新型コロナウィルスの感染対策につき、世界中で外出制限が増えている。そこで先日終了したオンラインのフランス映画祭「マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル」(MyFFF)が、短編映画59作品を期間限定で無料配信中。今回の無料配信企画は「お家にいよう MyFFF - STAY HOME EDITION」と題し、3月27日(金)夜から実施中。『8人の女たち』『真実』などで日本でも知られるカトリーヌ・ドヌーヴ特別出演作『美味しい美女』をはじめ、淡い初恋を描いた『私たちの愛は誰にも負けない』、ヴァンサン・マケーニュ主演『靄の向こうに』、シャルロット・ル・ボン監督作『ジュディット・ホテル』、ほんのり笑える郊外の若者を等身大で映し出した『真のフランス男』など。30分を超える見応えのあるものから、子どもも楽しめる動物のアニメーションなど様々な作品がラインアップ。ほかにも、「第10回マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバル」で配信された長編作品8作も延長配信中(有料)だ。「お家にいよう MyFFF - STAY HOME EDITION」は4月27日(月)まで1か月間実施中。(cinemacafe.net)
2020年04月01日レ・メルヴェイユーズ ラデュレ(Les Merveilleuses LADURÉE)から、2020年夏コスメが登場。2020年6月26日(金)より発売される。“名画に登場するスター女優”たちに着想レ・メルヴェイユーズ ラデュレの2020年夏コスメのテーマは「メルヴェイユーズたちのシネマ」。オードリー・ヘプバーンやカトリーヌ・ドヌーヴなど、歴史に名を残す魅惑的な女優たちや名作映画からインスピレーションを得たメイクアップコレクションとなっている。スポットライトを浴びたかのようにまぶしく、華やかなイエローの限定パッケージも目を惹く。スポットライトを浴びたように煌めくアイカラー「グリタリング アイカラー」は、きらびやかに輝く女優たちのまぶたをイメージした単色アイカラー。輝度の高いパールを散りばめたオイルリッチなベースが、まばゆい輝きと透明感のある発色で、スポットライトに照らされたかのように煌めく目もとを演出してくれる。しっとりなめらかなテクスチャーでムラなくのび、肌にピタッと密着してくれるのもグッド。カラーは「101 ショータイム」や「105 ハッピー・エンド」など5色。ネーミングにも今季の世界観を反映した。101 ショータイム:星屑を集めたようなプリズムシルバー102 スター:懐かしいきらめきのグリッターセピア103 ストーリーボード:ぐっと大人っぽさを演出するサマーブラウン104 メロドラム:ノスタルジックなダスティパープル105 ハッピー・エンド:幸せを届けるコーラルピンク女優のような表情美が叶うミニチークカラー「プレスト チークカラー N」がミニサイズになって限定登場する「プレスト チークカラー N(ミニ)」は、女優たちの豊かな表情美にインスパイアされたチークカラー。サイズが小さくなっても機能はそのままで、鮮やかな発色で頬を染め上げると共に、毛穴や凹凸をカバーしながら肌になめらかに密着し、女優たちのようにいきいきとした表情美を演出してくれる。カラーは「プレスト チークカラー N」から、人気の10色をセレクトした。01 ジョゼフィーヌ:甘い雰囲気漂うヴァイオレットピンク02 ドラジェ:繊細で儚いパウダーピンク03 ポンパドゥール:女性らしさが香り立つライトピンク06 ボンボン:飴玉のように愛らしいドーリーピンク09 ピュス:しっとりと落ち着いたブラウンベージュ10 カンディードゥ:イノセントを生み出す可憐なピーチ12 クラモアズィ:格調高いプラムレッド16 ラヴァンド:澄みきった美しさのラベンダーピンク17 シャルマントゥ:視線を惹きつけるチャーミングピンク18 リュビ:優しい温かみのある血色を与えるコーラルピンク白く澄み切った肌を演出するフェイスパウダー女優たちのように涼しげな表情を演出してくれるのが「ラスティング プレスト パウダー」。繊細なブルーパールと、蒼白で紫外線カット効果のあるUVパウダーを絶妙なバランスで配合したフェイスパウダーが、赤味、黄味をおさえて“白く澄み切った肌”を叶えてくれる。パウダーは薄膜ながら肌にぴたっとフィット。毛穴や肌の凹凸を補整しながら光を乱反射し、肌表面をふんわりとぼかして、ナチュラルで明るい印象へと導く。皮脂吸着パウダー配合で、余分な皮脂や汗を吸収してくれるのも嬉しいポイント。化粧崩れを防ぎながらつけたての美しさをキープする。【詳細】レ・メルヴェイユーズ ラデュレ 2020年夏コスメ発売日:2020年6月26日(金)※当初4月24日(金)発売を予定していたが、発売を延期。・グリタリング アイカラー 5色 各2,500円+税<数量限定品>・プレスト チークカラー N(ミニ) 10色 各3,000円+税<数量限定品>・ラスティング プレスト パウダー(ケース付き) SPF30 PA++ 1色 4,000円+税<数量限定品>・ラスティング プレスト パウダー SPF30 PA++ 1色 2,500円+税<新商品>【問い合わせ先】レ・メルヴェイユーズ ラデュレTEL:0120-818-727(フリーダイヤル)
2020年03月26日パリのホテルを舞台に繰り広げられるマジカルな一夜の物語を描く映画『今宵、212号室で』より、予告編と本ビジュアルが到着した。主人公マリアをカトリーヌ・ドヌーヴを母にもつキアラ・マストロヤンニ、夫役はバンジャマン・ビオレが務め、元夫婦共演も話題の本作。今回到着した予告編では、結婚して20年、密かに重ねていた浮気が発覚してしまったマリアが、夫リシャールと一晩距離を置くため、近くのホテル“212号室”を訪れる。すると、20年前の姿をした夫、さらには歴代の元カレたちも大集合と、ファンタスティックな一夜が幕を開ける――。そんな不思議な出来事が映し出される本映像。若き夫が言うには、この“212号室”は“民法212条”=「夫婦は互いに尊重し、貞節であること」と関連しているそうだが…。さらに映像と同時に公開されたポスタービジュアルには、ホテルのベッドに並んで物思いにふける2人を写し出す。また夜空の背景が、本作のマジカルな物語を予感させるようだ。『今宵、212号室で』は6月12日(金)よりBunkamuraル・シネマ、シネマカリテほか全国にて順次公開。(cinemacafe.net)■関連作品:今宵、212号室で 2020年6月12日よりBunkamura ル・シネマ、シネマカリテほか全国にて順次公開©Les Films Pelleas/Bidibul Productions/Scope Pictures/France 2 Cinema
2020年03月21日第72回カンヌ国際映画祭のある視点部門で最優秀演技賞(キアラ・マストロヤンニ)を受賞したフランス映画『今宵、212号室で』(原題:Chambre 212)が、6月12日(金)より日本でも公開されることが決定した。マリアは付き合って25年、結婚して20年になる夫リシャールと二人暮らし。ある日、密かに重ねていた浮気がリシャールにばれてしまい、距離を置くためマリアは一晩だけアパルトマンの真向かいにあるホテルの212号室へ。そしてマリアのもとに20年前の姿をしたリシャールが現れ、さらには元カレたちも次々と登場し、愛の魔法にかかった不思議な一夜が幕を開ける――。カトリーヌ・ドヌーヴらが出演した『愛のあしあと』(’11)のクリストフ・オノレが監督&脚本を務めた本作は、シャルル・アズナブールをはじめとするシャンソンの名曲に乗せてパリのホテルで繰り広げられる大人のための軽妙洒脱なラブ・ストーリー。ある日、夫に浮気がばれてしまう主人公マリア役は、マルチェロ・マストロヤンニを父に、カトリーヌ・ドヌーヴを母にもつキアラ・マストロヤンニ。若き日の夫リシャール役には、『アマンダと僕』のヴァンサン・ラコスト。夫役は、フランス・ポップス界の名プロデューサーであり人気ミュージシャン、そしてキアラの元夫であるバンジャマン・ビオレが演じており、“元夫婦による夫婦役”が注目を集めた。ほかにも、『007 ユア・アイズ・オンリー』のキャロル・ブーケらが本作に参加している。『今宵、212号室で』は6月12日(金)よりBunkamuraル・シネマ、シネマカリテほか全国にて順次公開。(cinemacafe.net)
2020年03月04日世界的大女優にしてフランス映画界の至宝といわれるカトリーヌ・ドヌーヴが、実娘で女優のキアラ・マストロヤンニと母娘役で共演を果たして話題を呼んでいる『アンティークの祝祭』。この度、予告編が解禁となった。この度解禁となったのは、ドヌーヴ演じる女性クレールの波乱万丈の人生が、歴史的なアンティークと共に描かれる予告編。「神様が教えてくれたの。今日私は死ぬと思うわ」というクレールの意味深な言葉から幕を開ける。からくり人形、仕掛け時計、肖像画など長年かけて集めてきたアンティークたちが庭に運ばれ、次々と売られていく。その奇妙な行動を聞きつけ、20年ぶりに娘マリー(マストロヤンニ)が帰ってくる。不機嫌なクレール…。2人の間には何があったのか?そして、若かったクレールに起こった出来事とは?自身の終焉を察した主人公の生き様に心揺さぶられる映像となっている。『アンティークの祝祭』は4月下旬よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:アンティークの祝祭 2020年4月下旬よりシネスイッチ銀座ほか全国にて公開©Les Films du Poisson - France 2 Cinéma - Uccelli Production – Pictanovo
2020年02月20日“フランス映画界の至宝”カトリーヌ・ドヌーヴの主演最新作『CLAIRE DARLING』が邦題『アンティークの祝祭』に決定し、4月下旬より公開されることが決定した。「今日が私の最期の日」…ある朝、そう確信したクレール(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、からくり人形、仕掛け時計、肖像画など長年かけて集めてきたアンティークの数々を売って処分することに。売り出されたアンティークたちは、彼女の劇的な生きざまの断片であり、切なく悲劇的な記憶を鮮明に蘇らせるものでもあった。一方、疎遠になっていた娘マリー(キアラ・マストロヤンニ)は、母のこの奇妙な行動を聞きつけ20年ぶりに帰ってくる――。是枝裕和監督の『真実』も記憶に新しいカトリーヌが、実娘で女優のキアラ・マストロヤンニと母娘役で共演を果たし話題を呼んでいる本作。監督は『やさしい嘘』(’03)、『パパの木』(’10)などのジュリー・ベルトゥチェリ。自身の終焉を察した主人公が、半生を共にしてきたアンティークを処分することで浮かび上がる“劇的な人生”と“本当に遺したい思い”を、繊細でしなやかな視点で描き出した。ティファニーやバカラなどの高級アンティークが数多く登場し、自然豊かなロケーションに、ドヌーヴの毅然とした美しさが映える1作。アンティークが見つめ続けた波瀾万丈な人生、その最期の日を描いた人間ドラマがついに日本に上陸する。『アンティークの祝祭』は4月下旬 よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2020年01月22日先月上旬に軽い脳卒中を発症して入院していたカトリーヌ・ドヌーヴが、退院したという。フランスの「ル・パリジャン」紙が伝えた。「カトリーヌ・ドヌーヴが自宅に戻ったのは確かです。できるだけ早く活動を再開するために、身体を休め、回復に努めています」と友人のひとりが語ったとのこと。自宅があるサンジェルマン・デ・プレ付近では、ここ数日でカトリーヌの姿が目撃されているとの報道もある。カトリーヌは11月6日に最新作『De Son Vivant』(原題)を撮影中、体調不良を訴え、脳卒中が発覚。撮影していた場所が病院だったため、迅速な手当てを受けられたという。その後、脳卒中の専門的な治療を受けられるサルペトリエール病院に入院。数週間後にパリ北部の私立病院に転院していた。『De Son Vivant』の撮影は10月11日から9週間を予定していたが、11月25日までにカトリーヌが出演しないシーンを全て撮り終わり、中断している。カトリーヌの調子を見ながら来年はじめには再開するとのことで、具体的な日にちは決まっていない。(Hiromi Kaku)
2019年12月13日ショートフィルム専門のオンライン映画館「ブリリア ショートショートシアター オンライン」(BSSTO)の12月の公開作品が発表された。12月はウィンター&クリスマス特集!横浜で運営されていたショートフィルム専門映画館「ブリリア ショートショート シアター」のブランドを引き継ぎ、国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」が厳選したショートフィルムを毎週公開中の「BSSTO」。12月は、“ウィンター&クリスマス特集”と題して冬ならではの作品を配信。少年が雪だるま作りする姿にほっこりする『スノーマン』をはじめ、ブラックコメディ『メリークリスマス』、『タイタニック』のケイト・ウィンスレットがナレーションを務める感動アニメーション『サンタクロースへの手紙』がラインアップ。いずれも8分ほどの短いストーリーとなっている。『スノーマン』12月5日配信8歳の少年ジャンは、雪だるまをつくるにあたり、父親の助けを求めているが…。『メリークリスマス』12月12日配信親戚一同が集まるクリスマスの夜。アントニオは、ルシアがトイレから戻る5分の間に、皆の前に立ってある話をし始める…。『サンタクロースへの手紙』12月19日配信クリスマス飾りを両手に抱え、近所の家を訪ねた少年。しかし、家の中の女性は「クリスマスなんて来なければいい」と言う。なんとか楽しい気分になってもらおうと頑張る少年の思いとは裏腹に、女性の悲しい経験が明かされる――。カトリーヌ・ドヌーヴ出演作ほか過去作をアンコール配信!また、12月27日(木)~2020年1月5日(日)には、「年末年始アンコール配信」も実施。過去配信作品の中から人気の8作品を、期間限定で一挙アンコール。『真実』でも話題のフランスの名女優カトリーヌ・ドヌーヴが出演するバレリーナの物語『スター誕生』や、『ラブ・アクチュアリー』『メイズ・ランナー』シリーズのトーマス・ブロディ=サングスター出演『軌道上の恋』。さらに、第90回アカデミー賞受賞作『サイレントチャイルド』。2015年カンヌ国際映画祭ノミネート作品『愛は盲目』などがラインアップされている。(cinemacafe.net)
2019年12月06日11月5日、主演作『De son vivant』(原題)を撮影中に軽度かつ限定的な脳卒中を発症して病院に搬送されたカトリーヌ・ドヌーヴ(76)が、3週間経ったいまも入院中だという。「Variety」誌が報じた。カトリーヌは、脳卒中の専門医がいるパリのサンペトリエール病院に入院していたが、現在はパリ北部の私立病院に転院。先週、パブリシストが「調子はいい」と現在のカトリーヌの様子を発表したが、「まだ療養を必要とする」とも述べた。こういった状況により、『De son vivant』の撮影は中断しており、カトリーヌが退院しているとみられる来年初めに再開すると伝えられている。もしくは、カトリーヌの代役を立てる可能性もあると関係者は語っている。「Le Parisien」紙によると、同作の監督エマニュエル・ベルコは、カトリーヌが出演しないシーンは全て撮り終えているという。1960年代から女優として活躍するカトリーヌは、70歳を超えても精力的に出演を続けてきた。2017年には5本、2018年には2本、今年は是枝裕和監督の『真実』を含む3本に出演。「多くのことをしすぎた疲労から脳卒中を起こした」と報じるメディアもあった。(Hiromi Kaku)
2019年11月27日カトリーヌ・ドヌーヴ(76)が非常に軽度の脳卒中でパリの病院に入院したという。カトリーヌの家族がエージェントのクレア・ブロンデル氏を通して声明を発表。「幸いなことに、彼女は運動機能を失っていません。もちろん、しばらくの療養は必要です」とのこと。『シェルブールの雨傘』や『ロシュフォールの恋人たち』を代表作に持つカトリーヌは、これまでに100本以上の映画に出演。76歳になったいまも現役で、つい先月もジュリエット・ビノシュと親子を演じた是枝裕和監督作『真実』のプロモーションで、来日した。さらに、最近はエマニュエル・ベルコ監督の『De son vivant』(原題)の撮影に参加。関係者は、発作は同作の撮影を病院でしていたときに起きたと語っている。ただし、入院しているのはこの病院ではなく、脳卒中を専門的に診察しているサルペトリエール病院だという。同作はここ3週間に渡って撮影を行っていたが、カトリーヌの入院を受け、現在は休止中。フランスのメディア「BFMTV」は、カトリーヌの発作は「多くのことをしすぎた疲労からきたもの」と報じている。(Hiromi Kaku)■関連作品:真実 2019年10月11日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA
2019年11月07日名女優ジュリエット・ビノシュが、是枝裕和監督の最新作『真実』に出演している。本作は是枝監督がフランスに渡ってビノシュやカトリーヌ・ドヌーヴ、イーサン・ホークらをキャストに迎えた作品だが、本企画はそもそもビノシュが是枝監督と一緒に映画を撮りたいと願ったところから企画がスタートした。なぜ彼女は是枝監督と共に映画をつくりたいと思ったのだろうか?彼女は是枝作品のどこに魅力を感じているのだろうか?2011年頃、来日したビノシュは是枝監督に会い、一緒に映画を撮りたいと声をかけた。ビノシュは「それも何度も何度も繰り返してお願いしたんですよ!そこは大事なことです!」と豪快に笑う。「今から振り返って思うのは、あの時は単にディナーの席を囲むとかいうのではなく、是枝さんと一緒に京都に行ったんですよ。そうすると1日ご一緒することになりますから、歩きながらじっくりと話をすることができました。その過程で私は何度も是枝さんに一緒に映画を撮りたいと言いましたし、“言葉の問題で悩んでいるのであれば、私が日本に滞在して撮影したっていいのよ”とも言いました。すると是枝さんはすぐに『撮るのであれば、絶対にフランスに行って撮影したい!』って……その段階で彼にはフランスで映画を撮ることに対する信念がしっかりとあるのだとわかりました」ビノシュはフランスの名だたる監督の作品に出演しているが、台湾のホウ・シャオシェン、イランのアッバス・キアロスタミ、英国のアンソニー・ミンゲラなど海外の映画作家とも繰り返しタッグを組んでいる。「是枝さんは人間として非常にオープンな方で、まるで磁石のように周囲の人を引き寄せる力があります。私はそういう作家の下で共に感情を分かち合いながら映画をつくりたいと思ったのです。映画は頭ではなく心でつくるものだと思っていますから」そして時は流れ、彼女の願いは、フランスで知らないものはいない大女優とその娘を主軸にしたドラマ『真実』として結実した。母と娘の間にはそれぞれの思い出や、言えなかったこと、過去の記憶、ついてきた嘘、隠し事、本音があり、ふたりは時に激しくぶつかり合う。本作はタイトルに“真実”とつけられているが、劇中ではさまざまなドラマや感情が混ざり合うことで観客が“真実とは一体、何なのか”想いを馳せるような展開になっている。「演技とは、私たちが生きている現実の外にある世界ーそこでは時間の観念すらも異なるでしょうーのリアリティに到達することだと私は考えています。俳優が考えたことや感情を基にしながら、そこで見つけたものも取り込んで、役の感情へと自分が到達するわけです。それはとてもスピリチュアルな場所ですし……言ってしまえば、私たちが現在こうしてお話をしている場所とは違う世界なわけです。つまり、この場所に真実があるように、別の世界にも真実があります。私たちは創作を通じて、そんな場所にある真実に迫っていくわけです」だからこそ彼女はいつも「自分の心は何かに囚われていないか?」と自問していると笑顔で語る。「私だけでなく誰もが自分の内面にある感情と向き合っているかどうか確かめる必要があると私は思います。自分に考える自由、感じる自由はあるのか?誰かの虜囚になっていないか?って」ビノシュがこう語るのには理由がある。是枝作品はこれまでも、そして本作でも繰り返し人間の内面に積み重なってきた歴史や記憶、時間を描いてきたからだ。時にそれらは登場人物の行動を左右し、抑圧し、彼らは自分の中に積み重なった記憶や時間と対峙するのだ。「そうですね。私もそのことはずっと感じていました。これは私の予想ですが、是枝さんは子供時代に誰かから受け継いだ“ヘリテイジ(遺産、継承されたもの)”があるのかもしれません。彼は映画づくりを通して、自分の中に蓄積されたものを理解しようとしたり、その影響から回復しようとしているのかもしれません。彼は過去のヘリテイジを持ったまま、いかに生きていくのか?を考えながら映画をつくっているのかもしれません。それゆえ、是枝さんの映画には一種の“メランコリー(ゆううつ)”があります。それは回復されたり癒されたりするようなものではありませんから、物語の中で再びメランコリーを経験して、メランコリーを生きなおすことで、何らかの境地に到達しようとしているのではないでしょうか」本作でもビノシュ演じる脚本家の娘は母や育ててくれた女性の記憶と向き合い、自分と母の、自分自身との関係を変えていく。映画『真実』はフランスの家族や母娘の複雑な関係を描きながら、さらに深いドラマを見せてくれる。ビノシュの言葉を頭の片隅に置いて作品を観ると、思いもよらない発見ができるかもしれない。『真実』公開中
2019年10月18日《取材・文:町山智浩》パリに住むベテラン女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)のもとを、アメリカで脚本家をしている娘リュミール(ジュリエット・ビノシュ)が夫(イーサン・ホーク)と娘を連れて訪れる。是枝裕和監督の『真実』は、全編パリでロケ、セリフはフランス語と英語、ワイルドバンチ製作のフランス映画だ。しかし、是枝作品のファンなら、すぐに気づくだろう。これは『歩いても、歩いても』や『海よりもまだ深く』などで是枝監督が繰り返し描いてきた「中年夫婦が実家を訪れて母親の嫌味を聞かされる」ホーム・コメディの変奏曲だ。特にカトリーヌ・ドヌーヴの「食えない」母親ぶりは、是枝作品の樹木希林を思わせる(二人は共に1943年生まれ)。「そうですね。カトリーヌ・ドヌーヴさんに樹木希林さんを感じたという感想はあちこちから聞いて、なるほどと思いました。意識していたわけじゃないんですけども、できあがって観てみると自分でもなんとなく、意地悪な、辛辣なことを言って、でも、それがウェットにならない感じが共通するなと。だからドヌーヴさんが希林さんに見える瞬間があるんですよね」。ドヌーヴ扮するファビエンヌはフランス映画界に君臨していて、誰も逆らえない。若い監督の映画に出るのだが「あなた、監督さん?」と子ども扱い。それはドヌーヴも同じだ。何しろ、フランソワ・トリュフォー、ロマン・ポランスキー、ジャック・ドゥミー、ルイス・ブニュエル…と世界の映画史上の巨匠たちと仕事をしてきたのだから。「すごいですよね。そこにラース・フォン・トリアーとレオス・カラックスまで加わるんですから」ドヌーヴは自分でトリアーに手紙を書いて、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の役を得た。「あの年齢でもチャレンジ精神旺盛なんです。彼女は会うと必ず、『あなた、あの映画観た?』って新しい映画の話をするんですよ。去年から今年にかけては、イ・チャンドン監督の『バーニング』とか、『あなた、ジャ・ジャンクーの新作は観た? あれはすごかったわよ』って、必ず彼女のほうから振ってくるんですよ。ちゃんと劇場で観てるんですよ。そのくらい新しい映画作家との出逢いをいち映画ファンとしても非常に大事にしてて、決して老いないんですよ」。最初は『真実』というタイトルではなかったファビエンヌは自伝を発表するが、それを読んだ娘リュミールは「嘘ばっかりね」と指摘する。ファビエンヌが語る映画史的記憶も、どこまでが本当かわからない。この映画のファビエンヌはドヌーヴ自身と重なる部分が多く、どこまでが事実でどこからがフィクションか、虚実皮膜で面白い。「脚本を作る段階で何度かドヌーヴさんに長いインタビューをさせてもらいました。彼女が最初にお芝居をし始めた時の話とか、娘さん(マルチェロ・マストロヤンニとの間に生まれたキアラもまた女優)との関係とかをいろいろ聞いて、もちろん、そのままではないんですが、脚本に反映させていきました。たとえば『ドヌーヴさんの俳優としてのDNAを受け継いでいる俳優はいますか?』という質問をした時に、『うーん、フランスには一人もいないわ』と答えたのがカッコよくて、セリフにして使わせてもらったり」そもそも企画段階ではドヌーヴの役はファビエンヌではなくカトリーヌで、タイトルも『カトリーヌの真実』だった。「でも、ドヌーヴさんから『役名はカトリーヌじゃなくて、私のミドルネームのファビエンヌにして』と言われたんです。『そういうスタンスなのかな』と思いました」。つまりある程度は自分自身だと。「『この役は全然あたしとは違うわ』って最初から言ってましたけどね」。演技スタイルも役そのもの娘リュミールが「嘘ばかりね」と言うのは、自伝のなかではファビエンヌはいい母親ぶっているが、実際は仕事を優先して、ロクに子育てをしなかったからだ。そのため、娘との関係は今もよくない。また、真面目な娘と、勝手気ままな母親とは性格も合わない。それは娘を演じるジュリエット・ビノシュとカトリーヌ・ドヌーヴの演技スタイルとも重なる。「ジュリエット・ビノシュは、すごく役作りに時間をかけて、その役の気持ちを理解することにとても神経をつかうのが、彼女の持ち味だと思うんです。だから変更があることに慣れてない。僕が変更点のメモを渡すと『そういうのは、私は二週間前に渡されないと無理なのに』って言われましたよ」。「でも、ドヌーヴさんはもともと台本読まないで現場来るから(笑)。その日の朝に初めて台本読むから、変更したことすらわからない(笑)。だから、いくら変えても全然OKでした。それは助かりました。ドヌーヴさんはほとんどそのまま現場に来て、その場でセリフ覚えて、瞬間的に役をつかまえるんですよ。準備しないんですよ。ただ、それが非常に的確。役のつかみ方が本当に動物的だけど、ピンポイントでつかんで、一回OK出たら、『今のがベストよ』って自分で言っちゃう(笑)。『今の以上にはできないから、これで終わり』って。仕事してみて、非常に感覚的な人で、面白かった。大変だったけど(笑)」。ドヌーヴのアイデアを物語に反映『真実』の劇中劇、ファビエンヌはSF映画を撮影している。ヒロインは持病の関係により、地球外の惑星で過ごしているため、歳を取らず、ある日地球に帰ると娘は70代になっている。その娘を演じるのがファビエンヌだ。「ファビエンヌの亡くなったライバルが若くして亡くなったことで彼女のイメージのなかではいつまでも歳を取らない、それを重ねてみようかなと」。ファビエンヌのライバルだった女優サラは若くして亡くなった。娘リュミールは「サラおばさんのほうがママよりも私に優しかった」と言う。それを見ていて思い出すのは、ドヌーヴの姉フランソワーズ・ドルレアックである。ドルレアックは『リオの男』(64年)が世界的に大ヒットし、ドヌーヴとは『ロシュフォールの恋人たち』(67年)で共演したが、その直後に交通事故で亡くなった。「いや、サラとファビエンヌには血縁関係はないんです。あれはフランス語でマレーヌと言っています(代母と訳される、両親がいない時に世話をしてくれる後見人)。ドヌーヴさんが『フランスには血縁がない叔母のようなマレーヌという存在があるので、それにしたらどうか』とアイデアをくれたんです」ファビエンヌは演技ではサラに勝てなかった。70歳を過ぎた今でもサラの存在を感じている。それは微妙で絶妙の映像で表現される。「あれを思いついたのは撮影監督のエリック・ゴーティエで、僕の指示じゃないです。脚本には書いてない。いくつかのシーンで僕はエリックに『サラが見ていることを示すカットを撮りたい』と言ったんですが、それを意識的に、あのように映像にしたのはエリック。脚本はそこまで書いてない。エリックは読み込みが本当に深くて」。是枝流の“感動”は今回も健在『真実』の母と娘の葛藤は、意外な感動を迎える。それが真実だったのか、と観客が感動の涙を流そうとすると、その感動が観客に染み入る前に、さらにひっくり返される。そのへんがいかにも是枝タッチである。「現場で撮影を続けるうちに、ビノシュが『私が演じるリュミールがどこかで能動的に動いたほうがいいと思う』と言ったんです。それで彼女が脚本家であることを活かした最後の展開を思いつきました。あれで真実というものが揺らぐというか、より重層的になっていくから。いや、曖昧にしたいわけじゃないんですが。あのセリフはリュミエールが母親を感動させるために書いただけじゃなくて、リュミエール自身の本当の気持ちだったかもしれない。そういう見え方がするといいかなと」真実には嘘があり、嘘の中に真実がある。でも、観客はもっとストレートな感動を求めているのでは?「プロデューサーには『もっと感動を引き延ばせ』と言われましたが、『いや、違う。それはそうじゃないんだ』と説得したんですよ(笑)」。(text:町山智浩)■関連作品:真実 2019年10月11日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA
2019年10月17日是枝裕和監督初の国際共同製作映画『真実』(公開中)の公開記念舞台挨拶が14日、都内で行われ、日本語吹替版で声優を務めた宮本信子、宮崎あおい、佐々木みゆ、是枝監督が登壇。宮本と宮崎は、史上初のワールドカップ決勝トーナメント進出を決めたラグビー日本代表を称えた。昨年のカンヌ国際映画祭で日本映画21年ぶりの快挙となる最高賞“パルムドール”を受賞し、 『万引き家族』が興行収入46億を超える大ヒットとなった是枝監督。長編14作目となる最新作にして初の国際共同製作映画『真実』は、カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュが演じる母と娘の間に隠されたある「真実」を巡る物語で、全編フランスにて撮影された。舞台挨拶では、本作にちなんで最近知って驚いた真実についてトークを繰り広げた。宮本は「昨日のラグビー、日本はものすごい強いんだっていう真実を見て、手のひら真っ赤になって応援しておりました。これが真実なんだなって」と興奮気味に語り、「頑張ってもらいたいです」とエール。宮崎も「私も昨日、拍手していました! わー! やったーって」と笑顔で話した。宮本はカトリーヌ・ドヌーヴの声、宮崎はジュリエット・ビノシュの声を演じ、2人とも本作で洋画吹き替えに初挑戦。宮本は「本番のときに是枝監督がいらして演出をしてくださるんだと思っていたんです。ところが、僕じゃないんだよって」と、是枝監督とは別に吹き替え版の監督がいることを知らず驚いたそう。宮崎も「そう思っていました」と言い、是枝監督は「うまく伝わっていなかったみたいで。申し訳ありません」と謝っていた。
2019年10月14日フジテレビの三田友梨佳アナウンサーが14日、都内で行われた是枝裕和監督初の国際共同製作映画『真実』(公開中)の公開記念舞台挨拶で司会を務めた。昨年のカンヌ国際映画祭で日本映画21年ぶりの快挙となる最高賞“パルムドール”を受賞し、 『万引き家族』が興行収入46億を超える大ヒットとなった是枝監督。長編14作目となる最新作にして初の国際共同製作映画『真実』は、カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュが演じる母と娘の間に隠されたある「真実」を巡る物語で、全編フランスにて撮影された。舞台挨拶には、是枝監督のほか日本語吹替キャストが集結し、カトリーヌ・ドヌーヴの声を演じた宮本信子、ジュリエット・ビノシュの声を演じた宮崎あおい、ドヌーヴの孫娘役の声を演じた佐々木みゆが登壇。三田アナが4人に質問しながらトークを繰り広げた。本作のタイトルにちなんで「最近知って驚いた真実は?」という質問も。宮本は「昨日のラグビー、日本はものすごい強いんだっていう真実を見て、手のひら真っ赤になって応援しておりました」とラグビー日本代表が強いという真実に興奮。宮崎は最近ハマっているシフォンケーキ作りで「こんなにオイルが入っているんだ」という真実に驚いたという。佐々木は「カトリーヌ・ドヌーヴさんが見た目は怖そうだったんですけど、舞台挨拶ですごい優しい人なんだなって思ったのが真実です」と語った。そして、是枝監督の順番になって三田アナが「監督はいかがでしょうか?」と尋ねると、監督は「三田さんはいかがですか?」と逆質問。三田アナは「私ですか!?」と驚きつつ、「先日是枝監督にインタビューさせていただいたときに、世界で注目されている監督ですから怖いのかなと思ったんですけど、とっても気さくで『三谷幸喜みたいなこと言えなくて』ってずっとおっしゃっていて、とっても素敵で温かい方だなというのが私の真実です」と答えた。是枝監督は「そうなんだよね。三谷さんずるいよね。監督はみんなあんな風に面白いことが言えるって思われるとちょっと困っちゃうよね」と佐々木の方を向くと、佐々木は「監督も言ってください」とリクエストし、会場から笑いが起こった。
2019年10月14日女優の宮崎あおいが14日、都内で行われた是枝裕和監督初の国際共同製作映画『真実』(公開中)の公開記念舞台挨拶に、宮本信子、佐々木みゆ、是枝監督とともに登壇。最近シフォンケーキ作りにハマっていると話した。昨年のカンヌ国際映画祭で日本映画21年ぶりの快挙となる最高賞“パルムドール”を受賞し、 『万引き家族』が興行収入46億を超える大ヒットとなった是枝監督。長編14作目となる最新作にして初の国際共同製作映画『真実』は、カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュが演じる母と娘の間に隠されたある「真実」を巡る物語で、全編フランスにて撮影された。日本語吹替え版でジュリエット・ビノシュの役を演じた宮崎は、洋画吹き替え初挑戦。「こういう形で作品に参加させていただいて舞台挨拶をするのは初めての経験で、すごく新鮮な気持ちです」と心境を告白。「DVDをひたすら見て、ビノシュさんがどういう表情でセリフを言っているのか焼き付けました。何が正解かもわからないスタートだったので、どうしたらいいかわからず」と戸惑いを明かすも、「収録自体はとても楽しくて、勝手にビノシュさんと同じ気持ちを共有できているような気持ちになりました」と振り返った。また、本作にちなんで最近知って驚いた真実を聞かれると、「最近シフォンケーキを作るのにハマっていて、こんなにオイルが入っているんだとか、材料に何を使っているのかわかったときに、オイルはなくしてみたいなとか、豆乳を使ってみようとか、米粉にしてみようとか、自分で試行錯誤しながら一番ベストなシフォンケーキを研究していて、抹茶とかきな粉とかアールグレイとかいろんな味を作っている」とエピソードを披露。「オイルをいっぱい使っているんだって思ったのが“真実”です」と話した。舞台挨拶では、フジテレビの三田友梨佳アナウンサーが進行を務めた。
2019年10月14日今年のカンヌ国際映画祭にて審査員満場一致で最高賞のパルムドールに輝き、オスカー前哨戦ともいわれるトロントやニューヨークなど各映画祭で絶賛&受賞を重ねているポン・ジュノ監督最新作『パラサイト 半地下の家族』。来る第92回アカデミー賞でも有力視されている本作は、近年、名匠や気鋭監督たちがこぞって取り上げる国境を越えた共通のテーマを浮き彫りにしている。全員失業中の貧しい一家とIT企業を経営する裕福な社長一家という、相反する2つの家族の出会いから想像を遥かに超える展開へと加速していく物語は、すでに韓国では1,000万人突破、フランスでは160万人突破ほか、各国で動員記録を塗り替える驚異的な盛り上がりをみせている。ソン・ガンホが父親を演じるキム一家は、窓を開ければ目の前に地面、日の光もほとんど入らず、水圧が低いために家の一番高い位置にトイレが鎮座する“半地下”の家での生活から抜け出せずにいる。彼らの極貧生活が、豪邸をかまえるパク社長一家との出会いでどのように変化していくのか、気になるところだ。そんな本作は貧富格差はもちろん、学歴社会、雇用問題など…いま世界が直面している問題への痛烈な批判を内包しつつ、ユーモア、サスペンス、アクションなど、あらゆる要素を融合させながら、ツイストの効いた展開で超一級のエンターテインメント作品として描かれている。ポン・ジュノ監督はカンヌの受賞式で、「世界の人たちにどこまで伝わるかがわからなかった。だが家族の問題というのは、どこの国でも共通なのだと思った」と語った。次に挙げる作品群もまた、いま世界が注目する監督がそれぞれ全く異なったアプローチで描く、貧富の両極化の中でもがく“どこにでもいる普通の人々”の姿。決して他人事ではない普遍性のあるテーマだからこそ、個性豊かな作品を貫く共通テーマに注目してみてほしい。●カンヌ、昨年のパルムドール『万引き家族』是枝裕和監督(’18)様々な“家族のかたち”を描き、今年はカトリーヌ・ドヌーヴやジュリエット・ビノシュらを迎えた『真実』が公開される是枝監督が、実際の事件に着想を得て“犯罪でしか繋がれなかった家族の絆”を描いた。昨年、カンヌ国際映画祭の審査委員長を務めた女優ケイト・ブランシェットから「見えない人々(Invisible People)に声を与えた」と評された本作を、是枝監督は「社会的、政治的問題を喚起する目的で映画を作ったわけではない」としながらも、「通常の枠を超えて多くの人のところに届いている」と実感を込めて語っていた。●ヴェネチアで最高賞『ジョーカー』トッド・フィリップス監督(公開中)「バットマン」の悪役ジョーカーの誕生秘話を、ホアキン・フェニックスを主演に迎え、オリジナルストーリーで描いた。ゴッサムシティという架空の街を舞台にしながら、両極化が進み、理不尽がまかり通る社会体制からはみ出した存在にフォーカスしている点も興味深い。第79回ヴェネチア国際映画祭にて金獅子賞を受賞し、アカデミー賞の最有力候補の1つとされている。フィリップス監督はヴェネチアの記者会見で、アーサー/ジョーカーという存在について「彼のゴールはあくまで『人々を笑わせたい』、『世界に喜びをもたらしたい』ということだったんだ。でもそれが様々な出来事が重なって、まったく異なる結末になってしまうんだ」と、格差社会をはじめとする様々な要因がジョーカー誕生の背景にあることを明かしていた。●全米で記録樹立『アス』ジョーダン・ピール監督(公開中)『ゲット・アウト』でアカデミー賞脚本賞に輝いたジョーダン・ピール監督の最新作。自分たちとそっくりな存在と対峙する、裕福な黒人一家の恐怖を描いたサスペンススリラーだ。全米では前作を上回る、週末興行収入ランキング初登場1位を記録。オリジナル・ホラー作品のオープニング記録、オリジナルR指定作品のオープニング記録の歴代1位をそれぞれ更新した。ピール監督は、本編冒頭に象徴的に登場する“貧困層やホームレスを救おう”と銘打った1986年のチャリティーイベント「ハンズ・アクロス・アメリカ」に触れ、「その頃から、アメリカの貧富の差は拡大していった。貧困層もホームレスも急激に増えていった」とふり返っている。●カンヌ・ある視点部門グランプリ『ボーダー 二つの世界』アリ・アッバシ監督(10月11日公開)醜い容姿のせいで孤独を抱えながらも人並外れた嗅覚を持つ女性が、奇妙な男との出会いにより人生を変える事件に巻き込まれる様を描く。善悪、美醜、性別、貧富…様々なものに境界線が引かれた世界のいまを浮き彫りにし、第71回カンヌ国際映画祭ある視点部門のグランプリ受賞。イラン系デンマーク人の新鋭アリ・アッバシ監督と、『ぼくのエリ 200歳の少女』原作者のヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストが共同で脚本を手掛けた本作。監督は「この作品は自分自身のアイデンティティを選ぶことができる人についての映画」とその魅力を語っている。●引退を撤回して描きたかった物語『家族を想うとき』ケン・ローチ監督(12月13日公開)第69回カンヌ国際映画祭(2016年)のパルムドール受賞作『わたしは、ダニエル・ブレイク』を最後に映画界からの引退を表明していた英国の巨匠ケン・ローチが、それを撤回してまで描きたかったのは“現代の家族の姿”。第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された。夫は宅配業者とフランチャイズ契約を結んだ個人事業主、妻はパートタイムの介護士。ギリギリの生活を送る主人公家族は、「ウーバーイーツ(Uber Eats)」などのギグエコノミー(インターネットを通じて単発の仕事を受注する)の浸透や、コンビニのフランチャイズ店オーナーの24時間営業問題、ブラックバイトや過労死にも繋がる長時間労働問題など、いまの日本にも通じるタイムリーさも。ローチ監督は是枝監督とNHKの番組で対談を行い、『誰も知らない』や『万引き家族』に「通じるものがある」と語っている。『パラサイト 半地下の家族』は2020年1月、TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:アス 2019年9月6日よりTOHO シネマズ 日比谷ほか全国にて公開©2018 UNIVERSAL STUDIOSジョーカー 2019年10月4日より全国にて公開© 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved” “TM & © DC Comics”ボーダー 二つの世界 2019年10月11日よりヒューマントラストシネマ有楽町・ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開©Meta_Spark&Kärnfilm_AB_2018家族を想うとき 2019年12月13日よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開©Joss Barratt, Sixteen Films 2019
2019年10月14日『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭・最高賞パルム・ドールを受賞した是枝裕和監督。その次作となったのは、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークらをキャストに迎えた『真実』だ。パリを舞台にした本作は、実際に監督自身がフランスに渡り、海外のスタッフとともに手がけている。ドヌーヴが演じるのは、自身のイメージに近い大女優ファビエンヌ。物語は、自伝『真実』の出版を控えたファビエンヌのもとに、ビノシュ演じる娘と、ホーク演じる、その夫がアメリカからやってくるという状況が描かれる。だが、自伝出版を祝うために来た娘は、その自伝に“真実”が書かれていないと主張。それを発端に、長年わだかまっていた家族たちの想いと軋轢とが表面化していく。ドヌーヴ、ビノシュといえば、それぞれの世代でフランスを代表する俳優。そのふたりが母娘を演じ、さらに是枝演出と混じることでどのような化学変化が起きるかが、本作の大きな注目ポイントだろう。カンヌでの受賞によって、是枝監督作品は観られる機会が増え、海外の著名な俳優が出演したいと思うような状況が生まれている。フランス・日本共同制作となり、フランスで撮られた本作だが、監督は今回フランス映画だということを強く意識はせずに撮影に臨んだのだという。カンヌで最優秀主演男優賞を受賞した『誰も知らない』や、『万引き家族』に代表されるように、社会における様々な問題をテーマに、シリアスでナチュラルな雰囲気の作品を手がけることが多い是枝監督。本作でも愛憎渦巻く家族の問題を描きながら、「自分の中でも最も明るい方へ振ろうと決めて現場に入りました」とインタビューで語っているように、その軽快なアプローチにも期待だ。『真実』公開中
2019年10月13日第71回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作『万引き家族』(18)の是枝裕和監督にとって初の国際共同製作映画となる『真実』が10月11日に公開を迎えた。本作で来日した世界的スター、ジュリエット・ビノシュと是枝監督を直撃し、日仏合作映画ならではの制作秘話や、大女優カトリーヌ・ドヌーヴとの撮影エピソードを語ってもらった。ドヌーヴが演じる主人公は、奔放でわがままな大女優ファビエンヌ。彼女の自伝の出版祝いに、アメリカ在住の娘リュミール(ジュリエット・ビノシュ)一家が、フランスに住む母を訪ねてくる。そこで、母と娘の間に隠された“真実”が明かされていく。本年度のヴェネチア国際映画祭で、日本人監督初のコンペティション部門オープニング作品として上映された本作。日本語吹替版声優は、ファビエンヌ役を宮本信子が、リュミール役を宮崎あおい、リュミールの娘、シャルロット役を『万引き家族』の佐々木みゆが務めた。――是枝監督は本作で、女優というものをとことん掘り下げつつ、母と娘の葛藤など、女性の心のひだをとても繊細に描いています。男性の是枝監督が、どうすればこんなにリアルな女性像を紡ぎ上げることができるのでしょうか?ビノシュ:それは是枝監督が、男装した女性だから(笑)。きっと是枝監督のなかに“おばちゃん”がいるんです。是枝監督:そうです。僕の中に、大事に育てているおばちゃんがいます(笑)。でも、おじさんもいますよ。――そう聞いてすごく納得してしまいそうですが、本当のところ、どういうテクニックを使われたのでしょうか?是枝監督:たとえば僕が弁護士の話を書く際には、弁護士事務所に通って取材をしますが、今回もそのプロセスで言うと、女優の話なので、ドヌーヴさんやビノシュさんのご自宅におじゃまして、長い時間をかけて話を聞かせてもらいました。ドキュメンタリーじゃないから、そのままを引用したわけじゃないけど、彼女たちから、自分の母親や娘さんとの関係などをいろいろ聞いて、それを脚本に取り入れました。――是枝監督の作品は、ナチュラルな口語体の台詞が印象的ですが、今回はフランス語の脚本に仕上げるために“翻訳”というフィルターをかける必要があったかと。やってみていかがでしたか?是枝監督:実は日本語ってすごくいい加減な言語で、主語がなかったり、時制がぐちゃぐちゃだったりしますが、映画だとむしろそのほうがリアルな台詞になります。でも、フランス語に訳す時、全部をきちんとした時制に戻さないといけなくて。通訳さんに戻してもらった脚本をみんなで読んでもらい、そこから修正を加え、なるべくリアルに仕上げていくという作業をしました。そこはちゃんとやれたんじゃないかなと思っています。――ビノシュさんは、是枝監督の脚本を読んで、どんな印象を受けましたか?ビノシュ:まず、是枝監督が、フランスの世界に溶け込もうとしているのを脚本から感じました。ただ、確かに言語のニュアンスの違いはあったと思います。――それはどういう違いでしょうか?ビノシュ:具体例を挙げると、日本人は謝ることが多いのですが、フランス人はめったなことで謝りません。通訳さんは、日本語の脚本の一語一句全てを丁寧に訳してくださいますので、たとえば「すいませんが」から始まる台詞をそのままフランス語に訳すと、謝罪から始まる形になります。私たちフランス人からすると「なぜ、いきなり謝るのか?」となってしまうわけです。また、カトリーヌは非常にタバコ好きですが、あれはフランス人のスタンダードではないです(笑)。私はあれほど吸いません。現場では、是枝監督もかなり苦労されていましたね。――ドヌーヴさんは、劇中だけではなく、もともとヘビースモーカーだったということですね。ちなみに是枝監督は喫煙者ですか?是枝監督:僕はタバコを吸わないので、あの状態が2カ月続いたら死ぬなと思いました(苦笑)。でも、途中から苦にならなくなったことに、自分でも驚きました。ビノシュ:カトリーヌは、撮影現場にもタバコを吸いながら来ますが、たぶん緊張をほぐすのに、必要なんだと思います。でも、エレベーターのなかでも、禁煙の場所でも吸っちゃいますね(笑)。――吸ってはいけないところでも吸われるのですね! 撮影に支障はなかったのですか?是枝監督:車の窓が閉まっている中でも吸われていて「大丈夫よ、本番になったら消すから」と言われまして、「用意!」と言う直前でようやく消すんです。そのあと、車内の煙をみんなでパタパタ追い払わなきゃいけなくて。そこから撮影を始めるまでに、かなり“間”が必要でした(苦笑)。――なるほど。それは大変でしたね。ビノシュ:ただ、カトリーヌがヘビースモーカーなので、私はタバコを利用して彼女と仲良くなろうとしました。フランス語で「あなた」という二人称は、親しみを込めた“tu”と、少し距離を置いた感じで、相手を敬う“vous”と2種類ありますが、カトリーヌは誰に対しても“vous”を使います。私は彼女との距離を縮めたかったので、「タバコを1本貸してください」と声をかけたんです。――そこから会話を広げようとしたわけですね?ビノシュ:そしたらカトリーヌから「貸してと言っても、返さないでしょ」と言われまして。私は「1本貸してくれたら箱で返しますから」と言ったら、リハーサル中にポンと1本投げてくれました。1週間後に約束どおり、タバコを1箱返しに行ったら「これは私の銘柄じゃないわ」と言われましたが、このやりとりで少しだけ距離が縮まりました(笑)。ヴェネチア国際映画祭での上映が終わったあとも、彼女に近づいていったら「タバコ、欲しいんでしょ?」と言って、私にくれたんです。――まさにドヌーヴさんは、ゴーイングマイウェイなファビエンヌそのものですね。是枝監督:確かにドヌーヴさんに取材した内容はかなり投影されています。また、ビノシュさんが母親と娘の話をしていたとき「もしかするとファビエンヌは、映画のなかで母親役を演じるために、リュミールを産んだのかもしれないわね」と言われて。僕は「そうかもしれませんね」と言いながら、女優さんて怖いなと思いつつ、「リュミール自身が、母に対してそう思っちゃったかもしれないですね」という話にもなりました。それをヒントに、母と娘のわだかまりを描いていきましたが、女優が役とどう向き合い、役作りをしていくのかというビノシュさんの話は非常に面白かったです。ビノシュ:私は普段から「女優とは何か」を考えていますから。でも、是枝監督と演技論をいろいろ闘わせたんですが、私の言ったことはあまりシナリオに入ってない気がしますよ。カトリーヌの言ったことをより多く入れられていますよね?是枝監督:アハハハ。そんなことはないですよ。目に見えない氷山の下のほうに、ちゃんと入っていますから。――是枝監督にとっては、初の国際共同製作映画となりましが、ビノシュさんは、現場でどんな印象を受けましたか?ビノシュ:是枝監督の演出方法はとてもやさしいハーモニーを大事にするやり方という印象を受けました。是枝監督は、全く言葉が通じないフランスに適用しながら仕事をしなければいけなかったけど、実は私も、河瀬直美監督の『Vision ビジョン』(18)の現場で同じような経験をしています。日本での撮影は、そういう協調性のある集団作業ですが、フランスの現場は各セクションがもう少し個人主義で、ある意味、エゴも出てくる現場だと思います。――是枝監督は、そういう現場を楽しめましたか?ビノシュ:フランス人の前では言えないですよね(笑)。是枝監督:日本の場合、スタッフ全員が集まってやる総合打ち合わせを設けるんですが、フランスではそういう習慣がなかったです。カメラマン、美術、衣装などのスタッフは、みんなが1対1での打ち合わせをしたがります。そこは彼らの、プライドだったりもするので、内心では「1回にまとめたい」と思いながらも徹底してやっていきました。ただ、現場に関しては、制作のプロセスも含め、ほぼ自分の思い通りにやれたという自信はあります。■ジュリエット・ビノシュ1964年3月9日、フランス、パリ生まれ。『ゴダールのマリア』(84)で注目され、『ランデヴー』(85)でセザール賞にノミネート。『存在の耐えられない軽さ』(88)でアメリカに進出。『ポンヌフの恋人』(91)でヨーロッパ映画賞女優賞を受賞し、『トリコロール/青の愛』(93)でセザール賞、ヴェネチア国際映画祭女優賞を受賞。『イングリッシュ・ペイシェント』(96)でアカデミー賞に輝く。カンヌ国際映画祭では、『トスカーナの贋作』(10)で女優賞を受賞、『アクトレス~女たちの舞台~』(14)でセザール賞にノミネート。河瀬直美監督作『Vision ビジョン』(18)にも出演。■是枝裕和(これえだ・ひろかず)1962年6月6日、東京都生まれの映画監督。1995年、監督デビュー作『幻の光』でヴェネチア国際映画祭で金のオゼッラ賞を受賞。2004年の『誰も知らない』では、主演の柳楽優弥がカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。2013年『そして父になる』で第66回カンヌ国際映画祭審査員賞をはじめ、国内外で多数の賞を受賞。2014年独立し、西川美和監督らと制作者集団「分福」を設立。『海街diary』(15)はカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、日本アカデミー賞最優秀作品賞他4冠に輝く。『三度目の殺人』(17)は第74回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門正式出品、日本アカデミー賞最優秀作品賞他6冠に輝く。『万引き家族』(18)は、第71回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、第91回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、第44回セザール賞外国映画賞を獲得し、第42回日本アカデミー賞では最優秀賞を最多8部門で受賞。※宮崎あおいの「崎」は「たつさき」。photo L. Champoussin (C)3B-分福-Mi Movies-FR3
2019年10月12日最新作『真実』が公開される是枝裕和監督がメガホンを取り、新火曜ドラマ「まだ結婚できない男」で主演を務める俳優の阿部寛が故・樹木希林と親子役を演じた『海よりもまだ深く』が、10月11日(金)今夜、フジテレビ系で地上波初放送される。『そして父になる』で第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞に、続く『海街diary』では第39回日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝き、2018年の『万引き家族』がカンヌの最高峰、パルム・ドールを獲得と、国内外で作品が高く評価される是枝監督が2016年に世に送り出した本作。主演には『テルマエ・ロマエ』で第36回日本アカデミー賞 最優秀主演男優賞に輝いたのをはじめ『ふしぎな岬の物語』『柘榴坂の仇討』といった作品で日本アカデミー賞を受賞、是枝監督の『奇跡』にも出演している阿部さん。そんな阿部さんと『奇跡』以来の親子役で共演するのが『そして父になる』『海街diary』『万引き家族』と是枝作品の常連となった樹木さん。そのほかリリー・フランキー、池松壮亮といった是枝作品で知られる面々に『モテキ』『焼肉ドラゴン』などの真木よう子、さらに小林聡美、吉沢太陽、橋爪功といった俳優陣が共演。ダメ人生を更新中の中年男、良多(阿部さん)は、15年前に文学賞を1度とったきりの自称作家。いまは探偵事務所に勤めているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳している。元妻の響子(真木さん)には愛想を尽かされ、息子・真悟の養育費も満足に払えないくせに、彼女に新恋人ができたことにショックを受けている。そんな良多の頼みの綱は、団地で気楽な独り暮らしを送る母・淑子(樹木さん)。ある日、たまたま淑子の家に集まった良多、響子、真悟は、台風のため翌朝まで帰れなくなり、“元家族”で一夜を共に過ごすことになるが…といったストーリー。カンヌグランプリに輝いた是枝監督がフランスを代表する名女優であるカトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュやイーサン・ホークらをキャストに、オールフランスロケ、スタッフもフランス人という初の国際共同製作に挑んだ最新作『真実』は10月11日(金)本日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。阿部さん主演の新火曜ドラマ「まだ結婚できない男」は毎週火曜21時~フジテレビ系で放送中。『海よりもまだ深く』は10月11日(金)今夜21時~フジテレビ系で地上波初放送。※「FIVBワールドカップバレーボール2019」延長の際、放送時間繰り下げの場合あり(笠緒)
2019年10月11日是枝裕和監督の最新作『真実』が公開になる。本作は是枝監督がフランスに渡り、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークらをキャストに迎え、初めて組む外国のスタッフと制作にあたった作品で、是枝監督がおし進めてきた“自身をオープンにして、壊して、さらに先へ進む”映画づくりの延長線上にある1作になった。1995年に映画監督として歩きだした是枝監督はある時期から自分ひとりで緻密に考えて創作にあたるのではなく、自分を開いて、予期せぬ出会いや、不安定な要素を意図的に作品に取り込んできた。そのきっかけのひとつは、2011年公開の『奇跡』だという。「あの時に“新幹線で何か映画を”って依頼を受けて(『奇跡』は同年春に九州新幹線が全線開通したことを機に企画された)、最初はこういうのもひとつの手かな、ぐらいの感覚だったんですけど、実際にやってみたらとても面白かったんですよ。もちろん惰性でつくってきたわけではないですけど、どうすれば自分が新鮮でいられるかは考えますし、ずっとオリジナルでやっていると自分が描ける人間や世界が何となくわかってくる。その状況を壊すにはどうしよう? と思ったりはします」偶然か必然か『奇跡』が完成した後に是枝監督はフランス人女優ジュリエット・ビノシュから“何か一緒に映画を撮りませんか?”と提案を受けた。「社交辞令よりはもう少し強い感じで、その頃(彼女には)日本で撮りたい企画があったみたいなんだけど、それには乗っからずにかわしつつ(笑)どうせやるならフランスに行って撮りたかった。自分の制作の環境を変えてみようかなという気持ちがありました」その後も是枝監督の“意図的な変化”は続いていった。福山雅治をキャストに迎えた『そして父になる』、吉田秋生のコミックを原作にした『海街diary』、名優・役所広司と対峙しながら完成直前まで苦しみ抜いて制作にあたった『三度目の殺人』、そして女優・安藤サクラ、撮影監督・近藤龍人から多大な刺激を受けた『万引き家族』……その間もフランスで新作を撮る構想が消えることはなかったようだ。是枝監督は「いつだったか忘れてしまいましたけど、フランス映画祭で来日していたフランソワ・オゾンに“君はフランスで撮っても成功すると思うよ”って言われて……真に受けちゃったって感じです」と笑みを浮かべる。映画『真実』の舞台はパリ。自伝『真実』の出版を控える大女優ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)のもとに、アメリカで脚本家として活動している娘リュミール(ジュリエット・ビノシュ)、その夫でテレビ俳優のハンク(イーサン・ホーク)、ふたりの娘シャルロット(クレモンティーヌ・グルニエ)がやってくる。3人は自伝出版を祝うためにやってきたが、本を読んだリュミールはそこに“真実”が書かれていないことから母と衝突。さらにファビエンヌを支えていた秘書が職を辞してしまい、母と娘はいつも行動を共にすることに。長年に渡ってそれぞれが蓄積してきた不満、言えなかった想い、ウソ、演技、秘密、そして真実が家族の間を行き交う。「最初からこの映画をフランス映画にしなきゃという強迫観念はなかったので“いつもやっている形をフランスで”が基本」と是枝監督は振り返る。しかし、完成した映画はこれまでの是枝作品とリズム、語り口、映像的な視点が大きく変化している。「今回の映画ではこれまでの作品よりは人間と人間を“衝突”させているんです。日本人なら語らずに“…”だろうなという場面でも今回はセリフの数を少し多くして衝突させた方が自然だろうと考えて脚本を書いてます。それに日本語だと主語を省略したりしますけど、日本語からフランス語に翻訳する際に主語を戻して、時制も統一して……すごく言葉の数が増えるんですよ。ただ、カトリーヌ・ドヌーヴはすごく早口で、他の女優よりも同じ秒数で多くの言葉をリズミカルに音楽的にしゃべることができる。だからこのリズムは生かそうと思って撮影していきました。大変だったのは編集で、撮影中に“これがOKテイクだな”というのはほぼ間違えずにジャッジできたと思いますし、ドヌーヴとビノシュは演技の組み立て方も、どのテイクで演技のピークがくるかも違うのでその見極めは丁寧にやったつもりですけど、そのテイクを編集で切り取っていくと、これが本当にベストだったのか、カットが変わるのは本当にこのタイミングでいいのか……編集の段階で改めて全部ジャッジしなおすことになりました。日本語でも“この言葉の途中でカットが変わると気持ち悪い”ってことがあると思うんですけど、僕はフランスの文法がわからないから、監督助手と通訳の方に観てもらいながら修正していって……そこでも映画のリズムは変化したんだと思います」そして何よりも大きな変化は撮影に名手エリック・ゴーティエを招いたことだ。オリヴィエ・アサイヤス、アルノー・デプレシャン、レオス・カラックスらの作品を手がけ、近年はジャ・ジャンクーやアモス・ギタイなど海外の映画作家ともタッグを組む現代の映画界を代表する撮影監督のひとりだ。「エリック・ゴーティエの力は大きいですよね。言葉が通じないので、こちらの意図を伝えるために事前に画コンテを描いて渡してあって、彼はコピーを台本に貼って現場に来てくれたんですけど、芝居を見た後に“カメラをこうやって動かすと、この3カットはひと続きに撮れる”って。確かに日本家屋でそこまでカメラを動かしたら少し気になりそうなところが、まったくそんなことはなくて、カメラを切り返していないのに、ワンカットの中でカメラを切り返しているような画になっていて……これはすごいなと(笑)。だから、ある段階からそこは任せてしまいましたし、結果としてカット数がどんどん減っていったんです。だから今回は画家で言うなら“筆”を変えてみようという感覚ですよね」国が変わり、俳優が変わり、言語が変わって編集のリズムが変わり、撮影監督によって“映画の語り”も変わった。「自分としては変わらない自分なんてなくてもいいと思ってやっていますし、カメラマンが変わるだけでこんなにも文体が変わるのか、など新しい出会いを新鮮に受け止めている感じです。だからこの先、どうやっていくかですよね。この映画もまだ“ファミリードラマ”の枠組みはあるわけで、それをとっぱらった時に何が残るのか? どこまで行けるだろう……ってほどの道を歩いているとは思わないですけど(笑)、次に一体、何を壊したら何が残るんだろう? それでも壊しきれないものは一体、何なのだろう? ってことは考えますよね」映画監督の中にはキャリアをかけて、自覚的にひとつのテーマを追求する人もいるが、是枝監督は意図的に“縛り”や“固定化”を避け、変化し、スクラップ&ビルドを繰り返して“変化し尽くしても変化しないもの”を見つけようとしており、その流れの中に本作もある。この映画は海外で撮った“特別編”でも、外国で活動するための“足がかり”でもないのだ。「そうです。僕の中ではこの映画は『万引き家族』よりも“真ん中”にある映画で、何年か経って振り返った時に“あそこで変化があったんだな”と思えるのはこの映画なんじゃないかと思っています。次へ向かう方向性を決めている作品。でも、それがどちらに向かっているかは……まだわからないんです(笑)」『真実』公開中
2019年10月11日『万引き家族』『パラサイト 半地下の家族』にて、それぞれカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドールを受賞し、東アジアに2年連続の栄冠をもたらした是枝裕和監督と、ポン・ジュノ監督。世界から高い注目を浴びるふたりの鬼才が対談し、互いの作品について鋭い考察や質問を投げ合うオリジナル番組「日韓から『家族』を描く是枝裕和×ポン・ジュノ」が、12日、日本映画専門チャンネルにて放送される。是枝監督作品の常連だった樹木希林や、これからを担う女優・広瀬すずについても語られた。テレビのドキュメンタリーの演出を経て映画監督デビューを果たし、『誰も知らない』『そして父になる』などを発表してきた是枝監督。この11日からはカトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュを迎えた日仏合作の『真実』が公開となった。『ほえる犬は噛まない』で劇場長編デビューしたポン監督は、『殺人の追憶』や『グエムル―漢江の怪物―』などで、日本でもファンを獲得。新作『パラサイト 半地下の家族』は2020年1月に日本公開される。ポン監督の『オクジャ/okja』のとき以来、2年ぶりの再会となったふたりだが、普段から交流はあり、ポン監督のパルムドール受賞の際には、是枝監督からすぐに祝辞のメールが入ったという。ふたりの対談では、矢継ぎ早にポン監督から是枝監督への質問が続いた。『万引き家族』の海辺のシーンに感極まったというポン監督。監督が作品を観たのは、樹木希林が亡くなった後のことであり、特別な思いを持って、そのシーンを観たと振り返る。是枝監督は、同シーンでの樹木のセリフにまつわる秘話を明かすとともに、樹木がポン監督の『母なる証明』をとても好きだったと伝えた。また同じく『万引き家族』より、終盤での安藤サクラの演技にまつわる話では、安藤の意外な演技アプローチにポン監督が唸る場面もあった。役者に関しては、ポン監督は「広瀬すずが好きだ」という話も。是枝監督からそのことを振られたポン監督は、『海街diary』での広瀬すずの、作品全体における存在感を絶賛。『三度目の殺人』での成長ぶりにも驚いたと明かすと、是枝監督も将来とても楽しみな女優と評し、「広瀬さんは耳がとてもいいので、きっと外国語もできる。ぜひポン監督の作品での彼女も見てみたい」と希望を口にした。ほかにも是枝監督の子役演出や、互いに脚本も手掛けるふたりの執筆スタイル、『パラサイト~』のセットについて、是枝監督の自伝から絵コンテにまつわる話、外国で映画を撮ることなど、多くを語ったふたり。特に終始、ポン監督からの是枝監督へのリスペクトが印象的で、ポン監督ならではの是枝作品への深い洞察を知ることができる。東アジアを引っ張るふたりの鬼才の濃い対談を聞けるまたとないチャンスだ。「特集・是枝裕和×ポン・ジュノ」と題し、オリジナル番組「日韓から『家族』を描く是枝裕和×ポン・ジュノ」、そして両監督の代表作『万引き家族』(監督:是枝裕和)、『母なる照明』(監督:ポン・ジュノ)を日本映画専門チャンネルにて、10月12日21時より3作品一挙放送される。
2019年10月11日昨年の邦画界において、もっとも注目を集めたニュースのひとつと言えば、『万引き家族』が日本映画としては21年ぶりにカンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを受賞したこと。その是枝裕和監督の最新作ということもあり、映画『真実』が世界中で大きな注目を集めています。本作は是枝組初の海外作品にして、舞台はパリ。さらに、世界を代表する豪華キャストが集結していることでも話題となっていますが、今回は特別にこちらの方にお話をうかがってきました。フランスが誇る名女優ジュリエット・ビノシュさん!【映画、ときどき私】 vol. 266フランス国内のみならず、ハリウッドなど数多くの作品に積極的に出演しているビノシュさん。本作では、大女優カトリーヌ・ドヌーヴさんとの初共演が実現するだけでなく、なんと母娘役を演じています。そこで、女優としての在り方や映画監督との関係性などについて、語っていただきました。―通常、ビノシュさんは自分のなかに役を落とし込むのに3週間はかけているそうですが、是枝監督といえば、現場でセリフを変更したり、口頭で伝えたりする演出方法を取ることでも知られています。本作でもいつも通りの方法だったとうかがいましたが、つねに変化する現場に身を置かれてみていかがでしたか?ビノシュさんそんなによくあることではないけれど、是枝監督だけではなく、直前に脚本を変える監督はほかにもいるので、これまでも変更したものを撮影の朝に突然渡されるということがありました。でも、小さな変更だったら私も特に気にしません。そういう意味では、今回の場合も是枝監督はちょっとした変更の積み重ねだったので、まったく問題ありませんでしたよ。ただ、私のように準備をきちんとしたいタイプの俳優にとって困るのは、大幅なセリフの変更があるときです。―実際、それによって何か問題が生じてしまったこともあったのでしょうか?ビノシュさんギリギリになって大きくセリフが変わってしまうと、俳優は新しいセリフを覚えているかどうかという記憶のほうに気が取られ、結果的に感情をうまく演技に乗せることができなくなってしまうものなんです。人によっては、「監督にはこういう権限があるんだ」というのを示したい気持ちがあるのかもしれませんが、私からすると、そうすることによって監督はむしろ損をすると思っています。なぜなら、いま言ったように、記憶力に囚われている俳優は、内面の探索が十分にできなくなってしまうから。それよりも、セリフをしっかりと覚え込み、自由になっている俳優のほうが、制限のない演技ができるはずだと考えています。そういった理由から、あまりにもたくさん変更してくる監督に対しては、拒否したこともありました。すごくわかりやすい例を挙げるなら、お祈りをするときにいまさっき覚えた言葉でお祈りしようとすると、覚えているかどうかが気になってまったく没頭できないですよね?それと同じことで、俳優のセリフも何度もかみ砕き、自分に取り込んで初めて、頭で考えることのない感情になれるものであり、そうなったときが一番いい状態なんです。偉大な人ほど権力を振りかざさない―これまでに国を越えてあらゆる現場を経験されているビノシュさんですが、先ほどお話に上がったように、俳優をコントロールしようとする監督というのは多いものなのでしょうか?ビノシュさん偉大な映画監督になるほど、現場で権力を振りかざすことはありません。なぜなら、そういう賢い人たちは、最終的には編集において監督の権限を行使できることを知っているからです。結局、物を言うのは最終段階。どのシーンをカットするかとか、順番を入れ替えるかどうかといったところで監督は自由に権力を行使することができるので、本当に頭のいい監督ほど、あからさまにそういうことをしないものなんですよ。逆に、自分に自信がない若い監督ほど、そうなりがちなところがあるかもしれません。以前、撮影初日のファーストカットの1テイク目で、いきなり私のところにダーッと走ってきて、いろいろと演技指導しようとする監督がいました。最初のシーンであったことと、あまりに突然だったので、「なぜそんなにコントロールしようとするのかしら」と少し驚いてしまった覚えがあります。結局、その監督には「まだ私もリサーチしているところだから、それを探す機会として3テイクは続けてやらせて欲しい。演技指導をしたいならそのあとにしてください」と伝えました。私が思うに、俳優が自分でいろいろと試せる自由があったほうが、“俳優を活かす”という意味でも映画にとっては得だと思っています。―数々の巨匠たちとご一緒されてきたビノシュさんだけに、非常に説得力があります。ビノシュさんただし、もし現場で監督と俳優たちの権力をめぐる闘争のようなものが発生してしまった場合は、俳優のほうが“身を引く”という一種の頭の良さが求められるとは思います。なぜなら、そういった権力闘争は映画にはまったく関係ありませんし、クリエイションを一切生み出さないものなので、必要ありませんよね。私が思うに、映画作りというのは、誰が一番権力を持っているかどうかではなく、オーケストラのように各自が自分の仕事をすることが重要。そのなかで監督や助監督は、指揮者としてみんながちゃんと仕事をできるようにまとめていくことが大切なのです。現場で一番必要としているものは「沈黙」―では、ビノシュさんが現場で大事にしていることは何ですか?ビノシュさん私が一番必要としているのは、「沈黙」。つまり、「静寂である」ということですが、現場で集中するときは、それがひとつのリスペクトの表れだと私は考えています。そして、なぜそれが必要かというと、演技を始めるということは、現実とは違う空間と時間にコネクトしなければいけませんし、ミステリアスな映画の世界に俳優が接触する“神聖な時間”でもあるからです。だから、「アクション!」と声がかかったあとも周りがガヤガヤしているときは、きちんとした演技ができないので、あえて始めずにじっと待つようにしています。そうすると、みんな気がついて、ちゃんと沈黙の状況を作り出してくれるのです。―以前、ビノシュさんが出演された『Vision』で監督を務められた河瀨直美監督に取材させていただいたことがあり、そのときにビノシュさんについてもおうかがいしました。「ストイックでとにかく高い集中力があり、何に対しても逃げることなく向き合う人」とおっしゃっていましたが、実際にお会いしてみてその意味がよくわかります。ビノシュさん河瀨監督の映画の場合は、作品自体が自然をテーマにしていたこともありましたし、現実と想像の世界が混ざり合うような不思議な世界観だったこともあり、集中力の高さが必要とされました。あとは、私は日本語がわからなかったこともあり、共演者たちが何を話しているのかを想像しようとして一生懸命聞いていたというところからくる集中もあったかもしれませんね。河瀨監督は「アクション!」というかけ声を言わず、切れ目なくカメラを回すという特別で素晴らしい撮影方法を取る監督だったので、現実と映画の境目がなく、繋がっているような感覚を味わうことができました。謙虚になってから作品と向き合うようにしている―では、仕事に対してそれほどまでに高い意識を持ち続けられる原動力を教えていただけますか?ビノシュさん私にとって集中力やモチベーションを維持できるのは、それが必要だからです。特に、映画では現実と異なる空間を作らなければならないので、私はそうした世界に“下から入る”という言い方をしています。つまり、すべては内面から発生しているものであり、そのための準備をしているだけなのです。そして、一回下に行くことによって、一度謙虚になり、「これから作品に対して何を奉仕することができるか」という問いと向き合うことになりますが、そこで「私にはこういう考えがあるんです」と拳を上げることも、知識をひけらかすことも私はしません。なぜなら、最初から「私の意志はこうです」とかたくなになっていると、それ以上に感情が入ってくることもありませんし、その時点で中立的ではなくなってしまいますからね。たとえるなら、風船がパンパンの状態だとそれ以上空気は入りませんが、空にしておくと、そこに空気を入れられるのと同じこと。私はそういう状態でありたいのです。インタビューを終えてみて……。35年以上にわたって映画界の第一線を走り続けているビノシュさん。年齢を感じさせない美しさとオーラに圧倒されてしまいましたが、ひとつずつに丁寧に答えてくださる姿にも感銘を受けました。人としての表現力の高さと女性としての佇まいは、永遠の憧れです。母と娘だからこそ生まれる感情を描く!大女優の母と女優になれなかった娘との間にある愛憎を見事に描き出した本作。それぞれの女性たちの生きざまは、同じ女性として、心に響くものを感じられるはず。パリを照らす日差しのような光にあふれる感動を味わってみては?ストーリー自伝の出版を控えていた国民的大女優のファビエンヌ。パリで暮らす彼女のもとに、ニューヨークで脚本家として働く娘のリュミールが家族とともに訪れる。出版祝いをするはずだったが、「本のなかに真実はない」とリュミールは怒りをあらわにするのだった。母と娘の間に隠された嘘と真実とは……。真実に迫る予告編はこちら!作品情報『真実』10月11日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開出演:カトリーヌ・ドヌーヴ『シェルブールの雨傘』/ジュリエット・ビノシュ『ポンヌフの恋人』/イーサン・ホーク『6才のボクが、大人になるまで。』/リュディヴィーヌ・サニエ『8人の女たち』配給:ギャガ©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMAphoto L. Champoussin ©3B-分福-Mi Movies-FR3
2019年10月10日是枝裕和監督がカトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークらを迎えて手掛けた『真実』が、現在開催中の第24回釜山国際映画祭Gala Presentation部門にて上映。さらに、是枝監督が同映画祭のAsian Filmmaker of the year(今年のアジア映画人賞)を受賞したことを受け、授賞式と公式会見、Q&Aに出席した。Gala Presentation部門の公式会見では、海外から訪れた記者も多数参加し、立ち見や、会場に入れない方も出てくるほど大盛況。会見がはじまると、最新作の『真実』について、監督のこれまでのキャリアについてなど、様々な質問が投げかけられ、会見終了予定の時刻となっても、挙手の手が止まることはなく、是枝監督の最新作への注目度の高さが伝わる会見となった。カトリーヌ・ドヌーヴを「いろいろな側面から光を当てて多面的に描く」是枝監督は本作について、「映画の中にいろんな母と娘の関係を登場させたいと思いました。それはある時は、立場が逆転して見えたり、ある時は演じている母親が演じることのなかったライバルにみえたり、庭から聞こえてくる言葉が娘のものだと錯覚したり、いろんな場所で母と娘、娘と母というものを重層的に描いてみたいというのは最初からコンセプトにしていました」とコメント。「それはカトリーヌ・ドヌーヴという女優をいろいろな側面から光を当てて多面的に描く一つの方法だったと思います。あとはやはり、祖母であり、女優であり、母であり、そして娘でもあるそういう事を目指しました」と語った。フランスの子役にも「いつも通り『ささやき作戦』で」また、監督の特徴ともいえるのが、フレッシュな子役への演出。本作に登場するシャルロット役のクレモンティーヌ・グルニエについて、「オーディションで選んだんですけど、日本と同じやりかたをしようと思って、事前に脚本は渡さずにおばあちゃんちに遊びに来たお話だよってことだけ伝えて、あとはいつも通り現場で僕がささやいてそれを通訳の人にささやいてもらう『ささやき作戦』で全部やりました」と明かす。「もともとの台本では学校でいじめられて不登校になっている女の子の設定だったんですけど、あのクレモンティーヌに会って、非常に勝気な女の子で、衣装合わせで夏休みあけに会った時に、『夏休みどこに遊びに行ったの』って聞いたらすごいめんどくさそうな顔して僕の事みて『あそこのおばさん(衣装担当)にさっき話したからあそこのおばさんに聞いてくれ』って(笑)」。そうしたやりとりから、「まさにおばあちゃん(ドヌーヴ)のDNAを受け継いだ孫としての存在として描いた方が面白そうだと思って、そこから脚本を随分変えました」とも語っていた。「尊敬するアジアの映画人から渡されたリレーのバトンだと思って」さらに、毎年アジア映画産業と文化発展に最も優れた業績を残したアジア映画関係者および団体に与えられる「Asian Filmmaker of the Year(今年のアジア映画人賞)」に選ばれた是枝監督。昨年は坂本龍一が受賞したことでも大きな話題となった。授賞式と公式上映に加え、上映後には直接監督に質問ができるQ&Aイベントもあることから、840席の会場がチケット発売開始後から3秒で完売し、当日券も朝一で売り切れとなったという。会場の客層は、20代~30代が圧倒的に多く、是枝監督が劇場の後方扉から客席を通って登場すると、大きな拍手と歓声が巻き起こった。ステージに上がり、トロフィーを受け取った是枝監督は、「こういう形で釜山映画祭に参加が出来て、皆さんの前で喜びの言葉を伝えられることが本当に嬉しいです」と喜びを明かし、「名誉賞をいただくことが増えてきて、そろそろキャリアの仕上げに入っていると思われるのではないかという不安がよぎっています(笑)ただ今回映画作りをご一緒したカトリーヌ・ドヌーヴさんに比べたら、まだまだ駆け出しの若造で、これからの僕の映画人としてのキャリアの道のりは、これまで過ごしてきた25年間よりもさらに長くなるだろうと、長くしたいなと、思っておりますので、これからの作品も頑張って作っていきたいと思います」と今後の抱負を語った。「このトロフィーは、尊敬するアジアの映画人から渡されたリレーのバトンだと思ってしっかり受け止めて、次の世代のアジアの作り手たちに渡したいと思います。いろんな対立や隔たりを超えて、映画と映画をつないでいく役割を担っていければいいなと今日改めて思いました」と最後に明かすと、再び盛大な拍手が巻き起こっていた。続けて、舞台挨拶として「この映画は、母と娘の物語です。いろんな母と娘が作品の中に登場します。ここ数作、重たい作品が続いたので、観終わった後に、気持ちが前向きで明るくなるような、少し遠回りして家までの道を歩きたくなるような、そんな作品を作りたいなと思いました。素直に楽しんでくださいと言える作品に仕上がっていると思います」と、これから映画を鑑賞する観客へコメントを寄せ、笑顔で会場を後にした。“家族はかけがいのないものだけど、やっかい”を描きとることを意識上映後、温かな拍手に包まれながら再びQ&Aにて出迎えられた是枝監督。劇中の登場人物のカット割りを分析して質問したり、監督の過去作からの考察を述べるような猛者が現れたり、監督の言葉に何度もうなずいたりと、熱心なファンたちによって会場はヒートアップ。急きょQ&Aの時間を延長し、最後は監督自ら壇上から観客を当てる形となる盛況ぶり。“映画を撮るときに意識していることは?”という問いについては、「『歩いても 歩いても』をという映画を撮ったときから、常にファミリードラマを撮るときは、“家族はかけがいのないものだけど、やっかいだ”という、その両面をどのように描きとるかは考えています」と返答。“監督は俳優さんたちから自然な演技、自然な雰囲気を引き出すのが素晴らしい”と指摘を受けると、「魔法は使ってないですよ(笑)」と笑顔でコメント。「ただ撮影をしながら脚本を書いていく、撮影して夜編集して、脚本を直して、翌日話してっていうやり方をしているので、現場でよく観察をしていて」と明かし、「例えばドヌーヴさんが『お疲れさま』って皆にハグをして帰るんですけど、良いお芝居ができて帰るときはキスの位置がここからここ(唇近く)に移るんです。それがすごく面白いなって思って、(娘婿の)ハンクにそういうキスをして、それを聞いた妻のリュミールが自分の母親の女の部分に苛立つ、という話は僕が現場でキスされたときの経験を書きました」と打ち明けていた。『真実』は10月11日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。※韓国では12月より公開予定第24回釜山国際映画祭は10月12日(土)まで開催中。(text:cinemacafe.net)
2019年10月07日おとな向け映画ガイドオススメはこの4作品。ぴあ編集部 坂口英明19/10/07(月)イラストレーション:高松啓二今週末に公開の作品は19本。全国100スクリーン以上で拡大上映されるのは『最高の人生の見つけ方』『空の青さを知る人よ』『真実』『クロールー凶暴領域ー』の4本。ミニシアターや一部シネコンなどで上映される作品が15本です。今週は粒ぞろいです。この中から厳選して、おとなの映画ファンにオススメしたい4作をご紹介します。『真実』なにしろ、カトリーヌ・ドヌーヴが主演、その娘夫婦役にジュリエット・ビノシュとイーサン・ホーク。で、監督は是枝裕和。すごいことであります。ドヌーヴ演じるファビエンヌは、フランスの国民的大女優。『真実』というタイトルの自伝を書き終えたところ。ちょうどその本が刷り上がり、出版を祝うため、アメリカから、疎遠だった娘一家がやってきます。新作の映画も撮影中です。大女優ですから、もうすべてわたしがルールブック、言いたい放題、やりたい放題ですが、にくめない存在。役者としてはさすが、の演技をみせます。まさにドヌーヴそのものといえます。娘は、家族のことがどう書かれているか心配です。事前に原稿を読ませてもらう約束をしたのに、母は「あら、送ったわよ。いきちがいね」ととぼける。印刷部数をきくと「10万部」。でも実は5万部。できたばかりの本を一晩かかって娘がチェックをしてみると、ふせんが付く付く、ともかく嘘ばかり。「このどこに真実が?」と母をなじると「事実なんて退屈だわ」と一蹴される。長年にわたって尽くしてくれた秘書について1行も書かれていない。彼女の人生に重要な役割を果たした親友のサラについても。そんなことが、波紋をよんで…。家族のこと、親しいひとたち、女優であることも、実は、書かれなかったことの中に「真実」が隠れているのです。是枝監督作品でおなじみの樹木希林さんが演じても、すてきな映画になったと思います。希林さんに似合いそうなセリフもあります。けれど、ドヌーヴが演じるからこそ、こんなにノーブルで華やぐ作品になったのでしょう。女優を描いた映画ですが、テーマは家族について。「是枝映画」、です。『ボーダー 二つの世界』注意深く紹介をします。その結末にきっと、驚かれると思いますが、そこにふれないように。ひとことでいうと、いままで観たことのない映画です。ショッカーでもホラーでもありません。どちらかというとファンタジーです。主人公はスウェーデンで税関の仕事をしているティーナ。正直、かなり醜悪な顔をしています。違法なものだけでなく、何かを隠しているという罪悪感まで匂いで嗅ぎ取れる、という能力を持っています。税関を通るとき、彼女が怪しいと判断した旅行客はたいていアウトです。ところがある日、彼女以上に醜悪で、怪しげな男が入国してきます。別室に連れていき、仔細に調べるのですが、証拠がでません。彼に、なぜか、どこか惹かれる彼女。後日再会したふたりは…。永遠に歳をとらないバンパイアの少女を主人公にした『ぼくのエリ 200歳の少女』の原作者、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストが原作と脚本を担当しています。異世界的という着想はこの映画も同じです。タイトルはそれを暗示しています。いったい彼女は何者か、なぜそういう顔をしているのか、なぜ超能力をもっているのか、そしてあのシーンとか、あれとか、あー、これ以上はとても言えない。『イエスタデイ』これはアイデアの勝利です。とても面白かったので、感想を何人にも吹聴したのですが、10人中ふたりくらいは、そんなのありえないといいます。12秒間だけ世界規模で謎の大停電がおき、そこから何かが狂う。例えば、ビートルズという存在が世界から消えてしまう。それがなぜか主人公の記憶だけに残っている、というお話です。パラレルワールドものといっていいでしょう。世の中の誰もがビートルズを知らない。自分が持っていたレコードコレクションも消えてしまった。売れないシンガーソングライターのジャックが、彼らの曲を思い出しながら、ためしに歌ってみると、もちろん誰も知らない。そして、聴いた人はみんな、なんていい曲なんだと感動してくれる。それはそうだ、ビートルズなんだから。記憶を掘り起こし、次々とレノン&マッカートニーの曲を発表するジャックはまたたく間に大スターになっていくのです。見方を変えますと、この映画、ビートルズが今デビューしたら、という仮説への答えなのかもしれません。SNS時代、音楽はレコードやCDが全盛ではありません。ジャックはビートルズが考え出したアイデアをそのままやろうとするのですが、うまくはまらないものもあります。そのあたり、逆にビートルズ好きにはたまりません。ホワイト・アルバム?、サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド?、バック・イン・ザ・U.S.S.R.? なるほどと思います。ジャック役のヒメーシュ・パテルが歌う楽曲は30曲近く。観終わって一週間は曲が頭に残ります。ビートルズは偉大だ、と痛感します。『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』こちらもワン・コンセプトの映画です。現代を代表するクリエイターなどに「Why are you creative?あなたはなぜクリエイティブなのか」を訊いたドキュメンタリー。デヴィッド・ボウイ、タランティーノ、ヘルツォーク、ジャームッシュ、ビョーク……。日本人では、北野武、オノ・ヨーコ、山本耀司、荒木経惟。ともかく、著名人なら遠慮会釈なくマイクとカメラを突きつける。これを30年にわたって続けてきたドイツ人ハーマン・ヴァスケ監督の映像記録です。これまでにアタックした人の数は1000人以上。うち107人がこの映画に登場します。アーティストだけでなく、ホーキング博士や法王ダライ・ラマ14世、ネルソン・マンデラ元大統領などのVIP、スイスのダボス会議に現れ、経済人や政治家にも同じ質問をあびせます。突然の問いかけに、とまどいながらも、自分の発想の原点や、発想の仕方などをていねいに話してくれる人が多数。とんちんかんな返答をする政治家もいます。中国の現代美術の巨人、アイ・ウェイウェイの受け答えなんて、さすが、と思いました。アラーキーのインタビューをとるために、カラオケで朝5時まで飲み「あんなに深酒をしたこととはない」とぼやく、ヴァスケ監督の突撃ぶりもユーモラスです。アサヒビールの金のオブジェを作ったデザイナー、フィリップ・スタルクとか、デヴィッド・リンチ、ペドロ・アルモドバル、デヴィッド・ホクニー…、へーっ、こういう風に話す人なんだ、という驚きの連続でもあります。東京は10/12から新宿武蔵野館ほか、名古屋は10/19から名演小劇場、大阪は11/1からシネ・リーブル梅田ほかで上映。
2019年10月07日ジャンルにとらわれずに多方面で活躍する3人のゲストが、それぞれの立場から自由気ままに語り合うトークドキュメンタリー「ボクらの時代」。10月6日(日)放送回は内田也哉子、YOU、是枝裕和監督がてい談を繰り広げる。故・樹木希林さんの娘で、『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』で母役・希林さんの若い頃を演じ第31回日本アカデミー賞新人賞を受賞するなど女優としての活動のほか、エッセイスト、翻訳家、音楽活動と多面的な才能をみせる内田さん。ボーカリスト、作詞家、バラエティでの活躍。是枝監督作『誰も知らない』や「ボイス 110緊急指令室」などで女優としての顔もみせるYOUさん。『そして父になる』ではカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞、『海街diary』では第39回日本アカデミー賞の最優秀作品・監督賞をはじめ各賞を総なめにし、『万引き家族』は第71回カンヌ国際映画祭で最高賞となるパルム・ドールを受賞するなど世界的な存在となった是枝監督。今回と次回の本番組では2週にわたりこの3人による語らいの模様をお届け。内田さんとYOUさんは子どもが同じ保育園に通っていた“ママ友”。そしてYOUさんは『誰も知らない』で是枝作品に出演経験があり、是枝監督は『そして父になる』や『海街diary』『海よりもまだ深く』『万引き家族』などの作品で幾度にもわたり、内田さんの母である希林さんと仕事をしてきた。そんな関係性の3人が11年前、希林さんとYOUさん、是枝監督がてい談した場所に集い、子育てや仕事、人生について語り合う。是枝監督最新作『真実』は10月11日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。是枝監督初の国際共同製作となる同作は、『シェルブールの雨傘』『インドシナ』などのカトリーヌ・ドヌーヴ、『イングリッシュ・ペイシェント』『ショコラ』のジュリエット・ビノシュら世界的名優をキャストに迎えオールフランスロケ、キャストだけでなくスタッフもフランス人のなか、是枝監督がメガホンをとった作品。国民的大女優ファビエンヌが出版した自伝本【真実】、その自伝が母と娘の間に隠された、愛憎渦巻く「真実」をも露わにしていく――という物語で宮本信子、宮崎あおいらが吹き替えを担当する。「ボクらの時代」は10月6日(日)7時~フジテレビで放送。(笠緒)
2019年10月05日是枝裕和監督最新作『真実』のジャパンプレミアイベントが10月3日(木)TOHOシネマズ六本木にて行われ、是枝監督やカトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュといった出演者、さらに本作で吹き替え声優を務めた宮本信子や宮崎あおいらが登場した。今回揃って来日したフランス映画界の至宝であり、本作で母娘を演じたカトリーヌとジュリエットは、監督と共にイベントに登場すると、「皆様、こんにちは。本日はこの場に訪れられたこと、皆様に映画を紹介できることを大変嬉しく思います」(カトリーヌ)、「“コンニチハ”本当にここへ来ることができて、嬉しく思っています。特にカトリーヌとは強い結びつきを持って、演じることができました。彼女のような母を持つことができて幸せでした」(ジュリエット)と挨拶。本作で初の国際共同製作にチャレンジした是枝監督も「ありがとうございます。こんな形で二人と映画を撮るなんて、撮り始めてからも現実味がなく、夢のようなことでした。こうして完成して三人で壇上に並んでいるのが、本当に信じられないです」と思いを明かす。オールフランスロケ、キャストやスタッフもフランス人という環境の中で行われた今回の映画撮影。当時をふり返り、カトリーヌは「最初はお互い言語の違いもあり、通訳を介してのコミュニケーションしかできず、もどかしい想いもありました。しかし徐々に一緒に時間を過ごしていくにつれ、監督の表情や視線を見るだけで、“今のシーンをこう感じているんだろうな”と、色々なことがよく理解できるようになりました」と最初は戸惑いもあったそう。一方、監督は「撮影できるのは1日8時間のみと、日本で撮影している時の半分の時間で、日本の倍くらいの日数をかけて映画を作っていったのですが、リズム感が日本と異なるので、“本当はもっと撮影できるのに!”と思っていましたが、撮影以外の時間も含めて、ゆっくりと同じ時間、場所を共有できたのは本当に良かったです」と日本と異なる部分を明かし、「各国の映画祭などに出ると、凄い二人と映画を撮ったんだな、と思いますが、現場にいる時はひとりの女優さんと監督という関係は変わらないので、お互い信頼関係を築きながら、楽しく良い映画を作るという事だけを考えました」と2人と映画を製作した思いを語った。また、今回のイベントでは、2人の来日を祝して日本語吹き替えを担当した宮本さん(ファビエンヌ役)、宮崎さん(リュミ―ル役)、佐々木みゆ(シャルロット役)が、会場へ駆けつけ、それぞれ花束を贈呈。「このお話を頂いてから、朝から晩まで映画を拝見しておりましたので、ドヌーヴさんに対して、どこか懐かしい方にお会いした感覚がありました。今日はありがとうございます」(宮本さん)、「この場に一緒に立たせて頂けていることが本当に恐縮で、幸せな一日です」(宮崎さん)と対面を喜んだ。実写吹き替え初挑戦となった宮本さんは「声だけを入れる、だからこそファビエンヌがどのような人物なのか理解し、表現するかというのをよく考えて演じさせていただきました」と収録時の思いを述べ、宮崎さんは「このお話を頂いてから、時間の許す限り作品を観て、ずっとビノシュさんを感じていたので、昨日初めてお会いしたときに、本当に涙が出てきそうになって、棒のように固まってしまった姿を監督に笑われました」と喜びを吐露。みゆちゃんも「頑張ってやってみたらすごく楽しくて、嬉しかったです!」と満足気。是枝監督は「みゆちゃんはずっと声のお仕事をやりたいと思っていたみたいなので、僕からオファーが来た時“よし!”って思ったみたいです(笑)」と明かす。続けて「宮本さんは凛とした声が良いなと思っていて、宮本さんは“自分の中にいる侍がこれは断ってはいけない!と言っているから、引き受けた”と仰っていたんですが、その侍がいてくれて良かったと思っています。宮崎さんはビノシュさんと比べると年齢的には少し若いんですけど、これまで声のお仕事を一緒にさせていただいていて、少年からおばあちゃんまで演じ分けられる女優さんだと思っているので、迷わずオファーしました。とても良いバランスで素敵なアンサンブルができたと思いますので、吹き替え版も是非楽しんでください」と吹き替えにも自信を見せている。そして、本作の印象的なシーンについて「ドヌーヴさん(ファビエンヌ)が撮影所を抜け出してクレープを食べにいこうとしているところを、ビノシュさん(リュミール)が迎えに行って止めるシーンがあるんですけど、なんだか親子の関係性が逆転しているようで、面白かったです」と宮崎さん。カトリーヌも「私もあのシーンはお気に入りなんです」と言い、ジュリエットは「私とカトリーヌの共通点が一つあって、それは“とても食いしん坊”ということ。だからこそ、あのシーンも成功したと思います」と会場の笑いを誘っていた。最後に、是枝監督がこれから本作楽しむ観客へ「母と娘が逆転しているというシーンがあると仰っていましたが、映画の中では母と娘が、娘と母に見えたり、昔の誰かと誰かの親子関係が見えたり、色々な見え方をするように重層的に作ったつもりでいるので、劇中劇も含め、注目して観て頂けると、より楽しんでいただけると思います」と伝え、イベントは幕を閉じた。『真実』は10月11日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)
2019年10月04日是枝裕和監督初の国際共同製作映画『真実』(10月11日公開)のジャパンプレミアが3日、都内で行われ、是枝監督、来日したカトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュらが登壇した。昨年のカンヌ国際映画祭で日本映画21年ぶりの快挙となる最高賞“パルムドール”を受賞し、 『万引き家族』が興行収入46億を超える大ヒットとなった是枝監督。長編14作目となる最新作にして初の国際共同製作映画『真実』は、母と娘の間に隠されたある「真実」を巡る物語で、全編フランスにて撮影された。是枝監督は、母娘を演じたドヌーヴとビノシュと並び、「こんな形で2人と映画を撮るなんて、映画を撮り始めてからも現実感のない夢のようなことだったんですけど、完成して3人で壇上に並んでいるのが信じられないです」と感無量の表情。「パリで本当に楽しい時間を過ごすことができて、それが映画に映っていると思います」と語った。ドヌーヴは「私を配役して映画を考えてくださってうれしかったです」と喜び、是枝監督の演出について「徐々に一緒に時間を過ごしていくにつれて、監督の表情や視線を見ただけで監督がどう考えているかわかるようになりました」と振り返り、監督を見てにっこり。ビノシュは「是枝監督と映画を作ることが夢だった」と言い、「『誰も知らない』を通じて是枝監督を初めて発見したんですけど、人生のディテールが細かく描かれていて感動しました」と是枝作品との出会いを説明。一緒に仕事をした感想を聞かれると「物静かな中に友情や優しさ、鋭い観察眼が感じられました。映画監督は耳と目の感受性が必要だと思うんですけど、その真髄たる方だと思います」と絶賛した。ビノシュの言葉を聞いて、是枝監督は「映画が人をつないでくれるんだなと、改めて感じて感動しています」としみじみ。また、映画祭や舞台挨拶などに登壇すると「すごい2人と撮ったんだな」と思うが、「現場だと1人の女優さんと監督。それは日本と変わらない。どういう風に信頼関係を築いて、いい映画を作るかということだけ考えました」と語った。イベントには、是枝監督作品初となる日本語吹替版で声優を務めた 宮本信子(カトリーヌ・ドヌーブ)、宮﨑あおい(ジュリエット・ビノシュ)、佐々木みゆ(クレモンティーヌ・グルニエ)も登壇した。
2019年10月03日是枝裕和監督最新作で初の国際共同製作映画『真実』の日本語吹き替え版の公開が決定。宮本信子、宮崎あおいが洋画吹き替え初挑戦することが分かった。本作の魅力のひとつでもある、母と娘の辛辣かつ軽妙な会話を様々な形で楽しめるように、字幕版に加えて吹き替え版も製作。カトリーヌ・ドヌーヴ演じる国民的大女優ファビエンヌは、連続テレビ小説「あまちゃん」「ひよっこ」の宮本信子。その娘で脚本家のジュリエット・ビノシュ演じるリュミールを大河ドラマ「篤姫」『神様のカルテ』『舟を編む』の宮崎あおいが吹き替え。宮本さんは「洋画の吹き替えは初めての事なので、出来るかどうかとても不安で正直悩みました」とオファー時の心境を明かし、「真実は一つではないですし、それを『一つであるべきだ』ではなく、色んな風に見られるんだよと言ってくれるような作品だと思います」と本作について語っている。また宮崎さんも「初めてのことに、何をどうしたら良いのか不安いっぱいで」と語るも、「始まってみたらとても楽しく…自分がジュリエット・ビノシュになったかのような幸せな錯覚を味わいながらの贅沢な時間でした」とコメント。是枝監督は「宮本さんの凛とした声と、背筋のピンとした佇まいは、まさにカトリーヌさんにぴったり重なると思いましたし、宮崎さんは声のお仕事もご一緒させて頂いたことがあるのですが、その繊細な表現力はもう、唯一無二だと思ってましたので、ビノシュさんとの年齢差は気になりませんでした。ダメ元で僕から提案したお二人が、お二人とも、思いがけずお引き受け頂けて、監督としてこんなに嬉しいことはありません」と2人について語っている。そんな是枝監督も熱望した吹き替えキャスト陣が、笑いと涙の母娘のドラマをより盛り上げる。そのほか、リュミールの娘シャルロット役には、『万引き家族』にも出演した子役・佐々木みゆ。是枝監督は吹き替え版でもみゆちゃんには台本を渡さず、口伝えの演出で台詞を収録したという。「吹き替えのお仕事をするのは私のあこがれ」と言うみゆちゃんは、今回の参加を喜び、「シャルロットちゃんは明るくて元気な女の子なので、吹き替えのときもたくさん笑って楽しかったです」と感想を話している。『真実』は10月11日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)
2019年09月19日是枝裕和監督の最新作『真実』の主演を務めたカトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュの来日が決定、10月初旬に行われるジャパンプレミアにも参加するという。是枝監督初の国際共同製作となった本作。先日は、日本人監督として初の快挙となるヴェネチア国際映画祭コンペティション部門オープニング作品としてワールドプレミアを飾ったばかり。是枝監督が本作でオファーしたのは、監督が海外で最も尊敬する女優であるという2人。『シェルブールの雨傘』(’63)や『ロシュフォールの恋人たち』(’66)で知られるフランス映画界が誇る至宝カトリーヌ・ドヌーヴは、名匠フランソワ・トリュフォー監督の『終電車』(’80)でセザール賞を受賞、2度目のセザール賞に輝いた『インドシナ』(’92)ではアカデミー賞にもノミネートされ、フランス映画のアイコンとして君臨。近年では、ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した『8人の女たち』(’02)やセザール賞ノミネートの『しあわせの雨傘』(’10)などフランソワ・オゾン監督作品でも高く評価され、2008年にはカンヌ国際映画祭で特別賞を贈られた。本作では、まるで自身さながらの国民的大女優役に。もともと是枝作品のファンであり、今回監督が書き上げたオリジナル脚本に惚れ込み、出演オファーを快諾したという。また、アメリカで脚本家として活躍する娘役を演じるのは、ジュリエット・ビノシュ。2005年に是枝監督と出会って以来交流を重ね、「いつか一緒に映画を作りましょう」という約束が今回実現。巨匠ジャン=リュック・ゴダール監督の『ゴダールのマリア』(’84)で注目され、レオス・カラックス監督の『汚れた血』(’86)で日本でも高い人気を獲得し、同じく『ポンヌフの恋人』(’91)、アカデミー賞を受賞した『イングリッシュ・ペイシェント』(’96)など、世界でその高い演技力が称賛されている。『トスカーナの贋作』(’10)でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞、『GODZILLA ゴジラ』(’14)、『ゴースト・イン・ザ・シェル』(’17)などハリウッドでの活躍も知られる。構想8年、是枝監督の渾身作ともいえる本作。2人は10月初旬に行われるジャパンプレミアにも参加する予定となっている。『真実』は10月11日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2019年09月12日第76回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門へ正式出品され、現地時間8月31日(土)に世界初お披露目された『ジョーカー』に早くも絶賛の嵐。レッドカーペットセレモニーには主演のホアキン・フェニックス、共演のザジー・ビーツ、監督・脚本をつとめたトッド・フィリップスが参加、彼らは記者会見にも登壇した。本年度アカデミー賞の行方を占う本映画祭ほか、第44回トロント国際映画祭ガラ・プレミア部門にも選出され注目を浴びている本作。そんな本作のレッドカーペットセレモニーとあって、会場は炎天下にも関わらず世界中から集まった大勢のマスコミと早朝から陣取ったジョーカーのコスプレをしたファンや、ホアキン・フェニックスの写真や似顔絵を手にしたファンで溢れかえった。本作のスタッフ・キャストに先行して、是枝裕和監督最新作『真実』に主演するカトリーヌ・ドヌーヴ、『ブルージャスミン』『キャロル』のケイト・ブランシェット、『女王陛下のお気に入り』『トールキン旅のはじまり』のニコラス・ホルト、さらにホアキンの婚約者である『her 世界でひとつの彼女』『キャロル』のルーニー・マーラなど大物俳優たちがこぞって祝福に駆け付けた。熱気に包まれた会場にザジー・ビーツ、トッド・フィリップス監督、そしてホアキンが登場すると会場のファンからは大歓声が!3名がファンへのサインや撮影に応じると、中には感極まって泣き出すファンの姿も見られ、プレミア上映の時間が迫り、ホアキンが会場への移動を促されるも、押し切ってファンの元へ戻るひと幕もあった。8分間のスタンディングオベーション!「アカデミー賞の価値がある」その後の座席数1,032席を誇るSala Grandeで世界初お披露目となる上映が行われると、終映時には「ブラボー!」の声と今年の上映一番の拍手喝采が起き、スタンディングオベーションが8分間も続いた。その圧倒的な完成度とジョーカー誕生の衝撃の物語を目撃した評論家からは、「ホアキン・フェニックスにはアカデミー賞の価値がある」(Total Film)、「ホアキン・フェニックスに心奪われる」(Time Out)、「決して見逃してはならない作品」(Hollywood Reporter)、「大胆かつ衝撃的で、この上なく美しい」(Empire)など、早くも絶賛の声が続出中だ。監督「ジョーカーの完璧な狂気にたどりつくまで、ホアキンと毎日話し合った」過去に『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』でゴールデン・グローブ賞作品賞を受賞したことのあるフィリップス監督は、「本作で最初からはっきりしていたのは、これまで描かれてきたジョーカーとは異なるアプローチをすること。ジョーカーの過去は原作でも詳しく描かれていないから、自由に創造できるスペースがあったんだ」と明かし、「だから、ジョーカーの完璧な狂気にたどりつくまで、ホアキンと毎日話し合って、撮影中ですら脚本を書き替えていったんだ」と、ジョーカーという人物を追及した過程をふり返る。「もともとはカオスをもたらすのが彼の目的だったわけじゃない。彼のゴールはあくまで『人々を笑わせたい』、『世界に喜びをもたらしたい』ということだったんだ。でもそれが様々な出来事が重なって、まったく異なる結末になってしまうんだ」と、記者会見では物語の行く末をにおわせた。ホアキン「役者人生で初めての経験」、ジョーカー役をふり返るさらに、これまでアカデミー賞3度のノミネート経験を持ち、本作での受賞に注目が集まっているホアキンは「アーサーの明るい部分に興味を持ち、深く探ってみたいと思った。彼には、苦悩もありますが、喜びもあり、幸せを感じ、人との繋がりや、温かさ、愛を求めている人物」と、“悪のカリスマ”ジョーカーのイメージとはかけ離れたアーサーの人物像に興味を抱いたことを告白。「彼が、単に苦痛を抱えたキャラクターだとは思っていませんし、私は演じる上でキャラクターをそういう風に決めつけることは、絶対にしない。8か月かけて探求したこのアーサーという人物を一言で語るのは難しいが、オファーを受けてからの数週間で感じた彼と撮影を終えるころに感じた彼とでは完全に異なっていた。常に変化していて、役者人生で初めての経験だ」と、改めてその役が与えた影響に言及、「“ジョーカーの笑い方のオーディションをして欲しい”とトッドに依頼したんだ。彼は“(役に決まっているんだから)お願いだからやめて!”って気まずそうにしていたけどね(笑)」とジョーク交じりに語っていた。本作には、本映画祭最高賞の“金獅子賞”受賞、および早くもアカデミー賞への期待もますます高まっている。『ジョーカー』は10月4日(金)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ジョーカー 2019年10月4日より全国にて公開© 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved” “TM & © DC Comics”
2019年09月02日