カリン・クサマが監督するドラキュラ映画『Mina Harker』が、撮影開始を3週間前に控える中、突然製作中止になった。ブラムハウスと共同製作するミラマックスが、クリエイティブ面での意見の相違を理由にプロジェクトを降板したのが原因。映画の舞台は現代のロサンゼルスで、主人公ミナ・ハーカーは『ハミルトン』、『ブラインドスポッティング』のジャスミン・セファス・ジョーンズが演じる予定だった。脚本は過去にもクサマと組んでいるフィル・ヘイとマット・マンフレディ。クルーにはすでに撮影中止の通達がなされているとのこと。この企画が今後再始動する可能性があるかどうかは不明だ。文=猿渡由紀
2022年04月20日単調になりがちな日常生活に刺激を与えてくれるもののひとつといえば、劇場の大きなスクリーンで映画を楽しむこと。そこで、予測不能な展開に引き込まれてしまうオススメの話題作をご紹介します。それは……。衝撃のネオ・ノワール『ストレイ・ドッグ』【映画、ときどき私】 vol. 333ロサンゼルスにあるハイウェイの下に止められた車の運転席で目を覚ましたのは、憔悴しきった中年女性のエリン・ベル刑事。足を引きずりながら歩き始め、男の射殺体がある現場へと向かっていた。死体の近くにあった38 ⼝径の拳銃と強盗対策⽤の紫の染料に染まった紙幣に⽬に留めたエリンは、「犯人を知ってる」と謎めいた⾔葉を呟き、その現場を後にする。そんななか、LA市警のエリン宛てに差出人不明の封筒が届く。そこにはかつてエリンが関わった未解決事件に関わる“あるもの”が入っていたのだった……。ハリウッドを代表する美人女優のひとりニコール・キッドマンが、これまでのイメージを覆す危険な汚れ役に挑み、ゴールデングローブ賞ではドラマ部⾨の主演⼥優賞にノミネートされた注目作。今回は、その舞台裏などについて、こちらの方にお話をうかがってきました。カリン・クサマ監督『ガールファイト』などで評価され、その手腕に注目が集まっているアメリカ出身の⽇系⼥性監督のクサマ監督(写真・左)。本作では、アメリカ映画の伝統的ジャンルのひとつであるフィルム・ノワールに初挑戦しています。そこで、制作過程の苦労や主演を務めたオスカー⼥優ニコール・キッドマンの魅力などについて語っていただきました。―脚本家たちの話し合いに途中参加された監督から、「主人公を女性にしたらどうか」という提案をされたそうですが、理由を教えてください。監督今回は、警官を題材にした少し変わった構造の物語にしようというのが最初にありました。そのあと、みんなで話し合いをするうちに「主人公を女性にしたほうが、これまでにないより新鮮な作品になるんじゃないか」という結論にたどり着いたからです。―本作はさまざまな映画からインスパイアを受けているようですが、そのなかでも特に影響を受けている作品はありますか?監督70年代のアメリカのジャンル映画に影響を受けている部分が大きいですね。たとえば『コールガール』(71年)や『タクシードライバー』(76年)、『狼たちの午後』(75年)のように人物形成がしっかりしている映画だったり、『L.A.⼤捜査線/狼たちの街』(85年)みたいに腐敗した人物が出てくる映画などを参考にさせてもらいました。あとは、これまでの私の人生において、自分のしたことに責任を取ろうと葛藤している人をたくさん見てきたので、そういった人たちを人物像の参考にしたところもあります。自分の内面にも共感するところが多くあった―エリンは監督が描いてきたキャラクターのなかでも、もっとも気に入っている登場人物だそうですね。どのようなところが魅力ですか?監督すごくパワフルだけど、葛藤や怒りを抱えていたり、壊れたようなところもあったりしていて、自分のなかに共感できる部分がたくさんあったからかもしれないですね。私が住んでいる世界とエリンが住んでいる世界は違いますが、そういった内面の部分は理解することができました。それに、私自身がキャラクターのことを愛していないと、描けないですからね。―なるほど。今回は、脚本を読んだニコールさんから監督に会いたいと面会を求めてきたそうですが、彼女からこの役を演じたいと言われたときどのように感じましたか?監督最初にこの役を演じてくれると聞いたときは、とにかく驚きました。実際にニコールと話をしてみると、「こういった役は演じたことがないからすごく怖い」と話してくれたので、「なんて正直な人なんだろう」というのがそのときの印象ですね。でも、彼女はこの役を演じることに刺激を受けているようにも見えました。それ以外にニコールと話し合ったのは、エリンが抱えている後悔や恥といったものが、肉体的そして精神的にどのような影響を与えるのかということ。私はこれまでにニコールの作品を観て、尊敬していたので、彼女だったらできると確信しました。ニコール・キッドマンは本物のアーティスト―実際、ニコールさんとは思えないような変貌ぶりでしたが、ご本人からもアイディアなどもありましたか?監督ニコールはこの役を演じると決めたときから、外見をとても重視していました。なぜなら、それによって人生に打ちのめされて、疲弊している人物の見た目を作らなければいけないということをわかっていたからです。彼女としてはもっと老け込んだ感じにしたかったみたいですが、私たちがもう十分ですと言って止めたんですよ(笑)。今回私たちが特に意識していたのは、エリンの肌は紫外線でやられていて、シミやそばかすだらけで、乾燥している質感であるということ。メイクアップアーティストが素晴らしい方だったのもありますが、みんなで何度もテストを重ねて、最終的にあのようなビジュアルにたどり着きました。―見たことのないニコールさんの姿に、観客も驚かされると思います。監督そうですね。彼女自身も、あの外見からはすごくインスパイアされていたようです。ご自身とはまったく違う人物ですから。そんなふうに変貌した自分の姿を鏡で見ることで、キャラクターをよく理解することができたとおっしゃっていました。―では、ニコールさんと一緒に仕事をしてみて、感銘を受けた瞬間はありましたか?監督彼女は用意周到に準備をされていましたし、とても勤勉な方なので、本当の意味でアーティストだと感じました。現場に来るときには、すでにキャラクターに入り込んでいて、撮影が終わってもそのキャラクターのままセットを出て行くようなタイプの女優。撮影期間中はずっとエリンでいたように見えました。彼女に対しては尊敬と憧れの気持ちをずっと抱いてきましたが、今回一番驚いたのは、失敗を恐れることなく、つねにリスクを取っているところ。たとえ間違ったことをしても、新しいことに挑戦し続け、世の中に対して好奇心を抱き続けている姿からは学ぶことも多かったです。これは女性にとっても男性にとっても、大切なことだと思っています。撮影中にはさまざまなトラブルもあった―そういったところが、長年にわたってハリウッドでも第一線を走り続けられる秘訣かもしれませんね。では、監督が見た素のニコールさんの魅力はどんなところですか?監督ニコールは10代ときから映画スターとして活躍されていますが、それにもかかわらず、とにかく優しくてオープンな方。周りにいる人だけでなく、社会に対しても優しさを持っているんですが、そういうところが本当に魅力的だと感じました。―劇中ではリアルなロケーションも見どころですが、危険地域とされる場所でも撮影をされたとか。撮影中にトラブルなどに見舞われたことはありませんでしたか?監督夜にヒスパニック系の教会で撮影していたとき、近くで襲撃事件が起こってしまい、警察が犯人を捜していたので、そのときは一旦撮影を止めたこともありました。みんなその場から動くことができず、大変でしたね。そのほかにも、すごく治安の悪い場所でたくさん撮影していたので、なるべく映画の撮影だと気づかれないようにしていましたが、なかなか難しかったです。ただ、不思議なことに、外見が豹変しすぎていたので、ニコールが一番目立たず、誰も気がついていなかったですね(笑)。とはいえ、誰にも気づかれずに街を歩けるのが、彼女はすごく楽しかったみたいです。実際の日常生活ではありえないことですから。自分らしく生きるとは何かを考えてほしい―確かにそうですね。監督は「本作は⼥性が⾃らに⽴ち向かう鮮烈なドラマであり、この物語に自身のこだまを見出し、共感を覚えてほしい」とコメントされていますが、監督自身もエリンと向き合うなかで、新たな発見がありましたか?監督それは自分のことを受け入れたうえで、自分を愛することができない部分が私のなかにもまだあると気がついたことですね。エリンもそれができない人ですが、私自身としてもそういった自分の側面は変えていかないといけないと感じました。―最後に、ananweb読者へ向けてメッセージをお願いします。監督いまは、正直に生きるというのがとても難しい時代。だからこそ、みなさんには自分自身をオープンにすることを恐れず、自分を受け入れて見つめ直してほしいと思っています。特に、女性は周りからいろいろなことを期待されて、さまざまな役割を演じなければいけないという期待を背負っているかもしれません。だとしても、そういったことに関係なく、自分らしく生きることとは何かを考えてほしいと伝えたいです。最後まで緊張感が止まらない!圧倒的なニコール・キッドマンの存在感と、衝撃的な結末から目が離せなくなる本作。秘密、孤独、葛藤、後悔、復讐、贖罪を描いた物語のなかで、主人公とともにさまざまな感情が渦巻くのを体感してみては?胸がざわつく予告編はこちら!作品情報『ストレイ・ドッグ』10月23日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開配給:キノフィルムズ© 2018 30WEST Destroyer, LLC.
2020年10月22日「こんなニコール・キッドマンは見たことがない」と高評価を受けた日系女性監督カリン・クサマによる最新作『ストレイ・ドッグ』。この度、そんなニコールの激変ぶりがうかがえ、謎に満ちた射殺体の発見現場から始まる約3分の冒頭映像が解禁となった。今回解禁となった冒頭映像では、怒りと絶望に満ちた17年の歳月で野良犬のような風貌になってしまった、ニコール演じる主人公エリンが眩しそうに目覚めるシーンから始まる。たどたどしい足取りで向かった先は、早朝の放水路。そのそばに立つ鉄塔の下には、腹ばいになった男の射殺体があった。死体の傍らには38口径の拳銃と、防犯対策用の紫の染料に染まった1ドル紙幣。そして死体の首には3つの丸い入れ墨が...。「犯人を知ってる」と謎めいた言葉を呟き現場を後にするエリン。酒に溺れて手のつけようのないエリンを疎ましく思っている同僚は、苦々しい表情で「なら教えてくれよ、刑事」と声を掛けるが、エリンは振り向きもせず、単独で犯人の行方を追うが…。「撮影は常に体当たりで進めていった。監督の熱意とパワーに感化される形でいい演技ができた」と、監督に対しても大絶賛するニコール。クサマ監督は、実際の犯罪多発地域を含むロサンゼルス全域でオールロケを敢行、女性刑事エリンの激情と哀切を描き切っている。『ストレイ・ドッグ』は10月23日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ストレイ・ドッグ 2020年10月23日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2018 30WEST Destroyer, LLC.
2020年10月22日ニコール・キッドマンが初めての刑事役に挑んだ最新作『ストレイ・ドッグ』。本作の日系女性監督カリン・クサマからのコメントと共に、ニコールがさらなる新境地を見せる13点もの場面写真が到着した。本作の主人公、刑事エリン役のニコールは、特殊メイクを施して顔かたちを変え、激しい暴力シーンや銃撃戦のシーンにも挑み、かつてない汚れ役を披露。キャラクターに複雑な陰影を与えたその演技は、全米マスコミから大きな注目を集め、「こんなキッドマンは見たことがない」と絶賛を呼び、2019年ゴールデン・グローブ賞主演女優賞にノミネート。そのチャレンジ精神と演技力は高く評価された。メガホンをとったのは、『イーオン・フラックス』や『ガールファイト』などのクサマ監督。脚本を読んで役を熱望したニコールと組み、緊張感みなぎる演出でドラマを牽引。同じくロサンゼルスを舞台にした『L.A.大捜査線/狼たちの街』『ヒート』『ドライヴ』といった傑作に連なるL.A.ノワールの世界を強烈なタッチで描き上げた。クサマ監督は、本作を観る全ての人へ「『ストレイ・ドッグ』は、“女性が自らに立ち向かう”鮮烈なドラマです。観客の皆さんが、この物語に自身のこだまを見出し、共感を覚えることを期待しています」とコメント。今回解禁となった場面写真では、17年前の潜入捜査で恋人同士を装った若いエリン(ニコール)とFBI捜査官クリス(セバスチャン・スタン)。子どもの頃の娘を背負い歩く姿、成長した娘と対峙する姿など、17年前と現在のエリンの物語を行き来するようなものが一挙に13点、お披露目されている。『ストレイ・ドッグ』は10月23日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:ストレイ・ドッグ 2020年10月23日 TOHOシネマズ シャンテほか全国公開© 2018 30WEST Destroyer, LLC.
2020年08月27日『ジェニファーズ・ボディ』のカリン・クサマが、ホラー映画『Breed』を監督することになった。フォックスが製作配給する。原作は、スコット・スペンサーが書いた小説。その他の情報子供が欲しいのにできないニューヨークに住む裕福なカップルは、東ヨーロッパにあるクリニックを訪れ、妊娠に成功。双子が生まれるが、それから10年後、夫妻にも子供たちにも、その施術の影響が現れ始めるという物語らしい。脚本は、2015年のクサマのホラー映画『The Invitation』を執筆したフィル・ヘイとマット・マンフレディが手がける。キャストはわかっていない。女流監督でアジア系のクサマは、今年、アカデミーから新会員に招待されている。文:猿渡由紀
2016年09月21日