『美女と野獣』の野獣、『オペラ座の怪人』のラウルなど、劇団四季で主要な役を多く務めてきた中井智彦。2015年に退団後は、歌謡曲や映画音楽のスタンダードナンバーを集めたカバーアルバム『私の歌を聴いてくれ』や、中原中也の詩に自ら曲をつけたCD付きBOOK『詩人・中原中也の世界~在りし日の歌~』を発表するなど、独自の音楽活動も開始した。そんな中井が、ミュージカルの曲ばかりで綴るコンサート『I Live Musical!』を開催する。「Love」ではなく、あえて「Live」とした理由など、本作に込めた想いを聞いた。中井智彦のコンサート チケット情報気になる曲目は、『Beauty And The Beast/愛せぬならば』(美女と野獣)、『All I Ask of You』(オペラ座の怪人)、『Maria』(ウェストサイド物語)など、まさに王道の曲も予定。ラインナップは、役の性別を問わずに選んだと中井は言う。「“なんでこっちを見てくれないの”と焦れたり、たとえば『レ・ミゼラブル』の『夢やぶれて』のように悲しみに暮れたりする気持ちは、男女を超えた共通のもの。自分だったらどう演じ、どう表現するかということに挑戦してみたかった」と話す。また、タイトルに「Live」という単語を用いた理由については、「子どもの頃から歌が好きで、バンドをやったり、東京芸術大学で学んだりしたのですが、心を一番動かされたのが、大学1年生の時に出合ったミュージカルの曲でした。今年は東宝の『レ・ミゼラブル』で初舞台を踏んでから10年。僕はミュージカルに生かされてきたし、一緒に生きてきたとも感じているので、改めてミュージカルの曲に立ち向かいたいという気持ちを込めました」と語った。現在33歳。中井は「実は恥ずかしがりで“中井智彦”として愛を表現するのは苦手なタイプ。でも劇中で、役としてだったら存分に感情をぶつけられるんです」と打ち明ける。「好きなのも、カンツォーネよりドイツリート。ひとりの男が愛して、破れて、結局死んじゃう、みたいな」と笑うが、そんな中井だからこそ、役に没入したときのエネルギーは目を見張るものがあるのだろう。「昭和の歌謡曲も大好きで、ミュージカルと共通するのは、歌詞はシンプルなのに物語にリアリティがあるということ。尾崎紀世彦さんや山口百恵さんの曲なんて、いま聴いても震えますよね」と熱っぽく話す。歌という“物語”を紡ぐ覚悟は決まっている。「これからも、時代を超えた名曲を歌っていけたら」と、最後は笑顔で締めくくってくれた。公演は4月8日(土)東京・ヤマハエレクトーンシティ渋谷にて。チケットの一般発売は2月25日(土)午前10時より。取材・文佐藤さくら
2017年02月24日1989年のデビュー以降、『レ・ミゼラブル』など数々のミュージカルでメインキャストを務めてきた岡幸二郎が、コンサート『ベスト・オブ・ミュージカルⅢ』を上演する。これは3年前、デビュー25周年を迎えて製作された同名アルバムとコンサートが好評を博したことから、その後も続けられているステージの第3弾。ミュージカルの名曲をフルオーケストラ(日本フィルハーモニー交響楽団)で聴けるという、贅沢な内容も話題だ。岡幸二郎スペシャル・プレミアム・コンサート チケット情報第1部は1927年初演のブロードウェイミュージカル『ショウ・ボート』のコンサート・バージョン。岡は一昨年、〈富山市オーバード・ホール 名作ミュージカル上演シリーズ〉として製作されたこの作品に出演した。「現在の“ミュージカル”の源とも言われているだけに、楽曲の素晴らしさに改めて感銘を受けました」と言うが、「舞台セットの関係で、簡単に上演できない作品というのが分かって。それならばと、今回のコンサート形式での上演を思いついたんです」と本作への想いを明かす。「『ショウ・ボート』が初演された1920年代は、まだ楽曲にクラシック音楽の色が色濃く残っていた頃。実は本作の“コンサート形式の楽譜”というのも存在していたので、それをそのままオーケストラでやってみようということになりました」と岡は話す。これが日本初という貴重な試みとなるが、「一昨年のマリア役・土居裕子さんも出てくださいますし、バスバリトンの三戸大久くんには、あの名曲『オール・マン・リヴァー』を歌ってもらう予定です。このコンサートを観た方に“いつかミュージカルのほうも観てみたい”と思っていただければ本望ですね」と笑顔で語ってくれた。そして第2部では『レ・ミゼラブル』の楽曲を中心に、ミュージカルの名曲を歌い上げる構成。「“レミ”は日本初演30周年ということもあり、せっかくだから(岡が演じた)ジャベールの歌以外にも、バルジャンはもちろん、ファンテーヌ、エポニーヌの曲も歌ってしまおうと思っています(笑)」と茶目っ気たっぷりに岡は話す。そんな挑戦が成立してしまうのも、名曲がもつ“強さ”と岡の表現力、その両方がそろってこそだろう。ここでは若手注目株の中井智彦と渡辺大輔をゲストに迎えて贈る。「ダンスも歌もやる“ミュージカル俳優”という仕事は、日本だとおそらく僕たちの世代が初めて。それが今は、どちらも出来てイケメンでという若手がたくさんいますよね。それは本当に嬉しいことだけれど、そんな彼らにこそ、古くても良いミュージカルをもっともっと知ってほしい」と言う岡。ミュージカル界を牽引し続けてきた岡の、温かい魅力の一端が垣間見られたインタビューとなった。公演は3月28日(火)東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアルにて。取材・文佐藤さくら
2017年02月23日スターバックス コーヒー(Starbucks Coffee)から、春に向けた日本限定ドリンク「さくら ブロッサム クリーム ラテ」と「さくら ブロッサム クリーム フラペチーノ with クリスピースワール」が登場。2017年2月15日(水)から3月14日(火)まで発売される。さくらをイメージした今回の2ドリンクは、花や葉、練乳、白餡といった和の素材を閉じ込めたさくらミルクソースや鮮やかなピンク色のあられ、そしてメープルホイップクリームなどを掛け合わせたもの。和と洋の素材が織り成すハーモニーが魅力だ。「さくら ブロッサム クリーム ラテ」は、ほんのりとした甘さが楽しめるメープルホイップクリームとさくらの優しい味わいが溶けて混ざり合い、さくらの風味を最大限に引き立たせたノンコーヒービバレッジ。 一方「さくら ブロッサム クリーム フラペチーノ with クリスピースワール」は、さくらの華やかな香りと共に、中にも混ぜ込んだクリスピーなあられの食感と、メープルの優しい甘さが混ざり合い、春の気分を高めてくれる一品。淡いさくらの花びらが描かれた、期間限定のさくらカップに注がれたドリンクで、ひと足早く春気分を楽しんでみてはいかがだろう。さらに店頭及びオンラインストアでは、春色満載のさくらや花々をデザインしたタンブラーやマグカップ、スターバックス カードなども販売される。2月15日(水)から始まる第1弾では、桜だけでなく春の花々が共存するデザインに。続いて3月1日(水)から始まる第2弾では、淡い桜の色味と光の温かさを感じるデザインに仕上げている。【アイテム詳細】スターバックス “SAKURA”シリーズ発売期間:2017年2月15日(水)〜3月14日(火)取扱店舗:全国のスターバックス店舗 (一部店舗を除く) ※なくなり次第終了■さくら ブロッサム クリーム ラテ(ホットのみ)価格:Short 430円+税、Tall 470円+税、Grande 510円+税、Venti 550円+税■さくら ブロッサム クリーム フラペチーノ with クリスピースワール価格:Tall 570円+税、Grande 610円+税、Venti 650円+税※Shortサイズは要望に応じて提供。
2017年02月04日市井の人々の心情を丁寧にすくいとる会話劇から出発し、近年では大型プロデュース公演の脚本や、シェイクスピア作品の演出でも高い評価を得ている劇作家・演出家の青木豪。そんな彼が、7年ぶりに自らの書き下ろし作を演出するのが、東京の下町を舞台に展開する『エジソン最後の発明』だ。主役の瀬奈じゅんは元宝塚トップスターにして、現在はミュージカルをメインに活躍中。一見意外な組み合わせにも思えるが、宝塚時代から繊細な表現力に定評があった瀬奈だけに、青木との化学反応には注目だ。2人に本作への想いを聞いた。【チケット情報はこちら】下町にある工場の社長(小野武彦)は、近所から“エジソンさん”と呼ばれるほどの発明好き。ところが2年前に妻を亡くしてから、仕事はどこか上の空だ。人気パーソナリティとしてラジオ局で働く娘(瀬奈)や、娘の恋人(東山義久)は心配するが、ある日、その新たな発明が判明する。それはなんと、発明王エジソンが最後に取り組んでいたという“死者と話す通信機器”!下町の“エジソンさん”の珍発明は、口やかましい近所の人々をも巻き込んで……!?おかしくて少し切なく、最後に心がじんわりと温かくなるのが青木作品の魅力。本領発揮になりそうな本作の着想について、「僕は当て書きしか出来ないので、瀬奈さんと東山さんと3人で食事会をした時の印象をもとに書きました」と言う青木。一方の瀬奈は、「青木さんは心の底を見透かすような瞳をお持ちなので、最初は緊張しました」と笑いながらも、次第に「格好つけてもバレるだろうから、素のままでいいや」と覚悟を決めたとか。結果、青木が「これまで瀬奈さんが出演されたいくつかのストレートプレイより、さらに“普通の”というか、市井の人々の物語がいいな」(青木)と感じたことから役どころが決定。実際にラジオ好きという瀬奈は、「本当の私も庶民派。等身大の役に挑戦できるのが嬉しいです」と笑顔で語ってくれた。さて、東京公演の会場となるシアタートラムは、客席数約220の小劇場。舞台構造の良さと客席との距離感の近さで、これまで数多の名優がその舞台に立ってきた。瀬奈にとっては久々の小劇場となるだけに「役者の内面がそのまま出てしまいそうで怖い」と話すが、「大きい役(大きな劇場での華やかな役どころ)が出来る人は、小さい役(小劇場での市井の人の役)も出来るから大丈夫」と青木が声をかけると、思わずホッとした表情に。その後も瀬奈と青木との間で芝居に関する様々なやりとりが行われるなど、早くも本番への熱意が垣間見られた2人。「ミュージカルとかストレートプレイとか関係なく、今はすごく“お芝居”がしたいんです」という瀬奈の言葉に、本番への期待がいっそう高まる取材となった。公演は4月2日(日)より23日(日)まで東京・シアタートラムにて。その後、愛知、大阪でも上演。チケットの一般発売は2月11日(土・祝)午前10時より。取材・文佐藤さくら
2017年02月02日約2万年前に残された洞窟壁画の中でも、鮮やかな彩色と生き生きとした構図で600頭とも言われる動物が描かれ、「洞窟壁画の最高傑作」と称されるのがラスコーの洞窟壁画だ。いま東京・国立科学博物館で開催中の特別展「世界遺産 ラスコー展~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」は、昨年ブームとなったTBS系火曜ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で、主人公の伯母“百合ちゃん”が大人デートを楽しんだスポット。それもそのはず、本展はフランス政府公認のもと制作された展覧会「LASCAUX INTERNATIONAL EXHIBITION」に、日本独自のコンテンツを加えた特別展なのだ。通常は午後5時までの開館も金曜のみ午後8時までとあって、子どもから大人まで楽しめる貴重な展覧会となっている。特別展「世界遺産ラスコー展~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」チケット情報東京で2月19日(日)まで開催の後、宮城・東北歴史博物館(3月25日(土)~5月28日(日))、福岡・九州国立博物館(7月11日(火)~9月3日(日))にも巡回する本展。その魅力を、ここで改めておさらいしておこう。見どころは大きくわけて3つ。ひとつめは、最新テクノロジーにより1ミリ以下の精度で再現された洞窟壁画(一部)だ。2メートル大の「黒い牝牛」や、なぜ描かれたのか謎と言われている鳥の頭を持つ人間とバイソンが描かれた「井戸の場面」など、洞窟の中で見る壁画はさすがの迫力。ふたつめは、クロマニョン人が残した彫刻や道具の実物資料だ。ラスコー洞窟「ラスコーのランプ」は、同博物館の人類史研究グループ長で本展の監修者・海部陽介氏が「まさか借りられるとは思わなかった」と語った国宝級の一品。「体をなめるバイソン」などの彫刻は毛並みまで繊細に彫られており、その豊かな表現力に驚かされる。そして3つめは、研究をもとに制作されたクロマニョン人の等身像と、その生活の紹介。かれらが身に付けているのは革で作った服に貝殻のアクセサリーなど、予想以上に洗練されたものばかり。実用器具である投槍器などにも美しい彫刻が施されているのを見ると、かれらが創作活動を楽しんでいたことが容易にうかがえる。1月5日に、海部氏と本展学術協力者の五十嵐ジャンヌ氏(東京藝芸術大学講師)が日比野克彦氏(東京藝芸術大学教授)を迎えて行ったトークイベントでは、「洞窟が実物大で再現されているので、壁画の作者と同じ距離感で作品に向かうことが出来た。クロマニョン人はあの暗闇で動物のイメージが頭に浮かんだからこそ、壁画を描き始められたのではないか」と、日比野氏がアーティスト側からの目線で発言。「本来、作家の視点や想いが反映されるのが“絵”というもの。いわゆる技術とは別で、ラスコーの壁画はそれが今も伝わってくるという意味で“上手い”んです」との日比野氏の言葉には、海部氏と五十嵐氏も納得の様子だった。2万年の時を超えて、今も見る者に訴えかけるラスコー壁画の魅力。その理由の一端が、垣間見える座談会となった。取材・文佐藤さくら
2017年01月27日昨年、歌とダンスで展開するコンサート『REON JACK』を大好評のうちに終え、そのショーマンぶりが改めて評価された柚希礼音。日本では数少ないショー要素の強いステージをまた観たいという熱い声に応え、早くも『REON JACK2』の上演が決定! 今回は上野水香や大貫勇輔ら国内外で活躍するトップダンサーが集結し、柚希と競演を繰り広げる。『REON JACK2』チケット情報星組トップスター時代に催された武道館コンサート(2014年)、そして退団後、女優に転身してからの『REON JACK』(2016年)。3度目となる『REON JACK2』では「よりアーティスティックな舞台を目指したい」と柚希は話す。「宝塚を退団したことで自分の心情も変わってきていますし、だからこそ難しいことにも挑戦していければ」と柚希。中でも、モーリス・ベジャールら世界的な振付家のもとで踊ってきた上野水香とは「ずっと一緒に踊ってみたいと思っていた」という。「実は(宝塚入団前に)私がバレエのコンクールに出ていた頃、いつも1位が上野さんだったんです(笑)。ただ、そんなスゴい上野さんでもショーのダンスはほとんど初めてのようなので、お互いにとっての挑戦になればいいなと思っています」と意気込みは充分だ。その分、今回の振付と出演も兼ねる大村俊介(宝塚では柚希の代表作『オーシャンズ11』や『ロミオとジュリエット』も担当)らスタッフたちと、ダンスナンバーについても細かく打ち合わせを重ねていると明かしてくれた。一方、楽曲の面でも大きな変化が。「今までは宝塚や海外アーティストの曲を歌っていたんですが、在団中にリリースした『夜空に眠るまで』や、今度出す5曲入りCDの分も合わせて、ほとんど私の曲で構成出来るようになりました。新曲のうち2曲を森雪之丞さんに作詞していただいたり、『夜空に~』でご好評いただいた本間昭光さんに音楽プロデューサーをお願いしたりしているので、これまでとはまた違った柚希礼音を見てもらえるんじゃないかな」と、柚希は笑顔で話した。さて、ダンスと歌の実力に加えて、主役に圧倒的な華がなければ成り立たないといわれるのが“ショー”(ここではコンサートと表記)。柚希は女優になった今も、その希有な道を気負うことなく進んでいる。「歌とダンスのレッスン、それから構成や演出も打ち合わせするから時間はいつも足りないです。『あぁ、ここは(スタッフに)任せてしまいたい』と思うこともあるんですが、結局は『いやいや!やるぞ!』となるんですよね(笑)。ダンスと歌で表現するコンサートは、“今の私”を表現する大切な場所。これからもずっと続けていきたいです」公演は3月23日(木)から26日(日)まで梅田芸術劇場メインホール、30日(木)・31日(金)パシフィコ横浜国立大ホール、4月19日(水)・20日(木)福岡市民会館大ホールにて。取材・文佐藤さくら
2017年01月20日佐藤アツヒロ主演の舞台『さくら色 オカンの嫁入り』が1月20日(金)のプレビュー公演を皮切りに2月に大阪・東京にて開幕する。その稽古場に潜入した。舞台『さくら色 オカンの嫁入り』チケット情報原作は、第3回日本ラブストーリー大賞ニフティ/ココログ賞を受賞した咲乃月音の同名小説。2010年の初演から4度目の上演で、今回の公演中に公演回数100回を達成する人気作となった。物語の舞台は大阪の下町。ある晩、酔ったオカン(母親/熊谷真実)が若い男を“拾って”きて「オカンな、この人と、結婚しよ思うてんねん」と娘・月子(荘田由紀)に伝えることから始まる。“捨て男”として拾われた研二(佐藤アツヒロ)はその日からオカンと月子の暮らす家に住み、祖父(島田順司)に教わったという美味しい食事を作るようになるが、男性にトラウマを持つ月子は拒絶し、心を閉ざす。そんな毎日の中で、オカンと月子、愛犬・ハチ(溝口琢矢)、隣に住む大家・サク婆(正司花江)の日常が静かに変わり始める――。稽古がスタートしてまだ1週間ほどであったが、既に通し稽古が行われていた。稽古が始まる前にはキャスト陣が和やかにおしゃべりをしながらストレッチをしていて、まるでオカンと月子の家のちゃぶ台を囲んでいるかのよう。正司が荘田の食事を気にかけるなど役柄同様のやり取りが行われ、キャスト達が作品に馴染んでいるのが伝わってきた。また、稽古の合間には関西弁のチェックも。キャスト達は方言指導の先生に何度もイントネーションを確認し、役作りに取り組む。本作には、自分の親切がもとで起きた事件がトラウマで外出恐怖症になった月子の苦しみや、祖父が自分の友人に騙され責任を感じ続けている研二の葛藤、さらに認知症やガンという病気、たったひとりの家族の死など、現代を生きる私たちのすぐそばにある出来事が数多く描かれている。その出来事を「不幸」として描くのではなく、周りの人たちの温もりの中でゆっくりと前を向いて歩き出すまでの姿を丁寧にみせていた。登場人物たちはいつも誰かのことを想っていて、それがなかなか伝わらなくても諦めない。人に当たったりしながらも相手と向き合う姿は、人と人とのつながりや会話をすること、待つことや時間をかけることの大切さなどを思い出させる。それを押しつけがましくなく感じられたのは、キャスト達から生まれる温かな空気もひとつの理由のように感じた。1月20日(金)に埼玉・志木市民会館パルシティでプレビュー公演。その後、2月2日(木)に大阪・すばるホール、2月8日(水)から15日(水)まで東京・銀座 博品館劇場にて上演。取材・文:中川實穗
2017年01月20日大河ドラマ『真田丸』を好評のうちに終えた三谷幸喜が、ホームである舞台の世界に戻り、新境地となる最新作を書き下ろした。その作品『不信』でのキーマンは、三谷作・演出の舞台『酒と涙とジキルとハイド』でコメディエンヌとしての才を見いだされ、堂々たるヒロインぶりも話題となった、優香。「『酒と~』はドタバタのコメディだったので、次は心理劇で翻弄される優香さんが見てみたい」(三谷)との着想から生まれたという本作について、優香に聞いた。舞台『不信』チケット情報なにげなく口にした嘘がさらなる虚言を呼び、予想もつかない結末へと向かうサスペンスフルな悲喜劇。キャストは優香のほかに“三谷組”常連の段田安則と戸田恵子、また『真田丸』の真田昌幸の弟・信尹役で注目を集め、これが三谷の舞台初参加となる栗原英雄と、強力な顔ぶれだ。優香は「三谷さんから『自由にやって』と言われているんですが、こんなにスゴイ人たちの間でどうやって!?という感じです」と謙遜して笑うが、プロデューサーから本作を新境地ととらえる三谷の意向とプロットを聞くと、表情は一変。「これまでの三谷さんだったら、たくさん笑って温かい気持ちで終わる作品が多かったと思うんですけど、今回はどうなるのか予想もつかないですね。ストレートな“笑い”ではなくて、人間の愚かさや滑稽さを浮き彫りにするなかでの“笑い”になるのかな」と、さっそく作品の方向性を探っている様子だ。初舞台となった『酒と~』の稽古場では、「数え切れないほどダメ出しを受けました」。そんな毎日を過ごすうちに「昨日まで出来なかったことが、今日はちょっとでもクリアできたと思う瞬間がある。そのちっちゃい自信が積み重なって、大きな自信につながっていく。その実感がたまらなく楽しくて」、公演が終わる頃には「またすぐ舞台をやりたい」という気持ちになっていたという優香。だからこそ、2度目の舞台にはより怖さも感じている、とも。「映像ではひとりの顔がアップになっているときは、ほかの登場人物の表情は見えないですよね。でも舞台だと、セリフを言っている人以外の人物の顔の動きも見えるし、意味ももってくる。今回は特に小さな嘘の積み重ねが大切な作品なので、とても緊張します」と熱っぽく語ってくれた。長年バラエティー番組やCMで活躍し、幅広い支持を得ている優香だが、ここ数年は本格的に女優としての活動が目立つ。「これまでのイメージを崩してやろうとかいう気持ちは、全くないんですよ。ただ、その時どきで出会った方に自分では分からない引き出しを開けていただいて、観てくださった方に『こんな優香は見たことない』と言われることには、すごく快感を覚えてきています(笑)。私は恵まれているなぁと思いますし、本当に三谷さんとの出会いにも感謝しかないですね」公演は3月4日(土)から4月30日(日)まで、東京芸術劇場 シアターイーストにて。チケットの一般発売は1月14日(土)午前10時より。取材・文佐藤さくら
2017年01月13日さくら色の限定ボトルが登場ファンケル化粧品は1月20日、人気アイテム「洗顔パウダー」のボトルに、さくらの花をデザインした限定パッケージを発売する。もっちり泡が人気の秘密濃密な泡が簡単に作れる「洗顔パウダー」は、極上のうるつる肌になれると人気のアイテム。独自の洗浄成分「うるおいキープ洗浄成分α」が肌本来のうるおい成分を守りつつ、「つるんとクリア成分」が皮脂や不要な角層をしっかり除去。角栓や毛穴の黒ずみを防いでくれる。限定で販売される特別パッケージには、春をイメージしてさくらをデザイン。キャップもピンク色に変更され、大人可愛い限定ボトルになっている。売り上げの一部は熊本の復興支援にこの限定品「洗顔パウダー<桜>」は、平成28年熊本地震の被災地域への支援を行う『FORKUMAMOTOPROJECT』に賛同しており、売り上げの一部を熊本地震の復興支援として寄付されるという。通信販売および直営店舗でのみの販売で、税込み1,296円。熊本の美しい春を願いながら、もっちり泡の洗顔パウダーを試してみよう。(画像はプレスリリースより)【参考】※株式会社ファンケル化粧品プレスリリース
2017年01月11日佐藤流司、佐藤永典、赤澤燈ら“2.5次元”系舞台で活躍する若手俳優たちが、“孤独”を抱える若者たちをリアルに演じる映画『Please Please Please』。この度、本作から予告編が到着した。ある地方都市。兄弟のシンジ(佐藤流司)とナオ(佐藤永典)は変わらぬ日常をやり過ごしていた。兄のシンジはデート詐欺で若い女を騙し、弟のナオは3人の仲間たちと架空請求詐欺をしていた。以前、2人は共に居たが、ある事が原因で仲違いし、今は別々に行動していた。シンジは若い女性に甘い言葉を囁き、廃墟で待ち受ける詐欺仲間・アオイ(赤澤燈)のもとへ誘う。シンジの言動に騙された女性は、アオイから貴金属を買わせられる。ナオはアジトである潰れた映画館で、詐欺の実行犯をさせるため、弱みを握った教師を取り囲んでいた。そんな中、仲間の一人である、ダイの裏切りが発覚する。誰にも打ち明けず、ミュージシャンを目指していたシンジは、音楽スタジオの男にデビューの話を持ちかけられる。そのためには、ある程度の金が必要だと。そんなとき、ナオは先輩から不思議な機械を売り捌けと命令される。金が必要となったシンジ、不思議な機械を売れと命じられたナオは、偶然にもある老婆の家で再会する。詐欺に陥れようとしていた兄弟に老婆は親切にし、大金を2人に渡す。そんなとき、以前シンジに騙されたアミが兄弟や彼らの仲間のことを調べまわっていた。大金を手にした兄弟はお互いの夢を叶えるべく動き出す。そして、老婆の優しさに触れ、兄弟に僅かな良心が芽生えていた。が、それは全ての終わりへの始まりであった…。遊びのように詐欺を働く若者たち、騙される女たちや大人たちが複雑に絡み合いながら、次第に皆が、少女の妄想の世界へと迷いこむ。「どうして彼らはあんな事をするのか?どうして私は彼が好きなのか」。『反抗』『私の悲しみ』『縁(えにし)The Bride of Izumo』の堀内博志が監督・脚本を務めた本作。堀内監督が温めていたという青春映画の本企画には、ミュージカル「刀剣乱舞」やライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」など人気作品に多数出演する佐藤流司や、2017年1月期ドラマ&舞台の「男水!」に出演する実力派俳優の佐藤永典と赤澤燈ら3人がメインキャストに配役。そのほか野川大地、栗原卓也、黒羽麻璃央、小笠原健、上田悠介ら若手俳優陣が共演する。今後の活躍に大きな期待が持たれる彼らが、時にリアルに、時にファンタジックに物語を演じる本作の予告編が公開された。映画『Please Please Please』は2017年1月14日(土)よりシネマート新宿、イオンシネマ板橋ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年12月19日大河ドラマ『真田丸』も好評の三谷幸喜が、長年タッグを組んできたパルコ劇場との新作書き下ろしに意欲を見せている(パルコ劇場は建て直し中のため、上演は東京芸術劇場にて)。とことん笑えるコメディはもちろん、華やかな世界の裏にひそむ“笑い”や、日常の“笑い”を散りばめつつ時代性をあぶり出すなど、硬軟自在の世界観を提示し続けてきた三谷。新作『不信-彼女が嘘をつく理由』は、2組の男女がうっかり嘘を口にしたことから、意外な結末を迎える悲喜劇になるという。「“自分がやるべきこと”を考えるようになった」という三谷に、話を聞いた。舞台『不信-彼女が嘘をつく理由』チケット情報キャストは4人のみ。三谷の舞台『国民の映画』などで見せる重層的な人間像が高い評価を得ている段田安則と、舞台・ドラマ・映画といずれも三谷作品の常連で、三谷から絶大な信頼を寄せられている戸田恵子。このふたりに対する新鮮な顔合わせが、同じく三谷作『酒と涙とジキルとハイド』でヒロインを演じ、舞台女優としての才能を開花させた優香と、『真田丸』の真田昌幸の弟・信尹役で、その清廉な存在感が注目を集めている栗原英雄だ。まず気になるのは『不信』という、不穏な響きをもつタイトルのこと。「長い時間(『真田丸』で)戦国時代を描いてきて、そこから戻ってきた時に、今までの延長線上のものを書いてもしょうがないと思えたんですね。この機会に新しいジャンルを切り拓いてみたくなったんです」と三谷は言う。その挑戦となる本作にあたっては、段田と戸田の存在が大きな支えになっている、とも。「僕が何か新しいことを始める時は、たいてい戸田さんがいるんですけどね」と冗談めかすひと幕にも、本作への意気込みが垣間見えた。一方、“三谷組”初参加の栗原については、「信尹役をクレバーかつクールに演じてくださって嬉しかったです。今の栗原さんはまだ、観ている方にはミステリアスな存在だと思うので、そこを生かしたいなと」。また『酒と涙と~』でコメディエンヌとしての才を見いだした優香については、「自分の中のコメディエンヌの条件として、『頭から水をかぶっても悲惨な感じがしないこと』というのがあるんです。優香さんはまさにそれで、どれだけボロボロな状況になっても悲惨さを感じさせない人。出会えたことに感謝しているし、出会ったからには責任をもって(舞台上で)ヒドいことをします」と三谷は笑った。取材中、「大河ドラマの執筆を経て自分なりに学んだ後で、自分の進むべき道というか、やるべきことが見えてきたと思う。本作がその最初の作品になる気がします」という言葉も三谷から聞かれた。"三谷幸喜の新境地"、これほどワクワクすることはないだろう。公演は2017年3月7日(火)より4月30日(日)まで、東京芸術劇場シアターイーストにて。なお、チケットぴあでは有料会員向けインターネット抽選先行「いち早プレリザーブ」を12月15日(木)11時まで、無料会員向けインターネット抽選先行「プレリザーブ」を12月21日(水)11時まで実施。取材・文:佐藤さくら
2016年12月14日2.5次元系舞台で女性ファンを中心に絶大な人気を誇る佐藤流司、佐藤永典、赤澤燈ら若手俳優たちが主演の映画『Please Please Please』が、2017年1月14日(土)よりシネマート新宿、イオンシネマ板橋ほかにて公開されることが決定した。地方都市でデート詐欺や架空請求詐欺などをして、日々を空虚に過ごす兄弟を中心に、彼らの仲間たちや騙された女性たち、また彼らから搾取し、翻弄される大人たちを、リアルに、時にファンタジックに描いた本作。監督・脚本を務めるのは、『私の悲しみ』でTAMANEW WAVEグランプリ&女優賞の2冠の偉業を達成し、佐々木希主演『縁(えにし)The Bride of Izumo』がハワイ国際映画祭、上海国際映画祭に正式招待された堀内博志。堀内監督が温めていた青春映画の企画に、旬のイケメン若手俳優が集結。デート詐欺で若い女を騙す兄・シンジ役に、ミュージカル「刀剣乱舞」シリーズの加州清光役や、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」うちはサスケ役など、人気作品に多数出演し、2.5次元舞台を代表する俳優のひとりとまで呼ばれる佐藤流司。仲間たちと架空請求詐欺を企む弟・ナオ役に、ミュージカル「テニスの王子様」でデビューすると数々の舞台・映画に登場し、2017年1月期ドラマ&舞台の「男水!」に出演する実力派俳優、佐藤永典。2人が数奇な運命に翻弄される兄弟を熱演。そして、シンジの詐欺仲間・アオイ役には、「Messiah メサイア」シリーズをはじめ「美男高校地球防衛部LOVE!活劇!」箱根有基役、歌劇「明治東亰恋伽」泉鏡花役、そして「男水!」にも出演する赤澤燈が配役。2.5次元を中心に女性ファンを魅力する若手俳優の彼らが、3人の等身大の若者をいかに演じるか、期待が高まる。映画『Please Please Please』は2017年1月14日(土)よりシネマート新宿、イオンシネマ板橋ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年12月13日漫画『カードキャプターさくら』のコラボカフェ「カードキャプターさくら クリスマスパーティー in HARAJUKU」が、東京・キュープラザ原宿のカフェ「AREA-Q」内にオープンする。期間は2016年12月2日(金)から25日(日)まで。『カードキャプターさくら』は1996年から2006年まで、月刊少女漫画誌「なかよし」にて連載され、2016年で連載開始20周年を迎えた人気作品だ。今回はそれを記念し、“さくらのクリスマスパーティー”をテーマにしたコラボカフェのオープンが実現。クリスマスツリーのフォトスポット、特別映像も上映クリスマス仕様の店内には、カラフルなツリーや大小様々なプレゼントが飾られたフォトスポットが登場。大画面モニターでは、声優からのコメントなど、特別映像の上映が行われている。さらに、立ち読み可能な原作漫画が置かれた本棚も。展示の中には、作品のキーアイテムでもある“クロウカード”が隠されているので探してみて。キャラクターやクロウカードをイメージした10種のオリジナルドリンク特別メニューは、入場チケットに含まれる、大人気キャラクター「ケロちゃん」をかたどったクッキー付きのクリスマスプレートのほか、登場キャラクターやクロウカードをイメージしたスペシャルドリンクなど。ドリンクは「さくらちゃんのピンクカルピスソーダ」「ケロちゃんのグレナデンジンジャー」のほか「クロウカード・鏡 ブルーラムネ」などユニークな名前がつけられている。さらに、さくらの友人・知世ちゃん家でのクリスマス会のご馳走をイメージした、2段のクリスマスプレートも販売。プレートにはローストビーフ、ポテトのアヒージョ、スモークサーモンのカルパッチョのほか、コーンスープ、ミニオムレツなどが盛り付けてある豪華な仕上がり。各回限定10食の提供なので、気になる人は急いで。なお、ドリンクとフードを購入することで、全8種のオリジナルコースターがランダムで貰える嬉しい特典も用意されている。ドリンク1杯で1枚、フード1品で3枚プレゼントされる。当カフェでしか買えないオリジナルグッズの販売や、ケロちゃんが店内に遊びに来てくれる企画も予定されているので、ぜひ足を運んでみては。【概要】「カードキャプターさくら クリスマスパーティー in HARAJUKU」期間:2016年12月2日(金)〜25日(日)形態:90分入替制 平日3回・土日祝4回/1日営業時間:・平日/1回目 12:30〜14:00、2回目 15:30〜17:00、3回目 19:30〜21:00・土日祝/1回目 10:30〜12:00、2回目 13:30〜15:00、3回目 16:30〜18:00、4回目 19:30〜21:00チケット料金:2,700円(フード、ランチョンマット、貼ってはがせるシール、しおり付き)チケット購入はカフェ公式HP(より©CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社■特別メニュー・大道寺家おもてなしプレート 2,000円(税込) ※各回限定10食・ドリンク 全10種 700円(税込)
2016年11月17日カードキャプターさくらのコラボカフェ『カードキャプターさくら クリスマスパーティー in HARAJUKU』が12月2日(金)~12月25日(日)までの期間限定で、キュープラザ原宿に登場します!ファン待望のコラボカフェ『カードキャプターさくら』は、1996年から2006年まで「なかよし」で連載されていた大人気マンガです。今年連載開始20 周年を迎え、新作の「クリアカード編」もスタート。20周年記念の締めくくりとして、コラボカフェが開催されることになりました。「さくらのクリスマスパーティー」をテーマに、クリスマスモード全開のすてきな空間になっています。店内の展示のなかには「クロウカード」も隠されているそうです。ぜひ見つけてみたいですね。また、人気キャラ「ケロちゃん」をかたどったクッキー付きのクリスマスプレートも販売されます。スペシャルドリンクを注文すると、ランダムでオリジナルコースターが1枚プレゼントされます。さらにオリジナルグッズの販売や、会場に設置された大画面モニターでの上映、そしてケロちゃんの来店などファンにはたまらない企画がもりだくさん!カードキャプターさくらの世界観をとことん楽しみつくしましょう!※オリジナルグッズは、カフェ終了後に通販で販売予定です。詳細はカフェ公式HPをチェックしてください。チケットの入手方法と特典についてチケットは 11月11日(金)午後0時より、カフェ公式サイトで販売が開始されています。チケットにはもれなくフード・ランチョンマット・オリジナルノベルティグッズなど、豪華来場特典がついていますよ。これは嬉しいですね!予約方法や今後の詳しい情報については、カフェの公式サイトと公式 Twitter(@ccsakura_CP)をチェックしてくださいね。▲来場特典「ランチョンマット」 ©C・ST/K▲来場特典「貼ってはがせるシール」©C・ST/K▲来場特典「しおり(2 種よりランダムで 1 枚)©C・ST/Kクリスマス気分がもりあがるカードキャプターさくらのコラボカフェで、素敵な時間をすごしましょう!■カフェ概要店名「カードキャプターさくら クリスマスパーティー in HARAJUKU」開催期間2016 年 12 月 2 日(金)~12 月 25 日(日)実施形態各回 90 分完全入替制、平日 3 回・土日祝 4 回/1 日営業時間:平日/12:30~14:00 15:30~17:00 19:30~21:00土日祝/10:30~12:0013:30~15:0016:30~18:0019:30~21:00※オープンは各回ともに、スタート開始の 30 分前チケット料金2,700 円(税込) ※フード、ランチョンマット、貼ってはがせるシール、しおり、の来場特典付き会場AREA-Q(東京都渋谷区神宮前 6-28-6 キュープラザ原宿7階)アクセス:東京メトロ千代田線・副都心線「明治神宮前」駅 7 番出口 徒歩 1 分、JR 山手線「原宿」駅 徒歩約 6 分カフェ公式 HP&チケットカフェ公式 Twitter@ccsakura_CPお問い合わせ先info@areaq.jp(AREA-Q 運営委員会)
2016年11月16日現在8巻まで刊行され、累計25万部を突破している鉄道トリビアコメディ『青春(あおはる)鉄道』(青春作、KADOKAWA/メディアファクトリー刊)。日本全国の鉄道路線を擬人化し、硬軟さまざまな鉄道ネタを盛り込みながら、彼ら(?)の日常を綴った大人気コミックだ。そのキャラクターを忠実に再現した舞台が初めて上演されたのは、2015年11月のこと。その待望の第2弾ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』2~信越地方よりアイをこめて~が、11月9日より東京・AiiA 2.5 Theater Tokyoで開幕した。ミュージカル『青春-AOHARU-鉄道』2 チケット情報山陽新幹線(滝川英治)をトップバッターに、京浜東北線(高橋優太)、西武池袋線(Kimeru)らが路線紹介をメドレーで歌い継ぐオープニングが終わると、舞台上には長野新幹線(板垣李光人)の姿が。北陸新幹線へと成長(延伸)中のため、まだ少年の風情だが、彼には最近、夜道で誰かの視線を感じるという悩みがあった。そんな長野新幹線を物陰から見つめる信越線(高崎翔太)をよそに、王道をゆく東海道新幹線(永山たかし)と東海道本線(鯨井康介)の兄弟や、謎の愛憎を交わす東北新幹線(石渡真修)と上越新幹線(田中涼星)ら、個性豊かな鉄道路線が入り乱れて……。物語は開通日におけるハプニングや、併走する2路線での紛らわしい駅の名前など、鉄道に詳しくなくとも充分楽しめるエピソードで展開。メジャー路線をひた走る東海道新幹線をキビキビと演じる永山、500系車両をこよなく愛する山陽新幹線役の滝川、西武グループへの愛を叫ぶ西武池袋線役のKimeruら、各路線のキャラクタライズもうなずいてしまうものばかり。乗客を運ぶ使命に燃えながらも、どこかほのぼのとした彼らの交流を見ているうちに、鉄道への親しみも湧いてくるから不思議だ。真面目だが不器用な東北新幹線役の石渡、制服の前をはだけてキザに振る舞う上越新幹線役の田中も印象に残った。初日前の囲み会見では永山と鯨井、高崎、田中、板垣が登壇。「今回は北に話が進んで、新幹線も多く登場します。長野新幹線が大人になる成長物語でもあって」と永山が解説すると、隣の鯨井も「本編から離れた、今までにないシーンも見どころ」と第2弾ならではの魅力をアピール。さらに田中が「在来線と新幹線との絡み、新幹線同士の絡みも見てほしい」と語ると、高崎も「前作を観た方も今回初めて観る方も裏切りません!」ときっぱり。ところが「長野新幹線の可愛らしく、でもブラックなところも見せたいです」と板垣が話し始めると、役柄同様、表情がゆるみっぱなしに。あげくに「一番優しいのは誰?」と板垣に尋ね、「鯨井さん」と返されるなど周囲の笑いを誘うひと幕も。舞台上のチームワークの良さも納得の会見となった。東京公演は終了。11月18日(金)から20日(日)まで兵庫・新神戸オリエンタル劇場で公演。取材・文:佐藤さくら
2016年11月14日「カードキャプターさくら」のコラボカフェ「カードキャプターさくら クリスマスパーティー in HARAJUKU」が、12月2日(金)より東京・キュープラザ原宿にある「AREA-Q」にて期間限定でオープンされることが分かった。1996年から2006年まで「なかよし」(講談社)にて連載されていたCLAMPの「カードキャプターさくら」。今年で連載開始20周年を迎え、TVアニメ再放送や新章連載&アニメ制作、また先日劇場版第1作目のリバイバル上映も決定し賑わいをみせているが、今回そんな20周年記念イヤーとなる本年の集大成として、コラボカフェを開催。今回のテーマは、この時期にぴったりの“さくらのクリスマスパーティー”。店内はクリスマスの装飾が施され、展示の中には作品のキーアイテムである「クロウカード」も隠されている。また、大人気キャラクター・ケロちゃんをかたどったクッキー付きのクリスマスプレートや登場キャラクターをイメージしたスペシャルドリンクの販売など、作品の世界観を味わうことができる内容となっている。さらに、カフェ限定のコンテンツとして、オリジナルグッズの販売や会場に設置された大画面モニターでの上映、そしてケロちゃんが店内に遊びに来てくれる企画も予定されているようだ。チケットは本日11月11日(金)より公式Webサイトにて販売中。「カードキャプターさくら クリスマスパーティー in HARAJUKU」は12月2日(金)~25日(日)の期間で開催。(cinemacafe.net)
2016年11月11日CLAMPによる人気コミックをアニメ化した「カードキャプターさくら 」。この度、1999年に公開された『劇場版カードキャプターさくら』が2017年1月21日(土)よりリバイバル上映されることが分かった。さくらはある日、家の近くの商店街の福引きで、なんと特賞の香港旅行を当てる。さくらにとっては初めての海外旅行で、もちろんケロちゃんも一緒に行けると大はしゃぎ。お父さんに代わって、兄の桃矢がさくらの保護者として同行し、さらに親友の知世、あこがれの雪兎も参加して、楽しい香港旅行に出発!そんなさくらたち一行を迎えたのは、華やかな香港の町並み。次々と目に入る初めての光景にはしゃぎまわるさくらであったが、しかしそのそばには必ず不思議な小鳥が…。そして夜、さくらは不思議な夢を見る。水がたたえられた空間に静かにたなびく白い布。その先には不思議な魔導士の姿が。この旅行は仕組まれたものなのか?古より続く魔都・香港を舞台に、カードキャプターさくら最大のピンチが訪れる――!1996年より「なかよし」(講談社)にて連載がスタートした漫画「カードキャプターさくら」。本作は、封印が解かれるとこの世に災いをもたらすという“クロウカード”の起こす事件を解決しながら、ケルベロス(ケロちゃん)や親友の大道寺知世らとカード集めに奮闘する小学4年生の少女・木之本桜の物語。1998年にはテレビアニメ化され、性別、世代、地域を越えた一大ムーブメントを巻き起こした大人気作品だ。今年で連載開始20周年を迎え、新たなプロジェクトが始動しており、「なかよし」では16年ぶりとなる新章「クリアカード編」がスタート、さらに新作アニメの制作も決定。加えて商品化にタイアップなど、これまで以上に大きな展開で、新たな盛り上がりを見せている。そんな中迎える2017年、観客動員数50万人以上を記録し、第4回アニメーション神戸作品賞劇場部門を受賞した『劇場版カードキャプターさくら』のリバイバル上映から幕を開けることが決定。劇場版は2作製作されており、今回リバイバル上映が決定したのは、そのうちの1作目。主人公の木之本桜役を演じるのは丹下桜、桜の親友の大道寺知世役に岩男潤子、ケルベロス役に久川綾、桜の兄・木之本桃矢役に関智一、月城雪兎役に緒方恵美、桜の父親・木之本藤隆役に田中秀幸、李小狼役にくまいもとこ、李苺鈴役にゆかな、クロウ・リード役に林一夫らアニメ版の人気声優の出演に加え、ゲスト声優として、魔導士役に林原めぐみ、小狼の母親の李夜蘭役に井上喜久子ら豪華声優が名を連ねる。東京・新宿ピカデリーや神奈川・109シネマズ川崎、大阪・なんばパークスシネマなど全国9都市で上映される。『劇場版カードキャプターさくら』は2017年1月21日(土)よりリバイバル上映。(cinemacafe.net)
2016年11月02日北尾トロのベストセラーをもとに2012年に上演され、好評を博してから4年。スタッフ・キャストを一新し、新しいストーリーで戻ってきたのが、この『裁判長!ここは懲役4年でどうすか 2016』だ。主演の中村優一に加え、石田晴香、佐藤すみれ(SKE48)などフレッシュな配役のほか、藤田玲や仁藤萌乃ら実力派も顔をそろえた本作。東京・ 全労済ホール/スペース・ゼロで開幕した舞台は、工夫を凝らしたセットに演者の熱演で、約2時間があっという間だ。舞台『裁判長!ここは懲役4年でどうすか 2016』チケット情報駆け出しのノンフィクションライター北尾友弘(中村)は、今日も霞ヶ関裁判所で傍聴に励んでいた。最初は覗き見気分でネタ探しにやってきたものの、裁判官や被告、検事、弁護士が織りなす法廷ドラマにすっかりハマってしまったのだ。傍聴席で顔見知りになった女子大生・勝村日向(石田)や“ダンディさん”こと段田誠(宮原将護)、“グレさん”こと木暮透ら、傍聴の先輩たちにツウな情報を教えてもらいながら、北尾は裁判の面白さを味わっていた。そんなある日、ふとしたことから日向が過去、裁判に関わっていたことを知り……。三方を客席で囲まれた法廷のセットをメインに、物語は主人公である北尾の視点で展開。難しい法廷用語も、多彩な裁判のケースとダンディさんらの解説で自然と理解できる仕掛けだ。中村は、ウラオモテのない性格だが少々頼りない駆け出しのライターを素直に演じて好演。覗き見気分で始めた傍聴が、次第に自分自身を振り返るきっかけになる過程を無理なく見せる。またトラウマをもつ日向役の石田は、可憐なたたずまいに明瞭な滑舌が印象的。緊迫感の続く舞台でホッとする存在だ。クライマックスは、乖離性同一性障害(多重人格)をもつ橘秋介(藤田)と、妹・春子(仁藤/佐藤とダブルキャスト)の公判だろう。尺は短いものの、演技派の藤田と仁藤の熱演で、事件に至らざるを得ない人間の愚かさや切なさがしっかりと伝わってくる。また、人情派の小田島裁判長(嶋村太一)、実直そうな田村弁護士(西嶌亮)、一見冴えない弁護士の浅野(浅倉一男)らが個性を表すことで、裁判の駆け引きの面白さが浮き彫りに。なかでも、クールで無表情な市原検察官役・水木ゆうなが、言い逃れをしようとする被告人に内なる炎を燃え上がらせるシーンは、胸がスッとした。機械的に進むのではなく、あくまで有機的に決着を探るのが裁判と知り、思わず傍聴を経験したくなる1本となった。公演は10月23日(日)まで。取材・文佐藤さくら
2016年10月21日ウブな女子大生が若い大富豪と出会い、愛を深めてゆく"恋愛小説"として、その実、エロティックなSM描写が散りばめられた官能小説として、女性読者を中心に世界中で大ブームを巻き起こした『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』。2014年にオフ・ブロードウェイで生まれたそのパロディミュージカルが、この『50 Shades!』だ。待望の日本版は、なんと大富豪のグレイ役に関西ジャニーズJr.の浜中文一を迎え、演出の河原雅彦が上演台本を書き下ろしたオリジナルバージョン。話題の本作に挑む玉置成実と大澄賢也にその胸中を聞いた。【チケット情報はこちら】パム(明星真由美)とベブ(安田カナ)、そしてキャロル(佐藤仁美)は、「本を読む会」と称して集う主婦仲間。ある夜、彼女たちは全世界で1億冊売れたという『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』を取り上げることに。マンネリ化した性生活に内心うんざりしていたキャロルたちは、女子大生アナ(玉置)と大富豪グレイ(浜中)のめくるめく世界にたちまち夢中になる。いつしか赤裸々な告白が飛び交うなか、彼女たちもアナとグレイ、そしてアナの同級生ホセ(大澄)たちが繰り広げる世界にいつのまにか入り込み……。かつて主宰していた劇団HIGHLEG JESUSで"エロ・バカ・ショック"を標榜していた河原だけあって、上演台本はそのものズバリの単語も頻出。玉置にとってはかなりの挑戦になるのでは?「確かにセリフは過激ですけれど、演じるアナは地方から出てきた純粋な女の子。私も和歌山から出てきて頑張っているところが似ているので(笑)、てらいなくアナを演じることで、世界観の一端を担えればなって思っています」と玉置は語る。一方、「ホセ役は大澄さん以外いないって思ってました!」と玉置に太鼓判を押された大澄は「こういう作品にピッタリってこと?」と笑いながらも、「河原さんの脚色台本ですから、日本人が無理なく笑えるセリフもたくさん。ふだん人前では言えないことを笑いとばしてスッキリするという意味で、"エロ"がコメディの重要な一部分になっているんだなと思いましたね」と、本作の魅力を分析してくれた。「成実ちゃんは歌もダンスも上手いけれど、この作品を経てさらに色んな表情が見られるようになるんじゃないかな」と大澄が言えば、玉置も「作品づくりに大澄さんの存在は大きいなって感じています」とすでに息もぴったりのふたり。最後に"エロ"と"コメディ"の部分を誰が牽引することになりそうか問うと、「意外と成実ちゃんかもしれないし、もしかして浜中くんかも!?人は誰しも隠している癖(へき)がありますからね……」と大澄が大胆発言をして、玉置が「フフフ……」と謎の笑みを返すひと幕も。実力派役者陣で贈るオトナのコメディ。その本番が今から楽しみだ。取材・文:佐藤さくら
2016年10月17日“フランスのヒッチコック”と呼ばれ、映画『8人の女たち』の原作戯曲でも知られる劇作家・脚本家のロベール・トマ。推理劇のようなスリリングな物語と小粋な会話、散りばめられた笑いに、あっと驚くどんでん返し。そんな彼の作風をたっぷりと味わえる舞台『一人二役』が、東京・北千住のシアター1010で幕を開けた(以降、全国で巡演中)。主人公の女性資産家フランソワーズに扮する大地真央と家政婦ルイーズ役の森公美子は、言わずとしれたミュージカル界のスター。だがストレートプレイである本作では、コメディの才能を存分に発揮、息の合ったコンビぶりを見せている。舞台『一人二役』チケット情報1960年代、パリ郊外の屋敷。膨大な遺産を相続して暮らすフランソワーズ(大地)は、半年ほど前に知り合ったリシャール(益岡徹)と結婚したばかりだ。しかし彼が酒と賭博に明け暮れる浪費家と知り、今では穏便に離婚する方法を探っていた。そんなある日、気のいい家政婦のルイーズ(森)の元に、恋人のミシェルから手紙が届く。ミシェルがリシャールに瓜ふたつの弟で、彼の罪を背負わされて投獄されていることを知ったフランソワーズは、ある計画を思いつき……。洗練された物腰の、有産階級の女性が主人公であることが多いトマの作品。本作でもその設定は同様で、古き良き時代の女優のような装いが大地にピタリとはまり、まずは目を楽しませてくれる。だがルイーズと結託してからが、本作での大地の真骨頂。小気味いい会話の応酬と芝居の妙とで、観客を笑いの渦に巻き込んでゆく。一方の森も、女主人にちゃっかりと報酬を要求する憎めない家政婦役がまさに適役。キャラクターの異なる大地とのやりとりも楽しく、終盤まで目が離せない存在だ。また、最初からリシャールとミシェルの“一人二役”の益岡は、早い役替わりもこなし大健闘。同じ長髪のまま、野性味あふれるラテン男と内気な文学青年のようなたたずまいとを演じ分けてみせた。リシャールの賭博仲間サルトーニ役の山崎一、警察署長役のおかやまはじめら、手練のキャスト陣も舞台を盛り上げる。初日前の囲み会見では、大地と森、益岡が登場。「ハラハラしながら笑って、途中に何度も謎解きがあり、最後はさらに大どんでん返し。説明できるのはここまでなので(笑)、ぜひ実際に観ていただきたいですね」と大地が語れば、益岡も「劇場でお客様に助けて(観て)いただいて、完成する作品」と同意。森も「騙して騙して、騙されて……ですね。一度観た方はネットには結末を書かないでください(笑)」と語り、大地と益岡の笑いを誘っていた。なお東京・シアタークリエでの公演中は、アフタートークショーも決定。肩の力を抜いて楽しめる、上質な娯楽作。世知辛い昨今だからこそ楽しみたい、貴重な1本である。公演は10月22日(土)から11月8日(火)まで東京・シアタークリエにて。その後、大阪・新歌舞伎座ほか、全国を巡演。取材・文佐藤さくら
2016年10月12日孤独な王子が男性ダンサー演じる妖しくも美しい白鳥と出会う『白鳥の湖』、大ヒット映画を大胆にバレエ化した『シザーハンズ』など、独創的な演出・振付と、美学に貫かれたセットや衣装で熱狂的なファンをもつマシュー・ボーン。今回の『眠れる森の美女』は、彼が手がけてきた『白鳥の湖』『くるみ割り人形』に続く“3大バレエ”の完結編。ボーン率いる〈ニュー・アドベンチャーズ〉が2012年にロンドンで初演して人気となった作品で、待望の来日公演を果たしている。マシュー・ボーンの『眠れる森の美女』古典バレエの大作として知られる『眠れる~』は、ダンサーたちの高度なテクニックが連続して披露される、バレエファンにはたまらない作品。だが場面展開がゆるやかなため、門外漢の目には少々退屈に映ってしまうのも事実だ。だがこのマシュー・ボーン版では、チャイコフスキーの音楽は存分に生かした上で、親しみやすいキャラクターとわかりやすくテンポのいいストーリーで展開。紗幕に「むかしむかしあるところに……」という文字が浮かんで始まる第1幕は、オーロラ姫の誕生を「1890年」に設定。赤ん坊のお祝いに妖精たちがやってくるのは古典バレエと同じだが、チュチュを着たリラの精ではなく、ゴシックテイストのダークな衣装に身を包んだ妖精の王・ライラック伯爵というのがボーンらしい。また「物語の最後でオーロラ姫と王子が初めて恋に落ちるのは、説得力に欠ける」(ボーン)ということで、オーロラ姫が二十歳を迎える第2幕「1911年」では、狩猟番の青年レオとすでに恋仲という設定に。自立心旺盛なオーロラと、彼女を100年愛し通すレオとのチャーミングなカップルが誕生した。一方、黒づくめの服に白いロングコートをなびかせて登場するカラボスの息子カラドックも、冷たい眼差しがなんとも魅惑的。『白鳥~』で王子を惑わすザ・ストレンジャー(黒鳥)しかり、芸術性とエンタメ性を融合させる心憎さは、ボーンの真骨頂だ。物語は、100年後にオーロラが目覚める第3幕「2011年」、クライマックスの第4幕「きのう」と進んでいく。オーロラとレオがどういう結末を迎えるかは……実際にその目で確かめてもらうとして。ボーンの作品を観るたびに思うのは、ダンサーが形作る舞台上の“絵”と西洋美術との共通点だ。眠るオーロラに覆いかぶさるカラドックは、多くの画家たちが描いてきた“美女と夢魔”のイメージ。また、共に背に羽根をもつカラドックとライラック伯爵の戦いの場面は、“サタンを退治する大天使ミカエル”のモチーフそのものだ。コマ送りのフィルムのように浮かび上がる美しい“絵”は、もちろんボーンの意図するところだろう。さまざまな見方で愉しめる舞台。だからこそ、彼の作品はこんなにも魅力的なのだ。マシュー・ボーンの『眠れる森の美女』は9月25日(日)まで、東京・東急シアターオーブにて。取材・文佐藤さくら
2016年09月16日1966年にブロードウェイで初演、2年後にはシャーリー・マクレーン主演で映画化もされ、大ヒットを記録したミュージカル『スウィート・チャリティ』。お人よしで男運のないダンスホールのホステス、チャリティが、愛を求めては傷つき、それでも前を向いて本当の愛を探し続けるという王道ミュージカル。思わず口ずさみたくなるようなナンバーからスタイリッシュなジャズ、切ないバラードまで、多彩な楽曲が詰まった本作の主演に挑むのは、これが初舞台となる元KARAの知英。初日を2週間後に控えた9月上旬、和やかな笑い声のあふれる稽古場に足を運んだ。【チケット情報はこちら】稽古が始まり、まずは1幕の第6場。映画スターのヴィットリオ(平方元基)の部屋で浮かれるチャリティが、ところ狭しと歌い踊るナンバー(「今の私を見てほしい」)から。テンポよく会話を交わしつつシルクハットとステッキも使って踊る場面で、歌とダンスに定評がある知英とはいえ、そこに細かい芝居も付け加えていくのはなかなか難しい様子。大人気映画スターらしく紳士的な"イケメンぶり"をいかんなく発揮する平方がさりげなくフォローするひとコマも見られた。その一方で、クシャッとした顔で笑ったり、不思議そうに首をかしげたりと、くるくる変わる表情のキュートさは元人気グループ出身の知英ならでは。凡百の女優とは異なる思い切りのいい表情とダンスもあいまって、ピュアなチャリティがまるでそこにいるかのような錯覚に陥った。続いて1幕の8場、岡幸二郎の演じる会計士オスカーとチャリティとが、エレベーターに閉じこめられる場面だ。いつもの美丈夫ぶりを封印し、見るからに真面目そうな会計士としてパニックに陥るオスカーを演じる岡に、スタッフ席からも笑いが。そしてここでも知英は臆することなく岡に対峙。オスカーを勇気づけるナンバー(「勇敢な人間」)や、うずくまるオスカーの手をさすってあげる彼女の姿からは、明るくて気持ちの優しいチャリティ像が伝わってくる。初舞台ということを思えば、それは演技云々を越えた彼女自身の魅力なのだろう。その適役ぶりに、本番への期待がいっそう高まった。稽古の前に、ひとりで汗を流して自主稽古をしていた知英。演出・振付の上島雪夫がステッキをさばくコツを彼女に教えると、「あぁ!」と心から納得した表情で声を上げたり、稽古前、ベテランの岡に「がんばりましょうね!」と声をかけて、思わず岡が笑顔になったりと、屈託のない知英の存在は共演者とスタッフのチームワークにひと役かっているようだ。その他、「ビッグ・スペンダー」、「私はブラスバンド」など、今ではスタンダードナンバーとなった楽曲も満載。キュートな知英と実力派役者陣で贈る本番が、今から待ち遠しい。ブロードウェイミュージカル『スウィート・チャリティ』は9月23日(金)から10月2日(日)まで、東京・天王洲銀河劇場にて上演。チケットは発売中。取材・文佐藤さくら
2016年09月16日パキスタン系アメリカ人の作家アヤド・アフタルが2013年にピューリッツァー賞を受賞した舞台『DISGRACED/ディスグレイスト─恥辱』が、日本初演の幕を開けた。作家と同じ出自をもつ主人公と白人の妻との無意識下のズレが、次第に大きな事件に発展していくさまを描いた問題作。人種や宗教観の相違という、日本ではなじみの薄いテーマが大きな要素を担っているが、観る前の心配は杞憂に終わった。小日向文世や秋山菜津子、安田顕といった実力派役者陣が火花を散らしてぶつかり合う、見応えのある舞台となっている。【チケット情報はこちら】ニューヨークに住む弁護士アミール(小日向)は、パキスタン系アメリカ人。白人の画家でイスラム美術を敬愛する妻エミリー(秋山)と何不自由ない生活を送っていたが、甥のエイブ(平埜生成)から“指導者”を助けてほしいと頼まれ、仕方なく引き受けたことで、世間の風向きが変わり始める。そんなある日、エミリーの絵がホイットニー美術館で展示されることになり、アミールと同じ事務所の弁護士で黒人のジョリー(小島聖)と、その夫のユダヤ人でホイットニー美術館のキュレーター・アイザック(安田)が来宅する。食事の席での冗談めかした会話は、次第に各々の人種にまつわる話題へと移り始め……。大河ドラマ『真田丸』でも、無邪気さと残酷さを併せ持つ豊臣秀吉を演じて高い評価を得た小日向だが、その陰影に富む役作りは本作でも健在。幼少期の「クソのような境遇」から、努力と実力で現在の社会的地位にまで上りつめたアミールが、封じ込めたはずのコンプレックスと葛藤におびえるさまが痛々しくも切ない。そんな彼のトリガーとなるのが、安田扮するアイザックだ。美術館のキュレーターだが、絵を値踏みするような口ぶりはニューヨーカーらしいスノッブさ。だが絶対的な“美”への服従は芯にもっている人物像が伝わってくる。同じように高い知性を持ちながらも、出自への迷いが拭いきれないアミールと、出自を受け入れ苛立ちを明確にするアイザックとが対峙するシーンは、息詰まるような緊張感で見応えがあった。美人で頭がよく、才能も思いやりもあるエミリー役の秋山と、褐色の肌に腰高のスタイル、強い眼差しをもつジョリー役の小島は、共にハマり役。アミールとアイザックはもちろん、エミリーとジョリーもそれぞれの夫とぶつかり合い、日常の瑣末な物事に対する反応を細かく積み上げていくことで、この世界観の"体温"に説得力が出た。人種、宗教、仕事、男女の愛、すべてを織り込むようにして進む物語の果てに、甥のエイブがアミールに放つひと言が、胸に迫る。上演は、休憩なしの1時間45分。とぎれることのない緊張感が演劇的高揚感に変わる、希有な1本である。舞台『DISGRACED/ディスグレイスト─恥辱』は9月25日(日)まで東京・世田谷パブリックシアター、9月27日(火)に名古屋・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、9月30日(金)から10月2日(日)まで兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて上演。取材・文佐藤さくら
2016年09月13日日本トップクラスのタップダンサーであり、振付家・演出家としても数多の演劇賞を受賞している玉野和紀。2007年の『CLUB SEVEN SP(4th)』の中で30分のミニミュージカル「ワン・ハート」として上演され、単独での公演を熱望されていたのが、この『CROSS HEART(クロスハート)』。今回の上演のため、歌もダンスもさらにパワーアップした本作で、ヒロインを演じる唯月ふうかに聞いた。A NEW MUSICAL『CROSS HEART(クロスハート)』チケット情報時は現代。とある大学に、フランスの歴史を研究するサークルがあった。ある日、教授のもとに、差出人不明の荷物が届く。そこにはフランスの歴史的資料がとある女性の書いた手記が入っていた。教授はその手記を基に、学生たちと共に演劇で再現しようと試みる。次第に演技に熱が入る学生たち。ふとした瞬間、「100年戦争」の真っただ中、1424年のフランスにタイムスリップしてしまう。学生たちは、歴史の流れに翻弄されながら互いに敵対しあい、歴史に背くものと理解しつつも自らの宿命・愛・友情に揺れ動きながら、突き進む……。「玉野さんとは、ミュージカル『ピーターパン』(唯月は9代目ピーターパンとして2013年より主演)の演出でご一緒しているのですが、『CLUB SEVEN』にもずっと憧れていたので、出演が決まって嬉しかったです」と声を弾ませる唯月。玉野作品については、「盛りだくさんの歌とダンスで、お客さんをとことん楽しませるエンターテインメント」とその魅力を語ってくれた。インタビューの前には、ちょうどビジュアル撮影も終了。ウエストを絞った中世風の衣装に、柔らかな笑顔が印象的だ。「玉野さんから、『演じるのは一途な女の子だよ』とヒントをいただけて。ひとりの人だけをずっと想い続けている子なんだなと思って、ときめいている表情の中にも切ない気持ちを込めてみました」と、さっそく役づくりにも取り組んでいる様子だ。ミュージカルに出演するようになった4年前からは、観劇の仕方も変わったという。「ミュージカルは同じ歌やセリフでも、一回一回が同じにはならないし、共演者とのやりとり次第で微妙に違う芝居に見えたりしますよね。どうやったらあんな風に見えるのかなって思いますし、観劇しているときもそういうところをつい見ちゃいます」と唯月は笑う。そして「ようやく最近、周りを見ながら舞台に立てるようになった気がします」とも。「歌声をしっかり出すためと、舞台での持久力のために、筋トレは欠かせません!」と、熱意も人一倍の19歳。玉野ワールドを唯月がどう表現してみせるのか、本番を楽しみに待ちたい。公演は12月9日(金)から28日(水)まで、東京・ Zeppブルーシアター六本木にて。取材・文佐藤さくら
2016年08月12日発行部数は1億5000万部を数え、毎年公開される劇場版も動員数を更新し続けているメガヒットコミック『名探偵コナン』(青山剛昌作/小学館刊)。そのテレビ放送・劇場版20周年を記念して、舞台『名探偵コナン×ライブミステリー~洋上の迷宮(ラビリンス)』の上演が決定。観客も、豪華客船に乗り合わせた客として、出演者と一緒に謎を解いてゆくという客席参加型の舞台だ。メインキャストのひとり、塩野瑛久に話を聞いた。名探偵コナン×ライブミステリー チケット情報豪華客船で開かれていた鈴本財閥のパーティの最中に、「令嬢をいただく」という謎のメッセージが届く。そして華やかなパーティ会場で残酷な殺人事件が起こる。船長の五十嵐(三上市朗)が現場を仕切ろうとする中、客船のクルーである葉上(平野良)は、鈴本財閥の令嬢すみれ(加藤里保菜)の友人で大学生の藤堂(塩野瑛久)や真部(宮城紘大)らと犯人捜しにとりかかるが……。観客は、第1幕「事件編」で物語の推移を見守り、幕間の「捜査篇」ではコナンから語られる事件の情報を整理し、推理結果を「逮捕状」に書き込んで提出。続く第2幕「解決編」では、次々と謎が明らかになっていき“答え合わせ”が出来るという流れだ。「テレビっ子なので、『名探偵コナン』はずっと観てました」という塩野は、出演が決まり、まず気になったのは「コナン役は誰がやるのか」だったとか。予想に反して、本作でのコナンは生身の役者ではなく、“ある形”での参加となるのだが……。「それを知って、逆に納得できたんですよ。原作やアニメでも、コナン君は毎回異なる人々に出会って、事件を解決していくパターン。だからこの作品でも、僕たちがその世界観に落とし込んだ芝居さえしていれば、自然とコナン君が僕らの謎を解決してくれるように見えるんだろうなって」と、塩野は早くもコナンワールドを楽しみにしている様子だ。演出は、同じく客席参加型の舞台『私のホストちゃん』をスマッシュヒットに導いた村上大樹。塩野も「本読みの時から、笑いも遊び心もつまった作品だなと感じてます。本番はきっと面白いことになるんじゃないかな」と信頼を寄せる。2013年の俳優デビュー以来、ようやく4年。多くの映像作品や舞台で着実に経験を重ねている塩野だが、「演技に関しては、全然。まだまだだなって痛感してばかりです」と謙虚に語る。「特に今回のような現代劇の大学生役で、ト書きの少ない台本では、セリフの余白を読みとって、言い回しや芝居を自分でしっかり考えないといけない。何が正解かは演出家や監督によって違うから、どの現場でも苦しんでます(笑)」という塩野。だがその口ぶりからは、どの作品にも真摯に取り組む姿勢が伝わってくる。本作でも彼の瑞々しい存在感は、いかんなく発揮されるに違いない。公演は8月10日(水)から21日(日)まで東京・紀伊國屋サザンシアターにて。取材・文佐藤さくら
2016年07月27日幼少時をヨーロッパで過ごし、同級生に貴族もいたという環境で培われた美学を盛り込んだ舞台が人気の演出家、藤沢文翁。彼が原作・脚本・演出を手掛ける音楽朗読劇『VOICARION(ヴォイサリオン)』が、豪華キャストを集めて上演される。公演は前半(8/27(土)~9/2(金))が日替わりキャストによる『女王がいた客室』、9/3(土)~9/5(月)が別キャストでの『Mr.Prisoner(ミスター・プリズナー)』。今回は藤沢と、『女王~』に出演する水夏希に話を聞いた。音楽朗読劇『VOICARION(ヴォイサリオン)』チケット情報20世紀初頭のパリ。従業員の多くがロマノフ王朝の生き残りとされるホテル「バッサーノ」は、"宿泊すると願いが叶うホテル"ともいわれていた。元の暮らしに戻ることを夢見るコンシェルジュのアレクサンドル・パーレン、ギャンブルと酒が好きでマダムの召使いのようになっているマイカ・デミドフも、元貴族。さらに黒いベールで顔を隠して長逗留しているマダムは、かつてのロシア皇帝アレクサンドル3世の皇后だった。そんな中、ただの客室係エレオノーラはマダムたちに振り回されながらも、女優になるという夢を追いかけていたのだが……。演じるエレオノーラを「天真爛漫ないわゆる“新人類”。自分とは思考回路が異なる役ですね」と言う水。「元宝塚スターに売れない女優の役なんてさせてスミマセン」と頭をかく藤沢には笑いながら、「でもその分、やり甲斐があります。それに私の世代も宝塚音楽学校に入った頃は、上級生から“新人類”って言われてましたし」と水が返すと、今度は藤沢が我が意を得たりとうなずいた。「実は、僕が水さんに託したいのはそこなんです。間違っていようがなんだろうが、“新時代を担う人間の強さ”ってありますよね。その"強さ"が未来を変えてゆく。水さんはいるだけでオーラを感じる方ですし、そういう意味ではエレオノーラ役にピッタリじゃないかと思って」と、配役の意図を語った。今回の出演を、「藤沢さんの作品を観ていて『あっち(作品)の世界に行きたい』と思っていたので、念願が叶って嬉しい」と話す水。魅力のひとつに「豪華な衣裳と美しいセット」を挙げると、藤沢が「実は演者の動きが少ない朗読劇だからこそ、衣裳は“足が開かない”“動くには重すぎる”などの制約を受けないで済む。それは美術セットも同じで、実用性より美しさを優先できるというメリットがあるんですよ」と語った。水も「声がメインの朗読劇だからこそ、お客様により多くの想像力を委ねられるというのもありますよね」と同意。「宝塚に在団時は、声をどういう風にしようかというところから役作りをしていました。今回もその点を意識しつつ、藤沢さんの世界に入っていければ」と、本作への意気込みを語ってくれた。公演は8月27日(土)から9月5日(月)まで東京・シアタークリエにて。取材・文佐藤さくら
2016年07月26日昨夏、フランス政府が総力を上げてパリで開催、熱い注目を集めた「LASCAUX INTERNATIONAL EXHIBITION(ラスコー展)」が、ついに日本にやってくる。しかも今回催される「世界遺産 ラスコー展~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」は、世界巡回中の内容に日本独自のコンテンツを加えた特別展。東京・国立科学博物館(11月1日(火)~2017年2月19日(日))の後、宮城・東北歴史博物館(2017年3月25日(土)~5月28日(日))、福岡・九州国立博物館(同7月11日(火)~9月3日(日))と、約1年をかけて日本を巡る予定だ。その記者発表会が6月13日、東京の会場となる国立科学博物館で行われた。「ラスコー展」チケット情報「ラスコーの洞窟壁画」は、約2万年前にクロマニョン人によって描かれた壁画のなかでも、ずば抜けて鮮やかな彩色画で知られる。フランス南西部・ヴェゼール渓谷にあるこの壁画が、地元の少年らによって発見されたのは1940年のこと。たちまち見学者が押し寄せて状態が悪化したために、残念ながら現在では見学禁止となっているが、洞窟そばに設置された実物大のレプリカは、今もフランスで人気のスポットだ。本展ではそれをさらに1ミリ以下の精度で再現、“世界の芸術の起源”とも言われるラスコー洞窟の内部を体感できる仕掛けだ。さらにクロマニョン人が残した彫刻や道具など、選りすぐりの実物資料も併せて展示。2万年前の人類の暮らしぶりがひと目でわかる内容となっている。会見では、同博物館・人類史研究グループ長で本展の監修者でもある海部陽介氏が、「夢に描いていた展覧会」とその内容を表現。フランス国立考古学博物館の全面協力のもと展示される実物資料は、トナカイの角で作られた彫刻「体をなめるバイソン」や、壁画を描く際に使われたとされる「ラスコーのランプ」など、「"国宝級"の品ばかり」(同氏)。「借りられること自体が驚き」と海部氏が言うほどの逸品ぞろいで、その他、"ヴィーナス"と呼ばれる小立像や、ネコ科の動物をモチーフにした投槍器など、どれも日本初公開となる。その後、本展協力者である五十嵐ジャンヌ氏(東京芸術大学講師)や佐野勝宏氏(東京大学総合研究博物館特任助教)、佐藤宏之氏(東京大学教授・日本旧石器学会会長)も登壇。「石器の製作技術の進化を感じ取れるような展示」(佐野氏)、「同時代の日本の旧石器時代も紹介したい」(佐藤氏)と、それぞれに見どころを語った。会見用に展示された資料のレプリカを間近で確認すると、上記の「~バイソン」は12、3センチほど、また投槍器は10センチほどの大きさ。てのひらに収まるサイズに刻まれた、その繊細な彫刻に驚かされる。「当時の高い技術力と共に、豊かな人間性も感じてほしい」という五十嵐氏の言葉に、本展への期待がいっそう高まった。お得な早割ペア券は7/1(金)よりチケットぴあにて販売。取材・文佐藤さくら
2016年07月01日劇団四季在団中は数多の作品でヒロインを務め、退団して活動再開後もたった4年で、今や日本ミュージカル界を代表する存在となった濱田めぐみ。彼女の芸能活動20周年を記念して、ミュージカル『Tell Me on a Sunday~サヨナラは日曜日に~』が上演中だ。新国立劇場小劇場という客席400の濃密な空間で繰り広げられるのは、なんとソロ・ミュージカル。しかも『キャッツ』『オペラ座の怪人』の作曲で知られる巨匠、アンドリュー・ロイド=ウェバーの手による、約40年前に初演された作品というから注目だ。ミュージカル『Tell Me on a Sunday~サヨナラは日曜日に~』チケット情報舞台はニューヨーク。スーツケースををぶらさげてロンドンからやってきたエマ(濱田)は、デザイナーと幸せな恋愛というふたつの夢を描いて胸を膨らませていた。ところが頼りにしていたニューヨークの恋人に裏切られ、女友達の家に転がり込むはめに。次にエマが恋したのは、大金持ちの映画プロデューサー。彼と共にロサンゼルスに移り住んだエマは、自分のスケッチを見てもらおうと意気込むが、恋人に軽くあしらわれてしまう。その後、自立を目指して再びニューヨークに戻ったエマだったが、年下の恋人との穏やかな時間も、やがて……。舞台奥から客席の前まで敷かれた白い"道"と、左右に同じく真っ白な布が天井から垂れ下がっているほかは、いくつかのトランクが置かれているだけのステージ。そこに登場した濱田も、最初は白いTシャツにショートパンツ姿だ。だが冒頭、シンプルな夢を抱いて都会に出てきたエマの歌声は、出会いと別れを繰り返して少しずつ陰影を増してゆく。弾けるような笑顔の少女が、挫折と現実を知った女性の横顔を見せるようになる。くるくると変わる表情や細やかな仕草で魅せる濱田を堪能するにつれ、セットなどの要素をギリギリまで削ぎ落としたスタッフの意図がわかるような気がした(演出/市川洋二郎、舞台美術/伊藤雅子)。楽曲は、当時の全英チャートにも入り、イギリスでは今も有名な曲だという「放っておいてよ」や、セリフをそのまま音に乗せたような「言わせて」など、どれもロイド=ウェバーならではのキャッチーなポップスばかり。一方で変拍子が多く、歌い手泣かせと言われる彼の曲だが、緩急自在に歌いこなして観客をグイグイと引き込むあたりは濱田の真骨頂。また舞台の白い壁面に映し出される映像は水彩画や軽いスケッチで、物語をさりげなく支えて印象に残った(映像/上田大樹)。「この何処にでもいるような女性の人生を描くことができるのは、類稀なる才能を持った女優だけ」(Whatsonstage.com)といわれる本作を、70分ノンストップで演じきる濱田。その言葉を見事に体現した彼女に、改めて感じ入る1本となった。公演は6月26日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて。チケット発売中。取材・文佐藤さくら
2016年06月14日2012年に鮮烈なデビューを飾って以来、ジャズ・シーンの若き担い手として注目されている桑原あい。彼女の4枚目のアルバム『ラブ・テーマ』は、桑原(ピアノ)と森田悠介(エレクトリックベース)、須川崇志(アコースティックベース)、石若駿(ドラムス)による、桑原あいトリオ・プロジェクトのカバーアルバムだ。冒頭から映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(1984年)の名曲『デボラのテーマ』に挑むなど、彼女の内的世界が映像となって浮かび上がるような全10曲。本作に込めた想いを、桑原に聞いた。【チケット情報はこちら】「実は私、自分のことをあまり"ジャズピアニスト"だとは思っていなくて(笑)。クラシックは今でもよく弾いているし、ミュージカルも映画も大好き。ジャンルを気にせず観たり聴いたりしてきた結果、今回は"好きなもの"ばかりが詰まったアルバムになったと思います」という桑原。その言葉通り、爽やかな『Here There and Everywhere』(レノン&マッカートニー)、美しく力強い『Finale(Tango Apasionado)』(ピアソラ)、プレーヤー全員が参加した『A Journey To Reedham』(スクエアプッシャー)、さらにマイルス・デイビスの名演で有名な『In Your Own Sweet Way』を桑原がゆったりとしたソロで聴かせるなど、次々と登場する曲はどれも鮮やかに異なる色彩を放つ。さらに注目したいのは、全曲を一発録りした点。桑原は「ずっとエンニオ・モリコーネ(『ニュー・シネマ・パラダイス』などの音楽も担当した巨匠)の大ファン。だから彼の『デボラのテーマ』は特に緊張しました」と語る。「でもリハーサルをやってから録るのは、音の道すじが見えてしまうようでイヤだったんです。個人的なエゴイズムなどを越えて、大きな意味での"愛"を表すこの曲を、心を研ぎ澄ませて出てきたものだけで奏でたかった」と桑原は言う。「5分くらいで録り終えたかと思った(笑)」という同曲は、実に11分。静謐かつライブ感あふれる1曲だ。一方、キューブリック監督の映画『バリー・リンドン』(1975年)からインスパイアされて桑原がアレンジした「ラブ・テーマ」は、映画が描く18世紀アイルランドの空気感をドラマチックに醸し出す。ちなみにアルバムタイトルも同じだが、こちらは「音楽そのものへの愛と、音楽家たちが刻んできた歴史へのリスペクトを込めました」と桑原は言う。「カバーだからといって、自分たちのものにするなんて気持ちは一切ない。全ての原曲の美しさをどこまで残せるかだよねって、皆で話しながらレコーディングしたんです」と、先人たちへの熱い想いを語ってくれた。それでもこぼれ落ちるものが個性というのなら、ここにそれがあるのは明白だ。瑞々しいアプローチの軌跡を、本作でぜひ味わってほしい。桑原あいは7月12日(火)に東京・東京オペラシティリサイタルホール、12月7日(水)に東京・サントリーホールブルーローズ(小ホール)で公演を開催。チケット一般発売は5月21(土)午前10時より。取材・文:佐藤さくら
2016年05月20日2年前の日本初演時、ドラマチックな楽曲と深い物語性、予想を越えるスリリングな展開で話題を呼んだ『ブラック メリーポピンズ』。韓国で2012年にヒットした舞台の日本版だが、演出に鈴木裕美、上演台本に田村孝裕と、こちらも日本演劇界の実力者が集結した。今回の再演にあたっては、同じスタッフはもちろん、初演キャストの一路真輝と小西遼生、良知真次、上山竜治に加え、これが初舞台となる中川翔子が出演。注目の集まるなか、5月13日のゲネプロの前に囲み会見が行われた。ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』チケット情報1920年代のドイツ。有名な心理学者として知られるグラチェン博士の屋敷で火事が起き、博士の遺体も燃え尽きてしまう。だが彼の養子たちーーハンス(小西)、ヘルマン(上山)、アンナ(中川)、ヨナス(良知)は、家庭教師のメリー・シュミット(一路)によって、猛火から救い出される。ところがその翌日、彼女は失踪し、子どもたちも次第に事件の詳細を忘れてゆく。それから12年後。ハンスたちは、博士が当時書きつけていたという手帳の存在を知る。そこに書かれていた驚くべき真実とは……。囲み会見では、キャストの5名が登場。中川は「(稽古中は)『皆様の足を引っ張ってはならない!』とガチガチになって。胃薬も飲んでました」と緊張の面もち。その一方で「コンサートと違ってお芝居は皆で作るものだなと。"ちゃんと(アンナの)人生を生きる"って思っていると、(芝居中も)涙が出てきたり、心が裸になる感じがします」と手応えを感じている様子だ。一路も「翔子ちゃんたちは、子ども時代と大人になった現在とを演じ分けなきゃいけないんですが、私は子ども時代のアンナちゃんがすごく可愛くて。メリーが母親のようにアンナたちを思う、そんな役の気持ちを翔子ちゃんからもらっています」と語った。小西や上山、良知も、揃って中川との顔合わせを新鮮に感じているという。「(中川の参加で)兄弟の関係性も前回とは全然違っていて。イチから新しいものを作っている感覚」と言うのは小西だ。続いて上山が「中川さんは最初全く目が合わなくて。最近はやっとコミュニケーションがとれるようになったんだよね」と優しく中川に言うと、恐縮する中川に一路たちは大笑い。本当の兄と妹のような温かい雰囲気に、思わず取材陣からも笑いが漏れた。とはいえ“心理スリラーミュージカル”と銘打つ本作では、歌や芝居のほかにも素早い舞台の進行など、多くのハードルがそびえるのも事実。それについても良知は、「中川さんは段取りを覚えるのが早くて、歌声も綺麗。堂々としてますよ」と太鼓判。最後は中川が「全力全身で挑みたい」と改めて表情を引き締め、心地よい緊張感のなか会見は終了した。5月29日(日)まで東京・世田谷パブリックシアター、6月3日(金)から5日(日)兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、9日(木)福岡・福岡市民会館 大ホール、17日(金)愛知・愛知県芸術劇場 大ホールで上演。チケットは発売中。取材・文佐藤さくら
2016年05月17日