インタビュー

『歩いても 歩いても』是枝裕和監督インタビュー

『ワンダフルライフ』や『誰も知らない』などの作品が国内外で高い評価を受けている是枝裕和監督。彼が手がけたホームドラマ『歩いても 歩いても』のDVDが1月23日、リリースされる。ユーモラスで温かく、ときに苦くて厄介。誰もが自分の家族の物語を重ね合わせずにはいられない、本作に込められた監督の想いをうかがいました。


Q:この作品で描かれている家族像が、とても自然なものに感じられました。実際にモデルがいるのですか? 歩いても 歩いても
設定自体はフィクションですけど、樹木希林さんが演じた母親には、自分の母親を重ねている部分が結構あると思います。セリフの半分ぐらいは僕の母親が言ってたことですね。

Q:希林さん演じるお母さんは、料理をしているシーンが印象的です。監督の思い入れのあるメニューも登場しているのでしょうか?

とうもろこしの天ぷらは、僕が子どものころから母親がよく作っていましたね。これが、シンプルなんだけど、お醤油をたらすと本当にうまいんですよ!

Q:監督ご自身は、阿部寛さんの演じる息子の目線に近いでしょうか?

そうですね。やっぱり、息子から見た父親と母親っていうのが、今回の作品の中では柱になっているだろうと思いますね。

Q:田中祥平くんが演じる子どもの目線もあって、複数の視点が交差していて面白いなと思いました。

田中祥平くんの役は大事なんですよ。彼はこの家族の中にいて、他者の目線を持っている。それをひとつ入れることで、その人間に接する家族がみんな違ってくるでしょ!?  彼がちょっと外から批評的に見ていることで、ホームドラマなんだけど、内部に閉じず、湿度が上がらずに見られるんじゃないかな。

Q:彼自身も、物語を通して家族というものへの見方が変化しますね。ところで、『歩いても 歩いても』というタイトルに込められたものはなんでしょうか?

単純にフレーズが好きだったので、まずタイトルを決めちゃったんです。でも、外を歩いているシーンや、坂を上ったり下りたりするシーンが印象に残る方が多いらしくて、「歩いても歩いても、なかなか距離が縮まらない夫婦とか親子の関係を象徴したタイトルなんですか?」って聞かれたりもしたんですけど、もともとそうではないんですよ。

Q:結果的に内容と重なる部分があったわけですね。もともとのフレーズは「ブルーライトヨコハマ」の歌詞ですが、この曲に関しては、なにか思い入れがあるのでしょうか?

僕が子どものころに聴いていた歌謡曲の中で、すごく都会的で印象に残っている曲だったので。いつか、自分の映画の中でかけたいなと思っていたんです。僕の実家は練馬なんですが、隣は本当にとうもろこし畑でしたし、長屋でしたし、井戸水を使っているような、自然いっぱいなところで。なので「ブルーライトヨコハマ」で、歌詞に出てくるカタカナの「ヨコハマ」っていうのが、子供心に非常に都会的な、大人のにおいがしたんですよ。

Q:作品の中で大事にされたこと、こだわったことを教えてください。 歩いても 歩いても
僕がひさしぶりに実家に帰ったときに、風呂場のタイルが割れていて、新しい手すりがついていて。親の“老い”が具体的なものとして家の中にぽんとあったときに、結構ショックだったんですよ。なので、そこから始まる映画にしようと思って。家の中にある、風呂場のタイルとか手すりとか、パジャマとか歯ブラシとか。そういう具体的なものから、感情が振れたりぶつかったりしていく映画ができないかなと思ったんですよね。だから、そこにはこだわりました。セットができて、そこに自分が身を置いたときに、人がどういうふうに動くだろう? とか、どこに何が置かれるだろう? とか、二人きりになったときに嫁と姑はなにをするだろう? とか……。そういう具体的なことだけを積み重ねようと思いました。

Q:今回発売されるDVDには、映像特典のメイキングが入っているそうですね。

メイキングはおもしろいと思いますよ! 特に夏川結衣さんのお茶目なところが出ていて、僕も含めファンにはたまらないはず(笑)。あと、田中祥平くんがかわいいったらありゃしない(笑)。撮影の現場の雰囲気もすごく伝わるし、相当お宝感がありますよ。

Q:それはぜひ、見てみたいです! 最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。

この作品を撮っているときに考えていたのは、「なにも大したことが起きない日常なんだけど、じつはそれが、かけがえがなくて、取り返しがつかなくて、いつか失われていくもので。人生はそういうものに満ちているんだよな」と。それをすごく感じたから、カメラの山崎さんと「これがいつか失われるものだという愛おしさ、いつくしみを込めて全カット撮ろう」と言って撮ってたんですよ。そういう目線で切り取ると、なにげないひと言だったり、なにげない日常だったりが、こんなに輝いて見えるんだな……というのに気づいた。だから、この映画に触れることで、自分の毎日の暮らしの中にある他愛もないものが愛おしくなるような、そんな変化が訪れることを願ってやみません(笑)。

■作品情報
監督・原作・脚本・編集:是枝裕和
出演:阿部寛/夏川結衣/YOU/高橋和也/田中祥平/樹木希林/原田芳雄/ほか

■DVD情報
『歩いても 歩いても』 DVD
初回限定版は特製ボックス仕様、特製ブックレット、フォトシート、イラストポスターなどの豪華特典付き!
発売元:バンダイビジュアル
発売日:2009年1月23日(金)
販売価格:3,990円(税込)

公式サイトhttp://www.aruitemo.com/index.html
(C)2008「歩いても 歩いても」製作委員会

tags : 邦画  映画  監督 

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