Businessman in suit at soccer field kicking ball. Mixed mediaサッカー日本代表をロシアワールドカップ出場に導いたバヒド・ハリルホジッチ監督が、4月に突如日本サッカー協会から解任通告を受けました。成績不振などが主な理由と言われていますが、ハリルホジッチ氏は納得していないようです。そして一部報道では、違約金と慰謝料の請求、また名誉毀損での訴訟なども検討していると言われています。ハリルホジッチ氏の主張は認められるのでしょうか?エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に解説していただきました。 ■違約金や慰謝料の請求はできる?「サッカーW杯も間近に迫る中での今回の電撃解任に、驚かれた方は少なくないと思います。解任に伴う違約金等の支払の可否は、日本サッカー協会と代表監督との間の契約内容がどうなっているのか次第で大きく変わります。まず、解任そのものの有効性ですが、契約上、中途解任ができないような内容になっていれば、解任の有効性自体否定される可能性はあります。しかし、今回の解任劇を見る限り、そのような条項にはなっていないのではないかと考えます。サッカー代表監督の契約は、民法上の準委任契約に該当するものと考えられますが、民法上の準委任契約も、委任者(≒サッカー協会)がいつでも契約を解除することができることが定められています(民法651条1項)次に違約金ですが、そもそも契約違反がなければ、違約という問題にはならないと考えられます。仮に、契約上の解任事由がないにもかかわらず解任されたということであれば、違約金という問題が生じる余地もありますが、先に述べたとおり、契約上協会側はいつでも解除できるとされている可能性が高く、違約は直接的に問題となる可能性は低いものと考えられます。」(大達弁護士) ■違約金でない金銭的請求は?「違約金ではない金銭的請求についてはどうでしょうか。民法上の準委任契約においては、受任者(≒ハリル氏)にとって不利な時期に契約を解除した場合の損害賠償義務が定められており(同条2項)、これに従えばハリル氏は、契約上の在任期間の報酬に相当する金額を請求できる可能性はあると思います。もっとも、同様に、契約上の解任事由に該当するとされ、しかもその解任事由が生じた場合にはサッカー協会が報酬の支払義務を免れると定められているような場合には、請求することは難しくなるでしょう。慰謝料という点について、慰謝料は精神的損害に対する賠償金を意味しますが、解任という行為自体の有効性が否定されるような場合でもない限り、契約上の解任権限を行使されたことのみをもって、精神的損害が生じたと言うことまでは難しいのではないでしょうか。」(大達弁護士) ■名誉棄損に該当する?「名誉棄損とは、公然と事実を摘示して人の社会的評価を低下させる行為を言いますが、刑法上は名誉棄損罪(刑法230条1項)の成立が問題となり、民法上は不法行為(民法709条)の成立が問題となります。ただし、刑法上においては、公共の利害に関するものであって、もっぱら公益を図る目的があったような場合には、真実性の証明による免責が定められており(刑法230条の2)、必ずしも名誉棄損があったからといって罪が成立するわけではありません。また、民法上も、同様の考え方は採用されています。サッカー日本代表監督という立場が必ずしも公共の利害に関するものと言い切れるかについては議論の余地があるかもしれませんが、今回のように選手との信頼関係が損なわれたことや、成績不振などの事実の摘示があったからといって、ただちに名誉棄損として罪が成立したり、民法上の損害賠償請求が認められたりする可能性は決して高くないと考えられます。」(大達弁護士) ■落ち着きどころは?「契約の定めがどうなっているかわからない以上、確たることは言えませんが、双方ともに代理人を立てる場合には、契約上の文言に照らし、双方の言い分を互いに検証することになるでしょう。その上で、自身の主張にどこまでの分があるのかを見極め、交渉による解決を目指すことになると思います。サッカー協会としては、W杯本番直前の段階において、他国に日本代表の情報が流出するリスクをも負うわけですから、場合によっては金銭的決着を見る代わりに、互いに秘密保持義務を課することによってそのリスクを回避するといった解決策も考えられるでしょう。なお、少し場面が異なりますが、数年前に日本自転車競技連盟が日本代表総監督の解任を巡り、訴訟にまで至ったことがありました。この場合には、契約上解任ができないという条項を含んだ契約であったことから、その解任の是非を問い提訴に至ったものと考えられます。今回の件の落ち着きどころはまだ見えてきませんが、日本代表選手たちが心ゆくまでサッカーに打ち込み、よい結果を出せるように、早い段階での解決を心から願うばかりです。」(大達弁護士) 契約内容の詳細が不明なため確実なことは言えませんが、現状判明していることだけを見ると、慰謝料や名誉毀損が認められる可能性は低く、契約上の在任期間に受け取るべき報酬を請求できる可能性は高いようです。このような事態になった以上、ある程度ハリルホジッチ氏のケアをすることも義務といえるのではないでしょうか。日本サッカー協会には適切な対応をとってもらいたいものです。 *取材対応弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)*画像はイメージです(pixta)解任で慰謝料請求検討のハリルホジッチ前監督…主張は認められる?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。解任で慰謝料請求検討のハリルホジッチ前監督…主張は認められる?はシェアしたくなる法律相談所で公開された投稿です。
2018年04月24日3月17日、『2018FIFAワールドカップロシア アジア2次予選 兼 AFCアジアカップUAE2019予選』アフガニスタン戦、シリア戦に臨む日本代表メンバーが発表された。ハリルホジッチ監督は「この2試合は我々にとって重要。目的は2勝。チャレンジしたいことは失点しないこと。そしてたくさんゴールを取りたい」と意気込みを語った。W杯2次予選 チケット情報日本代表メンバーは以下の通り。【GK】川島永嗣(ダンディー)、東口順昭(G大阪)、西川周作(浦和)、林彰洋(鳥栖)【DF】長友佑都(インテル)、槙野智章(浦和)、森重真人(FC東京)、吉田麻也(サウサンプトン)、藤春廣輝(G大阪)、酒井宏樹(ハノーファー)、酒井高徳(ハンブルガー)、昌子源(鹿島)【MF】長谷部誠(フランクフルト)、柏木陽介(浦和)、香川真司(ドルトムント)、清武弘嗣(ハノーファー)、山口蛍(ハノーファー)、原口元気(ベルリン)【FW】岡崎慎司(レスター)、本田圭佑(ミラン)、ハーフナー・マイク(デン・ハーグ)、小林悠(川崎F)、金崎夢生(鹿島)、宇佐美貴史(G大阪)指揮官は9か月ぶりに招集した川島について「GKはなぜ4人か? 永嗣がどんな状態か見てみたいからだ。彼がプレーするかは別問題。彼には経験とクオリティがある。ただ今までは先発だったが、彼は先発を奪う立場になった」と語り、1年5か月ぶりに代表復帰したハーフナーについては「(オランダで)13得点取っている。身長が高いFWは我々のチームにはいない。彼のヘディングを生かしたサッカーをしなければいけない。この2試合で違うオーガナイズを使う可能性がある」と言及した。また、国内組には「(先週の)ミニ合宿でメッセージを送った。今回は半分、国内組を選んだ。努力してスタメンを取ってほしい」と奮起を促した。さらに「柏木は我々に足りなかった左利き。運動量も多い。守備と中盤をつなぐ彼の役割は重要になる。攻守にいいものをもたらす。いいボールを送り、攻撃のスピードを上げるためにも彼は必要。彼のFKも重要だ。小林は偶然ここにいるわけではない。ミニ合宿でクオリティを見せた。彼はA代表で得点できる稀な選手。彼にはゴールゲッターの素質がある。宇佐美は能力がある選手。でも能力だけでは足りない。彼に関しては、私も我慢して、励ましながら使っていきたい」と主な国内組を評した。ハリルホジッチ監督はスピードアップを求める。「我々は速くボールを動かす。ワンタッチ、ツータッチで回し、ギャップを作り、フィジカルコンタクトを避ける。我々の攻撃は速くボールを走らせることが大事。選手たちには毎試合やってほしい」とキッパリ。埼玉スタジアム2002でキックオフを迎える『W杯2次予選』3月24日(木)・アフガニスタン戦、29日(火)・シリア戦はチケット発売中。
2016年03月17日朝日新聞出版は9月24日、サッカー日本代表監督、ヴァイッド・ハリルホジッチ氏の単独ロングインタビューを掲載した「アエラスタイルマガジン」(2015年秋号)を発売する。このほど、創刊7周年を迎えた男性ファッション誌「アエラスタイルマガジン」は、リニューアル号である2015年秋号において、ハリルホジッチ監督に単独インタビューを行った。インタビューでは、ワールドカップ予選突破を目指すハリルホジッチ監督がその心中を語っている。「最善の結果を生み出す指導者とは、何を考え、どのように行動すべきか」「ニッポンが"勝つ"ことにこだわったときに求められる、適正な組織形態とはどのようなものなのか」など、注目される指導者の姿と哲学を浮き彫りにしている。6月に行われたワールドカップ2次予選の対シンガポール戦でのスコアレスドローや、8月上旬の東アジアカップでの最下位という結果についても言及。監督の戦術に不満を示すジャーナリストが後を絶たず、自責で眠れない日々が続いたという。身を削りながら戦い続けるハリル監督は、選手たちにどうしても伝えたいことがあるという。名門パリ・サンジェルマンでも活躍した選手時代、戦争ですべてを奪われた日々、数々のチームで結果を残してきた監督時代。波乱万丈な人生を乗り越えてきたからこその、並々ならぬ重みのある言葉がつづられている。定価は税込900円。
2015年09月17日ヴァイッド・ハリルホジッチ新監督に率いられる新生日本代表がいよいよ始動する。62歳という年齢を感じさせない馬力と一切の妥協を許さない信念を刻みながら、ハビエル・アギーレ前監督の解任から時計が止まっていた日本サッカー界を力強く前進させる。○日本サッカー協会内で始まる緊急工事の目的新生日本代表が大分市内でスタートを切る3月23日から、東京・文京区にあるJFAハウス内でも緊急工事が行われる。空き部屋のひとつを改修してデスクと映像機器を設置し、簡単な応接間も設ける。日本サッカー協会(JFA)の霜田正浩技術委員長が、苦笑しながら目的を明かす。「監督専用の部屋を作ります。毎日ここで仕事をしたいと言う代表監督は初めてなので」。これまでにもスタッフがミーティングを行うための大部屋はあったが、ハリルホジッチ監督は就任直後からJFA内に常駐したいと希望していた。歴代の日本代表監督がJFAハウスを訪れた頻度は、多くて週に1回。これだけを見ても、62歳の新指揮官の熱血ぶりが伝わってくる。自宅のあるフランスから13日に来日して正式にサインを交わし、翌14日にはJ1のFC東京対横浜F・マリノスを視察。15日からはJFAハウス内で3日連続、合計して10時間を軽く超えるスタッフ会議を開催し、18日には自らの希望でナビスコカップ予選リーグの川崎フロンターレ対名古屋グランパスに足を運んだ。時差ぼけは大丈夫なのかと思わず心配してしまうほど、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身でフランス国籍をもつハリルホジッチ監督は精力的に動き回っている。○「日本代表の心臓」遠藤保仁を選外とした理由霜田技術委員長に対して、ハリルホジッチ監督はこう語っている。「勝利をつかむために完璧主義者に徹したい」。自身および周囲に対して一切の妥協を許さない。プロフェッショナルな姿勢を貫く指揮官は、19日の代表メンバー発表会見におそらく忸怩(じくじ)たる思いで臨んだはずだ。昨夏のワールドカップ・ブラジル大会や準々決勝で敗退した先のアジアカップ、開幕以降のJ1の全試合やACLなどのすべてを映像でチェック。その上で31人のメンバー、12人のバックアップメンバーを選出したハリルホジッチ監督は、偽らざる本音ものぞかせていたからだ。「もっと多くの時間をかけ、(日本人について)もっともっと多くのことを知ってから最初のリストを作ることが、本来のやり方だったと思う」。それでも、独自色の一端をのぞかせてもいる。ワールドカップおよびアジアカップのメンバーからそれぞれ20人を選んだ一方で、歴代最多の152キャップを誇るMF遠藤保仁(ガンバ大阪)を外した点だ。「皆さんもご存じのように、私はワールドカップ・ロシア大会への準備のために日本に来た」。ハリルホジッチ監督はそのキャリアに敬意を表しながら、長く日本の心臓に君臨してきた遠藤をリストに加えなかった理由を自ら明かした。○スター選手へ向けられた指揮官の"メッセージ"昨シーズンのJリーグMVPを獲得した遠藤は、いま現在も卓越したパフォーマンスを披露している。ハビエル・アギーレ前監督にも重用された。ロシア大会開催時で38歳となる年齢が考慮されたこともあるが、遠藤の選外にはもうひとつの意図が込められていると見ていいだろう。都内のホテルで13日に行われた就任会見で、ハリルホジッチ監督はこう宣言している。「私はチームがスターだと思っている。個々の能力をダメにしてはいけないが、スター選手もチームのために仕事をしてもらうということだ」。ザックジャパンはさまざまな意味で、FW本田圭佑(ACミラン)のチームだった。本田が発信し続けた「ワールドカップ優勝」と「自分たちのサッカー」がいつしか独り歩きして、ブラジル大会を迎えたときにはチームマネジメントが機能不全に陥っていた。ハリルホジッチ監督はアルジェリア代表を率いていたときに、チームの和を乱した主力選手を容赦なく外している。もちろん遠藤や本田がチームから浮いている、あるいは献身的ではないと指摘しているわけではない。それでも、遠藤を招集しなかったことは、ロシア大会を目指す日本代表に「アンタッチャブルな選手は存在しない」というハリルホジッチ監督の"メッセージ"となったはずだ。○自分自身への自信を失っている選手とは就任会見ではこんな言葉も飛び出している。「選手の何人かは自分自身への自信を失っているようだ」。指揮官の言う「何人か」が、MF香川真司(ドルトムント)やDF長友佑都(インテル)を指していることは明白だ。「個人的に話をして、勇気づけなければいけない」という目的も込めて、けがでプレーできない長友をあえて日本に呼び寄せてもいる。香川はどうなのか。けがこそしていないが、復帰した古巣でも精彩を欠く。日本代表においても攻撃面で結果を求めるあまり、守備意識がおろそかになることが少なくなかった。ハリルホジッチ監督の基本布陣は「4‐3‐3」と予想され、27日のチュニジア代表戦(大分銀行ドーム)は中盤を守備的な三角形型に、31日のウズベキスタン代表戦(味の素スタジアム)では攻撃的な逆三角形型で組んでくるだろう。香川が出場するとすれば前者でトップ下、後者ではインサイドハーフとなる。それでも躊躇(ちゅうちょ)したプレーが続くようならば、ハリルホジッチ監督の構想から一時的に外れる可能性も出てくる。実際、指揮官はこうも語っている。「現代のフットボールは『技術』『フィジカル』『戦術』『メンタル』で高いレベルを求められる。先発は確定していないし、招集メンバーも毎回変わるかもしれない」。○バックアップメンバーに見える独自の人選ハリルホジッチ監督が初めて作成したリストは、バックアップメンバーが記されていた点で異例だった。けが人が出た場合に入れ替わる選手のなかには、フロンターレの新人DF車屋紳太郎、大卒2年目のMF谷口彰悟らが名前を連ねている。さらなる独自色を出す準備が進んでいる証しといっていい。リオデジャネイロ・オリンピック出場を目指す、U‐22日本代表を率いる手倉森誠監督とも意見を交換しているハリルホジッチ監督はこうも語っている。「その時点でベストのパフォーマンスを見せている選手が、日本代表に呼ばれる。オリンピック代表でいい選手がいれば、問題なく受け入れていきたい」。代表監督の仕事に熱すぎるほどのエネルギーを注ぐ姿勢はフランス人のフィリップ・トルシエ監督を彷彿(ほうふつ)とさせ、「ピッチの上で我々のアイデンティティーを見つけていきたい」という抱負は「日本人化」を謳(うた)ったボスニア・ヘルツェゴビナ出身のイビチャ・オシム監督ともダブる。「最初の試合はすべてを注いで勝利に導き、『これが私たちの道だ』というものをお見せしたい」。還暦を超えているとは思えない馬力と、揺るぎない信念を感じさせる発信力とで周囲を力強くけん引しながら、ハリルホジッチ監督は「結果=勝利」と「改革=世代交代」の二兎を新生日本代表に追い求めていく。写真と本文は関係ありません○筆者プロフィール: 藤江直人(ふじえ なおと)日本代表やJリーグなどのサッカーをメインとして、各種スポーツを鋭意取材中のフリーランスのノンフィクションライター。1964年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒。スポーツ新聞記者時代は日本リーグ時代からカバーしたサッカーをはじめ、バルセロナ、アトランタの両夏季五輪、米ニューヨーク駐在員としてMLBを中心とするアメリカスポーツを幅広く取材。スポーツ雑誌編集などを経て2007年に独立し、現在に至る。Twitterのアカウントは「@GammoGooGoo」。
2015年03月21日