理化学研究所(理研)は12月18日、呼吸器学者の間で40年近く謎とされていた、神経内分泌細胞(NE細胞)が気管支の分岐点に規則正しく配置され、塊を形成するメカニズムを解明したと発表した。同成果は、同研究所 多細胞システム形成研究センター呼吸器形成研究チーム 森本充 チームリーダー、野口雅史 研究員、同研究所 生命システム研究センター 細胞デザインコア 合成生物学研究グループ 高速ゲノム変異マウス作製支援ユニット 隅山健太 ユニットリーダーらの研究グループによるもので、12月17日付けの米科学誌「Cell Reports」オンライン版に掲載された。NE細胞は気管支の上皮細胞の一種で、気管から細気管支までの上皮組織に広く観察される。NE細胞は吸気の酸素濃度のセンサーであるとともに、組織の損傷時には組織修復に働く幹細胞のための幹細胞ニッチになることが知られている。また、気管支の分岐点に数個集まって小型のクラスター(塊)を形成する。この特徴的なNE細胞の分布パターンは40年近く前に報告されて以来、吸気の酸素濃度の感知に役立っていると考えられてきたが、NE細胞が気管支の分岐点に規則正しく配置されクラスターを形成するメカニズムは謎となっていた。また、NE細胞は肺がんの1種である小細胞肺がんの起源になることが知られており、同細胞種の制御メカニズムの解明が求められている。同研究グループはまず、肺の上皮細胞およびNE細胞が蛍光で光るマウス系統を作製。このマウス系統の胎児から光る肺を採取し、組織透明化試薬で透明化した後、共焦点顕微鏡と2光子励起顕微鏡で高解像度かつ広範に撮影した。この結果、気管支の立体構造を保ったまま、ひとつの肺葉のすべての上皮細胞とそのなかに存在するNE細胞の分布の観察に成功した。さらに、取得した3次元画像を用いてNE細胞の正確な位置とクラスターの大きさを定量的に解析し、気管支の分岐構造とNE細胞クラスターとの関係を幾何学的に理解することに成功した。画像解析の結果、NE細胞クラスターは気管支の分岐構造においてほぼ同じ位置に形成されること、および発生中に少しずつ大きくなることがわかった。また、より高解像度の画像を取得したところ、分岐点と関係なく単独で出現する「単独NE細胞」を多数発見したという。単独NE細胞は、Notch-Hes1シグナルによって出現数が制限されていることも明らかになった。さらに同研究グループは、NE細胞の分化とクラスター化をリアルタイムで撮影する技術を開発し、NE細胞の挙動の経時観察に成功。その結果、NE細胞は分化するときは単独NE細胞として出現し、その後、自ら歩いて分岐点に向かって移動し、クラスターを形成することがわかった。同細胞を起源とする小細胞肺がん細胞は転移能が高いことが知られているため、今後はNE細胞の移動を制御している因子の同定が課題となる。
2015年12月18日東京大学は12月2日、細胞の酸素代謝を、細胞を傷つけずに計測できる柔らかい光学式シート型センサを開発したと発表した。同成果は同大大学院工学系研究科の一木隆範 准教授らとニコンの共同研究グループによるもので、12月1日に米科学誌「PLOS ONE」に掲載された。iPS細胞などの細胞技術を産業化するには、研究に使う細胞を同じ品質で供給する方法や、細胞の状態を傷つけない「非侵襲・非破壊」で評価する技術が必要となる。細胞の品質を評価する指標の1つとして、細胞の呼吸による酸素消費量があるが、現在市販されている酸素センサでは、培養液中の酸素濃度を計ることはできても、個々の細胞の酸素消費量を計測することはできない。また、従来の方法では、細胞1つあたりの代謝活性を測定するには、細胞を培養シャーレから剥がして専用の装置の中に細胞を移す必要があり、細胞を傷つけてしまうという課題があった。同研究グループが開発したシート型センサは柔らかな透明ポリマーシートの表面に、マイクロチャンバーと呼ばれる直径90μmの小さなへこみが多数形成されており、その中に酸素濃度によって発光応答が変わるリン光発光性金属錯体のセンサを備えている。研究では、同シートを培養細胞や生体組織に載せ、自動光学計測システムと組み合わせて使うことで1分間に100カ所の自動計測を行い、がん細胞や脳組織中の神経細胞の酸素代謝を計測することに成功した。同センサは個々の細胞や細胞コロニー単位で代謝活性を計れるため、薬効の評価や治療に使用する細胞の品質管理に役立つと考えられているほか、これまで不可能だった生体組織の細かい部位ごとに挙動の変化を調べることができるため、医薬品の開発における新しいスクリーニングに道を拓く可能性があると考えられている。
2015年12月03日京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は11月24日、細胞シートを簡便に多数積層化する手法を確立したと発表した。同成果は同大医学部附属病院心臓血管外科(当時)の松尾武彦氏(現同大学医学研究科 客員研究員、神戸市立医療センター中央市民病院医長)、CiRAの山下潤 教授、同大学医学部附属病院心臓血管外科(当時)の坂田隆造 元教授(現神戸市立医療センター中央市民病院院長)、同大学再生医科学研究所の田畑泰彦 教授らの研究グループによるもの。11月20日に英科学誌「Scientific Reports」で公開された。研究では、マウスES細胞から作製した心筋・血管などを含む心臓組織シートをゼラチンハイドロゲル粒子を挿み込みながら15枚積層化し、厚さ約1mmにすることに成功。また、ラット心筋梗塞モデルに心臓組織シートを5枚積層化したものを移植したところ、移植後12週間にわたり血管形成を伴った厚い心臓組織として生着すると同時に梗塞部の心機能を回復させていることが認められたという。今回の研究で確立された手法はほかの臓器や組織にも応用可能で、3次元の高次組織形成を容易にするものとなる。今後は、ヒトiPS細胞からも同様の積層化シートを形成すること、ブタなどヒトに近い動物モデルを含め有効性や安全性を確認することなどを行っていく。また、同研究グループは将来的には積層化したヒト心臓組織シートを製品化し、重症心不全治療に広く用いることを目指すとしている。
2015年11月25日冬は寒さで運動量が減り、つい身体が重くなってしまう……。身体のあちこちに余分な脂肪がついてしまうのを回避するには、適度な運動はもちろんですが、もっとも意識したいことは日々の食事を工夫することです。そのポイントは「酵素」!酵素不足ではどんどん痩せにくい身体になってしまうことが考えられます。年々減っていくものだからこそ、大人女子は意識して摂るべきでは?できるだけ酵素を含んだものを食べる習慣をつけることから始めましょう。野菜のなかでも酵素が多いのは青パパイヤやアボカド。大根、キャベツ、セロリ、ブロッコリスプラウトなども次いで酵素が豊富なため、サラダに積極的に取り入れるようにしましょう。生野菜のほかに海草類、発酵食品にも酵素は含まれています。たとえば、千切りにした大根に海苔と鰹節をかけただけでも立派な一品に。野菜スティックをアボカドディップでいただく方法もあります。チーズやキムチ、ぬか漬けといった発酵食品をサラダのトッピングにしても良いですね。また、フルーツも酵素がたっぷりと含まれています。生野菜だけでは食べにくいという場合には、グレープフルーツや柿、りんごなどを混ぜたり、ドライフルーツのレーズンやアプリコット、クランベリーを入れると甘酸っぱさが加わって食べやすくなります。サラダは毎食、なるべく食事の前半で食べることをおすすめします。“酵素を摂取する”ということを意識すれば、なんとなく食べていたサラダや野菜が、お好みのアレンジをすることでさらにおいしくいただけるのでは?賢く取り入れて、冬でも余分な脂肪を溜めない身体を目指しましょう!
2015年11月10日慶應義塾大学は11月6日、ES/iPS細胞から脳・脊髄にある任意の神経細胞を作製することができる技術を開発したと発表した。同成果は同大学医学部生理学教室の岡野栄之 教授、今泉研人氏、順天堂大学大学院医学研究科ゲノム・再生医療センターの赤松和土 特任教授らの共同研究グループによるもので、11月5日に米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載されたアルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経疾患では、脳・脊髄の特定の部位が障害されることが知られている。ヒトES/iPS細胞を用いてこれらの疾患を研究するためには、病変となる部位の神経細胞を選択的に作製する技術が必要となる。しかし、ヒトES/iPS細胞から任意の部位を自在に作り分ける手法は開発されておらず、これまで報告されている選択的に神経細胞を作製する方法はそれぞれが全く異なる手法を用いているため、異なる部位での症状を比較する研究は難しかった。今回の研究では、神経の発生過程における神経管の細分化を決定するシグナルを調整する薬剤の濃度を変化させることで、共通の作製法を用いて前脳から脊髄に至るあらゆる脳領域を作り分けることに成功。さらに、同技術を用いてアルツハイマー病とALSにおいて脳・脊髄の特定の部位の神経細胞で生じる症状を、患者iPS細胞から作製した神経細胞で再現することができたという。同技術により、特定の脳領域で起きる神経疾患の症状を正確に試験管内で再現することが可能になるほか、脳の複数の領域にまたがる神経難病では、iPS細胞を用いた研究の精度が向上し、新しい診断・治療方法の開発につながることが期待される。
2015年11月06日「寝る子は育つ」と言うように、睡眠中に分泌される成長ホルモンには、子どもの身長を伸ばしたり骨や筋肉を丈夫にしたりする働きがあると考えられています。しかし、成長ホルモンには、大人のダイエットにもうれしい働きがあるみたい!?成長ホルモンがダイエットに役立つのは、代謝との関わりが深いため。成長ホルモンには代謝を高め、脂肪を分解する効果があるといわれています。つまり、良質な睡眠をとり、成長ホルモンが十分に分泌されると、それだけ痩せやすい身体なるということ。成長ホルモンの分泌量を増やすには、筋トレを取り入れて。実は、成長ホルモンには筋肉を増やす働きもあり、筋トレによって破壊された筋肉を修復させるために、たくさんの成長ホルモンを分泌しようとするのです。分泌量アップが期待できるのが、加圧トレーニング。その量は通常時の290倍という研究結果もあります。しかし、加圧トレーニングはスタジオに通わなければならないため、継続が難しい人も多いでしょう。自宅でトレーニングをするなら、スクワットがおすすめです。1往復に10秒程度かけてゆっくりと行います。ポイントは、ひざを伸ばしきらないこと。伸ばすときはひざを軽く曲げた状態までに留めます。このスクワットを1日10回以上行うと、成長ホルモンが促進されやすくなるとのこと。また、睡眠前の血糖値も影響するそう。血糖値が急上昇する食後にすぐ寝てしまうと、成長ホルモンが十分に分泌されなくなるとされています。食後は少なくとも2時間は空けてから眠りに就きましょう。浴槽に浸かってゆっくりと入浴したり、軽く運動したりすると、血糖値が低下しやすくなりますよ。ダイエットに影響を与える運動方法と眠りの質。効率よく成長ホルモンを分泌させて、引き締まったメリハリボディを目指してみませんか?
2015年11月04日水分補給で中性脂肪対策株式会社伊藤園は、健康強調表示を指す中性脂肪のヘルスクレームで消費者庁より表示許可を得た特定保健用食品「スタイリーウォーターレモン」500mlペットボトル製品を、10月19日(月)より販売開始する。【製品概要】製品名スタイリーウォーターレモン品名清涼飲料水希望小売価格(税別)139円(プレスリリースより引用)「スタイリーウォーターレモン」は、1日1回、1本を飲用することで中性脂肪対策ができるカフェイン・カロリーゼロのトクホ飲料である。果実由来のポリフェノール“ヘスペリジン”は、主にみかんなど柑橘類の果実や皮・袋に含まれるポリフェノールの一種。水に溶けにくい性質があり、水に溶けやすくするためグルコースと結合させた成分が“モノグルコシルヘスペリジン”だ。“モノグルコシルヘスペリジン”は、血中の中性脂肪を減らす作用がある。そのメカニズムは、体内で余分となった糖や脂肪は肝臓内で「脂肪酸」となり、それが変化すると「中性脂肪」となり血液中に運ばれ、身体を動かすことで燃焼されるが、使用されない余分なものは体脂肪になるのだ。中性脂肪は、スイーツや、糖や脂肪の多い食事、アルコールなどの摂り過ぎだけでなく、年齢を重ねると肝機能も衰えてくるため加齢も中性脂肪増加の一因となっている。カフェインもカロリーもゼロ同製品は、1本当たり“モノグルコシルヘスペリジン”を340mg含有しているため、肝臓内で働き、中性脂肪を減少させる。美容や健康に気づかう人、中性脂肪が気になる人や、糖や脂肪の多い食事を摂りがちな人が毎日おいしく時間も場所も気にせず飲みやすい、ニアウォーター系のトクホ飲料となっている。(画像はニュースリリースより)【参考】・株式会社伊藤園ニュースリリース
2015年10月12日東北大学は10月5日、ヒト皮膚由来多能性幹細胞(Muse 細胞)を用いて脳梗塞動物モデルの失われた神経機能を回復することに成功したと発表した。同成果は東北大学大学院医学系研究科の出澤真理 教授と冨永悌二 教授らのグループによるもので、9月21日に米学術誌「Stem Cells」に掲載された。Muse細胞は骨髄・皮膚などに存在する腫瘍性を持たない多能性幹細胞で、肝細胞、筋肉、神経、グリア細胞、皮膚色素細胞、表皮、血管などへの分化が報告されている。同研究では、脳梗塞ラットにMuse細胞を移植した結果、梗塞部位に生着して自発的に神経細胞に分化し、大脳皮質から脊髄までの運動・知覚回路網を再構築した。また、脳梗塞で失われた運動・知覚機能の回復は約3カ月後も維持され、腫瘍形成は見られなかった。また、移植前にMuse細胞を神経に分化誘導する必要がなかったことから、脳梗塞に対して皮膚や骨髄などからMuse細胞を採取し移植することによって機能を回復する治療が実現する可能性があるという。今後、比較的小さな脳梗塞が単純構造の部位で生じ、かつ高度の症状を示すタイプの脳梗塞である「深部白質梗塞」に対してMuse細胞自家移植による「深部白質梗塞治療」に対してMuse細胞を用いた治療の開発を進め、3年以内に前臨床試験を終了し、臨床応用に移行することを目指すとしている。
2015年10月06日神奈川大学は9月30日、「何世代にもわたって細胞分裂できるモデル人工細胞」の構築に成功したと発表した。同成果は同大学理学部の菅原正 教授らの研究グループによるもので、9月29日の英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。菅原教授らはこれまでの研究で、細胞膜に見立てたジャイアントベクシルという直径3~10μmの人工分子膜でできた袋が、外部から膜分子の原料を取り込み、膜内でその原料から膜分子を作り出すことで自らを成長・分裂させ、さらに内部で染色体のモデルであるDNAを増幅することを報告していた。しかし、分裂後はDNAの複製に必要な原料分子が枯渇し、親細胞と同様の効率よい分裂を行わせることができなかった。今回の研究では、DNA複製の原料を外部から摂取する方法を開発し、DNAが枯渇した子供細胞に、内部でのDNA複製能力を回復させ、孫細胞を作らせることに成功。さらに、この人工細胞では現実の細胞と同様に摂取期、複製期、成熟期、分裂期を巡回する周期性が存在することを確認した。今後、この人工細胞が繰り返し分裂していく中で優れた形質をもつ「変異種」が出現し「進化」するモデル人工細胞が誕生する可能性もあるという。同研究グループは今回の成果について「物質からどのようにして生命が誕生したかの謎の解明に通じる研究であり、原始地球での生命誕生や、原始生命からどのような形で萌芽的な進化の仕組みを備えるに至ったかを知る手がかりになる」としている。
2015年09月30日富士フイルムは9月29日、iPS細胞由来分化細胞の開発・製造・販売会社「セルラー・ダイナミクス・インターナショナル・ジャパン」を10月1日付けで設立すると発表した。まずは、富士フイルムが2015年5月に買収した米Cellular Dynamics Internationalが製造した創薬支援向けiPS細胞由来分化細胞を輸入し、国内の大学や研究機関、企業などに販売していく。今後、国家戦略特区および国際戦略総合特区に指定されている神奈川県川崎市の殿町地区に製造・研究開発拠点を設立する計画で、将来的には良質なiPS細胞由来分化細胞を大量生産し、国内に安定供給していくとしている。
2015年09月29日東京大学は9月11日、ヒトiPS細胞から肝細胞および胆管上皮細胞を簡便かつ効率的に作製する方法を開発したと発表した。同成果は同大学分子細胞生物学研究所の木戸丈友助教と宮島篤教授らの研究グループによるもので、9月10日に米科学誌「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載された。近年、ヒトiPS細胞から肝細胞を誘導する試みが活発に行われているが、iPS細胞から肝細胞を誘導するには、さまざまなサイトカインによる多段階かつ長期間の分化誘導を必要とすること、また、全てのiPS細胞を均一な成熟肝細胞に分化させることが困難であるといった問題があった。今回の研究では、新たに肝前駆細胞のマーカーとしてCarboxypeptidase M(CPM)とうい物質を同定し、ヒトiPS細胞から肝細胞への分化誘導系からCPMの発現を指標にして自動磁気分離装置によって、簡便に効率よくヒトiPS細胞由来の肝前駆細胞を分取することに成功した。この肝前駆細胞は、肝細胞と胆管上皮細胞への分化能を維持したまま増幅することが可能だという。また、成熟肝細胞の性質を長期に渡って維持することから、薬物の毒性試験、新規薬物の探索、細胞治療などへの利用が期待できる。同研究グループが開発したヒトiPS細胞由来成熟肝細胞調製法は、迅速かつ低コストで肝細胞の大量調製を可能にするだけでなく、B型およびC型肝炎ウイルスやマラリアが感染する可能性もあるため、感染機構研究のツールとしての可能性もあるとしている。
2015年09月11日日立製作所(日立)と京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は9月7日、健常人iPS細胞パネルの構築に向けた協力をすることで合意したと発表した。CiRAでは、さまざまな病気の患者の細胞からiPS細胞(疾患特異的iPS細胞)を樹立し、公的な細胞バンクに寄託することで、多くの研究者や企業が使用できる環境を整備している。研究を進める上では、疾患特異的iPS細胞やそれに付随する診療情報で構成された「疾患特異的iPS細胞パネル」に加えて、これらの疾患を持たない人の細胞から樹立したiPS細胞と健康に関するデータで構成された「健常人iPS細胞パネル」の整備も不可欠となる。今回の合意により、今後、日立が運営する日立健康管理センタで、健康診断に訪れる健常人からドナーを募り、CiRAにおける日立の健常人iPS細胞パネル(日立iPS細胞パネル)の構築を進めることになる。具体的には、9月以降から同センタで、ドナーから血液を採取し、匿名化した健診データとともに、CiRAに提供。その後、CiRAが血液細胞からiPS細胞を樹立し、さまざまな年齢、性別の人からなる100名程度の「日立iPS細胞パネル」の構築を目指す。なお、樹立したiPS細胞のうち、ドナーの同意を得たものは、公的な細胞バンクである理化学研究所バイオリソースセンターに寄託される。健常人iPS細胞パネルの構築には、多数の健常人ドナーを確保するとともに健診データと関連付ける必要があるが、日立健康管理センタは、長期にわたり継続的に健診データを収集・活用してきた実績をもち、有用性の高い「日立iPS細胞パネル」の構築に貢献できると考えられている。同合意について日立は「『日立iPS細胞パネル』の構築は、iPS細胞の医療応用に向けた重要なプラットフォームを構築するものとして、社会的意義も極めて高いと考えています。」とコメント。健常人iPS細胞パネルの構築や疾患特異的iPS細胞パネルとの比較研究を通じて、特定の病気の発症原因および進行過程など、これまでわからなかった病気の詳しい原因の解明や、新たな治療法・医薬品の開発などにつながることが期待される。
2015年09月07日京都大学(京大)iPS細胞研究所(CiRA)は8月20日、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者のiPS細胞から筋肉の細胞へと分化させることにより、細胞レベルで病気の初期病態を再現することに成功したと発表した。同成果は、京都大学CiRAの庄子栄美 特定研究員(元京大 再生医科学研究所大学院生)、同 櫻井英俊 講師らによるもの。詳細は英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。DMDは男児に発症する疾患で、出生した男児の3000~3500人に1人の割合で発生すると言われている。幼少の頃から発症し、筋肉が萎縮することにより歩行や呼吸などが困難になる進行性の病気として知られ、細胞骨格の一部を構成するたんぱく質の中でも最も大きいジストロフィンタンパク質の欠損により発症することが分かっている。筋肉生検により、DMD患者の筋肉細胞を得られるが、そうして得られた筋芽細胞は、すでに体内で炎症を起こした状態にさらされているために、分化や増殖のスピードが遅くなるという現象が報告されているものの、発症の最初期にどのような変化が起きるのかはよく分かっていなかった。そこで今回の研究では、DMD患者の皮膚細胞からiPS細胞を作製し、筋管細胞を分化させることで炎症性の刺激を受けていない初期病態の調査を目指した取り組みが行われた。こうして得られた細胞株を培養していった結果、培養開始9日後、DMD患者ではジストロフィン遺伝子の発現が見られるのに対し、ジストロフィンたんぱく質が合成されていないことが確かめられたほか、電気刺激を加えて、細胞の収縮を観察したところ、細胞核が複数ある筋管細胞へと分化していることも確認したとする。また、ジストロフィンたんぱく質の発現を回復させる薬剤を導入し、カルシウムイオンの流入量を調べた結果、薬剤を加えた方が、加えていない場合よりも、カルシウムイオンの流入量が抑えられることを確認したほか、細胞が傷つくと、細胞外に漏れ出る酵素の活性割合を調べたところ、コントロール細胞に比べてDMD患者ではクレアチンキナーゼ活性が高まる傾向が認められたとする。なお研究グループでは、今回の手法では、ジストロフィンたんぱく質の発現を回復させる薬剤を用いることで、同一細胞株において病態の改善を確認することができたことから、今後、こうした評価系の活用が新たな創薬の研究に活用されることが期待されるとコメントしている。
2015年08月21日京都大学は8月20日、ウシ体細胞から生殖系列細胞を含む全ての組織・器官に分化するiPS細胞の作製に成功したと発表した。同成果は同大学大学院農学研究科の今井裕 教授と川口高正氏(現小野薬品工業研究員)、農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所の木村康二上席研究員(現岡山大学大学院環境生命科学研究科准教授)、同研究所の松山秀一 主任研員らの研究グループによるもの。8月19日(現地時間)に米科学誌「PLOS ONE」オンライン速報版に掲載された。iPS細胞などの多能性幹細胞から、生殖系列細胞や組織・器官形成へと細胞分化を誘導するには、ナイーブ型と呼ばれる細胞株が必要となる。これまで、マウスの体細胞ではナイーブ型多能性幹細胞の作製に成功していたが、マウス以外の哺乳類では生殖系列細胞への分化能力が低いプライム型と呼ばれる細胞しか作製することができていなかった。今回の研究では、ウシ妊娠胎仔から得られた羊膜細胞に、マウス由来の多能性関連転写遺伝子を4種類導入し、3種類の薬剤を添加した培養液で培養することによりナイーブ型のiPS細胞を樹立することができた。このナイーブ型iPS細胞を導入したキメラ胚を雌牛に移植し、妊娠90日目に胎仔を回収したところ、脳、心臓、生殖原基などを含むさまざまな組織にiPS細胞の寄与が認められた。また、このナイーブ型ウシiPS細胞は胚体外細胞系列へも分化しうることが示されたことから、体を構成するすべての細胞に分化する能力を有していると考えられるという。同研究グループは今後、ウシ以外の動物種でもナイーブ型のiPS細胞の樹立を試みていくとしている。
2015年08月20日カーブスジャパンはこのほど、第7回カーブス「サヨナラ脂肪川柳」の受賞作品を発表した。○およそ2万通の中から大賞決定!「サヨナラ脂肪川柳」は女性限定で"脂肪"に関する喜怒哀楽を詠んだ川柳を公募したもので、7回目となる今回は1万9,549通の作品が寄せられた。審査については、同社の川柳大賞実行委員会により都道府県賞47作品が選ばれ、その中からエリア賞8作品が選出されたほか、特別賞17作品も選考された。その後、全国のカーブス会員の投票によってエリア賞と特別賞の中から大賞が決定した。「大賞」「エリア賞」を受賞した作品は以下の通り(敬省略)。■大賞・「憧れの 壁ドンの前に 腹がドン」(富山県/うっちー/54歳)■エリア賞・「痩せなけりゃ もう後がない ベルト穴」(山形県/つや姫子/71歳)・「巻尺を 見ると腹部が 凹みだす」(千葉県/さっちゃん/64歳)・「せますぎる ゆずらないでね 気持ちだけ」(愛知県/りえこ/67歳)・「体重計 壊れていないか 米計る」(大阪府恋する乙女/65歳)・「痩せ祈願 出雲の神が 困り顔」(島根県/ぽん太/47歳)・「脂肪取れ お久しぶりね 膝小僧」(高知県/こむぎ/42歳)・「土偶見て 孫が『ばぁば!』と 騒ぎ出し」(佐賀県/金平糖/60歳)そのほか、特別賞の"ご当地編"では、「わんこそば 1位になっても 喜べぬ(岩手県)」「名古屋メシ でらうみゃーがね 肥えるがね(愛知県)」「見てみたい カープ優勝 私のくびれ(広島県)」など、その地方ならではの特色や名産、方言と絡められた個性豊かな作品が並んだ。入選した全作品は「第7回 サヨナラ脂肪川柳 2015」のサイトで確認できる。
2015年08月20日サントリー食品インターナショナルは8月18日、缶コーヒーの「BOSS」ブランドから脂肪の吸収を抑える効果のある「ボス ブラック(特定保健用食品)」を発売する。同商品は、「ボス ブラック」を特定保健用食品のボトル缶タイプにしたもの。コーヒー豆に含まれる食物繊維で、小腸での脂肪の吸収を抑制する効果のある「コーヒー豆マンノオリゴ糖」を配合することで、体脂肪が気になる人に適した商品を完成させた。特定保健用食品でありながらも、深いり焙煎(ばいせん)豆を使用し、抽出温度にこだわって、コーヒー豆本来の香り・苦味・コクを引き出したとのこと。毎日飲んでも飲み飽きない味わいを実現したという。希望小売価格は税別130円(280ml)。
2015年08月17日「脂っこいものが食べたい!」脂肪がからだに悪いのは百も承知だとはいえ、無性に揚げものを食べたくなるときがありますよね。でも、脂肪が体に与える影響を本当に知っていますか?『Science Daily』によれば、たった5日間、脂肪分の多い食事を続けただけで、筋肉やからだのつくりが変わってしまうというのです。これは長期的には、体重増加、肥満など健康上の問題を引き起こすともいわれています。■食事の影響は意外と早く体に出る!「多くの人は、数日間不健康な食生活をしても、すぐもとに戻れると考えています」ヴァージニア工科大学で栄養学や運動について研究している、マット・ハルヴァー準教授はいいます。「しかし、たったの5日で筋肉のつくりは変わってしまうのです」この研究で初めて、人体はいままで考えられていたより、ずっと早く食事に影響されることがわかりました。5日くらい、食事が不規則になったり、からだに悪いものを食べてしまうことはよくあります。しかし、それも確実に、からだに悪影響を及ぼすというのです。■筋肉はいちばん多く糖分を使う場所食べものを食べると血糖値が上がります。そして筋肉は、血液中の糖分をいちばん多く消費している場所。筋肉は私たちの体重の、実に30%を占めています。エネルギー消費が大きく量も多い筋肉の代謝が変わると、当然、からだにも大きな影響を与えます。5日間の高脂肪の食事のあと、筋肉は糖を分解しにくくなり、血糖値を下げる働きをするインシュリンの働きが鈍り、糖尿病などのリスクが高まるのです。■体重に変化がなくても筋肉は変わる研究では、健康な大学生たちにソーセージビスケットやマカロニとチーズ、バターであえたものなど高脂肪の食事をしてもらいました。通常の食事の脂肪分はおよそ30%ですが、この食事は55%が脂肪になるようにつくられました。高脂肪ですが、摂取カロリーは前と同じになるように計算されています。その後、筋肉のサンプルが採取され、糖分の代謝がどのように行われたか調査されました。すると、筋肉の糖分の代謝の仕方は変わっていましたが、学生たちには体重の増加やインシュリンの働きの低下は見られませんでした。自分ですぐにわかる変化がなくても、からだは確実に影響を受けているのです。自覚がないだけに、より注意が必要です。ハルヴァー準教授たちは、今後、高脂肪の食事が長期的に人体に与える影響や、どれくらいの期間で筋肉の代謝がもとに戻るのかを研究するといいます。昔からいわれているとおり、健康な食事はからだの基本。知らないうちに体のつくりが変わってしまわないようにするためにも、「今日だけ……」は禁物。毎日健康な食事を摂るように心がけましょう。(文/スケルトンワークス)【参考】※Five days of eating fatty foods can alter how your body’s muscle processes food―Science Daily
2015年08月11日クレモリス菌FC株とオリゴ糖のW効果!フジッコ株式会社は、「カスピ海ヨーグルト」の機能性とおいしさとそのままに、脂肪分を取り除いた「脂肪ゼロ」のヨーグルト「カスピ海ヨーグルト脂肪ゼロ400g」(標準小売価格258円:税込み278円)を、2015年9月1日から全国で発売を開始する。健康や美容に意識の高いカスピ海ヨーグルトユーザーから「脂肪ゼロ」のラインアップに対するニーズに応え、このたび「脂肪ゼロ」タイプの「カスピ海ヨーグルト」を開発した。ダイエットや脂肪を気にする人に最適同品の特長は、北海道産生乳から脂肪分だけを自社工場で取り除いた無脂肪牛乳を使用し、独自の乳酸菌「クレモリス菌FC株」を使用した。従来の「カスピ海ヨーグルトプレーン400g」の乳酸菌や数も同等なので、「クレモリス菌FC株」の腸内ビフィズス菌増殖作用に加え、配合されたオリゴ糖自体のビフィズス菌増殖作用が加わった。同品も、なめらかな口当たりと、酸味が少なく濃厚な味わいをキープしており、気になるカロリーは、100g当たり40kcalと低カロリーを実現している。ダイエットや、脂肪分を気にしている人にも最適だ。2006年より毎年2桁伸長の支持「カスピ海ヨーグルトプレーン400g」は、2006年の発売以来、濃厚で酸味が少ないまろやかな味わいと、研究に裏づけられた整腸作用や免疫賦活機能などの健康効果が、老若男女問わず幅広い層に支持を受けている。長寿地域のコーカサス地方から持ち帰ったヨーグルトより、同社が分離・純粋培養した生きて腸まで届く乳酸菌「クレモリス菌FC株」を使用。その「クレモリス菌FC株」が発酵中に作り出す、穏やかな酸味とねばりのもととなる「ねばり成分EPS」によるとろりとした食感が特長のヨーグルトだ。(画像はプレスリリースより)
2015年08月10日カネカは7月30日、グループ会社であるバイオマスターが運営するセルポートクリニック横浜が、培養脂肪幹細胞を用いる乳房再建療法の臨床研究を9月より開始すると発表した。乳がんの手術で乳房を摘出した場合、精神的な苦痛や日常生活の不都合などが生じるため、乳房再建が試みられる。乳房再建では、自身の背中や腹部の組織を用いる筋皮弁法やシリコンなどの人工物を挿入するインプラント法、脂肪・ヒアルロン酸注入などが行われているが、安全面を含め満足度の高い再建が得られない場合がある。これに対し、臨床研究を開始する再建療法では、自身の少量の脂肪から取り出し培養で増やした幹細胞を脂肪と混ぜることによって乳房を再建する。取り出す脂肪量が従来の脂肪移植にくらべて少なく負担が小さいことに加え、自身の幹細胞と脂肪を用いるため、安全に元の乳房に近い状態への再建が期待できるという。
2015年07月30日タカラバイオは7月24日、歯髄細胞を用いた再生医療の開発について、再生医療推進機構と共同で行うことに合意したと発表した。歯髄細胞は、ヒトの乳歯や親知らずといった、これまで廃棄されていた脱落歯や抜去歯から容易に採取することができ、再生医療への利用が有望視されている。今回の合意にもとづいて両社は今後、歯髄細胞の拡大培養法や凍結保存法などについて研究および開発を進める。タカラバイオは、同共同研究開発を通じて、再生医療に利用可能な歯髄細胞の調製技術の開発や歯髄細胞の培養に適した培地など製品の開発を行い、同技術を応用した再生医療製品の製造開発受託サービスの提供や培地など製品の販売を目指すとしている。
2015年07月27日京都大学は7月22日、急性腎障害マウスにヒトiPS細胞から作製した腎臓の前駆細胞を移植することで、腎機能障害や腎組織障害が軽減することを発見したと発表した。同成果は京都大学iPS 細胞研究所(CiRA)の長船健二 教授グループとアステラス製薬によるもので、7月21日に「Stem Cells Translational Medicine」でオンライン公開された。同研究では、ヒトiPS細胞から「OSR1」と「SIX2」というタンパク質を指標に腎臓の前駆細胞を作製する方法を確立し、その細胞が腎臓の尿細管様の3次元の管構造を作る能力を持ち、腎臓の前駆細胞として十分に機能することを明らかにした。さらに、この方法で作製した腎臓の前駆細胞を、腎障害マウスの腎皮膜下に移植した結果、移植した細胞はマウスの腎臓に一部にはならなかったが、腎機能の検査値である血中尿素窒素値や血清クレアチニン値が、細胞を移植しなかったマウスとくらべて顕著に低下していることがわかった。また、腎臓の組織切片を観察したところ、尿細管の壊死や線維化など、腎臓が障害を受けた時に発生する現象もかなり小さく抑えられていた。この成果について同研究グループは「腎移植を必要とするような人工透析を受けている慢性腎不全の方の場合、腎臓の細胞がほとんど壊れているため、治療には腎臓そのものを作製して移植することが必要であり、今回の方法だけでは治療は困難です。しかし、急性腎障害を負った方の腎機能を回復し、腎障害の慢性化を防げる可能性を示しており、腎疾患にも細胞移植を使った治療が適応できることを示唆しました。」とコメント。今後は、今回の方法を活用した臨床応用の可能性を探りながら、慢性腎臓病や慢性腎不全の治療に向けた研究も進める予定だとしている。
2015年07月22日コラーゲンはしっかり1,000mg配合株式会社明治は、今春発売の「アミノコラーゲンヨーグルト」シリーズより、「アミノコラーゲンヨーグルトドリンクタイプ脂肪0」と「アミノコラーゲンヨーグルト低脂肪」を全国で2015年7月28日(火)より順次新発売する。【商品名:アミノコラーゲンヨーグルトドリンクタイプ脂肪0】・希望小売価格:129円(税別)・内容量:190g・発売日2015年7月28日【商品名:アミノコラーゲンヨーグルト低脂肪】・希望小売価格:129円(税別)・内容量:112g・発売日:2015年8月4日(プレスリリースより引用)LB81乳酸菌を使用「明治ブルガリアヨーグルト」で使用しているLB81乳酸菌を使用し、吸収されやすいよう分解した魚由来の低分子化フィッシュコラーゲンを1,000mg配合しているため吸収性に優れている。さらに、酵素により分解されてセラミドになる成分、スフィンゴミエリンを含んだミルク由来のミルクセラミドを配合し、美しさを感じるためのアミノ酸の一種アルギニンも配合している。脂肪が気になる人にうれしい、毎日食べても脂肪分を気にせず、爽やかな味わいでおいしく食べられる商品となっている。アミノコラーゲンとブルガリアヨーグルトのイイトコどり「アミノコラーゲンヨーグルト」シリーズ初のパーソナルタイプ商品の発売により、気軽に手に取れ、食べるシーンも選ばないため、従来より、コラーゲンもヨーグルトも摂取したい人のニーズに応えていく。同商品発売に併せ、店頭での視認性を高めるために「アミノコラーゲン」シリーズすべてのパッケージを、ブランドカラーであるピンクを強調し、ロゴを前面に大きく配したデザインとした。(画像はプレスリリースより)【参考】・株式会社明治プレスリリース
2015年07月21日京都大学は7月17日、ヒトiPS細胞からヒト始原生殖細胞を効率よく誘導する方法の開発に成功したと発表した。同成果は同大学大学院医学研究科の斎藤通紀 教授(兼 京都大学物質-細胞統合システム拠点 主任研究者、京都大学iPS細胞研究所 研究員)、同研究科の佐々木恒太郎 特定研究員、横林しほり 特定助教らの研究グループによるもので、7月16日(現地時間)に米科学誌「Cell Stem Cell」のオンライン版に掲載された。ヒト始原生殖細胞は卵子や精子のもととなる細胞で、その発生機構はほとんど解明されていない。今回の研究では、遺伝情報を、細菌由来の遺伝子分解・切断酵素などを用いて改変するゲノム編集技術を用いて、ヒト始原生殖細胞で発現するとされている2つの遺伝子「BLIMP1」と「TFAP2C」が発現すると、緑色の蛍光を発するヒトiPS細胞を樹立。そのiPS細胞を用いることで、ヒト始原生殖細胞様細胞を効率よく誘導する培養条件を突き止めることに成功した。得られたヒト始原生殖細胞様細胞は、ヒトの始原生殖細胞と良く似た遺伝子発現パターンを示し、初期のヒト始原生殖細胞に似た状態であることが示唆されたという。また、あらかじめゲノム編集をiPS細胞に用いなくても、細胞を選別するために使われる細胞表面マーカーで生きた細胞を標識することで、ヒトiPS細胞から誘導したヒト始原生殖細胞様細胞を高い純度で単離できることも判明。これにより、原則的にはどのiPS細胞からもヒト始原生殖細胞様細胞を誘導・単離することができるようになった。今後、同研究成果をベースにヒト生殖細胞の発生機構の解明が進み、ヒト精子やヒト卵子の誘導が可能になれば、遺伝情報継承機構だけでなく不妊症や遺伝病の発症機序解明につながる可能性がある。
2015年07月17日真っ昼間だというのに眠たくて困ったことはありませんか?昼間に眠気をもよおす原因には、さまざまなものがありますが、もしかしたら脂肪もそのひとつかもしれません!脂肪が昼間の眠気とどんな関係があるのかをご紹介します。昼間の眠気は脂肪のせい?昼間に眠気をもよおす病気といえば、睡眠時無呼吸症候群やうつ病、ナルコレプシーといったものが思い浮かぶかもしれません。でも、原因はそれだけではなさそうです。というのも、昼間の眠気は食事の内容によって左右される可能性があるということが、アメリカのペンシルベニア州立大学医学部の研究チームによって明らかにされてきているからです。彼らの研究は、肥満ではない健康な男女31人(18~65歳)を対象に実施されました。具体的には、睡眠ポリグラフ検査を4晩連続で行い、その間、計5回の食事を提供し、総睡眠時間や日中の眠気を評価するというものです。結果はどうだったのでしょうか?脂肪の摂取で眠気増加、炭水化物で眠気減少?研究結果を分析したところ、年齢や性別、総カロリー摂取量、また総睡眠量とは関係なく、脂肪を多く摂ると日中の眠気が強くなることが分かったそうです。反対に、炭水化物を多く摂取すると、眠気が弱くなったとも報告されています。詳しいメカニズムについてはまだ分かっていないものの、脂肪酸によって分泌を促されるコレシストキニンという脳神経に作用するホルモンや、サイトカインと呼ばれるタンパク質の一部などの因子が、昼間の眠気を誘発している可能性があるようです。過去の研究でも、炭水化物にくらべて脂肪が、眠気や仕事の能率に良くない影響を与えると報告されていたので、この研究によってそれがさらに裏付けられたことになります。お肉がNGなわけではないまだまだ研究が始まったばかりの分野ですが、今後、そのメカニズムが解明されればより対策も取りやすくなるでしょう。これからの研究に期待です。ちなみに、同研究チームによると、タンバク質の摂取と眠気の関連は認められなかったそうなので、お肉がNGというわけではないようです。まだ確実な結果が出ているわけではありませんが、上記で紹介したような報告が実際にあるのですから、病気でもないのに昼間の眠気に悩んでいる人は、ひとまず脂分を控え、炭水化物の摂取を増やしてみるのはいかがでしょうか?昼間の眠気がなくなるかもしれません。photo by pixabay
2015年07月10日京都大学は6月29日、生きたマウスの脳内の細胞内RNAを可視化することに成功したと発表した。同成果は同大学物質-細胞統合システム拠点(iCeM S)の王丹 特定拠点助教らの研究グループによるもので、6月19日(現地時間)に英科学誌「Nucleic Acids Research」で公開された。RNAは体内で働くタンパク質が、いつ、どこで、どれだけ必要かという情報を持つほか、細胞内の生体反応の制御を行う役割をもつ。そのため、生体内で目的遺伝子がどのように機能しているかを知るためには、このRNAが細胞内のどこでどのように局在しているのかを突き止めることが必要となる。RNAが集まり、局在するという現象は正常な細胞でも発生するが、一部の神経変性疾患において異常な集まりがあることが観察されており、この局在変化によって本来のRNAの機能を果たせず、神経細胞の健康状態が破たんしてしまうと考えられている。しかし、生きた組織内でその局在を見るのは困難だったため、RNAの集まりがどのように細胞内で制御され、異常がもたらされているかは明らかになっていなかった。今回の研究では、目的とするRNAの有無によって蛍光のオン・オフができる点灯型蛍光プローブ(DNAやRNAなどの核酸を元にしたオリゴ鎖)を脳内に打ち込み、電流を流して細胞内に導入することで、生きた組織内でのRNAの標識を可能とした。この標識方法を用いて、組織内のRNAの集まりが薬剤に対してどう応答するのか検証したところ、ディッシュ内で培養した細胞と、生きた組織内の細胞では反応に違いがあることを初めて定性的に示すことができた。同研究グループは「今後は、生きた個体の細胞内でのRNAの集まりが環境応答によってどのように出現・消失するのか、何がそれを制御するのか、正常な組織と疾患にかかった組織でどのように異なっているのかを明らかにすることで、生きた組織・個体での遺伝子発現のメカニズムおよび疾患をもたらすRNAの動きの解明に繋げていきたいと考えています。」とコメントしている。
2015年06月29日富士フイルムは6月18日、ツヤのある肌は肌内部の細胞構造の乱れが少ないことを確認したと発表した。今回の研究では、ヒトを若々しく見せる要素である「視覚的ハリ感」に注目。20~50代の女性被験者の肌内部の状態を解析し、肌がどのような構造になっていればツヤがあるように見えるのかを調査した。その結果、ツヤの目視評価が高い被験者ほど、肌内部における細胞構造の乱れが少ないことがわかった。また、肌表面について、マイクロスコープを用いて肌画像を取得し、皮溝の幅や肌の密度などキメ形態の定量解析を実施。従来から知られている通り、肌表面の凹凸形状であるキメが荒くなると肌のツヤが減少することを確認した。さらに、肌のツヤを再現できる独自開発の光学画像シミュレーションシステムを用いて、細胞構造の乱れの程度やキメ形態をそれぞれ変化させた複数の肌モデルを作成し、ツヤの状態を可視化したところ、微細な細胞構造の乱れを抑制することでしっかりとしたツヤになることを実証することができたという。同社は「今回の光学画像シミュレーションおよび解析結果により、肌表面だけでなく肌内部の細胞構造の乱れを整えることでツヤがある肌になり、『視覚的ハリ感』が向上することが示唆されました。今回の研究結果で導き出した条件を満たすことで肌のツヤを向上させ、視覚的ハリ感を生むスキンケア化粧品の開発に応用していきます。」とコメントしている。
2015年06月18日慶應義塾大学(慶大)は6月16日、北里大学との共同研究で、遺伝性パーキンソン病患者由来のiPS細胞を樹立し、分化誘導した神経細胞を用いてパーキンソン病患者の脳内における病態を解明したと発表した。同成果は慶大学医学部生理学教室の岡野栄之 教授、北里大学医療衛生学部再生医療・細胞デザイン研究施設細胞デザイン研究開発センターの太田悦朗 講師(慶應義塾大学医学部共同研究員)、小幡文弥 教授らの研究グループによるもので、6月8日(現地時間)に医学誌「Human Molecular Genetics」に掲載された。同研究グループは全患者の10%を占める遺伝性パーキンソン病患者の発症メカニズム解明を目的に、原因遺伝子LRRK2に変異を有する優性遺伝性パーキンソン病家系内の患者2名からiPS細胞を樹立し、これらのiPS細胞から神経細胞のもととなる神経幹細胞を作製後、分化誘導した神経細胞について機能解析を行った。LRRK2に変異を持つ患者は、全患者の90%を占める孤発性パーキンソン病と臨床症状や発症年齢、治療薬に対する反応など似た特徴を示すことがわかっている。解析の結果、iPS細胞から誘導した患者の神経細胞群では、健常者の神経細胞群に比べ、酸化ストレスに対する脆弱性があったほか、ドーパミンの放出異常あること、細胞内のAKT/GSK-3βシグナル伝達経路の異常によってリン酸化タウが増加することも明らかとなった。また、iPS細胞を樹立したうちの1名の患者の死後脳を調べたところ、GSK-3β活性化によるリン酸化タウの増加、そしてそれが脳内に沈着して引き起こされる神経原線維変化が確認された。同研究グループは「今後、この患者由来のiPS 細胞を用いることで遺伝性だけでなく孤発性も含めたパーキンソン病の病態解明や治療のための新薬開発が期待される」とコメントしている。
2015年06月17日細胞を活性化NPO日本免疫美容協会は2015年5月27日、「免疫美容セミナー」を東京・TKP市ヶ谷カンファレンスセンターにて開催した。同協会では自然治癒力を生かしてより健康的な肌を維持することを提唱しており、同セミナーでは今、注目されているランゲルハンス細胞の働きについて詳しく紹介し、ランゲルハンス細胞を活性化させることで肌トラブルを改善する方法についても講演が行われた。肌本来のチカラで同セミナーでは、肌は排泄器官であり、有効成分を肌に浸透させるというのは間違ったスキンケアであるとし、「肌本来のチカラでキレイになる」免疫美容の考え方について学ぶことができる。ランゲルハンス細胞は皮膚のセンサーの役割をしており、皮膚内部をチェックし、肌に侵入してくる外敵を見つけてくれることから、ランゲルハンス細胞が脳に肌トラブルの情報を届け、脳が指令を出すことで自己回復力が高まり、肌を元気に戻してくれる。また、ランゲルハンス細胞を活性化させるアミノ酸についても、その研究者である小山秀男氏本人が解説を行い、日本免疫美容協会は今後も「免疫美容セミナー」を全国で開催し、ランゲルハンス細胞と皮膚免疫についての啓発を行っていく予定である。次回は7月14日に横浜新都市ビル(そごう)にて開催されるということだ。(画像はプレスリリースより)【参考】・NPO日本免疫美容協会免疫美容セミナー・NPO日本免疫美容協会のプレスリリース(Value Press)
2015年06月15日SBIファーマとリプロセルは6月8日、iPS細胞由来の分化細胞を用いた再生医療を行う際に問題となる残留iPS細胞を、再生医療に適したALAというアミノ酸で選択的に除去する技術を開発したと発表した。iPS細胞から心筋、神経、肝臓などの細胞を作製する際、iPS細胞が変化せず残留し、生体に移植した時にがん化してしまう場合があった。そのため、再生医療に向けた品質管理の観点から、体細胞に変化した細胞群から残留iPS細胞のみを除去する技術の開発が必要とされていた。ALAは、がん組織ではプロトポルフィリンIXという物質へ変化し、蓄積するという特徴を持つ。プロトポルフィリンIXは特殊な波長の光を浴びると細胞を破壊する物質を生成することから、海外ではALAはがん治療薬として承認されている。今回開発された技術ではがん細胞とiPS細胞に共通する特徴に着目し、ALAを含んだ培養液中でiPS細胞から変化させた体細胞に特殊な条件で光照射することで、容易にiPS細胞を選択的に除去することに成功した。
2015年06月08日東京大学(東大)は5月28日、悪性度の極めて高い小細胞肺がんを移植したマウスに、がん細胞にのみ結合する抗体「90Y標識抗ROBO1抗体」を投与したところ、腫瘤が著明に縮小することを確認したと発表した。同成果は、東大医学部附属病院 放射線科/東大大学院 医学系研究科核医学分野 准教授の百瀬敏光氏、東大医学部附属病院 放射線科 特任助教/東大大学院 医学系研究科核医学分野 博士課程学生(当時)の藤原健太郎氏、東大先端科学技術研究センター 計量生物医学 教授の 浜窪隆雄氏、東大先端科学技術研究センター システム生物医学 特任教授の児玉龍彦氏らによるもの。詳細は「PLOS ONE」に掲載された。肺がんは、がんの中で最も罹患率・死亡率が高く、その内、成長が早く、転移しやすい小細胞肺がんが約15%を占めているが、身体の他の部位までがんが広がってしまっている段階の進展型小細胞肺がんは、悪性度が高く、有効や治療法が確立されていない。今回、研究グループは、放射性同位元素で標識した「がん細胞にのみ結合する抗体(90Y標識抗ROBO1抗体)」を開発し、実際に、小細胞肺がんを移植したマウスに投与したところ、がん細胞を殺傷し、腫瘤を縮小させる効果があることを確認したという。また、こうした抗体を投与して、がんに集積させることで、小細胞肺がんを移植したマウスの体内から放射線治療をする「放射免疫療法」が、進展型小細胞肺がんの根治や余命の改善に向けた治療法の確立につながることが期待できるとしており、今後は、同薬剤の治療効果と副作用に関する詳細な評価に加え、治療効果や副作用のさらなる改善を目指して、化学治療との併用治療や、別の治療用放射性同位元素の導入、抗体の小分子化などを検討していくとするほか、抗体の体内動態を可視化することで、SPECT/PETイメージング用診断薬の開発にもつなげたいとしている。
2015年06月01日