『アギーレ/神の怒り』やニコール・キッドマン主演『アラビアの女王 愛と宿命の日々』などの作品で知られる巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク監督の新作『歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡』が、7月29日(金)をもって閉館が決定している岩波ホールにて6月4日(土)より公開することが決定。併せて、日本版のポスタービジュアルと予告編が解禁された。彗星のように現れこの世を去っていったイギリス人作家ブルース・チャトウィン(1940-1989)。本作は、彼の没後30年に、生前チャトウィンと親交を結んだヘルツォーク監督が制作したドキュメンタリー。ヘルツォーク監督は、パタゴニアや中央オーストラリアのアボリジニの地など、チャトウィンが歩いた道を自らも辿り、チャトウィンが魅了された「ノマディズム/放浪」という、人間の存在の根底にある大きな概念を探究する旅に出る。ヘルツォーク監督のドキュメンタリーが劇場公開されるのは、2012年の『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』以来10年ぶりとなり、また、神田神保町・岩波ホールでヘルツォーク監督作を公開するのは、1983年の『アギーレ/神の怒り』以来、39年ぶり。岩波ホールは1月11日に公式HPで7月29日(金)をもって閉館することを発表しており、本作品は岩波ホールでの最後の上映作品となる。配給のサニーフィルムは今回の公開決定に際し、「動かずしてあらゆる情報を簡単に入手することができる今の時代に、未知との遭遇を求め旅の中に自らの生き方を探した作家チャトウィンのドキュメンタリーを公開することに大きな意義を感じています。“自分の足で歩き、見て、感じる”ことの大切さを伝える本作品が、今まさに新たな一歩を踏み出そうとする多くの方々にヒントと勇気を与えてくれる事を心より信じています。世界の映画と共に半世紀以上旅をしてきた偉大な劇場で是非本作品をご覧いただけたら心より嬉しく思います」とコメントを寄せている。Story旅人で作家のブルース・チャトウィンは、幼少の頃、祖母の家のガラス張りの飾り棚にあった“ブロントサウルス”の毛皮をきっかけに、先史時代や人類史に関心を抱いた。美術品の蒐集家、考古学の研究生、ジャーナリストと、様々なフィールドで非凡な才能を発揮したチャトウィンが最終的に選んだのは自らの足で旅をしながら小説を書く人生。南米を旅し、デビュー作「パタゴニア」を書き上げたチャトウィンは、その後、アボリジニの神話に魅せられ、中央オーストラリアを旅した。当時は不治の病だったHIVに感染し、自らに訪れる死を悟ったチャトウィンは、死に近づいたアボリジニが生を受けた地に帰還するように、自らの死に方を探りながら「ソングライン」を書きあげる。映画は、一枚の毛皮から始まったチャトウィンの旅がユーカリの木陰の下で終わるまで、その過程で交差した人々のインタビューを交えながら、全8章、ヘルツォーク監督自身のナレーションで綴られていく。『歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡』は6月4日(土)より岩波ホールにて公開、7月29日(金)まで。(text:cinemacafe.net)■関連作品:歩いて見た世界 ブルース・チャトウィンの足跡 2021年6月4日より岩波ホールにて公開
2022年03月16日ジュード・ロウが、新作『Queen Of The Desert』(原題)に出演することが決まった。ジュードは、作家ガートルード・ベルの生涯をヴェルナー・ヘルツォーク監督が描く同新作で、ナオミ・ワッツやロバート・パティンソンと共演することになるという。同作でナオミは、探検家や作家、考古学者、大英帝国の情報員などとして20世紀初頭に多彩な活躍をしたガートルードに扮し、一方のロバートは「アラビアのロレンス」ことトーマス・エドワード・ロレンスを演じることがすでに決定している。まだジュードの役柄は明らかにされていないものの、ガートルードと2年間に渡って恋人関係にあったチャールズ・ドハティ=ワイリー役になる可能性があるという。本作のプロデュースを担当するニック・ラスランは「女性版『アラビアのロレンス』とも呼ばれるベル女史の素晴らしい物語を描く作品で、ヘルツォーク監督とまた一緒に組めるなんて非常に嬉しいです」と同作への期待を語っている。さらに、同作のセールスを担当するシエラ/アフィニティ社のニック・マイヤーCEOも「このような重要なプロジェクトで才能溢れるヘルツォーク監督と一緒に仕事ができることは、とても大切な機会です。我々は、ヘルツォーク監督がこの素晴らしい歴史大作を世界中の観客のみなさんのために映画化するのを楽しみにしています」と続けた。『Queen Of The Desert』は、来年3月にモロッコにてクランクインが予定されている。
2012年11月06日世界最古と言われる3万2千年前の洞窟壁画の様子を捉えたドキュメンタリー映画『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』の試写会が3月1日(木)に都内で行われ、世界中の洞窟壁画を巡っている写真家の石川直樹と、多摩美術大学の教授であり、洞窟壁画についての著作もある写真家・港千尋によるトークセッションが行われた。ドイツの巨匠ヴェルナー・ヘルツォークの最新作で、南仏のショーヴェ洞窟に3Dカメラが潜入。研究者たちの証言なども交えながら貴重な価値を持つ洞窟内の壁画をヴィヴィッドに描き出す。同じフランス内で以前発見されたラスコーの洞窟壁画が、人間が出入りしたことでカビが生えるなどしたこともあり、フランス政府はこのショーヴェ洞窟への立ち入りを厳しく制限しており、カメラが入るのは稀。ヘルツォーク監督はは1日4時間の計6日間というスケジュールの中で撮影を敢行した。港教授は「監督が漏らす愚痴が、いかに撮影が大変だったかを物語っている」とその苦労を察した上で「94年に発見されて、動画として見るのに約20年かかったけど、その間に新たな発見もあり、決して無駄な歳月ではなかった。科学的、芸術的な事実を伝える使命を持って作られた映画です」と絶賛。監督に電話インタビューを行なった石川さんも「深いところでヘルツォークが壁画に共鳴しているのを感じました」とその感動を口にした。写真家として映画、そして壁画から感じる部分は多々あったよう。「写真の面白いところは世界が止まっていること」と語る石川さんは、映画にも出てくる“ネガティブハンド”と呼ばれる、手を壁面において、そこに塗料を吹きかけることで手の形を浮かび上がらせるという技法について「写真の原型と言える」と言及。港教授は一見、一人の人物が描いたように見える動物の絵が、実は数千年の時を挟んで複数の人間の手により描き足されていることを明かし「そういうことを人類が出来たというところに感動しています」としみじみと語った。この日は、コピーライターでエッセイストの糸井重里も観客として来場しており、質疑応答の際にマイクを向けられると「3万2千年前の芸術家たちに対する憧れと敬意を感じさせてもらい嬉しかったです」と笑顔で感想を語った。映画にはショーヴェ壁画の付近で稼働している原子力発電所や、その余熱で運営されている娯楽施設の「ワニ園」なども映し出されており、港教授は「先に上映されたフランスでも賛否両論があったそうです」と明かし、石川さんも「ヘルツォークらしいですね」と今年で70歳を迎える巨匠の衰えることのない創作意欲や批判精神に舌を巻いていた。『世界最古の洞窟壁画 3D忘れられた夢の記憶』は3月3日(土)より全国にて3週間限定公開。■関連作品:世界最古の洞窟壁画 3D忘れられた夢の記憶 2012年3月3日よりTOHOシネマズ日劇、TOHOシネマズ六本木ヒルズにて公開© MMX CREATIVE DIFFERENCES PRODUCTIONS, INC.
2012年03月02日ドイツ映画界が誇る巨匠、ヴェルナー・ヘルツォーク監督が新作の題材に選んだのは、1994年に南仏で発見されたショーヴェ洞窟と、その奥に広がる3万2000年前の洞窟壁画だった。キャリア初となる3D撮影を敢行したドキュメンタリー映画『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』は、最新技術を用いることで現代を生きる私たちと、壁画に思いを込めた太古の人々をつなぐ芸術性とエンターテインメント性を兼ね備えた作品に仕上がっている。ヘルツォーク監督が撮影の舞台裏とショーヴェ洞窟への思いを語る。その他の写真少年時代にラスコー壁画の写真集と出会い、芸術に目覚めたといい「ショーヴェ洞窟の壁画は私に多くの事を語りかけた。そして、私をイマジネーションの世界へと導いてくれたんだ」。それだけに本作の製作には“使命”を感じたと断言する。3D撮影に挑んだ理由も「洞窟で見た壁画はどれも自然が生み出した凹凸に合わせて描かれた立体絵画。それらは3Dでこそ撮影するべきだと思った」と強いこだわりがうかがえる。ショーヴェ洞窟は非常に貴重な遺跡として、フランス政府が厳重に管理し、これまで研究者や学者のみに入場を許諾してきた場所。実際、人が吹く息や体温だけで多大な影響を与えてしまうデリケートな環境で、ヘルツォーク監督率いる撮影隊には、滞在時間や撮影スペースに厳しい制限が課せられた。「十分な明るさを保つ照明器具の持ち込みが禁止されたので、暗闇の中で3Dカメラのピントを合わせるのが非常に難しかった。それに洞窟内は有毒のガスが出ているエリアもあったからね。試練の連続だったが、いかにプロとしての仕事をやり遂げるかに気持ちを集中させた」。見どころはもちろん、3Dで撮影された洞窟壁画。その原始的ながら普遍的な美しさは、観客の知識や情報を飛び越え、ダイレクトに五感を刺激する。「同感だね。先史時代に創り上げた芸術が、私たちのイマジネーションを大いにかきたてる。それは現代人が想像する力を失いかけているということでもあるんだ。確かにこの作品はドキュメンタリーだ。しかし、私が大切にしたいのは事実を表面的に追うだけでなく、その先にある想像の世界を感じさせること。今回、そのことをショーヴェ洞窟が改めて教えてくれたといえる」。「例えば、洞窟の中には少年と狼の足跡がある。少年と狼が一緒に歩いていたのか。それとも、彼らの間には1万年ほどの時間軸の差があるのかも…。考古学的な見地からも、そう考えるだけでロマンがあると思うね。それにライオンの群れの絵は素晴らしい。彼らの目線の先に、私たちには見えない獲物のイメージがある」とヘルツォーク監督自身、ショーヴェ洞窟を通して、イマジネーションの翼を大きく広げていた。『世界最古の洞窟壁画 3D 忘れられた夢の記憶』3月3日(土)よりTOHOシネマズ日劇ほかロードショー取材・文:内田 涼
2012年03月01日