白く丸いビジュアルが人気を博す、北海道の野鳥・シマエナガ。『雪の妖精』と呼ばれるシマエナガの魅力を発信している、『ぼく、シマエナガ。』(@daily_simaenaga)さんは、Twitterに3枚の写真を投稿しました。写っているのは、投稿者さんが作った、シマエナガをモチーフにした料理!多くの人の心を奪った『日本一可愛い天むす』がこちらです。日本一可愛い天むす作っちゃった pic.twitter.com/y27wntSpWs — ぼく、シマエナガ。 (@daily_simaenaga) August 21, 2021 白いご飯と海苔で再現された、愛らしいシマエナガ。中にはエビの天ぷらが入っています!縦長の帽子をかぶっているような見た目から、「烏帽子みたい!」という声も。確かに、どことなく雅な雰囲気がありますね!『日本一可愛い天むす』は8万人以上のハートを射抜き、拡散されたことでさらに多くの人がシマエナガの魅力に気付かされたようです。しかし、ほとんどの人は「かわいすぎて食べられない!」と思ったことでしょう…![文・構成/grape編集部]
2021年08月23日マネーゲームやマネーレス社会…お金に翻弄される人々の姿を活写した、羽田圭介さんによる『Phantom』とは。「実はこの作品を書き始めたのは2014年末、芥川賞を取る前で、その時点では、主人公の華美(はなみ)の目線に近い感じで書いていました」羽田圭介さんの『Phantom』は、お金や将来への漠然とした不安を抱えている人に刺さる快作だ。華美は外資系食料品メーカーの日本法人に勤める会社員。冠婚葬祭費をケチり、生活費を切り詰めてまで投資に精を出しているのには理由がある。5000万を貯め、若いうちに自分の〈分身〉を作るためだ。「華美は、配当で毎年250万円が入るようにすれば、それが自分のいまの給料と同じだから、分身だという幻想を抱いています。夜な夜な米国の株式市場をチェックする長期投資家の貌(かお)も持ちます」高校生のときに作家としてデビューした羽田さん。コンスタントに出版は重ねていたものの、出版不況の現実も感じていたという。「それで僕も確定拠出年金(iDeCo)や株を始めたりしたのですが、賞を取ったら経済的な状況も変わり、少なくとも、株で自分の分身を作ることにはあまり興味がなくなってしまった。それもあって5年以上中断していました」だが、社会やお金をめぐる価値観は様変わりした。新たに、怪しげなオンラインコミュニティや、ムラ内の〈シンライ〉という独自通貨など、現実でも見聞きするモチーフを投入したことで、生きたお金や死んだお金という考え方を提示し、読む人の価値観まで揺さぶってくる。「いま味わう喜びを先送りにしてお金を貯め、お金さえあれば幸せになれると思っている華美。彼女の恋人の直幸は、そんな華美の価値観を笑うけれど、彼自身は(オンライン)コミュニティにのめり込み、お金などなくてもつながりだけでどうにかなるという危うい価値観にハマっていく。両方とも極端ですよね」終盤は、傭兵経験のある男性たちまで登場。何を言っているかわからないかもしれないが、怒濤の展開の面白さは保証する。「僕自身も、書きながら考えましたね。僕は何でも自分でやりたがるところがあって、動画の編集やマネジメント…書く以外の仕事も自分でやってしまいがちなところがあった。プロに頼るのは、生きたお金の使い方だなと思うように変わりました」『Phantom』自分の労働の代わりにお金を生み出す〈分身〉の危うさや、作中で象徴的に登場する車〈ファントム〉。タイトルも、複合的で意味深だ。文藝春秋1540円はだ・けいすけ1985年、東京都生まれ。2003年、「黒冷水」で文藝賞を受賞してデビュー。’15年、「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞受賞。近著に『成功者K』『ポルシェ太郎』など。※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年08月11日「将棋に興味を持ったきっかけは、奨励会の存在を知ったことです」芦沢央さんの『神の悪手』は将棋をモチーフにしたミステリー集だ。奨励会とはプロ棋士の養成機関。入るだけでも狭き門だが、そこからプロになれるのはごくわずか。しかも原則満26歳までの年齢制限もある。夢を見ることのダークサイドと夢だけが与えてくれる一筋の希望と。「“夢”はポジティブに語られることが多いけれど、夢に食い潰されるという恐ろしさもあるのではないかと。私の『書く動機』の核に、怖いものを見つめたい、恐ろしいものの正体を知りたいというのがあるんですよね(笑)。余計に惹かれました」書くと決めてから将棋教室に通い、棋書を読み、詰め将棋にも熱中した。それまでは駒の動かし方さえ知らなかった、と言うから恐れ入る。「せっかく将棋の小説を書くなら、勝負の世界であればスポーツとかに置き換えても成立する話にはしたくなかったんですね。あるとき『同じ棋譜はふたつとない』という特性を活かしたトリックが浮かんで、依頼されてもいないうちに表題作を書き上げてしまった。こんな体験は、作家生活10年で初めてです」各編とも棋士や将棋世界と関わる人々が主役。そこにミステリーとしての面白さや、社会とリンクするテーマが内包されている。たとえば、被災地の避難所に将棋指導に行ったプロ棋士が、将来有望な子どもと触れ合ったことで胸の痛む問題が浮かび上がる「弱い者」には、フェミニズム小説の匂いもある。「将棋界でも、女性の地位などジェンダー問題を感じますね」また、「ミイラ」の謎の始まりは、編集部に投稿された不可解な創作詰め将棋。たどっていくうちに、少年が味わった孤独が見えてくる。読者からの反響も大きかった一作だとか。「詰め将棋は、答えがわかった瞬間に、作者は盤の中にどんな伏線を張り、どんな意図を持ってその世界を構築したのかが迫ってきます。そこが、ミステリーの作者と読者の関係に似ているなと思ったんです。作中でやりとりをする作者とそれを添削する〈検討者〉は、一度も顔を合わせてはいない。なのに生まれる濃密なコミュニケーションにドラマがあるのが面白い」取材のために始めた将棋の勉強。「でも知れば知るほど深いし、自分の経験とシンクロするような。この題材でまだまだ書いてみたいです」あしざわ・よう作家。1984年、東京都生まれ。2012年、『罪の余白』で野性時代フロンティア文学賞に輝き、デビュー。『火のないところに煙は』『汚れた手をそこで拭かない』など話題作を次々と発表している。『神の悪手』どんでん返し、犯人視点で描く倒叙ミステリー、予想を覆す叙述トリック…。収録された5編はすべて、語りも仕掛けも機知に富んでいる。新潮社1760円※『anan』2021年7月28日号より。写真・土佐麻理子(芦沢さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年07月27日俳優の三浦春馬さんが、30歳という若さで旅立ったという衝撃的な出来事から、7月18日で1年になる。生前の三浦さんについては、誰もが口をそろえて、「どんな人にも真摯に接する純真な人」と評した。三浦さん自身、かつてこんなことを語っている。「自分で言うのも何ですが、僕はちょっと人に優しすぎるとこがあって(笑)」(『からだにいいこと』’19年10月号)超多忙な芸能活動の傍ら、常に弱い立場にいる人たちに心を寄せ、ときには難病患者と、ときには被爆者と語り合い、元気づける姿があった。エイズの啓発を行う「Act Against AIDS」(現:Act Against Anything)に積極的に参加していたことは、ファン以外にはあまり知られていないかもしれない。その支援金などをもとにラオスでは小児病院が設立されているが、彼が病院建設中から現地を訪れ、HIVポジティブの子供たちとふれ合う光景は、本誌でも報じている。そんな三浦さんとじかに接した多くの人の証言から、真面目で心温かい彼の人物像が浮かび上がってきた。■広島へ被爆者を訪ね、直筆の手紙を――「以前、広島を訪ねたとき、ある被爆者の方から、『人間は想像力が欠如したときにむごいことをする』というお話をうかがいました」三浦さんは’20年7月8日、戦時中の新型爆弾開発を題材にしたNHKドラマ『太陽の子』のプロモーションで広島を訪れた際に、こう語っていた。彼が突然、亡くなったのは、その10日後のことである。「三浦さんが広島を再訪したあのとき、会って、『がんばっとるのう』とひと言でも話しておれば、という後悔が今もあるんじゃよ」梶矢文昭さん(82)は、三浦さんが「ある被爆者の方」と口にしたその人だ。6歳で被爆し、教員を定年退職後、「ヒロシマを語り継ぐ教師の会」を設立、現在も語り部活動などを続けている。三浦さんは、47都道府県を訪ね歩いての交流をまとめた著書『日本製』(ワニブックス)の広島編の取材で「改めて平和について考える機会にしたい」と熱望し、梶矢さん宅を訪問していた。「三浦さんがうちに取材でやってくる前から女房の輝實は末期の乳がんで入院中じゃったが、病室で尋ねたら、『会いたい、会いたい』と。わしが主治医と交渉して10分だけの帰宅が許されたのじゃった」映画好きの夫妻は、特攻隊員と家族の葛藤を描いた『永遠の0』(’13年)を見て以来、三浦さんの大ファンになっていた。ところが取材当日の’17年3月13日、一行は遅刻してきたのだという。「こりゃ、だまされたわいとも思っておったが、20分もして、三浦さんが車から降りてきたときは、一目見た瞬間からオーラが輝いておって、まぶしいようじゃった」まず、三浦さんは車いすの輝實さんと向き合った。「『がんばってください、がんばってください』と、末期がんのおばあちゃんの目をまっすぐに見て、手を握りながら言ってくれました。あれは演技ではできんこと、彼の人柄でしょう。女房は、帰りの介護タクシーの中で『満足、満足』と繰り返したそうじゃ」続いて、三浦さんと梶矢さんの会話は、予定を大幅に超えて3時間近くに及んだという。「三浦さんからも彼の曽祖父の戦争体験を聞いて、わしも驚いた。過去から学ぼうとする探究心が、あの演技にもつながるんじゃね。女房が息を引き取ったのは、三浦さんと会った3日後じゃった」さらに1カ月後、三浦さんから手紙が届いた。「いまどき教え子からの手紙もワープロ文字じゃが、三浦さんのは直筆で驚いたし、うれしかった。ただ、これには前段があっての。取材で、三浦さんがカーディガンを忘れてな。聞けば、仕事に集中するあまり、けっこう忘れ物をするタイプじゃと。で、それを送り返してあげたら、お礼の手紙が届いたんじゃった」便せん2枚に、端正な文字でつづられた手紙には、こうあった。《まずは家族から忘れてはいけないことを繋げていくことがどんなに大切か身を持って感じました。三浦春馬》「彼と話をできたことは、わしの人生の宝じゃ。だから余計、なんで死んでしまったんじゃと思うんじゃよ。あんなに、うちの女房に『がんばってください』と繰り返していた男がなぜ、と。あの優しさが、死につながったのかもわからん。今の世の中、ちいとこすい(ずるい)くらいがエエのかもしらんが、彼はそんなこすさとは真逆の人じゃったから」■徹底的にASLの情報を学び、命をテーマに演じた「春馬さんがお亡くなりになって、それは本当に悲しいことですが、“拓人”として、いまだに多くの患者さんが生きるための支援を続けているんです」東京都立神経病院リハビリテーション科の本間武蔵さん(59)は語る。芸能関係者やファンの間で、’14年の『僕のいた時間』(フジテレビ系)を、三浦春馬さんのドラマにおける代表作として挙げる人は多い。三浦さん演じるALS(筋萎縮性側索硬化症)を患った大学生の主人公・澤田拓人の壮絶な闘病の日々を通じて、「今を生きる」ことを社会に問いかけた秀作。制作には日本ALS協会も協力した。三浦さん自らドラマの企画を立ち上げ、プロデューサーにも、「“命”を題材にしたドラマをやりたいんです」 と掛け合って番組を実現させたという。本間さんが三浦さんと出会ったのは、自身が開発した“マイボイス”(声を失ったALS患者などのためのコミュニケーションツール)の使い方の演技指導の場だった。「19時のお約束が、撮影が延びて実際に春馬さんがやってきたのは23時過ぎ。第一印象はとても痩せていて、もう体力も収録で使い切り、スタッフに肩を支えられるようにして入ってこられた姿に驚いたのを、鮮明に記憶しています。それが、いざ指導が始まると、パッと表情が一変して、そこにいたのは、“生きていこうとする拓人”だったんです」放映から7年が過ぎた今も、『僕のいた時間』の影響は大きいと本間さんは語る。「ALSに関する情報収集など下準備を徹底していた春馬さんの演技があまりにリアルで、ドラマを見ていて“もしや自分も”と気付き、病気を早期発見できた患者さんもいらっしゃいます。三浦春馬という役者さんは、拓人として、今も患者さんを救いながら生きているんですね」ドラマの最終話、拓人が語るセリフは、今となっては、そのまま命について真剣に考え続けた三浦さんの言葉として胸に響く。「僕が僕であり続けるにはどうしたらいいんだろう。そうなったとき、僕を支えてくれるのは、それまでの生きた時間、僕のいた時間 なんじゃないか」■三浦さんの愛は、今なお続いている彼が生前にさまざまな活動を通じて注いできた愛情は、ここにきて実を結びつつある。今年5月、アミューズから「三浦春馬支援」に関して報告がなされた。これは、彼の死後、新たに設立されたラオス支援等の基金だ。《このたび第一回目の支援として、フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN様を通じ、ラオ・フレンズ小児病院内にて使用される以下の医療物資を購入・寄贈させていただくことを決定いたしました》リストには、注射器、新生児血液採取用針、マスクなどが並ぶ。同時に、フレンズJAPAN代表の赤尾和美さんのコメントから、三浦さんの生前の活動の様子がうかがえる。《春馬さんはご多忙の中、年に1度は必ずラオスの現地へ赴き、(略)同じ目線で「何ができるだろうか」と真剣に考えてくださったことにラオス人スタッフも感動していました》4,000キロ離れたラオスの地でも、子供たちを笑顔にしていたのは、何より三浦さんの「温かいお気持ち」だったそうだ。三浦さんは遠くへと旅立ったが、「人間・三浦春馬」が出会いの場で残した言葉や思い出は、これからも人々の心に寄り添い、励まし続けるだろう。(文:堀ノ内雅一/取材:堀ノ内雅一、小野建史、鈴木利宗)
2021年07月18日突然の訃報から早くも1年。7月18日に三浦春馬さん(享年30)が一周忌を迎える。真摯な人柄と、役に対して誠実な演技で視聴者を魅了してきた三浦さんの輝きは多くの人々の胸に刻まれていることだろう。そこでそんな彼の人生観を、本誌に語っていた言葉から振り返っていく。【理想の大人の男性像?仕事に対して誠実な人かな】(2011年2月1日号より)ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』(フジテレビ系)で、実年齢より5歳年上の教師を演じるにあたり、理想の男性像について、こう語っていた三浦さん。さらに、「仕事だけじゃなくて、同時にプライベートな時間も自分らしく楽しめる人が、僕の憧れる“大人の男”ですね」ともいい、理想の男性として同じ事務所の先輩である福山雅治(52)を挙げている。また、プライベートについては「いつか自分の子供たちと笑顔で食卓を囲むような、そんな温かい家庭を築けたらいいなって思っています」と理想の家庭像も語っていた。【今は、自分の仕事をたくさんの人に観てもらうことが、すごく気持ちいい】(2012年12月25日号より)22歳を迎え、念願だった「劇団☆新感線」の舞台『ZIPANG PUNK~五右衛門ロックIII』への出演が決まった取材では、こんな言葉が。11歳から15歳ごろまで、養成所でダンスを特訓していたものの、当時は苦手だったという三浦さん。しかしその結果、“動ける役者”が求められる舞台への出演につながったこともあり、「頑張っておいてよかった!(中略)次の舞台でいいものを作れたら、またひとつ、いい景色が見られるんだと思います」とさらなる成長にむけて意気込んでいた。【目標があるとモチベーションが全然違います】(2015年9月1日号より)映画『進撃の巨人ATTACK ON TITAN』で主演を務めた際には、「今までぶつかってきた壁」というテーマに、語学の習得や、役者としてのキャパシティの“壁”を挙げていた。「映画のために中国語を学びましたけど、語学に限らず、目標があるとモチベーションが全然違います」と壁を越える原動力について熱弁。また「19歳のとき、仕事で悩んだ時期がありました。それからまた、役者を頑張ろうと思えたのは20歳になってからです。役の幅が広がり、いろんな挑戦ができるようになったんです」とかつての悩みを明かす姿も。【計画性と努力を継続的に続けられる忍耐力と探求心を持っている人でありたいと思いますね】(2017年11月28日号より)いつもの三浦春馬のイケメンぶりとは一変、残念すぎる男子を体当たりで演じる姿が話題になった、ドラマ『オトナ高校』(テレビ朝日系)。“オトナ”ってどんな人?というインタビューには、「スケジュール帳に記したものに忠実に生きるってことかな」「自分が設定したビジョンに対して妥協せずに頑張れる人、きちんと目標を決めて毎日努力して目標の達成に近づいていける人」と、2011年の取材時とはまた違った““オトナ観”を教えてくれた。【役者としての人生を振り返ると、生意気な時期もあったように思います】(2019年3月26日号より)亡くなる1年前、本誌では最後となったインタビューで、「生意気な時期」があったと明かしていた三浦さん。「たぶん当時は気が大きくなっていたんだと思います。いまの自分だったら、“そんなことをしても得るものなどなかったよ”と言ってあげますよ」と若いころの自分へアドバイスを送っている。また、「僕も今年で29歳。人間の苦悩や後悔、嘆きを表現する機会が重なって。そういう芝居に挑戦させてもらえる年齢になったということかな」と、役の幅が広がっていくことを喜んでいた。実直で誠実な彼の言葉は、今も私たちの胸に残り続けている――。
2021年07月18日俳優の三浦翔平が、ライフスタイルマガジン『GOODA(グーダ)』Vol.60(ブランジスタメディア)の表紙&巻頭グラビアに登場している。三浦は今回、色気のあるスクエアプリントのシャツ、脱力感漂うレトロなワイドパンツと白シャツなど“男の色気”をテーマにしたアーバンリゾートファッションを披露。インタビューでは、趣味のサーフィンについて「基本的には毎日でも海に行きたいんです」「仕事が早く終わった日には、そのまま海に直行することもありますよ」と明かし、「もう少し子どもが大きくなったら、一緒にサーフィンやツーリングにも連れて行きたいですね」と語っている。また、もともとゴルフやキャンプとアウトドアの趣味が多いが、キャンプでの釣りにも挑戦してみたいという三浦。キャンプに至っては「外出自粛の期間にはキャンプもできなかったので、気分だけでも浸ろうと、ベランダにアウトドア用のイスを出して、iPadで焚き火の映像を流しながら、ビールを飲んだりしていました」と話すほどの没頭ぶりだ。
2021年07月15日「閉じ込めた記憶や時間や骨…。ずっと忘れられていたものが、あるきっかけで呼び起こされる。そんな思いを込めたタイトルに牽引されて、書けた部分も大きかったですね」辻村深月さんの『琥珀の夏』は、残酷な真実が描かれながら、慰撫されるような余韻が残る。物語は、弁護士の近藤法子が〈ミライの学校〉という団体の事務局を訪れたところから始まる。〈ミライの学校〉は、学校教育に疑問を感じていた有志が集い、運営されていた。ある事件をきっかけにカルト集団と批判されたその団体施設の跡地で、女児の白骨死体が見つかったのだ。法子もそのニュースを知り、「自分の娘と孫が〈ミライの学校〉に入ってしまったまま連絡が取れない、白骨死体は孫なのではないか」と案じる吉住夫妻の代理人となった。対応した団体の担当者は、「うちは無関係です」とけんもほろろ。だが、法子の胸の内はざわつく。法子は小学校の4年生からの3年間、〈ミライの学校〉の夏合宿に参加していたことを思い出す。“見つかったのは、ミカちゃんなんじゃないか”。ミカは、当時クラスになじめず孤独だったノリコを、〈友だち〉と呼んでくれた子だった。「法子を弁護士にしたのは、自分の過去を見つめ直してもらうときに、個人としてより、仕事として“関わらなくてはいけない”ようにするのがいちばん自然なのではないかなと思ったからです」いい思い出もある〈ミライの学校〉がカルト的だと言われることに違和感を覚える法子でさえ、調べ、記憶を掘り起こすうちに、自分の中にある無意識なバイアスに気づく。物語の重要なキーとなるのは、大人と別々に暮らす子どもの自立を促す〈学び舎〉や、願いを叶えてくれるという〈泉〉、子どもの自主性を育むという名目でなされる〈問答〉、〈内部の子〉と〈麓の子〉の距離感…。大人になった法子が、数々の思い出とそのころの気持ちを、リアルに細やかに掬い上げていくのも読みどころ。「以前は、大人が子どものころを振り返る形で書くときには、“子ども時代”を別の何かのように見ていた感覚があったんです。それが『かがみの孤城』やこの『琥珀~』を書いた近年、子どもの時間と大人の時間は分断しているわけではないな、子どもの時間の地続きに、私は私のままあるのが大人の時間なんだ、ということが、作家としても私個人としても実感できるようになってきて。すると、実は記憶はとても恣意的なものなのだなと感じたんですね。ならば、自分が真実だと思っていたものにもう一歩踏み込んだらまた違うものが見えるのではないか。あらためて、記憶というものを検証してみたいという気持ちもありました」また、読者から反響が大きかったテーマのひとつが“育児/教育”だ。「現実の中でも多々ある違和感を、〈ミライの学校〉を通じて書きました。子どもが自分の方を見てほしい時期に、親はもっと大きな理想や理念に夢中。子どもの未来のためと言いながら、親が我が子の未来をないがしろにしてしまうとか。よい活動とされていることも、その本当の主体に“子ども”はいるのかなど。そういうことも今回とことん向き合って書いてみたいと思いました」実際、幼いころのミカが両親と離ればなれの寂しさに耐えかね、夜中にこっそり朝一番の水を求めて泉に向かう場面は、胸が痛む。終盤に、読者がそれまで見ていた風景を一変させるようなサプライズが仕込まれている。だが、この名シーンは、さらなるクライマックスへの布石なのだ。辻村深月、恐るべし。「ミステリー的にも大事に書きたかったシーンです。私自身もそこがゴールだと思っていたら、ここがスタートだったのかと(笑)」500ページ超の大作だが、ついページを繰る手が逸る。傑作だ。つじむら・みづき作家。1980年、山梨県生まれ。2004年メフィスト賞を受賞しデビュー。’11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、’12年『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞。本屋大賞受賞作『かがみの孤城』が文庫に。『琥珀の夏』白骨死体の少女は誰か。事故か他殺か。動機は。守れなかった子ども時代の自分と友を、大人になった本人たちが代わって守る――。ミステリーとしてのリーダビリティも備えた、贖罪の物語でもある。文藝春秋1980円※『anan』2021年7月14日号より。写真・土佐麻理子(辻村さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年07月13日岡田将生が主演、共演に峯田和伸、寺島しのぶらを迎えた、三浦大輔3年ぶりの新作舞台「物語なき、この世界。」が開幕。三浦さんと、岡田さんらキャスト陣からコメントが到着した。誰もが物語の“主人公”であり“脇役”で、人生に物語を求めがちな現代。なにか起きそうで、起こらなそうな危うい街、新宿・歌舞伎町で、「ドラマ」の主人公に憧れる売れない俳優と、人生に「ドラマ」を求める売れないミュージシャンが10年ぶりに邂逅する。映画監督としてのキャリアを積み上げた三浦さん作・演出の本作は、観客を演劇と映画の狭間にいざなう。売れない俳優で、同棲している彼女の稼ぎでヒモ生活をおくる菅原裕一役には、岡田将生。売れないミュージシャンで菅原の田舎の高校の同級生、今井伸二役にはロックバンド「銀杏BOYZ」の峯田和伸。売れない俳優と売れないミュージシャンという現実とは真逆の役柄を、初共演の2人が演じる。そして、今井のバイト先の後輩でフリーターの田村修役には柄本時生。菅原の彼女でOLの鈴木里美役に内田理央。事件のキーパーソンとなる橋本浩二役に星田英利、本作品の鍵を握る歌舞伎町のスナックのママ・橋本智子役に寺島しのぶ。さらに、宮崎吐夢、米村亮太朗と個性豊かな俳優陣が脇を固めた。三浦大輔コメント稽古中はマスク着用で何とかやってきました。難しいテーマでしたので、舞台として成立するのか手探りでしたが、良いものをお届けしたいと皆で一緒に意見交換しながら協力しあってこの世界感を作り上げました。(キャスト・スタッフの皆さんには)感謝しています。いよいよお客様にお見せ出来るので、反応が楽しみです。岡田将生コメント感染対策を徹底的に行いながら稽古をやってきました。この作品は疲れれば疲れるほど良くなってプラスになっていき疲労感イコール気持ちよくなってきて、とても充実した稽古ができました。やっとお客様の前で最高の芝居を届けられるのが嬉しいです。一つ一つのシーンを大切に演じていきます。峯田和伸コメント稽古場ではマスク着用でしたので目だけの情報だけで稽古をしていましたが、劇場に入ってマスクを外してお芝居ができるのでやっと一緒にお芝居ができているな、と実感がつかめた感じがしました。本場が楽しみです。舞台は同じ設定で同じセリフを話しますがそこに楽しみを見出したいと思っています。これが最期になってもよいという覚悟で、自分がやらなくてはいけない事をやるだけです。頑張ります。寺島しのぶコメント三浦さんの舞台は「禁断の裸体」以来で、その時も子供が生まれて2年経った時で煙草の火がつけられない程緊張したのを覚えています。今回も2年振りに舞台へ引き戻してもらい縁を感じています。三浦さんのグサッと刺さるセリフを理屈っぽくなくいかにサラッとメッセンジャーとして伝えるためにどう身体に入れるのか戦っています。COCOON PRODUCTION 2021「物語なき、この世界。」は【東京公演】~8月3日(火)Bunkamuraシアターコクーンにて公演中、【京都公演】8月7日(土)~8月11日(水)京都劇場にて公演。(text:cinemacafe.net)
2021年07月12日今年4月に発表した作品で、見事第165回直木賞にノミネートされた一穂ミチさん。昨年出版したデビュー作が、いきなりベストセラーリストに入った新川帆立さんと蝉谷めぐ実さん。注目の作家3人が、具体作を紹介しながら語る、官能を書く喜び、読む楽しみとは!?3人が語る、小説世界における「性愛」の秘密。新川:官能成分のない小説を書いている人間なので、どんな本をおすすめしたらいいんだろうと悩んだのですが、私はエログロ好きなので、筒井康隆さんや中島らもさんを交ぜました。筒井さんの「喪失の日」は、童貞喪失の日に主人公がてんやわんやする話。中島さんの「DECO-CHIN(デコチン)」は、チンの画期的な使い方を編み出した短編。どちらも、めちゃくちゃ面白いです。一穂:私は選書がかぶってしまったらどうしようと思っていました。いま新川さんの基準を聞いていたら、杞憂でしたね。かぶる要素が全然ない(笑)。LiLyさんみたいな、ザ・官能な作家さんのも選んでらっしゃいますね。新川:『SEX』は、きっと女子は大好き、男子はドン引きな本です!5編それぞれいろいろなタイプの男女が出ているので、自分の好みを探すのもいいかもしれません。友だちと感想を言い合いたくなる作品集です。蝉谷:一穂さんの挙げた山田太一さんの『飛ぶ夢をしばらく見ない』はどういう物語ですか。一穂:主人公の中年男性は、病院で衝立越しにいる女性と性的な交流を持つのですが、翌朝、彼女は自分よりずっと年上のおばあさんだとわかり、ショックを受けるんですね。ところが、女性はどんどん若返っていくんです。ひとり逆行していく時間を生きる彼女に何ができるかと、主人公が苦悩する悲恋物語です。最初に読んだのが中学生のときなので「性の描写なんて要らない。そこがなければ美しい話なのに…」と思っていたんですが、大人になったいまは、「官能描写は貴重だな。あった方がいい」と大転換。「喪失の日」筒井康隆童貞喪失を夢見る青年は、官能の扉を開けられるか。主人公は、24歳の会社員。ある日、童貞喪失のチャンスが巡ってくる。しかも相手は会社のマドンナ的存在。目の前の目標に囚われ、朝からハイテンションな青年は、仕事はミスし、挙動が同僚に不審がられる。「性愛で頭がいっぱいになった人間の滑稽さが味わい深いです」。(『最後の喫煙者―自選ドタバタ傑作集 1―』に所収)新潮文庫605円「DECO-CHIN」中島らもぶっ飛んだ世界観で描かれる音楽と性愛と生の三つ巴。主人公が出会ったのは、奇形のメンバーで構成されている奇妙なバンド〈ザ・コレクテッド・フリークス〉。この短編が不慮の事故でこの世を去った著者の遺作でもある。「狂気じみた性愛を切り取ったラストシーンが圧巻。誰しもが持つ破滅願望を突き付けられ、背筋が冷えます」。(『君はフィクション』に所収)集英社文庫576円『SEX』LiLy女性主体の性愛のかたち。共感ポイントも多いはず。マッチングアプリで出会った男女の一夜限りのアフェア、ずるずる続くオフィスラブ…身近なシチュエーションがリアル、性愛にまつわる5編を収録。「女性が主体的にありのままに描かれているので、読んでいても清々しい。表現に臨場感もあって、『これぞ官能』と思わずときめいてしまうような圧巻の小説集です」。幻冬舎1650円『飛ぶ夢をしばらく見ない』山田太一限られた時間の中で、性愛は切なく燃え上がる。「読み返して惹かれたのは、時を遡っていく恐怖に苛まれながら、束の間の蜜月を繰り返す睦子の強さと聡明さ。彼女の言葉〈私にこんな思いをさせている神様かなにかには、意志も善意も悪意も理性もなくて(略)、私の方には理性だって意志だってあるのだから、それでわずかに対抗するしかないと思うわ〉が気高い」。小学館電子版671円*編集部調べ一穂ミチさん「ずっとBL(ボーイズラブ)作品を書いてきました。そのときは、女性が読んで萌えるのは近づき、行為に至るまでのプロセスで盛り上がるのかがいちばん大切だと感じていました。それは、男女間を描く場合でも同じだと思います。官能性というのは、関係性なのだとあらためて感じました」新川帆立さん「官能どころか恋愛小説も依頼が来たことがなかったので、この機会に書いてみたいと思いました。最初は、自分の好きなシチュエーションを織り込んでいましたが、実際の行為の様子は恥ずかしくなってしまい、最終的にシチュエーションを変えました。思いがけない体験で楽しかったです」蝉谷めぐ実さん「お引き受けしたものの、意識して書いたことのない世界なので、書き進めながらも手探り。『官能?う~ん、わからんぞ~』とぼやきっぱなしでした(笑)。私は、秘めたものや見えないところがいちばんエロい、と思っているので、そこに共感していただけるよう、腐心しました」※『anan』2021年7月14日号より。取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年07月11日謎が解かれた後に残る切ない余韻も素晴らしい、重層的なミステリー。道尾秀介さんによる『雷神』とは?「これまでに『龍神の雨』『風神の手』と、タイトルに『神』が入る話を2冊書いているので、いつか雷神を書いて『神』シリーズとして完結させたいと考えていました。どれも本当に神様が出てくるわけではありませんが、今回は現代における『神というものの意味』についても突き詰めています。たまたまなんですが、自分が普段よくいる浅草でも、雷門の両側に風神雷神の像、その後ろ側に龍神が立ってるんですよね」『雷神』の主人公は、ある出来事で妻を亡くし、小料理屋をやりながら男手ひとつで娘の夕見を育ててきた藤原幸人。娘には決して知られたくない秘密を隠し続けてきたが、ある日一本の脅迫電話がかかってくる。そこから、幸人の生まれ故郷の新潟県羽田上村の伝統祭〈神鳴講〉やそのさなかに起きた30年前の事件など過去が呼び覚まされ、家族、村人たち、村の因習が複雑に絡まり合う。「東京出身なので、雷といわれてイメージするのは雨と一緒にやってくる夏の雷なんですね。でも新潟など日本海沿岸部では、冬の到来を告げるものでもあり、常識的に冬季の気象現象らしい。落雷の様子も関東で見るのと違って、日本海側の雷光は本当にヤマタノオロチのように分かれていくんですよね。その違いも楽しんでもらえるなと、物語舞台も決まっていきました」既出作『貘の檻』で登場した郷土史研究家で写真家の彩根が再登場。「なぜかすべてを見抜いて解決をアシストする彼を、どこかでまた出したいなと思っていたんですよね」藤原父娘のみならず、幸人の両親や姉の亜沙実とも関わる、一家を襲った悲劇。その封印は解かれるのか。「初めての試みとして、後半に一枚の手紙の画像を入れています。物語は文章だけで成立しているので、それは素通りしてもらってもいいし、あのページをじっと見ることで真実を言い当てることもできます」小説を書くときは、プラモデルのパーツを組み立てるのではなく、少しずつ手を加えて仕上げていく“粘土細工”のようなイメージだそう。「トリック優先で物語を組み立てると、どうしても動機が甘くなってしまう。ストーリー、仕掛け、テーマを、同時進行で描くことで、3世代を串刺しにする、逃れられなかった何かが描けたかなと思っています」『雷神』幸人は姉とともに父親に連れられ、30年前に羽田上村を逃げ出した。だが娘に乞われ、忌まわしき故郷へと真実を求めて舞い戻る――。新潮社1870円みちお・しゅうすけ作家。1975年生まれ。2011年『月と蟹』で直木賞受賞。ミリオンセラー『向日葵の咲かない夏』ほか著書多数。※『anan』2021年6月30日号より。写真・森山祐子(道尾さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年06月28日越智月子さんの『片をつける』のヒロインは、もうすぐ40歳になるシングル女性の夏野阿紗。マンションの隣の部屋に住む〈人間不信の塊のような〉老女・五百井八重とひょんなきっかけで知り合い、〈ゴミ箱をひっくり返したような部屋〉の片づけを手伝うはめになる。最初は、とんだ災難と思っていた阿紗だが、作業が進むにつれ、八重を理解し、自身が目を背けていた問題とも向き合っていくことに…。年の離れた女性同士の絆と再生。温かな余韻を残す、珠玉作。「小説を書くときに、わりと自分や周辺の出来事を入れたりするんですよね。本書でも、カギをなくした風変わりなおばあさんから頼られたり、散らかった隣の部屋へ8階のベランダの柵を越えて入ったりした阿紗のエピソードは、実体験に近いです」初めは、八重をもっとわかりやすい“いい人”として描いていたそう。「元シスターですしね。でも、ぶっきらぼうで悪い魔女みたいに変えたら、筆の進みが違った(笑)。人はだいたい社会的に矯正されてしまうものですが、いつまでも変わらず自分を貫く人にある種の敬意があるんです。いつもそういう人物を魅力的に書けたらいいなと思っています」実は、阿紗自身も最初から片づけ上手だったわけではないし、八重も昔から孤独で偏屈な暮らしをしていたわけではない。少しずつ彼女たちの来歴が明かされ、読者が彼女たちを見る目も変わる。「案外、ふたりは似たところがあるのかなと思います。ふたりの心の近づき方はレイモンド・カーヴァーの『大聖堂』という短編の〈私〉と盲人にすごく影響を受けていますね」床の上、引き出しの奥、冷蔵庫の中。粛々と仕分けし、八重に捨てるように促す阿紗。その一方で、片づけの極意を切々と伝え、八重が〈死んでも捨てるな〉というヨレヨレのパンツを残すことは受け入れ、八重が売りかけたシノワズリーのボンボニエールは取っておくよう促す。「終活でも断捨離でも、要不要だけで考えて、ムダだからと、物だの感情だののすべてを『一切合切捨てなきゃ』というのは違うんじゃないかと。美しくないものは取り除いた方がいいけれど、美しいものを見ているときの豊かさは値千金。大切なものを見極め、捨てられない思い出に気づくことが〈片をつける〉ことかなと思うんですよね」『片をつける』作中作の童話も著者のオリジナル。登場する片づけや掃除についての知識や情報は実践的。ささやかなロマンスもあって、盛りだくさんだ。ポプラ社1760円おち・つきこ作家。1965年、福岡県生まれ。学生時代からライターとして活躍し、2006年に『きょうの私は、どうかしている』でデビュー。インスタアカウントはochitsuki56※『anan』2021年6月23日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年06月22日意味深なタイトル、巧みな文体、センスのいいエピソードやモチーフ…。そのすべてに痺れる、十市社さんの『亜シンメトリー』。なかでも表題作は、十市さんが初めて短編に挑戦した作品だそうで、魅惑的ないくつもの謎に陶然とする。執筆に1年以上かけたという野心的な一作だ。謎解きの難易度高め、読む快感強め。魅力的な仕掛けで惑わせる短編集。「物語を面白くするにはどうすればいいかと考えていくうちにこうなった、というのが正直なところです。ただ、ヒントはすべて書いてあるつもりなので『読み終わっても、よくわからない』という反応になるとまでは思っていなかったです(笑)」大学講師の亜樹は、通勤に利用している循環バスで〈六十の境はまだ越えていない〉くらいの年齢の花田早由里と乗り合わせる。ふたりはやがて奇妙なゲームに興じるようになるのだが、その流れで、亜樹は早由里の初恋物語を知ることになり…。「自分にいろいろ縛りを設けた作品で、シンメトリーにこだわりを持つ女性というのもその一つですね。さらに、宇治の巨椋池や、和辻哲郎さんの随筆、その辺りを走る循環バスなど、作中に織り込める実在の場所やものがつながって、物語の世界を広げてくれました」他に3つの短編が収録されている。1話めと3話めは、大学のジャズサークルで先輩後輩の関係にある中熊美緒と千日顕、美緒の高校の後輩の紫子が登場。紫子の叔父のジャズ喫茶〈ポーギー〉で顔を合わせて交わす、緊迫した会話が秀逸だ。「『枯葉に始まり』では、高校の美術部での事件について書き起こされたテキストを、謎としてどう活かすかから着想しました。その9年後を描いたのが『三和音』。3人の関係性が持つインパクトはいまだからこそ強いかも。設定が決まると場にふさわしい人物が現れるので、彼らを観察するように書いています」2話めの「薄月の夜に」は一人称視点で語られるいびつな恋愛劇なのだが、「私」など自分を指す言葉が一切出てこないために、物語と不思議な体感で向き合えるのが面白い。「意図的に人称を使わないことで、得体の知れない男という印象を持ってもらえたらいいなと考えました」実は本書は、登場する男女の関係がどう転ぶかわからない、サスペンスフルな恋愛短編集としても一級品。何度も読み返したくなる。『亜シンメトリー』十市さん自身も「読み返してみたら、すべて三角関係の話だと気づきました」と言うように、ハラハラさせられる危うい恋愛譚揃い。新潮社1815円とおちの・やしろ作家。1978年、愛知県生まれ。Amazon Kindleストアにて発売した『ゴースト≠ノイズ(リダクション)』が、のちに東京創元社で刊行。他の著書に『滑らかな虹』。※『anan』2021年6月9日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年06月05日映画『キャラクター』の原案者・長崎尚志さんに聞く作品が生まれるとき。心を掴む魅力的なストーリーやキャラクターは、どんなふうに生み出されるのか。稀代のストーリーテラーが明かす、創作の秘密を明かします。浦沢直樹さんとの大ヒット漫画『MASTERキートン』や『20世紀少年』をはじめ、漫画や映画の原作を数多く手がけてきた長崎尚志さん。その長崎さんが原案・脚本を担当したのが、映画『キャラクター』だ。企画から完成まで約10年。書き上げたシナリオはゆうに20稿あるという。まさに渾身の一作だ。「映画化を待たされ続けたので、ずっと疑心暗鬼でした。本当に映画になるんだと喜んだのは、撮影がクランクインしたと聞いたときでしたね(笑)」『キャラクター』は、相対するふたりの青年の運命が、衝撃的な形で交錯する物語だ。冴えない漫画家アシスタントの山城圭吾は、一家4人の殺人事件に遭遇、犯人の顔も目撃してしまう。そしてその犯人をモデルに冷酷な殺人鬼“ダガー”が犯行を繰り返すサスペンス漫画『34(さんじゅうし)』を描き、一躍人気を獲得。一方で、刑事の清田俊介は、連続して起きた惨殺事件が漫画の内容と酷似していることに気づき、捜査していく。そんなある日、山城の前に現れた青年は両角と名乗り、「『34』で描かれた事件を再現しておきました」と告げる。「才能がいまひとつの漫画家が、人間離れした殺人鬼と出会ってしまったら、どんな行動を取るか。もともとのアイデアはそれでした。ただ僕の場合はキャラクター作りも『こういう設定で、こういうシーンで、自分ならどう行動するだろう』というのが軸になるんです。そんな中で、登場人物たちがどう化学変化を起こしていくかが肝だと思います。実際、そうした論理からしか、物語は生まれないと思っています」長崎さんは、キャリアを通して、山城のような漫画家志望の青年をごまんと見てきた。「僕自身もそうなんですが、漫画界は、煮え切らないヤツの集まりです(笑)。漫画家や漫画編集者、あるいは漫画家になりたいとあがいているような人は、『そんな自分はどこかダメなんじゃないか』と思いながら生きている。気が弱くて、そのくせ、わずかしかない長所に強烈な自信を持っている。そういう偏った人間が多いですよね。一方、両角のような超人的な殺人鬼というのは、人類の歴史にときどき現れ、恐怖が入り交じった中で語り継がれています。そういった知識や情報は、その人物造型の参考にはしますが、結局は、自分自身と照らし合わせながら肉付けしていく感じです」さまざまなアイデアをうまく化学変化させたい。執筆の仕事は基本的にはひとり作業だ。しかし映画の場合は、監督やプロデューサー、俳優との共同作業になってくる。そうした過程において、どんなところに悩むのだろうか。「この映画の場合は、永井聡監督が『こう変えていいか』などマメに聞いてくれたので、原案者としては、物語をより理解してもらえるよう書き換えたところもあります。表現者同士、解釈が多少ずれるのはしょうがないし、そこが面白いとも思っていますね。漫画と違って、僕の担当者は面白いアイデアを出す人も多かったし、映画は特に、いろんな部品が合わさって変化していく分、発見もありました。たとえば両角のキャラクターは、僕の中ではもっと大柄な男のイメージだったんです。最初に浮かんだのは、『ヒッチャー』という古い映画で怪物的殺人鬼を演じていたルトガー・ハウアーみたいな。だから圧倒的に殺人者が強くて漫画家は弱い、そんな感じでストーリーを作っていたので、SEKAI NO OWARIのFukaseさんがあの役を引き受けるなんて予想もしていなかったんです。ただ、MVなどいろいろな映像を見ていると、表情が多彩でちょっとヤバい顔もする人なんだとわかった。そこから、彼を思い浮かべて当て書きしました」もともと映画化が動き始めるまでに、作品をめぐるやりとりを、関係者の間で無限に繰り返してきたという。「勝手にいじられたりするのがイヤなたちなので、この脚本は『こうしたら満足か?』と挑戦状を叩きつける気持ちで先回りして変えていきました。山城と夏美という恋人との関係も、結婚していたりしていなかったり版ごとにいろいろです。ひとつの話を変奏していくことは、僕にとってはそう大変でもないんですね。つらそうなふりはしますけど(笑)」ちなみに、発売中の『キャラクター』のノベライズ版もコミカライズ版も、映画とは違う結末に仕上げたという驚異のストーリーテラー。「特に小説版では、山城、両角、清田という3人の視点が入れ替わりながら、映画では語られなかった背景や動機なども全部明かしています。山城はどういう理由で漫画家を目指したのかや、両角はどういう家庭で育ったのか、清田はなぜこの事件を執拗に追うのか。そういった部分がわかると、映画もより楽しんでもらえるのではないかと思います」自分を楽しませることを忘れちゃいけない。ところで、長崎さんにとって、作品を書くモチベーションが上がるのはどんなキャラクターなのだろう。「僕自身は、いじいじした弱虫が変貌していくのが好みなんです。その対抗で、すべてにおいてすごい能力や魅力を備えた超然とした人にも憧れる。そうした二人が相まみえる物語がいちばん好きで、これまで作ってきた作品もそういうのが多いです。もともとエンタメは作るも見るも、人がどう言おうが、自分が面白いと思うことがいちばん大事じゃないかなと思います」コロナ禍になって、エンタメの可能性はむしろ広がった部分もある、と長崎さんは言う。「僕が若いころの読者やマニアは、読むモノも観るモノも当たって砕けろというか、評判なんか気にせずに自分で選んでいき、いいも悪いも自分でジャッジしていました。しかし、それがいつからか、グルメにしてもエンタメにしてもガイドブックの言うなりになっている人が増えた気がしていました。外出自粛期間などの影響なのか、時間がある分、自分の感性で探し出して見始めてくれてるんですよね。それは面白い現象だなと思っています」ながさき・たかし作家、マンガ原作者・編集者。マンガ雑誌編集長を経て2001年に独立。原作者としてはリチャード・ウー名義でも活躍。「醍醐真司シリーズ」など小説も手がけ、好評発売中のノベライズ版『キャラクター』も発表。『キャラクター』画力はあるが、悪人が描けずにくすぶる漫画家アシスタント・山城(菅田)は、殺人現場に遭遇し、殺人鬼・両角(Fukase)を目撃する。両角をキャラクターにした漫画で、山城は人気漫画家となるが、作品と酷似した殺人事件が次々と起こり…。6月11日公開。※『anan』2021年6月2日号より。写真・内田絋倫(The VOICE)取材、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年05月27日時代の空気とそこに生きる人々の秘めたる本音を、絶妙な比喩を交えて表現してきた朝井リョウさん。そんな朝井さんが作家生活10周年記念作品として、昨年に『スター』(朝日新聞出版)を、そしてこの3月に『正欲』(新潮社)を刊行した。「『スター』は初めての週刊連載だったので、次々に展開するグルーヴ感のある作品を目指していました。一方、人間の欲望をテーマにした『正欲』は書き下ろしだったので、衝動のままに書くというか、読み手にとって咀嚼しにくい作品になるかもと思っていました。それで前者を〈白版〉、後者を〈黒版〉と名づけたんです。でも、完成してみれば、『スター』は閉所で誰かと誰かがずっと対話をしている話で、逆に『正欲』は、私の本の中で“生きる”ということにいちばん前向きな本になったと感じています。本当に小説って計画通りにいかないんです。ただ、『正欲』を書きながら、この数年で明確化してきた、“生と死のうち生を選ぶとして、その理由になり得るものとは”というテーマに少し向き合うことができた気がしていて、それはよかったなと感じています」朝井さんの言葉は強い。デビュー作のタイトルは、10年経ったいまもさまざまにもじられる言葉として定着している。また本書では、性欲と重なる音に「正」の字を当てはめたタイトルにしたことで、性的欲求だけではなく、生きる上でおろそかにできない承認欲求や生存欲求のような欲も俎上に乗せた。たった2文字で、正しい欲とは何か、それを誰がジャッジするのか、と突きつけられているかのようだ。「〈正欲〉という題名は執筆前から決まっていました。欲はすごく個人的なことで、正はすごくパブリックなイメージの文字。そのアンバランスさが居心地の悪さを醸し出してくれるかなと。性欲はずっと書きたいテーマだったのですが、それをテーマに据えたとして説得力が出る自分なのかと、ずっと躊躇していました」不登校児の息子を持て余している検事の寺井啓喜、自分は〈正しい命の循環〉から外れていると感じている寝具店勤務の桐生夏月、学祭の実行委員として〈ダイバーシティフェス〉を仕切る大学生の神戸八重子が、代わる代わる語り手を務め、物語は進む。冒頭に置かれているのは、ある手記と衝撃的な事件の記事だ。語り手を含め、それらに何かしらの形で関わる人々が、自らが直面している問題を語っていく。作中には、性的指向をひた隠しにしている人物も出てくる。それは決して、多様性を認めようという建前だけでは解決しない苦悩も孕んでいる。多様性という言葉にしても、〈清々しいほどのおめでたさでキラキラしている言葉〉〈話者が想像しうる“自分と違う”にしか向けられていない言葉〉と評し、安易に是としないところが朝井さんらしい。「好きな顔のタイプとかはよく聞く話ですが、他のパーツ、たとえば膝とかの好みってなかなか聞かない。同じ体でも人を興奮させる部位とそうでない部位があるということがずっと不思議でした。『正欲』には、そういうレベルのものを筆頭に、ずっと頭の中に流れていたさまざまな回路が集合しています。どんな話題にも、それっぽい答えみたいな言葉はあると思うんです。たとえばコロナ禍でのステイホーム。私も色々と準備をして家にいられる状況を整えました。家庭ごみの清掃業者の方々の大変さに気付いたのはかなり後のことでした。それっぽい答えに安住しているときほど視野は狭まる。全員の暮らしやすさや生きやすさが実現するまでには、どうしても順番が生まれてしまう――色々と実感しました。もっと言えば、最後まで順番が回ってこない人もいるような世界で、それでも生きるほうを選ぶきっかけになり得る言葉に巡り合いたい。これは今後の課題でもあります」装幀にも一瞬で掴まれる。「メインテーマである“欲”を彷彿とさせるので、人間を含めた動物を表紙にしたかったんです。写真家の友人に相談したら、菱沼勇夫さんの作品を教えてもらいまして、内容にとても惹かれました。鑑賞者を集中させる力がすごいんです。菱沼さんの作品からは、私たちにはきっと理解ができないレベルの、被写体への執着のようなものを感じます。鴨の写真を表紙に選んだ理由は幾つもありますが、せっかく読者の方が考察してくださっているので、変に限定せずにおこうかなと思います」小説家として10年が経ち、何か変化はあったのだろうか。「私はこれまで、小説を書くときに社会を反映した広い視野を持たなければという強迫観念みたいなものがありました。やはり若いときに直木賞という大きな賞をいただいたことで自縄自縛しがちだったのですが、今回思ったのが、広い視野を持つ努力よりも狭い視野の人をたくさん書く努力のほうが向いているかも、ということです。そうすれば、極狭な私自身の視野でも小説を書ける気がする。こういう感じで、自分の中にある、できないことやわからないことへの恐怖心が少し減ったのも変化かもしれません。それは、先ほど少し触れた今後の課題に関わってくることでもあります。『死にがいを求めて生きているの』あたりから、もう生きている理由はないからと終わりを選ぼうとする自分、または誰かがいるとして、そのとき機能しうる言葉を私は見つけられているのだろうかとずっと考えているんです。その言葉を見つけ出す作業は、小説や読者のためというより自分のために、今後も続けていくと思います」変化する時代の中で、作品の質や価値はどう変わっていくのかを考察した『スター』に続く最新刊『正欲』。あらゆる欲望は、多様性という美辞麗句ですべて肯定できるのかと問いかける。新潮社1870円あさい・りょう作家。1989年、岐阜県生まれ。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。’13年、『何者』で直木賞を、’14年、『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年05月18日亡き祖母から受け継いだ大切な着物を着てお出かけするのを休日の楽しみにしている、野々村もも。『恋せよキモノ乙女』は、ももが着る着物のコーディネートが毎回可愛いと話題のコミックだ。その著者が、普段から着物に親しんでいるという山崎零さん。描く着物はどんなふうに決めているのだろう。「読者から『こんなコーディネートをしてみたい』と思ってもらえるようなものを目指して、物語や春夏秋冬、出かける場所のことも意識して選んでいます。自分でも好きで着ていたとはいえ、実際に着物のマンガを描かないかと編集さんから提案されたときは、うれしさ半分、緊張もしていました。袖部分の形状やシワの寄り方、着たときの柄の合わせなど、いわゆる玄人の人が読んでも違和感がないようにと、いまでも調べたり勉強したりしながらです。ただ、もともと日本画からマンガの世界に入ったので、着物の柄の花鳥風月などを描くのはとても楽しいです」ももがお出かけする先にも、わくわくさせられる。京都の老舗喫茶店や大阪の歴史ある図書館など関西エリアから、7巻より舞台は東京へ。「物語の出発点は、男性が普段のぞけない女の子のお支度を描く、でした。なので、どこへ行くかなどを考えるようになったのは連載が決まってからです。関西編では、他府県の方が見てもすぐわかるような有名な観光名所ではなく、関西の人が見ても『あそこいいよね』『よくわかってるね』と盛り上がってくれそうな絶妙なセンを狙いました。東京編でも踏襲していきます」本書はまた、恋にも仕事にも一生懸命なももの成長マンガでもある。「会社の受付嬢から転職し、現在は着物屋『猫の目』のスタッフとして、さらに着物の魅力にのめりこんでいるところです。着物業界は格式張っている印象もありますが、『私もこんなところで働いてみたい』と憧れてもらえるような、ときめき要素を大切にしていきたいです。店長で先輩のリンコちゃんとも、お互いがお互いを知って高め合えるような関係性として描いていきたいですね」恋愛は、ももの想い人である椎名さんとの関係が、紆余曲折がありつつ進行中。7巻からは「ももが大阪、椎名さんが東京」と遠距離状態に。「ロマンスに関しては私自身がドライでちょっとズレている部分もあるので(笑)、周囲に取材しまくってエピソードに活かしています」7巻のラストでは、控えめだった椎名さんも意外な一面を発揮。恋の行方はますます楽しみだ。やまざき・ぜろマンガ家、日本画家。京都精華大学芸術学部日本画コース卒。同人活動を経て2013年商業誌デビュー。本作を「くらげバンチ」で連載中。『恋せよキモノ乙女』7各話の最後に、着物スタイリスト・コバヤシクミさんによる柄やコーディネート、歴史などの解説がついていて、着物初心者でも楽しめる。8巻は今秋刊行予定。新潮社704円©山崎零/新潮社※『anan』2021年5月19日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年05月15日あなたには、人より秀でた「才能」ってありますか?どうかな、わからないな……という人も多いはず。そこで今回は、星座別にあなたが天から授けられた才能をご紹介します!前編に引き続き、後編のみなさん!……ぜひ、お楽しみくださいね。■ てんびん座(9/23〜10/23)……人付き合いがうまく、世渡り上手やや八方美人で平和主義なてんびん座女性。その性格ゆえ、人付き合いがうまく世渡り上手。また物ごとを多面的に見られるので、偏った考えになりにくいのも、てんびん座女性の良い点。■ さそり座(10/24〜11/22)……大事な人を愛し抜く情熱的で集中力がすごいさそり座女性。身内をとても大事にし、恋愛においてはひとりの人を愛し抜く力を持っています。ただ悪く言えば、その人を地獄の果てまで追いかける執念深さも……。■ いて座(11/23〜12/21)……遊びの達人自由奔放で遊ぶことが大好きな、いて座女性。楽しいことへのアンテナをいつも張っていて、友人や恋人には自分のハマっている遊びを教えて、一緒にはしゃぐ遊びの達人。■ やぎ座(12/22〜1/20)……審美眼があり、お金もうけの素質アリ志が高く頑張り屋で、成功を目指すやぎ座女性。じつは本物を見抜く力があり、その審美眼はもちろんビジネスにも有利に働いていて、お金もうけが上手だったりします。■ みずがめ座(1/21〜2/18)……斬新なアイディアを生み出す個性的で常識にとらわれない、みずがめ座女性。普通の人なら思い浮かばないような斬新なアイディアをどんどん生み出したりと、かなりクリエイティブな才能があります。■ うお座(2/19〜3/20)……みんなの心を癒やすヒーラー共感能力が高く、癒やし系なうお座女性。みんなの悩みごとを「うんうん。わかるよ」と真剣に聞いて、相手の心を軽くしやさしく癒やすヒーラーのような能力があります。■ 魅力的な才能を活かして才能を自覚している人は、ごくわずかでしょう。「自分には何も才能がない」と思っていたあなた!あなたにも魅力的な才能が、ちゃんとありますよ。(美佳/ライター)(愛カツ編集部)presented by愛カツ ()
2021年05月12日ジェンダーギャップや結婚、高齢化など今日的な問題を題材に、問題提起していく作品を多く手がけている垣谷美雨さん。最新刊『代理母、はじめました』では、自然災害によりスラム化した2040年の東京を舞台に、少子化や不妊治療、代理出産などに焦点を当てて物語が進む。「もしも」の世界から見つめる、子を抱くことの願いと痛みと希望。「私はよく『if(イフ)の物語を書く』と言われます。この作品でも舞台としたのは地震や台風など災害が多い日本です。その上、原発の問題もすでに『もしも』とは言えないところまで来ています。今後も災害によって格差が広がり、自己責任の名のもとに人々の心が荒廃していくこともありえます。そうならないために今どうすればいいかを考えてみたかったのです。極端な設定で描くと、頭の中にある想像力を思う存分使えるので挑戦しがいがありました」24の章からなり、ふたつの視点で描かれる。奇数章の語り手は、義父の奸計で16歳で代理母をさせられ、その経験から代理母ビジネスに切り込んでいくユキ。偶数章は、社会の矛盾を許さないと奮起する役割でもあり、女性が抱えるいろいろな悩みを聞く役割も持つ倉持芽衣子医師。「世間知らずの少女と、人生経験豊富で教養のある大人の女性を対比させ、女性同士で互いに助け合う思いやりや優しさ、年齢差に関係ない友情などを表現したかったんですよね。『女の敵は女』などという家父長制的価値観にどっぷり浸かった昔ながらの男たちの戦略を、撃退したかったという気持ちもあります」本作では子どもを欲しがる人々の思惑が絡んでいるため、ジェンダー問題や経済格差など、社会の課題がリアリティをもって迫ってくる。「若いころから産婦人科医療が置き去りにされていると痛切に感じてきました。がんなどに比べ、妊娠出産、中絶、更年期に伴う様々な体調不良などの研究は進まず、欧米では100年も前から取り入れている処方や薬さえ日本の医療現場では使っていません。後々の世代まで引きずらないよう、すぐにでも解決してほしいという切なる願いを込めています」作中に〈この国は、考えると虚しくなる「もしも」がいっぱいだ〉とあるが、登場する女性たちのように、女性がいつか政治や組織の決定の場で力を持ち、社会を変えるかもしれない。そんな希望を感じる小説だ。『代理母、はじめました』家父長制社会の価値観から呪いのように投げかけられてきた言葉への違和感。それに気づき、抵抗するユキや芽衣子の存在が頼もしい。中央公論新社1760円かきや・みう作家。兵庫県生まれ。会社勤務を経て2005年「竜巻ガール」で小説推理新人賞を受賞しデビュー。今秋、熟年離婚小説『もう別れてもいいですか』を中央公論新社より刊行予定。※『anan』2021年4月14日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年04月13日現代を生きる等身大の女性たちの悲喜こもごもをリアルに描いてきた東村アキコさん。『私のことを憶えていますか』で選んだテーマは、初恋だ。誰しもが甘酸っぱく、あるいはほろ苦く思い出すその記憶が、いまの自分の人生とつながったら…。主人公の遥はそんな偶然に直面する。遥は、ゴシップサイト編集部のライターとして仕事三昧な日々を送っている30歳のシングル女性。ある日、人気俳優SORAが初恋相手の少年〈こうちゃん〉に似ていることに気づくのだが……。「作中の設定は、ほとんど私の実体験を重ねています。たとえば、私はアイドルグループ『2PM』のチャンソンの大ファンなんですが、K‐POP好きな友人たちからも『あなたが好きだって言うアイドルはいつも同じ系統の顔をしているよね。パフォーマンスとか関係ないよね』と指摘されてすごく納得しました。私自身の初恋も小学6年生で、相手はよく遊んでいた3歳年下の男の子。記憶では、『ターミネーター2』に出ていた少年時代のエドワード・ファーロングみたいでした!臆して好きだと言い出せなかったことや、バレてはいけないとひた隠しにしていたことも同じ。『初恋の相手こそがその人の恋愛のベースになる』というのが私の恋愛持論のひとつで、実際、周囲に聞いてみても共感してくれる人が結構いたんです。ならば、そうした気持ちを織り込んで描いてみようと思いました」〈こうちゃん〉は家庭の事情で引っ越してしまい、その後の消息がわからない。遥にすれば、初恋相手が芸能人になって目の前に現れたのかもしれないわけだ。SORAは〈こうちゃん〉なのか否か。もしそうだとしても、自分はどうしようというのか。遥の気持ちは揺れる。「イケメン俳優さんたちの小中学生時代には、きっと彼らに恋していた女の子たちがたくさんいたはずで、自分の初恋相手がいま芸能界にいる女性って1万人くらいはいそうだなと(笑)。わりと現実味のあるストーリーではないかと思うんです」一方、遥には猫作という腐れ縁の幼なじみがいる。恋愛の機微に乏しい遥は、猫作が密かに遥のことを思っていることにも気づいていない。この奇妙な三角関係の行方も物語の牽引力。なにせ、猫作はイケメンでワイナリーの跡取りという高スペック男子なのだ。「猫作がマンガ用語でいうところの『スパダリ』、つまりパーフェクトな男の人ではあるんですが、まだ完璧なスパダリになるためのエピソードが見えていなくて思案中です。リアルな恋愛で考えれば、SORAは芸能人なので、遥とくっつくのはなかなか難しい。猫作とハッピーになるという展開も可能性としてはあるけれど、実際、マンガは描いてみないとわからない部分が多くて。寡黙で魅力的なハンサムと、憎まれ口を叩く気心の知れたハンサムに挟まれて悩む感じが、オーソドックスな少女マンガのようでもあり、懐かしくないですか?」ちなみに、本作は日本と韓国で同時連載。マンガ界初の試みも話題だ。「なので、たとえば町の風景や看板の文字などは日本版・韓国版で変えているんですね。身近な物語として感じてもらいたいし、と同時に、どこの国の人が読んでも違和感なく読んでもらいたいので、細部まで工夫しています」3巻では、いよいよSORAの正体を遥が知ることになるのか…。首を長くして続刊を待ちたい!『私のことを憶えていますか』3仕事でSORAにインタビューする機会がめぐってきた遥。しかし、問い詰めることもできず、もやもやした気持ちは高まるばかり…。電子マンガサービス「ピッコマ」にて連載中。4/7発売。文藝春秋1045円©2021,Higashimura Akiko,neostory,All rights reserved.ひがしむら・あきこ1975年、宮崎県生まれ。’99年『ぶ~けデラックス』増刊にてデビュー。『海月姫』で講談社漫画賞少女部門を、『かくかくしかじか』でマンガ大賞、文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞。「東京タラレバ娘」シリーズ、『雪花の虎』など著書多数。衣装協力(ジャケット)・LOVELESS(LOVELESS青山 TEL:03・3401・2301)※『anan』2021年4月7日号より。写真・土佐麻理子(東村さん)スタイリスト・藤原わこヘア&メイク・後藤るみインタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年04月05日思いがけない人間関係やエピソードが交錯していくリーダビリティの高さが、村木美涼さんの小説の魅力だ。『商店街のジャンクション』もまた、着ぐるみが媒介となって物語は意外な方向へ転がっていく。商店街で、着ぐるみでチラシ配りのアルバイトをする、男女3人の物語。主な登場人物は、IT系会社員の滝田徹、インフォメーションセンターで働く水谷佳菜、追われる身の兵頭健太という3人の男女。「『着ぐるみの中にいる時間を何よりも大事にしている男』『すべての物事を右からしか始められなくなった女』『ただひたすら面倒から逃げている男』。この先もこのままでいいのかとうっすらとした不安を抱いている彼らがどう変わっていくかが読みどころかなと。着ぐるみの名前を〈チョッキー〉にしたのは、着ぐるみの中でVサインをしているからという単純な発想からです(笑)」村木さんの作品では、「この人物には何か人に言えない秘密や悩みがあるんだな」と思わせる場面が早い段階から明示されるのだが、その具体的な中身はなかなか明かされない。だが、作中に出てきた〈偶然こそが生きている証しだ〉という意味深な言葉が、テーマをよく表している。「10年くらい前から“偶然”というものについて考えるようになりました。よく“単なる偶然”などと言いますが、思いつきでしたこと、あるいはしなかったこと。それらが巡り巡って誰かのもとに偶然として届いたときに、もしかしたら、その人の人生を大きく変えるかもしれない。そんな考えはいまもずっと続いています。それを私なりにいろいろ考えた結果が、バラバラに見える4人の男女のエピソードがつながる『窓から見える最初のもの』で、あれは言ってみれば、偶然が主人公の作品だと思うんですね。本作ではラストに置いた『00』部分で、そんな思いをよりはっきりとした言葉にすることができたかなと思っています」過去作がいずれもミステリーの文学賞を受賞していることからもわかるように、作中に謎は入っているものの着地は奇妙。だがそこが痛快だ。「作品を出すたびに『これってミステリー?』と言われます。本人はあまり気にしていなくて、どうしてもこうなってしまうからしかたがないと、最近は開き直っている部分も。これからもそうした作品をマイペースで書いていきたいです」村木美涼『商店街のジャンクション』「登場人物を自分で理解するために表には出さない短編を書くということをよくします」。「00」という章も、そんな気持ちで加えたそう。早川書房1870円むらき・みすず作家。宮城県生まれ。2017年『窓から見える最初のもの』でアガサ・クリスティー賞大賞を受賞しデビュー。‘19年『箱とキツネと、パイナップル』で新潮ミステリー大賞優秀賞。※『anan』2021年4月7日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年04月05日アンリアレイジ(ANREALAGE)の2021年秋冬コレクションが発表された。“天と地”がひっくり返ったら、洋服はどうなる?シーズンテーマは「グラウンド(GROUND)」。人が依って立つ足元=地面から連想し、“天と地”をひっくり返すというひらめきを得た。パリファッションウィークにてデジタル形式で発表したコレクションでは、このアイデアを遺憾なく発揮し、重力と質量までもが消えたような天地逆転のファッションショーを繰り広げている。ファーストルックは、等間隔に並ぶドット柄のコート。モデルはいつも通り、地面にしっかりと足をついて歩みを進める。続いて現れる2体目を一目見れば、視聴者はデザイナー森永邦彦の意図を直感的に理解するはずだ。モデルは天井のランウェイに足を支えられており、“天と地”がひっくり返った世界を生きているのだから。彼女の纏うコートの水玉模様は、コートのショルダー部分に雪崩のように寄せあつまり、襟は逆立っている。重力に逆らって生きる彼女たちの洋服にあしらわれたダイスチェックや千鳥柄、アーガイルは、どれも原型をとどめていない。洋服の裾は無地になり、柄が首もとによって、見慣れない模様を成している。洋服のディテールも本来あるべき場所から解放されていて、トレンチコートのベルトは偏り、ドレスのフリルは逆立っている。デニムやミリタリージャケットの裾はめくれ上がり、裏地があらわになった。非日常が日常に、日常が非日常になりつつある現代。フィジカルショーを開催するのが難しい状況の中で、デジタルでしかできないショーをみせてくれた森永の姿勢は、天が地になり、地が天になろうとも、ポジティブに歩みを進めることの大切さを教えてくれた気がする。サカナクション山口らが音楽を担当なお、今シーズンも音楽はサカナクション・NFの山口一郎と、同じくNFの青山翔太郎が参加。ジャック・オルフェンバックによる「天国と地獄」にサウンドエフェクトやビートを加え、クラシック音楽をアレンジすることで、今季のムードを表現した。
2021年03月21日ジェンダーがからむ心ないノリに違和感を覚え、自分も無自覚に加害者になっていないかと心を痛める男性主人公を描いた、大前粟生さんの「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」。それを表題作とした短編集は、繊細で生きにくさを感じている読者のもとに届き、一躍注目作家に。待望の新刊『おもろい以外いらんねん』は、お笑い好きな男子3人の、高校時代と10年後を追う青春小説だ。お笑いに向き合う3人を介して、“既存の当たり前”に風穴をあける。「僕は、お笑いが好きで、劇場や配信でよく見ているのですが、いわゆるいじり笑いも多いんです。僕自身もイヤだなと感じたし、演者たちも本当に楽しんでやっているのかなとよく思っていました。学校という集団の中でのお笑いを描くことで、お笑いを取り巻く社会全体の空気感までグラデーションで描けるかなと」みんなを笑わせてクラスの中心にいる滝場、滝場の幼なじみで語り手の〈僕〉こと咲太、そんなふたりと仲良くなった転校生のユウキ。文化祭で漫才をやろうと滝場とユウキは〈馬場リッチバルコニー〉というコンビを組んだ。そんな高校時代から10年後、精力的にライブに出演していた〈馬場リッチバルコニー〉が、動画配信がきっかけで人気と知名度が上がり始めていた矢先に…。売れることと、面白いということ。お金のためなのか、生きがいのためなのか。両極端な価値観に翻弄される彼らの衝突や苦悩は、実は私たち読者の日常とも地続きだ。「自分ではふつうのつもりでも、時代の価値観に合わなくなっている危なげな人物。そんな人間に批判の目を向ける人物。さらに、いまはお笑い界と社会との境目にいて、距離を置きながらもよく見ている人物もいたらいいなと。人によっておもろいは違うし、正解を絞らないことで、面白いということの多様性、多面性を損なわずに書きたかったですね」本作でもジェンダー差別の問題に切り込んでいる。「男社会や男性性に起因する問題解決を、イヤな目に遭っている被害者たちに求めてしまうのはグロテスク。引き受けさせすぎ、背負わせすぎだったことが心苦しすぎます。せめて作中では女性たちに甘えずに、男たち3人の中で解決させてみました」咲太ら男性自身が問題に気づき、自主的に変えていこうとする展開は、読者にとっても間違いなく希望だ。『おもろい以外いらんねん』作中に登場するネタ台本も、大前さんの作。「小説なので省略することは可能でしたが、笑いのバラエティも出したかったので」。河出書房新社1400円おおまえ・あお作家。1992年、兵庫県生まれ。2016年、「彼女をバスタブに入れて燃やす」が「GRANTA JAPAN with 早稲田文学」公募プロジェクト最優秀作となり、デビュー。※『anan』2021年3月24日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年03月17日ある女の子が過酷な少女期から青春期を振り返る形で進む、木崎みつ子さんの『コンジュジ』。胸が痛む場面も多いが、少女が生きるよすがになるものを見つけ、やがて地に足をつけて踏み出す決意をするさまに、光が差す思いがする。過酷な現実を支えたのは空想の恋人。夢物語を踏み台にした、再生を描く。「最初の1行を書いたのは2015年。性虐待の報道などに触れたことが書く動機のひとつですが、どうやれば当事者の方や作品を読んでくださる方を必要以上に傷つけずに小説にできるのか迷って…。書き上がるまでに5年かかりました」逡巡を重ねながら書いた力作だ。主人公のせれなは、身勝手な母親が出奔し、残された弱い父親と暮らす。母親代わりになろうとしてくれた異国の女性ベラさんもいるが、父との関係は安定せず、家庭は壊れたままだ。そんなせれなの孤独を救ったのが、すでにこの世にいない往年のロックスター、リアンだった。「身近なアイドルよりも、時代も国も違う遠い存在の方がリアルタイムでの情報が入ってこないので、夢を見やすいかなと思ったんですね」作中で描かれるリアンや彼の所属するバンドのエピソードを読んでいると、実在していたのではないかと思わせるほどリアリティたっぷり。「せれなの熱狂を描く上で、私自身の体験も反映させています。ただ私の場合はミュージシャンではなくて、ウサイン・ボルトでしたが(笑)」だが、せれながリアンに夢中になるのは、現実から逃れたい気持ちの裏返し。父親はどんどんせれなに妻的な役割を強いるようになっていく。「ふだんから暴力的で社会から逸脱しているような父親なら『そういう人間だから』と例外的に思われてしまう。仕事もしていて、見ていられないほど頼りない父親でもこんなことを起こす人がいるのだと。身近な問題として書きたかったんです」父親に降りかかった出来事で、せれなの人生はひとつの転機を迎える。「倒れている父親を〈元気いっぱいのサボテンのよう〉と描写したのは、最大限の軽蔑を込めてのことです。フィクションでしかできないことをしようと思っていました」その後、リアンとの幻想の蜜月にも変化が生まれ、それに呼応するように、せれなは現実に立ち向かい始める。そんな再生と希望の物語だ。「この書き方が適切だったかわかりませんが、性被害の問題に関心を持つきっかけになればうれしいです」きざき・みつこ作家。1990年、大阪府生まれ。大学を卒業し、現在は校正業に携わる。本作で、2020年、第44回すばる文学賞を受賞。同作は、2020年下半期の芥川賞候補にもなった。写真・冨永智子『コンジュジ』せれなが15年もの間、恋していた相手は「The Cups」というバンドのイギリス人ボーカリストのリアン。彼の存在が、彼女の生きるすべだった。集英社1400円※『anan』2021年3月17日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年03月15日『地図にない場所』は、『町田くんの世界』で爆発的な人気を博した、安藤ゆきさんの最新刊。〈俺の人生、終わってるのかも……〉という、中学1年生・土屋悠人(ゆうと)のぼやきから、物語の幕は開く。兄は優等生で弟はイケメン。学校でも家庭でも居場所がないと感じている悠人の孤独を埋めてくれるのが、隣人のコハクさんこと宮本琥珀だ。世界的バレエダンサーだった琥珀だが、ケガにより引退と報道される。実は琥珀は母親とも死別したばかり。挫折を抱えているはずなのに、存外に明るい表情を見せる彼女に、悠人は最初とまどうが…。「自分にとって何が日常なのか、人はわりと認識できないもので、失って初めて気づくような部分があると思います。と同時に、失ったその状態が日常になっていくということもありますね。そのもろさや不思議さについて考えてみたかったんです」バレエ一筋できた琥珀は、いわゆる生活能力が皆無。そこで悠人は、倍も年上の彼女の部屋を訪ね、何くれとなく世話を焼く。琥珀の本心をつかみかねながらも、そんなひとときに悠人自身の寂しさも慰められる。「大人から見ると、悠人の悩みは絶望するほどではないと感じるかもしれませんが、中学生の閉じられた世界ではとても深刻な問題になります。そういった部分を繊細に描いていけたらいいですね。一方、琥珀は、天才ゆえに当たり前のことが何もできない人というところからキャラを肉付けしていきました。元天才は一種の使命を終えた人、という見方もできる。そんな天才を降りた人のその後を描きたいなと思ったんですね。琥珀がいつか当たり前の生活ができるようになればいいなと思います」ある日、琥珀は悠人に〈“地図にない場所”って知ってる?〉と問いかける。ふたりの住む地域の子どもたちの間で、かつて〈イズコ〉と呼ばれる地図に載っていない場所の都市伝説が流行ったのだ。「悠人と琥珀のキャラを作ってから、世代や性別を超えた特殊な共通認識があれば面白いなと考えました」かくて、ふたりは〈イズコ探し〉の小さな冒険を始める。まずは資料を求めて出向いた図書館で、悠人は幼なじみのすずと遭遇。バレエを習い、琥珀のファンでもあるすずが、悠人と琥珀の関係にさざ波を起こしそうで…。気になる2巻は、夏頃発売予定。『地図にない場所』1中間子の悠人が兄や弟、両親とどう関わっていくのか、家族関係が変化していくのも楽しみ。『ビッグコミックスペリオール』にて連載中。小学館591円©安藤ゆき/小学館あんどう・ゆきマンガ家。『町田くんの世界』(集英社)で第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞、第20回手塚治虫文化賞・新生賞を受賞。※『anan』2021年3月3日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年03月02日世界的なイリュージョニスト・プリンセス天功(引田天功)の最新ショー「プリンセス天功 ザ・イリュージョン2021」が3月6日(土)、有楽町よみうりホールにて開催される。今回のショーは「withコロナの日々に、魔法の瞬間(とき)を」と題し、コロナ感染症対策の観点から2部構成でイリュージョンをお届け。第1部は、世界中で上演をされている、プリンセス天功の“てっぱん”とも言うべき、スピーディー且つ華麗な構成演出となっている。第2部は、THE SYAMISENIST、東京魔術団、Mr.KAZUKI、ジェームズ小野田といった今まで個々に共演をしてきた音楽系アーティストを一堂に会し、音楽とイリュージョンの新しい融合を、世界初演出で上演。他照明、音響、特殊効果等も、一般的なマジックの世界観ではない、挑戦的な内容でプリンセス天功のイリュージョンを披露する。【公演概要】「プリンセス天功 ザ・イリュージョン2021 〜withコロナの日々に、魔法の瞬間を~」開催日時:3月6日(土)13:30開演(ロビー開場12:30 / 客席開場13:00)会場:有楽町よみうりホール(東京都)<出演>プリンセス天功東京魔術団 / Mr.KAZUKI / THE SYAMISENSIT特別出演:ジェームス小野田(米米CLUB)
2021年02月16日応募数が史上最多だったという第57回文藝賞。受賞作『水と礫(れき)』の著者が藤原無雨さん。物語世界を屹立させるディテール豊かな描写にも圧倒されるが、なんといっても構成の妙が光る。ある男の半生を反復させることで時空を押し広げ、一族のサーガとして描き出してみせた。筆力の高さを、これ一作で証明した。体内に溜まった水を乾かす旅は、時空を広げ一族のバトンを語り出す。「核となる物語に過去と未来をどんどん足していき、さらに圧縮していったらどうなるのか。そんな興味から出発したんです」核となる物語というのはこうだ。東京でドブ浚いの仕事をしていた青年クザーノ。取り返しのつかないミスで職場にいられなくなった彼は、やむなく故郷に戻ってくる。しかし、故郷にも居場所はなく、〈東京から運んできた悲しい水分を全部蒸発させ〉たいと願うように。クザーノは、先に砂漠へ旅立った弟分・甲一の後を追い、やがて砂漠の向こうの町にたどり着く。「1」「2」「3」と続いてきた物語は、再び「1」にループするが、見えてくるクザーノたちの生活は、ループするたびに少しずつ違うエピソードが足され、一族の来歴が具体的になっていく。「クザーノの息子がコイーバで、父親はラモンで、さらに孫や祖父も登場してくる。誰にフォーカスされるかは運動性に任せているところがあります。繰り返しといっても、書き始めが違えばプロセスは変わっていき、内容も変わっていくのが自然。指がキーボードを何度も往復し、僕自身も知らない物語を紡ごうとしているような感覚で書いていました」クザーノをはじめ、一族の男性の名前は葉巻から取った。「クザーノ ドミニカン コネチカット チャーチルとか、ロメオ イ フリエタとか。この作品を執筆中、葉巻に凝っていたので(笑)」タイトルにある礫は、石の砂漠=礫砂漠を意味する。「東京の水が体内に溜まって…という感覚は僕自身の実感なんです。小説を書くにあたって、いろんな湿度のようなものと闘っていかなくてはいけないと思っています。最初に水があれば、礫は最終地点にならざるを得ない。砂の砂漠は憧れなんですが、礫砂漠は憧れを超越している。そんな物語が書けたかなと」次回作も、固定観念を覆すような実験的な作品になるらしい。『水と礫』ラクダのカサンドルと出た砂漠への旅路。砂漠の向こうにある、生まれ故郷とニアリーイコールな町に居着いたクザーノは…。河出書房新社1400円ふじわら・むう作家。1987年、兵庫県生まれ。他の作品に、マライヤ・ムー名義の共著『裏切られた盗賊、怪盗魔王になって世界を掌握する』(一迅社)がある。ふだんはシガリロ(小型版の葉巻)を愛煙。※『anan』2021年2月17日号より。写真・橘 蓮二(藤原さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年02月14日宝石やアクセサリーが大好きな女子高生の谷川瑠璃(ルリ)。無謀にもひとりで水晶ハントに出かけた先で、鉱物学を研究中の大学院生・荒砥凪(ナギ)に出会う。かくて、ナギさんの手ほどきもあり、ルリもまた、鉱物採集の世界に足を踏み入れることに…。水晶、砂金、ガーネットなど、小さな鉱物が見せる大きな宇宙。『瑠璃の宝石』は、自然の中にある鉱物とのふれあいを楽しめるユニークなコミックだ。著者の渋谷圭一郎さんは、大学の研究室で学術的に鉱物を学んだそう。「水晶やその他の鉱物を採集しに行くというと、『私も行きたい』という女子学生もわりといるのですが、社会に出ると離れてしまう。やはり鉱物採集の現場には、年季の入ったおじさま方が多いです。実態を言えば、岩石ハンマーを手にして岩と格闘している泥くさい世界なんですが、そこはマンガ。女性キャラに活躍してもらい、広い読者に案外身近な世界なのだなと、楽しんでもらえたらと思いました」ルリは石は好きだが、いかんせん初心者。だが、ナギさんの解説を聞くうちにどんどん興味を深めていく。一方、ナギさんは自然を理解しようとするキャラクターとして描かれる。「もともと科学は、自然現象を理解しようというところから始まっているんです。雷は電気なのかとか虹はどうしてできるのかとか。そういうスタンスを持っている人物として、ナギは描きたいと思いました。現代では科学はお金になるかどうかが優先されがちですが、純粋にロマンを追いたいという思いもある。鉱物学や天文学など“地学”は科学が本来持っているそんな魂をいまも備えていると思うんです」作中では、鉱物がいかに生み出され、壮大な自然を見せてくれるかが随所で力説される。〈この景色を作るために自然はどれだけのエネルギーと時間と偶然を必要としたんだろうな〉〈人間の時間感覚とは全く違う(略)スケールで動いているからだ〉など、ナギさんの名言に心が揺さぶられずにはいられない。白黒の線で鉱石の輝きを表現するのは難易度が高そうだが、「むしろ、そういう宝石などの見せ場を描いているときがいちばん楽しいですね。山の中など自然を描くのも、自分がここにどんな樹や岩を置こうかと自由にデザインできるので、楽しいです」鉱物採集の魅力をルリやナギさんと一緒に楽しんでいる気分になれる。『瑠璃の宝石』1火山国で4枚ものプレートがひしめき合う日本は、種類が世界有数の鉱物産出国だそう。2巻は、サファイア採集を軸にしたストーリーになるらしい。KADOKAWA680円©渋谷圭一郎/KADOKAWAしぶや・けいいちろう群馬県出身。理科教員などを経て、リケジョの部活マンガ『大科学少女』(双葉社)で連載デビュー。現在、本作を『ハルタ』で連載中。※『anan』2021年2月17日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年02月13日江戸随一の大きさを誇る芝居小屋、中村座。ここで起きた怪異に、日本橋で鳥屋を営む藤九郎(ふじくろう)と元女形の魚之助(ととのすけ)がある謎に挑む『化け者心中』。その著者が、蝉谷めぐ実さん。芸に生きる役者たちが覗いた深い闇。お江戸のバディが挑む、鬼の正体とは。「中学、高校と演劇部だったんです。演劇でも、どこまで役になりきれるかというのが作品や役者の評価にもかかわりますよね。大学で受けた児玉竜一教授の講義をきっかけに、性別をも乗り越えて役になりきっていくという女形に強く惹かれるように。『女形という存在をぜひ知って!』という推しみたいな気持ちが、書く出発点にはありました」中村屋の小屋で、6人の役者が次の芝居の本読みをしていたときのこと。薄暗闇の中、車座の真ん中に転がり落ちてきたのは人の頭。ところが再び行灯が灯ったときには誰一人欠けていないのに、血だまりと肉片が遺されていて…。藤九郎と魚之助は鬼退治を請け負い、鬼に取って代わられたのは誰なのかを探り始める。本書は怪異をモチーフにした歌舞伎ミステリーでもあるが、物語が進むにつれ、芸事に生きる人々の心情を掘り下げる芸道小説にもなっていく。その奥行きがすばらしい。「役者たちはそれぞれ『若さがあれば』『華があれば』とないものねだりをします。私自身が『私の何を差し出せば作家になれるんだろう』くらいに思い詰めていたので、デビューする前までのさまざまな恨み辛みを役者たちに代弁してもらいました」ちなみに、魚之助には、ヒントになった実在の人物がいる。「歌舞伎好きには知られているのですが、三代目澤村田之助という伝説の女形。芝居中のケガがもとで壊疽になり、魚之助のように足を失っても舞台には立ち続けた。芸にすべてを奪われ、若くして死ぬ田之助のような悲しい結末から救いたいと思い、藤九郎という相方を配置しました」応募時には、ふたりの関係はもう少しBLっぽさがあったのだという。「名前のつく関係性にすると、物語の枠組みも狭まる。個人で認め合える関係性の方がこの作品にもふさわしいと思い、会話などに手を入れました。男と女、人間と化け物…その境目はどこにあるのか。そういう問いも、投げかけたいことでした」それは謎めいたタイトルにも投影されており、その意味がラストで腑に落ちる。外連味あふれる意欲作だ。『化け者心中』江戸の暮らしや舞台の様子を描写する躍動感のある文体や、心地いい活きのいい会話は、著者が落語や洒落本に親しんできた賜物らしい。KADOKAWA1650円せみたに・めぐみ作家。1992年、大阪府生まれ。早稲田大学文学部卒。卒論は、化政期の歌舞伎がテーマ。2020年、本作は「小説 野性時代 新人賞」選考委員の満場一致を受けて、受賞となる。※『anan』2021年2月10日号より。写真・土佐麻理子(蝉谷さん)中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年02月09日音楽と動く隊列で作られる“8分間の総合芸術”――それがマーチングだ。高校生の姫川美月は、母から強いられる勉強だけの毎日に倦み、思いあまって秋田の叔母の家へ。そこで偶然目にした光景に魅せられ、入部。美月がトランペットやマーチングに、部の仲間たちと共に情熱を注いでいくさまが描かれる『みかづきマーチ』は、胸を震わせる青春マンガだ。マーチングバンドに青春を懸ける高校生たちのまぶしく切ない日々。その著者が山田はまちさん。実は山田さんもマーチング経験者だ。「私とマーチングとの出合いも高校でした。美月のように、入部して1か月で大会に出たんです。楽譜以外にも覚えることがたくさんあって大変でしたが、みんなとひとつのものを作り上げるのはなんて気持ちがいいんだろうと。その分、達成感もすごいんです。マーチングバンドの強豪校に取材したり、ドキュメンタリーも参考にしていますが、基本的には自分自身や仲間が感じていたリアルな感情を軸に、熱い思いを伝えていきたいと思っています」士気の高い部員たちゆえ、和気あいあいとしているだけではない。3巻では、野球部応援や県大会などのハレの場で、誰がトランペットのソロパートを演奏するかのオーディションが行われ、それぞれが葛藤と向き合うことに。「3年生にとって最後の年なのだからという年功序列も、いちばん上手い人に任せるという実力主義も、どちらも正しいから悩ましいですよね。ただ部活も仕事も、勝ち続けられるものではないので、うまくいかないときにみなどうやって乗り越えていくのかも描きたいですね」デビュー前からマーチングのマンガが描きたかったという山田さん。「競技の面白さを描きたいけれど、どうしたら表現できるのか、キャラクターも含めなかなかうまくいかなくて。考える時間だけで2年くらいはあったので(笑)、美月たちに何が起きるか、吹奏楽のどんなイベントがあるかなどを一通り年表にして、それを参考に、展開を決めています」マーチングは一種の団体競技だという山田さん。「楽器も多いし、フラッグ(旗)を扱うカラーガードというパートもある。いろんな人のドラマがあるわけで、いわゆるモブみたいな人たちにも少しでもスポットが当たるような群像劇にしていきたい。読んだ人が元気になれる作品にしたいです」『みかづきマーチ』3生まれて初めて熱中するものを見つけた美月。1月28日発売の3巻では、トランペットのソロパートをオーディションで選ぶことになり部内がざわめく。双葉社620円©山田はまち/双葉社やまだ・はまち秋田県出身。会社員を経て、上京。独学でマンガ制作を始める。アシスタントの傍ら描き続け、2017 年に読み切り作品でデビュー。※『anan』2021年2月3日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年02月02日「有名人のスキャンダルや離婚の報道などを見ていると、『やっぱり天中殺の時期だった』と、思うことが多いです。天中殺期間の行動や心の持ち方が、その後の人生を大きく作用していきます。重要なのは、どう過ごすかです」そう指摘するのは、人気占い師の水晶玉子さん。水晶さんといえば、ゲッターズ飯田さんが、「唯一尊敬する占い師」と絶賛し、バラエティ番組などでタレントの結婚や運勢をズバリ言い当てることでも注目を集めている。そんな水晶さんが誰にも訪れる「天中殺の乗り越え方」を教えてくれた。「天中殺には、12年のうちに2年ある『年運』、1年のうちに2カ月ある『月運』、そして12日のうちに2日ある『日運』があります。そしてその天中殺がいつ訪れるかは12の干支の『子丑』『寅卯』『辰巳』『午羊』『申酉』『戌亥』の6つに分かれています。この時期は、『ただ悪いことだけが起こる時期』と思っている人が多いですが、ただ良い・悪いだけではありません」水晶さんはこう続ける。「なぜ“天中殺=悪いもの”と感じてしまうかというと、自分で運気をコントロールしにくい時期ゆえ、自分の意に反して、自分自身がそれまで秘かに隠してきたり見せてこなかったものが、表に出て明らかになったりするからです。でもそれは、その人の可能性を広げ成長するために訪れるイレギュラーな運気でもあります。そこで自分の我を通そうとすると、空回りしたり、状況に混乱が生じてしまいます。でもなぜか、危険なゾーンに無性に向かいたくなったり、なぜかそうせざる得ない状況に追い込まれたりもするんです」その天中殺の影響を如実に受けていると感じたのが、アンジャッシュの渡部建(48)だと水晶さん。「年運の天中殺がスタートした2020年、複数の女性との不倫が発覚しました。12月になって謝罪会見を開きましたが、渡部さんにとって、“年運&月運のW天中殺”での会見でした。ですからこのタイミングは、自分から危険な方へと向かってしまう天中殺の典型とも言えます。“天中殺の罠にかかってしまった”と、感じたんです」では、どうすればよかったのだろう?「天中殺の時期は、自分のことよりも、周りを優先して尽くすこと!それを第一に考えて行動しましょう。すると運気は穏やかになっていきます」水晶さんは自身の経験を織り交ぜてこう話す。「私自身、一昨年とその前年が天中殺でした。家族やペットの介護問題など、いろんなことが起こりました。仕事も多忙で、記憶がなくなるほど。自分自身のプライベートのことはほとんど何もできない2年間でしたが、そこでできる限り、家族や周囲のためにできることを優先するようにしたんです。天中殺は、怖がることなく、自分を見つめ直し、周りの人を大切にして過ごす。それが軌道修正と自身の成長へとつながる時期なんです」
2020年12月31日7月18日に亡くなった俳優・三浦春馬さんの所属事務所・アミューズは21日、公式サイトを通じ、9月4日に発表していた「三浦春馬基金(仮称)」の詳細について報告した。同社は、「2020年9月4日にお知らせさせていただいておりました『三浦春馬基金(仮称)』に関しまして、現状のご報告をさせていただきます」の書き出しから、「三浦春馬が2007年に初めて参加したAct Against AIDS『THE VARIETY』。この活動を通じて、彼はその支援先であるラオ・フレンズ小児病院に何度も足を運び、現地で活動するスタッフの方々と共に、『ラオスの子供たちの未来を守りたい』という強い気持ちを持って、チャリティ活動に取り組んでおりました」と背景を説明。「その想いを未来へ繋げていくべく、三浦春馬に関する弊社の全ての利益は、『三浦春馬支援』と称し、ラオ・フレンズ小児病院を始めとする、あらゆる困難に立ち向かう人々への寄付・支援に充てさせていただきます」とし、「まずは、フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN様を通じ、ラオ・フレンズ小児病院内にて使用される注射器や、感染症予防の為のスタッフ用グローブなどの購入、小児病院の運営維持に充てられます」と最初の支援先を明かした。今後については、「現在の新型コロナウイルス感染拡大の状況に鑑み、その時々に必要な国内外における支援を関係各所とご相談の上で、決定して参ります」。内容は決まり次第、報告していくという。
2020年12月21日