【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】結婚して2年目になります。30代半ばにさしかかり、そろそろ子どもを生むかどうか決断しなくてはと感じているのですが、強く「子どもがほしい」と思えません。一方で、「生まなかったら後悔するのではないか」という気持ちがよぎることもあって。どうしても決めきることができません。授かるには不妊治療しかないかという状況……。周りの結婚している友達は、疑問なく子どもを生んでいるか、不妊治療に励んでいる人しかいなくて、あまり悩みも打ち明けられずにいます。どうやったら決断できるでしょうか。(34歳・女性・会社員)【回答】30代半ば。子どもを生むか生まないか、悩ましいですね。出産にはどうしたって年齢的な縛りがありますから、ぎゅっと突き詰めて考えないといけないところがあります。あなたのご参考になるかどうかわかりませんが、看護師として見てきたケースをいくつかお話しさせてください。まったく子どもに興味がなく望まない妊娠だったAさんは、いよいよ出産となって入院してきたときにも表情が硬く、子育て大丈夫かしら? と心配しましたが、いざ産まれたらメロメロなママになりました。妊娠出産でホルモンバランスも変わりますから、「欲しくなかったけど、産んでみたらもうかわいくて!」というママはけっこういらっしゃいます。ずっと授からないようにしてきたBさんは、やっぱり子どもをつくろう、年齢的にもそろそろリミットだしと解禁したのですが、結局コウノトリはやってきませんでした。長年不妊治療をがんばってきたCさんは、もうこれ以上は無理と30代最後の年に泣く泣く不妊治療をやめましたが、その半年後、自然妊娠で子宝に恵まれました。こんなふうに、生命誕生のドラマはいつだって神秘的です。本来、たかだか人間ごときにどうにかできるものではないのだという気がしています。だから、ひとつだけ覚えておいていただけると嬉しいのは、「あなたの心をいつもやわらかくしておいてほしい」ということです。子どもなんていてもいなくてもどっちでもいいや、という柔軟さを持ち続けてほしいのです。私たちは「絶対」とか「必ず」とか「どうしても」という言葉を使いはじめると、袋小路に追い込まれ逃げ道をなくして苦しくなります。どんな結果になっても「それが私の人生」と受け入れるやわらかいアタマとココロさえあれば、穏やかに過ごせるはずです。「何があっても良しとする」。それはある意味、“覚悟”でもあります。覚悟ができたら、運を天に任せてごらんになってみては?【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年06月26日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】今年2月に理髪店を独立開業したのですが、いきなりコロナの影響でお店の経営が非常に厳しくなっています。しかも、付き合っている彼女が同時期に九州から上京してきて、同棲しながら東京で働きだしたのですが、こちらもコロナ禍で失業してしまいました。結婚も考えていたのですが、日々の生活を送るだけでも精いっぱいでそれどころではなくなり、彼女との関係も微妙な感じに……。九州に一度帰る話まで出てきています。いったい、私たちは、今後どうすればいいのでしょうか。(40代・男性・自営業)【回答】ああ、なんと申し上げればよいのか……。本当にこのたびの新型コロナウイルス感染拡大はいろいろなことを引き起こしています。倒産、離婚、虐待……。2020年がこんな年になるなんて、いったい誰が予測していたでしょう。お店の経営が非常に厳しくなっていらっしゃるとのこと。とても心配です。なんとか持ちこたえられそうですか?国は救済処置をはじめているようですが、利用できそうでしょうか?せっかく彼女さんが上京されて一緒に暮らしはじめた矢先だというのに、最悪ですね。貧すれば鈍するで、こんな最悪な状況下では彼女さんとの関係がギクシャクしてしまうのも無理ありません。どんな言葉もあなたさまの慰めにすらならないとわかっています。でも、あえてひとつ、申し上げさせていただこうと思います。人の人生のうちには、脱皮のように爆発的なエネルギーでもって殻を破り次元上昇する“機”が何度かあります。“機を待つ”。わたしたちは人生のたいていの時間をこの“機を待つ”ことに費やしているのです。凍てつく冬の間は膝を抱え、縮こまってやり過ごす。春に芽を出すためには、冷たい土のなかでじっと待つ冬が必要です。つまり、“機”を迎えて大きく跳ね上がるためには、低く沈み込む時間が必要なのです。私たちはいま、この状況をどうすることもできません。でも、これを次元上昇のための“機”ととらえるか、すべてがだめになった“災難”ととらえるかは、あなたの自由です。「冬来たりなば春遠からじ」。冬のあとには春がやってきます。必ず。誰にでも平等にーー。いまこんなに厳しい冬が来ているのですから、春はもうじきだと信じて、いま少しふんばってみませんか。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年06月19日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】緊急事態宣言が解除されてからの会社の指示に少しモヤモヤしています。宣言が出されてから私の会社は全面的に在宅勤務となったのですが、解除された途端に会議のために出社しろと上司から連絡が入りました。自粛が一部緩和されたとはいえ、まだまだ新型コロナウイルス感染の不安は残っていますし、満員電車の日々に舞い戻れば感染リスクも高まる気がします。なので、個人的にはなるべく外出を控えたいのですが、どうしても上司や同僚の目が気になってしまう……。どうすれば正解なのでしょうか。(35歳・女性・会社員)【回答】いや、おっしゃる通りです。いったいどうすればいいのか、“正解”がわかりません。たぶん正解を知っている人は、この世の中にひとりもいないのじゃないかしら。でも、みんながわからないのだとすれば、最終的な判断は自分でするしかないのだと思います。上司や同僚の目を気にして自らの命をかけて会社に行くか。自分の命を守るために会社を捨てるか。今回の新型コロナウイルスは、それぞれの個人に究極まで突き詰めた選択を問うていると感じます。ただ、もちろん事の大小はありますが、じつはこれまでだってそうだったのです。道を歩けば、交通事故に遭うかもしれないし、犯罪に巻き込まれるかもしれないし、上から物が落ちてくるかもしれない。いつだって命の危険は決してゼロではありません。でも、日々の生活のなかで私たちはそんなことなど考えもせずに「この命は必ず明日も続いていくものだ」と根拠なく信じ込んできたでしょう?その根拠なき確信が崩されただけ。私たちはもともと「明日をも知れない命」を抱えているのだということを見せつけられただけなのです。これが、今回の新型コロナウイルスがもたらした大きな事象です。さあ、どう生きていきましょう。一切の危険を排除しつつ衣食住が足るという方法はないものでしょうか。それを見つけられたら万事OKなのですが、なかなかそうはいきません。どこかで折り合いをつけて、妥協して、ときに諦めて、覚悟して、事に及ばなければならないようです。あなたの大事な命がかかっているのですよ。他人の目なんて気にしている場合ではありません。最終的な判断は、あなた自身が全責任を負ってする。そしてそれが、あなたの“正解”となるのです。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネージャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年06月12日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】親が過干渉で困っています。私はもう40歳目前ですが、いまだに実家暮らしを強いられ、出かけるときには誰に会うのか、どこに行くのかを詳細に親に伝えなくてはなりません。夜にたまに出かけるだけで「また飲みに出かけるのか」などと小言ばかりを言われます。耐えかねて年末年始はゆっくりひとり旅でもしようと計画していましたが、「正月に家にいないのはどういうことだ」と怒られ、結局叶いませんでした。交際相手のことにもすべて口を出してくるので、なかなか上手くいかず、このままではずっと結婚できないのではないかと焦っています。(39歳・女性・公務員)【回答】さて、親御さんが過干渉で困っていらっしゃるとのことですが、あらまあ、40歳も近いというのに、どうしてご実家をお出にならないのかしら。なにかどうしてもご実家にいなくてはならない深いご事情がおありでしたらごめんなさい。公務員でいらっしゃるなら収入もしっかりしていらっしゃるでしょうし、普通にひとり暮らしができるだろうに…と思ってしまったのです。詳細をお聞きしていないので適当なことを申しますけれどね、世の中に「強いられて」どうにもならないことというのは、そうそうあるものじゃありません。○○のせいであれができない、これもできないというのは、たいていの場合、じつは自分の心の奥底に「そうしたくない」という気持ちがあるものなのです。私なんぞは育ちが雑ですから、「正月に家にいないとはどういうことだ」なんていくら小言を言われても、「はあ、さようでございますか」ってな感じで出かけちゃいますからね。こんなことを言われると、「そんなことありません!なにもかも親のせいで…!」というお気持ちがムクムクされるでしょう。そのお気持ちもわかります。でも、40歳近いということでいらっしゃいますから、そろそろ自分に「軸」を持ちましょう。いまのあなたさまは「軸」を親御さんに渡してしまっているのです。親御さんに「軸」を渡して被害者でいることのほうがラクなのかもしれないですよ。厳しいことを言いますが、そのラクさを結局はあなたさまが選んでいるのです。「四十にして惑わず」ともいいますから、自信を持って自分の思うとおりにしてみましょう。簡単です。このままご実家にいるにしろ、出るにしろ、すべて「自分で選択したこと」という覚悟を持つこと。それだけです。誰かのせいじゃなくてね。自分のお尻は自分で拭く。自分に「軸」を持つことで、毎日は見違えるように楽しくなりますよ。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年06月05日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】実家の父は76歳なのですが、数年前に脳卒中を患い、歩行に不自由があります。最近は認知症かなと思うことも増えてきて、毎日椅子に座り、テレビを見ているだけの生活を送っています。昔は登山と読書が趣味だったのですが、もうひとりでは外に出られないので登山などはできず、目が悪くなったせいか、本も読まなくなってしまいました。2年ほど前までは母が車で外に連れ出したりしていましたが、お風呂に入るのも嫌がるのと、わがままな性格のために、母ももう一緒に外出するのが嫌になったようです。たまに帰省したときに、テレビと食べることだけにしか楽しみがない父の様子を見ると切なくなります。父になにか、ほかに楽しみがあればいいなと思うのですが……。(33歳・女性・会社員)【回答】あなたさまがどんなにお父さまのことを愛しておられ、大切に思っていらっしゃるかが伝わってきて、まず胸が熱くなりました。大好きだからこそ、今のお父さまを見ていられないのですよね。昔は登山と読書が趣味だったお父さまの楽しみが、今はテレビと食べることだけ。切ないですよね。お気持ちは痛いほどわかります。でも、その気持ちの根元にすこしでも「いきいきと趣味に没頭する父親を見て私が安心したい」というお気持ちがあるとしたら、そういうのを世間一般では「大きなお世話」というらしいのです。元気な私たちからすると一日中テレビばかりじゃ、さぞかしつまんないだろうと思ってしまいがちですが、それは自分の「ものさし」で物事を見てしまっているからです。脳卒中の後遺症を抱えるお父さまの「ものさし」で見なければ、本当のところはわかりません。とはいえ、お父様がどんな世界を見て、どんなふうに感じていらっしゃるのか、私たちにはわかるわけがありません。だから、インタビューしないとね。「お父さん、毎日どう?」「なにか困っていることはない?」「なにかやってみたいことはない?」「いま、どんな気分でいるの?」その答えのなかに、私たちにできるなにかがあるでしょう。往々にして、私たちは自分の「ものさし」で相手のあれこれを判断してしまいがち。最も賢い愛の伝え方は、自分の「ものさし」を捨てて、相手の「ものさし」を使ってゆっくり語り合うことなのです。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年05月29日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】先日、ステージ2の乳がんと宣告を受けました。医師からは治療すれば大丈夫だと言われましたが、切除しなくてはいけないことがショックで……。まさか自分がこんなことになるなんてと、ずっと落ち込んでいます。また、治療をしながら仕事を続けられるのかどうかもまだ分からず、独り身なのでもし続けられないなら自分の今後の生活がどうなってしまうのか、とても不安です。(43歳・女性・会社員)【回答】あなたさまのショックを思うと、言葉もありません。夜は眠れていますか。ごはんは食べられていますか。心配なこと、不安なことで頭がいっぱいでしょう。ひとつひとつじっくりお聞きしたいのですが、それはいつかお目にかかることができたときにということにして、ここでは、ひとつの方法をご紹介させてください。私は仕事柄、これまでに大勢のがん患者さんとお話をさせていただいてきました。もちろん、乳がんの方もいらっしゃいました。どなたももれなく、ご自分がそうとわかったときにはショックだったとおっしゃいます。ボディイメージの変化、仕事、家族、恋人、これからの人生設計、手術、検査、抗がん剤、お金…雑多な心配や不安がもう、どばどばっと。この混沌が、ショックに輪をかけて患者さんを苦しくするのです。心配や不安をすぐに解決する神業はありませんが、せめて混沌を整理してみませんか。方法は簡単です。紙とペンを用意してください。用意した紙の真ん中に1本線を引いて、左側の上の方に「GOOD」、右側の上の方に「BAD」と書きます。「GOOD」側には、がんになって良かったと思えたこと、得たもの、うれしかったことなどを書き出します。「BAD」の側には、がんになって悪かったこと、失ったもの、悲しかったことを書き出します。こうやってあなたの心と頭の中を“見える化”することで、混沌の波をすこしずつ鎮めようとしてみてください。「GOOD」の側に書くことなんてあるわけないじゃない!そうだよね。おっしゃるとおりです。みなさんそうでした。でも、三カ月後、半年後にこの作業をしてみてもらえませんか。なにか変化があるかもしれません。私なんぞが簡単に言うことではありませんが、『禍転じて福と成す』という言葉があります。目の前に起きている事象はひとつですが、それをどう捉えるか。捉え方は無限です。いつかあなたさまに起こったことが転じて福と捉えられる日がきますように。毎日心からお祈りいたします。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年05月22日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】私には40代前半の一人息子がいるのですが、息子の月収は低く、彼が結婚して一年後くらいに一軒家を新築するときはお金の援助をしました。その後も毎月仕送りをしています。しかし、息子の嫁はなかなか働いてくれず、何度かアドバイスはしたのですが、まったく仕事をする気がない様子。ついに私が今まで貯めてきたお金も底をついてきて困っているのですが、今後いったいどうしたらいいのでしょうか。(女性・68歳・専業主婦)【回答】まあ、あなたさま!動物は知能も仕組みも高度になればなるほど親離れが遅れる傾向にあるといいますが、現代社会はまさにその通りですね。親として、存分にすねをかじらせてやるというのも醍醐味のひとつでしょう。ただ、貯めたお金が底をついてしまうようでは、本当に困ります。あなたさまもこれから、いわゆる「老後」をお迎えになるわけで、そのための備えも必要でしょう。かわいい一人息子さんはあてにできませんからね。さて、拝読していて思いましたこと、ふたつほどお伝えさせてください。ひとつめ、矛先が違う気がいたします。「息子の嫁がなかなか働いてくれず、まったく仕事をする気がない様子」とのことですが、あなたさま、まさかお嫁さんにまで息子さんにすねを差し出せというのではないですよね。親としてあなたがものを言うべき相手は息子さんですよ。それを飛び越えてお嫁さんに矛先を向けてしまうのは、いかがなものでしょう。ふたつめ、困っていらっしゃるなら、困らないようにいたしましょう。つまり、出て行くお金を抑える=息子さんへの月々の仕送りをやめる、です。私は高野山で修行をしたのですが、運がよいとごくたまーにチョコレートの差し入れをいただいたりしたものです。手に入れたときは、それはそれは大事に少しずつかじりました。人は、なければないなりになんとかするものです。毎月決まって援助なさっているあなたさまの優しさが、いまの息子さん、お嫁さんをつくっているのです。変化というのは伝播します。あなたが変われば、息子さんが変わる。息子さんが変われば、お嫁さんが変わる。こんなふうにじわじわと伝わっていくものです。あなたが変わらずに息子さん、お嫁さんが変わるものですか。さあ、思い切って、手を引いてみてください。子離れするのも親の醍醐味です。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年05月15日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】家族が新型コロナウイルスにかかると、お見舞いもできないし、死に目にも会えないと聞きます。火葬にも立ち会えません。こういう状況で、どのように感染してしまった家族に寄りそえばいいのでしょうか?また、どのように自らの心を整理すればよいのでしょうか?逆もまたしかりで、自分が患者になると、家族にも会えなくなります。もしかしたら、そのまま死んでしまうかもしれません。そういう状況で、どのように心の平安を保てばいいのでしょうか?(番外編・編集部から)【回答】おっしゃるとおりですね。私が勤務している緩和ケア病棟でもご家族の面会が制限されています。最後の時間を一緒に過ごせないというのは、本当になんと申し上げてよいか……。さて、あなたさまが今リアルにそういうご状況に面しておられるのか、もしそうなったらを想定してご心配なさっているのかによってお伝えすることが異なりますので、二通りにわけてお伝えいたします。いま、まさにそういうご状況でいらっしゃるとしたら、本当にお辛いことと思います。おかけする言葉が見つかりません。会うことすらできないのにどのように寄りそえばいいのか、胸が痛みます。私は、ご家族との面会ができなくなってしまったご本人さまとお話をさせていただいているので、そのご様子をご参考までに。みなさま病室でテレビをご覧になったり、スタッフから情報を聞いたりして世の中の状況をよく把握していらっしゃいます。そして、みなさんご自分のことより、ご家族のことを心配していらっしゃいます。見舞いに来る道中で感染したら大変だと。また、ご家族と直に会えないのならと携帯電話のビデオ通話でお話をされたり、手紙のやりとりをなさったりする方もいらっしゃいました。厳しい制限の下ではありますが、みなさま懸命に過ごしていらっしゃいます。そのお姿を拝見するにつけ、お見舞いに行くこと、死に目に会うこと、火葬場でたたずむこと、これらのことだけが「寄りそう」方法ではないと教えられる日々です。寄りそうとは、どういうことなのか。私たちは、あらためて真摯に考えるべきときを迎えたのかもしれません。また、ご自分が感染してしまった場合。ご家族にも会えない、そして、死んでしまうかもしれない。そうなれば当然、心は乱れます。平安を保ってなどいられないでしょう。現代医学は、精一杯奮闘してくれていますが、最期のジャッジがどうなるかは、もはや祈るしかないのが現実です。人間は無力ですね。本来、無力なのです。すべての人がその人の望みどおりに在ることができるように、心から祈るばかりです。さて、もしそうなったらどうしようという“たられば”でご心配されていらっしゃるのなら、即考えるのをやめましょう。いますぐに、です。そんなことを考える時間があったら、しっかり食べて、しっかり寝て、しっかり動いて、免疫力をあげていきましょう。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年05月08日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】非常事態宣言を受けて仕事が完全に在宅勤務となった夫がずっと家にいます。結婚してこのかた、平日も休日も、朝から晩まで家で一緒に過ごすということがなかったので、かなり疲弊しています。食事も朝昼晩と三食用意しなくてはならず、メニューを考えるのも億劫で……。いまこの状況なら、定年退職したあとはどうなってしまうのかと途方に暮れています。(女性・48歳・専業主婦)【回答】狭い犬小屋に多くの犬を閉じ込めておくと、次々と争いや病が生じるそうですよ。おっと、ワンちゃんの例えなんかで失礼。つまり、最初にお伝えしたいのは、平日も休日も朝から晩まで家で一緒に過ごすことになって、いまのような気分におなりになるのは、生物としてしごくあたりまえのことだということです。心の問題ではなく、物理的な環境の問題です。まずは、そこをしっかりとわかっておきましょう。べつに、お互いの愛が冷めたわけでもなんでもないってことをね。あとは、その物理的問題の解決策ですね。ふたつほどご提案させてください。ひとつめ。「定年退職したらどうなってしまうのか…」と途方に暮れていらっしゃるようですが、定年退職後までお二人ともお元気でずっと一緒にお過ごしだと保証書でも出ていますか?まだお若いから、定年はあと20年くらい先のお話かしら。いやいや、20年後は定年が80歳になっているかもしれませんよ。ね、いまと同じ世界が続いているかどうかですら、私たちにはわからないのです。自分勝手に作り上げた未来像に、勝手に途方に暮れるのは、なんだかいろんなものがもったいない気がします。ふたつめ。これはすぐにでも実行できますよ。食事も朝昼晩三食用意しなくてはならず、メニューを考えるのも億劫なら、一日やめてごらんになったら?「そんなことできるわけがないでしょう」って、怒られそうですけど、本当にできない?なぜ、できないのかしら?できないって思い込んでいるだけじゃない?お相手が0歳児だったらそりゃできませんけれど、旦那さまはおいくつかしら?あなたさまをがんじがらめにして追い詰めているのは、あなたさま自身かもしれないってことに気がついてください。でもすこし、安心もしています。非常事態宣言のなかで定年後の心配ができているのですもの。あなたさまのメンタルは、ある意味強靱です。非常事態宣言に負けてなんかいません。お互い、しっかりと乗り切りましょうね!【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年05月01日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】83歳の父親についての相談です。父親は非常にしっかりしていて肉体的にも健康です。ただ、いつガタっと来るかわからないので、子供一同、車の運転は止めてほしいと思っており、それとなく伝えています。でも、本人は車の運転が好きで、かつ現状では心配なこともなにもないので、その気がありません。住んでいるのは首都圏で、徒歩圏内には店もあり、ターミナル駅まではバスで5分。車がなくても困ることはありません。ちなみに75歳の母親と2人暮らしで、買い物はおもに父親が担当しています。車の運転をやめてもらう、良い方法はないものでしょうか?(49歳・女性・会社員)【回答】いやあ、これは頭の痛い問題ですね。ご本人がしっかりなさっていらっしゃるのであれば、なおさらでしょう。これまでの生活スタイルを変えるというのは、なにかアクシデントがない限り本当にむずかしいものです。でも、アクシデントがあってからでは遅いですものね。自損事故も困りますけれど、人様の命を奪うようなことになったらそれこそ取り返しがつきません。83歳というご年齢を考えると、私も親に免許返納を進言します。さて、どう事を進めるかですが、「それとなく伝えて」いらっしゃるというのが、滞る原因では?私たちの耳は「選択的透過性」という特徴を持っています。「すべてを聞く」わけではなく、「聞きたいものを聞く」のです。つまり、それとなく「そろそろ車の運転をやめたら」と伝えている言葉は、お父さまには完全にスルーされていますね。どこにもひっかかっていません。望んでいないことを聞いてもらうためには、事実を示し、はっきり明確に、根気よく何回も、伝える必要があります。研究をするとき「事実は3つ並べよ」と教わりましたから、高齢者の運転事故の記事などを3件用意し、はっきり明確に「警察に行って返納するといいよ。かわりの身分証明書はくれるんだよ」と伝え、顔を見るたびに言ってみましょう。途中、ちょっと怒るかもしれませんが、それにつられて怒っちゃだめですよ。あくまでも、冷静に。そして、なによりも、運転を続けたいと思っていらっしゃるお父さまのお気持ちに耳を傾けてください。その理由は、単なる「不便になるから」だけではないはずです。なにかを捨てるって、どんなことでもなかなかできないものでしょう? たかだかお菓子の箱だってとっておきたいじゃないですか。運転免許なんて大きなもの、いろんな思いがあって当然です。その思いを、たっぷり聞いてさしあげてください。そして、それを捨てたところで、お父さまのなにも欠けはしないと、お伝えください。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年04月24日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】1年前に主人を病気で亡くしました。本人の意思により無治療を貫き、自宅で看取りました。それはそれは壮絶な最期で、あまりにも悲しくて、1年経った今も遺影の写真や生前の写真を見ることができません。絶対に既読にならないメールを亡き主人に送り続け、泣き続け、何とか正気を保つような毎日。主人の最期を思い出しては、「ああすればよかった。こうすればよかった」と沢山の後悔に苛まれています。このような後悔と現実に、どう向き合っていったらよいのか教えてください(57歳・女性・美容師)【回答】すでに、とても上手に向き合っていらっしゃると思います。ご主人にメールを出し続けていらっしゃること。泣き続けていらっしゃること。こうしてご相談してくださっていること。すべて、うまく向き合っていらっしゃる証の行動だと思います。ご主人と過ごした年月を、そしてさらに濃密だった最期の時を消化(昇華)するには時間がかかります。たとえば、風邪をひいて3日寝込めば、体の完全回復にはひと月かかると言われているのですよ。体がそうなら、心だって同じこと。回復には時間がかかるのです。焦る必要はありません。大切なのは、「きちんと悲しみきる」ことと、「良い後悔をする」こと。「きちんと悲しみきる」というのは、「毎日泣いてばかりじゃだめだ」とか、「もっとしっかりしなくちゃ」などと悲しい気持ちを抑え込まずに、きちんと悲しみの穴の底まで沈みきるということです。底に足がつけば、底をけって浮上する力が生まれます。中途半端に上がろうともがくから、よけい苦しいのです。大人はどうもこのあたりが不得意のようです。真っ当にきちんと悲しみきりましょう。そして、「良い後悔をする」。私たちは、どうがんばったって後悔せずにはいられない生きものです。だからこそ、こうして発展してきたとも言えるでしょう。良い後悔というのは、時間軸を今にもどす思考回路がある後悔です。「ああすればよかった」「こうすればよかった」だけで終わってしまっては、時間軸が過去にいきっぱなし。「だからこうしよう」と、時間軸を今に戻して考えましょう。ご主人がまさに命がけであなたに伝えてくれたのはなんですか。悲しみだけではないはずです。たっぷり涙を流したら、心の耳を澄まして聴いてみてください。大切なご主人からの、大いなるメッセージを。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年04月17日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】子どもが同級生だった縁で、時々お茶を飲んだり、出かけたりする友人が2人います。そのうちの1人が買い物中によく、小銭を貸してくれと言ってくるのですが、貸しても返してくれません。一緒に買い物に行ってくれと頼まれて車に乗せてあげても、お礼の一言がないこともしばしばで……。最近は距離を置いていました。ところが、その友人が「筋ジストロフィー症」(身体の筋肉が壊れやすく、再生しにくい病気)になったらしいと、共通の知り合いから聞きました。昔からの友人であり、何か力になってあげたいと思う反面、本人から病気のことを告げられておらず、かつてのように足代わりにされても困ります(63歳・主婦・女性)【回答】「かつてのように足代わりにされても困る」とお思いになっていらっしゃるのなら、関わらずにいたほうがよいと思います。むしろ、なんで迷われるのかしら。ものすごくシンプルなことだと思いますよ。もし、あなたがご自分の思いとしてその方を助けてさしあげたいのであれば、感謝されなくても、足代わりにされても、そんなことは関係なく手をお貸しになるでしょう。でも、たとえば「手助けもしない人だと思われたくない」といった体裁を気にされてということであれば、当然、感謝されなければ割が合わないし、足代わりにされるのはご勘弁でしょうね。人は3秒もあれば損得を考えはじめるそうです。だから、熱いやかんにうっかり触って「あちっ!」と手を引っ込めるように、間髪入れずに動かないとできないことはたくさんあるのです。損得を考えるのがいけないと言っているわけではありません。損得を考えるくらいなら、手を出さないほうがいいと言っているのです。それが、お互いのためです。あなたの躊躇はご友人に伝わってしまいますし、迷いを抱えながらの行動はあなたの心に今よりもっと大きな荷物を増やします。それに、実際に手を出して動くことだけが、ご友人にしてさしあげられることではありません。体がすこしでも楽なように、心がすこしでも穏やかであるようにと、ご友人のために祈ることだってできるのです。「祈り」の遠隔的効果(病人の回復に対して効果的であること)は、もう米国の研究で明らかになっていますからね。しかも、他の人の幸せのために祈ると、あなたの体の中はオキシトシンというホルモンで満たされます。オキシトシンは“回復ホルモン”ですから、あなたの免疫力もあがるという一石二鳥です。ね。無理はやめましょう。あなたが穏やかで幸せでなければ、ご友人も含めてあなたの周りの人が幸せであるはずないのですから。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年04月10日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】今年80歳になる母の主治医から「お母さんには軽度の認知症の兆候があります」と聞かされて心配でたまりません。まだ介護いらずで、足腰が達者なのもよいのですが、散歩が大好きな母は一人で隣町まで買い物に出かけたりします。これがいつか、迷子になったり、事故にあったり、お金を取られたりといったトラブルを招くようになるのではと思うと、だんだん不安になってきて……。頭ごなしに「一人であまり遠くに出かけないで」とは言えないし、健康にとっても良いことだと思うのですが、“徘徊と捜索”で苦労した友人の話を聞くと、何かしら対策を考えなきゃと思っています。(55歳・女性・主婦)【回答】最初に共有しておきたいのは「“軽度認知症の兆候”って、80歳以上の8割以上がそうなのでは?」ということです。人間としてごくあたりまえのありようは、医学の世界だとこのような言葉になってしまう。まずは、あまり悲観的にならないようにいたしましょう。とはいえ、ご心配なのはごもっともです。でも、「頭ごなしに言えない」「何か対策を考えなければ」とおっしゃっていらっしゃるのには、ほっとしました。そのとおりだからです。お母さまにとって、買い物や散歩はお楽しみのひとつでしょう。もちろん足腰の鍛錬のためにも、続けていただきたい習慣です。でも、それを「安全に」続けていただくためには、やはり「対策」が必要です。軽度の認知症の場合、やっかいなのは周りから見て、その状況が把握できないということ。つまり「普通」に見えてしまうということです。かといって「軽度認知症」とハタを立てて歩いていただくわけにもいきません。そこで、最近は各自治体が工夫をしています。私の地元では「お守りキーホルダー」をお配りしていて、身につけていただくことで、いざというときにサポートできるようにした仕組みがあります。お母さまがお住まいの地域にも何かあると思いますので、まずはそういった仕組みの利用をおすすめします。同時に、お母さまが暮らす地域の地域包括ケアセンターにご相談しておくとよいと思います。介護福祉のサービスはこちらから動かないと始まらないものですから、早速に動きましょう。「こんなこと相談してもいいのかしら?」と躊躇されることもあるかもしれませんが、相談を受ける側は、むしろ早めに相談していただくことを望んでいるので、即行動でOKです。ご友人の苦労話をお聞きになったりすると、お気持ちが沈むこともあるでしょう。でもね、人間は順繰りなのですよ。小さい頃はなんやかんやと親の手を煩わせながら、育ててもらいましたものね。今度は、子が親に手をかける番なのです。そして、それはず〜っと続く時間ではありません。たとえ望んだとしても、いずれ終わりがくるのです。大変なご状況だと重々わかっていますが、あえて言いますね。どうぞ“今”を楽しんでください。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』(火曜)のコメンテーターとニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務める。
2020年04月03日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】会社の人事異動により新しい取引先を担当することになりました。その取引先の責任者であるAさんは非常にくせのある性格で、私の会社だけでなく他の会社の担当者も人間関係で苦労していると聞いていました。実際、仕事を始めてみると、言いがかりのような難癖を毎回言われて精神的に参っています。さらに私の会社の前の担当者だったBさんはAさんと非常にうまく人間関係を築いていたため、毎回「Bさんの頃は良かった」「Bさんに比べてあなたは…」とAさんから責め立てられてしまいます。このままでは精神的に限界なのですが、一体どうすればいいでしょうか。(44歳・会社員・男性)【回答】本当は、「離れる」のが一番なのですけれどね。お仕事ですから、そうはいかないのですよね。お辛いお気持ち、お察しいたします。人間関係はいつの時代も、どこの場所でも、私たちの最大の問題です。まず、決定事項として申し上げられるのは「Aさんは変わらない」ってことでしょうか。だから、Bさんのように「Aさんとうまくやれる」ようになる、というのも期待薄です。Aさんという方は、他の会社の担当者さんからもぼやかれているくらいの強者ですもの。うまくやろうと力を使うより、どれだけこちらのダメージを少なく抑えて仕事をするか、ということに頭を使ったほうがよさそうです。私だったら、私だったらですよ、(1)Aさんと会う時間、話す時間を必要最低限に抑える(2)会社に直談判して担当を変えてもらう(3)職場を変える、の順番でやってみます。もしかして「そんなこと、簡単にできないよ!」って思われましたか。なら、できないのはどうしてでしょうか。まだ余力がある? それとも、逃げ出す気力もなくなってしまっている? 後者だったら危険信号が点滅しています。この際、何よりも大切なのは「自分」と心得てください。Aさんとの関係で心と体を壊しても、誰も責任なんて取ってくれません。自分のことは自分で守らないといけませんよ。今のご時世、ときどきね、いらっしゃるのです。頑張って付き合ってはいけない人が。原因は、あなたが「関係づくりが不得手」とか、「仕事ができない」とか、そういうことではないのですよ。そこの見極めがついたら、やっぱり可能な限り「離れて」ください。どうかうまくいきますように。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK総合『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS系『グッとラック!』(火曜)にコメンテーターとして出演する。4月1日よりニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務めることが決定。
2020年03月27日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】最近、大切な母を亡くしました。この2年間は寝たきりで…意思疎通もできない状態でした。そうなる前は多少の認知症があったものの、まだ会話はできていました。ある日、肺炎にかかり命の危険もあったので、何とか生き延びてもらいたいと胃ろうおよび器官切開を選択したんです。その結果が2年間の寝たきり状態で。生きる屍のようでした。母が亡くなった今、2年前の私の選択が果たして正しかったのか、繰り返し自問自答しています。このような状態になるなら、そのまま逝かせてあければよかったなと…。でも、あの時点でそういう選択ができたかどうか。私の判断は間違っていたのでしょうか?(57歳・主婦・女性)【回答】間違っていません。過ぎたことはすべてベストチョイスだったのです。私は看護師なのでいろいろ拝見してきましたけれど、つくづく「人の寿命は決まっている」と思うのです。現代医学の粋を尽くして治療をしても効なく逝ってしまった人もいれば、すべての治療をやめて「このまま逝きます」と言って何年も生きた人もいました。たぶん、私たちは生まれたときに、「〇年〇月〇日まで」と決められているのでしょうね。だからお母様は、胃ろうだとか気管切開だとかに関係なく、その日までこの世にいらっしゃるお約束だったのだと思います。それは、私たちたかだか人間ごときに、伸ばしたり縮めたりできるものではないのですよ。なにをどうしようと、その日と決まっていたことなのです。だから、あなたのせいではないし、間違っていたということもありません。ところでお母様、今ごろどうしていらっしゃるでしょうね。つかいきったからだをお脱ぎになって、さぞかし身軽になっていらっしゃることでしょう。「あ、今、近くにいるな」ってお感じになることなんてないですか。私の夫は9年前に逝きましたが、しばしば「ハエ」になって会いに来てくれるんですよ。「ハエ」ってところがあれですけれど、ま、そのへんはご愛敬で。あなたの周りにもいらしていませんか、お母様が。2年前の選択が正しかったかどうかなんて自問自答を繰り返すより、お顔を上げて周りを見ていただきたいわ。きっとお母様からのメッセージが届いているはずなんですけどねえ。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK総合『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS系『グッとラック!』(火曜)にコメンテーターとして出演する。4月1日よりニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務めることが決定。
2020年03月20日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】新型コロナウイルスによる商品不足に母親が敏感になりすぎて困っています。マスクやトイレットペーパーが品薄状態になっているのを見て心配になったようで、何軒もお店をはしごしていました。使うぶんだけ買ってくればいいのですが、「またいつ無くなるかわからないから」と必要以上の量を買いだめ、お米や缶詰の備蓄までどんどん増やしていく始末……。毎日落ち着かない様子で、母親の相手をするのにも疲れてきました。(36歳・会社員・女性)【回答】やらせてあげておいたらいいじゃないですか。お母さまの思うように。報道をご覧になってご存じのとおり、今回の新型コロナウイルスは高齢者のほうがリスクが高いのですよ。お若いあなたよりお母さまのほうが切実な問題なのです。昭和生まれの方というのは備蓄しておくことで多大なる安心を得ます。私の両親も同じです。加えて、この日々の報道。煽られないでいるほうがむずかしいです。トイレットペーパーも、マスクも、お米も、すぐ腐ってしまうものではありませんから、事態が無事収束したあとにでも、ゆっくり消費していけるでしょう。それに、まだ先は見えていませんからね。これからますます事態が悪化し、最悪のシナリオにならないともかぎりません。そうなれば、お母様が心血を注いで集めてくださった物資が大いに役立ちます。そうです。すべてはそうなのです。アリとキリギリスです。夏の間、せっせと働いて食料を運び込んでいたアリさんを、キリギリスはせせら笑って見ていました。食料のない冬なんて来るはずがないってね。でも、冬は来ました。食料をためていなかったキリギリスは瀕死の状態に。優しいアリさんに食料を分けてもらえなければ、助からなかったのです。キリギリスはお礼にバイオリンを演奏しましたが、あなた、バイオリンは弾けますか?とはいえ、多くのアリさんが買いだめをして、いろんなものの需要と供給のバランスがくずれてしまうのは、たしかにいただけませんね。お母さまには、ほどよいアリさん行動をお願いしましょうか。そのためにはまず、お母様の話を聞くことです。どんな苦労をして重いお米を運んできたのか。トイレットペーパーひと袋買うのにどれくらい並んだのか。まずはその労力と功績を十分にたたえます。そして最後に、遠慮がちに「でも、やり過ぎはよくないよ。お母さんの身体も心配だし。無理して感染しちゃったら元も子もないしね」と言うのです。だいたい10分聞いて30秒話す程度。そのくらいを意識してお伝えしてみてください。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK総合『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS系『グッとラック!』(火曜)にコメンテーターとして出演する。4月1日よりニッポン放送『テレフォン人生相談』のレギュラーパーソナリティを務めることが決定。「女性自身」2020年3月24・31日合併号 掲載
2020年03月13日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】私は東京の下町で長く居酒屋をやっているんですが、最近は若い人を雇っても、ちょっと厳しいことを言うとすぐやめてしまうんです。SNSで紹介されて店の人気が出てきたこともあって、ホントは系列店を増やしたいと思っているんですが、任せられる人材がまったくいない。若手を育てたいのに、「パワハラ」のようなことを言われたら、もう何も教えられません。おまけに、ウチで1年しか働いてないのに“愛弟子だった”みたいなことを言って独立する調子のいいやつもいる。どうしたらいいんでしょう。(42歳・男性・飲食業)【回答】思い返せば私たちの世代も「新人類」なんて言われたものです。遠く遡れば明治時代には、むしろ今は堅いイメージのある「小説」が軽蔑の対象になったこともあったそうです。つまり、いつの時代でも自分より若い世代には「違和感」を覚えるのですね。ましてや、社会が刻々と変わっていく現代においては、10年離れたらもう新人類どころか「別の惑星の人」ですよ。私もしばしば若い連中と交わりますが、正直あなた様と同じように戸惑っている部分もあります。なんといっても、まったく価値判断基準が違うのです。昔だったら10年も20年も修行をして、やっとこ“のれん分け”が許されたのでしょうけれど、1年で“愛弟子”ですものね。もう、時間の流れ方さえも違うのですよ。本当に。でも彼ら、すごいところもあります。まるで息をするようにSNSを使いこなすし、人と争うことを好まず優しいです。コミュニケーションは下手だけど、よく観察はしています。スピリチュアリティも高く、物質文化に流されない独自の価値観も持っています。ところで、あなた様のお店には外国の方もいらっしゃるでしょう。例えば英語しか話せない方がいらっしゃったとき、どうされていますか? たぶん、あなた様のほうが英語を話して意思疎通を図ろうとしていらっしゃるのでは? まさか、お客様に対して「ここは日本だ。日本語の話せねえやつは帰んな!」なんて言ってないですよね。つまり、そういうことかなあ。今どきの若い人をお客さん同様、「大事な人」だと認識すれば、私たちは彼らの使う言葉、彼らの持っている感覚に合わせてコミュニケーションを取ろうとするのです。でも、そう思えず自分の言葉と価値観を変えることなく接すると、結果、つながらないコミュニケーションにイラついて「最近の若い奴は!」と言うのですよ。「バブバブ」言っている赤ちゃんに、「はっきり言えよ。言わないとわかんないよ!」って言うのと同じです。ね、歩み寄るのはいつだって「大人」のほうなのです。彼らより長いことこの地球にいる私たちは、間違いなく彼らより「大人」。彼らの言葉と感覚に沿って、付き合っていってやろうではないですか。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2020年03月06日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】私は妻と3人の子供の5人で暮らしています。父親はすでに亡くなっており母親が隣の県に一人で住んでいますが、いずれは私たちも近くに住もうと家を新築しました。家にはせっかくなので今は母親に住んでもらっていますが、私たちが移るときには近所に引っ越しして別居してもらいたいと考えています。その旨を正月、家族が集まったときに話したところ、母親や弟、姉が激高し、厳しい言葉浴びせられました。「住宅ローンはすべて自分が払っている」と言っても、「それは元々そういう話だった」「母親を追い出そうとするなんてひどすぎる」と反論され、まったく話し合う余地がありません。妻と母親は元々そりが合わない関係だったのですが、この一件をきっかけに関係が完全に断絶。すでに弁護士を立ててお互い争うところまで来ているのですが、私としては何とか関係を修復したいと思っています。何か良い解決法がないものでしょうか。(37歳・会社員・男性)【回答】う~ん。いろんな要素が重なり合って、からまってしまったのですね。言い方とか、話す順番とか、言い出すタイミングとか、とにかくすべてがからまる方に向いちゃったのでしょう。もう、お気の毒としか言いようがないです。あなたも奥様もさぞかし嫌な思いをされていらっしゃるでしょう。そして、同じようにお母様も弟さんもお姉さんも、嫌な思いをなさっていることでしょうね。こういうとき、いちばん厄介なのは「事実」ではなく「感情」です。お母様方の言い分をお聞きしていないので片手落ちがあるかもしれませんが、あなたの言い分をお聞きする限り、あなたのおっしゃっていることに非はないように思います。家のローンを払っているのはあなただし(頭金とか出していただいてないですよね)、家の名義もあなた(たぶん)。となれば、その家に誰が住むかを決めるのはあなたということでしょう。「事実」はものすごくシンプルですよ。ただ、そこには物語がありますからね。そして物語には「感情」がつきものです。「感情」がしゃしゃり出てくると、からまるのですよ~。そして私たちは、「からまったものをからまったまま置いておく」というのがとても苦手なものですから、すぐさま解きにかかります。もう、ひっぱったり、ちぎったり、むしったり、どんなことをしたって解こうとやっきになってしまう。でも、力というものは押せば反発してくる。昔、物理の授業で習いましたよね。これ、道理です。だから「感情」だって、圧をかければ反発してくる。解こうとやっきになればなるほど、からまっていくのですよ。ましてやあなた、弁護士なんて超度級を持ち出しては…。修復したいとお考えなら、この糸玉からいったん離れてみては? できる限り時間と距離をおいて、解こうとするのをやめてみましょうよ。からまった糸玉をほどくのがいちばん上手なのは、なんといっても「時間」ですから。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2020年02月28日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】東京で働いている息子が、“墓じまい”をしたいと言い出しました。私は先祖代々受け継いだお墓を毎月のように掃除しに行っているのですが、息子は「お墓参りなんてしょっちゅうできないし、お母さんが生きている間に処分しておいてよ」と言うんです。私も夫も、亡くなったら先祖代々続くお墓に当然のように入ると思っていたし、息子にもお墓を受け継いでいってほしいと思っていたのに…。あっさり「処分して」と言い出したことにショックを受けました(69歳・主婦・女性)【回答】「人は死んだらどうなるのかしら」という問いの正解は知る由もありませんが、人はそれぞれの心の中に、なんとなくイメージを持っているようです。そのイメージは「人によって違う」ものです。さて、あなた様がご子息に受け継いで欲しいと願っているものは、先祖代々続く大事な「お墓」ですか? だったら、昨今いろいろな代行業者がありますから、ご依頼なさってみるのもひとつの手でしょう。ご子息を煩わせるまでもなく、お墓の掃除、命日のお参りと細やかな管理をして「お墓」を守ってくれるそうですよ。それとも、あなた様がご子息に受け継いで欲しいと願っているものは、先祖を敬う「気持ち」ですか? 自分がこの世を去った後、時々は「母さん。俺、頑張ってるよ。そっちはどうだい?」なんて思い出してくれる。そういう「気持ち」ですか?もし、あなた様がご子息に引き継いで欲しいと願っているものが「お墓」ではなく「気持ち」なら、「墓じまい」云々にはこだわらなくてもよさそうですね。きっとご子息は、「人は死んだら、お墓にいる」というイメージを持っていらっしゃらないのですよ。どう思っていらっしゃるのかしら。もしかしたら、もっともっと亡くなった人を身近に感じることができる方なのかもしれませんね。日々の生活の中で花を見たとき、風を感じたとき、空を見上げたとき、そのつど「母さん、父さん」と心を寄せることができる子なのではないかしら。とても優しい子。そうであれば、「お墓」は必需品ではありません。ものごとはすべて移ろうものです。あなた様が毎月お参りをして大切に守ってきた墓も、時代が変わり、人が変われば、やはり、変わってゆきます。そこには「よい」も「わるい」もない。ただただ、流れてゆくのみです。ご子息のお気持ちに、任せてみたらいかがでしょうか。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2020年02月21日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】これといった理由もなく、中学生の息子が学校に行かなくなりました。イジメではないようですが、行かなくなって半年くらいになります。担任の先生も友人も心配してくれていますが、本人はガンとして行きません(友人とはLINEでやり取りしているようです)。最初は、行くように厳しく言っていたのですが、そうするとベッドから出てこなくなり、話もしなくなります。夫に頼んで、力ずくで引っ張り出したこともありますが、さすがにそれ以上はできず(殴るようなことはしたくありません)、ほとほと困っています。夫とは、しばらく見守るしかないのかなと話していますが、引きこもりの子どもに関連する殺人事件などもあり、不安がよぎります。今後、子供にはどのように接すればいいでしょうか?(46歳・主婦・女性)【回答】一度、しばらく放っておいてみたらいかがでしょうか。大いなる慈愛に立脚した無関心です。彼には彼の「学校に行かない理由」があるんでしょう。でもそれは、親や先生が口出しして、手助けすれば解決策が見つかるような「理由」ではないのだと思います。そして、彼の抱える「理由」を、私たちが本当に「わかる」ことは不可能です。彼は今、自分の中にしかない「答え」を探す作業中。けっこう大変な作業なので、普通に学校に行きながらではできないんでしょう。今やるべきなのは、“学校に行かせる”ことではなくて、“答え探しの邪魔をしない”ことですよ。私も親ですから、子どもが学校に行かなくなって心配なお気持ちは「わかる」と言わせてください。きっと考え出したら夜も眠れないほど不安でしょう。でも、長い人生の中で1~2年、じっとしている時間があったってどうってことないですよ。いくらでも元に戻れます。「厳しく言ったり」「力ずくで引っぱり出したり」しないで、しっかり底まで沈ませてあげてください。中途半端に茶々を入れるから、息子さんが答え探しに没頭できないんですよ。お母さんとお父さんは、なるべく普通に過ごすこと。「あなたが学校に行っていないことなんて気にしてないよ」というふうに。お母さんはお母さんの毎日を、しっかり楽しんでください。息子さんの一番の道標となるのは、お母さんやお父さんが日々楽しくはつらつと生きている背中です。楽しそうでなければ、誰が出てくるものですか。たしかに世の中にはいろいろな事件がありますから、究極のところまで心配してしまうお気持ちもわかります。わかりますが、心配しすぎは愚の骨頂。今は価値観が変わってきていて、私たちが考えている「学校」と、彼らの考えている「学校」は違うようです。それに、社会も変化していて、みんなと同じことができる子が「良い子」「できる子」ではない。これまでの型には合わせられないところに、驚くような才能が隠れている場合だってあります。あなたが安心したいがために、子どもを無理やり型にはめることがないように。ありとあらゆる可能性を視野に入れて見守る胆力をつけたいものです。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2020年02月14日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】実家に住む75歳の母が最近、モノを捨てられなくなってしまいました。溜まった紙袋や使っていないタオル類、くたびれた洋服など、とにかく何でも捨てるのを嫌がって手元に残したがります。「これまだいるの?」と聞くと、必ず「いつか使うかもしれないから」「まだ使えるから」と言い訳ばかりで、モノは増えていく一方…。まだ体は丈夫ですが、将来のことを考えると、いまのうちから実家の片付けをしておいてほしいのですが…(48歳・会社員・女性)【回答】まず、お母さまは紙袋やタオルに埋まってしまって身動きとれない状況でしょうか? 身動きはできている? そうですか。それはよかった。そして、「将来のことを考えると、いまのうちから実家の片付けをしておいてほしい」とは、「お母さんが死んだあと、そこに住むために私が掃除するのはイヤだから、キレイに片付けておいてほしい」ということでしょうかね。誤訳だったらごめんなさい。お母さまのこれまでの人生はどんなものだったのでしょう。御歳75歳でいらっしゃるということは、幼少のみぎり、まだ食べるものにも事欠くような戦後を乗り越えてこられたのでしょうね。あのころは物が少なくて、なんでも貴重でした。鼻をかんだ紙だって、たたんでポケットにしまい、乾いたらもう1度使ったそうです。小さいころの経験で得た感覚は深く心にしみ込んで、どんなに周りの状況が変化しても変わることはありません。「三つ子の魂百まで」と言いますでしょう。だから、お母さまがあれもこれも捨てずにとっておきたいと思うお気持ち、わかります。わかってあげましょうよ。「実家に行くと胸のあたりまでタオルだらけで泳ぐようにして母を見つけ出します」というありさまでなければ、いいじゃないですか。あなたには「いらないもの」でも、お母さまには「宝もの」。とっておくことでお母さまの安心が手に入るなら、安いものです。無理やり捨てさせてしまうと精神的に落ち着かなくなってしまったり、喪失感から老人うつになってしまったりすることもありえますよ。ね、許してあげてください。ときに、ため込んでいるタオルの1枚でも手にとって「これちょうだい。家で使うのにちょうどいいわ!」なんて言ってさしあげれば、なおOK。それが「子どもから親への愛」ですよ。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2020年02月07日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】先月、父親が脳梗塞で倒れたとき、兄から「おまえは大した仕事はしていないんだから、仕事をやめて介護をしろ」と言われました。あまりに酷い言い方で、ずっと引きずってしまっています。私だって、自分なりに仕事は頑張っているし、結婚したてで子どももこれから…と考えていたところなのに。それも兄の妻は専業主婦ですが、「何もしません」と早々に宣言して一切介護には関わらない様子で。不公平な気がしています(34歳・会社員・女性)【回答】ああ、これはグサッときますよね。お兄さん、これは言っちゃいけないことです。でも、もしかすると「父、倒れる」という突然のことに、パニックになっていらしたのかもしれません。親が倒れるなんて子にとっては想定外ですから、慌てふためいて心にもない言葉をぶつけあってしまうようなこともあるでしょう。だから、とりあえずこの言葉は5割引きくらいで聞き流してしまいませんか。いつまでもリフレインして引きずっていても、そこから生まれてくるものは良くないものばかりのような気がします。さて、親の介護という避けがたい問題に対処するときは、「私はどうしたいのか」をキーワードに考えを進めてみてはいかがでしょう。たとえば、あなたに手持ちのコマが10あるとして、お父さまの介護にどれくらい投入したいと思うか、です。それを考えるとき、お兄さんにぶつけられた言葉や、専業主婦の義姉がなにもしないと早々に宣言したことなどは(腹は立ちますが)、とりあえず蚊帳の外に出しておきましょう。ご自分の気持ちだけに意識を集中して、考えてみていただきたいのです。考えた結果、介護に投入できるのは10のうち2だとか、0だと結論が出たなら、ケアマネさんにその旨を相談してみてください。世の中には、独居で在宅療養生活を送るケースも多々あり、対応策は十分にあります。だから、あなたひとりですべてを背負い込む必要はまったくありません。同時に、お兄さんや義姉に無理矢理やらせる必要もないのです。繰り返しになりますが、キーワードは「私はどうしたいのか」です。それにしても、私たち子どもは親が元気でいるのが当たり前で、いつまでも一緒にいられると思い込んでいますが、実はそうではないのですね。貴重な「時間」を大切に。あなたのご相談をお聞きして、そう気付かせていただきました。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2020年01月31日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】12歳年下の妻が、ときどき高校のときの同級生(元彼)と会っているという話を、妻の友人から聞きました。私たち夫婦は共働きで、お互い残業や会食などが多く、話を聞くまでまったく気づきませんでした。仕事終わりにあとをつけるわけにもいかず、妻のスマホを見るわけにもいかず、悶々としています(40歳・会社員・男性)【回答】奥さまの浮気を懸念していらっしゃる、ということでしょうか。ご親切にもこんないらぬ情報をあなたに耳打ちしてくださった妻のご友人(って、こんなことを夫の耳にわざわざ入れてくる人って、すくなくとも奥さんの“友人”ではないですよね。単なる知り合いかな)に話を聞くまでまったくお気づきではなかったのに、聞いたとたんに疑いが止まらなくなっちゃったというご状況ですね。悶々とするほど気になっていらっしゃるのなら、「あとをつける」とか「スマホを見る」とかおっしゃってないで、奥さまに直接「どうなっているの?」とお聞きになったらいかがでしょう。そんなこと聞いたら話が大きくなって「離婚」とかに発展してしまいそうなご心配がありますか?だから聞けない?でも、どんなに日々悶々とされていても真実は見つかりませんし、これからの人生も奥さまと一緒に歩いていきたいと思っていらっしゃるなら、尾行や覗き見で探るのは禁じ手です。まずは、奥さまと腹を割って話されることをおすすめします。さて、奥さまと話をするときのコツをひとつ。人間とは不器用なもので、人と話すときに第一感情が先に出てしまうのです。たとえば、「なんで元彼なんかと会ってるんだよ!(怒・疑)」。これが第一感情ですね。でも、その下には「僕への愛が揺らいでいるのかも…(不安・悲)」という第二感情が眠っています。この眠っている第二感情を、素直に前面に出して話をすること。それが、奥さまにあなたのお気持ちをうまく伝えるコツです。私も幾度となく手痛い失敗をしてまいりました。その結果、今は、「“裏切られた”と自己防衛するより、何度でもすりきれるまで信じきる。そういうものになることが今生のカルマ(=課題)」だと気付き、日々精進しております。奥さまとの話し合いがうまくいって「なあんだ、悶々としてソンした!」って笑える日本晴れがくることを心からお祈りしております。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2020年01月24日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】祖母が数年前に脳梗塞で亡くなりました。患う前は「終活」についての本を読んでいた様子で、祖母なりに自分が亡くなった時のことを考えていたようです。しかし結局、脳梗塞でうまくしゃべれなくなってしまい、どういう最期にしたいのか希望も聞けないまま亡くなってしまいました。良い見送り方ができたのかどうか、いまだに自問しています(31歳・女性)【回答】そうでしたか。お見送りになるその日まで、どんなお時間をご一緒にお過ごしになられたのでしょう。おばあさまのご表情や手のぬくもり、息使いなど、思い起こされる場面がたくさんおありになることでしょうね。おばあさまは患われる前から「終活」についてお考えだったご様子。賢明な方だったのですね。なかなかそこまで思い及ばないことの多い、日々の生活のなかでご興味をもって本を読まれていたとは、さすがです。そこに、おばあさまの生き様を拝見する思いです。そんなおばあさまにはいろいろ思うところもおありだったでしょうけれど、それを共有できなかったことがあなたさまの今の苦しみになっておられるようですね。でも、思い出してみていただきたいのです。私たちが心を通わすために使うのは、なにも言葉だけではありません。眼差しや表情、息使い、姿勢…ありとあらゆることが「伝える」「受け取る」ための道具になります。たしかに、おばあさまはご病気によって「言葉」を失われたかもしれませんが、それでも一緒に過ごされたお時間の中で、あなたに伝わってきたものがあったでしょう。必ずあったはずですよ。どうか思い出してみてください。それが、おばあさまの「最期はこうありたい」というご希望の表現だったのです。見送られて数年がたった今でもおばあさまをお心にかけ、自問自答なさっているあなたのお姿から、おばあさまへの大きく深い愛が伝わってきます。そんなあなたに見送られたおばあさまが、残念な思いを残されているわけがない。そうでしょう?仏教には「回向(えこう)」という考え方があります。生きている者が人助けをしたり、一生懸命に働いたりして「徳」をつむと、その「徳」があちらの世界に逝った方の周りを明るく照らし、幸せにするという考え方です。それでね、「笑顔で楽しく暮らす」ことも、「徳」をつむことになるのですよ。あなたの見送り方は最善だった。お顔をあげて、笑顔でいきましょう。その「徳」が、かならずやおばあさまを温かく照らし、優しく包んでくれます。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2020年01月17日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】私の実家には70代の両親と40代後半になる独身の兄が住んでいます。離れて暮らしていることもあり、年老いていく両親のことは心配で、できれば兄に結婚して家庭を築いてもらい、両親に介護が必要なときなど何かあった際は、奥さんや子供たちと協力し合って助けてあげてほしいと思っています。しかし、兄に結婚する様子はまったくありません。両親も兄の結婚のことを憂慮していて、私もこのままでは実家の先々が心配です(44歳・会社員・男性)【回答】まずは、すこし整理をしてみましょう。抱えていらっしゃるご心配の種は、(1)ご両親さまの今後の生活、(2)お兄さまのこれからの人生、(3)ご実家の存続、でしょうか。いろいろとご心労の多いことですね。お察しいたします。このなかで、すぐに解決の糸口が見つかりそうなのは(1)でしょうか。今はまだ必要のないご様子ですが、今後、ご両親さまの日々の生活に手助けが必要となる場合に備えて、ご近所の地域包括センターや役所の介護相談窓口とあらかじめ繋がっておくという手があります。そうすれば、いざというときにすぐ動くことができますので安心ですよ。(2)はいちばん難しいですね。お兄さまは今、鋭意婚活中でいらっしゃるというわけでもなさそうです。ご本人はあまり「結婚」ということにご興味がないのかもしれません。ご家族のご心配は痛いほど伝わってきますが、でもね、お兄さまの「人生」ですから。今の世の中、「結婚」することが「普通」で「幸せ」とは限らないでしょう。ましてや結婚してほしい理由が「両親の今後の生活を助けるため」とは、少々酷なお話に聞こえます(もちろんそればかりではないでしょうが)。お兄さまの結婚とご両親の介護はまったく別の問題。しっかり分けてお考えになったほうがいいですよ。それに、最近は50代で初婚ということも珍しくないようですから、お兄さまの人生にもこれからどういう展開が待っているかなんてわかりません。いずれにしても私たち、一回こっきりの人生ですから。お兄さまの人生は、お兄さまのいいようにしていただきましょうよ。(3)のご実家の存続については、場合によってはあなたさまがお継ぎになるということもありなのではないかしら。昔と違って兄弟が少ない現代ですから、長男が、次男がではなく、協力し合って子供たち全員で事に当たるというのが賢明なような気がします。私たちは、「心配の種」は他人にあるような気がしていますが、その「心配の種」を育てているのは、往々にして「自分」です。じつは自分が勝手に「心配の種」をつくり出し、育ててしまっているのです。ときにはちょっと見方を変えて、「起きていること」を別の方向から眺めてみてください。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2020年01月10日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】私たち夫婦と義姉はそれぞれ夫の実家の近くに住んでおり、義両親の身の回りの世話は義姉が通っておこなっていました。しかし、1年前からは私が義姉の代わりにすべての世話をおこなうように。そのこと自体に不満はないのですが、最近「レトルトや冷凍ものは使ってほしくない」「母には少量でたくさんの種類のおかずを食べさせてあげたい」など、義姉からの要求が増えてきました。もちろん、できる限りのことはしてあげたいのですが、毎日のことなので負担も大きくて……。さらに、それを夫に相談したところ、夫が義姉にきつめに伝えてしまい、二人は口を利かない関係に。私も気まずく、心労で痩せてきてしまいました。(67歳・主婦)【回答】ご状況が手に取るようにわかり「たいへんだ」と思わずため息が出てしまいました。「手を出さない人が口を出す」。介護期間に生じるトラブルの原因はほとんどがこれです。私だったら、「そうおっしゃるなら、ご自分でどうぞ」と言いたくなってしまいそうです。いや、実際、主人の介護をしていたときは言ってしまっていました。なので、お気持ちと大変さは、重々承知しているつもりでおります。いちばんの解決は、義姉が「ありがとう。あなたは本当によくやってくれている」と認めて改心してくれることなのですが、どうでしょう?無理そう?そうね、たぶん無理なのです。なぜなら、あなたさまもご存じのとおり「他人は自分の思うようにはならないもの」だからです。でも、ご主人はあなたのなさっていることをしっかり認めてくださっている。だから、お義姉さんにきつく言ってくれたのでしょう。三方良しがベストだけれども、なかなかそうはいきませんから、ご主人があなたを理解してくれているだけでもОK。義姉とは少し距離が取れてよかったくらいに考えてみてはいかがでしょうか。「他人は自分の思うようにはならない」けれど、「状況は自分の捉え方しだい」です。自分の考え方をコントロールする、これは練習あるのみです。一朝一夕でできることではないのですが、日々の練習でだんだんと身についていきます。コツは、物事の見方には何通りもあると考え、その具体的なパターンを思い浮かべるようにしてみること。そして、思い浮かんだパターンの中から、あなたさまがいちばんこころ穏やかでいられるパターンを選択すればいいのです。とはいえ、こんなことばかり言っていると「ちっとも解決にならない」と怒られてしまいそうです。そこで、もうひとつの見方をいたしましょう。あなたさまが疲れすぎていませんか。社会資源を使ったサポートを上手に取り入れていますか。また、義両親さまの介護や今後についての家族会議をもっていますでしょうか。おしなべて、あなたさまが今よりも楽になるように、ありとあらゆる手段を試してみていただきたいと思います。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2020年01月03日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】ベストセラーになっている樹木希林さんの本を読んで感動しました。どうすれば、あんなに穏やかで、潔い死に方ができるのでしょうか?(68歳・主婦)【回答】私も樹木希林さんのご本を拝読いたしました。本当に素晴らしい方ですね。憧れます。あなたと同じように私も「こうありたい」と思いました。最近、「どうしたら穏やかに死ねるのか」、「どうやったら幸せに死ねるか」というようなご相談をしばしばいただきます。私なんぞは“ズバリ”の答えを持ち合わせておりませんので、一緒に考えさせていただいております。まず、「穏やか」とは、「幸せ」とは、具体的にどういうことなのかを明らかにしていきます。「穏やか」、「幸せ」と一言で言っても、みなさんいろいろですからね。「私にとっての穏やかな状態」、「私が考える幸せ」を確認します。そうしたら仮に「“気持ちよく眠るように”が私にとっての“穏やか”だわ!」となったとしましょう。さて、それを実現するためにはどうしたらいいのでしょうか。ポイントは、そのときがポンと突然やってくるわけではなく、毎日の延長線上にあるということです。つまり、日々気持ちよく眠れていない人が、“気持ちよく眠るように逝く”ことはできないということです。それがわかったら、あとは簡単。今夜からさっそく“気持ちよく眠る”方法を実践してみましょう。やさしい香りのアロマを使ってみるのはいかがですか。静かな音楽を聞いてからお布団に入るのもいいかもしれませんね。逝き方は「生き方」です。「幸せ」に逝きたいなら、今日一日の中で「幸せ」をしっかり感じること。「潔く」逝きたいなら、今日一日を「潔く」過ごしてください。思い立ったが吉日ですよ。さっそくはじめてみてはいかがですか。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2019年12月27日【連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう~医療と宗教の間のケア~』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】ステージIIの大腸がんと診断されました。見通しが悪い話も医師から聞いていますが、まだ実感がわきません。でも、今後のことを考えると不安で仕方がないんです(75歳・無職)【回答】医師から暗い見通しのお話をされたとのこと。あなたの心中に思いを馳せますと、おかけする言葉につまります。まだ実感がわかない。そうなのでしょうね。これまでにも、たくさんの方にお会いさせていただきましたが、みなさん、「自分のことを言われている気がしない」「伝えられた現実と自分の実感がちぐはぐ」とおっしゃっておいででした。その“ちぐはぐ”な状態が、感じていらっしゃる「不安」の根っこなのではないかという気がします。突然降ってきた「暗い話」をわかり、認め、現実と実感をすり合わせて折り合いをつけるには、とても長い時間が必要なのだと思います。ある方は、「不安」の中身を細かく分析していらっしゃいました。そして「肉体がなくなった後も自分は存在するのだけど、誰にも気づいてもらえない」ことが一番怖いのだということに行きつきました。なので、そうなったときでもお互いに気づくことができるように合図の取り決めをして対策をたてたそうです。漠然とした「不安」を紐解くと、かたちがわかり、対策が立てられる場合があります。最後に、あなたのすこし先を歩く先輩から、あなたへのメッセージをいただいたのでお伝えさせてください。「日ごとにできることが少なくなっていくと感じ、さぞ不安だと思います。これからどうなるのかもわからないし、自分も一時はすべての希望をなくしました。でも、こんな状態でも“感謝することはできる”と気づいたんです。医者、看護師、家族…とにかく周りみんなに毎日感謝する。そうしたら、すこし楽になりましたよ」。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ-ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2019年12月20日【新連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】もうすぐ85歳になる母。いつも「もう死にたいのに、なかなかお迎えがこない」と言っています。かわいそうだとは思いますが、毎度のことにイラつく自分もいて、よけいに落ち込みます(62歳・主婦)【回答】「もう死にたいのにお迎えがこない」。これほど言われて返答に困る言葉はないのではないでしょうか。それをいつも聞かされていらっしゃるとは、大変ですね。この言葉は、お母さまの心の奥底にある小さな「箱」の中から湧き出てきています。その箱は、普段はフタが閉じているのですが、“命の限り”を意識したようなときに開きます。開いた箱の中から出てくる言葉には、答えがありません。答えがないから、聞かされた方は困ります。そして、その言葉は、聞かされた人の心の奥底にある箱のフタを開けてしまう力も持っています。だから、つらくなったり、悲しくなったり、怒ったり、イライラしたりするのです。これをスピリチュアルペインといいます。魂の痛み、とでもいいましょうか。もともと答えなどないのですから、「もう死にたいのにお迎えがこない」という言葉は、肯定も否定もせず、ただただ真面目に慈愛をもって聞き流しましょう。言いたいお母さまを「そんなこと言わないで」と止めようとしなくていいし、聞いたあなたもなにか答えようとしなくていいのです。そして、イラついたり、時に悲しくなったりと感情が動いてしまう自分をただただ認めましょう。感情が動くことに良いも悪いもありません。ただ、「あ、私イラついているな」と気づくだけでいいのです。落ち込む必要なんてまったくありませんよ。誰だってあなたと同じ気持ちになります。大切なのは、あなたがお母さまのまわりにいつづけること。そのためには、まず、あなた自身を優しくいたわってあげてくださいね。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2019年12月13日【新連載】玉置妙憂の心に寄りそう人生相談TBS『グッとラック!』のレギュラーコメンテーターをはじめ、数々のメディアにも紹介され大反響を呼んでいる新書『死にゆく人の心に寄りそう〜医療と宗教の間のケア〜』(光文社)の著者・玉置妙憂さんが毎週、読者の悩みに寄りそい、言葉を贈ります。【今回の相談内容】私の母は、医師から余命数カ月と言われていますが、ウチの子どもたちはまったく無関心。あんなに可愛がってくれていたおばあちゃんなのに……。私の育て方が間違っていたのでしょうか(45歳・会社員)【回答】お母さまは毎日毎日がとても大事で貴重な時期に入られたのですね。娘としてのあなたのお気持ち、お察しいたします。そのなかで、子どもさんたちが「無関心」。それは心穏やかではありませんね。あなたが、子どもさんたちが「無関心」だと思うのはどんなご様子からなのでしょう。おばあちゃんのそばに行くこともなく、お友達と遊びに行ってしまう?あなたが胸の内を聞いてもらおうと話しかけても聞いてくれない?おばあちゃんの時間が残り少ないことを悲しんでいる様子が伝わってこない?でも、あなたが見ていないところで、おばあちゃんと孫のやりとりがあるかもしれません。「無関心」だと子どもさんたちのご様子に「不満」をもっているのは、「お母さま」ではなく「自分」なんだということにまず気づきましょう。あなたの知りえない「おばあちゃん」と「孫」のあいだの交流がきっとあるはずですよ。それはあなたの望むかたちではないかもしれない。ただそれだけです。そしてもうひとつ。「教育10年」という言葉があります。今なにかを教えても人はすぐには納得しない。「ああ、そういうことだったのか」と腹に落ちるまでには10年かかるという意味です。とすると、あなたの育て方が間違っていたのではなく、今まさに、育てているのではないでしょうか。あなたが、お母さまとの最期の時間をどのように過ごされるのか、その一挙手一投足を子どもさんたちは見ていないようでちゃんと見ています。そして、そこから、さまざまなことを学んでいるはずです。ただ、それが彼らの腹に落ちるのは10年後。大丈夫。あなたの背中を見ていれば「おばあちゃん、いい人生だった。母さん、よくやっていたな」と、きっと心優しい立派な大人に育っていかれると思います。【プロフィール】玉置妙憂(たまおきみょうゆう)看護師・看護教員・ケアマネ−ジャー・僧侶。「一般社団法人大慈学苑」代表。著書『死にゆく人の心に寄りそう』(光文社新書)は8万部突破のベストセラー。NHK『クローズアップ現代+』、『あさイチ』に出演して大きな話題に。現在、TBS『グッとラック!』火曜のコメンテーターを務める。
2019年12月06日