私立恵比寿中学、アンジュルムなどのアイドルソング、アニメソングの作詞家として活躍している児玉雨子さん。初小説集『誰にも奪われたくない/凸撃』が早くも話題だ。「誰にも奪われたくない」は、銀行勤めをしながら作曲家としてもがんばっている園田レイカと、レイカが楽曲提供したアイドルグループ「シグナルΣ(シグマ)」のメンバー佐久村真子(まこ)の関係性の変化を軸に、彼女たちの生きづらさの正体に迫る一編。「凸撃」は、YouTubeで喧嘩凸待ちを配信している〈せまみち〉こと宏通が、顔も生年月日もプロフィールで晒している未成年の〈金キング〉とのやりとりから始まる短編。どちらも、いわゆるシスターフッドやブラザーフッドとは少し違う“連帯の形”が描かれ、はっとする。「人間関係がヒリヒリしている現代において、ネットは悪しきイメージを持たれている部分もあるけれど、匿名やハンドルネームの存在だからこそ、本音が言い合えるとか、つながり癒される瞬間があるのではないかと。実名と同じ名前で活動していたとしても、仕事や社会における名前の意味は、プライベートのそれと違うはず。現実とオンラインの世界が地続きでフラットにつながっている“イマドキの人と人との距離感”のリアリティは、書いてみたいなと思っていました」「誰にも~」で、思わず首肯してしまうのは、レイカ視点で描かれるふたりの距離感の捉え方や、社会や世相を斬る鋭い観察眼。たとえば、レイカと真子との関係は、ある盗撮動画がネットにアップされることによって変わっていく。「アイドルが不祥事を起こすと『男の影響』、整形する女の子に対しては『モテたいから』というように、紋切り型で決めつけてくる。社会の文脈へのアンチテーゼというか、そこにノーを言いたかったんです」「凸撃」でも、せまみちと金キングが次第に心を寄せほっこりしていたかと思いきや…。展開もお見事。「現実は、こんな距離感に落ち着くことも多いのかなと。ただ、どういう顛末であれ手を取り合った瞬間があるのはすばらしいなと」随所にちりばめられている作詞家ならではの刺さるフレーズといい、2編をつなぐ人物を登場させるアイデアといい、鮮烈なデビュー作だ。『誰にも奪われたくない/凸撃』「編集さんとのやりとりはセッションみたいでした」と振り返る。作中曲「ジルコニアの制服」を自身で作詞作曲、YouTubeで公開中。河出書房新社1694円こだま・あめこ1993年、神奈川県生まれ。作詞家、作家。2011年、高校在学中に作詞家デビュー。アイドル曲やアニメ曲を中心に、幅広く歌詞提供。『BRUTUS』で食コラムを連載中。©Miyoko Tamai※『anan』2021年9月29日号より。写真・中島慶子(本)インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2021年09月27日才能や素質は生まれ持ったもので、いくら努力しても才能や素質がなければダメ……と思っている方も少なくないはず。ところが世の中には、生まれ持った才能や素質はそれほどでもないのに「成功者」と呼ばれる人たちが数多く存在します。彼らに共通する成功の要因――それは「GRIT」(やり抜く力)です。自分で考え、選び、そして行動するとき、あるいは何かをやってみたけれどうまくできずに挫けそうになっているとき、GRITが十分に備わっていれば、子どもたちは壁を乗り越えることができるでしょう。GRITは生まれ持った能力ではなく、今からでも家庭で身につけさせることができるのです。これからの時代、お子さんに持っていてほしいGRITの力がどんな場面で発揮されるか、またGRITはどうしたら身につけられるのか、例を挙げながらご紹介します。世の中の成功者に共通する「GRIT」(やり抜く力)とは?「GRIT」は、Guts(度胸)、Resilience(復元力)、Initiative(自発性)、Tenacity(執念)の4つの頭文字をとった言葉で、やり抜く力のことを意味しています。ここ数年、アメリカでは、これまでに考えられてきた「才能」「知性」に加えて成功者に共通する要素として注目されています。例えば、プロ野球のイチロー選手は、天賦の才という言葉だけでは説明しきれない大記録を次々と打ち立ててきましたが、彼自身、「僕を天才と言う人がいますが、僕自身はそうは思いません。毎日血の滲むような練習を繰り返してきたから、いまの僕があると思っています。僕は天才ではありません」(引用元:児玉光雄 著(2012),『天才・イチロー逆境を超える「言葉」』,イースト・プレス.)と発言しているとおり、強い気持ちで不断の努力を続けてきた結果だということは多くの人が認めるところです。また、世界的な「成功者」の中でも、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏は「信念とグリット」がビジネスでの成功のカギだと言ってますし、バラク・オバマ元アメリカ合衆国大統領もスピーチの中で何度も「GRIT」という言葉を使っています。国内に目を向ければ、古くは江戸時代に全国各地を歩いて測量した伊能忠敬や本田技研の創業者、本田宗一郎も並外れたGRITの持ち主です。そして最近では、ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学iPS細胞研究所所長の山中教授が「9回失敗しないと、なかなか1回の成功が手に入らない」と語っています。このように、世の中の成功者にはGRITが備わっているのです。特別な才能や知性がなくてもGRITが強ければ成功できるやり抜く力や粘り強さを表わすGRITという概念自体は、目新しいものではありません。ここ数年で注目されている理由のひとつに、心理学を専門とするペンシルバニア大学のアンジェラ・ダックタース教授が行なった研究結果があります。彼女は、さまざまな分野で成功している人は誰か、また成功した理由は何かを調べました。対象者には以下のような人たちを選び、「GRITの高さ」と「成功」との関連性を証明するに至ったのです。・アメリカ陸軍士官学校の士官候補生・単語のスペルの正確さを競う大会「ナショナル・スペリング・ビー」での優勝者・教育困難なエリアという過酷な現場で働き続けて生徒の学力を伸ばした教師・民間企業のトップセールスマンこの研究で彼女は、才能や知性がある人が必ずしもGRITが強いというわけではないこと、逆にそれほど目立った才能を持っているとはいえない人でも、GRITが強ければ成功しているということを明らかにしました。つまり、才能や知性にあふれた特別な運命のもとに生まれなくても、やり抜く力や粘り強さにあふれていれば成功への道筋を切り開けるというわけです。さらに、このGRITは生まれ持った特別な能力ではなく、誰でも今から伸ばしていくことができる力だといわれています。もちろん、子どもだけでなく私たち大人も、今日からトレーニングをすればGRITを高めていくことができます。家庭でできる、GRITを伸ばす習慣4つお子さんの「やり抜く力」を伸ばしてやりたいと考えているのであれば、ご自身のGRITにも目を向けて、一緒に高めていくことを考えることをおすすめします。親が目標に向かって頑張っている姿は、子どもにとって一番身近なお手本であり、勇気づけられるものです。ダックタース教授のご家庭では、お子さんと一緒に次の4つのルールを課しています。【1】家族全員(親も)ひとつは “ハードなこと” に挑戦するダックタース家では、家族がそれぞれヨガやランニング、ピアノなど「意図した練習」が必要となる“ハードなこと”を決めて挑戦しているそうです。皆さんも、例えば「毎日30分、本を読む」「1年間、スイミングに休まず通う」「最寄り駅の1つ前で降りて通勤する」のような、やってみよう、やらなければと思っていることに家族全員で挑戦してみてはいかがでしょうか。【2】“ハードなこと” は自分で選ぶどんなことに挑戦するかは、自分で選びます。人任せにしないことで発言に責任がうまれ「やり抜く力」が伸びるからです。できないことや興味のないことを親に言われたからといって続けても意味はありません。それぞれがよく考え、ときには家族で相談し話し合い、最終的には自分で決めることが大切です。【3】 “ハードなこと” は変えてもいい一度、決めて始めてみたけれど続かないこともあります。その場合、他のものに変えてもいいというルールにしているそうです。ただし、それには「区切りのいい時期までは続ける」という条件があります。習い事であれば発表会や大会まで、スポーツジムなどであれば入会月や年度末といった区切りのいいところまでは続けることで「やり抜く力」を高めます。【4】高校生になったら、“ハードなこと” を2年間は続けなければならない小さいうちは、挑戦に粘り強く取り組むことも難しいかもしれません。【3】の区切りのいい時期も、大人からすれば「あっという間」の期間になることもあります。それでも、区切りを決めた期限まで「やり抜く」ことができたら、きちんと評価し褒めてあげましょう。そして、ある程度成長したら区切りのいい期間を長くします。まずは、難しそうでもやってみようと思い(Guts:度胸)、ちょっとくらいうまくいかなくても続けて(Resilience:復元力)、自分が決めたことを(Initiative:自発性)、決めた期間までは最後までやり遂げる(Tenacity:執念)ことが、GRITそのものを伸ばします。***果たして、自分にはどれくらいのGRITがあるのだろうと興味をもったら、10の質問に5段階で答える「グリッド・スケール」という指標でスコアチェックしてみてはいかがでしょうか。これはダックワース教授が研究で使ったスケールで、著書『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』に紹介されています。(参考)Study Hackerこどもまなび☆ラボ|才能よりも大切な「GRIT」!子どもの “やり抜く力” の育て方 ~家庭内ルール~BizHint|グリットHR NOTE|「GRIT」とは何か?成功者に共通するのは「才能」じゃなく「やりぬく力」DIAMOND online|子どもの「グリット」がみるみる上がる4大家庭ルールリンダ・キャプラン・セイラーロビン・コヴァル(著)三木俊哉(訳)(2016),『GRIT(グリット)平凡でも一流になれる「やり抜く力」』, 日経BP社.アンジェラ・ダックワース(著)神崎朗子(訳)(2016),『やり抜く力――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』,ダイヤモンド社.児玉光雄 著(2012),『天才・イチロー逆境を超える「言葉」』,イースト・プレス.Angela Duckworth|Grit Scale
2019年02月06日「片付けをしようと決めたものの、なんだか今日はやる気が出ない……」そんな日はありませんか?人間たるもの、気分の浮き沈みもあって当然です。ところが、お部屋は放っておくと、容赦なく散らかっていくというのも辛い現実。そこで今回は、心理学から学べる「どうしてもやる気が出ない時の対処法」をお伝えします。■ 「やる気が出ない!」のは、誰もが持つの悩み!アメリカで人気の、マーラ・シリーという整理整頓のプロフェッショナルをご存じでしょうか?自らをFlyLady(フライレディ)と称する彼女は「5分間お部屋レスキュー」というテクニックを提案しています。これは「部屋の一番汚い部分を探して、5分間だけそこを片付ける」というもの。M&T / PIXTA(ピクスタ)一番散らかっている場所を見つけたら、スマホでも目覚まし時計でも良いので5分間のタイマーをセットしましょう。そして、その5分間だけ片付けをしてみるのです。■ 好きな音楽でも聴きながら、ただ時間を過ごすだけここで注意点です。やる気が出ない時に「ここを綺麗に片付けなければ……」と考えると、やる気は一層なくなります。「5分だけだから、すぐ終わる」と考えて、時間を過ごすだけのつもりで臨みましょう。ちなみに筆者のオススメは、5分程度のお気に入りの曲を聞くことです。xiangtao / PIXTA(ピクスタ)好きな曲を聞いている間だけなら、気分が乗らない時間もなんとか過ごせそうです。しかも、1曲だけで良いのです。■ 5分後、あなたのやる気はどうなるか?なんとか5分やりきると、目の前の状況はどうなっているでしょうか?溜まっていたゴミをゴミ箱に捨てただけかもしれませんし、散らかっていた衣類をタンスにしまっただけかもしれません。kaka / PIXTA(ピクスタ)ここでまだやる気が出なければ、無理をするのはやめましょう。「5分頑張ったから、今日はここまで!」と潔く切り上げるのがベターです。ところが不思議なことに、5分ほど経過した時点でやる気が出てくる人が多いのです。これが、マーラ・シリーが提案する「5分間お部屋レスキュー」のすごいところなんです。■ 科学的にも証明!たった5分で脳に起きること。前述のような「5分程度やってみると、なんだかやる気が出てくる」という現象は、昔から研究対象になってきました。100年以上前のことですが、ドイツの精神科医であるエミール・クレペリンが「作業興奮」という概念を提唱しています。これは簡単に言うと「作業をやり始めると気分がノッてくる」ということなのですが、近年では脳科学の見地からも証明されています。Deja-vu / PIXTA(ピクスタ)脳には「側坐核」という箇所があり、刺激すると快感を覚えるため“快楽中枢”とも呼ばれています。この側坐核は、「成果が見える」ということが大好物。ちょっとした成果でも、「楽しい!もっとやろう!」とやる気をどんどん引き出してくれます。A_Team / PIXTA(ピクスタ)■ 片付け作業は、脳の「側坐核への刺激に向いている。片付けの良いところは、たった5分間でも手を動かせば何かしらの変化が起きること。「ゴミがちょっとだけ少なくなった」「服が少しだけ片付いた」CORA / PIXTA(ピクスタ)ほんの小さな変化でも、脳は「成果が出た!もっとやろう!」とやる気を出してくれるのです。そうなれば、もうこっちのもの。タイマーが鳴ろうが、曲が終わろうが片付けを続ければ良いだけです。kou / PIXTA(ピクスタ)ついさっきまでやる気が出なかったのが自分でも不思議なくらい、片付けが楽しくなるかもしれませんよ。【参考】※Fly Lady.net※児玉光雄『超一流アスリートが実践している本番で結果を出す技術』
2018年10月29日(写真:アフロ) 野球ファン以外にも夢を与え続ける大谷翔平(23)。常に高い目標を達成するために、自己をコントロールしてきた。そんな彼が取り組んできた方法とはーー。 「すごく順調にきています。(自軍の)ホームのデビュー戦でホームランが打てることは、あまり予想していなかったんで、『できすぎじゃないか』と思います!」 アメリカ・メジャーリーグのエンゼルスに入団して1年目の大谷。打者として3試合連続のホームランを放つ大活躍を見せた後、淡々とこう語った。投手としても2連勝し、日本のファンのみならず全世界の注目の的となった彼が目指しているのが、投・打の両面で、メジャーリーグの一流として活躍する“二刀流”。 最新刊に『夢をつかむパワー!大谷翔平86のメッセージ』(三笠書房)がある、追手門学院大学特別顧問で臨床スポーツ心理学者の児玉光雄さんは、こう話す。 「大谷選手は、『自分はできるんだ、能力が備わっているんだ』と思い込むことのできる『有能感』が桁外れです。周囲の意見に左右されることなく、夢の追求を貫いてきたのではないかと思います」 自分の夢を着々とかなえつつある23歳の若者が、花巻東高校入学した際、自身の才能を最大限に開花させるメソッドと出合った。それが、「目標達成シート」だ。 「大谷選手は高校の佐々木洋監督の指導の下、マンダラートという81マスからなる『目標達成シート』を作成しています。彼は中心のマスに『ドラ1、8球団』(=8球団からドラフト1位指名を受ける)と記し、周囲には技術面に加え、『メンタル』『運』『人間性』など8項目を設け、さらにその周りに、各8項目を細分化・具体化した目標を掲げたんです」(児玉さん) 最初に「ドラ1、8球団」と目標を限定し、この大目標を達成するために必要な要素を8つ周りに書く。そしてその8つの要素を達成するために必要なことを、マスの外にさらに8つ書いていくことで、より明確に各目標を目指したのだという。 「『メンタル』の分野の各項目は、『不安をなくす』ために必要なものです。大谷選手は『160キロ』というハッキリとした目標を持ち、プロ入り後も、クリスマスイブだろうが何だろうが、練習を続けた。シートにあるように『雰囲気に流されない』行動を貫きました。彼の努力は野球だけではありません。『本を読む』とあるように、相当な読書家です。愛読書にスティーブ・ジョブズの自伝がありますが、ジョブズには『自分の直感を信じる勇気を持ちなさい』という言葉があるんです。この言葉のように、大谷選手はどんな状況でも自分を貫いてきました。その努力のすべてが、『ピンチに強い』メンタルを育んだのです」 児玉さんはまた、「運という項目を掲げたことがいかにも大谷選手らしい」と続ける。 「人間性を高める=運を引き寄せるという考えがあるのでしょう。それが周囲の人とうまくコミュニケーションを取ることができて、はじめて一人前の人間なのだという謙虚な姿勢につながっています。『ゴミ拾い』や『部屋そうじ』といった、ふつうは嫌がるようなことでも『人が喜んでくれるなら』と率先して行っています」 それは「強運」を引き寄せるためのトレーニングのようだった。高校の野球部の同期が言う。 「翔平は3年生のとき一度、朝の練習に寝坊して遅刻したんです。監督から『お前はグラウンドに入るな!』と怒られ、彼はあの長身でしゃがんで、ずっと草むしりしていたんです。目標達成シートにある『ゴミ拾い』『部屋そうじ』につながる思いで、反省も込めて黙々とやっていました」 大谷は、周囲の人間とのコミュニケーションもしっかりと取れる“愛されキャラ”でもある。 「みんなで街に出るときは、193センチの長身でただでさえ目立つ翔平の周りを、自分たち同期は囲むようにして歩きました。それは、みんな『友達』で『チームメイト』という気持ちを、翔平も自分たちも平等に持っているからなんです」(前出・野球部同期) 高く高く上を目指して続く大谷のトレーニングを知ると、次の登板、打席からますます目が離せなくなる。
2018年04月19日(写真:アフロ) 「すごく順調にきています。(自軍の)ホームのデビュー戦でホームランが打てることは、あまり予想していなかったんで、『できすぎじゃないか』と思います!」 アメリカ・メジャーリーグのエンゼルスに入団して1年目の大谷翔平(23)。打者として3試合連続のホームランを放つ大活躍を見せた後、淡々とこう語った。投手としても2連勝し、日本のファンのみならず全世界の注目の的となった彼が目指しているのが、投・打の両面で、メジャーリーグの一流として活躍する“二刀流”。 最新刊に『夢をつかむパワー!大谷翔平86のメッセージ』(三笠書房)がある、追手門学院大学特別顧問で臨床スポーツ心理学者の児玉光雄さんは、こう話す。 「大谷選手は、『自分はできるんだ、能力が備わっているんだ』と思い込むことのできる『有能感』が桁外れです。周囲の意見に左右されることなく、夢の追求を貫いてきたのではないかと思います」 自分の夢を着々とかなえつつある23歳の若者が、ここに至るまでの道のりは、どんなものだったのだろうか。原点である家庭について取材した。 大谷は’94年7月5日、元・社会人野球選手で会社員の父・徹さんと、元バドミントン選手の母・加代子さんのあいだに生まれた。長男、長女、大谷と3きょうだいの末っ子だ。 大谷を取材し続け『道ひらく、海わたる大谷翔平の素顔』(扶桑社)を著したスポーツライターの佐々木亨さんが、当時の大谷家をこう語る。 「大谷選手が生まれる1年前に、大谷家は父・徹さんの地元・岩手県にもどりました。いまでもそうですが、大谷家にはテレビが1階のリビングに1台だけ。夕食は父の帰りを待って5人家族全員が食卓を囲むのが当たり前でした。お父さんもお母さんも大谷選手を厳しく叱ったことは『ほとんどなかった』と口をそろえるような、アットホームな家庭で育ったんです」 大谷本人も「ほとんど怒られた記憶がない」と佐々木さんに話したという。 「徹さんに聞くと、親が『おはようございます』『お休みなさい』と言ったり、自分の食器は自分で片づけるという程度のことを率先してやるだけでいいんだと。子どもたちもそれを見て、自然とするようになるだろうと思ったそうなんです」 前出・児玉さんはこう見る。 「親からネガティブな叱責を受けていない子どもは、自分の考えを信じて成長できます。大谷選手が他人の意見によって自分の心の声を消してしまうことがなかったのは、両親の自分をやさしく見守るような子育てに起因していたのではないかとも考えられますね」 小学3年生になる直前に入った野球チームには監督となった父とともに通った。 両親に温かく見守られて育った大谷は、このころから自分で考え、道を開くメンタルトレーニングを開始していた。 「内職をしていたお母さんは大谷選手が小学生になると同時にパートに出ました。息子のチームの監督であるお父さんも、勤めていた自動車会社の夜勤明けでも、そのまま大谷選手と試合に出かけた。身を粉にして働きながら見守ってくれる両親の背中を見て、大谷選手は親に頼るのではなく『自分で努力をしなければ』という自覚を持ったのではないでしょうか」(前出・佐々木さん) 脳科学者の塩田久嗣さんは、大谷の発想について次のように解析する。 「両親の教育で育まれた『根拠のない自信』が二刀流の原点でしょう。彼は幼少期に大脳辺縁系という感情をつかさどる部分がしっかり形成されたのかもしれない。逆境に強く、ポジティブに捉えられる発想は、幼少期に両親から肯定されて育てられた場合に発達することがあるんです」
2018年04月19日【ママからのご相談】小学6年生の子どもがいます。中学受験に向けて塾に通わせていますが、家では私が勉強を見ています。勉強を始めた時期がほかの家に比べて遅かったので、勉強時間は長く取るようにしています。しかし、勉強時間が相当長いのに、なかなか成果が出てきません。子どもは一生懸命に取り組んでいますが、このままだと受験に間に合わないし、折れてしまわないか心配です。●A. やみくもに学習するのをやめて、優先順位付けをご質問ありがとうございます。学習アドバイザーの佐々木恵と申します。一生懸命勉強しているのに成果が出ないと、お子さんはやる気を失ってしまう可能性が高くなりますし、質問者さん自身も不安やイライラが募ってしまい、ぶつかり合ってしまう危険性もありますね。ここで多くの方が、「もっと勉強時間を増やせば伸びるはず」と、さらに勉強時間を増やして、さらに疲弊してしまうという落とし穴にはまります。穴から抜け出すには、勉強時間を伸ばす以外の解決策 が必要になりますが、一体どうしたらいいのでしょうか?●やみくもに学んでも効果がない理由『パレートの法則 』をご存じでしょうか。『社会現象は平均的に分散しているのではなく、偏りがあり、主要な20%が全体の80%に影響を及ぼしている』というものです。勉強時間は長いのに成果がなかなか出てこない人は、やみくもに学び「すべての範囲を完璧にしなければ!」と考え、全てを均等に頭に入れようとします。すべての範囲をまんべんなく学ぶこともとても重要ですが、短時間で高得点を得ようと思うなら、重要な2割を重視して勉強する 必要があります。それで8割の得点を得られるのなら、理想的ですよね。特に、合否を判定する試験では、満点を目指す必要は全くありません。完璧を目指すというよりも、できるところを確実に解き、ほかの人ができるところを間違えずに着実にとり、プラスアルファで点数を積み上げていくことが求められるでしょう。このことからも、優先順位付けがいかに重要か、ご理解いただけると思います。●優先順位付けのコツは“過去問”にありまんべんなく学習するのではなく、重要なところだけを優先して学ぶ方が効率的ですが、問題はその方法ではないでしょうか。受験のプロではない親御さんには、どこが重要かそうでないかの判断は難しいでしょうし、そこまでのことは必要ないでしょう。そこで、活用したいのが、受験校の過去問 なのです。過去問には、重要事項が詰まっています。早い時期に過去問に触れておけば、受験校の傾向と対策を知ることができるので、受験校が何を重視しているかがわかるのです。過去問は直前まで取っておいて、実力試しにする方が多いですが、それではもったいないのです。過去問を有効活用することで、優先すべきポイントがわかるようになるのです。----------勉強時間が長いのに、うまく成果が出てこない人は、一度“まんべんなく”主義を捨てて 、過去問から傾向と対策を分析してみてはいかがでしょうか。本当に必要なところをしっかり学び、モノにすることで自信もつくはずです。ぜひ実践してみてください。【参考文献】・『勉強の技術 すべての努力を成果に変える科学的学習の極意』児玉光雄・著●ライター/佐々木恵(教育コンサルタント)
2016年11月27日