ananフェムケア連載「Femcare File」。今回のテーマは、私とフェムケアの話。昨年、卵子凍結手術を受けたことを公表したアイスダンスの小松原美里選手に自身の体の不調との向き合い方を伺いました。卵子凍結は未来の自分への“投資”。小松原美里さんが卵子凍結を考え始めたのは、2022年、北京五輪に出場した頃。’26年のミラノ五輪出場という目標ができたと同時に、30代に入り自分のライフプランを考えるようになったそう。「でも、現役を続けながらの妊娠・出産はハードルが高い。また、食事制限やストレスの影響で10代の頃から生理不順が続いており、妊娠を望んだ時にどうなるのか、漠然とした不安がありました。そんな時、スノーボードの竹内智香選手が卵子凍結の体験談を語った記事を読み、“こういう選択肢があるのか!”と」卵子凍結とは、卵巣から採卵した卵子を将来の妊娠のために凍結保存すること。今すぐ妊活することが難しい場合であっても加齢の影響が少ない状態で卵子を凍結保存できるといったメリットがある。小松原さんは結婚しており、夫の精子と自分の卵子を受精させ、受精卵を凍結保存する方法もあった。こちらの方が子宮に戻した際の着床率は高いため、悩んだという。「ただ、絶対に子供を産みたいという意志が固まっていたわけではなく、養子縁組という選択肢もあるし、引退後に自分の心身の状況が変化する可能性も考えられる。そのため、現時点での自分自身が納得できる形を選びました」卵子凍結を行うに先立ち、AMH(アンチミューラリアンホルモン)検査の値をチェック。卵胞から分泌されるホルモンの数値によって残りの卵子の量に目安をつける検査で、小松原さんの数値は46歳並みだった。「のんびりしている余裕はないと知り、こういった知識をもっと早くから知っておくべきでした」採卵時には麻酔をかけた上で、卵巣に針を刺して卵子を取り出す。「採卵前に竹内さんと対談する機会があり、採卵の痛みについて、『ケガと違って、自分の将来のための痛みだから怖くないよ』と聞き、すごく不安が払拭されました」この先、実際に凍結卵子を受精させて妊娠にのぞむかどうかは、まだ分からないという小松原さん。「でも、将来『あの時、卵子凍結しておけば…』と後悔はしたくない。その気持ちに素直になろうと思って。私にとって卵子凍結は未来の自分のための投資。ずっと抱えていたモヤモヤが取り払われて、今は競技にもより集中できるようになりました!」妊娠・出産以外にも、女性アスリートならではの悩みもある。「生理の少し前から腹筋の感覚が変わって力が入りにくくなるなど、生理の影響は大きいです。体にフィットしたコスチュームを着るので経血漏れも気になりましたが、月経カップを使うようになってからは、その不安も減りましたね。最近ではピルの助けも借りながら、生理をコントロールしています」また、パートナーやコーチにも「生理中は大きな負担がかかる技の練習は控えめにしたい」と伝え、体とのバランスをとっているそう。「女性特有の不調は人それぞれで、痛みの感じ方も違う。『生理痛で休むなんて。私は我慢できた』などと他人を非難してはならないし、真面目な人ほど『私が甘えているだけかも』と我慢してしまいがちですよね。自分がつらいと感じるなら、その感覚は間違っていないはず。自分の感覚を信じて、心身の声に耳を傾けてほしいです」こまつばら・みさと1992年生まれ、岡山県出身。16歳でアイスダンスに転向。2016年にティム・コレトさんとカップルを結成。’17年にティムさんと結婚。’22年北京五輪では、日本代表として団体銅メダルを獲得。※『anan』2024年2月14日号より。写真・水野昭子ヘア&メイク・未来取材、文・音部美穂(by anan編集部)
2024年02月10日33歳にしてシングルからアイスダンスに転向という異例の挑戦をした高橋大輔さんと、そのパートナー・村元哉中さん。“かなだい”の愛称で親しまれたふたりは3シーズンにわたる活動の中、四大陸選手権で日本史上最高の銀メダル、世界選手権で日本史上最高タイの11位を記録し、得点でも日本歴代史上最高をマーク。数々の好成績を残すとともに、傑出した表現力で魅了し続け、日本でのアイスダンスの認知度を飛躍的に高めたあと、昨年5月に引退した。“かなだい”のきっかけは村元さんのオファーに始まった。承諾したときのことを高橋さんは思い出す。村元哉中×高橋大輔高橋大輔:考えたところで答えが出るわけじゃないし、興味もありました。ただ新しいことをやるのは怖いじゃないですか。評価も怖い。でも哉中ちゃんが誘ったんだから、失敗したら哉中ちゃんのせいにしようと(笑)。それくらいの気持ちじゃないと決断はでかすぎると。成功してもしなくてもこの経験は絶対プラスになるという思いも間違いなくありました。村元哉中:2020年から始まって3年、全シーズン大変だったよね。高橋:なかでも1年目はコロナ禍で。村元:アメリカでコーチに教えてもらうはずが帰国して、いちばん基礎を習う時間がリモートになって。高橋:アメリカに戻ったあともお互いに怪我をして、なかなかふたりで練習できなくて。でも試合は迫ってくる中で、最初にNHK杯に出て。村元:次の全日本選手権で私が怪我して、ほんとうにバタバタ。高橋:ぎゅっと大変なことが起こって、それが最終的によかったのかな。村元:あれだけいろいろあると、お互い助け合い、サポートし合わないとアイスダンスはできないということをすごい実感しました。――短期間で解散するカップルも少なくない中、ふたりが抜群の相性を誇った理由は何だったのだろうか。村元:もちろんスーパーリスペクトしてるから。いいところ・嫌なところは誰にでも絶対にあるじゃないですか。それでもリスペクトして、いいところを見られるか見られないか。1シーズン目こそ大ちゃんを人として知らなかったけれど、2年3年と過ごして、本人を目の前に褒めるけど(笑)、人間性が本当に素敵で。本当に素直に信頼できる相手で、そこが大きかったかな。高橋:僕は基本、頑張らない派なんですよ。ちょっと自分に甘い。だけど哉中ちゃんは自分に厳しくて、それができる人って尊敬に値するじゃないですか。スケートに対する情熱もたぶん僕よりある。村元:ないよ(笑)。高橋:ある!引っ張ってもらった部分が大きいし、それにプラスして、日本人の中でここまで魅せられるスケーターは本当にいないと思うから。――引退後も、個々での活動に加え、アイスショーやイベントなどふたりでも行動を共にしてきた。年が明けて、これからの夢は。高橋:僕はエンターテインメントに関わっていければ、どんなことでもやっていきたいという気持ちです。そして初プロデュースするアイスショー「滑走屋」が2月にあります。劇団四季じゃないですけど、そういう集団に育てて、競技会のトップを目指す道もあれば、「魅せる」というところで目指していく道もあるのを示したい。日本にもアイスショーはあるんですが、新しい形のものを作って、広がっていけばいいな、と。村元:大ちゃんを見ていて、自分も動ける限りは滑り続けたいなと思いますし、私も何人かに振付してみてその楽しさを感じているので、世界でも活躍する振付師になれたらと思います。もちろん大ちゃんとも一緒にいろいろなものを創りたいです。今回の「滑走屋」では私もソロナンバーがありますが、そこで大ちゃんに振付してもらうという目標が叶ったんですよ。あとは大ちゃんとタンゴを滑りたいです。大ちゃん、タンゴ滑ってください!高橋:(笑)。これからもよろしくお願いします。村元:こんな私をお願いします。むらもと・かな1993年3月3日生まれ、兵庫県出身。5歳のときスケートを始める。2014年にアイスダンスへ転向。’18年平昌五輪にクリス・リードと組んで出場。’20年から高橋大輔をパートナーに活動。’23年5月現役引退。ジャケット¥73,700Tシャツ¥18,700パンツ¥33,000靴58,300(以上ディーゼル/ディーゼル ジャパン TEL:0120・55・1978)たかはし・だいすけ1986年3月16日生まれ、岡山県出身。2010年、バンクーバー五輪銅メダル、世界選手権金メダル。’14年に引退したが’18年復帰。’20年より村元哉中とアイスダンスペアを結成。’23年5月現役引退。ジャケット¥60,500Tシャツ¥15,400パンツ¥41,800靴¥105,600(以上ディーゼル/ディーゼル ジャパン)村元哉中・高橋大輔2020‐21シーズンに活動を開始。2021‐22シーズンの四大陸選手権で日本初の銀メダル。2022‐23シーズンは全日本選手権初優勝、世界選手権で日本史上最高タイの11位。’23年5月に引退、現在はプロスケーターとして活躍。高橋大輔さんがプロデュースするアイスショー「滑走屋」は2月10~12日にオーヴィジョンアイスアリーナ福岡にて開催。出演は高橋さん、村元さんのほかメインスケーターとして村上佳菜子、友野一希、山本草太、島田高志郎、三宅星南、青木祐奈。またアンサンブルスケーターとして学生を中心に14名が出演。※『anan』2024年1月24日号より。写真・SASU TEI(RETUNE Rep)スタイリスト・井田正明ヘア&メイク・金原萌香(Jari/村元さん)Nori(Jari/高橋さん)取材、文・松原孝臣(by anan編集部)
2024年01月20日3年間のペア活動ののち、2023年5月に現役引退したフィギュアスケーター、“かなだい”こと村元哉中さん、高橋大輔さんが本誌初登場!プロスケーターとして歩み出したふたりの今の心境を、それぞれの旅の思い出とともにお届けします。村元哉中アイスダンスの世界で長年にわたり活躍、高橋大輔さんとの“かなだい”でも圧倒的な存在感を示した村元哉中さん。これまで国内外の遠征を数多く経験してきた。「試合なので旅行とは違いますけれど、行ったことのない国、特に旅行ではあまり行くことがないところに行けるのは楽しかったですね。現地の人と触れ合ったりもしますし、不安や辛いという思いは全くなかったです。国内の試合でもいろいろな場所に行かせてもらって、旅行気分とまではいかなくても、遠征は一つの楽しみでした」移動の機会が多かったからこそ、心がけていたことがあるという。「カバンの中に入れる定番は決まっていて、スーツケースも何を入れるか、その中のどこに入れるかという場所も決まっています」昨年5月に引退したあとはプライベートの旅を楽しむゆとりが。「海が好きなので宮古島に行って、それから韓国にも行きました。韓国料理が本当に大好きで、食事とショッピング、ダンスも流行っているので息抜きで行きました」旅行スタイルを尋ねてみると、「私は心配性なので行く前はめちゃくちゃ情報を調べるんです。でも実際に行ったら流れに任せて行き当たりばったり(笑)。結局、決めた通りに行動するより、ノープランのほうが楽しいので」たくさんの国を訪れた村元さんにも、いつか行ってみたい場所が。「カナダにレイク・ルイーズというところがあります。冬に湖が凍るんですね。きれいな風景の中、自然の氷の上で滑りたいです」夢として描く旅の中にもスケートが。すると笑って答える。「1週間くらい経つと滑っていない自分にそわそわしちゃうというか、なんか怖くなる、不安になってくるんです。なので、1週間くらいでやっぱり氷の上に戻りたいという感じになる自分がいます」プロとして2年目を迎える。「個別の活動もしつつ、大ちゃんと一緒に滑るときには全力で楽しみたい。これからもお互いに刺激し合う仲でいたいと思います」むらもと・かな1993年3月3日生まれ、兵庫県出身。5歳のときスケートを始める。2014年にアイスダンスへ転向。’18年平昌五輪にクリス・リードと組んで出場。’20年から高橋大輔をパートナーに活動。’23年5月現役引退。ドレス¥232,000靴¥68,200(共にポール・スミス/ポール・スミス リミテッド TEL:03・3478・5600)高橋大輔シングル時代は数々の好成績で日本男子の歴史を切り拓き、村元哉中さんをパートナーに挑んだアイスダンスでも際立った表現で魅了した高橋大輔さん。昨年引退するまで海外遠征の機会も多かったが、辛い記憶のほうが多いという。「飛行機に乗るとき毎回暗くなってました。最初は結果もそこまで求められないから気楽でしたが、選手生活の後半は結果を出さなきゃいけなくてしんどかったです」一方で選手生活の合間のプライベートの旅では、楽しさを発見。「トリノかバンクーバー五輪が終わったあとかな。初めて宮古島に旅行したんですよ。着いてとりあえず水着を買い、その店の人と親しくなってごはんに行ったり船を出してもらったり。それから毎年、行けたら行くみたいな感じです」現役引退後は九州を巡った。「日本ってあまり旅行したことがなくて、でもいろいろ素敵な景色があるじゃないですか。高千穂は絶対に行きたいというのがずっとあって、大学生のときから仲がいい友人と2人で行きました。高千穂だけ決めて、あとはノープラン。宮崎、熊本、鹿児島、大分をまわりました。旅では新しい世界に出合いたいと思います。一人でも楽しいけれど、信頼している人と共有するというのが理想の旅かな」旅先ではあるこだわりが。「部屋が快適じゃないと嫌なのでテレビをリラックスして見られる位置や動線などを考えて、ベッドや椅子の位置をずらしたり、模様替えします。荷ほどきも、荷造りが楽になるように考えてやりますね。遠征もプライベートも変わりません。5人くらいで旅行するときは荷物のセッティングをみんなの分もやっちゃいます。快適に過ごせることがいちばんです」2月には高橋さんがプロデュースするショー「滑走屋」を控える。「ソロナンバーがあるのでダンスの靴にシングルのエッジ(靴に付ける金属製の刃)を付けて練習してみました。感覚が違いアイスダンスと両立は難しいなと一瞬思ったけど、両方やっていきたいです」たかはし・だいすけ1986年3月16日生まれ、岡山県出身。2010年、バンクーバー五輪銅メダル、世界選手権金メダル。’14年に引退したが’18年復帰。’20年より村元哉中とアイスダンスペアを結成。’23年5月現役引退。ブルゾン¥71,500シャツ¥35,200パンツ¥37,400靴¥99,000ネクタイ¥15,400(以上ポール・スミス/ポール・スミス リミテッド)村元哉中・高橋大輔2020‐21シーズンに活動を開始。2021‐22シーズンの四大陸選手権で日本初の銀メダル。2022‐23シーズンは全日本選手権初優勝、世界選手権で日本史上最高タイの11位。’23年5月に引退、現在はプロスケーターとして活躍。高橋大輔さんがプロデュースするアイスショー「滑走屋」は2月10~12日にオーヴィジョンアイスアリーナ福岡にて開催。出演は高橋さん、村元さんのほかメインスケーターとして村上佳菜子、友野一希、山本草太、島田高志郎、三宅星南、青木祐奈。またアンサンブルスケーターとして学生を中心に14名が出演。※『anan』2024年1月24日号より。写真・SASU TEI(RETUNE Rep)スタイリスト・井田正明ヘア&メイク・金原萌香(Jari/村元さん)Nori(Jari/高橋さん)取材、文・松原孝臣(by anan編集部)
2024年01月20日