問題山積みのまま新時代へと突入する’19年。経済ジャーナリストの荻原博子さん(64)が、立憲民主党の枝野幸男代表(54)に、今後の日本経済の行方について問う。題して「2019年、日本はどうなる」緊急対談。荻原「10月に消費増税が施行されたら景気が冷え込むのは間違いありません。国民にとって何のメリットもない。安倍総理だって、消費増税をやるデメリットは、よくわかっているはず」枝野「当面、大衆課税は無理ですよ。日本の今の消費不況からすると、そんなことをやれる状況ではない」荻原「安倍政権がやってきたことは、法人税を下げて消費税を上げる。つまり、家庭から企業にお金を移転させるということですね。それでなんと150兆円も企業の内部留保は増えたが、みんなの給料は上がらずという悪循環……」枝野「今やらなければいけない景気対策は『格差の是正』です。金持ちほどカネを使わないのが経済の大原則です。法人税や高額所得者に対する所得税を上げることなど、まずそっちをやらないと。そして所得が低めの人の賃金、所得を底上げする。所得が低めの人がお金を使えば消費は上向きます。格差を是正し、将来への不安を解消することが国民における消費を拡大させ、日本経済を立ち直らせると思っています」荻原「所得の底上げが大事だとおっしゃいましたが、具体的にはどんな方法がありますか?」枝野「介護や保育といった人手が不足しているところに、たくさんのニーズがあります。実は、国が直接的に給料を上げられる分野の代表が介護と保育なんです。ところが、どちらも需要があるのに低賃金。ここにお金を回せば、職員の賃金の底上げができる。国がどのくらいお金を出すかにかかっているわけですよ。需要があるところで、充実したサービスが受けられる場所が増えれば、老後や子育ての安心も高まるので一石二鳥や三鳥なんですよ」荻原「枝野さんは、消費不況を脱却するための対策として、“低所得の人たちの賃金、所得の底上げ”が、最も近道だということですね」枝野「われわれは従来から右とか左でもなく、上からと下からと両方から変えると言ってきました。今年は選挙もあるので、それをどうかみ砕いてわかりやすく伝えるか。伝えていければかなりの人たちが『そうだよね』と思っていただけるという自信はあります」荻原「先ほどおっしゃられた介護と保育の分野で、国がお金を出せば改善することができるわけですから」枝野「そうです。たとえば防衛費だって大事ですけど、アメリカから使うかどうかわからない戦闘機を向こうの言い値でそのままで買うぐらいだったら、現場の自衛隊員の待遇を改善すべきなんです。待遇をよくすることのほうが、日本の安全を高めると思いますから」荻原「発想がいまだに箱物から抜け切らないので、“オリンピックをやりましょう!”“大阪万博をやりましょう!”“IRをやりましょう!”という感覚のまま」枝野「5月1日に元号が変わります。そういうときって、結果的に時代の変わり目にもなってきたと思います。平成は昭和の成功体験を何とか引っ張って、引っ張って、ここまで食いつないできた。アベノミクスは昭和の成功体験に引きずられているんです。企業がもうかったらそのお金で設備投資をして新しい工場をたくさん作って、たくさん人を雇って給料も上がっていって」荻原「そうですね。いまは工場も海外に移転しているし、そこで雇用が生まれようもない。企業がもうけても株主も海外の人が多いので、お金はそっちに回ってしまう」枝野「でも、さすがにもう昭和から抜け出そうよというのが、新たな元号の下での考えだと思っています」荻原「生活者を軽視するような政策ではなく、国内で消費が増えるようなものでないと本当の意味で経済はよくならない。そのうえ、消費税率UPでは本当に私たちの暮らしが危なくなります」枝野「みんなが成長の実感の持てる日本経済にしていかないといけない。選挙でもそれが大きな争点となるでしょう。所得の低い人たちが底上げされると、結果的にその人たちがお金を使って消費するので、経済も回る。“あなたの暮らしにもつながるんですよ”と伝えることが、大事なのではないかと思います。変わり目のときはいろいろなことが起こって、大変かもしれません。でも、時代を変えようと前向きな空気を作れれば、そんなに絶望することはないと思います」
2019年01月21日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「平成の30年間」です。改革を目指したけれど、失敗の連続だった。昨年の「今年の漢字」は「災」、災害の目立った一年でした。それも、自然災害だけでなく、人災の要素も孕んでいました。台風や豪雨で川が氾濫し、家を破壊していったのは、山の管理がなされていなかったのも一因です。国の財政が、社会保障や国防などに多く投入され、地方の公共事業に回らなくなったことに起因しています。岡山県や広島県でも被害が集中したのは、市の周辺の山あいの地域でした。人口減少により、コンパクトシティ化を進め、宅地開発されたエリア。きちんと都市計画がなされていれば、被害を最小限にとどめられたかもしれません。平成の30年間には、たくさんの改革がなされましたが、ことごとく失敗しています。自民党と社会党の「55年体制」が崩れ、新党がたくさん生まれて、首相が頻繁に変わっていきました。行政改革、省庁再編、選挙制度改革をしましたが、政治離れは一層進行。人口減少による税収不足を補うため、平成とともに消費税をスタートさせましたが、社会保障費は膨らむばかりで国の借金は一向に減りません。実質賃金は下がる一方。労働市場は正規雇用と非正規雇用の格差が広がりました。第2次安倍政権以降は長期政権になり、安定しているといわれますが、政治と金の問題は解決せず、アベノミクスで恩恵を受けたのは一部の人にすぎません。福島の原発事故も、平成の大惨事でした。日本は原発の輸出を計画していましたが、フランスやトルコは反原発体制に舵を切り、エネルギー政策は転換期を迎えています。この30年の間に、世界で戦っていた日本の家電や車産業も、いつの間にか中国や韓国に追い抜かれてしまいました。その背景には、国も企業も既得権益に固執し内向きになっていったこと、デジタル分野など新しい産業、若い起業家を後押しする姿勢になかったことが挙げられます。昨年は企業不祥事、パワハラ、#MeTooなども表出しました。そんななか、失敗を払拭するかのように、平成最後に打ち上げたのが、東京オリンピックと大阪万博。昭和と同じ手法です。いまこそ平成の問題をきちんと検証し、膿を出しきり、次の改革へ踏み出せたらと思います。ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2019年1月23日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2019年01月17日「すべて国民のために、一致協力して新しい国を造ろう」石破茂元幹事長(61)に国会議員票で圧倒的な差をつけ総裁選(9月20日投開票)を制し、そう語った安倍晋三首相(63)。東京五輪、高齢者問題、そして憲法改正……任期を満了する’21年9月までの3年間で、安倍首相が抱える問題は山積みと言っていいのだが、投開票後の会見では、「すべて解決します」と言わんばかりの自信に満ちた笑みを、報道陣に向けた。しかし、今回本誌が専門家たちに、3年間の安倍政権で何が起こるかと聞いてみると、私たち国民にとっては笑顔も引きつるような負担が、この先待ち受けているのだった――。【社会保障】75歳以上の医療費負担が3割へ!「アベノミクスで大黒柱の収入が増えた家庭はごくわずか。そこで前任期中、安倍首相は働き手を増やすことで“一家の収入”を増やす政策に舵を切りました。配偶者控除を受けられる主婦の収入の上限が103万円から150万円に引き上げられたのも、こうした背景があるのです」こう語るのは、経済ジャーナリストの須田慎一郎さん。安倍首相は「待機児童ゼロ」「幼児教育無償化」を掲げ、多額の予算をつけている。しかし、国の借金は1,000兆円を超えるといわれている。経済産業省の元官僚である古賀茂明さんは、次のように話す。「予算をつけてしまった以上は、“国民全員に働いてもらいますよ”というのが安倍首相のスタンス。そして、その負担はシニア層にも強いることになるでしょう。まずひとつは年金。これについては、3年以内に年金受給開始年齢の選択を70歳超にも広げるようにすることに、安倍首相は言及しています」現在、65歳からの年金の受給開始を延期することができるのは70歳まで。1カ月見送るごとに0.7%が増額されるシステムだ。「5年遅らせて、70歳から受給すると、65歳の年金額よりも42%上乗せされます。75歳から受給開始となった場合、さらに増える可能性が高いです」(須田さん)受け取る年金額が増えることで、“もうちょっと働いて受給を我慢しよう”とするのが、狙いだ。「安倍首相は誰でも70歳まで働ける社会を、と言っています。聞こえはいいのですが、’21年以降、受給開始年齢を遅らせ、70歳まで年金を納めさせる制度を確立しようと考えてのことでしょう」(古賀さん)負担の材料はそれだけではない。すでに65歳以上の介護保険料は3年ごとの見直しで増額され続け、開始当初と比べると約2倍もの出費になっている。さらには医療費にも魔の手が。「従来、75歳以上の世帯は、世帯員の収入が145万円未満であれば1割負担で済み、現役世代なみに所得があれば彼らと同じ3割負担という制度でした」(古賀さん)しかし今年8月、75歳以上の3割負担の対象者を拡大することを政府・与党が検討していると報じられた。「’19年の参院選後、この議論は本格化し、早ければ’20年にも3割負担の対象者への拡大が行われる可能性があります」(古賀さん)まるで“国の社会保障に頼るな、働いて医療費をまかなえ”ともとれる今後の社会保障制度。「のんびりした老後生活」は、どんどん遠のいていくことに――。
2018年09月26日「すべて国民のために、一致協力して新しい国を造ろう」石破茂元幹事長(61)に国会議員票で圧倒的な差をつけ総裁選(9月20日投開票)を制し、そう語った安倍晋三首相(63)。東京五輪、高齢者問題、そして憲法改正……任期を満了する’21年9月までの3年間で、安倍首相が抱える問題は山積みと言っていいのだが、投開票後の会見では、「すべて解決します」と言わんばかりの自信に満ちた笑みを、報道陣に向けた。しかし、今回本誌が専門家たちに、3年間の安倍政権で何が起こるかと聞いてみると、私たち国民にとっては笑顔も引きつるような負担が、この先待ち受けているのだった――。【景気】消費税増税の直前“だけ”好景気がやってくる!大規模な金融緩和と財政出動を軸としたアベノミクスによって生まれた円安ドル高は輸出企業に“利益”をもたらし、株価は上がり、安倍首相はその成果をアピールしている。しかし、経済ジャーナリストの須田慎一郎さんはこの金融政策についてこう指摘する。「アベノミクスの利益を享受できたのは一部の大企業だけで、圧倒的多数の中小企業や零細企業は取り残され、給与が全く上がっていません」経済産業省の元官僚である古賀茂明さんも「決して豊かになっていない」と話す。「実質賃金も’12年で4%ほどダウンしていますし、国民の7~8割の人が『好景気を実感できない』と感じている。政権続投後も、アベノミクスは続きますが、じわじわと物価が上昇していく傾向にあるのに、賃金はたいして上がらないのではないでしょうか」にもかかわらず、来年10月には、消費税10%への引き上げが“ほぼ確実に”行われるという。「世論の反発などを懸念して、増税自体を再検討するという憶測もありますが、安倍首相にとって最後の任期ですし、増税を前提に始まった教育無償化への政策もあるので、先延ばしにはしないでしょう」(須田さん)’19年5月の新天皇即位に加え、増税直前に自動車、住宅などを購入しようとする“駆込み需要”により、増税前に“好景気”を迎えるかもしれない。しかし、家計の負担増は国民全体で2.2兆円にも達すると試算されている消費税増税により、景気にも陰りが見えはじめる。そして’20年には、インフラの整備など大規模の予算が組まれている、「東京オリンピック」があるが……。「一大イベントが終わってしまうと、消費の冷え込みに拍車をかけることになるでしょう。さらに、検討中のパート主婦の厚生年金への加入条件拡大も追い打ちとなりえます。厚生年金は企業が半分を負担するため、中小企業や零細企業にまで拡大されれば、人を雇うコストが増えて経営が苦しくなる企業が出るのです」(古賀さん)しかも、安倍首相はいまの景気を維持している金融緩和を「ずっとは続けられない」と明言している。そのときの“最悪のケース”について古賀さんが語る。「おそらく任期最後の’21年には具体案を発表すると思いますが、金融緩和を縮小すると、急激な金利上昇を招く可能性があります。変動金利で住宅ローンを支払っている人は要注意。高すぎる返済金を支払うことができず、“ローン破産者”が急増することが考えられます」安倍政権のこれからの3年は、日本を大不況に陥れる“危険因子”が散らばっているのだ。
2018年09月26日(イラスト:ちたまロケッツ) 『お笑い』→『海外ドラマ』→『マンガ』→『ラジオ』の4ジャンルを週替わりで、そのスペシャリストが“最推し番組”を指南する『今週の萌えガタリ』。今週は『ラジオ』ということで、『ラジオの時間』編集人の村上謙三久さんが最推し番組を紹介! 【最推し番組】『村上信五くんと経済クン』/文化放送で毎週土曜日9時00分〜10時00分に放送中 ジャニーズとラジオの関係性を掘り下げるだけでコラムが何本も書けてしまいますが、村上信五さんを語る上でも、ラジオは欠くことができません。関ジャニ∞を結成する前の’02年から文化放送の番組にレギュラー出演。翌年からこの春までの16年間、木曜夜の生放送でパーソナリティを担当していました。村上さんがテレビで見せるトーク術は、ラジオでの経験が土台になっているんです。 そんな村上さんが新たに始めた番組が『村上信五くんと経済クン』。これまでとガラッと変わり、土曜日朝に放送される経済番組です。 「経済」がテーマと言っても、気取った内容ではありません。初回の冒頭に村上さんがニュースを紹介したのですが、「大企業製造業の景況感が8四半期ぶりに悪化」という文章を読むことすらままならず、「チンプンのカンプンですよね」とこぼしていました。まさにリスナーの気持ちを代弁した発言です。「高校には1カ月しか通わなかった」という村上さんと共に、経済を学んでいくのが番組の趣旨なんです。 経済のスペシャリストが毎週ゲストに出演。初回は元財務官僚の山口真由さん、第2回は経済評論家の門倉貴史さんでした。合間にはゲストさんとのフリートークもあり、人となりもわかった上で、経済論が聴けるので、難しい話もスッと頭に入ってきます。 村上さんはわからないことがあったら素直に「わからない」というスタンスで、正直な反応をするんです。例えば、山口さんの口から「アベノミクス」という言葉が出た時。村上さんはうっすらと緊張感を漂わせつつ、その中身について質問していきます。有名な“3本の矢”の話を聞き、「ようやく効果が目に見えて出てきているんですね」と納得。山口さんから「ご理解の通りです」と褒められると、「ちょっとできた。ちょっとわかった」と嬉しそうに話してました。どうです?こんな風に初歩の初歩から掘り下げているんですよ。 他にも、山口さんに日本経済新聞を読んだほうがいいと勧められたら、「日経……取るか。先生言うから間違いないか」と決意したり、門倉さんとは経済学的な見方をした合コントークで盛り上がったり……。単純なトーク番組としても楽しめる内容です。 村上さんが興味津々で番組に取り組んでいるから、リスナーも取っつきやすいんですよね。「仮想通貨」「マイナス金利」「フェルミ推定」……。まさに“チンプンでカンプン”な用語の知識が身に付き、家計に直結する日本経済の今を知ることができます。何となく経済がわかったふりをして過ごしてきた私のような人間が、新年度から聴くのに持って来いの番組なんですよ。 そして強調したいのが、この4月からジャニーズ事務所所属タレントが出演する番組もradikoのタイムフリー、エリアフリーで聴けることになったこと。番組は4月7日に始まったばかり。村上さんと一緒にゼロから学ぶなら、今がチャンスですよ。
2018年05月07日「ここ最近、おにぎりやパンなどなじみの食品がちょっと減っているなと感じていたんです。お菓子も手に取ったら、がっかりするくらい小さくて……。パッケージが変わったときには、大概小さくなっているんですよね。値段が下がっていないものが多いので、だまし討ちにあった気分」 そう嘆くのは都内在住の主婦(57)。ペットボトルが持ちやすくスリムになったと思えば容量が減っていたり、いつのまにかチーズの中身が小さくなったり、ソーセージの数が減っていたり……。実際いま、お菓子や缶詰、飲料などの身近な食品の多くが値段が変わらないままサイズが小さくなっている。 「ここ20年、円安による原材料費の上昇、賃金値上げや人件費、輸送コストも右肩上がり。一見、価格水準は変わらないものの、これまでと同じように買ってもらうために、企業の涙ぐましい努力で値上げを避け続けてきました。その結果、数年かけて商品が小型化してきているんです」 こう語るのは、大手総合家庭用品メーカーで長年商品開発に携わっていた、プロダクトリサーチャーの四方宏明さん。企業が量を減らして対応する苦肉の策が始まったのは、’05年ごろからと話すのはファイナンシャルプランナーの山崎俊輔さん。 「’08年はバター不足や海外の穀物の高騰など大幅な食料高騰で、多くの企業が量を減らして対応しています。さらにアベノミクスが始まった’13年からも小さくなっています」(山崎さん・以下同) ただ、この縮小もそろそろ限界だという。 「商品を小さくするのも、値上げの印象を与えにくいだけで、実質値上げ。これはインフレの前兆です。原材料が上がるとこのまま値上げを抑えるのは難しい。いつか物価上昇が始まります」 インフレの入口に差し掛かっている今から、家計は厳しく引き締めておくべきだと山崎さんは指摘する。 「そうなると給料が上がったと喜んでも、商品の値段もこぞって上がります。家計を今から引き締めていくことが必要でしょう。食費や日用品がすべて1割減になったと考えれば、これまでと同量を買おうとするとそれだけ負担増になります。サイズダウンに気づかず、家計を回していると、赤字になることも」 取り急ぎ、サイズダウンに対抗する方法はないだろうか。 「まずは、飲み残しや廃棄ロスを減らすこと。コップに注いだジュースを飲み残したまま捨てていることはありがちなことでしょう。容量が減った1~2割の元がとれる計算です。洗剤なども、適量の使用を心掛けるようにしましょう」 小さくなり続ける食品――。それには、家計も縮小して備えることが必要になりそうだ。
2018年03月22日今年も通常国会が始まり、野党は昨年に引き続き「モリ・カケ・スパ」で政府を追及する姿勢を見せている。その「モリ・カケ」を問題化し、俎上に載せたのが望月衣塑子・東京新聞記者と、森ゆうこ・自由党議員だ。先日、2人は「問うことの意味」を巡って対話した新書『追及力~権力の暴走を食い止める』(光文社新書)を出版。そのタイムリーな内容を取っ掛かりに、今国会のポイントを聞いた。 ■本書に込めたメッセージは? 望月「誰しも日々、何かに疑問を感じ、もがいていると思います。困難にぶつかった時、いかにその問題の本質をつかみ、解決の道を探ればいいのか。そんなことを考えるヒントや勇気を持っていただければと思っています」 森「安倍一強の中で、“お友達”に便宜が図られ、行政が捻じ曲げられたのは明らか。その責任を取っていただくために私たちはあきらめないという宣言の書です」 ■今回の国会での目標は? 望月「国会質疑のやり取りは、基本的に政治部記者が書きます。社会部の私は、日々の紙面をチェックし、国会での質疑を聞き、その中で“ここだけは聞かねば!”と直感したことを、これまで通り会見や取材の場でぶつけ、引き出した言葉を報じていきたいと思っています」 森「私たちは少数政党ゆえの難しさを抱え、首相と直接対決の機会を得られるかどうかも分かりません。それでも、この国会中に首相には退陣いただくことを目標に掲げます」 ■森友加計問題はこれからも追及を続けるか? 望月「神戸大の上脇博之教授が情報公開請求していた、森友学園の国有地売却に関する、近畿財務局の売却担当者と法務担当者とのやり取りの文書が早速、開示されました。近畿財務局は“内部文書であり、交渉記録ではない”としていますが、生々しいやり取りがあったことが明らかになりました。上脇教授は昨年3月から情報公開を請求し、東京地検なども公文書管理法違反を問う市民団体からの告発状を受理していますが、財務局はなぜこのタイミングで公開したのか。また、あくまで“内部文書”であるならば、他の“交渉記録”だけを破棄したということなのか。破棄したとして、どういう理由や指示で行われたのか。そして政府は、これらをどう説明するのか。回答を求めていきたいと思います」 森「森友については、私が昨年末に財務省に出させた文書では、ごみの撤去費用は当初、約8,400万円と記載されていたのに、森友に売却する時には約8億円となってその額が値引きされた。この根拠は何なのか、回答を得なければなりません。また加計学園は、施設の安全基準を満たしていると自ら主張していますが、事前に必要な厚生労働省の承認を得ていなかった。本当に安全基準を満たしているのかどうか、明らかにしなければなりません」 ■野党・ジャーナリズムの最大の使命は「権力監視」。しかし、しばしばその姿勢は「重箱の隅をつつく」と揶揄される。「追及」「質疑」で大切なものとは? 望月「その問題がいかに許し難いことであり、国民は絶対に知るべきだいうことを、自分自身が感じるか否かが重要だと思います。質問するということは、そうした問題が存在することを周りで聞いている人たちにはもちろん、視聴者に伝えることでもあります。いま、政治や社会について考える際、何に不平等や怒りを感じるのか、それを突き詰めて伝える力が記者には求められています」 森「それが本質的な問題かどうかを見極められることが全てです。本質的な問題というのはすなわち、民主主義を脅かすもの。政治は権力者のためではなく、あくまで国民生活のためにある。一人ひとりの国民が犠牲になりかねない核心的な問題を追及します」 ■共謀罪成立、森友加計問題、詩織さん事件、そして改憲…「権力の私物化」がますます顕著になる安倍政権の暴走を食い止めるにはどうすれば? 望月「繰り返し、“これで良いのでしょうか、皆さん?税金がこんな風に使われていますよ!?”“司法がこのような判断を出しています、問題ないと思いますか?”と注意を呼び掛けることだと思います。人々に認識してもらうための“問題化”を繰り返すこと、これがジャーナリストとして何よりも必要なことだと考えています」 森「安倍政権の力はもう圧倒的で、すでに暴走しているわけだから、それを阻止する有効な手立てはなかなかない。それでも私たち野党が結集して、いかなる批判にも耐えながら批判・追及を続けられるかどうか。たとえば、私は詩織さん事件を検証する超党派の会を立ち上げましたが、こうした運動を“みんなで続けていくんだ”という雰囲気をつくることが重要です」 ■巷で使われる「左翼」や「リベラル」といった“レッテル”、あるいは「保守vs.リベラル」という二項対立の図式についてどう考えるか? 望月「憲法改正一つを取っても、自民党の中にも護憲派的な発想の方もいれば、野党側にも自民党のタカ派に近い考え方の議員もいます。“党”として括るだけではよく分からない、やはりその中にいる議員一人一人と直接やり取りして、当人の考え方を知ることが重要です。同じ新聞社内でも護憲のとらえ方は人それぞれ。レッテル貼りは簡単ですが、党派や新聞社という枠組みを越え、それぞれが何を良しとし、何をダメだと考えるのか、徹底的に話し合い、時にはぶつかりながらも、問い続けることが大切ではないかと思います」 森「私や小沢一郎さんはもともと右翼と呼ばれていたんですが(笑)。もはや対立軸は、右か左かにはありません。一部の金持ちを優遇する新自由主義的なアベノミクスか、それとも普通の庶民の生活を守ることを第一義とする政治か、ここに現代のすべての争点があります」 ■「追及力」に関して、一般読者ができること、日常で心がけるべきこととは 望月「まずは“これはおかしい”という問題意識を持つためにアンテナを張ること、そしておかしいと感じたことについての知識や情報を増やすこと。その中で本当に問うべきものを判断し、自分なりに解決策を考え続けていくことではないかと思います」 森「日々の生活で精一杯だと思いますが、何か一つでも社会的活動に参加していただきたいと思います。政治なんて誰がやったって同じ、野党は重箱の隅をつつくだけで結局何もできないと、シラケる気持ちは分かります。私も、もう政治家を辞めようと思う時だってある。それでも、社会を改革するには小さなことから変えていくしかない。かつての日本では、地域全体で政治家を育て、みんなの代表を送り出すという意識があった。これを少しでも取り戻していただけたらと思います」 『追求力~権力の暴走を食い止める』 著者:望月衣塑子・森ゆうこ価格:760円+税出版社:光文社新書
2018年02月01日「昨年末、みずほ・三井住友・三菱東京UFJの3メガ銀行が『口座維持手数料』の導入を検討中、との報道がありました。口座維持手数料とは、預貯金口座を開設しお金を預けておくだけでかかる手数料です。今は超低金利のため、3メガ銀行の普通預金に100万円を1年預けても、利息はわずか10円(税引き前)です。口座維持手数料の金額によっては、『銀行に預けるほど、お金が目減りしてしまう』という事態にもなりかねません」 こう語るのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。そもそも銀行は、預金者からお金を集め、そのお金を企業などに融資して収益を得ている。 「しかし近年、企業は利益の一部を内部留保として蓄積しています。国内の企業全体の内部留保は、アベノミクスが始まってからの5年間で約100兆円増え、’16年度には400兆円を超えました(’17年9月・財務省)。それだけ企業に蓄財があれば、銀行から融資を受ける必要はないでしょう。こうして銀行は、貸出先がない状況に陥り、預金者から集めたお金を、日銀の当座預金に“ブタ積み”と揶揄されるほど預け続けてきました。その状況を変えるため、’16年に日銀は、銀行が日銀に預けている当座預金に『マイナス金利』を導入しました。しかし、それでも日銀への預金は増えていて、貸出先、運用先がない状況は深刻です」 窮地に立たされた銀行が収益を上げる手段として、3メガ銀行が検討する口座維持手数料は、海外では一般的だが、日本では、銀行は公共性が高いものとの認識が強く、導入には強い反発が予想される。 「’18年度中の結論を目指すようで、実際に導入されるかどうかはわかりません。ですが、私たちは導入を前提に、準備を始めておきましょう」 そこで、荻原さんが口座維持手数料導入前にすべきことを解説してくれた。 「まずは、今ある口座の整理です。子どもの学校関連で使っていたものや、引っ越して使わなくなった口座などはありませんか?すべての口座をリストアップしたら、使っていない口座は解約しましょう。また、使ってはいるが、解約しても困らない口座については、口座維持手数料の導入が決まったらどうするか、対策を考えておきましょう。こうして利用口座をシンプルにまとめると、家計も管理しやすくなります。手数料の引き上げは銀行の苦しい経営状況の表れです。厳しいところから統合・合併などの再編が進み、大幅なリストラがあるかもしれません。大手銀行は安泰という時代は過ぎました。今後も注意深く見守っていきたいものです」
2018年01月19日2017年の新築住宅市場は住宅ローンの低金利が続く中、価格は横ばいで値上げも値下げもできない膠着した1年となった。その影響からか契約率も伸び悩み2017年後半は落ち込みが続いた。この流れの中で迎える2018年はどんな年になるのか、識者3人の意見を聞いた。2017年の新築住宅市場の振り返り2017年も新築マンション供給戸数は、月毎の振れが大きいものの、概ね増加基調。分譲価格の上昇が続く一方で契約率は伸び悩んだ。2018年はどうなる?みんなの不安に専門家が答えるPROFILE価値住宅株式会社代表不動産コンサルタント高橋 正典さん一般社団法人 相続支援士協会 理事。【著書】『プロだけが知っている!中古住宅の買い方・選び方』(朝日新聞出版)他みずほ証券上級研究員 石澤 卓志さん慶応義塾大学卒業後、1981年日本長期信用銀行に入行。第一勧銀総合研究所上席主任研究員を経て、みずほ証券チーフ不動産アナリストを経て、2014年より現職。東京カンテイ上席主任研究員井出 武さん全国のマンションや土地価格をデータベース化した不動産専門の情報サービス会社。不動産市況レポートなども提供。不動産鑑定や土壌汚染調査なども手掛けている。値下げ競争は起きない?不動産価格振り返りと2018年の展望高橋さん:バブルの崩壊とデフレ環境しか経験していない現在の住宅の一次取得世代は、2017年前半はその前年までの価格上昇を懸念し、購入を見合わせる行動をとりましたが、後半には需要が持ち直しました。一戸建は中堅企業による供給も多いため、一時的な価格下落が特に郊外型の開発では発生しましたが、全体としての価格下落には至っていません。2018年も、安定的な価格が推移するのではないでしょうか。石澤さん:新築価格の目安として、一般のサラリーマン世帯可処分所得の25%、坪単価240万円が目安と考えています。現状はそれよりも高いマンションが売れていますが、住宅ローン減税や低金利、それに、概ね住宅購入者の四割は親族から援助を受けるなどして、本来の取得能力より高いものを買えていますが、限界があります。2014年に価格が急上昇して、240万円を突破した結果、2016年から一戸当たり価格を抑えるために面積を抑制する傾向が強くなっています。にもかかわらず、今年、また一戸当たり価格が上昇しました。全般的に高くなりすぎましたが、東京都内の売れ行きは悪くありません。井出さん:2017年の新築は、価格が高くなりすぎたため、売れ行きが鈍化しました。購入者層は、上位数%の超富裕層、投資家層、実需層の3タイプに分類して動きを見ていますが、価格高ゆえの利回りの悪さから、投資家層が動きませんでした。ただ、今のところデベロッパーが主導権を握っており、「値下げ競争」の状況ではありません。「○○ショック」や、消費増税凍結のような「事件」が発生しない限り、急落の恐れはありません。ポイント新築価格は都心を中心に頭打ち気味ではあるが、需要は依然として旺盛である。購買力から考えれば「高すぎ」のきらいはあるものの、現状として価格の主導権はいまだデベロッパーが握っており、海外で突発的な金融危機が発生したりするなど、特別の事情が発生しない限り、価格が大きく下落することはないだろう。住宅ローン低金利は続く!ただし海外の動向に注意が必要高橋さん:政局の安定によって、アベノミクスによる金融緩和の継続が見込まれ、2016年から低金利下の状況がしばらく続くとの予測から、大きな金利変動はありませんでした。しかし、年末にかけてフラット35などの長期的な金利が少し上昇しており、これはアメリカの利上げとともに、2018年にかけて懸念すべき事項かと思います。石澤さん:短期的には北朝鮮問題で金利が下がったものの、危機感が薄れるとやや上昇するなど、短期的な動向はありますが、歴史的な低金利続いているので、気にする必要はありません。一部メガバンクが地方の住宅ローンを手じまいするようですが、貸し手が地方金融機関に変わるだけで、借りる側の利便性は変わらないでしょう。住宅ローン環境は良好な状態が続くはずです。井出さん:三菱UFJ信託銀行が新規住宅ローンから撤退、みずほ銀行も地方の住宅ローンから撤退する方針を発表するなど、大手銀行による住宅ローンの撤退・縮小が続いています。低金利ゆえに、住宅ローンはリスクが高いと銀行が認識し始めたのではないでしょうか。そうなると、地方ばかりでなく、価格が下がっている郊外での住宅ローン融資も、審査が厳しくなることもあり得ます。ポイント国内の金融緩和は政府日銀の政策から2018年も継続されると考えられるため、基本的には低金利で推移することが予想される。ただし、国外的な要因として米金利上昇を受ける可能性は否定できない。また、住宅ローンについても、抑制するようにとの金融庁・日銀による口先介入も影響し、とくに郊外・地方で借りにくくなるリスクが存在する。都心の供給増は止まらない!消費税10%の駆け込み需要に期待高橋さん:全体として、マンション・戸建共に新築の供給は緩やかに減少していく流れは今年と同様だと考えています。2019年に予定されている改元と、消費増税が予定通り行われるとすれば、駆け込み需要に向けた商戦を控え、安定的な市場となるのではないでしょうか。供給数は、対2017年比微減か同じくらいだと見ています。石澤さん:2017年1-9月の供給数は0.3%増と昨年並みになりましたが、立地によって相当大きな差が生じています。上昇を続ける東京23区とそれ以外の地域との差が激しい年となりました。東京都内では山手・下町ともに増加はしていますが、その他の地域では、供給戸数も減少し価格も下落しました。全般的に価格が高くなり過ぎたが故に需要が減少していますが、東京都内の売れ行きは悪くありません。井出さん:2018年は、2019年10月に予定されている消費増税に向けた駆け込み需要が重要になります。先般の衆院選で安倍政権の継続が決定したのはプジティブにとらえていいでしょう。18年の後半あたりから消費増税に向けた供給と消費によって、ここ2間年続いた低調な新築マーケットから脱する可能性があります。消費増税が凍結とかになるとまずいですね。ポイント新築供給数は東京都心を中心として対前年比微増が続いているが、これが穏やかに減少する傾向にある。2019年10月の消費増税に向けて、駆け込み需要を見込んだ供給が都心では増加する見込みなものの、郊外・地方では需給ともに減少する見込み。また、増税が凍結された場合、都内でも大きな影響があるだろう。立地や再開発エリアが新築マンション選びの重要なポイントに高橋さん:昨今、都市部における開発分譲用地が少なく、用地の取得が困難なこともあり、郊外型の供給が多くなっています。他方、郊外ショッピングセンター内のテナント出店企業が2016年をピークに激減しており、今後ショッピングセンターそのものの撤退が始まる可能性もでてきました。購入時の環境が今後継続的に存在し続けるのかどうか、購入に際しては「今後変わらないもの」と「今後変わりゆく可能性があるもの」を冷静に見極めて、立地の良し悪しを判断してほしいと思います。石澤さん:東京圏の地価は従来、西高東低の傾向がありましたが、いま、荒川区・北区・足立区といった、相対的に価格水準の低いあたりが伸びています。住宅地としてのイメージは必ずしも良くない地域ですが、住宅価格の高騰により、「名よりも実をとる」行動が増えています。また、来年以降は五輪の関係でインフラ整備の進む湾岸地域は、土地利用の点で開発の余地があるため、供給はこちらが中心となります。「気に入った場所に住む」ことが第一義ではありますが、資産価値の伸びしろから考えれば、こういった地域に目を向けるのも悪くないでしょう。井出さん:東京の都心3区乃至6区は価格が高くなっているので、調整がきくのかがポイントになります。山手線の外周部は、比較的価格がそんなに高くないところが、デベロッパーからすれば、主戦場になると考えています。台東区や墨田区はまだ相対的に安いので、4,000万台の物件も出て来るでしょう。中には山手線や東京駅へ直通でいけるような穴場も出て来ると思います。郊外物件も、幕張や津田沼のタワー、海老名や戸塚の再開発のような物件を、大手は用意しています。ポイント都心は供給自体が地価の高騰により、目につく物件は少なくなっていく傾向にあります。郊外物件も、ショッピングモールの撤退などの事例があり、「この地域の施設には継続性があるのか」といった視点が必要になるでしょう。東京都内北東部の新築物件には、利便性から考えると、「お買い得」な物件が出て来ると見られます。2018年の不動産市況天気図識者3人に2018年の不動産市況を天気図で表してもらった。ポイント物件価格はさらに上昇することはなく引き続き横ばいが続きそう。供給戸数も首都圏を中心に増え続け、住宅ローンの低金利も続くので取得環境は良好とみられる。
2017年12月05日日本の将来を左右する、重要な争点が目白押しだった今回の総選挙。与党の勝利でその公約が進められたら、私たちの暮らしはいったいどうなるのか、識者に聞いた。 「安倍政権下で、物価変動の影響を除いた“実質賃金”は、5%も下落しています。安倍さんは、’19年に消費税を10%にすると言いましたが、そうなるとわれわれの生活は、さらに苦しくなります」 そう予測するのは、経済学者の森永卓郎さんだ。さらに、ファイナンシャルプランナーの八ツ井慶子さんは「高齢者への影響は大きい」と語る。 「第2次安倍政権が始まった翌年’13年以降、高齢者の生活保護受給者は8万人も増加しています。しかも、全生活保護世帯に占める高齢者世帯の割合は、’13年度から5%増えて、’16年度には全体の50%にも達しています」 高齢者の生活保護受給理由は貯金の減少や老齢による収入減が大きい。「この状況下の消費増税はさらに困窮する高齢者が増えかねない」と八ツ井さんは指摘する。また子世代に“非正規労働者”が増え、親の負担がいつまでも続くことの影響も見逃せない。 このような状況を改善するのは容易ではない。というのも、平均貯蓄額は増加しているものの、“貯蓄額ゼロ”世帯も右肩上がりという“格差拡大”を示すデータがあるからだ。前出の森永さんは、さらに高齢者世帯を苦しめる政策が待っていると、こう話す。 「年金財政が苦しいので、年金支給額が70歳に引き上げられる可能性があるんです。その布石を打つように、公務員の定年を65歳に引き上げる法案が、来年の通常国会に提出されるようです」 本来、年金制度を保つためには、将来、保険料を払う子どもの数を増やすべきだ。しかし、そもそも所得が低くて結婚できない人が増えている。森永さんは指摘する。 「平成27年度の国勢調査では、30〜34歳男性非婚率は46.5%にのぼります。これを改善するためには、“同一労働同一賃金”にして、非正規労働者の待遇を改善しないといけない。しかし安倍政権は、正社員の残業代をカットする“ホワイトカラーエグゼンプション”を導入して、逆に正社員の待遇を、非正規に近づけようとしています」 高齢者は年金がなかなかもらえない、若い世代の賃金も伸びない。アベノミクスの行き詰まりも極まった感があるが、安倍首相にはそれを打開する“秘策”があるという。 「安倍さんは、憲法改正発議の目くらまし的な切り札として1年後に、『消費税を5%に引き下げます!』と、また選挙に踏み切るかも。これは経済回復の切り札にもなります。安倍さんのブレーンを務める浜田宏一氏が、雑誌に『減税を含む財政出動をすればアベノミクスの未来は明るい』という論文を発表しているからです」(森永さん) とはいえ、山積する問題を解決しなければ先行きは不安定。老後の生活は自力でなんとかするしかなさそうだ。
2017年10月26日10月10日、衆議院議員選挙が公示され、選挙戦に突入した。だが、「野党分裂!小池代表が『排除』発言!」……そんなニュースばかり飛び込み、選挙にいちばん大事な「どの政党が何を主張しているか」を忘れていませんか?投開票は22日に迫ってきている。そこで、各政党の「公約」をもとに気になる4つの争点の違いをジャーナリストの池上正樹さんが解説してくれた。 「今回の選挙は『3つの柱の対立』をイメージするとわかりやすい。1つめは、連立政権を組む自民党(安倍晋三総裁、332人立候補)と公明党(山口那津男代表、53人立候補)です。アベノミクスの景気回復路線、そして既得権益を守る路線は変わりません。次に、その体質に『NO』を突きつけた希望の党(小池百合子代表、235人立候補)の登場。しがらみを断って取り組むという姿勢は、『男社会を女性が覆す』ことを期待させました」(池上さん・以下同) 3つめは立憲民主党(枝野幸男代表、78人立候補)の“リベラル派”の動きだ。 「憲法改正反対、立憲主義、さらには社会保障を厚くすることで国民の権利を守ると主張している。立憲は、ツイッターのフォロワー数が全政党の中でトップ。リベラル層や無党派層の期待の大きさを表しているともいえます」 次に各党公約の主要4項目の違いを見ていこう。 ■憲法改正 「自民党はそもそも、『憲法改正』が悲願。しかし、9条をどう改正したいのかというのは、党の中でもまとまっていません。そこで、『自衛隊明記』という表現までにとどめた印象があります。災害派遣などでの自衛隊の活躍もあり『いまなら現実的に反対する人は少ないのではないか』とみているのでしょう」 これに対し、連立政権を組む公明党はかなり違う。 「公明党は“平和の党”を自任しています。9条の内容は堅持し、『環境権』など日本国憲法制定時には想定できなかった部分を『加憲(=加える)』だけならば認めるというスタンスで、これは自公で意見が一致していません」 自公と比較して、希望の党はどうだろうか。 「希望は『9条を含めて議論する』としており、『改正したいのか否か』は、現段階ではどちらとも取ることができる。また『知る権利』を明確に定めるという部分は、『情報公開の必要性』を憲法に明記してはどうかという提示です」 「教育無償化」「道州制」などに触れている日本維新の会(松井一郎代表、52人立候補)の改憲への姿勢はーー。 「9条改正の必要性について『国民の生命・財産を守るため』と目的を添えているのは、『北朝鮮などの有事がいつ起こるかわからない』という昨今の現実を鑑みて、万一のため『憲法の条文として明確化』を目指したいのでしょう。これに対し、9条改正には反対だけれど、それ以外の条文の議論はしてもいいというのが、立憲民主党のスタンス。さらに、共産党(志位和夫委員長、243人立候補)は、『現行憲法をすべて守る』という完全護憲派です。しかし、「現実的なのか」という批判もある。党が『自衛隊は違憲』としているため、政権を取ったときには現状と矛盾が生じます」 また、日本のこころ(中野正志代表、2人立候補)は、「保守」の立場で、目玉の政策として「自主憲法の制定」などを公約に掲げている。逆に「改革」の立場の社民党(吉田忠智党首、21人立候補)は、「憲法を変えさせない」スタンスだ。 ■原発 「自民は『再稼働を推進』の立場で現状維持。経済団体が支持基盤のひとつで、原発推進では密接なままです。福島第一原発事故の教訓が生かされていないし、廃炉や核のゴミの蓄積・処理の問題も何も片づいていない」 一方、希望は結党当初「原発ゼロ」をうたい注目された。 「公約ではさらに原発ゼロを『憲法に明記することを目指す』とまで踏み込みました。しかし『再稼働』は前提条件つきで『容認』とした。“両にらみ”のようで、小池代表にとっては苦肉の策であったのではないでしょうか。維新も『部分的には再稼働容認』としています」 これに対し立憲は「大きく踏み込んだ印象」だという。 「『原発ゼロ基本法』の制定をうたっています。『安全・安心』の視点からは評価できる。民進党時代のように支持団体を意識せず、『再稼働NO』と言えるようになったのでしょう。共産党は原発は『すべてNO』。政治決断でいますぐ止めろというスタンスです。これは政権を取られたら実現できる公約かもしれません」 ■消費税 「’19年に予定どおり10%に引き上げる、と公約を掲げているのは自公。あとは『凍結』や『中止』です。しかし立憲の『ただちに引き上げはできない』という表現は、いつかは上げるという見方もできる。共産党は『なにがなんでも増税はしない』という徹底した立場です」 ■子育て 「教育費などの『無償化』はどの政党もうたっています。しかし、その財源を自民は『’19年増税後の消費税の税収』と考えています。連立を組む公明以外の各党は、財源をどこから持ってくるのか、そしてその確実性についても答える義務があるでしょう」 “混乱ムード”ただよう今だからこそ、冷静に各党の政策に耳を傾けたいものだ。
2017年10月18日「私が街宣で演説しているときに歌を歌うと、子どもたちが集まってきて、『うまい〜、すごい〜!』って、尊敬のまなざしで言うんです(笑)。『街宣車になんでも書いていいよ』と言うと、“パティシエになりたい”なんて将来の夢を書き込んだり。こういうのを見ていると、子どもたちの未来にツケを回す政治を変えたいと、強く思うんです」 こう話すのは、国民的ダンス&ボーカルグループEXILEの『SUMMER TIME LOVE』など、楽曲を提供している作曲家の真白リョウさん(40)。10月22日投開票の衆議院選挙で、神奈川11区(横須賀市・三浦市)から出馬予定の希望の党新人候補者だ。 そんな真白さんが目指すのは、「普通に働いていれば、子どもに教育を受けさせることができ、老後の心配なく生きられた“一億総中流社会”のころの日本」だという。 「私が音大に行けたのは、親が経済成長の恩恵を受けていた時代だから。でも、いまや貯金のない世帯は3世帯に1世帯、子どもの貧困は6人に1人。しかも、安倍政権になってから“格差”は開くばかり。非正規雇用は増え続け、40%近くなっています。なのに安倍首相は、弱者置き去りで“日本を取り戻す”とか聞こえのいいことばかり。けど、安倍首相が取り戻したいのは、基本的人権や表現の自由が奪われ、個人が国家のために命を捧げなくてはならなかった明治憲法時代の日本です。最初の自民党改憲草案を読めば明らかだし、平成の治安維持法と呼ばれる共謀罪も強行採決してしまいました」(真白さん・以下同) 真白さんに転機が訪れたのは、’14年。真白さんのブログを読んだ森ゆうこ参議院議員の支援者からの勧めで、小沢一郎政治塾へ入塾したことになったのだ。2年間、政治塾でみっちり学んだ真白さんに、小沢一郎氏から声がかかる。 「’16年7月の参議院選挙前でした。小沢さんから、『真白くん、立候補しないか?』と。でも、すぐに断りました。当時はまだ、音楽や執筆などを通じて言いたいことを伝える、メッセンジャーになろうと思っていましたから」 ところが、’16年10月、再び真白さんに白羽の矢が立つ。「次の衆議院選挙の候補者に」と、再び小沢氏から出馬要請があったのだ。 「『君は、世の中をよくするために、さまざまな発信をしているけれど、みずから選挙に出ることが、いちばんの発信になるんじゃないか』と小沢さんから言われたんです。安倍首相は、表現の自由を脅かしかねない“特定秘密保護法”も強行採決したし、このままだと大好きな歌も自由に歌えなくなるかも。そう考えたら、政治家になって変えるしかないと思いました」 出馬を決めた真白さんは、当時、始動したばかりだったバンドのメンバーから音楽活動の休止と、出馬への理解を得た。’16年の末には、地元の大阪府寝屋川市の実家に戻り、政治活動をスタートさせる。そんな真白さんが、この10カ月間、選挙区を回って衝撃を受けたのは、想像以上に“格差”が広がっているということだった。 「とくに大阪は、生活保護の受給率が高く、貧困世帯が多い。地元の寝屋川市でも、老朽化した文化住宅があちこちにあって、子育て中のご夫婦も住んでおられます。非正規雇用者が多く、夫婦共働きでも生活が苦しいのです」 安倍首相は、“女性が輝く社会”を標榜するが、「女性が働かざるをえない状況に追い込まれているだけ」というのが、真白さんの実感だ。 「アベノミクスで私たちの生活がよくなった実感はないですよね。にもかかわらず安倍首相は、貧困な人ほど負担が重くなる消費税を10%に上げようとしています。そんなことをする前に、利益が大幅に出ている企業や、富裕高齢層への累進税率を抜本的に見直し、金融所得の課税も強化して福祉や教育費に充てるべきです。首相は、とってつけたように、消費税増税分を子どもの教育費に回すと言いだしましたが、’12年の衆議院選のときも、“TPP反対”と言っていたのに、選挙に勝ったとたん覆しました。国民を平気で裏切る政治家に、これ以上任せていられません」 野党再編が進み、一寸先は闇の政局。だが、真白さんは、「将来に不安を抱えている弱者の声を、政治に反映できるまで、あきらめない」と言う。 「とにかく、真面目にコツコツ働いている人が、老後の不安なく生きられる社会にしたいんです」
2017年10月10日《きみがカップ焼きそばを作ろうとしている事実について、僕は何も興味を持っていないし、何かを言う権利もない。エレベーターの階数表示を眺めるように、ただ見ているだけだ。 勝手に液体ソースとかやくを取り出せばいいし、容器にお湯をいれて五分待てばいい。その間、きみが何をしようと自由だ。少なくとも、何もしない時間がそこに存在している。好むと好まざるにかかわらず。 読みかけの本を開いてもいいし、買ったばかりのレコードを聞いてもいい。同居人の退屈な話に耳を傾けたっていい。それも悪くない選択だ。結局のところ、五分待てばいいのだ。それ以上でもそれ以下でもない。 ただ、一つだけ確実に言えることがある。 完璧な湯切りは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。》 発売から2カ月で10万部を突破したベストセラー『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)。冒頭の一文は“村上春樹風”の「作り方」。同書には、さまざまな文豪たちの文体で、100本もの「カップ焼きそばの作り方」が収録されている。読むと思わず「クスッ」と笑ってしまうものばかり。 こんな罰当たり(?)な“文体模倣”本を書いたのは、ライター・神田桂一さん(38)と会社員・菊池良さん(29)。2人は村上春樹の大ファン。昨年、菊池さんがツイッターで投稿した“村上春樹風の焼きそばの作り方”が3万人にリツイートされたことがきっかけで、2人で分担して100人分のパロディを書き上げた。 神田さんが現代文学、菊池さんが近代文学の作家を主に担当したが、もちろんこれまで読んだことのない作家も。 「僕は、その作家が使う一人称と語尾、そして段落のリズムを意識します。あと、行替えをしない作家もいるので、そうした“文章の見た目”も重視します」(菊池さん) 「文章でよく出てくるフレーズを“パターン”として拾っていきます。町田康さんだったら、よくダジャレを入れてくるとか……」(神田さん) じつは今回、神田さんと菊池さんが本誌のために特別版を書いてくれることに!それではご覧あれ。「もしビートたけしがカップ焼きそばの作り方を書いたら」ーー。 《(1)笑っちゃうよな、何が「カップ焼きそば」だっての。だいたいあれって「カップ」なのかよ。四角い箱に入ってるだけだよな。じゃあ、「ウサギ小屋」って言われた四角い狭い家に住んでいる人は「カップ人間」なのかよ。失礼しちゃうよな。安倍さんのアベノミクスで何とかしてほしいぜ。 (2)まー、オイラたち浅草芸人はこういうインスタント食品にだいぶお世話になったけどね。足を向けて寝られないっての。これ読んでいるあなたがどんな境遇かは知らないけどさ。ドバイの石油王かもしれないしな。 (3)ほんと、熱湯を入れて三分待つだけで完成するって、どうかしているぜ。料理番組の「〜したものがこちらになります」じゃねェんだからさ。昔の人が見たら魔法にしか見えねェぜ。オイラもそういう手品師になって発展途上国を巡ってみようかな。食糧問題の解決にもなって、一石二鳥だぜ。ま、今どき騙されねェだろうけどな。少数民族のほうがよっぽどテクノロジーを駆使しているっての。 (4)まァ、せいぜい湯切りに気をつけて作れよな。失敗したら最悪だっての。》 出来栄えの自信のほどは? 「前から、たけしさんの書いた本が好きなのでわりと書きやすかったです」(菊池さん) “たけし文体”の特徴はやはり語尾だそうで、政治家の名前をストレートに出す、自分の生い立ちと絡めて話すなどの特徴があるそうだ。
2017年09月01日皆さんは“限定正社員”という働き方をご存知ですか?アベノミクスの経済成長戦略の一環として比較的最近スタートした制度のため、具体的に“限定正社員”がどういうものか分からないという人も少なくないと思います。限定正社員には“職種限定正社員”と“地域限定正社員”などの種類がありますが、今回は地域限定正社員(エリア限定正社員)についてお話ししていきます。●地域限定正社員とは地域限定正社員について知る前に、限定正社員がどのような背景の中でスタートしたのかを知っておきましょう。今、日本では労働者の3割以上が“非正規労働者”として働いています。非正規労働者は基本的に正社員よりも給与や待遇が低いことが多く、以前は同じ職場で何年働こうが正社員になれない人も大勢いました。しかし、そのことが問題視されるようになり、2013年に労働契約法が改正され、同じ職場で5年以上働いている非正規労働者は申し出をすることで無期契約に切り替えることができるようになりました。ただ、5年以上働いた者を全員正社員にすることは、企業にとってコストのかかることであり、場合によっては経営を圧迫する可能性もあります。そこで検討されたのが、正社員と非正規労働者の“中間”とも言える限定社員なのです。限定社員は無期契約で雇用の安定が得られる 一方、職種や働く地域が限定される等の条件を背負います。地域限定社員の場合は“働く地域”が限定された正社員となります。反対に企業は、無期契約を結ぶ代わりに普通の正社員で雇うよりも人的コストを低く抑えることができます。●地域限定正社員になるメリット●(1)子育てしながら働きやすい地域限定社員になると、転勤になる可能性がないので住み慣れた地域でずっと働き続けることになります。そのため、子育てをしながら働いている人でも、引越しや単身赴任などで家族に負担をかけることなく 生活することができます。●(2)解雇されにくい地域限定正社員に限りませんが、限定正社員は基本的に“正社員”という扱いになります。そのため、企業で特別な解雇相当事由が設定されていない限りは、普通の正社員よりも解雇されやすいということはありません。●地域限定正社員になるデメリット●(1)働いている支社や支店が潰れたら解雇になる地域限定正社員は原則的に“無期契約”となりますが、働ける地域が限定されているため、勤務している支社や支店が潰れたら同時に解雇となる 恐れがあります。●(2)人間関係に悩む可能性も自分が働ける地域に一つしか勤務地がない場合、ずっと同じメンバーで働き続ける可能性があります。そのため、一度人間関係をこじらせてしまうと、転勤や配置転換などで逃げることができずに人間関係に悩まされる こともあります。●子育てとキャリアを両立させたい人にオススメかも子育てをきっかけに仕事を辞めたり、正社員からパート社員になったという人も少なくありません。無職期間ができたことやパート社員になったことでキャリアを継続するのが難しくなったという人もいるでしょう。地域限定正社員の場合は転勤の可能性がないため、安心して働くことができ、かつ正社員としてキャリアを継続させることができます。子育てとキャリアで迷っている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。【参考リンク】・勤務地などを限定した「多用な正社員」の円滑な導入・運用に向けて | 厚生労働省(PDF)()●文/パピマミ編集部●モデル/倉本麻貴(和くん)
2017年06月18日「先日、新聞各紙で、’12年12月に始まった『アベノミクス景気』が戦後3位の長さになった、と報じられました。景気は緩やかながら、52カ月間も回復局面にあるといいます。『どこの国の話?』と首をかしげた人も多いでしょう」 そう話すのは、経済ジャーナリストの荻原博子さん。戦後3位とは、あのバブル期を抜く長さということ!本当に経済はよくなっているのだろうか。私たちの実感とはかけ離れた数字の背景について、荻原さんが解説してくれた。 「この景気回復は、震災復興などの公共事業と、円安による企業収益の増加に支えられています。利益を得ているのは企業ですが、その利益を設備投資や人件費アップに使わず、もうけをため込む『内部留保』ばかり増やしています。’15年度の内部留保は、企業全体で前年より約23兆円増えて約378兆円。アベノミクス景気の4年間で、約80兆円も増えています(財務省)」 反対に、「家計は厳しくなるいっぽうです」と荻原さんは語る。 「収入はほとんど増えないのに社会保険料などの負担が増え、結果的に手取り額は減っています。実際に使った生活費を示す今年2月の『消費支出』は、前年より3.8%減って約26万円。12カ月連続の減少です(総務省・2人以上の世帯)。つまり、アベノミクスの恩恵を受けたのは企業や一部の富裕層だけ。ほか大勢の一般庶民は、さらに厳しい生活を強いられ、『二極化』が進みました。日本は、ますます格差社会になってしまったのです」 アベノミクス景気は’20年の東京オリンピックで終わり、その後には大不況がくると予想する専門家も。「今でさえ厳しい家計が、もっと困窮するかもしれません」と荻原さんはいう。 「私たちは、今のうちに家計をスリム化して、余計なお金は使わない、リスクのある投資はしない−−つまり今後も『借金減らして、現金増やせ』でいくしかないでしょう」
2017年04月24日意外と知らない社会的なテーマについて、ジャーナリストの堀潤さんが解説する連載「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは、「アベノミクス」です。* **9月の自民党総裁選挙の前に、「アベノミクス」についておさらいしてみましょうか。アベノミクスとは、2012年12月第2次安倍内閣が発足したときに掲げた経済政策で、「安倍」と「エコノミクス(経済学)」をかけた造語です。1980年代にアメリカのレーガン大統領が打ち出した政策、「レーガノミクス」になぞらえてつけられました。当時の日本の最大の課題は、デフレから抜け出すことでした。「デフレ」とは物の値段が下がること。一見よいことのように思われますが、物の値段が下がると企業の利益は当然減ります。すると企業はコストカットを迫られ、社員の給料を下げる。お給料が減れば人々の使えるお金は減り、安いものしか買えなくなる。その結果、安いものしか売れなくなり、さらに企業は値を下げる……というふうに悪循環が続いてしまうんですね。前年の春に東日本大震災が起こり、日本全体を奮い立たせなければいけなかった時期。安倍政権は「アベノミクスの3本の矢」と銘打って3つの政策を打ち出したんです。1つ目は「金融緩和」。政府と日本銀行でお金をバンバン市場に流しました。市場にお金が増えると、経済活動が活発になります。2つ目は「財政政策」。公共事業を増やして、政府で仕事を作り、失業者の数を減らそうとしました。道路を直したり、津波の防波堤を造ったり、古いビルを改築したり。3つ目は「成長戦略」。将来新しい産業を展開するために、日本が強みにしている科学技術や独自の文化に対して積極的に投資をして、育てようという戦略です。これらの政策の結果、株価は上がり失業率は下がりました。賃金も少しずつ上がってきました。ただ、3本目の矢の「成長戦略」はまだ効果がはっきりしていません。アベノミクスは成功かというと、一概にそうとは言えないんです。企業の利益は上がっても社員の賃金に反映されてなかったり。株価が上がって投資家たちは大喜びなんですが、投資をしていない人には無関係。成功という人、失敗という人、意見が分かれているんです。◇ほり・じゅんジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN※『anan』2015年9月2日号より。写真・中島慶子文・黒瀬朋子
2015年09月01日日本生命保険はこのほど、「夏のボーナス」に関するアンケート調査の結果を発表した。それによると、今夏のボーナスに対して、アベノミクスの効果を「感じない」と答えた人は74.1%に上った。○平均支給額、男性は増加、女性は減少夏のボーナスの平均支給額は前年比0.1%増の59万4,000円と微増。男女別に見ると、男性は68万7,000円で前年より1.8%増加したのに対し、女性は35万円で前年より2.8%減少した。アベノミクスの効果について、「感じない」と答えた割合は74.1%。反対に「感じる」は10.6%にとどまった。ボーナスが前年より「増えた」人は21.7%。他方、「減った」は16.4%、「変わらない」は61.9%となった。ボーナスの使い道については、「預貯金」が29.7%で最も多かったものの、前年と比べて1.6ポイント減少した。以下、「生活費の補てん」が21.9%。「ローンの返済」が14.1%、「教育費」が8.1%と続いた。来年の賃上げに期待しているかと尋ねたところ、「期待しない」が54.9%、「期待する」が30.4%。ボーナスの支給額別に見ると、160万~200万円未満では「期待する」と答えた割合の方が高くなるなど、支給額により異なる結果となった。調査期間は2015年6月1~28日、調査方法はインターネット、有効回答は1万4,541人。
2015年07月06日企業向けSNS「Connect」を提供するビートコミュニケーションは1月14日、「アベノミクスが掲げる女性の活躍支援」に関する元ライブドア社長 平松 庚三氏のインタビューをブログで公開した。ビートコミュニケーションは平松氏に「女性活用における日本企業とアメリカ企業の違い」について尋ねた。平松氏は現在、小僧comの代表取締役会長 兼 社長として事業を行っている。同氏によると、アメリカでは個人の能力を基準としてポジションの判断を行っているため、公平な制度や人事体系のもと、女性の登用もスムーズにできているという。「それに対して日本企業は、年功序列や過去の慣習に縛られている側面がある。これでは、オポチュニティ(機会)の公平、つまり年齢や学歴に関係ない能力と実力がある人はだれでもチャレンジできる当たり前のシステムができていないように思う」(平松氏)その一方で、男性と女性はイコール(公平)にはなれないと指摘。これは能力という意味ではなく「役割」という点で絶対に同一に扱えないのだという。それは女性が、男性にはない「子供を産み、授乳を行う」という点にあるという。「出産と育児において、男性は女性の役割を『補助』することはできても、その役割を担うことはできません。女性の代わりをするなんて絶対にできない」(平松氏)そのためにも、優秀な女性を登用し、ポジションを引き上げていくためには"公平かつ不公平な体制づくり"が必要だと平松氏。「女性をサポートしなければならない。時短勤務や週4日勤務など色々あると思うのですが、企業が女性をサポートし、フォローする仕組みを作らないと女性の活躍は増えません。企業が女性に投資することで、女性のパワーが会社に貢献する効果が生まれます」(平松氏)政府としてこうした女性活用の後押しを行っているが、それだけではダメだと平松氏は最後に語った。「安倍総理も女性の活用支援に力を入れると言っていますが、そういった政府の動きを待っているだけではこれまで同様に女性の活用が遅れていくでしょう。監督官庁から言われたり、組合から言われたので動くというものではなく、企業が能動的・戦略的に考えて実行することが重要で、それを実現させるのが経営者の責務です」(平松氏)
2015年01月14日先月、安倍首相は衆議院の解散を表明し、総選挙が今月14日に行なわれることになりました。今回は、選挙の争点とされる「アベノミクス」がどのような経済政策か、延期となった消費税率引き上げとあわせて、改めて振り返ってみます。○アベノミクスアベノミクスとは、デフレ脱却と日本経済の再生を目標とした安倍首相の経済財政政策のことで、安倍首相の「アベ」に「エコノミクス」(経済)を合わせて、アベノミクスと名付けられました。日本ではバブル崩壊後の1990年代以降、「失われた20年」と評されるように、低い経済成長とデフレ(デフレーション)が続いていました。デフレとは、供給に対して需要が不足し、物価が継続的に低下していく経済状態のことで、企業の収益や個人の所得が減少し、個人が消費を抑え、景気が悪化する傾向があります。アベノミクスでは、このデフレからの早期脱却をめざし、「三本の矢」と称した3つの経済財政政策に一体的に取り組むことを掲げています。第一の矢とされる「大胆な金融政策」は、日本銀行の大規模な金融緩和により、世の中に出回るお金の量を増やすことで景気を刺激するというものです。この緩和で円安傾向が強まり、輸出企業を中心に日本企業の収益が増加し、株価の上昇につながりました。第二の矢の「機動的な財政政策」では、政府が大規模な財政出動を通じて、インフラ整備などの公共事業を積極的に行なうことで需要が生まれ、100万人以上の雇用者数増加などにつながりました。さらに、第三の矢の「民間投資を喚起する成長戦略」により、持続的な経済成長の実現をめざしています。具体的には、企業の収益力の向上を金融市場から支援する政策や、ビジネスを展開するうえで障害となっている規制の緩和などを行ない、企業活動を後押しすることで、経済効果につなげようというものです。しかしながら、市場で注目を集める法人税率の大幅な引き下げは議論中の段階にあるなど、成長戦略の実施は他の政策と比較すると遅れている傾向がみられます。特に農業や医療などの分野では実現した政策が少なく、市場では、こうした分野における規制緩和に今後どこまで踏み込んでいけるか、注目されているようです。ステップアップ日銀が2013年4月に打ち出した「量的・質的金融緩和」では、長期国債などの保有額を大幅に増やすだけでなく、買い入れる国債の残存期間をより長期のものにするなど、従来とは量・質ともに次元の異なる金融緩和が掲げられました。また、日銀はこの緩和をさらに拡大することを、今年10月末に決定しました。○消費税率引き上げ今年11月、安倍首相は消費税率の引き上げを来年10月から2017年4月へ延期したことについて、国民に適切な決断であったかを問うため、衆議院の解散を表明しました。近年、日本では高齢化が進み、社会保障費が増加傾向にあることなどから、財政赤字が拡大しています。政府は、消費税率の引き上げにより、社会保障の安定した財源を確保し、将来的には財政健全化をめざす必要があるとしています。しかしながら、日本の7-9月期GDPが予想外のマイナス成長となったことなどを受け、政府は増税による景気の腰折れを避けるために、消費税率引き上げの延期を決定しました。安倍首相は、予定通りの増税で個人消費が再び押し下げられると、デフレからの脱却が危うくなるとし、政府は景気対策により個人消費を回復させたうえで、自然な税収増加による財政再建をめざすものとみられます。市場では、遅れが見られる日本の景気回復を助けるものとして、この決定が短期的には好感されているようです。ただし、延期により財政再建が遅れる懸念(将来的に財政破たんとなるリスク)が強まれば、債券市場での急激な金利上昇などにつながる恐れがあるため、長期的には市場にとってマイナスとなる可能性があります。安倍政権が今後も続く場合、法人税率引き下げや公共事業などの景気対策で財政負担の増大が見込まれる一方、財政再建のために財政支出の内容を見直す必要もあるとされており、アベノミクスによる経済成長と、財政再建が両立できるか注目されています。ステップアップ日本ではプライマリーバランス(基礎的財政収支)がマイナス(赤字)となる状態が続いています。これは、社会保障などの経費を、毎年の税収だけでどれだけまかなっているかを示す指標です。政府は、プライマリーバランスを2020年度に黒字化することを、国際的な公約として掲げています。(2014年12月3日 日興アセットマネジメント作成)●日興アセットマネジメントが提供する、投資信託・投資・経済の専門用語をテーマで学べる「語句よみ」からの転載です。→「語句よみ」※1 当資料は、日興アセットマネジメントが経済一般・関連用語についてお伝えすることなどを目的として作成した資料であり、特定ファンドの勧誘資料ではありません。また、当資料に掲載する内容は、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。※2 投資信託は、値動きのある資産(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことがあります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付目論見書)をご覧ください。
2014年12月04日安倍内閣が推し進める経済政策の“アベノミクス”。円安が進んで、株価も上がっているけれど、本当に私たちの生活は良くなるだろうか? お買い物なら、国産の家電製品を選ぶと経済的波及効果が高いのでオススメ! 美容家電に目を向けて(森永さん)夏のボーナス時期が近付く今、経済評論家の森永卓郎さんに伺った。「『アベノミクスは期待先行で、実体経済は良くなっていない』というエコノミストもいますが、それは真っ赤なウソ。実体経済も相当上向いていますよ」(森永さん)特に、アベノミクスの三本柱の一つである大胆な金融緩和による効果はかなり大きいとのこと。「リーマンショック直後から世界各国は金融緩和を進めて、EUはお金の量を2倍、アメリカは3倍に増やしたのに、日本だけが全く増やさなかった。その結果、円の価値が上がって、30%も円高が進んだんです。そのせいで大手家電メーカーや自動車メーカーが空前の大赤字に転落したわけですが、それもここ最近の円安によって、軒並み黒字に回復しています。トヨタなんて、今年度は過去最高の利益になるかもしれないと言っているほどです」■企業が儲かっているということは、私たちのお給料も上がるということ? 「残念ながら賃金が上がるのは、もう少し先ですね。皆さんのお給料が上がるのは、おそらく来年からになるでしょう。ただ、ボーナスはすぐに増えますよ。電機や自動車、建設・不動産、証券などの業界では、今年夏のボーナスはかなり上がる見通しになっています」(森永さん)これは働く女性たちにとってもうれしい話。せっかくなら、もらったボーナスで上向き始めた日本経済をさらに後押ししたいもの。経済効果の高いお金の使い道って、どんなものがあるのだろうか。「買い物による経済効果は、周囲への波及効果で決まります。例えば誰かがレストランで食事をしたら、そのお店はもちろん、材料の仕入れ先にもお金が回りますよね。ですから、日本経済に貢献したいなら、仕入れによる波及効果が高い製品を買うといいですよ。」 >>続きを読む
2013年06月19日