中谷美紀は誇らしげに自らを「肉体労働者」と呼ぶ。作品に必要とされ、己の身体、表情、声色、全てを駆使して役柄を表現することへの喜びと愛おしさがそこにはあふれている。今年の1月に公開された『繕い裁つ人』もまた彼女にとって大切な愛おしい作品となった。洋裁店の頑固な女主人・市江を演じ、タイトル通り「繕い」「裁つ」という営みの中で多くの発見を手にした。仕事に誇りを持ち、凛と生きる市江の姿は、中谷さんが20年以上にわたって、女優として見せてきた姿とも重なる。つい先日、デビュー以来、在籍してきた事務所を離れ、個人事務所を設立したことが発表された。そして、年が明ければ“不惑”の40歳を迎える。女優として、そしてひとりの女性として、中谷美紀の目にはいま、何が映っているのか?じっくりと話を聞いた。もちろん、洋服を作ることと女優として作品に参加するということは決して同じではない。中谷さんが演じた市江は、お客さんの気持ちを汲みつつ、あくまでも自分一人を責任者として、頑固に己の守るべきものを貫こうとするが、映画作りは共演者やスタッフ、何より全てをジャッジする監督がいてこそ存在する。「理想はやはり、自らの主張を貫くことではなく、本当に尊敬できる作り手さんと出会い、その方の色に染まることだと思います。それには、まず信じられる作り手さんと出会わなくてはならないのですが、その意味で三島(有紀子)監督との出会いは私の財産だなと思います」。中谷さんの初主演映画『BeRLiN』(’95)で当時まだ10代だった中谷さんの姿に衝撃を受け、以来、三島監督は中谷さんとの仕事を熱望。本作の企画が通るとすぐに市江役に中谷さんをオファーしたという。今回、三島監督と出会い、一緒に仕事をする中で、新たに引き出されたと感じる部分は?「監督がとりわけ大切にされていた部分が、市江の“ほころび”を見せるということでした。一見、修道女のような真面目で融通の利かない人間ですが、実は仕事以外ではダメ人間で、家事もろくにできなかったり、おっちょこちょいな部分――実はパジャマ姿の時もよく見るとボタンを掛け違えてるんです(笑)。『こういう人間です』と提示されると、どうしてもステレオタイプにその一面ばかりを演じたくなるものですが、やはり誰でも多面性を持っている。そこをどう演じるかでその人間、物語の豊かさが変わってくるものだと思います。そういった意味で、三島監督からいろんなエッセンスをいただけたと思います」。市江のチャーミングな一面として、お気に入りの喫茶店でチーズケーキをホールごと平らげるというシーンが登場する。これは池辺葵の漫画原作にはない、三島監督によるアイディア。中谷さん自身、ここでの市江の姿に自らを重ね合わせ、大いに共感する。「私も一人で食事をする時間がとても好きなんです。普段、100人近くの方々と接しているので、たまに一人でいたくて、おそば屋さんで一人、心の赴くままに、3枚くらい平らげたりします(笑)。とても幸せな時間なので、市江の気持ちがよくわかりますね。カウンターだけのお店で気配を消して、他人の話をじっと盗み聞きしたりもしています(笑)。お嫁さんや奥さんの愚痴だったり、ずっと別居されていたらしい老夫婦が久しぶりに会って、お互いの誤解を懸命に解いていたり……そんな話にじっと聞き耳を立てています(笑)」。ちなみに、本作に関しては中谷さんの出演が決まり、撮影のためのスケジュールを空けたのち、一度は企画が暗礁に乗り上げ、その後もめどが立たないまま約1年も予定が延びてようやく撮影が行われた。そんな不安定な状況でも、本作に出たいと考えたのは「三島監督がぶれることがなかったから」だった。「1年の延期も闇雲にというのではなく、機が熟して万全の状況で作れるのを待とうということでした。そこでじっくりと考える時間も生まれたでしょうし、監督はロケ地もご自分で探されるんです。(洋裁店のロケに使用された)旧平賀邸もかなり苦労して見つけたそうです(※実際に決定したのは撮影開始直前!)。スタッフは『もうそろそろ妥協してくれないと』と思ったでしょうが(笑)、決して妥協しない。でも、そこにみんな付いていきたいと思いますし、だからこそいいものができるに違いないと思ってるんです」。本作に限らず、中谷さんが作品への出演を決める際に基準としているのは何より「人」だという。「やはり、人生の少なからぬ貴重な時間を作品、監督に捧げることになるので、まず何より、自分が心動かされた作品に携わられたスタッフとお仕事させていただければ、幸せだなと思います。自分のテリトリーの範囲というか、心地よい範囲で演じていれば安全ですし楽ですが、どのみち新しい作品を作るのであれば、新しい扉を開いてくださる方、思いも寄らなかった演出をしてくださる方と出会いたい。撮影が始まってしまえば、暑かったり寒かったり、痛かったり眠れなかったり…つらいことばかりなので(苦笑)、いずれにせよ苦労するなら、それが喜びに変わるような作品に出逢えればと思います」。来年で40歳となるが年齢を重ねることは「楽しいです。20代の頃から40代になるのに憧れていた」と明かす。「たまたま憧れの対象が、年齢を重ねた方が多かったんです。その会話に加わるには20代、30代でまだ切符をいただけてない気がしていて、40代になれば憧れる世界に少しは近づけるのではないかと期待しています。そうなるとまた、50代、60代にならないといただけないチケットも出てくるのかもしれませんが…(笑)」。“年の功”という言い方は失礼かもしれないが、年齢を重ねたことで、若い時以上に見えてくるものや分かってくることは?「自分の発する言葉にようやく説得力が出てくるのかな…?その分、責任も生じてくると思いますけれど。若い頃は、理想の方が高くて現実が追い付かなかったので、理想の自分、やりたい作品や到達したいプランがあるのですが、口では言っていても全然出来なかったんです。それでも理想はあるのでそれを掲げるんですが、海外の良質な作品見る度に、理想と現実のギャップが開いて苦しかったです。最近はそれが少しは縮まってきたように思います。身の程知ったのもあるのかもしれませんが…(笑)」。先に“肉体労働者”という言葉が出たが、ここ数年で「猟銃」(’11/原作:井上靖/演出:フランソワ・ジラール)、「ロスト・イン・ヨンカーズ」(’13/作:ニール・サイモン./演出:三谷幸喜)、「メアリー・ステュアート」(’15作:ダーチャ・マライーニ/演出:マックス・ウェブスター)と、まさに己の肉体を最大限に使っての表現を求められる舞台にも出演している。30代半ばで初舞台というのも意外な気もするが、出演を決めたのには心境の変化が?「市江と同じように、自分に限界を設けていたんです。『私には舞台は向いていない』と。舞台俳優さんはやはり身体能力に長けた方たちであり、そうでないといけないと思っていて、私は訳あって体も硬くプロの方のように自由に身体を使えないので…。でもそれでも演じていいのだと演出家の方(フランソワ・ジラール)が教え導いてくださったんです。そうして舞台に携わるにつれて、限界というのは他人が強要したわけでも、目の前に壁のように立ちはだかっていたわけでもなく、あくまで自分の心が勝手に設けていたのだと感じました」。女優という仕事は「10代、20代の頃はアルバイト感覚で『私にはもっと適職があるはず』『いつでも辞めてやる!』なんて思いつつ、やめるタイミングを逃してここまで来てしまった感覚。それがいまでもお仕事をいただけるなんて、ありがたいことです」と苦笑交じりに語る。「若い時は七転八倒していました(笑)。いまは…やはり、人の心ってわからないから面白いと思うし、心を探る作業は興味の尽きない試みだなと感じてます」。この先の展望は「日本の誇るべき文化を紹介したい」とも。「友人知人にものづくりをする方が多いのですが、手仕事をする方々の懸命に生きる姿は本当に素敵で、またその作品もため息が出るほど美しいです。将来的に伝統そのものが廃れたり、人口の減少とともに販路を見出すことが難しくなっていく中で、その存在を伝えるお手伝いをできればと思っています。これまで大きな会社の庇護を受け、ありがたい環境で仕事をさせていただいて、心から感謝していますが、この先は、豊かな表現力を培って、守るべきものを守り、伝えるべきことを伝えるだけの価値のある人間になりたいと思います」。出会いとつながりの中で、中谷美紀はより一層、美しさを増してゆく。ヘアメイク:下田英里スタイリスト:岡部美穂カメラマン:宅間國博(text:Naoki Kurozu/photo:宅間國博)■関連作品:繕い裁つ人 2015年1月31日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開(C) 2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会
2015年09月04日中谷美紀と神野三鈴が競演するふたり芝居『メアリー・ステュアート』が6月13日、東京・PARCO劇場にて開幕した。16世紀のイングランドを舞台に、実在したスコットランド女王メアリー・スチュアート(中谷)とイングランド女王エリザベス一世(神野)の対立、そして史実にはなかったふたりの出会いが描かれた、イタリアの女性劇作家ダーチャ・マライーニによる創作劇だ。イギリス演劇界の精鋭マックス・ウェブスターの演出、ワダエミの衣装デザインなど、世界の才能が集結した話題作でもある。前日の開幕直前会見では、「できることなら逃げ出したいほど緊張しています。でもそれだけ素晴らしい作品に巡り合えた証だと思う」(中谷)、「もうどうにでもなれ!と武者震い(笑)。中谷さんと舞台の上で生きたいと思います」(神野)と率直な心情を語ったふたり。「メアリーを通して、感情を爆発させ、普段言えないことを口にするのはとても心地がいい」という中谷を、神野がさらに「歌い、叫び、踊り、狂う中谷さんが見られます!」ともり立てる。中谷からも「神野さんもスゴいです!」と気になるひと言が飛び出した。姉妹のように睦まじいやりとりを見せるふたりが、女王の激しい生きざまをどのように体現するのか。期待をもって初日公演に駆けつけた。ふたり芝居『メアリー・ステュアート』チケット情報中谷がメアリーとして登場する時は、神野は乳母ケネディ役に扮し、また神野のエリザベスには、中谷は侍女ナニーとなって相対する。中谷はさらに、エリザベスの寵臣と結婚し、女王の怒りを買う若き女レティス役をも兼任。傾斜した鏡を背面としたシンプルな舞台上で、ふたりの女優は全身を観客にみつめられたまま、滑らかに役を切り替えてドラマを交錯させる。傍らで時に軽やかに、時にけだるく妖艶な音色を響かせる古楽器リュートの生演奏、微細な変化をみせる照明が、女王たちの心の動きを浮かび上がらせて効果的だ。恋に溺れ、感情のままに揺れ動くメアリーと、一国を背負い、頑なに社会への体面を守って厳しく生きるエリザベス。中谷、神野両者が放つ豊かな表情、深みのある声の魅力に引き込まれ、どちらの言い分にも強く頷いて展開を追いかける。白眉はやはり、夢の中でふたりの女王が出会うシーンだ。会見での発言通り、大胆過激にはじけまくる中谷メアリーと、鉄の仮面を崩して淫らな笑みを浮かべる神野エリザベス。ウェブスターが仕掛けた、激走するエロチシズムとでも言おうか、とにかく痛快な妖しさに満ちた瞬間だった。その絶頂が際立つからこそ、カタルシスが過ぎ去った後のメアリーの滑稽さが哀しく、迎える最期は美しくせつなく、胸に沁みわたる。「誰のせいでもなく、自分が選択した生き方なのだと覚悟を決めた人たちの姿に、私自身も力をもらったように思います」(神野)。「仕事を選ぶか、家庭を選ぶか。現代の女性にとっても身近で普遍的なテーマです。男性には少しでも女性をご理解いただけるようにご覧いただきたいですし、女性の皆様とは手と手を取り合って、この物語を味わっていきたいです」(中谷)。東京公演は7月5日(日)まで。その後、大阪、広島、愛知、福岡を巡演。取材・文:上野紀子
2015年06月15日2015年6月13日(土)よりパルコ劇場にて上演されるイタリア人作家ダーチャ・マライーニ作、舞台「メアリー・ステュアート」。1990年に宮本亜門演出、麻実れい×白石加代子で上演し、パルコ劇場では2005年に南果歩×原田美枝子で上演されて以来10年ぶりとなる本作の上演にあたり6月12日(金)に都内で会見が行われ、主演の中谷美紀と神野三鈴が登壇した。16世紀に生きたスコットランド女王メアリー・スチュアートと、イングランド女王エリザベス1世という同時代に同じ島の中に生きた二人の女王を描く。生後6日目でスコットランドの王位を継承し、国や宗教に翻弄されながらも「女」として果敢に生き、奔放ゆえに処刑された、男で身を滅ぼしたと言われるメアリー・ステュアートに挑むのは中谷美紀。今作が舞台「三作目」となる。一方、政治にまつわる男女間の諍いを嫌い、「国家」と結婚をした“ヴァージン・クイーン”エリザベス一世を演じるのは、中谷さんが今、もっとも共演したかったという神野三鈴。井上ひさし作品に欠かすことのできない女優として活躍し、2012年には紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞している。本作の登場人物はメアリー・ステュアートとその乳母、そしてエリザベスとその侍女、そしてエリザベスの愛人と結婚した若き女性貴族の5人。しかし、演じるのは中谷さん、神野さんの2人の女優。メアリーを演じる中谷さんはエリザベスの侍女と若き女性貴族を、そして神野さんはメアリーの乳母を演じる。神野さんとの競演を熱望していた中谷さんは、「神野さんの情熱と知識に対して、私はまだまだ新人の状態。今回、神野さんの演劇に対する情熱をたくさん学ばさせていただきました。舞台の上で一緒に遊ばせてくれるような包容力のある方ですね」とコメント。しかし、演出家マックス・ウェブスター氏については「私たち稽古場で『この豚たち』と呼ばれているんです(笑)」と衝撃の発言!劇中に「豚」と連呼するシーンがあり、そこから覚えた日本語だがそうだが、「ひどい言葉を浴びせられながら演出して頂いていますが(笑)、愛情深く理知的な方で、すごく戯曲を読み込まれています」と英国気鋭の若手演出家を絶賛した。一方の神野さんは「役者としてのひとつの夢を与えて頂いたような今回の作品。ちょっと幸せすぎて怖いくらいです。あとはもう美紀ちゃんと舞台の上で愛し合って生きていくのみだと思っております。ぜひ見届けてやって下さい」と本作に対する意気込みを語った。美術にはヨーロッパオペラ界で注目のドイツ人デザイナー、ジュリア・ハンセン、そして衣装デザインには昨年三谷幸喜「紫式部ダイアリー」で久しぶりに日本に戻ってきたワダエミを迎える。そして、今回の最大の特徴は音楽。リュートの生演奏というヒストリカルな色彩の音色と、「Why Sheep?」名義でも活躍する内田学の「音」が絡み、ひとつの世界を作り出していく。本日より上演がスタートする本作。中谷さん、神野さんが創り出す新たな「歴史」を目撃してみては。舞台「メアリー・ステュアート」は6月13日(土)よりパルコ劇場にて上演。(text:cinemacafe.net)
2015年06月13日16世紀のスコットランド女王メアリー・ステュアートと、イングランド女王エリザベス1世。ふたりの女王の激動の生を描いた舞台『メアリー・ステュアート』(ダーチャ・マライーニ作)が10年ぶりに東京・PARCO劇場に登場する。かつて麻実れい×白石加代子(1990年)、南果歩×原田美枝子(2005年)の競演で話題を呼んだ、女優ふたり芝居。今回のタイトルロール、メアリー・ステュアート役を演じるのは、3作目の舞台出演となる中谷美紀だ。ひとり芝居の『猟銃』(2011年)で初舞台とは思えぬ圧巻の存在感を放ち、続く家族劇の『ロスト・イン・ヨンカーズ』(2013年)では読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。さらなる高みを目指し、本作に挑むこととなった。舞台『メアリー・ステュアート』チケット情報「ふたり芝居という点で躊躇したところはありました。ひとり芝居の場合は自分でペースをコントロールできますし、また群像芝居の場合は、自分がすべてのエネルギーを使わなくても相手のリズムに委ねられる部分が大きいんですね。でもふたり芝居では寸分の隙も見せられないな…と思っています」同時代に同じ島の中で生きたふたりの女王は、史実においては出会うことがなかったという。だがこの戯曲では、相反する個性を持ったふたりが夢の中で激突する。「エリザベスは大変理性的で、自らを律することができる人間。一方、メアリーはその場の感情で動いてしまうような、少し浅はかな部分もある女性です。そんなふたりの対比は、とくに女性の観客の方々にとっては働く女性の在り方や、どのように生きていくのかといったことを考えていただくきっかけになるのではないかなと思いますね」エリザベス1世に扮するのは、多くの舞台で華々しい活躍をみせる実力派、神野三鈴だ。それぞれが女王役を演じるほかに、中谷はエリザベスの侍女に、神野はメアリーの乳母に扮して相手役と対峙する点もこの戯曲の妙味である。「神野さんは圧倒的な存在感と、深みのある、いかようにも変化する声をお持ちの方です。多くを学ばせていただければと思っています。戯曲の上ではメアリーとエリザベスの侍女、二役が頻繁に切り替わるので、それもかなり難しい課題でしょう」気鋭のイギリス人演出家マックス・ウェブスターによる新演出にも注目だ。作品ごとに舞台女優の貫禄を増幅させていると感じる中谷だが、当人は「新たな作品や演出家と出会うことで、これまでの価値観はすべて壊さなければならない。ゼロからのスタートです」ときっぱり。潔く、涼やかな視線で臨む、濃厚な女優対決に期待したい。「女性が社会の中で生きていくのは容易ではないでしょう。身の振り方に迷いを感じている女性はたくさんいらっしゃると思います。ふたりの女王の姿が、ご自身の人生についてあらためて考えていただくきっかけになれば嬉しいです」東京公演は6月13日(土)から7月5日(日)まで。その後、大阪、広島、愛知、福岡でも公演。チケットの一般発売は4月4日(土)午前10時より。取材・文:上野紀子
2015年04月03日中谷美紀主演の舞台『メアリー・ステュアート』の上演が決定。6月、東京・PARCO劇場ほかで公演を行う。舞台『メアリー・ステュアート』チケット情報16世紀に生きた悲劇のスコットランド女王メアリー・ステュアートと、同時代のイングランド女王エリザベス1世を描くイタリア人女性作家ダーチャ・マライーニの作品。中谷が共演を熱望していた実力派女優・神野三鈴とのふたり芝居だ。中谷は舞台2作目(2013年上演の三谷幸喜演出『ロスト・イン・ヨンカーズ』)にして読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。今回2年ぶり3作目の舞台に挑む。舞台の登場人物は4人。中谷がタイトルロールのメアリーとエリザベスの侍女を、神野がエリザベスとメアリーの乳母を演じる。ふたりは上演決定にあたり、それぞれ次のようなコメントを寄せている。■メアリー・ステュアート/中谷美紀今回はステージの上にはたった二人だけですから、掛け合いの妙をお客様に楽しんでいただくためには、寸分の隙も許されません。大変な作品と出会ってしまったというのが今の正直な気持ちです。メアリーは、人の上に立つ者であるにもかかわらず、感情に流されやすく愚かな部分もあって、そこが魅力的でもある人物です。エリザベスのように冷静で、自制心をもって国を治める人間と異なり、彼女はその場の感情に流されている。その二人の対比を楽しんでいただきたいですし、対照的でありながら、ともに気高い女王たちの物語を全身全霊で演じたいと思っています。■エリザベス一世/神野三鈴中谷さんと一緒に二人芝居を、という話をいただき、しかもそれが『メアリー・ステュアート』。演劇史に残るような作品を、大好きな女優さんとご一緒できるなんて奇跡のようです。エリザベスの人生を演じることで、彼女が抱くものを昇華させてあげられたら、それが、私たちすべての女性の中にあるなにかを昇華させることに繋がったらうれしい。そして、女性ならではの苦しみや幸福、葛藤を一緒に感じていただければ。舞台という生身の人間が立つ場で、中谷さんと私が魂でぶつかり合う姿を見届けていただけたら幸せです。■『メアリー・ステュアート』[東京公演]6月13日(土)~7月5日(日)PARCO劇場[大阪公演]7月11日(土)~7月12日(日)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ[広島公演]7月15日(水)広島アステールプラザ・大ホール[名古屋公演]7月18日(土)~19日(日)愛知県産業労働センター[新潟公演]7月24日(金)新潟市民芸術文化会館 劇場
2015年01月27日1990年に宮本亜門演出、麻実れい×白石加代子で上演、2005年には南果歩×原田美枝子によって上演されたイタリア人女性作家、ダーチャ・マライーニ作の舞台「メアリー・ステュアート」。パルコ劇場では、現在放送中の「ゴーストライター」に出演する中谷美紀と舞台女優・神野三鈴を迎えて10年ぶりに上演が決定した。本作は、血なまぐさい宗教戦争と華やかなイギリス・ルネサンス文芸の黄金時代である16世紀に生きたスコットランド女王メアリー・ステュアートと、イングランド女王エリザベス1世という同時代に同じ島の中に生きた2人の女王を描いた作品。フリードリッヒ・シラーの同名作品の翻案として、イタリア人作家のダーチャ・マライーニが女性の視点からこの2人の女王を主人公に描いた戯曲だ。この作品の登場人物はメアリー・ステュアートとその乳母、そしてエリザベスとその侍女の4人だが、演じるのは2人の女優。メアリーを演じる中谷さんはエリザベスの侍女を、そしてエリザベスを演じる神野さんはメアリーの乳母を演じる。中谷さんは、映画・テレビでの活躍はもちろんのこと、フランソワ・ジラール演出「猟銃」(’11)で初舞台にして、紀伊国屋演劇賞個人賞、読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。そして翌年の三谷幸喜演出「ロスト・イン・ヨンカーズ」では、読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞するという2本目の舞台にして頂点に立つという快挙を遂げている。そして今回演じるのは、生後6日目スコットランドの王位を継承し、国や宗教に翻弄されながらも「女」として果敢に生きたメアリー・ステュアート。中谷さん自身、舞台の参加は3度目となる。一方、メアリーと同時代に生き、政治にまつわる男女間の諍いを嫌い、「国家」と結婚をした“ヴァージン・クイーン”エリザベス一世を演じるのは、中谷さんがいま、もっとも共演したかったという神野さん。井上ひさし作品に欠かすことのできない女優として活躍し、三谷幸喜演出「三谷版桜の園」(’12)、栗山民也演出「組曲虐殺」での演技により紀伊国屋演劇賞個人賞を受賞し注目を集めている。実力派女優が繰り広げる2人の女王の物語は見ごたえのある、熱く、そしてスリリングな舞台になること間違いなさそうだ。以下、出演者コメント。■中谷美紀(メアリー・ステュアート/エリザベスの侍女)今回はステージの上にはたった二人だけですから、掛け合いの妙をお客様に楽しんでいただくためには、寸分の隙も許されません。大変な作品と出会ってしまったというのがいまの正直な気持ちです。女王というポジションは、われわれ市井の人間とは異なった特殊なもの。とはいえ、女性が人の上に立つということでいえば、会社を営んだり、あるいは部署を司ったりということで、彼女と同じ立場にいる女性も多いと思います。そしてその中で、自分の意志だけではなにも決められない、という経験のある方も少なくないのでは。そのもどかしさは、メアリーと現代の女性たちが共通して感じる部分だと思っています。メアリーは、人の上に立つ者であるにもかかわらず、感情に流されやすく愚かな部分もあって、そこが魅力的でもある人物です。エリザベスのように冷静で、自制心をもって国を治める人間と異なり、彼女はその場の感情に流されている。その二人の対比を楽しんでいただきたいですし、対照的でありながら、ともに気高い女王たちの物語を全身全霊で演じたいと思っています。■神野三鈴(エリザベス一世/メアリーの乳母)中谷さんと一緒に二人芝居を、という話をいただき、しかもそれが「メアリー・ステュアート」。演劇史に残るような作品を、大好きな女優さんとご一緒できるなんて奇跡のようです。二人だけで、純粋に作品に取り組む環境を作っていただき、演劇を志した頃の夢が叶いました。エリザベスの人生を演じることで、彼女が抱くものを昇華させてあげられたら、それが、私たちすべての女性の中にあるなにかを昇華させることに繋がったらうれしい。そして、女性ならではの苦しみや幸福、葛藤を一緒に感じていただければ。舞台という生身の人間が立つ場で、中谷さんと私が魂でぶつかり合う姿を見届けていただけたら幸せです。舞台「メアリー・ステュアート」は6月13日(土)~7月5日(日)パルコ劇場ほか順次全国公演予定。(text:cinemacafe.net)
2015年01月26日