一流店の味を極めてきたシェフが出会った、築150年の都指定有形文化財の建物“東京もひとつの地方”。東京にもいい食材がたくさんあるこの場所で伝えていきたい“新たな東京の魅力”一流店の味を極めてきたシェフが出会った、築150年の都指定有形文化財の建物築150年の都指定有形文化財の建物の内部は、温かみを残しつつモダンに改装。シェフが目の前で料理を仕上げるカウンターテーブルは7席都心から車でも電車でも約1時間と、気軽に豊かな自然と澄んだ空気に触れることができる、東京・あきる野市。この地を新たなスタートの地として選んだのは、帝国ホテルのメインダイニング【レ セゾン】でのスーシェフを担うなど、一流店の味を極めてきた松尾直幹(マツオナオキ)さんです。1982年、東京都西多摩生まれ。料理専門学校卒業後、推薦状を手に「帝国ホテル」へ。メインダイニング【レ セゾン】でスーシェフを担うなど料理人として21年勤務したのち、2023年10月に自身がオーナーシェフを務める【L’Arbre(ラルブル)】を開業「僕はもともと隣のとなり町、西多摩の瑞穂町出身なんですが、あきる野市はもともと環境がよいため、有機農法で野菜をつくる農家さんが多くいました。その中でも農薬どころか有機物も使用しない育て方をされていた農家さんと出会い、僕も勉強してみたいという気持ちがあったので、【レ セゾン】時代の約9年前から自分で耕作を始め、近隣農家さんと一緒に畑を耕させてもらって約3年。今もここから約5分の場所で、30平方メートルほどの畑をお借りして、お店で使用する野菜などを育てさせてもらっています。その農家さんが、僕が西東京でお店をやりたいと思っていることを、周りの方に話してくださっていたおかげで、この建物のオーナーさんとのご縁に繋がりました」都指定有形文化財(建造物)である「小机家住宅」の建築面積は約90平米。当時は珍しかった洋風列柱廊や2階のバルコニーなどが配されている松尾さんが見た瞬間に「この場所でレストランを開きたい」と心を動かされたという建物は、都指定有形文化財(建造物)「小机(こづくえ)家住宅」。江戸時代に山林業で富を築いた小机家が、1875年(明治8年)頃に建てた木造2階建ての土蔵造りで、約150年前の建築とは思えぬ洋風の建築物に圧倒されます。「五日市の方たちでも、お店ができるまではこの建物自体をあまり知らない人がいたと思うんですが、改めて文化財である建物を認識していただいて、さらに食事を楽しみながら建物の内部を観ていただける機会にも繋がると思っています」カウンターで食事をとった後に、個室でゆっくりお茶を楽しむお客さまもいらっしゃるそう洋風の外観とはうってかわり、内部は伝統的な四間取りの形式を持ち、和風の意匠。メインのカウンターテーブル7席のほか、4名テーブルを据えた畳の個室が3部屋あり、臨機応変に個室を繋げることも可能です。“東京もひとつの地方”。東京にもいい食材がたくさんある帝国ホテルの【レ セゾン】時代、師匠であるフランス人シェフが、日本で過ごすうちに徐々に和の食材を取り入れていく姿を見て、その土地の風土とフランス料理を掛け合わせる大切さを学んできたという松尾さん。「とくに地方では“ローカル・ガストロノミー”という言葉がありますが、僕は“東京もひとつの地方”だと思っているんです。わざわざいろんな場所から食材を集めなくても、東京にもいい食材がたくさんある。東京をフィーチャーしているシェフはこれまであまりいなかったので、もともとこの地域に生まれてきた自分が、この場所で、これまで一緒に畑を耕してきた農家さんをはじめ、多くの生産者さんやその作物をもっと周知していければ、いろんなお客さまが来て、改めてこの地域が見直されるきっかけになるんじゃないかと考えました」【ラルブル】の料理はコースのみで、ランチが8品13,200円、ディナーが10品17,600円と、9品14,850円の2種類。お子さま用のメニューや、平日限定でメインの魚か肉を選べる9,900円のコースも実際に【ラルブル】では、松尾さんが自ら育てる野菜を含め、魚も肉もフルーツまで東京産の食材を使用。“東京ローカル・ガストロノミー”を体現しています。『八丈島 久保田さんの金目鯛とのらぼう菜』は、八丈島で獲れた青伊勢海老と車海老のアメリケーヌソースで。柚子と玉ねぎのチャツネもアクセントとして添えられます。直接、東京都八丈島の漁師・久保田さんから買い付けるという金目鯛は、調布の飛行場へ空輸されるため、新鮮な状態で仕入れが可能「八丈島は黒潮が入るのでマグロなどもおいしいですし、海が綺麗なので、金目鯛の味もクリアなんです。レモングラスと塩水で漬けて、水分を軽く飛ばして身を引き締めてから、オリーブオイルで皮目をパリッと焼き上げています」しっとりとジューシーな身は、肉に見紛うかのようなプリッとした食べ応えも魅力。付け合わせは、レモングラスとローリエの香りを付けたオリーブオイルでソテーしたのらぼう菜と、松尾さんが自然栽培農法で育てたじゃがいも「にしゆたか」。冷え込む地域だからこそ、野菜の甘みが増しておいしくなり、自然を色濃く反映した濃い黄色が印象的です。松尾さんが農家さんから借りている畑。またここ以外に、建物の敷地内でも野菜を育てています。「使用している野菜は比較的サイズが小さめですが、味はすごく濃いものが多いんです」「畑をやっている利点でもあるのですが、お店ではできるだけゴミを出さないようにしつつ、最低限出る生ゴミは堆肥化して、畑の肥料として使用し、そこで育った野菜がまた自分のお店へ戻ってくるように、まずは地域で無理のない循環を実現しています。お付き合いのある農家さんはほとんどが有機栽培なので、そもそもの食材にも農薬がなく、堆肥化することで土を汚す心配もありません」こちらは、松尾さんが育てた里芋と、西東京産の檜原舞茸を合わせた『檜原舞茸と、里芋団子』。薪も東京の「ナラの木」を使用して燻したという、檜原舞茸とアワビ茸からとった、香りまで味わい深いおだしで一度茹でてから焼きあげた里芋団子は、里芋を練った生地でさらに里芋を包んでおり、食感豊かな二層構造です。水分を十分に飛ばしてサクッとした歯ごたえに仕上げた檜原舞茸は、噛み締めることでジューシーな旨みも溢れ出す、こちらも新食感。仕上げにエシャロットの香りをまとわせ、数滴垂らしたウィスキーのウッディーな香りが、燻した舞茸の香りに良い添います。「元々、里芋団子は西東京のいろんな場所で食べられていたそうなんですが、食べる機会がなければどんどん文化として無くなっていってしまうので、食文化として繋いでいけるように、少しでもおいしく食べてもらえるように工夫しました」さらに肉料理には、これまで東京で「秋川牛」、「東京ビーフ」といった2つの黒毛和牛を生産してきた竹内孝司さん・孝英さん親子が、雌のA5ランクのものだけを選別した「東京和牛」を使用。東京和牛をじっくり火入れ。帝国ホテル時代、フレンチ以外に【鉄板焼 嘉門】でも3年間腕をふるい、肉の火入れにも職人としての矜持が光る「竹内さんの牧場では、牛の飲み水に湧き水を使用していたり、都内のワイナリーから出る搾りかすなどを飼料として与えたり、できる限りストレスなく自由に育てているので、肉の繊維が綺麗に入っているのが特徴です」。メインの『東京和牛とビーツ』は、しっかりとフレンチの粋を凝縮した赤ワインソースに、「青梅ファーム」のビーツと庭で穫れた銀杏を添えて。メインの「東京和牛」は、イチボかランプを使用することが多いそう。この日はイチボを、赤ワインソースでフランス料理のコースにはパンがつくように、通常“締め”のメニューは含まれませんが、【ラルブル】では、締めの『のしこみうどん』を提供。「こちらも奥多摩の郷土料理として、各家庭にレシピがあるものなのですが、基本は煮干しと椎茸でとっただしで葱など野菜とうどんを鉄鍋で煮込んだもの。うちでは少し異なりますが、チキンブイヨンと鰹節でとったスープで、のらぼう菜やブロッコリー、葱の青い部分を煮て、ミキサーでピューレ状にした汁と、ご近所の「久保島本舗」さんのやや細めの麺で軽やかに仕上げています」郷土料理へのオマージュを表現した『のしこみうどん』。山椒オイルと蕗のとうの緑がアクセント松尾さんが惚れ込んだという麺だけあり、柔らかな喉越しはどこまでも優しく、モダンな味わいながらどこかホッと和む味わいです。この場所で伝えていきたい“新たな東京の魅力”赤い「章姫(あきひめ)」から生まれた新たな品種が、ピンク色の「桃色あきひめ」デザートは、『五日市 中村さんの完熟イチゴとロゼシャンパーニュ』。パフェグラスを螺旋状に飾るイチゴは、五日市にあるイチゴ農家の中村さんが作る2種類のイチゴを使用。「一般的にスーパーのイチゴは9割くらい熟したものを農家さんが出荷していることが多いんですが、中村さんが作るイチゴは完熟なので、ヘタぎりぎりまで甘いんです」爽やかな甘みはもちろん、酸味が穏やかなのは、「桃色あきひめ」とそのルーツである「章姫」の特徴でもあるといいます。軽い口当たりのビスキュイ・ローズ・ド・ランスと、イチゴのコンポート、シャンパンのソルベに、2種類のイチゴが華を添える「“桃色あきひめ”は、中村さんが“あきひめ”の中から、1万株に1株くらい希少な確率で見つけたピンク色のイチゴを、毎年掛け合わせて継いでいくことで、徐々にここまで綺麗な淡いピンク色になっていったと聞きます。“白いイチゴ”って見た目が先行しがちですが、中村さんの“桃色あきひめ”はオリジナルで、すごくおいしいんです」こういった作り手のたゆまぬ努力や職人的な姿勢は、松尾さんが実際に訪ね、見聞きしたストーリー。古巣の帝国ホテルでの勤務時代から、休みがあれば生産者や農家さんを開拓し、“都内”といえど、その距離は小笠原諸島の漁師さんまで遠路はるばる足を運んでいるといいます。築150年の都指定有形文化財の建物で体験する、東京のローカル・ガストロノミー。地方にばかり目を向けがちだった昨今、新たな角度で東京を味わってみるのはいかがでしょうか。Restaurant L’Arbre【エリア】あきる野【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】15000円【ディナー平均予算】16000円【アクセス】武蔵五日市駅 徒歩10分自然派ワインを中心に、秋川で造られる少量生産の「雫酒」など日本酒も幅広く揃う。ペアリングは9,900円0
2024年02月28日ジョエル・ロブション(Joel Robuchon)は、2023年クリスマス限定メニューを2023年12月18日(月)から25日(月)までの期間、ガストロノミー“ジョエル・ロブション”にて提供する。ガストロノミー “ジョエル・ロブション”のクリスマス限定メニュージョエル・ロブションが展開する、ミシュラン三つ星の“最高峰”フレンチレストラン・ガストロノミー“ジョエル・ロブション”。2023年クリスマスに向けた豪華なコースメニューを用意する。中でも注目は、ガストロノミー“ジョエル・ロブション”を代表する「キャビア・アンペリアル」。甲殻類のジュレを薄く敷き、カリフラワーのクリームと蟹のサラダにキャビアを贅沢に合わせたスペシャリテだ。“ホワイトクリスマス”着想のデセールもホワイトクリスマスに着想したデセール「ブールドネージュフロマージュブランのクリームと苺のデクリネゾン雪の降るクリスマス」も見逃せない。繊細な飴細工にフロマージュブランのクリームをはじめ、苺やジュレ、エスプーマなどを閉じ込め、サイドには雪の結晶を飾った。様々な食感と、クリスマススイーツらしい華やかな見た目を楽しめる。バラ型ホワイトチョコレートのムースまた、ディナータイムのみ提供されるアヴァン デセールには、バラを模ったホワイトチョコレートのムースが登場。白い薔薇の下に、季節の柑橘やシャンパンのジュレ、グラニテを忍ばせているのが特徴だ。【詳細】ガストロノミー “ジョエル・ロブション” 2023年クリスマスメニュー期間:2023年12月18日(月)~12月25日(月) ※12月18日~20日はディナーのみの営業場所:ガストロノミー“ジョエル・ロブション”住所:東京都目黒区三田1-13-1 恵比寿ガーデンプレイス内営業時間:・ランチ 11:30~12:30(15:00クローズ)・ディナー 17:30~19:30(22:00クローズ)コース:・ランチ 45,000円【アミューズ/キャビア・アンペリアル/前菜/魚料理/肉料理/デセール/カフェ/小菓子】・ディナー 60,000円【アミューズ/キャビア・アンペリアル/前菜2品/魚料理/肉料理/アヴァン デセール/デセール/カフェ/小菓子】※キャビア・アンペリアルはランチとディナーで提供スタイルが異なる。※サービス料12%別【予約・問い合わせ】TEL:03-5424-1338 または 03-5424-1347(受付時間11:00~21:00)
2023年10月26日世界の食通に愛されるミシュランスターシェフが日本へ休息、仕事、遊びのための便利で快適な空間「ホテル虎ノ門ヒルズ」アジア初上陸の【ル・プリスティン東京】で没入型ガストロノミーを世界の食通に愛されるミシュランスターシェフが日本へオランダやベルギーで星を獲得する有名レストランを複数経営する、セルジオ・ハーマン氏セルジオ・ハーマン氏は、自身の両親が経営していたオランダの片隅にあるレストランでミシュラン3つ星を獲得し、同店を「世界のベストレストラン50」に8年間ランクインし続ける名店へと押し上げたミシュランスターシェフ。オランダやベルギーにて星を獲得する有名レストランを複数経営するSergio Herman Groupの創設者です。休息、仕事、遊びのための便利で快適な空間「ホテル虎ノ門ヒルズ」「ホテル虎ノ門ヒルズ」のエントランスと【ル・プリスティン東京】のテラスカフェ(イメージ)駅と街が一体化し、国際新都心・グローバルビジネスセンターへ進化する「虎ノ門ヒルズ」の中核施設の一つとして2023年12月6日に開業予定の「ホテル虎ノ門ヒルズ」。ホテルのインテリアデザインは、デンマークの「スペース・コペンハーゲン」が手掛け、彼らが担当するのは日本で初めてのことです。天然素材を多用したシンプルさと持続可能性を融合させた快適なリラクゼーション空間で、ホテルの朝食やインルームダイニングを含む料飲全般をセルジオ・ハーマン氏が監修します。アジア初上陸の【ル・プリスティン東京】で没入型ガストロノミーを『ル・プリスティン・クラシック』ホテルの1階に路面店としてオープンするのは、長年ミシュランの星に輝くセルジオ・ハーマン氏監修のレストラン【ル・プリスティン東京】。常に革新的な食の楽しみを追求するオランダ出身のスターシェフによる、日本を含めアジア初上陸となるレストラン&カフェバーとなり、「食」「ファッション」「デザイン」「アート」「音楽」の5つのエレメントで食す新感覚の没入型ガストロノミーです。『ゼーランド産ムール貝、ソブラサーダ、ブラータ、フレゴラ』『イェルセーケの「デ・オステライ」産夏牡蠣、ストラッチャテッラ、グレープフルーツ、イタリアン・スプリッツ・グラニテ添え』シェフゆかりの地である、北海に面したオランダ南西部ゼーラント地方の食材と日本の旬の食材を融合させ、ヨーロッパの伝統料理を現代風にアレンジ。ゼーラント地方は、豊かな土壌、十分な日照時間、人の手を加えていない自然の水、海に洗われた川岸を持つオランダ最大の農業地帯であり、ヨーロッパで最もみずみずしくジューシーな甲殻類の産地としても知られています。『グリーン・ミネストローネ、ゼーランド産ムール貝&ザルガイ』『プラトー・ル・プリスティン』セルジオ・ハーマン氏がゼーラント地方の食材で最もこだわるのは、海水と淡水が混じり合う沿岸で獲れるウナギ、オイスター、ムール貝の3つ。これらは日本で獲れるものとはかなり異なるため、新たな食体験となることでしょう。メニューの6割以上はベルギーにある本店で提供しているもので、3割以上は日本の食材を融合させた新たなメニューを予定しています。『パッパルデッレ、ゼーランド産ムール貝、ンドゥーヤ、ライム』『タリオリーニ、フェンネル、燻製ゼランド産ウナギ、サワークリーム、キャビア』ホテル同様、ダイニングのデザインも「スペース・コペンハーゲン」が担当。北欧で発展してきた「スカンジナビアンデザイン」に特有の、シンプルかつスタイリッシュでありながらも居心地よい空間で、ヨーロッパ以外ではあまり出会うことがないオランダ風デザインも特徴的です。5つのエレメントのひとつ「アート」を感じられるオブジェや、空間を引き立たせる独特の「音楽」にも注目したい味覚的な楽しみだけではなく、インテリアやテーブルウェア、料理の盛り付けや店内のプレゼンテーションがもたらす視覚的な美から、店内の雰囲気を決定づける音楽のリズムまで、あらゆる感覚と欲求をみたす新感覚の没入型ガストロノミーのオープンを心待ちにしています。
2023年10月13日東京から新幹線を利用して約1時間半、長年シャッター通りと化していた群馬県前橋市の地元商店街がアートとデザインの街へと変貌を遂げています。その象徴のひとつ、複数のギャラリーとレストラン、住居が一体となった複合施設「まえばしガレリア」の一角に【cépages(セパージュ)】がオープンしました。日本を代表する有名ギャラリーに囲まれた【cépages】建物自体も芸術性を感じさせる空間で料理とワインのマリアージュという“アート”を披露する大役を担ったのは、石橋和樹シェフと内藤大治朗シェフソムリエのふたり。同世代で元同僚、なぜか気が合って職場が離れても連絡を取り合い一緒に食事をしていたと言うだけあって息はピッタリ。このふたりが創り出すマリアージュに期待が持てます。石橋シェフに誘われて二つ返事で群馬へ転居したと話す内藤シェフソムリエ石橋シェフは調理師専門学校卒業後、日比谷の東京有数のグランメゾン【アピシウス】で8年修業したのちに日本のテロワールレストランの代表格、「ミシュランガイド東京」で三つ星を獲得している青山【レフェルヴェソンス】でセクションシェフを務めた伝統と革新、両方に通じる逸材です。学生時代のアルバイト先は浅草【オマージュ】。そこからフランス料理一筋の石橋シェフ12皿前後のおまかせコースは33,000円、ワインペアリング33,000円というなかなか強気な設定ですが、それだけ自信があるということ。群馬県産を中心とした国内の食材をフランス料理のテクニックと東京の感性を組み合わせた日本人だからできるフランス料理に昇華させ、群馬の食文化と共に発信します。ウェルカムシャンパンは常時2種類を用意していますはじめの皿はレモンのコンフィチュールやシブレットを中に忍ばせタルタル仕立てにしたアオリイカです。白い世界かと思いきやアオリイカの下で潜んでいたのは真っ黒の「HALキャビア」。塩分濃度を抑えた養殖のキャビアはアオリイカの優しいうまみに寄り添います。仕上げにコブミカンの葉で作ったオイルとライムを閉じ込めたオリーブオイルの泡の香りが芳しく、食欲をそそります。シャンパンとの相性も良く、次なる皿への期待度が高まります。アオリイカはねっとりとしていますが、細かく刻んでいるので泡とともに溶けてしまいます2皿目は前橋市民のソウルフード「焼きまんじゅう」をフランス料理にという型破りな発想から生まれたスペシャリテ。フォアグラにブリオッシュを合わせるフランス料理とイメージが重なったそう。館林の小麦を独自で配合した生地を焼きまんじゅうに見立て、その上にフォアグラのテリーヌをのせ、高知県のサトウキビの搾り汁を煮詰めたシロップ「ボカ」を塗りながら焼きあげました。カリっとサクッとした揚げ焼き風の生地にトロッとしたフォアグラ、独特な風味と優しい甘さを持つ「ボカ」との三位一体の未知なるおいしさが口中を刺激します。『ハンガリーフォアグラ焼きまんじゅう高知ボカ』スペシャリテに合わせたのは「シャトーディケム」の「ソーテルヌ」。2005年のヴィンテージは状態も良く独特の香りと甘さが最強マリアージュを完成させました上州地鶏のコンソメと卵で作った『フラン』の上に北海道噴火湾の「毛蟹」の餡をかけたひと皿。山椒オイルを回しかけ香りよく仕上げています。影の立役者は「針生姜」の食感と刺激。【レフェルヴェソンス】で作っていた山椒オイルや生姜を効かせた料理からインスピレーションを得たそう。この小さな器の中にたくさんの滋味が詰まっています。その場にいた全員が口にした瞬間「おいしい」と言った料理『フラン』とのペアリングはフランス・ブルゴーニュの辛口ワイン「David Butterfield CORTON GRAND CRU 2012」。薫香やミネラル感、凝縮した果実味が毛蟹と卵の深い味わいを引き立てます「群馬は海がないので養殖の技術が秀でています。水替え不要の循環システムを開発して、そこで養殖したヒラメは薬剤を使わないので安心安全、しかもおいしいんです」とシェフ。そのヒラメをムースにしてほうれん草を巻きフランス料理の定番、パイ包み焼きに。ソースは酸味とクリームのコクがある「ヴァン・ブラン」と「スープドポワソン」を煮詰めてガラムマサラを加え、スパイスのメリハリを効かせた「ヴァン・ルージュ」の2種類。フランス料理に欠かせないソースは後半になるにつれ濃厚になっていきます。そこでワインとのマリアージュが功を奏すると内藤氏メインには青森の「銀の鴨」を炭火でじんわりと内部まで火を通し、最後に藁で燻して香りをつけます。ぷっくりと弾ける寸前まで膨らんだ雄の鴨はほどよい歯ごたえとしみ出るうまみがあります。添えたのは上野村の麦味噌「十石味噌」と京都祇園の黒七味を牛のだしで煮詰めて黒ニンニクを効かせたソース。ひと口ではわからなくても食べ進めると鴨のきれいに澄んだ深い味わいが主張を始めます。地産地消の素晴らしさを体験できる鴨肉とソースのみというシンプルを極めた皿にはシェフの名店での経験が存分に活かされています。炭火でじっくりと火を入れていくと表面にうまみたっぷりのジュが溢れてきます700年の歴史ある越前刃物の代表格「佐治打刃物」のステーキナイフを使用。包丁のレジェンドと言われる佐治武士作のステーキナイフはスゥーッと肉に入り、力を入れずともスパッと繊維を切ってくれるさすがの代物メインの鴨にはどっしりとしながらもスルスルとした飲み心地の「Chateau Angelus 1er Grand Cru Classé 2004」を。ソースに使った味噌にマリアージュしたコクのあるメルロー主体のワインをセレクトこちらは日本料理のごとく「〆ごはん」が供されます。だからフランス料理には欠かせないはずのパンがありません。それはパンでお腹を膨らせて欲しくないという思いから。ゆえに使う米は極上品。群馬県川場村で日本百名山の武尊山から湧き出る天然水で育ったコシヒカリ「雪ほたか」をスペイン料理の雑炊「カルドッソ」を作る鍋で貝柱のだしと上州地鶏のコンソメとともに炊き込み、リゾットにしています。スペイン「Garcima社」製日本の「おじや」をイメージした「OJIYA」という名前の鉄製蓋付きの鍋でリゾットを作ります炊きあがる前に炭火で焼いたノドグロと木の芽をたっぷりのせて蓋を閉めて数分蒸らします。蓋を開けて全体を混ぜるとノドグロの脂を纏った米は艶々、見るからにおいしそう! 木の芽のいい香りに癒されながら口にするとしっとりと弾力のあるノドグロとうまみをたっぷり吸った米、そして生姜の辛味とノドグロの薫香が複雑に絡み合うのです。今まで何度となくリゾットは食してきたけれど、チーズやバターに頼らずここまで素材のうまみだけで勝負できるリゾットにはお目にかかったことがありません。さっぱりの奥に隠れていたコッテリが後から顔を出してきますオープン前の準備期間は食材探しに奔走した石橋シェフ。海がない群馬県は畜産物のレベルが非常に高く、特に鶏、卵、乳製品は国内トップレベルだと話します。たくさんの食材との出合いの中で初めて飲んだ高崎市の「栗本牛乳」の雑味のないピュアな味に衝撃を受け、どうしてもアイスクリームを作りたくなったそう。通常使われる乳化剤や安定剤は一切加えずに「栗本牛乳」、「与那国島の薪炊きの海塩」、「喜界島のきび砂糖」だけで作ります。食事のスピードに合わせて提供する1時間前にアイスクリームマシンをかけたできたてのアイスは史上最高とも言える極上のなめらかさと味わいを堪能できます。コースのプロローグとエピローグが白の世界だったのが印象的こちらに来てイチから創りあげることに魅力を感じたと話す石橋シェフ。温度感を最重要視するシェフの皿はすべてがミニマル。それゆえ、食材のよさとシェフの腕が問われるのです。日本人に馴染みのある和の要素を取り入れながらもしっかりとフランス料理に着地させている石橋シェフの感性と技術の高さは遠方からわざわざ足を運ぶ価値があります。その料理を完全に把握して魅力を十二分に伝える内藤氏のサービス力も素晴らしい。まもなく日本だけにとどまらず海外からも美食家たちが駆けつけるに違いない、そう思わせる店が誕生しました。メインのカウンターは6席、ダイニングは16席、21時からオープンするバーは12席という異なる3つの空間があり、シチュエーションにあった使い方ができるのも魅力ですcepages【エリア】前橋【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】-【ディナー平均予算】-
2023年08月08日コース構成、設えともに一新館内4箇所をめぐり、バスクへの旅をメインダイニングにも新たな風コース構成、設えともに一新東京・六本木駅から徒歩8分。西麻布のギリシャ大使館隣りにたたずむ【ENEKO Tokyo(エネコ東京)】。美食の街、スペインバスク地方の中でも、最年少の36歳で三つ星を獲得してから、10年間にわたり星を保持し続けているエネコ・アチャシェフが監修を務める【アスルメンディ】の姉妹店です。街の雰囲気に溶け込む落ちついた外観磯島シェフが率いるチームが、時差のないバスクの食体験を提供してきた同店。6年目に入るこのタイミングで、コースの構成をさらにアップグレードし、体験としても、より本店【アスルメンディ】を感じられるスタイルに生まれ変わりました。新コースでは、バスクの郷土料理や食文化が背景にある料理はもちろん、エネコシェフが表現するバスク×日本を感じる料理を含めた、エネコシェフならではのエンターテインメントをより楽しむことができます。(左)エネコ・アチャシェフ(右)東京店の総料理長兼総支配人の磯島仁シェフ館内4箇所をめぐり、バスクへの旅をゲストをバスクへの旅にいざなうかのように、エンターテインメント性にあふれた体験を提供する【ENEKO Tokyo】は、1F・2Fと広がるモダンな空間を贅沢に使用しています。生まれ変わった館内は「Bar」、「Sea Station」、「Dome」、「Truffle Station」と名付けられた4箇所のステーションに分かれています。ここだけの空間で、スペシャルな食体験ができるのです。1F「Bar」では、ウェルカムドリンクとしてカクテルが提供されます足を踏みいれると、まずはバーカウンターがお出迎え。ウェルカムドリンクの『バスクと日本』と題されたこちらのカクテルは、日本のために考案されたオリジナル。梅酒をベースに煎茶、黒龍酒造の「九頭龍」、レモン果汁のハーモニーを味わいます。1F「Sea Station」では、料理とともにチャコリを楽しみますかつて「グリーンハウス」だった場所は「Sea Station」へと変貌を遂げ、各所にバスクの海を五感で感じられる工夫が施されています。写真右は『甲殻類のスープ』。とろみのあるテクスチャーからその濃厚さが見てとれます。貝殻の器に入ったスープは、ムール貝、海老、香味野菜の旨みがぎゅっと凝縮された味わい。ピクニックは2Fの「Dome」にてバスクの海を感じ、チャコリで身体を温めた後は、2Fの「Dome」へ。【ENEKO Tokyo】の代名詞ともいえるピクニックは、バスク地方の豊かな緑を表現しているよう。ピクニックスタイルで、料理はバスケットに入れて提供されます写真右下は、バスクの郷土料理である赤インゲンの煮込みからインスパイアされた『赤インゲン豆』。そこから時計回りに『うなぎのブリオッシュ』、『アスパラガスのテクスチャー』、『赤パプリカ』とフィンガーフードが続きます。エネコシェフがバスクの郷土料理を独自にアレンジした料理を、磯島シェフが見事に日本で体現した一品スペシャリテ『有機卵とトリュフ』はメインダイニングではなく、そのために現れた「Truffle Station」で。卵黄に注射器を差して少し取り出し、トリュフソースを加えてから再度注入して仕上げる様子を目の当たりにします。合わせるのは、ビルバオ名物であるベルモットベースの食前酒「マリアニート」にインスパイアされたカクテルと『トリュフのメレンゲ』。メインダイニングにも新たな風4箇所のステーションを経て、ここでようやくメインダイニングに着席です。バスクと日本は自然風土が似ているというエネコシェフ。メニューは本店で人気のメニューを、日本の食材でアレンジしたものを中心に構成しています。『サーモン サーモンキャビア』こちらはエネコシェフが日本にインスパイアを受けて仕上げた一品です。スモークをまとったそれは、サーモンのタルトレットをベースに、青ネギのエマルション、サーモンのタルタル、上にいくらを乗せています。『カツオ レフリト ア ラ バスカ』こちらもバスクの郷土料理「白カツオのトマト煮」がベースとなっています。本来は、カツオをトマトソースで煮込んだ料理ですが、日本のカツオは新鮮で、刺身がおいしいので、焼いた香ばしさと生の身質の両方を楽しめるよう、片面だけ瞬間的に焼いて半分はレア、温かい仕立てで用意しています。デザートの『クワハーダ ハチミツ』デザートの最後にはかき氷機が登場。「クワハーダ」とは、バスクの家庭で簡単にできるミルクプリンのようなもので、これに蜂蜜のかき氷を合わせることでバスクと日本の融合を表現しています。どこを切り取ってもバスクの地域性が垣間見えるなかで、日本の豊かな食材を生かした【ENEKO Tokyo】の新たな料理。時差を取り払ったように日々バスクとともに進化を続けるこの場所から、今後も目が離せません。ENEKO Tokyo (エネコ東京)【エリア】西麻布【ジャンル】スペイン料理・地中海料理【ランチ平均予算】20,000円 ~【ディナー平均予算】30,000円 ~【アクセス】六本木駅
2023年01月12日優美な雰囲気に包まれて、特別感あふれる時間を「ジョエル・ロブション」の集大成を味わう希少な味も楽しめる、2万5000本のワインセラー優美な雰囲気に包まれて、特別感あふれる時間をルイ15世様式の古城を思わせる優美な外観JR恵比寿駅より徒歩5分、恵比寿ガーデンプレイス内にひときわ目を惹く優美な建物に心奪われます。ここが、フレンチエレガンスの神髄を体現するグラン・メゾン【ガストロノミー “ジョエル・ロブション”】。落ち着いた大人のデートや大切な接待などに自信をもって選びたい、憧れの名店です。貴族の邸宅を移築した建物は、内装も華麗でエレガンス華麗な建物の最上階には、「サロン」と呼ばれる優雅な個室が用意されてます。最大4名、8名、16名用の計3室があり、接待や会食、デートなど目的に応じた柔軟な対応が可能。料理はもちろん、特別感あふれるおもてなしが、心に残るひとときを演出してくれます。「ジョエル・ロブション」の集大成を味わう「20世紀最高の料理人」と評されるフレンチの巨匠、ジョエル・ロブション氏の薫陶を受けた関谷健一朗総料理長が生み出す美しき料理の数々。宮廷料理に端を発するフランスの伝統的なスタイルを受け継ぐ味を、コース料理で存分に堪能できます。その中から、オススメの3品をご紹介しましょう!『帆立貝のターバン仕立て』ビスクソースで鮮やかさを添えた『帆立貝のターバン仕立て』ル・テタンジェコンクールでもテーマになったターバン仕立て。丸い型の底にスパゲティを敷き詰め、帆立貝のムースを加えました。周りにビスクソースを流し入れ、エスペレットペッパーと白トリュフのスライスが添えられています。一口ごとに違った味わいが楽しめる、贅沢な一皿です。『牛フィレ肉 フォアグラと抱き合わせローストにし“ロッシーニ”風に仕上げて』牛とフォアグラの食感が絶品『牛フィレ肉 フォアグラと抱き合わせローストにし“ロッシーニ”風に仕上げて』牛フィレ肉の中でも、特に柔らかいシャトーブリアンを使い、フォアグラと共に低温調理。周りを香ばしく焼くことで牛とフォアグラの食感を合わせ、とろけるように仕上げた逸品です。バルサミコソースが、おいしさをより深みのあるものにしてくれます。『キャビア 甲殻類のジュレになめらかなカリフラワーのクレーム』ジョエル・ロブションを象徴する料理『キャビア 甲殻類のジュレになめらかなカリフラワーのクレーム』ロブション氏のシグネチャーとも言えるのが、この『キャビア 甲殻類のジュレになめらかなカリフラワーのクレーム』。白いお皿の中央にカニのサラダを丸く盛り付け、その上にキャビアを贅沢に飾って。周りに甲殻類の柔らかいジュレを敷き詰め、カリフラワーのクリームとパセリのピュレでドットを描いた、斬新なデザインも印象的です。希少な味も楽しめる、2万5000本のワインセラーワインセラーには2万5000本のワインが揃う料理の味をより一層引き立ててくれるワインにも、名店ならではのこだわりが光ります。地下には、専用の空調システムで温度・湿度ともに管理する、約80平米のワインセラーが。2万5000本のワインは9割がフランス産で、大手だけでなく、希少なメゾンのワインも揃っています。15年間、ミシュランガイド東京で三つ星を獲得し続ける【ガストロノミー“ジョエル・ロブション”】。フレンチの伝統、ロブション氏の世界観を映しながらも、常に新たな進化を続ける名店で、大切な人と大切な時間をお過ごしください。料理人プロフィール:関谷 健一朗さん専門学校卒業後、ホテルでの経験を経て、2002年に渡仏。パリにある【ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション】で、26歳でスーシェフに。2010年より東京の【ラトリエ ドゥ ジョエル・ロブション】のシェフを務める。2018年パリで行われた「<ル・テタンジェ>国際料理賞コンクール」で優勝。2021年11月、国内のロブショングループを統括する総料理長に就任。ガストロノミー“ジョエル・ロブション”【エリア】恵比寿【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】30000円【ディナー平均予算】60000円【アクセス】恵比寿駅 徒歩5分※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報や営業時間は店舗にご確認ください。
2022年04月21日人里離れた、大自然に囲まれた古民家での暮らしを体験四季折々の里山の恵みをローカル・ガストロノミーに昇華酒どころ、新潟の銘酒が料理のおいしさを後押し人里離れた、大自然に囲まれた古民家での暮らしを体験新潟県南魚沼の豊かな自然の中にある【里山十帖】。6500平米の敷地の中に13室の客室を有する温泉宿です。築150年の古民家をフルリノベーションして、2014年にオープンしました。大きな梁や柱はそのままに、昔ながらの古民家の雰囲気を感じつつ、静かな空間で雪国の暮らしを、見て、味わって、体験することができます。暮らすように里山の恵みを体験同施設のメインダイニングは、『ミシュランガイド新潟2020特別版』一つ星を獲得した【早苗饗(さなぶり)】。【里山十帖】の宿泊者以外も、【早苗饗】を利用できます。店名の早苗饗とは、田植えが終わったあと、その年の豊作を祈るのと同時に、田植えに協力してくれた人々をもてなす饗応のこと。「その昔は当然だった自然と共存する暮らし。人は水、空気、食べ物がなくては生きられません。風土と文化に寄り添いながら、自然の恵みに手を合わせていただく。そんな料理の基本に忠実に、人間が持つ「野生」が目覚める料理を作りたいと思っています」と語るのは、料理長の桑木野恵子さん。南魚沼の食材と向き合う料理長の桑木野さん桑木野さんは、オーストラリアやインドでアーユルヴェーダを学んだ経験があり、野菜料理に加えて、ハーブやスパイス使いが得意。ドイツの他、さまざまな国での生活経験があるため、調理の引き出しも豊富です。「大地の恵みを感じていただくこと」「食材の力を感じていただくこと」をテーマに、南魚沼の食材を使ったコース料理と新潟の日本酒やワインを提供します。四季折々の里山の恵みをローカル・ガストロノミーに昇華コースの内容は日本の二十四節気に合わせて変わるため、訪れるたびに新しい出会いがあります。料理の主役は南魚沼の旬野菜。例えば夏なら、トマト30個の栄養を盛り込んだ皿や、5種のナスを異なった調理法で食べさせる料理が提供されます。川で釣った魚や、地下の蔵でひと冬を越えた木の実のピクルスなど、さまざまな食材がコースを彩ります。トマトウォーターをプラスして、桃太郎トマト30個分の栄養を詰め込んだ『とまと30個』近隣の農家から仕入れる桃太郎トマトと、その果肉のエキスを凝縮させたトマトウォーターを合わせて、デラウエアとバジルも添えた一品。一皿にトマト30個分の旨みと栄養が凝縮大沢茄子など5種のナスに異なる調理法を施し、旨みを引き出した『新潟茄子王国 2021』夏の新潟のごちそうといえば、ナス。大沢茄子、泉州茄子、水茄子、梨茄子、長茄子には、煮る、炭で焼く、揚げるなど、異なる調理法を施します。また付け合わせの焼きサバが、ナスの豊潤な旨みを引き立ててくれます。ナスの味の違いを食べ比べ骨せんべいと肝を練り込んだ素麺付きで、南魚沼の鮎をまるごと堪能できる『鮎』近くを流れる魚野川で獲れたばかりの鮎。炭火で焼いた身だけでなく、骨は骨せんべいに、肝は焼いた身の下に忍ばせた素麺に練り込んで、一皿でまるごと一匹の鮎を味わえる仕立てです。一皿でアユの美味しさを丸ごと堪能酒どころ、新潟の銘酒が料理のおいしさを後押しさらに新潟県南魚沼といえば、日本を代表する酒どころです。【八海醸造】【高千代酒造】【青木酒造】など、日本酒は地元の酒蔵の銘柄を中心にオンリスト。ワインも【カーブドッチワイナリー】など、新潟産がメインです。料理の味を引き立てるものばかり四季折々で変化する自然の美しさ、山の恵み。自然と共にある時間と空間をゆっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。料理人プロフィール:桑木野恵子さん1980年埼玉県生まれ。武蔵大学人文科比較文化学科卒業後、都内のエステサロン勤務を経て海外へ。オーストラリア、ドイツ、インドなど世界を巡り、ヨガとベジタリアン料理を学んだ。帰国後、都内のヴィーガンレストランを経て、新潟に移住、【里山十帖】のダイニング【早苗饗】で勤務を開始。2018年には【里山十帖】料理長に就任する。地に根付く食文化、風土、雪国の暮らしを肌で感じながら、ローカル・ガストロノミーを料理で表現する日々。早苗饗【エリア】湯沢/奥只見【ジャンル】日本料理・懐石・会席【ランチ平均予算】14080円【ディナー平均予算】14080円※店舗情報は取材当時の情報です。最新の情報や営業時間は店舗にご確認ください
2022年03月09日フランスの瀟洒な邸宅を思わせるレストラン正統派かつ芸術的な極上のフランス料理約400種類で構成されたワインリストを用意フランスの瀟洒な邸宅を思わせるレストランガーデンに面したテーブル席飯田橋駅から徒歩3分、フランス風の気品のある一軒家【SOMBREUIL】は、ガストロノミーの世界観を味わえるフランス料理店。450坪の敷地には美しく整えられたガーデンが広がり、季節の移ろいとともに美しい花が咲き乱れています。壮麗な門柱に重厚な扉、フランス風の石造りの館と、品格あるメゾンの趣が感じられます。居心地の良いラウンジで心躍るひとときを店内に入ると、ゆったりとした空気に包まれるラウンジがお目見え。そこに広がるのは、ヨーロッパから取り寄せた格調高い家具たちや、螺旋階段、シャンデリアなどの美しいインテリア。ほかにもアンティークの調度品、リモージュの磁器やクリストフルの銀器を使用するなど、本物を知る大人も納得のこだわりを見せています。正統派かつ芸術的な極上のフランス料理エグゼクティブシェフの若月稔章氏【エメ・ヴィベール】にてミシュラン2つ星を獲得以来、7年連続で星を守り続けたシェフがつくるのは、芸術作品ともいうべき一皿。真の伝統的なフランス料理が少ない日本で、正統派のクラシカルな技法と、時流を追求する革新的な技法とを融合させた料理で多くの食通を魅了しています。ここからは、コース料理の一例をご紹介します。鴨のフォワグラのコンフィ 黒無花果のチャツネ ポルト ソーテルヌ マイスソテー 胡桃 鴨胸肉フュメのサラダシェフのスペシャリテのうちの一つ。厳選した鴨のフォワグラを、低温でじっくりと調理しています。滑らかでシルクのような艶やかさのフォワグラは、口の中でゆっくりとろけます。鴨胸肉フュメのサラダは別盛りで。金目鯛のヴァプール クレソンのクーリ サフラン マイクロトマト上質な金目鯛を蒸し焼きにすることでしっとり旨みを閉じ込め、朱色がかった皮目の赤味は強調されます。緑が美しいクレソンのソースや鮮やかな黄色のサフランソースがより金目鯛を引き立てます。フレッシュトリュフの丸ごとパイ包み焼き トリュフソース香ばしく焼き上げたパイ生地の中には黒いダイヤモンドといわれる「黒トリュフ」が丸々1つ。ナイフを入れた瞬間に溢れ出すトリュフの香りを纏わせながら、さらに芳醇なトリュフソースと共にいただく至高の一品です。約400種類で構成されるワインリストを用意料理と合わせるワインペアリングコース、豊富に揃うグラスワインも愉しめる吹き抜けのエントランスに螺旋階段という非日常的な一軒家には、ガーデンを望める40席のメインダイニング、2~6名と30名までの個室も完備。大切な方との会食や接待などに最適です。そんな特別な席に華を添えるのは、やはりワイン。用意しているのはフランス産を中心に約400種で構成されるワインリストです。悩んだらぜひソムリエに相談してみましょう。料理人プロフィール:若月稔章さん武蔵野調理師専門学校卒業後、【ラ・マレ】【トゥールダルジャン】を経て渡仏。様々な星付きレストランで修業後、帰国。2004年【エメ・ヴィベール】の料理長就任。「ミシュラン東京」創刊号で2つ星を獲得以来、7年連続星を獲得。更なる高みを目指し、同士と共に新会社を設立。2017年【ソンブルイユ】開業と共にエグゼクティブシェフに就任。ソンブルイユ(SOMBREUIL)【エリア】飯田橋【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】10000円【ディナー平均予算】20000円【アクセス】飯田橋駅 徒歩3分※緊急事態宣言の際は、営業時間が変更されている可能性があります。最新の営業時間はお店に直接お問い合わせください。
2021年02月23日ガストロノミー “ジョエル・ロブション”は、特別ディナーコース“Menu 25ème Anniversaire du Château”を、9月29日(日)から10月31日(木)まで提供。“Menu 25ème Anniversaire du Château”は、ガストロノミー “ジョエル・ロブション”の開業25周年を記念した期間限定の特別メニュー。ジョエル・ロブションを代表する料理から高級食材を使用したメニューまで、贅をつくした華やかな品々がテーブルを彩る。コースの始まりは、ゴンドラに見立て焼き上げた生地に、白トリュフ入りのコンテチーズのクリームソース絡めた「ゴンドール 香り高い白トリュフとコンテチーズのソースで」。仕上げにスライスした白トリュフを飾った贅沢な一皿だ。また、ドット柄でソースの淵を彩った「ソローニュ産キャビア 甲殻類のジュレになめらかなカリフラワーのクレーム」や、帆立貝のムースをスパゲティーで覆った「ホタテ貝スパゲッティのテュルバン シャトーシャロンの香る軽やかなソースコライユで」など、ジョエル・ロブションを代表するメニューの数々を堪能できる。【詳細】Menu 25ème Anniversaire du Château期間:2019年9月29日(日)~10月31日(木)会場:ガストロノミー “ジョエル・ロブション”住所:東京都目黒区三田1-13-1 恵比寿ガーデンプレイス内コース内容:特別ディナーフルコース価格:1人 65,000円(税込) ※サービス料12%別※コース価格に飲み物は含まれない。※特別ディナーコースは来店日2日前迄の予約が必須。※コースの内容・金額は予告なく変更となることがある。【予約・問い合わせ先】ガストロノミー “ジョエル・ロブション”TEL:03-5424-1338 又は 03-5424-1347(受付時間 11:00~21:00)
2019年10月14日2019年、イタリアで一番注目されたシェフはこの人現在イタリアで最も注目されているシェフは?と聞いたならば多くのシェフが名前をあげるのが【リド84(オッタンタクアットロ)】のシェフ、リッカルド・カマニーニだ。【リド84】は風光明媚な場所として知られる北イタリアのガルダ湖畔にあり、2014年にOPENして半年後に1つ星を獲得。カマニーニは今年6月に発表された世界ベストレストラン50では「最注目シェフ賞」に相当する「One to watach Award」を受賞し、一気にその名前が世界的に知れ渡った。2014年にジャンカルロとリッカルド兄弟はガルダ湖畔にレストランをOPEN、その後徐々に拡張し、現在は湖に面したテラスもあるリッカルド・カマニーニ。1973年生まれ。マルケージやデュカスの元で修行したのち【リド84】をOPEN。地元食材を使った発酵料理が人気。2019年のイタリア料理界はカマニーニ・イヤーだったといっても過言ではないだろう。昨年秋に発表された老舗レストラン・ガイド「エスプレッソ」では最高峰の5つ帽子=チンクエ・カッペッリを獲得。これはマッシモ・ボットゥーラの【オステリア・フランチェスカーナ】やニコ・ロミートの【レアーレ】など合計7軒のレストランにしか与えられない名誉な賞。2019年現在イタリアではミシュラン3つ星を獲得しているレストランは合計10軒。「エスプレッソ」で5つ帽子を獲得することはある意味ミシュラン3つ星よりも狭き門なのである。『リゾット・アル・アーリオ・ネロ』黒にんにくを海水で40日間発酵させてリゾットに。ニンニク臭は皆無でヨード香やミネラル感が際立つ。ビーツの赤と黒のコントラストはマルケージの名作「赤と黒」と思わせる1973年生まれのリッカルド・カマニーニはグアルティエロ・マルケージやアラン・デュカスの元で修行。パリから戻ったカマニーニはリゾート地として名高いガルダ湖畔にある1つ星【ヴィッラ・フィオルダリーゾ】の厨房に入り、40才まで15年間勤め上げた。兄であるサービス担当のジャンカルロ・カマニーニとともに【リド84】を同じガルダ湖畔に2014年にOPEN。以来ここ5年間の活躍は目覚ましいばかりとしかいいようがない。これが噂の『豚の膀胱のカチョ・エ・ペペ』。注文は2人前からだが大抵のゲストがコースにこのパスタを注文する。1人前15ユーロとリーズナブルカマニーニがイタリアで注目されるようになったのは、シグネチャーディッシュのひとつである『カチョ・エ・ペペ・イン・ヴェッシカ・ディ・マイアーレ』つまり豚の膀胱内で調理するパスタ、カチョ・エ・ペペを発表してからだ。これは古い羊飼いの伝統的調理法を再現したというものだが、調理法としてはイタリア料理の伝統的手法である紙包焼き「アル・カルトッチョ」なのだ。まずパスタと水、ペコリーノ、黒胡椒を豚の膀胱で包んで口をひもでしばる。これを湯せんにかけてパスタには間接的に火を入れるのだが、すると蒸気で膀胱がぱんぱんに膨れ上がりバレーボールのようになる。テーブルには丸い膀胱がそのまま運ばれて来てゲストの目の前でスタッフがハサミを入れると中からなんともかぐわしいパスタが登場する、という仕掛けだ。スタッフが膀胱を切り分け、サーブしてくれたカチョ・エ・ペペ。ペコリーノと水で加熱したゆえにこの乳化具合。茹で具合が毎回微妙に異なるので、スタッフは必ず一切れカマニーニの試食用に持ち帰る「このパスタは最後の瞬間まで味見ができないし、間接加熱なのでパスタの茹で加減は毎回違う。でも手作りなんだからそれもいいじゃないか」とカマニーニ。確かに一口食べてみるとローマで味わうかのようなアル・デンテ。ペコリーノ・チーズと水を混ぜてその中でパスタを茹でただけあってソースのクリーミーさは今まで味わったことがないほど滑らか。イタリアでは生ハムの王様と呼ばれるクラテッロはやはり豚の膀胱に包んで発酵させるので、熟成庫に入るとそのアンモニア臭にうっ、となることもあるがこの料理は膀胱を調理器具として使用しているのでそのような香りは全く無い。鴨の脂でコンフィにした牛のバベットステーキ。赤ワイン品種、ネッビオーロのヴィナッチャ(搾りかす)で風味を加えているもうひとつ、カマニーニの代表的料理に『ビール酵母とバターのスパゲッティ』があるが、これはイタリア代表として美術館から招聘され、ミュージアム・パスタとなった。というのもSFMOMAのミュージアム・レストラン【In Situ】では世界のトップシェフ90人のシグネチャー・ディッシュを再現しており、ボットゥーラのドルチェ『ウップス!』などと並び、イタリア代表としてカマニーニのパスタが選ばれたのだ。『ビール酵母とバターのスパゲッティ』低温ローストした酵母はヘーゼルナッツを思わせる香ばしい香りでピエモンテ産バターと相性がいいこのパスタは国産小麦100%、アブルッツォ産太めのスパゲッティを使い、味付けは最高級バターと名高いピエモンテのベッピーノ・オチェッリを使用。仕上げに75度で5時間乾燥させたビール酵母のクランブルをトッピングする。酵母というのは確かに食材だがダイレクトに味わうというのは今まで誰も試したことがなかった。ところがバターと酵母の出会いは実に奥深い発酵バターの香りとなり、スパゲッティの力強さに負けない極上のソースとなる。クリスピーな酵母も食感のアクセントとなって実に心地よい。アミューズで登場するセージとタッジェーリという野草のフリット。地元の生産者を大切にするカマニーニは、可能な限り地元の食材を使うよう心がけているカマニーニは大の日本食ファンであり、10年前には40日間かけて日本を旅し、東京、京都、大阪などを食べ歩いた。その時最も気に入ったのが京都の【草喰なかひがし】で、食材に対して自分の料理と日本料理は共通項が多い、と再認識したそうだ。カマニーニは現在北イタリアを中心のトレンドとなっている発酵料理の先駆者であり、ガルダ湖畔の名も知れぬ野草を好んで使う。それはいままで未知の味との出会いへつながるアプローチであり、そうした仕事がいまイタリアのみならず世界中で評価されている。イタリアにおけるガストロノミーのトレンドは昔も今も「ミクロテリトリアーレ」つまり極小地域料理だが、ガルダ湖畔が新たな美食の地としていま注目されているのは、このリッカルド・カマニーニに追うところが非常に大きい。LIDO 84 リド・オッタンタクアットロ住所:Corso Zanardelli 196, 25083 Gardone Riviera (BS)Tel:+39-0365-20019営業:12:30014:30、19:30022:30休日:火曜、水曜
2019年09月27日シェフプロフィールアンドレ・チャン(ANDRE・CHIANG)【RAW(ロウ)】 オーナーシェフ。フランスの【メゾン・ トロワグロ】をほか数々のレストランを経験した後、 2010年6月にシンガポールで【Restaurant André】をオープン(現在閉店)。その後2014年12月に故郷 台湾 に【RAW】オープン。「2019年アジアのベストレストラン50」30位、 2019年版「ミシュランガイド台湾」で二ツ星を獲得。リオネル・ベカ (LIONEL BECCAT)【エスキス(ESqUISSE)】エグゼクティブシェフ。【メゾン・トロワグロ】でスーシェフを務めたのち、2006年東京の【キュイジーヌ [S]ミッシェル・トロワグロ】オープンに伴い来日。シェフとなる。 2012年【エスキス】のシェフに就任。2013 年~2019年現在「ミシュランガイド東京」で二ツ星を獲得、2018年に「ゴ・エ・ミヨ」の"今年のシェフ賞″受賞。僕たちのコラボレーションは、料理で奏でる"ジャズセッション"―リオネルさんとアンドレさんは、17年前、【メゾン・トロワグロ】で一緒に働いたことがあると聞きました。お互いの印象はどうでしたか?リオネル・べカ(以下リオネル敬称略):アンドレは、17年前に出会ったときも今とまったく同じ目をしていました。先をまっすぐ見ている目が印象的だった。働き方を見ていても一つ一つの動きに無駄がない。凄いやつだと思いました。ですから、再会したときに彼はすでに世界的なシェフとなっていましたが、それについてまったく驚くことはありませんでした。アンドレ・チャン(以下アンドレ敬称略):僕はあまりほかの人と交わるタイプではないのですが、【メゾン・トロワグロ】に入ったとき、リオネルはすぐに話しかけてくれました。最初にできた友達ですね。僕はモンペリエからやってきて、彼はマルセイユ出身。南仏のノリで波長があった。リオネルは威張らず、どこにも属さず、正直でフェアでいろんな可能性にオープンな人だった。そんな印象は情熱的な部分も含めて今も変わらないです。「芸術、色、形」という言葉から始まり、「希望・思考」という言葉で終わる全6種のテーマを設定。そのテーマに沿って、各シェフが1品ずつつつくるというメニュー構成―今回のコースは印象的な言葉のテーマに沿って、二人が一品ずつつくるという内容でしたね。メニューはどのようにして決めましたか?リオネル:二人のコラボは今回が二回目。一回目は自分たちのルーツをテーマにしました。今回のテーマ【感覚―地球への視点ー】は、二人の日常で話していたこと。地球の環境問題から、美しさ、ともに経験した懐かしい日々。そんな二人だけの話を料理を通じてゲストに分かち合いたいと思ったんです。そこから得たインスピレーションで言葉をいくつか考えて、アンドレに渡しました。彼がその言葉に沿って料理を考えて僕に戻してくれたので、そこから自分の料理を考えていきました。アンドレ:【RAW】は台湾の食材と、台湾のホスピタリティを発信し体感してもらうレストランです。その基本スタンスはそのままに、彼から投げかけてもらった言葉の間を埋めていくように料理のイメージを膨らませました。第一回目が過去がテーマだとしたら、第二回目は"今"がテーマ。僕が興味のある"今"の要素―アートや形や考えや風景-を、リオネルの言葉にフィットさせるように料理を考えました。キッチンでの息もぴったり。リオネル・ベカシェフ(左)とアンドレ・チャンシェフ(右)―抽象的な言葉だけで、一つのコースを二人で作り上げていく。まとめていくのは、とても大変なことのように思います。”こうしよう”というルールなどがあったのでしょうか。リオネル:特にありません。例えば、猫は高い所から空中にジャンプしてもストンときれいに着地できるでしょ。お互いを信頼しているからうまく着地する。自分のことも相手のことも予想がつくから、”驚くこと”はあっても、”突拍子もない”ことはならないって確信していましたね。アンドレ:我々のコラボは、ジャズのセッションのよう。個々の練習は必要だけれど、二人の練習は必要ない。初めて演奏するにしても、どっちがソロをやるのかという順番も関係ない。違うことを違う楽器で演奏するのに、一つの曲として成立する。自由に奏でてそのときのバイブレーションで一体化する。そんな感覚です。「芸術・色彩・形状」というテーマに合わせて、リオネルシェフがつくった料理。なかは酒粕を入れた、フォアグラのムース。周りは薄くスライスしたマッシュルームフランスの魂を持ったアジア人、アジアの魂を持ったフランス人。正反対な二人だから、うまくいく―それにしても、お二人の料理はどちらも本当に美しいです。そしてとても調和していました。リオネル:前菜のマッシュルームの一皿は、パピヨン(蝶)が飛び立つイメージでつくりました。この皿の前に出すアンドレの料理が牛肉のタルタルで、鮮烈な赤、卵黄の黄色、キャビアの黒、と強いコントラストがあった。だから、僕は一切の色を無くそうと思った。折り紙のようなはかない生き物がそっと皿の上で羽化した。そんなイメージで生のエネルギーを感じてほしかった。シンプルに見えるけれど、この料理はいろいろな技術をつかってをつくっています。アンドレ:僕たちは、とても似ているけれど、とても違う。リオネルはフランス人だけれどアジアの魂を持っているし、僕はフランスの魂を持ったアジア人。料理の方法も正反対。彼の料理は一見エレガントでシンプルだけれど、中は驚くほどパワフル。私は逆に、パッションをもっとダイレクトに表現する。けれど中は静寂。インサイドアウトとアウトサイドイン。お互いが持っている反対の部分をよく理解していて、それがうまくかみ合ったと思います。「遺産、工芸、伝統」のテーマでアンドレがつくった『ニガウリとシリアル』。軽くマリネしたゴーヤの下には、鶏のだしで炊いた冷たいおかゆが隠れている。塩卵の黄身のクリームを添えて―アンドレさんのゴーヤの一皿も美しく、そして意外性がありました。ゴーヤの下はおかゆでしたね。アンドレ:「遺産・工芸・伝統」というワードから、台湾で子供時代に日常的に食べていたおかゆをつくりました。ゴーヤを重ねたのは、積み重ねてきた人生をなぞらえて。ゴーヤは体を冷やす食べ物だから、夏、台湾でも食卓によく登場する食材です。昔から伝わる食べ物にまつわる知恵は、DNAレベルで体が覚えていると思うのです。私たちの無意識下にあるルーツ、我々はどこから来たのか、そんなことを料理で伝えられたらと感じました。―メニューには、「アンドレの悪夢」や「もっと薄くできないの?」という面白いタイトルのものもありました。リオネル:「アンドレの悪夢」は、毎日毎日アンドレがなすを大量に仕込まなくてはいけなくて、"なすを見るとその時の悪夢がよみがえる"という、今だから笑える記憶から生まれたもの。同じように、「もっと薄くできないの?」は、僕が牛乳とレンネットで凝乳シートをつくる仕込みをしていると、ミッシェル・トロワグロ氏から「もっと薄くできないの?」といつも怒らていた僕のトラウマから生まれた料理です(笑)「風景、人生、要素」というテーマでリオネルがつくった『キンキ、梅、花ズッキーニ』。ウロコを立たせて仕上げたキンキに、肝でつくったソース。青梅のコンポートを添えて―リオネルさんの「風景、人生、要素」というのはどんなイメージでつくったのですか?リオネル:料理人て、頭が先行して、皿の上で自分自身を主張してしまうことがある。内省的になってしまい、料理に自分を投影してしまう。この一皿では、素材そのものをきちんと前に出る料理にしたいと思った。メイン食材はキンキ。だからキンキの良さを前面に出しました。なにも隠さないし、自分の意識は乗せない。食材の美しさを感じてもらうような料理を、コースの中で一皿は食べてもらいたい、これは【エスキス】で常に考えていることです。―しかし、内省的、つまり自分が今までなにを見てきたかの積み重ねは大切なのではないでしょうか。だからこそ、極限まで素材そのものにフォーカスしても、料理人の中につもってきた様々な経験が料理にあらわれる……。リオネル:そうした部分ももちろん大切です。美しさを見出だす目を養うこと。人に対して誠実であること。自分で自分のリズムを刻みつづけられるかということ。詩的なことに敏感であるかどうか。自分の内なる声を聴き、クリエイティブなところに自分をおけるかどうか。そうした経験の積み重ねが自分を形づくっているのですから。「美と儚さ」をテーマにアンドレがつくったデザート、『アイユー、タマリロ、ホエイ』。水分にアイユー(愛玉子)の果汁をいれると固まる性質を利用し、水に果汁をいれて固めたゼリーの上に、酒粕でつくったチュイルを添えて―「夢と儚さ」と名付けられたアンドレさんのデザートは、アイユー(愛玉子)と水のゼリーがメインでした。これはどういうメッセージが込められていますか?アンドレ:このデザートはこれからの食の未来を考えた一品です。アイユーは、台湾で昔はよく食べられてたゼリーに使う柑橘でした。けれど、最近は一昔前の食べ物として忘れられてしまっている。だから、そこに光をあてたかった。昔はあたりまえだったのに、今の生活からはじかれてしまっているノスタルジックな食べ物を今に引き戻す。それは自分の店のメニューづくりの考え方でもあります。リオネルとこれからの食について話したことがあったんです。とても大きなテーマですけれどね。僕は50年後に虫を食べなければいけない未来が待っているとは思えない。忘れられた食べ物に光をあてる、というのもそうですが、いろんな視点で未来は変えられる。台湾カカオの殻をお茶にする、というのは”使えないものを食べ物にする”という視点が未来につながると考え、最後に出しました。今日初めてお披露目したという、台湾カカオの殻のお茶。ほんのりとカカオの香りがするハーブティー―初めてお互いが出会ってから17年間。その間に自分自身も環境も、時代も変わってきました。これからどのように料理と向き合い、チャレンジしていきたいですか?リオネル:来日して13年、自分の視点は変わっていませんが、自分自身のパーソナリティは変わったと思います。日本で暮らす中で日本人的な感覚が身について、繊細さをより感じ取れるようになりました。最近は無駄のない、ピュアな料理にはまっています。程よいバランスとシンプルかつ力強さを見いだせる一皿を作りたい。そうはいっても料理で実現させることは難しい。まだまだチャレンジは続きます。アンドレ:僕の家族は父親が書家で母がシェフ、自分自身は彫刻と陶芸を勉強していた芸術一家でした。ですから僕は、クローズしたシンガポールの【アンドレ】、台湾【RAW】、四川か【ブリッジ】、マカオ【シチュアムーン】と別の絵を描くようにそれぞれのレストランをつくってきました。すべてのレストランは私の心です。そんな私にとって、今も昔も大切なことは、"いい世界を信じること"。その考え自体が正しいかどうかわからないけれど、ポジティブシンキングさえあればどんなこともやり遂げられる。なにかの経験が、驚くようなことに導くとは思っていません。日々の考え方の積み重ねが、自分がイメージする絵を描けるように導いてくれるのだと思います。今回のコラボレーションも大成功。より絆が深まった二人のシェフESqUISSE【エリア】銀座【ジャンル】フレンチ【ランチ平均予算】15000円【ディナー平均予算】30000円【アクセス】銀座駅 徒歩1分
2019年09月19日久しぶりの大阪。駆け足の旅で、京都からの帰りにいくことができました。予約の電話をしたとき、苦手な食材を聞かれて、「ジビエはいかがですか?」と言われ、「そういえば、前回行ったときも、この季節だった」と懐かしくなりました。前回は、日帰りで京都の神社とお寺を可能な限り回るという強行スケジュールで、しかも、最終の新幹線で帰ることにしていたので、慌ただしいことこの上ない食事でした。白い店内は、個人的には北欧をイメージするような柔らかい空間で、オープンキッチンでシェフたちが動く姿も楽しめる、チームワークが見えて、「ここ、好き」という印象が強く残ったレストランでした。そして、昨年、ゴールデンウィーク後にリニューアルされて、前回の「ちょっとカジュアルさ」を感じたアニエルドール は、「大人のフレンチレストラン」に進化したという噂が耳に入ってきました。九州ばかり行っているので、大阪はいつも上空通過ですが、やっと、やっと、この日がきました。 はやる気持ちで、予約時間の1時間前に到着京都のホテルを出て、京都駅で京都土産を購入、東海道山陽本線から大阪駅で地下鉄に乗り換え、約1時間。カメラ2台持ち、お土産ありで、帰りに空港までのリムジンに乗るなんば駅でコインロッカーに荷物を預けて身軽になって、お店に向かいます。大阪は、いたるところにコインロッカーがあって、とても便利だなと思います。阿波座駅について、時計を見たら、12時前。予約は13時。帰りの飛行機の時間を考えると、13時だと少し厳しいなと思ったので、電話をして早く行っても良いかの確認をして、快く受けてくださって、お店に向かいました。が、絶対に迷う自信があって、ホームページでは「徒歩4分」とあるのに3倍くらいかかって、到着。暖かい週末だったので、軽く汗かきです。 このシンプルさが、とても素敵!(気をつけないと、初めていくときは、見過ごしてしまうかも)ワクワクしたながらドアを開けて、食事が始まりました。 ときめきだらけのメニュー、ビストロノミーからガストロノミーへ 軽く汗かきだったので、まず、シャンパーニュをお願いして、あとは、お料理に合わせたワインをお願いします。前回と変わっているのは、オープンキッチンから窓から覗けるキッチンになっていること。盛り付けは、そこで行われます。その窓まで、テーブルふたつを挟んでいたので、遠慮がちに遠目で拝見。美しく盛り付けられているお皿が並んでいて、本当に、ワクワクします。 まず、はじめに、揚げパン(写真奥)とビスク。熱々の揚げパンは、中に煮込んだ海老が入っていて、ビスクには海老と人参のフランが入っています。ちょっと感じたスパイスが、ヴァドゥヴァンマサラという半発酵させた、クミンに似ているスパイスということでした。 つづいて、2皿目。素揚げした湯葉、豆乳のスープにホタテと蕪のタルタル、からすみのパウダー。やさしい味です。 3皿目は、卵が登場。スーシェフが盛り付けていたのを見ていて、綺麗だなと思っていたひと皿。菊芋チップス、半熟卵、和牛のタルタル。右下にある柚子のマヨネーズソースをつけて。この柚子のマヨネーズソース、美味しかった。春が来た!みたいな綺麗なひと皿。牛肉のタルタルは、ハツが歯ごたえのアクセントになっていて、目にも、舌にも、楽しい、美味しい、美しいひと皿でした。 真っ黒なチップスに囲まれて出てきました。中を覗くと、炊いた大根の上に、カンパチ、そして、大根、チョリソー、黒オリーブのタルタルです。真っ黒なチップスは、黒オリーブのチップス。カンパチはあっさり目のイメージですが、このカンパチはふくよかな感じがして、そこに、個性的なチョリソーが味と歯応えで対応している感じでした。 そして、メインのお魚とお肉お魚は、五島のクエとホワイトアスパラ、つぼみ菜。今年初めてのホワイトアスパラ。ソースはザ・フレンチな濃厚リッチなクリームソースを、外カリ、中ふわのグリルしたクエにたっぷりつけていただきました。つぼみ菜、実は、初めて食べました。福岡産のお野菜ということで、春を感じる蕾に似た形がこの時期が旬のお野菜です。このお料理に合わせていただいたワイン、オレゴンのシャルドネ、これ以上ないペアリングでした。 そして、お肉は、小鴨。とても綺麗なお肉です。真ん中のソースはベリーのソース。綺麗に、まんまる。そして、左にあるのは、ほうれん草に包まれだ椎茸といぶりがっこの肉団子。いぶりがっこのスモーキーさが椎茸とよく合ってます。 お皿の統一感 この日のお料理は、オレンジ、黄色、白という色の統一感がとても気になりました。 そして、デザート。もう、春、がそこまできているようなキウイとピスタチオ、発酵マスカルポーネのパルフェ。 飛行機の時間を気にしながらのミニャルディーズ。 藤田晃成シェフ。大根が形を変えて何回も登場。美味しい物を美味しい時に食べる、旬をいただくことになるのですが、大阪という場所がら、庭の畑で採れたお野菜を使うというのは、難しいことであって、それでも、美味しい食材をタイムリーに手に入れるというのは、大変だと思います。でも、そこは大阪。2年前にきた時にも、シェフが、大阪の地の利を生かしてお料理をするとおっしゃってました。なんでも手に入るという経済の強さ、流通の強さがあるから、料理する、ということに集中できるのですね。食後にシェフとお話しした際、「突き詰めると、お料理がシンプルになる」とおっしゃっていたのが印象的でした。 agnel d’or(アニエルドール)住所:〒550-0005大阪府大阪市西区西本町2-4-4阿波座住宅三栄ビル1F(地下鉄中央線「阿波座」駅1番出口より徒歩4分)TEL:06-4981-1974OPEN:Lunch 12:00 - 13:15(L.O)Dinner 18:00 - 20:00(L.O)CLOSE:月曜日(Monday)、火曜日ランチ(Tuesday lunch time)
2019年02月21日―料理人になって50余年。振り返ってみて、18歳のときに今の自分の姿は想像できたでしょうか?それは難しいですね。誰も将来の自分を想像することはできないですよね。でも振り返ってみて、毎日健康でいられることにただひたすら感謝しています。それから素晴らしい家族、仲間がいること、一緒に仕事をしてくれるパートナーがいることに心から感謝をしています。毎日メニューを考えたりすることなど、この職業は集中する必要があります。そこに対して少しフラストレーションを感じることもあるけれど、それは職業の宿命として受け止めている。50年やっても、そう思いますね。―1981年にサン=テティエンヌでレストラン【ピエール・ガニェール】をオープンした後、5年後の86年に2つ星、93年に3つ星を獲得。ご自身のキャリアの中で、どんどん評価があがってきたときにどう感じられましたか?2つ星がつく少し前に日本に初めて行ったことを覚えています。ミシュランの星の獲得については特にそれについて考えることはなく、とにかく目の前の仕事をするのみでした。評価は自分でするものではなく、他者の評価で初めて成り立つもの。自己満足でもいけない。自虐的でもいけない。そのバランスを保ちながら自信を持ち続けることが必要です。よく言われるけれど、人生というのは常に新しいスタートの連続だととらえています。毎日自分自身をこうするんだという自分への説得、あるいは、他の人を説得し続けることも必要。よりよい仕事を保つことのエネルギーが必要。その連続なのです。厨房で料理を盛り付けるピエール・ガニェールシェフ。日本の【ピエール・ガニェール】赤坂洋介シェフがサポート―とはいえ、いろんな声が入ってしまうから、バランスを保つことは難しいと思います。どうやってブレないような状態にされているのでしょうか?謙虚であること。人の話を聞くこと。集中しつづけること。流行にとらわれすぎないこと。今という時代は情報が溢れていて、毎日のように“また新たな天才が生まれた”というようなニュースに触れるわけですが、周りで起こっていることに注意を払いつつ、決してそれに振り回されることなく自分の芯となる部分は保つことが大切です。自分をよい状態にするには、ある程度のストレスも大事だと思っています。でも、ストレスがありすぎるのはダメです。また、私自身は“ナンバーワンシェフではない”ということを受け入れているつもりです。確かに名前が知られているかもしれませんが、常に批判もある。それにいちいち振り回されていては気が狂ってしまいます。批判はありつつも動じない。どこででもナンバーワンと認められるわけではない、それを認める、ということです。―ガニェールさんのお料理は前衛的でアーティスティックな料理という印象があります。一番最初にご自身のお店に立たれたときから、明確な料理のイメージはあったのでしょうか?自分の名前の店をやるときというよりもさらに前、父親の店を継いだ後、1977年に自分のために料理をしようと思ったんです。そう思ったとき、今までとは違うやり方で料理をしないといけないと感じました。さらに先を追及したい、違う組み立て方をしないといけないと思った。しばらくしてから初めて日本を訪れて日本料理を食べたときに、5-6年前から探していたのはこれだったんだ!と大きな発見がありました。料理に限らず絵画、陶芸、花・・・・・・。ほかの様々な芸術のように、料理を通して自分の感情を表現したいと気づいたのです。この日即興でガニェール氏がつくった一皿。インタビューしたのは4月末。春の生き生きとした食材がにぎやかに皿を彩る―その体験は、ガニェールさんに影響を与えた、ということでしょうか?”影響”、ではなく、”共鳴”と言うのでしょうか。多くの欧米の料理人がおかしてしまった過ちは日本の文化をコピーをすること。例えば洗練されたプレゼンテーションをまねする、というようなことは危険だと思います。私自身はそういう風に影響を受けたというつもりはありません。それより、日本の文化に触れたことによって、哲学的な親近感を感じた、ということです。―振り返ったときに日本に最初に来たときの体験は、やはりすごく印象的な出来事だったんですね。若いころは何かをつくり上げて、それが何を意味するかというのに気が付くことはできない。けれど、それをもとにだんだん人生が積み上がり、それが人のヒストリーとなっていく。この経験がその時期最も重要だったかはわからないけれど、強く記憶に残っているのは確かです。遠くに見える山、そしてビル群が東京らしい景色。【ピエール・ガニェール】の窓際は絶景を望める―日本の魅力はなんですか?少し矛盾している国だというところ。1つの側面は素晴らしく洗練されたものを持っていて、美しくて、純粋で、ピュア。建築の中にも見えますし、寿司店のカウンターの木のクォリティの良さ一つとってもそうです。洋服もそうです。しかし、その一方で猥雑な面も持っていると思います。日本の洗練された部分は年を重ねるごとにどんどん理解できるようになった。けれどゲームや漫画、という我々と異なる文化、それから男女関係などは私には不思議に映るところがある。そこが面白いです。―男女関係ですか??僕は専門家ではないので、そこは詳しくは語りませんが(笑)シックで落ち着いた店内―50年という年月を通じて、料理に対する変化というのはあったのでしょうか?ありますね。長いこと、料理は私にとって一種のセラピーのようなものでした。料理を通して精神を表しているような。料理を通して自分の人生を写しているような感覚です。ただ、現在は料理自体が私の人生そのものであることに変わりはないのですが、そこに対する恐怖感というのは減ったように感じます。また初めてロンドンに海外展開をしたときから変わったことがありました。以前はすべて自分でメニューを考えて書いたら、自分で料理をしていました。けれど今は私がメニューを考えて各国のシェフたちがさらに私の考えを翻訳して料理をつくっています。それで良くなるときもあれば、そうでないときもある。そこも変化した部分ですね。―日本では赤坂洋介シェフが翻訳をしているということですね。赤坂シェフは昔、料理の仕方がとても日本的だった。けれど彼も年齢を重ねて自分自身のスタイルというのが少しずつ出てきて、日本人的なやり方とフランス文化のうまい感じの組み合わせになってきた。前よりもずっとシンプルな料理になってきていますし、味覚もより繊細になってきている。私は本当にそう思っていなければ言いませんが、赤坂シェフは才能があると思います。赤坂シェフがつくる春の一皿―料理人に必要な才能はなんだと思いますか?勇気を持つこと。精神的に強いこと。人が好きなこと。最後のほんのわずかな部分が、生まれつきの感覚なのだと思います。―今、ご自身が興味を持っている国や食材、調理法などがありましたら教えてください。いろんなものに興味はありますが、特にこれ、というものはありません。例えば私の兄弟は他人のことを良く観察しているな、と思いますが、私自身は人のことを観察しません。それは私の欠点かもしれませんが、私は私の考えをもとに料理をつくる。確かに少しは何かの影響をうけることもありますが、人のことは人のこと。ほかからなにか情報を得る、影響を受けるということに時間を割いているつもりはありません。私は私自身の個人的な感情を料理にしている。そこに加えて、ここ数年は自分を取り囲む人に応じながら料理をつくっているという感じです。インタビューのときに、心の奥底から言葉をひとつひとつ救い上げるように答えてくれたピエール・ガニェール氏。来日時には店内のスタッフ、一人一人への気遣いも忘れない―最後にこれからチャレンジしたいことはなんですか?特にないですね。ひとつあるとすれば、毎日の暮らしのなかで素晴らしい瞬間をつくるということ。毎日を面白いものにしていくこと、だと思っています。―シェフの毎日は、すでに素晴らしいことに出会う環境にいらっしゃると思ってしまいます。でも、自分でそれは仕向けていく必要がありますよ。たとえば今この瞬間もそうですけれど、色々な出会いに対して、きちんきちんとその瞬間に向かい合うということだと思います。きちんと話を聞いてくれる人には耳を傾け、誠意をもって対応する。意識をしなければそういう面白い瞬間をつくれないと思います。
2018年05月18日2017年6月24日、この日は本岡将シェフが日本でのシェフとしてのデビューの日。お休みしていたRestaurant Bio-sが人知れず、予約を開始していて、「みずくさいな」という思いとともに、予約を入れて、富士宮へ向かいました。お天気もよく、富士山も見えるというとても気持ちのいいBio-s日和の日曜日。食事が始まります。 はじめまして、いただきます 野菜のコンソメ緑茶のオイル Farm to Table。地元で採れたオーガニックな食材を使った、旬の美味しさを料理するレストラン、Restaurant Bio-sとの再会の一皿目は、スープ。お野菜だけで作られたコンソメ、濃いです。 サンダル履きで、外に飛び出る人その人がシェフでした。お料理を飾るEdible Flowerを採りに、レストランの前の菜園へ走る彼。シェフが自ら食材を採りに行く、日頃の生活圏内では考えられない光景です。その摘んだばかりの食材は次のお料理に使われて、出てくるお料理はそれはみずみずしく、美しい。でも、どこか、力強くて、艶っぽさもあります。 LYB豚 そして、再会Restaurant Bio-sは静岡県富士宮市にあります。東京に住んでいると、近いけれど、それほど頻繁に通える距離でもありません。富士宮市にできた「富士山世界遺産センター」に行こうと思っていたので、ちょうど良い機会と、半年以上を経て、2度目の本岡シェフのお料理をいただきに、Restaurant Bio-sを予約しました。 野菜の滴緑茶の薫り お皿が変わりました。花柄の綺麗な飾り皿は、本岡シェフのイメージにとてもよくあっているように思います。野菜のコンソメから始まるコースは変わっていないけれど、コンソメはより洗練されて、濃密な味わいになった印象があります。これは、シェフのSignature dishになるのかしら。 「お久しぶりです」から始まるシェフとの会話久しぶり、と言える関係にあるお店ができると、大人になったかなと思えて嬉しい瞬間です。2度目だったので、「お久しぶりです」から、会話が始まりました。本岡シェフは、物静かで、柔らかな雰囲気を纏っている方です。物腰からは、Edible Flowerが彩るお料理のような優しい感じなのですが、話をするときは、哲学者のような雰囲気があります。 Biosに来て、もうすぐ1年、今の気持ちを聞いてみると。 「毎日楽しいです。そして、ここの人たちは、みんな優しいです。」 Restaurant Bio-sは里山にあり、お店の前は牛舎、周りに民家は見当たらないような場所です。お散歩をしていると出会うおばあちゃんやおじいちゃんとの会話が楽しくて、好きです、と。知り合うと、会うたびに、「これ持っていきな」とお野菜を分けてくれたりする、そういう繋がりが嬉しい、と。そのおばあちゃん、おじいちゃんからもらった優しさが、お野菜と一緒にお料理に反映されているのですね。 「食材が豊富で、本当に楽しいです。山野草は、全部、自分で味わってみて、料理のイメージができたら使います。自生している野生の植物を、自分の目と舌で確かめて、それを料理して、お客さんに食べてもらう。そして、お客さんが喜んでくれるのが、嬉しいんです。お客さんの喜んでいる顔を見るのが何より楽しい。」 でも、野生の植物だと、食べられないものもあるのでは? 「もちろん、初めてみる植物だと、調べます。でも、一度調べたら、覚えています。」 兵庫県赤穂市の牡蠣、Biosの畑で採れた野草 シェフが選んだ野菜やハーブが、お料理を彩ります。この日、シェフの出身、兵庫県の牡蠣が届いたので、急遽、メニューに加えたということでした。その日採れた食材を、旬の状態で、一番美味しくお客さんに食べてもらいたいと料理が作られて、それを食べられるというのは幸せです。 当日ある食材でコース料理を提供するというのは、その日もしかしたら予定していた野菜が採れないかもしれないのでは? 「雨だと咲いていない花もあり、里芋など地中系のお野菜も取れません。そういう時は、当日、メニューを変更します。」 自然とともに、自然をお料理する、という本岡シェフ。コースメニューはだいたい期間が決まっているので、富士山を見ることはできなくても、雨の日に訪れるのが楽しみになります。 最初の一皿、コンソメはどのように決めたメニューなのでしょうか? 「静岡を代表するお茶、松木さんのお野菜を表すコンソメ、両方を表せる。そして、Restaurant Bio-sにきたというテロワールを感じることができると思います。野菜のお出汁の味はどこにも負けない、それほど大切なものです。」 Edible Flowerがいつもお皿を彩っていて、本当に美しいお料理ですね。 「自分にとっては、人工的なイメージのEdible Flowerというより、「食べられる山野草」です。僕は、人と人が物々交換をしていたような時代が本当に優しい時代だと感じていて、野山で食材を調達する生活に戻したいのです。今、自分自身が富士宮の地域や自然に密着した生活を送っています。お料理に山野草を使うということがその象徴です。」 どうして料理をつくることを選んだのですか? 小さい頃、「自分が好きなことをして、自分が幸せで、それによって周りの人が幸せになる。幸せが重なる」そういう生き方をしたくて、毎日、いつの瞬間も実現できることを考えていました。自分の好きなものってなんだろう?そう考えると、家族、ペット、食べ物、日常的に当たり前に触れているものは全て好きだな。それなら、これからも、当たり前に隣にあってほしいもの、それは、管理栄養士をしていたおばあちゃんが昔からずっと教えてくれていた「料理」だな、と、今に至りました。僕は、「幸せ」だけで料理をして、みなさんに食べてもらいたいと思っています。食材を大切にして、いかに美味しく食べてもらおう、作る僕自身も笑顔で作り続けたいです。Biosで働く人の心の中には、愛や優しさがいつもあるキーワードです。 最後に、好きな季節は? 「梅雨前の春です。ハーブや野菜が豊富で、見ていて癒されるし、暑すぎないからどんな料理も食べたくなるような季節ですね。そして、その季節のお豆料理。お豆が好きなので。」 料理が終わると厨房からダイニングにやって来て、各テーブルのお客さんとお話をしています。その日のお料理について話したり、レストランの前にいる山羊のことを話したり。私は、行くたびに、その日のメニューにサインをしてもらいます。美味しい記憶を繋げて行くのが楽しみな本岡シェフのお料理。これからの時期、富士山はすっきりと見えることは少なくなるそうですが、夏野菜が美味しくなる季節です。また、シェフの新しいお料理を楽しみに行きたくなります。東京から2時間半ほどでいける非日常なレストランは、ホスピタリティに溢れた素敵なレストランです。 本岡将シェフ1993年8月生まれ、兵庫県加古川市出身。南仏、パリで働き、帰国、2017年6月よりRestaurant Bio-sのシェフ。 Restaurant Bio-s
2018年05月13日ガストロノミーで自然と東北への想いを表現東京・赤坂の路地裏にひっそりと佇む「Crear Bacchus(クレア バックス)」では、目でも舌でも味わえる絶品フレンチをいただけます。グレーの壁面に木の扉、シンボルツリーとお店の看板がおしゃれで落ち着いた外観です。店内は1日10名限定で、ゆったりと過ごせる空間になっています。2016年3月11日にオープンしたこのお店は、スタッフ全員が東北出身者。東北への想いをのせて東日本大震災が起きたその日に開店しました。ガストロノミーという美食術と自然がコンセプトで、生産者の顔が分かる自然の食材にシェフの繊細な技術をのせて、見た目も舌も喜ばせてくれるフレンチレストランです。「収穫」は、収穫の喜びを表現したガストロノミー「収穫」には、ガストロノミーと自然というお店のコンセプトが一皿に込められています。茨城県大和田農園露地栽培の有機野菜を使い、収穫の喜びが伝わってくる料理です。木のお皿の上に、土や草原をパウダーで表し、花と小さなシャベルが添えられています。シェフが信頼している農家さんから仕入れた野菜を収穫のイメージで盛り付けられており、美味しくも可愛らしい一皿に、思わず笑みがこぼれそうです。日本の自然と四季を表現した「息吹」はこだわりの一品北海道産の鴨のフォアグラを使用し、自然の息吹や日本の四季を表現した「息吹」。お肉は54度の低温でじっくりと火入れを施し、付け合わせの庄内野菜はコンソメで煮込んであり、お客さんの来店時間から逆算して用意されています。味を引きしめるワイン塩は、フランス産の海塩と、ボルドーの人気ワインを使って作ったこだわりの自家製塩です。火山に見立てたカフェドパリバターのソースが絶妙な味わいをさらに引き立てています。薔薇の花ことば「絆」は美しすぎる絶品デザート東北への想いが込められた「絆」は、福島県千駒酒造酒粕とピスタチオのパルフェの上に、薔薇が花咲くデザートです。薔薇の花ことばのひとつ「絆」からネーミングされ、シェフの出身地福島県への想いを表しています。まるで本物のような薔薇はホワイトチョコレートで作られ、美しすぎてフォークを入れるのをためらってしまうほどです。ガストロノミーを通して東北復興の力になりたいこのお店では、福島出身のシェフが東日本大震災の復興の力になりたいという思いを持ち、東北出身のスタッフと料理を提供しています。自然を表現したガストロノミーの美しい料理は、多くのグルメ本でも紹介されるほど。1日10名限定のゆったりとした空間で、創造的な料理の美しさと味わう楽しさを記憶に残しながら、誕生日や記念日、接待にご利用してみてはいかがでしょうか。お店までは、東京メトロ千代田線「赤坂駅」5a出口から徒歩2分、もしくは南北線「溜池山王駅」12番出口から徒歩8分です。駅から近くアクセスの良い場所にありながら、一歩路地を入ったB1Fの落ち着いた雰囲気も魅力のひとつです。特別な日に記憶に残るガストロノミーをぜひ一度お召し上がりください。スポット情報スポット名:Crear Bacchus住所:東京都港区赤坂2-15-9 石井第3ビル B1F電話番号:03-5797-7260
2018年05月07日ガストロノミー“ジョエル・ロブション”より、バレンタイン限定コース「MENU DE LA SAINT-VALENTIN」が登場。2018年2月10日(土)から2月14日(水)までの期間限定で展開される。世界を代表するフレンチシェフ「ジョエル・ロブション」によって開業されたガストロノミー”ジョエル・ロブション”。今回登場する「MENU DE LA SAINT-VALENTIN」は、バレンタインを華やかに演出する、季節の食材をふんだんに使用した色鮮やかな料理コースとなっている。「北海道産ホタテ貝 ポアレにし、金柑のコンフィとクーリに乗せ ソローニュ産キャビア・アンペリアルを添えて」は、器のふちを彩る緑とオレンジのドットが印象的なスープ。金柑を使用したソースは、香りも味わいも爽やか。絶妙なタイミングで火入れしたホタテを合わせて食べる、なんとも贅沢な一皿だ。メインの肉料理は、「牛フィレ肉 フォアグラと抱き合わせローストにし“ロッシーニ”風に仕上げて」。サービススタッフが、目の前で肉を切り分けるパフォーマンスが見どころだ。真っ赤なハートの飴細工がインパクトのあるのデザート「シュークル・クール とちおとめのソテー エピスを効かせたジュレと共に」。アニスやカルダモンといった香辛料を苺に合わせたスパイシーな味わい。可愛らしい見た目と、刺激的な味わいで大人のバレンタインを楽しんで。【詳細】MENU DE LA SAINT-VALENTIN期間:2018年2月10日(土)~2018年2月14日(水)時間:ランチ 土・日・祝 12:00~14:00 (L.O.)16:00 クローズ/ディナー 18:00~21:00 (L.O.)24:00 クローズ 場所:ガストロノミー“ジョエル・ロブション”住所:東京都目黒区三田1-13-1 恵比寿ガーデンプレイス内料金:1人 35,000円※価格は全て税込、サービス料別となり、飲み物は含まれない。【予約・問い合わせ先】03-5424-1338 又は 03-5424-1347(受付時間 11:00~21:00)※男性には、ジャケットの着用をおすすめ。※このメニューは、テーブルごとに一緒の注文となる。【メニュー】・ラングスティーヌ 軽くて香ばしいゴーフレットに・北海道産雲丹 甲殻類のジュレになめらかなカリフラワーのクレーム・北海道産ホタテ貝 ポアレにし、金柑のコンフィとクーリに乗せ ソローニュ産キャビア・アンペリアルを添えて・オマールブルー ロティし、シャトーシャロンの香るソースと黒トリュフ、フランス産栗のラグーと共に・牛フィレ肉 フォアグラと抱き合わせローストにし“ロッシーニ”風に仕上げて・シュークル・クール とちおとめのソテー エピスを効かせたジュレと共に・カフェとミニャルディーズ※コースの内容は予告なく変更となることがある。
2018年02月03日喧騒を忘れる落ち着つける大人のための空間で、心も身体も整える表参道駅から徒歩5分、一歩足を踏み入れると上質な大人の空間が出迎えてくれる「I・K・U青山」。ゆったりと落ち着けるリラックスした雰囲気でありながら、カジュアルすぎないのがポイントです。開放感たっぷりの窓からは、緑も楽しめます。「自然派フレンチ」の名の通り、オーガニック食材を中心にハーブや野菜、肉、魚、全ての素材にこだわり、信頼できる生産者の食材のみを使用。さらに、濃厚なソースや油の使用を極力避けるなど配慮されているので、「フレンチは重くて胃もたれしそう…」というイメージも一新されます。有機野菜をはじめとした厳選素材の味をシンプルに楽しむ食前は3種のスーパーナチュラルジュースから始まるのがI・K・U流。コールドプレス製法で作られているので、栄養素を壊さずそのまま身体に摂り入れられます。3種はそれぞれ野菜ソムリエが「デトックス」「ビューティー」「パワーチャージ」のテーマで特別にブレンドした、他には無いオリジナルな味わいです。続くサラダやスープ、テリーヌ、メイン料理、デザートにいたるまで、風邪予防や血行促進、消化吸収、保湿効果のある食材を使ったりと、全てが健康と美容にうれしいメニューばかり。緻密に考え抜かれた「身体へのやさしさとおいしさ」への心遣いは、初めての感動体験になるはずです!文/加藤芝浦スポット情報スポット名:I・K・U青山住所:東京都港区南青山6-1-24 南青6124ビル3F電話番号:03-6805-1199
2017年10月24日