ヴィム・ヴェンダース監督作品『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』より予告編と場面写真が解禁された。本作は、戦後ドイツ最大の芸術家、アンゼルム・キーファーの全てをヴィム・ヴェンダース監督が描くドキュメンタリー。この度解禁となった予告編では、広大なアトリエの床に寝そべる、上半身が裸のアンゼルム・キーファーの自由奔放な姿に始まり、その代名詞とも言える巨大な芸術品を作りだす秘密に迫っていく。「ナチス、戦争、神話、文学……アンゼルムは傷ついた世界を創造する―」というナレーションに重なるように、その歴史的背景を感じずにはいられない立体的な作品が眼前に迫ってくる。ヴィム・ヴェンダース監督が2年の月日をかけて映像化した、アンゼルムの芸術作品の全貌が“圧倒的没入感”で立ち現れ、「まだ高みに到達していない。私は止まらないんだ」と、進化を止めようとしないアンゼルムの声が静かにそして高らかに響く予告編となっている。併せて解禁となった新たな場面写は、アンゼルムのインタビューカットや、ナチス式の敬礼をする自身の姿を撮影したシリーズ「占領」の1枚のほか、アンゼルムの幼少期を演じるヴェンダースの孫甥アントン・ヴェンダースや青年期を演じる、アンゼルム息子のダニエル・キーファーのカットも。また、巨大な作品の前に佇む、アンゼルムとヴェンダース監督のスチール写真も切り取られている。『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』は6月21日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて順次公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家 2024年6月21日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国順次公開© 2023, Road Movies, All rights reserved.
2024年04月08日第96回アカデミー賞の授賞式直前、レッドカーペットに『PERFECT DAYS』で国際長編映画賞にノミネートされているヴィム・ヴェンダース監督と役所広司、視覚効果賞候補の『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督とVFXのチーム、長編アニメ映画賞候補の『君たちはどう生きるか』チームが登場した。ヴェンダース監督と役所さんは時折肩を組みながらリラックスした様子でWOWOWのインタビューに応じ、マーティン・スコセッシ監督やロバート・ダウニー・Jr.と対面したとコメント。役所広司とヴィム・ヴェンダース監督 Photo by Kevin Mazur/Getty Images作品が世界で受け入れた理由について役所さんは「国は違っても人の気持ちは共通しているものがある」と語り、「(特に)大都市の人たちの心には響くんじゃないでしょうか」と語った。また、お馴染みのゴジラ人形が蝶ネクタイのゴールデンゴジラ仕様となった『ゴジラ-1.0』の山崎監督は、現地で「ストーリーとキャラクターがよかった」と言われているとコメント。ゴールデンゴジラ Photo by Mike Coppola/Getty Images視覚効果賞に日本映画として初ノミネートとなったが、予算の規模がハリウッド大作と違う中で候補となった理由について、VFXディレクターの渋谷紀世子らは「ヒヤヒヤだったけれど、ここに来ているみんなで頑張った」とコメント。「(それぞれが)好き勝手言ってるだけ」と山崎監督が笑顔を見せる後ろで「チームワーク!」「みんなで頑張ったよ!」と笑顔のチームの声が飛び交っていた。山崎貴監督 Photo by Gilbert Flores/Variety via Getty Imagesそんな『ゴジラ-1.0』チームは揃ってゴジラ仕様の靴でレッドカーペットを闊歩した。『ゴジラ-1.0』Photo by Kevin Mazur/Getty Imagesさらに、『君たちはどう生きるか』からは中島清文さん、福田博之さん、依田謙一さんが参加した。(シネマカフェ編集部)■関連作品:君たちはどう生きるか 2023年7月14日より公開©2023 Studio Ghibliゴジラ-1.0 2023年11月3日より全国東宝系にて公開©2023 TOHO CO.,LTD.PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2024年03月11日第47回日本アカデミー賞の授賞式が3月8日(金) 、東京・グランドプリンスホテル新高輪国際館パミールで行われ、山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』が最優秀作品賞を受賞。同作は、最優秀助演女優賞(安藤サクラ)、最優秀脚本賞(山崎貴)、最優秀撮影賞、最優秀照明賞、最優秀美術賞、最優秀録音賞、最優秀編集賞の8冠を達成した。日本が生んだ特撮怪獣映画の金字塔「ゴジラ」の生誕70周年記念作品で、日本で製作された実写のゴジラ映画としては通算30作目。国内外でヒットを記録しており、日本映画として初めて第96回アカデミー賞の視覚効果賞にノミネートされている。最優秀作品賞の受賞について、山崎監督は「皆さんとゴジラがとった賞だと思います。作品賞って一番うれしいです。スタッフ、キャスト全員でお祝いできるので、めちゃくちゃうれしい」と喜びの声。神木隆之介(主人公・敷島浩一役)は「一丸となって、ゴジラに立ち向かって、ゴジラに引っ張っていってもらったなと思います」と日本が世界に誇るアイコンに感謝を示した。(C)日本アカデミー賞協会第96回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされている『PERFECT DAYS』は、最優秀監督賞(ヴィム・ヴェンダース)、最優秀主演男優賞(役所広司)の2部門を受賞した。役所が最優秀主演男優賞に輝くのは、『Shall We ダンス?』(第20回)、『うなぎ』(第21回)、『孤狼の血』(第42回)に続き通算4度目。この日は、『ゴジラ-1.0』が破竹の勢いで受賞を重ねていただけに、「これでやっと、ゴジラの牙を抜いた感じがします」と歓喜した。また、授賞式欠席のヴェンダース監督に代わり、最優秀監督賞のブロンズを受け取り、「日本という国、そして日本人が大好きでいらっしゃる。ここにいたら喜ぶと思います。今は(米アカデミー賞出席のため)アメリカにいると思いますが、このすばらしい賞をお渡ししたい」と話していた。役所広司 (C)日本アカデミー賞協会また、安藤サクラは最優秀主演女優賞(『怪物』)、最優秀助演女優賞(『ゴジラ-1.0』)をダブル受賞した。同一俳優が、同じ年に両賞に輝くのは10年ぶり。最優秀主演女優賞を受賞した際には、役所のコメントに便乗し「これでゴジラの牙を、また1本抜いたけど……、なんか複雑」と照れ笑い。最優秀助演女優賞に関しては、昨年の『ある男』に続き2年連続の受賞を果たし、プレゼンターも務めた安藤本人が、自分の受賞を発表することになった。安藤サクラ (C)日本アカデミー賞協会最優秀助演男優賞に輝いたのは、『月』(石井裕也監督)の磯村勇斗。実際の障がい者殺傷事件を題材にした辺見庸の小説を映画化した本作で、施設職員で殺傷事件の犯人となる青年を演じた。「この映画は参加するにあたっても、作るにあたっても、公開するにあたっても、たくさんの壁があった。映画をお客様に届けるのが、どれだけ大変なのか痛感した作品」と振り返り、「石井監督とともに難しい作品に挑戦し、覚悟をもって臨んだので、この賞は自分でもらうというよりは、一緒に作り上げた皆さんと喜びを分かち合えれば」と喜びを噛みしめていた。磯村勇斗 (C)日本アカデミー賞協会第47回日本アカデミー賞は、2023年1月1日~12月31日に東京地区の商業映画劇場にて有料で初公開され、同一劇場で1日3回以上、かつ2週間以上継続して上映された40分以上の劇場用劇映画及びアニメーション作品が対象となっている。取材・文:内田涼受賞作品/受賞者リスト最優秀作品賞:『ゴジラ-1.0』最優秀監督賞:ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』最優秀主演男優賞:役所広司『PERFECT DAYS』最優秀主演女優賞:安藤サクラ『怪物』最優秀助演男優賞:磯村勇斗『月』最優秀助演女優賞:安藤サクラ『ゴジラ-1.0』最優秀脚本賞:『ゴジラ-1.0』最優秀撮影賞:『ゴジラ-1.0』最優秀照明賞:『ゴジラ-1.0』最優秀美術賞:『ゴジラ-1.0』最優秀録音賞:『ゴジラ-1.0』最優秀編集賞:『ゴジラ-1.0』最優秀音楽賞:『BLUE GIANT』最優秀外国作品賞:『ミッション:インポッシブルデッドレコニング PART ONE』(東和ピクチャーズ)最優秀アニメーション作品賞:『君たちはどう生きるか』新人俳優賞:アイナ・ジ・エンド(『キリエのうた』)、桜田ひより(『交換ウソ日記』)、原菜乃華(『ミステリと言う勿れ』)、福原遥(『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』)、市川染五郎(『レジェンド&バタフライ』)、黒川想矢(『怪物』)、高橋文哉(『交換ウソ日記』)、柊木陽太(『怪物』)話題賞(作品部門):『キリエのうた』話題賞(俳優部門):山田裕貴『ゴジラ-1.0』『キングダム運命の炎』『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編決戦』『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編運命』『BLUE GIANT』
2024年03月08日ヴィム・ヴェンダース監督作『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』が、6月21日(金)より全国順次公開されることが決定。日本版ポスタービジュアルが解禁された。本作は、戦後ドイツを代表する芸術家であり、ドイツの暗黒の歴史を主題とした作品群で知られるアンゼルム・キーファーの生涯と、その現在を追ったドキュメンタリー。監督は、『PERFECT DAYS』(23)で第76回カンヌ国際映画祭主演俳優賞(役所広司)を受賞し、第96回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたことも記憶に新しい、ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース。『パリ、テキサス』(84)、『ベルリン・天使の詩』(87)、『ミリオンダラー・ホテル』(00)などの劇映画だけでなく、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(99)、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(11)、『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』(14)などドキュメンタリーも手掛け、世界各国から高い評価を受けている。アンゼルム・キーファーは、ナチスや戦争、神話などのテーマを、絵画、彫刻、建築など多彩な表現で壮大な世界を創造する、戦後ドイツを代表する芸術家。1991年、高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門を受賞。ヴェンダース監督と同じ、1945年生まれであり、初期の作品の中には、戦後ナチスの暗い歴史に目を背けようとする世論に反し、ナチス式の敬礼を揶揄する作品を作るなど“タブー”に挑戦する作家として美術界の反発を生みながらも注目を浴びる存在となった。1971年からは、フランスに拠点を移し、わらや生地を用いて、歴史、哲学、詩、聖書の世界を創作している。彼の作品に一貫しているのは、戦後ドイツ、そして死に向き合ってきたことであり、“傷ついたもの”への鎮魂を捧げ続けている。製作期間には2年の歳月を費やし、3D&6Kで撮影。従来の3D映画のような飛び出すような仕掛けではなく、絵画や建築を、立体的で目の前に存在するかのような奥行きのある映像を再現し、ドキュメンタリー作品において新しい可能性を追求した。「先入観を捨てて、この衝撃的なビジュアルをただ楽しんでもらいたい」とヴェンダース監督は語る。キャストには、アンゼルム・キーファー本人のほか、自身の青年期を息子のダニエル・キーファーが演じ、幼少期をヴェンダース監督の息子、アントン・ヴェンダースが務めている。本作は『PERFECT DAYS』が出品された第76回カンヌ国際映画祭で、ヴィム・ヴェンダース監督作品として2作同時にプレミア上映された。この度解禁となった日本版ポスタービジュアルは、作品の1つである巨大な塔の中に佇むアンゼルム・キーファーの後ろ姿を映し出したもの。中央のキャッチコピー「圧倒的な没入感」とある通り、目の前に巨大で立体的な芸術品が迫りくるような迫力ある3D映像を、ぜひ劇場で確かめてほしい。さらに併せて、アンゼルムの手掛けた作品の一部が捉えられた場面写真も解禁。また、2025年3月下旬から6月下旬まで、世界遺産・二条城でアンゼルム・キーファーの大規模個展が開催されることも決定している。『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』は6月21日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて順次公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家 2024年6月21日より TOHO シネマズ日比谷ほか全国順次公開© 2023, Road Movies, All rights reserved.
2024年03月08日ヴィム・ヴェンダース監督の『Anselm』(原題)が『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』の邦題で6月21日(金)に公開されることが決定し、日本版ポスタービジュアルと場面写真2点が解禁された。本作は、戦後ドイツを代表する芸術家であり、ドイツの暗黒の歴史を主題とした作品群で知られるアンゼルム・キーファーの生涯と、その現在を追ったドキュメンタリー。第76回カンヌ国際映画祭で役所広司が主演俳優賞を受賞、第96回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたことも記憶に新しい『PERFECT DAYS』のヴィム・ヴェンダースが監督を務める。『パリ、テキサス』、『ベルリン・天使の詩』などの劇映画だけでなく、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』、『Pina/ピナ・バウシュ踊り続けるいのち』などドキュメンタリーも手掛け、世界各国から高い評価を受けている。アンゼルム・キーファーは、ナチスや戦争、神話などのテーマを、絵画、彫刻、建築など多彩な表現で壮大な世界を創造する戦後ドイツを代表する芸術家で、1991年には高松宮殿下記念世界文化賞・絵画部門を受賞。ヴェンダース監督と同じ1945年生まれであり、初期の作品の中には、戦後ナチスの暗い歴史に目を背けようとする世論に反し、ナチス式の敬礼を揶揄する作品を作るなど“タブー”に挑戦する作家として美術界の反発を生みながらも注目を浴びる存在となった。1971年からはフランスに拠点を移し、わらや生地を用いて、歴史、哲学、詩、聖書の世界を創作している。彼の作品に一貫しているのは戦後ドイツ、そして死に向き合ってきたことであり、“傷ついたもの”への鎮魂を捧げ続けている。ヴェンダース監督は映画の制作期間に2年の歳月を費やし、3D&6Kで撮影。「先入観を捨てて、この衝撃的なビジュアルをただ楽しんでもらいたい」と監督が語るように、従来の3D映画のような飛び出すような仕掛けではなく、絵画や建築を立体的で目の前に存在するかのような奥行きのある映像で再現し、ドキュメンタリー作品において新しい可能性を追求した。キャストには、アンゼルム・キーファー本人のほか、自身の青年期を息子のダニエル・キーファーが演じ、幼少期をヴェンダース監督の息子、アントン・ヴェンダースが務めている。本作は『PERFECT DAYS』が出品された第76回カンヌ国際映画祭で、ヴィム・ヴェンダース監督作品として2作同時にプレミア上映されたほか、昨年の第36回東京国際映画祭でも上映された。今回解禁となった日本版ポスタービジュアルは、作品のひとつである巨大な塔の中に佇むアンゼルム・キーファーの後ろ姿を映し出したもの。中央のキャッチコピー「圧倒的な没入感」とある通り、目の前に巨大で立体的な芸術品が迫りくるような迫力ある3D映像に期待が高まる。併せて解禁となった場面写真は、アンゼルムの手掛けた作品の一部を捉えたものとなっている。また、2025年3月下旬から6月下旬まで、世界遺産・二条城でアンゼルム・キーファーの大規模個展が開催されることも決定している。『アンゼルム “傷ついた世界”の芸術家』6/21(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国順次公開公式サイト()監督:ヴィム・ヴェンダースエグゼクティブプロデューサー:ジェレミー・トーマス撮影:フランツ・ルスティグステレオグラファー:セバスチャンクレイマー編集:マクシーン・ゲディケ作曲:レオナルド・キュスナー出演:アンゼルム・キーファー/ダニエル・キーファー/アントン・ヴェンダース2023年/ドイツ/93分/1.50:1/ドイツ語・英語原題:Anselmカラー・B&W/5.1ch/3D&2D字幕:吉川美奈子配給:アンプラグド(C)2023, Road Movies, All rights reserved.
2024年03月08日ヴィム・ヴェンダース、ホウ・シャオシェン、アッバス・キアロスタミ、ソフィア・コッポラなど、世界中の映画監督が“東京”を舞台に撮影した作品を集めた特集上映「映画に愛される街、TOKYO! ―アート・キッチュ・エキゾチズム―」が3月16日(土)から3月29日(金)まで、渋谷の映画館・ユーロスペースにて開催決定。特集上映の予告編とポスタービジュアルも到着した。本企画は作品上映やトークセッションを通じて【東京/TOKYO】の多様な魅力を紐解き、観客や次代の作家たちの感受性を刺激することを意図した令和初の試み。あらゆるものを貪欲に取り込み、常に進化を続け、多様性を体現してきたこの街は国内外の多くの映画作家たちをいまも変わらず惹きつけている。『東京画 2K レストア版』© Wim Wenders Stiftung 2014上映作品には古今東西、ジャンルを問わず、バラエティーに富んだ映画が集結。ヴィム・ヴェンダースが小津安二郎の東京を探し歩く『東京画』、ファッションデザイナー・山本耀司の仕事を追った『都市とモードのビデオノート』をはじめ、イランの巨匠アッバス・キアロスタミが現代を舞台に日本人の俳優・スタッフを起用した『ライク・サムワン・イン・ラブ』。『ライク・サムワン・イン・ラブ』©mk2/Eurospace近未来の東京で暮らすトルコ人家族を描いた日本初公開のサスペンス・スリラー『IGUANA TOKYO ーイグアナ トウキョウー』(カアン・ミュジデジ監督)に加え、スペシャル・スクリーニング『あなたの東京、わたしの東京』(ホームムービー特別上映会)として、家族の記録、地元のお祭り、散歩の風景など、地域や家庭に眠っていた8mmや16mmフィルムのホームムービーを上映。商業映画とはまた異なる、市井の作家の私的な視点が捉えた東京の記憶が、観る者に語りかける。<上映作品一覧>『IGUANA TOKYO ーイグアナ トウキョウー』カアン・ミュジデジ監督『TOKYO EYES』ジャン=ピエール・リモザン監督『TOKYO!』ミシェル・ゴンドリー監督/レオス・カラックス監督/ポン・ジュノ監督『ライク・サムワン・イン・ラブ』アッバス・キアロスタミ監督『ロスト・イン・トランスレーション』ソフィア・コッポラ監督『書かれた顔 4Kレストア版』ダニエル・シュミット監督『神々の山嶺 』パトリック・インバート監督『都市とモードのビデオノート 4Kレストア版』ヴィム・ヴェンダース監督『東京画 2Kレストア版』ヴィム・ヴェンダース監督『二郎は鮨の夢を見る』デビッド・ゲルブ監督『不思議なクミコ』クリス・マルケル監督『珈琲時光』ホウ・シャオシェン監督スペシャル・スクリーニング『あなたの東京、わたしの東京』(ホームムービー特別上映会)ポスタービジュアルは音楽、書籍、雑誌のイラストをはじめ漫画家やアニメーターとしても活躍するイラストレーターのサヌキナオヤ氏の描き下ろしで制作、木々が生い茂る公園に光が差し込んでいる様子が描かれている。今回の特集上映はスクリーンの外の東京の街並みと、スクリーンの中の【東京/TOKYO】が地続きにあるような、自らの街に対する認識が拡張されるような体験を提供できる唯一無二の機会に。『TOKYO!』ミシェル・ゴンドリー監督「インテリア・デザイン」©2008 「TOKYO!」世界中の映画監督たちの映画の中で【東京/TOKYO】がどのような背景や被写体であったかを改めて見つめ直し、感じ取ることは、この街の魅力を再発見し、あるいは問い直すことに繋がるだろう。『珈琲時光』「映画に愛される街、TOKYO! ―アート・キッチュ・エキゾチズム―」は3月16日(土)~ 29日(金)ユーロスペースにて開催。(シネマカフェ編集部)■関連作品:TOKYO! 2008年8月16日より渋谷シネマライズ、シネ・リーブル池袋ほか全国にて順次公開ライク・サムワン・イン・ラブ 2012年9月、渋谷・ユーロスペースにて公開二郎は鮨の夢を見る 2013年2月2日よりヒューマントラストシネマ有楽町、 ユーロスペースほか全国にて公開© 2011 Sushi Movie,LLC神々の山嶺 2022年7月8日より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開© Le Sommet des Dieux - 2021 / Julianne Films / Folivari / Mélusine Productions / France 3 Cinéma / Aura Cinéma書かれた顔 4Kレストア版 2023年3月11日よりユーロスペースほか全国にて公開1995 T&C FILM AG / EURO SPACE
2024年02月22日現代ドイツを代表する映画監督・写真家であるヴィム・ヴェンダースの展覧会『ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし』が、3月2日(土) まで東京・N&A Art SITEで開催されている。本展では、ヴェンダースが「究極のロードムービー」と称する『夢の涯てまでも』のクライマックスシーンから生み出された、鮮烈な色彩の電子絵画作品「Electronic Paintings」に加え、『パリ、テキサス』ロケ時にヴェンダースが撮影し、写真家としての才能を知らしめたアメリカ中西部の風景写真「Written in the west」シリーズが展示される。また「恵比寿映像祭2024『月へ行く30の方法/30 Ways to Go to the Moon』」の地域連携プログラムの一環として、2月20日(火) から3月1日(金)(2月26日、2月29日を除く)、3月20日(水・祝) の10日間にかけて『夢の涯てまでも ディレクターズカット 4Kレストア版』が東京都写真美術館で上映されるほか、本展に関するドキュメンタリー映像上映・トークイベントが行われる予定だ。<開催概要>『ヴィム・ヴェンダースの透明なまなざし / Wim Wenders’s Lucid Gaze』2月1日(木) ~3月2日(土) 東京・N&A Art SITE※日曜・月曜・祝日は休館公式サイト:
2024年02月07日役所広司主演、ヴィム・ヴェンダース監督最新作『PERFECT DAYS』よりインタビュー映像が解禁された。公開から1か月たってなお劇場は平日、土日も変わらず賑わいを見せ、公開劇場も増加し続けている本作。動員48万人を突破、興行収入は7億円が目前となっている。この度解禁となったのは、監督ヴィム・ヴェンダースの妻、ドナータ・ヴェンダースと主演を務めた役所広司の妻、橋本さえ子が一番近くにいるからこそ見えた景色を率直に語るインタビュー映像。「長編映画としては、これ以上ヴィムらしい映画はない」と言い切るのは、自らも写真家として活躍しているヴェンダース監督の妻ドナータ・ヴェンダースだ。長編映画を撮るときは、常にプロダクション側の都合を優先してきたというヴィム。結婚して以来30年間、夫の仕事を間近で見てきたドナータは、撮影の都合で、エンディングを最初に撮影する方法に対して「ヴィム本来のやり方ではない」と語る。そんな中、アーティストとしてヴィム作家性を最大限に尊重して製作に望んだ日本のスタッフに対し、「『あなたが最も手腕を発揮できる方法こそがベストな方法です』と言ってくれたからこそ、このような傑作が生まれたのです」と、最大限の感謝の意を示した。そのほか、インタビューでは長年のキャリアを誇り、世界的に確固たる地位を築いたヴェンダース監督の「映画全体を絵画として見る」ということについて、また主人公の平山の細かい点がヴィムに似ているということ、またプロデュースの高崎卓馬から受けた、愛と献身的な仕事ぶりに対して「ヴィムもインスピレーションを受けていた」ことなど、いちばん近くで見つめている妻だからこその解像度で、本作の舞台裏を語っている。そして、主演の役所広司の妻、橋本さえ子は、端々に役所さんのつぶやきを織り交ぜて、俳優としての役所さんの自宅での様子などを語る。本作はドキュメンタリーのように撮影されたが、演じる平山の生活をシンプルに追った撮影から帰宅した役所さんについて「目がこっちにもあっちにもついている感じがして――普通とは違う神経の使い方だったんだと思う」と当時をふり返る。撮影前に役所さんは「俺、平山じゃないからなあ」とふと呟いたと明かすが、毎日のようにツナギを着てすごしたり、庭を掃除したりと「なんとなく気分をそっちの方向に向ける」役作りをしていたという。そして迎えた撮影期間について「みんなの気持ちが一つになって、奇跡的な巡り合い」があったとふり返った。最後に家でもその役のままなのか、という問いに対し、自宅での飾らない役所さんの様子を披露。その魅力を存分に垣間見ることができるインタビューとなった。また、プロデュースを担当した柳井康治のインタビューも同時公開。インタビューではトイレから映画に至った経緯を説明。「トイレのプロジェクトをやる前に、清掃がとても大事なことを半分、義務感で」考えていると語り、「形で示す」ことが必要だと思っていたと語る。プロジェクトが始まり、ヴェンダース監督と話す中で「すっと」腹落ちしたことを明かし、自分の気持ちに気付かされて「すごい嬉しかった」という。ヴェンダース監督とのやり取りの中で、得たことが大きかった柳井氏は、主演の役所さんに対しても「僕の方が気付かされることが多かった」とリスペクトを捧げ、最後に役所さんが演じた平山というキャラクターに対し「物事に真正面から対峙をするという姿勢とか、こう、そのありよう身につけられたらいいなぁって思う。何かこう、自分ができてないところはすごい見えちゃうから、憧れというよりかは、う~ん、反省の方が多いかも」と、素直な気持ちを明かして締め括った。『PERFECT DAYS』は全国にて公開中。(シネマカフェ編集部)■関連作品:PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2024年01月27日1月18日(現地時間)、「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」がパリで2024-25秋冬メンズコレクションを発表。ファッションショーのランウェイに『PERFECT DAYS』のヴィム・ヴェンダース監督がモデルとしてサプライズ出演し、2パターンの衣装を披露した。どちらもバレエダンサーのオニール八菜と腕を組んで登場。ブランドの公式インスタグラムが投稿した写真に、「かっこよすぎる」「レジェンド!」「ヨウジヤマモトはヴィム・ヴェンダース監督の友だちなんだよ」などのコメントが寄せられている。ヴェンダース監督とデザイナーの山本耀司氏の出会いは1989年にさかのぼる。ヴェンダース監督が山本氏を題材として撮ったドキュメンタリー『都市とモードのビデオノート』をきっかけに、親しくなったという。監督はショーのバックステージで、「私たちはずっと前から親しくて、兄弟みたいなんですよ。すごく若い時から同じ思い出を共有してきました」と「The Hollywood Reporter」に語った。ショーのBGMには「レディオヘッド」の「Creep」、デュア・リパの「Levitating」などが使用された。山本氏は「静けさが一番です。みなさんを音で驚かすようなことはしたくない。私は自分の服でみなさんを驚かせたいのです」とコメントしたという。ショーにはヴェンダース監督のほか、「ウォーキング・デッド」のノーマン・リーダスもヨウジヤマモトのショーに出演した。(賀来比呂美)■関連作品:PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2024年01月22日名匠ヴィム・ヴェンダースが長年リスペクトしてやまない役所広司を主演に迎えて贈る『PERFECT DAYS』。第96回アカデミー賞国際長編映画賞・日本代表に選出され、見事ショートリストに選出、本選ノミネートへの期待も高まる本作から、主演を務めた役所さんのロング・インタビューが解禁となった。トイレ清掃員の“平山”という男を演じ、カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した役所さん。撮影を終えほっとした表情の役所さんが、『PERFECT DAYS』について、主人公・平山について、そして絶賛された演技について率直に語った。「映画ってやっぱ自由な発想ですべきだなと思いますね」と、リラックスした表情で語る役所さんは、映画に対して同じ展開ではなく、また同じ絵でもない「見たことがないものがみたい」と明かす。『PERFECT DAYS』はヴェンダースのこだわりが詰まった、フィクションでありながらドキュメンタリーのような作品。役所さんにとってはいままで経験した作品とは異なる体験になったよう。また、役所さんが演じた主人公・平山は前半ほとんどセリフがなく、朝起きて、身支度をし、仕事であるトイレへ清掃に向かう。そんなルーティンが淡々と描かれ、ナレーションもない。そんな展開に役所さんは「人生は誰も、何も説明的でもないし、伏線もない。何が起こるかわかんない」というところに惹きつけられるという。「こういう映画は50年後、100年後に見られても、古くならない映画を目指してるんじゃないかなと思う」と語り、小津映画を例に出しながら「自分が年取ってきたり、家族ができたりなんかそういうことによってなんか全然やっぱり深みがある映画だってことに初めてこう気がつくしもっと年取るともっと面白くなるかもしれない。やっぱできればそういう映画に出たいですよね」と『PERFECT DAYS』もそうあってほしいとの願いを込めて語った。「自分と平山は似ていない」と言い、監督の“Who is Hirayama”というメモ(平山がなぜ今の生活に至ったか、その精神のプロセスが書かれている)を手がかりに、平山を演じきった役所さん。「あれだけこう同じ繰り返しを見せられても、やっぱりそこにはこう生きた人間がね、人間とか生きた植物が動いている映画っていうのは結構持つんだなって」と語っている。『PERFECT DAYS』は全国にて公開中。(シネマカフェ編集部)■関連作品:PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2023年12月30日12月22日(金)、23日(土)、24日(日) の全国映画動員ランキングは、『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』が初登場1位となった。2022年からTVアニメ化もされている、人気漫画『SPY×FAMILY』初の劇場版。原作者の遠藤達哉が監修に携わった完全オリジナルエピソードで、伝統菓子の本場を訪れた一家がハプニングに巻き込まれる。監督は片桐崇。声の出演は江口拓也、種崎敦美、早見沙織、松田健一郎ら。先週1位スタートを切った『ウィッシュ』、2位の『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』、そして3位の『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』はそれぞれ1ランクダウンで2位、3位、4位へと後退した。反対に公開6週目の『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』は、1ランクアップで5位へと順位を上げた。6位には、初登場の『仮面ライダー THE WINTER MOVIE ガッチャード&ギーツ 最強ケミー★ガッチャ大作戦』がランクイン。2023年9月から放送された『仮面ライダーガッチャード』と、2022年から放送された『仮面ライダーギーツ』がクロスオーバーする劇場版。人工生命体によって始まった戦いに、仮面ライダーギーツに似た狐の姿のケミーも加わり主人公たちを新たな運命が待ち受ける。監督は山口恭平。出演は本島純政、松本麗世、藤林泰也、安倍乙、富園力也ら。そのほか初登場組では、『PERFECT DAYS』が9位となった。第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞に輝いた、役所広司が主演を務める人間ドラマ。清掃員として働きながら静かな日々を送っていた男が、再会をきっかけに過去に目を向けていく様子をドキュメンタリータッチで描く。監督は『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』のヴィム・ヴェンダース。共演は柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未ら。今週は『宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました』『サンクスギビング』などが封切られる。全国映画動員ランキングトップ10全国映画動員ランキングトップ10(興行通信社調べ)1位『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』2位『ウィッシュ』3位『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』4位『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』5位『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』6位『仮面ライダー THE WINTER MOVIE ガッチャード&ギーツ 最強ケミー★ガッチャ大作戦』7位『パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー』8位『ゴジラ-1.0』9位『PERFECT DAYS』10位『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』
2023年12月25日ヴィム・ヴェンダース監督による、東京を舞台にした『PERFECT DAYS』は、企画が勝利した映画ともいえる。プロデューサーとして世界的監督を口説き、共に脚本を手がけた高崎卓馬さんが語る、完成までの旅の軌跡。巨匠ヴィム・ヴェンダース最新作は“木漏れ日のような映画”『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など、映画史に残るような作品を撮り続けている、ドイツの映画監督、ヴィム・ヴェンダース。東京を舞台に撮影され、主演の役所広司さんが第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞したことでも注目を浴びている、最新作『PERFECT DAYS』がいよいよ公開を迎える。本作の種となったのが、渋谷区にある17か所の公共トイレを世界的な建築家やクリエイターがリニューアルする「THE TOKYO TOILET」というプロジェクト。発案者であるファーストリテイリング取締役の柳井康治さんが、高崎卓馬さんに相談を持ちかけたのが、長い旅の始まりだ。「いいトイレを作ったもののメンテナンスが大変で、みんなが大事に使うようになるにはどうすればいいだろう、という相談でした。かつて渋谷系と呼ばれたミュージシャンに曲を作ってもらう案から派生して、架空の映画のサウンドトラックにしたら面白いんじゃないかという話になって。そしたら柳井さんが、それなら本当に映画を作らないかと言い出したんです。存在しない映画のサントラだから、企画として面白いのに…」映画を作るのは簡単なことではないが、一度浮かんだアイデアに対する高揚感のほうが勝ってしまった。さらに監督候補に挙がったヴェンダースを、ふたりとも敬愛していたことが決め手となった。「ドキュメンタリーとフィクション、どちらも撮っている彼だからこそできる表現があると思ったので、“あなたじゃないとダメなんです”というラブレターを書きました。もし断りの手紙が来たとしても、それを額に入れて飾ってやるぞと思っていましたね(笑)」主人公の平山という男は、渋谷のトイレの清掃員で、押上の古いアパートに一人で暮らしている。早朝、近所の老女が掃除する竹ぼうきの音で目を覚まし、風変わりなデザインのトイレを隅々まで磨き上げ、文庫本を読みながら寝落ちするまで、傍からは同じことを繰り返す日々に見える。高崎さんは監督と共に、平山の人物像を立体的に作り上げていった。「どこで何を撮るのか、シナリオハンティングのためにヴィムが日本に来たとき、主人公の暮らしぶりや好きなものを、一問一答形式で質問攻めにされました。実際に街を歩いて撮影場所を探したりもしたのですが、最終日に『男の暮らしはわかったが、シナリオはどこにもない』と言われて焦りました。それでこの1週間、彼と話したり見たりしたことを思い出し、日本には“木漏れ日”という言葉があると伝えました。男の人生は木のように動かず、毎日変わらないけど少しずつ成長している。そんななかある出来事が起きて木が揺れ、木漏れ日を作るのだと」撮影期間は16日間。高崎さんがまず驚いたのは、主演の役所さんの変化だった。「現場に入ってきたときの顔が明らかに違ったんです。時間をかけてシナリオを読み込み、書かれていない部分を想像して、平山のことをずっと考えていたのでしょうが、細胞を入れ替えたのかと思うくらい別人になっていましたね」撮影現場でのヴェンダース監督の様子については、「懐の大きな映画の先生だった」と振り返る。「もっとアーティストらしく、感情に任せて撮るのかなと想像していたのですが、プロデューサー的でもあって、僕らの意見にも耳を傾けてチームを回していく人でした。彼は“マスターショット”と呼んでいたのですが、各シーンの最も大事な構図を考えて現場に臨んでいて、それが毎回とにかく美しく、真横で感動していました」完成した映画には日本に暮らす私たちがよく知る光景が映し出されているものの、ここではないどこかのような不思議な余韻を残す。「シナリオを作っているとき、ヴィムにどういうテーマなのか聞いたら、そういうことを考えちゃダメだって言われたんです。それが言葉にできるのだったら、映画を作る必要はない。映画でしか捕まえられないものにしないといけないんだって。作り終わってやっぱり思うのは、みんなが同じ感想でなくてもいいということ。絵や写真と一緒で、今日観て気づくこともあれば、1週間後、あるいは10年後に観て気づくこともある。しかも何かを感じることに正解も間違いもないのが、映画の一番いいところ。そういう作品になったかな、という気はしています」『PERFECT DAYS』トイレ清掃員として働きながら、音楽や本、休日に通う居酒屋、仕事の合間に見上げる木漏れ日などに喜びを感じている平山。ある日、思いがけない人が現れ、彼の心が揺れ動く。フィクションをドキュメントのように追う手法で、観終わったら“平山さん”に会いに行きたくなるはず。監督/ヴィム・ヴェンダース脚本/ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬出演/役所広司、中野有紗、柄本時生、アオイヤマダ、田中泯、三浦友和ほか12月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開。©2023 MASTER MIND Ltd.たかさき・たくまクリエイティブディレクター、小説家。電通グループ グロース・オフィサー。JR東日本「行くぜ、東北」など数々の広告キャンペーンを手がけ、2度のクリエイター・オブ・ザ・イヤーなど国内外の受賞多数。著書に小説『オートリバース』(中央公論新社)、絵本『まっくろ』(講談社)など。※『anan』2023年12月27日号より。写真・中島慶子取材、文・兵藤育子(by anan編集部)
2023年12月22日ヴィム・ヴェンダース監督最新作『PERFECT DAYS』の劇場公開を記念し、「映画 PERFECT DAYS 公開前夜スペシャル『THEATER RADIO』」が12月21日(木)夜9時より「ABEMA」にて独占生放送されることが決定した。ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースが東京の街を舞台に制作した『PERFECT DAYS』は渋谷の公共トイレ清掃員の日常を描いた、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品作品。主演の役所広司が最優秀男優賞を受賞し、劇場公開を前に、大きな話題を集めている。役所さんが演じる主人公・平山がカセットで聴くのは、ルー・リード、「アニマルズ」、ニーナ・シモン、「ザ・ローリング・ストーンズ」、オーティス・レディングなどの名曲の数々。本番組では、「Ovall」、さらさ、Yaffle、荒谷翔大ら4組の多彩なアーティストたちがこれらの劇中曲を披露し、珠玉のカバーライブを行う。さらに、映画『PERFECT DAYS』にまつわる対談の模様も公開。アオイヤマダ、長井短の同作キャスト陣や、共同脚本・プロデュースを務めた高崎卓馬氏、またJ-WAVEの朝の顔・別所哲也による、ここでしか聞くことのできない豪華対談が実現。そのほかにも、J-WAVEナビゲーター陣による同作の感想や、それぞれが思う「PERFECT DAY=完璧な日」をコメント形式で紹介する。特別番組「映画 PERFECT DAYS 公開前夜スペシャル『THEATER RADIO』」はABEMAにて12月21日(木)夜9時~11時、12月28日(木)夜10時からJ-WAVE(81.3FM)にて放送。『PERFECT DAYS』は12月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2023年12月18日12月22日(金) から公開される映画『PERFECT DAYS』より、ヴィム・ヴェンダース監督のインタビュー映像が公開された。『PERFECT DAYS』は、『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など、数々の傑作を世に送り出し続けてきたヴェンダース監督が役所広司を主演に迎え、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた作品だ。ヴェンダース監督が、日本の公共トイレのなかに「small sanctuaries of peace and dignity」(平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所)を見出し、清掃員の平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡いだ本作は、第76回カンヌ国際映画祭で役所が最優秀男優賞を受賞。また、第50回テルライド映画祭、第48回トロント国際映画祭、第71回サンセバスチャン映画祭、第60回台北金馬映画祭と名だたる映画祭に招待され、米国アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表選出も決定した。今回公開されたロングインタビューは映画の制作直後にヴェンダース監督のオフィスにて収録。当初15分程度を予定していたインタビューは徐々に熱を帯び、映画がどのように生まれたか、シナリオづくりのときに何をイメージしていたか、一緒に制作していたチームにも演じる役所広司にも伝えなかった思いを語った。1時間半にも及んだインタビューは、共同脚本の高崎卓馬がテーマごとにまとめ、6本の映像に。今回の動画は「観客自身を、平山にする」というテーマでまとめられたインタビューとなっている。なお、公式サイトでは12月22日(金) にロングインタビュー全6本を掲載予定。さらに、主人公平山の「映画にはならなかった日々」の353日をDAYS OF HIRAYAMAというオリジナルコンテンツとして公開。触れるたびに表情を変える不思議な 『スクロール・ブック』と合わせて、主人公平山の世界を存分に感じることができるサイトとなっている。ヴィム・ヴェンダース監督 インタビュー映像<作品情報>『PERFECT DAYS』12月22日(金) 公開公式サイト: MASTER MIND Ltd.
2023年12月11日役所広司主演、ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』より本予告映像が解禁された。東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた本作は、第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞受賞のほか各国映画祭を席巻、米国アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表選出にも決定している。先月より開催された第36回東京国際映画祭ではオープニング作品としてアジアプレミアが実施され、SNS上では、「完璧な作品」「素晴らしすぎて泣いてしまった」「見た日がパーフェクトデイになる」といった絶賛の感想が相次いでいる。そんな本作より、日本版本予告映像が解禁。映像は、竹箒で地面を掃く音が聞こえてくる中、いつもの朝を迎えたことを悟った主人公・平山の日常から始まる。布団を畳み、ドアを開けて空を見上げ、アパートの前にある自販機で缶コーヒーを買う。なんてことの無い毎日のルーティーンだ。「この世界は、ほんとはたくさんの世界がある。つながっているようにみえても、つながっていない世界がある」というセリフを背に、平山はいくつもの風変わりなトイレを清掃してまわる。全編に流れているルー・リードの「PERFECT DAY」が盛り上がりを見せるとき、平山は一日を終え、薄い布団に寝そべり、小さな明かりで文庫本を読み耽るのだった…。キャッチコピーの「こんなふうに生きていけたなら」とともに、歌詞にもある「Oh, it’s such a perfect day」を体現するような予告編に仕上がっている。また映像には、「詩情漂う傑作」(tagesschau)や「ヴィム・ヴェンダース監督の美しい禅の精神が再び現れた」(PREMIERE)、「ほとんどの時間を無言の演技で支配している 魅惑的で優雅な役所広司の演技」(DEADLINE)といった世界中の海外メディアによる本作のレビューが映し出されており、ドイツの名匠が捉えた日本を舞台にした新たな名作が世界中で受け入れられていることを裏付ける。さらに、11月3日(金・祝)からは、ムビチケ前売り券の発売も開始されている。『PERFECT DAYS』は12月22日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2023年11月03日東京・丸の内に誕生した新たな映画祭「丸の内映画祭」が、10月28日から30日の3日間、丸ビルホールで開催。記念すべき第1回の今年は、第36回東京国際映画祭のコンペティション部門審査委員長を務める巨匠ヴィム・ヴェンダース監督作品や、今泉力哉をはじめ、国内外から注目を集める日本映画監督の作品など、計7タイトルの上映とトーク・レクチャーが行われた。最終日の30日には、『裸足で鳴らしてみせろ』の工藤梨穂監督と、『ケイコ 目を澄ませて』で第46回日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を受賞した岸井ゆきのによるトークイベントを開催。日本映画界を担う若き映画人の2人が、同日上映されたヴェンダース監督作の『夢の涯てまでも』(ディレクターズカット 4Kレストア版)について、その魅力を語った。工藤梨穂地球の滅亡が近づく中で、主人公のトレヴァー(ウィリアム・ハート)は、父親が発明した装置を使って、世界中を旅して集めた映像を、盲目の母親の脳に送り込もうとしていた。フランス、ドイツ、日本など世界各地でロケが行われた壮大な作品で、詩情豊かな映像、追跡劇、SF的な設定、そして小津作品への深い愛情が結集した287分の超大作だ。工藤監督は「美術1つ1つが世界を作っている。世界観やばっ」とヴェンダース監督のこだわりに驚きの声。本作に限らず「ロードムービーが好き」だといい、「旅の中で、何かをしたいというのがある。青春、かな?」とその理由を説明し、『天国の口、終りの楽園。』(アルフォンソ・キュアロン監督)、『イントゥ・ザ・ワイルド』(ショーン・ペン監督)も好きだと明かすと、岸井は「最高ですね」とうなずいた。岸井ゆきの岸井は『夢の涯てまでも』について、「SFのような、でもすんなり入り込める地続きのSF」とコメント。ヴェンダース監督の最新作で、第36回東京国際映画祭のオープニングを飾った『PERFECT DAYS』も鑑賞したといい、「ヴェンダースの作品は、音が意外な方向から来ることがあって、この作品もそういうシーンがありました。歌を口ずさむシーンでは、アフレコと口の動きが合っていなくて、これもヴィム・ヴェンダースの世界なんだと思った」と独自の批評眼を披露していた。取材・文・撮影:内田涼<開催概要>第1回丸の内映画祭会期:10月28日(土)・29日(日)・30日(月)会場:丸ビルホール10月28日(土)15:00~『ハッシュ!』『ちひろさん』2本立て19:45~今泉力哉監督ビデオトーク10月29日(日)12:00~『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』14:30~『リスボン物語』17:00~『東京画』18:45~「小津安二郎とヴィム・ヴェンダース」特別講義10月30日(月)12:00~『夢の涯てまでも』ディレクターズカット4Kレストア版、『裸足で鳴らしてみせろ』2本立て19:10~工藤梨穂監督+岸井ゆきの対談
2023年10月31日第61回ニューヨーク映画祭にて、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた『PERFECT DAYS』のプレミア上映が現地時間10月11日に行われ、上映後に主演・役所広司と、共同脚本・プロデュースの高崎卓馬がQ&Aに登壇した。ヴィム・ヴェンダース監督による本作は、役所さんが第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。さらに第50回テルライド映画祭、第48回トロント国際映画祭、第71回サンセバスチャン映画祭、第43回台北金馬映画祭と名だたる映画祭に招待。先日、米国アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表作品にも決定し、10月23日(月)から始まる第36回東京国際映画祭ではオープニング作品としてアジアプレミア。世界80か国での配給が決定している。この日、1,086席の客席は即座にソールドアウトとなり、いち早く本作を観ようと駆けつけた観客の熱気あふれる場内。上映後、2階席の役所さん、高崎さんにスポットライトがあたると会場は大歓声に包まれた。役所広司「台詞は少ないけれどもとても美しい脚本」役所さんのために書かれた平山という役を演じるにあたり準備したことを問われると、「こんなにもすばらしい役を高崎さんとヴィム・ヴェンダース監督が書いてくれて幸せです。役を演じるにあたって一番大切だったことはやはり、トイレの掃除をきちんとプロのようにみえるように練習することでした」と役所さん。ヴィム・ヴェンダース監督と共同で脚本を担当した高崎さんは、その脚本づくりをふり返り、「最初からヴィムとは、フィクションの存在をドキュメンタリーのように撮ろうと話していました」と語り、「ヴィムも僕も心がけていたのは、書いていないものをちゃんと書く、スクリーンに映っていない部分がちゃんと出るように、ということです。そして脚本に書いていないものを映像にするというのはやっぱり役所さんじゃないとできなかったなと思います」と語り、役所さんの“平山”としての佇まいを絶賛した。平山の行動や感情を、脚本からどのように捉えて演じたのか問われると、役所さんは「台詞は少ないけれどもとても美しい脚本で、そこから想像されるキャラクターに近づくために、毎日毎日トイレの掃除をしながら、サンドイッチを森の中で食べて、お風呂に入って、好きな本を読みながら満足して眠りにつく男というのは、どういう人だろうと思い浮かべながら撮影をしていました」と回答。「本当にドキュメンタリーのように、ほとんどテストがなく、本番だけを繰り返して撮っていたので、まるでそこで本当に生活をしているような撮影でした。もう二度と訪れない、今のこの瞬間瞬間を大切に生きるという風に心がけて演じました」と、撮影時のことを思い返すように丁寧に語った。ヴィム・ヴェンダース監督は「映画における音楽の使い方が世界最高」印象的な音楽の使われ方、選曲について問われると、「みなさんご存じの通り、ヴィム・ヴェンダースという方は映画における音楽の使い方が世界最高のディレクターだと思います」と高崎さん。「彼と“平山は何を聴いているのか”と、一緒に選曲をしていきました。脚本の段階で音楽のリストはほとんど出ていたのですが、いちばん驚いたのは、平山が聴いている音楽以外使わないということをある段階で決めたことでした。感情を説明する音楽を入れるんじゃなくて、平山さんが聴いているもの、観ているものを僕たちは受け取るという、その線をきちんと引いたということが彼の素晴らしいディレクションだなと感じました」と明かしてくれた。最後に役所さんは、平山という人物についての思いを「財産といえるものは何も持っていないけれども最低限の生活で日々満足して眠りにつける人物。東京でもニューヨークでも、お金さえあればどんなものも手に入るけれど、手に入れても満足することがない生活をしている人が僕を含め多い中、平山さんは、コンクリートだらけの大都会の中でもひとりだけ、テレビもインターネットもなくて、彼に情報が入ってくるのは彼の耳と目で見るものだけ」と語りながら、「森の中で心地よく住んでいるような感じがしました。都会の人たちが、そういえばこんな生き方もあるな、と思ってくれるといいなと感じました」と観客へのメッセージを送り、Q&Aは締めくくられた。『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』など数々の名作を発表し、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など多くのドキュメンタリーも手掛けたヴィム・ヴェンダース監督と、『うなぎ』から『すばらしき世界』などまで多くの主演作を持つ役所さんとの美しきセッションで生まれた本作。フィクションの存在をドキュメントのように追い、ドキュメントとフィクションを極め、ヴェンダースの最高傑作との呼び声も高い。『PERFECT DAYS』は12月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。10月24日(火)~ 30日(月)TOHOシネマズ 日比谷にて特別先行上映。(シネマカフェ編集部)■関連作品:PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2023年10月16日10月23日(月) より開催される第36回東京国際映画祭の上映プログラム『小津安二郎生誕120年記念企画“SHOULDERS OF GIANTS”』にて、ヴィム・ヴェンダース監督が小津監督の魅力を語るインタビュー映像「ヴェンダース、小津を語る」と、小津安二郎生誕120年メッセージムービー「SHOULDERS OF GIANTS~普遍」が上映されることが決定した。「ヴェンダース、小津を語る」は約8分の映像になっており、なぜ小津にここまで惹かれるのか?極めて日本的と言われる物語がなぜ世界で受け入れられたのか?かつて小津の足跡を追ったドキュメンタリー『東京画』を作ったドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースが、小津との出会いの衝撃とその影響の大きさを自身の言葉で語る2023年ベルリンでのインタビュー(世界初公開)となる。ヴィム・ヴェンダースの『PERFECT DAYS』で脚本・製作を担当した高崎卓馬が監督を務めた。「SHOULDERS OF GIANTS~普遍」は1分45秒の映像で、東京国際映画祭で上映される小津安二郎作品の中から選ばれたシーンで構成されたメッセージムービーになっている。ナレーションは、今年カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した俳優・役所広司、演出は映像作家・辻川幸一郎、音楽はovallが担当した。それぞれ本編は小津作品の先付けとして上映されるほか、公式YouTubeチャンネルにてショートバージョンが公開される。「SHOULDERS OF GIANTS~普遍」また、小津安二郎監督生誕120年記念プロジェクトとして、生誕120年メインビジュアルや第76回カンヌ国際映画祭で好評を博した『長屋紳士録』海外向けポスターにあしらわれた小津安二郎監督の肖像ロゴに加え、『東京物語』をはじめとする7作品の代表的な場面を描いたアーティストの長場雄によるアートワークを使った東京国際映画祭とのオリジナルコラボグッズの販売も決定。小津安二郎生誕120年記念×TIFFのステッカー3種(各500円、税込)とリングノート2種(各1,000円、税込)の全5種となっている。東京国際映画祭の上映会場、JR有楽町駅前チケットセンター、東京国際映画祭オンラインショップ「TIFF SHOP」にて販売される。『東京物語』ステッカーArtwork: Yu Nagaba(C)SHOCHIKU CO., LTD.『東京暮色』リングノートArtwork: Yu Nagaba(C)SHOCHIKU CO., LTD.<イベント情報>第36回東京国際映画祭開催期間:10月23日(月)~11月1日(水)会場:日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区公式サイト:
2023年10月16日『PERFECT DAYS』のヴィム・ヴェンダース監督による短編映画『Some Body Comes Into the Light』が第36回東京国際映画祭にてワールドプレミア上映されることが決定した。本作は、役所広司主演の最新作『PERFECT DAYS』に出演する田中泯との奇跡のコラボレーションで生み出された短編映画で、『PERFECT DAYS』撮影最終日に日本で撮影されたもの。しかしあまりに鮮烈なその映像は引力があり、本編のなかにはおさまりきれなかったのだという。カンヌ国際映画祭の後、ヴェンダース監督はあの映像を一つの作品にすることを思い付き、『ピナ踊り続けるいのち』やヴェンダース財団などでヴィム・ヴェンダース監督とも創作をともにしている世界的に活躍する音楽家、三宅純氏の音楽と出会い、より美しく神秘的な作品として完成。美しい時と光の揺らぎ。言葉のない、唯一無二の物語となっている。本作は東京国際映画祭期間中に4回の上映を予定。ヴェンダース監督のもうひとつの新作、戦後ドイツを代表する画家、アンセルム・キーファーの美しきドキュメント『ANSELM』、そして第73回ベルリン国際映画祭にて最優秀脚本賞(銀熊賞)を受賞した『MUSIC』との併映となる。また、『MUSIC』との併映、丸の内TOEIでは、田中泯、高崎卓馬(映画『PERDECT DAYS』脚本・プロデュース)、三宅純(音楽)による舞台挨拶も実施される。【ヴィム・ヴェンダース監督 コメント】田中泯とは何年も前に出会い、彼の踊りを観たこともある。親しくしていた友人のピナ・バウシュにとって彼は偉大なヒーローで、大きなリスペクトとともによく話しを聞かせてくれました。だから、私たちの映画『PERFECT DAYS』で小さな役を演じることを泯さんが引き受けてくれたときは、本当に胸が踊りました。でもその一方で、不安を覚えました。泯さんの才能を見せるのに十分な時間が映画のなかに本当にあるだろうか、この映画で彼の存在を本当にうまく表現できるのだろうか、そう自分を疑ったのです。ほとんどの人からは「見えない」が、主人公の平山にとっては確実に存在する「ただの」ホームレスという小さな役を演じているとき、泯さんはかなり落ち着いていた。私はそれで心強い気持ちとともに、この役を大切にしようと心に誓いました。なのに撮影が終わりにさしかかった頃、再び同じ疑念がわいたのです。泯さんの大いなる才能を思えば、まだ存分に描ききれていないと感じたのです。撮影の最終日、この日は主役の役所広司さんは不在で、いつもであれば足りない街の実景の撮影に充てるのですが、私はその半日を泯さんの撮影に使いたいと皆に言いました。撮影スタジオを用意して、撮影のフランツ・ラスティグが本物の木をたくさん用意して、泯さんのパフォーマンスを余すところなく撮影しました。彼と木々のみで、他にセットは一切なく、ただ光と影だけでした。大きな木漏れ日のなかの田中泯、と言えるかもしれません。映画のなかの夢のシーンで、この映像をふんだんに使えるという期待がありましたがそれでも結局、泯さんの登場は少ないままでした。私は突然に(カンヌ映画祭の受賞式の最中に)思いついたことを、良き友であり脚本を一緒につくった高崎卓馬氏に話しました。『PERFECT DAYS』のためにまだやり残したことがある、泯さんのあの踊りの映像の完全版を編集することだ、と。それがついに完成して、この作品を、そしてあの映画のホームレスの存在が、平山だけでなく世界中のたくさんの人々の目に触れる。そのことをとても誇りに思います。泯さん、あなたは私が今まで出会った人の中でも、極めて素晴らしい人です!ヴィム・ヴェンダース『Some Body Comes Into the Light』は10月26日(木)より丸の内TOEIほか、第36回東京国際映画祭にて上映。『PERFECT DAYS』は12月22日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2023年10月09日役所広司主演のヴィム・ヴェンダース監督最新作『PERFECT DAYS』より、日本版30秒予告編と日本版ポスタービジュアルが解禁された。第76回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞し、公開へ向け大きな注目を集める本作。第36回東京国際映画祭では、オープニング作品としてアジアプレミアを予定しており、ヴィム・ヴェンダース監督も来日して、本映画祭の審査委員長を務める。フィクションの存在をドキュメントのように追い、ドキュメントとフィクションを極めた“ヴェンダースの最高傑作”と呼び声も高い。この度解禁されたビジュアルでは、主人公である公衆トイレの清掃員、平山(役所広司)が薄い布団に寝そべり、小さなあかりで文庫本を読んでいるシーンを使用。その上からは“木漏れ日”が平山を包み込むようにさし込み、『PERFECT DAYS』のタイトルが浮かび上がる。「こんなふうに生きていけたなら」というコピーが、平山という男への興味と想像をかきたてる。また30秒予告編では、メインビジュアルで描かれている平山が読書をしているシーンから始まり、いつものルーティーンをすませ、ドアを開けて空を見る様子が捉えられている。スカイツリーをみているのか、光をみているのかは分からない。「この世界は、ほんとはたくさんの世界がある。つながっているようにみえても、つながっていない世界がある」そんなナレーションを背に、平山はいくつもの風変わりなトイレを清掃してまわるのだった…。全編に流れているのはルー・リードの「PERFECT DAY」。心の静寂と平穏を感じる30秒予告となっている。また。ヴィム・ヴェンダース監督の来日を記念した特別先行上映が、10月24日(火)~30日(月)、TOHOシネマズ日比谷にて行われることも発表された。世界各国でもいよいよ待望の公開となる本作。作品賞そして最優秀俳優賞に役所さんがノミネートされたアジア太平洋映画祭の受賞の行方などにも、注目が集まりそうだ。『PERFECT DAYS』は12月22日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2023年10月04日アジア最大級の国際映画祭『東京国際映画祭』とコラボレーションした第1回『丸の内映画祭』が、10月28日(土) から30日(月) にかけて丸ビル7階丸ビルホールで開催されることが決定した。東京国際映画祭のミッションである「東京から映画の可能性を発信し、多様な世界との交流に貢献する」ことを目的とした丸の内映画祭は、東京国際映画祭に来日するゲストたちにフォーカスし、深く紹介する「特集」と、日本の映画監督が独自の視点で「映画の楽しみ方」を拡げる「日本映画企画」という2本柱で構成され、上映とゲストトークを展開。記念すべき第1回は、東京国際映画祭に審査委員長として来日するヴィム・ヴェンダース監督を特集。『東京画』『夢の涯てまでも』『リスボン物語』『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』の計4本が上映される。また日本映画監督では、今泉力哉監督が創作秘話を告白するプログラムなどを実施。『ちひろさん』『ハッシュ!』『裸足で鳴らしてみせろ』など、国内外から高い評価を受けている3作品を上映する。さらに、各日上映作品にまつわるレクチャーやトークショーも実施される予定だ。■今泉力哉監督 コメント企画のお話をいただいた時、すぐに『ちひろさん』と橋口亮輔監督の『ハッシュ!』の2本立てにしたいと思いました。2本続けて観たら、明確に2つのシーンの類似に気づくと思います。ひとつは構造(場面設定)について。もうひとつは構図について。それはともに『ちひろさん』を観た人たちが「あの場面が好きだ」と語ることの多いシーンで、ちょっとだけ悔しいです。でも『ハッシュ!』を観ておいてよかった。映画もトークもぜひお楽しみに!<イベント情報>第1回『丸の内映画祭』10月28日(土) ~30日(月) 丸ビル7階丸ビルホール特設サイト:チケット情報:
2023年09月28日ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』が、第96回アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表作品として出品されることが分かった。日本映画製作者連盟が発表した。7名の選考員が、8作品の中から選出したという。近年、同部門に出品された作品には早川千絵監督の『PLAN 75』、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』、河瀬直美監督の『朝が来る』などがある。海外メディアも報じており、「The Hollywood Reporter」は「日本からこの部門に、日本人以外の監督が手掛けた作品が出品されるのは初めて」と報じている。ヴェンダース監督は『パリ、テキサス』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』などの名作を世に送り出してきた映画界の巨匠。主演の役所広司は今年のカンヌ国際映画祭で、日本人俳優としては『誰も知らない』の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞する快挙を成し遂げた。また、本作は同映画祭でエキュメニカル賞も受賞した。監督はドイツ人だがキャストは日本人で言語も日本語。役所さんのほか、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、三浦友和、田中泯が出演している。『PERFECT DAYS』は、10月23日から11月1日に開催される第36回東京国際映画祭のオープニング作品に決定しており、ヴェンダース監督がコンペティション部門の審査員長を務めることも明らかになっている。日本公開は12月22日。(賀来比呂美)■関連作品:PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2023年09月05日役所広司が第76回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した、ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』が12月22日(金)より公開されることが決定した。『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』など、数々の傑作を世に送り出し続けてきた名匠ヴィム・ヴェンダースが、長年リスペクトしてやまない役所広司を主演に迎え、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた本作。日本の公共トイレのなかにsmall sanctuaries of peace and dignity(平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所)を見出し、清掃員の平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡いだ。全国公開のメイン館となるTOHOシネマズ シャンテは、1988年にヴェンダース監督の『ベルリン・天使の詩』が30週にもわたるロングラン上映で大ヒットを記録した記念すべき映画館。10月23日(月)より開催される第36回東京国際映画祭の審査委員長としてヴィム・ヴェンダース監督が来日することが決定しており、それに併せて、10月24日(火)より特別先行上映も行われる予定だ。『PERFECT DAYS』は12月22日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国。(シネマカフェ編集部)■関連作品:PERFECT DAYS 2023年12月22日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開© 2023 MASTER MIND Ltd.
2023年08月30日10月23日(月)~11月1日(水)に開催される第36回東京国際映画祭で、コンペティション部門の審査委員長をドイツの映画監督、ヴィム・ヴェンダースが務めることが決定した。ヴィム・ヴェンダースは、『ことの次第』(1982)でヴェネチア国際映画祭の金獅子賞を受賞するなど、キャリアを通じて世界中で多くの栄誉を受けてきた。『パリ、テキサス』(1984)でカンヌ国際映画祭パルムドール、『ベルリン・天使の詩』(1987)で同カンヌ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞し、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999)、『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2011)、『セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター』(2014)の3作品で米国アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門へのノミネートを果たした。また、親日家としても知られ、特に『東京物語』(1953)を観て魅せられたという小津安二郎監督への傾倒は深く、1985年には小津安二郎へのオマージュとしてドキュメンタリー映画『東京画』を製作し、高い評価を得た。東京・渋谷の公衆トイレのリノベーションを紹介したアートプロジェクトThe Tokyo Toiletの一部である最新作『パーフェクト・デイズ』(2023)は、日本の俳優である役所広司を主演に迎え、今年のカンヌ国際映画祭で同氏に最優秀男優賞をもたらした(ドイツ人アーティスト、アンセルム・キーファーのポートレイト映画『アンセルム』も同映画祭Special Screenings部門に選出)。同監督の東京国際映画祭への参加は1991年のクロージング作品『夢の涯てまでも』、1993年のヤングシネマコンペティション部門の審査委員長、2011年の『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』以来4回目の参加となる。また、小津安二郎監督特集も決定。今年で生誕120年となる、日本が世界に誇る巨匠の特集を小津ファンでもあるヴィム・ヴェンダース監督を迎える中で特集を組めることは内外の映画ファンにとっても大きな喜びとなるだろう。詳しい上映作品及びイベントに関しては、後日発表される予定だ。■コメントヴィム・ヴェンダース東京国際映画祭にまた戻ってこられることを嬉しく思います。以前の私の初めての審査委員長体験は本当に良い思い出しかなく、今でも当時の審査委員の人たちとは交流があり、お互いに「クローディーさん(プロデューサーのClaudie Ossard)」、「ポールさん(作家のPaul Auster)」、「ヴィムさん(監督ご本人)」と「さん」を付けて日本風に呼び合っています。今年の東京国際映画祭は私が敬愛する巨匠・小津安二郎監督の死後60年、生誕120年の記念すべき年に開催されるもので、そんな機会に参加できることは私にとっては特別なことです。東京国際映画祭チェアマン 安藤裕康昨年秋ヴィム・ヴェンダース監督が世界文化賞受賞のため訪日した際、親日家で知られる同監督に今年の審査委員長就任を打診したところ、前向きな反応を頂いて心強かった。そして今年、小津安二郎生誕120年の記念の年に、同監督を敬愛するヴィム・ヴェンダース監督に審査委員長をお引き受け頂くことになって、本当に有意義だと思う。また、同監督の最新作『パーフェクト・デイズ』に主演している役所広司さんが、この度のカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞されたとの素晴らしいニュースも喜ばしい限りだ。第36回東京国際映画祭は10月23日(月)~11月1日(水)、日比谷・有楽町・丸の内・銀座エリアにて開催。(text:cinemacafe.net)
2023年06月12日第76回カンヌ国際映画祭の授賞式が現地時間5月27日(土)夜に行われ、ヴィム・ヴェンダース監督『PERFECT DAYS』(原題)の役所広司が、日本人としては柳楽優弥以来19年ぶり2度目となる男優賞を受賞。また、坂元裕二が是枝裕和監督『怪物』で脚本賞を受賞した。カンヌでパルム・ドール受賞経験もあるヴェンダース監督のもと、役所さんが演じたのは、東京・渋谷の公共トイレ清掃員という仕事を淡々とこなし、日々の小さな歓びに満足している無口な平山という男。「平山の暮らしぶりをイメージさせる様な環境を監督が整えてくださった」と明かしており、5月25日(木)の公式上映では約10分間のスタンディングオベーションにつつまれ、観客からも大きな評価を得ていた。授賞式の壇上は、1997年に故・今村昌平監督『うなぎ』のパルム・ドールを代理で受け取って以来という役所さんは、感激の面持ちで「こんな華々しいカンヌ映画祭でスピーチをするのはあんまり好きじゃない」と微笑みつつ、審査員、ヴェンダース監督やスタッフ、そして観客に対して感謝をコメント。日本人のカンヌ男優賞受賞は、2004年の是枝裕和監督作『誰も知らない』で当時14歳だった柳楽さん以来、19年ぶり。昨年は是枝監督作『ベイビー・ブローカー』でソン・ガンホが同賞を受賞しており、2年続けてアジア人が男優賞に選ばれた。授賞式を終えた役所さんは日本のメディアに対し、「やっと柳楽くんに追いついたかなと(笑)。彼は本当にすばらしい俳優になったし、(自分も)いろんな男優賞をいただきましたけれど、これからこの賞に恥じないように頑張らなきゃなと改めて思いました」と心情を語った。海外作品への出演について話が及ぶと「自分の表現が役に立つような良い作品があれば参加したいとは思っています。基本的には、自分たちの国の映画で、世界中の人たちに楽しんでもらえるのが、一番の早道かな」と語った。なお、『PERFECT DAYS』はエキュメニカル審査員賞も受賞した。また、是枝監督の最新作『怪物』(6月2日公開)で、『花束みたいな恋をした』や数々のヒットドラマの脚本を手がけてきた坂元さんが脚本賞に。『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督以来、日本人としては2人目。独立賞であるクィア・パルム賞と合わせて2冠となった。『怪物』最高賞にあたるパルム・ドールは、ジュスティーヌ・トリエによる『ANATOMY OF A FALL』(英題)が受賞。女性監督のパルム・ドールは、ジェーン・カンピオン監督『ピアノ・レッスン』、ジュリア・デュクルノー監督『TITANE/チタン』に続く史上3人目の快挙となった。コンペティション部門主な受賞結果パルム・ドール(最高賞)ジュスティーヌ・トリエ『ANATOMY OF A FALL』グランプリ(次点)ジョナサン・グレイザー『THE ZONE OF INTEREST』監督賞トラン・アン・ユン 『THE POT AU FEU』審査員賞アキ・カウリスマキ『FALLEN LEAVES』脚本賞坂元裕二『怪物』女優賞メルベ・ディズダル『ABOUT DRY GRASSES』男優賞役所広司『PERFECT DAYS』カメラ・ドール(新人監督賞)ファム・ティエン・アン『INSIDE THE YELLOW COCOON SHELL』(text:cinemacafe.net)■関連作品:怪物 2023年6月2日より全国にて公開©2023「怪物」製作委員会
2023年05月28日ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースと役所広司がタッグを組み、東京・渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた長編映画『PERFECT DAYS』(原題/日本公開未定)が、第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品。レッドカーペットや公式上映に監督やキャスト陣が登場した。数々の傑作を世に送り出し続けたヴィム・ヴェンダースが、日本の公共トイレのなかに「small sanctuaries of peace and dignity(平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所)」を見出し、清掃員の平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら紡いだ本作。第76回カンヌ国際映画祭、開催10日目となる5月25日、晴れやかな日差しに迎えられ、15時半頃、『PERFECT DAYS』のコンペティション上映を直後に控えたヴィム・ヴェンダース監督、主演の役所広司、中野有紗、アオイヤマダ、田中泯がレッドカーペットに登場した。大きな声援を受け、ゆっくりとレッドカーペットを進むと、劇中で使用されている楽曲Lou Reedの「Perfect Day」がかかり、監督が思わず踊りだす場面も。レッドカーペットの前に実施された取材では、「編集ではみんなの顔を見ていたけど、カンヌで実際に会うことができてとても嬉しい」と顔をほころばせていた監督。役所さんについて聞かれると「彼の作品は、かなりの数を見た」という。「警官としても侍としても素晴らしい、なんという役者なんだと思っていた。役所さんと仕事するのは夢のようでした」と役所さんへの思いを明かす。また、「この作品にはスピリチュアルなレベルがあって、みなそれを感じてくれていた」とキャスト陣への厚い信頼も明かした。一方、役所さんがヴェンダース監督から学んだことについて話題が及ぶと、「常に楽しそうにしていたので、その姿勢がキャストを励まし、大きな演出になっていた」という。役所さん演じる主人公・平山の姪を演じた中野さんは「本当にありのままのわたしとキャラクターを重ねて演じるような環境をヴィムが整えてくださったので、自然に演じることができた」と回顧、ホームレスを演じた田中さんは「映像にとらえたものは全部その場でやったもの。わたしはスピリットそのものです」と明かし、アオイさんは「ヴィムさんも、役所さんも周りを引き立ててくれる人だなと思った」と語った。公式上映は、2,300人以上を収容できるパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレにて満員の観客の中、開催。会場に監督とキャストが現れると、観客は総立ちで迎え、約5分間におよび拍手が鳴りつづけ、上映開始前から期待の大きさを感じさせる。そして2時間5分の上映が終了するや否や、会場は一気に熱を帯び、観客は一斉に立ち上がって約10分に渡るスタンディングオベーションが起こった。感激につつまれる監督を役所さん、中野さん、アオイさん、田中さんが優しくつつみこみ、映画同様、あたたかく感動的な上映となった。熱気はそのままに、キャストのみ上映後の囲み取材を実施。熱いスタンディングオベーションを受けた気持ちについて聞かれると、役所さんは「みなさん褒めるの上手ですよね(笑)」と謙遜し照れつつも「監督が言ってたんですけど、褒められても自分がうまいと思わないで、けなされても自分がダメだと思わないで、映画で語りなさい。と。まさにそうだなと。でも今日みたいな暖かい拍手を受けて、ああお客さんが喜んでくれてるんだ。良かったな。と単純に思いました」と顔をほころばせた。中野さんは「どういう反応がくるのかなと不安だったけど、きっと感じるものがあるんじゃないかという望みはありました。スタンディングオベーションで拍手と喝采を感じた時にそれが確信に変わりました」とコメント。ベテランの田中さんは「映像のお仕事で(スタンディングオベーションを受けたのは)初めてです。嬉しいというよりも『役所さん、やったね!!』という気持ちで、抱きつきたかったです」と、主演の役所さんを気遣った。最後にアオイさんは「役所さんが爆発するわけでも、変身するわけでもない映画なんですが、日常の幸せ、平和の象徴が描かれた映画が評価された、ということがとても嬉しく思いました」と締めくくった。『逆転のトライアングル』のリューベン・オストルンド監督がコンペティション部門の審査員長を務めている、今回のカンヌ国際映画祭。カンヌの常連であるヴェンダース監督が、日本を舞台にした本作で計21作品の中から最高賞となるパルム・ドールを狙う。主演男優賞はじめ各賞が発表となるのは、現地時間5月27日(土)となっている。(text:cinemacafe.net)
2023年05月26日ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司主演で渋谷の公共トイレ清掃員の日々を描いた長編映画『PERFECT DAYS』。この度、第76回カンヌ国際映画祭にて、コンペティション部門へ正式出品を果たした本作の海外用特報映像が解禁された。5月16日から開催された、世界中から選出された映画と映画人が一堂に会する世界最大級の国際映画祭、第76回カンヌ国際映画祭にてコンペティション部門へ正式出品を果たした本作。現代映画における最も重要な1人とされるドイツの名匠ヴィム・ヴェンダースが、日本の公共トイレのなかにsmall sanctuaries of peace and dignity(平穏と高貴さをあわせもった、ささやかで神聖な場所)を見出し、東京・渋谷の公共トイレ清掃員・平山という男の日々の小さな揺らぎを丁寧に追いながら日々を紡いだ。この度解禁されたカンヌ国際映画祭用の映像は、パリ、ロンドン、ベルリン、東京で行われた試写会で、「今の東京をこんなにも温かく、美しく、描けるのか」と驚きの声が多数あがった映像。「この世界にはつながっている世界と、そうでない世界がある」その言葉のとおり、自分だけのルーティンのなかを淡々と生きる清掃員の平山。そしてそれを静かに揺らす出来事たち。ヴィム・ヴェンダースの見つめる、詩的で温かな世界がここにあると分かる映像となっている。(text:cinemacafe.net)
2023年05月22日ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を迎えて製作する『Perfect Days』(原題)が、第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されることが発表された。ヴェンダース監督がその趣旨・社会的意義に賛同した「THE TOKYO TOILETプロジェクト」。世界的に活躍する16名の建築家やクリエイターがそれぞれの個性を発揮し、2020年から渋谷区内17か所の公共トイレを新たなデザインで改修。現在までに、12か所が完成している。海外からも大きな注目を集めている同プロジェクト。ヴェンダース監督は、現在の東京、渋谷の街、THE TOKYO TOILETで改修された公共トイレを舞台に映像を製作。本作は、役所さんはじめ、日本人キャストを起用している。『Perfect Days』(原題)は日本公開未定。(cinemacafe.net)
2023年04月13日「ロードムービー」とは端的に言えば、旅の映画だ。この用語を聞いて真っ先に名前が浮かぶ映画作家がいる。『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』『夢の涯てまでも』など数々の話題作を発表してきたドイツ出身のヴィム・ヴェンダース監督(77)だ。世界の芸術家を顕彰する高松宮殿下記念世界文化賞(主催・公益財団法人日本美術協会)の演劇・映像部門に、2022年の第33回はヴェンダース監督が選ばれた。10月18日に東京都内で開かれた受賞会見では、本人の原点とも言うべきこの表現ジャンルや日本映画にも触れた。23年には東京・渋谷の公共トイレを舞台にした作品が公開されるなど世界を旅して活躍する巨匠は、なぜロードムービーを撮ったのか──。「ロードムービーを見つけたことは運が良かった」ヴェンダース監督の名声が一気に高まったのは、息子と共にクルマで妻を捜す男を描く1984年の『パリ、テキサス』だろう。その年の第37回カンヌ国際映画祭で最高賞「パルム・ドール」に輝き、日本でも公開されてヒットした。個人的なことを明かせば、この作品を87年に名画座で鑑賞して以来、ヴェンダース監督の映画は観続けている。特に『パリ、テキサス』の魅力はあせず、劇場で観てきた1000本以上の中で一位の座を譲らない。ロードムービーという映画用語を知ったのも、この作品からだった。ロードムービーとは、登場人物がクルマなどで長距離を移動(旅)しながら、その過程で起きる出来事を描いた映画を指す。つまり物語はクルマが到着した場所から動き始める。映画評論家の梅本洋一氏は「自動車が停止することへの感受性。それがロードムーヴィーの成否を決定している」(『映画=日誌 ロードムーヴィーのように』より)と本質を言い当てたが、冒頭にクルマが川に飛び込んで止まるヴェンダース監督の『さすらい』(76年)は、そのお手本と言える。個別の受賞会見では、ロードムービーへの思いを本人から直接聞きたかった。産経新聞の受賞インタビューに「子供の頃から旅行がとても好きでした。映画監督として旅をすることに目覚め、それに伴いロードムービーというジャンルが生まれました」などと話していたが、表現手段として選択し、自身の製作手法の主流となったのは、どういう理由からなのか。参考にした作品はあるのだろうか。こんな疑問にヴェンダース監督は次のように答えてくれた。個別会見の後、自作のボックスセットを手渡され、微笑むヴェンダース監督「参照した作品はありません。ロードムービーという(表現)形式を見つけたことは、運が良かったといえます。旅をしながら映画を撮れますから。映画製作で、時系列で撮ることは非常に贅沢なことなんです。その意味では、ロードムービーはスタッフも役者も自分も、全員が一緒に旅をしながら、それが可能になる。やってみて、私が得意なことは、これなんだ、と確信を持てたのです。これが、私なりの(物語の)語り方、やり方なんだと」ヴェンダース監督は「最初は何かをモデルにして作るものなんですが、最初に撮った3本は、あまり幸せなものではなかった」と明かす。そこで「他を参考にしていてはいけないんだ」と模索する中で、ロードムービーというジャンルを発見したのだという。一番好きなロードムービーは『夢の涯てまでも』ドキュメンタリーも含め他ジャンルも撮ってきたが、自作で一番好きなものは、やはりロードムービーだ。前述のインタビューで、『夢の涯てまでも』(91年)を挙げ、「究極のロードムービー」と評価している。「(日本など)10カ国をほぼ時系列で回りました」とも。同作は、その後公開時より100分以上も上映時間が長い287分の「ディレクターズカット 4Kレストア版」が作られ、日本のシーンも増えている。会見では、ロードムービーの魅力について、こうも語った。「道というものは人生を象徴しています。人生そのものがひとつの道です。我々の心の在り方を表しています」『夢の涯てまでも ディレクターズカット版』(1994年)のウィリアム・ハートと笠智衆William Hurt and Ryu Chishu in Until the End of the World - Director’s Cut by Wim Wenders© 1994 Road Movies - Argos FilmsCourtesy of Wim Wenders Stiftung - Argos Films『東京物語』を4回連続で観た小津安二郎監督の作品は、ヴェンダース監督にとって特別だ。初めて観たのは1970年代半ば。既に映画人としてのキャリアを積んでいたが、強い影響を受けたことを、数々のインタビューで答えている。85年には、小津の傑作『東京物語』(1953年)の主演を務めた笠智衆、撮影の厚田雄春にインタビューし、“現代”の東京を描いたドキュメンタリー『東京画』を製作しているほどだ。会見では、小津作品に出合った時から今も魅力は変わらないか、との質問が出た。「『東京物語』を初めて観たのは、ニューヨークだったんですが、4回連続で観ました。私にとってはパラダイス、つまりこれ以上のものはありえないと思っています。その感覚は今も変わっていません。小津作品は、いろいろな字幕のものを持っています。どれを観ても、いつも同じ変わらない感動があります。人への尊敬の念、精神性を毎回感じます」ドイツに戻ったら「自宅のトイレを日本製に変える」安藤忠雄、役所広司とTHE TOKYO TOILETアート・プロジェクトの発表会見で2022年 With Tadao Ando and Koji Yakusho at the press conference of THE TOKYO TOILET art project,202223年公開予定の最新作は、渋谷の公共トイレがテーマだ。主演は役所広司。渋谷区内の公共トイレ17カ所を、建築家の安藤忠雄さんら世界的なクリエイターが改修するという「The Tokyo Toilet」プロジェクトに賛同したヴェンダース監督が映像製作するというものだ。会見で聞かれたヴェンダース監督は「最初に提案があったとき、はっ?と驚いた」と、振り返る。ただ、思い直したという。「トイレは、建築におけるひとつの傑作だと思いました。トイレを誤解していたと。我々は非常に長い時間を、そこで過ごします。我々はきちんと評価してこなかった。そういう意味ではドキュメンタリーではなく、映画にすべきだと思ったんです。ドイツに戻ったら、自宅のトイレを日本製に変えようと思います。皆さんは日々使っていますから、私がなぜそう思うか、わかってくれますよね」「日本は第二の故郷」と語り、来日回数は50回か100回ぐらいか、途中で数えるのをやめたほどの親日家は、トイレについても日本のものが気に入ったようだ。各部門の受賞者とともに合同記者会見に臨むヴェンダース監督文・撮影:堀晃和【高松宮殿下記念世界文化賞】1988年に創設され、毎年、文化芸術の発展に大きく寄与した芸術家を対象に、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の5部門で選ばれる。演劇・映像部門の受賞者には、第1回のマルセル・カルネ(1989年)以来、フェデリコ・フェリーニ(90年)、イングマール・ベルイマン(91年)、黒澤明(92年)、アンジェイ・ワイダ(96年)、アッバス・キアロスタミ(2004年)、フランシス・フォード・コッポラ(13年)、マーティン・スコセッシ(16年)ら錚々たる監督が名を連ねる。2022年9月13日に91歳で亡くなったジャン=リュック・ゴダールも20年前の受賞者だ。10月18日、東京都内で開かれた受賞者全員が並ぶ合同記者会見で、ヴェンダース監督は、フェリーニ、ベルイマン、黒澤、ゴダール、コッポラ、スコセッシらの名を挙げた上で、同じ賞を受けたことを喜んだ。
2022年10月19日ドイツを代表する映画監督のヴィム・ヴェンダースが5月11日、都内で行われた「THE TOKYO TOILET Art Project with Wim Wenders」記者発表会見に出席した。2020年から東京・渋谷区内17ヶ所の公共トイレを、建築家やクリエイターが改修するプロジェクトに賛同し“トイレを舞台にしたアートフィルム”を製作することになり、主人公のトイレ清掃員を演じる役所広司とともに意気込みを語った。『ベルリン・天使の詩』『東京画』など、数々の名作で知られるヴェンダース監督は、本作のロケハンを行うため、約10年ぶりに来日。「なかなか東京に戻ってこられず、ホームシック状態だった」と明かし、「社会的に意義があるプロジェクトに参加し、都市の特別な場所である“トイレ”について、自由に物語を紡ぎだせるのは、すばらしいこと」と期待のコメント。「貧富の差も、年齢の違いもなく、人類がひとりの人間になれるのがトイレ。英語ではrestroomといいますが、文字通り“心休まる”場所であり、美しくメンテナンスをするのは、世界にも真似してほしい日本的コンセプトだと思う」とプロジェクトの重要性を説いていた。オファーを快諾したもう1つの理由は、役所の存在だといい「ご出演した『Shall We ダンス?』『バベル』など10数本観ていますが、どんな役柄を演じても、そこに必ず役所さんご本人がいらっしゃる。今回ご一緒するのは、なぜ自分がそこまで惹かれるのか理由を知るためでもあるんです」と早くも期待感。「私は好きじゃない俳優とは仕事しませんし」と語ると、役所は「この作品で嫌われないように頑張りたい」と背筋を伸ばした。その役所は「ヴェンダース監督の作品ですからね。断る俳優はいないんじゃないかと思う」と興奮しきり。「俳優になって40年、頑張ってこの業界にしがみついてきて良かった(笑)。すばらしいご褒美をいただいた気がします」と喜びを明かし、「世界中の皆さんに、日本や日本人というものを理解してもらえる物語になれば。とても美しい物語になる予感がしました」と意気込んだ。ヴェンダース監督とは、役柄についても言葉を交わしたそうで「きっと主人公は単に仕事で清掃しているだけではないと思う。撮影しながら、作品を仕上げていく感覚でしょうし、日々いろんなことが起こると思うので、何とかついていきたい」と抱負を語った。現在はヴェンダース監督による都内のロケハンとともに、シナリオの構想が練られている段階だといい、公開時期やフォーマット、タイトルなどは未定となっている。取材・文・写真=内田涼
2022年05月11日