新作『ラッキー&ヘブン』をリリースするザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトさんと真島昌利さんに、制作の裏側について話をうかがいました。まだやり遂げた感がないから、気持ちは1stアルバムと変わらない。新作をリリースする度に、まだ味わったことのないR&Rショーを体感させてくれるザ・クロマニヨンズ。新作『ラッキー&ヘブン』も、フレッシュな柑橘の飛沫を浴びるような瑞々しさを感じるアルバムだ。「どんなアルバムにしようかって話し合いは、全然しないよ。普段から曲を作っているから、次のアルバムにはこれ入れたいなという曲を選んで、みんなに自分の曲を聴いてもらうことからはじまります」(真島)「そうそう。それまでは世界中で自分しか知らない曲だから、聴かせるときは毎回緊張するというか、ドキドキするよ。くだらねえ曲だなぁとか、思われないかなって」(甲本)発表するナンバーは、メンバー4人で30~40分のセッションを繰り広げるうちに、完成形に近づく。「マーシーがギターを弾きだしたらオレが追っかけながら歌い、ドラムはリズムはこんな感じかなって叩き、ベースも合わせてついてくる。その積み重ねがアルバムになります。それはもう何十年もやってきた経験がそうさせる≪手くせ≫としか言いようがないんだよね」(甲本)そうして生まれた12曲のメロディに魂を揺さぶられ、ビートに体ごと射抜かれ、何度も繰り返し聴きたくなる唯一無二のR&R。このアルバムを聴きながら、走り出したいような衝動にも駆られる。「R&Rは何十年演奏してきても、リスナーとしてもまったく飽きない。早く家に帰って、あのレコードを聴きたいとか思ってる(笑)。何だろう、永遠に追い続けるもの?まだ何かをやり遂げた感がないんだよね。これだけ長くやってきても、オレはこんなにすごい作品を書いた、というものがない。だからファーストアルバムとまったく同じテンションでやれるんだと思う」(甲本)10月26日からは本作を引っ提げた全国ツアーが始まる。全58公演という半年間に及ぶロングツアーだ。結成12年目を迎え、最高のチームワークを見せる4人のパフォーマンスは各地を盛り上げること必至。「いつも4人一緒にいるように見えるけど、年間で考えればツアーとレコーディングのときしか集まらないからそんなに多くもないんだよね。だからツアー中は一緒にいる瞬間を大事にしたいと思ってる」(真島)ちなみにカレー好きで知られるふたり。ライブ前の昼ご飯は必ずカレーとか。またヒロトさんは開演前にバナナを食べてステージに立つそう。「そしてステージが終わったあと、4人で食べるご飯がすごくおいしいんです。ときどき誰か用事があって先に帰ることがあると、すごく寂しい。ご飯だけでも食べていきなよー、みたいな(笑)。でも、一緒にテーブルを囲みたいと思える人たちと、音楽を作り上げるのが、いいことなんじゃないかな」(甲本)左・甲本ヒロト(V)、右・真島昌利(G)に加え、小林勝(B)、桐田勝治(D)の4人編成ロックバンド。THE BLUE HEARTSと↑THEHIGH-LOWS↓で活動を共にしてきた甲本と真島を中心に結成され、2006年デビュー。11th ALBUM『ラッキー&ヘブン』。先行シングル『どん底』など全12曲収録。【通常盤CD】¥2,913※初回生産分のみ紙ジャケット仕様。【完全生産限定アナログ盤】¥2,913(Ariora Japan╱Sony Music)10月11日発売。※『anan』2017年10月11日号より。写真・野呂知功(TRIVAL)文・北條尚子(by anan編集部)
2017年10月06日バンド結成20周年の今年、7年ぶりにニューアルバムをリリースしたロックバンド・RIZE。ダブルで嬉しいタイミングに、ドラマーの金子ノブアキさんにインタビュー!「20周年なんてメンバーみんな忘れていたんですが、デビュー当時に所属していたレコード会社に戻って、新たな気持ちでアルバムを作ることになりました。バンドが原点に立ち返ることができたし、今年だからこそ作れたアルバムだと思います」メンバーのJESSEはThe BONEZ、KenKenはLIFE IS GROOVE、Dragon Ash.など別のバンドでも活躍中。金子さん自身も、俳優業やドラマーとしてのソロワークのほか、パフォーマーとのコラボなど活動は多岐にわたる。しかし3人の原点は、やはりRIZE。「このメンバーで音を出すと、結成したころの衝動や焦燥感が引っ張り出されてくるんだよね。いまのRIZEらしさを出すなら、一発録りでやるべきだよ、と思ってドラムとベースはほぼワンテイクです。説明が難しいんだけど、2回3回録っても、まるで魔法みたいに、最初のプレイがいちばんカッコいいんです」金子さんとJESSEはとりわけ’90年代のアメリカ西海岸のミクスチャーロックに影響を受けた世代だ。この『THUNDERBOLT~帰ってきたサンダーボルト~』からは、彼らが吸収してきた音楽の原点を、おおいに感じさせられる。「アメリカにもこういうバンドはもういなくなっちゃったから、絶滅危惧種?(笑)そんなこと気にせず、全身で表現しているよ。ライブはみんなで命を分け合うような瞬間なので、その基本に立ち返って、この作品を作れたことは非常に大きいね」20年前、高校生でRIZEを結成したころから、金子さんは「変わったバンドだな」と思っていたそうだが、いま再び、いい意味での特殊性を強く感じると言う。「今回は、半分裏方のような気持ちでレコーディングしました。ドラマーに徹し、サウンド面は3人に大部分を任せました。JESSEのラップは誰よりもカッコいいし、ギターのリフのキレ味も、他にできる人が見当たらないぐらいいいんですよ。そしてKenKenのベースとサポートギターのRio君という2人のソリストが、ボーカルをうまく盛り上げてくれる。これだけ濃いメンバーが集まって成立する音、我がバンドながら最高だと思います」そして12月にはRIZEとして初の武道館公演が控えている。「’97年の『新宿ロフト』20周年イベントでRIZEを結成し、武道館で演奏したんですよ。思い出もあるので特別なライブになるでしょう」8th ALBUM『THUNDERBOLT~帰ってきたサンダーボルト~』【初回生産限定盤CD+Blu-ray】¥5,000映像特典は昨年のツアーファイナルのライブの模様とドキュメンタリーを収録。【通常盤CD】¥3,000*共に税込み(EPIC RECORDS JAPAN)ライズメンバーはJESSE(V&G)、金子ノブアキ(D)、KenKen(B)。JESSEと金子により結成され、2000年『カミナリ』でデビュー。2006年にKenKen加入。9月後半から全国22会場をツアーし、12/20に初の武道館公演を行う。※『anan』2017年9月27日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子(by anan編集部)
2017年09月26日約4年半前、ananの表紙を飾ってくれたあのOne Directionのメンバー、ナイル・ホーランがソロシングルをリリース!大人のアーティストへと成長した彼に会ってきました。――ソロアーティストとして久しぶりに来日し、どんな気持ち?ナイル:初めて来たときは高層ホテルから見る東京の夜景の素晴らしさに度肝を抜かれるほど感動したんだけど、その後も日本に来るたびに何か新しい感動があるよ。美しい風景や食べ物だけでなく、日本にしかないものが心地よくて。例えば、他の人を思いやり、リスペクトする文化は本当に素敵だと思う。そういえば、初来日のときのことだけど、いまも忘れられないシーンがあるんだ。――え、なんでしょう?ナイル:初めてのイベントで、ファンの子たちが曲の合間に静かになるので面食らったんだよ。でもそれは曲をじっくり聴くだけでなく、MCも聞き漏らしたくないという真剣さの表れなんだよね。とくにアカペラで『ストリート・オブ・マイ・ライフ』を歌ったときの心地よい静寂は、いまも忘れられない。――なるほど。日本人は盛り上がり下手、みたいに思われているんじゃないかと心配なんですが。ナイル:そんなことないよ!確かに初めは、僕らのステージだけそうなのかなと思っていたんだけど、たまたま同時期に来日していたザ・ヴァクシーンズのライブを観に行ったら全く同じだったから安心した。他のどこの国とも違う日本の《文化》だから大切にしてほしい。――ありがとうございます。ところで昨晩は何を食べたんですか?ナイル:A LOT LOT OF SUSHI!(笑)食べすぎるほど食べたよ。日本の人は、ほんの少しずつ食べるけど、僕らは大盛りにしてもらって、オオカミのようにどんどん食べた。全部おいしかった。失恋したら、曲を書くと立ち直りが早い。――ソロとして2曲のシングルをリリースされましたが、両方の歌詞は実体験に基づくものですか?ナイル:特にそういうわけでもないかな。アルバムに向けて歌詞よりもサウンド面でやりたいことがたくさんあったから、あの2曲は’80年代のロックのテイストを取り入れて作り、後から歌詞を乗せたんだ。――『スロー・ハンズ』は仕草がセクシーな女性像を描いているけど、もしや好きなタイプ?ナイル:うーん、どうかな(笑)。僕の好みでいえば、華やかで自信満々で押しの強い子よりも、かわいらしくて飾らない子のほうが好き。――好きになると正直に気持ちを伝えるほうですか?ナイル:そう!すぐに告白するよ。それが良くもあり悪くもありで、いまはガールフレンドがいないという(笑)。でもまだ24歳だし、自分の恋心には素直に従いたいと思ってるよ。――もし失恋したら、どんな方法で立ち直るんですか?ナイル:(即答で)曲を書く!だから音楽活動が、僕の助けになってる。――そういう作品が聴けるソロデビューアルバムが楽しみです。ナイル:うん。今年中には聴いてもらえると思うよ。その前にサードシングルも予定している。ロンドンに戻ったら、プロデューサーのグレッグ・クルスティン、彼はアデルの『ハロー』を手掛けたすごい人なんだけど、彼とシングルを仕上げる予定なんだ。――曲作りはどんなふうにやってるんですか?ナイル:書こうと思うと浮かばないから、ひとりでリラックスしているときにギターを弾きながら、かな。そういう時間のほうが、感情豊かな歌詞が浮かんだり、いいギターのリフが出てくるんだ。レコーディングはLAとロンドンで半々ずつ録っている。ロスのスタジオはザ・ビーチ・ボーイズが名盤『ぺット・サウンズ』を作った場所と聞き、歴史の重みを感じたよ。※『anan』2017年9月27日号より。写真・YASUNARI KIKUMA取材、文・北條尚子(by anan編集部)
2017年09月23日ジャズミュージシャンだけでなく、シンガーやタップダンサーなどともジャンルを超えて共演し、その度に新しい音の世界を見せてくれる、ピアニストの上原ひろみさん。最新アルバム『ライヴ・イン・モントリオール』についてお話を伺いました。運命の出会いをしたふたりの情熱的なジャズセッション。最新アルバムでは、ハープ(アルパ)奏者のエドマール・カスタネーダと熱いセッションを繰り広げている。「彼の演奏を聴くまで、ハープという楽器についてあまり知らなかったのですが、そのパッションに引き込まれました。同時に、音楽上で話している言語が共通だと直感的に思い、共鳴できるものを感じました」という出会いが昨年のカナダ・モントリオールでのフェス。その後、ひと月も経たないうちにNYで共演し、今年、世界ツアーが進行中だ。「一緒にやりたいと思ったら、私、行動が早いんです(笑)。彼と実際に一緒に演奏すると想像以上にすごい化学反応が生まれましたね。今まで知らなかったのが不思議なくらい。運命的な出会いを感じています」アルパとは、主にコロンビアとベネズエラで演奏される楽器で、クラシック用の大きなハープとは別物。プレイヤーの演奏次第でギターにもベースにもパーカッションにもなる、多面的な楽器なのだとか。「このプロジェクトでツアーをするなら、曲を書きたいと思いました。ハープの特性上、コード進行に制約があるのですが、逆にその制約を可能性にして、新しいドアを開くことが作曲者としてすごく面白かったですね。ふたりで演奏している場面を想像しながら書き上げました」と話すオリジナル作品「ジ・エレメンツ」は自然を題材にした4部構成。本作のメインともいえる作品だ。「エドマールはハープ用に曲を提供されること自体はじめてだったそうで、とても喜んでくれました。こんなに多彩な色合いの曲を書いてくれてうれしい、ありがとう、って」1年前の6月30日にモントリオールで初対面し、1年後の同日に録音されたというこれまた運命的な『ライヴ・イン・モントリオール』。ピアノ&ハープのジャズセッションの、日本初お披露目も楽しみだ。上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ『ライヴ・イン・モントリオール』【初回限定盤CD+DVD】¥3,300DVDにはツアードキュメンタリー等を収録。【通常盤CD】¥2,600(ユニバーサルクラシック&ジャズ)うえはら・ひろみ世界を舞台に活躍するジャズピアニスト。9月24日に横浜赤レンガ倉庫特設ステージで開催される「Blue Note JAZZ FESTIVAL in JAPAN 2017」で、カスタネーダとの日本初公演を行う。※『anan』2017年9月20日号より。写真・小笠原真紀文・北條尚子(by anan編集部)
2017年09月19日真心ブラザーズの15thアルバム『FLOW ON THE CLOUD』。その制作背景、歌詞へこだわりなどについて、お二人に話を伺いました。聴く人の人生がより良くなるように解釈してくれる歌を書きたくなった。「レコードのブツブツ」という曲からはじまる真心ブラザーズの新作アルバム『FLOW ON THE CLOUD』。アナログレコード世代には懐かしい響きだが、音楽DL世代には“ブツブツ?それって何?”かもしれない。「かっこいいカフェって、音楽をレコードで流している店が多いんだけど、スタッフが忙しいからすぐにレコードを引っ繰り返せないので、ブツブツが聞けるんだよね(笑)」と話すYO-KINGご本人も、家で聴く音楽は、あえてアナログレコードだけになったとか。「このアルバムは、制作前からYO-KINGが明確なテーマを持っていました。’67年のボブ・ディランのアルバム『ジョン・ウェズリー・ハーディング』とか’60年代のアルバムをいくつか聴かせてもらって、掴んでいった感じでした」(桜井)『FLOW ON THE CLOUD』は、真心の二人がアナログレコードで聴き、いまも愛してやまない’60年代のR&Rがお手本だ。狙ったのはステレオ以前の’60年代にラジオから流れていたビートルズやボブ・ディランのモノラルサウンド。しかしレコーディングはデジタル、ミックスはモノラルという新手法で完成させた。ギターやスチールギターの生音に、切ないフレーズを奏でるハーモニカ。2017年の作品なのに、その音色ひとつからも、時空を超えた熱気が伝わってくる。「わざと歌詞も1番だけとか、リズムもきちんと決めずにスタジオに入り、メンバーを煙に巻きながら、セッションで作っていったんです。偶然の産物が名曲を呼ぶ、そんな感じでしたね。まぁ性格的に詰められないというのもあるんだけど(笑)」(YO-KING)「YO-KINGの持ってきたものに、楽器陣がどう応えるか、というセッションでしたね。これでどうだ、といういろんな大喜利を繰り広げながら、初日から面白いようにハマったよね。パッと聴いてパッと返してという応酬は、めちゃくちゃ疲れたけど楽しかったな。僕の楽器の腕も数段上がった気がする。でもポップ、ロック畑でこんなことやってる人はいないと思うけど(笑)」(桜井)さらにはその歌詞にも、大いに惑わされる。例えば、恋人との別れのことなのか、人生への惜別なのか、答えがすぐに分からない歌詞世界がめくるめく妄想を呼ぶのだ。「文学というと何ですけど、その匂いは残したかったんです。この10年ぐらい、歌詞ではストレートな物言いをしてきたけど、いまはイメージをたくさん作って、幾通りにも解釈できるような歌詞が好きなんです。僕もビートルズやボブ・ディランの歌詞を誤読しまくって解釈して快楽を得てきたので(笑)。誤読というより、どう解釈してくれるか、かな。それによって聴く人の人生がより良くなる歌詞を書きたくなってきたんだよね」(YO-KING)アルバムは12曲入り。曲順はA面6曲、B面6曲を意識したそうで、アナログ盤もリリースされる。15th ALBUM『FLOW ON THE CLOUD』【初回限定盤CD+DVD】¥3,700渡辺美里に提供した「鼓動」のセルフカバーを含む12曲入り。DVDには《マゴーソニック2017》よりライブ映像などを収録。【通常盤CD】¥3,200*共に税込み(Do Thing Recordings/徳間ジャパン)まごころブラザーズ右・桜井秀俊、左・YO-KING。デビュー25年目に自身のレーベル《Do Thing Recordings》を設立し、活動を続けている。10/8の横浜公演を皮切りに、全国18都市を回るツアー「FLOW ON THE CLOUD」がスタート。※『anan』2017年9月20日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子(by anan編集部)
2017年09月19日昨年、新人ながら映画『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌に抜擢され、一躍注目の存在となったGLIM SPANKY。誰もが一度は耳にしたことのあるハスキーな女性ボーカルをのせたオーセンティックなロックを奏でる二人は、いまや時代の寵児とも評される。ルーツを前面に打ち出した最新アルバムも完成し、ロックの王道をひた走る彼らの過去・現在・未来に迫るインタビューです。――結成が2007年だからちょうど10周年なんですね。当時は松尾さんが高1、亀本さんが高2で。松尾:はい。初めて会ったとき亀はサッカー部だったので、真っ黒に焼けてて髪が長くて腰パンで、うわーと思ってたけど、バンドのことめっちゃ真面目なんですよ。亀本:音楽だけじゃなくて全てのことに真面目なんだよ。松尾:初めてスタジオに入った日、ちゃんと練習してきたので驚いて。亀本:サッカー部だから毎日練習するのが当たり前。もし軽音部のヤツが運動部並みに練習したら、卒業するころにはめちゃくちゃギターがうまくなると思いますよ。――確かに(笑)。それですぐに地元コンテストで優勝とは、すごい。松尾:持ち曲がまだ2曲しかなかったのに、出ちゃいましたね。その翌年は10代限定のロックフェス「閃光ライオット」に応募して、ファイナリストになりました。――高校時代から、プロになりたいという気持ちだったんですか。亀本:特にありませんでした。向上心を持って続けていただけ。松尾:私も創作すること自体が楽しくて、自然に活動していました。――進学で上京し、4人だったメンバーが2人になったそうですが、活動は続けていたんですか?松尾:弾き語りやライブなど、活動は変わらずしていました。でもすごいとんがっていたので、《メンバー募集中!》とかは絶対言わない(笑)。一緒にやりたいヤツから連絡してこい、みたいな。亀本:ただ、「閃光ライオット」の直後は、お客さんも観に来てくれたけど、その後は1人か2人。松尾:それでもなぜか根拠のない自信だけはあって。将来、GLIM SPANKYが音楽シーンにいなかったら、日本の音楽はおしまいだ!と本気で思ってました。そんなバカさがあったから、やってこられたのかな。――なるほど。でも大人を信じてなさそうな二人だから、デビューまでも波乱だったのでは(笑)。松尾:そもそも信用していなかったし、敵対しまくりでした。いまのレーベルのトップの方と会ったときも「キミたちはこういう売り方をすればイケるよ」的なことを言われると思って、絶対言い返してやると思っていたのに、好きなバンドの話とか音楽トークだけ。純粋なロックファンだったので、私たちの音楽を捻じ曲げないだろうと思えて、一緒にやろうと決めたんです。こんなに自由でいいの、と思うぐらい、伸び伸びと好きなように活動させてもらっています。――今日の衣装も自分たちで選んだ古着ですか?松尾:はい。もともとはノースリーブのワンピースだったんですが、袖をつけてリメイクしてみました。――音楽もそうだけど、ファッションや松尾さんがデザインするノベルティに至るまで、一貫したスタイルがありますよね。松尾:普段は自分で衣装を用意し、メイクもセルフでしますが、私はこういうスタイルでやりたいというイメージが明確にあるので、スタイリストさんにお願いするときもイメージ画像を何十枚も見せて、衣装を用意してもらいますね。――二人を見てると、ロックミュージシャンはスタイルがなければ、というポリシーを感じます。松尾:バンドを始めたころから、ロックはファッションやカルチャーとともに時代の中で生まれていくもの、という感覚がありました。それは両親にずっと言われ続けてきたことなんですが。――ご両親の教育の賜物!亀本さんはどうですか?亀本:僕は音楽にしか興味がないので、流行とかブランドがどうとかは分からないんです。でも、ロックって見た目がカッコ良くないとダメ、というこだわりはあります。このGジャンも古着ですけど、その人の作る音楽がカッコいいから、Gジャンもカッコ良く見えるし、たとえTシャツをインしてても、カッコいい音を出せる人なら、インすらもカッコ良く見えると思う。でも音をカッコ良くするのがいちばん難しい、と僕は言いたい。松尾:そうだね。亀には音については徹底的にこだわってもらいたい。私はビジュアル面にもこだわるから、いいバランスで活動できているし、ストレスなくやっています。亀本:もし音楽以外のことに時間をかける暇があるなら、その時間も音楽のことだけにしたいからね。――ファンの人たちも二人に刺激されて、古着屋に通うようになったりしていますよね。松尾:はい。私はベレー帽にワンピースを合わせるのが好きなんですが、同じ格好の子が何人もライブに来てくれたり、前列の女の子がみんな私と同じ靴を履いていたこともありました。すごく嬉しいです。――二人の音楽を初めて聴いたとき、最初は松尾さんのボーカルに気持ちがざわざわしました。ご自身の、天から与えられたような奇跡的な声をどう感じますか。松尾:歌は子供のころから大好きでしたが、張り上げると自然にひずむし、ガサッとした声なので、どうもみんなと違うなって。でも小学生のときにジョン・レノンがガサッとした声で歌っているのを聴いて、その不安は吹っ飛びました。こういう音楽をやれば私の声が合うかもしれないって、ビビッときて。そのとき自分の声の使い道に気が付いたんだと思います。――その歌声が最先端の機材で作られたロックに乗っていることに、毎回感動します。最新作『BIZARRE CARNIVAL』について教えてもらえますか。松尾:1作目、2作目はシンプルなロックを中心にした構成で、名詞代わりのアルバムでしたが、3作目はよりマニアックなところに足を突っ込んでもいいんじゃないか、って。もともと私が大好きなサイケデリックロックにも挑戦していますし、フォーキーな曲もあり、アッパーなロックンロールもあります。新曲だけでなく、全くお客さんが入らなかった大学時代、ライブハウスで演奏していた懐かしい曲も。そんなビザ―ルな曲たちが集まったカーニバルを開くよ、というアルバムです。亀本:いま振り返ると、サイケデリックなサウンドをフィーチャーしたアルバムを作ろうと決めたのは正解だったよね。松尾:うん。‘60~‘70年代のサイケデリックロックをずっと聴いてきて、私たちの血となり肉となっているので、GLIM SPANKYなりのサイケデリックロックを、現代に提示したかったんです。グリムスパンキー松尾レミ(V&G)、亀本寛貴(G)。‘60~‘70年代のロックやブルースをベースに新しい感性を加えたロックを聴かせるユニット。2014年にミニアルバム『焦燥』でデビューするや否や、松尾のハスキーな声が評判となり、多くのCM曲にも参加する。3枚目のアルバムをリリースし、J-Rockのシーンでも唯一の個性を放つアーティストに。3rd Album『BIZARRE CARNIVAL』好評発売中。【初回限定盤CD+DVD】¥3,700【通常盤CD】¥2,700なお収録曲の「ビートニクス」は映画『DCスーパーヒーローズ vs 鷹の爪団』主題歌になる。10月から全国20会場を回るツアー「BIZARRE CARNIVAL Tour 2017-2018」がスタートする。来年1月には台湾と香港で、初のワンマンライブを開催する。※『anan』2017年9月20日号より。写真・内田紘倫インタビュー、文・北條尚子(by anan編集部)
2017年09月14日公開中の映画『トリガール!』に、ねごとが素晴らしい曲で物語に彩りを添えている。主題歌はスピッツの「空も飛べるはず」のカバー、さらに新曲「ALL RIGHT」が挿入歌として採用され、その2曲がシングルとしてリリースされた。「『空も飛べるはず』は、小学校のころ合唱曲として歌った思い出もあり、名曲を受け継ぐ気持ちでカバーさせていただきました。私はスピッツが大好きだったので、すーっと曲の中に入って歌うことができました」(蒼山)「まったく新しいアレンジではないけれど、ねごとがいまやっているエレクトロなダンスミュージックのテイストを入れて、ねごとはこういうサウンドだよ、という音の作り方にもこだわりました」(澤村)4人がまだ幼いころの大ヒット曲(1996年)だけど、リアルタイムで聴いていないぶん、’90年代の音楽にはある種、憧憬のようなものを感じるという。「スピッツさんやミスチルさんなどそれぞれのカラーが際立っていて、どこから聴いてもすぐに分かるメロディがあって、ずっとメッセージを発信し続けていることがすごい。カバーするときにはそういう普遍性を大事にしました」(沙田)『トリガール!』は「鳥人間コンテスト」を目指す大学生たちの物語。4人も子供のころからワクワクしながら番組を見てきたそうで、挿入歌の「ALL RIGHT」には、感情移入もたっぷり。アルバム『ETERNALBEAT』で聴かせたエレクトロニクス色の強いサウンドに疾走感が加わり、さらに振り切れた感じ。いまのねごとの魅力を強烈に印象づける。この曲がまた最高に素敵なシーンで流れるのだ。「私も友達や、家族と、違うグループで数回観に行きましたが、子供から大人まで楽しめる映画だし、登場人物が魅力的です。ねごとの曲がいいシーンで流れてくるので、私たちをもっと知ってもらえる素敵な機会をいただいたと思います」(藤咲)映画主題歌という大役を得て、それぞれ異なる質感と熱気を持つ、ねごとらしい名曲を完成させた。どちらもステージで聴きたいナンバーだ。ねごと写真右から、澤村小夜子(D)、沙田瑞紀(G)、蒼山幸子(V&Key)、藤咲佑(B)。2010年デビュー。今年はじめにリリースした『ETERNALBEAT』では鳴りやまないビートをテーマにしたダンサブルな作品で新境地を見せた。Double A Side Single『空も飛べるはず/ALL RIGHT』【初回生産限定盤CD+DVD】¥1,300特典DVDにはタイトル曲2曲のMV収録。映画で主演を務める土屋太鳳も出演している。【通常盤CD-初回仕様-】¥1,000『トリガール!』アナザージャケット封入。(Ki/oon Music)※『anan』2017年9月13日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子(by anan編集部)
2017年09月11日スペシャルユニット・福耳が、5年ぶりに新曲をリリースする。両A面となる今作、一曲「ブライト」は長澤知之さん、もう一曲の「Swing Swing Sing」は秦 基博さんという、昨年デビュー10周年を迎えた2人が書き下ろした。新メンバーも加わったスペシャルユニットが、新曲2曲を発表。「福耳にはいい曲がたくさんあるし、いつか自分も書けたらいいな、とずっと思っていました。恒例の<Augusta Camp>の舞台で皆さんと一緒に歌い、踊れるような楽しい曲を意識しました」(秦さん)「僕も秦君と同じように、参加したアーティストもファンの方々も楽しめることをイメージしながら、福耳の作品ということで自分なりに敬意をもって書きました」(長澤さん)彼らが手掛けた作品のプロデュースを務めたのが山崎まさよしさん。「2人を公文式のように個別指導して(笑)、曲を仕上げました。2曲ともデモの段階で世界観が出来上がっていたので、少々お化粧をしたくらいです。イントロからワクワクさせたいので、最初の音、歌から勢いが始まるようにしようとか、そんなアイデアを加えました」(山崎さん)ご存じのように福耳は、同じ事務所に所属するアーティストのユニット。今年は3人の他に竹原ピストル、浜端ヨウヘイ、松室政哉などの新メンバーが入り総勢13名の大所帯に。「みんなつき合いが長いので、例えば、ここは元ちとせが歌いそうだな、という具合に、歌のパートはすんなり決まるんです。全員の歌入れにずっと立ち会いましたが、うーん、とか言ってるだけ(笑)。録音マイクの上げ下げが面倒だったくらい。浜端ヨウヘイが190cmもあるので、次が杏子さんだと、めちゃ下げなくてはならず(笑)」(山崎さん)「『Swing Swing Sing』は、自分のイメージから始まった曲ですけど、福耳メンバーの声がソロで、さらにコーラスで重なって、本当に福耳の曲になったんだなと感じました。みんなの歌の説得力には感激しましたね」(秦さん)「そう、僕も同じことに感激しました。自分の仮歌はだいぶハスキーだったのですが、完成したコーラスには様々な彩りが加わって、この2曲が新しい福耳の曲になるんだなって、嬉しかったですね」(長澤さん)新しく生まれた福耳の曲を<Augusta Camp>で聴くのを心待ちにしている人も多いはず。「同じ事務所のアーティストが揃うイベントは他にあまりないし、これに行かなきゃ“夏が終わらない!”という方が多いのは、もう感謝しかないです。今回は貴重なセッションやコラボもあるので、ぜひ一緒に歌いに来てください」(山崎さん)『ブライト/Swing Swing Sing』【初回限定盤CD+DVD】¥1,600DVDにはレコーディングドキュメンタリーを収録。【通常盤CD】¥1,200(AUGUSTARECORDS)全形態に、9月22日(金)「Augusta Camp 2017前夜祭」入場券の特典が封入。ふくみみオフィスオーガスタに所属するアーティストで編成されたスペシャルユニット。9/23に富士急ハイランドコニファーフォレストで<Augusta Camp2017>開催。山崎さん/シャツ¥26,000(BLUEBLUE )Tシャツ¥9,800(BANDITBRAND)共にHOLLYWOOD RANCH MARKET TEL:03・3463・5668ブレスレット¥50,000ネックレス¥10,000(共に NORTH WORKS TEL:042・513・0927)その他はスタイリスト私物秦さん/シャツ¥34,000(ヨウジヤマモト/ヨウジヤマモト プレスルームTEL:03・5463・1500)パンツ¥19,800(BARHSTORMER/HEMT PR TEL:03・6721・0882)※『anan』2017年8月30日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・宮崎まどか(山崎さん)中村 剛(秦さん)ヘア&メイク・三原結花(M-FLAGS/山崎さん)片桐早苗(EARTH IS ART/秦さん)文・北條尚子(by anan編集部)
2017年08月26日フワフワしたウィスパーボイスと多彩なサウンドで、独特の世界観を放つシンガーソングライター、ラブリーサマーちゃん。最新作『人間の土地』について話をうかがいました。最新作は4曲入りEP盤『人間の土地』。ラブリーサマーちゃんが大好きだというサン=テグジュペリの作品名をタイトルに借り、海を思わせる曲もある、サマー気分な作品だ。「名前もこうなので、今までも『夏っぽい曲を書いて』と言われていたんですが、去年までは頑なに拒否していました。いわゆる『ザ・夏の曲』みたいなイケイケな世界観が苦手なんですよ、根暗なので。だけど、あの夏はラブサマちゃんの曲けっこう聴いたなー、と言ってくれるファンがいるかもしれないと思い、ポリシーを崩して、夏に聴きたくなるような曲を書いちゃいました(笑)」とはいえ≪終電で海へ行く≫という物語が彼女らしいというか、ユニーク。全ての歌詞は実体験に基づいて書いているそう。一曲一曲から彼女の物事の感じ方や捉え方が誠実に伝わってきて、ハマる人が多いのもうなずける作品ばかりなのだ。「高校時代に同い年の子たちとバンドをやっていたんですが、3年生になるとみんな受験で忙しくなり、一人になってしまって。そこから宅録を始めたんですよ。パソコン音痴だったので、ハウツー本を見ながら曲を作り始めました。そうすると今日はエフェクトのかけ方を覚えたとか、毎日少しずつですが新しいことができるようになり、なんて楽しい!とモチベーションになりました」完成した作品をネットにアップし始めると、徐々にネット上で知られる存在に。アーティスト名もそのころ決めたそうで、本名の漢字を英語に置き換えたものとか。「本気で書いたガチンコの曲が評価されなかったら落ち込むと思ったので、最初はふざけた曲ばかり上げていました。その後、本気で書いた『あなたは煙草私はシャボン』がきっかけでレコード会社から連絡が来たんです。でもネットでしか活動していなかったので実在しないと思われたみたいで、中の人はこんなです、って自分のプリクラを送って、実在する女の子だと信じてもらいました(笑)」今作『人間の土地』はメジャー2作目。今までの曲と同様に、ラブサマちゃんが日々様々なものを見て感じて、悩み傷つき…というリアルな息遣いが聞こえてくるよう。つぶやきのような歌詞と、その言葉に寄り添うアッパーなサウンドが、聴くほどに沁みてくる。「音楽を作るって、自分の頭の中でしか鳴っていないものを、他の人も聴けるようにすること。そういうモノ作りが、すごく面白いんです」ラブリーサマーちゃん1995年生まれ、現役大学生。高3のとき自宅で音楽制作を始め、ネット上に公開した作品が話題になる。昨年秋『LSC』でメジャーデビュー。8/25にShibuya WWW Xで初の自主企画イベント「ラブリーサマーソニック 2017」を開催する。1st EP『人間の土地』【初回限定盤CD+DVD】¥1,800「海を見に行こう」など4曲入りEP盤。DVDには初の映像作品を収録。【通常盤CD】¥1,200(SPEEDSTAR RECORDS)※『anan』2017年8月9日号より。写真・水野昭子文・北條尚子(by anan編集部)
2017年08月04日あどけない表情の18歳。先日、初来日を果たしたデクラン・マッケンナは、イギリスの新しい世代のシンガーソングライターとして注目の存在だ。デビューアルバム『ホワット・ドゥ・ユー・シンク・アバウト・ザ・カー?』は、彼が15歳から17歳までに作り上げた作品集。ちょっとハスキーな声と洗練された音づくりも含め、その早熟さに驚かされる。「両親やきょうだい、いとこたちも音楽が好きだったので、家の中にいつも音楽があったんだ。僕は6人きょうだいの末っ子なので、姉や兄たちが楽器を弾いたり、バンドの真似事をやったりするのを見て、カッコいいなぁと憧れていたからね。物心つく前から、ごく自然に歌ったり、ギターを弾いたりしていたんだよ」そんな環境で育ったデクランは、13歳から本格的に曲を作り始め、15歳で発表した『ブラジル』が大きな話題に。‘14年のブラジルサッカーワールドカップを痛烈に批判した曲で、しかも歌っているのが15歳の少年だということで、イギリスの音楽シーンで瞬く間にニュースになった。「この曲は初めてスタジオでレコーディングした記念すべき一曲なんだけど、あんなに話題になるとは予想もしていなかったよ。W杯が話題になってる陰で、スタジアム建設の犠牲になった人々や、約束を守らないブラジル政府のことを知り、自分の言葉でプロテストソングを書こうと思って作ったんだ。僕が感じたことを正直に表現したことで、世の中で起きている出来事を多くの人々が知るきっかけになったことは誇りに思うし、すごく嬉しい経験だった」1曲だけならビギナーズラックもあり得るかもしれないが、デクランはその後もセンセーショナルな名曲を次々に発表し、若い世代だけでなく大人たちにも支持されていった。「歌を書く時には、なんの制限もないし、無限の可能性があると思って作っていて。僕の場合は、何よりもいい曲を作りたいし、自分の気持ちをありのまま入れて、歌として表現して伝えたいだけ。デビューアルバムには、これといったテーマはないけど、15歳から今までに自由に書き、楽しく歌った作品が入っています。10代の大事な時期に考えたこと、疑問に感じたこと、経験したことなどが、思いっきり映し出されているアルバムになっているんだ」「車についてどう思う?」という意味の不思議なタイトルは、彼が4歳の時の“名フレーズ”なのだとか。「父が新車を買い、その車の前で姉がホームビデオを回し、僕に『ねえ、新しい車はどう?』と聞くと『いい車だね。では僕のファーストアルバムから一曲歌うよ』と言って自作の曲を高らかに歌い始めたわけ。最近、そのビデオを久しぶりに見たら、これいいじゃんと思って、タイトルにしたんだ。ついにファーストアルバムが現実になったので、ぴったりのネーミングでしょ(笑)」ちなみにジャケ写よりもこのインタビューカットのほうが、ご本人の素の姿に近いです。どちらかといえば物静かでシャイな18歳というイメージ。8月の「サマーソニック」ではどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、全く想像がつかなくてワクワクする。Debut Album『ホワット・ドゥ・ユー・シンク・アバウト・ザ・カー?』¥2,200今年3月にロンドンで行われた公演のライブ音源など3曲を日本盤ボーナス・トラックとして収録。(SONY MUSIC INTERNATIONAL)デクラン・マッケンナ1998年生まれの18歳。「グラストンベリー・フェスティバル」に出演できるコンテストで優勝し、レコード会社と契約。8月に東京、大阪で開催される「サマーソニック2017」に出演予定。※『anan』2017年8月2日号より。写真・勝岡ももこ文・北條尚子(by anan編集部)
2017年07月29日「ネバヤン」という愛称で、既にジワジワとファンを虜にしているロックバンド、never young beachがアルバム『A GOOD TIME』でメジャーデビューを飾る。メンバーを代表して、安部勇磨さん(V&G)と、鈴木健人さん(D)にインタビュー。そもそもネバヤンは、安部さんと松島皓さん(G)の2人の宅録からスタートしたそうだ。「誰かに聴いてほしいとかは全くなくて、歌が好き、音楽が好きだからはじめました。僕の好きな流行りの音楽を取り入れながら、歌詞では自分の気持ちや生活のことを、正直に書いていましたね」(安部)その作品を次々にYouTubeにアップ。「歌もメロディも気持ちよく響いてきて、いまの日本にはいそうでいないバンドだと感じました」と鈴木さん。楽曲に惚れた3人のメンバーが加わり、すぐにライブが決まってバンド活動がスタート。「プロを目指すとか、全く考えないではじめた宅録ですが、いちばんの収穫は、このメンバーが集まったことですね。5人集まると人間のエネルギーの塊がすごいです」(安部)「最初は知らない者同士のメンバーだったけど、勇磨はそんな間柄でも、こうしたいと遠慮なくモノを言うので、ときにはぶつかり合いながらも、いい化学反応を起こしてくれる。今回のレコーディングも楽しかったですね」(鈴木)安部さんは全ての楽曲を手掛け、ソングライターとしても注目を浴びる。平成生まれとは思えない懐かしいメロディやアナログ感、生活感に根付いた歌詞が、そのままネバヤンの魅力になっており、親近感を覚えるのかも。「いまの時代は、誰でも簡単に曲が作れ、発信できるぶん、作っている人間と音楽が直結しないとバレる、と思うんです。僕が好きなアーティストは、作る音楽と、その人ならではの人間力がきちんと繋がっている人。それがないと、あまり好きになれないです。魅力的な音楽を生み出す人間性や人間力って、音楽よりも大事だと思うし、僕もそこはずっと大切にしていきたいですね」(安部)ニューアルバムのカバーでは、メンバーがボウリングの球を持ってはしゃいでいるが、ライブで全国を回りながら、その土地、土地でマジにボウリングに熱中しているのだとか。ちなみに去年の流行りは「大貧民」だったそうな。この“ナツカシ感”も、ネバヤンの音楽の魅力に結びついているのかも。この夏、フェスにも多数出演する彼らに会いに行こう。ネバーヤングビーチ左・安部勇磨(V)、右・鈴木健人(D)に、松島皓(G)、阿南智史(G)、巽啓伍(B)を加えた5人組ロックバンド。昨年リリースした2nd Album『fam fam』がCDショップ大賞を受賞。9月からワンマンツアーで11都市を回る。3rd Album『A GOOD TIME』【初回限定盤CD+DVD 】¥3,800特典DVD には初ワンマンツアーより、4 月の東京リキッドルーム公演の模様を収録。【通常盤CD】¥2,600(SPEEDSTAR RECORDS)7月19日発売※『anan』2017年7月19日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子(by anan編集部)
2017年07月17日昨年『ワタリドリ』でヒットを飛ばし、勢いを緩めることなくシングルのリリースやフェス、ツアーに明け暮れていた[Alexandros]。ニューアルバム『EXIST(イグジスト)!』でも、アグレッシブな活動ぶりそのままのサウンドが聴ける。「アルバムを作るときは、こんな一枚にしようということは全く考えないんです。行き当たりばったり。一枚を通して聴くと、コイツら一体何をやりたいんだろう、と思われることが多いです。非常にファンには優しくないバンド(笑)」(川上洋平)「アルバムは自分たちのやりたいことをやるものなんです。誰かが聴きたいもの、を考えて作ったことはないですね」(庄村聡泰)「そうそう、型に嵌められたくないんですね。音楽シーンにも過去の[Alexandros]にも、囚われたくはない。いままで全くやってこなかったタイプの曲も多くて面白いアルバムになりました」(川上)いつも通りグルーヴ感は心憎いほど気持ちよく、さらに4人の“野性的な面”が勢いよく噴出しているのが新作『EXIST!』といえそう。「パンキッシュな薫りの新曲『Aoyama』は今までになく音数を減らしているけど、その代わり軽快感が出て、新しいなと感じます。『Feel like』はポップスでもあり、ダンサブルな曲なんだけど、どのジャンルにも属さないような新しさが生まれましたね」(白井眞輝)「うん、音数を減らしたぶん、演奏してても気持ち良かった。ベースを弾いててグルーヴを操ってる感じが作れたんですよね。その一方『クソッタレな貴様らへ』は、あれほどカオスな曲は珍しい(笑)。どこまでムチャクチャになるんだ、と思いながらカッコよくできちゃった感じ。何度聴いても気持ちいいです」(磯部寛之)「名曲ぞろいです。半分ぐらい既発の曲ですが、アルバムの曲順どおりに聴いてもらうと、また新しい発見があるんじゃないかな。そういう楽しみ方もしてほしいですね」(庄村)ファンには知られた話だが、インディーズ時代には4人で共同生活をしていた彼ら。「うちらは大人になってから組んだバンドなので、ともに青春は過ごしてないけど、社会に出てからの苦労は一緒に経験しています。20代後半になっても芽が出ないバンドマンって、アンアン読者が最も彼氏にしたくないタイプですよね(笑)」(川上)「二十歳そこそこでデビューできなかった組、なんですよね。その代わりハングリー精神の塊みたいなバンドだし、いまもこれからもやりたいことだらけです」(庄村)当時から世界へ目を向けていたことも[Alexandros]の方向性に影響を与えている。積極的に海外のフェスに参加したり、来日したMUSEやプライマル・スクリームなどのサポートアクトでも注目され、常に海外を視野に入れて活動中。「アイドルのイベントで、台湾まで行きましたからね。普通は断るんでしょうけど、行きたかったので(笑)。そこで気に入ってもらえるチャンスがあるなら、共演者が誰とかはあまり関係なく、どこにでも行きます。世界中でライブしたいし、世界中で聴いてほしいと思ってます」(川上)◇アレキサンドロス右から、白井眞輝(G)、川上洋平(V&G)、磯部寛之(B&Cho)、庄村聡泰(D)。『ワタリドリ/Dracula La』でメジャーデビュー。現在は香港、韓国、台湾公演も含むアルバムリリースツアー中。最終公演は4/22・23の幕張メッセ。◇6th album『EXIST(イグジスト)!』【初回限定盤A CD+DVD】¥5,800特典DVDに『Premium V.I.P. Party大阪城ホール』を収録。【初回限定盤B CD+DVD】¥3,900MVのコンピレーションDVD付き。【通常盤CD】¥3,000(UNIVERSALMUSIC)※『anan』2016年11月23日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子
2016年11月21日衝動がそのまま音になったような、若者の奏でる音楽ももちろん魅力的。一方で、そんな時間を経たのち、窮屈になるどころか、ますます自由で個性的になっていく大人世代のミュージシャンたちがいる。今回は、東京スカパラダイスオーケストラでバリトンサックスを担当している谷中敦さんにお話をうかがいました。***東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦さんといえば、熟練のプレイと大人のクールさを備え、ファンだけでなく若いアーティストからも慕われる憧れの存在だ。「若いときは、将来ああいう大人の男になりたいと目標にする人物はいなかったんですよね。いま思えば、もったいなかったかもしれない。それより『世の中には一体どういう人がいるんだろう』『いろんな人のことを知りたい』、という気持ちが人一倍強かった」大学生のころから映画やアートが好きそうな人を見つけると「一緒にゴダールの映画を観に行かない?」と“ナンパ”したり、個性的で面白い人を集めては、定期的にパーティをしたり。今に至るまで、人づき合いは常にオープンだ。「肉体労働のアルバイトもしましたが、会社勤めをせず、まるで自由人のように働いている方たちと話すと面白いし、人間性が際立っていましたね。『お前はいい大学行ってるけど、世の中のこと何も分かっちゃいないな』と言われて嬉しくなったりね(笑)。振り返ると、いろんな人と接することで自分自身のことも分かってきた気がします。人間関係を通して自分がどういう人間なのか知れるし、どうアピールすれば分かってもらえるか、人との交わりの中で自分らしさを追求してきたのかな」20代にして、いろいろな自分の“場所”を持っていた谷中さん。誰にも会わずに自分を確立することも不可能ではないが、やはり出会いが豊富なぶん、人として成長し、磨かれていくのだろう。「大人になって気づいたのは、オーラがある人からは、何もしてなくても“凄み”を感じるということ。ただ笑っているだけでも凄みがあるような人と話すと、やっぱり人間関係がすごく広くて、経験豊富なんですよ。そういうことが内面に影響し、その人が持つ力になっていくんだと思いますね」今も昔と変わらず谷中さんは多くの人と話す機会を大事にしている。そういう場でひとつだけ大人として心がけているのは「人に対する“あたり”を、できるだけ柔らかくしようと努力する」こと。「若手アーティストの席にお邪魔する機会も増えましたが、オレが登場すると、それまでの会話と明らかに内容が変わるんだよね(笑)。そっと紛れ込んで、年上とかミュージシャンの先輩だなんて気を使われずに、いい話をしたいんですよ。まぁ、年上から言われたことは強制的に感じるかもしれないので、優しく話すべきだし、面白いこと、楽しいことを言いたいんです。スカパラのメンバーも、みんな大人になって、変に干渉はしないし、楽しいことを優先して共有しようという、グループにとって必要なことが分かってきたので、すごくラクですね。とはいえ、誰かが疲れていれば、それとなく気を使ったりもするし、みんな優しいですよ」誰にでも分け隔てなく接し、話し上手で聞き上手な谷中さんは、男女問わず恋愛の悩みなど数多くの相談を快く引き受けてきたという。そんな優しさも大人としての懐の深さだと感じる。「人に優しくできる程度に悲しさも知って、経験を積んできたのかな。傷つけば傷つくほど人に優しくできるのが、大人だと思います。ただ個人的に、女の人はできるだけ傷つかないようにしたほうがいいと思っています。女の人って、適度に傷つくくらいならまだいいんだけど、極端に傷つくとだんだん意地悪になっちゃったりすることがあるでしょ?だから傷つかない方がいいのかな、と思って」なるほど。こんなふうに優しく相談に答えてくれることを想像するだけで舞い上がりそうだ。「長年いろんな人の悩みを聞いていると、その世代特有の苦悩や、その時代ならではの特徴、いま日本人はどんなふうに悩んでいるのかが分かってくるんですよね。そうすると音楽で自分が何をしたら人々の力になるか、すごくいいヒントにもなっています」谷中さんの包容力から生まれる濃い人間関係が、ソングライティングにも反映されていたとは。「コラボソングなど、スカパラの歌ものの歌詞は自分がほとんど書いているんですけど、歌詞って明るくポジティブなことだけでは物語にならないんです。ネガティブな影の要素も取り入れ、両方とも使ってはじめて絵として深みのあるものになります。以前、詩集を出したとき、読んでくれた友人に『悲しいことや辛いことが、ディープなところまで書いてあるけど、1%ぐらいポジティブが勝ってますね』と言われて、すごい嬉しかったんだよね。ポジティブさが少し上回る大人って、なんかいいじゃないですか。たぶん本当の大人って、幸せと哀しみを知っていて、なおかつ“幸せ”を作り出せる人だと思うんですよ。自分も最後に笑って幸せに人生を終わらせられるように、いい経験を積み重ねていきたいですね」◇やなか・あつし東京スカパラダイスオーケストラでバリトンサックスを担当。バンド活動以外に俳優、詩人としても活躍。年末まで全国ライブハウスをツアー中。12 月14日にライブDVD『「叶えた夢に火をつけて燃やす LIVE INKYOTO 2016.4.14」&「トーキョースカジャンボリー2016.8.6」』を発売。◇コート¥460,000ジャケット¥190,000ベスト¥96,000シャツ¥43,000パンツ¥59,000タイ¥22,000チーフ¥17,000(以上エトロ/エトロジャパンTEL:03・3406・2655)その他はスタイリスト私物※『anan』2016年11月16日号より。写真・矢吹健巳(W)スタイリスト・吉本知嗣ヘア&メイク・高草木 剛インタビュー、文・北條尚子
2016年11月15日大人で子ども、大人で自由。ますます自由で個性的になっていく大人世代のミュージシャンたち。今回は、私たちを夢中にさせてくれる魅力あふれるMANNISH BOYSのお二人にお話をうかがいました。***MANNISH BOYSは斉藤和義さんと、ドラマーの中村達也さんが、意気投合して結成したユニット。多くのアーティストからリスペクトされる二人の作る音楽は、ジャンルも多種多彩。批評精神に満ちたメッセージソングからラブソングまで、ベテランならではの惚れ惚れするような熱い音楽を聴かせてくれる。やっと好きなことが自由にできるように。「ある飲み会で出会って、すぐに和ちゃんのソロアルバムに参加して一緒にやろうということになり、ひと儲けしようとしているプロジェクトなんですよ(笑)」(中村)「以前は怖そうな人だと思っていたけど、話してみたら優しい人でホッとした(笑)。レコーディングとは別の機会にスタジオに入り、二人でジャムり倒していたら、すごく楽しかったんですよ」(斉藤)何の決め事もなく、自由に楽器を鳴らしてセッションを続け、高揚した気分のまま結成したのがMANNISH BOYSだという。期間限定バンドと思いきや、新作のリリースが続き、フェスへの参加や全国ツアーもきちんと行ってきた。先月、待望のサードアルバム『麗しのフラスカ』もリリース。「達つぁんのいたBLANKEY(JET CITY)は、どうせカッコいいんでしょ、って、あまり聴かなかったんだよね」(斉藤)「コラコラ(笑)」(中村)「影響を受けそうだったからね。だけど解散後に達つぁんがLOSALIOSというジャムバンドをはじめたころ、オレも同じようなことをやっていたので嬉しかったし、勇気をもらいました」(斉藤)斉藤和義という名前で活動する限り、やはり歌ものを求められるし、好きなようにできないこともままあったとか。その調整か、いわば“表”の斉藤和義とは別に、“裏”では海外のミュージシャンとセッションしたり、インスト作品の音源を作ったりもしていた。「いつか一緒に達つぁんとジャムれるかも、と何となく思い描きながらきてて、いざチャンスが来たら、その思いが爆発したかのようだった」(斉藤)「それは初耳です。うまいこと言ってくれてありがとう。オレの場合は、音楽に関しては仕事でやっているという意識がなくて、18で社会に出て以来、ずっと“休み”だと思ってきたわけ。最近になって、これは仕事だから我慢しようとか思うようになり、なんか大人になったみたいで、これでいいんだろうかと悩む毎日(笑)」(中村)「出会ったのはちょうど震災の直後で、当時は『こんな時期に音楽なんて』って風潮があって。そんなときにはじめて一緒に音を鳴らして、精神的に解放されたのも、すごく大きかった」(斉藤)「アルバム作るから詞を書いてよ、と言われて頭抱えたんだけど、いつも不平不満とか、怒りやしょんぼりした気持ちとか、そのとき飛び散った感情を、スケッチブックに全部書いてるのね。それを和ちゃんがちゃんと歌詞にまとめてくれて嬉しかったな」(中村)「ずっと歌詞を書いてきたけど、やっぱりボキャブラリーには限界がある。スケッチブックにあった言葉や絵は、全く自分とは違うものだったし、オレはただ交通整理するだけでしたよ。歌詞は全て共作にしています。このバンドは歌詞もサウンドも全て共作することで成り立っていると思う」(斉藤)「うん。斉藤和義さんというちゃんと確立された個性があるポピュラーな人に、書き散らかしたものを『それいいじゃん』と言われると救われた感じになった。オレなんかどうせダメじゃんと思ってきたからさ。救われて、最近はちょっと調子に乗ってきてる」(中村)◇マニッシュボーイズ2011年に意気投合した二人が急きょ結成したロックンロールユニット。2年ぶりにアルバム『麗しのフラスカ』をリリースし、来年1月末まで、全国30か所のライブハウスを精力的にツアー中。◇さいとう・かずよしシンガーソングライター。‘93 年デビュー。『ずっと好きだった』『やさしくなりたい』などヒット曲多数。MANNISH BOYSではソロとはまた違うユーモアとクールさが溢れる音楽を聴かせる。◇なかむら・たつやドラマー。‘87年結成のロックバンドBLANKEY JET CITY のドラマーとして名を馳せる。解散後は自身のバンドLOSALIOSを本格始動させ、現在多数のバンドに在籍。たまに俳優としても活躍している。◇斉藤さん/シャツ¥27,000(wjk/wjk baseTEL:03・6418・6314)コート¥69,000(KAZUYUKI KUMAGAI/アタッチメント代官山本店TEL:03・3770・5090)他はスタイリスト私物◇中村さん/ブルゾン¥95,000パンツ¥33,000(共にISAMU KATAYAMA BACKLASHTEL:03・3462・2070)ネックレス¥37,000(BILL WALL LEATHER×SYMPATHYOF SOUL/S.O.S fp恵比寿本店TEL:03・3461・4875)他はスタイリスト私物。※『anan』2016年11月16日号より。写真・三浦太輔(go relax E more)スタイリスト・佐々木健一(StyleLAB)ヘア&メイク・市川摩衣子インタビュー、文・北條尚子
2016年11月14日衝動がそのまま音になったような、若者の奏でる音楽ももちろん魅力的。一方で、そんな時間を経たのち、窮屈になるどころか、ますます自由で個性的になっていく大人世代のミュージシャンたちがいる。今なお子どものような、キラキラした眼を持つトータス松本さんにお話をうかがいました。***昨日買ったばかりというGibsonのヴィンテージギターを抱えて現れたトータス松本さん。ご本人とほぼ同い年なのだそうだ。「ヴィンテージ好きになるのも、大人になったということですかね。同じモデルの新品もかなり良い出来なんですが、弾き比べると『まだまだ若いな、お前』って。でもこの年季の入ったギターは、『おおっ!』となる。シブいおっさんに憧れるような気持ちですね」そんなトータスさんも、かつては「アニキっぽさ」が好きと憧れられていたのに、最近はファンからカッコいい「おっさん」と言われることが増え、少々戸惑いも。「オレ、おっさんか?と、言われて初めて見られ方に気づく感じ。嬉しいけど、くすぐったいというか、恥ずかしい。大人かどうかって、自分ではよう分からないですね。ただ若いときよりも、いい加減にはなったね」“ちょっと不器用だけど情熱的で真っすぐな人”というイメージを持たれがちなトータスさんだが、実は几帳面。DIYや料理の才能もあるマメな方なのだ。「そういう性格だから、何でもキチッとやらないとダメ。若いころは、うわー、どうしよう、これではアカンと、常に追い詰められているような感じやった。でも結局、なるようになってきたから『世の中になんともならへんことはない』ということを経験則として学べたんですね。それが分かってきたから、ズルイというか、いい加減になってきているんですよ。こんな自分が新鮮だし、これも大人になったということなのかな」若いときは経験値がないぶん、あるがままにやっては、結果が出る前に焦ったり、目上の人の意見を取り入れても、うまくいかなかったりしたことも。「いま思えば、若さの魅力って若いってこと以外にないと思う。負け惜しみじゃなくて、本当にそう。逆に大人はいろんなことを経験したぞ、という特権で、いい加減になったり、いろんなことがラクになってくる。けど僕はまだあがいているし、過渡期だと思ってます。60~70代になれば余裕も出るんやろうけど、今は余裕のある部分とない部分が、せめぎ合ってる感じがする」トータスさんが参加する「ROOTS66」というイベントがある。‘66年生まれのアーティストが大勢集結する年齢縛りのライブだ。「みんな揃って、他の出演者のリハーサルを舞台袖で見るんですが、それぞれに思うことがありながら、いろんな表情をしているんですよ。あれがすごくいい!みんな同い年やけど、大人と呼べる人は誰もいないね(笑)。若い人と共演するときも、オレは『負けたないー!』と思って観てますね。焦ったり、緊張したりは未だにするなぁ。でも、そういう気持ちが面白いし、まだどっか若くて、青いんやね。それはすごくいいことだと思っている」面白いエピソードを聞いた。トータスさん世代のミュージシャンがバックを務め、ゲストにベテランシンガーを招くといったイベントのときのこと。「リハ中にその方がいきなりブチ切れて、何やっとんじゃ!とバンドに怒鳴って、シーンとなったんですよ。それがすごく面白くて、いいなーと思って。大人げないところを見せるのも、大人の余裕やな、と思って嬉しくなったんです(笑)。きっと家に帰って『ああ、やってもうた』と反省するんやろうけど、いいじゃないですか。オレもあんなピュアでメンドクサイ60代になろう、って思いました」曲作りは年齢とともに変わるのだろうか。トータスさんの作品に共通する、ああこの感じ、という“らしさ”は変わらない気もする。「曲はね、割とすぐに書けるんです。でもすごい1曲と普通の10曲ではえらい差や、と思う。このままだと普通の曲ばかりになりそうなので、すごい曲を書きたいと、ずっとあがいていますね。自分にしかできない日本のポップスとか、ブルース、ロックがまだまだある気がしていて。いろんなことで刺激されながら、新しいな、と思われるものを作りたい。でも音楽そのものから何かをもらうのではなく、いろんな表現からこっちに来るものを取り入れています。最近、宮﨑駿さんのドキュメントを観て、70代が苦悩しながら新しいものを生み出す姿に感動し、よっしゃまだ20年ある、まだまだ行けんなーって元気出ましたね」来年ウルフルズはデビュー25周年を迎える。記念盤はベスト盤でなく、まっさらの新作を出すそう。「節目の年ではあるけど、正直言って、今はイマイチ、ピンときてないんですよね。昔、RCサクセションの35周年ライブに出させてもらったんですけど、清志郎さんは『今がいちばんいいんだから、周年イベントとかやりたくない』と言われてて、当時はなんでー、スゴイことじゃないですか、と思ってたんやけど、今ならその気持ちがすごい分かる。何年だろうが関係ない、それがどうした、って感じがありますね、うん」◇とーたす・まつもとウルフルズのボーカルとして1992年にデビュー。来年デビュー25周年記念のオリジナルアルバムをリリース予定。ソロワークとしては主題歌と初めて劇中音楽を手がけたオムニバス映画『アニバーサリー』が公開中。※『anan』2016年11月16日号より。写真・野呂知功(TRIVAL)スタイリスト・堀井香苗ヘア&メイク・田中大作田中ヒロ子インタビュー、文・北條尚子
2016年11月14日恋愛、友情、就活というヒリヒリするような青春群像を追った映画『何者』。この作品の劇中音楽と主題歌を手掛けたのが中田ヤスタカさん。きゃりーぱみゅぱみゅやPerfumeのプロデュースで広く知られる彼だが、これまでの作品とはかなり異なるインストゥルメンタル中心のサウンドでも手腕を発揮。サウンドトラックとしてリリースされる。「もともと僕は歌ものの作品を作ろうと思って音楽をはじめたわけではなく、昔から映画音楽などのインストを聴いてきて、影響も受けてきているし、映画音楽ならいつでも引き受けますよ!という気持ちはありました。ただ主役は映画なので、音楽もいわば演出の一つ。映画を通して音楽を聴いてもらうことに魅力を感じたので、すごくいい機会でした」いままでも映画やアニメの音楽、CM曲やTV番組のテーマなど、数々の音楽を手掛けてきた中田さんだが、この作品に関しては「実はすごく時間をかけた」とのこと。「いい曲を10曲作るなら早いんですけど、いい曲だったねーで終わっては成功とはいえないし、劇中音楽としては失敗ですよね。まず映画音楽としての役割を細かく詰めていくことに時間を使いました」サウンドトラックの曲名を見ると、「3人の出会い」とか「拓人の想い」、「ギンジとのやりとり」など、各シーンを具体的に想像させるタイトルが並んでいる。「劇中音楽はあくまでも“劇の伴奏”だと思うので、誰かの気持ちを心理的に増幅する曲もあれば、不安な心中をメロディで表したり、逆にわざと観客にミスリードさせたりとか、そういう役割を楽しみながら作っていきました」ひとつの部屋に集まった5人の男女が、それぞれの青春から就活戦線に向かう日々の心象風景に、緻密に寄り添うメロディ。ストーリーのリアルさと、俳優たちの演技に中田さんの音楽の効果がミックスして、観る側も痛みを伴うほど、深く心情を共有させてくれると感じる。少々ネタばらしになりつつも、いちばんのお気に入りシーンを中田さんに聞いてみた。「主人公の拓人(佐藤健)がすごいスピードで走るシーンがあるんですが、普通は走る足音や車の音など効果音も入るところですが、それが一切なく、ピアノのメロディだけで場面が進んでいくんです。そこは何度見てもいいなぁと思います」そして映画主題歌「NANIMONO」では、中田さんの曲を米津玄師がゲストボーカルで歌うという、初のコラボレーションが実現した。「劇中音楽と主題歌は同時進行で作りたくなくて、実はすべてが終わってから最後に作りました。制作するとき、インストとボーカル作品とは、使うチャンネルが違いますし、気分を切り替えてから作りたかったんです。自分のソロ楽曲に男性ボーカルを迎えるのは初めてでしたが、完成したものを監督さんはじめ、スタッフに聴いてもらったとき、いい映画になりそう、という空気を感じたので良かった。すべての曲は映画のために作っているので、上映中に楽しんでくれれば、僕としては満足なんですけど、サントラとして買ってくれたら、すごく嬉しい(笑)」今回、劇中音楽にがっちり取り組んだ中田さん。映画音楽を作る楽しさを十分に謳歌し、音楽家としていままで見せたことのない新しいステージを表現してくれたと感じる。「最近の映画、とくにハリウッド映画は、誰もが鼻歌で歌えるような≪主メロ≫のある曲が、少なくなっている気がします。かつてUnderworldの『ボーン・スリッピー』が、『トレインスポッティング』(※1996年のイギリス映画)のラストシーンに使われて、彼らのブレイクの瞬間をまざまざと見た気がしたんですが、ああいうドキドキするような音楽の使われ方もいいと思う。僕もいつか彼らのようなチャンスを、映画音楽で実現できたらいいな、と夢見ています」◇なかた・やすたかCAPSULEの活動の他、Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅのプロデュース、最近ではリオ五輪閉会式「トーキョーショー」の音楽を手掛けた。独自の感性で多岐にわたる作品を制作するサウンドクリエイター。◇『NANIMONO EP/何者(オリジナル・サウンドトラック)』【2CD】¥2,000disc1:NANIMONO(feat.米津玄師)ほかREMIX含む全5曲。disc2:何者(オリジナル・サウンドトラック)。(unBORDE/WARNER MUSIC JAPAN)※『anan』2016年10月26日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子
2016年10月19日姉妹ユニット、チャラン・ポ・ランタンがカヴァーアルバム『借りもの協奏』をリリース。まず選曲が予想のつかないものばかりでびっくり。聴くとアレンジの幅の広さに、さらにびっくり。サービス精神旺盛な楽しすぎるアルバムが完成した。「2人で活動を始めたころから、オリジナル曲がほとんどなくて。“いかに私たちらしくカヴァーして聴かせるか”というユニットだったので、カヴァーもレパートリーのうち、という認識でした。もう300曲ぐらいはカヴァーしています」(小春)「だからカヴァーアルバムはずっと出したかったですね。出すなら様々なジャンルをギュッと詰め込むものにしたかったけど、レパートリーが多すぎて選べなくて、2人組アーティスト縛りにしました」(もも)カヴァーしたのは邦楽ではPUFFY、フリッパーズ・ギターに、ザ・ピーナッツ、ポルノグラフィティと電気グルーヴの5組。時代もジャンルも超えた驚きのラインナップだ。さらに洋楽5曲を加え、古今東西の名曲を“お借りして”堂々カヴァー。YouTube世代らしく、関連動画を探りながら見つけ、カヴァーすることになった曲もあるとか。「ザ・ピーナッツのような昭和歌謡は、私たちに似合うし、平和な感じにまとまると予測できますが、今回は出来上がりが想像を超えたところにある曲を多く選びました。知らない曲も抵抗なくカヴァーしたし、作っていてすごく面白かった」(小春)「フリッパーズ・ギターの『恋とマシンガン』のアコーディオンがすごくフランスっぽくて、あれ、小春はこんなにお洒落な音も出せるんだ、と気づいたり(笑)。いつもはバリバリと弾いているので」(もも)「ちょっと、アコーディオンはお洒落な楽器なの!でも、自分たちが知っている曲ばかりでは、原曲の魅力が分からなかったかもしれないね。カヴァーの醍醐味って、その曲の魅力を引き出すことなんだなって、改めて感じました」(小春)アコーディオンを中心に、ジャズからフレンチポップ、ジプシー音楽など民族音楽テイストまで。10の名曲に新たな魅力を吹き込んだ2人のカヴァーのワザを、ライブ感たっぷりに楽しもう。◇左・もも(唄)、右・小春(アコーディオン)。一昨年『忘れかけてた物語』でメジャーデビュー。11月から来年1月まで全国ツアー“大衆音楽の手引き”を行う。◇カヴァーアルバム『借りもの協奏』【CD+DVD】¥2,8002人組縛りのカヴァーを10曲収録。DVDにはPUFFYの「アジアの純真」やフリッパーズ・ギターの「恋とマシンガン」など4曲のMV収録。【通常盤CD】¥2,300(avex)※『anan』2016年9月28日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子
2016年09月23日無重力奏法と評される個性派ピアニスト、HZETT M率いる、H ZETTRIO。国内のみならず海外のフェスでも注目の的。ジャズ界の大御所が彼らの演奏に感動し「AMAZING BOYS!」と叫んだという逸話もあるほどだ。「3人で最初に演奏したのがクリスマスライブのステージでした。そのとき3人から生まれるグルーヴ感が気持ちよくて、自然にバンドをやるようになった感じですね。楽しくて、遊べて、パーティみたいな音楽を、作り続けたいと思っています」(H ZETT NIRE)ちなみに彼らのそれぞれの鼻の色は、そのライブがきっかけとか。結成4年目の今年、47都道府県をツアーで回り、ファンを巻き込んだハッピーなパーティが展開された模様。「どの会場でも子どもさんから、おじいちゃんおばあちゃんまで来てくれて、気持ちよさそうに踊ってくれるのが嬉しかった。ちっちゃい子が本能のまま、僕らのグルーヴを感じてダンスする姿は、忘れられないですね」(H ZETT KOU)ハードなツアー期間中、どんどん新曲も作っていき、計8曲を配信でリリースするという驚異的な制作作業も遂行。もちろんそれらの作品はすぐにライブで披露され、未発表の新曲を加えたニューアルバムが『PIANO CRAZE』だ。「結成以来、バンドとしての立ち位置をいろいろ考えながら活動してきました。今回の全国ツアーで、ライブを楽しんでくれているみなさんを見て、もっとピアノが暴れる曲を作りたいと思ったんですよね。その思惑通りに生まれた一曲が『PIANO CRAZE』というタイトルになり、アルバムができ上がっていった感じです」(H ZETT M)ピアノを中心とした3つの楽器がまさに暴れる、飛ぶ、跳ねる、奏でる…を感じられる熱いアンサンブルを、とことん楽しんでほしい。◇エイチゼットリオ右から、H ZETT M(Pf、H ZETT NIRE(Ba)、H ZETT KOU(Dr)。昨年解散したPE‘Zの元メンバー?との噂のピアノトリオ。10月から全国ツアー「PIANOCRAZE Next step」開催。www.hzettrio.info◇3rd Album『PIANO CRAZE』【EXCITING FLIGHT盤】(apart.RECORDS)、【DYNAMIC FLIGHT盤】(anaked.RECORDS )各¥3,000共通の配信シングル+新曲の12曲に加え、異なるボーナストラックを1曲ずつ収録。9月7日発売。※『anan』2016年9月7日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子
2016年09月04日多部未華子主演の『あやしい彼女』の主題歌で注目を浴びたanderlust。待望の新曲「いつかの自分」は前作以上にハートフルで、多くの人の共感を呼び、力を与えるナンバーだ。「この曲を作っている頃、実はスランプが続いていて、どうやったら抜け出せるだろうと悩んでいたんです。たまたま電車に乗るので自動改札を抜けたとき、≪なに一つうまくいかないなんて…≫というサビの歌詞が浮かび、そのときの心情がブワーッと言葉になりました」と越野アンナさん。自動改札機を通った途端、スランプからも脱出したというわけだ。そしてこの曲は人気TVアニメ『バッテリー』の主題歌となった。「歌詞の話を聞いたとき、自分の実体験を歌詞にしているから説得力があり、強く共感させられる、と改めて思いました。アンナちゃんは既成概念に囚われず、常に自由で独創的にアプローチするタイプ。一緒に活動を始めて約1年ですが、刺激的で新しい発見がありました」(西塚)「そうなんです。メロディラインなんかも、バラードから始まって激ロックで終わる曲とか、ぶっ飛んでいるものが多くて。でも評判はなかなかいいんですよ(笑)。私は性格的に大雑把だし、いろんなことをやりたいほうなので、真吾さんがそれを的確にまとめてくれるんです」(越野)物心つくころから、ピアノを弾きながらヒット曲の歌詞とメロディを全く変えて別曲にしたり、という“遊び”をしていたアンナさん。その才能を受け止め、音楽的により質の高いものに変える西塚さんとは、まさにピッタリのコンビ。カップリングでは、松たか子の「明日、春が来たら」とYEN TOWN BANDの「SWALLOWTAIL BUTTERFLY ~あいのうた~」という名曲のカバーにも挑んだ。「偉大すぎる曲ですが、怯えることなく、自分たちの色を精一杯出して作ろう、と思いました。本番では、思ったより、すーっと歌えましたね。曲としてうまく向き合えたのが良かったかな、と思います」(越野)彼女の魅力でもある清涼感と力強さが同居するような歌声が、名曲に新しい風を吹き込んだかのよう。新世代ユニットの活躍が楽しみだ。◇アンダーラスト作詞、作曲を担当するボーカルの越野アンナと、ベーシスト西塚真吾のユニット。今年3月に『帰り道』でメジャーデビュー。ユニット名は“旅への衝動”を意味するWanderlustからWを外した造語。◇2nd Single『いつかの自分』(フジテレビ<ノイタミナ>アニメ『バッテリー』オープニングテーマ)【初回生産限定盤CD+DVD 】¥1,500カップリングの「明日、春が来たら」は『バッテリー』エンディング・テーマ。【通常盤CD】¥1,296(Sony Music Records)※『anan』2016年9月7日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子
2016年09月02日Coccoさんが待望のニューアルバム『アダンバレエ』をリリースし、5年ぶりとなる全国ツアーを行うことを発表した。そのアルバムは予想以上にポップで、生命力に満ち溢れた力強い作品。インタビューに応じてくれた彼女自身も、とても明るく、再び音楽と向かい合う喜びをおおいに感じさせてくれた。そのきっかけとなったのが、昨年撮影され、今年公開された映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』だった。「映画の撮影が楽しすぎたの。だって全てがアンダーコントロールで、監督がスタートもストップも言ってくれるし、そんなことって音楽をやっている時にはないことだから。歌に関しては、自分でコントロールできない。翻弄されるし振り回されて、ちょっと疲れる。私が悲しい時も明るい歌を歌わなければならないこともあるし。でも、映画が楽しい半面、毎日こんな楽しいことばかり続くのが許されるわけがないと、怖くなってきた。このままではヤバイって(笑)。そうか、辛いこともしなくてはいけないな、アルバムを作らないと、きっとバチが当たるって思いました」楽しい撮影の最中から、頭の中で音楽が鳴っていたそう。収録曲「花も咲いたよな」は、箱根でのロケの帰り道で歌っていた曲だとか。「忘れてしまう歌もあるけど、撮影が終わってからも、頭の中は歌でいっぱいだった。はいはい、やりますよ、と一曲ずつ向き合って、アルバムができ上がりました。結局、私は歌うことになるんだな、って思いました。鎖につながれ、毎日鞭で打たれていた気分だった<音楽>の世界にまた戻ってきた。2年前に『プランC』を出した時は、このアルバムを最後に、もう歌なんかやめてやる、と決めていたのにね」というのも当時は、その時が自分の人生のピークで「もうこれ以上、嬉しいことも悲しいことも起こらない。今が人生の最先端だ」と信じていたからとか。「だけど2年経つうちに、もっと嬉しいことも悲しいこともあって、また学んでしまった。まだ学ぶのかよ、と思いながらアルバムができてしまったのね。昔は、学ぶことはいつか尽きると思っていたけど、39歳まで生きても、まだ学ぶことがあるんだ、と少々呆れてもいる。だから人生って愛おしいし、だから私は生きるんだな、って。こういう話を20歳の子に言っても、今は分からないだろうけど、いつかこのアルバムがいい参考書になればいいな、と思う」◇9th album『アダンバレエ』【初回限定盤CD+フォトブック】¥3,700沖縄で撮影した写真やレコーディング風景をとらえた56ページの写真集付き。【通常盤CD】¥3,000(Colourful/Victor Entertainment)◇こっこ1977年、沖縄県那覇市生まれ。1997年にメジャーデビュー。9月13日のZepp Nagoyaを皮切りに、5年ぶりとなる全国ツアー「Cocco Live Tour2016“Adan Ballet”」を開催。※『anan』2016年8月31日号より。写真・内山めぐみコスチューム・前嶋章吾文・北條尚子
2016年08月26日メロディアスなのに骨太のロックスピリット溢れるサウンドと、CMや映像作品に引っぱりだこの個性的なボーカル。その2つの個性を備えたGLIM SPANKYがセカンドアルバム『Next One』をリリース。既に発売前から2人が担当した映画『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌「怒りをくれよ」が大きな話題に。もちろん本作品にも収録されています。「『ONE PIECE』といえば、まさに私たち世代の大人気漫画ですからね。小学生の頃は『昨日のONE PIECE見た!?』って学校で盛り上がっていたので、主題歌を担当できるなんてビックリ。作者の尾田栄一郎さんが、私の声を気に入って推して下さったそうで、信じられない気持ちでした」(松尾)しかしアルバムの制作中に、この大きな仕事が飛び込んできて、現場はなかなか大変だった模様。「主題歌は好きなように作っていい、お茶の間に衝撃を与えるような曲を作ってほしい、とだけ言われたんですが、締め切りの日まで全く歌詞が書けなかったんですよ。書けない自分に腹が立ってきて、このプレッシャーを絶対乗り越えてやる、という怒りが湧き起こってきたんです。その気持ちがテーマとなり、締め切り30分前に書き上げました」(松尾)完成した曲が「怒りをくれよ」。まさに松尾さんの心情をそのまま反映した曲になった。「残り30分で、サビなどのサウンド面を仕上げました。待っている間にどんな曲が来ても対応できるようにいろいろなパターンを準備していたので、無事完成。後から“もっとパンチが欲しい”と言われないように、いつも以上にテンションを上げて気合を入れて作りました」(亀本)アーティスティックな松尾さんと、職人的アプローチで取り組む亀本さん。この2人のコンビネーションがあるから、GLIM SPANKYの音楽は、彼らと同世代の若いファンから、音楽通の大人世代まで、多くの人をうならせるのだろう。「『怒りをくれよ』もそうですが、自分の中から湧き上がってくるものを歌詞にすることを大事にしています。いま私がどんなモードなのかを、リアルタイムで示すというのかな。今しかできない歌詞、メロディを“記録”したもの、それがGLIM SPANKYのアルバムとしてまとまったな、と思います」(松尾)「あまりルールはないけど、2人の中に流れているロックなもの、は大事にしていますね。これこれ!これだよね!というふうに共有しているものとしか言いようがないんですけど、それが音として出せれば、誰がどう聴いてもロックである、という作品になるんです」(亀本)アルバムタイトルにつけた『Next One』とは、松尾さんの中学生のときからの座右の銘だとか。「どれだけ満足がいく作品ができても、最高傑作は次回作だ、という意味なのですが、私もミュージシャンとして、死ぬまでそう言い続けたい。ハングリーさを見失わないで音楽を続けたい、そんな気持ちを、この言葉で示したかったんです」(松尾)◇グリムスパンキー左・松尾レミ(V&G)、右・亀本寛貴(G)。一昨年、ミニアルバム『焦燥』でメジャーデビュー。9月22日から全国ツアー「Next One TOUR 2016」がスタート。◇2nd album『Next One』【初回限定盤CD+DVD】¥3,700特典DVDには「ワイルド・サイドを行け」ツアーでの恵比寿LIQUID ROOM ライブ映像を収録。【通常盤CD】¥2,700(UNIVERSAL MUSIC/Virgin Records)※『anan』2016年8月3日号より。写真・熊谷直子文・北條尚子
2016年07月29日デビュー10周年を迎えた絢香さんがその心境と最新作のベストアルバムについて語ってくれました。「好きな歌を10年間歌ってこられて、なんて幸せなんだろうと感謝で胸がいっぱいになりました。とくにデビュー曲『I believe』を歌ったときは、こんな大きな会場でコンサートができていることを、10年前の私が見たらどう思うだろうなと、またその景色に感動してしまいました」とは、絢香さんがデビュー10年目の日に代々木第一体育館で開催されたメモリアルライブのステージに立ったときの気持ち。ファンと共に幸せな10周年を迎え、その集大成ともいえるベストアルバム『THIS IS ME~絢香10th anniversary BEST~』をリリース。それぞれSun盤、Moon盤、Wind盤と名付けた3枚のCDには、大ヒット曲から未発表の新曲まで37曲が収録され、絢香さんの過去と未来を行き来するような素晴らしい作品になった。「Sun盤には昼、太陽の出ている時間に聴きたい曲、Moon盤には夜、ひとりでしっとり聴きたい曲を入れました。選曲も曲順もすごく悩みましたが、結局リリース順に並べたものが、いちばんしっくりきました。改めて聴いてみると、声も曲もアレンジもミックスも変化してゆくのが分かり、私自身10年間の成長を感じることができたので、聴いて下さる方もそういった部分も楽しんでもらえるんじゃないかと思います」タイトル曲になった新曲「THIS IS ME」の“今の私にしか歌えない歌があって”というフレーズは、とくに印象的に響くはず。そう言い切れるに至るまでの、彼女の悩みや葛藤など、今まであまり語らなかった正直な心情が垣間見られるエモーショナルなナンバーなのだ。「10代の私は、強くいなければいけない、という思いばかりが強くて…。この濃い10年間で悩んだり、立ち止まったり、いろんなことを経験して今の私がある、と改めて感じています。強いだけじゃないよ、と正直に出せるようになり、この曲が生まれました」10年間で最も嬉しかったことは、「ライブ会場で私の歌を、みんなと一緒に歌っている場面です。届いていることが実感できるし、いちばん楽しい時間」と言う。9月からはアリーナツアーも始まり、再び感動する場面を重ねていくのだろう。「10周年を迎えた今、ここからの10年をすごく意識しています。もっとみなさんに喜んで、驚いて、感動してもらえる作品を、どんどん作っていきたいって、強く思っています」◇あやか2006年『I believe』でデビュー。『三日月』や『みんな空の下』など数々のヒットを記録。2年間の活動休止を経て2012年に復帰を果たす。9月から絢香自身では最大規模のアリーナツアーを開催予定。バングル×リング¥61,000(Maison Margiela/boutique W TEL:03・5778・3433)その他はスタイリスト私物◇『THIS IS ME~絢香 10th anniversary BEST~』Sun盤、Moon盤、Wind盤と銘打たれた3 枚のCD で構成。表題曲など新曲も2曲収録。【初回生産限定盤3CD+DVD】¥3,500【通常盤3CD】¥3,000(avex)※『anan』2016年7月27日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・岡本純子ヘア&メイク・竹下あゆみ文・北條尚子
2016年07月24日インディーズシーンで注目を浴び、初のワンマンライブも各所で絶賛されたLILI LIMITがメジャーデビュー。デビュー作『LIVING ROOM EP』は、≪部屋≫をモチーフにして日常生活を描き出した作品。しかも、「メジャーデビューにあたり、作り方から変えてみた」と牧野さん。「“フィクションでありノンフィクションでもある詩”を書いたんです。今までは“カフェで聞こえてきた奥様方の愚痴”など、そこにあるものを詩にしていたんですが、今回は自分の生き方というか、辛かったなぁと感じたことを引っ張り出した。僕にとって大きな変化です」(牧野)ふと自分の部屋から見上げた空がきれいだったことから表題曲「Living Room」が生まれ、他の3曲も部屋にまつわるものに。どれも日常生活の切り取り方や心象風景が素晴らしい曲ばかり。「前作までは原案や歌詞の一部をもらってから曲を書いていたけど、今回は何もないところからメロディを生み出す作業でした」とは作曲担当の土器さん。その方法も功を奏したのだろう。色合いが全く違う4つのメロディがきちんと新しいポップミュージックとして成立し、バンドの魅力を十二分に伝えてくれる。「従来のレコーディングはほぼ打ち込みでしたが、これはスタジオに入ってみんなで意見を交換しながら作れて、すごく楽しかった」(黒瀬)「音のからみ方がリアルタイムで感じられるレコーディングだったので、バンドのグルーブ感が、いい感じに出ていると思います」(丸谷)「キーボードだけでなく、カウベルやパーカッションなど、役割に囚われない自由な感じも発揮できて、すごく面白かったですね」(志水)初回限定盤にはサウンドと連動するアーティスティックな写真集が付属する。音とビジュアル両面から、LILI LIMITが創り出す新世界を堪能できるはず。◇リリ・リミット右から、丸谷誠治(D)、志水美日(K)、牧野純平(V)、土器大洋(G)、黒瀬莉世(B)。山口県で結成され、一昨年から東京で活動中。自主制作CDが評価され、メジャーデビュー。◇『LIVING ROOM EP』【初回生産限定盤CD+スペシャルフォトブック】¥1,759 全4 曲入り。特典は写真家・伊丹豪による約100ページの写真集。【通常盤CD】¥1,204(Ki/oon Music)※『anan』2016年7月20日号より。写真・内田紘倫文・北條尚子
2016年07月19日‘13年の日本ソロデビュー以来、毎年この時期にミニアルバムを発表してきたジュノさん。今年も自身が全面作曲・プロデュースしたミニアルバムが完成。ドント・ストップ・ミー・ナウ(俺を止めるな!)を略したタイトル『DSMN』からも想像できる通り、ハイテンションになれるイケイケな一枚に仕上がった。「前作は、夏の爽やかさを目で見える形で表したくてMVをハワイで撮ったりしたのですが、今回は耳から夏を感じられるよう、開放感や疾走感を味わえるようなサウンドを意識しました。ドライブや運動中のBGMにオススメです」今回のミニアルバムの製作期間が2PMのライブやドラマ撮影と重なり、精神的、物理的に追い詰められたこともあったとか。「なんで体が10個ないんだろう、なんで天才じゃないんだろうと思ったことも。でも、崖っぷちに立たされたからこそ生まれる音楽、“降りてくる”メロディって本当にあるんですよね。今回は、特にそんな直感に助けられました」最も疾走感を感じられる曲が、1トラック目に収録されている「HYPER feat. Jun.K」。同じ2PMの仲間でヒップホップを得意とするJun.Kがラップを担当した。意外にも、二人のコラボは、これが初めて。「この曲は、作り始めるときからテンションの高い曲にしたいと思っていたんです。ここまでの“ハイパー”な曲を消化できるのはJun.Kさんしかいないなって。頼んでみたら『いいよ』と即答してくれました。レコーディングでも、僕がイメージする以上に素晴らしいパフォーマンスを見せてくれ、Jun.Kさんのおかげで、最高の一曲になりました」続く「DSMN」も、自然と体が動き踊りだしてしまうようなビートの利いたダンスナンバー。「NO LIFE NO MUSIC」というフレーズは、今のジュノの姿そのものだとか。「音楽がないと生きられないというより、音楽と演技に関すること以外、何もしてないと言ったほうが正しいかも(笑)。こんなこと言ったら聖職者みたいですけど。部屋のインテリアを考えたり、一人暮らしを満喫しているだけ。唯一の趣味といえば、愛猫の写真を撮ること!猫たちにはいつも癒されています(笑)」アルバムの中には、ジュノ特有の甘い歌声を楽しめる「YES」のような恋愛ソングも。導入部で、日本語で愛をささやく声には、胸がキュンキュンしてしまうこと必至。「タキシードを着るようなフォーマルなパーティで、彼女にこの曲を歌ってプロポーズするという情景をイメージして作りました。導入部のセリフは、もともと寝起きのような声で言おうと思っていたのですが、どうしても難しくて。今作のレコーディングで一番苦労しましたね」ちなみに、実際のプロポーズはどんなふうにしたい?「シンプルに、“一緒に暮らそう”って言いますね。歌わないですよ、絶対(笑)」◇ジュノ‘90年1月25日生まれ。2PMのメンバー。‘13年から、毎年日本でソロアルバム発売&ソロライブを開催。今作をひっさげた5都市12公演のソロツアー「HYPER」が開催中。◇『DSMN』【通常盤CD】¥2,000(税込み)5曲入り。通常盤にMUSIC VIDEOやmaking movie等を収録したDVDがついた【初回生産限定盤A】、ボーナストラック3曲入りの【初回生産限定盤B】も。(エピックレコードジャパン)※『anan』2016年7月20日号より。写真・小笠原真紀文・北條尚子
2016年07月15日油絵で描かれた、自身の肖像画のジャケットが印象的な『THE STILL LIFE』。デビュー20周年のアニバーサリーイヤーを経た平井堅さんの、5年ぶりのオリジナルアルバムだ。「ドラマ主題歌になったシングル『告白』以降の曲をおさめたアルバムになりました。『告白』は僕の中でエポックメイキングな一曲でもあり、今まで以上に明確なビジョンを持って作り上げたので、ある意味、僕の新たなスタートだったんです」「告白」で歌われるのは、女性目線の心情。それまでの平井さんの歌にはなかったような、絶望や深い哀しみに満ちた曲だった。「最後に希望の光が一条差す、ということもなく、絶望だけで終わる曲ですが、自分としてはすごく満足のいく作品になりました。『告白』で人間の裏の部分を描いたことに引っ張られて、毒づきたい気持ちがあったんですよね。結果的に、今回のアルバムも俯瞰で見ると“陽”より“陰”や“闇”を打ち出した曲が多くなっています。ただ、全編通して聴くとダークな曲が多かったので、ラストにほっこりした曲『それでいいな』を入れています(笑)」本作の収録曲14曲は、全て平井さんの作詞。しかしご本人は、うっすら“不本意”なのだそう。「本当はあまり自分を出したくないので、自作曲へのこだわりは全くないんです。<非実力派宣言>じゃないですけど、自分は“スピーカー”だと思っています。もともと歌手志望だし、いろんな人のアイデアや美意識をもらって、歌を発するスピーカーでありたいと意識している。今回は自分の曲ばかりになってしまったので、せめてプロデュースだけは、と若手から大御所の方までいろんな方にお願いしました」『THE STILL LIFE』とは絵画の“静物画”のこと。肖像画ジャケットといい、最新の音源に反するように、それを包むパッケージからはクラシックな薫りが漂う。「僕がいまだにガラケーユーザーだからかもしれないけど、SNS経由の自分発信が溢れる今の社会とは、逆を行きたいんです。自分は発信なんてしないぞ、って。僕の仕事は発信しなければいけない側なんですけど、実はそういう意識はあまりないんです。今回のジャケットも、アンチセルフィーというか。この時代にあえて実際にモデルになって、長い時間をかけて油絵で描いてもらうことをしました」このアルバムには、今までの平井さんとは違う“裏面”が隠されている?ぜひそこを覗いてみて。◇ひらい・けん1995年『Precious Junk』でデビューし、昨年20周年を迎えた。最新シングル『魔法って言っていいかな?』(Panasonic 4KカメラTVCMソング)もヒット中。◇9th ALBUM『THE STILL LIFE』【初回限定盤CD + DVD】¥3,750DVDには新曲「魔法って言っていいかな?」など、新たに録ったスタジオライブ4曲とMUSIC VIDEO 7曲を収録。【通常盤CD】¥3,000(アリオラジャパン)※『anan』2016年7月13日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子
2016年07月12日毎回、素晴らしいゲストが登場する東京スカパラダイスオーケストラの歌モノ作品。最新作『道なき道、反骨の。』のボーカリストは、Hi‐STANDARDのKen Yokoyama。公開中の映画『日本で一番悪い奴ら』の主題歌でもあり、10人の男気がぶつかり合うスリリングな曲が完成。「彼が日本語で歌ってくれたことにビックリした」とは川上つよしさん。Yokoyamaさんの作品は、バンドでもソロでも全て英語詞。この曲が初の日本語曲になる。「僕は挨拶代わりに、友人に自分の詩を贈るんですが、彼に贈った詩に対して“スカパラと一緒にやることがあれば、こういう曲を歌いたい”という返信が来たんですよ。あれ?日本語でいいんだ、これは立候補だな、と思いました(笑)」(谷中敦)その話を聞いたスカパラのメンバーも、大いに盛り上がったとか。その後、メンバー全員が曲出し。毎回新曲の度に全員がメロディを作り、実際に演奏して決めるのがデビュー以来のスカパラのやり方だそうだが、今回は川上さんの曲が選ばれた。「最初にリハーサルで歌ってもらった段階から、ものすごいエネルギーを感じました。やはり不屈のパンクロッカーですよ。共感する部分が大きかったし、彼はギタリストでもあるので、一緒に作っていくのも楽しかったですね」(川上)「彼だけが持つ信念やイノセントなものが、表現の中にきっちりこめられていると思う。少年のような無垢な気持ちが、この曲にもドーンと入っていると感じるし、すごい力を持つ作品だと思います」(茂木欣一)今まで20組を超えるゲストボーカルと共に、斬新な作品を作り出してきたスカパラ。相思相愛のコラボレーションには、毎度驚かされる。「最後の共演のときに『会えなくなるのが寂しい』とか『次のボーカリストに嫉妬する』とか言われます(笑)。僕らにとってもコラボは、自分たちを客観的に見られる大事な機会。今回もKen君から『9人全員集まって作ることに感動した』と言われて、ああそうなのか、と。言われて気づくことも多いし、大いに励みにもなりますね」(谷中)8月6日にはスカパラが主催する「トーキョースカジャンボリーvol.6」が今年も山中湖で開催。ゲストのKen Yokoyamaとの共演が、今から楽しみだ。◇右・かわかみ・つよしベース。スカパラ作品の作曲も数多く担当。スカパラ以外でもスペシャルバンド「川上つよしと彼のムードメイカーズ」のバンマスも務める。中・やなか・あつしバリトンサックス。スカパラ作品のほとんどの作詞を手がけ、他ア-ティストにも数多く歌詞を提供している。俳優として映画などにも出演。左・もてぎ・きんいちドラム。フィッシュマンズの活動停止後、2001年に正式加入。近年、フィッシュマンズとしても定期的に活動を展開。◇東京スカパラダイスオーケストラ feat. Ken Yokoyama『道なき道、反骨の。』(映画『日本で一番悪い奴ら』主題歌)【CD+DVD 】¥2,300【通常盤CD 】¥1,000(cutting edge)※『anan』2016年7月6日号より。写真・小笠原真紀文・北條尚子
2016年07月01日先日、バンド活動に終止符を打つことを発表したBOOM BOOM SATELLITES。その理由は、メンバー川島道行さんの5度目の脳腫瘍発症のために、バンド活動が不可能になったこと。最新作『LAY YOUR HANDS ON ME』が彼らのキャリア最後の作品になる。メンバーの中野雅之さんに、活動終了に至るまでのお話を聞きました。「昨年の夏、川島君に4度目の脳腫瘍再発が発覚し、予定していたツアーをキャンセルしました。もう次の作品はないかもしれない、という可能性が高い中で作り始めたのがこのシングルでしたが、今まで一貫してやってきたように志の高いプロダクツを作るという意識で制作しました。ただ一つ心残りはフルアルバムを作れなかったことだけど、4曲、22分のこの作品は、きちんとストーリーを持ち、一曲一曲にメッセージ性があります。このバンドの生涯を描き切ったような壮大で美しい作品になり、僕らとしては、ラスト“アルバム”を作れたと思っています」これまで川島さんは度重なる脳腫瘍の再発に対して幾度も手術を受け、病魔と壮絶な闘いを続けては復活してきた。今回はそれが叶わず療養することになったが、『LAY YOUR HANDS ON ME』に記した歌詞は、バンド史上最高にポジティブなメッセージ。美しいメロディと躍動感のあるサウンド、川島さんのボーカルに心打たれる曲だ。「相談したわけではないけど、希望があるものを作ろうと思いました。川島君はだいぶ体力や記憶力が落ちていたので、歌詞を書いているときもずいぶん頑張ってくれたんです。きっと必死だったと思う。ただ、そう言うと制作現場は大変そうに感じられるかもしれないんですが、僕らの純粋な、人間性そのものを出しながらでき上がっていきました。今の川島君のリアリティを伝えられるものにもなったと思っています」バンド最後の作品、メンバーの一人がこれを最後に療養生活へ…となるとセンチメンタルな感傷に左右されそうだが、中野さんは曲の完成まで冷静だったという。「今までも、ボーカルを入れた後は僕ひとりの作業だったんですが、前作までは川島君とプロセスを共有することができました。しかし今回は全くの孤独な作業。最後の作品、という無意識のプレッシャーもあったと思うんですが、その感情で台無しにすることは絶対にしたくないと考えていました。初めて川島君と一緒にレコーディングした18歳のときに、川島君の声を聴いて“憂いがあって魂を感じる声だ”と感動したんですが、この作品も素晴らしかった。特に最近は、憂いに優しさが加わったように感じます。心が動く声、というのかな。その魅力は、様々な編集や効果を加えても、全く消えずに残るほど力強いものです。完成した4曲を聴いてもらったとき、どれくらい川島君が受け止めてくれたか分からないけど、たぶん喜んでくれていたと思います」“まだ立ち止まらない前に進むんだ”と歌う「LAY YOUR HANDS ON ME」。何よりもメンバー2人のために、そして支えてくれたファンのために作られた、壮大で美しい曲になった。「スポーツ選手の引退試合のようでもありつつ、少し違うかなとも思う。引退試合は優勝しなくてもいいけど、僕らは過去最高の飛距離を出そうとしていました。アーティストとして最後まで諦めたものは何もないし、やりたいことが全てできて、今、とても誇らしい気持ちです。自信を持って世に送り出せる作品になりました。ラッキーというとおかしいけど、覚悟を持って幕引きできたのは幸運だったと思うんです。アーティストとしてどういう終わり方をするか、というのはなかなか難しい問題ですが、僕らは自分の意志でアーティストとしての姿勢と音楽性に終止符を打つことができた。それは良いことだったと思うし、『LAY YOUR HANDS ON ME』が僕らの最後の作品です!と言って歩きたいほどの気持ちになっています」◇ブンブンサテライツ左・中野雅之(prog.&bass)、右・川島道行(V&G )からなるロックユニット。海外での人気も高く欧州のフェスでも活躍。昨年リリースのアルバム『SHINE LIKE A BILLION SUNS』が現在もヒット中。◇『LAY YOUR HANDS ON ME』【初回生産限定盤CD+Blu-ray】¥3,657TVアニメ『キズナイーバー』OPテーマ。特典はハイレゾ音源とMP3音源データ各4曲収録、PHOTO BOOKなど。【通常盤CD】¥1,389(Sony Music Records)※『anan』2016年6月29日号より。写真・平間 至文・北條尚子
2016年06月28日伝説のバンド、YEN TOWN BANDが本格的に復活する。映画『スワロウテイル』から生まれ、’90年代に大きな足跡を残したバンドのボーカルを務めるCharaさんにインタビューしました。「プロデューサーの小林武史さんから、またやろう、と言われたときには、え、映画の中の架空のバンドなのに、なんでやるの、と思った。とはいえ『Swallowtail Butterfly~あいのうた~』はライブでも歌い続けている大切な曲だし、アルバムも20年経ても色あせない作品です。でも月日は流れているし、どうしたらいいんだろ、みたいな気持ちはあったかな」『Swallowtail Butterfly~あいのうた~』とアルバム『MONTAGE』は、’96年にヒットチャート同時1位を記録した作品。映画でCharaさんが演じた“グリコ”は、中国から来た娼婦でバンドの歌手。監督の岩井俊二さんも彼女のイメージで脚本を書いた部分が大きいと想像する。「愛の歌を歌う女で、愛する者のために歌う、という部分に当時すごく共感しました。復活するにあたりCharaとどう差別化するか悩みましたけど、結局、髪型を変えたぐらいで、あまり変わってないの(笑)」最新シングル『my town』では、feat.アーティストとしてDragon AshのKjとのコラボが実現。これもCharaさんのアイデアだったとか。「Kjはすごくピースフルな人だし、まるでYEN TOWNに住んでいるような存在。自由にやってもらいました。Kjから『Charaちゃんがいつも別れ際に言うみたいに、“じゃーねー”って歌って』と言われたので、あらかわいい、もちろんやるよ!って、頼まれた通りに私が歌ったパートも入っているの」アナログシンセの印象的なソロから始まる「my town」は、名曲「あいのうた」を彷彿とさせる曲。「YEN TOWN BANDらしいアナログ感も残しつつ、ロックとポップスがいい感じに混在しているような曲かな。小林さんとCharaの個性が“融合”して、なかなか面白い作品になったと思います」アルバムも完成しており、Charaさんは6曲ほど楽曲を提供したほか、アレンジも手がけている。「プロデューサーは小林さんだけど、私は出された服をそのまま着るわけじゃないし、クセのあるアーティストなんで、結構面倒くさいですよー(笑)、と言い合いながら作ったの。アルバムを聴いてもらえば、私らしいこだわりが伝わると思います」◇イェン・タウン・バンド岩井俊二監督の『スワロウテイル』に登場した劇中バンド。昨年復活ライブおよび新曲をリリース。7月30、31日に宮城で開催の「ap bank fes 2016」に出演決定。◇YEN TOWN BAND feat. Kj(Dragon Ash)『my town』【初回限定盤CD+DVD】¥1,620【通常盤CD】¥1,080【アナログ盤】¥1,620(UNIVERSALSIGMA)全て税込み。20年ぶりのAL『diverse journey』も7/20にリリース。◇ミリタリージャケット¥28,000Tシャツ¥11,000(共にvintage)タッセルネックレス¥57,000(jujumade)以上CPCMTEL:03・3406・1104スカートはスタイリスト私物※『anan』2016年6月29日号より。写真・内山めぐみスタイリスト・小川恭平ヘア&メイク・杉田和人(POOL) 文・北條尚子
2016年06月28日18歳のシンガーソングライター、井上苑子さん。夏に向けてとびきり瑞々しいサマーソング『ナツコイ』をリリース。甘くて切なくてキラキラした恋のゆくえを、キュートなボーカルで聴かせてくれます。「私が書く恋の歌はほとんどが片思いの歌なんですが、『ナツコイ』もそう。どこかもどかしくて甘酸っぱい曲です。実は悲しいことに歌詞にできるような恋を、まだ経験したことがなくて…。私だったら、きっとこう感じる、という気持ちで書いています。恋に関してはもっと頑張らないとなー、と思っています(笑)」幼い頃から歌うことが大好きで、そのまま大きくなったような女の子。11歳(!)の時から大阪の心斎橋で路上ライブをはじめ、高校に入学してからは“ツイキャス”で自室から放送する生ライブを配信。視聴者は200万人を数えたという。「新曲ができるとすぐにツイキャスで歌い、聴いてもらいました。リアルタイムで感想やコメントがもらえるので、友だちと話しているみたいで楽しいんですよ。ライブにも来てくれる人が増えていきましたし、デビューが決まった時も、みんなに喜んでもらえて嬉しかったです」高校3年時の昨年、ミニアルバム『#17』でデビュー。10代が共感できる歌詞や、彼女本人の普通っぽい魅力が愛され、JK(女子高生)が最も支持するアーティストに。「高校卒業を機に、学校がテーマの歌からも“卒業”したので、もっと幅広い世代の方々に向けて曲を伝えたいです。路上ライブやツイキャスもそうなんですが、ファンと同じように感じたり、同じ目線で話せたりするアーティストでありたいですね。もしどこかで出会ったら『わぁ、井上苑子って、普通だね!』と言われるところにずっといたいです。それが私らしさだと思っています」笑顔が絶えない明るい18歳。近所の幼馴染みのような親近感を感じるかわいいキャラクタ―で、愛される存在になりそう。この夏は7都市をライブツアーの予定。お楽しみに。◇いのうえ・そのここの春、高校を卒業したばかりの18歳。ツイキャスでライブ映像を配信したところ視聴者数が200万人を突破。昨年『# 17』でデビュー。7/22に赤坂BLITZでライブを行う。◇2nd single『ナツコイ』【初回限定盤CD + DVD】¥4,000特典DVDには、3月に行われた高校卒業記念ライブの模様を完全収録。【通常盤CD】¥1,200(EMI RECORDS/UNIVERSAL MUSIC)価格は税込み。※『anan』2016年6月15日号より。写真・土佐麻理子文・北條尚子
2016年06月10日デビュー5周年を迎えたきゃりーぱみゅぱみゅが、初のベストアルバム『KPP BEST』をリリース。初回限定盤がほぼ実物大の立体的な顔ジャケットという豪華パッケージで、既に話題沸騰中だ。「『もしもし原宿』(デビュー作)を出したときは、これっきりだと思っていたので、次のシングルはこれ、と言われるたびに、『あ、また新曲出せるんだ』みたいな(笑)5年間だったんですよね。でも最新シングル『最&高』の歌詞を中田ヤスタカ(CAPSULE)さんからもらったとき、きゃりーの存在自体がミラクルなもの、と改めて感じました。みんなに応援してもらいながら、奇跡が重なって、ここまでやってこられたんだなって。今こうやって歌えることの幸せをかみしめています」『KPP BEST』には24曲のベストセレクションと、中田ヤスタカさんのセルフミックス盤が収められる。楽曲も歌詞も中田さんが手がけてきたが、『つけまつける』を筆頭に、きゃりーさんとの他愛ない会話の中からヒット曲が生まれてきた。「一緒にいろんな話をしたことが、見事に歌詞に反映されているんですよね。レコーディングも独特で、本番当日に歌詞を渡され、メロディもその場で覚えて録音するんです。うろ覚えで歌ったものが、そのままCDになったりするので、最初はビックリ(笑)。どうして?と中田さんに聞いたら、覚えたてのフワフワした感じがきゃりーの良さだからって。それが5年間続いています」過去のヒット曲を改めて聴くと、ラブソングがほとんど見当たらないのも、きゃりーさんらしさ、だろう。「そうなんです。私もPerfumeさんみたいなラブソング歌いたい、と中田さんに訴えたら、えへへ、とスルーされました。そういえば私、恋愛の話ってほとんどしないんですよ。ただ、『もんだいガール』のときは恋の相談をしていたので、歌詞をもらったとき『機械みたいに生きてるわけじゃない』というフレーズがあり、泣きそうになりました」そしてきゃりーさんといえば、新曲を出す度に話題になるのがミュージックビデオ。その突拍子もないアイデアも、彼女の思いついたものから展開することが多いとか。「私はかわいいものが好きだけど、ちょっとエグイものも好き。ピンクのスライムをかぶりたいとか、ラーメン丼の上で踊りたいとか、思いつくままに言ってきました。それを実現するクリエイターさんたちは、ホントすごいと思う。きゃりーちゃんのMVは、何でもしていいから楽しいと、よく言われます(笑)」独特のMVが海外でも話題になり、デビュー3年目に海外進出。いまや日本を代表するポップアイコンだ。今年も2年ぶりのワールドツアーが予定され、このベスト盤も海外同時発売されるそう。「海外のファンには、私のMVを見て、『自分が着たい服を着て、やりたいことをやろうと思った』と、よく言われます。そんなことを言った覚えはないんですが、私自身の存在から発するメッセージを、国境を超えて感じてもらっているのは、本当に嬉しい。もっと楽しいことを見せてやろうと思います」アニバーサリーイヤーの今年は、ベスト盤、海外公演に続き、まだまだ楽しい“たくらみ”を用意しているそう。ますます目が離せない!◇きゃりーぱみゅぱみゅ5月からワールドツアーを行い、ファイナルは8月19、20日の日本武道館。大阪のUSJにアトラクション「きゃりーぱみゅぱみゅ XRライド」が登場。◇『KPP BEST 』【初回限定盤 超限定リアルお顔パッケージ3CD+DVD】¥5,555特典DVDにはインタビュー映像『きゃりーぱみゅぱみゅ 5年目の真実』を収録。【通常盤2CD】¥3,200(WARNER MUSIC JAPAN)※『anan』2016年6月1日号より。写真・土佐麻理子文・北條尚子
2016年05月31日