トロント国際映画祭が、現地時間9月5日に開幕する。オスカー予測の上でも重要な役割を果たすこの映画祭は、今回もまた期待作が目白押し。ハリウッドスターが集まることでも有名で、今年もニコール・キッドマン、ジェニファー・ロペス、マイケル・B・ジョーダン、ダニエル・ラドクリフ、クリスチャン・ベール、マット・デイモンなどがレッドカーペットを歩く予定だ。オープニング作品は音楽ドキュメンタリー『Once Were Brothers: Robbie Robertson and The Band』。クロージング作品はロザムンド・パイク主演の『Radioactive』。この映画祭で世界プレミアを果たすのは、先に述べたオープニング、クロージング作品のほかに、タイカ・ワイティティ監督、スカーレット・ヨハンソン出演の『Jojo Rabbit』、トムハンクス主演の『A Beautiful Day in the Neighborhood』、ライアン・ジョンソン監督、ダニエル・クレイグ主演の『Knives Out』、マイケル・B・ジョーダンとジェイミー・フォックスが共演する『Just Mercy』、ブロードウェイ劇の映画化で、ケリー・ワシントンが再び主演する『American Son』などがある。ひと足先にヴェネチア、テリュライドでプレミアされた作品では、是枝裕和監督が初めてフランス語と英語で撮影した『真実』、ホアキン・フェニックス主演の『ジョーカー』、レネ・ゼルウェガーがジュディ・ガーランドを演じる『Judy』、エディ・レッドメインとフェリシティ・ジョーンズ共演の『Abominable』など。さらに、それより早くカンヌで受賞したボン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』、ペドロ・アルモドバル監督の『Pain and Glory』なども上映される。トロントは、カンヌ、ヴェネチア、ベルリンと違い、審査員が話し合いで賞を決めるのではなく、一般観客の投票で決まるのが大きな特徴。つまりは、気取った小難しい作品よりも、ストレートに人々の心に響く作品が受賞するということ。昨年の受賞作も、『グリーンブック』だった。ご存知のとおり、この映画は、見事、オスカーも受賞している。その前にも、『スラムドッグ$ミリオネア』『英国王のスピーチ』『アメリカン・ビューティ』などがその道をたどった。今年もまたここから、次のオスカーが生まれるのだろうか?それを期待しつつ、これから映画祭レポートを書かせていただくことにする。受賞結果発表は、現地時間9月15日(日)。取材・文=猿渡由紀
2019年09月05日クラシックの歴史において「スペイン音楽」はどうも別扱いされているような気がしてならない。フランスとはすぐ隣り合わせにあり、音楽家の交流も頻繁だったスペインがなぜ?との疑問は、スペインの作曲家たちが描き出した名曲の数々を聴いてみると解決できそうだ。本公演のタイトルにもある「哀愁のスペイン」は、まさにスペイン音楽の魅力を見事に言いきったキャッチに違いない。そう、スペイン音楽は他のどの国の音楽よりも民族色が強いのだ。今回予定されるビゼーの「カルメン」や、ラロの「スペイン交響曲」&ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」はまさにその代表曲。哀愁に満ちた美しいメロディの数々は、クラシック初心者にもすぐに受け入れられる親しみやすさに満ちている。ソリストに瀬崎明日香(ヴァイオリン)と木村大(ギター)を迎えたマエストロ“コバケン“こと小林研一郎の熱いタクトが楽しみでならない。瀬崎明日香木村大◆公演概要9月11日(水)サントリーホール大ホール「コバケンの名曲の花束~哀愁のスペイン/オービック・スペシャル・コンサート2019」指揮:小林研一郎ヴァイオリン:瀬崎明日香ギター:木村大ナビゲーター:朝岡聡管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団
2019年09月05日福岡県、大牟田市に実在する動物福祉に特化した、“日本一動物に優しい”との声もある動物園を舞台にしたヒューマンドラマ『いのちスケッチ』が、11月15日(金)より全国公開(11月8日より福岡県先行公開)される。この度、その予告編が公開された。本作の主人公は、漫画家になる夢に限界を感じ、故郷の福岡に帰ってきた田中亮太。彼が軽い気持ちで始めた動物園飼育員の仕事を通して、動物の命について考えるようになり、家族の問題とも向き合いながら、再び一歩を踏み出す勇気を取り戻していく姿が描かれていく。主人公を演じるのは、TV朝日スペシャルドラマ『ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ』、映画『走れ!T校バスケット』、映画『今日も嫌がらせ弁当』などで幅広い役柄を演じてきた、劇団EXILEの佐藤寛太。福岡県出身である佐藤は、朴訥として気の優しい等身大の若者を、地元出身ならではのナチュラルな方言で演じている。ヒロインの獣医役を務めるのは、連続テレビ小説『まんぷく』で注目された藤本泉。さらに、動物園園長役に武田鉄矢、主人公の祖母役には渡辺美佐子、両親には浅田美代子、チェッカーズの高杢禎彦、飼育員役には、芹澤興人、大牟田市出身の林田麻里が脇を固める。公開された予告編では、佐藤が演じる亮太が、東京で漫画家になるべく奮闘する姿や、故郷に帰って動物園で働くようになり、藤本演じる獣医から動物について教えを受ける様子などを切り取りながら、絵を描く才能を活かし、新たな世界に出会うまでが映し出されている。『いのちスケッチ』11月15日(金)より全国公開(11月8日より福岡県先行公開)
2019年09月05日『長江哀歌』『罪の手ざわり』など数多くの傑作を手がけてきたジャ・ジャンク―監督の最新作『帰れない二人』が6日(金)から公開になる。本作はひと組の男女のラブ・ストーリーを描いているが、監督は意図的に物語の中で17年もの時間を経過させ、長い時の中で変化する人の心、社会の様子を描き出している。『プラットホーム』『青の稲妻』などキャリアの初期から世界の映画祭で注目を集めてきたジャ・ジャンク―監督は、変化していく中国社会の中でもがく者たちの姿を描き、自国よりも海外の方が評価が高い時期もあったが、ここ数年は自国で商業的ヒットを生み出すことも増えている。しかし、監督の姿勢はブレることがなく「社会から取り残された人に目を向けることが映画監督の仕事」と言い切る。「世界的な規模で考えますと、理想に近づくことはできるかもしませんが、人間が完璧な理想世界に生きることは不可能だと私は思います。それがまず前提にありますので、社会が大きな変革を迎えると、成功する人がいる一方で少数の取り残される人が必ずいると考えます。私たち芸術家の仕事は、そんな少数者に目を向けて、彼らを描くことです。それが世界でたったひとりであっても、豊かになった大多数の流れについていけなかった人、苦境にある人に目を向けるのが映画監督だと思うのです」そんな監督が最新作で描くのもまた“取り残された男女”だ。中国で暮らすヤクザ者のビンと恋人のチャオはさらなる成功を夢見て暮らしていたが、ある事件をきっかけに離れ離れになってしまう。映画は2011年から始まり、17年におよぶ愛のドラマを描いていく。前作『山河ノスタルジア』も長い時間が扱われたが監督は「脚本を書きながら、前作に続いてまた長い時間を扱うことになるのか……と思うことはありました」と笑う。「しかし私はじっくりと考え、最終的にこの映画では長いスパンの中で主人公ふたりの運命を見ていくことが必要だと決断しました。というのも、私はこの映画で“男女の気持ちが変化していくラブ・ストーリー”と“中国の裏社会の現在”を描きたかったからです。現代の中国は情報過多で、次から次へと予想外の出来事が押し寄せてきますから、現代だけを舞台にしてしまうと、題材の“ごく一面”しか描けないと思いました。そこで2011年から17年間を舞台に、抽象的でマクロな視点から、つまり歴史を盛り込んだ視点からふたりの運命を描くことが必要だと考えたわけです」21世紀のはじめ、中国は大きな変化を遂げた。北京五輪が開催され、多くの人々の暮らしは豊かになり、いくつかの家々は巨大なダムによって沈み、新しいビジネスが勃興し、かつての商売は廃れた。「社会が変化すると、人間の心の中の世界も変化を遂げます。私の考えでは、多くの男性は社会が変化すれば、その主流に乗ろうとして結果的に失敗します。一方、多くの女性は主流の流れとは距離を置いて、伝統的な愛の方法を貫こうとします。そこですれ違いが起こってしまい、悲劇が生まれるわけです」監督が語る通り、主人公のビンとチャオは長い時間の中で翻弄され、お互いの気持ちはすれ違い、いつまで経っても心落ち着ける場所を見いだせない。本作の邦題は『帰れない二人』だが、監督はこれまでも繰り返し、帰る場所、つまり“故郷”を作品のモチーフにしてきた。「かつて私はこんなことを言ったことがあるんです。“離れてこそ故郷がある”と。つまり、遠く離れた場所から想像する時に故郷は抽象的に成立するのだと。私にとって故郷とは物理的な場所ではありません。それに私自身も映画に登場する裏社会の人たちと同じく漂泊の生活を送っているのです」生まれた場所から遠く離れた男女は中国の各地を漂流しながら、時に相手を探し、時に相手から遠ざかるようにして激動の時代を漂っていく。監督が「これまでの作品以上に“男女の情感”を描くことに注意を傾けた」と語る本作は、多くの観客にいつまでも消えることのない深い余韻を残すことになるだろう。『帰れない二人』9月6日(金)より、Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
2019年09月05日ヴィジュアル系ロックバンド、シドが2年ぶりにニューアルバム『承認欲求』をリリースする。昨年、結成15周年&メジャーデビュー10周年を迎え、今年3月にアニバーサリーイヤーのグランドファイナルとして『SID 15th Anniversary GRAND FINAL at 横浜アリーナ 〜その未来へ〜』を行ったシドは、アルバム発売後、全国ホールツアーを開催する。次々に色と形を変えながら進化する楽曲制作と精力的に行うライブへの尽きない情熱、シドが持つその衝動の理由を探るインタビューを敢行した。変化することへの恐れをバンドとしての生き様で打ち砕いていきたい——アルバム『承認欲求』を聴かせていただいて、前作『NOMAD』の時から見ても飾り立てた感じのカッコよさではなく、今のシドの等身大の良さが出ていると感じました。この1年ほどで『SIDぴあ』を出していただいたり、エッセイ本を出されたりと、15年間の過去を振り返る機会を作ってこられたと思うのですが、そういった振り返りを経て、今のシドがどんなバンドなのか? 教えていただけますでしょうか。マオシドはヴィジュアル系というジャンルでバンドを始めて、その畑で育ってきて、色々な刺激を受けながら、形を変えて、でも軸は守りつつやってきました。音楽という軸はもちろん、ステージでヴィジュアルの部分もしっかり見せるということも大切にしてきましたし、ステージだけじゃなくジャケットとか細かいところでも、軸は守りつつも、とにかく変化を楽しめるバンドでありたいというところに今たどり着いているのかなと思います。でも途中では、変化することの恐れというのはありました。なんでもそうだと思うんです。バンドだけじゃなくて、ファンのみんなの日常もそうだと思うんですけど、変化することの恐れをバンドとしての生き様で打ち砕いていけるような、そういうのを見せながら活動していきたいなっていうところに今ちょうどたどり着いているところで。それがまさにこのアルバムに繋がっていて、いろんなものをそぎ落として、一つ大きな変化を、自分たち的には成し遂げることができたと思っています。あとは受け取ってくれた皆さんが、どういう風に受け取るかはまた別としても、俺たちはまた一つ皮剥けたよっていうのはあるので。今そこにいます。——自然体の姿を見せられるようになったというのがあるんでしょうか?マオもちろんありますね。それって多分、音楽だけじゃなくなんでもそうだと思うんですけど。人と人が15、6年一緒にいたら、自然な姿って見せられるようになってくると思うし、ファンに対して活動しているバンドだからこそできている、安心感の中だからこそやれることだとも思うので。だから自然体でできていますね、昔よりは。——メンバー間でのバンドでの役割は、15年の長い時間の中で変わってきていると思うのですが、たとえば前作の『NOMAD』からの2年間で変わったりしましたか?マオ『NOMAD』からの2年間だったらそんなに変わってないかも。ゆうや 変わってないよね。——では変わったタイミングは?マオ『NOMAD』からということで振り返ってみたら『NOMAD』で、新生シドになったという感じが俺の中ではしていて。役割って意味ではあまり変わってないかもしれないですし、このバンドはこれが役割、この人はこうっていうより、それぞれなんですよね。それぞれが時々で得意分野が変わったりとか、その得意分野の人が時期によっては2人いたりとか、そういうバンドなので。上手いことそこでやっていると思うので。役割で言ったら常に変わってきているかも。——今、「新生シド」というワードが出ましたが、15周年を経て、今回のアルバムでもまた、新しいシドの新章がスタートしていると思います。15周年を経て、見えたものって一言で表すと何になりますか?Shinji全員の中で、余分なものをそぎ落としていこう、というのが今回のアルバムではあって、それを出せたなと思っています。シドってみんな何でも割とできてしまうバンドで、すごくいろんなことを曲に対してできてしまうんですけど、それを今回は良い意味でそぎ落としているんです。——なるほど。Shinjiさんの中での余分なものって何ですか?Shinjiその点で言ったら、僕は失敗って結構するんですけど。やっぱり失敗がないと気づかないことも多いなって思っていて。例えば、バンドだからこそ4人の意見があって、一人で曲をグイグイ進めるのも違うというか。みんなの意見で、その曲が出来上がってくっていうバンドならではのこともあるし……。そぎ落したものは、もう色々ですよ、ギターの本数も減りましたし。昔は本当に、たくさんのギターを使いたいとか、たくさんのブランドのギターを弾きたいとかっていう願望がすごく強かったんですけど、今はもう逆で。弦が切れない限り変えたくないなと。やっぱり情報量が多すぎるとまとまらなくなっちゃうので。減らしたいなと思ってますね。——明希さんはいかがですか?明希いろんな意味で、アーティストとしてなのか、人間としてなのかは分からないですけど、あんまり心配することがなくなったかなというのはありますね。こうならないようにこうしよう、こうならないようにこうしなきゃ、あれどうかな?って考えるよりも、音楽に対してここまで自分のキャリアができたし、自信というのがやっぱりあるし。少々の揺れというか、出来事では、揺らがなくなってきたのかなという気はしますね。——以前は考えすぎたり、不安になったりも?明希なんか120%やんなきゃいけない、くらいに勝手に思っていて。もっと俯瞰で自分のことも、もちろんバンドのことも、見るっていう気持ちというか、その観点があったほうがチームとしていい結果になるなっていうのを思ってきて。そういう部分ではそぎ落とされた部分が多いのかな。考えすぎて気苦労してたりっていうのもないし。今は、そういう気持ちですかね。変わったところっていうと。——『SIDぴあ』でもおっしゃってましたね。以前は自分の曲が選ばれるかというのを気にしていたけど、今は4人のシドのカラーを考えていると。明希そうですね。でもやっぱりそこの部分に関しては、常に15年間戦いつづけてきたところなので。メンバーと切磋琢磨してきたというか。そこはきっと本質は多分変わらないんじゃないかなという気はしますけど。でも、どういう方向にバンドが向いても、プラスアルファでいられる存在に、よりいられるようにはなってきたかなという感じです。——ゆうやさんはいかがですか?ゆうや明希と近いです。やっぱり自信だと思うんですよね。だって俺らってもう15年以上やってきて、毎回毎回こんなにいろんな、自分たちの持ってるものだけに頼らないで、何が新しくて、何が必要でって、16年やってきたんです。もう、これすごいじゃんっていう風にまず思うから。自信なのかなっていうところはあります、とっても。——揺れなくなったみたいなところも?ゆうやうーん……明希と同じで、いらない心配をしなくなったのはありますね。考えすぎるところとか、そこじゃねぇなっていうところに気づけるようにもなったし。それが、シンプルな考えに持っていけるコツだったりするのかもしれないし。そう思うと自信がついたからなんだろうなって思います。——それは、ライブでの演奏やパフォーマンスにも影響してるなって思います?ゆうやそうですね、ドラムという、ずっと同じポジションにいるので、あそこだけは自分がエキスパートだと思ってるので。ドラムに対しては自信はあるし、あそこにいるとすごく安心するしっていうのもあるので、ライブにももちろん現れているのかなと思います。今伝えたい言葉は、今のうちに伝えようと思った——アルバム『承認欲求』はすごく攻めたタイトルだなと思いましたが、とても温かい、優しい曲が多くて、中身を聴かないと想像できないアルバムでした。アルバムのコンセプトは今回どんな風に決まったんですか?マオコンセプトは、タイトルをつけた後でいうと、『言葉でしっかり時代にシドを刻みたい』というのがあって。承認欲求っていう言葉が、2019年の今を象徴している言葉でもあると思うので、そこにしっかりシドの音楽を刻み込んでおきたいなっていう意味でつけました。『承認欲求』という曲から始まり、今のシドができる、シンプルで強い楽曲たちを中に詰め込んで、最後『君色の朝』でしっかりちゃんと希望を残して終わる。すごくコンセプトがあるものにできたのかなと思っています。——シドは聴く人に寄り添う、共感性を呼ぶ歌詞・曲が多いと思っています。今回はそれをより強く感じたのですが、聴く人に寄り添いたいとか希望を与えたい、みたいな思いは今回は強かったんですか?マオそうですね……今まで我慢していたわけではないんですけど、特に最近それが出てきていて。いっぱい出てきちゃうんですよね。——それは何かきっかけが?マオやっぱり一回休んだ時に色々考えたことが大きかったんですかね、振り返ってみると。その時に、思ったことはすぐやらないとな、というのがすごく気づいたことでもあったんですよね。やりたいことを何かの理由をつけてやんなかったりだとか、何かの理由をつけて臆病になっちゃったりとかっていうんじゃなくて。今、伝えたい言葉は、今のうちに伝えようっていうのを感じて。もともとそういう性格ではあるんですけど、余計にそういうスタイルに、言葉に関してはなってきているのかな。歌詞に対しては、今思っていることを出すことが多くなっていますね。——よりご自身の思いというものをストレートに表現されている?マオそうですね。ストレートにしたほうが伝わるのかなとか、とにかく「伝わる」というところをすごく重視しているかもしれないですね。——ライブで聴いたときに聴き取りやすい歌詞というのも意識されているのかなと思いました。マオもちろんそこはありますね。今って歌詞カードを見ない人も多いので、それでも伝わるようなものを意識しています。だからといって、難しい言葉は書けないから簡単なことを書くっていう風にしてしまうと、本当の気持ちは伝わらないと思っているので、難しいことを書ける準備はちゃんと日々アンテナ張って勉強して仕入れながらも、ザルを振った時に細かい網目からちっちゃい原石だけが落ちてくるイメージというか。そこは本当にシンプルだけど伝わる言葉がある。ここには難しいことがいっぱい残っていて、いつでも難しい言葉を俺は使えるんだよっていう状況の中で、伝わりやすいことを伝えていくっていう方向に結構今来てます、作詞に関しては。——本当は難しい部分は上にあるんですね?マオそうですね、そこも書きたいっちゃ書きたいんですよね。ただ今後のシド、特に今のシドに関してはそれは違うなと思っていて。難しいことも書きたいは書きたいんです。——明希さん、すごく頷いてらっしゃいましたけど、曲に関してはいかがですか? 今回入ってるご自身作曲のものでいうと。明希自分的に一個一個の曲にテーマを持っていたような気がするんですよね。例えば2曲目の『Blood Vessel』だったら、自分たちの思う、スリリングな場面のシドっていうか、変な話ですけど、チューニングを落としてヘヴィにグワッ!って攻めるような楽曲よりも、フレーズとか空気感がエッジが効いてるというかジャンル感も含めて、こういうスリリングさのほうがシドっぽいのかなっていうイメージでした。で、『Trick』はこの中でいうとロック色の強い曲だと思うんですけど、その辺も新しい見せ方というか、あんまり日本の歌謡曲ロックっぽいコード感じゃないというか、メロディの乗り方もちょっと不思議な感じがあって。そういうところもテーマでした。『涙雨』は、結構昔からあった曲なんですよ。『2℃目の彼女』とかそのへんぐらいの時に元々の原曲みたいなものはあって。最近、アルバムを作る上で過去曲をちらっと聴くんですけど、その時にメロディが引っかかって。今のシドのスキルでこの曲をやったら結構壮大な、今までにないバラードの色が出るんじゃないかなと思って。10曲目の『君色の朝』は、横浜アリーナの時のライブのイメージというか。セットリストのあの流れで、新曲をハメるんだったらあの場所で、この曲で、っていういろんなタイミングが重なって。最後に未来が見えるような曲になって、15年目のありがとうと、これからの16年目もよろしくね、応援してねっていうような意味合いの曲で、未来をちゃんと見据えた楽曲になっていたらいいなと思っています。——シドのライブのラストを飾るのが想像できるような。明希これを作った時はラスト感はあんまりなかったんですよ。マオくんの歌詞がハマって、よりそっちにいったのかなと。最後を締めくくる雰囲気がより濃くなっていったのは歌詞のおかげです。アルバムの曲順はマオくん中心に決まったんですけど、最初『君色の朝』がラストになったのは意外で。でも並べて聴いてみて、歌詞もちゃんと読むと、逆にこれしかないなと、今聴いてみると思います。——ゆうやさん作曲の『ポジティブの魔法』はめちゃくちゃゆうやさんっぽいというか、ゆうやさんそのものだなと思いました。ゆうや本当ですか!? 僕から出るこの優しさが……出てますよねぇ(笑)僕が書いたこういう優しい感じの曲に、マオくんの歌詞がすごくマッチしていてすごくいいなぁと思いますね。本当に、ゆうやの顔、見えてきますよね。——ゆうやさんの曲なんだろうなって。ゆうや一発で分かっちゃう感じですよね。僕も本当すごいそう思ってます。——作曲は割とスムーズにできた感じなんですか?ゆうやそうですね、これ狙いが元々あって。こういう感じにしたいなっていう。単純にシドのオリジナル音源の中に、アコースティックの曲がないなって思ったのがきっかけで。アコースティックバージョンみたいなライブはやったりするけど、アコースティックの曲があったら面白いなぁって思ったのがきっかけで、この曲を作りました。——新しいシドの曲になりましたね。Shinjiさん作曲の『承認欲求』はアルバムのタイトルにもなっていますけど、これはどういった経緯で出来上がった曲ですか?Shinj基本的に僕の曲の作り方って、アレンジとメロディが一緒に進んでいく感じで作ることが多いんですけど、この曲に関しては最初はアレンジを全く考えずにコードだけでメロディをガシっと作った曲で。ちょっと初めての感じですね。——『承認欲求』っていうタイトルとか、マオさんの歌詞がこうなるっていうイメージみたいなものは最初から共有されていたんですか?Shinjいや全くないですね。むしろこれは朝作った曲で、そういう歌詞がはまるなんて全然思ってなかったんです。——マオさんは、『承認欲求』というフレーズが今の時代を表す言葉だなというのを肌で感じられていたんですか?マオそうですね。本当、どこに行ってもそこにぶつかるっていうか、テーマの一つだと思うし。世界的なテーマにもなっていると思うんですよ。世界が繋がってるみたいなイメージをみんな持っていて、実際ある部分に関しては繋がっていると思うんですけど、実はちっちゃい世界の中にいるっていう滑稽な感じ、異様な感じが、今の時代だなと。僕が20代の前半だったら何も感じないテーマだと思うんですけど、この歳だから感じたこと、人生の最初の半分はそうじゃないところで生きてきた自分だから感じたテーマだと思うんで、これは自分にしか書けないなと思って書きましたね。あと自分もかなり世の中的には「承認欲求」というのは、満たされても満たされなくてもどっちでもいいんですけど、自分を「好き」ってファンの人に言われちゃうと、その人に対しては承認されたい欲求がグイッと上がっちゃうんで。ついつい、パーっとその気持ちに応えたいっていう気持ちが強くなっていってしまうんですけど。それって別に楽しい範囲内かなと思うし、誰も損してないし、俺も楽しいし、いいかなって思っていて。ただ、そういう「認められたい欲求」がどんどんどんどん、見ず知らずの人に対してまでってなっていくのは考えてしまう。今、「承認欲求」が原因の怖い事件もあるし。だからその辺のいろんな角度から、受け取れる歌詞にしたいなと思って書きました。——今、「ファンの人に対しては期待に応えたい」し、「それが楽しい範囲内」だとおっしゃいましたが、本当にそうなんだろうなと思っていました。ファンからの期待に応えるしんどさみたいなものが、昔より減ってきたんじゃないかなと勝手に想像していまして。マオそうですね。期待には結果的には、多分前より応えられてるのかなっていう気は自分ではしているんですけど、それは結果的なだけであって。応えなきゃって思って応えているわけでは確かにないですね。自分がやりたいなって思ったことを今ひたすらやれているし、前より実際のところはたくさん忙しく動いているかもしれないんですけど、それが「やんなきゃ」っていう感じじゃなくて。やりたくてやっている感じがすごく良いですね。——すごく良いサイクルなんですね。マオそうなんですよ、だからこういう歌詞も生まれたと思うし。——だからこんな優しい雰囲気のアルバムになったんですね。声ではない、音みたいなエネルギーを感じた瞬間、満たされた——ライブのお話を伺いたいんですけど、シドの魅力ってやっぱりライブだなって思っていて。今年もすごく精力的にライブをされてきていて、次は9月からホールツアーですね。今の皆さんのライブへの原動力っていうのは何ですか? ずっと変わらないものからきている?マオめちゃめちゃ変わっていると思います。最初は正直、お客さんが増えるっていうところ、だけとまでは言わないですけど、そこを本当に4人とも目指してやってきたんで。ある時、突然変わってきたというか。それぞれ変わった場所は違うと思うんですけど、今はそこじゃないところに行き着いている感じがしますね。——マオさんにとっての”ある時”というのは?マオバンドを始めたきっかけが「人に知られたい」「人気になりたい」「モテたい」とかっていう、本当に言ってしまえばちょっと不純な欲求だけで始めているんで。それが満たされた瞬間かな。ライブをやっていて、キャー!とかマオー!とかっていう声が、ウワーー!っていう声じゃない、何か音みたいなものになった時に、なんかキタな俺!っていうので一回満たされた感じがしますね。なのでそこからは、最初の原動力だった「人気になりたい」ばっかりじゃないところをもっと突き詰めていきたいというのは感じました。それがどのライブだったかっていうのは分からないですし、いまだにキャーキャーやっぱり言われたいですけど(笑)でもそこが全てじゃないなと。——キャーっていう声には今もエネルギーを感じる?マオなんだろうね、あれは。自分の歌で、明らかに何かが動いているっていうのを感じるからかな。自分の歌に対して興奮して人がキャーって言ってるんじゃなくて、何かが動いてるっていう。一個ずつ紐解いていくと、聴いている人たちの人生だったりとか、みんなそれぞれが動いていて。自分の歌詞だったりとか歌だったりとか曲だったりで。それを感じたときに「ただ人気になりたい」とかじゃいかんなって、発信するものもちゃんとしなきゃなって、しっかりそこで思ったんですよね。——マオさん個人だけではなくて、シドとしてもそれは、変化した瞬間だったのかもしれないですね。明希さんはいかがですか? ライブに対する今の原動力について。明希俺は変わらないですね。やりたいことが変わらないから。音楽が好きなので。バンドをやりたい、ライブをしたいっていうのが、バンドやろうって決めた16〜17歳の初期衝動からずっと変わらない。——音楽が嫌になったことは?明希嫌になったっていうか、疲れたことはもちろんたくさんあるけど。そうですね、ないかな嫌になったっていうのは。音楽自体はね。——こんなたくさんのライブ本数をずっとやり続けるって想像できないくらいすごいことだなぁと思っているんですが。体力的にも、精神的にも。明希あんまり苦じゃないんですよね。体力的に疲れたりとか、精神的に疲れたりっていうのは多分あったんでしょうけど、それで全部崩れちゃったっていうのはまだなくて、幸い。自分としては学生の頃にバンドやって、軽音部で授業終わった後に部活の時間があるじゃないですか。あの感じがまだ終わってないっていう感じなんですよね、変な言い方かもしれないですけど。そういうイメージでずーっと音楽をやれてるから、ライブへの、音楽への欲求がずっとあるから、バンドって楽しいなってずっと思ってきたので、それが原動力ですかね。——それ、ライブで観ているほうもわかるかもしれないです。シドの魅力って、変わらないことも魅力だと思っていて。少年っぽかったりとか、ステージでずっとバカっぽいこと言ってみたりとか、そういうのを含めて、めちゃくちゃ楽しそうな4人っていうのが魅力だと思うので。Shinjiさんはいかがですか?Shinjバラードを演奏していて、お客さんで泣いている人を見かけたりするときですね。自分たちが作った曲を、渾身で弾いて、ちゃんと伝わったんだなとか、そういうのがすごい一番嬉しくて。自分も、少年の頃ってライブ見に行って、自分の好きな曲が流れたりするとやっぱり泣くほど嬉しかったりしたので、なんかそういうのいいなぁって思って。体力的にはずっとやってるのがキツい時もありますけど、そういう瞬間で全部オッケーになっちゃったりするから。最近そういうのすごい感じます。年齢を重ねれば重ねるほど。——プライベートの自分が変わってきたことが影響していたりはしますか?Shinjどうなんですかね。ライブで僕が意識してるのは、あんまり緊張しすぎても良くないし、でも緊張感なくなっちゃいけない。だから割とライブに臨む前は、ちょっと自分に話しかけるというか。例えばツアーがちょっと佳境になってくると慣れてくるんで、緊張しなくなってくるんですよ。でもそれじゃいかんぞと自分に問いかけて。ガチガチは駄目だけど、緊張感を持ってちゃんとやりたいなっていう。——そのバランスは今の方が昔より取れている?Shinjそうですね。——ゆうやさんはいかがですか?ゆうやライブの原動力……やっぱりファンじゃないかな。ファンの人たちが待っててくれているから、シドのゆうやでいられる、というのが原動力であって、ライブでワッってやれてることが繋がってるのかなって気がしますね。そこがなかったら、もうめちゃくちゃ若くはないですから、そこに逆らってこんなことしてやろう! とかも思わないだろうし。多分きっと、暴れ曲限定ライブなんてやらないだろうし。ここまで色々やってきた俺たちが、ここにきて、暴れ曲限定ライブをやるっていうのは結構傑作だなって思うんですけど。それも、ファンの人に対しての原動力があるから、そんな自分たち面白くない?ここにきてこれやるの面白くない?って思っているところがあるんですよね。それをやるにはいろんな支度が必要だったりもするけど、それをさせてくれるのはそこらへんのところだったりするんじゃないかと思うんです。じゃないとやれないような気がするんですよね。本当に年相応か、気にしてる部分も気にしなくなるんじゃないかと思いますけどね。体調管理をしっかりしようとかも、多分気にしなくなるんじゃないかな。ライブってファンがいないと成り立たないと思うので。ファンの存在が大きな原動力になっているんじゃないかなと思います。シドのゆうやでいさせてくれるのはファンだから。若い奴に負けないくらい、これからもバカバカ暴れてやろうと思ってますね。——若いアーティストのことは気になったりするんですか?ゆうや気にはならないですけど、僕らも若いアーティスト、という時期を経てきてるので、自分のめっちゃ若い頃と比較して、いや、あの頃より今の方が全然動けるなって自分でも思っちゃったりするとか色々あるし。そういう、若い頃の自分にまず勝っていきたいなと。俺は割と若い頃から他の人よりも動けるタイプだったりするので、そんな自分に勝ってればもう最高だなって思っちゃったりするんで。どんどんどんどん逆らって、アホみたいにやっていけたらいいんじゃないかなと思いますね、ずっと。メンバーのエンタメ紹介「窓もトイレも開けていないとダメなんです」——ぴあのwebとアプリが、”検索では出会えないエンタテインメントとの出会い”というのがコンセプトなので、皆さんが最近出会ったエンタメについて一つ教えてください。明希最近家のそばに、めちゃくちゃ美味いカレー屋を見つけて。超辛いんですよ! むっちゃくちゃ辛くて。俺、辛いのあんまりいきすぎると食べれないんですけど、それは結構イケて、楽しみの一つです。次の日に仕事がない日だと、昼間からそこで食べて、そのあと酒飲んで。持ち帰りのも買ったりとかして。ビーフカレーなんですけど、いろんなスパイスをずーっと煮込んでて。強力な辛さなんですけど、イケるんですよね、そこのカレーだけは。辛さだけを売りにして、この辛さに耐えられたらみたいなのあるじゃないですか。そういうのではなくて、ちゃんと旨辛な味なのでそれが好きですね。——それは食べてみたいですね! マオさんはいかがですか?マオ俺もご飯なんですけど、この間、河村隆一さんに連れて行ってもらったお店で、めちゃめちゃエンタメだなと思ったお店があって。お店の中に入ると、まずでっかいワゴンでいろんな食材がバーって置かれていて。その食材から、じゃあこれとこれとこれ使ってパスタ作ってください、とか。まずは前菜から20種類くらい置いてあるんですけど、好きなのちょっとずつでもいいし、これだけいっぱいでもいいしみたいな並べ方ができて、そういうのがどんどんどんどん出てくる。メインのお肉とお魚これですーってまるまるそのお肉とお魚がまず出てきて。これで、この味でこうして下さいとかって言えちゃうやつで。めちゃめちゃ楽しかったです。明希も一緒に行ったんですけど。明希美味しかったね!マオめちゃめちゃ感動でしたね。こんなお店があるんだって。俺もこういうとこに後輩連れて来たいなって思いました。やっぱ偉大な先輩はそういう引き出しもすごいなって。——大人だから知っていることですね。Shinjiさんはいかがですか?Shinj僕は何年もYouTubeが好きで、すごい詳しいんですよ。最初の頃はチャンネル登録者が5万人だった人が、ずーっと僕が見てたら200万人になったりとか。なんかそういうのが嬉しいと思って。——自分が見つけた感が。Shinjそういうのあるじゃないですか。ずーっとその人のこと見てたんですけど。自分って好きな物が偏ってるんだなって思うのが、YouTube見ながら寝てたりすると、全部同じのばっかりループになってるんです。関連で出てくるやつが。朝起きたら魚ばっかりの映像が。魚とかラーメンとか……。——魚の映像?Shinj釣りだったりとか、捌いているところだったりとか。なんかすごいですよね、最近本とか買わなくてもそういう実演みたいなので勉強できるので。すごい好きですね。——朝まで、それが流れてるってなかなかシュールですが。Shinjずっと捌いている動画が流れながら寝てますよ。——割と音がないと寝られない方なんでしたっけ。Shinjそうですね、音があった方がいいですね。カーテン閉まってるとあんまり寝られなかったりとか。トイレもドアが開いてたほうが安心するんですよ。——そこまで。じゃあ家では他に人がいなければトイレはドアを開けて?Shinj全然開けてますよ、そっちのほうが落ち着きます。ゆうや人がいても開いてる。いても開いてんだよこの人は!——人に見られても気にならないんですかね(笑)Shinjなんか不安なんですよね。小っちゃいところに閉じこもってるのが。——じゃあ飛行機とかやばいんじゃですか?Shinjもう、ダメですね。ゆうやShinjiの隣だと眩しくてしょうがない。窓閉めんなって言うんだもん。Shinjでも窓閉めたいとか開けてたいは、人によって違うから、半分閉めたりします、眩しいだろうなと思いながら。ゆうや半分でも眩しくてしょうがない。Shinjでも俺は一人だったら全開なんだけど。全開がいいです、本当は。——(笑)ゆうやさんはどうですか?ゆうや僕、吉本以外何も思いつかない。あとは釣りの落とし込みかな。釣りの方法で落とし込み釣りっていうのがありまして。東京って海あるじゃないですか。ああいうところで市場に並ぶような魚が目の前で釣れると思わないじゃないですか、普通。それが釣れちゃうのが意外と落とし込みだったりして。そんなところにそんな魚いるの?っていうのがすごくエンタメ感あるよね、なんかびっくりするんですよ、まず目に見えていないものだから。そんなとこなんて小さい魚ぐらいしかいないでしょう?とか思いがちなところに潜んでるやつが割とちゃんとしていて。それがやっぱりエンタメかな。都内なのにっていうところに俺はすごくエンタメを感じるんですよね。大自然のどこどこに行って、何かを釣るくらいなら普通の釣りかなとは思うんですけど、都内で高速道路が後ろに走ってるのが見えているところで、しかも橋下目の前のところで釣れるくらいの感じがやっぱり半端ないエンタメ感だなと。——大物が釣れた時の喜びみたいな?ゆうや半端ないですね。トピックスですよ。簡単なんですよ、それがまた。アイテム少ないんで、落とし込みって。ポーンと落として来なかったら、またちょこちょこっと上げて、また落として。居ないところにはいないので。餌をずっとたらして、魚がやってくるのを待つ釣りじゃないんで。居るところに落としてやって、食わせるだけの釣りなんですよ。足使ってやる釣りなんですけどね。ツアーとかでも釣り道具を持って行って、本当にライトなので楽にやれるのに、釣れる魚はドデカいんで。エンタメ感半端ないかな。あの子たちがついてきてくれるから、新しいことがやれる——アルバムが出まして、ここからまたシドの新章がスタートということで。ここからのシドのビジョンをうかがいたいです。以前、ベストアルバムを出されたときのインタビューで、マオさんに「目標って何ですか?」とお聞きした時に「シドをやめないこと」だっておっしゃっていて。「やめるっていうことが、ずっとシドを追いかけてきてくれている人を否定することになるから」とおっしゃっていたのがすごく印象的でした。新章としての、これからのシドのビジョンはまた変わってきていると思います。マオやめないっていうのはもう普通になってきていますね。やっぱり特殊だと思うんですよ、シドって。ファンの方の持ってくれている比重が、よそと比べるわけじゃないですけどすごく重いというか。同じ気持ち、同じ想いを持って一緒に進んでっているような。まさにあの横浜アリーナの飛空艇のような。同じ想いを乗せて飛んでいるようなバンドだと思うので。そんなバンドだからこそやらせてもらえることが、新しい挑戦だったりするのかなって。そんなファンの子たちすらもドッキリさせるような、いい意味での裏切りであったり、そこはやっぱり目指していきたいですね。せっかくこういう環境でやらせてもらっているので。それって普通できないこと、実は難しいことだったりもすると思うんですよね。このタイミングで、こんな新しいことやってみようぜって、なかなか怖くてできなかったりすることも、シドだと「あの子たちがついてきてくれてるし」って思えるから、やれることもたくさんあるので、そこをやっていきたいです。わかりやすく言うと、新しいことを、新しい扉をどんどん開きながら活動していきたいっていうのはありますね。——ファンの人たちの熱量が他と違うっていうのは、ご本人たちも感じられているんですね!マオ比べたことはそんなにないんですけど、きっとそこに関しては勝負でもないけど、負けないのかなって。というのも、自分たちだけじゃなくてファンのみんなも思ってるっていうバンドっていうところでいうと、16年という時間を長いって捉えれば長いんですけど、俺は短いなって思っていて。16年でこんなものを作れたバンドってなかなかいないんじゃないかなと思って。それは大切にしながら頑張っていきたいですね。——2003年からって考えると、時間的にはやっぱり長いなって思うんですけど、短く感じるんですね。マオそういう色濃いものを作る期間としてはすごく短い。短い時間でやれたのは、すごく幸せだなって思いますね。明希今マオくんが言った言葉が一番しっくりくるなって聞きながら思いました。音楽的には、だんだん年月を重ねていくと、「やっぱりこれが好き」ってなっていくと思うんですけど。そういう中に、もっともっと欲しいとか、もっともっといろんな音楽を知りたいとか、表現してみたいという欲求というのは尽きない4人だと思うので。自分の色がもっともっとこの先濃くなっていくと思うんですよ。その中でやっぱり、さっき言った変わらない部分と、変わっていく、進化していく部分がこのバンドにはたくさんあると思うから。そういうところをこれからも大事にして、この先もやっていけるだろうなという、ある種の確信はありますね。Shinj今16年やっていて、シドって徐々にグルーヴができてきてるというか。それは確実にあるんですけど、もっともっと何年もやったら、絶妙なグルーヴになっていく気がしていて。このアルバムも16年経った今じゃないとできないと思っていて。すごく尊敬するギターの人とか、めちゃくちゃ上手い人とかいるんだけど、僕はその人には追いつけないだろうし。ギターをめちゃくちゃ上手くなる、とかじゃなくて、シドじゃないとできないこととか、そういう個性をどんどん強くしていきたいですね。——個性を強めていくというと?Shinjこの演奏を聴いただけでシドってわかるとか、新しいんだけどすごくシドを感じるとか。そういう”じゃないと駄目”っていう感じにしたいですね。演奏の面やライブでのパフォーマンスもそうですけど、他の人が演奏したらダメっていうものにしていきたいです。ゆうや僕も同じ気持ちです。ファンの方が俺らのことを信じてずっとついてきてくれてるっていうのがあるので、本当に心置きなくチャレンジできる、させてもらえているから、これからも攻めて行きたいなと思います。——ありがとうございました!■New Album『承認欲求』2019.9.4Release【初回生産限定盤A(CD+DVD)】KSCL-3180/1¥3,611+税【初回生産限定盤B(CD+写真集)】KSCL-3182/3¥3,611+税【通常盤(CD)】KSCL-3184¥2,870+税<収録曲>01. 承認欲求02. Blood Vessel(アプリゲーム「イケメンヴァンパイア」第2章主題歌)03. 手04. デアイ=キセキ05. see through06. ポジティブの魔法07. 淡い足跡08. Trick09. 涙雨10. 君色の朝■SID TOUR 2019 -承認欲求-2019年9月13日(金)千葉 / 松戸・森のホール21〜ID-S限定LIVE〜2019年9月14日(土)千葉 / 松戸・森のホール212019年9月23日(月・祝)群馬 / ベイシア文化ホール(群馬県民会館)2019年9月25日(水)神奈川 / カルッツかわさき2019年10月5日(土)宮城 / 東京エレクトロンホール宮城2019年10月12日(土)埼玉 / 大宮ソニックシティ2019年10月14日(月・祝)岡山 / 岡山市民会館2019年10月19日(土)大阪 / 大阪国際会議場メインホール2019年10月20日(日)大阪 / 大阪国際会議場メインホール2019年10月22日(火・休)福岡 / 久留米シティプラザザ・グランドホール2019年11月2日(土)愛知 / 日本特殊陶業市民会館フォレストホール2019年11月3日(日・祝)愛知 / 日本特殊陶業市民会館フォレストホール2019年11月5日(火)東京 / 中野サンプラザホール2019年11月6日(水)東京 / 中野サンプラザホール2019年11月9日(土)新潟 / 新潟テルサ2019年11月13日(水)北海道 / カナモトホール(札幌市民ホール)2019年11月21日(木)東京 / 東京国際フォーラムホールA撮影/木村直軌、取材・文/藤坂美樹、ヘアメイク/坂野井秀明(Alpha Knot)・大平修子、スタイリング/奥村渉
2019年09月05日現代美術家6名によるグループ展『話しているのは誰? 現代美術に潜む文学』が国立新美術館で11月11日(月)まで開催されている。同展に参加するのは、北島敬三、小林エリカ、ミヤギフトシ、田村友一郎、豊嶋康子、山城知佳子の6名のアーティストたち。1950年代から1980年代生まれまでと年齢は幅広く、表現方法も映像や写真を用いたインスタレーションをはじめとして多岐にわたる。そんな彼らの共通点は、作品のうちに「文学」の要素が色濃く反映されていることだ。2014年より日本各地を撮影した風景写真シリーズ「UNTITLED RECORDS」の制作を行う北島敬三。目に見えないもの、時間や歴史、家族や記憶をモチーフとして作品を手がける小林エリカ。映像や写真などを用いて、社会政治的事象、とりわけセクシュアリティとマイノリティの問題を取り上げた作品を手がけるミヤギフトシ。既存のイメージやオブジェクトを起点にしたインスタレーションやパフォーマンスを手がける田村友一郎。そろばん、サイコロ、安全ピン、油絵具などの既製品や美術に馴染みのある物質を素材に手を加え、これら事物の中に複数の見え方が表出する作品を制作する豊嶋康子。写真、映像、パフォーマンス、インスタレーションによって沖縄における米軍基地や戦争の問題を掘り下げてきた山城知佳子。さまざまな形式で表現活動を行う彼らの作品の中に「文学」がどのように潜んでいるのか?その多様な現れ方を感じ取ってみたい。【関連リンク】 国立新美術館(https:// www.nact.jp )北島敬三 《ツィルカール村 アルメニア共和国》(「USSR 1991」シリーズより)1991/2019 年 顔料印刷 66.0×93.0cm 作家蔵 ©KITAJIMA KEIZO小林エリカ 《ドル》 2017年 ウランガラス、鏡、紫外線ランプ 61.0×41.0×7.5 φ70cm 個人蔵 協力:妖精の森ガラス美術館 © Erika Kobayashi Courtesy of Yutaka Kikutake Galleryミヤギフトシ 《A Lamp》(「物語るには明るい部屋が必要で」より) 2019 年 デジタルCプリント 作家蔵 ©Futoshi Miyagi田村友一郎 《Sky Eyes》 2019 年 ミクストメディア 作家蔵 ©Yuichiro Tamura豊嶋康子 《ズレ》 2018 年 紙、割りピン、アクリル絵具、ボールペン φ11.5cm 作家蔵 撮影:木奥惠三山城知佳子 《チンビン・ウェスタン『家族の表象』》 2019 年 4KHD ヴィデオ、カラー、サウンド 作家蔵
2019年09月05日多様な国籍のメンバーで構成された、韓国発のボーイズグループNCT 127(読み:エヌシーティーイチニナナ)。クリエイティブの先進性とクオリティーの高さでK-POPファン以外からも高い評価を受ける彼らが、日本オフィシャルファンクラブの発足を記念し、9月23日(月)に幕張メッセにて『NCTzen 127-JAPAN 1st Meeting 2019‘Welcome To Our Playground’』を開催する。同イベントは「通常のライブツアーとはまったく違った表情でお届けする1日限りのプレミアムイベント!」というコンセプトとのことで、SNSでも非常に話題を集めている。というのも、アメリカの地上波ABCの人気番組「Good Morning America」「Strahan and Sara」への出演。最新アルバム『NCT#127 WE ARE SUPERHUMAN』での、米ビルボード最大のメインチャート“ビルボード200”11位の快挙。エイバ・マックスの「SO AM I」にフィーチャリングで参加……。など、世界的な活躍が注目される一方、NCT 127はメンバーのキャラクターが伝わるような、バラエティ性の高いコンテンツへの注目も高いのだ。映像配信サービス「dTV」にて、8月25日より放送開始となったNCT 127出演の人気番組『NCT 127 おしえてJAPAN!』の2期(Lesson2)では、「体操着で全力で駆け抜け、大玉転がしやパン食い競走に身体を張って挑む企画」や「放課後トークと銘打った素の青年たちの会話を垣間見れるコーナー」もあり、そんな多様な姿を見せる世界的アーティストは彼らぐらいのものなのだろう。さらにはYouTubeチャンネルにて細やかな頻度でV Logを更新するなど、多面的な魅力を見せてファンとのコミュニケーションを取っていくところに、NCT 127のオンリーワンな世界人気の秘密があるのではないだろうか。日本オフィシャルファンクラブの設立で、ますます彼らの魅力を身近に感じられる機会が増えるのではないかと、これからの展開が楽しみだ。早めのファンクラブ入会で『NCTzen 127-JAPAN 1st Meeting 2019‘Welcome To Our Playground’』のチケット申し込みの案内や、早期入会限定特典がゲットできるそうなので、ぜひともチェックしたい。また、NCT 127は9月28日(現地時間)に、ニューヨークで開催される大規模チャリティーイベント「2019 Global Citizen Festival」へ、クイーン、アダムランバート、アリシア・キーズ、ファレル・ウィリアムス、ワン・リパブリック、ヒュー・ジャックマンらと肩を並べ、K-POPアーティストとして初出演することが決定している。世界を股にかけて活動を加速させ、さまざまな魅力を発揮するNCT 127からますます目が離せなくなりそうだ。次の楽曲がどんなものなのかにも期待が膨らむ。■NCT 127 日本オフィシャルファンクラブ開設&1st Meeting2次先行申込受付中!NCT 127、待望の日本オフィシャルファンクラブ『NCTzen 127-JAPAN』が開設されました。今後、ファンクラブを通してたくさんの限定サービスをお届けする予定です。また、1日限りのプレミアムイベント『NCTzen 127-JAPAN 1st Meeting 2019 ‘Welcome To Our Playground’』の開催が決定。ファンクラブチケット2次先行予約を、9月8日(日)18:00まで申込受付中です。受付期間内に入会すれば、申込が可能となります。是非この期間にお申込みください!-----------------NCTzen 127-JAPAN 1st Meeting 2019‘Welcome To Our Playground’-----------------■日時2019年9月23日(月・祝)昼公演:開場14:00/開演15:00夜公演:開場18:00/開演19:00※開場/開演時間は変更となる場合がございます。※出演メンバーは予告なく変更になる場合があります。予めご了承ください。■会場幕張メッセ国際展示場7ホール■チケット料金¥7,800(税込・手数料込み)※会員限定来場特典付き
2019年09月05日本日、9月5日に竹原ピストルが「全国弾き語りツアー 2019-2020 It’s My Life」を神奈川県・よこすか芸術劇場にて行う。竹原ピストルは1999年、野狐禅を結成。際立った音楽性が高く評価され、2003年にメジャーデビュー。2009年に野狐禅を解散し、全国のライブハウスを行脚する傍ら、CMソングとして話題になっていた『よー、そこの若いの』を含むニューアルバム『youth』をリリース。音楽活動に加え、役者としての評価も高く、これまでに熊切和嘉監督作品『青春☆金属バット』『フリージア』『海炭市叙景』『さや侍』への出演実績を持つほか、2016年秋に公開された西川美和監督の最新作『永い言い訳』での好演が評価され、キネマ旬報助演男優賞、日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。サントリーコーヒー『BOSS』のCMにも出演した。その竹原ピストルの開催する今回の引き語りツアーは、今まで通りの白熱した言葉と歌で魂に火をつけられながらも、より血と肉を伴ったパフォーマンスに心を揺さぶられることは間違いない。日常に少し疲れたり、今いる自分の場所を見失いそうな時ほど、彼のメッセージが胸に突き刺さるライブになりそうだ。■公演情報住友生命 「Vitality」 presents竹原ピストル 全国弾き語りツアー 2019-2020 It’s My Life日時:9月5日(木)会場:18:00開演:19:00場所:神奈川県・よこすか芸術劇場大劇場
2019年09月05日阿佐ヶ谷スパイダースの新作公演、長塚圭史作・演出による『桜姫〜燃焦旋律隊殺於焼跡(もえてこがれてばんどごろし)〜』が9月10日、東京・吉祥寺シアターにて開幕する。四代目鶴屋南北が手がけた歌舞伎の人気演目『桜姫東文章』を原作とした長塚作品と聞いて、十年前、2009年に上演された、故・中村勘三郎、大竹しのぶ、白井晃らが出演した舞台『桜姫〜清玄阿闍梨改始於南米版(せいげんあじゃりあらためはじめなんべいばん)〜』を思い出した人もいるだろう。本作は、その十年前の公演の際に長塚が書き上げていて、上演されなかったもうひとつの『桜姫』である。長塚に話を訊いた。「書き上げたといっても、推敲する前の段階でしたけど。それがさまざまな理由で採用されず、南米版を新たに書くことになった。それ以降、こっちの『桜姫』についてはすっかり忘れていたんです。だってこれに執着していたら次の作品が書けないから、切り替えていかないとね。僕は、過去のことを忘れる能力に長けているので(笑)」埋没していた未発表作品を掘り起こしたのは、当時、推敲前の戯曲を読んでいた劇団員で演出助手の山田美紀だ。今、形にするに至った経緯には、一昨年に阿佐ヶ谷スパイダースが“劇団”として再始動したことも関わりがあるようだ。「このような過去のプロデュース公演などで、自分の中で心残りのあるものにもう一度、スポットを当ててみる。そうした試みを劇団でやってみたらいいなと思っていたんですよね。以前の僕には、次から次へと新作を書き飛ばす……といった時代があった。それらをもう一回見直して、きちんと作品化する。その時も作ってはいたけれど、書きあがったらすぐに短期間で立ち上げる……といったことをしていたわけだから。もうちょっと冷静になって作り上げたい、ずっとそう考えていたんですね」奇しくも今回、2006年に長塚が書き下ろした戯曲『アジアの女』の再演が重なっている。「自分がかつて書いたものを眺める機会が続きました。恥ずかしさもあるけど、やっぱりその時の思考、エネルギーは面白いし、どちらも僕にとっては転機となった作品。考えてみたら、原作モノを扱って書いたのは『桜姫』が初めての経験でしたね」十年前の自作を改訂していく作業は「自分を疑うというより、信用してみる」感覚だったという。「原作の『桜姫東文章』自体が荒唐無稽で、これを現代劇にするにはどういうやり方がいいんだろう?と自分なりに考えた痕跡があって、それを見つめるのが面白いですね。当時は、演出は串田(和美)さんがやるんだから演出家が勝手になんとかやればいいと、僕も乱暴に書いていて(笑)。とんでもなく荒唐無稽なことを書いているから大変なんですけど、なんだかあの時の串田さん、勘三郎さんと対話しているような気もして、面白いんです」稚児白菊との心中に失敗して生き残った高僧清玄は、後に出会った高貴な生まれの桜姫を白菊の生まれ変わりと信じて執着する。桜姫は、かつて自分を凌辱した盗賊・権助に焦がれ、再会して夫婦になるも女郎として売られることに……。この奇天烈な原作を、長塚は戦後占領下の東京を舞台とした物語に移し替え、大胆に改稿。不思議な楽隊に導かれるようにして嬉々と堕ちてゆく美しき桜姫、彼女を追いかける聖人・清玄、運命に巻き込まれていく極悪人・権助ほか、生への執念をたぎらせた人々が痛快に絡み合うドラマとして再生した。その展開の鮮やかな飛躍に、長塚圭史の真髄が覗く。「今、立ち稽古をやっていて、荒唐無稽でムチャクチャだし、ほとんど血まみれだったりするんだけど、そんなに違和感がないんですよね(笑)。鶴屋南北が書いたこの突拍子もない世界と、相性がいいのかもしれない。歌舞伎についてアドバイスをいただいた国文学の先生によると、いわゆるその時代の世相をアレンジして歌舞伎は作られていると。それはどうしたって現代劇には通用しないから、だったらもう思い切って変えてしまう。カブいていいわけですからね。意外と違和感なく、工作を作るように人物の関係性をつなげて、立ち上げていっていますね。その中で、僕が戦後という時代にしたかった思いは何なのかが、段々と明確になって来ています。清玄は、白菊とともに死ねずに生き残った生命力、そして後に殺されても幽霊になってまで桜姫に纏い付く生命力がある。桜姫は、私の人生はこれじゃない、もっとスリリングに、ドラマチックに生きたいと願う、その熱量はつまり生きることへの渇望です。獣みたいな権助は、戦争でおそらく人を殺して来ている。彼はもう理屈じゃなく、人を殺してでも生きていくしかない。そんな彼らの思いは、戦後の、本当だと思っていたことが全部嘘になってしまったあの時代、ひっくり返ってしまった世の中を、どうにか生き抜こうとするエネルギーに繋がっていくんじゃないかと思うわけです。やっぱり人を殺してでも僕らは生きたい、そういう理不尽な生き物なんだと。そのことに僕らは向き合って生きていくしかない、今、そんなことを思いながら稽古をしています」物語の鍵を握る“楽隊”、その音楽を、数々の長塚作品を支えてきた強力な助っ人、荻野清子が手がけている点にも注目だ。「荻野さん、最高ですよ。楽器は、ウクレレとクラリネットと段ボールの太鼓とピアニカ。そんな編成で本当に楽隊になるのかな、どうなることやら……と最初は思ったんだけど、やっぱり楽譜が良ければなるんですね(笑)。素敵な曲を作ってくれて、ある種の見世物小屋みたいな光景が楽隊に重なる……そんなイメージの広がりを見せています」桜姫を演じる藤間爽子をはじめとする若手の面々に、中村まこと、村岡希美などの巧者が混ざって、14名の劇団員キャストで放つ新作舞台。熟考して積み上げた芝居、全員の生きるエネルギーの結実を、ぜひ見届けたい。主要スタッフも劇団員である。どうやら阿佐ヶ谷スパイダースの“劇団員”は今後も増え続けていくらしい。「今も増えていて、幽霊みたいに(笑)精神だけは共にしている、って人もいる。僕が認識できるのは100人程度だと思うので、100人くらいの集団で、公演によって伸び縮みしながらやっていけたらと思っていますね。ただ、劇団って閉じていく傾向があるので、閉じないように、でもいたずらに肥大しないで……と、試行錯誤してやっていくしかない。今回みたいな荒唐無稽な作品に劇団の皆が頭を使って、必死になって考えている光景はいいな〜と思って(笑)。これからも、劇団でしかできない公演をやっていくつもりです」取材・文:上野紀子
2019年09月04日エミリー・ブラントが恋愛映画に主演することになった。タイトルは『Wild Mountain Thyme』で、お相手役は『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のジェイミー・ドーナン。ドーナンの父役をクリストファー・ウォーケン、ブラントの父役をジョン・ハムが演じる。原作は、ジョン・パトリック・シャンリーが書いた舞台劇。映画版でも、シャンリーは脚色と監督を務める。撮影は今月末、アイルランドでスタートの予定だ。ブラントの次回作は、来年公開予定のディズニーの超大作『ジャングル・クルーズ』。文=猿渡由紀
2019年09月04日スペインのピアニストといえば、かつて一斉を風靡した美しき名手アリシア・デ・ラローチャ(1923-2009)の名前を思い出す。彼女亡き後のスペインピアニズムは一体どうなってしまったのだろう。などと思っていた矢先に現れたのがホアキン・アチュカロだ。と言いつつ1932年生まれのアチュカロとラローチャとの年齢差はわずか9歳。見方を変えれば、これまでラローチャの影に隠れていた大器にようやく光が当てられたとも言えそうだ。今回の公演では、モーツァルト、ベートーヴェン&ショパンの名曲のほか、得意とするスペインのグラナドス&アルベニスなどの作品が披露される。まさにスペインピアニズムの継承者を堪能するにふさわしいラインナップだ。老いてなお色気を感じさせるスペイン人特有のダンディズムも合わせて堪能したい。◆公演概要9月9日(月)日経ホール「ホアキン・アチュカロピアノ・リサイタル/第488回日経ミューズサロン」●ホアキン・アチュカロ(ピアノ)Joaquin Achúcarro:1932年スペイン・ビルバオ生まれ。59年リヴァプール国際コンクール優勝。以来、世界中の著名ホールでベルリン・フィル他と共演。C.アバド、R.シャイー、C.デイヴィス、Z.メータ、小澤征爾、S.ラトルら指揮者が信頼を寄せる世界最高の巨匠のひとり。2014/15シーズンは北米、南米、ヨーロッパ、アジアなど12か国で演奏、ヴェルビエ音楽祭へ参加、リスボンでは4つの協奏曲を10日間で演奏し大成功を収める。CDはホアキン・ロドリーゴ唯一のピアノ協奏曲ほか多数、DVD「アチュカロ・プレイズ・ブラームス」(C.デイヴィス指揮ロンドン響)や「ファリャ&フレンズ」(S.ラトル指揮ベルリン・フィル)でも見事な音楽性を披露。2000年《平和のためのユネスコ・アーティスト》に選出。2003年スペイン国王より国家功労十字勲章を授与。イタリア・シエナのキジアーナ音楽院名誉教授、同院国際サマーコースの専任講師。1989年より南メソジスト大学(アメリカ・ダラス)の名誉教授。www.achucarro.com
2019年09月04日本日よりMovieNEXで発売が開始される、『アベンジャーズ/エンドゲーム』。この度、MovieNEXに収録されるボーナスコンテンツの中から、あのシリアスな本編からは想像できない、爆笑必至の貴重なふたつのNGシーン集が公開された。前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の興行収入をわずか10日間で抜くという、驚異のスピードで日本中を席巻。この記録破りの大ヒットで映画界の歴史を塗り替えた超大作が、本作『アベンジャーズ/エンドゲーム』だ。本作では、最凶の敵サノスを倒すために再び集結したアベンジャーズが、それぞれの葛藤と戦い、大きな犠牲を払いながら、最後にして最大の逆襲を成し遂げるストーリー展開で、世界中の人々を感動と興奮の渦に巻き込んだ。公開となった映像では、ワンダ・マキシモフ役のエリザベス・オルセンが転んでしまう様子や、ソーの母親を演じたレネ・ルッソやアイアンマン役のロバート・ダウニー・Jr.が奇声を発するという、本編では決して見ることができないキャストたちの意外な一面を見ることができる。宙づりで飛行シーンを撮影するキャプテン・マーベル役のブリー・ラーソンは「クールに見える?それなら我慢する」とジョークを飛ばす。本編ではサノスの艦隊を貫く大活躍を見せるのだが、とてもそんなスーパーパワーがあるとは思えない姿に、思わず笑ってしまうこと間違いなしだ。ダウニー・Jr.は、車のトランクからキャプテン・アメリカの盾を取り出すシーンで大苦戦。さらにガモーラ役のゾーイ・サルダナをはじめ、キャプテン・アメリカ役のクリス・エヴァンス、ブラック・ウィドウ役のスカーレット・ヨハンソン、そしてエンシェント・ワン役のティルダ・スウィントンまで、豪華キャスト陣がノリノリでダンスする様子も収められている。撮影現場の雰囲気の良さはもちろん、キャスト同士の強い信頼関係があるからこそ、複雑なアクションシーンやシリアスな演技を可能とし、全世界歴代興収ランキング1位という偉業を成し遂げることができたのだ。この度発売されるMovieNEXは、Tシャツ、ピンバッジ、ポスター、手ぬぐいなど、貴重なアイテムが目白押しの限定グッズとセットになったものも発売される。また、同日発売の『MCU ART COLLECTION』にも、Amazon限定でオリジナルマグネットとのセット商品や、本日から予約受付を開始する、シリーズ20作とオリジナル収納ケースなどをセットにした“ユーキャン『マーベル・スタジオ・ブルーレイ・コレクション』”なども登場。限定アイテムと一緒に、『アベンジャーズ/エンドゲーム』MovieNEXやMCU作品を楽しむことができる。本作の初回限定のボーナスディスクには、今回公開された映像の他にも、『スタン・リーの功績』をはじめ、製作の舞台裏や未公開シーン、ファン必見の貴重映像が多数収録(デジタル配信(購入)にも一部収録)されている。『アベンジャーズ/エンドゲーム』本日より発売『アベンジャーズ/エンドゲームMovieNEX』/4,200円+税『アベンジャーズ/エンドゲーム 4K UHD MovieNEX』/8,000円+税『アベンジャーズ/エンドゲーム 4K UHD MovieNEXプレミアムBOX(数量限定)』/10,000円+税先行デジタル配信中
2019年09月04日10月18日(金)より日米同時公開となる、『マレフィセント』の待望の続編『マレフィセント2』。この度、出演者のひとりであるエル・ファニングのコメントが公開された。ディズニー・クラッシック・アニメーションの金字塔として、半世紀以上も世界中で愛され続けている『眠れる森の美女』に隠されていた“禁断の呪い”が生んだ究極の愛の物語を描き、全世界で空前の大ヒットを記録した『マレフィセント』。前作に続きオーロラ姫を演じるのは、日本でもキュートなルックスで人気を誇る女優のファニングだ。ファニングは、マレフィセントを演じるアンジェリーナ・ジョリーをまるで本当の“母”のように慕っており、憧れの存在だそう。ファニングは「アンジェリーナみたいな人になりたいって思うわ。彼女は監督もするし、『マレフィセント』シリーズの製作総指揮も務めている。彼女の近くで学ばせてもらって、私もいつか映画監督をやってみたいと思うようになったの」と、ジョリーから影響を受けたことと大きな野望を明かした。ファニングは2歳の時に映画『I am Sam アイ・アム・サム』で女優デビューして以来、ハリウッドの第一線で女優として活躍。これまでキアヌ・リーヴスやニコール・キッドマンなど数々のハリウッドスターたちと共演してきたが、本作で2度目の共演となるジョリーには特に強い憧れを抱いているという。前作で撮影した時にエルはまだ14歳だったが、ジョリーの役と向き合う姿に衝撃を受けたそうで、「彼女はマレフィセント役を体に染み込ませるために、リハーサルの時から大きな杖を持っていたの。カメラが回っていない所でもキャラクターになりきっていたわ。衣装もキャラクターにぴったりのものを選んだり、メイクを決めることにもたくさんの時間をかけたり、細部にまでこだわっていた。役に全力を注ぐ彼女の姿勢を覚えておかないとって思ったし、私もアンジェリーナみたいになりたいと強く思ったの」と振り返る。そして21歳になった現在、ジョリーと再共演を果たした彼女は、女優としてのジョリーだけでなく、“女性”としての生き方に憧れるようになったそうだ。「アンジェリーナは女優として素晴らしいだけでなく、世の中の人のために色んなことをしているでしょ。そういう人に私もなりたい。彼女にしかできない方法で、世界中の人のためになることをしていて、私は彼女のそんな素晴らしいところに憧れているの。それに女優だけでなく、映画も撮っていて本当に凄いわ。自分でプロジェクトを動かしたいし、映画監督もやってみたい。まだまだ達成していない“夢”がたくさんあるのよ」と語る。本作の撮影中のオフショットをインスタグラムにアップするほど仲良しのふたりだが、ファニングはジョリーから生き方も学んだようで、本作での再共演も楽しみが膨らむばかりだ。さらにファニングは、ジョリーが自分の意志をはっきりと発言する姿を撮影現場で見て、彼女も本作ではオーロラ姫役について色んな意見を言うことができるようになったそう。「撮影現場でのアンジェリーナの様子は凄く勉強になるから、ずっと観察してお手本にさせてもらっているの。何事においても自分の意志を持っていて、はっきりとした意見を貫く。そんな姿を見て、私もオーロラ姫が本作ではどんな風に大人の女性に成長して、どんな気持ちなのか、衣装などについても意見を言えるようになったのよ」と明かしている。そんなファニング演じるオーロラ姫とマレフィセントは真実の愛を見つけたはずだったが、本作では“めでたし、めでたし”では終わらない『眠れる森の美女』の新たな伝説が描かれる。オーロラ姫は前作で結ばれたフィリップ王子とめでたく結婚することに。しかしその婚礼には、真実の愛によって母と娘のように結ばれたマレフィセントとオーロラ姫の絆を引き裂き、妖精界を滅ぼそうとするイングリス王妃による恐るべき罠が隠されて いた……。結婚式の日、迫り来る危機から愛するオーロラ姫を救うため、マレフィセントの“究極の愛”が試される。『マレフィセント2』10月18日(金)より全国公開
2019年09月04日《麗子像》などで知られる岸田劉生の没後90年を記念した大回顧展『岸田劉生展』が開幕。10月20日(日)まで東京ステーションギャラリーで開催された後、山口県立美術館(11月2日〜12月22日)、名古屋市美術館(2020年1月8日〜3月1日)に巡回する。日本の近代美術を代表する画家、岸田劉生(1891〜1929)。没後90年を迎えて開催される同展では、初期から最晩年までの厳選された名品が一堂に会する。監修の山田諭氏(京都市美術館学芸員)によると、「日本の近代美術が常にフランスの近代美術を後追いしていた時代に、劉生はただひとり、自己の価値判断によって、自己の歩む道を選択し、自己の絵画を展開していった」と言う。劉生のほとんどの作品は、画面に残されたサインや日記から制作年月日が明らかになっており、同展ではほぼ制作年代順に作品を展示。そうすることで、劉生がどの時期に、どのような刺激を受けて、自身の画風を意識的に変転していったのか、その歩みを理解できるようになっている。第1章では、独学で水彩画を制作していた劉生が、黒田清輝が主催する研究所で本格的に油彩を学び、雑誌『白樺』からゴッホやゴーギャン、マチスら後期印象派の画家たちから衝撃を受けた時代の作品を紹介する。東京ステーションギャラリー()
2019年09月04日現在放送中のドラマ『あなたの番です -反撃編-』で田中圭が演じる、手塚翔太による主題歌『会いたいよ』が本日9月4日に発売となる。『あなたの番です』は日本テレビで25年ぶりとなる、2クール連続ドラマとして4月からスタート。原田知世と田中圭が演じる、年の差新婚夫婦が交換殺人ゲームに巻き込まれていくミステリー作品だ。企画・原案は秋元康が務めている。展開と謎解き要素の奥深さで人気を集め、第一章最終回の放送時にはTwitterで「#あなたの番です」が世界トレンドランキング第1位を獲得。放送中の第二章『反撃編』の初回放送は、放送開始から前章からの最高視聴率を記録した。田中が演じる主人公の手塚翔太は妻の菜奈を殺され、犯人を突き止めるため立ち上がるスポーツジムのトレーナー。彼が歌う『会いたいよ』は7月の配信スタートから、1時間足らずでiTunes総合ランキング1位を獲得した。楽曲はもう会えない恋人を想う、切ないバラードとなっている。■リリース情報手塚翔太『会いたいよ』9月4日発売●初回限定盤CD01.会いたいよ02.Bookmark03.川沿いの道04.会いたいよ(Instrumental)05.Bookmark(Instrumental)06.川沿いの道(Instrumental)DVD01.「会いたいよ」Music Video02.Making of「会いたいよ」●通常盤CD01.会いたいよ02.Bookmark03.川沿いの道04.会いたいよ -Piano Only Ver.-
2019年09月04日19世紀にドイツの修道院で発見された、13世紀初期に南ドイツで書き写されたものとされる詩歌集、『カルミナ・ブラーナ』。ミュンヘンの出身の作曲家、カール・オルフ(1895~1982)がこれに基づいて書き上げた同名のカンタータはあまりにも有名で、映画作品などでも頻繁に使用されている。このカンタータに魅了されたのが、今や世界的スターダンサーであるだけでなく、演出家としても高い評価を得る熊川哲也。「全曲を聞き終わった瞬間に、バレエ作品として構築するためのアイデアが溢れ、たった1時間で全曲の構想をまとめてしまった」という彼が構成・演出・振付を手がける『カルミナ・ブラーナ』が、本日9月4日から2日間にわたって東京・オーチャードホールで上演される。中世ラテン語とドイツ語の詩や風刺作品などで構成された、遍歴の神学生が書いたとされる詩歌集の内容は、開放的に自然を謳歌した彼らの思想が反映されたもの。だが熊川がオルフの音楽から受けたイメージは、「女神フォルトゥーナの子は、悪魔であった」という発想から始まる型破りなものだった。母である女神フォルトゥーナ(中村祥子)を失脚させて人間界に紛れ込み、世界を操って悪を蔓延させる悪魔アドルフ(関野海斗)と、運命に立ち向かう人間たち。熊川が大曲に授ける、新たな物語の結末とは……。Bunkamuraの開業30周年を記念した公演とあって、熊川とタッグを組むのも話題の面々ばかり。衣裳・美術デザインを手がけるのは、ダンサーからデザイナーに転身し、マクヴィカー演出のオペラ『アイーダ』やウィールドン振付のバレエ『DGV』などで頭角を現してきたジャン=マルク・ピュイッソン。指揮はイタリアの新星アンドレア・バッティストーニが務め、Bunkamura開業以来のフランチャイズカンパニーである東京フィルハーモニー交響楽団が、昨年新たにフランチャイズカンパニーとなったK-BALLET COMPANYと初の本格共演を果たす。ダンサー、歌手、合唱、オーケストラの合計人数は250名を超えるとのことで、記念イヤーに相応しい、大規模で贅沢な公演になりそうだ。文:町田麻子
2019年09月04日ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが共演した同名ハリウッド映画を原案にした感動のヒューマンドラマ『最高の人生の見つけ方』のジャパンプレミアが9月3日、東京・六本木ヒルズアリーナで行われ、共演する吉永小百合と天海祐希が出席した。主婦として人生のほとんどを家庭のために捧げてきた幸枝(吉永)と、仕事だけに駆け抜けたセレブ社長・マ子(天海)。余命宣告を受けたふたりが、同じ病院で出会った少女の「死ぬまでにやりたいことリスト」を代理で実行しようと珍道中を繰り広げ、“生きる喜び”に目覚めていく。レッドカーペット上でファンと交流した吉永は「宝塚のスターになった気分」と満面の笑み。天海も「幸せな気持ちにさせていただいた」とファンの熱気に感謝を示した。ふたりの共演は『千年の恋・ひかる源氏物語』以来18年ぶり。「ずっと“兄貴”についていった。かっこいい方。前回はあまり共演シーンがありませんでしたが、今回は毎日一緒で」(吉永)、「現場にいたら、吉永さんがいるんですよ。夢のような毎日でした」(天海)と撮影の日々を振り返っていた。ジャパンプレミアには共演するムロツヨシ、ももいろクローバーZ、 前川清、犬童一心監督(『引っ越し大名!』)が出席。劇中には吉永と天海、ムロがももいろクローバーZのステージに登場するシーンがあり、吉永は「わたしもモノノフ(ファンの通称)ですから。1万2000人のお客様の前で、踊ってしまって(笑)。一生に一度のこと」。撮影は極秘だったが、ファンから情報が洩れることはなく、ムロは「このSNSの時代に……。本当にありがとうございます」とモノノフたちに感謝していた。吉永の推薦で、夫婦役が実現した前川は「ずいぶん迷惑をかけました。実際、最初は自信がなくてお断りしたんです」と回想。それでも「吉永さんからいただいたお手紙、今も大切にしています」とにっこり。犬童監督は「まさか自分の人生で、吉永さんの映画を撮れるなんて、ふと我に返ると想定してなかった。でも、すばらしい映画が出来上がりました。映画を撮り始めた17歳の頃の自分に教えてあげたい気持ち」と瞳を輝かせていた。取材・文・写真:内田 涼『最高の人生の見つけ方』10月11日(金)より全国公開
2019年09月03日アーロン・ソーキン監督による『The Trial of the Chicago 7』のキャストが固まってきた。現在までに決まっているのは、エディ・レッドメイン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、サシャ・バロン・コーエン、マーク・ライランス、フランク・ランジェラら。ほかにマイケル・キートンの名も囁かれている。映画は1969年の反戦活動家たちに対する裁判を描くものだ。ソーキンが書いた脚本には何人かの名監督が興味を示しており、一時はスティーヴン・スピルバーグが監督する予定だったが、最終的にソーキンが監督も兼任することになった。撮影開始は来月からで、来年秋の大統領選を狙って公開されるのではと見られている。文=猿渡由紀
2019年09月03日稲垣吾郎主演舞台『君の輝く夜に ~FREE TIME,SHOW TIME~』が8月30日に東京・日本青年館ホールで開幕した。今作は2012年、2014年、2016年と上演された稲垣主演の舞台『恋と音楽』シリーズのクリエイター陣が再びタッグを組んだもの。作・演出に鈴木聡、音楽は鬼才のジャズピアニスト・作曲家の佐山雅弘が担当。2018年夏に京都で上演されて好評を博した作品が、さらにパワーアップを遂げていよいよ東京にお目見えとなった。昨年と同じく、主演の稲垣吾郎を、共演の安寿ミラ、北村岳子、中島亜梨沙という3人の実力派女優が囲む布陣。2部構成の音楽劇の合間にショウタイムが入り、音楽は舞台上での生演奏。ショウアップされたエンタテインメント作品となっている。初演から1年近く時間が空いての再演となったが、初日公演前の囲み取材では「去年京都で1カ月公演をしているので、スタート地点が違う。より良い、さらに磨きのかかったものになっていると思います」と稲垣。安寿も「1年経って寝かせたというか、熟成した4人のチームワークはバッチリなので、いい初日を迎えられると信じております」とコメント。中島も「京都の時よりもさらに人の関係がパワーアップしているので、楽しみにしてください」と語れば、「練りこんで寝かせて、良いものをお見せできるように頑張りたいと思います」と北村も自信を覗かせる。また、新しい地図のふたり、香取慎吾と草なぎ剛も観にくるのかと問われ、「多分……そうですね、もちろん来てくれると思います」と稲垣が一瞬照れる様子も。昨年の京都公演にはふたりが訪れていたらしいが、どうやらふたりに今作を観られるのは緊張するようで、「歌とか踊りって、ずっとグループでやってきたものだから。お芝居は昔からひとりでやらせてもらってきたけど、歌と踊りをふたりに見られるのはなんとも言えない小っ恥ずかしさがあり。でもピリッと引き締まります。恥のないようにやりたいと思いますし、逆に頑張れるかなと」と、長く活動を共にしてきたメンバーならではの思いを語った。音楽劇の舞台は、国道沿いにある海の見えるダイナー兼ホテル。稲垣演じる男性客が店を訪れ、店の女主人や逗留客の若い美女、ふらりと店を訪れた謎の女社長らと、夏の終りのひとときを過ごすこととなる。男性客・ジョージにはこの店を訪れた理由があり、それは「10年前に別れた恋人とここで再会の約束をしている」というもの。また、女性たちもそれぞれ過去や事情を抱え、ジョージは再会の時を待ち焦がれながら、彼女らと会話を交わしていく……という物語だ。少しチャラいけれどもナイーブさを抱えたジョージには、まさに稲垣のキャラクターがぴったり。また、コメディエンヌぶりをいかんなく発揮している北村、凛とした佇まいで“大人の女性”の存在感を見せつける安寿、弾けるような天真爛漫さが魅力の中島と、女性陣のキャラクターがまさに三者三様。ジョージが抱えた“大人の恋”の顛末を、歌い踊りながら彩っていく。1幕と2幕の間に入るショウタイムも、見どころがたっぷりだ。全員がデザイン違いの白い燕尾服に身を包み、『ニューヨークニューヨーク』や『マック・ザ・ナイフ』など誰もが知るスタンダード・ナンバーを歌い踊っていく。ときに芝居仕立てでコミカルに、ときにしっとりと繰り広げるナンバーはなんとノンストップで14曲!今回のショウタイムは京都公演から時間が10分拡大されたとのことで、よりパワーアップした構成に。それぞれ活動してきたフィールドは少しずつ違うものの、“歌とダンス”という共通の分野で活躍を続けてきた4人だけに、そのクオリティは折り紙付き。特に稲垣と北村のタップダンスや、『イパネマの娘』や『スマイル』などをソロで歌い上げるなど、稲垣ファンにはたまらないシーンが満載だ。実は今作の音楽監督である佐山が昨年11月に64歳の若さで逝去。今回の公演は彼への追悼の意が込められているが、会見で稲垣が「暗い雰囲気は佐山さん自身が好きではないと思う。今日の初日、本番も一番の特等席で観劇して欲しい」と語ったように、出演者全員の想いが伝わってくるようなパワフルな舞台となっている。夏の終わりにぴったりの贅沢なエンタテインメント作品、ぜひたっぷりと楽しもう。同会場にて9月23日(月)まで上演される。取材・文:川口有紀
2019年09月03日文学座が上演する『スリーウインターズ』は、クロアチア・ザグレブ出身の女性作家、テーナ・シュティヴィチッチが描く、ある家族の4世代にわたる物語。第二次世界大戦直後から、グローバリズムの波に飲み込まれてゆく現代まで、クロアチアの3つの時代を背景に、生き方を模索する女性たちの姿が綴られる。上演会場は、約70年にわたって数々の意欲的な舞台を生み出してきた文学座アトリエ。本日9月3日、ベテランから若手までそろう座組みによって、いよいよ初日の幕を開ける。第二次世界大戦後の1945年、ザグレブ。ローズは、かつてナチスの協力者だったブルジョワジーの家を手に入れる。この家は、ローズの母親がメイドとして働き、ある事情から追い出された家でもあった。時は移り、ユーゴスラビア分断が決定した1990年、さらにクロアチアがEUに加盟をした2011年と、ローズを取り巻く状況は大きく変化してゆく。人々は、そして女たちは、この3つの冬をどう受け止め、生きたのか。2014年にロンドン・ナショナルシアターで初演、2016年にはクロアチア国立劇場でも上演された本作。日本初演となる今回の演出を手がけるのは、文学座の演出家・松本祐子だ。文学座アトリエの会では、『ペンテコスト』『ホームバディ/カブール』など異文化間の対立を描いた問題作を発表してきた松本。外部公演でも、新たな視点による『ピーターパン』の演出で、第47回毎日芸術賞千田是也賞を受賞するなど、戯曲の魅力を引き出す手腕に定評がある。アトリエ公演という密な空間で、どんな物語を紡ぎだしてくれるのか期待はふくらむ。そしてこのたび、シュティヴィチッチの来日が急きょ決定。9月4日13:30の回の終演後に、シュティヴィチッチと松本のアフタートークが開催される(別日のチケットでも参加可能)。女性にとっての“自分らしさ”や幸せのありようが大きく変化するなか、著作が10カ国語で翻訳され、ますます注目が高まるシュティヴィチッチの戯曲。日本の観客にとっても、多くの示唆を与えられる舞台となるに違いない。文:佐藤さくら
2019年09月03日南北戦争時代の米マサチューセッツを舞台に、牧師として従軍中の父を待つマーチ家の四姉妹が、家族や周りの人々に支えられながらそれぞれに成長する姿を描く『若草物語』と『続・若草物語』。ルイーザ・メイ・オルコットによるこの世界的名作小説を原作に、2005年にブロードウェイで初演されたミュージカルの日本語版『Little Women ~若草物語~』が、本日9月3日東京・にシアタークリエで開幕する。日本オリジナルミュージカル『生きる』でその才能を見せつけた作曲家、ジェイソン・ハウランドの代表作としても知られる作品だ。女性が職業を持つことがまだ稀だった時代に、小説家という夢を抱いて突き進む情熱の主人公、次女のジョーを演じるのは朝夏まなと。優しくおしとやかな長女メグには彩乃かなみ、病弱だが芯の強い三女ベスには乃木坂46の井上小百合、おしゃまで生意気な末っ子エイミーにはフェアリーズの下村実生と、イメージ通りのキャストが揃った。姉妹の“5人目のきょうだい”となる少年ローリーにジャニーズJr.の林翔太、メグと恋に落ちるジョンに川久保拓司、そしてジョーが下宿先のニューヨークで出会うベア教授にはLE VELVETSの宮原浩暢と、男性陣も適材適所。ここに姉妹の母役の香寿たつき、おば役の久野綾希子、ローリーの祖父役の村井國夫を加えた10人が、時には別の役にも扮しながら物語を紡ぐ。演出を務めるのは、多くのコンサートやショーを手がける一方、近年では『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』などの大作ミュージカルの日本語版でも手腕を発揮している小林香。心温まる少人数ミュージカルに、丁寧で細やかな演出が光る彼女とはやはり適役で、良質な日本版の誕生に期待が高まる。文:町田麻子
2019年09月03日w-inds.が、本日9月3日に神奈川県民ホールにて、「w-inds. LIVE TOUR 2019 “Future/Past”」を行う。w-inds.は、橘慶太、千葉涼平、緒方龍一からなる3人組ダンスボーカルユニット。2001年3月14日にシングル『Forever Memories』でデビュー。同年リリースした1stアルバム『w-inds.〜1st message〜』はオリコンチャート1位を記録。その功績が認められ第43回日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞。これまでに日本レコード大賞の金賞を7回、最優秀作品賞を1回受賞、NHK紅白歌合戦には6回の出場を果たしている。その活躍は国内に留まらず、中国や台湾・香港などの東南アジア全域に拡がり、これまでに台湾で7公演、上海で2公演、香港で10公演の海外単独公演を実施。台湾ではアルバム4作連続総合チャート1位を記録し、日本人として初の快挙を達成。香港でもIFPI香港トップセールス・ミュージックアワードにてベストセールス・リリース日韓部門でアルバム12作連続受賞という史上初の快挙を成し遂げ続けている。今回は7月31日に発売された41枚目となるシングル『Get Down』を引っさげた、全国11カ所を巡るツアー。『Get Down』は、橘慶太が作詞・作曲した楽曲の中でも最も激しいダンスナンバーとなっており、ライブでの披露も見逃せない。w-inds.の破竹のような勢いを体感できるライブになりそうだ。■公演日時「w-inds. LIVE TOUR 2019 “Future/Past”」9月3日(火)会場:17:30/開演:18:30場所:神奈川県民ホール
2019年09月03日つねにその表現を更新しながら、彼らにしかできない演劇で現在を照射する劇団・快快(ファイファイ)が新作『ルイ・ルイ』を9月8日からKAAT神奈川芸術劇場 大スタジオにて上演する。快快の主宰であり脚本を担当する北川陽子に話を聞いた。約2年半ぶりの公演となる今作には、異例な要素がたくさんある。まずキャストにぬいぐるみがいること。「キャストがなかなか決まらないなかで、いちばん最初に決まったのが片岡メリヤスさんのぬいぐるみ。とにかく舞台上に“いろんな存在”を出したいと思っていたときにInstagramで見かけて、快快のみんなに提案したら“いいね!”ってなりました」ぬいぐるみの声を演じるのは、御年83歳のラジオスター・毒蝮三太夫。起用の理由は「シンパシー」だという。「この公演が決まるずっと前、快快メンバー全員で毒蝮さんのラジオ公開生中継を観に行きました。たしか銭湯に来ていたときだったかな。そこで毒蝮さんにめちゃめちゃシンパシーを感じたんです。まず、おじいちゃんおばあちゃんを集めてしゃべって、その人たちに元気を与えているところ。中継が終わってから直接お話ししたんですけど、急に“俺は毒蝮三太夫を演じているんだ”っておっしゃったんですよ」取材時点の脚本を見せてもらったものの、読んだだけではいったいどんな劇空間が広がるのか、全容がつかめない。そのことを伝えると「私も」と笑う北川。いまはキャスト・スタッフ全員で話し合いながら、シーンをつくっている最中だという。「脚本のときから、みんなでとにかくしゃべる。キャスト個人個人の近況はもちろん、最近だったら香港のデモのこととか、みんなが気になっていることも。それを反映させて脚本をつくるし、演出も全員でアイデアを出しあってやります。客演の方たちも、すごく積極的に参加してくれます。最後の調整は私がやるけど、ほんとにみんなでつくるんですよ」つねに「いま、ここ」を観客に強く意識させる作品をつくってきた快快。「本当はもっとお客さんに参加してもらいたい気持ちはある。でも急に参加させられるのって嫌じゃないですか。私も観客だったら嫌だし(笑)。だからいい塩梅を探りつつ、現在性を感じてもらえるようにとは考えています」。音楽や映像も含め、新しさ、若さを爆発させてきた劇団だが、北川は「渋さに憧れている」と言う。「今回もほんとは渋くしたかったんだけど、そうはならなかった」。けれど今作のタイトル『ルイ・ルイ』は1965年にアメリカで発表された楽曲からとられているし、毒蝮三太夫という存在もある。これらのもつ空気が快快と混じり合ったときに生まれるものは、渋いかどうかはわからないが、きっといままで観たことのない面白さをもっているだろう。「この作品は観たあとに“あー、すっきりした~!”って思ってもらえるものになると思います」と北川。もやもやすることの多い今、必要とされているものが9月のKAATに立ち現れる。取材・文:釣木文恵
2019年09月02日「ぴあ」調査による2019年8月30日公開のぴあ映画初日満足度ランキングは、暁なつめのライトノベルを原作にした人気TVアニメシリーズの劇場版『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』(略称“このすば”)が第1位になった。出口調査では原作やアニメ版のファンから「最高!」「何回笑ったか覚えてない」など熱い声が多くあがった。本作は、不慮の事故で命を落とし、ひょんなことからRPGのような異世界へ転生した主人公カズマが、仲間の少女3人と「生まれ変わったらファンタジー世界で勇者のように大活躍する」という理想とはかけはなれた冒険者生活を営む様子を描くファンタジーコメディ。原作はシリーズ累計発行部数650万部を突破する人気作で、アニメ版は2016年に第1期、2017年に第2期が放送された。上映後のアンケートでは、10代から50代までの男性から特に好評で「ところどころに仕込んでくるギャグが最高!」「何回笑ったか覚えてないぐらい笑った」「ギャグのクオリティがTVシリーズと変わらない」「劇場内で笑いが起こるくらい笑えた!」と話す人も。そのほか「キャラクターが好きというよりは作品が好き。とても楽しかった」「いつもどおりの『このすば』で、いつもどおりのおもしろさ!」「テンポよく話が進んでいくのと、声優同士の絡み合いもあってこの作品らしい」「画が崩れることもなく、長編という尺の利点を活かした内容になっていた」「異世界ものってわりと多くあるけれど、一番ギャグ寄りで笑える」などの感想もあった。(本ランキングは、8/30(金)に公開された新作映画9本を対象に、ぴあ編集部による映画館前での出口調査によるもの)
2019年09月02日もしかして今、日本でいちばんお殿様が似合う俳優は、この人じゃないだろうか。8月30日(金)より公開の映画『引っ越し大名!』の及川光博を観て、そう思った。及川が演じるのは、生涯に7回もの国替えをさせられた“引っ越し大名”こと松平直矩。原作・脚本の土橋章宏が「直矩の気品、色っぽさは及川さんしかいない!と最初から思って書いていました」と熱弁するのも頷ける麗しきお殿様姿を銀幕で披露している。「お殿様になった自分を見て、嫌いじゃないなと思いました(笑)。他の出演者のみなさまより衣装も派手でゴージャス。正直、とてもいい気分で撮影に参加しました(笑)」しかもこの直矩という男、ただ幕府に翻弄される可哀相なお殿様、というわけではない。夜は家臣の美少年と何やら妖しい雰囲気になったり、ひとクセもふたクセもあるキャラクターなのだ。そんなところも実に及川らしい。「撮影中、直矩の喘ぎ声を録ってもらったんですよ。それも男らしい「あん」とかちょっと女の子っぽい感じの「あん?」とかいろんなバリエーションを録ったんですけど、完成版を観たらどこにも喘ぎ声が使われていなかったんです!演技がトゥーマッチだったのかな……とひとり反省しています(笑)」そんなセクシーな喘ぎ声はあえなく幻となったが、他にも及川演じる直矩の見せ場は盛りだくさん。終盤に訪れる浜辺のアクションシーンでは、見事な殺陣を披露する他の出演者とは対照的に、駕籠(かご)の中でひとりアタフタするコミカルな演技で観客を和ませてくれる。「あの場面は監督がどの台詞のあとにどのカットを入れたいのか、撮影に入る前からきっちりイメージをされていらっしゃったんですね。なので、僕は監督の指示に従いながら、驚いたり怯えたりひっくり返ったりしていました。ただ、駕籠の中だけに大きな動きはできなくて、顔だけで表現するのはなかなか大変でした」予算のない中、移動距離600kmという大がかりな国替えを成功させようと、主人公の片桐春之介(星野源)ら藩士は奮闘する。次々と襲いかかるピンチをどう春之介が切り抜けるかが大きな見どころだが、及川自身は日々発生する予測不能なピンチを、どのように対処しているのだろうか。「僕はピンチなことが起きると燃えちゃうタイプなんですよ。この間も、今からライブが始まるぞというときに、奥歯につめていたセラミックがとれちゃって。このままステージに出たら、最前列の子に見えちゃうかもしれないぞ、と。で、どうやって乗り越えたと思います?堂々とMCでセラミックがとれた話をしました(笑)」こんな鮮やかな機転こそが、及川光博が20年以上にわたって多くの人に愛され続けている理由のひとつだろう。取材中も、少しでも相手を楽しませようと端々にジョークを盛り込むところに、エンターテイナーシップが感じられた。「こんな軽いピンチもあれば、時には簡単に笑い話にできないような重いピンチに見舞われることもある。そんなとき、僕の対処法はとにかく全力を尽くすこと。そして、あとは諦める。全力を尽くしたら、あとはなるようにしかならないと思うタイプなんですね。あのときああしていればよかったって、たらればを言いはじめるときって、きっと全力を尽くせなかったときだと思うんです。だから、僕はやれることを全部やったら、あとは流れに身を任せるようにしています」そうやって涼やかに微笑む横顔が、気品あふれる松平直矩と重なった。映画『引っ越し大名!』は8月30日(金)より全国公開される。撮影/高橋那月、取材・文/横川良明
2019年09月02日8月31日、9月1日の全国映画動員ランキングは、公開7週目の『天気の子』(全国362館)が先週に続いてトップを飾った。今週は1位から4位まで変動がなく、公開4週目の『ライオン・キング』(全国374館)、公開2週目の『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』(全国314館)、公開4週目の『劇場版 ONE PIECE STAMPEDE』(全国352館)という並び。新作では、星野源主演、犬童一心が監督を務めた時代劇『引っ越し大名!』(全国325館)が初登場5位。レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが主演を務めたクエンティン・タランティーノ監督の新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(全国285館)が初登場6位。暁なつめのライトノベルが原作の人気TVアニメシリーズの劇場版『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』(全国100館)が初登場8位に入った。次週は『アス』『いなくなれ、群青』『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』『SHADOW/影武者』『台風家族』『タロウのバカ』『フリーソロ』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』などが封切られる。全国映画動員ランキングトップ10(興行通信社調べ)1位『天気の子』2位『ライオン・キング』3位『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』4位『劇場版 ONE PIECE STAMPEDE』5位『引っ越し大名!』6位『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』7位『トイ・ストーリー4』8位『この素晴らしい世界に祝福を!紅伝説』9位『ロケットマン』10位『二ノ国』
2019年09月02日10月4日(金)より日米同日公開となる『ジョーカー』。孤独だが心優しかった男が“悪のカリスマ”に変貌していく衝撃のドラマを、アカデミー賞常連の実力派スタッフ・キャストで描くサスペンスエンタテインメントだ。本作の公開に先駆け、第76回ヴェネチア映画祭コンペティション部門へ正式出品。現地時間8月31日(日本時間9月1日)に世界で初お披露目され、レッドカーペットセレモニーには、主演のホアキン・フェニックス、ザジー・ビーツ、監督と脚本を務めたトッド・フィリップスが参加し華々しく執り行われ、同日開催となった記者会見にも登壇した。本映画祭だけでなく、第44回トロント映画祭のガラ・プレミア部門にも選出されており、「今年もっとも驚くべき映画。アカデミー賞は確実だ」(ヴェネチア映画祭:アルバート・バルベーラ)、「ホアキン・フェニックスによるキャリア史上最高の演技。世界の映画賞が注目している」(トロント映画祭:キャメロン・ベイリー)ら映画祭ディレクターをはじめ、世界の映画関係者が「本年度アカデミー賞最有力」と絶賛と注目を浴びせている。そんな注目の本作のレッドカーペットセレモニーとあって、会場は炎天下にも関わらず世界中から集まった大勢のマスコミと早朝から陣取ったジョーカーのコスプレをしたファンや、フェニックスの写真や似顔絵を手にしたファンで溢れかえった。本作のスタッフ・キャストに先行して、カトリーヌ・ドヌーヴ、ケイト・ブランシェット、ニコラス・ホルト、フェニックスの婚約者ルーニー・マーラーなど大物俳優たちがこぞって祝福に駆け付けた。熱気に包まれた会場にビーツ、フィリップス監督、フェニックスが登場すると会場のファンからは歓声が起こり、カメラのフラッシュが一斉に焚かれた。3名がファンへのサインや撮影に応じると、中には感極まって泣き出すファンの姿も。そして、プレミア上映の時間が迫り、フェニックスが会場への移動を促されるも、押し切ってファンの元へ戻る一幕もあった。その後、座席数1032席を誇るSala Grandeで世界初お披露目となる上映が行われ、終映時には「ブラボー!」の声と今年の上映一番の拍手喝采が起き、スタンディングオベーションは8分間も鳴りやまなかった。その圧倒的な完成度とジョーカー誕生の衝撃の物語を目撃した評論家からは、「ホアキン・フェニックスにはアカデミー賞の価値がある」(Total Film)、「ホアキン・フェニックスに心奪われる」(Time Out)、「決して見逃してはならない作品」(Hollywood Reporte)、「大胆かつ衝撃的で、この上なく美しい」(Empire)など、早くも絶賛の声が集まっている。高評価を受けた本作の監督と脚本を務め、過去には『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』でゴールデングローブ賞作品賞を受賞した経験を誇るフィリップス監督は「本作で最初からはっきりしていたのは、これまで描かれてきたジョーカーとは異なるアプローチをすること。ジョーカーの過去は原作でも詳しく描かれていないから、自由に創造できるスペースがあったんだ。だから、ジョーカーの完璧な狂気にたどりつくまで、ホアキンと毎日話し合って、撮影中ですら脚本を書き替えていったんだ」とジョーカーという人物を追及した過程を振り返る。そして、ジョーカーを演じたアカデミー賞・3度のノミネート経験を持ち、本作での受賞に注目が集まっているフェニックスは「アーサーの明るい部分に興味を持ち、深く探ってみたいと思った。彼には、苦悩もありますが、喜びもあり、幸せを感じ、人との繋がりや、温かさ、愛を求めている人物」と、“悪のカリスマ”ジョーカーのイメージとはかけ離れたアーサーの人物像に興味を抱いたと明かす。スタンディングオベーションの大きさや、各国ジャーナリストからの絶賛の声の高さから、本映画祭“金獅子賞”受賞、及びアカデミー賞受賞への期待が高まっている本作。「どんな時も笑顔で」という母の言葉を胸にコメディアンを夢見る、孤独だが心優しいアーサー。ドン底から抜け出そうとした彼はなぜ“悪のカリスマ”・ジョーカーに変貌したのか?あわせて、フェニックス、フィリップス監督のコメントも公開された。■ホアキン・フェニックスまずは、アーサーの明るい部分に興味を持ち、深く探ってみたいと思った。彼には、苦悩もありますが、喜びもあり、幸せを感じ、人との繋がりや、温かさ、愛を求めている人物。彼が、単に苦痛を抱えたキャラクターだとは思っていませんし、私は演じる上でキャラクターをそういう風に決めつけることは、絶対にしない。8カ月かけて探求したこのアーサーという人物を一言で語るのは難しいが、オファーを受けてからの数週間で感じた彼と撮影を終えるころに感じた彼とでは完全に異なっていた。常に変化していて、役者人生で初めての経験だ。“ジョーカーの笑い方のオーディションをして欲しい”とトッドに依頼したんだ。彼は“(役に決まっているんだから)お願いだからやめて!”って気まずそうにしていたけどね(笑)。■トッド・フィリップス監督もともとはカオスをもたらすのが彼の目的だったわけじゃない。彼のゴールはあくまで「人々を笑わせたい」「世界に喜びをもたらしたい」ということだったんだ。でもそれがさまざまな出来事が重なって、まったく異なる結末になってしまうんだ。『ジョーカー』10月4日(金)より日米同日公開
2019年09月02日カーラ・ボノフの来日公演が本日9月2日にビルボードライブ東京にて行われる。カーラ・ボノフは、10代で活動をスタートさせ、ジャクソン・ブラウンやジェームス・テイラーも出入りしていたLAのライヴ・ハウス「トルバトール」への出演をきっかけに、その後のキャリアを築いた、ウェストコーストサウンドを代表するシンガーソングライター。この度、今年2月にリリースされた新作『CARRY ME HOME』を携えて来日公演を行う。16曲入りの本作は、2007年に発売された『KARLA BONOFF LIVE』以来、12年ぶりの作品で、セルフカバーやジャクソン・ブラウンの名曲のカバーを含んだ内容となっている。時を経ても色あせない心地の良い旋律と、美しいナチュラル・ボイスに酔いしれるステージは、初秋にぴったりで贅沢な時間になりそうだ。■公演情報日時:9月2日(月)/ 9月3日(火)場所;ビルボードライブ東京1st Stage 開場:17:30/開始:18:302nd Stage 開場;20:30/開始:21:30
2019年09月02日おとな向け映画ガイド今週のオススメは、この3作品。「ぴあフィルムフェスティバル」へもぜひ。ぴあ編集部 坂口英明19/9/2(月)イラストレーション:高松啓二今週末に公開の作品は22本。とても多い週です。全国200スクリーン規模で拡大上映される『かぐや様は告らせたい ~天才たちの恋愛頭脳戦~』と、ミニシアターや一部シネコンなどで上映される21本です。その中から、おとなの映画ファンにオススメしたい作品をご紹介します。『ラスト・ムービースター』かつてクリント・イーストウッドと人気を二分したアクションスター、バート・レイノルズを覚えていますか? 1978年から82年にかけて、マネーメイキング・スターのトップでした。昨年8月にこの世を去ったレイノルズが、2017年、生涯最後に出演した作品。これがなんとも素敵な、泣かせる映画です。主人公は、いまや忘れられた、伝説のスター。孤独な老人です。その彼に「国際ナッシュビル映画祭」という地方映画祭から、特別功労賞を贈りたいという招待状が届きます。つい誘いにのって、ナッシュビルまででかけます。ところが、この映画祭、映画オタクのマニアたちが企画した超マイナーな手作り催事で……。自虐ネタとしか思えないストーリー。よくこういう役を頼み、そして受けたなと、製作者にもレイノルズにも驚嘆します。劇中、『トランザム7000』や『脱出』の映像も引用されますし、雑誌『コスモポリタン』で発表されて話題になった男性ヌードも使われます。役名こそ、ヴィック・エドワーズですが、レイノルズそのものです。しみじみとした映画、素晴らしいオマージュ。こんな遺作は初めて観ました。『SHADOW/影武者』マット・デイモンが万里の長城で、CGで作られた無数の怪物と戦う、『グレートウォール』を観たときは、ああ、チャン・イーモウは終わったな、と正直思いました。が、この作品はどうでしょう。見事な復活、といっていいと思います。数あるフィルモグラフィーのなかでは、『HERO』『LOVERS』の系譜。戦国時代を舞台にした武侠アクションです。時は『三国志』の頃。ある小国の都督(軍司令官)とその影武者による、隣国に奪われた領地の奪還作戦がテーマ。病に伏した都督が、影武者を使って国政を操り、隣国との開戦に挑みます。都督と影武者はダン・チャオの一人二役です。ずっと降り続く雨。頻出する陰と陽のシンボル、白と黒の太極図。カラーなのですが、色味を極力おさえた水墨画の世界は、ちょっとやりすぎなくらいで、これこそチャン・イーモウです。つまりはそれらが、テーマである影武者の暗喩。影武者を描くために用意した見事な舞台装置です。戦いは刀と弓矢が中心ですが、やはり「けれん」が売りの監督、雨傘のような新兵器を登場させます。生地の部分が刃という雨傘を持った部隊が、くるくる回して、敵の剣をかわしながら倒していきます。極力VFXを避け、セットやアクション、衣装などほとんどが手作りで製作されたといいます。『帰れない二人』チャン・イーモウが旧世代の代表とすれば、現代の中国の巨匠はジャ・ジャンクー。国内で商業的に大成功しているわけではありませんが、世界の映画祭では常に注目の的です。ジャ・ジャンクーの映画のヒロインはいつも、チャオ・タオが演じています。もちろんこの作品も彼女が主演。役名もチャオです。そのチャオとやくざ者の恋人ビンの、17年におよぶ愛の物語と、21世紀の中国を重ね合わせたジャ・ジャンクーらしい叙事詩のような映画です。チャオ・タオはインタビューで「人生で初めて銃を撃ちました。銃の音が鳴り響くのを聞きながら、チャオの青春は終わったのだと自分に言い聞かせていました」。このシーン、とても印象に残ります。特集上映、映画祭では。「第41回ぴあフィルムフェスティバル」国立映画アーカイブ(9/7〜21)「第41回ぴあフィルムフェスティバル」国立映画アーカイブ(9/7〜21)今年のPFFはもりだくさんです。その中から「招待作品部門」をご紹介しましょう。上映作品は長短編をあわせて40本。7つのプログラムに分かれています。いずれも凝った内容なのでご期待ください。まず、特別先行上映されるのは、劇場版『ガンダム GのレコンギスタⅠ』。あの富野由悠季総監督がトークゲストです。「凄すぎる人たち」というプログラムの「カッコいい女編」では、在宅医療の終末治療に取り組むチームを描いた『おみおくり〜Sending Off〜』、ベイルートが舞台の映画をテーマにした『昔々ベイルートで』、マフィアを撮り続ける女性写真家を追う『シューティング・マフィア』など、凄い女性たちの映画を上映。「諦めない男編」では、フリードキンの『恐怖の報酬』、不条理な恐怖を描く『変態村』、小林正樹の『東京裁判』、セルジオ・コルブッチの『殺しが静かにやって来る』など、異色作ばかりです。デビュー作を集めた「巨匠たちのファーストステップPart4」というプログラムでは、ヤン・イクチュン『息もできない』、ジャ・ジャンクー『一瞬の夢』、ヴィスコンティ『郵便配達は二度ベルを鳴らす』、ルイ・マル『死刑台のエレベーター」、バリー・ジェンキンス『メランコリーの妙薬』、ジャック・ドゥミ『ローラ』、ライアン・クーグラー『フルートベール駅で』、レオス・カラックス『ボーイ・ミーツ・ガール』。巨匠のデビュー作、新旧様々なかなかのチョイスです。ブラック映画とブラック音楽にこだわった「ブラック&ブラック」というプログラムもあります。『私はあなたのニグロではない』や、ピーター・バラカンさんがトークゲストの『真夏の夜のジャズ』、DJ YANATAKEのトークがつく『DOPE/ドープ!!』を上映。他に。PFFスペシャル講座では、今年も原恵一監督、橋口亮輔監督の対談「天才・木下惠介は知っている」と『日本の悲劇』の上映。「カンヌ映画祭批評家週間って何?」では、批評家週間出品の『典座』と短編コンペ作品を上映。フランス在住のプロデューサーで、6月に急逝した吉武美知子さんの追悼企画もあり、黒沢清監督が登壇し『ダゲレオタイプの女』を、諏訪敦彦監督と『ライオンは今夜死ぬ』、堀越謙三プロデューサーと『TOKYO!』といったゆかりの作品を上映し、ゆかりの人が故人を偲びます。
2019年09月02日