ヘンリク・イプセンの名作『人形の家』の続編として、新進気鋭のアメリカ人劇作家ルーカス・ナスが発表した『人形の家 Part2』。本作が日本初上陸し、栗山民也の演出により上演される。そこで主人公のノラを演じる永作博美に話を聞いた。【チケット情報はこちら】『人形の家』といえば、良き妻であり良き母だったノラが、自らの生き方に疑問を抱き、ひとり家を出て行くまでを描いた近代古典の傑作。そんなノラが、15年ぶりに帰って来るところから本作は始まる。「あの先を見られるということに、まずはやっぱりワクワクしましたね。何を考えていたんだろうとか、何を言うんだろうとか、どの面下げて帰って来るんだろうとか。やっぱり顔が見たいですよね。イプセンのノラは可愛らしくて奔放な女性というイメージですが、こちらのノラも相変わらず自由は自由。でもそれが現代っぽいというか。全体的に古典感が薄れていて、それがまた新たな魅力になっていると思います」本作の登場人物はノラ以外に、夫のトルヴァル、乳母のアンネ・マリー、娘のエミーの4人。しかし舞台上はほぼノラともうひとりという構図になっており、結果ふたり芝居が続いていくような展開となる。「すごく大変な舞台ですよね。ノラはみんなと対峙しなくちゃいけない、実質ふたり芝居ですから。緊張感がずっと続くので、息が苦しくなるような感覚はあるだろうなと。ふたり芝居は以前やったことがあるんですが、その時に思ったんです。“2度とやるもんか!”って(笑)。でも台本がとにかく面白かったので、やってみようと決めたんです」演出の栗山民也とは、今回で3度目の顔合わせ。「栗山さんとやらせていただくと、自分のホンの読み方の浅さに毎回気づかされます。よく栗山さんは“全部ホンの中に書いてある”とおっしゃるんですが、そこまでたどり着けない自分をいつも思い知らされるというか。でも人って知れることが大きな喜びですからね。栗山さんがどう思っているのかを聞けること自体、すごく嬉しくもあって。その度にどんどん作品が深くなっていくのが見えますし、今回もそういう喜びを体験出来るのかと思うとすごく楽しみです」女性の自立について描いた『人形の家』。そしてこの『Part2』で浮かび上がるのも、女性としてどう生きるか、ということだ。「今このタイミングの題材だということを強く感じる作品です。だからこそ今の日本の女性が考えられる、今生きている女性にきちんと投げられるような舞台にしたいと思っています」公演は8月9日(金)から9月1日(日)まで、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて。その後、福岡でも上演。二次プレリザーブは5月11日(土)より受付予定。取材・文:野上瑠美子
2019年05月10日ドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』などの脚本を手がけた、矢島弘一が主宰する劇団“東京マハロ”。その最新作『余白を埋める-エリカな人々2019-』が、5月2日(木・祝)、東京・東京芸術劇場シアターイーストで幕を開ける。そこで脚本・演出を担う矢島と、客演の中島早貴に話を聞いた。【チケット情報はこちら】『エリカな人々』とは、松坂世代の男女が織り成す会話劇で、2009年、2014年、2016年と再演を重ねてきた東京マハロの代表作。矢島自身、「自分が世に出たきっかけであり、大事な作品」と位置づける。だが今回はタイトルも改めリライト。後輩の子供の通夜に参列するため、かつての野球部の面々が久しぶりに再会し…というところから物語は始まる。「前回から3年経っているので、やはり今とはすでに時代背景が違うんですよね。松坂世代の登場人物たちは前作だと35歳で、本作では40歳手前。人としても成長していますし、逆に苦しくなっている部分もある。いろいろなことに妥協しているというか、もっと人間臭い感じになったと思います」その中で中島演じる雫は、松坂世代な登場人物たちとはひと回り以上も下の20歳の女性。矢島が狙うのは、「芯の強さはあるけど周りには軽く見られてしまう、可愛くて天然な女性」だという。だが中島自身は、「グループ(※℃-ute)で活動していた時は気づかなかったんですが、私すごく我が強いみたいなんです。雫としてはもっとほんわかした感じにしないといけないのに、ついグサッとするようなセリフの言い回しをしてしまって…」と、自らの性格と役柄との隔たりに苦戦しているようす。しかし中島が劇団公演に参加するのは初とのことで、その魅力にこう声を弾ませる。「今回めちゃくちゃ勉強になるなと思っていて。経験豊富な劇団員さんばかりなので、たくさん皆さんとお話したいですね!あと作品としてはすごくナチュラルな会話が続くので、そこに嘘があってはいけないですし、テンポ感や自然なやり取りなどを学んでいけたらなと思います」昨年から7人の劇団員が新加入し、一気に劇団力を増した東京マハロ。矢島は「僕はこのメンバーと家族をつくったと思っていますし、ずっと共に歩んでいきたいと思っています。だからこそ作品づくりに対してはよりドライに、いいものをつくるということに徹底していきたいなと。その点、今回もゴールデンウィークの休日を使って観に来てもらっても、決して恥じない作品になっていると思います」と、自信をのぞかせた。『余白を埋める-エリカな人々2019-』は5月2日(木・祝)から6日(月・祝)まで、東京・東京芸術劇場シアターイーストにて。取材・文:野上瑠美子
2019年04月26日中村獅童念願の企画、オフシアター歌舞伎『女殺油地獄』が、ついに5月11日(土)、その幕を開ける。歌舞伎では初となる倉庫と新宿歌舞伎町での公演。演出の赤堀雅秋とともに、創作真っ只中の稽古場で話を聞いた。【チケット情報はこちら】『女殺油地獄』といえば、これまで数々の名優によって演じられてきた近松門左衛門の傑作。借金で首が回らなくなった放蕩息子の与兵衛が、金欲しさがゆえに親身にしていたお吉を殺めてしまう。獅童は「今起きてもおかしくない事件」と表し、「赤堀さんは日常を切り抜くのが非常に上手な演出家さん。これも殺しは殺しですが、どこかその人たちの日常というか、気づいたら殺人鬼になってしまったような……。そういった日常を淡々と見せていければと思っているんです」と続ける。赤堀も「表現する場所が演劇だろうが、映画だろうが、今回であれば歌舞伎だろうが、僕がやっているのはただ単に人間を見せていく、目の当たりにしていただくということだけ」と、歌舞伎の現場でも普段と変わらぬ姿勢を貫く。さらに「だからものすごく地味だと思いますよ」と笑い、確かに稽古風景を見ても、派手な仕掛けやアクションは皆無。ただ通行人役の俳優に対しても、「エキストラみたいな芝居をしないで」と声をかけるなど、すべての登場人物を生きた人間へと変化させていく。注目の共演者には、大人計画の荒川良々が歌舞伎に初参加。荒川と歌舞伎の相性について、「めちゃくちゃいいと思いますよ」と赤堀も太鼓判を押す。「ただ古典と言われるものも、もとは歌舞伎俳優さんがゼロからつくり出したものですよね。その点、荒川くんもまず“荒川くん”という素材がそこにあって、彼がお客さんに対して何をやったら1番面白いかをゼロから考えていく。そのつくり方は歌舞伎であろうが、普段とまったく変わらないと思います」獅童にとって荒川は長年の友であり、待望の歌舞伎初共演。荒川の稽古場での様子について、「全然違和感がないんですよ。白稲荷法印というインチキ祈祷師の役で、もちろんひとつの型はあるんですが、それをあの人が自分なりの捉え方で演じた時のインパクトがものすごくて!」と驚きを隠せない。さらに赤堀も「だからこれを機に、普段歌舞伎を観ない人にむしろ来て欲しいですね。こんなに面白いものだとか、こんなにゾクゾクするほどカッコいいものだとか。僕らが歌舞伎の入り口になれたら、それはすごく嬉しいことだと思います」と期待を寄せた。公演は5月11日(土)から17日(金)まで、東京・天王洲アイル 寺田倉庫、5月22日(水)から29日まで(水)東京・歌舞伎町 新宿FACEで上演。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2019年04月26日今年で上演39年目を迎えるブロードウェイミュージカル『ピーターパン』。中でも特に人気の高いキャラクターであるフック船長役(ダーリング氏との2役)に、EXILEのヴォーカル&パフォーマーのEXILE NESMITHが抜擢された。22代目フック船長にかける想いとは?現在の心境を聞いた。【チケット情報はこちら】EXILEでの活動を続けながらも、「いつか本格的なミュージカルに挑戦してみたい」との夢を長年抱いてきたというNESMITH。それだけに今回のオファーは、「まさかでした!」と驚きつつも喜びを隠せないようす。「以前劇団EXILEの舞台に出させていただいたことがあるんですが、それがすごく楽しかったんです。生ものだけに同じステージは2度とないですし、そこでしか生まれないものがたくさんあって。しかも幕が上がってからも常に新しくなっていく、あの快感をまた味わいたいと思ったんです」取材当日はポスター撮影日。初めてフック船長の衣裳を身にまとったEXILE NESMITHは、その感想を興奮気味に語る。「今までイメージだけだったフックが、衣裳を着たことで、何パーセントか自分の中に入ってきたような気がします。ちょっとニヒルで紳士的でもあり、かつ妖艶な動きも出せるんじゃないか。そんなことがいろいろ想像出来て。ここで初めて生まれたフックを、次は稽古場で皆さんとやり取りをしていく中で膨らませていきたいですね。ちなみにフックの扮装をした自分を見た時に、“これが自分か!?”って思ったんです(笑)。だからお客さまにも“EXILE NESMITH”という先入観を捨てて、純粋に『ピーターパン』という作品を観に来ていただいた方が、より楽しんでもらえるのではないかと思います」子供はもちろん、かつて子供だった大人をも夢中にさせるファンタジーの傑作『ピーターパン』。そのキーワードは“光と闇”にあるようだ。「子供は子供で、このワクワクのファンタジーの世界に自分も一緒になって飛び込んで楽しめるでしょうし、大人は大人で、子供の時とはまた違った視点から観ることで新しい発見があると思うんです。あと演出の藤田(俊太郎)さんは、『ピーターパン』という作品には“光と闇”が描かれているとおっしゃっていて。しかもそれぞれがとても純粋で、それぞれ自分なりの正義をもって行動している。いわば光も闇も、善も悪も、表裏一体というか。だからフックの中にある純粋な闇、さらにそれは光と背中合わせなんだっていうのを意識することで、単なるヒールではない、自分らしいフックを表現出来るのではないかと思います」公演は7月21日(日)から28日(日)まで埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール、8月2日(金)から5日(月)まで神奈川・カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化センター)ホールにて上演。名古屋・大阪・富山公演も。チケットは現在発売中。取材・文:野上瑠美子
2019年04月26日大の落語ファンである豊原功補が、落語と演劇の融合を目指し立ち上げた舞台“芝居噺”。2017年の『名人長二』に続いて弐席目となる『後家安とその妹』が、5月25日(土)から、東京・紀伊國屋ホールで上演される。そこで今回も企画、脚本、演出、出演の4役を兼ねる豊原と、主人公の後家安役の毎熊克哉に話を聞いた。【チケット情報はこちら】前作について「自分の好きな落語の世界が、素晴らしい役者さんによって現実化していく。その喜びだけで突っ走っていたので、ただただ楽しくてしょうがなかったです」と振り返る豊原。とはいえ「どこまでオリジナルに迫れるのか。その上で新しいものにならなければつくる意味がない」との想いから、“芝居噺”そのものを続けることも悩んだそう。しかし前作で得られた確かな手応えが、豊原の背中をこの弐席目へと押すことになった。元御家人で腕は立つが、その気性の激しさからヤクザ者のような生活を送る後家安こと安三郎と、あることをきっかけに大名に見初められ、側室になった妹のお藤。物語はこのふたりを中心に、彼らに翻弄される人々の悲劇が描かれる。毎熊は今回のオファーについて、「ビビりました(笑)」とひと言。だが脚本を読み進めるうちに、「これは大変なことになるなとは思いつつも、ある魅力を感じて」と、作品に惹かれ出演を決めたと明かす。さらに後家安という人物について、「ひどい男ではありますが、会話の節々に何か感じる部分があるんですよね。この役を演じていく上でその余韻、醸し出す空気感みたいなものは、きっと最終的にすごく大事になってくると思います」と語る。毎熊のキャスティングについて豊原は「雰囲気」を挙げた上でさらに、「後家安というのは悪党ではあるんですが、どこか誠実な悪党じゃなきゃいけないんですよね。これは毎熊くんに出てもらうことにも繋がりますが、心の中にきれいなものが通っていないと、この兄妹に説得力を持たせられない。それを感じられる俳優さんかどうかというのは、ひとつ大きな決め手になったと思います」と続ける。そんな豊原の言葉に、舞台経験が決して多くない毎熊は、「僕を選ぶ時点でリスクがあると思いますが…」と苦笑い。だが豊原は「いやいや、頼もしい限りですよ。僕も演出家としてはまだペーペーですし、今回も俳優さんに助けてもらいたいなと。ただ前回よりは若い方が多いので、また違う、もっと生々しい頼り方をしたいと思っています」と毎熊に期待の眼差しを向けた。公演は6月4日(火)まで、東京・紀伊國屋ホールにて。チケット発売中。取材・文:野上瑠美子
2019年04月22日中村獅童が倉庫、さらには新宿・歌舞伎町での歌舞伎公演に挑む話題作、オフシアター歌舞伎『女殺油地獄』。映画監督、俳優としても活躍する赤堀雅秋が、初めて歌舞伎の脚本、演出を担う。コクーン歌舞伎『四谷怪談』(2016年)で演出助手を務めて以降、獅童と親交を深めてきたという赤堀。この異色の組み合わせから生まれる歌舞伎とはいかなるものなのか。ふたりに話を聞いた。【チケット情報はこちら】“伝統と革新”の精神で、これまでチャレンジングな企画を次々と打ち立ててきた獅童。このオフシアター歌舞伎も、獅童が長年あたためてきた企画のひとつだ。「20代でニューヨークの舞台に立った時、いろいろな演劇のスタイルがあることを知りましたし、また幼少期に観た唐十郎さんのテント芝居など、アングラに対する憧れも自分の中にはあったと思います。そういった影響、そして今自分がやるべきことを考えた時、倉庫で歌舞伎をやってみたいなと。古典を守りつつ革新を追求する。そんな自分なりの生き方を追求していく上で、“獅童らしい”スタイルをつくっていく。そのためにもこの企画を成功させて、続けていきたいと思っているんです」『四谷怪談』の現場に参加したことで、歌舞伎に対する考えが大きく変わったと言う赤堀。「青臭い言い方ですけど…」と前置きした上で、「歌舞伎も自分たちの演劇も“魂”は変わらない」と語る。そしてその思いは、自ら演出を手がける本作でも同じようで、「なにか奇をてらったものをやろうとも思いませんし、極めてアナログに、それでもお客さんの心にちゃんと届くような作品を、歌舞伎と寄り添いながらつくっていけたらと思います」と続ける。倉庫での歌舞伎公演を考えた時、獅童の頭にパッと浮かんだ演目がこの『女殺油地獄』。油まみれの凄惨な殺しの場面が大きな見せ場となるだけに、赤堀は「僕が人殺しの作品ばっかりやっているから声をかけられたのかな」と笑う。一方獅童は、「歌舞伎のダークな部分を見せたい」とひと言。さらに「現代で起こってもおかしくない、事件性をもった演目ですからね。こういった危険な演目をアングラな倉庫、そして歌舞伎町でやることに大きな意味を感じています」と明かす。また四方を客席に囲まれた舞台を採用したことについて、「手を伸ばせば届くような、ライブ感のある、生々しい感覚のお芝居になればいい」とは赤堀。獅童も「観客がこの事件を“目撃”してしまったようなものになれば」と期待を寄せる。公演は5月11日(土)から17日(金)まで、東京・天王洲アイル 寺田倉庫、5月22日(水)から29日まで(水)東京・歌舞伎町 新宿FACEで上演。一般発売は4月6日(土)。前日の4月5日(金)10時よりチケットぴあにて先着先行プリセールを受付する。取材・文:野上瑠美子
2019年04月04日青木豪の書き下ろし新作を、河原雅彦が演出。ジョン・スタインベックの小説『エデンの東』をモチーフに、舞台を1990年代の長崎に置き、ある家族の姿を描き出す。そこで脚本の青木と、主人公の双子の兄弟、勇と光を演じる松下優也と平間壮一に話を聞いた。【チケット情報はこちら】2005年の舞台『エデンの東』でも脚本を務めた青木。だが今回の執筆にあたり、当時とはまた違った点に着目したという。「全4巻の小説ですが、多くの人が知っている映画版ではその4巻だけが描かれていて、3巻まではわりと父母の話がメインになっているんですよね。僕はそこが書く上で面白いところだなと。ある程度大人になった人間が、両親がどう生きてきたかを知っていく。今回はそこから物語を組み直していきました」松下と平間の共演は、『THE ALUCARD SHOW』(2013年、2014年再演)以来今回で2作目。お互いの印象について「当時、同世代の俳優さんのことはほとんど知らなかったんですが、こんなに踊れる人がいるんだってことに驚いて」と松下が切り出すと、平間は「僕は優也の歌を聴いた瞬間、この人の後ろで踊りたいって気持ちになりました」と明かし、それぞれ出会いが鮮烈だったことを振り返る。さらにその後もお互いの活躍は大いに刺激になっていたようで、久々の共演に「嬉しい!」と声をそろえる。また風間杜夫や高橋惠子ら大御所との共演にも、「壮ちゃんがいることでだいぶ不安が和らいでいる」との松下の言葉に、「僕も!優也がいるからわりと落ち着いているかも」と平間も続く。演出の河原とのタッグは、青木は『八犬伝』(2013年)で、松下と平間は『THE ALUCARD SHOW』で経験済み。青木は「河原さんの演出は、作品をすごく“エンタメ”にしてくれるという印象。自分が演出しない時は、“絶対そんなこと出来ないだろう”ってことを書くんですが(笑)、今回河原さんがこれをどう舞台化してくれるのか。すごく楽しみ」と期待を寄せる。「河原さんの演出は思いっきり乗っかれる感じがあって、今回も安心して挑めそうです」とは松下。また平間は「ちょっとピリついた稽古場も経験しているんですが(笑)、それはお芝居に対して河原さんが本気だから。こちらも全身でぶつかっていかないと通用しないという点で、大好きな演出家さんです」と絶大な信頼を寄せる。青木と河原の手により、俳優・松下優也、俳優・平間壮一がいかなる顔を見せてくれるのか。その開幕が待たれる。6月7日(金)よりシアターコクーンにて開幕する東京公演を皮切りに、兵庫、愛知、長崎、福岡と各地を巡る。東京公演は現在、チケットぴあにてプレイガイド最速抽選を実施中。取材・文:野上瑠美子
2019年03月27日“SF”にこだわり続け、唯一無二の作品世界で多くの演劇ファンを魅了している「イキウメ」。6年ぶりの上演となる『獣の柱』は、見る者に恐ろしいほどの幸福感をもたらす小さな隕石、そして空から降ってくる巨大な柱によって、世界が大きく変わっていくパニックSFだ。そこで今回の再演を前に、作・演出を手がける前川知大に話を聞いた。【チケット情報はこちら】代表作の『散歩する侵略者』をはじめ、イキウメには再演を重ねる作品が多い。荒唐無稽ともいえるアイデアからスタートした脚本を、ブラッシュアップし再演を繰り返すことで作品を研ぎ澄ませ、アーカイブしていきたい。そんな前川の思いがあるためだ。「この『獣の柱』に関しても、いつか書き直さなきゃと思っていたんです。すごく長いスパンのお話なだけに、個々の登場人物のバックボーンを普通に打ち出していくと、ものすごく上演時間が長いものになってしまう。あと、公演をすることで、作家の自分はこんなことを考えていたのかと、演出家の自分が気が付いていくところがあります。前回も、自分でも最後までわからなかった。今回まずやるべきはそのテーマをはっきりさせることであり、それが今ようやくつかめてきた感じです(笑)」もともと温めていたアイデアのパイロット版として2008年に短編『瞬きさせない宇宙の「幸福」』として上演。改めて長編に書き換え、『獣の柱』として2013年に初演。そこからさらに6年を経たことで、本作はどんな変化を見せていくのだろうか。「最初のアイデアとしては、“宇宙人侵略もの”みたいなイメージで考えていたんです。でも『獣の柱』になった時、この作品で起こる“大状況”みたいなものを、震災の2年後ということもあり、そこに当てはめて観る人が多くて。それに比べると自分自身、もっと落ち着いて、広い視野で書けている気はしますね。ある一個の出来事に対する解釈を巡る話として。ただ柱によって人々は住む場所を移動せざるを得なくなるわけで、そういった意味で言うと、やはりその後の話だとは思います」中心となる人物は、今回は、双子の兄妹とその友人の3人。彼らがこの世界で起きている不条理をどう受け止めていくのか。その解釈の物語になるという。「妹はキリスト教の『ヨハネの黙示録』に合わせて、その友人は科学的な知識によって、それぞれがこの“大状況”を解釈していこうとします。そんな登場人物たちの解釈に惑わされつつ、観ている側にもいろいろ考えてもらえたらなと。すごく壮大ですが、笑いもしっかりあり、間違いなく楽しい作品にはなると思います。またはっきりさせる部分ははっきりさせて、初演よりもわかりやすく伝えられたらいいですね」公演は5月14日(火)から6月9日(日)まで、東京・シアタートラム、6月15日(土)・16日(日)大阪・サンケイホールブリーゼにて。チケット発売中。東京公演については3月28日(木)10:00より追加公演のチケットを発売開始。取材・文:野上瑠美子
2019年03月27日ジョビジョバの新作ライブ『LET’S GO SIX MONKEYS』が、4月27日(土)より、東京・品川プリンスホテル クラブeXで上演される。そこで構成・演出も務めるリーダーのマギーに、ライブにかける想いを聞いた。【チケット情報はこちら】マギーと福田雄一によるコントユニット・U-1グランプリ『ジョビジョバ』(2014年)での再集結を機に、前作『Keep On Monkeys』(2017年)で再起動を果たしたジョビジョバ。15年もの活動停止期間を経て、再び6人でスタートを切るに至った、そのエネルギーの源とはいったい何だったのか。「この6人で、自分たちが面白いと思うことを発信するってスタイルが、やっぱりすごく楽しかったんですよね。それが1番前にきて、その後ろも特にないっていうか(笑)」メンバーの長谷川朝晴、坂田聡、六角慎司は活動停止後も俳優業を続けてきたが、木下明水と石倉力は引退。そんなメンバーの変化は、マギーの中で6人それぞれのポジションをより明確にしたようだ。「やっぱり俺がすごく頼りたいのは坂田と長谷川で、六角は“お前の出来ることだけでいいよ”と。で、明水と石倉は“お前ら素人なのに面白いなー”みたいな。あくまで“俺の好きな君でいてください”くらいのオーダー(笑)。そういう環境が、以前と違う楽しさや面白さに繋がってるのかもしれません」そんな6人がつくる、“今だからこそ出来る笑い”とは?「今の自分たちのおかしみや切なさ、大変さとか、いわゆる“この人が透けて見えるから面白い”みたいなこともやれるようになってきて。前回は、長谷川が大河ドラマで伊達政宗役をやっていたので、それを長谷川の親父がすごく自慢しているってネタをつくったんです。そういうドキュメント性のある笑いに、20代では出せなかった説得力が出てきたというか。今は“おじさんの哀愁”みたいなものが、ただぼんやり立っているだけで滲んでくるようになってきた。単に年を取っただけとも言えますが(笑)、それは今の俺らの強みに変えていけると思っています」前回公演のチケットは即完。今回も購入前から諦めの声がちらほら聞こえてくるが…。「いやいやいや! 今回は公演数も増やしましたし、逆に埋まるのか?って不安も…(笑)。新しいお客さんにも観てもらいたいですしね。他の作品を観た時の“ちょっと面白いおじさん”って感想を、“スゲー面白いおじさん!”に変える自信はあります。“ジョビジョバ営業中”の札を掲げてお待ちしていますので、ぜひ劇場に遊びに来てください!」取材・文:野上瑠美子
2019年03月25日2006年に上演された『ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?』の面々が再集結。ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)演出、大竹しのぶ、稲垣吾郎、ともさかりえ、段田安則の出演で、今回はヤスミナ・レザの『LIFE LIFE LIFE~人生の3つのヴァージョン~』を上演する。そこで上演台本も兼ねるKERAに、本作に臨む思いを聞いた。【チケット情報はこちら】レザの代表作『ART』以来、彼女の描く“シニカルなコメディ”のファンだと語るKERA。中でもその決定版と位置づけるのが、日本でも2011年に上演された『大人は、かく戦えり』だ。一方、この『LIFE LIFE LIFE~』はと言うと…。「『大人~』は後半に向けて笑いも緊張感もすべてが高まっていく、非常によくまとまった芝居だと思うんです。でもこれはすごく実験的な作品で、1幕に関してはある爆発力を持ったシットコムとして見られるんですが、それが2幕、3幕と進むうちに、どんどん奇妙なトーンになっていく。普通は徐々にいろんなことが分かっていくわけですが、これはその逆ですから。ひと筋縄ではいかない構造だなと」自宅で子供の寝かしつけに手を焼いている、天体物理学者のアンリ(稲垣)とソニア(ともさか)夫婦。するとそこに、翌日のディナーに招待していたはずのアンリの上司ユベール(段田)とイネス(大竹)夫妻がやって来て…。この幕開けは3幕ともすべて同じ。だがちょっとしたズレやトーンの違いから、物語は異なる展開を見せていく。「後半が大きな課題ですね。生理の流れも複雑ですし、観客のカタルシス、また演者のカタルシスを考えても、非常に難しい。ただそこをあまり明瞭にしない方がいいのかなとも思っていて。そもそも人って説明のつかないことをしたり、言ったりするもの。だからあえてわかりやすい説明はせず、観客に想像させる部分を残しておくのもアリだと思うんです」稲垣以外のキャストとは、すでに何本もの現場を共にしてきたKERA。「勝手知ったる俳優と演出家の関係になれているのでは」との言葉に、互いへの厚い信頼が伺える。「僕がやりたい笑いに対してビビットに反応してくれる人ばかりですからね。“笑わせたいの?笑わせたくないの?”という二者択一ではなく、“こういった笑わせ方をしたいんです”っていう相談が出来る人たちというか。何より少人数ということもあり、演出家も俳優も他のスタッフも含め、みんなで一緒に探っていくことが出来る。それこそこういった芝居の醍醐味ではないかと思います」公演は4月6日(土)から30日(火・休)までBunkamura シアターコクーンにて上演。一般発売分の前売チケットは予定枚数終了。立見券はチケットぴあにて3月16日(土)10時より発売開始。取材・文:野上瑠美子
2019年03月15日フランス・パリでの初個展が大盛況をおさめた香取慎吾が、今度は“日本初”となる個展、サントリー オールフリーpresents『BOUM!BOUM!BOUM!(ブン!ブン!ブン!)香取慎吾NIPPON初個展』を、3月15日(金)から6月16日(日)まで、IHIステージアラウンド東京で開催する。個展ながら会場は劇場。しかも客席が回転するステージアラウンドで、最大350人、120分の入れ替え制。この前代未聞の内容について、香取本人に直撃した。【チケット情報はこちら】人生初の個展がパリ。これはさすがの香取でもさぞプレッシャーだったのではないかと思いきや、「やれることの喜び、嬉しさ、最高!」と、軽やかな口調で振り返る。それだけに今回のステージアラウンドという一見巨大過ぎるキャンバスも、香取に恐れを抱かせるようなものではないらしい。「これまで10万人、100万人と相対してきましたからね。恐怖はないです。いや、あるにはあるんだろうけど、怖くないことをやっていても面白くないですから。逆に今まで大きいものを描きたいと思いつつ、やっぱり家のサイズからはみ出すようなものはなかなか手をつけられなかった。それが今回このサイズ感のところでやれるわけですからね。本当に楽しみです!」本展のテーマは「香取慎吾の身体性に起因するアート」。会場全体を香取の体と捉え、まるで体内を巡るような感覚でアート作品を楽しめる構成となっている。「劇場の入り口が僕の口で、1度僕に食べられてもらう感じですね。で、最後には僕から排出されるという(笑)。もともと絵を描くのは好きだったんですけど、エンタテインメントのいち素材として生きてきた中で、自分自身がアートなんじゃないかと思うようになって。例えばこれまで切った髪は全部ストックしてあるんですけど、それこそいろんな髪の色にしてきたので、これが初めて使えるんじゃないかとか。あと抜けた歯はそのまま大きくしてオブジェにしようかとか。アイデアはたくさんあるので、あとは時間との勝負ですね」作品の仕上がりは「全体の20パーセントくらい」と苦笑いを浮かべつつ、すでにその開幕が待ち切れないようす。なお鑑賞の流れとしては、まず客席に着席。映像作品を鑑賞したあと、スクリーンの奥、舞台上へと進み、展示された作品をじっくり堪能することが出来る。「もしかしたら僕がひょっこり遊びに来ているかも」といたずらっぽく笑う香取。そんなサプライズも期待しつつ、香取自身を体感しに、この型破りなアート展に足を運んでみてはいかがだろうか。開催期間は3月15日(金)~6月16日(日)まで、IHIステージアラウンド東京にて。チケットは現在、第1期[3月15日(金)~4月15日(月)]が発売中。第2期[4月17日(水)~5月20日(月)]は3月15日(金)からぴあプリセールを実施。一般発売は3月17日(日)。第3期[5月22日(水)~6月16日(日)]は4月21日(日)チケット一般発売。取材・文:野上瑠美子
2019年03月13日ジャニーズJr.の林翔太が主役を務めるミュージカル『ソーホー・シンダーズ』が、3月9日、東京・よみうり大手町ホールで開幕した。その初日公演を前にマスコミ向けのフォトコールと囲み取材が行われ、林のほか共演者の松岡充、マルシア、大澄賢也と、演出の元吉庸泰が登壇。公演にかける想いを語った。【チケット情報はこちら】ロンドン・ソーホーで母の遺した洗濯屋を切り盛りしているロビー(林)は、ある日、店のオーナーである義姉妹によって家から追い出されてしまう。経済界の大物・ベリンガム卿(大澄)から金銭的な援助と求愛を受けるも、実は彼には本命の恋人の存在が。その恋人こそ、今をときめくロンドン市長選立候補者で、フィアンセもいるジェイムズ・プリンス(松岡)だ。そんな秘密のふたりの関係が、ある出来事から明るみになってしまい…。冒頭、スポットライトの中に浮かび上がるひとりの男性。“語り”の役どころでもある西川大貴が、圧巻のタップを披露し、一瞬で観客を『ソーホー・シンダーズ』の世界へと引き込む。続くM1『オールド・コンプトン・ストリート』は全キャストがそろう、明快でリズミカルなナンバー。本作の舞台であるソーホーを「ごたまぜのごっちゃ煮」と歌い上げ、社会的立場や愛のかたちなど、さまざまな人たちが交差する本作の象徴的なナンバーだ。またM4の『見知らぬ恋人』は、ロビーと多忙を極めるジェイムズが束の間の逢瀬を楽しむナンバー。立場は違えどもお互いを思う気持ちに変わりはなく、その恋するふたりのピュアな姿は何とも微笑ましい。そしてふたりの伸びやかで美しい歌声が、シーンをより一層盛り上げる。フォトコールを終え囲み取材に応じた5人は、終始にこやか。ここまでいかにいい時間を過ごしてきたカンパニーかが分かる。林は「ファンの皆さんも楽しみにしてくれていると思いますが、それ以上に僕らが楽しみにしていたと思います」と満面の笑み。さらに「ひとつ殻を破れた林翔太をお見せ出来るのではないか」と自信も覗かせる。そんな林について、「この子犬感はヤバい(笑)」とは松岡。林の純粋さ、さらに作品に対する真摯な姿勢に、ジェイムズさながらすっかり魅了されてしまったようだ。それは大先輩であるマルシア、大澄も同様。また演出の元吉は、それぞれの役どころについて「ぴったり過ぎて怖いくらい」と太鼓判。固いチームワークで結ばれたカンパニーだけが見せられる、極上のエンタテインメントがここにはある。東京公演は、3月21日(木・祝)まで。その後、大阪・愛知・石川・神奈川を巡演する。チケット発売中。取材・文:野上瑠美子
2019年03月11日藤沢文翁が原作・脚本・演出を手がける、オリジナル音楽創作劇シリーズ「VOICARION(ヴォイサリオン)」。その第1弾として上演された『Mr.Prisoner(ミスター・プリズナー)』が、初演時のキャストそのままに、3年ぶりに再演。3月3日(日)より東京・シアタークリエで上演中だ。そこでキャストのひとりである上川隆也に話を聞いた。【チケット情報はこちら】このシリーズの3つの柱となっているのが、超豪華キャスト、生演奏による美しい音楽、上質な演出。中でも上川が着目するのは、演出も手がける藤沢の台本だ。「僕らが普段手渡される台本というのは、映像化することを最終的な目的にしているんです。でも文翁さんの台本は、最初からそれを見越していない。役者が演じ、そこに音楽、照明、舞台美術がひとつになることで、お客さまの脳の中に画を描くことを想定して書かれているんです。どこか抽象的な領域を出ない“声”を用いているにも関わらず、それがお客さまに届いた瞬間に具象になる。そこが大きな魅力ですし、演者としてはその難しさも含め、向き合えば向き合うほど多くの発見がある台本だと思います」物語の舞台は19世紀の英国。ロンドン塔の地下にひとりの囚人が幽閉されており、彼は「絶対に声を聞いてはならない囚人」と呼ばれていた――。上川が演じるのは、その囚人に興味を抱き、取材を試みる作家のチャールズ・ディケンズと、囚人の正体を知る謎の男、クライヴ・ヘイスティングス卿の二役。「ありがたいことにそれぞれキャラクターが相当違うので、演じ分けるということには難渋しませんでした。ただこれが声だけの表現となった途端に、僕は自分自身の手駒のなさに愕然として……。この隔たりのある人物を、いかに声だけで色分け出来るのか。それは今回も課題のひとつになっていくと思います」共演者は、ともに日本の声優界でトップを走り続ける林原めぐみと山寺宏一。「おふた方に共通するのは、しぐさや距離感などト書きにあるようなことを、声だけでこちらに喚起させてしまうということ。その実に巧みな表現には本当に驚かされましたし、自分がその領域にどう踏み込んでいけるのか。今回またイチから摸索していきたいと思っています」作品の内容にちなみに、最後はこんな言葉で締めくくってくれた。「他では絶対に観ることが出来ない、上質なエンタテインメントがここにはあると思います。それは何より信じていただいていいことだと思いますので、初演をご覧になった方も、初めての方も、ぜひ劇場まで収監されに来てください(笑)」東京公演は3月10日(日)まで。大阪公演は3月16日(土)・17日(日)大阪・サンケイホールブリーゼにて。取材・文:野上瑠美子
2019年03月05日第53回岸田國士戯曲賞に輝いた蓬莱竜太の傑作『まほろば』を、新たに劇団チョコレートケーキの日澤雄介が演出。ほぼキャストも一新し、7年ぶりに上演される。そこで宝塚歌劇団の元トップスターであり、本作のミドリ役で初のストレートプレイ挑戦となる、早霧せいなに話を聞いた。『まほろば』チケット情報物語の舞台は長崎の田舎町にある日本家屋。祭りの準備に追われる母・藤木ヒロコのもと、上京していた長女・ミドリが帰って来る。次女のキョウコは、かつて父親不明のユリアを出産。この家に住みつつ、現在はマオという子供を持つ男とつき合っている。祖母のタマエを含め、6人の女性が集った藤木家。そして祭りの夜、それぞれの思いが交錯して…。早霧演じるミドリは、東京でバリバリ働きつつ、あることをきっかけに実家へと戻って来た女性。そんなミドリに、早霧は自らの姿を重ねる。「台本を読んだ時に、他人事じゃない感じがしたんです。まさに自分も長崎出身で、今東京に住んで、お仕事をしている。自分に近い部分がたくさんあるだけに、裸の私を見せているような感じになるのではないかと…。でもそこは役者の見せどころで、素の自分とは違う、あくまで“ミドリ”という役として存在できるよう、皆さんとつくり上げていきたいと思います」。本作の大きな魅力であり、それぞれの人物像を形づくる一翼を担っているのが、長崎弁のせりふだ。「これはもう完璧ですね。方言指導の方が録音してくださったものを聞いても、『あー、分かる、分かる』って(笑)。ただ私は帰省するとすぐ長崎弁に戻るのですが、ミドリはしばらく標準語のまま。きっと家族に対して虚勢を張っていることが、その標準語に表れているんだろうなと。そんなミドリが長崎弁に戻った瞬間こそが彼女の本性だと思いますし、演じる上ではとても大きなポイントだと思います」。世代も、生きてきた道のりも違う6人の女性たち。観た者の心に残るものも、きっとさまざまに違いない。「劇中に『普通』というせりふが出てくるんですが、それって何だろうと思うんです。適齢期に結婚し、子供を産み、立派に育てあげることが普通なのか。でもそうじゃない生き方にも幸せはあるんじゃないかと。そういうことを考えると、最後のミドリのセリフはシンプルが故に難しい…。ただミドリとしてしっかりと存在し、発することが出来れば、きっとこのひと言は、お客さまの心にスッと入っていくものになるではないかなと思います」。公演は4月5日(金)から21日(日)東京芸術劇場シアターイースト、4月23日(火)・24日(水)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて。チケットは3月2日(土)一般発売。取材・文:野上瑠美子
2019年03月01日近年一大ブームを巻き起こした伊藤若冲や歌川国芳を始め、岩佐又兵衛、狩野山雪、曽我蕭白、長沢芦雪という6名の画家の独創的な作品群を紹介した、美術史家・辻惟雄による著作『奇想の系譜』。本著で取り上げられたこの6名に、白隠慧鶴、鈴木其一を加え、江戸絵画の魅力を再発見しようという展覧会、「奇想の系譜展江戸絵画ミラクルワールド」が、4月7日(日)まで、東京都美術館で開催されている。【チケット情報はこちら】『奇想の系譜』というタイトル通り、8名の画家それぞれの斬新でオリジナリティあふれる作品の数々を、いいとこどりで楽しめる本展。その1番手に登場するのが、2016年の大回顧展が社会現象にもなった、伊藤若冲だ。若冲の代名詞とも言える“鶏”だが、今回はその最高傑作に挙げられる「紫陽花双鶏図」を展示。その細密な描写と大胆な構図には、観る者の目を一瞬にして釘づけにする圧倒的な美しさがある。また近年見出された新出作品「鶏図押絵貼屏風」は、踊るような筆使いとどこかユーモラスな鶏の表情が光る、最晩年の秀作と言えるだろう。精緻なタッチとグロテスクな描写が人気の曽我蕭白。「雪山童子図」などいかにも蕭白らしい作品の中、雄大な富士山に遊び心を加えた「富士・三保松原図屏風」(展示は3月10日(日)まで)など多彩な作品群が並ぶ。さらにエンターテイナーとして観る者を魅了する長沢芦雪は、やはり「白象黒牛図屏風」が圧巻。まず目を奪われるのは、右隻の白い象と左隻の黒い牛の堂々たる姿。だが牛の腹の横で舌を出し、ちょこんと座る仔犬が、実は本作の主役なのではないかと思われるほど、愛嬌たっぷりの存在感を発揮している。白隠慧鶴の作品は、禅僧として仏の教えを伝える手段として描かれているのが特徴。その作風は力強さと軽妙さを兼ね備えており、中でも「達磨図」に代表される達磨を描いた作品が目を引く。「宮本武蔵の鯨退治」などで見せる歌川国芳の錦絵は、まるで現代アートにも通じるようなポップさ。その飛び抜けた発想力は、江戸庶民から現代人までをも魅了する。ほかにも独自の極彩色が印象的な岩佐又兵衛。酒井抱一の弟子ながら、若冲の影響も滲ませる鈴木其一。大作「龍虎図屏風」でダイナミックかつユーモラスな水墨の龍と彩色の虎を描いた狩野山雪。虎図は若冲、蕭白、芦雪も描いており、それらを見比べるのも楽しい。なお会場では、前出した芦雪の仔犬をモチーフにしたものなど、オリジナルグッズの販売も充実している。また、お得な新・北斎×奇想の系譜セット券も発売中。取材・文:野上瑠美子
2019年02月19日“近代建築の三大巨匠”のひとりであるル・コルビュジエ。その偉大な功績を振り返る企画展、『ル・コルビュジエ絵画から建築へ―ピュリスムの時代』が、2月19日(火)から5月19日(日)まで、東京・国立西洋美術館で開催される。今回音声ガイドを担当することになったのは、多くの作品に出演する声優・ナレーターの諏訪部順一。そこで収録を終えたばかりの諏訪部に話を聞いた。【チケット情報はこちら】“ピュリスム(純粋主義)”の運動を推進した1920年代を中心に、絵画や建築、インテリア・デザインなどが紹介される本展。中でも1番の魅力を諏訪部はこう語る。「会場である国立西洋美術館そのものが、ル・コルビュジエ氏が設計に関わった作品ですからね。彼が遺したさまざまな作品を鑑賞しつつ、空間までも味わうことが出来ます。ル・コルビュジエの世界を体感出来る、非常に貴重で意義のある展覧会だと思いました。高濃度の聖地巡礼、といった感じですね(笑)」実は諏訪部、以前からル・コルビュジエの家具のファンで、自宅にはLC6というテーブルを所有しているそう。そんな彼が本展で実際に観てみたいと考えているのが…。「やはり絵画(本名のシャルル=エドゥアール・ジャンヌレ名義で発表)でしょうか。今までは建築家であったり、家具デザイナーとしてル・コルビュジエ氏を存じ上げていましたが、画家としての活動はあまり知らなかったもので。彼が絵画に注いでいた情熱や、そこから得たインスピレーションをどのように立体作品へと転化していったのか、その流れを知ることが出来そうなのでとても楽しみです」声優やナレーターとしての活動を軸に、声の表現を追求してきた諏訪部。そんな彼だからこそ、この音声ガイドではどんなことを大切にして臨んだのだろうか。「音声ガイドとは、作品鑑賞をより充実したものにするためのアシスタントみたいなものですから。少しでもご来場くださった皆さまのお役に立てるように、そして、体験をより良い思い出としていただけるように、雰囲気づくりなども意識しながら読ませていただきました。会場である国立西洋美術館自体がル・コルビュジエが遺した足跡です。音声ガイドには、そこに込められた彼のこだわりを読み解くボーナストラックも収録されています。ご利用いただくと、よりディープにル・コルビュジエの世界に浸れると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」取材・文:野上瑠美子
2019年02月15日ピースの又吉直樹が立ち上げたユニットコントライブ“さよなら、絶景雑技団”。その4度目となる公演『さよなら、絶景雑技団 2019 本公演』が、3月22日(金)東京・三越劇場で幕を開ける。そこで作・演出も担う又吉に、コントにかける想いを聞いた。【チケット情報はこちら】近年では作家としての活動に注目が集まることが多かった又吉だが、「単純にコントをやるのが好き。ネタをつくるのも好き」と語る、根っからの芸人。そんな彼にとって、自分の“好き”を実現出来る大切な場がこの絶景雑技団だ。メンバーにはしずる、ライス、サルゴリラらが名を連ね、又吉は「全員コントが好きな人ばかり。みんな気心知れたメンバーですし、僕がやろうとしていることも1番よくわかってくれている」と、厚い信頼を寄せる。さらにメンバーには、「わりと純粋だし、無欲だし、いつまでも子供のままみたいな、“ちょっと大丈夫か?”って心配になる(笑)」ようなタイプが多いと言う。だがその中で異色なのが……。「パンサーの向井(慧)と井上好井の好井(まさお)だけは、めちゃくちゃガツガツしていますね。最初にやった時、“出してくださいよ!”って直談判してきたのも向井と好井。このふたりに関しては、そろそろ僕らを踏み台に、次のステップに進む可能性は大いにあり得るなと(笑)。まぁ絶景雑技団ってある種のドキュメンタリーで、僕がみんなを見て、それをそのままコントにしてきた。だから裏切られたら裏切られたで、そういうコントがつくれるからいいんですけどね(笑)」2019年は絶景雑技団を始めてから10年であると同時に、又吉にとって芸人生活20年という節目の年でもある。「“10年、20年、又吉は何やってきてんねん”ってことが問われるわけですからね。怖いは怖いです。それでもやりたいと思うのは、やっぱり考えるのが好きだし、コントを見てもらうのが好きだから。ただ過度な期待はしないで欲しいです。僕、平成ノブシコブシの吉村(崇)くんに誘ってもらって、一緒に海外旅行したりするんですけど、毎回全然楽しみじゃないんですよ(笑)。というのも僕はベタな街が好きなんですけど、吉村くんはメキシコのカンクンとか、“なんでそこ?”ってところを選んでくるから。でも毎回、その街のことが大好きになって。つまりあまり期待せえへんってことが、旅行の最高の楽しみ方ではないかと。だからこのライブも、そんな気持ちで来てもらえると丁度いいのかなと思います(笑)」チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2019年02月06日葛飾北斎の約70年にも及ぶ画業の遍歴を、一挙にまとめて紹介する『新・北斎展 HOKUSAI UPDATED』が、3月24日(日)まで、東京・森アーツセンターギャラリーにて開催されている。本展は北斎研究の第一人者である、故・永田生慈氏のコレクションが中心となっており、その展示数は約480件(会期中展示替えあり)にものぼる。【チケット情報はこちら】画号の変化とともに、その作風も大きく変えていった北斎。会場は春朗期(20~35歳ごろ)、宗理期(36~46歳ごろ)、葛飾北斎期(46~50歳ごろ)、戴斗期(51~60歳ごろ)、為一期(61~75歳ごろ)、画狂老人卍期(75~90歳ごろ)の6期に分けられ、若年期から老年期までを順に辿ることが出来る。勝川春章に入門し、勝川春朗の号でデビューした北斎。役者絵や名所絵、黄表紙といった本の挿絵など、さまざまな題材を描くことで絵師としての基礎を築いていく。この春朗期では、全長約9メートルという大作(通期展示、場面替えあり)を本邦初公開。また「鍾馗図」(~1月28日(月)までの展示)は、春朗期の落款のある唯一の肉筆画となる。勝川派から離れ、新たなスタイルを摸索し始めた北斎。その宗理期に初めて手がけたと言われる摺物が、(通期展示、118枚を4期に分けて展示)だ。摺物とはいわゆる私家版で、贅沢な絵の具や刷りが用いられており、さらに本作は保存状態も非常によかったため、当時のままの鮮やかな色彩を楽しむことが出来る。葛飾北斎期で注目は、シンシナティ美術館所蔵の(通期展示)。また戴斗期の「冨嶽三十六景 凱風快晴」(~2月18日(月)までの展示)や「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」(2月21日(木)~3月24日(日)まで展示、~2月18日(月)までは所蔵先が異なります)、3900ものスケッチからなる『北斎漫画』、さらに為一期では「百物語」を題材にした不気味な怪奇ものなど、これぞ北斎!と言われる名作が続く。そして画狂老人卍期で待ち構えるのが、長らく行方不明になっていたが、永田氏の調査によって、西新井大師總持寺で発見された(通期展示)。北斎最大級の肉筆画にして、作品が放つその圧倒的なパワーと細密な描写は、齢90にして北斎がたどり着いた驚愕の境地と言える。会場では北斎らしい、粋でユーモアの光るオリジナルグッズを多数販売。また同フロアのカフェ・THE SUN 茶寮 featuring 北斎では、赤富士カレー(1566円)や北斎漫画パフェ(1404円)など、作品にちなんだメニューも提供されている。目も口も心も楽しい、北斎尽くしの1日を満喫出来るはずだ。新・北斎×奇想の系譜セット券2,800円も好評発売中!取材・文:野上瑠美子
2019年01月22日小池修一郎の演出により、2011年に初演、2013年に再演、さらに2017年には新演出版を発表。公演毎にその人気を高めているミュージカル『ロミオ&ジュリエット』が、新キャストを加え再演されることに。そこで前回から引き続きの参加となる平間壮一と、2度目のオーディションでついにマーキューシオ役を射止めた黒羽麻璃央という、Wキャストのふたりに話を聞いた。【チケット情報はこちら】ロミオの親友であり、物語の大きなカギを握るマーキューシオ。前回を振り返りつつ平間は、「自分としては挑戦だったんですよね。ロミジュリのマーキューシオを、あんなちょっと狂った感じの、かなり個性的な人物につくり上げたことは。ただあれを好きだって言ってくれる人も多かったので、またあの役をやれるのはとても嬉しいです」と目を輝かせる。そんな平間のマーキューシオを、前回劇場で観ていたのが黒羽。「僕にとっては平間さんがつくったあれこそがマーキューシオで、すでに潜在意識の中に刷り込まれちゃっているんですよね。ただ自分がつくるマーキューシオの色というものも大切にしたいですし、今回新たに盗めるものもいっぱいあると思うので、稽古場でじーっと平間さんのことを観察したいなと思います」と笑う。すると平間も、「僕も黒羽くんを見て勉強させてもらいたいですし、仲良くやっていけたら」と新キャストの黒羽に期待を寄せる。シェイクスピアの不朽の名作にして、今を生きる多くの若者の心を捉えた本作。その大きな理由が小池による斬新な演出だろう。「小池さんの演出がすごくぶっ飛んでるなって思ったんです。ストリートダンスの要素が強かったり、新しいものをつくるんだって強い意志が感じられて」と平間。黒羽も「“ポップでロック”ですよね。音楽もすごくカッコいいですし!」。と、その明るい口調が一転、「ただ僕、ダンスがあまり得意ではなくて…」と少々不安顔に。「平間さんのマーキューシオはめちゃめちゃ動くのに、僕は全然動かない、みたいになるかも」と苦笑いを浮かべるも、平間が「それはそれで全然違うものになって面白いかもよ!」と先輩らしい言葉で背中を押す。チケットは常に完売。今回も争奪戦が予想されるが、もし購入を迷っている人がいたら……という問いに、平間は「迷わないで!」とひと言。さらに黒羽も「諦めないで!」と押しのひと言。彼らふたりが切磋琢磨し、いかなるマーキューシオ像を生み出していくのか。その答えは来年の開幕を待とう。公演は2月23日(土)から3月10日(日)まで、東京・東京国際フォーラムホールCにて上演。その後、愛知、大阪を周る。取材・文:野上瑠美子
2018年12月28日俳優の富岡晃一郎と作演出家の福原充則による劇団「ベッド&メイキングス」が、来年3月に新作『こそぎ落としの明け暮れ』を上演。本作は岸田國士戯曲賞受賞後初の、福原の書き下ろし長編作品となる。【チケット情報はこちら】富岡と福原が劇団を立ち上げたのが2012年。当時からすでに演劇界の実力派同士だったふたりだが、ベッド&メイキングスならではのモノづくりの魅力を、「ここにきてやっと劇団っぽいというか、“ツーと言えばカー”みたいな役者さんが集まってくれるようになって。それがいい感じで形になってきたかな」と富岡。その客演陣について福原は、「いろんなタイプの演技法がある中で、それなりにフィクション度が高いことを、説得力をもってお客さんに見せられる人」と演出家目線で分析する。また“エンタテインメント”にこだわるふたりだけに、サービス精神があるという意味で、「飲んでいて楽しい人」というのも重要な一因のようだ。舞台では「いつも自分のことを書いてきた」という福原だが、不惑(=40歳)を過ぎた彼が今思うのは……。「どんどん惑いますよね(笑)。今まで自分が中心に据えてきたものが、頼りにならなくなってきている。そこでなにか新しいルールというか、日常の支えが欲しいなと思って。それが今回の創作の原点になっています」。そんな福原の構想を聞いて富岡は、「福ちゃん(福原)が今思っていることが作品になるわけですから。しかもモチーフがないという意味ではすごく久しぶりの作品なので、その点でも楽しみです」と期待を寄せる。今回の客演陣は、安藤聖や町田マリーら“ツーカー”な面々が多いことに加え、中には近年母親になった人も。そして全員が女優という点について、福原は「改めて女優さんって生き物は面白いなと思って」と語り、続けて「それこそトミー(富岡)は大御所の女優さんみたいですから」と笑う。するとすかさず富岡が「えー!」とひと言。笑いつつ、「僕は基本、仲がいいのは女優さんが多いので、すごく居心地よくやれるんです」と、信頼を置く女優陣との共演に心弾ませる。作品全体の肌ざわりについて福原は、「現代口語演劇の前夜にあったような、いわゆる演劇っぽい会話劇。翻訳劇かな?っていうような」と明かす。だが“サルでもわかる哲学”をテーマに掲げる彼らの作品は、決して難解なものではなく、あくまでエンタテインメント。だが持ち帰るものは非常に多い。その癖になる味わいを、ぜひ劇場で体感して欲しい。公演は3月15日(金)から27日(水)まで、東京・東京芸術劇場シアターイーストにて上演。取材・文:野上瑠美子
2018年12月18日連続テレビ小説「わろてんか」でヒロインの藤岡てんを演じるなど、若手注目株として期待されている葵わかな。そんな彼女が、小池修一郎演出の『ロミオ&ジュリエット』で初舞台、初ミュージカルに挑むことになった。【チケット情報はこちら】今回オーディションの末に出演が決まった葵だが、このジュリエット役は初めて自ら「やってみたい」と熱望した役だという。「私が思うに、このお話ってすごく幸福で、でも悲劇的でもあり。その塩梅が私にとってはまずツボで。そして愛し合うふたりがすごく羨ましく見えますし、私たちには触れられない儚さというか、神聖さがある。ジュリエットはお嬢さまという点で憧れる部分もありますが、なによりひとつのものに命をかけた女性だってことがすごくカッコいいなと思って。今この年代でしか出来ない役でもありますし、ぜひ挑戦してみたいと思ったんです」キャピュレット家のひとり娘にして、敵対するモンタギュー家のひとり息子・ロミオと運命の恋に落ちるジュリエット。誰もが知る悲劇のヒロインだが、この少女について葵はこう分析する。「すごく不安定ですよね。強さと無知が混在しているというか。だからはたから見ると“そっちいっちゃうんだ!?”って思うようなことでも、それが若さゆえの危うさであり、魅力にもなっていて。だからこそあれだけドラマチックな運命を辿ることになったと思いますし、今回演じる上ではジュリエットの中にある芯の強さみたいなものも表現していけたらなと思います」ジュリエットにとってロミオは、最初で最後の愛する人。なぜジュリエットがそれほどまでにロミオに惹かれたのか、葵の意見を聞いてみると……。「それはあまり考えない方がいいような気がします。ふたりが出会って好きになったのは、お互いの意思というよりも、なにかそうさせられた、出会わされたからじゃないのかなと。そういうものだったんだって考えた方が、私はすごくしっくりくるんです」若干20歳ながらすでに芸歴は10年近い。撮影現場でも「緊張というよりかは、自分の役割に集中出来るようになってきた」という。だが初めての舞台の現場は今までとはまったく勝手が違うようで。「同じシーンを何度も繰り返すことも初めてですし、なにより相手役が変わるのが一番の衝撃で!普段から考えるスイッチが入っちゃうとわりと頭で考えちゃうタイプなので、こうだって決めつけず、がむしゃらに走りたいなと思います」『ロミオ&ジュリエット』は2月23日(土)から3月10日(日)まで、東京・東京国際フォーラムホールCで上演。その後、愛知、大阪を周る。取材・文:野上瑠美子
2018年11月21日1年の終わりが近づくと、またあの公演の時期なのだと心がホッとあたたかくなる。それこそ高泉淳子がライフワークとしている、音楽劇『ア・ラ・カルト』。しかも今年は30周年ということで、記念すべき公演を前にした胸の内を高泉に語ってもらった。【チケット情報はこちら】今や冬の風物詩としてすっかり定着している『ア・ラ・カルト』。だがそのスタートは意外なものだった。「1983年12月に遊◎機械/全自動シアターを結成したんですが、年に2、3本芝居をつくっていると、どうしてもボツになるシーンが出てくるわけです。そういったものをアットランダムにポンポン置いて、繋がらないところに音楽を入れてつくったのが“SEASON OFF シアター”。その延長線上に始まったのが、『ア・ラ・カルト』なんです」そうして産声をあげた『ア・ラ・カルト』だが、まずは3年、5年と続けていくうちに、8年目ごろにはチケット入手困難な人気舞台へと成長する。だがその後、劇団の解散やメンバーの交代、拠点であった青山円形劇場の閉鎖など、数々の困難に直面。だが高泉は、辞めようとは決して思わなかったという。「やっぱり根本には、私が子供のころから好きだったものがそこにあったからだと思います。例えばウッディ・アレンの映画のような、ジャズが流れる中に、重味のある人生を軽やかに語るようなお話があること。だから今ここにきて思うのは、残るものが残ったんだなって」『ア・ラ・カルト』という名のレストランで楽しめるのは、観客とのセッションも含め、いつもの5皿。そしてそのメインディッシュには、毎回豪華で個性的な日替わりゲストが登場する。「今回新たに、(日本舞踊尾上流四代家元)尾上菊之丞さんが参加してくださいます。以前私が企画した『恋する夏のレストラン~美味しいワインと恋のお話~』という作品に出ていただいたんですが、本当に素晴らしくて!もともと音楽がお好きな方で、歌がとっても素敵なんです。いずれは『ア・ラ・カルト』にも!というお話をしていたので、今回念願が叶いとても楽しみです」日替わりゲストには尾上菊之丞を始め、篠井英介、春風亭昇太、高橋源一郎、舘形比呂一、レ・ロマネスクTOBI、ROLLYと、ほかでは決してそろわない個性的な顔ぶれが。改めて高泉が、そして『ア・ラ・カルト』という作品が愛されてきたことがよくわかる。30周年を振り返り、「とにかく感謝です」と語る高泉。素敵な音楽と物語でお腹いっぱいになれる、まさに唯一無二のレストランがここにある。東京公演は12月14日(金)から26日(水)まで、東京芸術劇場 シアターイーストにて。その後、12月28日(金) ・29日(土)には近鉄アート館にて大阪公演も上演する。両公演ともに10月27日(土)午前10時より一般発売開始。なお、東京公演は10月22日(月)まで、先行抽選プレリザーブを実施中。取材・文:野上瑠美子
2018年10月18日『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の4冊からなる、三島由紀夫の長編小説『豊饒の海』。その舞台化が、てがみ座の長田育恵の脚本、ロンドンを拠点に活躍するマックス・ウェブスターの演出により実現する。そこで美しき夭逝の青年・松枝清顕を東出昌大が、清顕の魂を受け継ぐ若者・飯沼勲を宮沢氷魚が演じる。【チケット情報はこちら】三島作品を愛読するという、三島ファンである東出は『豊饒の海』というタイトルを聞いた時、「その壮大なスケールに戸惑い、恐れのようなものを感じました」と明かす。また宮沢も「4作全部ということで、これをどう舞台化するのか。その疑問はなかなか拭えませんでした」と続ける。だが今ふたりは、不安よりも楽しみの方が大きいのだと言う。その理由が……。ひとつは演出のウェブスターの存在。本稽古前にワークショップを行った際、彼がこう切り出したそう。「僕はみんなよりもちょっと有利な部分がある」と。その時のことを東出は「日本人は“三島”というのを神格化している部分があるけれども、彼はそれを知らずに原作を読み、舞台化出来ると思ったそうなんです。さらに“やることは人間のドラマを描くことだ”と。まさしくそうだと思いますし、血の通った人間のドラマとして描くことで、より生き生きとした『豊饒の海』が出来るのではと思います」と期待する。さらにもうひとつの理由が、大胆に翻案した長田の脚本だ。「長田さんが本当に上手に、4作の素晴らしいところを汲み取ってひとつの作品にしてくださいました。まるで新しい作品にも思えるほどです」と宮沢。さらに東出も「原作は三島の遺作であり最高傑作なので、文学的な表現がブイブイ」と笑い、「ただ今回は舞台だけで絶対に伝わると思いますし、初見の方でも安心して観ていただけると思います」と太鼓判を押す。それぞれ演じる清顕、勲という人物をどう捉えているのか問うと、東出は「4作全部読んでもわからない。それが正直なところです。でもそのわからないってところが、多分に魅力的に映る人物なのだと思います」と、謎めいた清顕像を三島ファンらしく紐解く。また宮沢は、「勲は覚悟がはっきりしていて、ピュアで、正義感に溢れた人物。そういった部分は大事にしていきたいですし、青年から大人になっていく、その変化もうまく表現していけたらなと思います」と難役への意欲を見せた。彼らの肉体を通し、三島の魂がどう体現されるのか。11月の開幕が待ち遠しい。公演は11月3日(土・祝)から12月2日(日)まで、東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA、12月8日(土)・9日(日)大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。取材・文:野上瑠美子ヘアメイク(東出):廣瀬瑠美ヘアメイク(宮沢): 川端富生スタイリスト:林 道雄
2018年09月27日今年、ナイロン100℃での『百年の秘密』、『睾丸』という2本の劇団公演に続いて、KERA・MAPでも新作を発表するケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)。しかも『修道女たち』というタイトルには、何とも言えない魅惑的な響きが…。そこで出演者のひとりである鈴木杏とともに、現段階での構想、作品への想いを聞いた。【チケット情報はこちら】前作『睾丸』における学生運動のように、KERAの頭の中には創作の題材になりそうなキーワードが、常にぼんやりとストックされているという。その中から今回“修道女”を選び出した理由を問うと、「毎度ながら直感なんですよね」とKERA。「リサーチしてここを目指す、というのではなく、知らない町に行って、何があるかわからないままうろうろしながら、どれだけ面白いものや心打つもの、美しいものを発見出来るのか、みたいな。とてもリスキーではありますけど、その方が思いもよらぬものを手に入れられたりするんです」と、これまでの評価の高さに裏打ちされた自信を覗かせる。秀作が続くKERAだが、前作から3か月での新作発表は近年まれに見るハイペース。「モチベーションはものすごく高いですよ。スタッフやキャスト、もちろん自分のためにも、絶対に納得のいくものをつくりたいと思っていて。いつにも増して頑張りたい気持ち」と語気を強めるも、すぐ「まぁ頑張りゃいいってわけでもないけどね」と照れ笑いを浮かべる。鈴木は、2014年のナイロン本公演『社長吸血記』以来、KERA作品への参加は今回が2度目。前作について「KERAさんとの最初のお仕事が劇団公演の客演だったというのは、ものすごく確かな入口で。劇団の内部に入れたことはとても興味深く、面白い日々でした」と振り返る。さらに今回のオファーについては、「また声をかけて頂けたのは、素直に嬉しいです。KERAさんのホンが出来上がりながら、稽古しながら、本番になるっていうのは、どことも違う、すごく特殊な時空。あの感覚をもう一度味わえると思うとワクワクします」と顔をほころばせる。「神を信じる者が神の不在に直面する、そうした局面を描くのが好き」とKERAが語るように、これまでのKERA作品にも聖職者は何度か登場している。とはいえ現在KERAの頭の中にあるのは、「豪雪によって山荘に閉じ込められた、巡礼に来た修道女たち」という設定くらい。内容についてはKERA自身、「僕もまだ知らない」と笑う。まさに神のみぞ知る『修道女たち』の全貌。それが明らかになる開幕を心待ちにしたい。公演は10月20日(土)より東京・本多劇場にて開幕。その後、兵庫、福岡と各地を巡る。東京・兵庫公演はチケット発売中。福岡公演は9月30日(日)より一般発売。取材・文:野上瑠美子
2018年09月26日梅田芸術劇場とイギリス・チャリングクロス劇場による新プロジェクトが始動。その記者会見が9月12日、都内某所で開かれ、チャリングクロス劇場の芸術監督で、『タイタニック』再演のため来日中のトム・サザーランドと、演出家の藤田俊太郎が登壇した。【チケット情報はこちら】日本演劇史上、かつてない挑戦となる今回のプロジェクト。日本とイギリスが共同で公演の企画・制作をし、イギリスキャスト版、日本キャスト版をそれぞれの国で上演する。その第1弾作品に選ばれたのが、1997年にオフ・ブロードウェイで初演されて以降、高評価を得続けているミュージカル『VIOLET』。そしてその演出を、若手実力派の藤田が担う。サザーランドと梅田芸術劇場との出会いは、2015年に上演された『タイタニック』の初演。その後もいくつかの作品を重ね、両者は強い信頼関係で結ばれていくことになる。そして梅田芸術劇場側の「人と人のコラボ―レーションをしたい」という本プロジェクトに込めた思いに、サザーランドが「それは面白い!」と即決で応えたかたちだ。藤田はまず英語のスピーチを披露。終盤「Sorry」と苦笑いを浮かべ、カンニングペーパーの存在を明かす場面もあったが、熱のこもったそのスピーチに、本作にかける並々ならぬ意気込みを感じさせた。続けて「僕の人生は演劇がすべて。新しい場所に行きたいし、新しい人に出会いたいという演劇的な体験を一生続けていきたい。だからこそこれだけ野心的なプロジェクトに出合えたことに、心から感謝です」と語った。またサザーランドは、「この才能あふれる演出家の作品が、イギリスのお客さまの目にも触れる機会が出来て本当に嬉しい」と藤田を絶賛した。そんな藤田は『タイタニック』の日本初演とイギリスでのツアー版を観劇しており、その時からサザーランドに強い尊敬の念を抱いていたという。「トムさんの演出って、シンプルに言うと観客がタイタニックと一緒に旅をしているということだと思うんです。ファーストシーンでは観客があたかもタイタニックを見送ったような視点をつくり、今度はいつの間にかタイタニックの乗客になっている。タイタニックを通したさまざまな視点を体感出来るというか。観客が作品を体験することを導き出せる、数少ない演出家だと思います」若き才能あふれるふたり。藤田演出の『VIOLET』イギリス公演は来年の1月に、サザーランド演出の『タイタニック』再演は、10月1日(月)東京・日本青年館ホールで開幕する。取材・文:野上瑠美子
2018年09月14日人気演歌歌手・水谷千重子の明治座初座長公演が決定。明治座『水谷千重子50周年記念公演』と銘打ち、来年2月に上演される。8月23日、会場となる東京・明治座で製作発表が行われ、水谷のほか、ゲストのこまどり姉妹らが登壇した。お笑い芸人・友近の友人で、芸能生活50周年を迎えるベテラン演歌歌手の水谷千重子。その記念すべき年に、初の明治座公演が実現したことに対し、水谷は「本当に嬉しいことでございます」と切り出す。「やはり50周年ということで、何か大きなことがしたい、皆さんの記憶に残ることがしたいと考えておりました。海外に目を向けるのもよかったんですけれども、やっぱり日本のいいところを見直さないといけないんじゃないかと。そこでやっぱり舞台は日本で、それも最終目標ともいえる明治座さんに立たせていただけるということで、明治座さんの勇気に(笑)……、本当に感謝です」公演は“芝居”と“歌謡ショー”の二本立てとなっており、この日は芝居のタイトルが初披露された。その名も『とんち尼将軍一休ねえさん』。「ちょっと長くて、いろんなものがついているタイトルではございますけれども……(笑)。昼の顔は尼さんなんですが、夜の顔は花魁、といった感じで、私自身、五社英雄監督がすごく好きなんですね。なのでこのお芝居でも女性の情念みたいなものを描きつつ、でも痛快で、笑えて、人情もあるといった楽しいお芝居にしたいと思っております」豪華なゲストも多数参加。歌謡ショーに登場するこまどり姉妹からは、「本当に楽しみです」と期待の声が聞かれるも、その後「お腹が空いてきちゃって……」と意外な告白が。すると水谷の提案でラーメンの出前が取られることに。ふたりがその場で食べ始めたことも驚きだが、さらにはその食べ方。熱いものが苦手というふたりは、アツアツのラーメンになんと氷と水を投入。「これやらせじゃないんですよ(笑)」との水谷の言葉通り、美味しそうにラーメンを食べるふたりの姿に、会場は衝撃と笑いに包まれた。会見の最後には、水谷のコンサートでは恒例の“豆腐開き”を実施。「明治座『水谷千重子50周年記念公演』が成功いたしますように。そしてたくさんの皆さんに喜んでいただけますように」との水谷の口上のあと、「よいしょ、よいしょ、よいしょー!」の掛け声とともに登壇者全員が手にした焼き豆腐を真っぷたつに。水谷らしい儀式で公演の成功を祈願した。公演は2019年2月22日(金)から3月4日(月)まで。取材・文:野上瑠美子
2018年08月24日三代目J Soul Brothersの山下健二郎が舞台初主演。作、演出を、放送作家、脚本家として幅広く活躍する鈴木おさむが手がける。そんな話題の舞台「八王子ゾンビーズ」の稽古場に潜入。熱気あふれる創作の現場をレポートする。【チケット情報はコチラ】開幕まで10日と迫ったこの日。都内某所にある稽古場には墓場を模したセットが組まれ、キャストがおのおのアップを始めている。その輪の中心にいるのが、本作で主人公の隆を演じる山下。そんな彼の周りには常に笑いが溢れている。軽く殺陣の確認があったあと、本格的な稽古がスタート。この日は冒頭からラストまでの通し稽古が行われた。まず舞台に現れたのは山下。彼演じる隆は、ダンサーになる夢を諦め、“新しい自分”を探すために八王子にある希望寺へとやって来る。満月の夜、隆が寺の墓場で出くわしたのは、なんとゾンビ!住職からこのことは決して他言しないようにと言われるも、再び墓場を訪れた隆の前に、またもゾンビが現れる。だがこのゾンビたち、なぜか陽気なイケメンばかり。しかもある悩みを抱えており…。演技経験は豊富な山下だが、今回は初の主演舞台。それだけに出番、せりふ量ともに非常に多いが、しっかりとした存在感とどこか飄々とした軽やかさを合わせ持ち、隆というキャラクターを非常に魅力的な人物に仕上げている。さらに個性的なゾンビたちのツッコミ的なポジションでもあり、その柔軟性と対応力の高さに改めて驚かされた。タイトルロールでもある“八王子ゾンビーズ”を演じるのは、久保田悠来、小澤雄太(劇団EXILE)、藤田玲、丘山晴己ら若手8人。特にリーダーの仁を演じる久保田は、男の色気と抜群の笑いのセンスで、役柄同様、八王子ゾンビーズを先頭に立って引っ張る。また彼らと敵対するのが、寺の用心棒的存在である早乙女友貴。刀さばきは圧巻で、その美しさに息を飲む。また住職役の駿河太郎や、謎のホームレス役の酒井敏也など、ベテラン勢がしっかりと脇を固めている。時事ネタなどを盛り込んだ鈴木らしい笑いはもちろんのこと、本作の大きな魅力はやはり山下を筆頭にしたダンス。さらにm-floが書き下ろしたというクールな主題歌が、山下とゾンビーズたちとのキレのあるダンスを大いに盛り上げる。それら作品全体のテンポのよさが、観る者の心地よさ、楽しさへと繋がり、非常にエンタテインメント性の高い青春劇に。まさに夏にぴったりの1本だ。公演は8月19日(日)まで、東京・TBS赤坂ACTシアターにて上演。取材・文:野上瑠美子
2018年08月07日飯塚悟志、角田晃広、豊本明長によるお笑いトリオ・東京03の単独公演『不自然体』がついに開幕。7月4日から8日まで上演された東京公演を皮切りに、福岡、長崎、長野、愛知、静岡、大阪、北海道、岡山、広島、新潟、宮城と、全国12都市を巡る。また10月12日(金)から14日(日)まで東京・ガーデンホールでの追加公演も決定。そこで気になる公演の内容を、ちょっとだけご紹介する。【チケット情報はこちら】中年男性たちの日常を舞台に、絶妙な切り口と抜群の演技力で、独自のコントの世界を切り開いてきた東京03の3人。今回はタイトルにもあるように、“不自然”な状況や人物が続々と登場。豊本ののほほんとしたマイペースな雰囲気と、角田の少々暴走気味のボケ、そこに飯塚の的確でキレのいいツッコミが炸裂し、少しの不自然がラストに向かって爆発的な笑いを生んでいく。今回も7本の新ネタを用意。サラリーマンに喫茶店のマスターと客、高校の同窓会にワールドカップのテレビ観戦など、どれもこれも身近な設定ばかり。だがそこに潜む微妙な不自然を見つけるのが、彼らは本当にうまい。そしてやはり目を引くのが、角田の振り切ったハイテンションぶりとクドさ。それにはネタの共同作成者である飯塚でさえも、笑いをこらえるため、つい顔をそむけてしまうほど。また豊美(=女性役の豊本)の登場も、ファンには嬉しいところだ。東京03の単独公演でもうひとつ欠かせないのが、ネタとネタの間に流れる映像。こういった映像は時に単なる場繋ぎのようにも思われがちだが、これが十分1本のネタと言えるほどクオリティの高い仕上がり。前ネタをより膨らませ、新たな笑いを生み出すのはもちろん、短編ドラマのような趣もあり、PVのような楽しさもあり、なんと宣伝までも兼ねていたりする。その手のかけよう、こだわりには驚くばかりだ。またサウンドトラックCDを販売するほど、楽曲にも力を入れている。事前のインタビューでは「今回かなりいいと思いますよ」と自信をのぞかせていた3人。それが間違いでなかったことは、観客の反応のよさを見れば明らかだ。チケットの購入はもちろん早めがおすすめだが、10月13日(土)には各地でライブビューイングも。実はこのライブビューイング、角田が必ずミスをするという、東京03にとっては鬼門の公演でもあるらしい。飯塚はこう笑う。「角ちゃんが噛まずに最後までやれたら、全劇場でスタンディングオーベーションしてあげてください!」取材・文:野上瑠美子《追加公演チケット販売スケジュール》詳細は下記チケットリンクをご確認ください・いち早プレリザーブ:7月17日(火)12:00~7月22日(日)23:59・プレリザーブ:7月20日(金)12:00~7月25日(水)23:59・一般販売:8月4日(土)10:00~
2018年07月24日“ゾンビ”をテーマに、さまざまなジャンルの精鋭たちが、珠玉のパフォーマンスを披露する『ゾンビフェス』。好評を博した昨年に引き続き、今年は『ゾンビフェス THE END OF SUMMER 2018』として、8月27日(月)、東京・CBGKシブゲキ!!で上演される。そこで本公演のホストである入江雅人に話を訊いた。【チケット情報はこちら】ゾンビをこよなく愛し、ゾンビもののひとり芝居を数多く創作してきた入江。そんな入江にとって念願だったのが、この『ゾンビフェス』の開催だ。「去年、自分の出番じゃない時は客席で観ていたんですが、やっぱり面白かったですね。“こんなのない感”がとにかくすごくて。今年はさらにジャンルの幅を広げて、よりフェス感を強めていこうと思っています。これだけのジャンルの、しかもゾンビものが観られるフェスなんて、きっと世界中どこにもないと思いますよ」そう入江が言うように、今年は一気にジャンルを拡大。入江のひとり芝居はもちろん、ダンス、演劇、コント、無声映画活弁、スタンダップコメディ、落語と、豪華なラインナップが実現した。「コントのかもめんたるさんは僕が大好きな芸人さんですし、ダンスの入手杏奈さんやスタンダップコメディの清水宏あたりは、かつて僕が一緒にやらせてもらった人たち。そういう意味では安心感はすごく大きくて。それぞれの演者さんが目的のお客さんでも、違うジャンルの演目を観たらどれも絶対に楽しい、そんなラインナップだと思います」さらに今回こだわったのが、塚本功によるライブ演奏。「塚本くんには“夏の終わり”をテーマに演奏してもらおうと思っています。すごくソウルフルな歌と演奏で、これがとにかくすごい。みんなぶっ飛ぶと思いますよ」「いつかはロメロさん(※『ゾンビ』などゾンビ映画の先駆者として知られるジョージ・A・ロメロ監督)的なポジションになれたら」と笑うほど、入江のレパートリーにゾンビものは多い。数だけで言えば、ロメロ監督をもしのぐほどだとか。そんな数ある入江のゾンビ作品の中でも、絶対に外せない1本が『帰郷』だ。「毎年やっても胸にくる作品ですからね。我ながらすごいなと (笑)。落語の『芝浜』みたいな感じで、夏の終わりに『ゾンビフェス』があって、最後に『帰郷』をやる。そんなことが根づいていけばいいなと思いますし、それまでは頑張って続けていきたいですね」笑えて、切ない、そんな唯一無二の『ゾンビフェス』。忘れられない夏の一夜になるはず。そのほか出演者には、オクイシュージ&野口かおる(演劇)、坂本頼光(無声映画活弁)、立川志ら乃(落語)。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2018年07月19日幅広い世代から長年愛されているブロードウェイ・ミュージカル『ピーターパン』。38年目を迎えた今回は、昨年に引き続き藤田俊太郎が演出を手がけ、弱冠14歳の吉柳咲良もピーターパン役を続投する。また新キャストとしてフック船長&ダーリング氏役にISSA、ウェンディ役に河西智美を抜擢。マスコミ向けに行われた製作発表には、タイガー・リリー役の莉奈、ダーリング夫人役の入江加奈子、ライザ役の久保田磨希を加えた全7人が登壇した。会見の冒頭を飾ったのは、ピーターパンがウェンディたちとネバーランドへと飛び立つ、作品を代表するナンバー『アイムフライング』。役の衣裳に身を包んだ吉柳が颯爽と登場すると、会場は一気に『ピーターパン』の世界に。伸びやかで透明感のある、そして元気いっぱいな歌声を披露してくれた。その後は演出の藤田、さらにそれぞれの衣裳をまとったキャストが登場。作品への抱負を語った。2度目の演出となる藤田だが、「新鮮な気持ちで、新作のつもりで挑戦しています」と述べ、さらに「世界中で上演されている『ピーターパン』の歴史の中でも、きちんとした1ページを刻める、そんな作品をお客さまに届けたいです」と続け、世界レベルという大きな目標を掲げた。ピーターパン役の吉柳は、「去年とはまた違うプレッシャー、座長の重みを感じています…」と神妙な面持ち。だが「たくさんレッスンを重ねてきて、去年に比べ、技術面や台詞の読み解き方も大きく変わってきたと思います。藤田さんの言う“永遠に子供のままだけど成長しているピーターパン”というのを、この1年で成長した私の姿を通してお見せしたいです!」と、頼もしい言葉も聞かせてくれた。近年俳優としても高い評価を受けているISSAは、「皆さんの思っている以上を返すのが自分の役目」と初のフック船長役に気合い十分。さらに吉柳について「とにかく頑張り屋さん」と切り出し、「責任感がすごく強いので、みんなをちゃんと頼れるよう、僕らがフォローしていければ」と頼れる兄貴の一面を覗かせた。すると吉柳の目にはいっぱいの涙が。「本当にありがたいです」と声を震わせ、カンパニーの結束の強さをうかがわせた。ライザ目線での物語展開、セットを簡潔にしてアクティングスペースを広く、飛び出す絵本ならぬ飛び出す舞台になど、新たな趣向も盛りだくさん。大人も子供も楽しめる、世界レベルのミュージカルで、夏の思い出の1ページを彩ってみては?公演は、7月21日(土)から8月1日(水)まで東京・東京国際フォーラム ホールCにて。その後、大阪、金沢、名古屋でも上演する。チケットは発売中。取材・文:野上瑠美子
2018年07月09日