2015年2月27日 10:00|ウーマンエキサイト
ラブバージン【自由が丘恋物語 〜winter version〜 第20話】
桃香は、ボーカルレッスンで課題曲の恋の歌を歌うとき、ふたりの彼のことを思いながら声を出した。
はがゆい気持ち、切ない気持ちがクルクルと渦を巻いて空へ空へあがってゆく。立ちすくむ桃香は息もできないほど苦しい。胸の中で何かが暴れている。歌詞をひと言声にすると息が熱い。声が熱い。歌い終わるとカオル先生が、興奮したように言った。
「桃香ちゃん、変わったわ。
また歌い方が変わってきたわ。音は、ずれたところがあるけど、恋に翻弄されてる女性の気持ちがしっかり歌に入り込んでた。最近嬉しくなったり、ブルーになったり、気持ちの揺れが激しいでしょ。心が年取るとそういう恋はできないけど、桃香ちゃんはラブバージンだから、純粋さが歌に出る。壊れそうなガラスみたいでいい感じよ。」
「え、そうですか。でもラブバージンって…」
桃香は恥ずかしそうにうつむく。