1曲目を鳴らした途端、いきなりの爆音ロック。ぼんやりした日常に喝!を与えるギターウルフの最新作『チラノザウルス四畳半 T-REX FROM A TINY SPACE YOJOUHAN』です。「音が出た途端、うわ!となってくれると嬉しい。レコーディングも、演奏部分は常に一発録りです。そのときの気合やアクション、エモーションがぶわっと盛り上がるところまで録音したいと思っている。そうしないと曲に命が吹き込めない気がするんだよね」(Seiji)「ベースとドラムだけ先に録音しても、Seijiさんのギターと合わないんですね。このやり方がギターウルフらしさだと思う」(U.G)海外にも熱狂的なファンが多い。’93年にアメリカで先にデビューし、日本でのメジャーデビューは’97年。20年以上にわたり海外ツアーを続ける日本代表的なロックバンド。新作は3年2か月ぶり。「アルバムを出した後は、まず国内ツアーをしてからアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドを長期間回ります。それが全て終わると、次のアルバムのモードに。曲作りはタイトルが浮かんだら、歌詞とメロディを一緒に作るんだけど、なんでこのタイトルが浮かんだのかな、って自分でもいつも不思議に感じます(笑)」(Seiji)収録11曲のタイトルを見ると、Seijiさんらしいフレーズ炸裂。アルバム名にある〝チラノザウルス四畳半〟の他「アメーバーラブソング」「ネッシームーン」など太古のロマンを感じさせる曲が目につきます。「新曲のタイトルが来ると、相変わらず冴えているなぁ、って。意味を聞いても分からないときは、自分の判断で演奏します」(Toru)「チラノザウスル四畳半というタイトルが出て、一体何を歌えというんだ、と思ったけど、東京に出てきて住んだ四畳半の部屋で、夢を抱いて、恐竜のように吠えていた自分の姿になりました。夢がある若いみなさんを、元気づけられるアルバムになるといいなぁ」(Seiji)◇ギターウルフ’97年『狼惑星』でデビュー。6月からレコ発で国内ツアーを行い、その後は世界規模のツアー。◇『チラノザウルス四畳半』【初回生産限定盤CD+カセットテープ】¥3,200ジェットR&R炸裂アルバム。「ソ連のヒロシ」「海とコーラ」などインパクト大の名曲ぞろい。【通常盤CD】¥2,500(Ki/oon Music)※『anan』2016年5月25日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子
2016年05月24日今年デビュー20周年を迎えるT.Ḿ.Revolution(以下T.Ḿ.R.)西川貴教さん。アニバーサリーイヤー事業のために「株式會社 突風」まで設立し、気合の入った“お祝い企画”を準備中のよう。その第一弾が3枚組ベストアルバム『2020‐T.Ḿ.Revolution ALL TIME BEST‐』。デビュー以降のシングル+αの全40曲収録というボリュームだ。「T.Ḿ.R.の20年の歴史を、ひとつのパッケージにできたのは、やっぱり感動しますね。こうやって並べてみると、やっぱりスピーディな曲が多いのは、バラードよりも疾走感のある曲を求められていたということなんでしょうね。この機会に全曲をNYでリマスタリングし、ずいぶん音質も良くなりました。後世に残す作品を、このタイミングでグレードアップでき、すごく嬉しかったです」ジャケットはご本人自らが強風を受ける姿で、衣装はお馴染み“HOT LIMIT”スーツ。顔は出さなくても、すぐにT.Ḿ.R.と分かってしまうインパクトの強さも、彼が20年の歴史で築いたものだ。「記念アルバムなのに、本人の顔が出ていないというね(笑)。この衣装も風に当たる姿も、デビュー数年後までのものなのに、すっかりT.Ḿ.R.らしさとして多くの方々に認識されているのは面白いことですよ。自分で言うのも何ですけど、このアートワークは現代アートとして、どこかの美術館に飾ってほしい(笑)」デビュー10周年ぐらいまでは、この姿を求められることに「過去のイメージに囚われてほしくなくて、モヤモヤしたものがあった」そう。しかしいまは、それすらありがたいと感じているとか。「デビュー当時はミュージシャンという意識が強く、音楽以外でテレビに出るなんて…、と思っていました。でも思ってもみなかったお芝居や、映画のお仕事をいただき、その期待に応えるうちに、T.Ḿ.R.っていいね、面白い、と感じてもらえる嬉しさが膨らんでいきました。そういう期待に応えてきた20年の歴史だな、という思いも大きいですね」そうして活動の幅を広げ、西川貴教としてお芝居に出演したり、バラエティ番組に出ることが多くなってから、「僕自身とT.Ḿ.R.が、どんどん離れていった」と言う。「T.Ḿ.R.は自分であって自分でない存在なので、そのキャラクターの素晴らしさを、全うしていただきたい(笑)。いわばキティちゃんを扱うサンリオの社長みたいな気持ちで、T.Ḿ.R.とつき合っています」◇ティーエムレボリューション'96年、西川貴教のソロプロジェクトとしてデビュー。5/13のデビュー記念日からクリスマスイブまで、長期にわたる全国ツアー「T.M.R. LIVE REVOLUTION'16‐Route 20‐」がスタート。◇『2020‐T.M.Revolution ALL TIME BEST‐』【初回生産限定盤3CD + DVD 】¥4,556デビュー曲からの全シングルを収録。T.M.R.の歴史を追った2020秒の特典DVD付き。【通常盤3CD】¥3,630(EPIC RECORDS JAPAN)※『anan』2016年5月18日号より。写真・小笠原真紀文・北條尚子
2016年05月11日赤のショートヘアがキュートなHARUHIさん。映画『世界から猫が消えたなら』の主題歌でデビューする、17歳のアーティストだ。映画の予告編が公開されると、映像をドラマティックに彩るピュアな歌声が注目され、「歌っているのは誰?」と問い合わせが殺到したという。ご本人に話を伺った。「実は日本語詞の歌を歌うのは初めて。上手に伝えられるかな、という不安もあったけど、映画の場面を思い浮かべながら歌に入っていきました。とくに『ありがとう』というフレーズが好きだったので、その気持ちを大事にして歌いました。聴いてくれた人それぞれに、大切にしてもらえる言葉が見つかるといいな」アメリカで生まれ、学校はずっとインターナショナルスクール。小さい頃から洋楽のロックやジャズ(!)に親しみ、音楽に囲まれた生活を送ってきた。13歳からギターやピアノでオリジナル曲を作るなど、才能を発揮。その頃から「音楽で生きていく」と決めていたと言う。「思い切って受けた学校のミュージカルのオーディションに合格したのが大きなきっかけでした。本番に気持ちよくパフォーマンスできたことや、それまでの練習が楽しくて、『私には音楽しかない』と思えるようになったんです」ただし当時は若すぎて、曲の作り方がわからなかったそう。しかし、「最初の曲が完成したら、その後はどんどん曲が浮かんできた」という、恐るべき10代。デビューシングルのカップリング曲では、自作の英語詞のR&Rや、物語仕立ての曲など、才能の片鱗を見せてくれる。「 “普通のもの”があまり好きじゃないかも。音楽もファッションも書くものも、何でも。髪の毛も今は赤だけど、作品ごとに変えようかなと思っています(笑)。でも、デビュー日が学校の試験期間と重なるので、一体どうなることやら。今からちょっとビビってる(笑)」話題の映画とともにデビューする新世代のアーティストに、リスナーとしてもワクワクが止まりません。◇Debut single『ひずみ』【初回生産限定盤CD+DVD 】¥1,500映画『世界から猫が消えたなら』主題歌。4曲入りCDと「ひずみ」MV収録のDVD2枚組。【通常盤CD】¥1,200(Sony Music Associated Records)共に税込み◇ハルヒロサンゼルス生まれ。現在インターナショナルスクールに通う17歳。13歳から楽曲制作を開始し、ライブやレコーディングに参加。その一曲『ひずみ』が映画主題歌に抜擢され、デビュー。※『anan』2016 年5月18日号より。写真・小笠原真紀文・北條尚子
2016年05月11日長年、兄弟ユニットとして活躍してきたキリンジから離れた弟の堀込泰行さんが、ついに待望のソロ・デビュー。ファーストアルバムは、全曲洋楽のカバーという、サプライズ感のあるスタートになりました。タイトルは、『“Choice”by 堀込泰行』。「昨年の暮れ、キーボードの伊藤隆博さんと2人だけのツアーをしたのですが、そのとき洋楽のヒット曲のカバーを演奏するステージが面白いかな、と思い、このアルバムに入れた曲も全部やったんです」堀込さんも「初めての経験だった」という小編成のライブツアー「IN A SIMPLE WAY」。楽器はオルガンなどの鍵盤とギターのみ。ビートはリズムボックスを鳴らした。そして今作は、ライブで使用したアンプやギターなど、機材も同じものを使って、スタジオでレコーディングした曲もあるそう。「たまたま好きで聴いていた南米のCDが、エレクトーンとリズムボックスと歌だけという成り立ちで、そのチープな感じが面白かったんですよ。これはいいなぁ、と思い、その雰囲気を僕のツアーにも取り入れてパフォーマンスを行い、このCDができ上がりました。ただ、ライブと同じ手法で録った曲もありますが、CDで聴くことを考えて、アレンジなど手を加えたものもあります」最低限のシンプルなトラックに、堀込さんの甘く深みのあるボーカルが乗り、往年のヒット曲の数々が、面白いようにイメージチェンジ。べースと歌だけのThe Doorsの『Light My Fire』や、明るいリゾートソングがしっとりと響いてくるバリー・マニロウの『Copacabana』。原曲が有名なヒット曲ばかりなので、一曲一曲の“変身”ぶりも聴きもの。「僕の中ではすごくメジャーでスタンダードな曲ばかり。有名だからこそイジり甲斐があるというのかな、クスッと笑ってもらえることを狙って、様々な遊び心を入れながら、有名な曲を、どこまでオリジナルから離せられるか、という部分に重きを置いてアレンジしました。それと、10曲の曲順には、かなりこだわっています。最後の曲を聴き終わったとき、また最初から聴きたくなるようにヒネリました。BGMとして何度もリピートして、例えば家事をしながらとか楽しく聴いてほしいな」◇ほりごめ・やすゆき'97年に兄・堀込高樹と共にキリンジとしてデビュー。'13年に脱退し、ソロに転身。CM音楽や他のアーティストへの楽曲提供も行う。◇『“Choice”by 堀込泰行』¥2,500 ライブハウス『ビルボード』レーベルの洋楽カバーシリーズ最新作。どの世代も楽しめるエバーグリーンなヒット曲を、堀込流のアレンジで聴かせる。(Billboard Records)※『anan』2016年5月4日‐11日合併号より。写真・小笠原真紀文・北條尚子
2016年04月29日華麗なドラムプレイとともに、熱いボーカルを聴かせるドラムボーカルとして活躍中のシシド・カフカさん。久々にリリースするフルアルバム『トリドリ』は、日本有数のプロデューサー陣と組んだセッションアルバム。その相手は亀田誠治、蔦谷好位置、織田哲郎など音楽シーンを代表するヒットメーカーばかりだ。「プロデュースしてほしいと思った方々に当たって砕けろ!の精神でお願いし、引き受けていただきました。初めてご一緒する方も多かったのですが、皆さんそれぞれ“こんなシシド・カフカを見てみたい”というイメージがあったようで、私も曲作りの段階からディスカッションし、共に作品を作り上げていきました」収録曲にはキュートな女心を思わせるポップソングや、歌謡曲テイストのセクシーな歌など、今までの彼女の作品にはなかったような歌も。「何曲か歌詞も自分で書いているんですが、今までなら“シシド・カフカは、こうは歌わない”と頑なにせき止めていた部分がありました。だけど、今回はメロディに呼ばれるまま、よし、音に乗っかろう!という気持ちで書いています」例えば、今までは日本語と英語が混在する歌詞は、絶対に書かなかったものの、今回は「メロディの良さを失わせるより、みんなも私自身も楽しめる言葉を自由に書く」と、いい意味で“脱力”していったとか。「今まではドラムのレコーディングも、まだ録るの!?と言われるほど、納得いくまで何十テイクも録ってきました。でも今回は、ビート感という芯が一本通っていて、みんながOKと言ってくれれば完了。頑なにならず、その音が生まれた場を楽しめればいいじゃないと、そんなふうに、心が柔らかくなりましたね」個性的なプロデューサーの他、歌詞の作家陣として甲本ヒロト、大森靖子、VERBALなど幅広いジャンルのアーティストが参加。それぞれのシシド・カフカ像が楽しめる。「13曲全部が完成したとき、いいアルバムができた、と素直に思えたのが嬉しかったですね。自分に自信が持てる作品になりましたし、アーティストとしての柔軟さを見せることもできた。あまりにもいいアルバムを作っちゃったので、次はどうしようと心配なほどです(笑)」シシドさんの新しい魅力をさらけ出す新作『トリドリ』。全国ツアーでは、全曲をパフォーマンスする予定とか。まるでアスリートのように全身全霊でドラムを叩き、歌う、彼女のカッコいい姿が今から楽しみだ。◇シシド・カフカメキシコ出身。2012年にデビュー。5月からは、2年7か月ぶりの今作を引っ提げての、全国9都市のライブハウスツアーが決定。◇2nd フルアルバム『トリドリ』【初回限定生産盤CD+Blu-ray】¥5,800「朝までsugar me」など3曲のMVと、Zepp TokyoでのライブをBlu-rayにフル収録。【CD+DVD】¥3,800【通常盤CD】¥3,000(avextrax)※『anan』2016年4月27日号より。写真・小笠原真紀ヘア・mayumiメイク・SAKURA文・北條尚子衣装協力・Y‘s
2016年04月22日昭和の歌謡曲からジャズ、ロックステディなど、レコード盤の匂いがするロマンティックなサウンドを聴かせてきたEGO‐WRAPPIN’。今年で結成20周年を迎え、記念盤となる3枚組ベスト盤、All time best&Cover Album『ROUTE 20 HIT THE ROAD』をリリース。それぞれを太陽盤、月盤、星盤と名付け、オリジナル作同様の個性が吹き込まれていて、聴きごたえたっぷり。「20年間でいろんなタイプの曲を作ってきましたが、曲調によって陰と陽と2つのバランスに分けてみました」と中納さん。そして星盤がファン待望のカバー曲集。「毎年恒例の東京キネマ倶楽部のライブと日比谷野音のイベントで、僕たちらしいセレクトでカバーをやってきているんです。今回の星盤では、いままで演奏してきた『異邦人』などのほか、渋すぎず、でもEGOらしいヒネリもある選曲も加えつつ、新たに10曲レコーディングしました。一家に1枚、置いてほしい(笑)」と森さん。ラインナップは、昭和のジャズや日本のポップス、R&B、UKロックなど多岐にわたる。「原曲が男性ボーカルの作品が多いんですが、女性のよっちゃんに歌ってほしくて選んだ曲もあります。狙い通りカッコよく、スタイリッシュに仕上がっています」(森)「昔なら絶対やらなかったという曲もありますね。20年目のいまだから歌える、という曲。ユーミンの『曇り空』は、大人になってから知った曲ですが、めっさいい曲。私にはない“女心”を掘り起こしながら歌いました。私にとってカバーとは、ただ歌うだけでなく、歌詞や世界観を、かみしめられるかどうかがすごく大事。そのあたりも感じてもらえたら嬉しいですね」(中納)一曲一曲にブルージーなムードや歌心が凝縮され、改めてすごいバンドだと思わされる作品だ。「ベスト盤の曲を選ぶとき、全部聴き直しましたが、昔の曲もすごい勢いがあるし、怖いものなしでやってたんやな、と感じました。若いということもあるけど、私たちの音楽は絶対にカッコいい、絶対にいける、と思っていた。いま思えば厚かましい話やけど(笑)、それほどの確信を持ってやっていました。大人になるにつれ知ることが多くなり、自分に制限をかけたりもするけど、人の目なんか気にせんと、自由にやることがいちばん人間らしい、と改めて感じましたね」(中納)20周年は終わりではなく、まだまだ続く通過点と言う2人。21年目から先も、この情熱のままカッコいい音楽を聴かせてくれるだろう。◇エゴラッピンメンバーは中納良恵(Vo)と森雅樹(G)。’96年に大阪で結成。’00年の『色彩のブルース』などヒット作多数。5月から全国ツアー、11/27には日本武道館でメモリアルライブを予定。◇All time best&Cover Album『ROUTE 20 HIT THE ROAD』それぞれ新曲1曲を含むベストセレクション盤2枚と、新たにレコーディングしたカバーアルバムのCD3枚組。¥3,700(NOFRAMES/TOY'S FACTORY)※『anan』2016年4月20日号より。写真・内田紘倫文・北條尚子
2016年04月18日ゼインがワン・ダイレクションからの脱退を表明したのは昨年の3月25日。20万人を動員したジャパンツアーの直後だっただけに、とくに日本のファンの悲しみは大きかった。当時のインタビューでは「僕は心からバンドを楽しんだし、あの中にいて自分自身でいられるようにするためには何でもしてきた。だけどミュージシャンとして身を置く場所ではないと感じたんだ」と語っていたゼイン。その後は愛する家族のもとに帰り、母の手料理を食べ、家族との時間を楽しんだ。そして「ようやく本来の自分になれて、自分に正直に音楽を作れる。心からやすらげるようになった」という心境に。昨年夏にレコード会社と契約し、ゼインはソロとして走りだした。年明け早々シングル『PILLOWTALK』を配信リリース。1Dでは歌えなかったセクシーなラブソングであり、恋人と噂される人気モデル、ジジ・ハディッドと共演したミュージックビデオも大きな反響を呼んだ。そして奇しくも1Dからの脱退を発表したちょうど1年後、アルバム『MIND OF MINE』を全世界同時リリースした。「アルバムのために46~47曲ぐらい書いた。この作品で伝えたいのは、1Dとソロは全く別のものだということ。1Dは素晴しい経験だったし、いい時を過ごしていたと思う。でも今作っているのは、僕自身の音楽。自分の気持ちや達成感を、音楽で伝えられることが嬉しいんだ」収録曲にはノリのいいパーティチューンもあるが、やはり彼の美しいボーカルをじっくり聴かせるスロー&ミディアムなナンバーが印象的。「このアルバムを自分の両足で立っている僕らしいものにしたかった。4人と4年以上も一緒に歌ってきたから、今は自分の声だけを聴きたい、そんな気持ちもある。アルバムの中でも重要な『iT’s YoU』という曲は、自分を正直にさらけ出しながら書いた。僕にとって曲を書くことが傷を癒すセラピーでもあったからね。あの曲で同じような心境の人を癒すことができたら嬉しいな」人気グループからの脱退で、少なからず批判も受けたゼイン。その声を跳ね飛ばすには、自分自身と正直に向き合い、最高の曲を作り上げることしかなかったのだろう。そして3月から活動休止に入った1Dもメンバーそれぞれのソロ活動が噂されている。最新アルバム『MADE IN THE A.M.』からのリード曲『HISTORY』のMVでは思い出深い映像がたくさん登場し、ゼインの姿も見られる。「僕たちは一緒にたくさんの歴史を作ってきたよね」という歌詞も涙モノ。それぞれの新たなスタートにエールを送ろう。◇ゼイン1993年1月12日、英国生まれ、本名ゼイン・マリク。17歳の時出場したオーディションをきっかけに、2011年に1Dとしてデビュー。ミステリアスなキャラとハイトーンボーカルが魅力。◇Debut album『MIND OF MINE』【初回限定仕様CD】¥2,200 「PILLOWTALK」をはじめ日本盤限定ボーナストラックなど21曲収録。特典ステッカー付き。ジャケットは子供時代のゼイン。(Sony Music Japan)※『anan』2016年4月6日号より。文・北條尚子
2016年04月05日flumpoolがニューアルバム『EGG』をリリースした。まるで“叫び”のような感情を湛えたリードトラック「解放区」から始まる本作、いままでのflumpoolのイメージとは違うアグレッシブなスタートにドキドキするはず。メンバーに話を聞いた。「攻めの姿勢が漲る、すごくROCKなアルバムだと思います。前作から3年半という時間の流れの中で、自分たちも30代になって。年齢とともに熱心になれることが減りがちになると思うんですが、まだ落ち着きたくはないし、楽しいことを探したい。自分たちに勢いをつけていく、という気持ちをこめて、攻撃的なアルバムになりました」(山村さん)アルバムの歌詞を見ると「クソみたいな」「ぶっ壊せぶっ飛ばせ」など、過激なワードもちらほら。「普段はあまり使わない言葉ですが、おとなしそうに見える人のほうが、そんな思いを秘めていたりするもの。自分も真面目っぽく見られるし、怒ったりしない人だと思われがちですが、そうでもないですよ(笑)。内に秘めた気持ちが素直に歌詞に反映されていると思います。ミュージシャンだから誰かと違う生活をしているわけじゃないし、皆さんが日常感じていることを歌いたいし、歌えていると信じています」(山村さん)その“予兆”は先行シングル『夜は眠れるかい?』にあった。彼らの新境地ともいえるラウドなロックナンバーにみんなが驚いた。しかし「『これ、本当にflumpool?』と思われてもいい」と、メンバーにとっては狙い通りのようだ。「『夜は眠れるかい?』という曲ができたことで、このアルバムがROCKモードになっていった気がします。曲作りの面でも、3年半前に比べると機材の面が進化し、できることがすごく増えたんです。“こういう音で”と思い浮かべた音がすぐに鳴らせるし、思ったことがそのまま形にできています」(阪井さん)これまた彼らにしては異色の一曲、EDM風の『World beats』は、バキバキの打ち込みのダンスナンバー。「ライブで一緒に盛り上がれるように」(阪井さん)とチャレンジした曲とか。もちろん従来のflumpoolらしい叙情的で優しい曲もあり、絶妙なバランスで様々な魅力が伝わってくる。「でき上がった『EGG』を全体通して聴いてみたら、本当にカッコいいアルバムになったと改めて思いました。サウンドも力強くなっているし、曲調の振れ幅も広がった。全曲から力を感じるアルバムになっているんじゃないかな」(小倉さん)◇フランプール2007年結成。写真右から、阪井一生(G)、尼川元気(B)、山村隆太(V&G)、小倉誠司(D)。4月2日から14都市22公演の全国ツアー「WHAT ABOUT EGGS?」開催が決定。公式サイトは、◇4th album『EGG』【初回限定盤CD+DVD】¥3,800最新スタジオライブや昨年の台湾公演ライブ映像、「夜は眠れるかい?」のMVとドキュメントなどを特典DVDに収録。【通常盤CD】¥2,800(A‐Sketch)※『anan』2016年3月23日号より。写真・佐山順丸文・北條尚子
2016年03月17日幼い頃、自然に訪れた音楽との出会い。加藤ミリヤさんの歌手への道は、フットワークの軽さといい人間関係を築くことで開かれました。そんな加藤さんの“運命の出会い”を、ご本人に語っていただきました。* **加藤ミリヤさんと音楽との最初の接点は<詩>だったと言う。「机に向かって静かに何かをコツコツとするのが好きで、勉強の延長で、小学生の時から詩を作りはじめたんです」詩を書くことに興味がわいたのは、「自分の存在価値が何なのかを示す手段だったから」とミリヤさん。記憶をたどると、メロディに乗せれば歌になる、歌詞のような詩だったそう。「10歳でたまたま始めたことが作詞だったのは、ラッキーだったと思うけど、誰かに見せたり話したりするものではなく、自分だけの大事なものでした」言葉が<音楽>にグッと近づいたのは、その頃に憧れた女性ソロアーティストたちの存在だ。「小学校1年生の時から安室奈美恵さんの大ファンでした。その後は浜崎あゆみさん、宇多田ヒカルさん、椎名林檎さんを好きになって。まるで夢の世界を見せてくれるような輝くアイコンだけど、どこか薄紙に包まれているような生活感のないイメージに、強く憧れていました」憧れのアーティストたちが自ら楽曲を作ることが、詩を書きためていたミリヤさんにとって、大きな励みになった。「その頃は自分の心の叫びが詩になっていて、人に聴いてもらいたいという気持ちが強くなっていたんです。この目的を実現するには、歌手になればいい、と考えました。その時、自分が歌手になっている姿がピンとイメージできたんですよね。そこからどんどん“なりたい”でなく“私、歌手になる”というマインドになっていきました」中1の時、思い切ってソニーミュージックのオーディションに応募し、見事合格。デビューを目指していた時、その後の人生に幸運を呼び込む出会いがあった。オーディションを見た女性スタッフが「この子の声が好きだから、私が担当したい」と名乗りを上げたのだそう。「直属の担当者として、私のイメージを完璧に理解し、売り出しから10年間一緒に仕事をしました。私も頑固な性格だし、彼女も自分の意見をはっきり言う熱い人。でも、お互い絶対に間違ったことは言わない、という信頼があったので、うまく譲り合う関係でもありました。それでも感情的にぶつかりそうな時は距離を置いていましたね」熱心さと冷静さのバランスが良い関係を、最も近い仕事仲間と築けたこと。これもミリヤさんを成功に導いた鍵だろう。◇かとう・みりや’88年生まれ。一昨年デビュー10周年を迎え、その後ファン待望のアルバム『LIBERTY』をリリース。4/14より、全国ツアー「“DRAMATIC LIBERTY”tour 2016」がスタートする。◇トップス¥16,000パンツ¥14,000(共にLABRAT/LABRAT BOUTIQUETEL:03・5474・6060)その他はスタイリスト私物※『anan』2016 年3月23日号より。写真・細見裕美(go relax E more)スタイリスト・西川哲也(holy.)取材、文・ 北條尚子
2016年03月16日ロマンティックな王道バラード曲で、ファンの胸を切なくさせ続ける3人組「いきものがかり」。昨年には紅白8年連続出場も果たし、デビュー10周年を迎えた彼らが今ハマッていることとは?吉岡聖恵さん(Vocal)、水野良樹さん(Guitar&リーダー)、山下穂尊さん(Guitar&ハーモニカ)にお話を聞きました。* **――最近、何かハマっているコトはありますか?山下:冷蔵庫が欲しいんですよ。ラップをしなくても乾かないチルド室とか、家電店を回って最新式の冷蔵庫をチェックしています。水野:料理好きだもんね。寸胴鍋でラーメンスープ作ってたり。――寸胴鍋!本格的ですね。山下:鶏ガラと豚骨を煮込んで、スープをとって作りました。水野:僕はポメラニアンを飼い始め、めちゃくちゃ溺愛しています。以前はペット写真の待ち受けとかあり得ないと思っていたけど、完璧に待ち受けにしていますし、写真はほとんど犬。もう二人の冷ややかな視線すら、全然平気です。吉岡:私は…最近ボウリングに行ってないので、行きたくて。お正月にペットボトルに水を入れたものをピン代わりにして、姪っ子とボウリングごっこをしたのですが、けっこう本気になっちゃって。本物のボウリングがやりたいなぁ。◇いきものがかり吉岡聖恵(Vocal)、水野良樹(Guitar&リーダー)、山下穂尊(Guitar&ハーモニカ)。地元・厚木や海老名の路上ライブをきっかけに人気を博し、2006年『SAKURA』でデビュー。31枚のシングルと、7枚のアルバムをリリース。◇デビュー10周年のスペシャル野外ライブイベント「超いきものまつり2016 地元でSHOW!!」が決定。8月27・28日海老名運動公園、9月10・11日厚木市荻野運動公園で開催される。10周年記念ベストアルバム『超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~』が3月15日発売。【初回生産限定盤4CD】¥4,444【初回仕様限定盤3CD】¥3,333(EPICレコードジャパン)※『anan』2016年3月16日号より。写真・押尾健太郎インタビュー、文・北條尚子
2016年03月12日昨年10月に第一子を出産したことを発表し、早くもニューアルバム『TOKYO BLACK HOLE』をリリースする大森靖子さん。2月にはワンマンライブも行い、産休何それ?なダッシュぶりだ。「ある日、『はじめてのおつかい』を見ていて、ひとりのお父さんがめちゃくちゃ子供に慕われている姿に感動してしまって。ああいうふうに誰かに全てをあずけられてみたい、って初めて思ったんです。ただ、産休&育休を取るはずが、結局ほとんど休んでいないんですけどね(笑)」出産したことで「地球がひとつ増えた感じ」とは、大森さん語録。産む直前まで書いていた曲のアレンジが届き、出産後すぐにアルバムのレコーディング。歌詞にちりばめられた言葉、サウンド、シンガーとしての魅力などあらゆる面が更新されている。新しい世界を見せてくれる作品となった。「私の音楽は“メンヘラ曲”みたいに言われていたんですけど、そんなつもりは全然なくて、むしろ現実よりも少し明るくしていたつもりだったんですよ。もともと“自分を出したい”という欲はなくて、ただ歌詞や文章を書くのが楽しいだけ。このアルバムの曲も、“こんな人と関わったからこの歌が生まれた”とか、“こういうものを見たからこの歌ができた”とか、見たものをそのまま書いて、面白いでしょ、だから聴いて!という気持ちなんです」多くのファンから「大森さんの歌を聴いて、こういうことを考えてもいいんだと勇気づけられた」という手紙が届くという。「心の奥にある言いたくないこと、言ったら嫌われるようなことでも、全部大丈夫、と肯定しながら、ずっと歌を書いてきたからだと思う。私はそれをいちばん書き起こさないといけないと感じています。いままでは女の子の感情で歌詞を書くことが多かったけど、オジさん層にも聴いていただいているとわかったので、新作はいろいろな人の“土台”になれる歌を書きました。楽しいです、いろんな人間になれるのは」常々“ファンは友達”と話す大森さん。握手会を開催して気軽にお喋りするなど、リスナーとの距離が近く、その関係や会話できるツールを大事にしている。作品にもそのやりとりが反映されるのは当然だろう。数え切れないほどの誰かの感情を受け止め、歌い、癒す存在だ。「私は歌いたい病気(笑)なので、場所は小さなスナックでも大きなホールでもいいんですよ。どこででも音楽的に面白いものをいっぱい見せたい、と思っています」◇おおもり・せいこ大学在学中に弾き語りライブを始め、注目される。2014年『きゅるきゅる』でメジャーデビュー。詩人・作家の最果タヒとの共著『かけがえのないマグマ大森靖子激白』も好評。◇2nd Album『TOKYO BLACK HOLE』【完全生産限定盤CD+DVD+BOOK】出産の瞬間までの1か月間を綴った初の書き下ろしエッセイ付き。¥4,800【通常盤CD+DVD】 ¥3,800【通常盤CD】¥2,800(avex trax)3月23日発売。※『anan』2016年3月16日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子
2016年03月09日ボーカロイド楽曲をインターネットに上げ、サウンドクリエイターとして人気だったwowakaさんが結成したロックバンド、ヒトリエ。「ひとりでボーカロイドを作り続け、出し尽くしてしまった感があったんです。この先何をしたいのか悩んだとき、バンドならではの途方もないエネルギーとアンサンブルへの憧れを思い出し、もうバンドしかない!と思ったんです」(wowaka)ネットシーンで交流のあった3人に声をかけ、制作した自主制作盤が話題を呼び、一昨年メジャーデビュー。しかし当初はwowakaさんの思想と美学に基づく作品を、忠実に再現するワンマンバンドだった。「でも去年1年間、アルバムに向けた制作とライブを一緒にやってきて、フレーズでもアレンジ面でも、メンバーに委ねる部分が、どんどん増えていったんです」(wowaka)トラックを制作するときもwowakaさんはあえて参加せず、3人に任せた時間が多かったとか。「3人だけで自由に伸び伸びと作りました。wowakaの好きなモノを分かった上で、全く違うものをぶつけたりして(笑)」(シノダ)「ここまでやる?って悪ノリするほど好きなようにやっていたね。その半面、これでOKもらえるか内心ドキドキしたけど、ボツにならなかったので驚きました」(ゆーまお)「バンドだけに集中してきた2015年が、全てこのアルバムに入っている気がします。一曲一曲が思い入れだらけ。作り方が変わってきたことも楽しかったし、バンドを続けてきてよかった(笑)」(イガラシ)冒険心に満ちた様々なサウンドアプローチで聴かせる『DEEPER』。個々のメンバーの真剣勝負がはじけるアルバムになった。「僕の曲が思ってもみないような展開になっていたり、僕からは絶対に出ないアイデアがあったり、新鮮ですごく楽しかったですね。いま改めて聴いて感じるのは、ヒトリエがバンドとしてより深まったこと。それが『DEEPER』のいちばんの意義だと思います」(wowaka)◇左から、ゆーまお(D)、シノダ(G)、wowaka(V&G)、イガラシ(B)。2014年『センスレス・ワンダー』でメジャーデビュー。3月から全国14か所のライブハウスをツアー。※『anan』2016年3月2日号より。文・北條尚子
2016年02月29日絶妙なアップテンポ感の曲で、多くのファンに熱いエールを送るバンド、KANA-BOONの最新作『Origin』が完成。デビュー以来、ポンポンと快進撃を続けてきた彼らだが、3作目の制作を前に、もう一度自分たちと向き合い、意思統一を図る時間が必要だったようだ。「このバンドで初めて音を出したときの感動が薄れてしまい、モヤモヤした気持ちがあったんです。理想のバンド像に向かって、一歩ずつ進んでいたはずなのに、鮮明な像が見えなくなっていました」(飯田)「僕は去年の武道館が終わったころからスランプに陥ってしまい、ちゃんとドラムが叩けているかずっと不安で、ライブが怖く感じたときもありましたね」(小泉)「ギターのフレーズを考えるときも、これならみんなノレるかな、とか、お客さんのニーズに応えることを優先していた気がします。でもこれって自分のフレーズなのか?と思うと、やっぱり自分らしくない音なんですよ。個人的にはそこが楽しくなかったんですよね」(古賀)バンドは順調だし、同級生ならではの仲の良さも変わらない。しかしこのままアルバムは作れないという不安を感じた谷口さんの声かけで、心に抱えていた本音をぶつけるシリアスな話し合いをもった4人。「音楽が純粋に楽しめていない、という我慢も限界に来ていました。そんな気持ちのままアルバムを作るのはすごいストレスやったし、純粋に未来への不安がありました。バンドを始めたあのころの気持ちをしっかり取り戻すという結論でみんなが一致し、それからすぐに生まれたのが、『スタンドバイミー』と『Origin』の2曲です」(谷口)ヒーローに例えながら“君には君だけのやり方がある”というメッセージを込めたタイトル曲「Origin」。迷いから抜け、再び目標をとらえた彼らの心境そのままの曲だ。「自分たちのやり方というのを忘れる瞬間があって、それを思い出すためにできた曲です。デビューして3年目の段階で、こういう状況に気づけて良かったと思います」(谷口)「ギターも聴く人のニーズはあまり考えず(笑)、自分の思い通りのフレーズ100%で弾いています。話し合いを通して、忘れていた気持ちに気づかせてもらったのもすごく大きいですね」(古賀)デビュー前の純粋で怖いもの知らずだったころの気持ちと、彼らの未来をつなぐ橋のようなもの、それがこのアルバムといえるだろう。「レコーディング中はいつも2軒の弁当屋から出前を交代で取っていたんですが、ふと新しい蕎麦屋に注文したら、めちゃくちゃうまくて当たりやったんですよ。仕事でも何でもたまに違うことすると視野が広がるな、大事やなという話になり、演奏にやる気が出ました(笑)」(飯田)4月からは海外公演も含む3か月に及ぶツアーが待っている。早くライブでこのアルバムを聴かせたいと荒ぶる彼らのパフォーマンスはきっと特別なものになるに違いない。◇カナブーン左から、小泉貴裕(D)、古賀隼斗(G)、飯田祐馬(B)、谷口鮪(V&G)。2013年『盛者必衰の理、お断り』でデビュー。4月から香港・台湾公演も含む全国ツアーを行う。◇3rd album『Origin』【初回生産限定盤A2CD】デビュー前の自主企画イベントで披露した曲を網羅した特典CD付き¥4,200【初回生産限定盤B CD + DVD】好評のパロディ映像を収録したDVD付き¥3,500【通常盤CD】¥2,800(Ki/oon Music)※『anan』2016年2月24日号より。写真・高橋マナミ文・北條尚子
2016年02月23日一度その姿を見たら忘れられないチャーミングなルックスとパワフルな楽曲で、たちまち音楽ファンの心をわしづかみにしたオオカミたち、MAN WITH A MISSION。最新作とその魅力に迫った!突如音楽シーンに登場し、瞬く間にアリーナクラスを満杯にする人気バンドとなったMAN WITH A MISSION(以下MWAM)。完成したばかりの最新アルバムの制作秘話とオオカミバンドの日常を、5匹の中で唯一言葉を操れるJean‐Ken Johnnyさんにお聞きしました。頭は狼、体は人間という“究極の生命体”である彼らの会話は、通常カタカナ表記で紹介されるが、今回は特別に翻訳版でお届けします!――アンアンは知っていますか?はい、存じ上げていますよ。ただコンビニエンスストアで立ち読みするのは勇気がいりますけど。(取材日の最新号を見ながら)この「恋と運命。」という女性誌をオオカミが手にしているのを誰かに見られたら、ちょっとね(笑)。――星座は何ですか?我々は、何月生まれということが特にございませんので、アレですけど…でもいつも運勢はチェックしていますよ、今後の運気とか。――なるほど(笑)。新作の『The World’s On Fire』は“戦火”のような緊張感のあるタイトルだと感じました。ああ、そういう言葉も想起されますが、どちらかといえば世界中の人々の心の中に、火が灯っているんだぞ、というメッセージが主軸になっています。壮大なテーマのようですが、いちばん普遍的な、世界中の共通言語になり得る力のあるテーマだと思っています。――そのタイトルを選んだのは?一番にですね、我々が結成以来思い描いていたバンドの理想型というのが、世界中で当たり前のように歌われ、オーディエンスと共に共通理念を持てるMWAMの“アンセム”ソング(代表曲)を作りたいと思っていたことです。世界中から崇拝されるようなバンドは、必ずひとつはアンセムをお持ちでいらっしゃって。とはいえ、そういう作品を生み出すのはハードルが高いのですが、たまたまこのタイトル曲を作っているとき、海外のスタッフが、「この曲は“The World’s On Fire”だね」と言い、ソレだ!と瞬時に感じました。こういうメッセージは世界の人にも通じるんだと、ずっと見上げていたハードルを越えた気分になりました。――新作は海外のプロデューサー陣と組んで作られていますね。はい、大半の楽曲がそうです。新しいスタッフとの仕事はひとつの挑戦でしたし、アルバムにも我々のチャレンジが含まれていると思います。結果的に一曲一曲が持つ力強さとメッセージ性が、よりダイレクトに、よりパワフルになっています。僕自身、本当にお気に入りのアルバムになりました。――このまま海外でもリリースできる作品だと感じました。そうですね。まだ具体的な内容は決まっていませんが、世界の音楽のメインストリームでも、ひけをとらないものだと信じておりますので。まぁ、自分で言うのもおこがましいのですが、世界に勝負を賭けられる作品に仕上がったと思います。ぜひ手に取って、聴いてみて、もし私の言葉が間違っていたらバカにしてください。――メンバーの方々の魅力を教えてもらえますか。まずボーカルのTokyo Tanakaさん。彼は非常に男気溢れるオオカミなのでガテン系に思われがちですが、実は女子力が最も高いです。料理がものすごく上手で、何作ってもおいしい。そろそろ料理本を出すと予想しています。――Kamikaze Boyさん。僕と並んでMWAMの楽曲制作を担う、バンドの軸のオオカミです。ただ酒を飲む量が激しすぎるので、アンアン読者へのお勧めチャームポイントはないですね(笑)。――DJ Santa Monicaさん。最近、女子に「手がきれい」と言われているそうです。非常にヤンチャなオオカミさんでもありまして、ライブ中いなくなることも多い(笑)。少年ぽい男子がお好きな方は、きゅんとくるのでは。――Spear Ribさん。かわいい顔なので、モテ度はダントツですね。犬特集の際には、どこかに紛れ込ませてもらえますか?(笑)バンドのリズムを司るドラマーとして重要な存在なので、カワイイだけじゃないぞ、と。――では最後にJean‐Kenさんもお願いします。えっ、自分で自分を!そんな恥ずかしい話ありますか(笑)。――どんな性格なんでしょう。実は怒りっぽいとか?いや、めったに怒らないですよ。カルシウムもちゃんと摂っていますし。人とコミュニケーションをとるのが好きです。強いて言うならちょっとオタクですね。漫画や映画は相当観ています。◇マン ウィズ ア ミッション頭が狼で体が人間という、“究極の生命体”ロックバンド。2011年メジャーデビュー。海外での活動も積極的に行い、昨年は2度のヨーロッパツアーを敢行。ロックの伝統と様式美を感じさせる壮大なスケールのサウンドとともに、テレビ番組などで垣間見られるメンバーのチャーミングな様子も大人気。◇Tokyo Tanaka「今作ハイロンナコトニトライシタ作品。デビュー6年目ヲ迎エタ我々ノ新シイ音ヲゼヒ感ジテホシイデス」右から覗く舌が特徴。アニキ的な存在のボーカル担当、通称“タナパイ”。◇Spear Rib「イツモマンウィズヲ聴カナイ人デモ聴キヤスイアルバムニナッテルト思ウニク(・∀・)!イツモ聴イテクレテル人ハプロデューサーノ違イヲ感ジテモラエルト面白イト思ウニク!」その愛らしいルックスから女子の支持率No.1のドラマー“リブちゃん”。◇DJ Santa Monica「今作ハ、イロンナ方々ト作リ様々ナ雰囲気ノ楽曲ガ集マッタ!!!!個人的ニ凄ォーク気ニ入ッテル一枚デス!!!!」“サンちゃん”の舌は左側。「皿回しパーティ野郎」の異名をとるDJ担当。◇Kamikaze Boy「見タ目デオ腹イッパイトカ言ワズニ、チョット囓ッテミナサイヨ」ワイルドな風貌の“ボイさん”はベース担当でテキーラが好物。◇Jean‐Ken Johnny「狼ガ載ッテテ雑誌ヲ間違エタト思ッタ貴方、安心シテ下サイananデスヨ」唯一おしゃべりできる“ジャンケン”はギターとラップ&ボーカル担当。※『anan』2016年2月17日号より。写真・森滝 進(まきうらオフィス)インタビュー、文・北條尚子
2016年02月11日黒猫チェルシーが、久々に新曲『グッバイ』をリリースする。イントロのギターと渡辺さんの最初の歌い出しから、グッと心掴む名曲の予感。彼ららしいアップテンポのR&Rを予想していた人は、見事に裏切られるような、メロディアスで切ないスローなロックバラードだ。「新曲を出さなくては、という焦りはなかったんですよね。いちばん考えたのは、ライブのためにどんな曲があれば盛り上がるか、楽しめるかということでした。激しい曲はたくさんあるから、緩急をつけられる曲がいいと、前からみんなで話しつつも、なかなか1曲で勝負できるバラードがなかったんです」(渡辺)そんな思いで曲作りを始め、澤さんが作曲したのが『グッバイ』。デモを聴いた瞬間「この曲で勝負しよう」と全員の意見が一致したそう。「昨年、レコード会社を移籍したのですが、その一発目に出す曲だから、ロックバンドとしてど真ん中で勝負したい。そういう意識で曲を作りました。今までは楽器を入れて広がりを求めたり、新しい試みに常にチャレンジしたり、という意識でやってきましたが、今は4人で勝負する、それが最優先でした」(澤)「最初にデモを聴いたとき、めっちゃいい曲だなぁと、即座に感じました。だからドラムはこう叩こうと考える必要もないぐらいナチュラルにプレイできましたね」(岡本)「僕は去年、ドラマの中のバンド“little voice”として出演したときの感じを思い出しました。渡辺が書いた曲を気負いなく演奏でき、この『グッバイ』に繋がったなぁ、と感じます」(宮田)ドラマとは、NHK朝ドラの『まれ』。劇中歌の『涙のふたり/また会おう―バンドver―』の2曲は、彼らが最も大事にしている部分がてらいなく伝わる名曲だった。「“little voice”は、今後やろうとしてたことを試すきっかけになりました。最初の脚本ではデスメタルのバンドやったんですよ。それで『僕らはデスできません』と言って(笑)。ちゃんと歌詞を届けたいので、フォーキーなバンドになったんです。『グッバイ』も伝えたいことはたくさんあったけど、余計なものを省き、簡単な言葉だけどすごく大事で、スーッと入ってくるような歌詞にしました」(渡辺)CDリリースはしばらく途切れつつも、ドラマ出演の他、渡辺さんは俳優だけでなく映画監督にもチャレンジ。岡本さんも映画出演と他バンドのサポート、澤さんはPUFFYのツアーのサポートギタリスト、そして宮田さんは大学院のマスターコースに通いながら漆作家としても活動。4人のバンド外の経験が、いい起爆剤となって、バンドがますます活性化している印象だ。「堂々とロックバンドとしてやっていく意識が強くなったと思う。いい感じに転がり始めているので、今、すごく気持ちがいいんです」(澤)◇くろねこチェルシー左から、宮田岳(B)、渡辺大知(V)、澤竜次(G)、岡本啓佑( D )。2月末より全国7都市を回るツアーを行う。東名阪の会場はワンマンライブを開催。◇New Single『グッバイ』【初回生産限定盤CD+DVD】¥1,800特典DVDはタイトル曲MVと「little voice presents 黒猫といく類まれなツアー」ダイジェスト映像。【通常盤CD】¥1,200(SONY MUSIC RECORDS)※『anan』2016年2月3日号より。写真・土佐麻理子文・北條尚子
2016年01月27日昨年レコード大賞新人賞を受賞し、最高の1年目だったlol。グループ名に込めた「人を笑顔にして感動させる」使命を持つ5人は、2年目に突入してすぐに、新曲をリリース。「デビュー曲の『fire!』と新曲の『ladi dadi』は、特にEDM全開でメンバー全員が好きな曲です。パフォーマンスに大きな影響を与えてくれました」(佐藤)「この曲を聴いていつも踊っているんです。MVのダンスやダンスプラクティスビデオというダンスの構成が全てわかる映像が2曲ともあるので、ぜひチェックしてもらいたいですね!」(hibiki)lolの楽曲はもはやJ-POPの領域を越え、世界のメインストリームに挑めるほどクオリティの高いダンスミュージック。セカンドシングル『ladi dadi』では、その魅力を直球で楽しめるはず。「すごくかっこいい曲です。歌詞の意味は少し複雑なものの、共感できるところがあるので、そこが特に気に入っています」(moca)原曲ができると、まずは歌を練習し、パート分けののち本番レコーディング。音源が完成したら、ダンスの振り付けを全員で決めていく。「みんな仲間なのでライバル心はないけど、ここ私が歌いたいと思っていたパートを取られると、ちょっと悔しいです(笑)」(honoka)「honokaは負けん気が強いからね(笑)。僕はダンスを始めたのが遅かったので、ついていけるよう必死で練習しました。メンバーに『最近、うまくなったねー』と褒められると嬉しくなりますね」(佐藤)5人の中でも、佐藤さんとhonokaさんがお笑い担当のよう。今後は二人の絶妙なトークも注目されそう。そして自身の曲以外でも、globeの20周年カバーアルバムへの参加が話題に。名曲『SWEETPAIN』をカバーした。「本家が偉大すぎるので、そのギャップを少しでも埋める努力をしました。僕らなりの『SWEET PAIN』が作れたと思うので、聴いていただけると嬉しいです」(小見山)ますます熱い5人に、ぜひ注目!◇エルオーエル左から、佐藤友祐、honoka、hibiki、小見山直人、moca。オーディションを勝ち抜き、結成された5人組。昨年8月、シングル『fire!』でデビュー。◇2nd Single『ladi dadi(ラディダディ)』日本テレビ系『バズリズム』11月期オープニングテーマでもある。【CD+DVD】¥1,800DVDにはタイトル曲のMVを収録している。【CDシングル】¥1,000(avex)。※『anan』2016年1月27日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子
2016年01月23日大人気の7人組パフォーマンスグループ・AAAとして活動する一方で、ソロとしての活動も行うSKY-HI。その卓越したラップのスキルと、作詞・作曲を全て手がけるという才能に注目が高まっているアーティストだ。「10年くらい前からラッパーとして、こっそり活動していたんです。メンバーやスタッフにも内緒でやっていたので、みんな“よくクラブに行って踊っているな”と感じてはいつつも、まさか出演しているとは思っていなかったはず(笑)。紅白歌合戦に出演した後に、クラブの年越しライブに出演したこともありましたね」しかしAAAが人気者になると、クラブの観客やHIP HOPファンの、彼を見る目が変わっていく。「意地悪されたり揶揄されたり、いろいろありましたけど、黙らせるには同世代のラッパーの中でNo.1にならなければならなかった。そういう意地と音楽への愛情を持ってきちんとやってきたら、自ずと応援してくれる人が増えていったんです」そんな彼の最新シングルが『アイリスライト』。「本当の意味での愛とは何か」について、力強い言葉で綴ったバラードだ。そしてシングルとは対照的に「ガチのHIP HOPファンも面白いと思ってくれる」と自信を持って作ったのがセカンドアルバム『カタルシス』。「『アイリスライト』はシングルでは初のバラードですが、この時代に必要な歌が作りたくて書いたので、必ずそう感じてもらえると思います。一方『カタルシス』は、ずっとサウンドの柱にしてきたオーセンティックなHIP HOPとディスコポップ、未来型のべースミュージックの3つを、明確に示せたアルバムになりました。ディズニーの映画のように、楽しくて華やかなイメージでアルバムの物語が展開しますが、歌詞に伝えたいメッセージを必ず込めているので、受け取ってほしいな」磨き抜かれたラップのスキルで、新たなスタイルのHIP HOPエンターテイナーになったSKY-HI。今年は面白い存在になるはずだ。「ジャンルがどうとか、メジャーだアングラシーンだとか、分けられるのがすごく嫌いなんですよね。制作でいちばん大事にしたのは、オレのCDを選んでくれる人や、これからファンになってくれる人のための作品にすること。自分を支えてくれるのは、AAAでもHIP HOPファンでもなく、“オレのファン”なので、その期待に応えるべく、責任を持ってやっていくだけですね」◇スカイ・ハイ’86年12月12日生まれ。AAAの活動と並行して、ソロワークを継続し、2013年に『愛ブルーム/RULE』でソロデビュー。2月14日より全国7大都市を回る初のホールツアーを行う。◇5th single『アイリスライト』シングル初のバラード。1/13発売。【CD+DVD 1】¥1,800【CD + DVD 2】¥1,800【CDシングル】¥1,000◇2nd album『カタルシス』。1/20発売。【CD+DVD <LIVE映像盤>】昨年のZEPP NAGOYA公演を収録したDVD付き。¥4,500【CD+DVD<Music Video盤>】7曲のMVを収録したDVD付き。¥3,700【通常盤CD】¥3,000(avex)※『anan』2016年1月20日号より。写真・内山めぐみ 文・北條尚子
2016年01月19日昨年まで活動の場をインディーズに移し、一人で音楽制作をしていたスガシカオさんが再びメジャーシーンに復帰。6年ぶりにアルバム『THE LAST』をリリースする。様々な経験や新しい仲間との出会いを糧に完成した最新作は、自分の音楽ともう一度純粋に向き合った“むき出しのスガ シカオ”の存在感に圧倒されるものになった。――アンアンに出ていただくのは、かなり久しぶりですね。スガ:ですよね。’11年から雑誌にはほとんど出ていなかったから、スガシカオはお休みしていると思われていたんじゃないかな。インディーズに戻り、全部一人でやり始めて、日々の仕事をこなすことに精いっぱい。事務的なことも…たとえば、今日みたいにアンアンのインタビューを受けるとしたら、依頼のメールに返事するとか、場所や時間を決めるとか、ギャラをどうするとか…とにかく全部やらなくちゃいけなかった。法務局にも毎日のように通っていたんですよ(笑)。その間もライブを企画したり、シングルを何曲か発売したんだけど、アルバムを作る気持ちにならなくて逃げていたんです。――それはどうしてですか?スガ:次に出すアルバムは自分の集大成的な作品になる、とファンに宣言していたので、それほどのものを作るのが怖くてできなくて…。でも「アストライド」という曲ができ、この曲の世界観を囲むようなアルバムを作りたい、と思いました。この曲の原案みたいなものは10年前からあったんだけど、何度トライしても歌えなくてね。思うように歌えるまで10年かかった。――え、10年も!スガ:メロディでもないし、HIPHOPでもないし、字余りで歌うところにグルーヴ感がある独特の曲なんです。10年かけて、これ!と思うものがようやく日本語で表現できたと思う。自分はこんなふうにいきたい、という気持ちや感覚を、そのまま歌詞にしています。さらに、プロデューサーを小林武史さんにお願いすることになってやっと、曲作りに集中するぞ、と前向きな気持ちになれましたね。――このアルバムを、自ら“J‐POPになる前のスガ シカオ”と紹介されています。でも、1度目のメジャーの際にリリースしている『あまい果実』や『19才』などは、“J‐POP”を感じさせるものではない気がするんですが。スガ:『19才』のMVは、地上波放送禁止だからね(笑)。そうはいってもやっぱり自分はバランスをとる人間なので、J‐POP的な要素が強くなった時期もありました。だから歌番組にアイドルと一緒に出ても“わ!この人、違和感ある”みたいなことはなかったと思うんです。『午後のパレード』とか『コノユビトマレ』なんかは世の中にドンと出しても放送禁止にはならないし(笑)。でも『THELAST』は、どの曲を歌っても違和感があると思う。この人、大丈夫?みたいな、ね。そこがたぶんJ‐POP以前ということじゃないかな。◇1997年デビュー。翌年SMAPの『夜空ノムコウ』の作詞を手がけて注目の存在に。これまでリリースしたオリジナルアルバムは全てTOP10入りの記録を持つ。’11年に独立し、インディーズで音楽活動を継続。昨年5月にメジャー復帰作となるシングル『アストライド/LIFE』をリリース。シャツ¥22,000(n(n)BY NUMBER(N)INE TEL:03・6416・3503)その他はスタイリスト私物◇6年ぶりのオリジナルアルバム『THE LAST』(SPEEDSTAR RECORD)は1月20日リリース。小林武史との共同プロデュースで、自己の集大成となるアルバムを完成させた。スペシャルDVDと“ガス カシオ”ぬいぐるみ付きの完全生産限定盤(¥8,000)、スペシャルCD付きの初回限定盤(¥3,800)と通常盤(¥3,000)の3形態で発売される。※『anan』2016年1月20日号より。写真・森滝 進(まきうらオフィス)スタイリスト・大村鉄也インタビュー、文・北條尚子
2016年01月13日「indigo la End」「ゲスの極み乙女。」という今もっとも熱い視線を注がれる2バンドのフロントマンを務めるのが、川谷絵音さん。両バンドの全ての楽曲を手がけ、ツアーやプロモーション活動、レギュラーのラジオ、さらに他のアーティストへの楽曲提供などのソロワークも休みなしに行う、27歳。そんな当代一の仕事人間の川谷さんですが、実は意外な過去が…。更に今後の目標についても伺いました。* **――昔、お笑い芸人を志したほどだそうですが、お笑いは?川谷:ライブは行かなくなりましたが、好きな芸人さんのネタは、YouTubeでけっこうチェックしています。――笑い飯の大ファンだとか。川谷:大好きです。とにかく最初見たときに、ダブルボケというスタイルが衝撃的で、大ファンになりました。今も伝説の「奈良県立歴史民俗博物館」というネタがあるんですが、人生であんなに腹を抱えて笑ったことはなかった。それを見て、自分もこれだ!と思ったんですよね。僕は音楽よりもお笑いがいちばん好きかもしれない、やってみようって。お笑い養成所の入学金を払うためにバイトしようと思っていた矢先、バンドに誘われたので、諦めました。今は音楽のほうを選んで良かったと思います(笑)。――あはは、そう思います。川谷:今は音楽で名前を知られるようになったので、バンドを使ってお笑いへの踏み込みもできるかな、って、少しずつ始めているところです。昨年10月からゲスのラジオ番組でコントをやっているんですね。台本は放送作家の方に書いてもらっているんですが、4人でコントのコーナーをやっています。――へえ。それは楽しそうです。そういうこともできるゲスは、自由度の高いグループですね。川谷:はい、そう思います。僕たち4人はキャラがハッキリしているので、音楽以外の方向にもどんどんシフトできるバンド、つまり音楽だけじゃないエンタメ集団になれればいいな、とずっと考えていたんですよね。もともと僕が好きだったお笑いにも繋がるし、このメンバーなら、いろんな可能性があるんじゃないかって。実はこのあとも、ラジオ番組のコント練習の予定が入っているんです(笑)。◇かわたに・えのん1988年生まれ、長崎県出身。ゲスの極み乙女。とindigo la Endの両バンドでボーカル、ギターを担当し、全ての楽曲を手がける。indigo la Endのインディーズ盤CDデビューを契機に大学院を退学し、プロに。その後結成したゲスの極み乙女。のミニアルバム『みんなノーマル』で’14年メジャーデビュー。◇ゲスの極み乙女。の2nd album『両成敗』が1月13日にリリース。3月30・31日は「ゲス乙女大集会~武道館編~」を日本武道館で開催。なおアルバムにはゲーム『消滅都市』のテーマ曲『煙る』を収録。またindigo la Endも同ゲームの曲『心雨』を2月3日にシングルリリースする。※『anan』2016年1月13日号より。写真・森滝 進(まきうらオフィス)インタビュー、文・北條尚子
2016年01月06日クリスタル・ケイが3年ぶりのアルバム『Shine』をリリース。昨年末までNYに住み、音楽活動を行っていたが、再び日本のシーンに戻ってきた。このニューアルバムには彼女の2年間のNYでの様々な経験と成長が大きく反映されている。「幼い頃からアメリカで活躍するのが夢で、いまもそれは変わらない。でもたった2年くらいでデビューできるような世界じゃないし、そうはいっても何も形にしないで帰国して“失敗だね”と言われるんじゃないかというプレッシャーも感じたし。滞在中に60曲も曲を書いていたので、帰国を前にして、こんなに頑張っていたのに…という引き裂かれるような思いや葛藤もありました」何かやらなくては!という気持ちでケイさんが行動したのは自主ライブの実行。自ら会場を探し、ミュージシャンを頼んで開催を決めた。「とにかくパフォーマンスしたかった。お客さんが来てくれるかどうか全く分からなかったけど、インスタで告知したら、速攻で60枚がソールドアウトになり、お店側から翌日もやって、とお願いされたの(笑)。私の人生で最高のライブでした。丸裸になった気分で“聴いて下さい!”みたいなパフォーマンスができて、すごく自信がついたし、NYで過ごした意味を感じました」帰国後はEXILEを擁するLDHにマネージメントを移し、三代目J Soul BrothersのドームツアーにてPKCZ(R)のゲストボーカリストを務めるなど、以前にはない活動を始める。「ネクストステージに行きたい」という本人の希望通り、新たなスタートを切った。「すごく気持ちが切り替えられたというか、 NYにいた頃のようなネガティブさが消え、ポジティブな気持ちになれた。それが新しいアルバムにすごく入っていると感じます。私も29歳なので、普通の女性たちと同じように将来のキャリアに悩んだり、挫折したり、ステップアップしたいのにどうしたらいいか分からない、というような壁に何度もぶつかってきました。きっと同じような道を歩んでいる人が大勢いるはずと感じていたので、アルバムもポジティブなものにしたいと思ったんです」洋楽的なアプローチのダンスアルバムだった前作『VIVID』とは好対照に、『Shine』はサウンドもバラエティに富み、心に深く響く歌詞が聞こえてくる作品。このアルバムのために実現した三代目J Soul Brothersの今市隆二とのデュエット曲など、心打たれるナンバーがずらりと並ぶ。「このアルバムで、“自分のためではなく、誰かのために歌いたい”と、気持ちが切り替わった気がします。いまはどれだけ伝えられるかがいちばん大事だし、私の歌で元気を出してもらいたい。歌で支える、というのかな、そういう役割に気づいたので、聴いてくれた人に元気を出して、自信をつけて、輝いてほしい。Shine!輝け!というメッセージを、自分自身も含めて送っているアルバムになりました」◇クリスタル・ケイメロウなバラードからEDMまで天性の歌力で聴かせる。久々のツアーは、’16年2/12大阪UMEDA CLUB QUATTRO、2/19名古屋Electric Lady Land、2/26 赤坂BLITZ。◇11th album『Shine』【初回生産限定盤CD+DVD】¥4,104「君がいたから」など今年リリースしたシングルのMVとライブ映像8曲で構成したDVD付き。【通常盤CD】¥3,240*共に税込み(Virgin Music/UNIVERSAL MUSIC)※『anan』2015年12月30日‐2016年1月6日合併号より。写真・佐山順丸スタイリスト・入江陽子ヘア&メイク・下竹絢子文・北條尚子
2016年01月04日今年5月にデビュー30周年を迎えた渡辺美里さん。年末まで47都道府県を全て回るツアーを行うなど精力的にメモリアルイヤーを駆け抜け、さらに12月16日には、デビュー作の『eyes』のリマスタリング盤という特別な一枚をリリースする。「18歳の時に出した作品が、こんな素晴らしい形で再びリリースできて本当に嬉しいですね。私の音楽活動の軸になったこの1stアルバムがあったからこそ、30年頑張ってこられた。そういう作品です」‘85年に発売された『eyes』。前髪を切っている美里さんの意志の強そうな表情が印象的なカバー写真。このアルバムに楽曲を提供したのが小室哲哉、大江千里、岡村靖幸など驚くほどの豪華なメンバー。ただ当時は彼らも若く、まだ無名だった。「レーベルメイトとして出会った彼らは、私を含めて自分自身の作品を世に発表したくてうずうずしていたころ。そんな時代に巡り会い、その後大活躍する彼らの才能が芽吹いてくる時期の勢いを、このアルバムからいまも感じます。本当にいい出会いをさせてもらいました。現在まで音楽を続けているからこそ、みんな立派になったよねぇと、30周年のいまだからこそ言えることだと思いますね」デビューの翌年、『My Revolution』が大ヒットし、同年より夏の西武スタジアム公演がスタート。そして20年連続公演という前人未到の記録を打ち立てた初の女性アーティスト。そして30年間でリリースしたオリジナルアルバムは、30周年記念の最新作『オーディナリー・ライフ』で19作を数える。このアルバムも、かつて名曲を一緒に作った仲間から、初共演となるYO‐KINGやCaravanなど素晴らしいメンバーが結集。それぞれが思う渡辺さんのイメージが提供曲に表れていて楽しい。「サンボマスターの山口(隆)さんには“涙を信じない女”と思われているみたい(笑)。でもすごいインパクトあるフレーズで、すぐ歌いたい!と思いました。自分では絶対書かない歌詞ですしね。そういうみんなの様々な渡辺美里像も含めて、すごく楽しいアルバム制作でした」この『オーディナリー・ライフ』は渡辺さんにとって、30年目の『eyes』といえるような作品なのだとか。30年の時間の隔たりはあっても、この2作の距離はとても近いように感じる。「アルバムタイトルは“普通の日々”とか“ありふれた日々”という意味ですが、私にはごく当たり前の、幸せな日々があったから、特別な時間が輝く、と感じています。常にスタジアムやアリーナのステージに立っているイメージがあるかもしれないけど、普通の日々があるからこそ、大きなステージでも輝けるというのかな。おいしいごはんを作ったり、洗濯物を干しながら金木犀の香りで秋の深まりに気づいたり。そういう何気ない時間の積み重ねがあって、30年後のいまがある、そんな思いをかみしめています」◇わたなべ・みさと1985年デビュー、翌年『My Revolution』が大ヒットし、一躍時代を代表するアーティストに。来年1月9日「オーディナリー・ライフ祭り」を横浜アリーナで開催予定。◇『eyes-30th Anniversary Edition-』【完全生産限定盤CD+LP】¥6,500NYのスタジオでリマスタリングした音源で再発売されるデビューアルバム。アナログ盤付き2枚組。【通常盤CD】¥3,000*共に税込み(EPIC RECORDS)※『anan』2015年12月25日号より。写真・佐山順丸文・北條尚子
2015年12月21日この夏『24時間テレビ』のマラソンランナーに選ばれ、見事に完走したDAIGOがボーカルを務めるBREAKERZ。バンド活動休止からの再始動と、DAIGOさんの人生を賭けた挑戦が重なり、バンドとしても大きく飛躍した‘15年だった。「100 kmマラソンはなかなかチャレンジできることではないし、やって良かったという気持ちはあります。この先、どんな大変なことがあっても乗り切れると思うし、人生で最高に限界を超えたあの経験のおかげで、今後は何でも前向きに頑張れると思えるんですよね」(DAIGO)再始動第2弾シングル『YAIBA』は、人気アニメのオープニングテーマにもなっている。この曲の歌詞にも挑戦者・DAIGOさんの熱い思いが反映されている。「100 km走ることは自分への挑戦、自分との闘いです。人は必ず戦わなきゃならないときがあるし、その限界を超えたときに人としてレベルアップできるし、新しい世界が見えてくる。一人でできない場合は支えてくれる人たちに助けられ、普段出せないパワーが出せる、そんなメッセージをテーマに、歌詞を書きました。それは勉強でも仕事でも共通することだと思います」(DAIGO)まさにあの100kmマラソン成功あっての特別な曲が誕生。「戦いがテーマのアニメ作品の曲だったので、とにかく鋭い楽曲を作ろうと思いました。ツインギターがガッと攻めてくるサウンドになったので、仮タイトルを『YAIBA』と名付けたら、DAIGOくんがぴったりの歌詞をつけて世界観をまとめてくれたので、そのままタイトルになりました」(AKIHIDE)一昨年の3月からバンド活動を休止し、それぞれがソロ活動をしていたBREAKERZ。その経験はバンドにとって変化を促したよう。「一緒に6年活動してきて、常に制作、リリース、ツアーと続いていて、例えが変かもしれないけど、お腹がいっぱいなのにもう次のごはん…みたいな状況になっていました。でもソロを経てリフレッシュでき、自分がまっさらな状態になって、またバンドと向き合うことができた。またこの3人でやれる嬉しさと喜びを感じています」(SHINPEI)「個人個人がソロでやりたいことをやり遂げ、お互いの刺激にもなり、気分転換にもなり、何か見えたものもあったと思う。客観的にBREAKERZのことを考えることができたよね。クルマだとしたらピットインして休ませながら、こういうカラーリングもいいねとか、バンドを外から見ることができたのが本当にデカくて。その結果、シングル『WEGO』とアルバム『0-ZERO-』が生まれ、この『YAIBA』に繋がったと思います」(DAIGO)テクニックに長けた2人の凄腕ギタリストと、バラエティでも大活躍するカッコいいボーカリストから成るロックバンド。他には見当たらない唯一無二の存在だ。「僕がテレビに出たことで、BREAKERZを知ってくれた方も大勢います。音楽が僕の基盤ということはこの先も変わらないので、もっと聴いてくれる人が広がっていくと嬉しいかな」(DAIGO)◇ブレイカーズ左からSHINPEI(G)、DAIGO(V)、AKIHIDE(G)。メンバーのソロ活動を経て今年再始動。5月に第1弾シングル『WE GO』、7月にアルバム『0-ZERO-』をリリース。◇16th Single『YAIBA』【初回限定盤CD+DVD】¥1,700【初回限定盤BCD+スペシャルフォトブック】¥1,600【通常盤CD】¥1,000TVアニメ『カードファイト!!ヴァンガードG ギアースクライシス編』オープニングテーマ。(ZAIN RECORDS)※『anan』2015年12月16日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・高見佳明ヘア&メイク・小田桐由加里(unvicious)文・北條尚子
2015年12月15日インディーズ界きっての人気バンドだったきのこ帝国が、メジャー第一弾アルバムをリリース。バンドを代表して、全ての楽曲を手がける美貌のボーカリスト・佐藤千亜妃さんに、不思議な名前の新作『猫とアレルギー』についてお聞きしました。「タイトル曲の『猫と…』は近所を散歩していて子猫たちを見かけたときに浮かんだ曲です。実は私は猫が大好きなのに、猫アレルギー。好きなのに触れない、近づけないというその切なさを人間関係に当てはめて描きたいと思いました。アルバムも、この曲の持つ世界観を中心に1年かけて作っていきました」冷たい手触りのイノセントな歌声ではあるけれど、その内側に熱いものを感じる佐藤さんの歌声。タイトル曲から始まる12曲それぞれが持つ物語に、共感というより、知らず知らずに引き込まれる感じを味わう。「このアルバムは過去の作品以上に、メロディの強さを殺さないようなバンドのアレンジを意識しながら作っていきました。歌声が物語をかき立てる、と感じてもらえるのがいちばん嬉しいです」大学時代に女性2人、男性2人で結成したバンドは今年で8年目。当初は佐藤さんが作詞作曲、アレンジからギターのリフまで決めていたが、今回は4人で自由に作り上げた。「特殊なバンドなのかもしれません。例えばドラムなら私の歌にひっついてくれるように叩いてくれます。その相性が合わないと聴いていても気持ち悪いものになる。私の歌に合わせてくれる歌心のある素晴らしいメンバーです」そんな4人が創り出した最新作『猫とアレルギー』は、「忘れられない日々を思い起こさせるアルバム」と佐藤さんは言う。「ずっと好きな人や、失っても忘れられない人、忘れられない日々。そんなあれこれを思い出す場面が多い作品になりました。雨の日におうちで聴くとか、寝る前にじっくり落ち着いて聴いてくれるといいな、って。聴く人がそれぞれの世界観や価値観に身を委ねて、音から景色が浮かぶように聴いてくれたら、嬉しく思いますね」それにしてもバンド名“きのこ帝国”には若干の後悔があるそう。「ひどい名前ですよね、音とのギャップがありすぎて(笑)。尊敬するバンド“ゆらゆら帝国”から拝借して、ライブに出るために急きょ“きのこ”を付けたまま、8年経ってしまった…。名前では少々損していますが、音で挽回できると思っています」◇きのこていこくメンバーは写真の佐藤千亜妃(V&G)ほか、あーちゃん(G)、谷口滋昭(B)、西村“コン”(D)。大学時代に結成され、今年4月にメジャーデビュー。来年3月から9都市を回るワンマンツアーを行う。◇Major 1st Album『猫とアレルギー』¥2,800メジャーデビュー曲「桜が咲く前に」など12曲収録。佐藤さんの描く、曲それぞれが持つストーリーに心が共鳴するはず。(EMI Records/UNIVERSAL MUSIC)※『anan』2015年12月9日号より。写真・内山めぐみスタイリスト・森山優花(S‐14)文・北條尚子
2015年12月03日みんなの日常から切り取ったようなリアルな“LOVE”を歌い続けてきた西野カナが、ベストアルバム『Secret Collection』をリリース。それぞれに“RED”と“GREEN”という2色のタイトルが付いた2枚には、シングルのカップリング曲やアルバム収録曲に加え、新曲も収録している。「一昨年出したベスト『Love Collection~pink~/~mint~』のピンクとミントよりも濃く、深く、掘り下げたもの、という気持ちをこめ、赤と緑にしました。カップリング曲は、あまり気負わず、楽な気持ちで好きに作れるので、お気に入りの曲が多いんです。ライブで披露してファンの皆さんに浸透した曲もあるので、ステージの雰囲気を思い出してもらえるセットリストのような曲順にしました」ライブで映えるというシングルのカップリング曲やアルバムオリジナル曲は、クラブテイストな曲や英語詞を多用した曲など通好みのエッジーなナンバーが多い。そんな彼女のアーティスティックな面にスポットライトを当てた“知られざる西野カナ裏ベストアルバム”といえるスペシャルな作品になった。「個人的な趣味で作ってきた音楽たちや、デビュー以来、そのときどきでハマってきた音楽、ライブの思い出がある曲ばかりです。私の“裏”を知らなかった人にはこれを聴いてびっくりしてほしい(笑)。以前、ファン投票で1位になった『Rainbow』、2位だった『このままで』も、アンコールで歌うと必ずみんなと大合唱になる『Together』も、3曲ともシングルじゃないんです。そういう曲を愛してくれる人がたくさんいて、すごく幸せ」さらに放送中のドラマ『掟上今日子の備忘録』主題歌のダンサブルなナンバー「No.1」はGREEN盤に収録。それぞれのアルバムに2曲の最新曲が入っているのも楽しみ。「この曲はドラマに寄り添うのではなく、いままでの私の思う恋愛を正直に書いたものになりました。ちょっと大人になったぶん、恋愛に臆病になったり、なかなか思うように行動できなくなったりする自分自身の気持ちを、そのまま歌いました」曲の作り置きはしない、作りごとで歌詞は書かない、自分の想いをそのまま言葉に、という姿勢で曲を作ってきた西野さん。そうやって生まれたリアルな歌が、多くの女性たちの宝物になっていくのだろう。「そこを目指して曲を作っているので、一人でも多くの人の気持ちと重なってほしい。とくに悲しい経験をして書いた悲しい歌に共感してもらえたら、私の悲しい気持ちも救われるような気がします」◇にしの・かな 2008年デビュー。昨年の『Darling』、今年の『トリセツ』は社会現象になるほどの大ヒットに。今年のアリーナツアー「with LOVE tour」では20万人を動員した。◇Another Side Of Best Album 『Secret Collection~RED~』【初回限定盤CD+DVD】¥3,990 「Kanayan X’mas Special」のダイジェストDVDとフォトブック付き。【通常盤CD】¥3,100 *すべて税込み(SME Records)◇Another Side Of Best Album 『Secret Collection ~GREEN~』【初回限定盤CD+DVD】¥3,990 ドラマ『掟上今日子の備忘録』主題歌「No.1」収録。「Halloween Collection」のダイジェストDVDとフォトブック付き。【通常盤CD】¥3,100 *すべて税込み(SME Records)※『anan』2015年12月2日号より。写真・内山めぐみスタイリスト・松島 茜ヘア&メイク・大西トモユキ(GROUNDCOVER)文・北條尚子
2015年11月25日兄弟ユニットから、兄・堀込高樹を中心とした6人編成のバンドとなったKIRINJI。新体制での活動歴も2年を超え、夏フェスや『ビルボードライブ東京』でライブを行うなど、積極的にバンド活動中。ソロワークが忙しいメンバーの中から、今回は4人の方に最新作『EXTRA 11』についてお聞きしました。「エクストラとは増刊号という意味なんです。このアルバムは昨年出した『11』の曲を新たなアレンジで『ビルボードライブ東京』で演奏した音源に、さらに音源を重ねて作り替えたもの。だからライブ盤でもないし、リミックス盤でもないし、僕も何と呼んだらいいか分からないんですけど(笑)」(堀込)スタジオ録音盤の『11』をライブ用にアレンジして、コンサート当日に録音したトラックを3割ぐらい残し、さらにリアレンジして新たにレコーディングしたトラックが7割も加わった音源になったそうで、曲は同じでもまるでニューアルバム。「一回ツアーをやると飽きてしまうので、他のことをやりたくなるんですよね。マイナーな曲がメジャーになったり、リズムが変わったり、けっこう大胆に変えている曲もあります。僕やコトリンゴさん、楠さんのボーカルパートも新たに歌入れし直しています」(堀込)「オリジナルではペダルスチールだったのがライブではバンジョーになり、今度はスチールパンに代わっている曲もあります。ツアーを通して、どこか違和感みたいなものがあったから、必然的に楽器も変わっていったんだろうね」(田村)「ちゃんと買って聴いてもらうには、オリジナルの『11』とは違う新しい面白みを感じてもらわないといけない。そこは妥協せずに作りました。洋楽には、ライブ盤を出した後に、改めてスタジオ録音盤を作るアーティストがたくさんいますけど、ライブ音源をさらにいじる人は聞いたことがないです(笑)。世界初のアルバム!と言えばアンアン読者にも伝わりやすいかな」(堀込)“いじる”は、専門用語的にはポストプロダクションと呼ぶとか。ツワ者ミュージシャンが集まったKIRINJIらしい大胆なポストプロダクションで、『11』の新しい世界の広がりを楽しませてくれる。もちろん兄弟時代からファンをうならせてきた温かな音の交わりや、どこか異国を旅しているような気分にさせる独特のサウンドは、このバンドにも引き継がれている。「ドラムはライブ音源を使ってもらったので、完成したときに聴き手として楽しめました。高樹君が僕らの演奏を素材として、ホームワークでコツコツと世界を広げてくれた感じが、すごく良かったなぁ」(楠)「ライブ音源は少ないけど、それでもライブ感や演奏場所の雰囲気は残っていると感じました。KIRINJIの音楽は、CDとライブでは全く違う楽しさがあるので、このアルバムがライブに来てくださるきっかけになると嬉しいです」(弓木)◇きりんじ 左から、楠均(D)、堀込高樹(V&G)、弓木英梨乃(G&Vi)、田村玄一(G)。さらに千ヶ崎学(B)、コトリンゴ(Key)が加わる。新バンドとして昨年、アルバム『11』をリリース。◇Album『EXTRA 11』¥3,240 前作『11』のライブ音源に、リアレンジや新規レコーディングの音を加え、全く新しいアルバムとして生まれ変わった。(Verve/UNIVERSAL MUSIC)※『anan』2015年12月2日号より。写真・内山めぐみ文・北條尚子
2015年11月25日3か月連続でシングルをリリースしたBase Ball Bear。その最終章としてアルバム『C2』が完成。デビュー作『C』を継いだタイトルだ。先行シングルから濃厚に漂っていた新しい音の構築+彼ららしいギターロックの醍醐味が、ハイブリッドに共存するアルバムだ。「ずっとやってきたギターロックの手法とか文法の中で料理を続けるのはもう楽しくない、と何となく思っていて…。自分たちのいるシーンを見ても、その文法から外れていないバンドばかりで、大きなフェスがまるで文化祭みたいに見えたんです。元々僕らはその中に入っていたつもりはないけど、ギターロックの範囲をもっと広く、押し広げたいという目標がありました」(小出)シングル第1弾『「それって、for誰?」part.1』ではSNS依存への違和感を正直に歌い、第2弾の『文化祭の夜』では、バンド史上初(?)ともいえるグルービーでファンキーなサウンドでファンを驚かせた。「曲を仕上げるときは、簡単なコード進行だけ聴いて4人で1から作っていくことが多いんですが、『文化祭…』はサビの部分だけ歌詞がついていて、これヤバい、面白いアルバムになるってその時点で感じました。4人で音を出してみたら関根さんのベースがすごく良くて、カッコいい曲になりましたね」(堀之内)「ベースは土台ってよく言われますが、今までは土台ではなく部品の一部という感覚でした。やっとこのアルバムで、聴いてくれる人たちにリズムの気持ち良さを提案できると思っています。バンドも私自身もすごく成長した気がします」(関根)「これだけグルービーなギターを弾けたのは、自分自身でもすごいことだと思います。疾走感だけのギターロックはつまらないし、かけ離れたことがやれて楽しかった」(湯浅)◇ベースボールベアー左から、湯浅将平(G)、小出祐介(V&G)、関根史織(B&Cho)、堀之内大介(D&Cho)。文化祭のために結成され’06年にデビュー。全25公演のツアー「三十一歳」開催中。◇6th Album『C2』【初回限定エクストリーム・エディション3CD】¥4,5002枚の特典CDは全12曲のインストゥルメンタル盤とデビューアルバム『C』のリマスター盤。【通常盤CD】¥3,000(EMI RECORDS/UNIVERSAL MUSIC)※『anan』2015 年11月25日号より。写真・土佐麻理子文・北條尚子
2015年11月24日エレファントカシマシを率いて26年。宮本浩次さんは一貫して真っすぐで純粋で熱い男の心情を、全身全霊で歌い続けてきたロックンローラーです。2012年、突然の耳の不調によりバンド活動を停止するという悲劇に見舞われましたが、見事に復活。そして、ついに今年、3年半ぶりのオリジナルアルバムアルバム『RAINBOW』が完成しました。さぞ、体のことを気にしていると思いきや、そうでもないようで……?宮本さんのプライベートに迫ります。* **宮本:うーん…。そうなんですけど、活動が元通りになったら、全然大事にしてないですね(笑)。ごはんも食べたほうがいいと思うんだけど、俺が食べないからメンバーも食べなくなる。それでみんなでどんどん痩せていくんですね。――最近のお楽しみは何ですか?宮本:ビールをね、けっこう飲むんですよ。元々あまり飲めないんです。ただ、ギターの石森君とよくファミレスに行くんですが、ファミレスだとなぜか3杯くらい飲めちゃうんですよ。石君は一滴も飲めないので、「なんとかサラダ」とか注文すると、店の人が「シェアサラダにしますか」と勧めるので「じゃあそれで」みたいな。2人でサラダをシェアしてね(笑)。ファミレスでビールを飲むって信じられないほど楽しいんですよ。そして旬のメニューがまたおいしい。どこそこ産の茄子とかね。それを頼むのが狙い目です。ああ、蕎麦屋で飲むビールもいいですね。――おお、蕎麦屋と宮本さん、似合いますね。宮本:贅沢な気持ちになりますね。すごく気に入っている手打ち蕎麦屋さんがあるんですが、店の人のこだわりがすごいんですよ。北海道産とか埼玉産の蕎麦だとか、うちの主人が作っている蕎麦ですよ、とかね。もう全然分かんないんだけど、高い意識で一生懸命やっているところにロマンがありますよね。そういう場所に行くと気持ちがいいんです。リラックスできますし、大人の気分になります。あと、いちばんリラックスするのは、やっぱりクルマですね。家に帰ってきて、散歩代わりに首都高を一周走るんです。音楽もかけずに、ひたすら走るだけですが。◇みやもと・ひろじ1966年6月12日生まれ。中3の時、同級生とバンド「エレファントカシマシ」を結成、1988年デビュー。テレビ出演などで見せる独特のポーズや会話のキュートさも人気。◇3年半ぶりのオリジナルアルバム『RAINBOW』(UNIVERSAL SIGMA)が11月18日に発売。11月19日より年末まで、4年半ぶりの全国ツアーがスタート。恒例の新春ライブは1月4・5日東京国際フォーラム ホールA、1月10・11日大阪フェスティバルホールで開催される。※『anan』2015年11月18日号より。写真・森滝 進(まきうらオフィス)インタビュー、文・北條尚子
2015年11月11日一昨年、惜しまれつつ解散したFUNKY MONKEY BABYSのリーダー、ファンキー加藤。昨年2月にソロデビューし、ファンモンの加藤からソロアーティストに。いま、その魅力をさらに増している。「いよいよ立ち止まれなくなったというか、ソロとして走り始めたので、なりふり構わず、ただ前を見て突っ走っています。今年は39か所・44公演をツアーで回り、出会いや再会がありました。一人になってもこんなに応援してくれるのかと感じ、それが新たな原動力になっています」加藤さん自身、ソロでやっていくことを宣言したものの、“3分の1”からのスタートには、実は不安がつきまとっていたと言う。「オレの性格もあるんですが、根がネガティブというか、一つ不安を解消しても、また次の不安が出てくるんです。ツアー中もファンモン解散の傷が癒えてない皆さんが、ソロの加藤を受け入れてくれるか、ずっとモヤモヤしていました。でもライブを観て、良かった、応援するよ、という声を聞き、大きな勇気をもらいました。今まで以上に真っすぐな応援歌を聴いてもらいたい、その気持ちに自信が持てました」ニューシングル『MUSIC MAGIC』は、彼についてきてくれるファンへの思いを、直球で書いた熱いナンバーだ。「ツアー前に、みんなに聴かせたくて作った曲です。お客さんが来てくれるかな、体力持つかなぁ…とか、いつものように心の中がモヤモヤしているとき、その不安を吐き出したくて、思いのたけをノートに書き出し、そのまま歌にしました。歌詞はパーソナルな内容ですが、目の前にいる人に伝えたい思いが、ギュッと込められている曲。ライブの各会場でも、すごく盛り上がりました」後日、この曲をシングルにしたい、とスタッフから請われ、驚くと同時に嬉しかったとか。カップリング曲「少年の声」も、加藤さんの内面に深く切り込んだ異色のナンバーだ。「過去の自分と向き合ってできた曲です。誰でも大なり小なり、悩み多き10代を過ごしていると思うけど、オレは高校3年間、暗黒だったんですよ。人生で最も大切な3年間なのに何も思い出がない。だから、その青春時代を今なお取り戻そうとしているのかもしれない。いま必死で頑張ることで、あの空白にピースを埋めている、そんな気がするんです。オレと同じような日々を送っている若い子たちが、この歌を聴いて、悲観することないぜ、未来はまだまだ可能性あるから、ってメッセージを感じ取ってくれたら嬉しいですね」そして加藤さんの新しいチャレンジも進行中。映画『サブイボマスク』の主役に抜擢されたのだ。役柄は人々に笑顔や希望を取り戻す“暑苦しいほどの熱血漢”だとか。「監督さんがオレの武道館のライブを観て、さらに熱いキャラに脚本を変えたそうです(笑)。俳優はやりたいことのひとつでしたが、まさか主演なんて…。でも引き受けた以上は、全力投球で臨みました。別の人生を疑似体験できる仕事というのかな、こんなに楽しくて刺激的なことはないと感じました。撮影は終わりましたが、嬉しいことに主題歌と挿入歌も任されたので、現場の風景や肌で感じたことを組み込みながら、自分らしい曲を書きたいです」◇ふぁんきー・かとう昨年2月『My VOICE』でソロデビュー。2日連続の武道館公演、全国ツアーも大成功を収めた。俳優として来年の初夏公開の映画『サブイボマスク』で初主演を果たした。◇4th Single『MUSIC MAGIC』【初回生産限定盤CD+DVD】¥1,667 カップリング曲は「つながるから」と「少年の声」。特典DVDはタイトル曲のMVやライブダイジェスト映像を収録。通常盤CD¥1,000(DREAMUSIC)※『anan』2015年11月11日号より。写真・土佐麻理子文・北條尚子
2015年11月10日清水翔太さんがニューシングル『花束のかわりにメロディーを』をリリースする。発売前から黒木メイサさん主演のドラマ『デザイナーベイビー』の主題歌として流れており、男の側から見た片思いの切なさに、共感する人が続出中のバラードだ。「モテないダメ男ならではの、ピュアな究極の愛を曲にしたいと思って、ツアー前に完成させた新曲です。僕自身モテなくて、追いかけて追いかけて、やっぱりダメ…みたいな恋愛がすごく多かった。そのコンプレックスをはねのけるのが音楽でした。僕の誇りでありプライドであり、いちばんの宝物を最後の手段としてプレゼントし、振り向いてもらうというシチュエーション、自分らしくていいかな、と思っています」“君を愛する為に僕は生まれてきたよ”と歌いあげる、渾身のラブバラード。「自分の正直な恋愛観をそのまま言葉にし、メロディをつけた曲です。ツアーではピアノ弾き語りでしたが、ドラマの主題歌に採用され、ぴったりのアレンジでトラックにしました」サスペンスタッチの物語とも呼応するように、今後のストーリーを盛り上げていくはずだ。また、今年の清水さんは2月にベスト盤『ALL SINGLES BEST』をリリース。そして先月、日本武道館と大阪城ホールという大舞台を含む全国ツアーを終えたばかり。「最終日の大阪城ホールでは『HOME』で感極まって、歌えなくなってしまって。やっぱりこのデビュー曲は仲間との別れとか、当時の様々な痛みから生まれた特別な曲。その場所に戻ってこられて、多くの方に迎えられて、10年分の様々なストーリーが一気にこみ上げてきたんですよね。ベスト盤とこのツアーで、僕の活動がいい意味でリセットされたので、またゼロからスタートし、成長していきたいですね」デビュー前、城の前で路上ライブをしていたころの原点に戻り、ファンへの感謝を込めた大阪城ホールは、凱旋と呼ぶのにふさわしい夜だった。そして現在は、来年のアルバムリリースに向けて、曲作りの真っ最中だとか。「僕は期間を決めると作れなくなる方なので、常に曲を作って溜めています。曲作りに関しては、昔と比べると、26歳のいまがいちばん洗練されている気がします。作りたいと思える曲を、作れるようになったというのかな。自分自身、ベスト盤以降、そこがいちばん変わった気がします。このシングルは、かなりJ―POP寄りの作品になったので、アルバムの方向性は、R&Bテイストがもっと際立った、DOPEなものになるんじゃないかな」最先端のR&Bテイストを、カッコ良く取り入れたDOPEなトラックを作るにせよ、彼が曲作りで最も大事にしていることは、昔から一貫して変わらない。「共感ですね。それっぽい言葉を並べることは誰でもできるけど。多くの人が、どれだけ共感してくれるか、がいちばん重要。オリジナリティは譲らず、その上で共感してもらいたい。誰かに対して発信する以上、そこは絶対に大事にしています」◇しみず・しょうた 2008年、19歳の時シングル『HOME』でデビュー。ベスト盤『ALL SINGLES BEST』をリリースし、9月まで全国ツアーを行い、各地で大きな感動を呼んだ。◇『花束のかわりにメロディーを』【初回生産限定盤CD+DVD】¥1,700 NHKドラマ10『デザイナーベイビー』主題歌。DVDには同曲のMVを収録。【通常盤CD】¥1,300(Sony Music Records)10月28日発売。※『anan』2015年10月28日号より。写真・土佐麻理子スタイリスト・戸倉祥仁文・北條尚子
2015年10月23日斉藤和義が2年ぶりにニューアルバム『風の果てまで』をリリースする。キャリア初のLAレコーディングを敢行し、気心の知れた在米のミュージシャンたちと共に、リラックスしたハウススタジオで、素晴らしいアルバムを作り上げた。「LAといっても東京でいうなら、阿佐ヶ谷みたいな場所に滞在していたので、あんまりカリフォルニアに行った感はないんです。ビーチに行ったのも最終日だったし(笑)。ドラムのチャーリー・ドレイトンとは10数年来の友人ですが、昨年のツアーに参加してくれて、その感触が良かったので、彼と一緒にアルバムを作りたいと思いました。チャーリーは日本語分かるんじゃないの、と思うほど歌いやすいドラムを叩いてくれました。彼が連れてきた他のミュージシャンも素晴らしかったですね」収録曲は現在ヒット中の「攻めていこーぜ!」や大人の女の哀しい本音?を歌う新曲「シンデレラ」など、ぐいぐい来る名曲ぞろい。「『シンデレラ』の女性像は、30代になったら合コンに誘われなくなった、とかそのあたりの年齢ですね。楽しいことばっかりじゃないよ、と(笑)。女性目線の曲は、自分の理想の女性像として書いています」デビューから20年以上経った現在も、ロングランツアーを行うなど、“攻め”の姿勢を崩さない斉藤さん。そして彼の音楽には彼しか作れない、歌えない独特のムードがある。「最近は曲を作るというより、歌を書こう、という意識でやっています。20年以上やっていると、自分のクセや、なじみのコード進行がどうしても出てきてしまう。それを無理に拒絶するのもな、と考えていました。同世代の友人と飲んでいるとき、真心ブラザーズのYO‐KINGが、『オレは手グセ上等!でやってるよ』と言っていて、救われました。普段は下ネタか、肩が痛いとか体の話題しか出ないんだけど(笑)。たとえ昔使ったコード進行でも、自分にとって新しい、というものが入っていればOK、という感じですね」11月からは、半年に及ぶ全都道府県を巡るツアーがスタートする。「旅をしながら回るというのは、演奏家のいちばんベーシックな姿だし、ライブをしているときが、いちばん幸せです。CDはできたけど、それを演奏すると、また曲が育っていく。それを見届けて初めて、アルバムが完成する、と思うんですよね」◇さいとう・かずよし 1993年デビュー。『歩いて帰ろう』や『やさしくなりたい』など多くのヒットを放つ。11月から来年5月まで全都道府県を回る長期ツアーがスタート。◇18th Album『風の果てまで』【初回限定盤A(2CD+DVD)】¥4,400 DVDには最新曲「攻めていこーぜ!」まで全15曲のMVを収録。【初回限定盤B(2CD)】¥3,500【通常盤CD】¥3,000(SPEEDSTAR RECORDS)10月28日発売。※『anan』2015年10月28日号より。文・北條尚子
2015年10月22日