「うちのクロチャンが当選するなんて、最初は信じられませんでした。でも、本当にうれしいです」沖縄県那覇市在住のピアノ講師・砂川楠汀子さんは、こう感慨深げに語る。砂川さんの愛猫・クロチャン(オス・推定5歳)が見事、当選を果たしたのは、架空の猫都市「ニャハ市」の、記念すべき初代市長を決める選挙。9月16日に告知され、那覇市の猫7匹が立候補した。投票は観光客にも人気の牧志公設市場など市内10カ所で、同月24日から10月6日まで実施され、翌7日に開票された。有効得票数1,386票のうち、 “マにゃフェスト”を「クロチャンミクスの実現……ニャハ市の経済を発展させ、ぼくたち猫の幸せを実現させるニャ!」としたクロチャンは316票を獲得し、次点のぶん太郎候補(オス・推定8歳)に90票の大差で圧勝した。折しも、この秋の沖縄県は9月30日投開票の知事選を皮切りに、豊見城市長選、那覇市長選と首長選挙が続いた。そんな熱い選挙シーズンに、これまたホットなニャハ市長選を主催したのが「島猫力向上委員会」。その委員長で動物愛護団体「TSUNAGU OKINAWA」の代表・畑井モト子さんは、ニャハ市長選の目的を熱く、こう語る。「目的は猫の地位向上。日ごろ関心の薄い人にも猫の魅力に気づいてほしい。結果、野良猫が1匹でも減れば、また、まだ少なくない県内の殺処分がゼロになればと思い、選挙を実施しました」図書館の1日猫館長を務めたこともあるにゃんにゃん丸、みそ大好きな飼い猫のフジ、サロンの看板猫・おもち、デザイン事務所の看板猫・ぶん太郎、市場の猫店長・梅にゃん……今回、立候補したみんなも、かつては野良で、保護された経験がある猫たちだ。なかには、この選挙で新しい飼い主さんを探したグルー(仮名)なんて猫も。もちろんクロチャンも、元は立派な野良だった。「3年ぐらい前です。教室でピアノを弾いてると、決まって窓の外にやってくる黒い野良猫がいて」いまではクロチャンにメロメロの砂川さんだが、当時は猫が苦手だったそうだ。ところが、何度追い払ってもピアノを聴きにくるクロチャンが、いつしかかわいく思えてきて……。「『シッシ、あっちいけ!』って何回やっても、私の前に来てかわいい声で『ニャ~ン』って鳴くんです。そのうち、しばらく姿が見えないと、『あれ?クロチャン来ないね』と心配になったり(苦笑)。その後、うちの猫になって、いまではもう、片時も離れられない」それどころか砂川さん、クロチャンを家に迎え入れて以降、さらに4匹の猫を保護し、大切に育てている。今回の選挙、クロチャンのキャットフレーズ、もといキャッチフレーズは「面倒見の良さは負けません!」だったが。「本当なんです。黒ちゃんの朝は、まず後輩猫たちの全員の毛づくろいから始まるんです。また、新入りの猫が来たときには、自分が大切にしているネズミのオモチャをくわえていって、ポンとその子の前に置いたこともありました」どうしてどうして、かわいらしい顔からは想像もつかない、親分肌の初代ニャハ市長。面倒見のよさで圧倒的支持を得たようだ。
2018年11月15日「目的は猫の地位向上。日ごろ関心の薄い人にも猫の魅力に気づいてほしい。結果、野良猫が1匹でも減れば、また、まだ少なくない県内の殺処分がゼロになればと思い、選挙を実施しました」そうニャハ市長選の目的を語るのは、ニャハ市長選を主催した「島猫力向上委員会」の委員長で、動物愛護団体「TSUNAGU OKINAWA」の代表・畑井モト子さん。架空の猫都市「ニャハ市」の、記念すべき初代市長を決める選挙は9月16日に告知され、那覇市の猫7匹が立候補した。投票は観光客にも人気の牧志公設市場など市内10カ所で、同月24日から10月6日まで実施され、翌7日に開票された。有効得票数1,386票。うちクロチャン(オス・推定5歳)は316票を獲得し、次点のぶん太郎候補(オス・推定8歳)に90票の大差で圧勝した。「うちのクロチャンが当選するなんて、最初は信じられませんでした。でも、本当にうれしいです」沖縄県那覇市在住のピアノ講師でクロチャンの飼い主・砂川楠汀子さんは、こう感慨深げに語る。折しも、この秋の沖縄県は9月30日投開票の知事選を皮切りに、豊見城市長選、那覇市長選と首長選挙が続いた。そんな熱い選挙シーズンに、このニャハ市長選挙を主催した畑井さんは「最初は軽い気持ちで、猫好きの仲間と何かイベントができれば」ぐらいの気持ちだったんだそう。ところが、いざ始めてみると、SNSで情報が広まり、地元テレビ局や新聞もこぞってネタにするなど、想定外の盛り上がりを見せた。「もう、うれしい悲鳴なんですけど。取材対応とか、めっちゃ忙しかったんです」(畑井さん)揚げ句の果てには、なんと、先日の選挙で再選を果たした城間幹子“リアル”那覇市長が、ニャハ市長・クロチャンを表敬訪問するまでに。そこで、本誌も調子に乗って、猫好きで知られる玉城デニー・沖縄県知事に、クロチャンへメッセージをお願いすると……。「命を大切にする政治を、沖縄県とニャハ市、ともに手を携えてやっていきましょう」(玉城知事)これまでずっと基地問題などで大変な沖縄だけど、何やらクロチャン市長を中心に、妙にホンワカしたムードだ。「そう、猫には社会を癒す力があるんです。そこをわかっていただけただけでも、ニャハ市長選挙、やってよかったと思います」(畑井さん)
2018年11月15日