面積広めの旗竿敷地笹沼邸が立つのは旗竿敷地。敷地自体は約190㎡と広く、そのため土地の値段は当初の予算をオーバーしていたという。しかし「西側が開けていて、駅からの距離感や駅の規模感なども含めトータルで考えた時にいい敷地だと思った」と笹沼さんは話す。そして予算のオーバー分をうまくやりくりする手段として賃貸併用のアイデアに思い至ったという。賃貸のワンルームを2戸併設した笹沼邸の設計を依頼したのは奥さんの旧友であった北澤さん。建築のデザインに興味をもっていた笹沼さんは、北澤さんが妹島和世さん、西沢立衛さんのお2人が主宰するSANAAで働いていたこともあり「会ってみたい」と連絡を取って知り合ったのが5年ほど前のことだったという。2階右端と1階左端が賃貸部分。外壁は小波のガルバリウム。箱がずれたような構成になっているが、それをあまり強調したくなかったため、全体として大きな一軒の家のような連続性を感じさせる素材ということで選択された。ダイニング側から「まえにわ」を見る。この壁の裏側に2階の賃貸スペースへと上る階段がある。旗竿敷地に建てられた笹沼邸のエントランス部分。3つのリクエスト笹沼さんが北澤さんにこの家の設計でまずリクエストしたのは「友だちが来て楽しくなるような家にしてほしい」「外と中の関係をあいまいにしてほしい」「天井の高い家にしてほしい」の3点だった。はじめの2点が明確に表れているのはエントランス部分だ。上部に賃貸部分がつくられた「まえにわ」と呼ばれるスペースとダイニングキッチンのスペースがガラスの開口を介してつながっていて通常の玄関のように内と外との関係が切れていない。「そもそもスペースが限られた中で玄関をつくるのがもったいないと思い、縁側からスッと入るように外と中が連続するようなつくりにしました。正面にキッチンをつくったので1階は奥様がお店をやっているような感じになって、外と中とがつながりつつ楽しそうになっていいかなと」(北澤さん)エントランス側からダイニングキッチンを見る。2階はリビング。キッチンからエントランス側を見る。ハイサイドライトは朝日を入れるため施工途中で開けることに。このアイデアにたいして笹沼さんは「もともとふつうの家はいやだなと思っていたのと、建築によって生活が変わる楽しさみたいなのも許容しようと思っていたので楽しく受け入れました」と話す。外と中の関係があいまいということでは、2階上部にあるサンルームと呼ばれるスペースとテラスとのつながり、さらに、白い壁にところどころに開けられた開口を通して外部へと視線が気持ちよく抜けていく点も見逃せない。「リビングのハイサイドライトとか外からの視線が気にならないところは大きく開けてカーテンも付けていません。そうすると外の空気の動きとか天気の様子などが中にいてもすごく感じられて、体感として大きな外部環境にいるように感じられるのではないかと」(北澤さん)2階からダイニングキッチンを見下ろす。キッチンは奥さんの希望でアイランド式に。壁は塗装に見えるが薄手のクロスが貼られている。ずれつつ縦に展開天井の高さはダイニングキッチンが4745mmでリビングが4515mmとふつうの住宅よりも2mほど高い。笹沼さん曰く「どちらも住宅であまり経験したことがない高さでどんな感じになるのか全然イメージがわかなかった」。そしてまた天井が高いばかりでなく、ダイニングキッチンとリビングというプロポーションの近い箱状のスペースが2つ縦にずれながらつながり、さらにその上のサンルームへと、これもずれながらつながる構成も笹沼邸の大きな特徴だ。キッチンから2階へと上る階段を見る。ダイニングテーブルからの眺め。階段と2階部分の手すりにはさび止め効果のある常温亜鉛めっきが施されている。1階から見上げる。階段上部の梁だけが下の柱と揃えて白く天井が仕上げられている。2階リビングからサンルームに至る階段を見上げる。白の壁とそのほかの木の部分とのコントラストがきいている。2階のリビングからダイニングキッチンとその上につくられたサンルームを見る。サンルーム側からリビングを見下ろす。奥の木の扉を開けると左が書斎で、右はベッドルームに至る階段がある。奥さんは設計時には「子どももいるので階段が多いことなどに抵抗があった」というが、「住んでみたら各スペースの高さが違うことで室内でも見晴らしが良く、下に子どもがいても上の階から見えるので良かった」と思っているそうだ。笹沼邸では白い壁と天井などに使われた木のコントラストも特徴的だが、設計では当初、天井は梁を見せずに白い板を張って白い箱が連続しているようなイメージだったが、天井が減額対象となって、現状のような構造をそのまま見せるつくりとなった。抽象性の高いイメージから素材のコントラストを意識させるような構成へとシフトさせたということだろう。ダイニングキッチン上部につくられたサンルームからリビング方向を見る。湾曲した木の扉はトイレの扉。階段を上った先にはテラスがある。「いずれ、バーベキューパーティとかできたらいいなと思ってます」(笹沼さん)。テラスへと至る階段には家具的な佇まいも感じられる。「床がコンクリートということもあって、この1階のスペースには長い時間はいないかもと思っていたんですが、住んでみたら、人が来たときは皆ここに集まって、キッチンで何か作業をしながらでもお話がとてもしやすくて思っていたよりも好きな空間になりました。なので今はこの1階にいるのが長いですね」。奥さんはさらに、「夏は1階が涼しくて快適でしたが、冬は2階のリビングが長くなるのかな」と話す。季節により住む空間が変わる、というつくりも気に入っているようだ。奥さんはさらに「2階のリビングでゴロンとしてテレビを見るのも好き」と話すが、笹沼さんも「2階はプライバシーが他よりも保たれている場所なのでだらっとできる気持ちよさがある」としつつも1階の心地よさを強調する。「1階は天井が高いだけでなく光も溢れているし外気にも接することができて気持ち良く、いろんなことが体感できるので面白くて好きですね」と話す。「あとお風呂上りとかにテラスに出る階段に座って歯を磨くんですが、あそこは窓が3面開くので夜風がとても気持ちがいい」とも語る笹沼さん。「あそこでビールとか飲んだら気持ちいいだろうなって思ったりしますね」。これを実行するのは冷えたビールのうまい来夏あたりだろうか。奥さんが思っていた以上に好きになったと話すダイニングキッチンのスペース。どの方向にも視線が抜けて快適なスペースになっている。賃貸スペースを2つ併設した笹沼邸。北澤さんは「距離感がそれなりにありがながら関係性をうまくつくれる」ような構成を考えたという。敷地奥の1階にある賃貸スペースの前には「うしろにわ」がつくられている。内部は縦方向にずれながらつながっていたが、横方向でもずれつつつながる。笹沼邸設計北澤伸浩建築設計事務所所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上2階延床面積159.6㎡(賃貸スペース含む)
2019年11月04日開放感と抜けのある空間この近くの団地に10数年住んでいて、土地勘があり、また地域のコミュニティとのかかわりができていたことから同じ市内で探してH夫妻がみつけたのが公園に面した敷地だった。「住宅密集地ではなく開放感と視線の抜けのある敷地を望んでいました。ここは南側に公園があってわれわれにとっては理想的でした」とHさん。大きな片流れの屋根とずらして配置された開口が特徴的。外壁は家の周りにサンプルを並べて黒のガルバリウムに決めた。手前(南)側に公園がある。設計でのリクエストもまずは「開放的で抜けのある空間」。そして「奇をてらわずおおらかで品の感じられる空間」だったという。奥さんは打ち合わせ時に、スペイン旅行の際に泊ったホテルでの体験を建築家の角倉さんに話したという。「そのホテルは修道院を改装した建物で崖っぷちに立っていたんですが、視線が遠くまで抜けて窓際からの景色が素晴らしかったんです」キッチンから2階のダイニングとリビングを見る。正面の窓から南側の公園の緑まで視線が気持ちよく抜けていく。H邸は南側の壁面に同程度の大きさの3つの窓と玄関扉の脇につくられたフィックスのガラスの開口などによって公園への抜けを確保してH夫妻のリクエストに応えているが、さらに内部においてもスペース間の視線の抜けを確保している。「どのスペースにいても開けた感じを望まれているのが最初からわかっていたので、それが設計する際の大きな核になりました」と角倉さん。さらに「基本的にはワンルームのようなつくりで吹き抜けで全体がつながっている。そういうものを望まれているのではないかと思った」と話す。リビング側からダイニングとキッチンを見る。左上が趣味室でその下が玄関ホール。素材感にこだわったH夫妻はこの空間の壁天井に砂漆喰、フローリングには「木を感じられる」材を選択した。家族がそれぞれの趣味を楽しむスペース。ドラムは上の娘さんのもの。半階分レベルがずれた趣味のスペースからLDKを見る。ベランダから内部空間を見下ろすような不思議な感覚も。階段途中から趣味のスペースを見下ろす。このスペースの真下は玄関ホールになっている。趣味のスペースの窓から向かいの公園の緑が見える。大きな玄関ホールを介してつながるH邸は玄関を入ると広めのホールになっているが、この土間のスペースはH邸のすべての部屋とつながっていて、まさに「ワンルームのようなつくり」にも感じられる。このつくりはH夫妻からの「人が集まれる家にしたい」というリクエストにも応えたものであった。外部から気軽に入れるこのスペースは「公園の集まりをそのまま引き込むようにしてつくったもの」と角倉さんは話すが「最初はお子さんが知らない間に外出したりしないように1階をリビングにしてほしいという話があって、これにずっと引っ張られてなかなかうまくいかなかった」という。1階奥から玄関ホールを見る。玄関脇の開口から公園が見える。この開口を曇りガラスにするか迷ったが結局透明ガラスを選択。玄関ホールから見る。1階奥には浴室がある。1階にはホールに面して子ども部屋が2つ並ぶ。上に見えるのはリビング。2階和室から見る。玄関上の開口のブラインドが開いているときにここで横になると公園まで視線が抜けて気持ちがいいという。「しかしあるとき、目の前に公園があるわけだからリビングを2階にもっていったほうがいいんじゃないかと思ったときに同時に土間の発想が出てきた。リビングと土間とつなげることでお子さんの出入りもわかり、土間にすることで近所の方も集まってくる。このアイデアが出てからは計画がスムーズに進みましたね」角倉さんからのこの提案に「直感的にいいな」と思ったというHさん。「土間になったホールが単なる玄関ではなくて部屋の延長でもあり、またそこでいろんなことができる可能性を感じました」左が「旅館の大きな玄関」のようなイメージでつくられた廊下。モノを置いたり座ったりと使い勝手がいいという。戸を開けておくと手前のホールと子ども部屋、リビングがつながりワンルームのようにも感じられる。昨年末に餅つきをしたときは、5家族が参加。この場所に作業台を設置し外でついた餅であんころ餅や黄な粉餅などをつくった。2階のリビングにいても人の出入りが容易に確認できる。階段途中から玄関ホールを見下ろす。おおらかさも実現竣工して2年が過ぎたH邸。「以前団地に住んでいたときも人を呼びたいとは思っていたんですが狭くてできなかった。2年経って、思った以上に人が集まってくれる家になっていますね」とHさん。奥さんは「友だちとの仲間づくりにおいてもとてもいいなと思っていて、今ならランチも外に食べに行くのではなくて“家においでよ”って言える。人とのつながりが以前とは違ったものになったのはこの家のおかげだと思います」奥さんはまた「好きな場所が家の中にたくさんあるのですが、ソファに座って眺める内部の景色が好きで、季節や時間によって光の反射の具合がちょっとずつ違うのが家の中にいて感じられるのもうれしい」と話す。Hさんはこの大きな傾斜天井が落ち着けて気に入っている。奥さんもこの天井も含めソファのところから見える景色が好きという。ソファのファブリックは皆川明さんデザインのものをオプションで張ったもの。Hさんのお気に入りは1階のホール。「機能面などからすると“遊びの空間”的なスペースともいえますが、これがこの家にある種の余裕のようなものをもたらしてくれていると思います」。そして「窓から入る光と公園の植栽の緑に心が落ち着きますね」とも。Hさんの言葉から、開放感と視線の抜けとともにリクエストした「おおらかさ」も十分に実現されている、そのように感じられた。H邸設計角倉剛建築設計事務所所在地千葉県松戸市構造木造規模地上2階延床面積114.23㎡
2019年09月09日超狭小地での建て替え高級感と庶民性を併せ持った雰囲気と利便性の良さが魅力の東京・四谷。大きな通りから1本奥へ入ると、細かく区切られた昔ながらの住宅街がある。古河さん一家が暮らすのは、車は入ることができない狭い路地に面した敷地。「両親が新婚時代に購入したところで、築40年くらいの古家に住んでいました。子育てをはじめその住みやすさから、この先もずっと四谷に住み続けたいと思い、建て替えを決意しました」と話すのは、四谷育ちの奥さま。建築面積は、わずか6坪の超狭小地。「土地は狭いのに、リビングやキッチン、テラス、屋上など、いろいろなところの空間を“広く”とってほしいとリクエストしました(笑)」とご主人。「その難題をすべて叶えていただき、感動しています」とご満悦である。設計を依頼されたのは、建築家の岡本浩さん。明るく広がりのある家を目指し、プロならではの工夫を詰め込んだ。そして、地上3階、地下1階のコンパクトながらも開放感のある家が完成した。ダイニングとリビングはスキップフロアになっていて、バルコニーまで一続きに。長女(6歳)、長男(4歳)も自由に行き来し、のびやかに過ごしている。住宅密集地に建つ。マーブル模様の外壁は左官コテ塗仕上げで落ち着いた雰囲気。2階のバルコニーに設置した木製ルーバーの羽根の角度にこだわり、道路からの視線をカット。ダイニングの上は吹き抜けで、4.5mの天井高を確保。天井にはご主人が希望したアンティーク調のシーリングファンを設置。「ビールを飲みながら、ファンが回っているのを見ているのが好きです」。防火壁を最大限に活用する玄関奥の階段を昇ると、たっぷりの光が降り注ぐダイニングキッチンが現れる。「朝起きて、半地下の寝室からここに上がってきた瞬間がとても気持ちいいんです。まぶしいほどの光に包まれ、一気に目が覚めますね」とご主人。スキップフロアによって半階上のリビングを見通すことができ、さらにリビングからフルオープン窓でつながるバルコニーへと続く。バルコニーには周囲からの視線を遮りつつ、光と風を通す木製ルーバーが設置されているため、リビングの延長として安心して使用できる。内外一体の開放感が気持ちよく、子どもたちや愛犬も自由に行き来している。隣地の境界ギリギリの位置には、防火壁を設けた。これにより、法規制で必要とされていた階段室の設置を回避したうえに、隣からの視線も完全にカット。そのためカーテンいらずの大きな開口を実現し、日中は豊かな自然光が室内の隅々まで行きわたる。また夜間は、外部照明の光を反射させて室内に送り込み、防火壁が間接照明の役割も。自宅で仕事をしている奥さまは、「夕方くらいまで照明をつける必要がないですね」と話す。防火壁と建物との間には30cmほどの隙間があり、さらに奥行きを感じさせてくれる利点も。その隙間はドッグランとしても活用し、長年共に暮らす愛犬ピースちゃん(8歳・メス)が嬉しそうに駆け回っていた。ご夫妻で立てるよう作業台を広めにとったキッチン。衣服等が引っ掛からないようにフラットなデザインをチョイス。造作のテーブルにはカトラリーの収納を設けた。扉の奥には地下の寝室へと続く階段があり、まるで隠し部屋のよう。扉は階段のほうまで開くため、大きな荷物も搬入可能に。左の階段を昇るとダイニングキッチンへ。半地下にある寝室は、1年中安定した気温で快適。造作棚には間接照明を組み込み、演出効果を。大きな開口(右側〉の奥が防火壁。シャビーシックな床はご主人の希望。「あまり真新しい感じが好きではないので、少しレトロな感じにしたかったんです」。犬のハウスやオモチャを置くスペースをリクエスト。ピースちゃんのサイズに合わせて棚の高さを決定。ベンチとしても使用できるようにした。防火壁と建物の隙間によって生まれたドッグラン。大人はやっとすり抜けられる幅ではあるが、ピースちゃんにはちょうどよい。3階はキッズスペース。奥が長女の部屋、手前が長男の部屋。扉によって分けられるようになっている。螺旋階段を昇ってきた正面には、大きめの収納を確保。梁が必要だったところに板を置いてデスクにした。自宅で仕事をする奥さまのちょうどよい仕事スペースとなった。屋上は家族の憩いの場空間を広く見せるために、仕切りとなる壁は極力抑えたという岡本さんは、「必要な壁は、逆手にとってポジティブに利用しました」と話す。例えば、リビングとバルコニーを結ぶ開口部。家の四隅には壁が必要なため、ここにも壁を設置しなければならなかった。「ならば壁で窓のフレームを隠し、風景だけが見えるような空間にしたら面白いかなと思って」と岡本さん。さらに、壁をアーチ型にし、裏側には間接照明を設けるなど徹底的にこだわった。まるで額縁の中の1枚の絵のような美しい光景は、奥さまの最もお気に入りの場所という。「ダイニングから見上げたときに目に飛び込んでくる、窓際のその光景が好きです」。また、ほかの壁も収納や家具として利用している。スキップフロアの階段部分はベンチ兼収納になっていて、テレビ脇の壁も収納を兼ねている。さらにそこに間接照明を組み込むなど、一石二鳥、三鳥の発想が随所にあり、使い勝手のよい空間となっている。これからの季節は屋上テラスも活躍。都会の風景や空が360度見渡せ、風も心地よい。バーベキューや子どもたちのプールなど、屋外にいながら人目を気にせず寛ぐことができ、家族だけの時間が満喫できる。「先日、玄関前に子どもたちとひまわりを植えました。もっと緑を増やしていきたいので、屋上でのガーデニングも構想中です」とご主人。家族で植物にふれる豊かなひととき。まさに古河家のオアシスになりそうだ。フルオープンの窓は、壁でフレームを隠し、窓の存在を消した。スキップフロアの段差を利用し、ベンチを2つ設けた。ベンチの中は収納に。毎日使うものを即収納できて便利だそう。長男が顔を出しているのはトイレの窓。ダイニングとつながり、コミュニケーションの場にもなっている。360度眺望が楽しめる、気持ちのよい屋上テラス。ベンチは折りたたみ可能。古河邸設計OASis一級建築士事務所所在地東京都新宿区構造木造規模地上3階地下1階延床面積65.14㎡
2019年06月03日3月15日発売の「住まいの設計2019年4月号」では、家好き芸人、アンガールズ・田中さんが建築家の自邸を突撃取材する4回目の連載が掲載されています。アンガールズ・田中さんは広島大学工学部第四類建築学部卒業。大学では建築の構造を研究し、得意分野は日本建築だそうです。今回は、四方を建物に囲まれた旗竿敷地で快適に暮らす、浜崎一伸さんのお宅を取材しました。■ 2つの中庭にはさまれ借景の緑も楽しめる開放感あふれる空間周囲を住宅に囲まれた旗竿敷地にRC造の平屋を建てた浜崎一伸さん。「最初にここに来たとき、『本当に囲まれているな』と思いました。真ん中だけポツンと残った状態で、どう建てても周りは迷惑だろうな、と。それで平屋にしました」と語ってくれました。「旗」の部分に配された平屋には、2つの中庭が。1つは屋上への階段がある中庭で、もう1つには大きなシマトネリコが植えられています。その2つにはさまれるようにあるのが、リビングダイニング。「中庭から光が入るので、室内は明るくて気持ちがいいですね」と田中さん。ダイニングの横長の窓からは、隣の庭の緑を借景として取り込んでいます。「あっちの緑も、光が差して影がカッコいい!」と、田中さんはリビング側のコンクリート壁に設けられた窓を指していました。■ いろいろな楽しみ方できる!高低差のある屋上次は、中庭の階段を上って屋上へ。「気軽に屋上に行けるのって、大事なポイントだと思います」と、上りながら語る田中さん。部屋ごとに異なる天井高を反映して高低差が生まれたルーフテラスは、芝生スペースに菜園、ウッドデッキの物干し場と、変化に富んでいます。「寝室のロフトからも屋上に出られるので、子どもが小さい頃はよく友達と鬼ごっこをしていました。階段を下りて、またロフトから出てきて。今は、ロフトの窓からそれぞれ部屋に乾いた洗濯物を投げ入れています(笑)」と浜崎さん。浜崎さん自身も、芝刈りや菜園の水やりなどで、頻繁に屋上に上がるそう。「いろんなところから気軽に屋上に行けるのもいいし、ご近所との関係性もちょうどいい感じですね」(田中さん)。こちらは、中庭を見下ろす田中さん。中庭の両サイドのサッシはフルオープンになっていて、室内に光と風を行き渡らせています。各部屋から眺められるシンボルツリーのシマトネリコは、ルーフテラスの上にも大きく枝を伸ばして成長中!■ 階段のある中庭で仕切られた仕事スペース階段のある中庭の南側は、浜崎さんの仕事場。玄関脇の仕事場も中庭によって明るい空間になっています。中庭で分けつつ、居住空間との回遊性も確保。■ ゲートの道路側のフェンスには半透明のガラスを採用田中さんが立っているガラスフェンスの手前は“ミニ生産緑地”の予定地で、実現したらガラスのフィルムをはがして緑を見せる予定だそう。「この半透明のガラスも、圧迫感がなくていいと思います。」と田中さん。家を見終わった田中さんは「庭や中庭、屋上も広々していて、大変魅力的だった」と満足気でした。もっと詳しく見たい方は、「住まいの設計2019年4月号」をご覧ください!【取材協力】株式会社And Associates東京都中央区日本橋茅場町2-13-8 FLAT4代表の浜崎一伸さんは、1969年香川県生まれ。’93年東京大学工学部建築学科卒業、’95年同大学大学院修士課程修了。竹中工務店、谷口建築設計研究所(出向)などを経て、2010年よりAnd Associatesを主宰。撮影/水谷綾子住まいの設計2019年4月号豊富な実例ときめ細やかな情報で快適・便利な住スタイルを提案。家作りの夢が広がる!住まいのお役立ちマガジン【巻頭特集】「家族のシアワセのときが流れるキッチン&バスルームあります」 【第二特集】「HOUSE with SMALL SHOP小さなお店のある暮らし」
2019年03月15日小学生の子どもをもつ齋藤さん夫妻は、のびのび子育てをしたいと、借景の緑を眺められる土地を購入。そんなご夫妻の思いを受け、建築家の布施木綿子さんは「林の中にいるような空間づくり」を目指したといいます。樹種を多く使うなど、特徴的な斎藤邸。どんな住まいができ上がったのでしょう。■ 「林の中にいるような」空間づくり齋藤さん夫妻が設計を依頼したのは、「アーティスティックだけど派手ではなく、シンプルな感じ」が好みに合うと感じた、佐藤・布施建築事務所でした。一般の住宅と少し異なるのは、いわゆる玄関はなく、ウッドデッキからリビングへダイレクトにアプローチすること。デッキから木製サッシを開けるとすぐにタイル貼りのリビングが広がります。こちらがそのリビングです。日当たりのいい明るいリビングは、長男の遊び場にもなっています。その先に進むと、木をたっぷり使用したダイナミックな空間が広がります。見上げる吹き抜けは下見板張りの壁で囲まれ、天窓から光が降り注いでいます。布施さんが目指した「林の中にいるような空間」が実現しました。深呼吸をしたくなるような爽やかさを感じますね。もちろん木の香りにあふれています。もうひとつ特徴的なのが、多種多様な樹種を使用していること。ダイニングの床は木目が強く主張するミモザ。吹き抜けの壁はベイ杉。カウンターの天板や柱は国産のスギ。また扉類はマコレー等を使用しています。「住まいは生活の場ですから雑多なものが入ってきます。素材に幅を持たせることで、雑多なものを置いても受け止められる大らかさが空間に備わるのです」(布施さん)。■ 家全体をひとつの部屋のように共働きの夫妻が望んだのは、「家全体がひとつの部屋のような」住まい。家族がしっかりとコミュニケーションを取れるように間取りが考えられています。上下階が吹き抜けでつながる構成は、お互いの声や気配が伝わりやすいだけではなく、高低差が空間にダイナミックな躍動感を与えています。キッチンは家じゅうを見渡せる位置に。「リビングの大きな高窓から一面の緑が見えて気持ちがいいんです」(妻)。妻は毎朝、お気に入りのキッチンに立つのが楽しいとか。多忙な日々、この家から活力をもらっていると話します。右手にキッチンを見つつステップを上がれば、家族団らんの場所、ダイニングです。公園に向かって開かれたダイニングは明るく、まるで広い庭があるような開放感。ミモザのフローリングが、インドネシア製のダイニングセットの存在感と調和しています。先ほどご覧いただいた大らかな吹き抜けは、2階から見ると、このとおり。「ごはんよ〜」「すぐ行くよ〜」。声もはっきり聞こえます。「共働きだから、家族で一緒にいられる時間が短いので、どこにいても気配を感じられる家が希望でした」(妻)。2階主寝室は吹き抜けに面しています。左手壁の向こうの大型ウォークインクロゼットに、家族の衣類を集中収納。和室は両親が泊まりにきたときのための部屋で、縁なし畳の下には布団などを収納できるよう工夫しました。右の障子を開ければ、吹き抜けにつながります。その和室は子ども室とつながっています。現在は和室と子ども室の2部屋をオープンに使っていますが、将来は建具で隔てられるように、溝を彫ってあります。ちなみに、1階にも子どもの勉強のためのコーナーを作りました。小学生なので、個室ではなく家族の目が届く場所で勉強をしているそう。限られた面積の中にも、家族の成長に合わせて変えられるフレキシブルな空間が確保されているのはうれしいですね。■ 公園の緑を借景とし、風通しも得る実は、不動産会社からは隣の土地を案内され、南面する学校の緑が気に入って決めかけていたといいます。しかし、現地を訪れた佐藤さんと布施さんは、道路から奥まった公園側の土地を勧めました。「齋藤さんは明るく風通しのいい家を希望されていたので、3方向に抜けのあるこちらのほうが有利でした。それに、敷地延長の路地を駐車スペースにすることで、家の前に庭もつくれると考えました」と佐藤さん。南西側が学校(写真手前)、北側が市の公園(写真左側)に接する敷地環境を生かし、プライバシーを守りつつ緑を借景として最大限取り込めるように窓を配置しました。旗竿敷地を選んだおかげで、建物の前を駐車スペースでふさがれず庭を設けることができました。「庭を抜けて家に入ると、ホッとしますね」(夫)南西側正面は高校の敷地で、鬱蒼と樹木が茂ります。こんなところにも緑を望める窓が……。在宅で仕事をすることもある夫妻のため、1階にワークスペースを設けました。パソコンから目を上げれば北側の公園の緑が見えます。2階浴室の窓は公園側を向いており、開放的。洗面・脱衣室は、間仕切りをガラスにしたことで浴室からの光をたっぷり採り入れます。床は足触りがひんやりしないパインの無垢材を採用しました。差し込む光と木のぬくもりで、とてもリラックスできそうな浴室空間ですね。木々に囲まれ、吹き抜けがつなぐ大らかな空間は、自然の中に溶け込んでいるような齋藤邸。家族全員がリラックスでき、疲れも癒されるような家でした。もっと詳しく見たい方は、ぜひ「住まいの設計2017年9-10月号」を参考にしてみてくださいね。設計/佐藤哲也+布施木綿子(佐藤・布施建築事務所)撮影/伊藤美香子住まいの設計2017年9-10月号豊富な実例ときめ細やかな情報で快適・便利な住スタイルを提案。家作りの夢が広がる!住まいのお役立ちマガジン【巻頭特集】「住む人に優しい 木の家、自然素材の家」 【第二特集】「緑と一緒に暮らしたい!ビューティフルガーデンハウス」
2019年03月10日30人のパーティも余裕の大空間横浜の南向きの傾斜地に建つお宅は、大きな窓や吹き抜けが気持ちのいい開放感のある住まい。グレイエムさんが南アフリカ出身ということもあり、日本に来た時に住んだ小さな窓の集合住宅が、とても息苦しく感じたのだそう。「その反動から、大きな窓がたくさんあって、外に広がりを感じられる家は、夫のたっての希望でした。なので我が家の窓にはカーテンがほとんどありません(笑)」と奥様の理恵さん。部屋を仕切る壁もほとんどないので、内部空間が広々と感じられる。「冬に暖房効率を上げたい時など、必要な時にカーテンで仕切れるようにしています」玄関から続く土間は、一段高くなっているリビングの周囲をぐるりと回ることができる。広々としたキッチンは、30人も集まるというホームパーティのお客さんの受け入れ態勢も万全。「仕切りのない家なので、思い思いの場所でくつろいでいただけます」大人数のホームパーティも余裕で楽しめる広々としたキッチン。「鍋も洗える大型の食洗機は私の希望でつけていただきました」。庭のバーベキューコーナーへもキッチンから直行できる。土間をはさんだ反対側の部屋は壁にプロジェクターで映像を流し、ゴロゴロしながらくつろげる空間。階段の踊り場の下が収納になっている。吹き抜けを生かした明るい空間。玄関を入ると正面に庭に出られるガラスのドアがある。傾斜地に建つ家ならではの抜け感が気持ちいい。左側の収納の扉には鏡を張った。「姿見になりますし、部屋も広く見えます」モルタルの土間はリビングをグルリと回ることができる。行き止まりを作らないことで、空間が澱まないようにした。必要なものは楽しくDIYで大きな吹き抜けがあり、部屋を壁で区切っていないので、家のどこにいても家族の気配が感じられる。「1階にいて、2階で子どもが何をしているのかがわからないのが嫌だったので、できるだけ壁を作らないようにしました。もし子どもが成長して必要になれば、後から壁を作ることもできますし」と理恵さん。凛々子(りりこ)ちゃんのお部屋の家具や、壁の塗装など、DIYで仕上げた部分も多いのだそう。「海外での暮らしが長かったこともあり、自分で工夫してカスタムする習慣が身につきました。たとえばダイニングのスツールは980円のものを買ってきて、テープを巻いて座面にカバーをかけました」凛々子ちゃんのお部屋は、吹き抜けの渡り廊下の先。空間を柔らかにカーテンで区切っている。吹き抜けにある照明器具はIKEAで。IKEAのフレームつきのベッドにふんわりとレースをかけて、お姫様気分のベッドルームのできあがり。「淡いグレーの壁は自分たちで塗りました」壁や扉がない凛々子ちゃんのお部屋は、広がりが感じられる。寝室にも広々とした窓を確保。グリーンを飾ってくつろげる空間に。日々成長する家竣工から1年が経ち、この家で四季を体験したとのこと。「薪ストーブを導入するかどうかはまだ考え中です。いつでも作ることができるように、ダイニングの一角に煙突用の穴をいつでも開けられるようにしておいていただきました」友人をたくさん招いてホームパーティを開き、庭でバーベキューを楽しむ。家を存分に使いこなしているグレイエムさん一家。DIYで手を入れたり改造したり、これからさらに心地のいい家に成長していくはずだ。奥に広くなっている変形敷地。敷地に沿って家を建てたことで、開口部を大きく取ることができた。ガルバリウムの外壁。玄関の庇がアクセントに。外からも丸い照明器具が見える。伊藤暁(伊藤暁建築設計事務所)所在地神奈川県横浜市構造木造規模地上2階延床面積106㎡
2019年02月27日銀座エリア最大の商業施設、ギンザ シックス(GINZA SIX)では、施設中央に位置する吹き抜け空間に、アーティスト・塩田千春による新作インスタレーション「6つの船」を2月27日から10月31日まで展示する。同館の開業以来、3作品ぶりの日本人アーティスト起用となる新作アートを手掛けるのは、ベルリンを拠点として国際的に活躍し、今年6月から森美術館で過去最大規模の個展開催が控えているアーティスト・塩田千春。「6つの船」をテーマに、鉄枠、フェルト、ロープの素材で作られた全長5メートルの6隻の船が中央吹き抜け空間を飾る。これまでも塩田の作品にはしばしば船がモチーフとして用いられてきた。船は人や物だけでなく、時間をも運びながらいずれかの方向に前進するものであり、「存在とは何か。生きているとはどういう意味なのか。私たちは何を求めて、どこへ向かおうとしているのか」を追求してきた塩田の問いに共鳴している。今回の新作では、戦後多くの困難を乗り越えて復興を遂げてきた銀座の「記憶の海」を6隻の船が出航し、前進する様子を表現。6隻の船は異なる高さや向きで配置されているため、同館の各フロアから見え隠れする船を眺めながら、ふと異次元を訪れるような想像の旅を楽しめる。同館の象徴とも言える中央吹き抜け空間では、これまでに草間彌生、ダニエル・ビュレン(Daniel Buren)、ニコラ・ビュフ(Nicolas Buffe)といった世界で活躍するアーティストの作品を展示し、クリエイティブなエネルギーと驚きの要素に満ちた、感性を刺激するアートプログラムを展開してきた。同作品では草間彌生、ダニエル・ビュレンの作品に続いて森美術館が監修を務め、館内各所にも国内外で活躍する注目アーティストの作品を常設展示している。銀座および東京の文化発信拠点として、身近にアートと触れ合える機会を創出し、より豊かな生活を提案する同館の取り組みに注目したい。
2019年01月23日1月15日発売の「住まいの設計2月号」では、家好き芸人、アンガールズ・田中さんが建築家の自邸を突撃取材する3回目の連載が掲載されています。アンガールズ・田中さんは広島大学工学部第四類建築学部卒業。大学では建築の構造を研究し、得意分野は日本建築だそうです。今回は、緑に囲まれた落ち着いた住宅街に溶け込むように建つ、建築家・佐藤重徳さんのお宅を取材しました。■ 大開口により感じつつ薪ストーブの温もりに包まれる佐藤重徳さんは12年前、長女が小学校に入学したのを機に土地を購入し、RC造3階建ての家を建てました。「緑が多い住宅地ですけど、ちょっと面白い立地ですよね」と田中さんが言うように、北と南の2つの道路に挟まれている敷地。「せっかく道が2つあるから、トンネルのような家にして両方の道とつなげようと思いました。近くの公園とも緑を通してリンクすれば、大きな居住地になると。街並みに楽しく緑を提供。環境をつくることも建築家の仕事ですから」(佐藤さん)。「薪ストーブはどうですか?」と田中さんが尋ねると、「南の大きなガラス面から冷気が下りてくるので、薪ストーブの暖かさで空気のバリアをつくっています。最新の薪ストーブはとても性能がよくて、快適」と佐藤さん。剪定した庭木も薪に使うと聞いた田中さんは、「無駄がなくて、めちゃくちゃいいじゃないですか!」と大絶賛。「ヨーロッパやアメリカでは、車と同じように薪ストーブの性能検査があるんです」(佐藤さん)との話に興味津々の田中さんでした。■ 吹き抜けに浮かぶ「ブリッジ」が空間のダイナミックさを強調!ブリッジからLDKを見下ろし、「これだけ大きな“抜け” があると、かなり開放的ですね」と、田中さんがその眺めに圧倒されていると、「うちの両親は、『ここに部屋が2つはつくれる』って言うんです(笑)」と、2階から奥さんの声。「たしかに2部屋つくりたくなる気持ちも分かりますけど(笑)、あえて思い切って“抜く” ことで余裕が生まれて、こんなに気持ちいいっていうことを、みんなにぜひ分かってほしい!」と田中さんは力説していました。「南側の隣家は幸い2階建てですが、将来3階建てが建つ可能性もあるので、そうなっても採光できるように吹き抜けを設けています」(佐藤さん)。3階北側には子ども室が配されており、吹き抜けに面した通路には本棚とデスクを設置した家族共用のライブラリーを配置しています。また上部には、トップライトが設けられています。「この家は自然の光をたくさん取り入れていますね」と田中さんが言うと、「本が日焼けしちゃうので、トップライトにすだれを掛けたほうがいいかなと思っています」と佐藤さん。トップライトには屋根に出られるようハッチが設けられており、佐藤さんは自分でガラスや煙突の掃除をしているそうです。こちらはブリッジからLDKを眺めた写真。南面の大開口が開放感をもたらすリビングダイニングは、窓を開けると外にいるようです。さらに、佐藤さんがデザインした円形のダイニングテーブルが、四角い空間にやさしい表情を与えています。■ 鳥のさえずりと植栽の緑にホッとひと息するバルコニーこちらは南の庭に植えられた2本のシマトネリコの緑が美しい、リビングからの眺め。バルコニー越しに見える緑がとてもきれいです。バルコニーの庇は2階が深く、3階は浅めにすることで、夏の日差しをカットし冬は奥まで光を取り入れている。「鳥の巣箱にシジュウカラが来るんですって」と田中さん。3階にも2階と同様にバルコニーが設けられており、窓拭きが可能。田中さんはちょっと怖そうでしたが、街を見渡すこともできます!もっと詳しく見たい方は、「住まいの設計2019年2月号」をご覧ください!【取材協力】佐藤重徳建築設計事務所東京都府中市府中町1-30-2-101年生まれの佐藤重徳さんは、レミングハウス(建築家・中村好文氏)勤務を経て、’97年に佐藤重徳建築設計事務所を設立。住宅のほか、保育園の設計、家具デザイン、薪ストーブの開発などを手掛けている。撮影難波雄史住まいの設計2018年12月号豊富な実例ときめ細やかな情報で快適・便利な住スタイルを提案。家作りの夢が広がる!住まいのお役立ちマガジン【巻頭特集】「猫だってハッピーにしてほしい!猫と一緒に暮らすための家」 【第二特集】「自分らしいインテリアと暮らしています」
2019年01月15日吹き抜けの基本的な役割は、上の階と下の階を結びつけるというものです。それによって、平面では感じられなかった上下の断面的な空間関係が生まれてきます。空間そのものの大きさによる立体的なひろがりは、視覚的な開放感だけでなく、家族の雰囲気や声をつなげ、住まいをより豊かに感じさせることができます。とはいいましても、天井を高くすると、それによって部屋の空気が温まりにくくなるというデメリットも生じます。空調などを検討しながら吹き抜けに対する明確な目的を考えるということも大切です。そこで今回は、吹き抜け空間に対する温熱環境をどうフォローしていくかについて、お伝えしていきます。■ 吹き抜けの空気の流れまず吹き抜けによる空気の流れを確認していきましょう。ご存知の方も多いと思いますが、温かい空気は上にいき、冷たい空気は下にいきます。それが冬のここちよさを妨げる要因となっています。つまり、上下空間の温度差にムラがないようにすることがポイントとなってきます。■ 熱が逃げにくい箱を用意すること、つまり断熱が大事!OrangeMoon / PIXTA(ピクスタ)温度差にムラが出ないようにするためには、熱が逃げにくい住まいの箱を用意すること、つまり断熱基準を満たすことが重要です(住まわれている地域ごとに断熱基準が定められています)。どんなにいい設備を導入しても、その温まった空気が外に逃げていっては元も子もありません。できればお住まいの地域で設定されている断熱基準より1ランク上くらいにするとより良いでしょう。■ 暖房をどうするか?maroke / PIXTA(ピクスタ)エアコンの温風がなかなか下まで届かず温まった気がしない。みなさんも経験されたことがあるのではないでしょうか。これを解消するには、まず全館暖房にしていただくのがベストな考え方です。全館暖房が予算的にはどうしても厳しいというかたは、吹き抜けのあるリビング空間をきちんと部屋として仕切れる構成とし、エアコンとガス温水式床暖房の併用して使用するのがよいでしょう。床部分の暖かさを維持できるようにすることが重要です。しっかり断熱がされているだけで大分良い温熱環境となるはずです。断熱工法と暖房形式については様々なアプローチがあります。これらについてはまた別の機会をもうけて詳しく書かせていただこうと思っております。いかがでしたか。この記事が吹き抜け空間を住まいで実現する後押しになれましたでしょうか?「この設備があれば大丈夫!」というふうにとらえるのではなく、部屋の空気の流れをについて理解し、そのためには空間をどう暖めて循環させてゆけば温度差が生じないか。これらの点をよく考えて取り組んでいけば、快適な吹き抜け空間を手に入れることができるはずです。
2018年11月27日自分の好きな間取りを自由に決めることができる注文住宅。住宅購入を考えた時に、多くの人が一番憧れる建て方ではないでしょうか。しかし自由だからこそ、注文住宅を建てたことがある人にとっては「これは作らなければ良かった」と思う間取りがあれば、「これは作って良かった!」と思う間取りもあります。これから注文住宅を建てようと思っている人は、経験者の意見を参考にすると失敗が少なくなるかもしれません。「いい(11)いえ(18)」という語呂合わせから11月18日は「いい家の日」と制定されています。その日に向けて、株式会社リクルート住まいカンパニー3年以内に注文住宅を建てた全国の男女300人に「住んでよかった間取り」についてのアンケート調査を実施しました。今回は、その結果についてご紹介いたします。■ 対面式キッチン、オープンなLDK。家族とのコミュニケーションを重要視した間取りが上位にアンケートの結果、最も多くの人が「住んでよかった」と実感している間取りの第1位は「対面式キッチン」でした。ABC / PIXTA(ピクスタ)キッチンと食卓の距離が近いので、家事がラクになるだけでなく、料理をしながらでも家族とコミュニケーションが取りやすく、ダイニングやリビングの様子がよく見える点で人気となっています。2位は「オープンなLDK」。こちらも対面式キッチンと同様に、家族とのコミュニケーションが取りやすい間取りになっています。オープンなLDKの一角に家族の作業場を設け、一人で部屋にこもることなく宿題やPC作業などができるため、家族の気配を感じながら個々の時間に集中できるのも魅力のひとつです。夫婦共働きや核家族化が進み、限られた時間の中で家族のつながりを実感できる対面式キッチンやオープンなLDKのような居住空間は、今後もますます重要視されていくでしょう。■ ウォークインクロゼット、畳スペース。小空間を有効に使った間取りも人気この他、3位の「ウォークインクロゼット」、5位の「室内干しスペース」、6位の「パントリー」、8位の「階段下収納」、9位の「シューズインクロゼット」など、限られたスペースを有効に使った間取りも人気でした。YUZ / PIXTA(ピクスタ)このような間取りは、収納を便利にしたり家事をラクにしてくれたりするので、注文住宅を建てる際には作ってみたいですよね。IYO / PIXTA(ピクスタ)また、4位の「畳コーナー」、7位の「吹き抜け」、10位の「ウッドデッキ」など、特別感のあるこだわりの空間もランクイン。OrangeMoon / PIXTA(ピクスタ)畳コーナーは独立した和室の代わりに、リビングの一角に設けるスタイルが人気です。小さなスペースでも、子どものお昼寝や洗濯物を畳む際など何かと重宝します。自分たちの生活スタイルや家族構成に応じた、好きな家を作ることができる注文住宅。いざ自分が建てようと思った時には、意外と間取り決めに悩むことも多くあります。注文住宅を建てようと思っている人だけでなく、物件購入を考えている人はぜひ、今回のアンケート結果を参考にしてみてくださいね。【参考】※<11月18日は「いい家の日」>住んで良かった「間取」は?注文住宅を建てた300人に聞いた、家づくり最新トレンドご紹介
2018年11月18日ギンザ シックス(GINZA SIX)はオープン1周年を記念し、フランス人アーティスト ダニエル・ビュレンによる新作アートをギンザ シックス2F 中央吹き抜けにて展示する。期間は2018年4月2日(月)から10月31日(水)まで。草間彌生《南瓜》からダニエル・ビュレンの新作にギンザ シックスでは館内の様々な場所に注目アーティストや人気クリエイターとのコラボレーションアートを展開。中でも館内中央の吹き抜け空間に展示された草間彌生のアート作品《南瓜》は2017年の開業時より話題を集めてきた。ダニエル・ビュレンによる新作アートはこの吹き抜けアートの第2弾として登場。ギンザ シックスを象徴する新たな顔としてバトンを引き継ぐ。ダニエル・ビュレンとは50年以上にわたりイギリス、イタリア、日本など世界各地で多くの作品を手掛けてきたダニエル・ビュレン。2016年にはルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)が手掛ける現代アート美術館「フォンダシオン ルイ・ヴィトン」の建築をジャックしたことでも知られている。フラッグアートが吹き抜け空間を彩るギンザ シックスには彼のトレードマークである8.7cmのストライプ模様を旗に用いた新作アート《ムクドリの飛行のように ―GINZA SIX にて》を展示。赤と青の計1,675枚の旗を使った作品が開放的な吹き抜け空間を彩る。銀座・中央通りやギンザ シックス外観にもさらにこの吹き抜けアートと連動した作品が、5月6日(日)まで銀座・中央通り、ギンザ シックス外観に登場。銀座1丁目から8丁目の目抜き通り・中央通りには全長約1,100mに及ぶ90枚のフラッグアートが展開され、ギンザ シックス外観のれん部分にも三角形が印象的なアート作品が飾られる。ギンザ シックス1周年記念限定アイテムもなおギンザ シックスの各店舗では1周年を記念した限定アイテムを多数取り揃える。ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)の「TOKYO」のロゴ入りバッグ、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(VALENTINO GARAVANI)の桜カラーのミディアム ショルダー バッグ、KURO(クロ)のメンズリメイクデニムなどが用意されている。マルベリー(MULBERRY)は、ギンザ シックス1周年を記念して、ブランドのアイコンバッグ ベイズウォーターの特別限定モデルとなる「スモール ベイズウォーター クロスグレイン ミッドナイト」を先行発売。エナメルのレッド、ホワイト、ブルーのユニオンジャックがポストマンズロックに配された英国カルチャーを反映したモデルは、コンパクトサイズ感がポイント。取り外し可能なストラップが付属するので、クロスボディとしても使用できる。【詳細】ギンザ シックス ダニエル・ビュレン 新作アート・《ムクドリの飛行のように ―GINZA SIX にて》期間:2018年4月2日(月)~10月31日(水)予定場所:ギンザ シックス 2F 中央吹き抜け住所:東京都中央区銀座6 丁目10-1・《三角形を追いかけて ―2018年東京・銀座中央通りにて》期間:4月2日(月)~5月6日(日)場所:銀座・中央通り・《GINZA SIX のエントランスのための三角形》期間:4月2日(月)~5月6日(日)場所:ギンザ シックス 外観
2018年04月06日