2023年11月2日、日本オリンピック委員会(JOC)は、会長である山下泰裕さんが転倒し、頸椎を損傷したことを明らかにしました。産経ニュースによると、山下会長は、プライベートでの行動中に負傷し、現在は手術を受けて入院しているとのことです。1984年に開催された『ロサンゼルスオリンピック』にて、柔道男子無差別級で金メダルを獲得した山下会長。2019年6月にJOCの会長に就任し、3期目でした。山下会長の復帰の時期は未定で、当面は三屋裕子副会長が職務を代行するとのことです。突然の発表に、ネット上では「心配…」「びっくりです」「どうか安静になさってください」などの声が上がっています。山下会長の、1日も早いご回復をお祈り申し上げます。[文・構成/grape編集部]
2023年11月02日2023年3月1日(水)~5月7日(日)までの2か月間、全国のエニタイムフィットネス店舗にて実施しました、レッドブルとのコラボレーションキャンペーン 『ナショナルフィットネスチャレンジ 2023』 を終了いたしました。当キャンペーンには多くの会員さま・未入会者さまにご参加いただき、159,468kmの総走行距離となり、159,468円をレッドブルが支援する脊髄損傷の研究機関へ寄付いたします。ご参加いただきました皆さまありがとうございました。今後も、エニタイムフィットネスでの運動を通じて、社会貢献への取り組みを実施してまいります。■ナショナルフィットネスチャレンジ 2023『ナショナルフィットネスチャレンジ 2023』は、エニタイムフィットネスが協賛するチャリティーランイベント「Wings For Life World Run(ウィングス フォー ライフ ワールド ラン)」の目的である、脊髄損傷の治療法研究の支援に貢献するため、全国のエニタイムフィットネス店舗で 『エニタイムフィットネス チャリティーラン』 を開催しました。エニタイムフィットネス チャリティーランは、全国のエニタイムフィットネス会員が有酸素マシンで走った総距離を、支援金として寄付させていただきます。エニタイムフィットネスでの運動を通じて、社会貢献に参加できる取り組みとなっており、エニタイムフィットネス会員の皆様のご参加をいただきました。エニタイムフィットネス チャリティーランに参加いただいたエニタイムフィットネス会員には、レッドブル イベント招待券・コラボレーションアイテムを抽選で提供し、レッドブルユーザー(エニタイムフィットネス未入会者)には、エニタイムフィットネス1日無料体験を提供いたしました。キャンペーンページ : 実施概要のご報告1.実施店舗全国のエニタイムフィットネス店舗※一部の店舗を除く2.実施期間2023年3月1日(水)~2023年5月7日(日)3.参加者24,080回※エニタイムフィットネス会員様・未入会者様含む4.総距離159,468km※全国のエニタイムフィットネス会員様が有酸素マシンで走った総距離5.支援金159,468円※有酸素マシンで走った総距離へ換算6.懸賞エニタイムフィットネス会員様抽選にて、レッドブル イベント招待券(10名様)・コラボレーションアイテムTシャツ(40名様)へ提供。レッドブルユーザー(エニタイムフィットネス未入会者)様エニタイムフィットネス1日無料体験を提供。※体験利用は、お一人様一回まで。スタッフアワー内のみ利用。■エニタイムフィットネスとはエニタイムフィットネスは、米国発祥で世界5,000店舗以上を展開するフィットネスジム・フランチャイズです。日本では2010年に東京都調布市に1号店をオープンしてから、2022年3月には国内1,000店舗を達成。24時間365日オープン、会員は国内外すべての店舗を利用いただけることから、さまざまな生活スタイルにフィットするジムとして、全国の会員数も70万人を超えています。FC本部 :株式会社Fast Fitness Japan代表者 : 代表取締役社長 土屋 敦之東京本社 :東京都新宿区西新宿6-12-1パークウエスト6FHP: お問い合わせはこちら : 詳細はこちら プレスリリース提供元:NEWSCAST
2023年06月20日AKB48の柏木由紀が、25日に脊髄髄内腫瘍治療の手術を終えていたことが28日、所属事務所・ワタナベエンターテインメントの発表により明らかになった。同社は公式サイトを通じ、「先日ご報告させていただきました柏木由紀の脊髄髄内腫瘍治療につきまして、先週6月25日に7時間以上に及ぶ手術を終え、無事に成功した旨、担当医より申し受けておりました」と報告。「術後の状態が安定」したため、本日の発表に至った。また、「現在リハビリも開始しており、少しずつ歩くこともできております」と経過は良好のようで、「弊社としても全力でサポートして参りたいと存じます」と説明。「引き続き柏木由紀への声援を何卒よろしくお願い申し上げます」と呼びかけ、「改めまして応援してくださっているファンの皆様、関係者の皆様にはご心配をおかけいたしますことをお詫び申し上げます」と結んでいる。柏木は、3日放送のテレビ東京系『主治医が見つかる診療所』で人間ドックを受診し、精密検査の結果、脊髄空洞症が判明。治療に専念することを8日に明かし、22日のツイッターではファンに向けて、「初めての手術に入院、その後のリハビリなど正直泣きたくなるくらい不安で、『早く治したいけど、怖いよー、、』を繰り返す日々ですが、いつもみんなに支えていただいてることを思い出して乗り越えてきます」「まっててくださいねー!!」とメッセージを送っていた。
2021年06月28日アイドルグループ・AKB48の柏木由紀が8日、所属事務所の公式サイトや自身の公式ツイッターにて、「脊髄空洞症」の治療のため休養することを発表した。所属事務所の公式サイトは同日、「先日放送された番組内にて、柏木由紀が『脊髄空洞症』であることが判明いたしました。協議の上、大事をとり早期手術と治療のため、一定期間の休養をいただくことをご報告申し上げます」と発表。「つきましては、7月7日、7月8日に予定されている柏木由紀ソロコンサート『寝ても覚めてもゆきりんワールド』と、8月31日に予定されているWACK所属7グループとのコラボシングルのリリースは延期とさせていただきます」と伝えた。これを受け、柏木は自身のツイッターで「気持ちは元気なので安心してください」としながら、「ソロコンサートやWACKコラボシングル、AKBのコンサートを楽しみにしてくださっていた皆様には、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。私自身も本当に楽しみにしていたので、悔しい気持ちが大きいですが、中止ではなく延期なので! まずは治療に専念して、今まで以上に元気な姿をお見せできるようにしたいと思います」とコメント。そして最後に「心の中で少しだけでもエールを送っていただけると心強いです! どうぞよろしくお願いいたします」とメッセージを送った。
2021年06月08日2020年12月4日、那覇空港を離陸した羽田空港行き、日本航空(通称:JAL)904便がエンジントラブルのため緊急着陸しました。乗客乗員にケガはありませんでしたが、運輸安全委員会は、機長が国土交通大臣に報告をする必要がある「『重大インシデント』にあたる」と判断し、調査を進めています。トラブルのあった飛行機に乗っていた、沢庵和尚さんは離陸から緊急着陸するまでを動画で撮影していました。その様子を約7分にまとめて、自身のYouTubeチャンネルに投稿。当時の様子が分かる映像から、機長の対応に称賛の声が上がっています。何事もなく離陸滑走を始めた飛行機。しばらくすると、座席がガタガタと揺れはじめ…。ただいま離陸上昇中に、左のエンジンに故障が生じたため現在1つのエンジンで運航しております。また、この先那覇空港へ引き返すことが決定いたしました。我々はこのような時に備えて十分な飛行訓練を行っていますので、どうぞご安心ください。そのままお座席にてお待ちください。ご迷惑おかけしますことを心よりお詫び申し上げます。沢庵和尚ーより引用小刻みに揺れる機内で不安になる乗客のために、現在起きている状況を説明した機長。また、「訓練をしているため安心してほしい」と乗客に呼び掛けました。動画では、冷静な機長や客室乗務員のおかげか、乗客がパニックになったり取り乱したりする様子は映っていませんでした。全員無事に着陸できたのも、そのような背景があったのでしょう。動画にはたくさんのコメントが寄せられていました。・冷静な対応が素晴らしい。訓練されていると思うと少し安心できますね。・緊張感がとても伝わってきた。何事もなくてよかったです。・機長、客室乗務員、乗客がみんな冷静ですごい。安全に着陸した基調に感謝しかない。どんなトラブルの時でも冷静に、乗客の安全を守ってくれる客室乗務員、機長には頭が下がりますね。[文・構成/grape編集部]
2020年12月06日「車いすの操作や、脊髄を損傷した方の動きにきちんとリアリティを持たせるという作業は、樹という人物を見せるうえでとても重要でした。監修の方に動画を送るなどして、厳しくジャッジしていただきながら本番に臨みました」そう語るのは、映画『パーフェクトワールド君といる奇跡』(10月5日全国公開)で、車いす生活を送る一級建築士・鮎川樹を演じる岩田剛典(29)。車いす生活者の身体的特徴だけでなく、笑顔の裏の葛藤や孤独を見事に表現している。本作は、インテリアコーディネーターとして働く川奈つぐみ(杉咲花)が、事故で車いす生活となっていた初恋の人・樹に再会することからはじまるラブストーリー。共に仕事をするようになる2人の距離は次第に縮まっていくが……。ヒロイン・つぐみとのせつない恋も本作の魅力。“好き”だけでは越えられない、試練が2人の前に立ちはだかる。「もしも自分が樹だったら、正直恋だって諦めちゃうと思います。自分のことに精いっぱいで、愛する人ができても、その人を支えていく自信もなければ、覚悟もなくて。樹とつぐみのように、さまざまな壁や困難を乗り越えて行き着く愛の形というのは、究極ですよね」(岩田・以下同)現場では杉咲のプロフェッショナルな姿勢に刺激を受けたことも。「透き通った声、品のある話し方、その存在自体が唯一無二の女優さんだと思います。彼女が演じたつぐみのように、自分の思いをしっかり相手の目を見て伝えられる女性っていいですよね、信頼できる」そんな岩田の恋愛でいちばん大切だと思うことは?「思いやりですね。人生いろいろありますから、そのたびに相手のことをしっかり思いやれることが何よりも大事だと思います。家族以外でいちばん思いやれる相手というのが恋人なんじゃないかな、と。その人の喜ぶ顔が見たいと思ったら、それは絶対、恋のはじまりですよ(笑)」
2018年10月09日脊髄小脳変性症(SCD)とは出典 : 脊髄小脳変性症(SCD)は、小脳を中心に、脳幹、脊髄、大脳が徐々におかされる進行性の神経変性疾患のことです。主に歩くときにふらついたり、ろれつが回らなかったりする運動失調と呼ばれる症状があります。脊髄小脳変性症は数十の疾患を含む総称で、その病型によって運動失調のほか、パーキンソン症状や認知症などさまざまな症状が同時にあらわれることもあります。病型は、遺伝性とそうではない孤発性に大きく分けられます。発症年齢などにもよりますが、進行すると数年で車いすが必要になり、寝たきりになったり死に至ることもあり、家族や医療・福祉などのサポートが必要不可欠です。◇小脳のはたらき小脳は四肢の運動がなめらかになるように、また、歩行の安定を調整する機能などがあります。そのため、小脳が障害されると、筋肉に異常はないのに手足がうまく動かせなくなり、歩行時にふらつくといった運動障害が起こります。参考書籍: 日本神経学会厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」(監修)「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン」作成委員会(編集) 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 』(南江堂・2018年)脊髄小脳変性症(SCD)の主な症状出典 : 脊髄小脳変性症は数十もの病気が含まれているので、症状もさまざまあります。ここではその中でもよく見られる症状について、紹介します。1. 小脳性運動失調脊髄小脳変性症でもっとも代表的な症状です。筋力の低下、麻痺といった筋肉の異常はないものの、筋の協調運動の障害が生じて、体をうまくコントロールできない状態です。・歩行障害…歩行時のふらつき、歩けないなど・四肢失調…腕や手がうまく使えない、箸がうまく使えない、文字が下手になったなど・会話障害…声の大きさやリズムが不整、言葉が不明瞭になる・眼振…眼球が細かく揺れる2. 不随意運動本人の意思に関係なく体が動く症状です。・素早くピクッとする動き・踊っているように見える・姿勢の異常などが起きるジストニア3. 自律神経系の障害血圧や呼吸などを調整する自律神経系の障害によって引き起こされる症状で、脊髄小脳変性症のなかでも患者の多い多系統萎縮症(MSA)によく見られます。・起立性低血圧…起立時に血圧が急に下降し、立ちくらみ、耳鳴り、頭痛などが起こる。重症例では失神することもあり、寝たきりになるケースもある・発汗障害…下半身から発汗の機能に影響が出て汗が出なくなる一方で、上半身では汗が多く出るなど、体温調節がうまくできなくなる。最終的には全身で汗が出なくなる・排尿障害…十分に尿を膀胱に溜めていられない頻尿などの蓄尿障害と尿を排出させることが困難となる尿排出障害があり、同時に生じることもある・睡眠時無呼吸…眠っている間に10秒以上呼吸が止まるのを1時間のうち5回以上繰り返す脊髄小脳変性症(SCD)を発症する原因は?出典 : 遺伝性のものとそうでない孤発性と呼ばれるタイプがあり、原因も疾患によって様々です。疾患ごとの原因遺伝子の特徴などは研究によって明らかになってきていますが、脊髄小脳変性症を引き起こすはっきりとした原因はまだ解明されていません。孤発性の場合、生活習慣や食習慣の関係はないと考えられ、疾患の進行を左右するような食習慣などもありません。遺伝性の場合は、遺伝の仕組みや疾患ごとの原因遺伝子が分かってきており、親子で伝わっていく常染色体優性遺伝性の疾患、きょうだいのみで発症する常染色体劣性遺伝性が知られています。脊髄小脳変性症(SCD)の病型病型がはっきりと分かることでその後の進行の見通しや、治療などの道筋も立てられます。そのため、病型の分類などを把握することは大切です。病型は、遺伝性かいなかによって大きく区別されます。Upload By 発達障害のキホン遺伝性ではない孤発性は脊髄小脳変性症患者全体の半数以上を占めます。その中でも多系統萎縮症(MSA)は最も多く、かつて別の疾患と考えられていた、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症、シャイ・ドレーガー症候群も多系統萎縮症に含まれています。小脳以外にも脳幹の萎縮が目立ち、進行すると車いすの使用や寝たきりになるなど日常生活が難しくなります。一方で、皮質性小脳萎縮症は小脳失調症以外のパーキンソン症状や自律神経症状などがない純粋小脳失調型です。予後や進行は多系統萎縮型と大きく変わってきます。Upload By 発達障害のキホン遺伝性の場合、多くは常染色体優性遺伝性です。日本で発症の頻度が高いのはマチャド・ジョセフ病や脊髄小脳失調症6型(SCA6)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症などがあげられます。常染色体劣性遺伝性は、両親が未発症でも発症します。十分に家族歴などの情報を得られないと、孤発性と思われる可能性もあります。脊髄小脳変性症(SCD)の発症の頻度や年齢の特徴出典 : 脊髄小脳変性症の患者は、全国で3万人を超えると言われています。また、2003年の「運動失調に関する調査及び病態機序に関する研究班」の解析結果では、脊髄小脳変性症の67.2%が孤発性、27%が常染色体優性遺伝性、1.8%が常染色体劣性遺伝性、残りが「その他」と「痙性対麻痺」でした。出典: 診断・治療指針(医療従事者向け) 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)(指定難病18)|難病情報センター発症年齢の傾向は、病型によっても変わってきます。全体では小児から70歳以上の高齢までと幅広く、特に30歳前後の中年以降に多くなります。出典: 脊髄小脳変性症 概要|小児慢性特定疾病情報センター主に見られる多系統萎縮症と皮質性小脳萎縮症は、ともに成年期以降に発症します。そのうち、多系統萎縮症が64.7%、35.3%が皮質性小脳位縮小と臨床診断されています。出典: 日本神経学会厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」(監修)「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン」作成委員会 (編集) 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 』(南江堂・2018年)日本における遺伝性脊髄小脳変性症は、90%以上が常染色体優性遺伝性、数%が常染色体劣性遺伝性、さらにまれにX連鎖性が認められています。常染色体優性遺伝性に含まれる疾患別では、マチャド・ジョセフ病、脊髄小脳変性症6型(SCA6)、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、脊髄小脳変性症31型(SCA31)の4疾患だけで70〜80%を占めます。出典: 日本神経学会厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」(監修)「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン」作成委員会 (編集) 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 』(南江堂・2018年)常染色体優性遺伝性であれば、祖父母、両親、患者の各世代には男女ともに発病者が分布していることになります。成人発症の遺伝性疾患は、患者のきょうだいや子どもの世代に未発症の保因者がいることも十分に考えられます。一方、常染色体劣性遺伝性の場合、両親が未発症でも保因者となります。患者のきょうだい、両親が近親婚でその血縁に罹患者がいる場合には、劣性遺伝である可能性が高いと思われます。また、一見孤発性と思われても、常染色体劣性遺伝性である可能性もあります。常染色体劣性遺伝脊髄小脳変性症3、4、6型の疾患では、多くが幼少期から若年発症です。しかし、一部には出生時にすでに小脳萎縮があり、非進行性であるなどの特徴から奇形・低形成、またはそれを基盤とした発達障害との異同が問題となっています。ほかにも、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症は、祖父母、父母、子、孫…と世代を経るごとに発症年齢が早まるのが特徴です。成年発症では、ふらつき、震えなどの小脳失調、舞踏アテトーゼなどの不随意運動が主症状とされてます。一方で、20歳以下の発症では、てんかん、精神発達遅滞、小脳運動失調といった症状がみられます。脊髄小脳変性症(SCD)の検査・診断出典 : 脊髄小脳変性症の診断は神経内科で行われ、臨床症状や頭部MRI、CTスキャンの画像検査から非遺伝性・遺伝性の違い、病型を調べます。診断を受けることで、症状に対応した治療を受けられます。皮質性小脳脊髄小脳変性症は、診断のための決定的な所見がないため、検査によって他の疾患の可能性を除外していきます。・画像検査…MRIやCTスキャンで小脳などの萎縮の有無、脳血流シンチグラフィーで小脳の血流低下の有無などを調べます。・神経学的な診察…本人の意思と関係なく体が動く反射や反応、麻痺などの神経症状がないかを調べます。・遺伝子検査…家族の中で脊髄小脳変性症の人がいる場合、採血をして遺伝性かどうか、どの病型に属しているかを調べます。予後の見通しなどにか変わってくるほか、治療可能な疾患の処置を適切に行うためにも、別の病気ではないかどうかの鑑別は重要です。症状が似ている疾患は以下のようなものがあります。・ビタミンB1やB12、葉酸の欠乏・アルコール中毒・甲状腺機能低下症・多発性硬化症・エイズ関連の神経疾患など多くの原因遺伝子が分かってきたこともあり、遺伝子検査によって正確に診断できるようになってきました。正確な診断ができることで、臨床的に有用な情報が提供されます。また病型の確定は予後の判定、合併症の予測に有効です。遺伝子検査をしない場合、原因究明のために他のいくつもの検査を繰り返すことになりますが、それが必要なくなるという長所もあります。しかし、遺伝性の場合、親族に保因者がいたり、患者の子ども以降の世代にも影響したりすることが考えられ、診断の受容における心理的影響についても配慮が必要であることが知られています。そのため、遺伝子検査は、患者本人の意思に基づいて行われるものとされています。参考: 脊髄小脳変性症の診断 | 健康長寿ネット参考書籍: 水澤 英洋 (監修) 月刊『難病と在宅ケア』編集部 (編集)『脊髄小脳変性症のすべて』(日本プランニングセンター・2006年)参考書籍: 日本神経学会厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」(監修)「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン」作成委員会 (編集) 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 』(南江堂・2018年)脊髄小脳変性症(SCD)の進行・予後は?出典 : 脊髄小脳変性症の進行は、病型ごとに傾向があります。小脳症状のみがみられる病型の場合、孤発性、遺伝性を問わず、おおむね10〜15年など長い時間をかけてゆっくり進行します。発症年齢が高齢の場合は、余命にあまり影響を与えない場合もあります。ただし、小脳だけでなく多系統を障害するタイプの病型では、孤発性、遺伝性の両方で、進行が早く重症になることが分かっています。出典: 独立行政法人国立病院機構 宇多野病院 『難病ケアガイド』(日総研出版・2005年)多系統萎縮症の予後は個人差はあるものの、一般的には、発症から3年ほどで歩行補助具、5年ほどで車いすが必要となります。その後は、発症から10年程度のうちに寝たきりとなり、血圧や呼吸、排尿、嚥下などの機能が衰えることで、肺炎や窒息などによって死亡する場合があります。出典: 月刊 難病と在宅ケア4月号脊髄小脳変性症のすべて「多系統萎縮症の現状と課題」(日本プランニングセンター・2018年)対して同じ孤発性でも、皮質性小脳萎縮症では、歩行時のふらつきや字がうまく書けないといった上肢の運動失調、ろれつが回りにくいなどの小脳症状のみがみられます。発症から4〜5年後に一人で歩ける人は76%だったという国内の研究の報告もあります。長い年数をかけてゆっくりと進行し、多くのケースで車いすが必要になります。出典: 日本神経学会厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」(監修)「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン」作成委員会 (編集) 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 』(南江堂・2018年)遺伝性も同様で、常染色体優性遺伝性脊髄小脳変性症のなかでも、小脳症状のみがみられる脊髄小脳変性症6型(SCA6)や脊髄小脳変性症31型(SCA31)は、発症から車椅子が必要になるまでの平均が20年余りという報告もあり、進行はゆるやかであることが多いです。出典: 日本神経学会厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」(監修)「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン」作成委員会 (編集) 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 』(南江堂・2018年)脊髄小脳変性症(SCD)の治療やリハビリは?出典 : さまざまなアプローチで、根本的治療の実現に向けて研究が進められていますが、まだ確立した治療法はありません。薬で症状を和らげる対症療法や生活の質を維持していくためのリハビリが中心となっています。一般的に、薬剤による治療開始は早ければ早いほど、運動機能が維持でき、身体機能も良好な状態をより長く保つことができる可能性があります。主症状である運動失調に対しては以下のような薬が使用されます。注射液…プロチレリン酒石酸塩(ヒルトニン®)錠剤…タルチレリン水和物(セレジスト®)その他、足のつっぱり感、めまい感など、症状に応じて薬で治療します。ヒルトニン®セレジスト®うまく体が動かせなくなっていくことで、症状の進行とともに患者が転倒などを恐れて動く時間が減っていく傾向があります。それに伴い、筋力や体力の低下につながり、さらに症状を悪化させます。しかし、小脳失調を主体とする脊髄小脳変性症に対して、バランスや歩行に対する理学療法を集中的に行うと、小脳失調や歩行が改善することができます。病院などでのリハビリテーションをはじめ、自宅での日常生活でも自分でできることを継続的に行うなど前向きに体を動かしていくことが大切です。介護者が専門的技術を指導してもらうことも、介護者負担を軽減するために重要です。外来や訪問リハビリテーションの際に歩行時や車いすなどへの移乗時の介助方法に関して、介護者が指導を受けて習得することで、負担感の軽減、腰痛や転倒事故の予防にもつながることが期待されます。参考書籍: 日本神経学会厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」(監修)「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン」作成委員会 (編集) 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 』(南江堂・2018年)家族も知って安心。利用できる福祉制度・相談先出典 : 脊髄小脳変性症は、厚生労働省の認可する指定難病に認定されており、医療費の補助や福祉・介護サービスなどを受けることができます。患者本人や家族の生活を支えてくれる制度や相談先を知り、頼るようにしましょう。◇医療ソーシャルワーカー病院の医療ソーシャルワーカーは、病気やけがで生じる心理的・社会的問題、経済的問題を患者や家族が解決できるようにお手伝いしてくれます。診断された本人や家族がどう受け止めたらいいか悩んだり、進行して働くことができなくなる不安、身の回りのことが一人でできにくくなっていくといった問題に専門的な立場から寄り添い、改善の糸口を考えてくれます。参考: 医療ソーシャルワーカーとは|公益社団法人 日本医療社会福祉協会◇特定医療費(指定難病)受給者証認定申請によってお住まいの都道府県から交付されます。受給者証があると、医療費について、所得に応じて一部が助成されます。◇障害者総合支援法「障害者総合支援法」では、障害者の定義に難病等も含まれます。そのため身体障害者手帳を持たない難病患者にも、障害福祉サービスが公費負担されます。お住まいの市町村区の担当窓口で申請をすると、障害福祉サービス・相談支援・補装具及び地域生活支援事業 (障害児の場合は、障害児通所支援と障害児入所支援も含む)が利用できるようになります。参考: 障害者総合支援法が施行されました| 厚生労働省◇介護保険介護を必要とする人に対し、その費用の給付を受けられます。介護保険に必要な要介護認定は本来、65歳以上が対象ですが、脊髄小脳変性症は40歳以上から対象となります。お住まいの市区町村の窓口で要介護認定を申請してください。医療保険と介護保険で重複しているサービスは介護保険が優先されます。ただし、訪問看護は医療保険となります。参考: 特定疾病の選定基準の考え方 | 厚生労働省◇傷病手当金病気療養のために仕事を休み、給料が減った・もらえないなどの場合、健康保険から支給されます。◇障害年金国民年金の加入者が、病気やけがで障害が残った時に受け取れる障害基礎年金と障害基礎年金に上乗せして支払われる障害厚生年金があります。脊髄小脳変性症では、障害が重くなり仕事を継続することが困難になった際などに申請できる場合があります。障害認定日や障害程度、年金の加入期間など、細かい決まりがあるので病院で相談してみてください。参考: 難病対策| 厚生労働省参考: 指定難病患者への医療費助成制度のご案内 | 難病情報センターまとめ出典 : 脊髄小脳変性症は、病型によって症状や進行などが変わってきます。根本的な治療法がまだなく、介護などで家族や周りの支援が必要となる可能性が高い進行性の難病ですが、検査をしっかり受けることで、症状に対応した治療を受られ、リハビリで体の機能をなるべく維持することもできます。医療費の補助や介護サービスを受けられるので、制度を理解してサポートを受けることで、一緒に過ごす家族の不安や負担を減らすこともできます。診断後の日常生活は、患者本人が行えること、周囲のサポートを必要とすることを見極めながら、治療やリハビリをして過ごすことが大切です。参考: 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く)(指定難病18)|難病情報センター参考書籍: 独立行政法人国立病院機構 宇多野病院 『難病ケアガイド―筋萎縮性側索硬化症・パーキンソン病・脊髄小脳変性症・多発性硬化症』(日総研出版・2005年)参考書籍 : 水澤 英洋 (監修) 月刊『難病と在宅ケア』編集部 (編集)『脊髄小脳変性症のすべて』(日本プランニングセンター・2006年)参考書籍: 月刊 難病と在宅ケア6月号脊髄小脳変性症のすべて「脊髄小脳変性症の病態と治療〜現状と展望〜」(日本プランニングセンター・2018年)参考書籍: 日本神経学会厚生労働省「運動失調症の医療基盤に関する調査研究班」(監修)「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン」作成委員会 (編集) 『脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018 』(南江堂・2018年)
2018年08月28日作家の乙武洋匡氏が7日、自身のツイッターを更新。脊髄損傷による両下肢麻痺で、今後は車椅子での生活になると公表したアイドルグループ・仮面女子の猪狩ともかにエールを送った。乙武洋匡氏自身も車椅子生活を送っている乙武氏。ツイッターで「盲目のお笑い芸人がR1グランプリで優勝する時代。『車椅子アイドル』がいたっていいですよね」とコメントし、「面識はありませんが、応援させていただきます!」とメッセージを送った。猪狩は4月11日、都内で強風によって倒れた看板の下敷きになる事故に遭い、緊急手術を受けて入院していたが、グループの公式ツイッターで7日、「『脊髄損傷による両下肢麻痺』となり、自分の力で脚を動かす事が困難で今後は車椅子での生活となります。退院後は仮面女子として活動を続け、これを事務所も支えていきます」と発表された。
2018年05月07日アイドルグループ・仮面女子の猪狩ともかが、脊髄損傷による両下肢麻痺で、今後は車椅子での生活になることが、グループの公式ツイッターで報告された。また、猪狩本人も、自身の公式ブログで報告した。猪狩は4月11日に都内で、強風で倒れた看板の下敷きになるという事故に遭い、緊急手術。その後、ICU(集中治療室)、HCU(高度治療室)を経て、一般病棟に入院中だという。公式ツイッターでは「『脊髄損傷による両下肢麻痺』となり、自分の力で脚を動かす事が困難で今後は車椅子での生活となります」と病状を説明し、「退院後は仮面女子として活動を続け、これを事務所も支えていきます。これからも猪狩ともかを宜しくお願いします」と伝えた。猪狩も同日、自身のブログを更新し、「主に負った怪我は、・瞼裂傷・頭部挫創・骨折(脚、肋骨、胸椎、腰椎)そして、・脊髄損傷その影響で両下肢麻痺。私は歩くことはもちろん、自分の力で脚を動かすことすらできなくなってしまいました。治る可能性は極めて低く、今後、車椅子での生活を余儀なくされました」と詳しく説明。「体調・怪我は徐々に良くなり、今は自立した車椅子生活を送れるよう毎日リハビリに励んでいます。退院は今から約3ヶ月後の予定です」と記した。そして、「ずっと心配してくださっている皆さんにまずは早く『私、大丈夫だよ!』って言いたくてもどかしい日々が続きました。でも私自身、状況を把握・受け入れるのに相当な時間が掛かりました」と葛藤を明かし、「自分自身が受け入れることに時間がかかったこと、ファンの皆さんに何とお伝えしたらいいか分からなかったこと、そんなことを考えていると、なかなか文章にまとめることができず、ご報告が遅くなってしまいました。ごめんなさい」と発表を決意するまでの思いをつづった。また、「“歌って踊らなくなる時 = 卒業”としか考えたことがなかった私は、踊れない猪狩ともかを想像することができなくて。そんな状態の私に需要はあるのか。いったい何ができるのか」「絶望しました」と悩むも、「不思議と“仮面女子としての活動を辞める”という考えに至ったことは1度もありませんでした」とのこと。 「そう思わせてくれたのは支えてくれる周りの全ての人でした」とし、家族や友人、スタッフ、メンバー、ファンへの感謝をつづった。「私は生きています。このことだけは何にも代えることのできない神様からのプレゼントだと思っています。その分試練も与えられたけど、きっと越えられない試練は与えないはず」と猪狩。「これからどんなことがあっても、向日葵のように上を向いて楽しくて幸せな人生を歩んでいく。そして毎日を丁寧に大切に生きていきたい」とつづり、「私は前を向いています。もう心配しないでね。これからも猪狩ともかを見守ってください。そして一緒に歩んでいければ嬉しいです。この先もずっと、よろしくお願いします」とメッセージを送った。
2018年05月07日産業技術総合研究所(産総研)は3月22日、水素ステーション用蓄圧器の損傷評価技術を開発したと発表した。同成果は産総研製造技術研究部門トリリオンセンサ研究グループの藤尾侑輝 研究員、坂田義太朗 研究員、寺崎正 研究グループ長、同研究部門の徐超男 総括研究主幹、九州大学の山辺 純一郎 特任教授、村上敬宜 名誉教授、佐賀大学の上野直広 教授、水素エネルギー製品研究試験センターによるもの。1月12日付の学術誌「International Journal of Hydrogen Energy」に掲載された。水素を貯蔵する方法としては、蓄圧器などの高圧ガス容器での貯蔵が一般的であり、鋼製容器と複合容器の2種類が利用されている。いずれの容器も水素の充塡・放出に伴う加圧・減圧の繰り返しによって生じる容器内部の疲労き裂や水素脆化が懸念となっている。現状は、高圧ガス容器の内部を定期的に目視検査することによって安全性を確保しているが、より簡便に内部の状態を調べることができる検査技術が望まれている。今回の研究では、外部からの刺激によって繰り返し発光する応力発光シートセンサを水素ステーション蓄圧器の損傷診断技術に応用し、水圧サイクル試験中での内部亀裂の可視化および進展度を算出する技術の開発に取り組み、適用可能性を示すことに成功した。応力発光体を用いたセンサは、個々のセラミックス微粒子が力学的刺激により繰り返し発光することが特徴。今回開発した技術では、蓄圧器外表面に接着した応力発光シートセンサーの発光分布を撮影することで、水素ガスの充填・放出の繰り返しによって生じる蓄圧器内面の損傷を2次元的に可視化することができるほか、内部亀裂の進展度を発光パターンの変遷から推測することも可能だという。同技術は、近年整備が進められている水素ステーションの安全・安心への貢献だけでなく、パイプラインや航空機などの安全管理への応用も期待できるという。
2016年03月23日新潟大学は2月3日、多発性硬化症および視神経脊髄炎の神経変性に関わる新たな仕組みを発見したと発表した。同成果は、同大学 脳研究所 神経内科 河内泉 講師、西澤正豊 教授、穂苅万李子 大学院生、横関明子 医師らの研究グループによるもので、2月2日付けの米科学誌「Annals of Neurology」に掲載された。多発性硬化症(MS)および視神経脊髄炎(NMO)は、視神経や脊髄、脳に炎症が起こることで、視力の障害、手足の麻痺、しびれや認知機能障害などの症状が現れる神経難病。異常な免疫反応により、MSでは神経軸索を覆うミエリンが破壊され、NMOでは神経細胞・軸索に隣接しサポートするアストロサイトが破壊される。この結果、神経機能が重度に障害される神経変性が起こる。MSとNMOでは異なる免疫制御治療が開発されており、異常な免疫因子をある程度制御することが可能となっているが、神経を保護する治療法は未だ開発されていない。今回、同研究グループは、MSとNMOでは視力障害がしばしば起こるが、NMOではMSに比較して、より重度で回復が不良な視力障害に進展すること、MSのミエリン障害、NMOのアストロサイト障害に加え、MS・NMOともに、視神経軸索と網膜の神経細胞が強く変性していることを明らかにした。また、MSでは「未知の異常な免疫因子」によるミエリンの破壊に引き続き神経変性が起こる一方で、NMOでは「アクアポリン4抗体」によるアストロサイトの破壊に引き続き神経変性が引き起こるが、MSとNMOで障害された神経軸索には、変性したミトコンドリアや陽イオンチャネル「transient receptor potential cation channel subfamily M member 4 (TRPM4)」が異常に集積しており、MSとNMOの神経軸索減少に関与していることがわかった。さらに神経軸索の障害は、網膜の神経細胞にも変化を及ぼすことがわかった。特にNMOではMSと比較してより多くの異常なミトコンドリアが、変性した神経軸索に含まれるため、疾患の早期から免疫制御治療を行うことに加え、神経保護治療を追加する必要があることが示唆された。同研究グループは、異常な免疫分子を制御する「免疫制御治療」と「神経保護治療」の組み合わせにより、患者のQOL向上が期待されるとしている。
2016年02月04日慶應義塾大学(慶大)は1月18日、ヒトiPS細胞から効率的にオリゴデンドロサイト前駆細胞へと分化誘導する方法を開発し、マウス損傷脊髄の再髄鞘化に成功したと発表した。同成果は同大医学部生理学教室(岡野栄之 教授)と同整形外科学教室(中村雅也 教授)によるもので、2015年12月24日に米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。オリゴデンドロサイトは中枢神経内に存在する細胞の1つで、細い神経の周囲を取り囲む髄鞘と呼ばれる脂質の層を形成し、神経の信号が伝わる速度を早める機能を持つ。脊髄損傷に対する神経幹細胞移植による機能回復メカニズムとして、移植細胞がオリゴデンドロサイトに分化して神経の再髄鞘化に寄与するという説が唱えられているが、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞は主にニューロンに分化し、オリゴデンドロサイトにはあまり分化には分化しなかった。今回の研究では、同研究グループが2014年に開発したヒトiPS細胞から効率的にオリゴデンドロサイト前駆細胞を多く含む神経幹細胞(hiPS-OPC-enriched NS/PCs)へと分化誘導する方法を用いて、マウス脊髄損傷に対しhiPS-OPC-enriched NS/PCsを移植し、その有効性を検証した。その結果、hiPS-OPC-enriched NS/PCsが多くの神経栄養因子を分泌していることを確認。移植後12週のマウス脊髄内で、移植細胞はニューロン、アストロサイトに加え、成熟オリゴデンドロサイトに分化していた。さらに従来のヒトiPS細胞由来神経幹細胞の移植では見られなかった所見として、移植細胞由来オリゴデンドロサイトが残存軸索を再髄鞘化していた。また、移植細胞由来ニューロンは、ホストマウスのニューロンとシナプスを形成していた。その後、hiPS-OPC-enriched NS/PCsを移植したマウスの後肢運動機能評価を行った結果、明らかな運動機能の改善が認められた。また、電気生理学的評価として、運動誘発電位を計測したところ、明らかな改善が認められたことから、移植細胞由来のニューロンやオリゴデンドロサイトが、神経回路の再構築や神経伝達速度の回復に寄与していることが示唆された。脊髄損傷に対しては、従来の細胞移植でも有意な運動機能の回復が認められていたが、今回の成果によってさらなる機能回復を望める可能性が示されたことになる。
2016年01月18日慶應義塾大学は11月6日、ES/iPS細胞から脳・脊髄にある任意の神経細胞を作製することができる技術を開発したと発表した。同成果は同大学医学部生理学教室の岡野栄之 教授、今泉研人氏、順天堂大学大学院医学研究科ゲノム・再生医療センターの赤松和土 特任教授らの共同研究グループによるもので、11月5日に米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載されたアルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経疾患では、脳・脊髄の特定の部位が障害されることが知られている。ヒトES/iPS細胞を用いてこれらの疾患を研究するためには、病変となる部位の神経細胞を選択的に作製する技術が必要となる。しかし、ヒトES/iPS細胞から任意の部位を自在に作り分ける手法は開発されておらず、これまで報告されている選択的に神経細胞を作製する方法はそれぞれが全く異なる手法を用いているため、異なる部位での症状を比較する研究は難しかった。今回の研究では、神経の発生過程における神経管の細分化を決定するシグナルを調整する薬剤の濃度を変化させることで、共通の作製法を用いて前脳から脊髄に至るあらゆる脳領域を作り分けることに成功。さらに、同技術を用いてアルツハイマー病とALSにおいて脳・脊髄の特定の部位の神経細胞で生じる症状を、患者iPS細胞から作製した神経細胞で再現することができたという。同技術により、特定の脳領域で起きる神経疾患の症状を正確に試験管内で再現することが可能になるほか、脳の複数の領域にまたがる神経難病では、iPS細胞を用いた研究の精度が向上し、新しい診断・治療方法の開発につながることが期待される。
2015年11月06日米国ハーバード大学はこのほど、マウスを用いた実験から、脳の白質が障害を受けた際に障害部位のアストロサイトが脳由来神経栄養因子の遊離を介して損傷した白質の修復を促すことを明らかにしたと発表した。同成果は、マサチューセッツ総合病院 ハーバード大学医学部の荒井健 Assistant Professorの研究チームの宮元伸和 研究員および眞木崇州 研究員らが中心となって行った研究によるもの。10月14日(現地時間)に北米神経科学学会の学会誌「The Journal of Neuroscience」オンライン版に掲載された。脳の白質は人間の高次機能を司る脳領域だが、脳卒中や血管性認知症などの脳疾患において、容易に障害を受けてしまう。そのため、障害を受けた脳白質をどのように修復するかは、さまざまな脳疾患の治療戦略を考える上で重要な課題となっている。今回の研究では、脳白質に存在するオリゴデンドロサイト前駆細胞に着目し、脳白質の修復メカニズムを検討した。グリア細胞の一種であるオリゴデンドロサイト前駆細胞は、脳がその構造を構築する胎生期および幼若期に活発に活動する。その時期のオリゴデンドロサイト前駆細胞は、増殖を繰り返しながら脳白質の主要な細胞種であるオリゴデンドロサイトへと分化する。しかし近年の研究から、大人の脳においても一定数のオリゴデンドロサイト前駆細胞(不活化状態)が残っていることが明らかとなってきた。オリゴデンドロサイトは脳白質の機能維持に重要な役割を果たしているが、この細胞は分裂することができない。そのため大人の脳において、オリゴデンドロサイトが何らかの理由でダメージを受けると、不活化状態にあったオリゴデンドロサイト前駆細胞が一時的に活性化してオリゴデンドロサイトへと分化する。実際に研究チームがマウスの脳血流を持続的に低下させて血管性認知症の状態を人工的に引き起こすと、脳白質の障害が生じる一方で、オリゴデンドロサイト前駆細胞の一過性の増殖とオリゴデンドロサイトへの分化が観察された。しかし、アストロサイトからの脳由来神経栄養因子の遊離量を遺伝子操作により減弱させると、白質障害後に新しく誕生したオリゴデンドロサイトの細胞数が顕著に少なくなっていた。アストロサイト、オリゴデンドロサイト前駆細胞、オリゴデンドロサイトはいずれも脳のグリア細胞に分類される細胞である。これらグリア細胞は脳機能の維持において、それぞれが異なる独自の役割を担っている。同研究チームは今回の研究成果について、障害を受けた脳白質の修復を促進させる薬剤の新規ターゲットを提示しただけでなく、グリア細胞同士の関係がどのように脳機能を維持・修復しているかに関するメカニズムの一端を明らかにしたものであるとしている。
2015年10月23日生理学研究所(生理研)は10月2日、脊髄損傷後のサルの運動機能回復の早期において、やる気や頑張りを司るどる脳の領域「側坐核」が、運動機能を司る「大脳皮質運動野」の活動を活性化し、運動機能の回復を支えることを脳科学的に明らかにしたと発表した。同成果は、同研究所の西村幸男 准教授、京都大学大学院医学研究科大学院生(研究当時)の澤田真寛氏(現・滋賀県立成人病センター 脳神経外科)、理化学研究所・ライフサイエンス技術基盤研究センターの尾上浩隆グループディレクターらによるもの。詳細は米科学誌「Science」に掲載された。これまでの研究から、患者がなんらかのリハビリを行う際、意欲を高く持つと回復効果が高く、うつ症状を発症すると、機能の回復に遅れが生じることが知られていた。しかし、実際に脳科学的に、そういった高い意欲であるやる気や頑張りといった心理状態が、運動機能の回復にどのように結びついているのかはよく分かっていなかった。そこで研究グループは、今回、サルを用いて、やる気や頑張りを司る脳の神経核である「側坐核」を不活性化させることで、運動機能を司る「大脳皮質運動野」の神経活動がどのように変化するのかを調査。その結果、脊髄損傷後の運動機能回復の初期において、側坐核による運動野の活性化がリハビリテーションによる運動機能回復を支えていることを突き止めたとする。また、脊髄損傷前と完全に運動機能回復した後では、側坐核の活動は大脳皮質運動野の活動や手などの運動に関与していないことも確認されたことから、研究グループでは、実際の患者のリハビリにおいては運動機能を回復させることそのものも重要だが、脳科学や心理学などに基づく心理的サポートも重要であることが示された、とコメントしている。
2015年10月02日Appleは、25日より販売する「iPhone 6s」「iPhone 6s Plus」の修理代金を公開した。それによると、画面損傷の場合、iPhone 6sであれば税込み(以下同)14,800円、iPhone 6s Plusは16,800円で修理を受けられる。ディスプレイにひびが入った場合や、割れてしまった際など画面損傷の修理代金は、iPhone 6s Plusが16,800円、iPhone 6s/6 Plus/5s/5c/5が14,800円、iPhone 6が12,800円となる。ただし、同社が用意する保証サービス「AppleCare + for iPhone」(税別14,800円)に加入していれば、iPhone 6s/6s Plusの場合、2年間で最大2回まで11,480円で修理を受けられる。バッテリーの消耗が早くなったり、充電できなくなるなどのバッテリーに関する修理の場合は、すべてのiPhoneが同一で9,400円。なお、こちらはAppleCareに加入していれば費用はかからない。修理にかかる所要時間は、どちらも1周間程度。また、画面やバッテリー以外の修理については、iPhone 6s Plus/6 Plusが税別(以下同)38,800円、iPhone 6s/6が34,800円、iPhone 5s/5c/5が31,800円、iPhone 4sが22,800円、iPhone 4が16,800円となっている。
2015年09月14日理化学研究所(理研)は8月28日、皮膚で痛みを感じる「痛覚」や自分の関節の位置や動きを感じる「固有感覚」といった異なる種類の感覚を、脊髄で放出される脂質「LysoPtdGlc」が、各感覚を分けることで、脊髄以降、脳に至るまで混線することがなくなることを発見したと発表した。同成果は、理研 脳科学総合研究センター神経成長機構研究チームの上口裕之チームリーダーと神経膜機能研究チームの平林義雄チームリーダー、東北大学 大学院薬学研究科の青木淳賢教授、東京大学 大学院総合文化研究科の太田邦史教授らによるもの。詳細は米国の科学雑誌「Science」に掲載された。さまざまな感覚は、それを伝える神経細胞の突起(神経突起)が脊髄の特定部位を通り、最終的に脳へ投射されることが知られていたが、これまでの研究では、この神経突起の分別を行うタンパク質などは発見されておらず、研究チームは、この分別がタンパク質の働きだけでは説明が難しいことから、脂質によって制御されているのでは、と考え、その検証作業を行ったという。その結果、脊髄を構成する神経細胞以外の細胞(グリア細胞)が、特定の部位で脂質を産生し、その代謝産物が痛覚神経突起のみを反発して固有感覚神経突起から分離させる役割を担っていることを突き止めた。また、その分子メカニズムとして、Gタンパク質共役受容体「GPR55」が受容体であり、これを介して痛覚神経突起を反発することで、痛覚と固有感覚の神経突起が混線することなく別の目的地へ投射できることを突き止めたとする。なお研究グループでは、今回の成果を受けて、脳脊髄の発生メカニズムの理解が深まり、損傷した神経回路の修復技術の開発が進むことが期待できるとコメントしているほか、GPR55は痛覚神経細胞だけでなく骨細胞・脂肪細胞・免疫細胞・がん細胞などにも発現していることから、これらの細胞が関与する疼痛・骨疾患・肥満・炎症・がん転移など各種疾患の病態解明と治療法開発に役立つ可能性があるとしている。
2015年08月28日順天堂大学は7月1日、脳の前頭前野が損傷を受けた時に示す記憶障害の程度を予測する方法を開発したと発表した。同成果は同大学医学部生理学第一講座の長田貴宏 助教らの研究グループと、東京大学、東京工業大学の共同研究によるもので、6月30日付(現地時間)で科学誌「PLOS Biology」に掲載された。大脳の前頭葉の前方に位置する前頭前野は記憶や思考などに関与しており、記憶課題の遂行中には複数の部位が活動することが知られている。しかし、前頭前野損傷患者における症例報告では、これらの部位の損傷の全てが記憶障害を引き起こすわけではなかった。そのため、なぜ前頭前野で特定の部位を損傷すると記憶障害につながるかはわかっておらず、損傷で記憶障害を引き起こす部位の位置やその障害の程度について予測する方法は確立されていなかった。今回の研究では、記憶課題遂行中のサルの脳活動をfMRIを用いて測定することで、課題遂行時に活動する領域を同定し、それらの領域がネットワークを形成して活動していることを突き止めた。fMRIはMRIを使って脳の血流反応を計測することで、脳の活動を非侵襲的に測定することができる。さらに、ネットワークの活動変化に着目し、パターン認識と呼ばれる計算手法を用いることで、これらの脳領域が損傷を受けネットワークから取り除かれた際の影響を定量的に予測するアルゴリズムを開発。このアルゴリズムを用いると、損傷を受けて障害を示す部分とそうでない部分の違いを説明することができた。また、ネットワーク分析の観点から、損傷時に障害を示す部位は、記憶を思い出すときに活動するネットワークの中でほかの部位と多く結びついており、「ハブ」として脳の情報処理における中心的な役割を果たしていることがわかった。同研究で開発した手法を用いることで、脳損傷や脳外科手術における後遺症の程度を事前に予測できると考えられており、手術で影響を受ける部位を回避したりリハビリの方針を最適化するのに役立てられることが期待される。
2015年07月01日東京医科歯科大学は6月18日、小脳の神経細胞が徐々に脱落し運動機能が低下する脊髄小脳失調症6型(SCA6)の病態に、神経炎症が関与することを明らかにしたと発表した。同成果は東京医科歯科大学脳統合機能研究センターの渡瀬啓 准教授と相川知徳 特任助教の研究グループによるもので、国際科学誌「Human Molecular Genetics」に掲載された。脊髄小脳失調症は、アルツハイマー病、パーキンソン病に次いで患者数が多い神経変性疾患で、現在のところ有効な治療法は確立されていない。今回研究の対象となったSCA6は日本で最も患者数の多い優性遺伝性の脊髄小脳失調症の1つとして知られている。同研究グループは、プルキンエ細胞と呼ばれる小脳の神経細胞がSCA6で変性に陥る機構を解明するため、SCA6モデルマウスの小脳の遺伝子発現状況を網羅的に解析。その結果、SCA6モデルマウスではプルキンエ細胞変性が確認できるより前に、脳内の免疫系を担うミクログリア細胞が活性化していることを突き止めた。ミクログリアは神経組織が傷害を受けると活性化するが、その際、神経細胞傷害的なタイプと、神経細胞保護的なタイプ、さらにそれらの中間的な状態となりうることが知られている。活性化したミクログリアはある特定のToll様受容体(TLR)タンパクを発現しており、同研究グループはTLRシグナルがミクログリアを活性化していると予想。TLRシグナルの伝達を仲介する分子MyD88の遺伝子を欠損させたマウスとSCRモデルマウスを交配させ、ミクログリアの活性化を抑制を試みたところ、作成した2重変異マウスではプルキンエ細胞変性が抑制され、SCA6の症状が改善されていた。これらの結果から、SCA6モデルマウスでは、神経細胞傷害的なタイプが有意に活性化されており、プルキンエ細胞変性を悪化させていることが示唆された。今回の研究成果はTLRシグナルの機能を阻害することで、この病気の初期の病態を軽減できる可能性を示すものとなった。製薬企業などによって、TLRの機能を抑制する小分子化合物の開発が進められており、今後それらの化合物をSCA6モデルマウスへ投与する検証実験を通して、有効な治療法の開発につながることが期待される。
2015年06月19日NTTドコモは、同社のTwitter公式アカウント「ドコモ公式サポート」で、スマートフォンの持ち方によって指が変形してしまう「テキストサム損傷」への注意を促すツイートをしている。「テキストサム損傷」は、スマートフォンなどの持ち方によって、特定の指に負担がかかり、指が変形してしまう症状。Twitter上では、「自分がまさにこれ」、「すでになってしまってる……」、「小指を置くと安定するからついついやってしまう」などのツイートが散見される。ドコモ公式サポートでは、特定の指に負担をかけ過ぎると指の形が歪んでしまう恐れがあるとし、ときどき持ち方を変えたり、長時間の使用の際は休憩を取るようも、ツイートで注意を呼びかけている。(記事提供: AndroWire編集部)
2015年03月09日映画『マンゴーと赤い車椅子』の初日舞台あいさつが7日、東京・イオンシネマ板橋で開催され、秋元才加、三田佳子、仲倉重郎監督が登壇した。本作は、事故による脊髄損傷で歩けなくなってしまった宮園彩夏(秋元才加)が、赤い車椅子を相棒に、葛藤しながら未来へ踏み出していくという感動作。彩夏と交流する車椅子の青年で、バンドのボーカリスト・翔太役を、EXILEパフォーマーのNAOTOが、認知症の症状が出始めた祖母役を三田佳子が演じた。監督は、映画『きつね』(1983年)を手掛け、脚本家としても活躍する仲倉重郎で、自身が車椅子人生となった体験を織り込んだ映画に仕上げた。主演の秋元は「監督が10年以上、構想されていた映画です。三田さんをはじめ、素晴らしい方々と共演させていただき、私自身も成長させていただいた映画です。うれしく思いつつもドキドキしています。興奮しています」と、初日の感想を語った。秋元は共演のNAOTOについて、「パフォーマーとしても尊敬していますが、今回の役で7kgも体重を落とされたと聞き、役者としてのストイックさに、私自身もすごく刺激を受けました。最後のライブシーンでは、NAOTOさんの歌声に、ぱーっと涙を流すことができました」と感謝。三田については、「三田さんが現場にいらした瞬間、『おばあちゃんだ!』って思いました」と感心しきりの様子だった。三田は「ふわっとした部分、ただの年寄りではなく、おばあちゃんの雰囲気を出すのを楽しみながらやりました」と役作りを振り返った。また「才加さんが、良い女優さんになる資質をもっていると思ったの」と称えた後、秋元に「歌手ですか?」と尋ねた。秋元は笑顔で「はい。いろいろやらせていただきました」と答えると、三田は「歌手の方は音感もリズム感もあるけど、彼女はさらに、勇気のある役作りもやりました」と秋元をねぎらった。自身も突然の車椅子人生となった経験を持つ仲倉監督は「こんなに若いお客さんが見てくださるのが本当にうれしいです」と大喜び。秋元は「車椅子の方にも見ていただきたいですが、健常者の方にも見ていただきたい。今、ある人生の環境のなかで、どうベストに生きていけるかという、背中を押せるような映画になると良いなあと」と、力強く本作をアピールした。
2015年02月08日映画『マンゴーと赤い車椅子』の完成披露試写会が16日、都内で開催され、秋元才加、三田佳子、仲倉重郎監督が登壇した。本作は、事故による脊髄損傷で歩けなくなってしまった彩夏(秋元才加)の奮闘と再生の物語。秋元は、主人公・彩夏の葛藤や勇気を車椅子姿で体現した。彩夏と交流する車椅子の青年で、バンドのボーカリスト・翔太役を演じるのは、EXILEのパフォーマー、NAOTO。認知症の症状が出始めた祖母役に三田佳子が扮した。監督は、映画『きつね』(1983年)を手掛け、脚本家としても活躍する仲倉重郎で、自身の突然、車椅子人生となった体験を織り込み、本作のメガホンをとった。秋元は「車椅子を乗りこなすという技術的な問題も難しかったけど、それ以上に、いろんな葛藤や思いがあり、成長していく彩夏(役柄)をどう演じていくかってことが難しくて。監督からアドバイスをいただきながら、一生懸命演じさせていただきました。素晴らしい共演者の方々と演じさせていただき、本当にありがたかったです」と力強く語った。祖母役の三田について、秋元は「三田さんが入ってきた時、『おばあちゃんだ!』と本当に思えました。私も三田さんのように相手を引き込むような女優になりたいです」とリスペクト。三田は「うれしい。どうもありがとう」と笑顔で言った後「監督から『あんまり老けなくていいから。今の80歳は若いから』と言われてたんです。でも、若く見えちゃうと、どうしても地を隠せない、なりきってないと言われるのがすごく嫌だなと思って、90歳くらいのつもりでやったら、監督から文句が出ました」とおちゃめな笑顔を見せた。仲倉監督は、30数年温めていた映画が完成して感無量の様子。秋元について「なるほど、こういう彩夏っているんだと、新鮮な気持ちで見ていました。秋元さん、セリフがすっかり入っていて、現場に台本をもってこなかったので、セリフは直せなかったです(苦笑)。また、三田さんは、もっと若くても良いなあと思って見ていました」と笑いながら語った。また、三田が秋元について「異国情緒がある、顔に凹凸があって、すごく良いでしょ。こういう映像向きの人がどんどん新しい役をしていったら、良い女優さんになるんじゃないかと。また、現場ですごく勝ち気だなと思ったの。監督にくってかかっていたから。でも、そういう役だったからね。見込みがあるなと思いました」と彼女を称えた。秋元は「その時期、自分では気付かなかったんですが、すごく強かったみたいで」と恐縮。三田は「私も『極道の妻』をやった時、そうだったの。役に成り切っていたのよ」とうなずいた。『マンゴーと赤い車椅子』は2月7日(土)より公開。
2015年01月17日産業技術総合研究所(産総研)は1月7日、脳損傷で失われた運動機能を肩代わりする脳の変化を解明したと発表した。同成果は、産総研ヒューマンライフテクノロジー研究部門システム脳科学研究グループの村田弓 研究員、肥後範行 主任研究員と理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センターの林拓也 ユニットリーダー、尾上浩隆 グループディレクターらが、自然科学研究機構生理学研究所の西村幸男 准教授、伊佐正 教授、京都大学霊長類研究所の大石高生 准教授、浜松ホトニクス 中央研究所の塚田秀夫センター長らと協力して得られたもの。1月7日付の米科学誌「Journal of Neuroscience」オンライン版に掲載された。今回、モデル動物の大脳皮質運動野で手の運動機能を担う領域に損傷を作成後、リハビリによる運動機能の回復過程での脳活動の変化を調べた。指先でものをつまむといった動作はヒトと一部の動物のみが持つ高度な運動機能で、手の運動機能を担う領域が損傷すると回復は不可能と考えられていたが、リハビリの結果、約1カ月後に運動機能が回復した。これは、リハビリの回復過程で損傷した領域の機能を補うために脳に何らかの変化が生じたためと考えられた。同研究グループが陽電子放出断層撮影(PET)を用いて、動作が回復した直後の脳の変化を調べたところ、損傷した領域の活動は減少していたが、損傷前よりも活動が上昇した脳領域が複数認められた。また、損傷後数カ月経過した回復の安定期の脳活動を調べたところ、損傷近くの領域で活動の変化が見られた。さらに、この脳の変化が機能回復に貢献しているかどうかを検証するために、回復直後と回復安定期に、変化が認められた領域の活動を薬剤によってブロックした。その結果、手の運動障害が再発したことから、これらの領域の脳活動の変化が、損傷した手の運動機能を担う領域を肩代わりしていることが確認された。同研究グループは「今回の研究成果は、脳機能のメカニズムに基づいた新しいリハビリであるニューロリハビリテーションを構築する上で鍵となる」とコメントしている。
2015年01月08日