大人二人が暮らすためのミニマムな空間ファッション関係の仕事をするSさん(50代・女性)と、写真家・山岳ガイドとして活動するKさん(60代・男性)。パートナーの二人が暮らすのは、品川区の住宅街にこの春完成したばかりの住まい。家を建てるきっかけは、Sさんが築50年の実家を受け継いだことだったという。「当時としてはモダンなRC造の建物でしたが、古さゆえ快適とは言い難い住環境でした。そこで、取り壊して新たに家を建てようと思いました」(Sさん)。家づくりにあたっての二人のコンセプトは「都会の隠れ家」。「50〜60代の大人が、必要最小限のモノで暮らしていくためのシンプルな家を建てたいと思いました。私は写真家・山岳ガイドという仕事柄、東京を離れ自然の中にいることが多く、彼女も山登りを一番の趣味としているので、逆に住まいはアーティフィシャルな空間を楽しみたいと思いました。」(Kさん)。間取りの面では、住宅密集地のため閉じたつくりとし、北側と北西側が道路に隣接するためベッドルームを南東角に配置した。さらに空間を有効活用するために廊下を設けず、リビングやダイニング、寝室など暮らしの中心となるスペースは2階にまとめた。2階は間仕切り壁を設けず、建具やカーテンで仕切っている。「限られた空間を有効に使うために、2階は部屋と部屋が直接つながるレイアウトに落ち着きました」(Kさん)。キッチンの奥から二階全体を見渡す。2階はワンルーム的な設計。ダイニング・リビング・寝室を、アイアンのガラス吊り戸とカーテンで仕切っている。2階やロフトへ上がる階段の手すりもアイアンで統一。北西側にスリット状の明かりとりの窓を設けている。ロフトへの階段下にはピアノを置いた。ロフトからリビングを見下ろす。照明は、ルイスポールセンの「パテラ」。点灯していない時でも美しく光を演出する照明は、二人のお気に入りだ。NYのロフトをイメージしたインテリアインテリアについては、主にSさんの好みが反映されているという。「ピンタレストなどでいいなと思う画像を集めていたのですが、その中で見つけたNYのロフトがイメージの源になりました」(Sさん)。アイアンを使ったモノトーンの空間に惹かれ、自宅にもアイアンのガラス建具を採用した。「アイアンの建具、階段、手すりをキーにして内装を組み立て、壁紙や床はグレイッシュな色調を選びました」(Sさん)。「モノトーンの壁は、陰影を楽しむことができて、また飾った写真がよく映えます」(Kさん)。ほとんど外食をしないという二人にとって、キッチンは大切な場所。設計段階から悩み、こだわり続けた結果「使わない時には家具のように見え、それでいて機能的なキッチン」を目指したという。「フラットな棚板面、カウンタートップの質感や色合いなどが気に入って、クッチーナでオーダーしました」(Sさん)。使わない時には家具のように見えるキッチン。キッチンのデザインは、天板をセンターにして、左右対称シンメトリーにした。ダイニングの照明は、ルイスポールセンの「アバーブ」をチョイス。コーヒーをいれるKさんと、ダイニングでくつろぐSさん。テーブルは、ウォルナットの挽き板を巾接ぎした天板と特注のアイアンの脚の組み合わせ。キッチンの収納。扉を開けると広い収納スペースが現れる。引き出しと扉は把手がないタイプを選び、スッキリと見えるように。充実した収納や全館空調もテーマに必要最小限のモノでの暮らしを目指しつつも、洋服やアウトドア用品など、仕事柄持ち物の多い二人。家を建てる際には、「狭い家を広く使う」ことを重視し、収納スペースを十分に設けた。2階の寝室に続く3.5畳のウォークインクロゼットのほか、1階の多目的スペース奥にも3.3畳のウォークインクロゼット、階段下に2.4畳の納戸、さらに玄関にシューズクロゼットを設けている。また、設計段階の当初から、全館空調を希望したという。「ワンルーム的なレイアウトにすると個別のエアコンでは効率が悪いこと、より高齢になった時にヒートショックなどを起こさないために、24時間全館空調を選びました。太陽光パネルも設置したので、晴れた日ならかなりの電力を賄えています」(Kさん)。この家で暮らし始めて約2カ月が経つが、「以前のRCの家は部屋によっては極端に夏暑く冬寒かったのですが、全館空調のおかげで快適です」とSさんが微笑む。始まったばかりの「都会の隠れ家」での暮らし。これからこの空間で、シンプルかつ豊かな日々が紡がれていくのだろう。寝室はシックな柄の壁紙を選んだ。ダウンライトを仕込んだ壁の向こうはウォークインクロゼットになっている。寝室からからウォークインクロゼットに入るところに、造作のベンチと明かりとりの窓を設けた。ウォークインクロゼットには、二人の衣類などを収納している。リビングから階段を上がったところにあるロフト。Kさんの山用のシュラフや書籍を置いているが、気分転換に読書や昼寝をすることも。1階のバスルームは、洗面、トイレにランドリーコーナーを合わせて水回りを一箇所に。ガラス張りにして広さを演出。一階のフリースペースは、山に行く支度をしたり、ゲスト用のベッドルームに使う予定。奥にはウォークインクロゼットがある。気に入った写真を額装して飾るためにもシンプルな内装に。「内装をグレーで統一した理由の一つは、写真が引き立つからです」(Kさん)。2階へ上がる階段にもアイアンの手すり。北西側にスリット状の明かりとりの窓。ジムトンプソンのテキスタイルでシェードを。一階玄関ホールの照明は、FLOSの「IC LIGHT」。ショールームでひと目見て気に入り、モノトーンの玄関のアクセントにした。外観。通りに面した玄関は、外扉と内扉を設け、ともに引き戸を採用した。
2020年06月08日「スタイルのある家と暮らし」をテーマに情報発信する『100%LiFE』。クリエイティブな感性で暮らしと空間を楽しむ人たちのライフスタイルメディアとして2012年の7月にスタート、8周年を迎えます。そこで、今回、特別企画として、これまで取材した家の中で『100%LiFE』に集う読者の方々に人気のあった家を、テーマごと振り返ってみました。読者の皆さんが興味をもった家とは?第3回は、「グリーンを楽しむ家」、人気の10軒を紹介します。type1グリーンと暮らすとらわれない発想で、自分なりの味出しを愉しむ数々の店舗のガーデンデザインを手がけ、都内に4店舗のショップも展開するガーデンスタイリスト川本諭さん。独自のスタイルの秘訣とは。type2木への思いとこだわり自然に包まれた森の中のモダン建築芝生の向こうに別荘のような瀟洒な建物。煙突があって、平屋っぽくて。子供が絵に描くような、本当にシンプルな家がイメージでした。type3離れと庭のある暮らし豊かな緑に囲まれた世田谷モダンライフ「私はどちらかと言うと、金属とかガラスとか、ひんやりした素材が好きなんですが、家内はそれが嫌いで」と語るのはこの家のご主人。type4内と外を繋ぐグリーンルーム心地良さを求めてボタニカル・ライフ奥さまの念願であった「植物を取り入れた暮らし」。家づくりへの思いを詰め込んだ『フェイバリット』ファイルを作成し、建築家へ伝えた。type5葉山の自然を愉しむ屋根より高い樹々とともに暮らす家多忙な日々を送っている小林夫妻が造りたかったのは、しっかりと気分転換ができる海の近くの家。緑が豊かなこの場所に家を建てることに決めた。type6緑が生活の中心にある暮らし自然に包まれた鎌倉山の庭には念願のアトリエも緑豊かな鎌倉山の一軒家をリノベーションした塙 麻衣子さんのお宅。広々とした庭の一角には、念願のアトリエも完成させた。type7曲線が優しい建築家の自邸テラスの楽しみを広げる瑞々しい緑のカーテングリーンカーテンが印象的な家。イギリスの未来派モダン建築事務所で仕事をした経験を持つ、建築家の熊木秀雄さんの自邸に伺った。type8花と緑に囲まれてオリジナルの感性を家族で表現する家坂の上の陽だまりに佇む家。花生師として活動する岡本典子さんが家族と暮らす家は、いつもグリーンや花で満たされている。type9植物とアンティークを暮らしに多肉植物と共生するボタニカルガーデン真っ白な一軒家は、妻が育った家を建て替えて完成。多肉植物のアレンジを行う近藤夫妻の家は、白い器にふたりの感性が盛り込まれた作品のよう。type10自然との共生の中で庭づくりに、サックス吹き…楽しみと挑戦へと触発する家右左ずれながら仕切りのない1室空間が裏庭まで25mも続く山﨑邸。庭の緑との関係に思わず見とれてしまうこの家は、退職を機に新築したもの。
2020年06月01日「スタイルのある家と暮らし」をテーマに情報発信する『100%LiFE』。クリエイティブな感性で暮らしと空間を楽しむ人たちのライフスタイルメディアとして2012年の7月にスタート、8周年を迎えます。そこで、今回、特別企画として、これまで取材した家の中で『100%LiFE』に集う読者の方々に人気のあった家を、テーマごと振り返ってみました。読者の皆さんが興味をもった家とは?第2回は、憧れの「湘南スタイル」、人気の10軒を紹介します。type1湘南のサーファーズハウス海を気持ちよく楽しめるカリフォルニアスタイルの家ハワイで挙式した時に借りたバケーションレンタルが理想の家。海岸まで歩いて5分。サーフィン好きの真崎さんにとってこの上ない家が誕生した。type2葉山の海を一望お菓子も作れるカフェになる工夫を凝らしたキッチン葉山の人気カフェ「cafe manimani」の土屋由美さん。その自宅には優しい空気感が漂い、海を一望できるダイニングはアジアのリゾートのよう。type3カリフォルニアの風が吹く愛する海と暮らすサーファーズハウス湘南の海をこよなく愛する山崎さん。七里ケ浜の高台に、海の近くにふさわしいカリフォルニアテイストの家を完成させた。type4平屋の民家をリフォーム家族や自然と調和するゆるやかな生活夫婦でケータリングやレシピ開発の仕事に携わる堀出隼さん。築約50年の平屋の物件をリフォームし、住居兼アトリエを誕生させた。type5理想をカタチにするアメリカの古材を使った、CAPE COD STYLEの家。結婚を機に、家を建てることにした工藤さん夫妻。趣のあるアメリカの古材や建築廃材をふんだんに使って、理想の住まいを実現した。type6葉山の景観に溶け込む広大な庭とともに暮らす真っ白な平屋の家葉山の景観に寄り添うように建つ白亜の平屋。小川さんは、庭の緑を育てながら、自然の中での家族との暮らしを楽しんでいる。type7愛犬との湘南ライフ非日常性を求めて暮らしを楽しみ尽くす海の近くで暮らすこと、犬を飼うことを目的に湘南へ。漫画家・小説家の折原みとさんは自然に寄り添う暮らしを楽しんでいる。type8家造りは自分の手で葉山への移住を決意したのは波乗りと愛犬のため葉山への引っ越しを決意したのは、毎日愛犬とビーチを散歩したい、存分にサーフィンを楽しみたい…という願いから。type9海辺の暮らしを満喫海辺の古い一軒家を自分らしく再生潮騒の音が聞こえる海辺の1軒家。築40年の古いコンクリート住宅を、アメリカの匂いを感じさせる快適な住まいへと変身させた梅本さん夫妻。type10湘南の海を望む天空の家地上から高く離れて海と山と空を満喫する家東海道線の大磯の駅から歩いて10分ほど。ゆるやかな傾斜の続く住宅地の先に、巨大な擁壁の姿が現れる。その上に立つのが藤田邸だ。
2020年05月27日2階をリビングにするアイデアからスタート川崎市の高台の住宅地に建つ南原さん邸。今年の3月に竣工したこの家に、貴宏さん、友香さん、萌々香(ももか)ちゃん、壮佑(そうすけ)くんの4人家族が暮らしている。「以前は2LDKのマンション住まいでしたが、30歳を節目に周りも家の話が増えてきていたので、自然と自分たちの家を持とうと考えるようになりました。一生に一度の大きな買い物なので、理想を叶えられる注文住宅にしようと夫婦で話していました」(貴宏さん)。家づくりにあたり、まずは土地を探そうとご夫妻が不動産屋さんに相談したところ、紹介されたのが、設計事務所「IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)」の井上亮さんだった。「井上さんが、土地とともに提案してくださったのは、リビングを2階にするというアイデアでした。それを見て、こんなこともできるのか、とイメージが広がりました。他の土地も紹介していただいていたのですが、もうここしかない!という気持ちになりました」とご夫妻は振り返る。「周囲が密集地だったため、1階をリビングにすると窓の外にあまり良い環境をつくることができないので、開放感のある2階をリビングにする案を勧めました」という井上さん。この提案が決定打となり、ご夫妻はIYs inc.に設計を依頼。本格的な家づくりが始まった。「温かさだけではない、バリエーションのある空間を意識しました」という井上さん。特に1階と2階の雰囲気の切り替わりのバランスにこだわったという。1階は、中国の伝統的な洞穴式住居「ヤオトン」をイメージして、地下のような雰囲気を木材の温もりで表現した。1階の個室から玄関ホールを見る。こちらも、白いクロスのシンプルな個室から温かみのある玄関ホールへの切り替わりで、自然と気持ちも切り替わるようにした。玄関に入るとすぐに広がるのは、吹き抜けの開放的なホール。フリースペースのような使い方もできるように考えたという。玄関の左側に設けたウォークインシューズクローク。使い勝手も良く、玄関周りもスッキリとした印象に。家のつながりと快適な居心地南原さんご夫妻が家づくりにおいて、何よりも希望したのは、リビングを経由して子どもの部屋にアクセスできること、家族のつながりを感じられることだった。また、友人の多い南原さんご夫妻は「いろんな人が集まれる家にしたい」という想いもあった。これを受けた井上さんは、いくつかのプランを考案。「2階をリビングとしながらも、いかに下の階と断絶せずに、家族の一体感を高められるか」という課題に対し、井上さんが導き出したプランは「家の中央に大きな吹き抜けを設けることによって、リビングと下階の個室群をつなげる」というもの。1階部分に広さをつくるために設ける一般的な「吹き抜け」とは違い、この場合の「吹き抜け」は2階に設けるため、吹き抜けというよりも「大きな穴」というニュアンスに近い。この「大きな穴」を設けることで、玄関から広がる開放的なホールが生まれ、各空間をつなぎ、家族のつながりを損ねることのない居心地の良い空間を実現させた。当初、南原さんご夫婦が選んだのは、吹き抜けのホールがなく、2階はフラットなLDKとロフトというシンプルな構成のプランだったという。「部屋が分断されてしまうのでは、と思いLDKの中央に大きな穴があるイメージがつかなかったのですが、ワンルームの中でも、子どもが遊べるスペースと大人がゆっくりと話せるスペースを分けられるほうが良いと井上さんからご提案いただいて、最終的には現在のプランを選びました。今は井上さんがおっしゃっていた通り、吹き抜けのホールを境にして、リビングで子どもが遊んでいるときも、ダイニングでは子どもの様子を見ながら落ち着いて話すことができています」と声を揃える南原さんご夫妻。「個々の居場所をゆるやかに分けながらも、各空間、家族がつながる住まい」という快適な居場所感と家のつながり感の同居を追求した井上さん。こだわったポイントのひとつには、「回遊性」があるという。「見た目の美しさも大事ですが、いろんな場所に楽しさがあり、動きたくなるような家を最重視しています。今回は、大黒柱を中心とした同心円状の広がりをイメージした設計にしたことで、家の回遊性が生まれました」(井上さん)。吹き抜けのホールを挟んだリビングの反対側にあるダイニングスペース。外からの視線を考慮し、微調整を重ねて配置した窓。また壁や天井の辺に合わせて配置することで、壁に光が反射し、明かりがグラデーションに広がる。2階のリビング。3.4メートルの高い天井と4面に設けられた窓により、明るく開放感のある空間。友香さんの希望で、リビングまで見通せるオープンキッチンに。「調理スペースも広いので、この場所に椅子を持ってきて、子どもと一緒にクッキーやパン作りを楽しんでいます」(友香さん)。大黒柱一本で支える美しさを追求するため、あえて梁をかけず、力強く太い柱にこだわった。壁にはストライプ柄のLVL材を張った。「普通の壁紙ではためらってしまいますが、LVL材は画鋲を貼っても跡が気にならないので、これからは家族の写真や子どもの工作などを飾っていきたいなと考えています」(貴宏さん)。空間と日常風景の美しさが凝縮された家南原さんご一家がこの家に暮らし始めてから約1ヶ月。3歳になる萌々香ちゃんは、ホールの周りをぐるぐる回ったり、階段を昇り降りして、元気いっぱいに家中を走り回っているという。「コロナウィルスの影響で今は家にいなければなりませんが、開放感もあり居心地も良いので、大人も子どももストレスを感じずに楽しく過ごせています。人が集まりたくなるような家というのもテーマだったので、これからは家族や友人を定期的に呼べれば良いなと思っています」(貴宏さん)。「いまだに自分の家ではなく、ペンションに泊まりに来ているような気持ちで過ごしています」(友香さん)。笑顔で語るご夫妻の姿からも、この新たな住まいでの充実した暮らしぶりが伝わってくる。家の中央に大きな吹き抜けを設けるというアイデアによって、家族がつながる明るく開放的な住まいを実現したIYs inc.の井上さんは「LDKに吹き抜けのホールを作るという変わった案でしたが、自分としては理想の家に限りなく近いものだったので、提案を受け入れていただいて嬉しく思っています」と振り返る。「水面を挟んで地上や水中を覗くように1階から2階を、2階から1階を眺める感覚は普通の家にはありません。空間的な美しさとともに、日常風景の美しさや不思議な感覚が味わえ、今までにない魅力が凝縮された家が実現できました」(井上さん)。開放感のある住まいで心地良く家族団欒の時間を重ねる南原さんご一家。家族のつながりを感じられるこの家は、萌々香ちゃんと昨年生まれた壮佑くんの成長とともに、また新たな過ごし方や居場所を示してくれることだろう。家の中心にある天窓からは光がたっぷりと差し込む。「夜になると、月が見えることもあり子ども達が反応するんです。もともと天窓を設けるつもりはなかったのですが、今は天窓があって良かったと感じています」と貴宏さん。萌々香ちゃんもお気に入りのロフトは、現在はプレイルームとして活用している。ロフトの窓からは、富士山が望める。使い勝手や機能性を考えて「GRAFTEKT(グラフテクト)」のキッチン、「ミーレ」の食洗機を導入。「大幅に時短となって、子どもとの時間も長く持てるようになりました」と友香さん。青空に映えるシンプルな外観。窓には日光がたっぷりと差し込む。南原さん邸設計IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)施工株式会社坂牧工務店所在地神奈川県川崎市構造木造規模地上2階建延床面積101.73㎡(ロフト除く)
2020年05月11日石と木の素材感が心地よい稲村ヶ崎の海のすぐそばに建つアメリカ西海岸風のスクエアな建物が、照明器具や家電の輸入を手掛ける稲村ヶ崎の『HERMOSA』の代表、牛尾秀樹さんのお宅だ。「築8年の中古住宅を購入し、『デコデモデ』にお願いしてリノベーションしました。内外装をやり直しましたが、家のレイアウトが良かったので間取りは変えていません。ちなみに、ここはもともとショールームとして使われていた家だったようです」リビングの壁一面に施した石の壁が印象的だ。石の自然のままの凹凸を生かし、ナチュラルに仕上げられている。「ハワイのオアフ島のタンタラスの丘に行く途中に『リジェストランド・ハウス』というミッドセンチュリーの名建築があるのですが、その家をイメージしました。この1面で約1トンの石を使っています。バランス良く仕上げていただいた職人さんには感謝しています」リビング側は吹き抜けになっていて、ダイニング側の2階が個室になっている。吹き抜けに面した窓はリノベーションの際に設置。ダイニングテーブルの後の収納家具はミッドセンチュリーの家具をイメージして製作した。一昨年、リビングのソファをEMECOのものから、パシフィックファニチャーサービスでオーダーしたものにチェンジ。TV台も併せて製作。ランダムかつ立体感が感じられるように貼られた天然石がカッコいい。照明はフランスのジェルデライト。ローテーブルの脚に使っているのはスウェーデン軍のキャビネット。サイドから開閉できる。天板は床と同じ、教室の床のようなスクールパーケットと呼ばれる床材で製作ケーススタディハウスがお手本にイームズをはじめとするアメリカのミッドセンチュリー家具に惹かれ、インテリアを扱う仕事を始めたという牛尾さん。「カリフォルニアのイームズ邸には何度も訪れました。我が家のリノベーションのデザインは、ケーススタディハウスが手本になっています」中庭には屋根をかけ、シーリングファンを取り付けている。ケーススタディハウスの深い軒をイメージさせる。「薪ストーブはデンマーク製の大型のものに買い替えました。中でTボーンステーキを焼いたり、ダッジオーブンで料理したりと、楽しみが広がりました。この辺りは気候が穏やかなので、この薪ストーブと小型の石油ストーブで充分暖まります」「キッチンは扉を木目にし、把手を換えました」フルトハンザの機内で使われているカートをカスタムしたドイツ製のプロダクト。下部に冷蔵庫が収納されていて、照明のカラーがリモコンでコントロールできる。「『ハモサ』でも取り扱いがあります。人気の商品です」。隣の白い消化器は蔦屋家電で購入。「リオン社のスチールロッカーはパシフィックファニチャーサービスのものです。別注色のサンプルで、このオーシャンブルーが気に入って分けていただきました」玄関のドアには船舶用の窓を使用。ブロックは沖縄のもの。「壁はツヤのある、少しクリームがかった色にしました。このツヤ感がミッドセンチュリーのアメリカの住宅らしさを感じさせてくれます。汚れが落としやすいのも気に入っています」。2階へ上がる階段はカーペット敷に。海からバスルームに直行できるよう大改装「実はバスルームの改装に一番お金がかかっています」と牛尾さん。海からウエットスーツのままでバスルームに直行できるように、壁を抜いて新たに出入り口を作ったのだそう。「鍵を持たずに海に行けるように、鍵は暗証番号式のものにしました」そしてウエットスーツを干すためのバーも設置。スイッチプレートやドアノブなどのディティールや、ツヤ感のある壁のペイントのニュアンスなど、細かな部分にも気を配ることで、アメリカのミッドセンチュリーを感じさせる家を完成させている。バスルームと洗面所の仕切りは木製。「水に強い南洋材を使っています」。バスルームの裏口を出るとすぐにボード置き場がある。リノベーションの際、ドアもアメリカを感じさせるものに交換。「ドアノブはアメリカのものを使っています」洗面所周りの小物は、アメリカのキャンブロ社製のケースに収納。スイッチプレートにもこだわっている。
2020年04月29日「スタイルのある家と暮らし」をテーマに情報発信する『100%LiFE』。クリエイティブな感性で暮らしと空間を楽しむ人たちのライフスタイルメディアとして2012年の7月にスタート、8周年を迎えます。そこで、今回、特別企画として、これまで取材した家の中で『100%LiFE』に集う読者の方々に人気のあった家を、テーマごと振り返ってみました。読者の皆さんが興味をもった家とは?第1回は、最近話題の「アウトドアリビングの家」、人気の10軒を紹介します。type1家にいながらアウトドアライフをキャンプの楽しさを家でも家でくつろぐ感覚を外でも部屋で使う家具をそのままアウトドアに持ち出して使えることをコンセプトにしたショップ『INOUT』オーナーの小林卓さんのアウトドアな家。type2海を愛する建築家の自邸海まで3分。カリフォルニアスタイルのヴィンテージハウス数々のカリフォルニアスタイルの家を手がけてきた建築家・岩切剣一郎さん。満を持しての自邸は、茅ヶ崎の築約40年の平屋のヴィンテージハウス。type3100年経っても色あせない家西海岸の空気感を感じながら暮らす緑に囲まれたテラスが心地良いK邸にはどこか西海岸の空気感が漂う。夫妻の「ライフスタイルと両立する家にしたい」そんな思いが込められている。type4雨が降ると池が出現子どもの成長を見守りながら外を感じて過ごせる家池田岳郎さん・亜希子さん夫妻のお宅の前庭には、雨水を溜めると大きな水盤が現れるシカケがある。夏はここで子ども達が存分に水遊びを楽しめる。type5車庫をギャラリーに鎌倉の森の隣に人が集まる場所を作る稲村ヶ崎の海を望む丘の上。既存の半地下の駐車場をギャラリーに改造し、1階をカフェに。住まいと、地域の人が集まる場所の両方が完成した。type6漫画の世界にも通ずる住空間リビングが外にあって、直接空を望める家で暮らす高橋邸が立つのは中央線沿線の「安くて小さい土地」。そこに設計者で漫画家の高橋さんが建てたのはリビングが外部にある家だった。type7モノを即物的に扱い混在させた家おおらかな自由さの中で居心地よく暮らす山田邸でまず目を引くのは、その外構部分。家づくりでは「このスチールの骨組みと緑からなる外構をいかにつくるか、そして家のほうはそれに向かっていかに生活できるようにするか」が出発点となった。type8見たことないつくりのRC住宅都会の狭小地で街とつながって暮らす建築家が正方形の敷地にほれ込んで建てた家は、梁と床・天井のスラブを大胆にずらしてつくられた、今までにない体験のできるコンクリート住宅だ。type9縁側は“外にある居間”逗子の戸外感覚溢れる家で暮らす緑あふれる逗子の地での家づくりを決めた老子夫妻。建築家へのリクエストのひとつは「家にいるのに外にいるような感じで暮らしたい」だった。type10逗子の自然に溶け込む本物の素材に包まれる上質な暮らしの心地よさ世田谷から逗子へ。共にインテリアデザイナーの高城さんご夫婦が選んだのは、自然の中に溶け込む暮らし。素材にこだわった上質な空間が完成した。
2020年04月28日コンセプトは台湾に住むアメリカ人『toolbox』で住宅やオフィスの内装設計施工を担当している渋谷南人さんと、きもののスタイリング/着付けの『kifkif』の大川枝里子さんのお宅は、築60年ほどの約90㎡の一軒家。「この家は、基本自由に改装してもよいという、願ってもない条件でした。まず天井、壁を全て白くペイント、リビングの床をフローリングに、ダイニングキッチンはコルクの床を貼りました。間取りは特に変えていません。改装費用は出来る限りかけたくなかったので、会社や職人さんから捨ててしまうような端材をもらい、仕事に行く前や土日の合間の時間を使ってDIYでコツコツ進めました」この家のコンセプトは、”台湾に住むアメリカ人の部屋”なのだとか。「もともと二人とも手持ちの家具や雑貨が多く、私はアメリカやヨーロッパの古いものが好きなのですが、妻は昭和を中心とした和の雰囲気のものを集めていて、かつリビングのすぐ隣には和室もある。全てを強引にMIXさせようとした結果、そうだ、台湾に住んでるアメリカ人風というコンセプトで行こうと(笑)。和室の入り口の枠全体を朱色に塗ってバランスを取ったり、古い紹興酒の壺を置いてみたり、全体的に改装費用はかけられなかったのですが、せめて空間にしっかりテーマ性は持たせたいと思いました」壁と天井は白にペイント。梁はそのまま残した。渋谷さんが指を指している部分の棚受けは、なんと、macの梱包材(段ボールの中でモニターが動かないように支えている部分)なのだとか!「とても頑丈ですし、おもしろい形なのでなにかに使えないかなと考えていて、ひらめいたのが奥行きの浅い棚受けでした(笑)」この家の唯一のキーカラーは濃いめのグリーン。棚の中に渋谷さん好みのキッチュな小物が並ぶ。引き戸の木口を、キーカラーのグリーンに塗装する遊び心に注目!古道具屋で買ったスピーカーを縦積み。キッチンでは肉を一週間かけて仕込むことも渋谷宅には来客も多いのだとか。お客様へのおもてなしが、目下ハマりにハマっているのスモークバーベキュー。「ときには仕込みに1週間、そして12時間かけて燻製器でじっくりと焼くこともあります。庭でスモークができるのも、一軒家ならではですね。今も仕込み中の肉が小さな冷蔵庫を占領しています」ダイニングテーブルの天板は、なんとドア!脚は『toolbox』。イスはお気に入りのものをバラバラにセット。キッチンの扉にはメラミン材の裏を表にして貼った。キッチンのペンダントライトは、電球にレフ球を使うことで傘がなくてもダウンライト的に手元を明るくできる優れもの。キッチンのタイルは枝里子さんが貼ったのだそう。すごい! 「夫が外でタイルをカットしている間、私がせっせと貼っていきました。目地の幅を均一にするのがとても難しかったです」なるほど”台湾のアメリカ人”っぽい、無国籍感がキュートなキッチン。下駄箱の上は『toolbox』のフローリング材の端材を載せている。広い和室はきもののコーディネイト空間2階の2間続きの和室はあえて手を入れずにそのまま残した。水屋のある本格的な和室だ。畳の部屋は、枝里子さんがきものを広げてコーディネイトをするのにとても重宝している。「1階と2階の雰囲気をあえて変えて、違いを楽しんでいます」。きもののコーディネイトを考える際、広い和室はとてもありがたい存在なのだとか。「箪笥はたぶん中国のものだと思います。宇都宮の古道具店で買いました」床の間には、ダルマや歌舞伎のはりこ人形を並べて。2階の奥の洋室をベッドルームに。木製のカーテンレールは『toolbox』のもの。
2020年04月03日緑が近くにある環境を求めてファッションディレクターであり料理家としても活躍する内山しのぶさんが、2匹の愛犬と家族と暮らすのは、等々力渓谷の近くに建つ2階建ての家。この家が完成したのは2001年のこと。「緑に囲まれて暮らしたい」「当時の愛犬・チャイがのびのびと過ごせるように」と願い、東京のオアシス・等々力渓谷に近く、四季の自然を感じる環境に惹かれ、建築をオーダーした。「桜、ハナミズキ、マキの木が元から植わっていて、それが素敵だったんです。家を建ててからミモザも植えたので、春はピンクと黄色で息をのむほどに綺麗なんですよ」。設計をお願いしたのは、日影良孝建築アトリエの日影良孝さん。「日影さんとは長い付き合いの友達で、趣味やライフスタイルをわかってくださっているから、安心してお任せできましたし、どんな家になるかとても楽しみでした」。この家の間取りはシンプルだ。1階に寝室やバスルーム、書斎などのプライベートなスペースをまとめ、2階はフロア全体を開放的なリビング・ダイニングとした。そして、緑に囲まれたのびのびとした暮らしを生み出しているのが、リビングにつながる約16畳のウッドテラスだ。家を建てた時に居たチャイちゃんも、現在の愛犬・ルウルウちゃんとロンちゃんも、このテラスが大好きで、自由に駆け回ったり日向ぼっこを楽しんでいる。外観の3本のシンボルツリーは20年前よりだいぶ大きくなった。2階のテラスには外からも上がれるようになっていて便利。駐車場の屋根としての役割も併せ持つ。テラスでくつろぐロンちゃん(取材時4カ月の男の子)。見晴らしの良いテラスは、ルウルウとロンちゃんお気に入りの場所。暮らしに馴染んだ明るいリビング2階に上がると、そこはたっぷりの光と窓外の緑を心地よく感じる空間が広がる。南東のコーナーはL字型の掃き出し窓になっていて、開け放つと外のテラスと一体化する。視線がすっと抜け、室内でありながら空間の制限を感じないのは、設計の妙だ。しのぶさんは「本当に気持ちの良いリビングで、冬も太陽の光がたっぷり入るので暖かいんです」と笑顔で話す。また、内山さんは家づくりの打ち合わせ時に、好きな建築家として吉村順三氏の本を日影さんに見せ、理想とする空間を伝えたという。それを受けた日影さんは、シンプルで洗練されたデザインを追求。壁や天井の「白部」と床や建具の「木部」のバランスにこだわり、吉村順三氏が愛した暖炉をリビングに設置した。温もりや安らぎを感じるインテリアは、ほとんどが20年前の竣工時より前から長く大切に使い続けているもので、家具に合わせて設計。毎日の暮らしにしっくりと馴染んでいる。「犬の脚に負担をかけないように」と、床は無垢のカラマツに。20年の時を経て、味わいのある飴色になってきた。ルウちゃんとロンちゃんは、窓際の特等席でゆったりくつろぐ。リビングからは、ウッドテラスのグリーン、そして3本のシンボルツリーを望むことができ、四季の移ろいを感じられる。木製建具にはラワンをチョイスして、明るい雰囲気に仕上げた。リビングの一角には、白いポルトローナ・フラウのソファやジョージ・ネルソンのベンチを配したくつろぎコーナーが。白い梯子を登るとロフト。奥はキッチンになっている。ルイス・ポールセンの照明はヴィンテージ。20年前からずっとリビングを照らし続けている。奥の鏡は目黒通りのアンティークショップで見つけたもの。ローテーブルとして使っているネルソンベンチには花やキャンドルを飾り、インテリアの一部に。花の匂いを嗅いでいるのは、好奇心旺盛な4カ月(取材時)のロンちゃん(男の子)。白を基調としたモダンなデザインの暖炉。炉台は耐火性に優れたトラバーチンという石材。冬には火を入れて、揺れる炎や薪のはぜる音でリラックスする。アットホームな料理教室をスタート大手出版社の女性誌の編集長を歴任してきたしのぶさん。3年前に会社を辞め、今はフリーランスでEコマースや編集の仕事をしている。「これから迎える60歳から先の人生を考えた時に、何か軸がほしいと思ったんです。それで思い切って会社を辞め、自分らしく生き生きと過ごすにはどうしたら良いか考えました」そこで頭に浮かんだのが料理だった。『編集長のお家ごはん』(世界文化社、2013)というレシピ本を上梓したほど料理好き・もてなし好きのしのぶさんは、退社後に中国伝統医学を取り入れた薬膳料理、マクロビオティック、オーガニックなどについて勉強。調理師の免許を取得し、2018年の6月から自宅で月に2回の料理教室を開催している。「この家があったことが、背中を押してくれた部分もあると思います。この家を訪れる方は皆さん『居心地が良い』と言ってくださるので、生徒さんを迎えるのにもいいかなと思いました」。編集者として忙しい日々を送ってきたしのぶさんが教えるのは、素早く簡単につくれるけれど、おしゃれで、体に優しい料理。さらに2019年には国際中医薬膳師の資格も取得し、「体にパワーをくれる・体を整えてくれる食材を、シンプルな料理法で美味しくいただく」ことをテーマとしている。生徒さんからは「料理教室の日の翌朝は体の調子が良い」と、うれしい感想が届いている。また、友達の家に遊びに来たようなアットホームな雰囲気も特長で、教室が終わった後もゆったりとくつろいでいく人が多いという。慣れ親しんだ自宅で新たな挑戦を始めた内山しのぶさん。この家はこれからも、住まい手と愛犬たち、そして訪れるゲストを心地よく包んでくれるのだろう。ダイニングテーブルは、以前の住まいの時から愛用している「IDEE」のもの。手前のテーブルは、教室を始める際に買い足した。シャンデリアはオランダのブランド「moooi」のもので、料理教室を始めるにあたり、新しく購入した。白を基調としたキッチンは、緑が見える窓もあって明るい。ミーレの食洗機、AEGのオーブンなど、しのぶさんが厳選した機器がおさまる。壁面はモザイクタイルにしてあり、素材のグラデーションが楽しい。ガスコンロは、フランスの老舗キッチン機器ブランド「ROSIERES(ロジェール)」のもの。4口あって使わない時は蓋ができるので、とても使い勝手が良いそう。中医学薬膳料理教室SHINOBUTEIお問い合わせインスタグラム shinobutei内山邸設計日影良孝(日影良孝建築アトリエ)所在地東京都世田谷区構造木造規模地上2階建延床面積87.01㎡
2020年03月09日デレク・ジャーマンに憧れて東京の立川市で手仕事品を扱う店「H.works」を営む園部由貴さん。以前は駅近くのビルの一室で12年ほど店をしていたが、家を建てるのを機に、職住一体の暮らしに。駅からは遠くなったが、大きな通りから少し入り、畑などに囲まれた緑のある敷地に小さな家を建てゆったりとお客様を迎えている。「デレク・ジャーマンの家と庭がすごく大好きで、あんな家がいいなあというイメージがありました」。そう話す園部さん。デレク・ジャーマンとは、原子力発電所の近くの何も無いだだっぴろい土地に小屋を建て、庭造りをしながら暮らしていたイギリス人の映像作家だ。確かに、畑や大きな木が植わっている広い敷地にさりげなく建つ小さな家は、デレク・ジャーマンの家と通じるものがある。正面から見た1階の店部分。右奥がダイニングスペース。正面棚の裏がキッチンスペースに。店、ダイニング、キッチンを回遊できる動線となっている。吹き抜けからの見下ろし。奥のダイニングスペースは店ともキッチンともつながっている。扉をしめればプライベート空間に。限られた面積で使い勝手よく1階が店で、外から中が見えやすい木枠のガラスドアを開けて中に入る。建物は「家」だが、店としての入りにくさもなく、家と店の中間という絶妙な雰囲気を感じさせる。店には園部さん厳選の器や料理道具などが並べられている。決して広くはないが、見ごたえのある量とバラエティで展開されており、かゆいところに手が届くような品ばかり。奥にはキッチンとダイニングスペースが。ここは普段の食事にはもちろん作家さんを招いたり、出張カフェをしてもらったりするときにも使うという半プライベート空間。奥の階段前が玄関で、靴を脱いで2階へ。ここを扉で仕切り、将来的に小さな二世帯住宅としても使うことも考慮されているそう。2階はリビングと寝室のプライベートな空間。小さなキッチンもあるが、ここではお湯を沸かす程度だという。ご自身の使い方と器の寸法を熟知した園部さんが望んだコンパクトかつ収納力もあるキッチンスペース。道具類は見えるように扉などはつけなかった。ダイニングから見たキッチン。この小窓からお皿の出し入れもできる。キッチンは以前から愛用していたワゴンが収納できるよう大工さんにつくってもらった。ダイニング奥にある玄関スペース。食事の器、暮らしの器家の設計をお願いしたのは、国分寺の設計事務所「straight design lab」を営む建築家・東端桐子さん。「雑誌の狭小住宅特集で東端さんの手がけられた記事を見つけて、サイトを見たらすごく心にひっかかる部分があったんです。木も好きなんですが、素材によってはスチールのシャープな感じなんかも好きで。東端さんのご自宅の記事も拝見して色使いや使っている材質、細部のちょっとした工夫がまさに私が求めているイメージと重なったのでお願いしました」と園部さん。東端さん曰く、「色使いなどに関しては本当にスムーズに決めることができました。また、プランなどは園部さんが熟考されたスケッチをいただいたので、私は整える程度でしたね。特にキッチンまわりは完璧なスケッチでした」。「私の器選びの基準は、自分の心にぴたっとくるものかどうか。つくり手の思いや実際の使い勝手など、見た目以外のことも重要なので、作家さんとも対話を重ねています。家も器も似たようなところがあると思います。今の家はほんとうにちょうどいいもので、デザインも使い勝手も居心地もとても満足しています」。店へのアクセスは決してよくはないが、長居していく方も多いそう。少しずつ庭づくりも楽しんでいきたいと話す。2階のリビング。奥が寝室とクロゼット。寝室は屋根の形がそのまま現しの落ち着く空間。シンプルな白いタイル貼りの清潔感ある水周り。ところどころに使われているスチールのブラケットは、東端さんが家具製作をするご主人とつくる「SAT. PRODUCTS」のもの。
2020年02月10日それぞれの飼い猫が大集合「一緒に住めばいいのに」と夫の一言から始まったという吉田邸の建て替え計画。妻・沙織さんの祖父母が亡くなったあと空き家になっていた神奈川県横浜市の家に住んでいた吉田さん夫妻は、県内の他市に住む沙織さんの母・小原清美さんと妹・千春さんに同居話を持ち掛けた。同時に、それぞれの家で飼われていた猫6匹も集結することになった。「母の家としょっちゅう行き来していて、そのたびにお互いの猫たちも連れて移動していました。その様子を見ていた夫からの思いがけない提案で、えっ、いいの?という感じでした(笑)」大人4人と猫6匹が快適に暮らせる家を求めて、家づくりがスタート。設計は、ペットと暮らす家をいくつも手掛けている建築家の石川淳さんに依頼した。「石川さんの作品に興味をもっていた、いとこから教えてもらいホームページを見たのです。シンプルで流行り廃りのないデザインと、キャットウォークがさりげなくリビングと一体化しているところが素敵だなと思い、早速コンタクトを取りました」(沙織さん)。2階リビングに設えたキャットウォーク。猫たちが自由に行き来する姿に癒される。旗竿敷地に建つ。縦スリットの2階窓から猫たちが外を見下ろしていることも。沙織さんが書かれた文字をモチーフにした、オリジナルのアイアン表札が目を引く。シェアハウスのような心地よさまず、こだわったのは、4人それぞれの部屋を確保すること。1階には清美さんと千春さん、3階には沙織さんと夫の部屋として、コンパクトな4つの個室を配置。共有スペースとはしっかり分けた造りになっている。「将来、家族の形も変わるかもしれないし、好みもそれぞれなので、個室はシンプルな造りで各自がアレンジできるようにしてもらいました」(千春さん)。1階の廊下には、天井までの壁面収納を造り、各自に振り分けた。また、女性専用の大型クローゼットも設置。女性3人で洋服をシェアすることもあるため、1か所にまとめることで使い勝手もよいという。収納をたっぷり設けたことで、各自の部屋はコンパクトでもすっきりとした空間を保つことができる。家族が集まる2階のLDKは、南側の採光をたっぷり取り込んだ吹き抜けのある大空間。みんなでキッチンに立つこともあるため、キッチンは回遊できるアイランドを採用し、通路も広めに設定した。「なんとなく2階で一緒に過ごしていることが多いのですが、個室があることでプライベートをしっかり確保でき、程よい距離感で過ごせます。シェアハウスのような心地よさがありますね」(沙織さん)2階リビングは3階まで吹き抜けに。3階に設えたブリッジ状の廊下から、リビングでくつろぐ人間たちを猫が見下ろしていることもあるそう。猫が物を落としにくいように立ち上がりを付けたアイランドキッチン。IHクッキングヒーターのスイッチは猫の肉球にも反応するため、カバーを造ってもらった。壁側の収納は造作で、食器や調味料、調理具など収納。3階の夫の部屋。ゲームをするときには個室に籠るそう。沙織さんの部屋には小さなウッドデッキが併設。小さなテーブルが置かれ、まるで“猫用アウトドアリビング”。3階のシャワーブース。1階にバスルームがあるものの、朝の忙しい時間帯などに使用。階段下は収納として活用。1階に向かう階段の一角は、まろくん(オス、6歳)のお気に入りスペース。自ら扉を開けて入るのだそう。1階廊下に設えた天井までの壁面収納。4人それぞれ専用の収納スペースを持っている。1階に設置した大型クローゼットは女性専用。収納グッズを上手に利用し、整理整頓されていた。基本的に、猫は立ち入り禁止。猫が喜ぶ仕掛けが満載「猫が快適な“お猫様御殿”です」と清美さんが笑うように、自由気ままな猫たちの暮らしやすさも重視。猫の習性や行動を考慮し、室内飼いでも飽きない工夫が随所に見られる。まずは、2階リビングのテレビ台から3階の廊下まで巡らしたキャットウォーク。リビングを見渡しながら家族と一緒に過ごせるため、猫たちにも大人気。壁の白と統一したデザインは、インテリアにさりげなく溶け込んでいる。リビングの床に開いた穴は猫専用階段の出入り口で、1階と続いている。人間用の階段と合わせて2つのルートを用意したことで、6匹の猫たちのトラブル回避にもつながった。キャットウォークも猫階段も、行き止まりをなくした動線を考えた設計で、家中を回遊できる。猫たちが自由に動き回れ、運動量のアップにもつながり、ストレスの軽減にもなっている。床暖房の入ったリビングの床では、猫たちがゴロゴロと横たわっていることも。太陽の動きに合わせて移動し、自然光に包まれながらお昼寝タイムを満喫している。外を眺めることが好きな猫たちのために、小さなベランダや窓を所々に設けた。それぞれの猫の特性にあったキャットタワーも置かれ、猫それぞれがお気に入りの場所で過ごしている。3階の渡り廊下からリビングを見下ろす。ひと続きにつながるキャットウォークのラインが美しい。左から、千春さんと春太くん(オス、8歳前後)、清美さんとももちゃん(メス、13歳)、沙織さんと久太郎くん(オス、3歳)。右側のベランダ前の穴が1階へ続く猫用階段の出入り口。1階から猫用階段を昇り、春太くんが登場。リビングで寛いでいるときに、突然猫が床から現れる光景はユニーク。1階廊下の奥に設けた猫用階段。階段を昇るとリビングへ続く。チョコくん(オス、3歳)と久太郎くんの若い3歳コンビが活発に昇り降りするそう。3階の渡り廊下。リビングが見下ろせ、大きな窓からはあたたかな日差しも入るため、猫の日向ぼっこスペースとして最適。3階のキャットウォークの到達点には、猫が通れるトンネルを用意。唯一の女の子・ももちゃんが可愛らしいお顔をのぞかせていた。1階の千春さんの部屋。ちょっぴり臆病なくろくん(オス、6歳)は、この部屋のクローゼットに籠り気味。運動能力の高いくろくん用のキャットタワーを設置。坪庭を介して猫が自由に行き来できるように、千春さんの部屋と清美さんの部屋の双方に猫専用出入り口をつけた。清美さんの部屋。窓の外にあるウッドデッキは、2階のベランダ下に位置する。高齢のももちゃんが愛用するキャットタワーは段差が控えめになっている。人と猫が楽しく共存多頭飼いで気になるのは、トイレ問題。「独立した猫のトイレ室を希望しました」と沙織さん。LDK脇に設けた猫のトイレ専用スペースは、半透明の引き戸でしっかり閉めることができるため、来客時などにもさっと隠せて便利。奥にはサービスバルコニーを設置し、汚物を取ったらすぐに外に出すことができるようにした。また、室内に設置した換気扇を24時間まわし、空気清浄機も置くなど、臭い対策は万全である。6匹分のトイレがズラリと並んでいるが、臭いは全く気にならなかった。大人4人と猫6匹が共存する吉田邸。空間が広く、人も猫もそのときの気分によって過ごせる居場所がたくさんあり、ストレスのない穏やかな時間が流れている。猫たちの愛くるしい姿とお茶目な行動に癒され、笑いに満ちあふれていた。床暖房の入ったリビングは、猫にとって最高の心地よさ。季節や時間によって降り注ぐ太陽の位置が変わり、それに沿って動く猫の姿も楽しい。右側の半透明の引き戸内が猫のトイレ室。6匹分のトイレが並ぶ、猫のトイレ室。奥にはゴミが置けるサービスバルコニーを設置。キャットタワーからは玄関前の様子が見える。リビングから一続きになったウッドデッキ。猫も自由に行き来できる。奥の下が、清美さんの部屋。吉田邸設計株式会社 石川淳建築設計事務所所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上3階延床面積132.81㎡
2020年01月20日文化交流の小さな窓口に東京都品川区にある駐日コロンビア共和国大使館。同じ敷地内にある公邸に暮らしているのは駐日コロンビア特命全権大使のサンティアゴ・パルド氏だ。元々、コロンビアコーヒー生産者連合会のアジア事務局長(東京駐在)として2011年8月から日本で暮らしていたパルド大使。駐日大使に着任した2019年4月よりこの公邸での生活が始まった。「訪れた人にコロンビアのことを知ってもらえるように、大使としてはこの家をコロンビアの小さな窓口にしていきたいと考えています。コロンビアの文化と日本の文化の融合を目指したいですね」と語るパルド大使。その言葉どおり、公邸ではイベントやパーティが頻繁に開かれ、多くの人が訪れる。「直近では、日本コロンビア友好協会の会員をお招きしてカクテルパーティーを予定しています。ビュッフェスタイルでの食事や歓談を通じて、両国の親睦を図るイベントです。国の代表として、こうしたイベントを開催し、プロモーションを行えることは非常に楽しいですし、光栄に思っています」(パルド大使)。1984年の竣工より、代々引き継がれてきた趣きのある洋風建築の公邸。開放感あふれる吹き抜けのエントランスホール。窓から差し込む光が空間を心地よい明るさに。公邸1階の応接間を兼ねたリビングルーム。主にこの場所でイベントやパーティが開かれる。コロンビアの名産品であるコーヒーと、本物の牛の角をあしらったコロンビアの伝統工芸品。黄金伝説(エルドラド)を生んだ先コロンブス期の先住民による金細工のレプリカ。コロンビアの太平洋沿岸にあるチョコという地域に伝わる工芸品。乾燥したヤシの葉で編まれている。主にフォーマルな食事会に使用されるダイニングルーム。家族と過ごす時間が増えたパルド大使は、奥さまと10歳のご長男、7歳のご長女の4人家族。駐日大使となり、職場と家が同じ敷地内となったことは、パルド大使にとっては大きなメリットだという。「家族は非常に大切な存在なので、一緒に過ごせる時間が増えたのはとてもうれしいですね。子どもが学校へ行くときも、バス停まで送ることができますし、スケジュールの都合が合えば、大使館から家に戻って子どもたちと一緒に食事することもできます。そういう意味では恵まれた環境と言えますね」(パルド大使)。家族で使用するダイニングルーム。ガラステーブルはコロンビアから持ってきたという15年前からの愛用品。飾られているのは、コロンビアの若いアーティスト、レオナルド・ピネダの作品。コロンビア料理を盛り付ける伝統的な食器。パルド大使が結婚祝いでもらったという銀細工のティーセット。パーティなどの催しに対応できる広いキッチン。専属シェフがいるが、大使自身も週末はキッチンに立ち、料理をするという。2階は家族の居住空間1階部分は靴を履いたまま過ごすが、2階に上がる階段からは靴を脱いで過ごす日本式に。2階はフォーマルな雰囲気の1階部分とは違い、暮らしぶりを感じさせる家族の居住空間となっている。「私も妻もアートが好きで、大使としてもコロンビアのアートを広めていきたいという気持ちがあります」と話すパルド大使。代々の大使によって集められてきたコロンビアの絵画や工芸品が飾られている1階に対して、2階にはパルド大使の私物のアート作品が各所に飾られている。2階にある書斎。絵本作家の奥さまと共同の仕事場となっている。パルド大使が気に入っているという吹き抜けの窓。季節によって変わっていく木の葉の色づきを眺めるのが特に好きだという。最近東京でも展覧会が行われたコロンビアの現代アーティストの作品。2階の家族用のリビング。ソファーは20年以上前にアルゼンチンで買った牛革を使って、コロンビアで作ったもの。奥さまが描いた絵本『EQUIS(エキス)』。リスのキャラクターが各国を調査するというシリーズ物。光がたっぷりと入る寝室。私物のベッドは、コロンビアから持ってくるのに苦労したそう。飾られている絵はコロンビアのロレンザ・パネロというアーティストの作品。ご長男の部屋。大好きなスターウォーズのポスターが貼られている。パステルグリーンを基調としたゲストルーム。普段は子どもたちが楽器の習い事をするときに使用しているという。日本とコロンビアの関係をより深める来日以前、パルド大使は日本についてまったく知らなかったという。「以前一度だけ日本に来たことがあったのですが、その後、自分が駐日大使になるとは想像もしていませんでした。来日してからは日本の文化も食事もすぐに好きになりました。治安も良く、住み心地も良いので、子どもたちにとっても、非常に良い環境だと感じています」(パルド大使)。家族とのプライベートの時間と国の代表であるコロンビア大使としての時間をこの家で両立させているパルド大使。最後に今後の展望について伺った。「古い伝統と最先端を走る現代的な側面、日本はその2つが融合する国だと思っています。そんな日本とコロンビアの関係を、大使として、政治や経済をはじめ、科学技術や貿易の面で、より深めていきたいと考えています。プライベートでは旅行が好きなので、日本のまだ行ったことのない地域に家族で行ってみたいですね」(パルド大使)。公邸と同じ敷地内にある日本家屋。コロンビアからの来客の際はゲストハウスとしても使われている。和室から日本庭園を眺める。「コロンビアから来るお客様に日本の畳を体験していただけるのはうれしいです」とパルド大使。
2020年01月13日「スタイルのある家と暮らし」をテーマに情報発信する『100%LiFE』。クリエイティブな感性で暮らしと空間を楽しむ人たちのライフスタイルメディアとして2012年にスタート、8年めを迎えています。毎週、個性的な戸建て住宅を紹介。人気建築家の最先端の設計から、人気のアウトドアリビングを取り入れた家、築数十年の日本家屋のリノベーション物件まで、ほんとにいろいろ。そんな中で『100%LiFE』に集う読者の方々は、どんな家、どんな暮らしに興味を持っているのでしょうか。2019年中にアップされた家のアクセス数ランキングを公開します。第1位2階レベルに平屋をつくる居心地の良さを生む多方向への抜けの良さ73坪とゆったりとした敷地が購入できたため、伊藤さんは平屋の家をリクエスト。以前の後輩に設計を依頼してできた上がったのは、平屋が壁柱で2階レベルに持ち上げられた家だった。第2位鎌倉の平屋をリノベ築60年の味わいを楽しみながら暮らす「すべてが見渡せるのが平屋の魅力」と語る濱さんの住まいは、なんとここが3軒目の平屋だそう。緑豊かな敷地に建つ築60年の家をリノベした。第3位多摩川のほとりに暮らす光、風、緑を取り込む癒しと心地よさに満ちた家「目線の高さに緑がある、ここは理想的な場所でした」。スタジオCYの堀内犀さん・雪さんは、3年前多摩川のほとりに自宅兼アトリエを建てた。第4位まるで登山道!犬専用階段も3つの庭が心地よさを生む愛犬との生活をとことん愉しむ共に暮らす小さな犬たちが心地よく過ごせるように、マンション暮らしだったNさん夫妻は一軒家を新築。犬への愛が詰まった工夫満載の家となった。第5位大型犬が駆けまわる人にも犬にも優しいスロープハウス大型犬2匹と共に暮らす横田さん姉妹。車椅子のお母さまと老犬の介護のために、階段や段差が一切ない“スロープの家”にこだわった。第6位漫画の世界にも通ずる住空間リビングが外にあって、直接空を望める家で暮らす高橋邸が立つのは中央線沿線の「安くて小さい土地」。そこで設計者で漫画家の高橋さんが建てたのはリビングが外部にある家だった。第7位人が集まる家をつくる玄関を入るとそこはキッチン……玄関を入るとすぐキッチンのあるつくり。これは「みんなが集まってくる家」にしたいという奥さんのリクエストから生まれたものだった。第8位見たことないつくりのRC住宅都会の狭小地で街とつながって暮らす建築家が正方形の敷地にほれ込んで建てた家は、梁と床・天井のスラブを大胆にずらしてつくられた、今までにない体験のできるコンクリート住宅だ。第9位店舗と住宅一体の都心でも光と緑あふれる温かい空間を都心のビルが多い地域に建ちながらも、光を取り入れ緑を感じられる空間をつくって人を迎えられるよう工夫された店舗兼住宅。第10位築45年の木造家屋を再生当たり前を変えてみる独創性に満ちたアイデア空間祖父母が暮らした築45年の1軒家をほぼDIYでリノベーション。デザイナーの家は、古さと斬新なアイデアが同居する。
2020年01月12日仕事と暮らしをひとつに都心にもアクセスがいい、静かな住宅街。そこで龍光寺建築設計一級建築士事務所を営む、龍光寺眞人さんと池守由紀子さん、そして二人のお子さんが暮らし始めた住まいを訪ねた。事務所兼住宅の建物の入り口は大きなガラス張りで、いわゆる戸建という感じはしない。「ここはなんだろう?という感じで見ながら通り過ぎる人もけっこういますね」と話す龍光寺さん。以前もこのあたりに家を借りて暮らしていたという。「ただ、仕事場が別だと子どものことも心配で仕事にも集中できなかったので、職住を一緒にしたいと思い土地を探し始めました」。なかなか空きが出ず、2年ほどかかったという土地探しも、やっと古い家屋のある24坪ほどの土地を購入し、自分たちで設計を始めた。そしておよそ8カ月の工事を経て今年完成した。打ち合わせスペースの土間は基礎をそのまま現しにした。その下には床暖房が埋められている。半地下の仕事スペースは、壁に向かって仕事はしたくないと、中央に円形のテーブルを置いた。内と外のいい関係設計にあたってまず考えたことは、自分たちの生活と街との距離感だったという。「この敷地内で事務所は別棟にする案もあったのですが、そうすると壁が増えてコストもかかるし、何より仕切って別世界をつくるようなことはしたくなかったんです。このあたりに長年住んでいますから近所の人などの雰囲気もわかっているので、街に向けてオープンに暮らした方が気持ち良さそうだな、というイメージがありました」と龍光寺さん。入り口にガラス張りのサッシを選んだことや、入ってすぐの打ち合わせスペースは土間で外との段差がほとんどないことからも、内と外との境界がいい意味であいまいになっていることを感じる。「家の中は下から上に向かって徐々にプライベートになっていきます。壁をつくると狭くなるのでなるべく仕切らず、窓は大きく取りました」。ドアを開けると土間の床と高い天井の開放感のあるゆったりとした打ち合わせスペース。その奥の半地下が夫婦の仕事場。土間から階段を上がるとダイニング、さらに階段を上がるとプライベートなリビングや子ども部屋や水周りとなっており、各スペースが壁ではなく階段によって分けられている。ダイニングスペースからは階段下、その向こうの外の通りへの見通しもよく、子どもが遊んでいる気配も感じられる。ダイニングから上がったフロアにはテレビを観たりする小さなリビングスペースを。奥が子供部屋で、梯子の上のロフトは夫婦の寝室。ダイニングからの気持ちの良い見下ろし。天井には木毛セメントボードを貼った。階段はスチールで見通しを邪魔しないすっきりさ。リビングスペースの窓は大きく取るために、ビル用のサッシを入れた。さりげない親しみやすさをこうして考えられた家には、近所の子どもや友人たちもよく遊びに来るという。そんな時は土間の打ち合わせスペースがパーティー会場に。「近所の子はガラス越しに中が見えるから遊びに来やすいみたいですね。それに若い人は共働きなどで日中家にいる人が少ないから、なんとなく安心感もあるのかなと。自分たちとしてはやっと仕事と生活を一緒にすることができて、子どもも見ながら仕事もするというのは効率としてはあまりよくないかもしれませんが、精神的な面では安定しましたね」と池守さん。「子どもたちには、私たちの設計した家をいろいろと見せていたので、早く自分の家がほしかったみたいですごく喜んでくれています。でも、家の写真を携帯電話の待ち受け画面にしている僕がいちばん気に入っているかもれません」と龍光寺さんは嬉しそうに話す。空間が狭くならないよう、照明器具は最低限のものを。電球ソケットは思ったよりも明るく、灯りをつけないときは存在感もさりげない。ロフトの寝室は子ども部屋ともつながっており気配も感じられるので、大人も子どもも安心して眠れる。バスルームも建具はつけずにシャワーカーテンのみで仕切る。メンテナンスも簡単。大きなガラスが印象的な外観。手前の駐車スペースから入り口ドアまでの動線も親しみやすさを感じる。
2019年12月09日湘南ライフ、湘南スタイル、サーファーズハウス、サーファーの家、鎌倉の家、葉山の家、海浜の暮らし、海辺の家、実例、ランキング、インテリア、デザイン
2019年09月29日自分たちの感性で見つけた家場所は都心の喧騒から離れた、坂のある静かな街。写真家の松村隆史さんと絵本作家の真依子さん、そして二人のお子さんの4人家族が暮らす家を訪ねた。以前は古いマンションに住んでいたが、子供が小学校にあがるタイミングを目標に家探しを始めた。「1年半ぐらいは場所にもこだわらず、いろいろなところを見に行って探しました。でもなかなかいい物件もないし、ここだ!と思ったところがタイミング悪く買えなかったり。この家は住宅情報サイトで見つけました。冴えない写真が掲載されていたのですが、間取りが気になったから見に来て見たらすごく気に入って絶対ここだ!と」。築年数はおよそ35年ほどと古すぎず、住み始めるには現実的だった。さらに、設計者が吉村順三の所員だったことも判明した。目の前には緑地に植えられたもみの木や桜の木が借景に。キッチンはPacific furniture serviceに設計してもらった。木目もこの家に合うものを。レンジの向かいには実用的にも装飾にも使える穴あきボードで壁を。三層で構成する空間「普通は斜面の土地を平らにして建てると思うんですが、土地の形に合わせて設計されているところが良かったです」と話す隆史さん。丘陵地帯に建つこの家は、その地形を活かした三層構造で設計されているので、まさに地に足が着いているというような安心感が漂う。一層目の小さな仕事部屋脇を通って階段を上がったところが二層目で玄関ポーチがある。中に入ると正面の水周りスペースを挟んでLDK側と寝室側に分かれる。LDKは正面に大きな開口がスクリーンのように設けられ、外の景色を切り取っている。さらに三層目の2階の部屋の広さもそこそこに吹き抜けで天井高をとっているので、自然の明るさと実際の面積以上の開放感を感じられる。入居するにあたり、大きくはキッチンをつくり変えた。「前に住まわれていた方用にとても低いキッチンだったので思い切ってつくりました。壁の白いタイルも普通のなんでもない壁にしたくて、貼り方もなんでもない感じを模索して」。つくり付けのダイニングテーブルも、設計されていたかのような馴染み具合。真依子さんは使い勝手がとてもいいという。壁面のユニットシェルフはドイツのインダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスが1960年にデザインした「ヴィツゥ」のもの。子ども机は松村さんお手製。友人でもあるMOBLEY WORKSでつくらせてもらったという。LDKに真依子さんの絵を描くためのスペースがある。こちら側にも大きな開口があり気持ちがいい。真依子さんがつくった絵本たち。しっとりと落ち着く空間外観からは見えないが、庭はもちろん植栽スペースがところどころにあり住まいに潤いを添えている。寝室は低い位置に配されたL字方の開口が庭木の景色を切り取り、しっとりと落ち着く空間になっている。開口の位置が低いので、隣家との距離が近くても視線が気にならず、地面に近い高さで過ごせる。鉢植えも枯らすようなタイプだった、と話す真依子さん。「広くないとはいえ、庭の手入れはすごく大変です。こまめにやらないとあっという間にジャングルになっちゃう。洗濯物干したついでにここだけ、という感じでちょこちょこ草むしりしています。でも無心になれるから気持ちがいいですよ」。「ここは川も近いし環境はいいですね。たぬきが出たりもするし、ふくろうもたまにいるんですよ」と話す隆史さんは、庭に小さな畑コーナーをつくり、ミニトマトや紫蘇、パクチーなど、摘んですぐ食卓に添えられるものをつくり始めたそうだ。この家で少しずつ、自分たちの暮らしをつくりはじめている。寝室の壁のシックな色合いとイサム・ノグチの和紙の照明がマッチしている。玄関建具は腐食していたので、元の扉に忠実に作り直してもらい、下部には補強も兼ねてコッパーを廻した。エントランスまでのアプローチ脇にも植栽スペースがある。右手には仕事部屋がある。すっきりと無駄がなく、さりげない佇まいの外観。
2019年08月12日可変性を仕込むK邸の敷地は恵比寿の住宅地にある。Kさんの仕事場との距離を考慮してこの土地を購入したが、その際にはご両親が利用することも想定されていたという。「当時は一人暮らしでしたが、これから家族が増える可能性もあるし、何年後かに事務所にするパターンもあるかもしれない。将来いかようにもできるようなつくりにしてほしいと建築家にお伝えしました」鉄骨3階建てのK邸。この写真では見えないが奥にはペントハウスが載っている。玄関入って数段階段を上がると1階スペース。加えて、Kさんが共同でこの家の設計にあたった山路さんと釜萢さんのお2人に伝えたのは「スキップフロアにしたい」、そして「ツルツルピカピカの空間にはしたくない」ということだった。さらに、ネットで見つけた好みのインテリア写真を見てもらったという。山路さんは「スキップフロアにしたいというお話があった時に、部屋をつくっていくというよりずるずるとスペースがつながっているような構成をイメージされているように感じた」という。「それで、斜線制限をかわした最大ボリュームをシンプルに立ち上げてできた空間を伸びやかに使い切るようにしようと。そしてその縦の空間にどのように床を取っていくか、断面的な構成をどうするかが最初から設計のテーマになりました」玄関入ってすぐのソファの置かれたスペース。階高は2.2mで鉄骨造の部分はペントハウスを含めて4層ある。寝室と同じ2階レベルにある踊り場スペース。チャーミングな場所をつくるKさんが揃えたインテリアの写真には、「シンプルだが設えがかわいらしい感じのもの」が多かったという。そこで空間としてはシンプルな構成につつ、ところどころにチャーミングな場所をつくる方向で設計を進めることに。空間を広く感じまた使えるように、木造よりも小ぶりで薄い部材ですむ鉄骨造が選択されたが、鉄骨造でありがちな、人を少し突き放すような冷たさを感じさせないように、建築家のお2人は、このチャーミングな場所をつくることを意識しつつも、温もりのようなものも感じさせることも考慮して素材や色の選択を行っていったという。2階レベルにある踊り場を見下ろす。「チャーミングな場所」は家具や緑とのセットでつくられる。踊り場から同じ2階レベルにある寝室を見る。庭のような空間設計が進む中で、お風呂を眺めのいいペントハウスにつくり、寝室を2階に、ダイニングキッチンを地下にすることなどが決まっていったが、K邸の玄関を入ってすぐ目の前に現れるスペースは用途が決まらないままだった。今はソファが置かれリビング然としたこの空間、Kさんは「何にでも使える庭のようなものにしたらどうだろう」と思っていた。これに対して設計側は「ふつうに考えた場合、いちばんいいと思える場所に生活の中での機能的な役割をあまりもたせずに、Kさんの言われるように中庭的なものとすることで家の広がりをつくるというふうにとらえてみると面白いのでは」と考えたという。山路さんがまたさらにKさんとの打ち合わせの中で面白いと感じたことがある。「行為の順番で空間に対する要望を話されるんですね。お風呂を出た後にこうしたいからこのへんにそうできるスペースがあったらいい、というようなシーンで伝えてくる。こういう要望の出され方ってほんとに珍しいんですね」踊り場から1階を見下ろす。寝室に行くにはここから1階上がってから階段を下る。トイレ以外は閉じた空間がなく1階のスペースを中心に広がりの感じられるつくりになっている。寝室の1層上は服や小物が置かれ洗面所もある多目的のスペース。寝室を見下ろす。壁の明るいシナ合板は、鉄骨部分のグレーを考慮し、かつ空間に温もり感を与えるための選択。「そういう話からあの部屋が生まれたんです」と山路さんが話すのは寝室の1層上につくられた多目的のスペースだ。「ふつうは水回りは水回りで固めるとつくりやすいんですが、シーンで考えていくと、お風呂をあがった後に顔を洗わないし、服を着替える近くに洗面所があったほうが自然じゃないかという話からあの場所にできたんです」Kさんは「帰ってきて、あそこで服を脱いでお風呂に入って着替えて寝るという流れを考えたのと、あの部屋はぐちゃぐちゃしていていいという考えだったので、あそこにものをたくさん置いて、ほかのスペースをすっきりさせようという考えもありました」階段の踊り場に置かれた古い机とテーブルがチャーミングな雰囲気をつくり出している。1階の柱にかけられたマーク・ロスコのレプリカ。1階の壁際に置かれた家具や緑などもチャーミングな場所をつくり出している。背景のシナ合板の色合いとの相性もいい。「お風呂だろ、この家は」というKさんのお父様の“鶴の一声”でお風呂を最上階のペントハウスにつくることが決まったという。お風呂だけのシンプルなつくりが気持ちの良さをさらに増幅する。大開口からの眺望がすばらしい。近くの住宅とはレベル差があるためプライバシー的にも大きな問題はないという。今も攻略中引っ越しから1年近く経ったK邸。最初は慣れない感じもあったが、Kさんの中では気持ちのいい“流れ”ができてきたという。「帰ってきて、窓を開けて、上に上がって、お風呂にお湯を貯めてとか、だいぶ自分のなかで流れ、リズムのようなものができてきて、今はそれが気持ちがいいし楽しいですね」窓を開けるといった単純な所作も意外と楽しいというKさん。「そういう普通なら“余白みたいなところ”に面白さを見出すとは自分でも思ってもみなかった」という。「帰ってきてからあの洗面のあるスペースから子どもが寝ているのが見えるのもいいし、また同じ場所で、一拍おくようにして何かを考えるリズムのようなものができて、それも面白い」と話すKさん。さらなる面白さを見出すために、この家を「今も攻略している感じ」だという。「もうちょっとこの家の可能性を住みながら探していく感じはあります」とも話すKさんは、この家を身体にとても近い感覚でとらえ、楽しんでいるのではと感じられた。Kさんが一人の時はよくキッチンの換気扇の下あたりで、タバコを吸いながら晩酌をしているという話から、地下のキッチンを居心地の良いものにしようと心がけたという。キッチンの上は吹き抜けになっている。Kさんは現在、パートナーと娘さんの3人で暮らす。3人でいる時間はダイニングスペースがいちばん長いという。テーブル上のライトは、「真っすぐに並べたらたぶんつまらないんじゃないか」と思い、試験的にばらばらに設置したもの。キッチン上の吹き抜け。ペントハウスの天井まで見える。玄関の下にあるボックスがトイレ。この家で唯一の閉じられたスペースだ。エントランス付近に置かれた緑もどこかチャーミングな雰囲気を醸し出している。K邸設計山路哲生建築設計事務所+釜萢誠司建築設計事務所所在地東京都渋谷区構造鉄骨造規模地上3階+地下1階延床面積103.84㎡
2019年07月22日ながれが感じられるようにスペイン料理のシェフを務める夫と、デザイナーの妻。昨年秋、のどかな東京郊外に建坪14坪ほどの角地を見つけ、松島さん夫妻は新居を建てた。「土地を見つけてから設計事務所を探し、その中でいちばん私が求めているものに近いミハデザインに依頼することにしたんです」。設計の仕事に携わってきた妻が、家づくりを主導した。「ほとんど私の希望で進めました。夫が口出しをしたのはキッチンだけなんですよ(笑)」。妻の理想は“仕切りが少なく、全部がつながっているような家”。1歳の長女が1階のリビングで遊んでいても、2階のワークスペースからその様子を感じ取ることができる。そんな見通しのいい家が希望だった。南側のテラスに面した大きな開口から光が差し込むリビング。2階の床の高さに差がつけられている。厨房のようなキッチンがリビングと一体に。正面上はワークスペースから子ども部屋に上がる階段。抜けが連続していく「松島さんが思い描く家は、生活をベースにしたフラットでナチュラルなものでした。大まかなことを伝えられた以外、細かい指示はなくスムーズでしたね」というのは、ミハデザインの光本さん。“全体がつながった家”を実現するために、光本さんが考えたのは、床のレベルを違えながら、2階の天井までつなげていくこと。吹き抜けになったリビングの上に生活スペースが積み上げられていくような構成だ。「まず1階のリビングから2階のワークスペースに空間が抜け、さらに2階の子ども部屋も少しレベルを上げることで、抜けが全体をぐるっとつなげていきます」。敷地に面した通りとの距離も、どうカバーするかを思考した。「車や人が通ったときの家との距離感が気になっていました。そこでプランターのあるテラスを1階の南側に設け、テラスに面して大きな開口を設置しました」。北側の2階にも開口が設けられ、光が南から北に、家の中を通り抜ける。「この光の通り道があることで、空間が外までつながっていきます。外まで含めた大きな空間の中に、レベルの違う床が載っかっているイメージです」。25坪ほどのコンパクトな一軒家ながら、つながりと外部との一体感が、開放感を感じさせる。2階ワークスペースからリビングを見る。ここから家族の様子を見守ることができる。2階のワークスペース。中央の机と本棚を挟み、左右対照に設計されている。リビングから上を見上げる。仕上げ材を使わないことで自然な風合いを感じさせながら、コストもカット。木の温もりを味わうミハデザインともうひとつ考え方を共有していたのは、空間を包む素材感。「均質でまっさらな感じには違和感があったんです。子どもが絵を描いたり、だんだん汚れていったりしても気にならない。そういう家にしておきたかったので、仕上げ材はあえて用いず、木を現しました」(松島さん)。無垢のオークの床に壁はラワン、天井も建材をむき出しに。「あとはリビングさえ広ければ、個室は小さくてもいいとお伝えしました」。2階のワークスペースとベッドルームのあるフロアから、階段を数段あがってアクセスする子ども部屋は、中央で区切ればもうひと部屋設けることもできる。その際には、現在ある階段と反対側にもうひとつ、左右対称に階段を設けて、入り口をつくることも計算されている。ここで図面をひいたり、パースを描いたりする間も、1階や2階子ども部屋の気配を感じることができる。ベッドルームもシンプルに。昔から持っている和家具を活用。玄関とリビングの間に階段を設置。空間を塞ぐことなく緩やかに分けている。階段下を利用して土間の収納に。キッチンにも通り抜けられて動線がいい。リビングの壁は、家族の思い出の写真を飾るコーナーに。これからどんどん増えて行く予定。いずれはテイクアウトのお店も「私のリクエストはキッチン台の高さとシンクの大きさ、コンロの火力などの設備です。調理のしやすさを優先しました」。夫のオーダーで造ったステンレスのキッチン台の下は、収納を設けずオープンに。こうすることで厨房のように調理器具などが取り出しやすくなる。毎週末、ここで食事の準備をするのは、夫の担当なのだそう。「いずれはテイクアウトの弁当屋などもできたらいいなと思っているんです。そのために、小窓を設けてもらいました」。キッチンの一角は将来のプランにも対応が可能。今は、1歳の長女が自然の風合いに包まれたリビングで自由に遊ぶ。光が通り抜ける開放的な一軒家は、これから変化を続けていく。使い勝手を考えたキッチン。子どものために、これまで観ることがなかったテレビを、キッチン台の下に置いた。スコーンなども、よく夫が焼いて家族で味わうそう。いずれお店にしたいと考えているコーナー。リビングで寛ぐ松島さん家族。外とつながるような開放感が心地よい。昔、古道具屋さんで買ったライト。設備鋼管や既成の金物をうまく組み合わせて設置してもらった。グレーに青を混ぜた色味の外壁は、粗めのタッチでムラを出した左官仕上げ。松島邸設計ミハデザイン所在地東京都小金井市構造木造規模地上2階延床面積78.35㎡
2019年07月15日縁側のすぐ先には裏山の緑「天気のいい日は縁側に子どもたちが集まってきて遊んでいます」と話すのは老子邸の奥さん。お子さんは「東京のマンションに住んでいるときよりも格段に元気に家の中を走り回ったりするようになった」という。奥さんの話に出た縁側は、アプローチから玄関へと至る前に現れる。中庭を囲むコの字形をしたその縁側のすぐ先には裏山の緑が間近に見える。老子邸はとても戸外感覚が溢れるつくりなのだ。老子邸のエントランス。玄関はいったん靴を脱いでウッドデッキの上に上がると左手に現れる。家づくりの考え方が変わっていった子育てを考えて逗子に越そうと考えた夫妻がこの土地を選んだのは、敷地のすぐ裏にまで迫る山に加え、前方にも緑が豊かに見えるというのがポイントだったという。しかし、現在のような家のつくりはまったく想像もしていなかったものだった。最初は「単純にちょっとおしゃれな家がいい」「無垢の木を使いたい」と漠然と考えていたという。その夫妻の考え方が「“住んでいて面白い家がいい”とうふうに変わっていった」という。そのきっかけになったのが建築家の岸本さんとのやり取りだった。「子どもには隠れる場所が必要」「子どもが外から自由に出入りするぐらいがちょうどいい」等々、子どもに対する目線の重要性などの話も聞きながら徐々に夫妻の家づくりの考え方がシフトしていったという。エントランスからウッドデッキにまで至ると視線は中庭越しにそのまま裏山へと抜ける。家にいるのに外にいるような「岸本さんと話をしていてもはじめはどんな家ができるのか想像がつかなかったんですが、お任せしてお願いをしたら楽しめる家になるんじゃないかなと思いました」と老子さん。設計に際しては岸本さんが「東京からわざわざ逗子に越してきて家を建てるというわけですから、お2人の要望を聞く前からこちらで何をするべきかはすでに半分ぐらいは決まっていた」と話す。それほど家づくりにおいては敷地環境の比重が大きかったが、夫妻の思いが大きく反映したものがひとつあった。それは「家にいるのに外にいるような感じで暮らしたい」というものだった。「どういう家がいいかというよりも、どういう生活がしたいかを箇条書きでもいいのでくださいと岸本さんに言われて」(奥さん)出したリクエストが戸外感覚溢れるつくりへとつながったのだ。中庭側からエントランス方向を見る。真ん中のドアが開いた部分が玄関。その右手に水回り関係が並ぶ。1階のこちらのサイドには奥から寝室、納戸、将来の子ども部屋が並ぶ。外にある居間第1案からほとんど変わっていないという設計案は「面白いというのが第一印象」だったが、奥さんは「びっくりして、もちろん抵抗もありました」と話す。そこで岸本さんにたくさんの質問を投げかけた。「玄関はどこ?」に始まり、いろんな「?」が奥さんの頭の中で渦巻いたという。「でも何回も何回も話をして、岸本さんが具体的な情景を例に出しながら説明してくれて。それで模型を見ながら、ああこういうことなのかなあとだんだんがわかるようになって納得していきました」(奥さん)「ふつうは玄関で内と外がはっきりと区切られていますが、そこを少しぼかしてだんだん内側に入っていくようにする。そうした中間ゾーンをできるだけ豊かにしようとしました。コの字の両端の部分は縁側の風情ですが、真ん中の部分も縁側であり玄関であり、また外にある居間でもあるというように」(岸本さん)水回り前の縁側でくつろぐ老子さん一家。老子さんは「自然の移り変わりをとても身近に感じ取れるようになった」という。「お風呂に入りながら外を見たいというのはリクエストしました」(老子さん)。下見板張りは陰をつくって壁の表情を出すためと家の内側だが外部という「ひっくり返った世界」をつくるため。多様な場所をつくる子どもたちが走り回るのには開放的で自然との距離が近く感じられる空気感も大きく作用しているが、老子邸ではそれに加えて多様な場所がつくられているというのも見逃せない。「場の差異をどうやってつくっていくかが重要だ」という岸本さんは、この家では凝縮された延床面積の中に小さな空間をつくってバリエーションを多様化させているという。階段途中に机の置かれたスペースや2階のロフトがそれで、ともに入口にアーチを設け壁を濃紺で仕上げている。さらに2階に畳の空間をつくったのも「空間が変わる体験を無意識のうちに感じてもらうため」の建築的仕掛けである。子どもに対する目線も意識してつくられたこの家では、実際に子どもたちが楽しそうに走り回るだけでなくいろんな場所で遊ぶという。「畳の間で遊んだり、友だちが来るとベンチ伝いに歩いたりロフトに大集合して遊だりしています。大きくなったらさらに遊ぶ場所が増えていくんだろうなと」(奥さん)玄関を入ったところから見る。階段途中に作業のできる小スペースが設けられている。ダイニングのほうとは対照的に「ちょっとふわっとしたウエットな感じ」(岸本さん)の空間。家の中心に位置するキッチン。食事をつくる際にも裏山の緑が眼に入る。左右の空間とは天井の仕上げを変えている。このキッチンで家族間のコミュニケ―ションが以前よりも活発になったという。キッチンの奥にロフトが設けられている。キッチン前から見る。ダイニングの奥に畳のスペースがつくられている。キッチンからも豊かな緑を眺めることができる。エントランスの上部、キッチンの外側につくられたベランダ。この場所でバーベキューをすることも。ダイニングからベンチがぐるりとめぐりベランダ近くまで続く。壁・天井には土佐和紙が貼られている。逗子という土地を選んで東京から越してきた老子一家。8月にこの家での暮らしが1年を迎えるという。「もともと外が好きでよく外に出るんですが、越してきてからさらにすぐに外に出るようになりました」という老子さん。夜はエントランスの上部につくられたベランダに出てコーヒーをよく飲むという。「ほんとうに想像以上の家に住めて楽しいし、楽しんでいます」との言葉からは、「この地での家づくりは大成功だった」との思いがにじみ出ているように感じられた。縁側であり、また“外にある居間”でもあるような空間。正面ファサード。白壁の部分にはガルバリウム鋼板が張られている。老子(おいご)邸設計acaa所在地神奈川県逗子市構造木造規模地上2階延床面積180.99㎡
2019年07月10日遊び心に感動「面白いし、楽しいです」と我が家について語るのは藤川家の奥さん。雑誌を見ていて納谷新さん設計の家に目がとまったという。「どこか不思議な感じがあって、どちらの方角にも空が見えて、リビングには大きな窓がある。さらに、地中にもぐっているスペースもあって、それで、ぜひ見てみたいと思って」その家は以前このサイトでも紹介した納谷さんの自邸だった(2014年09月22日の記事「すべての空間を居心地よく、楽しくしたかった」)。建築家への設計依頼を考えていた夫妻はさっそく見学にうかがうことに。「主人が気に入ったのは屋上緑化で、サッカーやフットサルが好きな人なので、屋上一面にはられた芝生を見て感動していました。わたしも“こんなことできるんだ”ってその遊び心に感動して。材料の選択とか、構造をそのまま見せているところも良くて、 “ここはこうしてほしい”とか細かいことを言わなくてもわたしが好きなテイストでつくっていただけるだろうと思って設計をお願いしました」ダイニングとキッチンのあるレベルから見る。右手の吹き抜け部分にリビングがある。居場所をたくさんつくる設計に際しては、「楽しい家にしたい」という希望とともに、納谷邸のようにいろいろな居場所をつくってほしいとも伝えた。「納谷邸で階段の途中に中2階のような場所があって、一方にはキャンプの道具が置いてありもう一方は畳になっているんですね。その畳のスペースで奥さんが洗濯物をたたんだりしているそうなんですが、“気分転換にその端に腰かけて脚をぶらんと下げて外の景色を見たりもしています”って聞いて、“あ、すごくいいな”と思って」「わたしは以前山登りをしていたんですが、山だったらどこに腰かけてもいい。それに近い感じがあってどこに座ってもいいというのがいいと思ったし、面白い居場所がいろいろとあるのもいいなと」リビングから見る。奥さんの希望で大きな開口がつくられた。天井には奥さんが好きという木製の梁がリビングからキッチンまで整然と並ぶ。キッチンからデッキと中庭を見る。ダイニングからキッチンを見る。大きな開口を通して畳のスペースのある棟を見る。半地下+分棟式に納谷さんにはさらに具体的に納谷邸で気にいった点をいくつか伝えたが、設計では前提として特殊な敷地条件を考慮する必要があった。敷地は藤川さんの実家が購入したものだったが、長い間空き地の状態で、周囲の住宅の中庭のような存在になっていたという。そこで、高さにおいてもボリューム感においても周囲に対して圧迫感を与えない立ち方になるように、1層目を半分地下に埋めて2層目を分棟することに。さらに吹抜けもつくり、藤川邸の最大の特徴といえる屋根の部分も緑化する予定で設計がスタートした。斜めに張られたデッキの上から見る。正面の棟には上階にダイニングとキッチン、下階に寝室、その途中のレベルにリビングが設けられている。右のデッキの上に張られた人工芝の上で朝食やランチを食べることもあるという。ダイニングに設けられた扉の前から見る。右手の畳のあるスペースの前を通ってぐるりとデッキの上をめぐるとキッチン近くにまで達する。屋上にデッキを張る「うちの主人が納谷邸の屋上緑化をすごく気に入ったので、屋上は緑化する計画だったんですが、予算的にも難しいことからあきらめてデッキにしようと。デッキにすれば出てすぐその上で遊べるし、ダイニングともつながっているのもなんかちょっとうれしいなと」藤川さんと娘さんは日曜日などにデッキのいちばん高い部分に敷いた人工芝の上で朝ごはんやランチを食べて過ごすこともあるという。「キッチンから出てぱっと食事を渡すことができるし回収も楽なので、あそこはけっこう活用していますね。あの人工芝は緑化をやめたのでそれにかわる面白いものが何かほしいねって話をしていたときに納谷さんに勧められたんです」デッキには正面のダイニングとキッチン部分に設けられた扉からだけでなく、左手の畳のスペースからも出入りすることができる。巣穴と畳の部屋納谷邸と同様に下階は地面を掘り下げてつくった。「納谷さんの家よりももぐっている感があるので、巣穴みたいな感じがするんですね。よく寝室の窓からから中庭にウサギを出して遊ばせるんですが、そのときに動物の巣穴ってこんな感じなのかなあと」リビングから半地下のスペースを経て階段を上がるとデッキと同じレベルに畳のスペースが設けられている。「ふだんはそんなには行かないんですが、娘の友だちが来たら必ず開放しています。デッキから行ったりいったん下に降りてから階段で上がったりとすごく楽しそうに遊び回っています。大人の方が来たらぜひあそこに泊ってもらいたいとも思っていて、とても使い勝手のあるいい部屋だなと思っています」右側と正面のデッキの高さは庭から150㎝。寝室の窓を開けて中庭を見る。寝室から見る。この窓から飼っているウサギを中庭に出して遊ばせるという。子ども部屋から畳のスペースに上る階段を見る。畳のスペースの下にあるスタディルームと左に中庭。畳のスペースに上る階段近くからリビングの方向を見る。畳のあるスペースにはいったん半地下のスペースに下ってからまた上がる。畳のスペースからもデッキへと直接出ることができる。天井はぐっと低くしており、梁まで130~147cm。子どもたちは階段から上ったりデッキから入ってきたりとこのスペースを秘密基地のような感覚で楽しんでいるという。奥さんが一番気持ちがいいといってあげてくれたのはダイニングとリビングだった。「ダイニングの椅子に座っていることが多いんですが、庭の緑を目に入れながら生活できるのがすごくいいですね。疲れたときにリビングに大の字になって寝ることがあるんですが、見上げたときに天井の構造(梁)が目に気持ち良くて、その時もこの家に住んで良かったなって」娘さんに思いきりこの家を楽しんでもらいたいと話す奥さん、自身もこの家をとても楽しんでいるように見えた。外壁のエンジ色は緑と補色関係にあることと、いずれデッキが退色してグレーになることを見越して決められた。敷地は四方を住宅に囲まれた旗竿敷地。当初は右側のほうへと寄せて建てる予定だったが、それだと実家の窓をふさいでしまうため左側へと移動した。それによって、窓を通して実家とのやり取りが容易にできるようになったという。藤川邸設計納谷建築設計事務所所在地東京都杉並区構造木造規模地上2階延床面積125.55㎡
2019年06月12日一目惚れの敷地正方形の敷地を探していたという建築家の古澤さん。「見た瞬間にここだと思った」敷地は約45㎡の狭小地で、私道(位置指定道路)の突き当りに位置する。そして、住宅に両脇を挟まれたその私道は古澤邸のためだけに存在しているかのように見える。「正面性もあって一目惚れでした。そして、ここだったら街とつながったような生活ができるんじゃないかと」私道奥の真正面に立つ古澤邸。敷地は約45㎡。建物の半分近くが外部空間になっている。外部空間が半分当初の計画ではプランの真ん中に螺旋階段をもうけていたが、「図式的には美しいけれども、求心力が強すぎて生活が束縛されそうな感じがしたため」、多数の案を経て現在のプランへと変更を行った。しかし、道路に面した建物の半分近くを外部空間にするというコンセプトははじめと変わらずに維持した。「こういう繁華街に近い場所ではどうしても外部が少なくなってしまう。さらに、子どもを育てるうえでも外があるほうが絶対いいと思ったので」と古澤さん。2階バルコニー。都会ではどうしても外部空間が少なくなってしまうため、2~4階でバルコニーを4カ所もうけた。2階の入口近くから外階段越しにバルコニーを見る。コンクリート階段が途中からスチールにかわる。2階へ上る階段途中から見る。梁とスラブを分離する試行錯誤を重ねて行き着いたプランは中央に十字形を配したものだった。図面を見る限りこのプランにも空間を支配するような図式の強さが感じられるが、十字の四隅に柱を設けて十字の交点の部分には柱を置いていないため、ある意味、螺旋のプランとは違って中心といえるものもなく、十字形によって「生活が束縛されそうな感じ」はまったくしない。十字形を意識させない要素としてはこのほか、梁と床/天井のスラブが分離していることが挙げられる。通常は梁と同じレベルにスラブがつくられるが、古澤邸では上下の梁の間にもうけられている。そのため床レベルから見ると天井までの途中に梁が見えることになる。2階スペース。柱から出ているのはスラブではなく梁。この梁が上から見ると十字の形になっている。梁が直角にぶつかっている部分が建物の中央になる。2階スペース。左からキッチン、階段室、バルコニー。ガラス面が大きいが、梁が視線をほどよくさえぎるためプライバシーの面ではあまり気にならないという。この構造は構造家との話し合いの中から生まれたものという。「梁とスラブが一体になっていることに疑いをもつ人はいないと思いますが、ラーメン構造というのは柱梁構造のためスラブは本来、構造的に不要です。ジャングルジムのようなものなので、ある意味、スラブは柱や梁とは別の要素なんですね」こうしてできた空間ではスラブと梁が絵画のフレームのようになって外部空間をさまざまなプロポ―ションで切り取るだけでなく、視線が内外ともに斜めにも抜けて都会の狭小敷地では得難い開放性も獲得している。さらにはまた、正面がガラス張りのため、内へと閉じがちの都会生活では珍しく街とのほどよい距離感と関係性もつくり出されている。4階からの見下げ。基本的に外の階段をコンクリート、内部は木にしているが、それだけでは対比的になりすぎるので途中にスチールの階段もつくっている。寝室のある4階スペース。柱から出た梁によって十字の形ができているのがわかる。階段部分の吹き抜けは1階から4階まで続く。狭小住宅では上下移動の体験が重要になるため、歩くごとに風景が変わる、街を散歩するような楽しさを目指した。2階と3階を見る。2つの床の途中に存在感のある梁があるため、スキップフロアと勘違いする人が多いという。スラブがピン角でぶつかる部分はスチールで接合されている。3階バルコニー。和室のある3階スペース。3階和室から見る。厳しさとは真逆の居心地がいい引っ越しをしてから1カ月という古澤さん一家。間仕切り壁のような存在感のある梁はモノを置く棚としても活用しているというが、はじめてチャレンジしたつくりの空間の中で古澤さんは「モノをどこに置くのかがまったく決まらなかった」と話す。「ようやく落ち着いてきましたが、いろんなところにモノを置いていいきっかけがあるから、しばらくの間、毎日のようにモノが移動していました」家族の戸惑いは、古澤さんよりもさらに大きかった。「最初は開放的すぎて全部外につながっている気がして自分の部屋がないような感じがしました」と娘さん。しかし今は心地よい開放感に慣れて外の目が気にならなくなり、カーテンも開けて暮らしているという。いろいろなプロポーションの開口部が外をさまざまに切り取って風景の変化を楽しませてくれる。1階玄関内部から外を見る。壁と天井のスリットから光が入る。1階。木のボックスの内部はトイレ。階段越しに玄関のほうを見る。階段途中から見る。梁とスラブが分離することで、通常ではありえないような外との関係性が建物のいたるところで生まれている。古澤さんと息子さんの2人がいるのは梁の上。40×40cmの梁は棚としても使えるし、腰かけたりすることもできる。奥さんも「家の中まで見えてしまうのかなと思っていたんですが、意外に見えないので、外からの視線はだんだん気にならなくなってきました」と話す。「あと、頭をコンクリートの梁にぶつけたりするととても痛いのですが、そうした厳しさとは真逆の居心地の良さがあってそれがとても気に入っています。コンクリートでなければ、このような快適な開放性は得られなかったんだろうなと」奥さんは古澤さんに「狭い面積の中でバルコニーを広く取りすぎてもったいない」と設計中ずっと言っていたそうだ。しかし「外とつながって空間が広く感じられるし、よくあそこでお茶を飲んだりして楽しんでいるので、これで良かったなと思って」いるという。設計で外を意識的に多く取り込んだ古澤さんもこう話す。「昨日も友人たちをまねいてバルコニーで食事をしたんですが、外というのはやはり気持ちがいいですね。外とつながっているというのは街とつながっているというのと同じなので、そのあたりの気持ちの良さに住んでみてあらためて気づいたような気がします」。古澤さんはまたこの気持ちの良さを「街と体験が一体化する」という建築家らしい表現でも伝えてくれた。古澤邸設計古澤大輔/リライト_D+日本大学理工学部古澤研究室所在地東京都杉並区構造RC造規模地上4階延床面積90.59㎡
2019年05月27日この家に住みたい「自分のライフスタイルにちょうどいいプランで、2階はワンルームで生活して下は事務所にも使えるというものでした。それで建てようかなと」こう話すのは工務店を営む黒羽さん。ある集まりで知り合った建築家の若原さんがデザインした規格化住宅のプロトタイプのプランが気に入って設計を依頼したのだという。「若原さんの家をいくつも見ていてどういう空間になるのかは想像ができたので、“この家に住みたい”と思いました」黒羽さんはワンルームでシンプルな空間が好みという。考え抜かれたプロポーションによってつくられた2階スペースには静かで落ち着いた雰囲気が漂う。白い漆喰の壁・天井は鏝で粗く仕上げているため、表面自体に細かな陰影がある。モデルルームも兼ねる黒羽邸のプランはこのプロトタイプをベースにつくられ、1・2階がそれぞれ約15坪の延床30坪ほどの広さのものに落ち着いた。モデルルームの機能ももたせたいと考えた黒羽さんは「ローコスト」かつ「シンプルであまりつくり込まない」をこの家のコンセプトとした。さらに、黒羽さんが仕事でよく使っている空調システムを採用。1階に設置したエアコンの暖気を床下のダクトを通して部屋全体を暖めるというものだ。また、床に北海道のナラ材、2階の中心近くに立つ柱をヒノキ材にするなど黒羽さんの希望によって材が選択された。開口の開け方をコントロールして生まれた陰影が空間に奥行きをもたらす。右の畳スペースはセパレートして移動することもできる。上部のスチール材は横に開こうとする登り梁を留めるためのもの。たっぷり幅を取ったキッチン。パーティなどの際には料理を盛ったお皿を並べセルフサービスで取ってもらうことも。障子を閉めると空間に柔らかな光が回って和の雰囲気が強まる。傍島浩美さんデザインによる家具がシンプルで落ち着きのある空間にとてもフィットしている。奥行きと場所をつくる黒羽邸の空間には考え抜かれたプロポーションとともに空間の明るさ/暗さにも特徴がある。一般的な住宅よりも明るさを抑えた空間の中に開口からの光で場所/領域をつくっているのだ。こうして空間に明るさのメリハリをつくり出すことで奥行き感も生まれている。場所の明るさの違いも意図的につくり出されている。たとえば2階のダイニング近くには大きめの開口によって比較的広範囲に明るさが確保されているのに比べて、リビングのスペースは近くの開口も小さくやや暗めの印象。畳スペースの近くには畳面と同じレベルにつくられた小窓とトップライトがあるが、このスペースもダイニングよりやや暗めに明るさが抑えられている。トップライトが直接照らす壁面には、斜めに射す光が印象的なものになるように周囲と同じ白い漆喰ではなく木を採用した。壁面自体で陰影と奥行き感を出すために凹凸に張られているが、さらに粗い仕上げ感も出そうと間柱用のスギ材が使われた。この壁面が、セパレートして移動できる畳とともに空間を特徴づける要素となっている。ダイニング横の障子を開けると付近がかなり明るめの空間となる。通常は間柱に使われる材でつくられた正面の壁はトップライトからの光で多様な表情を見せる。設計側からの提案のものよりも大きなものに変更してもらったというストーブは工務店業で出た廃材を薪に使う。街とつながる1階の事務所スペースはお施主さんとの打ち合わせのほか、この地域で協力関係にある工務店などともに行っている子どもたちを対象とした大工教室やお祭りなどのイベントのための会合などにも使用している。事務所スペースの隣に設けた和室の部分は最初のプランではなかったものという。「事務所だった部分をゲストルームに使える畳の部屋にしてもらったんですが、打ち合わせ中にお客さんのお子さんたちが遊ぶスペースになったりしていてこれはつくって良かったなと思っています」この1階にもモデルルーム的な機能をもたせている。コンセプトは「50~60代ぐらいの人たちが家にいながら地域に開いていく場所」。それぞれの家に街とつながる場所をつくることでまた違った暮らしの楽しみようをつくってほしいという思いから、玄関側の開口はそこからも気軽に入っていけるようなつくりにしている。和室側から見る。奥の左手が玄関。玄関ホールと事務所スペースは引き戸によって仕切ることができる。左が事務所スペースで右が玄関。事務所スペースから玄関側の開口を見る。玄関ホールから奥の和室を見る。空間を縁どるフレームが奥の開口へとむけて連なる。和室から事務所スペースを通して玄関ホールを見る。和室から灯籠の置かれた庭を見る。大人の空間引っ越しをされてから2年ほど経つ黒羽邸。黒羽さんは温熱環境が良くすごく快適に過ごせているという。夫妻ともにいることが多いのはダイニングスペースで、とても居心地が良く、また家具作家の傍島さんデザインによる家具も気に入っているという。「ちょっと薄暗い印象はありますが、それが“とても心地良い”というのを住んでみて実感しています」。こう黒羽さんが話す2階のワンルームはとても落ち着いて静かな空気感が特徴的だ。シンプルながら考え抜かれたプロポーションと相まって「大人の空間」の雰囲気が漂っているのである。ダイニングスペースは夫妻ともにお気に入りの場所。平側1階の左が玄関、右が事務所スペースの開口。手前の黒いカバーが掛けられているのは黒羽さんの愛車「Lotus Elise」。モデルハウスという要素もあったため、お客さんの記憶に残りやすい家形の屋根が採用された。黒羽邸設計若原アトリエ所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上2階延床面積106.82㎡
2019年05月13日カギだけでなく、バッグにつけるチャームに活躍するキーホルダー。小さいけど、普段のアイテムに楽しさをプラスできる優れもの。個性的なデザインから実用系までを紹介。ウェリントンにラウンド。好きな型のメガネを選ぼう。実際のセルフレームにも使われているアセテート樹脂を採用した、ミニチュア眼鏡。金具部分は、カギの抜き差しがスムーズにできるゴールドメッキのGカンを使用。各¥980(スリップオン/スミス 渋谷ヒカリエシンクス TEL:03・6427・2330)ふわふわでボリューミー。独特の存在感に釘付け。ベルリンを拠点に活躍したデザイナー、クリスティン・バークルが手がけたもの。何色ものフェルトの紐を束ねて作られており、ボリューム感と、カラフルな色使いがポイント。¥4,900(ハットアップ/プレイマウンテン TEL:03・5775・6747)ブランドのアイコン的アイテムを忠実に再現。定番のウェリー・レイン・ブーツをキーチェーンに。かかとの「L.L.Bean」のロゴや、靴底の凹凸、本物と同素材を使うなど、細部にまでこだわりが光る。¥1,200(エル・エル・ビーン/L.L.Beanカスタマーサービスセンター TEL:0422・79・9131)仕事運アップ!? 幸せを呼びこむ、かわいいたぬき。“他を抜く”に通じることから、日本では商売繁盛の象徴として店の軒先に置かれることの多い、信楽焼のたぬきがモチーフに。ちょっと間抜けで愛らしい表情を見るだけで、なんだか笑顔になれそう!¥900(ビームス ジャパン TEL:03・5368・7300)工業的なデザインとメッセージに惹かれる。アメリカの牧場で牛につけるナンバータグを使用した、『ランドスケーププロダクツ』のオリジナルアイテム。少し大ぶりのサイズ感は、バッグの中でも見つけやすくて便利。各¥1,500(ランドスケーププロダクツ/プレイマウンテン)シンプルで品のいい、大人っぽい佇まい。昔ながらのホテルのカギについているキーホルダーのような、細長い直方体のフォルムがポイント。手に馴染みのいいカウレザーを使用し、革ならではの風合いや経年変化を味わえる。¥5,000(エンダースキーマ/シボネ青山 TEL:03・3475・8017)※『anan』2019年5月15日より。写真・多田 寛(DOUBLE ONE)スタイリスト・長坂磨莉文・重信 綾(by anan編集部)
2019年05月10日もう一度、理想の家を作りたいDIYを楽しみながらリノベーションした都内のマンションに住んでいた葛谷晴子さん。「DIYをやり尽くした感覚もあったので(笑)、もう一度、1からリノベーションを楽しみたいと思い始めたんです」とんとん拍子にマンションの売却が進んだので、とり急ぎ北鎌倉の賃貸物件にお試し移住しながら次の家を探したのだそう。「最初は古い家をリノベーションするつもりで探していたのですが、多くの物件が、階段の場所は移せない、この柱は取れないといった制約のあるものでした。そして実際に見積もりをとってみると、新築の家を建てるのと同じくらいの金額になることもわかりました。ならばリノベじゃなくて新築もありじゃない?と考えを変えた時に出会ったのが、この『ENJOY WORKS(エンジョイワークス一級建築士事務所)』の”スケルトンハウス”でした」“スケルトンハウス”は、居住性を高めた箱型の建物で、内装は施主が自由に設計できるというもの。内装は以前からおつきあいのあった『FIELD GARAGE(フィールドガレージ)』にお願いした。パリの部屋を思わせる真っ赤な床は、パイン材にDIYでペイント。15年ほど愛用しているというセルジュ・ムイユの照明スタンドと、イケアのペンダントライトの組み合わせが素敵。窓際の段差はベンチとしても使える。室内にはたっぷりのグリーンを。リビングの一角の、アーチ状の入り口のある囲いの中は、パントリールームになっている。手前は20年以上使っているという愛着のある小さなテーブル。奥のヘリンボーンに貼った扉も、葛谷さんのDIYなのだとか。光がたっぷり差し込むキッチン。「キッチンの棚はオープンラックにしたいと思っていました。なかなか気に入ったものがなくてずいぶん探し、『オルネ ド フォイユ』の実店舗でやっとお目当てのものが見つかりました」正面のキッチンの奥と階段の吹き抜けの壁に大谷石を貼っている。壁付けのキッチンの横は白のタイルにして目地を黒に。ブルーの壁も自分でペイント。棚板の幅を変えれば、背の高い植物も飾れる。「食器棚として使っている和家具は、自分でペイントしました」扉を一から作るほどのDIYの腕前都内のマンションに住んでいた頃からDIYを楽しんでいたという葛谷さん。この逗子の家でも、自分で扉をつけたり、壁や床をペイントしたりと、存分にDIYの腕を発揮している。「床は以前住んでいた都内のマンションと同じ赤にペイントしました」1階の床は足場板。階段の踏み板も施主支給の足場板を使った。「大工さんが、こんな古い板を貼って大丈夫?と心配してくれました。確かに裸足で歩くとキケンなほどササクレだっていたので、後から丁寧に磨いてオイルを塗りました」葛谷さんのDIYの腕前は、足場板を組み合わせてドアを作ってしまうほど。愛猫用のドアは額縁を使っている。「20年ほど前からDIYを始めました。今回は初の戸建てなので、フェンスを自分で作ってみました。DIYは予算の節約にもなりますし、自分らしいインテリアを作ることができる最高の趣味だと思います」寝室のカーテンはH.P.DECOのもの。階段室との間の仕切りはまだ開いたまま。「まだアイディアが固まっていません。猫がここを便利に使って行き来しています(笑)」このドアがすべて手作りというから驚く。足場板を使い、ドアの下に額縁を使った愛猫のタンゴちゃんのための出入口もある。日だまりでお昼寝していた黒猫のタンゴちゃん。「2階のベランダは出入り自由にしています」1階から2階への吹き抜けの壁はすべて本棚に。アイアンの手すりの階段。踏み板は古い足場板。右の扉はアメリカの小学校で使われていたものだそう。「塗装を削ってみると歴代のペンキが現れ、カラフルな扉になりました」本物の素材を使うことで経年変化も楽しめる「この”スケルトンハウス”は、4坪単位のモジュールで大きさを決められること、そしてインフィルを自由設計できる魅力に大いに惹かれました。加えて、実際に住んでみると、建物の断熱性が高いのに驚きました。北鎌倉に住んでいた時の家と比べると、広さは倍になっているのですが、光熱費は半分。全館空調なので快適です」間取りは数十パターンも考えたという葛谷さん。もろもろ検討した結果、寝室は1階に、ウォーキングクローゼットは寝室と浴室と玄関の側に、リビングは海の見える2階と決まった。「お気に入りは、階段の脇の書棚とスチールの手すりと足場板の踏み板です。DIYの作業は階段下のホールですることが多いです」葛谷さんがインテリアを考える上で大切にしていることは、”本物の素材を使うこと”。「年月を経ても味わいが出てくる本物の素材を選ぶようにしています。”スケルトンハウス”の外壁はレッドシダーを使っていますが、年月とともにシルバーに変わっていく過程も楽しみです」水回りはすべて大理石の白のモザイクタイルを使った。こだわりのコンセントプレートや水栓、洗面台など、様々なものを施主支給して内装を仕上げてもらったのだそう。鏡の横のライトはIKEAのもの。「施主支給して設置してもらいました」。眺めのよいバスルームは、手前にもシャワーがある。「シャワーだけで済ませる時に浴室全体が濡れないほうが掃除が簡単かなと思って贅沢をしました(笑)」壁につけた水色の2つのボックスはDIYしたもの。「木箱に扉をつけて、クラックペイントしました」。この壁の裏側が洋服の収納スペースになっている。ネットオークションで手に入れたという黄色の扉が目を引くエントランス。左のアーチ型の奥のスペースは物入れになっている。キュートなデザインと色が気に入って購入を決めたインポートの宅配ボックス。逗子の高台に建つ葛谷邸。以前ここには平屋があった。「撮影用のポールの先にスマホをつけて伸ばしてみたら、2階の高さから逗子マリーナ辺りの海が見えることがわかったんです。この眺めを見て、平屋をリノベするよりも、2階建てを新築したほうがよいと決断しました」外回りは整備を始めたばかりなのだそう。「先日、蛇カゴを置いてもらいました。これから草木を植えていこうと思っています」
2019年04月29日実家は築90年超線路沿いの道から敷地に入ってその先の階段を10段ほど上がると、そこには一瞬言葉を失うほどの風景が現れる。なだらかな傾斜地に見事な具合に草木が配置され、その背後には登録有形文化財「旧坂井家住宅」の和館と洋館が控えているのだ。和館は昭和2年に建てられたというから築90年以上。かつて別荘地として整備された土地は今もその趣を十分に残している。H邸はその南側に隣接した敷地に立つが、実はこの旧坂井家の家屋と土地は以前は奥さんの実家が所有し相続に際して寄付をしたものだ。階段をのぼるとこの風景が目の前に広がる。元は別荘地として整備された敷地は草木の配置も素晴らしく目を楽しませてくれる。左上に見えるのがH邸の玄関庇。土地と建物を寄付「父が10年ほど前に倒れて、世話をしながら維持管理をすることになったんですが、これがとにかく大変で、相続しても自分ではとてもできないのではないかと。それで父とも話をして公のところにお願いしようという話になって鎌倉の風致保存会に建物と土地を寄付することになりました」お父様が亡くなられてお母様の世話をされたときに当時住んでいた土地と行ったり来たりの生活になったが、その頃に家を建ててこの地に暮らすという話が持ち上がったのだという。夫のHさんはそれまで20年近く住んだ土地に骨を埋めるつもりだった。しかし「幸い土地もあったので建てようかという話が突然出てきたんです。環境もいいし、終の住処をつくって鎌倉で終わるのもいいなということでこちらに移ることになりました」と話す。駅から道すがら見てきた風景とは一変して目を癒してくれるが、一方で維持管理にはとても手間がかかり、個人では手に負えないことから建物と土地を寄付することに。和館の2階からH邸を見る。H邸の外観デザインはその前に広がる風景との関係を重視してスタディが重ねられた。終の棲家をつくる奥さんにはその終の住処は「鎌倉という土地に調和し、かつ前のお家とも調和するような家であってほしい」という思いがあった。「別荘地として立った風情にあまりにもアンマッチなものを建ててはいけないだろうなと。そうしたことを考えたら、色合いも形も決まってくるのかなという感じでしたね」設計を依頼したのはナフ・アーキテクト&デザインの中佐さん。奥さんの従兄の息子さんである中佐さんは、夏休みなどにこの地を何度か訪れたことがあるという。終の住処ということからバリアフリーであること、そして、面積は以前の家と同じくらいで100㎡くらいというイメージを夫妻は持っていた。依頼を受けた中佐さんは「以前の暮らしぶりをあまり変えることなく自然に継承できるような方向で考えて、間取り的には6畳と8畳の組み合わせでいこうと。それに打ち合わせを重ねる中で要望をうかがいながらまとめたものを提案させていただいた」と話す。敷石がわりのコンクリートのPC板がH邸の玄関まで導く。北側から玄関付近を見る。玄関の左手に階段がある。外壁の素材はメンテのしやすさも考慮して決められた。西側の斜面の上から見る。手前の紫の花はショカッサイ。奥さんは家の周囲に自然に広がって咲く様を見てとても癒されるという。北側は旧坂井家を訪れる人がいるため、プライベートな庭は南側に設けた。外壁はグレーから途中でベージュに色を切り替えている。フレキシビリティを仕込む中佐さんからの提案のひとつは建物にフレキシビリティをもたせることだった。夫妻は「いずれ子どもたちに別荘にしてもらってもいいし、住めるのだったら住んでもらってもいい」という考えだった。そこでお子さんたちの好きなようにできるようにと間取りと面積が変えられるようにした。間取り的には現在部屋を仕切っている壁は取ることができるし、また逆に壁をつくって新たに空間を仕切ることもできるように。そしていま吹き抜けている部分に2階をつくることで面積を増やすこともできるようにしたのだ。このような仕組みを支えているのは特徴的な形をした構造システムである。柱と梁の間に斜めの材(方杖)を使っているのだが、通常であれば耐力壁を入れて空間を仕切らないといけない箇所にこれをダブルで設置しさらにその間に板を渡すことで耐力壁と同様の働きをしてもらうというものだ。「天井が高くて生活に対する圧迫感はまったくないし、また、南側もクリアに見えて向こうの空間が共有できているのですごく開放感がある」。このように夫妻は空間的な広がりの気持ちの良さを指摘するが、これも中佐さんからの提案から生まれたもの。「立体的な多様性があったほうがいいだろう」と考えた断面のデザインによって、南側の部屋であっても立てば北側につくったハイサイドから旧坂井家の庭へと視線が気持ちよく抜けていく。吹き抜けになっている部分に床を張り2階を増築することも可能。現在は2階へ上がることができないが、最近、お子さんの家族が泊まりがけで来たがることから階段をつくることを考えているという。高窓からは旧坂井家の家が見える。建物奥から玄関方向を見る。玄関を入ってすぐのスペースは廊下兼納戸。右に仕切られた部屋が並ぶ。新たな挑戦新しい家で生活を始めて1年と5カ月。Hさんはこの家が気に入っているし「こうした機会にこのような環境のいいところに住めて非常に幸運」だと思っているという。さらに「鎌倉に恩返しというか、なにかできたらいいなと思ってます」とも。そのHさんが目下「意欲的に取り組んでいる」というのが鎌倉の歴史。散歩好きでよく出かけるというHさんが、途中で出会った観光客に「鎌倉に点在するお寺の歴史などを紹介するようなことができればはげみにもなるんじゃないかな」と話す。築90年を超える家とも調和するように考えられながらもどこか清々しさの漂うH邸。そういった雰囲気も、Hさんのこの新たな挑戦を後押ししているのだろう、そんな印象を持った。夫妻ともに理系出身のため、中佐さんは構造や全体の構成が把握できるつくりにすることを意識したという。各部屋の柱の上の戸に棒状の取っ手が付けられていて開閉ができるようになっているが、これは北側の高窓と南側の窓との間で換気を行うためのもの。柱から続く斜めの部分が方杖。これを奥に見えるものとダブルとしかつ梁の間に板を渡すことで耐力壁のかわりとしている。以前、橋脚の仕事をされていた奥さんはこの柱梁の形が橋脚に似ていて気に入っているという。右上の棒は換気のための取っ手。玄関からダイニングを見る。中央に見える天井部分もその両脇の柱梁とともに構造の役割を果たしている。寝室からもショカッサイのきれいな紫色の花を楽しむことができる。西側の斜面に咲くショカッサイの花を眺めるH夫妻。H邸設計中佐昭夫/ナフ・アーキテクト&デザイン所在地神奈川県鎌倉市構造木造規模地上1階延床面積102.12㎡
2019年04月22日特徴的な外観世田谷区南部の多摩川寄りの斜面に立つK邸。傾斜した道路から見上げるその外観は2階が迫り出して左右のつくりも対照的と、特徴的なものだ。周囲の家並みから際立つその姿はKさんのリクエストに応えたものであった。「僕からのリクエストで大きかったのはガレージをつくることと、あとは家を建てるのに借金をしますから“このために頑張ろう”と思えるような、他とはちょっと違った雰囲気のものにしてくださいと」予算的なこともあり建築家の岸本さんから出された1案目はおとなしめのものだったが、現状のデザインに近い2案目を模型で見たときは「パッと見で、“うわっ、カッコいいじゃないですか”と声を上げた」という。斜面に立つK邸。道路へと迫り出した2階部分が左右で素材とデザインが対照的なのがとても印象的だ。左のリビングは道路側から見ても左の部分。20cm近く周りより下げることで”領域”が生まれている。天井に木(レッドシダー)を張ったのはKさんの希望から。晴れていると左手に富士山が見える。開口前の20cmほど上がった部分は座るのにもちょうどいい高さ。これは開口上部の鴨居とともに、開口部のプロポーションを整えるためのものでもあった。鴨居上部には間接照明が仕込まれている。開放的なつくりと閉じたつくり道路から見て左側は長手方向にガラス面を大きく取った非常に開放的な空間。対して右側は隣家からの視線があるため壁でほぼ閉じたつくりだ。空間のつくり方も柱梁で木を多用した空間に対して、白い壁と天井に囲まれた空間と対照的。西側に向けて開放的なつくりにして眼前に広がる眺望を満喫できるようにすることは、敷地が決まった段階で当然のように設計条件に組み込まれた。幅1.8mのガラス窓が横一列に並んだ開口からは天気のいい日には富士山を望むこともできる。2階が迫り出して一部中に浮いたようなつくりになった理由はこうだ。「西の眺望に気持ちよく開けるようにするために長手方向の長さを延ばすというのは必然でした。ですが、1階はそこまでのボリュームは必要ではなかったし、道路に対して1階から全部がドーンと威圧的に立ちはだかるようなつくりは避けたかったんです」(岸本さん)。つまり2階を出したのではなく1階をひっこめたのである。リビングから和室の方向を見る。奥の和室まで開口部はすべて障子で閉じることができる。道路側に少し迫り出した和室部分。開口が大きいため浮遊感も感じられる。ごろっと寝転がることができる空間がほしいとのKさんの要望からつくられた。障子で仕切るとぐっと落ち着いた空間になる。2世帯共存のためのつくり空間を左右にわけるように家の中央には吹き抜けがありトップライトからの光が1階まで落ちるが、この吹き抜けは下階へと光をもたらすためだけのものではない。Kさんのご両親とともに2世帯が暮らすこの家で、空間的には離れながらもお互いの気配を感じることができるのだ。2世帯が共存して暮らすときにご両親が玄関からそのままそれぞれの個室に向かえるつくりではうまくいかないのではと考えた岸本さんは、玄関入ってすぐの吹き抜けのある場所に2世帯共有の廊下をつくった。廊下に関しては「その右手側にご両親のお部屋があって左手に畳、突き当たったところに浴室などの水回り、その途中に階段を設けました。そして、この廊下にタイルを敷いて外部の路地のように扱いそこに上からスーッと光が落ちるようにするといいのではないかと考えた」という。リビングからキッチン方向を見る。2つの空間の間に吹き抜けがあり、トップライトから1階まで光が落ちる。リビング、和室とは対照的に壁に囲まれた空間。壁には珪藻土が塗られている。リビングと80cmのレベル差がある。キッチンからも外の景色を眺めることができる。奥さんの要望でパントリーは余裕のある広さにつくられた。“いちばん”がないこの家に越してきてから1年と2カ月ほど。Kさんは「この家にはひとつも文句がない」という。さらに「どこがいいかと聞かれても、ひとつというのは選べないですね。ダイニングに座っていてもいいしリビングに座っててもいい。2階の和室で寝ててもいいし、下の和室にいてもいい。バルコニーで遊んでいてもいいし。そういう一個一個の場所が満たされているんです。ぜんぶの場所が活用されていて、“ここはいらなかったね”みたいなところがひとつもない」とも。奥さんも同様に「すべてが良すぎて、“ここがいちばん”という場所がない」という。ダイニングのところから西側の景色を眺めることが多いという奥さんは、「雲も空の色も毎日こんなに違うものなのか」とはじめて気づいたという。さらに、「家族でよくハワイに行くんですが、前回はいつもの感動がなかったんです。ダイヤモンドヘッドの景色を見ていつも感激するんですが、“これはいつも見ているのと変わらない”と思った」という。奥さんは自宅にいながら“いちばん”の眺望を手に入れた、そう思っているのではないだろうか。岸本さんは「左右の空間をわけるのにトップライトからの光を使う」という意図もあったという。座ることもできる幅広の階段。右側は犬用に敷かれたもの。玄関から少し進むと右手にこの空間が現れる。右にご両親の部屋が並ぶ。外部的空間とするため床にタイルを敷いた。1階から見上げる。右の奥に玄関がある。ご両親の個室の前につくられた畳のスペース。濃紺の壁は2階までつながり空間の連続性を感じさせる。岸本さんによると「濃紺はいろんなものを吸収してすーっとその背後にイメージを抜かすことができる色」だという。畳に寝転がって空を見上げると知らぬ間に時間が経っていきそうだ。元の地形に沿って傾斜するつくりにした。1階西側につくられたウッドデッキのテラス。「多摩川の花火大会ではこの場所が”特等席”になる。夏にはまた大きなプールを広げて、お子さんの友だちも呼んで水遊びの場となるという。左が玄関。右にライト設計の照明。Kさんは帰宅時にこの照明が点いていると「帰って来たという気がしてホッとする」という。用途を限定していない多目的空間。「ここで靴をはいてもいいし、人が来た時に靴のまま上がって座ってもらってもいい」黒い木戸の左部分がガレージ。傾斜した道路から入るときに車が擦らないようにするのに設計では苦労したという。K邸設計acaa所在地東京都世田谷区構造RC造+S造+木造規模地上2階地下1階延床面積191.91㎡
2019年04月15日3人兄弟が育つ家1歳から小学生まで、3人の男の子がいるAさん夫妻。以前はマンション住まいをしていたが、元気いっぱいの兄弟が伸び伸び過ごせるようにと考え、横浜市内の眺めの良い高台に家を建てた。設計をお願いしたのは、IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)の井上亮と吉村明さん。土地を購入した不動産屋さんの紹介で知り、スタイリッシュでありながら温かみもあるデザインに惹かれたという。「お二人は気さくで話しやすくて、打ち合わせがとにかく丁寧なんです。最初に間取りを決めるときは、私たちの希望を聞きながら、30パターン以上も提案をしてくださいました」と振り返る奥さま。取材に同席してくださった井上さんは、「じっくりお話してたくさんの選択肢をご提示することは、『あっ私たちはこんな家に住みたいんだ。こういうものが好きだったんだ』と気づいていただくために、大切な工程なのです」と話す。Aさん邸外観。ブルーグレーの壁が爽やかな印象。木製のフェンスの中は、広々としたテラスになっている。ゆったりと広さをとった玄関。手前の扉はキッチン脇のパントリーにつながり、奥の扉の中は土足で入れるシューズクロークになっている。ほどほどに繋がる「前に住んでいたマンションは、広いリビングダイニングがドーンと広がっていて、開放感はあるけれど、いまいち落ち着けなかったんです。そこで、こっちで大人がお茶をしてあっちで子どもたちが遊ぶという風に、空間を分けつつ、ほどよい繋がりもある家にしたいと思いました」と振り返る奥さま。その希望を受けた井上さんは、リビングスペースとダイニングスペースを斜めに配置。いわばひょうたん型のくびれの部分でリビングとダイニングがつながるプランを考案し、リビングの上は吹き抜けとした。「視線が斜めに抜けつつ空間は分かれているところをとても気に入っていて、楽しいリズムがある家だなあと感じています」(奥さま)。また井上さんは、窓の大きさや形、並べ方にもあえてランダムさを持たせた。特に印象的なのは、吹き抜けと2階主寝室をつなぐ大きな室内窓。空間は分けつつも、どちらにいてもスッと視線が抜けるのが心地よい。「まるで森の中にいるように、いろいろな眺めがあって、明るいところも暗いところもある。家族団らんの時間も自分の時間も満喫できる。そんな“場所のグラデーション”を追求しました」(井上さん)。手前の吹き抜けリビングと奥のダイニングスペースが、斜めにゆるやかにつながる。ダイニングスペースからリビングスペースを見る。奥の白い扉は、ウォークスルー・クローゼットにつながる。吹き抜けに面してつくった主寝室の窓。主寝室。吹き抜けに向いた窓があることで、開放的でユニークな空間に。主寝室の窓からは2階フリースペースの様子も見える。毎日の家事を快適に今は育休中だが、ほどなく仕事に復帰する予定だという奥さま。3人兄弟の食事づくりや洗濯は、ますます忙しくなるだろう。「快適に家事ができる家に」というのは、切実な願いだった。そこで打ち合わせでは、家事の効率もじっくりと追求。玄関パントリーキッチンと抜けられる動線を確保し、食材をしまったりゴミ出しをする作業をスムーズに行えるようにした。また、「洗濯物を毎日2階のそれぞれの部屋にしまうのは大変」という奥さまの声を受け、1階に家族全員の衣類をしまえるウォークスルー・クローゼットを確保。そして、洗濯乾燥機を置いた脱衣室、洗面室、ウォークスルー・クローゼットを一列に配した。奥さまも、「洗濯物を乾燥機から出して片付けるまでの流れと、朝の身支度が驚くほど楽になりました」と頷く。キッチンは「GRAFTEKT」。「とても使いやすいし、絶妙な色味が気に入っています」と奥さま。右の奥がパントリーになっていて、玄関につながっている。玄関からパントリーを通してダイニングを見る。洗面台は2つ並びにして、5人家族の朝の身支度をサポート。ウォークスルー・クローゼットの中から、洗面室、脱衣室を見る。家族全員の衣類をしまえる大容量のウォークスルー・クローゼット。突き当たりを右に抜けると、リビングに出られる。木の積層を見せた天井デザイン面では、「シンプルな北欧風テイストに」という奥さまの希望を受け、グレーと白をメインカラーに。そこに無垢の木の床を合わせ、温かみもプラスした。また、木のラインがきれいな天井は、「LVL材」を張って仕上げたもの。LVL材とは薄い板を何枚も貼り合わせた構造材で、「積層面のストライプの表情が面白い」と考えた井上さんが内装材として使うようになったという。「内装に取り入れるのはまだめずらしいようです。Aさん邸の施工では大工さんが『本当にこれ貼るの?やり直しになったら嫌だよ』と言っていたのですが、完成したら『何これ。すごいきれいじゃん!』って驚いていました(笑)」。Aさん一家がこの家に住み始めて数ヶ月。奥さまは「かっこよさも使い勝手も兼ね備えていて、大満足です」と微笑む。この家はこれからの3兄弟の成長を見守り、にぎやかで楽しい日々を支えていくのだろう。2階の廊下。LVL材の天井とグレーの壁紙がよくマッチしている。2階の床はバーチ材にして、1階とは少し表情を変えた。LVL材天井の表情。軒天井もLVL材。ダイニング奥の壁にもLVL材を貼った。「釘やピンが刺せるので、ご家族の写真やお子さんの絵を自由に飾っていただけます」(井上さん)。2階フリースペース。将来は区切って個室にすることもできる。長男と次男はピアノを弾くのが大好きだそう。吹き抜けからリビングを見下ろす。1階の床は幅19cmの無垢のオーク材で、足に心地よい。Aさん邸設計IYs inc.(イノウエヨシムラスタジオ株式会社)施工坂牧工務店所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上2階建延床面積137.45㎡(1階74.52㎡/2階62.93㎡)
2019年04月08日3月末、オルネ ド フォイユが青山から目黒駅よりほど近い不動前の住宅街に移転オープンした。新しいオルネ ド フォイユは、店主、谷あきらさんの「パリでの暮らしで得た感覚」を軸に、エレガンスというフィルターを意識してセレクト。また、「お店」という固定概念を取り払い、もっと自由に、実験的な場所としてスタートした。お部屋づくりのアイディアやひらめきがきっと見つかるはず。もっと自由に、実験的に。スタイリスト石井佳苗さんが手がけた、パリジェンヌのアトリエ。スタイリングの一角に置かれたデンマークのフラワーベース。ムーニーともみさんの絵皿と吉田麻衣子さんの花器。フラワーアーティストの平井かずみさんによる店内装花。もっと自由に、実験的に、テーマに合わせてまるごと店内の雰囲気を変えていく、というコンセプトのもと、新しくスタートしたオル ネ ドフォイユ。初回のイメージは、パリジェンヌのアトリエ。スタイリングとともに並べられたフラワーベースや照明、器などは、イメージもしやすく、ディスプレイや植物の取り入れ方は、実際の部屋づくりの参考に。商品を陳列して販売するという、今までのスタイルではなく、商品とともにアイデアも提供してくれる。モロッコフェア異国情緒を感じる水草のモロッコランプ。モロッコラグは、アートとして飾っても。ヴィンテージから一点モノの手織りまで、センスのいいものだけ厳選されたモロッコラグが充実。オープンと同時に、モロッコフェアを開催。個性的な水草のランプシェードや、オブジェ、色とりどりのモロッコラグやポットなど、現地でセレクトされたアイテムが並ぶ。モロッコラグは、さまざまな民族の伝統柄や、従来のエスニックのイメージにとらわれない新鮮な色使いなど、オルネ ド フォイユにしかないラグが集結。モダンなインテリアに、センスよくプリミティブな要素を取り入れたボーホースタイルを楽しんでみては?部屋づくりの決め手は照明フランス、FORESTIER(フォレスティア)のユニークな照明。フランスの工房、Datcha.(ダッチャ)の吹きガラスによるランプ。モダンなフォルムとメタリックな質感が美しいデンマークのペンダントランプ。アスティエ・ド・ヴィラットの陶器のランプシェード。ノスタルジックな雰囲気が魅力。インダストリアルなランプシェードをブラスで仕上げることで、モダンでクラシカルな印象に店主の審美眼により集められた照明にも注目。デザイナーのバーナード・フォレスによりフランスで設立された照明ブランド、フォレスティアは、オブジェのようなフォルムが一際目を引く、存在感のあるランプ。二人のフランス人アーティストにより設立されたダッチャのガラスランプは、手吹きガラスならではの味わいと、美しい色合いが魅力。ブラスやブラックのデンマークのランプは、シンプルでモダンな印象。品よくインテリアのアクセントになってくれる。デンマークのデザインスタジオ「FRAMA」フラマの美しい照明とシェルフ。デンマークで注目されている気鋭のデザインスタジオ、FRAMA ( フラマ ) は、日本での取扱いはオルネ ド フォイユのみ。オーク材とステンレスのウォールシェルフは、素材を活かしたミニマルな構造が美しい。リビングの飾棚やキッチンの食器棚など、見せる収納で使いたい。気鋭のデザインデュオINCLUDED MIDDLEによるペンダントランプは、スワンネックと名付けられた真鍮製のポールが特徴。日本の作家、パリの陶器、ジュートのタッセルLue ( ルー ) のカトラリー、櫻井薫さんの器、MISHIM POTTERY CREATION ( ミシンポタリークリエイション ) のマグカップ。アスティエ・ド・ヴィラットの白い陶器。センスのいいシンプルなタッセル。オルネ ド フォイユのいまの気分に合うクラフトを厳選。岡山の真鍮作家によるブランド、ルーの繊細なカトラリーや、益子の陶芸作家、櫻井薫さんの灰釉の器、ミシンポタリークリエイションの美しいかいらぎのマグカップなど、その時々のバイヤーの個人的な興味や視線を率直に反映されたセレクト。アスティエ・ド・ヴィラットは、テーブルウエアだけでなく、キャンドルホルダーや香炉、花器なども充実。フランス製の美しいカーテンタッセルにも注目。ジュートのロープの両端にボールがついただけのシンプルなデザインで、中にワイヤーが通してあるので、自在に形を変えて、保つことができる。インテリアの細部までこだわることができるアイテムが見つかるのも嬉しい。訪れるたびに新しい発見!モロッコフェア中のファサード。テーマにより、ガラッと変わる可能性もあり、訪れるたびに新しい発見ができそう!エントランスのピロティは、気持ちの良い風が通る心地よい空間。Informationオルネ ド フォイユ03-6876-7832東京都品川区西五反田5-21-19Open 11:00- 19:00 ( 金土のみ )
2019年03月29日1階は居心地のいいカフェに改装町田の住宅地に建つ築約50年の古民家は、見附春佳さんの祖母の持家だったのだそう。「もともと美容院として建てられた家だったそうです。その家を祖母が購入したのですが、祖母が亡くなった後は父が管理を任されていました。彫刻家の親戚が作品の保管場所として使っていたのですが、やはり人が住まないともったいないということになり、私が住むことになりました」見附さんがこの家に住むに当たり、『無相創』 にリノベーションを依頼した。「世界観が大好きで、『無相創』にはずっと通っていました。今回、自分の家をまるごとお願いすることができてとても幸せです」1階を念願のブックカフェ『403.notfound』に、2階を住居にリノベーションした。リノベーションにあたり、1階は見附さんが作りたかったブックカフェにした。カフェスペースと調理場は、古い電車の窓のような、持ち上げて開くスタイルに。金色の金物も美しい。2階をプライベートな空間に2階がプライベートな空間。階段を上がり、手前にリビングとベッドの空間、奥がダイニングキッチン、窓の外には広いテラスが続く。「親戚が使っていた家具は手放すことも考えたのですが、いい感じに収まったので有り難く使わせていただいています。『無相創』さんがラックを作ってくださり、また照明器具もつけてくださいました」リノベーションにあたり、外断熱にしてペアガラスも導入。「驚くほど暖かく、快適な住まいになりました!」2階がプライベートスペース。左官の下地材で仕上げにした壁がいい雰囲気を作っている。「ガラスの見本を見せていただいて、その中からこのストライプのものを選びました」チェストの後ろをベッドスペースとしている。「光が天井に当たるハーフミラー電球は、明るすぎないのでベッドの上の照明としては最適でした」窓には遮光のロールスクリーンを採用。奥の部屋がダイニング。「その先のベランダは父母がDIYで板を張りベンチを作って、居心地よくしてくれました」トレイにまとめたお茶のセット。「このランプシェードは母のハンドメイドです」隅々まで丁寧に作り込んだ家1階のお店部分は、古材やアンティークを使用。照明器具はすべて『無相創』のオリジナル。壁は珪藻土、電気の配線には銅管を使っている。隅々まで心を配り丁寧に仕上げることで、居心地のいいセンス溢れる空間に仕上がっている。ブックカフェをオープンさせる前は、ソムリエの仕事をしていたという見附さん。『403.notfound』では、美味しい焼菓子とコーヒー、そして自然派のワインをいただける。「ワインバーは敷居の高いお店が多いので、ひとりでふらりとワインを飲める場所を作りました。ぜひ気軽に遊びにいらしてください」ひとつひとつ違う椅子。ひとりになれるスペースがお店のそこここに用意されている。いろんな場所に座ってみたくなる。「アンティークスイッチを使いたいとお願いしたら、まさかの1箇所に10個!ひとつひとつ違う表情のスイッチがとても気に入っています」デザインの違う照明はすべて『無相創』のオリジナル。地球儀のモビールが素敵。リノベ前の家の窓の形をそのまま残している。「私もこの家の前を通って通学していました」「親戚が使っていた畳敷きの小上がりにカーペットを敷きました。靴を脱いでリラックスしていただけます」お店の入口のドアは、フランスのアンティーク。見附邸米原政一( 無相創 )所在地東京都町田市構造木造規模地上2階延床面積85.8㎡読みたくなる本がお店のそこここにある。外断熱+ペアガラスに変えてとても暖かく快適な家になったそう。
2019年03月27日原状回復さえできればいい、機能性だけが満たされれば十分だ、というリフォームもありだと思います。でも、予算をはるかにオーバーしてしまうならば無理ですが、創意工夫を凝らせば低予算でも十分におしゃれなデザインに仕上げることができるのです。今回のコラムは競合住宅会社もそのデザインを参考にすることで知られる、北九州市の〔(株)なかやしき〕さんにご協力を願いおしゃれに仕上げるデザインリフォームのコツを徹底的に伺ってきました。おしゃれなデザインリフォームとは?〔株式会社なかやしき〕は創業130年の老舗会社で新築一戸建てとマンションを主軸にしているのですが、小さなリフォームはもちろんのこと、数千万円クラスのリフォームも行うことで知られています。取材場所は福岡県北九州市にある小倉南住宅展示場ですが、こちらには全国区のハウスメーカーや地場工務店を含めて12社の展示場が建っています。なかやしきさんの展示場はバリ島をイメージしたデザインになっていて、12社の中でもひときわ目を引く建物でした。取材にはリフォームをメインに担当する設計士の石井課長に対応していただきました。おしゃれなデザインにリフォームする4つの秘訣上記の写真は主寝室のベッド部分なのですが、枕元の上を指さす石井課長の先に照明の影が映っています。この影をうまく使うことがおしゃれデザインの秘訣とのこと。「照明とクロスのリフォームにはお金がかかりますが、そこから生み出される影は無料の副産物なんですよね」これが好きか嫌いかは別物ですが、展示場の接客においてもこの説明をお客さんにするそうです。実際には多くのお客さんが「こういうのもいいね!」と反応するとのこと。もう一枚の写真を見てみましょう。これは寝室全体を引きで撮ったものですが、枕元の上部分には鎖状の影は見えません。室内照明を消していると影がでないように工夫されているからです。このように、影を意識することにより昼と夜とで違うイメージを創り出すことができるのです。収納リフォームは水回りリフォームと並んで工事件数が多いといえます。収納不足を感じないという人はまずいませんし、それどころか新築した瞬間からすでに収納不足に陥っているケースすらよく耳にするほどです。次の写真を見てみましょう。さきほどの主寝室写真でお気づきかもしれませんが、奥に4畳程度のスペースウォークスルー方式の収納があります。とにかくこのウォークスルー方式はとてもおすすめ。是非検討してほしいのですが、収納スペースは広さだけを確保すればいいというものではありません。石井課長はこう話してくれました。「こういう洋服が何着、奥さんのワンピースが何着、というように現在持っている服などもしっかり数えて設計士に相談してほしいのです。収納のリフォームでは打ち合わせ時に必ず私は聞きますよ」おしゃれなデザインリフォームの秘訣の一つは、目に付く雑多なものを隠すことでしょう。収納不足ということは、それだけいろいろなものが部屋にあふれて視界に入り込むので、それらをなんとしてでもどこかに押し込みたくなるのです。ただ、押し込むだけでは視界からは除去されるものの、その押し込んだ先が悲惨なことに。単にものを押し込んだだけで隠すことには成功したものの、今度はそこから目的のものを探し出すのに一苦労してしまいます。次に石井課長が指摘したのがこの写真。多くの家庭でその置き場所に苦労しているスーツケースです。写真は比較的小ぶりなスーツケースですが、あなたはどこに置いていますか?おそらくは空いているスペースに押し込んでいるはず。おしゃれなリフォームをしようと思うのであれば、こういったスーツケースの置き場も考えたうえで収納リフォームをするべきと石井課長はアドバイスをします。これも同じく寝室収納です。掃除機とルンバが写っていますが、この手のものは充電を考えるとコンセントの近くにスペースを取るべきでしょう。自立式の掃除機を買ったものの、置き場所にコンセントがないとすこぶる使い勝手が悪くなります。仕方ないのでコードを長く床には這わせる羽目に。いくら見えない収納ないとはいえ、これではおしゃれリフォームとは言えなくなってしまいます。これは脱衣洗面所にある大きめの洗面台です。「通常は2台を並列しておくのですが、これは横に長いタイプです。探すのに苦労したんですよ(笑)」というレアな商品です。ただ、ここで見ていただきたいのは商品ではありません。石井課長が指さししている場所に注目してみましょう。こんなおしゃれな商品を使ってリフォームすれば、毎日の入浴タイムは楽しくなりますし、お化粧するときも力が入りますよね。しかし、問題は意外なところにありました。「この境目の部分がどうしても汚れてしまうのです。四六時中掃除しているわけにはいきませんから」おしゃれなデザインリフォームを目指してステキなレア商品を選ぶところまではいいのですが、問題はそのメンテナンス。きれいに維持するからこそおしゃれデザインを楽しめるのですが、汚くなってしまってはすべてが台無しです。この展示場ではこのような仕様にしていますが、メンテナンスを考えるのならば壁から直接出すタイプにすべきなのです。ただ、これも好き好き。こまめな掃除をいとわない覚悟があるかどうかにかかっています。設計士の立場から石井課長が強く話されていたことを最後の秘訣としましょう。これは実に人間的なことなのですが、あなたが持っているおしゃれ感覚と担当者の持つおしゃれ感覚とのずれをなくすことが肝心なことです。つまり、イメージを正確に伝えることの重要性を理解してほしいのです。筆者も住宅営業出身者ですのでよくわかるのですが、お客さんが打ちあわせ段階で想像した【真っ白な外壁】と実際に出来上がった壁を見た時に見た【真っ白な外壁】では色に微妙なずれが生じます。私の経験談ですが、あるお客さんの強い要望に従って真っ白な外壁に仕上げたところ「私はこんな色を選んだっけ?」と言われてしまったのです。結論から言うとお互いに何のミスもありませんでした。認識のずれというか感覚のずれがあったことに加えて、外壁の色を小さなサンプル板だけを見て決めたことが原因でした。この時は別にトラブルになることもなく済みましたが、こういった失敗を起こさないようにするための鉄則があります。それは、「とにかく商品の実物をあなたの目で確認すること」につきます。単価の高いキッチンなどはさすがに実物をショウルームなどで確認するとは思いますが、最新式でない限り近くのショウルームにないというケースも多々あります。なければ仕方がないのですが、後悔しないためにも多少の距離はいとわない気持ちで実物を確認しに現地まで足を運んでください。結果的におしゃれであったとしても、自分の好みもあってのおしゃれです。イメージと異なってしまっては元も子もありませんからね。リフォーム箇所別、おしゃれデザインのリフォームポイント石井課長がタオルを持っている場所は脱衣洗面所になります。展示場ということもあり、若干のタオルをサンプルとして入れるくらいしか使っていませんが、もし4人家族で脱衣洗面所をリフォームするならこの程度の収納を作るべきでしょう。【秘訣3】で洗面台の写真を掲載したように、おしゃれな洗面所リフォームを目指すならば、収納を増やして下着などの置き場に困らないように気を付けてください。棚の写真を見ていただくと中段が5枚あります。1段の高さは30cmほどは確保されています。これだけあれば4人家族であっても、バスタオルや下着置き場などを十分に収納できます。繰り返しますが、おしゃれなデザインリフォームをするには余分なものが目に入らないことが重要なのです。ついつい壁紙や洗面台を選ぶことだけに目が行ってしまうのですが、せっかくの良い商品を選んでも、脱いだ下着を入れた籠が足元を占拠していたらすべてが台無しです。もう一つの注目ポイントは壁紙。写真をもう一回見てみましょう。奥に写っている棚の話をしましたが、壁にはタイルが貼ってあります。洗面所はご承知のように湿気が非常に高い場所になります。ところが、ほとんどの家では普通のクロスを使っているのではないでしょうか。機能的にはもちろんですが、この部分を写真のようなタイルにすると洗面台が非常に映えるのです。タイルはどうしても高価になりがちですが、貼る面積が少なければ一考の余地がありますし、一部の壁だけをタイルにするリフォームも考えられます。洗面所の話をしましたが、この展示場は洗面所とお風呂がこんな感じでつながっています。一般的なお風呂をここまでリフォームでグレードアップするのは難しいとは思いますが、ここでご覧いただきたいのは次の写真です。「この眺め良いと思いませんか?」と石井課長。全く同感なのですが、たとえユニットバスであってもこの考えは通用します。周囲の家がどのように建っているかが問題ですが、「視線を遮る」ことができる角度を見つけたら、その視線を軸にリフォームをすればよいのです。「視線を遮る」とは以下のようなことです。上の写真では石井課長が外を眺めていますね。見ることができるということは、その逆もしかり。この視線の先がお隣の2階にある窓であればどうでしょうか?当然のことながら、このように外の景色をスリットの間から楽しむなどということは無理です。しかしここはそもそも2階で、隣も大きな空き地ですので覗かれるという心配はありませんが、このように外を眺められるような計画をするのであれば、外から見られないような角度と場所を見つけ出そう、となるのです。次の写真にも注目してください。おそらくはユニットバスを使ってのリフォームになるケースが多いと推測していますが、商品を選ぶ際にはこうして実物に入ってほしいのです。メーカーによる違いはもちろんですが商品によっても座り心地などが微妙に違います。あとで後悔しないように、この点だけは面倒くさがらずに実行するよう気を付けましょう。こんなトイレはいかがですか。「トイレのリフォームまでは手が回らないわ」という声も聞こえてきそうですが、トイレは毎日使う場所ですから何とかしたいですよね。この写真を見ながらおしゃれなデザインのポイントを考えていきましょう。最初にチェックしたいのはこの窓。建物の構造を調べなくてはなりませんが、電気をつけなくても昼間ならばこの程度の明るさを確保できるのです。では、次の写真を見てみましょう。このトイレを掃除するシーンをイメージしてください。便器周りにも簡単に手が届きますし、モップを使えば床も拭き残すことなく掃除ができます。また、おしゃれなトイレを演出するには、自然光と人工光の2つのシーンを楽しめるようにするべきです。女性にとってこの窓の高さは気になるかもしれませんが、おしゃれデザインという観点から考えると一考の余地はあります。今度は天井を見てみましょう。「ここのおしゃれポイントは斜め天井と間接光です」と力説する石井課長。ちょっとした工夫なのですが天井を斜めにしただけで雰囲気は大きく変わります。また、間接照明もおしゃれポイント。トイレはできるだけ明るくこうこうと照らすものという固定概念を振り払うと、こんな落ち着いた空間を造り出せるのです。おしゃれなデザインリフォームの代表格はといえば、何と言ってもキッチンでしょう。とくに女性にとっては絶対に外せない重要ポイントであるはずです。キッチンの配置としては①クローズドキッチン②対面キッチン③アイランドキッチンの3パターンに大別できます。このどれを選択するかはあなたの好みですが、今回のテーマであるおしゃれデザインをキーワードにすると、写真のようなアイランドキッチンをおすすめします。石井課長と一緒に筆者もこのキッチンを前にして立ってみたのですが、やはりアイランドキッチンはいいですね!とにかく見晴らしがいい!ただし、アイランド型キッチンは部屋のどこからも丸見えに。きれいにしておかないと、せっかくのおしゃれキッチンも台無しになってしまうこともあります。女性としては大いに悩むところだと思いますが、アイランドキッチンは一度使うと止められないくらいの満足感があるのは事実。思い切ってチャレンジする価値はありますよ。それでもこの開放感はどうでしょう。ここは展示場ですからキッチンの上に写真やカタログが置いてありますが、実際にはもっとすっきりした空間になるうえに、キッチンが中心になります。LDKの空間の場合、一般的にはいくら豪華なキッチンリフォームを行っても、あくまで中心はリビングとなるはず。しかし、今回のようにアイランド型キッチンにリフォームすると、設計の仕方によってはこれだけ存在感のあるスペースに変えることもできるのです。せっかくリフォームをするのですから常識にとらわれる必要はありません。次は部屋のリフォームに話を移しましょう。最初の写真は展示場の子ども部屋に入ったところです。いかがですか?「来場される奥様の80%以上はここに入られた瞬間に『かわいい!』を連発されるんですよね(笑)」と石井課長。それでは、女性の多くが「かわいい!」と思わず口にする要因はどこにあるのでしょうか?その理由をお尋ねしました。「やはり壁紙だと思いますね。ここは子ども部屋ということもあって少し冒険した壁紙を使いましたが、この柄が女性の心をがっちり捕まえたようです」またもう一つの要因として挙げたのが照明。この星形照明をあなたはどう思いますか?純粋にかわいらしい形をしています。さらに、なんとこれは手で押すとへこむのです。ここは子ども部屋になりますので、小さな子供が怪我をしないような素材を使用しているのです。このように部屋のおしゃれデザインリフォームのコツは壁紙と照明の使い方だそうです。では、次の写真をご覧ください。先ほどは子ども部屋ということもあったのでかわいらしいポップな壁紙でしたが、今度の写真は寝室になります。ご覧のように色のトーンを落とした壁紙を使っていますが、このように部屋のリフォームは壁紙の選択が大きく影響をしているのです。そして次の写真は同じく寝室なのですが、間接照明を使っているのがお判りでしょう。ここは寝室なので、一切の直接照明を排除してすべて間接照明でまとめてあります。直接光とは違い、間接光は微妙な陰影が部屋の中に広がるのが特徴。照明による影の効果がもっとも出るのは寝室です。部屋リフォームのおしゃれポイントをいくつか解説しましたが、やはりTPOというものは存在します。いくら赤色が好きだとしても、寝室に持ってくるのはどうでしょう……先々後悔しないような選択を心がけたいですね。RKB住宅展 小倉南 住宅展示場(引用元:NAKAYASHIKI 戸建て事業部 HOUSING SEC. )一般的には外壁の塗り直しとなるのですが、予算に余裕があるのならばウッドデッキを新設したり、屋根材まで一気に変える選択もあります。ただ、ここでは外壁の塗り直しに話を絞りましょう。通常は新築してから10年が塗り直しの目安とお考えください。30坪程度の住宅でも費用は150万円程度にはなるので、絶対に後悔をしたくないリフォームといえます。「おしゃれな外壁リフォームを目指していたのにイメージが全く違う(泣)」とならないポイントを引き続き石井課長にお聞きしました。「外壁リフォームのトラブルは、打ち合わせ時のイメージと仕上がりが異なるというものが大半です」これには筆者も同感です。外壁の塗り替えリフォームをしたことがあるのですが、その打ち合わせの際に立ち会った女性のインテリアコーディネーターはお客さんにこうアドバイスしていました。「お客さんが選んだこの色で実際に施工した案件がありますのでそこを見て下さい。そのうえで最終的な決断をした方がいいですよ」狭い事務所で見るサンプル版と実際に施工されたものとでは印象が大きく異なることを知っているからです。さらに徹底するのであれば、晴天、荒天、夜間と時間や気象条件が異なる状況で外壁をチェックできるとなおよいでしょう!まとめ現在住んでいる家が古くなったり、あるいは中古住宅を購入したりすると、どうしても古い部分や傷んだ部分に目が行きリフォームをしたくなります。ただ、どうせリフォームをするのであればおしゃれな仕上がりにしたいと願うのは誰しもが同じこと。同じ金額であればデザイン性の高いリフォームをして満足したいものですね。【取材協力福岡県北九州市㈱なかやしき】このアイデアの監修者森住宅コンサルタント株式会社代表取締役森雅樹名古屋生まれ。名古屋市立菊里高校卒業。法政大学卒業後、大手ハウスメーカーに就職し戸建て住宅営業を経験。退職後は都内の零細工務店において戸建て営業とリフォーム営業に従事。その後、森住宅コンサルタント㈱を興して独立。現在は住宅会社と消費者向けの講演、執筆、コンサルティング活動を行う。買う側、売る側双方の立場を熟知したうえでのアドバイスを行っている。住宅購入者向け、住宅販売者向けの単行本20冊以上。森住宅コンサルタント(株)
2019年03月12日