2021年の『春原さんのうた』でマルセイユ国際映画祭のグランプリを含む3冠を獲得するなど、国内外で高く評価されている杉田協士監督。昨年の東京国際映画祭でも注目を集めた最新作『彼方のうた』が、まもなく公開を迎えます。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。眞島秀和さん【映画、ときどき私】 vol. 630映画やドラマ、舞台などで幅広い活躍を見せ、今年も主演ドラマ「#居酒屋新幹線2」や「おっさんずラブ-リターンズ-」といった話題作への出演が控えている眞島さん。劇中では、主人公の春と過去にある関わりがあった剛を演じています。そこで、現場の様子や年齢を重ねていくなかで感じる心境の変化、癒しの時間に欠かせない存在などについて語っていただきました。―杉田監督とは、以前からお付き合いがあったそうですが、今回ご一緒されてみていかがでしたか?眞島さん杉田さんとはお互いに20代の頃から一緒に映画作りをしてきましたが、杉田さんの現場はほかで味わうことのないような穏やかで優しい時間がつねに流れている印象。いつ始まったかもわからないようなとても不思議な雰囲気なので、撮影に参加した感覚もないくらいです。しばらく会えていなかった時期もあったので初日は驚きもありましたが、久々に再会したときに「こういう作品を作るところに杉田さんはたどり着いたんだな」と感慨深い気持ちにもなりました。昔を思い出してノスタルジックな気持ちになった―ということは、役作りもこれまでとは違う部分もあったのでしょうか。眞島さん僕はもともとたくさん準備していくタイプの役者ではありませんが、今回はいつも以上に「撮影現場に行くんだ」という意識をなるべく持たないほうがいいかなと。特に、普段お芝居をされていない方々にもご協力いただいて撮影した作品だったので、スッとお邪魔するような感じで行くようにしていました。―なるほど。そのなかでも印象に残っていることはありますか?眞島さん実は、撮影場所がたまたま僕が若い頃によく行っていた場所の連続だったので、それはすごい偶然でしたね。役者を目指し始めたばかりで何も進まないもどかしい時間を過ごしていた街の景色のなかにいるのは不思議でしたし、ノスタルジックな気持ちにもなりました。―本作では、悲しみを抱えている人同士が支え合っていく姿が描かれていますが、ご自身にもそういう経験や転機となった出会いなどはありますか?眞島さん人生ってそういう出来事の連続じゃないかなと思います。作品でいうならドラマ「海峡」や「なぜ君は絶望と闘えたのか」のように、自分ができるすべてを出し尽くせるような作品に節目節目で出会えていることも本当にありがたいことです。「人生は夕方が一番いい」という言葉の意味がわかった―今年で俳優デビューから25年を迎えましたが、心境の変化などはありますか?眞島さん「現場であと何回こういう喜びが味わえるのかな」とか、「両親や友達にあと何回会えるんだろう」とか、そういう感覚が強くなってきたような気がしています。これが年を重ねていくうえで起きる変化のひとつなのかなとも思いますが、そのおかげでいまは瞬間瞬間がこれまで以上に愛おしく感じるようになりました。最近は大したことじゃなくても楽しめるようになってきたので、景色も前よりきれいに見えるんですよね。これってすごく素敵なことだなと思っています。―それは47歳になったいまだからこそわかることであって、20代や30代の頃には気付けなかったと。眞島さんそうですね。そういう思いが顕著になってきたこともあって、前に朗読を担当した小説「日の名残り」のなかに出てくる「人生は夕方が一番いい」というセリフの意味もちょっとだけわかってきました。いろんなことを逆算するようになってからのほうが楽しくなってきたので、これからも目の前のことを一つ一つしっかりとやりつつ、より密度の濃いものにしていきたいなと考えています。愛犬との散歩の時間が何よりも癒し―お忙しいなかで、日々の癒しとなっている時間はどんなときですか?眞島さんそれは、仕事が終わって家に帰ってきてから行く愛犬との散歩の時間です。特にハードルの高い作品のときは本当に助けられているので、毎日「長生きしてくれ」と懇願しています(笑)。少し前に、ギネス世界記録で世界最高齢だったワンちゃんが31歳で亡くなったニュースを見て、「そこを目指そうね」って話しているところです。最近はほかにハマっていることもまったくなく、ワンちゃん一筋ですね(笑)。―そんなふうに、仕事を忘れられるような時間は大事ですよね。眞島さんあと、お散歩をしていると季節の移り変わりや近所のいろんな変化にも気付けるのがいいなと。この前も、家の近くに交番ができたので、おまわりさんにうちの子を紹介してきました。―おまわりさんにワンちゃんを紹介されたんですか!?相手は眞島さんだと気が付いていたのでしょうか…。眞島さんいや、それはないですね。ちなみに、なぜ紹介したかというと、うちの子は光る首輪をつけているんですけど、おまわりさんたちが「あの光っているのは何だ!」みたいな感じで警戒して立ち上がっているのが見えたんですよ(笑)。なので、「この色はうちの子ですよ」というのを知ってもらおうと思って、紹介しました。仕事で適当にやってきたことはひとつもない―お仕事とワンちゃん以外に、いま興味を持っていることや挑戦してみたいことはありますか?眞島さんバイトしたいなと思うことはありますね(笑)。―それは意外ですが、どんなバイトをしてみたいですか?眞島さんバーのカウンターに立ってみたりとか、飲食業がいいなと思いますね。活気のあるお店の前を通ると、威勢よく声を出しながら働いてみたいなと考えることがよくあるので。―眞島さんがいたら驚きですが、楽しそうですね。では、ご自身が仕事を続けるなかで貫いてきたことがあれば、教えてください。眞島さん特にそういうものはないですが、何に対しても本当に一生懸命やってきたつもりなので、適当にやってきたことはひとつもないはずです。それくらいじゃないかなと思います。「いまが大変でも年月がたてば大丈夫」と伝えたい―「色気がすごい俳優ランキング」で1位に輝くなど、近年はそういう観点で注目されることも増えているようですが、ご自分ではこの状況をどのように受け止めていますか?眞島さん「そう見える人もいるんだな。ふーん…」くらいの感じですね(笑)。でも、僕らの仕事というのは、作品としてのエンターテインメントを提供するだけでなく、客観的にどう見えるかを楽しんでもらうのもひとつですからね。なので、みなさんにとってそれが楽しいことに繋がっていればいいなと思っています。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。眞島さん女性だけでなく、男性にも言えることですが、20代から30代にかけては1つのターニングポイントみたいなところがあるかもしれません。でも、いま抱えている悩みや将来に対する不安というのは、ある程度年月がたったら、全然大したことじゃなかったなと思うことがほとんどです。僕にもそういう時期がありましたが、一生懸命やっているだけで何とかなりましたから。もし、プライベートで悩みがあるのなら、仕事をがんばっていればいつの間にか時間が過ぎて気にならなくなるので、「いまが大変でも大丈夫ですよ」というのを伝えたいです。インタビューを終えてみて…。大人の色気を漂わせつつ、落ち着いた雰囲気で一つ一つ丁寧に答えてくださる眞島さん。なかでも、仕事に対する真剣な表情と目尻を下げて愛犬について話されるときのギャップがとても素敵でした。本作では、眞島さんならではの存在感を放つ佇まいが印象的なので、ぜひスクリーンでご覧ください。内に秘めた悲しみにそっと寄り添う多くの言葉で語ることなく、観る者の心に訴えかける本作。杉田監督ならではの余白と余韻が生み出す、温かくて不思議な世界観に包み込まれる1本です。写真・園山友基(眞島秀和)取材、文・志村昌美ストーリー駅前のベンチに座っていた雪子に、書店員の春は道を尋ねるふりをして声をかける。春は雪子の顔に見える悲しみを見過ごせずにいたのだ。またあるときは、剛の後をつけている春。剛の様子を確かめる日々を過ごしていた。実は、春が子どもだった頃、街中で見かけた雪子や剛に声をかけた過去があったのだ。春の行動に気づいていた剛が春の職場を訪れ、春自身がふたたび雪子に声をかけたことで、それぞれの関係が動き出す。そして春は2人と過ごすうちに、自分自身が抱えている母親への思いと悲しみの気持ちに向き合っていくことに…。引き込まれる予告編はこちら!作品情報『彼方のうた』1月5日(金)よりポレポレ東中野、渋谷シネクイント、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開配給:イハフィルムズ(C)2023 Nekojarashi Inc.写真・園山友基(眞島秀和)
2024年01月04日バンダイナムコグループ公式通販サイト「プレミアムバンダイ」( )では、日本を代表するコメディアン「志村けん」の演じるキャラクター「志村けんのバカ殿様」を可動フィギュア化した『S.H.Figuarts 志村けんのバカ殿様』(9,900円 税込/送料・手数料別途)の予約受付を2023年11月17日(金)10時に開始いたします。(発売元:株式会社BANDAI SPIRITS)※商品購入ページ: S.H.Figuarts 志村けんのバカ殿様■商品特長“殿の御成り~”日本を代表するコメディアン志村けんの演じる代表的キャラクター「志村けんのバカ殿様」が可動フィギュアブランドS.H.Figuartsで登場。標準の「笑い顔」に加えて、「退屈顔」「アイーン顔」の2種類の交換用頭部が付属。白塗り顔と極太墨マユが特徴的なバカ殿の表情を、最新技術「魂のデジタル彩色」によりリアルに再現しています。また、オレンジ色と金色の羽織袴もS.H.Figuartsシリーズならではの多彩な彩色技術で表現しています。さらに開き扇子、閉じ扇子、交換用右手首4種左手首1種が付属し、組み合わせることでバカ殿のさまざまなポージングや、「アイーン」「嬉しいなぁ」「いいよなぁ」などのギャグを再現可能です。S.H.Figuarts 志村けんのバカ殿様(退屈顔)S.H.Figuarts 志村けんのバカ殿様(付属:開き扇子)■商品概要・商品名 :S.H.Figuarts 志村けんのバカ殿様( )・価格 :9,900円(税込/送料・手数料別途)・対象年齢 :15才以上・セット内容 :本体、交換用頭部2種、扇子(開き)、扇子(閉じ)、交換用右手首4種左手首1種・商品サイズ :全高約150mm・商品素材 :ABS・PVC・生産エリア :中国・販売ルート :バンダイナムコグループ公式通販サイト「プレミアムバンダイ」( )、他・予約受付開始:2023年11月17日(金)10時・商品お届け :2024年6月予定・発売元 :株式会社BANDAI SPIRITS(C)イザワオフィス (C) IZAWA OFFICE Co., Ltd.※最新の情報・詳細は商品販売ページをご確認ください。※準備数に達した場合、販売を終了させていただくことがあります。※ページにアクセスした時点で販売が終了している場合があります。※商品仕様等は予告なく変更になる場合があります。※掲載している写真は開発中のため、実際の商品とは多少異なる場合があります。※日本国外で販売する可能性があります。■「S.H.Figuarts 志村けんの変なおじさん」もご予約受付中!日本を代表するコメディアンである「志村けん」が変なおじさんの姿でS.H.Figuartsに登場!!特徴的な髪型のカツラのカラーや全身に及ぶ被服のプリントまでこだわり「志村けんの変なおじさん」を再現!交換用頭部パーツが付属し、さまざまなコントシーンに対応!バンダイナムコグループ公式通販サイト「プレミアムバンダイ」にて12月3日(日)23時までご予約受付中! ■S.H.Figuarts(エス・エイチ・フィギュアーツ)シリーズについて「可動によるキャラクター表現の追求」をテーマに、「造形」「可動」「彩色」とあらゆるフィギュアの技術を凝縮した手の平サイズのスタンダードフィギュアシリーズです。■「志村けんのバカ殿様」について日本を代表するコメディアン志村けんがコントで演じるキャラクター。1977年にTBS系『8時だョ!全員集合』、同時期にフジテレビ系『ドリフ大爆笑』内でのコントを前身として、1986年よりフジテレビ系『志村けんのバカ殿様』として単独番組の放送が開始。志村けんの代表的なキャラクターのひとつとして多くのファンから愛されている。■バンダイナムコグループ公式通販サイト「プレミアムバンダイ」とは「プレミアムバンダイ」は今ここでしか買えないメーカー公式の限定商品、アニメ・コミックなどに登場する人気キャラクターのグッズを多数取り扱っています。ガンプラなどのプラモデルやフィギュア、ガシャポン、食玩からファッションまで豊富な品揃えです。バンダイナムコグループ公式通販サイト「プレミアムバンダイ」 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年11月16日『Wの悲劇』や『ヴァイブレータ』など数多くの脚本を手掛け、『火口のふたり』では監督としても高い評価を得ている荒井晴彦さん。芥川賞受賞作『花腐し』の映画化に挑んだ最新作は、綾野剛さんや柄本佑さんをはじめとする実力派キャストたちが顔を揃えていることでも反響を呼んでいます。そこで、ヒロインを務めたこちらの方にお話をうかがってきました。さとうほなみさん【映画、ときどき私】 vol. 615ドラマ『六本木クラス』や『あなたがしてくれなくても』、『30までにとうるさくて』、映画『愛なのに』など、さまざまな話題作への出演が続いているさとうさん。「ゲスの極み乙女」のドラム担当ほな・いこかさんとしても知られていますが、俳優としては「さとうほなみ」の名義で活動されています。本作では、ピンク映画の監督を務める栩谷と脚本家志望の伊関というふたりの男が愛した女優の祥子役を見事に演じ切り、注目を集めているところです。今回は、現場で感じたことや日常生活で欠かさずしていること、そしていまの心境などについて語っていただきました。お名前を聞いたとき、絶対にご一緒したいと思った―脚本から映像化の想像ができなかったにもかかわらず、この作品には強く惹かれていたそうですが、どういうところに魅力を感じましたか?さとうさん最初に脚本を読ませていただいたのは、オーディションのとき。肝となる2つのシーンだけだったので原稿用紙2枚分のみでしたが、物語の概要を聞いただけですでに面白いと感じていました。なかでも一番想像がつかなかったのは、ラストシーン。脚本には山口百恵さんの「さよならの向う側」の歌詞がすべて書いてあるだけで、どうなるのかが何も書かれていませんでした。でも、これだけ言葉を大事にする荒井監督がそうするということは、ここに『花腐し』にとっての何かしらの意味が絶対にあるんだろうなと。そういう気持ちで挑んでいましたが、現場ではさらにいろんな偶然や監督の思いつきなどもそこに合わさっていったので、結果的に激エモな終わり方になったと思っています。―ぜひ、観客のみなさんにもそのエモさを感じていただきたいですね。そして、本作では綾野さんと柄本さんと共演できるというのも出演を熱望した理由のひとつだったのではないかなと。さとうさん荒井晴彦監督、綾野剛さん、柄本佑さんというお三方のお名前を聞いたとき、絶対にご一緒したいと思いました。取材などで綾野さんが「柄本さんのファンだった」とおっしゃっているのを聞きましたが、私こそずっと前からおふたりのファンですから!といっても、まだご本人たちには伝えていないので、この記事で知っていただけたら本望です(笑)。現場にいてくれるだけで心強かった―それは喜ばれると思います。実際にご一緒されてみて、現場での様子についても教えてください。さとうさん綾野さんはお芝居に対してストイックで、本当にいろんなことをよく考えていらっしゃると感じました。それだけでなく、周りのキャストやスタッフのこともしっかりと見ていてすごく気を遣ってくださいますし、場の雰囲気を大切にされる方でもあるので、いてくださるだけで心強かったです。今回は、濡れ場やちょっとしたアクションもありましたが、カラダが交わることや動かすことに関する技術的な面を自ら監修してくださったのもすごいなと。「自分に委ねてくれたら受け身を取るから大丈夫だよ」と言っていただいたので、そういう面でも助けていただきました。―柄本さんについて、印象に残っていることはありますか?さとうさん本当にナチュラルな方なんですが、器の大きい方でもあると感じました。カメラの回っていないところで話していたと思ったら、いつの間にか役に入っているので、ご自身から役にシフトチェンジしているところを見せないようにしているところも素晴らしかったです。仕事選びの基準は、大変でも心を動かされたとき―お仕事選びについては、ご自身がキュンとするかどうかを大事にされているそうですが、本作にもそういう感覚はあったのでしょうか。さとうさん普段、私のなかで基準となっているのは、そこに挑むのがどれだけ自分にとって大変なことだとわかっていても心を動かされたとき。『花腐し』に関しては、「キュンキュンキュンキュン…」くらい最高にキュンとしました。―今回は役柄上、肌を出されるシーンが多かったですが、色気があってとても美しかったです。演じるうえで、意識されたこともありましたか?さとうさん特に何かを気を付けていたわけではありませんが、みなさんのお目汚しにならない程度にはしたいなと(笑)。ただ、後半はピンク映画を生業としている女優として描かれていたので、「肌を人に見せることを意識するとはどういうことか」というのは考えていたかなと思います。いつ仕事が来てもいいようにしているピンク映画の女優としてのプライドを持っているようにしました。―なるほど。非常にお肌もキレイなのですが、意外にも美容にはあまり興味がないとか。とはいえ、ケアとして何かされていることもあるのでは?さとうさん毎日欠かさず、赤ワインを飲んでいます(笑)。というのも、マッサージを担当していただいている方に「手足は冷え切っているし、腸の活動も悪いけど、あなたは赤ワインとの相性が非常にいい」と言われたからです。自分にとって、年齢の分岐点となったのは25歳―それはお酒好きにはうれしいアドバイスですね。普段、どのくらい飲まれていますか?さとうさん詳しくは言えませんが、“適量”ということにしておいてください(笑)。―わかりました。30代もまもなく折り返しですが、30代ならではの変化や楽しみ方みたいなものがあれば教えてください。さとうさんあまり変わっていないような気もしますが、逆に代謝が良くなりました。―それはすごいですね!赤ワインの効果でしょうか…。さとうさんそうですね。もしかしたら、体温が上がっているのかもしれません(笑)。ちなみに、気持ちの面で言うと、私にとって年齢の分岐点は25歳のとき。「あと5年で30歳だからいろんな決断をしなきゃ」みたいな焦りがありました。でも、27歳くらいで「多分もう変わらないな」と気が付いてから、30歳に対する恐れを乗り越えた気がします。ただ、そう考えると次にそれが来るのは35歳なのかなと思ったりもしますが、いまのところ不安や怖さはありません。というのも、いまの40代の方ってすごく若々しくて、みなさん楽しんでいらっしゃるので、自分もそういう風に生きていけるなら年齢はあまり関係ないなって。ただ、来年35歳になったときにめっちゃ恐れているかもしれないので、そのときにまた聞いてください(笑)。観客にしか見えない部分を最後まで楽しんでほしい―ぜひ楽しみにしております。それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。さとうさんこの作品はとても面白い構成の映画となっていて、登場人物たちの関係性は観客にしか見えない部分があるので、そこを楽しみつつ最後までしっかりと観ていただけたらうれしいです。あとは、みなさんにも赤ワインを推奨したいですね(笑)。というのは置いておいて、最近ハマっているのは、朝歩くこと。「朝に日光を浴びるといい」とよく言われていますが、それって本当なんだなと実感しています。私の場合は、音楽を聴きながら何も考えずに歩き、近所の神社に挨拶して帰ってくるという流れですが、それだけも一石二鳥どころか一石三鳥くらいになっているような気がするので、オススメしたいです。インタビューを終えてみて…。飾らない人柄と弾ける笑顔が魅力的なさとうさん。ユーモアたっぷりのお話にも、終始笑わせていただきました。劇中では、全身全霊で役と向き合っているのがひしひしと伝わってくるほどの熱演を見せていますので、ぜひそちらにも注目してみてください。切なさに胸を締め付けられる現在と過去が交錯するなかで、ふたりの男とひとりの女が繰り広げる激しい愛の物語を描いた本作。朽ちてなお純粋さを失わない愛の姿は、いつまでも降り続ける雨のように、観る者の心に突き刺さるはずです。写真・園山友基(さとうほなみ)取材、文・志村昌美ストーリー斜陽の一途にあるピンク映画業界で監督を務めている栩谷。5年も映画を撮っていなかったためにアパートの家賃を支払うことにも困り、制作会社の事務所に居候させてもらっていた。梅雨のある日、栩谷は大家からあるアパートの住人に対する立ち退き交渉を頼まれる。アパートを訪ねた栩谷は伊関という名の男と揉み合いになるが、部屋に入って話し始めると、伊関はかつてシナリオを書いていたことを栩谷に明かす。そして、映画を夢見たふたりの男の人生は、女優・祥子との奇縁に繋がっていくのだった…。引き込まれる予告編はこちら!作品情報『花腐し』11月10日(金)テアトル新宿ほか全国公開配給:東映ビデオ(C)2023「花腐し」製作委員会写真・園山友基(さとうほなみ)
2023年11月09日この秋も注目の映画が目白押しですが、そのなかでも豪華キャストが集結していることで話題となっているのは、石井裕也監督の最新作『愛にイナズマ』。そこで、見どころについてこちらの方々にお話をうかがってきました。池松壮亮さん & 若葉竜也さん【映画、ときどき私】 vol. 608映画監督という夢をデビュー目前で奪われた女性が、10年近く音信不通の家族とともに繰り広げる反撃の物語を描いた本作。主人公の兄で長男の誠一を池松さん、次男の雄二を若葉さんが演じています。今回は、初共演で感じたお互いへの思いや現場での忘れられない出来事、そして自身にイナズマが走った瞬間などについて語っていただきました。―まずは、おふたりが兄弟役として決まったときのお気持ちを教えてください。池松さんこの役が若葉くんに決まったと聞いてうれしかったんですが、実年齢は僕がひとつ下で、「初めましてで家族になれるかな?」といったことをいろいろと考えました。でも、人間的な要素を隠し持っているような役に見事な説得力を注ぎ込まれていて、この家族のバランスも含め、これ以上ないキャスティングだったと思っています。―これまで共演がなかったのが不思議なくらいですが、ようやく初共演ということで反響は大きかったのではないでしょうか。若葉さん今回は各所から「ついにこの2人の共演が見られる」と言われて、そんなに待望してくださっていたんだなと初めて感じました。僕の周りには池松くんのファンが多いというのもありますが、こんなにもみんなが騒いでくれるとは思っていなかったです。池松さんそういえば(仲野)太賀も「どうなるんでしょうね!」と言っていました(笑)。若葉くんとの兄弟は面白くなっている自信がある―完成した作品を観て、太賀さんからはどんな反応がありましたか?若葉さん「最高でした!」と笑っていたので、うまくいったのかなと思っています。池松さん(松岡茉優さん演じる)花子も含めて、とても面白い兄弟になっている自信があります。―実際、共演してみてお互いへの印象に変化はありましたか?池松さん初めての共演で兄弟役というのはあまりないご縁だと思っているので、ほかの共演者にはない、特別な感情を抱いています。作品にともに向き合い、折村家という物語をともに信じた“共犯者”として特別な思いがありますし、撮影期間中、素晴らしい俳優さんだなと改めて感じる日々でした。若葉さん以前から池松くんの作品はたくさん観ていましたし、もともと好きでしたけど、池松くんってちょっと鋭利なイメージがあったんです。なので、こんなに穏やかでチャーミングだとは思いませんでした。あとは、現場の音も人の話もよく聞いていて、すごく敏感な方です。池松くんの名シーンには、周りを気にせず笑ってしまった―本作では松岡茉優さん、窪田正孝さん、佐藤浩市さんを含む5人のシーンが多かったと思いますが、現場の様子はいかがでしたか?池松さんカメラが回っているときもいないときも、そう決めたわけではなく自然とみんなが同じ場所で同じ時間を過ごしていました。そうやって過ごしていることで互いの存在を認識していくようなプロセスがありました。まるで本当の家族のような真実味を生むということは簡単なことではありませんが、「この家族で行けるところまで行こう!」という心の団結ができていたと思います。この物語のなかで壊れていた家族がもう一度家族をやり直すように、さまざまな家族行事を一つ一つ撮影しながら家族のようなものになっていく感覚がありました。―そのなかでも撮影中の印象的なエピソードなどがあれば、お聞かせください。若葉さん僕は池松くんがちっちゃいマスクをつけているシーンですね。本当にいい顔してるんですよ(笑)。池松さんいやいや、若葉くんも同じマスクしてたでしょ!若葉さんでも、池松くんの場合は、マスクをつけていないときの顔が透けて見えるんです。あれは本当に名シーンですね。こういうことはほとんどないんですけど、試写を観たときに「周りを気にせずにここまで笑ったのは何年振りだろう」と思ったほど笑いました。池松さん石井さんのうまいところですよね。ものすごいアクセルを踏んでおいて、そこから思いっきり急ハンドルで笑いに転調する。あのシーンは確か台本にはありませんでしたが、現場でやっぱり撮りたいとなって、急遽ゲラゲラ笑いながら撮影しました(笑)。いまの時代は誰もが演じながら生きている―ぜひ、みなさんにも注目していただきたいですね。劇中に「人はみな俳優でありつねに演じている」というようなセリフがありましたが、職業柄おふたりにも普段からそういう部分はあるのではないかなと。素の自分でいられるのはどんなときですか?若葉さん僕は、もはや本当の自分が何なのかわからなくなっているかもしれませんね(笑)。地元の友達といるときは限りなく素に近いですけど、そんなの1年に何時間あるんだろうというくらい。素に戻っているかどうかさえわからなくなっている瞬間は、たくさんある気がしています。池松さん確かに、難しいところですよね。“本当の自分”と言うけれど、結局は全部自分であるとも言えますから。ただ、いまの時代は個人と大多数の社会が密接に繋がっていて、生き延びていくためにあらゆる処世術が必要です。結果誰もがアイデンティティ難民に陥ってしまうようなところがあります。そもそも人は自分を演じ、役割を演じる生き物だと思いますが、それが過剰になっている、そうしなければ生きていけないような世の中になっていることの危機感は感じます。そういったあらゆる欺瞞と嘘にまみれてしまったものを、雷やカメラや、家族やマスクを使って、人間のありのままの姿を暴いてみるというのがこの映画の真の試みだと思っています。撮影中もイナズマが走るようにビリビリきていた―『愛にイナズマ』というタイトルのように、ご自身の人生においてイナズマが走った出来事があれば、教えてください。池松さん若葉くんはもちろん、浩市さん、松岡さん、窪田さんとこの作品で出会えたこと、それぞれの奮闘と勇姿に撮影中ビリビリきていました。若葉さんそれに比べて僕はバカみたいな話になっちゃうんですけど、ラーメンがすごく好きで、本当においしいラーメンを食べると、ほっぺがビリビリするんです。池松さんほっぺにイナズマだね(笑)。若葉さん最近もほっぺにイナズマが走る瞬間を蒲田で味わいました。好きなものに理由は付けないようにしている―また、本作を通して改めてご家族のことを考えたのではないかなと思うのですが、ご自身にとって家族の存在とは?池松さん今回のように疑似家族を作りあげるというのは、意識的にも無意識的にも自分の記憶や人生を持ち寄るような行為でもあるので、全然会えていない妹のことや、いつかいなくなってしまうであろう父親のことなど、考えていたと思います。本作では、花子がすべてを信じられなくなったときに、最後の頼みの綱としてダメな家族に会いに行き、自分を肯定してもらえる場所を取り戻すという構図ですが、仮に家族でなくてもそういったことがこれからの時代も当たり前の希望としてあってほしいなと思います。若葉さん僕は生まれ育った場所が大衆演劇だったので、本番が始まると父親は師匠になり、兄弟はライバルになるという環境でした。なので、たまに家族で外食に行くと照れくさくて…。そういう居心地の悪さみたいなものをケンカのシーンを撮影しているときに思い出しました。池松さん自分の家族が好きだということに理由があるかと言われると難しいですが、そういう理屈を超えたところに本来は生きる指針があるのかなとも思います。若葉さん僕も好きなものに理由があるほうが少ないかもしれません。たとえば、人に対して「こういう人だから好き」と理由を付けちゃうと、「もしその人がそうではなくなってしまったら…」と考えてしまうので。逆境だらけの主人公を見て奮い立ってほしい―では、おふたりにとって仕事のモチベーションとなっているものと言えば?若葉さん僕は、興味ですね。自分が興味のないことに時間をあまり割きたくないという気持ちは強いほうだと思います。池松さん若葉くんは興味のあることにしっかりと責任を取っているけど、それを保ち続けるというのは生きることと同じくらい難しいことですよね。僕のモチベーションは、月並みですが夢かなと思います。―最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。池松さんこの映画が観てくれた方への大きなエールになったらうれしいです。主人公、花子の奮闘に奮い立ち、イナズマのような映画体験をしてもらえたら幸せです。明日への逆転ファミリーラブコメディ、愛と勇気と優しさについての映画です。同時代を共に生きる、逆境だらけの誰かの人生にイナズマが届くことを願っています。若葉さん僕もまさに池松くんと同じような気持ちでこの映画と向き合い、作っていきました。ぜひ、そういう思いを感じていただきたいです。インタビューを終えてみて…。今回が初共演だったとは思えないほど、同じような空気感を漂わせていた池松さんと若葉さん。お互いをリスペクトする気持ちがあるのはもちろん、家族として過ごした濃密な時間があったからこそ、おふたりの間には居心地の良さがあるようにも感じました。次はどのような役柄で再び共演を果たすのかが楽しみなところです。ラストに待ち受けているのは、痺れるほどの大きな愛!奪われたものを自らの手で取り返そうと立ち上がる主人公たちの姿にも、俳優陣が繰り広げる演技バトルにもイナズマが走る本作。理不尽な現実に直面し、誰もがマスクの下に本音を隠して生きてきた日々を経験したいまだから心に刺さる1本です。写真・園山友基(池松壮亮、若葉竜也)取材、文・志村昌美池松壮亮 ヘアメイク・FUJIU JIMI若葉竜也 ヘアメイク・FUJIU JIMIスタイリスト・Toshio Takeda (MILD)トップス(08sircus 08サーカス/08book 08ブック TEL:03-5329-0801)、パンツ(NEONSIGN ネオンサイン TEL:03-6447-0709)ストーリー長年の夢だった映画監督デビュー目前で、すべてを奪われた花子(松岡茉優)。イナズマが轟く中、反撃を誓った花子は、運命的に出会った恋人の正夫(窪田正孝)とともに、10年以上音信不通だった家族のもとを訪ねる。妻に愛想を尽かされた父・治(佐藤浩市)、口だけがうまい長男・誠一(池松壮亮)、真面目ゆえにストレスを溜め込む次男・雄二(若葉竜也)。そんなダメダメな家族が抱える“ある秘密”が明らかになった時、花子の反撃の物語は思いもよらない方向に進んでいく…。衝撃が走る予告編はこちら!作品情報『愛にイナズマ』10月27日(金)、全国公開配給:東京テアトル(C)2023「愛にイナズマ」製作委員会写真・園山友基(池松壮亮、若葉竜也)
2023年10月26日1993年にヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞を受賞したのち、配給された20か国以上の地域で熱狂的な支持を集めつつも日本で劇場公開されなかった1本の映画。今回ご紹介するのは、30年のときを経てついに日本初公開となるオーストラリア発の衝撃作です。『悪い子バビー』【映画、ときどき私】 vol. 606「ドアの外に出れば、汚染された空気の猛毒で命を落とす」という母親の教えを信じ、暗く汚い部屋に閉じ込められていたバビー。身の回りのすべてを母親が管理し、ただそれに従うだけの日々を35年間も続けていた。ある日、何の前触れもなく“父親”だと名乗る男が突然現れ、その出来事をきっかけにバビーの人生は動き出す。言葉、音楽、暴力、宗教、美味しいピザといった刺激に満ち溢れた外の世界で、純粋無垢なバビーは大暴走。誰もが彼の自由で荒々しいスタイルに巻き込まれていくことに…。公開された国のなかでも、ノルウェーでは年間興行収入第2位にランクインするほどの大ヒットを記録したこともある本作。そこで多くの観客を虜にした理由について、こちらの方にお話をうかがってきました。ロルフ・デ・ヒーア監督オランダで生まれたのち、オーストラリアに移住し、1984年に映画監督デビューを果たしたロルフ監督。これまでに“モダン・ジャズの帝王”マイルズ・デイヴィスが出演した『ディンゴ』や『クワイエット・ルーム』などを手掛けて、高く評価されています。今回は撮影の裏話や約40年のキャリアで大事にしていること、そして忘れられない日本でのエピソードなどについて語っていただきました。―30年という長い年月を経て、ようやく日本で劇場初公開されることになりましたが、いまの時代に本作が日本の観客に届けられることをどう感じていますか?監督この作品に関しては、これまでに次から次へといろんなことが起きているので、ずっと驚かされ続けているんですよ。今回日本で公開されるということで、やっとみなさんの心の準備ができたのかなと思っています。やはり映画館で観るのがベストだと思うので、うれしいことですね。―近年、日本でも「毒親」という言葉が頻繁に使われるようになっているので、そういう意味でも本作には現代に通じる題材が描かれていると思いますが、改めてご自身で振り返ってみてどのように感じていますか?監督オーストラリアでの公開からちょうど30周年ということで、数か月前に上映があり、僕もまた観客と一緒に鑑賞したんです。そのときは、約半分がすでに鑑賞済で、残りが初めての観客でしたが、そういう方々は「こんな作品が存在していたのか」とすごく驚いてくれました。上映後に質疑応答を行った際、質問の内容を聞いていてもこのテーマがいかに普遍的でタイムレスなものだったのかと感じることが多かったです。作品によっては時代に合わないものもありますが、この作品はずっと観客に響き続けているように思っています。子ども時代におけるダークサイトを描きたかった―ちなみに、ご自身はバビーとは違って非常に幸せな子ども時代を過ごしたそうですが、そんな監督がこういった物語を描こうと思ったきっかけは何ですか?監督映画を作るときはいろんな理由が重なっているものですが、もともとは子ども時代におけるダークサイトを描いた映画を作りたいというのがありました。というのも、僕自身の幼少期は素晴らしいものでしたが、そういう機会を与えられない子どもがたくさんいることを周りから見聞きしていたからです。ただ、子どもを主人公にした映画を作りたくはなかったので、バビーのように“大人だけど子ども”というキャラクターを形成することに。そのほうがよりダークな部分に足を踏み入れることができると考えたのです。―なるほど。先ほど「周りから見聞きしていた」とおっしゃっていましたが、バビーにはモデルのような方もいたのでしょうか。監督特にそういった人物はいないですが、記憶に残っているのは、シドニーにある友人の家に遊びに行ったときのこと。庭にいると、隣の家から母親が自分の娘を棒のようなもので叩いている音と声が聞こえてきました。でも、その娘は「ママ!愛してるよ!」とずっと泣き叫んでいたんです。2人の姿を見たわけではなかったのですが、そのときのことが強烈な印象として自分のなかに残っていたのかもしれません。実際、この映画ではバビーと母親のシーンではそれがある種の“フィルター”のようになっていたように感じています。撮影監督を変えることでいい影響が作品に出た―また、本作では合計32名の撮影監督が参加したというのが驚きですが、最初から複数で行く予定だったのか、それとも撮りたい映像を追求していったらそうなったのでしょうか。監督この映画を作りたいなと思ったとき、まだ予算がなかったので、フィルムを買うために自分で稼ぎ、1本購入したら撮影しよう考えていました。ただ、その方法だと1人のカメラマンのスケジュールをずっと押さえることができないと気がついたんです。そこで、「屋内に閉じ込められているバビーが外の世界で経験することはすべて初めて」という設定にすればいいんだと思いつきました。そうすれば、違うカメラマンが撮っても成立するのではないかなと。同じカメラマンを確保できないことを大きな問題とするのではなく、逆に面白いと思うことにしました。―まさに発想の転換ですね。実際、それによってどのような効果が得られたとお考えですか?監督脚本にいろんな視点を入れることができましたし、視覚的にもいい影響が出たと感じています。ほかにも大きかったのは、違う撮影監督が入るたびに、新しいエネルギーを現場に持ち込んでくれたこと。そういうところも含めて、いまはよかったなと思っています。日本の映画からは深く影響を受けている―また、バビーの耳に届く音の刺激をリアルに再現する「バイノーラルサウンド録音」を採用するなどしていたそうですが、そのほかにもこの作品ならではのこだわりと言えば?監督今回、冒頭の30分はスタジオ内にあるセットで撮影をしていますが、バビーの父親が登場して以降はそのセットを25~30%大きくしています。これは、バビー自身の世界が少し広がったことを表したかったからです。といっても、おそらく観ている方は言われないとわからないくらいかもしれませんが、それを肌で感じてもらえたらいいなと。最初の息が詰まるような閉塞感との違いをそういった演出で表現しました。―非常に興味深い点なので、ぜひ意識して観ていただきたいですね。それでは、まもなく公開を迎える日本とのエピソードがあれば、お聞かせください。監督日本には2009年に行われたイベントに参加するために滞在したことがありますが、もともと映画の面でも深く影響を受けていたこともあって、素晴らしい国だなと感じました。なかでも印象的だったのは、黒澤明監督の『デルス・ウザーラ』を好きな作品としてスピーチで紹介したときのこと。イベントの参加者のなかに黒澤組のスタッフだった方がいて、なんと黒澤監督と写っている写真をくれたんです。これはいまでも大切に部屋に飾っています。心から情熱を感じる題材であることが大事―素敵な思い出ですね。今回はオンライン取材ということもあり、監督のお部屋の壁にびっしりと映画のアイデアとなるメモが貼り付けてあるのが見えるのですが、いくつになっても尽きない創作意欲には感銘を受けます。映画作りにおいて大切にしていることはありますか?監督僕の場合は、まず映画が好きというのがありますが、題材に心から情熱を感じられないとダメなんですよ。脚本を書くことから始まり、映画作りは大変な作業も多いですが、だからこそ楽しめる方法を見つけることが大事なのではないかなと。そうすれば、作品の質も上がると考えています。ちなみに、僕にとってはこうしてどんどんメモを書いていくほうが簡単で、リラックスできるやり方なんです。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。監督映画というのは、何かしらのカタチで人の心を動かすものでなければいけないと僕は思っています。同じ作品でも、人によっては感動する場合もあれば、すごく笑える場合もあるし、面白くないと感じる場合もあるかもしれません。そんなふうにたとえ正反対のリアクションだったとしても、観客にとってはいいことだと考えています。というのも、いまの私たちは現代社会のなかでそれだけの強い感情を味わうことが少なくなっているからです。『悪い子バビー』に関しては、自分の作品ではありますが、感情的な美しさを持っていると自負しているので、たとえ一部分だけでもその美しさを感じてもらえたらうれしいなと思います。待ち受けるのは、唯一無二の映画体験!30年が過ぎても色褪せることない衝撃を観客に与え続け、「映画の常識を覆した」とも言われている本作。想像を上回る異色作は、驚きとまさかの感動で観る者の心を揺さぶること間違いなしです。取材、文・志村昌美刺激的な予告編はこちら!作品情報『悪い子バビー』10月20日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー配給:コピアポア・フィルム️(C) 1993 [AFFC/Bubby Productions/Fandango]
2023年10月17日バンダイナムコグループ公式通販サイト「プレミアムバンダイ」( )では、日本を代表するコメディアン「志村けん」の演じるキャラクター「志村けんの変なおじさん」を可動フィギュア化した『S.H.Figuarts 志村けんの変なおじさん』(9,900円 税込/送料・手数料別途)の予約受付を2023年9月29日(金)10時に開始いたします。(発売元:株式会社BANDAI SPIRITS)※商品購入ページ: S.H.Figuarts 志村けんの変なおじさん▲S.H.Figuarts ボディちゃん -スポーツ- Edition DX SET (Gray Color Ver.)、S.H.Figuarts ボディくん -スポーツ- Edition DX SET (Gray Color Ver.)は別売りです。■商品特長『このおじさん変なんですー!!!』日本を代表するコメディアン志村けんの演じる代表的キャラクター「志村けんの変なおじさん」が可動フィギュアブランドS.H.Figuartsで登場。S.H.Figuartsならではの可動により、「変なおじさん」のヘンテコな踊りをはじめ、さまざまなポージングが可能です。さらに通常の頭部に加えて「そぉですぅ顔」「だっふんだ顔」の交換用頭部、「アイーン用右手首」を含む左手首2種右手首4種の交換用手首が付属し、志村けんの往年のギャグを再現可能です。■商品概要・商品名 :S.H.Figuarts 志村けんの変なおじさん( )・価格 :9,900円(税込)(送料・手数料別途)・対象年齢 :15才以上・セット内容 :本体、交換用頭部2種、交換用左手首2種右手首4種・商品サイズ :全高約150mm・商品素材 :ABS・PVC・生産エリア :中国・販売ルート :バンダイナムコグループ公式通販サイト「プレミアムバンダイ」( )、他・予約受付開始:2023年9月29日(金)10時・お届け日 :2024年4月発送予定・発売元 :株式会社BANDAI SPIRITS(C) イザワオフィス※準備数に達した場合、販売を終了させていただくことがあります。※ページにアクセスした時点で販売が終了している場合があります。※商品仕様等は予告なく変更になる場合があります。※掲載している写真は開発中のため、実際の商品とは多少異なる場合があります。■S.H.Figuarts(エス・エイチ・フィギュアーツ)シリーズについて「可動によるキャラクター表現の追求」をテーマに、「造形」「可動」「彩色」とあらゆるフィギュアの技術を凝縮した手の平サイズのスタンダードフィギュアシリーズです。■志村けんの変なおじさんについて日本を代表するコメディアン志村けんがコントで演じるキャラクター。1987年11月にフジテレビで放送されたバラエティ番組『志村けんのだいじょうぶだぁ』第1回で登場。志村けんの演じる代表的なキャラクターのひとつとして多くのファンから愛されている。■バンダイナムコグループ公式通販サイト「プレミアムバンダイ」とは「プレミアムバンダイ」は今ここでしか買えないメーカー公式の限定商品、アニメ・コミックなどに登場する人気キャラクターのグッズを多数取り扱っています。ガンプラなどのプラモデルやフィギュア、ガシャポン、食玩からファッションまで豊富な品揃えです。バンダイナムコグループ公式通販サイト「プレミアムバンダイ」 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2023年09月29日連日続く暑さによって心身ともに疲れがたまってくる時期ですが、そんなときにオススメの1本は、親子の愛に心が温まると話題の映画『高野豆腐店の春』です。今回は、現在公開中の注目作についてこちらの方々にお話をうかがってきました。藤竜也さん & 麻生久美子さん【映画、ときどき私】 vol. 595豆腐屋を舞台に描かれている本作で、職人気質の頑固な父・高野辰雄を演じる藤さんと、明るくて気立てのいい娘・春を演じている麻生さん。日本映画界に欠かせないおふたりが共演するのは、実に26年ぶりとなります。そこで、お互いに現場で感じていたことや役作りのこだわり、そして長年のキャリアにおけるそれぞれの転機などについて語っていただきました。―今回、藤さんは三原光尋監督からシナリオが送られてきた際、その2日後には監督のもとに届くように速達でお戻しされたほど出演を即決されたそうですね。藤さん三原監督とは三度目になりますが、20年ほどかけて3本も主演作を作ってくれるなんてありがたいことですし、お礼は早いほうがいいですから(笑)。最初はいつ撮れるかわからないということでしたが、それでも「待ちます」と伝えました。―麻生さんにとって、出演の決め手となったものは何ですか?麻生さんそれは、藤さんです。もちろん脚本もすごくおもしろかったですが、私はいつも誰とお仕事ができるかで選ばせていただいているので、今回は藤さんとご一緒できるからお受けしました。藤さんいやー、うれしいですね!麻生さんとは一緒にいるだけで呼応し合えた―藤さんも「麻生さんの演じる春だから心が動いた」とおっしゃっていますが、現場で麻生さんとのやりとりで忘れられない瞬間といえば?藤さんたくさんありますよ。やっぱり人には合う合わないがありますが、麻生さんとは一緒にいるだけで呼応し合うことができました。「娘がいたらこんな感じなんだろうな」と思ったくらいです。―26年ぶりの共演で、麻生さんは藤さんの背中から学ぶこともあったのではないでしょうか。麻生さん今回は、改めて「初めまして」の気持ちでご一緒させていただきましたが、藤さんがとにかくかっこよくて…。ご本人の前で言うのは恥ずかしいですが、それでいてとてもチャーミングな方でもあるんですよね。本当にすごい役者さんだと思いましたし、いろんな藤さんを見せていただきました。―本物の親子のような息の合ったやりとりが印象的でしたが、アドリブなどもありましたか?麻生さん基本は台本通りですが、ときには藤さんがご自身のアイディアやアドリブを入れていることもありました。藤さんたとえば、商店街を2人で歩いているシーンでは鼻歌を用意していきましたが、はじめは「どんぐりころころ」だったのを「ずいずいずっころばし」に変えてみたことも。自分でもなんでそうなったのかはわからないけど、何となくそれがいいかなと思ったんです。演じるなかで、辰雄が春といる時間をどれだけ大切にしているのかをひしひしと感じていました。麻生さん私は、そういうところもすごく好きでしたね。想像とは違った藤さんのお芝居が見られて楽しかった―親子の関係性を象徴する素敵なシーンですよね。藤さんは職人の役を演じるのがお好きということで、これまでにさまざまな職人を演じられてきましたが、本作の豆腐屋に関してはどのような準備をされましたか?藤さん今回はあまり時間がなかったので、ある豆腐屋のお店を借りてそこのお父さんに2日間ほど教えてもらいました。麻生さんそれだけで長年やっているような空気感を出せるのが、本当にすごいですよね。私もお豆腐屋さんで作業を見せていただきましたが、大きな鍋のかき混ぜ方やにがりを入れるタイミングなど、思っていた以上に大変だということがよくわかりました。―藤さんはいつも脚本にはないキャラクターの背景もご自身でかなり細かく考えられるそうですが、辰雄はどんな人物として分析されましたか?藤さん今回も、これまでと同じように役のプロファイリングを自分なりにしました。脚本には豆腐屋さんになる前に造船所で働いていたと書かれていましたが、そのほかに思い浮かんだのは、「この人はきっと橋の工事などをしていて、高いところで働いていたんだろうな」とか「小学校はここに通っていたかな」とか。若いときに奥さんとどんな話をしていたかまで想像してドキドキしていましたが、そんなふうに物語と関係ないことで遊ぶなかでいろいろと思いついてしまうんですよね。麻生さん本当にすごいことです。そういうお話を聞くと、私は何もしていないんじゃないかと思ってしまいますが、私が一番大事にしているのは脚本から何を感じ取るか。そのうえで、現場に行ったときに自分がどう感じるかを大切にしたいなといつも考えています。―そういう意味では、藤さんとご一緒されることで予想しない感情が出てくることもあったのでは?麻生さんはい、いっぱいありました。というのも、藤さんは私が想像していたお父ちゃんとは違うお芝居をされることが多かったので。でも、それがすごく魅力的だと感じました。思っていたよりも可愛かったり、怖かったりするので、楽しかったです。「春が来た!」と感じる瞬間とは?―本作のタイトルにある「春」は、親子2人に恋が訪れる意味の春であり、監督にとってはまた映画を撮るチャンスを得られたという意味の春でもあるそうですが、最近おふたりにとって「春が来た!」と感じるほどうれしかった出来事はありましたか?麻生さん6歳になった下の子が剣道をしていますが、3歳で始めた頃は体育館で寝転がっているだけでほとんど何もしていなかったのに、最近すっかり形になってきたので、いまはそれがとにかくうれしいです。「春が来た」と言えるほど大きなことではないかもしれないですが、もうすぐ試合もあるので感慨深いなと思って見ています。藤さん私は、毎朝起きるたびに春ですよ!ちゃんと目覚められるだけでありがたいです(笑)。―以前、ananwebでお話をおうかがいした際に、奥さまと寝る前に握手するのが習慣だとおっしゃっていましたが、それも続けていらっしゃいますか?藤さんコロナ禍前は握手でしたが、最近はグータッチになりました。麻生さんいいですね!―もともとは奥さまに触れたいというお気持ちから始められたそうですが、いまでは毎日しないと寝つきが悪くなってしまうほどだとか。藤さん年齢的に、翌日どちらかが目覚めない可能性もありますからね(笑)。なので、「おやすみ」と言ってグータッチをしています。―本当に奥さまを大切にしていらっしゃるのが伝わってきます。藤さん年を取ると自然とそうなりますよ。若いときはよそ見もしますが、そういう時間はもう終わりました(笑)。いまは、妻一筋です。麻生さんあはは!素敵すぎます。役者をやめたいと思ったことはない―今年は藤さんにとってデビューから60周年となりますが、これまでを振り返ってみて、苦しかった時期などもありましたか?藤さんやめたいと思ったことは、ありません。というのも、飽きちゃいけないと思って、あえてそんなにたくさん仕事してこなかったんですよ。―若いときから作品の数をご自身でコントロールするというのは、なかなかできないことだと思いますが…。藤さんあんまりやりすぎると、当たり前になってありがたみを感じられなくなってしまいますから。それに、そのほうがつねに新鮮なんですよ。待ちに待ってから脚本をもらうと、読むだけで「ありがたい!」と興奮してきます。麻生さんいま、すごくいいヒントをいただいた気がします!藤さんいやいや、そんなに仕事がこなかっただけですよ。それに、若いときは遊びやよそ見で忙しかったので…。麻生さん(笑)。『時効警察』で新しい世界があると知った―麻生さんもデビューから30周年が近づいてきましたが、これまでご自身が大切にしてきたことは?麻生さんもうそんなになるんですね。何十周年とか考えたことないですし、いままで自分が何本の作品に出たかもわかっていないくらいなんです。なので、気がついたらここまで来た感じではありますが、これからも1本1本大切にやっていきたいなとは思っています。―ここまで続けてこれた原動力になっていたものといえば?麻生さん実は、私は20代半ばにやめたいと思っていた時期がありました。それを乗り越えてのいまですが、そんなときにドラマ『時効警察』に出会って、「こんな新しい世界がまだあったのか!」と知ることができたのが大きかったなと。そこでお芝居の奥深さや難しさ、そしてワクワクする気持ちを改めて感じられたので、「自分の限界を勝手に決めてはいけない」と反省して、そこから改めてスタートした感じです。藤さん僕も同じく20代半ばくらいの頃、行き詰っていて何をやっていいのかわからなかったことがありますよ。―そこで突破口になった出来事などがあったのでしょうか。藤さん「このままじゃダメだな」と思っていたときに、周りで評価されていた監督に「僕を使ってください」とお願いしたんです。そしたら「君には使いたいと思わせるものがないんだよな」と。でも、自分でもわかっていたので、そこから「“ない”ってなんだろう」「“ある”ってなんだろう」と役者っぽく悩み始めたのがきっかけです。生きていく楽しさを感じてもらえるはず―本作では「甘くてちょっと苦みがある豆腐は人生に似ている」としていますが、もしご自身の人生を何かに例えるとしたら?藤さん自分でもはっきりとわかっているのは、僕はサラブレッドではないということ。どちらかというと駄馬やロバみたいに輝かしくはないけれど、のんびりゆっくりと前に進んで行く感じですね。麻生さんうーん、なかなか難しいですね…。じゃあ、私も映画と同じお豆腐でお願いします(笑)。―最後に、仕事や恋愛に悩むananwebの女性読者に向けてメッセージをお願いします。藤さん『高野豆腐店の春』を観ていただければ、きっとわかっていただけるのではないかなと思っています。ぜひ、ご覧ください。麻生さん年齢層高めの方々がターゲットの作品に見えるかもしれませんが、30代の女性たちにとっても親の問題や人間関係などこれから先の人生で起こるであろうことが描かれています。そして、「生きていくっていいな」とも感じられるはずです。それから私がよくしているのは、ネガティブをポジティブに変換すること。実は、私はみなさんが思うよりもダメダメで、いろんなことを心配しすぎてしまうほうなんです。でも、それが取り越し苦労に終わると、逆に「いまの自分って何て幸せなんだろう」と気づかされるんですよね。みなさんもネガティブになってしまうときは、そんなふうに考えてもらうといいかなと思っています。インタビューを終えてみて…。劇中同様に、本当の親子のような空気感を醸し出していた藤さんと麻生さん。相手に対する信頼感の高さはもちろんですが、お互いのことが大好きな気持ちがひしひしと伝わってきました。いつまでも見ていたいと思わせるチャーミングなおふたりのやりとりは、ぜひスクリーンでも堪能してください。誰の人生にも、春は必ずやってくる!純白の愛情を持つ父と柔らかくて優しい娘が繰り広げる甘くて少し苦い人生を描いた本作は、シンプルでありながら奥が深い豆腐のような味わいのある1本。お互いを大切に思うからこそ、ときにはぶつかってしまうこともある親子の姿に、共感するとともに心がじんわりと温かくなるのを感じるはずです。写真・園山友基(藤竜也、麻生久美子)取材、文・志村昌美麻生久美子 ヘアメイク・ナライユミスタイリスト・井阪恵(dynamic)ドレス¥59,400(ルーム エイト ブラック/オットデザイン TEL:03-6824-4059)他アクセ(スタイリスト私物)ストーリー尾道の風情ある下町の一角に店を構えている高野豆腐店。そこで働く父の辰雄と娘の春は、陽が昇る前から工場に入り、二人三脚で毎日おいしい豆腐を作っていた。ところがある日、辰雄はもともと患っている心臓の具合が良くないことを医師から告げられてしまう。そこで、出戻りの一人娘である春のことを心配した辰雄は、昔ながらの仲間たちに協力を依頼。春の再婚相手を探すため、本人には内緒でお見合い作戦を企てることに。そんななか、辰雄は偶然が重なって知り合ったスーパーの清掃員として働くふみえと言葉を交わすようになるのだった…。優しさに包まれている予告編はこちら!作品情報『高野豆腐店の春』シネ・リーブル池袋、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開中配給:東京テアトル(C)2023「高野豆腐店の春」製作委員会写真・園山友基(藤竜也、麻生久美子)
2023年08月23日誰もが興味のあるトピックのひとつといえば、お金のうまい使い方について。そこでオススメするのは、100億円もの借金返済をするための節約大作戦を描いている注目作『大名倒産』です。その見どころについて、こちらの方にお話をうかがってきました。桜田通さん【映画、ときどき私】 vol. 587ある日突然、庶民から一国の殿様になったと同時に大きな借金を抱えてしまう主人公・小四郎が繰り広げる人生逆転エンターテインメントを描いた本作。そのなかで、病弱だが聡明な兄の喜三郎を演じているのが桜田さん。Netflix「今際の国のアリス」シリーズやテレビ東京「クールドジ男子」など、話題作への出演が続いています。今回は、親交の深い主演の神木隆之介さんとの現場で感じたことや役作りの裏側、そしてピンチの乗り越え方などについて語っていただきました。―まずは、本作の出演にあたって決め手となったものを教えてください。桜田さんその理由のすべてに、神木隆之介という存在が関わっています。もちろん物語自体も素晴らしいですが、僕にとってはこの作品に彼がいないことは考えられませんでした。僕は神木さんとはもともと仲良くさせてもらっていますが、がっつり共演したことはあまりなかったので、そういう意味でも一緒に出たいという気持ちは強かったです。―実際に兄弟役として共演してみて、印象に残っていることはありますか?桜田さん友達としての時間がすごく長いこともあって、僕のなかでは面白くて少年のような神木隆之介のイメージしかありませんでした。現場ではいい意味で普段と差がないように感じたのですが、撮影が始まるとしっかりと小四郎になっていたので、そういう部分は僕のいまの技量では測れないところなのかなと。僕がどうこう言えない次元にいるようにも感じたので、それを間近に見ることができていい経験になったと思います。いつもは友達としてふざけてばかりですが、そんな僕でもまだ踏み入れていない領域があるというのはすごく刺激的でした。普段抱いている感情が役の関係性にも活かせた―とはいえ、仲が良いからこそ、できたこともあったのでは?桜田さんそうですね。たとえば、普段から神木さんに対して抱いている尊敬やかわいらしいなと感じている気持ちは、小四郎と喜三郎の関係性にも活かせたと思っています。特に、僕が背中をさすりながら元気づけるシーンでは、本番前から心のなかで温めていた思いを込めて言うことができました。―もうひとりの兄弟役を務めた松山ケンイチさんも強烈なキャラクターを見事に演じ切っていましたが、現場で印象的なことがあればお聞かせください。桜田さんそれまでお会いしたことがなかったので、松山さんは寡黙な方というイメージを持っていたんです。でも、実際はすごくたくさんお話をしてくださったこともあって、一気に印象が変わりました。あとは、物事をすごく自由に考えていらっしゃいますし、僕にはできないようなやりとりを監督ともされていたので、その姿を見てカッコイイ先輩だなと。アドリブの入れ方や演じるときの思い切りの良さも、「ここまで激しくやるのか」と驚きましたが、完成した作品を観たときにすべてがつながっていたので、改めて松山さんのすごさを実感しました。前田監督の姿は、ロックでカッコイイ―ご自身の役どころもセリフの言い回しなどが普段とは違っていたので大変だったと思いますが、前田哲監督からはどんな演出がありましたか?桜田さん最初に台本を読んだときに、セリフを普通に言うのか、それとも歌いながら言うのか、恥ずかしながら初めは自分のなかで構築できていませんでした。そんななか、現場では監督自らどうするのかを見せてくださったので、ボイトレみたいに僕がそれを自分のカラダに落とし込んでいくという作業をしました。僕もあそこまで歌うキャラになるとは思ってもいなかったです。―なるほど。監督と一緒に作っていくような感じだったのですね。桜田さん正直に言うと、完成した映像を見るまでは自分のなかで不安もありました。でも、ちゃんとそれが成立していたので、初めからこれが見えていたのかと思うと監督は本当にすごいなと。前田監督はわかりやすく愛情を表現する方ではないのでクールなところもありますが、魅力的な方ですし、それにすごく変人だなとも思いました(笑)。―(笑)。それはどういった点においてですか?桜田さんもちろんマイナスな意味ではなくて、僕ではまだ及ばないような前田監督にしか見えていない世界があるんだろうなというのを感じました。そういう監督のオリジナリティが面白くてすごく好きです。年齢を重ねるにつれて、いろんな雑念が入ったり、周りの意見にブレてしまいそうになったりする瞬間ってありますよね?それでも監督はやり遂げているので、そういう姿がロックでカッコイイなと思いました。もともと無駄なことはしない節約タイプ―また、劇中ではお金に関するさまざまなことが描かれていましたが、ご自身も勉強になったことはありましたか?桜田さん本作を観て、僕も自分のお金をだまし取られないように気を付けようと思いました。特に、題材のひとつとして描かれている「中抜き」は、現代でも社会問題になっていることですからね。お金は生きていくうえでは大事なことです。あと、節約に関して言うなら、僕はもともと無駄なことはしないタイプ。お水を飲んだらちゃんと冷蔵庫に入れて翌日も飲めるようにしようとか、髪を洗っている間もシャワーの水は止めるようにしています。ただ、自分がほしいものは買ってしまうほうなので、すべてにおいて節約しているとは言えないかもしれませんが…。―ちなみに、最近浪費してしまったものはありますか?桜田さんついこの前、洋服をたくさん買いました。1年に1回くらいドーンとまとめて買うことがありますが、逆に僕がお金を使うのは洋服ぐらいじゃないかな。普段は、あまり使わないほうだと思います。ピンチの状況でも、楽しむように意識している―では、小四郎のように自分の人生が逆転したなと思った瞬間は?桜田さんどちらかと言うと、僕はまだ逆転前の身ですが、先月音楽でデビューをさせていただきました。それによって新しく出会えた人がいたり、よくなった部分もあったりするので、そこは決めてよかったなと思っています。―ちなみに、人生最大のピンチもありましたか?桜田さんいや、ピンチだらけですよ(笑)。振り返ればいろんな苦難もありましたから。ベタな言葉ではありますが、やっぱり「ピンチはチャンス」なので、それを乗り越えた先に何かがあったことが多かったなと感じています。ピンチのほうが気持ち的には上がるというか、その状況も楽しむように意識しているので、自分のなかではすべてが大切な経験です。―ピンチのときはどうやって克服されているのでしょうか。桜田さんこれは僕だけではないと思いますが、問題があったときは何か意味があることなんだなと考えるようにしています。実際、あとでそれが“武器”になることもあるので、ハプニングも自分を高めてくれる要素というイメージで生きています。仲間を大切にしながら、明るく前向きに生きて行きたい―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。桜田さんまずは、「元気でポジティブに生きる」というのが大事だと思っています。まさにギャルマインドですよね(笑)。本来、人間はご飯と水さえ確保していれば生きていけますが、そのほかに価値があるものといえば、周りにいてくれる人たちの存在。そういった仲間たちを大切にしながら、「死ななきゃ人生プラス!」くらいの明るさと前向きな気持ちで僕も生きて行こうと考えています。そういうマインドがもっと広がっていけばいいなと思っているところです。それから、自分のことを大切にしている人は性別に関係なく素敵だなと感じるので、周りに迷惑をかけるのはよくないですが、自分のやりたいことや自分がやりたくないことを意識することも必要かなと。そんなふうに、毎日を楽しく生きていってほしいです。インタビューを終えてみて…。取材前はクールなイメージがありましたが、とても明るくていい意味で期待を裏切ってくださった桜田さん。神木さんのことや現場の話をしているときがとにかく楽しそうだったので、スクリーンを通してでもその雰囲気が伝わってきた理由がわかりました。今後は俳優としてだけでなく、アーティストとしてもどんな活躍されるのかに期待が高まるところです。どんな問題も痛快にぶった斬る!現代にも通じるお金の問題も学べるだけでなく、ピンチのときこそ発想の転換で大逆転も可能だと教えてくれる本作。時代劇とは思えないテンポ感とコメディ要素を堪能しつつ、家族や仲間の大切さも身に染みる必見作です。写真・園山友基(桜田通)取材、文・志村昌美スタイリング・柴田圭(辻事務所)ヘアメイク・和田しづかストーリー越後・丹生山(にぶやま)藩の鮭売り・小四郎はある日突然、父・間垣作兵衛から衝撃の事実を告げられる。なんと自分は、〈松平〉小四郎—徳川家康の血を引く、大名の跡継ぎだと!庶民から一国の殿様へと、華麗なる転身…と思ったのもつかの間、実は借金100億円を抱えるワケありビンボー藩だった!?先代藩主・一狐斎は藩を救う策として「大名倒産」すなわち藩の計画倒産を小四郎に命じるが、実はすべての責任を押し付け、切腹させようとしていた…!残された道は、100億返済か切腹のみ!小四郎は幼馴染のさよや、兄の新次郎・喜三郎、家臣の平八郎らとともに節約プロジェクトを始める。不要な武具や家具をリサイクル、屋敷を売り払い、兄弟ひとつ屋根の下でシェアハウス、果ては殿の下肥まで肥料として売るなど、知恵と工夫で藩の財政を立て直そうとするが、そんななか、江戸幕府に倒産を疑われてしまい大ピンチ!果たして小四郎は100億を完済し、自らの命と、藩を救うことが出来るのか…!?まさかの予告編はこちら!作品情報『大名倒産』6月23日(金)より、全国公開配給:松竹(C) 2023映画『大名倒産』製作委員会写真・園山友基(桜田通)
2023年06月22日「このマンガがすごい!2021」や「第 24 回手塚治虫文化賞新生賞」を受賞し、幅広い層から支持されている田島列島さんの漫画『水は海に向かって流れる』がついに実写映画化。「恋愛はしない」と宣言した26歳の女性会社員と10歳年下の男子高校生が繰り広げる物語が、大きな共感を呼んでいる人気作です。そこで、こちらの方々にお話をうかがってきました。高良健吾さん & 大西利空さん【映画、ときどき私】 vol. 583主人公の榊さんに淡い想いを寄せる高校1年生の直達に抜擢されたのは、約400人のなかから選ばれた大西さん。生後5ヶ月で芸能活動を始め、『キングダム』シリーズでは主人公・信の幼少時代を演じるなど、すでに芸歴17年の若手の注目株です。そして、直達の叔父・茂道役には、『横道世之介』や『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』など数々の話題作に出演している高良さん。劇中では、脱サラした漫画家をユーモアたっぷりに演じています。今回は、現場での裏話や恋とは何かなどについて、語っていただきました。―大西さんは2015年の『悼む人』で、高良さんの子ども時代を演じられていますが、お会いするのはそのとき以来でしたか?大西さん前回は重なるシーンがなかったので、お会いするのは今回が初めてでした。高良さん現場で会ったときに「高良さんの幼少期を演じたことがあります」と言われて、こんなご縁はあまりないので大切にしたいなと思いました。しかも、まだ10代半ばの大西くんがメインを務める作品でもあるので、そこに自分が関われるのも楽しみでした。大西さん『悼む人』とは作品の内容も役柄もまったく違うというのもありましたが、撮影はとても楽しかったです。高良さんはすごく優しくていろんな話もしてくださるので、助けていただきました。現場では大西くんと楽しく話しながら過ごしていた―現場では、どんなお話をされていたのでしょうか。高良さん大西くんと楽しく世間話していただけじゃなかったかな。野球や漫画の話をしてみたり、「いまは何が流行っているの?」と聞いてみたり。どちらかというと、僕のほうがいろいろ気になって聞いていた記憶があります。大西さんあと、僕が一番覚えているのは焼肉屋さんの話です。僕の家の近所にあるおいしい焼肉屋さんに行った話をしました。高良さんそうそう。僕が一度は行ってみたいと思っている焼肉のお店に大西くんは行ってるんだよね。―ほかにも高良さんからアドバイスがあったり、大西さんが何かを相談したり、みたいなこともありましたか?大西さん涙を流しながら話すシーンがどうしてもうまくいかないということがあったんですが、そのときに高良さんといろいろお話をさせていただきました。でも、その内容については聞かれても答えていません(笑)。高良さんそういうことを自然にできるのって、すごいですよね。もし僕が高校生で、大西くんの立場だったら普通に言っちゃうと思うので…。広瀬さんのすごさを現場で痛感した―ご自身が10代のときにもそういうことはありましたか?高良さんそうですね。実際、僕は18歳のときにご一緒した廣木隆一監督から言われた言葉をその当時ガンガン言ってしまっていましたから(笑)。いまは自分がいただいた大切な言葉は簡単に出したくないなと感じるようになったので、そこからは言わなくなりましたけど、大西くんの年齢で「自分のなかで大切にしたいから言わない」という選択はなかなかできないんじゃないかなと。僕もうれしいですし、そういうふうに思える大西くんは素敵だなと思います。―本当にそうですね。では、主演の広瀬すずさんについてもおうかがいしますが、共演された印象をお聞かせください。大西さんこれまでテレビや映画を見ていて、演技や表現力がすごいというのはわかっていましたが、現場ではそれを痛感しました。特に、広瀬さん演じる榊さんが長年疎遠だったお母さんに会いに行って感情をぶつけるシーンを真横で聞いていて、こちらまで衝撃を受けたというか、とにかく圧倒される感じだったなと。でも、撮影以外はとても気さくな方でした。高良さん僕は、広瀬さんに対しては「かっこいいな」という印象がありました。一瞬で役に入るのですが、そのスピードもすごかったですし、いいバランスで現場にいる方なんだなと。あとは、大西くんが言っていたみたいに、オーラがあって圧倒されるようなところもありました。前田監督が作品を料理している様子に感動した―本作では個性豊かなキャストの方も揃っていましたが、現場で楽しかったエピソードは?大西さんみんなで集まってバーベキューしていたシーンでは、たくさん話していた記憶があります。高良さんでも、何を話していたのかまったく思い出せないくらい、本当にくだらない話をしてたよね(笑)。―そういう楽しそうな様子は、スクリーンからも伝わってきました。前田哲監督の演出はいかがでしたか?高良さん今作は長回しが多かったのもあるかもしれませんが、「映画の現場にいるんだな」というのを強く感じる現場だったと思います。しかも、前田監督が作品を料理しているような印象もあったので、そこに感動したというか、映画ならではのすごさを見た気がしました。大西さん先に話したうまくいかなかったシーンのときには、監督から「次の日でもいいよ」と声をかけていただき、高良さんともお話をできたからこそ落ち着いてできました。周りの方からの助けがなかったら、乗り越えられなかったなと思います。恋愛は自分のためというよりも、相手のことを考えている―本作では、恋の持つ力を改めて感じさせてくれるようなところがありましたが、おふたりにとって恋とは?高良さんうーん、恋ですか…。大西さん僕が先に答えてもいいですか?高良さんぜひ教えて!いや、頼もしいなあ。大西さんというのも、僕が演じた直達がそういう感情を持っていたキャラクターだったので。これは直達を通して感じたことですが、いろいろなことがあっても相手に思いを伝えるというのはやっぱりすごいことだなと思いました。恋心があるからこそ、その人のために何かしたい気持ちになるんじゃないかなと。今回の作品で、そういったことを感じました。高良さん確かに、恋愛というのは自分のためというよりも、相手のことを考えるので、誰かのために何かしたいという気持ちになるよね。榊さんが「一生恋愛しない」となるまでには相当の絶望があったと思いますが、直達のドストレートなピュアさがあったからそんな気持ちも溶かすことができたんだろうなと。そういうところは、自分自身もわかるなと思いましたし、感動しました。1週間を乗り切るのに欠かせないのはサウナ―そのあたりは、ぜひ作品でも楽しんでほしいところですね。おふたりとも、お忙しい日々をお過ごしだと思いますが、何か癒しになっているものがあれば、教えてください。大西さん最近ハマっているのは、サウナです!部活でフェンシングをしているんですが、疲れが溜まった週末にサウナに行くと、身も心もスッキリするんですよ。高良さんなんかサラリーマンみたいだね(笑)。大西さんまだ高校生ですが、それが1週間を乗り切るモチベーションになっています。高良さん僕は、旅行しかないかな。コロナ禍で行けていなかったですが、できれば年に1~2回は海外に行きたいなと思っています。「自分ならできる!」と何事にも自信を持ってほしい―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。大西さん仕事も恋愛もうまくいかないときがあるかもしれませんが、何事にも自信を持って、「自分ならできる!」という気持ちがあれば、へし折れることはないのではないかなと思っています。なので、ぜひ強い意志を持ってがんばってください。高良さん本当にその通りだよね。自分に対して厳しくしたり、責めたりしすぎずに自分のことを信じてあげてください。インタビューを終えてみて…。どことなく雰囲気が似ていることもあり、本当の親戚のような空気感が漂っていた高良さんと大西さん。2人だけの言葉を大切にしたいというやりとりには、こちらまで気持ちが温かくなりました。次回の共演も、楽しみにしたいところです。爽やかな感動が胸のなかに流れ込む!恋愛に対してつい臆病になってしまうときもあるけれど、恋が起こす奇跡と人を好きになる気持ちの尊さを思い出させてくれる本作。直達のまっすぐな想いに、心がときめくのを誰もが感じるはずです。写真・園山友基(高良健吾、大西利空)取材、文・志村昌美高良健吾 ヘアメイク・森田康平スタイリスト・渡辺慎也(Koa Hole)ジャケット¥53,900(UNUSED)、ニットポロ¥25,300(YASHIKI)問い合わせはすべてalpha PR 03-5413-3546大西利空 ヘアメイク・Emiyスタイリスト・MASAYAストーリー高校生の直達は、通学のために叔父・茂道の家に居候することになる。どしゃぶりの雨のなか、最寄りの駅に迎えとして現れたのは見知らぬ大人の女性、榊さん。茂道はシェアハウスに暮らしていたのだった。同居人は、いつも不機嫌そうにしているが、気まぐれに美味しいご飯を振る舞う26 歳の会社員・榊さんと脱サラしたマンガ家の茂道のほかに、女装の占い師や海外を放浪する大学教授といういずれもクセ者揃い。そこに直達の同級生・楓も混ざり、想定外の共同生活が始まっていく。いつしか榊さんに淡い想いを抱き始める直達だったが、「恋愛はしない」と宣言する彼女との間には、過去に思いもよらぬ因縁があった。榊さんが恋愛をやめた本当の理由とは…。目が離せない予告編はこちら!作品情報『水は海に向かって流れる』6月9日(金)TOHO シネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー配給:ハピネットファントム・スタジオ(C)2023映画「水は海に向かって流れる」製作委員会 (C)田島列島/講談社写真・園山友基(高良健吾、大西利空)
2023年06月07日どんなドラマや映画でも、重要な役割を果たしている役どころの1人と言えば死体役。物語においては欠かせない人物にもかかわらずあまり注目されないことが多いですが、現在公開中の最新作『死体の人』では、死体役を演じ続ける男を主人公に描き、話題となっています。そこで、主演を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。奥野瑛太さん【映画、ときどき私】 vol. 562ドラマ『最愛』や映画『グッバイ・クルエル・ワールド』など、数々の作品で圧倒的な存在感を放つ名バイプレイヤーとして注目の奥野さん。本作では、演じることへの思いは人一倍強いものの、死体役ばかりをあてがわれる吉田広志を好演しています。今回は、死体役を演じるときのこだわりや現場への思い、そして自身の死生観について語っていただきました。―最初に本作のオファーがあったとき、草苅勲監督に「僕はミスキャストです」と伝えたとか。なぜそう思われたのですか?奥野さん脚本を読ませていただいたとき、「草苅さんにとって一生に1本書けるかどうかの作品だな」と思いました。ご自身のパーソナルな部分を包み隠さずさらけだしている気概のようなものを感じたのと同時に、主人公の吉田広志は草苅さんなんだなと思いました。草苅さんは終始優しくて温かい視点で物事を眺めている方ですが、どちらかというと僕は撮影現場で何クソ根性みたいなエネルギーを燃やしてきてしまった。草苅さんの前で草苅さんを演じるには、いまの自分は下手に現場を重ねてきたことでホコリが付いているんじゃないかなと思ったんです。そういう意味でも「ミスキャストじゃないですか?」というお話をしました。―とはいえ、同じ役者という立場のキャラクターに通ずるところもあったのではないかなと。奥野さんもちろんそれはありました。僕も小劇場の出身ですし、画面のはじっこに映りながらもずっと俳優業を続けているという意味では、同じ状況ですから。現場のあるあるも含めて、シンパシーを感じながら演じていました。ただ、僕は草苅さんや吉田のように笑って過ごせるネアカな部分が少し弱いなと思いました。死に方によって、作品との関わり方を変えている―そんなふうに苦しさを感じるときは、どのようにして乗り越えていますか?奥野さんいや、苦しいといいますか、僕の場合はそれを楽しんでる節があるかもしれません。それは作品に対する向き合い方であり、エネルギーを湧かせる方法の違いなので、どんな向き合い方でも結局はそれでお芝居を楽しめて作品に良い作用になればいいと思います。これに関しては百人百様のやり方があるのではないでしょうか。―ちなみに、ご自身はこれまで死体役を演じられてきましたか?奥野さんたくさんあります(笑)。僕自身も、作品に関われば必ず死ぬみたいな時期がありました。画面に出てきた瞬間に「この人どうせ死ぬだろうフラグ」が立ち始めてしまったこともあったくらいです(笑)。その作品内ではできるだけ予定調和を消したいとは思ってましたけど、全く関係ない作品と照らし合わされてメタ的についた死体役のイメージまではなかなか払拭できないものですね(笑)。―実際、死体役は難しい役どころでもあると思いますが、奥野さんなりのこだわりなどがあれば、教えてください。奥野さん「台本に書いてあるように死ぬ」くらいしかないですね。特にこれといった自分のこだわりはありませんが、手癖が出ないようにその場に生きて、その場で死ぬっていうことは本当に難しいことだと思います。技術的に見ても死ぬシーンは、難しくておもしろいことが多いです。例えば、発砲によって死ぬときは現場に一発勝負の雰囲気が漂うことがあってとても緊張感が高まります。以前経験したなかでいうと、1発目の発砲で頭を撃ち抜かれて即死した後に、追い討ちで身体に数発撃たれるという死に方です。目を開けたまま頭から流れてくる血のりを受け止め、次の身体への着弾に反射しないように反応しなきゃいけないので…。考えるだけでもこんがらがりますね(笑)。ともかく、死ぬことで役柄を生かす瞬間にもなるので、生きるために死ぬことに必死になっています。どこでも練習してしまうので、やりすぎてしまうことも―劇中では、吉田が日常生活のなかで死ぬ練習をしている姿もおもしろかったですが、これは役者あるあるですか?奥野さんそうですね。僕もよく道を歩きながら人目も気にせずずっとセリフをブツブツしゃべっています。ふとした瞬間に「あそこをやっておこう!」と思ったら、ところかまわず練習してしまうことがありまして…。前にたまたま閑静な住宅街を歩いていたときにそのスイッチが入ってしまい、電信柱に向かって1時間くらいセリフの壁打ちをしてたんです。そしたら、近所の方が通報されたんでしょうね、警察の方に「何しているんですか?」と声をかけられてしまって(笑)。セリフの内容が怪しい雰囲気のある役どころだったので、妙に状況とマッチしてしまっていたのかもしれません。「迷惑をかけてごめんなさい」と反省しているつもりではいるんですが、未だに職質をよく受けます。―(笑)。そんなふうに、日常と役の線引きがあいまいになってしまうことはよくあることなのでしょうか。奥野さんあいまいと言いますか…、みなさんと同じですよ(笑)。たとえば、仕事の内容を覚えるために電車のなかで資料を読んだりされると思いますが、それと一緒です。ただ、僕の場合はセリフなので声に出てしまったり、テンションもその空間にあるものではないので突拍子もないものだったり、空気を読まずにやると大変なことになりがちではありますね。―それだけリアルな演技ということでもありますよね。いままで本当に幅広い役を演じられていますが、そのなかでも変わった役だったなと思ったものは?奥野さんこれまでに右翼、左翼、殺し屋、学生、兵士、ラッパー、チャラ男などいろんな役をやらせていただきましたが、僕としてはみんな“普通の人”だと思っています。現場では、どうしたらおもしろいかをつねに考えている―なるほど。奥野さんは作品ごとに別人かと思うほど印象が変わりますが、役作りで大事にしていることがあれば、教えてください。奥野さん当たり前のことですが、まずは台本に書かれていることを一生懸命覚えて、それをちゃんとできるように準備をしっかりしていきます。でも、現場はなまものですからね。そこで変わっていくことに対してどう能動的に動けるかが問われるので、準備してきたことも1回全部忘れてその場に立つことに集中しています。―以前共演された西島秀俊さんは、現場での奥野さんの姿に「これが自分の求めている俳優像だ」と感じたそうですが、ご自分でも意識されていることはあるのでしょうか。奥野さんいやぁ、僕は癖として意識した時点で、変な意図が働いてしまうので、なるべく意識しないように心がけています。ただ、周りの方からするとどう見えているかはわかりませんが、僕的にはひどく客観的な感覚はあるように思います。「あ、いま見られてるな」とか(笑)。そんなふうに遊んでいるというか、現場ではどうしたらおもしろいか、みたいなことばかりを考えています。―現場を楽しむことに重きを置いていらっしゃるんですね。奥野さんそうですね。現場では「どう楽しむ?」「やっぱり緊張する」みたいなことを自分のなかでずっと繰り返している感じです。それこそ、1つ息をするタイミングだけでも緊張するときがありますが、そういう小さなことから大きなことまでを楽しむようにしています。―今回の現場では、個性豊かなキャストの方も多かったですが、印象に残っていることはありますか?奥野さんみなさん本当に素晴らしかったです。なかでも父親役のきたろうさんがおもしろくて(笑)。現場でもおもしろく変容していくことに誰よりも能動的で「これぐらいのほうが笑える」ということにとても繊細に向き合ってる姿勢がめちゃくちゃ格好良かったです。きたろうさんが草苅監督にセリフの変更を提案された箇所があったんですが、断然そっちのほうがおもしろくてみな笑うのを必死に堪えていました(笑)。喜劇とその裏側の悲劇をちゃんと認識されているからなのか、その瞬間瞬間に軽くエネルギーをポンと出すだけで、周りはたちまち大爆発を起こしてしまう。いやぁ、本当に格好良かったです。あえて格言は持たずに、考え続けるようにしている―そのほかで、苦労されたシーンなどはありましたか?たとえば、今回は演技が下手な役者のキャラクターを演じられていたので、いつもとは真逆の作業で違和感もあったのではないかなと思うのですが。奥野さん確かに、あれは感覚的には変でしたね。今回はイマイチなお芝居をすることが良しとされていたので、カットのあと監督に「ちゃんとイマイチにできてました?」と確認したほどです(笑)。―また、劇中では吉田が母親とのやりとりのなかで、壁を1つ乗り越える姿も描かれていますが、ご自身も転機になった出来事はありましたか?奥野さんいまでもずっと悩んでいますよ。ただ、作品に出会うたびにそれが転機にはなっていると思いますが、毎回悩んでばっかりです。僕は主観的な感覚だけでするのはダメだと考えているので、客観的な視点も持つようにしていますが、自分の演技を見返すときは「ひどい芝居してるな」とものすごいダメ出しをすることが多いかもしれません。―今回、作品のなかで生と死に関する格言がいくつか紹介されますが、ご自身にも響いた格言はありましたか?奥野さん僕は考え続けることのほうが好きなので、正直これと言い切れる格言は思い浮かびません。というのも、格言は言葉としてそこに置いておけば自分の助けになるかもしれませんが、僕はどうしても言葉になってしまった時点でラクしようとしてしまうので。言葉の上澄みを覚えているだけで、そこに行きつくまでの過程やらその瞬間の感情を全部すっぽり忘れてしまうことが多くてがっかりするんです。それよりも言葉にはせずにずっと向き合っていたり、肌に感じていたりするほうが覚えていられる気がします。もちろん、衝撃的な言葉に出会ってその都度右往左往しますが、僕のなかでは格言という感覚ではないんじゃないかと思います。ちなみに、ラストシーンで吉田の格言も出てくるのですが、実はいまだに僕はあの言葉にピンときてないんです(笑)。それは僕のなかにない感覚。だからこそ「どういうことだろう?」といまでも考えています。僕はそういうほうが好きかもしれないですね。死体役を演じることで、どう生きるかと向き合えた―非常に深いですね。死ぬ役ばかりを演じたことで、ご自身の死生観に影響を与えた部分はあったのでしょうか。奥野さんおそらく草苅監督も吉田もネアカだから死について考えられるんだろうなと思いました。それに比べて、僕はネクラなので死への向き合い方が根本的に違う。そういうことにも、気づかせてもらったように感じています。あと、変な言い方になりますが、エロスとタナトスがあって、エロスが生きるエネルギーで、タナトスが死に向かうエネルギーだとしたら、僕にとって生きる力となっているのはタナトスが強い気がします。わかりやすく言うと、「死ね死ね!」と自らに言い聞かせて生を実感するタイプというか。なので逆にネアカな人たちへの憧れやうらやましさみたいなものはある気がしています。そういう意味でも今回は、人としても俳優としても死生観というものに改めて触れられるいい機会でしたし、死体役を演じることでどう生きるかと向き合えました。―そのうえで、この作品の見どころについても教えてください。奥野さん死体役ばかりをあてがわれる主人公を通して、死生観や明るく生きるエネルギーを感じていただけたら幸いです。何者でもない人の強さとおもしろさも観ていただけたらと思います。―今後の奥野さんにも注目ですが、ananweb読者に向けてもメッセージをお願いします。奥野さんもし少しでも興味を持っていただけましたら、映画館に足を運んでいただき、スクリーンで『死体の人」を観ていただけましたら、これ幸いです。僕というより、草苅監督と主人公の吉田広志に注目して、ぜひキュンとして下さい(笑)インタビューを終えてみて……。少しシャイな雰囲気もありますが、ひと言ひと言からまっすぐな思いが伝わってくる奥野さん。ずっと取材したかった俳優さんの1人だったのでようやく念願が叶いましたが、興味深い話が多く、もっと掘り下げていきたいという思いになりました。これからもどのような役どころで楽しませてくれるのか、ますます期待が高まるところです。生きることが下手でも、自分らしくあればいい思わず声を上げて笑ってしまうユーモアセンスと、胸がギュッとするような人間ドラマとが絶秒に織り交ぜられている本作。ときには空回りしてしまうこともあるけれど、不器用なりにも一生懸命な人たちの姿から必死に生きることも悪くないと感じるはずです。写真・園山友基(奥野瑛太)取材、文・志村昌美ヘアメイク・光野ひとみスタイリスト・ 清水奈緒美シャツ ¥41,800(AURALEE 03-6427-7141)他、スタイリスト私物ストーリー劇団を主宰して役者を志していたものの、要領よく振る舞えず、気がつくと“死体役”ばかりを演じるようになっていた吉田広志。開いたスケジュール帳は、さまざまな方法で“死ぬ予定”で埋まっていた。つねに死に方を探求する日々を送っていた吉田だったが、自宅に招いたデリヘル嬢の加奈と人生を変えるような運命的な出会いを果たす。そんななか、母が入院するという知らせに加え、新たな問題が発生。偶然見つけた妊娠検査薬を自分で試してみたところ、なんと陽性反応が出てしまう。一体これはどういうことなのか。そして、吉田は一世一代の大芝居を撃つことに……。釘付けになる予告編はこちら!作品情報『死体の人』渋谷シネクイント他、全国順次公開中配給:ラビットハウス(C)2022オフィスクレッシェンド写真・園山友基(奥野瑛太)
2023年03月22日年末にかけてさまざまなジャンルの映画がひしめき合っている時期だけに、どの作品を観ようか悩んでいる人も多いのでは?そんななかご紹介するのは、日常から離れて異世界へと迷い込みたい気分の人にオススメの注目作『餓鬼が笑う』です。今回は、こちらの方にお話をうかがってきました。田中俊介さん & 山谷花純さん【映画、ときどき私】 vol. 545自分を見失い、あの世とこの世を行き来する「骨董屋」志望の青年・大を演じたのは、映画『ミッドナイトスワン』をはじめ、話題作への出演が続いている田中さん。そして、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』など、幅広い活躍で注目を集めている山谷さんがヒロイン役の佳奈を演じています。そこで、共演を熱望していた2人が出会ったきっかけやお互いの印象、そして同世代の人たちに伝えたい思いなどについて語っていただきました。―田中さんはオファーをもらった際、企画書と台本を読んで本作の不思議な世界観に興味を持ったそうですが、どのあたりに惹かれましたか?田中さんこんなにもできあがりが想像できない作品はないんじゃないかな、というのが最初の印象でした。でも、異世界や骨董を扱っているところも含めて、なかなか見ない作品でもあると感じたので、そのあたりに関心を持つようになっていったんだと思います。あとは、平波亘監督をはじめ、顔見知りのスタッフやいままで共演したことがある方と一緒に映画を作れる喜びも大きかったです。―山谷さんも「この作品の終着点はどこなのかわからない」と感じたこともあったそうですが、演じるうえで悩むようなこともありましたか?山谷さん私は特に悩むことはなかったですが、観客の一人として、この作品がどういうふうにできあがるんだろうというほうに興味がありました。そういった部分を現場で直接見ることができたので、すごく贅沢な時間を過ごすことができたと思います。いつか一緒にと思っていたので、楽しみだった―以前から、お互いに「いつかきっと」という言葉を交わしていたとか。どういったきっかけで、そういう話になったのでしょうか。山谷さん最初に顔を合わせたのは、共通でお世話になっている内田英治監督のご飯会。田中さんのお話は内田監督からよく聞いていましたし、素敵な役者さんだなと思って見ていました。でも、まさかこのタイミングで共演できるとは。思っていたよりも早く実現できたと感じています。田中さんそうですね。僕もいつかご一緒したいと考えていたので、今回はすごく楽しみでした。―実際に、現場で会われてみて、印象が変わった部分はありましたか?山谷さんこれまでは、田中さんのお芝居は出来上がった作品のなかで見てきました。なので、過程を見るのは初めてでしたが、本読みのときにセッションをしてみて、「こういうふうに役を作っていく方なんだな」と。すごく正確で、いろんなことを自分のなかでしっかりと解釈し、カラダと一体化させてお芝居をされるので、そういう部分を知ることができておもしろかったです。田中さんありがとうございます。田中さんは、情熱や誠実さを言葉にして伝えられる人―ちなみに、素はどのような感じですか?山谷さん基本的にローテンションなイメージです(笑)。田中さんあはははは!山谷さんというのも、いままで私の前ではしゃいでいる姿を見たことがないので。ただ、お芝居や映画に対する、情熱とか誠実さというのをちゃんと言葉にして人に伝えることができる方だと感じました。それは、相手が受け取りやすい言葉を選び、思っていることを嘘偽りなく言うことができる心を持っているからだと思っています。田中さんそう言ってもらえて、うれしいです。僕は、出会う前から「演じることや役者としての熱量が高い人」という印象を持っていました。こんなに熱い人っているのかなと思うくらいほとばしるものがある方なので、共鳴できるのではないかなと。普段の僕のテンションはローですが、そういう部分での熱は自分にもあるつもりなので(笑)。ずっと抱いていた念願が叶ったからこそ、今回はものすごく楽しかったです。山谷さんのお芝居に、ゾクゾクする感覚を味わった―そんななか、お互いが相手役だったからできたといった瞬間もあったのではないでしょうか。田中さん僕が印象的だったのは、佳奈からあることを告げられる神社のシーン。山谷さんの気持ちがダイレクトに届いたので、実は自分でも予期せぬ返し方をしてしまったんです。でも、山谷さんのお芝居を受けたからこそ、イメージしていたものとは違うお芝居ができたんだと思います。そういう部分を引っ張り出してもらえたので、ゾクゾクするような感覚を味わえたシーンでした。山谷さんあの場面はすごく難しかったので、そう言ってもらえるとうれしいです。私は、最初と最後に出てくる古書店のシーンですね。あそこは背中同士で会話をするという感じでしたが、それがすごく心地よかった覚えがあります。「懐かしい香りがした」というナレーション通りだったなと。田中さんあれが「はじめまして」のお芝居でしたけどね。山谷さんそうですね。でも、本当に懐かしい香りがしたんですよ。たった数歩進んで本を読むというだけのシーンですが、田中さんのように背中から何かを感じさせてくれる役者さんはそんなに多くはないと思いました。田中さんに対して信頼があったというのもありますが、そんなふうにつながれた瞬間みたいなものがあったので、あのシーンが好きです。田中さんありがとうございます。山谷さん久しぶりに会って、お互いに褒め合うという……。田中さん照れ臭いですね(笑)。現実世界では、みんな同じようにさまよっている―タイトルにある「餓鬼」には、物質的に豊かであっても心が満たされない様子や欲深さなど、さまざまな意味がありますが、おふたりのなかにもそういう部分はあると感じていますか?田中さん僕はつねにありますね。劇中の大は異世界に行ったり、散々な目に遭ったり、いろんな経験をしていますが、現実世界でもみんな同じようにさまよっているんじゃないかなと。実際、僕自身も大みたいに心にぽっかりと穴が開いてしまったり、人とのつながりを拒絶してしまったりという経験が過去にありましたから。でも、周りの方から刺激と愛情をたくさん受けて虚無感を埋めていくことができ、そのおかげで生きていることを実感し、もう一度自分を信じてやって行こうと前向きになれました。誰でもいろんな悩みがあったり、そういう感覚に陥ったりするものですが、僕も同じような経験があったからこそ、その感覚や感情をストレートに表現できたんだと思います。―この役を演じたことで、ご自身に与えた影響などもありましたか?田中さん大もいろんな感情に苦しみますが、人との出会いがあったからこそ、もう一歩前に踏み出してみようと思えたのではないかなと。そこは僕も改めて気づかされましたし、やっぱり人とのつながりがないと生きていけないんだなと感じました。ただ、いまはSNSとかコミュニケーションの手段は増えているものの、そのぶん生きづらくなっているというか、芯の部分でつながれなくなっているようなところがある気はしています。山谷さん私にも餓鬼の部分はあると思いますが、それを表に出しても周りにいい影響を与えないだろうなとわかっているので、見て見ぬふりしているところはあるかもしれません。なので、「あるのはわかっているけど、自分のなかだけにしておいたほうがいいんじゃないかな」みたいな感じです。心の片隅に置きつつ、どこかで封印しているのかもしれませんね。基本的には、無理をしないように心がけている―つらくなったり、悩んだりしたときは、どのようにして気持ちを切り替えていますか?山谷さん普段、人に会うことが多いので、逆に人に会わなくなるというか、とにかく1人になりたいと思うことはあります。そういうときは部屋のなかを無音にしたり、クラシックだけを流してみたり、いつもとは違う音や環境に身を置くことが多いです。そんなふうに一回リセットするんですけど、そうするとまた人に会いたくなるんですよね。私も根本的には人とつながっていたいほうなので、その気持ちを取り戻すためにこういう方法を取りますが、基本的には無理はしないように心がけています。―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。田中さん何が幸せなのかは人それぞれですが、やっぱり人は周りから何かをもらって生きているんじゃないかなと思っています。なかには「絶対に1人で生きていける」という強い人もまれにいますが、誰にでも弱いところがあって、何かに支えられているのではないかなと。実際、僕自身もそうですから。僕の場合は、映画に救われたところもあるので、そういう支えを見つけられたのは大きかったですね。まだそれが見つからないという人でも、さまよっているとふいに“救い”みたいなものがみなさんの前にも現れると思います。これは少し違うかもしれませんが、最近の僕は観葉植物の成長を見て癒されているところです(笑)。前はそんなことなかったんですけど、芽が出て広がっていくのを見るだけで幸せを感じています。山谷さん本作の現場で、田中泯さんも同じこと言っていましたよ!お百姓さんもされている方なので、畑を見るとそう思うみたいです。この作品を通して「1人じゃないよ」と伝えたい田中さんもしかして、僕も泯さんの境地に近づいたのかな(笑)。でも、そんなふうに生きて行くうえでの小さな幸せみたいなものは、あちこちに転がっているのではないかなと。もしかしたら、この映画も「いままでこういう作品には触れてこなかったけど、意外と好きかも」と感じてもらえることもあるかもしれません。これも何かの縁だと思うので、今回のインタビューを読んでくださった方のなかで、この映画によって何かが変わったり、活力になってくださったりしたら、そんなにうれしいことはないです。山谷さん生きていれば、苦しいことも悩むこともありますよね。でも、落ち込んだり、壁にぶつかったりしたときに「私なんか……」と自分を卑下すると、その傷をより一層深め、次に進む一歩がなかなか出せなくなってしまいます。そんなときは、まず視点を少し変えてみてください。そうすると、自分と同じような思いをしている人がたくさんいることに気づけますし、それによって勇気が湧いてきたり、悩みが小さく感じられたりするはずです。本作の大もまっすぐ歩けば簡単に着く道を右往左往して苦しみますが、だからこそ人とのつながりや愛を見つけることができたのかなと。佳奈もみなさんが共感できる役どころなので、女性たちには本作を通して「1人じゃないよ」というのを伝えたいです。そして、自分を守るうえでは、大切にしていた過去もスパッと切り捨てて、次に進む心意気もときには必要であるということも合わせて感じてほしいと思っています。インタビューを終えてみて……。作品からも取材中の様子からも、俳優としてお互いに絶大な信頼感を寄せていることが伝わってくる田中さんと山谷さん。演じることに対して真摯な姿勢と熱量は、同じものを感じずにはいられませんでした。次回また共演する際には、おふたりがどのようなセッションを見せるのか楽しみなところです。地獄と天国が入り乱れた幻想の世界へようこそ!生と死、そして夢と現実が交錯し、見たこともない世界観へと迷い込んでしまう本作。“餓鬼”がはびこる現代社会に生きているからこそ、観る者はもがきなからも愛にたどり着く主人公たちの姿に懐かしさとともに共感を覚えるはずです。写真・山本嵩(田中俊介、 山谷花純)取材、文・志村昌美田中俊介 ヘアメイク・奥山信次(barrel)スタイリスト・中川原有(CaNN)ジャケット¥121,000、ニット¥39,600、Tシャツ¥26,950、パンツ¥44,000(以上アクネ ストゥディオズ/アクネ ストゥディオズ アオヤマ 03-6418-9923)、その他はスタイリスト私物山谷花純 ヘアメイク・杏奈スタイリスト・高橋美咲ストーリー「骨董屋」を目指していた大貫大は、四畳半のアパートに住みながら路上で古物を売って暮らしていた。ある日、古書店で看護師をしながら夜学に通っている佳奈とすれ違い、一目で恋に落ちる。大は人生に新たな意味を見出したかと思ったが、広場で警察の取り締まりに遭い、警棒でひどく殴られて意識を失う。その後、大の人生の“何か”が狂い始め、先輩商人に誘われて行った山奥の骨董競り市場に参加した帰り道に、この世の境目を抜けて黄泉の国に迷い込んでしまう。人の膵臓を笑いながら喰らう異形の餓鬼や絶世の美貌で黄泉と常世の関所を司る如意輪(にょいりん)の女と出会い、大はあの世とこの世を行ったり戻ったりすることに。そして、自身の人生を生き直し始めるのだった。引き込まれる予告編はこちら!作品情報『餓鬼が笑う』12月24日(土)よりK’s cinemaほか全国順次公開配給:ブライトホース・フィルム、コギトワークス️©OOEDO FILMS写真・山本嵩(田中俊介、 山谷花純)
2022年12月23日映画やドラマにおいて人気の高いキャラクターのひとつと言えば、私立探偵。裏社会で躍動する姿には惚れ惚れしてしまうところですが、まもなく公開の注目作『終末の探偵』でも、誰もが魅了されること間違いなしの新たな主人公が登場しています。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。北村有起哉さん【映画、ときどき私】 vol. 541本作で主演を務めているのは、幅広い役どころで数多くの話題作に出演している北村さん。劇中では、ギャンブルとお酒が好きで、女に弱くて情にもろい型破りな探偵・連城新次郎を演じています。今回は、役に込めた思いや男の色気とは何か、そして目標を達成するための秘訣について語っていただきました。―まずは、出演が決まった際のお気持ちと役作りで意識したことを教えてください。北村さんいままでいろんな役をやらせていただきましたが、探偵は初めてだったので、それだけでうれしかったです。ただ、どの時代にもいろんな国で探偵が主人公の作品はたくさんあるので、それをなぞることなく、令和の時代の探偵とはどんな人かを考えました。というのも、探偵というのは、その時代を映す鏡のような職業だと僕は思っているので。だから、探偵モノって滅びないというか、人気があって自由なんでしょうね。―具体的に、いまの時代ならではの部分を表現するためにしたこともあったのでしょうか。北村さん男臭さみたいなものだけを先行するのではなく、仕方ないなとため息をついているような感じも出せたらいいなと考えました。そこで提案したのは、「もういいよ、こういうのは」という口癖です。憂いながらも期待を持っているイメージで役を作った―そのフレーズを選んだのはなぜですか?北村さんいわゆる決めゼリフみたいなものですが、こういうぼんやりとした言葉のほうがいまの時代ではみんなに当てはまるんじゃないかなと思ったからです。それと、この言葉は憂いから思わず発してしまうものですが、その裏にはまだ願いが残っているんじゃないかなとも感じました。というのも、人は諦めたら「もういいよ」という言葉すら言わなくなるものですから。そういったこともあって、連城は仕方ないなと思いながらも人とつながっていき、憂いながらも「もしかしたら光が差し込んで来るかも」と期待しているようなイメージにしました。―なるほど。物語が進むにつれて傷だらけになっていきますが、それによって逆に色気が増していく様子はさすがだなと思いました。北村さんケガをして血が出て、痛みを伴うことでアドレナリンが出てくるので、それがそう見えるのかもしれないですね。連城というのは、決してケンカは強くないのに、「俺が悪かった」と相手が言うまで諦めないタイプ。ボロボロになりながらも相手のことを絶対に離さない厄介な人なので、一番嫌なタイプですよ(笑)。ただ、僕としては、鮮やかでキレキレな動きをするよりも、そんなふうにしぶとくて、ずるい人物像のほうがやりやすいというのはありました。どんどんダメージを負いながらも、それでも目標に向かっていくほうがリアルな気がしています。厳しさと優しさを同居させている人に色気を感じる―北村さんが思う“男の色気”とは何ですか?北村さんベールに包まれているというか、私生活が見えなくて、何を考えているかわからないような人が持っているものじゃないかな。そういう人は、怒るのか泣くのか笑うのか、次にどういう表情をするのかわからないですからね。昔、ある現場にいたのが、「まさに顔面凶器」というようなものすごい怖い顔をした小道具のおじさん。でも、一緒に飲みに行ったら仕事中はつり目だった目が一気にたれ目になってて、「何なんだ、この人!」と驚いたことがありました。でも、そんなふうに厳しい部分と優しい部分という2つを同居させている人は色気や深みがあるなと。あとは、何かを我慢しているような人も独特な雰囲気がありますよね。男の色気というのは女性だけが感じるものじゃなくて、同性からも慕われるような人にあるもの。俳優のなかでわかりやすい例を挙げると、佐藤浩市さんが圧倒的にそういうタイプですよね。同業者の後輩が憧れるような色気がありますが、本人はそんなことは意識していないですし、だからこそ素敵なんだと思います。―確かにそうですね。とはいえ、北村さんもミステリアスな印象があり、普段の様子が見えないと思っている方は多いのではないかなと。北村さんみなさんと一緒で、家ではいつも掃除機をかけたり、洗濯したりしていますし、子どもの幼稚園の送り迎えもしています。でも、洋服の畳み方が違うといつも怒られていますが(笑)。大事なのは、遠くの目標と近くの目標を立てること―それは意外な一面ですね。来年で俳優デビューから25年となりますが、キャリアを続けていくなかで、貫いてきたことはありますか?北村さん僕は、なるべく遠くの目標と近くの目標の両方を立てるようにしてきました。たとえば、10年後の自分と半年後の自分とそれぞれ2つの目標と立てたら、いまの自分を含めた3点を結びつけておく。そうすると、まず少し先の目標をクリアするために具体的に何をすればいいのかがわかってきます。もちろん、ビジョンを打ち出すのは非常に面倒なことですが、それがあるかないかで分かれるので、これはどんな職業でも年齢や性別を問わずやってみたほうがいいことかなと。ビジョンなんてわからないと感じるかもしれないですけど、「かっこいい車に乗りたい」とか「結婚したい」とか「バリバリ仕事したい」とか、本当に何でもいいんですよ。―まずは、自分のしたいことを明確にするということですね。北村さん夢みたいな目標でも、そのためにどうしようかと考えることが大事ですから。僕の場合は、「やりたいじゃなくてやる」「なりたいじゃなくてなる」と思ってやってきました。もちろん、そこに向かうのはしんどいですし、難しいです。でも、思うのは自分の自由というか、自分をどう追い込んで、どこまで解放できるかは、すべて自分の判断ですから。そんな感じで、いちいち立ち止まってやってきた気がしています。転機を迎えるときというのは、だいたい自分のビジョン通りに行ったときなので、それができたらまた次を打ち出す、その繰り返しです。これから先はどんどんサバイバルになるので、息の長い役者になるために、「60歳でも現役でいる」とか「健康に気をつける」とか、そういうことを意識していこうかなと考えています。時間というのは意外とないものなので、20代のうちにどこまで自己投資できるかも大切なことかもしれません。妻に笑顔でいてもらうための努力をしている―ちなみに、ご自身が20代のときにしておいてよかったことは?北村さん仲間とのつながりはもちろんですが、人の意見を聞くなかで、ケンカもして、仲直りもするというのがあればあるほど素敵なことだと思います。最近はそれも面倒くさいとなっているかもしれませんが、やっぱりそういうのがあると面白い。いろんな出会いや別れを経験して、影響を受けたほうがいいんじゃないかな。「絶対にコイツとは無理だ」と感じるくらいむかつくヤツがいてもいいんですよ。それによって、逆に自分のことがわかる場合もありますから。―では、仕事がオフのときの楽しみ方についてもお聞かせください。北村さん好きなお酒を飲むことが多いですが、いまは子どもといる時間が一番ありがたいですね。こういう職業をしているせいか、昔から死生観について意識しているというのも大きいかもしれません。まだカウントダウンするには早いですが、「あとどのくらい時間が残っているのかな?」と考えると、子どもたちとの時間は限られているんだなと感じます。僕は家庭を顧みないで飲み歩いたり、役者バカみたいなことをしたりするのかなと自分のことを思っていましたが、全然そんなことはなくて、意外と普通のお父さん。コロナ禍になる前から、仕事が終わったらまっすぐ家に帰っています。僕の父が忙しい人だったこともあり、父親との思い出がほとんどないので、僕はなるべく一緒にいてあげたいなと。あとは、少しでも妻には笑顔でいてほしいので、そのために努力してサポートしているつもりです。いくつになっても必要なのは、ときめくこと―素敵ですね。それでは最後に、ananwebを読む女性たちに向けてメッセージをお願いします。北村さん最近、ある女優さんとの雑談のなかで、「いい男の見分け方はありますか?」と聞かれたので、「いいなと思う人の友人関係を見てみたら?」とアドバイスをしました。どんな人とつるんでいるかで、その人がわかることもありますからね。それが読者のみなさんにも役立つかわかりませんが、とにかく臆することなくいろんな人と積極的に出会うことは大切だと思っています。あとは、「ときめいていきましょう!」ということでしょうか。ときめきというのは、いくつになってもできることですし、真剣な恋だけじゃなくて、誰かのファンになるのでもいいですよね。そういう気持ちになるだけで健康にもなると言われているので、目がキラキラするようなことをたくさんしてほしいです。インタビューを終えてみて……。劇中ではアウトローな魅力全開でしたが、とても穏やかで優しい笑顔が印象的な北村さん。撮影時には20年以上前にこれからブレイクする俳優としてananで取材を受けた際、うれしくてがんばろうと思ったというエピソードまで聞かせてくださいました。本作では、ぜひ泥臭くて色気に溢れる北村さんのかっこよさにしびれてください。型破りな魅力に、惚れずにはいられない!昭和の匂いを漂わせながら、令和ならではの要素も加え、新たな探偵映画として誕生した本作。多くの人が生きづらさを抱え、閉塞感に包まれている現代だからこそ、見事なまでの暴れっぷりには誰もが虜となり、爽快感と共感を覚えるはずです。写真・安田光優(北村有起哉)取材、文・志村昌美ヘアメイク・石邑麻由スタイリスト:吉田幸弘ジャケット¥31,900、パンツ¥15,400/ともにクラウデッド クローゼット(クラウデッド クローゼット 越谷レイクタウン店 048-930-7224)、インナー¥17,600/ディスティンクション メンズビギ(メンズビギ リミテッド 有楽町マルイ店 03-6738-3801)、その他スタイリスト私物ストーリーとある街に流れ着き、しがない探偵業を営んでいる一匹狼の中年男・連城新次郎。闇の賭博場で起こしたトラブルの代償として、顔なじみのヤクザである笠原組の幹部から事務所でボヤ騒ぎを起こした犯人を突き止めるように言われる。そんななか、新たな依頼人として連城のもとを訪ねてきたのは、若い女性ガルシア・ミチコ。突然消息不明になった親友のクルド人女性を捜しているという。こうしてふたつの厄介な依頼を背負い込むことになった連城だが、行く先で次々と緊迫の事態が巻き起こることに……。胸が高鳴る予告編はこちら!作品情報『終末の探偵』12月16日(金)より、シネマート新宿ほかにて公開配給:マグネタイズ©2022「終末の探偵」製作委員会写真・安田光優(北村有起哉)
2022年12月14日ブルガリ(BVLGARI)から、染織家・志村ふくみとコラボレーションした新作バッグ「セルペンティ フォーエバー 志村ふくみ限定モデル」が登場。2022年11月に発売予定だ。人間国宝・志村ふくみとのコラボバッグ絹に草木染めを施した"紬糸”から織りあげた“紬織(つむぎおり)”で知られる、人間国宝の染織家・志村ふくみ。今回のコラボレーションでは、ブルガリのアイコニックな”蛇”モチーフ「セルペンティ」に、志村が生み出す艶やかな色彩と卓越したクラフツマンシップを落とし込み、息を呑むほどに美しいハンドバッグを完成させた。カラーは、自然がもつ色合いを表現した3つを用意。イエローを基調に、輝く光を思わせる色合いの「燈(あかり)」、パステルピンクが濃いパープルへと移り行く様子を表した「舞姫(まいひめ)」、グリーンの濃淡が自然の光景を思わせる「夕虹(ゆうにじ)」がラインナップする。ボディには、京都にある志村の工房で織りあげた、優美な着物生地を採用。そこにブルガリの職人たちによる熟練の技で、同系色のカーフレザーを組み合わせ、洗練された佇まいに。フロントには、マラカイトの瞳をあしらった、エナメルの”スネークヘッド”クロージャーをあしらっている。なおこれらのバッグは、各10点のみの限定アイテムとなっている。【詳細】ブルガリ「セルペンティ フォーエバー 志村ふくみ限定モデル」1,017,500円<各限定10点>※日本限定発売日:2022年11月発売予定カラー:燈、舞姫、夕虹サイズ:W18xH15xD9.5cm【問い合わせ先】ブルガリ / ブルガリ ジャパンTEL:03-6362-0100
2022年10月10日夏の風物詩である甲子園ではすでに熱戦が繰り広げられていますが、負けないくらい熱くて激しい青春を体感できると話題の映画『野球部に花束を』もいよいよ開幕。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。醍醐虎汰朗さん【映画、ときどき私】 vol. 510アニメ『天気の子』で主役に抜擢されたのをはじめ、舞台『千と千尋の神隠し』ではハク役を務めるなど、注目を集めている醍醐さん。本作では、青春を謳歌しようと高校に入学したはずが、いつの間にか地獄のような野球部生活を送ることになってしまう主人公の黒田鉄平を演じています。今回は、過酷な撮影現場の裏側や青春の思い出、さらにいま夢中になってることなどについて、語っていただきました。―ご自身にとって本作は実写映画で初主演となりますが、現場に入ったときはどのようなお気持ちでしたか?醍醐さんワクワクする気持ちもありましたが、いろいろ考えすぎてしまった状態だったこともあり、初日はとにかくガチガチ。あまりにも緊張していたので、歩き方がわからなくなるほどでした(笑)。―緊張されていた理由のひとつには、野球が未経験だったこともあるのではないかなと思いますが、事前にかなり練習して挑まれたとか。醍醐さんクランクインの前にコーチの方がついてくださって練習しました。まずはキャッチボールから始めて、そのあとはバットを振ったり、キャッチャーの捕球練習をしたりしました。そのときに驚いたのはボールの硬さ。正直に言うと、いままでは野球の試合でデッドボールに当たって痛そうにしている人のことを「大げさだな」と思っていたんです。でも、痛いどころの騒ぎではないことがわかりました。硬球はもう石ですね……。僕も大きなあざがたくさんできました。―ということは、劇中で痛がっているシーンは実際のリアクションですか?醍醐さんそうですね。撮影中はボールを受ける手がパンパンに腫れました。でも、芝居はしないといけないし、ビビッていると監督から注意されるので、歯を食いしばって続けるしかなかったです。でも、内心では地獄だなと思っていました(笑)。芝居ではなく、本当に部活をしている気分だった―髙嶋政宏さん演じる野球部の監督はスパルタでしたが、本作の飯塚健監督もかなり厳しかったんですね。醍醐さんこれは僕の話ではないですが、本番中に髙嶋さんのアドリブがおもしろくて笑ってしまった人がいて、それがきっかけでカットになってしまったことがあったんです。そしたら飯塚監督がその人のところに近づいていって「ふざけてんのか?」と。もしかしたら、野球部よりも現場の監督のほうが、怖かったかもしれません(笑)。―とはいえ、実際に髙嶋さんの演技はかなりおもしろかったのでは?醍醐さんまだ慣れていないときは、僕も笑っちゃいましたね。ただ、髙嶋さんの演技は慣れてもおもしろいですし、絶対に笑っちゃいけないと思うと余計笑いそうになるので、カメラが違うところを向いているときに笑ったりしながら乗り切りました。―髙嶋さんからは「自分がアドリブを延々とやりすぎてみんなに申し訳なかった」といったコメントが出ているようですが、何があったのでしょうか。醍醐さん劇中で、髙嶋さんに合わせて「野球に狂え!」とみんなで一緒に叫ぶシーンを撮っていたときのこと。テストも本番もまったくカットがかからなくて、延々と叫んでいたら、翌日になって部員の大半の声がカスカスになってしまったんです。僕は喉が強いほうなので大丈夫でしたが、とはいえ舞台のお仕事以外で龍角散を溶かした水を常備して挑んだ現場は初めてな気がします。―肉体的な疲労もかなりあったと思いますが、きつかったシーンといえば?醍醐さん引退ノックをしている場面では、本当に倒れるまでやり続けたので、あのシーンでは誰も芝居していないですね。みんな本気でしたし、素で限界を迎えて倒れています。翌日もみんな歩けないくらいになっていたので、本当に部活をしている気分でした。サッカー部だった頃を思い出して、懐かしくなった―ご自身は、中学生のときにサッカー部に所属されていたそうですね。劇中の練習風景はいまなら問題になりそうなものばかりでしたが、当時を思い出すこともありましたか?醍醐さん僕がいたサッカー部もいまの時代っぽくないくらい本当に厳しかったので、そういう意味では懐かしい気持ちになりました。あと、劇中で出てくる“野球部あるある”で「怖い指導者ほど一度泳がす」というのはどこも同じなんだなと。いまでもたまに調子に乗ってると、泳がされたうえでスパーンと怒られることがあるので、この言葉は心に刻まれました(笑)。―怖いと言えば、“顔面凶器”と呼ばれる小沢仁志さんが先輩役として登場するシーン。共演されてみていかがでしたか?醍醐さん誰よりも現場に早く入り、座ることなくモニターの前でつねにチェックされていらっしゃるのがすごいなと思いました。ただ、いままで出会ってきた人のなかでも、トップレベルで怖かったです(笑)。といっても、ご本人は本当に優しい方なので、Vシネマのイメージから僕が勝手に怖がっていただけですが……。撮影の合間には、日常的な会話もさせていただいたのに、粗相をしてはいけないという気持ちが強すぎてどんな話をしたのかまったく思い出せません(笑)。―そのお気持ちもわかるほど、画面越しでも伝わる迫力がありました。今回は、中学生以来の坊主にも挑戦されていますが、抵抗はなかったですか?醍醐さんいや、最高でしたね。お風呂なんて、体感2分で終わる感覚です。中学生のときは、髪の毛がなかったら女の子にモテないと思ってショックを受けていましたが、いまはそういうのもなくなりましたし、仕事なので何とも思わなかったです。高校生に戻れたら、映画のような恋愛をしてみたい―ただ、劇中で坊主にするシーンでは、1発で決めないといけないプレッシャーもあったのではないかなと。醍醐さん本来、坊主にする場合は、一旦髪を短くカットしてからしないとバリカンに髪の毛が絡まってしまうんですが、今回は長いままの状態から一気にいったので、けっこう引っかかってしまって……。髪の毛がブチブチ抜けてめちゃくちゃ痛かったです。でも、坊主にされる僕だけでなく、僕を坊主にする人も周りが見えなくなるくらいアドレナリンが出ていたからこそできた気がします。―ちなみに、ご自身にとって青春の思い出といえば何ですか?醍醐さん暇さえあれば友達と遊んでいたので、用もないのに友達の家に泊まりに行ったり、花火をしたり、というのをよくしてましたね。―もし高校生に戻れたらしたいことはありますか?醍醐さん部活には入らなかったので、部活に熱中するのも楽しそうかなと。あと、ほかのことは何も考えずに、映画のような恋愛とかもしてみたいです(笑)。―まさに青春ですね。では、いま一番夢中になっているものがあれば、教えてください。醍醐さんそれは、『バチェロレッテ・ジャパン』です。シーズン2が始まったこともあって、僕の周りもみんな見ています。参加者の気分も楽しみつつ、バチェロレッテの尾崎美紀さんのファンとしても応援しているところです。―ちなみに、醍醐さんが女性に魅力を感じる瞬間といえば?醍醐さんたとえば、人の家に行って、みんながワーッと脱いだ靴を自分のと一緒に何気なく揃えてくれる姿とかはいいですね。あとは、よく笑う人です。求められたことにひとつずつ全力で取り組んでいる―お休みの日は、どのように過ごすことが多いですか?醍醐さん夕方くらいから友達とお酒を飲むか、サウナに行くか、そのどちらかですね。家で飲むときは、つまみとして角煮を作るのが好きなので、長い時間をかけてホロホロの肉を育てています。ただ、飲みながら料理しているので、角煮が出来上がるころにはベロベロになってしまうんですけどね。ポイントとしては、あえて少ししか作らないこと。量が少ないぶん、すぐに食べ終わってしまうのですが、そこで「お肉がもうなーい!」となるのが楽しいです(笑)。―なかなか独特な楽しみ方ですね。まもなく22歳となりますが、お仕事に関しては20代に入ったことで変化を感じることもあるのでしょうか。醍醐さんもっと若いときは遊びの延長みたいなところも少しあったかもしれませんが、最近は僕の周りもちょうど就職活動をしている人が多いので、より仕事としての意識が芽生えたところはあると思います。―現在は、映像作品から舞台、声優と幅広く活躍されていますが、今後やってみたいことは?醍醐さんいまはまだ僕が選ぶ立場にはいないと思っているので、まずはいただいたお仕事をひとつひとつ全力でやっていきたいです。そのなかで、いつか第一線で活躍されている方々と肩を並べられたかなと思えるところまで来たら、そのとき初めて自分がしたいことを考えたいなと。それまでは、求められたものを一生懸命する時期だと思っています。周りを鼓舞できるスーパーポジティブな人になりたい―それでは、男性として目指している理想像などがあれば、お聞かせください。醍醐さん僕は、スーパーポジティブで太陽みたいな人間になりたいです!その場にいるだけで周りを鼓舞できるような存在になりたいので、普段からネガティブな発言はしないように気をつけています。―最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。醍醐さん女性にとっては、「男のノリってこんな感じなのかな?」という教科書みたいなところも楽しんでいただけると思っています。いまはこういうご時世であまりハッピーな雰囲気ではないかもしれないですが、この作品のように「ただおもしろいだけ」という映画はあまりないと思うので、ぜひ笑いに来て明るい気持ちになっていただけたらうれしいです。インタビューを終えてみて……。とにかく明るくて、太陽のような笑顔が似合う醍醐さん。そのいっぽうで、女性読者へのメッセージをお願いした際には、「女性に向けて言うのはちょっと恥ずかしい」とシャイな一面も覗かせていました。さまざまな顔を持つ醍醐さんだけに、幅広い役どころでこれからも楽しませてくれそうです。思春期あるあるに共感必至!あり得ないほど理不尽な世の中も、メジャーリーグ級の“笑いのホームラン”ですべて吹き飛ばしてくれる青春コメディ。泥まみれになっても何度でも立ち上がる部員たちの姿に愛おしさを覚え、いつの間にか胸が熱くなってしまうはず。汗と涙を流しながら全力で生きる人たちに届けたい最高のエールを受け取ってみては?写真・北尾渉(醍醐虎汰朗)取材、文・志村昌美ストーリー中学時代の野球部生活に別れを告げ、坊主頭から茶髪にイメチェンして高校デビューを目指していた黒田鉄平。夢見たバラ色の高校生活は、同級生と一緒にうっかり野球部の見学に行ったことによって、あっけなくゲームセットとなる。しかも、新入生歓迎の儀式で早々に坊主に逆戻りしてしまうのだった。鬼のように豹変した二年生と三年生、そして昭和スパルタ丸出しの最恐監督のもと、 黒田ら一年生は“ザ・ハラスメント”な世界に翻弄され、憔悴していくことに。しかし、恐れていたはずの“伝統”に、気がつけば自分たちも染まっていくのだった……。衝撃の予告編はこちら!作品情報『野球部に花束を』8月11日(木・祝)全国ロードショー配給:日活️©2022「野球部に花束を」製作委員会
2022年08月08日まもなく公開される映画のなかで、60年振りに映画化されることでも関心を集めている『破戒』。そこで、日本文学における不朽の名作に挑んだこちらの方々にお話をうかがってきました。間宮祥太朗さん、石井杏奈さん、矢本悠馬さん【映画、ときどき私】 vol. 499間宮さんが演じたのは、亡き父から強い戒めを受け、被差別部落出身者であることを隠し続けて苦悩する主人公の丑松(うしまつ)。そして、その丑松が想いを寄せる士族出身の志保役を石井さん、さらに丑松の同僚であり親友でもある銀之助役を矢本さんが務めています。今回は、現場での忘れられない思い出やそれぞれのターニングポイントなどについて、語っていただきました。―共演された感想からおうかがいしたいのですが、まずは間宮さんから見た石井さんの印象を教えてください。間宮さんもともと凛とした雰囲気を持っている女優さんだなと思っていましたが、それが今回の志保という役をより魅力的にしていると感じました。所作にも哀愁のようなものが含まれているので、立ち姿だけで説得力がある方だと思います。―また、親友役にプライベートでも親交の深い矢本さんが決まったときはいかがでしたか?間宮さん悠馬に関しては、もはや印象も何もないですよね(笑)。でも、銀之助が丑松にとっていかに重要な存在だったのかがわかっていたので、その役を悠馬がやってくれると聞いたときに、これは間違いないものになるだろうなと。そういった確信と安心感がありました。矢本さん僕は、はじめは本当の友達だからオファーされたのかなと(笑)。でも、台本を読んでみると、僕が銀之助を演じる重要度やキャスティングの意図は汲み取れたので、納得のいく形で最後まで緊張感を持って務めあげられました。ただ、最初に聞いたときは、また一緒かと笑っちゃいましたが……。2人の間にしか流れていない緊張感があった―やっぱり照れ臭い部分があるのでしょうか。矢本さんいやぁ、本当は共演なんてしたくないですよ!間宮さんあははは!矢本さんだって、みなさんも同じだと思いますが、仕事場にプライベートの友達がいるとこそばゆくないですか?まさにそういう感じです。でも、今回は題材として根底に重いものが流れているなかで、友達としての関係性をゼロから築いていくのはしんどいところもあったの思うので、そういうなかで仲のいい連れと親友役ができたというのよかったです。おかげで最初から芝居だけに集中できたので、ストレスなく気持ちがいい状態で現場に入ることが出来ました。―石井さんから見た間宮さんはいかがでしたか?石井さん本当に裏表のない方なんだろうなと思いましたが、私が京都で見た間宮さんは、佇まいなどすべてが丑松さんという印象でした。なので、取材でお会いした際、「こんなに笑う方なんだ」と思ったくらいです(笑)。間宮さん確かに、普段はラフですけど、今回の志保と丑松は、2人の間にしか流れていない緊張感みたいなものがある関係性だったので、現場ではお互いにあまりしゃべる感じではなかったよね。―長年一緒にいる矢本さんから見て、本作での間宮さんの魅力といえばどんなところでしょうか。矢本さん今回は、不完全燃焼な人生に葛藤するようなところがあり、いままで祥太朗が演じてきたなかでも精神的なカロリーが高い役。それだけに、台本を読んでいるときからどうやってこれを演じるんだろうかと考えていました。というのも、いつもは何となくどういう感じで祥太朗が肩を作ってくるかわかるんですけど、今回はどんな球種かもまったく見えないまま。だからこそ、この現場で祥太朗を見るのは新鮮でした。それに、僕の銀之助は祥太朗の丑松を見てからではないと完成しない役だったなと思います。この現場でもう一度初心に返ろうと思えた―石井さんにとっても、そんなおふたりの存在は大きかったのではないかなと。石井さんそうですね。私はあまり時代劇の経験がなく、京都の撮影所も初めてだったので、とても緊張していましたが、おふたりが他愛のない話で盛り上がっていたり、テンションが高く元気だったおかげで、リラックスして演じることができました。―ほかにも、幅広いキャストが揃っていましたが、印象に残っている方は?間宮さん僕は、大先輩の石橋蓮司さんですね。矢本さんいや、もう大、大、大先輩ですよ。間宮さん撮影中に天候の関係で、人力車に乗ったり降りたりを何度も繰り返していたことがあり、すごく大変そうでしたが、人力車の上で前のめりの状態のままでも、何も言わずにじっと止まっていらっしゃる姿がすごく印象的で。本当に優しい方なんです。矢本さん僕は、本田博太郎さん。いままでもけっこう共演しているんですが、こういう緊張感のある作品でもいつも通りで、「俺は爪痕を残すことしか考えていない!」とおっしゃっていたんですよ。博太郎さんほどの大先輩で、あの年齢で、もう十分されてきたのに、まだ爪痕を残そうという精神と役者としての欲深さみたいなものがすごいなと。自分も若手の頃から考えると、そういう欲が少し減ってきていたので、焦りも感じましたし、いい刺激になりました。俺もこうじゃないといけないな、みたいな。間宮さん確かに、爪痕残そうと思わなくなったら終わりだよね。矢本さん役者になりたてのころに、「80歳まで爪痕残すんだ!」と言っていたことを思い出して、もう一度初心に返ろうと思いました。ターニングポイントで人生が大きく変わった―丑松は戒めを破ることで、人生の新たな一歩を踏み出していきますが、みなさんにとって大きなターニングポイントを振り返るとしたらいつですか?間宮さん実は、一昨日ある番組を収録したときに気がついたんですけど……。矢本さんえまさか一昨日がターニングポイント?もしかして、いまはターニング後に会えてるってこと?間宮さん違う違う!そんなピンポイントじゃないから(笑)。でも、僕は今年ですね。『破戒』という歴史のある文学作品で主演をさせていただき、ゴールデンタイムでドラマ初主演、さらに3クール連続でドラマにも出させていただいているところなので。とはいえ、いまは渦中にいるからわからないですが、何年かして振り返ったときに、今年がターニングポイントだったと感じるのではないかなと。そういう年を経験してから30代に突入できるというのは、今後意味を持つような気がしています。石井さん私は2年前にアーティスト活動と女優業の両立から、お芝居一本にしようと決めたときです。ただ、私もまだまだがむしゃらに進まなければいけない時期で、振り返る余裕はないですが、みんなで話し合いをしながら決めたことでもあるので、そこがターニングポイントだと思います。実際、人生は大きく変わりました。矢本さん僕は明確にあって、役者を始めた初日です。実は、それまでは友達からおもしろいとチヤホヤされていて、僕は自分のことを天才だと思ってたんですよ(笑)。でも、大人計画の研究生として先輩たちの舞台稽古を見学していたら、アドリブがあまりにおもしろくて「役者とはこんなバケモノしか活動できないものなのか。俺なんてただの凡人じゃないか」と打ちのめされまして……。その翌日には、「役者をやめたいです」と言っていました(笑)。でも、あの日の“洗礼”というか、挫折がなかったらいまみたいに自分のやりたいことに対して心を強く持てなかったと思うので、1日目に地面に膝がついて本当によかったです。自分は何者でもないと思いながらやっている―みなさんは、ご自身に課している“戒め”はありますか?矢本さん僕は調子に乗りやすいので、天狗にならないように、つねに自分に言い聞かせています(笑)。いまは、バイプレイヤー的な感じの立ち位置なので自分をキープできていますが、もし一気に売れるようなことがあったら危険だなと。実際、もしいまの若い子みたいにスターになるようなタイプだったら、半端なく嫌なヤツになっていたでしょうね。なので、「俺は何者でもないんだ」と思いながらやっています。間宮さん戒めというわけではないですが、仕事に関することだと、僕たちの場合は作品ごとに職場自体が変わって、雰囲気も全然違うので、そこに対応できる柔軟さは持ち続けていたいですね。自分がしたいことを貫くというよりも、その現場の空気に合った自分の居方(いかた)をそれぞれで見つけていきたいなと思っています。石井さん私も戒めではないかもしれませんが、何事も嫌いにならずに、楽しみたいという心意気を持つようにしています。つらいことがあったとしても、それによって何かを嫌いになりたくないので、まずは楽しむことを大事にしながら日々を過ごしているところです。自分の好きなことをしているときが一番魅力的―それでは最後に、ananweb読者へメッセージをお願いします。石井さんこの映画は、若い世代の方にも観ていただきたい映画になっているので、多くの方に届いてほしいなと思います。矢本さん僕は、女性というのは、年を重ねれば重ねるほどキレイになると思っているので、それだけを伝えたいですね。間宮さん(笑)。ここってそういうコーナーなの?じゃあ、とりあえずその系統に合わせると、女性は自分の好きなことを心から楽しんでいる姿が一番魅力的だと思います。あと、映画に関して付け加えると、最近は恋愛リアリティー番組とかで、男女が公の場でイチャイチャする姿に見慣れてきたかもしれませんが、志保と丑松はプラトニックな関係。ただ目が合うだけでも、指が触れそうになるだけでもドキドキするようなところがあり、僕もそこがいいなと思ったので、そういった奥ゆかしい感じも楽しんでいただきたいです。インタビューを終えてみて……。大変な撮影をともにしたからこそ生まれたお互いへの信頼感も伝わってきた間宮さん、石井さん、矢本さん。3人揃っての取材は今回が初ということでしたが、緊張感の漂う劇中とは違い、とてもリラックスした笑いの絶えない取材となりました。いつもとはまた違う表情を見せるみなさんの熱演は、ぜひスクリーンで堪能してください。自らの信念を持って未来を切り開く!生きていくうえで誰もが抱える葛藤や人間としての尊厳など、現代にも通じるものが描かれている本作。“戒め”を破った先に開けた道へと向かって歩いていく丑松の姿、そして胸を締め付ける恋模様にも心を揺さぶられる渾身の1本です。写真・角戸菜摘(間宮祥太朗、石井杏奈、矢本悠馬)取材、文・志村昌美ストーリー自分が被差別部落出身ということを隠し、地元から離れた小学校で教師として勤めていた瀬川丑松。彼は出自を隠し通すように、亡くなった父からの強い戒めを受けていたが、そのことに悩み、差別の現状を体験するたびに心を乱されていた。そして、下宿先の娘で士族出身の女性・志保への恋にも心を焦がすことに。友人の同僚教師・銀之助に支えられながらも、苦しみのなかにいた丑松は、被差別部落出身の思想家・猪子蓮太郎に傾倒していく。そんななか、学校では丑松の出自についての疑念もささやかれ始め、丑松の立場は危ういものになっていくのだった……。胸に刺さる予告編はこちら!作品情報『破戒』7月8日(金)丸の内TOEIほか全国ロードショー!配給: 東映ビデオ©全国水平社創立100周年記念映画製作委員会写真・角戸菜摘(間宮祥太朗、石井杏奈、矢本悠馬)
2022年07月07日『志村けんの大爆笑展』が、6月12日(日)まで名古屋パルコ南館7階 イベントスペースにて開催中。本展は、「ザ・ドリフターズ」で活躍、テレビのバラエティー番組などに出演して人気を集めたコメディアン、志村けんの初の企画展だ。すでに東京、大阪、仙台、福岡など、どの会場でも大きな盛り上がりをみせ、ついに名古屋での開催となる。輝かしい歴史と笑いに徹底的にこだわったプロフェッショナルな素顔を、かつらや衣装、小道具のほか、セットの再現やプライベートの貴重品などを通して紹介している。『志村けんの大爆笑展』会場はいくつかのブースに分かれて展示。ご家族から拝借した貴重品とともに笑いのルーツを年表にして展示するほか、『名物キャラクター大集合』では「変なおじさん」や「ひとみばあさん」をはじめ、志村けんが生み出した名物キャラクターが集結。コント内で実際に使用されたかつらや衣装に加え、緻密に計算し制作された小道具などをコント映像と解説と共に紹介する。『志村けんの大爆笑展』また、会場内にはコントを体験できる写真撮影スポットがあり、『志村けんのだいじょうぶだぁ』でおなじみの鏡を使用したコントや、ドリフターズ時代からの定番の「タライ落とし」もあり、志村けんのコントを体験できるのも必見だ。撮影可能エリア。実際にコントを体験することができる。撮影可能エリア。実際にコントを体験することができる。「ひとみばあさん」のブティック『高級ブティックひとみ』がグッツショップイベント限定でオープンするのも見逃せない。ここでは「変なおじさんパジャマ」や、志村けんが愛用したブランドとのコラボ商品など、ここでしか手に入らない限定グッズが目白押しだ。『志村けんの大爆笑展』多くの志村けんグッズが並んでおり、何を買おうか悩んでしまいそうなほど。時間に余裕を持ってご来場いただくのがおすすめだ。『志村けんの大爆笑展』『志村けんの大爆笑展』また、『志村けんの大爆笑展』初日となる5月28日(土)には、仲本工事がオープニング店長として来場した。「志村のお祭りみたい」「いたるところに志村がいるみたいで懐かしい気持ちになる」と本展を鑑賞した感想をもらう。初日には仲本工事がオープニング店長として来場仲本工事がいるところはこの展覧会の一番の見どころと言っても過言ではない「殿の部屋」。志村けんの代表作“バカ殿”がお客様の目の前に降臨! 特殊メイク・等身大で非常にリアルに再現してあり、「志村けんのバカ殿様」の世界に引き込まれる。こちらも撮影スポットなため、志村けんと一緒に写真を撮るのがおすすめ!本当に本物の志村けんがいるように思えてしまうほどの再現力なので腰を抜かす人も続出しそうだ。『志村けんの大爆笑展』会期: 6月12日(日)まで会場:名古屋パルコ南館7階 イベントスペース開催時間:11時~20時 (最終日は18時まで/入場は閉場60分前まで)入場料:当日券一般・大学生1,200円 / 小中高生600円※未就学児は無料。※未就学児のお子様のみの入場はできません。※障害者手帳の提示で本人は無料、介添えは有料です。
2022年06月02日映画には、知られざる真実や忘れられた過去にも光を当てる力がありますが、注目作『山歌(サンカ)』では、かつて日本の山々に実在していた「サンカ」と呼ばれる流浪の民の姿を描いています。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。杉田雷麟さん【映画、ときどき私】 vol. 475本作で、主演に抜擢されたのは、『半世界』や『罪の声』『孤狼の血 LEVEL2』といった話題作への出演が続いている若手実力派俳優の杉田雷麟(らいる)さん。劇中では、生きづらさを抱えていた中学生の則夫が山でサンカの家族と出会い、さまざまな経験を通して変化していくさまを見事に演じています。今回は、初主演作への思いや今後挑戦してみたいことなどについて、語っていただきました。―まずは、初主演が決まったときのお気持ちからお聞かせください。杉田さんオーディション用の脚本では、ラストの父親と対峙する場面しか描かれていなかったので、そのときはまだ自分の役や内容についてあまりわかっていませんでした。実は、主演であることも受かってから知り、「え主演?」となったほどなので(笑)。―かなり驚いたと思いますが、同時にプレッシャーも感じたのではないかなと。杉田さん確かに、初めは主演ということに気負ってしまったところもありました。でも、本読みを進めていくうちにだんだん緊張がほぐれていき、則夫が自分の体のなかに染み込んでいった感じです。サンカについても、監督が僕の疑問点についてきちんと説明してくださったおかげで現場にはすごくいい状態で入れました。―笹谷遼平監督は杉田さんの影の部分に惹かれたとおっしゃっていますが、何か意識されていますか?杉田さんオーディションに行くときは、毎回「絶対にこの役を獲るぞ」という感じで気合いを入れて行きますが、重めの役が続いていたときに受けたオーディションだったので、そういうふうに見えてしまったのかなと。監督からは「影が2メートルくらいに見えた」と言われました(笑)。一番に考えていたのは、自分らしくいること―ちなみに、普段の杉田さんはどんな感じですか?杉田さん友人といるときは、ツッコんだり、ボケたりする感じで、けっこう明るいほうだと思います。とはいえ、スベることは多いですが……。―(笑)。今回、現場では主演として心がけていたこともありましたか?杉田さん自分らしくいたいというのを一番に考えていたので、主演というのはあまり意識していなかったです。それよりも周りの方に助けていただいたほうが多かったので、またこういう機会があれば、次はがんばりたいと思います。―撮影から3年近く経っていますが、初主演を経験したことで変化を感じる部分もあるのではないでしょうか。杉田さん演技については、3年前より成長していてほしい気持ちはありますが、役者に対する思いやこの道で生きていく覚悟に関しては、役者を始めたときからずっと変わっていません。いい意味であの頃とは変わっていない気がしています。―素敵ですね。本作で描かれている「サンカ」については、どのような印象を受けましたか?杉田さん最初に聞いたときは、何にも縛られることなく、自由に生きていてうらやましいというか、少し憧れるようなところはあったかもしれません。でも、劇中でも描かれているように、サンカの人たちが生きにくい時代になっていると知り、自分たちが何気なく便利に暮らしている陰で、やはり何かが犠牲になっていると改めて感じました。命や自然の偉大さについて改めて実感した―自然に対する見方や生き方など、何か影響を受けたところもあったのでは?杉田さん撮影では、実際に魚やヘビをさばくシーンがありましたが、直前まで生きていたものを焼いて食べたので、僕たちは命をいただいているんだなと実感しました。普段の生活ではあまり考えていないことだったので、ヘビの頭を切り落とすシーンでは僕の素のリアクションが映っています。―ご出身は栃木県ということですが、子ども時代はどんなふうにして過ごされていましたか?杉田さん僕は自然のなかで遊ぶことがわりと多かったので、トカゲやヘビを追いかけていたりしていましたね。ただ、最近はあまりそういうことに触れる機会が少なかったので、今回の現場を通じて、改めて命や自然の偉大さについて考えました。―杉田さんはサッカーやボクシングなどをされてきたということで、体力には自信があるほうだと思いますが、それでも山での撮影は大変だったのではないかなと。杉田さん雨が多くて寒さなどのきつさはあったものの、山に溶け込んでいるような感覚でいられたので、体力的な問題はありませんでした。ただ、撮影の最後のほうで大量発生していたヒルに刺されてしまい、かかとが血だらけになったことはありましたが(笑)。今回は、自分と則夫を切り替えることもなく、初めから終わりまで猛ダッシュで駆け抜けているようなイメージだったので、どちらかというとドキュメンタリーに近い撮影環境だったかもしれないですね。20代はいろいろな役をやって、幅を広げたい―今年でいよいよ20歳となりますが、法改正によってすでに4月から新成人となりました。心境の変化などはありましたか?杉田さん社会的にはすでにいろいろなことが適応されてはいますが、正直あまり実感がないというか……。やっぱり僕のなかでは、12月の誕生日に20歳を迎えたときが節目になる感じはしています。―どんな20代にしたいですか?杉田さん20歳になったら、今後演技をしていくうえで必要な感情が生まれ、幅も広がると思うので、とにかくいろいろな役をやりたいです。そのためにも、いまやれることを全力でできたらと。20代は、物事をもっと客観的に見れるようにもなりたいです。―ちなみに、これまでターニングポイントとなった作品や監督との出会いといえば?杉田さん本作の笹谷監督は伊参スタジオ映画祭で大賞を受賞したことでこの映画を作ることができたと聞きましたが、そのときに自分のなかでも監督をやってみたいという気持ちが生まれました。そういう意味では、この作品もひとつのターニングポイントになっている気がします。いつか自分の作品を海外に出してみたいと考えている―すでに脚本を書き始めているそうですが、どのようなものを書かれているのか教えていただけますか?杉田さん自分で読み返してみても、浅くてダメだなと思うものばかりなのでまだちょっと……。というのも、自分でも明確にコレだと言えるものが見つけられていなくて、どこに行こうかなとさまよっている状態なので。これまでわりと暗めの役が多かったので、そういうタイプの作品にひっぱられがちなんですが、それが本当に自分の撮りたいものかどうか僕自身でもわかっていないんだと思います。まずはいろいろと書いてみて、俳優と監督の両方ができるようになりたいです。映像化まではまだ遠い話ではありますが、いつか自分の作品を海外に出して、多くの方に観てもらえるようになれたらいいなと考えています。―非常に楽しみです。ちなみに、ご自身は普段どんなタイプの作品が好きですか?杉田さん洋画を観ることが多いですが、日本だと刑事ドラマをよく観ています。―最近観てよかったものがあれば、教えてください。杉田さん僕が大好きなトム・ハンクスさん主演の『ターミナル』とホラー映画の『ソウ』。どちらもほぼ同じ場所で展開されていますが、それであそこまでおもしろくできるということは、やっぱり脚本がおもしろければいい映画が作れるんだと、この2作品だけでも、思い知りました。最近は、時間があるとだいたい動画配信サービスで映画やアニメを観ていますが、俳優の仕事を始めてからは純粋な観客としての目線ではなくなりましたね。どうやって撮っているのか、つねにいろいろなことを考えながら観ています。これからもいい意味で変わらずに、がんばっていきたい―これから俳優として目指している理想像はありますか?杉田さん主役でも脇役でも両方務まるようになりたいですし、少し出ているだけでも印象に残るような俳優になりたいと思っています。いつか刑事役もやってみたいですし、コメディなども含めてどんどん幅は広げていきたいです。僕は演じているときが一番楽しいですし、現場では学ぶことも多いので、とにかく一生懸命やることをいつも意識しています。―それでは最後に、ananweb読者へメッセージをお願いします。杉田さんこの作品では、僕らが演じている以外にも、山の情景や命の描写などたくさん映し出されているので、観ていただいたときに、何でもいいので何かを感じ取ってもらえたらうれしいです。僕自身は、これからもいい意味で変わることなく、成長していきたいと思っています。応援よろしくお願いします。インタビューを終えてみて……。「現場と違って、取材での撮影は恥ずかしくて苦手」とはにかみつつも、さまざまな表情を見せてくれた杉田さん。雷麟というお名前は本名で、雷のように厳しく、頭がよくなるようにという願いが込められているそうですが、それを体現するような唯一無二の存在として、今後ますますの活躍に期待です。山が訴える声に耳を傾ける圧倒的な山の景色のなかで、人間も自然の一部であることを感じるとともに、真の意味で「生きる」とは何かを改めて考えさせられる本作。則夫のように、多くの人が生きづらさを抱えている現代にこそ観たい1本です。写真・北尾渉(杉田雷麟)取材、文・志村昌美ストーリー高度成長にわく1965年の夏。中学生の則夫は受験勉強のため、東京から祖母の家がある山奥の田舎を訪れていた。父と祖母に勉強を強いられ、一方的な価値観を押し付けられていた則夫は、ふとしたきっかけで、山から山へ漂泊の旅を続けるサンカの長である省三と娘のハナ、母のタエばあと出会う。既成概念に縛られることなく自然と共生している彼らと交流を深めていく則夫。生きづらさを抱えていた則夫にとって、いつしかサンカの家族は特別な存在となっていた。そんななか、彼らが山での生活を続けられないほど追い込まれていることを知った則夫は、ある事件を引き起こすことに……。引き込まれる予告編はこちら!作品情報『山歌(サンカ)』4月22日(金)よりテアトル新宿、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開配給:マジックアワー©六字映画機構写真・北尾渉(杉田雷麟)
2022年04月21日2022年3月26日、コントグループ『ザ・ドリフターズ』の仲本工事さんがTwitterを更新。2020年3月に新型コロナウイルス感染症で亡くなった、『ザ・ドリフターズ』のメンバーである、志村けんさんの墓参りに訪れたことを報告しました。墓参りには、同じく『ザ・ドリフターズ』のメンバーである、高木ブーさんと加藤茶さんの3人で訪れたそうです。久しぶりに三人揃ってお墓参りに行ってきました。やっぱり、グループで一緒に仕事をした時のことが一番甦りました。今となっては、良い思い出です。志村、ありがとうネ。 pic.twitter.com/fdfF4IAEPj — 仲本工事 (@nakamoto_koji1) March 26, 2022 同日、高木さんも自身のインスタグラムを更新し、「3人でやっとお墓参りに行けました」とコメントしています。早いもので、志村が亡くなって3回忌です。今日、3人でやっとお墓参りに行けました。bootakagi85ーより引用3人で墓参りする姿に、ファンからは「もう3回忌なのか…」などの声が寄せられています。・志村さんが亡くなって、もう3回忌なのか。早いなぁ。・何世代にも笑いを届けてくれた志村さん。未だに亡くなったなんて信じられない自分がいます。・この3人がそろって、並んでいるだけでなんだか嬉しいです。志村さんも笑っていると思う。・志村さん、幼少期からたくさんの笑いと元気をありがとう!3人が墓参りしてくれて、志村さんも喜んでいるだろうな。加藤さん、高木さん、仲本さんがそろって、志村さんの墓参りへ訪れた姿は、多くの人の涙を誘いました。3人そろって墓参りする姿を、天国の志村さんは、にこにこと笑いながら見守っていたことでしょう。[文・構成/grape編集部]
2022年03月27日俳優・山田裕貴が日本を代表するコメディアンの一人、志村けんさんの若き日を演じるドラマ「志村けんとドリフの大爆笑物語」の放送日が12月27日(月)に決定。さらなる追加キャストが発表された。先日、雑誌「日経トレンディ」(日経BP社)が選ぶ「2021年今年の顔」にも選ばれた山田さんが、デビュー10周年の節目の年に志村けんさん役を演じる本作。いかりや長介さん役を遠藤憲一、加藤茶役を勝地涼、高木ブー役を加治将樹、仲本工事役を松本岳が演じることも発表されている。そして今回発表された、荒井注さん役には金田明夫、志村さんの父親・志村憲司さん役には渡辺いっけい、母親・志村和子さん役には宮崎美子、さらにムロツヨシもある役で出演する。ドラマは、志村さんがコメディアンになることを決意し、いかりやさんの元を訪れ、1968年、高校卒業間際にバンドのボーヤ(付き人)として携わるところから始まる。見習い時代の修業の日々、そして1974年にメンバーの一員となってから1990年代までの、想像を絶するような過酷なスケジュールや、人気の裏に隠された挫折と苦悩、葛藤を描く。また、毎週行われていたネタ会議の様子や、徐々に築かれていく加藤との友情も明らかに。いままで表には出ることのなかったメンバーとのやりとりや、いかりやさんとの関係など、今回のドラマ化に当たって取材して初めてわかったことも描かれる。出演の話がきたときの感想を、金田さんは「志村さんの半生を描くドラマがあるということ、そのメンバーの中の荒井注さん役を、と聞いて、“やらせてください”と、二つ返事でした」と言う。「実在の人物を演じることは、その人物の気持ちをどのぐらい代弁できるのかなとか、彼だったらどう思ってるのかなとまずは考えます。そして形態模写というよりは性格模写のような感じで気持ちを作っていくのですが、今回はそれを楽しんで演じられればいいなと思って臨みました」と語った。子どもの頃からドリフターズを見て育ったという渡辺さんは「本当にドリフターズが好きで見ていました。志村さんが見習いで入ってきて、はじめはあまりうけていない頃からよく覚えているので、今回の出演のお話には感慨深いものがありました」とコメント。さらに芸名の由来には、「お父さんの名前を取って“志村けん”という名前になったことを今回初めて知って、ちょっと鳥肌がたちました」と語る。そして志村さんとは生前、親交のあった宮崎さんは、「今回このようなお話をいただいて、みんなに愛された志村さんを大事に育て、その志村さんが大好きだったお母さんの役を演じることができて、本当に光栄で幸せだなと思います」と言う。約1年ぶりとなる福田組の撮影現場にムロさんは、「ここが僕のホームなんだなと思い出させてくれる時間でした」と言い、「志村けんさんと加藤茶さんという偉大なるお二人を、山田裕貴さんと勝地涼さんが演じられるいうことで、私なりの応援の方法はないかと思って、出演させていただきました」と二人にエールを送る形での出演となった。最後には「今日も楽しいおふざけができました」ともコメントしており、どのような役で登場するのかにも注目だ。「志村けんとドリフの大爆笑物語」は12月27日(月)21時~フジテレビ系にて放送。(text:cinemacafe.net)
2021年11月24日志村けんさんの半生を描いたドラマ「志村けんとドリフの大爆笑物語」の放送が決定。山田裕貴が志村さんを演じ、福田雄一が脚本・演出を手掛ける。昨年3月、新型コロナウイルス感染症に伴う肺炎のためこの世を去った、日本を代表するコメディアンの一人、志村さん。今回ドラマでは、志村さんがコメディアンになることを決意し、1968年、高校卒業間際にバンドのボーヤ(付き人)として「ザ・ドリフターズ」に携わるところから始まる。見習い時代の修業の日々、そして1974年にメンバーの一員となってから1990年代までの、想像を絶するような過酷なスケジュールや、人気の裏に隠された挫折と苦悩、葛藤が描かれる。また、毎週行われていたコントのネタ会議の様子や、徐々に築かれていくメンバーとの友情も明らかに。そして、「8時だヨ!全員集合」や「ドリフ大爆笑」の懐かしい一場面も登場する。今回そんな志村さんを演じるのは、『東京リベンジャーズ』で東京卍會副総長・ドラケン役や、「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」の刑事・山田武志役が近年話題となった山田さん。「お話をいただいたときは、“本当に僕ですか?僕で大丈夫ですか?”と、信じられませんでした。楽しみよりもプレッシャーの方が大きかったです」と心境を明かした山田さんは、役を演じるにあたって、コントシーンを何度も繰り返し映像で見て研究したそうで、撮影の合間もスタッフ相手にコントの練習に励むほど、熱心に取り組んでいたという。そして「実はコントシーンの撮影日が、31歳の誕生日でした。すごくうれしくて、もしかしたらそれは志村けんさんからのプレゼントだったのかなと思います。ドラマの中のセリフで、“笑いたがっている人、笑わせましょうよ”とありますが、そういうドラマになればいいなと思っていますし、その日1日は、志村けんさんに変わって皆さんを笑顔にできるとうれしいです」とコメントしている。福田さんもまた、喜びとともにとてつもないプレッシャーを感じていたそうで「ドリフの歴史の一端を担うことができるだろうかという不安と、僕自身、志村けんさんへの思い入れがとてつもなく強かったので。何しろ、志村さんは少年時代からずっとテレビの前で見てきた大スターでしたから」と思いを明かし、「本当に大変なプレッシャーの中でしたが、山田裕貴さんはじめ役者の皆さんが本当に頑張ってくれましたし、スタッフも本当に素晴らしかったので、いい作品が撮れていると思います。編集はこれからですので、私がプレッシャーから解放されることはありませんけれど、きっといい作品になると信じて、ぜひ、お楽しみに!」と呼びかけた。「志村けんとドリフの大爆笑物語」は12月、フジテレビにて放送予定。(cinemacafe.net)
2021年10月20日志村けんさん(享年70)のコメディアン人生46年を振り返る初の企画展「志村けんの大爆笑展」(10月17日まで東京・松坂屋上野店本館6階催事場にて開催中。11月6〜28日に宮城・TFUギャラリーミニモリ、12月22日〜2022年1月11日に石川・金沢エムザでも開催。詳しくは公式HPまで)が東京で開催中だ。本展は家族から提供された志村さんの貴重な私物や、名物キャラクターの衣装や小道具、コント体験ができる撮影スポットなどで構成されている。そんな「志村けんの大爆笑展」を、『金スマ』(TBS系)の再現ドラマで志村さんの幼少期を演じた星流くん(12)が体験!「殿の部屋」では、志村さんの代表作「バカ殿様」の等身大人形がお出迎え。ザ・ドリフターズの仲本工事さん(80)も「隣にいると話しかけちゃう」と太鼓判を押したリアルさ。星流くんもその完成度に「すごい!」と驚きの様子。「アイーン」のポーズで記念撮影です。「志村けんの大爆笑展」は、見るだけでなく撮影も楽しめる内容になっているのがポイント。「変なおじさん」「いいよなおじさん」など名物キャラクターの実際に使用していた衣装がずらりと並ぶなか、星流くんは、『8時だョ!全員集合』(TBS系)で使用されていた白鳥の衣装の前で「だっふんだ!」の表情でパチリ!また、ザ・ドリフターズの鉄板ネタ、天井からタライが落ちてくるコントを体験できるスペースが。星流くんもタライに当たったときのリアクションが試される!?ほかにも、『志村けんのだいじょうぶだぁ』(フジテレビ系)で人気だった鏡のコント体験も!鏡から体を半分出して、宙に浮いてるような写真や動画も撮れちゃいます。「あんだってぇ!?」でおなじみのひとみばあさんのブティックには、イベント限定グッズが盛りだくさん!レアなグッズに「欲しい!」が止まりません。「笑いがなければ人は生きられない。だから僕は笑いを大事にしたい」ーー。そう語っていた喜劇王・志村けんさんが遺した笑いの世界を楽しんで!
2021年10月16日お笑い芸人・志村けんさんの企画展『志村けんの大爆笑展』の東京開催が2日、松坂屋上野店で初日を迎え、オープニング店長を務めるザ・ドリフターズの仲本工事が、開店前に取材に応じた。仲本は「この時期にこういうものをできるということは喜ばしいし、志村とってもいいことだと思います」と心境をコメント。会場を回って、肌の質感から細部にまでこだわって製作された“リアルバカ殿様”が「一番落ち着くかなあ」という。あまりのリアルさに、つい話しかけてしまうそうで、「『お前なんで先逝っちゃったんだよ』とか『カトちゃんが一番悲しんでるぞ』とか言いました。日本の財産だったからね」と、しみじみ。ほかにも、「『(8時だョ!)全員集合』や『(ドリフ)大爆笑』で見たシーンの現場がありますので、そこで体感してもらって楽しんでもらえればと思います」と呼びかけた。志村さんとの思い出を聞かれると、「一番印象に残ってるのは『ジャンケン決闘』かな。あれが盛り上がってやってても楽しかったな」と、志村さんがあの“最初はグー”を生み出したコーナーを回想。志村さんが亡くなってから1年半という月日が経ったが、「僕らはわりと単純だから、あんまりそういう思い出に浸ったりとかはしてないんです。こういう機会に『ああいうことがあったな』とか鮮明に思い出されるというのでいいんじゃないですか? 志村の思いまで背負って演技したり、コントしてたら、きっと湿ったもんになっちゃうと思うので、それはそれ、これはこれって線引きをきちっとしてやっていけばいいと思います」と強調した。はっぴの下に、志村さんの様々なキャラクターが描かれたTシャツを着用した仲本。志村さんの描かれたTシャツを着るのは初めてだそうだが、着心地は「気持ちいいです(笑)」。「Tシャツが好きで1年中着てるので、こうやって仲間のTシャツを着るっていうのは、僕は好きですね」とご満悦の様子で、プライベートでも「いろいろと着て、私のファッションにしたいと思います」と笑顔を見せた。その後に開店すると、仲本はオープニング店長として来場者1人1人を出迎え、幅広い世代に愛される志村さんの人気を実感していた。同展は、17日まで開催。入場時間は10時~20時(最終入場は19時30分まで)で、入場料は一般・大学生1,200円、中高生800円、図録付き2,000円。
2021年10月02日お笑い芸人・志村けんさんの企画展『志村けんの大爆笑展』が、10月2日から松坂屋上野店で東京開催を迎える。この初日に、ザ・ドリフターズの仲本工事が、オープニング店長に就任することが決まった。大阪開催では、連日多くの客が来場し、志村さんの笑いのルーツやコント映像、衣装などで喜劇王の軌跡を懐かしんでいる。特に、肌の質感から細部にまでこだわり製作された“リアルバカ殿様”は来場者を圧倒。また、大人気の「鏡のコント」が体験できるエリアなども用意されている。東京開催では、イベントの告知映像のナレーションを務めた仲本が初日の開店時に客をお出迎え。人気キャラクター“ひとみばあさん”のお店「高級ブティック ひとみ」では、アメリカで1920年に創業したキャップブランド“NEW ERA”とのコラボ商品を発売する。国民的キャラクター“変なおじさん”をモチーフにしたデザインを含め3種類が販売される予定だ。仲本は「笑いに対して生涯かけて勉強し努力し追求し続けた志村の遺(のこ)した作品を、ぜひみなさんも会場に足を運んで見に来てくださいね! 僕もみなさんに会えるのが楽しみです。志村もきっと喜ぶよ」と話している。(C)イザワオフィス/フジテレビ
2021年09月01日お笑い芸人・志村けんさん初の企画展『志村けんの大爆笑展』(企画制作:フジテレビ/イザワオフィス)が、8月6日から全国10都市以上で開催されることが決まった。同展では、志村さんの幼少期の写真など、その笑いへのルーツを年表形式で紹介すると共に、一番のファンである家族から借りた貴重品を展示。また、緻密な計算で作られた劇用小道具や衣装も大量に展示する。「喜劇王『志村けん』の軌跡」では、志村さんの笑いのルーツを大年表にして、その軌跡を追う。幼少期から喜劇王が創り上げた数々の名作コントと功績を、マル秘エピソードと家族から拝借した貴重品と共に紹介する。「名物キャラクター大集合」では、志村さんが生み出した国民的キャラクター“変なおじさん”、“ひとみばあさん”をはじめ、名物キャラが集合。コント内で実際に使用されたかつらや衣装に加え、緻密な計算で創作された小道具も公開。コント映像と解説と共に紹介する。写真撮影スポット「殿の部屋」では、志村さんの代表キャラ“バカ殿様”を特殊メーク・等身大でリアルに再現。おなじみの“アイーン”ポーズで出迎える。『志村けんのバカ殿様』撮影セットも再現し、“バカ殿様”の世界観に引き込む。写真撮影スポット「名作コント体験」では、『志村けんのだいじょうぶだぁ』でおなじみの鏡を使用した摩訶不思議コントや、ドリフターズで定番の“タライ落とし”コントを体験。物販コーナー「高級ブティックひとみ」では、大人気商品「変なおじさんのパジャマ」や、志村さんが愛用した「GOD SELECTION XXX」などの有名ブランドコラボ商品をはじめ、イベント会場でしか手に入らない限定グッズが販売される。ザ・ドリフターズの高木ブーは「志村は笑いに対してドリフのメンバーの誰よりも貪欲だったよね。そんなアイツの作品をぜひ皆さんお楽しみください。僕の中では志村はずっと生きてる。だからみんなが大爆笑展に来てくれるのを、アイツも会場で待ってるんじゃないかな」とコメント。仲本工事は「あんなに笑いに対して努力した男、僕は見たことがないよ。すごくいろんな笑いを見たり、音楽を聴いたりと、とにかく勉強熱心だった。そんな志村が遺(のこ)した作品をみなさんも是非会場に足を運んで見に来てください!志村もきっと喜ぶよ」。加藤茶は「ドリフターズの坊やとして入ってきた志村を誰よりも可愛がってきたのは俺じゃないかな。アイツにはずいぶん無茶させられたんだけど、憎めない奴だった。会場にはそんな志村と俺のエピソードなんかも展示されているみたいなんで、皆さんぜひお越しください」とアピール。企画制作のフジテレビ・板谷恒一氏は「2020年3月29日、新型コロナウイルス感染症による肺炎のため亡くなられた志村けんさん。志村さんは生前、こんな言葉を残されています。“笑いがなければ人は生きられない。だから僕は笑いを大事にしたい”。現在も先の見えない状況が続き、多くの皆さんが不安な日々を過ごされています。そんな中でも、志村さんが残された“笑い”はどんな時でも私たちを笑顔にしてくれました。このイベントを体感していただき、改めて志村さんをしのぶと共に、数多く作られた珠玉のコントで“大爆笑”していただくことで、日本が前を向いて生きていくための大事な糧になれば幸いです」と話している。開催日程は、下記の通り。・2021年8月6日~2022年12月(予定)・大阪会場を皮切りに全国10都市以上を巡回(予定)■大阪会場2021年8月6日~9月5日(なんばスカイオ7階 コンベンションホール)入場料金:一般・大学生1,000円(800円)、小中高生700円(500円)■東京会場2021年10月2日~10月17日(松坂屋上野店 本館6階 催事場)入場料金:調整中宮城会場は2021年11月~、石川会場は2021年12月~開催予定
2021年06月30日ステイホームが続くなか、家族と過ごす時間が増えたことで、改めて家族としっかり向き合った人も多いのではないでしょうか?そこで、今回ご紹介するのは、ある決断をした母親と家族の姿から生き方や家族のあり方について考えさせられる話題作です。『ブラックバード家族が家族であるうちに』【映画、ときどき私】 vol. 387ある週末、医師のポールと病を患っている妻リリーが暮らす海辺の家に集まってきたのは、娘たちとその家族。彼らの目的は、安楽死を決意したリリーが家族と最後の時間を過ごすためだった。母の意思を受け入れてはいるものの、苛立ちを隠せない長女ジェニファー。いっぽう、次女のアナは母の決意を受け入れられず、姉と衝突を繰り返していた。複雑な思いを抱えながらも、一緒の時間を過ごす家族たち。徐々にそれぞれが抱えていた秘密が明らかになるのだった。そして、ジェニファーとアナは、母の決意を覆そうと試みるのだが……。アカデミー賞受賞経験のあるスーザン・サランドンとケイト・ウィンスレットをはじめ、実力派俳優が顔を揃えていることでも注目の本作。そこで、こちらの方にその舞台裏についてお話をうかがってきました。ロジャー・ミッシェル監督『ノッティングヒルの恋人』や『恋とニュースのつくり方』など、さまざまな人気作を手掛けてきたミッシェル監督。今回は、本作の現場で初めて経験したことや俳優陣から感銘を受けた瞬間などについて、語っていただきました。―オファーをもらってすぐに決断したそうですが、普段から作品の題材を決めるときは、即決するタイプなのでしょうか?それとも、この作品は特別でしたか?監督普段はわりと頭で物事を考えるタイプではありますが、作品に関しては直感が一番正しいガイドになることが多いですね。今回も、すぐに魅力を感じました。ただ、直感なので、オファーを受けたときは自分と題材とがどうしてつながっているのかわからないことも。撮り終わって数年経ってから、「ああ、こういうことだったんだ!」とわかることもけっこうあるくらいなんですよ(笑)。―では、本作に関しては、どのような部分に監督の直感が働いたのか答えは出ていらっしゃいますか?監督題材はもちろんのこと、ひとつの家に家族全員がほぼ丸3日間一緒にいなければいけないという設定がおもしろいと思いました。それはまるでアガサ・クリスティの作品のように、容疑者たちが集まる週末に誰かが死んでしまうことがわかっているような展開だなと。登場人物も、それぞれのキャラクターに踏み込みやすい物語なので、そういった部分に惹かれました。スーザンの存在と演技に助けられた―母のリリーを演じたスーザン・サランドンさんの存在感は、この作品の大きな柱になっていたと思いますが、ご一緒されてみていかがでしたか?監督この映画では死よりも、生を描いているので、スーザン自身の魅力をリリーにも吹き込んでいきたいと考えていました。彼女は機知に富んでいて、洗練されたユーモアを持ち、本当にタフでイキイキとした人なんですよね。撮影中、彼女のアイディアを取り入れながら最終的な脚本を完成させていきました。スーザンのおかげでリリーはセンチメンタルになることなく、リアルでありながらエッジの効いたユーモアのあるキャラクターにすることができたのではないかなと。題材が重いので、なるべくそういった軽妙さを出したいと思っていましたが、アドリブも含めた彼女の素晴らしい演技に助けられました。―対する娘のジェニファー役を務めたケイト・ウィンスレットさんも、素晴らしかったです。監督今回、一番初めにキャスティングされたのは彼女でしたが、「ケイト・ウィンスレット」という名前が自分の企画につくだけでまるでハチミツのようにほかの俳優たちを引きつけてくれました(笑)。そうやって素晴らしいキャストに集まってもらうことができ、より魅力的な作品になったと思います。―ケイトさんの役との向き合い方は、どのようにご覧になっていましたか?監督この役はいままでの彼女が演じてきた役とは違うタイプのキャラクターだったと思いますが、そういう醍醐味も感じながら演じてくれました。実は、公開前に私の知人に作品を見せたところ、驚くことに最後のクレジットになるまで、ジェニファーがケイトであることに気がつかなかった人もいたくらい。つまり、それだけ彼女が役になりきっていたということだと思います。彼女の冒険心や喜びは周りにも影響を及ぼしていて、みんなのお母さんのようでもありました。そんな彼女が言い出しっぺで、キャストも含めたみんなでブラックバードの柄のタトゥーを入れたことも。私にとって人生で初めてのタトゥーとなりましたが、それくらいみんなの仲がいい現場でした。映画作りは予期せぬ出来事を見つける作業の連続―その一体感は、作品からも伝わってきました。監督撮影中はみんなで現場に近くに泊まっていたこともあり、つねに一緒の時間を過ごしていたので、ある種のストックホルム症候群のような状態に陥っていたのかもしれませんね(笑)。ただ、それによって、お互いのことを思いやれる関係性を築くことができました。―舞台となった家にも、そういった空気感を生み出す力があったのではないでしょうか?監督今回は家もキャラクターのひとりと言ってもいいほど、重要な存在となりました。当初はイギリスのあらゆる場所を探しても見つからなかったんですが、そんなときにケイトから「うちの近くにいい家があるから見に来てほしい」と。それを聞いた私は、「現場と自宅が近ければ遅く起きても行けるから、すすめているんだろう」くらいに考えていたんです(笑)。でも、その場に足を踏み入れた瞬間に、「ここで撮影したい」と思うほど素晴らしい場所でした。イギリスにも関わらず、家のデザインはアメリカ的で、海沿いの景色もアメリカの東海岸を思い起こさせるような雰囲気。リリーのキャラクターとも呼応する家になると感じました。―実際に現場では、監督も予期しないような瞬間が生まれたこともありましたか?監督映画作りというのは、毎日現場で自然発生的に起こる予期せぬ出来事を見つける作業でもあると私は思っています。俳優たちの演技に関して言うと、そういった“化学反応”のような瞬間はたくさんありました。特にテーブルを囲んでのランチやディナーのシーンでは、俳優にアドリブを入れてもいいと伝え、長回しにしているので、そこで生まれたものは多かったですね。監督としてはつねに網を持って待ち構え、突然飛び出してきた蝶々をつかまえるような感覚だと言えると思います。そのためには、準備もきちんとしなければいけないですけどね。―とても素敵な表現ですね。監督あと、もうひとつ気がついたことは、本作のようにシリアスでエモーショナルな作品のときほどジョークが飛び交ったりして笑いの絶えない現場になりますが、逆にコメディのときはすごくダークな雰囲気になることも……。そこが反比例するのはおもしろいですが、人生というのはそういうものかもしれないですね(笑)。安楽死の持つ複雑な側面を知ることとなった―なるほど、非常に興味深いお話です。こういった作品と向き合ってみて、監督自身の死生観に影響を与えたことはありましたか?監督この映画を作るにあたって、すごく考えたのは安楽死について。特に、いろんなリサーチをするなかで、「世界中で安楽死を合法にすべき」と主張することがいかに難しいことかを知りました。なぜなら、安楽死には複雑な面がたくさんあり、悪用されてしまう可能性があることもわかったからです。この作品は安楽死に関する政治的な映画ではありませんが、リリーの選択については、誰もが考えさせられるとは思います。英語で安楽死を意味する「Euthanasia」の語源がギリシャ語の「良い死」から来ていることも、興味深いことだなと感じました。―監督にとって、この作品で一番の挑戦だったことは?監督挑戦でもあり利点でもあったのは、家のなかというひとつのロケーションで少人数の俳優たちと撮影したこと。なぜなら、カーチェイスやファイトシーンのような刺激的なカットを入れることができないだけに、俳優とストーリーだけで観客の関心をずっと引き続けなければいけなかったからです。それだけに、どうやって新しい形で撮影できるかをつねに考えながら撮影していました。―これまでに日本の作品や文化で、監督が感銘を受けたものがあれば教えてください。監督黒澤明監督をはじめとする日本映画を築いた方々の作品が非常に好きで、影響を受けています。とはいえ、これは私だけではなく、世界中の方が同じように感じているのはないでしょうか。私はまだアジアを訪れたことがありませんが、近いうちに日本にはぜひ行きたいです。―お待ちしております。それでは、日本の観客に向けてメッセージをお願いします。監督観たら気持ちが落ち込んでしまうような物語だと身構えてしまう人もいるかもしれませんが、「ぜひ観てください」と心の底から言えるような作品になりました。死についてではなく生についての映画になっているので、コロナ禍を経験したいまの時代にぴったりの1本だと思います。家族だからこその葛藤と秘密に震える静かでありながら、心の奥に鋭い問いを突きつける本作。家族との向き合い方や目に見えない絆、そして生きるうえで自分が譲れないものについて、思いを巡らせずにはいられないヒューマンドラマです。彼らとともに、濃密な時間を過ごしてみては?取材、文・志村昌美胸が熱くなる予告編はこちら!作品情報『ブラックバード家族が家族であるうちに』6月11日(金)より、TOHO シネマズシャンテほか全国ロードショー配給:プレシディオ、彩プロ© 2019 BLACK BIRD PRODUCTIONS, INC ALL RIGHTS RESERVED
2021年06月10日大人気コミックからはじまり、ドラマ、映画と着実にパワーアップしている『賭ケグルイ』シリーズ。最新作となるのは、映画版第2弾の『映画 賭ケグルイ絶体絶命ロシアンルーレット』です。その舞台裏について、本シリーズには欠かせないこちらの方にお話をうかがってきました。高杉真宙さん【映画、ときどき私】 vol. 384舞台は、ギャンブルの強さで生徒の階級が決まる私立百花王学園。高杉さんは、“最狂の賭け狂い”である主人公・蛇喰夢子の親友としてつねに隣に寄り添っている鈴井涼太を演じています。今回は、役に対する思いや現場の様子、そして人生を賭けた自身の分岐点について語ってもらいました。―まずは、劇場版の続編が決まったときのお気持ちから教えてください。高杉さん3年くらいこの役をやらせていただいていますが、僕自身も鈴井ともう一度会えるんだとうれしい気持ちが強かったです。そういったなかでも、進化した鈴井と以前とは違う高杉真宙を見せられたらいいなと思って挑みました。どこまでできるかわかっているぶん、その信頼を裏切ることなく、さらに上を目指していく必要がありますが、それを超えていくところにもおもしろさがあったと思います。―前回演じたときから、2年ほど空いていると思いますが、すぐに感覚は戻りましたか?高杉さん今回は、わりと時間がかかりましたね。特に大変だったのは、『賭ケグルイ』でも大事なリズム感を思い出すこと。ラスボスのようなキャラクターがたくさんいるなかで、それぞれ異なるリズム感を持つみなさんにうまく乗っていくのが鈴井の役割でもあるので、その感覚を取り戻すのにけっこう苦労しました。―個性の強いキャラクターの方々に囲まれていますが、惹かれる女性キャラクターはいますか?高杉さんあまりにもみなさん濃い方々なので、正直なことを言うと、できることならあまり関わりたくないキャラクターばっかりですよね。実際、僕がこの学園に入ったら、生きていける気がしません(笑)。鈴井としては、浜辺美波さん演じる夢子と言いたいところですが、森川葵さん演じる早乙女芽亜里の男気があるところが意外と好きですね。ただ、芽亜里もお金にはがめついですからね……。となると、やっぱり夢子の賭け狂っている姿と普段とのギャップが素敵だなとは思います。特に今回の映画版では夢子のお茶目な部分がときどき出ていて、これまでの作品とは違う魅力が見れるところもいいかなと。とはいえ、あくまでも「強いて言えば」ですけどね。そこは強調しておきたいです(笑)。予測できないのがこの現場のおもしろいところ―(笑)。このシリーズでは、高杉さんの顔芸もすごいですが、意識していることはありますか?高杉さん『賭ケグルイ』の現場に行くと、挙動不審に思われているかもしれませんが、役作りをするうえで僕は顔の筋肉をずっと動かしていないと落ち着かないんです。普段の生活で、あんなに顔を動かしていることはありませんから。そういう意味でも顔をほぐす運動は、鈴井を演じるうえでは、すごく重要なこと。決して不審な行動ではなく、意味のあることだというのをちゃんと書いてもらえるとありがたいです(笑)。周りの方々もみなさんすごいので、それに負けないようにしたいという気持ちで演じました。―今回は、劇中でミュージカルシーンもあり、驚きましたが、ご自身で演じてみていかがでしたか?高杉さんそのシーンは、一番緊張しました。曲が送られてきたとき、『賭ケグルイ』で歌うことになるとは思わず、少し笑ってしまいましたが、本当にいろいろなことに挑戦させていただける現場だなと思います。でも、僕はあまり歌が得意なほうではないので、とにかく緊張しました。このシリーズでは、どこまで進化させられるんだろうと思いますが、予測できないのがこの現場のおもしろいところでもあるのかなと。結果的には、楽しんで演じられたと思います。―では、主演の浜辺美波さんのすごさを目の当たりにしたような瞬間があれば、教えてください。高杉さん浜辺さんは、相変わらずオンオフの切り替えが早くて本当にすごいです。一番初めに夢子が賭け狂っているシーンを撮ったときの表情は、いまでも記憶に刻まれていますが、今回新たに最凶の相手と向き合うなかで、そのときのことを思い出しました。そういう浜辺さんの姿はかっこいいんですよね。いろいろな夢子の表情が見れますが、やっぱりそこが一番魅力的だなと感じています。―素の浜辺さんはどんな方ですか?高杉さん最初は静かな方なのかなと思っていましたが、このキャストのなかでは一番年下なのに、一番しっかりしていて、みんなを守ってくれるような大人っぽいところがある方です。僕はこの現場ではいじられキャラなんですが、いつの間にか浜辺さんにもいじられるようになりました(笑)。でも、そうやって接してくださるおかげで僕は現場にいやすいので、優しい方なんだと思います。鈴井のおかげで現場での立ち振る舞い方がわかった―高杉さんは、以前からいじられキャラだったんですか?高杉さん『賭ケグルイ』の現場でいじられキャラでいることっていいなと気がついたので、僕に現場での振る舞い方を教えてくれたのは、鈴井かもしれません。最近は、自分と鈴井は意外と近いのかなと思うようになりました。ほかの現場でも、先輩からいじられることは時々ありますが、僕は自分から話しかけるのがあまり得意ではないので、コミュニケーションのきっかけにもなるいじられキャラは居心地がいいですね。いまはそれに甘えています(笑)。―今回、初参加となったのは、シリーズ史上最凶最悪のヴィランである視鬼神真玄を演じたジャニーズWESTの藤井流星さんです。どのような印象を受けましたか?高杉さん以前、僕はジャニーズWESTのメンバーの方とお仕事したことがあったので、そういったお話もできるなとすごく楽しみにしていました。女性キャストが多くて寂しかったので、男性同士でいろんなお話ができてうれしかったです。撮影中の藤井さんは、世界観もキャラクターもかなりしっかりと作り込まれていたので、すごかったですね。こちらも何かしないといけないと思うくらいの強い圧を感じて、本当に魅了されました。ダンスを踊りながら演じるシーンでは、すべての動作に色気があり、ラスボスとしての存在感もしっかりと出ていたので、これは勝てないなと思って見ていたほどです。なので、もしギャンブルでペアを組むなら、藤井さんがいいですね。最後に華麗に決めてくれそうな気がしています。大きい勝負では意外とギャンブルするタイプ―そんなふうに魅了されつつも、高杉さんも鈴井くんとして負けたくないという気持ちもあったのでは?高杉さんそれも当然ありましたが、「アットホームだけど負けないぞ!」という気持ちがみんなのなかにあるのが『賭ケグルイ』の現場。チームでありライバルでもある関係をみんなが楽しんでいるからこそ、いい意味で競争ができているのかなと。それが、この現場のいいところだと思います。何年も演じるなかで鈴井は僕しかいないという自信もありますし、愛着だけは誰にも負けません。―鈴井くんの好きなポイントはどんなところですか?高杉さんすごくバタバタしているんですけど、自分のためだけではなくて、人のためにしているところが愛らしい人だなと。こんな学園でも、こういうキャラクターが生きていけるというのは、意味のあることだと思います。今回の映画では、男気があるところも見せているので、さらに好感度が上がりました。―まだまだ高校生役は演じ続けられそうですか?高杉さん僕はいつか取材で「これが最後の高校生役なので、ぜひ見てください」と言いたいと考えていますが、そのタイミングを図っているところなので、いつになるかはわかりません(笑)。―鈴井くんは少し頼りないところがありますが、高杉さんは一発逆転を狙うギャンブラータイプですか?それとも堅実派?高杉さんどちらかというと、石橋を叩いて渡るタイプかなと思っているんですけど、おもしろければいいかなというところもあるので、大きい勝負のときは意外とギャンブルするタイプかもしれません。この仕事を始めたことは大きな決断だった―人生で一番の賭けに出たことといえば、どんなことですか?高杉さんいくつかありますが、まずはこの仕事をしようと決めたのもひとつの大きな賭けだったかなとは思います。ギャンブルは一切しませんが、人生の分岐点ではどちらを選ぶかは重要なことですよね。なので、この仕事を始めたことは大きな決断だったなと改めて感じています。ただ、普段はけっこう堅実なほうじゃないかなと。実際、ゲームセンターでUFOキャッチャーにお金を使いすぎていることに気がついて以来、UFOキャッチャーはすぐにやめました(笑)。―(笑)。本作では、それぞれのキャラクターが絶体絶命に陥りますが、人生最大のピンチがあれば、教えてください。高杉さん幼少期のできごとですが、大きなお祭りで家族とはぐれて迷子になったときのこと。けっこう小さかったのに、あのときのことはいまでもはっきりと覚えているほどです。すごく不気味で『千と千尋の神隠し』みたいな感じでした。それで、「あー、もう絶体絶命だ!」と思っていたら、近くの建物から家族が僕の名前を呼びながらのんきに僕に手を振っていたんです。母は焦っていたかもしれませんが、僕と家族の間にあまりにも温度差があることに驚いた記憶があります(笑)。―無事でよかったです。では、夢子さんのギャンブル同様に、自分もこれを奪われたら生きていけないと思うものはありますか?高杉さんゲームですね!ただ、最近はゲームを愛しすぎるあまり、自分を律するのが大変になっていてよくないなと感じているので、もう少し趣味程度に収めるのがベストかなと感じています。ゲームのために、家にも早く帰るくらいですから(笑)。ほかのことをおろそかにしてはいけないとわかってはいるんですが、本当におもしろいんですよね……。しっかりと中身のある人になりたい―2年前にananwebでインタビューさせていただいたときに、「がんばった自分へのご褒美は?」という質問にも、朝から晩までゲームしたいとおっしゃっていましたよね(笑)。いまは何をご褒美にしたいですか?高杉さんそういったこともあって、最近はもう少しほかにも趣味を作りたいなと思うようになりました。まだ出会っていないもののなかに好きなものがあるかもしれないので、「もっといろいろなことを試したほうがいいよ」と周りからも言われています。もしかしたらゲーム以上に好きなものあるかもしれないと思って探していますが、まだその域にはたどり着けていないですね。でも、いま興味があるのはひとり旅。旅行をしても大丈夫な時期になったら、ぜひやってみたいなと思っています。とはいえ、いろいろなものを試したうえで、やっぱりゲームがいいと舞い戻ってくるかもしれないですが(笑)。―新たに見つけたら、次回ぜひ教えてください。21歳になったばかりのときの取材では、「男らしさに憧れている」とおっしゃっていましたが、20代も半ばに差し掛かってきて、今後はどのようになりたいとお考えですか?高杉さんもちろん、いまでも男らしさはほしいなと思っていますが、見た目だけではなくて、精神的に男らしい存在になりたいと考えるようになりました。最近、舞台でご一緒させていただいた藤原竜也さんが先輩としても人としても素晴らしくて、本当にかっこよかったので、そういう先輩を目の当たりにすると、20代前半で考えていた男らしさに対する憧れは浅はかだったなと。自分がちゃんと成長をのぞめば、それに伴った速度で成長していけると思うので、これからもいろいろな経験を積んで、しっかりと中身のある人になりたいと改めて思っているところです。インタビューを終えてみて……。これまで高杉さんには何度も取材をさせていただいていますが、お茶目なところは変わらないまま、芯の部分ではますます強くなっているのを感じました。高校生の役もまだ最後ではないようなので、これからも幅広いキャラクターで私たちを楽しませてくれること間違いなしです。まずは、高杉さんにしか演じられない進化を遂げた鈴井くんに注目してください。一度知ったら忘れられない刺激体験!極限状態で繰り広げられる心理戦と張り詰めた緊張感、そして次々と巻き起こる罠に釘付けになってしまう本作。先が読めない命を懸けた壮絶なバトルにハマり、日常を忘れてしまうほどの興奮を味わいたい人にオススメです。写真・安田光優(高杉真宙)取材、文・志村昌美ストーリーギャンブルの強さだけで学内のヒエラルキーが決まる私立百花王学園。生徒会は、蛇喰夢子の脅威に危機感を募らせていた。一方、学園内では生徒会への上納金を支払えない“家畜”と呼ばれる生徒の数が爆発的に増加。「家畜の呪い」と呼ばれる現象によって、事態は混乱の一途をたどっていた。そんななか、学園に突如現れたのは、視鬼神真玄と名乗る1人の男。2年前に起こしたある事件をきっかけに、生徒会長の桃喰綺羅莉によって学園を追われた過去を持っていた視鬼神は、“共感覚”という特殊能力を持つ最凶最悪のギャンブラーだった。そして、ついに夢子vs視鬼神vs綺羅莉の戦いの火蓋が切って落とされることに……。スリリングな予告編はこちら!作品情報『映画 賭ケグルイ絶体絶命ロシアンルーレット』6月1日(火)TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー配給:ギャガ©河本ほむら・尚村透/SQUARE ENIX ©2021 「映画 賭ケグルイ2」製作委員会写真・安田光優(高杉真宙)
2021年05月29日近年のさまざまなムーブメントにより、社会における女性の立場は大きく変化しているものの、それでも職場や家庭で何かと問題に直面しているという人もいるのでは?そこで、そんな思いや悩みを抱えている女性にピッタリの1本を最新作のなかからご紹介します。『5月の花嫁学校』【映画、ときどき私】 vol. 3821967年、フランスの田舎アルザスにある家政学校に、18人の少女たちが入学。ピンクのスーツを着こなす校長のポーレットは、迷信を信じる修道女と少女のまま中年になったような無垢な義理の妹とともに理想の良妻賢母を育成するために力を注いでいた。ところがある日、経営者であるポーレットの夫が莫大な隠れ借金を残して急死。ポーレットは夫の事業を支え、夜のお勤めにも渋々付き合っていたのにひどい仕打ちが待ち受けていたことに呆然としてしまう。そんななか、死に別れたはずの恋人と再会し、心の奥にしまっていた情熱に火がつくポーレット。生徒たちとともに、自分らしい生き方に目覚めていくことに……。本国フランスでは初登場1位に輝き、大ヒットとなった本作。今回は、多くの女性たちの共感を呼んだ物語がどのように誕生したのかについて、こちらの方にお話をうかがってきました。マルタン・プロヴォ監督ananwebには前作『ルージュの手紙』以来、4年振り2度目の登場となるプロヴォ監督。今回は、初タッグを組んだフランスの大女優ジュリエット・ビノシュとの現場で感じたことや女性が生きやすい社会に必要なことなどについて語っていただきました。―監督が子どもの頃に家政学校の生徒たちがベビーシッターのアルバイトに来ていたことがあったそうですが、それがこの物語が誕生したきっかけでしょうか?だとしたら、いまの時代に作ろうと思った理由を教えてください。監督実は僕の子ども時代の思い出が始まりではなく、きっかけは3年前。バカンスに行った先で出会ったおばあさんが、自分が15歳くらいのときに家政学校に通っていた話をしてくれたんです。彼女が「家政学校」と言った瞬間、僕のなかで何かがひらめき、そして子どもの頃に若い女の子たちが家に来ていたことを思い出しました。そのあとすぐ、まずはインターネットで家政学校のことを調べてみることに。そうしたらフランスでさまざまなアーカイブ映像を保管している機関に、1950~60年代の家政学校に関するドキュメンタリーがあることがわかりました。おばあさんからも、学校を卒業するためにはウサギを自分で殺してさばかないといけないとか、「そんなことありえるの?」と思うような話をいくつか聞いてはいましたが、実際に映像を見てみるとほかにもおもしろいエピソードが盛りだくさん。そういったこともあり、これは映画になると思いました。脚本と世の中がリンクし始めておもしろかった―家政学校に通っていた女の子たちは、どのような子が多かったのでしょうか?彼女たちにとって、家政学校はどのような場所だったのかについても教えてください。監督60年代のフランスというのはどこも田舎で、いまのように都会とされるような地域はごくわずかでした。そういうなかで各地に多くの家政学校があったんですが、当時は貧しい家庭で生まれ育った女の子たちが数多く在籍していたようです。ただ、彼女たちにとって家政学校に通うことは「いい夫を見つけられるかもしれない」とか「何か資格を得られるかもしれない」という可能性にもつながっていたので、ある意味では“夢のある場所”でもあったかもしれません。そういった背景もあったからか、当時のドキュメンタリーに出てくる彼女たちはみんなとても幸せでいっぱいの表情を浮かべていました。―劇中では50年以上前の女性たちを描いているものの、現代に通じるところも多く感じられました。何か意識されたこともあったのでしょうか?監督僕が脚本家のセヴリーヌ・ヴェルバと一緒にシナリオを書き始めたときは、まだMe Too運動も始まっていませんでしたし、特に現代の女性の在り方から影響を受けた部分はありませんでした。ただ、ストーリーを書き進めていくなかで、女性に関するいろいろなムーブメントが起きるようになり、自分たちが書いているような内容に世の中の女性たちがリンクし始めたので、非常におもしろい体験ではありました。ジュリエットは監督にとって理想的な女優―なるほど。では、主演のジュリエット・ビノシュさんについてもおうかがいします。監督がこの作品で彼女をキャスティングから理由を教えてください。監督実は、以前ほかの作品で彼女と組もうという話があったのですが、その企画がなくなってっしまったことがありました。そんななか、今回の物語を思いついたときに、「この役はジュリエットしかいない」と感じたので、脚本自体も彼女をあてがきしているんです。とはいえ、彼女にはいままでとは違うところにいってほしいという気持ちもあったので、そこは意識したところでもあります。―ananwebでは2年前に来日された際に、直接取材をさせていただいたことがあり、とても聡明で美しいジュリエットさんに魅了されました。実際ご一緒されてみて監督から見たジュリエットさんの魅力について教えてください。監督ジュリエットは、出し惜しみをしない気前のいい女優だと感じました。役に入り込むなかで、ときには僕と意見が異なることもありましたが、だからこそとても美しい関係を築けたのではないかなと。それは撮影が終わったいまでも続いていて、時々電話をしてお互いのことを話したりすることもあるほどです。監督にとっては、本当に素晴らしい理想的な女優だと思います。現場では彼女をはじめ、みんなでとても楽しい雰囲気で進めることができましたが、実は撮影していたときはジュリエットのお父さんが危篤状態で、彼女にとっては非常につらい時期でもありました。その後、撮影中に訃報が届いたときは、何度もやり直しをしなければいけないほど難しいシーンを撮っていたときで、僕自身もいろんな葛藤がありましたが、彼女のほうから「大丈夫です」と。そうやって毅然とした態度で撮影に専念する姿勢をみんなに見せてくれて、本当に勇気と度胸のある器の大きな女性だと強く感じました。また別の作品でも、ぜひ一緒に仕事をしたいと考えているところです。自由への道を勇ましく歩く女性たちをイメージした―女優としての覚悟を感じさせるエピソードですね。劇中で非常に興味深かったのは、「何よりもまず夫に付き従うこと」「家事を完璧にこなし不平不満を言わない」から始まる“良き妻の鉄則の7か条”。新旧と2パターンが登場しますが、何かを参考にされて作ったのでしょうか?監督まず古いほうは、1950年代に出版された本のなかで「女性はこうあるべき」といった考えを項目別に説明されているものを読み、そこから良き妻の鉄則としてそのまま7つもらうことにしました。まるで迷信のような内容でしたが、実際に本に書かれていたものというのが驚きですよね。―そんな本があったんですね。では、新しいものはどのようにして作成しましたか?監督それは先ほどの古い7つの鉄則をそのまま裏返して作りました。女性たちが、自由になって解放されるためには、こういったことが必要なのではないかと考えたものばかりです。新しい鉄則を披露するラストシーンは、女性たちが心を開き、自由への道を勇ましく歩いていくイメージを出すために、あえてミュージカル風にしました。そのなかで、ジュリエットのアイディアをもらって変更したところが1か所あります。それは、女性解放のために貢献した実在の女性たちの名前を挙げていくシーンです。当初はここも歌う予定でしたが、ジュリエットが女性たちの名前を毅然と言うほうがいいということだったので、その意見に賛同して取り入れることにしました。男女の差や権力で対立しない未来を信じたい―そのあたりも注目ですね。フランスでは1968年から女性解放運動が始まりましたが、いまなお女性たちはいろいろな問題を抱えています。女性を主人公にした作品を多く手掛けている監督から見て、この状況を改善するために必要なことは何だと思いますか?監督いまはとても才能豊かで優秀な女性たちがたくさん活躍している姿を目にするので、僕が子どもの頃に比べるとたいぶ変わったなと感じます。1970年から2021年までの50年の間だけでも、本当にいろんなことがありましたよね。とはいえ、同じ仕事をしているのに女性のほうが男性よりも給与が少ないといった男女の不平等がまだ社会に残っているのも事実です。なので、まだ変化の途上だと僕は思っています。そう考えると、いま大事なことは教育。特に、育児を行っている人たちの意識を変えていかなければならないと感じています。そのほかにも伝えたいのは、男性のなかにも女性性があり、女性のなかにも男性性があるので、みなが自分のなかにある“異性”というものをもっと活用していくべきだということ。そうすれば、男女の差や権力で対立することはなくなっていくのではないかと考えているからです。もしかしたら、それは夢のような話かもしれませんが、そうなっていくことを信じたいですね。外面的な変化だけではなく、人間の内面的な意識改革が進んでいけば、50年後はもっといい方向へと変わっていけるのではないかと思っています。女性たちの意識に革命を起こしてくれる!フランスから届いたのは、爽やかな感動に包まれる人生賛歌。固定概念から解放され、自分の道を歩いていくことを決めた女性たちが変貌を遂げていく姿は、あなたの人生をよりカラフルでパワフルなものにしてくれるはず。社会が変化するのを待つのではなく、自分自身から変わっていきたいと前進する力をもらえる1本です。取材、文・志村昌美元気をもらえる予告編はこちら!作品情報『5月の花嫁学校』5月28日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開配給:アルバトロス・フィルム© 2020 - LES FILMS DU KIOSQUE - FRANCE 3 CINÉMA - ORANGE STUDIO - UMEDIA© 2020 Carole BETHUEL - LES FILMS DU KIOSQUE
2021年05月27日仕事や育児などに追われながら、忙しい日々を送っている現代の女性たち。子を持つ母親なら誰もが一度は経験したことのあるさまざまな問題を真正面から描いているのが、まもなく公開を迎える話題作『明日の食卓』です。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。高畑充希さん【映画、ときどき私】 vol. 381劇中では、立場や住む場所は異なるものの「石橋ユウ」という同じ名前の息子を持つ母親が3名登場しますが、そのなかで大阪に住むシングルマザーの加奈を演じた高畑さん。今回は、現場の様子や自身の経験、そしてこれからのことについて語っていただきました。―最初に脚本を読まれたとき、ご自分の役どころについてはどのように感じましたか?高畑さん私自身も東大阪の町工場が多い場所で育ったこともあり、自分が小さいときに味わった空気感や出会った人たちを思い出して、懐かしさを覚えたところがありました。なので、加奈というキャラクターも他人という気がしなかったですね。役に関しては、子どもとの間で生まれる部分が大きいと感じていたので、どうなるんだろうとワクワクしながら現場に行きました。―実際に演じてみて、いかがでしたか?高畑さん今回、私のパートは1週間くらいのタイトなスケジュールだったので、怒涛のように過ぎていき、気がついたら終わっていたという感じでしたね。私は3人の母親のなかでもトップバッターでしたが、スタッフのみなさんはこれをあと2回繰り返すのかと考えたら、本当に体に気をつけてほしいと思うくらいハードでした。年齢を重ねて、周りに委ねられるようになった―瀬々敬久監督の現場は今回が初となりますが、「1日の密度があまりにも濃すぎて、撮影中の記憶がほとんどない」というコメントを拝見しました。そのなかでも、何か驚いたことがありましたか?高畑さんまずこれだけの内容をこの短期間で撮ることだけでもすごいんですが、それにスタッフのみなさんがガンガンついていっている姿を見て、めちゃくちゃタフだなと。瀬々監督の現場は、「全員猛ダッシュ!」みたいな雰囲気でした。それはやっぱり監督がとにかく映画が好きだからだと思いますが、キラキラした目でずっとモニターにかじりついていて、「モニター食べちゃうんじゃないかな?」と思ったくらいです(笑)。そんな監督の映画愛とエネルギーについて行きたいと思う方々が、あのハードな現場に集まっていらっしゃるんだと思うと、改めてすごいなと感じました。私自身もずっとスイッチが入っているような感覚で、集中力が切れるタイミングもなかったので、撮影が終わった後は抜け殻のようになってしまったほどです。―加奈はどんなにつらくてもまじめにがんばり続けている女性でしたが、ご自身と重なる部分はありましたか?高畑さん加奈は自分が一生懸命がんばって何とかしなきゃと考えているタイプなので、誰かに頼るのが下手な人だなと感じました。私は年齢を重ねてきたこともあるのか、いまでこそ周りに委ねることも増えましたが、20歳前後のときは私にも加奈のようなところはあったと思います。そんなふうに、自分で突破口を見つける以外に方法を知らない感じはすごくわかるなと思いながら演じていました。子どもとの距離感は人それぞれでいい―そういうふうに考え方を変えるきっかけがあったのでしょうか?高畑さん何か大きなきっかけがあったわけではありませんが、急に主演を任されることになったとき、主演は「どしっと立っていないといけない人」というイメージがあったので、そこに自分がついていけないことに悩んでいた時期がありました。そのときは自分で何とかしなきゃいけないと思っていたんですが、主演を務めさせていただく機会が増えていくとともに、周りの人にも頼りながら行ったほうが結果的にみんなで作品を作り上げていけるんだということに気がついたんです。自分としても、そのほうが余裕を持ってできることに経験を重ねていくうえでわかったので、いい意味であまり考えなくなったのかなと。そういうことに気がついてからは、「自分ひとりだけでがんばらなきゃ」みたいなものがなくなったように感じています。―なるほど。では、完成した作品をご覧になったときはどのような感想を持たれましたか?高畑さんどうしても自分が出ている作品は冷静に見ることができないので、菅野美穂さんと尾野真千子さんのパートのほうにばかり目が行きましたね。実際に、おふたりとは現場ではご一緒していませんし、ほかの方の様子はまったく知らなかったので、「菅野さんのパートは子どもが2人いて大変だっただろうな」とか、「尾野さんのパートは息子が大変なことになってるな(笑)」とか、そんなことを考えながら見ていました。―女優というお仕事では、いろいろな母親を疑似体験できるところがあると思いますが、そのうえで思う理想の母親像があれば、教えてください。高畑さん理想像というのはあまり考えたことはないですが、私の周りで母親になっているみなさんを見ていると、子どもとの距離感は本当に人それぞれなんだなとは感じています。でも、それは男女のパートナーシップと同じで、正解がないことなんじゃないかなと。もし私が母親になったら、子どものやりたいことをやらせてあげたいなとか、ある程度距離を持って自由にさせてあげたいなとか、自分がしてもらったようにしたいとは思いますけど、実際に子どもが生まれてみたら全然違うかもしれないですからね。こればっかりは経験してみないとわからないことかなと感じています。転んだらまたそこから立ち上がればいい―ご自身のお母さんから受けている影響はありますか?高畑さん私の母は私とは性格がまったく違って、すごく心配症なので、私の前に何か障害物があるとそれを拾ってくれるタイプなんです。でも、私はどちらかというと転んで学べというタイプの父に似ているので、自分に対しても人に対しても「転んだらまたそこから立ち上がればいいんじゃない?」というスタンスですね。実際、私は早くに地元を出て15歳からひとりで生活を始めたこともあり、10代の頃にたくさん転んで、いっぱい挫折を味わいました。母といたらもっと障害物のない道を歩いてしまっていたかもしれませんし、距離があったことでより両親と仲良くなれたところもあるので、いまとなっては若いうちに親元を離れてよかったなと感じています。―本作では、母親が抱える苦悩を描くいっぽうで、父親や夫としての男性の在り方に関する問題も描かれていると感じました。高畑さんは、どのように受け止められましたか?高畑さん私も難しいことだなと思いました。おそらく、女性は家族や子どもに対してストレートに矢印が向いていますが、男性は女性よりも「社会のなかにいる自分」というものに矢印が向いてしまっているケースが多いのかな、って。もちろん全員ではありませんが、男性は女性よりも社会からの目線というものに重きを置いている方が多いような印象です。育児に関しても、いまだに母親が子どもを育てるのを“手伝う”という感覚が根強いのかなと感じました。「イクメン」という言葉がありますが、そもそも父親と母親と両方の子どもなので、子育てをするのは当然のことなんじゃないかなと思うこともありますからね。この作品では男性の育児不参加という部分も描かれているので、子育てを経験されている方には共感するところが多いのではないかなと思いました。もっと生活の質を上げていきたい―最近は菊田一夫演劇賞を受賞するなど、女優としてますますやりがいを感じることもあると思いますが、コロナ禍で仕事に対する向き合い方などに変化はありましたか?高畑さん舞台では、お客さんの熱量を直接感じることができるので、改めてエンターテインメントのすごさを実感しています。それまでは当たり前にあったものだったので気がついていないところがありましたが、こういう状況になってはじめてどれほど自分にとって活力になっていたのかがわかりました。私自身もワクワクできる空間がないと、生きている感じがしないので、見る側としても、出る側としてもエンターテインメントがいかに大切なものだったのかを知ると同時に、改めてこの仕事をしていてよかったなと感じているところです。―そんな忙しい毎日で、癒しになっているものがあれば、教えてください。高畑さんいままではあまり興味がなかったんですが、最近はお花や植物を部屋に置くようになりました。以前、母に「年を取るとお花をもらうのがうれしくなるよ」と言われたことがあって、そのときはわからなかったんですが、意味がわかるようになったので、私も大人になったんだなと(笑)。植物を飾るだけで気持ちが華やかになる感覚は、自分にとっても新鮮ですね。最近は、大きな木を買いました。おそらくその背景には、生活の質を上げたいという思いもあるのかなと感じています。かつては仕事に一生懸命で家がぐちゃぐちゃみたいなときもありましたが、いまは生活がベースにあって、それにプラスして仕事があるという感覚です。まだまだこれからですが、生活の質はどんどん上げていきたいと思っています。30代はおもしろくなりそうだとワクワクしている―今年で30歳を迎えることもあり、この質問を聞かれることも多いと思いますが、30歳というのを意識されていますか?高畑さんそうですね、最近めちゃくちゃ聞かれます(笑)。20代前半は求められる若々しさや明るさに自分が追いつけていないように感じて、そのギャップに悩むこともありましたが、最近はそういうことを求められることもなくなってきたので、いまはいい感じに気楽になってきました。なので、自分としては30代のほうがおもしろくなるんじゃないかなとワクワクしています。―そのなかでも、今後ご自身が目指しているところや夢などがあれば、教えてください。高畑さん私はあまり計算できるほうではなく、行き当たりばったりでここまで来たところがあるので、実際にいまの自分がこうなっていることもまったく想定していませんでした。わりと波乱万丈なところもありますが、それはそれですごくおもしろいなと自分では思っています。人生はいろいろなことがありますが、どれもよかったなと思っているので、この先も同じように感じられたらいいかなと。これからも、自分らしく楽しんでいけたらいいなと考えています。インタビューを終えてみて……。ひとつの質問に対してしっかりと言葉を選びながら、真摯に答えてくれる高畑さん。そこには女優としてだけでなく、エンターテインメントに対する強い思いもひしひしと感じました。本作での観る者を惹きつける熱演も必見です。感情を揺さぶるミステリアスな群像劇多くの女性たちが抱えているであろう葛藤をリアルに描き、心をえぐるような展開を見せる本作。3人の女性たちが下す決断と彼女たちが迎える結末から、さまざまな気づきと希望を得られるはずです。写真・北尾渉(高畑充希)取材、文・志村昌美スタイリスト:Shohei Kashima(W)ヘアメイク:根本亜沙美ビスチェ¥11,000、スカート¥15,400/すべてパブリック トウキョウ(パブリック トウキョウ 渋谷店 03-6450-6559)、ピアス¥13,200/ユーカリプト(ユーカリプト )、リング(人差し指)¥19,000/ガガン(ガガン 070-3321-1424)、リング(中指)¥9,900/ソワリー(ソワリー 06-6377-6711)、その他スタイリスト私物ストーリー神奈川在住・フリーライターの石橋留美子43歳、大阪在住・シングルマザーの石橋加奈30歳、静岡在住・専業主婦の石橋あすみ36歳。3人の母親たちは、いずれも「石橋ユウ」という同じ名前の小学 5 年生の息子を育てていた。それぞれが忙しくも幸せな日々を送っていたはずだったが、些細なことがきっかけで歯車が狂い始め、生活が崩れていくことに。はたして、ユウの命を奪ってしまった犯人は一体誰なのか。3つの石橋家がたどりつく運命とは……。胸に刺さる予告編はこちら!作品情報『明日の食卓』5 月 28 日(金)より、角川シネマ有楽町ほか全国公開配給:KADOKAWA/WOWOW©2021「明日の食卓」製作委員会写真・北尾渉(高畑充希)
2021年05月27日男女平等が声高に叫ばれているものの、まだまだ乗り越えなければならない“壁”が多く存在しているのが現実。そんななか、あるタブーを覆した女性が発端となって起きた事件をもとにした注目作をご紹介します。『ペトルーニャに祝福を』【映画、ときどき私】 vol. 379大学で学んだ知識を生かす仕事に就くことができず、ウェイトレスとして働く32歳のペトルーニャ。母親の知人に紹介された縫製工場へ面接に行くものの、面接担当の男性からは「仕事ができないうえに、見た目もそそらない」という言葉を吐き捨てられてしまう。最悪の面接からの帰りにペトルーニャが遭遇したのは、司祭が川に投げ込んだ十字架を最初に見つけた男性は1年幸福に過ごせると信じられている祭だった。半裸の男たちが川のなかで競い合うなか、思わず川に飛び込んだペトルーニャは十字架を手にする。しかし、女性が十字架を取ることが禁止されているため、群衆は怒り狂うことに。はたして、ペトルーニャの運命は……。2014年にマケドニア東部の町で行われた祭で、女性が十字架を取って騒ぎになったという実際の出来事がもとになっている本作。ベルリン国際映画祭では、エキュメニカル審査員賞とギルド映画賞をW受賞するなど、高く評価されています。今回は、その背景についてこちらの方にお話をうかがってきました。テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督北マケドニアの首都スコピエ出身で、芸術一家に生まれたミテフスカ監督。2001年に監督デビューを果たして以降、さまざまな作品を送り出し、世界各国の映画祭で注目を集めている存在です。そこで、本作を通して描いている女性の思いや監督自身の経験などについて語っていただきました。―本作は実在する女性が起こした騒動がもとになっていますが、彼女の行動がきっかけとなって、ほかの女性たちに何か変化を与えたところはありましたか?監督彼女が周りから受けた扱いを見て、多くの女性たちが脅威を感じてしまったところがあるかもしれません。しかし、そのいっぽうで彼女から勇気をもらった女性もいたようで、2019年にふたたび若い女性が男性と一緒に川へ飛び込んで十字架を手にするという出来事が起きました。ちなみに、そのときは5年前とは違って、何の問題もなく女性が十字架を手にすることができたそうです。私が本作を制作していたときは、この題材をテーマにすることに対して風当たりが強いところがありましたが、彼女が十字架を手にすることができたということは、間違いなく北マケドニアにも変化が訪れている証拠だと思います。―実際、作品を観た人たちの感想はどのようなものだったのでしょうか?監督いろいろな反応がありましたが、前提として、そもそもこの映画自体が北マケドニアの観客にとっては、難しいところがある作品であると言えると思います。なぜかというと、「自分たちは何者なのか」「自分たちの物事のやり方は正しいのか」といったあまり向き合いたくない現実をはっきりと描いている作品だからです。みなさんも、自分を鏡で見て、「自分のここは間違っている」と指を差すのは簡単なことではないですよね?この作品は、北マケドニアの人たちにとってそういう意味合いのある映画でもあるのです。いままさに変化のときを迎えていると感じる―なるほど。ちなみに、女性と男性では受け取り方もかなり違いがありましたか?監督さまざまな感想がありましたが、多くの女性たちは自分のつらい経験を話してくれたうえで、「これからは自分らしく生きます」とか「勇気をもらいました」と言ってくれました。男性のなかには「自分たちの国をこんなふうに描くなんて」と罵る方もいれば、心から支えて応援してくれる方もいたので、本当にいろいろなリアクションがありましたね。でも、それは同時に北マケドニアの社会がいままさに変化を迎えているということの表れでもあると思うので、私としてはポジティブなこととして捉えています。―日本でも女人禁制の祭はいまでも存在していますし、国技と言われる相撲も女性は土俵に上がることさえも禁止されています。そんなふうに、現在でも世界中で女性禁止の伝統行事が数多くあることを監督はどのように思っていますか?監督まず、伝統というのはとても重要なものだと考えています。なぜなら、それによって私たちが誰であって、どこから来ているのかというのを文化的に定義づけてくれますし、私たちと深くつながっているものだからです。歴史的に見ていくと、もともと母権主義だった社会が父権主義へと移行していった社会も多いので、家父長制を構築する過程の一部として女性の参加を禁じる伝統行事が生まれたのではないか、と私は考えています。ただ、私たちがいま生きている世界というのは、変化しつつあるので、こういったことに対する人々の認識もどんどん向上していますし、表現の自由というものが昔より重要になっていますよね?だからこそ、過去のままでは合点がいかないことも出てきてしまうのだと思います。それらをすべて捨て去る必要はないにしても、あるべきバランスを見ながら再定義していくほうがいいのではないかなと。その変化というのは、決して伝統を滅ぼすものではなく、より美しくなるためのものだと考えています。女性の問題が改善することを期待している―ペトルーニャについても、おうかがいしますが、彼女は30代を超えてもいい仕事に就けず、恋人もいない女性という設定です。このようなキャラクターにしたのは、なぜですか?監督彼女のような女性は典型的なタイプではありませんが、北マケドニアの社会が抱える悲劇的な2つの側面が彼女の設定には深く関わっています。1つ目は、若者のなかで職業に就けていない人が多いこと。現在、その割合は全体の35%を占めていると言われており、これはかなり絶望的な数字だと思っています。2つ目は30歳を過ぎて未婚だと、結婚できないと思われていること。劇中でもペトルーニャが母親から言われていることですが、だいたい30歳までに家庭を作ることが北マケドニアの伝統的なルールだとされています。そういったこともあり、そんなことをすべて吹き飛ばすような存在としてペトルーニャを描きました。北マケドニアだけでなく、世界中の女性たちが古いルールから抜け出そうとしていますが、社会というのはそんなふうに変化するタイミングというのが必ずあるものなのです。―確かに、その通りですね。また、劇中では男性からのセクハラや言葉の暴力についても描かれていますが、ここに込めた思いについて教えてください。監督面接のシーンでペトルーニャの身に起きるセクハラやパワハラのようなことは、おそらく多くの女性たちが何らかの形で経験していることだと思っています。それは非常に残念なことではありますが、こういったことをオープンに話せる時代になり、問題が表面化してきているので、これからいい方向に変わっていくことを期待しているところです。ただ、私もこの映画を撮影しているときに男性たちからひどい言葉をたくさん浴びせられ、言葉の暴力を何度も経験しました。そういった現実に直面すると、大切なのは教育なのではないかと感じています。周りに合わせず、自分自身を保ってほしい―そうですね。北マケドニアの若い世代では、考え方にも変化が表れていると感じていますか?監督今回、この映画をきっかけにさまざまな地域の高校生と話をする機会がありました。そのときに、こういったことに対して若い世代の向き合い方が素晴らしいと感じることが多かったので、いまは希望を抱いています。昔に比べると彼らは非常にオープンな考え方を持っているので、その様子はとても美しかったですね。―監督も過去には、つらい経験を味わったこともあったのでしょうか?監督私が17年前に初めて長編映画を作ったときは、まだユーゴスラビアの一部だったので、北マケドニアの映画業界は成熟していませんでした。スタッフも数が限られていましたし、私以外は50歳以上の男性スタッフしかいない状況。最初の3本はそういう環境で映画を作らなければいけなかったので、とにかく男っぽく振る舞う必要がありました。でも、あるときに「私は映画を作るのと同じくらいエネルギーを使って、自分ではない誰かの振りをしようとしているのではないか?」ということにふと気がついたんです。そんな状況にいるなかで、「女性である自分が監督として現場にいることは普通なんだ」と自分を受け入れて、自分を解放するのは大変なことでした。実際、居心地のいい環境にすることと、自分を問い詰めることをやめるまでには何年もかかりましたね。特に、男性社会にいる女性というのは、どうしても周りに合わせようとしてしまうので、それを乗り越えることはなかなか難しいことだと思います。―それでは最後に、日本の女性たちに向けて、アドバイスがあればお願いします。監督まず伝えたいのは、自信と勇気の両方を持ってほしいということ。そして、あまり自問しすぎないことですね。あとは、自分の直感を信じることも大事だと思っています。なぜなら、直感というのは、意外と真実につながっていることも多いものですからね。いまは自分らしくいることもできるようなった素晴らしさもある時代になったので、あまり自分を周りに合わせるようなことをせずに、自分自身を保ってほしいと思います。誰にでも、戦うべきときがある!ときには、自分らしく生きることに難しさを感じることはあるけれど、そんなときこそ勇気を与えてくれるペトルーニャの姿。自分が一歩踏み出すことで世界を変えられること、そして誰でも“幸せの権利”を手にすることができるのだと教えてくれるはずです。取材、文・志村昌美気持ちが高ぶる予告編はこちら!作品情報『ペトルーニャに祝福を』5月22日(土)より、岩波ホール他全国順次ロードショー配給:アルバトロス・フィルム©Sisters and Brother Mitevski Production, Entre Chien et Loup, Vertigo.Spiritus Movens Production, DueuxiemeLigne Films, EZ Films-2019 All rights reserved
2021年05月21日「事実は小説より奇なり」という言葉があるように、人生には思いがけない出来事がつきものですが、今回ご紹介する映画の主人公もまさにそんな生涯を駆け抜けたひとり。“東ドイツのボブ・ディラン”と呼ばれたシンガーソングライターでありながら、スパイでもあった男の真実を描いた注目作です。『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』【映画、ときどき私】 vol. 378ベルリンの壁が崩壊し、東ドイツが消滅した後もカリスマ的な人気を誇っていたシンガーソングライターのゲアハルト・グンダーマン。昼間は炭鉱でパワーショベルを運転し、仕事のあとは仲間とステージに上がっていた。希望や夢に満ちた自作の歌で人々に感動を与えていたが、実は秘密警察に協力し、スパイとして活動していたという人には言えない過去があった。葛藤する日々を過ごしていたグンダーマンは、友人たちを裏切っていた事実をついに告白。そして、観客の待つステージへと向かっていくことに……。2019 年の「ドイツ映画賞」では作品賞や監督賞含む 6 部門で最優秀賞に輝き、本国ドイツで大ヒットを記録した本作。そこで、その舞台裏についてこちらの方にお話をうかがってきました。アンドレアス・ドレーゼン監督見事な手腕を発揮し、高く評価されている東ドイツ出身のドレーゼン監督。今回は、長い時間をかけて制作された本作の完成までの道のりやグンダーマンの魅力について語っていただきました。―本作は10年もの時間をかけて作り上げたそうですが、そこまでの過程について教えていただけますか?監督まず一番時間がかかったのは、脚本を仕上げることでした。40数年という短い人生を送った人物とはいえ、ひとりの人間がたどった生きざまをたった2時間の映画にまとめるのはやはり大変なことですからね。今回の脚本を書いてくれたライラ・シュティーラーは、生前のグンダーマンを知っている人、特に妻のコニーと何度も会って話をしながら、どういう物語にするかを考えてくれました。彼が送った壮大な人生のドラマをうまくまとめるためには、それくらい時間を費やしていい脚本にする必要があったのです。もうひとつ時間がかかったのは、資金集めでした。というのも、助成金に関わる公的機関で委員を務めている人たちは、西ドイツ出身の人が多く、脚本を出した際には「こんな話がおもしろい映画になるとは思えない」と言われたりしたこともあったくらいですから(笑)。そういったこともあり、なかなか助成金が下りず、撮影までに長い時間を要してしまいました。自分の人生をどう生きていくかを考えてほしい―ということは、当時を知っている人と知らない人とでは、映画の感想もかなりわかれたのでしょうか?監督そうですね。観客のなかでも世代が異なると、作品の受け取り方も違ったようです。私は東ドイツで生まれましたが、ドイツが統一してもう30年以上経つので、昔はどうだったのか思い出せないこともありますけどね。ただ、当時を知らない人たちにとってはこの映画で描かれていることは、別世界のように感じたのかもしれないです。私としては、若い世代の人たちがこの映画を“哲学的娯楽作品”として受け取ってくれたらいいかなと考えています。「哲学的」といったのは、罪の意識にさいなまれているグンダーマンの姿を見て、「どうしたら人生で罪を犯さずに生きていくことができるのか」ということを感じてほしいからです。実際、当時の東ドイツで起きていたこういう問題は、なくなったわけではなく、形を変えていまの世界にもまだあるものですよね。なので、観客の方々がこの映画を観たときに、映画を楽しむと同時に自分の人生をどう生きていこうかと考えてくれたらいいなと思っています。―グンダーマンのように労働者であり、シンガーソングライターであり、スパイでもあるという人物はなかなかいないと思いますが、監督が映画の主人公にしたいと思うほど惹かれたのはどのあたりですか?監督私がもともと彼のファンだったということもありますが、彼は本当に人をワクワクさせる人物なんですよね。人間としても、アーティストとしても魅力的だと感じています。あとは、彼の政治的な部分に興味を持っていたというのも大きかったかなと。実際、彼は加害者でありながら被害者でもあるという二面性を持った複雑な立場に置かれていた人でしたからね。そのほかに惹かれたのは、友人の妻であったコニーに7年間も恋をしていたところ。そういったひとりの女性に対する純粋さも魅力的だと感じました。コニーもグンダーマンとのことは、大恋愛だったと話していたほどです。グンダーマンの音楽は人の心を開かせる―資金面で苦労したとおっしゃっていましたが、そういった彼の魅力やストーリーのおもしろさを訴えて、最終的にOKをもらえたのでしょうか?監督もちろん主人公であるグンダーマンがどれほど魅力的な人物かということは伝えましたが、委員会の人たちはあまり現実的には受け取ってはくれませんでしたね……。なので、私はいろいろなところに手紙を出しては、この作品を作りたいと訴え、何とか助成金を出してもらうことができました。結果としては、観客動員数もよかったですし、多くの映画賞を受賞できたので、いまとなっては委員会も助成金を出して正解だったと感じてくれていると思います(笑)。―間違いないですね。実際にグンダーマンを知る人たちと会ってみて、彼の素顔を垣間見た瞬間はありましたか?監督コニーやバンドの仲間たちから聞く話は、知らない事実が多かったので、驚くことばかりでした。先ほども触れたコニーとのラブストーリーもそのひとつ。人妻だったコニーの心を7年もかけて射止めたという話を初めて聞いたときはびっくりしました。あと、今回のリサーチのなかで興味深かったのは、彼が思いついたことをカセットテープに吹き込んでいたこと。劇中にもシーンとして入れましたが、実際に聞かせてもらうこともできました。そこには、おもに彼の声で歌のアイディアが録音されていましたが、ときにはどこかの電話番号が吹き込まれていたことも(笑)。普通では聞けないような音源で、そこからリアルな情報も得られたので映画を制作するうえでは非常に役に立ちました。ファンとしてもうれしかったですし、まだ彼が生きているかのような感覚も味わうことができて、非常に満足しています。―グンダーマンの歌が多くの人を惹きつける理由は、何だと思いますか?監督彼の音楽の魅力は、人の心を開かせるところ。そして、歌を通して彼の優しい眼差しが見えるところだと思います。だからこそ、彼の歌を聴いていると、精神的に強い力をもらうことができるように感じるのかなと。そういう気持ちが歌にも込められているので、私もほかの人に対して優しく接したいなと思うようになりますね。周りからのエネルギーが自分にとっての原動力―そのなかでも、特に歌詞が印象的でしたが、監督が好きなフレーズや曲があれば、教えてください。監督気に入っている言葉がありすぎるので、選ぶのは難しいですね。映画のなかで使った曲から好きなものを挙げるとすると、「LINDA(リンダ)」という彼の娘のことを歌った曲が印象に残っています。というのも、この曲は娘に対しての歌ではありますが、男性が女性に向けるラブソングとして聞くこともできる曲だからです。特に、冒頭の「僕の心に 君が宿った/ 寂しい一軒家に/ ドアも窓も 大きく開けて/ 明るい光が 入るように…」と歌っている部分が好きです。でも、本当に好きな歌が多いので、すべてを言うことはできないくらいですね。―同じアーティストとして、彼から影響を受けているところはありますか?監督私は普通の生活を送るいっぽうで、グンダーマンと同じようにツアーに出て歌うこともあるので、芸術に携わる人間としても、ひとりの人間としても、いろいろな意味で影響を受けていると思います。―では、監督にとって創作活動の源になっているものとは?監督まずは、自分はひとりではないということですね。一匹狼のようなアーティストの方もいますが、私はそういうタイプではなく、俳優やいろいろなスタッフとチームで仕事をするのが好きなんです。だから今回も、ひとりひとりからエネルギーをもらってこのような作品を作り上げることができました。私にとっては、それが何よりも原動力です。そして、観た方々には作品から感動を家に持ち帰ってもらえたらいいなと思うので、そういった作品を生み出すことが映画に携わる人間の仕事だと思っています。毎日さまざまな新しい発見をしながら、映画を作っているところです。―そういった部分が映画作りの魅力でもありますね。監督そうですね。映画を作るというのは、本当に人間的な行動だなとも思っています。なぜなら、映画を通して幅広い世代の人たちに物語を伝えており、それはまるで親が子どもに本を読んで聞かせるようでもありますからね。みんなでひとつの映画を仕上げていく作業は、とにかく楽しいので、それがモチベーションになっています。映画を通じて日本を近く感じることがある―ちなみに、日本の作品や文化から影響を受けたことはありますか?監督もちろん、日本の芸術家からも多くの影響を受けていますよ。映画でいえば、特に黒澤明監督の『羅生門』。こんなにすばらしい作品はほかにはないと思っているほどです。あと、ほぼ毎年カンヌ国際映画祭に行っているので、そこで日本の映画をよく観ていますが、いまの日本人の日常生活を垣間見れるようないい作品が多い印象ですね。日本の映画を観ていると、自分のなかにも同じようなところがあると気づかされるので、日本をとても近く感じることがあるほどです。だからこそ、それとは逆で日本のみなさんがこの作品をどのように受け止めるのかについては、とても興味があります。―最後に、日本の観客にメッセージをお願いいたします。監督10年以上の時間をかけて作った映画でもあるので、それが日本でも公開されることをうれしく思っていますし、本当に楽しみにしています。「人生というのは、なんて複雑なものなのか」と感じて作った映画でもあるので、みなさんにもぜひそういったことを感じていただきたいです。ひとりの男の人生から学ぶことがある東ドイツで最大のスキャンダルとも言われた秘密警察に翻弄され、数奇な運命をたどることとなったグンダーマン。さまざまな感情を味わった彼にしか歌うことのできない力強い名曲の数々とともに、ひとりの人間が経験した愛や葛藤に胸が熱くなるのを感じるはずです。取材、文・志村昌美熱量の高い予告編はこちら!作品情報『グンダーマン 優しき裏切り者の歌』5月15日(土)より、渋谷ユーロスペース他全国順次公開配給・宣伝:太秦© 2018 Pandora Film Produktion GmbH, Kineo Filmproduktion, Pandora Film GmbH & Co. Filmproduktions- und Vertriebs KG, Rundfunk Berlin Brandenburg
2021年05月14日