山田尚子監督の完全オリジナルアニメーション映画『きみの色』の報告会にて、本作に新垣結衣が出演していることが分かった。『映画けいおん!』『映画 聲の形』の山田監督最新作は、青春期の物語。新垣さんが演じるのは、音楽で心を通わせていく3人を導くキーマンであるシスターの日吉子。新垣さんは「完成した作品を見たとき、全てが柔らかくて繊細で、心に淡い春色(はるいろ)の風がそよぐような優しい気持ちが、画面から溢れていると感じました」と作品の印象を明かし、「シスター日吉子は、物語の登場人物の中では、大人たちとトツ子たちの間にいる人だと監督から説明をいただきました。トツ子たちに対して、他の大人たちよりもひとつ心の距離が近いというか、静かに、でも熱く、いや実は“かなり”熱く、トツ子たちを見守っている人です。気持ちをわかりやすくストレートに表すセリフはあまりない印象だったので、日吉子がなにか言葉を飲み込んだときの、その奥の気持ちはどんなものかを想像するのも、とてもやり甲斐ある作業でした」とコメントした。監督は新垣さんの出演に関して、「新垣さんのことはテレビや映画のスクリーンを通してでしか知らないのですが、勝手な思い込みかもしれませんが彼女はきっとすごく芯が強くて、ものすごくぶっきらぼうなぐらい真面目な方なんじゃないかな、そしてすごくチャーミングな方なんじゃないかなという風に思っていました。それはまさに今回のシスター日吉子にぴったりなんです」と話している。本作の主演を務めるのは、オーディションを経て、大河ドラマ「どうする家康」に出演した鈴川紗由、『ベイビーわるきゅーれ』シリーズの高石あかり、この春放送予定の「9ボーダー」への出演が決定している木戸大聖に決定。トツ子「声優のお仕事はずっとやりたい目標の一つだった」という、人が色で見えるトツ子役の鈴川さんは、「最初に聞いた時は嬉しいという感情がまだなくて、信じられなくて、頭が真っ白になって涙が止まりませんでした」とふり返る。きみトツ子と同じ学校だったきみ役の高石さんは「山田監督の作品に出演させていただけるということが本当に嬉しくて、感動しました」と参加を喜ぶ。離島に住むルイ役の木戸さんも「不安とプレッシャーがありました。それと同時に山田監督の作品に出られる、という喜びが押し寄せてきました」と語っている。ルイまた今回、本編映像初公開となるスペシャルPVも合わせて到着した。『きみの色』は8月30日(金)より全国東宝系にて公開。(シネマカフェ編集部)■関連作品:きみの色 2024年8月30日より全国東宝系にて公開予定©2024「きみの色」製作委員会
2024年03月19日深くしなやかな音とこまやかな情感で聴き手を魅了する河村尚子。来日するオメル・メイール・ヴェルバー指揮ウィーン交響楽団とブラームスのピアノ協奏曲第1番を弾く。「ブラームスの協奏曲はスケールが大きく、交響曲的な構造。私はシンフォニーも大好きなので、第1番にも第2番にもすごく惹かれます。ピアノ協奏曲第1番には、若かりしブラームスの情熱と勢い、激しさ、悩みと愛情、あこがれ……。さまざまな思いが詰まっています。すごく張り切っているブラームス。いろんなことに挑戦してみたいという姿が、音楽を通して見えてくるようです」24歳のブラームスが完成した若き日の作品。はじめ2台ピアノの作品として着想したとか、当初の第2楽章は《ドイツ・レクイエム》に転用されたとか、完成した第2楽章はミサ曲から転用したものとされているとか、いろんな「物語」のある作品だ。「その第2楽章の讃美歌のような音楽など、伝統的な協奏曲の第2楽章のスタイルではありませんよね。ブラームスはオルガンも弾いていたり、いろんな分野からピアノ音楽にたどり着いた。ピアノだけを中心にしている人だったら、こんな音楽は書けないんじゃないかなと思うのです。オーケストラも書ける。宗教曲も書ける。ピアノ曲も書ける。室内楽も書ける。歌曲も書ける。そういういろんな引き出しを持った人だからこそできあがったピアノ協奏曲だと思います。それらすべてが編み込まれている感じです。その一方で、第3楽章の終わりにはフガートが書かれています。フガートって、協奏曲の第3楽章でよく出てくるんですよ。シューマンも書いているし、ベートーヴェンの第3番もそう。そういう伝統もちゃんと踏まえたうえで、自分の新しい音楽を作っていこうという意気込みが感じ取れます」(C)Marco Borggreveブラームスの作品は、「音楽の波が自然に、心地よく流れていく」と語る。「もちろん弾くのが大変なところはたくさんありますよ(笑)。でも弾いていて心地よいというか、音楽の波に自然に乗せられていくんです。ブラームスって、頭でっかちになりすぎないというか、頭と心、技巧的な部分とエモーショナルな部分のバランスが非常にいい。和声もとても巧みで、弾いても聴いても心地よい。ピアニストたちが弾きたい協奏曲のひとつだと思いますよね。そして、オーケストラにとっても弾きがいがある。ソロ・ピアノの伴奏としてではなく、一種の交響曲として弾くから、その意気込みがオーケストラ側からも感じられます。歌はすべての音楽の原点ですから。私は生徒に教える時、楽器ではなく、まずは自分の声で歌ってみてと言っています。自分も歌います。自分がどう歌う時に把握しないと自然さが出てこないですし、声を出して歌ってみると、ブレスの場所や呼吸の長さがわかってくる。もちろん、楽器でしかできない歌い方もあるので、両方を組み合わせて音楽を作っていければいいですね」指揮者ヴェルバーとは初共演。事前にウィーンでリハーサルをして来日する。(C)Julia Wesely「コンサートだけの指揮者ではなく、2025/2026シーズンからハンブルク州立歌劇場の音楽総監督に就任するなど、ブラームスと同じく、すごく広い分野から音楽を取り出している人物だと思います。アコーディオンを演奏されたり、新しい音楽の見方、コンサートのあり方をどんどん改革していく方なんじゃないかなと思っております」今年は日本デビュー20周年の節目の年。9月にはそれを記念したリサイタル・ツアーも予定している。「佐賀県の有田市を皮切りに、毎年のように演奏会をさせていただいている山形の白鷹町、故郷である兵庫県立芸術文化センター。そしてフィリアホールとサントリーホール。ショパンのソナタ第3番を後半のメインに、現代作曲家・岸野末利加さんに委嘱した《単彩の庭園 IX》の初演、そしてプロコフィエフのピアノ・ソナタ第7番。コンサートの始まりは、能登半島地震で被災された方々へ捧げる祈りとしてバッハ/ブゾーニの《シャコンヌ》を弾きます。やはりバッハは、心をゼロに戻して祈ることができる音楽だと思うのです。岸野さんの作品は彼女の《単彩の庭園(Monochromer Garten)》というシリーズの9曲目。「単彩の庭園」は日本庭園をイメージした作品シリーズで、彼女は京都のご出身でご実家がお寺さんなんです」女性作曲家の紹介は、近年彼女が手がけているプロジェクトの一環。また4月には、東京や山形で、フランスの近現代作品と矢代秋雄、武満徹を組み合わせた新しい取り組みも。21年目の新たな一歩を刻み始めた河村尚子から目が離せない。(宮本明)オメル・メイール・ヴェルバー指揮ウィーン交響楽団■チケット情報()3月13日(水) 19:00開演ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 Op.15[ピアノ] 河村尚子ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 Op.683月14日(木) 19:00開演ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 Op.93ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 Op.92サントリーホール
2024年03月06日異なる個性、スタイルをもつ演奏家が舞台上で共演する東京芸術劇場の人気シリーズ「VS」の第7弾が11月14日(火)に開催される。今回は、ピアニストの河村尚子とアレクサンドル・メルニコフが出演。熱い演奏を繰り広げる。本シリーズは、ふたりのピアニストが、ピアノ・デュオ(2台のピアノ)演奏によって、熱狂的な空間を創造するリサイタル。ここでしか見られない演奏が人気を集めている。河村尚子 (c)Marco Borggreve河村尚子は、ミュンヘン国際コンクールで第2位、クララ・ハスキル国際コンクールで優勝し、ドイツを拠点にウィーン響、バイエルン放送響などにソリストして迎えられた音楽家。2019年秋公開の映画『蜜蜂と遠雷』では主役・栄伝亜夜のピアノ演奏を担当するなど、活動も多岐に渡っており、現在はドイツのフォルクヴァング芸術大学教授も務めている。アレクサンドル・メルニコフ (c)Marco Borggreve河村と共演するのはロシアのピアニスト アレクサンドル・メルニコフ。シューマン国際コンクール、エリザベート王妃国際音楽コンクールなど主要な国際ピアノコンクールで入賞を果たし、ロイヤル・コンセルトヘボウやライプツィヒ・ゲヴァントハウスなどの数多くの名門オーケストラと共演。古楽器とモダンピアノとを弾き分け、多彩なレパートリー、スケールの大きな表現力をほこるピアニストだ。当日は、ふたりのアイデアによりピアノ1台4手連弾の傑作「シューベルト/幻想曲 ヘ短調 D940」をはじめ、ドビュッシー自身の編曲による1台4手連弾版の交響詩『海』、2台ピアノ作品の金字塔「ラフマニノフ/交響的舞曲」が披露される予定。それぞれ異なるアプローチで楽曲に向き合うふたりの演奏が、ステージ上で重なり合う。トップソリストの共演は多くのファンの注目を集めそうだ。「ぴあ」アプリ限定 割引チケット販売中!芸劇リサイタルシリーズ「VS」Vol.7河村尚子×アレクサンドル・メルニコフ11月14日(火)19:00開演東京芸術劇場 コンサートホール(東京都豊島区西池袋1-8-1)出演河村尚子 (ピアノ)アレクサンドル・メルニコフ (ピアノ)曲目シューベルト/幻想曲 ヘ短調 D940ドビュッシー/交響詩『海』(作曲者による1台4手版)ラフマニノフ/交響的舞曲
2023年10月04日国内外で活躍するジャズ・ヴァイオリニストの寺井尚子が企画と原案を担当し、真琴つばさら宝塚歌劇OGが出演する、初のコラボレーション『ALL THAT ZZJAALL THAT ZZKA(オール・ザット・ズージャ/オール・ザット・ズカ)』。出演者から真琴のほか姿月あさと、湖月わたる、風花舞、そして昨年退団したばかりの天寿光希と晴音アキに本作への意気込みを聞いた。「ジャズの“扉”は開けられても“その先”に進むのが難しいと感じていたところだったので、出演できて嬉しい」と微笑むのは、昨年ジャズを歌うアルバムをリリースしたばかりの真琴だ。姿月も「自分のコンサートでジャズを歌うことは多いのですが、OG公演でシャンソンなどではなく、ジャズだけっていうのはなかなか無いですよね。それだけに、このメンバーでの共演が楽しみです」と話す。一方、ジャズダンスの魅力を「解放感」と表現するのは湖月。「そこにハマってたくさん踊ってきましたが、ジャズの歌のほうはまだまだ挑戦中。本作を通してさらに勉強できたら」と意気込む。「“ジャズ”と聞いて一番印象深いのは、歌劇団に在団中、NY公演(1992年)で踊ったベニー・グッドマン」という風花は、「今回は歌が多いので緊張しますが、寺井さんとご一緒できるのが何より嬉しい」と笑顔を見せる。さらに、意外にも在団中はジャズに触れる機会が少なかったという天寿は「他の組でジャズのシーンがあるとワクワクして観ていました(笑)。憧れの先輩たちからたくさん吸収したいです」と気合い充分。晴音もうなずきながら、「“宝塚とジャズ”ってたくさんの名場面が残っていますよね。退団後はジャズを勉強したいと思っていたので、出演できて夢のよう」と喜ぶ。2人とも在団中は“エトワール”(フィナーレでの独唱)経験者だけに、強力な助っ人となりそうだ。選曲については、「真琴さんたちと『せっかくだからハードルの高い曲に挑戦してみたいですよね』と相談しました」と茶目っ気たっぷりに明かす湖月。「まさかの選曲です」(姿月)、「女性同士でのデュエットも」(真琴)など、気になる発言が飛び出した。「宝塚歌劇出身者の声って独特だなと思うんですよ。そういう声を持った人たちが“ジャズ”という枠で歌ったときに新しいハーモニーが生まれる。ぜひ楽しみにしていてください」と語る真琴。「寺井尚子カルテット」の生演奏と、真琴らのパフォーマンスが融合して贈る新たなステージ。その開幕を楽しみに待ちたい。取材・文:藤野さくら【公演情報】ALL THAT ZZJA ALL THAT ZZKA東京:9/22(金)~9/24(日) 日本青年館ホール大阪:9/29(金)~10/1(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2023年08月01日『映画 聲の形』や「けいおん!」の山田尚子監督のオリジナル作品「Garden of Remembrance」が、フランスで開催される世界最古・最大規模のアニメ映画祭「アヌシー国際アニメーション映画祭」にて特別上映されることが決定した。空のビール缶・ウィスキーグラスが床に置かれ、部屋の端には画材やエレキギターが並ぶ、少し散らかった「きみ」の部屋。携帯のアラームが鳴って、ぼんやりと起き上がり「きみ」1人の朝が始まる。「ぼく」が好きだったアネモネの花、それは「ぼく」との思い出を繋ぐ大切な花。ある日部屋のクローゼットを開けると「ぼく」との思い出が「きみ」を包み込んでいき…。これは「きみ」と「ぼく」、そして「おさななじみ」との“さよなら”を描く物語――。本作は、アネモネの花をテーマとして、「きみ」と「僕」と「おさななじみ」の3人の感情が揺れ動く様子を鮮麗に描いた、珠玉のハートフルショートアニメーション。制作は「サイエンスSARU」が担当、キャラクター原案は「花のズボラ飯」の作画を手掛けた漫画家・水沢悦子、音楽は「可愛くてかっこいいピチピチロックギャル」として活動するシンガーソングライター・ラブリーサマーちゃんが書き下ろす。なお、本作に加え、日本作品からは『BLUE GIANT』、『THE FIRST SLAM DUNK』、『名探偵コナン 黒鉄の魚影』などが特別上映される。「Garden of Remembrance」は2023年リリース予定。(cinemacafe.net)
2023年05月08日2月7日、大手自動車メーカー「スズキ」は社外取締役の候補者として、元陸上競技選手でスポーツキャスターの高橋尚子(50)を選任したと発表した。6月開催予定の第157回定時株主総会での承認を経て、正式決定となる。選任理由について、スズキは「高橋氏はスポーツ分野の第一人者であり、環境や社会貢献などへの取り組みを評価する『ESG』への対応などで知見を発揮してもらいたい」と語った。’00年のシドニー五輪女子マラソンで日本女子陸上史上初となる金メダル獲得という、偉業を達成した高橋。愛くるしいキャラクターもあって大ブレイクし、同年には国民栄誉賞も受賞した。’08年10月の現役引退以降は、マラソン解説者やスポーツキャスターとして数々の番組に出演で活躍。途上国の子供たちへの慈善活動などにも積極的に参加していた。“Qちゃん”の愛称で日本中から親しまれた高橋だが、あまり公言してない趣味があった。16年7月下旬、高橋が向かったのは、なんと千葉市内にある当時の自宅から10キロほど離れたパチンコ店。午前11時半ごろに入店すると、大きなマスクで顔を隠したまま、ホラー小説『リング』の台の前へ。黙々と打ち始めるやいなや10分ほどで大当たりを引くと、2時間後にはなんと “ドル箱”が14箱も積み上げられるほどに。その後はトイレ休憩以外、食事もとらずに黙々と打ち続ける。そして、午後8時頃にマネージャーも務める恋人男性が車で迎えに来ていたが、大当たり中だったからなのか、そのまま続行。結局、終わったのは午後10時40分ごろで、すでに他の客はすべて帰っていた。ぶっ通しで11時間もパチンコを打ち続けたその翌日、本誌が直撃すると、「月に何回かしか行かないです。昨日は休みだったので……あくまで息抜き(苦笑)」と明るく答えていた。現在、日本オリンピック委員会の理事や日本陸上競技連盟の常務理事も務めている高橋。社外取締役への選任も今回が初めてではなく、昨年6 月には、’19年からスポンサー契約を締結していた「スターツコーポレーション株式会社」の社外取締役にも就任が決定していた。激務の疲れをひそかにパチンコで癒やしているのかも?
2023年02月10日長編アニメーション映画『きみの色』が、2024年8月30日(金)に公開される。監督は山田尚子、脚本は吉田玲子。『映画 聲の形』山田尚子監督の新作映画映画『きみの色』は、『映画 聲の形』「けいおん!」「平家物語」などを手掛ける山田尚子が監督を務める新作映画。思春期の少女たち、それぞれが向き合う自立、葛藤、恋の模様を、“音楽×青春”というテーマを通じてまるで絵画のように美しい映像で描写する長編アニメーション作品だ。“感情の色”が見える少女の恋と青春物語の主人公は、長崎市内のミッション・スクールに通う高校生の少女・トツ子。人の感情が「色」として見える、不思議な能力を持っている。友達や家族の「色」を暗くしないため、気を遣い、空気を読み、その場を取り繕うようなウソをついてしまう彼女。そんなトツ子が、美少女のきみと、音楽好きのルイとともにバンドを組むことになる。主人公・日暮トツ子…鈴川紗由長崎市内の全寮制ミッションスクールに通う高校生。子供の頃から嬉しい色、楽しい色、穏やかな色など人が「色」で見える。唯一、自分自身の「色」だけは見えない。バンドでピアノを担当する。作永きみ…髙石あかりトツ子と同じ学校に通っていたが突然中退してしまった、美しい色を放つ少女。学校に行かなくなってしまったことを同居する祖母に打ち明けられていない。毎日学校へ行くふりをしながら古本屋でアルバイトをしている。トツ子とバンドを組むことになり、ボーカル、ギターを担当する。影平ルイ…木戸大聖街の片隅にある古書店で出会った音楽好きの少年。トツ子とバンドを組む。母に医者になることを期待されているが、隠れて音楽活動をしている。物語のキーマンに新垣結衣また、物語のキーマンであるシスター日吉子役は、映画『正欲』『違国日記』など話題作への出演が続く新垣結衣が声優として出演する。シスター日吉子…新垣結衣トツ子が通う学校のシスター。同校の卒業生でもあり、生徒たちにとっては良き相談相手。トツ子、きみ、ルイの3人を導く。脚本は吉田玲子&最強のスタッフが集結映画『きみの色』には、最強のスタッフが集結。脚本は、『猫の恩返し』「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」「若おかみは小学生!」の吉田玲子が担当。監督の山田尚子とは、「けいおん!」シリーズ以降、幾度となくタッグを組んでいる。音楽は、『映画 聲の形』『リズと青い鳥』や、「チェンソーマン」のサウンドトラックを担当する作曲家・牛尾憲輔。企画・プロデュースは、『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』など新海誠作品を手掛けたSTORY inc.、制作・プロデュースは、『夜は短し歩けよ乙女』や「平家物語」のサイエンス SARUが担う。アニメ映画『きみの色』あらすじわたしには、人の心が「色」で見える長崎市内のミッション・スクールに通う高校生の少女・トツ子は、人の感情が「色」として見える。嬉しい色、悲しい色、穏やかな色、怯えている色……。友達や家族の「色」を暗くしないため、気を遣い、空気を読み、その場を取り繕うようなウソをついてしまう。そんなトツ子は、街の片隅にある古書店で出会ったとても美しい色を放つ美少女と、音楽好きの少年とバンドを組むことになる。やがて訪れる学園祭、そして初めてのライブ。会場に集まった観客の前で見せた、3人の「色」とは。【詳細】アニメ映画『きみの色』公開日:2024年8月30日(金)監督:山田尚子脚本:吉田玲子出演:鈴川紗由、髙石あかり、木戸大聖、新垣結衣音楽:牛尾憲輔キャラクターデザイン・作画監督:小島崇史キャラクターデザイン原案:ダイスケリチャード企画・プロデュース:STORY inc.制作・プロデュース:サイエンス SARU製作:「きみの色」製作委員会
2022年12月06日『映画けいおん!』『映画 聲の形』などを手掛けた山田尚子監督による最新オリジナル長編アニメーション映画『きみの色』の制作が発表された。2023年秋に劇場公開予定の本作のテーマは、山田監督が最も得意とする思春期の青春。少女たちそれぞれが向き合う自立、葛藤、恋の模様が、まるで絵画のような美しい映像で描かれる。脚本を務めるのは、スタジオジブリや京都アニメーションで数々の作品を手掛け、山田監督とは「けいおん!」シリーズ以降幾度となくタッグを組む吉田玲子。音楽は『映画 聲の形』『リズと青い鳥』など山田監督作品のほか、話題作『チェンソーマン』のサウンドトラックを担当する作曲家・牛尾憲輔が手掛ける。企画・プロデュースは日本映画史に残る金字塔『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』など、新海誠作品を手掛けたSTORY inc.、そして『夜は短し歩けよ乙女』で第41回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞などを受賞、最近では山田監督と共に伝統美と最先端の演出を組み合わせたテレビアニメ『平家物語』を生み出し、日本を代表するアニメーションスタジオとなったサイエンスSARUが制作・プロデュースを担う。本作は「人の外側と内側、そこから生みだされるそれぞれのかたちを描いてみたいというところから始まった」と山田監督は明かす。そして吉田が山田監督の描きたい内容を聞き、脚本を作り始めた。吉田は「《色が見える女の子》というのは山田監督のアイディアで、すごく映像的で面白いなと感じました。繊細な心模様と、そこに寄り添うような監督の演出を今回もとても楽しみにしています。」と本作に期待を寄せる。また、脚本に対して「吉田さんの書かれる彼らの物語はとてもやさしく、そしてとてもチャーミング」という印象を持つ山田監督は「音楽を通じてお互いに共鳴していく主人公たちの、やわらかく力強い足取りを描いていきたい」と作品完成へ向けて抱負を語っている。<コメント>■山田尚子監督人の外側と内側、そこから生みだされるそれぞれのかたちを描いてみたいというところから『きみの色』は始まりました。人はきっと、その時向いている方向に進んでいくわけで、それが前であっても後ろであってもどちらでも成り立っていくと思うのですが、できれば前に進んでいきたい。音楽を通じてお互いに共鳴していく主人公たちの、やわらかく力強い足取りを描いていきたいと思っています。吉田さんの書かれる彼らの物語はとてもやさしく、そしてとてもチャーミングです。悩んだり、何かを変えようとするときに起こる摩擦は、これからを切り開いていくためのとても大切な成長痛であって、その痛みがそれぞれの人が放つ色になっていくのかなと思うのです。たくさんの色が出会って、混ざり合った先にはどんな色の世界が待っているのでしょう。絵具を混ぜるパレットのような、または光を集めて分散させるプリズムのような、そんな物語を描いていきたいと思っております。よろしくおねがいいたします。■吉田玲子『きみの色』は、山田監督の「こういうことやりたいなぁ、こういう子たちを描きたいなぁ」というメモをいただいて、そこから脚本を作り始めました。《色が見える女の子》というのは山田監督のアイディアで、すごく映像的で面白いなと感じました。山田監督の作品は、登場人物たちがおずおずと手を伸ばし扉を開いていくような感じがあって、今回もその感覚を大切にしました。そこにある世界と、自分。そこにある現実と、自分。触れると痛いような傷ついてしまうようなものの中で、楽しさや愛しさや生命力を見出していくことを意識しながら書きました。繊細な心模様と、そこに寄り添うような監督の演出を今回もとても楽しみにしています。『きみの色』はある意味、原点に戻ったようでもあり、今までの集大成的な面もありながら、さらに新しく踏み出していけるような作品になるのではないかと思っています。光の当たり方によって、濃く見えたり、淡く見えたりはしますが、誰もが自分の『色』を持っていると思います。観てくださった方が、それぞれの『色』を愛おしく思えるような映画になっていると、うれしいです。『きみの色』スーパーティザーPV<作品情報>『きみの色』2023年秋 全国公開監督:山田尚子『映画 聲の形』『リズと青い鳥』『けいおん!』『平家物語』脚本:吉田玲子『猫の恩返し』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』『若おかみは小学生!』音楽:牛尾憲輔『映画 聲の形』『チェンソーマン』企画・プロデュース:STORY inc.『君の名は。』『天気の子』『すずめの戸締まり』制作・プロデュース:サイエンス SARU『夜は短し歩けよ乙女』『映像研には手を出すな!』『平家物語』
2022年12月03日「けいおん!」シリーズの山田尚子監督と脚本・吉田玲子がタッグを組んだ完全オリジナルアニメーション映画『きみの色』の製作が決定。スーパーティザーPVが公開された。長崎市内のミッション・スクールに通う高校生の少女・トツ子は、人の感情が「色」として見える。友達や家族の「色」を暗くしないため、気を遣い、空気を読み、その場を取り繕うようなウソをついてしまう。そんなトツ子は、街の片隅にある古書店で出会ったとても美しい色を放つ美少女と、音楽好きの少年とバンドを組むことになる――。京都アニメーション作品『映画けいおん!』『映画 聲の形』を手掛ける山田尚子監督は、些細な日常を瑞々しく鮮やかに描く稀有な映像センスと、小さな心の揺れ動きさえ表現していく繊細な演出で、全世界から最も脚光を浴びるアニメーション監督の一人。待望の最新作となる『きみの色』のテーマは、山田監督が最も得意とする思春期の青春。少女たちそれぞれが向き合う自立、葛藤、恋の模様が、まるで絵画のような美しい映像で描かれる。脚本は、スタジオジブリや京都アニメーションの作品を手掛け、山田監督とは「けいおん!」シリーズ以降、幾度となくタッグを組んできた吉田玲子。音楽は『映画 聲の形』「チェンソーマン」のサウンドトラックを担当する作曲家・牛尾憲輔。企画・プロデュースは『君の名は。』『すずめの戸締まり』など新海誠作品を手掛けた「STORY inc.」が担当する。また、山田監督と共に伝統美と最先端の演出を組み合わせた「平家物語」を生み出し、日本を代表するアニメーションスタジオとなった「サイエンスSARU」が制作・プロデュースを担う。スタッフコメント▼監督・山田尚子人の外側と内側、そこから生みだされるそれぞれのかたちを描いてみたいというところから「きみの色」は始まりました。人はきっと、その時向いている方向に進んでいくわけで、それが前であっても後ろであってもどちらでも成り立っていくと思うのですが、できれば前に進んでいきたい。音楽を通じてお互いに共鳴していく主人公たちの、やわらかく力強い足取りを描いていきたいと思っています。吉田さんの書かれる彼らの物語はとてもやさしく、そしてとてもチャーミングです。悩んだり、何かを変えようとするときに起こる摩擦は、これからを切り開いていくためのとても大切な成長痛であって、その痛みがそれぞれの人が放つ色になっていくのかなと思うのです。たくさんの色が出会って、混ざり合った先にはどんな色の世界が待っているのでしょう。絵具を混ぜるパレットのような、または光を集めて分散させるプリズムのような、そんな物語を描いていきたいと思っております。よろしくおねがいいたします。▼脚本・吉田玲子『きみの色』は、山田監督の「こういうことやりたいなぁ、こういう子たちを描きたいなぁ」というメモをいただいて、そこから脚本を作り始めました。《色が見える女の子》というのは山田監督のアイディアで、すごく映像的で面白いなと感じました。山田監督の作品は、登場人物たちがおずおずと手と伸ばし扉を開いていくような感じがあって、今回もその感覚を大切にしました。そこにある世界と、自分。そこにある現実と、自分。触れると痛いような傷ついてしまうようなものの中で、楽しさや愛しさや生命力を見出していくことを意識しながら書きました。繊細な心模様と、そこに寄り添うような監督の演出を今回もとても楽しみにしています。『きみの色』はある意味、原点に戻ったようでもあり、今までの集大成的な面もありながら、さらに新しく踏み出していけるような作品になるのではないかと思っています。光の当たり方によって、濃く見えたり、淡く見えたりはしますが、誰もが自分の『色』を持っていると思います。観てくださった方が、それぞれの『色』を愛おしく思えるような映画になっていると、うれしいです。『きみの色』は2023年秋、全国東宝系にて公開予定。(cinemacafe.net)
2022年12月03日ピアニスト河村尚子が、「シューベルト プロジェクト」の第2夜を開く[9月13日(火)紀尾井ホール]。シューベルト晩年のソナタ4曲を2回に分けたリサイタル。今年3月に続く今回は第20、21番の傑作2曲を軸に3曲の小品を組み合わせた。「晩年のソナタは音楽的にもドラマ的にも充実していますし、インテンシヴな瞬間がある、メッセージとしてすごい強い音楽です。病気に悩まされた晩年の苦しみや孤独が伝わってくるのを感じます。愛に憧れて、でも応えてもらえなかったシューベルト。孤独を感じることは誰にもありますが、シューベルトのように、それを音で表現した、〝孤独な音楽〟というのは多くありません。それが聴衆の心を摑むのだと思います」シューベルトを〝歌曲王〟のイメージで考えると、つい旋律に目が向くが、それだけではないという。「ものすごく挑戦的な和声を使っていたりするんですね。とても穏やかだったところで、えっ、こんな和声を使うの?という、突然すごく落胆するような表現をする。そこがスパイスになっているのがシューベルトの聴きどころだと思います。旋律の美しさだけではないのです」2018年から2年間、全4回のリサイタルで集中的にベートーヴェンと向き合った。その経験から、あらためて見えてきたシューベルト像もある。「晩年のシューベルトが、ベートーヴェンの作品から受けた刺激を、より意識するようになりました。たとえば調性。シューベルトの第20番はベートーヴェンの作品101(第28番)と同じイ長調。第21番と《ハンマークラヴィーア》(第29番)は変ロ長調です。3月の第1夜で弾いた第18番はピアノ協奏曲第4番と同じト長調で、始まり方もそっくり。シューベルトが、『ベートーヴェンは素晴らしい。でもここに僕がいるんだ!」とアピールしているのを感じます。あとは弾き方ですね。アーティキュレーションとかペダルとか。ロマン派に振り分けがちですが、より古典的な要素を持っているのを感じるようになりました」取材では、「シューベルトのことを話せてうれしい」と作曲家への愛を丁寧に語ってくれた。シューベルトに必要なのは、自然な声で歌える範囲の表現と、弦楽合奏をイミテーションしながら作る広がりのある音色だという。6年後の2028年には生誕200年を迎えるシューベルト。そのカウントダウンを彼女のコンサートから!第1夜を聴き逃した人もまだ間に合う。(宮本明)
2022年08月08日松竹株式会社メディア事業本部の藤井宏美と、ユーロスペース支配人の北條誠人がオンライン・コミュニティ「ミニシアタークラブ」で対談を行った。「ミニシアタークラブ」はミニシアターや映画好きのためのコミュニティ。そこにユーロスペースで特集上映されている「篠田正浩監督生誕90年祭『夜叉ケ池』への道モダニズムポップアートそしてニッポン」の企画者である藤井がゲストとして出演し、今回の対談に至ったのだという。現在上映中の『夜叉ヶ池』の話から特集上映に対する考え方などで盛り上がったトークセッションを以下にレポートする。――藤井の業務内容について。藤井:松竹のメディア事業部という部署に所属しています。劇場公開後のパッケージ、配信、TV、海外などいわゆる2次利用と言われるものの権利窓口を扱う部署です。その中で私は知財事業室というところにいるのですが、松竹の過去の作品をいかに多くの人に見ていただくかを考えて企画、推進していく仕事をしています。――特集上映開催までの経緯。藤井:篠田正浩監督と坂東玉三郎さんが登壇された初日舞台挨拶でもおっしゃってたんですが、昨年7月に、お二人が再会された時に、今の人たちにもう一度『夜叉ヶ池』を見てもらいたいですね、というお話になりその翌日には松竹に連絡をいただきました。『夜叉ヶ池』を多くの方に見ていただくには、現存のフィルムの状態やフィルム映写機がない劇場も多いことを考慮して4Kデジタルリマスター版を制作しようということになりました。デジタル化にあたってはいろんな方法があるんですが『夜叉ヶ池』ではフィルムの1コマ1コマを4Kでスキャンしリマスターしました。さらにそこから2次利用の素材も劇場上映用素材も作り、さらに篠田監督は海外でも非常に人気が高いので海外の映画祭でもかけられないか、など動き始めました。初日の舞台挨拶は北條さんに司会もしていただき本当に好評でした。北條:客層も幅広くて、盛況でした。※ユーロスペースでの『夜叉ヶ池 4Kデジタルリマスター』の上映は4Kデジタル上映マスター版をもとにした2K上映。――リマスターについて。北條:リマスターされる作品の条件というか基準などは何かあるんでしょうか?藤井:リマスターは、公開当時(の上映プリント)の状況を復元することなので、監修についていただける方、例えば当時を知るキャメラマンの方などに立ち会っていただけるかどうか、ということも重要な要素です。例えば小津監督作品でも『東京物語』からやったんですが、当時撮影助手でつかれていた川又昂キャメラマンに見ていただきました。あと『青春残酷物語』や『砂の器』なども。――特集上映の面白さとは。北條:篠田監督が今年90歳ということで、そのお祝いになるような企画ができないか?とはじめにお話をいただきました。その時、篠田監督の作品本数は非常に多いのでどうセレクトしていこうか?ということが頭をよぎりました。(笑)結果的に企画コンセプトとしては落ち着いたのは『夜叉ヶ池』に至るまでの10本を篠田監督に選んでいただくということで、上映作品を決定しました。司会:ユーロスペースの特集上映のジャンルを見るとかなり幅広く、バラエティーに富んでいると思うんですが狙いはあるんでしょうか?今年ですとイスラーム映画祭、相米慎二監督特集、タルコフスキー特集など。北條:日本映画に関して言いますと、全ての世代に向けて満遍なく、というのを意識しております。藤井:私たちは過去の作品や監督、俳優に新しいお客さんが出会って欲しいと思っているので、いろんな年代の客層がいらっしゃるユーロスペースさんは本当にありがたいです。『夜叉ヶ池』は玉三郎さんのファンと特撮ファンという要素があるので、まずは北條さんにご相談しました。――次の企画について。北條:次は小津120周年ですか?藤井:そうですね、2022年頃から準備に入ります。『周年』の企画というのは企画を立てやすいんですが、それ以外の企画も考えていきたいです。例えば、今を生きている私たちに考えるきっかけを与えてくれるような作品や監督、人物に焦点をあてたような。■配信情報ミニシアタークラブ対談「藤井宏美(松竹株式会社)×北條誠人(ユーロスペース支配人)」対談動画は、ミニシアタークラブに入会後、閲覧可能。■上映情報「篠田正浩監督生誕90年祭『夜叉ケ池』への道モダニズムポップアートそしてニッポン」7月30日(金)まで上映劇場:ユーロスペーストークショー7月17日(土)13:00回の上映後ゲスト:樋口真嗣(映画監督)聞き手:樋口尚文(映画評論家 / 映画監督)※オンライントークになる場合もあり。
2021年07月16日MONO NO AWAREの曲を初めて聴いた時、セオリーにとらわれない自由な音の奏で方と、言葉使いのセンスが独特なバンドだなと感じた。ニューアルバム『行列のできる方舟』を聴いて、ますます“こんなバンド、他にいない感”が強まり、嬉しくなった。みんなのありのままの心境を音楽として言語化したかった。「3作目までは人間の優しい面を曲にして、優しい人コミュニティをつくる感覚でしたけど、それが前回の『かけがえのないもの』で完成した気がしていました。今回はそれよりみんなが実は、抱えてるありのままの心境を言語化できないかな、と思ったのが制作のスタートでした」と話すのは、全曲の歌詞を手がける玉置周啓(Vo&Gt)さん。メンバー4人は熱いメッセージを投げかけるバンドを聴いてきた世代だと思うけど、その影響は本作でも希薄。それが彼らの個性でもあるのだけど。「みんな頑張っていこう!ではなく、言語化できないもの、微妙な心境をどう詰めていくかを、考えていますね。もともと内気な4人なので、その心の内が音楽にも絶妙に出ていると思う。明るい気持ちで頑張ろう、という提示は、そもそもしていないです」(加藤成順・Gt)『行列のできる方舟』は、玉置さんがメロディに歌詞の一部の大事なワードだけをのせた状態でメンバーに示し、トラックをつくり、最後に歌入れをしたそう。そんな制作もはじめての試みだったとか。レコーディングは歌詞がヌケていて不安じゃなかったのだろうか。「私はテーマについて聞きすぎてしまうと、そっちに寄せてしまうので(笑)、わからないまま自分で見えた風景とか、ふんわりとしたイメージでとどめておいたことがよかった気がします」(竹田綾子・Ba)「レコーディングしながら、例えば女性らしさのような誰かが描いた理想像に向かって頑張るというより、このアルバムは、ありのままでいることの価値観にフォーカスしているのかな、となんとなく思いながら創作しました」(柳澤豊・Dr)このアルバムを聴き終わって感じるのは、さまよっていた心が落ち着きを取り戻すようなピースフルな感覚だ。前に進むよりも、ちょっと自分を見つめてみよう、私は私だもの、という気持ち。「今回のニューアルバムの全体のトーンをいちばん表しているのが『異邦人』という曲だと思います。人間はみんなバラバラです、ということを分かりやすく伝えたかったんですよね」(玉置)とにかくすべての歌詞を、じっくり読むことをおすすめ。玉置さんの言葉の裏にある景色を想像するのも楽しいアルバムだと思う。「『方舟』とは頑張った人だけが乗れる理想郷ですが、過去100年はあったかもしれないけど、もうないんじゃないかと思う。いま助かる方法は、自分の身でもってどうにかするしかない、と感じます。それはアルバム全体で言いたいことのひとつ」(玉置)最後に嬉しい話。玉置さんが大学生の時、グループワークで歴代のananを取り上げ、“時代とananの関連性”を、国会図書館に通って調べ尽くしたそうでびっくり。「時代とともにエロくなっていったことがわかった」とのことなので、そのレポート読んでみたいな。もののあわれ左から、柳澤豊(Dr)、竹田綾子(Ba)、玉置周啓(Vo&Gt)、加藤成順(Gt)。2017年に『人生、山おり谷おり』でデビューし、独特の言語感覚とユニークな楽曲が注目された。レコ発ツアー「ODORI CRUISING」は6月20日の札幌を皮切りに、ファイナルの7月25日の東京Zepp Diver Cityまで7都市を回る。4th Album『行列のできる方舟』。劇場アニメ『海辺のエトランゼ』主題歌「ゾッコン」や、配信シングル「そこにあったから」に、新曲8曲を加えた全10曲入り。¥2,860(SPACE SHOWER MUSIC)※『anan』2021年6月16日号より。写真・川村恵理取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2021年06月15日コロナ禍で数々の公演が中止となり、半年ぶりの帰国となるドイツ在住のピアニスト、河村尚子。充実した演奏活動を繰り広げ、今や日本を代表する実力と人気を兼ね備えたピアニストだ。待ちに待った日本での公演は、詩的なロマンにあふれた傑作・シューマンのピアノ協奏曲を披露する。14日間の待機の後、音楽の喜びを爆発させてくれるに違いない。指揮は、かつて日本フィルの正指揮者として数々の共演も記憶に残る沼尻竜典。リューベック歌劇場では音楽総監督として、びわ湖ホールでは芸術監督として成功を収めてきたが、2022年度からは神奈川フィルハーモニー管弦楽団音楽監督に就任することが決定している。メインプログラムはショスタコーヴィチの交響曲第5番。20世紀ソヴィエト体制下で抑圧されながらも芸術家として強い信念をもって作品を生み出したショスタコーヴィチ。緊張感と劇的なドラマ性を孕み、今を生きる私たちの魂をも強く揺さぶる作品は必聴だ。先日、久しぶりに指揮した日本フィルは、伝統である元気の良さや、音楽の楽しさをお客様に懸命に伝えようとする姿勢はいまだ健在でした。河村尚子さんと共演できることも、大きな喜びです。<河村尚子>18歳の頃から弾き続けているシューマンの協奏曲、読み返せば読み返すほど味が滲み出てきます。皆様に音楽を聞いて頂くのは半年振りです。精一杯演奏に集中しますので、音楽会をどうぞお楽しみに![公演情報]第366回横浜定期演奏会[ライブ配信あり]2021年4月16日(金)19:00開演 神奈川県民ホール第391回名曲コンサート2021年4月18日(日)18:00開演 サントリーホール指揮:沼尻竜典ピアノ:河村尚子シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 op.54ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 ニ短調 op.47
2021年04月08日『アイラヴユー』という極めてシンプルなタイトルをつけて、4人組ロックバンドSUPER BEAVERがメジャーシーン復帰後初めてとなるアルバムをリリースした。ありふれたことばだけど、歌を通して正面から言われたらやっぱり嬉しいし、その歌詞からも大きな力をもらえるのだ。あなたに向けて、いま伝えたい言葉は「アイラヴユー」。「いま歌いたいことを考えたら『アイラヴユー』が浮かんできて。それは愛を伝えたいというよりも、誰かに声をかけてあげたい、逆に、かけてもらいたい、そんな気持ちを欲していたのかも。好きだ、でもあり、頑張れとか、いろんな意味を含んでいると思います」(柳沢)彼らの魅力は、徹底的にそこにいる〈あなた〉に向けていること。ライブではボーカルの渋谷さんが「あなたたちじゃない、あなたに歌ってるんだ」と叫ぶ。あなた=わたし、にまっすぐに届く力強い歌。そんな彼らの姿勢は、大勢のファンの心を動かしてきた。「アルバム『アイラヴユー』も、そこに繋がっていると思います。誰かと向き合うとき、集団と捉えないでひとりひとりと真摯に向き合うことを、ずっと大事にしてきました。音楽家として、対ひとり、として対峙しないと失礼に感じます」(渋谷)今回の楽曲制作は、コロナの影響もあり普段通りに4人揃ってはスタジオに集まれず、個々の作業時間が多かったそうだ。「初めて自分でアレンジした音源をデータでやり取りして、今まで以上に個人の力が試されたかな。でもおかげで時間をかけ、細かい部分まで自分で楽曲を詰めることができたのはメリット。ライブがなくなった代わり、すごい集中力でアルバムを作り上げた感があります」(上杉)「ドラムは家で叩けないので、あわてて電子ドラムとパソコン用の音楽ソフトを買って、データのやり取りをしました。みんなで集まって、せーの、で音を合わせる前に、調整できたのは良かったですね」(藤原)「去年起こったいろんなことが無意識に新曲に影響した部分はあります。それでも時代を超えて響く曲が作れたし、11曲並べたとき一本芯が通ってると感じ、嬉しかった」(柳沢)アルバム『アイラヴユー』は、高橋一生主演のドラマ『僕らは奇跡でできている』主題歌の「予感」を筆頭に、インディーズ時代に制作した楽曲から、去年生まれた新曲まで、この3年間の彼らの重要なタイムラインをなぞる作品でもある。そしてリリース後は、結成15周年アニバーサリーの最後を飾るツアーが待っている。『アイラヴユー』【初回生産限定盤A(CD+BD)】BDに無観客配信LIVE@横浜アリーナと制作ドキュメント収録。¥4,500【初回生産限定盤B(CD+DVD)】¥4,000【通常盤(CD)】¥3,000*すべて税込み(Sony Music Records)スーパービーバー左から、上杉研太(B)、藤原“32才”広明(D)、渋谷龍太(V)、柳沢亮太(G)。2009年メジャーデビュー後、’12年に自主レーベルを設立し、約10年間インディーズシーンで活動。昨年シングル『ハイライト』でメジャーに復帰。※『anan』2021年2月10日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2021年02月09日撮影前、顔を合わせた瞬間からお喋りが止まらない松本穂香さんと奈緒さん。二人が仲を深めるきっかけになったのは、楽屋を共にして撮影に挑んだ角川春樹監督最後の監督作、映画『みをつくし料理帖』。松本:ベテランのキャストが揃う中、私が主演でいいの?と真っ先に思いました。でも監督は、これまでの私のお芝居を見た上でお声がけくださったそうなので、不安を拭ってやり抜こうと決めたんです。奈緒:角川監督は怖い方かと思っていましたが(笑)、初めてお会いした日、笑顔でいろんなお話をしてくださって。とても優しい方でした。松本さんは江戸で料理人をする澪を、奈緒さんは遊郭で花魁(おいらん)・あさひ太夫と名乗る野江を演じている。二人はかつて生き別れた幼馴染みだ。松本:澪は、自分の大切にしていることや仕事に対する志をしっかり持っていて、そういう思いを表に出すのではなく内に秘めている女性。役作りにおいてその意志の強さは、「何があってもずっと一緒や」と約束した野江ちゃんのことを思いながら演じることで、おのずと表現となってにじみ出てくると信じて撮影に臨みました。普段の役作りでも、何か一つブレない軸を心に留めておくことを意識しているんです。奈緒:野江はすごく大きな孤独と寂しさを抱えた女性ですが、でも、生きることを絶対に諦めない人。生活が困難な時代で美しく生き抜く花魁は憧れの役でしたが、悩むことも多くて、撮影中は楽しい思い出もあるけど不甲斐ない思いもたくさん。同世代の松本さんにずいぶん助けられたと思う。完成作を見た時はクランクアップからまだ日が浅く、生傷が残ったまま見たので、顔を覆って指の隙間から見たいぐらいでした(笑)。松本:自分の足りない部分とかが目についちゃって客観的には見られないよね。でも、現場で撮影を見ていた時、あさひ太夫さんの目線の動かし方は素晴らしかったです!奈緒:言えないことが多い女性なので、目線の演技は意識していたの。だからそう言われると照れるけど嬉しいです。習っていた日本舞踊の動きが役に立ったところもあると思います。松本さんは、見ている人に“澪は本当にいるかも”と信じさせる力のある人。生まれ持ったものに加え、お芝居の力と人柄から生まれた美しい目がとても魅力的でした。松本:泣いちゃいそう…。本編には澪が作る美しい料理が次々と登場するが、ところで二人にとっての思い出の料理とは?奈緒:初めてお母さんに教えてもらった九州のちょっと甘い筑前煮かな。この先も私はずっと、母の味を引き継いで作り続けるんだと思います。松本:私は…カレーかな。奈緒:私が一番好きな食べ物!松本:実は二人でいつかキャンプに行こうと話しているんです。奈緒:そこでカレーを振る舞ってくれる約束だもんね。これは思い出の料理になる!え…期待、重い?松本:頑張って作るね!(笑)映画『みをつくし料理帖』製作・監督/角川春樹原作/高田郁『みをつくし料理帖』出演/松本穂香、奈緒ほか10月16日より全国公開。幼い頃に生き別れた澪と野江。10年後、澪は料理人に、野江は幻の花魁として名を知らしめていた。松本さん・シューズ¥86,000(ジミー チュウ TEL:0120・013・700)イヤリング¥54,000リング、左手人差し指¥80,000右手中指、ゴールド¥50,000右手中指¥48,000(以上ボロロ)まつもと・ほのか1997年2月5日生まれ、大阪府出身。公開中の映画『青くて痛くて脆い』や『君が世界のはじまり』など今年は5本の映画と、『竜の道 二つの顔の復讐者』など2本のテレビドラマに出演。なお1995年2月10日生まれ、福岡県出身。10月27日から放送開始のドラマ『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・CX系)に出演。また、出演映画『君は永遠にそいつらより若い』が2021年公開予定。※『anan』2020年10月21日号より。写真・土佐麻理子ヘア&メイク・橘 房図取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2020年10月18日『愛のひみつ』というちょっとドキッとするタイトル通り、ハンバートハンバートの新作はLOVEが溢れるアルバム。テーマは全曲LOVE。さまざまな愛の物語を奏でます。「曲が出そろったところで、テーマを探ったらLOVEだな、と思いまして」と全曲の作詞・作曲を担当する佐藤良成さん。その12曲はさまざまな愛のカタチ、恋人、夫婦、家族、ときどき片思い。「ドラマの配役を決めるように、この曲は主役、こっちは三枚目の役とか、バリエーションが出るように曲を配していますね」(佐藤)一曲一曲がまるで一編のショートムービーのような物語がある愛の歌を、佐野遊穂さんのふんわりしたボーカルでしみじみと聴かせてくれる。「ずっと仕事部屋にこもって作曲しているので、知らないメロディが聞こえてくると、新しい曲できたな、って。気付いても、いつも何も聞かないんですけどね」(佐野)「詞がついてからはじめて聴かせます。ボツになることもあるし、書き直しもあります。けっこう手厳しいんですよ(笑)」(佐藤)「歌い手というより、リスナーの気持ちで、ここまで言っちゃったらつまらないよとか、そんなアドバイスをしていますね」(佐野)佐藤さんと佐野さんは夫婦デュオ。自宅に仕事部屋があり、3人の子供たちと家族として日々生活する中で曲が生まれ、ハンバート ハンバートの作品になる。そんなほっこりしたイメージや、佐野さんのキュートな歌声と相まって、ふたりの音楽に癒される!という人も多いけど、このアルバムには、ちょっと後ろめたい“闇”や“深淵”を覗いてしまったような瞬間もある。詞の世界にもじわりと浸りたい作品なのだ。「作詞は苦行ですね。ただ自分の実体験というわけではなく、人生において見聞きしたものを引っ張ってくることが多いかもしれない」(佐藤)結成して22年間、トラックは佐藤さんがアレンジし、楽器演奏もほぼひとり。アレンジは何十パターンも作るそうだ。選び抜いたアレンジに、多彩な音色の楽器を駆使して作られる独特のサウンド。そこに佐野さんの歌が乗ってハンバート ハンバートの世界に到達。そんな制作過程を聞くと『愛のひみつ』の秘密にグッと近づく感じがする。「今回、アニメ作品のために書いたテーマ曲を2曲セルフカバーしました。細かくオーダーされる制作が、僕たちにハマったというか、すごく楽しかったんです。オリジナルはどうしてもシブくなる傾向があるので、ポップなハンバート ハンバートも味わって欲しいですね」(佐藤)10th album『愛のひみつ』10月21日発売。【初回限定盤CD +特典DVD】おしゃべり+撮り下ろしでアルバム収録曲を演奏した映像を収めたDVD付き。¥3,500、【通常盤CD】¥2,800(SPACE SHOWER MUSIC)ハンバート ハンバート1998年結成の佐藤良成と佐野遊穂によるデュオ。オリジナル作品と並行してテレビ、CM 、映画などに数多くの楽曲を提供している。今年8月、閉園間際の『としまえん』で無観客生配信ライブを行い、話題となった。※『anan』2020年10月21日号より。写真・土佐麻理子ヘア&メイク・橘 房図取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2020年10月14日文:北條誠人(ユーロスペース支配人)今日は6月1日月曜日。「非常事態宣言」をうけての4月8日から53日間続いた休館がようやく終わり、いよいよ上映再開です。2月中旬からお客さんが徐々に減ってきていましたから、私たちは3か月半の期間を新型コロナウイルスと戦ってきたことになります。そしてこの戦いはまだしばらくつづきそうです。それぞれの映画館が上映再開にあたっては何を上映しようかと思いを込めて考えていると思いますが、ユーロスペースの再開第一弾はアキ・カウリスマキ監督の『希望のかなた』を35mmフィルムで上映します。シリアで生きはぐれた妹をお兄さんがヘルシンキの人たちの力を借りて再会する物語。ほんとうに普通の人が困っている人を助けるというだけのことがなんと心に沁み込むことかと今、あらためて思います。今回のフィルムはロードショウの時に全国のミニシアター15館でリレーのように廻して上映をしてもらったもの。こんな機会がなければスクリーンで再会することもなかったでしょう。もう片方のスクリーンは『ようこそ、革命シネマへ』。スーダンでは1989年に軍事政権が発足してから映画産業も映画館もなくなってしまいました。それから35年、年をとった4人の映画人が閉館している映画館をなんとか復活させようとがんばる、まさに上映再開へのすがたをとらえたドキュメンタリー映画。いずれもまず観ていただきたい映画として選びました。今回のコロナ禍をミニシアターで経験して考えたこと、感じたことはさまざまにありますが、一番の驚きは、多くのかたからのミニシアターへの思いです。「ミニシアター・エイド基金」のクライドファンディング、「Save the Cinema ミニシアターを救おう!」の署名と参加していただいた方々にはお礼のことばしかありません。それだけではなく直接に間接に映画館に応援のことばや支援をいただき、その量と熱さが本当に自分たちに向けられているのかと疑いたくなるくらいでした。この疑問は、今から思えば恥ずかしい限りです。仕事に対して無自覚でありすぎました。ミニシアター・エイド、仮設の映画館、Save the Cinema……"若い力"ともに、ミニシアターのルネサンスを!ここ数年、私たちミニシアターを取り巻く環境は決して恵まれていたものではないと思っていました。その環境は若い人のミニシアター離れやシネコンとの競争、デジタル化による作品の膨大な増加が問題点としてまず挙げられますが、そこで働いている者がこの状況を変えていくための方策をきちんと持っていたり、今後の将来的なヴィジョンを説明できるかといえばまったく心もとない状況が、新型コロナウィルスの感染拡大まで続いていました。果たして自分たちの仕事はどう見られているのか。社会から置いていかれている小さな産業になってしまっていないか。そんな疑問を心の片隅に追いやって仕事を続けてきていたのかもしれません。好きな映画を上映できていればいいと。ですから、今回の多くのかたからのミニシアターへの応援は、私たちの今までの仕事の見直しを嫌でも強いてきます。「ミニシアター・エイド基金」や「仮設の映画館」が若い映画監督や配給会社のメンバーなどによってすぐに立ち上がって進んでいったこと。「Save the Cinema」の運営に若い世代の人たちが参加してくれていること。もしクラウドファンディングや署名に若い人たちが参加してくれていれば、ミニシアターのこれからは若い文化にもなっていくのではないかと期待しています。私が今回のことで一番学んだことはこの“若い力”。そして一緒に動いていく“協同の力”。これがなければ、たぶん全国のミニシアターは生き残ることはできなかったでしょう。多くのかたがたからの応援の声を帆にいっぱい受けて、今日からの上映再開の海に漕ぎ出していきます。はたしてその海はどんな海なのかはまったく予想ができませんが、これからは私たちの海図を作りながら進んでいくことになります。先日、友人が「コロナが落ち着いたらミニシアターのルネサンスがきますよ」と声をかけてくれました。中世のペスト大流行のあとにルネサンス文化が花開いたことをふと思いだしましたが、この友人の船出への手向けのことばを全国のミニシアターと共有したいと思います。競争の時代ではなく共同の時代がきました。北條誠人(撮影:平辻哲也連載『発信する!映画館』から)プロフィール北條誠人(ほうじょう・まさと)1961年、静岡県清水市(現静岡市)生まれ。大学在学中から映画の自主上映に携わり、1985年、ユーロスペースに入社、1987年から支配人を務める。全国各地域の映画・映像文化を担う組織で構成する、一般社団法人コミュニティシネマセンター理事。SaveTheCinema「ミニシアターを救え!」呼びかけ人のひとり。
2020年06月01日インターネットやSNSは日常のツールという世代の申し子のように10代からトラックメーカーとして活動してきたtofubeatsさん。アルバムをリリースするたびに新しい扉を開き、ダンスミュージックの楽しさを示してくれるアーティストだ。新作『TBEP』の制作秘話とともに、彼のプライベートライフにグッと迫ってみた。――『TBEP』は、シンプルこのうえないネーミングですね。これは気合が入ったアルバムです!という感じではなく、DJでも使える曲や、みなさんが家でも楽しめる曲というしばりで、BPMも120~130の間と、テンポも決めてやってみようと気軽な気持ちで作りました。――前作『RUN』はゲストボーカルなしで自ら歌っているのが印象的でしたが今回も、ですね。前作はシンガーソングライターとしての自覚が芽生えたアルバムでしたね。それ以前はゲストボーカルの方にお願いしていたけど、曲を作る技術が向上してきたというか、歌詞も言いたいことの輪郭やメッセージがはっきりしてきたので、他の方が歌うと、矛盾が出てくる気がして。それで自分で歌うようになっていきました。――昨年はボーカリストとして、竹内まりやの名曲「Plastic Love」をカバーしてビックリ。あの曲は海外でリバイバルというか、再評価されています。僕のカバーとは関係なく(笑)。そんな海外の反響を受けて日本側からリアクションしようと、僕が歌うことになったんです。海外の友達からは山下達郎さんや細野晴臣さんの作品を聴きたいと言われるし、最近ではさらに突っ込んで「角松敏生のアルバムはないか」とか。日本の’80年代シティポップスの注目度はいますごいですよ。tofubeats的働き方改革とは。――新作1曲目の「陰謀論」はタイトルにギョッとしたけど、内容はクラブのことで、ニヤリ。何も考えてない曲のときは、意味深なタイトルを付けがち(笑)。僕自身、クラブには昔から相当通っていて、踊ったりDJやったり両方楽しんでいたので、クラブの楽しさも共有できる曲を作れたらいいなと思って書きました。――配信シングルの「SOMEBODY TORE MY P」がインスト曲、というのも意外なセレクトでした。あの曲は実は自分にしては珍しい作り方をした曲なんです。国立近代美術館で国吉康雄という画家の「誰かが私のポスターを破った」という油絵を鑑賞し、タイトルも絵もめちゃカッコいい!と触発されて出来上がったんです。――ええ!?一枚の絵からあの曲が生まれたんですか。他の絵が目的で行ったのに、後から見た「誰かが私のポスターを破った」があまりにも衝撃的すぎて。その後、国吉さんの画集を買ったり、本を読んだりしながらイメージを膨らませていきました。日本から移民としてアメリカに渡り、戦時中は冷遇された時代背景までくっきりと出ている作品に心から感動したんですよね。――他にはどんな刺激や衝撃から曲が生まれるんでしょうか。漫然と生きてても、何も生まれないですからね。やばい、曲ができない!という状況のときには、やっぱり美術館に行くことが多いかな。神戸ではよく「横尾忠則現代美術館」に行っていました。――助けを求めて。そう。僕が美術館をフラフラしてるときは、曲ができてないというときなので、見かけたら優しくしてくださいね(笑)。――そういえば、最近、東京に引っ越されたそうですが。はい。まぁここ5年ぐらいは、ひと月のうち1週間は東京に滞在していたので、ちょっとずつ慣らしていった感じですね。いまだ慣れないのは、人が多いことと、物価が高いことぐらいかな。体が関西の価格に順応しきっていたので。でも、家と仕事場を完全に分けたので、仕事しやすくなりました。――では、通勤しているんですか。徒歩通勤ですけどね。毎朝、NHKの朝ドラを見てから家を出て、9時から19時ぐらいまで仕事してます。自宅にはパソコンは持ち込まないし、スピーカーもブルートゥースのちっちゃいやつだけ。家では真面目に音楽を聴かないようにしています。――どうしてですか?大学を出てから就職をしないで、ずっとこの仕事をしているので、家で働くということがどういうことか、身をもって分かっています。いまテレワーク中の方にも参考になると思いますが、僕のようなソーホー(在宅)ワーカーには“退路を断つ”ことが最も大事なんですよ。もともと神戸の仕事場には、ふたり掛けのソファを置いていましたが、そこで寝てしまうので、ひとり掛けに変えました。寝ないで自分を働かせる環境じゃないとダメだと。人間工学に従ってというか、強制的に労働させる条件を作ったんです。東京の仕事場もデスクしか置いてないので、仕事のみに集中できるし、もし眠くなったら床で寝るしかない(笑)。その代わり、自宅ではくつろげるように、音楽のことは考えない環境に。――働き方改革、すごい!仕事内容は、毎朝決めるんですか?これは昔からなんですけど、一日の最後に明日やるべきことを全部書き出してから帰るんです。それを毎日やるので、たとえその日に全部終わらなくても、また翌日の予定に繰り越す。そうやって自分を管理する、みたいな。――それは子どものころから?いや、この仕事一本になったときに、“自動的に人はサボる”ということを発見して、いまはこのやり方で落ち着いています。あと、体調が悪くなったりすると、音の聞こえ方のバランスが悪くなったり、違って聞こえたりするんですよ。夜中まで働くと、耳がおかしくなるので、意識的に午前中から動くようにしています。週末はDJの仕事で夜中まで働くこともあるんですけど、それでも月曜日は元通りに働く感じです。――作品が生まれる背景には、そんなストイックなライフスタイルがあったんですね。驚きました。はい。8年かけて、このスタイルを構築しました(笑)。――でも、ご自分の作品制作以外に、他のアーティストからMIXを依頼されたり、CMの仕事とか締め切りも厳しいのでは?僕はめちゃくちゃ締め切り守ります。ですよね?(と、担当者に確認)でも、セカンドアルバムの『POSITIVE』を作っていたころまでは締め切りを飛ばしまくっていて、どうしてできないんだろうと自己嫌悪を感じていましたけど、周りのスタッフに「ポジティブになりなよ」と励まされて、それがアルバムタイトルになったり(笑)。そんな時代を経て、“人に迷惑をかけるな”というルールを守ってきました。締め切りって約束だし、約束は絶対破ってはいけない。トーフビーツ1990年生まれ、兵庫県出身。学生時代からインターネット上で音楽制作活動を行い、2013年『Don’t Stop The Music』でメジャーデビュー。森高千里、藤井隆らをゲストに迎えて楽曲を制作、またSMAP、平井堅、Crystal Kayのリミックス、ゆずのサウンドプロデュースに加え、CM音楽など、活動は多岐にわたっている。4thアルバム『RUN』から1年半ぶり、7曲入りミニアルバム『TBEP』をリリース。前作同様ゲストアーティストを入れない、セルフメイド作品。トラックメーカー、シンガーソングライターとしても新たな進化を遂げた。最新情報は、公式Twitter(@tofubeats)をチェック。※『anan』2020年4月29日号より。写真・大嶋千尋インタビュー、文・北條尚子(by anan編集部)
2020年04月22日ピアニストの河村尚子が栄えある「第51回サントリー音楽賞(2019年度)」を受賞した。サントリー音楽賞は、日本における洋楽の発展にもっとも顕著な業績をあげた個人または団体に贈られるもので、1969年の第1回以来、今回が51回目となる。過去の受賞者には、第1回の小林道夫(チェンバロ)を筆頭に、内田光子(ピアノ)や武満徹(作曲)など、日本の音楽界を代表する顔ぶれがずらりと並ぶ。今回の受賞理由として、2019年の「ベートーヴェン・ピアノソナタ・プロジェクト」の完結及び、CD「ベートーヴェン・ ソナタ集1、2」のリリース。そして新しいレパートリー開拓ともなった山田和樹指揮NHK交響楽団との共演 による矢代秋雄「ピアノ協奏曲」においての演奏で作品の再評価に貢献したことなどをはじめ、近年の目覚ましく充実した演奏活動が評価されての受賞となった。今後の日本での活動は、10月にオーケストラとの共演や各地でのリサイタルを予定。東京では10月13日(火)に紀尾井ホールで1年ぶりのリサイタルを行うことが発表されている。プログラムには、モーツァルト、シューベルト&ショパンに加え、映画『蜜蜂と遠雷』で話題となった藤倉大作曲による『春と修羅』も予定される。●河村尚子(ピアノ)(c)Marco Borggreve兵庫県西宮市生まれ。1986年渡独後、ハノーファー国立音楽芸術大学在学中にヴィオッティ(ヴェルチェリ)、カサグランデ、ゲーザ・アンダなどヨーロッパの数々のコンクールで優勝・入賞を重ねる。2006年には権威ある難関ミュンヘン国際コンクール第2位受賞。翌年、多くの名ピアニストを輩出しているクララ・ハスキル国際コンクールにて優勝を飾り、大器を感じさせる新鋭として世界の注目を浴びる。ドイツを拠点に、ヨーロッパ、ロシア、日本などで積極的にリサイタルを行う傍ら、ウィーン交響楽団、サンクトペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団、ロシア国立交響楽団、モスクワ・ヴィルトゥオーゾ、バーミンガム市交響楽団、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、ハンガリー国立フィルハーモニー管弦楽団などのソリストに迎えられている。また、「ルール・ピアノ祭」(ドイツ)、「オーヴェール・シュル・オアーズ音楽祭」(フランス)、「ドシュニキ国際ショパン・フェスティヴァル」(ポーランド)、日本では「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」や「東京・春・音楽祭」などの音楽祭に参加。2011年には、ドイツ・ワイマール近郊にあるエッタースブルク城での音楽祭でアーティスト・イン・レジデンスをつとめ、4夜にわたるソロ・リサイタルを開催し、絶賛を博す。室内楽では、ハーゲン・クァルテットの名チェリスト、クレメンス・ハーゲンとのデュオで好評を得ているほか、マキシミリアン・ホルヌング(チェロ)とロンドン・ウィグモアホール、ラモン・オルテガ・ケロ(オーボエ)とニューヨーク・カーネギーホールにデビューするなど、同世代の実力派アーティストとも積極的な活動を展開している。日本では、2004年小林研一郎指揮東京フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会でデビュー。以来、パーヴォ・ヤルヴィ指揮NHK交響楽団を含む日本国内の主要オーケストラと相次いで共演を重ねる一方、ウラディーミル・フェドセーエフ指揮モスクワ放送交響楽団、ファビオ・ルイージ指揮ウィーン交響楽団、ミハイル・プレトニョフ指揮ロシア・ナショナル管弦楽団、マレク・ヤノフスキ指揮べルリン放送交響楽団、イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、山田和樹指揮バーミンガム市交響楽団などの日本ツアーに参加。その他、サー・ロジャー・ノリントン、ユーリ・テミルカーノフ、アレクサンドル・ラザレフなど多くの指揮者から度々再演の指名を受けている。現在、2019年の日本デビュー15周年に向けて、2年にわたり「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ・プロジェクト」に取り組み、自ら厳選した14のソナタを全4回のリサイタルで披露している。2009年、名門RCA Red Sealレーベルより「夜想 (ノットゥルノ)~ショパンの世界」てメジャー・CDデビュー。 2011年9月、セカンド・アルバム「ショパン:ピアノ・ソナタ第3番&シューマン:フモレスケ」をリリース、各誌で特選盤に選定される。2013年秋、サード・アルバム「ショパン:バラード」のリリースを経て、2014年秋には、プラハ・ルドルフィヌムでのチェコ・フィルとの定期演奏会、およびドイツ・エルマウ城でのクレメンス・ハーゲンとの演奏会をライヴ収録した「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番&チェロ・ソナタ」をリリースした。2018年には4年ぶりのソロ・アルバム「ショパン:24の前奏曲&幻想ポロネーズ」をリリースし、2019年4月、「月光」「悲愴」を含む待望のベートーヴェンCDをリリースする。その他のレコーディングとして、ソロでは仏ディスコヴェール(2002年/同レコーディン具はXRCD化され、日本伝統文化振興財団より2012年6月に再発売された)、独アウディーテ(2004年)、ルール・ピアノ音楽祭エディション(2008年/ライヴ録音)が、また日本コロムビアからシューマンのピアノ五重奏曲(2010年/トッパンホール)、京響レーべルからラフマニノフのパガニーニ狂詩曲(2009年/広上淳一指揮京響との共演)、独コヴィエロ・クラシックからモーツァルトのピアノ協奏曲第21番(2014年/ボストック指揮アルゴヴィア・フィルとの共演)がリリースされている。また、国際ピアノ・コンクールにおける若者たちの群像劇をリアルに描いた、作家・恩田陸の直木賞受賞小説を原作とした映画『蜜蜂と遠雷』(2019年10月公開)では主人公・栄伝亜夜のピアノ演奏を担当し話題をさらっている。文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞、新日鉄音楽賞 、出光音楽賞、日本ショパン協会賞、井植文化賞、ホテル・オークラ賞を受賞。これまで、ウラディーミル・クライネフ、澤野京子、マウゴルジャータ・バートル・シュライバーの各氏に師事。現在、 ドイツ・エッセンのフォルクヴァング芸術大学教授、東京音楽大学特任講師。
2020年04月04日木村カエラさんに、デビュー15周年記念アルバム『いちご』についてお話を聞きました。積み上げたものを壊すことを恐れずに、新しいことをやろうと思った。真っ赤な苺をくわえた木村カエラさんをカバーにしたニューアルバムはその名も『いちご』。実はこれ、15を≪いちご≫と読ませるデビュー15周年記念アルバム。アニバーサリー作品といえばベスト盤など集大成作品をリリースするアーティストも多いけど、本作はすべてオリジナルの新曲だけのアルバムである。「15周年を前にして、なぜか20周年のことまで考えてしまって、20年目までずっとこのまま歌い続けていたい!という気持ちがぶわーっと出てきたんです。ということは、自分は一回、生まれ変わらなければならない、命という意味ではなく、全部壊して、新しいことをやるべきだ。プライドとか積み上げてきたものも壊すことを恐れずに、新しいことをしよう、そう思いました」その強い気持ちが最も表れているのが、ラストに収められたタイトル曲「いちご」。過去と未来、または子どもとおとなの中間地点に立ちながら、カエラさんのいまの心境を正直につづったかのような曲。しんみりしながらも強い意志を感じる曲だ。「いままではバンドメンバーと一緒にメロディを作り上げることが多かったけど、これは家で一人でギターを弾きながら書いた曲です。ギターで一から曲も歌詞も作るって、やったことがなかったので、新しい挑戦でした。『BREAKER』(映画『ペット2』日本語版イメージソング)という曲は、文字通り壊す人なんだけど、子どもが高く積んだ積み木を躊躇なくバーンと壊したりするでしょう。あのイメージを書きたかったの。壊してゼロにして、殻を破るっていまの私にぴったりだと感じたし、壊すことって新しい可能性を伸ばすことだと思っているんです」この2曲を筆頭に、このアルバムから伝わってくるのは、守りに入らず、変化を恐れず、ずっと進化し続けたい、というメッセージ。「いつも未来に目を向けているし、過去は振り返らない。自分を信じて生きていきたいと思っているかな。だって過去と他人はどうやっても変えられないでしょう。それを信じて行動していると、キターー!という感じに欲しいものを引き寄せてる気がします。そういうミラクルが、よく私には起きるんですよね」本作ではChara、あいみょんとのコラボが実現。これはファンにとってまさにキターー!という嬉しいジョイントに違いない。「あいみょんちゃんは歌詞も書きたいと言ってくれて、普段は歌い手に何も聞かずに書くみたいだけど(笑)、私はこういうことを書いてほしいとお願いして歌詞をつけてもらいました。Charaさんはご自宅に伺って、いろんな話をしながら、その合間にピアノに向かって、歌詞のアドバイスをしていただき。めちゃくちゃ楽しかったです」さらにノルウェーのアートロックバンド、Pom Pokoには、直々に曲提供を依頼したとか。「音楽もユニークだし、バンド名をジブリの映画『平成狸合戦ぽんぽこ』から採ったと聞き、これはもう頼むしかないとコンタクトしました。彼らのインスタに『日本のスーパースター、カエラキムラの曲を書いたよ、イエー!』とか上がってて、とっても喜んでくれてるみたいでよかった(笑)」10th Album『いちご』【初回限定盤CD+DVD】¥3,700すべて新曲の11曲入りスペシャルパッケージ。DVDには「Continue」のMVと「カエラのドキドキドッキリ大作戦」を収録。【通常盤CD】¥3,000(Colourful Records)きむら・かえら1984年生まれ。2004年『Level 42』でメジャーデビュー。今年6月23日には日比谷野外大音楽堂でアニバーサリー公演を開催した。10月から木村カエラ LIVE 2019 全国「いちご狩り」ツアーで8都市を回る。Tシャツ¥20,500(アクネ ストゥディオズ/アクネ ストゥディオズ アオヤマ TEL:03・6418・9923)ピアス¥38,000(オール ブルース/エドストローム オフィス TEL:03・6427・5901)ブーツ(ユーズド)¥12,800(ドクターマーチン/VOSTOK TEL:03・3470・2221)その他はスタイリスト私物※『anan』2019年8月7日号より。写真・井手野下貴弘(HITOME)スタイリスト・白山春久ヘア&メイク・フジワラミホコ取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2019年08月03日菅田将暉さんが、昨年リリースした『PLAY』に続き、アルバム『LOVE』をリリースする。多忙な日々を送る実力派俳優でありながら一体いつの間に!?と感じるほどの素晴らしい作品だ。熱気のこもった歌声と歌詞を隅々まで味わい尽くすと、しばらく動けなくなるほど心に響く重みのあるアルバムでもある。「音楽活動は、そもそも万人受けするつもりはなくて、こうやってアンアンに取材してもらえるとも全く思っていなかったんです。俳優としての菅田将暉は見てほしいけど、音楽に関してはあんまりライトを当てんでくれ、という気持ち(笑)。でも、ファーストアルバムの制作がすごく楽しかったので、ちゃんと人に聴いてもらうことを意識せな、と思ったのが、この『LOVE』ですね」前作に引き続き米津玄師や秋田ひろむ(amazarashi)、石崎ひゅーい、柴田隆浩(忘れらんねえよ)とのコラボ曲のほか、今作で初めてあいみょん、志磨遼平(ドレスコーズ)の提供曲も収録。オファーも、菅田さん自身がしたそうだ。「楽曲を依頼した方々は、かっこいいな、面白いなと僕が単純に好きな人たちでもあり、ちゃんと“会話ができる”人たち。同じ目線で遊びながら楽しくモノ作りがしたかった。そんなありがたい存在が自分の近くにいたことは幸運だと思います」コラボ曲は菅田さんと作り手との間の、たわいない会話から生まれていったという。その後、セッションしながらサウンド面も一緒に作り上げていくというプロセスを経た曲も多い。とくにデュエット曲を一緒に作った、あいみょんさんとのコラボ曲「キスだけで feat. あいみょん」は、女性にはとりわけ沁みる名曲だと感じた。女性パートを菅田さん、男性パートをあいみょんさんが歌っているのもすごく心に響くのだ。「彼女(あいみょんさん)は感性がすごく面白いし、関西人同士なのでスピード感が合って、ツッコんでもらえる快感があるんです。僕がバーッと喋ってたことを、ちょっと待って、と携帯にメモりだしたら、もうこれしかないというほどの曲ができてきた。紡ぐ力というか、プロフェッショナルな力を感じましたね」今作には、音源化されていなかった石崎ひゅーい作の「クローバー」が収録されるとともに、この曲を原案にしたショートフィルムを菅田さんの初監督で制作。『LOVE』はシンガーとしてだけでなく、映像作品や、CDカバーのデザインディレクションなど、菅田さんのさまざまな才能を楽しめるアルバムになった。「いろいろなことをやらせてもらいましたが、僕はとにかくモノを作っている過程が楽しくて大好きなんです。すべては友人たちとの遊びがベース、というと生意気に聞こえるかもしれないけど、遊びを思いつくのが得意なんすよ、思い出を無理やり作るというか(笑)。発想との戦いです、誰が面白いものを考えられるか、という。それを仕事にできて、作品にしてもらえるのは幸せなことだと思っています」2nd Album『LOVE』【完全生産限定盤CD+大判フォトブック】アルバム制作風景を収めた写真集付き。¥5,000【初回生産限定盤CD+DVD】DVDにはジャケット撮影も手がけた太賀主演のショートフィルムを収録。¥3,611【通常盤CD】¥2,963(Sony Music Labels)すだ・まさき1993年2月21日生まれ、大阪府出身。俳優として多方面で活躍しながら音楽活動も行い、『さよならエレジー』など数々のヒット曲を放つ。8月から東名阪福でZeppツアーを開催。※『anan』2019年7月17日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・猪塚慶太ヘア&メイク・AZUMA(M‐rep by MONDO‐artist)取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2019年07月14日「アルバムタイトルの『十』は、はじめて楽器を持ってバンドを結成してからの“10年”でもありますし、前作『Q』に対する“十”でもありますね。『Q』が完成したとき、私たちへの風向きがかなり変わってきたと感じました。そのひとつが、女王蜂を好きと言ってくれる人がとても増えたこと。『Q』で広がったものがさらに発展して、今回は、私たちの決定打になるアルバムが作れたと思っています」紆余曲折あっても音楽活動を握りしめ、生きてきた。そう話すのは女王蜂のボーカル・アヴちゃん。どこにも似た人がいない独特のカリスマ性を持ち、常にスタイリッシュで妖艶で、発する言葉はインテリジェンスに溢れたアーティストだ。約2年ぶりにリリースされたアルバム『十』は、映画『貞子』にTVアニメ『どろろ』『東京種喰(トーキョーグール):re』というダークファンタジー3作への提供曲と新曲で構成される。すべてのサウンドや歌詞の端々から感じるのは、圧倒的な情熱がほとばしる人間賛歌のナンバー。聴いていて心臓の鼓動が速くなる感覚を何度もおぼえたほど、アヴちゃんのソングライターとしての力量に改めて驚かされるアルバムだ。「貞子は両性具有的な存在だし、どろろも東京喰種も、半分人間という存在であったりと、それぞれに戦っているキャラクターたちの作品。自分自身そういう作品に引き寄せられることが多いし、私にとってはまったく無理のないアプローチでした。ただ私は職業作家ではないので、作品の意図を汲むことはできません。書き下ろしではなく、女王蜂として歌い続けていきたいと思って作った曲を、提供させていただきました」この『十』の中で、個人的に心揺さぶられたのがタイトル曲の「十」だ。家族や郷里に別れを告げ、遠くの町に旅立つ、というテーマは普遍的なものだけど、独創性豊かな言葉で綴られるリリックに、胸が痛むほどの痛烈なセンチメンタルを感じる。「バンドがないと生きられないというか、紆余曲折あって当たり前というか……。当然いろいろあったんですけど、乗り越えなければいけないと思って生きてきました。クリスチャンの方が苦難に遭ったとき十字架を握りしめるように、私はこの10年、音楽活動を握りしめることで、生きてこられたと思う。『十』は十字架の十でもあるし、この曲は泣くほどの悲しみを正直に込めないと、出してはいけない曲だと思っています。こんなふうに私が作った曲を、メンバーが具現化してくれることに感謝しています。前からうすうす感じていたけど、こんなバンド、世界中探してもどこにもいない。そう、胸を張って言いたいな」New Album『十』【初回生産限定盤CD + DVD 】映画『貞子』主題歌「聖戦」など10曲入り。DVDには女王蜂主催「蜜蜂ナイト4~:re~」を収録。¥4,500【通常盤CD】¥3,000(Sony Music Associated Records)じょおうばちメンバーはアヴちゃん(Vo)、やしちゃん(Ba)、ルリちゃん(Dr)、ひばりくん(Gt)。2011年、『アルバム『孔雀』でデビュー。7月まで“「十」‐火炎‐”ツアー中。8/18に行われる「SUMMER SONIC 2019」に出演。※『anan』2019年5月29日号より。写真・井手野下貴弘(HITOME)インタビュー、文・北條尚子(by anan編集部)
2019年05月22日家入レオさんの6枚目のアルバムは『DUO』。歌詞の世界観や様々なサウンドプロダクションで聴かせる12曲は、“家入レオ劇場”と呼びたくなるほど、いまの彼女の全身全霊が映し出されているような作品だ。「昨年リリースした『TIME』は、みんなの“背景”になりたくて作った普遍的なアルバムでした。聴いた人が自分の思いを託しやすい作品に、と願っていましたが、一方でツアーに出てステージで歌いながら、いろんなことを感じたんですよね。私に求められているものは普遍的なものではなく、家入レオそのもの、私しか歌えないものなんじゃないか。そんなことを改めて考えました」その確信からスタートした本作には、King Gnuの常田大希、シンガーソングライターの小谷美紗子、相対性理論の永井聖一ら、彼女自身がコラボレーションを熱望したクリエイターが参加。共に家入レオしか歌えない歌を作り上げていった。「この人とやりたい!と思っても、スタッフの方にオファーを出してもらって共演するのでは、ずっと残る音楽は作れないと思いました。だから私自身がライブに行ったり、直接お話をして自分を知ってもらった上で、曲を提供していただいたんです。楽曲は、お芝居の世界にある“あて書き”みたいに、私を主人公にして書いてもらいました。制作自体も“二重奏=DUO”でしたね」リード曲の「Prime Numbers」(テレビ朝日系4月期木曜ドラマ『緊急取調室』主題歌)は、以前、家入さんが松任谷由実さんに会ったとき「あなた素数ね。どこにいても馴染めないでしょう」と言われたことで生まれた曲とか。「ずっと場に馴染めなかったり、孤立しがちだったりする理由を言い当てられた気がしたと同時に、新しい名前を付けてもらったような気がしました。特殊で孤独な数字である“素数”(Prime Numbers)同士が出会うような歌詞を書いてほしいと、作詞家の松尾潔さんにお願いしてできた曲です」また、提供曲の歌詞にある言葉には徹底的にこだわり、自分が発しないようなフレーズはすべて直してもらったという。まさにアルバム全体が“家入レオ劇場”に値するコラボレーションアルバムになった。「自分のことがより分かってきたことで、本当に新たなモードに変化してきているな、という意識が生まれてきました。自分がやりたかった形を、しっかり実現できた一枚になったと思います」そんな歌たちはツアーではファンを巻き込む“二重奏”になるはずだ。6th Album『DUO』【初回限定盤A CD+DVD】¥4,900DVDには昨年10月の女性限定FCライブの模様を収録。【初回限定盤B CD+DVD】¥3,500「Prime Numbers」のMVとメイキングがDVDに。【通常盤CD】¥3,000(Colourful Records)いえいり・れお1994年生まれ、福岡県出身。2012年にメジャーデビュー。1年ぶりの全国ツアーが5/10からスタートする。ファイナルは7/27の千葉・幕張メッセ国際展示場。Tシャツ¥9,000スカート¥34,000ストール¥9,000(以上ティート トウキョウ/シアン PR TEL:03・6662・5525)※『anan』2019年5月1日-8日合併号より。写真・映美スタイリスト・高田勇人ヘア&メイク・奥原清一取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2019年04月26日「バンド名を省略されたくないから3文字にした」、というちょっとクスッとしてしまう由来の名前を持つ4人組ロックバンド、ミツメ。自主制作盤も含め、すでに4枚のアルバムをリリースし、その独自性で敏感なファンに熱く支持されている。約3年ぶりにリリースした『Ghosts』も、初めて彼らの音楽に触れた人にもスッとなじむ、とても日常的で心地よいサウンドだと感じた。「前作を作り終えた時に、次はシングルを2枚リリースして、その地続きになるようなアルバムにしよう、と決めていました。そういうことを今までしたことがなかったので、やってみたかったんです」(川辺素/Vo&Gt)シングル『エスパー』と『セダン』が国内外で幅広くヒットし、そこに、さらにミツメらしいサウンドプロダクションの作品を追加して完成したのが『Ghosts』だ。「4人のトラックにさらにシンセを重ねたり、かなり複雑なダビングをたくさんやり、相当汗をかいて作りました。でも聴いてみると重くなく、むしろ軽く聴けるところがいいなぁ、と思いますね」(大竹雅生/Gt)「ポップなんだけど、いい意味でつかみどころのないサウンド。レコーディング中もずっとワクワクしてました」(nakayaan/Ba)川辺さんが書く歌詞は、走り書きのようなてらいのないやさしい言葉が多く、湿度や温度をほのかに体感するサウンドもキメ細やかだ。ミツメの音楽は、初めて袖を通したシャツがずっと着ているかのように肌になじんだ時の気分にも似ている。「制作中は説明し合ったり、コミュニケーションはとらないんです。だけど好きな音楽が似ているし、プレイヤーとして信頼し合っているので、気持ちいいアレンジになり、いい音になっていくんですよね」(須田洋次郎/Dr)その魅力は海外にもじわじわと伝播し、特に中国を中心とする東アジアには熱狂的なファンがいる。「4~5年前に日本のインディーロックブームの第一波の時、ミツメの音楽が入っていたようです。4年前の初回の中国公演からたくさんの人が来て『煙突』を合唱してくれたので、びっくりしました」(川辺)そのほかインドネシアやタイ、韓国、台湾などでも大人気の彼ら。このアルバムで、海外のファンをさらに増やすことだろう。5th Album『Ghosts』。先行シングル曲「エスパー」と「セダン」に新曲を加えた全11曲収録。生活の一部のように響く新感覚のアンビエントミュージック。【CD】¥2,800【LP】¥3,000(mitsume)左から、川辺素(Vo&Gt)、nakayaan(Ba)、須田洋次郎(Dr)、大竹雅生(Gt)。5/26の札幌公演を皮切りに国内でレコ発ツアーを行った後、7月後半は北京など7か所の中国公演が控える。※『anan』2019年4月17日号より。写真・井手野下貴弘(HITOME)取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2019年04月11日1stアルバム『Familia』から約1年8か月ぶりのアルバム『Chime』をリリースした4人組バンド、sumika。「フィクション」や「ファンファーレ」「ホワイトマーチ」などの人気ナンバーに新曲を加えた14曲は、従来の彼らの持ち味に新境地のサウンドも加わり、何度聴いても新しい発見があるアルバムだ。「この一枚を聴いてもらえたら、今のsumikaが全部分かるアルバムを作りたかったんです。やりたいことがいっぱいあって、それを全部やり切れた気がしています」とボーカル&ギターの片岡健太さん。昨年は3日連続の武道館公演と長期間のホールツアーを成功させ、大きく成長した4人。「様々なチャレンジをした1stアルバム『Familia』は、受け入れてもらえるか少々不安もありましたが、ツアーを通してファンの方々に楽しんでもらえて、どんどん自信がつきました。それがこの新作にも、相当いい影響を及ぼしていると感じます」(荒井智之・Dr&Cho)「曲作りからレコーディングまでを通して、バンドでやりたいことが、どんどん増えていったのが嬉しかったですね。sumikaらしいポップソングに、自分が好きなギターロックのエッセンスを入れたり、小川(貴之)君(Key&Cho)と一緒に共作曲を作ったり、チャレンジをどんどん広げていったアルバムです」(黒田隼之介・G&Cho)『Chime』に収録された14曲には、これまでの彼らにはなかったタイプの曲が目立っている。「『Chime』には個人的にも初挑戦した部分がたくさんあります。僕が書いた『Monday』は、こんな曲があったらアルバムの中で際立つかなと思って作りました。それができたのも、メンバー間の信頼感が高まり、同時に自由度が上がったことが大きいと思います」(小川)結成5周年を過ぎ、日本武道館という大きな舞台、さらに、彼ららしい音楽を最高のクオリティで奏でられるホールでのパフォーマンスを成功させ、自信をつけた成果がみなぎっているのが、この『Chime』だろう。そんな作品のタイトルには、「この音を届けに、みんなの家の玄関のチャイムを鳴らす」(片岡)という意味が込められている。スミカ左から、黒田隼之介(G&Cho)、片岡健太(Vo&Gt)、小川貴之(Key&Cho)、荒井智之(Dr&Cho)。武道館、横アリ、大阪城ホール公演を含む『Chime』のレコ発ツアーが3/14から開催。2nd Album『Chime』【初回生産限定盤CD+DVD】¥3,800「ファンファーレ」など新曲を含む全14曲。DVDにはスタジオでのライブセッションを収録。【通常盤CD】¥3,000(Sony Music Records)※『anan』2019年3月20日号より。写真・土佐麻理子文・北條尚子(by anan編集部)
2019年03月18日結成2年でメジャーデビューを果たし、MVを発表すれば瞬く間に数百万回も再生され、大企業から次々とタイアップのラブコールが送られる……そんな快進撃を続けているバンドが、ポルカドットスティングレイだ。ついに、待望のセカンドアルバム『有頂天』がリリース。「デビュー作の『全知全能』を作っている頃からすでに次回作はこういうことをやろう、タイトルは“有頂天”がいいな、と決めていました」と、ボーカルの雫さん。彼女はすべての楽曲を手がけ、バンドのコンセプトからプランニングまで決定する、リーダー兼プロデューサーのようだ。「子供の頃から何でも計画するのが好きでした。このバンドでも、いつアルバムをリリースして、こんな曲を入れて、タイアップを仕掛けてとか、全部私が考えています。音楽をやってなければ、広告代理店の仕事とかを、やってみたかった(笑)」そんな彼女のアタマから生まれ、メンバーと共に仕上げる曲は、どれも徹底的にポップだ。「私たちは邦楽ロックバンドの界隈にいながら、こんなのロックじゃないと言われます。じゃロックである、ロックじゃないって、何?という問いには誰も答えてくれない。自分がいま伝えたいこと、訴えたいことを叫ぶのがロックなら、私たちは真逆のやり方をしています。クオリティの高い音を奏でて、否定する人たちを黙らせればいいんだ、まとめてかかってこい、というアルバムが『有頂天』です」“真逆のやり方”とは「みんなが欲しいものを作る。超リスナーありき」というシンプルなコンセプトだ。自分の体験や心情で曲を書くことはないときっぱり。それを可能にするマーケティングとして、相当丁寧にファンの心をすくい上げ、音楽に反映していると感じる。「ファンに受けないことはしない、ポップだと感じられないことはしないというのがバンドのポリシーですね。だから制作中はメンバー間で『これ、わかりづらくないですか』という発言がめっちゃ飛び交っています(笑)。そんなふうにジャッジしながら、この4人で作れる、枠にとらわれない曲を作っています」2nd ALBUM『有頂天』【初回生産限定盤CD+Tシャツ】¥5,300【初回生産限定盤CD+DVD】約75分に及ぶ映像特典“負けられない戦い2”付き¥3,500【通常盤CD】¥2,800*すべて税込み(UNIVERSAL SIGMA)『ポルカドットスティングレイ』雫(V&G)、エジマハルシ(G)、ウエムラユウキ(B)、ミツヤスカズマ(D)から成る福岡県出身の4人組ギターロックバンド。今年7/17には初の日本武道館ワンマン公演を行う。※『anan』2019年2月20日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子(by anan編集部)
2019年02月18日2019年、デビュー10周年を迎えるOKAMOTO’Sが、ニューアルバム『BOY』をリリースする。一曲一曲にマジックを起こしながら、愛着が持てる曲を作りたかった。「今までのようにデモをとにかくたくさん出して曲を選んでいくやり方ではなく、様々な方法を試しながら10曲が出来上がりました。曲に向き合いながら、いかにマジックを起こせるか、俺らがどれだけ愛着を持てるかを探求していった気がします」(ショウ)リスナーを焚きつけるように熱いR&R(ロックンロール)「Dreaming Man」から始まるものの、ソウルナンバーやフォーキーな曲、レゲエなどサウンドは多彩。この10年の音楽的な積み重ねがあふれ出すような、ある意味で革命的な変容を感じずにはいられない、意欲的な作品だ。「今作では唯一ホーンセクションに入ってもらった『偶然』なんかは、以前だったら絶対に入らないような曲調ですし、作れなかったと思う。でも僕は元々ああいう曲が好きで作っていたので、いまならカッコよくやれると思いました」(コウキ)「曲は基本的にショウとコウキが原型を作るんだけど、それを俺がぶっこわしまくったというか、全く違う形にアレンジした楽曲もいくつか入っていて。ドラムを一切叩いていない曲もあるし、コウキのデモをインストにアレンジし、原曲を知らないショウにメロディをつけてもらったり、自由にアレンジして。それをバンドできっちり合わせて仕上げていきました」(レイジ)もしかしたら彼らを知るファンは、らしくない、と感じるかもしれない。しかし彼らは「“らしさ”って自分たちにはわからないし、そこにこだわりはない」と口を揃える。「作っている自分たちの感覚としては、生身を感じるものが作れたな、という気持ちが大きい。伝え方によっては、普通にカッコいい曲だね、と言われるだけでももちろん嬉しいけど、作っている自分たちの心情や姿勢まで感じてもらえたらより嬉しいですね」(ショウ)「音源を聴いてもらったミュージシャンの方々から連絡が来て、すごくカッコいいアルバムを作ったねと言われました。そんなふうに評価されたのは初めての経験でしたし、10年間やってきたことすべてが、このアルバムに繋がった気がして、よかったなと思いました」(ハマ)10代でデビューした彼らも、’19年で全員が28歳になる。タイトルに『BOY』と名付けたのは、刹那的だけど、ぴったりではないだろうか。「大人になりきってもいないし、子どもでもない年齢。でも、いましか表現できない微妙な感情とかが、アルバムの曲にも自然に出てきている気がします」(コウキ)「この年齢で“少年”とあえて名乗りたいタイミングだったのかな。24~25なら絶対言わないだろうし、大人になって気づけたこともある。いまの俺たちを表現するには、ジャストな言葉だと思います」(レイジ)6月には“最初で最後”という意味深なタイトルを掲げた初の日本武道館ワンマン公演が控える。このアルバムを武道館で鳴らしてくれる日が待ち遠しい。8th ALBUM『BOY』【初回生産限定盤CD+DVD】¥3,80010曲すべてが新曲で構成されたアルバム。DVDにはレコーディング・ドキュメンタリーを収録。2019年1月9日発売。【通常盤CD】¥3,300(ARIORA JAPAN)オカモトズ左から、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(D)、オカモトショウ(V)、オカモトコウキ(G)。中学校からの同級生で結成されたロックバンド。’19年にデビュー10周年を迎え、6月27日に日本武道館でキャリア初のワンマンライブを行う。※『anan』2019年1月2・9日号より。写真・岡本 俊(まきうらオフィス)ヘア&メイク・高草木剛(Vanites)取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2018年12月26日現在“放牧中”の3人組J-POPユニット「いきものがかり」のボーカル・吉岡聖恵さんが、ソロカバーアルバムをリリース。ソロとして始動するに至った心境の変化や、“放牧中”の過ごし方などを明かしました。彼女の歌声が名曲とともに、久しぶりに聴けるとは――ご存じのように現在≪放牧中≫につき、メンバーそれぞれが自由な時間を過ごしているいきものがかり。ボーカルの吉岡聖恵さんも「自分自身がやりたいことを自由にやらせてあげようと、食べたいだけ食べ、寝たいだけ寝て(笑)、料理を作ったり、会えなかった友達に会ったり、旅に出たり…という日々を過ごしていました。でも半年ぐらいで、そろそろ声を出したいなと思うようになって」と、10年間歌い続けてきたぶん、再びワクワクする気持ちで歌いたくなるまで、歌うことは封印していた。「ちょうどそんなふうに気持ちが動いていたとき、『夢で逢えたら』と『糸』をカバーするというお話をいただき、直感的に“やりたい!”と思いました。恐れ多いほどの名曲ですが、私が歌ったらどういうふうに聞こえるのか、その興味に勝てなかったんですね(笑)。この2曲が、ソロカバーアルバム『うたいろ』への扉を開いてくれたと思います」収録曲は11曲。100曲ほどの候補曲を歌い、選び抜いたそうだ。「好きな曲を歌えばいい、と思っていましたが、そんな簡単じゃなかった(笑)。私が歌うことで新しい作品にできる曲、という厳しいジャッジがあり、それをクリアするのが難しくて。原曲を超えるのは簡単ではないし、悔しい思いも味わいました」新しい作品、新しい曲にするとは、その曲が持つ≪いい色≫を吉岡さんが表現すること。そこから、タイトルの『うたいろ』が浮かんだそうだ。「その曲が持っている別の≪魅力≫を少しでも出せたらいいな、と思いながら歌いました。例えば、忌野清志郎さんが日本語訳詞を書いた『500マイル』は、故郷を離れる心境を歌った悲しいイメージの曲ですが、私は未来に向かっていくような明るい気持ちで歌い、原曲とは違う色が出せたかな、って」そして、学生時代からリスペクトする、ゆずの作品もカバーした。「路上ライブ時代から歌ってきて好きな歌もいっぱいあるけど、入れるべきか迷いました。私は特に内省的なしっとりした曲が好きなんですが、『少年』はいまの私の気分にぴったりだったので、よし、歌っちゃえって。スカッと心が晴れ渡って、心がオープンになるような歌になりました。この曲だけでなくアルバム全体に、いまの私が歌に対してとても前向きでポジティブ、という心境がそっくりそのまま反映されています」よしおか・きよえ3人組J-POPユニット、いきものがかりのボーカル。確かな歌唱力とあたたかみのある歌声は、世代を超えて愛されている。なお、いきものがかりは、現在、各自が自由な活動を行う放牧期間中。ブラウス¥36,000(ヒュー・デイ・トゥ・イブニング/ハルミ ショールームTEL:03・6433・5395)ワンピース¥24,000(サップTEL:03・6721・6894)その他はスタイリスト私物カバーアルバム『うたいろ』【初回仕様限定盤】¥3,000配信中の「ラグビーワールドカップ2019」公式ソング「World In Union」など、全11曲を収録。(Epic Records Japan)※『anan』2018年10月31日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・小林 新(UM)ヘア&メイク・長谷川亮介インタビュー、文・北條尚子
2018年10月24日痛切なほどに気持ちを歌に乗せる高橋 優さん。新アルバム作成の前の時期は、いわゆる「スランプ」を経験したと正直に語る。久々のオリジナル作に向けた思いとは。心に生まれたままの感情を、加工することなく歌詞に綴り、歌い続けているシンガーソングライターの高橋 優さん。最近は音楽のみならず、映画やドラマに出演したり、巧みな話術を武器にラジオ番組を持つなど、武骨なイメージとかけ離れた、驚くほどマルチな才能を発揮しているのだ。そんな彼が2年ぶりにリリースするアルバムが『STARTING OVER』。この作品に込めた彼のいまの思いから、話を聞いてみた。――アルバムタイトルが“原点に戻る”とか“再出発”という意味合いですね。高橋:はい、そうです。実は去年、自分の親に、ずっとあげたいと思っていた大きなプレゼントをしたんですよ。こんなことができるなんて、僕も大人になったなぁ、と感慨深くて。いまはお金を稼ぎながら歌わせてもらえる、なんて自分は幸せなんだろうと思ったら、曲が書けなくなってしまったんです。――えっ、そんなことが。高橋:曲作りに向かうモチベーションが全然上がらないのに、日々が充実している感じはあって……。でもその感覚がすごく怖くて、去年から今年の5月ぐらいまでそのモードから抜けきれなかったんですよね。曲作りって自分自身のメンタルと向き合うものだから、ヘンにホンワカしているとダメなんですよ。ギスギスしていたり、いびつじゃなきゃいけないのに、その部分が小さくなってしまっていた。このまま歌も書けないつまらない人間になってしまうのか、と。――作り手としては危機的状況。高橋:あぶなかったですね。もう一度ゼロからやり直すというか、ここから高橋 優をゼロから知ってもらうぐらいの気持ちで曲作りをしないと、自分は終わってしまう。そういう思いで「STARTING OVER」とつけました。――完成したアルバムには16曲もの素晴らしい歌があります。書けるようになったきっかけは?高橋:この8年間で積み重ねてきた曲作りのやり方を、いったん忘れて一度ゼロに戻ろうと「曲作りってどうやるんですか?」と、それぐらいのレベルからはじめたんです。「こんな感じですか」「いやそれは違うぞ」とダメ出しされるようなことを、わざとやってみようと。駄作と言われようが関係ない。自分をもっと伸び伸びと出して、新しい曲を生み出す、そんなやり方で書いてみて、最初にできたのが「美しい鳥」でした。――具体的には、なにをどうしたんでしょうか。高橋:譜割りを気にしないことですね。いままでは、とくにシングル曲は、口ずさみやすいとか、キャッチーだとか、どこかで気にしていたけど、そういうことを全部やめた。このアルバムに入っている曲は、全部歌いづらいです(笑)。――言葉がいままでの作品以上に饒舌で、歌詞カードからはみ出しそうですよね。高橋:そう。自分にしか歌えない歌かも。それが良いことか悪いことかはわからないけど、いまの僕に必要なのは、曲作りを楽しむことや、ワクワクしながら届けることだし、キレイな形じゃなくても、高橋優の音楽を聴いてくれる人は、きっと受け取ってくれるんじゃないかと期待しています。みんながカラオケで歌うことを意識しないで作っていったら、どんどん楽しくなっていったし、誰が聴いても素晴らしいと思われる曲を書くのはやめました。――おおー。高橋:いつの時代も古くならない普遍的な曲を書くことがいい場合もあるけど、いま僕がやろうとしているのは、自分の中で爆発しているものの火花を、しっかりとアルバムに焼き付けること。永遠に残ってゆく曲ではないかもしれないけど、そういう瞬発性を大事にしたいと、ますます思うようになりました。僕はデビュー当時は「リアルタイムシンガーソングライター」と言ってきたけど、いまになってその言葉がしっくりきている気がします。――なるほど。ソングライターは若いころの思いや経験の蓄積で曲を作り続けるという話も聞きますが、優さんの曲の素となるのは、いまこの瞬間、ということですか。高橋:ありがたいことに僕は“根に持ちタイプ”なので、いまも18歳の自分に負けないぐらい、傷つきながら生きています。だから青春時代の蓄積で曲を書くことになってしまったら、シンガーソングライター・高橋 優としてはおしまいなんです。もしそうなったら、歌うこともやめると思う。だってそんな歌、誰も聴きたくないですもん。去年、ふわっと幸せの幕の中に入ってしまい、しばらく曲が書けなくなったのは、いい意味で失敗をしにいったような感じ。あの経験があったから、新しい道が拓けたのかもしれないですね。――このアルバムは、高橋 優の生まれ変わりの作品、なんですね。高橋:まあでも失敗は数限りなくしてますよ。いまでもかわいい年下の女の子と知り合う機会があると、中途半端にカッコつけて、失敗していますし(笑)。ほら、20歳そこそこの女性って、例えばお酒が強い男性って大人、とかいう価値観持ってませんか?それに乗せられちゃって、気づいたらベロベロとか、僕、そんなですよ。シンガーソングライターの人って、その界隈で戦っていることが多い気がします(笑)。――どこ界隈で戦っているんでしょう(笑)。高橋:そのひと言を言わなければカッコいいのに、みたいな。または逆に言うべきときに言えなかったり。どんなときもうまく決められる人は、歌を歌わなくてもカッコいいんですよね。でも僕は、そのときの孤独感や、切ない気持ちを歌にするんです。だからロクでもないんですけどね(笑)。――シンガーソングライターあるある(笑)。ところで、以前お伺いした「お誘いは断らないキャンペーン」は継続中ですか?高橋:いえ、社交的なことはもう積極的にはしてないです。まぁ、そういう場では社交的なフリはしてますよ。――フリ(笑)。でもご友人はすごく多そうです。高橋:僕が話そうとしていることと似たニュアンスの人といると落ち着きますね。なぜかO型の人が多いんですよ。最近、面白いと思ったのは、僕はいま34歳ですけど、上の世代の40代の人って、これじゃなくてはいけないというこだわりの強い人が多いんですよ。僕ら30代は、そのこだわりを見せられてきたから、別にそこまでこだわらなくてもいいじゃんという世代。でも20代はまた別のこだわりがある世代なんですよ。その3つの世代と同席していると、飲みの場なのに20代と40代が、マジトークになってきて、ケンカになったりする。僕らはその合間の中間層ですし、ケンカが大っ嫌いなんですよ(笑)。ホント苦手だから、そういうことで熱くならない人がいい。たかはし・ゆう1983年生まれ、秋田県出身。2010年、シングル『素晴らしき日常』でメジャーデビュー。‘16年より主催野外音楽フェス「秋田CARAVAN MUSIC FES」を開催。‘17年から‘18年にかけて、約8万人動員した自身最大規模となる全国ツアーを成功させた。‘18年12月より高橋 優LIVE TOUR 2018-2019「STARTING OVER」を開催する。カットソー¥9,500パンツ¥32,000(共に原宿VILLAGETEL:03・3405・8528)ブルゾン¥28,000(ROCK THERAPYTEL:03・6805・1312)その他はスタイリスト私物6作目のアルバム『STARTING OVER』(10月24日発売)は、シングル「ありがとう」(映画『パパはわるものチャンピオン』主題歌)など16曲を収録。ジャケット写真は親交の深いリリー・フランキーさんが撮影した。ニッポン放送『オールナイトニッポンサタデースペシャル 大倉くんと高橋くん』に出演中。※『anan』2018年9月26日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・横田勝広(YKP)ヘア&メイク・内山多加子(Commune)インタビュー、文・北條尚子(by anan編集部)
2018年09月24日多重構造の総合芸術とでもいうようなライブで、いままさに、人々を熱狂に導いているサカナクション。ベスト盤を引っ提げての、話題の即完ライブ「SAKANAQUARIUM2018“魚図鑑ゼミナール”」2018.7.10 @Zepp Tokyoに潜入。第1部深海深海で、海月のごとくゆらゆらと、音に酔いしれる。―ステージは『深海』からはじまった!―と書くと何のことやらだが、この春リリースした初ベストアルバム『魚図鑑』は、DISC1『浅瀬』→DISC2『中層』→DISC3『深海』の順に、海中へ潜っていくかのように自分たちの楽曲を階層分けした作品だった。しかし今日のライブは海底から徐々に水面に上がる順で行われるらしい。開演早々のサプライズだ。7月10日のZepp Tokyoは、全国5都市で2万2000人を動員したツアー「SAKANAQUARIUM2018“魚図鑑ゼミナール”」の最終日。波打ち際を映し出すオープニング映像を見つめながら《受講生の皆様》と呼ばれた観客は、既に感動の予兆ではちきれそうだ。グラフィカルなCG映像でのメンバー紹介の後、山口一郎、江島啓一、岩寺基晴、草刈愛美、岡崎英美が登場。山口が指揮者のようなポーズをとり、深海チャプターの1曲目『朝の歌』が始まった。暗転し、蒼々としたライトブルーに包まれてライブは静かに進んでいく。5曲の短い構成だったが、とくに『enough』など、山口さんの歌から流れる感情が体の中を伝うような感覚を味わう。深海で演奏する5人を見つめる私たちも、同じ海中を漂っているような、不思議な感覚にとらわれはじめていた。第2部中層近距離にいる彼らの演奏で、会場はダンスフロアに。『深海』の最後に、山口さんが今宵はじめてひと言だけ「ありがとう」と発し、いよいよステージは『中層』へ。ステージ演出はガラリと変わり、スクリーンを使ったディスコティックな空間へと観客をいざなう。サカナクションはダンスビートを刻みだす。いよいよ踊れる予感だ。『魚図鑑』の『中層』には17曲が収められている。あの素晴らしいラインナップから、ここで聴ける曲はどれだ?とワクワクする。結論から言えば、中層チャプターのステージは、ダンスグルーヴ満載の空間だった。山口さんに煽られ、バンドに乗せられ、Zepp Tokyo全体が揺れる、揺れる。それにしてもライブハウスで、この近距離で、サカナクションの生演奏に身を委ねられるとは、鳥肌モノの贅沢さだ。「僕はシャツの袖で流した涙を拭いたんだ」との歌い出しで、『三日月サンセット』が始まった。グリーンのライトに照らされ、空間は一気に変わる。それにしても既にライブ中盤戦で、“魚図鑑ゼミナール”の計算し尽くされた演出の素晴らしさに興奮。レーザーをはじめとしたライティング、映像、オイルアート、そして完璧な音響設備。最先端のさまざまな技術までパッケージにしてライブを作り上げる、彼らの見事な演出力にゾクゾクしていた。第3部浅瀬~アンコールエンターテイナーとして新しい可能性に挑み続ける姿。『魚図鑑』が完成したときのインタビューで、山口さんは「多くの人が好きなものと、受け入れられないものを組み合わせると、どうしても違和感が生まれます。でも僕は良いものって、違和感から生まれると思っていて、その違和感を組み合わせたものが『浅瀬』です」と解説してくれた。演奏曲はシングルも多く、高揚感たっぷりのチャプターに。忘れられないのが『アイデンティティ』。「みんな歌える?」と山口さんが問うと、会場全体がアカペラで歌いはじめる。「すごい!」と山口さん。観客だけに歌わせることに驚かされたが、圧巻の、忘れがたい光景のひとつだ。「まだまだ踊り足りなーい?一緒に踊りましょう」とラスト曲がスタート。曲中、歌謡ショーの歌手のように前列のお客さんと握手したり、マイクコードで縄跳びしたり、お茶目な山口さんの姿も。そんなサービス精神も含め、現代を代表するエンターテイナーとして、音楽を最大限に楽しむための可能性に挑んでいる。そんなことが心に刻まれた“ゼミナール”だった。アンコールの合間に、翌々日からレコーディングに入ること、いい曲がいっぱいできていること、を山口さんが報告して会場を再び沸かせた。そして「あと一曲、沁みながら踊りましょう!」と叫び、『夜の踊り子』で幕を閉じた。サカナクション札幌出身のロックバンド。メンバーは山口一郎(V&G)、岩寺基晴(G)、草刈愛美(B)、岡崎英美(key)、江島啓一(D)。2007年のデビュー直後から、デジタルを駆使した独特のサウンドを聴かせ、新たなロックの潮流に挑み続けてきた。とくに音響、映像など最新の装置を積極的に使い、明確なコンセプトで楽しませるライブ空間には高い定評があり、そこには必ず驚きと熱狂がある。バンドというより、クリエイター集団と呼びたい5人組。※『anan』2018年9月12日号より。文・北條尚子(by anan編集部)
2018年09月05日