宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月31日、金星探査機「あかつき」の試験観測について、中間報告を行った。あかつきは2015年12月7日に金星に到着。4月からの定常観測に向け、これまで試験観測を行ってきた。あかつきの観測機器の状態は良好ということで、まだ試験観測ながら、興味深い成果が得られつつある。あかつきは金星到着後、12月20日に軌道修正を実施し、現在、遠金点36万km、近金点1,000~10,000km、周期10.5日の軌道を周回している。今後、大きな軌道修正は予定しておらず、定常観測も、この軌道のまま行う計画だ。搭載した観測機器は、順次立ち上げを実施しており、現時点で概ね順調だという。あかつきの設計寿命は4年半。金星周回軌道への投入失敗があったため、観測の開始が5年も遅れてしまったが、これまでのところ、特に故障は見つかっていない。放射線による劣化が予想より低かった理由について、JAXAの中村正人・あかつきプロジェクトマネージャは、「この5年間、太陽活動が低下していたせいでは」と推測する。当初の計画よりも遠金点が高い軌道であるため、観測画像の解像度が低下する時間帯が長いものの、これはあまり大きな支障とはならないようだ。ミッション達成度を示すサクセスクライテリアにおいて、すでにミニマムサクセスを達成。フルサクセスには2年間の観測が必要なため、しばらく時間がかかるものの、試験観測を始める前に比べると、達成できる可能性は「高まったと思う」と中村プロマネ。エクストラサクセスについても、「いけるんじゃないか」との見通しを示した。現在の燃料の残量は3kg(最大7kgの可能性も)。今後、軌道制御に1kg、姿勢制御に1kg使い、残りの1kgは予備としておき、5年間観測できる可能性があるという。前回の失敗で、一時は金星観測の実現すら危ぶまれていた。もちろんまだ楽観はできないものの、ここまで状況を持ち直したことには驚くほかない。あかつき搭載の観測機器の状況については、それぞれ担当者から説明があった。「1μmカメラ(IR1)」については、東京大学の岩上直幹教授が説明した。IR1は、すでに金星の昼側と夜側の撮影に成功。昼側の観測では、金星最大の謎であるスーパーローテーションを観測するが、撮影データを画像処理すると凹凸が良く見えており、問題なく下層大気の雲の追跡ができそうだという。一方、夜側の観測では、地上付近の水蒸気を観測することが主目的であったが、実際に観測されたデータを調べてみると、主に地形が見えていることが分かった。このデータから、地表面の鉱物組成が分かると期待されている。金星に火山があるのかないのか議論されているが、IR1の観測により、この議論に決着を付ける可能性もあるとか。「2μmカメラ(IR2)」については、JAXA宇宙科学研究所の佐藤毅彦教授が説明した。IR2はスターリング式の冷凍機で検出器を冷やす必要があるが、経年劣化のため、最初はなかなかうまく冷却できなかったという。その点には苦労したものの、最近になってようやく解決、昼側も夜側も撮影できるようになったそうだ。夜側の観測では、下層からの熱放射により、雲の濃淡がシルエットのように浮かび上がる。実際に撮影した画像には、南北に広がりを持つ巨大な雲の塊が見えている。昼側の撮影では、緯度50°より高緯度側で劇的に雲の高さが変わっており、複雑な構造があることが分かった。これらは今まで、よく知られていなかったことだという。「中間赤外カメラ(LIR)」については、立教大学の田口真教授が説明した。LIRは雲自身からの熱放射を撮影するため、昼側も夜側も同じように、雲頂の温度を観測することができる。すでに定常観測に近い連続的な撮影も行っており、これまでに数10枚もの画像を取得したとのこと。LIRでは、金星到着直後に撮影された、弓状の模様が写っている画像が大きな話題となった。この大きな構造はその後4日間に渡り観測されたものの、その後は見つかっていない。何か突発的な現象だったと見られているが、そのメカニズムについては現在検討中とのことだ。「紫外イメージャ(UVI)」については、JAXA宇宙科学研究所の山﨑敦助教が説明した。UVIは雲頂で反射された太陽紫外線を観測するため、昼側でのみ使用する。これまであかつきは夜側の軌道であったため、ほとんど撮影チャンスが無かったとのことだが、4月以降は昼側の軌道になるため、本格的な観測が開始できる見込み。紫外線は、雲に含まれる吸収物質の量により反射光の明るさが変わるため、その濃度の違いによる模様が表れ、これを追うことで、雲の速度を算出することができる。紫外線観測はこれまで、他国の金星探査機でも行われてきたが、あかつきでは違う波長域も使った観測を行い、雲の成因にも迫っていくという。「雷・大気光カメラ(LAC)」については、北海道大学の高橋幸弘教授が説明した。LACはあかつきの観測機器の中で唯一高圧電源を使っているため、10日に1回、1時間程度しかない日陰時に運用が限られている。現在、慎重に電圧を上げていく運用を行っているところで、本格観測の開始は6月あたりになる見通しだ。「金星にも雷はあるのか?」というのは、30年以上も続く大論争。未だに決着が付いていないのは、これまで雷専用のカメラが無く、ノイズと雷の区別が難しかったためだが、LACは1秒間に3万回も計測することで、時間変化から両者を区別することが可能だ。あかつきでこの長年に渡る論争に決着が付けられるか、期待されている。「超高安定発振器(USO)」を使った電波掩蔽(えんぺい)観測については、JAXA宇宙科学研究所の今村剛准教授が説明した。あかつきが金星の背後に隠れるときに電波を出せば、電波は金星大気の中を通って地球に届く。この電波の周波数と強度の変化から、大気の高度方向の構造を調べることができる。電波源として搭載されているのがUSOであるが、周波数安定度が劣化していないことを確認。試験観測を、3月4日と3月25日に実施した。周波数の時間変化から気温の高度変化を算出したところ、複雑な層構造が存在することが分かった。今後、他のカメラで得られた水平方向の情報を補完する役割が期待されている。
2016年04月01日ネットアップは6月30日、2016年度の事業戦略発表会を開催した。同社は5月1日から新年度がスタートしたが、同社の業績について同社代表取締役社長 岩上純一氏は、「ドルベースで14.5%伸びており、勢いが強いのが今のネットアップの環境だ。国内の売り上げはこの3年で2.1倍になり、オフィススペースは1.7倍となり順調に伸びている」と好調さをアピールした。同氏は、今後のストレージの市場について「現在は『Cloud Enable』(現在あるシステムをクラウドに移行する)から『Cloud Native』(最初からクラウドで利用することを想定したシステム)へという流れがあるが、クラウドはもはや使うのが前提だ。ただ、クラウドに移行するには、オンプレミス環境を可視化することが前提となるため、大手の製造業も必至になって次世代エンタープライズアーキテクチャーで作っている。それに対してネットがアップが何ができるかといえば、Software Definedですべて製品が作られている会社なので、Software Defined Infrastructure(SDI)やSoftware Defined DataCenter(SDDC)といったSoftware Definedされたインフラの上にネットワーク、サーバ、ストレージを置きたいと思っている。そういったインフラをどうやってオーケストレーションするかが課題で、それに対してストレージベンダーがどうかかわっていくかだ。その答えはまだ見つけていないが、すでに製品はあるので、そういった環境を構築しておくことが重要だ」と、次世代のエンタープライズインフラは、Software Definedで構築すべきで、ネットアップの製品がすでに、Software Definedインフラに対応済みであることを強調した。ただ、今後、同社がストレージ販売に注力することはしないという。その理由を岩上氏は、「米国ではすでに出荷の6割がホワイトボックスで、そこと戦うのはネットアップのコアビジネスではない。これらは価格は安いが管理できない製品だ。われわれはそこに対してインテリジェンスな製品を提供している。すべてをお客様の管理化に置くということが重要だ。そして今後はソフトウェア、ソリューション、アプライアンスをしっかりやっていく」と、今後はストレージの管理に主軸を置くとした。同氏は国内戦略のビジョンを、「これまでと変わりがないが」と前置きした上で、「常に革新的かつ実効性の高い技術をもって、お客様の成功を支えるTrusted Advisorになる」とし、同社が目指す方向性については、「われわれの製品がお客様の業務の中で、どれだけ事業貢献できるかだ。それがわれわれの使命でありミッションだ。ネットアップはTrusted Advisorとして、インフラ構築のオールラウンダーを目指しており、データマネージといえば、ネットアップという環境を作っていきたい」と語った。同氏はそのための戦略を、「もしかすると、われわれは5年後にはディスクを売っていないかもしれない。その分野に特化したソフトやソリューションを提供し、日本からイノベーションを起こすような会社になっているかもしれない。お客様のデータ管理を解決するには、お客様の業務を理解できる人間をどれだけ増やすかで、そのための人員を増強している。そういう意味で、コアベンダーとしてお客様の業務に参加していきたい」語り、具体的に、ハイブリッドクラウド推進部隊として13名、データアーキテクト6名、営業SE20%をぞれぞれ増員、オフィスも1.7倍に増床し、Customer Briefing Centerの開設、検証センターの増設、常設トレーニングセンターの設置を行ったという。では、何を差別化ポイントとして事業を展開するのか?これについて岩上氏は、「われわれの国内のシェアは10%程度で、それを踏まえた上でのわれわれ価値は、ネットアップの単一のアーキテクチャによってお客様にバリュー提供できる点だ。ネットアップのONTAPというデータマネージメントを提供することで、お客様の環境を軽く、早く、安く、高品質にできる。SDS(Software Defined Storage)をすべて兼ね備えているのがONTAPだ」と述べた。
2015年07月01日