俳優の本田翼(31)が21日、自身のインスタグラムを更新。太もも美脚あらわな写真を公開した。本田は「雑誌の撮影で韓国へ」とつづり、1枚の写真をアップ。赤いワンピースに黒のブーツをあわせたコーディネートで、足を組み座ってサンドイッチをほおばる様子がとらえられている。この投稿に「ヒャ~やばい美しいお足お出しになってますが可愛い過ぎてやばいやばいですね」「最近セクシーが捗ってますね」「脚が綺麗すぎ」「太ももエロい」「可愛さ100点」などの声が寄せられている。
2024年04月22日小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第12回目のテーマは「コルギなソウル(魂)」です。ホテルのカーテンを開けると、ソウルは一面の雪景色になっていた。キャスティング関連でのわずか2日間の訪韓。午前中だけ予定が空いていたのもあり、繁華街の明洞(ミョンドン)へと向かった。焼肉屋やチヂミのハングル文字に紛れて、日本語の看板が目に入る。「韓国式エステ」。ここだ。急な階段を2フロア分、上がる。店に入ると店長らしきおばちゃんが日本語で話しかけてくる。「ギンジャ(銀座)だと、この倍の値段。うちは安いよ」と、160分の極上コースを猛烈に薦めてくる。午後から大事なミーティングがある。2時間以上のコースは避けたい。“ヒーリング・コース”を希望したが、おばちゃんの強引な推しで、話題の“顔骨気(コルギ)コース”を体験することになった。おばちゃんに連れられ、更衣室へ。指示通り、パンツ一丁になり、その上に紙パンツを履いて、チャイナドレスのような刺繍の入ったピンクの施術着を羽織る。外に出ると、別のおばちゃんが待ち受けており、階段を上らされる。曲がりくねった廊下を進むと、ドラム式の乾燥機が並んでいる小部屋に突き当たる。そこにはまた別のおばちゃん達が待機している。まさか乾燥機に足を入れるのでは?と構えたが、杞憂だった。用意されたお湯に足を浸けて、洗浄。再び階段を上り、逃げ場のない突き当たりの部屋へ通される。硬いベッドに仰向けに固定された後、店自慢の“顔骨気コース”が、いよいよスタートする。まずは、クレンジングと足つぼマッサージ。続いて、顔にクリームを塗られる。何度も何度も塗り込まれる。目隠しをされているので、何を塗られているかは、わからない。そして、唐突に骨気テラピー(注1)が始まる。かなり痛いとは事前に聞いていた。おばちゃんは、器具を使わず、指先だけで親の仇の様に攻めてくる!「イタタタ!!」と、思わず声を出して訴えるが、日本語は通じない。ところが「イタイ、イタイ」と、楽しそうにオウム返ししながら手を緩めずに続ける。我慢するしかない。続くフェイスリンパマッサージにも耐え抜き、ホワイトニングパックにシフト。同時に、空気圧による自動の骨盤マッサージが始まる。その間に、肩・肩甲骨の指圧とデコルテ、首、肩リンパマッサージ。最後に頭皮マッサージ。これで終了か、と安堵していると、入れ替わりに別のおばちゃんが迎えにやって来る。「全部脱いで、これを頭から被って。パンツも脱いでスッポンポンに」と黄色い布を渡される。まだ終わりじゃないの?よく見てみると、布の中央に穴が開いていて、そこに首を入れて着るらしい。中でパンツを脱いで、全裸になる。まるで貫頭衣(注2)ではないか?逡巡している間もなく、巨大なてるてる坊主と化したまま、階段を上らされる。いや、下りたのかもしれない。ここは、エッシャーの絵のような迷宮なのだ。最後に待っていたのは、骨気と人気を二分する“よもぎ蒸し”(注3)。部屋に向かうと、おばちゃんが入口にひとり、岩のように座っている。縦に長い部屋内には、真ん中に穴が開いた陶器製の丸い椅子(座浴器)がぞんざいに並べられている。複数の椅子とセットになるように、それぞれに丸テーブルが用意されている。奥には、てるてる坊主から首だけ出した先客の女性2人が、日本語で談笑している。女性もいるの?大丈夫?と面食らっていると、反対側の椅子へと何の説明もなく、誘導される。てるてる坊主の裾を広げて、座浴器に跨る。その下に火種があり、そこによもぎ(韓方薬/ハニャッ)が焚べられている。跨ると、肛門よりも陰嚢が熱い。蒸すというより、熱い。冷やさないといけない大切な器官。これって、男性がやって大丈夫なの?と、顔を上げると、おばちゃんは、目の前にお茶とお菓子を置いて戻っていく。ちょっと、待って!これ何分のコースだったっけ?泌尿器系の改善どころか、睾丸の生産機能がイカれてしまう!経過時間を知りたくて、見回すものの、時計は何処にもない。スマホは持ち込みOKとは知らず、ロッカーに置いてきてしまったのだ。隣では先客達が、楽しそうに自撮りをしている。あなたたち、これ熱くないの?僕はおばちゃんの顔色を窺いながらも、耐え続ける。あと何分だろう。先客は、出されたお菓子を頬張り、お茶を飲み干す。するとおばちゃんに連れられて、部屋を出ていく。なるほど、お茶を飲むのが合図で、蒸し終了なのか!と思い、手をつけていなかったお茶を飲み干す。なんと、おばちゃんはまた新しいお茶を運んでくるではないか。飲んでも終わらない?まさに地獄蒸しだ。結局、40分以上蒸されて終了。股間が熱いので、座る位置を何度も変更。座浴器の縁を移動し続けたおかげで、かなりの汗をかいた。受付に戻ると、あのおばちゃんが待ち構えていた。「お客さんの顔、ずいぶんと白くなった、小顔にもなったわよ」と、優しく笑う。ああ、この感覚。知っている。これ、嫌いじゃない。いや、むしろ好きだ。必要以上に相手を気遣うことが接客だとされる令和の時代にはない、粗暴だが、温かさのあるエネルギーが骨に染みた。またここに来ようか。ここはソウルだが、ここにはソウル(魂)がある。おばちゃんの言葉に、少しはその気になったものの、午後に韓国の人気女優さんと並ぶと、毎日、顔骨気に通っても勝てないと思った。彼女の顔はずっと小さかった。注1:骨気テラピー手や腕を使って骨を刺激し、老廃物の排出、リンパの流れや血行の促進にアプローチする韓国発祥の美容法。小顔や顔色が明るくなるなどの効果が期待できる。注2:貫頭衣生地の中央に穴を開け、そこに頭を通して着用する衣類のこと。注3:よもぎ蒸し韓国の伝統的な民間療法。よもぎなど韓方薬などを煮立て、蒸気を下半身に当てることで体を内側から温める。今月のCulture Favorite顔骨気前の小島監督と、『はちどり』などで知られる俳優のパク・ジフさん。顔骨気後の小島監督。顔がスッキリ!その後、『モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン』などに出演するチョン・ジョンソさんと。こじま・ひでお1963年生まれ、東京都出身。ゲームクリエイター、コジマプロダクション代表。’87年、初めて手掛けた『メタルギア』でステルスゲームと呼ばれるジャンルを切り開き、ゲームにおけるシネマティックな映像表現とストーリーテリングのパイオニアとしても評価され、世界的な人気を獲得。世界中で年間最優秀ゲーム賞をはじめ、多くのゲーム賞を受賞。2020年、これまでのビデオゲームや映像メディアへの貢献を讃えられ、BAFTAフェローシップ賞を受賞。映画、小説などの解説や推薦文も多数。ゲームや映画などのジャンルを超えたエンターテインメントへも、創作領域を広げている。「The Game Awards 2023」にて発表した、最新作『OD』の公式ティザートレーラーが、KOJIMA PRODUCTIONSの公式YouTubeチャンネルで公開中。『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』の第2弾トレーラーが公開中。先日、完全新作オリジナルIP『PHYSINT(Working Title)』の制作を発表。次回は、2396号(2024年5月1日発売)です。※『anan』2024年4月10日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2024年04月17日俳優・モデルの本田翼による完全プロデュースのビューティーブランド『By ttt.(バイ ティースリー)』のメディアお披露目イベントが9日、都内で行われた。同ブランドは「自分にとっても、みんなにとっても間違いないもの」を追求して、本田が企画・開発などトータルプロデュース。爽やかな装いで登場した本田は「ブランドのイメージカラーである水色を取り入れつつ、自分らしさとしてカジュアルさも表現できたら」と笑顔。また、ブランドお披露目の日を迎え「ドキドキとワクワクと…いろんな気持ちが混在しています。こんなに(報道陣に)来ていただけるなんて…」と心境を吐露しつつも予想以上の注目度に驚いた。また、ブランド立ち上げの経緯について問われると「私自身、いろんな美容グッズやコスメ、スキンケア用品を買うのが大好き。自分に合ったものを探し当てるのが好き」と前置きをしたうえで「でもそういうことをしていて、ふと思ったのが私は探すのが大好きだからできるけど、こんなにたくさん商品があるなかでどれを選んでいいか分からない方も多いだろうなと。そんなときに『By ttt.』なら大丈夫、そう思っていただけるブランドがあればいいんじゃないかな」と、思い立ったことがきっかけだと明かした。さらに「自分にとっていいものが、皆さんにとっていいものなのか。そういった不安との戦いが大変なところでもありました」と、ブランドプロデュースの難しさを語った。実は“日焼け止めマニア”という本田が特にこだわったのがサンケア商品。「コスメの机は日焼け止めだらけ。年間多い時は(日焼け止めを)100種類ぐらい試させていただいています。とにかく日に焼けないことが肌に一番いいこと」と熱弁していた。
2024年04月09日株式会社ジョイフル本田(本社:茨城県土浦市、代表取締役社長 平山育夫、以下 ジョイフル本田)は、2024年4月6日(土)、ジョイフル本田千葉ニュータウン店(千葉県印西市)2階に直営のカプセルトイプレイゾーン「JOYGACHA(ジョイガチャ)」をオープンいたします。カプセルトイ自販機設置面数500面を超える大型売場で、カプセルトイ自販機以外にも高額カプセル自販機やトレーディングカードカプセル自販機、ジョイフル本田らしいDIY工具カプセル自販機などを一堂に展開いたします。「JOYGACHA(ジョイガチャ)」には購入したカプセルトイを撮影できるジオラマブースも設置いたします。このジオラマブースはジョイフル本田のスタッフが店舗で販売しているアイテムを活用して作成したオリジナルのブースですので、とっておきの一枚を撮影することができます。また、お気に入りのカプセルトイを額装してインテリアとして飾る提案なども行います。「JOYGACHA(ジョイガチャ)」はカプセルトイの楽しさが大きく広がる、ジョイフル本田ならではのカプセルトイプレイゾーンです。「JOYGACHA」全景DIY工具カプセル自販機ジョイフル本田千葉ニュータウン店のある印西エリアは人口増加が著しく、子育て世代も多く居住していることから、ホームセンター内に家族で楽しめる売場を作ることで、より多くのお客様にご利用いただける店舗を目指してまいります。◆「JOYGACHA(ジョイガチャ)」概要所在地 : 千葉県印西市牧の原2-1ジョイフル本田千葉ニュータウン店 2F開店日 : 2024年4月6日(土)営業時間: 9:00~20:00設置 : ・カプセルトイ自販機・カプセル自販機<古銭>全てのカプセルに本物の古銭が入っており、希少性のある古銭も含まれています。・ステーショナリー自販機人気のアニメやキャラクターがクリップやクリアファイル、ステッカーなどのステーショナリーになった自販機。・郵便局オリジナル カプセルトイ「ガチャポス」人気クリエイター達が手がけるソフビフィギュア「萬福猫」シリーズを豊富に取りそろえています。・トレーディングカードカプセル自販機人気のキャラクタートレーディングカードが入ったカプセル自販機。・2,000円カプセル自販機<DIYシリーズ、エンタメシリーズ>DIYシリーズ:インパクトドライバー、ジグソー、ブロワ等のDIY工具20種類。エンタメシリーズ:ゲーム機、カードゲーム、コミック、ぬいぐるみ等20種類。・撮影用オリジナルジオラマブース(ジョイフル本田スタッフ作成)・インテリア装飾用額装提案(ジョイフル本田スタッフ作成)※取り扱い商品、サービスは随時追加・更新してまいります。◆商品・サービスカプセルトイ自販機の一例ジオラマブースの一例【会社概要】株式会社ジョイフル本田代表者 :代表取締役社長 平山育夫(ひらやま いくお)本社所在地:茨城県土浦市富士崎一丁目16番2号設立年月日:1975年12月15日事業内容 :ホームセンター事業、住宅リフォーム事業店舗数 :ホームセンター 17店舗、専門小売店 7店舗、商業施設 1店舗 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2024年04月04日本田翼が、山下智久主演の新ドラマ「ブルーモーメント」に出演。本田さんは俳優デビュー以来、14年連続の地上波ドラマ出演となる。本作は、甚大な気象災害によって脅かされる人命を守るべく、知恵と知識を駆使して現場の最前線で、命がけで救助に立ち向かうSDM(特別災害対策本部)の奮闘物語。本田さんが演じるのは、晴原(山下さん)の婚約者で、特命担当大臣(防災担当)・園部肇一(舘ひろし)の一人娘である灯。自分の地盤を継がせようとする父と不仲になった時期もあったが、幼い頃に見た空の美しさに魅せられ、気象学研究官の道へ。研究官としてまい進する傍ら、行政の枠組みや既存組織にとらわれず、迅速に判断を下すための組織を立ち上げる夢をかなえるため日々奮闘していた。気象学で自然災害に立ち向かう組織には、卓越した数学脳で天気を解析できる人間が必要不可欠だったため、晴原を気象学の世界に勧誘。大雨の日、自宅で気象解析を行う晴原と灯は、大きな災害が発生する場所を突き止め、人的被害の拡大を防ぐためそれぞれの職場へ向かうが…。晴原を突き動かす本作の最大の謎、灯の死。自然災害の恐ろしさを知っているはずの灯がなぜ亡くなってしまったのか、明かされる真実とは?「シマシマ」でドラマデビューして以来、実に14年連続となる地上波ドラマ出演となる本田さん。キーマンを演じるにあたり、「この作品のシリアスでありながらどこか温かい面を、灯を通して表現できたらと思います。灯はSDMメンバーではないですが、SDMの活躍がどのように描かれるのかとても楽しみです。また灯の“真実”が明かされた時、皆さんがどう感じられるのか私自身いまからドキドキしています」とコメント。山下さんとの共演は、「ほんとにあった怖い話夏の特別編2012」以来、およそ12年ぶり、連続ドラマでは今回が初共演。「まだ私が新人だった12年前、山下さん主演の『ほん怖』に出演させて頂いたことがあったのですが、今回初めて連ドラでご一緒させて頂けること、そして、『ラジハII』から3年ぶりに会うスタッフさんもいらっしゃるなど、この作品に参加できたことをうれしく思っています」と語っている。また出演発表と合わせて、10年前、幸せそうな表情を浮かべる晴原と灯をとらえた写真も公開。物語の始まりでもある2人の姿が見られるのは、初回の放送にて。「ブルーモーメント」は4月24日より毎週水曜日22時~フジテレビ系にて放送(※初回15分拡大)。(シネマカフェ編集部)
2024年04月01日俳優・モデルの本田翼(31)が1日までに、自身のインスタグラムを更新。ブラトップ姿のオフショットを公開した。先日「この度ビューティーブランド By ttt.(バイティースリー)をローンチいたしました」と報告していた本田。この日は「@by_ttt_ の撮影のオフショット 真冬の韓国でみんなでがんばりました」と、ブラトップスタイルでの撮影の裏側をアップし、「#皮膚に霜つもるかとおもった」とちゃめっ気たっぷりに極寒だったことを伝えた。この投稿に「ばっさーの腹筋ヤバすぎ」「え!! 腹筋すご!!!」「この笑顔が堪らなくいい」「いつもかわいいばっさーだけど今日はセクシーかわいい ドキッとしました」「スタイル抜群すぎる」「バキバキやないかい」などの声が寄せられている。
2024年04月01日京都の保育園の挑戦ーー『保育園に心理士がやってきた 多職種連携が保育の質をあげる』Upload By 発達ナビBOOKガイド京都市にある認可保育所「みぎわ保育園」は、全国でも珍しい常勤心理士がいる保育園です。本書には、9年前まではごく一般的な保育園だったみぎわ園が、保育園に心理士を導入し、現在の「ユニバーサルデザイン保育」にまでたどり着いた道のりと共に、心理士や保育士など多職種の専門家たちが連携し、保育の質の向上をめざした同園の取り組みが紹介されています。「保育園で常勤の心理士を雇用する」、この理想を実現するにはたくさんの試行錯誤、汗と涙と、そして笑顔がありました。同園が発達支援分野に力をいれるようになった経緯から、保育現場に心理士の存在が受け入れられるまでのストーリー、保育園心理士の基本姿勢と専門性の活かし方や、みぎわ園における保育園心理の具体的な役割などが、数々のエピソードと共に記されています。そして、保育士と心理士だけではなく、保護者も地域の人々も、多くの目と手が関わり、連携することによって、障害があってもなくても、子どもをみんなで受け入れて育てていく社会を実現する。その方法の一つを、この本は提示してくれています。だれでも楽しく取り組めるーー『絵をみてまねっこ!いっしょにできたねおしゃべりカード』Upload By 発達ナビBOOKガイド本書は、言語聴覚士の寺田奈々先生が相談室でおこなっている言葉の練習を、だれでもどこでも取り組めるように考案した言葉の発達支援教材です。「言葉を理解しているけれど、おしゃべりが苦手」「言える音が少ない」「おしゃべりが著しく不明瞭」「断片的・部分的なおしゃべりが多い」「身振りで伝えることが多い」など、このような悩みがあるお子さんに向けてつくられています。企画・監修の寺田奈々先生は、子どものことばの発達全般・吃音・発音指導・学習面のサポート・大人の発音矯正を専門とし、総合病院や区立障害者福祉センターなどに勤務。年間100症例以上のことばの相談・支援に携わっています。臨床のかたわら、「おうち療育」を合言葉にこれまでも数々の教材を発表しています。子どもが絵を見てまねをすることで言葉の発達を促すことを目的とした本書は、言語聴覚士の視点で選んだ言葉の練習に用いりやすいフレーズが書かれた50枚の「おしゃべりカード」、動物のイラストが描かれた5枚の「お口のたいそうふだ」、ガイドブックで構成されています。ガイドブックには、カードの使い方や練習方法だけではなく、発音の仕組みなど言葉の発達に関する基礎知識もやさしく解説されています。かわいいイラストが子どもの興味を引き、おうちで楽しみながら取り組めるように工夫された本書。「いっしょにできたね」と、わが子の成長を感じられるひと時も与えてくれるのではないでしょうか。2つの障害はどう関連するのかーー『知的障害と発達障害の子どもたち』Upload By 発達ナビBOOKガイド令和4年度の文部科学省の調査では、小・中学校の通常学級では特別な配慮が必要だと思われる子どもは8.8%いるという報告がされました。発達障害の特性がある子どもが多く含まれると考えられますが、そのなかには軽度知的障害や境界知能に該当する子どもが見逃されている可能性もあります。さらに、知的障害(知的発達症)のある子どもが在籍している特別支援学級・特別支援学校を合わせると、義務教育期間中の全体の一割以上は特別な配慮が必要な子どもたちなのです。本書では、発達ナビにもご寄稿いただいている精神科医の本田秀夫先生により「知的障害とは何か」「知的障害と発達障害にはどのような関連があるのか」「知的障害がある子をどうやって育てていけばいいのか」が分かりやすく解説されています。さらに、気づかれにくい軽度から境界知能についても言及されています。知的障害がある子どもの支援において大切なことは「早く」と「ゆっくり」であると本書では記されています。「早く」早期発見・早期支援を指しますが、「ゆっくり」も支援において重要なキーワードとのこと。前半では、発達障害と知的障害の基本を、後半では「ゆっくり」の意味の解説と、「ゆっくりな子どもをどう育てていくのか」が丁寧に紹介されています。本田先生の豊富な臨床経験から紹介されたさまざまな事例と、医学的知見に基づいたよりよい接し方を盛り込んだ本書。保護者はもちろん、園や学校の教育現場、支援者や医療関係者など、日々子どもたちと接する方にとって、手元に置いておきたい一冊となるのではないでしょうか。この街で生活していいんだと思えるためにーー『地域で育ち、地域で暮らすを支える発達支援』Upload By 発達ナビBOOKガイド本書は、「障害がある子どもたちが地域で育ち、地域でくらすことを支援するためにどうしたらよいか」ということを、編著者の社会福祉法人青い鳥川崎西部地域療育センターが、これまでの数々の実践とエビデンスに基づく支援の方法をまとめた一冊です。川崎西部地域療育センターの開所は平成22年ですが、運営している法人「青い鳥」は50年以上の歴史があります。法人の設立当時は発達について継続して相談するところもなく、障害がある子どもをどのように育ててよいものなのか保護者たちは途方に暮れた時代でした。そのような中、法人「青い鳥」は、長きにわたり、子ども・家族・地域と向き合い、試行錯誤を重ねてきました。本書の特徴は教科書的な内容ではなく、これまで職員たちが出会ってきた子どもや家族との実践が、その温度感や手ざわり感と共に届けられていること。また、子どもたちのために開発された教材や、支援の具体例などがたくさんの写真や図表を用いて紹介されています。子どもを一人の人間として尊重し、専門職が家族と協力して、地域でその子ならではの生き方を貫くためのヒントがぎっしりと詰まった本書。子どもの支援に関わるすべての人に習得してほしい知識や技術、そして感動までもが満載です。親も子どもも笑顔になれる子育てのヒントーー『育ててわかった 発達障害の子の就学・就労・自立の話』Upload By 発達ナビBOOKガイド本書は発達ナビでライターとしてコラムを執筆中の立石美津子さんが、ASD(自閉スペクトラム症)のある息子さんを出産し共に歩んだ23年間をまとめた一冊です。障害がある子どもを出産し、たくさんの壁を乗り越えてきた立石さんが伝える、親と子どもも笑顔になれる子育てのヒントがまとめられています。発達障害を理解し、親として子どもとの向き合い方を学べる一冊です。障害受容、療育選び、カミングアウト、学校選びなど、子どもの将来を左右する大切な分岐点で、親としてぶつかるさまざまな悩みと解決方法を、立石さんと息子さんのエピソードを交えながら具体的に記されています。第1章ではASD(自閉スペクトラム症)の息子さんの体験から綴られた「発達障害がある子の特徴」について、第2章では障害と向き合う心構えについて、第3章では子育てで気をつけたいことが、自身の体験をベースに記述。さらに第4章では学校選びのポイントや、第5章では大人になってからの向き合い方についてなど、成人した子どもをもつ保護者ならではのエピソードが共有されています。最後の第6章では、保育者や支援者との関わりの中で感じたことなど、発達障害の理解を深めるために保護者として今感じることが書かれています。発達に課題があるお子さんのことで悩んでいる保護者の役に立ちたいという想いを込めて執筆された本書。同じ立場だからこそ伝えることができる子育てのヒントや、発達障害がある子どもを育てる気持ちなど、共感しながら学べる一冊ではないでしょうか。LITALICO発達ナビ無料会員は発達障害コラムが読み放題!(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。ADHD(注意欠如多動症)注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。SLD(限局性学習症)LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
2024年03月24日大人になったときの状態から「逆算」する私は知的障害のあるお子さんの親御さんと話すときに、例えばこんなことをお伝えすることがあります。「お子さんは将来、スーパーマーケットに買い物のリストを持っていって、必要なものを購入してくることは十分にできそうです。ただし、金額の複雑な計算は難しいかもしれません」そして、その見通しから逆算する形で「いま教えたら身につきそうなことを一緒に考えていきましょう。例えば、買い物リストを見ながら必要な商品をカゴに入れることはできそうですから、練習してみましょう」といったことを具体的に提案するわけです。本人が着実に身につけていけることを考える本人が一人で買い物リストをつくることや、必要な金額を計算することは難しいかもしれません。そのようなことを教えても、適切な支援にならない可能性があります。それよりも本人が着実に身につけていけることを考える。そして家族にはサポートの仕方を知ってもらう。そのような形で、支援の枠組みを考えていくのです。家族が買い物のリストと代金を用意する。本人はそれを持って買い物に行く――そのような枠組みで、生活習慣を習得していける場合があります。仕事についても同じようなことが言えます。例えば、職場側にマニュアルを用意してもらえれば、それにそって作業を行うことはできるという人もいます。知的障害の子育てではそのような形で、本人に合った枠組みを整えていくことが大事です。親御さんがお子さんに対して「こういう支援があれば、こういうことができる」という見通しを持てれば、それをほかの人に伝えることができます。家族や園・学校の先生、療育機関の支援者、職場の関係者、ヘルパーさんなど、お子さんに関わる人たちに「こういうところを手伝ってください」と、具体的なお願いができるようになるのです。ピアジェの「認知発達理論」を参考に「逆算」を考えるときに、参考になる理論があります。スイスの心理学者ジャン・ピアジェが提唱した「認知発達理論」です。ピアジェは子どもの認知の発達を、次のように4段階に分けて説明しました。・感覚運動期(0〜2歳頃)赤ちゃんはおもちゃを手でさわったり、口にくわえたりして、ものとして認識します。ピアジェは、乳幼児期の子どもは感覚と運動によってものごとを理解していると考え、この時期を「感覚運動期」としました。・前操作期(2〜7歳頃)幼児期になると子どもは、言葉を使ってものごとを理解するようになります。しかしまだ理解があやふやで、情報をうまく扱うことはできません。ピアジェはこの時期を、ものごとを頭の中で「操作」する前の時期ということで「前操作期」としました。・具体的操作期(7〜11歳頃)小学校に入るくらいの年代になると、子どもはものごとを具体的に理解できるようになってきます。ピアジェは情報を「操作」すること、つまり論理的に考えることも、少しずつできるようになると考えました。一方で、この時期にはまだ抽象的な思考、例えば仮説を立てることなどは難しいとされています。・形式的操作期(11歳頃〜)ピアジェは11歳頃から認知の発達が次の段階に進むと考えました。この頃から、子どもは抽象的に考えることができるようになっていきます。頭の中で仮説を立てたり、一般論を考えたりするようになります。知識を使って、形式的に考えられるようになる時期ということで、「形式的操作期」とされています。ピアジェの認知発達理論を参照すると、知的機能がどのように発達していくのかがよく分かります。それによって、知的障害のあるお子さんへの支援を検討しやすくなります。大人になって「抽象的な思考が難しい」場合認知の発達には4つの段階があるわけですが、知的障害のあるお子さんの場合、将来的にも具体的操作期の段階にとどまる可能性があります。中等度よりも重い知的障害がある場合には、その可能性が高いでしょう。大人になったときに「抽象的な思考が難しい」状態だと想定される場合もあるわけです。その場合、成人期に「状況に合わせて臨機応変に立ち回る仕事」に就くのは難しいでしょう。各部署の思惑を察して社内調整をするような業務は、おそらくできません。そのような将来像を目標にしてしまうと、幼児期や学齢期に適切な支援ができなくなります。一方で、その子は将来「具体的なものを取り扱う定型的な仕事」であれば、問題なくこなせる可能性があります。そういった見通しから逆算して、今から取り組んでいけることを考えるのが「逆算の支援」です。例えば、まだ学齢期でも「一定の作業を何時から何時まで実行する」「作業が終わったら報告する」といった習慣を身につけることはできるかもしれません。将来像から逆算してそのような取り組みを考えていくと、子どもの成長をサポートできます。認知発達理論は算数・数学にも当てはまる発達の段階によって、学べることは違います。これは学校の勉強にも当てはまる話です。小学校では「算数」を学習します。中学になると「数学」になります。算数では、主に身近なものごとが扱われます。日常生活の中でも使うような、例えば人数や、ものの大きさなどを計算します。算数では、具体的なことを主に学ぶのです。それに対して数学では、抽象的なことも学んでいきます。xやyなどを使って関数の計算をしたり、「n」という記号を自然数とみなしたりします。この違いは、ピアジェの認知発達理論とおおむね一致しています。「数学は難しいが算数は分かる」状態でできる支援11歳ぐらいまでは具体的なものごとを扱い、その後少しずつ、抽象的な思考を広げていく。xやyのような抽象的な概念を扱うためには、一定の理解力が必要になるのです。これまでに何度か述べた「抽象的な思考が難しい」状態というのは、算数と数学の例で言えば、「数学を理解するのは難しいけど、算数は分かる」というようなものです。そのようなイメージを持って、逆算の支援を考えるのもいいかもしれません。大人になったときに「数学レベルの計算はできないけど、算数レベルの計算はできる」と考えると、例えば金銭管理でも、どの程度のことを教えればしっかりと身につくのかが、検討しやすくなるのではないでしょうか。Upload By 本田秀夫(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。知的発達症知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
2024年03月21日小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第11回目のテーマは「推しも推される関係」です。1月、トレント・レズナーのスタジオへ訪問し、彼とアッティカス・ロスの2人と数時間に渡り貴重な時間を共有した。さらに「ナイン・インチ・ネイルズ」(注1)のファーストCDと『ソーシャル・ネットワーク』のサントラ盤CDにそれぞれサインを貰った。2016年のE3にて『デス・ストランディング』(以下『DS』)のティザー映像(注2)を初めて発表した後、コジプロ公式アドレス宛の方に、トレントから「私はヒデオの大ファンです。デスストの音楽にとても興味があります」というメールが入った。当時はまだ、精査をする担当者も不在だった為、「本当に本人からだったのか?」もわからない状態でフェードアウトしてしまった。勿論、僕にとっての彼は、ずっと“推し”だった。それからも行く先々で「トレントはヒデオのファンだ」という話を耳にした。『DS』のパフォーマンス・キャプチャー中にノーマン・リーダス(注3)からも「友達のトレントが、ヒデオの大ファンなので、明日にでもこの撮影現場に来るかもしれない」と、聞かされた。しかし、実際には彼は現れず、僕の方もやはり耳半分な状態だった。ところが、昨年末に、知人のジェフ・キーリー(注4)から「トレントが逢いたがっている!」と、直接の連絡先のメールアドレスが届いた。1月にちょうどロスに行く予定があったので、漸く逢う機会を得た。トレントは、僕を待ち受けていて、こう言った。「『MGSV』(注5)は、219時間プレイ。『DS』は発売された時にやり終えて、今はまたPCでディレクターズカットを再プレイしている!何度も言うけど、いくつかのアルバム制作を妨げたのは、ヒデオのせいだよ(笑)」お互い“推し”であったにも関わらず、実際に邂逅するまでに8年を要した。“推し”と“推し”が日常生活で偶然出逢うということは、まずあり得ない。昔は、対談などを活用して、“推し”に会う機会を作った。偶然を待っているだけでは、容易に“推し”に出逢えなかったのだ。ところがSNS時代になって、そんな“推し”との繋がり方は、大きく変わった。SNSというツールが“推し”と“推し”を容易に、効率的に繋げてくれるようになったのだ。例えば、ある本を読む、映画を観る、音楽を聴く、作品を見る。僕はその“推し”の感想をSNSに投稿する。すると、その“ラブコール”は世界中を瞬時に駆け巡り、その日のうちに、ほぼ間違いなく、“推し”にダイレクトに届くのである。僕がフォローすれば、相手もフォローしてくれる。そうなると、DMで直接話が出来る。仲良くなり「今度、どこかで逢いましょう!」と約束する。いずれ直接、歓談することが出来てしまう。“推し”同士は、エージェントやマネージャーをすっ飛ばすので、話がはやい。そうやって“推し”も“推される”関係を築いた小説家、映画監督、アーティスト、ミュージシャン、俳優、クリエイターは数えきれない。『DS』の日本語版音声に、津田健次郎さんへサム役のオファーをしたのも、まさにこういう経緯によるものだ。10年くらい前のSNSでは、今ほどの即効性も確実性もなかった。しかし、「HIDEO KOJIMAというゲームクリエイターが、あなたの作品を推しているよ」と、僕のファンと相手のファンたちが間を取り持って、うまく繋いでくれた。僕と相手を“推す”人たちが協力し合い、“推し”同士を繋いでくれたのだ。色々と問題はあるSNSだが、“推し”を推しはかる人たちにとっては、“推し”と“推し”が繋がることができる最強のツールでもあるのだ。勿論、相手が僕の事を知らない片想いの場合もある。例えば、パク・チャヌク監督(注6)。韓国映画『オールド・ボーイ』を観て、パク監督に惚れたのは20年前。どうしても彼に逢いたかった僕は、人を介してパク監督に連絡をとって貰った。韓国に飛ぶと、パク監督は『親切なクムジャさん』のラストシーンを玉川(オクチョン)という場所で撮影中とのこと。ソウルから車を飛ばして3時間あまり。零下16度の現場で“推し”に邂逅した。現場近くのレストランで通訳もなく、韓国料理を咀嚼しながら、身振り手振りで対話した。お互いが、好きな作品のことを夢中で話していると、通じるものがいくつもあることが分かった。いつしか“推し”と“推し”は、人種や言語を超えて繋がっていた。僕らは、同じものを“推し”て、創作の世界に入ったのだと理解し合った。いつの間にか“推して”いるつもりが“推される”、初めて会ったのに、幼馴染のような関係になっていた。以降、パク監督とはずっと特別な関係が続いている。“推し”とは誰かにゾッコンとなり、好きなことを公言し、行動を起こし、生涯応援することだ。同時に、それは、新たなクリエイティブにも繋がる。“推し”もまた一つの創作なのだ。好きという気持ちは世界共通だ。同じものを“推す”情熱が、見知らぬ者同士を繋いでくれる。全身全霊をかけて“推し”ていれば、いつかは“推し”からも“推される”機会がやってくる。“推し”も“推される”関係は、誰にとっても夢ではない。今日も僕は誰かを“推し”続ける。注1:ナイン・インチ・ネイルズ1988年に活動を開始した、トレント・レズナーによるプロジェクト・バンド。注2:アメリカで開催されていた世界最大級のゲームの祭典であるE3において、小島監督の新作として、そのタイトルとノーマン・リーダスが主演であることが発表された。単なる予告編とは異なり、謎に満ちた映像が世界中の注目を集めた。注3:ノーマン・リーダス俳優。『ウォーキング・デッド』『処刑人』などに出演。『デス・ストランディング』のサムを演じている。注4:ジェフ・キーリーゲーム業界のアカデミー賞ともいわれるThe Game Awards(TGA)のプロデューサーであり司会者。小島監督のよき理解者であり友人。注5:MGSV小島監督のゲーム『メタルギアソリッドVファントム・ペイン』のこと。注6:パク・チャヌク監督『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』のほか、『お嬢さん』『別れる決心』など数多くの映画を手掛ける。今月のCulture Favoriteトレント・レズナー、アッティカス・ロス両氏と。『犯罪都市 NO WAY OUT』に出演するマ・ドンソク氏と。4年ぶりにソウルで再会したパク・チャヌク監督と。こじま・ひでお1963年生まれ、東京都出身。ゲームクリエイター、コジマプロダクション代表。’87年、初めて手掛けた『メタルギア』でステルスゲームと呼ばれるジャンルを切り開き、ゲームにおけるシネマティックな映像表現とストーリーテリングのパイオニアとしても評価され、世界的な人気を獲得。世界中で年間最優秀ゲーム賞をはじめ、多くのゲーム賞を受賞。2020年、これまでのビデオゲームや映像メディアへの貢献を讃えられ、BAFTAフェローシップ賞を受賞。映画、小説などの解説や推薦文も多数。ゲームや映画などのジャンルを超えたエンターテインメントへも、創作領域を広げている。『HideoTube (ヒデチュー):特別版』小島監督が、津田健次郎さん、宇内梨沙さんと、コジマプロダクションが発表した様々なトピックについて語り尽くす。次回は、2392号(2024年4月3日発売)です。※『anan』2024年3月13日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2024年03月09日お笑いコンビ・チョコレートプラネットとプロフィギュアスケーターの本田真凜が、『ゴーストバスターズ』シリーズ最新作『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』(3月29日公開)で日本語吹替版声優を務めることが29日、発表された。本作の舞台は、太陽が降り注ぐ真夏のニューヨーク。すべてを一瞬で凍らせる史上最強ゴースト“ガラッカ”の襲来で、ニューヨークに史上最大の危機が訪れる。このたび最新予告が公開され、新旧バスターズvsゴーストの攻防や、すべてを凍らせる最強のゴースト“ガラッカ”の姿がお披露目された。さらに、本作から登場する新キャラクターの吹替を担当するキャストが発表。第1弾で発表された上白石萌歌、梶裕貴ら前作から続投するキャストに加え、新しくゴーストバスターズ声優陣の仲間入りとなるのは、『ゴーストバスターズ』の大ファンだと語るチョコレートプラネットの長田庄平と松尾駿。さらに先日、今季限りで競技からの引退、プロフィギュアスケーターへの転向を発表した本田真凜だ。かねてよりゴーストバスターズの大ファンであることを公言しており、「子供の頃にダンボールでプロトンパックを作ってゴーストバスターズごっこしていた」という長田が演じるのは、ゴースト研究所で働くエリート研究員。「大好きなゴーストバスターズの声優をやらせて頂けるなんて子供の僕が知ったらマシュマロマン見たぐらいびっくりするでしょう。現場で凍りつかないように頑張ります!」と『ゴーストバスターズ』愛が溢れるコメントを寄せた。松尾は自身のキャスティングに関して「ゴーストに体型が近いからオファーをもらえたんだと思ってます」と分析。気になる松尾が演じるキャラクターは、劇場公開までシークレット。果たしてどのキャラクターを任されているのか。そして、映画の舞台でも“氷”と運命を共にすることになった本田は本作が声優はもちろん演技初挑戦。「小さい頃に大好きで観ていた、あの!!! ゴーストバスターズの映画に”メロディ”として演じさせて頂ける事、本当に嬉しく思います」と大喜び。「真夏も凍らせる史上最強のゴースト、そして新生ゴーストバスターズがどんな物語を魅せてくれるのか、とても楽しみです! 全力で頑張ります!」と意気込んでいる。そんな本田が演じるのは、上白石演じる新生ゴーストバスターズの中心的存在であるフィービーと友情を育むゴーストのメロディ役。上白石とどんな掛け合いを見せるのか注目だ。【編集部MEMO】『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』の監督はギル・キーナン(『モンスター・ハウス』『ポルターガイスト』)。キャストはポール・ラッド、キャリー・クーン、フィン・ウルフハード、マッケナ・グレイス、クメイル・ナンジアニ、セレステ・オコナー、ローガン・キム、ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、アーニー・ハドソン、アニー・ポッツら。
2024年02月29日プロフィギュアスケーターの本田真凜が27日、都内で行われた貝印新ブランド「miness(マイネス)」メディア向け発表会に出席した。グローバル刃物メーカーの貝印は、3月6日に部位別に選べるパーソナルケアの新ブランド「miness(マイネス)」を発売。ブランドアンバサダーに本田真凜が就任した。本田は美背中あらわな純白ドレスで登場。「フィギュアの衣装の少しスカートが長いバージョンみたいな感じで、すごく新鮮でソワソワしています」と照れ笑いを浮かべた。そして、ブランドアンバサダー就任について「小さい頃からフィギュアスケートを通して美しさを求め続けてきたので、美容には幼い頃から興味がありますし、アンバサダーとして携わることができてとてもうれしく思います」と喜び、「minessの魅力をたくさんの方に知っていただけたらいいなと思います」と意気込んだ。
2024年02月27日小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第10回目のテーマは「人生をストーリーテリングする」です。先日、配信されたSIEのイベント『State of Play』(注1)にて、『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』の第二弾トレーラー(注2)を全世界に向けて公開した。今回も、企画、構成、画面選び、セリフ選び、コピー、音付け、編集、ディレクション、MIXなどを贅沢にひとりで楽しんだ。ほぼ1年ぶりの編集作業だった。トレーラーの尺は9分39秒。ちょっとした短編作品とも言える。発売前だが、僕にとっては、これも作品(ゲーム)の一部なのである。ゲームのプロモーション映像は普通であれば、TVCMや映画の予告編と同じく、外部の映像専門会社に委託する。なぜそれをゲーム制作者の僕がするのか?技術、納期、バジェットなど、裏事情は色々あるが、最大の理由は、やはり編集という行為が好きだからだ。ゲーム創りは高度で複雑、生き物の様に日々進化する。だから、飽きることはない。とはいえ、ゲームはインタラクティブだ。見るもの、見せるもの全ては創り手側にはなく、プレイヤーの行動に依存する。一方で、映像は創り手の思惑通りにタイムラインを操作できる。何を見せて、何を見せないか?さらにはそのタイミングも。だから、たまにはタイムラインを自分で制御した旧来の映像作品で、観客を驚かせたいと、僕は編集機の前に座る。自分だけのペースで完結した作業が出来る事も大きい。チームを動かす仕様書もミーティングも不要だ。僕が初めて編集機に触れたのは、中学生の頃。当時は家庭用のビデオカメラもまだない。友人の父親が持っていた8mmスーパー8カメラを借りて、つまらない自主映画で戯れていたアナログの時代。編集映像が覗ける画面(フィルムエディター)も付いていない、ただのフィルムスプライサー(注3)とスプライシングテープ(注4)での切り貼りを行っていた。切りすぎるとフィルムがダメになる。うまく繋げないと映写機に引っかかる。デジタル世代では当たり前の「undo」(注5)が効かない。だから、細かな編集はできない。あの頃は正直、面白いとは思わなかった。’90年代、ゲーム制作現場にもMacが導入されるようになった。当時の編集環境はMacとAdobe Premiere。しかも、今とは違うノンリニア編集なので、編集中の結果(レンダリング)は、かなりの時間を待たされ、完成した映像の解像度も低いものだった。それでもアナログ時代とは違い、デジタル編集は魔法のようだった。トレーラーやPV、CMに使う素材編集、ゲーム内に入れる実写映像などなど。ここから今に続く、僕の編集人生がスタートしたとも言える。人は時間を超えることも、遡ることも出来ない。タイムマシンやタイムワープといった“SFガジェット”は、現実には実現しそうもない。過去や未来への時間旅行は、宇宙人や魔法の力を借りない限り、無理なのだ。僕らの人生も同じだ。過去を振り返ったり、未来を想像することは出来ても、人生というタイムラインを入れ替えたり、嫌な過去を消したり、楽しかった頃を強調したりは出来ない。さらにゲームの様に生きた人生を何度もやり直し(リプレイ)することも出来ない。ところが、映像の中であれば、時間を自由に行き来出来る。カットを繋ぎ、入れ替えるだけで、時間を自在に旅することが出来る。A“ある家の玄関の前でキスをしている男女”のカット。B“お洒落なレストランで見つめ合いながら食事をする男女”のカット。この二つを並べ替えるだけで、印象は大きく変わってくる。ABだと、既に付き合っているカップルが家から出てきて、何かの記念日にレストランで祝うという物語に見える。AとBを並び替えてみる。レストランで食事をしてから、どちらかの家まで送っていき、そこで初キスをする。食事を経て、男女に恋が芽生えたというドラマティックな物語が産まれる。さらにキスシーンが夜で、レストランが昼だとすると、時間経過も大きく変わる。ABだと、二人がレストランに行くのは一泊した翌日の昼になり、彼らの愛の営みまでも連想できる。BAだと、レストランで話をしているうちに夜になり、どちらかの家まで送り、キスをしているということに。AとBの間に太陽が昇る、あるいは沈むカットを入れる(街の明かりが灯る/消えるカットでもいい)と、さらに物語を強くすることができる。編集によって、時間の操作だけではなく、二人の関係や物語をも決定出来るのだ。リアルな人生はやり直せない。しかし、想像力で編集をしてみれば、そこからまた違ういくつものストーリーを紡ぎ出せるはずだ。そのことで、よりよい未来を想像・創造が出来る。人生を素材としたストーリーテリングだ。“編集”とは僕にとってのタイムマシンであり、人生を物語ることでもあるのだ。注1:State of Play最新のゲームトレーラーやゲームプレイ映像など、PlayStationに関する情報をインターネット上で配信する番組。注2:小島秀夫監督が現在制作しているゲームの最新ティザートレーラー。注3:フィルムスプライサーフィルムを切ったり繋いだりする器具。注4:スプライシングテープ粘着剤が付きづらいものにも接着する、繋ぎ用の粘着テープ。注5:undo直前に実行した操作や処理を取り消し、元の状態に戻すこと。今月のCulture Favorite『ザ・ホエール』などを手がけるダーレン・アロノフスキー監督。俳優のマッツ・ミケルセンが来社。『DEATH STRANDING』でサムの声を演じた津田健次郎さんと。こじま・ひでお1963年生まれ、東京都出身。ゲームクリエイター、コジマプロダクション代表。’87年、初めて手掛けた『メタルギア』でステルスゲームと呼ばれるジャンルを切り開き、ゲームにおけるシネマティックな映像表現とストーリーテリングのパイオニアとしても評価され、世界的な人気を獲得。世界中で年間最優秀ゲーム賞をはじめ、多くのゲーム賞を受賞。2020年、これまでのビデオゲームや映像メディアへの貢献を讃えられ、BAFTAフェローシップ賞を受賞。映画、小説などの解説や推薦文も多数。ゲームや映画などのジャンルを超えたエンターテインメントへも、創作領域を広げている。「The Game Awards 2023」にて発表した、最新作『OD』の公式ティザートレーラーが、KOJIMA PRODUCTIONSの公式YouTubeチャンネルで公開中。『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』の第2弾トレーラーが公開中。先日、完全新作オリジナルIP『PHYSINT(Working Title)』の制作を発表。次回は、2388号(2024年3月6日発売)です。※『anan』2024年2月14日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2024年02月10日ゲーム「Death Stranding 2」の第2弾予告編が公開された。製作を手掛けた小島秀夫監督は、Xで予告編について「今回も自分で編集しました」とつづり、ゲームの正式タイトルが「Death Stranding 2 On The Beach」に決定したことを明かした。予告編には前作からお馴染みのサム(ノーマン・リーダス)、フラジャイル(レア・セドゥ)、ヒッグス(トロイ・ベイカー)や、エル・ファニング演じる新キャラクター、しゃべる小さなパペット、『マッドマックス』のジョージ・ミラー監督演じる新キャラクターが登場。小島監督によれば「物語やゲーム性のヒントを埋めんでいます(原文ママ)」とのことで、「何度か観て、お楽しみ下さい」と呼び掛けている。ファンから「編集、音楽、全体のトーン、すべてが素晴らしい予告編」「天才だ。あなたは自分のアートをさらなるレベルに高めている」「ゲームがリリースされるまでずっと観続ける!」などの感想が寄せられている。また、予告編の公開からわずかな時間しか経っていないにもかかわらず、すでに予告編を反映したファンアートがXに多数ポストされており、小島監督の英語版Xが複数リポストして紹介。忽那汐里の登場も発表されている「Death Stranding 2 On The Beach」は、2025年発売予定。(賀来比呂美)
2024年02月01日小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第9回目のテーマは「トラウマの向こうにある“好き”」です。先月のTGA(注1)で『OD』という新作ゲームを発表した。究極の“恐怖”を扱う非常に“とんがったゲーム”を目指した野心作である。昨年の秋には、この『OD』の特別企画合宿を熱海で行った。僕は子供の頃から、怖がりだった。それは今も変わらない。人には見えないものが見える、聞こえない音が聞こえる。と言っても、霊能力者ではない。感受性の強さゆえに、あらゆる刺激に過敏に反応してしまうのだ。森の木々が人に見えたり、天井のシミが歪んだ顔に見えたり、柱の影が巨大な化け物に見えたりする。だからホラー映画もオカルトも怪談も苦手だ。だが、怖がりだからこそ、誰よりも怖いものが創れるというメリットがある。ヒッチコックやスピルバーグがそうであるように。コナミ在籍時代に『P.T.』というホラーゲーム(注2)の体験版を創った。配信後、制作が中止となったこともあり、今でも多くのフォロワーが影響を受け“伝説のホラー・ゲーム”として語り継がれている。スタッフと一緒なら、怖がりの僕でも冷静に観られるかもしれない。そう思い、ある映画のBD(注3)を倉庫から発掘、熱海での合宿に持参した。どうしても観られない作品、僕のオールタイムベスト級の“怖い映画”だ(別の映画を観たいというスタッフの意見を優先し、観る機会は逃した)。それが『エクソシスト』(1973)だ。監督はウィリアム・フリードキン。昨年の8月、ロサンゼルスの自宅で肺炎と心不全のため、87歳で死去した。言わずと知れた映画界の巨匠だ。僕も多くの影響を受けた。中でも『フレンチ・コネクション』『恐怖の報酬(リメイク版)』『L.A.大捜査線/狼たちの街』などがお気に入りだ。映画を通じて、マイク・オールドフィールド(『エクソシスト』の挿入曲)やタンジェリン・ドリーム(『恐怖の報酬』のOST担当。注4)といった“プログレッシブ・ロック”という前衛音楽を教えてくれたのも彼である。訃報を聞いた夜、彼を悼んで作品を観直した。だがそれほどまでにリスペクトしている監督なのに、どうしても『エクソシスト』だけは怖くて観られない。それが日本で公開されたのは小学5年生の時。北米のわずか26館からスタートした映画は、評判が評判を呼び、世界中で空前の大ヒットを記録した。あまりの怖さに退出者が続出、心臓発作で死人が出たとの噂も飛び込んできた。口から嘔吐物を飛ばす!十字架を陰部に突き立てる!首が360度回転する!という映画の常識を超えた過激さに途中退席したという知人からの生の鑑賞譚も聞いた。「悪魔祓い(エクソシスト)」という単語さえもが、未知なる恐怖の対象だった。既にかなりの映画マニアだった僕でも鑑賞は無理だと思った。ある日、中学生だった2歳上の兄が原作本を買ってきた。その表紙のイラストがまた怖かった!青い背景に丸い窓があり、悪魔に憑依されるリーガンらしき少女のイラスト(似ていない)が載っている。左手は吊り革のようなものを握り、そのサークルの中に、笑みを浮かべた少年の頭部が逆さまに描かれている。ゾッとするイラストだった。それが本棚にあるだけで、僕は兄の部屋には入れなくなった。そこに邪悪な霊が宿っているかのようで。6年後、禁断の映画『エクソシスト』がTVで放映されることとなった。いつまでも逃げてはいられない。高校生になった僕は、決意してテレビの前に座った。日本語音声なので、少しは怖さも紛れるだろう。しかし、映画には恐怖した。以降、“最も怖い映画”として、2度と観ることはなかった。熱海の合宿後、『エクソシスト』の正統派続編と言われる話題の『エクソシスト 信じる者』が公開された。向き合うには今しかない。そう思い、10年前に購入していた『エクソシスト』製作40周年記念エディションのBDの封を開けた。60歳を超えて観直した『エクソシスト』は、怖いどころか、猛烈によく出来た映画だった。フリードキンの演出、特殊効果、音響、カメラ、役者の演技、ディテール。どのシーンも素晴らしく、完璧だった。邪悪なものに立ち向かう、人間の勇気と愛を描いた良質なドラマだったのだ。世界中で大ヒットし、今も語り継がれているのも、オカルト映画だからではなかったのだ。フリードキン監督、ごめんさない。50年間も誤解していました。あなたはやはり天才です。私は永遠にあなたを“信じる者”です。そして今、僕の眼の前に、トラウマとなったあの原作本がある。文庫版が復刊されたのだ。例の怖かった単行本の表紙は、貞子のような写真に変わっている(注5)。昨年11月に出た『エクソシスト』のソフト(注6)も購入した。原作を読んだ後に観直すつもりだ。それもフリードキンの音声解説付きで。この作品をもっと知りたいと思う。もっと好きになりたいと思う。怖さは未知から来るからだ。これから僕は、あるお祓いの儀式をする。トラウマとなった原作を読むことで“悪魔祓い”をするのだ。その“トラウマ”を乗り越えた向こうに、本当の“好き”が待っている。注1:TGAThe Game Awardsの略称で、毎年12月にアメリカで開催されるビデオゲームイベント。注2:『P.T.』プレイアブル・ティザー。2014年8月14日に無料配信され、絶賛された小島秀夫監督作品のホラー・ゲーム。注3:BDBlu‐ray Discのこと。注4:OSTオリジナルサウンドトラックのこと。注5:ウィリアム・ピーター・ブラッティの原作は、1973年に新潮社から翻訳が出版され(吊り革を握った少女のイラスト)、1977年に新潮文庫版(リーガンの顔がトレースされたイラスト)、1999年に創元推理文庫版が出版され、2023年の復刊で現在のカバーになった。注6:ディレクターズカット版&オリジナル劇場版〈4K ULTRA HD&ブルーレイセット〉(4枚組/ペーパープレミアム付き)今月のCulture Favorite新作『OD』のトレイラーに登場するハンター・シェイファー。ティモシー・シャラメと。『OD』でタッグを組むジョーダン・ピール監督と。こじま・ひでお1963年生まれ、東京都出身。ゲームクリエイター、コジマプロダクション代表。’87年、初めて手掛けた『メタルギア』でステルスゲームと呼ばれるジャンルを切り開き、ゲームにおけるシネマティックな映像表現とストーリーテリングのパイオニアとしても評価され、世界的な人気を獲得。世界中で年間最優秀ゲーム賞をはじめ、多くのゲーム賞を受賞。2020年、これまでのビデオゲームや映像メディアへの貢献を讃えられ、BAFTAフェローシップ賞を受賞。映画、小説などの解説や推薦文も多数。ゲームや映画などのジャンルを超えたエンターテインメントへも、創作領域を広げている。「The Game Awards 2023」にて発表した、最新作『OD』の公式ティザートレーラーが、KOJIMA PRODUCTIONSの公式YouTubeチャンネルで公開中。次回は、2384号(2024年2月7日発売)です。※『anan』2024年1月17日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2024年01月13日いま世界で最も話題のホラー映画『TALK TO ME』を手がけたフィリッポウ兄弟と、世界的ゲームクリエイターである小島秀夫監督の鼎談を実施!作品のことから、お互いのもの創りへの考えまで、終始ハイテンションで楽しいトークをお届け。――フィリッポウ兄弟と小島監督の出会いを教えてください。小島秀夫(以下、小島):『TALK TO ME』のティザーが公開されて、こいつはすごい!と。その後にYouTubeを見たら、特殊メイク、VFX、アクションと色々な要素が全部入っていて、しかもクオリティが高くて驚いた。この世代には勝てない、会ってみたいと思って連絡しました。マイケル:大ファンだったので、光栄すぎて慌てましたね(笑)。――小島監督のゲームをプレイしていたんですか?ダニー:もちろん!マイケル:『P.T.』(幽霊の住む屋敷の廊下をループしながら探索するホラーゲーム)は本当に素晴らしい。超クール!ダニー:小島監督は、すごく存在感がある人で。マイケル:でも、いつも楽しくて緊張感なく話せるんだよね。クリエイティブな頭をしているので、刺激を受けます。小島:ずっとテンションが高くて。僕は60歳なので羨ましい。マイケル:もし小島監督が棺桶に入ったらエナジーを与えに行くので呼んでください。小島:(笑)。敬愛するジョージ・ミラー監督も双子ですが、二人に会って初めて双子っていいなと思いました。2馬力でしょ。1人で20時間働いても時間が足りないから。たとえば、現場で俳優Aと話をしていると、その間、俳優Bとは話せない。でも双子なら同時にできるので。マイケル:たとえば何かアイデアが浮かんで、すごくクレイジーだから、他の人みんなに「できるわけないよ」と言われても、双子だから「いや、できるよ」と言えるところが強みの一つ。一応、現場ではダニーが監督で彼が演出について話します。二人が監督で入ると、「え、さっきダニーが言っていたことと違う」となっちゃうから。ダニー:喧嘩をする時は、みんなの前ではせず、スマホでテキストを打って見せる感じ。マイケル:で、僕は見ないふりをするっていうね(笑)。――YouTuberとしても活躍するフィリッポウ兄弟ですが、小島監督が作品を作り始めた時代とは、もの創りの環境がかなり異なるように思います。小島:まず発表の場があることが違いますよね。僕らの時は、脚本を書いて、カメラを調達して、友だちを騙して集めて(笑)、現像して、編集して…なので、お金もものすごくかかります。でも、今はデジタルだから、カメラもライティングもCGも全部できるし、世界中の人が見ているネットで発表できます。ダニー:今みたいに発表する場がないために埋もれてしまった、いいアイデアがいっぱいあるかと思うと悲しいね。マイケル:以前、小島監督に聞いた、子どもの頃に映画作りをしたという話がすごく面白くて、映画化したいくらい。もちろん、小島さんにも出てもらう!小島:(笑)。内臓が飛び出るシーンを撮るのに、肉屋で腸を買ってきたりとかね。実際、現場でやってみたら、人間のじゃないので大きすぎて使えなくて。ダニー&マイケル:あはははは。マイケル:夕日の話も最高!小島:夕日のシーンが必要だったけどなかなか撮れなくて、友だちのお父さんが撮っていた夕日のフィルムを切りました(笑)。――『TALK TO ME』を観ていかがでしたか?小島:ホラーというより降霊版ドラマ『ユーフォリア』という印象です。パーティ、セックス、ドラッグ、その向こうに降霊があるという。YouTubeは、導入がゆっくりしていると、視聴者が飛ばしたりするじゃないですか。でも今作は最初から編集がされていないワンショットで入っていくので、作り方を変えているのかなと。マイケル:ドラマとホラーの両方を偏りなく、バランスよく作りたかったんです。ホラーもバイオレントな要素も、ストーリーにおいて必要なものだけを入れました。弟のライリーが煉獄に行くというホラー要素の強いシーンも、2分30秒くらいあったのを15秒くらいに短くしたり。ダニー:フレームごとに細かく見ていくと、ものすごいシーンが間に入っていたりもします。小島:手が作品のアイコンとしてあることや、死者との繋がり、友だちや親とのコネクションなど、僕の作った『DEATH STRANDING』と近いところもあって驚きました。僕は、主人公が元彼と手を合わせるシーンが好きなんですけど、ビジュアルで見せていく場面なので、「I miss you」とか言わせたりしそうなところなのに、やらないのがいい。ダニー:僕もそのシーンが好きで、長引かせたいと伝えていたところなので、嬉しいです。マイケル:僕は切りたかったし、「I miss you」と言わせたかったけどね!3人:(爆笑)小島:病院の街灯が消えるシーンも撮影が難しいと思うんですけど、ワンショット撮影に慣れているんだろうなと。ダニー:でも、そのシーンは難しくて14テイクかかったかな。小島:十分、少ないですよ!ダニー:えー!マイケル:オープニングのパーティシーンは大規模なものにしたかったので、毎日インスタグラムで人を募集したところ、ものすごい人が集まってしまって。当日、Wデッカー(2階建てバス)が何台も必要だったり、さらに、現場に人が勝手に入ってきたりもして、カオスに(笑)。でも、いい絵になりました。小島:僕らもゲームなので、なるべくワンショットを狙うんですけど。今作は本当にいきなりワンショットから始まるので、現代の若者たちへの映画という感じがします。アメリカン・ニューシネマに続く、YouTube・ニューシネマになるんじゃないでしょうか。――印象的な手のビジュアルは、どのように仕上げたのでしょう。マイケル:最初は指の角度やフォルムも違いましたね。ダニー:あと、木の台に載っていたけど、腕の部分を重くして自立するようにしたり。“人と触れ合いたい”という気持ちを表現した仕上がりになりました。小島:なぜ、左手なんですか?ダニー:歴史的に悪者の手は左じゃないですか。マイケルは悪いやつなので左利きです。マイケル:でも、左利きの人ってクリエイティブだよね!3人:あははは。――影響を受けたホラー映画はありますか?ダニー:『エクソシスト』とか。『リング』は前に書いた短編にすごく影響を受けています。マイケル:『殺人の追憶』も。色々なジャンルが混ざっているところがいいです。小島:僕は悪魔とか日本の幽霊が一番怖い。ゾンビは存在するから物理的に攻撃ができるので怖くないんです。ダニー:僕は幽霊でも殴るかな。3人:あははは。マイケル:小島監督の『P.T.』は、幽霊屋敷の2階にリサがいるところが怖いよね。小島:子どもの頃、よくテレビで映画を放送していて、解説者の話があるんです。でも、夕方と夜中の映画番組に解説はなく、異国の映画が突然、前情報もなく始まるのがむちゃくちゃ怖くて。『P.T.』は、架空のスタジオの名前を使うなど、そういう怖さを利用しています。ダニー&マイケル:なるほど!小島:映画『鬼婆』(熱狂的人気を誇る1964年公開のホラー作品)もテレビで観ました。ダニー:『鬼婆』は観てなくて。小島:僕はフィッリポウ兄弟が『鬼婆』を観てると知って、この人たちイケてると思ったけど、マイケルさんだったんですね。マイケル:(小島監督とグータッチして)クールなのは僕!ダニー:わ、絶対観なきゃ。『TALK TO ME』母を亡くし、日々、寂しさを募らせていた17歳のミア。高校の同級生たちの間で降霊を楽しむ「憑依チャレンジ」が流行っていると知った彼女と親友のジェイドは、集まりに参加。久しぶりに生きる実感を味わい、虜になってしまう。しかし、ある時、守らなければならない“90秒ルール”を破ってしまい…。12月22日から丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国でロードショー。©2022 Talk To Me Holdings Pty Ltd, Adelaide Film Festival,Screen Australiaダニー&マイケル・フィリッポウ兄弟映画監督、YouTuber。1992年11月13日生まれ、オーストラリア出身。ジャンル映画愛溢れるハイテンションな動画が人気のYouTubeチャンネル「RackaRacka」を運営する双子。『TALK TO ME』で長編監督デビュー、A24製作で続編『TALK 2 ME』も決定。ゲーム『ストリートファイター』の実写化作品の監督に抜擢されたことも話題に。こじま・ひでおゲームクリエイター 1963年生まれ、東京都出身。コジマプロダクション代表。’87年、初めて手掛けた『メタルギア』でステルスゲームと呼ばれるジャンルを切り開く。独立後初となる『DEATH STRANDING』が世界的に話題となり、現在は『DEATH STRANDING 2』を制作中。映画、小説などの解説や推薦文も多数。※『anan』2023年12月27日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2023年12月23日小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第8回目のテーマは「“ヒデミス”と“推し活”」です。この冬、全国の書店では、その年のベスト作品をセレクトした恒例のミステリー・フェアが催される。有名なものは、文藝春秋の「週刊文春ミステリーベスト10」、宝島社の「このミステリーがすごい!(このミス)」、原書房の「本格ミステリ・ベスト10」、早川書房の「ミステリが読みたい!」など。1年間に出版された国内外のミステリーのお薦め新刊リストが出揃う。もはや冬の恒例行事だ。埋もれてしまう“物語”をもう一度、人の眼に触れさせる貴重な機会となる。“僕の身体の70%は映画でできている”と、公言してきたが、“身体の70%は読書でもできている”と、言い換えていいほど、僕は本が好きだ。手軽なエンタメが日常にいくらでも散らばっているSNSやサブスクの時代に、読書人口は激減している。果たして、それでいいのだろうか。本を好きになればわかる。読書は、僕らの人生や未来を間違いなく、豊かにしてくれるのだ。本を読む習慣をつけるにはどうすればいいのか?まず、本屋に出向くこと。交通費も手間も時間もかかる。帰宅時には、荷物にもなる。そのリスクと負担があってこそ、慎重に本をセレクトできる。注意点は3つ。必ず自分の財布で購入する。買う本は自分で選ぶ。買った本は興味を失う前に読む。本はナマモノ、興味を失うと積み本というただの置物に変わってしまう。星の数ほどもある本の中から、自力で“当たり”を引くことができれば、必ず次の読書へと繋がる。重要なのは、“当たり”を見極める経験を積むことだ。小説やノンフィクションは、あくまでも人が書いたものだ。だから、その9割は“ハズレ”ばかり。しかし、残りの1割には至極の“当たり”が潜んでいる。では、“当たり”はどうやって引けばいいのか?雑誌や電子書籍ではない紙の本は、年間7万冊(部数ではない)も出版されている。7万種類の新種が書店で産声を上げている。毎年、デビューする7万人の推し候補の中から、自分の推しを如何に見つけ出すのか?それにはフェアが最適だ。出版社の人、書店員、書評家たちは、この世で一番、本を読んでいる。本に厳しく、愛してもいる。彼らがセレクトし薦めている本に間違いはないはずだ。その中から、自分が選ぶ。これなら、難しくはないだろう。コロナ禍の2021年、早川書房の塩澤編集長(現シニアエディター)から、提案があった。「小島さんが選んだ本のフェアを、出版社を超えてやりませんか?」と。以前にも僕が選んだハヤカワ文庫のブックフェアをしたことがある。コロナ禍でもあったので、本で人を助けたい!と思い、快諾した。そうやって誕生したのが、“ヒデミス”だ。正式名称は、「ヒデミス! 小島秀夫が選んだミステリー・ゴールデン・ダズン」。“ダズン”なので12作品。今年で3回目になる。コロナ禍前は毎日、本屋に通っていたが、コロナ禍後は週末に本屋を数軒回るくらいにまで減った。それでも旧刊の買い直しも含め、1年に150冊くらい(漫画や画集、ムック本は除く)は購入する。献本や、コメントや解説用のプルーフやゲラも、毎日のように届く。本には困らないが、全てを読むわけにはいかず、半分くらいが倉庫入り。積み本が“罪本”になる。心の痛むところだ。昔は、待ち合わせや電車の移動などのちょっとした隙間の時間に読書をしたが、今ではスマホに余暇を奪われる。特に今年は、海外出張が頻繁にあったので、読めたのは100冊程度だった。例年に比べるとかなり少ない。書評家や書店員、作家たちと比べると圧倒的に少なく、精度は低くなってしまう。辞退しようかとも考えたが、塩澤さんの励ましもあり、続ける決意をした。そんなこともあり、今年は13作にさせてもらった。“ヒデミス”の常連作家もいるが、純粋なミステリーだけではなく、文学系の作品やSF、ホラー、ハードボイルドなどを含む、広い意味での“ミステリー”をバランスよく選択したつもりだ。この中から選ぶのはあなただ。誰の意見も聞かず、自分で決めて欲しい。ハズれても気にしない。“当たり”を引くまで読み続ける。“当たり”があれば、読書はあなたの生活の一部となるはずだ。すると、13冊では足らなくなる。もっと面白い、自分だけの本が読みたくなる。その経験をもとに、自分の好きな本を選んでみよう。他のブックフェアや帯コピーなどを参考にしてもいい。膨大な量の本の中から、自分だけの“好き”を見つける。その出逢いは、偶然ではない。それが本と出逢うということだ。そして、面白かった本は、家族や友人たちに薦め、SNSで推してみるといい。読書とはまた異なる喜びが得られるはずだ。これがヒデオのミステリーだ。「ヒデミス! 小島秀夫が選んだミステリー・ゴールデン・ダズン」選出リスト1、『ミン・スーが犯した幾千もの罪』トム・リン2、『真珠湾の冬』ジェイムズ・ケストレル3、『踏切の幽霊』高野和明4、『頰に哀しみを刻め』S・A・コスビー5、『わたしたちの怪獣』久永実木彦6、『卒業生には向かない真実』ホリー・ジャクソン7、『生存者』アレックス・シュルマン8、『怪獣保護協会』ジョン・スコルジー9、『8つの完璧な殺人』ピーター・スワンソン10、『トゥルー・クライム・ストーリー』ジョセフ・ノックス11、『ナイフをひねれば』アンソニー・ホロヴィッツ12、『グレイラットの殺人』M・W・クレイヴン13、『この密やかな森の奥で』キミ・カニンガム・グラント※リストは発売日順今年の選出リストがこちら。小島監督が“ヒデミス”を語る配信がトーハンのYouTubeチャンネル「出版区」で配信中。今月のCulture Favorite映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどでおなじみの俳優、イライジャ・ウッドとのツーショット。西島秀俊さんとの一コマ。二人が並んだ姿は、SNSで大きな話題を呼んだ。こじま・ひでお1963年生まれ、東京都出身。ゲームクリエイター、コジマプロダクション代表。’87年、初めて手掛けた『メタルギア』でステルスゲームと呼ばれるジャンルを切り開き、ゲームにおけるシネマティックな映像表現とストーリーテリングのパイオニアとしても評価され、世界的な人気を獲得。世界中で年間最優秀ゲーム賞をはじめ、多くのゲーム賞を受賞。2020年、これまでのビデオゲームや映像メディアへの貢献を讃えられ、BAFTAフェローシップ賞を受賞。映画、小説などの解説や推薦文も多数。ゲームや映画などのジャンルを超えたエンターテインメントへも、創作領域を広げている。「The Game Awards 2023」にて発表した、最新作『OD』の公式ティザートレーラーが、KOJIMA PRODUCTIONSの公式YouTubeチャンネルで公開中。次回は、2380号(2024年1月10日発売)です。※『anan』2023年12月13日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2023年12月16日大ヒットゲームを手掛けてきたクリエイターの小島秀夫に密着したドキュメンタリー『HIDEO KOJIMA:CONNECTING WORLDS』がディズニープラス「スター」にて2024年春より独占配信されることが決定した。世界中で大きなブームを起こし、日本のみならず世界で熱狂的なファンを産み出した「DEATH STRANDING」、「メタルギアシリーズ」を誕生させた、世界有数のゲームクリエイター小島秀夫。本作では、独立スタジオの設立から「DEATH STRANDING」を完成させるまでの創造過程に迫り、小島監督が創造した作品を通して、ゲームを芸術の視点から見た時の影響力や可能性を探る。小島監督をはじめ、本作を彩る豪華出演陣として、ジョージ・ミラー、ギレルモ・デル・トロ、ノーマン・リーダスらをはじめ、ニコラス・ウィンディング・レフン、グライムス、ウッドキッド、「チャーチズ」、押井守、三上真司、塚本晋也など、映画や音楽のシーンで活躍する様々なアーティストやクリエイターがコメンテーターとして本編に登場。彼らが小島監督の素顔をどのように語るのか。著名クリエイターから見た視点ならではの素顔にも注目だ。解禁されている予告編では小島監督と共に仕事をしたノーマン・リーダスが交流をふり返り、「まるでウィリー・ウォンカと一緒にチョコレート工場に入る感じだ」と評し、ギレルモ・デル・トロも「ゲームは芸術でそれを仕切る唯一の指揮者は『作家』なんだ」と、彼の持つ作家としての創造性を力説。「誰もが見たことのないものを作りたい」「人は自分でプロデュースするしかない」と笑顔で語る小島監督の姿が印象に残る。会議中の場面も和気藹々とした空気となっており、彼の人柄が窺えるシーンが描かれている。『HIDEO KOJIMA:CONNECTING WORLDS』は2024年春、ディズニープラス「スター」にて独占配信。(シネマカフェ編集部)
2023年12月08日小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第7回目のテーマは「フィジカルなクローゼット」です。クライテリオン・コレクション社(注1)が運営する「Closet Picks」という人気企画がある。クライテリオン社のNY本社にある映画ソフト棚にゲストを迎え、各人が選んだフェイバリット作品を映像配信で紹介するのだ。映画監督は勿論、世界中の映画関係者が呼ばれる。その名誉ある“クローゼット”の案内人に指名された。ゲーム業界からの参加は初めてだという。あえて’50~’60年代の邦画を選んだ。黒澤明、小津安二郎、溝口健二、小林正樹、新藤兼人、勅使河原宏、中川信夫らの作品の中から特にお薦めの映画を9作品。誰もが名前くらいは聞いたことがあるはずだが、これらの名匠たちの作品を日本で観ることは難しい。サブスクや、BD(ブルーレイディスク)で鑑賞できる作品は限られている。ところが、米国のクライテリオン社からは、多くの邦画の傑作がBD化されている。海外のクリエイターたちは、これらの邦画を当たり前のように観ては勉強を重ねている。この皮肉な事実を伝えたかったのだ。子供の頃、映画を個人で所有することは、“夢”だった。劇場かTVで観ることしかできない。瞬きも惜しんで、映画のワンカットずつを記憶した。映画は、特別な体験だったのだ。学生時代の1970年代後半、ようやく家庭用ビデオが発売される。映画を個人で所有できる!これは人類が月面に降り立つのと同じくらい、衝撃的だった。ただし、当時のVHSソフトは、個人で購入するには高価だった。レンタルか、ダビングで我慢するしかない。ビデオテープは観るたびに、ダビングするたびに劣化してゆく。その後、レーザーディスクが登場。シネフィルはこぞって、高画質な映画を買い揃えた。映像特典も魅力だった。10年後、DVDが爆発的に家庭に浸透。DVDは何度観ても劣化しないが、まだまだ劇場クオリティには程遠かった。それでも映画ファンたちのクローゼットは拡大していった。続いてTVの進化と相まって、さらに高画質なBDが登場する。現在では、過去の名作群が、4K UHDやフィルム素材からデジタル修復(リストア)された至福のラインナップが次々と登場している。映画ファンたちのクローゼットは、まさに物理的に――フィジカルにヤバくなってきている。デジタル化してサーバーに保存すれば、“クローゼット問題”は解決するだろう。サブスクならば、買い直しの必要もない。しかし、サブスクへの不信感は否めない。たとえば、音楽。僕は未だにCDを買い、パソコンを経由してWALKMAN(注2)に取り込んだ曲を聴いている。CD化されていない過去の楽曲やデジタル配信のみの新曲は聴きようがない。だからサブスクでの体験は斬新だった。楽曲は豊富で手軽だ。フィジカル化されていない懐かしい曲との再会に喜びもした。確かに便利だ。しかし、既にサーバーにあるものを引き出して聴くだけ。自分だけのコレクションをそこに追加することはできない。錯覚をしてしまいそうだが、“自分のもの”ではない。他人が所有し、運営するデータベースの蛇口を捻る権利を一時的に付与されているだけなのだ。サブスクの映画も同じだ。国や企業、団体、時代や規範が蛇口の権限を握る。蛇口を規制され、いくら捻っても“自分のもの”が、出てこない未来は起こりうる。自分だけが好きなもの、自分だけの思い出が、一方的に他者に否定されてしまうリスクがある。イーロン・マスク氏がツイッター社を買収、「X」と名称を変えた際、ある噂が流れた。「10年以上前の投稿画像データは全て消される」と。幸いデマではあったが、それはいつ起こってもおかしくはない。政変や紛争、大災害などでサーバーが沈黙したら、蛇口どころか、何も残らない。デジタル版『華氏451度』(注3)さえ現実になりかねない。しかし、化石や壁画、ピラミッド、彫刻などフィジカルなものは、風化しても何千年もの時を超えて残る。それらには歴史の残り香がある。肌触り、重量、匂いがある。デバイスを必要とせず、思いを馳せることができる。劉慈欣の『三体』の、“文明のなかで最も残るメディアは石に刻まれた文字だ”、という記述を思い出した。僕のクローゼットは、資料置き場とは異なる。単なる資料ならば、デジタルの方が機能的だ。そこは、映画や本や音楽たちとの“思い出”を保管する場所なのだ。好きなものを所有する。それは独占欲ともまた違う。モノは場所を取るし、劣化し、色褪せるから、手入れも必要。永遠ではない。老化する肉体を持った僕ら人間たちと同じだ。厄介だけれど愛すべき存在。その大好きなものをいつも側に置きたい。好きな時に触って、眺めては、過去と繋がっていたい。だから、僕には好きなものたちを仕舞う“フィジカルなクローゼット”が必要なのだ。そうは言っても、個人が所有できる映画の数は、たかがしれている。企業が運営するサブスクには敵わない。だからこそ、そこは“僕だけのクローゼット”なのだ。そこには、僕の人生が並んでいる。「Closet Picks」出演で頂いた北米盤の名作たちをクローゼットに並べてみる。また“思い出”たちが、僕の元に戻ってきた。注1:アメリカのソフトメーカーで、歴史的に重要な名作映画のディスクを販売。古典作品のリマスターなども行っており、映画ファンからの信頼も厚い。注2:SONYのポータブルオーディオプレーヤー。注3:レイ・ブラッドベリの小説で、本の所持や読書が禁じられた架空の社会が描かれている。今月のCulture Favoriteクライテリオン・コレクション社「Closet Picks」の一コマ。Photo courtesy of the Criterion Collectionモーションキャプチャーの現場での、押井守監督との一枚。ロンドンで会ったアレックス・ガーランド監督と。こじま・ひでお1963年生まれ、東京都出身。コジマプロダクション代表。’87年に初監督作『メタルギア』でデビュー。独立後初となるタイトル『DEATH STRANDING』が世界で大きな話題を呼んだ。現在、その続編となる『DEATH STRANDING 2』の制作中。ドキュメンタリーフィルム『HIDEO KOJIMA ‐ CONNECTING WORLDS』の予告編が、KOJIMA PRODUCTIONSの公式YouTubeチャンネルで公開中。次回は、2376号(12月6日発売)です。※『anan』2023年11月15日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2023年11月11日女優の本田望結、本田紗来が、発売中のマンガ誌『週刊ヤングマガジン』(講談社)第47号のグラビアに登場している。望結は2004年6月1日生まれ、紗来は2007年4月4日生まれで、2人とも京都府出身。子役時代から活躍し、それぞれドラマ、映画、CMやバラエティなどに出演する。今回は、国民的美少女姉妹が同誌に初登場。漫画誌の撮影の仕事は初めてだという2人が、秋の北海道で撮り下ろしを敢行し、ここでしか見られない姉妹の絆を誌面に収めた。
2023年10月26日女優の本田翼が出演する、アダストリア・GLOBAL WORKの新CM「『メルティニットは、まちがいない服。冬」編が、26日より放送される。新CMでは、本田が「メルティニット」の包み込むような暖かさと、リラックスできるとろけるような着心地を表現。犬のバディーと無邪気にじゃれ合ったり、ソファにくつろぎながらメガネ姿で本を読みリラックスしたり、自然体で豊かな表情を見せている。また、声優・津田健次郎がナレーションを担当。心地よくしなやかな大人なボイスと、本田の演技とのコラボレーションが実現した。さらに津田が声でナビゲートする特設WEBコンテンツ「津田健次郎のメルティニットラジオ」も公開される。■本田翼インタビュー――撮影を終えた感想を教えてください。今日の撮影は“冬”がテーマになっています。日常の生活の中で「メルティニット」を着用して過ごす様子を演じさせていただきました。わんちゃん(バディーくん)と生活する様子も撮影したので、普段の自分の生活に近い感じでとても楽しく撮影をすることができました。――CM撮影当日は猛暑でしたが、スタジオセットで初雪を見ながらの撮影はいかがでしたか?(猛暑日に撮影を行い、撮影セットでは雪を降らせていたため)スタジオでは雪が降っているのに、外に出ると暑くて、とても神秘的な気持ちになりました。――バディーくんとの再共演はいかがでしたか?相変わらずいい子でした。再共演ということもあり以前よりも仲良くなってきた気がします。そんな様子もCMを通して伝わったら嬉しいです!――今回初となる「メルティニット」のCM撮影で、今日も1日着用して撮影いただきましたが、着心地はいかがでしょうか?一切チクチクしないことにとても驚きました! 大きすぎず小さすぎずバランスのとれたサイズ感と柔らかい肌ざわりで着やすかったです。――着用いただいた「メルティニット」は、カラーバリエーションがたくさんありますが、何色が好みでしょうか?今年の秋冬はカラーがあるものも沢山着たいと思っていますが、今日着用させていただいている”モカ色“が上品さもあり普段使いもしやすい色味なので気に入りました!――今回のCM撮影では初雪の演出がありましたが、本田さんがしたいこの冬の過ごし方を教えてください。この冬は鍋をしたいなと思っています。その他は、雪山などにも行ってみたいです! 例年はおうちでゆっくりゲームをして過ごすことが多いので、今年は目標として普段はしない過ごし方をしてみたいです。日本の素敵な景色が見られるスポットや、雪景色がきれいな長野や北海道に行ってみたいです。――今年はパンツの他に、ブラウス、ニットの商品も増えて、アンバサダーとして様々な商品に触れていただきましたが、本田さんにとってGLOBAL WORKを一言で表すとどんなブランドだと思いますか?パンツもブラウスもニットも「まちがいない服」です。GLOBAL WORKの服を着れば、“絶対にはずさない。これを着ればキマる!”という安心感があります。――「メルティニット」のCMを見る方に一言お願いします。メルティというだけあり、とろけるような肌触りになっていますので、是非みなさんに体感していただけたら嬉しいです!
2023年10月26日小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第6回目のテーマは「60歳をどう生きるか」です。夏の終わり、初めてシニア料金で映画を観た。入口で身分証明書の提示もなく、変わりない鑑賞だった。この8月24日で“還暦”を迎えた。そもそも還暦とはなんなのか?石器時代の平均寿命は15歳だというから、60歳という年齢はとてつもない。しかし現代の日本人男性は平均して81歳まで生きるという。それを思うと、60歳がめでたいのかわからなくなる。たまたま誕生日は、セルビアでキャストの撮影をしていた。現地のスタッフにお祝いをして貰った。帰国後には、コジプロで“監督還暦祝いの会”を開催していただいた。赤い革ジャン、赤いベルト、赤い靴、赤いヘッドホンを装着、全身が真っ赤に。僕の顔も赤くなる。そして、M78星雲から、真っ赤なウルトラセブンのサプライズ登場まで!僕の家系には、男性に早死の傾向がある。親父は45歳で亡くなった。親戚の叔父たちが長生きした記憶はない。だから幼い頃から、寿命への漠然とした強迫観念があった。自分が父親の45歳を超えた時には、なんとも言えない気持ちになったものだ。親父を超えて生き続けている。自分はもう大丈夫だ。そこから死の恐怖を意識はしなくなった。ただコロナ禍を経て、誰もが平等に死ぬことを悟った。自分も例外ではなく、いつかは死ぬ。あのタイムリミットを思い出した。さらに、2020年に大きく体調を崩すことがあった。生涯で初めて、「制作はもう続けられないかも?」と最悪の未来をも考えた。僕のリタイア後もコジプロを存続させる必要がある。そこで、企画草案メモが詰まったUSBを秘書に、遺書を付けて渡した。「何かあればこれを。これで数年は持つはずだ」と。幸い、体調は回復、現場に復帰することが出来た。死なないまでも、物創りが出来なくなることはあるのだと、自覚を新たにした。僕が業界に入った1986年時には、「ゲーム開発の寿命は20代後半まで」と言われていた。柔軟な頭脳と体力が求められる、長くは携われない職業なのだと。会社員として、一発当てたゲーム開発者は、所属長に抜擢される。マネージメントを覚え、管理職に就く。さらに、経営陣として参画する場合もある。僕はKONAMIでは二足の草鞋を履くことを選んだ。「経営と制作(開発)のどちらもやる、だから現場も続けさせてください」と。50歳を過ぎて、独立スタジオを立ち上げたのも、現場でクリエイトを続けるためでしかない。ゲーム業界では、60歳を超えて現場で物創りをベタでしているクリエイターはほとんどいない。ところが、これが映画業界となるとまるで話が違ってくる。今も現役で活動を続けている巨匠たちがいる。スティーブン・スピルバーグは76歳、ジョージ・ミラーは78歳。デヴィッド・クローネンバーグ、ポール・バーホーベン、リドリー・スコット、ブライアン・デ・パルマ、ダリオ・アルジェント、ミヒャエル・ハネケ、マーティン・スコセッシ、マイケル・マンたちは、80歳を超えている。ウィリアム・フリードキンは87歳で亡くなったが、最期まで映画を撮り続けていた。宮崎駿監督は82歳で『君たちはどう生きるか』を創った。『千と千尋の神隠し』が60歳の時の作品なので、その後の約20年間で5本を創ったことになる。僕が宮崎さんのように80歳まで現役を続けられたとしよう。どんな作品を、何作創るべきか。現在、僕がどっぷりかかわっているオリジナル作品は、『DS2』と“とんがったゲーム”の2本。同時進行もあるだろうが、20年でせいぜい5、6本だろうか?隠居生活は頭にはない。生涯現役で物創りを続けたい。映画やアニメ、PVのオファーは、KONAMI在籍中からいくつもあった。独立後は格段に増えた。だが、コジプロを立ち上げて社員を抱えている以上、映画創りでスタジオを数年開けることも、抜けることも許されない。残りの人生をどうするか?ゲームか?映画か?選択を迫られる。ここ数年はそのストレスが尋常ではなかった。それを朋友ギレルモ・デル・トロに相談する機会があった。「ヒデオが創っているものは、唯一無二の“映画”だ。今のままの物創りを続けるべきだ」と、彼は応えた。そこでこの先10年の優先順位を決めた。映画の企画はとりあえず保留、独立後、オリジナルの3作目となる大作ゲームの企画を頭の中だけで始めた。宮崎さんの最終作品が北米でも上映された時に、デル・トロがSNSで発した言葉が素晴らしい。“I will joyfully watch his latest rather than his last.”――最後の作品としてではなく、彼の最新作として楽しむつもりだ。寿命は自分で決めるものではない。作品もそうだ。これからの僕の作品も、常に最新作として生まれてくるのだ。60歳とは、ただの通過点でしかない。“シルバー”な隠居ではなく、“燻銀”の現役でいたい。今月のCulture Favoriteセルビアの撮影スタッフに現地で還暦を祝ってもらった時の一枚。還暦祝いのプレゼントでもらった紅革ジャン。ケータリングサービス「ライムンダ」さんの、真っ赤なオリジナル誕生日ケーキ。こじま・ひでお1963年生まれ、東京都出身。コジマプロダクション代表。’87年に初監督作『メタルギア』でデビュー。独立後初となるタイトル『DEATH STRANDING』が世界で大きな話題を呼んだ。現在、その続編となる『DEATH STRANDING 2』の制作中。ドキュメンタリーフィルム『HIDEO KOJIMA ‐ CONNECTING WORLDS』の予告編が、KOJIMA PRODUCTIONSの公式YouTubeチャンネルで公開中。次回は、2372号(11月8日発売)です。※『anan』2023年10月18日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2023年10月21日アイドルグループ・AKB48の本田仁美が19日、都内で行われた「Calvin Klein グローバルイベント in TOKYO」に出席した。同イベントは、アメリカ発のデザイナーズ・ライフスタイル・ブランドであるカルバン・クラインによる、一夜限りの音楽&ファッションイベントで、テーマは「MUSIC MEETS FASHION」。国内外の著名人がカルバン・クラインのファッションを身にまとって参加した。本田は、デニムコーデに黒のショートブーツを合わせたさわやかなコーディネートで、ミニスカートからすらりとした美脚を披露。笑顔を見せながら撮影に応じた。イベントには、池田エライザ、imase、UTA、佐野勇斗(M!LK)、ジョングク(BTS)、SKY-HI、曽野舜太(M!LK)、仲里依紗、西内まりや、ブライト、森星、山本舞香らも出席した。
2023年10月19日人間と物を分け隔てしない友達が自転車に乗っていて転んだとき、自閉スペクトラムの特性がある子どもが自転車に「大丈夫?」と声をかけたという話があります。多くの人はそのような場面で、まず人間のことを心配します。しかし、人間と物を同列に見て、「友達は平気そうだけど、自転車は壊れたかも」と考える人もいるのです。自閉スペクトラムの特性がある子どもが、人に興味がないわけではありません。そうではなくて、人間と物を分け隔てしない。平等に考えるのです。そう理解したほうが、お子さんの心理を想像しやすくなると思います。※「特性=障害」とはならないため、障害(Disorder)を除いて、「自閉スペクトラム(AS)」、「注意欠如多動(ADH)」ということもあります。このコラムのなかでも、『マンガでわかる発達障害の子どもたち 自閉スペクトラムの不可解な行動には理由がある』と同様に「自閉スペクトラム」と表記しています。自閉スペクトラムの子のアタッチメント「人間と物を平等に見ている」ということが、親子の「アタッチメント(愛着)」を形成する場面にも表れることがあります。一般的には「愛着形成」というと、子どもが親に見守られて安心・安全を感じて、親子関係に愛着を持っていくような流れのことを指しますが、自閉スペクトラムの特性がある子の場合、対人関係が必ずしも重要なわけではありません。それよりもむしろ一貫性や継続性、法則性を安心・安全の根拠にするところがあります。自閉スペクトラムの特性がある子は親との関係に対して、情緒的に特別な意味を持たないことがあるのです。「この人は母親だから特別」という形で愛着を持つというよりは、「この人はいつも同じようにふるまってくれる」という点で相手を信頼し、愛着が生まれていくようなところがあります。大人の同じふるまい、予想通りの行動に安心感相手の行動に一貫性があることで安心し、安全だと感じて、相手を信頼していく傾向があるのです。そのため、愛情深くても気まぐれな人に対しては安心を感じにくいところがあります。それよりも、いつも同じようにふるまう人、自分の予想通りの行動をとる人のほうが信頼できるわけです。Upload By 本田秀夫ルーティンのある生活が安心材料になるですから、決まったルーティンの生活をすることが、自閉スペクトラムの特性がある子にとっては安心材料となります。幼児期にまるで判で押したように「パターン化」した暮らしをして、情緒的に安定して育つと、大きくなってから多少のイレギュラーが起こっても、メンタルに影響しにくくなります。生活の基本的な部分が安定しているので、情緒的に揺れにくくなるのですね。親のもともとの生活スタイルもあると思いますが、子どもが望む一貫性や継続性などを考慮して、親子で平和に過ごせるルーティンをつくっていくことをおすすめします。「いろいろな経験をさせたい」で情緒不安定になることも反対に、小さい頃から「早くいろいろなことに慣れさせなきゃ」と言われて、習い事などに頻繁に連れ出されていた子の中には、情緒不安定になる子もいます。もちろん、新しい課題も多少はあってもいいのですが、毎日予想外のことが起きて、気持ちが疲れてしまうような生活を送っていたら、「いつもと同じ」を好むタイプの子はなかなか安心できません。情緒的に安定した暮らしが送れなくなってしまうわけです。「北風」よりも「太陽」のようなサポートを私は、自閉スペクトラムの特性がある子への接し方は「北風と太陽」でいうところの「太陽」がよいと考えています。「北風」を吹かせるようなやり方で無理やり特定の活動をさせようとしても、かえってこだわりが強くなり、抵抗されることが多いです。それよりも「太陽」のようにあたたかくサポートしながら、本人が動き出すのを待つほうがいいでしょう。Upload By 本田秀夫自閉スペクトラムの特性がある子はルーティン化した生活をしていると、自分のほうからパターンに飽きて、新しいことに取り組み出すことがあります。人間は安心・安全を保障されると、慣れるのも飽きるのも早いのです。こだわりの強い子も、安心感のある環境で育つと、自発的に行動パターンを広げていきます。一人で好きな遊びを楽しむのを見守るという愛情自閉スペクトラムの特性がある子に、新しい経験をさせること自体が悪いわけではありません。子どもが安心して新しい経験に取り組めることが重要なのです。その安心感を自閉スペクトラムの特性がある子は対人関係というよりは、一貫性のある生活の中で感じ取っていきます。子どもが人にあまり興味を示さず、一人で遊んでいると、周りの人から「もっと愛情をかけて」「接する時間が足りないのでは」などと言われることがあるかもしれません。しかし、話しかけることだけが愛情の示し方ではありません。子どもが1人で好きな遊びを楽しんで、安心して暮らせるように見守ることが、最大の愛情表現になることもあるのです。あるお子さんが親御さんに、こう言ったそうです。「お母さん、何も話さないで見ていてくれるのも『好き』っていうことなんだよ」親子でこのような信頼関係を意識できると、お互いに安心して、穏やかな暮らしができるのではないでしょうか。(コラム内の障害名表記について)コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。神経発達症発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。ASD(自閉スペクトラム症)自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
2023年09月29日小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第5回目のテーマは「乗り継ぎへの全力疾走」です。子供の頃、よく“全力疾走”したものだ。公園で、運動場で、河川敷の堤防で。何かを追いかけていたのか?何かに追われていたのか?誰かと競争していたのか?それとも、外の世界へ飛び出そうとしていたのか?ただ走るのが楽しかった。あれから50年。日常生活で走ることはなくなった。年齢的に“全力疾走”はやめた方がいいとインストラクターにも注意されている。6月末、セルビアでの撮影を終えて帰国する為、ベオグラード空港にチェックインした。東京までの直行便はない。フランクフルトで羽田行きの便に乗り継ぐ。乗り継ぎには2時間の余裕を取っていた。ラウンジで仕事の成功を祝う乾杯をしながら出発を待っていると、「フランクフルト行きの便が遅延」との案内。2時間近くもの遅れだ。航空会社に相談してみたものの、ギリギリ間に合うかどうか?とのこと。遅れると帰国便はもうない。案の定、2時間遅れでフランクフルトに到着する。真っ先にボーディング・ブリッジを駆け抜け、ターミナルビルに!そのつもりだったが、なんと、出口から伸びていたのは、地上へのタラップ?!しかも待機していたのは、数台連結のバス!乗客全員が乗り込むまでバスは出発しない!さらにバスが送り届けてくれたのは、隣のターミナルのA!乗り継ぎ便が待つのはターミナルのB!これはまずい!そう思った時、出口で「TOKYO」のプラカードを持った空港職員の40代くらいのドイツ人女性を発見!「20分以内でゲートに着かないと乗り遅れます!私について来てください!」と、女性はそう言って唐突に走り出した。「え?走るの?!」。僕は大きなバッグを背負い直して、彼女を真似て“小走り”を始めた。裏道をショートカットすると思いきや、そうではなかった。彼女は正規のルートを、一定のスピードを保ったまま進んでいく。走り慣れていない僕には、“小走り”さえもきつい。ただ乗り継ぎには、出入国管理場(パスポート・コントロール)は通過しない。それで時間が稼げる?!だがそこはトラムのホーム。どうやら、隣のターミナルまでトラムで移動するらしい。彼女は冷静沈着に、「あと10分!」と航空会社と無線連絡を交わしている。しかし、当のトラムはなかなか来ない。筋肉だけではなく、胃まで痛くなる。到着したトラムに駆け込み、ターミナルBで降りる。セキュリティ・チェックが待っていたが、問題なく通過。あの空港職員がいない!見失った?!と、彼女が廊下の向こうで手を振っている。ゲートはまだまだ先!停止している空港内の電動カートを尻目に、また“小走り”を再開する。今いるのは10番ゲート、目指すのは42番ゲート?!随分と先だ。彼女は、ペースを崩さず進んでいく。驚くべき体力。僕には、このラストスパートは辛かった。諦めてもいい?そんな弱音が一瞬、頭を過(よぎ)った。なんとか搭乗ゲートに到着。ヘロヘロになりながらも、ゴールイン。乗客がいなくなったゲートでチケットを見せる。航空会社のCAは「荷物は間に合わないかも知れません」。あの女性を探したが、“小走り”の天使の姿はもうなかった。お礼は伝えられなかった。彼女は幻だったのか。結局、離陸機が混雑していたとのことで、1時間以上遅れての離陸となった。おかげで絶望視していた荷物の積み込みも完了。本当にあそこまで走り続ける必要が、あったのだろうか。空港での乗り継ぎには、リスクが付き纏う。乗り遅れたり、荷物がなくなったり、スーツケースが壊れたり。なるべくなら、直行便が安心だ。でも、長い人生には、乗り継ぎや乗り越しは、必然。7年前、僕は大きな“乗り継ぎ”、いや、“乗り換え”を行った。30数年間勤めた会社を去り、自分の機体となる“コジプロ”を創った。僕が“全力疾走”していたのは、乗り継ぎの為ではなかった。“物創り”という大きな目的地に向けての“全力疾走”だったのだ。僕はもう機体を乗り換えない。同じ機体(スタジオ)で給油と乗組員(スタッフ)の交代をしながら飛び続ける。僕の新たな冒険はノンストップ便だ。だから、この旅は“トランスファー(注1)”ではなく、“トランジット(注2)”だ。もう自分の機体も、目的地も、変えるつもりはない。この機体で“全力疾走”を続ける。いま、僕は再び“乗り継ぎ”の危機に直面したフランクフルト空港にいる。ベオグラードからの便が、機材の遅延と雷の影響で離陸が大幅に遅れた為だ。ヨロヨロと迎えに来たバスに乗り込み、時計を確認する。出発時刻まで僅か10分!前回よりもシビアな状況だ。他の乗客たちも殺気立っている。乗り継げるかどうか?“全力疾走”が試される。注1:トランスファー目的地へ向かう途中の空港で飛行機から降り、最終目的地へ向かう別の飛行機へと乗り換えること。注2:トランジット目的地へ向かう途中の空港にいったん着陸し、燃料の補給や清掃、クルーの入れ替えを行い、再び同じ飛行機で最終目的地へ向かうこと。今月のCulture Favoriteフランクフルト空港での全力疾走の乗り継ぎの様子。映画『NOPE/ノープ』などで知られるジョーダン・ピール監督、ホイテ・ヴァン・ホイテマ撮影監督と、お揃いの上着で記念撮影。今年12月日本公開予定のホラー映画『Talk to Me』を監督した、フィリッポウ兄弟と。こじま・ひでお1963年生まれ、東京都出身。コジマプロダクション代表。’87年に初監督作『メタルギア』でデビュー。独立後初となるタイトル『DEATH STRANDING』が世界で大きな話題を呼んだ。現在、その続編となる『DEATH STRANDING 2』の制作中。ドキュメンタリーフィルム『HIDEO KOJIMA ‐ CONNECTING WORLDS』の予告編が、KOJIMA PRODUCTIONSの公式YouTubeチャンネルで公開中。次回は、2368号(10月11日発売)です。※『anan』2023年9月20日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2023年09月17日女優の本田翼が出演する、アダストリア・GLOBAL WORK「ウツクシルエットパンツ」の新CM「テーパードもワイドも編」が14日より放送される。○■本田翼、ウツクシルエットパンツを着こなす新CMでは、これまでCMで展開してきた「ウツクシルエットパンツ」のテーパードパンツに加えて、ワイドパンツが初登場。オフィスでかっこよくプレゼンをしたり、同僚や友達と和気あいあいとランチに向かったり、本屋で好きな雑誌を見つけて旅行の計画を立てたりと、本田はウツクシルエットパンツを着こなしながらさまざまなシチュエーションを演じている。また、新CMには、いま話題のアーティスト・imaseの楽曲「I say bye」を使用。新CMの解禁に合わせて、フルバージョンのストリーミング配信が開始する。○■imase コメント「I say bye」がGLOBAL WORKさんのCMタイアップ曲になったことを光栄に思います! この曲は活動初期にSNSにサビだけ投稿していた楽曲で、ファンの方々から早くフルで聴きたいとたくさんコメントを頂いていました。その楽 曲を今回このような素敵なCMに使用していただけること、とてもうれしく思っています。また今回、GLOBAL WORKさんの店頭でミュージックビデオが見られたり、僕のライブご招待などが当たるガチャキャンペーンも行われています! 是非、店頭にも遊びに来てもらえるとうれしいです!
2023年09月14日フィギュアスケーターの本田真凜、本田望結姉妹が27日(20:00~)、ABEMAで配信された特別番組『「ワンピース・オン・アイス」完全攻略ガイド何度でも楽しめる予習復習SP』に出演。『ワンピース・オン・アイス~エピソード・オブ・アラバスタ~』で演じる役について語った。○■『ワンピース・オン・アイス』の裏側に迫る番組『ワンピース・オン・アイス』は、TVアニメ『ワンピース』シリーズ史上初のアイスショー。11日より横浜公演が開催されると、『ワンピース』とフィギュアスケートの融合を実現させた演出や、日本屈指のスケーターたちの名演に称賛の声が集まっている。同番組では、そのアイスショーを徹底解説し、サンジ役の島田高志郎、トニートニー・チョッパー役の渡辺倫果、ボン・クレー役の本郷理華が出演。3人がオファーを受けた際の心境や、役作りのポイント、話題を呼んだバトルシーンの表現など、『ワンピース・オン・アイス』の裏側に迫る。○■ビビ役・本田真凜とナミ役・本田望結が出演また、ビビ役の本田真凜、ナミ役の本田望結らメインキャスト陣への独占インタビュー映像も公開。ビビを演じるにあたり、「役者に近い部分の演技というのが初めての経験だったので、最初はすごく難しいなっていうのが正直な感想でした」という真凜。女優でもある妹の望結から刺激を受けたそうで、「妹が女優さんのお仕事で小さい頃から培ってきたものを、改めてすごいなって肌で感じた」と真凜が絶賛すると、望結は照れながら「今のカットだけ個人的に後で動画ください」と笑いを誘う。一方、望結は女優だからこその難しさもあり、「普段はいかに小さな動きで心の動きを伝えられるかという勉強をしてきたのですが、氷上では大きく、大げさにやらないといけないので、普段とは真逆の演技をするのは苦労しましたし、大丈夫かなって思っていました」と吐露。○■“二兎追う者しか二兎を得ず”の精神共演者やファン、そして初日公演を見に来ていた家族からも絶賛されて一安心した望結だが、「私は普段、“二兎追う者は一兎も得ず”を“二兎追う者しか二兎を得ず”って自分の言葉に変えて、好きな言葉として言ってきたんですけど、両親がまさにそうだったよって言ってくれて」と瞳を潤ませる。「このショーのために、小さい頃から中途半端かもしれないけど、お芝居とフィギュアを続けてきたのかなって思うくらい、それくらいのショーに出させていただいてるなって感じました」と涙ながらに喜びを伝えていた。なお同番組は、9月17日まで無料で視聴可能。また、「ABEMA PPV ONLINE LIVE」では、9月3日に名古屋にて開催される『ワンピース・オン・アイス』“大千秋楽”を独占生配信する。(C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション(C)AbemaTV,Inc.
2023年08月31日小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第4回目のテーマは「個性を“ オーダーメイド”する」です。トライベッカ映画祭(注1)で、ドキュメンタリー映画『HIDEO KOJIMA ‐ CONNECTING WORLDS(注2)』がワールドプレミア上映されるという。そこで、久しぶりにスーツに袖を通してみた。ところが、前ボタンが締まらない。太った?この間、スーツを着たのは、昨年の芸術選奨文部科学大臣賞の授賞式だったか。これでは登壇出来ない。痩せるか?あるいは、新調するか?スーツは、もともと立襟式の軍服から派生した。個を埋没させ、集団統制と画一化を目的にしたもの。その後、第一ボタンを外し、立襟を外側に折り返した民間用が、一般化して現在のスーツに。つまり、軍服も学生服もセーラー服もスーツも、“個”を縛る為の鎧ということになる。僕の父親は高度成長期に“企業戦士”と謳われた昭和のサラリーマンだった。春夏秋冬、ダークスーツにワイシャツ、ネクタイを締め、疲弊した革靴を履いては、家と職場を往復するモノクロな毎日。だから、スーツという鎧を纏う仕事を選ぶのには抵抗があった。公立の詰襟の制服を中高と纏わされていたせいもある。ゲーム業界に入った理由のひとつは、ラフな私服で通勤出来るからだった。しかし、日本では制服やスーツを纏わない私服ワーカーだと、遊び人の“不良オヤジ”として分類されてしまう。ジーパンにTシャツ、スニーカー姿なのに、学生でも定年退職者でもない中年の私服姿。30代、40代の頃、終電を逃すと、タクシーを拾って深夜に帰宅した。乗車早々、「飲み会ですか?」と不躾な態度で聞かれる。「仕事の帰りです」そう答えると「お互い大変ですね」と労いの言葉が返ってくる。それでも「お客さん、テレビ関係の人?」と、服装への偏見は生きたまま。ところが、これがスーツ姿となるとまるで違う。「お仕事、遅くまでお疲れ様です!」と、お礼まで言ってくれる。どうやらスーツは、「勤勉な日本国民」という社会的認定証のかわりになるらしい。コナミ在籍時は、役員会や経営会議、本社でのグループ会議と、月1ペースでスーツを引っ張り出していた。たまに纏うと、不思議と世界が違って見える。周囲の反応や態度が変わるのだ。だから、スーツで出勤した日は、普段は味わえないサラリーマン気分を満喫するよう努めた。行きつけのカフェでは、いつもは声をかけてこないお姉さんに「今日は素敵ですね」と褒められる。六本木の繁華街を歩けば、私服だと絶対に近寄っては来ない客引きの女性に肘を掴まれる。外来で医者にかかれば、いつもより丁寧に診てくれる。ネクタイを緩めてカラオケで流行歌を唄い、酩酊して山手線の吊り革にぶら下がる。マスに紛れ、自分をスーツに隠す。僕は“ソーシャル・ステルス”と呼んだ。ただオーダーメイドのスーツに頼るようになってから、それは間違いかも?と思うようになった。スーツのライン、デザイン、生地、色、ボタン。組み合わせは無限。スーツ創りは、完成図を頭に描きながら、細部を組み合わせていくクリエイティブな行為だ。個性を消し去るのでなく、ある秩序(ルール)の下で、自分らしさを如何に埋め込むかの勝負。まさに現代の社会で生きる我々の姿ではないか。数年ぶりに訪れたテイラーで今回、選んだ素材はこれ。ジャケットは、骸骨のカモフラ柄がストライプの間から垣間見える布地。下襟(ラペル)部分とズボンは、虎の顔が透かしで入った布地。裏地(ライニング)は、薔薇と骸骨のカラフルな柄布。フロントボタンは、2ボタン。裾はスリム用のセンターベント。トライベッカ映画祭当日。楽屋に出演者が顔を合わせた。前説を行うのは、朋友ニコラス・W・レフン監督。いつものように上から下まで新調のプラダでキメてきた(彼はプラダのアンバサダー)。上映後のQ&Aの司会役は、親友ジェフ・キーリー。そしてドキュメンタリーの監督は、僕の音楽の友グレン・ミルナー。彼らもこの特別な夜の為に、思い思いのオリジナル・スーツを新調してきた。3人の朋友たちと舞台に上がる。スーツメンは、画一性をもたらすどころか、それぞれの個性を引き立てるかのように、気ままに振る舞う。やがて4つの個性は、持ち寄った鎧を纏ったまま、壇上でひとつになる。その様は、セッションを演奏するバンドマンそのもの。こんなスーツなひとときも、気持ちいいものだ。もっと好きになってもいいかも。新しいもの、自分だけのものをオーダーする。そこに発見がある。人生も同じだ。注1:俳優のロバート・デニーロらによって設立された、ニューヨークで行われるインディペンデント映画祭。今年は6月7日~18日に開催された。注2:小島監督の幼少期のエピソード、独立スタジオの設立、『DEATH STRANDING』完成までの創作過程などに迫ったドキュメンタリー映画。今月のCulture Favorite『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』などを手掛けた映画監督のアリ・アスターとの2ショット。トライベッカ映画祭のために仕立てたオーダーメイドスーツ。トライベッカ映画祭ワールドプレミアにて。『ドライヴ』などで知られる映画監督ニコラス・W・レフン、「The Game Awards」の主催者でもあるジェフ・キーリー、今回のドキュメンタリーの監督を務めたグレン・ミルナーと。こじま・ひでお1963年生まれ、東京都出身。コジマプロダクション代表。’87年に初監督作『メタルギア』でデビュー。独立後初となるタイトル『DEATH STRANDING』が世界で大きな話題を呼んだ。現在、その続編となる『DEATH STRANDING 2』の制作中。ドキュメンタリーフィルム『HIDEO KOJIMA ‐ CONNECTING WORLDS』の予告編が、KOJIMA PRODUCTIONSの公式YouTubeチャンネルで公開中。次回は、2364号(9月13日発売)です。※『anan』2023年8月16日‐23日合併号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2023年08月12日小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第3回目のテーマは「誰かの齧りかけの林檎」です。30年にわたって齧り続けている“大好きな”ものがある。最初から好きだった訳ではない。齧り続けているうちに、やめられなくなったというのが本音だ。最初に乗った自転車から降りられなくなるような。もはや齧らない日常は、想像もつかない。なぜならこの“林檎”は、ふぞろいながらも、日々品種改良し、進化しているからだ。その“林檎”とはどういうものなのか?それは歯で咀嚼する果実ではない。脳で齧る“林檎”、つまりApple社製の“Mac”のことだ。先月、カリフォルニア州クパティーノで行われた“WWDC23”(注1)での基調講演の為、Apple Park(注2)を訪れた。そこには僕が齧り続けた“林檎”の過去と未来があった。テクノロジーと自然が調和した壮大な施設を前にして、確信した。好きなものをずっと齧り続けてきて良かったと。何かの対価を求めて齧り続けてきたのでも、他人の目を気にしていた訳でもない。たまたま漕ぎ出した自転車から一度も降りなかったのは、ただ好きだったからだ。僕がゲーム業界に入ったのは、80年代半ば。パソコンといえば、NECや富士通などの日本企業が席巻していた。入社したばかりの頃は、手書きで企画書や書類を書いていた。ところがある時、所属長から「お前の字は読みにくい。ワープロで提出しろ」と一喝され、仕方なく、“一太郎”(注3)などのワープロを見様見真似で、使い出した。それがパソコンを齧った最初の記憶だ。企画書や仕様書、脚本、原稿、提出書類など、全てキーボードで入力するようになった。神戸の技術研究所に所属していた90年代初頭、そこで運命のMacに出逢う。当時のMacは個人ではなかなか手が出せないくらい、高価だった。ところが、所内のパッケージ・デザイン室にMacとPhotoshopのセットが試験導入された。そこで、DTP(注4)を使った初めてのゲーム取説(PCエンジン版『SNATCHER』・注5)を制作した。MacでPhotoshopを齧る体験は、衝撃だった。その後、社内でAppleメールが採用され、普段の事務業務でもMacを使うようになった。映像編集(『POLICENAUTS』・注6)も、外部ストレージを繋いだMacを使って作業した。空いた時間には、インターネットに繋ぎ、WEBをサーフィンし、圧縮された映像を覗いた。そこには未来があった。仕事上のツールやワープロというだけではなく、音楽や映像、アート、エンタメを齧れる“魔法の箱”だったのだ。すぐに僕は“林檎”の虜になった。仲間からは、幾度となく、“Windows”を推奨されたが、家でも会社でも、頑なに“窓”は開けなかった。そもそも“窓”は齧れない。ところが、今では考えられないことだが、当時のMacはかなり頻繁にフリーズした。数時間使う度に、画面中央に“爆弾マーク”が出たものだ。爆弾処理の知識がない僕らは、こまめにセーブするしかなかった。もちろん、編集時の映像レンダリング中も例外ではない。帰宅する前、“かけ逃げ”(夜間に処理させる)して、朝戻ると、かなりの確率で落ちている。それが普通だった。当時のMacユーザーは、そんな“爆弾”との駆け引きさえも楽しんでいた。“林檎”はまだ青く、熟すまでには時間が必要だったのだ。それがかえってMacとの絆を強いものにした。ある種の人間臭さを感じたのだ。Macに話しかけ、機嫌をとりながら、対話する。そうやって、僕はMacを齧りながら、人生のビタミンを補給してきた。一度だけ“sad Mac(サッドマック)”を見たことがある。Macが故障した時に表示されるお別れ(故障)のマーク。さすがにあの時は、しばらく喪に服した。まるで愛犬が逝ったような喪失感を味わった。林檎は誘惑の果実といわれる。蛇がイブを誘惑して食べさせた禁断の林檎。白雪姫で魔女が食べさせた毒入り林檎。あらゆる神話や物語でアイコンとして描かれてきた。禁断の果実を追求し続ければ、いつかはその代償を払わされることになるかも知れない。だが、好きなものを齧れなくなる生活は虚しい。好きなものを齧り続ける、この些細な継続こそ、幸せではないのか。なんでもいい。目についた興味のあるものを、まずは皮も剥かずに齧ってみよう。毒や影響があるかもしれない。だからこそ、面白い。人の真似をして齧るより、まず自分の歯で齧り、自分の舌で味わってみよう。と、ここまで原稿を書いてきた手を休め、最先端の洗練されたMacと向き合う。“林檎”の木は、完璧なサービスの円環として社会に深く根を張っている。あの“爆弾”はもう見ることはない。どこか寂しさを覚えた瞬間、モニター内のタグにある“林檎”に目を留める。齧りかけの“林檎”は変わらず、誰にも食べられず、今もそこにある。そこで初めてこのマークの周到さに気づく。注1:WWDC232023年6月5日(現地時間)から開催された、Appleの開発者向け年次大型イベント。注2:Apple ParkAppleの本社ビルを中心とする施設。注3:一太郎ジャストシステム社が販売する、歴史の長い日本語ワープロソフト。注4:DTPDesktop Publishingの略。パソコン上で印刷物のデータを制作すること。注5:『SNATCHER』1988年発売のアドベンチャーゲーム。小島秀夫が企画・シナリオを手がけた。注6:『POLICENAUTS』小島秀夫による1994年発売のアドベンチャーゲーム。今月のCulture Favorite“WWDC23”で訪れたAppleの本社にて。パフォーマンスキャプチャー撮影現場での一コマ。GW休暇で別府温泉へ行った際の写真。こじま・ひでお1963年生まれ、東京都出身。コジマプロダクション代表。’87年に初監督作『メタルギア』でデビュー。独立後初となるタイトル『DEATH STRANDING』が世界で大きな話題を呼んだ。現在、その続編となる『DEATH STRANDING 2』の制作中。ドキュメンタリーフィルム『HIDEO KOJIMA:CONNECTING WORLDS』の予告編が、KOJIMA PRODUCTIONSの公式YouTubeチャンネルで公開中。次回は、2360号(8月9日発売)です。※『anan』2023年7月19日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2023年07月15日女優の本田翼が27日、7月1日に東京・原宿にオープンする「UGG TOKYO FLAGSHIP STORE」で行われた同店のオープン記念イベントに出席した。南カリフォルニアを拠点とするグローバルライフスタイルブランド・UGGのアジア初の旗艦店となる同店。ブランドのルーツであるカリフォルニアらしさが反映された世界観で、べビー、キッズ、レディース、メンズ、オールジェンダー対応商品が揃い、ライフスタイルブランドとしてのUGGの幅広いラインナップの商品を購入できる日本最大級の店舗となる。本田は、ゴージャスなブルーのローブコートにショートブーツをあわせたコーディネートを披露。「ボリュームコートと鮮やかな色味、スノーブーツなんですけど雪も雨も大丈夫ですし、防水で歩きやすい、軽いという、すごいコーディネートでございます」と笑顔で紹介し、「スノーブーツをファッションにできるというのがすごいんですけど、かわいい!」と大満足の様子だった。イベントには、アレン 明亜莉 クレア、池田美優、磯村勇斗、板垣李光人、片寄涼太、佐野勇斗、高橋文哉、冨永愛、柊木陽太、百田夏菜子、山崎天(櫻坂46)も参加した。
2023年06月27日小島秀夫の右脳が大好きなこと=を日常から切り取り、それを左脳で深掘りする、未来への考察&応援エッセイ「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き」。第2回目のテーマは「“調理時間 500W 約4分30秒/600W 約3分40秒”の味」です。子供の頃、料理番組に嵌った。特にお気に入りだったのが、料理研究家グラハム・カーがオーナーを務めるカナダのTV番組『世界の料理ショー』。料理の作り方をなぞる今のYouTuberとは“味”が違った。世界中のレシピを選び、ワイングラスを手にしたグラハムが観客に語りながら、調理の過程を優雅に魅せる。選ばれた一人の観客が試食をする。創り手と観客が一体となって料理を楽しむユニークなエンタメ番組だった。僕は関西育ち。地元大阪のたこ焼き、神戸の明石焼き(たまご焼き)には目がない。関西では、たこ焼きは自分たちで焼くのが習わしで、友人たちと具材を持ち寄り、“たこ焼きパーティー”なるものもよく開催した。たこ焼きの魅力はその“味”の美味しさだけではない。創る過程も格別だ。たこ焼きが焼けないと、一人前として格好が付かない。子供の頃は、餃子包みやドーナツや天ぷら等、仕込みの手伝いをよく、オカンにやらされた。おかげで、両手にもった卵も片手でそれぞれ同時に割る芸当も出来るし、林檎も一度も皮を途切れさせずに最後まで剥ける。特に卵焼きやプレーンオムレツは、僕の十八番の料理でもあった。僕にとっての料理は、彫刻や粘土をこねるといった造形行為に近いものだったのだ。中でも熱を加えると固まり、形が変わる卵や粉物の料理には興奮した。完成時の美しさが問われる卵料理、揚げ物、お好み焼き、中でも完全なる球体を求められるたこ焼きは特別な存在だった。子供の頃、コンビニはまだなかった。出前を取るのは特別な機会に限る。学校から帰っても家に誰もいない“鍵っ子”だった僕にとっては、小腹が空いた時、台所に立つのは日常だった。あくまでも自分が食べる為だが、グラハム・カーのように食べる観客を妄想して、料理に挑む。ただ空腹を満たすだけでなく、孤独感も軽減してくれた。それは、創作行為であり、エンタテインメントでもあったのだ。上京して、関東発のたこ焼き“銀だこ”に出逢った。“銀だこ”は、表面を油で薄く揚げている。たこ焼きを揚げるなんて邪道だとは思ったが、食べてみてその食感と旨さに驚いた。たこ焼きは熱を含んだ状態では中の空気が膨張して球体を維持しているものの、皿に置くと萎んでしまう。その点、油で表面を焦がした“銀だこ”は、盛り付けしても形は崩れない。美しいドーム状を維持したまま。それから、大好物になった。そして、コロナ禍の孤立した環境下で、冷凍の“銀だこ”のお世話になることとなった。僅か数分、チンをするだけで老舗のたこ焼きが食べられる。コンビニに行けば、24時間、いつでも手に入る。素材も器具も場所も時間もいらない。失敗もしない。なんとも便利な時代になったものだ。ただ、これは僕が好きだったあの“たこ焼き”とは何処か違う気がする。既に工場で完成しているものを温め直すだけ。そこに、もの創りにおける創意工夫や興奮はない。素材やレシピとの緊張したあの駆け引きもない。味も外見も同じ。失敗と成功、落胆と喜びはない。創り手と食べる側に生まれるはずのドラマもない。これは、もはや子供の頃に熱中したあの“料理”ではないのだろうか。料理をエンタテインするグラハム・カーのショー魂は、どこにもいない。昨今の冷凍食品やレトルト、インスタント食品の進化には、眼を見張るものがある。AIが食卓に入る近い未来には、調理の風景は大きく変わることだろう。一度完成したものをチンする時代から、冷蔵庫にアプリが知らぬ間にストックした材料を、AIが瞬時に調理してくれる時代が来る。僕らは、ただ座って食べる側だけの楽しみしかない日常を送るのだろうか。何故、たこ焼きが球体なのか?何故、ピザが薄い円盤型なのか?料理をするプロセスが欠落した日常では、完成形を見たとしても、誰も疑問を抱くこともなくなるだろう。未来の新人類は何ごともなかったように、ブラックボックスの中で調理され、出力された完成形を食べるのだろうか。そんなことを思いながら、電子レンジに大好きな冷凍のたこ焼きを入れ、大好きだった『世界の料理ショー』のDVD‐BOXを取り出す。調理が終わるまでの僅か数分、僕はグラハム・カーの番組を観て料理の世界に食い入る。レンジが放つ“チン”音は僕の耳には聴こえない。今月のCulture Favoriteコジプロに遊びにきた朋友ギレルモ・デル・トロ監督とのツーショット。映画『NOPE』や『インターステラー』の天才撮影監督であるホイテ・ヴァン・ホイテマさんと邂逅。コロナ禍のためしばらく逢えなかったローレン・サイさんと再会。こじま・ひでお1963年生まれ、東京都出身。コジマプロダクション代表。’87年に初監督作『メタルギア』でデビュー。独立後初となるタイトル『DEATH STRANDING』が世界で大きな話題を呼んだ。現在、その続編となる『DEATH STRANDING 2』の制作中。ドキュメンタリーフィルム『HIDEO KOJIMA‐CONNECTING WORLDS』が、6月17日トライベッカ映画祭でワールドプレミア上映される。次回は、2356号(7月12日発売)です。※『anan』2023年6月21日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)(by anan編集部)
2023年06月17日