『夢売るふたり』は、とにかく考えたくなる映画だ。火事ですべてを失った小料理屋の夫婦が、もう一度自分たちの店を持ちたいと願い、その夢の実現のために結婚詐欺に手を染める。板前の貫也は妻の里子が目をつけた標的――東京の片隅で孤独を抱えた女性たち――の懐に入り込み、金を引き出して行く。『ゆれる』、『ディア・ドクター』の西川美和監督が今回もオリジナル脚本を手がけ、松たか子と阿部サダヲを初共演に迎えた本作は、夢とお金と愛に翻弄される人々の姿を通して、男について、女について、自分自身についても考えたくなる作品だ。「夢を諦めるところも含めて、好きなんです」(西川監督)結婚願望の強いOLにスポーツ選手、風俗嬢、シングルマザー、と様々な女性が登場する。彼女たちの王子さまが貫也なわけだが、演じる阿部さん自身は同性として、「貫也はダメな男だなぁ…って思いました」と言う。「途中で自分の夢を諦めちゃってるんです。それで他人の夢、例えばウエイトリフティング選手のひとみちゃんの夢に乗っかっちゃって。それはだめでしょう、男として。そういうところは、自分とはちょっと違うなと思ったんですよね」。夢を諦めるのは、やはり駄目なことかと尋ねると「諦めなきゃいけないこともあるんでしょうけど。僕もプロ野球の選手になりたかった夢を諦めて、いま俳優やってるんですけどね(笑)」と答える。「ただ僕は、向いていないと気づいて、プロの選手にはなれないなと思ってやめたので。貫也はなんとなくやめてるから。そこはちょっとな、と思う」。西川監督は「だめなところなのかな…」と考え込みながら、「自分が男だったら、厳しく見ちゃうかもしれませんね。でも、なんとなく、しょうがないのかなとも思っちゃうな」。貫也という男は面白い。店が焼失し、失意のどん底にいた彼は、成り行きで一夜を共にした店の常連客に里子がいかに立派な妻か、熱心に語る。そして、大金をもらって喜び勇んで帰っていく。無邪気というか、天真爛漫というか。「走っちゃってるんだもんな…」と阿部さんは笑いながら呟く。「脚本にはなかったんですけど、監督が『松さんを抱きしめて、歌ってくれ』と言ったんですよ。オペラっぽくやってくれって。どんな男だ!?と思いました(笑)」。西川監督はにっこり笑って「そうお願いしました。見て下さいね。オペラ声で歌ってくださってますから」と答える。そのオペラの直後、物語は一気に加速する。滑稽さをまといながら、人の心の奥底まで深く深く分け入って、そこに隠されているものを白日のもとに曝してしまう。それが西川作品の特色だ。何気ない風で、人が一番触られたくない部分を鋭く突く。貫也のみならず、ラーメン屋店主や風俗嬢のDV夫、探偵など、登場する男たちも、騙す里子も騙される女たちも、誰もが少しずるいし、ばかでもある。「でも、ばかだけど、そこがいい。だから、夢を諦めるところも含めて、好きなんです。私は貫也っていうキャラクターが好きなんで、ついつい脚本を書いてても、貫也の話ばっかり膨らんでいくんですよね。だから、里子が物語の軸なんだって、振り戻すのにすごく苦労するぐらい。貫也は結婚詐欺をするのに外を歩くので、面白いんですよね」。貫也は女性から見た、理想の男性像?外に出て、いろいろな女性と対面しながら、貫也は変化していく。もう一度夫婦で店を始めたいという夢がブレない里子とは差が出てくる。「結構別人みたいになりますよね。監督からも別人でいいって言われました(笑)」(阿部さん)。西川監督は「貫也のいいところは、生き生きしてるんですよ、いつも」と言う。「もう、目の前にしたものが好きになり、それに心底没頭する」。確かに、どの女性といるときも貫也は楽しそうだ。家で夫を待つ里子が内に暗いものを抱えているのは明白だが、貫也にはどす黒いところはない。それとも見せていないだけ?「僕は、ない気がしますけどね。初めて会った子供とチャンバラやるっていう男は、どす黒くないでしょう」と阿部さん。西川監督は「ある意味、貫也は理想ですから、女の人から見た」と言う。「本当は男の人だっていろいろあると思いますけど、その暗い面、見たくない面は押さえて、だめだけど、人間の明るい面を寄せ集めた、かわいいキャラクターに書いたつもりです」。阿部さんは西川監督の男性の描き方について「面白がってるんだろうなって思いますね」と言う。「面白い男が多いなと思って。いろいろタイプが違う人がいっぱい出てきますけど、見方によっては笑えるっていうか、男の滑稽さが出てる。女性にしかできないような描き方だと思います。男が描くと、多分、貫也はもうちょっとかっこつけちゃったりするのかもしれない。もしくは、笑いに逃がしたりとか。西川さんの脚本はそれがないんです」。話を聞いていて頭に浮かんだのは、物語後半、すれ違い始めた夫婦が口論するシーンだ。里子に言われるまま動いてきた貫也が、彼女をやり込める。相手に逃げ場を与えない追いつめ方は、女性的にも思える。「そうですね、ああいう言い合いのシーンって、やっぱりね、男の人は描かなそうですよね」と阿部さん。「なるほどね。でも、私の周りの男の人は結構口が立つんだけどな」と言いながら、西川監督は阿部さんに「どうするんだろう、男の人。黙っちゃう?」と質問。阿部さんは「黙っちゃう。『逃げてくでしょう? 出かけちゃうでしょう?待ちなさいよ』って言われちゃう」と返答。監督は「煮物を容器に詰めて出ちゃう」と劇中の1シーンを引き合いに出して笑う。「自分じゃ知らない表情が映し出されていた」(阿部さん)阿部さんは「完成した映画には自分自身じゃ知らない表情が映し出されていました」と言う。「うれしいですよ。引き出してくれた監督に感謝しなきゃいけないですね」。自分でも未知の領域に連れていってくれる。俳優はそんな期待をもって監督との仕事に臨むのかもしれない。だが、監督本人は「いやいや、全然。そういうことのできるタイプの演出家じゃないです」と謙遜する。「松さんと阿部さんは、現場での有りさまが、私から見れば、すごく近い。2人とも歩調がちょっと似てるんです。だから、とてもバランスのいい現場でした」。みっちり話し合いを重ねて撮るようなこともない。「あんまり喋らないですよね(笑)。ちょっと解釈がずれてると思えば、言わせてもらうけど、ほとんどもうできてるんですよ。だから、目線の位置を決めるとか、その程度です」。「リハーサルをやってみて、あ、こいつ分かってないなって思うと来てくれるんです」と言う阿部さんの言葉に困ったような笑顔になる西川監督。「でも、阿部さんも松さんも、私の想定とは違う芝居のときが、いいことが多いんです。まあ、ほとんどずれないんですけど、基本は。でも、あ、元々の狙いよりも2人の出してきてくれたもののほうがいいって思うことがあった。だから、何にも言わないことが多かったですね」。「何も監督が言わないと、『もう諦められたのかな』って松さんと話してました」(阿部さん)「(笑)そんなことない。逆にこっちはなんにも言うことがなくて、申し訳ない、不甲斐ないって思うことが多かったですね。『まあ、この程度だな、この演出家も』って思われてるんだろうなって」(西川監督)お互いにそんなことを思いながらの撮影現場。互いへの愛情と尊敬、畏れと自意識の闘い合いは、『夢売るふたり』の世界観と重なるように思えて、何かストンと腹に落ちた。(text:Yuki Tominaga)Hairmake:Eisuke Arakawa/Stylist:Chiyo■関連作品:夢売るふたり 2012年9月8日より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2012「夢売るふたり」製作委員会
2012年09月05日人を騙す生き物と言えば、昔からキツネとタヌキが有名ですが、彼らよりもよほど始末に負えない動物がいます。それはもちろん、人間。残酷なほど狡猾に、人の心を弄ぶ…。その極悪非道ぶりといったら、昔ばなしに登場するキツネやタヌキの比ではありません。手を変え品を変え、お年寄りを騙す振り込め詐欺、訪問販売詐欺なんて、ニュースでやり口を知るたびに、胸がムカムカ。人は、ここまで下品になれるものかと驚きすら生まれます。人間の想像力は素晴らしいものなのに、こんな風に悪用するなんて…と。ただ、映画や小説などで意外な結末に驚愕させられる、そんな“騙し”は「ああ、やられた!」と爽快感すら覚えます。想像力を駆使し、人を騙す――。テクニックは同じでも、人の心を傷つける詐欺とは大違いです。意外な結末へと導かれていく『夢売るふたり』も、一種の楽しい詐欺に会うようなものかもしれません。というか、主人公たちは夫婦で詐欺師。映画を観れば、実際に詐欺に出会っちゃうわけですが。それにしても、詐欺の話なのに、“夢を売る”とはけしからんと思う方もいるかもしれませんが、映画を観るとなぜか納得できるはず。あらすじはこんな感じです。東京の片隅で、小さいながらも評判の日本料理店を営んでいる、貫也と里子。やっとの思いで開いた小料理屋でしたが、ある日、火事ですべてを失ってしまいます。落胆した夫を気丈に支える妻でしたが、完全にふてくされてしまった夫が妻に要らぬ言いがかりばかりつけるので2人の仲はぎくしゃく。そんな折、貫也はかつて店の常連だった女性に偶然再会し、彼女が不倫の末に失恋をしたことを知ります。そして、傷心の彼女を慰めるうちに一晩を共に過ごすことになり、なぜか彼女が得た手切れ金をそっくりそのままもらうことに。翌日、大金を持ち帰った夫から事情を聞き出し、怒りを覚える妻でしたが、そのとき、彼女にはあるアイディアがひらめくのです。それは、再び店を持ちたいという夫婦の夢を再び叶えるために、夫婦で結婚詐欺を働くこと。そして、里子が都会に暮らす寂しい女性を見つけては、貫也が懐に入り込み、お金を巧みに巻き上げるという段取りで、着々と資金を集めていくのです。ところが、嘘の繰り返しは、思わぬ事態を生み出して…。夫婦で詐欺なんて、とんでもない悪者たちのようにも聞こえますが、彼らはある時期までは正直に生きていた普通の人々。とある不幸をきっかけに、それまで眠っていた潜在的な悪意が心の中心を占めてしまうのです。ただ、物語が上手く流れているせいか、元々極悪人ではないせいか、見ていても、2人にひどい嫌悪感は覚えません。むしろ滑稽で面白く感じるのです。人を騙すと言う卑劣な行為の中にも、詐欺師たちの人間臭さが見事に描写されているのもその原因。阿部サダヲ演じる夫は、騙す相手にもどこか愛情のようなものを寄せてしまうほどに優しい人情派。一方、たちが悪いのは松たか子演じる妻の方です。相手選びなどを率先して行うほど自分主導で詐欺をしているにもかかわらず、夫が女に優しくしているのを、冷ややかな目で見ています。夫がターゲットに優しくするのは当然ですが、その優しさには詐欺を成功させようという計算高さからくるもの以外に、彼自身の人間性から来る優しさが大いに混ざっていることを、妻は敏感に感じ取っているのです。そこで、夫が騙す女たちを、とことん意地悪な目線で見つめ続ける妻。やがて夫も、健気で明るいばかりだと思っていた妻の邪気に気づき始めるのです。夫婦は、詐欺をすることでしか見えてこなかった相手の一面、互いに知らなかった自分たちの本質にまで気づいていきます。詐欺はとことん計画的だったはずなのに、計算しきれなかったのは、自分たちの心の動きや心情の変化。それに戸惑い、それを受け入れられなくなっていく2人。本作は、「騙す」ということが、騙される側だけでなく、いかに騙す側にもリスキーであることかを、見事な語り口で描いていくのです。他人を思い通りに動かせたとしても、自分の心が思い通りに動かせない。人間はますます不思議な生き物です。ここまで描ききれるところが、西川美和監督の凄いところ。さらには、女が持つ意地悪な視点を包み隠さず描けるところもさすがです。個人的には、これが最高レベルでできるのは映画監督ならフランソワ・オゾン、作家なら桐野夏生くらいだと思っていたのですが、この方もなかなか。あの上品な松たか子から、何とも意地悪な女性の性を引き出すあたりにも、恐れを知らぬ作家性が見えてきます。そしてもちろん、それに応えた松たか子の女優魂もあっぱれ。実は、裸になったり、派手な濡れ場を演じたりするよりも、よほどこういう演技の方が、女優にとって勇気がいるのではないかと同性ながらに思うのですが、いかがでしょう。とんでもないどんでん返しが待っているわけではありません。でも、心は翻弄され続け、物語に引き込まれ続ける『夢売るふたり』。そこが劇場であることを忘れ、嘘の世界に浸ることのできる137分です。騙されたと思って、ぜひ。(text:June Makiguchi)■関連作品:夢売るふたり 2012年9月8日より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2012「夢売るふたり」製作委員会
2012年09月05日映画『夢売るふたり』のカップルを招待しての試写会が8月27日(月)に都内で開催され、午前中に行なわれたヒット祈願イベントに引き続き、西川美和監督に松たか子、阿部サダヲ、さらに笑福亭鶴瓶が登壇。事前に観客から寄せられた男女の謎にまつわる質問に答えた。『ゆれる』、『ディア・ドクター』に続く新作で西川監督が描くのは夫婦による結婚詐欺。火事で全てを失った夫婦が次々と女性を騙して金を巻き上げるも、やがて彼らの間には溝が…。生々しい男女の姿を通じて愛や結婚について問いかける。客席は様々な年齢層のカップル、夫婦で埋め尽くされたが、映画のあまりの生々しさに鶴瓶さんは「うちも夫婦で観て、エライことになりました。カップルで観るのは避けた方が…」と心配そう。「観た後に監督がうちの嫁はんに質問してまして、オレは答えを聞きたなかったけど『女ってあんなもんよ』とか聞こえてきた」と苦笑していたが、西川監督は「いい夫婦がこの映画をどう観るのか?実験台になってもらいました」とイタズラっぽい笑顔を浮かべていた。本作を撮るにあたって西川監督は、鶴瓶さんの知人だという結婚詐欺の被害者に話を聞いたそう。鶴瓶さんによると、その結婚詐欺師は「この前、捕まった」とのことだが、西川監督は「被害者の感情は複雑で、単に『許せない』じゃ済まされないものがあった。周りから見たらバカだなと思うかもしれないけど、話を聞いたら『これはお金出すな』と思うような話も多く、それは(劇中の)騙される女性に投影したつもり」と明かす。その上で、夫に結婚詐欺を実行させる妻・里子を演じた松さんを絶賛。「内面を言葉に出さずに腹に抱えて孤軍奮闘する姿をどう描くかが勝負でしたが、松さんの芝居を見ていたら『この人についていけばいい』と思えた」と最大限の賛辞を送る。一方、松さんは阿部さんとの初共演に触れ「素敵な俳優さんでいつかご一緒したいと思ってましたが、夫婦役で出会うとは…。掴みどころがないようで、でもとてもシンプルな方のようにも思えて、一緒に仕事をしていて楽しかったです」と笑顔でふり返った。観客から寄せられた相談に答えるコーナーでは、「7年付き合っている彼が結婚に乗り気ではなく、実家への挨拶にも行ってくれない」という悩みに、鶴瓶さんが「行ったれや!」とガツンと一撃。「結婚はいいですよ」と言いつつ「でも男は文句言うときは隠して言うように!絶対にケンカしたらアカン!」と熱弁をふるっていた。また21歳の学生の「どうやって好きな女性にアプローチしたらよいか?」という相談には、「絶対大丈夫。誘えば来ますよ」とかなり楽観的なアドバイス。さらに「ずっと自分で温めてきた一発ギャグとかしてみたら?」という無責任な後押しで会場の笑いを誘ったが、松さんは「相手が引くかもしれないってくらいのことを全部試して、それでも大丈夫そうな人と付き合うといいんじゃないでしょうか?」と現実的な助言を送っていた。最後にこれから映画を観る観客に向け、松さんは「どの部分がみなさんの心に響くのか私たちも分かりません。この2人が幸せなのかどうか?最後まで見守ってください」と挨拶。阿部さんも「2人で観られて、その後にいっぱい話し合ってもらえたら」と呼びかけた。『夢売るふたり』は9月8日(土)より公開。■関連作品:夢売るふたり 2012年9月8日より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2012「夢売るふたり」製作委員会
2012年08月28日『ゆれる』、『ディア・ドクター』の西川美和監督の最新作『夢売るふたり』のヒット祈願イベントが神田明神(東京・神田)で行われ、西川監督を始め、劇中で夫婦を演じた松たか子&阿部サダヲに田中麗奈、鈴木砂羽、木村多江らが出席した。夫婦による結婚詐欺を描いた本作。妻が計画し夫が実行に移して女性から金を巻き上げていく姿を通じて愛や結婚、女性の本性を描き出していく。この日、キャスト陣は西川監督が事前に伝えたという劇中でのイメージカラーにちなんだ浴衣姿で登場。ただひとり男性の阿部さんは「みなさん、美しいのでじっくり見たい。神聖な場所でいやらしいことを考えてしまいました」と満面の笑み。「土日は休むとして、月曜日は…って感じで、(日替わりで)愛人を連れて歩いたらカッコいいですね」とよからぬ妄想まで口にしていた。これまでの人生における良縁を尋ねられると松さん、阿部さん、そして昨秋、結婚したばかりの鈴木さんは夫および妻との縁を挙げた。田中さんは「私も『夫』と言ってみたい」とうらやましそうに語りつつ、本作で共演している笑福亭鶴瓶について「短い期間で共演したり、近所で会ってお茶させていただいたりと縁がある気がしています」と微笑んだ。木村さんは、西川監督が助監督だった十数年前からの付き合いだそうで「監督はまだ大学生で『お互い頑張っていきましょう』って話してました。こうしてまたご一緒できて、良い縁を感じています」と運命を明かす。西川監督も「まだカチンコを叩いていた時期ですね。ギュウギュウのロケバスで隣に座って一緒に話してました」と懐かしそうに語った。松さんは改めて“夫”阿部さんの魅力を尋ねられると、「得意なところで売ってないところが『やるなぁ』って思います」と語る。これに阿部さんは「この着物、買い取りになるんじゃないかってくらい汗かいてます」と本気で照れていた。またこれまでの人生でつかれた最大の嘘は?という問いに女性陣はしばし思案。松さんは「思い当たらないんですが、気づいてないのかも。夫には嘘はつかれたことはないと思います」と苦笑交じりに語っていた。『夢売るふたり』は9月8日(土)より新宿ピカデリーほか全国にて公開。■関連作品:夢売るふたり 2012年9月8日より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2012「夢売るふたり」製作委員会
2012年08月27日阿部サダヲ×松たか子が結婚詐欺で女性から金を巻き上げる夫婦役を演じることで話題の映画『夢売るふたり』。本作の学生限定試写会が8月23日(木)に青山学院アスタジオで行われ、メガホンを握った西川美和監督が学生たちとの座談会に出席した。2人で営んでいた小料理屋を火事で失った夫婦が、店の再建のために心に隙間を抱えた女性をターゲットに結婚詐欺を実行。愛とは何か?夫婦とは何かを刺激とユーモアたっぷりに描き出す。青山学院の学生を中心に、会場にはおよそ150名の学生が来場。西川監督は「結婚適齢期を過ぎた女性を中心に描いた作品なので、まだそこに至っていない若いみなさんがどう観たのか?楽しみです」と語る。映画を鑑賞したばかりの学生からは様々な感想が寄せられたが、“女の強さ”という点について監督は「妻の強さ、母の強さというのは私も母を見ながら感じていました。女はひとりでいるよりも家を持った方がこれまでにない強さを持つのかもしれません」と分析。一方で“男の単純さ”という声が学生から挙がると「私は決して男は単純だと思いません。男の人も単純だと言われて否定しない側面がありますよね。男と女で“単純さ”について認識のズレがあるのかな?興味深いところですね」と語るなど、学生の意見に触発された様子だった。話題が「浮気」「好きな男性に騙されたとき許せるか?」といったテーマになると俄然、話し合いは活発に。自らの浮気経験を告白する男子学生、「騙されているとしても好きな人との時間はほかに代えがたいもの」と語る女子学生など生々しい声が続出。監督は学生の声に耳を傾け、熱心にメモを取っていた。若い学生に比べ、大人の立場になると浮気を許せるようになるものか?という問いには監督は「そんなことないですよ。人間の根っこは年取っても変わらない。50歳の人でも恋する瞬間は14歳の顔するって言います」と否定しつつ「ただ、年を取ると守らないといけないものが変わってきて感情に流されまいとするようになるかもしれません」とも語った。また、質疑応答の時間には、西川監督は若い世代がシネコンで上映される大作以外の独立系の作品、ミニシアターの映画を観に行かなくなったと言われている現状に触れ「情報をみなさんに与えられていない部分もある」と自省しつつ「大学生のみなさんが分かりやすいものしか見ないのは寂しい。学生時代は何をやってもいい期間。分かりにくいものを柔軟に頭に叩き込んでほしい。解釈する力や幅が広がるので、どんどん映画館に行ってほしい」と呼びかけた。『夢売るふたり』は9月8日(土)より全国にて公開。■関連作品:夢売るふたり 2012年9月8日より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2012「夢売るふたり」製作委員会
2012年08月23日監督・黒沢清×主演・小泉今日子でWOWOWで放送された『贖罪』。原作を手がけたのは映画化もされた『告白』の衝撃がいまなお記憶に新しい湊かなえ。DVDリリースを機に改めて湊が映像化された自作について語った。その他の写真迷宮入りとなった少女殺害事件。被害者の少女の母親は現場にいた娘の友人の少女4人に「犯人を見つけるか、私が納得する償いをすること」を迫るが、事件から15年を経て、彼女の言葉を胸に刻んだまま成長した4人が連鎖的に悲劇を引き寄せていく。蒼井優、小池栄子、安藤サクラ、池脇千鶴が成長した4人を演じるなど、実力派俳優が集結したが、湊は特に被害者の母親・麻子を演じた小泉を絶賛。原作でも4人の視点を絡ませながら、麻子は時に素直で慈悲深い母として、時に盲目的に復讐の炎を胸に抱く鬼女のようにも描かれるが「小泉さんには一人の女性に対して様々な見方が存在しうるということを表現していただけました。小泉さんが演じてくださったことで、私の中での自分の小説の登場人物ランキングで麻子さんが『告白』の森口先生(松たか子)に肩を並べるくらいになってます(笑)」と称賛を惜しまない。本作を含め自作の映像化について「監督の独特の世界観で新しいものを作ってもらえたという感覚で『よかったね、私の子供たち』という気持ち」と思いを明かす。湊本人が「映像化できないだろうなと思いながら書いている」と語るように、一人称の語りを中心にした彼女の著作には文章ならではの魅力があり、決して映像化しやすい小説とは言えない。それを自覚した上で、どのように映像化されるのか「誰よりも私自身が楽しみでしょうがない」のだという。特に本作で湊が驚きをもって受け止めたのは最終第5話。「麻子さんが犯人と対峙しますが、原作ではここはたった2行なんです。黒沢監督の解釈によって完成した場面だと思うし、『ここでこの人たちはこんな顔してたのか』とあそこに連れて行ってもらったかのような気持ちになりました」と原作者の思惑を超えた映像作品ならではの魅力を嬉しそうに語る。子供の頃から「テレビと読書が娯楽の中心だった」と語っており小説家デビューの前には脚本コンクールに応募したことも。トレンディドラマ隆盛の時期に高校・大学生活を送ったことで「その頃や子供時代に見たドラマが自分の財産になっていると思う」とうなずく。ちなみに好きな俳優は織田裕二。「私の作品に出てこないタイプでしょ?」と残念そうに笑うが、ぜひ今後、織田をイメージした人物を描き、実写化を実現させてほしい!ちなみに、本作は、DVD発売を記念して19日(日)から9月7日(金)まで渋谷・ユーロスペースで特別上映される。『贖罪』8月24日(金)より、発売&レンタル開始DVDコレクターズBOX【初回生産限定】3枚組(全5話収録)8,990円(税込)レンタル:前篇・中篇・後篇(全5話)発売元:20世紀フォックスホームエンターテイメント取材・文・写真:黒豆直樹
2012年08月07日妻が企て、夫が女を騙す!松たか子×阿部サダヲが、夫婦で結婚詐欺。 衝撃の≪ラブストーリー≫、『夢売るふたり』。今回、キャストの松たか子、阿部サダオ、監督の西川美和に行った試写会の模様をお届けする。舞台上の紐を引くと、松、阿部、監督がそれぞれ「男とは」「女とは」「愛とは」について考えた内容が登場する垂れ幕トークも実施した。●松さん、阿部さんをキャスティングしたきっかけは?監督:映画賞か何かに(作品が)かかった時に初めてご挨拶させていただいたのですが。そこでは女優さんたちがキラキラしている中で、松さんはひっそりと座っていらっしゃって。その時、こういう言い方するの失礼かもしれないんですが、“あ、この人普通だなぁ”と思って。完全なサラブレッドなのに、普通、って、女優さんでは珍しいなと思って。今回は“普通の人”、市井の人を描きたくて、松さんがそういう役を演じられるのかなと。あとは、内容がグロテスクな話なので、これを演じてもらう女優さんには、“品”というものが絶対必要だな、そうでないとグチャグチャになっちゃうな、と思っていたので。今回は松さんにお願いしようと思いました。阿部さんは、ずっと一緒にお仕事をさせていただきたいな、何かきっかけさえあれば…と思って狙ってたんです(笑)。お二人の組み合わせを、私も見たことないし、どういう雰囲気になるのかイメージがつかない部分もあったので。そこが化学反応を起こしてくれるとおもしろいなと思いました。お二人とも好きな役者さんだったので、このたびキャスティングしたという次第です。●松さんと阿部さんの初共演について松:とても楽しかったです。お芝居をしていることを“楽しい”と思えるのは幸せだな、と思えましたので、好きな俳優さん(が共演)でよかったなと。自分の目が確かだったな(笑)、狂いはなかったと思いました。阿部:共演する前の松さんのイメージは、ほんと完璧な人、欠点の無い人、という女優さんで。監督が「OK!」って言ったら「うん、わかってる」「そうでしょ」みたいな(笑)。そういう人かなと思っていたのですが、お会いしたら全然そんなことはなくて。監督からOK がかかっても「今ので良いでしょうか」と。普通…というか、さっきも入場時に転びかけてたり。普通より…下でもいいぐらい?(笑)でも芝居は本当に素晴らしい女優さんです。●『ゆれる』『ディア・ドクター』は男性目線の映画でしたが。今回女性目線で描きたかったものは?監督:女性のみっともないところ。誰も見たことのないというか、厳密にはそんなことないんだろうけど、なかなかスポットを当てられない、女の、同性からもスポットライトを当ててもらえないような、都会の片隅で一人、自分の生きる道を模索している女性というのを描いてみたいなと思いました。女の人の生活ってどんどん多様になっている、それだけに悩みも複雑で。30 代とかになってくると、色んな複雑な思いを抱き、あがきながら、歩んで行くしかない、っていう。そういう、大人の女性の“生きづらさ”を描いてみようかなというのが今回ありました。●撮影中、印象に残っているエピソード松:最初のシーンの撮影が夜のパートだったので、撮影は夜になってから明るくなるまでの勝負だったんです。普通の人が寝静まった頃に働き出して、普通の人が働き出す頃に終わる、みたいな。こう、昼夜逆転みたいな生活をしてみて、夜のお仕事の人たちの生活が少しわかった気がしました。●本当にたくさんの女優さんとの絡みがありましたが。阿部:絡み…(笑)。それぞれの個性がおもしろかったですね。みなさんそれぞれ、(劇中では)職業がバラバラで、松さん(里子)が見つけてきた人もいれば、僕(貫也)が見つけてきた人もいるんですけれど、その人たちの役への入り方がすばらしいと思いました。上映前なのでどこまで言っていいかわからなかったので、また今度…(笑)。監督:阿部さんはどの女の人と一緒にいても楽しそうでした。松さんは―…なんだろう、この人(笑)。阿部:たぶん、間違いなく言えるのは“お蕎麦が好き”なことですね。監督:何人ものスタッフが「松さんと蕎麦に行った」と自慢していましたね。しかも蕎麦、食べるの早いんですよ。阿部:蕎麦食べる以外も、現場入りも、着替えも、何でも早かった。歌舞伎の早着替えかっていうくらい(笑)。松:好きです、ええ。浅草など下町がロケ地だったので、蕎麦屋を見つけては一人で入ったりしていました。(ここで、「男とは」「女とは」「愛とは」のそれぞれの回答を書いた垂れ幕が下がる)松:【男とは。と聞かれても答えに困るものである】本当に思いつかなくて…。あまりにも困っていたら夫が考えてくれたんですが、その内容が「(男とは)歌舞伎の家の娘に聞くな」っていうもので、ちょっと波紋を呼びそうだったので(笑)。本当にわからなくて、白旗を上げてしまいました!すみません!阿部:【女とは。うちのネコみたいである】僕も松さんみたいに書きたかった。その勇気がなかった。いいなぁ…。そのとおりだと思う。だから、こんな答えになってしまったんですが(笑)。わかんない、ってことです。飼ってるんだか飼っていないんだか、なついているんだかいないんだかもわからない。なついていると思ったら、急にいなくなるし、なんだかよくわからないけど怒ってるっぽいときもあるし…。女の人っぽいなと思って。まぁうちのネコ、オスなんだけど。(会場笑い)監督:【愛とは。と、語るやつほど、我愛(いと)しなり】まぁ、そんなもんです。むつかしいというか、色んな愛の形のひとつです、この二人が演じたのは。こういうつながり方でも、夫婦ってあるんだな、と。●これから観るみなさんへ一言ずつ監督:お二人いつもゆったりと、全然緊張していないような雰囲気で現場にもいらしていたんですけれども。お芝居は…完璧でしたね。もう何も言うことがないぐらい、二人とも素晴らしいお芝居をしてくださって。それ(芝居)に対しての心構えも、しっかり準備されてきたなぁと感じました。全力で役に対して向き合ってくれて、非常に血の通った作品になったと思いました。是非楽しんでいってください。阿部:自分がこれまで役者をやってきて、今までやったことがない役、やったことがない表情を引き出していただいたと思います。初めてなんです、こういう役。観終わった後に話したいんですが、観た後に色んな意見があっていいというか、一人一人全員違うんじゃないかっていうぐらいで。本当におもしろいですよね。今日、一緒に観に来た人と、三夜ぐらい話し合っていただけるんじゃないかっていうぐらい(笑)不思議な映画だと思います。また二、三回観て意見が変わってもいいなとも思います。松:色んな見方ができる作品だと思います。自分以外の人の意見に寛容な気持ちで物語を楽しんでいってください。作品情報『夢売るふたり』R-15作品 公式サイト 主演:松たか子、阿部サダヲ監督:西川美和配給:アスミック・エース(C)2012「夢売るふたり」製作委員会9月8日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
2012年07月18日シャーロット・ブロンテの傑作小説を舞台化したミュージカル『ジェーン・エア』。2000年のブロードウェイ初演を手掛けて数々の賞賛を浴びた演出家ジョン・ケアードは、2009年に自ら新演出に挑み、「ブロードウェイ版を越えた完全版」とうたわれる感動の日本初演を生み出した。不遇な出生に負けず強く生き、愛をつらぬく主人公ジェーン・エアを真摯な歌声で熱演した松たか子は、本作で第35回菊田一夫演劇賞を受賞。相手役ロチェスターに扮した橋本さとしは陰影の魅力に富んだ男性像を作り上げ、深い余韻を残す好演をみせた。この秋、その初演の名コンビによる愛の物語が復活する。待望の再演に臨む、ふたりの思いを聞いた。ミュージカル『ジェーン・エア』チケット情報「初演、再演に関係なく舞台に立つドキドキした気持ちに変わりはない。共演の皆さんのこの3年間のパワーをいただいて、また新しいジェーンを演じられたら」と新鮮な感覚で再演をみつめている松に対し、橋本は「緊張感がずっと漂う、集中力をかなり使った舞台だった。どれだけ自分が緊張して大変だったか、また、そんな作品に入っていける幸せ、喜びをわかった上での再演になるので、前回とはまた違うものになるのでは」と初演を踏まえての自らの変化に期待をかける。それぞれ心に痛みを抱え、不器用に惹かれ合うジェーンとロチェスター。初演では、荒野を背景とした舞台に生の力強さをみなぎらせて立つ、ふたりの確かな存在感に圧倒された。「ジェーンは完璧な女性ではなく、気が強くて頑なところも持っている人。普通に迷いながら生きている、そんな人間的なところも表現できたらと思っていました。でもそれは、ロチェスターやほかの登場人物と対峙して発見できたこと。人との出会いで成長していくジェーンに共感しますね」と松。一方、ロチェスターを「女性から見たら大ひんしゅくな男」と笑う橋本は、「背徳の愛に苦しんで危険を冒そうとする。しかもその苦悩を自分ひとりで耐えきれず、ジェーンにさらけ出すんですよ。男の弱さをみせるキャラクターですよね。その弱さにジェーンは手をさしのべる。女性は男性とは違う種類の愛を持っているのかな?」。橋本の疑問を受けて、松が「それは恋をしているから」と限りなくシンプルに、鮮やかな答えを繰り出した。「ロチェスターに出会って、ジェーンは理屈じゃ整理できない気持ちに陥った。苦しみながら生きる人に親近感を抱くところもあったかもしれません。それもロチェスターの持っている魅力なんですよね」。物語のクライマックスには、「魂の叫びが響いて、真実の愛を分かち合える」(橋本)、「じわじわと幸せな気持ちになれる」(松)と両者が強く推す感動のシーンが待ち受ける。美しい旋律に乗ってドラマチックに展開する、珠玉のラブストーリーをとくと味わいたい。公演は10月6日(土)から28日(日)まで東京・日生劇場のほか、福岡・博多座でも上演される。東京公演のチケットは7月29日(日)10時より一般発売開始。取材・文:上野紀子
2012年07月12日松たか子主演のミュージカル『ジェーン・エア』の制作発表会見が7月5日に行われ、松と共演の橋本さとしが登壇した。『ジェーン・エア』チケット情報本公演は、シャーロット・ブロンテが書いた傑作ロマンスを2000年に英国人演出家のジョン・ケアードがブロードウェイでミュージカル化し、2009年に日本で初演された舞台の再演。19世紀のイギリスを舞台に、ひとりの女性が様々な困難を乗り越え、時代に立ち向かいながら強く逞しく、愛に生きた姿を描く。主人公のジェーン・エア役は松、ジェーンが家庭教師として住み込んだ家の主人で、やがて愛し合うようになるロチェスター役は橋本と、初演と変わらぬふたりが務める。作品の魅力について松は「ジェーンという女性は、はじめから完璧な人ではなくて、悔いや迷いを感じながら生きて、恋愛をして、自分の気持ちが揺らぎながらも一生懸命に生きようとする人。自分の足で立とうとする姿は、時代を超えて訴えかけるものがあると思います」とコメント。橋本は「シンプルで美しく、無駄なものがない舞台です。絵画のような美しさの中に入って浸っていただきたい」とアピールしていた。3年ぶりの再演について松は「初演の時は楽しかったんですけど、ほんとに必至で。最後のほうは這ってゴールにたどり着いたという記憶があって。今回再演のチャンスをいただけたので、楽しんで演じ、歌えるようになりたい」と抱負を述べた。また演じる役どころと自身との共通点を訊かれると「家庭教師にはなれません。人に教える仕事は一生無理」と松が答えると、橋本は「愛とかそういうものに抵抗を持っている男なんですけど、僕自身は愛がないと生きていけない“愛依存症”です」とそれぞれ語った。演出のジョン・ケアードから再演に際し、「この偉大なラブストーリーを松さん、橋本さんと一緒に創作した時間は、日本での演劇経験の中でもっとも幸せな記憶として心に刻まれています」とふたりを絶賛するコメントが届いた。これを受けて橋本は「世界で一番一緒に仕事をしたいと思っていた演出家」と言いながらも、英語が話せないため稽古場以外では「近づいてきたら逃げちゃう」と話し、前回、稽古場から偶然ジョンを車で送ることになった時、車内で一言も話さず気まずかったというエピソードを披露、記者の笑いを誘っていた。共演は初演メンバーの寿ひずる、旺なつき、山崎直子、小西遼生、福井貴一 、壤晴彦に、新たに阿知波悟美、辛島小恵が加わる。公演は10月6日(土)から28日(日)まで東京・日生劇場のほか、福岡・博多座でも上演される。東京公演のチケットは7月29日(日)10時より一般発売開始。なお、チケットぴあでは7月8日(日)11時までインターネット先行抽選・プレリザーブを受付中。
2012年07月06日『ゆれる』『ディア・ドクター』の西川美和監督の最新作『夢売るふたり』の完成披露試写会が行われ、西川監督と主演の松たか子、阿部サダヲが登壇しての舞台挨拶が行われた。その他の写真本作は、営んでいた小料理屋が火事で全焼し、再出発のための資金集めをすべく結婚詐欺に手を染めていく夫婦の物語。これまでの作品でも一貫して人間同士の密な関係性を描いてきた西川監督は、本作を作るにあたり、「女性のみっともないところを描きたかった」と語る。「女の人の生活はどんどん多様になっていて、悩みも複雑。30代になってくるといろんな思いを抱き、あがきながら人生を歩んでいくしかない。そういう大人の女性の生きづらさ、都会の片隅でひっそり自分の生きる道を模索しているような女性を描いてみたいと思いました」。実は、松と阿部は今回が初共演。現場での様子について監督は、「阿部さんはどの女の人と一緒にいても楽しそうだった(笑)」と証言。一方松については「完全なサラブレッドなのに、そういう女優さんには珍しく雰囲気がフツーっぽかった」と語る。それを立証するかのように阿部が「松さん、おソバ好きですよね」と一言。実は現場では何人もの男性スタッフが、松と一緒におソバを食べたことを自慢していたのだとか。さらには「食べるのも早いし、着替えもすごく早い。歌舞伎かって思うくらい(笑)」と、意外な一面が次々に明かされ、松がタジタジになる場面も。しかしそんな松も、「昼夜逆転のスケジュールでしたが、楽しく幸せな時間でした」と撮影中を振り返るなど、シリアスな物語とは打って変わって、現場は和やかな雰囲気だったようだ。「全員が全力で役に向き合ってくれたおかげで、血の通った作品になった」と、手ごたえのほどを感じさせる西川監督のコメントには、役者たちもそれぞれ感慨深げに。阿部は「今までやったことのない役で、出したことのない表情が出せた。観終わった後の感想がそれぞれ違うんじゃないかな。3~4日くらい話せると思うので、たくさん話し合ってください」と映画をアピール。松も「いろんな見方が出来る作品。どうか寛容な気持ちで楽しんでほしい」とコメントし、舞台挨拶を締めくくった。『夢売るふたり』9月8日(土)より新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー
2012年06月29日結婚詐欺に手を染める夫婦の愛憎を描いた話題作『夢売るふたり』の完成披露試写会が6月28日(木)、東京・千代田区の日経ホールで行われ、初共演で夫婦役に挑んだ松たか子と阿部サダヲ、メガホンをとった西川美和監督が舞台挨拶に登壇した。営んでいた小料理屋を火災で失った夫婦(松さん&阿部さん)が、再出発の手段として選んだのは結婚詐欺!真っ当ではないと知りつつも、金のために嘘をつき続けるが、やがて夫婦の間、騙した女たちとの間にさざ波が立ち始め、歯車が狂っていく…。松さん、阿部さんを始め、田中麗奈、鈴木砂羽、伊勢谷友介、香川照之に笑福亭鶴瓶と個性派キャストが集結した。松さんは「とても楽しかった。阿部さんはもともと好きな俳優さんだったので、私の目に狂いはなかったなと(笑)」と今回の初共演に手応え十分。一方の阿部さんは、「完璧で欠点がない女優さんというイメージ。監督さんが『OK』って言えば、『そうでしょ』って感じの(笑)。でも実際にお会いしたら、とても普通な方で…」と印象をコメント。さらにステージ登場時に松さんがつまずいたと明かし、「普通より下かも」と茶化して笑いを誘っていた。西川監督は「物語がグロテスクなので、松さんの“品”が必要だった」、「阿部さんとはずっとお仕事したくって、何かチャンスがあればと狙っていた」と2人を起用した理由を説明し、「おふたりの化学反応に期待したし、実際言うことのない完ぺきな演技だった」と大満足。さらに劇中で次々と美女を手玉に取る阿部さんの様子を「どの女性と一緒にしても楽しそうでしたよ」と暴露し、阿部さんは照れくさそうな表情だ。これまで男性を主人公に据え、さらに“騙す”という一貫したテーマで長編映画を撮り続けている西川監督。今回は初めての“女性目線”映画となり「描きたかったのは、女性のみっともなさや生きづらさ。女性の人生が多様になった時代、30歳を超えると悩みも複雑になるもの。あがきながら、生きる道を模索する女性の姿を見てほしい」と自信を込めて最新作をアピールしていた。『夢売るふたり』は9月8日(土)より新宿ピカデリーほか全国にて公開。■関連作品:夢売るふたり 2012年9月8日より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2012「夢売るふたり」製作委員会
2012年06月28日酒癖が悪い、浮気癖がある、常識がない男たち…通称・ダメ男。映画の中に登場する“ダメ男”も千差万別。どうしようもない男たちだが、女性からは「ほっとけない!」、「なぜか気になる」といった声があるのも事実。シネマカフェのランキング企画「シネマカフェゴコロ ランキング5」では、「あなたが思う“ダメ男”が似合う俳優」をテーマにアンケートを実施。納得の人から意外な人まで、世の“ダメ男”像を背負う俳優たちを大発表!堂々の1位に見事(?)輝いたのは、先の二股報道により時の人となった塩谷瞬。連日にわたるワイドショーやネットニュースでの報道が後押しし、大差で1位を獲得した。今回もやはりゴシップに対する手厳しい意見が多数寄せられたが、私生活でのリアルなダメ男像とは裏腹に、役者としては沢尻エリカとの共演で国境を超えた恋にもがく純愛男子を演じた『パッチギ!』や、現在公開中の『道~白磁の人~』、さらに今夏公開予定の主演映画『バナナとグローブとジンベイザメ』など、順風満帆の様子の正統派イケメン俳優に票が集まる結果となった。2位には、森山未來がランクイン。こちらは1位の塩谷さんとは逆に、役の上での強烈なダメ男っぷりが大きく影響したようだ。その代表格と言えるのが『モテキ』。意外にも「似合うというか演じ切るですね」(30代・男性)、「ダメ男をやるとセクシー」(20代・男性)など、男性からの高い支持を得ていた。さらに、待機作として芥川賞作家・西村賢太が自身の堕落した青春を描いた同名小説の映画化『苦役列車』(7月14日公開)の公開を控えており、もはや魅力的なダメ男を演じさせたら彼の右に出る者はいない?3位には、好んでダメ男を演じるハリウッドからの刺客、ジョニー・デップがランクイン。現在公開中の『ダーク・シャドウ』はもちろん、今週末に公開を迎える『ラム・ダイアリー』(6月30日公開)など、“完璧ではない男”を演じることを哲学としているかのような役選びが森山さん同様に大きく影響したようだ。寄せられたコメントにも、「いい男過ぎて、逆に似合う」(30代・女性)といった、どこか欠点があるからこそ光る彼の魅力に女性からの支持が見られた。そして4位には、「悪い意味ではなくて、愛すべき可愛いダメ男を演じたら一番だと思う」(30代・女性)との声が集まったコメディ俳優・阿部サダヲ。『舞妓 Haaaan!!!』や『なくもんか』など、ハイテンションでどんなダメ男役も愛すべきキャラクターに変えてしまう、まさに天才。松たか子と夫婦役で共演した『夢売るふたり』(9月8日公開)で演じる、結婚詐欺に講じる夫役にも期待が集まる。そして5位には、温厚なイメージが強い堺雅人と伊藤淳史が同票で滑り込んだ。堺さんには「滑稽な役が上手いなぁ~と感じた」(40代・女性)、伊藤さんには「ダメ男というか“弱男”(?)が似合うかな。昔の『電車男』のイメージが強いです。でも演技上手です!」(20代・女性)と、演技巧者な2人から生み出される独特のダメ男像に惹かれる女性の意見が多数見られた。堺さん主演の『鍵泥棒のメソッド』(9月15日公開)ではこれまでにないダメ男ぶりを発揮しているので、ご注目を。そのほかにも、「最高のダメ男!女子をキュンとさせる魅力があります」(50代・女性)といった声が挙がった西島秀俊や、妻夫木聡、オダギリジョーなど日本映画界を背負って立つ俳優たちの名が並んだ。こうして見ると、森山さん以外は女性票がほぼ全体を占め、男性の「ダメさ」に母性をくすぐられてしまう女性が多いように見受けられた。さて、あなたが気になる“ダメ男”は誰?「“ダメ男”俳優」ベスト51位:塩谷瞬2位:森山未來3位:ジョニー・デップ4位:阿部サダヲ5位:堺雅人、伊藤淳史次回の「シネマカフェゴコロランキング5」のテーマは「“女王様”が似合う女優は?」。こちらもぜひ、ご応募ください。「シネマカフェゴコロランキング5」■関連作品:鍵泥棒のメソッド 2012年9月15日よりシネクイントほか全国にて公開© 2012「鍵泥棒のメソッド」製作委員会ボクたちの交換日記 2013年公開予定夢売るふたり 2012年9月8日より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2012「夢売るふたり」製作委員会ラム・ダイアリー 2012年6月30日より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2010 GK Films, LLC. All Rights Reserved.苦役列車 2012年7月14日より全国にて公開© 2012「苦役列車」製作委員会道~白磁の人~ 2012年6月9日より新宿バルト9、有楽町スバル座ほか全国にて公開© 2012 「道~白磁の人~」フィルムパートナーズ
2012年06月25日現在、大ヒット公開中の『宇宙兄弟』を始め、『告白』、『悪人』、『モテキ』とヒット作を次々と送り出してきた東宝の気鋭プロデューサー・川村元気が、6月16日(土)、ラフォーレミュージアム原宿にて、「ショートショートフィルムフェスティバル & ASIA2012」の一環で行われた若手クリエイター向けのセミナーに登壇し、ほかでは聞くことのできない製作秘話を交えながら、ヒットを生み出す極意の講義を行った。「映画プロデューサー」と聞くと、映画製作のためのお金を集める人というイメージを持っている人もいるかもしれないが、川村さん曰く「全部をやる人」であり、「プロデューサーのネームバリューだけで作れる映画なんて、まずないですよ」と語る。川村さんがいう“全部”とは、映画の企画・脚本やキャスティングから宣伝、DVDパッケージの製作まで、1本の作品の全てに携わるということ。だが一方で、「僕は撮影現場にはあまり行かないんです」とも。父親が映画監督だったこともあり、「(撮影現場に)行くと、ついつい何か言いたくなってしまうんですよ」と笑い、妻夫木聡&深津絵里主演の『悪人』の撮影現場では「たまにノムさん(元・楽天ホークスの監督)みたいに、ボヤいてました(笑)」というエピソードを明かし、会場を沸かせた。続いて、松たか子が壮絶な復讐劇を怪演した『告白』の話になり、予告編が流されると、「疲れますね~。胃もたれしそうですね…」と自身の担当作品を辛口評価する川村さん。「この暗い内容を“どうやって売れる娯楽作品にできるか”に挑戦して、メジャー大作として成功させられたことは本当に嬉しかった」とふり返った。本作のメガホンを取ったのは、現在『進撃の巨人』を製作中の鬼才・中島哲也監督。鬼才の放つオーラに日々怯えていたという川村さんは「熊みたいで、ホントに怖かった…」と漏らす一方で、「中島さんって“誰の言うことも聞かねぇぞ”ってイメージだと思うですけど、実は誰よりも他人の話をよく聞いてるんですよ。映画を成功させる人って、みなさんそうだと思います」としっかりフォローも忘れなかった。さらに、『モテキ』の製作裏話も。本作では、長澤まさみを始め、麻生久美子、仲里依沙、真木よう子ら主人公を取り巻く豪華なヒロインたちが特に話題を集めたが、このキャスティングの理由について聞かれた川村さんは「下世話すぎて、僕の人品が下がりそうですが…」と前置きしつつ、「大根仁(監督)と『誰が飲み会に来てくれたら、嬉しいか』と話し、オファーしました(笑)」と正直に告白。「とことん脚本を作る時点で考えました。脚本は女優に対するラブレターだから」。ちなみに、大根監督は長澤さん、川村さんは麻生さんを推したそう。最後に、川村さんは「よく映画祭に足を運ぶんですが、たいていの若い監督はアイディアを“発見”した時点で映画を作ってしまっていて、その発見を使ってどうやって観客を楽しませるかという“発明”の部分がないように思います。ウディ・アレン(『ミッドナイト・イン・パリ』)やコーエン兄弟(『トゥルー・グリット』)のような監督だって『面白くない』と思われることがあるのに、若い監督ならなおさら。たぶん観客を優しい人たちだと思って作っている。だから、僕はそこの“甘え”はなくしてほしい」と真剣な表情で、明日のヒットメイカーたちにエールを送っていた。「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2012」は6月19日(火)までラフォーレミュージアム原宿にて、6月22日(金)から24日(日)まで表参道ヒルズ スペース オーほかにて開催。公式サイト:特集「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2012」特集「シネカフェくんのふらっと映画祭」■関連作品:悪人 2010年9月11日より全国東宝系にて公開© 2010「悪人」製作委員会 告白 2010年6月5日より全国東宝系にて公開© 映画「告白」フィルムパートナーズモテキ 2011年9月23日より全国東宝系にて公開© 2011映画「モテキ」製作委員会宇宙兄弟 2012年5月5日より全国東宝系にて公開© 2012「宇宙兄弟」製作委員会
2012年06月18日松たか子と阿部サダヲが主演し、『ゆれる』『ディア・ドクター』の西川美和が監督を務める『夢売るふたり』の予告編がこのほど公開になり、騙し騙される男女の緊迫した関係をとらえた本作の一部が明らかになった。『夢売るふたり』予告動画本作の主人公は、東京の片隅で小料理屋を営んでいた夫婦。穏やかに暮らしていたふたりは店の火災ですべてを失い、人生の再出発のために、夫婦で“結婚詐欺”をはたらくことに。このほど公開された予告編も、仲睦まじい主人公夫婦の姿を捉えた場面で幕を開けるも映像は一転、ダークなトーンで借金を抱えて途方にくれるふたりを映し出す。その後の映像に登場するのは、夫婦の周到な計画によって、心を奪われ、金も奪われてしまう女たち。結婚できない独身の会社員を田中麗奈が、不倫で大金を手にした女性を鈴木砂羽が、家計を支えるシングルマザーを木村多江が演じており、その他に伊勢谷友介、香川照之、笑福亭鶴瓶らが出演する。予告編は、夫婦が結婚詐欺を働き、次々と金を巻き上げていく過程を描いた後に、相手を騙しても騙しても精神的にも金銭的にも満たされることのない夫婦の心象を描く。金を得たことで夫婦は何を売り渡してしまったのか? 騙された者たちは泣き寝入りするだけなのか? 『ゆれる』で緊迫した家族関係を描き高い評価を得た西川監督の新作だけに、本作がどんなカタチで“男と女の真実”を描き出すのか気になるところだ。『夢売るふたり』9月8日(土)全国ロードショー
2012年06月06日『ゆれる』、『ディア・ドクター』の西川美和監督が、主演に松たか子と阿部サダヲを迎えて贈る最新作『夢売るふたり』が9月8日(土)より公開されることが決定。これに合わせて本作のポスタービジュアルも完成し、このほど初披露となった。『蛇イチゴ』や『ゆれる』、『ディア・ドクター』など、人間の深層心理を突く鋭い視点と女性ならではの繊細な描写で映画ファンを魅了する、西川美和監督の新境地となる本作。人々が日々すれ違いながら生きる都会・東京の片隅で、松さんと阿部さん扮する一組の夫婦が始めるある計らいを通して、愛とは何か?を問いかける。その計らいとは、なんと夫婦共同作業による“結婚詐欺”!火事で営んでいた小料理屋を失い、生きる糧を失ってしまった2人は再出発への資金を貯めるべく、妻が計画し、夫が女を騙すという、何とも信じがたい行動に出る。妻の指令のもと、次々と女性たちを騙していく夫。だが、嘘の繰り返しはやがて、夫婦の間にさざ波を立て始め…。今回完成したポスターでは、深い夜景をバックに、松さんと阿部さんの複雑な感情のこもった顔が大きく映し出されているが、夢を閉ざされた絶望感が阿部さんの表情から感じられる一方で、松さんのまっすぐに見据える視線には、それとは異なる“狙い”を感じさせるものがある。そして2人の前に踊るのは、「人間最大の謎は、男と女」というキャッチコピー。果たして2人が巻き起こす「騙し」のドラマの終着点には何が待ち受けているのか…?先の読めないミステリーの雰囲気をこのポスターからも感じ取ることができる。さらに、既に発表されていた2人、そして“騙される”女役の田中麗奈、鈴木砂羽、木村多江、安藤玉恵、江原由夏に続き、ほかの豪華キャストも発表!伊勢谷友介、やべきょうすけ、大堀こういち、倉科カナ、古舘寛治、小林勝也に加え、『ゆれる』での演技が印象的な香川照之、『ディア・ドクター』主演の笑福亭鶴瓶など、西川監督作おなじみの顔ぶれが意外なシーンで出演しているので、こちらも要チェック!『夢売るふたり』は9月8日(土)より新宿ピカデリーほか全国にて公開。■関連作品:夢売るふたり 2012年9月8日より新宿ピカデリーほか全国にて公開© 2012「夢売るふたり」製作委員会■関連記事:阿部サダヲ「凄い結末に…」『夢売るふたり』“騙される女”はこの5人!『夢売るふたり』松たか子&阿部サダヲが“夫婦”そろって無事クランクアップ!『ゆれる』の西川美和最新作で松たか子と阿部サダヲが結婚詐欺師の夫婦に!
2012年04月27日松本幸四郎が主演するミュージカル『ラ・マンチャの男』の製作発表が4月2日、都内にて行われた。この作品は幸四郎が26歳の時から43年にわたって演じ続けている、まさに彼のライフワークと呼べるもの。共演は娘の松たか子、松本紀保ら。『ラ・マンチャの男』チケット情報はこちら『ラ・マンチャの男』はセルバンテスによる有名な小説『ドン・キホーテ』をもとにした作品。この小説は自らが伝説の騎士だという妄想に陥った男の遍歴の旅を描くものだが、ミュージカルではこれに作者・セルバンテスが投獄された史実を絡め多重構造で綴っていく。1965年にブロードウェイで初演された作品で、日本では1969年の初演以降、松本幸四郎(初演当時は市川染五郎)が主演を務めており、1970年には幸四郎はブロードウェイで海外の役者の中で約2か月にわたって主役のドン・キホーテを演じるなど、数々の伝説を残している。さらに今回、8月19日の幸四郎の古希の誕生日には上演回数1200回を達成する。そのことを幸四郎は「ありがたいこと」と話し、「初演の頃は日本では1年に2・3本ミュージカルの上演があるくらいだった。今は毎月、どこかの劇場でミュージカルをやっている」としみじみ。さらに「この作品のテーマは、人間にとって大事なことはあるべき姿のために戦うことだ、というもの。昨今の日本は厳しい状況だが、毎日命がけで努力している方々、あるべき姿のために戦っている皆様に今回の『ラ・マンチャ』を捧げたい。ひとりでも多くの方に安らぎと勇気と希望と夢を届けたい」と熱っぽく語った。またドン・キホーテが姫と慕うアルドンサ役は、次女・松たか子が扮する。この役を演じてちょうど10年目になる松は「毎回課題があり、向き合うことの多い役ですが、今までで一番の緊張感を持って演じたい」とコメント。また久しぶりにアントニア役として戻ってくる長女の松本紀保も「夢を持って生きるということの意味を問いかけてくれる作品」とこのミュージカルの魅力を語った。また、会見後半には、俳優・川原和久との交際が報道された紀保に関する質問も。幸四郎は「紀保は、私が(『ラ・マンチャの男』で)ブロードウェイに行った翌年に生まれたので、ドン・キホーテから名付けたんです。その紀保がいい“相棒”を見つけまして……」と嬉しそうに話す一幕もあった。公演は5月5日(土・祝)から28日(月)まで福岡・博多座、8月3日(金)から25日(土)に東京・帝国劇場にて。チケットは福岡公演が発売中、東京公演が5月26日(土)に一般発売開始。
2012年04月03日『ゆれる』、『ディア・ドクター』の西川美和監督の最新作で、松たか子と阿部サダヲが夫婦役で初競演を果たした『夢売るふたり』の新たな豪華キャスト陣が発表!主人公夫婦に“騙される”女として、田中麗奈、木村多江、鈴木砂羽らが出演することが明らかとなった。人間の心の機微を鋭く描く西川監督が自らの原案を基に脚本も手がけた本作。東京の片隅で小料理屋を営むも火事で全てを失ってしまった夫婦の里子(松さん)と貫也(阿部さん)が、再出発の資金調達のために結婚詐欺を企てていく姿を描く。今回、新キャストとして発表されたのは田中麗奈、木村多江、鈴木砂羽、安藤玉恵、江原由夏と、全く異なるタイプの女優陣。結婚できないアラサーOLに不倫生活に終止符を打った40代女性、ソープ嬢にウエイトリフティング選手と、性格も環境も全く異なる彼女たちだが、松さんと阿部さん扮する夫婦による巧みな結婚詐欺により、まんまと騙されてしまう。男運に恵まれず親と同居中の冴えない独身アラサーOL・棚橋咲月を演じた田中さんは、「西川監督の作品に出演できる喜びと恐怖でいっぱいでした」とコメント。阿部さんとは初共演となったが、「個性的な役柄が印象深い役者さんなのでご本人もそんな方なのかなと思ったら、雰囲気が柔らかい方でびっくりしました。スタッフや共演者のみなさんにも優しくて…ただ、作品の中では見事に騙されてしまいましたけど」とそのギャップに“騙された”よう?一方、騙す側に徹した阿部さんは「5人の女性たちを騙す役をやらせていただきましたが、本当にみなさんビックリするほどリアルで、“騙そう”とする芝居は必要ありませんでした。木村多江さんのハローワークの職員とか、江原由夏さんのウエイトリフティングの選手とか、本物です。田中麗奈さんとは東京のいろんなところをデートさせてもらいましたけど、凄い結末に…」と“本物”の女優陣との撮影を満喫しつつも圧倒された様子。この5人の“騙された”女たちが迎える結末とは?『夢売るふたり』は今秋、全国にて公開。■関連作品:夢売るふたり 2012年秋、全国にて公開■関連記事:『夢売るふたり』松たか子&阿部サダヲが“夫婦”そろって無事クランクアップ!『ゆれる』の西川美和最新作で松たか子と阿部サダヲが結婚詐欺師の夫婦に!
2012年03月22日『ゆれる』『ディア・ドクター』の西川美和監督最新作、松たか子&阿部サダヲ初共演で今秋全国ロードショーとなる映画『夢売るふたり』。松と阿部が演じる夫婦、里子と貫也は東京の片隅で小料理屋を営んでいたが、火事ですべてを失ってしまう。夢を諦めきれないふたりは、金が必要。彼らは再出発のため、結婚詐欺を始める、というストーリー。西川美和が、自らの原案を基にオリジナル脚本を執筆し、誰も観たことがない男と女たちの愛の物語を描く。騙される女①田中麗奈:結婚できないOL 棚橋咲月(31)役<田中麗奈 コメント>西川監督の作品に出演出来る喜びと恐怖でいっぱいでした。以前からご一緒したかったので、お話を頂いた時はとても嬉かった半面、参加する事に色んな意味で重みを感じました。西川監督とのお仕事は、初めてでした。身体が小柄なのに勇ましく現場を引っ張ってく姿は誰よりも男らしかったです。言葉の数や種類が豊富な方。今ままでどんなことを感じ、どんな経験をしてこんな凄い脚本、作品を作るんだろうと思いました。阿部さんとは初共演で、個性的な役柄が印象深い役者さんなので、ご本人もそんな方なのかなと思ったら、雰囲気が柔らかい方でびっくりしました。スタッフや、共演者の皆さんにも優しくて、、、ただ、作品の中では見事に騙されてしまいましたけど。私が演じた咲月という役は阿部さんに騙される女性の一人で、仕事では伸び悩み恋愛に対しては不器用タイプ。監督からアドバイスを頂きながら、役を作っていったという感じで、撮影が終了するまで私は監督の思いに応えられているかと思っていましたし、今でも思い返す時もあります。この作品を通して役者として大変貴重な経験ができたと思います。最後に「夢売るふたり」というタイトルには良い意味で裏切られました。騙される女②鈴木砂羽:不倫を終わらせたOL 睦島玲子(42)役<鈴木砂羽 コメント>待望の西川監督作品での出演。細やかな演出に勉強になり、大変痺れました。そして西川監督のいい女ぶりにも痺れました。本当に監督の作品に出演させて頂き、光栄で嬉しく思いました。騙される女③木村多江:女手一つで家庭を養う職業安定所職員 木下滝子(38)役<木村多江 コメント>西川監督とお互い二十代で出会い、又ご一緒したいという思いが現実になりました。面白い台本、素晴らしいキャスティング!その中で生きる難しさと幸せをかみしめた日々でした。役者をしていてよかった!騙す男 阿部サダヲ:妻・里子と結婚詐欺をはたらく夫 市澤貫也(40)役<阿部サダヲ コメント>自分が5人の女性達を騙す役をやらせて頂きましたが、本当に皆さんビックリする程リアルで「騙そう」とする芝居は必要ありませんでした。木村多江さんのハローワークの職員とか、江原由夏さんのウエイトリフティングの選手とか、本物です。本業の方からスカウトされる人もいる位(笑)。田中麗奈さんとは東京の色んな所をデートさせてもらいましたけど凄い結末に……それぞれの女性との結末は是非劇場の方でご覧下さい!作品情報『夢売るふたり』原案・脚本・監督:西川美和出演:松たか子 阿部サダヲ田中麗奈 鈴木砂羽 安藤玉恵 江原由夏 / 木村多江配給アスミック・エース(c)2012「夢売るふたり」製作委員会
2012年03月22日メイド喫茶をはじめとするコンセプトカフェがブームになって久しい。筆者もこれまでたくさんのお店を取材してきたが、ふと「こうしたコンセプトカフェの原点はどこなんだろう? 」という疑問を抱いた。そこで色々と調べていくと、あるお店の存在が見えてきた。アメリカで誕生し、1973年に日本に上陸した「アンナミラーズ」だ。といってもアンナミラーズはメイド喫茶ではなく、ペンシルベニア・ダッチスタイルの家庭料理を中心に、季節のパイやスイーツを提供する本格的なカフェレストランである。ではなぜアンナミラーズがメイド喫茶の原点と思ったのか。それは実際に店へ足を運んでみてもらうとわかる。ちなみにアンナミラーズは現在、東京・品川駅高輪口から徒歩1分に位置する複合施設、ウィング高輪の2階で営業を行う「ウィング高輪店」1店舗のみ。1973年に1号店をオープンさせ、長年にわたって展開してきたが、今年1月に横浜の店舗がクローズし、そういった意味でもウィング高輪店はとっても貴重な店舗となるわけだ。店内に入ると、ピンクと白のかわいい制服のウエイトレスさんが元気よく出迎えてくれた。そう、アンナミラーズがメイド喫茶に与えた影響とは、この制服のデザインなのである。現在のメイド喫茶の衣装に比べると落ち着いた雰囲気だが、前述した通り、アンナミラーズはそもそもメイド喫茶ではなくレストランである。あくまでもウエイトレスとしての上品さを失わず、それでいて男性の視線を釘付けにするこの制服デザインは、何と39年もの間ほぼ変わらず踏襲されているという。ちなみにアンナミラーズの影響はメイド喫茶だけに留まらず、漫画やアニメ、ゲームにも似た衣装はたびたび登場している。さらに1997年のTBS系ドラマ『理想の結婚』では主演の常盤貴子がアンナミラーズの制服を披露し、2006年のフジテレビ系ドラマ『役者魂! 』でも松たか子が制服姿を披露するなど、”かわいい制服のウエイトレスといえばアンナミラーズ”として定着しているのだ。【拡大画像を含む完全版はこちら】
2012年03月08日1969年の日本初演から43年。松本幸四郎が人生の半分以上演じ続けている『ラ・マンチャの男』。その制作発表が2月20日にホテルオークラ福岡で開催され、主演のドン・キホーテを演じる松本幸四郎と、彼が想い姫と慕うアルドンサ役の松たか子が登壇した。今年は5月の福岡・博多座、8月の東京・帝国劇場の上演が予定されているが、幸四郎が古希を迎える8月19日(日)の東京公演で、上演回数1200回という偉業を達成する。ミュージカル「ラ・マンチャの男」 チケット情報10年前の博多座公演からは、幸四郎が本作の演出も担当。「外国の作品を、日本の役者が日本語で演じるわけだから、日本の現代劇としてお見せすることが基本姿勢。プラス、オリジナルの良さを保つように。2009年の公演を、本作の脚本家デール・ワッサーマンさんの未亡人がご覧になられて『オリジナルの魅力を保ち続けているのは、このカンパニーだけ』というお言葉を頂いたのですが、それは本当に嬉しかった。皆様も、その言葉を信じて観にきて頂きたいですね」と、演出家としての自信ものぞかせる。子供の頃からこの作品を観ていたという松も「最初は『暗い、怖い、汚い』というイメージ(笑)。でも、やっぱり何かいいなって思う気持ちがあって。自分が出演し始めてからは、演じるごとに感じることが違う作品で、再演を重ねられる作品というのはこういうものなのだな、と日々実感しています」と魅力を語りつつ、「同じ舞台に立つ以上は『父のために頑張る』という気持ちは全くなく、とにかく作品を良くしたい。そのためにもアルドンサを死にもの狂いで演じます」と俳優としての決意を語った。互いに「たか子は、人間をつかむ能力が凄い」「父の好奇心の強さは尊敬する」と俳優しての魅力を語り合いつつも、作品の中ではライバルとして演じ合うふたり。1200回公演を迎える今年は、さらに気持ちも熱いようで、声を合わせて「記念の公演に向けて、1公演1公演しっかり演じていきたい」と語る。福岡公演は5月5日(土)から28日(月)まで、東京公演は8月3日(金)から25日(土)まで開催。チケットはそれぞれ福岡公演が3月10日(土)、東京公演は5月26日(土)より一般発売する。
2012年02月22日今年の10月で開場15周年の節目を迎える新国立劇場。1月23日、来期2012/2013シーズンのラインアップが同劇場にて発表された。演劇芸術監督の宮田慶子と舞踊部門芸術監督のデヴィッド・ビントレーが登壇し、それぞれラインナップの特徴や抱負について語った。「演劇部門は冒険をしました。全8作のうち4本が新作」と語る宮田は、4本のうち3本を海外の演劇人と新作を作る新シリーズ≪With-つながる演劇-≫に費やす。ウェールズのギャリー・オーウェン、おなじみの鄭義信、ドイツのローラント・シンメルプフェニヒ、以上3名の新作を届ける。もう1本の新作は劇場待望の子供向け企画で、長塚圭史作・演出、近藤良平振付の『音のいない世界で』。出演は長塚、近藤、首藤康之、松たか子で、豪華キャストの競演も楽しみだ。そのほか2009年度の演劇賞を多数受賞した『ヘンリー六世』とほぼ同じキャストがその続編に挑む『リチャード三世』を筆頭に、2010年から続くシリーズ≪JAPAN MEETS… -現代劇の系譜をひもとく-≫の第7弾であるアーサー・ミラーの『るつぼ』や、福田善之の『長い墓標の列』、2010年に続いて再び上演する別役実の『象』が揃う。一方、舞踊部門のバレエは全6作品。ビントレー芸術監督が「音楽的にも多種多様なものを聴いて頂け、バラエティ豊かな踊りを目にできる格好の機会」と話す3本立てのミックス・プログラムを2本ラインアップした。昨年震災のため公演中止を余儀なくされた新制作の『ダイナミック ダンス!』と2010年度の開幕作品として上演され、新たにビントレーの近作「E=mc2」を加えた『ペンギン・カフェ』(仮題)を用意。そのほか新制作の『シルヴィア』、おなじみのレパートリー『シンデレラ』、『ジゼル』、『ドン・キホーテ』が並ぶ。舞踊部門のダンス・ラインアップは全4本、うち新作が2本だ。森山開次『曼荼羅の宇宙』は、NHKの特集番組『空海 ~至宝と人生』で披露したソロダンスをさらに深く掘り下げる内容。また、新国立劇場で代表作を生み出してきた平山素子による音楽3部作公演(仮題)も楽しみだ。そのほか、新国立劇場バレエ団とのコラボレーションを図るDANCE to the Future 2013、ユニット・キミホの新作が観られるAプロと高谷史郎/ダムタイプの『明るい部屋』のBプロを連続上演するDANCE PLATFORM 2012を予定。演劇部門、舞踊部門ともに、10月より新ラインナップの上演を開始する。演劇の『リチャード三世』は7月22日(日)、『るつぼ』は9月2日(日)にチケットを発売。また、バレエの『シルヴィア』は7月21日(土)、『シンデレラ』は9月15日(土)、ダンスの森山開次『曼荼羅の宇宙』は7月28日(土)、DANCE PLATFORM 2012は9月9日(日)に前売を開始する。
2012年01月23日映画『忌野清志郎ナニワ・サリバン・ショー 〜感度サイコ―!!!〜』の“大江戸プレミア”が11月24日(木)に都内劇場で開催され、生前から清志郎さんと親交があり映画にも出演しているお笑い芸人の間寛平とその息子でミュージシャンの間慎太郎が出席。親子揃って清志郎さんの名曲「雨上がりの夜空に」を熱唱し、生前の思い出を明かした。斉藤和義に竹中直人、Chara、トータス松本、松たか子、「ゆず」など錚々たるメンバーが集結した本作。清志郎さんが3度にわたって行った伝説的ライヴ「ナニワ・サリバン・ショー」の映像を交えつつ、2011年のある日のとあるドラマを描き出す。熱唱を終えて寛平さんは「歌、下手やのに息子と一緒に歌って恥ずかしいですわ(笑)」と照れくさそう。慎太郎さんは「父親が合いの手を入れてくれたので歌いやすかったです」と笑顔を見せた。元々、清志郎さんと家が近所だったことで親交が始まったという寛平さん。「食事に行くとこが同じで、そこのおばちゃんに『清志郎さん好きだから会わして』って頼んだんです(笑)。『歌作ってくれへん?』って言ったら『いいよ』って言ってくれて、できたのが『ジャングル野郎』って曲。サハラ砂漠マラソンのときも、もう限界ってときにスタッフが『清志郎さんも応援してくれてるよ』ってビデオを見せてくれたんですが、それもライヴで客に『ダチがサハラ砂漠を走ってるから応援してやってくれ!』って言ってビデオに撮ってくれたんです。ロック界のキングなのに、何でこんなに優しいのかと思った」と感激のエピソードを披露。慎太郎さんは2007年にアルバムを発売した際、ある企画で清志郎さんにコメントをもらったそうで「体調崩されて退院したばかりだったんで難しいかなと思ってたら、『やるやる』と。清志郎さんのアイディアで花やしきで乗り物に乗りながら感想を語ってくださったんです。愛のある方でした」と思い出を語った。映画に関しては2人とも完成した作品をこれから初めて観るそうで、全く全貌が分からないとのこと。「通天閣のとこに行って、監督から『とりあえず走ってくれ』と言われて走っただけ。どうなってるのかさっぱり分からない(笑)」と寛平さんが言えば、慎太郎さんも「僕は『うどんを食べて』と言われただけです」。2人を含め、豪華な顔ぶれがどんな演技を見せ、どんな物語になっているのか楽しみなところだ。報道陣からは昨日、逝去したことが発表された立川談志についての質問も出たが、寛平さんがレギュラーで出演していたTVトーク番組「いつみても波瀾万丈」に立川さんがゲストで来場したことがあったそうで、「何て魅力のある方なんだと思い、教えてもらいたい、勉強させてもらいたいと感じた。一緒に飲みたかった」とその死を悼んだ。『忌野清志郎ナニワ・サリバン・ショー 〜感度サイコ―!!!〜』は11月26日(土)より梅田ブルク7、新宿バルト9ほか全国にて公開。■関連作品:忌野清志郎ナニワ・サリバン・ショー 〜感度サイコ―!!!〜 2011年11月26日より新宿バルト9、梅田ブルク7ほか全国にて公開© 2011「忌野清志郎 ナニワ・サリバン・ショー〜感度サイコー!!!〜」製作委員会
2011年11月24日9月1日に公開され日本国内で動員100万人を突破したネイチャー・ドキュメンタリー『ライフ ―いのちをつなぐ物語―』のブルーレイとDVDが早くも来年2月3日(金)に発売されることが決定した。その他の写真『ライフ』は、BBC(英国放送協会)の製作で、製作費35億円、撮影日数3000日をかけ、多様な生き物たちの生態と命の営みを地球上の全大陸で撮影したドキュメンタリー作品。現在も一部の劇場でロングランしている本作は、松本幸四郎、松たか子の親子共演による日本語版で上映されているが、ブルーレイ&DVDには、ジェームズ・ボンド役でお馴染みのダニエル・クレイグがナレーターを務めたオリジナル版も同時収録。日本語版は男女の語り手が交互にドラマを紡いでいく穏やかな印象だが、クレイグが渋いトーンで語るオリジナル版がどのような印象に仕上がっているのか気になるところだ。本作は、投じた予算や日数ではなく、撮影においても通常の自然ドキュメンタリーと一線を画する体制が組まれた。これまでの約4倍の記録数を誇る“1秒8000コマ”撮影可能なハイ・スピードカメラを導入し、通常の機材では撮影不可能だった小動物の姿や、動物たちの決定的瞬間を捉え、これまで“傍観者”でしかなかった自然ドキュメンタリーの定石をやぶって“動物の目線”から自然の驚異を描き出すことに成功。通常盤DVD/BDと同日発売になる2枚組のプレミアム・エディションには、そんな撮影の光景を記録したメイキングや、カメラマンへのインタビューが収録されており、自然界のスゴさだけでなく、ドキュメンタリー撮影の驚異と製作クルーの情熱も感じることができる。『ライフ -いのちをつなぐ物語-』・プレミアム・エディション(2枚組)BD 5985円(税込)/DVD 4935円(税込)・スタンダードエディションBD 3990円(税込)/DVD 2980円(税込)2012年2月3日(金)リリース発売元:エイベックス・エンタテインメント(C)BBC EARTH PRODUCTIONS(LIFE)LIMITED MMXI.ALL RIGHTS RESEVED.
2011年11月11日『蛇いちご』、『ゆれる』など独自の視点から“生々しさ”をはらんだ人々の絆を描いてきた女流監督・西川美和が、松たか子と阿部サダヲを主演に迎えて贈る『夢売るふたり』が約1か月半にわたる撮影を終え、10月2日(日)にクランクアップを迎えた。東京の片隅で小料理屋を営んでいたある日、火災で全てを失ってしまった一組の夫婦が“自分たちの店”という夢を諦めきれず、再出発の手段として“結婚詐欺”をはたらく姿を描いた優しくも切ない夫婦の愛の物語。8月下旬から埼玉県のスキップシティでクランクインし、都内近郊でのロケを中心に、日差しの厳しい猛暑の真夏から風を冷たく感じる初秋へと季節が変わるまで、長期間の撮影を敢行してきた本作。茨城県常総市で遂に迎えたラストシーンは、日没後うっすらと肌寒さを感じる夕方頃に撮影が開始され、見事“1発OK”で夫・市澤貫也役の阿部さんの撮影が終了した。そして翌3日(月)の冷たい風が吹き抜ける深夜、ロケ地を東京・門前仲町に移し、今度は妻・里子役の松さんが何度も橋を全力疾走する最後のシーンが撮影され、“夫婦”共に無事クランクアップを迎えた。撮影を終えたばかりの松さんは「約1か月半走り続けて、まさかこの日が来るとは!という心境です。ほっとしたような、寂しいような気持ちでもあります。阿部さんとは、映画で、しかも夫婦役でご一緒できるなんてとても光栄なことでした。西川監督との現場もとても面白くて、私たちが演じる夫婦を形作っていただきました。おふたりとも、サイコーです。夫婦は、いちばん近くにいて、そして一生血のつながらない、不思議で、それでいて面白い関係だと思います。どんな映画になるのか、私自身も完成が楽しみです」と、早くも映画の完成が待ち遠しいといった様子。一方、阿部さんは「長い期間、本当にありがとうございました。燃やしていただいたりだとか、水をかけていただいたりだとか、色々やらせていただいて、すごく嬉しかったです。すごく楽しくお芝居をさせていただきました。本当にありがとうございました」と、厳しい(?)撮影の日々をちらつかせる。阿部さんのコメントを聞く限りでは、どうやら撮影は大変なことになっていたようだが、西川テイストの“夫婦”たちが果たしてどんな結末を迎えるのか、楽しみに完成を待ちたい。『夢売るふたり』は2012年秋、全国にて公開予定。■関連作品:夢売るふたり 2012年秋、全国にて公開■関連記事:『ゆれる』の西川美和最新作で松たか子と阿部サダヲが結婚詐欺師の夫婦に!
2011年10月05日撮影日数のべ3000日、総製作費35億円をかけたBBC史上最大のネイチャードキュメンタリー映画『ライフ ―いのちをつなぐ物語―』が1日より公開され、週末の興行ランキングで初登場1位を飾った。その他の写真映画『ライフ』は、多様な生き物たちの生態と命の営みを最新技術を駆使して捉えたドキュメンタリー作品で、今月1日から全国310スクリーンで公開がスタート。全国的に台風接近による悪天候の影響で、全国劇場の観客動員が前週から約15%減だったにも関わらず、公開後の週末4日間で興行収入約3億5千万円、観客動員数約30万人を記録。先週のランキングで第1位だった『神様のカルテ』をおさえて週末の興行ランキング首位を獲得した。本作は、日本版の案内人に松本幸四郎と松たか子を、主題歌にMr.Childrenを起用し、公開直前には東京・六本木ヒルズで本物の象を招いた大イベントを開催するなど、幅広い層の観客にアピールする宣伝活動を展開し、作品の存在と、そこで描かれる“動物たちの生きる力”を紹介し続けてきた。その結果、公開後最初の週末にはファミリー層を中心に、都市部の劇場では20代~30代の男女が多く来場。シニア層からの支持も厚いことから平日の動員も好調で、配給側は「9月中下旬のシルバーウィークに向けた追い宣伝で、引き続き多くの来場者が見込める」と話しており、天候に恵まれれば、公開2週目に初週の動員記録を更新することも予想される。『ライフ -いのちをつなぐ物語-』公開中
2011年09月06日ネイチャードキュメンタリー『ライフ −いのちをつなぐ物語−』の“アニマル”プレミアイベントが8月29日(月)、都内で開催され、犬や馬、ヤギなどに加え本物の象が来場!ゲストの土屋アンナと共にグリーンカーペットを歩いた。BBCが撮影日数3,000日、製作費35億円を費やして史上最大規模で製作したドキュメンタリー。動物たちと同じ目線で親から子へ、命を紡いでいく動物たちの姿をカメラにとらえている。この日は動物好き、もしくは動物に関わりの深い著名人がそれぞれ動物たちを連れて来場。中でも山本梓、森泉、プリンセス天功はそれぞれ自宅で飼っている犬、インコ、フクロウを伴って登場した。土屋アンナは映画『星になった少年』でもおなじみの象のランディくんとグリーンカーペットを闊歩。“美女と象”の組み合わせに開場からは大歓声がわき起こった。壇上に上がった土屋さんは「すごくかわいい!目がキレイ」と大興奮。映画についても「動物たちはものすごく考えていて、ものすごく繊細。自然のルールで生きているのだということを考えさせられた」とうなづいた。ほかにアニマル浜口はソフトバンクのCMでおなじみのカイくんの親戚である白い北海道犬を連れ、気合い10連発をお見舞い。まもなく開催のレスリングの世界選手権に向けて劇中の動物たちさながら“親子愛”での飛躍を誓った。元プロ野球選手で“ハマの大魔神”こと佐々木主浩はミニチュアホース、お笑いコンビ「ドランクドラゴン」(鈴木拓、塚地武雅)はヤギ、そして韓流歌手のJUNOはリスザルを同伴。一方、猫ひろしは自ら猫の被り物で登場し、プロレスラーのタイガーマスク&獣神サンダーライガーも壇上へ。東京のど真ん中での動物&人間入り乱れてのプレミアに会場は大きな盛り上がりを見せた。『ライフ −いのちをつなぐ物語−』は9月1日(木)よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国にて公開。■関連作品:ライフ −いのちをつなぐ物語− 2011年9月1日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国にて公開© BBC EARTH PRODUCTIONS(LIFE)LIMITED MMXI.ALL RIGHTS RESEVED.■関連記事:なでしこ丸山、動物に例えるなら「監督はゾウ、澤さんはイルカ」最新鋭の技術によって捉えた奇跡の瞬間『ライフ』試写会に10組20名様ご招待松本幸四郎&松たか子による“父娘”ナレーションを監督が絶賛!幸四郎&松たか子が親子でナレーションで共演!娘へのストレートな質問に父、苦笑
2011年08月29日『ゆれる』、『ディア・ドクター』の西川美和監督の最新作『夢売るふたり』で松たか子と阿部サダヲが夫婦役で初共演を果たすことが明らかになった。監督デビュー作『蛇いちご』では家族を、続く『ゆれる』で兄弟を描き出し、前作『ディア・ドクター』ではニセ医者の姿を通じて嘘があぶりだしていく真実の人間の絆を綴った西川監督が最新作で描くのは“夫婦”。東京の片隅で小料理屋を営んでいたが、火災で全てを失ったとある夫婦。自分たちの店という夢をあきらめきれず、彼らは再出発の手段として結婚詐欺を行う。真っ当ではないと知りつつも、金のために嘘をつき続けるが、やがて夫婦の間、騙した女たちとの間にさざ波が立ち始める。歯車の狂った夫婦が行き着く先は…。西川監督のオリジナル脚本による本作で、主人公の里子を演じるのは松たか子。『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』では破天荒な太宰治の妻を演じた彼女が、本作ではどんな妻、そして女の表情を見せてくれるのか?その夫の貫也には、映画にドラマ、舞台と幅広い活躍を見せる阿部サダヲ。どんな顔をして女たちを騙していくのか楽しみなところ。西川監督は「これまで自分がやってきていない“関係性”にトライしようと思ったのですが、普段からこの“夫婦”というのは奇妙だな、いびつだな、面白いな、と、どこの夫婦を見ても思っていまして、今回はそれに挑戦してみることにいたしました。松たか子さんは天性の品、阿部サダヲさんは天性の愛嬌、それに惹かれて出演をお願いいたしました。お2人の組み合わせで夫婦をやってみて一体何が起こるのか、私もさっぱりワカリマセ〜ン。たいへん楽しみです」と語っており、監督自身が誰よりもクランクインを楽しみにしているようだ。さらに「夫婦と並んで描こうと思ったのは女の人です。自分は男を書く方が筆が楽なので、いままでそうしてきたんですが、書いてみるといままでいかにさぼって来たかが分かりました。女は難しいですが、何層にもコクがあって面白いです。男の人が女を好きな理由が少し分かった気がします。灯りの消えた暗い東京に漂う『誰も見たことのない女たち』を描きたい。まあどうなるかは分かりませんが、志は高く、です」と意気込みを明かす。松さんは「西川監督の作品には、“今”という空気が強烈に漂っていながら、登場人物達が無気力になっていない、生命力があると思います。阿部サダヲさんは大好きな俳優さんなので、ご一緒できるのがとても楽しみです。“夫婦”として、苦楽を共にして、この夏をこの作品に捧げたいと思います」とこちらも気合十分。阿部さんも「『夢売るふたり』って、スゴイいいタイトルですよね。元々、色んな人に成り済まし願望みたいなものが強くて俳優を始めたとこもあるので、結婚詐欺の話って聞いてワクッてしたけど、台本読んだら全く自分が想像する詐欺師じゃなかった(笑)。でも西川監督が脚本、演出という事ですから初めてお仕事するけど勝手に信用しちゃってます。同様に、松さんも勝手に信頼、尊敬してます!いつかご一緒できたらと思っていたお2人なので大変光栄です。一生懸命、貫也だけに成り済ましたいと思います!よろしくお願いします!」と西川監督の現場、松さんとの共演が楽しみで仕方がないといった様子。3人が現場でどのような化学変化を生み出すのか、期待して待ちたい。まもなく8月20日(土)よりクランクイン。10月上旬にクランクアップの予定で、撮影中、公式Twitterから、現場の様子やマル秘エピソード(?)など、現場のスタッフからつぶやきが発信される。『夢売るふたり』は2012年秋、全国にて公開。『夢売るふたり』公式Twitter■関連作品:夢売るふたり 2012年秋、全国にて公開
2011年08月16日BBCのドキュメンタリー映画『ライフ −いのちをつなぐ物語−』公開を記念して、デザイナーのキム・ジョーンズが発起人となり、人々に生きるエールを贈る“ワンライフ・プロジェクト”が発足。8月8日(月)、英国大使館で行われた発足記念会見に映画のメッセージに賛同したVERBAL(m-flo)と女子サッカー日本代表の丸山桂里奈が出席した。3,000日にわたって全大陸の動物たちの、新たな世代へと命をつないでいく営みを映像に残した本作。世界的なデザイナーとして活躍し、今年3月にはLOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン)のディレクターに就任したジョーンズが、映画のメッセージに感銘を受けて今回のプロジェクトが発足し映画のオフィシャルTシャツをデザイン。プロジェクトを通じて“生きる力”を伝えることを目的に、このTシャツの販売1枚ごとにスペシャルノートブック1冊が東日本大震災の被災者の子供たちに届けられる。映画に感動したという丸山さんは「私もみなさんにエールを送れたらと思い、こちらにうかがいました」と挨拶。特に劇中のチーターの兄弟の物語が感動したそうで「兄弟3人が自分たちより大きなダチョウを仕留める姿から、ひとりでは勝てなくても力を合わせていく強さを感じました」となでしこジャパンの一員としての激闘に重ね合わせて感じるところがあったよう。ジョーンズの手によるゴリラのTシャツで登場したVERBALも、映画から多くのメッセージを受け取った様子。「失敗を繰り返すことで新しいことが見えてくる。続けていくことが大切。『前を向いて続けていこうよ』というのが僕からのメッセージ」と呼びかけた。自らを動物に例えるなら?という問いに、さすがフォワードだけあって丸山さんは先述のチーターを挙げた。さらに、日本代表の佐々木監督については「(映画の中で)家族愛を見せているので」とゾウに、澤穂希選手については「外見は優しそうだけど闘争心を持っている」とイルカに喩えた。まもなくロンドン五輪のアジア予選が始まるが丸山さんは「ロンドンの金メダルを獲りたい」と再び世界の頂点に立つことを目標に掲げる。一方のVERBALは「新しいアーティストの発掘や今後のニューカマーを世に送り出す手伝いができれば」と今後の目標を明かしてくれた。『ライフ −いのちをつなぐ物語−』は9月1日(木)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて公開。■関連作品:ライフ −いのちをつなぐ物語− 2011年9月1日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国にて公開© BBC EARTH PRODUCTIONS(LIFE)LIMITED MMXI.ALL RIGHTS RESEVED.■関連記事:最新鋭の技術によって捉えた奇跡の瞬間『ライフ』試写会に10組20名様ご招待松本幸四郎&松たか子による“父娘”ナレーションを監督が絶賛!幸四郎&松たか子が親子でナレーションで共演!娘へのストレートな質問に父、苦笑
2011年08月08日先日亡くなった原田芳雄さんの最後の主演作『大鹿村騒動記』のヒット御礼舞台挨拶が8月8日(月)に都内劇場で開催され、阪本順治監督をはじめ大楠道代、松たか子、佐藤浩市、石橋蓮司が登壇。原田さんを偲ぶと共に撮影の日々をふり返った。長野県の山間の村で、300年もの村歌舞伎の伝統を持つ大鹿村を舞台に村人たちの悲喜こもごもを描いた本作。原田さんが自ら阪本監督に提案する形で製作され、先日の公開直後、原田さんは急逝した。この日の舞台挨拶は阪本監督からの是非にという声もあって実現。監督自らが司会進行を務める手作り感たっぷりの舞台挨拶で、劇中、村役場の職員を演じた松さんが役柄そのままに撮影、録音の禁止などの注意事項を読み上げた。大楠さんは「公開と同時に悲しい、悲しいことに遭遇しました。心の晴れない日々が続いていましたが、こうしてヒットを原田さんに報告できることを嬉しく思います」と挨拶。佐藤さんは「ベテラン勢の軽妙な演技に阪本監督の奇抜さのない王道演出。安心して楽しめる映画を遺して、芳雄さんはあちらに逝かれたんだなと思います」としみじみと語った。松さんも撮影をふり返り「夢のような数か月でした」。そして原田さんの“盟友”石橋さんは「原田芳雄も大変喜んでいると思います。普段、(撮影中に)役者同士は付き合いはないものですが、この作品はいつも一緒に顔を合わせていて、映画の中の村人たちのようでした。佐藤浩市がいま、どんな仕事してるのか?失敗しやしないか?とか気になったり(笑)。これも精神的“村長”原田芳雄のおかげです」と思いを語った。阪本監督は「いま芳雄さんがもしここにいらして、『ご気分は?』と尋ねたら映画の中のセリフのように『あれ?』って言うんじゃないかと。肉体は失われても、精神やその人の言葉は失われるとは思いません。きっとそのへんをピョンピョンしてる」と語りかけた。キャスト陣は阪本監督に尋ねられるままに撮影時の思い出話を披露。大楠さんが松さんにビンタするシーンについて、思い切ってビンタした後の松さんの表情について大楠さんが「ポカーンとした顔がかわいかった」と言えば、松さんは「痛いとか考える余裕もなくスコーンと入って気持ちよかった」と笑顔を見せた。また佐藤さんにとって本作が40代最後の作品となったが、佐藤さんは「(松さんへの)『好きだからだよ』というのが、40代最後のセリフになりました。これでいいんだなと言い聞かせて思いの丈をぶつけようと思ったら、テストの段階で監督が飽きちゃって『違う言い方を』と言われました」と明かす。その結果、どんな言い回しになったのかはぜひ劇場で確認を!村の歌舞伎のシーンでは、松さんは歌舞伎を演じる石橋さんたちの世話をしていたそうだが、そんな松さんを石橋さんは村のボランティアと勘違い。「待ってる時間が長かったんですが、『今回は本当に世話になってね』とか『女優になりてぇんだろ?東京に連れてってやろうか?』と言われました」と暴露し、会場は笑いに包まれた。阪本監督は、「以前、ある飲み屋である俳優と殴り合いの喧嘩になったことがあって、原田さんが間に入って止めてくれました。原田さんの家でも別の俳優に喧嘩売って、拳を合わせてるところを止めてもらったことがありまして、一体、何をさせてたんでしょう…(苦笑)」と泣き笑いのような表情で原田さんとの思い出を披露した。ちなみに「飲み屋で喧嘩になった俳優はもちろん、この壇上にはおりません!」と言明したが、すると佐藤さんがとぼけたような顔を見せつつ苦笑い。阪本監督と佐藤さん、原田さんの深い絆が見え隠れするエピソードに会場は温かい笑いに包まれた。最後の写真撮影で大楠さんは、劇中で原田さんがずっと被っていたテンガロンハットを手に写真に収まり「帽子の主も今日、来ていて『ありがとう』と言っています」と語った。阪本監督は故・忌野清志郎による主題歌「太陽の当たる場所」の中の「この運命に甘いキスを送ろう」という一節を挙げ「みなさんで甘いキスを送ってください」と呼びかけ、舞台挨拶は幕を閉じた。舞台挨拶が行われた東京・銀座の丸の内TOEIでは、当初の3週間の上映の予定をさらに2週間延長。全国でも97館での上映から170館以上に拡大。昨日8月7日(日)時点で15万人を動員し、興行収入1.5億円のヒットとなっている。『大鹿村騒動記』は全国にて公開中。■関連作品:大鹿村騒動記 2011年7月16日より全国にて公開© 2011「大鹿村騒動記」製作委員会■関連記事:原田芳雄の遺作で共演した松たか子が追悼コメント「魂の強さ決して忘れない」加療中の原田芳雄が車椅子で登場!温かい拍手に涙名優たちが魅せる珠玉のドラマ『大鹿村騒動記』試写会に50組100名様ご招待
2011年08月08日個性派俳優として年を刻むごとに輝きと味わいを放っていた俳優の原田芳雄さんが昨日午前、上行結腸がんから併発した肺炎のため、都内の病院で71歳で死去した。長男でミュージシャンの原田喧太から報道陣に向けてコメントが発表されたのに加え、原田さんの最後の映画出演作となった『大鹿村騒動記』で共演した松たか子も、追悼の談話を発表した。喧太さんのコメントでは、先週11日(月)の『大鹿村騒動記』の舞台挨拶に関して、医師から「99%無理」と言われながらも見事に舞台に上がった父の偉大さが綴られている。以下、喧太さんのコメント全文マスコミ関係の皆様本日午前9時35分、父原田芳雄が上行結腸癌から併発する肺炎で亡くなりました。3年前に大腸癌の手術後、長い間抗がん剤治療をして癌と戦って来ましたが、残念な結果となってしまいした。しかし、最後の最後までの役者魂の凄さには本当に頭が下がります。今回の入院で何度も山を乗り越えて、11日の舞台挨拶は99%無理と言われたのですが、自らの力を振り絞って、見事舞台に上がって皆を驚かせたものです。担当の医師の方々も見事な闘病生活でしたと言ってくれてます。今まで関わって下さった方々、お世話になった方々、そして、原田芳雄を応援してくださった皆様、心よりお礼申し上げます。最後に、役者 原田芳雄の魂は永遠生き続けますので、これからも応援宜しくお願いします。感謝原田喧太松さんは『大鹿村騒動記』で、原田さん演じる主人公・善の元を何かと訪れ、面倒を見る村役場の職員・美江役で出演。11日(月)の舞台挨拶には松さんも登壇したが、映画の公開を無事に見届けて旅立った原田さんの役者魂を「決して忘れない」と語る。以下、松さんのコメント全文哀しいしらせに、言葉もありません。しかしながら、映画の完成、そして船出を見届けた、芳雄さんの魂の強さを、私は決して忘れません。心より御冥福をお祈り申し上げます。芳雄さん、お疲れ様でした。ありがとうございました。松たか子原田さんは1968年に『復讐の歌が聞こえる』で銀幕デビューを果たし、その後はアウトロー的な役柄を数多くこなし、個性派俳優として映画、ドラマで人気を博した。黒木和雄監督による『TOMORROW 明日』、『美しい夏キリシマ』、『父と暮せば』の“戦争レクイエム三部作”や鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』、『陽炎座』など100本を超える映画に出演。近年でも2007年と2008年にはそれぞれ3本の出演作が公開されるなど、精力的に活動していた。特に最近では頑固なオヤジや祖父の役で、味わいのある演技を見せていた。最後の映画となった『大鹿村騒動記』は原田さんがNHKのドラマ「おシャシャのシャン!」(2008年放送)に出演した際に、300年以上の伝統を誇る長野県の山間の大鹿村の“大鹿歌舞伎”と出会ったことが企画のきっかけとなった。原田さん自ら阪本順治監督に提案し、豪華キャストを迎えて製作された。昨年秋に大鹿村で撮影され、今年5月4日には大鹿村で完成披露試写会と舞台挨拶が行われ、原田さんは阪本監督、大楠道代、岸部一徳と共に村に凱旋し、元気な姿を見せていたが帰京後に入院。先週11日(月)の本作の舞台挨拶には車いすに乗って登壇し、声が出ないために共演者で“盟友”の石橋蓮司がコメントを代読した。16日(土)の初日舞台挨拶は欠席し、その後、体調が急変し昨日午前、帰らぬ人に。まさに映画の船出を見届けての旅立ちとなった。■関連作品:大鹿村騒動記 2011年7月16日より全国にて公開© 2011「大鹿村騒動記」製作委員会■関連記事:加療中の原田芳雄が車椅子で登場!温かい拍手に涙名優たちが魅せる珠玉のドラマ『大鹿村騒動記』試写会に50組100名様ご招待
2011年07月20日