2021年1月5日の自民党役員会で菅義偉総理大臣は、1都3県に対する緊急事態宣言の発令を、同月7日に決定する方針を表明しました。そんな中、情報番組『news every.』(日本テレビ系)での藤井貴彦アナウンサーの発言が反響を呼んでいます。藤井アナ「まだ頑張れ、まだ頑張れと…」同月5日の放送では、緊急事態宣言の生活への影響について特集。1都3県の知事は午後8時以降の不要不急の外出自粛や、飲食店の時短営業の要請などを呼びかけています。感染症対策をすでに講じている人たちにとって、最初の緊急事態宣言以降から続く、終わりの見えないコロナウイルスとの闘いに疲弊した人も多いはず。特集の終盤、藤井アナは感染症対策に励んでいる人たちへ、こんな言葉を送りました。テレビの前でご覧になっているみなさんは、もうずっと家にいて会食もしていない方ばかりだと思うんです。マラソンをずっと走ってきて、「まだ頑張れ、まだ頑張れ」といわれているような感じがあるんだと思います。「感染症対策が万全な人たちが増えれば、感染者も減っていく」ということを信じて、生活をするしかないんじゃないかと私は思います。news every.ーより引用なかなか収束に至らない中、長い間感染症対策をする人たちの努力を「マラソンを走り続けるようなもの」と表現。そして、その努力は決して無駄にはならないという労いの言葉を添えました。ネット上では、藤井アナの言葉で元気づけられた人が続出。多くのコメントが上がっています。・マラソンを走り続けるという表現、本当にその通りだと思いました。ここで諦めてはいけませんよね…!・なんて温かいコメント…。とても心に響きました。どうかコロナと闘う全ての人へ届いてほしいものです。・暗い気持ちになっていましたが、また感染症対策を頑張ろうと思えました。ありがとうございます。制限の多い中でも、安全な範囲内で気分転換をしてみるのも1つの手かもしれません。藤井アナの言葉を胸に、これまで以上に自分や家族の命を守る行動をとっていきたいものですね。[文・構成/grape編集部]
2021年01月06日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「2020年の民主主義」です。民主主義の危機が深まった2020年。国連の変革を求む。2020年は民主主義が問われた一年でした。香港の民主主義は失われ、一国二制度は実質、消えてしまいました。ベラルーシでは独裁政権を倒そうとデモが続いていますし、タイでは’16年に即位した新国王がスキャンダルにまみれ、経済も悪化しており、若い世代を中心に憲法改正や王室改革を訴えて大規模なデモが始まりました。スーダンでは市民革命が成功し、新たな和平を生み出そうとしています。レバノンやパレスチナ、ヨルダンでも、強権的な政治に対して、市民の生活が立ちゆかなくなり、連日、反政府運動が行われています。これらは思想の運動ではなく、市民の「生きるための戦い」。やむにやまれぬ状況に追い込まれて声を上げています。新型コロナウイルスによって経済状況が悪化し、これらの動きは加速しました。この流れは、経済の仕組みが変わらない限りなくならないのだろうと思います。つまり、民主主義と資本主義の相性が悪いということがわかってきたんですね。資本主義で国の覇権を広げていこうとすると、民主的な手続きを踏まない独裁政権のほうがスピーディに進める。そうして中国は、コロナからもいち早く立ち直り、経済政策も着実に実施していきました。世界のなかで中国の存在はより大きくなり、アメリカに伍する経済大国になりました。中国との関係が深い国や企業は安定するけれども、搾取される市民にとっては自由と尊厳が奪われるような状況が鮮明に。先日もブータン領内に集落を建設して、実質的な移民政策を始めようとし、インドとの緊張が高まってきています。ただ、そうした覇権の先に本当の豊かさがあるのでしょうか?情報が公開される透明性のある政府と、市民が参加できる民主主義でないかぎりは、状況は改善されないでしょう。国連が機能不全に陥っているのも問題です。太平洋戦争が終わってから75年。国連は戦勝国によって作られた組織ですから、日本もドイツも常任理事国ではありません。インドやアフリカ、中東のリーダーも世界の秩序決定に参加したいと思っています。多様化するいまの世界に応じた、新しい時代の秩序を作ってほしいなと思います。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年12月30日‐2021年1月6日合併号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2021年01月02日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「脱ハンコ」です。無駄な手続きを省くのが目的。押印否定ではない。菅政権になり、書類に押印をする手続きを簡略化しようと「脱ハンコ」の動きが官民で急速に進んでいます。コロナ禍のなか、テレワークが推奨されながらも、経理部門などでは、押印のためにわざわざ出社しなければいけないというような事態になっていたことも、改革の後押しとなりました。ただ、河野太郎行政改革大臣も話していましたが、政府はすべての押印をなくそうとしているわけではありません。印鑑証明や銀行印、契約書の押印などは残ります。そもそもハンコの問題ではなく、書類申請や申し込みなど、責任を分散させるために何人もの承認印を押させるなど、煩雑だった手続きを見直すことから始まりました。契約書の押印も、実は民法上では必須ではありません。口約束でも証明さえできれば契約は成立します。ただ、たとえば裁判になったとき、「自分で判を押した」ということが本人の承認意志の有無の証明になるため、押印を求められることが常になっているのです。インターネットの登場とともに電子取引が増え、2001年には電子署名法が施行されました。しかし、電子認証の申請手続きのハードルが高く、なかなか利用されませんでした。その後、テクノロジーが発達し、民間企業の方で電子署名の仕組みが進み、2017年以降、電子契約サービス市場は急速に伸びています。2018年に約37億円程度だったのが2023年には198億円になる見込みです。コロナ禍で契約者数が増え、電子契約サービスを導入している日本の法人数は300万社前後にのぼりました。Eメールの登場で、逆に、手書きの文書が特別なものになったように、今後、印を押す行為は文化として継承されていくのではないかと思います。脱ハンコは菅政権の行政改革の「1丁目1番地」。デジタル化の一つとして進められました。安倍政権のころから提案されていた事案。代替サービスもありますし、押印の必要性は法的根拠もなく、なんとなく皆が続けていた古い産業形態だったので、おそらく誰も反対はしない。ここにメスを入れるのは、菅総理にとって、手柄を立てるのにもってこいのテーマだったんです。堀潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年12月23日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年12月24日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「国連世界食糧計画」です。ノーベル賞受賞を機に、飢餓問題に注目が集まれば。今年のノーベル平和賞は、国連世界食糧計画(WFP)が選ばれました。WFPは、飢餓と貧困をなくすことを使命とする、国連唯一の食糧支援機関です。世界では6億9000万人の人が十分な食料を得られず、空腹に苦しんでいるといわれています。WFPは難民キャンプに食料を届けたり、学校給食を配布したり、紛争や飢餓で栄養不良に陥っている母子に援助を行うなどしており、2019年には88か国、約1億人への支援を行いました。空港が閉鎖された紛争地や辺境の地までも届けなければならないので、WFPはトラックのほかに、30隻の船や100機の専用飛行機も持っています。日本円に換算すると、例えば3000円寄付をすると赤ちゃんに75個の栄養強化ペーストを届けることができ、5000円ならば子ども1人に1年間給食を、1万円では5人世帯の家族を1か月、食糧支援できるのだそうです。貧困地域にも開発の手が入り、2000年代に入り、少しずつ改善されてきていたのですが、紛争やテロ、気候変動が原因で、2014年以降、飢餓人口は再び増加に転じてしまいました。先進国が過剰に開発を進めてきたために気候変動が起き、経済的な困窮、格差拡大により、内戦やテロが起きています。世界の飢餓の問題には思想も国家も関係ありません。今回、ノーベル平和賞を受賞したのも、いま世界中の人が参画して対策を打たねばならないという、国際協調を訴えるメッセージも込められていたのだと思います。自分の暮らしとは関係ないと日本の人々は思うかもしれません。でも、日本は多くの「食品ロス」を生んでいる国。全く無縁と言い切れるでしょうか?コロナ禍においては、WFPは衛生面の大切さも伝えており、食料とともに石鹸も配布。ただ、パンデミックにより飢餓人口は急激に拡大、年末までにさらに1億3000万人以上の人が慢性的な飢餓に陥るだろうといわれています。SDGs(持続可能な開発目標)では「2030年までに飢餓をゼロに」と掲げていますが、実現を危ぶむ声も。WFPの公式ツイッターでは、現地の写真をたくさんアップしていますので、現状をぜひ知ってください。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年12月16日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年12月09日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「大阪都構想」です。大阪をきっかけに、都市のあり方の再検討が進めば。11月1日、大阪都構想についての住民投票が行われ、反対多数で否決されました。大阪都構想とは、大阪府が「都」になることではありません。大阪市を廃止して、4つの特別区として再編。東京23区のように地域ごとに行政区を割って、地域特性を生かし細やかな地域サービスを実現。広域的な行政は大阪府が行うという提案でした。これまで大阪府も大阪市も同じように権限を持ち、財源もあるため、「二重行政」となって税金の無駄遣いになっていると問題視されていました。たとえば、大阪府で高層商業ビルを建てたのに、同じようなビルを大阪市でも建てたり。あるいは、府がやろうとすることに市が反対し、プロジェクトが進まないというような事例も重なり、大阪の産業の衰退を招いたといわれてきました。それを解消しようと当時、府知事だった橋下徹さんと松井一郎さん(現在の大阪市長)が中心となり、2010年に「大阪維新の会」が立ち上がり、大阪都構想を掲げたのです。2015年に住民投票をしましたが否決。今年2度目の住民投票も再否決され、廃案になりました。大阪維新の会は新自由主義的な政党なので、競争させて無駄は省くという考え方。コストカットの側面から、行政サービスが悪くなるんじゃないか、というのが反対派の見立てでした。廃案になったものの、菅総理は「大都市制度の議論に一石を投じた」と提案については一定の評価を示しました。実際、平成の大合併により、多くの市町村の再編が行われ、同じ市のなかでも中心部は潤うが山間部は廃れるといった格差も生まれてしまいました。逆に、合併を選ばなかった村が地域特性を生かして発展していったケースも。社会的ニーズが多様化し、生活環境が変化に富むいま、暮らしや財政の基盤となる行政はもう少しミニマムにしていったほうが、隅々にまで目が届くのではないかと思います。松井市長は、その後、大阪市を残したまま区の権限を強くする8つの「総合区」を設置する条例案を来年2月に市議会に提案すると表明。大阪に限らず、これを機に地方行政のあり方を再検討する動きが進むことを望みます。堀潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年12月9日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年12月08日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日本学術会議」です。さまざまな論点が浮き彫りに。透明性が重要です。日本学術会議の新会員候補者のうち6名の任命を菅総理が拒否。その理由がなかなか明らかにされていないことから、さまざまな憶測が飛び交い、日本学術会議のあり方が問われるまで、大きな問題になりました。日本学術会議は、昭和23年に日本学術会議法という法律で定められた内閣府直轄の政府機関。日本の科学技術が戦争に利用されていった歴史を踏まえ、科学が文化国家の基礎という考え方に立ち、国の施策や生活に科学を反映させ、平和的な復興、人類社会の福祉への貢献、世界の学会と提携して学術の進歩に寄与するという目的で設立されました。また、技術の発達とともに、たとえばAIやゲノム編集など、倫理的な問題や高度な政治判断が求められるようになり、6月に科学技術基本法が見直され、科学技術に人文科学系の分野も含まれるようになりました。「科学者を養成するためにこういう施策を」「この分野に科学技術の浸透を」など、科学界から政府に対して提言・勧告するのも役割なのですが、最近では、見解を問われていない事柄については意見の発表を行わないなど、「ちゃんと機能しているの?」という批判もあがりました。日本学術会議は、独立した機関と説明をしていますが、内閣府の直轄で税金が投入されているため、本当に独立していると言えるのか?という声もあります。今回の任命拒否が、候補者の反政府的な発言や行動が理由だった場合、議論は2つに分かれます。ひとつは、国の機関なのだから、自分たちの政策に反対する人をわざわざ任命する必要はないだろうという意見。もう一つは、科学が間違った使われ方をしないためには国の方針に物言いをつけられる独立した存在としての役割を期待したい。だからこそ、反対意見を持つ人も必要という考えです。科学者の意図しない形で、技術が政治に使われてしまった最たる例は原子爆弾です。政治と科学のつながりは一歩間違えば恐ろしいことに。あらゆる観点から検証する慎重さが求められます。安全保障上の問題で、理由を説明できない事情があるのかもしれませんが、政府は情報の透明性を大事にしてほしいと思います。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年12月2日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年11月26日2020年11月25日、小池百合子都知事が臨時会見を行いました。会見中、時より咳き込む様子を見せていた小池都知事。マスクを着用すると、シャッター音が鳴り響き「なんでそこで撮るわけ?」と報道陣に問いかけました。その後も、咳をすると写真を撮る報道陣に対し、小池都知事は「咳をするたびに撮らないでくださいませんか」と強く指摘。ネット上でも「なんで咳のたびに写真撮るの?」「話してるんだから少しの咳ぐらい出るでしょ」など、批判の声が相次いでいました。藤井貴彦アナのコメントに称賛の声が続出同日放送された、情報番組『news every.』(日本テレビ系)でも、小池都知事の会見を報道。会見映像を見て、藤井貴彦アナウンサーはこのようにコメントしました。また、小池都知事が会見中に咳き込んでしまってマスクを着用しましたけれども、日常で私たちもこういうことよくあります。単に咳き込んでしまう場合もありますので、普段の体調を整えなければならないというプレッシャーがあると思いますけれども、みなさんもですね、気遣いを持ちながらお互いに思いやりを持ちながら生活をしていきたいと思います。news every.ーより引用意図せず咳が出てしまう場面に対し、フォローを入れた藤井アナウンサー。お互いに思いやりを持つよう呼びかけました。視聴者からは、「素晴らしい」といった称賛の声がたくさん寄せられています。・思わず拍手したわ。こういう大人になりたい。・コメントが秀逸すぎる。いつも言葉に思いやりを感じる。・藤井アナは本当にいいことをいう。フォローがさすが。病気ではなくただ単に咳き込んでしまったり、むせてしまったりすることは誰にでもあるでしょう。新型コロナウイルス感染症が流行する中では、他人の咳に敏感になりやすく「咳をしないでほしい」と嫌悪感をあらわにする人もいるかもしれません。ですが、「むせてしまったのかな」など思いやりや気遣いを忘れないようにしたいですね。[文・構成/grape編集部]
2020年11月26日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「新疆ウイグル問題」です。企業のSDGsの意識を強めるきっかけになった。中国の新疆ウイグル自治区では、中国政府がウイグル族の人々を弾圧したり、100万人以上を収容所で強制労働させているなど、非人道的な行為が長年、世界的に問題になっていました。ウイグル族はイスラム教を信仰しており、中国共産党は実質的に宗教の自由を認めていません。特定の宗教は弾圧し、言葉や文化も漢民族への同化政策をとっています。そのことに反発し、一部のイスラム原理主義への回帰思想の人たちがテロを起こすようになり、中国共産党はそれらの過激派をテロ組織と認定し、取り締まりを強化するという悪循環も生まれているのです。今年、新疆ウイグル問題がさらに注目を浴びたのは、3月にオーストラリアの政府系シンクタンクが、世界の82社のサプライチェーン(部品や原材料の調達から製造、販売、消費までの一連の流れ)に、ウイグル族の強制労働が含まれていると発表したからです。そのなかにはアパレル、自動車、電化製品、携帯端末、ITなどの世界の有名多国籍企業や日本の企業も数多く含まれていました。これまでは人権や環境に配慮していると宣言していた企業でも、ウイグルの人たちから搾取するような強制労働に加担していることが明らかになり、各社対応に追われました。いまやESG投資が広まっており、人権や環境に感度が高い企業が投資の対象になり、それらに問題を抱えているとただちに企業価値を損ねます。しかし、サプライチェーンは多岐にわたっているため、メーカー側にしてみれば、まさか自分たちの会社が!と寝耳に水の出来事でもあったのです。トランプ政権は6月にウイグル人権法案を施行。ウイグル族弾圧に関与していることがわかった中国当局の担当者に、制裁を科せるようにする法律です。9月にはウイグル自治区で生産されている綿製品の輸入の禁止を宣言し、対中政策を強化しました。もしかしたら、私たちが普段着ている服や使っているスマホが、ウイグルの人々の強制労働につながっているかもしれません。そういう想像力を欠かさないようにしたいですね。こういう動きをきっかけに、SDGsの取り組みが世界的に進むことを願います。堀潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年11月25日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年11月19日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ベラルーシ情勢」です。自由主義諸国vsロシア&独裁国家の対立が如実に。8月の大統領選挙で6期目の当選を果たしたベラルーシのルカシェンコ大統領。ネットの世論調査では支持率が3%だったにもかかわらず、80%の票を得たため、不正選挙だと市民が抗議。暴力的な制圧がなされ、直後には6000人の市民が拘束され、拷問を受けた人もいました。デモは最大時には10万人以上が参加、2か月以上たった今も、辞任を求めるデモは続いています。ベラルーシはロシアとEU諸国双方に隣接する旧ソビエト連邦の国で、「欧州最後の独裁国家」と呼ばれています。ソ連崩壊に伴う独立後、1994年にルカシェンコ政権が発足。民主的な国の誕生と、国民の期待を背負って生まれたのですが、長期政権のうちに腐敗し独裁化が進行。不正選挙が繰り返されました。経済成長に問題があり、市民の政治参加に制約がかかっていたところに、今年、大統領が「ウォッカやサウナが効く」などと新型コロナを軽視したため感染者が増え、国民の不信感はさらに募りました。そこでルカシェンコ大統領が支援を求めたのがロシア。プーチン大統領はルカシェンコを支持し、15億ドルの融資と軍事的協力の継続を約束。ベラルーシの貿易相手の80%はロシアで、文化的にも地理的にも近い存在です。ソ連から独立した国々が次々とEUに加盟し、自国と緊張関係を持つようになってしまったため、ロシアにしてみればベラルーシをEU側に引き抜かれたくない。ただでさえプーチン大統領の支持率が落ちている今、市民が蜂起して政権が倒れる事態が隣国で起きて、ロシアに飛び火することを恐れています。ベラルーシの抗議運動は音楽を流したり、民族衣装を着たり花束を持つなど徹底して平和的に行われています。暴力に訴えれば、それを理由に軍や警察に即刻制圧されてしまうからです。34年前、チェルノブイリの原発事故で飛散した放射性物質の7割がベラルーシに降り注いだといわれ、復興のために広島の原爆研究を共有するなど、核の被災国としても日本とはつながりのある国。独裁政権の横暴を止めるには「国際社会が見ている」ということが力になります。ベラルーシの現状をぜひ知っていただきたいです。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年11月18日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年11月12日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「アメリカ大統領選挙2020」です。対中国関係、経済政策が勝敗を分けるポイントに。共和党のドナルド・トランプ候補vs民主党のジョー・バイデン候補で繰り広げられているアメリカ大統領選挙。選挙活動中にトランプ氏が新型コロナウイルに感染するなど、混乱もありましたが最後まで接戦が続いています。選挙戦のポイントの一つは対中国。トランプ氏は中国に対して強い姿勢を示し、内政を固めようとしました。WeChatの禁止やファーウェイへの制裁、香港や新疆ウイグル自治区問題への抗議などです。一方、民主党は中国に対して親和的な立場。バイデン氏の次男がビジネスで中国と太いパイプを築いており、「国を中国に売るのか」とトランプ氏は激しく突いてきました。この4年の間に経済が悪化していれば、現職の大統領は支持されないでしょうが、新型コロナにより少し落ち込んだとはいえ、アメリカの経済は堅調。「アメリカファースト」と、国内に工場を呼び戻し雇用を作り、国内で消費する政策が功を奏したため、経済界はトランプ氏の再選を願っています。これに対してバイデン氏が主に掲げているのは気候変動への対応や、人種差別への対抗などの大きなテーマ。大切な問題なのですが、明日の暮らしに直結するものではないため、有権者がそれを重要視するのかどうか。日本にとっては、民主党政権下では貿易交渉が厳しくなると言われており、日本の財界は代々共和党政府を歓迎してきました。自民党政権ではアメリカと二人三脚で日米同盟を深化させ、米軍の負担を日本がサポートし、中国や朝鮮半島をともに牽制するという流れが続いていました。トランプ氏は、フェイクニュースを流したり、人種・性差別など問題発言が多いですが、実はトランプ政権下ではアメリカはほとんど戦争に加担していません。アフガンから撤退し、北朝鮮の金正恩委員長と会談、中東でイスラエルとUAEの国交を実現させたり。「安定した社会でなければ、商売も安心して行えない」と、極めてビジネスマンらしい発想で動いています。結果はいずれにしても、共和党か民主党かではなく、人権や環境、SDGsに関わる価値観が“豊かさ”と考える大統領であってほしいなと思います。堀潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年11月11日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年11月04日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「小選挙区制」です。時局により、すぐ体制が変わりやすい選挙制度。安倍前総理の退陣により発足した菅内閣の任期は2021年の9月末までです。支持率の高いうちに衆議院を解散、総選挙を行って、盤石な体制を整えようという声も自民党内から強く上がっています。いま衆議院選挙で取り入れているのは小選挙区比例代表並立制。小選挙区制では、1つの選挙区から1人を選出します。この場合、与党かそれ以外か、ほぼ一騎討ちになるため、時の風によって体制が一気にひっくり返りやすい。民主党政権も、原発や消費税問題で対応を間違い、あっという間に政権が自民党に戻ってしまいました。小選挙区制では少数派の意見を拾いにくいという問題もあります。実は1993年までは中選挙区制でした。同じ選挙区内から3~5人を選べたので、多様な議員を国会に送ることができたのです。ただ、選挙区が広いと選挙運動に金がかかり、地元の有力者や代々政治家家系の候補者が有利になり、汚職も広がりやすい。それを改善しようと小選挙区制になりました。選挙で「支持する候補者はいるが、所属する政党は支持していない。どうしたらいい」という悩みをよく聞きます。僕は、小選挙区制では政治家個人の資質を見て選び、比例代表制の政党は、普段から自分の考え方に近い政党に投票するようにしています。ただ、比例代表制も、党の判断で名簿上位に並んだ候補者が私たちが選んだわけではないのに当選し、その後、汚職にまみれていく問題などが起きています。自民党の青年局が73歳定年制を打ち出したときには、党内でも相当の抵抗がありました。73歳を越えた候補者が比例代表の名簿の上位におり、本当にこの人たちは必要かと切り込んだのです。国民にとっていい政策を実現するには、与党と野党が緊張関係を持ち、多様な意見が飛び交い、慎重に議論できるようにしておくことが必須です。現在、女性議員や女性閣僚の比率はOECD加盟国でも日本は最低レベル。時代にマッチした、新しい感覚を持った議員が活躍できる国会や政府であってほしいですね。そのためにこの選挙制度は最適なのか、あらためてチェックする必要があるのかもしれません。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年11月4日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年11月03日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「菅内閣誕生」です。なぜ改革が必要か、目的と理由の情報公開も求む。安倍総理が病気を理由に退陣。9月16日、自民党の菅義偉総裁が、第99代内閣総理大臣に指名され、菅内閣が発足しました。就任の記者会見ではデジタル化強化のために新しくデジタル庁を創設することや、少子化対策として不妊治療の保険適用を実施したいと発言しました。安倍政権の流れを汲み、継承していくのは安全保障政策や自衛隊のあり方、憲法改正など。菅さんは外交経験は少ないため、ロシアのプーチン大統領など、前総理がこれまでに積み上げてきた信頼関係を生かし、体調が回復し次第、安倍さんが外交特使として派遣されるのではないかと注目が集まっています。特にいまは、アメリカと中国が牽制し合っている最中なので、前任者に託すというのは、いい対策なのではないかと思います。一方、内政に関して菅内閣は、積極的に改革を行おうとしています。安倍さんとの大きな違いは、菅さんは世襲政治家ではなく無派閥ということ。会見でも「行政の縦割り、既得権益、悪しき前例主義を打ち破り、規制改革を全力で進める」と断言していました。前政権では、成長戦略が道半ばで終わってしまったので、これからは民間の参入を積極的に打ち出すことになりそうです。政府内でもベンチャー企業が活躍できるかもしれないという期待は、企業家の間に高まっています。また、官邸人事は強化されるでしょう。内閣の方針に沿う人は重用するけれど、抵抗する人は容赦なく切るという傾向は今後も続きそうです。9月には「日本学術会議」が推薦した候補者のうち6名の任命を見送りました。その理由が不明だという声が上がりましたが、明確な説明はなされていません。パンケーキ好きなど、柔らかいイメージのメディアプロパガンダも効いて、就任時には74%と高い支持率を集めました。しかし、改革により、特定の産業や企業、一部の富裕層や企業家にのみ利益がもたらされ、弱者が切り捨てられることになってはいけません。「誰にとっての改革なのか」ということは見失わないでほしいと思います。また、なぜ改革が必要なのか、目的と理由に関するしっかりとした情報公開はぜひ求めたいところです。ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年10月28日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年10月21日フリーアナウンサーになって今年で2年目。自粛中は、仕事に救われたと宇賀なつみさんは語る。できないことを数えるのでなく今できることを数えてみる「私は超がつくほどアクティブ。自粛中は外出ができなかったので、仕事があって本当に助かりました。でもテレビ局に行かず、リモート出演になることも多く、最初は結構しんどかったです」どうやって乗り越えましたか?「友人など仲間の存在が大きかったです。オンラインで同窓会をしたり、この機会を利用して、普段なかなか会えない人たちに、近況伺いの手紙やメールをたくさん送りました。皆さんが元気でいることがわかっただけで、心がすっと軽くなった。外出できないからと塞ぎ込んでいても何も変わらないし、できないことを数えるより、できることを数えた方がいいなと思い始めたんです」できることを数えるというのはとてもポジティブですね。「はい。ほかには映画を観たり、本を読んだり近所を散歩してみたり。あとは部屋を居心地の良い場所にするために、花を飾るようにしたら、丁寧に暮らしているような気がして、心が豊かに。あと、今さらですがスキンケアをしっかりするようになりました。あれこれ試して、自分に合うものを買い揃えたら、すこぶる調子がいい!今こういう状況になったことは、自分としっかり向き合う時間を持つためだったんだなぁと実感しました。実は今年、海外旅行を予定していたんですが、全てキャンセルになってしまって…。まあ、生きていればいつか行けるし、もしかしたら今は日本を再発見する時期なのかもしれないと思ったり。時間は限られているので、自分の人生をおもしろくするにはどうしたらいいのか、いつも真剣に考えるようにしています」真剣に考えるとは、具体的にどのようなことでしょうか?「私は、小学生の時から日記をつけているんですが、どこに行き、何を食べて、誰と会って、何を感じたかを毎日書きとめています。それをたまに読み返したりしているうちに好きなものや、おもしろいと思っているものが明確にわかって、自分というものが見えてきたんです。反対に、嫌なものや苦手なものもはっきりするから、それを好きに変えたり、これはもうやらなくていいと排除できるようになるんです。気持ちを書き出すことが、自分がおもしろいと思えるものに気づくきっかけになるのかもしれませんね」宇賀さんが、事務所に所属せず、個人で活動をしているのも、“人生をおもしろくすること”を真面目に考えた結果の決断ですか?「はい。自分の心の純度だけで仕事を選びたいと思ったから。誰かに気を遣うこともなく、おもしろいと思えるものだけを、自分で決めたかったんです。次は何をしたいか、常に考えているけれど、具体的な夢や目標は持たないようにしています。決めてしまうと、可能性を狭めてしまう気がするから。時代も目まぐるしく変わっていくし、自分も年齢とともに考え方は変わっていくと思うので、今を楽しんで、その結果、人生がおもしろくなればいいなと思ってます」うが・なつみ1986年生まれ、東京都出身。2009年、テレビ朝日に入社し、‘19年にフリーに。現在も情報・バラエティ番組を幅広く担当。趣味は旅行、読書、ドライブなど。※『anan』2020年10月21日号より。取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2020年10月20日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「優生思想」です。弱者を切り捨てる、効率主義に基づく恐ろしい思想。優秀な人間を増やし、劣った人を排除しようとするのが「優生思想」です。象徴的なのはナチスドイツ。「アーリア人は世界一優秀で、最も卑劣なのはユダヤ人だ」と根拠もなしに決めつけ、大量のユダヤ人を強制収容所に送り虐殺しました。ナチスはそれ以前に、障害のある人々を排除していました。第一次世界大戦に負け、民族の誇りを傷つけられたドイツ。世界恐慌に襲われ、強い国として復活を遂げねばならなくなったときに、「効率の悪い人間はいらない」と、障害のある人やLGBTの迫害を始めたのです。ドイツ国民はこれに対して否定的な声をあげませんでした。国の成長のためには仕方がないと段階的に優生思想に染まり、ユダヤ人虐殺も容認してしまったのです。ナチスの崩壊により、この思想の根本的な間違いにドイツは気づきましたが、戦後も優生思想を続けていたのが日本です。1948年に「優生保護法」を制定。「不良な子孫の出生の防止」「母性の生命健康を保護する」ことを目的に定められ、本人の同意なしに中絶、避妊、断種(手術により生殖能力を失わせること)をさせていました。この法律は1996年、「母体保護法」に改定されるまで続きました。優秀か否かを国が選別し、劣っている人を、国を挙げて差別するというのはとても恐ろしいことです。これは産業構造に支配された考え方といえます。学校教育でも科学の発展につながる理数系は尊重され、国語や音楽など、生産性に直結しないものは役に立たないというような価値基準が広がってはいないでしょうか。7月、有名ミュージシャンが、優れた遺伝子を持つスポーツ選手や芸能人の配偶者は、国家プロジェクトとして政府が選定するべきじゃないかとツイートし、大きな波紋を呼びました。これは、優秀でなければ社会に必要ないという考えに結びついてしまいます。「効率の悪い人は社会のお荷物」という感覚は、私たちのなかに、拭えず残っているのかもしれません。優生思想的なものがあるかもしれないという自覚は持っておきましょう。社会の効率主義が変わらないかぎり、優生思想は生き続けてしまう恐れがあります。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年10月21日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年10月16日フリーアナウンサーの柴田将平さんは、自身のTwitterを更新。その内容が話題になっています。柴田さんが投稿したのは、4秒の短い動画に実況を付けたもの。犬が走っているだけの映像ですが、プロが本気で実況をすると…。アナウンサーによる本気の4秒実況です。 pic.twitter.com/Dhtjx12Wdf — 柴田将平(アナウンサー) (@shibata_shohei) October 12, 2020 なんだか、めちゃめちゃ盛り上がる…!朝の情報番組『あさチャン!』(TBS系)でリポーターなどを務めている柴田さん。家の前を行き来するだけの犬の映像が、実況があるだけでまるで何かの競技を見ているかのような気分にさせられます!投稿には20万件もの『いいね』がつき、たくさんのコメントが寄せられました。・いい声出てますね!さすがプロの本気は違います。・たった4秒で楽しませてくれる柴田アナウンサー、素敵です!・声を出して笑いました!お見事です。・犬の勢いとそれに負けない柴田さんの勢いが素晴らしい…。ナイスコラボですね!実況があるだけで、その映像の見方が大きく変わることが分かります。プロの本気を感じる動画に、多くの人が盛り上がりました。[文・構成/grape編集部]
2020年10月14日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「政府事業の民間委託」です。問題点は行政側に。新規民間の参入と育成が課題です。新型コロナウイルス対策の「持続化給付金」の支給において、経済産業省がサービスデザイン推進協議会に事業委託。そのほとんどを電通に再委託していたことが発覚し、中抜き疑惑が湧き起こり問題になりました。こういう大きな行政事業は、お金の管理、宣伝文句やデザイン、業者への発注など、仕事が多岐にわたります。しかも迅速に実行しなければいけないとなると、ノウハウを持ち安心して任せられるのは大手広告代理店しかないというのも事実です。東日本大震災で、計画停電を急にしなければいけなくなったときも広告代理店がいろいろなプロジェクトを組んで進めていました。前述の問題の決定的なミスは、説明がきちんとなされなかったことでしょう。不透明な関係で、本当は発注に偏りがあるのに、あたかも公平にやっているかのように見せかけた手法が問題。最初から、こういった大事業を頼める業者は限られていることを正直に公表すればよかったのだと思います。ただ、発注先が限られるということは、市場競争が起こらないため、価格が適正なのかどうかも判断がつきません。この状況を変えるためには、日頃から、様々な業界が行政事業に参入しやすくすることではないでしょうか。アメリカではオバマ政権以降、「オープンガバメント政策」を打ち出しており、政府の透明性、国民参加、官民協業を謳っています。地方行政では福岡市がITやデジタル技術を積極的に使った、新たな行政サービスを次々と打ち出しています。交通では配車サービスの「Uber」のライドシェアをいちはやく実験的にスタート。ベンチャー企業の誘致も進め、育成に力を入れてきました。LINEやYahoo!などのテック系、デジタル系新興企業と連携してプロジェクトを動かすなどしており、他県から視察も多く来ているようです。大手広告代理店が悪いという話ではなく、政府はきちんと情報公開をして、民間参入者を増やし、新たな産業を起こしたり企業育成をすること。本当の意味での効率を高めて、先鋭的、前衛的な新陳代謝のいい国になる必要があるのではないかと僕は思います。ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年10月14日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年10月12日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「TikTok買収」です。モバイル向け動画のプラットフォーム、TikTokが急成長。ダウンロード数は世界で20億件を超えました。TikTokの親会社は中国企業のバイトダンス。個人情報が中国政府に流出するのではという懸念から、インドは6月に国内でのTikTokの使用を禁止。トランプ大統領も「安全保障上の理由から、閉鎖されるか売却されるかだ」と述べ、TikTokのアメリカ事業の買収に、マイクロソフトほか数々の企業が興味を示しました。最終的には、オラクルとの提携が決定。TikTokやWeiboなど、中国のSNSを運営する企業の真の目的は、利用者のスマホのなかに、どれだけ自分たちのビジネスインフラを入れ込めるかということです。利用者のモバイルに入り込み、利用者の情報をコントロールし、嗜好にぴったりのモノを売るインフラを世界に広げていこうとしています。中国は5月に「デジタル人民元」の試験運用を開始。中国当局が発行するデジタル通貨がアプリを介して世界に流通する日も遠くないでしょう。すると、中国系のアプリサービスや通貨を使用しなければ、世界の商売に参画できなくなる可能性も出てきます。アメリカやEU諸国は、そうして世界の貿易地図が中国に塗り替えられることを最も恐れています。日本や欧米諸国からすればそんな中国は脅威ですが、世界に照らしてみれば、中国に親和性のある国のほうが多数。一帯一路構想が広がり、東南アジアやアフリカ、東欧、中欧諸国などは、経済的に強く結びついている中国との共存共栄を望んでいるのです。独自のITインフラを持っていない日本は、すでにアメリカ系のインフラを使用しています。EUも独自のインフラはありませんが、自衛のために、個人情報を企業に握らせないルールづくりを徹底し、制裁金を課すなどのプレッシャーをかけています。日本政府は国民に何のリスクも知らせないまま、行政までもが海外のプラットフォームを使っています。これは、危機感が少し足りないのではないでしょうか。自国の商売や国民の情報を守るのが国の役割。それができないのなら、自衛の策を直ちに打つべきだと思います。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年10月7日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年10月02日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日本の防衛」です。攻撃力を高めるより外交、経済政策でリスク回避を。日本の防衛における今年の大きなトピックは、河野防衛大臣が陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の秋田・山口への配備を撤回したことでしょう。撤回の理由は、想定されていた安全が確保できないこと。改修に費用がかかりすぎることなどでした。イージス・アショアは、飛んできたミサイルを撃ち落とすシステムです。いま計画を撤廃することで、防衛のためには敵基地に攻撃する能力のあるミサイルシステムが必要なんじゃないかと、話は思わぬほうに進んでいます。そうなると新しい兵器を買わなくてはいけませんし、攻撃能力を持てば、当然攻撃されるリスクも高まります。こうして、際限なく防衛力の拡張にひきずりこまれてしまうことを「安全保障のジレンマ」といいます。2020年度の防衛予算は5兆3130億円と過去最大になりました。2010年くらいまでは5兆円程度でしたが、近年一気に跳ね上がっています。理由の一つは、アメリカが防衛費を見直したこと。自国の経済も疲弊しているアメリカは、日本や韓国から軍を撤退し、自分の身は自分で守ってくれという姿勢でいます。これを受け、これまで空母を持たなかった日本も、空母の機能を持たせるために護衛艦いずもを改修したり、母艦に離発着できるオスプレイを配備したり、宇宙やサイバー関連にも防衛費を投入しました。ただ、安全保障は、軍事力増強だけが方法ではありません。外交政策も大きな歯止めになります。経済的な結びつきを強め、相手国を攻撃すれば自分たちも不利益を被る、という関係を作っておくことはとても有効です。EUが誕生したのも同じ理由です。2つの世界大戦の反省を受け、経済的関係を強めることでEU圏内は戦争を回避してきました。日本も、TPPやRCEPなど、アジア太平洋地域で大きな貿易圏を作り、互いを攻撃しにくくする方法を構築しようとしています。いま新型コロナで、人もモノも行き来しづらくなり、自国第一主義に走りがちです。しかし、各国の連携が薄れれば、リスクも高まります。このなかでどういう防衛協調策があるのか、今後もウォッチしていきたいと思います。ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開中。※『anan』2020年9月30日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年09月23日言葉は人間が生み出した最強のツールである。それにより、気持ちを伝え、情報を共有し、思考を深化させてきた。そして今、言葉がさらに大きなチカラを持つ時代になりつつある。響く言葉と紡ぎ方について考えてみました。今こそ、言葉の重要性が高まっている。ニューノーマル時代に突入し、人と直接言葉を交わす機会が減ってきている。「一昔前は、“以心伝心が美徳”とされたものですが、今は違います。人と気軽に会えなくなり、さらにマスクが必需品になり、目や息遣いで察することは難しく、言葉の重要性はこれまでになく増しています」(日本語教師・清水由美さん)オンラインツールの普及も、言葉の可能性を広げていると、SHOWROOM代表の前田裕二さん。「オンライン上でのコミュニケーションが定着し、地位や権力に関係なく、よりフラットに自分を表現できるようになりました。これからは極端にいえば人間力の前に言語力が問われる場面がたくさん訪れます」アナウンサーの吉田尚記さんは語る。「そもそも言葉は、敵か味方かを判断するために生まれた道具だと、僕は思っています。言葉を上手く使い、相手の心に響けば、仲間を増やすことができ、その結果、自分が望んでいることを実現しやすくなります。人生を切り拓いていくには、言葉のチカラは欠かせません」多様化が進み、どんな場面でも最大の武器として使えるのが言葉である。心に残る言葉はいかにして生まれるのか?人との会話の中や、小説や音楽の中でふと深く心に突き刺さる言葉。反対に、耳には残るけれど、何だか嘘っぽい言葉。その違いって何だろう?「それは、その言葉にちゃんと指紋がついているかどうかの違いかなと思います。情報が瞬時に行き渡るネット社会は、いうなれば、誰でも同じ言葉をコピペして、言ったり書いたりできてしまう時代です。一見同じような指でも、よく見ると全て違った種類の指紋がついていることとよく似ていますが、その言葉の裏側に、その人固有のストーリーがあるか。その言葉が紡ぎ出された独自の背景や、“味”が見えてくるのか。そんな“言葉の指紋”が見えた時にはじめて、本当に人の胸を打つのだと思います。そのためにはまず、ストーリーを紐付ける内省力や思考力が、狭義の言語化力(≒コピペ力)以上に重要だと思います。自分の心を深く見つめて、想いを込めた言葉は、自然と誰かに届くでしょう」(前田さん)事前に用意された言葉や、取り繕った言葉は、人の心に残らないと、吉田さん。「感情が自然と溢れて発せられた、ライブ感のある言葉にこそ、人は感動します。だからいつも周りをきちんと見て、その場で感じることを大切にしてほしい。どんな心の動きがあったか自分の気持ちと向き合うことを続けていけば、人の感情を揺さぶる言葉を自然と発しやすくなります」人は自分のことをわかっているようで、案外わかっていないもの。だからこそ思考するクセをつけることが大事なよう。新たな言葉が、イノベーションを生み出す。時代を表す言葉や流行語など、新しい言葉は次々と生まれてくる。たとえばお笑い第7世代という言葉が広まったことで、5は?6は?と気になり、興味の幅が広がった。さらに、社会に影響を与えることも。「呼び名のなかった人や現象、感情に対して名前が付くということは、新たな価値観や概念を生み出すことに繋がるので、言葉の持つ大きなチカラのひとつだといえます。例を挙げるとイクメンという言葉ができたことで、それを目指す男性が増えたり、はたまた母親にはそれに該当する呼び名がないということに社会が気づくきっかけにもなりました。LGBTもしかり。これまでないことにされてきた人たちに名称ができたことで、社会や世間が多様性を受け入れられるようになり始めました」(清水さん)若者言葉が流行るのにも大きな意味が。「ぴえんなど、“パッと聞いて意味がわからない”けれど、使いたくなる。そんなつい口にしたくなる、自分たちにしかわからない秘密の共通言語が、気づかぬうちにコミュニティの境目を生み、仲間感を濃くします」(前田さん)新しい言葉には、それぞれに生まれる意味があるのだ。言葉を紡いで、本当に伝えたいことを磨く。気持ちを言葉にするのが苦手な人は、アウトプットの精度を高める作業も必要になってくる。「言葉は∞。語彙力を高めれば、自分の感情の輪郭をなぞるようにリアルに描写することができ、相手に伝わりやすくなります。そのためにも良質な言葉や文章と、数多く出合うこと。言葉を吸収して、実践を繰り返せば、状況に応じて、ドンピシャな表現ができるようになります。僕のマイルールは、『頑張ってください』などの通り一遍な言葉を極力使わないこと。自分の中で禁止ワードを作ると、表現を工夫するようになり、言葉を紡ぎ出すことが楽しくなります」(吉田さん)さらに、話し方を磨くことも重要。「たとえば本当に伝えたい言葉は、心を込めて放った後に、少し我慢して間を置いてみます。言葉に、体重と体温、そして魂をのせるイメージです。思い切り体重をのせたなら、重たい言葉なので、すぐには次にいけずに間ができますよね。熱い言葉は伝播しやすいし、魂ののり方次第で抑揚、トーン、リズム、音量なども自然と調整されて、気づいた時には、皆さんの言葉の威力は格段に上がっていると思います」(前田さん)新しい世界を開く言葉のチカラ。あなたも手に入れてみませんか?清水由美さん日本語教師。千葉大学や法政大学大学院で非常勤講師として、留学生に日本語を教える。著書に『すばらしき日本語』(ポプラ新書)、ヨシタケシンスケさんとの共著に『日本語びいき』(中公文庫)など。前田裕二さんSHOWROOM代表。オンラインサロン「メモ魔塾」主宰。『スッキリ』『新・日本男児と中居』(共に日本テレビ系)をはじめ、コメンテーターとしても活躍。著書にベストセラーの『メモの魔力』(幻冬舎)など。吉田尚記(ひさのり)さんニッポン放送アナウンサー。ラジオ番組『ミューコミプラス』は、月~木曜24:00~生放送中。『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』(アスコム)を上梓。※『anan』2020年9月23日号より。取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2020年09月18日元『フジテレビ』でフリーアナウンサーの内田恭子(うちだ・きょうこ)さんが、2020年9月13日にインスタグラムを更新。10歳の長男と7歳の次男とのスリーショットを公開しています。内田恭子の親子ショットに「幸せそう…」2006年に吉本興業の社員と結婚した内田恭子さんは、2010年4月に長男、2013年1月に次男を出産。この日は家族で母親の古希祝いをしたといい、子供たちとのスリーショットをアップしています。 この投稿をInstagramで見る 母のお誕生会にて。毎日の慌しさにかまけて、こうしてイベントがないと、きちんと子供たちと一緒の写真に収まることが少なくなってきたなあ。写真、大事。あっという間に大きくなってしまいそうだから。気がついた時にちゃんと撮っていこう。 #子供の成長 #早すぎて #母の古希祝い #家族 #内田恭子 #kyokouchida Kyoko Uchida (@kyoko.uchida.official)がシェアした投稿 - 2020年 9月月13日午前4時27分PDT素敵な笑顔を見せている内田恭子さんですが、最近は忙しさもあり、家族写真を撮っていなかったと告白。あっという間に大きくなってしまう子供たちとの思い出を形に残しておくため、「気がついた時にちゃんと撮っていこう」と決意をつづっています。投稿見たファンは「素敵な写真」「大きくなったね」とコメント。「確かに写真は大事!」と内田恭子さんの思いに賛同する声も寄せています。・息子ちゃんたち大きくなりましたね。きっとイケメンなんだろうな。・恭子さんはいつまでもきれい…。そして、幸せそうでほっこりしました。・家族写真はたくさん残しておきたいですよね。この投稿で気づかされました!お祝いのイベントを開くなど、家族との時間を大切にしている内田恭子さん。これからも仕事と両立しながら、活躍してほしいと思います!内田恭子と旦那の結婚生活に「うらやましい!」子供について語ったことに共感の声が相次ぐ[文・構成/grape編集部]
2020年09月17日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「コロナ禍の災害支援」です。被災地と離れていながらできる、新しい支援に注目。今年も豪雨災害が続いています。7月には熊本を中心に、九州やその他の地域が大きな被害に見舞われました。しかし、このコロナ禍では感染リスクもあり、自由に移動ができません。現地ではやはり人手が足りていないとのこと。とはいえ、県外の方が来ると地元から一斉に不安の声があがり、疑心暗鬼も招いてしまうそうです。そんななか、新しい支援の形が2つ見られました。一つは、被災した当事者がAmazonの「ほしい物リスト」で必要物資を公開し、支援を募るというもの。八代市の水没した保育園では、園児の帽子からフェルトペン、シーツに至るまで具体的に必要なモノと数をリストアップしました。これまでは、被災地で何が必要なのかの情報をリアルタイムに得るのが難しく、物資を送っても自治体の倉庫で管理されて適切に届かないというような問題がありました。その点、この方法は明快で合理的です。もう一つは、熊本地震をきっかけに結成された支援団体「BRIDGE KUMAMOTO」の働きです。広告を手掛けるデザイナーや映像クリエイターらが中心メンバーで、7月の豪雨災害を受け、いち早く基金を創設。これはクラウドファンディングで支援金を募り、被災地支援を行う組織や団体はBRIDGE KUMAMOTOに申請して、助成金を受け取れるというシステムです。全国のクリエイターたちに呼びかけて動画メッセージ集を作るなど、お金以外の支援も行っており、僕もナレーターとして参加しました。このように中間支援団体がSNSを展開して支援に入るというのは新しい動きです。行政では手の回りにくいところを細やかにサポートしています。豪雨や台風災害は今後も起きるでしょう。地震や富士山の噴火の危険もはらんでいます。コロナ禍の複合災害では、外に出られない、外からの支援が得られない状況が続く恐れがありますから、食糧や水、常備薬に加え、マスクや消毒液も適量、備蓄しておいたほうがよいでしょう。これまで避難所ではたびたび、食中毒や感染症の問題が起きていました。コロナにより、衛生面の危機意識が一般的に高まったのは、良かったことかもしれません。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。※『anan』2020年8月26日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年08月19日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「スーパーシティ構想」です。遅れている日本。地域の課題解決に活用を期待したい。「スーパーシティ」構想を盛り込んだ、国家戦略特別区域法(特区法)の一部を改正する法案が成立し、6月に公布されました。特区法とは、「世界一ビジネスをしやすい環境をつくること」を目的に、地域や分野を限定して、規制や制度を緩和したり、税の優遇などを行ったりする法律です。AIやビッグデータを活用し、社会のあり方を根本から変える街づくり「スマートシティ」化は世界中で計画が進んでおり、日本はだいぶ遅れています。スーパーシティとは日本独自の言葉で、スマートシティに防災や社会福祉の要素を加え、地域住民のデータを連携して管理することで、効率のいい都市計画を2030年頃までに実現しようとしています。スーパーシティ構想では、自動運転、ドローンによる配送、テレワークやオンライン教育、オンライン診療、キャッシュレス決済、エネルギーや水の無駄のない管理など、生活全般を網羅しようとしています。スマートシティ計画が最も進んでいるのは中国。医療分野はテンセント、人の動きはアリババというふうに、いくつもの大企業が牽引しており、各企業の持つデータベースを統合して一体運用。杭州市や雄案新区などで進められています。カナダのトロント郊外でもGoogleが中心になり、計画を進めていましたが、個人情報の扱いに不安があると住民から反対の声があがり、計画は中止してしまいました。今法案でも懸念されたのは、個人情報が自治体に管理されるのではないかということでした。内閣府の国家戦略特区担当の審議官は、データ管理は一企業や一行政が一元的に管理するのではなく、必要ないときは遮断されるため、過度に心配する必要はないと話していました。ただ、現在の個人情報保護法は弱いので、個人が嫌だと思えば、すぐに自分のデータを切り離すことができるよう、法律を強化すればよいのではないかと思います。内閣府は現在、スーパーシティのアイデアを各自治体から募集しています。技術主体の実験的なものではなく、高齢化や過疎、災害対策など、地域の課題解決を目的にした街づくりであることが大前提であってほしいと思います。ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。※『anan』2020年8月12日-19日合併号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年08月11日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ネット中傷」です。当人にとっては気にするなでは済まされません。『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーの木村花さんが5月に亡くなりました。インターネット上で誹謗中傷を受けていたことが原因による自死といわれており、ネット上の誹謗中傷に対し、新たな法律や厳罰化を求める声が強くなりました。でも、僕は新たな法律を設ける必要はないと思います。侮辱罪や名誉毀損罪など、既存の法律で十分裁くことができるからです。ただ問題なのは、訴えようにも、発信した相手の特定がとても難しいということ。弁護士を立て、SNS事業者や掲示板管理者などに情報開示請求を行い、発信者のIPアドレスをもとに、電話会社などに開示を求めて、住所や氏名、本人特定ができます。そこから損害賠償の請求になるので、お金も時間もかかるのです。アクセスログの保存期間は決まっているため、特定が間に合わないケースもあり、政府からは事業者に対し、情報の速やかな開示や保存期間の延長を求める動きが出ています。ほかにも、過度に人を傷つける文言は書き込めなくするなど、民間事業者にできることはあると思います。ニコニコ生放送やABEMAでは、NGワードを指定して、本人が受け付けたくない言葉をはじく機能を備えています。SNSも、ミュート機能で自分のコメント欄を表示させないようにするなど、改善はされつつあります。木村花さんには、悪質な投稿を上回る大量の励ましや応援の声があったそうです。ただ、僕も経験がありますが、1000人に1人の悪口でも、言われた本人は一日中それを引きずります。「知らないやつの他愛もない悪口だから、気にしないだろう」と思ったら大間違い。受け取り手は、実は知人が匿名で本音を漏らしているのかもしれないと、疑心暗鬼に陥ってしまうのです。木村花さんのほかにも、伊藤詩織さんやきゃりーぱみゅぱみゅさんらに対するネット中傷を見ても、女性の発言に対して、大量の批判がことさら集中する傾向があるようです。メディア・リテラシーも大事ですが、女性差別・女性蔑視など、古い価値観に基づいた社会のありようも変えていかなければいけないと思います。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。※『anan』2020年8月5日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年08月01日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「香港国家安全維持法」です。中国の強権を示す法律。一国二制度崩壊の危機に。6月30日、中国の国会・全国人民代表大会(全人代)にて香港国家安全維持法(国安法)が全会一致で可決。香港政府は同日23時頃に公布し即日施行しました。翌1日は、23年前に香港がイギリスから返還された記念日でした。この法律は、国の分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力と結託して国家安全に危害を加える行為を犯罪とみなすもので、最高刑は無期懲役。香港人だけでなく外国人にも適用され、国外在住の人も含まれます。これまで香港は言論の自由が守られ、司法の独立性も認められた民主的な都市でした。しかし2014年頃から少しずつ中国共産党が香港行政、司法に介入する姿勢を見せ始め、民主化を求めるデモ活動が続いていました。昨年は香港警察の市民への取り締まりが強くなり、SNSや防犯カメラによる監視、カード情報などから抗議運動関係者が特定されていきました。国安法により、中国本国による直接の取り締まりが合法化されます。この法律に対する抗議デモが起き、1日で370人が逮捕され、そのうち10人が国安法に抵触。「香港独立」の旗を持っていただけで捕らえられた人もいました。返還から50年は一国二制度を変えない約束でしたが、実質反故にされた形です。アメリカは、これまで香港に対して認めてきた貿易や渡航の優遇措置を、一部を除き停止しました。イギリスは、返還前に発行していた許可証を持つ香港市民には、将来的にイギリス市民権の申請を可能にすると発表。日本にとって中国はビジネスでも安全保障上でも良好な関係を保っておきたい相手です。日本政府はこれまで強い批判を示していませんでしたが、自民党内から習近平国家主席を国賓として迎える予定を中止するべきという声も上がり、判断に注目が集まりました。貿易相手国だからこそ、自由や人権、公平であることに対する価値観を共有する必要があると思います。そうでなければ、安心して連携をとれません。日本や欧米から抗議が上がる中、ロシアや、中国と経済的な結びつきの強い東南アジアや中南米の国々からは、国安法を支持する声が上がっており、分断が深まっています。ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。※『anan』2020年7月29日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年07月28日2020年7月13日、報道番組『news zero』(日本テレビ系)への欠席が報じられた、有働由美子アナウンサー。有働アナが生放送を発熱で欠席櫻井翔のひと言に、ネットで「本当にそれ」有働アナウンサーは発熱があったことから、その日中に病院へ行き、PCR検査をしたところ陰性だったといいます。有働アナが生放送で涙「大事な人の命を…」同月17日に放送されたラジオ番組『うどうのらじお』(ニッポン放送)に、有働アナウンサーはリモート出演。陰性ではあるものの、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の疑いを抱いた経験を振り返りました。有働アナウンサーは「感染の疑いが出た際に、どう行動するか前もって想定すべきだった」と反省し、発熱の前日に、自身が尊敬している先輩の松平定知アナウンサーと食事をしていたことを明かします。食事中は、松平アナウンサーが高齢であることから、店側と協力してできる限りの感染予防対策をしていたそうです。しかし、検査結果を待ちながら点滴を打つ間、有働アナウンサーはこれまでの行動を振り返り、激しく動揺していたといいます。(感染予防として)できることは全部やってたんです。でも、もし。もしなんですけど、殿(松平アナ)に移して、殿が重症化したらって考えたら、点滴してる腕が、そっちのほうが震えるっていう。それを思うと。うどうのらじおーより引用その後松平アナウンサーに電話で報告すると、当人は元気で、電話を切った後に「自分には変調なし、心配無用」と、有働アナウンサーを気遣うメールが送られてきたといいます。有働アナウンサーは「メールを読んで、本当にもう…」といったきり、耐えきれなくなったようにしばらく沈黙します。しばらくしてから、涙で声を震わせ、こう切り出しました。なんかやっぱり、改めて思ったのは、自分がどうかじゃないんですね。ごめんなさい、昨日の今日なんで。やっぱり怖いのは、自分がどうかじゃなくて、大事な人の命を…。ごめんなさい。1%でも危険にさらすってことがやっぱり怖いって、一番思って。今回、コロナで私が一番怖かったのは、つらかったのはこれでした。うどうのらじおーより引用有働アナウンサーは、涙声になることを何度も謝りながら、懸命に言葉をつむぎます。きっと、自分の行動によって大切な先輩を危険にさらした恐ろしさを思い出したのでしょう。【ネットの声】・有働アナが陰性で本当にほっとしました。お身体大切にしてください。・もらい泣きしてしまった。これぐらい真剣に考える人が増えたら、感染は広がりにくくなると思う。・素敵な考え方。自分が同じような状況になった時に、こんな風に思える人になりたい。有働アナウンサーの責任感が強く、他者を思いやる人柄がうかがえますね。「大切な人の命を1%でも危険にさらすのが怖い」という、有働アナウンサーの正直な想いは、改めてコロナウイルス下で暮らす私たちの心に刺さりました。[文・構成/grape編集部]
2020年07月17日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「検察」です。権力を持つからこそ、独立した存在であるべき。著名人も含め多くの反対の声がTwitter上にあがった「検察庁法改正案」は、今国会では廃案となりました。定年延長が問題になっていた黒川弘務東京高等検察庁検事長は、緊急事態宣言のさなかに新聞社記者らと賭け麻雀をしていたことが発覚し、5月に辞職しました。検察官とは、検事と副検事を指します。法律違反を犯した人を逮捕するのが警察官。逮捕された人が、本当に罪を犯したのか、裁判にかけるに値するかを調べるのが検察官。法律に照らし合わせて刑を定めるのが裁判官です。日本では、犯人を起訴できるのは検察官のみ。日本の裁判は無罪率が低いといわれますが、それは、検察が裁判に勝てると踏んだものしか起訴しないからです。性犯罪のように、密室で行われて証拠をそろえるのが難しいものは起訴されないことが多い。伊藤詩織さんの例がまさにそうです。刑事訴訟で争うことができず、民事訴訟を起こし、ようやく一審で勝訴できました。かつて、郵便不正事件で厚生労働省の元局長の村木厚子さんが無実の罪に問われ、長期間拘留された事件もありました。検察が事前に用意したストーリーに沿って裁かれていくというのは、とても怖いことですよね。それくらい検察官の権限はすごく大きいんです。その検察庁の人事を、時の政府が強く握るというのはやはり危険です。そうなれば検察官は自分の生活や出世のために、政権に擦り寄る可能性があります。また政府が敵とみなした人を、検察が簡単に起訴することもできるようになってしまいます。それらを憂慮し、多くの人が反対を述べ、改正案は見送られました。一方で、国家権力にも相対してメスを入れることもできる存在なので、検察はやはり独立した存在でなければいけません。正義の検察が暴走しないよう、私たち国民は常に監視しておく必要があります。実際の監視役はメディアが担うべきでしょう。それなのに、雀卓を囲み、検察と新聞記者がずぶずぶの関係だったというのは残念でなりません。一緒に食事をしようが麻雀をしようが、正義に反することが起きたときには、ペンの力で刺してほしかったと思います。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。※『anan』2020年7月22日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年07月16日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「9月入学」です。コロナ禍では無理。じっくりと時間をかけて再考を求む。学校の入学・始業時期を4月から9月にする案は「今年度・来年度のような直近の導入は困難」と、見送られることになりました。9月入学制度はこれまでにも何度も議題にのぼっています。世界ではアメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ベルギー、トルコ、モンゴル、ロシア、中国などの国が9月入学制度を導入しています。日本も明治維新後、西洋の教育を導入した当初は9月始業でした。ところが、国の会計を4月~3月を一年とする年度制を採用したこと、徴兵制の始まりなどから4月始業に変わり、今に至ります。今年、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために学校の休校が続き、授業の遅れが問題になりました。そんななか、高校生のツイートをきっかけに、全国知事会から国へ9月入学の検討要請があり、安倍首相も「有力な選択肢の一つ」とコメント。いったん検討し始めたのですが、実際に導入するとなると、初年度の入学生徒数が半年分増加し、大量の教員不足が生じてしまうこと、また、保育所の入学待機児童数が増大すること、システムやカリュキュラムの再編など、拙速な対応は無理と判断されたのです。このコロナ禍で、ただでさえ問題が山積するなか、大きな改変をしようとしたのは現場の声を無視した行動だったと思います。授業の遅れを取り戻すことが目的なら、感染者数は地域によって差がありますし、全国一律にすること自体がナンセンスなのではないでしょうか。4月でも9月でも、いつ学校が始まっても継続してきちんと教育を提供できる仕組み作りを議論するべきなのではないかと思います。日本は会社も年度ベースなので、学校の始業時期をずらせば就職にも影響が及びます。会社を通年採用に変え、大学も途中入学を許すなど、個々のスタイルに合わせた社会設計が必要になるでしょう。世界の学校制度はもっと柔軟です。イギリスは年に3回、入学の機会がありますし、フランスでは家庭での義務教育の就学も可能になっています。また、海外は飛び級制度も広く採用されていますね。日本もこれを機に時間をかけて議論し、右に倣えではない、多様な学校制度へと見直してみてはいかがでしょうか。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。※『anan』2020年7月15日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年07月09日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「新型コロナ支援策」です。官民ともに、多岐にわたる支援。有効利用して。外出自粛要請により、仕事が減り、経済的に厳しい状況に追い込まれた方が大勢います。1人10万円の特別定額給付金制度や、中小企業やフリーランス向けの持続化給付金のほかにも、新型コロナウイルス感染症の支援策はたくさん発表されています。内閣官房のHPには、それらをまとめたリストが見られます。「収入減により住宅を失うおそれがある」「アルバイト収入減で学業継続が困難」など、それぞれの問題に対して相談窓口を記しています。事業者向けには、経済産業省がLINEアプリを使用して支援メニューを紹介しています。「経済産業省新型コロナ事業者サポート」(ID:@meti_chusho)を友だち登録すると、「給付金」や「資金繰り支援」などの項目が出てきて、詳細がわかるようになっています。民間では「マネーフォワード」という、会計アプリサービスを提供している会社が、事業者、個人向けの支援情報をサイトにまとめました。「失業した」「生活が苦しい」「家賃が払えない」「子育て世帯」など、フローチャートで自分に合う支援を探せるので便利です。支援策の具体例は、たとえば社会福祉協議会では、コロナの影響で休業し、一時的に生計維持にお金が必要になった事業主に対し、「緊急小口資金」として、無利子で20万円以内の貸し付けを行っています。緊急融資なので申請受理から10日以内に振り込まれます。また、失業するなど収入減少で生活費に困った人には、「総合支援資金」として、2人以上の家庭には月20万円以内、単身者には月15万円以内の貸し付けが可能に。コロナ禍の深刻な状況ですから、「返済の見込みが立たない」と臆さずに、とりあえず相談してほしいとのことです。電気、ガス、水道料金も、支払期限の延長をそれぞれの事業者が受け付けています。携帯電話の大手3社は2月末までの支払期限を6月末まで延ばしていました。困っているという声に対して、国も自治体も柔軟な対応に努めています。支援情報は日々更新されますので、頼れるところは頼って、身を守ってください。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。※『anan』2020年7月8日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年07月03日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「内閣総理大臣」です。独裁を避けるため日本が選んだ内閣という組織。新型コロナウイルス感染症の対策をめぐり、世界各国のリーダーの違いを目の当たりにする機会が増えました。政治のシステムは大きくわけて議院内閣制と大統領制があります。前者のトップは首相、後者のトップが大統領。日本は議院内閣制をとっており、安倍首相は内閣総理大臣。内閣という行政府の長です。大統領制にはアメリカ型とフランス型があり、アメリカは大統領個人が行政を担いますが、フランスは大統領が国家元首として外交や儀礼を担い、国内の政治は首相に任せます。ドイツも政治は国内外とも首相が担い、大統領は外交儀礼を行います。日本の元首は憲法で明文化されていませんが、儀礼や国会の召集などの元首的な役割は、ほとんど天皇が担っています。イメージでは、大統領のほうが総理大臣よりも強い権限を持っているように感じるかもしれません。しかし、アメリカの場合、大統領に議席はなく、議会と大統領個人は拮抗する関係を保っています。大統領がいくら「こうしたい!」と言っても、議会がつっぱねて「予算を通さない」と揺さぶりをかけることができる。オバマ前大統領もトランプ大統領もそれで思うように政策を進められず苦労しました。そうやって大統領の独裁にならないようにバランスをとっているのです。日本は太平洋戦争の過ちを繰り返さないため、総理大臣一人に権限を持たせず、内閣という国務大臣の集団で行政を進めるようにしました。問題がおきた場合は、「責任をとります」と内閣が総辞職をしますよね?内閣総理大臣一人が辞めることはありません。ただ、内閣=ほぼ与党ですから、総理の意向が通りやすいという意味では、大統領よりも総理のほうが権限を持っていると言えるかもしれません。誤った道を進まないためには、与党のなかにさまざまな意見を持つ人がいることが大事になってくるのです。大統領選挙のように、国民が直接総理を選ぶシステムではありませんが、私たちは選挙で「与党」を選べます。内閣総理大臣は与党の党首が任命されることがほとんど。議員選挙が私たちの暮らしや将来に直接関係し、どれだけ重要か、自覚していただけたらと思います。堀潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。※『anan』2020年7月1日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年06月26日2020年5月末、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の流行による緊急事態宣言が解除されました。政府は同年6月19日に、都道府県をまたぐ移動の制限を解除。コロナウイルスと共存しながら、新しい生活様式を作っていく動きが広がっています。有働由美子「古い習慣を脱皮した新人類」Instagramで『うどばあちゃん』という独自のキャラクターを使い、誰にでも分かりやすくコロナウイルスに関する情報を発信している、有働由美子アナウンサー。緊急事態宣言の一部解除に有働由美子アナ「違いが出る時には…」続く言葉に、絶賛の声有働アナウンサーは、19日に解除された移動の制限について、次のような想いを投稿しました。今日から基本的にいろんなことが解除されて、本当に本当に大丈夫?って不安になりますよね。それも含めて、自分の価値観で判断していかなくてはいけない時代。なんとか、新しい呼吸で深呼吸して、自分の価値観確かめながら生きていきましょうね^_^udoyumikoーより引用あわせて、『うどばあちゃん』が登場する、こちらの動画を公開。 この投稿をInstagramで見る 有働由美子(@udoyumiko)がシェアした投稿 - 2020年 6月月19日午前3時56分PDT誰も経験したことねえ思いをいろいろ経験したねぇ。感謝されなくてもみんなでサナギみてぇに閉じこもったし、情報に振り回されて人それぞれのとらえ方の違いにストレスもたまったなぁ。でも!医療従事者に感謝する気持ち。配達の方やゴミ収集、スーパーのレジの方、今まで見えてなかった縁の下の力見えてきたな。マスク、手洗い、テレワーク、やってみればできんだっぺってこと、いろいろやれたなぁ。いってみりゃあおらたち、古い習慣を脱皮して、新しい価値観を手に入れた新人類だよ。2つ目の波はきっと越えられる。手に入れた習慣、価値観、警戒心忘れずに、『新しい呼吸』しながら豊かに生きていこうね。udoyumikoーより引用有働アナウンサーは、これまで一人ひとりが自粛してきた頑張りを称えるとともに、コロナウイルスの流行によって改めて気付いた、生活を支える人々の存在に注目。さらに、テレワークなどを行ったことで、さまざまな古い習慣から脱却し、新しい価値観を手に入れたことをつづります。「手に入れた新しい価値観があれば、2つ目の波はきっと越えられる」という有働アナウンサーの訴えに、多くの人が共感の声を上げました。・本当に制限を解除して大丈夫なのか、正直不安です。でも、これからはその不安と付き合っていこうと思えました。・うどばあちゃん、ありがとうございます。つらかった自粛生活を忘れずに、心豊かに生きていきたいです。・有働さんの優しい語りに涙が出ました。この経験を、未来のために活かさなくてはいけませんね。世間では、さまざまな制限の解除により、「コロナウイルス流行の第2波が訪れるのではないか」という見解もささやかれています。未来のことは誰にも分からないからこそ、私たちは第2波、第3波に備えて、先んじて対策を取る必要があるでしょう。不安やストレスと上手に付き合いながら、これまでの経験を活かして、困難を乗り越えていきたいですね。[文・構成/grape編集部]
2020年06月20日