1999年にスタートしたサントリーホールの「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン」。世界最高峰のオーケストラ、ウィーン・フィルの豊麗な響きを、ほぼ毎年、東京にいながらにして直に聴くことのできる機会がうれしい。2年ぶり16回目の開催となる今年は、「ウィーン・フィル オペラを謳う」と題した、オーケストラ・メンバーによる室内楽のスペシャル公演で開幕する(11月19日(月)・サントリーホール大ホール)。5月下旬の段階で、出演者詳細は未発表だが、曲目(編成)は次のとおり。【チケット情報はこちら】●R.シュトラウス:弦楽六重奏のためのカプリッチョ●ワーグナー:歌劇《ローエングリン》より前奏曲(ヴァイオリン・アンサンブル)●モーツァルト:ハルモニームジークによるオペラ・メドレー 《フィガロの結婚》より(木管アンサンブル)●ワーグナー:《ヴェーゼンドンク歌曲集》より〈夢〉、ジークフリート牧歌(管楽アンサンブル)●ウェーバー:歌劇《魔弾の射手》より「狩人の合唱」(ホルン四重奏)●バーンスタイン:《ウェストサイド・ストーリー》よりシンフォニック・ダンス(打楽器アンサンブル)ほかコンサート・タイトルどおり、オペラに関連した曲目によるプログラムだ。ご承知のように、ウィーン・フィルは、ウィーン国立歌劇場管弦楽団員として、毎晩のように劇場のオーケストラ・ピットで演奏している奏者たちで構成されている。団員たちに話を聞くと誰もが、オペラの大切さを、また日常的に歌とともに演奏している経験が彼らの音楽作りに大きく寄与していることを教えてくれる。いわばウィーン・フィルの基盤を聴かせましょうというプログラムなわけだ。しかも編成を見ると、弦楽六重奏曲から管楽アンサンブル、打楽器アンサンブルまで、ウィーン・フィルの名技を、パートごとに代わる代わる楽しめてしまう贅沢な内容だ。むろん、小編成の室内楽が、オーケストラのアンサンブル能力を研ぎ澄ますうえでも基盤になっていることはいうまでもない。曲目とオペラの関係について少しだけ補足しておこう。最初の弦楽六重奏は、シュトラウス最後の歌劇《カプリッチョ》の導入の音楽。モーツァルトのオペラ・メドレーの「ハルモニームジーク」は、当時流行した管楽アンサンブルのこと。録音のなかった時代、劇場外でオペラの音楽を楽しむために、この編成用の編曲は人気だった。ワーグナーの歌曲〈夢〉の旋律は、同じ時期に書かれた楽劇《トリスタンとイゾルデ》にも用いられている。《ジークフリート牧歌》は、妻コジマへの私的なプレゼントとして書かれた。「ジークフリート」は彼らの息子の名前だが、曲中の素材が、後年書かれた楽劇《ジークフリート》にも転用されている。という具合に、オペラとの関係もひとひねり効いたプログラム。なんとも粋な、ウィーン・フィルの室内楽スペシャルだ!チケットの一般発売は5月26日(土)午前10時より。なお、一般発売に先がけて、プリセールを実施。受付は5月23(水)午前10時より。文:宮本明
2018年05月21日「クラシックの演奏会には0歳児は入れない」が常識。しかし、これを覆すコンサートがある。東京交響楽団が2007年より開催している「キッズプログラム ~0歳からのオーケストラ~ズーラシアンブラス meets東京交響楽団」だ。【チケット情報はこちら】小さいこどもがいるクラシック・ファンにとっての悩みは「生でクラシック音楽を聴きたくても、こどもが小さくて行けない」、託児サービスのあるコンサートは増えているものの、「せっかくコンサートホールまで一緒にきたのだから親子でクラシック音楽を楽しみたい」といった要望はいままで数多く聞かれてきた。0歳から入場できるコンサートと言えば、童謡やアニメの音楽などをピアノや小編成のアンサンブル、歌のおねえさん・おにいさんと一緒というものが多く、今までコンサートホールでクラシック音楽を聴いてきた層には物足りなく感じる方もいたことだろう。その中でこの東京交響楽団とこどもたちを魅了する動物たちの金管五重奏団「ズーラシアンブラス」が出演するこのコンサートはその路線とは一線を画し、今年はワーグナー:『ローエングリン』第3幕への前奏曲や、ボロディン:ダッタン人の踊りなど、およそこども向けコンサートには演奏されないような多彩なオーケストラの曲がプログラミングされ、本格的なクラシックの名曲をこどもと一緒に楽しめるようになっている。また、このコンサートは見た目の演出にも工夫があり、コンサートの中で“フルオーケストラ” “ズーラシアンブラスと東京交響楽団のアンサンブルとのお楽しみコーナー”、“オーケストラの中にズーラシアンブラスのメンバーが入って一緒に演奏する”など場面展開があり、こどもたちが飽きないよう構成されている。全体の時間も休憩なしの約70分。休憩時間でこどもたちが走り回る心配もなく、むしろ集中して聴ける時間と言えよう。小さいこどもを連れての外出の際に心配になるのはベビーカーやおむつなどの問題だが、これについても「ベビーカー置き場」、「おむつ交換室」、「授乳室」などを会場に準備するなどしっかりと配慮がなされ安心できる。会場となるミューザ川崎シンフォニーホールはJR川崎駅中央西口から直結で大人の足で3分程度。また2月に川崎駅のエキナカがオープン。ラゾーナ川崎とともにコンサート前後のアクテビティも楽しめそうだ。実はこのコンサート、小さなこどものいる楽団員もできることなら客席で自分のこどもと一緒に聴きたいと思うほど充実した内容だそうだ。プロの音楽家がそう思うのだから、小さな頃から本格的なクラシックで音楽デビューなど情操教育にもきっと良いに違いない。公演は4月8日(日)神奈川・ミューザ川崎シンフォニーホールにて。チケット発売中。
2018年03月05日開場20年目のシーズンを迎えている新国立劇場で10月12日、来年5・6月に20周年特別公演として上演される新演出の《フィデリオ》(ベートーヴェン)の制作発表会見が行なわれた。愛と自由が全編を貫くベートーヴェン唯一のオペラ。ドイツ・オペラ史上最重要の古典をどのように描くのか。公演を指揮する飯守泰次郎や演出のカタリーナ・ワーグナーらがそれぞれの思いを語った。新国立劇場オペラ「フィデリオ」のチケット情報飯守にとっては、2014年から4年間の任期を務めた芸術監督としての最後の指揮公演となる。「ベートーヴェンは、ワーグナーと並んで私が最も深く掘り下げてきた作曲家。任期の締めくくりとして《フィデリオ》に取り組めるのは大変意味のあること。ベートーヴェンの理想主義と哲学が表現された、深い感動をもたらす特別な作品。《フィデリオ》と聞いただけで身が引き締まる」(飯守)《フィデリオ》に描かれているのは、政敵に囚われた夫フロレスタンを救うため、男装して監獄に乗り込んだ妻レオノーレの命がけの愛。夫婦愛が軸となる。「身を焦がすような恋も、浮気も裏切りもない夫婦愛はオペラにはなりにくいテーマ。悲劇が足りないという人もいるが、この作品はそんな俗説を超越して、より深く、より高貴な人間性という理念を追求している。声楽的オペラというより、むしろ器楽的で、歌手にも高度な技術が要求される。しかも気品とパワーが必要な、ある意味ワーグナーより難しいオペラ」(飯守)演出はバイロイト音楽祭総監督のカタリーナ・ワーグナー。リヒャルト・ワーグナーの曾孫でもある。父ヴォルフガングは20年前に新国立劇場開場記念公演の《ローエングリン》(ワーグナー)を演出しているので、父娘2代にわたる演出家としての登場となる。「《フィデリオ》に新しい視点を提供したい。大きなテーマとなるのは、人はどのように認識するかということ。同じものを見ても人それぞれ異なる認識を持つ。たとえばレオノーレは女性だけれど男性として認識される。それをもう少し広く考えてもよいのではないか。人物だけでなく「自由」がどのように認識されるのかも考えなければならない。オペラではピツァロとフロレスタンの関係もはっきりとは見えてこない。最終的にどちらが勝ったのかわからないまま終わってしまう。そういうこところにも注目して解釈している。驚くかもしれないけれども、どうぞ楽しみに」(ワーグナー)飯守も「新国立劇場から世界に発信する《フィデリオ》にふさわしい新鮮な舞台を期待」と語る新プロダクション。保守的なアプローチではない、より心理的な解釈の舞台になりそうだ。出演はステファン・グールド(フォロレスタン)、リカルダ・メルベート(レオノーレ)、妻屋秀和(ロッコ)、ミヒャエル・クプファー=ラデツキー(ドン・ピツァロ)、黒田博(ドン・フェルナンド)ほか。初日は2018年5月20日(日)、東京・初台の新国立劇場オペラパレスで。チケットは来年1月27日(土)午前10時より一般発を予定している。取材・文:宮本明
2017年10月13日10月1日(日)に2017/18シーズンの初日を迎える新国立劇場。記念すべき開場20年目のシーズンだ。その幕開けを飾るのはワーグナーの《神々の黄昏》。3年がかりで制作してきた新国立劇場の新しい『ニーベルングの指環』が、いよいよ完結する。【チケット情報はこちら】《神々の黄昏》は4部作中最長の6時間におよぶ超大作。ハーゲンの策略にはまってジークフリートは死に、彼のあとを追った妻ブリュンヒルデが、世界を支配する指環とともに炎に身を投じると、神々の世界は崩落し、すべては無に戻る。「ジークフリートの葬送行進曲」「ブリュンヒルデの自己犠牲」など、単独でも演奏される聴きどころが多数ある、『指環』全作のクライマックスだ。英雄ジークフリートを歌うのはステファン・グールド。今回の「新国リング」で、ローゲ(ラインの黄金)、ジークムント(ワルキューレ)、ジークフリートと演じてきた世界的なヘルデン(英雄)テノールが、4部作を連続制覇することになる、いわばグランドスラム。ブリュンヒルデ役には現在最も注目されるワーグナー歌手であるペトラ・ラング。新国立劇場には昨年の《ローエングリン》に続いての登場。ジークフリートの裏切りに復讐の鬼と化し、最後は神々しい自己犠牲で、悪意に満ちた『指環』の壮大な物語に終止符を打つドラマティックなヒロインを、世界最高水準で聴かせてくれる。オペラ史上屈指の悪役バス、ハーゲンには、昨年の《ワルキューレ》でフンディングを歌ったアルベルト・ペーゼンドルファーが再登場。ブリュンヒルデの異母姉妹のヴァルトラウテにも大物が起用される。現代を代表するメゾ・ソプラノ、ヴァルトラウト・マイヤー。38年間歌い続けているという同役は、彼女の輝かしいキャリアのなかでも重要なレパートリーだ。舞台は故ゲッツ・フリードリヒが1996~99年にフィンランド国立歌劇場で演出したプロダクションで、これまでの3作でもそうだったように、ワーグナーのドラマと音楽を真正面から堪能させてくれる。指揮は新国立劇場芸術監督でワーグナー演奏の第一人者・飯守泰次郎。読売日本交響楽団が初めて新国立劇場のオーケストラ・ピットに入る。4部作中で唯一登場する合唱は、もちろん新国立劇場合唱団。指環を巡る争いの悲劇に幕を降ろし、「愛の救済の動機」が未来への希望を高らかに予感させるフィナーレに向かって、役者が揃った。公演は10月1日(日)4日(水)、7日(土)、11日(水)、14日(土)、17日(火)の全6回。最終日はチケットぴあが1階席前方の中央ブロックを確保。世界有数のワーグナー歌手たちの圧倒的な歌唱と荘厳な分厚いオーケストレーションを、間近で、全身に浴びるように体感するチャンスだ!取材・文:宮本明
2017年09月15日米Googleは12月1日(現地時間)、世界最高峰と呼べるようなオーケストラの演奏や演劇のパフォーマンスを舞台から360度のパノラマで鑑賞できる「Step on stage」の提供を開始した。同社は20カ国以上の60を超える芸術・文化団体との協力でパフォーミングアーツをテーマとしたオンラインギャラリーをGoogle Cultural Instituteで公開し、その中に360度パノラマのインタラクティブコンテンツも用意した。1日時点でStep on stageで楽しめるのは、カーネギーホールでのフィラデルフィア管弦楽団による「ペール・ギュント」、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の「交響曲第9番」のリハーサル、サンパウロ市立劇場での「ローエングリン」のリハーサル、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの「ヘンリー五世」など。パフォーマンスは複数のカメラで収録されており、ユーザーはカメラを切り替えて舞台の上を移動できる。なお、Google Cultural Instituteのパフォーミングアーツでは、神話や歌舞伎、武者などを題材に作られた巨大な山車燈籠が練り歩く「青森ねぶた祭」が世界の演劇の一つとして紹介されている。
2015年12月02日新国立劇場2015/2016シーズンラインアップが発表された。オペラ部門は全10演目。例年同様、新制作3・再演7(内、邦人作品1)となる。新国立劇場オペラの公演情報飯守泰次郎オペラ芸術監督が「新国立劇場は、世界の主要歌劇場として、国際的に高いクオリティを保ち、さらに発展させていくべき存在。そのためには国際的な水準・技量をもったキャスト、そしてレパートリーが重要」と語るように、充実のスタッフ・キャストが揃うラインアップとなった。新制作1本目は、シーズン開幕公演。ワーグナーの超大作「ニーベルングの指環」(4部作)から『ラインの黄金』を取り上げる。ドイツの名演出家ゲッツ・フリードリヒが晩年にフィンランド国立歌劇場で作り上げたプロダクションを上演する。指揮は、ワーグナーの聖地、バイロイト音楽祭で長年キャリアを積んだ飯守オペラ芸術監督が自らタクトを振る。新制作2本目は、同劇場初上演となるヤナーチェクの『イェヌーファ』。世界の主要歌劇場では必ず取り上げられるヤナーチェクだが、日本での上演機会は少ない。演出にはドイツの権威あるオペラ専門誌『オーパンヴェルト』で「年間最高の演出家」を受賞したクリストフ・ロイを迎える。新制作3本目はマスネの『ウェルテル』。演出にはフランスのベテラン、ニコラ・ジョエルを迎える。飯守芸術監督は「(ジョエル)は1976年のバイロイト百年祭で苦楽を共にした仲。久々の再会が楽しみ」と期待を寄せる(同音楽祭で飯守はピエール・ブーレーズの助手、ジョエルはパトリス・シェローの助手を務めた)。再演演目もこれまで好評を博してきた人気作が並ぶ。壮大で華麗な舞台・衣装が魅力の『トスカ』。ヴェルディ最後のオペラで唯一の喜劇『ファルスタッフ』。大人から子どもまで楽しめるファンタジー『魔笛』はオール日本人キャストで。『サロメ』は、ウィーン、パリ、ベルリンでも同役を演じて聴衆を虜にした世界的ソプラノ、ニールントが登場。イタリアのヴェリズモ・オペラの名作からは『アンドレア・シェニエ』を。飯守オペラ芸術監督がタクトを振る『ローエングリン』は、2012年上演時に大好評を博したクラウス・フロリアン・フォークトが再登場。邦人作品は和製オペラの傑作『夕鶴』を上演する。■新国立劇場オペラ2015/2016シーズン2015年10月ワーグナー/楽劇「ニーベルングの指環」序夜ラインの黄金【新制作】11月プッチーニ/トスカ12月ヴェルディ/ファルスタッフ2016年1月モーツァルト/魔笛2・3月ヤナーチェク/イェヌーファ【新制作】3月R.シュトラウス/サロメ4月マスネ/ウェルテル【新制作】4月ジョルダーノ/アンドレア・シェニエ5・6月ワーグナー/ローエングリン7月團伊玖磨/夕鶴
2015年01月23日ウィーンが誇る世界最高のオペラハウス、ウィーン国立歌劇場の日本公演が10月14日に開幕。R.シュトラウス作曲のオペラ『サロメ』が東京文化会館で上演された。「ウィーン国立歌劇場 2012年 日本公演」の公演情報4年ぶり通算8度目の日本公演は、新音楽総監督フランツ・ウェルザー=メスト体制下での初来日だが、当初『サロメ』を指揮予定だったメストは右腕の怪我により来日を断念。代わって、今回の来日公演で『フィガロの結婚』を指揮するペーター・シュナイダーがタクトを振る。10月12日夜に行われた記者会見では、ドミニク・マイヤー同劇場総裁、指揮のペーター・シュナイダー、サロメのキャストたちが登壇。ドミニク・マイヤー総裁は「音楽総監督のウェルザー=メストは、毎日治療を続けないと今後の活動にも影響があるような状態。本人も心待ちにしていただけに残念です。ただ『サロメ』の指揮は、幸運にもシュナイダーさんが代役を受けてくれました。これまで我々の劇場で同作を最も多く指揮している“サロメのスペシャリスト”です」と語る。最後の来日となるエディタ・グルベローヴァをはじめ、スター歌手の帯同も注目だが、同総裁は「才能豊かな若い歌手も紹介したい」という。「サロメ役のグン=ブリット・バークミンは、新しい『サロメ』を素晴らしい歌と演技で表現できる人。またヨカナーン役のマルクス・マルカルトは我々の劇場とドレスデン国立歌劇場に定期的に出演しています」と、同劇場の看板演目である『サロメ』に抜擢した歌手たちを紹介した。続いて、ペーター・シュナイダーは「私自身の初来日も1986年のウィーン国立歌劇場の日本公演。ドイツとオーストリア以外だと、指揮回数は日本が一番多いと思います。最近も新国立劇場で『ローエングリン』を振ったばかり。またウィーン国立歌劇場と一緒に帰ってこられて嬉しい」と語る。また急遽代役を務める『サロメ』について「来年2月にもウィーン国立歌劇場で振る予定。ここのオーケストラは私がどう指揮したいか、よく分かってくれるので、リハーサルも非常に上手くいきました」と自信のほどを窺わせる。記者会見の前に行われた『サロメ』公開リハーサルでは、同作がウィーン国立歌劇場の看板演目であることを改めて証明するようなステージに。オペラ界の重鎮シュナイダーによる安定感抜群のタクト、世界最高のオーケストラが奏でる極彩色豊かな官能の響きにのせ、主役のバークミンが常軌を逸した狂気性と純真な少女性を併せ持つサロメを演じ、観客から熱い拍手が贈られた。同劇場の日本公演は11月4日(日)まで残り8公演。『サロメ』を10月16日(火)・19日(金)に東京文化会館で、『フィガロの結婚』を10月20日(土)・23日(火)・28日(日)に神奈川県民ホールで、『アンナ・ボレーナ』を10月27日(土)・31日(水)・11月4日(日)に東京文化会館で上演。また、今回日本初上演のプロダクションで、現地ウィーンで人気のこども向けオペラ「小学生のためのオペラ『魔笛』」を、10月26日(金)にKAAT 神奈川芸術劇場で開催する。
2012年10月15日新国立劇場オペラ2011/2012シーズンのラストを飾る「ローエングリン」(新制作)が、6月1日(金)に開幕を迎えた。新国立劇場オペラ「ローエングリン」の公演情報「ローエングリン」は、中世の聖杯騎士伝説などを題材に、リヒャルト・ワーグナーが作曲・台本を手がけた傑作オペラ。舞台は10世紀のアントワープ、権勢欲うずまくブラバンド。弟殺しの罪で訴えられたブラバンド公女エルザの窮地を救うため、白鳥の騎士(ローエングリン)が登場するところから物語は展開していく。新国立劇場の上演は、1997年11月の開場記念公演以来15年ぶりとなる今回。新制作の演出を手がけるのはマティアス・フォン・シュテークマン、美術・衣装はロザリエ。ともに“ワーグナーの聖地”バイロイト音楽祭で長年にわたり活躍してきたふたりは、今回日本で初めてタッグを組む。演出のシュテークマンは、ローエングリンについて「キーワードはふたつ。神話と悲劇です。他のワーグナー作品に見られる救済の結末が(この作品には)なく、それは変化することを受け入れられない登場人物全員が、それぞれ何らかの失敗を犯してしまうことに起因します」と評す。人と人でないものが登場する――神話的要素を含む世界観をいかに表現しきるかに焦点を置いたロザリエの美術は、モダンな手法を用いたものになった。舞台上には、光と色彩が溢れる美しいセットが出現。ローエングリンの精神的な美しさを表現する青と銀をはじめ、登場人物たちの心情を色鮮やかに表す照明効果が、舞台空間を駆け巡り、視覚的にも惹きつけるステージとなった。また豪華キャストにも注目したい。特に白眉なのは、圧倒的な存在感を放ったローエングリン役のクラウス・フロリアン・フォークトだ。“バイロイトの新たな英雄”とも称賛される、しなやかで甘く、官能的で艶のある美声を披露。観客たちは、まるで劇中で白鳥の騎士に恋するエルザのように魅了された。その他、エルザ役にはワーグナー作品に定評のあるリカルダ・メルベート、テルラムント伯爵役にゲルト・グロホフスキー、国王役にギュンター・グロイスベック、欧州の一流歌劇場で活躍する歌手たちが出演。ドイツ・オペラの第一人者である名匠ペーター・シュナイダーの指揮のもと、歌唱面でも充実したステージを作り上げた。新国立劇場オペラ「ローエングリン」は、6月16日(土)まで全6公演を開催。チケットは発売中。
2012年06月01日開館15周年を迎える新国立劇場の2012/2013シーズン オペラ部門のラインアップが発表。1月23日に同劇場にて記者会見が行われた。「新国立劇場オペラ」の公演情報「3月に発生した未曾有の大震災、そして原発事故の影響により、昨年は大変な困難に見舞われました。文化の役割とは何か、劇場のなすべきことは何かを真剣に考えましたし、多くのお客様から励ましのお言葉もいただきました。また、その中で抜擢した日本人歌手たちの活躍は、嬉しい結果となりました」と昨年を振り返るオペラ芸術監督・尾高忠明。そして任期3シーズン目となる2012/2013シーズンの演目については「2013年が生誕200年のワーグナーとヴェルディ、同じく生誕100周年を迎えるブリテンの傑作と、スタンダートな名作や人気演目を揃えました」と語った。シーズン開幕には、英国人作曲家ブリテンの傑作『ピーター・グライムズ』を上演。またワーグナー作品には、現シーズンの『さまよえるオランダ人』(3月)と『ローエングリン』(6月)に続いて『タンホイザー』を、ヴェルディ作品には、これまで同劇場の節目でも上演されてきた『アイーダ』(フランコ・ゼッフィレッリ演出)と『ナブッコ』(新制作)が、ラインアップに選ばれている。その他には『トスカ』『セビリアの理髪師』『愛の妙薬』といったイタリア・オペラの名作、モーツァルトのオペラ2作『魔笛』『コジ・ファン・トゥッテ』、そして新国立劇場3年ぶりとなる新作オペラとして、泉鏡花原作の創作委嘱作品『夜叉ヶ池』(世界初演)を上演する。◆新国立劇場オペラ 2012/2013シーズンラインアップ2012年10月ブリテン作曲:ピーター・グライムズ [新制作]11月プッチーニ作曲:トスカ11月・12月ロッシーニ作曲:セビリアの理髪師2013年1月・2月ワーグナー作曲:タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦1月・2月ドニゼッティ作曲:愛の妙薬3月ヴェルディ作曲:アイーダ [開場15周年記念公演]4月モーツァルト作曲:魔笛 [新制作]5月・6月ヴェルディ作曲:ナブッコ [新制作]6月モーツァルト作曲:コジ・ファン・トゥッテ6月香月修作曲:夜叉ヶ池 [新制作/創作委嘱作品・世界初演]
2012年01月24日ドイツ・オペラの名門、バイエルン国立歌劇場が6年ぶりの来日公演の開幕を翌日に控えた9月22日 都内で記者会見を開催。ニコラウス・バッハラー総裁、音楽総監督ケント・ナガノ、ヨハン・ボータ、ワルトラウト・マイヤーらが登壇した。今回の来日公演では、日本でも高い人気を誇るソプラノ界の女王エディタ・グルベローヴァを主演に迎える『ロベルト・デヴェリュー』(ドニゼッティ作曲)、劇場と縁の深い大作曲家ふたりの名作―『ローエングリン』(ワーグナー作曲)と『ナクソス島のアリアドネ』(リヒャルト・シュトラウス作曲)を上演する。バッハラー総裁は、一大事業と捉える今回の日本公演に向け、4年前から準備を進めていたことに触れ、日本公演への参加を強く希望するメンバー400名で来日したことを明かした。「震災後の日本で意欲の高いスタッフと世界的なソリストを揃えて日本公演を行える事を嬉しく思います。私たちは世界を代表するオペラハウスのひとつだと自負しています。今回の3作品はどれも劇場を代表するもので、芸術性の高さをつぶさに見ていただきたい」と自信をのぞかせた。今回『ローエングリン』『ナクソス島のアリアドネ』で指揮者として日本でのオペラ・デビューを果すケント・ナガノは「明日からの本番に向けて準備万端です。エキサイティングな気持ちで臨みたい」と抱負を語った。会見には『ローエングリン』のキャストが登壇。ワーグナーテノールとして知られるヨハン・ボータ(ローエングリン役)は、「2年前にミラノ・スカラ座日本公演で歌ったばかりですが、また日本で歌えて嬉しく思っています」。これまで何度も来日しており、今回バイエルンでは初のオルトルート役を披露するワルトラウト・マイヤーは、「日本の観客は、来るたびに素晴らしいと感じます。今回の舞台もとても楽しみです」と、日本公演への思いをそれぞれ語った。バイエルン国立歌劇場 来日公演は、9月23日(金・祝)から10月10日(月・祝)まで、神奈川県立県民ホール、東京文化会館、NHKホールで上演される。また、9月28日(水)にはサントリーホールにて、来日記念特別演奏会としてバイエルン国立管弦楽団の公演も開催される。チケットは発売中。■バイエルン国立歌劇場 2011年日本公演《ロベルト・デヴェリュー》9月23日(金・祝) 神奈川県立県民ホール9月27日(火)・10月1日(土) 東京文化会館《ローエングリン》9月25日(日)・9月29日(木)・10月2日(日) NHKホール《ナクソス島のアリアドネ》10月5日(水)・8日(土)・10日(月・祝) 東京文化会館《特別演奏会》9月28日(水) サントリーホール
2011年09月22日