ミュージカル劇団「ミュージカル座」による『おでかけ姫』が9月25日に開幕、9月29日(日)まで東京・六行会ホールにて上演中。25日の公演レポートをお届けする。【チケット情報はこちら】本作は、脚本・作詞・演出・振付をハマナカトオル、作曲・編曲・音楽監督をtakが手掛け、2016年に初演されたオリジナルミュージカル。初演に続き“おでかけ姫”を水野貴以が演じる。物語の舞台はふたつ。ひとつは現実世界、そしてもうひとつは夢の世界。現実世界で“スポーツカー王子”と呼ばれる御曹司(丹宗立峰/水越友紀・Wキャスト)との熱愛を週刊誌に書かれたテレビ局の人気女子アナ・丸岡久理子(水野貴以)だが、実際のところは「結婚なんて考えられない」「仕事が楽しい」と一人で日々を楽しむアラサー女性。しかし夢の世界では“お姫様=マル王女”として7日後に隣の国の“フェラーリ王子”と結婚が決まる。1度しか会ったことのない王子と結婚して本当にいいものかという迷いを払しょくするために、お城を抜け出し王子のもとに“おでかけ”するマル王女。しかし、その道中で泥棒・ピート(中井智彦)と出会い――。“愛”や“結婚”という重みのあるテーマを描きながら、確かな歌唱力とポップな音楽で、軽やかに展開していく本作。コメディタッチな表現や、タップダンスをはじめとするダンスなども楽しく、“王室”や“テレビ局”というどこか私たちの日常とは距離のある設定ながら、いつのまにか同じ世界に引き込まれていく。マル王女のストーリーは、夢の世界ならではの思わず笑ってしまうようなハチャメチャ展開もあるが、そんな中だからこそ、水野をはじめとする実力派キャストたちの歌声によって説得力を持って届けられる“愛”や“想い”が鮮やかに際立っていた。クライマックスの水野と中井によるデュエットでは、「何のために結婚するの?」「結婚って何?」と考えていたマル王女が知った答えがそのハーモニーからも真っ直ぐに伝わってくる。ミュージカルそのものの魅力が体感できる作品だ。果たしてマル王女そして丸岡は、どんな“結婚の意味”に辿り着いたのかをぜひ劇場で確認してほしい。伊東えりが初演から引き続き演じる魔女や、今井清隆と渚あきが演じる夫婦など、個性豊かなキャラクターが揃う本作の上演時間は休憩なしの約2時間。ミュージカル『おでかけ姫』は9月29日(日)まで東京・六行会ホールにて上演中。取材・文:中川實穗
2019年09月26日東京・DDD青山クロスシアターで行われる落語会『青山らくご ~DDD寄席~』のVol.2が10月4日(金)から6日(日)に開催される。vol.1に続き出演する柳家花緑と、ゲストの篠井英介に話を聞いた。【チケット情報はこちら】劇場で開かれ、“落語界と演劇界がクロスする落語会”として今年8月にvol.1が開催された『青山らくご』の第二弾。前回も出演した花緑は「第一弾はおもしろい会になりましたね。DDD青山クロスシアターは落語にちょうどいいサイズだと感じました。一番後ろの席でも顔が観えますし、伝わりやすい距離感ですよね」と感想を語る。初登場でトークゲストの篠井は「青山という、落語にはなかなか結び付かなかった場所でやるというのもミソですよね。ワクワクする」と印象を語る。会は3日間開催され、初日は花緑の一門から柳家緑君、大神楽の柳貴家雪之介を迎えての「~花緑のふざけ過ぎてごめんなさいの会~」。花緑曰く「ふざけることを前提にやる落語会です」とのこと。内容について「僕が9歳から落語をやってきて、一番ふざけているものを詰め込む予定です。この企画は、最初で最後かもしれないですよ(笑)」と構想を語ると、篠井も「すごい!それはアピールしないと」と大興奮。中日(なかび)は「~『昭和元禄落語心中』の会~」と題し、昨年10月に放送されたドラマも好評の漫画『昭和元禄落語心中』(雲田はるこ/講談社刊)にゆかりのある出演者が揃う。噺家はドラマに出演した橘家圓太郎、隅田川馬石、柳家緑助、トークゲストに松田役の篠井が登場。篠井は「噺家の皆さんがドラマの現場でどんなふうに思っていたのか聞いてみたい。今だからできる話ができればと思っています」と楽しみにしている様子。余談だが、篠井は落語をやらないのかと聞いてみると「やってみたいというスケベ心はあるんですよ、正直」と笑いつつ、「でも、とんでもないです」と落語家へのリスペクトを明かした。千秋楽は「~令和の推しメンの会~」と題し、落語界のイケメン五明樓玉の輔、瀧川鯉斗、林家木りんが集結。昨年上方演芸の殿堂入りをした「かしまし娘」から正司花江をトークゲストに迎え、トークバトルが行われるという。花緑が「僕は、玉の輔兄さん以外のふたりに稽古をつけているのですが、確かに推しメンになるほどのいい男ですよ。でも……これ以上は言いません!!」と気になる言葉(笑)。一体どんな会になるのか最も未知な日とも言えそうだ。ここでしか観られない3日間になる『青山らくご Vol.2~DDD寄席~』は、10月4日(金)から6日(日)に東京・DDD青山クロスシアターで開催。」取材・文:中川實穗
2019年09月25日屋良朝幸主演のダンスエンターテインメントショー『THE CIRCUS! -エピソードFINAL-』が全国を巡演し、現在は東京・新国立劇場 中劇場にて9月29(日)まで上演中だ。9月13日に行われたプレビュー公演のレポートをお届けする。【チケット情報はこちら】オリジナルミュージカル『THE CIRCUS!』シリーズは、企画・構成・演出・振付をTETSUHARUが手掛けるダンスエンターテインメントショー。2016年に【エピソード0】が初演され、今回が4作目にしてシリーズFINALとなる。アメコミの世界から飛び出したような世界観で、これまで数多くのアーティストやミュージカル、映画、ドラマなどで振付を手掛けてきたTETSUHARUならではのみせ方で、ダンス・アクション・音楽・映像を組み合わせた表現が広がる。主人公で、強靭な体力と精神力を武器に国家の危機を救う“アツい男”、ケントを演じるのは、屋良朝幸。さらに、前作【エピソード2】にも出演した、矢田悠祐、越岡裕貴(ふぉ~ゆ~)、寺西拓人(ジャニーズJr.)、田野優花、高橋駿一(PADMA)、菜々香、青柳塁斗、そして植木豪も登場。今作では新たに、壮一帆、奥村佳恵も加わり、3年に渡り描かれてきた熱い絆の物語が終結する。物語は、3人の男たちによるバトルシーンから始まる。次々と敵を倒していったのは、ベン(植木)、ウィラード(寺西)、そして……ケント・バーンズ(屋良)。前作までを知る人は「どういうことになっているの?」と思うような面子だ。ベンによると、ケントの仲間たちは半年前に(【エピソード2】)、特殊なエネルギーを持つ星の欠片・コアを巡る戦いで起きた爆発によって全員死に、ケントの所属していた「サーカス」はもうないという。ベンの仲間として活動を共にするケント。しかし――。カーテンコールで屋良が「今までの中で1番踊って、アクションしている。TETSUHARUさんのSっ気には本当にやられます(笑)」と話した通り、出演者全員がとにかくダンスして、アクションして、時には歌ってと、パフォーマンスを軸にストーリーを進めていく本作。アクションはダンスの要素が入った美しい動きが華やか、ダンスも映像とコラボしたパフォーマンスなどもあり楽しく、本シリーズならではの面白さがさらにパワーアップしていた。芝居パートのチームワークの良さは4作目ならでは。それぞれのキャラクターもより濃くなった印象だ。そして、ラストの屋良VS植木のダンスバトルは必見。言葉を使わずに身体表現だけで見せる想いや絆、決意は、このふたり、そして本作だからこそ見せられる世界だろう。ぜひ劇場で堪能してほしい。公演は9月29(日)まで東京・新国立劇場 中劇場にて上演後、10月2日(水)には神奈川・やまと芸術文化ホール メインホールにて上演。取材・文:中川實穗
2019年09月25日人気乙女ゲームを原作にした舞台「OZMAFIA!! sink into oblivion」が、2017年の初演からキャストを一新して上演される。主演の神永圭佑と、谷佳樹、遊馬晃祐に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作は、記憶を失った少女・フーカと、「オズの魔法使い」や「赤ずきん」など名作童話をモチーフにしたさまざまなキャラクターが出会い、物語を展開していくゲームの舞台化。脚本は小日波著書、演出は伊勢直弘が手掛ける。初演からキャストを一新しての上演となる今作。主演を務める神永は「個人的に初演キャストに知り合いが多いので、彼らの気持ちを継いで真ん中に立つと思うと、より“しっかりやらないと”という気持ちになりました」と明かす。それを聞いた谷が「そんな神永くんを後ろから支えられる存在でいたいです。今回は若いキャストも多いので、30代の僕は嫌われ役になってもいいかも。はっちゃけすぎたときに止められたらなって」と語ると、遊馬は「僕は谷さんに止めてもらうタイプかもしれない!(笑)役の関係性的にもおふたりとお芝居することが多いと思うし、いい関係を築いていきたいです」と、初対面ながらいい雰囲気。神永は、マフィア「オズファミリー」のボス・カラミアを、谷は相談役・キリエを、遊馬は幹部・アクセルを演じる。神永は「カラミアは大らかで、おっちょこちょいで、常に笑っているような人物。でもオズファミリーのボスなんです。そこに何かがあると思うので、研究していきたいです」、谷は「キリエはとにかく喋るし口が悪い人。そういう人がどうして“相談役”なのかが大事なのかなと思っています。今回は“ファミリー”というくらいだから、関係性を大切に演じたいですね」、遊馬は「アクセルはツンデレで、なにか気持ちはあっても抑えてしまうタイプなんだと思います。僕とはなにかと真逆な人なので、稽古場でしっかりと役を深めていきたいです」とそれぞれ語る。乙女ゲームをやるにあたり「フーカと僕らのやりとりを見て『私もこうされたい』と思ってもらえたら、原作の魅力に近づくのかなと思っています」と神永。演出について谷は「僕、伊勢さんとは今年だけで4本目なのですが(笑)、伊勢さんの稽古は早いし短い。最初は驚くのですが、だからこそすごくいいものができあがる」とふたりに伝授する。遊馬は「僕はデビューから2.5次元作品だけをやってきて、前作、前々作で初めてオリジナル作品をやらせてもらいました。コテンパンになりながらいろんなことを学んだので、今回はより魅力的なキャラクターを作りたいです」と意気込む。そんな3人が出演する本作は10 月23 日(水)から27 日(日)まで東京・こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて上演。取材・文:中川實穗
2019年09月20日2006年に公開された映画『フラガール』を原作にした舞台『フラガール - dance for smile -』が10月から11月にかけて上演される。総合演出は河毛俊作、構成演出は岡村俊一が手掛ける本作で、主演を務める井上小百合(乃木坂46)に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作について井上は「母と一緒に映画館に観に行ったのを覚えています。当時も『おもしろかったね』と話した記憶があるのですが、今改めて観ると、あのときとは違う感想を持ちました」と語る。作品の舞台は昭和40 年の福島県いわき市。かつて栄えた炭鉱の町がエネルギーの石油化で滅んでいく中で、町おこしのために常磐ハワイアンセンターの設立が計画される。建設への反対や、当時は馴染みのないフラダンスへの偏見を浴びながらも、少女たちが必死にフラガールへと生まれ変わっていく物語だ。「すごく深い話だったんだと思いました。描かれているのは女性が社会進出する姿で、登場人物たちは女性ならではの強さや美しさや明るさで、いろいろな壁を突破していく。作品の舞台は昭和40年ですが、私は今もまだ女性の社会的な立場は男性と同じでないように思います。だからこそすごいエネルギーを届けられる作品になるはず。男女問わずいろんな人に観てほしいです」作品の肝と言えるのが、クライマックスのフラダンス。井上も「あのシーンがあってこその作品だと思う。本格的なフラダンスは初めてですが、舞台は全てが見えるしごまかしがきかないので、一生懸命頑張りたいです」と意気込む。自身が演じるフラガールのリーダー・谷川紀美子については「どこにでもいそうな素朴な子。そういう子が最後にすごいダンスを見せることがドラマチック」と印象を語り、役は「自分に合ってると思います。田舎育ちですし、素朴だねってよく言われるんですけど、やると決めたことは最後まで突き通すタイプなので」と話した。舞台での活躍も目覚ましく、演じることが好きだという井上。「私は自分を出すのも、自分のことを知られるのも得意じゃなくて。だから舞台上にいるときのほうがいろんなことを表現できるんです。もともとお芝居を観るのが大好きで、元気や勇気やいろんなエネルギーをもらっていました。その舞台に立つ側になったとき、自分も誰かに何かを与えられていると思う。そこが原動力にもなっています」。井上が「この令和の時代に生きる人たちがこの作品を観て、どんなことを考えるのかが私は楽しみ」という舞台『フラガール - dance for smile -』は、10月18日(金)から27日(日)まで東京・日本青年館ホール、11月2日(土)から4日(月・祝)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。チケットぴあでは9月19日より先行先着を実施。一般発売は9月21日(土)より。取材・文:中川實穗
2019年09月19日<ダンス×演劇×J-POP>という組み合わせで、台詞を使わずに身体表現と音楽で物語をみせるダンスエンタテインメント集団「梅棒(うめぼう)」による舞台『ウチの親父が最強』が現在上演中。大好評の東京公演のレポートをお届けする。梅棒 Extra シリーズ『ウチの親父が最強』チケット情報“梅棒 EXTRA シリーズ”と題した本作は、2014年に上演された第2回公演の5年ぶりの再演。梅棒のメンバー8名(伊藤今人、梅澤裕介、遠山晶司、遠藤誠、塩野拓矢、櫻井竜彦、天野一輝、野田裕貴)に加え、ゲストには、ミュージカルからストレートプレイまで幅広い作品で活躍中の多和田任益、ダンスパフォーマンスに定評がある横山結衣(AKB48)、そして梅棒公演ではお馴染みで本作の初演にも出演したパイレーツオブマチョビアン、鉄棒ダンスで注目を集める上西隆史(AIRFOOTWORKS)、子役の永洞奏瑠美が名を連ねる。初演は、梅棒が初めて長編を披露した作品(第1回公演はオムニバス形式)であり、第2回公演にしてPARCO劇場に進出し、多くの人が彼らの名を知るきっかけとなった大切な作品。ある男女が出会い、結婚し、子供が生まれ、成長し……という家族の物語で、梅棒らしいコメディテイストもしっかりと盛り込まれつつ、全体的に温かでホロリとくる作品だ。梅棒初出演の多和田はその豊かな演技力に加え、長い手足を存分に生かしたダンス、アクションで、登場人物の中でも複雑な役どころを鮮やかに演じていた。ヒロイン役で同じく梅棒初登場の横山は、愛らしくコロコロ変わる感情表現とキレのあるダンスパフォーマンスとのギャップが印象的。さらに、永洞の小さな身体がのびのびと広がるダンスや芝居には心を惹きつけられ、パイレーツオブマチョビアンや上西が繰り出す目を疑うようなパフォーマンスは痛快だ。そして、ときに引き締め、ときにとっちらかし、作品を賑やかに仕上げるのは、やはり梅棒メンバーのパフォーマンス。この絶妙なバランスは、ぜひ劇場で確認してほしい。ここ数年の本公演と比べると、劇場のサイズ感やストーリー展開、選曲(再演版の選曲もあり)に新鮮味を感じ、逆に“今の梅棒”の良さも改めて見えるようにも感じた『ウチの親父が最強』は銀座 博品館劇場での上演を終え、9月20日(金)から23日(月・祝)まで東京・新国立劇場 小劇場、その後、10月19日(土)に福岡・西鉄ホール、10月22日(火・祝)に三重・四日市市文化会館 第2ホール、10月25日(金)から27日(日)まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演。チケット発売中。取材・文:中川實穗
2019年09月19日いじめに遭い、不登校になる子どもたち。なかには自ら命を絶ってしまう子も……。私たち大人には何ができるのだろう?中川翔子(34)が実体験を踏まえて語る。「『死ぬんじゃねーぞ!!』は私がライブ中にも叫ぶメッセージ。いじめに遭い、私と同じような思いをしている子どもたちに、“どうか生き延びて”と伝えたくて」そんな願いを込め、中川翔子が自身のいじめ体験を文章とイラストでつづった『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』(文藝春秋)がベストセラーとなっている。子どものころからマンガやアニメ、ゲームが好きだった中川だが、私立中学に入学直後から、1人で絵を描いていることで「キモい」「オタク」とレッテルを貼られ、いじめが始まった。「誰からも話しかけられず孤立して、5分、10分の休み時間をどう過ごしていいか、わからなかった」絶えず誰かに悪口を言われ笑われている気がして、吐き気をこらえながらも、何とか学校へ通う日々。「週末に、母と一緒にマンガを読んでダラッと過ごしたり笑ったりしているときが救いでした」大人はよく「つらいのは今だけ」「卒業したら楽になる」と、助け船のつもりで言葉にするが……。「いじめで苦しんでいる子どもの耳には入りません。私は、死にたくなるくらいなら、学校には行かなくていいと思う。不登校は“逃げる”ことじゃない。自分の人生に合う道を探すことなんです」中川の母は娘のために、通信制高校を見つけてきた。「通学も自分のペースでいい。ひきこもりの人やヤンキーもいる。世代もさまざま。いろんな人がいて、それぞれよかった」教室で絵を描いていると「めっちゃうまいじゃん。Ayu(浜崎あゆみ)の絵を描いて」と、声をかけられたことも。「うれしかった。その同級生とは今でも友達です。母が違う選択肢を示し、味方でいてくれた。これが何よりサポートになりました」中川の母は、毎年貯金をはたいて、旅行にも連れていってくれた。「小学校3年のときに父が亡くなってからは、母が1人で働いて育ててくれました。決して裕福ではないなか、16歳のときには、フロリダのディズニーワールドへ連れていってくれて……。それから10年後、ディズニー映画『塔の上のラプンツェル』(’11年公開)で、私がラプンツェルの声を担当したときは、母も大喜びしてくれました。『生きててよかった〜』と思いましたね」そう思ったのには理由がある。「じつは17歳のとき、『死にたい』という衝撃が襲ってきて、リストカットしてしまったんです。母は『バカ!なんでこんなことするのよ』と、涙を流しながら私を叱りました。父が亡くなったとき以来、初めて見た母の涙……。今も忘れられません」その後、再び「死にたい衝動」に襲われたという中川。そのときは飼っていた猫が甘えてきて、さすっているうちに収まったという。「『死にたい衝動』が起きたときは、まずいったん寝て、好きなものを食べたり、好きなことをしたりして、気持ちをそらしてほしい。それを繰り返して、少しずつ毎日を生き延びてほしいです」好きなことをする――中川の場合はマンガ、アニメ、ゲームと、“明るい遺書”のつもりで始めたブログだった。「“好きなこと縛り”で発信していたら、そこに共感の声が届くようになり、自分の居場所になって、夢や未来をつくり出す場所にもなっていきました。私がそうだったように、つらい時代は『未来の種を見つける“さなぎの時間”』。いじめで苦しんでいる子どもには、そう伝えたい。お母さんには、そんな子どもに“隣って”あげてほしいんです」“隣る人”とは、絶妙な距離感で子どもを見守り、寄り添い続ける人。ある児童養護施設の保育士と子どもを描いた映画のタイトルだったという。「ただ隣に、そばにいる人。でも、いじめで傷ついた子どもの絶対的な味方。いじめはなくならないかもしれない。でもいじめで亡くなる子は、なくしたい。そのためにも“隣ってくれる”大人が必要なんです」最後に、10代の自分に今、かけたい言葉を聞いてみると。「大丈夫。生きているといいことあって、幸せを感じられる。つらい日々も上書きできる。30代、友達もいるよ、約束する!」いつも“隣って”くれた母にも「ありがとう」と伝えたい――そう笑顔で答えた。
2019年09月09日アニメから10年後の磯野家を描く 明治座9月公演 舞台『サザエさん』が9月3日に開幕した。その初日に囲み取材が行われ、主演でサザエ役の藤原紀香、マスオ役の葛山信吾、フネ役の高橋惠子、波平役の松平健、カツオ役の荒牧慶彦、ワカメ役の秋元真夏(乃木坂46)(Wキャストで齊藤京子/日向坂46)、タラオ役の大平峻也、タマ役の酒井敏也が登壇した。【チケット情報はこちら】会見で藤原が「脚本・演出の田村孝裕先生と共に、かなり細かく稽古を重ねてきました」と語ったように、芝居はもちろんセットや小道具、効果音に至るまで、隅から隅まで『サザエさん』らしさが詰まった舞台。キャラクターはそれぞれ10年前…つまりアニメの面影をしっかりと漂わせ、特に大学生になったカツオや、服飾学校に通うワカメ、中学生のタラオは思わず「大きくなった!」と親戚のような気持ちにさせられる役作り。逆にサザエや波平、フネ、マスオという大人の面々は、懐かしさすら感じられる魅力を放っている。特にオープニングは、誰もが「あの『サザエさん』だ!」という演出の目白押しで、ぜひ注目してほしいポイント。とはいえ舞台となるのはアニメの10年後の世界。「磯野家にもこういう問題がやってくるんだなということを、稽古場でも考えました」と藤原が語るように、波平は定年退職し、カツオは就職活動を控え、ワカメは課題に追われ、マスオは残業続き、タラオは勉強に忙しく、家族そろって食卓を囲む機会はほとんどなくなっていて、それぞれがリアルな悩みも抱えている。けれど、その問題をどうするかは、やっぱりサザエさん!と思う展開。高橋が「いろんなことを言い合えたり、喧嘩したり、ぶつかり合えたり。それが家族の良さ。“些細なことでもいいから何でも話して”っていうサザエさんの台詞は、時代が変わってもそうだなと思います」と語るストーリーはぜひ劇場で確認してほしい。また、ある意味で最も“舞台ならでは”な存在・タマについて、演じる酒井は「葛山さんの飼い猫の動画を見せていただいて、勉強しました」とサラリと話したが、実際はかなりのインパクト。客席に笑いを生む存在となっていた。三河屋さんや中島、穴子さん、花沢さんなどお馴染みのキャラクターも登場する舞台『サザエさん』は9月17日(火)まで東京・明治座にて、9月28日(土)から10月13日(日)まで福岡・博多座にて上演。取材・文:中川實穗
2019年09月04日ミュージシャンROLLYによるコンサート『Global ROLLY Groovy 2019~ローリーの音楽交差点~』が9月21日(土)から23日(月・祝)まで、神奈川・横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホールにて開催される。どんな公演になるのか、ROLLYに話を聞いた。【チケット情報はこちら】ROLLYが「へんてこりんなコンサートなんですよ」と言う本作は、2005年から2013年まで東京・青山円形劇場で『ROLLY Glory Rolly』『Classical ROLLY』『Best of ROLLY』『ROLLY 生誕50周年 -前夜祭-』と上演してきたコンサートシリーズだが、昨年から横浜赤レンガ倉庫に会場を移し今年で2回目となる。このシリーズはROLLYとバイオリニスト・中西俊博の出会いから生まれたもので、今回も中西は音楽監督、そしてバイオリンで出演。さらに林正樹(ピアノ)、楠均(パーカッション)、鹿島達彦(ベース)、アルフォンヌこと羽田謙治(パフォーマンス)、吉澤耕一(演出)という布陣で上演される。そこで演奏されるのは「クラシックやジャズやシャンソン…音楽のすべてを超えたナンセンスな世界」とROLLY。今回のセットリストに並ぶのも、ROLLYの曲(すかんちの楽曲も!)だけでなく、クラシックや童謡、歌謡曲など、少し不思議なラインナップだ。当然、そのままやるわけではない。「日本のコンサートで最もイカれたことを、最もハイセンスにバカバカしく、けれど真剣にやっています。超一流のミュージシャンが、真心を込めてアホなことをやり続ける世界です」。中でもクラシック音楽にオリジナルの歌詞をつけ歌うアレンジは秀逸で、「歌うために作られていない音楽に全く関係ない歌詞を乗せる、フルオーケストラで演奏する音楽をたった5人で演奏する…これ大変なんですよ」と笑うが、だからこそROLLYにしか作れない世界となる。今回はムソルグスキーの『バーバ・ヤーガの小屋』(組曲『展覧会の絵』より)を使った新曲をやるそうなので、事前に正統派の演奏を聴いておいてもより楽しめそうだ。ROLLYが「このコンサートはあまりにも難しすぎてね、毎回自分で墓穴を掘ってます(笑)」と語るように、演奏以外も凝りに凝っている。会場となる赤レンガ倉庫の特色を生かした演出は、「『赤い靴』という童謡は多くの方がご存知だと思うのですが、あの曲で“異人さんに連れられて行っちゃった”女の子は、実は外国行きの船に乗らなかったという話があって。船に乗る前に結核になり、そのまま亡くなったというんです。今回はその子をテーマに、“実は横浜の地下にもカタコンベ(地下墓地)があった”という架空の設定でやろうと思っています」(昨年はフランスがテーマでパリの地下墓地が舞台)と、期待せずにはいられないもの。赤い靴はいていた女の子がどうなったのか……めくるめくROLLYの世界をぜひ堪能して!公演は、9月21日(土)から23日(月・祝)まで、神奈川・横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホールにて。チケット発売中。取材・文:中川實穗
2019年08月23日ケラリーノ・サンドロヴィッチの書き下ろし最新作「ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~」が11月にKAAT神奈川芸術劇場で上演される。作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)と主演の多部未華子に話を聞いた。今回初タッグのふたりだが、劇場などでは顔を合わせており、「初めて言葉を交わしてからはおそらく4、5年経つ」(KERA)のだそう。本作への出演について「作品の内容を知る前に出演を決めました。決め手はやっぱりKERAさんです。KERAさんの作品は全部違うけれど、そのどれもおもしろい」と多部。本作は、KERAが『失踪者』『審判』『城』に続くカフカ4作目の長編小説を“捏造”し、舞台化するというユニークな作品。内容についてKERAは「僕もまだわからない(笑)。ただカフカの、ありもしない小説を捏造するわけですから、理路整然とした芝居にはまずならないと思います。そうした作品を歓迎してくれるのがKAATですしね」。KERAが書くとはいえど多部も「難しいイメージがあり、読んだことはありません」と明かすカフカ作品。やはり難解なものになるのだろうか。カフカの大ファンでこれまで2作、カフカにまつわる作品を上演してきたKERAは「世の中にはいろんな「面白い」があって、スッキリとわかりやすい面白さもあるし、爽快感を伴う面白さもある。そしてなんだかわからなくて観たあともモヤモヤするような面白さもあるんですよね。絵やダンスを観て、“これどういうことなの?わからないからつまらない”と言う人っていないじゃないですか。絵画やダンスは“わかろう”という前提で観ないから。“わかる”ってことだけじゃないんですよ、“面白い”って」。その世界で演じるのは大変そうだが、多部は「内容をよく理解できないまま稽古場に行くことは結構あることなので、いつも通りです」と飄々。「けれど稽古で“何度読んでもわからなかった”と話すと、大体松尾(スズキ)さんに“え!”と言われてしまいます(笑)」と笑う。その松尾作品での活躍は実は本作にも直結している。「僕は昔から松尾さんをすごく信じているから。その松尾さんの作品に何本も出ている多部ちゃんへの信頼は大きいんです」(KERA)。舞台での芝居が「1番好きです。本番の約2時間を頑張れば終わる、その潔さが好きです」と話す多部が、KERAとの初タッグでどんな姿を見せるかにも期待したい。「カフカを捏造しようと思ってもカフカにはなれないし、“やっぱKERAだな”と思われるんじゃないかな。難解なりにポップになると思う、僕がやると。久しぶりに生演奏もあるし」(KERA)という「ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~」は、11月にKAAT神奈川芸術劇場にて上演。8月24日(土)からの一般発売に先駆けて、チケットぴあでは先着先行受付中。取材・文:中川實穗
2019年08月21日歌舞伎や日本舞踊など伝統芸能と言われる舞台で活躍する「邦楽囃子(ほうがくはやし)」を軸に、ラテンパーカッションやアコーディオン、ウッドベースなど多様な楽器とセッションする「お囃子プロジェクト」のvol.14が、9月3日(火)・4日(水)に東京・ヤマハ銀座スタジオで上演される。主宰で邦楽囃子演奏家の望月秀幸と望月左太寿郎に話を聞いた。【チケット情報はこちら】普段演奏されるのが伝統芸能の場ということもあってどこか“キチンとした”印象がある邦楽囃子だが、彼らのつくるステージはフレンドリーで賑やか。そこにはvol.1での経験が影響しているといい「古典の世界では、シーンとしたなかで幕が開き、演奏をして、終わったら拍手をいただく。僕らはそういうものしかやったことがありませんでした。でも、vol.1のゲスト・ニトロン虎の巻(2011年にNITRONに改名/バンド)のパフォーマンスでお客さんが全員スタンディングになったのが印象的で」(秀幸)、「(お囃子を聴きに来たお客様ばかりで)誰も彼らのことを知らないような状況だったのですが、みんなの心を掴んでいったんです」(左太寿郎)ある意味ショックも受けたそうで「僕たちは“お客様を喜ばせる”ということをひとつもしてきてないね、という話になって」(秀幸)、「古典の演奏会というのは、お客様に向けてというよりは、演奏者が自分と向き合っているのを鑑賞してもらうという側面が強い。逆に『お囃子プロジェクト』はみんなが単純に楽しめたり、お囃子に興味を持ってもらうためのツールにしたい」(左太寿郎)と今のスタイルで進み出した。最近はその魅力が伝わり始め、動員が増えたほか、「お囃子プロジェクト」としてテレビ番組や公演に呼ばれる機会も増えたという。邦楽囃子は、主に締太鼓(しめだいこ)、大鼓(おおつづみ)、小鼓(こつづみ)、笛を使った演奏のこと。そこに毎回ゲストプレイヤーがさまざまな楽器を携えて参加する。演奏する楽曲も、J-POPや、秀幸の趣味であるプロレスの曲(!)など親しみやすい。「ただ自分たちの意識はそんなに変わらないです。常に自分たちのジャンルの音楽としてやっている」(左太寿郎)、「お囃子のカタチを崩さずにミックスすることにはこだわっています」(秀幸)と、邦楽囃子そのものを生かしたアレンジ。だからこそ、ここでしか聴けない音が味わえる。今回はオリジナル曲も作曲。「尺八をメインにしたラテンの曲になります。お囃子の演奏家が作るラテンの曲…寿司屋が作るラーメンみたいな感じです(笑)」と秀幸。「お囃子プロジェクト」vol.14は、9月3日(火)・4日(水)に東京・ヤマハ銀座スタジオにて上演。チケット発売中。取材・文:中川實穗
2019年08月16日博多華丸と酒井美紀が主演を務める舞台『めんたいぴりり~未来永劫編』が9月22日(日)に東京・明治座で開幕する。2013年から主演を務める博多華丸に話を聞いた。【チケット情報はこちら】『めんたいぴりり』は、博多土産の定番・辛子明太子の誕生を描いた『明太子をつくった男』(川原健・著)を原作に2013年に福岡でドラマ化され、好評を得て全国で放送された作品。2015年には博多座で舞台化、今年1月には映画化も果たした“メイド・イン・博多”の人気シリーズだ。舞台2作目となる今作『未来永劫編』は、今年3月、4月に博多座で上演された新作。舞台は東京初進出となる。博多座での公演を振り返り華丸は「舞台2作目でプレッシャーはありました。でも幕が開けて、お客さんが“今回もよかった!”と言ってくれたのでホッとしましたね」。今作は、年老いて病床に伏す俊之(華丸)がこれまでの人生を振り返り、「明太子」に情熱を注いだ日々の思い出が走馬灯のように甦る――という内容だが、「初めて描くエピソードもありますよ」と、これまでの映像や舞台を観てきた人にも楽しめる内容になっているそう。華丸が「申し訳ないくらいいい役をやらせてもらっています」と言うのは、日本で初めて明太子を製造・販売した“ふくや”の創業者・川原俊夫をモデルにした俊之役。酒井美紀演じる妻・千代子と共に、戦後の博多で明太子作りに情熱を注ぐ男だ。博多っ子の役は得意なように思えるが、「これは地元の人にしかわからないような違いですが、僕は“博多”ではなく“福岡市内”の人間。だからやっぱり違うんですよ。“博多=商人の町”のあの感じは自分にはないものなんです」と話し、「だから博多山笠(博多の祭)に参加して、皆さんと飲みに行ったりしました。なるべく博多の、そして当時の感じを出そうと思って」と、徹底した役作りに取り組んだのだという。実は本作での芝居の経験は漫才にも生きた。「間(ま)が怖くなくなりました。漫才だけやっていると、どうしても間があくのが心配になるんですよ。でも芝居では間もしっかりと演出してもらえるので、その重要性を感じることができた。それが本業にも生きてる…と妻から言われました。『めんたいぴりり』がよかったっちゃないと?って(笑)」明太子のお母さん(!)スケトウダラ役として映像出演する相方・博多大吉にも「東京でやるからね、ちょっとくらい出てくれよと思ってます」と笑顔をみせた華丸が主演を務める舞台『めんたいぴりり~未来永劫編』は、9月22日(日)から29日(日)まで東京・明治座にて上演。取材・文:中川實穗
2019年08月14日ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が作・演出を手掛ける「ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~」が11月にKAAT神奈川芸術劇場で開幕する。出演者の瀬戸康史に話を聞いた。KERAの書き下ろし最新作である本作は、『失踪者』『審判』『城』に続くカフカ4作目の長編小説の遺稿が発見され、舞台化するというもの。つまりKERAが愛するカフカの長編を捏造し、戯曲化する。そんな本作ついて瀬戸は「やっぱりKERAさんの発想はおもしろいなと思いました。ただ、カフカってちょっと難しいじゃないですか。僕も『城』と『変身』を読みましたが、まったくと言っていいほど意味がわかりませんでした。だからもしかしたら観る人も『難解な作品になるのかな』と思っているんじゃないかと思いますが、KERAさんなのでめちゃくちゃおもしろいと思います。それだけは自信を持って言えます!」と語る。それほどKERAに信頼を寄せる瀬戸が、KERA作品に出演するのは2017年の『陥没』(KERA作・演出)以来2作目。その際に演じた役はこれまでの瀬戸の印象とは違うもので、俳優・瀬戸康史の実力を知らしめた。「映像などでの僕のイメージは完全に裏切ったと思います。そういう役を振ってくださったことにすごく感謝しています」と明かし、「こうやってまた呼んでいただけて、恩返しするつもりでがんばりたい。気は早いですが、次も呼んでいただけるような働きはしたいです」と意気込む。当時の稽古について尋ねると「楽しかったです。脚本が毎日数ページずつできていくんですよ。KERAさんが僕らを見て書かれている感じがすごく新鮮でしたし、みんなでイチからつくっている感じがしました」といきいきとした表情で振り返り、演じることも「自由でした。言われたのは“役に慣れないこと”くらいで。だからそのシーンをやったらすぐ忘れるくらいの勢いでやっていたのを覚えています。今回はカフカだから、役としてはもう少し作り込まれる部分もあるんじゃないかな…いや、完全に想像ですけど(笑)」と楽しそうに話した。主演は多部未華子。「ガッツリお芝居で絡むのは初ですが、いろいろな表現に挑戦されている方という印象があります。そういう方とご一緒すると刺激を受けますし、特に多部さんは同い年なので燃えますね。他のキャストを見ても、いい作品になる予感はしていますよ!」と瀬戸が語るKAAT神奈川芸術劇場プロデュース「ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~」は、11月7日(木)から24日(日)までKAAT神奈川芸術劇場にて上演。その後、兵庫、北九州、愛知を巡演する。8月24日(土)の一般発売に先駆け、7月31日(水)からプレイガイド最速先行抽選受付中。取材・文:中川實穗
2019年08月01日小堺一機のライブショー『小堺一機トーク&ソング SPECIAL ~リハの気分で!~』が、8月14・15日に東京・Bunkamura シアターコクーンで上演される。小堺に話を聞いた。【チケット情報はこちら】内容については「自分でもわからないんですよ」と笑いながら、「基本的には全部ふざけてる。きちんとしたものをやる場所は3か所くらいで(笑)、あとはずっと笑ってもらえるようにつくっています」ベースは“トーク&ソング”。お喋りはここでしか聴けないちょっとワルいトーク、歌謡曲ヒットメドレー、映画音楽や小堺のオリジナル曲など彩り豊かだ。さらに今回は「ずっとやってみたかった」という挑戦も。「『五つの銅貨』(1959年)という映画があるのですが、その中でダニー・ケイとルイ・アームストロングと小さい女の子がそれぞれ違う歌を歌って、最後にひとつになるというシーンがあるんです。それを僕は小さい頃から『どうやってやるんだろうな』と思っていて。今回は出演者の3人(小堺・ピアノ宇佐元恭一・チェロ橋本歩)で、それをやってみようと思います」。そんな歌のアイデアからも垣間見える、小堺ならではのステージ。その根っこにあるのは、子供の頃に観ていたテレビ番組なのだという。「当時は『ダニー・ケイ・ショー』(アメリカのバラエティー番組)も普通に放送されていたんですよ。そこでダニー・ケイさんが歌うし、踊るし、笑わせるのがすごくカッコいいと思っていた」。そんな一味違うおもしろさの定義が染み込んだ小堺だからこそのアイデアが詰め込まれた時間は、ここにしかないものだ。テレビの印象が強い小堺だが、1985年から2017年まで毎年上演された『小堺クンのおすましでSHOW』をはじめ、舞台にも立ち続けている。その魅力を「舞台は最後にお客様に完成させてもらうもの。これは今でもそうなんだけど、ドーンとくる笑いって思いもよらないものが多いんですよ。そしてそういうものは次の日にやってもウケない。本当に“その日のそのとき”だけのものなんです」と語る。実はそんな経験がこの“リハの気分で”という副題につながっている。「思いもよらない爆笑って、お客さんがくれたある瞬間に僕がパンと返せたときに起こるものなんです。それは僕にとっても楽しいものですが、そのためには“リハの気分”でやらないと。“次の曲があるから”では返せないですからね。だから“リハの気分”っていうのはダラダラやるという意味ではなく、そういう心持ちでやりたいなっていうことです」。小堺が「いい意味で何も残らないものを届けたい。おもしろかったー!でも何やってたっけ?というようなね」と語る本作は、8月14日(水)・15日(木)に東京・Bunkamura シアターコクーンにて。チケットは現在発売中。取材・文:中川實穗
2019年07月31日満島ひかりや坂口健太郎が出演し、熊林弘高が演出を手掛けるシェイクスピアの恋愛喜劇『お気に召すまま』が7月30日に開幕する。それに先がけフォトコール(マスコミ向け撮影会)が行われ、冒頭のシーンが公開された。【チケット情報はこちら】開幕を前に熊林は「僕が演出を考える前提には、“役者の肉体”が大きくあり、作品と役に正しくはまる役者があって初めてスタートが切れるんです。シェイクスピアを演出するのは初めてです。シェイクスピアは、プロテスタントの時代に、カトリックの生まれなうえ、ゲイだったという説もある、つまり仮面をかぶって生きていた人なんですよね。だからこそ、作中で幾度も「自分とは何者か」と登場人物たちに自問させる。シェイクスピアのどこまでも続く問いかけに、いまわれわれが何を感じ考えたかを提示し、あとは観て下さる方々に委ねるしかありません。お客様には存分に(舞台となっているアーデンの)森の混沌を味わっていただければと思います」とコメント。本作は、配役で男女や年齢が大胆にひねられていたり、アーデンの森が牧歌的なユートピアではなく性的欲望がうごめく暗闇になっていたり、一筋縄ではいかない世界観。『お気に召すまま』と聞いて自動的にイメージするものとのギャップは、おもしろくもあり、なにか気付かされるものでもあった。ヒロイン・ロザリンドを演じる満島は「劇中ではかなり明け透けに、性的なことや恋することが語られますが、見て聞いている方それぞれにもきっと、違ったどきどきがあると思います(どきっとして欲しい)」、オーランド役の坂口は「性差を超えてさまざまな愛のカタチが描かれる今作、混沌としたアーデンの森で、自分が持っている肉体を、性的に純粋に駆使しながら、オーランドとして生まれてくる感情を大切に演じています」とコメントを寄せた。フォトコールでは、物語の始まり、ロザリンドとオーランドが恋に落ちるまでのシーンを披露。シェイクスピア特有の膨大な長台詞が渦巻く中でも、ふと運命に触る言葉が告げられる瞬間や、ロザリンドとオーランドの視線が交わる瞬間には、劇場全体の空気がぐらりと揺れたのが印象的だった。思わぬ始まり方や、客席まではみ出した舞台、合わせ鏡のようなセット、美しい衣裳も楽しく、魅力的なキャストが揃う本作は7月30日から8月18日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウスにて上演後、豊橋、新潟、兵庫、熊本、北九州を巡演する。取材・文:中川實穗
2019年07月30日城田優が演出を手掛けるミュージカル『ファントム』が11月・12月に上演される。その製作発表会見が開かれ、ファントム/エリック役の加藤和樹と城田優、ヒロイン・クリスティーヌ役の愛希れいかと木下晴香、ファントムの恋敵・シャンドン伯爵役の廣瀬友祐と木村達成(それぞれWキャスト)が出席した。ミュージカル「ファントム」チケット情報本作は、ガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』を原作に、アーサー・コピットが脚本、モーリー・イェストンが作詞・作曲を手掛け、アメリカで1991年に初演されたミュージカル。今回の上演は、2014年にファントム/エリック役を演じた城田が演出を手掛ける新演出版。城田はファントム役も演じる。加藤、城田、愛希、木下による劇中歌『You are music』の美しいハーモニーからスタートした会見では、モーリー・イェストンから「(今回の新演出版では)今まで観たことのない、城田優ならではのオリジナリティが生きた『ファントム』を期待しています」というメッセージも。城田は今回の演出について「歌を歌いあげるミュージカルではなく、心情を歌い上げるミュージカルをつくりたい。いかに“心”に届けられるかが一番大事だと僕は思っています」と語る。城田とWキャストでファントム/エリックを演じる加藤は「城田優とは僕の初舞台でご一緒しました。僕を知っている彼だからこそ、一緒につくり上げられる役だと思います。城田は『「今までで一番加藤和樹がいい」と言わせる作品にする』と言いました。この言葉は自分にとってもプレッシャーです。演出家・城田優に最後までついていきたい。ご期待ください」と熱く語った。愛希は「この作品、そしてクリスティーヌという役にはずっと憧れがありました」と明かし、木下は「自分の新しい一面を出して、衝撃的なクリスティーヌを皆様にお届けできるよう精一杯つとめていきたいです」と意気込み、廣瀬は「プレイボーイでもあるシャンドンがいかにクリスティーヌに惹かれていくか、そこにある純粋さもみせていきたい」、木村は「こんなに勉強させていただける座組はなかなかない。いろんなことを吸収しながら、作品の一員として素晴らしいものにできるようがんばっていきたい」とそれぞれコメントした。城田が「オペラ座の怪人…つまりオペラ座に住んでいるお化けがどうして誕生したのか、彼がどうしてそうならなければならなかったのかを描いたストーリーに心打たれる」と語る公演は、11月9日(土)から12月1日(日)まで東京・TBS赤坂ACTシアター、12月7日(土)から16日(月)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて。取材・文:中川實穗
2019年07月25日手塚治虫の“黒い”作品群の代表作を原作に、上演台本・演出を中屋敷法仁、主演を五関晃一(A.B.C-Z)が務める舞台『奇子(あやこ)』が現在上演中。その東京公演開幕に先がけ公開ゲネプロと囲み取材が行われ、取材には五関と梶原善、そして中屋敷が出席した。会見で中屋敷が「水戸でのプレビュー公演(7月14日・15日上演)では興奮しました。こんなに好きな原作を、こんなに好きな俳優さんで、僕の好きな演出でやってくれている。夢を見ているみたいな感じです。五関くんが本当にかっこよくて、水戸公演から東京公演まで早く観たくて仕方ない気持ちでした」と熱く語った本作。青森で500年の歴史を誇る大地主でありながら、終戦後の農地改正法を境に衰えていく天外(てんげ)一族を中心に、一族の体面のために土蔵の地下に22年ものあいだ閉じ込められる奇子を巡り起こる物語について五関は「時代背景も、それぞれが持っている欲も、初めて読んだときはファンタジーに感じたくらい、自分とはかけ離れた出来事だと思いました」と話し、だからこそ演じるうえで「それをリアルとして突き詰めていくのは大変でした」と振り返る。梶原も「重いです。観ている方はどう思っていらっしゃるのか」と語るように、遺産のために妻を実の父に差し出す天外家の長男・市朗(梶原)をはじめ、次男の仁朗(五関)、三男の伺朗(三津谷亮)、東京で奇子と出会う波奈夫(味方良介)ら登場人物の奥底に持つものが、奇子(駒井蓮)という存在によって暴かれていくような内容で、同じ手塚作品『鉄腕アトム』などからは想像しにくい残酷さも描かれている。マンガの内容を約1時間45分に凝縮した舞台は「そのシーンそのシーンで主人公が変わるので、そのぶん、それぞれの欲や目を疑いたくなる行為が怒涛のように押し寄せてくる」と五関。登場人物の心情が芝居や時にはダンスによって滴るような生々しさで表わされ、特にそれぞれが追い詰められたときの姿、今際の際に語る言葉は強烈。観ている側もどこか剥き出しにされていくような感覚に陥る作品だ。中屋敷が「演出や原作の手が届かないくらい俳優同士のやりとりが濃密。だからこれからも(公演を重ねるにつれ)勝手に深まっていくんじゃないか」と話す、手塚治虫生誕90周年記念事業PARCOプロデュース2019 舞台『奇子』は、7月28日(日)まで東京・紀伊國屋ホールにて上演中。その後、8月3日(土)4日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼにて上演。ぴあでは下記特別サイトにて発売中。また、東京公演は公演当日午前9時30分より11時まで当日券専用ダイヤル(0570-00-2321)にてチケット発売中。取材・文・撮影:中川實穗
2019年07月23日「3年前に不整脈が出たときがきっかけで、『これはまずい、しっかり体を鍛えなくては』と危機感を覚えたんです」こう話すのは、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さん(71)だ。当時から地元での医療活動のほか、1年のうち100日間は全国のあちこちを飛び回って、精力的に講演活動をする日々を送っていたという。「15年くらい前から、行く先々で僕のオリジナルの『スクワット』と『かかと落とし』をすすめていたのですが、実のところ、僕自身は思いついたときにする程度でした。もちろん、健康に気を使った食事もしていたのですが、どこか“医者の不養生”なところがあり、おなかはポッコリで、少し階段を上がると息切れがしていたんです」(鎌田さん・以下同)運動不足が招いた不整脈だと反省し、仕事が忙しくても、毎日運動をしようと決意した鎌田さん。自身で開発したスクワットとかかと落としは、最短時間で効率よく体を鍛えられる、格好のエクササイズになったのだ。「高齢になると大切なのは、『筋活』『骨活』です。『筋活』はしっかり動けてけがをしない筋肉を作る活動、『骨活』は骨密度を上げて骨を丈夫にする活動です」高齢者が要介護になるきっかけの約13%は、骨折をまねく転倒だ。太ももが上がらなくなったり、つま先が上がらなくなって、じゅうたんや畳の縁につまづいたり、階段を下りるときに足をとられて転ぶなど、転倒のほとんどは室内で起こる。特に骨折は女性に多く、70歳以上の女性の7割以上が骨粗しょう症だ。だからといって転倒防止のために一日中座ってばかりの生活を送っていると、末端の毛細血管に血液が循環しなくなり、エコノミークラス症候群や肺塞栓症といった病気の原因となる。「筋肉は何歳になってからでも鍛えることができますが、じゃあ体が衰えてからやればよいというわけではなく、女性の場合は特に、女性ホルモンが激減する40~50代から始めてほしいです」「鎌田式スクワット」は筋活に、「鎌田式かかと落とし」は骨活にそれぞれ有効だ。それは鎌田先生自身が証明している。「僕自身、3年間毎日スクワットとかかと落としを続けて、3年前に起こった不整脈は再発していません。骨密度に至っては130%です。丈夫でしょう?さらに体重9kg減、ウエスト9cm減で、それまではいていたズボンがブカブカになりました。僕はあつらえたズボンをはいているので、サイズが変わるとお直しをしてもらうのですが、テーラーの方から『太もも部分も細くなりましたね』と言われました。脂肪が筋肉に変わって太ももが締まったみたいです」ポッコリおなかも今はスッキリ。毎年冬になると大好きなスキーを楽しむが、ここ数年は筋力が上がったため、以前よりも速く滑れるようになったという。ここでは「骨活」となる「鎌田式かかと落とし」を紹介。■椅子ありスクワット(1セット10回×1日3セット)(1)椅子の背につかまり、背筋を伸ばして立つ。(2)かかとをつけたまま、つま先をゆっくりと上げてむこうずねの筋肉を強化する。腰が引けないように。(3)つま先を下ろすと同時にかかとを少し上げる。(4)さらにかかとを上げ、背筋をピンと伸ばす。ふくらはぎの筋肉に意識を向ける。(5)かかとをドスンと落とす。「つま先をしっかりと上げることで、むこうずねの筋肉が鍛えられます。ここは意識しないと、日常生活の中ではなかなか使われていない筋肉です。転倒の原因もこの筋肉が衰えることで起こります。しっかりとつま先を上げ、その後かかとを上げて“ドスン”と勢いよく落とすことで、骨を再生する骨芽細胞に刺激を与えて、骨ホルモンのオステオカルシンを分泌させます。これにより骨密度を上げる効果が期待できるのです」オステオカルシンには血糖値やコレステロール値を下げる働きのほか、動脈硬化予防の働きもあるという。また、ふくらはぎは第二の心臓ともいわれるが、ふくらはぎの筋肉を刺激することで、足先から全身に血液が巡って心臓や脳の血流もアップする効果が期待できる。鎌田先生は、毎年最低1回はイラクの難民キャンプに医療支援に行っている。飛行機で片道20時間はかかる長い行程だ。普通は年齢を重ねると、長時間の渡航は体に負担を感じるようになるが、「僕は今71歳だけれど、海外に行っても時差ボケもなく行動できます」とキッパリ。「80歳まではイラクに行き続けたいし、大好きなスキーは93歳まで滑り続けたい。そのためにも、スクワットとかかと落としを続けて、いつまでも元気に動ける体を保つつもりです」
2019年07月18日原嘉孝(宇宙Six/ジャニーズJr.)が主演する舞台『THE BANK ROBBERY!~ダイヤモンド強奪大作戦~』が8月2日(金)に開幕する。その公開稽古と会見が行われ、会見には原、桜井玲香(乃木坂46)、元木聖也、尾上寛之、しゅはまはるみ、溜口佑太朗(ラブレターズ)、塚本直毅(ラブレターズ)、大堀こういち、市川しんぺー、田中要次、演出の小林顕作が出席した。【チケット情報はこちら】本作は今イギリスで最も勢いのあると言われている頭脳派コメディ劇団「Mischief Theatre(ミスチーフシアター)」の最新作。日本初演となる今回は、谷賢一が翻訳、小林顕作が演出を手掛ける。この日は2シーンの稽古を披露。まずは元木演じるミッチがダイヤモンドを強奪するために刑務所から脱獄する冒頭~オープニングシーンの稽古が行われた。“刑務所から脱獄”と言っても、笑ってしまう展開、歌、ダンスなど盛りだくさんで賑やか。これから始まる物語の楽しさを予感させるシーンとなった。続いては、原演じるスリの名人サムが、母親(しゅはま)の働く銀行を訪れ、桜井演じる結婚詐欺師カプリスに出会うシーン。まず舞台となる銀行がハチャメチャで、行き交う人も強烈なキャラクターばかりなのだが、そんななかサムは最愛の母親との会話中でもスリのチャンスは逃さない、ある意味“デキる男”。隙あらば人の財布を抜き取りながら口八丁手八丁でその場を切り抜けていくのに、母親に怒られると逆らえない姿はかわいい。また、カプリスのやり手な結婚詐欺師ぶりは歌&ダンスで表現されるのだが、桜井の愛らしい外見とかわいいダンスで歌いあげられる歌詞は強烈。そのアンバランスに思わず笑ってしまう。稽古後に開かれた会見は笑いの絶えない和やかな雰囲気。小林が「コメディは難しいですが、今回おもしろいと思います。イギリスに勝てるなと思うくらい。日本人の繊細な間(ま)が活かされている」と手応えを話し、原は自信の役柄について「サムはお母さんが大好きだったり、スリの名人だったりして、人によって全く違う顔を見せる。そういう詐欺師っぽい一面が出せたら」、桜井は「ヒロインだと思うのですが、時々自分がヒロインなのかわからなくなるシーンがあります(笑)」と紹介。元木は作品について「ここまでコメディに振り切った作品はなかなかない。誰が観ても楽しいはず」と話した。田中が「見所はとにかく出てくるキャラクターがバカばっかりなところ。普通はひとりくらい振り回される人がいるのですが、本当にバカばっかり!(笑)」と話す本作は、8月2日(金)から8月12日(月・祝)東京・新国立劇場 中劇場、8月16日(金)から8月17日(土)大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。取材・文・撮影:中川實穗
2019年07月17日「3年前に不整脈が出たときがきっかけで、『これはまずい、しっかり体を鍛えなくては』と危機感を覚えたんです」こう話すのは、諏訪中央病院名誉院長の鎌田實さん(71)だ。当時から地元での医療活動のほか、1年のうち100日間は全国のあちこちを飛び回って、精力的に講演活動をする日々を送っていたという。「15年くらい前から、行く先々で僕のオリジナルの『スクワット』と『かかと落とし』をすすめていたのですが、実のところ、僕自身は思いついたときにする程度でした。もちろん、健康に気を使った食事もしていたのですが、どこか“医者の不養生”なところがあり、おなかはポッコリで、少し階段を上がると息切れがしていたんです」(鎌田さん・以下同)運動不足が招いた不整脈だと反省し、仕事が忙しくても、毎日運動をしようと決意した鎌田さん。自身で開発したスクワットとかかと落としは、最短時間で効率よく体を鍛えられる、格好のエクササイズになったのだ。「高齢になると大切なのは、『筋活』『骨活』です。『筋活』はしっかり動けてけがをしない筋肉を作る活動、『骨活』は骨密度を上げて骨を丈夫にする活動です」高齢者が要介護になるきっかけの約13%は、骨折をまねく転倒だ。太ももが上がらなくなったり、つま先が上がらなくなって、じゅうたんや畳の縁につまづいたり、階段を下りるときに足をとられて転ぶなど、転倒のほとんどは室内で起こる。特に骨折は女性に多く、70歳以上の女性の7割以上が骨粗しょう症だ。だからといって転倒防止のために一日中座ってばかりの生活を送っていると、末端の毛細血管に血液が循環しなくなり、エコノミークラス症候群や肺塞栓症といった病気の原因となる。「筋肉は何歳になってからでも鍛えることができますが、じゃあ体が衰えてからやればよいというわけではなく、女性の場合は特に、女性ホルモンが激減する40~50代から始めてほしいです」「鎌田式スクワット」は筋活に、「鎌田式かかと落とし」は骨活にそれぞれ有効だ。それは鎌田先生自身が証明している。「僕自身、3年間毎日スクワットとかかと落としを続けて、3年前に起こった不整脈は再発していません。骨密度に至っては130%です。丈夫でしょう?さらに体重9kg減、ウエスト9cm減で、それまではいていたズボンがブカブカになりました。僕はあつらえたズボンをはいているので、サイズが変わるとお直しをしてもらうのですが、テーラーの方から『太もも部分も細くなりましたね』と言われました。脂肪が筋肉に変わって太ももが締まったみたいです」ポッコリおなかも今はスッキリ。毎年冬になると大好きなスキーを楽しむが、ここ数年は筋力が上がったため、以前よりも速く滑れるようになったという。「筋活」となる「鎌田式スクワット」は4段階のレベルがある。ここでは、レベル2の「椅子ありスクワット」を紹介。■椅子ありスクワット(1セット10回×1日3セット)(1)椅子の背につかまり両足を肩幅に広げて立つ。(2)ゆっくりと膝を曲げて腰を落とす。膝は曲げすぎないように(90度以上保つ)。お尻を後ろに引くイメージで。(3)ゆっくりと呼吸しながら、5秒ほど同じ姿勢を保つ。(4)ゆっくりと1の姿勢に戻る。「10年ほど前、黒柳徹子さんとお会いしたときに、『ジャイアント馬場さんに教えてもらったスクワットを日課にしている』と聞き、スクワットの効果を確信しました。『椅子ありスクワット』は、台所で食事の支度をしている合間などにできる簡単なスクワットです」
2019年07月17日オスカープロモーションによる男性エンタテインメント集団「男劇団 青山表参道X」の第2回公演『ENDLESS REPEATERS -エンドレスリピーターズ-』が7月20日(土)に開幕する。川尻恵太(SUGARBOY)による脚本・演出で、3つのチームでの上演となる本作。各チームを代表して、「ルビー」の飯島寛騎、「サファイア」の西銘駿、「エメラルド」の定本楓馬に話を聞いた。【チケット情報はこちら】オリジナルの密室劇で<4人チーム+ゲストひとり>の5人芝居となる本作。「ルビー」チームは飯島寛騎・栗山航・小沼将太・立花裕大、「サファイア」チームは西銘駿・塩野瑛久・村上由歩・松本健太、「エメラルド」チームは定本楓馬・中村嘉惟人・湯本健一・長田翔恩という布陣だ。さらに「日替わりゲスト」として水江建太・奥野壮・岩田知樹のほか、別チームのメンバーが登場することも。そんな独特のつくりの本作を、飯島は「全く同じストーリーだからこそ、各チームがどう演じるか、どんな違いが出るかが興味深いです」、西銘も「少人数だからこそ各チームの色が出るはず。さらに日替わりで自由なスペシャルゲストが加わりますからね…(笑)。毎回“違う作品”だと思われるようなものになればいいなと思います」と意気込む。各チームについて、飯島は「ルビーチームは“チーム・アダルティ”。他のチームに比べて年齢が上なぶん経験値があるのは魅力なのですが、いかんせん個性の塊揃いなので(笑)。どんなことになるのかは今から楽しみです」、西銘は「サファイアチームは“チーム・スタンダード”。メンバーを知っている方は異論があると思いますが(笑)、敢えて僕らはスタンダードを目指します!」、定本は「エメラルドチームは“チーム・バラバラ”です。それはチームワークがバラバラという意味ではなく(笑)、アクションだったり、英語だったり、メンバーそれぞれが違う得意分野を持っているという意味でのバラバラ。このメンバーだから生まれるものを活かしていきたいです」。昨年6月に旗揚げ公演を行った「男劇団 青山表参道X」。舞台作品としては2作目だが、それ以外にもさまざまな活動を行ってきた。飯島が「身内感が出てきた」と語るように、インタビュー中の3人の雰囲気も他の現場ではあまり見たことがないのびのびとした表情が印象的。定本は「それぞれがそれぞれの活動の中で吸収してきたものを持ち帰って、それをまたメンバーが吸収できる場所になっている。そこがすごくいいなと思います」と語る。旗揚げから1年経った今だからこそのものが観られるであろう本作は、7月20日(土)から28日(日)まで東京・品川プリンスホテル クラブeXにて上演。取材・文:中川實穗
2019年07月10日7月27日(土)から31日(水)まで東京・三越劇場にて舞台『Run For Your Wife』が上演される。本作はイギリスの劇作家レイ・クーニーによる戯曲で、日本でも何度も上演されているコメディ作品。主演の山本一慶に話を聞いた。【チケット情報はこちら】山本にとって初のコメディ作品となる本作。「脚本を読んで、計算しつくされた上質なコメディ作品だなと思いました。笑わされるのと同時に、どうなっていくのかワクワクする内容で、脚本を読んでいるだけでも楽しくて。そこに挑戦できるのはありがたいです」。これまでも舞台上で“笑いを取る”ことはやってきたという山本だが「でも、そういう笑いとは違いますよね。登場人物のすれ違いだったり、勘違いだったり、そこから生まれる出来事だったりが、被さり合って被さり合って生み出される笑いですから。だから正直、不安もあります。舞台上でのキャッチボールがうまくいかないとおもしろくならないから」。主人公にはふたりの妻がいるけどバレたくない!というドタバタ劇。山本が演じる主人公のタクシードライバー ジョン・スミスは「重婚している最悪なヤツなんですけど(笑)、脚本を読んでいると憎めないんですよね。むしろガンバレって言いたくなるかわいらしさがある。そこを演じたいです」。そんなジョンのために振り回される友人を演じるのが、初共演のルー大柴。「ルーさんと僕の年齢差をうまく生かせれば、僕らがやる『Run For Your Wife』になるんじゃないかと思っています。35歳差の“友達”ですからね。そんなふたりだからこその関係も楽しい要素にしたいです」。ジョンのふたりの妻を演じるのは、花奈澪と七木奏音。「花奈は以前共演して以来、気心知れた仲なので、こういう作品を一緒にやるのは楽しみです。奏音ちゃんとも共演経験はあるのですが、そのときはあまり話せなかったので、今回どんなふうになるのか期待しています。それ以外の皆さんも芝居が好きなメンバーが揃っているので、楽しくなるんじゃないかな」。演出の菅原道則とはこれまでもタッグを組んでおり「菅原さんは役者にも自由にアプローチさせてくれるんですよ。そのうえで締めてくれるので、すごくやりやすいです」と信頼を寄せる。この6月に30歳という節目を迎えて最初の作品。「30歳の誕生日にファースト写真集を発売していただき、当日はファンクラブイベントもあってファンの皆さんと迎えられて、いいスタートを切れました。その皆さんが、僕がこの作品に出ることを喜んでくださっていて。だからこそいいものを見せたい。笑わせますが、それは僕が普段2.5次元作品で見せるような笑いでも、コントの笑いでもない、コメディ作品の笑いです。計算しつくされた笑いを堪能していただきたいです!」文:中川實穗、ヘアメイク:瀬川なつみ
2019年07月10日中村雅俊デビュー45周年を記念した『中村雅俊45thアニバーサリー公演』が東京・明治座にて上演中。その公演初日に潜入した。【チケット情報はこちら】1974年4月にドラマ『われら青春!』で俳優デビューし、同年7月にはドラマ挿入歌『ふれあい』で歌手デビューした中村の記念公演となる本作は、その45年間に欠かせない“芝居”と“歌”をそれぞれ披露する二部構成。明治座初座長を務める。第一部で上演されたのは、中村が主演を務める時代劇『勝小吉伝 ~ああわが人生最良の今日~』。中村とは4度目のタッグとなる鴻上尚史が脚本・演出、鹿目由紀が脚本を手掛け、中村が勝海舟の父である勝小吉を演じる。共演は、小吉の妻・賀来千香子、息子の麟太郎(未来の勝海舟)・東啓介、麟太郎の恋人・愛加あゆ、悪役の片目・山崎銀之丞、小吉の兄・田山涼成、小吉の甥・寺脇康文ら個性豊かな面々。時代劇ならではの殺陣はもちろん、生演奏あり、歌あり、ダンスあり…そしてまさかのフライングあり!?という賑やかで楽しい作品に仕上がっていた。そしてその楽しさの中には「相手を信じる気持ち」や「今日の自分によかったと言える生き方」などさまざまなメッセージが詰まっていて、そこから生まれるあたたかなものには“中村雅俊”という存在に通ずるものを感じた。中村が演じる小吉は、自由でどこかとぼけているけれど剣の腕が立つ男。そんな彼を中心に登場人物それぞれが周囲の人を愛し、信じ、影響を与え合い、勇気を持って一歩踏み出す姿にぜひ注目してほしい。そして第二部のライブでは、デビュー曲『ふれあい』をはじめとするシングル曲はもちろん、アルバム曲やメドレーなど10曲以上を披露。中村は、歌はもちろんのこと、サックスやギターなど楽器を演奏したり、MCで観客とコミュニケーションを取ったりと、約60分のステージはあっという間だった。この日はMCで、本ライブのタイトルであり、7月1日に発売したばかりのベストアルバムのタイトルにもなっている『yes!on the way』について「まだ途中、という意味です。まだまだがんばるつもり。過去の45年よりもこれから先のほうががんばり甲斐があります」とにこやかに語り、観客を喜ばせた。公演は7月31日(水)まで東京・明治座にて上演中。チケット発売中。また、7月15日(月・祝)に開催される一夜限りのスペシャルライブには小椋佳、松山千春がスペシャルゲストで参加する。取材・文:中川實穗
2019年07月09日1969年10月5日に放送開始し、今年50周年を迎えるアニメ 『サザエさん』。そのアニバーサリー企画のひとつとして舞台「サザエさん」(脚本・演出:田村孝裕)が上演される。アニメから10年後の磯野家を描くという本作。磯野カツオを演じる荒牧慶彦に話を聞いた。【チケット情報はこちら】漫画やアニメを舞台化した2.5次元作品でさまざまな役を魅力的に演じ、高い人気を集める荒牧。小学生男子から刀剣男士まで演じてきた彼だが、磯野カツオという誰もが知るキャラクターを演じることには驚いたそう。「最初に話を聞いたときは戸惑いました、“僕でいいんですか!?”って。まさか自分がカツオ役をやるとは…」と明かしつつも「光栄なことです」と笑顔をみせる。本作のカツオは“10年後”の大学生。「大学生って進路に悩みますし、周りからの影響も過分にうける年頃だと思うので、そういう揺れる心が人間臭くていいなと思いました。ちょっと大人ぶりたい年頃を演じるので、アニメのわんぱくさも残しつつ、そういう部分も演じていけたら」。荒牧自身も大学時代は進路で揺れたそうで「ちょうど就職活動の頃に俳優をやろうと決めたので、友達が次々と大企業に就職が決まっていくなかにいるとやっぱり揺れましたね。だけど1回は自分のやりたいことをやってみたいと思い、この世界に飛び込みました。当時、僕を心配していた友達は今も応援してくれています。あのときやれてよかったです」。サザエを藤原紀香、マスオを葛山信吾、フネを高橋惠子、波平を松平健、ワカメをWキャストで秋元真夏(乃木坂46)と齊藤京子(日向坂46)、タマを酒井敏也というキャスト陣が揃う本作。「豪華なキャストの皆さんとお芝居できることは、嬉しいのと同時に“うわあ、めっちゃ緊張するやつじゃん!”と思いました(笑)。だから早く先輩たちと仲良くなりたいです。きっと親しみやすくておもしろい作品になると思いますし」と稽古が始まるのを楽しみにしている様子。脚本・演出の田村孝裕とも初めてのタッグとなるが「初めての演出家さんとはまず打ち解けたいです。そうするとお互い話をしやすくなりますから。特に今回はまだ誰も見たことのない10年後のカツオなので、しっかりと話しながらつくっていけたら」と意気込む。10年後の磯野カツオ、そして磯野家がどんな姿をみせてくれるのか楽しみに待ちたい。舞台「サザエさん」は9月3日(火)から17日(火)まで東京・明治座、28日(土)から10月13日(日)まで福岡・博多座にて上演。7月15日(月・祝)からの一般発売に先駆け、7月11日(木)までぴあ先行申込受付中。取材・文:中川實穗
2019年07月08日8月11日(日・祝)と12日(月・休)に東京・DDD青山クロスシアター初となる落語会『青山らくごVol.1~DDD寄席~』が開催される。劇場で開かれ、落語家・柳家花緑、俳優・風間杜夫らが出演する、“落語界と演劇界がクロスする2日間”な本企画。その両日に出演する風間に話を聞いた。【チケット情報はこちら】8月11日は「~花緑と風間落語×演劇の最強タッグ~」として柳家花緑、風間、柳家勧之助が、12日は「~風間杜夫と旬な若手たち~」として風間と笑福亭べ瓶、三遊亭とむ、三遊亭鳳月が出演するこの企画。そこに両日出演し、古典落語のネタを披露する風間は、“演劇界代表”とはいえ落語ファンにはおなじみの存在だ。俳優業のかたわら20年以上にわたり落語に取り組み、多いときは年間30ステージほども高座にあがる。実は1日目に共演する花緑はその活動のきっかけを作った人物。「僕が初めて高座にあがったとき、花緑師匠がすごく褒めてくださいまして。花緑師匠は小さん師匠のお孫さん、つまり人間国宝の孫でしょう?さすがサラブレッドですよ。人を見る目が違う。褒める人間を間違えない(笑)。師匠の眼力の鋭さに敬服しまして、『それじゃあやってやろうじゃないか』とね」とお茶目に笑う。2日目の出演者は、二ツ目(落語家の階級。最高位「真打」のひとつ下)を中心に勢いある若手がズラリ。そんな若手との共演を「楽しみ」と語りつつも「でも中には『なんで風間杜夫なんだ』と思っている人もいるかもしれないからね!そこは芸でねじ伏せないと」と意気込んでみせる。では風間にとって“良い芸”とはなにか。「これは芝居も同じですが、上手い下手、好き嫌いはあれど、結局人を惹きつけるのって“人柄”だと思います。よく『芸は人なり』と言いますよね。そこに人間性が出るものだからこそ、僕がつまんないヤツだと噺もつまんなくなっちゃう」。『芸は人なり』は柳家小さんの言葉でもあるが、俳優・風間と縁が深いつかこうへいの考えにも通ずる。「つかさんも、そうやって僕らを前に出してくれました。お客さんに判断してもらえ、と。お前の中にある愛嬌だとか正義感だとか卑屈さだとか人を嫉む気持ちとか、とにかく人としてのいろんなものを観てもらえ、そして『でもやっぱり風間はいいな』と言われるようになれ、と」。本企画を前に「花緑師匠と同じ板の上に出られることはしあわせですし、若手の皆さんの高座を拝見して刺激を受けるのも楽しみです。落語はいつも修行のつもりで出ていますが、僕が落語を楽しんでることは、お客さんに伝えたいですね」と語った風間。70歳を迎えてもなお進化し続ける風間と落語家たちの、DDD青山クロスシアターでしか観られないコラボをお楽しみに!取材・文:中川實穗
2019年07月05日鄭義信が演出を手掛け、稲葉友、大鶴佐助、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)が出演する舞台『エダニク』が6月22日に東京・浅草九劇で開幕、7月15日(月・祝)まで上演中だ。【チケット情報はこちら】食肉加工センターを舞台にした本作。開幕に際し演出の鄭は「この作品の中には“人が生きるために、肉を食べなくてはならない”という大きなテーマが隠されているのですが、そのことが笑いの中から少しずつ染みていく形で、最後に観客にどう伝わっていくのか、今からとてもドキドキしています」とコメント。横山拓也(iaku)が2009年に書き下ろし、以降、さまざまな演出家、出演者によって再演を重ねられている脚本について鄭は「とてもしっかり書き込まれている作品なので、その中で役者がどれだけ自由にのびのびと遊べるかというのが、今回の演出の大きなテーマでもあります」と語る。その言葉通り、今作は、脚本を読んだだけでは想像できない、あらゆる意味で“稲葉、大鶴、中山、そして鄭だからこそ”と思わされる仕上がりに。そういう意味でも、もちろん芝居の面でも、演劇のおもしろさを堪能できる作品となっている。3人芝居となっており、稲葉は「男3人の丁々発止なやり取りと鄭義信さんならではの演出がギッシリと詰まった劇を楽しんでいただけたら嬉しいです。多面的なテーマを持った演劇ですので何がどこでどうお客様に響くのかこちらも楽しみにしております」。大鶴は「3人の登場人物が持つそれぞれの思いや願いが交差し合い濃密な空間が舞台上を支配すると思うので、そこにお客さんも巻き込み、汗だくになって帰ってもらいたいです。ジェットコースターのような展開の中、3人それぞれの真実を見逃さないで欲しいです」。中山は「屠場(とじょう)という牛や豚を解体する場所での劇です。そこによくわからない兄ちゃんが入ってきて、帰ってほしいのに全然帰ってくれないというなかで色々な事件が起こる仕掛けとなっていて、元々の会話劇の面白さにアングラの鄭さんの演出が加わりパワフルなコメディとなっていますので大変観やすくて誰にもオススメです」とそれぞれコメント。笑いもあって観やすいのに、それだけでは終わらせない3人にぜひ注目してほしい。また、この劇場サイズだから届く熱気や空気、見える表情の変化、香る食べ物の匂いも、本作をより濃密なものにしている。劇場でぜひ体験してほしい。公演は7月15日(月・祝)まで東京・浅草九劇にて上演中。取材・文:中川實穗
2019年06月28日A New Musical『FACTORY GIRLS~私が描く物語~』が9月から10月にかけて東京・大阪で“世界初演”される。本作は、ブロードウェイで新進気鋭のソングライティング・コンビとして注目を集めるクレイトン・アイロンズ&ショーン・マホニーが音楽・詞を、板垣恭一が日本版脚本・演出を手掛ける新作ロックミュージカル。主演の柚希礼音、共演のソニンに話を聞いた。【チケット情報はこちら】19世紀半ばのアメリカ・ローウェルを舞台に、紡績工場で働くファクトリー・ガールズたちが自分たちの労働のために闘う“ウーマンパワーミュージカル”となる本作。柚希は「音楽がすごく素敵。工場でファクトリー・ガールズたちが歌う曲なんてワクワクしました。すごいミュージカルになるんじゃないかと思います」、ソニンも「女性がメインの作品は日本では少ない。ひとつの革命だと思っています」と期待を胸に作品に臨む。ふたりが演じるのは、文章を武器に女性の権利を求めて労働争議を率いた実在の女性サラ・バグリー(柚希)と、編集者としてサラと深い友情で結ばれながらも生き方がすれ違っていくハリエット・ファーリー(ソニン)。自身の役柄を、柚希は「知性と文章の力で力強く戦う役です。私とはタイプが違うので(笑)、しっかり作り込まないと納得する役作りにならない。実在する人物を演じることが好きなので、これから研究していこうと思います」、ソニンは「サラとは逆の、保守的というかある意味現実主義で、はみ出すより守るほうがいいんじゃないかと考えている人です。ふたりの対比はおもしろいポイントだと思うので、サラとは逆の強さをつくり上げていきたいですね」。ふたりは初共演だが交流があり「柚希さんは最高にチャーミング。こんなにフレンドリーに接していただけるんだ!と感激しました」(ソニン)、「ソニンちゃんをリスペクトしているので、一緒につくることが楽しみです!」(柚希)と笑顔を交わす。世界初演で「お手本や“こうであるべき”がないので、生み出すまでに時間もかかるでしょうし、自分の中が空っぽだとなにも生まれないのだろうと思っています。だけどやっぱりイメージが何もないところからつくっていくのはすごく楽しいと思う」と柚希も語る本作は、9月25日(水)から10月9日(水)まで東京・TBS赤坂ACTシアター、10月25日(金)から27日(日)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて上演。取材・文中川實穗撮影川野結李歌柚希礼音ワンピース\36,000/ミドラ(株式会社アルディム)パンツ\48,000、腰に巻いたタッセル 各\9,800/アオイ ワナカ(アオイ ワナカ)ソニンブラウス\7900、スカート\13800/セピカ、イヤリング\2100/スリーフォータイム/ジオン商事、リング\32000/SERGE THORAVAL(H.P.FRANCE本社)
2019年06月24日稲葉友、大鶴佐助、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)による3人芝居『エダニク』が6月22日(土)に東京・浅草九劇で開幕する。その稽古場に潜入した。【チケット情報はこちら】『エダニク』は横山拓也(iaku)が2009年に書き下ろし、さまざまな演出家、出演者によって再演を重ねられている作品。今作では、鄭義信が演出を手掛ける。とある食肉加工センターを舞台に、そこで働く若者・沢村(稲葉)と同僚のベテラン・玄田(中山)、そして取引先の新入社員・伊舞(大鶴)が休憩室で一緒になり、屠畜という作業への言及や、企業間の駆け引き、立場の保守など、各々のアイデンティティに関わる問題をぶつけ合い議論を白熱させる――。と、あらすじを書くとやや硬質なイメージになってしまうが、稽古場ではとにかく笑わされた。稲葉が演じる沢村は、ラジオから流れる音楽に合わせて激しくカップ焼きそばを作るシーンからおもしろく、けれど戯曲を読んでみると、そんなスタイルで作ることは書かれていなかった。つまりこれが鄭バージョンということだろう。中山演じる玄田のキャラも新鮮。マイペースさと図太さとミステリアスさがごっちゃになったような男を、中山にとって初めてという関西弁で演じている。大鶴が演じる伊舞は、そんなふたりとは一線を画すキャラクター。軽く、ゆるく、おっとりしていて、けれどやや癇に障る話し方が強烈だ。彼が会話に参加すると、ことごとく稲葉と中山の会話のテンポが崩れていくのがおかしい。それぞれの芝居は濃厚で、どこか楽しそう。例えば伊舞が「30歳までニートで、つい最近就職した」と聞いて思いっきり先輩風を吹かせるも、伊舞の秘密を知った沢村は、気が動転して能のような口調で謝り始める。その姿はおもしろいのだが、“急に態度を変える調子がいい若者”というより“家族のために仕事をクビになりたくない父親”に見えるのがさすがだった。また、秘密を知っても特に態度が変わらない玄田にも「こういうふうに生きてきた人なんだろうな」と思わせる説得力があるし、それぞれの反応に対する伊舞の案外わかりやすい表情も見どころ。そういったひとつひとつの積み重ねで、この芝居がどんどん深みを増していくのを感じた。ドタバタでありながらも、そこが屠場、つまり豚などの家畜を殺し、解体し、食肉として整えていく場であることで、話題は「命」「生き物」「食べ物」「仕事」も絡む議論に発展していく。生々しい題材だが、この3人だからこそ何を語るのか聞きたい、と思わされる稽古場だった。『エダニク』は6月22日(土)から7月15日(月・祝)まで東京・浅草九劇にて上演。チケットは発売中。取材・文:中川實穗
2019年06月20日村上春樹の小説を原作にした舞台『神の子どもたちはみな踊る after the quake』が7月から8月にかけて上演される。ヒロイン・小夜子を演じる松井玲奈に話を聞いた。【チケット情報はこちら】本作は、阪神・淡路大震災(1995年)後、「地震のニュースを見た人たちの心の中で何が起こったのか」をテーマに書かれた短編小説集『神の子どもたちはみな踊る』(英語タイトル「after the quake」)から「かえるくん、東京を救う」「蜂蜜パイ」を取り上げた舞台作品。蜷川幸雄演出×村上春樹原作の舞台『海辺のカフカ』と同じフランク・ギャラティによる脚本で、2005年にアメリカで初演され、日本では初めての上演となる。演出を手掛けるのは倉持裕。「舞台は定期的に、できれば毎年やりたいと思っています。去年は映像が続いて出られなかったぶん、今回は待ちに待ったという感じです」と約1年7か月ぶりの舞台出演を喜ぶ松井。そのタイミングで挑む本作は「挑戦したことのないものがたくさん詰まっている作品。自分がまだ行ったことのない場所に行くような気持ちでいます」と意気込んだ。原作小説を「答えをハッキリとは言わない文章だったり結末だったりするので、読む人によって着目するところが違う。だから人の感想を聞くのが楽しい」と言う松井自身の感想は「簡単な言葉で言うと“めでたし、めでたし”です。小夜子役が決まって読んだというのもありますが、小夜子と(古川雄輝演じる)淳平の長い恋愛のお話なのかなって」と語る。ふたつの短編をミックスした脚本については「最初に読んだときはちょっと難しいと思ったのですが、それはつまり舞台を観る方にもそうだと思うので。そういう方々にも“楽しかった”“観てよかった”と思ってもらえるようにつくっていけたら」夫と離婚し娘と暮らしている女性、という初めて挑む役柄。「小夜子は思っていることをはっきりと口にせず、そこにある空気感を読み取ってほしいタイプなのかなと思います。それに“母親”というよりは“女性”なんだなということもすごく感じました。だけど娘がいるから1歩を踏み出せない。魅力的な人です」と印象を語る。大学時代からの友人である淳平との関係の変化は「なぜ今なのかというところにある心理はまだ見つけられていないのですが、そこは村上さんが読む人に委ねている部分なのではないかとも思うんです。この作品での答えは、稽古の中で見つけていけたらと思っています」公演は7月31日(水)から8月16日(金)まで東京・よみうり大手町ホールにて上演。取材・文中川實穗撮影川野結李歌スタイリスト佐藤英恵[DRAGON FRUIT]ヘアメイク白石久美子
2019年06月18日鈴木勝秀が脚本・演出を手掛け、佐藤流司と仲万美がロミオとジュリエットを演じるRock Opera『R&J』が6月14日(金)に開幕する。それに先駆け前日に囲み取材と公開ゲネプロが行われ、取材には佐藤、仲、ロレンス神父役の陣内孝則、そして鈴木が出席した。【チケット情報はこちら】本作は、ウィリアム・シェイクスピアの恋愛悲劇『ロミオとジュリエット』をモチーフに、鈴木による大胆なアレンジと、大嶋吾郎による音楽で生み出されたロックオペラ。囲み取材で佐藤は本作について「『ロミオとジュリエット』で今までに観たことがないくらい破壊的な舞台になっています。『ロミジュリ』だけど『ロミジュリ』じゃない」と表現。音楽については「心臓に悪い楽曲と言いますか(笑)、Rock Operaというタイトルにふさわしい楽曲が揃っていて、普段ミュージカルや舞台を観る方は聴いたこともないような曲もあるんじゃないかと思います。僕自身も舞台ではしたことのない歌い方をしているので、ぜひ聴いていただきたいです」と熱く語った。マドンナのツアーなどにも参加するなど世界的に活躍するダンサーで、しかし舞台で芝居するのはこれが初となる仲は「感じたことないことばかりです。舞台上で踊ることはたくさんありましたが、喋るとか歌うというのは初めて。本番前は不安になるかなと思ったけど、快感と興奮しかないです!」と笑顔。そんな仲について佐藤は「初舞台とは思えないクオリティ。高めてくれる存在です」と話し、劇中で披露されるダンスについては「別次元」と明かした。鈴木はそんなふたりの印象を「佐藤流司のような強いハートを持っている若者と出会えて僕は本当に嬉しかった。それだけで感動してしまう。万美ちゃんはその強いハートに激しく共鳴することができる人。そのふたりがロミオとジュリエットとして最後に立っている姿を見ると、劇場全体が震えるような気がします。そういったものはなかなか観られないと思います」と絶賛。さらに陣内はロレンス神父役について「原作では作品の良心のような役だと思うのですが、今回はエキセントリックです。この役で自分の新たな一面が、スズカツ(鈴木)さんの演出によって引き出されたような気がします」と明かした。近未来を舞台に、「一目惚れって信じる?」という言葉で動き出す物語。鳴り響く音の中、がなり、叫びながら、直感だけを頼りに突き進むロミオとジュリエットが行き着くのはどこなのか。ぜひ劇場で確認してほしい。公演は6月23日(日)まで東京・日本青年館ホールにて上演後、7月4日(木)から7日(日)に大阪・森ノ宮ピロティホールで上演される。取材・文:中川實穗
2019年06月14日