株式会社ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス(本社:東京都豊島区代表取締役:堤 聡)は、新刊「見て読んで感じて覚える 音楽のことば辞典」を、2023年4月26日に発売いたします。【イタリア発!オールカラー!】絵本のように読める「音楽のことば辞典」。お子さんが楽譜を読めるようになったら、ぜひ一緒に読んでください。音楽を学びはじめた子どもに「これだけは!」と思うことばを、音楽教育のエキスパートが吟味しセレクトした音楽用語辞典です。見て読んで感じて覚える 音楽のことば辞典▼この本で紹介する「音楽のことば」アルペッジョ[arpeggio]/オーケストラ[orchestra]/おと【音】/おとのたかさ【音の高さ】/おんかい【音階】/おんてい【音程】/おんぶきごう【音部記号】/かいめい【階名】/がっき【楽器】/カノン[canone]/きゅうふ【休符】/きょうじゃくきごう【強弱記号】/クレシェンド/デクレシェンド・ディミヌエンド[crescendo/decrescendo・diminuendo]/ごせんふ【五線譜】/ジーグ[giga]/しょうせつ【小節】/スラー/タイ[legatura di frase/legatura di valore]/せいじゃく【静寂】/そうしょくおん【装飾音】/そくどきごう【速度記号】/ソナチネ[sonatine]/だいふひょう【大譜表】/はく【拍】/はんおん/ぜんおん【半音/全音】/ひょうし【拍子】/フーガ[fuga]/フェルマータ[fermata]/プレリュード[preludio]/マーチ[marcia]/メトロノーム[metronomo]/メヌエット[minuetto]/メロディー[melodia]/リズム[ritmo]/リタルダンド・ラッレンタンド[ritardando・rallentando]/りんじきごう【臨時記号】/レガート/スタッカート[legato/staccato]/わおん【和音】/わせい【和声】/ワルツ[valzer]■原作者についてラウラ・ペーコ5歳からピアノを始める。スカラ座ピアニストのアーダ・マウリに師事。ブレーシャのルーカ・マレンツィオ音楽院にてピアノのディプロマを取得。その後、音楽教育専門の機関「CENTRO EDUCAZIONE MUSICALE DI BASE DI MILANO」にて音楽教育法のディプロマを取得。音楽教育の主なメソッド(オルフ、ウィレムス、コダーイ、ビアンキ、ダルクローズ、ゴイトレなど) のエキスパートとして、子どもから大人まですべてのレベルの音楽教育に従事し、イタリア全土の音楽院や音楽学校などで、授業や講演などさまざまな形で活動を続ける。音楽教育に関する記事も多数執筆。長年に渡りSCUOLA MUSICALE DI MILANO にてピアノ、ソルフェージュ、音感トレーニングを教え、現在では同校の学長も兼任する。■日本語版著者・イラストについて川西 麻理(かわにし・まり)4歳からピアノ、17歳から声楽を始める。東京音楽大学声楽専攻を卒業後、渡伊。歌をビアンカ・マリア・カゾーニ、音楽史をアントニオ・ポリニャーノに師事。イタリアの国立音楽院のテキストとしても使われている、クリスティーナ・チマガッリ、マリオ・カッロッツォ共著『西洋音楽の歴史』(全3巻、シーライトパブリッシング、2009~2011年)などを翻訳。2013年より音楽ジャーナリストとしてスカラ座の公演(オペラ・シンフォニー・バレエ)に関する記事を執筆。イタリア海外プレスクラブ会員。スカラ座アカデミーバレエ伴奏者コースを修了し、現在スカラ座付属バレエ学校のピアニストを務める。また、さまざまな機会にイラストを提供している。見て読んで感じて覚える 音楽のことば辞典定価:1,760円(10%税込)仕様:B5判縦/96ページ発売日:2023年4月26日ISBN:978-4-636-10435-6商品コード:GTP01100630 ★ご予約受付中! お求めは、全国ヤマハ特約楽器店・書店またはオンラインショップまで。【本商品に関するお問い合わせ】(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス ミュージックメディア部問い合わせフォーム: 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年04月18日働くリアルと会社の本音がわかる株式会社カンゼンより、新刊書籍『社畜語辞典』が3月7日に発売されます。新入社員から中間管理職まで、ビジネスでいちばん使える「社畜語」が満載。会社という組織で働く人なら誰もが共感、そして様々な場面で役立つ、気付くことが出来る。ビジネスパーソン必見の内容となっている。■こんな時代を生き抜くビジネスパーソンのための一冊誰も教えてくれない777語収載!!新入社員から中間管理職までビジネスでいちばん使える!働くリアルと会社の本音がわかる社畜【しゃちく】「会社」と「家畜」を組み合わせた造語。1980年代後半、小説家の安土敏が新聞記者との会話中に使ったことがはじまりとされる。一般的には、勤めている会社の言いなりとなって、文句も言わずにひたすら働く労働者を指す。彼らは、個人の意思や良心、自由を放棄して膨大な仕事量をこなし、理不尽な業務命令や望まない人事異動にも耐えている。近年は、厳格な業務マニュアルによって社員に長時間労働や低賃金の労働を強いる企業が増え、奴隷のように扱われたあげく使い捨てにされる社畜が増えている。本書は、こんな時代を生き抜くビジネスパーソンのための1冊である。■もくじはじめに社畜度チェックリストこの本の読み方社畜の基礎知識あ行愛社精神/あいみつ/アウトソーシング/アウトプット/アカウント/アグリー/アゴアシ付き/アサイン/朝活/足/アジェンダ/足元の悪い中/アジャイル/預かり/明日やろうは馬鹿野郎/遊び/アチーブメント/安土敏/アットホーム/アテンド/後出しジャンケン/後付け/あのころは良かった/アポなし/天海祐希/アンテナを張る/あんばい/いい意味で/いい会社/イエスマン/異業種交流会/育児休暇/イケハヤ/勇み足/石和温泉/意識高い系/椅子取りゲーム/板挟み/一億総活躍/一存/一生に一度のお願い/言った言わない/一丁目一番地/いってこい/一本/稲盛和夫/イニシアチブ/いのちの電話/イノベーション/今どきの若者は/色をつける/岩瀬大輔/印鑑/インセンティブ/インターンシップ/インフルエンサー/Win-Win/上/wage slavery/打たれ強さ/打ち合わせ/うつ/うっちゃる/打てば響く/うまいもんでも食って帰んな/裏どり/えいや/ASAP/エクスキューズ/エクストリーム出社/エクストリーム通勤/Excel化/依怙贔屓/SNS/エスカレーター式/SDGs/エナジードリンク/NR/エビデンス/MTG/MBA/縁故採用/炎上/円満退社/おいおい/オーガナイズ/OJT/おごったったやん/お先に失礼します/おざなり/おじさん構文/お歳暮/お茶出し/お中元/お疲れさまです/おっしゃられる/お局/お電話が遠い/落としどころ/オフピーク通勤/オブラート/オフレコ/お前の代わり/お見送り/オンスケ/オンとオフ/オンライン会議社畜を味わう作品①蟹工船/嫌われる勇気か行会議/解雇規制/会社人間/カイゼン/解像度/買い出し/回転率/顔採用/学生気分/ガクチカ/確認します/学閥/学歴/菓子折り/かしこまりました/箇条書き/風通し/家族経営/肩たたき/カタルシス/カツカツ/ガッチャンコ/ガバナンス/カバン持ち/カプセルホテル/株主総会/上座/がむしゃら/仮面社畜/ガラガラポン/カリスマ/軽く一杯/カレンダーどおり/過労死/侃侃諤々/歓迎会/幹事/神田明神/完パケ/がんばりどころ/看板/幹部会/幹部候補/聞いていない/黄色と黒は勇気のしるし/企画書/聞きながらメモをとれ/起業/机上の空論/喫緊/昨日の今日/決め打ち/肝が据わる/肝に銘じます/逆境/キャパ/キャリアアップ/キャリアアドバイザー/キャリアコンサルタント/キャリアプランシート/休日返上/吸収/給湯室/今日中/恐縮ですが/業務委託/共有/教養/切り抜き動画/勤続表彰/勤続疲労/勤務間インターバル/空気/Google Meet/クールビズ/ググって/9時5時/口裏合わせ/組合/クライアント/クリティカルシンキング/クレーム処理/クロージング/グローバル/経営者目線/経験則/傾聴力/契約書/激務/欠員補充/ケツカッチン/決起集会/決算書/月曜日/結論から言うと/元気があればなんでもできる/健康診断/言語化/研修/現状維持/献身的/現代用語の基礎知識/言質をとる/検討します/現場がすべて/ご挨拶だけでも/交渉術/拘束時間/5S/ゴールデンウィーク/五月病/ご苦労さまです/ご査収ください/ご自愛ください/5時から男/個人情報/コスト意識/コスパ/ご足労/ゴチになります/寿退社/小春日和/コピペ/ゴマすり/コミット/コミュニケーション/コモディティ/ゴルフ/コロナ疑惑/コワーキング/コンシューマー/コンセプト/コンセンサス/コンプラ社畜を味わう作品②サラリーマン金太郎/資本論さ行サービス残業/最大公約数/在宅手当/裁量/搾取/刺さる/サステナビリティ/させていただく/左遷/ざっくり/雑談/さとり世代/サブロク協定/差別化/サマータイム/サマリー/五月雨/左様ですか/サラメシ/ザル/産業医/残業自慢/残業手当/3高/三下/サンモニ/CSR/CCに入れる/C○O/ジェネラリスト/資格試験/自己開示/自己管理/自己犠牲/自己啓発本/自己肯定感/自己効力感/事後処理/自己点検/仕事抜きで/仕事始め/自己評価/指示待ち/時代性/下請法/下積み/実家暮らし/失念/失敗/失敗自慢/質問ありますか?/実力主義/自転車操業/シナジー/地ならし/始発/辞表/自分探し/自分へのごほうび/自分への投資/自分磨き/始末書/社会人基礎力/社会の窓/社食/ジャストアイデア/社是/社長案件/社長様/社内結婚/社内コンペ/社内報/視野に入れる/遮二無二/ジャブを打つ/社用車/週休2日/終日/終身雇用/終電/粛々と/主体性/出社拒否/出世街道/出張/出張土産/10分前行動/趣味の延長線上/シュリンク/シュレッダー行き/奨学金/常識の範囲/上場/上昇志向/昇進試験/承知しました/賞与/昭和/ショート/暑気払い/職業病/ジョブ型/ジョルダン/白羽の矢/知らんけど/人海戦術/人事異動/人事考課/新人類/診断書/人畜無害/新年会/新聞スクラップ/人脈/スーパーコンパニオン/Zoom/スキーム/スキルアップ/「好き」を仕事に/すぐやる/スケジュール感/ステークホルダー/ストレス耐性/スペシャリスト/すべては慣れ/スリム化/成果主義/税込/精算/生産性/精神論/セカンドキャリア/責任者/セクション/世代格差/接待/Z世代/背広組/セミナー/ゼロイチ/全員野球/前職/センターピン/洗脳/全力投球/送別会/属人化/即戦力/即レス/そもそも論/ソリューション営業社畜を味わう作品③島耕作シリーズ/就職しないで生きるにはた行ターゲット/体育会系/大企業/太鼓持ち/大丈夫です/タイト/第二新卒/タイパ/ダイバーシティ/タイムカード/抱き合わせ/タクシーチケット/竹中平蔵/他者への想像力/タスク/たたき台/脱サラ/脱社畜/達成感/たった今/建前/棚卸し/田端信太郎/ダブスタ/ダブルスクール/ダブルブッキング/ダマでやる/たらいまわし/段取り/段ボール/遅延証明書/力仕事/ちきりん/遅配/Chatwork/茶柱が立つ/チャレンジ/中小企業/ちょいと一服/朝礼/直行直帰/ついでのときにでも/つかぬこと/月一/突き抜ける/常見陽平/手垢のついた/DX推進/TPO/体裁/定時/DINKs/手探り/デジタルイノベーション/ですます調/出たとこ勝負/丁稚奉公/デッドライン/鉄板/てっぺん/鉄砲玉/手離れ/出前/テリトリー/出る杭/テレコ/テレワーク/転勤族/天狗/転職サイト/テンパる/テンプレ/顛末書/電話番/同一労働同一賃金/同期/同窓会/同調圧力/堂々めぐり/どうにかしろ/独身寮/所ジョージ/特化/トップダウン/トップバッター/飛び込み営業/とらばーゆ/とりあえず謝る/とりあえず3年/取り急ぎ/取り込み中/取締役会/取り巻き/泥舟/トントン社畜を味わう作品④女工哀史/特命係長 只野仁な行内定取消/内部告発/流す/泣く/投げる/仲人/雪崩/何かあったら連絡ください/名ばかり管理職/成田悠輔/なるはや/なるほどですね/ナレッジ/ナンバー2/ニーズ/ニート/握る/二重敬語/日曜日/日経新聞/新田龍/日報/二刀流/二番煎じ/二匹目のドジョウ/人間関係/人間力/認識/濡れ衣/寝かせる/ネグる/ネゴる/熱量/寝てない自慢/根回し/寝技/年賀状/年功序列/年収/年俸制/年末年始/ノー/ノー残/伸びしろ/のほほん/飲み会/飲みニケーション/乗りかかった舟/ノルマ/ノンキャリ社畜を味わう作品⑤なぜ僕らは働くのか/7つの習慣は行パーキンソンの法則/パイセン/パイプ/バカ息子/歯車/派遣社員/バジェット/はしごを外す/畑/バタバタ/働き方改革/ハック/バッファ/花金/花見の席取り/派閥/パフォーマンス/バブルのころは/原田曜平/ハレーション/パレートの法則/パワーバランス/パワポ資料/半ドン/PDF/PDCAサイクル/BtoB/引き継ぎ/ピケティ/ビジネスカジュアル/ビジネスモデル/ビジョン/ひと手間/ひとまず/独り相撲/百歩譲って/ヒヤリ・ハット/ヒラメ上司/ひろゆき/FIRE/ファジー/ファシリテート/フィードバック/フィックス/50:50/フォーマット/フォロー/副業/ぶしつけ/部署を越えて/ぶっちゃけ/無難/ブラック企業/ブラッシュアップ/フラットな目線/ブランディング/無礼講/フレキシブル/ブレスト/プレゼン/フレックス制/プレミアムフライデー/プロ意識/プロジェクト/プロパー/粉骨砕身/平成/平熱/ベター/ヘッドハンティング/ペラ一枚/ベルトコンベア式/勉強会/勉強して/ベンチ/ベンチャー/ペンディング/方向/法定労働時間/忘年会/ホウレンソウ/ボール/保険屋さん/ポスト/ボトルネック/ほぼほぼ/ほめて伸ばす/ホリエモン/ホワイトカラーエグゼンプション/本田宗一郎/ポンチ絵社畜を味わう作品⑥働きマン/パパの歌ま行マージン/毎月勤労統計調査/マイペース/マイホーム/マインド/マウンティング/まえかぶ/前倒し/前の会議/孫請け/マスト/またの機会/松下幸之助/窓際族/学び/マニュアル/マネジメント/マネタイズ/丸投げ/○○職人/〇〇チルドレン/〇〇2.0/〇〇ハラ/○○マター/丸める/満員電車/漫喫/マンパワー/見える化/右肩上がり/見切り発車/味噌をつける/身だしなみ/見なかったことにする/みなし残業/みなし労働時間/身バレ/見回り/明日/見る人は見ている/無趣味/無駄/無断欠勤/無遅刻無欠勤/無理/名刺/目を通す/メンター/メンタル/もう帰るの?/もうひと踏ん張り/持ち帰り仕事/持ち帰ります/持ちつ持たれつ/モチベーション/揉み手/揉む社畜を味わう作品⑦半沢直樹/ヒゲとボインや行役職定年/やっつけ仕事/闇専/やりがい/やりたいことはなんだ/槍玉/やる気/有休/有休買取/優秀な人材/優先順位/行先予定表/ゆとり世代/ヨイショ/要領/養老SA/よきにはからえ/横文字/よしなに/よしんば/予測変換/予定調和/40歳社畜を味わう作品⑧部長と社畜の恋はもどかしい/プロフェッショナルの条件らわ行ライン/ランチミーティング/リア充/リーダーシップ/利益/リカレント/離職率/リスキー/リスクヘッジ/リスケ/理想の上司/利他精神/リテラシー/リモート勤務/リモート疲れ/流動性/流動的/料理/稟議/ルーティンワーク/レギュレーション/レジリエンス/レスポンス/連勤/老害/労基署/労災/労使協定/労使交渉/労働基準法/労働条件/ロールモデル/ローンチ/ロジカルシンキング/ロスジェネ/ロット/ロハ/ワーカホリック/ワークシェアリング/ワークショップ/ワークフロー/ワーク・ライフ・バランス/ワーケーション/若者言葉/若者の〇〇離れ/私/1on1/ワンコールで取れ/ワンチーム/ワンマン社畜を味わう作品⑨道は開ける/道をひらくおわりに■サンプルページAmazon : 楽天ブックス : KANZENショップ : ■編著プロフィール著者:唐沢明(からさわ・あきら)ビジネスマナー講師・コミュニケーションアドバイザー・大学講師・作家。大学卒業後、大手出版社の営業部、編集部を経て、2000年に独立。多くの大学で面接・就職講座講師、企業では新人研修・ビジネスマナー・敬語・コミュニケーションの講師を担当する。NHK Eテレ「目指せ!会社の星」「オトナへのトビラ」などにもゲスト出演。オンライン学習動画スクー(Schoo)で「ビジネスコミュニケーションの教科書」講師としてレギュラー出演中。著書は、10万部超のベストセラー『さすが!と言われる話し方・聞き方のビジネスマナー』(高橋書店)をはじめ、『大学生からはじめる社会人基礎力トレーニング』(丸善出版)、『敬語すらすらBOOK』(成甲書房)など90冊にのぼる。編集:造事務所(ぞうじむしょ)1985年設立の書籍の編集・制作会社。雑学をはじめ、生活実用まで幅広いジャンルの単行本の編集などを行う。編著となる単行本等は年間30冊にのぼる。主な制作物に『絶滅事典 20世紀末モノ&コトカタログ』(小社)、『競馬あるある』(同)、『復活事典 21世紀「再ブレイク」モノ&コトカタログ』(同)など。書名:社畜語辞典著者:唐沢明編集:造事務所ISBN:9784862556752定価:1,980円(本体1,800円+税)判型:A5判ページ数:240P発売日:2023年3月7日出版社:カンゼン 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年03月02日株式会社朝日出版社は7月7日(木)に、『エモい古語辞典』(著・堀越 英美 イラスト・海島 千本)を全国の書店・ネット書店で発売開始いたしました。――うそうそ時に逢いましょう。――海月(くらげ)の骨のような恋をした。――可惜夜(あたらよ)を君とすごせたら。――そして二人は泡沫(うたかた)に還る。古語は、古代から「あはれ」を表現してきた、エモい言葉の宝庫です。表現に迷うとき、推しの尊さを前に言葉を失うとき、古語を参照しない手はありません。しかし、ふつうの古語辞典には大量の言葉があり、そのなかから素敵な言葉を見つけるのは至難の業です。そこで本書では、春夏秋冬、月や星、草花や色、「恋」など人の心を表す美しい言葉だけでなく、「名おそろしきもの」――怖さやおぞましさで心をつかむ言葉、様々な物語のイメージソースとなってきた神話や伝説、仏教の言葉、知る人ぞ知る四字熟語、現代の文章でも使える伝統的でみやびやかな雅語まで、知られざる「日本語」を収集。1654語まで厳選して掲載しました。海島千本さんの美しいイラスト入りですエモさにふるえても語彙力を喪失したくない。むしろ語彙力でエモさを増幅させたい。これはそんな人のための辞典です。(著者)『エモい古語辞典』はこんな方におすすめです!近年、『鬼滅の刃』『呪術廻戦』などのヒット作では、古き良き日本語が効果的に使われています。春愁――Mrs. GREEN APPLEの曲名千本桜――2011年の初音ミクのヒット曲のタイトル上弦、下弦、魘夢、栗花落、胡蝶、紅蓮、黎明、幾星霜――『鬼滅の刃』に登場。可惜夜、玉響、碧落、月の舟――霜降り明星・粗品「希う feat.初音ミク」寒苦鳥、波羅夷――ヒプノシスマイクのメンバーの名前そのほか初音ミクの楽曲に「待宵の歌姫」「玉響」「月夜の恋蛍」「沫雪ストライド」など。小説、マンガ、歌詞、短歌、俳句など、自らも創作活動においてこのような言葉を使ってみたい!と思う人は少なくありません。★小説・マンガ・歌詞などの創作活動全般に。★お話作りやネーミングのアイデア集として。★古文や近代文学を楽しむ導入として。(和歌、漢詩、近代文学から、用例をできるだけ入れています)本書をぜひお役立てください。著者プロフィール堀越英美(ほりこし・ひでみ)1973年生まれ。文筆家。早稲田大学第一文学部卒。著書に『女の子は本当にピンクが好きなのか』『不道徳お母さん講座』『スゴ母列伝』『モヤモヤしている女の子のための読書案内』など、訳書に『世界と科学を変えた52人の女性たち』『ガール・コード』『ギタンジャリ・ラオSTEMで未来は変えられる』など。目次まえがき、凡例第一部 天文時間……時の流れ/朝/夕/夜季節……春夏秋冬/月の異名宇宙……宇宙/月/星/七夕気象……空/空の現象/太陽/雲/風/雨/つゆ、霜、氷/雪第二部 自然生物……哺乳類/鳥/虫/そのほかの生物植物……花一般/梅、桜/花の名前/草、木元素……水/火/鉱物、宝石/ガラス色……色第三部 人生感情……恋/人の心、おこない人の営み……夢、うつつ/身を飾るもの、こと/少女、芸能/こども第四部 物語神話・歴史……記紀神話/伝説、歴史/剣などのアイテム怪異……あやかし/鬼/占い、呪い中国……中国の伝説仏教……仏教思想/仏教世界/地獄/仏教キャラ/仏教アイテム禅……禅第五部 言葉ことわざ……ことわざ・故事/言葉遊び二字熟語……光の二字熟語/闇の二字熟語/自然の二字熟語/人の二字熟語四字熟語……時空の四字熟語/情景の四字熟語/人の四字熟語/愛と友情の四字熟語/はかなさの四字熟語/芸術の四字熟語/戦いの四字熟語/闇の四字熟語/近世語……近世語、近代語雅語……雅語五十音索引、出典一覧、参考文献書誌情報・書名:『エモい古語辞典』・著者名:著・堀越 英美 イラスト・海島 千本・発売日:2022年7月・定価:1,782円(本体1,620円+税)・判型:四六判変型・ISBN:9784255013015・ページ数:184頁・発行:朝日出版社 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2022年07月07日「保障」と「保証」、「辞典」と「事典」など、発音が同じで意味が違う同音異義語。文字を変換するとき、どっち?と迷う言葉って、けっこうありますよね。今回も、うっかりミスしやすいパターンをクイズ形式でご紹介!【漢字クイズ】vol. 14「百科辞典」は間違い?では、ひとつめの問題。「百科辞典」の「辞典」は正解?間違い?どっちでしょう?正解は、「百科事典」です!「事典」は、物や事を集めて説明した書物のこと。【例】・百科事典・動物事典・恐竜事典・妖怪事典・雑学事典「辞典」は、言葉や文字の意味や読み方などを記した書物。辞書のことです。【例】・英和辞典・国語辞典・ことわざ辞典・四字熟語辞典事典と辞典は音が同じなので、区別するため事典を「ことてん」と発音することもあります。ちなみに、「事典」という言葉が生まれたのは、昭和時代。『日本大百科全書』(小学館)によると、1931年に平凡社が百科事典の計画を発表し、『大百科事典』と命名したのが最初。「辞典」とは違うものとして「事典」が使われるようになったそうです。おまけで「字典」もご紹介。こちらは漢字の読み方や意味などを記した書物です。「一同に会する」は間違い?2問目は、「一同に会する」。この「一同」は正解?間違い?どっちでしょう?正解は、「一堂に会する」です!「一堂」の意味は、「ひとつの堂、部屋、同じ建物」。そこに寄り合って会うというのが「一堂に会する」です。ほかに、「一堂に集まる」ともいいます。いっぽう「一同」は、「その場にあるすべてのもの」を表します。【例文】・職員一同・家族一同・一同を代表してあいさつする・一同ご起立願います語感的に「一同に会する」でも合いそうなイメージなので、文字変換するとき要注意です。「身元をホショウする」は?最後は「ホショウ」問題。「身元をホショウする」、は「保障」、「保証」、どっちでしょう?正解は、「身元を保証する」です!「保証」の意味は、大丈夫で間違いないとうけあうこと。【例文】・人柄を保証する・品質を保証する・保証書・保証金・連帯保証いっぽう「保障」は、権利や身分などを守ること。【例文】・人権保障・社会保障・国の安全を保障する・生活を保障するちなみに、「補償」も「ホショウ」なので混乱しやすいかもしれません。こちらの意味は、損失を補い償(つぐな)うこと。【例文】・損害補償・遺族補償・補償金を支払う「ホショウ」は、どの漢字も重要な場面で使われるので、うっかりミスは避けたいところ。ぜひ使い分けをマスターしておいてください!以上、ミスしやすい同音異義語3選でした!参考資料:・『日本大百科全書』(小学館)・『広辞苑』(岩波書店)・『日本国語大辞典』(小学館)文・田代わこ
2022年03月27日メル・ギブソンとショーン・ペンが初共演し、世界最大の辞典「オックスフォード英語大辞典」誕生に隠された真実の物語を描く『博士と狂人』(原題:THE PROFESSOR AND THE MADMAN)が、10月16日(金)より公開されることが決定した。貧しい家に生まれ、学士号を持たない学者マレーと、エリートながら精神を病んだアメリカ人の元軍医マイナー。辞典づくりという壮大なロマンを共有し、異端の天才たちふたりは固い絆で結ばれていく。だが、大英帝国の威信をかけた一大事業に犯罪者が協力していることが明るみになると、プロジェクトは暗礁に乗り上げ、時の内務大臣ウィンストン・チャーチルや王室をも巻き込んでいく――。本作は、全米で大反響を呼んだベストセラーノンフィクション、サイモン・ウィンチェスターの「博士と狂人―世界最高の辞書 OEDの誕生秘話」の映画化。初版発行まで70年以上の歳月を費やし、世界最高峰と称される「オックスフォード英語大辞典」。世界に冠たる辞典の礎を築いたのは、“異端の学者”と“殺人犯”…。この驚くべき事実をドラマチックに描いたノンフィクション本が待望の映画化。この映画化に真っ先に名乗りを上げたのが、『ハクソー・リッジ』の監督を務め、本作ではマレー博士を演じるメル。本作の映画化には実に20年以上を費やし、情熱を傾けてきたという。そして元軍医マイナー役には、『ミスティック・リバー』と『ミルク』で2度のアカデミー賞(R)主演男優賞に輝いたショーンが扮している。ほかにも、『ハンガー・ゲーム FINAL』「ゲーム・オブ・スローンズ」のナタリー・ドーマー、『シャーロック・ホームズ』シリーズのエディ・マーサン。そして、オックスフォード大学で孤立するマレーを支え続けた言語学者を、『コーヒー&シガレッツ』のスティーヴ・クーガンが演じている。『博士と狂人』は10月16日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町・渋谷ほか全国にて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:博士と狂人 2020年10月16日よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開© 2018 Definition Delaware, LLC. All Rights Reserved.
2020年07月13日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第61回アクマの辞典ア行【オ】➤「重い」(おもい)今回のテーマはあ行から「重い」である。体重の話ではない。確かに世の中には、物理的に重く、体積的に広い人が好み、といった人もいる。そういう方のために体重100キロ以上の淑女を揃えた、婚活パーティが秘密裏に開催されたりもしているようだが、エレベーターに1回3人ぐらいしかの乗せられないため、なかなか会場入りが終わらないという。ちなみに気合の入ったデブ専男性でも100キロあたりの女がボーダーでそれ以上だとキツと感じるらしい。このキツいとは、好みから外れるとかいう意味ではなく、むしろイイネなのだが、100キロ以上を超えると移動に支障が出てくる場合が多く、デートも満足にできなくなるといった意味でキツイのだそうだ。つまり「下半身(性的じゃない意味で)が強い動けるデブ」になれば、一部の層から熱烈にモテるかもしれないということだ。3ケタの大台を超えている人は中途半端なダイエットなどやめて、膝を鍛えたほうが良い。今回はそういう重さではなく、精神的な「重さ」の話である。昔から「重い女は男に嫌われる」と言われている。しかし、世の中には、女が自分の気に入らない行動を取った時に「重い」とか「お前のそういうところが嫌なんだ」と、あたかもそれが欠点かのように責めて支配しようと男もいるので注意が必要だ。もちろん、男が気に入らないことをすると「私を大事にしてくれてない」とさらに漠然としたことを言って、手こずらせてくる女もいる。では「重い」と言われる行動とは何か、というと第一に「束縛」だそうだ。いつどこで何をしていたか全て把握するだけで飽き足らず、コイツとは会うな、など行動を管理しようとするタイプは「重い」と言われる。他にもネガティブな発言が多いのも「重い」と思われるようだ。確かに、赤の他人がネガティブな発言ばかりしていたら「暗くていいなあ!好き!」と、映画『刑務所の中』の山崎努のように逆に元気になれるだろう。だが、家族や恋人がネガティブ発言ばかりしてくる場合、それを励まし続けるのは正直面倒だし、励ましミッションに失敗した時に送られてくる死をほのめかすLINEに逐一対処しなければいけないのも疲れる。しかも相手の希死念慮は、なぜか仕事中や午前2時など明らかに「試される時間帯」に起こるのである。だが、常に自由でいさせてくれて、俺の前ではいつも元気で明るく振る舞ってほしいなんていうのもわがままであり、それは結局、重い女が嫌なのではなく、俺に都合の悪い女が嫌、ということだ。よって、相手の行動を全て把握制限し、左内股にお互いの名前を彫り、右にはこれから生まれてくるであろう二人の子どもの名前を彫ろうなどという提案もしていないのに「お前重いんだよ」と言われた場合は、ただ俺の思い通りに動けと言っているにすぎない場合もあるので真に受ける必要はない。そもそも、物理的重さにも好みがあるように、精神的重さにも好みはあるのだ。世の中には束縛すら「愛されている」と感じ、放任されると不安になってしまうタイプもいるだろう。「重いんだよ」と言われたら、相性が悪かったと思って、内股タトゥー案をイイネと言ってくれる相手を探すというのも手である。--------------------------■ア行【ア】➤「あいみょん」(あいみょん)…腐せば老害と言われ、好きと言ったら媚びていると言われる、中年以上が触れづらいゾーン【イ】➤「陰キャ」(いんきゃ)…陰キャは、陽キャに陰キャ呼ばわりされるのがちょっと嬉しかったりする【ウ】➤「映り込み」(うつりこみ)…飯を二人分映りこませるのは彼氏アピールではなく、本当に二人前食う女もいるということを覚えておいてほしい【エ】➤「エモい」(えもい)…褒め言葉ではなく「よくわからない」という意味【オ】➤「重い」(おもい)…逆に自分の積載量が少ないのが悪いというケースもある**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。『ひとりでしにたい』 (モーニング KC)『ひとりでしにたい』 (モーニング KC)も発売中。
2020年07月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第60回アクマの辞典パ行【ピ】➤「ピンヒール」(ぴんひーる)今回のテーマはパ行から「ピンヒール」だ。近年、ネット上で「#Ku Too」という、職場で女性にヒール靴を履くことを強要するのをやめようという運動が起こったために、ヒールを義務付けするのをやめる企業も増えている。ヒール靴というのは機動力を低下させ、さらに体への負担も大きい。魚であれば「職場ではエラを3分の1塞いで働きましょう」と言われているようなものであり、社会人うんぬん以前に生物として不自然なことをさせていると言ってもいい。しかし、人間というのは、体に悪いとわかっていて好きな物ばかり食ったり酒やタバコやクスリをやったりと、他の動物より圧倒的に生物としてトチくるった行動をしてしまう生き物なのだ。ヤギとかが「草よりこっちのほうが美味いから」と、ピザポテトばかり食っているところを見たことがないだろう。だが、徹底して合理的に生きる動物に対し、無駄な行動をしがちなのが人間らしさとも言える。よって強要するのはおかしいが、多少動きづらくて足が痛くてもカッコいいヒールを履きたいと思うのは個人の自由であり、その動機が己のオシャレのためだろうが、男にモテるためだろうが、それも自由でなのある。ちなみにヒールを履くことがモテにつながるか、というと、いつもの根拠0.02ミリサガミオリジナルネット情報によると「モテる」らしい。ペタンコ靴よりピンヒールを履いた女のほうが、男に声を掛けられやすく、また男に助けを求めた時も応じてもらえる率が高かったそうだ。しかし、これは海外での調査なので、日本でも同様なのかはわからない、むしろ日本の男はピンヒールという目立つファッションをしている女を避ける傾向にあるのではないだろうか。痴漢や、“駅で女に体当たりマン”のような輩は、相手が女であればビヨンセでも果敢に立ち向かうというわけではなく、抵抗しなさそうな地味めな女を狙ってやるのだという。また、少し前に「童貞を殺す服」と称して、セクシーなニットがネットで流行ったが、本物の童貞に言わせると「こんな格好している女がいたら怖くて逃げる」そうだ。だからといって、ヒールを履いた女に「そんな靴じゃ逆にモテないよ」などと忠告するのは余計なお世話だ。仮にモテるために履いているのだとしても、ヒールごときにビビって逃げる男はお呼びでないだろう、かかとにピザカッターがついていても挑んでくる男をご所望のはずだ。ちなみに「背が高い女がデートにヒールの靴を履いてくるのは相手の男に配慮がない」という意見もあるらしい。100歩譲って女が自主的に配慮するならいいが、カップルと無関係な人間や、男のほうが言っているのなら性質が悪い。そもそも相手の背が高いというのは、デートするまで常にスネまで地中にめり込んでいたというのでなければ、はじめからわかっていたはずである。つきあってみないとわからないことは多々ある、しかし一目でわかることに対して後から文句をつけるというのはただのクレーマーと呼ばれても仕方ないだろう。--------------------------■パ行【パ】➤「パプリカ」(ぱぷりか)…自意識が目覚めつつある年頃の子どもに無理やりパプリカを踊らせるのはやめよう【ピ】➤「ピンヒール」(ぴんひーる)…ヒール自体をやめたい人に「痛くないヒールの履き方」を送るというクソリプ【プ】➤「プロフィール」(ぷろふぃーる)…プロフに(笑)を入れてるヤツとはつきあうなとおばあちゃんが言っていた【ペ】➤「ペアルック」(ぺあるっく)…初期からダサくないペアルックに成功していた林家ペーパー【ポ】➤「ポーカーフェイス」(ポーカーフェイス)…事件後に同級生から「何考えているかわかんないヤツだった」と言われるタイプ**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。『ひとりでしにたい』 (モーニング KC)『ひとりでしにたい』 (モーニング KC)も発売中。
2020年06月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第59回アクマの辞典バ行【ブ】➤「ブロック」(ぶろっく)今回のテーマはバ行から「ブロック」である。言葉が生まれて以来、人間の最もポピュラーなコミュニケーション方法と言えば会話であった。しかし、時代の流れと共に、手紙、電話、聞いたあと爆発するメッセージなど手段が増えていき、ネットが生まれたことによりさらに多様化していった。そしてついに最後の砦であった仕事まで、コロナウィルスの影響により対面ではなくネットを使ったリモートで行われるようになった。未だに紙の書類や印鑑にこだわる企業が多かった状況を考えれば飛躍的な進化である。石器で狩りをしていた旧人類が、アイパッドでヘラジカを仕留めるようになったみたいなものだ。しかし、こういう対面ではないネット上のコミュニケーションは人間に思わぬ影響を与える。気が巨大になってしまうのだ。見つめ合うと素直におしゃべりできないどころか、「ンフッ」という鼻呼吸をするだけがやっとの人間も、ネット上であれば、同じクラスにいたとしたら3年間1度も話せないような可愛いアイドルに暴言や卑猥な言葉を送ったりしてしまえるのである。リモート業務でも、今まで会社ではそんな素振りを見せたこともなかった人間が、リモートになった途端、女子社員にプライベートなことを尋ねたりする「リモートセクハラおじさん」と化した例もあるようだ。ネットでよく見る、隙あらばワンチャン狙う痛いLINEおじさんも、現実では若い女に声もかけられないノーチャンおじさんである可能性が高い。エロ自撮りアカウントは、リアルでは大胆になれない女が脱ぎ、リアルでは積極的に女に声を掛けられない男がワンチャン狙うという地獄のマッチングが成立しているともいえる。このように、良くも悪くもネットなどを介したコミュニケーションはリアルより積極的になれるため、もちろん恋愛でもよく使われている。「LINEモテテク」や、意中の相手と仲良くなるためにまずSNSのアカウントを尋ねたりと、昨今ではネットコミュニケーションツールを上手く使いこなすことが、モテや恋愛を成就させる鍵と言っても過言ではなくなってきている。そして、ネットコミュニケーションには「ブロック」できる、という最大の特徴がある。「ブロック」とは相手が送ってくるメッセージを拒否したり、相手が自分のSNSを見られないようにしたりする機能である。リアルであれば、話しかけようとする相手の口に馬糞を詰めたり、こちらを見ようとしてくる目に薬指と人差し指を使った本格的目つぶしを食らわせたりするようなものだ。そんなリアルでは絶対できないことをやってのけられる、痺れて憧れる機能なのだが「ブロック」するのは勇気がいるのでなかなかできない、という人も多い。明確な拒否表示なため、相手を不快に思っているからブロックしたいのに、ブロックしたことを相手に知られたら不快に思われるのでは、というワケのわからない心理である。しかしブロックはブロックである、アタックではない、相手を攻撃しているのではなく自分を守っているだけだ。何かあればすぐ「自衛しろ」と言われる昨今である、不穏なものを感じたら防御は躊躇なくしたほうが良いのだ。そもそも使って良い機能だからついているのだ、リアルで馬糞をお見舞いするのを我慢してやっているのだからネット上でくらいは我慢しなくて良いだろう。しかし、押せば相手に巨漢が3人ぐらい体当たりしてくる「アタック」ボタンがついたらそれはそれで需要がある気はする。--------------------------■バ行【バ】➤「バチェラー」(ばちぇらー)…結婚してはいけない3B男子の第4候補【ビ】➤「ビデオ会議」(びでおかいぎ)…「顔映す必要あるか」と思うが、外出自粛中、人の形を保つのに一役買っている【ブ】➤「ブロック」(ぶろっく)…ブロックを攻撃と取る者もいるが、己が攻撃したからブロック(防御)された可能性が高い【ベ】➤「別腹」(べつばら)…浮気を繰り返す人間も「別腹」と思っているので罪悪感を持たせることはできない【ボ】➤「ボイチャ」(ぼいちゃ)…顔出しリモート飲み会をやっているのはリア充、比較的陽気な陰キャはこれ、普通の陰キャはツイッターだけ**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。★オフィシャルサイト★Twitter
2020年06月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第58回アクマの辞典ダ行【ド】➤「ドライブデート」(どらいぶでーと)今回のテーマは「ドライブデート」である。都会は交通が発達しているので、車好き以外そんなに車を所有していないと思うが、私の住んでいる村では、車がないのはIQが低いジョブズレベルのヤバさなのだ。もはや一家に一台どころか、大人一人あたり一台がデフォルトなので、男だろうが女だろうが車を所有しており、大正や明治生まれでなければ免許も大体持っている。よって「女子だけでランチしよーよ! 」とガーリーなことを言っても「全員車で現地集合」という走り屋の集会スタイルになるのだが、田舎ではこれが普通だ。したがって、車を持っていることに全く特別感がなく、むしろ持ってないほうが「こいつどうやって生きてるんだ? 」と一目置かれてしまう。それゆえ「車はステータス」と言われてもピンと来ないのだが、ひと昔前には、車は男のステータスで、所有はもちろん、何に乗っているかで男の価値が決まり、そして良い車の助手席に乗せてもらうのが女のステータス、という価値観があったらしい。確かに我が村とて、全員軽トラに乗っているわけではない。むしろ、「女は軽だが男で軽は恥」とか、「ラパンのコフレピンクやフレンチミントは女子らしさをアピりたい雑魚ども全員が乗ってるから、あえてフェニックスレッドで差をつけろ」みたいな田舎特有の車マウントがあるような気がする。ただ、田舎も都会も共通するのは「車にこだわっているのは男」という印象だ。確かに、男女によって「好みがちなもの」というものはある。男は、車や新幹線などの乗り物、怪獣、ロボット、『ダークナイト』を好み、女は『セックス・アンド・ザ・シティ』やセーラーウラヌスを好みがち、というような一般論だ。確かに、男女によって好む傾向に差があるのは否定できない。しかし、その傾向からはずれている者に対して厳しくなりがちなのは良くない風潮だろう。例えば、女でロボットアニメが好きと言えば「どうせ彼氏の影響だろう」「女にロボットの良さはわからんだろう」、「女はリカちゃん人形で昼顔ごっこでもやってな」と言われ、男が魔法少女アニメを好むと、どストレートに「変態」と言われたりするヤツである。その発想は古いとしか表現しようがなく、ツイッターで炎上したくてそう言っているとしか思えない。「車は男のステータス」という価値観を自分が持つのは良いが「よって、女は車を語るべからず」というような否定的価値観を持つのは前時代的である。それゆえ、パートナーが何を好きでも構わないが「この良さは男、もしくは女にしかわからない」という論調の場合は注意が必要である。ただし「風呂場でキンタマの上に座ってしまった」「湯船で股間にメチャクチャ湯が入って時間差で出てきた」など、本当に男や女にしかわからない事象、というものは存在するので、そういう発言はノーカンにしてあげよう。--------------------------■ダ行【ダ】➤「誰でもいい」(だれでもいい)…顔がよくて年収1000万円以上なら誰でもいい、の略なので注意【ヂ】➤「地蔵」(ぢぞう)…周りが、自分には興味のない話題で盛り上がっている時のオタク【ヅ】➤「妻」(つま/づま)…この肩書きを得ることでモテるようになる場合もあるらしいが、それに魅かれて来る男は全員ヤバい【デ】➤「電撃結婚」(でんげきけっこん)…「妊娠○カ月」というオプションがついてない者だけ電撃結婚を名乗りなさい【ド】➤「ドライブデート」(どらいぶでーと)…ドライブデートの時、「私が運転するんですよ。変わってますよね!」とアピる女も同様に古い**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2020年05月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第57回アクマの辞典ザ行【ゼ】➤「絶叫マシン」(ぜっきょうましん)今回のテーマはザ行から「絶叫マシン」だ。私は遊園地に行っても絶叫マシンにだけは乗らない、なぜなら怖いし、怖いことを楽しいとも思わないからだ。一体何が楽しくて乗るのか全く理解できないので、絶叫マシンが好きだという人間に聞いてみた。すると「スピード感がいい」「爽快感がある」「無重力最高」「その後に来るGで絶頂」など、今世ではわかりあえない言葉のみが返ってきた。ただしGがゴリラなら、そこだけはまだ理解の余地がある。このように「絶叫マシン」は人によって好き嫌いがはっきりと分かれるため、「絶叫マシン好きはこういうタイプ」といった心理分析も巷でよく見かける。こういう「赤縁メガネをかけている女は欲求不満だからヤれる」的な「○○な奴は××情報」をなくすのが世界平和の第一歩である。言い切っていいのは「絶叫マシン好きの人は絶叫マシンが好き」ということだけだ。これに関してだけは「オニギリ好き太郎さんについて調べてみました!好き太郎さんはオニギリが好きみたいですね!」のように、わかりきったことしか言わないクソキュレ―ションサイトの姿勢のほうが正しい。よって無根拠なのは前提として、絶叫マシンが好きな人はどんなタイプかというと「スリルを好むタイプ」らしい。何となくそんな気がしていたし、おそらく間違いではないだろうと思う。しかし「恋愛心理学」などと呼ばれる、治安維持のため、一生童貞を誓う者以外には信じることを法律で禁じるしかない心理学によると、絶叫マシンを好む女はスリルを求めるため、口説きやすいらしい。もはや「ヤレる」という結論にもっていければ何でもいいような気がするが、その結論は少し短絡的すぎる。絶叫マシン好きな人は、確かにスリルを好むのかもしれない。しかし、スリルを得るために「絶叫マシン」という、一応安全が保障された乗り物を選んでいるのである。そういうタイプは、むしろ「見ず知らずの男についていく」といったリスクの高いスリルを求めたりしないのではないか。つまり「いきなりトラックの前に飛び出す女は口説きやすい」のほうがまだ理屈が通っている。世の中には生まれ持った性癖が法に反するという人もいるが、その全員が犯罪者になるわけではなく、多くの人は、妄想やフィクションなどで欲求を解消し、ホンモノに手を出すことはないだろう。それと同様に、スリルを求める性格は生まれつきでも、全員がそれを、ワンナイトラブや、浮気、不倫、連続殺人で満たそうとするわけではなく、絶叫マシンのように、合法、安全、人の迷惑にならない行為で満たしている者もいるのだ。よって「絶叫マシンが好きな女はスリルを求めるので、即ヤリしやすい」という結論にはならない。もちろん絶叫マシン好きのヤリマンもいるだろうが、全員がそうではない。過去に偉人がこう言っていた「赤縁メガネをかけている女がドスケベなのではない、ドスケベな赤縁メガネの女がいるだけだ」と。一例をすべてに当てはめようとするから、誤解や、犯罪は起きるのだ。■ザ行【ザ】➤「雑食」(ざっしょく)…何でも食うという意味にされがちだが、我々がそこらへんの草とか食わないように、やっぱり相手も選んでくる【ジ】➤「地味系女子」(じみけいじょし)…男性向け○○女子の説明の最後は必ず、「○○系女子は××だから落としやすい!」になる【ズ】➤「図々しい女」(ずうずうしいおんな)…産休、育休、時短勤務など、与えられた権利を行使しただけで言われる時もある【ゼ】➤「絶叫マシン」(ぜっきょうましん)…乗りたがらない人を乗せようとするのはハラスメントである【ゾ】➤「(ストライク)ゾーン」(ぞーん)…ストライクゾーン広めだからをアピールする奴ほど、死球はきれいに避ける**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2020年05月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第56回アクマの辞典ガ行【ゲ】➤「幻滅」(げんめつ)今回のテーマは、が行から「幻滅」である。「幻滅」とは、イケていると思っていた男の初デート先がポッポだった上、財布がマジックテープで、その場にいたどの中学生よりも軽快なバリバリ音を轟かせた、など「思っていたのと違った」ためがっかりする現象である。しかしこの幻滅は男が悪いというより、勝手にしゃらくさいイタリアンレストランに連れて行ってくれて、会計はこっちが便所に行っている間に済ませてくれるから、仮に財布がマジックテープでもこちらが目にすることはない、と思い込んだほうに非がある。このように幻滅というのは、自分のイメージと実際の相手との差が大きかったときに起こりやすい。よって、相手がいくらイトーヨーカドー前に、ウォレットチェーンをチャカつかせながら参上してもそれがイメージ通りなら幻滅などしないのである。つまり、幻滅しないためには、まず相手に間違ったイメージを持たないことが大事である。私の知り合いに、旦那が金にだらしなく多額の借金すらある、という人がいる。さぞ結婚したことを後悔しているだろう、と思うかもしれないが、少なくともそんなそぶりはなく、旦那の悪口や愚痴も全然言わないのだ。なぜなら、出会ったときから、周りに「あいつは金にだらしないから関わるな」と忠告されていたからである。それを知っていて、つきあって結婚しているので、特に幻滅も後悔もないのだ。そうは言うても家族に借金があるのは困るやろという気もするが、別家計なので今のところ自分に害はないし、害が出ても自分に収入があるのですぐ別れれば良いから、特に不安やストレスはないらしい。このように、幻滅を防ぐためには、過度に相手を美化しないことも大事だが「相手に期待しすぎない」つまり「頼る」という発想を持ちすぎないことが大事である。例えば「この人と結婚すれば一生安泰」と思い込めば、当然そうじゃなくなったときに「思ってたんと違う」となってしまう。「病気」や「失業」など、生きていれば当然起こり得ることすら「裏切り」と感じ、「一緒に乗り切っていこう」という発想すら起こせなくなってしまうのだ。逆に、最初から頼るつもりでなければ、相手が思っていたのと違っても、そこまで動揺することはない。むしろ己に自立心がないから、自分の人生を変えてくれる王子様が現れるのを期待してしまい、相手を過度に美化してしまいがちになるという現象が起こるのかもしれない。よって、まずは、万が一相手が借金モラハラバリ財布野郎でも、なるようになると思えるぐらい己が自立すれば、自然と幻滅という現象自体起こらなくなるのではないだろうか。ポッポが不満なら、自分がイタリアンレストランに連れていけば良いだけなのである。あとポッポもバリ財布も別に悪くない、それで勝手に幻滅したり一喜一憂してしまったりする我々が悪いのだ。■ガ行【ガ】➤「ガラスの仮面」(がらすのかめん)…完結させないと死後勝手にAIに続きを描かせそうなので頑張ってほしい【ギ】➤「ギリイケメン」(ぎりいけめん)…人を「ギリイケメン」「ギリ抱ける」などと言ってくる人間とは付き合うなと、ばあちゃんという概念が言っていた【グ】➤「グルチャ」(ぐるちゃ)…すぐ「俺のいないところでグルチャが行われている」被害妄想が起こるので最初から入らないほうが良い【ゲ】➤「幻滅」(げんめつ)…女にムダ毛が生えていることに幻滅する男は、こちらを人間と思っていないということなので別れたほうが良い【ゴ】➤「ゴールイン」(ごーるいん)…結婚をゴールと考えていると後々問題が起こりやすいので「終わりの始まり」という意味では正しい用法**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2020年04月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第55回アクマの辞典ワ行【ワ】➤「若作り」(わかづくり)今回のテーマはワ行から「若作り」だ。人間、成人したあたりから、実年齢より若くありたいと思うようになる。なぜそう思うのか、まずは自分の気持ちの問題だ。誰だって、朝っぱらから鏡を見て、お母さんやお祖母ちゃんを越えて「ご先祖様光臨!?」と思いたくはない。自分の顔を見てテンションが下がるという地味なメデューサみたいな目にあわないために、いつまでも若々しく元気な顔でありたいと思うのだ。もう1つは、それによって周囲からの扱いが変わってきたりするからである。若い女はチヤホヤされ、逆に年増は三段オチの三段目にされた上、それを「ヤダ~もう! キンタマもいじゃうぞ! 」と笑って流すのが、正しい職場のババアの姿である、という世界観のもとで生きていかなければならないとしたら、処女の生き血をジャブジャブ浴びてでも若くありたいと思ってしまうだろう。日本は未だに、その世界観寄りなところがある。若さがもてはやされるとは「年を取ると急激にチヤホヤされなくなる」ということでもある、その恐怖が女を処女狩りに走らせるのである。しかし、私は昔、ブスについて研究した自著の中で「ブスは加齢に強い」という話をしたような気がする。ただ、読んだ人間の記憶に残らないのはもちろん、書いた人間の記憶にも残っていないので定かではない。若ければ全員チヤホヤされるわけではない、若くても全く神輿に乗せてもらえない女は存在する、ソースは私だ。よく年を取って「美貌が衰えた」などと言うが、衰える美貌がそもそもない人間だっているのである。そういうタイプは、年を取っても失う美貌もチヤホヤもないため「30を超えてから、周りの対応が急に冷たくなくなった」などと感じることはないだろう。むしろ「30代も20代と変わらず塩、そして40代になってもおそらく塩」なのだ。それがわかっているため「加齢に対する過剰な恐怖」がないのである。美人は失う物が多くて大変デブスなあ、という話だが、加齢によってなくなるチヤホヤなどそんなに惜しむ必要はない。年を取ってチヤホヤがなくなったのは「若さ、一点のみを評価していた勢」が消えたと考えるべきである。逆に言えば、今後評価してくれる人は「若さ」とかいう誰もが一度は持てる物ではなく「君は上手投げの型がすごくキレイだね」など、能力や内面を評価してくれている、とも言える。年を取り、周りの態度が変わることで自分を「オワコン」と感じてしまう場合もあるかもしれない。ただむやみに落ち込み、無理に若さに執着するよりは、「ワンチャン狙われる若い女」という性消費コンテンツとしても終われたのだ、と前向きに考えてみてはどうだろうか。■ワ行【ワ】➤「若作り」(わかづくり)…美容意識が低い中年ほど「中学生みたいな格好で外に出る」といった超若作りをしてしまう【ヲ】➤「ヲタクに恋は難しい」(をたくにこいはむずかしい)…映画版にオタクが軒並み激怒したため「やっぱりオタクは面倒くさい」という偏見を強調することになった、と言われているが、偏見ではなく本当に面倒くさい【ン】➤「ンジャメナ」(んじゃめな)…恒例の「無理やり」としか言いようのない「ん」。今回はアフリカの地名です。お納めください**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。★オフィシャルサイト★Twitter
2020年04月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第54回アクマの辞典ラ行【ル】➤「ルッキズム」(るっきずむ)今回のテーマはラ行から「ルックス(ルッキズム)」だ。コンプラが重要視される現代。意識の高い国では、他人を容姿でからかったり、見た目で差別したりするなんて、もはや原始人のやることであり、ウケるどころか、そんな北京原人はわが社にいらないとさえ言われてしまう。しかし私は、その昔「ブスの本懐」という本を出したことがある。「ブス」なんて「1秒でも早く燃えたい」という自短炎上目的以外、言わないほうが良い言葉である。幸い拙作は、内容があまりにもなさ過ぎたため燃えるところにすら行けなかったのだが、今ならタイトルだけで「ジャケ燃え」できるかもしれない。確かに、全く良い言葉ではないので、見るだけで不快という人がいるのもわかる。そんな攻撃的な言葉を使わずとも「攻めたデザイン」「プロ向け」「時代が追いついていない顔」など、ポジティブな表現はいくらでもできる。しかし「見た目で判断するのは良くない」と頭でわかっていても、われわれ人間は他のお動物様より能力が劣っているため、基本的に判断を「視覚」に頼り切って生きざるを得ないのだ。他のお動物様方なら臭いや鳴き声、ブチャラティなら相手の頬を舐めるなどして、相手が嘘をついているかなどを判断できるが、人間は下等生物なのでそれができない。よって人間のこともとりあえず見た目で判断するしかないのである。だが、この「見た目で判断する」というのは、時に必要なことだ。子どもに「人間は見た目じゃない」と言いながら「怪しい人には近づくな」とも言っているだろう。この「怪しい」というのは明らかに見た目のことを言っている「見た目が何かヤバいヤツには近づくな」ということだ。もちろん、見た目は紳士、中身はゴリゴリのロリコン、という御仁も多くいるので、それで全て判断できるわけではないが、ヤバい見た目の人がマジでヤバいケースももちろんある。「見た目で判断することにより回避できる危機もある」ということだ。「人は見た目じゃない」と言って、全裸に青龍刀、という武器にだけ金をかけすぎたアバターみたいな人に積極的に声をかけていたら命がいくつあっても足りない。見た目で判断することも大事、つまり「見た目も大事」ということである。ただ、ここで大切にすべき「見た目」というのは「パンツを履いている」「洗った服を着ている」「3日以内に風呂に入った痕跡がある髪」などの社会的見た目のほうである。生まれつきの顔の設計やデザイン、耐震強度を見て「基準以下だから不採用」と容姿が関係ない場でビジュアル差別するのは、やはり「㈱北京原人」の人間がやることである。逆に言えば、風呂に入って洗濯された服を着るだけで避けられるマイナス査定があるということだ。見た目で判断するなんてバカらしいと思うなら、逆に「清潔感」という見た目にこだわったほうが良いということだ。ちなみに恋愛対象として「顔が良い人が好き」「ブサイクとは付き合いたくない」というのは差別ではない。これはただの個人の好みの問題であり「無職はちょっと」というのと同じである。つまり、大変遺憾ながら「顔がいい人間がモテる」という現象に不当性はない、ということである。■ラ行【ラ】➤「ランジェリー」(らんじぇりー)…キャラクターパンツは「元カノからのプレゼント」と決めつけられるので履かないほうがいい【リ】➤「リモートワーク」(りもーとわーく)…ただの仕事持ち帰りなら平時でもやっている【ル】➤「ルッキズム」(るっきずむ)…中身を見られたらもっと困るのでむしろ見た目で判断してほしい【レ】➤「令和婚」(れいわこん)…令和離婚のほうが再スタートという意味で正しい【ロ】➤「ロック画面」(ろっくがめん)…ここが無難なヤツほど中身がヤバい**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2020年03月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第53回アクマの辞典ヤ行【ヤ】➤「病みアピール」(やみあぴーる)今回のテーマはヤ行から「病みアピール」である。病(ビョウ)には二種類ある、肉体的なものと精神的なもの、そして同じクリアファイルを10枚以上買ってしまうオタクだ。肉体的な病(ビョウ)というのは、精神的なものに比べれば、わかりやすいし、心配もされやすい。骨折している人に「このわざとらしい松葉づえ!」と井之頭五郎の顔で言うヤツがいたら、そっちのほうが何らかの病(ビョウ)に罹っている。しかし、精神的なほうは見た目ではわかりづらく、理解もされにくい、心配どころか「メンヘラ」と揶揄され、ただの面倒くさいヤツ扱いされることさえある。病(ビョウ)が理解されないのは由々しきことである。しかし病(ビョウ)でもないのに、病(ビョウ)みアピールをする面倒くさいヤツが実在するのも事実だ。そういうタイプがなぜ病みアピールをするか、というと、よく言われている通り、人の気を引くためである場合が多い。よって「かまってちゃん」と呼ばれることもある。しかし、かまって氏が求めるかまわれ方は、的確なアドバイス、間違っても厳しいご意見などではない。彼女たちが求めるのは、己から無限に繰り出される「でも」「だって」を全て笑顔で受けきる合気道の達人、そして「私のこと嫌いになったでしょ?」に永遠に「好きに決まってんだろ」と言ってくれる語彙少な目な人間だ。病みアピールをする人とはつまり、他人からの関心がないと不安になるタイプであり、その気の引き方が「心配させること」なのである。どれだけ励ましてもネガティブなことしか言わず、黙ったかと思えば、本文なしで大量の錠剤の写真が送られてきたりするので、結局「面倒くさい」ということになり、人が離れやすくなってしまう。しかし、なぜ世の中にかまって氏が存在するかというと必ず「かまう氏」がいるからである。「マジ…ムリ…リスカしょ…」というつぶやきにリプ0件、いいね1件だったら、二度とそんな投稿はしないし、もちろんリスカもしない。「病みアピールでかまわれた」という成功体験があるから、何度でもアピるのである。人の関心を求めるタイプは、他人を強く必要としているということだ。求めれば「お?俺の出番か?」とベンチコートを脱ぎだすヤツの一人や二人現れるものなのである。よって、他人を全く必要としていない人間より、むしろこっちのタイプのほうがモテてしまう。しかしベンチから出てくるのは、包容力のある男ではなく「こういう女に優しくすればすぐヤレる、という成功体験を得ているおじさん」かもしれないのだ。誰しも、人にかまわれたい、認められたいと思う時はある。しかし「溺れる者はクソリプおじさんにも抱かれる」という。そのたびに誰でもいいから抱きしめてと叫ぶのは非常に危険だ。孤独にさいなまれた時、平成初期の同人便箋でよく見た、自分で自分を抱きしめる「己抱き」のポーズをとることで気持ちを落ち着かせられるよう、日ごろから訓練しておこう。■ヤ行【ヤ】➤「病みアピール」(やみあぴーる)…SNSで繰り返すたびに周囲の人間の質が落ちる逆ふるい【ヰ】➤「ヰトゲンシュタイン」(ゐとげんしゅたいん)…ドイツにある姓それ以上言うことがない【ユ】➤「指毛」(ゆびげ)…第二関節から上に生えていると逆にモテる【ヱ】➤「酔い泣き」(ゑいなき)…本物の泣き上戸と、酔って泣き言を言ったらちやほやしてもらえた体験が死ぬまで忘れられないタイプに分かれる【ヨ】➤「米津玄師」(よねづけんし)…推しカプのイメソンを歌ってくれる人としてオタクにも人気**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2020年03月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第52回アクマの辞典ハ行【フ】➤「不機嫌」(ふきげん)ゲーム「龍が如くシリーズ」には赤ちゃんプレイ好きのヤクザがオムツ姿で出てくる。帰るな、今からすごく大事な話が始まる。登場した時はただの変態という位置づけだったが、最新作ではついに「子どもが生まれてから妻が冷たくなった」と嘆く、男に子育ての大変さを説く存在にまでなっている。保母役の嬢曰く「夜泣きをされても、どうしたら泣き止むのか、どうして泣いているのかさえもわからない」のだそうだ。理不尽ですらある、しかしそれが赤ん坊というものであり、それを育てることがいかに大変かということがよくわかる。最初、坊主頭の強面がオムツ姿で「バブー!」と現れた時は、こんな重要なことを伝える役になるとは夢にも思わなかった。しかし、世の中には赤ちゃんでもないくせに、このような理不尽をやってのける人間もいる。今回のテーマは、は行から「不機嫌」だ。人間、生きていれば不機嫌な時もある。むしろこのストレス社会、機嫌がいい時のほうが☆5のSSレアかもしれない。しかし、大人になったら、どれだけ心のオムツがビショ濡れでも、他人の前では「股間の通気性抜群」という顔をしなければならない。そして一人になってから、ファミチキなどを食って心のオムツを取り換える「自分の機嫌は自分で取る」行為をしていかなければいけないのだ。それにもかかわらず、プレイ料金を払っているわけでもないのに、未だにオムツを他人に取り換えてもらおうとする人間がいる。会社などでも、不機嫌を全く隠さないのに、どうして不機嫌なのか全く説明しない、まさに夜泣きしている赤ちゃんみたいなのが一人はいるのではないだろうか。赤ちゃんでも正直ストレスなのに、大人であればそのウザさは計り知れず、職場の空気は極めて悪くなる。それが上司だったりしたら、周囲は「赤ちゃんプレイの保母嬢」という、求人票に書いてない業務をしなければならなくなってしまう。もちろん、恋人や家族間でもこの「赤ちゃん」は現れる。むしろ、恋人や家族ほど甘えが強くなるので、赤ちゃん出現率が高い。なぜ怒っているのか説明せず、不機嫌アピールをして、相手に機嫌を取らせようとする行為自体が恋人同士の「プレイ」とも言える。だが、この不機嫌赤ちゃんプレイばかり続けるのは自分のためにもならない。怒っている理由を説明せず、ただ謝らせたり機嫌を取らせたりして終わりにすれば、相手はまた同じことをするからである。説明責任を放棄して、ただ「アバー」とおムズがっているだけでは、相手は「これをすれば怒る」ということを学べないままなのだ。乳幼児とお母さんのまま関係性が成長しないのである。最近、ツイッターなどには怒っている人ばかりで、昔の飯と猫とIQ3の下ネタしかなかったころが懐かしいという声も耳にする。しかし、怒りをはっきり表明しなければ何も変わらないという面もあるので、それはそれで必要なことだとは思う。赤ちゃんだって成長して、いつかは自分の要求を言葉で伝えるようになるのだ。恋人同士の赤ちゃんプレイも1年ぐらいで卒業して、後は言語でコミュニケーションを取るべきだろう。■ハ行【ハ】➤「初恋」(はつこい)…一番キレイなのを初恋にしがち、ノーカンにされた初恋が2~3個ある【ヒ】➤「冷え性」(ひえしょう)…すぐに「僕が温めてあげようか? ナンチャッテσ(^_^;)」とLINEが送れないようでは一人前のおじさんとは言えない【フ】➤「不機嫌」(ふきげん)…若いころは機嫌をとってもらえても、そのうち居酒屋の隅に放置されるようになる【ヘ】➤「ヘイシリ」(へいしり)…シリと二人きりじゃない時に言える人間は稀【ホ】➤「包容力」(ほうようりょく)…ただ「丈夫」と思われている節がある**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2020年02月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第51回アクマの辞典マ行【メ】➤「目が合う」(めがあう)今回のテーマはマ行から「目が合う」だ。昔「目と目で通じ合う」というような歌もあった。知らない? あの『闇金ウシジマくん』1巻で、風俗に沈められて妖怪人間ベラみたいになったOLが歌ってたやつだよ、と力説しても仕方ないのだが、目が合うことで始まる恋もあるらしい。一度目が合っただけで「俺に気がある」などと思うようなヤツは完全に危険人物なのでGPSを埋め込むべきだと思うが、俺に気があるのではと思うことで、逆に相手のことが気になり、いつの間にか好きになっている、ということもあるようだ。しかし、元来人間は、自分の見たいものを見ようとする生き物である。コンサートでアイドルがアリーナ2階席に視線を向けたら150人ぐらいが「自分を見た」と感じるだろうし、推しカプが同じコマにいたら「付き合っている」ように見えるのだ。よって「よく目が合う」というのも、既に相手に好意を持っているがゆえの錯覚である場合も多い。そもそも、よく目が合うのは、自分も相手をよく見ているからなのだ。もしくは、自分か相手が「後頭部に目がある系女子」の時だけである。たかが「目が合う・合わない」で、恋愛にまで発展するものかと疑問が生じるかもしれない。しかし、何とも思ってなかった人が夢に出てきたり、好きなガンダムが自分と同じGだったりしただけで相手のことが気になりだすように、人間は割とちょっとしたことで相手に興味を持つものなのだ。相手の気を引くために、頻繁に目を合わせる、というテクニックがないこともないだろう。それに「目を合わせない」というのは、常にコミュ症あるあるランキングのトップに食い込んでくる条件である。コミュ症あるある全部当てるまで帰れま10でも大体最初に出てくる。ちなみに当てづらいのが「『フヒっ』ではなく、よく聞いたら『ンフっ』が多い」だ。つまり、コミュニケーションにおいて「目を合わせる」ことが重要であることは否定できない。逆に言えば、コミュ症と目が合うようになったら相手はかなり自分に心を開いている、もしくは相手が「目を合わせたまま完全に心を手放す術」を習得したかである。そういう相手にムリに視線を合わせようとしてはいけない「コミュ強がマウントをとってきている」としか思われないので、ますます閉じてしまう。野生動物がいきなり人間の手から餌を食ってくれないのと同じだ、まずは100メートルぐらい離れるか、壁を3枚ぐらい隔てて目を合わせることから始めよう。なぜコミュ症が人と目を合わせないかというと、恥ずかしい、緊張する、怖い、など様々理由もあるが、じっと見られることにより悪事を見透かされそうで嫌というのもある。これは、コミュ症が全員時効待ちの連続殺人犯というわけではない。特に悪い事もしていないのに、交番の前で早足になってしまうように、コミュ症やネガティブな人間は「見られる」=「悪いところを見られる」と思ってしまうのだ。よって目を合わせたり、見つめたりすることで相手の気を引く方法というのは、それなりにポジティブで自分に自信のある人間にしか通用しない。ネガティブな人間を見つめても「格好がダサいと思われている」「そんなに俺がPIKOを着ているのがおもしろいか」という被害妄想を爆発させてしまうだけだ。郷に入れば郷に従えだ、もしコミュ症の気を引きたいという奇特な方がいたら、まず目を全く合わさずに会話するところから始めよう。そうすれば「珍しく話しやすい人に会った」と思われるだろう。■マ行【マ】➤「マクラ営業」(まくらえいぎょう)…すぐ相手がSNSに書くので減ったらしい【ミ】➤「見合い結婚」(みあいけっこん)…そのうちマッチング結婚と言われるかもしれない【ム】➤「無人島」(むじんとう)…「無人島に持って行くなら何?」という質問、「宝くじ当たったら…」に次ぐ虚無【メ】➤「目が合う」(めがあう)…コミュ症は大体、襟あたりを見ているので、胸元が開いていない服を着て来てくれるとありがたい【モ】➤「モブキャラ」(もぶきゃら)…モブおじさんのように主役と絡めるモブもいるので希望を捨ててはいけない**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2020年02月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第50回アクマの辞典ナ行【ニ】➤「肉じゃが」(にくじゃが)今回のテーマは、ナ行から「肉じゃが」だ。それとは直接関係ないのだが、先日テレビでローカル番組を見ていたところ、どこかの市町村が「イクメン表彰式」をした、というニュースが流れてきた。その地域で育児を頑張っている男性に表彰状を送ったのだという。てっきり壇上に上がっている男性たちは、赤の他人の子供の世話を無償で頑張ったに違いない、それは偉い、表彰状の一つや二つくれてやるべきだろう、と思ったのだが、どうやら頑張ったのは「自分の子供の育児」のようである。つまり、当たり前のことをしているだけなのに「偉い」と表彰状を貰っているのだ。これは我が地域、納得の過疎化、限界集落待ったなしと言ったところである。おそらく、妻のほうも同じぐらい育児をしているだろうに、表彰されるのは男だけだという。父親の育児が表彰されるなら、我々全員「息してる」という理由で金一封を貰っていいはずである。なぜ男が、己の子供を育てただけで讃えられるのかというと、今でも「育てないヤツ」のほうが多いからだ。つまり「珍しい」という理由で褒められているのだ。希少価値で褒めるなら、もっとイリオモテおキャット様や、マヌルおキャット様とかを讃えるべきだろう。それと同じように「料理ができる男」も、未だに「すごーい」と合コンに住んでるサーバルちゃんに褒められていたりする。「得意」とかいうレベルではなく「できる」だけで褒められる対象なのだ。片や女は「料理ができる」というのは、それこそ「息ができる」と同じぐらいできて当たり前と思われているので「毎日人間が食えるものを作っている」という偉業を成し遂げていても、全く褒められない。だが昔から、男は胃袋と玉袋をつかめ、お袋(おふくろ)はこっそり殺せ、と言うように「料理上手」は現在でも女のチャームポイントの一つとされている。そして「肉じゃが」というのは、男が喜ぶ料理の鉄板と言われていた。なにゆえ「肉じゃが」なのかは諸説ある。もちろん芋と肉が甘辛く煮てあれば、誰でも泣いて喜ぶに決まっているのだが、それに加え「肉じゃが」が「おふくろの味」という人が多かったからではないか、とも言われている。今では、おふくろの味もハンバーグやグラタン、ハッピーセットなど多様化しているので、肉じゃがはすでに男ウケメニューとは言えなくなっているのかもしれない。料理上手をセールスポイントにするのは悪くない。飯というのはマストなため、それが毎日致命的に不味いと、すぐに精神に異常をきたすので美味いに越したことはない。しかし、料理ができない女がダメというわけでもない。ひと昔前まで「嫁がメシマズで」というと、嫁のほうが悪く、夫は同情される側であった。だが、今ではもう「じゃあ、なんで自分で作らないの」と言われてもおかしくない。料理ができないなら他のできることを担当すれば良い。仕事も家事も、得意な人がやるほうが効率も良くなるに決まっているのだ。性別で役割を決めて、ムリヤリ苦手なことをさせるから、メシマズ女や甲斐性なし男という悲しきモンスターが爆誕するのである。■ナ行【ナ】➤「涙袋」(なみだぶくろ)…たまに目よりでかくなっていることに気付いてない人がいる【ニ】➤「肉じゃが」(にくじゃが)…好みのタイプ「家庭的」「肉じゃが をおいしく作れる人」は「処女一択」と同じレベルの地雷になりつつある【ヌ】➤「濡れ髪」(ぬれがみ)…見るだけならセクシーだが、髪を拭かずにウロウロするヤツとは結婚しないほうがいい【ネ】➤「ネット婚活」(ねっとこんかつ)…ネットで出会った人なんて、というが現実で出会うヤツも結構ろくでもない【ノ】➤「ノーメーク」(のーめーく)…化粧動画は、いかにノーメーク状態がブスか、にかかっている**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2020年01月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第49回アクマの辞典タ行【チ】➤「遅刻癖」(ちこくへき)今回のはタ行から「遅刻癖」である。まず、この原稿が締切りを3日過ぎている。だが私はこれでも編集者から「締め切りを守るほう」と言われているのだ。それ以外褒めるところがないので消去法で言っているのかもしれないが、裏を返せば、他の作家がいかに締め切りを守っていないか、という話である。どのぐらい守っていないか、というと私が聞いた最長は「半年」だ。しかしこの業界の特殊なところは、人気作家、作品であれば、出版社も読者も半年どころか18年ぐらい待ち続けてしまうという点である。しかも、ようやくやって来た時のコメントは「遅えよ」ではなく「ありがとう」なのだ。だが、これは本当に特殊な世界で、さらに選ばれた者のみが持つ異能力である。赤子が絶対夜泣きしないベビーベッドがあったとしても、納期を18年も遅らせるようでは商売にならない。確かに夜泣きは18歳どころか40近くなった今でもするのだが、さすがに体のサイズが合わないだろう。このように「時間を守らない」というのは、ほとんどの仕事で致命的なのである。いくら他の仕事ができても、遅刻癖があったり納期が守れなかったりすると全てが台無しなのだ。そういう人は作家のように「全員守らない」世界に行くことをお勧めする。恋愛面でも、遅刻というのは大きなマイナスである。デートに遅刻してくることの何がマイナスかというと、遅れてきたことよりも「軽んじられている」という印象を相手に与える点だ。誰だって、石原さとみとのデートだったら、遅刻などしないだろう。むしろ3日前から待っても遅いぐらいだ。つまり、初デートで遅刻をするというのは、“ディナーの店がサイゼリア”よりも明確に「自分に気がない」と思われてしまうのだ。本当に気がなくても、時間を守らないのは人間的信用も落とすため、遅刻はサイゼリアのハイグレード版と言って良い。また遅刻というのは、相手を軽んじているだけでなく「このぐらい遅刻しても相手は待つし、怒りもしない、なぜなら俺のことが好きだから」という、何様感の演出にも一躍買っている。逆に言うと、相手がいつもデートに遅刻するという場合は、相手に軽く見られているか、何をしても怒らないと思われている可能性が高いだろう。だが、決して相手を軽視しているわけではないが、遅刻してくる人というのもいる。「待ったら死ぬ病患者」はそれにあたる。世の中には生まれつき1分待つごとに寿命が1年縮むという、病(ビョウ)に罹っているものがいるのだ。待ち合わせでも待ちたくないため、「ちょっと遅れていく」という行動を取りがちなのだ。このタイプは、3時間など派手な遅刻はしない、毎回きっかり5分遅刻してくるなど、むしろ誰よりも時間を守った遅れ方をしてくる。病(ビョウ)なので、自信過剰系の遅刻魔よりある意味矯正が難しい。これはもう難病のパートナーを支えていると思って我慢するしかないだろう。また先天的特性上、どうしても遅刻してしまうという人もいるので、頭ごなしに怒るのではなく、一緒に原因を究明してあげることも必要だ遅刻というと軽く聞こえるが「約束を守る」というのは、信用問題であり、相手へのリスペクトの表れでもある。これから付き合いたい、長く付き合いたいという相手にはするべきではないだろう。もしくは、1時間とかぬるい遅刻はせず18年待たせたほうが良い。そうすれば相手は怒りなど超えて「来てくれてありがとう」という感謝と感動に変わっているはずだ。■タ行【タ】➤「タイミング」(たいみんぐ)…運の次に失敗責任をなすりつけられている存在【チ】➤「遅刻癖」(ちこくへき)…じっとしていられないので予定を入れまくり、それがちょっとずつズレることで遅刻するというヤツもいたので理由は様々【ツ】➤「妻スタグラム」(つますたぐらむ)…他人の写真をネットに載せる以上、俺スタグラムも並行してやるのが平等だと思う【テ】➤「てへぺろ」(てへぺろ)…「殴ってください」という意味【ト】➤「トリセツ」(とりせつ)…カナさんが激怒する男を見ながらワインを飲むために作った曲**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2020年01月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第48回アクマの辞典サ行【ス】➤「好きのサイン」(すきのさいん)今回のテーマはサ行から「好きのサイン」である。結論から言うとこういった「サイン文化」はあまりよろしくない。人差し指と中指の間に親指を握りこむとか、親指と人差し指で作った輪っかに、もう片方の人差し指をぶっ刺すとか、単純明快でわかりやすいサインならよい。しかし「部屋に来たということはOK」「スカートをはいて来たからヤッてよい」など、相手が全く出してないサインを勝手に受信するのは犯罪のもとである。逆に「察して」ではなく、ちゃんと言葉で伝える習慣もつけなければいけない。何事もサインではなく明確な意思表示が大事なのだ。しかし「やらないか」「スケベしようや」と、なかなか言葉で言えないのが我々である。サインを読んだり読ませたりする文化は今後も続くだろう。「好きのサイン」が使われるのはどんな時であろうか。時に我々は、どんなに魅力的でも「無理め」な相手より「イケそう」な相手を選んでしまうことがある。これは致し方ない。素人がエベレストに挑んで遭難死したら「無謀」と呆れられ「高尾山にしておけば…」と言われるだろう、それと同じだ。山は無難なのにしとけという癖に、恋愛は死を覚悟で過酷なエベレスト級の相手に挑むべき、というのはおかしい。そして「イケそう」かどうかを判断する材料が、相手が自分に「好きのサイン」を発しているかどうかである。また、自分からは告りたくない時に「好きのサイン」を発して、相手から告らせようという時にも使う。この「好きのサイン」の出し方だが、昔であれば、でかいネズミを捕まえて来たり、相手の前で石を遠くに投げたりする 、という方法が取られていたが、今では専ら「LINE」だという。恋愛記事でも「相手の気を引くLINEテク」などの記事をよく見かけるだろう。しかし、LINEでもサインの読み違いは起こる。「LINEを送ると必ず返事が来る」というだけで「イケる」と勘違いしてしまう人間もいるのだ。これはよくネットに晒されている「痛いLINEを送ってくるおじさん」にありがちなことだという。相手が「痛いLINEを送ってくる知らないおじさん」だったら無視できる、それ以前に貴様は誰だ、という話だ。しかし、その「おじさん」というのは、客だったり、上司だったり取引先だったり「立場上無視はできないおじさん」というケースがあるのだ。よって、たとえ嫌でも返事だけは返すため、おじさんはそれを「好きのサイン」と勘違いし、「ちゃんづけしてくる」「下ネタを入れてくる」からの「なんちゃって」とエスカレートしていってしまう。つまり、おじさんに限らず「返事が必ず返ってくる」だけで「イケる」と思うのは事故のもとだ。せめて相手のほうから業務連絡以外の「無意味なLINE」が来るようになってから、登る準備を始めたほうがよい。ネットで自分の出したLINEが晒されているのを発見したくはないだろう。■サ行【サ】➤「サプライズ」(さぷらいず)…フラッシュモブプロポーズを断られてびっくりすること【シ】➤「塩顔」(しおがお)…さっぱり系の美形、それ以外は「モブ」と呼ばれる【ス】➤「好きのサイン」(すきのさいん)…「気づいてくれない」ではなく「無視されている」可能性も考えよう【セ】➤「整形美人」(せいけいびじん)…整形は嫌と言う癖に「天然ブス」も嫌だと言う【ソ】➤「ソウルメイト」(そうるめいと)…「うちらソウルメイトじゃん?」は「絶対お前とは付き合わない」の意**************************プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年12月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第47回アクマの辞典カ行【ケ】➤「倦怠期」(けんたいき)今回のテーマはか行から「倦怠期」だ。倦怠期とは、セックスさえしていれば二人の時間はあっという間という頃を過ぎ、やっと相手の全体像が見えるようになって「あれ、こいつこんなエロ大根みたいな形してたっけ?」と思う時期である。大体、付き合いたての頃というのは、ときめきで目が眩んでいるので、視力が0.03、視野が2度ぐらいしかなく、相手の良いところしか見えず、悪いところはぼやけて見える。その霧がだんだん晴れて、当初から薄々気になっていた違和感が浮き彫りになり始めるのが、付き合いだして3ヶ月頃だと言う。それに加えて「飽き」や「慣れ」も起こっているため、ここで最初の「こいつのこと本当に好きなのか」「このまま付き合って良いのか」のシンキングタイムが始まるという。「どう見ても働いてない」「とても殴ってくる」「独身と言っているが子連れ」「犬だ」などの、でかすぎる違和感は3日ぐらいで気づくはずだ。気づくのに3ヶ月かかる違和感というのは「別れる決定打になるほどの違和感」でないことが多いため、逆に悩ましいとも言える。完璧な人間などいない、大体完璧な相手なら自分と付き合うはずがない、今頃石原さとみと付き合っているだろう。むしろ、自分と付き合っている時点で「見る目がない」という欠点があるのは明らかではないか。よって、ある程度、我慢も妥協も必要である。しかし、その違和感が“今は許せても、今後絶対許せなくなる”というような「悪性」のものだったとしたら、病気と同じで、時間が経てば経つほど良くなるどころか病状が悪化していくだろう。さらに、時が過ぎるほど別れるのも難しくなっていく。初期症状のうちに「別れ」という名の根絶治療をしたほうが良い場合もあるのだ。このように、相手への違和感に気づいた場合は、それが良性か悪性かの見極めが重要になる。だが、倦怠期には「相手に不満があるわけではないが、ときめきもない」という状況も含む。このような倦怠期の解消については、すでにベストアンサーが出ている。「相手を変える」ことだ。どれだけマヨネーズやトリュフ塩で味変しても、カレーはカレーであり、「カレー味のウンコに変える」以上の抜本的改革にはならないのだ。それを承知の上で、味変でなんとかやり過ごしていくのが、長く交際することであり、もう味変すらすることなく同じものを食い続けるのが結婚だ。ここで、我慢できずに、家にカレーがあるのに、こっそりウンコを食いに行ってしまったりするタイプは、一人の相手と長く付き合うこと自体に向いていない。そう言うと、一人の相手と長く付き合ったり、結婚したりすることは、味気なくつまらないことのように思えるかもしれないが、飽きを超えると「食い飽きたが、これさえ食っていれば死なないし、腹は壊さない」という「安心感」や「信頼感」に変わったりもする。ときめきや、刺激は、長く付き合えば、確実に失われていく。だが、その分「寝ゲロを一緒に掃除してくれる相手」など、得ているものもあるはずなのだ。【カ】➤「隠れメンヘラ」(かくれめんへら)…最近は、逆に「見せるメンヘラ」というファッションがある【キ】➤「筋肉フェチ」(きんにくふぇち)…よく聞くと「痩せすぎで筋肉が浮き出ている細身の男が好き」だったりする【ク】➤「口説き文句」(くどきもんく)…「猫見にくる?」と言われたら、断れる自信がない【ケ】➤「倦怠期」(けんたいき)…感じているのが「飽き」なのか「嫌悪」なのかが重要【コ】➤「婚活」(こんかつ)…ベテランになるほどダメ、という珍しい業界プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年12月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第46回アクマの辞典ア行【エ】➤「映画デート」(えいがでーと)今回のテーマはあ行から「映画デート」だ。私の住んでいるような村で、交際1年以上のカップルが行くところと言ったら、カラオケ、ネカフェ、ラブホテルのフリータイムぐらいしかない。つまり、簡易ラブホに行くか、ラブホに行くかの二択になるのだが、そんなただれたカップルにとって「映画」というのは比較的、健康的なデートである。しかし、映画がカップルにとって決定的な破局原因につながることもある。選んだ映画が「巨乳ドラゴン温泉ゾンビVSストリッパー5」だったから、というわけではない。上映中、やたらしゃべりかけてきたり、スマホをいじったり、果ては終盤で「ゲッツ!」という着信音を鳴り響かせてくるなど、センスを含めて相手に「ないわ」と思わせる行動が山ほどあるからだ。モラルとマナーの問題であるから、デートにサイゼリヤ云々如きより、よほど速やかに相手を萎えさせることができる。逆に、そういうことさえしなければ、無難なデートとも言えるだろう。だが、もちろん観た映画の内容がその後に無影響というわけではない。今、公開中の映画『ジョーカー』では、上映後どんよりしているカップルが散見されており「むしろそれがジョーカーの見どころ」と言っても過言ではないようだ。このように「デートに向かない映画」というものも存在する。一番向かないのは「鬱になる映画」だ。人間は、これだけ現実に嫌なことしかないのにフィクションでさらに嫌なことをするという変態生物なので、何故か結末がバッドエンドになる「鬱映画」が普通に出回っている。そういうものを事故ってデートで観てしまうと、その後の「夕食後ホテル」という完璧な流れが「そんな気分じゃない」になりかねない。ホテル前の時間つぶしで観た映画でそんなことになったら「痛恨」としか言いようがない。しかも「鬱映画」というジャンルはどこにでも潜んでおり、恋愛映画だからと言って油断できない。『タイタニック』と思って観たら『レボリューショナリー・ロード』だった、という大惨事もあるのだ。次に避けたいのは「よくわからない映画」だ。もはや、つまらないのかどうかさえわからない映画を観てしまった時、人は無口になる。つまり盛り下がってしまい、これもまたホテルが危うい。デートで一番観るべきは当然、おもしろい映画だが、つまらない映画が悪いかと言うと場合による。つまらなすぎると、逆に盛り上がるということもあるからだ。そこでオススメしたいのが映画『デビルマン』だ。この映画を観て、盛り上がれるかどうかで、感性が合うかどうかの12割がわかる。私は『デビルマン』を、デートで初めて観たのだが、鑑賞後、数々のツッコミどころでその相手と話が盛り上がることなく、その後破局した。あの時『デビルマン』のことで話が盛り上がっていたら、私の運命も変わっていたかもしれない。映画『デビルマン』は人の運命を変える最高のデートムービーである。【ア】➤「悪妻」(あくさい)…自称「悪妻」の女は自分のことをデキる嫁と思っている【イ】➤「犬派猫派」(いぬはねこは)…愚かな人間の好みなど、おドッグ様もおキャット様も興味ないと思う【ウ】➤「ウエディングハイ」(うえでぃんぐはい)…巨額の金を使いがちなのでマリッジブルーより結婚生活に影響が出やすい【エ】➤「映画デート」(えいがでーと)…何だかんだで「火薬の量が多いほど偉い」みたいな映画が一番無難【オ】➤「奥手」(おくて)…自分に興味を持ってくれない人間を、奥手や草食系と言いたがるプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年11月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第45回アクマの辞典パ行【ポ】➤「ポジティブ」(ぽじてぃぶ)今回はパ行から「ポジティブ」だ。ひと昔前なら、ポジティブシンキングこそ人類にとって不可欠なものであり「ネガティブは治してポジティブになりましょう」という「ネガティブが病(ビョウ)かよ」という暴論が平気で跋扈していた。だが最近は「ネガティブで何が悪い」という開き直りや「ネガティブこそ良いんだ」という逆張りも珍しくなくなってきた。自分を変えるより、頭をゾウさんに踏まれるなどして、今の自分を認め、好きになるよう意識を変えたほうが、手っ取り早い、ということである。実際ポジティブとネガティブ、どちらが良いかというと「どちらも良い所と悪い所がある」としか言いようがない。おそらく、野生動物などに不用意に近づいてランチになってしまう人というのはポジティブなのではないか、と思う。そういう人間はヒグマに遭っても「ぬいぐるみみたい!」というポジティブシンキングをしてしまううえ「これはバズりまっせ」と事態を前向きに捉えすぎてしまうのだ。さらに「少しぐらい近づいて写真撮っても大丈夫だろう」と楽観的ゆえに軽卒な行動を取ることも多い。その結果ゴールデンカムイ2巻、みたいなことになってしまうのだ。その点ネガティブな人間はヒグマを見た瞬間「死んだ」と、全てを諦め、声一つ出さずに食べられることが可能だ。もちろん、これはネガティブを極めた人間にしかできない偉業であり、少しネガティブなぐらいの人間なら、すぐに危険を察知し逃げる、程度が関の山だが、生存率が高いのはこちらである。このようにネガティブな人間はポジティブな人間に比べ、慎重さはあるのだ。しかし、逆に「常に最悪の事態を想定する」ため、行動力が著しく低いという欠点も持ち合わせている。私がひきこもりなのも、外に出たら、トレーラー、隕石、通り魔、いずれかに当たって死ぬに決まっているからだ。あらゆるリスクヘッジをした結果のひきこもりなのである。その点ポジティブな人間は、行動力やチャレンジ精神は高い。このように一長一短なのだから、どっちが良いわけでも悪いわけでもないのだ。だが、個人は良いとして、パートナーとして一緒にいるとしたら、多くの人は「ポジティブな人のほうが良い」と答えるのではないだろうか。しかし、考えてみてほしい。パートナーが怪しい商材を片手に「絶対儲かるから」とポジティブなことを言い、あなたが何を言っても聞く耳持たず、結果大損しても「これは勉強代!」とさらにポジティブ波状攻撃をされたら「やっぱポジティブな人とつきあって良かった」と思うだろうか。だからと言って、ネガティブな相手に何を言っても「でも」「だって」「そんなの無理」で返されるのも腹が立つだろう。パートナーとして大事なのはポジティブかネガティブかではない。「人の話を聞くか、聞かないか」である。【パ】➤「パジャマ」(ぱじゃま)…パジャマと部屋着の境界線がなくなり、そのうち外出着とも一体化する【ピ】➤「ピンキーリング」(ぴんきーりんぐ)…クリスマス後のメルカリのエース【プ】➤「プーチン」(ぷーちん)…「塩対応」は彼の表情をマスターすることからはじまる【ペ】➤「ペット」(ぺっと)…ペットを飼うと婚期を逃すという人間は、なぜペットより結婚のほうが上と思っているのか【ポ】➤「ポジティブ」(ぽじてぃぶ)…何も考えてない奴をどうしても褒めなければいけない時に使う言葉プロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年11月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第44回アクマの辞典バ行【ベ】➤「ベッドテク」(べっどてく)今回のテーマはバ行から「ベッドテク」だ。若者のセックス離れ、草食化などと言うが、今でも男性誌からベッドテクページが消えることはない。もし本当にセックスに興味を失っているなら、このページはポメラニアンとかの写真になっているはずだ。むしろ女向けのベッドテクについては、情報が増えている。昔から存在してはいたのだろうが、一般誌で「女のお前ら! セックス特集だぞ! 集まれ! 」とやりだしたのは割と最近な気がする。「男に逃げられないようにつかむのは胃袋ではなく玉袋」と言えば語呂は良いが、そこは好みが分かれると思うので、まずは「その上にあるスティック状のもの」をつかみにいくべきだろう。しかし、ベッドテクで男の心をつかめ、と言われると「え~それだと~セフレとかにされちゃうじゃん~」と言葉より語尾のほうが長いんじゃねえの、といったような文句を垂れがちな我々だ。確かに、ベッドテクよりもっと大事なことあるだろ、という気がするが、諸外国から言わせると逆に「日本人はおセックス様を軽視しすぎ」だそうだ。実際、年間セックス回数は、おそらく日本がワースト1だった気がする。何故かというと、日本人は「明日仕事だから」と言ってセックスを控えたりするからだ。もうこの時点で、セックスがお盛んな国の人は「神よ…」とつぶやいて卒倒してしまうレベルだという。何故、楽しくない仕事のために、楽しいおセックス様を諦めなければいけないのか、という話だそうだ。そう言われてみれば、好きな食べ物を差し出されているのに「いや、これから嫌いな食い物を食うから、腹を空かせておかないと」と言って辞退するようなものである。意味がわからない。このように、日本はセックスに興味はあっても優先順位が低いので「ほかに大事なことがある」と何がほかに大事なのかわからぬまま、ベッドテクを学ぶということが後回しにされてきたのかもしれない。確かに女のほうも「観音様や! 」と拝まれるレベルのテクはなくて良いが、男同様、マナーレベルのベッドテクは「でも~セフレに~」などと言わず学んでおくべきだろう。しかし、女が男に求めるマナーと言ったら、避妊してほしい、乱暴にしないでほしい、ワキ毛をチェックする時間を与えろ、などいろいろあるが、男が女に求めるマナーとはなんだろうか。まず思いつくのは「噛まずにお舐めください」という、薬の用法によく書いてあるやつだが、それ以外あまり思いつかない。だが、もしかしたら男は女に「自分でオメガに気づいてほしい」と思っているのではないだろうか。オメガというのは股間が臭い女のことだ。あの部分はワキ同様、体質的にニオイがキツイ場合があるのである。しかし、0.01ミリ、サガミオリジナルレベルでも愛があれば、そんなことを男から女に伝えるのは憚られる。よって「我慢」するしかない。それを本人が気づき、自分で対策してくれたら、これほどありがたいことはない。もちろんこれは私の妄想であり、男が実際どう思っているかはわからない。このようにセックスマナーというのは「言ってくれなきゃわからない」の世界である。直接は言えなくても、どこかで言い続けていれば、いつかおセックス特集様が女に伝えてくれるだろう。【バ】➤「バイブス」(ばいぶす)…パリピにだけ「高まっている」ことを感じられる、謎の単位【ビ】➤「ビフォーアフター」(びふぉーあふたー)…美人にブスメイクをして「ビフォー」だと言っている説がある【ブ】➤「文学系男子」(ぶんがくけいだんし)…メガネをかけているイケメンのことちなみに理系男子はメガネをかけているイケメンのこと【ベ】➤「ベッドテク」(べっどてく)…知らなきゃ人体を破壊しかねないので、最低限知っとくべき【ボ】➤「ボディタッチ」(ぼでぃたっち)…セクハラをなくしたいなら、女のモテテクからもボディタッチを外すべきプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年10月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第42回アクマの辞典ダ行【ダ】➤「だめんず好き」(だめんずずき)今回のテーマはダ行より「だめんず」だ。「だめんず」とは「ダメな男」を指すわけだが、「だめんず」はそれそのものより「そういう男が好きな女」を語る時に出てくることが多い。まず、だめんずの「だめ」とは何がダメかというと、ブサイクとかデブとか、ハゲとか、ハゲなのにまつ毛が長くてその割にスネ毛が薄いとか、そんな文字通り表面上の話ではない。だめんずの定義に外見的ダメさが入ってくることは滅多にない。そう言った意味では公平な世界である。「だめんず」の条件はいろいろあるが、いつの世も不動のトップ3である、イカれたメンバーを紹介するぜ。「DV(モラハラ)野郎」「金銭感覚崩壊太郎」「全身下半身」とても「だめんず」などというかわいい表現では収まりきらない、せめて「堕免豆」と漢字表記して、注意喚起すべきだろう。だが、そういう男とつきあったり結婚してしまったりした女を単純に「見る目がない」「選んだほうも悪い」と責めることはできない。そういう男は、交際や結婚した瞬間「リボーン」する場合も多く、ラーの鏡でも持ってないと見破れない、ということもあるのだ。しかし、普通の女なら「こいつボストロールやんけ」とわかった瞬間に逃げ出したり、倒して経験値を2500くらい手に入れた後は、同じ過ちを繰り返さなかったりするものである。それに対し「だめんず好き」と言われる女は、ボストロールだとわかった後も、正体がバレる前の姿を「本物のカレ」と自分に言い聞かせてつきあい続ける。もしくは正体がわかった上で「こんな緑色の紫ワンショルダー野郎とつきあってあげられるのは私だけ」と思い込んで離れられないのだ。そして別れたとしても、何度も狙って同じ犬のクソを踏むというより、踏み出したところに犬のクソが滑り込んでいるのか、というぐらい、自然に同じタイプとつきあってしまうのである。たまたま、つきあった男がダメだったり、支配されて別れられなくなったりすることは、誰にでもあり得ることだ。しかし、何度も同じようなタイプとつきあってしまうとは何事だろうか。理由としては「だめんずに目をつけられやすい」もしくは「だめんず(とつきあっている自分が)好き」もしくはその両方が挙げられる。自分に自信がない女はだめんずにつけこまれやすく、そして自信がない女はだめんずとつきあっている時だけ「普通の女なら逃げだしている男と私は互角にやりあっているんだ」という「自信」を持てるのではないか。そうだとしたら、別れた時に再び「自信喪失」してしまうので、また自信をつけにいってしまっても不思議ではない。だめんずに3千円渡すくらいなら「プロテイン一袋」買って、とりあえず「肉体的自信」でもつけたほうが良い。DV野郎に殴られても、殴り返せるようになって一石二鳥である。【ダ】➤「だめんず好き」(だめんずずき)…なぜ自慢げに言う女がいるかというと「手に負えない男と私はつきあえてる」という自負があるからだが、手に負えている時点でそんなにダメな男ではない【ヂ】➤「地雷」(じらい/ぢらい)…好きなものより「これが許せない」という話ばかりする人間がいる、もはや好きなのか【ヅ】➤「○○疲れ」(づかれ)…むしろなぜ疲れないのか不思議な生活をしているのがオタク【デ】➤「デート商法」(でーとしょうほう)…ターゲットが若者より、若者と話したい高齢者になりつつある、要注意【ド】➤「鈍感力」(どんかんりょく)…敏感や繊細を自称する人間ほど、他人の痛みへの鈍感力が凄まじいプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年10月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第42回アクマの辞典ザ行【ズ】➤「ズルズル」(ずるずる)今回のテーマはザ行から「ズルズル」だ。人間の人生の3分の1は「睡眠」だと言うが、それよりも長い時間、この「ズルズル」をやっているヤツもいる。物事というのは「はじめる」「つづける」「おわる」で1セットである。私ほどのスゴ腕無職になると「なにもしていない」が一番長くなるのだが、大体の人は上記の流れを繰り返しながら生きていると思う。その中でも「おわる」が苦手な人間は「ズルズル」しやすい。よく、ジムなどに会費だけ払って行かない、という慈善事業に従事している人がいる。普通の人から見れば、もったいないから早く退会すれば良いのにと思うかもしれない。しかし「おわる」が苦手な人間からすると、まず退会を伝えにいく「手間」が面倒、そして退会を伝える「勇気」が出ない。そして「ああ、こいつ続かなかったんだな」と思われるのが嫌という「見栄」がある。それらのコストを考えると退会より会費を払い続けたほうが「安い」と感じてしまうのが「おわれない人」である。おわれない人はとにかく「終わり」をマイナスなことと思っている。よって恋愛もなかなか終わらせることができない。恋愛には、愛情もなければ未来もない、バッグでずっとセックスピストルズが「ノーフュ―チャー ノーフュ―チャー」と歌っているような状況に陥るときがある。そういうときに限って、愛も未来もなければ「別れる理由もない」。つまり真の意味での「虚無」であり、この関係がラブホのポイントカード以外なにも生み出さないのは明白だ。これ以上の時間的損失を出さないために、多くの投資家が「損切り」のサインを出すところである。しかし、おわれない人は未来の時間より「これまで使った時間」が無駄になることを厭う。そして「こいつと別れても、次が見つかる気がしない」など終わることによるデメリットばかりに目を向け、「つきあい続ければ好転の可能性がある」と続けることのメリットを無理にでも作り出そうとする。つまり、終わることにより次が始められる、というポジティブな気持ちになれない、己の未来に悲観的でネガティブな人が「おわれない人」になりがちなのだ。だが、これは短所でしかないとも言い切れないだろう。続けられること自体が才能だし、続けることで上向く可能性もなくはない。それに、次の新しい相手がリアルセックスピストルズ、シド・ヴィシャスからカリスマとセンスを取ったような男で、前の相手のほうが5兆倍マシだった、ということもある。また「はじめる」が苦手な人は慎重だが、慎重すぎると「なにもしてない時間」だけが過ぎ、「慎重なだけの無職」になってしまう。「はじめる」のも「おわる」のも得意だが「つづける」が壊滅的に苦手というのは、ただの「飽きっぽい人」だ。「ときめき」が重要視される恋愛の場合、「ズルズル」は悪いことかもしれないが、結婚となると、良い事もないが悪い事もない状態は「ズルズル」ではなく「安定」と言われたりする。「ズルズルできる関係」というのも決して悪い事ではないのだ。【ザ】➤「残念男子」(ざんねんだんし)…他人に「残念」「惜しい」と言われるのは、告ってないのにフラれるに等しい【ジ】➤「ジェンダーレス男子」(じぇんだーれすだんし)…指毛や腕毛が生えていてもガタガタ言われない「ジェンダーレス女子」も認めてほしい【ズ】➤「ズルズル」(ずるずる)…継続は力なり、主に「忍耐力」がつく【ゼ】➤「前世」(ぜんせ)…前世恋人同士だったより、前世王族とカナブンだったものが、今世結ばれるほうがロマンチック【ゾ】➤「増税」(ぞうぜい)…「増税前に買っとこう浪費」を今すぐやめろプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年09月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第41回アクマの辞典ガ行【グ】➤「偶然(運命)の出会い」(ぐうぜんのであい)今回のテーマはガ行から「偶然の出会い」だ。日本には根強い「天然信仰」がある。養殖より天然、どんな美人でも整形とわかるや否や、皆「これは偽物ですよ」と美味しんぼの山岡の顔になる。よって「出会い」も天然、つまり自然なほうがよいとされてきた。ベストなのは、学校や職場などの出会うことが一番の目的ではないコミュニティでの出会いである。それに対し「インターネットで知り合った」というのは、私たち世代では養殖の出会いであり、結婚式などでは「(出会い系の)紹介で知り合った二人」と、そこは省略されることが多かった。しかし、そう言った自然な出会い、つまり偶然の出会いにこだわり過ぎると、針に何も引っかからないまま、人生の日が暮れてしまう、というリスクがある。それに「偶然の出会い」と言っても、実は必然要素もあるのだ。魅力的な人間であれば、周りが勝手に「これは運命(偶然)の出会い」と感じて近づいてくるので「偶然発生率」が高くなる。だが、そうでない人間だと、自分が「ペロッ!これは運命!」と思わなければ、偶然の出会いは発生しないし、自分はそう思っていても相手は「この合コンが終わったら二度と会うことはないだろう」という別の運命を感じている可能性もある。偶然の出会いを発生させるにも成立させるにも、それなりの魅力が必要なのである。あまりそれがない人間は、「偶然の出会いが起こるのをひたすら待つ」のみで時間ばかりが過ぎ去っていき「お客さんそろそろ閉店時間なんで」と言われてしまうだけなのだ。偶然の出会いが勝手に起こらない人間が偶然を起こそうと思ったら、出会いがありそうな場に積極的に出向き、進んでコミュニケーションをとる。偶然発生率を高める努力が必要となってくるのだ。つまりやる気と行動である。しかし最近は、そういったやる気と行動力があるなら「出会いに繋がるかもしれない人と出会えるかもしれない場」のような「友達のいとこの夫の愛人である義父」のごとき遠い場所で無駄撃ちするより「出会いを求めている人が集まる場」で的確に狙ったほうがよいだろう、という風潮が強まってきている。つまり、本気で出会いたければ、むしろ早めに信用のおける出会いアプリや結婚相談所などの、ネットや業者を挟めということである。確かに、職場のような「自然な出会いの場」にだって、妻子持ちなのに恋愛しようとする人間は潜んでいるものである。自然な出会いの場のほうが、養殖場より魚の質がよい、なんてことはないのだ。そして、天然物より美味い養殖物はいくらでもある。よい出会いを求めるなら、逆に漁場にはこだわらないほうがよいだろう。【ガ】➤「学歴」(がくれき)…これと年収の落差がひどいと、ないほうがマシなぐらいモテない【ギ】➤「義父母」(ぎふぼ)…夫ガチャで引くと強制的に引かなければならないガチャ、1つでも爆死すると死につながる【グ】➤「偶然(運命)の出会い」(ぐうぜんのであい)…ライブで「俺のほう見た」と思うのと同じ、思うことが幸せ【ゲ】➤「下戸」(げこ)…酒が飲めるヤツがやる失態を犯さずに済む、むしろ得な人【ゴ】➤「誤送信」(ごそうしん)…「あえて誤送信」というLINEモテテクがある。お母さんにエロ画像を送ってしまったときも「あえて」と思おうプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年09月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第39回アクマの辞典ワ行【ワ】「割り勘」(わりかん)今回のテーマはワ行から「割り勘」だ。同性同士が集まった場合、そこに石油王でもまざっていない限り、会計はほぼ自動的に割り勘になる。しかし、石油王がまざっていたとしても、実はおごってやる必要などないのだ。石油王だって、誰よりも早くスマホの電卓で1円単位まで割りにかかったり、レジ前で「別々でお願いします!」とコールしても良いのである。このように、女だろうが男だろうが、年が上だろうが金を持っていようが「おごる義務」というのは誰にもないはずなのである、そうじゃないと自分が万が一金を持った時に困る。しかし、その場にいる人間は全員こう言うのである「石油王のくせに」と。そしてその内の半分がツイッターに書くはずだ。このように、おごる義務は誰にもないはずなのに「おごる、おごらない」は定期的にツイッターなどで話題になる、鉄板学級会ネタである。議題に挙がるのは大体「デートでのおごる、おごらない」だ。勢力は主に「デートでおごらない男ってなんなの?」派と「おごられて当然と思ってる女どうなん?」派に分かれる。ちなみに私は「部屋で一人で食うペペロソチーノ最高原理主義過激派」だ。だいぶ薄れてきたものの、未だにデートは「男がおごるもの」という風潮がある。だからこそ、おごられなかった女が「初デートなのにおごってくれなかった、ないわ」などと言う「開戦の詔」をツイッターに書き込み、議会が開廷されてしまうのだ。おごる、おごらないの話だけなら、「男だからといっておごらなければいけないということはない」というのが、ジェンダーフリー社会には相応しいのだろうが、そこに「恋愛」が絡むとそう簡単ではなくなる。単に、おごった、おごらなかっただけではなく、その「真意」を考えてしまうのだ。おごらなかった場合「お前に投資するつもりはない」つまり、つきあいたいとか、ヤリたいと思っているわけではない、と捉えることができる、つまり「脈なし」である。しかし、恋愛対象の女にしかおごらない、ということは「おごることに性的な見返りを求めている」ということでもある。こういうタイプにおごられると逆に厄介なことになるかもしれない。一方で、長く真剣につきあいたいからこそ、最初からおごらないことで「対等な関係」であると表明している、という説もある。それは良いのだが「わかりづれえ…」という欠点がある。なかなかそこまで読み取ってくれる女はいないだろう。また、おごらないことで反応を確認し、その女の“人となり”を見ている、という者もいる。それも、最初から「試し」をいれてくれる男はどうなんだ、という気がする。そこで「合格」したとしても、今後あらゆる面で「試される」ことは容易に想像がつくからだ。そして、おごられた場合も、ただ単におごってくれたのか、自分に気があるのか、もしくはヤりたいのか、などの可能性を考えないといけない。このように、おごられようがおごられまいが、モヤモヤしようと思えばいくらでもできる。つまり、これは「落ちている一円玉」なのだ。落ちている一円玉を拾うと、一円以上のエネルギーを使うから損、というように、おごる、おごられないでモヤること自体、たとえおごられていたとしても赤字なのではないだろうか。どんな高い飯でも最終的にウンコになる。たかだかウンコの素を1回おごられなかったぐらいでモヤる相手とは最初から食事に行かなければ良いのだ。高い飯をおごられるのではなく、他人にガタガタ言わずに自分の金で美味い飯をスカッと食えるのが良い女なのではないか。【ワ】➤「割り勘」(わりかん)公平なようで、酒を飲まない奴が根に持つシステム【ヲ】➤「ヲタ卒」(おたそつ)オタクは病(ビョウ)なので卒業はない、寛解と再発だけがある【ン】➤「んちゃ」(んちゃ)子どもだけでなく、30年前の不思議ちゃんも使ってたのではないかプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年08月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第39回アクマの辞典ラ行【レ】「(セックス)レス」(れす)今回のテーマはラ行より「レス」だ。何がレスかというと「セックス」に決まっているだろう、言わせるな。セックスレスとは、単に個人がセックスしていないという意味ではなく、配偶者や恋人など、セックスしてしかるべき相手がいるはずなのに、長期間セックスしていない状態のことを指す。よって「セックスレス歴=年齢」みたいな使い方は正しくない。一般的に「セックスレス」とは、あまり良くない意味で使われている。「仲が悪いからセックスレスなのだ」もしくは「セックスレスが原因でこれから悪くなる」といったイメージがあるからだ。しかし「円満離婚」などの言葉がまかり通るなら「仲良しセックスレス」も十分通るはずだ。どこを、と言われたら困るが、お互いが「セックスするより犬に顔を舐められていたほうが良い」と思っていれば、それは「円満セックスレス」である。何事も「する」「しない」が問題ではない、そこで意見が割れてしまうのが問題なのだ。よって「深刻なセックスレス問題」とか「セックスレスは不和の原因」などというのは、顔を犬のツバだらけにして仲良くやっているレスカップルを「脅迫している」とも言える。そういうカップルが無理してセックスしても、多分良いことにはならない。セックスだろうが綱引きだろうが、やりたくないことを無理にやっていたら、仲良くなるどころか、悪くなるに決まっているのだ。パートナー間だけではなく、女性誌などの「セックス特集」は評価される一方で、「セックスしないとあっという間に更年期ヒスババアになっちゃうぞ」と、セックスしない女を脅す内容であるといった批判もある。娯楽やコミュニケーションが多岐に渡る現代において、セックスとは、人生をより良くするための選択肢の一つでしかなく、魅力を感じなければ無理に選ぶ必要はない。クリスマスイブはセックスしている人間が一番偉く、1人で明石家サンタを見ているヤツはかわいそう、という発想はすでに前時代的なのだ。人によっては、セックスより優れた明石家サンタがそこにあるのである。だが、片方は猛烈にセックスしたいが、もう片方は痛烈にしたくないといった「セックスレス」は確かに深刻な問題だろう、折衷案が見いだせない場合は「別れ」もやむなしかもしれない。性の不一致で離婚、などと言うと、カップルならともかく、セックスで離婚までするなよ、と言われてしまうかもしれないが「とにかくセックスが一番大事なんだ」というのも個人の大事な価値観である。負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、そしてセックス、相手が何を「それが一番大事」と考えているか、せめて結婚する前に確認しておくべきかもしれない。【ラ】➤「(一緒にいて)楽な人」(らくなひと)…好きなところは一つもないが、この一点だけで別れられないことがある【リ】➤「リバウンド」(りばうんど)…むしろダイエットはリバウンドするための「助走」【ル】➤「ルマンド」(るまんど)…「ブルボン界のセンター」というと、多数の中年から反論の声が上がる【レ】➤「(セックス)レス」(れす)…パートナーに「よそでしてきてよ」と言われても真に受けてはいけない【ロ】➤「ロリータ」(ろりーた)…高齢化社会、90歳で60歳とつきあうのはロリコンになるのだろうかプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年08月05日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第38回アクマの辞典ヤ行今回のテーマはヤ行から「余計な一言」だ。余計な一言とは「逆画竜点睛」。バトル漫画としては最高なのに、作者がサービスのつもりで入れているパンチラシーンが邪魔すぎる、という「それのおかげで全部台無し」というヤツである。「余計な一言」は文字通り、一言でなければいけない。ベラベラと余計なことしか言わないヤツというのは逆に印象に残らないものだ。「立てば菜々緒、座ればガッキー、投げる姿は吉田沙保里」と途中までパーフェクトに褒めておいて、最後に一言「なのになんで嫁にいけないのかな~」でキメるのが正しい余計な一言である。こうすることにより、途中の褒めまで最後の落としを引き立てる「前フリ」でしかなくなり、相手に「すごく嫌なヤツ」と、より強い印象を与えることができるのだ。もちろん恋愛関係でも、余計な一言が発射されて空気がヒリつくことはよくあるが、その場合の余計な一言は「照れ隠し」のつもりで言われているケースもある。今は大分違ってきていると思うが、昔から日本人、特に男は欧米諸国に比べて、パートナーの女性のことを素直に褒めない傾向にあると言われていた。それどころか、人前で自分の妻を褒めるなんて恥ずべきこと、という風潮すらあり、その結果「うちの愚妻がお恥ずかしい」などという、悪い日本語が生まれてしまったのだ。ちなみに良い日本語は「小生の愚息も昇天」などである。その名残なのか「今日カワイイじゃん」と褒めた後でも照れ隠しかなんなのか「服が(笑)」というギャグとしても全く面白くない余計な一言を口にして「おっとやんのか?」という空気にしてしまうのである。ここで注目したいのが「ツンデレ」だ。既に消費し尽くされた古の萌えキャラという印象があるかもしれないが、これこそが「余計な一言」の逆の存在なのだ。ツンと言うのはいわば「嫌な態度」だ、これだけだと当然悪い印象を与えたままになる。だが、ツンを積み重ねた最後に「デレ」を繰り出すことにより、今までのツン全てがデレを輝かす布石となる。もちろんツンデレは二次元のみで許される存在であり、現実でやるとツンの時点で周りから人がいなくなるのだが、「最後はデレ(褒め)で締めるよう心がける」というのは現実でも使える。前述の会話で言うなら「今日服じゃん」からの「カワイイ(笑)」だ。このように全く意味不明なのだが、最後「カワイイ」という褒め言葉で締めるだけで、相手は少なくとも嫌な気にはならないはずである。照れ隠しというのは、相手が「照れ隠しだな」と気づいてくれるケースは稀で、大体は「余計な一言」なのだ。それを言わずにいられないなら「なにも言わない」という良い手段があるので試してみると良いだろう。【ヤ】➤「ヤフー知恵袋」(やふーちえぶくろ)…発言小町が胃にもたれてきたら、こっちを見る【ヰ】➤「ゐろは」(ゐろは)…ほへと、以外言うことが思いつかない【ユ】➤「百合」(ゆり)…「間に入りたい」と言った瞬間殺害されるジャンル【ヱ】➤「ヱロチック」(えろちっく)…自分をこう表現する女はエロいかもしれないが、面倒くさそう【ヨ】➤「余計な一言」(よけいなひとこと)…言葉をちょうどいいところで止められず必ず溢れさせるタイプ、無口のほうがマシプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年07月21日漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラム「アクマの辞典」このコラムは、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!■第37回アクマの辞典マ行【ム】「ムラムラ」(むらむら)今回のテーマはマ行から「ムラムラ」だ。その前にこの言葉は若人に通じているのだろうか、言葉と私の作る弁当は一瞬でも目を離すと腐っているので気が抜けない。「ムラムラ」とは、エロい気分になること、大塚明夫の声で言うなら「性欲を持て余す」状態のことである。つまりムラムラしたらそれを解消したくなる。その方法は、ソロやペア、団体戦までいろいろあるが、とりあえず満足いくまでエロいことをすればムラムラは消え去り、どこかのCEOかと見紛うばかりの「賢者タイム」が訪れる。今でこそ、女にも性欲があることは有名な話であり、女性向けAVや、オシャレなソロライブグッズなど、女の性欲に向けたコンテンツも多くあるが、それでも「女が性欲を他人に見せる」ことは未だに憚られる風潮がある。男がスケベなのは当たり前とされているが、女が性欲を前に出すと「ふしだら」「淫乱」「さかりのおつきになった女性のおキャット様」など、言われてしまうことがある。これらはある意味全部褒め言葉だが、そう言われたくないあまり、性に対し抑圧的になり、男任せにせざるを得ない日本女性は依然として多い。このように、性欲に関しては何かと女のほうが不利を被っているように見えるが、逆に男が不利な点はないのだろうか。あるとしたら「性的目線」に関しては明らかに男のほうが配慮されていない。「女性の性的消費」が問題になっているように、「女をエロ目線で見ること」は、どんどん大っぴらにはできないことになってきている。片や「女が男を性的に見ること」は割と堂々と行われているのだ。わかりやすいのは「抱かれたい男性芸能人」ではないだろうか、あれは「女が男をほぼ100%エロ目線で選ぶ」という行為だ。それが割と大々的に発表されているのである。一方「抱きたい女性芸能人」のほうは、そういった企画が皆無ということはないだろうが、上記の理由からか男性芸能人に比べればひっそりとしている。女が男に性的視線で見られるのが嫌だとするなら、男だって不特定多数の女に「ヤりたい」と思われるのは不愉快かもしれないのだ。しかし、男の場合、女に「抱かれたい」と思われているのは「栄誉」と喜ばないといけない、というような風潮がある。これが「抱きたい女性芸能人」で、一位に選ばれた人に「みんなお前とヤリたいと思っているぞ、光栄に思え」と言ったら、おそらく炎上する。「男はみんなスケベ」と思われているが故の無遠慮さを、男は向けられているのである。ちなみに「抱かれたい男性芸能人は?」と聞かれた時の女の回答は「半分以上フェイク説」がある。本心では「森山直太朗」とか真に抱かれたい男はいるが「なんで?」と聞かれるのがウザいのでとりあえず「福山雅治」など、万人が納得しやすい回答をしており、それが上位に来ているのだという。確かに自分の性的嗜好を他人にカミングアウトする義務などないし、抱かれたいと言われたほうが不愉快に思う可能性だってあるのだ。そろそろこの質問もやめるべき時代なのかもしれない。【マ】➤「負け組」(まけぐみ)…自称して他人を油断させるための言葉。他人に使ってはダメ【ミ】➤「ミニマリスト」(みにまりすと)…片づけられない奴が真似すると、必要なものがなくゴミだけある部屋になる【ム】➤「ムラムラ」(むらむら)…元は「群群」で人が集まる様という意味、それが何故か性欲になるのだから言葉は不思議【メ】➤「女々しい男」(めめしいおとこ)…そろそろ差別表現として怒られそうなので「男の腐ったヤツ」と言ったほうが無難【モ】➤「モテ期」(もてき)…運が良ければ、生まれた時と葬式で二回あるプロフィールカレー沢薫漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。著書『ブスのたしなみ』(太田出版)も発売中。
2019年07月05日