ロンドンやブロードウェイをはじめ世界をまたにかけ活躍をしつつ、日本でも数多くの作品を送り出している英国出身の演出家デヴィッド・ルヴォー。彼が近松門左衛門の心中ものをベースに作る新作舞台『ETERNALCHIKAMATSU ―近松門左衛門「心中天網島」より―』の制作発表会見が1月27日、都内にて開催された。主演は深津絵里、中村七之助。舞台『ETERNAL CHIKAMATSU』チケット情報もともとは、ルヴォーと故・中村勘三郎さんとで歌舞伎に取り組む約束をしていたそうで、今回の上演について「勘三郎さんと出会えたおかげ」とルヴォーは語る。紡がれる物語は、江戸時代を舞台に遊女小春と紙屋治兵衛、その妻おさんの三角関係を描いた『心中天網島』の世界と、現代日本で売春婦として暮らし、客のジロウと恋に落ちる女性・ハルのストーリーから、“愛”を描き出していくものになるとのこと。「当初話していたものとは違う形になりましたが、勘三郎さんと語ったオリジナルの思いは詰まっている。作品のイメージは、近松作品の登場人物を通して、現代の日本と過去の日本とが手を結ぶというもの。過去と現在の女性ふたりが出会い、相手の中に自分を見つけ、ふたりが愛について探っていく」とルヴォー。ダブルヒロインを務めるのが深津と七之助で、深津がハルを、七之助が小春を演じる。深津は「これまで何度も上演されている近松の物語を、デヴィッドさんがどう演出するのかに興味を抱きました。近松のドロドロした“愛の渦”に身をおけるのかな、と思ったら、私は現代を生きる女性の役でした(笑)。でもデヴィッドさんのあふれ出るアイディアがいたるところに散りばめられているので、とてもユニークな作品になりそうです」と楽しみにしている様子。七之助は「父の遺志を引き継げたことが嬉しく思う。父の思い描いていたものより、もっともっと、スケールの大きいものになっています」と話した。ふたりは初共演になるが、深津が「七之助さんは、すごく軽やかで美しい。美しさではすでに負けているので、そこは足掻かず、その美しさを自分の中に取り入れたい」と話し、共演の伊藤歩も「(七之助の美しさには)降参です、そこを比べられてしまうと…」と語ったところ、七之助が「さっきから公開処刑みたいになってる、やめてください!」と悲鳴を上げ、場内が笑いに沸く一幕も。なお、このダブルヒロインを配したことに関してルヴォーは「女性が女性を演じる、女性を男性が演じる、このふたつが同時に舞台に存在する時に生まれる緊張感や深みも探っていきたいし、そこが面白いポイントになると思う」と期待を話していた。出演はほかに、中嶋しゅう、音尾琢真ら。公演は2月29日(月)から3月6日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、3月10日(木)から27日(日)まで東京・シアターコクーンにて上演。チケットは発売中。
2016年01月27日近松門左衛門の代表作「心中天網島」をベースにした舞台「ETERNAL CHIKAMATSU」の製作発表が1月27日(水)、水天宮ピットで行われ、出演する深津絵里、中村七之助、伊藤歩と演出家のデヴィッド・ルヴォーらが出席した。「ETERNAL CHIKAMATSU」は、遊女小春、治兵衛、その妻・おさんの三角関係を描いた近松の「心中天網島」をベースに、究極の愛を描いた物語。演出家デヴィッド氏のオリジナルアイデアに基づき、作家の谷賢一が書き下ろす新作戯曲となっている。主演を務める深津さんと中村さんは、本作が初共演。中村さんの印象について、深津さんは「まだ信じられないような気持ちです。七之助さんは本当に軽やかな方で、すごく美しいんです。ものを作る姿勢が本当に素晴らしくて。一緒に芝居を1から作っていけることの喜びをすごく感じています。すでに美しさは負けているんですけど」と語り、伊藤さんも「美しさは降参です」と、女形で培った中村さんの可憐な美しさに触れた。首を振っていた中村さんだったが、「公開処刑、やめてください。今、心の中ではすごく小さくなっています」と恐縮しきりだった。一方、深津さんの印象を尋ねられると中村さんは絶賛。「もちろん綺麗だということは前提で、ミーハーなんですけど『踊る!大捜査線』のすみれさんだあ!、というイメージが強くて」と記者を笑わせた後、「舞台も拝見していて、映画『悪人』も素晴らしいですし、映像もドラマも舞台もできる女優さんは少ないと思っているので、本当に尊敬できる大先輩です」と、女優としての器の大きさを感じていたようだ。もともと本作は七之助さんの亡き父、勘三郎さんがデヴィッド氏と「歌舞伎で上演できれば」と話を進めていたものだという。その延長戦上にあるプロジェクトゆえに、中村さんは「父の願いは近松の作品を歌舞伎で演出することでしたが、父親が描いていたものをはるかに超えて、もっともっとスケールの大きいものになっているので、すごく楽しみです」と、希望をたたえた瞳で舞台への意気込みを語った。会見には、そのほか中嶋しゅう、音尾琢真が出席した。舞台「ETERNAL CHIKAMATSU」は、2月29日(月)~3月6日(日)まで大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて、3月10日(木)~27日(日)まで東京・Bunkamura シアターコクーンで公演。(cinamacafe.net)
2016年01月27日新国立劇場の2016/2017シーズンのラインナップ発表会見が開催され、バレエ・ダンス部門の舞踊芸術監督・大原永子、演劇部門の芸術監督・宮田慶子が出席し、それぞれ来季の演目について説明した。バレエでは『ロミオとジュリエット』を皮切りに、12月にはクリスマスの定番『シンデレラ』、2月には新旧の名作で構成される『ヴァレンタイン・バレエ』、その後も『コッペリア』、『眠れる森の美女』、『ジゼル』と計6演目が上演される。大原氏は、新国立劇場バレエ団を成長途上にあるとし、過去のシーズンでも上演してきた「同じ演目をどう続けていくか」と継続の重要性を強調する。それは、新制作の作品が上演されないことも意味するが「消化不良になってしまったら無駄になる」といまはその時期ではないと説明。特に日本人ダンサーが国民性として宿命的に持つ、感情表現の乏しさという弱点を克服するためのプログラムであると先を見据えた。演劇部門では、過去に同劇場で『ヘンリー六世』三部作、『リチャード三世』が上演されたが、2016年がシェイクスピアの没後400年にあたることから、11月、12月の2か月で『ヘンリー四世』の第一部・第二部を連続上演。前の二作に続き小田島雄志の翻訳に鵜山仁の演出のコンビで、浦井健治、岡本健一、ラサール石井、中嶋しゅう、佐藤B作ら実力派が集う。上演に際しては第一部、第二部を単独で上演するだけでなく、第一部、二部を通しで上演する日も設ける予定。オープニングを飾るのは、一昨年の『永遠の一瞬』、昨年の『バグダッド動物園のベンガルタイガー』に続き、日本未発表の欧米の同時代作品を上演する企画で、アニー・ベイカーの2014年ピュリッツァー賞受賞戯曲『フリック』。マキノノゾミの演出で送り出す。また、3月以降は「かさなる視点 -日本戯曲の力-」と銘打ち、昭和30年代の名作に30代の新鋭演出家が挑む。三島由紀夫初の長編戯曲『白蟻の巣』を谷賢一、安部公房の『城塞』を上村聡史、田中千禾夫が戦後の長崎を舞台に書き上げた『マリアの首』を小川絵梨子がそれぞれ演出を務める。このほか、日本の近代演劇に大きな影響を与えた海外戯曲を新たな翻訳で蘇らせるシリーズ企画では、こちらもピュリッツァー賞受賞のウィリアム・サローヤンの『君が人生の時』、そして戦後、英国の演劇の歴史を塗り替えたジョン・オズボーンの『怒りをこめてふり返れ』を上演。『怒りを――』では俳優のみならず演出家としても際立った才能を見せる千葉哲也を演出に迎える。シェイクスピアから国内の名作、海外戯曲と多彩な演目が並ぶが、宮田氏は「いまの日本を強く見つめる作品群」と意気込みを口にしていた。取材・文:黒豆直樹
2016年01月18日舞台『スポケーンの左手』が11月14日、東京・シアタートラムで初日を迎えた。【チケット情報はこちら】同作は、アイルランド系イギリス人の劇作家マーティン・マクドナーによる戯曲を、『第48回紀伊國屋演劇賞』個人賞をはじめとする多くの受賞歴を持つ小川絵梨子が翻訳・演出を手がけた舞台。2010年にアメリカ・ニューヨークで初演、日本で上演されるのは今回が初めて。物語の舞台は、アメリカのワシントン州にある都市、スポケーン。37年もの間、亡くした左手を探す男、カーマイケル。そんな彼のもとに、マリリンとトビーが彼の左手を持っていると言って近づく。そこへホテルのフロント係・マーヴィンが現れて・・・。マリリン役を蒼井優、トビー役を岡本健一、マーヴィン役を成河、カーマイケル役を中嶋しゅうがそれぞれ務める。同作の開幕を前に、出演者がコメントを寄せた。「人間特有の愚かさ故の、おかしさ、愛おしさ、あたたかさが描かれている作品です。稽古中、何度も吹き出してしまいました。舞台上では、常に命の危険にさらされている役なので、集中して4人の滑稽な心理戦に挑みたいと思います。客席に取り囲まれた舞台は初めてなので、いつもより更にお客様と作り上げる感覚を毎公演感じられるのではないかと期待しています」(蒼井優)「夢の様なキャストと白昼夢のような衝撃的な事件を劇場で体験して欲しいなと思います。生き抜くことがどれだけ大変か、生きているということがどれだけ素晴らしいかを、この作品で感じてもらえればなと思います」(岡本健一)「今回やらせて頂くマーヴィンという人物はとても面白い役で、初めて台本を読んだ時からとても楽しみにしていました。彼の持つ奇妙な孤独感は実は僕たち誰もが持つものなのですが、それを観ている人に決して押し付けることなく感じて貰うのは至難の技です。どこまでも親身になって話を聞いてくれる演出の小川絵梨子さんと、信頼出来る素晴らしい仲間たちを信じて、最後の幕が降りるまで、しぶとく挑戦を続けたいと思います」(成河)「37年も左手を探している男ってどんな人だろう!!この男にとって左手って何なんだろう?きっとただ左手を失っただけじゃないんだろうな。魂の喪失感みたいなものの象徴なのかも?カーマイケルの37年の重さを思っています。芝居を楽しんで頂ければ幸いです」(中嶋しゅう)舞台『スポケーンの左手』は11月29日(日)まで、東京・シアタートラムにて上演。チケットは発売中。
2015年11月16日深津絵里、中村七之助が初共演かつダブル主演を勤める近松門左衛門の代表作『心中天網島』をベースにした舞台、『ETERNALCHIKAMATSU -近松門左衛門「心中天網島」より-』が2016年春、大阪、東京で上演されることが決定した。『ETERNAL CHIKAMATSU-近松門左衛門「心中天網島」より-』チケット情報遊女小春、治兵衛、その妻おさんの三角関係を軸に、究極の愛を描いた作品。演出は、『日陰者に照る月』でウエストエンド演劇賞を受賞後、様々な作品でトニー賞を受賞・ノミネートし続けている奇才、デヴィッド・ルヴォーだ。「今回の作品は、中村勘三郎さんと歌舞伎に取り組む約束をし、近松の世界を取り上げる話をしていました。そのプロジェクトの延長線上にあるものです。勘三郎さんのアイディアとエネルギーに支えられ、深津絵里さんと中村七之助さんに託すことで、より明確化するときが訪れたのだと思っています」とルヴォー。ルヴォーのオリジナルアイデアに基づき、作家の谷 賢一が戯曲を書き下ろす。共演には他に、映画・ドラマで特別な存在感を放つ伊藤歩、実力・人気ともに日本でオンリーワンの演劇集団TEAM NACS の音尾琢真、柔剛自在な演技力とその個性が光る中嶋しゅう、さらにNHK 連続テレビ小説『花子とアン』で一躍有名となった中島歩など、錚々たる俳優陣が名を連ねる。今作品を前にして深津は、「七之助さんとご一緒できて大変光栄です。この不思議なご縁を大事にしたいです。また、お稽古から贅沢な時間となりそうで、今からとても楽しみです」とコメント。七之助も、「深津さんはすてきな方ですばらしい大先輩。僕は現代劇で女性の方とのお芝居も初めてなので、新人のつもりで取り組みたいです。そして、有言実行の人だった父(勘三郎)の夢が、このような形で実現し、この上なくうれしいです。きっと父も喜んでくれていると思います」と意気込みを語った。『ETERNALCHIKAMATSU -近松門左衛門「心中天網島」より-』は、2016年2月29日(月)~3月6日(日)まで、大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて、3月10日(木)~27日(日)まで、東京・Bunkamura シアターコクーンにて上演。チケットは12月12日(土)より一般発売開始。一般発売に先駆け、11月11日(水)11:00まで最速抽選「いち早プレリザーブ」を受付中。ぴあスペシャルシート(前方10列目まで)の受付も有。
2015年11月05日東洋水産はこのほど、チルドシュウマイ「マルちゃんジャーマンポテト風しゅうまい」を発売した。○国産ポテトを使用、ジャーマンポテト風の味わいに同商品は、国産ポテトを使用しジャーマンポテト風の味わいに仕上げたチルドシュウマイ。従来のシュウマイとは一味違った一品になっているという。ペースト状のポテトをベースに、食感の異なるダイス状のポテトと、コーン・玉ねぎ・ベーコンを合わせた。粗挽きブラックペッパーを利かせ、ジャーマンポテト風の味わいに仕上げている。電子レンジ調理だけでなく、フライパンで焼いてもおいしく食べられるという。内容量144g(8個入り)で、希望小売価格は255円(税別)。
2015年08月30日『日の名残り』『わたしを離さないで』などで知られる英国の作家カズオ・イシグロが、2009年に発表した初の短編集『夜想曲集』。この中から「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3編を選んで1本の戯曲に再構築した同名の舞台が東京・天王洲 銀河劇場で上演中だ。主人公の旧共産圏出身の青年ヤンを演じるのは、連続テレビ小説「ごちそうさん」でブレイクし、現在はNHK大河ドラマ「花燃ゆ」にも出演中の東出昌大。安田成美や近藤芳正、中嶋しゅうといった共演のベテラン勢に支えられ、初舞台ならではの瑞々しい姿を見せている。舞台『夜想曲集』チケット情報旧共産圏からやってきた無名のチェリスト・ヤン(東出)は、ベネツィアの広場でアメリカの往年の歌手トニー・ガードナー(中嶋)と出会う。今夜ゴンドラから妻のリンディ(安田)にセレナーデを歌う予定だと言うガードナーに、ギター伴奏の役目を買ってでるヤン。幸運な出会いから、一度は手放したはずの“自分の音楽”に再び向き合おうとするヤンの脳内に、以前レッスンを受けた女性エロイーズ(渚あき)との記憶がよみがえる。その光景に、リンディとサックス奏者のスティーブン(近藤)が過ごした不思議な夜など、才能を持つ者と持たざる者との物語が交差していき…。短い髪に簡素な白シャツでたたずむ東出は、いかにも純朴な青年といった風情。だが、ふと立ち止まって風に耳を澄ますシーンでは、“才能を持つ者”を表す、まっすぐで強い目力が印象的だ。さらにエロイーズから個人レッスンを受けるシーンは、昨年から実際にチェロの練習を重ねてきたというだけあって、楽器を抱えるポーズがピタリと決まっていた。またエロイーズとの哲学めいた会話のやりとりはまだ硬さが見られたものの、身のこなしの美しさは抜群。グレーの壁に白い家具、弱くゆらめくシャンデリアといった抑制されたセットと違和感なくなじみ、原作の静謐な空気を上手く伝えていた。一方の、“才能もないのに有名であり続ける女”リンディと、“才能はあるのに売れない”スティーブンとの会話は赤裸々だ。ビバリーヒルズのホテルでたまたま隣り合ったふたりは、どちらも整形手術後の療養中で、顔にグルグルと包帯を巻いている。妻に逃げられ自棄になって手術を受けたスティーブンを演じる近藤の声音には自嘲がにじむが、進んで手術を受けたらしいリンディ役の安田の声は、屈託なく可憐だ。最初はそんなリンディを毛嫌いしていたスティーブンだが、口論の末に彼女の本当の姿を知る過程が興味深い。ベネツィア、ビバリーヒルズ、アドリア海沿いの小さな町と、物語は舞台を変え、それぞれの人生に通奏低音のようにチェロの音色を響かせながら展開してゆく。本と音楽を愛する人にこそ、観てほしい1本だ。東京公演は5月24日(日)まで。その後、5月30日(土)・31日(日)大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演。チケットは発売中。取材・文佐藤さくら
2015年05月19日ドラマや映画での活躍目覚ましい東出昌大が初めて舞台に挑戦する。原作はイギリスの文学界における最高の栄誉といわれるブッカー賞、さらに大英帝国勲章を獲得し、日本での人気も高い作家、カズオ・イシグロが初めて手掛けた短篇集。独立しながらもテーマと状況がつながる5篇のうちから、「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3篇をひとつに組み立て直して舞台の上に描き出す。脚本はてがみ座の長田育恵。演出を手掛けるのは、ここ数年立て続けに良作を手掛け、3度の読売演劇大賞優秀演出家賞を獲得する小川絵梨子だ。本番を2週間後に控えたなかで行われた公開稽古を覗いた。舞台『夜想曲集』チケット情報稽古場には二階建てのセットが組み上げられ、ところどころに椅子が置かれている。稽古場に入ってきた東出は、報道陣が稽古場を埋め尽くさんばかりの様子を見て「すっごい空気!」と笑う。キャスト同士、いい空気ができあがっているようで、通常とは明らかに違うこの状況に対しても過剰に意識することなく、笑い合いながら稽古開始を待っている。やがて稽古がスタート。東出演じる旧共産圏出身のヤンが、彼の亡き母がかつて大ファンだった往年の歌手、トニー・ガードナー(中嶋しゅう)とカフェで遭遇するシーン。静謐な空気の中で言葉がやり取りされる。その静けさを破るように登場したのが安田成美演じるトニーの妻リンディ。ロングコートに幅広のハットをかぶり、意識的か無意識か、やや無礼なところもあるマダムをそのしゃべり方と空気感で見事に体現。素朴な青年の雰囲気をまとった東出との対比が鮮明に見える。稽古の切れ目で緊張がほどけたような笑い声がセットの裏から聞こえてくる。長身の東出はチェロを構える姿、青いギターを構える姿が実にしっくりくる。稽古の中ではギターを持った東出がベネツィアのゴンドラに揺られるシーンや、近藤芳正によるサックスプレイが披露されるシーンもあり、物語の断片を観ただけでも幻想と現実の合間をたゆたうような、不思議な世界がそこに広がる。初舞台ながらこの物語の空気の中にすっと溶け込んでいる東出。彼が本番でどんな姿を披露するのか、期待が募る。公演は5月11日(月)から24日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場、5月30日(土)・31日(日)大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて。その後広島・富山でも上演。チケットは発売中。取材・文/釣木文恵
2015年04月28日「日の名残り」「わたしを離さないで」で世界的に著名な英国の作家、カズオ・イシグロの自身初となる短編集「夜想曲集」が世界初舞台化されることが決定。この度、『桐島、部活やめるってよ』から一気に注目を集め、主演作が相次ぐ最旬俳優・東出昌大が本作で舞台デビューを果たすことが明らかになった。「ブッカー賞」に輝いたイシグロ氏の初短編集に収められている5編は、どれもが独立した作品としての完成度、面白さを持ちつつも、テーマと状況はつながっていて全体で一つの世界を形成している。この5編の中から、「老歌手」「夜想曲」「チェリスト」の3編を選び、一つの戯曲として“井上ひさし最後の弟子”と言われ、確かな筆の力で注目を集める劇作家・長田育恵が再構築。2度の読売演劇大賞優秀演出家賞に輝く新進気鋭の演出家・小川絵梨子が人生の夕暮れに直面し心揺らす人々を切なくユーモラスに描いていく。主演に抜擢されたのは、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」や、『アオハライド』『寄生獣』など今年最も活躍したといっても過言ではない東出昌大。本作が初舞台という東出さんの演技に注目が集まる。東出さんの脇を固めるキャストには、小川演出作2作目となる安田成美を始め、近藤芳正、長谷川寧、中嶋しゅうなど演技俳優陣が集結している。舞台「夜想曲集」は2015年5月11日(月)より天王洲 銀河劇場にて公演予定。(text:cinemacafe.net)
2014年12月03日エプソン販売は14日、中嶋悟氏が総監督を務める『EPSON NAKAJIMA RACING』の「2012年SUPER GTシリーズ GT500クラス」参戦を今シーズンも支援していくと発表した。これを受けて、同チームのドライバー・道上龍選手と、レースクイーンの高橋聡美さん、池田ゆい佳さんが本誌編集部を訪問。今シーズンに向けての思いを語った。エプソンは中嶋氏の現役時代(1983年~)からスポンサー活動を行い、2004年以降、『EPSON NAKAJIMA RACING』のSUPER GT参戦も支援している。昨シーズンは第4戦(スポーツランドSUGO)で3位入賞をはたすなど、チーム力の向上を感じさせる1年となった。今シーズンも、ドライバーに道上龍選手、中山友貴選手を起用し、シリーズチャンピオン獲得を目標に、ホンダ「HSV-010 GT」がベースのマシン「EPSON HSV-010 GT」で全8戦に臨む。このほど公開されたマシンの車体カラーリングは、一般公募による「2012年EPSON HSV-010 GT カラーリングコンテスト」最優秀賞作品をもとにデザインされたもの。中嶋総監督は最優秀賞のデザインに関して、「サイドやボンネットも含めてきれいなストレートラインが印象的」と評価。チームのPRのため、本誌編集部を訪問した道上選手、高橋さん、池田さんも新デザインを気に入った様子で、「かっこいい!」「きりっとしていて、スピード感がありますよね」と話していた。高橋さんは3年ぶりに同チームのレースクイーンを務める一方、池田さんは今年がレースクイーンとして1年目の活動に。「すごく憧れていたので、レースクイーンになることが決まったとき、うれしくて感動して号泣してしまいました(笑)」と池田さんがカミングアウトし、「(池田さんは)かわいいので、そのまま自然体でいてほしいですよね。私も3年目として、困ったことがあればすぐ気づける存在になりたいです」と高橋さんが”先輩”らしい一面を見せる一幕も。2人とも『EPSON NAKAJIMA RACING』の一員として、「笑顔と明るさと元気でチームの力になれたら」と誓った。そんな2人を見ながら、「エプソンの衣装も似合っているし、イメージにぴったり」と道上選手。2010年より同チームのドライバーを務める彼は、「正直、この2年間はいい成績を残せていないけど、今年はいろいろなものが進化し、いい状態になってきていると感じます。レースクイーンをはじめチームのみんながひとつになって、優勝を勝ち取れるものだと思うので、みんなで力を合わせてレースに臨みたい」とコメント。3年目となる今シーズンに向けて、「とにかく結果を出したい。全8戦を通じて、最低でもシーズン3位以内に入れるようなレースを続けていきたい」と抱負を述べた。なお、『EPSON NAKAJIMA RACING』専用ホームページでは、「EPSON HSV-010 GT」をはじめ、歴代マシンやレーシングピットを精緻に再現した「スーパーペーパークラフト」のコンテンツも充実。今シーズンも新デザインの「EPSON HSV-010 GT」や、7年ぶりとなるフォーミュラーカーのペーパークラフトを公開予定とのことだ。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年03月14日画家ゴッホの短くも激しい生涯を描いた劇作家・三好十郎の代表作で、日本演劇史に残る傑作戯曲として知られる『炎の人』。2009年に初演された栗山民也演出、市村正親主演のバージョンは絶賛を浴び、市村に読売演劇大賞最優秀男優賞などをもたらした。その再演が11月4日、東京・天王洲銀河劇場で幕を開けた。『炎の人』チケット情報物語はゴッホが画家になる以前、ベルギーで宣教師として貧しい人々に尽力していた時期より始まる。労働者たちの悲惨な現状に触れ、聖職者でありながら神を冒涜する言葉を吐いたゴッホはその道を閉ざされ、絵画に理想と真実を見出すようになる。ゴッホは実弟テオの支援を受けて憑かれたように絵を描き続けるが、未成熟で特異に映る彼の絵は当時の人々に受け入れられない。貧しい画家たちが集い創作に没頭するコロニーを夢見るようになったゴッホは、パリから自然豊かなアルルに移住。憧れと同時に嫉妬の対象である画家ゴーガンとの念願の共同生活がスタートする。だがゴッホの凄まじいまでの絵画への情熱は、その肉体と神経を確実に蝕み……。キャストは初演とほぼ変わらず(シィヌ、ラシェル役の富田靖子は初参加)ということもあってか、まるで危なげのない完成度の高い初日だった。初演をなぞるがゆえの安定、という意味ではない。“無垢の人”ゴッホを慈しむようなまなざしで見つめるこの戯曲は、むしろ安定とは対極の鮮烈なるパッションを放出し尽くして、観客の心を激しく揺さぶる。やはり、ゴッホ役の市村が圧倒的だ。風貌も、見慣れたゴッホの自画像によく似ているが、舞台上の市村はゴッホの魂と通じているかのよう。劇中で他者が言うように“優しすぎる”“素直すぎる”“無抵抗すぎる”など何事においても“~すぎる”ゴッホのありのままを、テクニックというよりは魂で体現する。本当に感動的な演技だ。舞台全体が巨大な額縁に収まっているようなセットだが(美術は堀尾幸男)、ゴッホの生き様イコール作品なのだろう。だからこそゴッホの作品は今も、見る者の心を鷲づかみにして離さない。ラスト、中嶋しゅうによって朗読される詩の言葉ひとつひとつにも耳を傾けてほしい。そこには作者・三好十郎のむき出しの思いや魂があふれんばかりに込められている。作者、主人公、俳優……あらゆる者の偽りなき魂のぶつかり合い。名作と呼ばれる理由がそこにある。取材・文武田吏都公演は11月13日(日)まで同劇場にて上演。チケットは発売中。
2011年11月07日