映画『逆転のトライアングル』は、第75回カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドール受賞作品。2023年2月23日(木・祝)よりTOHOシネマズ 日比谷他にて全国公開される。リューベン・オストルンド監督が2作連続でパルムドール受賞映画『逆転のトライアングル』は、スウェーデンの奇才リューベン・オストルンド監督が“ファッション業界とルッキズム、そして現代階級社会”を題材に描く新作映画。前作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』に続く2作連続で、カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールに輝いた。豪華客船が遭難?!乗船者のヒエラルキーが逆転物語は、超富裕層のための豪華客船クルーズに、セレブモデルのカップルが招待されることからはじまる。リッチでな乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでも叶える客室乗務員が笑顔を振りまくゴージャスな世界。インスタ映えすると思われた船旅だったが、その船は遭難してしまう。流れ着いた無人島では、乗船者たちのこれまでのヒエラルキーが逆転。その頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な、船のトイレの清掃婦だった――。驚くべき人間観察眼とセンス抜群のブラックユーモアで、価値観を見事にひっくり返す本作は、まさに世紀の大逆転エンタメ。皮肉の効いた社会風刺コメディに仕上がっている。ハリス・ディキンソンやウディ・ハレルソンが出演キャストは、『キングスマン:ファースト・エージェント』のハリス・ディキンソンや、チャールビ・ディーン、フィリピンのベテラン女優ドリー・デ・レオンや『スリー・ビルボード』のウディ・ハレルソンも出演する。■主人公カール…ハリス・ディキンソン男性ファッションモデル。恋人のヤヤと豪華客船の旅に出る。・ヤヤ…チャールビ・ディーン恋人のカールにSNS用の写真を撮影させる超売れっ子モデルで人気インフルエンサー。・アル中の船長…ウディ・ハレルソン・アビゲイル…ドリー・デ・レオンサバイバル能力抜群な船のトイレ清掃婦。第80回ゴールデングローブ賞&第95回アカデミー賞にノミネート映画『逆転のトライアングル』は、第80回ゴールデングローブ賞では、ミュージカル・コメディ部門の作品賞とトイレの清掃婦を演じたドリー・デ・レオンの助演女優賞の2部門にノミネート。第95回アカデミー賞では、作品賞・監督賞・脚本賞の主要3部門にノミネートされている。〈映画『逆転のトライアングル』あらすじ〉モデル・人気インフルエンサーのヤヤと、男性モデルのカールのカップルは、招待を受け豪華客船クルーズの旅に出ることに。リッチでクセモノだらけな乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでも叶える客室乗務員が笑顔を振りまくゴージャスな世界。しかしある夜、船が難破してしまう。そのまま海賊に襲われ、彼らは無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態で、ヒエラルキーの頂点に立ったのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃婦だった――。【詳細】映画『逆転のトライアングル』公開日:2023年2月23日(木・祝)監督:リューベン・オストルンド出演:ハリス・ディキンソン、チャールビ・ディーン、ドリー・デ・レオン、ウディ・ハレルソン、ズニー・メレス原題:TRIANGLE OF SADNESSFredrik Wenzel © Plattform Produktion
2022年11月14日パルムドール受賞作、映画『TITANE/チタン』が2022年4月1日(金)より公開される。監督はジュリア・デュクルノー。パルムドール受賞、ジュリア・デュクルノー最新作映画『TITANE/チタン』は、鮮烈なるデビュー作『RAW~少女のめざめ~』で世界にその名を知らしめたフランス人女性監督ジュリア・デュクルノーの最新作。長編2作目にして、第74回カンヌ国際映画祭<最高賞>にあたるパルムドールを受賞する偉業を成し遂げた。その勢いはとどまることを知らず、世界各国の映画祭で8ノミネート22受賞を果たし、ショーレースを席巻している。チタンがもたらす数奇な運命...混乱・驚愕の連続2018年『万引き家族』、2019年『パラサイト 半地下の家族』に続き、パルムドールに輝いた『TITANE/チタン』は、幼い頃、交通事故により頭蓋骨に“チタンプレート”が埋め込まれたアレクシアを主人公とする物語。“チタンプレート”が彼女にもたらす数奇な運命とは?混乱、驚愕のストーリー展開に、最後まで目が離せない。<主な登場人物&キャスト>主人公・アレクシア...アガト・ルセル幼い頃の交通事故により、頭蓋骨に“チタンプレート”が埋め込まれている。事故以来、車に異常に執着し、危険な衝動に駆られるようになってしまった。ヴィンセント...ヴァンサン・ランドン消防士。アレクシアと出会い、奇妙な共同生活を始める。<映画『TITANE/チタン』あらすじ>頭蓋骨に埋め込まれた<チタンプレート>が引き起こす【突然変異】幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。彼女はそれ以来<車>に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。遂に自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴィンセントと出会う。10年前に息子が行方不明となり、今は独りで生きる彼の保護を受けながら、ふたりは奇妙な共同生活を始める。だが、彼女は自らの体にある重大な秘密を抱えていた──【詳細】映画『TITANE/チタン』公開日:2022年4月1日(金)新宿バルト9ほか全国ロードショー監督:ジュリア・デュクルノー出演:ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル原題:TITANE/2021年/フランス/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/108分/字幕翻訳:松崎広幸/R-15+© KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020
2022年02月04日『RAW~少女のめざめ~』のジュリア・デュクルノー監督によるパルムドール受賞の話題作『TITANE/チタン』が4月1日(金)より日本公開されることが決定し、ポスタービジュアルが解禁となった。幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。彼女はそれ以来<車>に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。遂に自らの犯した罪により行き場を失った彼女は、消防士のヴィンセントと出会う。10年前に息子が行方不明となり、いまは独りで生きていた彼と、奇妙な共同生活を始めるアレクシア。しかし彼女は、自らの体にある重大な秘密を抱えていた…。『RAW~少女のめざめ~』で鮮烈デビューを飾ったジュリア・デュクルノー監督の長編2作目で、2021年のカンヌ国際映画祭にて最高賞<パルムドール>を受賞した本作。その勢いはとどまることを知らず、世界各国の映画祭・映画賞で84ノミネート、22の受賞と席巻中だ(22/01/28 時点)。本作を観たエドガー・ライト監督は「完全に独創的。脳がブッ飛んだ」と語り、更にポール・トーマス・アンダーソン監督も「警告する、心して見よ。身を任せて観た先に素晴らしい映画体験が待っていた」と大絶賛評を送った。解禁となったポスタービジュアルでは、髪をかきあげチタンの埋め込まれた頭部をあらわにして振り向くアレクシアが切り取られており、ビビットな色合いが強い印象を残す、本編への期待が高まるビジュアルとなっている。頭蓋骨に埋め込まれた<チタンプレート>はアレクシアとヴィンセントにどんな運命をもたらすのか?カンヌを揺るがせた圧倒的怪作に、注目が集まる。『TITANE/チタン』は4月1日(金)より新宿バルト9ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:TITANE/チタン 2022年4月1日より新宿バルト9ほか全国にて公開© KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE CINEMA – VOO 2020
2022年02月01日映画『家族を想うとき』が、2019年12月13日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開。カンヌ・パルムドール受賞、ケン・ローチ監督最新作メガホンを握るのは、映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』でカンヌ国際映画祭 最高賞パルムドールを受賞した、イギリスの巨匠ケン・ローチ監督。これまで労働者や移民、貧困など社会問題に焦点を当て、社会的弱者を取り巻く現実、明日を生きようとする人々の懸命な姿を捉えた作品を世に送り出してきたケン・ローチ監督だが、『わたしは、ダニエル・ブレイク』を最後に映画界からの引退を表明していた。“働いても働いても報われない”英国家族の物語監督が引退宣言を撤回してまで、本作『家族を想うとき』で描きたかったのは、グローバル経済が加速する中で変わっていく人々の働き方と、時代の波に翻弄される「現代の家族の姿」だ。物語の舞台は、イギリス北東部ニューカッスル。マイホーム購入を夢みて働く父・リッキーとホームヘルパーとして働き家計を助ける母・アビー。そして愛する息子セブ、娘ジェーンの4人家族が主人公だ。父リッキーは、大手配送業者のフランチャイズの下請けドライバーとして働き、母アビーはホームヘルパーとして朝から晩まで働く。理不尽なシステムによる過酷な環境下では、働いても働いても、社会の下層から這い上がれない報われない日々が続いている。社会への「怒り」、働き方への疑問。両親が懸命に働く中、子供たちはどんどん寂しさを募らせていくのだった…。日本でも日々取り上げられている労働問題と重なり、観る者は現代社会が失いつつある家族の美しくも力強い絆に、激しく胸を揺さぶられるだろう。あらすじイギリス、ニューカッスルに住むある家族。父のリッキーはマイホーム購入の夢をかなえるために、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立。 母のアビーはパートタイムの介護福祉士として、時間外まで 1 日中働いている。家族を幸せにするはずの仕事が、家族との時間を奪っていき、高 校生のセブと小学生の娘のライザ・ジェーンは寂しい想いを募らせてゆく。そんななか、リッキーがある事件に巻き込まれてしまうーー。【作品情報】映画『家族を想うとき』公開日:2019年12月13日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開監督:ケン・ローチ脚本:ポール・ラヴァティ出演:クリス・ヒッチェンズ、デビー・ハニーウッド、リス・ストーン、ケイティ・プロクターphoto: Joss Barratt, Sixteen Films 2019
2019年05月24日第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、3度目の最高賞パルムドール受賞も囁かれているケン・ローチ監督作『Sorry We Missed You』(原題)が、12月13日(金)より日本でも公開されることが決定した。イギリス、ニューカッスルに住むある家族。父リッキーはマイホーム購入を夢みて、大手配送業者のフランチャイズの下請けドライバーとして働き出す。母アビーはホームヘルパーとして朝から晩まで働く毎日。次第に家族で過ごす時間が減って行き、息子セブと娘ジェーンは寂しさを募らせてゆく…。本作は、第69回カンヌ国際映画祭にて最高賞パルムドールを受賞した『わたしは、ダニエル・ブレイク』のケン・ローチ監督の最新作。『わたしは、ダニエル・ブレイク』を最後に映画界からの引退を表明していたが、引退宣言を撤回してまで監督が描きたかったのは、時代の波に翻弄される“現代の家族の姿”――。これまで、労働者や社会的弱者に寄り添い、彼らを取り巻く現実と、それでも明日を懸命に生きようとする人々を描き続けてきたローチ監督。本作では、理不尽なシステムによる過酷な労働の中で、社会の下層から這い上がれない家族を通し、現代社会への「怒り」を描く。なお、脚本は『わたしは、ダニエル・ブレイク』『ジミー、野を駆ける伝説』で手を組んだポール・ラヴァティが手掛けた。『Sorry We Missed You』(原題)は12月13日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国にて順次公開。(cinemacafe.net)
2019年05月17日◼︎日本人21年ぶりのパルムドール!読者のみなさん、こんにちは。今回みなさんにご紹介したいのは、日本人監督作品としては、1997年の今村昌平(いまむら・しょうへい)監督『うなぎ』以来、21年ぶりにカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドールを獲得した是枝裕和(これえだ・ひろかず)監督の『万引き家族』です。1995年『幻の光』でデビューした是枝監督は、2004年、事件報道で断罪された家族の内側を描いた『誰も知らない』で、主演の柳楽優弥に史上最年少および、日本人として初めてのカンヌ国際映画祭・最優秀主演男優賞をもたらしました。2013年の『そして父になる』で子どもを取り違えられた夫婦を、2015年の『海街diary』では腹違いの姉妹を、2016年の『海よりもまだ深く』では離婚した夫婦とその子どもなど……さまざまな家族の形を描き続けてきた是枝監督。本作で描くのは、祖母の年金を頼りに、足りない生活品は万引きで賄う、とある家族の姿です。◼︎『万引き家族』のストーリー高層マンションの谷間にポツンと取り残された平屋で暮らす5人の家族。祖母の初枝(樹木希林)、父の治(リリー・フランキー)、妻の信代(安藤サクラ)、息子の祥太(城桧吏)、そして信代の妹の亜紀(松岡茉優)は身を寄せ合って暮らしていた。ある日、街角のスーパーで、鮮やかな連携プレーで万引きをした治と祥太は、帰り道にある団地で凍えている小さな女の子(佐々木みゆ)を見つける。母親に部屋から締め出されたらしいその様子を以前にも見かけていた治は、その女の子を家に連れて帰ることにするのだった。その日の深夜。自分の名前を「ゆり」と答えたその女の子を、団地まで送り届けようとした治と信代だったが、ゆりの両親が罵り合う声を聞いてしまう。「産みたくて産んだわけじゃない」という言葉を聞いたふたりは、ゆりを残して帰ることができなかった。季節は流れ、春。「荒川区で5歳の女の子が行方不明」というニュースが流れ、行方不明の「じゅり」ちゃんが、「ゆり」だと知った家族は、彼女の呼び名を「りん」に変える。「りん」として生きることを選んだ少女を加え、ゆっくりと、確かな絆で結ばれていく家族だったが、ある事件をきっかけにそれぞれに抱えてきた秘密が暴かれることとなり……。◼︎是枝作品の常連キャスト×新キャスト『そして父になる』以来、これまで三度是枝作品に出演してきたリリー・フランキーはもちろん、6作目の是枝作品出演となったベテラン女優・樹木希林の深みのある演技は必見です。祖母・初枝を演じるにあたり、「その方が気持ちが悪い」という理由で、普段よりも髪を伸ばし、入れ歯を外すという役作りを行っています。また、初の是枝作品参加となった母の信代に扮した安藤サクラ、信代の妹・亜紀に扮した松岡茉優、そしてオーディションによって選ばれた子役のふたりが、絶妙なバランスで「犯罪でしかつながれなかった」家族にリアリティを与えています。◼︎「犯罪でしかつながれなかった」すでに死亡している親の年金を、家族が不正に受給していた事件を知ったことが、本作を作るきっかけになったという是枝監督。まずはじめに思いついたのは、「犯罪でしかつながれなかった」というキャッチコピーだったそうです。家族のつながりに根底にあるものは、果たして”血”なのかどうか。2013年の『そして父になる』、2015年の『海街diary』などの作品で、家族のつながりに大切なのは血なのか?一緒に過ごした時間なのか?という問いかけを提示した監督が、血ではなく犯罪でつながった家族の姿を描き、あらためて絆とは何かを問い直します。これまで是枝作品を観たことがない方にとっても、是枝作品のエッセンスがすべて詰まっている本作。パルムドールを受賞し話題となっている『万引き家族』は是枝作品の最初の一本としてもオススメです。震災以降、家族の絆が叫ばれ続けている中、あらためて家族のつながりについて考えてみませんか?『万引き家族』は6月8日より全国で公開されています。◼︎『万引き家族』公開情報『万引き家族』6月8日TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー監督・脚本:是枝裕和出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮、城桧吏、佐々木みゆ、高良健吾、池脇千鶴、樹木希林配給:ギャガ上映時間:121分公式サイト:©2018フジテレビジョンギャガAOI Pro.
2018年06月08日第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した『万引き家族』の是枝裕和監督が6月6日(水)、東京・有楽町の外国人特派員協会で行われた上映会に出席。外国人を中心とした報道陣からの質問に答えた。物語は都内の高層ビルの隙間にひっそりと建つ一軒家で、年金を目当てに祖母と同居し、足りない分を万引きによって補いながら暮らす一家の姿を描き出す。■思わぬ物議!? ブログに記したパルムドール受賞後の反応への思い是枝監督は数日前に自らのサイトに、“「invisible」という言葉を巡って――第71回カンヌ国際映画祭に参加して考えたこと――”という長文をアップ。映画祭期間中に受けた取材の中で、自ら発した言葉が外国語への翻訳を通して少しずつ異なる意味を付与されていくことや、映画が期せずして政治的、社会的なメッセージを伴って語られていくことへの自らの考えを述べている。この日の会見では「社会的、政治的問題を喚起する目的で映画を作ったわけではない」と断った上で、「2000年代に海外の映画祭に出るようになって一番言われたのが『日本映画には社会と政治がない。なぜだ?』ということ。それは、そういう作品は、興行として成立しにくいという判断を、日本の大きな興行会社をしてきたから。企画を提出しても『ちょっと重たい』とジャッジされて進まなくなる状況があった。それは日本の映画の幅を狭くしていると自覚はしていました」と語る。自身、2000年代の後半から家族を題材にした作品を撮り続けてきたが「この2作ほどでファミリードラマにピリオドを打って、社会性、現代の日本が抱えている問題の上に家族を置いてみて、その接点をどう描くか?そこで起こる摩擦にどう目を向けるか?という作品を作りました」と本作について説明し、パルムドール受賞後の様々な反応について「21年ぶりの(日本映画の)パルムドールということで、思った以上に取り上げられて、普段、映画について語らない人たちもこの映画について語る状況になって、一部で、僕と僕の映画が物議を醸している蚊のような状況になっていますが、それはこの映画が、通常の枠を超えて多くの人のところに届いているのだなと個人的には前向きに捉えています」と語った。■施設への取材で出会った「スイミー」を読んでくれた女の子との出会い本作は実際に起きた年金詐欺(※年金受給者の死亡を遺族が届け出ずに、年金を受け取っていた事件)など、家族を巡って起きた事件をモチーフに監督が脚本を手掛けたが、リサーチの中で、親から虐待を受けた子どもたちが暮らしている施設にも足を運んだという。「一番印象に残っているのが、施設でひとりの女の子に『いま、何を勉強してるの?』と聞いたら、ランドセルから国語の教科書を取り出して、『スイミー』を読み始めたんです。周りの大人が『みなさん、忙しいからやめなさい』と言うのに最後まで読み通してくれて、僕らが拍手したら、すごく嬉しそうに笑ったんです。この子はきっと、離れて暮らす親に聞かせたいんじゃないかと感じて、その朗読している顔が頭から離れず、すぐに映画の中の少年が教科書を読むシーンを書きました」と明かした。その後、別の記者から「社会問題をテーマに選んだ関係上、この作品の観衆に政治家や官僚はイメージしていたか?」と尋ねられると「ありませんでした」と即答。「TVをやっていた時代に、先輩から言われたのが『誰か一人に向かって作れ』ということ。『TVのように不特定多数に向けて作るものほど、ひとりの観客の顔を思い浮かべて作れ』と20代の頃に言われて、ずっとそうしてます。いま、わかりましたが、『スイミー』を読んでくれた女の子に向かって作っていると思います」とうなずいた。■カンヌ審査員チャン・チェンのお気に入りのシーンは…?映画では、都会の真ん中にひっそりとたたずむ「家」そのものが主人公とも言える大きな役割を果たしている。『歩いても 歩いても』『海街diary』『海よりもまだ深く』など過去の是枝作品でも家は、非常に大きな意味を持ってきたが、この点について、家族が家からは見えない花火大会の花火を見上げようとするシーンに触れ「審査員だったチャン・チェンが、『あのシーンが一番好き』と言ってました。この映画は『見えない』、『聞こえない』ものをどう想像していただくか?ということがモチーフになっています。その中であの家は、この映画の成功に大きく貢献してくれていると思います。家が主役であることは間違いないです」と語った。■秋にフランスで新作を撮影予定も情報漏洩に困惑?受賞後、次の作品を海外で外国人俳優を起用して撮ることになっている、といった推測が報じられているが、これについて「まだ正式発表をする前の段階なのに、なぜかいろんなところから情報が洩れてて、どこまでしゃべっていいのか…?秋にフランスでフランスの役者と撮ろうということになっていて、6月終わりからパリに渡る予定ですが、まだ発表してないのにキャストやギャラまで載ってて…(苦笑)」と困惑を口にした。カンヌで見た他のコンペ作の感想や評価を尋ねられると「『万引き家族』の上映後、評判がよくて連日取材が入って、全くほかの作品を見られてないです」と明かし、「なので、見た中では『万引き家族』が一番良かったです」と茶目っ気たっぷりに語り、笑いを誘った。この日は、56歳の誕生日ということで、サプライズでケーキも用意され、笑顔を見せていた。『万引き家族』は6月8日(金)より公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:万引き家族 2018年6月8日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2018フジテレビジョンギャガAOI Pro.
2018年06月07日第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞し、21年ぶりの快挙が話題となっている是枝裕和監督作『万引き家族』。本作に出演する安藤サクラが4日(月)、大阪にて行われた記者会見に登壇し、パルムドール受賞の喜びを語った。■安藤サクラ、 パルムドール受賞時に寝落ち…!?パルムドール受賞後、安藤さんが映画について語るのは今回が初めて。受賞について聞かれると、「この“家族たち”と夜中だけどYouTubeで中継をみようとやりとりをしていて」と準備万端で授賞式の中継を見ていたものの、「いつの間にか眠ってしまいまして…」とまさかの寝落ちをしてしまったことを告白!「そしたら、リリーさんから『サクラ起きろと!』とメールがすごい来ていて、マネージャーさんには、真っ暗にして寝ていた部屋で『パルムドールです!』と言われて…それですぐにTVをつけてニュースが流れているをみて、これは残さなきゃとフィルムのカメラでその画面を撮りました(笑)」と、受賞の瞬間をふり返った。実は、受賞発表前から撮影で大阪にいたという安藤さん。「まだみんなと喜びを分かち合えていないですし、監督にも直接おめでとうございますも言えていない」と言い、まだふわふわとした感じだとも語っていた。■出産後初の撮影に「面白い経験」是枝組には初参加、しかも産後初めての撮影で、国内外からその高い演技力を絶賛された安藤さん。母・信代役について、「台本を読んでいて共感することはなかった」と語りながらも、「フイルムの中にいる信代が過ごした時間は、私自身が“家族”と過ごした時間でもあります。共感というものではなく、私自身がこの“家族”の温度を自分の身体で感じていたので、その温かさがいまもまだ残っています」とコメント。また、「私は正直、妊娠中、出産後はできるだけ仕事はしないし、できるだけ子どもと一緒にいるのがいいと思って、そうしたいと思っていました」と話しつつも、「こうやってこの作品に出会えたことがよかった」「すごく良い時間を過ごせたと思っています。役柄としては自分は真逆だけど、産後初めてあの役を演じるというのは面白い経験でした」とふり返った。■子役・佐々木みゆとは「すごいご縁」カンヌに行ってからは特に、この“家族”がより大事な存在になっていったという安藤さん。本作で夫の治(リリー・フランキー)に拾われ、“家族”の娘になるゆり役を演じた子役・佐々木みゆは、なんと自身の愛娘と誕生日が同じなのだとか。「だから撮影中から、それこそ血の繋がりではない何かの繋がりがあるようなそんな気持ちを感じていました」と明かし、「映画が公開したら、あまりこの“家族”と会う機会がなくなるのかなと思うとすごい寂しい気持ちになって、たまにちょっと泣きそうになります」と語った。■審査員からの賛辞に「粋な誉め言葉」受賞記者会見では、審査員長で大女優のケイト・ブランシェット、審査員のレア・セドゥやクリスティン・スチュワートらが安藤さんの演技を高く評価。是枝監督も帰国後の会見で、彼女の泣くシーンについて、「“今後、私も含め今回の審査員を務めた俳優の中で、今後あの泣き方をしたら、彼女の真似をしたと思って“と仰っていて、その会話から虜にしたんだなとよくわかりました」と語っており、この賛辞について安藤さんは「監督からメールをいただいたんですけど、やっぱりスターの方たちは粋な誉め言葉を使うんだなと思って…」と話していた。なお、全国公開に先駆けて先週末に行われた本作の先行公開では、2日間で興行収入193,709,400円の好成績をあげた。『万引き家族』は6月8日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:万引き家族 2018年6月8日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2018フジテレビジョンギャガAOI Pro.
2018年06月06日最新作『万引き家族』が、第71回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門にて、見事最高賞「パルムドール」を受賞した是枝裕和監督。そんなカンヌを沸かせた是枝監督が、5月23日(水)に凱旋帰国し、羽田空港内にて記者会見を行い、現在の心境を語った。本作は、様々な“家族のかたち”を描き続けてきた是枝監督が、「この10年間考え続けてきたことを全部込めた」と語る渾身作。リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林らが出演し、家族を超えた絆を描いた本作は、カンヌ公式上映後に約9分間ものスタンディングオベーションが起こった。日本人監督のパルムドール受賞は、1997年の今村昌平監督の『うなぎ』以来、21年ぶりの快挙となった。是枝監督、凱旋帰国! 「実感が湧くのはこれから」そして今回、そんな快挙を成し遂げた是枝監督が帰国し、80名ほどのマスコミ陣の前に、黄金に輝く“パルムドール”のトロフィーとともに登場。是枝監督は、「大きな賞であることが、本日このようにお越しいただいたマスコミの方の数をみてわかります。実感が湧くのはこれからだと思います。シャワーを浴びて一息ついたところですが、LINEやメールが山のようにたまっているので、お礼の返信をしたいと思います」と、まだ受賞の実感はない様子。また、今作でカンヌ国際映画祭への出品は7回目、『海街diary』以来3年ぶり5回目のコンペティション部門出品。これまで『誰も知らない』では柳楽優弥が最優秀男優賞を、『そして父になる』では審査員賞を受賞している。そんな過去の受賞作と今作との反応の違いについて聞かれると、「前のことはあまり覚えていませんが、『誰も知らない』のときも温かったけど、あのときは子どもたちの世話で手一杯で、それだけで終わってしまったという印象なんです」とふり返り、「公式上映後に受けた取材では、記者たちから『Touch』と『Love』という言葉が一番多かったんです。それで、届いたなと良い手ごたえは感じました」と明かしている。■ケイト・ブランシェット、安藤サクラの“泣き演技”を絶賛!そして、審査員長のケイト・ブランシェットからは、授賞式後の公式記者会見の際にも言っていたことと同様に「演技、監督、撮影などトータルで素晴らしかった」と改めて言われたという監督。加えて、安藤さんの芝居についても熱く語っていたそうで、彼女の泣くシーンについて、「『今後、私も含め今回の審査員を務めた俳優の中で、今後あの泣き方をしたら、彼女の真似をしたと思って』と仰っていて、その会話から虜にしたんだなとよくわかりました」と述べた。■注目ポイントは役者のアンサンブル「惚れ惚れするくらいの演技」さらに映画完成の際をふり返り、「役者が素晴らしかったです。ケイトさんも仰っていた安藤さんの泣くシーンは、カメラの脇で立ち会っていても特別な瞬間だと感じましたし、そんなことがほかにも何度もありました。いろんな意味で化学反応も起こり、良い映画が出来たと実感はしましたね」と作品への手ごたえを語った監督。公開はこれからということで、注目ポイントについては「今回役者のアンサンブルがとてもうまくいきました。自分なりの子どもへの演出と、演出も担える樹木さんとリリーさん、安藤さん、松岡さんも相手の演技を受けるのが上手でバランスがよかった。撮影している中で、惚れ惚れするくらいの演技もみせてくれた」と説明していた。お祝いムードの中、熱気に包まれながらも終始穏やかな空気が流れていた今回の会見。受賞後、監督はNYに少し滞在していたそうで、「色々差支えがあって喋れないんですけど、近いうちに情報が発表されるかと思います。でも、打ち合わせは上手くいきました」と新たな報告もあった。なお、受賞の結果を受けて日本公開館数は200館から300館に拡大、そして6月2日(土)・3日(日)2日間限定で先行上映も決定した。『万引き家族』は6月8日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:万引き家族 2018年6月8日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開© 2018フジテレビジョンギャガAOI Pro.
2018年05月24日ケン・ローチ監督が22日、第69回カンヌ国際映画祭で歴代8人目となる2度目のパルムドール賞受賞者となった。2006年の『麦の穂をゆらす風』以来10年ぶりに新作『アイ・ダニエル・ブレイク』で同映画祭最高賞を受賞した。コメディアンのデイブ・ジョンズが主役を務めた同作品は、妻を失い、心臓発作の影響で働くことも困難な状況を強いられているが、政府から援助を得ることもできないイングランド北部に暮らす中年男性の姿を追ったストーリーとなっている。同映画祭の審査員たちは「頑張り屋と怠け者」という嘲笑的な対比が横行する現代のイギリスで、鉄条網に囲まれたかのような福祉行政の無人地帯に迷い込んでしまったキャラクターたちの描写を高く評価した。メル・ギブソンからトロフィーを受け取ったローチ監督は、その受賞スピーチの中で「緊縮経済における危険な政策」について苦言を呈した。「私たちは希望のメッセージを伝えなくてはなりません。こんな世界ではなくてもいいのだと」「私たちが暮らしている現代社会は危険な状態です。新自由主義という考え方によって引き起こされた緊縮経済における危険な政策に支配され、私たちの生活に大惨事をもたらされています」そして同映画祭の今年のグランプリにはグザヴィエ・ドラン監督の新作『イッツ・オンリー・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド』が選ばれた。審査員賞にはアンドレア・アーノルド監督の『アメリカン・ハニー』、女優賞には『マ・ローザ』のジャクリン・ホセが選ばれた。『ザ・セールスマン』はアスガル・ファルハーディーが脚本賞を受賞し、主演を務めたシャハブ・ホセイニが男優賞を獲得している。監督賞には『グラデュエーション』のクリスティアン・ムンジウ監督、『パーソナル・ショッパー』のオリヴィエ・アサイヤス監督が輝いた。(C)BANG Media International
2016年05月24日第69回カンヌ国際映画祭授賞式が5月22日夜(現地時間)に開催され、イギリスの名匠ケン・ローチ監督の『I,Daniel Blake』(原題)が最高賞パルムドールに輝いた。2006年の『麦の穂を揺らす風』以来、10年ぶり2度目のパルムドール受賞となったケン・ローチ。『I,Daniel Blake』は、心臓病で失業した木工職人ダニエルと、貧困にあえぐシングルマザーのケイティが生活保護を求めるものの拒まれ、窮地に陥る姿を描く。社会主義者として知られるケン・ローチは「貧困にあえぐ人々に取材した作品で、このような豪華な場にいるのは、やや違和感がありますが」と前置きしつつ、「カンヌ映画祭を支える労働者の人々に感謝します」とスピーチした。社会保障システムの欠陥を告発しつつも、『天使の分け前』に通じるユーモアもあり、観客、評論家の評価も高く、納得の結果となった。次席にあたるグランプリは、カナダの若き天才グザヴィエ・ドランの『It’s Only The End of the World』(原題)に贈られた。一昨年『Mommy/マミー』で審査員賞を受賞したグザヴィエは、さらなる名誉に感激の涙をぬぐった。本作はギャスパー・ウリエル、マリオン・コティヤール、ヴァンサン・カッセルらフランスのオールスターで描く、秘密を抱えた家族のドラマ。受賞者会見でグザヴィエは「いままでは観客はどう思うのか、ということを考えていたが、これからは自分に忠実でありたい」と語った。監督賞はクリスチャン・ムンジウとオリヴィエ・アサイヤスの同時受賞。アサイヤスが『アクトレス~女たちの舞台~』に続いてクリステン・スチュアートを起用した『Personal Shopper』(原題)は心霊映画だったためか現地での評価が低く、『マッドマックス怒りのデスロード』のジョージ・ミラー率いる審査員団の意外な選択に記者席からはブーイングが起きた。このほかの主な受賞作は以下の通り。パルムドール『I, Daniel Blake』ケン・ローチ(イギリス)グランプリ『It’s Only The End of the World』グザヴィエ・ドラン(カナダ)監督賞『Graduetion』クリスチャン・ムンジウ(ルーマニア)監督賞『Personal Shopper』オリヴィエ・アサイヤス(フランス)脚本賞『The Salesman』アスガル・ファルハーディー(イラン)審査員賞『American Honey』アンドレア・アーノルド(イギリス)男優賞『The Salesman』シャハーフ・ホセイニ(イラン)女優賞『Ma’ Rosa』ジャクリン・ホセ(フィリピン)(photo / text:Ayako Ishizu)
2016年05月23日24日夜(現地時間)、第68回カンヌ国際映画祭の授賞式が行われ、コンペティション部門の最高賞パルムドールはジャック・オディアール(仏)監督の『ディーパン』(原題)に贈られた。また、日本から妻夫木聡が参加した『黒衣の刺客』の侯孝賢(ホウ・シャオシェン/台湾)監督が、監督賞に輝いた。侯孝賢監督は壇上で、「監督賞をいただけて感激です。作家映画を作るのは決して簡単なことではありませんし、資金を獲得するのも難しいことです。スタッフに感謝します。また主演のスー・チー、チャン・チェン、そして全ての人に感謝いたします」と喜びを語り、会場にいたスー・チーとチャン・チェンも感激の面持ちだった。すでに帰国していた妻夫木さんは「侯孝賢監督の作品に参加できたこと、このような素晴らしい賞を受賞したこと、こんな奇跡的な瞬間に立ち会えたことに幸せを感じています。一期一会の心を忘れず、これからも人や作品に出会えていけたらと思います」とコメントした。日本の是枝裕和監督の『海街diary』は無冠に終わったが、「ある視点」部門では黒沢清監督が『岸辺の旅』で監督賞を受賞した。パルムドール受賞作『ディーパン』(原題)は、スリランカ内戦で全てを失ったタミール族の兵士ディーパンが、偽装家族とフランスで難民として暮らす姿を描く。オディアール監督は『預言者』で2009年にグランプリを受賞しているが、パルムは初となった。下馬評の高かったポール・ソレンティーノ(伊)の『YOUTH』(英題)、ナンニ・モレッティの『MY MOTHER』(私の母)などイタリア勢を破っての受賞に、記者席の一部からはブーイングもあがったが、力強いラブストーリーとなっている。一方、誰もが納得したのが、男優賞の『MEASURE OF A MAN』(英題)で、失業とモラルの狭間で苦悩する男を演じたフランスの人気俳優ヴァンサン・ランドン。ハンガリーの新鋭ラズロ・ネメスがユダヤ人強制収容所を舞台にした『SON OF SAUL』(英題)のグランプリ受賞も、期待通りの結果となった。審査員の1人である女優シエナ・ミラーは「私は観たときに、圧倒されてしまった。映画祭が始まってすぐに観たのに、最後までその強烈さは忘れられなかった」と明かした。女優賞は『CAROL』(英・原題)のルーニー・マーラ(米)、『MON ROI』(原題)のエマニュエル・ベスコ(仏)の同時受賞。メキシコの若手監督ミシェル・フランコがティム・ロス主演で終末医療専門の看護師を描いた『CHRONIC』(原題)が脚本賞に、ヨルゴス・ランティモス(ギリシャ)が独身者が禁じられた近未来をコリン・ファレル主演で描く『THE LOBSTER』(原題)が審査員賞に輝いた。2人は前作がいずれも「ある視点」部門のグランプリを受賞しており、まさにカンヌの申し子となった。全体にフランス勢が圧勝という印象であり、現地のテレビではヴァンサン・ランドンの栄冠が大きく報じられている。(photo / text:Ayako Ishizu)
2015年05月26日カンヌ映画祭の最高賞パルムドールに、フランスのジャック・オーディアール監督の『Dheepan』が輝いた。オーディアール監督は、過去に『預言者』『君と歩く世界』でコンペ入りしているが、いずれの年もミヒャエル・ハネケ監督にパルムをさらわれていることもあり、授賞スピーチでは「ミヒャエル、今年、映画を作らないでいてくれてありがとう」と語っている。その他の情報2番目の賞にあたるグランプリは、ハンガリーのラズロ・ネメス監督の『Son of Saul』、監督賞は、妻夫木聡が出演した台湾のホウ・シャオシェン監督の(『黒衣の刺客』)が受賞。男優賞はフランスのヴァンサン・ランドン(『The Measure of a Man』)。女優賞はアメリカのルーニー・マーラ(『Carol』)とフランスのエマニュエル・ベルコ(『Mon roi』)のダブル受賞となった。日本からコンペ入りしていた是枝秀和監督の『海街diary』は無冠に終わったが、ある視点部門では、黒沢清監督の『岸辺の旅』が監督賞に輝いている。文:猿渡由紀
2015年05月25日第65回カンヌ映画祭の受賞結果が、フランス時間27日夜、発表された。最高賞パルムドールに輝いたのは、ミヒャエル・ハネケ監督の『アムール(原題)』。ハネケは2009年に『白いリボン』でパルムドールを受賞しており、わずか3年の間に二度もカンヌの最高賞を獲得したことになる。最高賞の次にあたるグランプリは、イタリアのマッテオ・ガッローネ監督の『リアリティ(原題)』が受賞。ガッローネ監督は、前作『ゴモラ』で審査員特別賞を受賞している。男優賞は『狩り(原題)』のマッツ・ミケルセンが受賞。受賞スピーチでミケルセンは「感激している。すごいサプライズだ」とコメント。授賞式後の記者会見では、思わず泣きそうになったと告白した。同作品でのミケルセンの演技ついて、審査員のひとりユアン・マクレガーは、「静かで繊細な演技。観る者の心を完全に惹き付ける」と褒めたたえている。今年のコンペ部門にはアメリカ作品が多く、ブラッド・ピット、ニコール・キッドマン、リース・ウィザースプーン、ブルース・ウィリス、マシュー・マコノヒー、クリステン・スチュワート、ロバート・パティンソン、シャイア・ラブーフなどハリウッドスターが多数レッドカーペットを歩いた。しかしアメリカ映画は何も受賞しないまま。同じく、フランス映画の受賞もなかった。日本の監督の作品はなかったが、日米合作のアッバス・キアロスタミ監督作『ライク・サムワン・イン・ラブ(原題)』がコンペ入り。「ある視点」部門では若松孝二監督の『11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち』が上映されたが、受賞には至らなかった。主な受賞結果は以下のとおり。パルムドール:『アムール(原題)』グランプリ:『リアリティ(原題)』監督賞:カルロス・レイガダス(『闇の後の光(原題)』)審査員賞:『天使の取り分(原題)』男優賞:マッツ・ミケルセン(『狩り(原題)』)女優賞:クリスティーナ・フルトゥ、コスミーナ・ストラタン(『ビヨンド・ザ・ヒルズ(原題)』)脚本賞:クリスティアン・ムンジウ(『ビヨンド・ザ・ヒルズ(原題)』)ある視点:『アフター・ルチア(原題)』取材・文:猿渡由紀
2012年05月28日第64回カンヌ国際映画祭の授賞式が22日夜〈現地時間)に行われ、テレンス・マリック監督(米)の『ツリー・オブ・ライフ』が、最高賞パルムドールに輝いた。社会的に成功した男が、厳格な父に育てられた1950年代の少年時代をふり返りながら、家族とは、生命とは何かと問いかけるヒューマンドラマ。父親役をブラッド・ピットが演じている。公の場に一切出ないマリック監督は授賞式も欠席、代理でプロデューサーが楯を受け取った。女優賞は、『メランコリア』のキルスティン・ダンストが受賞。 監督はナチ発言騒動でカンヌへの出入り禁止が言い渡されたラース・フォン・トリアーだが、これに対して審査委員長のロバート・デ・ニーロは「作品とその件は別で、良いと思う人が多いから選ばれた」と発言。さらに審査員のフランス人監督オリヴィエ・アサイヤスは「これはすばらしい映画。フォン・トリアーの作品の中でも1、2を争う出来」と擁護した。男優賞は、『アーティスト』(原題)で無声映画時代のハリウッドスターを演じたフランスの人気俳優ジャン・デュジャルダンが、予想通りに受賞した。また次点にあたるグランプリは2作品が選ばれるなど、審査員団の苦心がうかがわれた。日本映画2本(『一命』、『朱花の月』)は受賞を逃したことについて、ジョニー・トーは「日本映画もすばらしかったが、賞は限られている」と語った。今年は審査員賞を受賞した『ポリス』をはじめ、児童虐待をテーマにした映画が多く、子供を守らなければ世界の未来はない、という潮流をかんじさせる結果だった。<主な受賞結果>パルムドール『ツリー・オブ・ライフ』/テレンス・マリック監督グランプリ『少年と自転車』(原題)/ジャン・ピエール&リュック・ダルデンヌ監督『昔々、アナトリアで』(原題)/ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督監督賞ニコラス・ウィンディング・レフン監督(『ドライブ』<原題>)男優賞ジャン・デュジャルダン(『アーティスト』<原題>)女優賞キルスティン・ダンスト(『メランコリア』<原題>)脚本賞『脚注』(原題)/ジョセフ・シダー審査員賞『ポリス』(原題)/マイウェン・ル・ベスコ監督(photo/text:Ayako Ishizu)特集「カンヌ国際映画祭現地から最新ニュースお届け」■関連作品:第64回カンヌ国際映画祭 [映画祭]ツリー・オブ・ライフ 2011年8月12日より丸の内ルーブルほか全国にて公開© 2010 Cottonwood Pictures, LLC. All Rights Reservedメランコリア 2011年、全国にて公開予定© 2011 ZENTROPA ENTERTAINMENTS APS27 MEMFIS FILM INTERNATIONAL AB ZENTROPA INTERNATIONAL SWEDEN AB SLOT MACHINE SARL LIBERATOR PRODUCTIONS SARL ARTE FRANCE CINEMA ZENTROPA INTERNATIONAL KOLN GMBH■関連記事:【カンヌレポート8】テーマが明確な作品が勝利の鍵?気になるパルム・ドールの行方【カンヌレポート番外編】カンヌに華をそえる!スターたちのファッションチェック【カンヌレポート7】瑛太、初カンヌに緊張監督は時代劇に3D起用理由を説明【カンヌレポート6】ブラピ、子供たちに対し「すごい俳優だと思ってくれれば(笑)」【カンヌレポート5】金城武、北野武になる?
2011年05月23日カンヌ映画祭も残すところあと3日。こちらでの評価を総合すると、最高賞パルムドールに一番近いところにいると思われるのが、イギリスのマイク・リー(『秘密と嘘』でパルムドール受賞経験あり)が中高年シングルの悲喜劇をつづる『Another Year』(原題)と、地元フランスの監督兼俳優グザビエ・ブーヴォワによるアルジェリアの修道士殺害事件に基づく美しくも悲しいドラマ『Of Gods and Men』(原題)。これに続くのが、タイのアピチャットポン・ウィーラセタクンが輪廻転生を独自のスタイルで描く『Uncle Boonmee Recalls His Past Lives』(原題)も、そのあまりにぶっ飛んだ表現に否定的な意見もあるものの評価が高い。また、昨年審査員を務めた韓国のイ・チャンドン(『シークレット・サンシャイン』)の『Poetry』(原題)も、60代女性の魂の彷徨を描き、パルム候補のひとつ。さらに、フランスのラシッド・ブシャレブの『Outside The Law』(原題)もアルジェリア独立運動を扱い論争を巻き起こしているが、力強い1本。映像の美しさ、演技、そしてテーマ性の高さからいって、この中では『Of Gods and Men』がもっともパルムドールにふさわしいと思えるが、果たしてティム・バートン以下審査員団のジャッジはいかに?日本の北野武監督の『アウトレイジ』はスクリーン誌が4点中0.9点という厳しい点数の一方、カイエ・デュ・シネマ誌などは高く評価。意外とカンヌはこうした極端な映画に賞を与える傾向があるので、パルムは難しくとも、監督賞あたりをさらう可能性は捨てきれない。今年は死を描く映画が多すぎたため、個人的にはマチュー・アマルリックが監督、主演したバーレスク・ショーの舞台裏を描く『On Tour』(原題)のような、生命力あふれる映画に光をあてたい。結果発表は23日夜。(photo/text:Ayako Ishizu)第63回カンヌ国際映画祭 現地レポート■関連作品:第63回カンヌ国際映画祭 [映画祭] 2010年5月12日開幕© Brigitte Lacombe – ad design graphique■関連記事:審問に出廷しなかったリンジー・ローハンに逮捕状発布【カンヌレポート 04】たけし、批評家の採点は辛口も観客からは5分の拍手の嵐【カンヌレポート 03】74歳ウディ・アレン意気軒昂!「モテる役じゃなきゃ嫌」【カンヌレポート 02】『ウォール・ストリート』シャイア&キャリー揃って登場成海璃子カンヌで“最後の”書道パフォーマンスを披露することが決定!
2010年05月21日