ロシア出身のクラウン(=道化師)、スラバ・ポルニンが創作・演出する体感型ファンタジーショー『スラバのスノーショー』が7月15日、大阪・森ノ宮ピロティホールで開幕した。1993年の初演以降30か国以上で500万人を動員してきた本作、日本には2014年の初来日以来2度目の上陸となる。SLAVA’S SNOWSHOW スラバのスノーショー チケット情報雪が積もり、月あかりがぼんやりと灯る薄暗い闇夜に、汽車の音が鳴り響く。どこか遠くの国へ迷い込んだかのような空間を作り込み、劇場へ足を踏み入れたときから観客をその世界へと引き込む。登場するクラウンたちは、セリフを一切発することなく、動きと表情だけで人間の喜怒哀楽を表現していく。哀しげに見せたと思えばコミカルに、ゾクッとさせたかと思えば愛嬌たっぷりに、場面ごとに緩急をつけながら観る者の感情を揺さぶり、楽しませてくれる。また、舞台と客席の垣根を越えたパフォーマンスも、このショーの魅力のひとつ。いたずら大好きなクラウンたちが席の間を縫いながら、雪を投げたりバッグを盗んだり、時には雨を降らしたり…。客席からは驚きの悲鳴と共に笑い声が響きわたる。さらには、客席を蜘蛛の巣が覆いつくし、クライマックスでは、最後列まで届くほどの猛吹雪を巻き起こすなど、これまでに体験したことのないようなダイナミックな演出に圧倒される。大小のバルーンが客席に投入されるエンディングは、子どもはもちろん大人も大喜び。アトラクションのように体感して楽しめるエンタテインメント・ショーだ。本公演を創作・演出しクラウンとしても出演するスラバ・ポルニンは「日本のお客さんは注意力があり、一つひとつ集中して私たちの演技を観てくださっているのが伝わってきます。バルーンが飛び交うシーンでは、誰が大人か子どもか分からないくらい喜んでくださって、感無量です」と、コメント。また、本公演のオフィシャル・サポーターの野沢直子は「絵本のような世界観で、すごくキレイで楽しかった。個人的には、ナナメの世界に生きる人たちがツボでした」と語り、家族で観劇していた月亭八光は「非現実的な空間を楽しませていただきました。休憩時間も楽しめる空間になっていて、後半になればなるほどすごい勢いで盛り上がりが加速する。日本の舞台鑑賞は座ったまま最後まで終わるのが、動きまわっても怒られへん(笑)。日本では考えられないショーやなと思いました」と、興奮していた。大阪・森ノ宮ピロティーホールで7月26日(火)まで公演。東京公演はシアター1010(せんじゅ)にて、7月30日(土)から8月14日(日)まで上演される。取材・文/黒石悦子
2016年07月19日7月16日より大阪四季劇場でミュージカル『キャッツ』が開幕した。『キャッツ』は、24匹の個性あふれる猫たちの物語。都会の夜のゴミ捨て場を舞台に、各々のキャラクターが自らの生き様を高らかに謳い上げる。劇団四季『キャッツ』大阪公演のチケット情報ここ大阪での公演は13年ぶり4度目。大阪初演は1985年~1986年、旧国鉄の西梅田コンテナヤード跡地(現:大阪モード学園・HAL大阪)に建てられたテント式の仮設劇場「キャッツ・シアター」で、2度目の公演は1992年~1993年、大阪スタヂアム(当時)グランド内に特設された「キャッツ・ドーム」。そして3度目の公演は2001年~2003年「大阪MBS劇場」(当時)にて行われた。グリザベラ役の木村智秋は「13年ぶり4度目の『キャッツ』大阪公演がいよいよ開幕しました。大阪初演の場となった西梅田で再びこの作品を上演できるのは大変光栄なことです。作品の感動を、お客様お一人お一人の心へお届けできるよう、出演者一同、全力で取り組んで参りたいと思います」と意気込む。劇団四季『キャッツ』大阪公演は現在上演中。11月末までのチケットはほぼ完売。12月~2017年3月末公演分のチケットを発売中。
2016年07月19日ミュージカル『マイ・フェア・レディ』が現在、東京芸術劇場 プレイハウスにて上演中だ。映画でオードリー・ヘップバーンが演じたヒロイン・イライザは霧矢大夢(きりや ひろむ)と、真飛聖(まとぶ せい)のWキャスト。霧矢版を観劇したレポートを記す。ミュージカル『マイ・フェア・レディ』下町育ちの花売り娘・イライザが、言語学者のヒギンズ教授に正しい言葉と淑女としてのマナーを教え込まれ、レディとして生まれ変わるシンデレラ・ストーリー。名作として名高い1964年の映画でもよく知られているが、元は1956年に“戦後のブロードウェイを代表する大傑作”と賞賛された舞台だ。日本では映画公開に先立ち1963年に初演、これは日本で初めて日本人が日本語で演じたブロードウェイ・ミュージカルとしてミュージカル史に名を刻んでいる。そんな歴史ある作品だが、今の時代でもまったく古びず、むしろ恋をする高揚感や切なさ、苦しさなどはひりつくほどリアルでフレッシュに伝わってくる。演出のG2は2013年に“リボーン版”を謳い、訳や演出を一新。今回はその3年ぶりの再演だが、それぞれカンペキな人間ではない、だがまっすぐに生きている登場人物たちの愛おしさがさらにパワーアップしている。“きちんとした言葉遣いを習いたい”と素直な気持ちで頑張るイライザを、霧矢は明るくキュートに演じる。その健気な前向きさに、周囲の人々が力が貸すのは納得だ。イライザを教え導く立場ながら、女心を解さず衝突するヒギンズ教授は寺脇康文。前回より“変わり者感”が増し、イライザとヒギンズの関係も、さらにもどかしくなった。教養を身につけ自立していく一方でヒギンズに次第に惹かれ、自分を特別扱いして欲しくなるイライザ。イライザに惹かれながらも、自分のその気持ちにすら気付かないヒギンズ。恋をしたら自分を見て欲しい、ありのままの自分を愛して欲しい……そう思うのは、いつの時代も同じなのだ。そして大人の恋だからこその不器用さは見ていていっそう微笑ましく、観客は彼らの恋に心を寄り添わせ、応援したくなる。それこそがこの作品が永遠の名作であるゆえんだろう。音楽は、初めてこの作品を観る方もどこかで耳にしたことがあるであろう、おなじみの名曲揃い。『踊り明かそう』という名で親しまれている曲が、『じっとしていられない』とタイトルを変えるなど、リボーン版で大胆な手を入れたG2だが、その訳は芝居の中で歌われてこそ光る。芝居と歌の間で感情を途切れさせることなく、気持ちの高ぶりが歌になる。ミュージカルの本来の在り方を再発見し、そしてミュージカルの素晴らしさを改めて輝かせているリボーン版『マイ・フェア・レディ』は、普遍的な良さを、新鮮な感動で包んだ名作だ。ほか出演は田山涼成、松尾貴史、水田航生、麻生かほ里、高橋惠子ら。東京公演は8月7日(日)まで。その後8月13日(土)・14日(日)に愛知県芸術劇場 大ホール、8月20日(土)から22日(月)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演。
2016年07月15日ウィーンで初演され、1996年に宝塚歌劇団雪組により日本初上演されたミュージカル『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』。再演を繰り返し20周年の節目となる今年、この大作に宙組が挑む。ミュージカル『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』チケット情報主演の宙組トップスター・朝夏まなとは、9代目のトートとしてビジュアルからオリジナリティを追求。「鬘の色は赤と青とを合わせて濃い紫にしています。宙組のテーマカラーである紫をぜひ使いたかったので。衣装も現代的なレザーでスタイリッシュなイメージです」と話す。数奇な運命を辿るオーストリア皇后・エリザベートと、黄泉の帝王・トート(死)との“愛”を描いた本作。「現実世界ではあり得ない関係だからみなさん惹かれるんでしょうね。トートはとてつもない生命力を持った少女のエリザベートにひと目で惹かれますが、その最初の出会いである『愛と死の輪舞』のナンバーは特に大事にしたいです」。全編珠玉の音楽で綴られる高度なミュージカルだけに、基礎の歌稽古からきっちりとこなし楽譜に向き合っている。「計算し尽くされた音楽ですごいなと思います。自分が歌うところ以外に“トートの音階”というのが潜んでいたり。新しい発見がたくさんあります」と、『エリザベート』の奥深い魅力を実感している様子。「みんなこの作品に出られる喜びを感じ作品に没頭しています。士気が高く宙組のスケール感が出るのでは」。朝夏がトップになり大劇場公演3作目。『王家に捧ぐ歌』など大作も成功に導いた“組力”がさらに発揮されそうだ。また今回から日本初演より潤色・演出を手掛ける小池修一郎に加え、小柳奈穂子も演出に名を連ねている。「小柳先生には『一幕では(エリザベートを手のひらで転がすように)もっと遊んだら』とアドバイスを頂きました。エリザベートを追い詰めようという意識だけに囚われていましたが、遊び的な部分も取り入れてみたくなり、すごく視野が広がりました」。稽古の前にはオーストリアへ行き、舞台となるアウグスティーナ教会などを訪れた。「ヒヤッと冷気が漂い『ここにならトートはいるな』と感じました(笑)。そういう空気感はトートの登場シーンなどで意識しています」今は“死”やエリザベートに関する本なども熟読。「エリザベート自身、死に近付きたいと思い、その興味からトートというキャラクターが引き出されたので。彼女の精神状態などを読んで勉強しています」。死後の世界には色んな解釈があるが、朝夏は「美しい世界だと捉えています。だからこそトートは美しい存在として描かれているし、そこを表現したいです」。怖ろしいはずの“死”に惹かれるエリザベート。何ともいえないロマンティシズムを、クレバーな朝夏が万全の役作りでタカラヅカの舞台上に創出する。公演は宝塚大劇場にて7月22日(金)から8月22日(月)まで上演。チケットは発売中。東京宝塚劇場公演は9月9日(金)から10月16日(日)まで。8月7日(日)より一般発売が開始される。取材・文:小野寺亜紀
2016年07月13日今年で36年目となる、ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』。7月9日、明治神宮球場にて行われた「東京ヤクルトスワローズ対中日ドラゴンズ」の始球式にピーターパン役の唯月ふうかが登場した。【チケット情報はこちら】当日は選手も含め、球場に集まった東京ヤクルトスワローズファンのほとんどが緑のユニホームを着用。全体がピーターパン色に染まる中、グラウンドに現れたのは衣装を身にまとった唯月とウェンディ役の入来茉里、片山陽加らだ。可愛らしい姿に球場からは「ピーターパン!」「可愛い!」と声援がとぶ。それに応えるように唯月ふうかは笑顔で「いばろうぜ」を歌い出した。「クックーククッ!」の歌詞に合わせて踊るピーターパン達の姿に、球場からは思わず笑みが溢れる。歌唱披露が終わり、いよいよ始球式だ。マウンドに立ち、ぐんっと勢い良く振りかぶって放たれたボールは、ワンバウンドながらもまっすぐバッターボックスへ。キャッチャーが無事にボールを受け取ると、ほっとした表情を浮かべた唯月。球場からは大きな拍手が起こった。始球式終了後、つば九郎と唯月が並んでの会見が始まった。記者から始球式の感想を聞かれると、「あっという間であまり覚えていないが、なんとかキャッチャーの方に届いて良かった」と語った。稽古場や公園で5日間ほど練習をしてきたと言う唯月に対して、つば九郎が持っていたスケッチブックに「甘い」とひと言、一同に笑いが起きた。「球技がとても苦手で、始球式が決まった際にはどうしようかと思ったが、ボールと友達になれて良かった」とピーターパンならではの受け答えに、4年目をむかえる余裕をも感じた。始球式前のパフォーマンスに関しては、「ピーターパンの歌をまさか球場で歌えると思っていなかったので戸惑いがあったが、球場全体が盛り上がってくれて良かった」と笑顔。パフォーマンスと始球式、どちらが緊張したかと聞かれると、衣装での投球が困難だったこともあり始球式と即答するも、ボールが緑色に塗られていたり、グローブに葉が描かれていたりと至るところにピーターパンらしさが散りばめられていることに、パワーがもらえたと元気よく答えた。きっと球場にいた子供や大人たちも、見事に始球式を終えた唯月からパワーをもらったに違いない。本公演は7月24日(日)から8月3日(水)東京・東京国際フォーラム ホールC、8月17日(水)大阪・梅田芸術劇場メインホールにて。チケットは発売中。
2016年07月11日ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学(せいがく)vs氷帝が7月に開幕する。本公演で初のダブルスを組み、氷帝の宍戸 亮(小早川俊輔 )&鳳 長太郎(渡辺碧斗)ペアに挑む、乾 貞治役の田中涼星と海堂 薫役の佐奈宏紀に話を聞いた。ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学vs氷帝 チケット情報今回、初めてラリーと呼ばれる試合場面を演じる田中は「このダブルスのために、最初の不動峰公演のときから乾と海堂の関係性は意識していたので、やっとか……という思いです。これまで試合をしているみんなを観てはいますが、いざ自分がやってみるとボールの行方や、今、自分が優勢かどうかをどう見せるか?とか意識することがすごく多くて、毎日が発見です。でも、自分が打った瞬間、ラケットにボールが当たる効果音が入ることが、ものすごく気持ちいいと知りました!」と笑顔を見せる。そんな乾の姿に、稽古中なのに思わず笑みがこぼれてしまうという佐奈も「前回の山吹公演でも、リョーマが勝ってみんなが湧いている隅で海堂はひとり、拳を握りしめている。その姿に乾だけが気付く……といった、ベンチワークでの立ち居振る舞いでもふたりの関係性を見せたくて、一緒にいろいろ考えて作っていたんです」そんな互いについて「涼星くんはすごく柔らかい人。跳ね返すことなく受け入れてくれるし、それどころか言わなくても察して提案してくれる」と佐奈。続けて田中は「佐奈は……天才だよね!」と発言。すかさず「まあ、そうだね(笑)」と佐奈。しかし、大真面目に「でも、本当にそうなんです。視野が広くて、細かい部分もちゃんと見ていて、なんでもできるから、僕のほうが教えられることが多い」と絶賛し、仲の良さを披露。「初試合の場面はもちろんですが、データ主義だった乾が海堂の執念や努力に影響を受け、これまで信じてきたデータテニスを超える……その姿を見せたい。特に乾がダブルスを組もうと決めるキッカケとなる、海堂がひとりで特訓する場面がすごく好きなんです」と田中。「あそこは僕もずっと演じてみたかった。試合ともベンチワークともちがう、海堂としての演技を観てほしいです。新曲も増えて、新しい氷帝公演になっているので、何度も観てほしいです!」と佐奈。この公演で青学8代目として卒業する、彼らの試合をその目に焼き付けてほしい。公演は、2016年7月14日(木)から24日(日)までTOKYO DOME CITY HALLから、大阪、愛知、宮城、福岡、そしてテニミュ初となる上海公演を経て9月の東京凱旋公演と続く。取材・文/おーちようこ
2016年07月08日歴史朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』『俺とおまえの夏の陣』が、7月7日に開幕する。シリーズ3回目となる今回は『僕とあいつの関ヶ原』2チーム、『俺とおまえの夏の陣』1チームの計3チームで上演される。公演チケット情報各チームの稽古場に潜入した。まず、戦国時代の終焉をもたらした“関ヶ原の戦い”に向け、徳川家康と石田三成が率いる軍の武将の駆け引きや葛藤を描いた『僕とあいつの関ヶ原』。演じるのは荒田至法、尾関陸、黒羽麻璃央、染谷俊之、松田凌による【紫陽花チーム】と、猪塚健太、尾関陸、西川俊介、松田岳、矢部昌暉(DISH//)による【青竹チーム】の2チームだ。印象的だったのは、島左近と女性・染音を演じる荒田(紫陽花チーム)、松田岳(青竹チーム)だ。同じ本でここまで変わるかというほど役の印象が違う。その両チームで松平忠吉役の尾関も、同じ役、同じ台詞でありながらもやはり演じ方が違っている。“チームで作る”ことがよくわかり、同じ脚本を2チームが演じる楽しさを感じた。さらに紫陽花チームでは、三成と家康のどちらにつくか悩み、侍女・染音との恋も捨てられない小早川秀秋を演じる松田凌の“ヘタレ”な姿は新鮮。黒羽は、鬼と呼ばれる井伊直政と、友情に生きる大谷吉継のコントラストでそれぞれの役を引き立たせる。そして、染谷が演じる三成と家康がグッと空気を引き締めていた。青竹チームは、猪塚の熱演も印象的。家康の「がじゅり、がじゅり」と爪を噛む音だけで舞台上の空気を不穏に変え、圧倒的な恐ろしさを見せつける。矢部は、今回最年少の18歳という若さながら重みのある直政と吉継という役をのびのびと演じていた。小早川役の西川がスイッチのようにパチパチとモブ役を入れ替えていく様も面白い。そして、伊達政宗とその家臣・小十郎の過ごした長い年月を軸に戦国時代を描く『俺とおまえの夏の陣』を演じるのは、須賀健太、染谷俊之、黒羽麻璃央、猪塚健太。『夏の陣』チームはこの日が初稽古だったが、テンポが合うスピードも早く、ひとつ合わさるたびに魅力を増していく様子は観ていて驚いた。幼い梵天丸(政宗/須賀)の願いを命懸けで叶える小十郎(染谷)のシーンでは、互いの複雑に入り混じった感情、決意までしっかりと伝わるのがさすが。猪塚はかわいらしい政宗の弟と、政宗を毒殺しようとした母親を同時に演じるという難しいことをしていたが、魅力的に演じ分けていた。黒羽によるナレーションも舞台全体の空気を動かしており、朗読劇ならではの面白さを感じた。『僕とあいつの関ヶ原』は7月7日(木)から9日(土)、『俺とおまえの夏の陣』は7月10日(日)に東京・天王洲銀河劇場にて。取材・文:中川實穗
2016年07月06日元宝塚星組トップスター・柚希礼音が宝塚退団後、初主演するミュージカル『ミュージカル バイオハザード~ヴォイス・オブ・ガイア~』の制作発表会見が7月6日、都内で行われた。『ミュージカル バイオハザード~ヴォイス・オブ・ガイア~』チケット情報原作は1996年に誕生し、シリーズ累計6800万本を出荷しているサバイバルホラーゲーム『バイオハザード』。2002年にはハリウッドで映画化もされた、日本ゲーム界が誇る大ヒット作だ。“人類を滅亡へと向かわせる「ウィルス=奴ら」との壮絶な戦い”という原作のモチーフはそのままに、今回は作・演出家のG2がオリジナルミュージカルとして作り上げる。物語は、アドリア海沿岸のとある城塞都市を舞台に、周りを“奴ら”に取り囲まれた人々が、エーゲ海の小島に噛まれても生きている少女がいるという噂を入手し、少女の抗体から血清を作ろうと危険をおかし小島を目指すが……というもの。ゲームクリエイターであり、今回監修として参加するCAPCOMの小林裕幸氏は「ゲームと設定やキャラクターは違いますが、『バイオハザード』の面白さをより多くの人に知って頂きたいので、皆さんに預けた形となります。G2さんが描きたい『バイオハザード』を思い切りやっていただきたい」と、ミュージカル版ならではの展開に期待を寄せる。その中で、過去の記憶を失くしたヒロイン、リサ・マーチンを演じるのが柚希。2015年に宝塚を退団後、コンサートやショー作品には出演してきたが「すごくお芝居をしたいなと思っているところでしたので、今回、退団後初ミュージカルに出演できてとても嬉しいです」と喜びを語る。ただ、ゲームは子どもの頃から得意ではないと話し「でも、今回はゲームをちゃんと全部やっていないとダメだとまわりの原作ファンに強く言われまして、頑張ってやってみたのですが……どうしても最初のゾンビを倒すことができない。何度やってもいっぱい噛まれて死んでしまうんです。“カッコいい戦う女性”であるリサをできるのか心配になるくらい、敵が来ると逃げたくなる」と可愛らしいエピソードを明かす。とはいえ、「もともとの作品のファンの方々にも満足していただきつつ、それを真似るだけではなく、愛や勇気、オリジナルなハートフルなメッセージ性をお届けしたい」と意気込みを語った。共演者は横田栄司、渡辺大輔、平間壮一、海宝直人、吉野圭吾ら。この日の会見でもズラリとイケメンたちに囲まれ、「(共演者の男優陣の)あまりの豪華さにテンションあがってます」と柚希。公演は9月30日(金)から10月12日(水)まで東京・赤坂ACTシアター、11月11日(金)から16日(水)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて。チケットは7月23日(土)に一般発売を開始する。
2016年07月06日世界約30か国で指揮者として活躍する西本智実。2012年にイルミナートフィルハーモニーオーケストラを結成し、13年にはイルミナートバレエもスタート。14年および15年に西本の演出・指揮でバレエ『白鳥の湖』を上演した。そして今年、チャイコフスキーのバレエ『くるみ割り人形』で再び演出と指揮を手がける。公演チケット情報「イルミナートの『くるみ割り人形』では、音楽もバレエも全て、総合芸術として有機的に結びついた舞台を目指します」と語る西本。『くるみ割り人形』といえば、クリスマスに醜いくるみ割り人形をもらったドイツの少女マリーが夜中、くるみ割り人形と敵対する鼠を退治し、王子の姿に戻ったくるみ割り人形に案内されて雪の国やおとぎの国を巡るという物語が一般的。西本はその流れを踏まえつつ、細部に様々な工夫を施すという。「この作品は、ドイツの作家E.T.A.ホフマンの原作に、フランスの作家A.デュマ・ペールが翻案を施したものですが、現行のバレエでは抜け落ちてしまっているエピソードも多いのです。たとえば原作では、ドロッセルマイヤーが世界各国を回り、旅先でみつけたくるみを割ると、中から漢字が出てくるという記述があるので、今回、そういったエピソードも演出に織り込んで創っています。おとぎの国で展開する各国の踊りにしても、なぜその国の踊りが登場するのか、それは一体何を表しているのかを、提示する事で“もう1つの世界”を見ていただきたい」西本は『くるみ割り人形』の世界に現代との共通点を見出している。「原作が書かれたのは、フランス革命後、ヨーロッパの価値観が大きく変化した時代。グローバリゼーションと言われ、価値観が多様化する現代に重なります。マリーはこちらの世界では内向的に映りますが、その感受性や誠実さによって、別の価値観を持つ世界の人達から選ばれていきます。私はこの作品を通じて“もう1つの世界”というチャンスが誰にでも起こり得るということも表現したい。絵画と違って音楽は瞬間を留めることはできませんが、ご覧になった方が、幕が降りてからも舞台を思考の中で巻き戻し、思考の窓を広げていけるような仕掛けを、舞台上で幾つも創るつもりです」マリーの旅は、西本自身の指揮者としての活動とも重なる。「チャイコフスキーの音楽を指揮すると、自分が今、何時代のどこの国にいるのかわからなくなることがあります。チャイコフスキーも通った劇場で指揮者をしていたころは特にそうでした。ロシアのサンクトぺテルブルクの冬はとても寒いので、窓は全て二重窓になっているのですが、真冬になると二枚目のガラスの向こう側がすっかり凍ってぼやけて見えます。しかしよく見ると雪の結晶が結合し、大きな雪の結晶の模様が浮き上がるのです!この光景はとても幻想的なんですよ。チャイコフスキーと同じ情景を見た者として、その美しい世界を、斜幕なども用いながら表現したいと思っています」公演は8月16日(火)大阪・フェスティバルホール、30日(火)・31日(水)、東京・新国立劇場 オペラパレスにて。取材・文:高橋彩子
2016年07月06日8月16日(火)に東京・CBGKシブゲキ!!で落語会「実験落語neo~シブヤ炎上ふたたび~」が開催される。【チケット情報はこちら】「実験落語」は、1970~80年代に渋谷ジァンジァンで三遊亭円丈を中心に開催されていた創作落語の会。今年の6月に復活し、好評を博していた。復活第2弾の出演者は、三遊亭円丈、柳家小ゑん、柳家喬太郎、立川吉笑、桂三度の5人。元祖『実験落語』のメンバーであり、復活後は初参加となる柳家小ゑんは「すごくありがたい。当時とは状況が変わってやりやすくなったと思います。型破りなものをやった方がいいのかな?」とコメント。さらに、柳家喬太郎は「実験落語という名前のついた会に出られるということで興奮してます。がんばります」と意気込んだ。チケットの一般発売は7月9日(土)午前10時より。■「実験落語neo~シブヤ炎上ふたたび~」日時:8月16日(火)開場18:00 / 開演19:00出演:三遊亭円丈 / 柳家小ゑん / 柳家喬太郎 / 立川吉笑 / 桂三度料金:3,800円(全席指定・税込)
2016年07月06日昨年人気を博した朗読劇「僕とあいつの関ヶ原」「俺とおまえの夏の陣」がキャストを一新し7月に再演をむかえる。「俺とおまえの夏の陣」に出演が決定している須賀健太、染谷俊之、黒羽麻璃央、猪塚健太からそれぞれコメントが届いた。公演チケット情報―出演が決まっての感想はいかがですか?須賀:「何度か別の朗読劇をみせていただく機会があって、純粋にやれてうれしいなって思いますね。すごく技術が必要なものだと思うので、すごく普通なことですけど、噛まないかなって今は(笑)。普段噛むわけじゃないんですけど、噛むってことの重みが変わってくるので、文字を伝える舞台な感じがするので、朗読劇って。噛めないなっていうところはあります」染谷:「朗読劇って何作品か出させていただいたんですけど、時代物の朗読劇って初めてで、きっと大変なんだろうなって思うんですけど、やりがいがあるんだろうなって楽しみです。前回の映像を観たら、ひとりが何役も演じて、入れ代わり立ち代わりで、観ていて飽きさせないというか、観ててすごく楽しいなって思いました」猪塚:「本当に僕、本読みが苦手なので、朗読劇って初めは抵抗あったんですけど、演出の中屋敷さんと一度お仕事してみたいなと思っていて、銀河劇場も初めてで、これは苦手意識は克服したいなってやらせてもらうことになって。緊張はしてますけど、楽しみでもありますね」―今回チャレンジしたいことはありますか?染谷:「感情はもちろんなんですが、色んな声質で色んな役を演じ分けて、観に来て下さった方に楽しんで頂けたらと思います」―意気込みを。黒羽:「ひとつの作品の中でふたりの役を演じるということは初挑戦なので、まず自分が楽しむという事も大切に作品に触れていきたいと思います。」猪塚:「朗読劇ということで、僕にとってはすごく挑戦の舞台になるんですけど、僕が感じた朗読劇の楽しさを皆さんにも感じていただけるようにしたいです。あとはチーム感がすごく大事だと思うので、このメンバーが好きだなと思ってもらえるようにがんばりたいと思います。劇場でお待ちしております!」『俺とおまえの夏の陣』は7月10日(日)東京・天王洲 銀河劇場にて。
2016年07月05日2014年に宝塚歌劇100周年を記念して上演され、7万人を動員した、世界初・女性キャストのみの宝塚歌劇OGバージョン『CHICAGO』が、7月9日(土)に神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場大ホールで開幕。NY、東京、大阪を巡るワールドツアーが開催される。本番を間近に、代表曲を抜粋した公開稽古が行われた。宝塚歌劇OGバージョン『CHICAGO』チケット情報まず、序曲『Overture』~『All That Jazz』では、和央ようか演じるヴェルマが舞台中央から艶やかに登場。朝海ひかる演じるロキシーが愛人を殺害する、本作でも代表的な曲が披露された。続いては、麻路さきが演じる、大金を積めば無罪にしてくれるという敏腕弁護士・ビリーの登場シーン。大きな羽根扇に囲まれて『All I Care About』を歌う姿はビリーという人物を一瞬で印象付ける、大胆で華やかな演出だ。姿月あさと演じるビリーが、大和悠河演じるロキシーをマリオネットに見立て、記者会見で腹話術のように歌う『We Both Reached For The Gun』は、映画版でも印象的なシーンのひとつ。その記者会見によって朝海ひかる演じるロキシーが一躍スターダムに上り詰め、「私、スターよ!」と喜びを歌い上げる『Roxie』では、朝海の滑らかに動くセクシーな腰も見どころだ。ビリーがいかに法廷、世間を支配しているかを歌い上げるナンバー『Razzle Dazzle』は、峰さを理演じるビリーがダンサーを支配していく姿に圧倒的存在感が漂う。公開稽古の最後には、NY公演でのみ上演する『タカラヅカ・アンコール』より『すみれの花咲くころ』を。宝塚歌劇団の演出家・三木章雄が今回のためだけに構成したレビューショーは、初風諄の美しい歌声の中、キャストが全員登場。純白の羽根扇が美しく舞い、宝塚歌劇の伝統と歴史の華が披露された。レビューショーは、横浜公演でのお見送りセレモニーで一部上演予定。公開稽古後に行われた囲み取材では、峰が「ワクワク感と緊張感が混ざった感じ。よりいい空気感が出るように、アンサンブルも含めて一緒に上がっていきたい」と話すと、麻路も「ずっとこのまま続いててほしいなって思うほど、稽古場でのひとときが楽しい。久しぶりに男役をやれて幸せ」と笑顔に。『タカラヅカ・アンコール』では、その日のメインキャストが羽根を背負う演出もあるそうで「ぜひNYまで観にいらしてください!」(朝海)と盛り上げた。最後に峰は「アンサンブルの中には私が退団してから生まれた方もいるんですけど、魂がやっぱり同じなんだなってひしひしと感じます。そこに退団後の経験が上乗せされているので、OG公演は魅力がある」と話し、公演への期待を高めた。主要キャストはダブルキャストもしくはトリプルキャスト。公演は、7月9日(土)から14日(木)のKAAT 神奈川芸術劇場大ホールを皮切りに、7月20日(水)から24日(日)にはNYで上演。8月に東京・大阪公演を行う。撮影・取材・文:中川實穗
2016年07月04日今年で3度目の小籔千豊が座長を務める「吉本新喜劇」東京公演が、この夏開催。7月1日には吉本興業 東京本部にて開催発表会見が行われ、小籔座長が「東京での活動は新喜劇を盛り上げたい、恩返ししたいという思いでやらせてもらっています。3回目の東京公演も成功できるように頑張って、5年10年と続けていきたいと思っております」と意気込みを語った。「吉本新喜劇 小籔座長東京公演2016」チケット情報一昨年は俳優座劇場、昨年はサンシャイン劇場で開催。今年、ジャニーズの聖地である東京グローブ座で行うことに小籔座長は、「グローブ座でやらせていただくことで、ジャニーズファンがまさかここに来るとは思ってませんけども」と前置きしながらも、「普段全く見向きもせえへん方たちに、まずはチラシを手に取っていただけたら。ジャニーズパワーが降り注いでいる劇場でやらせていただく、僕の狙い通りです」と語った。今回は2部制で、第1部は、新喜劇「似て非なるもの?」(作・演出/大崎知仁)を上演予定。小籔座長が観てほしいという座員は、「アメトーーク!」のギター芸人に出演した松浦真也や、大阪でちびっこに大人気の今別府直之など。中でも、「観に来たら忘れへんと思う」と特にオススメするのが祐代朗功。「2代目Mr.オクレを襲名してもらいたいと思うぐらいの逸材」と太鼓判を押した。第2部は、ゲストを迎えるトークコーナーで、東京の一線で活躍している芸人が出演する予定とのこと。「例えばミランダ・カーが来るとか、オバマ大統領が来るとか、そういうことはありません。そういう意味で言いますと、だいぶ目玉的には弱いかなと思います(笑)」と話し、笑わせた。最後に、「新喜劇なんてどうせおもんないやろ、一切笑えへんのちゃうか、と思ってる方に、できたら一回チャンスをいただけたらなと思います。ちびっこ、カップル、ご夫婦、ご家族で来ていただけたら」とPR。さらに、「テレビに小籔が出てきたらチャンネル変えるっていう方が多いと思うんですけど、新喜劇のときは偉そうなことを言うてませんので。僕のことは嫌いになっても、新喜劇のことは嫌いにならないでください」と吉本新喜劇への情熱を語り、場内を沸かせた。「吉本新喜劇 小籔座長東京公演2016」は、8月24日(水)から28日(日)までの5日間で計9公演。東京グローブ座にて開催。チケットの一般発売は7月9日(土)より。取材・文:門 宏
2016年07月04日オフブロードウェイ・ミュージカル『bare -ベア-』が6月30日(木)より東京・新宿 シアターサンモールで開幕。上演に先がけて、ゲネプロと会見が行われ、演出の原田優一、キャストの鯨井康介、田村良太、増田有華、川崎麻世が出席した。【チケット情報はこちら】同作は2000年にアメリカで初演。日本での初演は2014年12月に今回と同じく俳優の原田優一が演出を務め、大きな反響を呼んだ。今回、新たなキャストを迎え再演される。物語の舞台は全寮制のセント・セシリア高校。平凡な生徒ピーターにはある秘密があった。それは、学校一の人気者であるジェイソンという同性の恋人がいること。いつかは自らを―bare―さらけ出し、愛し合いたいと強く願っていた…。この日行われたゲネプロでは生バンドによる演奏で、力強く疾走感溢れるロックから、ラップやダンスミュージック、聖歌などジャンルを越えた音楽が、登場人物のそれぞれの葛藤を表現。ラップに合わせたブレイクダンスはパーティーシーンを盛り上げる。また、入絵加奈子演じるシスター・シャンテル扮するブラックミュージックの歌手のシーンも必見。一見、「同性愛」「宗教」「ドラッグ」というセンセーショナルな題材だが、「周りに理解してもらえない」「もっとキレイになれたら」「自分の方に目を向けて欲しい」など登場人物の抱える不安や悩みは、誰しもに通じるものがある。観るものをbare(=さらけ出す)するきっかけになる作品だ。開幕を前に、ジェイソン役を務める鯨井は「文武両道、人気者のジェイソンが抱える秘密、これがどうストーリーに作用していくかが見どころ。キャスト・スタッフ含め素晴らしいカンパニーなので、仲間たちと一瞬一瞬をきちんと演じていきたい」とコメント。増田から「緊張してない?」とツッコミが入ると、「普段は緊張しないんですが…確かに緊張してます(笑)。少し不安なんですが、逆にこの不安定さがジェイソンの持つ気持ちの不安定さとして良い作用を持たせられたらと思います」と話した。対照的にピーター役を務める田村は「僕は全然緊張してないんですが…(笑)。演出の原田さんの素晴らしい導きもあったし、キャストも信頼できる方々なので、皆さんを信用して思い切りやりたいと思います」と意気込んだ。ジェイソンに好意を寄せる女性アイヴィ役を務める増田は、今回初のキスシーンに挑戦。「凄く恥ずかしいけど、この作品のようにさらけ出して行かないとダメだなと思った」と照れながら語ると、鯨井が「(キスの相手は)私です!光栄です!」と挙手し、笑いを誘った。鯨井は「(増田は)稽古ではそんなに構えている様子はなかった。僕のほうが心臓がバクバクしていると思います(笑)」と語った。オフブロードウェイ・ミュージカル『bare -ベア-』は7月10日(日)まで、東京・新宿 シアターサンモールで上演。なお、ぴあでは原田優一のファンクラブを好評受付中。詳しくは下記関連リンクより。
2016年07月04日画家であるゴッホと彼を支え続けた弟テオの半生を描く『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』の上演にあたり、韓国発のこのミュージカルを日本版として創作していく3人が顔を揃えた。上演台本・演出の河原雅彦、ヴィンセント役の橋本さとし、弟テオ役の岸祐二である。韓国では、キャストふたりだけで濃密な物語を紡いでいくこと、さらに、プロジェクション・マッピングを駆使し、ゴッホの絵画がそのまま美術の一部になったりする舞台美術が話題を集めたこの舞台。さて、日本版が目指すものは。ミュージカル『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』チケット情報韓国での公演を目にしてきた河原は、やはりプロジェクション・マッピングの使い方が印象に残ったそうだ。「今はマッピングと芝居が連動する舞台も珍しくないんですけども、より細かく複雑な使い方をしていて、面白いアイデアがいっぱい詰まっていた。ここでの映像は、すでに作品の一部として内包されていて、細部まで仕上がっているので、それは構造上外せない。その分じゃあ、演出として何ができるのかと思いヴィンセントとテオの関係を調べていくうちに気が付いたのは、ふたりはただ狂った兄とやさしい弟ではなく、もっと人間っぽかったということ。いびつで生々しいふたりを提示することで、韓国版とはまた違うエンターテインメントを作れるんじゃないかと思ってるんです」。橋本も言う。「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホといえば狂人的なイメージがあるけど、おそらく彼としてはただ普通に生きてるだけだったと思うんです。それが周りの常識からはみ出していただけで。だから、僕としてはどこかのほほーんと存在していたいなと思うんですね」。そのヴィンセント本人が無意識に放つものを信じ続けたテオを岸は、「兄を助けることが自分の救いになるという共依存の関係だったんじゃないか」と分析し、「そういう根底にあるいびつな感情とか、感情のぶつかり合いを、この作品では音楽に乗せることで見やすく変換しているんです」と付け加える。「あの爽やかな曲のなかにいびつさをどう出していくか。陽のメロディのなかに陰な部分を組み入れることで、ヴィンセントとテオのエキセントリックで複雑なものが出たらいいなと思いますね」と橋本も意欲的だ。「韓国版のように『こんな兄弟愛、素敵でしょ?』というシンプルな手触りにはならないと思います(笑)。でも、ふたりのこの過剰さは、ピュアだから生まれたものだし、過剰さは時にファンタジーにも似た感動を覚える。ゴッホって色々な切り口で語れる面白い題材だなと改めて思います」と河原が最後に語る。どこまでも突き抜けて生きた人間を観ることは、それが叶わない現状を少しでも打破する力になるかもしれない。公演は9月2日(金)東京・かめありリリオホール、9月7日(水)から24日(土)まで東京・紀伊國屋サザンシアターにて。チケットの一般発売は7月23日(土)午前10時より。取材・文:大内弓子
2016年07月04日2013年のトニー賞にて13部門にノミネートされ、作品賞をはじめ6部門を受賞したブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」。その日本人キャスト版が今月開幕する。今回の上演にあたっては小池徹平や三浦春馬らが出演し、脚本のハーヴェイ・ファイアスタイン、音楽・作詞のシンディ・ローパー、演出・振付のジェリー・ミッチェルらオリジナルスタッフ陣が集結。6月30日、都内にて公開稽古と囲み取材が行われた。ブロードウェイミュージカル「キンキーブーツ」(日本版) チケット情報「キンキーブーツ」は、経営不振に陥った老舗の靴工場の跡取り息子・チャーリー(小池)が、ドラァグクイーンのローラ(三浦)と出会い、差別や偏見を捨ててドラァグクイーン専門のブーツ工場として再生していく物語。この日の公開稽古ではまず演出代理のD.B.Bondsが作品について「愛であったり、他者を受け入れたりといった、とても大切なストーリーをもっている」と解説。その後、チャーリーがドラァグクイーンのためのブーツで工場を救おうと思いつくナンバーと、そこにローラが現れてブーツのヒールに対する思いを表明する計2曲のナンバーが披露された。その後の囲み取材で三浦は、ハイヒールを履くドラァグクイーンのローラ役に挑戦することについて「ブロードウェイでこの作品を初めて観たときから、もし日本での上演が決まったら絶対オーディションを受けたいと思った。実際にブーツを履いてみると(目線とともに)自分のテンションや志をひとつ上げてくれるような感覚になる。観に来てくれた皆さんはヒールを見る目が変わるんじゃないかっていうくらいにとても魅力的」とコメント。さらに作品について「作品自体に力があって、大切なメッセージを最後にビシッと、そして楽しく伝えてくれる。(ブロードウェイで)観終わった後、シンディ・ローパーさんの作った楽曲の数々が頭の中で何日もガンガン鳴るんです。それだけ自然に入ってくる音楽と、大事なテーマを届けてくれるので、たくさんの人に本当に本当に観てほしいです」と熱い思いを爆発させた。ローラとは好対照なチャーリーを演じる小池は、三浦との初共演について「むっちゃ楽しい。初めての感じがしない。役がまったくちがうので、(稽古では)お互いに別の苦労があって、どっちも本当にしんどい。共に苦労して進んでいる感じ」と稽古の様子を語り、「本番に向けてより一層素晴らしい作品になるよう日々努力しています。ぜひ劇場でご覧ください」とメッセージを送った。今月21日(木)に開幕する新国立劇場中劇場での東京公演のチケットは完売。8月13日(土)開幕のオリックス劇場での大阪公演、8月28日(日)開幕の東急シアターオーブでの東京凱旋公演のチケットを現在発売中。また、今秋には本場アメリカのカンパニーによる来日版も上演予定。来日版のチケットも発売中。
2016年07月01日今から60年前、ニューヨークで幕を開け、日本を含め世界中で上演されている名作ミュージカル『マイ・フェア・レディ』。日本では、2013年にG2を演出に迎え、キャストも一新した同作が、再び上演される。前回に引き続き、ヒギンズ教授を務める寺脇康文に話を聞いた。ミュージカル「マイ・フェア・レディ」チケット情報「セリフも演出も前回よりかなり変わって、深くなっています。例えば、前回はそりの合わないイライザとヒギンズが、段々と惹かれ合っていく構図だったんですが、今回はより複雑になり、最初にふたりが出会うシーンから、互いにビビッとくるものがあったはずだという解釈です」。ロンドンに住む貧しい花売りの娘イライザが、淑女になるため、言語学者のヒギンズから、上流階級の言葉や礼儀作法を教わり、美しい貴婦人へと成長していく物語。日本でも「源氏物語」で紫の上を好みの女性に育てる光源氏が描かれるが、男性にはそんな願望があるのだろうか。「男女共にあると思います。でも何をしても結局、男は女性に教育され、手のひらの上で転がされる(笑)。威張り散らしているけれど、ヒギンズも同じですね」。言語に厳しく偏屈もののヒギンズだが、寺脇が演じると何ともいえない色気がありチャーミングだ。「彼は子供がそのまま大人になったやんちゃ坊主。バカだけど守ってあげたくなるような男の一面も出したいんです」演じることは寺脇にとって、「相手によって音楽の種類や演奏法が変わるセッション」だという。前回同様、イライザを霧矢大夢と真飛聖がWキャストで務める。「霧矢さんは芯の通った男気のあるイライザ。真飛さんには『どうしようもねぇなコイツ』と、小学生の女の子に接する感じですね」。ふたりに対してヒギンズは、包み込んだり、突き放したりと今回も違う音楽を奏でるそうだ。また、上流階級の言葉が習得できず自暴自棄になるイライザに対し、ヒギンズが「言葉は人の心に流れる気高いもの、創造力に富んだ音楽的な集合体だ」と語る名台詞がある。「役者としても感慨深いセリフです。前回はやさしくそう言っていたのですが、G2さんが『男はもうダメだと思ったらダメ。女性はもうダメだ…、からまだ余力がある』と名言をはかれて(笑)。今回はイライザに対する最後の鞭として、叱咤激励する感情を込めたい。あの言葉は彼女に勇気と活力を与えるのですから」最後に舞台に立つ意義を聞いてみた。「世界中で紛争が起こり、悲しいニュースが多すぎる。僕らにできるのは、いい作品を作り人の心を豊かにすること。現代の日本で、貴族や上流階級はあまり関係がありませんが、人間は生活や考え方、心の持ちようも含めて少しでも上昇し成長したいはず。そこを自分と重ねてこの舞台を見てほしいですね」公演は、7月10日(日)から8月7日(日)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウス、8月13日(土)・14日(日)は愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、8月20日(土)から22日(月)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは発売中。取材・文:米満ゆうこ
2016年07月01日6月27日、劇団四季ミュージカル『キャッツ』大阪公演開幕に先駆けて、大阪四季劇場にて舞台仕込み取材会が行われた。劇団四季「キャッツ」のチケット情報『キャッツ』の舞台は都会のゴミ捨て場。舞台はもちろん客席に至るまで、猫の目線に合わせて3~5倍の大きさで作られた巨大なゴミのオブジェが2000~2500個設置され、客席に一歩足を踏み入れた途端、“猫の世界”へといざなわれる。取材会では、舞台監督の福永泰晴と舞台美術家の土屋茂昭が装置や作業内容、『キャッツ』の世界観やデザインについて解説。「猫になったような錯覚を覚える舞台装置は『キャッツ』の大事な演出の一つ。劇場内では、ゴミ捨て場にいる猫の目線を味わってほしい」と福永。また、「東日本大震災の被災地を『ユタと不思議な仲間たち』公演で回って以降、ゴミのオブジェをめぐる意識が変わり、単に空間を埋める物ではなく“思い出の塊”だと意識するようになりました。『キャッツ』は、何度観ても新しい発見があり、空間全体が秘めた力を持っていると感じます」と話す土屋。上演される土地ゆかりの“ご当地ゴミ”と呼ばれるオブジェも公開。このたびの大阪公演では、たこ焼き器や阪神タイガースの応援バットなど約15個のご当地ゴミが飾られるとのこと。ぜひ会場で見つけてみよう。13年ぶり4度目となる『キャッツ』大阪公演は、7月16日(土)に開幕。11月末までのチケットはほぼ完売。12月~2017年3月末公演分のチケットは7月3日(日)一般発売開始。チケットぴあでは、一般発売前最後のWEB先行先着[プリセール]を7月1日(金)昼12:00から7月2日(土)23:59まで受付。
2016年07月01日宝塚歌劇団宙組の初代トップとして絶大な人気を博した姿月あさと。『エリザベート』のトート役を本場オーストリア、ハンガリー、日本と3ヵ国語で演じ、日本でも根強い人気を誇るマテ・カマラス。そして同じく『エリザベート』ルドルフ皇太子役でミュージカル界の本流に躍り出た伊礼彼方。この3人がタッグを組んで贈るスペシャル・ライブ「姿月あさと×マテ・カマラス×伊礼彼方 -Musical Songs and Pop Galore!-」がこの秋、開催される。姿月、伊礼に話を聞いた。チケット情報はこちら彼らの出会いは、日本ミュージカル界から3名、ウィーン・ミュージカル界から3名が出演し、2009年に上演されたコンサート『LOVE LEGEND』。この時も出演者の素晴らしい歌唱力とともに、息のあったトークや、彼らの個性的な素の表情が堪能でき、大いに盛り上がった。「マテさんはマツケンサンバをやっていましたね(笑)。あの時は彼自身が、テレビでマツケンサンバを見て『これがやりたい』って言ったんですよ」と姿月が振り返る。確かに、ウィーン・ミュージカルの貴公子がマツケンサンバを歌い踊る姿は衝撃的だった。「でも、『LOVE LEGEND』は皆さんの個性の強烈さが、面白かった」(伊礼)、「ずっと、ああいうのをまたやりたいね、って言ってました」(姿月)。そんな待望のライブである。今回の構想を問うと、「ちょうど9月だし、『夏の終わりのハーモニー』を歌いたいね。彼方くんのリクエストは『あずさ2号』でしょ(笑)?」(姿月)、「そうそう、マテとふたりでやりたいんですよ。姿月さんには、10代の女の子が歌いそうな可愛い曲を歌って欲しいなぁ」(伊礼)、「じゃあ彼方くんは『男の子女の子』を(笑)」(姿月)……と、ミュージカル俳優らしからぬラインナップが次々と飛び出す。しまいには「北島三郎さんがやっているような座長芝居みたいなものをやるのも、面白くないですか!? 前半・寸劇、後半・ロックショー」(伊礼)と、冗談か本気かわからない話で盛り上がるふたり。だが、あながちすべてが冗談ではないようで、「ミュージカル俳優だから、こういうことをやるに違いないと決め付けられるのはイヤなんです。型にはまりたくもないし、今の私たちにしか出来ないライブをやりたい」と姿月。伊礼も「いわゆる“ミュージカル俳優さんたちがやるようなコンサート”には絶対ならないはずです。ノンジャンルで、ノンスタイルなライブになると思いますので、楽しみにしていてください」と、ここにしかないステージを約束してくれた。それぞれミュージカル界の王道と呼べそうな、煌びやかな経歴を誇る3人だからこそできる“型破り”なライブ。ただし、人気のミュージカルナンバーも、きっちり盛り込む予定。「私たちは遊びながら、ちゃんとしたこともきちんとやるんです。今回も“大人の遊び場”という感じのライブになるといいですよね」(姿月)。公演は9月13日(火)から15日(木)まで東京・草月ホール、9月28日(水)に兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで行われる。
2016年07月01日ミュージカル「忍たま乱太郎」第7弾 再演~水軍砦三つ巴の戦い!~が、東京ドームシティ シアターGロッソで上演中だ。ミュージカル「忍たま乱太郎」チケット情報尼子騒兵衛著作の漫画「落第忍者乱太郎」(朝日新聞出版刊)と、それを原作にしたアニメ「忍たま乱太郎」(Eテレ)をミュージカル化した本作。2010年の第1弾から“忍ミュ”の愛称で親しまれ、本作は今年1月に上演された第7弾の再演。今回はシリーズ始まって以来の静岡、尼崎での旅公演も行う。中でも尼崎は、尼子騒兵衛の暮らす街であり、土地名がそのままキャラクターの名前になっているなど、『忍たま乱太郎』の聖地とも言える場所。描かれるのは、シリーズ初登場のキャラクター・兵庫水軍と忍術学園六年生たちとの“ファーストコンタクト”。忍者嫌いで知られる兵庫水軍の男たちが、忍術学園の生徒たちとどのようにして出会い、また理解しあうようになったのか、という原作には描かれていないオリジナルストーリーで、兵庫水軍が原作に登場する以前の「エピソードゼロ」となっている。第7弾初演で好評を博した、足を踏み鳴らして踊る“ストンプ”や、20人以上の大迫力の殺陣、楽しいマルチエンディングはもちろん、今作では、ヒーローショーも行われる“シアターGロッソ”という劇場を生かし、派手なワイヤーアクションや新曲も新たに追加。地上から空中まで楽しそうに動き回る忍者たちの姿に、子供から大人まであっという間に引き込まれるはずだ。囲み取材では、初めての旅公演について、潮江文次郎役の海老澤健次が「歴代のメンバーが一生懸命、一弾ずつ作ってこられたおかげで僕たちが行くことができます。今までの先輩方の気持ちも持って、代表として、たくさんの方々にこのミュージカル『忍たま乱太郎』を知っていただいて、元気を与えて、みんなが明るくなるようにがんばりたい」。また、立花仙蔵役の鐘ヶ江洸は「“日本を元気にしていく”っていう目標で僕たちはやっています。舞台を観て、明日もがんばろうって思ってもらえるように、僕らは精一杯舞台上で生きますので、楽しんでもらえたら!」と意気込みを語った。本作は、7月3日(日)まで東京・東京ドームシティ シアターGロッソ、7月15日(金)から17日(日)まで兵庫・あましんアルカイックホール、7月23日(土)・24日(日)は静岡・静岡市民文化会館にて上演。取材・文:中川實穗
2016年06月30日6月25日、セールで賑わう越谷レイクタウンに、ピーターパンが登場した。この日はピーターパン役の唯月ふうかと着ぐるみによるブロードウェイミュージカル「ピーターパン」の宣伝イベントが開催。会場となった越谷レイクタウンkaze光の広場は、高い吹き抜けになっていて、一階はもちろん、二階や三階からもたくさんのお客様が参加した。ブロードウェイミュージカル「ピーターパン」チケット情報まず着ぐるみのピーターパンが登場すると、客席からフック船長が登場。ピーターとフックの戦いが始まる。途中で唯月ピーターパンが登場し、フック船長と決闘。見事勝利をおさめ、改めてピーターパンから挨拶がありイベントがスタートした。まずは、1曲目の歌を披露。ブロードウェイミュージカル「ピーターパン」より、ピーターパンがウェンディたちと空を飛んで行く時に歌う「アイムフライング♪」。軽快なナンバーに手拍子が起こり、客席のワクワク感が高まる。次のコーナーは、おなじみの「ピーターパンクイズ」。ピーターパンのお話にまつわるクイズ数問が出題。司会がお客様に質問を投げかける場面もあり、客席も一体となってクイズを楽しんだ。そして2曲目の歌披露はピーターパンがウェンディに自分の島の素敵なところを聞かせるバラード曲「ネバーランド」。唯月ピーターパンの歌声に、大人も子供も聞き入る。次はこちらも恒例の「ピーターパンジャンケン」のコーナー。勝ち残った参加者にはネバーランドをイメージしたカラフルなペロペロキャンディーがプレゼントされた。そして最後の歌披露は「いばろうぜ♪」。クックーククッ!の振り付きで、客席とともに盛り上がった。ピーターパンからの挨拶のあとに、「7月9日(土)にピーターパンが神宮球場の始球式に登場します」というサプライズ発表もあり、イベントはたくさんの笑顔と拍手に包まれて終了した。そしてお土産は特製ぬり絵ポストカード。ぬり絵をして専用アプリで読み込むと、絵が浮き出て、唯月ピーターパンの歌が聞けるスペシャルなポストカードがプレゼントされた。30分ほどのイベントだったが、ミュージカル「ピーターパン」のワクワクする世界と素敵なミュージカルナンバーの数々を体験できる催しとなった。ブロードウェイミュージカル「ピーターパン」は7月24日(日)から8月3日(水)東京・東京国際フォーラム ホールC、8月17日(水)大阪・梅田芸術劇場メインホールにて。
2016年06月29日1963年の日本初演より長年愛されてきたミュージカル『マイ・フェア・レディ』。2013年、G2により演出が一新、新たなキャストを迎えてリボーン(再誕生)し好評を博した。ロンドンの下町娘イライザの父・ドゥーリトル役を演じたのが松尾貴史。本作がミュージカルデビューとなった彼に、3年ぶりの再演への想いを聞いた。ミュージカル「マイ・フェア・レディ」チケット情報「ミュージカルは絶対やらない、やれないと思ってました。演出家のG2とは仲良しだけど、最初G2も東宝の方に『彼はミュージカルはやらないです』って、話を勝手に断ってたらしい」と笑う。G2とは演劇ユニットAGAPE storeで長年組んでいる仲。ただ松尾自身、実はこの酔っ払いのドゥーリトルならやってもいいかなという想いが昔からあった。「父がこの映画が好きで、一緒にテレビで見ていた思い出があります。ドゥーリトルは屁理屈を言ったり酒好きなところが、父にも似ているし僕にも似ている。無責任なところもね(笑)」。実際に演じてみると『運がよけりゃ』『教会へは遅れずに』というこの役のビッグナンバーも、「気持ち良く歌えました。手拍子も頂いて、おだてられれば木に登る感じですよ! あのシーンは自分が楽しみ、皆さんにも一緒に楽しい雰囲気になって頂くのがポイントです」と話す。貧しい家庭に育ったイライザが、ヒギンズ教授のレッスンで淑女になるシンデレラ・ストーリー。自堕落な父親であるために再演では新たにヒゲを付け、酔っ払う演技にも磨きをかける。「昔テレビで見た藤山寛美さんの演技指導の言葉が残っています。『酔っ払いは前のめりではなく、かかとに重心がくるんや』って。つまり前に行きたいけれど、後ろに重心が行ってしまうと。試してみたら『お!』となって面白かったです。再演にあたっては、滑舌のいい“立て板に水の酔っ払い”でと演出家に言われています」。そのG2の演出については、「暗転嫌いで、各シーンがオーバーラップしながらきれいに進んでいく。いつも緻密やなって思いますね」と話す。娘のイライザは、元宝塚歌劇団トップスターの霧矢大夢&真飛聖のWキャスト。「霧矢さんはすごく親しみが持てる娘、真飛さんは生き抜く力が強いという感じで、全然違うから面白い。おふたりとも再演でパワーアップするのは間違いないです」。松尾自身も先頃、ふたりだけのミュージカル『マーダー・フォー・トゥー』でハードに3役を演じ分け、人生初のピアノ演奏を堂々披露した経験が生かされるはず。「ジャンルで仕事を断ったことはありません。マゾヒスティックにお引き受けすることが最近楽しい(笑)」。ラジオ、落語、折り紙など多彩な才能の持ち主は、「プロフェッショナルな世界」のミュージカルに今夢中だ。公演は、7月10日(日)から8月7日(日)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウス、8月13日(土)・14日(日)は愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、8月20日(土)から22日(月)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは発売中。取材・文:小野寺亜紀
2016年06月28日激しく足を打ち鳴らす音と手拍子、掛け声の余韻がいつまでも耳に残る…。そんなフラメンコの舞台『「フラメンコ・カフェ・デル・ガト』が大阪・サンケイホールブリーゼで幕を開けた。同作は、湖月わたる、水夏希、原田薫で結成された「BAD GIRLS」が、異国のダンスに挑戦する「ダンス・レジェンドシリーズ」の第3弾。今回は、スペイン人舞踊家でマリア・パヘス舞踊団第一舞踊手のホセ・バリオスが構成・演出・振付を手掛けた。「BAD GIRLS」のメンバーに、元宙組男役スター緒月遠麻、ダンサー大貫勇輔を迎え、皆、マドリッドで約1ヵ月間の稽古を積んだという。そのメンバーにスペインから招聘した女性ひとり、男性4人の若手実力派のフラメンコダンサーが加わった。「フラメンコ・カフェ・デル・ガト」チケット情報1幕目は、スペインの酒場「カフェ・デル・ガト」で、長女ローラ(湖月)、次女カルメン(緒月)、弟ルイス(大貫)ら兄妹がフラメンコを踊り始める。そこへ仲間を連れた闘牛士が登場。スペイン人を含めたキャスト全員が踊り、その迫力、華麗さに目は釘づけになった。日本人女性キャストは、踊りながらマントン(大型のショール)を回したり、アバニコ(扇)を振ったり、難しい小道具も使って美しく優雅に見せる。大貫はスピーディにステップを踏み体の切れも抜群だ。日本人キャストは皆、フラメンコ初挑戦だが、スペイン人キャストに引けを取らない。「ダンスのジャンルが違っていても『核』があれば踊りこなせる」と、大貫が取材で語った言葉を全員が体現している。ローラは闘牛士に心を奪われ、女たらしの彼と付き合うことを許さないルイスは怒り狂う。ルイスと闘牛士がバストン(杖)で地面を激しく叩き合って闘うシーンは、そのバストンの音、ダンサーが奏でる箱型の打楽器カホンのリズム、ダンサーが足で床を鳴らす音が、大雨のように舞台を打ち続け強烈な印象を残す。さらに、闘牛士を誘惑するマリア(原田)まで現れ、店の主人アナ(水)は混乱した状況を収めようとするが…。意外な結末は見てのお楽しみだ。第2幕は、アンダルシアを舞台に、キャストが各地を旅するようにフラメンコで表現するショーが展開。土地によって違う独特の音楽や踊りが堪能できる。日本人女性キャストが、アルメリアでパンツスーツを着てジャズダンスを踊る場面は、マニッシュで「BAD GIRLS」らしい魅力が満載だ。また、スペイン人キャストがセルビアで踊るシーンは、一秒ごとに振付けをしているかのような緻密で繊細な手と足さばきに圧倒される。息をするように踊り、大地を踏みしめて力強く生きることがフラメンコだと実感した。日本、スペインの両キャストが美しく調和しそれを伝えてくれた。この後、6月29日(水)から7月4日(月)まで東京芸術劇場 プレイハウスで上演される。チケットは発売中。取材・文:米満ゆうこ
2016年06月27日昨年人気を博した朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』『俺とおまえの夏の陣』がキャストを一新し7月に再演をむかえる。「僕とあいつの関ヶ原」に出演が決定している荒田至法、猪塚健太、尾関陸、黒羽麻璃央、染谷俊之、西川俊介、松田岳、松田凌、矢部昌暉(DISH//)からそれぞれコメントが届いた。朗読劇『僕とあいつの関ヶ原』チケット情報―出演が決まっての感想はいかがですか?荒田:とても嬉しかったです。「やったー!!」ってテンションが上がったあとすぐ、「あれ、朗読劇も和物も初めてじゃん」と、気づいてひとりで動揺していました。先日稽古が始まり台本をみんなで読み進めていたのですが、一行ごとに新たな発見があり次の稽古も本番もとても楽しみになりました。尾関:まず驚きました!朗読劇に出演したことがなかったので不安はありますが、新しい挑戦ですので楽しみです!松田岳:とてもワクワクしています。読み間違えのないようとりあえず台本に出てくる漢字から調べました笑矢部:僕は歴史がすごく好きで、好きになったきっかけが戦国の時代なので、戦国時代の有名な合戦である関ヶ原の戦いのお話に出演できることに喜びを感じています!―中屋敷さんの演出ですが、中屋敷さんに対してはどのような印象をお持ちですか?黒羽:中屋敷さんとは以前一緒に舞台を作りましたが頭の中が宇宙だと思っております。もちろん良い意味で、ですよ? 笑染谷:前回の映像を見せていただいて、すごい演出をされる方だなっていう印象を受けました。エネルギッシュで熱い方なのかなっていうのが作品のイメージです。楽しみです。―今回チャレンジしたいことはありますか?猪塚:演じ分けるところ、しかもそれが、演じ分けをして、役によっては一言二言の役もあると思うんですけど、それがただのギャグにはしたくないので、何役やるかはわからないですけど、その人その人の人生を真摯に考えたいなっていうのはありますね。西川:台本を読んで僕の演じる小早川秀秋は自分次第でいくらでも面白さを出せる役だと感じました。小早川秀秋という人物を詳しく調べて、自分の殻を破りたいです。―意気込みを。染谷:戦国時代に生きた武将を、朗読劇の世界で熱く演じきりたいと思います!みなさんぜひぜひ観に来てください。西川:僕自身朗読劇は初挑戦なので、戦国時代に生きていた将軍のように堂々と舞台に立ち物語の空気を変える存在になれればいいなと思います。松田凌:かせられた枠からはみ出ていきたいと思います。『僕とあいつの関ヶ原』は7月7日(木)から9日(土)東京・天王洲 銀河劇場にて。
2016年06月27日フランスの子どもの一般的な習い事の中に、テアートル(演劇教室)があります。「演劇教室」というと、日本では芸能界デビューを目指す子どもが行くところ…という印象を抱きがちですが、そうではありません。フランスのテアートルでは、人前で堂々としゃべったり、自己表現力をつけたりすることを目的としています。3歳から受け入れている教室もあり、小さいうちはまだセリフの入った劇をするわけではありません。それでは、実際にどんなことをやっているのでしょうか。■習い事の内容はシークレットフランスのテアートルの登録料金は、モダンダンス、音楽、テニスなどの一般的な習い事とそれほど変わらない料金で、地域や団体によって異なるものの、1年間約180ユーロ~300ユーロ(週1回、1時間)の価格帯です。5歳の娘はテアートルを習い始める前、「人前だと恥ずかしがって、なかなか発言できないところがある」と幼稚園の先生から言われていました。家では一度口を開いたら「もういいから…」と言いたくなるほどしゃべり続けているというのに、これには耳を疑いました。テアートルに登録する前、娘に何をするところかと聞かれ、「動物の真似とかもするから面白いよ。それに踊ったりもするんじゃないかな」と言うと、喜んで頷いてくれました。では実際に、どんなことをしているのか。実はこれがなかなかわかりませんでした。というのも、毎回子どもを教室に送り届けると、親は防音の思い扉のある教室の外で待っているように言われます。日本の多くの習い事と違い、子どもが何をしているのかを見ることができないのです。「今日は何をしたの?」と娘に聞いても、「秘密。発表会の日まで内緒という約束なの」と言われてしまいます。結局、「どうやら教室に入るとすぐに靴を脱いでいるようだ」(フランスでは常に土足のところがほとんどです)ということ以外、発表会の日までその謎は深まる一方なのでした。これは先生が親にサプライズを送ろうというアイデアから始まったようで、やがて5ヶ月が経った頃、発表会で初めて教室内に入れることになりました。■習い始めて5ヶ月、ようやく入れた教室で見たものは発表会では、まずはウォーミングアップということで、親も参加する場が持たれました。子どもとその両親全員が小さな舞台にのぼって輪になり、1人1人名前を言いながら輪の真ん中に進み出て、終えたら元の位置まで下がるということを繰り返していきます。ニコニコしながら名前を言うのも良し、厳しい面持ちで言っても良し、落ち着いた様子で言っても良し。自分の感情を表現しながら堂々とふるまい、発話することが目的なのです。子どもも大人も含め25人くらいが様子を見守る中、自分の番はたった5秒程度のことなのに、それでも「人前で何とかうまくできた」という達成感の大きさに驚きました。続いて、教師のストップの合図があるまで輪を描きながら皆で歩き、指示を受けてから一斉に動きを止めるという練習をしました。指示の内容は、「怒りながら隣りに止まった人をにらむ」、「優しく隣りの人の肩に右手をかける」、「悲しい顔をしながら隣りの人の顔を覗き込む」といった具合に、毎回変わります。ここでは、感情を表現しながらどんな風に人と接するのか、という自分なりの姿勢について考えさせられました。そこからは子どもたちだけで輪になり、先生の太鼓のリズムにのって歩きながら合図とともに立ち止まり、キリン、ウマ、ヘビ、ゾウなどを、体全体を使って思い思いに表現して見せてくれます。十人十色とはまさにこのことで、誰ひとりとして同じ表現をする子どもがいないことを実感しました。続いて、「水の中にいるものは?」という先生の問いかけを受けて、1人ずつ前に出て表現するということをしました。人魚、ワニ、魚、滑り台など問いかけに対するさまざまな答えを、子どもたちが表現していくのです。 ■自己表現することで自分を受け入れ、信頼できるようになっていく最後に少し長めの「1人だけの見せ場」として、舞台に置かれたひとつの風船を取りにいき、風船と一緒に飛んだり動いたりするというお題を与えられます。舞台の裾からすでに走ってくる子もいれば、のそのそと出てくる子もいます。また、風船に引っぱられてどんどん速く走って去っていくさまを表現する子がいれば、笑いながら空を風船で飛ぶ様子を表現する子もいます。つまり、フランスの演劇教室とは、演技力を身につけるのではなく、ほかの人の表現を見ながら、「自分はこうしよう」という自己主張を身につける場所なのです。娘と一緒に発表をしていた子どもたちは皆、4歳~5歳の子どもたちでしたが、誰ひとりとして恥ずかしがらないところがとても立派だと思いました。人前に立って話し、表現をすることは大人でも恥ずかしく、子どもならばなおさら勇気のいることです。そのプレッシャーを跳ねきって自己表現することに慣れていく過程では、自然と自分を受け入れ、自分を信頼できるようになるものです。また、それを見る他人に自分を委ねる以上、他人との信頼関係も築かれやすいのではないかと感じました。 5ヶ月間、わが子がテアートルで何をやっているのか誰も知らない、という謎は大きかったものの、先生のサプライズは結果的に子どもの成長の大きさを見せつけ、親たちにたくさんの感動をもたらしてくれました。幼稚園の先生からも「恥ずかしがらずに、本当に自己主張ができるようになった」と言われたのは、言うまでもありません。今後テアートルでは、年齢と共にセリフをつけながら表現する段階に入っていくようです。フランスでは、役者を目指すわけでなくても大人向けのテアートルが一般的に存在します。いわば演劇を学ぶことは大衆文化。それほど自分の表現力を磨き、表現しきることに喜びを感じる人が多いということがわかりますね。
2016年06月25日抜群の華やかさやダンスに加え、悪役、クセのある役で存在感が光る俳優・吉野圭吾。夏の風物詩となったブロードウェイミュージカル『ピーターパン』で、今年、吉野が悪役のフック船長役に選ばれたのは大いにうなずける。作品について話を聞いた。ブロードウェイミュージカル「ピーターパン」チケット情報最近のフック船長でいえば、橋本じゅんはコミカルに、大貫勇輔はダンサブルに役を演じてきた。吉野ならその両方ができそうだ。「そうですか?僕、何でもやりますよ。踊って歌って、ギャグも言ったりして。フックを上手に使って色々なこともしてみたい。例えば、ロープに引っ掛けて上からザーッと降りて来ることができないかと、演出・振付の玉野和紀さんと話をしているんです。過去にはこだわらず、僕なりの新しいフック船長を作り上げたいですね」吉野にとって大人も楽しめる『ピーターパン』の魅力はどこだろう?「台本を読むと、『殺す』というセリフがフックだけではなく、ピーターパンにもやたらと出てくる(笑)。ピーターパンもけっこうグロいんですよね(笑)。でもそこを強調しすぎないようにしたい。物語も夢の中の話ではない。ネバーランドに行って帰って来て、目が覚めたら夢だった…という設定ではないですから」。ラストを含め、きれいごとだけでは終わらない話の奥深さが老若男女を引きつけるのだろう。ウェンディの父親ダーリング氏との一人二役をこなす。「ネバーランドの住人はフックをはじめ、大人になりたくてもなれない大人。みんな子供の心を持っていてずっと遊んでいたい。そこを大切に演じたいですね。一方、ダーリング氏は大人の中の大人として描かれている。ふたりをどう演じ分けるかです」子供の心は、最近出演したミュージカル『1789 -バスティーユの恋人たち-』の子役たちと交流することで取り戻しているという。「1789で演じた悪役のメイクは怖いんです。稽古場ではそのいでたちで、誰も寄せ付けないオーラを醸し出していたはずなのに、子供たちは『遊ぼう』と寄ってきて、僕の固い扉をコンコンとノックしてくる(笑)。実家が昔、保育園だったこともあり、子供には好かれるんですよね(笑)」また、舞台では、観客に向かってピーターパンが「妖精を信じる?」と問うシーンが有名だが、吉野も妖精を信じるという。「妖精を含め、物には神様が宿っている。舞台の神様には真摯に向き合わないと、セリフが出てこなかったり、小道具の鎖が切れたりして裏切られるんです。そんな時は、『なぜ、私を裏切るのですか』と会話しています(笑)」。裏切りを経験してこその役者業。今後は「妖怪や動物、ゾンビなど人ではないものも演じてみたい」と意気込みも高い。ただならぬフック船長を演じてくれそうだ。公演は、7月24日(日)から8月3日(水)東京・東京国際フォーラム ホールC、8月17日(水)大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは発売中。取材・文:米満ゆうこ
2016年06月23日湖月わたるら宝塚歌劇団OGを中心とする“BAD GIRLS”がフラメンコに挑戦する『フラメンコ・カフェ・デル・ガト』が、6月25日(土)の開幕に先がけ、公開稽古で4曲を披露した。「フラメンコ・カフェ・デル・ガト」チケット情報本作は、2012年の『BAD GIRLS meets BAD BOYS』、2014 年の『Argentango』に続くダンスレジェンドシリーズの第3弾。今回は、第1弾から出演する湖月わたる、水夏希、原田薫に加え、昨年2月に宝塚歌劇団を退団した緒月遠麻が初参戦。さらに、2014年公演で“BAD BOYS”に参加した大貫勇輔と、本場スペインのダンサー4人で作り上げられる。構成・演出・振り付けは、フラメンコの名門マリア・パヘス舞踊団の舞踊手・振付家であるホセ・バリオス。ホセは、スペインフラメンコ界で最も権威のある賞「フラメンコ・オイ賞」男性舞踏家部門・最優秀賞を受賞したばかり。フラメンコの本場・マドリッドでの稽古を終え、6月13日に帰国したばかりというキャスト達。稽古場には、約1か月間の稽古を共に過ごす中で生まれたであろう濃厚な空気が漂う。ACT1は、19世紀に存在したフラメンコショーを観劇できる酒場「カフェ・デル・ガト」で起きる愛と悲劇の物語。その中から披露されたM1「GALLARDO」、M2「Carmen Overture」は大迫力の群舞。まず振動を感じるほどのサパテアード(足を踏み鳴らす動き)に圧倒され、そして情熱的なダンスに心を奪われる。照明もセットもない稽古場でも、その熱い空気に飲み込まれてしまいそうなフラメンコは、実際のステージでは更に強烈な魅力を放つはずだ。M4「Yo solo quiero caminar」は芝居仕立てで、湖月演じるローラと闘牛士が互いに惹かれ、想いを伝え合うように踊る姿がセクシーで印象的。その仲を裂こうとするローラの弟役・大貫の演技にも注目だ。ACT2は、アンダルシアをイメージしたダンスショウ。披露されたM6「FLAMENCO JAZZ」では、ACT1から雰囲気をガラリと変え、BAD GIRLSの4名がマニッシュなパンツスタイルで登場。宝塚歌劇団時代の男役を彷彿させる姿で披露されたクールなダンスは必見だろう。稽古後の囲み取材では日本人キャストの5人が本作について、「言葉より、観て、感じていただくと魅力がわかる」(湖月)、「フラメンコは難しいイメージがあるかもしれないが、気負いなく楽しんでもらえるはず」(水)、「東京に戻ってまたいい雰囲気になった。楽しむ雰囲気が伝われば」(原田)、「スペインチームの足さばきはすごい」(緒月)、「僕らにしかできないフラメンコを観てもらいたい」(大貫)と話した。公演は、6月25日(土)・26日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、6月29日(水)から7月4日(月)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて上演。撮影・取材・文:中川實穗
2016年06月22日ミュージカル『ミス・サイゴン』の製作発表が6月20日、都内で行われた。『レ・ミゼラブル』のクリエイティブチームが、ベトナム戦争を背景に“究極の愛”を描き出し、世界的に大ヒットしている作品。出演は市村正親、駒田一、ダイアモンド☆ユカイら。ミュージカル『ミス・サイゴン』チケット情報日本では1992年の初演以降、通算1368回上演されているが、混乱のサイゴンでアメリカン・ドリームを追い求めしたたかに生きるフランス系ベトナム人・エンジニア役を日本初演からずっと演じているのが、市村正親。複数キャストで交互出演するシステムだが、800回以上エンジニアとして舞台に立っている“ミスター・サイゴン”だ。だが市村は2014年の前回公演時、5回演じたのみで胃がん闘病を発表し、降板。今回はそのリベンジ出演になるが「前回は胃がんでしたが、今回はガンガン行きますよ!」と軽口を叩き、絶好調っぷりをアピール。同時に市村は、今回がエンジニアとしてのファイナルステージとなることを発表。「25年前のこの作品のオーディションの時、劇団四季を辞めたばかりで、この役を勝ち得ないと今後の舞台生活はないと必死な思いで受けた。スタッフによると、それが生き延びることに必死なエンジニアと重ったそうです。それからだいぶたちましたが、今回どういうエンジニアを作らなければいけないのか。もう一度演技プランを強く考え、ベトナム戦争に巻き込まれていく必死な彼を作りたい。そうすれば、どんな方がエンジニア役に来ても、僕のエンジニアを超すことは絶対にありえない」と、最後の挑戦もギラギラの闘志を見せた。エンジニア役は、ほかに駒田一、ダイアモンド☆ユカイ。駒田は前回、市村降板を受けしばらくの間ひとりでこの役を支えた。「前回はエンジニアが必死に生きたというより、役者・駒田ががむしゃらに頑張った記憶しかない。今回は地に足をつけて頑張りたい」と駒田。今回初参加のユカイは「ミュージカルど素人ですが、しぶとく生き続けるエンジニアのごとく、しぶとく皆さんについていきたい」と話した。駒田が「(市村は)ミュージカル界の怪人であり、模範である大先輩」話すなど、共演者からも市村を慕う声が次々と上がったが、「『ミス・サイゴン』は来年ブロードウェイでもリバイバル版が開幕するんですよ。ということで(日本版を卒業したら)ブロードウェイを目指そうかと!」と冗談交じりに話す市村に、会場から大きな拍手が上がっていた。ほか、ヒロイン・キム役に、ロンドンでの『ミス・サイゴン』25周年記念公演で同役を演じたキム・スハが参加するなど、話題豊富(キム役は笹本玲奈、昆夏美とトリプルキャスト)。公演は帝国劇場にて、10月19日(水)から11月23日(水・祝)まで(10月15日(土)からプレビュー公演あり)。チケットは10月公演分が7月23日(土)、11月公演分が7月30日(土)に一般発売開始。その後岩手、鹿児島、福岡、大阪、愛知でも上演される。
2016年06月21日2014年に日本初上陸し、全24公演で2万人を動員したクラウン(道化師)が繰り広げるファンタジーショー「SLAVA’S SNOWSHOW スラバのスノーショー」がこの夏、東京、大阪で再演。上演まで1か月を切った6月20日、クラウン来日記者会見が開かれ、クラウンのヴァーニャ・ポルニンとともに、応援副隊長のおかずクラブ、ゆりやんレトリィバァ、平成ノブシコブシの徳井健太が登場した。SLAVA’S SNOWSHOW チケット情報“道化師界の巨匠”と称されるロシア出身のスラバ・ポルニンが主宰するクラウンたちによる体感型パントマイムショー「スラバのスノーショー」は、1993年の初演以来、世界30か国以上で500万人を動員している世界で人気の舞台。客席を覆う巨大なクモの巣や大量の紙ふぶき、クラウンたちによる客いじりなど、観客を巻き込んだ一体感のある演出で観る者を圧倒し続けている。今回の日本公演には、おかずクラブのゆいPとゆりやんの出演が決定し、ふたりはクラウンの姿で登場。会見直前に出演することを告げられたゆいPは、「何をすればいいかもわからないですし、まずうまくやっていけるかもわからないので、ちょっと不安はあります」と戸惑い気味。一方、挨拶中に執拗にクラウンに絡まれていたゆりやんは、「私が言うのもなんなんですけど、絡みにくいなぁと思いました」と発言し、会場を爆笑させた。海外公演に出演した経験のある徳井は、「イメージは友近さんとロバート秋山さんに近いと思う。もういいって言っても、ずっとキャラをやってるでしょ。あの感じ。それからみんな寿司がめっちゃ好きだから、差し入れに持っていったら喜ぶよ」と先輩らしくアドバイス。「タラ(魚へんに雪)とか差し入れしたら喜びそうですね」とゆりやんが切り返すと、「頭のいいボケだな、お前」と徳井がツッコミを入れ、笑いを誘った。ヴァーニャ・ポルニンは、「この舞台で大切にしているのは空気。お客さんと一緒に空気を作って、その中でお客さんがだんだんと心を開いていけるようなものを目指しています。お客さんがおとぎの国に入ったかのような、そういう劇を目指しています」と意気込みを語った。「今回は客席から楽しむ」というおかずクラブのオカリナは、「ゆいPが戸惑っている姿を見つけたりしながら楽しんでもらえたら」とPRした。「SLAVA’S SNOWSHOW スラバのスノーショー」は、7月15日(金)~26日(火)に大阪・森ノ宮ピロティホール、7月30日(土)~8月14日(日)に東京・シアター1010(センジュ)にて上演。チケット発売中。取材・文:門 宏
2016年06月21日今年で36年目に突入する、夏のファンタジーミュージカル『ピーターパン』(演出・振付・上演台本/玉野和紀)が東京と大阪で上演される。現在、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」でヒロインを務める高畑充希から、9代目ピーターパンとして16歳の時にバトンを受け継いだ唯月ふうか。「みんなのヒーローになりたい!」と、4年目のアツい夏が始まる。ブロードウェイミュージカル「ピーターパン」チケット情報ある夜、ウェンディ、ジョン、マイケルの3姉弟は、ピーターパンと妖精のティンカーベルの導きで、永遠に子供でいられる「ネバーランド」を訪れる。四季が入り交じる不思議な島でインディアンらと存分に遊んだ3人。そろそろ家に帰ろうとした時、フック船長率いる海賊たちが現れる。なんと、ウェンディを自分たちの「お母さん」にしようというのだ。助けに来たピーターパンやインディアンのリリーを巻き込み、海賊船上で大乱闘が始まる。ピーターパンといえば、フライング。ウェンディらと夜空を旅したり、海賊との戦闘では宙を舞いながらのアクションも披露する。「妖精の粉を撒く昨年の客席フライングでは、3年目にしてようやく子供たちの表情を見られるまでになりました。歓声を上げながら舞い落ちる粉を待っているみんなの姿が嬉しくて、自分はピーターパンなんだなと改めて実感しました」座長として本番前には必ず円陣を組み、共演者らに言葉をかける。毎公演100%の喜怒哀楽を出し切るため、毎日の腹筋背筋も欠かさない。「観に来てくれる子供たちが本当にパワフルなので、そこから元気を貰いまた舞台に返せる、相乗効果がある。チームワークも万全で、出演者みんなが『ピーターパン大好き』と公演が終わる度に言うくらい。私も『もう終わりね』と言われるまで出演し続けたいとブログに書くほど、特別な思い入れのある作品です」今年は宿敵のフック船長役に吉野圭吾が初参戦。唯月にとって3人目のフック船長だ。「橋本じゅんさんには毎回のアドリブで対応力を鍛えられ、2番目の大貫勇輔さんには体格や力では敵わないので、声の大きさで勝とうと頑張っていました(笑)。吉野圭吾さんは面白い方と伺っているので、どんな仕上がりになるのか私も楽しみです」東京公演は7月24日(日)から8月3日(水)まで東京国際フォーラムホールC、大阪公演は8月17日(水)に梅田芸術劇場メインホールにて上演。チケットは発売中。「子供から大人まで楽しめる作品です。劇場ではネバーランドの住人気分で、一緒にアツい夏を過ごしましょう!」取材・文:石橋法子
2016年06月21日