12月6日に新たにオープンした「PORTER CLASSIC 銀座」。 内装は“旅する帆船”をテーマに映画美術監督の種田陽平と東宝映像美術が手掛けています。今回のリニューアルでは新しい店舗の在り方を試行錯誤しブランドの世界観を創るパートナーに映画美術の専門家集団を招き入れ、「旅する帆船」をテーマに映画のセットのような店舗を実現しました。店舗面積は約100平方メートル。広さを生かし、大きなマストを持つ船の甲板が設置されています。その演出は天井の空や窓からのぞく光景が朝から夕闇まで徐々に変化するという仕掛けにまで至っており、細部まで拘り抜かれた空間は訪れるお客様をポータークラシックの世界へと誘います。同社会長の吉田克幸が収集したヴィンテージ小物が並ぶ「KATSU’S ROOM」、お針子たちの手仕事を間近で見られる「OHARIKO MAFIA SPACE」、ブランドに関する映像作品を観られる「PC CINEMA LOUNGE」を用意。会計をするレジ周りは船内のバーカウンターを模すなど、船内を回遊するように店にいることを楽しんでもらえるようにデザインされています。同店ではジュエリーやヴィンテージウォッチ、限定のコレクションなど、銀座店でしか購入できない商品の数々を取りそろえています。「KATSU’S ROOM」「PC CINEMA LOUNGE」「MAIN DECK」「OHARIKO MAFIA SPACE」「CHECKOUT COUNTER」リニューアルオープン後初となるイベント「SASHIKO LOVE GINZA 2022」を開催「モノを大切にする心」から生まれた「刺し子」*。これを現代から次の世代へ伝えるため糸・織・染・裁ち・縫いのすべての過程において試行錯誤し製品にしています。そんな「刺し子」に敬意を表し銀座限定の一点モノのアイテムやイベント期間中は店頭でアイテムを購入すると希望の言葉やイニシャルが刺しゅうできるお針子によるカスタムサービスを実施する他、当日はお針子(職人)も在中し様々なイベントを予定。*刺し子とは人々が厳しい環境の中で少しでも快適に過ごそうという暮らしの知恵から生まれた刺繍技法の1つ【GINZA EXCLUSIVE】PC KENDO CHINESE JACKET HANDWORK VIP CUSTOM -OLD BLUE税込 60万5,000円開催日時12月24日(土)~12月28日(水) 12:00~20:00PORTER CLASSIC 銀座104-0061 東京都中央区銀座5-1 GINZA FIVE 2FTEL:03-3571-0099HP:
2022年12月25日染色加工業大手セイショク株式会社は、布のアップサイクルプロジェクトNUNOUS[ニューノス]と、2名のデザイナー(橋田 規子、大木 陽平)とのコラボレーションアイテムをインテリアライフスタイル2022(期間:2022年6月1日~6月3日、於:東京ビッグサイト西ホール E002)にて発表。デザイナーのアイディアの詰まったアイテム群「Morph into a cat & kitties」「Life with a bird」「Basket」「Book cover」「necklace」「pierced earring」「Bangle」を2022年8月5日(金)より順次、NUNOUSオンラインショップにて発売いたしました。活用されていない布をアップサイクルNUNOUS(R)[ニューノス]は、活用されていない布を、アップサイクルするプロジェクト。綿、麻、毛、ポリエステルなど様々な繊維が混ざった布に、サトウキビの非可食成分から抽出したバイオポリマーを含侵させる独自の特許製法(※)で、布素材の美しさを引き出しました。柔らかな表面ながら堅牢な「STONE」。丈夫でしなやかな「SKIN」。布らしい質感と、布にはない特性を合わせもつ素材です。社会問題ともなっている、大量に発生する繊維廃材を「美しく見える化」。持続可能な社会に向けて、建築、木工、ファッション、印刷等の様々な分野に、新しい価値を提供します。■コラボレーションデザイナープロフィール<橋田 規子>芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 プロダクトデザイン領域 教授 博士(工学)プロダクトデザイナー/NORIKO HASHIDA DESIGN 主宰/グッドデザイン賞審査委員iF DESIGN AWARD、Red Dot Design Award等、受賞歴多数。<大木 陽平>デザインオフィスnendoを経て、idとして活動した後、2019年にsideを設立。様々なカテゴリーのデザインを手がける。The Design Plus Award、Red Dot Design Award等、受賞歴多数。 (画像はプレスリリースより)【参考】※公式サイト
2022年08月03日日本が誇るアクション監督・谷垣健治がスタッフに名を連ねる、トニー・レオン主演『モンスター・ハント 王の末裔』より新場面写真が公開された。トニー・レオンを主演に迎え、ジン・ボーラン、バイ・バイホーら人気俳優が参加し、アイドルグループ「X-NINE」がカメオ出演している本作。アクション監督は、『るろうに剣心』シリーズや『スーパーティーチャー 熱血格闘』の谷垣健治が担当し、本作で2018金馬獎最優秀アクション賞にノミネートされた。また、『キル・ビル』『三度目の殺人』に参加した種田陽平が美術監督として圧倒的な世界観を創り出し、『アクアマン』などを手掛けるBase FXが視覚&特殊効果を担当と、豪華スタッフが集結した。今回到着したのは、なぜか甲冑姿に口髭を付けたり、トラの着ぐるみ姿の四谷(トニー・レオン)、お怒りモードのフーバの姿などが収められている場面写真。変装やその場をやり過ごすのはお手の物な四谷。金貸し屋の女主人・朱(クリス・リー)までをも手玉に取り、フーバの保護者のような気のいい妖怪ベンベンとの3人の笑いとアクションたっぷりの珍道中、絆にも注目。さらに、フーバの産みの親で妖怪ハンターの天蔭(ジン・ボーラン)と小嵐(バイ・バイホー)は、生き別れたフーバに心を残す中、夫婦水入らずの時間で「ある光景」を目にしてしまう。また、天師堂の上級ハンター雲(トニー・ヤン)の場面写真も到着した。ほかにも、本作の入場者特典も発表。四谷、天蔭、小嵐、X-NINEのキャラクターポストカードが、初日から3日間、ランダム配布。いずれも、裏面はフーバが描かれている。『モンスター・ハント 王の末裔』は11月6日(金)より新宿シネマカリテにて公開。(cinemacafe.net)■関連作品:モンスター・ハント 王の末裔 2020年11月6日より新宿シネマカリテにて公開
2020年10月29日続いてご紹介するのは、スタジオジブリ制作、米林宏昌監督による『思い出のマーニー』です。2014年公開の作品ですから、多くのペルル読者にとっては、大人になってから劇場公開されたジブリ映画だと思います。 舞台は北海道の田舎にある海辺の町。主人公・佐々木杏奈は、少し内気な12歳の女の子。ぜんそくの持病を持つ彼女はおとなしい性格で、学校ではクラスメイトたちから孤立しています。養母の頼子は、感情を表に出さない杏奈のことを、「あの子…いつもふつうの顔なんです」と心配し、その原因が血のつながらない親子関係にあるのではないかと悩んでいました。夏休みの間、この海辺の町にある親戚の家に、療養をかねて滞在することになった杏奈。そこで彼女は、不思議な少女・マーニーと出会うのですが…。 『思い出のマーニー』(米林宏昌監督/2014年公開)© 2014 Studio Ghibli・NDHDMTK ★印象的な名セリフ「私は私がキライ」「あんたはあんたのとおりに見えてるんだから」本作の特徴のひとつは、主人公の女の子・杏奈が、おとなしくて少し影のあるキャラクターだということ。どちらかというと、明るくて活発なヒロインが多い印象のジブリ映画のなかでは、異色です。学校では同年代の女子に上手くなじめず、家庭では養母との関係に悩む彼女。冒頭で「私は私がキライ」と語る杏奈のモノローグは、触れるものすべてを傷つけてしまいそうな、思春期の繊細な心情を表しています。そして、もうひとつのセリフ「あんたはあんたのとおりに見えてるんだから」は、杏奈が言い合いになった女子から投げ掛けられるキツイひと言。思春期の自意識過剰さから、自分を肯定できない少女の葛藤が、痛いほど伝わってくるセリフです。 夢と現実が入り混じるファンタジックなストーリー展開北海道の田舎にやって来た初日、杏奈は部屋のバルコニーから美しい湿地を見渡し、この風景をひと目で気に入ります。絵を描くのが大好きな彼女は、湿地でスケッチを楽しみます。ふと見渡す先に、古い西洋風の屋敷を見つけた杏奈。何度かスケッチに出かけるうちに、この屋敷に暮らすひとりの少女と出会います。かつて外国人の別荘だったという屋敷に、今は誰も住んではいないはずなのですが、杏奈は「マーニー」と名乗るその少女と交流を深めていきます。夢と現実の境界があいまいな展開ゆえに、杏奈とマーニーの交流シーンは、現実離れしたファンタジックな美しさに満ちています。それは、大人になる前の少女が、心の奥に深く下りて行き自分と向き合う、そんな心象風景を表現しているかのよう。夢に出てきたのとそっくりな少女=マーニーの正体とは?という問いは、杏奈の生い立ちとともに、映画の最後で明かされるため、ここで詳細に触れるのは避けておきます。しかし、結末を知った後でも、本作は観客さまざまな解釈の余地を残しているように思えます。あの夜、出会ったマーニーの姿は、こうなりたいと憧れる自分の理想像の投影でもあるのかもしれないと…。 種田陽平による映画美術が物語を彩るまた、細かいところまで描き込まれた映画美術も、見逃せない要素のひとつ。本作の映画美術を務めたのは、日本のみならず世界で活躍する美術監督・種田陽平氏。杏奈が暮らすことになった家の、手作り感あふれる内装や外観。マーニーが暮らす石造りの西洋風屋敷の造形、壁に飾られた雑貨ひとつをとっても、物語を理解する手助けとなってくれます。そして、マーニーと杏奈が出会う、夜の湿地の風景。月明りに照らされた海でふたりがボートをこぐシーンは、静謐で本当にきれいです。作品全体のテーマと世界観を凝縮したこのシーンは、まさに作品の肝。普段人には見せない心の傷や、自己の内面と向き合う作業は、時に孤独を伴う。それでも最後には明るい表情で未来を見つめる杏奈の姿は、あなたにどう映るでしょうか。 【DVD発売情報】 『思い出のマーニー』(米林宏昌監督/2014年製作)【発売元】 ウォルト・ディズニー・ジャパン【価格】4700円(税別)© 2014 Studio Ghibli・NDHDMTK
2018年04月22日異なる分野で活躍する2人の“達人”がクロスインタビュー形式で対談する「SWITCHインタビュー達人達(たち)」の8月19日(土)放送回に、数々の映画美術を手がける美術監督・種田陽平と人気アーティストの振付で知られる演出振付家・MIKIKOが登場する。大学在学中より映画美術の道に進み、『スワロウテイル』『不夜城』、クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル Vol.1』などで世界的に高い評価を受けた種田さん。米林宏昌監督の『思い出のマーニー』などアニメーション作品から「Perfume」の「Cling Cling」などMVまで活躍の場は幅広く、最近では9月に公開される是枝裕和監督がメガホンをとった『三度目の殺人』の美術も手がけている。一方、モダンバレエやストリートダンスなど幅広い経験をもとに広島でダンスの先生として活動、NY留学を経て「Perfume」や「BABYMETAL」などの振り付け・ライブ演出を手がけるようになり、昨年は社会現象にもなった「恋ダンス」を生み出すなどそのセンスとパフォーマンスが高く評価されたMIKIKOさん。主宰するダンスカンパニー「ELEVENPLAY」での活動も世界から注目を集め、PV、CM、舞台、広告など多分野にわたる仕事をこなしている。今回「Perfume」のミュージックビデオでMIKIKOさんと共に仕事をしたことがあるという種田さんが、「全くやっている方向性が異なる」ゆえに興味があるということでMIKIKOさんのスタジオ訪ねて、歌詞を手の動きで表現するなど彼女の作る独特の振り付けについて話を聞く。番組後半、今度はMIKIKOさんが映画スタジオに種田さんを訪ね、是枝裕和監督の『三度目の殺人』のセットなど、細部のリアリティーを追求しながらときに大胆なデフォルメを加える種田美術の秘密に迫っていく。種田さんが美術を手がけた『三度目の殺人』は9月9日(土)より全国にて公開。死刑がほぼ確実となった殺人犯の弁護を引き受けることになった弁護士が、事件の調査を進めるうちに違和感を感じ、やがて犯人と被害者の娘の接点が明らかになり、新たな事実が浮かび上がる──という物語。勝利にこだわる弁護士・重盛を福山雅治が演じて主演、重盛に対峙する殺人犯・三隅を役所広司が、物語の鍵を握る少女で被害者の娘役を広瀬すずがそれぞれ演じる。種田さんとMIKIKOさんが独自の世界観を生み出す極意を語り合う「SWITCHインタビュー達人達(たち)」は8月19日(土)22時~NHK Eテレで放送。(笠緒)
2017年08月19日クエンティン・タランティーノ監督の最新作『ヘイトフル・エイト』が公開されている。本作は雪に閉ざされた密室で起こる8人のキャラクターの壮絶な駆け引きを描いた作品だが、『キル・ビルVol.1』以来、久々に種田陽平がプロダクション・デザインを手がけている。密室に8人の俳優が詰め込まれ、デジタルよりも遥かに大きな70ミリカメラを使った撮影が行われたが、監督のリクエストは「セットは少し小さくしてくれ」だったいう。その真意は? 種田に話を聞いた。その他の画像日本だけでなく世界で活躍する種田は、これまでに様々な監督とタッグを組んでおり、タランティーノ作品は『キル・ビル』以来、約12年ぶりになるが「クエンティンの場合は、オーセンティックではあるんだけど、一般的な映画以上に、美術と俳優、カメラとの絡みが執拗なまでに細かい」のが特徴だという。「たとえば、(映画の前半に登場する)駅馬車のステップの“しなり具合”だったり、ドアノブの“まわり具合”だったり、俳優が小道具を使い倒すので、クエンティンが自分で持ってみて、座ってみて、芝居がしにくいと変更が入ったりします。それに彼はとにかくクローズアップが好きなので、ちょっとした違和感があるとリクエストがあるし、予想外の注文が来たりするんです」現在、多くの映画監督は撮影現場でカメラの隣ではなく、撮影されたものと同じ映像が見られるモニターの前にいることが多いが、タランティーノ監督は現在もカメラの隣で俳優の演技を見守る。さらに撮影現場には、ウルトラ・パナビジョン70という巨大で、シネマスコープよりも横長(1対2.76)の映像を描き出せるカメラが導入された。「最初に『70ミリのためにセットを少し大きくしようか?』と提案したら、クエンティンから『役者のためにセットは少し小さくしてくれ』と言われたので、70ミリのために特別、大げさなことをしたということはないんです。クエンティンから言われたのは、“インテリアが役者を包み込んでいるようなセット”。映像から考えると、もう少し広くしたほうが70ミリには映えるかなってなるんですけど、完成した映画はカットごとにムードが出ている。それはコンピュータとかCGを通して出てくる感覚とは違うんですよね」さらに横に長いフレームがスクリーンいっぱいに広がることで、“最後までひとつ空間に見えない”ほどの多様性のあるカットの積み重ねが可能になっているという。「この画面比率は、室内を撮るにはそんなに適していないんですよね。というのも、普通に撮っただけでも、広く見えてしまうんです。結果として狭く作ったセットがちゃんと広く見えるし、同じセットの中でも見るたびに違う場所に目が行くんですよ。フォーカスとライティングで、それまで気づかなかったものが見えたり、最後まで飽きることなくひとつのセットにつきあってもらえる。この映画はできるだけ大きな画面で、シネコンでも大きなスクリーンで上映されている間に観てほしいですね」『ヘイトフル・エイト』公開中
2016年03月01日●「業界の慣習」を超えた再タッグ映画を作っているのは誰だろうか。役者を除けば真っ先に思い浮かぶのは監督だが、監督だけで映画が作れるわけではない。プロデューサー、脚本家、音楽家、照明に録音、編集と、多くのスタッフが関わって一本の作品を作り上げている。中でも美術監督は映画の舞台となる空間を作り上げる責任者であり、監督の思い描く世界を再現する重要なポジション。監督にとって自分の作品の美術監督を誰に依頼するのかは、映画の成否に関わる一大事なのだ。そんな美術監督として、ハリウッドを代表する監督であるクエンティン・タランティーノ氏の最新作『ヘイトフル・エイト』(2月27日公開)に参加するのが種田陽平氏だ。過去には『キル・ビル Vol.1』の美術監督も担当しており、コンビを組むのは今作が二度目となる。『ヘイトフル・エイト』はタランティーノ監督初となる密室ミステリー。舞台は吹雪のロッジ、登場人物は足止めを食らったワケありの8人の男女。そこで起きる殺人事件から、物語は思いもよらぬ方向に展開していく。ストーリーは閉ざされたロッジのみで展開されるため、狭いワンルームが本作の世界のすべてといっても過言ではない。同作の世界そのものともいえるロッジを作り上げたのが種田氏である。『キル・ビル』以来となるタランティーノ×種田コンビはいかにして実現したのか。そして種田氏は『ヘイトフル・エイト』の世界をどのように構築していったのか。種田氏に制作の舞台裏を聞いた。――タランティーノ監督とお仕事をされるのは『キル・ビル』以来ですよね。今回、どのような形で依頼がきたのですか?種田:話がきたのは2014年の8月だったかな。『ヘイトフル・エイト』のプロデューサーから電話があったんです。クエンティンが今作の美術監督を僕に頼みたいと言っていると。普通はメールで話がくるんですが、電話でしたね。スケジュールを確認して、OKしました。ちょうど『思い出のマーニー』が終わったところだったのでいいタイミングだったんです。ただ、クエンティンが僕に頼みたいと希望しても、そう簡単にはいかなくて。というのも、ハリウッドは基本的にコンペ方式で美術監督を決めるからなんですよ。――えっ、監督本人が指名しているのに、それでもコンペをするんですか?種田:そうなんです。特に僕のような海外の人間が美術監督――プロダクトデザイナーとして入ることはさまざまな制限があるんです。ハリウッドメジャーには業界団体であるユニオンがあって、基本的によそ者が入り込んで美術監督をすることはできないんですよ。――『キル・ビル』のときは?種田:あれはノンユニオンの映画でしたから。それに撮影場所が中国や日本だったから大丈夫だったみたいです。アメリカだとダメだったでしょうね。ただ、それでもクレジットにユニオン以外の人間の名前が入ると、プロデューサーがユニオンに呼び出されて事情を説明しないといけないみたいですよ。――そんな裏話があったとは……。種田:だから、監督が「この人とやりたい」と言っても、ユニオンだとコンペ方式になるので、プロデューサーが何人か用意するんですね。ところがタランティーノ監督の場合はちょっと違って、ぜんぶ彼が決めるんです。プロデューサーの権限はなくて、ぜんぶタランティーノ監督が決める(笑)。――タランティーノ監督のイメージ通りです(笑)。種田:だから僕に声をかけてもらったときも、一応面接はするから、台本を読んでイメージ画を描いて持ってきてほしいと言われました。その台本がまた難しかった。というのは今回、セリフも多いし、登場人物の位置関係が難しいんですね。しかも、タランティーノ監督は台本にものすごく書き込むんですよ。たとえばオープニングで雪の中に立っているキリスト像がありましたが、あれも「いわゆるヒッピー的なキリストの顔立ちではなく、エイデンシュタインの『イワン雷帝』のような出で立ちをした、北欧彫刻のような、この場にふさわしくない像」とか書いているんです。――こ、細かいですね。もう監督の頭の中に出来上がっているんですね。種田:そう。それで面接に備えて、いくつかイメージ画を描いて持っていったんですが、監督はほとんど見ず、「おまえと一緒にやりたかったんだよ!」みたいな話に終始しました(笑)。――(笑)。コンペ方式にしたけど、監督の中では決まっていたんでしょうね。種田:僕に決まったと連絡が来たのは9月に入ってからだった。そして、ロケ地は標高3000mくらいの場所で、12月から撮影を開始したいと監督は希望していた。11月にはもう雪が降りだすだろうし、撮影前に高地にロッジが建ってないといけないでしょう。これはやばいとなって、決まったと同時にロケハンに行ったんです。●タランティーノ監督の"規格外"な画づくりの仕掛け――厳しいスケジュールですね。タランティーノ監督の頭にあるロッジをどのようにして具現化していったのですか?種田:その話をするにはまず、今回の作品の特徴からお話した方がいいですね。『ヘイトフル・エイト』は70mmフィルムで撮影された映画です。――通常の映画で使われる35mmフィルムに比べて、ワイドかつ高画質なフィルムですね。種田:そう。それからピントの合う範囲が狭くて、たとえば人物の目にピントを合わせると、すぐ後ろはもうボケてしまうという特徴もあります。だからフォーカスするのが大変で、ベテランのフォーカスマンがやっています。日本だとフォーカスマンって新人の仕事なんですけどね。――レンズもすごいですよね。種田:あの『ベン・ハー』で使われたレンズを使っていますからね。一つ10kgくらいある(笑)。それも一つじゃなくて、シーンによっていろいろ使い分けているんです。――ピントが浅い70mmフィルムで、しかもレンズもいろいろ、ですか。種田:そうなると、どうなるか。『ヘイトフル・エイト』の物語は15m四方くらいの小さな部屋で展開するのですが、ワンルームなのに部屋の全貌が観客に見えにくくなるんです。何しろレンズの焦点距離が変わるので、遠近感がどんどん変わる。あるカットでは暖炉から扉までが遠く見えるのに、あるカットでは近く感じたりします。――しかもピントが浅いから、人物の背景がよくわからない。種田:映画中盤でシチューを食べるシーンなんか、「えっ、テーブルがあったの!?」って驚くんじゃないですか(笑)。ピアノもそう。最初からあるんだけど、観客が画面に観るものはどんどん変わる。70mmフィルムじゃないとこうはならなかったでしょうね。もちろんクエンティンは意図的にそうしています。そうでないと、いくらシナリオがうまくできていても、美術が面白いセットをつくっても、お客さんはこの密室劇に30分くらいで飽きてしまうでしょう。――言われてみれば納得です。種田:それから光の当て方――撮影監督によるライティングもワンカットごとに相当工夫されていた。これはタランティーノ監督というより、アメリカの考え方なんですが。――というと?種田:日本やアジアの映画はカットのつながりを重視します。だからカットが変わっても光が当たる方向が変わることを嫌う。その結果、全体的に光を当てることが多いんです。――強い影がなくて、まんべんなく明るい状況ですね。種田:ところがアメリカでは、役者と背景を切り離すために逆光でライトを当てることが多い。たとえば黒い服で背景がグレーだと溶けこんでしまうから、背中側からライトを当てることで輪郭を際立たせたりする。――逆光で写真を撮ると髪の毛の輪郭がふわっと明るくなるのと同じですね。種田:ところが、全カットそれをやるわけにはいかないから、日本の場合は光を回すんですね。――アメリカではあまりライティングのつながりを気にしないんですね。種田:……と、そういった日本とは異なる撮影事情をふまえてセットを造る必要があるんです。――おもしろいですね。たとえばどんなところに気をつけたのでしょうか。種田:たとえば入口付近の天井を見てほしいのですが、この天井をスリット状にしているんです。実際に丸太を組んで、その上に天窓を作りました。こうすると光が通るので、入り口に立った俳優の頭上から光が射すんです。――先ほどの逆光と同じで俳優が浮かび上がるわけですね。種田:この天井は取り外せるようになっていて、上にものを置くことができるという設定にしました。それから、扉や壁にわざと隙間を作りました。――えっ、実際の雪山で撮影しているのに?種田:ロッジは隙間だらけじゃないと、と監督がこだわったんです。一応、暖炉はあるけど寒くて、登場人物の吐く息は白くならないとだめなんだというのが監督の要求だった。雪も吹き込んでいたでしょう。――す、すごいこだわりですね……。さすがタランティーノ監督。種田:でも夜のシーンはね、さすがに無理なんですよ。雪山で撮影するのは。――凍え死んでしまいそうですね。種田:そこでハリウッドのスタジオにまったく同じセットを用意したんです。――夜のシーンを撮影するためだけに?種田:そうです。雪山は寒いけど、ハリウッドは暖かいんですよ。冬とはいえ、気温が30℃くらいある日もある。その中で、役者は猛吹雪の零下の世界にいるという演技をしないといけない。――俳優の演技力が問われますね。種田:それがですね、クエンティンが言うには「そういう今風の撮り方に迎合していると役者の本気が出てこない」と(笑)。暖かいところでやっても寒がる芝居にはならないと言うんです。それで、セットを建てたステージをぎんぎんに冷やしてね。大きなトラックを6台用意して、それに巨大な冷凍装置を載せ、スタジオを-5℃まで冷やしたんです。しかも、一度冷凍装置を止めてしまうと気温が戻ってしまって、なかなか冷えなくなるから、24時間フル稼働で動かすんですよ。撮影期間が2カ月くらいだったので、その間ずっとかけっぱなし。もう、めちゃくちゃお金がかかるんです(笑)。――やることが桁違いですね……。そういう現場に撮影期間、ずっとついてらっしゃるんですか?種田:いや、ずっとはつかないですね。日本だと撮影現場にいることが多いんですが、アメリカだと次の撮影の準備をすることが多いです。雪山でクエンティンが撮っているならハリウッドのスタジオで準備をしているし、逆もある。雪が降ることも計算に入れて、翌日の撮影で雪の量がちょうどよくなるように現場を作ったり。――現場が二つあると大変ですね。種田:呼び出されることもあるんですけどね。クエンティンが「(ロッジの)柱を外す!」って言い出して、大丈夫なのかってことで呼ばれたり。しょっちゅう問題は起きます。――システムがぜんぜん違いますね。種田:良い悪いじゃなくて、国によってさまざまなんですね。ハリウッドとニューヨークでも違うし、ロンドンとドイツ、イタリアでもまた違う。――『ヘイトフル・エイト』はまさにタランティーノ監督ならではのこだわりがつめ込まれた映画なんですね。種田さんが作り上げたロッジの細部にまで注目して観てほしいです。本日はありがとうございました。
2016年02月26日ニコニコ生放送で隔週木曜日放送されている「アニメぴあちゃんねる」。本日10月8日(木)のゲストに、声優の種田梨沙と加隈亜衣が登場する。種田と加隈は、先月家庭用ゲームとして発売され、現在テレビアニメで放送中の作品『うたわれるもの 偽りの仮面』に出演中。また、11月28日(土)、29日(日)に東京・両国国技館で開催されるイベント「大アクアプラス祭」への出演も決定している。「アニメぴあちゃんねる」通常放送では、種田梨沙は学生時代から好きでハマっている有名ファンタジー映画の超レアグッズ、加隈亜衣は少し変わった特技を披露するとのこと。気になる方は本放送でご確認を。会員放送では、ふたりの学生時代の思い出の秘蔵写真を公開予定。さらに、レギュラー陣とのコラボ企画「アニメぴあちゃんねる劇場」では秋に因んだシチュエーションでのセリフ読みを行う。同企画は、シチュエーションやキャラクターをくじ引きで決めるのでいつもとは違う一面を見られる可能性も。また恒例企画の「ファッションチェック」ではゲストふたりも含めた出演者全員の服装をCCDカメラでチェックする。そのほか、「大アクアプラス祭」で出される「アマムニィ」という料理を賭けて、出演者全員で行うジェンガ対決。番組恒例、タカオユキのキャラ弁「タカ弁」をゲストのふたりが試食など、企画が目白押し。ニコニコ生放送「アニメぴあちゃんねる」は10月8日(木)午後8時30分より放送開始。またYouTube「アニメぴあちゃんねる」では、現在、オリジナル動画が配信されている。前田玲奈と、怪しいゆるキャラ“がまぴぃ”が、気になる話題について語る「もうすぐアレでる」。第7回のテーマは「男が追いかけたくなる女子の特徴」。前田玲奈は、果たして脈ありサインを見抜けるか!「もうすぐアレでる」は、女性向けWEBサイト、「オネガマ」とも連動中。■アニメぴあちゃんねる日時:10月8日(木)午後8時30分~午後10時00分出演:前田玲奈 / 秦佐和子 / タカオユキ / 美濃部達宏ゲスト:種田梨沙 / 加隈亜衣
2015年10月08日第37回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)が開催中の東京国立近代美術館フィルムセンターで9月13日、美術監督の種田陽平氏と周防正行監督がPFF講座シリーズ『映画のコツ 21世紀から観る小津安二郎の映画と空間』と題したトークイベントを行った。その他の画像この日、上映されたのは小津監督が唯一東宝に招かれ、オール東宝スタッフで撮ったアグファカラーの美しいオールスター映画『小早川家の秋』。京都にある造り酒屋“小早川”を舞台に、小早川家にかかわる人々の悲喜こもごもを描く本作について「小津さんが得意な暖色系を抑えて、大人の色合い。窓の外の造り酒屋の凝りようがすごい」(種田氏)、「遺作の一本前だからなのか、しっとりとした落ち着きがある。この映画を観て、改めて小津監督は画家なんだと思う」(周防監督)と語った。学生時代から熱心な小津ファンだったふたりの出会いは、今から30年前。低予算のピンク映画にもかかわらず大きな話題を呼んだ周防監督の『変態家族 兄貴の嫁さん』(1984年)で、種田氏が美術を手がけて以来、親交が続いている。小津映画にオマージュを捧げた作品としても知られており、周防監督は「デビュー作だから一番好きなことをやりたくって、小津安二郎を徹底研究した。ちゃんと小津さんの墓参りをして、謝りましたけど(笑)」と当時の思いを明かした。一方、種田氏は「周防さんは、小津監督の写真をプリントしたTシャツを着て、気合い充分。ベテランのスタッフさんも『普段の周防君じゃない』ってビビっちゃって(笑)」と振り返り、「撮影はわずか5日間。美術予算もあまりないから、菓子折り1つで日活スタジオにあった角川映画のセットの一部をお借りした」と苦労を語った。9月23日には『変態家族 兄貴の嫁さん』が“映画のコツ”プログラム関連作品として特別上映される。『第37回 PFF』は9月24日(木)まで東京国立近代美術館フィルムセンターにて開催中(月曜休館)。第37回PFFぴあフィルムフェスティバル9月12日(土)から24日(木)まで 東京国立近代美術館フィルムセンター10月3日(土)から9日(金)まで 京都シネマ10月31日(土)から11月3日(火・祝)まで 神戸アートビレッジセンター11月12日(木)から15日(日)まで 愛知芸術文化センター2016年4月(予定)福岡市総合図書館で開催取材・文・写真:内田 涼
2015年09月14日9月に行われる第37回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)の“サプライズ上映”のプログラム内容が発表になった。その他の写真これまで発表になっていなかった“サプライズ上映”は全3作品。映画祭では特別講座にも登場する周防正行監督と、美術監督の種田陽平が手がけた『変態家族兄貴の嫁さん』を上映。周防監督が1984年に発表した作品で、小津安二郎監督作品にオマージュを捧げた作品として、現在も語り継がれている。さらに映画祭で最新作『唇はどこ?』がプレミア上映される長崎俊一監督が1982年に発表して熱狂的なファンを生んだ伝説の8ミリ作品『闇打つ心臓』も上映。若き日の内藤剛志、室井 滋、諏訪太郎が出演しており、後に35ミリでリメイク版も製作されたが、本映画祭ではオリジナル版が上映される。また、韓国のインディーズ映画で、河瀬直美がプロデューサーを務めた『ひと夏のファンタジア』も上映。監督のチャン・ゴンジェは世界の映画祭で注目を集めている俊英で、上映日には監督も緊急来日することが決定している。“PFF(ぴあフィルムフェスティバル)”は、世界最大級の自主映画コンペ“PFFアワード”をメインプログラムに据えている映画祭。今年も全国から集まった577作品の中から20作品が入選作に決定。全作品が映画祭で上映され、各賞が決定する。また、“サミュエル・フラー~誰もが憧れた奇跡の作家~”や、“映画内映画~映画は映画をつくることをどのように描いてきたか~”などの特集も開催される。第37回PFFぴあフィルムフェスティバル9月12日(土)から24日(木)まで 東京国立近代美術館フィルムセンター10月3日(土)から9日(金)まで 京都シネマ10月31日(土)から11月3日(火・宿)まで 神戸アートビレッジセンター11月12日(木)から15日(日)まで 愛知芸術文化センター2016年4月(予定)福岡市総合図書館で開催
2015年08月31日9月に行われる第37回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)のプログラムが新たに発表になった。その他の画像/第37回PFFのプログラムが決定“PFF(ぴあフィルムフェスティバル)”は、世界最大級の自主映画コンペ“PFFアワード”をメインプログラムに据えている映画祭。今年も全国から集まった577作品の中から20作品が入選作に決定。全作品が映画祭で上映され、各賞が決定する。今年は、多くの映画人が敬愛した伝説の映像作家サミュエル・フラーの作品を上映。『最前線物語』『東京暗黒街・竹の家』などの名作のほか、日本初上映となる『ベートーヴェン通りの死んだ鳩』や、フラーに関するドキュメンタリー『フラーライフ』も上映される。また、映画の製作現場を描いた映画を集めた特集“映画内映画~映画は映画をつくることをどのように描いてきたか~”を開催。長崎俊一監督の最新作『唇はどこ?』、鈴木卓爾監督の新作『ジョギング渡り鳥』のプレミア上映が行われ、フランソワ・トリュフォー監督の名作『アメリカの夜』なども上映される。さらに世界の映画祭で好評を博した短編映画を集めた特別企画“世界が絶賛した日本の短編たち”も実施。5作品が上映される。9月13日(日)と19日(土)には特別講座を開催。13日には美術監督の種田陽平と周防正行監督が映画の“美術”について対談し、小津安二郎監督の『小早川家の秋』が上映される。19日には映画プロデューサーの伊地智啓と濱口竜介監督が“プロデューサー”について語り合い、『居酒屋ゆうれい』が参考上映される。会期中にはさらに何作品か“サプライズ上映”が予定されており、詳細は追って映画祭の公式サイトで発表される。第37回PFFぴあフィルムフェスティバル9月12日(土)から24日(木)まで 東京国立近代美術館フィルムセンター10月3日(土)から9日(金)まで 京都シネマ10月31日(土)から11月3日(火・宿)まで 神戸アートビレッジセンター11月12日(木)から15日(日)まで 愛知芸術文化センター2016年4月(予定)福岡市総合図書館で開催※東京会場のチケットは8月8日(土)より発売開始
2015年08月12日スウェーデンが誇る巨匠ロイ・アンダーソン監督が、構想15年、撮影4年もの歳月をかけ、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を抑えて第71回ヴェネチア国際映画祭「金獅子賞(グランプリ)」を受賞した最新作『さよなら、人類』。ロイ・アンダーソンといえば、CG全盛のこの時代、巨大なスタジオにセットを組み、マットペイントを多用して細部にまでこだわった配色や美術で、1シーン1シーンがまるで絵画のような、徹底的に作り込まれた映像美が魅力のひとつとなっている。今回、クリエイターとしての一面も持つ板尾創路、菊池亜希子、種田陽平ら、業界の垣根を越えた各界の著名人たちから、その映像世界への絶賛コメントが到着。また、彼らも魅せられた、監督が描く“脚本代わり”のドローイング画の数々がシネマカフェに到着した。サムとヨナタンは、何の役にも立たない“面白グッズ”を売り歩く冴えないセールスマンコンビ。現代のドン・キホーテとサンチョ・パンサのように、何をやっても上手くいかない人たちの、哀しくも可笑しいさまざまな人生を目撃する。ワインを開けようとして心臓発作で死ぬ夫とそれに気づかない妻、天国に持って行くために宝石の入ったバッグを手放さない臨終の床の老女、現代のバーに立ち寄るスウェーデン国王率いる18世紀の騎馬軍。万華鏡のような不思議な世界へ、私たちを誘う2人は…。ロイ・アンダーソン監督は、完璧な脚本を作らない代わりに、イメージをスケッチやドローイングで描き、映画に登場すると思う順番に、スタジオの壁に貼り付け、それを “脚本”とする手法を取っている。まずは、各シーンのイメージをドローイング画で描き起こし、奥行きや配置などをスタッフやキャストに伝え、それを基に撮影を進めて、世界観を作り出していく。撮り終わったシーンは、ドローイングとスチール写真と取り替えていき、最終的には、壁に貼った写真の順番を変えてベストな並びを想定。なんと、壁を使って“編集”するという、アナログへのこだわりぶりがあった。さらに、本作は、16世紀の画家ピーテル・ブリューゲル「雪中の狩人」など、様々な絵画からインスピレーションを受けて作られているという。「特に絵画の中でも、ワイドアングルの、背景が丁寧に描かれ、その生活や生き方が伝わってくるものが好きだ」と語るロイ・アンダーソンの作品は、全編を通して絵画のように固定されたワイドアングルのカメラワークを採用している。また、絵描きがうらやましいというロイ・アンダーソンは、「世界にはたった1枚の絵を観るためだけに、世界1周をする人が大勢いる。絵画には、人をそこまで動かしてしまう力を秘めている。だから私も絵画のように“いつまでも眺めていたくなるような映画”を作ってみたいんだ」と、唯一無二の自身の映画づくりへの思いを話している。監督の頭の中を、こだわり抜かれた映画美術により具現化した奥行と温かみのある映像は、観る者を不思議な感覚の世界へと連れていってくれる。<著名人コメント>■板尾創路(芸人)39枚の絵画は突然 動き 喋り 笑いを仕掛けてくる…そんな100分間の美術館。映画の基本的手法でありながら映画の枠を超えた贅沢なエンターテイメントだ!■菊池亜希子(女優・モデル)旅の途中でふらりと入った異国の美術館で、名もなき絵画に心を奪われ動けなくなるような、そんな感覚。たちは一体何者で、どこにいて、これからどこへ向かうのだろう。■種田陽平(美術監督)『さよなら、人類』は、全シーン、美術がつくったセットで撮影された。独特な色彩と光で世界は抽象化されていて、絵画の中に迷いこむ感覚を味わうことができるだろう。■椹木野衣(美術批評家)ああ、素晴らしきかなマヌケな人生。何をやってもうまくいかぬ男たちの醜態が、しかし完璧な一枚の壁画のように描かれる。死期を控えたすべての人類に!『さよなら、人類』はYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:さよなら、人類 2015年8月8日よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開(C) Roy Andersson Filmproduktion AB
2015年08月10日スタジオジブリの『思い出のマーニー』がブルーレイ&DVD発売を前に3月7日(土)、「三鷹の森ジブリ美術館」によるイベント「三鷹の森アニメフェスタ2015 ~アニメーション古今東西 その12~」にて上映され、米林宏昌監督がトークセッションに出席した。「アニメーション古今東西」は三鷹の森ジブリ美術館が厳選した世界のアニメーションを上映するイベントで、今年は200名超が招待され、宮崎駿監督引退発表後に製作された初のジブリ作品で昨夏に公開され、日本アカデミー賞「優秀アニメーション作品賞」を受賞した『思い出のマーニー』が上映された。米林監督は、鈴木敏夫プロデューサーから英国の児童文学の名作「思い出のマーニー」を託されたが、原作は主人公の心理描写が多く「どうアニメで表現するのか?難しいと思った」と当初、アニメ化には乗り気ではなかったと明かす。「原作ではアンナ(※映画では舞台を日本に移しており、日本人の少女・杏奈)が、“普通の顔”で他人と接しているとあるんですが、普通の顔を絵と動きで表現しないといけない…」とその難しさに触れつつ、杏奈を絵を描く少女にし、月夜のダンスシーンなどを加えることでアニメーションとしてのイメージを膨らませていったという。美術監督に、数々の実写映画の美術監督(Production Designer)を務めてきた種田陽平を起用しているのも大きな特徴だが「実写の美術監督がアニメに関わるとどうなるのか?面白いと思った。種田さんの力で立体感のある美術ができた」と語る。北海道を舞台にした点も「北海道の実際の風景に感動して、絵にしてみると絵が風景に負けてつまらなくなっちゃう(苦笑)」とかなり難易度の高い挑戦だったよう。「そこが宮崎さんが(ジブリ作品で北海道を舞台に)やらなかったこと(=理由)なのかも。宮崎さんは『瀬戸内の方がいいんじゃないか?』と言ってましたが、薄曇りの空など、これまでのジブリにない空気が描けたのではと思う」と手応えを明かす。声優にはマーニーに有村架純、杏奈に高月彩良を起用した。特に今をときめく有村さんは、オーディションでトップバッターだったそうだが「マーニーを出来るひと、『ふふ』っと笑う演技ができる人は(他に)いなかった」と称賛する。トークでは米林監督自身のアニメーション作りや絵の原点についても語られた。生まれも育ちも石川県で、地元の金沢美術工芸大の出身だが、同大学は『おおかみこどもの雨と雪』やこの夏公開予定の最新作『バケモノの子』が注目を集める細田守監督も卒業生。在学期間は重なっていないが、細田監督の卒業制作を学生時代のバイト先の映像制作会社で目にする機会があり、その質の高さに驚いたそうで、意外な2人の接点が明らかに。また、これまでに影響を受けた作品としてフェデリコ・フェリーニの『道』や『2001年宇宙の旅』(S・キューブリック監督)、『ミツバチのささやき』(ビクトル・エリセ監督)を挙げ、アニメではジブリの『耳をすませば』を見て「感動して、こういうのを作る会社なら働きたい」とジブリ入社を決めたと明かす。また子どもの頃から「ドラえもん」や鳥山明(「ドラゴンボール」)の漫画が好きだったほか、少女漫画が好きで「りぼん」(集英社刊)を購読しており、少女漫画にも多大な影響を受けていると語った。ちなみに、自分の監督作品を公開後に見返す機会はあまりないそうで「家に帰ると子どもが『アリエッティ』を観てたりして…」と苦笑い。『マーニー』公開に合わせて昨年、画集「汚れなき悪戯」が発売されたが、本人は「僕は自分の絵がキライ!画集も恥ずかしくてしょうがない。もうちょっとうまく描けたらと思ってしまう。このタイトルを決めたのは僕じゃなくて鈴木さん」と苦笑いを浮かべていた。この日は、会場の観客の質問にも答えたが、ジブリキャラクターで自分と一番似ているのは誰?という質問で、長年、言われ続けてきた『千と千尋の神隠し』のカオナシのモデルが米林監督だというエピソードについて言及。「実際にはカオナシのシーンを僕が描いてたんです。それを宮崎さんがラッシュで観て『麻呂(=米林監督のニックネーム)じゃないか!(アニメに)入ってきた』と言ったのが、いつの間にか僕がモデルと言われるようになった」と真相を説明した。米林監督、そしてスタジオジブリが今後、どのような新作を生み出すのかが気になるが、米林監督は、今後の体制などについては未定としつつも「また作りたい。いま、考え始めたひとつのアイディアを持ってます。『マーニー』は“静”の作品ですが、僕はアニメーターなので(動きの激しい)『崖の上のポニョ』とかが好き。(構想中の企画は)『マーニー』とは真逆です」といまだ構想段階とはいえ、新企画が進行中であることを明かした。『思い出のマーニー』は3月18日(水)、ブルーレイ&DVD発売開始。なお、本作は今年1月にフランスで劇場公開されており、3月19日(木)より韓国で、5月からはアメリカで公開される。(text:cinemacafe.net)
2015年03月08日劇作家・脚本家として人気を誇る三谷幸喜監督の最新作が、主演に香取慎吾(SMAP)、ヒロインに綾瀬はるかを迎えて製作されることが決定!登場人物は全員宇宙人ーー三谷映画史上初の“宇宙”が舞台となる本作の名は『ギャラクシー街道』だ。時は西暦2265年、木星のそばに浮かぶスペースコロニー(宇宙空間に作られた人工居住区)「うず潮」。そこと地球を結ぶスペース幹線道路を、人は“ギャラクシー街道”と呼んだ。かつては、交通量も多く、沿道にもたくさんの飲食店が並んでいたが、開通して150年。老朽化が著しく、そろそろ廃止の噂も聞こえ始めた…そんな街道の脇に佇む、小さな飲食店を舞台に、そこで働く人々と客たちが織りなす、宇宙人模様を描き出す。本作に登場するのは、スペース警備隊、スペースヒーロー、スペース客引き、スペース娼婦、スペース獣医、スペース役人、スペースシンガーに、スペースパートタイムのおばさん…そう全員、宇宙人である。そんな奇想天外な物語で、主人公の宇宙人・ノア役を演じることとなったのは香取さん。三谷作品には、『みんなのいえ』『THE 有頂天ホテル』『ザ・マジックアワー』に出演してきたが、三谷監督は「主演の香取さんは、信頼する俳優さんの一人です。彼にはまだまだ隠れた引き出しが沢山あると思っています。今まで彼が演じてきた役柄ではなく、今回はあくまで等身大の人間を演じてもらうつもり。香取さん主演の舞台『オーシャンズ11』を観て、香取さんとジョージ・クルーニーには共通するところがあると感じたので、今回の役柄はジョージもちょっと入っています」とそのキャラクターは全く予想がつかない。そしてノアの妻・ノエ役には、『ザ・マジックアワー』以来の三谷作品となる綾瀬さん。三谷監督によると「綾瀬さんは、ピュアで天然なイメージがありますが、『ザ・マジックアワー』でご一緒した時にとてもクレバーな方だなと感じました。その後、大河ドラマなど様々な経験を積まれて、より演技にも深みが出て、ぜひもう一度ご一緒したいと思っていました。綾瀬さんは物を食べる時に、本当に美味しそうに食べるイメージがあります。今回は宇宙一食べ方がかわいいキャラクターになっています」と、こちらも予測不可能なキャラクターだ。三谷作品といえば、毎回壮大なセットが魅力のひとつだが、今回も美術は種田陽平チームが担当するとのこと。「これまでに、ホテル、港町、裁判所、清須城と作ってきました。作品作りの一番最初に、まず舞台を決めて、さぁそこを舞台に何をしようか、と考えます。既に街というスケールの大きな空間を作っていたので、さらにスケールを大きく、宇宙を作ろう!ということは大分早い段階から決まっていました。今の技術を使えば、いくらでもCGで宇宙を作ることはできますが、スタジオのセットで作る、手作り感満載の宇宙が見てみたい!という、僕の希望で、今回は敢えてCGではなくセットで宇宙空間を作ります」とチャレンジングな作戦となっているようだ。そして、壮大なのはセットだけではない、興行面に関しても三谷監督は壮大な野望を持っているようだ…。「偶然にも、今年はあの『スター・ウォーズ』新作も公開されます。ライバルはもちろん『スター・ウォーズ』!! 目指すはSWシリーズ最高興収(『エピソード1/ファントム・メナス』の132.6億円)越え。目標も宇宙規模でいきたいと思っています」。『ギャラクシー街道』の撮影は3月にクランクインし、今年10月の公開を予定している。(text:cinemacafe.net)
2015年02月10日小金井市の江戸東京たてもの園で9月11日(木)、「ジブリの立体建造物展」の動員10万人突破セレモニーが行われ、『思い出のマーニー』の米林宏昌監督と、米林監督が“モデル”とされるカオナシが揃い踏み。米林監督は「こういう機会は初めて」と照れていた。7月10日から江戸東京たてもの園で開催されている同展では、スタジオジブリの出発点である『風の谷のナウシカ』から、『思い出のマーニー』まで作品に登場する建造物の背景画や美術ボード、美術設定といった貴重な資料が展示されているほか、本展覧会のために制作された『千と千尋の神隠し』の“油屋”の立体建造物が来場者を出迎える。2002年に同園で開催された「千と千尋の神隠し展」を上回るペースで、動員10万人を突破し、セレモニーでは幸運にも10万人目の来場者となった竹内美晴さん(19歳)、佐々木春希さん(18歳)に米林監督直筆のイラスト色紙などがプレゼントされた。プライベートでも足を運んだという米林監督は、「いい展示ですよね。ラピュタやナウシカといった何度も観ている作品の背景原画に直接触れると、こういう世界観を作り出す宮崎(駿)さんの頭って、どんな構造しているんだろうと思う」と巨匠の発想力に改めて最敬礼だった。セレモニーには米林監督とカオナシに加えて、トトロも駆けつけ、来場者は大喜び。また、トトロは現在、墨田区の江戸東京博物館で開催される「思い出のマーニー×種田陽平展」に“出張”することも明らかになった。トトロが姿を現すのは、9月12日(金)から最終日の9月15日(月・祝)まで。「ジブリの立体建造物展」は12月14日(日)まで江戸東京たてもの園で開催中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:思い出のマーニー 2014年7月19日より全国東宝系にて公開(C) 2014 GNDHDDTK
2014年09月11日ジブリ最新作『思い出のマーニー』の公開を記念して開催される「思い出のマーニー×種田陽平展」のプレス見学会が7月24日(木)、会場となる東京・墨田区の江戸東京博物館で行われた。本作の美術監督である種田陽平氏が、アニメの世界を実写セットで再現する。世界屈指の美術監督としてグローバルに活躍する種田氏が、本作でアニメの美術監督に初めて挑んだ『思い出のマーニー』。物語の重要な舞台である“湿っ地屋敷”やその中にあるマーニーの部屋、キノコの森やマーニーの心の闇を象徴するサイロなどが、三次元で立ち上がった。「コンセプトは杏奈がマーニーを探す旅。お客さんが『マーニーはどこにいるんだろう?』と思ってもらえる展示を目指した」と種田氏。展示物の製作には「数か月かかっている」と言い、「この場所で実写版『マーニー』が撮れる、というつもりで製作した。実写の映画でも、ここまで細かい作業はできないかも」と強いこだわりを明かした。見学会には種田氏を始め、本作で“Wヒロイン”を演じた高月彩良(杏奈役)と有村架純(マーニー役)、米林宏昌監督が駆けつけ、一足先に展示を満喫し「とってもリアルで、鳥肌が立ちましたね」(高月さん)、「ジブリ作品の世界に入り込み、肌で体感した感覚。ワクワクしました」(有村さん)。米林監督も「自分が描いた絵が、現実に存在する不思議な感覚です。ビックリしました」と種田氏と実写スタッフが生み出した、もうひとつのジブリ世界に感動していた。映画はイギリスの作家ジョーン・ロビンソンによる同名児童文学を原作に、海辺に暮らす親せきに預けられることになった少女・杏奈と、海辺に佇む“湿っ地屋敷”に暮らす金髪の少女・マーニーがひと夏を過ごし、ある秘密を分かち合う姿が描かれる。「思い出のマーニー×種田陽平展」は江戸東京博物館で7月27日から9月15日まで開催(8月4日、9月1日は休館)。『思い出のマーニー』は全国にて公開中。(text:cinemacafe.net)■関連作品:思い出のマーニー 2014年7月19日より全国東宝系にて公開(C) 2014 GNDHDDTK
2014年07月24日『ステキな金縛り』で2011年実写映画ナンバー1ヒットを記録した三谷幸喜監督が早くも新作映画『清須会議』を製作し、来年秋に公開することを発表した。その他の写真『清須会議』は、三谷監督が本日発売する同名小説が原作。本能寺の変で織田信長が没した後、彼の跡取りに名乗りをあげたふたりの男の息つまる頭脳戦を描く。老将・柴田勝家と後に天下を統一する羽柴秀吉が、壮絶な駆け引きを展開する本作は、ふたりの他にも歴史の名将たちが次々に登場し、会議場で“歴史が動いた”瞬間を描くという。キャストは今後発表されるが、三谷監督は小説執筆時は「柴田勝家をショーン・コネリー、秀吉は若かりし頃の緒形拳」とイメージしていたそうで、映画版ではどのような俳優がキャスティングされるか気になるところだ。また、美術監督の種田陽平氏が清須城下町を現代に甦らせるべくロケセットを作り出すなど、大規模な製作体制が敷かれており、今年11月より撮影を開始し、来年秋の公開を予定している。『清須会議』2013年秋公開
2012年06月27日興行収入60.8億円という大ヒットを博した『THE 有頂天ホテル』や昨年の邦画No.1を記録した『ステキな金縛り』など、大ヒット喜劇を送り出し続ける三谷幸喜監督が、昨年から続く自身の“生誕50周年感謝祭”の締めくくりとして、本日6月27日(水)発売となる自身著の小説「清須会議」を同名映画化することが決定!本作は、三谷監督の映画作品史上、初の時代劇であり、初の小説の映画化作品となる。天正10年、本能寺の変で織田信長が命を絶った後、彼の跡取りに名乗りを上げた2人の男。老将・柴田勝家と、後に天下を統一する羽柴秀吉。清須城を舞台に、2人の人生を賭けた頭脳戦が交わされる。これが日本史上、初めて会議の席上で歴史が動いた「清須会議」。勝家、秀吉を始め、歴史に名を残した猛将たちのそれぞれの思惑をモノローグ式に、その全貌が三谷監督ならではの人間喜劇としてコミカルに描かれる。原作となる小説は、三谷監督にとっては実に17年ぶりとなる小説で、これが発売される6月27日は奇しくも歴史上、清須会議が行われた日と旧暦で同日。映画では小説とは異なるアプローチで、登場人物“全員”が騙し騙されるさまを描いていくという。『ザ・マジックアワー』では架空の港町が東宝スタジオに作り上げられたが、本作では、それを上回る大規模となる城下町のセットを美術担当の種田陽平と共に制作する予定だ。また、毎度その豪華キャスティングで挑む三谷作品。現時点では未発表だが、「『清須会議』は群像劇であり全員が主役。日本映画・演劇界を代表する“信じられないくらい”豪華キャストに出演していただきます」と三谷監督が語る通り、今回も当然、豪華キャストの集結が期待される。ちなみに、小説執筆時のキャスティングイメージは、柴田勝家=ショーン・コネリー、秀吉=若かりし頃の緒形拳とのことだが、その采配やいかに?本作の撮影は今年11月にクランクイン、2013年秋の公開を予定している。『清須会議』は2013年秋、全国東宝系にて公開。■関連作品:清須会議 2013年秋、全国東宝系にて公開
2012年06月27日