子どもがいきなりおう吐したら、あたふたしてしまう人も少なくないでしょう。突然始まることが多い子どものおう吐ですが、事前に備えておくことで落ち着いて対処できます。今回は、子どもがおう吐した時の対処法や、予防策について、書籍 『マンガでわかる!子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK』 からご紹介します。■子どもがおう吐したらどうする?子どもがおう吐したら、まずは吐いたものをチェックしましょう。何回くらい吐いたのか、どれくらいの量を吐いたのか、いつ吐いたのか、どんな時に吐いたのかなど、わかる範囲で観察しておくことが大切です。そして、吐いたものを処理する際には、しっかりと消毒を行います。処理したあとは、しっかりと手洗いをして、吐いたものから感染を広げないようにしましょう。■おう吐の原因と受診の目安子どもがおう吐して、発熱や下痢症状も出ている場合、感染性胃腸炎の可能性が高いです。その場合、おう吐は1〜3日続き、遅れて下痢が3〜7日ほど続きます。子どもの感染性胃腸炎の多くはウイルスが原因で、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスなどがあります。ロタウイルスの場合、合併症でけいれんを起こすこともあるので、注意が必要です。また、ウイルス性の胃腸炎に効く抗ウイルス薬はなく、病院では整腸剤や吐きどめなどの投薬治療をすることとなります。ロタウイルスには非常に有効なワクチンがあるので、あらかじめ予防接種を受けておくといいでしょう。▼受診の目安:すぐに受診!病院に連れて行くかどうか迷ったら、次の項目に当てはまるかどうか確認して、当てはまる場合にはすぐに医療機関を受診した方がいいでしょう。□おう吐症状が強く、半日以上水が飲めない□ぐったりしている□水のような下痢が1日6回以上ある□口や舌が乾き、涙が出ない□尿が出ていない□血便が出た■おうちでのケアと感染予防対策次は、子どもがおう吐した場合にできる、おうちでのケアについてご紹介します。▼おうちケアのポイント1、横向きに寝かせ窒息防止2、水分補給はゆっくりと3、食事も無理せずゆっくりおうちでのケアは、無理をしないのがポイントです。吐いたもので喉をつまらせないよう、横向きに寝かせてあげます。また、おう吐した後すぐに水分を与えると再び吐いてしまう可能性があるため、1〜2時間おなかを休めた後、ティースプーン1杯分の水分をあげて、様子を見ましょう。食事についても、ゆっくり様子を見ながら、おかゆや温かいうどんなど、消化のいい炭水化物からあげてください。▼感染予防に「ゲーゲーセット」を備えようまた、吐いたものの処理は、周囲へのウイルス感染に十分注意し、次亜塩素酸ナトリウム液での消毒を徹底しましょう。普段からできる備えとして、佐久医師会の先生がおすすめしているのが、漫画にも登場した「ゲーゲーセット」です。【「ゲーゲーセット」の内容】・次亜塩素酸ナトリウム液・新聞紙、キッチンペーパー、古い布・使い捨てマスク・使い捨てビニール手袋・ポリ袋をかけたバケツこれらをすべてバケツに入れて、子どもの手が届かない身近な場所に置いておくと、急なおう吐にも慌てず対処できて便利です。【消毒の仕方】■【子どものおう吐】教えてドクターQ&A最後に、「教えて!ドクタープロジェクト」に子どものおう吐にまつわる悩みにお答えいただきました!――おう吐症状がある時に、何をどれくらい食べさせるべきか悩みます。本人が食べたがっていたら、食事を取らせてもいいですか?まずは水分から少しずつ始めてください。経口補水液がのぞましいですが、薄めたリンゴジュースなどでも構いません。よほどおう吐しなさそうで、大丈夫そうであればうどんなど消化のいいものを少量から与えてあげてください。――泣きすぎたり咳をしすぎたりして嘔吐することがあります。問題はないのでしょうか?子どもは少しの刺激でも大人より嘔吐しやすく、咳を繰り返したり、泣いたりしただけで吐いてしまうことがあります。お子さんによっては吐きやすいお子さんもいますが、これ自体は病気ではありませんので心配は不要です。ただ、何か病気ではないかと不安になってしまうお気持ちもわかります。吐く状況が「咳をしているとき」「泣いているとき」など状況が限定されているかどうかで、区別することになります。ただし、よくわからないこともあると思いますので、その場合には医療機関でご相談いただければと思います。※本連載で紹介する情報は、2020年12月時点のものです。 『マンガでわかる!子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK』 (佐久医師会 教えて!ドクタープロジェクトチーム/KADOKAWA ¥1,430)赤ちゃん・子どもの病気、ケガ、事故…突然の「どうしよう」この1冊があれば安心!病院に行く? 行かない? こういう時は様子を見ても大丈夫など、子どもの体の心配ごと、 マンガと解説でわかります。突然起こる子どもの病気、ケガで不安になるときに、親が慌てずに対処するための常備本。●「教えて!ドクタープロジェクトチーム」とは?長野県佐久医師会・佐久市による、子どもの病気、ホームケア、地域の子育て支援情報などを発信するプロジェクトチーム。地域の子育て力向上事業としてだけでなく、SNS発信により「医師による確実な情報」を、リアルタイムで全国に発信している。公式HP: 教えて!ドクタープロジェクトチーム
2021年01月20日冬になるとノロウイルス胃腸炎が流行して、下痢やおう吐で小児科を受診する子が増えます。今回は、下痢やおう吐の対策、ノロウイルス胃腸炎を中心に解説していきます。ノロウイルス胃腸炎の症状は? 診断、治療は??ノロウイルス胃腸炎とは、どんな病気なのでしょうか? その症状や合併症、診断のポイント、治療についてご紹介します。ノロウイルス胃腸炎、その症状は?ノロウイルスはおう吐を主な症状として下痢、腹痛、発熱を認め、冬に流行しやすい胃腸炎です。子どもが感染すると、そこから大人にも感染することが多く、家族内で流行することも珍しくありません。数日間の症状ですが激しいおう吐などから脱水になってぐったりしてきたり、おしっこが出なくなったりします。この合併症に注意ノロウイルス胃腸炎の合併症として、けいれんを起こす「胃腸炎関連けいれん」があげられます。これは、ノロウイルス以外の胃腸炎でも起きるものですが、熱性けいれんとは異なり、熱がなくても起こる症状で、数秒~数分の短いけいれんを反復するという特徴があります。熱性けいれんとは治療薬が異なるので、けいれんが見られた時には医師に胃腸炎症状があるかないかを伝えることはとても重要です。ノロ、それとも? 医師の診断ポイントおう吐にはじまり、下痢症状をともない、数日の胃腸症状ののち改善し、周囲でも流行しているようならノロウイルス胃腸炎の可能性が高いと医師は診断します。ノロウイルス胃腸炎の場合、おう吐から始まることが多いですが、おう吐=ノロとは限りません。実は、おう吐=ノロと考えるとほかの疾患を見逃すことになり、思わぬ落とし穴があります。例えば、髄膜炎や心筋炎などでもおう吐の症状があります。ノロウイルス胃腸炎かどうかの診断については、便の検査はあるものの必須ではなく、保険診療での検査も3歳以下や65歳以上の高齢者のみと制限があります(子どもと高齢者は悪化しやすいため)。そのため、便の検査は補助的に用いて、基本的には診察や経過で総合的に医師が判断します。特効薬はなし! ノロウイルス胃腸炎の治療特効薬はありません。下痢としてウイルスが体内から出ていけばだんだんと改善しますので、症状のある数日間、脱水にならないようにしのぐことが最も重要です。薬としては、症状を緩和させるために整腸剤や、漢方薬の五苓散などが使用されます。オーエスワン/OS-1(大塚製薬)など経口補水液による脱水対策が大切ですが、飲めない場合は点滴を考慮します。これらはノロウイルスに特別な治療ではなくて、ほかの胃腸炎でも同じ対症療法です。つまり検査でノロウイルスを確認しなくても治療は可能で、おおまかに胃腸炎ということがわかればそのあとの治療は一緒です。そのため、ノロウイルス胃腸炎かどうか検査するためだけの受診は必要ないといえます。どちらかというと、そのおう吐がほかの病気ではないこと、胃腸炎であることを確認することを一番の目的としたほうがいいでしょう。受診するか、しないか…その目安は?受診するかしないか迷った時は、脱水傾向があるかどうかが目安になります。つまり、水分がとれずぐったりしている、尿が少ない、口がかわいている、などの症状です。脱水の症状があれば、点滴が必要になる可能性があるからです。逆に言えば、脱水の心配がなく水分がとれているようであれば、無理をして受診をしなくても家でしばらく様子をみてもかまわないでしょう(注:医師により判断は異なります)。もちろん不安だったり、ほかの病気の心配があれば受診したほうがベター。ただ、ある程度元気で、脱水の症状が出ていなければ、ホームケアで自然と治っていく病気であるといえます。一番こわい脱水症状を防ぐ「吐き気がある時の水分摂取」ポイントは症状が強い数日間、ここをいかに経口補水でしのぐかです。よく、おう吐するから飲ませないと考える場合があるかもしれませんが、おう吐して水分が少ない状態でさらに経口摂取を絞れば、すぐに脱水になってしまいます。飲ませ方には、ちょっとしたコツがあるので、以下の手順ですすめてみてください。脱水症状を防ぐ水分の取り方1.おう吐直後はすぐまたもどしてしまうので、水分は飲ませないほうがいいでしょう。30分くらい時間をあけます。2.吐き気がおさまったタイミングで、水分を一度口に含ませてみてください。スプーン1さじでかまいません。3.1さじ飲めたら、2さじ、3さじと段階的に様子をみながら水分量を増やしていきます。吐かない程度に少量づつ体に水分をいれていけば、脱水を予防できます。※もし、1さじも受けつけない、数さじでもおう吐するようであれば、病院での点滴を考えたほうがいいでしょう。飲ませる水分は、アクアライト(アサヒグループ食品)など乳児用イオン飲料や、オーエスワン/OS-1などの経口補水液がいいでしょう。ナトリウム(電解質)や糖分が入っていないと、血液中のナトリウムが少なくなったり、低血糖によって倦怠感(けんたいかん)を感じたり、時にけいれんを起こす可能性があります。飲み物はできる限り、電解質や糖分を含むものにしてください。経口補水液が飲みにくいという場合、軽症であればりんごジュースなどと半々で割って飲みやすくしてから与える方法もあります(※)。家族への感染を食い止める! 予防法とホームケア親が感染すると看病を含め2倍、3倍のしんどさになります。下痢、おう吐の処理は手袋をして、可能であればビニールエプロンを使って感染対策をしてください。寝具におう吐すると後片付けが大変なので、ペットシーツなどをしいておくのも一つの方法です(我が家も一度ひどい目にあいました…泣)。子どもがおう吐しそうになったときすぐに受けることができるよう、洗面器やボウルにビニールをかぶせておくと便利です。もし出かける場合はおう吐に備えて、紙袋+ビニール袋や、着替え(親の分も)、手をふくウェットティッシュなど用意しておくことをおすすめします。予防には、手洗いが基本です。できるだけ流水でウイルスを洗い流しましょう。ノロウイルスは飛びやすいので、いろいろなところに付着しているため、ほかの人がさわる可能性のあるところは極力さわらず、どこかさわったあとは手を洗うようにしてください。アルコール消毒は効果が乏しいので、ハイター(花王)といった次亜塩素酸ナトリウム配合の商品で除菌するのがおすすめです。ドラッグストアにはノロウイルス対策と書いていても、成分がアルコールという場合があります。買う時の参考にしてくださいね。参考資料※ Effect of Dilute Apple Juice and Preferred Fluids vs Electrolyte Maintenance Solution on Treatment Failure Among Children With Mild Gastroenteritis: A Randomized Clinical Trial.
2018年12月31日こんにちは! イラストレーターのにわゆりです。体調をくずしやすい時期になりましたね。そう…かーちゃんがもっとも恐れる季節です。インフルエンザや胃腸炎など、冬は感染症のオンパレード! いつ病気をもらってくるかわからない子どもたちに、かーちゃんは毎日毎日ヒヤヒヤしています。というのも、わが家の子どもたちは胃腸が弱いのか、毎年、必ずと言っていいほど感染性胃腸炎にかかってしまうのです(涙)。そして感染力の強い胃腸炎で家族全滅! がお決まりのパターン。あ~本当に恐ろしい~!今回は、2歳のモン太が初めて胃腸炎でけいれん(!?)を起こして大パニックになったお話です。この日はおでかけするために準備をしていたかーちゃん。しかし、モン太の機嫌がとても悪く、なかなか準備が進みません…そのとき!突然のおう吐!びっくりしたかーちゃんでしたが、すぐに予定を取りやめ様子を見ることに。その後4、5回ほど吐き、夕方になってから病院で診てもらうとはやりの胃腸風邪とのことでした。「特効薬はなく、とにかく菌を出さないと治らない」と言われ、ひたすら看病…。 次の日、繰り返し続いたおう吐が少しおさまったかなと思ったところで、今度は下痢の嵐!オムツを変えると、白くて水っぽい便! 初めて白いうんちを見たかーちゃんは固まりました…。しかし、水分は取れるようになってきたのでこのまま引き続き様子を見ることに。そして3日目。食欲も出てきたのでおかゆを食べさせてひと安心していたところ…。柵につかまっていたモン太がいきなり後ろに「バタン!」と倒れました。モン太はけいれんを起こしていて、手は突っ張って、口はパクパク泡を吹き目はうつろ…。初めてのことにかーちゃん大パニック! どうしていいかわからず、生まれて初めて救急車を呼びました。 救急車はすぐに来てくれ、着いたころにはモン太の意識は戻っていました。隊員の方にどのくらいけいれんしていたかなどを聞かれ、すぐに病院へ。原因ははっきりとはわかりませんでしたが、「脱水によるけいれんかな?」ということでした。胃腸炎でけいれんを起こすことは、まれにあるようで、お医者さんの優しい言葉に泣きそうになりました。ちなみに、けいれんを起こした場合は時間をはかり、1分くらいでおさまるようなら、焦らずに自分の足で病院に来ても大丈夫とのことでした。もし5分くらい続く場合は、すぐに病院へ行ったほうがいいとも言われました。その後は症状もおさまり、けいれんも起こさず無事に回復したモン太でしたが、また次の年に同じように胃腸炎になり、また同じようにけいれんを起こしてしまいました(涙)しかし! 2度目は、時間をはかって意識が戻るのを確認し、病院に連絡、受診と、取り乱さずに冷静に対処することができました。とはいえ、何度経験してもヒヤヒヤしてしまう冬の感染症。「今年こそはウイルスに負けない!」と消毒スプレーをかけまくっているかーちゃんなのでした…。※この体験記に記載された症状や治療法は、あくまでも筆者の体験談であり、症状を説明したり治療を保証したりするものではありません。
2018年11月24日