現在施設に入所している80代後半の父。2010年に初期のアルツハイマー型認知症と診断され要介護認定を受け、担当のケアマネジャーさんが決定し、デイサービス(利用者が自宅で自立した日常生活を送れるよう、食事や入浴などの支援が中心の介護サービス)の利用を開始しました。それから数年後、足腰が丈夫だった父の身に今後歩行が難しくなるかもしれないという事態が生じました。腰から足にかけてのしびれと痛みが強くなった父はアルツハイマー型認知症(脳の神経細胞が減り、脳が小さく萎縮することで症状が現れる認知症)と診断される前から首から肩、腰の痛みを訴え、近所の整形外科に通っていました。首と肩の痛みは元々の姿勢の悪さから、腰については2008年ごろに交通事故に遭い腰と足を強打した際に自己判断で治療を中断しており、その後遺症ではないかと家族は考えていました。幸いそのころはまだ足腰はしっかりしており、自力での歩行が可能で日常生活に問題ありませんでした。しかしアルツハイマー型認知症の診断から2年が過ぎた2012年ごろから、腰から足にかけて痛みが次第に強くなってきた様子で、同時にしびれも訴えるようになりました。それまでは病院で処方された湿布や飲み薬、年に数回ペインクリニック(神経ブロック:一時的あるいは長期間にわたり神経機能を停止させ痛みを軽減することを目的とした治療をおこなうクリニック)でブロック注射を受けて対処していましたが、それだけでは効果が薄くなってきたようです。何より困ったのが、エレベーターのないマンションの3階に自宅があることでした。階段の昇り降りがつらいようで、次第に生活に支障が出てきました。主たる介護者である母が「このまま歩けなくなって寝たきりになってしまったらどうしよう」という不安を感じ通院中の整形外科の医師に相談したところ、「一度精密検査を受けたほうが良いだろう」と総合病院へ紹介状を書いてくれることになりました。総合病院で検査、手術を決意総合病院へ行きMRIを受けたところ「画像で見た限りでは脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう:脊柱管と呼ばれる背骨の中にある神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫される病気)だと思われます。対応はブロック注射で痛みを抑えるか手術となります」とのことでした。手術という言葉におびえた父は「手術は絶対に嫌だ!」と言い張り、数カ月様子を見ることとなりました。今にして思うと、そのころから父の様子が少しずつ変わっていたのです。体が思うように動かない上に痛みもあるためか、徐々に気力が低下し、表情が乏しくなり外へ出ようとしなくなりました。喜んで通っていたデイサービスに行くことも拒むようにもなり、要介護認定を受けて以来担当してくださっているケアマネジャーさんも抑うつ状態であることを心配し、少しでも前向きになってもらいたいと利用するサービスの変更などの対応を考えてくださいました。2013年8月、このままでは本当に動けなくなってしまうと手術を前提に検査入院をしました。その結果、脊柱管が細く狭くなる狭窄(きょうさく)は4カ所あり、全身麻酔での手術をおこなうことになりました。病院側からは、認知症がある場合、手術直後に注意や理解、記憶などの機能が急性に低下するせん妄状態となり一時的ではあるものの認知症の状態が悪化する可能性が高いこと、また手術をしたからといって必ず痛みがなくなるとは限らないとのことについて説明がありました。手術後の経過2014年3月に手術を受けました。手術後は、傷の痛みとせん妄による興奮状態で大声を出す、看護師さんに暴言を吐くなどの様子が見られヒヤヒヤしました。幸い手術は成功し、時々腰にしびれを感じることはあるけれど足にかけての痛みはかなり減ったとのことで2週間後に退院しました。退院後は父のほうから「歩いてみたい」と言い始め、つえを突きながら少しずつ歩行練習を始めました。また手術前にケアマネジャーさんより「今後使える介護サービスを増やすことを考え、要介護度の見直しをしてみましょう」と言われおり、再度要介護認定を受け、要介護度が要支援1から要介護1となりました。それまでは、リハビリがメインとなる半日型のデイサービスを週2回利用していましたが、使用できる単位数が増えたので、入浴介助もしてくれレクリエーションも充実している1日型のデイサービスを追加で週1回利用することになりました。実はこのころ、自宅での入浴が徐々に難しくなってきており、母の負担を減らす目的もありました。その後、体の状態が安定してくるにつれ精神状態も安定してきたことが目に見えてわかり、家族はもちろん父自身もホッとしたようでした。まとめ当時は、父の体のことが心配なのはもちろんですが、日に日に気力を失っていく姿を見ることが何よりつらかったです。体の痛みや自由が利かないことがどれほど精神に影響を与えるかを改めて考えさせられた出来事でした。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。監修/菊池大和先生(医療法人ONEきくち総合診療クリニック理事長・院長)地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。ウーマンカレンダー/シニアカレンダー編集室著者/ブルームーン(53歳)30代でシングルマザーになり、50代で再婚。
2024年04月02日アルツハイマー型認知症になった実母のことや、アラフィフ主婦の日常をあれこれ書き連ねるワフウフさん。自身の体験をマンガにしています。母・あーちゃんの通院前日。ワフウフさんは、いつものように確認メールを送りますが、メールの最後に「朝一番で行こうね」と書いたところ、あーちゃんからすぐに電話がかかってきました。「朝一番って何時……?」と心細そうな声で聞かれ、ゆっくりと説明しましたが、もしかして時間の感覚が狂ってしまったのかも? と、心配になったワフウフさんでした。ようやく実家に行き、ずっと気になっていた押入れチェックができたワフウフさん姉妹。そこには「食事」と言い張る菓子パンや、賞味期限切れの食べ物など、いろいろと衝撃的なものが隠されていました……。しかし、電子レンジは問題なく使えていたため、今後は宅配食も選択肢に入れられそうだとわかって安心したのでした。 記憶も自覚もない… 次回の通院は、付き添いの都合がつかないからひとりで行ってほしいと伝えると……。 あーちゃんは、自信満々に大丈夫だと言いました。 姉・なーにゃんが心配する理由を伝えても……。 本気でわかっていない様子。 仕方がないので、注射に来るのを忘れたり、行っても「先週来てないわ!」って言ったり、 毎回のように「注射は毎週なの?」って聞いたりすることを伝えると……。 記憶も自覚もないようで、とてもショックを受けていました。 なんとかひとりでの通院をクリアした次の週。 ずっとボケーっとしていて、無気力に見えるあーちゃん。 1週間もしないうちにこんなにも変化してしまうのかと、認知症の怖さを感じてしまうのでした。 姉とともに実家をチェックした翌日の通院日。あーちゃんは時間通りに現れました。そして糖尿病の数値も、本当に少しだけですが、先月より減っていてひと安心。 そして、次の通院日は私も姉も予定があって付き添いができないため、ひとりで行ってほしいとあーちゃんに話したところ「私はひとりでも全然大丈夫なのよ!」と自信満々。でも「注射に来るのを忘れたり、来たこと自体を忘れたり、毎回のように注射は毎週必要かと確認しているから心配だ」と告げると、自分の発言や行動をまったく覚えていないようで、ショックを受けていました……。 結局、無事にひとりでの通院を終えたあーちゃんでしたが、次の通院で姉が会ったときは、なんだかいつもよりもボーッとしていて無気力に見えたそう。それだけ、毎週娘と通院することが刺激になっていたということなのかもしれませんが、1週間抜けただけでそんなに変わってしまうなんて、ただ進んでいくだけの認知症の怖さを感じました。 --------------ただ進行するだけで戻ることは難しい認知症……。毎週繰り返している通院の付き添いが刺激を与えて、進行を緩やかにしていたのかもしれませんね。たった1週間会わなかっただけでハッキリとわかるくらいの変化が出てしまうのは、家族としてもショックですよね。 ※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。 シニアカレンダー編集部では、自宅介護や老々介護、みとりなど介護に関わる人やシニア世代のお悩みを解決する記事を配信中。介護者やシニア世代の毎日がハッピーになりますように! 著者:マンガ家・イラストレーター ワフウフ
2024年03月22日現在施設に入所している80代後半の父は、75歳のときに体調を崩しMRI検査を受けたことをきっかけに初期のアルツハイマー型認知症と診断されました。あまりに唐突なことで今ひとつ現実を受け入れられなかった私たち家族でしたが、今後のことを考えるとしなければならないことが山積みでした。服薬開始と要介護認定まず、「ごく初期の段階なので今でしたら薬でアルツハイマーの進行を遅らせることも可能かと思われます。どうされますか?」と医師から提案があり服薬することとなりました。また、そのころ父は「デイサービス(食事や入浴など日常生活上の支援や生活機能向上のための機能訓練などを受けられる施設)へ行きたい」と言うようになりました。理由はそれまでお付き合いのあった近所の方たちが通われていることを知ったからです。定年後は自治会などの活動を通して人付き合いも頻繁にありましたが、数年前より一緒に活動されていた方たちの高齢化もあり、段々とそれらの活動から遠のき、家に引きこもるようになっていました。それが寂しかったのか、父もデイサービスに行けば友人ができるかもと期待をしていたようです。医師からも「他人と関わりを持ったり、適度な刺激を受けたりすることは認知症の方には良いことですよ」とアドバイスをいただき、メインの介護者となる母にも父をデイサービスに通わせるという方向で話を進めました。デイサービスを利用するには要介護認定を受け、ケアマネジャー(居宅支援事業所:要介護者の在宅介護に関する相談や計画、連絡・調整を総合的に引き受ける事業所)を決定し、ケアプランを作成してもらう必要があります。そこで、住所地を管轄する地域包括支援センター(高齢者と高齢者を支える人をサポートする拠点として設置された施設)へ相談に行き、要介護認定を受けられるかどうかを決定するために認定審査を受けることとなりました。ケアマネジャー決定!?数日後、市から派遣された調査員の方が認定審査に来て、それから約1カ月後に市から介護保険証が届き、「要支援1」の判定が出ました。次にケアマネジャー(居宅支援事業所)を決めることとなるのですが、ここで父が周囲を驚かせる行動に出たのです。介護認定さえ出ればデイサービスに行けると思っており、旧知の方が多く通っている近所の介護施設に「私をここのデイサービスに通わせてほしい」とひとりで直談判に行ってしまったのでした。後に知ったことですが、その施設で父のことを知る近所の方が働かれていて、幸いその方が窓口で騒いでいる父に気付き話を聞いてくださったそうです。その方は、デイサービスを利用するにはケアマネジャー(居宅介護事業所)を決める必要があることを説明してくださり、「今すぐ通いたい」の一点張りで話の通じない父をなだめて、担当者に話をつなげてくださったのでした。その後、担当の方から母宛てに電話があり「こちらの施設には居宅介護支援事業所もありますので、よろしければケアマネジャーを引き受けさせていただくことも可能です。デイサービスの利用については、ケアマネジャーが決まり次第、一度ご本人様ご家族様とお会いしてから調整させていただくという方向でいかがでしょうか」とのお話がありました。いざ! デイサービスへこのような経緯で、担当のケアマネジャーさんが決まりました。デイサービスの利用に向けてプランを作成していただく際に「Yさん(父の名前)の場合、身体的には自立(介助の必要がない)、認知症もまだ初期の段階ですよね。私どものデイサービスは介護度の高い方が多く通われていて、会話を楽しむとか、友人作りとなると難しいかもしれません。よろしければ他のデイサービス事業所を検討してみませんか?」とのお話がありました。しかし「いや、俺はそちらのデイサービスに行きたいんだ」とまたしても一点張りの父。ケアマネジャーさんも一度言いだしたら聞かない父の性格をすぐに見抜き「それでは、お試しに週1回通ってみましょうか」となりました。が、結局3カ月後には父の意思により利用終了となりました。ケアマネジャーさんが言われた通り、自分が望むようなコミュニケーションを取れる方との出会いは難しかったようです。「それでしたら今度は身体機能を維持するためにリハビリ中心の半日型のデイサービスに通ってみませんか?」と提案していただき、そちらは要介護度の低い方が多く、利用者同士の関わりもあり、体を動かすことが好きな父にとって居心地がよかったようで数年間お世話になりました。まとめ認知症と診断されてから介護サービスにつながるまでに、いくつもの手続きがあったり、さまざまな職種の方と会ったり、用語、介護保険の制度を理解していかなければならなかったりして、大変なことがたくさんありました。実体験として、介護が必要となったときにはまずは「住所地を管轄する地域包括支援センターへ相談!」が良いなと思いました。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。監修/菊池大和先生(医療法人ONEきくち総合診療クリニック理事長・院長)地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。ウーマンカレンダー/シニアカレンダー編集室著者/ブルームーン(53歳)30代でシングルマザーになり、50代で再婚。
2024年03月04日アルツハイマー型認知症になった実母のことや、アラフィフ主婦の日常をあれこれ書き連ねるワフウフさん。自身の体験をマンガにしています。母・あーちゃんの通院前日。ワフウフさんは、いつものように確認メールを送りますが、メールの最後に「朝一番で行こうね」と書いたところ、あーちゃんからすぐに電話がかかってきました。「朝一番って何時……?」と心細そうな声で聞かれ、ゆっくりと説明しましたが、もしかして時間の感覚が狂ってしまったのかも? と、心配になったワフウフさんでした。記憶も自覚もない…ようやく実家に行き、ずっと気になっていた押入れチェックができたワフウフさん姉妹。そこには「食事」と言い張る菓子パンや、賞味期限切れの食べ物など、いろいろと衝撃的なものが隠されていました……。しかし、電子レンジは問題なく使えていたため、今後は宅配食も選択肢に入れられそうだとわかって安心したのでした。次回の通院は、付き添いの都合がつかないからひとりで行ってほしいと伝えると……。あーちゃんは、自信満々に大丈夫だと言いました。姉・なーにゃんが心配する理由を伝えても……。本気でわかっていない様子。仕方がないので、注射に来るのを忘れたり、行っても「先週来てないわ!」って言ったり、毎回のように「注射は毎週なの?」って聞いたりすることを伝えると……。記憶も自覚もないようで、とてもショックを受けていました。なんとかひとりでの通院をクリアした次の週。ずっとボケーっとしていて、無気力に見えるあーちゃん。1週間もしないうちにこんなにも変化してしまうのかと、認知症の怖さを感じてしまうのでした。姉とともに実家をチェックした翌日の通院日。あーちゃんは時間通りに現れました。そして糖尿病の数値も、本当に少しだけですが、先月より減っていてひと安心。そして、次の通院日は私も姉も予定があって付き添いができないため、ひとりで行ってほしいとあーちゃんに話したところ「私はひとりでも全然大丈夫なのよ!」と自信満々。でも「注射に来るのを忘れたり、来たこと自体を忘れたり、毎回のように注射は毎週必要かと確認しているから心配だ」と告げると、自分の発言や行動をまったく覚えていないようで、ショックを受けていました……。結局、無事にひとりでの通院を終えたあーちゃんでしたが、次の通院で姉が会ったときは、なんだかいつもよりもボーッとしていて無気力に見えたそう。それだけ、毎週娘と通院することが刺激になっていたということなのかもしれませんが、1週間抜けただけでそんなに変わってしまうなんて、ただ進んでいくだけの認知症の怖さを感じました。--------------ただ進行するだけで戻ることは難しい認知症……。毎週繰り返している通院の付き添いが刺激を与えて、進行を緩やかにしていたのかもしれませんね。たった1週間会わなかっただけでハッキリとわかるくらいの変化が出てしまうのは、家族としてもショックですよね。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。ウーマンカレンダー/シニアカレンダー編集室著者/ワフウフ昭和を引きずる夫、成人した息子娘を持つ50代主婦。実母のアルツハイマー型認知症発覚をきっかけに備忘録としてAmebaでブログを始める。2019年一般の部にてAmebaブログオブザイヤー受賞。2023年4月、書籍「アルツフルデイズ笑いと涙の認知症介護」発売。
2024年02月16日現在施設に入所している80代後半の父は、75歳のときにあることをきっかけにアルツハイマー型認知症(脳の神経細胞が減り、脳が小さく萎縮することで症状が現れる認知症)との診断を受けました。当時の父は体のあちこちが痛むようになったと言いつつも年齢の割に足腰が丈夫で体力もあり、定年退職後は初孫である私の息子の相手や、自治会活動、地域でのボランティア活動を楽しんでおり、家族には青天の霹靂(へきれき)でした。父が意識不明!?2010年の秋、私は正社員として勤務しており、息子は小学校3年生でした。息子は数日前から風邪をひいており、その日の朝には熱は下がりましたが大事を取って学校は休ませることにしました。しかし、私は仕事を休むことができず近所に住む私の両親に家に来てもらって息子の世話を頼むことにし、私の出勤時間に合わせてまず父のみが来てくれました。お昼少し前、携帯に母から着信がありました。「これから救急車を呼ぶから。何時ごろなら帰って来られる?」。「えっ!? 息子に一体何があったの?」と気が動転する私。しかし、その後の母とのやりとりがかみ合わず、落ち着いて話を整理してみると、具合が悪いのは父だったのです。自宅にいた母に息子から「おじいちゃんが気持ちが悪いと言って、トイレで苦しそうに吐いている。どうしよう」と電話があり、10数分後に駆けつけてみると、意識もうろうで真っ白な顔の父が嘔吐し、「頭が痛い、体の左半分がしびれるような気がして立っていられない」と訴え、救急車を呼ぶことにしたとのことでした。幸い私の勤務先は自宅の近くで救急隊の方が搬送先を決めている最中に帰宅することができました。そして脳外科のある病院へ搬送しようとしましたがどこも受け入れが難しく、定期的に通院していた近所の総合病院に運ぶことが決まり、父と母を乗せた救急車を見送りました。病院へ搬送。数日入院するはずが!?数時間後、母から連絡があり「現在、意識はハッキリしていて、吐き気と頭痛も治まっている。CTで確認したところ頭部に大きな問題はないけれど念のため数日入院となったから」とのこと。ただ、左半身のしびれた感じは残っているようで、紹介状を出すので退院後に詳しい検査のできる脳外科を受診するようにと言われたとのことでした。とりあえず最悪の事態は免れたとホッとしました。しかし翌日の朝、またしても母から驚く内容の電話が来たのです。「お父さんすっかり元気になって、退院させろ!と言っているの。病院としても特に治療することはないし早めに脳外科のある病院へ行ったほうが良いですよと言うので、これから退院することになったから」と母。「今日これから!? 昨日は数日入院って言っていたよね?」と私。どうやら、一度言い出したら聞かない父が「もう大丈夫だから退院させろ!」と騒いだらしく、病院側もそれならということとなったようで、母と私は仕方がないと大きなため息をつくばかりでした。「それで、紹介状を書いてくれた脳外科のある病院を明日受診しようと思うのだけれど、一緒に来てもらえる?」とのことで同行することとなりました。そして、その受診の際にまさかと思うような事実がわかるのでした。脳外科を受診してわかったことは脳外科では、頭部MRI検査をおこないました。「脳梗塞などの心配はないのですが、脳の萎縮が始まっており、アルツハイマー型認知症の初期段階ですね」との診断でした。「それと気になることがあるのですが。お薬は何か飲まれていますか?」との質問を受けました。ちょうどそのころ、母は父が随分多くの薬を服用していることに疑問を持っていました。父は「病院から出されたのだから!」の一点張りで、この機会にと医師に確認していただきました。そこでわかったのは、父は元々通っていた内科以外に、整形外科、ペインクリニック(神経ブロック:一時的あるいは長期間にわたり神経機能を停止させ痛みを軽減することを目的とした治療をおこなうクリニック)など、母の知らぬ間にあちこちの病院に通っていたのです。その都度薬を処方され、それぞれの病院近くの調剤薬局で受取り、同時にお薬手帳も発行されていました。つまり通っていた病院の件数分だけお薬手帳を持っており、その薬局で受け取った薬のみの記録がされていたのです。「そうすると、別々の病院から同じような成分の薬が同時期に処方されている可能性がありますね。飲み合わせについても改めて確認が必要です。おそらく今回の頭痛や吐き気は、薬剤の過剰摂取や飲み合わせに問題があったのではないかと思います。あと左半身のしびれは整形外科にも通われていたようですし、機能的な問題ではないかと思います」との医師の見立てでした。まとめ父の場合、たまたま脳外科を受診したことからアルツハイマー型認知症の初期段階であることがわかりました。家族としてはショックではありましたが、「今なら薬で進行を遅らせることが可能かもしれません」と言われたのは幸いでした。また、薬の受取りについては一カ所の薬局でお願いすることにし、父が最も頼りにしている調剤薬局さんで一元管理をしてもらうこととしました。家族の見守りがいかに大切であるかを考えさせられた出来事でした。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。監修/菊池大和先生(医療法人ONEきくち総合診療クリニック理事長・院長)地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。ウーマンカレンダー/シニアカレンダー編集室著者/ブルームーン(53歳)30代でシングルマザーになり、50代で再婚。
2024年02月02日人生において誰もが避けて通れないもののひとつといえば、年を取ること。そこで今回ご紹介するのは、作品を発表するたびに過激な性描写で世界中に賛否を巻き起こしてきたフランス映画界の鬼才ギャスパー・ノエ監督が「老い」に挑んだ話題作です。『VORTEX ヴォルテックス』【映画、ときどき私】 vol. 620映画評論家である夫と元精神科医で認知症を患う妻。離れて暮らす息子は両親のことを心配しながらも、家を訪れては金を無心していた。心臓に持病を抱える夫は、日に日にひどくなる妻の認知症に悩まされ、日常生活に支障をきたすようになる。そして、刻一刻とふたりに人生最期のときが近づいていた…。“ホラー映画の帝王”で知られるダリオ・アルジェント監督が80歳にして人生初の主演を務め、“伝説的女優”と称されるフランソワーズ・ルブランと夫婦役を演じていることでも注目を集めている本作。そこで、見どころなどについてこちらの方にお話をうかがってきました。ギャスパー・ノエ監督『アレックス』や『CLIMAX クライマックス』など、暴力的な描写と刺激的な作品で映画界を挑発し続けてきたノエ監督。本作では、これまでの作風とはまるで異なるアプローチで新たな題材を描き切っています。今回は、作品が誕生した経緯や死の恐怖を味わった実体験を通して感じたこと、そして日本映画から受けている影響などについて語っていただきました。―以前から「病」や「死」には興味があったそうですが、このテーマを取り上げようと思ったきっかけを教えてください。監督数年前から年配の方と一緒に映画を作りたいと思っていましたし、「老い」について描きたいと考えていました。そのなかでも影響を受けた映画は、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の『ウンベルト・D』と黒澤明監督の『生きる』。映画を通して疑似体験することができたのも大きかったかもしれませんが、そういったことを通して少しずつこういったテーマを取り上げたいという気持ちになりました。そんななか、自分の母がアルツハイマーになり、混乱や恐怖心からつねに脳が興奮しているような状況に陥ってしまいましたが、そういう姿を目の当たりにしてこれほど恐ろしいことはないなと。そのときに、老後には生きていくうえで非常に複雑で困難な問題が伴うことに気付いたんです。と同時に、そういった部分はこれまでの映画でも見たことがないとも感じたので、自分が描きたいと思うようになりました。「命というのは儚いものだ」と痛感した―その過程で、2019年にはご自身も生死をさまよう病に見舞われてしまいましたが、死を間近に感じたことによって映画作りにも影響を与えたのではないでしょうか。監督僕の場合は、脳出血を起こして突然倒れてしまい、50%の確率で命を落としていた可能性がありましたが、病院に運ばれたのが早かったおかげで助かりました。ただ、一命を取り留めても、発症から5日の間に亡くなる方も多く、35%の人に後遺症が残ると言われていたのでかなり厳しい状態。最初のうちは、自分が生きるか死ぬかわからないような状況にいたので、「命というのは儚いものなんだな」と実体験を通して痛感していました。そんななか、幸いにも元の健康を取り戻すことができたので、それ以降はタバコをやめてお酒は控えめに…。自分の身体に気を付けるようになったのが、大きく変わったことですね。そのあと、コロナ禍で身近な人が何名も命を落としてしまったり、母がアルツハイマーでこの世を去ったりして、死に直面する機会が増えたので、こういったテーマについてじっくりと考えるようになりました。これらの経験がなかったら、おそらくこの作品は生まれていなかったと思います。―ということは、本作には実体験もかなり反映されていると。監督自伝的な作品ではありませんが、自分の経験をそのまま再現したようなシーンはところどころに含まれています。たとえば、アルツハイマーになってしまった母親から息子ではなく夫と間違えられたとか、自宅にいるのに「家に帰りたい」と何度も言い出す母親の様子は、現実と重なっている部分です。そういった母の姿は、見ていてもつらかったですね。自分も日本映画のような真面目な映画を作りたくなった―また、本作は先ほど挙げていた『生きる』だけでなく、木下恵介監督の『楢山節考』や篠田正浩監督『心中天網島』にもインスパイアされているとか。監督退院したあと、ロックダウンの影響ですることがなく、最初はパリの街を自転車で走ったりしていました。そのうちに、日本映画を観るようになり、日本の偉大な監督たちのメロドラマな作品を発見するのに何か月も費やすようになっていったのです。おかげで憂鬱さや残酷さ、美的独創性など、本当に素晴らしい映画とは何なのかを思い出させてもらいました。それまでの自分は大人向けでも若者向けでもない、中途半端な位置づけの作品が多かったのですが、日本映画を観たことで「僕も溝口健二監督や成瀬巳喜男監督のように真面目な映画を作りたい」と考えるようになっていったのです。―4年前に取材させていただいた際にも「欧米で制作された傑作と日本で制作された名画を比べると、日本映画の持つ力は抜群に大きいと感じる」とおっしゃっていましたが、そう思われているのはなぜですか?監督まず、「日本映画にはヒット作が多い」というのが理由のひとつです。日本は1950年代から70年代が映画の最盛期と言われていますが、戦後の日本には素晴らしい作品が数多く誕生しました。ヨーロッパと比べてみると、たとえばスペインにはいわゆる“最高傑作”と言われる作品が50本もないように感じますが、日本だったら50本をはるかに超えるのではないでしょうか。僕は、そういった部分での違いだと考えています。撮影のすべてがアドリブのような感じだった―では、本作の現場に関してもおうかがいしますが、今回はほとんど台本がなく、大半が俳優たちの即興による演技だったとか。それでも、キャストからは「監督の頭の中には何をするかという全体的なビジョンは見えていた」という声が上がっていますが、どのような演出をされていましたか?監督老夫婦役のダリオ・アルジェントとフランソワーズ・ルブラン、そして息子役のアレックス・ルッツの3人は、とても頭がよくて協力的なので、台本がなくても事前に話し合いをするだけで、だいたいの方向性を決めることができました。撮影では30分くらいカメラを回しっぱなしにすることが多く、そのなかから使える7~8分くらいを抜き出すという形を取っています。―俳優たちの即興に感銘を受けたり、驚かされたりしたことはありましたか?監督それはたくさんありましたね。なかでも印象に残っている場面を例に挙げるとすれば、孫を演じた子役がテーブルにおもちゃを叩きつける様子を見ていたフランソワーズが突然泣き始めるシーン。事前に決めていたわけではなく、本人も無意識のうちに自然と涙が出てしまったことがありました。そのほかにも、予定していなかったことや思いもしないようなことが撮影中はいっぱいあったので、撮影すべてがアドリブみたいな感じだったなと。あるときは撮影場所の近くにあった金物屋さんにたまたま入って、急遽撮影させてもらったこともありましたが、その映像も本編には使われています。本当に、今回は予期せぬことばかりが起きた現場でした。観た人が泣けるような映画を目指して作った―タイトルの『VORTEX ヴォルテックス』には「渦」という意味がありますが、どういった思いを込めてつけられたのでしょうか。監督「一度巻き込まれたら奈落の底まで落ちていく」という意味と、上に向かっているハリケーンと違って下に向かっているところも意識してつけました。フランス語だと「Tourbillon」という単語もありますが、「VORTEX」もほうがより巻き込まれるという意味合いが強いですし、ドラマティックで音もいい。しかも、自分の過去作品である『アレックス』や『CLIMAX クライマックス』との並びもよく、インターナショナルであるというのも理由です。―それでは最後に、日本の観客へ向けてメッセージをお願いします。監督本作は、僕にとってはすべての観客に向けた初めての長編映画です。描かれているのは、多くの人が経験している、または今後経験するであろう普遍的なシチュエーションなので、もっともつらい映画であるとも言われています。でも、僕は人々を怖がらせたり、興奮させたり、笑わせたりする映画を作ってきたので、今回は思いっきり泣けるような映画を目指したいと思って作りました。涙はまぶたの膜に触れると鎮静効果があり、この世でもっとも快感をもたらす物質のひとつですからね。なので、映画が終わったときに、全員が泣いてくれることを期待しています。もし泣かない人がいたら、それは本作が失敗作だということになるので…ぜひとも泣いてください!人生に潜む暴力なき恐怖をあぶり出す静かに破滅へと向かっていく人間の姿をリアルに映し出し、観る者に「死」や「老い」を追体験させる本作。「暴力」や「セックス」を封印することで新境地を開いた鬼才ギャスパー・ノエが生み出す“渦”に、身も心も震える唯一無二の異色作です。取材、文・志村昌美胸に迫る予告編はこちら!作品情報『VORTEX ヴォルテックス』12月8日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開配給:シンカ(C) 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA
2023年12月06日1人暮らしをしていた私の祖母が、アルツハイマー病(記憶や思考、行動などに問題を起こす脳の病気)と診断されたのは約10年前。祖母の自宅介護から施設入所までを経験した私のお話です。1人暮らしの祖母がアルツハイマー病に当時はまだアルツハイマー病の初期の状態で、たまに前後の事実関係がわからなくなったり、同じことを何度も繰り返したりするくらいでした。しかし、だんだんと症状が進行していくうちに1人暮らしがままならない状態になっていきました。それでも本人はずっとグループホーム(高齢者や障害者が支援を受けながら小人数で一般住宅で生活する施設)に入ることを嫌がっていて、家族も祖母の意向を尊重したいと思い、祖母は1人暮らしを続けていました。ひとりの生活に限界が見えてきて頻繁に祖母宅に様子を見に行くも、掃除は行き届いておらず、臭いも発生するように。私は早く施設に入所させたほうが祖母のためなのではないかと思っていたのですが、本人と家族の強い意向でかなわないまま。そうこうしているうちに、祖母の徘徊(はいかい)が始まりました。最初のうちはGPSタグを祖母に取り付けるなどして対策していたのですが、徘徊の回数も増えてきたので、それを機にようやくグループホームの入所申請をすることに。親族の反対を受け…ところが、せっかく入所できる順番が回ってきたにもかかわらず、親族が「祖母がかわいそうだから」と言って入所を見送ることも……。そのたびにグッと耐えて祖母の介護をしてきました。その後、ようやく祖母の入所が決まり、今ではグループホームで暮らすように。健康で清潔な日常を送っている祖母を見て、安心して面会に行くことができるようになりました。まとめ私は、家族を施設に入れることになっても、決して見捨てるということではないと思っています。私の親族のように、家族が介護をすることが当然かのうように思う人もいるかと思いますが、本人と介護者の負担を考えても、プロの力を借りることは重要な選択肢の1つだという考えが、もっと浸透してほしいと思いました。(30代女性)※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。監修/菊池大和先生(医療法人ONEきくち総合診療クリニック理事長・院長)地域密着の総合診療かかりつけ医として、内科から整形外科、アレルギー科や心療内科など、ほぼすべての診療科目を扱っている。日本の医療体制や課題についての書籍出版もしており、地上波メディアにも出演中。ウーマンカレンダー/介護カレンダー編集室著者/ウーマンカレンダー編集室40歳を過ぎて心と体の変化に戸惑い、悩むオトナ女子を応援するメディア「ウーマンカレンダー」の編集室です。オトナ女子がおこなっているコスパ良し!時短!ズボラでもできる!リアルなアンチエイジング情報をお届け。医師解説の記事も満載!
2023年11月07日「認知症のなかで、約7割を占めるアルツハイマー病に特化した薬『レカネマブ』が、9月25日に日本で正式承認され、年内にも実用化される見通しです。同薬については、今年7月にFDA(アメリカ食品医薬品局)で承認されたことから、『アメリカで治療したい』という声もあったほど、患者さんやそのご家族の期待度が高いものです。臨床医としても、大きな武器を得ることができたという思いです」こう語るのは、日本のアルツハイマー病研究の第一人者で、アルツクリニック東京の院長・新井平伊さんだ。日本では、これまで4種類の認知症薬が使用されてきたが、今回、12年ぶりに承認された「レカネマブ」は、根本的に構造が異なるという。「全認知症のうち、7割を占めるアルツハイマー病は、遺伝的要素、生活習慣病などの要因が重なり、脳の神経細胞内外に『アミロイドβ』というタンパク質が沈着することが起因だと考えられています」神経細胞がダメージを受けると、アセチルコリンという神経伝達物質の合成が阻害され、物忘れなどが生じ、最終的に脳の萎縮に至る。■アルツハイマー病の原因そのものを除去「既存薬は、アセチルコリンを補充したりする対症療法的なもので、投薬後、10カ月ほどで効果がなくなってしまいました。ところが新薬『レカネマブ』は、アミロイドβそのものを除去するため、進行を遅らせる効果が持続することが期待されるのです」治療法は、2週間に1度、1時間ほどの点滴治療を受ける。「1年6カ月の投薬を続けることで、進行を27%ほど、時間に換算すると2〜3年ほど、遅らせるというデータが出ています」副作用は、頭痛、寒気、吐き気などが報告されている。「特徴的な副作用としては、脳浮腫が約12%、脳の微小な出血が約17%ほどの確率で起こるとされています。ただし、2千人の治験では、亡くなるなど重篤な副作用の報告はありませんでした。症状がなく軽い場合は治療を継続できますし、状況を見る必要がある場合は、一時中断して、落ち着いたら再開することになります」薬価はどうなるのだろうか。「米国では1年間で360万円ほど、日本ではその半分の180万円ほどを期待している」というが、保険適用になるので、収入や年齢に応じて1~3割の負担で使用できる。また、医療費が高額になった場合、高額療養費制度が利用できる。70歳以上の一般的な収入の人の自己負担額の上限は14万4千円なので、月に換算すると1万2千円ほどの負担で利用できそうだ。ただし、どんな認知症の患者にも効果があるわけではない。対象となるのは軽度認知障害(MCI)や早期アルツハイマー病の患者。「多少の物忘れがあっても、着替えや入浴、外出など、身の回りのことができ、生活が自立できていて、加えてアミロイドβの蓄積が認められた人などです」アミロイドβの蓄積は、通常のMRIでは判別できず、アミロイドPET検査や脳脊髄液検査で判定することになる。「現在、これらの検査は全額自己負担で、当院でもPET検査の薬剤だけで25万円もします。しかし検査が高額では、新薬の導入のハードルが高くなってしまいます。薬価を決めるとともに、アミロイドPET検査も保険診療にする必要があるでしょう」アルツハイマー病に向き合う患者や家族の福音となるのか、新薬の普及と効果に期待したい。
2023年10月12日東京歯科大学市川総合病院(千葉県市川市)では、“米ぬか成分によるアルツハイマー型認知症への治療効果”を確かめるため、臨床試験への参加を希望する65~85歳の軽度のアルツハイマー型認知症の方を募集しています。現在、参加定員320名のうち40名のお申込みがあり、残り280名となっております。研究の流れ【ポイント】●国民病ともいえる認知症、その中でも約6割を占めるアルツハイマー病の治療法は未だ確立されておらず、症状進行を薬で予防しているのが現状。また新たな新薬も開発されて話題になっているものの(疾患修飾薬)も、その効果は現状満足できるレベルにあるとは、まだ言えない。●近年、アルツハイマー病は、“脳の糖尿病”とも称されるように、これまで信じられてきた病理とは異なる、栄養学的な見地からの理解も進み、新たな予防・治療アプローチが注目されてきている。●特に、米ぬか成分による栄養療法が、アルツハイマー病に効果を持つ可能性が期待されている。●動物実験では、既にアルツハイマー病の原因物質とされる「脳のアミロイドベータ蓄積が、米ぬか成分を食べることで5-7割減少」とも報告され、実地でも一部の認知症の方には草の根では広がりを見せつつある一方で、厳密な医学的検証試験は行われておらず、認知症患者での研究が待たれていた。●本研究は、世界初の試みとして、米ぬか成分の治療効果の検証のため、ランダム化比較での臨床試験への参加協力を希望する65~85歳の軽度のアルツハイマー型認知症の方を320名募集する。●米ぬか成分はサプリメントとして服用可能で、参加者には約1年間、3ヶ月に1回程度、通院していただく。●この研究によって、米ぬか成分による認知症の予防・治療効果が証明され、安心・安全・安価で医学的根拠に基づいた『食の力』という治療選択の確立を目指す。【研究の目的】65歳以上の認知症の人の数は2025年には高齢者の約5人に1人である約700万人になると予測されています。国民病ともいえる認知症ですが、その中でも約6割を占めるアルツハイマー病の治療法は未だ確立されておらず、症状進行を薬で予防しているのが現状です。従来とは作用機序の異なる新たな治療薬(疾患修飾薬など)も必死に開発が進められていますが、その効果は限定的で、また費用対効果からもその使用に賛否が分かれるなど、未だ満足できるレベルにあるとは言えません。近年、アルツハイマー病は、“脳の糖尿病”や“3型糖尿病”とも称され、脳の栄養学的な異常として、従来とは一線を画す、新たな病理の存在が示唆されています。その中でも、米ぬかに多く含まれているポリフェノールの一種である「フェルラ酸」による栄養療法は、脳のアンチエイジングともいうべき抗酸化作用、抗炎症作用、抗糖尿病作用が知られており、脳神経細胞の保護効果を通じて、アルツハイマー病の予防や進行を遅らせる可能性が期待されています。既に、動物実験では、この米ぬか成分を摂取したマウスは、摂取しないマウスと比べ、アルツハイマー病の原因物質と考えられている脳内の「アミロイドベータ」が59%~73%減少したと報告されており、人間を対象とした研究でも、認知症予備軍であるグレーゾーンの軽度認知障害に対しての効果が証明されています。一方で、この米ぬか成分が、認知症の患者そのものに本当に効果があるのかについては、信頼のおける臨床試験では証明されておらず、研究が待たれていました。こうした背景を踏まえ、本研究では、世界初の試みとして米ぬか成分のアルツハイマー型認知症への治療効果を検証します。効果検証のため、臨床試験への参加を希望する65~85歳の軽度のアルツハイマー型認知症の患者さん320名を募集します。米ぬか成分は、サプリメントとして服用可能となっています。研究期間は約1年間で、参加者にはその間、初診および3ヶ月に1回程度(5回)の全6回、通院していただきます。そのうちの開始時・半年後・1年後には、1回1時間半程度の専門家による心理検査等で、丁寧に認知症の状態が評価されます。また、アルツハイマー病の原因物質とされる「アミロイドベータ」の脳内の蓄積度合いを血液検査でも評価します。これは、自費で行うと数十万円かかることの多い高額な脳画像検査に匹敵する、高い診断精度(94.9%)が研究でも近年示唆されている血液検査で、臨床試験の参加者はこの血液検査が無料で受けられます。本研究では、米ぬか成分による認知症の予防・治療効果が証明され、認知症の当事者やご家族に、薬以外の選択である安心・安全・安価な『食の力』による治療が、選択肢としてもたらされることを目指しています。実は近年、最先端の医学研究では先進国での高齢者における認知症の発症確率が低下しているという事実はご存知でしょうか?例えば、米国では65歳以上の認知症発症確率は約10年前と比べて24%の減少が示され、その理由として食生活も含めた「生活習慣(病)の改善」が大きいと考えられ、世界最大の医療研究機関である米国国立衛生研究所(NIH)でも、認知症予防としてその改善を提唱しています。既に認知症への栄養学的なアプローチは、眉唾の民間療法などではなく、次世代の認知症治療開発における大きな希望の星とさえ言えるのです。特に、米文化を伝統の中心に持つ私たち日本人は、世界で最も米の恩恵にあずかってきた国民と言っても過言ではありません。そんな米ぬかの成分に、アルツハイマー病に立ち向かう大きな力が秘められていることを証明するという試みは、瑞穂の国に生まれ育った私たち日本人こそが率先して行うべき研究であると確信すると共に、本研究を進めることで、「医食同源」によるアルツハイマー病の予防・治療の効果というエビデンスが示されることを、心より強く願っており、みなさまのご協力をぜひお待ちしております。関心をお持ちいただけるようでしたら、下記、ウェブサイトをご覧ください。URL: 〇主任研究者(宗 未来)は、「アロマセラピーによる高齢者の認知機能改善」の効果証明などで、日本精神神経学会学術総会の優秀発表賞を、これまで3度にわたって受賞した精神科専門医です。〇本研究は、認定臨床研究審査委員会の審査・承認を受けた後、東京歯科大学市川総合病院の病院長の許諾を得て、厚生労働大臣に研究に関する実施計画を提出した上で実施されています(臨床研究実施計画番号:jRCTs031220615)。【臨床試験概要】実施機関: 東京歯科大学市川総合病院対象 : 抗認知症薬ドネペジル5mg1錠を内服している、65~85歳の軽度のアルツハイマー型認知症患者(軽度とは、自分一人で服を選んで着替えられ、自発的に入浴(シャワー)も可能な方)(その他の条件等は以下、URLをご参照ください)募集 : 2023年4月1日から試験期間: 48週(約1年間)来院回数: 全6回(初回+3ヶ月に1回のペースで計5回来院)方法 : ランダム比較試験(RCT)(被験食品群=米ぬか成分とドネペジル5mgの併用、プラセボ群=プラセボとドネペジル5mgの併用)目標人数: 320名(被験食品群:160名 プラセボ群:160名)URL : *ランダム化比較試験(RCT):抽選で効果の期待される米ぬか成分のサプリメントか、プラセボかのいずれかのグループに振り分けられ、毎日摂取していただきます。研究期間中はどちらを摂取しているかは伏せられていますが、1年後にどちらのグループであったかは伝えられます。この研究では、軽症のアルツハイマー型認知症に対して「標準的な薬物療法であるドネペジル塩酸塩5mg1錠の内服に加えて、米ぬか成分配合食品であるサプリメントを毎日服用(被験食品群)」、もしくは「標準的な薬物療法であるドネペジル塩酸塩5mg1錠に加えて、プラセボを毎日服用(プラセボ群)」のどちらかの群に割り付けられます。この研究に参加いただくことになりましたら、そのいずれかを48週間服用していただきます。研究参加者は、初回・半年後・さらに1年後の計3回、認知機能の精密な評価のための神経心理検査やアルツハイマー型認知症の予後を予測することが知られている嗅覚検査などが実施されます。また、アルツハイマー病の原因物質と考えられている脳内アミロイドベータの蓄積具合を評価するための血液検査も研究開始の前後の2回、実施されます。【申込方法】研究の参加条件などの詳細を知りたい方は、下記のURLにアクセスしてください。二次元バーコードをスキャンしてもアクセスできます。参加を希望される方は、概要をお読みいただいた上で、アンケートにお答えください(所要時間約5分)。内容を確認した後、事務局より連絡させていただきます。URL: 二次元バーコード【その他】●健康保険の取り扱いについてこの研究で用いる試験食品、研究のための血液検査(バイオマーカー)、研究に必要な検査等の費用負担はありません。ただし、併用薬であるドネペジルの薬剤費や通常診療の範疇としてなされる採血や心電図といった検査費用については、参加者の健康保険を用いて行われますので、自己負担となります。●最近、物忘れの悪化は認めるが、「医療機関で認知症という診断・治療はまだ受けていない」という方現在、通院治療のない方でも、物忘れが目立ってきて心配されている場合には、東京歯科大学市川総合病院の認知症外来で通常診療を受けていただき、条件に該当する場合はその延長で研究に参加いただくことができます(研究参加は、辞退しても不利益はありません)。お気軽にお問い合わせください。●既に、他の医療機関で軽度のアルツハイマー型認知症と診断され、ドネペジル5mg1錠を内服中という方現在、他院に通院中の方は、主治医からの許諾と、主治医からの診療情報提供書(紹介状)が必要になります。主治医とよくご相談の上で、お申込みいただけますと幸いです。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年08月17日フォレスト出版株式会社(所在地:東京都新宿区、代表取締役:太田 宏)は、『糖尿病専門医だから知っているアルツハイマー病にならない習慣』(牧田 善二・著)を2023年6月12日に発売いたしました。『糖尿病専門医だから知っているアルツハイマー病にならない習慣』(牧田善二・著)詳細URL: 高齢者の5人に1人が認知症になる時代、そのうちのおよそ7割が「アルツハイマー型認知症」に苦しめられている現状にあります。これまで、一般人に向けたアルツハイマー病に関する本は、星の数ほど出版されてきました。しかし、そこには発症のメカニズムや症状について詳しく書かれていても、その予防法と進行の食い止め方に対する答えはありませんでした。「そもそもグレーゾーンとはどういうものなのか」「そこで何をすれば良いのか」「日頃の生活でどんなことに気をつけるべきなのか」「何かサインが出ているとしたら、どうキャッチしたらいいのか」本書は、そんな「認知症になりたくない」という読者の切なる願いに答える唯一の本です。実は、アルツハイマー病は「糖尿病」と深くリンクしており、専門家の間では、アルツハイマー病は「3型糖尿病」という認識が広まりつつあります。つまり、アルツハイマー病を予防する上では、糖尿病に関する深い知見が必要になるということです。著者は、糖尿病専門医として、これまでに20万人以上の患者にアドバイスを行ない、実際にアルツハイマー病の進行を食い止めてきた実績があります。年齢も、置かれている状況も問わず、アルツハイマー病に不安を抱く人なら誰でも活用できる「一生アルツハイマー病とは無縁の生活」を送るための1冊です。■著者プロフィール牧田 善二(まきた・ぜんじ)1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行なう。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作りおき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)、『20万人を診た老化物質「AGE」の専門医が教える 老化をとめる本』(フォレスト出版)ほか、多数。■主要目次はじめに がんより怖い不治の病に勝つ方法第1章 アルツハイマー病が治るという真っ赤な嘘第2章 アルツハイマー病は「脳の糖尿病」第3章 脳を萎縮させる12の原因第4章 今からでも間に合うアルツハイマー病予防対策第5章 事例多数! アルツハイマー病予防治療の劇的効果おわりに 夢を持って楽しくアルツハイマー病を予防する■書籍概要書名 : 糖尿病専門医だから知っているアルツハイマー病にならない習慣著者 : 牧田 善二ページ数: 192ページ価格 : 1,760円(税込)出版社 : フォレスト出版株式会社ISBN : 978-4-86680-231-2発売日 : 2023年6月12日URL : ■会社概要商号 : フォレスト出版株式会社所在地 : 〒162-0824 東京都新宿区揚場町2-18 白宝ビル7F設立年月日: 1996年4月1日代表取締役: 太田 宏業務内容 : 出版物の企画・制作及び販売URL : 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年06月12日株式会社ルネサンス(本社:東京都墨田区、代表取締役社長執行役員:岡本利治、以下「当社」)は、世界アルツハイマーデーの9月21日より、「認知症予防」についての無料オンラインセミナーを公開します。 本セミナーでは、認知機能の専門家である東京医科歯科大学の特任教授の朝田隆氏による認知症予防についての講座と、当社が独自に開発し、アルツハイマーや認知症に関する国際的なジャーナル「Alzheimer’s & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」等にもその効果が掲載され、脳の認知機能の低下予防が期待されている脳活性化メソッド「シナプソロジー®」を紹介します。■取り組みの背景日本における認知症の人の数は650万人以上と推計されており、高齢社会の日本では予防に向けた取り組みがますます重要になっています。また、誰でもなり得る疾患のため、認知症への理解を深め、罹患しても希望を持って日常生活を過ごせる「共生※」の社会を創っていくことが重要となります。毎年9月21日は「世界アルツハイマーデー」であることから、当社はご家族やご友人の皆さまと一緒に認知症についての理解を深めていただく機会を提供したいと考え、今回のセミナー開催に至りました。※認知症の人が、尊厳と希望を持って認知症とともに生きる、また認知症があってもなくても同じ社会でともに生きるという意味■本セミナーについて≪セミナータイトル≫「世界アルツハイマーデー」に考える『Withコロナ時代の認知症予防とは?』≪プログラム内容≫➤認知症と軽度認知障害(MCI)とは➤アルツハイマー病薬の開発状況(2022年最新版)➤運動・食事・睡眠と認知症の関係性➤年代別にみた認知症の危険因子➤認知機能の低下が期待できる「シナプソロジー」の紹介➤「シナプソロジー」の効果ほか≪講師≫朝田隆氏東京医科歯科大学特任教授筑波大学名誉教授メモリークリニックお茶の水院長認知症予防、治療の第一人者わかりやすい語り口で、TVや雑誌などで認知症について解説望月美佐緒株式会社ルネサンス取締役常務執行役員シナプソロジー研究所所長≪視聴方法≫オンラインによる動画視聴≪申込期間≫2022年9月21日(水)~2022年9月27日(火)≪申込URL≫ ≪視聴期間≫2022年9月28日(水)~2022年10月9日(日)■「世界アルツハイマーデー」について1994年9月21日、スコットランドのエジンバラで第10回国際アルツハイマー病協会国際会議が開催されました。国際アルツハイマー病協会(ADI)は、世界保健機関(WHO)と共同で、会議の初日であるこの日を「世界アルツハイマーデー」と制定し、この日を中心に認知症の啓発を実施しています。また、9月を「世界アルツハイマー月間」と定め、様々な取り組みを行っています。■「シナプソロジー」について感覚器を通じて入る刺激や認知機能に対する刺激を変化させ続け、その刺激に対して反応する事で、脳を活性化させていく、当社が独自に開発したメソッドです。参加者の年齢、性別、体力レベルなどに応じて調整が可能で、幅広い対象者に対して実施することができ、その効果は様々な研究機関と効果検証を重ねています。直近では、2022年6月に筑波大学とともに共同で発表した老人ホームに入居する平均年齢 89.9 歳(85–97 歳)の超高齢者を対象とした研究結果でもシナプソロジーを実施グループは身体機能と認知機能に優位な改善が認められ、その詳細は国際的なジャーナルに論文掲載されています。◇本研究に関するプレスリリースのURL : ◇シナプソロジー研究所のURL脳がよろこぶ!笑顔がうまれる!| シナプソロジー研究所 : シナプソロジー、シナプソロジーロゴ、SYNAPSOLOGYは、株式会社ルネサンスの登録商標です。当社は、「人生100年時代を豊かにする 健康のソリューションカンパニー」を長期ビジョンに掲げており、今後高齢者の増加による認知症が課題とされている日本において、当社独自のソリューションを提案し、認知症になる前の早期対応に取り組むことで、健康長寿社会の実現に貢献してまいります。 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年09月21日カリフォルニアのくるみ生産者と加工業者を代表するカリフォルニア くるみ協会日本代表事務所(所在地:東京都千代田区)は、9月21日の「世界アルツハイマーデー」を前に、脳の健康サポートに役立つ「秋の味覚を使ったくるみレシピ」を公式ウェブサイト上で公開しました。ナッツの中でもオメガ3脂肪酸を豊富に含むくるみ世界アルツハイマーデーは、認知症予防の啓蒙を目的に、国際アルツハイマー病協会(ADI)と世界保健機関(WHO)により1994年に制定されました(※1)。古来より、東北地方を中心に食され、日本人にとって親しみのある健脳食材であるくるみには、脳の健康をサポートする重要な栄養素で、身体で生成されない必須脂肪酸のオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸=ALA)が含まれています。ナッツの中で唯一、オメガ3脂肪酸を豊富に含むのはくるみだけであり、ひとつかみ(約30g)あたり2.7gのオメガ3脂肪酸を摂取できます(※2)。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日あたりのオメガ3脂肪酸の摂取量の目標値は、18~74歳の男性で1日あたり2.0g以上、女性で1.6g以上となっており、くるみひとつかみ(約30g)で1日の摂取目安量を満たすことができます(※3)。秋の味覚を使ったくるみレシピくるみ入りサーモンロール、くるみとキノコのオムレツ、ナスのくるみ衣焼き、くるみと無花果のデザートなどのレシピは記事下部URLをご覧ください。参考資料くるみの最新研究情報くるみには認知機能をサポートする栄養素、オメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。くるみに豊富に含まれる植物由来のオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸(ALA)は、身体で生成されない必須脂肪酸で、ナッツ類の中で唯一オメガ3脂肪酸を豊富に含むナッツです。脂肪と聞くと悪いイメージを持たれがちですが、α-リノレン酸(ALA)は身体に良い脂肪なので、積極的に摂ることがおすすめです。くるみひとつかみ(約30g)あたり、α-リノレン酸(2.7g)が含まれており、その他植物性たんぱく質(4.6g)、食物繊維(2g)、マグネシウムの他、免疫機能に寄与するビタミンB6(0.2mg)や銅(0.48mg)、マンガン(1mg)が摂取できます(※2)。※1 厚生労働省「世界アルツハイマーデー/世界アルツハイマー月間とは」※2 USDA National Nutrient Database for Standard Reference (2019)※3 日本人の食事摂取基準(2020年版) (画像はプレスリリースより)【参考】※公式WEBサイト
2022年09月15日国内に700万人ほどいる認知症患者のうち、約7割がアルツハイマー型だと推定されている。アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が減っていくことで、脳が萎縮し、認知機能が衰えていく疾患だ。患者の脳にはアミロイドβとよばれるタンパク質が蓄積することが確認されている。アミロイドβは健康な人の脳内にも存在していて、体内の酵素の働きによって分解され排出されている。だが、何らかの理由で正常な分解がされなくなると、複数のアミロイドβが結合したオリゴマーという物質が生まれて脳内に蓄積していってしまうという。このアミロイドβオリゴマーによって、アルツハイマー型認知症が起きるという「アミロイドβ仮説」が、もっとも有力視されてきた。■アミロイドβ仮説の根拠論文に捏造疑惑しかし、7月22日に、米国の科学誌『サイエンス』は「アミロイドβ仮説」の根拠のひとつだった重要な論文が捏造である可能性が高いという記事を掲載したのだ。捏造が指摘されたのは、2006年にミネソタ大学のシルヴァン・レスネ氏らが英国の学術誌『ネイチャー』で発表した論文。この論文によると、レスネ氏らの研究グループは認知症を引き起こすアミロイドβのオリゴマーを見つけ、Aβ*56と名付けた。これをラットの脳に注入したところ、認知機能の著しい低下が認められたとしている。つまり、このオリゴマーが原因で認知症が起きたことを実験で証明したということになる。だが、この実験を記録した画像に、複数の加工の痕跡が発見され、実験結果のみならず、Aβ*56の存在にも疑義が生じているのだ。これまで「アミロイドβ仮説」を前提に、アミロイドβを脳から取り除く治療薬が開発されてきたが、認知症を改善する目立った成果が出てこなかった。論文の捏造をうけて、開発の前提となっている「アミロイドβ仮説」が誤っているためではないかと指摘する声も多いという。■治療薬は予防にこそ効果を発揮する可能性しかし、原因は別のところにあると指摘する専門家もいる。日本のアルツハイマー型認知症研究の第一人者で、アルツクリニック東京院長の新井平伊さんだ。「溜まり始める原因は不明だが、アミロイドβが脳にダメージを与えていることは間違いない」としたうえでこう語る。「捏造論文と治療薬の臨床試験(治験)の結果に因果関係はありません。まず、オリゴマーには他にもたくさんの優れた研究成果があります。一方、これまでの治験は発病後の初期患者が対象で、神経細胞がすでにダメージを受けた段階でした。ここでアミロイドβを取り除いても『焼け跡に水をかける』ようなもの。なので、今は発病前の軽度認知障害や健常者に薬を投与して発症予防効果をみています。この結果がとても重要になります」新井さんら最前線で治療薬の開発に挑んできた多くの研究者の努力に水を差すことになった今回の論文捏造疑惑。一刻も早い真相の究明と、認知症治療薬開発の進展を願ってやまない。
2022年08月04日アメリカのコネティカット州に住む、ピーター・マーシャルさんと妻のリサさん。ペンシルベニア州で、近所付き合いをしていた中で知り合った2人は当時、それぞれ別のパートナーと結婚していました。その後、ピーターさんがコネティカット州に引っ越したことで疎遠になりますが、約1年後に再び連絡を取り合い、お互いに離婚したことを知ったのだとか。友人関係だった2人は急接近。それぞれの子供が大学へ進学するまで8年間の遠距離恋愛を経て、2009年に結婚しました。Posted by Oh Hello Alzheimer's on Tuesday, August 13, 2019Posted by Oh Hello Alzheimer's on Tuesday, August 13, 2019妻のことを忘れた夫が…海外メディア『CNN』によると、ある時からピーターさんの物忘れが多くなったのだそう。最初はカギや財布などを忘れていたのが、次第に言葉が出てこなくなったのだとか。そして2018年4月に病院で検査を受けた結果、ピーターさんは53歳でアルツハイマー病と診断されたのです。病気の進行は早く、彼の記憶からリサさんとの思い出が次々と消えていきます。そして、ピーターさんはリサさんが妻であることも忘れてしまいました。2020年12月、2人が家でテレビドラマを見ていた時のこと。結婚式のシーンで感動したリサさんが泣いていたのだそう。するとそんな彼女を見たピーターさんがテレビを指さして「これをしよう!」といったのです。リサさんが「これって何?」と聞き返すと彼は「結婚しよう」と笑顔で応えました。すでにリサさんと結婚しているという事実を忘れたピーターさんは、再び彼女にプロポーズしたのです。リサさんがこの話を子供たちにしたところ、「もう一度結婚式をするべき!」と背中を押されたのだそう。こうしてリサさんとピーターさんは家族や友人に見守られながら、再び永遠の愛を誓いました。リサさんは、ピーターさんから「結婚しよう」といわれた時の気持ちをこう振り返っています。とても感動しました。彼は私に二度、恋に落ちてくれた。光栄で、まるでシンデレラのようなお姫様になった気分でした。私は世界で1番ラッキーな女の子です。CNNーより引用(和訳)Posted by Oh Hello Alzheimer's on Thursday, April 29, 2021Posted by Oh Hello Alzheimer's on Thursday, April 29, 2021最高に幸せな二度目の結婚式を挙げた2人ですが、リサさんはピーターさんがそのうち彼女が妻であることを忘れてしまうことを心配はしていないそう。彼女は「私は彼のお気に入りです。だから妻だとか、呼び方のラベルは必要ありません。彼は私を愛していて、私は彼を愛している、それがすべてです」と語っています。LOWER YOUR VOICESome of my first memories are those of being shushed. “Be quiet. Simmer down. That’s enough talking. ...Posted by Oh Hello Alzheimer's on Monday, June 28, 2021LOWER YOUR VOICESome of my first memories are those of being shushed. “Be quiet. Simmer down. That’s enough talking. ...Posted by Oh Hello Alzheimer's on Monday, June 28, 2021リサさんはアルツハイマー病の人を介護する人たちを助けるために、ピーターさんとの生活をFacebookにつづっていて、コメント欄には同じ病気をもつ家族を支えている人たちからの共感や励ましの声があふれています。「私たちは最後まで一緒です。私たちを引き離せるものはありません」というリサさん。たとえピーターさんがまた彼女が妻だということを忘れても、彼は何度でもリサさんに恋に落ち、2人の愛は永遠にそこにあり続けるのでしょう。[文・構成/grape編集部]
2021年07月07日女性たちから人気の高いジャンルの映画といえば、ラブストーリー。いくつになっても胸のトキメキを味わうのは大切なことですよね?そこで今回ご紹介するのは、時代を超えて描かれる“愛の物語”です。それは……。感動を呼ぶ『43年後のアイ・ラヴ・ユー』【映画、ときどき私】 vol. 352妻を亡くしたあと、ロサンゼルスの郊外にひとりで暮らしていた70歳の元演劇評論家クロード。近所に住んでいる親友のシェーンとともに、老後を楽しんでいた。そんなある日、クロードにとっては忘れられない昔の恋人で、人気舞台女優だったリリィがアルツハイマーを患わせて施設に入ったことを知る。もう一度リリィに会いたいと強く願ったクロードが思いついた一世一代の嘘は、なんとアルツハイマーのフリをしてリリィと同じ施設に入居するというものだった。ようやくリリィと再会でき、喜ぶクロードだったが、彼女の記憶から自分のことが完全に消し去られていることに気がつく。そして、クロードは“ある作戦”を実行することに……。美しい物語に加え、数々の巨匠監督に愛されてきたハリウッドのレジェンドであるブルース・ダーンが魅せる名演技にも注目が集まっている本作。今回は、こちらの方にお話をうかがってきました。マーティン・ロセテ監督現在、ニューヨークに拠点を置いて活動を続けているスペイン出身のロセテ監督。短編映画の制作で高く評価されたあと、長編を手掛けるようになり、今回で長編映画2作目となります。そこで、本作が誕生したきっかけや作品を通して伝えたい思いなどについて語っていただきました。―まずは、本作の脚本との出会いやどのあたりに惹かれたのかについて教えてください。監督前作の撮影が終わったあと、「映画を通して何か特別なものを伝えたい」と考えていた僕は、次の映画の題材を探すためにいろいろな脚本を読んでいました。そんなときに、脚本家であるラファ・ルッソから本作のアイディアを聞き、最初の5分だけでこの物語にほれ込んでしまったんです。「スウィートな物語を描きたいけれど、よくあるラブストーリーにはしたくない」と思っていた僕にとってまさにぴったりな作品だなと。なぜなら、ありきたりなラブストーリーではないうえに、ユーモアもあると感じたからです。さらに、物語のメインが年配の方々であることも、アルツハイマーという病に対してリスペクトを持った形で描いているところも、この作品の特別なところだと思います。アルツハイマーの違う側面に焦点を当てたかった―確かに、一般的にはネガティブな部分を取り上げられることが多いアルツハイマーも、本作からは違う印象を受けました。アルツハイマーを描くうえで、注意したことはありましたか?監督僕の家族にもアルツハイマーを患っている人がいますし、実は本作のプロデューサーのひとりもまさにいま闘病中なので、コメディ要素はありつつも、そのあたりはしっかりと配慮して描かなければいけないと感じていました。つまり、超えてはいけない一線があるということ。非常に難しいところではありましたが、そこを超えてしまうと、現在病気と闘っている方々やその家族を傷つけてしまうことになると思ったからです。もちろん、これまでにアルツハイマーのつらい部分を描いている作品で素晴らしいものもありますが、今回はそれとは違う側面を見せたいというのがありました。特に、愛やユーモアの部分に焦点を当てたいなと。それは自分にとって大きな挑戦でしたが、とにかくリスペクトを持って描くことを大切に作品づくりと向き合いました。―アルツハイマーについてリサーチを重ねるなかで、印象に残っていることはありますか?監督制作にあたっては、アルツハイマーに関するドキュメンタリーや本など、かなりたくさんの資料に目を通しました。そのなかでも特にリサーチを重ねたのは、楽器を弾いたり、歌ったり、アートにかかわったりするような方々の症状について。そのあたりは参考にさせてもらったところです。また、今回は僕たちのアルツハイマーに関する描写が正確であるかどうか、配慮がきちんとされているかどうかを確認するために、アルツハイマー協会に脚本を読んでもらうようにお願いしました。協会の方々からは、非常にポジティブなフィードバックが戻ってきたので、安心しましたし、すごくうれしかったです。毎日マスタークラスに通っているような現場だった―劇中では、キャストのみなさんが非常に魅力的でした。主演のブルース・ダーンさんをはじめ、ベテランの方が多い現場で学んだことがあれば教えてください。監督ブルースは、そうそうたる監督たちと仕事をしてきた経験豊富な俳優。アルフレッド・ヒッチコックからもらったアドバイスや僕が敬愛するスティーヴン・スピルバーグとのエピソードなど、いろんなことを教えてくれたので、毎日マスタークラスに参加しているような感じでしたね(笑)。今回の撮影のあとには、クエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でブラッド・ピットとの共演シーンが控えていて、そのスケジュールに合わせるために彼だけ2日早くクランクアップした、なんてこともありました。僕が尊敬する監督たちがどんなふうに映画を撮っていたのかということを知ることができただけではなく、ブルースたちからは人への接し方も学ぶことができたので、自分にとってはとても身になることが多い現場だったと思います。―素晴らしい現場だったんですね。では、彼らの演技に驚かされたようなこともありましたか?監督クロード役のブルースとシェーン役のブライアン・コックスが同じフレームに収まっているだけでも興奮しましたが、おもしろかったのは、彼らの演技に対するアプローチが正反対であること。ブルースは毎回アドリブをたくさんかますようなワイルドなタイプの役者なんですけど、ブライアンはいわゆる英国系の脚本を全部しっかり頭に入れてその通りに演じるタイプの役者ですから。でも、それが夢見るようなところのあるクロードと真面目な性格のシェーンというそれぞれのキャラクターとも重なっていて、それを見ることができたのは楽しかったです。そういった2つのエネルギーが現場ではいい形で合わさっていたように感じています。人は愛のためなら信じられない力を発揮できる―本作からは、愛には人の想像を超える力があるとも感じさせられましたが、監督にとって愛とはどのような存在ですか?監督愛とは宇宙で一番力があるものじゃないかな、というふうに僕は思っています。愛する誰かと一緒にいるためだったら、人は信じられない力を発揮することができますからね。はたから見るとちょっとクレイジーなことでも人は愛のためだったら、何でもできるんですよ。僕は世界を動かすことできる力のなかで、愛が一番ステキなものだと思っています。だからこそ、「恐怖や不安ではなく、もっと愛のほうに目を向けてみましょう」というのをこの映画でも描いているのです。―素敵ですね。また、手紙やセリフからは言葉の持つ力や美しさにも魅了されました。監督自身が大切にしている言葉があれば、ぜひ日本の観客にも教えてください。監督僕はよく瞑想をするのですが、そのときにいつも思い浮かべている言葉は、「Everything will be fine」。つまり、「すべてはうまくいく」という考え方ですね。それから、いつも忘れないようにしているのは、「僕たちがいまここに存在しているのは一瞬なんだ」ということ。人は心配しすぎると恐怖心から動けなくなってしまうこともありますが、心配ばかりしていると時間が無駄に過ぎてしまうことがありますから。その真逆が劇中のクロードですが、他人が自分のことをどう思っていたとしても、自分が正しいと感じる行動を心のままにすることが大切なんだと僕は考えています。愛を語るのに年齢は関係ない!一途な愛と優しい嘘が引き起こす奇跡のラブストーリー。愛の持つ力や人と人の絆について改めて考えさせられる時代だからこそ、その重みにも心が動かされるはず。身も心も冷え切ってしまいがちなこの時期にぴったりの温かさが詰まった1本です。取材、文・志村昌美輝きに満ちた予告編はこちら!作品情報『43年後のアイ・ラヴ・ユー』1 月 15 日(金)より、新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開配給:松竹©2019 CREATE ENTERTAINMENT, LAZONA, KAMEL FILMS, TORNADO FILMS AIE, FCOMME FILM . All rights reserved.
2021年01月14日記憶力や思考能力などの低下が症状として表れるアルツハイマー病。アルツハイマー病が進行し重症化した人の中には、自身の生い立ちについても、完全に思い出せなくなることがあるのだそうです。元バレエダンサーの女性…『白鳥の湖』を聞くと?アルツハイマー病を患っている、元バレエダンサーの女性の動画が話題となっています。その女性は、マルタ・C・ゴンザレスさん。スペインの非営利団体である『Música para Despertar』によると、彼女は1960年代にニューヨーク・シティ・バレエでプリマとして活躍していたのだとか。プリマとは、バレエ団における女性バレエダンサーの最高位を指します。彼女にヘッドホンでチャイコフスキーの『白鳥の湖』を聞かせると…。『白鳥の湖』を聴き始めると、目に輝きが戻り、周囲を圧倒させる踊りを見せたのです!まるで舞台の上で踊っているような、迫真の演技に「涙がでた」「感動した」といった声がたくさん上がっています。・号泣してしまいました。ほんのひと握りの人しかなれない、『道を極めし者』というのは、こういう人のことなのだろうと思います。・表情、演技がすごい。舞台の上で踊っている彼女の姿が見えました。怖いくらい美しい。・引退しても、病を患っても、この人は最期までバレエダンサーなんだろうな。記憶を失っても、人生をかけて挑んだものは心に宿り続けるのかもしれません。[文・構成/grape編集部]
2020年11月10日2人の娘を育てながらエッセイ漫画を描いている吉田いらこ(@irakoir)さん。吉田さんは高校生の頃、父親が若年性認知症を患ったそうです。要介護となった父親とその家族が経験した、23年間を漫画にしました。『若年性認知症の父親と私』脳を手術した吉田さんの父親は、その後左半身がマヒしてしまいました。以前の父親とは様子が異なり、「術後で記憶が混乱しているのだ」と自分に言い聞かせていたという母親。しかしその後、父親は若年性認知症と診断されたのでした。自宅での介護が始まり…?すぐに物事を忘れてしまう父親に対して、「なんですぐ忘れちゃうの」と想いをぶつけてしまった吉田さん。しかし、父親はそれに対して「ふざけるな」と手を挙げたのでした。父親が完全に変わってしまったのだと悟った吉田さん。父親との介護生活に思い悩み「あの時、いっそ…」と考えてしまうこともあったそうです。その後、社会人となった娘。父親は…?一時は恋人の家族に、『病気の遺伝』を理由に難色を示されたものの、周囲の応援のおかげで無事結婚することができた吉田さん。その後、2人の娘が生まれ母親として子育てに奮闘する中、父親の『延命措置』についての話が持ち上がりました。吉田さんは、「もしもの時、どうしたいか」という母親の問いに、答えを出すことはできませんでした。父親の『延命措置』母親の決断は…【最終話】若年性認知症の父親と私41お読みいただきありがとうございました pic.twitter.com/40IIHDQpBE — 吉田いらこ/大阪おでこ姉妹 (@irakoir) October 10, 2020 延命治療することなく、息を引き取った父親。葬儀の時、吉田さんは母親に「どうしてここまで父親の世話をできたの」と聞くと、「惚れてたってことかな」と答えられ衝撃を受けたといいます。吉田さんの母親は、初めから最期まで父親と向き合い続けたのでした。対して、吉田さんは、現実を受け入れきれなかった自分を責めてしまうそうです。読者からはさまざまな声が寄せられました。・自分の家族が要介護状態になった時、受け入れることができるのか、向き合えるのか。普段、目を背けていることを、改めて考えさせられるお話でした。・うちの母親の姿と、吉田さんの父親の姿が重なり泣いてしまいました。元の姿を知っているからこそ、変わってしまった姿を受け入れきれない。家族にしか分からない苦しみだと思います。・僕は父親と同居しながら介護をしています。介護って本当に難しいです。でも、たまに見せてくれる笑顔が救いかな。病気や障がいにより要介護となってしまった人、同居しながら長年介護をする人、また、介護士として患者と日々接する人…それぞれ、考え方や感じ方、苦悩はまったく違うものでしょう。介護が必要となった人の家族として、心の葛藤や経験を漫画にした吉田さん。介護については、それぞれの家庭環境や家族関係がみな違うため、一概に『こうすればいい』ということはいえません。もし、自分の家族が要介護となった場合、また、自分自身が介護される側になった場合など普段目を背けがちな問題について、家族同士で一度話してみてはいかがでしょうか。[文・構成/grape編集部]
2020年10月10日戸田恵梨香とムロツヨシの共演で贈る、若年性アルツハイマーにおかされる女医と、彼女を明るく支え続ける元小説家の男の、10年にわたる愛の奇跡を描く純愛ラブストーリー「大恋愛~僕を忘れる君と」が、TBS10月期の金曜ドラマ枠として放送されることが決定した。■あらすじレディースクリニックの医師として働く34歳の北澤尚(戸田恵梨香)は、年上の医師・井原侑市との婚約が決まり、仕事もプライベートも順風満帆の毎日を送っていた。結婚式まであと1か月と迫った新居への引越しの日、尚は元小説家で引越しのアルバイトをする無愛想な男・間宮真司(ムロツヨシ)と運命的な出会いをし、2人は恋に落ちる。初めて本気の恋に突き進む尚と真司だったが、2人の愛を阻むように、尚が若年性アルツハイマー病におかされていることが発覚する…。34歳にして、若年性アルツハイマーという病におかされてしまった真っ直ぐな女性と、そんな彼女に恋した売れない小説家の、美しくも儚いラブストーリー。明るくけなげに尚を支え続ける真司は、いつしかお互いを愛することの意味や喜びを知ることに。そして、尚の存在が真司の眠っていた才能を再び呼び起こしていく…。尚がいつか自分のことすらも分からなくなる運命の中で、真司が1冊の本に綴る尚と生きる日々と愛の行方…。なぜ、何のために、真司はその本を書いたのか? 2人が綴る本当の愛の物語、その結末とは一体?■戸田さんが難役に挑み、ムロさんが初のラブストーリーに挑戦!主人公・北澤尚(きたざわ・なお)を演じるのは、ドラマや映画はもちろんCMなどで幅広く活躍する女優の戸田さん。TBS連続ドラマで主演を務めるのは、2010年に放送した「SPEC~警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿~」以来実に8年ぶりとなる。今作では、34歳にして若年性アルツハイマー病におかされながらも、本気で1人の男に恋をする女医を演じる。また、尚の恋人・間宮真司(まみや・しんじ)役には、ドラマや映画、舞台などでその存在感を発揮し、「2018年エランドール賞」の新人賞を42歳にして受賞した個性派俳優のムロツヨシさん。引越し業のアルバイトで尚と出会い、自分が過去に書いた小説の文章の一部を暗唱できるほど好きだと言う尚からアタックされるうち、彼女を愛するようになり、同時に自分の忘れていた小説への思いを呼び起こされていくという役柄だ。本作のような本格ラブストーリーに挑むのは初で、注目を集めている。お互い、意外な共演過ぎて最初は半信半疑だった?戸田さんは演じた役柄について、「尚は、いい意味でつかみどころがあるようでない人だなと思いました。あとは、真っ直ぐですね。ものすごく理論的であり、堅い人にみえる反面、能動的というか、本能的で…。それが1人の女性って、どういうことになるのか興味があります」と語り、ムロさんとの共演については「今回純愛ラブストーリーのお話を頂き、お相手がムロさんとお聞きし、『ムロさん?』って思いました(笑)」とおどけて見せた。ムロさんも今回の役柄について「真司はちょっと影というか過去が、多少、色々ある人なので、それで恋愛とかするタイプじゃないように思います。私も、20代の頃やりたいことがあったのに、やれなくなることがあったのでちょっと重なるところはありますね。」と語った。戸田さんの印象についても「以前、TBSで放送された『うぬぼれ刑事』というドラマで共演させて頂き、車の中での2人待ち時間が長く、ずっとゲラゲラ笑いながらお話ししていた記憶があります。今回、純愛ラブストーリーのお話を頂き、お相手が戸田恵梨香さんとお聞きし、戸田さんは本当にOKされているのかと疑いました(笑)」と驚きを隠せない様子だ。本作は、ラブストーリーの名手と名高い脚本家・大石静の完全オリジナルドラマ。大石さんは「すっかり便利になったいま、恋にも障害が少なくなりました。障害がないと切ない想いも芽生えにくいせいか、世の中の男女は劇的な恋より、ちょっと楽しくリスクの少ない関係を好むようになったと感じます。その風潮を否定もしませんが、ドラマの中では、常識や道徳のはるか向こうにある1組のカップルの“震えるような恋心”を、視聴者の方に体験していただきたいと願って、このドラマを書きました」と語っている。「大恋愛~僕を忘れる君と」は10月より毎週金曜22時~TBS系にて放送。(text:cinemacafe.net)
2018年07月26日産業技術総合研究所は3月16日、脳遺伝子研究グループの落石知世主任研究員らが北海道大学などと共同し、アルツハイマー病の原因因子の一つであるアミロイドβたんぱく質の動態を、生きた神経細胞内や生体内で可視化する技術を開発したことを明らかにした。培養細胞や生きた個体を用いたアルツハイマー病治療薬の候補物質のスクリーニングへの応用や、アルツハイマー病の発症メカニズム解明への貢献が期待できるという。アルツハイマー病は記憶障害や判断能力の低下、見当識障害等を特徴とし、認知症の半数以上を占める。だが、詳細な発症メカニズムが解明されておらず、有効な治療法や特効薬も開発されていない。アミロイドβたんぱく質の特徴として、集まって大きな凝集体を形成しやすい。アミロイドβたんぱく質と蛍光たんぱく質の「GFP」(緑色蛍光たんぱく質: 生きた細胞や個体内のタンパク質の局在などを観察する際によく用いられるたんぱく質)を融合させたたんぱく質・アミロイドβ-GFPは、アミロイドβたんぱく質が重合することでGFPの蛍光が阻害されると推測されてきた。そのため、これまでアミロイドβたんぱく質の局在や動態の可視化が困難とされてきた。研究チームは今回、アミロイドβたんぱく質とGFPをつなぐアミノ酸配列(リンカー)として、14個のアミノ酸を用いてアミロイドβ分子の重合体が形成されても蛍光を観察できる「アミロイドβ-GFP融合たんぱく質」(アミロイドβ-GFP)を開発。このアミロイドβ-GFPを核磁気共鳴装置や電子顕微鏡、免疫組織化学法、蛍光相関分光法で解析したところ、GFPを融合させたことでアミロイドβの重合が一定以上進まず、生体内でも生体外でも2量体から4量体を中心としたオリゴマー(単量体が少数個結合<重合>した物)の状態で存在することがわかったという。これらの特徴を活用し、生きた細胞内でアミロイドβの動きや、初代培養神経細胞内での蓄積状態などの解析が可能となるとのこと。また、アミロイドβとGFPをつなぐリンカーが短いと、重合の影響を受けてGFPの蛍光は観察されなくなる。そこで研究チームは、今回発見した現象を利用して重合の状態が検出できるシステムを考案し、GFPの蛍光強度を利用した治療薬候補物質のスクリーニングが可能か否かを実証した。その結果、GFP単独を特定の神経細胞に発現させたトランスジェニック線虫では神経細胞内で明瞭な蛍光が観察できたが、2個のアミノ酸からなる短いリンカーを持つアミロイドβ-GFPを発現させた線虫では、アミロイドβの重合の影響を受けてGFPの蛍光は観察されなかった。さらにこの線虫を、アミロイドβの重合を抑制するクルクミンを加えた培地で飼育した結果、GFPの蛍光が観察できた。これらの結果から、アミロイドβ-GFPは蛍光強度の変化を測定することで、アミロイドβの重合を抑える創薬候補物質のスクリーニングに利用できることが期待できるという。同研究所は今後の展開について、「培養神経細胞を用いて、アミロイドβ-GFPの蛍光強度を利用したアルツハイマー病の治療薬や予防薬の候補となる物質をより簡便にスクリーニングできる方法の開発に着手する」としている。
2016年03月18日理化学研究所(理研)は3月17日、アルツハイマー病モデルマウスの失われた記憶の復元に成功したと発表した。同成果は、理研 脳科学総合研究センター 理研-MIT神経回路遺伝学研究センター 利根川進センター長、マサチューセッツ工科大学 博士課程 ディーラジ・ロイ氏らの研究グループによるもので、3月16日付けの英国科学誌「Nature」オンライン版に掲載された。アルツハイマー病(AD)では、海馬およびその周辺で神経細胞の変性が始まることから、海馬の働きの異常がAD初期の記憶障害を引き起こしている可能性が指摘されていた。しかし記憶障害は、記憶を新しく形成できないために起こるのか、それとも形成された記憶を正しく思い出せないため起こるのか、そのメカニズムは不明となっていた。同研究グループはこれまでに、光感受性タンパク質を特定の神経細胞群に発現させ、その神経細胞群に局所的に光を当てて活性化/抑制する技術「光遺伝学」を用い、海馬の「記憶エングラム」と呼ばれる細胞群に個々の記憶の痕跡が物理的に保存されることを証明している。今回、同研究グループは、ヒトのAD患者由来の遺伝子変異が導入されたADマウスを用い、記憶エングラムがどうなっているのかを直接調べることにした。普通のマウスを実験箱Aの中に入れ弱い電流を脚に流すと、マウスはこの嫌な体験の記憶を形成し、翌日同じ箱Aに入れられるとその記憶を思い出して"すくむ"。一方、7カ月齢のADマウスは、嫌な体験をしてから1時間以内であれば箱A内ですくむが、翌日になるとすくまなくなる。つまり、ADマウスは、嫌な体験の記憶を作ることはできるが、24時間後にそれを想起することができなくなっていると考えられる。そこで同研究グループは、神経が活動するとその発現が誘導される遺伝子の調節領域と標識する期間を限定させることができるTet-offシステムを用いて、ADマウスが箱Aで嫌な体験をしている最中に活動した記憶エングラム細胞において、光感受性タンパク質遺伝子ChR2が発現するよう標識。嫌な体験の翌日、箱Aに入れてADマウスがすくまないことを確認してから、別の実験箱Bに入れ、標識したエングラム細胞群を青色光により活性化すると、ADマウスはすくんだという。これは、ADマウスにおいても記憶エングラムは形成されているが、その記憶エングラムを正しく想起できないことから記憶障害が引き起こされている可能性を示唆している。同研究グループはさらに、このADマウスにおける記憶想起の障害が、神経細胞同士をつなぐシナプスが形成されるスパインという構造の減少と関連していることを突き止めた。シナプスは何度も刺激されると増強されてスパインも増えるため、同研究グループは、シナプスを増強することでADマウスの記憶想起の障害を回復させられるのではないかと考えた。そこで、もともと嫌な記憶と結びついていた実験箱Aに入れながら、標識しておいたADマウスの記憶エングラムへの入力を青色光によって人為的に何度も活性化させ、シナプス増強を起こしたところ、シナプスを増強したADマウスは、2日後に箱Aに入れられると、箱Aという自然な手がかりだけで嫌な記憶を思い出してすくむようになったという。利根川センター長は今回の成果について、「少なくとも、AD病初期の患者の記憶は失われているのではなく、思い出すことができないだけなのかもしれないのです。初期の患者には記憶を保持する細胞が維持されているというのであれば、将来、これらの細胞から記憶を取り出す技術が開発されれば、障害を軽減できるかもしれません」とコメントしている。
2016年03月17日産業技術総合研究所(産総研)は3月16日、アルツハイマー病の原因因子のひとつ「アミロイドβタンパク質(Aβ)」の動態を、生きた神経細胞内や生体内で可視化する技術の開発に成功したと発表した。同成果は、産総研 バイオメディカル研究部門 脳遺伝子研究グループ 落石知世 主任研究員、北海道大学大学院 先端生命科学研究院 北村朗 助教、順天堂大学 医学部 脳神経内科 志村秀樹 准教授らの研究グループによるもので、3月16日付けの英国科学誌「Scientific Reports」電子版に掲載された。アルツハイマー病発症のメカニズムとして近年、少数のAβ分子が重合したAβオリゴマーが細胞に対する強い毒性を有し、これが細胞内に蓄積されることが病気の発症に強く関与するという説が有力になりつつある。しかし従来の方法では、細胞や脳組織の標本を用いた解析しかできなかったため、生きた細胞内でAβのオリゴマー化の状態を直接可視化して毒性との因果関係を詳細に解析する方法の開発が求められていた。これまでにAβと蛍光タンパク質GFPを繋ぐリンカーとして12個以下のアミノ酸から構成されたものが報告されていたが、これらはAβが重合するとGFPの蛍光が消失するため、Aβオリゴマーの観察はできない。今回、同研究グループは、AβとGFPを繋ぐリンカーとして14個のアミノ酸を用いて、Aβ分子の重合体が形成されても蛍光を観察できるAβ-GFP融合タンパク質(Aβ-GFP)を開発した。このAβ-GFPを核磁気共鳴装置や電子顕微鏡、免疫組織化学法、蛍光相関分光法で解析したところ、GFPを融合させたことでAβの重合が一定以上進まず、生体内でも生体外でも2量体から4量体を中心としたオリゴマーの状態で存在することがわかった。これらの特徴を活かすことで、生きた細胞内でAβのダイナミックな動きや、初代培養神経細胞内での蓄積状態などの解析が可能となる。また、重合が進んで繊維状となったAβよりも、オリゴマーのほうがより強い毒性を有することから、Aβオリゴマーの重合の度合いと細胞への毒性との関係などの解析を行うことができる。また、AβとGFPを繋ぐリンカーが短いと、重合の影響を受けてGFPの蛍光は観察されなくなる。そこで同研究グループは、今回発見した現象を利用して重合の状態が検出できるシステムを考案。GFPの蛍光強度の変化を測定することで、Aβの重合を抑える創薬候補物質のスクリーニングに利用できることを実証した。同研究グループは今後、培養神経細胞を用いて、Aβ-GFPの蛍光強度を利用したアルツハイマー病の治療薬や予防薬の候補となる物質をより簡便にスクリーニングできる方法の開発に着手する。また、Aβ-GFPを発現させたトランスジェニックマウスを用いて、アルツハイマー病発症のごく初期に起こる神経細胞内部での微細な変化にAβオリゴマーが与える影響についてより詳細な解析を行い、アルツハイマー病発症のメカニズムの解明や予防に関する研究を進めていくとしている。
2016年03月17日東京大学は12月10日、老齢ネコの脳にヒトのアルツハイマー病と同一の病変が形成され、神経細胞が減少することを明らかにしたと発表した。同成果は同大大学院農学生命科学研究科のチェンバーズ ジェームズ助教、内田和幸 准教授、中山裕之 教授、京都府立医科大学の徳田隆彦 教授、同大大学院医学研究科の石井亮太郎 助教、建部陽嗣 特任助教、麻布大学獣医学部の高橋映里佳氏、宇根有美 教授、大阪市立大学大学院医学研究科の富山貴美 准教授らの研究グループによるもの。「Acta Neuropathologica Communications」に掲載された。アルツハイマー病では、βアミロイドと高リン酸化タウと呼ばれるタンパク質が蓄積し、海馬の神経細胞が脱落することによって認知症を発症する。βアミロイドの沈着はヒト以外の哺乳類に脳でもみられるが、同研究グループがこれまでの研究でチーターとヤマネコの脳で発見した以外では高リン酸化タウの蓄積と海馬の神経細胞脱落は動物では見つかっていなかった。今回の研究では、ペットとして飼育されていたネコを死亡後に解剖して脳を詳しく調べたところ、8歳頃から脳にβアミロイドが沈着し、14歳頃から高リン酸化タウが蓄積することが判明。高リン酸化タウが蓄積した神経細胞では、神経原線維変化と呼ばれるアルツハイマー病に特有の病変が確認された。また、神経原線維変化を構成するタウ蛋白質のアイソフォームがヒトのアルツハイマー病と同じであり、神経原線維変化が形成されたネコでは、海馬の神経細胞が減少していることがわかった。これらの結果から、老齢のネコではβアミロイドと過剰リン酸化タウが脳に蓄積し、海馬の神経細胞が脱落することが明らかとなった。さらに、ネコの脳に蓄積したβアミロイドは他の動物種と比べて凝集性が弱く、海馬の神経細胞内にβアミロイド-オリゴマーと呼ばれる毒性が高いβアミロイドが蓄積していることが判明した。βアミロイドのアミノ酸配列を動物種間で比較したところ、ネコはほかの動物と異なる配列を有していることがわかった。神経原線維変化が発生するヤマネコやチーターなどのほかのネコ科動物も、このネコ型βアミロイドを共通して保有しており、ヒトのアルツハイマー病患者の脳においてもβアミロイド-オリゴマーが検出されていることから、この結果は神経原線維変化の形成においてβアミロイド-オリゴマーが重要であることを示していると考えられている。同研究グループは今後、ネコの脳を研究することで、βアミロイドとタウタンパク質の関係が明らかにされ、アルツハイマー病の病態解明と治療法開発につながることが期待されるとしている。
2015年12月10日東京医科歯科大学は7月14日、アルツハイマー病における飢餓状態は病態に悪影響を与える可能性があると発表した。同成果は東京医科歯科大学・難治疾患研究所/脳統合機能研究センター・神経病理学分野の岡澤均 教授の研究グループによるもので、7月14日付の国際科学誌「Scientific Reports」に掲載される。アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患は、細胞の内外に異常タンパク質が蓄積することが特徴として挙げられる。この異常タンパク質を除去する細胞機構の1つとして、細胞の自食機能であるオートファジーがある。オートファジーには、常に働いている基礎的オートファジーと、カロリー制限などで活性化する誘導性オートファジーの2種類があることが知られている。後者については、脳内においては存在が認められないとする報告がある一方、カロリー制限などによる誘導性オートファジーが異常タンパク質の凝集を除き、症状を改善するとの報告もあり、神経細胞における誘導性オートファジーの有無は決着がついていなかった。同研究では、神経細胞における誘導性オートファジーの有無を明らかにするため、生きた脳の中の神経細胞におけるオートファジーを観察する技術を開発。マウスの脳内を観察した結果、飢餓誘導性オートファジーが存在することを確認した。次に、オートファジーが病態を抑制するのか、進行させるのかという問題を検討した結果、アルツハイマー病態では飢餓による誘導性オートファジーが亢進しているものの、細胞外から取り込んだベータアミロイドというタンパク質を分解処理できず、アルツハイマー病で侵されやすい脳内部位でベータアミロイドを溜め込むことがわかった。これにより、カロリー制限によってオートファジーを過度に活性化することが、アルツハイマー病態を悪化させるリスクとなることが示唆された。同研究グループは今回の研究成果について「食習慣を通じた認知症予防・治療を進める際に重要なポイントと考えられる」とコメントしており、同成果をもとにしたアルツハイマー病の病態理解と新規治療法開発への応用が期待される。
2015年07月14日東京大学(東大)、キリン、小岩井乳業は3月12日、カマンベールチーズの摂取にアルツハイマー病の予防効果があることを確認し、その有効成分を同定したと発表した。同成果はキリンR&D本部基盤技術研究所、小岩井乳業、東大大学院農学生命科学研究科の中山裕之 教授らの研究グループによるもので、米科学誌「PLOS ONE」に掲載された。これまでの研究で、チーズなどの発酵乳製品を摂取することで老後の認知機能低下が予防されることは知られていたが、それがどのような成分とメカニズムによるものかはわかっていなかった。同研究グループが今回、市販のカマンベールチーズの摂取によるアルツハイマー病への作用を検証した結果、アルツハイマー病モデルマウスにカマンベールチーズから調製した餌を摂取させると、アルツハイマー病の原因となる脳内物質であるアミロイドβの脳内沈着が減少し、脳内の炎症が緩和されることがわかった。さらに、オレイン酸アミドとデヒドロエルゴステロールとう物質が、脳内で異物の排除を担うミクログリアという細胞のアミロイドβを除去する機能と抗炎症活性を促進していることを特定した。これらの物質は乳の微生物による発酵過程で生成されたと考えられている。
2015年03月13日国立長寿医療研究センター(長寿研)は11月11日、アルツハイマー病変の発症前検出に有用と考えられる血液バイオマーカーを発見したと発表した。同発見は同センターと島津製作所などによる共同研究グループによるもので、11月11日に日本学士院発行の英文学術誌「Proceedings of Japan Academy, Series B (PJAB)」のオンライン版に掲載された。現在、アルツハイマー病に特異的な脳内病変は、脳脊髄液検査やPETを用いたアミロイド・イメージングによって検出できるが、前者は侵襲性が高く、後者は大型の設備を要し検査費用も高額になるなどの課題がある。アルツハイマー病の罹患者数は増加の一途を辿っており、早期に病変を検出し、発症予防につなげる安全で簡便な手法の確立が求められている。今回の発見は、アルツハイマー病に伴う脳内変化を、症状が出る前に、血液検査で捉えることに世界で初めて成功したもの。アルツハイマー病の根治薬や発症予防薬の開発に大きく貢献するものと期待される。同センターは今後、さらに多くの検体を対象に、他機関とも共同研究を行い、同バイオマーカーの臨床的有用性を確認していくとしている。
2014年11月11日カリフォルニア くるみ協会(California Walnut Commission:CWC)は10月31日、くるみを取り入れた食事はアルツハイマー病の発症リスク抑制、発症遅延、進行抑制、予防といった有益な効果をもたらす可能性があると発表した。同研究はニューヨーク州立発達障害基礎研究所 発達神経科学研究室長のアバ・チャウハン博士らによるもので、国際科学誌「Journal of Alzheimer’s Disease」の10月号に掲載された。今回の研究はチャウハン博士が率いた過去の細胞培養実験から発展したもので、その実験では、アルツハイマー病患者の脳内で形成されるアミロイドプラークの主成分であるアミロイドβタンパク質による酸化ダメージに対して、くるみ抽出物が保護作用を示すことが明らかとなっていた。今回、マウスの餌の総量のうち6パーセントまたは9パーセントをくるみとした場合の効果を調べたところ、学習能力、記憶力、不安軽減、運動発達において有意な改善が確認された。研究グループによれば、くるみに抗酸化物質が豊富に含まれることが、アルツハイマー病で典型的にみられる変性症からマウスの脳を保護する一因となった可能性があるという。チャウハン博士は「今回の研究結果は非常に有望であり、根治方法が見つかっていない病気であるアルツハイマー病とくるみの関係を調べる今後の臨床試験の土台を築く助けとなります」とコメントしている。
2014年10月31日滋賀医科大学は、アルツハイマー病(AD)の発症を抑制するタンパク質「ILEI」を同定したと発表した。同成果は、同大分子神経科学研究センターの西村正樹 准教授、遠山育夫 教授らと、東京都健康長寿医療センターの村山繁雄 部長らによるもの。詳細は「Nature Communications」に掲載された。アルツハイマー病の分子病態は、脳内のアミロイドβ(Aβ)蓄積により惹起されることまでは分かっているものの、Aβ蓄積の一次的原因の多くは未だに不明であり、分子病態の是正による治療法の確立には到っていないのが現状だ。今回の研究では、Aβペプチド産生の原因物質である前駆体タンパク質(amyloid-β precursor protein:APP)のC末端断片(APP-C99)のAβ非産生経路による分解を促進することで、Aβ産生経路を抑制し、Aβ産生レベルを減少させるタンパク質「ILEI」を発見したという。具体的にはILEIは、培養細胞を用いた解析から、その強制発現により細胞から分泌されるAβレベルを約30%程度減少させ、ILEI発現抑制を50%程度増加させることが確認されたほか、無細胞系の反応では、γセクレターゼがAPPを切断する活性を阻害しないことが確認されたという。また、Aβ産生の直前の基質(直接の前駆体)であるAPP-C99を不安定化し細胞内レベルを減少させることでAβの産生を抑制できること、ならびにILEIは本来、脳において正常な神経細胞が発現し分泌している物質であること、そして認知症のない症例の脳やアルツハイマー病以外の神経疾患症例の脳に比較して、AD例の脳ではILEIのレベルが減少していることを確認。さらに、トランスジェニックマウスを用いた解析から、ILEIを脳に高レベルで発現させるとアルツハイマー病モデルマウスにみられる脳Aβ蓄積と記憶障害を改善できることが確認されたという。今回の結果を受けて研究グループでは、ILEIないしILEI様活性が新たな治療法開発のターゲットになる可能性が示されたとコメントしている。
2014年06月05日