阿部寛主演、塚本高史、吉田羊、稲森いずみ、深川麻衣らの共演による「まだ結婚できない男」の第7話が11月19日オンエア。有希江が店長を務めるカフェの危機に救うため桑野が取った行動に「良い人すぎ」などの声が続々と集まっている。2006年放送の前作から13年、53歳になるも引き続き独身で偏屈、独善的、皮肉屋の桑野信介を阿部さんが、桑野のアシスタントから今では共同経営者となった村上英治に塚本さんが演じ、桑野の母・育代役の草笛光子、妹の中川圭子役の三浦理恵子、義弟の中川良雄役の尾美としのりらが前作から続投。桑野がネット中傷を相談したのがきっかけで知り合った弁護士の吉山まどかに吉田さん、桑野らが行きつけのカフェの雇われ店長・岡野有希江に稲森さん、桑野の隣人となる女優の戸波早紀に深川さんといった面々が今シーズンから参加する。※以下ネタバレを含む表現があります。ご注意ください。桜子(咲妃みゆ)が店舗デザインの仕事を持ってくる。人が住む家を作ることがポリシーだと最初は断っていた桑野だったが、映子(阿南敦子)の圧や依頼主の大島(岡部たかし)からの提案を聞き、意欲満々で仕事に乗り出す。一方、有希江は、店の譲渡契約の直前になって店を退去するよう命じられ、困っていた。まどかと裁判で戦おうとした矢先、跡地に作られる新店舗の内装を桑野が担当していることがわかる。同じころ桑野も有希江の店がこのままではなくなってしまうことに気付く。この事をも有希江に伝えようとするが機会を逃してしまう桑野だが、大島からギャラのキックバックを求められ調べてみると、大島はキックバックされた金を私的に流用している疑惑が上がって…というのが今回のおはなし。大島を呼び出し「BROWN CLOVER」が自分の行きつけの店だと明かす桑野。大島が「あんなカフェ」と言うと、すぐさま「あんなカフェが僕には大事なんですよ」と真剣な顔つきで仕事を断り、さらには社長に内部告発。有希江の危機を救った桑野に「今週は神回だった」「桑野さんめっちゃくちゃ良い人すぎ」などの声が上がる。また問題を解決したのが自分だということをまどかや有希江に隠すその姿にも「桑野さんが活躍してたのにまわりのみんなは知らない。桑野さんもそれを言わない。そこが、カッコいい。」「いい話だったな 凄くほっこりした」などといった感想も続々と寄せられている。(笠緒)
2019年11月19日モデルでタレントの木村有希(ゆきぽよ)が7日、都内で初エッセイ『ゆきぽよ流 愛される秘訣 死ぬとき「カワイイ人生」だったっていえる生き方じゃない と意味がない』(発売中 1,200円税抜 KADOKAWA刊)の会見を行った。Amazonプライムの恋愛バラエティー番組『バチェラー・ジャパン』に出演して一躍注目を集め、今やメディアでは見ない日がないほどの快進撃を見せている木村有希。そんな彼女が初めてのエッセイ本を発売。JOB論、LOVE論、FAV論、COMMS論、GAL論と5つの章に分けた本書では、彼女の考え方やマインドを解説。さらにはファッションやメイク、バッグの中身なども公開している。この日発売となったエッセイ本について木村は「有希ってずっと昔からギャルをやっていますが、ストリートなギャルがガッツリした書籍を出すとは思っていなかったので、お話をいただいた時や今日出せたというのも夢なんじゃないかというくらいビックリしています。すごくうれしいですし、大人になった気分ですね」と笑顔。初めて書き記したエッセイについては「タイトルも全部そうですが、語彙力が足りないし、どうまとめてどう伝えたら良いのか分からなかったので難しかったですね。一人では無理だったので、周りの方に手伝ってもらいながらルノアール(喫茶店)で書きました」と明かしつつ、「自分らしさを詰め込んでいて、有希ってこんな風に見えるんだと思ったし、全部事実ばかり。少しも盛ったところがないです。世に出してない写真もありますよ。ギャルへの偏見が少しでもなくなったらいいなと思います」とアピールした。本の内容にちなんだ「人生の中で必要なことは?」という質問に、「eggのモデルをやっていた時、先輩から礼儀や人間関係を教えてもらい、ためになりました。腹パンされたり痛い思いもしてきましたが、全部本当に役に立っています」と回答。「eggの編集部でご飯を食べていた時に、憧れの先輩にコンビニに行こうと誘われてエレベーターに乗ったんです。そしたら中で『テメエ調子に乗ってんじゃねえよ』と腹パンされました。ギャルの世界はこんな感じですよ」と赤裸々に告白。仕返しはしなかったそうで、「受けただけでヤラれ損(笑)。結局腹パンしてきた先輩はモデルも辞めてこの世界からいなくなってしまいました。有希の勝ちだし何とも思っていません」と意に介してない様子だった。
2019年11月07日ワコール(WACOAL)が展開する「ウンナナクール(une nana cool)」から、イラストレーター徳田有希とのコラボレーションアイテムが登場。2017年3月24日(金)より、全国のウンナナクール直営店にて販売される。ネットで話題となったオリジナルキャラ「ひとがたくん」をはじめ、どこかシュールでキュートな女の子や生き物をパステルカラーで描き出す徳田有希。今回登場するアイテムも、甘くキュートでありながら、少し独特で不思議な世界観を放つイラストが用いられている。登場するのは、ノンワイヤーブラジャーや、ショーツ、ハラマキ、パジャマなど。アイテムには、クラゲや魚など海の中の生き物を淡いピンクやブルーで描いたイラストや、雲がぷかぷかと浮かぶ青空のイラストをプリント。柔らかく不思議なオーラを放つ女の子を演出してくれる。また注目は、アンバサダーに就任した「でんぱ組.inc」の最上もがだ。パジャマを着た最上もがが徳田のイラストの世界に迷い込むというストーリーのアイテムのPR映像も公開された。奇妙で可愛い映像がアイテムのイメージにマッチしているので、是非チェックしてみて。【詳細】ウンナナクール×徳田有希 コラボアイテム発売日:2017年3月24日(金)販売店舗:全国のウンナナクール直営店、ワコールウェブストア、ZOZOTOWN■アイテム例ノンワイヤーブラジャー (JB3630) 3,000円+税ショーツ (JF1630) 1,200円+税ハラマキ (JF4371) 1,400円+税パジャマ (JP6176) 5,200円+税【問い合わせ先】株式会社ワコールお客様センターTEL:0120-307-056(平日9:30~17:00)
2017年03月27日2016年、タロットを重要なモチーフとしたファンタジー漫画『サングリアル~王への羅針盤~』が誕生!9月12日にその第2巻が発売されるということで、帯のコピーを手がけた鏡リュウジさんが、作者の寺山マルさん、監修協力をしている占い師の田波有希さんと初対面しました。漫画の舞台は中世ヨーロッパ。王族の姫君と、貧民街で暮らす謎めいたタロット占い師の出会いから始まる魅惑のストーリーに興奮を隠せない様子の鏡さんが、寺山さん、田波さん、そして担当編集者の瀬尾さんに様々な質問を投げかけます。作品づくりの舞台裏はもちろん、タロットの豆知識や歴史的背景、さらには占いとの上手な付き合い方にまつわるお話まで飛び出して…。最終回である今回、鏡先生、寺山さん、田波さん、それぞれのお気に入りのタロットの絵柄が判明します。理由を聞いて納得。なんとなく“らしさ”が出ているのも興味深いところです。他には、寺山さんのデビュー秘話や田波さんが経営する古書店のお話も。もちろん鏡先生ならではの、タロットにまつわる豆知識もたくさん教えていただきました。鏡リュウジ…心理占星術研究の第一人者、圧倒的な支持を受ける存在で、大学で教鞭をとるなど、アカデミックな世界での占星術の紹介にも積極的。寺山マル…2014年、新人コミック大賞で入選、デビュー。漫画を読むのとガムが好物。田波有希…プロとしての鑑定歴16年、1万人超の鑑定数を誇るタロットリーディングを中心とした占い師。最初は「死神」のカードはなかった?編集部:ここまで、いろいろなお話をしていただきましたが、座談会をしてみていかがでしたか?田波有希(以下/田波):鏡先生のお言葉に、ものすごくパワーをいただきました。寺山マル(以下/寺山):私もです。ありがとうございます!改めてタロットって面白いなと思いました。鏡リュウジ(以下/鏡):同感です。タロットは面白い!一同:(笑)田波:特に歴史は本当に興味深いです。私も本はたくさん読んできたけど、どの説がフィクションでどの説がノンフィクションか、というのは知らない部分も多かったので、鏡先生のお話を伺えてよかったです。鏡:これからまた新説が出て、変わっていくかもしれないですけどね。タロットは誤読の歴史なので。ジェブラン(※1)のタロットエジプト起源説以降、いろいろな人が誤読を積み重ねてきました。実は、タロットに関するきちんとした研究が始まったのは1980年代以降なんです。田波:歴史の長さを考えると、80年代以降って、つい最近って感じがしますね。ところで「ヴィスコンティ版」(※2)のタロットが、もともとは観賞用だったって本当ですか?鏡:観賞用だったという説があります。確かに「ヴィスコンティ・スフォルザ版」は遊ぶにはだいぶ大きいし、現存するカードの上部にはピンで留めたような穴が残っていますから。ただ、ルネサンス期にはカードで遊ぶ女性の姿を描いた絵もあるので、遊戯にも用いられていたデッキがあったのも事実でしょう。田波:そうなんですね。そういえば、消失してる部分は縁起が悪いカードだから、もともとなかったのかも?という説もありますよね。鏡:「死神」のカードはあるのに「悪魔」と「塔」の2枚がないんですよね。もとからないのか、後で焼失したのか、そこは謎に包まれています。田波:その2枚がないっていうのが意味深ですね。編集部:絶対に引きたくないからと、取り除いてしまったのでしょうか?鏡:そこは二通りの説があるんです。最初はあったのにたまたまなくなったり、貴族が破いたりしたのか。もしくは初めはなくて、後に「悪魔」や「塔」がプラスオンされたんじゃないか、という二つの考え方ですね。縁起が悪いからなくしたという説もあるけど、「死神」はあるからなんとも言えなくて。田波:確かに。2枚はもともとなかったとも考えられますね。鏡:ええ。さっきもちらっと言ったけど、タロットは必ずしも22枚と決まっているわけではなくて、ヴィスコンティと同時代の「キャリー・イェール版」のカードはもっと枚数が多いし、もう少し後に出た「ミンキアーテ」というカードなんかは97枚もあります。つまり、もとからなかったとしても不思議ではないんです。田波:なるほど。3人が好きなタロットカードは?瀬尾亞佑(以下/瀬尾):ところで、鏡先生は大アルカナの中ではどのカードが一番お好きですか?鏡:そうですね。ベタですけど、「フール(愚者)」や「マジシャン(魔術師)」かな。でも、みなさん好きだから「フール」ってあんまり言いたくないんです(笑)。田波:好きな人多いんですか?私は好きと言う方にお会いしたの、鏡先生が初めてです。瀬尾:私も。鏡:えっ!本当に?田波:前に説話社さん(※3)がタロットの意味を「〇△×」で表すランキングを作ったのですが、それを見たら「愚者」に「△」がついていました。それでスタッフさんに「何で△なの?」って聞いたら、「愚者」は何者でもない存在だから良くも悪くもないし、好き嫌いもあまりないって言ってたんです。鏡:そうなんですね!田波:鏡先生は、深い知識をお持ちだからこそ好きと言えるような気がします。鏡:そうなのかなぁ。でも、男性は「フール」が好きな人、結構いるイメージがあります。田波:確かに男女の違いはありそうですね。「フール」は自由な感じがしますし。鏡:崖から飛び出してて危なっかしいから…。女性はもっとロマンチックなカードが好きなのかもしれませんね。何がお好きですか?瀬尾:私は「太陽」が好きです。田波:私は「審判」。編集部:きれいに分かれましたね。鏡:女性には「フール」は人気ないのか…。ベタすぎてみなさんと同じになっちゃうかと思ってました。田波:ベタではないですね(笑)。鏡:でも、ビートルズに「The Fool on the Hill」って曲があるし、海外で、いろんな人が描いた「フール」のカードを集めた画集も出てるんですよ。瀬尾:そんなに人気があるとは…。田波:今日の今日まで知りませんでした。鏡:そうか、わかった!タロットが世界的に本当にブームになったのが70年代なんですね。当時はヒッピー・ジェネレーション。ヒッピーと「フール」って相性がいいから人気が出たのかもしれません。田波:新しい時代を作りたい若者にとっての象徴になったんですね?鏡:そう。既存の社会にはハマんねーよ!と思ってるような人たちにウケたんだと思います。瀬尾:今のお話、すごく腑に落ちました。寺山先生はどのカードがお好きですか?寺山:「隠者」ですね。鏡:それは珍しい。でも、なんとなくお好きなのわかる気がします。田波:先生が描いたタロットの中でも、「隠者」のカードは素敵ですよね。寺山:ありがとうございます。「隠者」ってなんだか落ち着くんです。鏡:そういえばレッド・ツェッペリンの「天国への階段」というアルバムがあるのですが、開くと「隠者」が出てきますよ。一同:へぇー!編集部:タロットっていろいろな所で使われてるんですね。鏡:そうなんですよ。占いの専門家はトンデモ本がお好き?鏡:「審判」がお好きなのは何でですか?「審判」の解釈って人によってずいぶん違うので気になります。田波:「タロットストーリー」の中で、「審判」について“最後の最後まで残ってしまった人も救いましょう”というようなことが書かれていたんですね。そこがすごく好きなんです。鏡:どなたの「タロットストーリー」を読まれたんですか?田波:私が読んだのは東条真人さんの『タロット大事典』です。あと、子どもの頃に読んだ弦エニシさんの『タロットスター』が、最初のタロットの記憶として残っています。鏡:タロットの入門書や教本って、その人独自の世界観の表れですよね。言ってみれば、それぞれがその人の「タロットストーリー」。田波:『タロット大事典』はすごくイマジネーションが膨らむ本だなと思いました。井上敦子さんの『タロット象徴事典』も面白かったですね。もちろん鏡先生の本も拝読しています。タロットじゃないけど『アニマの香り』なんか大好きです。鏡:ありがとうございます。マニアックですね。田波:本の虫というかオタクなので。鏡:田波さんが経営する本屋さんに置かれている本も、占い関係のものがメインなんですか?田波:いえ、どちらかというとトンデモ本が多いですね。鏡:トンデモ本?どんなのを扱っているんですか?田波:そうですね。例えば、戦後の安い紙でできている、恋を叶えるおまじないの本だとか、不思議な絵が描かれた奇門遁甲(※4)の本だとか。民俗学やオカルトの本も結構あります。鏡:へぇー、行ってみたいな。僕も年季の入ったトンデモ本好きです。田波:いいですよね。ちなみに、うちは古本屋なんですけど、占いの本だけは新刊があります。もちろん鏡先生の本も置いてますよ。鏡:ありがとうございます。寺山先生、漫画家デビュー秘話編集部:聞きそびれていたのですが、寺山先生と瀬尾さんはいつ頃から一緒にお仕事をされてるんですか?瀬尾:ええと、最初はクリスマスイブに作品を持ち込まれたんですよね。寺山:そうそう。鏡:それはロマンチックな!(笑)瀬尾:私たちは「クリスマスですね」「そうですね」って感じで、全然ロマンチックさはなかったですけどね(笑)。持ち込みを受け、魅力的な作品だなと思って、弊社の新人賞に出していただいたら受賞して。読み切り漫画を2本くらい掲載し、その後すぐに連載が始まりました。連載まで、かなり早かったですね。鏡:すごい。「ROAD OF THE KING」だ。(※5)ジェブランの幻想的なタロットエジプト起源説では、Taortという言葉が「王の道」の意味であると解釈されていましたが(もちろん、これは間違い)、そんなスピード展開を聞くと、まさに「王の道」を地でいかれているという感じもしますね。瀬尾:そうなんです!田波:寺山先生は本当に才能豊かなんですけど、ものすごくピュアな方で、心がずっと子どものように清らかだなっていつも感じています。寺山:え?そんな、そんな…。鏡:漫画家さんってそういう方多いですよね。瀬尾:そうですね。だからこそ面白いものが描けるんだと思います。鏡:これからが楽しみですね。『サングリアル』も、寺山さんご自身も。寺山:ありがとうございます。精進します。一同:今日はありがとうございました。【編集部註】※1アントワーヌ・クール・ド・ジェブラン。1781年に『原始世界』を刊行し、「タロット=トートの書」説を発表。※2ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロット。15世紀後半にミラノ公によって作られた、様々な博物館、図書館、世界中の個人コレクションに散らばる約15デッキのタロットの総称。※3占い専門の老舗出版社。※4古代中国で生まれた方位術。周の軍師・太公望や三国時代に活躍した諸葛亮孔明が戦に用いたと言われる。※5『サングリアル』の表紙に「ROAD OF THE KING」と書かれている。陰謀と闘え。運命を選べ。弱い自分を打ち破れ。禁断の王宮ブラッディー・ファンタジー、誕生。『サングリアル~王への羅針盤~ 1』 (ビッグコミックス)9月12日 第2巻発売!『サングリアル~王への羅針盤~ 2』 (ビッグコミックス)鏡リュウジ1968年、京都生まれ。国際基督教大学大学院修了。占星術研究家・翻訳家。京都文教大学客員教授。平安女学院大学客員教授。日本トランスパーソナル学会理事。英国占星術協会会員。著書に『鏡リュウジ 星のワークブック』(講談社)、『オルフェウスの卵』(文春文庫)、共著 角田光代『12星座の恋物語』(新潮文庫)、訳書にヒルマン『魂のコード』(河出書房新社)、サバス『魔法の杖』(ヴィレッジブックス)ほか多数。寺山マル2014年、新人コミック大賞で入選、デビュー。「月刊!スピリッツ」で『あいのあいだに(前後編)』掲載後、本作が初連載作品となる。漫画を読むのとガムが好物。田波有希多摩美術大学卒業。同大学染織デザイン研究室助手を経て、美術作家として活躍しながら占い師に。プロとしての鑑定歴16年、鑑定人数10000人以上。東京、雑司が谷にて古本と占い「JUNGLE BOOKS」を拠点に活動。下北沢「FUTURE DAYS」などでも鑑定を行う。「サングリアル~王への羅針盤」「神軍のカデット」監修中。
2016年11月07日2016年、タロットを重要なモチーフとしたファンタジー漫画『サングリアル~王への羅針盤~』が誕生!9月12日にその第2巻が発売されるということで、帯のコピーを手がけた鏡リュウジさんが、作者の寺山マルさん、監修協力をしている占い師の田波有希さんと初対面しました。漫画の舞台は中世ヨーロッパ。王族の姫君と、貧民街で暮らす謎めいたタロット占い師の出会いから始まる魅惑のストーリーに興奮を隠せない様子の鏡さんが、寺山さん、田波さん、そして担当編集者の瀬尾さんに様々な質問を投げかけます。作品づくりの舞台裏はもちろん、タロットの豆知識や歴史的背景、さらには占いとの上手な付き合い方にまつわるお話まで飛び出して…。前回まではタロットの歴史や背景にまつわるお話を伺ってきましたが、今回は漫画家・寺山マルさんの過去・現在・未来にスポットを当てていきます。『サングリアル』のマル秘エピソードや気になる今後の展開についても、ちょっぴり聞けるかも?鏡リュウジ…心理占星術研究の第一人者、圧倒的な支持を受ける存在で、大学で教鞭をとるなど、アカデミックな世界での占星術の紹介にも積極的。寺山マル…2014年、新人コミック大賞で入選、デビュー。漫画を読むのとガムが好物。田波有希…プロとしての鑑定歴16年、1万人超の鑑定数を誇るタロットリーディングを中心とした占い師。次なる夢は舞台化、映像化?鏡リュウジ(以下/鏡):『サングリアル』は初の連載作品とのことですが、これまではどんな漫画を描かれてきたんですか?瀬尾亞佑(以下/瀬尾):前の作品とは全然、作風が違うんですよ。以前は現代の日常的な物語を読み切りで描いたりしていて。鏡:ずいぶん幅が広いんですね。寺山マル(以下/寺山):そう言っていただけるとうれしいです!鏡:『サングリアル』は歴史大河ロマンですよね?田波有希(以下/田波):歴史大河!私たちもそう言ってたんですよ。瀬尾:初めての連載なのに、こんな大変な作品を頑張って描いてくださって…。鏡:描き込みが細かいですよね。すごく時間がかかりそうだなと思いながら読んでいました。寺山:タロットが持つパワーに負けない世界観をつくりたいと思って、洋服ひとつ取っても、なるべく細部までこだわって描くようにしてます。編集部:てっきり、最初からそういう作風の方なのかと思っていました。瀬尾:今回の作品で大化けしたんです。鏡:絢爛豪華な世界ですよね。お嫌でなければ映像化してほしいです。個人的にはCG実写、希望です(笑)。田波:CG実写いいですね!舞台化も憧れます。鏡:確かに舞台もいいなぁ。宝塚でやってくれたら合いそうな気がします。瀬尾:実は作品づくりの過程で宝塚を観に行ったんですよ。2回くらい行きましたよね?寺山:はい。素敵でした。鏡:やっぱり観たんですね!宝塚っぽさがあるなと思いました。田波:寺山先生は、一度対面鑑定を受けただけでストーリーが浮かんでくるほど感受性が豊かだし、とにかく吸収力が高いので、舞台を観に行ったりすると、ものすごく反応してくれるんですよね。寺山:ありがとうございます。田波:本当に苦労して、3人とも作品に潜って潜ってつくってるので、舞台や映像になったら涙が出ちゃいそう。寺山先生なんて泣きながら絵を描いてるんですよ。それも、嫌だからではなく感動して泣いてるんです。いい話やーって(笑)。鏡:ご自身が納得できるまで力を出しきってるってことですね?寺山:そうなんだと思います。『サングリアル』は愛の物語!?編集部:これは伺っていいのかわからないのですが…。「ココロニプロロ」は恋愛がテーマのサイトなので、今後、主人公2人の間に恋愛の展開があるのか、差し支えない範囲で教えていただけないでしょうか。寺山:そうですね。あったらいいなと思います!瀬尾:恋愛、恋愛はしていない2人ですが、何者でもなかった男の子アンが王を目指し、その斜め後ろに女性であるキルケがいて背中を押して、一緒に王座へ登っていくというお話なので、何かしら愛の形は出せたらいいなと考えながらつくってますね。田波:まず、2人の出会いについて考えたとき、アンはバックグラウンドが何もわからないキルケをいきなりお城に連れて来るじゃないですか。そのときアンの中で恋のような気持ち…自分にとってのものすごいインパクトがなかったら連れては来ないだろうという感覚のもと、みんなでお話をつくってるんです。瀬尾:そうですね。そしてこの物語の発端は、実は愛の話なんです。寺山先生は2人の愛の話っていうところからイメージをつくりあげてるので、見え方としてはラブストーリーではないけど、根底には愛があります。鏡:思うに最初、アンにとってキルケはお母さん的な存在ですよね。これはユング心理学では「アニマ」と言うのですが、そこから彼女が性の対象としての女性に変容するってことは、アン自身が男の子として成長していくこと。つまり愛の形の変容そのものが、アンの成長ストーリーを物語ることになるのかなという気がします。寺山:わー!その解釈、すごくうれしいです!田波:うれしいですね。ところで話は戻りますが、タイトルにある「サングリアル」という言葉について、どこまで広げたらいいか悩んでいるんです。先ほど言ってた「聖杯」としての意味も持たせられたら面白いなと思うのですが。鏡:聖杯って、シンボリックに言うと「かけがえのない自分のアイデンティティ」の象徴だから、この作品自体がある意味、聖杯探しの物語ですよね。それから、王というのは自分自身の元型、基本的な存在の在り様そのものの象徴なんです。この作品の主人公は、実際に王を目指すわけですが、何者でもなかった若者が自分自身になっていくという意味では、あらゆる物語の雛形をたどってると言えますよね。そういう意味でも『サングリアル』って深いなー。寺山:本当ですか?瀬尾:私たち、本当に血を吐くようにしてつくってるので、そう言っていただけると最高にうれしいです!漫画、舞台…作品づくりはインプットが命編集部:『サングリアル』は今までとは作風が違うというお話でしたが、この漫画を描くにあたって影響を受けた作品はありますか?寺山:そうですね。いろんなところから影響を受けてると思うんですけど、きれいなものが好きなので、よく画集を見たりはしています。あと、小さい頃に星の神話の本を眺めるのが好きで、読めなくても絵だけ見て楽しんでいました。寺山:星座のハンカチなんかも好きで集めてましたね。そういうものが蓄積されてこの作品につながったんじゃないかと思います。宝塚も観ましたし。漫画だったら、ジョージ朝倉先生の作品をよく読んでいました。『ベルサイユのばら』や『キャンディ・キャンディ』のような女の子っぽい漫画も好きです。そういう、ありとあらゆるものから影響を受けてるんじゃないかなと思います。瀬尾:『エリザベート』を観たときは寺山先生、感動して「これだ!」って言ってましたよね。田波:その後、上がってきた絵がすごく良かったのを覚えてます。瀬尾:そしてミュージカルみたいな漫画を描きたいって。ババーンと音楽が聞こえてくるような、豪華絢爛な雰囲気の漫画を描きたいって言い始めたんですよね。寺山:『エリザベート』は本当に感動しました。ヒロインが王家を思って歌い、でも息子には反発されて…というシーンの二重唱が素晴らしくて。素敵!切ない!と感じました。「ママは僕の鏡だから」って曲かな?編集部:インプットが大事なんですね。漫画はもちろんですが、作品のイメージ的に、神話やミュージカルから影響を受けてらっしゃるのも、とても納得がいきました。第2巻の見どころをちょっとだけ…!編集部:『サングリアル』の第2巻は、第1巻とガラッと変わっていくのかなと想像しています。見どころやキーパーソンを教えていただけますか?瀬尾:簡単にお話すると、第1巻ではアンが「僕は王になるんだ」と覚悟を決めましたよね。でも、その時点ではまだ弱いし、口で言ってるだけなんです。そんなアンが実際、どうやって強くなっていくのか、どのように現実に立ち向かい、戦っていくのか、というのが第2巻で描かれています。キルケの謎もだんだん明らかになっていくので、そこも楽しみにしていただきたいですね。編集部:キルケにそんな裏があるとは思っていなかったので、ちょっとドキドキします。鏡:それにしても、これだけ細密な漫画を描き続けるのは大変ですよね?寺山:そうですね。でも、最近は1人でやってる感覚がないんです。正直なことを言うと、瀬尾さんも有希さん(田波さん)も本当にいい方なので、もう力になっていただけるものなら、どんどんそうしてもらおうと思ってたくさん協力を仰いでいます。その分、絵の部分では私は精いっぱい頑張ろうと思って、歌いながら描いてるような感じです(笑)。鏡:歌いながら描いてるんですか?ミュージカル的な世界観の作品だから合ってますね(笑)。寺山:はい。もし今、日常的な物語の漫画を1人で描いてたら、連載するのが逆にキツかったかもしれません。もちろん今も苦しいことはあるけど、楽しさの中に苦しさがある、という感じがします。編集部:産みの苦しみの中に楽しさがあるって素敵ですね。ところで、鏡先生は今回、帯のコピーを書かれたとのことですが、その際、何か意識されたことはありますか?鏡:帯を書かせていただく機会は結構多いのですが、短くキャッチ―にしなくちゃならないから難しいんですよね。僕、長く書く癖があるから申し訳なくて。本当は大きいフォントで「読んで!」「買って!」って書きたいんですけどね(笑)。一同:(笑)鏡:でも、そうもいかないし、タロットに携わる立場からすると、このタイトルを見ただけでも語りたいことがたくさん出てくるから、どうしても情報量が多くなるんですよね。『サングリアル』という作品自体が一つのタロットのストーリーになってるということも書きたいし、とにかく言いたいことがいっぱいあって、絞るのが本当に難しかったです。それで帯にありえないルビを振ってもらっちゃいました(笑)。編集部:難しい漢字が出てくるんですか?瀬尾:いえ、かっこよくルビを振っていただいたんです。それはぜひ書店でご覧ください!次回予告タロットを勉強したい方に朗報!占いの専門家による、おすすめの本をご紹介します。そして、鏡先生、寺山さん、田波さん、それぞれのお気に入りのタロットの絵柄も判明しちゃいます♪鏡リュウジ1968年、京都生まれ。国際基督教大学大学院修了。占星術研究家・翻訳家。京都文教大学客員教授。平安女学院大学客員教授。日本トランスパーソナル学会理事。英国占星術協会会員。著書に『鏡リュウジ 星のワークブック』(講談社)、『オルフェウスの卵』(文春文庫)、共著 角田光代『12星座の恋物語』(新潮文庫)、訳書にヒルマン『魂のコード』(河出書房新社)、サバス『魔法の杖』(ヴィレッジブックス)ほか多数。寺山マル2014年、新人コミック大賞で入選、デビュー。「月刊!スピリッツ」で『あいのあいだに(前後編)』掲載後、本作が初連載作品となる。漫画を読むのとガムが好物。田波有希多摩美術大学卒業。同大学染織デザイン研究室助手を経て、美術作家として活躍しながら占い師に。プロとしての鑑定歴16年、鑑定人数10000人以上。東京、雑司が谷にて古本と占い「JUNGLE BOOKS」を拠点に活動。下北沢「FUTURE DAYS」などでも鑑定を行う。「サングリアル~王への羅針盤」「神軍のカデット」監修中。
2016年10月12日2016年、タロットを重要なモチーフとしたファンタジー漫画『サングリアル~王への羅針盤~』が誕生!9月12日にその第2巻が発売されるということで、帯のコピーを手がけた鏡リュウジさんが、作者の寺山マルさん、監修協力をしている占い師の田波有希さんと初対面しました。漫画の舞台は中世ヨーロッパ。王族の姫君と、貧民街で暮らす謎めいたタロット占い師の出会いから始まる魅惑のストーリーに興奮を隠せない様子の鏡さんが、寺山さん、田波さん、そして担当編集者の瀬尾さんに様々な質問を投げかけます。作品づくりの舞台裏はもちろん、タロットの豆知識や歴史的背景、さらには占いとの上手な付き合い方にまつわるお話まで飛び出して…。前回に引き続き、タロットにまつわる、ちょっと深いお話をお届け。漫画の随所に登場する、美しいオリジナル・タロットカードについての秘話も伺いました!鏡リュウジ…心理占星術研究の第一人者、圧倒的な支持を受ける存在で、大学で教鞭をとるなど、アカデミックな世界での占星術の紹介にも積極的。寺山マル…2014年、新人コミック大賞で入選、デビュー。漫画を読むのとガムが好物。田波有希…プロとしての鑑定歴16年、1万人超の鑑定数を誇るタロットリーディングを中心とした占い師。「ウェイト版」の謎は小アルカナ編集部:「ウェイト版」以外のタロットについてはどう思われますか?田波有希(以下/田波):「トート・タロット」(※1)なんかも面白くて好きなんですけど、やっぱり私は「ウェイト版」派です。鏡リュウジ(以下/鏡):「ウェイト版」と「トート・タロット」だと、その誕生の仕方からして違うんですよね。「ウェイト版」は「ウェイト・スミス版」とも言って、最初の発表の場は「オカルト・レヴュー」というオカルト雑誌なんですよ。ウェイトがこれを商業誌で発表したことを、クロウリーは「ウェイトは商売に走った」と批難して、その後に自分でタロットを出したんです。田波:なるほど。そもそもの方向性が違うんですね?鏡:はい。ちなみに、ウェイト自身は「ウェイト版」のタロットがあまり気に入っていなかったようで、よりキリスト教神秘主義的なタロットものちに出しています。田波:知りませんでした。見てみたいです!鏡:一般的には「トリニック版」と言うのかな?カード化はされていないのですが、本にはなっています。占いに使うものではなく、どちらかというと瞑想用のものですね。田波:でも絵柄はタロットなんですか?鏡:ええ。ところで、「ウェイト・スミス版」の謎は、実は小アルカナなんですよ。「ウェイト・スミス版」は、全てのカードが絵札になっているじゃないですか。この絵札についてウェイトは、たぶんあんまり口出ししていないと思うんです。だから絵を描いたパメラ・コールマン・スミス(※2)の独自の世界観が相当入ってるんですね。ほとんど彼女任せだったと言ってもいいかもしれません。そして、パメラはこのカードに自分の故郷の風景を入れ込んだとか、友達が飼っていた猫を描いた、なんて説があります。田波:へぇー!寺山マル(以下/寺山):友達の猫?面白いですね!タロットの絵を描くのは難しい!編集部:今回、漫画に登場するタロットの絵柄は寺山先生のオリジナルですよね?寺山:はい。頑張って描いています。鏡:カード化して販売する予定はありますか?瀬尾亞佑(以下/瀬尾):したいですね。有希さん(田波さん)からダメ出しをいただいて、寺山先生、何回も何回も描き直してるんです。田波:すみません(笑)。ただ、カードの意味に関するダメ出しは、ほとんどしたことがないんですよ。それより、寺山先生ご自身の魅力をもっと全面に出してほしいと思っていろいろ言っています。モデルとして何かのカードを見ると、どうしてもそれに捉われて先生らしくなくなるから、「悪いけど、もう少しこういう感じにしてください」「もっと強く描いてください」って。瀬尾:そのダメ出しの仕方が面白いんです。「バーンってやって」とか、“世界”や“太陽”は「あっぱれって感じでお願いします」とか。田波:“死”は「もう、一目で“死”ってわかるようにしてください」って言いました(笑)。鏡:あはは。僕もこれまで、いろんな雑誌やメディアでタロットの監修をしてきたのですが、仰る通り、みなさん、絵を描くのが非常に難しいようです。タロットって少なくとも300~400年変わっていないので、構図としてある意味、完成度高いんですよね。つまり、下手をするとコピーになってしまうんです。田波:そうですよね。鏡:なかなかオリジナリティーを出しにくいと思います。逆にオリジナリティーを出しすぎると、今度はタロットじゃなくなるっていう、かなり微妙なところだなと。田波:今回、監修するにあたっていろいろなカードを見ていて、鏡先生のカードも改めて拝見したのですが、『ソウルフルタロット』(※3)は、カードの象徴をはっきり出して別の絵にしているという意味で、ものすごい成功例だと感じました。鏡:ありがとうございます。あの絵は独創的ですよね。それから『はじめてのタロット』(※4)の独創性もすごいと思います。さすが、世界の荒井良二さんって感じで。田波:はい。でも、そういったタロットを見て余計に考えてしまって。もし寺山先生に見せたら、今度はそっちに捉われちゃうかもしれないと思ったんです。なので、オリジナリティーを出せるようにできるだけ縛りは設けず、これだけは入れてほしいポイントをお伝えする、という形にしていきました。「月だけは入れて」「犬だけは必要」と。鏡:なるほど。寺山:最初に描いたものを見せたら、有希さんに「先生、悪いけどこれ、アールヌーヴォーです。近代っぽいから、もうちょっと昔っぽくしてください」と言われました(笑)。田波:今思うと失礼ですよね。ごめんなさい(笑)。寺山:いえ、本当に助かりました。ただ、確かにアドバイスはかなり抽象的ですよね。「あっぱれ」とか(笑)。そういうふうに言っていただいたら、じゃあ、どこまで「あっぱれ」にしようかなと考えて、ベースの絵からずらしていく感じで描いています。田波:怖いカードは「楳図かずお先生の作品くらい怖く」なんてことも言いましたね。寺山:ふふふ。編集部:そういうお話を聞いていると、さらにカード化を期待してしまいます。寺山:ありがとうございます。もし実現したら、また描き直したくなるかもしれません。鏡:小アルカナを56枚描くと思うと大変ですね。寺山:確かに…頑張ります!占いは、占い師と受ける側の共同作業編集部:『サングリアル』を読んでいる中で、“占いが救ってくれるのではなく、決断するのは自分自身だ”というメッセージがとても印象的でした。みなさんは基本スタンスとして、普段からそういう考えをお持ちなんですか?田波:それは、最初に占いを受ける側として瀬尾さんが話していたことにつながるかな?瀬尾:そうですね。先ほど言ったように私、占いが大好きなんです。それこそ中学生の頃からハマっていて、いろんな占いを受けてきました。あるとき、占い師さんに言われた通りの行動をしたら、大失敗したことがありまして。当時、付き合ってた彼氏に「そんなに放っとくなら浮気しちゃうぞ」と言いなさいって言われて、普段はそういうことを言うタイプじゃないのに、無理して言ってみたんです。そうしたら、それがきっかけでケンカして別れることになって…。鏡:えー!(笑)瀬尾:その出来事が自分の中で結構大きなスペースを占めてるんです。自分らしくない発言をしたことも、占い師さんを信じて失敗したことも嫌だし、その人が言ったことをやったから失敗したと責任転嫁するのも嫌だし。結局、どんな占いを受けても、言われるがままに行動するんじゃなくて、アドバイスの内容をしっかり考えて昇華し、その後どうするか選ぶのは自分自身なんだ、という学びを得たんですね。それは受ける側のスタンスとしてかなり大事なことだと思っています。鏡:占い師と鑑定される人の共同作業ですよね?瀬尾:そう思います。ただ受けるだけじゃなく、自分で考えるのが大事っていうのは、寺山先生にお話しした覚えがあります。寺山:そうですね。熱く語ってました(笑)。鏡:普通はそこでもう二度と占いしないって思うんですけど、何で今でも好きなんですか?瀬尾:ただただ好きなんですよね。だから、そのときは自分が悪かったんだなって反省しました。鏡:偉いですね。偉いと言うか不思議!(笑)。田波:私は占いをする側のスタンスとして、若い頃は「占いがはずれたら死ぬ」くらいの気持ちでいたんです。それって精神的にはすごくしんどいんですね。他人の人生に関わって、まずいことを言ったら、その人の身に何か起こるんじゃないかと思うのがつらくて。田波:でも、お客さんって意外とライトな人も多いんです。あるとき、不動産についての相談をしたお客さんに「この物件はやめたほうがいいですよ」と言ったのに、しばらくしてまた来て「先生にダメって言われたけど、あの物件買っちゃった。やっぱり失敗だったんですけど、どうしよう?」と言われまして。それを聞いて「そうか。個人の責任なんだ」と気が楽になりました。占い師とお客さんがそういう状態でいられるのって気持ちいいなって。瀬尾:人生の中で占いを友好的に使うというか、占いに振り回されるわけでも洗脳されるわけでもなく、お互いがいい関係であるっていうことを、漫画の中で表現したいなって想いはすごくあります。世の中には「占いなんて信じてるの?」と言う人もいますが、私は占いが好きだし、このメンバーで漫画を作っている以上は「そうじゃないんだよ」ということを伝えたいですね。その想いが作品に出てるといいなと思っています。編集部:それは絵にも出ているし、「決めるのはお前だ」というセリフからも感じられます。寺山:うれしいです!田波:主人公の成長ストーリーというベースがあるので、言われるがままに行動しているようでは、彼も成長できないですしね。占いは飽くまで背中を押す存在であり、頑張るのは彼自身なんです。鏡:そうですよね。占いは日常生活の中の一つのエッセンスですから。田波:私、鏡先生や石井ゆかりさんの占いが大好きで、ときどき見るのですが、ヘコんでるときに見ると「よし!」と元気が出るんです。占いにはやっぱり、心の栄養剤というか、自分を奮い立たせたり、慰めたりしてくれるものであってほしいなと思います。鏡:確かに。読者のみなさんにもそういう使い方をしていただけたらありがたいですね。【編集部註】※1イギリスのオカルティスト、アレイスター・クロウリーがデザインしたタロット。※2イギリス出身の画家・作家。「ウェイト・スミス版」のタロットカードのデザインをしたことで有名。※3鏡先生の著書。正逆を問わない斬新な解釈と、優しく繊細な色使いの絵柄が人気。※4同じく鏡先生の著書。荒井良二氏による美しく独創的な絵柄と、誰にでも読み解ける易しい解説が特徴。
2016年09月28日2016年、タロットを重要なモチーフとしたファンタジー漫画『サングリアル~王への羅針盤~』が誕生!9月12日にその第2巻が発売されるということで、帯のコピーを手がけた鏡リュウジさんが、作者の寺山マルさん、監修協力をしている占い師の田波有希さんと初対面しました。漫画の舞台は中世ヨーロッパ。王族の姫君と、貧民街で暮らす謎めいたタロット占い師の出会いから始まる魅惑のストーリーに興奮を隠せない様子の鏡さんが、寺山さん、田波さん、そして担当編集者の瀬尾さんに様々な質問を投げかけます。作品づくりの舞台裏はもちろん、タロットの豆知識や歴史的背景、さらには占いとの上手な付き合い方にまつわるお話まで飛び出して…。今回はタロットの歴史やカードの意味にまつわるエピソードなど、占い好きにはたまらない話題がテンコ盛り。トランプについてのちょっとびっくりなお話も飛び出します。鏡リュウジ…心理占星術研究の第一人者、圧倒的な支持を受ける存在で、大学で教鞭をとるなど、アカデミックな世界での占星術の紹介にも積極的。寺山マル…2014年、新人コミック対象『フタゴのコ』で入選、デビュー。漫画を読むのとガムが好物。田波有希…プロとしての鑑定歴16年、1万人超の鑑定数を誇るタロットリーディングを中心とした占い師。☆漫画家の寺山マルさんからスペシャルプレゼントもあるので、ぜひ最後まで読んでくださいね!『サングリアル』というタイトルが生まれたワケ鏡リュウジ(以下/鏡):もしかしたらネタバレになるかもしれないから聞いていいのかわからないのですが、タイトルの「サングリアル」という言葉は相当、重要なキーワードなんですか?僕からすると、これは実はかなり衝撃的なタイトルなので、うわ~っと興奮しちゃいまして。寺山マル(以下/寺山):そうですね。あまり詳しくはお話できないのですが、「サングリアル」…つまり「王家の血筋」というのは、今後の展開の中で大きな位置を占めていきます。「血」がキーワードですね。瀬尾亞佑(以下/瀬尾):タイトルをつけるときは、かなり悩みました。寺山先生と田波さんと私、3人がそれぞれ何十個も案を持ち寄って。田波有希(以下/田波):1人50案は出しましたよね?瀬尾:その中で、寺山先生が出した「サングリアル」は、ダブルミーニングもあってかっこいい!ということで、こちらに決まりました。鏡:なるほど。「サングリアル」は「血」「王家の血」の意味ですが、「サングラール」というと「聖杯」のことですよね。だから聖杯伝承と関わっているのかな?と。それからマニアックな話をすると、イギリスに「サングラール・ソサエティ」というタロットを作っている秘密結社があったりもします。そして、何と言っても「ウェイト版」のタロットを作ったウェイト(※1)が、「聖杯伝承はタロットのルーツだ」と言ってるんですね。そういうことも背景にあるのかな?と思いました。田波:そのあたりのことが簡単に書かれた本があったので、寺山先生にお渡ししました。先生はそれを読んでからストーリーを作ってくださったんです。寺山:はい、いろいろと参考にさせていただきました。謎の占い師キルケの人物づくり編集部:こちらの作品では、主人公のアンを導く占い師のキルケが重要な存在として描かれていますよね。キルケを女性にしたのはなぜですか?彼女の人物づくりについて、きっかけなどあれば教えてください。寺山:アンは王子だけど最初は女の子として登場し、王座を目指すことになっても、やっぱりどこか女の子っぽいところがあります。そんなアンの傍にいて背中を押してあげる、斜め後ろの微妙な存在は強い女性であってほしいなと。そんな私の憧れを込めて描きました。編集部:キルケという名前の由来は?寺山:ギリシャ神話の女神の名前です。鏡:ホメロスの『オデュッセイア』にもキルケという魔女が登場しますね。(漫画を)読んでいて、キルケは裏の主人公という印象を受けました。アンと表裏になっているような。寺山:そうです、そうです。編集部:ちなみに、『サングリアル』はどんな方に読んでほしいと思いますか?瀬尾:この漫画を連載している「月刊!スピリッツ」は男性読者さんが多い雑誌ではありますが、女性の読者さんも結構多いんです。占いを題材としていますし、ロマンチックな内容なので、20代・30代ぐらいの女性に読んでいただきたいという想いはありますね。占いに興味がある方はもちろん、ない方にも「占いっていいな」と思ってもらえたらうれしいです。アンと同じように悩んでいる人が、一歩前に進むために背中を押せたらと考えて作っています。タロットは占いのツールではなかった?編集部:キルケは主人公のアドバイザー的な存在として描かれていますね。歴史において占い師が権力者に寄り添い、アドバイスをするというケースはたくさんあったと聞きますが、実際、タロットはいつ頃からどのような使われ方をしてきたのでしょうか?田波:現存する最古のタロットカードは15世紀頃のものと言われていますよね?鏡:そうですね。ただ、もともとタロットは、占いではなくゲームや観賞用のものとして使われていました。15世紀頃から占いに使われていたという説もあったのですが、それは後世の人が勘違いして流布した、誤った情報のようです。今は、占いのツールとして使われ始めたのは18世紀以降と考えられています。だからカードそのものには歴史があるけれど、占いのツールとしては比較的新しい存在です。一方、占星術師は古くから政治と深く関わっていました。鏡:18世紀、フランス革命の頃にカードが占いに使われるようになり、その時期に「ルノルマン・カード」(※2)で知られるルノルマンという女性が、王家の人々やナポレオンの奥さんなどを占ったという話が残っています。とはいえ、具体的にどれくらい政治との関わりがあったかは不明です。恐らく、当時の貴族の大半は占星術を支持していたのではないかと思います。編集部:最初は占いのツールではなくゲーム用のものだったんですね?田波:「マルセイユ版」は、ずっとトランプ的な扱いをされているみたいです。鏡:そう。今でもカードゲームとして使われていて、イギリスの田舎に行くと、おじいちゃんが将棋を指すような感じで遊んでいるんですよ。一同:へぇ~。鏡:ゲームと占いって構造としては似ていますから、占いのツールに発展していったのは当然と言えば当然かもしれません。ちなみにタロットには大アルカナと小アルカナがありますが、もともとは小アルカナと呼ばれるトランプのような数札(かずふだ)が先に存在したんですよ。寺山:え?小アルカナが先にあったんですか?鏡:はい。イスラム起源の4つのスートのカードなんです。それが今のトランプに進化していく流れの中で、イタリアで20数枚の絵札(※3)が加えられ、タロットが発明されました。そして15世紀頃に今と同じようなタロットが登場したのですが、その時に絵札として選ばれたのは、当時ルネッサンスで大流行していた、抽象概念を絵にした、誰が見てもわかる花札みたいな絵柄でした。なお、ルネッサンス期には、それこそディズニーランドのパレードみたいに、タロットの「恋人」のモチーフなんかを山車に乗せて行進したりしていたそうです。一同:ほぉ~。トランプはゲームの名前ではなかった!鏡:当時、タロットという言葉はまだなくて、「トライアンフ」や「トリオンフィ」と呼ばれていました。勝利を表す言葉ですね。これが今のトランプの語源で、「切り札」「勝ち札」といった意味があります。鏡:トランプは英語では「プレイング・カード」と呼ばれ、「トランプ」と言って通じるのは日本だけです。要するに江戸時代、ポルトガル人が「UNO」のように「トランプ、トランプ」と言っていたのを聞いた日本人が、「なるほど、これはトランプと言うのか」と勘違いしたわけです。寺山:面白いですね!鏡:あと、ルネッサンス期にフランチェスコ・ペトラルカという詩人がいたのですが、彼は「トリオンフィ」という詩を書いています。その詩には、最初に「愛」が登場するのですが、「愛」は「死」に負けちゃうんです。でも「死」は「名声」に負ける。瀬尾:「死」は「名声」に負けるんですか?鏡:「死」の後に「名声」が残るじゃないですか。一同:あー!鏡:「名声」の後には「時」が出てきます。「名声」も「時」には負けてしまう。そのように順番に勝っていくんですよ、というシリーズがあるんです。寺山:すごい哲学的ですね!鏡:そこに出てくるモチーフが、ほぼタロットと共通しているんです。タロットには「隠者」のカードがありますが、昔あのカードには「時間」という意味があったんです。田波:なるほど。謎に包まれるタロットの真実鏡:トランプの語源はわかるけど、「タロット」の意味は、実は未だにわかっていないんです。謎の言葉だったので、昔、ジェブラン(※4)という人物が古代エジプト語だと誤解し、その説が広まりました。田波:私もそれ、何かの本で読みました。鏡:ジェブランは1781年にその説を発表し、この年はタロットの歴史の決定的な転換点となりました。当時パリでは古代エジプト文明が大流行していたため、何でもエジプトに結びつけて考える風潮があったんです。鏡:そのときに生まれたタロット・エジプト起源説がいろいろな人のインスピレーションをかき立て、そこから占いに使われるようになったり、魔術に使われるようになったりしました。実際のところ、当時は古代エジプト語が解読されていなかったので、ある意味、好き勝手言える部分があったんですよね(笑)。田波:あはは。確かに。その時代の話は調べていくと本当に面白いなと思います。ウェイトが所属していた「黄金の暁団(黄金の夜明け団)」にまつわることなんかも興味深くて。私は歴史が好きでいろいろな本を読んできたのですが、その中で占いに関係あることはもちろん、それ以外も参考になりそうなものがあったら、寺山先生にお渡ししているんです。編集部:なるほど。では、寺山先生も結構、歴史的な背景について学ばれているんですか?寺山:そうですね。いただいた資料を一生懸命読んでいます。鏡:「黄金の暁団」、つまり「ゴールデン・ドーン」の話が出たので補足説明しますね。ウェイトというのは、先ほど言っていた「ウェイト版タロット」をつくった人物ですが、彼は独自の思想を持つ学者だったし、ヘブライ語やラテン語の翻訳も得意だったそうです。田波:それはすごい!鏡:だからアカデミックな分野で尊敬され、結社とは関係のない人たちにも一目置かれていました。あと、「ゴールデン・ドーン」にはノーベル賞を獲ったイェイツ(※5)もいましたね。田波:私は占いの学校などで学んだわけではなく、独学で占い師になったので、どのカードが優れているか、というのを教えてもらったことはないんですね。でも、いろいろ使ってみたところ、「ウェイト版」はすごく完成度が高いなと感じました。田波:一つ一つの絵柄にきちんと意味が収まっているのに、デザイン力も高くて、解説も一本筋が通った感じがするし、本当に良くできたカードだなと思います。鏡:僕も「ウェイト版」、好きです。スミスさんという人が絵を描いたから「ウェイト・スミス版」とも言いますね。ところでみなさん、あまりマニアックなタロットの話になっても難しいんじゃないかと思うのですが、大丈夫ですか?瀬尾:いえ、とても面白いです。寺山:もっと聞きたいです!【編集部註】※1アーサー・エドワード・ウェイト。数秘術・魔術などの文筆家。「ウェイト版タロット」の制作者として著名。※2ルノルマンの名を冠したオラクル・カード。※3「20数枚の絵札」…現在、大アルカナは基本的に22枚と考えられているが、明確な決まりはなく20数枚とされている。※4アントワーヌ・クール・ド・ジェブラン。1781年に『原始世界』を刊行し、「タロット=トートの書」説を発表。※5ウィリアム・バトラー・イェイツ。アイルランドの詩人、劇作家で、イギリスの神秘主義秘密結社「黄金の夜明け団」のメンバー。次回予告というわけで、マニアックなタロットのお話がもう少し続きます。ぜひお付き合いください!漫画に登場するオリジナル・タロットにまつわる秘話もお届けする予定です。陰謀と闘え。運命を選べ。弱い自分を打ち破れ。禁断の王宮ブラッディー・ファンタジー、誕生。『サングリアル~王への羅針盤~ 1』 (ビッグコミックス)9月12日 第2巻発売!『サングリアル~王への羅針盤~ 2』 (ビッグコミックス)鏡リュウジ1968年、京都生まれ。国際基督教大学大学院修了。占星術研究家・翻訳家。京都文教大学客員教授。平安女学院大学客員教授。日本トランスパーソナル学会理事。英国占星術協会会員。著書に『鏡リュウジ 星のワークブック』(講談社)、『オルフェウスの卵』(文春文庫)、共著 角田光代『12星座の恋物語』(新潮文庫)、訳書にヒルマン『魂のコード』(河出書房新社)、サバス『魔法の杖』(ヴィレッジブックス)ほか多数。寺山マル2014年、新人コミック大賞』で入選、デビュー。「月刊!スピリッツ」で『あいのあいだに(前後編)』掲載後、本作が初連載作品となる。漫画を読むのとガムが好物。★Twitter@terayamamaru田波有希多摩美術大学卒業。同大学染織デザイン研究室助手を経て、美術作家として活躍しながら占い師に。プロとしての鑑定歴16年、鑑定人数10000人以上。東京、雑司が谷にて古本と占い「JUNGLE BOOKS」を拠点に活動。下北沢「FUTURE DAYS」などでも鑑定を行う。「サングリアル~王への羅針盤」「神軍のカデット」監修中。
2016年09月20日2016年、タロットを重要なモチーフとしたファンタジー漫画『サングリアル~王への羅針盤~』が誕生!9月12日にその第2巻が発売されるということで、帯のコピーを手がけた鏡リュウジさんが、作者の寺山マルさん、監修協力をしている占い師の田波有希さんと初対面しました。漫画の舞台は中世ヨーロッパ。王族の姫君と、貧民街で暮らす謎めいたタロット占い師の出会いから始まる魅惑のストーリーに興奮を隠せない様子の鏡さんが、寺山さん、田波さん、そして担当編集者の瀬尾さんに様々な質問を投げかけます。作品づくりの舞台裏はもちろん、タロットの豆知識や歴史的背景、さらには占いとの上手な付き合い方にまつわるお話まで飛び出して…。鏡リュウジ…心理占星術研究の第一人者、圧倒的な支持を受ける存在で、大学で教鞭をとるなど、アカデミックな世界での占星術の紹介にも積極的。寺山マル…2014年、新人コミック対象『フタゴのコ』で入選、デビュー。漫画を読むのとガムが好物。田波有希…プロとしての鑑定歴16年、1万人超の鑑定数を誇るタロットリーディングを中心とした占い師。三者がこの場に集ったきっかけは?編集部:まずはみなさんの出会いについて教えてください。鏡リュウジ(以下/鏡):こちらの『サングリアル~王への羅針盤~』の第二巻が出るにあたって、ありがたいことに編集の瀬尾さんから帯のご依頼をいただきました。失礼ながら漫画の存在を知らなかったのですが、拝見して「ああ、こんな本が出ていたんだ」と感動しまして。それで作者の寺山さんにぜひお会いしたいと思っている中、ココロニプロロの方に話したら、「その対面の様子を記事にしましょう」と言ってくださったんです。寺山マル(以下/寺山):ありがとうございます。鏡:僕のほうはそんなところなのですが、寺山さんと田波さん、お二人の出会いはどんな感じだったのでしょうか?現役の占い師の方が漫画の監修をするって珍しいんじゃないかなと。田波有希(以下/田波):そうですね。初めてです。鏡:そのあたりの経緯をお聞かせいただけますか?寺山:もともと編集の瀬尾さんが占い好きで、企画の話をしているときに「今度占いをしてもらえるお店に行ってみませんか?」と誘ってくれたのが始まりです。雑誌でどこがいいかな?って探して有希さんのお店を見つけました。いわゆる占いのお店ではなく、占いの本を扱ってる本屋さんなのですが、面白そうなので、そこに行ってみようということになり有希さんと会いました。鏡:それ以前は占いの経験は特になかったんですか?寺山:はい。そのときに占っていただいたのが初めてです。実際に鑑定を受けてみてものすごくびっくりしました。悩みを相談したのではなく、全体的に私という人間のことを観ていただいたのですが、初対面なのに「こういうことを考えるところがある」「こんなクセがある」と言い当てられて。鏡:なるほど。ちなみにその時点では、まだタロットを用いた作品になるかどうかは決まっていなかったんですね?瀬尾亞佑(以下/瀬尾):そうですね。いくら私が占い好きでも、作家である寺山さんがピンと来なければ作品は生まれないので、まずは体験してもらおうと思ってお連れしたんです。そうしたら寺山さん、有希さんの鑑定を受けた後に二人で行ったカフェで「すごいです!何でわかるんですかね?」と感動されていて。そこからもうインスピレーションが湧いて、「お姫さまと占い師のお話だったらどうかな?」とか『サングリアル』の基本のキぐらいのお話をしていました。鏡:相当、タロットのインパクトが大きかったんですね?寺山:ええ。変な言い方かもしれませんが、一言も話してないことや、自分でもよくわかっていなかった部分を初対面の方に言い当てられてびっくりして。そのときタロットの話もいろいろ伺ったんですけど、ファンタジーの世界が常にそこにある、みたいな感じがしたんです。鏡:なるほど。わかります。占いが好きな方って現実的な方もいるけど、ファンタジー映画に出てくるような世界観が好きで入り込む方もいますし。そして、占いが当たるって確かにファンタジーですよね。現実の世界では普通、パッと引いた紙に自分のことが書いてあるなんていうのはあり得ないわけですから。そういう魔法が映画や小説の中ではなく、目の前で展開されてることに驚かれたんですね?寺山:本当に感動しました。設定を決めれば、後はこのまま描いてもいいんだなっていう驚きです。漫画『サングリアル』が生まれたきっかけ編集部:先ほど、お姫さまと占い師というお話が出ましたが、作品をつくるにあたって、その設定から物語を膨らませていったんですか?寺山:最初、どんな漫画にしようかと話していたときに、瀬尾さんから「ラブコメはどうですか?」「ファンタジーはどうですか?」といろいろな提案をいただいていたんですね。それが、有希さんのお店で占いをしていただいたときに、あ、タロットがあれば、これまでに出てきた要素を全部入れられる。逆にそういう世界がつくれちゃうんだろうなっていう不思議な感覚になりました。もともと漫画そのものがファンタジーみたいなものですが、占いを通せば、もっとファンタジーにしても違和感なく表現できるんだなと思ったら、自信を持っていろいろ膨らませられるようになったんです。鏡:なるほどね。実はタロットってわりとよく漫画のアイテムに使われているのですが、素人目にストーリーをつくることを考えると、占いはすごく扱いが難しいと思うんです。例えば推理ものの場合、占いで答えが全部わかったら話がそこで終わっちゃう(笑)。今回の作品は、先のことが全部が見えているわけではないけれど、伏線としてヒントのようなものが出てくるその描き方が、非常に絶妙なすれすれのラインというか。それがすごいなと感じました。田波:鏡さんの仰る通り、全てわかってしまったら話として全く面白くないですよね。これまでタロットが出てくる漫画はたくさんあったけど、だいたいは何かの象徴としての登場でした。タロットってビジュアルはいいのに、漫画にすると意外と地味になっちゃうんですよね。でも寺山先生は、占いシーンを心象風景として、イマジネーションを絵のカタチにする力がすごくある方なんです。月とカードをリンクさせるとか、そういう画的イメージというのは先生の力そのものなんですよ。鏡:なるほど。今言われてハッとしたのですが、確かに占いのシーンって絵にならないですよね。昔、ドキュメンタリー番組に出演させてもらったことがあるのですが、占いって動きがないから動画で見ても面白くないんですよ。料理人やスポーツ選手はアクションがあるから絵になるんですけど。結局、テレビの占いのシーンってタレントさんの「すごーい、当たってる」というリアクションでしか見せることができないんです。でも田波さんが仰るように、この漫画には占い師側の観ている心象風景が絵として表現されているっていう面白さがあります。田波:最初のインスピレーションでしっかり骨子をつくり、ネームを切ってきてくださったのですが、そのストーリーがある中で、あれだけ占いのイメージを表現できるって、寺山先生はものすごい才能の持ち主だなと思って。寺山:いえいえいえ…。鏡:これが魔術だったら、いろいろなものが飛び出してくることもあるかもしれないけど、占いの場合は、外目には、占い師の頭の中で何が起こってるかわからないですからね。それとこの漫画は、我々のイメージする通りのタロットの世界…中世ヨーロッパ的な架空の世界になっているわけですが、この舞台はどうやって選ばれたんですか?例えば学園コメディでも良かったかもしれないですよね?瀬尾:寺山先生、最初から中世ヨーロッパか明治時代の日本を舞台にして描きたいって仰ってたんです。それを聞いて和風なものも合うだろうけど、ロマンチックな絵を描かれるから、ヨーロッパのほうが合うんじゃないかな?なんて話をした記憶があります。鏡:ある種、正攻法ですね。今どき珍しい王道。田波:そうなんです。王道の設定で、王道ストーリー。鏡:直球だから、今の若い方には逆に新鮮かもしれませんね。田波:確かに。それにしても、占い師って本当に地味な仕事なんですね。毎日コツコツ占いを続けている中、瀬尾さんが、「寺山先生がタロットからインスピレーションを得た」と仰って、つくったネームを持ってきてくださったんです。それを読んだら、こんなに美しい見方をしてくれるんだと思って涙が止まりませんでした。『サングリアル』は一つのタロット?鏡:ところで、この作品が主人公アンの成長物語になっているというのが、20世紀・21世紀のタロットの考え方と基本的に共通しているなと思いました。それも何か意識しているんですか?寺山:どうでしょう?有希さんはよくタロットは成長物語って仰ってますよね?田波:そうなんです。物語をつくる前にタロットストーリーも説明したんですね。22枚の大アルカナって人間の成長物語じゃないですか。そのお話を先生が受け取り、こちらにバックしてる感じで、先生としては無意識かもしれないけど、全部がリンクしてるんです。鏡:タロットストーリーね。通常、大アルカナと呼ばれている22枚のカードが人間の成長物語を表すという解釈は1960年代末ぐらいからされるようになりました。最初の「愚者のカード」はまだ何もない若者を表していて、その何者でもない存在が「世界」という最終ステージに向かって成長していく。そういった心理学的な解釈をするようになったんですね。そんなタロットの世界観が、そのまま展開されているというのはとても納得できますね。これからどういうふうに物語が進んでいくのか楽しみです。もはや『サングリアル』って物語自体が、一個のタロットと言っても過言ではないかもしれません。寺山:ありがとうございます!鏡:読んだ方が「スケールは違うけど、まるで自分のことを描いてるような話だ」って。寺山:そう思っていただけたらうれしいです。鏡:この物語の設定のモデルはどこかにあったんですか?それから、中世ヨーロッパを舞台にした理由は?寺山:昔、王子さまが女装する風習があったというのは、ハプスブルグ家の肖像画を観て知ったんです。何で王子さまがドレスを着てるんだろうと思ったら、昔は世継ぎの男の子が早く亡くなってしまうことが多かったから、周りの人が悪魔の目をそらすために女の子の格好をさせたと書いてあって。そういうところから、アンはこういう育てられ方をしていたかもしれない、と思ったらドキドキしてしまいました。鏡:読んでいるこっちもドキドキしましたよ。えっ男子?って。実際、そういうストーリーのプロットがあったうえでカードを当てはめていったんですか?それとも、ここでこのカードを使いたいから、こういうストーリーにしようと考えていったんですか?田波:どちらもありますね。1巻の5話に関しては、先生が「力」のカードにインスピレーションを受けて、最初からそのカードでやりたいって仰ったんですけど、最初のほうはストーリーありきで、そこにどのカードを入れたら適切かと考えて、私が選んだりもしていました。瀬尾:最近はカードありきでつくってますね。今回は「悪魔」にしましょう。このカードをシンボルにして、どんなお話にしましょうか?っていうふうに。鏡:そうなんですね。出るカードは毎回、重複しないようにしてるんですか?田波:一応、メインのカードは重複しないようにしています。鏡:では、22話は確実につくれますね?その後は小アルカナも?田波:そうなったら最高ですね。寺山:はい。タロットは物語づくりにも役立つ?鏡:もし今後ストーリーにつまったら、パッとカードを引いてイメージを広げることもできるかもしれませんね。大塚英志さん(小説家、漫画原作者)は、タロットはストーリーテリングのインスピレーションのツールとして使えるって仰ってるんですよ。寺山:へー、すごい!タロットってそういうふうにも使えるんですね。確かに、登場人物のキャラを考えるときとかに、この人はこんな感じの人かな?と悩んでタロットの本をパラパラ見たりすると、思わぬカードがそのキャラに当てはまったりしてすごく面白いなと思います。鏡:それもいいですね。ところで寺山さん、ご自身でも占いができるようになってきたんじゃないですか?寺山:悩んだときにタロットを一枚引きすることはあります。意味はよくわからないけど、本を見ながら今の私に当てはまるのはこの部分かなと思って、そういうのを心の支えにしたりしています。鏡:では、既に占いを始めてるんですね!次回予告『サングリアル』というタイトルの誕生秘話をお届け!9月12日 第2巻発売!『サングリアル~王への羅針盤~ 1』 (ビッグコミックス)陰謀と闘え。運命を選べ。弱い自分を打ち破れ。禁断の王宮ブラッディー・ファンタジー、誕生。鏡リュウジ1968年、京都生まれ。国際基督教大学大学院修了。占星術研究家・翻訳家。京都文教大学客員教授。平安女学院大学客員教授。日本トランスパーソナル学会理事。英国占星術協会会員。著書に『鏡リュウジ 星のワークブック』(講談社)、『オルフェウスの卵』(文春文庫)、共著 角田光代『12星座の恋物語』(新潮文庫)、訳書にヒルマン『魂のコード』(河出書房新社)、サバス『魔法の杖』(ヴィレッジブックス)ほか多数。寺山マル2014年、新人コミック大賞』で入選、デビュー。「月刊!スピリッツ」で『あいのあいだに(前後編)』掲載後、本作が初連載作品となる。漫画を読むのとガムが好物。★Twitter@terayamamaru田波有希多摩美術大学卒業。同大学染織デザイン研究室助手を経て、美術作家として活躍しながら占い師に。プロとしての鑑定歴16年、鑑定人数10000人以上。東京、雑司が谷にて古本と占い「JUNGLE BOOKS」を拠点に活動。下北沢「FUTURE DAYS」などでも鑑定を行う。「サングリアル~王への羅針盤」「神軍のカデット」監修中。
2016年09月12日2015年4月より放送開始となったTVアニメ『長門有希ちゃんの消失』から、ユニークなキーホルダーと【きゃらいど】シリーズのラバーストラップがグルーヴガレージよりリリースされる。まずは、オープニングの1コマをモチーフにデザインされたハルヒ、長門、みくるの3人がゆらゆらと揺れるアクリル製の連装ストラップ「ハルヒ&長門&みくるのフレフレキーホルダー」。アニメ中の印象的なシーンを切り取り商品化しているグルーヴガレージだが、さらに使用時の動きもプラスされ、より楽しめるグッズへと進化させているのがポイントだ。価格は1,200円(税別)。また、キャラクターが何かの上に乗っているというコンセプトでデザインされた【きゃらいど】シリーズからは、長門on急須/キョンon湯のみ/ハルヒon古泉/朝倉on土鍋/鶴屋さんonみくるの5種類が登場。価格は各800円(税別)。なお、2商品のデフォルメキャラクターデザインはぜろ氏が担当。発売はいずれも2015年9月の予定だが、すでにアニメショップ、ネット通販サイトにて予約受付が開始している。(C)2015 谷川流・いとうのいぢ・ぷよ/KADOKAWA角川書店/北高文芸部
2015年07月14日