劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ主宰の劇団ナイロン100℃が結成30周年記念公演第二弾として上演する新作『江戸時代の思い出』の追加キャストが発表された。昨年2月から3月に結成30周年記念公演第一弾として東京・ザ・スズナリで上演されたレトロホラー『Don’t freak out』に続く本公演は、劇団初の時代劇。三宅弘城、みのすけ、犬山イヌコ、峯村リエ、大倉孝二ら劇団員、客演の池田成志、坂井真紀、山西惇の出演がすでに発表されていたが、劇団公演には実に21年ぶりの参加となる奥菜恵の出演が決定した。併せて、奥菜を加えたチラシビジュアルも新たに公開となった。なお『江戸時代の思い出』は2024年6月から8月にかけて東京・新潟・兵庫・北九州で上演される。<公演情報>ナイロン100℃結成30周年記念公演 第二弾ナイロン100℃ 49th SESSION『江戸時代の思い出』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチナイロン100℃結成30周年記念公演 第二弾 ナイロン100℃ 49th SESSION『江戸時代の思い出』チラシビジュアル【出演】三宅弘城みのすけ犬山イヌコ峯村リエ大倉孝二松永玲子安澤千草藤田秀世喜安浩平眼鏡太郎猪俣三四郎水野小論伊与勢我無木乃江祐希/池田成志坂井真紀奥菜恵山西惇【東京公演】2024年6月22日(土)〜7月21日(日) 本多劇場【新潟公演】2024年7月27日(土)・28日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場【兵庫公演】2024年8月3日(土)・4日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール【北九州公演】2024年8月10日(土)・11日(日・祝) J:COM北九州芸術劇場 中劇場チケット情報:()関連リンクキューブ 公式サイト:シリーウォーク 公式サイト:
2024年04月04日劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチが主宰を務める劇団ナイロン100℃の結成30周年記念公演第二弾『江戸時代の思い出』が、2024年6月22日(土) から7月21日(日) まで東京・本多劇場で上演されることが決定した。昨年2月から3月に結成30周年記念公演第一弾として東京・ザ・スズナリで上演されたレトロホラー『Don’t freak out』に続く本公演は、劇団初の時代劇。出演には、三宅弘城、みのすけ、犬山イヌコ、峯村リエ、大倉孝二、松永玲子、安澤千草、藤田秀世、喜安浩平、眼鏡太郎、猪俣三四郎、水野小論、伊与勢我無、木乃江祐希の劇団員に加え、客演として池田成志、坂井真紀、山西惇が名を連ねた。併せて公開されたチラシビジュアルでは、漫画家・松田光市によるカラフルさと癖のあるキャラクターたちが目を引くイラストと、江戸時代の武士、町人、花魁に扮し凛々しい様子の出演者たちの躍動感ある写真が並んでおり、ナイロン100℃ならではの一筋縄ではいかない時代劇を予感させる仕上がりとなっている。『江戸時代の思い出』は東京公演を上演後、新潟・兵庫・北九州公演が予定されている。<公演情報>ナイロン100℃結成30周年記念公演 第二弾ナイロン100℃ 49th SESSION『江戸時代の思い出』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチナイロン100℃結成30周年記念公演 第二弾 ナイロン100℃ 49th SESSION『江戸時代の思い出』チラシビジュアル【出演】三宅弘城みのすけ犬山イヌコ峯村リエ大倉孝二松永玲子安澤千草藤田秀世喜安浩平眼鏡太郎猪俣三四郎水野小論伊与勢我無木乃江祐希/池田成志坂井真紀山西惇【東京公演】2024年6月22日(土)〜7月21日(日) 本多劇場【新潟公演】2024年7月27日(土)・28日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場【兵庫公演】2024年8月3日(土)・4日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール【北九州公演】2024年8月10日(土)・11日(日・祝) J:COM北九州芸術劇場 中劇場チケット情報:()関連リンクキューブ 公式サイト:シリーウォーク 公式サイト:
2024年03月06日ケラリーノ・サンドロヴィッチの過去の戯曲を、才気あふれる演出家たちが舞台化するKERA CROSSシリーズの第五弾『骨と軽蔑』が、2024年2月23日(金・祝) に東京・シアタークリエで幕を開けた。シリーズのラストを飾る本作は、KERA自身による新作書き下ろし・演出作品。7人の手練れの俳優たち(宮沢りえ、鈴木杏、犬山イヌコ、堀内敬子、水川あさみ、峯村リエ、小池栄子)と紡ぎ出す、女性だけの群像劇だ。公演開幕に際し、オフィシャルレポートと、作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチと出演者7名からのコメントが到着した。舞台は、東西に分かれての内戦が続くとある国の田舎町。作家の姉マーゴとその妹ドミー、母のグルカ、長年この家に仕えてきた家政婦のネネは、「お城」と呼ばれる巨大で古ぼけた邸宅に暮らしている。屋敷の主である父親は、軍需工場を経営し一財産を築いたが、今は2階の寝室に伏せったまま。秘書のソフィーがつきっきりで世話をしている。止まない爆撃音、姿を見せない権力者=父が醸し出す不穏なムードの中、それぞれに孤独を抱えた登場人物たちが交わす会話は、感情豊かで、滑稽で、しばしば不謹慎なほどに笑え、時に切なく身に迫る。さらにマーゴの熱狂的ファンの客人ナッツ、編集者のミロンガも加えた人間関係も、羨望と嫉妬、優越感と思いやり、反発と絆……の間を常に揺れていて定まらず、スリリングで目が離せない。人生も、日々の暮らしも、確かに「幸福」「不幸」といった一色に染まるものではない。こうした現実の人生、人の営みに対する解像度の高さと、マジカルでファンタジックな設定も折り込んだ独自の世界観が同居するところにこそ、本作の、そしてKERAの手がけるドラマの真骨頂がある、と言えるだろう。東京公演は3月23日(土) まで。その後、福岡・博多座、大阪・サンケイホールブリーゼでの公演を予定している。■ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント腕も魂もある7人のキャスト、骨身を惜しまず尽力してくれるスタッフ、そして集中して観てくれるお客さんのおかげで、とても気持ちよく終われた初日でした。日比谷で公演するのは初めてなので緊張します。今日は、私のひねくれた作劇を心得てくれてるお客さんが多いように感じられて、非常に有り難かった。こんな日ばかりじゃないでしょう。心して臨みます。こんな世の中なので迂闊なことは言えませんが、女優だけの出演者で書く台本、女優だけに演出する稽古は、昔からとてもやりやすいと感じてます。今回のように手練れ揃いだと尚更です。私はうまい俳優が好きです。どんどん変わってゆく。稽古もとても楽しかった。あそこで積み上げたものを大切にし、さらに練り上げていきます。いきますともさ。■宮沢りえ コメント楽しくて刺激的な稽古を経て、無事開幕いたしました。強烈な個性と、高温の魂を持った7人が、KERAさん色に染まった台詞を紡ぎあって生まれていくユーモアや緊張感、演じていてもあっという間の濃密な舞台です。千秋楽まで、鮮度を大切に、飛躍し続けられるよう、頑張ります。劇場という空間で、素敵な音色や明かりにも誘われこの作品の世界に吸い込まれるように、楽しんでいただけたらと思います。■鈴木杏 コメントなんとか初日を迎えることができて嬉しいです。台本を読んだ時に感じた面白さや驚き、稽古場で日々KERAさんから言っていただいたこと――その素晴らしさをダイレクトにお客様にお渡ししたいなという気持ちでいます。KERAさんの作品にはこれまでも出演したことがありますが、今回は特に複雑さを感じます。ですから、緊張もするし、気持ちの切り替えも大変なんですが、最後まで新鮮な気持ちでやっていきたいです。■犬山イヌコ コメントKERAさんの作品には、数多く参加しておりますが、今回はその中でも上位に入る、シビれる初日でした。なんせ日比谷でKERAさんの新作をやるのは初めてなので、これは芝居を観ていただいた方にはわかると思いますが、いかに初めてお会いするお客さんに楽しんでいただけるのか、というポイントを、わしが一つ担っているんです。今日も無事それを届けられたんではないかと思います。“スーパーセブン”って呼んでもいいぐらいの素晴らしい女優さんたちとつくりあげたKERAさんの世界を存分に楽しんでいただければと思います。それでは、劇場でお会いしましょう。■堀内敬子 コメント緊張しましたー!(笑)私の役が登場するのは最後なので、どんどん緊張感が高まって……。でも最初のうちから劇場全体があったかい感じだったので、お客さんとキャストのみんなを信じていこう、みたいな気持ちで出ていきました。とはいえ結局、最後まで緊張はしてしまっていたかもしれない。でも、出演者7人、すごく心が通じてる感じもあって。サポートもしてくれるし、とっても温かいチームなので、最後まで頑張って公演をやり遂げたいと思います。■水川あさみ コメント本番に向かってつくってきたみんなのグルーヴがはまっていく感じにゾクゾクしました。お客さまには、KERAさんの言葉、演出をたくさん浴びて、そのおかしみ、奥行きを味わっていただきたいと思います。どの人物も多面的で、感情移入できるポイントや面白みがあって、最初から最後まで一面しか見せてない役はないんです。だから、「あれ、この人、さっき言ってたことと違うな」なんて発見も楽しくて、ずっと見ていたくなるはずです。驚くような幕切れになりますし、「この人たちどうなるの……?」なんて台本には書かれていない場面の前後を想像してみるのもきっと面白いと思います。■峯村リエ コメント初日が無事に開きました!!色々な言い間違えのミス満載だったゲネプロを経て、完璧な初日を迎えました!!多分!!これからは日々、違った形の完璧を繰り返しながら、益々深い世界観を創っていく所存です。言い間違い満載のゲネプロも大変面白かったです。■小池栄子 コメント冒頭からお芝居のギアがあがり、お客さまとの間でちょっとずつ、いい“うねり”ができていくのがわかりました。ナッツが客席に語りかける場面でも、お客さまが本当に温かくて。彼女のチャーミングさを伝えていくことで、一緒にひとつの空間をつくっていけるという実感が得られた気がします。大きな事件というよりは、シンプルな出来事を複雑に積み重ねて関係性をつくったり、言葉遊びも随所にありますから、ぜひKERAさんの書く台詞を聞き逃さないでいただきたいと思います。私たちも、一言一句を大切に届けていきますので、共に味わって楽しんでいただければ嬉しいです。撮影:引地信彦写真提供:東宝 キューブ<公演情報>KERA CROSS 第五弾『骨と軽蔑』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:宮沢りえ 鈴木杏 犬山イヌコ 堀内敬子 水川あさみ 峯村リエ 小池栄子【公演日程】2024年2月23日(金・祝) ~3月23日(土) 東京・シアタークリエ2024年3月27日(水) ~3月31日(日) 福岡・博多座2024年4月4日(木) ~4月7日(日) 大阪・サンケイホールブリーゼチケット情報:()公式サイト:
2024年02月26日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の過去戯曲を様々な演出家たちが新たに創り上げるシリーズ「KERA CROSS」。そのラストをKERA自身が新作を書き下ろして手掛ける。登場するのは女性7人のみ。そのひとりとなる宮沢りえにKERAとの創作について聞いた。KERAさんの作品には両極端なものを感じます──これまでKERAさんとは、『三人姉妹』(15年)、『ワーニャ伯父さん』(17年)、『桜の園』(20年/稽古のみで全公演中止)のチェーホフシリーズでご一緒されてきました。KERAさんの作品にはどんな印象をお持ちですか。演じても観ていても、両極端なものを感じます。痛いけれど笑っちゃう、笑っちゃうけど悲しいというようなところがあるなと。それを演じるのは大変ではありますけど。ある生々しさみたいなものも要求されますから。──気づきや刺激なども多い現場でしたか。広いイメージを私たちにくれることもあれば、具体的におっしゃることもありました。『三人姉妹』では、「空気をどんどん壊すような女でいてほしい」とおっしゃったり、「宮沢りえが出したことのない音で高笑いしてください」と言われたり。そうやって毎日くれる課題に応えていくことにワクワクしましたし、自分が出したアイデアを採用されるのも嬉しかったです。──今度の『骨と軽蔑』では、初めてKERAさんの新作に出演されることになります。現時点ではキャストだけが決まっていて、「手練れの女優7人と一緒に辛辣なコメディを作ってみたい。会話劇だ」とのコメントを寄せておられます。手練れのおひとりとして、今、どんな心持ちでいらっしゃいますか。私は全然ダメですけど(苦笑)、本当にいい役者さんが揃っているので、その個性の中で自分がいかに届くような芝居ができるかというのは、大きな課題だなと思っています。──宮沢さんご自身がいいな、素敵だなと思われるのはどんな役者さんですか。今回ご一緒する役者さんは皆さん、自分が担っているものを理解して、惜しまずやっていらっしゃるイメージが強くあります。その意味で破壊力しかない(笑)。それから私は、チェーホフシリーズですごく勉強になったことがあって。チェーホフの戯曲には喋らなくてもその空間にいる人物がいて、その話を聞いているだけの人を見ると物語がわかってくるんですね。その人がいい居方をしていると喋っている人も生きてくる。そんな“主”もできるし“脇”もできるという私の憧れるスタイルを持っていらっしゃるところも、今回の皆さんの強さだろうなと思っています。2024年は舞台の年になりそう──KERAさんの作品も、誰もが主で誰もが脇という印象があります。今回もそうなりそうな気がしますが、『骨と軽蔑』というタイトルからどんな想像をされていますか。私はこのタイトルを見たときに、「好き!」って思ったんです。骨というのは命が果てた後に剥き出てくるものなので、それがどんなふうに出てくるのか。きっと楽しい会話劇ではないだろうなと思いますけど(笑)。強さと弱さとか、美しさと醜さとか、怖さと面白さとか、さっきお話したような両極に振れる世界観なのかなとは思っています。──これが2024年の最初の舞台になります。ご自身に期待するのはどんなことでしょう。24年は舞台の年になりそうなんです。どれもすごく飛躍をしなければ成立しないような作品や役ばかりなので、常に今までの自分ではダメだと思っていますけど、それをより強く感じる1年になるのではないかなと。だから、できるだけ高いところに飛べる力を鍛えながら、誠実に一つひとつ乗り越えていけたらなと思っています。取材・文:大内弓子撮影:石阪大輔<公演情報>KERA CROSS第五弾『骨と軽蔑』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:宮沢りえ、鈴木杏、犬山イヌコ、堀内敬子、水川あさみ、峯村リエ、小池栄子【東京公演】2024年2月23日(金・祝) 〜3月23日(土)会場:日比谷・シアタークリエほか、福岡・大阪公演ありチケット情報:()公式サイト:
2024年01月25日劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と女優の緒川たまきのユニット『ケムリ研究室』の第三弾新作公演『眠くなっちゃった』が、10月7日(土) に世田谷パブリックシアターで初日を迎えた。毎回観客の予想を超える挑戦を続け、注目を浴びる『ケムリ研究室』。第三弾となる今回は“レトロフューチャー”と称し“近未来を舞台にした大人のための寓話”をテーマに、20世紀初頭のヨーロッパを思わせるような懐かしさと異質な未来感、そして終末感が混在する不思議な世界の中で、恐ろしくどこか儚い人々の姿が描かれる。当初、10月1日(日) に初日を迎える予定だったが、9月30日(土) に発生した劇場機構の予期せぬ深刻なトラブルにより公演が中止に。その後劇場内の安全確認を行い、10月7日18時に開幕した。出演者は緒川をはじめ、北村有起哉、音尾琢真、奈緒、水野美紀、山内圭哉、野間口徹、犬山イヌコ、篠井英介、木野花といった面々がキャストとして名を連ねている。東京公演は10月15日(日) まで。その後、北九州、兵庫、新潟公演を予定している。■ケムリ研究室(ケラリーノ・サンドロヴィッチ緒川たまき) コメント『眠くなっちゃった』開幕ニ日目の夜にこれを書いています。キャスト&スタッフの溢れんばかりの愛情が詰まったこの作品が、観客の皆様の記憶に永く刻まれることを願うばかりです。撮影:桜井隆幸<公演情報>ケムリ研究室no.3『眠くなっちゃった』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチケムリ研究室no.3『眠くなっちゃった』ビジュアル【出演】緒川たまき北村有起哉音尾琢真奈緒水野美紀近藤公園松永玲子福田転球平田敦子永田崇人小野寺修二斉藤悠藤田桃子依田朋子/山内圭哉野間口徹犬山イヌコ篠井英介木野花【公演日程】東京公演:2023年10月1日(日)〜15日(日) 世田谷パブリックシアター(10月1日(日)~10月7日(土) 13時公演は中止)北九州公演:2023年10月20日(金)〜22日(日) J:COM北九州芸術劇場 中劇場兵庫公演:2023年10月26日(木)〜29日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール新潟公演:2023年11月4日(土)・5日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場チケット情報:公式サイト:
2023年10月10日劇作家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さんと俳優の緒川たまきさんによるユニット、ケムリ研究室。これまで、どこかほの暗く非現実的でありながら、ポップさも感じさせる独特の世界に、シニカルな笑いを交えた作品を上演してきた。その最新作で第3弾となる舞台『眠くなっちゃった』に音尾琢真さんが出演する。「KERAさんの作品というと、どこかトリッキーなイメージがあると思うんです。でも実際に出演してみると、演技の組み立て方というのはすごくベーシック。自分の役をしっかり立ち上げて、その人と人とが会話をしているという土台をしっかり作っておかないと、あのKERAさん独特の世界は生まれないんです」KERAさんの演出作は、’19年の舞台『ドクター・ホフマンのサナトリウム』以来2度目の出演となる。「正直、僕は何もしていません。僕が無理にああだこうだとしなくても、台本が緻密に書かれているから、KERAさんに委ねれば自然と面白くなるんです。ただ、シーンによって、この場面のこのセリフではお客さんにこういう印象を抱いてほしいと言われるので、それに忠実に応えようとしているくらいです」“いつか見た懐かしい未来”を舞台に不可思議なSF劇が展開される。「もともとファンでもあるんですが、KERAさんの作品って物語の中に入り込んで、何が起こるかわからない“何か”を追いかけている間に終わるっていう印象があって、観ている間ずっと集中が途切れないんです。しかもそれが複雑な迷路のように見えるのに、ひとつひとつ矢印が付いているようにスイスイ進んでいけるのが面白いんですよね」ただ、その複雑な迷路を、毎日突っかかることなく同じペースで歩くのはやはり大変なようで…。「毎日綱渡りをし続けている感覚ではあります(笑)。その日の気持ちに任せてやれれば、毎回達成感は得られると思いますが、この現場はそういうわけにはいかない。毎回、あるハードルを越えたその先のレベルで、出演者全員が抑制をきかせた芝居で、狭い通路を通り続けなければいけないんですよね。その通り方を少しでも間違うと、棘が刺さって痛ッてことになってしまう。KERA作品に出ている方というのは、その日その日の自分のコンディションを調整しながら、ブレなくやり続けられるタイプの人ばかりな気がします。僕も日々精神統一して、仙人のような気持ちで臨んでいます」しかし、「そうやって迷路の中を歩き続けるくらいじゃないと、芝居って面白くないと思ってしまうところがある」のだとか。そして苦笑いしながら、「逆に言えば、そうじゃない舞台にはあまり興味がないともいえるんですけど」と付け加えた。「KERAさんの作品には知性を感じるんですよね。その知性が非常に探究心を煽るというか、観ていて、自分の中の何かが刺激されている感じがするのが好きなんですよね」音尾さんといえば、出演はわずかながら、妙な存在感を残したドラマ『VIVANT』が記憶に新しい。「完全に演出のおかげです。あえてもったいぶった出し方をして、視聴者の方にそう思わせる。まさに福澤(克雄)監督の思惑通り。そうやって、見る方の意識を思い通りに誘導できる方でないと、作れないものっていうのがあるんですよね。それはKERAさんも同じなんですけど」笑いながら語るその言葉の奥に流れるのは、深い信頼とリスペクト。「これは白石(和彌)監督にもいえるんですが、信頼している監督の作品ならば、どんなにちょっとでも、いつでも出させていただきたい。『そんなわけにいかないよ』って言われますけど、信頼できる方となら、どんな役でもやりたいです」ケムリ研究室 no.3『眠くなっちゃった』いつか見た懐かしい未来、どこかの国の話。娼婦のノーラ(緒川)。今は、夫のヨルコ(音尾)と一見、穏やかな日々を過ごしているが…。ほろ苦い異色のSF劇。10月1日(日)~15日(日)三軒茶屋・世田谷パブリックシアター作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演/緒川たまき、北村有起哉、音尾琢真、奈緒、水野美紀、近藤公園、松永玲子、福田転球、平田敦子、永田崇人、小野寺修二、斉藤悠、藤田桃子、依田朋子、山内圭哉、野間口徹、犬山イヌコ、篠井英介、木野花S席1万2800円A席8800円U‐25チケット6000円キューブ TEL:03・5485・2252北九州、兵庫、新潟公演あり。おとお・たくま1976年3月21日生まれ、北海道出身。TEAM NACSのメンバーとして人気を博し、ドラマ、映画、舞台などで活躍。10月24日深夜スタートのドラマ『マイホームヒーロー』(TBS系)への出演が控える。※『anan』2023年10月4日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2023年10月03日宮沢りえら、女優7名が出演するKERA CROSS 第五弾『骨と軽蔑』 が上演されることが28日、明らかになった。KERA CROSSは、劇作家で演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の戯曲の中から選りすぐりの名作を、才気溢れる演出家たちが異なる味わいで新たに創りあげる連続上演シリーズで、2019年の第一弾『フローズン・ビーチ』(演出:鈴木裕美)、2020年の第二弾『グッドバイ』(演出:生瀬勝久)、2021年4〜5月の第三弾『カメレオンズ・リップ』(演出:河原雅彦)、2021年12月〜2022年2月の第四弾『SLAPSTICKS』(演出:三浦直之)と、上演を重ねてきた。過去4作品とは異なり、シリーズラストとなる今回は“書き下ろしの新作”をケラリーノ・サンドロヴィッチ自ら演出し、宮沢りえ、鈴木杏、犬山イヌコ、堀内敬子、水川あさみ、峯村リエ、小池栄子と女優7名の豪華キャストで上演する。公演は東京・日比谷・シアタークリエにて2024年2月23日〜3月23日。○ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント女優のみが出演する舞台を書いて演出するのは、記憶が正しければ、これが3作目、23年ぶりのことだ。女優4人と創った一作目も、女優21人と作った二作目も、独自の香りを放つ特別な作品となった。今の時代、俳優は俳優であって、男優も女優もないと言う向きもあろうが、特別なものは特別なのだから仕方がない。ご期待頂きたい。
2023年09月28日劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチと女優の緒川たまきによるユニット「ケムリ研究室」の第3弾公演『眠くなっちゃった』の公演ビジュアルが公開された。「近未来を舞台にした大人のための寓話になる」という本作には、緒川をはじめ、北村有起哉、音尾琢真、奈緒、水野美紀、篠井英介、木野花といったキャストが名を連ねている。公開されたビジュアルは、閉塞的な雰囲気漂う中、集合したキャストたちと異質な存在感の緒川がこちらを見つめており、SF的な雰囲気と不思議な懐かしさが混じり合う“レトロフューチャー”の雰囲気を醸している。『眠くなっちゃった』は、10月1日(日) から15日(日) まで世田谷パブリックシアターで上演後、北九州、兵庫、新潟公演が行われる予定だ。■ケムリ研究室(ケラリーノ・サンドロヴィッチ、緒川たまき) コメントケムリ研究室は私たち二人が2020年に結成した演劇ユニットです。この秋、三回目の公演を行う運びとなりました。今作の時代背景はいつか見た懐かしい未来。追い詰められ世界を呪う人、生きることに草臥れた人、社会に怒れる人――そんな人々が織り成す、ほろ苦い異色SF劇になるのではないでしょうか。今回も素晴らしいスタッフ、キャストと共に思い切った研究に邁進します。ご期待ください。<公演情報>ケムリ研究室no.3『眠くなっちゃった』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ【出演】緒川たまき北村有起哉音尾琢真奈緒水野美紀近藤公園松永玲子福田転球平田敦子永田崇人小野寺修二斉藤悠藤田桃子依田朋子/山内圭哉野間口徹犬山イヌコ篠井英介木野花【東京公演】10月1日(日)〜10月15日(日) 世田谷パブリックシアター■チケット情報(前売・当日共/全席指定/税込)S席(1・2階席):12,800円A席(3階席):8,800円U-25チケット:6,000円(チケットぴあ前売のみ取扱)※U-25チケットは当日の開場時間から受付にて身分証明書提示の上、指定席券と引き換えます。座席はお選びいただけません。東京公演チケット一般発売:8月5日(土)【北九州公演】10月20日(金) 〜10月22日(日) J:COM北九州芸術劇場 中劇場【兵庫公演】10月26日(木) 〜10月29日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール【新潟公演】11月4日(土) ・11月5日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場公式サイト:
2023年06月30日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が作・演出を手がけた舞台『世界は笑う』のDVDの一般発売が、本日6月21日(水) 正午よりスタートした。2022年8月から9月に東京・京都で上演された本作では、昭和32年の東京・新宿にある軽演劇の劇団「三角座」を舞台に、喜劇人と彼らを取り巻く人々が織りなす哀しくて可笑しい群像劇が繰り広げられる。出演者は、瀬戸康史、松雪泰子、千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉、ラサール石井、銀粉蝶といったキャストが集結。喜劇に取り憑かれた人々の悲喜劇を描き切り、話題となった。映像には、KERA自ら監修したこだわりの編集により、総勢17名のキャストのあふれる魅力がしっかりと収められている。“手紙”のシーンも瀬戸が直筆で書き添え、映像ならではの編集がされている。また、特典には昭和の喜劇を愛するラサールとKERAによる作品背景を深掘りする対談、京都公演大千穐楽カーテンコールの模様、瀬戸、マギー、犬山イヌコによる副音声コメンタリーと、作品をより楽しめるコンテンツが収録されている。<リリース情報>COCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022『世界は笑う』DVD発売中価格:8,800円(税込)COCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022『世界は笑う』DVDジャケット作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:瀬戸康史、千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉、大倉孝二、緒川たまき、山内圭哉、マギー、伊勢志摩、廣川三憲、神谷圭介、犬山イヌコ、温水洋一、山西惇、ラサール石井、銀粉蝶、松雪泰子【収録日】2022年8月24日(水) Bunkamuraシアターコクーン【特典映像】・対談「昭和30年代の喜劇について」ラサール石井×ケラリーノ・サンドロヴィッチ・京都大千穐楽カーテンコールダイジェスト【特典】・副音声コメンタリー収録:瀬戸康史×マギー×犬山イヌコ詳細はこちら:
2023年06月21日劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチと女優の緒川たまきによるユニット「ケムリ研究室」の第3弾公演のタイトルが『眠くなっちゃった』に決定した。本作は近未来を舞台にした大人のための寓話になるとのことで、緒川をはじめ、北村有起哉、音尾琢真、奈緒、水野美紀、篠井英介、木野花といったキャストが名を連ねている。東京公演は、10月1日(日) から15日(日) まで世田谷パブリックシアターで上演。その後北九州、兵庫、新潟公演が予定されている。また、本作への期待をより高めるイベント『ケムリ研究室・研究見学会2023~新作のためのキーワード「未来・喪失・革命」をなんとなく巡ってのリーディング&トーク~』が、7月7日(金)・8日(土) に渋谷 LOFT HEAVENで開催予定。イベントにはケムリ研究室のふたりのほか、前作『砂の女』に出演した武谷公雄も参加する。<公演情報>ケムリ研究室no.3『眠くなっちゃった』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ【出演】緒川たまき北村有起哉音尾琢真奈緒水野美紀近藤公園松永玲子福田転球平田敦子永田崇人小野寺修二斉藤悠藤田桃子依田朋子/山内圭哉野間口徹犬山イヌコ篠井英介木野花【東京公演】10月1日(日)〜10月15日(日) 世田谷パブリックシアター■チケット情報(前売・当日共/全席指定/税込)S席(1・2階席):12,800円A席(3階席):8,800円U-25チケット:6,000円(チケットぴあ前売のみ取扱)※U-25チケットは当日の開場時間から受付にて身分証明書提示の上、指定席券と引き換えます。座席はお選びいただけません。東京公演チケット一般発売:8月5日(土)【北九州公演】10月20日(金) 〜10月22日(日) J:COM北九州芸術劇場 中劇場【兵庫公演】10月26日(木) 〜10月29日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール【新潟公演】11月4日(土) ・11月5日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場株式会社キューブ 公式サイト:<イベント情報>ケムリ研究室・研究見学会2023 ~新作のためのキーワード「未来・喪失・革命」をなんとなく巡ってのリーディング&トーク~7月7日(金)・7月8日(土) 渋谷 LOFT HEAVENOPEN18:30 / START19:00出演:ケムリ研究室(ケラリーノ・サンドロヴィッチ×緒川たまき)、武谷公雄詳細はこちら:
2023年06月07日劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチが率いる劇団ナイロン100℃の最新舞台『Don’t freak out』が、オンデマンド配信されることが決定した。本公演は、2月から4月かけて下北沢ザ・スズナリと大阪近鉄アート館にて上演されたナイロン100℃結成30周年記念公演第一弾で、大正か昭和初期か判然としない時代に、脳病院を営む天房家の女中部屋を舞台に繰り広げられるレトロホラー作品となっている。姉のくも(村岡希美)と妹のあめ(松永玲子)は天房家に住込みで働く女中。天房家の当主は、長男の征太郎(みのすけ)から、いつしか次男の茂次郎(岩谷健司)に変わっていた。茂次郎の妻・雅代(安澤千草)は、かつては征太郎の妻であり、征太郎との娘・颯子(松本まりか)、茂次郎との息子・清(新谷真弓)は共に暮らしている。複雑さといびつな闇を抱える天房家の秘密を把握する女中姉妹にも、また、逃れられない影と因縁があった。さらに、颯子の婚約者・ソネ(尾上寛之)や、昔馴染みの警官・カブラギ(藤田秀世)、葬儀屋のクグツ(入江雅人)など、屋敷に出入りする人々も絡み合い不気味な闇が浮き上がる……。視聴チケットは、本日より発売がスタート。<配信情報>ナイロン100℃ 48th SESSION『Don’t freak out』4月17日(月) 14:00 配信開始※4月23日(日) 23:59までアーカイブ有り配信内容:本編(3月7日(火) 収録映像/配信限定編集版)視聴料金:3,500円(税込)発売期間:4月3日(月) 12:00~23日(日) 21:30チケットはこちら:公演詳細:
2023年04月03日劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチが率いる劇団ナイロン100℃の結成30周年記念公演第一弾『Don’t freak out』が、下北沢ザ・スズナリにて2月24日(金) のプレビュー公演を経て、2月25日(土) に初日を迎えた。結成当時から人気劇団として30年間走り続けて来たナイロン100℃にとって、ザ・スズナリでの本公演は26年ぶり。客席数150席程の濃密な空間でナイロン100℃の芝居を細部まで目の当たりに出来る貴重な機会だ。時は大正か昭和初期か判然としない時代、姉のあめ(村岡希美)と妹のくも(松永玲子)は、脳病院を営む天房家の屋敷に住み込み女中として働いていた。天房家はかつては長男の征太郎(みのすけ)が当主であったが、今は、次男の茂次郎(岩谷健司)が当主をつとめる。茂次郎の妻・雅代(安澤千草)、二人の息子・清(新谷真弓)、雅代と前夫・征太郎の娘・颯子(松本まりか)と婚約者・ソネ(尾上寛之)……、屋敷には一族やその周囲の人々が出入りしている。長い歳月、天房家の家事を切り盛りしてきた女中姉妹はこの家の暗部や秘密を把握する一方で、彼女たち自身の人生も影と秘密を抱えていた。あめは婚約者(入江雅人)との悲しい過去に囚われ、くもは天房家と離れられぬ因縁を抱え……。キャストの吐息や衣擦れの音まで聞こえてくるような空間、不穏でミステリアスな展開に、客席は息を飲むようにのめり込んでいく。白塗りのメイクが陰鬱な空気をより不気味にさせる。怖さとおかしみを一緒に味わうようなケラリーノ・サンドロヴィッチならではの味わいのある作品であり、そして“ナイロン印”とも言える、キャストとスタッフの揺るぎないチームワークに支えられた精度の高い技術も健在。美術、照明、音響、音楽、映像、衣裳、ヘアメイク、細部まで編み上げられた総合芸術を間近に堪能できる作品となっている。公演は、3月21日(火・祝) までザ・スズナリで上演後、3月30日(木)〜4月2日(日) 大阪・近鉄アート館で上演予定。また、公演開幕に際し、主演の松永玲子、村岡希美、作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチからコメントが届いた。■松永玲子 コメントまずは無事にお客様の前に作品を出すことができ、ほっとしています。何とかこのまま大阪大千穐楽まで全ステージ出来ればと祈っております。ナイロン公演をよくご覧になる方は、 3時間越えで1時間半位で休憩が入るといったパターンに慣れてらっしゃると思いますが、今回はノンストップで2時間20分、それはそれで腰やお尻にはなかなか厳しいものもありますので、そこのところはちょっとお覚悟の上、どうぞ濃密な時間を楽しんで下さい。30周年記念公演の第一弾としてこれを書いた、主宰ケラリーノ・サンドロヴィッチは本当に斜め上の発想の人だなと、改めてそう思いました。またナイロン100℃の新たなジャンルが生まれた。スズナリは全てが視界に入る小さな空間です。皆様もどうぞ隅々までご覧頂ければと思います。大阪近鉄アート館公演は前売券販売中。スズナリより空間も広がりますので、大きな額縁の観てはいけない紙芝居を観るような作品になるのでは? と予想しています。■村岡希美 コメント『Don’t freak out』プレビュー公演無事に終了致しました。ナイロン100℃30周年の年に、26年ぶりにまたスズナリに立てたわけですが、スズナリでしかできないこと、30周年という劇団でしかできないことにチャレンジしております。その感じをお客様も感じ取ってくださって、とても集中してご覧頂けたように思います。お客様と一緒に空間を作る作品だと思いましたし、また聖地スズナリがそうさせてくれているように感じています。千穐楽まで日々どんどん良くなるように一生懸命チャレンジを続けたいと思ってます。当日券も少し出るようですので、ぜひお客様も宜しければ足を運んで頂けたらと思います。お待ちしております。■ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント周年を祝ってばかりきたので30周年の感慨はあまりありませんが、長い年月で培われた数々あっての今作なのでしょう。まずは松永と村岡が、全く頼もしくなってくれた。彼女たちへの長年の努力に対する贈り物のような気持ちで書いた戯曲が、ふたりだけでなく、観客の皆さん含めた全員に刺激的であってくれるなら、やった甲斐があったというもんです。それから、劇場の力ですね。本当に久しぶりにスズナリでやらせて頂いてます。この劇場ならではの芝居を、と皆で頑張りました。劇場と作品のマッチングは大切。上手くいったのではないでしょうか。あとはキャスト、スタッフ全員が楽日まで緊張感を持ち続けてさえくれれば。御来場お待ちしてます。<公演情報>ナイロン100℃ 結成30周年記念公演第一弾ナイロン100℃ 48th SESSION『Don’t freak out』『Don’t freak out』メインビジュアル作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ【出演】松永玲子、村岡希美みのすけ、安澤千草、新谷真弓、廣川三憲、藤田秀世吉増裕士、小園茉奈、大石将弘松本まりか、尾上寛之、岩谷健司、入江雅人【東京公演】第33回下北沢演劇祭参加作品2月25日(土)~3月21日(火・祝) 下北沢 ザ・スズナリ ※2月24日(金)プレビュー公演【大阪公演】3月30日(木)~4月2日(日) 近鉄アート館チケットはこちら:キューブHP:ナイロン100℃HP:
2023年02月27日劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と、緒川たまきのふたりが主宰するユニット「ケムリ研究室」の新作公演が、2023年10月の世田谷パブリックシアター公演を皮切りに、北九州・兵庫・新潟で上演されることが決定した。旗揚げ公演『ベイジルタウンの女神』は、緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、松下洸平、吉岡里帆、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子といったキャストが出演し、コロナ禍の閉塞感漂う中、心をほぐすコメディを届け好評を得た。第二弾『砂の女』では第一弾に続き仲村トオルが続投。シアタートラムという濃密な空間で、閉鎖的な集落と砂の存在に圧迫されてゆく男女の心のゆらぎを描き、第29回読売演劇大賞 優秀作品賞、最優秀女優賞(緒川たまき)、第五十六回紀伊國屋演劇賞個人賞(緒川たまき)、第41回公益社団法人日本照明家協会賞 舞台部門 文部科学大臣賞・大賞(関口裕二)など、数々の賞に輝いた。第三弾公演となる今回は、緒川たまきをはじめ、北村有起哉、音尾琢真、奈緒、水野美紀、近藤公園、松永玲子、福田転球、平田敦子、永田崇人、山内圭哉、野間口徹、犬山イヌコ、篠井英介、木野花、さらに「ケムリ研究室」第一弾、第二弾の振付を手がけた小野寺修二がキャストとして出演する。公演タイトルなど詳細は後日アナウンスされる。<公演情報>ケムリ研究室no.3『新作(タイトル未定)』ケムリ研究室no.3『新作(タイトル未定)』チラシ画像作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ【出演】緒川たまき北村有起哉音尾琢真奈緒水野美紀近藤公園松永玲子福田転球平田敦子永田崇人小野寺修二斉藤悠藤田桃子依田朋子/山内圭哉野間口徹犬山イヌコ篠井英介木野花【公演日程】2023年10月 世田谷パブリックシアター※ほか北九州・兵庫・新潟公演あり東京公演チケット一般発売:2023年8月予定お問い合わせ:キューブTEL:03-5485-2252(平日12:00〜17:00)
2023年02月24日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)率いるナイロン100℃が、2023~24年に結成30周年を迎える。そのアニバーサリーイヤーとして2本の本公演を予定、1本目を飾るのがこの『Don’t freak out』だ。そこで劇団員の松永玲子、村岡希美のふたりに話を訊いた。実は2020年冬にザ・スズナリ(※東京公演)で新作劇団公演を上演予定であったが、コロナ禍の影響により中止に。それだけに今回の上演決定に松永は「非常に嬉しいです」と顔をほころばせる。また村岡が「ナイロンがスズナリで出来るということが本当に嬉しいです」と話すように、なんとナイロンの本公演がスズナリで上演されるのは26年ぶり。その数字をふたりに告げると、「えー!」と目を丸くする。ナイロンのホームグランドといえば下北沢 本多劇場だが、スズナリの大きさはその半分程度。もちろん客席と劇空間の密度はより濃くなり、松永は「試されている感じがします。そこでやるだけの体力、気力、知力をお前は備えているのか?と。それはそれは恐ろしい空間」と表現する。だがKERAのもと、30年近く演劇人として切磋琢磨してきたふたり。26年前のスズナリでの公演『カメラ≠万年筆』では、まだ新人だった松永と村岡が、コンビのような役どころだったとも。それだけに村岡は、「すごく感慨深いですし、聖地スズナリでの上演ということで、“燃え”と“萌え”の両方でワクワクしています」と声を弾ませる。本公演としては前作『イモンドの勝負』同様、KERAの書き下ろし。だがその作風は一転、ホラーになるそう。「そう」と断定しないのは、その行く先はKERAのみぞ知るところゆえ。松永と村岡曰く「時代設定としては大正、もしくは昭和の初期ぐらい。基本的には不条理劇だが、『イモンド~』のように笑いに特化したものではなく、シリアス路線。このふたりの役どころはある屋敷で働く女中の姉妹」。稽古と執筆を同時進行するKERAの創作法を知り尽くしたふたりは、稽古しながら次第に現れてくる作品世界を前に、その予測不能な状況すら楽しんでいるようだ。松永と村岡という巧者ふたりががっつり絡む役どころは、実は『カメラ≠万年筆』以降、そう多くはない。それだけに姉妹ふたりを中心にした新作、しかも聖地スズナリでの上演。さらにスズナリでの東京公演後、ナイロンとしては25年ぶりの大阪・近鉄アート館での上演を予定。ベテラン劇団による贅沢な劇空間を近距離で体感出来る貴重な機会、見逃すにはあまりに惜しい。取材・文:野上瑠美子
2023年02月17日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が作・演出を手がけた舞台『世界は笑う』の模様が、2023年2月11日(土) にWOWOWで放送・配信されることが決定した。今作でKERAが題材にしたのは“昭和の喜劇人”。昭和の東京をモチーフにした「昭和三部作」シリーズをはじめ、日頃から“昭和”という時代への深い愛着を公言するKERAが、敗戦から10年強の月日が流れた東京・新宿を舞台に、決して喜劇とは言い切れない人間ドラマを描く。出演は、KERAとは3度目のタッグとなる瀬戸康史、2度目の松雪泰子をはじめ、KERA作品は初となる千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉、ラサール石井、銀粉蝶ら総勢17人。“全員主役の群像劇”というKERAの言葉通り、俳優陣の魅力的なキャラクターが息づき、登場人物それぞれが抱える人間ドラマを重層的に堪能できる作品となっている。<番組情報>『世界は笑う』2023年2月11日(土) 18:15WOWOWライブ / WOWOWオンデマンド収録日:2022年8月24日(水)収録場所:東京・Bunkamuraシアターコクーン【スタッフ・キャスト】作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:瀬戸康史、千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉、大倉孝二、緒川たまき、山内圭哉、マギー、伊勢志摩、廣川三憲、神谷圭介、犬山イヌコ、温水洋一、山西惇、ラサール石井、銀粉蝶、松雪泰子番組HP:
2022年12月26日劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の新作、KERA・MAP #010『しびれ雲』が、11月12日(土) 下北沢・本多劇場で開幕し、舞台写真とコメントが到着した。本作は、本来11月6日(日) が初日であったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕延期に加え7公演が中止となり、準備期間を経て開幕の運びとなった。『しびれ雲』は、KERA・MAP『キネマと恋人』(2016、2019年) の舞台となった“梟島(ふくろうじま)”を舞台に描かれる、まったく新たなストーリー。ある地方の小さな島。少しとぼけた響きが微笑ましい独特な方言を持つ小さなコミュニティには、未亡人の波子やその妹の千夏、その夫の文吉をはじめとした人々が住み、家族、友人、恋人……それぞれに人間関係を育む人々の日常が繰り広げられている。そんな島に、ある日忽然と謎の男が現れて……。本多劇場初登場となる井上芳雄をはじめ、緒川たまき、ともさかりえ、松尾諭、三宅弘城、三上市朗、萩原聖人など華やかな出演陣が、小さな梟島に生きる個性豊かな人々を演じる姿に時間を忘れて、いつまでも梟島弁と潮の香りと波の音に包まれていたいような気持になる。どこか自らの日々の暮らしとも重なるような、KERAが公演前に公言していた“小津作品”への憧憬のような、懐かしさも感じさせる手触りもある。KERAにとっては“異色”とも言える新たな色の作品が誕生した。■井上芳雄 コメント通常でも、新作ですしギリギリの状態でドキドキしながら迎える初日、今回開幕が少し伸びてしまい、お客様に申し訳なかったのですが、遂に迎えられた初日は最高でした。今回は大爆笑を狙うような芝居ではありませんが、最初お客様がどっと笑った時、感動して少し涙が出ました。ここまでの道のりを経て、初日の幕が開いて、良い芝居をやらせてもらっていて心底嬉しいです。また、僕は本多劇場に立つのが初めてですが、客席との距離感や温度感を感じながら、お客様がしっかり観て反応してくださっていることが伝わって来て、教えてもらう事だらけです。KERAさんと前回ご一緒した『陥没』、そしてコロナ禍で本番が出来なかった『桜の園』以来、KERAさんの作品で芝居をするのはやっぱり楽しいな、と改めて感じました。『しびれ雲』は演じながら、笑いながらも心に染みるものがあって、KERAさんは作りたいと仰っていた通りのものを作られ、本当に凄いなと思ってます。「また明日やるのが楽しみだ」と思えるのが幸せな事だし、お客様には胸を張って「良い作品ができました」とお伝えしたいです。最後まで無事にできるようにと祈りつつ、皆様の健康も祈っています。■ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント今回は珍しく、姑息に笑わせようとか無闇に緊張させようとかいった狙いが全く無い、真っ直ぐで暖かでささやかな群像劇です。普遍的な人間の営みを描いていて、登場する人々もどこにでもいる平凡な人達。一方、失われてしまった「家族」と言う制度とか型みたいなものも描いています。お客さんはどこかしら自分と重ねる部分があるのではないでしょうか。そろそろこうした芝居を作っておきたかった。50代最後に皆で創作できたのは幸せです。なので、リラックスして好きに観てもらいたいと思っています。最終稽古の最後に、キャストには、細かいミスがあったとしても、梟島の人として皆が生きてくれていればきっと良い拍手が貰えるだろうからそれを信じて、というようなことを言ったんですけれども、とても良い拍手だった。お客さんはすごく集中して観て下さっていて嬉しかったです。座組も新鮮なバランスでとてもいい感じです。座長の井上芳雄君は、いつもは帝劇みたいな広い劇場でやっている人ですから、本来のスケール感と全く違う会場で演じているわけですけれど、良くこんなにスッと順応できるなと驚きます。今回、チケットを手にしながらも開幕延期でご観劇が叶わなかった7ステージのお客様には、申し訳ない気持ちでいっぱいです。もう少し早く開けられなかったのかという声も聞こえてきましたが、準備不足の杜撰な状態で開幕してしまうというのは僕の本意では無く、そこを貫かせて頂きました。ご理解ください。『しびれ雲』は、10月から年末にかけてを描いています。少々気が早いですが、ご覧になったお客様に、良い年を越せそうだなあと感じて頂けたら嬉しいです。<公演情報>KERA・MAP #010『しびれ雲』KERA・MAP #010『しびれ雲』ビジュアル作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:井上芳雄、緒川たまき、ともさかりえ、松尾諭、安澤千草、菅原永二、清水葉月、富田望生、尾方宣久、森準人、石住昭彦三宅弘城、三上市朗、萩原聖人【東京公演】11月12日(土)〜12月4日(日) 下北沢 本多劇場【兵庫公演】12月8日(木)〜11日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール【北九州公演】12月17日(土)・18日(日) 北九州芸術劇場 中劇場【新潟公演】12月24日(土)・25日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場お問い合わせ:キューブTEL:03-5485-2252(平日12:00~17:00)キューブ オフィシャルサイト:
2022年11月14日劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が主宰を務め、映像・舞台で活躍中の俳優が多く所属する劇団「ナイロン100℃」が、結成30周年記念公演の第1弾を2023年2月から4月にかけて東京・ザ・スズナリ、大阪・近鉄アート館で上演することが決定した。ナイロン100℃がザ・スズナリで公演を行うのは、2013年上演の劇団若手公演『SEX,LOVE&DEATH ~ケラリーノ・サンドロヴィッチ短編三作によるオムニバス~』から10年ぶり、本公演としては1997年の『カメラ≠万年筆』『ライフ・アフター・パンク・ロック』2本立て公演から26年ぶり。元々は2020年冬に同所での公演が予定されていたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け中止となっており、今回が満を持してのザ・スズナリ公演となる。出演者は松永玲子、村岡希美という劇団の大きな支柱であるふたりを中心に手練れの劇団員たちが集結。さらに客演として松本まりか、尾上寛之、岩谷健司、入江雅人が名を連ねている。また結成30周年記念公演の第2弾を、2024年夏に劇団のホームグラウンドである東京・本多劇場で上演することが発表された。■ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメントこの間25周年だと思ったらもう30周年なのだそうだ。人を馬鹿にしているような速さで時は過ぎる。というわけで2023年2月と2024年の夏に、30周年記念公演をやることになった。ナイロン100℃の旗揚げは1993年8月だから、後者は最早31年目にかかっているのだが、まあいいじゃありませんか。48回目の本公演は26年ぶりのスズナリでちょっと怖い芝居を、49回目の本公演はホームグラウンドである本多劇場で刀を抜かない時代劇をやってみたいなと、今は考えている。よろしくお願い、乞うご期待。<公演情報>ナイロン100℃ 48th SESSION『新作(タイトル未定)』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:松永玲子 村岡希美 /みのすけ 安澤千草 新谷真弓 廣川三憲 藤田秀世吉増裕士 小園茉奈 大石将弘 /松本まりか 尾上寛之 岩谷健司 入江雅人東京公演:2023年2月24日(金) 〜3月21日(火・祝) ザ・スズナリ大阪公演:2023年3月30日(木) 〜4月2日(日) 近鉄アート館ナイロン100℃ 49th SESSION『新作(タイトル未定)』作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ2024年夏 東京・本多劇場で上演関連リンクナイロン100℃ 公式サイト:キューブ 公式サイト:
2022年11月11日今夏8月から9月にかけてBunkamura シアターコクーン、京都劇場で上演された、劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)の新作舞台『世界は笑う』のオンデマンド配信が決定した。本作は、昭和32年の東京・新宿で活動する軽演劇の劇団「三角座」を舞台に、混沌とした時代を生きる喜劇人と彼らを取り巻く人々が高度経済成長前夜の新宿という街で織りなす哀しくて可笑しい群像劇。瀬戸康史、千葉雄大、勝地 涼、伊藤沙莉、ラサール石井、銀粉蝶、松雪泰子ほか、若手からベテランまで多彩な実力派キャストが結集し、喜劇に取り憑かれた人々の様々な人生の悲喜劇を描いた作品だ。配信期間は、Bunkamuraの動画配信サービス「Bunkamura STREAMING」で11月11日から25日まで、「PIA LIVE STREAM」で11月11日から18日までとなっている。視聴チケットは、配信開始時間と同時の11月11日12時より販売がスタートする。<配信情報>COCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022『世界は笑う』『世界は笑う』メインビジュアル作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ出演:瀬戸康史 / 千葉雄大 / 勝地 涼 / 伊藤沙莉大倉孝二 / 緒川たまき / 山内圭哉 / マギー / 伊勢志摩 / 廣川三憲 / 神谷圭介犬山イヌコ / 温水洋一 / 山西 惇 / ラサール石井 / 銀粉蝶 / 松雪泰子【配信期間】■Bunkamura STREAMING2022年11月11日(金) 12:00~11月25日(金) 23:59チケットはこちら:購入・視聴ガイド:■ぴあ「PIA LIVE STREAM」2022年11月11日(金) 12:00~11月18日(金) 23:59チケットはこちら:ご利用ガイド:■視聴券料金:3,500円(税込)※配信される舞台映像は、Bunkamura シアターコクーンにて収録された映像を配信用に編集した“配信限定編集版”となります。Bunkamura シアターコクーン『世界は笑う』特集ページ:
2022年10月28日ミュージカルのみならず、様々なジャンルの舞台作品への出演が続く井上芳雄。次に登場するのは、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)によるKERA・MAP#010『しびれ雲』である。作品について今わかっている情報はほとんどない。でも、「未知だから面白い」と井上の表情はほころぶ。この頼もしい俳優から飛び出す言葉は、KERAの新作への期待を高めていく。井上がKERA作品に参加するのは、『陥没』(17年)、舞台稽古まで終えながら全公演中止となった『桜の園』(20年)に続いて3度目。その創作を「魔法のようだ」と表現する。「KERAさんは稽古をしながら台本を書かれることが多いと聞いていたんですが、徐々に上がってくるものが本当に面白くて。これは他のKERAさんの作品にも言えることですけど、最終的にものすごく高いクオリティで、観たことのない世界ができあがり、お客さんに喜んでもらえる。こんなことができる人がいるんだと、初めてご一緒したときはびっくりしました」。今回の『しびれ雲』も、現時点でわかっているのは、KERA・MAP#007/#009『キネマと恋人』(16年/19年)の架空の島が舞台になるということくらい。しかし、井上は楽しそうに語る。「『陥没』のときも予想とは全然違う話になりましたし(笑)。僕自身は、全くわからないで始まるなんてこんな楽しいことはないと思うんです。わからないから下準備もいらないし(笑)。『キネマと恋人』で緒川たまきさんが話されていた島の架空の方言をやらなきゃいけないかもしれませんけど、それもそのときになって頑張れば何とかなると思っています」。KERAのコメントには、小津安二郎、岸田國士、アキ・カウリスマキの名前が並ぶ。「小さな、喜び、悲しみ、驚き、嫉妬、幸せ、不幸、ぼんやりした時間を描きたい」ともある。ビジュアル写真からも、「昭和の映画みたいな匂いは感じる」とか。「なので、必要であれば小津安二郎さんの映画なども観たいと思いますし。KERAさんの作品って、ニュアンスの強弱とかちょっとしたことの積み重ねでできあがっていくイメージで、誰一人欠けてもその世界が成立しない感じがするので。カンパニーの皆さんと一緒にただただその世界に入り込んで、そこで右往左往して泣いたり笑ったりできたらと思います」。しかも、東京公演が上演されるのは、井上にとって初となる本多劇場。ミュージカルで帝劇などの大劇場に立つことの多い井上の繊細な芝居が目撃できるはず。「小劇場の下北沢のお客様と、ミュージカルの日比谷のお客様が、行き来するきっかけにもなったら嬉しいです」。舞台を愛する俳優の心からの言葉だ。(取材・文:大内弓子)
2022年08月30日8月11日にBunkamuraシアターコクーンにて、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)作・演出の新作舞台COCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022『世界は笑う』の上演がスタートした。KERAが自身の“昭和”という時代への愛着を込め、初めて“昭和の喜劇人”を題材に描いた作品であり、5年ぶりのBunkamuraシアターコクーンでの新作となる今作。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、当初予定されていた初日8月7日から5公演の中止を経て、満を持しての上演となった。戦後の色を残しながらも活気づいていた昭和32年の東京・新宿。その一角に常打小屋を持つ軽演劇の一座「三角座」があった。彦造(瀬戸康史)は三角座で喜劇俳優をしている弟の是也(千葉雄大)を訪ね上京する。劇団には、若手俳優・大和(勝地涼)や、踊り子・撫子(伊藤沙莉)、古株俳優のトーキー(ラサール石井)、興行主の蛇之目(銀粉蝶)、貸本屋で働きながら劇団を手伝う初子(松雪泰子)など……様々な人々が交差し、高度経済成長期前夜の新宿で、哀しくも可笑しい人間群像が描かれていく。本作は“全員主役の群像劇”というKERAの言葉通り、俳優陣の魅力的なキャラクターが息づき、重層的な人間ドラマを堪能できる一作となっている。また開幕に際し、作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチよりコメントが届いている。■ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント初日の幕が開き、ほっとしています。新型コロナウイルス感染拡大の影響で初日が伸びてしまい、また周囲でも公演が中止になったり延期になったりしている中、ともかく一回目を終えられて、本当に良かったと思っています。そういった特殊な環境下での“安心”にも少し慣れてきてしまった感もありますが、そんな安心はしないで済む状況に早くなってくれることを願います。通常初日を観劇して下さるお客様は前のめりに見てくださる印象があります。今日は本来初日ではなかった日ですので、ニュートラルな客層かなと思っていたのですが、非常に熱と集中力を持ってご覧になって下さり、ありがたかったです。本当にキャストとスタッフとお客様に感謝の気持ちで一杯です。作者としては、喜劇人達への個人的なラブレターというか、落とし前というか、そういった意味で、非常に特殊な、この作品にしかない思いがあります。こんな芝居を創ることが出来たのは幸せです。<公演情報>COCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022『世界は笑う』『世界は笑う』メインビジュアル【東京公演】2022年8月11日(木・祝)~8月28日(日) Bunkamuraシアターコクーン※8月7日(日) 18:30~11日(木・祝) 13:00の5公演は中止となりました。【京都公演】2022年9月3日(土)~9月6日(火) 京都劇場作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ■出演瀬戸康史 / 千葉雄大 / 勝地 涼 / 伊藤沙莉大倉孝二 / 緒川たまき / 山内圭哉 / マギー / 伊勢志摩 / 廣川三憲 / 神谷圭介犬山イヌコ / 温水洋一 / 山西 惇 / ラサール石井 / 銀粉蝶 / 松雪泰子公式サイト:
2022年08月16日現在上演中の舞台『室温~夜の音楽~』において、初日公演を鑑賞した。ケラリーノ・サンドロヴィッチが2001年に作・演出したホラーコメディで、翌年に鶴屋南北戯曲賞を獲得した本作。河原雅彦が演出を手がける今回の上演版では古川雄輝が主演を務め、在日ファンクが音楽・演奏で参加する。キャストには平野綾、坪倉由幸、浜野謙太、長井短、堀部圭亮、伊藤ヨタロウ、ジェントル久保田が名を連ねた。ホラー作家の海老沢十三(堀部)と娘のキオリ(平野)父娘は田舎暮らし。12年前、拉致・監禁の末、集団暴行を受け殺害されたキオリの双子の妹・サオリの命日に、近所を巡回中の警察官・下平(坪倉)、海老沢の熱心なファンを自称する赤井(長井)、体の不調を訴えるタクシー運転手の木村(浜野)が転がり込む。そこへ出所した加害者の一人である間宮(古川)が「焼香をしたい」と訪ねて来たことから、事態は思わぬ方向へ発展して──。妹を「この世から葬った」と激昂するキオリに萎縮したかと思えば、初対面でない赤井には声を荒げるなど、相手によって言動を大きく変える間宮。演じる古川は向き合う相手の一挙手一投足をニュートラルに受けて応戦する巧みさを発揮した。被害者の家族や周囲の人々に対して強く出られないという立場上、感情を剥き出しにするシーンは少ないが、表情や間といった台本上セリフに起こされない“オフ芝居”に注目したい。キオリを演じる平野も、単なる被害者の姉にとどまらない存在感を見せつける。キオリは何かと海老沢家に立ち寄る下平に金銭を求め、「東京へ行く」と嘘をついて母親に会うなどひと筋縄ではいかないキャラクター。間宮を冷たくあしらう声色、媚態の一歩手前で下平を籠絡する視線など出色の表現力で劇世界に貢献していた。なお持ち前の歌声はカーテンコールで耳にすることができるだろう。事前の取材会で河原が言及したように、サオリの死は東京・埼玉で発生した実在の「女子高生コンクリート詰め殺人事件」(1988~89年)がモチーフとなっている。事件の痛ましい描写をはじめ、得体の知れないキャラクターが生み出す薄気味悪さ・違和感が全編に潜む一方で、時折挟まれる在日ファンクの生演奏パフォーマンスが作品にサイケデリックな“陽”の雰囲気を持ち込む。グルーヴ感に満ちた彼らの既存曲や本作に書き下ろしたナンバーが不条理な空気をいかに転化させるか──。バンドと役人物を行き交い、劇中でコミックリリーフ的な役割を果たす浜野の躍動にも注目だ。上演時間は約155分(20分休憩を含む2幕)。公演は7月10日(日)まで、東京・世田谷パブリックシアターにて。その後、7月22日(金)~24日(日)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールと巡演する。チケット販売中。取材・文=岡山朋代
2022年06月27日2001年に初演されたケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)作の舞台『室温~夜の音楽~』は、12年前に起きた殺人事件を軸に物語が展開され、次第に過去の真相が明らかにされていくホラー・コメディ。初演時、作品のダークでどこか浮遊感漂うムードを牽引していたのが、たまの楽曲と生演奏。今回の上演にあたり、音楽の刷新を決めた演出の河原雅彦さんが白羽の矢を立てたのが在日ファンクだった。「最初はもちろん尻込みしました。でも初演時の台本を読ませていただいたら、物語が歌の世界観と一体になって進行していく構成にものすごくそそられたんです。僕らとたまさんとではスタイルが全然違うというのもあったし。なにより、河原さんが一緒にやりたいと言ってきてくださったことが、ワクワクと同時にすごく嬉しかったんですよね」浜野謙太さんはにこやかに話した後、真面目な表情になり「メンバーのモチベーションを大事にしているから…」と続けた。「バンドが作品の賑やかしのためのコンテンツとして弄ばれる…みたいなことがあんまり好きじゃないんです。でも今回、河原さんは本当に在日ファンクを気に入ってくださっていたし、音楽全体に対する深い愛も感じて、メンバーを説得しました」当初は既存曲を使用したいとの依頼だったが、なんと今作のために新曲を多数書き下ろしている。「マネージャーが促してくれたんです(笑)。メンバーにも振って個々に作り始めたんですが、自然と普段にはない目的意識で違うアプローチになるわけじゃないですか。それがすごく作曲のバリエーションにつながったし、作品の世界観から掻き立てられるものもありました。僕の曲だけじゃなく、いつもアーバンなかっこいい曲を作ってくるギターの仰木(亮彦)の曲も、この作品に当てはめると、不思議と不気味に感じられたのも新感覚でしたね」物語が展開されるのは、12年前に殺害された少女の双子の姉と父である作家が暮らす家。そこに集まってきたバラバラな人々が絡み合い、かつての事件の真相が明らかにされていく。俳優としても出演する浜野さんの役は、タクシー運転手・木村。「じつは学生のときにKERAさんのホンを上演させてもらったことがあって、変なテンポで進んでいく会話とか、そのズレで笑いが起きる感じがすごく好きだったんです。僕は音楽をやっているからか、KERAさんのテンポってたぶんこうだろうなって思って木村を演じちゃうんですが、河原さんは、この場面のズレの面白さはなぜ起こるのか、というところから木村の性格を導き出してリズムに反映する…みたいな本当に細かい部分から“逆”逆算しながら作っていく感じが面白いですね」コメディリリーフ的な役割も担う。「場を乱していく奴なんで、バンドでの僕の立ち位置とあまり変わらない」と笑いを交えて語るが、後々とんでもないことを引き起こす人物だ。「やればやるほど懐がすごく深くて、すごいホンだなと思うことがいっぱいあるんです。ホラーかサスペンスか、コメディか…と油断していると胸を掴まれる部分があったりするので、油断して観に来てほしいですね」『室温~夜の音楽~』12年前、集団暴行を受け殺害されたサオリ。彼女の十三回忌、父であるホラー作家の海老沢(堀部)とサオリの双子の姉・キオリ(平野)の暮らす家に、加害少年のひとり、間宮(古川)が訪ねてくる。6月25日(土)~7月10日(日)三軒茶屋・世田谷パブリックシアター作/ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出/河原雅彦音楽・演奏/在日ファンク出演/古川雄輝、平野綾、坪倉由幸(我が家)、浜野謙太、長井短、堀部圭亮ほかS席9500円A席7500円サンライズプロモーション東京 TEL:0570・00・3337(平日12:00~15:00)兵庫公演あり。はまの・けんた1981年8月5日生まれ、神奈川県出身。在日ファンクのボーカル兼リーダーで、俳優としても活躍。最近の出演作に映画『劇場版ラジエーションハウス』など。Tシャツ¥19,800パンツ¥44,000(共に71MICHAELcontact@71michael.jp)※『anan』2022年6月29日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・森川雅代(1994)ヘア&メイク・阿部孝介(traffic)インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年06月26日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)が2001年に作・演出を手がけた戯曲『室温~夜の音楽~』。新演出版で21年ぶりに復活を果たす同作が6月25日、東京・世田谷パブリックシアターで開幕するにあたり、演出の河原雅彦、主演する古川雄輝、共演者の平野綾、音楽と演奏でも参加する浜野謙太が取材に応じ、意気込みを語った。12年前に起こった凄惨な殺人事件をきっかけに、ひとつの場所に集まってきた人々の奇妙な関係を描き、第五回鶴屋南北戯曲賞を受賞した本作。河原は21年前の初演を観劇していたといい「それ以来、ずっと頭の片隅に残っていた」と強い思い入れ。“湿度”と“見えない部分”をコンセプトにした異色の美術セットについては、「もちろん、すべての打ち合わせに立ち会ってはいるんですが、実際に劇場で見てみると『うわ~』って、ちょっと引きましたね(笑)。すごく個性的なオリジナリティあふれる舞台になるんじゃないかと思っています」と期待を寄せた。殺人事件に関わる人物・間宮を演じる古川にとっては、2019年の『神の子どもたちはみな踊る』以来約3年ぶりの舞台主演。「久しぶりに見る舞台と客席に、ワクワク感と緊張感を覚えます」と心境を語り、「ホラーコメディというジャンルなので、怖さと思わずクスっと笑ってしまう面白さを劇場で楽しんでいただければ」とアピール。「接する相手によって、性格やテイストが変わる役柄なので、セリフはもちろん、周りにいる皆さんへのリアクションや細かな動作を気にしながら演じたい」と語った。平野は久々のストレートプレイ出演で「お稽古中から新鮮な気持ちで取り組むことができた」と手応え。発声にも注意を払っているといい「ミュージカルとは、使う(喉の)ポジションも変わりますし、今回は特に感情のふり幅が大きい役柄。舞台が終わる頃には、声もガラガラですが、やれることを全力でやろうと思っている」と抱負を明かした。浜野は俳優としての出演に加えて、自身が所属する「在日ファンク」として劇中音楽を手がけ、全公演でバンドとともに生パフォーマンスも披露する活躍ぶり。それだけに「こっちにも出て、あっちにも出て(笑)。『また、あいつ出てるよ』って、うざくならないよう塩梅を考えたい。登場シーンからして、うざいので」と苦笑い。在日ファンクの起用は、河原のたっての希望だったそうで「引き受けてもらえなければ、今回の『室温』はできなかった」(河原)。在日ファンクのパフォーマンスについて、古川は「好きな曲が流れると、思わずノリたくなるが、そういうシーンに限って、じっとしていないといけなくて(笑)。たまに、チラ見しています」。平野も「とにかく贅沢ですよね。新しいジャンルが生まれる瞬間に立ち会えて、とてもうれしい」と声を弾ませていた。取材・文・写真=内田涼<公演情報>舞台『室温~夜の音楽~』『室温~夜の音楽~』メインビジュアル作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出:河原雅彦音楽・演奏:在日ファンク出演:古川雄輝 / 平野綾 / 坪倉由幸 / 浜野謙太 / 長井短 / 堀部圭亮・伊藤ヨタロウ / ジェントル久保田【東京公演】2022年6月25日(土) ~2022年7月10日(日)全19回公演会場:世田谷パブリックシアター【兵庫公演】2022年7月22日(金) ~2022年7月24日(日)全4回公演会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール公式HP:
2022年06月24日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が作演出を手がけた『室温~夜の音楽~』を21年ぶりに上演。河原雅彦が演出を担う。そこで河原と共に、音楽と出演を兼ねる在日ファンクの浜野謙太、主演の古川雄輝が出席した取材会に参加。その模様をレポートする。KERA作品を手がける上で、真っ先に浮かんだのがこの『室温』だったと言う河原。「僕はとても音楽が好きで、この『室温』は副題にもあるように音楽と共にある作品。で、前作の“たま”の音楽の土着感から考えてファンクだ…“在日ファンク”だ!って(笑)。実際すごくハマっていますし、いい芝居を作らないと音楽に持ってかれちゃうなってくらい、ハマっていると思います(笑)」だが当のバンドメンバーは、本作への参加に当初懐疑的だったと浜野は言う。「ただ河原さんと本当に一から組み立てさせてもらったので、今ではある意味、共犯みたいな気持ちが強いです。何曲か書き下ろしもあって、ライブだけでは表現出来なかったことが、今引き出されている感じ。バンドとしても新しい一歩を踏み出させてもらって、とても感謝しています」双子の妹を拉致・監禁、集団暴行された上に殺された、キオリとその父。妹の命日、親子の家にはさまざまな人々が訪れて――。浜野演じる木村と古川演じる間宮も“さまざまな人々”のひとりだが、その役どころの説明は難しく、古川自身「稽古が進むにつれ、今まで思っていた人物像とはちょっと違ってきていて…。どういう役かと聞かれても、なかなか難しくて答えられないんです」と顔を曇らせる。そんな不安げな古川に河原から、「でも素敵ですよ」とひと言。さらに「わからないことをわからないという俳優は、とても誠実だと思います」との言葉に、浜野も「わからない時のポカーンって顔が、僕にとってはまさに間宮。だからもう出来てるじゃんって思います」と笑う。すると古川も、「役としっかり向き合えるのは舞台ならでは。そういう意味でいい時間を過ごせているなと思います」と語る顔は、少し明るくなったように見えた。最後に河原は、作品の魅力について改めてこう語る。「僕が好きなのは、いろんな感情を持って帰れる多面的な作品。KERAさんはそういうものを書ける作家さんで、この『室温』もどこまでも真っ黒で、どこまでも真っ白な作品なんですよね。ただそのホンを預かる以上、初演にはない面白さを出せなければ、やっぱり僕らの負け。だから勝てるように頑張ります!」取材・文:野上瑠美子
2022年06月10日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)の新作は、KERA自身愛してやまない昭和を生きた喜劇人たちの物語。昭和30年代初頭の新宿を舞台に、総勢17名のキャストが入り乱れる群像劇だ。そこで演出も担うKERAと、KERA作品への出演は3作目となる瀬戸康史、初めての千葉雄大に、現段階での本作にかける想いを語ってもらった。笑いがなければ演劇も続けてこられなかった――昭和の喜劇人に対するKERAさんの想いはこれまでも度々お聞きしてきましたが、改めてKERAさんが喜劇人たちに心惹かれる理由とは?KERA自分がコメディを作り続けてきたそもそものきっかけが、そういう人たちへの興味だったと思うんです。やっぱり笑いが好きだし、笑いにたくさん救われてきたし、笑いがなかったらここまで演劇も続けてこられなかったと思うので。あとは父親の関係で、幼少期に喜劇人たちが偶然周りにいたってことも大きいと思いますね。――昭和30年代初頭の喜劇人たちの群像劇とのことですが、現段階での構想は?KERA当初は『ドクター・ホフマンのサナトリウム〜カフカ第4の長編〜』(19年) のような、理屈では説明出来ない、不条理な作品にしようかと考えていたんです。1幕は人間ドラマで、2幕にかけて思いもよらない展開をしていく、みたいな。でもそれはちょっと欲張り過ぎかなと。20人近い登場人物をそれぞれ着地させようと思ったら、5時間半ぐらいはかかってしまう(笑)。だから人間を描くってところだけにとどまっていても、書いていてある意味弾んでしまうところはあるだろうし、自分では普通の人間ドラマを書いているつもりでも、そうではないものになるに違いない(笑)。だったらそれでいいのかな、と思っているんです。笑いってものの表現の幅がすごく広がっている――瀬戸さんがKERAさん作品に参加されるのは、『陥没』(17年) 、『ドクター・ホフマン~』に続いて3作目ですね。瀬戸ほかの現場と比べても、KERAさんとは“一緒に作っている感”が強いんです。KERAそれは嬉しいな。瀬戸あと僕はKERAさんに感謝しかなくて。僕自身知らない扉を開けてくださいましたし、KERAさんのおかげで僕に対する周りの見方が変わったと思っていて。だからまたこうやって一緒に作品を作れるってことが、ただただ嬉しいです。――千葉さんはKERAさん作品への参加は初ですが、上京後に初めて観た舞台が、KERAさん演出の『どん底』(08年) だったそうですね。千葉はい。今回この中に入れていただけるってことが、まずは本当に嬉しかったです。それと物語の舞台が昭和30年代ということで、知らないことを知れる機会をいただけたってこともありがたいなと。あと以前から「KERAさんの頭の中ってどうなっているんだろう?」と気になっていたので、KERAさんの手によって自分がどうなっていくのか。それも今から楽しみです。――お稽古はこれからとのことですが、瀬戸さん、千葉さんはすでに2度、KERAさんのワークショップを受けられたと伺いました。KERA昭和に最も縁遠いであろう瀬戸くんと千葉くん、あと(伊藤)沙莉ちゃんと勝地(涼)くんに、ちょっと昭和30年代を勉強してもらいたいなと思って。岸田國士の『かんしゃく玉』を読んだり、過去の映像を見たりしました。主眼はやっぱり、稽古が始まった時点でその時代の人になってもらうこと。ただ昭和を知っているほかのキャストに比べて、どうしてもスタートが遅くなってしまう分、焦りもあると思うんです。そのために少し心に余裕を持ってもらう、そのためのワークショップですね。瀬戸まずはみんなで集まってなにかをやる、っていう時間がとても楽しかったです。稽古を前に、さらにワクワクした気持ちになったというか。あと改めて、笑いって進化しているんだなと感じました。例えば海外の、ニール・サイモンのジョークとかを聞いても、「これはジョークなのか?」とわからなかったりするんですが、時代は違えども、そこは同じ日本人なのでやっぱりわかる。ただレパートリーが増えているというか、笑いってものの表現の幅がすごく広がっているんだなと。それは非常に面白いなと思いました。千葉拝見した映像の中には、喜劇人の方たちのドキュメンタリーなどもありました。舞台上ではこんなに面白いことをやっているのに、プライベートでは実はこんな壮絶なことがあって……みたいなことも初めて知れて。そのギャップというか、一筋縄ではいかないみたいな部分は、自分が演じる上でも意識していきたいなと思っています。瀬戸と千葉がまったく性格の異なる兄弟役に――おふたりの役どころのイメージは?KERAまだ全然決まっていないです。ほかのパズルを組み立てていく中でのバランスなので。ただ瀬戸くんと千葉くんは、9割方兄弟にしようと思っています。見た目が似ているふたりなので、いっそのこと兄弟っていうのも面白いかなと。しかもまったく性格の違う兄弟。もともとは瀬戸くんが兄貴かなと思っていたんですが、千葉くんが兄貴っていう線も面白いかもしれないですね。瀬戸・千葉(笑)。瀬戸千葉くんとは同い年で、顔も似ていると言われて、10年前ぐらいからお互い知ってはいました。当時はすごくキャピキャピした印象でしたが(笑)、数年前に映画で久しぶりに会った時、すごく芯が太くなった印象に変わっていて。ただガッツリお芝居をするのは、今回が初めて。千葉くんがなにを隠し持っているのか、すごくワクワクした気持ちです。千葉別になにも隠し持ってはいませんが……(笑)。僕も瀬戸さんとガッツリお芝居出来ることがすごく楽しみですし、KERAさんの舞台の先輩でもあるので、いろいろ見て、学ばせてもらいたいなと思っています。取材・文=野上瑠美子撮影=源賀津己スタイリスト=小林洋治郎(Yolken)(瀬戸康史)、寒河江健(千葉雄大)ヘアメイク=RYO(瀬戸康史)、堤 紗也香(千葉雄大)、山本絵里子(KERA)衣裳(瀬戸康史)ジャケット:¥35,200(UNDECORATED/UNDECORATED)パンツ:¥36,300(UNDECORATED/UNDECORATED)シャツ:¥30,800(SEVEN BY SEVEN/Sakas PR)【問合せ先】UNDECORATED〒153-0061東京都目黒区中目黒1-8-1 VORT中目黒1 2FTEL:03-3794-4037Sakas PR東京都渋谷区神宮前3-15-21 ヒルトップ原宿301TEL:03-6447-2762『世界は笑う』チケット情報:★6月19日(日) 10:00よりチケット一般発売開始
2022年06月10日ケラリーノ・サンドロヴィッチによる傑作ホラー・コメディ舞台『室温~夜の音楽~』が2022年6月25日(土)から世田谷パブリックシアターで上演される。田舎で二人暮らしをしているホラー作家の海老沢十三(堀部圭亮)と娘・キオリ(平野綾)。12年前、拉致・監禁の末、集団暴行を受け殺害されたキオリの双子の妹・サオリの命日の日に、さまざまな人々が海老沢家に集まってくる。巡回中の警察官下平(坪倉由幸)、海老沢のファンだという女・赤井(長井短)、タクシー運転手の木村(浜野謙太)、そして加害者の少年の一人である間宮(古川雄輝)......。死者と生者、虚構と現実、善と悪との境が曖昧になっていき、やがて過去の真相が浮かび上がってーー。今回、主演する古川雄輝は、およそ3年ぶりの舞台で「楽しみな気持ちでいっぱい」と気持ちを明かす。「映像作品ではなかなか演技指導を受けるような時間が取れませんが、演劇はしっかりと稽古がある。壁にもぶち当たるんですが、何かひとつでも成長できたら」と貪欲な姿勢を崩さない。KERAらしいホラー・コメディ作品。古川は「まさに映像よりも舞台で観たいホラー・コメディ作品ですよね。初めて舞台を観る人は『笑っていいのかな?』と困るかもしれませんが(笑)、誰かがクスッと笑ってくれたら、周りも笑っていいんだと思ってもらえる気がします。日に日に笑ってもらえるポイントが変わりそう」。ちなみに古川自身は「引き出しが多くないとコメディは難しいし、ホラーもそんなに経験があるわけではないので、どちらも慣れたものではないです」と話していた。2010年に開催された新人発掘オーディション「キャンパスター★H50withメンズノンノ」で審査員特別賞を受賞し、芸能界デビューした古川。帰国子女ということで英語が得意で、中国版ツイッターWeiboでは450万人以上のフォロワーがいる“海外派”でもある。だが、今後やってみたい仕事を尋ねると「やりたいことは叶ってきたので、今は具体的にない」。ちなみに新人の頃から憧れは佐々木蔵之介。「ずっとお名前を出してきたので、なんだか申し訳ないのですが。蔵之介さんは、頭が良くて、テクニックがあって、引き出しが多い。人柄も優しく、憧れです」。舞台を楽しみにしている観客へのメッセージを尋ねると、「ホラーとコメディが融合した作品で、見終わった後にすごく不思議な感覚になると思いますので、まずはそれを楽しみにしていただきたい。個人的には久々の舞台。キャストの皆さん、スタッフの皆さんと一緒に一生懸命稽古をしていきますので、ぜひ劇場に来ていただきたいと思います」取材・文:五月女菜穂
2022年05月11日劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が、5年ぶりにBunkamuraシアターコクーンで新作公演「世界は笑う」を上演することが決定。KERAとの3度目のタッグとなる瀬戸康史、2度目となる松雪泰子、KERA作品初出演となる千葉雄大、勝地涼、伊藤沙莉らが出演する。舞台は、昭和30年代初頭の東京・新宿。敗戦から10年強の月日が流れ、巷に「もはや戦後ではない」というフレーズが飛び交い、“太陽族”と呼ばれる若者の出現など解放感に活気づく人々の一方で、戦争の傷跡から立ち上がれぬ人間がそこかしこに蠢く…。そんな殺伐と喧騒を背景にKERAが描くのは、笑いに取り憑かれた人々の決して喜劇とは言い切れない人間ドラマ。戦前から舞台や映画で人気を博しながらも、時代の流れによる世相の変化と自身の衰え、そして若手の台頭に、内心不安を抱えるベテラン喜劇俳優たち。新しい笑いを求めながらもままならぬ若手コメディアンたちなど、混沌とした時代を生きる喜劇人と、彼らを取り巻く人々が、高度経済成長前夜の新宿という街で織りなす、哀しくて可笑しい群像劇。出演は瀬戸さん、千葉さん、勝地さん、伊藤さん、大倉孝二、緒川たまき、山内圭哉、マギー、伊勢志摩、廣川三憲、神谷圭介、犬山イヌコ、温水洋一、山西惇、ラサール石井、銀粉蝶、松雪さんと、勢いのある若手から存在感が際立つベテランまで多彩な実力派キャストが集結。初参加に向け、伊藤さんは「KERAさんの舞台は過去いくつも観劇させて頂いていてオーディションも受けたことがあります。やっと立てるんだ。と、喜びに溢れる中、それに勝る緊張でソワソワしています」と喜びをコメント、「自分にとって、KERAさんの舞台演出を受けるのが、長年の夢だった」と勝地さんも明かす。千葉さんは「世の中で起きている事と自分の足並みが揃わない感覚は僕も感じることがあり、その時代ならではのものではありますが、令和にも通じる部分はあるのかなと思います」と期待を込めて語っている。2009年より昭和の東京をモチーフに発表してきた「昭和三部作」シリーズをはじめ、日頃から“昭和”という時代への深い愛着を公言するKERAが、“昭和の喜劇人”を作品の題材とするのは今回が初めて。その挑戦に期待が高まる。作・演出ケラリーノ・サンドロヴィッチコメント日本の喜劇人たちを描きたいというのは、十年どころではない、二十年以上前から切望していたことだ。もちろん例外はあろうが、かつて、昭和のあの頃、笑いを生業にしていた人なんてのは、皆どこか常軌を逸していた。などと知ったようなことを言うのは、私がそうした人たちに囲まれて幼少期を過ごしたからだ。ジャズマンだった私の父親には、同じヤクザな稼業だったからだろうか、喜劇俳優の知人友人が沢山いた。テレビの中では愉快な面白いオジちゃんオバちゃんだったその人たちは、例えば私の父と雀卓を囲んでいる時、どこか普通じゃなかった。怖かった。そして、時たま、ホッとさせてくれるかのように可笑しかった。評伝劇ではないし、実在の人物は出てこない予定だが、半分はフィクションになるかと思う。普通じゃなくて、怖くて、可笑しな人たちと、彼らを取り巻く人々を巡る群像悲喜劇。全員がメインキャスト、みたいなキャストが集まってくれました。ご期待あれ。ケラリーノ・サンドロヴィッチCOCOON PRODUCTION 2022+CUBE 25th PRESENTS,2022「世界は笑う」【東京公演】は8月7日(日)~8月28日(日)全26回Bunkamuraシアターコクーンにて、【京都公演】9月3日(土)~9月6日(火)京都劇場にて上演。(text:cinemacafe.net)
2022年04月04日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)作、河原雅彦演出、古川雄輝主演による舞台『室温~夜の音楽~』が、6月25日(土)より7月10日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて、7月22日(金)より24日(日)まで兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて上演される。演劇界の第一線を走り続けるKERAが2001年に作・演出を手がけた舞台『室温~夜の音楽~』は、人間が潜在的に秘めたる善と悪、正気と狂気といった、相反する感情に恐怖と笑いを織り込んだ唯一無二のホラー・コメディとして絶賛され、第五回鶴屋南北戯曲賞を受賞した。2021年に『カメレオンズ・リップ』で初めてKERA作品を手掛け、KERAからの厚い信頼を受ける河原が、この戯曲にほれ込み上演を熱望したことで、記録にも記憶にも残る傑作戯曲が誕生から21年ぶりに復活することになった。主演を務めるのは、映像を中心に数多くの作品に出演し、クールな役から人外(?)なキャラクターまで硬軟問わず幅広い役を演じ分け、2019年の『神の子どもたちはみな踊る』以来約3年ぶりの舞台主演となる古川雄輝。舞台作品にも定期的に出演し、本作ではKERA作品、河原演出と初顔合わせでホラー・コメディという異色なジャンルの作品に挑む。共演は、声優として絶大な人気を誇り、舞台女優としても活躍する平野綾、人気お笑いトリオ我が家の大ボケ担当・坪倉由幸、ミュージシャンの活動と並行して俳優としても数多くの作品に出演、本作には音楽と演奏でも参加する浜野謙太、独特の存在感で個性を放つ長井短、映像・舞台とジャンルを問わず活躍し、現在放映中の『カムカムエヴリバディ』の好演も話題の堀部圭亮と、豪華実力派俳優が結集。12年前に起こった凄惨な殺人事件をきっかけにひとつの場所に集まってきた人々の奇妙な関係を描いた本作。公開されたビジュアルは“湿度”と“見えない部分”をコンセプトに、登場人物の表面ではなく内面に焦点を当て、それぞれのキャラクターの、種類の違った粘着質な感情を表現している。曇りガラス越しに見える人物のクリアな部分とそうでない部分の混在からも作品世界がうかがえる。演出の河原とキャストが一丸となって挑む異色作に期待したい。また、作品のタイトルにもある通り本作のカギとなる音楽は、“新しい時代のディープファンクバンド”在日ファンクが手掛け、全公演に出演。生演奏による物語と音楽のセッションにも注目だ。<ストーリー>田舎でふたり暮らしをしているホラー作家・海老沢十三(堀部圭亮)と娘・キオリ(平野綾)。12年前、拉致・監禁の末、集団暴行を受け殺害されたキオリの双子の妹・サオリの命日の日に、様々な人々が海老沢家に集まってくる。巡回中の近所の警察官・下平(坪倉由幸)、海老沢の熱心なファンだという女・赤井(長井短)。タクシー運転手・木村(浜野謙太)が腹痛を訴えて転がり込み、そこへ加害者の少年のひとり、間宮(古川雄輝)が焼香をしたいと訪ねてくる。偶然か…、必然か…、バラバラに集まってきたそれぞれの奇妙な関係は物語が進むに連れ、死者と生者、虚構と現実、善と悪との境が曖昧になっていき、やがて過去の真相が浮かびあがってくる…。<キャスト&スタッフ コメント>【河原雅彦(演出)コメント】音楽が好きだ。小さな頃からずーっと。でも、自分が就いた職業はミュージシャンでもなければDJでもない。気がつけば舞台演出家になっちまった。なのでね。せめて音楽との繋がりを求めて、がっつりミュージシャンとコラボ出来る作品を、「ええのはねぇがー、ええのはねぇがー」と、ナマハゲさながら血眼で常々探している次第。筋肉少女帯、O.L.H.(ex面影ラッキーホール)、レキシ、昨年は東京事変の伊澤さんや亀田さん、そして今年の『ロッキー・ホラー・ショー』。個人的にいずれも大変充実した作品になった。『室温〜夜の音楽〜』を在日ファンクでやる。初演のバンドはたまだった。たまと在日ファンク・・・ギャップ半端ないでしょ?でも僕の見立ては当たるんです。これはね、きっとはまる。KERAさん特有のヒリヒリぞわぞわした名作を、一癖も二癖もある素敵俳優陣とディープに混ぜ合わせ、2022年僕なりに蘇らせます。演劇好き音楽好きの皆々様、お楽しみに。【在日ファンク[浜野謙太(Vo)、仰木亮彦(Gt)、村上啓太(Ba)、永田真毅(Dr)、橋本剛秀(Sax)、村上基(Tp)、ジェントル久保田(Tb)](音楽・演奏)コメント】在日ファンクで舞台の生演奏をとオファーをいただいたのはチャンスだと思いました。ブラスセクションのある大所帯バンドって、きっとたいそうフェスを盛り上げてくれるんだろうくらいのイメージで見られがちなんですが、今回は長編の物語であるわけで色んな場面で演奏しなくてはいけない。物語を彩るわけですが同時に色んな感情やシーンの表現が僕らの音楽にも返ってくる。在日ファンクの楽曲はこんなに多面的に立体的に楽しめるんだというのがお客さんも僕らも発見できると思うんです。在日ファンクのホラーな部分(あるんです、あるつもりなんです)に気づいてもらえると思います。バンドも1演者として頑張ります。きっと濃い濃い作品になると思うので是非見に来てください!(在日ファンク・浜野謙太)【古川雄輝 コメント】久しぶりの舞台に出られるということで大変嬉しく思います。ゾッとするホラー的な要素が詰まった緊張感のある物語なのですが、シリアスなシーンなのに思わずクスっと笑ってしまうようなコメディの要素も混ざっていて、ホラーとコメディが融合した、とてもおもしろい台本だと思いました。僕の役は、ある罪を犯した青年の役です。犯罪者の役を演じた経験は、今までそれほど多くないので、そういう姿もぜひ劇場に観に来ていただければと思います。【平野綾 コメント】ケラさんの生み出す世界観、ケラ・ワールドにいつか携わってみたいと思っていたので、出演が決まって本当に嬉しかったです。私自身、ストレートプレイが久しぶりなので、今から本当に楽しみです。私は、12年前に双子の妹を殺された姉の役で、底知れぬ感じがある女性じゃないかなと思います。一度はまってしまうとかなり中毒性のある、危険で抜け出せないこの作品。時期的に、ちょうど湿度が上がり暑くなってくるタイミングでの上演だと思うので、ちょっとひんやりしつつ、じめっとしつつ、絶妙な空気感の中、いろんなところに散りばめられたケラさんのトリックを楽しんでいただけたらなと思います。【堀部圭亮 コメント】僕自身、ケラさんの作品への参加を切望していましたので、やっと念願が叶い、しかも演出は河原さん。本当に楽しみにしています。僕の役は「何かあるぞ…」っていう作家です。物語の冒頭から「何かある感」満載です。舞台作品は、演じている役者と観客が同じ空間にいることで、音や気配、匂いや空気を一緒に感じてもらえるというのが、すごく魅力だと思います。この作品は「思わず笑っちゃったけど、なーんかヒドい事になってない?…不快だなぁ…後味悪いなぁ…けど不思議と心地好い…あっ!ホラーコメディって、そういうことか!?」そんな感じです。ぜひ劇場に“不快に”なりにきてください。公演概要舞台『室温~夜の音楽~』作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出:河原雅彦音楽・演奏:在日ファンク出演:古川雄輝平野綾坪倉由幸浜野謙太長井短堀部圭亮 ・ 伊藤ヨタロウジェントル久保田【東京公演】2022年6月25日(土)~2022年7月10日(日)全19回公演会場:世田谷パブリックシアター【兵庫公演】2022年7月22日(金)~2022年7月24日(日)全4回公演会場:兵庫県立芸術文化センター阪急中ホールチケット発売日:2022年4月29日(金・祝)AM10:00~公式HP:
2022年02月28日木村達成が主演を務める舞台『SLAPSTICKS』が上演されている。劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチの名作戯曲を、才気あふれる演出家たちが新たに息吹を吹き込む連続企画KERA CROSSの第4弾。今回は、劇団「ロロ」主宰・三浦直之が演出を担う。舞台は、1939年のアメリカ。ビリー・ハーロックは、伝説のコメディアンであるロスコー・アーバックルの映画をリバイバル上映してもらおうと奔走している。だが、人々にとって、サイレント・コメディーはもはや過去の遺物。ビリーは、配給会社に勤めるデニーを説得すべく、熱い眼差しで1920年代のハリウッドでの思い出を語り出すーー。ケラが30歳の時に書いた戯曲。1993年、ナイロン100℃で初演され、2003年にはオダギリジョー主演で再演されている。今回は、木村のほか、桜井玲香、小西遼生、壮一帆、金田哲(はんにゃ)、元木聖也、黒沢ともよ、マギーに加え、劇団ロロの面々が出演。バラエティ豊かな顔ぶれがそろった。シアター1010での初日公演(12月25日)を観劇した。サイレント映画からトーキーへ転換期を迎えるハリウッドで、サイレント・コメディを愛し続けた人々の群像劇。ケラは「半分捏造の評伝劇とは言え、残り半分は実話である」と語っているが、作中に挟み込まれる実際のサイレント・コメディの映像も相まって(この映像がまたすごい)、舞台上で生きる人々にリアリティを感じた。命懸けで「笑い」を生み出そうとした現場には、確かに「笑い」があったが、それ以上に苦悩も闇も狂気もあって。ただ、それらをピュアに、ロマンチックに、そしてナンセンスに仕上げてしまうのは、やはりケラ戯曲の魅力で、三浦の狙いなのかもしれないと思う。木村は「やっと待ちに待った初日の幕が上がります。楽しみながら千秋楽まで怪我なく無事公演ができるように、最後まで気を緩めずに演じていきたいと思います」とコメント。桜井は「遂に幕が上がるという高揚感で胸がいっぱいです。夢みる人たちが、その夢のため一生懸命生きる姿に奮い立たされる瞬間が沢山詰め込まれています。儚くかけがえのない時間が流れる、素敵な作品に仕上がっています。劇場でお待ちしております」と語った。大阪公演は1月8日(土)〜10日(月・祝)、サンケイホールブリーゼ。福岡公演は1月14日(金)〜16日(日)、博多座。愛知公演は1月28日(金)、日本特殊陶業市民会館ビレッジホール。東京公演は2月3日(木)〜17日(木)、シアタークリエ 。ぜひお見逃しなく!取材・文:五月女菜穂
2021年12月27日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)作、三浦直之演出により、KERA CROSS第四弾として上演される舞台『SLAPSTICKS』のレクチャーレポートが到着した。本作の舞台は、サイレント映画からトーキーへ、転換期を迎えるハリウッド。激動の時代に映画作りに情熱を注ぐ人々を、映画への愛と希望に溢れる一人の青年を通じて描くロマンチック・コメディ。ケラリーノ・サンドロヴィッチにより、1993年にナイロン100℃で初演され、2003年にはオダギリジョー主演で再演された。今回、主人公の若き助監督ビリー・ハーロックを演じるのは、『プロデューサーズ』や『ジャック・ザ・リッパー』など舞台での活躍に加え、大河ドラマ『青天を衝け』に出演するなど活躍の場を広げる木村達成。ビリーの初恋の人であるアリス・ターナー役には、乃木坂46を卒業し、ミュージカル『GHOST』や『ダンス・オブ・ヴァンパイア』などでその存在感を示す桜井玲香。そして、18後のビリーを小西遼生。さらに、壮一帆、金田哲(はんにゃ)、元木聖也、黒沢ともよ、マギーといった個性豊かな実力派が集結した。晩秋のある日、稽古場にKERAが登場。今回の上演にあたり設定考証・協力をしている喜劇映画研究会の新野敏也と共に、20年代前後のサイレント映画の名場面をキャスト・スタッフらで揃って視聴し、ふたりに解説してもらうというスペシャル・レクチャーが決行された。実はKERAと新野は高校時代の先輩・後輩の仲(新野が2年先輩だとのこと)。まずはそんなふたりの関係、そして今作の登場人物でもあるロスコー・アーバックルやマック・セネットのこと、そのセネットが映画という文化にとっては大変に重要な人物であること、「その役を演じるマギーはそのことを肝に銘じていてほしい」といったことなどが、KERAの口から語られた。今回の上演にあたって演出の三浦直之は「『SLAPSTICKS』はサイレント・コメディを偏愛するひとたちの物語です。そして、KERAさんのサイレント・コメディに対する偏愛の物語でもあるとおもっています」とオフィシャルでコメントしているのだが「まさに、その通り」だとKERAは頷き、今作が30歳の時に自らの映画への偏愛が書かせた芝居だということを認めた上で、「だからこそせっかくなら、少しでもみなさんに興味を持っていただき、作品を楽しんでもらいながら演じてほしいと思い、こういう時間を設けてもらった次第です」と挨拶。左:三浦直之、右:新野敏也このレクチャーのためにVTRだけでなく私物のプロジェクターも持参してくれたという新野も「当時はメディアといえば新聞と雑誌しかない時代、映画誕生と共に“娯楽”というものを発明したのが、マック・セネットです。彼の演出により今のアメリカ映画のさまざまな撮影方法が築かれ、さまざまな映画人の人脈の礎ともなった人でもあります。これから流す映像に出てくるのは100年前の人たちで、とにかく映画に対する熱量が今と全然違うんだという点も参考になるかもしれません。おそらく初めて観る映像がほとんどだと思いますが、まずは楽しむ感覚で、肩の力を抜いてご覧いただければ」と語り、いよいよ珠玉のサイレント・コメディの名場面集の上映がスタートした。稽古場に設置された小型スクリーンに映し出されたのは、劇中に登場するロスコー・アーバックルやメーベル・ノーマンドだけでなく、ハロルド・ロイドやチャールズ・チャップリンやバスター・キートンといった有名どころだけでもなく、チャップリンの兄がいたり、キートンの妹や妻がいたり、さらには「この人は美術監督」「これは脚本家」「この役は途中から実はキートンがバイクアクションだけ吹き替えてる」等々、“一コマずつ止めて確認しながら観てきた”新野ならではのツッコミコメントが入り、そのたびに参加者一同は笑い声に加えて「へえ~!」「うわあ、すごい!」「コワッ!!」などと感嘆の声も響かせている。用意されたオムニバス集3本のVTR上映の合間には、キャストからそれぞれ質問も受け付け、中でもマギーは興味津々だったようで、ハロルド・ロイドの映像でビルの高層階で行われたアクションのからくりを聞いたり(新野によれば、ビルの屋上に高さのあるセットを組み、カメラアングルを工夫して撮影しているとのこと)、自分が演じるマック・セネットの人となりについて聞いたり。他にもヴァージニア・ラップを演じる黒沢ともよら、実在の人物を演じるキャストは、この物語には実際に起きた事件や当時の映画人たちの普段のふるまいなどが盛り込まれていることもあって、どこまでが現実にあった出来事でどこからがKERAの創作なのかが気になるようで、それぞれのキャラクターについてや、「自転車を食べる女優は本当にいたんですか?」(KERAからの答えは「創作です!」)、「白塗り男は誰をイメージしたんですか?」(「確かハリー・ラングドンだったと思う」とKERA)、「あの当時の映画界には男女差別や人種差別はあったか」(立場は対等だったように見える、ギャラも男女差というより売れた人がより大切にされていた、男か女かというよりもコメディアンもコメディエンヌも同じように笑いのためには相当に激しいことを要求されていた)、などなど活発な質疑応答が行われていた。また、物語の大きなモチーフのひとつでもあり、いまだに謎が多く残る“アーバックル事件”についても「結局は今も想像するしかないけれど」と前置きしながらも新野が長い時間をかけて解説。「実際のアーバックルはどんな笑いをとるタイプだったんですか」という質問には、KERAが「明るくて完全に“陽”な人。とにかくあの体重であれだけ動ける人はいないし、ちょっとした足さばき、手さばきが流麗。そもそも日本で今みたいに太った人を“デブ”と全国区で表現するようになったのは、アーバックルに覚えやすい通名をつけるにあたって、江戸時代に一時流行った“でぶでぶ”という言葉をあて“デブくん”としたことからなんだよ」というトリビア的な事実を明かしたところで、ラストはそのアーバックル主演の1916年の短編『デブの料理番』をピアノ演奏の音声も入ったフルバージョンで上映。その上映終了後には「個人的な自分の想いを話しておきます」と、KERAから締めのコメントとして「忘れもしない小学4年生の12月に父親と一緒に観たチャップリンの『モダンタイムス』、その翌年にキートンを観て、すっかり魅せられてしまった」という子供時代のこと、小学6年生の卒業アルバムに「将来なりたいのは喜劇映画の監督」と書き、明らかにそれが今の自分の出発点となったこと、8ミリカメラを買ってもらって本人はチャップリンやキートンみたいなことをやっていたつもりだったが、その後高校に入って似たような映像を撮っていた人が同じ映画部にいてそれが新野だったこと……。「今、考えるとある意味狂っていたとしか思えないくらいだけれど、本当に映画が好きだったんです。だけど周囲の人々はそこまで映画好きではないわけで。そういう人たちに向けて、サイレント・コメディのような“忘れ去られたもの”をなんとか自分なりに、昔こういうことがあったんですよということを創作や捏造をも交えて伝えたいと思った、“運動”みたいな作品なんです」と話した上に、さらに『SLAPSTICKS』と複数形の“S”が付いていることについては「幾多のコメディアン、コメディエンヌ、クリエイターに対する敬意を、あえて複数形にすることによって、全員分の『SLAPSTICK』があるという意味で複数形にしています」とタイトルに込めた想いも打ち明けた。「自分も若かったし、当時は理屈でないところで動かされていたところもあった。異常な熱量で生きていただろうサイレント時代の登場人物を演じる時に、まったくクールな状態でクリエイトしてもなかなか伝わらないかもしれないな、と思うんです。なので、ほんの数カ月でいいので、今ならYouTubeでも観られる映像もあってホント恵まれた環境にありますから、それほどゲラゲラ笑えるものではないですがまたいろいろと観てみてほしい。そして実在の人を演じる方も、創作の人物を演じる方も、当時の世界の住人として存在する説得力を持って演じていただければ。今、台本を読み直すと“随分フツーのことを言ってる!”と思うし、若書きでストレートなこともいっぱい書いていて恥ずかしくなるんですけどね。ですので三浦くんの解釈で、どんな風に変えていただいても構いません。実際の出来事をフィクションにしてもらってもいいので、その時代の人たちをぜひみなさんで楽しみながら再現してもらえたらと思います!」と改めて、キャスト・スタッフに向けてエールを送った。キャスト陣もみなすっかりサイレント映画に魅惑されたのか、挨拶のあとも何人も手を挙げて質問コーナーは続き、作品や演じるキャラクターへの想い、その登場人物たちで構築する映画愛たっぷりのこの物語世界への想いはかなり増幅した模様だ。よりリアルに、より深くなるはずのニューバージョン『SLAPSTICKS』に期待は高まるばかり、初日の幕が上がるのが今から楽しみでならない。取材・文田中里津子写真提供:東宝演劇部■公演概要KERA CROSS 第4弾『SLAPSTICKS』2021年12月25日(土)・26日(日)会場:東京・シアター10102022年1月8日(土)~10日(月・祝)会場:大阪・サンケイホールブリーゼ2022年1月14日(金)~16日(日)会場:福岡・博多座2022年1月28日(金)会場:愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール2022年2月3日(木)~17日(木)会場:東京・シアタークリエ作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出:三浦直之出演:木村達成、桜井玲香、小西遼生 / 壮一帆、金田哲(はんにゃ)、元木聖也、黒沢ともよ、マギー / 亀島一徳、篠崎大悟、島田桃子、望月綾乃、森本華
2021年12月09日