皆さんは47都道府県のうち、どちらの土地に行かれたことがありますか? 私は現在までに34都道府県を訪れていました。逆を言えば、13県はまだ訪れたことがないので今後の楽しみとしています。昨年の秋頃にたてた「2017年は和歌山、鳥取、鹿児島へ必ず行こう」という目標も思いのほか早く叶い、12月には和歌山へ訪問してきました。とはいえ、一度訪れただけではまだまだ分からない魅力を探りたいので、再訪したいと考えています。そんな調子で、2017年は1月に大阪、2月には熱海と広島、と順調に旅ができて嬉しく思っていたところ、さらに福井新聞社の方から素敵なお誘いを頂き、先日初めて福井を訪れてきました。大変申し訳ないのですが、今まで「福井へ行こう」と積極的に思ったことがなく、なんとなく勝手なイメージで電車の乗継ぎが大変で時間がかかりそう、と思っていたことも原因かもしれません。しかし、「福井」と「純喫茶」を同時に耳にした時、以前写真で見た衝撃的な内装の店が脳裏に浮かびました。その店の名前は『王朝喫茶 寛山』。壁の一面を光らせる大きくて美しいステンドグラスのある純喫茶です。…が、今回はその前日に思いがけず出会えた『マロン三世』という純喫茶についてお話します。思わず色々注文したくなってしまう純喫茶東京駅から新幹線で米原駅へ、そこから特急しらさぎに乗り換えて目指すは福井駅。のはずでしたが、急遽“めがねのまち”として有名な鯖江駅で途中下車をしました。急がない旅であれば、思いついたままに行動するのはとても楽しいことです。駅から歩くこと10分程でしょうか。車道に面した一軒家が現れ、『マロン三世』と書かれた大きな看板を見つけました。建物に近付き入口周辺を観察していると、窓の向こう側にいらっしゃる方と視線が合い、にっこりと笑いかけて下さいました。店内はカウンター席とテーブル席に分かれ、ゆったりとした配置です。テーブル席のソファは腰掛けると深く沈み、もうこのまま立ち上がりたくないと思ってしまうほどの座り心地の良さ。メニューを一通り眺めていると、とても笑顔の素敵なやさしそうなママが注文を取りに来て下さいました。まずは、クリームソーダとフルーツワッフルを注文。楽しそうに談笑する、窓際の高齢男性たちのやり取りを微笑ましく眺めていた時に運ばれてきたクリームソーダを目にして、思わず声を上げてしまいました。一般的な緑色を想像していましたが、こちらでは青色だったのです。窓から差し込む夕暮れ時の光がグラスに反射して、泡もキラキラと弾けている様子に感動。ワッフルも瑞々しい果物がふんだんに乗せられ、思わず笑顔に。この日は朝からほとんど何も口にしていなかったこともあり、ナポリタンとアマランサスコーヒーも追加注文。「驚異の穀物」と呼ばれるアマランサスの粉が入った珈琲は、飲み進めていくと底の方にとろみがあり、初めての食感でした。ナポリタンはなんと下に卵焼きが敷かれた鉄板タイプ。注文した全てのメニューに想像を裏切る嬉しい驚きがあったのでした。すっかりこの店のファンになってしまい、今度福井に来るときはこちらへ寄ることが大きな目的になるだろう、と思ったのでした。Text/難波里奈
2017年03月17日乃木坂46の生駒里奈、衛藤美彩、齋藤飛鳥が13日、都内で行われたはるやま『スラっと スラテクノスーツ』新CM発表会に出席した。スーツメーカーのはるやま商事は、燃焼系ビジネススーツ『スラテクノシリーズ』を新発売。それに伴い、新CM「スラテクノスーツ 燃焼系スーツ」編が16日から全国で放映され、イメージキャラクターに乃木坂46の生駒ら3人のメンバーを起用した。生駒、齋藤、衛藤の3人が出演したCMは、多忙なサラリーマンのカロリー消費を応援する、という内容となっている。新商品を着用しながらステージ上に登場した生駒ら3人。生駒が「今回は3人で撮影するということを聞いて、前回はフレッシャーズのCMだったのでどうなるかと思いましたが、機能性もすごいスーツで私たちがいい感じで出来たらなという気持ちで撮影に臨みました」と新CMの撮影を振り返れば、衛藤は「私は男性と一緒のポーズを決めるシーンがあり、いい意味でプレッシャーがあって緊張してました」とコメント。燃焼系スーツと言われる新商品について齋藤が「スラテクノということで働く方には最適だと思います。着てみるとストレッチが効いているし動きやすく、気分的な問題か分かりませんが燃焼するスイッチが入りますね」とすっかり気に入った様子だった。スーツ姿で登場した3人だが、スーツ姿のお互いの印象を問われた生駒は「美彩先輩は上司で感じですね。飛鳥ちゃんと私は就活生」と語りつつ、「握手会が昨日あったんですけど、同い年の子たちがスーツで来ていて、私は『就活できない分、頑張ってね』て言いました。就活生だったらスーツ着て会社を回っていたんだろうなと思ったので、今日着られて嬉しいです」と笑顔。続けて「私は普通にパソコンを打てないし、そういう仕事は出来ないと思いました。こっち(芸能界)で正解でしたね」と安堵した表情だった。
2017年03月13日寒さの中にもどこか春を感じるようになったこの頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか? もう少しすると、淡いピンク色の花びらが水色の空を舞うお花見の季節ですね。さて、お花見、といえばテレビなどの影響か、私は真っ先に京都を思い浮かべます。しかし、美しい景色には皆が集中するため、総じて賑わうもの。せっかく花見を楽しんだのなら、このまま珈琲を飲みながらのんびり過ごしたいと思っても、混雑した街中でひと息つける場所を確保するのは大変なことでしょう。そんな場合、桜の季節に限らず、年中観光客で賑わう祇園界隈で、わりと空席を見つけやすいおすすめの純喫茶を紹介します。祇園に佇む、高級感溢れる純喫茶店は四条通に面しているのに「知らなかった」という人が多いのは、眩しい天然石が並ぶ宝石店の中を抜けて、二階へ行く仕組みになっているから。そのため、祇園の真ん中という便利な立地にありながら、静かで高級感あふれる空間が保たれているのかもしれません。店内に入るとまず目に留まる、まるでシャボン玉のような透明で大きな丸い形の照明。木の板が何枚も連なった素晴らしいデザインの壁から、柔らかな明かりが照らしてくれます。そして、ゆったりとした低めのソファにひとたび腰をおろしてしまえば、その座り心地のよさになかなか離れられなくなるでしょう。もし窓の近くの席に座れたなら、祇園の街を眺めながら寛ぐのも楽しいです。メニューは定番の珈琲やアイスクリームなどの他に、京都らしく宇治抹茶を使用したプリンやパフェなども揃っています。そして、こちらのクリームソーダはブルーベリーソーダを使用した紫色の珍しいもの。実に美しい色合いで、店内のインテリア(えんじ色の絨毯、ベージュ色の椅子、茶色を基調とした壁)にすっと馴染みます。爽やかな味わいのレモンゼリーと珈琲のセットも珍しく、喉越しよくつるりと食べられるので、これからの暑くなる季節におすすめです。なんと3階に上がると、社長も「美味しい」とおすすめして下さった蕎麦屋(ぎおん石 祇園店)があるので、おなかが空いたらそのまま食事に赴くのも良いかもしれませんね。Text/難波里奈
2017年03月03日皆さまは、日帰り旅行をされることはありますか?宿泊するより慌ただしいのはたしかですが、思い立った時にすぐに出掛けることができ、かつ荷物が少ないので手軽なところがおすすめです。急な休みができたら、ふらりと出掛けたい場所として浮かぶのは、熱海か江の島です。熱海は一見遠いように感じますが、東京駅から新幹線に乗ってしまえば“こだま”でも片道40分ほど。窓の外を眺めたり、今日はどこへ行こうかと考えているうちにあっという間に到着してしまいます。つい先日も趣味の合う旧くからの友人と、よく晴れたあたたかな日曜日に熱海へ出掛けてきました。テーマは「日帰り逃避行」。私はいつも通りの身軽な格好でしたが、新幹線のホームで待ち合わせた友人は、レトロな柄のワンピースにトレンチコートを羽織り、大きな旅行鞄を持っていたので、なんだか長い旅に出掛けるかのようで気分も盛り上がりました。事前に作った旅のしおりを眺めながら、あれこれ話しているうちに海が見えてきて、いつもより気持ちもふわりと浮き立ちます。旅先で真っ先にするのは、近くの純喫茶でひと休みしながらその日の計画を練ること。昼食はどこで食べよう、純喫茶は何軒巡れるかしら、あのクラシックのシャンデリアの下で写真を撮ろう……。地元の人たちも入り混じった純喫茶で珈琲を飲みながら、はやる気持ちを落ち着かせます。さてこの日は、レストラン フルヤ(昼食)→ ホテル ニューアカオ(見学)→ 純喫茶 田園 → 純喫茶 くろんぼ、というコースを巡りました。訪れたいところはたくさんありますが、旅は少し名残惜しいくらいがきっとちょうど良いのでしょう。日が暮れてきて、でもまだ帰りたくない気持ちでソワソワしはじめた頃に訪れたのは、1冊目の書籍『純喫茶コレクション』からお世話になっている「くろんぼ」。特徴的なイラストに点る灯りに営業を確認してほっとし、地下への階段をするすると。重厚な石たちに囲まれた、でもどこかあたたかなイメージの店内は清潔に保たれ、カウンターにはママが活けた大きくて美しい花が。思わず目を惹かれ、花の名前を尋ねました。すると、「今日はコデマリよ。本当に花が好きでね、その時の直感で決めるの。季節によっても気分によっても欲しい色は違うでしょう?」と笑顔で教えてくれました。「少し前にもね、あなたの本を見て、遠くから来てくれた人がいたわよ。それで私のことを気に入ってくれたみたいで、またその後も来てくれたのよ。嬉しかったわぁ」と、ママは訪れる人たちのことをよく覚えていて、とても嬉しそうに話して下さいました。尽きない会話の中には、ぴりっと身の引き締まる人生論やこんな話も。「夏でも冬でもね、まず起きたら部屋の窓を全部開けるの。海が見えるから、今の季節に人が歩いていると、あぁ昨日よりあたたかいんだなって知るの」と情景がくっきりと浮かぶような、季節に寄り添った暮らしをしているママを羨ましく思いました。しかし、そんな気持ちを見透かされてしまったのか「でも観光で来るくらいがちょうどいいってこともあるかもしれないわよ。また来てね」といたずらっぽく笑うのでした。1年中ほぼ休むことなく営業し、夕食をとる時間だけ店を閉めるそう。ここを目指してくる人たちにいつまでも元気で出迎えてほしいと願い、駅までの夜道を軽い足取りで進むのでした。Text/難波里奈
2017年02月17日身近であるゆえに後回しにしてしまう、というのは意外と多いのではないでしょうか? 見慣れたものへの安心感、なくなるはずはないという勝手な信頼感…。純喫茶にも同じことが言えるのですが、閉店してしまったらもう二度と訪れることはできないので、後悔しないためにも気になった店へは早めに訪れたほうが良いと考えるようになりました。そこで最近まで近さゆえに、なかなか足を運べずにいた純喫茶にさっそく出掛けてきました。それは地下鉄東西線の茅場町駅にある「珈琲家」という店です。現在、日本橋で勤務しているため、その気になれば徒歩で訪れることも可能なのですが、初めて行こうと思い立ってから10年近くが経っていたのでした。改札を出て歩くこと2、3分。目当ての店名の看板が視界に入りました。どうやら地下にあるようで少し緊張します。店内の様子が見えないため、席数はどのくらいだろうか、どのくらい混雑しているのだろうか、店主は気難しい人ではないだろうか、色々な不安や期待と一緒に階段を降ります。扉の向こうに見えたのは、可愛らしいデザインの赤い椅子たち。夕方遅くの訪問でしたので、先客も少なく、一番奥の端というとても好きな席を確保できました。水を運んできて下さった男性も、カウンターの中にいる女性もやさしそうな笑顔でほっとします。この日のお目当ては「とんでもないほど分厚い」と噂に聞いていたホットケーキ。飲み物は何にしようかとメニューを眺めると、<アレンジコーヒー>の欄にフランス風、オランダ風、アメリカ風、北欧風、イタリア風、アイルランド風と思いがけない楽しげな文字たちが。迷ったあげく、今回は「オランダ風」を注文。ココア入りの珈琲の上に生クリームが浮かべられたものでとても美味でした。それぞれ味の説明がされていますが、直感で頼んでみるのも面白いかもしれませんね。そして、お待ちかねのホットケーキが運ばれてきたのですが、この日一番の驚きの声を上げてしまいました。なんと直径は7インチレコード程もあり、1枚4㎝ほどの厚さです。1枚から注文可能ですが、おなかが空いていたので欲張って2枚注文してしまいました。もし、自分が手のひらサイズの大きさであったなら、ここで眠ってみたくなるほどふかふかで、圧倒的な存在感があります。思わず「すごいですね」と運んできてくれた男性に声を掛けると、「型で焼くわけではないので、どんどん大きくなってしまって」と笑顔。まずはたっぷりのバターで、2枚目はシロップを染み込ませながら美味しく完食。帰り際の「ビーフシチューも美味しいよ」という誘惑に近々の再訪を誓い、小麦粉とバターとシロップの甘い幸せにすっかり満たされたままあたたかい気持ちで帰りの電車に乗るのでした。Text/難波里奈
2017年02月03日「ひとり純喫茶」をご覧下さっている皆さま、新年はもう純喫茶に行かれましたか?私は元旦に新宿三丁目にある、24時間営業の「珈琲貴族 エジンバラ」を訪問しました。こちらの名物は、店員さんが珈琲とミルクを高い位置から注いでくれるカフェ・オレ。カップに到着するまでの時間、空気を含んでミルクがやわらかくなる効果があると聞きますが、何よりもその圧倒的なパフォーマンスを見ているだけで楽しいのです。純喫茶へ行く理由はいくつか挙げられますが、人によって様々だと思います。例えば、店内のインテリアや建築に興味がある方、美味しいメニューや珈琲を求める方、個性あふれるマスターたちとの会話がお目当ての方…。色々な要素が組み合わさって楽しいひとときは成り立つもので、私もその時々の気分によって訪れる店を決めています。1700軒訪れた中で、初めて出会った「仏像のある純喫茶」さて、そんな私が新年早々に選んだのは、念願だった「店内の様子がかなり特殊である」純喫茶。大阪で暮らす知人たちから話を聞いて以来、気になって仕方がなかった「篝(かがり)」です。「かがり」とは、かがり火を焚く時に使用する“鉄製のカゴ”を指し、こちらの天井にも吊るされています。さらに、このお店を表す最も強烈なキーワードが「店内の至るところに仏像がある」ということ。全国1700軒ほどの純喫茶を訪れ、数えきれないほど個性的な店と出会いましたが、仏像があるお店は初めてでした。大阪の新大阪から御堂筋線でなんば駅へ行き、そこから千日前線に乗り換えて玉川駅へ。駅から少し歩き、商店街に入ると目当ての「篝」が見えてきます。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年01月20日あけましておめでとうございます。昨年も『ひとり純喫茶』をご覧頂き、本当にありがとうございました。2015年11月から連載をはじめて早いもので1年あまり経ちました。こうして純喫茶のことを綴る場所があるというのは大変ありがたいことです。今年度も引き続きよろしくお願い致します。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2017年01月06日2016年も終わりに近付き、色々と慌ただしくなる時期ですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか?忙しいながらも、クリスマスに冬休み、大晦日、元旦と行事も目白押しな楽しい季節でもあります。街のいたる場所では木々が煌びやかな照明でデコレーションされ、思わず寒さに首をすくめ、下を向いて歩きがちな冬の景色を鮮やかに彩ります。有名な観光スポットに出掛けるも良しですが、人気の場所は混雑しているのが難点です。そんな「人混みは苦手、でもクリスマス気分は味わいたい」という方におすすめしたいのは、あたたかい珈琲を頂きながらクリスマスツリーを眺めることのできる「純喫茶 ヒスイ」です。「昭和」を味わえる、美術館のような趣き場所は和歌山県和歌山市駅周辺。私は大阪のなんば駅から南海電鉄の特急サザンに揺られて向かいました。のんびりした街並みを散策するも一興ですが、「建築物としても素晴らしい」という事前情報を頂いていたので、つい早足になって向かってしまいました。緑色の文字で「純喫茶 ヒスイ」と書かれた看板と、まるで洋館のような外観は期待を裏切りませんでした。入口には“自家製生ケーキ付”とコーヒーセットを知らせるボードが。メニューサンプルは色の濃いガラスの向こう側にあり、ぼんやりとしか見えないところも魅力的です。扉を開けて中に入ると、まず視界に入るのは可愛く飾り付けられたクリスマスツリー。隣には貴重な大型のコーヒーミルが並べられています。現在は開放されていませんが、かつては多くの人で賑わったであろう二階へ上がるための階段が。手摺の美しい鉄細工や大きなシャンデリアに目を奪われながら奥へ進むと、思わず言葉を失ってしまうほどの豪華な吹き抜けが現れます。一階席がある右側と、数段下がった半地下の座席がある左側。一本足の椅子は橙色と黒色の2種類があり、座る場所によって見える景色が違うので、どの席にしようかしばし迷ってしまいました。吹き抜け部分にはまるで神殿のような柱が立っていて、頭上には大きな輝くシャンデリアが。ぐるりと360度うっとりする美しさで、時間が止まって、しばらくここに閉じ込められてしまいたいと思うほど。「もともとあった建物を改装したのではなくて、この店を始めるために一から作った。大阪の心斎橋にあった好きだった純喫茶を真似してね」とは、ご高齢ながらもお元気そうなマスターのお言葉。尋常ではないこだわりを感じられる数々の細工が施されたこの素晴らしい空間を、たった珈琲一杯の値段で味わえるなんて…。やはり純喫茶は素晴らしい“昭和美術館”である、と今までに何百回、何千回と感じた思いをまたもや噛み締めるのでした。Text/難波里奈
2016年12月23日皆さんが純喫茶で過ごす時間は、だいたいどのくらいでしょうか?長居するように思われる私ですが、実は平均して30分程です。店内にいる時は、たいてい何もせずひたすらぼんやりして過ごすことが多いので、一杯の珈琲をゆっくりと飲み干した頃合いで、自然に立ち上がり店内を後にすることが常です。しかし、それは「ある場合」を除いてのこと。というのは、好みの漫画が本棚に多数並んでいた時は、つい時間を忘れて過ごしてしまうこともしばしば。例えば、ここのところ頻繁に足を運んでいる、練馬駅にある「アンデス」などがそうです。地下鉄大江戸線から、地上にあがってすぐ目の前。30秒もかからずに行けるので、雨の日や風の日にも心強い存在です。一面が広い窓に囲まれている、二階にある店内には、日中は光が差し込み、夜も信号の灯りに照らされた通行人たちを眺めることができる、開放的な空間です。窓と反対側の壁をぐるりと囲む棚には、漫画や雑誌、小説など様々なジャンルの本が天井に届くほど高く積まれています。まるでここは大人の図書館のようで、好きな漫画を片っ端から読んでも通い続けたくなる楽しみがあるのです。私が好んで読むのは、純喫茶の定番である「ゴルゴ13」や「黄昏流星群」「人間交差点」など。豊富なメニューの中には、東京ではなかなかお目にかかれない“鉄板ナポリタン”もあるので、空腹時に訪れたいところです。ただし、混雑する昼時は鉄板が足りなくなるため、普通のお皿で提供されるのでご注意を。他にも気になるメニュー名として「日焼けパフェ」に「シェフマリオ」などが。通常のチョコレートパフェは白いバニラのアイスクリームが乗っていますが、日焼けパフェにはいったいどんなアイスクリームが…?何が出てくるのかは、注文してからのお楽しみに。「アンデス」という店名から分かるように山登りがお好きだというマスター。「ここでガツンと儲けて、いつかはアンデスへ旅をしたいってずっと思っていてね。でもきっとずっとここで働くのだろうなあ」と冗談を交えながら、優しい顔で笑います。実はこちらの鉄板ナポリタンを有名にしたのは、漫画家のあだち充先生。今でもたまにいらっしゃるそうで、店内にはお店宛に描かれた絵も飾られています。絵の横には『コーヒーとナポリタンは注文すれば出て来たが、作品のアイデアは「アンデス」のメニューに無かった…』と思わずくすりと笑ってしまう一言。訪れた時には探してみることをお薦めします。Text/難波里奈
2016年12月09日「いつも純喫茶では何を注文しますか?」「必ず食べるメニューを教えて下さい」という質問をたまにいただきます。だいたいの場合、店の看板メニューともいえる珈琲は注文しますが、食べ物のメニューに関してはその日の気分によってまちまちです。ケチャップたっぷりの熱々ナポリタンやマスターこだわりのスパイシーなカレー、ふんわり卵で巻かれたオムライス、冷たいアイスクリームと美しい色合いのソーダ水を交互に楽しむクリームソーダ、レトロな飾り付けにうっとりときめくプリンアラモードなどなど。純喫茶へ行く度にどちらを食べようか迷ってしまうので、胃袋がいくつあっても足りない…と思ってしまうほど。そんな豊富な純喫茶メニューに迷ってしまった時、よく注文していたのは「ホットケーキ」です。誰もが幼い頃に一度は食べたことのあるような、懐かしく親しみのある味。そして、運ばれてきた時の見た目になんともいえない幸せな気持ちになるところも、私が心惹かれるだけでなく、多くの人から人気がある秘密ではないでしょうか。綺麗なまんまるも、少しいびつな形も愛おしい…。今回は、誰かと一緒に分け合って食べたくなる、ホットケーキのある店を紹介します。錦糸町の南口から歩くこと数分。夜になるとネオンが輝き出す街並みの一角にあり、長い間近隣の人たちを癒してきたであろう純喫茶「ニット」です。今ではすっかり名物になった、驚くほど分厚くて美しいホットケーキを求めて、遠方からもたくさんの人がやって来るそうです。注文してから運ばれてくるまで約20分。もし誰かと一緒ならば、銀色のトレイで提供される太麺を使用した、ナポリタンも一緒にいかがでしょうか。他に、少し変わったメニューとして、かに雑炊やおにぎりセットなどもあります。表面カリッと中はふわふわ、美しいホットケーキ白いシャツと黒いパンツの制服に身を包み、素敵な声でもてなして下さる感じの良いボーイさん。彼が運んでくれるホットケーキは本当に美しくて、何度見ても思わず感嘆の声をあげてしまうほど。セルクル(形)に入れられてじっくり焼かれたホットケーキは、表面はカリッとしていて、その厚さにも関わらず中はふんわり。最初はバターだけで味わい、その後にシロップ(こちらでは透明のもの)を好きなだけ染み込ませて。焼き立てのホットケーキみたいに艶やかで、素敵な洋服をお召しのママさんは、品があっていつもにこやか。閉店間際にはレジにいらっしゃることも多いので、ホットケーキやナポリタンの美味しさの秘密について、伺ってみるのはいかがでしょうか?Text/難波里奈
2016年11月25日好きなものがなくなってしまうことは、とても寂しいことです。もちろん純喫茶もその例外ではなく、「閉店」を知る瞬間は幾度となくやりきれない気持ちに。閉店の理由はいくつかあり、例えば、店主の高齢化、建物の老朽化、後継者の不在、お客さんの減少など…。どんなにその純喫茶を好きでいても、店主が下した「閉店」という決心はなかなか変えられるものではありません。それならば、せめて営業している時に少しでも多く足を運び、「珈琲、美味しかったです」「ここのサンドイッチが食べたくて一日を頑張れました」「今日もお元気そうで何よりです」など、マスターやママと言葉を交わしたい。そして、お店を続けて下さっていることへの感謝とその店が好きだという気持ちを素直に伝えられたならと思いました。そんな思いを込めて、今回はぜひ皆さんに訪れて頂きたい純喫茶を紹介します。日本を代表する金融商品取引所として、日本経済の成長に貢献してきた東京証券取引所。近くには、かつてスーツ姿のサラリーマンたちがひとときの憩いを求めてひっきりなしにやってくる純喫茶がありました。場所は兜町。東証の向かいで今も営業を続けている「may」という店です。時代の流れとともに技術が発達し、作業がコンピュータ化された結果、今ではmayの扉を開ける人もめっきり少なくなってしまったそうです。かつては、決して広くない店内に4人の女性アルバイトが忙しく働き、毎日やってくる常連客の顔と好きな席を把握しては、切り盛りしていたのだとか。前の賑わいはなくなりましたが、昭和の時代に、働くサラリーマンたちを見守り続けてきた老舗は今も訪れる人たちをほっとさせる空間です。歴史を感じるあたたかみのある店内と、カウンターの奥にいらっしゃる白い髭をたくわえた穏やかなマスターとやさしいママが出迎えてくれます。店の扉を開けて、すぐ注目してほしいのは、入口近くの左側の棚にある給水器。年月を重ね、鈍く光る銀色の大きな容器はどこか懐かしく、思わず見とれてしまいます。カウンター後ろの棚には、長い間大事にされてきた食器たちが美しく並べられています。こちらでぜひ注文して頂きたいのは「チャンポン」というメニュー。その昔、まだカフェオレというものが一般的でなかった頃からこの界隈で親しまれていた、珈琲を牛乳で割ったものです。細長いカップも珍しく、ぽってりとした手触りが癖になります。窓の向こう側に流れていたという川に思いを馳せながら、マスターとの会話を楽しみ、ゆっくりと過ごしてみるのはいかがでしょうか。営業は11/30(水)まで。訪れた方へ素敵な時間をお約束します。Text/難波里奈
2016年11月11日皆さんは何かを集めることがお好きでしょうか?私は年を経るごとに物を集めることは少なくなりましたが、かれこれ10年ほど、訪れた純喫茶の思い出を『純喫茶コレクション』というブログにマイペースに綴っています。ブログを開設する際に「訪問した喫茶店の記録を自分のために、後から見返して色々なことを思い出せるように、まとめていこう。タイトルは、『喫茶店コレクション』でも良いけれど、特別な思いを込めて『純喫茶コレクション』にしよう」と考えたのでした。ブログ名にある『純喫茶』は、一般的に言われる「アルコールを出さず珈琲を出すことを生業としている喫茶店」という解釈に加えて、私の考えるゆるやかな定義の「昭和の時代から今に至るまで、長い間たくさんの人たちに愛されている喫茶店」という意味を含め、「私は『純』粋に『喫茶』店が大好きである」という強い気持ちを込めて名付けました。このブログでは、純喫茶の内装、そこで食べたもの、マスターとの会話など訪問した時の記録を主に残していますが、実は形として残るものも集めていて、今もとても大切にしています。それは「マッチ」です。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2016年10月28日ワコールの直営ブランド「アンフィ(AMPHI)」は、今や企業ブランドのプロデュースもてがけている、青文字系ファッション誌カリスマ人気モデル田中里奈とのコラボレーションランジェリー『田中里奈×AMPHI』を2016年10月14日(金)より発売開始した。女の子にもっとランジェリーを楽しんでもらいたい!という田中の想いから抜け感にこだわったデザインと日常の着用シーンをイメージした目を引くカラーリングに仕上げた『田中里奈×AMPHI』のランジェリー。レースをたっぷりと使いながらもシンプルにまとめ、それぞれのディテールにポイントを効かせている。ブラジャーは着けごこちがやわらかでふんわり丸みのあるバストをつくる3/4カップ、ストラップを取りはずしても谷間を演出してくれる1/2カップの2型。そのほか、うしろ姿にもこだわったレーシーなショーツ3型と前面にスリットをデザインしたキャッチーな印象のキャミソールの3アイテム、全6型で展開。コラボレーションランジェリーは、全国の『AMPHI』取扱いショップ、ワコールウェブストア、ZOZOTOWN他で発売する。●ワコールウェブストア <10月13日(木)15:00より先行発売開始>商品詳細■ブラジャー<3/4カップタイプ>(品番:BYL329)¥4,200(税抜)~【デザインポイント】カップ裏打ちのカラーを上下で切り替え、今までと違った見え方に。カップ下にたっぷりレースを施して、可愛らしさをプラス。■ブラジャー<1/2カップ(ストラップレス)タイプ>(品番:BYL529)¥4,200(税抜)~【デザインポイント】洋服の着こなしを意識して、レースとチュールの切り替えでシンプルに。カップ裏打ちのカラーを切り替えることで、遊び心もプラス。■ノーマルショーツ(品番:PYL129)¥2,100(税抜)【デザインポイント】ウエスト部分に透け感を持たせ、バックは肌ざわりの良いスムース生地にカットレースを添えたショーツ。■ソングショーツ(品番:PYL529)¥2,300(税抜)【デザインポイント】たっぷりフリルをあしらい、バックもレース仕立てにしたはきやすいソングショーツ。■フレアショーツ(品番:PYL629)¥2,600(税抜)【デザインポイント】フロントもバックも繊細なレース使い。サイドはサテンリボンで気分も盛り上がるフレアショーツ。カラーバリエーション■SP(シュガーピンク) お天気の良い休日の朝普段何かと忙しい女の子にとって、自分のために使える時間はとても贅沢。だからあえて早起きして、お洗濯したり、ゆっくりハーブティーを飲んだり、ヨガに出かけてみたり。そんな自分のための1日は、大好きなピンクのランジェリーが気持ちをさらにHAPPYにしてくれる。■KO(ネイビー) 気の合う友達と夜のパーティーデコレーションされたスイーツとシャンパン、流行りのファッションに身を包んだ女の子達。昼間じゃ味わえない、彼との時間とも違う、大人女子だけの特別感を共有するその空間では、研ぎ澄まされたネイビーのランジェリーがぴったり。■RP(ローズピンク) クリスマス年末独特の忙しない空気が好き。イルミネーションが輝く街並みに、買い物袋をたくさん抱えた足早な人たち。普段は着ないフレアたっぷりのスカートに、ちょっと背伸びした大人のパンプス。そしてフェミニンが溢れるローズピンクのランジェリー。いつもと違う自分になりたくなるような、一年で今だけの不思議な感覚。公式ページ【オフィシャルサイト】 【instagram】
2016年10月16日アンフィ(AMPHI)から、ファッションモデル・田中里奈とのコラボレーションランジェリーがデビュー。2016年10月14日(金)より、全国のアンフィ取扱いショップ、ワコールウェブストアなどで発売される。「女の子にもっとランジェリーを楽しんでもらいたい」という田中里奈の想いから、抜け感にこだわったデザインと日常の着用シーンをイメージした目を引くカラーリングに仕上げたコラボランジェリー。レースをたっぷりと使いながらもシンプルにまとめ、それぞれのディテールにポイントを効かせたデザインがポイントだ。ブラジャーは着けごこちがやわらかでふんわり丸みのあるバストをつくる3/4カップ、ストラップを取りはずしても谷間を演出してくれる1/2カップの2型。そのほか、後ろ姿にもこだわったレーシーなショーツ3型と、前面にスリットをデザインした3色のキャミソールの全6型で展開される。【商品情報】田中里奈×AMPHI コラボランジェリー発売日:2016年10月14日(金)取り扱い店舗:全国のアンフィ取扱いショップ、ワコールウェブストア、ZOZOTOWNほか※ワコールウェブストアでは10月13日(木)15:00より先行発売開始。【問い合わせ先】株式会社ワコール/お客様センターフリーダイヤルTEL:0120-307-056営業時間:9:30~17:00(土・日・年末年始・祝日をのぞく)
2016年10月15日あっという間に2016年も残り数か月となりましたが、皆さまは年初に目標を立てていましたか?私は自分に対して「1日1純喫茶」を課しました。こちらは文字通り、「必ず1日に1軒以上どちらかの純喫茶に寄る」ことを指します。現在までは無事に遂行しており、この記事がアップされる頃には恐らく、340軒程訪問済みとなっているはずです。毎日飽きもせず、様々な純喫茶を巡って過ごしているのですが、平日は会社員ゆえの制限時間があるため、基本的には業務後の夜にしか出掛けられません。本当は遠くの街へ赴き、気分転換をしたいと思っても、翌日のことを考えるとせいぜい片道1時間以内の移動が現実的です。幸い職場のある駅はどの方面にもアクセスが良いため、毎朝満員電車に揺られながら頭の中で路線図を広げて、帰り道に寄る純喫茶を考えることがささやかな楽しみです。今回は平日に行ける場所の中で、最も現実逃避の気分が味わえる浅草の純喫茶のことを。浅草は独特の雰囲気があるためか、地下から地上に出ると、空気が紅く染まったような錯覚を覚えます。平日でも観光客たちで賑わう雷門を通り過ぎて、歩くこと数分。「純喫茶マウンテン」という店が見えてきます。店名に「純喫茶」と付けられているのが今では貴重で嬉しくなります。難波里奈『純喫茶、あの味』難波さんの新刊『純喫茶、あの味』にご興味がある方はこちらから!
2016年10月14日「一番美味しい〇〇がある純喫茶を教えてください」このような活動をしていると、多く聞かれる質問の1つです。「この方にとって美味しいものとはどのようなものだろう?」と考え、あらゆる純喫茶のメニューを次々に思い浮かべていくのは楽しいと同時にとても悩ましいことです。味覚というのは千差万別で、私がいくら美味しいと思っていても一緒に食べたり飲んだりしている人が同じように感激しているかどうかは、本当のところ分からないのですから。しかし、分からないのであればせめて自分が自信を持って美味しいと思える店を薦めてみて、残念ながらそちらが好みでなかったなら、また違う店を薦めてみれば良いのだ、と思うようになりました。例えば、東京の美味しい珈琲について尋ねられた時には、まっさきにこの店をお知らせすることにしています。名前は「神田伯剌西爾」。といっても所在地は神保町です。書泉グランデというとても好きな書店の横道にあり、橙色のひさしを掲げ、階段を降りた地下にある店です。店内は2つの空間に分かれ、入口から見て右側は禁煙席、左側は喫煙席となっています。右側の個室のような空間は、曜日や時間帯によって貸切ができるのも嬉しいところ。左側の広めの空間には囲炉裏もあり、どこか和の懐かしい雰囲気を感じながら、淹れたての美味しい珈琲をいただけます。「珈琲は好きだけれど、そんなに詳しいわけではない…」そんな方は多いと思いますが 私もそうで、初めて入る純喫茶ではだいたい「ブレンドコーヒー」を注文します。こちらのメニュー表は、豆の名前の横に苦味と酸味の目安が分かりやすく記されているため、好みの味を選びやすいのですが、酸味があまり得意ではなく苦味と甘みのある味をお好みでしたら、是非一度「ペルーチャンチャマイヨ」というまるで呪文のように片仮名が並んだ珈琲を飲んでいただきたいです。こちらを薦めるとほとんどの方が「美味しい」と気に入ってくれる、私も大好きな珈琲です。珈琲だけでは口さみしい時のために、美味しいケーキも充実しています。私が良く注文するのは、「サンマルク」か「コニャックショコラ」。どちらも程良い甘さで珈琲が進んでしまうので、思わずお代わりをしたくなります。ついついあたたかい珈琲ばかり注文してしまうのですが、こちらのアイスコーヒーには通常のガムシロップの他に、コーヒー専用の茶色いシロップの2種類のシロップが提供されます。他ではあまりない珍しいものですので、冷たいものを飲みたい気分の時には、ぜひアイスコーヒーもいかがでしょうか?Text/難波里奈
2016年09月30日以前、イベントでご一緒したホットケーキ研究家のトミヤマユキコさん(著作に『パンケーキ・ノート』等)が興味深い話をして下さいました。それは「ホットケーキの美味しい店は、火加減の上手な店だから、タマゴサンドなどの卵を使用した料理も美味しいところが多い」という話。聞いた瞬間に「なるほど!」と思わず膝を打ったものでした。確かに言われてみると、今まで訪れたホットケーキを名物とする店では、タマゴサンドも同じように人気メニューであるとマスターたちから聞いたことがあったのを思い出したのです。例えば、休日になると開店前から行列が出来る人気店、東京・平井の「ワンモア」。「カク1!」「マル2!」(※「カク」はフレンチトースト、「マル」はホットケーキを指します)など威勢の良い注文の声がひっきりなしに飛び交い、その暗号のような言葉の間に「タマゴサンド1!」という注文も多く挟まれていたのです。また、メニューにホットケーキはありませんが、ジャンボで美味しいプリンが有名な虎の門「ヘッケルン」もマスターの気まぐれによって食べることが出来る幻のメニュー、ふわふわ熱々のオムレツサンドも夢のように美味しいのです。今回ご紹介する大阪・東梅田にある「サンシャイン」も例外ではありませんでした。駅構内を出ることなくたどり着ける純喫茶は、雨の日や暑い夏に重宝します。東梅田駅の改札からすぐ、しかし初めての方には少し分かりにくい場所にあるにも関わらず、常に満席が続く人気店です。ご家族で営業されていて、扉を開けた瞬間に「いらっしゃーい」とにこやかに迎えて下さるアットホームな雰囲気にほっとします。空いている席に腰掛け、名物のホットケーキを食べようと決めながらも何となくメニューを眺めていたところ、視界に入り気になってしまったオムそばに注文を変更しました。この時、冒頭のトミヤマさんの言葉がぱっと浮かんだのでした。「これも美味しいに違いない」。期待しながら待つこと数分。ボリュームのある焼きそばをくるりと包んでいる卵焼きは、向こう側がうっすらと見える程の絶妙な薄さ。当たり前のように運ばれてきた皿の中に見えたのは1日にたくさんの卵を焼き続けているからこそ出来る職人の技。その卵の薄さは焼きそばの香ばしさを邪魔せず、黙々と口に運んでしまう美味しさのバランスを作り出しているのです。そして、最初は断念したはずのホットケーキですが、せっかくの旅先で食べずに帰るのはもったいないと自分に言い訳をして、結局ふわふわの分厚いホットケーキも注文し、大満足で店を出るのでした。Text/難波里奈
2016年09月16日「純喫茶は店内の様子が分からないから少し入りにくい」「マスターが怖い人だったらどうしよう」「実は珈琲が苦手…」と純喫茶に興味をもっていらっしゃる方でも、通い慣れるまでにはそのような葛藤があることが少なくないようです。そのような初心をすっかり忘れてしまった今日この頃ですが、「1人では入りにくい」という方に対しては、出来ることなら同行してそのひとときをご一緒したいところが本音です。しかし、なかなかそうもいかないため、少しでも不安を取り除いて扉を開けるきっかけを作れたらと思います(何軒か通っていくうちに次第に慣れ、様子が分からないことさえも楽しめるようになる時期がくると思います)。こちらの連載をご覧下さっている方の大半を占めていると思われる女性に向けて、1つアドバイスしたいと思います。それは「店主が女性の店を選ぶこと」です。絶対というわけではないですが、今までの経験を基に考えると、女性店主が営む空間は純喫茶ならではの「素っ気なさ(慣れてきたらこれは本当に良いものです)」が少し薄れ、初めての人でも訪れやすいような雰囲気を醸し出しているところが多いような気がします。例えば、神保町駅近くの交差点からすぐの地下にある「トロワバグ」。店内の様子は地上からは分からないのですが、扉を開けた時に漂う清潔感のある雰囲気にほっとすることと思います。赤いベロアの椅子が並ぶきちんと掃除された店内には活き活きした花が飾られ、珈琲の注文が入る度に良い香りが漂うのです。何を食べても美味しいですが、人気メニューのグラタントーストは現在の店主である三輪さんのお母様が大切にしていたメニュー。今は亡き初代ママさんの思い出の味を求めてやってくる人たち、また初めてやってくる人たちに美味しいトーストを提供すべく、三輪さんは日々手間と時間のかかる仕込みをこなしています。そして、やわらかい雰囲気をまといながらもカウンターの奥で珈琲を淹れる様子は凛としていて見惚れるほど格好良いのです。まったり美味しいかぼちゃムースもおなかの余裕があれば是非食べて頂きたい一品です。「変わらないものを大切にしながらも、今に寄り添っていきたい」と以前話して下さった三輪さん。現在では、ご自身もお好きなワインも楽しめる空間となるそうです。Text/難波里奈
2016年09月02日「店の名前から勝手な想像をしてしまって入ったことがなかったから、こんな素敵な店だとは思わなかった。これからは1人でもたくさん通いたいな。」一緒に夕飯を食べるために連れていった友人が、ふとこんなことを言いました。訪れたのは、亀戸駅の目の前にある「珈琲道場 侍」。ホームから看板は見えるものの、店は階段を上がった二階にあるため中の様子がすぐには見えない。それが理由なのか、「気になってはいたもののまだ入ったことがない。」という話を今までに何度も聞きました。店名のインパクトだけでなく、メニューも一筋縄ではいかない興味深いものばかりであるこちら。一杯ずつ丁寧に淹れられるあたたかい珈琲や8時間かけて抽出される特選水出しブレンド(夏場は注文に対して生産が追い付かなくなるため、泊まり込んで様子を見ているそう!)、ストレートコーヒーやアレンジコーヒーの種類も豊富で、ブルーベリーやバラの香りのついたフレーバーコーヒーなど珍しいものも揃っています。更に、食事メニューのネーミングも他では見かけないセンスです。例えば、こちらの店のカレーやハンバーグはどちらもご飯の上にルーがかけられ、熱々に焼かれたドリア方式なのですが、それぞれ「殿様カレー」と「将軍ハンバーグ」と名付けられています。メニューを見ているだけでいくらでも時間が過ぎてしまいそうなくらい楽しいのですが、更なるサービスとして特筆すべき点から3つ紹介します。1つめは、入口の扉を開けるとすぐに目が合ってしまう大きな甲冑。まるで中に誰かが入っているような存在感です。2つめは、カウンターのテーブルにそってずらりと並んだロッキングチェア。ゆらゆら揺れながらリラックスした時間を過ごすことが出来ます。こちらは公園のブランコに乗りながら煙草を吸っていた社長の思いつきにより取り入れられたそう。3つめは、なんといっても働く店員さんたちのユーモアあふれる接客。男前な店員さんたちの中でも特にお薦めしたいのは、出会えたら思わず嬉しい気分になる社長。「ほらほら、ちゃんと書いた?『ここは男前喫茶です』って。僕は口下手だからね、自信があるのは顔だけだよ、あっ、今日は化粧ノリが悪いから写真はやめてね。」など愉快なやり取りをしながらも店全体に気を配る丁寧な接客と迅速な作業が素晴らしいのです。まるで「大人の遊園地」のようにわくわくした気持ちを味わえる侍でいつもとは違った時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。Text/難波里奈
2016年08月19日「タマゴサンド」というと皆さんはどのようなものを思い浮かべるでしょうか?店ごとに個性が光り、同じものはないところが面白い純喫茶メニューですが、「タマゴサンド」にも地域ごとの特徴があるようで、一般的に、東ではゆで卵をつぶしてマヨネーズや塩こしょうと和えたサラダタイプが、西ではふわふわに焼き上げられたオムレツタイプが多いとされています。私は東京で生まれ育ったのですが、純喫茶に夢中になりそのようなことを意識するまで自分の中では「タマゴサンド=タマゴサラダが挟まっているもの」という認識でした。実際、幼い頃に母が作ってくれたタマゴサンドはゆで卵が半熟だったり固ゆでだったりの違いはありましたが。一度もオムレツタイプだった記憶はないのでした。どちらのタイプも美味しく、優劣をつけることは不可能なのですが、私の場合ふと食べたくなってしまう時、思い浮かべるのは焼き立てで熱々のオムレツが挟まれたものでした。先日のこと。私は夢の中にいて、どこかの純喫茶にそれはそれは美味しいタマゴサンドがあると聞き、遠方まで食べに来ているところでした。その純喫茶はかつて訪れたことがあるような、まだ見たことがないような空間。というのは窓から差し込む光が眩しすぎたため店内の輪郭がぼやけてしまっているのでした。注文を済ませ、運ばれてくるのをそわそわして待っている。今日はこのタマゴサンドのために朝食も食べずに急いで朝一番の電車でここへやってきた。あと数分後、どれだけの幸せに包まれるのだろう!……ところが、夢らしい夢だったおかげでここで目覚めてしまったのです。夢の中とはいえ、評判のタマゴサンドを食べ損なってしまった悲しみ。仕事が終わったら必ずや夢で想像していた味を上回るサンドイッチを食べよう、この日はその強い思いだけで夜を迎えました。そして、真っ先に思いついた学芸大学の雑伽屋を目指し、ベーコンとオムレツに加えてチーズもトッピングし(通常メニューでは2種類の具を選べますが、+100円でさらに具を増やせるとのことです)、贅沢な美味しさにすっかり満足したのでした。濃厚なクリームがたっぷりなアイスウィンナーコーヒーも一緒に。Text/難波里奈
2016年08月05日歌手で女優の知念里奈(35)が28日、自身のブログを更新し、27日にミュージカル俳優の井上芳雄(37)と結婚したことを報告した。知念は「7月27日に、井上芳雄さんと入籍しました」と報告。「これまで、家族に支えてもらいながら息子と二人で歩んできた道を、公私ともに尊敬する彼と三人で進んでいけることに感謝の思いでいっぱいです。そして、誰よりも息子が喜んでくれていることを、母親としてとても幸せに思います」と喜びをつづった。そして、「いつも温かく見守ってくださり、応援してくれる皆様に報告ができて嬉しいです。本当に本当にありがとう」とファンに感謝。「未熟な私ですが、表現者として、一人の人間として、これからも誠心誠意頑張って参ります」と誓った。知念は、2005年にモデルと結婚し、翌年に第1子となる男児を出産したが、2007年に離婚。井上は初婚となる。
2016年07月28日ラサール石井が脚本・演出・主演を務め、10年ぶりに舞台化される「こちら葛飾区亀有公園前派出所」。このほど、「乃木坂46」の生駒里奈が、本舞台にオリジナルキャラクターの謎の少女・サキ役として出演することが決定。「乃木坂46」以外の舞台は初挑戦となることが分かった。週刊「少年ジャンプ」(集英社)にて連載40周年を迎える「こちら葛飾区亀有公園前派出所」といえば、秋本治による国民的ギャグ漫画。葛飾区亀有の下町を題材とし、主人公の両津勘吉を中心にさまざまな時事ネタや流行を取り入れた本作は、コミックスの発行部数は累計1億万部を超え、これまでTVアニメ化や実写ドラマ・映画化などでも幅広く愛されてきた。今回、1999年の初の舞台化から、10年ぶり5度目となる本作。脚本・演出を手がけ主人公・両津勘吉役をおなじみラサールさんが演じるほか、派出所の美男子担当・中川圭一役にユージ、秋本・カトリーヌ・麗子役に原幹恵、向島三四郎役に池田鉄洋らが出演するなど、注目を集めている。そんな中、ストーリーの鍵を握る、舞台オリジナルキャラクターの少女・サキを演じることになった生駒さん。これまで、映画『コープスパーティー』で初主演を果たしていたが、「乃木坂46」以外の舞台出演は今回が初めて。生駒さんは、「もともと『ジャンプ』が大好きで、そのご縁でTX『特捜警察ジャンポリス』のレギュラーもやらせていただいてますが、まさか『こち亀』の舞台に出られる日がくるなんて思っていなかったので、とても嬉しいです」と喜びをコメント。「『ジャンプ』が大好きな一員として、また、40周年という私より20年も先輩の作品の記念公演に華を添えられるように、サキ役を精いっぱい演じさせていただきます!頑張ります!」と熱い意気込みを明かしている。連載40周年特別企画舞台版「こちら葛飾区亀有公園前派出所」は、9月9日(金)~19日(月・祝)AiiA 2.5 Theater Tokyo(東京)、9月23日(金)~25日(日)サンケイホールブリーゼ(大阪)にて上演。(text:cinemacafe.net)
2016年06月13日純喫茶のマスターというとどのような方を思い浮かべるでしょうか?蝶ネクタイを締めた白いシャツと黒いパンツスタイルで正装した物静かな方、トレードマークになっているエプロン姿が見慣れた元気な方、清潔でパリッとしたシャツに身を包んだ穏やかな方…。今回は立ち寄れば思わず元気になってしまうような明るくてユーモアあふれるマスターのいる純喫茶を紹介します。足を運んでくれる人たちには応えたい難波里奈『純喫茶へ、1000軒』難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年04月15日学校がある街には必ず素敵な純喫茶がある?難波里奈『純喫茶へ、1000軒』難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年04月08日1人1人に向き合った高架下の純喫茶難波里奈『純喫茶へ、1000軒』難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年04月01日銀座からほど近い昭和の空気を残す純喫茶(c)『ローヤル』皆さんは、「好きなのに緊張してしまう街」はありますか。私にとってその一つが銀座です。大人になれば自然とその街の空気に溶け込めるのではないかと期待していたのですが、今でも緊張してどこかぎこちなくなってしまいます。それゆえに、多少遠回りになるとしても、比較的近いJRの有楽町駅や新橋駅で下車してから目的地へ向かう癖がついてしまいました。同じように感じる方は、華やかな空間へ入るための心の準備としてお気に入りの純喫茶でひと息つく時間を作ってみてはいかがでしょうか。今回は、JR有楽町駅前にある昭和の空気を色濃く残す純喫茶を紹介します。銀座から近いこともあり、中央改札口へ出るとファッションビルが立ち並ぶ眩しい光景が広がりますが、その近くにある東京交通会館は50年以上の歴史があり、館内には当時から変わっていないような懐かしさを感じる飲食店も多数。中でも圧倒的な広さを誇り、いつも賑わっているのが「ローヤル」です。掲げられた看板に「純喫茶」とあることは今では貴重。入口には食品サンプルが並ぶガラスケースも健在です。(c)『ローヤル』空間は大きく2つに区切られ、どちらもゆったりと腰掛けることの出来る赤くて低い椅子が特徴的です。白いシャツに黒いパンツスタイルといった正装の男性ウエイターの接客はきびきびとしていますが、注文の品が来た後は放っておいてくれる気遣いが居心地良さの理由かもしれません。人気のハニートーストは食後のデザートにはありあまるほどの分厚さでありながらも、たっぷりバターとはちみつの美味しさでいつの間にか完食を。(c)『ローヤル』「お元気ですか?」「相変わらずね。そちらも元気そうで。」何度も繰り返したマスターとのやり取りの中に「でも、いつまでこのビルで続けていけるのかなあ。」とマスターのつぶやきが混じり、続く言葉を失ってしまいました。駅前にある便利さは再開発と隣合せであることは承知の上ですが、次々と景色を変えて華やかになっていく街の近くには、ローヤルのように変わらない憩いの場がいつまでもあってほしいと勝手ながら強く願うのでした。Text/難波里奈難波里奈『純喫茶へ、1000軒』難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年03月25日人気アイドルグループ・乃木坂46の生駒里奈が19日、国内最大級のファッションイベント『第22回 東京ガールズコレクション 2016 SPRING/SUMMER』(東京・代々木第一体育館)に初登場。ブラック×ボルドーのシックなファッションに身を包み、少々緊張の面持ちでウォーキングを披露した。<写真>初々しい?生駒のランウェイポージング生駒は米NY初の人気ブランドANNA SUIの2016年春夏のアジア圏ビジュアルモデルに抜擢されており、今回のTGCも同ブランドのステージで登場。ボルドーの口紅&ブラックベースのアイメイクでいつもとは違ったモードな表情を見せ、会場を魅了した。2005年よりスタートした同イベントは今回で22回目。 “PARTY”をテーマにした今回は「ピュアフェミニン」「トライバルマインド」「ニューストリート」「タキジョ」をトレンドキーワードに据え、ファッションやエンタテインメントなどジャパニーズ・ガールズ・カルチャー世界に向けて発信。乃木坂46からはほかにも白石麻衣や橋本奈々未、松村沙友理、西野七瀬、齋藤飛鳥が参加している。
2016年03月19日新宿の喧騒を忘れる空間(c)『らんぷる』繁華街は美味しいレストランや素敵な洋服店などが軒を連ねるとても楽しい場所ですが、あまりの人の多さに疲れてしまうこともしばしばです。特に休日は賑わうため、ひと休み出来るカフェや喫茶店は満席であることが多く、休むためにも列を作って待たなければならないことも多いのではないでしょうか。特に新宿は混雑が激しく、自分のペースで歩くのも困難なほどです。しかし、そんな時にふらりと訪れても入店可能で、珈琲やレモンスカッシュを飲みながらほっと一息つける純喫茶があります。新宿駅東口から三丁目方向に向かう飲食店が並ぶ商店街の中に浮かぶ黄色い看板が目印の「らんぶる」です。(c)『らんぷる』外からは一階部分しか見えないため、初めて訪れた方はこぢんまりとした喫茶店だというイメージを持つのではないでしょうか?しかし、扉を開けて左側にある階段を降りていくと、そこにはまるで舞踏会場のように広く天井の高い空間が現れます。赤いベロアの絨毯と座り心地の良さそうな赤いソファ、さらに下のフロアへと続く大きな階段に目を奪われます。地下階にはあわせて200席ほどあるため、よほどでない限り入れないことはなく、待ち合わせにも安心して利用することが出来ます。(c)『らんぷる』名曲喫茶として愛されてきたこちらでは現在でこそCDを使用しているようですが、かつては膨大な枚数のレコードが日々流れていたそう 。周りの喧騒が嘘のように落ち着いた空間でぼんやりと座っていると疲れもどこかへ飛んでいくような気がします。余談ですが、店を任されている三代目の店長は学生時代の友人です。当時はもちろんそのような話をしたこともなかったのですが、数年前に開催された飲み会で見覚えのある顔を見つけ、交換した名刺にはなんと「新宿らんぶる店長」と記載されていたのです。すでに純喫茶に夢中だった私は飛び上るほど驚いたのでした。長い間疎遠だったにも関わらず、最近では時々一緒に珈琲を飲んだり、撮影場所として協力をしてもらうなど頻繁に連絡を取るようになり、純喫茶が再び繋いでくれた不思議なご縁に感謝するのでした。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年03月18日旅先でのモーニングの楽しみ(c)『珈琲美学アベ』旅先で目的の駅に着いた時、皆さんはまず何をしますか?私はいつも駅周辺の純喫茶を探します。気分を切り替え、珈琲を飲みながら一日の予定を組み立てるためです。日帰り旅行が可能で好きな街の一つとして思い浮かべるのは、長野県松本市。美しい自然があり、美味しい洋食屋、松本民芸用品を基調とした雑貨屋などが軒を連ねるコンパクトな街は、散策に最適です。かつて何度も訪れた馴染みのある場所に、純喫茶に関する打合せのため出掛けてきました。今回は、何気ない話から繋がった純喫茶でのこの先も続いていくご縁について話します。(c)『珈琲美学アベ』今回の旅の目的の一つは松本市で行うイベント会場として利用させてほしいというお願いのために訪れた『珈琲美学アベ』でした。交渉の途中、さらに東京で行うイベントでも珈琲を淹れる実演をして頂けないかと提案しました。すると急な依頼にも関わらず、マスターは「面白そうだから」と二つ返事で快諾して下さったのです。その優しさと決断力のおかげで先日開催された東京でのイベントは大盛況に終わることが出来ました。(c)『珈琲美学アベ』そんな素敵なマスターがいらっしゃる珈琲美学アベは松本駅から歩いて数分。看板や入口のマットに描かれている髭を生やした男性のイラストが目印です。彼の名前は「セニョールアベ」。店名の通り、こちらは二代目マスターである安部さんとご子息の三代目で営まれています。純喫茶が年々減少していく原因の1つとして「後継者不在」が挙げられるため、すでに頼もしい後任者がいることには純喫茶愛好家として感動しました。店内には、現在ではあまり見かけなくなった電話ボックスがあり(携帯電話で通話したい時に使用されるそう)、骨董品と思われる古めかしい黒電話が現役で使用されているなど、至るところにマスターの美学を感じることが出来ます。(c)『珈琲美学アベ』メニューには選べるモーニングセットやモカクリームオーレなど美味しそうな文字が並びますが、必ず珈琲もご一緒に。長い年月をかけて習得したマスターの技による「完全抽出」珈琲が自慢の一品です。実際にネルドリップで珈琲を淹れる作業を拝見しましたが、抽出後の珈琲粉の表面はまるでとろけたチョコレートのようになめらかでした。熱い珈琲を一口飲めば、レシート裏にある「悪魔のように黒く、天使のように優しく、恋のように甘い、珈琲のひととき…」という文言にも納得。長い間愛されている純喫茶には何度も会いたくなるマスターの存在が欠かせないものだとしみじみと思うのでした。Text/難波里奈(c)純喫茶へ、1000軒難波里奈 (著)難波さんの新刊『純喫茶へ、1000軒』に興味がある方はこちらから!
2016年03月14日