●"回る"よりも、スクリーンが重要な感覚客席が360°回転する劇場として話題のIHIステージアラウンド東京。席に座ると、周りをスクリーンに覆われたステージに囲まれ、場面に合わせてそれぞれの箇所のスクリーンが開いていく。開いたスクリーンに合わせて客席が動いていくと、今までにない没入感が得られるのが、同劇場の特徴だ。業界内外から注目を受けるだけでなく、普段演劇を観に行かない層からも「行ってみたい」という声があがっている。3月からは、こけら落としとして劇団☆新感線の代表作である『髑髏城の七人』を、"花・鳥・風・月"と4つのシーズンに分け、それぞれ異なるキャスト・演出で1年3カ月にわたる長期公演として行っている。オランダの劇場を元に、日本初、どころかアジア初となる劇場に挑んだ演出家・いのうえひでのりは、実際にどのような感想を抱いたのだろうか。○タイムシミュレートが必要に――360°ステージという、今までに日本になかったステージに挑戦されたいのうえさんですが、実際にステージで演出されてみていかがでしたか?思ったより転換がスピーディーではないので、そこに工夫がいる感覚ですね。回ることより、スクリーンが閉じるということを、どう見せるのかが重要でした。お客さんも360°回ることに期待があると思いますが、実は回っていることにはあまり気が行かないんですよね。客席が回っている間に、役者も一緒に移動をしているわけですから。改めて使ってみて、シーンの並べ方が重要になってくるなと思いました。――稽古場では、俯瞰で見ることはできないんですか?稽古場では各シーンを切り取って稽古するので、シーンとシーンの間は頭の中で埋めていました。頭の中でシミュレートしていることが、どのくらいうまくいくか、試せるのは劇場の中に入ってみてからです。「このタイムでこのスクリーンが開くはずだから、その間に移動して……」みたいなことを、模型を使いながらシミュレートしていました。その開き方も、真ん中から開くのか、役者の動きを追いかけて開くのか、自由度はあるんだけど、事前にコンピュータに覚えこませなきゃいけないので、タイムシミュレートが一番難しいかな。――確かに拝見すると、スクリーンが開く時の開放感がすごかったり、自分が俳優さんや物語を追いかけながら移動している感覚が強かったです。そうなんですよ。だから、客席を本当に全部回転して見せるのは、特別な場面になりますよね。カーテンコールはネタバレしていいので、回せるんですけど、芝居中はなかなかね、難しい。このシーンとこのシーンが隣同士ってバレるから(笑)。カーテンコールで客席を回すと、映画のエンドロールみたいな効果があるんです。オランダでも同じような使い方をしていました。3月から"Season花"をやって、見え方や、できることできないこと、タイム感はわかりました。いっぱい頭の中で考えてても、実際の劇場に行かないと、わからない(笑)。無駄にデカかったり、意外と狭かったり、長所と短所みたいなことは随分わかりましたね。タイム感を把握したので、シーンの並べ方も変更して、なるべく映像でつなぐ場面を少なくしようとか、次にやろうと思っていることは沢山あります。●歌って踊る、エンタテインメント要素のある舞台に○見せ方を変えて行う4シーズン――6月12日まで小栗旬さん出演の"Season花"を上演されていましたが、6月27日からの阿部サダヲさん主演"Season鳥"では、かなりショーアップされるというお話でした。『髑髏城の七人』はキャスティングによって全然違う切り口、見せ方もできるので、アオドクロ(2004年、市川染五郎主演)のように、歌ったり踊ったりしている年もあるんですよ。"Season花"はもともとシンプルに、ワカドクロ(2011年、小栗旬主演)をブラッシュアップしたいという気持ちがあったから、次の"Season鳥"は逆にショーアップしよう、と決めていました。"Season鳥"が一番、歌や踊りががっつり入っているんじゃないでしょうか。――新感線さんは、歌って踊るエンタテインメント要素が入っている作品が多く、「演劇で歌うなんてけしからん」という感じがないところが魅力的だと思うのですが、いのうえさんはどういう感覚で演出をされているんですか?もともと音楽も好きだし、ミュージカルも好きだし、映画も好きだし、自分の中で「今回はこうしよう」という思いがあれば、全然あると思います。ただ個人的には「ミュージカル」というと、音楽で話が進むという明確なカテゴライズがあるので、自分がやっているのは音楽劇で、ミュージカルじゃないとは思っています。音楽が入ったPlay with musicという感覚です。○お客さんの感覚にハマる音楽劇――今回"Season鳥"には、星野源さんの"恋"ダンスの振り付けをしたMIKIKOさんが拘られているそうですが、歌って踊るという要素が求められてる時代だったりもするんでしょうか?やっぱり解放されるし、お客さんもいい芝居を観ている時にわっと暴れたくなるような瞬間もあるんだと思います。そういう時に、音楽劇はハマる。"Season鳥"は歌えるキャストも多いし、時代に応えるというより、もともとショーアップしたいという気持ちはありました。――新感線さんもそうですし、ミュージカル俳優の方が映像やストレートプレイに出たりとか、最近は俳優さんの間にも垣根がなくなってきたのかな、と感じます。新感線に出て下さる俳優さんは、ミュージカルに出ている方もいるし、新感線で初めて歌ったり踊ったりするという方もいる。ノンジャンルというか、「あの人、カラオケで歌っててうまかったよ」と聞いたら、「じゃあ歌おう」とお願いすることもあります(笑)。実際に歌ってもらったら、本当にうまかったりするんですよね。日本にはミュージカル俳優というジャンルがありますが、本当は"歌える俳優"や、"踊れる俳優"がいるだけなんじゃないかな? と思います。――それでは、最後に改めて今後の『髑髏城の七人』の見どころについても少し教えてください。「Season風」ではもともとやっていた、捨之介と天魔王が二役というバージョンもやります。また、思いっきり若い人にシフトした『髑髏城の七人』が出てくる可能性もありますよね。せっかく4シーズンあるので、手練手管、いろいろ見せ方を変えて頑張りますよ。○『髑髏城の七人』情報作・中島かずき、演出・いのうひでのりにより、1990年の初演以来、7年ごとに再演されている劇団☆新感線の代表作。これまでに古田新太、市川染五郎、小栗旬が主演を務めている。天正18年、織田信長の死後「関東髑髏党」に支配されている関東を舞台に、浪人・捨之介は偶然知り合った仲間たちと共に、関東髑髏党の首領・天魔王と戦うことになる。IHIステージアラウンド東京で行われる"Season鳥"は阿部サダヲ主演にて、6月27日~9月1日に上演。さらに向井理主演"Season風"(9月15日~11月3日)、主演未発表の"Season月"(11月下旬~)公演を控える。
2017年06月25日●作品じゃなく、俳優にファンがつく日本現在、豊洲の新劇場・IHIステージアラウンド東京で上演されている『髑髏城の七人』。“花・鳥・風・月"と4つのシーズンに分け、それぞれ異なるキャスト、脚本・演出で1年3カ月にわたる長期公演が行なわれている。1年以上の公演でありながら、チケットはすぐに完売。当日券を求める人が列をなす事態となっている。『髑髏城の七人』は、劇団☆新感線の代表作で、1990年の初演以来、7年ごとに再演されている。なぜ『髑髏城の七人』がここまで求められるのか、演出家のいのうえひでのりに話を聞いた。○『髑髏城の七人』しかなかった――今回、1年3カ月という長丁場に、『髑髏城の七人』を選んだ理由を教えてください。最初話があった時にまず、1年以上同じ作品をやるのは、日本では難しいなと思ったんですよ。だから何本かやらなければいけないという話になり、同じ作品で何本かやるなら、うち(劇団☆新感線)のレパートリーには『髑髏城の七人』しかなかった。やってみて正解でしたよ。この作品しかないです。話の骨格がしっかりしているので、応用が効く。七人のキャラクターの設定をちょっとずついじっても、骨格がぶれないので、面白く4シーズンで見せられます。――4シーズンに分けて、出演者や演出を変えるというのも、驚きでした。海外と違って、ロングランできるような演目がなかなか日本にない、というのが大きいですよね。例えば『エリザベート』のようにチケットが取れない作品でも、1年以上の公演は難しいと思うんですよ。やっぱり日本は、作品より俳優さんにお客さんがついてるので、ロングランで、しかも豊洲の辺鄙な土地に人を集めようと思うと、改めて「『髑髏城の七人』を4シーズンやる」という作戦しかなかったと思います。――『髑髏城の七人』があってよかった、というお気持ちですか。本当に、『髑髏城の七人』しかなかったですね。阿修羅(『阿修羅城の瞳』)じゃ難しかったと思います。このシアターの醍醐味として、場面転換がいろいろできて、しっかりと作りこんだセットで見せられるという点でも『髑髏城の七人』しかなかったなあと、"Season花"が開いてみて、改めて思いました。なんだかんだ言っても、ずっと再演している作品って、これだけなんですよね。キャストを変えて、新たに創造できる、間口の広さがこのホンにはあるんだと思います。●BL要素、刀剣ブームもハマった!?○『髑髏城の七人』は日本人が好きな話――改めて、『髑髏城の七人』のどこがこんなに求められるんだと思いますか?日本人が好きな話なんじゃないでしょうか。3人にするか、5人にするか悩んだこともありましたが、7人という点も良かった。何者でもない連中が集まって、巨大な敵に向かうというのも、もともと日本人が好きなパターンだと思うんです。そこにうまいことはまったというのは、お客さんの反応からも感じます。あとは淡いBL要素があるとか、今はちょっとした刀剣ブームがあるとか(笑)。僕らは昔からやっているので、狙っているわけじゃないけど、もともとそういう要素がいっぱいある作品なんで、今の時代はそこにハマるんだ、みたいな驚きはありました。――そういった感想も、キャッチアップされているんですね。狙ってやっているわけじゃないんですが、こんな風に受けるんだと思って。じゃあちょっと狙っていこうかな、みたいな気持ちも芽生えますが(笑)。――最近、殺陣をやる舞台もかなり多いですよね。僕らが始めた頃に観ていた人たちが「こういうことやっていいんだ」と思われた点もあるかもしれないですね。ゲームのクリエイターや漫画家さんの中にも、新感線を観ていらっしゃる方がいるみたいで。そういう広がりが今、実を結んでいるのかもしれません。2.5次元ミュージカルで、昔の新感線がやっていたような衣装を見ると、僕たちはもうやらんぞ、と思ったりしますね(笑)。昔は誰もやっていなかったし、お金もなかったから、「時代物でもブーツでいいじゃん」みたいなところがありました。髪の毛も「髷のヅラが買えないから長髪でやろう」みたいな。逆にそれが、今の時代では定番になっている。僕らは逆に、今はカツラも借りられるようになりました(笑)。○時代が求める阿部サダヲ――"Season花"の小栗旬さん、"Season鳥"の森山未來さん&早乙女太一さんと、2011年の通称"ワカドクロ"キャストが、再出演されていますが、何か意図はあるのでしょうか?ワカドクロで知り合った俳優さんたちが、脂が乗っている時期に来ていると思うんです。(小栗)旬も出会った時から時間が経って、気力・体力、いろんなものが充実して、改めて"Season花"で挑戦できたし、当時19歳だった(早乙女)太一が25歳で、一番脂が乗った時に、もう1回できる。そういう出会いが、実を結んでるところもあります。――逆に"Season鳥"主演・捨之介役の阿部サダヲさんは、かなり今までのイメージと違いますね。捨之介にはどうしても「着流しの傾奇者」というパブリックなイメージがあったので、「阿部ちゃんで!?」と思ったんですけど、全然変える捨之介だったらありだな、と。そこがきっかけになって、"Season鳥"は設定も変えていこうと思いました。――阿部サダヲさん、ちょうど2019年のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』の主役となることも発表されて。やっぱり、時代のシンクロニシティじゃないですかね。うまいですよ、阿部ちゃん。古田(新太)と一緒で、会場の空気を感じながらお芝居ができる。これは、天性のものですね。華もあるのに、腕もある。安心して任せられる主役俳優さんだと思います。――ちなみに、今注目している役者さんはいますか?神木隆之介くんは、面白そうですね。映画『るろうに剣心』を見たらかなり動いてたし、やってくれたらいいなとは思いますけど、なかなか映像でハマってる人は舞台に来てくれないこともあるからなあ。――舞台と映像を行き来する役者さんも、最近は増えているのかなという印象もありますが、舞台の良さはどこにあると思いますか。舞台をやらなきゃいけない、と思っているところもあると思うんですよ。お客さんの前に緊張した状態で、自分の体を晒す経験ですからね。映像の演技も大変なんですけど、全てを晒すわけではないじゃないですか。編集もあるので、1素材になるという点が大きいと思います。逆に舞台は、ステージに出ちゃうと、本人が見せ方のディレクションも含めてやるから、自分のパフォーマンスの支配率が高くなる。そこが楽しいところでもありますね。○『髑髏城の七人』情報作・中島かずき、演出・いのうひでのりにより、1990年の初演以来、7年ごとに再演されている劇団☆新感線の代表作。これまでに古田新太、市川染五郎、小栗旬が主演を務めている。天正18年、織田信長の死後「関東髑髏党」に支配されている関東を舞台に、浪人・捨之介が偶然知り合った仲間たちと共に、因縁深い関東髑髏党の首領・天魔王と戦う。IHIステージアラウンド東京で行われる"Season鳥"は阿部サダヲ主演にて、6月27日~9月1日に上演。さらに向井理主演"Season風"(9月15日~11月3日)、主演未発表の"Season月"(11月下旬~)公演を控える。
2017年06月22日俳優の古田新太が主演を務める舞台『ロッキー・ホラー・ショー』のビジュアルが21日、公開された。同作は1973年にロンドンで初演を迎え、世界的な人気を誇るミュージカルで、1975年に映画化もされている。2011年には、演出家・いのうえひでのりと古田のタッグによって上演され、今回河原雅彦の演出で復活することとなった。今回公開されたのは、古田が演じるフランク・フルターのビジュアル。全性愛、異性装のマッドサイエンティストであり、変態度パワーアップで異質な世界を作り上げる。古田も「オイラはこのカツラとボンテージを着たらフランクになっちゃうので、みんなもコスプレして一緒に騒ぎましょう」とファンへメッセージをおくった。同作には他、小池徹平、ISSA、ソニン、上木彩矢、アヴちゃん(女王蜂)、吉田メタル、東京ゲゲゲイ(BOW・MARIE・YUYU・MIKU)、ROLLY、武田真治が出演する。東京公演は11月7日~12日にZeppブルーシアター六本木、11月16日~12月3日にサンシャイン劇場。さらに北九州公演、仙台公演、松本公演、大阪公演を予定している。○古田新太コメント全国の「ロッキー・ホラーショー」ファンの皆さんに嫌われないように今回も皆さんが楽しめるような作品にしたいですね。前回は映画へのオマージュ色が強かったですが、今回はライブのノリで、お客さんと一緒に盛り上がれる、レスポンスを楽しめるような作品になるかと。作品を知らない人にも楽しめると思いますが、DVDなどで予習してきてもらえると、もっと楽しめると思います。これまでとは全く違う「ロッキー・ホラー・ショー」になります! オイラはこのカツラとボンテージを着たらフランクになっちゃうので、みんなもコスプレして一緒に騒ぎましょう○河原雅彦コメント「ロッキー・ホラー・ショー」には、お客さんが一緒になって騒いで盛り上げて、能動的に楽しむことで、作品としてのオリジナリティが構築された背景があると思います。今回はその空気感を持ち込んで、今まで以上にお客さんが参加して楽しめる仕掛けを作りたいと思っています。出演には音楽的な香りがする、もの凄く濃いメンバーが集まりました。クリエイティブスタッフには、日本の「ロッキー・ホラー・ショー」の伝説的存在であるROLLYさんが音楽監督でも入ってくださいますし、振付は僕も大ファンである 東京ゲゲゲイのMIKEYさんに声をかけさせてもらいました。絶対に刺激的な 「ロッキー・ホラー・ショー」ができると確信しています。「ロッキー・ホラー・ショー」を僕たちもめちゃくちゃ楽しんで創るので、イベントや ライブ、時期的には忘年会に参加するような気持ちで劇場に来て一緒に楽しんでもらえたらと思っています。
2017年06月21日吉高由里子が5年ぶりに映画主演を務め、2012年に大藪春彦賞受賞、本屋大賞ノミネートを果たした沼田まほかるのベストセラーを映画化する『ユリゴコロ』。本作の新キャストとして、松坂桃李と松山ケンイチ、さらに佐津川愛美、清野菜名、清原果耶、木村多江という豪華な顔ぶれが明らかになった。ある一家で見つかる「ユリゴコロ」と書かれた1冊のノート。そのノートに綴られていたのは、悲しき殺人者の記憶。これは事実か、創作か。誰が、何のために書いたのか。その秘密に踏み入ってしまったなら、もう後戻りはできない。壮絶な愛と宿命の物語が、いま静かに動き始める――。“出版業界の事件”ともいうべき空前の“まほかるブーム”を巻き起こし、その名前を広く知らしめた作家・沼田まほかるの同名小説を、「東京タラレバ娘」の好演も記憶に新しい吉高さんが主演、『君に届け』『近キョリ恋愛』などを手がけた熊澤尚人監督で映画化。殺人者の告白文が綴られた1冊のノートと、その登場人物・美紗子(吉高さん)を中心に過去と現在が交錯しながら、登場人物たちが愛と宿命の渦に翻弄されていく物語となる。そんな本作で、熊澤監督とは『親指さがし』(’06)以来、2度目のタッグとなる松山さんは、吉高さん演じる美紗子と運命的な出会いを果たす男・洋介役に。誰にも言えない罪、心の傷を抱えながら生きる、色気と繊細さが同居したキャラクターを、昨年の『聖の青春』で第40回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど、日本を代表する俳優の1人として活躍を続ける松山さんが、その圧倒的な表現力と存在感で演じる。一方、松坂さんは、物語が動き出すきっかけとなる1冊のノートを見つけ、その秘密に惹き寄せられる男・亮介役に。余命わずかな父の書斎で見つけた、殺人者の記憶が綴られたショッキングなノート。「これは事実か創作か?」「いったい誰が、何のために書いたのか?」「自らの家族とどんな関係があるのか?」数々の疑念を抱きながらも強烈にそのノートに惹き寄せられ、自らの運命を狂わせていく役どころ。菅田将暉とのW主演映画『キセキ -あの日のソビト-』が大ヒットを記録、今後も続々と新作映画の公開が控える松坂さんが、宿命に翻弄されるキャラクターで、どんな姿を見せてくれるのかは要注目。さらに、ある日、突然に亮介(松坂さん)の前から姿を消してしまう婚約者・千絵役には、『暗黒女子』をはじめ映画・ドラマはもちろん、宮藤官九郎やいのうえひでのりなど、名だたる演出家たちに見いだされ舞台へも表現の場を広げる清野さん。そして、千絵(清野さん)の元同僚で、彼女からある伝言を預かり、亮介の前へ姿を現す謎多き人物・細谷役を、『ぐるりのこと。』など数多の映画・ドラマへ出演し、あらゆる女性像をも体現する表現力と独特の存在感が魅力の木村さんが演じる。また、生まれながらに“人間の死”へ本能的な衝動を感じ、そこから逃れる術を持たなかった美紗子(吉高さん)の若き日を、『3月のライオン』などへ出演する清原さんが抜擢。そして、美紗子が特別な感情を抱く友人・みつ子役には、『ヒメアノ~ル』などへの出演でその演技力には定評がある佐津川さんが演じるなど、若手注目女優も集結する。なお、ノートに綴られた“過去”の物語に出演する吉高さん、松山さん、佐津川さん、清原さんは昨年9月初旬~10月中旬に撮影を終了。ノートの秘密に迫る“現在パート”へ出演する松坂さん、木村さん、清野さんらは本年6月下旬から撮影に入るという。過去と現在が交錯する物語をコントラスト強く表現するため、画のトーン、現場スタッフなども変更。あえて撮影時期もずらし、二部作的なスケール感の制作体制を敷いているという。そして松山さんと松坂さんからコメントが到着した。■松山ケンイチ暖かく、柔和で、暗くなりがちな役柄を演じるのは久しぶりだったので、自分の中のステレオタイプも参考にしながら演じました。由里子ちゃんとの共演も願っていたことだったので、とても嬉しく思っています。熊澤監督とは2回目で10年近く間が空いてますが、プライベートでもお付き合いがあったので、良い関係で最後まで出来ました。僕自身大好きな90年代の映画の匂いのする作品だなと思ったので完成が楽しみです。■松坂桃李非常に不思議な本でした。ミステリーでもあるけれど人間ドラマとしても深いところをえぐってくる。完成するまで「こういう作品だ」と言いきれないんじゃないかと思いました。偶然にも近いタイミングで同じ原作者の沼田さんの作品(「彼女がその名を知らない鳥たち」)に携わることになり、そこにも深い“縁”を感じました。過去の出来事を想像しながら、現在の物語を大切に演じていきたいと思います。『ユリゴコロ』は9月23(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2017年04月10日宮藤官九郎作、いのうえひでのり演出の劇団☆新感線最新作『Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~』が10月19日、大阪のフェスティバルホールで開幕した。平安時代の吸血鬼(生田斗真)がビジュアル系バンドのヴォーカリストとして現代に蘇り、愛するかぐや姫の生まれ変わりを探し求める時空を超えた物語。2016年劇団☆新感線夏秋興行 SHINKANSEN☆RX 「Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~」チケット情報体操競技の床に例えるなら、助走して捻って回って踏み切って、パーンと空中で大技を決めた瞬間パカッと「どこでもドア」が開き、着地後にはまったく別世界が広がっていた、というような。文字通り予測不可能な展開なのだ。物語は海外のB級ホラー、特撮、SF、時代劇、Vシネマ、純愛…など複数の映画をザッピングしながら、同時にテレビやCMもチェックするような感覚。「帰ってきたぜ、オオサカー!」の掛け声に、観客も総立ちで応える音楽フェスタイムまで盛り込まれ、盆と正月をいっぺんに味わうような気分。そんな縦横無尽な脚本を舞台化したいのうえ演出は、まるでマジックでも見るようで。映像や照明、舞台装置を効果的に駆使し、ダイナミックに観客を劇世界へと誘っていく。芸達者な劇団員らは、宮藤の視点でより灰汁を煮詰めたようなキャラ付けが一周回って新鮮にも感じられ、何より豪華ゲスト陣が破天荒な役柄を存分に楽しんでいる様子が一層お祭りムードを盛り上げる。効果音に合わせ変顔も厭わない生田だが、ここぞの場面では、心底かっこいい!と見惚れてしまう、人目を惹く美貌は本物。ヒロインの小池栄子は、人知を越えた役柄を体当たりで演じる、硬軟自在な手数の多さに舌を巻く。同じく、カメレオン的活躍で複雑な設定と役柄に説得力を持たせる中村倫也。妖艶さを湛えた視線で観客の心を射抜き、抜群の演技力で物語を牽引していく、もう一人の主役と呼びたい存在だ。さらに、妖しくもキュートな魅力でファンタジー要素を担う篠井英介。地元関西が生んだアイドルグループ、ジャニーズWESTの神ちゃんこと神山智洋は、劇団初参加にして大健闘。登場の度に爆笑をさらい、本領発揮のダンスも披露。限られた場面にもばっちり爪痕を残している。かくして、見所満載の物語は、劇的な幕切れを迎える。今こそ「千年前から愛してる」の告白が、深く切なく胸に突き刺さる。愛を語る男女の声、視線、佇まい、そしてあの決着の付け方――。いのうえ美学が結実したシビれるほどの光景に、万雷の拍手が沸き起こった。公演は、10月31日(月)まで大阪・フェスティバルホールにて上演中。チケットぴあWEBサイトでは、当日引換券を発売中(※受付は先着順)。取材・文:石橋法子
2016年10月21日2017年3月に東京・豊洲にオープンする新劇場「IHIステージアラウンド東京」のこけら落とし公演として1年3か月上演する、劇団☆新感線の『髑髏城の七人』。花・鳥・風・月の4シーズンに分けて上演する、その最初の「Season 花」の製作発表記者会見が行われ、小栗旬、山本耕史、成河、りょう、青木崇高、清野菜名、近藤芳正、古田新太、中島かずき、いのうえひでのりが登壇した。新劇場は、360度回転する円形の客席を中央に配置し、その周囲をステージとスクリーンがぐるりと囲む形状。劇団の主宰で演出のいのうえは「1番のメリットは暗転を作らないこと。舞台はどうしてもセットを入れ替えないといけないので、その間どうやってお客さんの気持ちを途切れさせずにみせるかは、ひとつ演出の腕の見せ所だと思うのですが、(新劇場では)セットが用意してあるところを客席の方がグルグル回っていくわけですから。映画じゃないですけど、ほとんど切れ目なくシーンが進んでいく。ある意味では新感線にピッタリな劇場と言っても過言ではない」、脚本の中島も「(同じ形状の舞台がある)オランダで芝居を観たときに、客席が回るということは想像よりももっと演劇の中に(観客が)一緒に入っている感覚が強い。今まで感じたことがない感覚でした」と熱く語った。1990年の初演以来、7年ごとに上演を繰り返してきた『髑髏城の七人』について、いのうえは「戦国を舞台に若者たちが暴れまくるという話。『Season花』では、圧倒的な大人、リーダーを失った若者たちの葛藤と青春を中心に描いていく」と紹介。中島は「1990年にやったときには粗削りな舞台でした。でも逆に原石のような魅力があって。再演するたびに輝き方が違う芝居になって、ある種宝物だなと思いながらやってきました。今度は(劇場)システムが違うということで、磨けば磨くほど輝き方が違う芝居に対してピッタリ」と期待を寄せた。捨之介役の小栗は「2011年の『髑髏城の七人』でこの捨之介の役をやらせていただきまして、そのときにちょっと自分の中でいろいろ足りない点や思うところがいっぱいあったので、それをこういう形でやらせてもらえることを非常に嬉しく思っています」。蘭兵衛役の山本は今回が新感線初参加。何度も再演された作品への出演について「演者が違うということは全く違うものになると思う」と真っ新な状態で挑むことを宣言。贋鉄斎役の古田は「最終的に『りょうちゃんより古田さんの方が色っぽかったよ』って言われたい」と意外なライバル心(?)を披露した。公演は2017年3月30日(木)から6月12日(月)まで、東京・IHIステージアラウンド東京にて。
2016年09月09日俳優・青木崇高が8日、都内で行われた主演舞台「ONWARD presents 劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season 花 Produced by TBS」の製作発表記者会見に出席した。青木は6月に女優・タレントの優香と結婚した。結婚後初の舞台に関する意気込みを聞かれると、共演者たちはニコニコと青木を見守るムードに。青木は、「なんでしょうねえ、ロングランですから、しっかり体力精神力を培って、両方やっていきたいと思います」と苦笑しながら答えた。共演者陣も肩を震わせ、あたたかな笑いに包まれた。また、会見終了後、報道陣から「青木さんおめでとうございます!」と声がかかると、青木はピースで応えた。共演の成河も、後ろを振り向き拍手で祝福した。同作は劇団☆新感線による人気演目で、1990年の初演以来、7年ごとに上演されている代表作。今回は360度型の新劇場「IHIステージアラウンド東京」にて、2017年3月より1年3カ月のロングランを予定している。”花・鳥・風・月”の4シーズンに分け、すべて異なるキャスト、それぞれ全く違ったアプローチで上演する。製作発表には他に小栗旬、山本耕史、成河、りょう、清野菜名、近藤芳正、古田新太、脚本の中島かずき、演出のいのうえひでのりが登場した。
2016年09月08日俳優の小栗旬が8日、都内で行われた主演舞台「ONWARD presents 劇団☆新感線 『髑髏城の七人』Season 花 Produced by TBS」の製作発表に出席した。また、製作発表には山本耕史、成河、りょう、青木崇高、清野菜名、近藤芳正、古田新太、脚本の中島かずき、演出のいのうえひでのりも登場した。同作は劇団☆新感線による人気演目で、1990年の初演以来、7年ごとに上演されている代表作。今回は360度型の新劇場「IHIステージアラウンド東京」にて、2017年3月より1年3カ月のロングランを予定している。”花・鳥・風・月”の4シーズンに分け、すべて異なるキャスト、それぞれ全く違ったアプローチで上演する。2011年公演、通称"ワカドクロ"で主演を務めた小栗は「その時に自分の中で反省点があった」と振り返った。今回はオファーを快く引き受けてしまったものの、製作発表にはTBS社長も同席、協賛企業の重鎮が並ぶ姿に「だいぶ期待がかかってるぽいな、受けるんじゃなかった、みたいなところは」とこぼした。しかし、「誰もしたことのない公演」に対して、意気込みは十分だった。山本も「こんなにお金かかった製作発表は初めて」と驚き、「これだけお金がかかっていればこれだけの人(取材陣)が来るのかな」と苦笑。新感線初挑戦となる成河も、以前から出たいという話はしていたというが、「それがこの代表作で、こんなお金が動いてそうな作品になるとは」と、作品の大きさを実感した様子だった。小栗が演じる捨之介は、初演から何回も古田が演じていた役だが、小栗は「古田新太さんには負けたくないですね」とライバル宣言。「前回は古田さんと同じ板の上に立てなかったんですが、今回は立たせていただけるということで、新感線にいる古田さんを見れることも楽しみです」と期待を寄せた。一方の古田は「僕はりょうちゃんには負けたくない」と意外な発言でその場を沸かせた。古田は「りょうちゃんは花魁の役で、僕もそっちに寄せていこうと」と語り、「最終的に、りょうさんより古田さんの方が色っぽかったよと言われたい」と希望を述べた。古田からライバル視されたりょうは、「勝てる気はしないですね」と笑顔に。りょうは「前回の公演を観てみたんですけど、(同役の)小池栄子さんがすごく素敵で、それを見ながら『ここはカットだな』みたいな台詞もありまして、ここがないので……」と自身の胸を巨乳の形に示し、「絶対なくなるのはわかりました」と自虐的に発言した。
2016年09月08日『10人の泥棒たち』や『猟奇的な彼女』のチョン・ジヒョンと、『新しき世界』のイ・ジョンジェ、『テロ、ライブ』のハ・ジョンウという人気俳優が共演し、韓国で歴代トップテンに入るほどの大ヒットを記録した『暗殺』。7月16日(土)に迫った日本公開を前に、「劇団☆新感線」主宰・いのうえひでのり、ラジオDJ・MCの古家正亨から本作についてコメントが到着、さらに撮影現場でのメイキングオフショットがシネマカフェにて解禁となった。1933年、杭州。日本統治からの祖国独立を目指す韓国臨時政府は、日本政府要人と親日派を暗殺するため、独立軍最高のスナイパーのアン・オギュン(チョン・ジヒョン)、速射砲(チョ・ジヌン)、爆弾職人(チェ・ドクムン)の3名を上海に結集させる。臨時政府の警務隊長でありながら、日本政府の密偵であるヨム・ソクチン(イ・ジョンジェ)は、暗殺団を招集する一方、巨額の報酬で“ハワイ・ピストル”と呼ばれる殺し屋(ハ・ジョンウ)に彼らの殺害を依頼。ヨムの画策を知らぬまま、暗殺実行のため、上海から京城(現・ソウル)へと送り込まれた彼らには、非情なまでの運命が待ち受けていた…。本作は、アジアのトップスターが競演を果たした『10人の泥棒たち』で一躍ヒットメーカーに躍り出たチェ・ドンフン監督が、長年の構想を経て、「運命に対して揺るぎなく進む人々の“思い”というものをスクリーンに描きあげてみたかった」として完成させた意欲作。名もなきレジスタンスたちを軸に、さまざまな思惑と裏切りが錯綜する統治下の祖国を壮大なスケールでドラマチックに描き出し、昨年韓国で1,270万人を動員する大ヒットを記録、「青龍映画賞」作品賞ほか多数の映画賞を受賞した。時代に翻弄された人々を演じるのは、チョン・ジヒョン、イ・ジョンジェ、ハ・ジョンウという日本でも大人気の豪華俳優陣。チョン・ジヒョンは「シナリオを読んでびっくりした。キャラクターが多様性にあふれ、シナリオが本当に面白かった」と監督の前作『10人の泥棒たち』に続く出演で、独立軍きってのスナイパー、アン・オギュン役を熱演。5kgの銃を持ってのワイヤーアクションも華麗にこなした。また、暗殺作戦のために暗殺団を呼び集める冷徹な臨時政府隊員ヨム・ソクチンに扮したイ・ジョンジェは、役作りのため2か月で15kgも減量して撮影に挑み、現場でもひとりで禁酒をして役作りをするほど、そのキャラクターにほれ込んだ。そして、数々の話題作に出演するハ・ジョンウは、「個人的にいつ自分に声をかけてくれるのだろうかと思っていた」というチェ・ドンフン監督と念願の初タッグ。暗殺団を殺そうとする謎の殺し屋“ハワイ・ピストル”をミステリアスに演じている。さらにベテラン俳優イ・ギョンヨンやヒット作への出演が相次ぐオ・ダルスほか、韓国屈指の演技派が脇を固めている。今回解禁となったメイキングカットでは、監督の横で銃をかまえるチョン・ジヒョンや、監督の演出を聞くハ・ジョンウの真剣な表情とともに、イ・ジョンジェとチョン・ジヒョンのにこやかなカットなどが解禁。撮影時の雰囲気を垣間見ることができ、本編への期待が高まるオフショットとなっている。また、本作をいち早く鑑賞した「劇団☆新感線」主宰の演出家・いのうえ氏は「暗殺チーム・密偵・殺し屋、三つ巴の戦いと、陰謀・策略・裏切り、そして運命の悪戯がいり乱れて巡るスリリングなストーリー展開を、スピーディーなアクション満載でテンポよく見せていく。まさにエンタテイメントの“満漢全席”。いやあ本当に 面白かった。...そしてちょっとくやしい」と、作り手らしいジェラシーを交えながらも大絶賛。また、韓流ファンにはおなじみで、韓国大衆文化ジャーナリストとしても活躍する古家氏も「その“設定”に唖然とし、その“映像”に唸らされた。フィクションとして、ファンタジーとして、そしてアクション映画としては、面白い。この映画は、どう観るかで、その“価値”が変わってくるだろう」と熱いコメントを寄せている。『暗殺』は7月16日(土)よりシネマート新宿ほかにて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年07月10日俳優・生田斗真が9日、都内で行われた主演舞台『SHINKANSEN☆RX Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~』の製作発表に、共演の小池栄子、中村倫也、神山智洋(ジャニーズWEST)、橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと、篠井英介、演出のいのうえひでのり、脚本の宮藤官九郎とともに出席した。同作は宮藤が生田のために書き下ろし、劇団☆新感線作品の中でも「メタルマクベス」「五右衛門ロック」のように生演奏による楽曲を多く披露する「R」シリーズとして公演。生田は平安時代から生きるヴァンパイア役として、ヴィジュアル系ロックバンドのボーカルとして想い人の生まれ変わりを探す。生田は「お芝居に進むきっかけを作ってくれたのが劇団☆新感線の皆さんで、僕が17歳、高校2年の時でした。いつか僕もこういう人たちみたいになりたいなと思って、今日まで頑張ってきています」と気合十分。演出のいのうえは、「10年前に漠然としたアイディアを持ってたけど、斗真が『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』でブレイクしてしまい、なかなかできずに。もしかしたら城田優くんがやってるかもしれないと話していました」と明かし、「実現できて本当に良かったと思います」と喜びを語った。劇中で披露する楽曲は「十数曲はあると思います」と言うと、出演者一同驚いた様子だった。小池は「斗真くんに言い寄られて、神山くんを選ぶというぜいたくな役だなと。ファンの方に嫌われないように頑張ります」と役柄について語る。稽古後の"飲み番長"に立候補し、「若い男の子たちを引き連れて、週刊誌に撮られないように守ります!」と力強く宣言した。ずっと新感線舞台に立たいと思っていたという中村は半グレ組織の”ナメクジ連合”リーダーという役柄で、「ナメクジの身体模写から始めたい」と苦笑。生田と会うのが2回目だという神山は「あいさつした際に、メイク中なのにたってくださって『イケパラや!!』と思った」と先輩の印象を語っていた。
2016年06月09日森田剛の圧倒的な狂気の演技が絶賛を受けている、5月28日(土)公開の『ヒメアノ~ル』。このほど、「行け!稲中卓球部」「ヒミズ」の人気漫画家・古谷実による原作とは違う映画のラストに、涙する人が続出していることが分かった。平凡な毎日に焦りを感じながら、ビル清掃会社のパートタイマーとして働いている青年・岡田(濱田岳)。ある日、同僚の先輩である安藤(ムロツヨシ)から、密かに思いを寄せるカフェ店員・ユカとの恋のキューピッド役を頼まれた彼は、ユカのカフェで高校時代の同級生・森田と再会する。その後、ユカの口から、彼女が森田らしき人物からストーキングされていることを知らされ、不穏な気持ちを抱き始める岡田。やがて物語は、岡田と安藤とユカの三角関係から、現在では快楽殺人者となった森田によって、変化のなかった日常が狂気に満ちていく――。蜷川幸雄、宮本亜門、いのうえひでのりなど、錚々たる演出家の舞台作品で培い、演技力を高く評価されている森田さんが、人間をターゲット(餌)としか思わない連続殺人犯・森田を怪演し、マスコミ関係者や先行上映でいち早く本作をみた観客の間では、「森田剛が恐すぎる!」と、とにかく話題となっている本作。だが、そんな声に反して、SNSでは「怖いよりも感動で泣いてしまった」「手のひらの中で手汗拭くために握られたハンドタオルが、まさか涙を拭くためのタオルになるとは」といった感想もあがっているという。もちろん「森田剛が恐すぎて泣いた」という声もあるが、その“泣き”の真相は、原作とは違うラストにあることが明らかになった。原作のラストといえば、森田が警察官に声をかけられるシーンで終わる。だが、本作の脚本も手掛けた吉田恵輔監督は、「クライマックスなど、個人的には映画には何かしらエンターテインメントな要素を入れなきゃいけない」と自論を述べ、「だから、原作のシュールな終わり方も好きだったのですが、あえて原作にはなかった森田と岡田が対峙するクライマックスを作ることにしました」と、大胆に脚色した理由を語る。さらに、「原作では森田の内面部分をかなり描いているのですが、それは映画的ではないと思ったし、それを中途半端に語ってしまうと、殺人犯を擁護してしまうものになってしまう恐れもある。分からないものは分からないし、共感できないものは共感できない。つまり、原作との大きな違いは、森田を突き放して、ある程度の距離感をとったこと」とも明かしている。そんな監督の見事な脚色と演出は、どうやら功をなしたようだ。「見終わってみたら、とっても切なく悲しいなと思った。まさか泣ける映画だとは思ってなかった」「狂気で意味不明でこんな奴、絶対許せない!って思ってたのに、最後自分の中に森田が入ってきた感じがしたぐらい、森田の気持ちが伝わってきた。最後、涙止まらなかった!」と、それまでの恐怖に反して、森田に心を寄り添わずにはいられないラストに心を動かされる人が続出。『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』「山田孝之の東京都北区赤羽」などを手がけるドキュメンタリー監督の松江哲明も、「笑いと恐怖を交差する原作とは異なり、初々しい恋愛と凄惨な殺人とを分割する演出に驚愕。しかも、地獄の果てに感動が待っているとは。マジでビビった」とコメントを寄せている。『ヒメアノ~ル』は5月28日(土)よりTOHOシネマズ 新宿ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年05月27日歌舞伎役者の市川染五郎、中村勘九郎、中村七之助が17日、都内で行われたシネマ歌舞伎『阿弖流為<アテルイ>』(6月25日公開)の完成披露上映会に登場した。劇団☆新感線・いのうえひでのりが演出、中島かずきが脚本を担当し、2015年に新橋演舞場で行われた、歌舞伎NEXT『阿弖流爲<アテルイ>』を映像として編集、全国公開する。舞台挨拶では、18日に33歳の誕生日を迎える七之助に、サプライズでバースデーケーキが贈られた。観客に祝われた七之助は「どんどん衰えていくものなので、次の歌舞伎NEXTの時は動けるように、日々精進していきたいと思います」と33歳の抱負を語った。染五郎が七之助の口にケーキの装飾の熊を「あ~ん」と食べさせると、七之助は「甘いです」と苦笑。また、勘九郎は「いい1年にしてください」とメッセージを送った。『阿弖流爲<アテルイ>』について、染五郎は「すごいもの、びっくりするものを作ろうじゃないかと、思いだけで作り上げた感じ」と説明し、「同じ方向を向いて一気に作り上げた」と感慨深げに振り返った。七之助は「劇団☆新感線は見るもんで、出るもんじゃないと言われていたけど、まあ、地獄でした(笑)」と舞台の激しさを語り、「養老院みたいな人たちが走らされて、けが人続出で大変でしたね」としみじみ。また七之助は、舞台上の動きがほとんどいのうえの演出指示通りであることを明かし「型が決まっている中で、自分の感情を表現するのは歌舞伎と同じ」と表現した。劇団員である俳優・古田新太や橋本じゅんについて、「自由にやってるなと思ってたんですけど、毎回そういう演出を受けてたんですよ。ああ恐ろしい人達だと思いました」とすごさに触れた。
2016年05月18日その過激な内容から実写化不可能といわれていた古谷実の衝撃作を映画化した『ヒメアノ~ル』。「V6」の森田剛が映画初主演にして“最狂”の殺人鬼役を演じ、【R15+】指定を受けたことでさらなる注目を集めた本作の、日常と狂気が交錯するスリリングな予告編がついに解禁となった。平凡な毎日に焦りを感じているお人好しな青年・岡田(濱田岳)。ある日、職場の先輩である安藤(ムロツヨシ)に、カフェ店員・ユカ(佐津川愛美)との仲を取り持つよう頼まれた彼は、ユカが働くカフェで高校時代の同級生・森田(森田剛)と再会する。しかし、ユカと距離を縮めた岡田は彼女の口から、「森田らしき人物からストーキングをされている」と知らされ、不穏な気持ちを抱き始める。かつて過酷ないじめを受けていた森田は、ある事件をきっかけに、欲望のままに無抵抗な相手を殺害していく快楽殺人者になっていた…。世の不条理、屈折した感情、恋愛、友情、ポップなギャグなど、古谷作品が持つ独特な要素を含みながら、過激な内容にファンのあいだで物議を醸していた原作に引けを取らない、過激な描写が盛り込まれた本作。今回解禁された予告編は、本編に基づいた異例の二部構成となっており、その前評判から覚悟して映像を見始めると、思わず拍子抜け!? 濱田さん演じる岡田と、佐津川さん演じるユカ、ムロさん演じる安藤のコミカルな三角関係による、コメディー調のラブストーリーが繰り広げられる。ところが、後半ではトーンが一転、殺人鬼・森田が登場するや、狂気と過激な暴力が手持ちカメラの映像により圧倒的なリアリティをもって描かれる、という真逆の世界観が展開される。穏やかな口調とは裏腹に、血まみれで思わず目を覆いたくなるような所業をやってのける森田さんの姿は圧巻の一言。蜷川幸雄、宮本亜門、いのうえひでのりなど、名だたる演出家の舞台への出演で磨かれた演技力を惜しみなく披露し、“最狂の殺人鬼”役を生々しく演じきっている。吉田恵輔監督も「現場も編集も、まるで2本の作品を撮っているような感覚」と語るほどの振れ幅を感じさせる本作。日常と狂気が交錯する濃密なストーリーの緊迫感を、まずは予告編映像から体感してみて。『ヒメアノ~ル』は5月28日(土)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年03月22日劇団☆新感線の2016年春興行、いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK 「乱鶯」の製作発表が1月13日、都内で行われ、主役の古田新太をはじめ、稲森いずみ、大東駿介、清水くるみ、橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと、いのうえひでのり(演出)、倉持裕(脚本)が登壇した。「蛮幽鬼」以来、7年ぶりに新橋演舞場での上演となる、いのうえ歌舞伎最新作「乱鶯」。立ち回りあり、サスペンス色あり、ちょっぴり大人の恋模様あり。江戸中期に暮らす市井の人々の人情味あふれるドラマが描かれる。会見では、演出を務めるいのうえが「いつもより若干大人っぽい、ビターな味わいのある『いのうえ歌舞伎』を作りたい。(座付作家の)中島かずきが書く王道の『いのうえ歌舞伎』だと少年漫画、ファンタジーの色が強く、リアルさがない。それもおもしろいが、リアルな話をやってみたい。ちょうどいいタイミングで倉持くんにお願いできた」と語ると、倉持も「やっときてくれた。待ってましたという気持ちでした。すごくうれしい。新感線はエンターテインメント。間口が広いところが魅力であこがれていた」といのうえに応えた。「古田さんから『出番が多い』と言われた」と明かすと古田は、「倉持くんがバカなせいでものすごくセリフが多い。立ち回りもそんなにないって言ってたのに、オープニングから大立ち回りです。本当に殺してやると思いました」と倉持の脚本への毒舌を披露するも、「倉持くんの台本は、セリフのやりとりやリズム感が上手だなと思う。台本を読んでて心地いい」と作品への期待もみせていた。また、7年ぶりに新感線に出演する稲森、5年ぶりに出演する大東は、ともに初共演となる古田への印象を「本当に温かくて素敵な方」(稲森)、「『お前そのカッコいきってんのか?』と早速洗礼を受けました。そこからいろいろ勉強させていただきたい」(大東)とそれぞれ語った。会見終盤には「倉持くんが書いてるので倉持くんの世界観ができると思うんですが、やってる人間は(劇団☆)新感線なので、最終的には新感線(の芝居)になると思う。だからなるべく下ネタを入れたい」と古田が会場を笑いの渦に巻き込んだ。いのうえ歌舞伎≪黒≫BLACK 「乱鶯」は3月5日(土)から4月1日(金)まで東京・新橋演舞場にて。1月17日(日)23:59まで先行抽選プレリザーブ受付中。
2016年01月15日WOWOWでは今年結成35周年を迎えた劇団☆新感線の舞台を12月25日と2016年1月2日に放送する。12月25日(金曜 20:00~)は橋本じゅん演じる剣轟天が活躍する『直撃! ドラゴンロック~轟天~』『直撃! ドラゴンロック2・轟天大逆転~九龍城のマムシ』『直撃! ドラゴンロック3・轟天対エイリアン』のシリーズ3作をWOWOWライブにて一挙放送。破天荒な変態キャラ・剣轟天が舞台狭しと暴れ回る爆笑アクション活劇を存分に味わえる、またとない機会となっている。2016年1月2日(土曜 20:00~)は今年上演された記念公演「劇団☆新感線35周年オールスターチャンピオンまつり『五右衛門vs轟天』」を同じくWOWOWライブにて放送。劇団の看板であり、圧倒的な存在感を放つ古田新太演じる石川五右衛門と剣轟天が時空を超えてぶつかり合う、まさに夢の舞台を松雪泰子、池田成志、賀来賢人といったゲストが盛り上げる。また、劇団を主宰するいのうえひでのりや古田新太、橋本じゅん、高田聖子らが作品や思い出話を語るミニ番組『祝35周年! 劇団☆新感線「五右衛門vs轟天」参上!!』も無料放送中。番組の中で古田は「40オーバーの劇団員たちの体がまだ動くここ2、3年のうちに、早くノンストップのバカロックミュージカルを作ってほしい。充分お客さんを納得させられるスキルをもってるスタッフとキャストがいるから」、橋本は「最近、お客さんに追いつかれすぎやなって思ってる。そういうのが癪にさわるので(笑)、こんなのしまっせ! って、びっくりさせていきたいなと思う」とそれぞれに意気込みを語っている。
2015年12月20日演劇界の金字塔、つかこうへい作の不朽の名作『熱海殺人事件』が、1980年代に同作品で強烈な印象を残した黄金コンビ、平田満と風間杜夫の出演、劇団☆新感線のいのうえひでのりの演出で鮮やかに復活。初日の幕が開いた12月8日、出演者たちが公演への思いを語った。舞台『熱海殺人事件』チケット情報『熱海殺人事件』の初演は1973年。平田満は熊田留吉役のオリジナル・キャストで、その後木村伝兵衛役に配された風間杜夫とは、1980年から3年間コンビを組んだ。この作品でのふたりの共演は、33年ぶりだという。風間との共演を「良かった。これがひとりだったら浮いていると思うので(笑)」と笑顔の平田。その役柄は新米刑事で30歳、風間の部長刑事は40歳との設定だが、「バレバレですけれど(笑)、シラを切ってやる」(風間)と、実年齢とのギャップを楽しんでもいる。さらに平田は、「いのうえさんが、つかさんの演出をリスペクトし、尊重すると言ってくださった。もちろん、いのうえさん流に変えたところもありますが、昔のままのところも。それがとても感慨深く、稽古の最初の頃は震えました」。風間も「つかさんが亡くなった後、『熱海』をやりたいといろんな人に声をかけていた。それがいのうえさんの演出で、つかさんのお嬢さんと一緒にできるなんて……」と感無量の様子。つかの愛娘、元宝塚歌劇団トップ娘役の愛原実花が婦人警官役を演じるとは、ふたりにとって “奇跡”のような巡り合わせだろう。初めて父の作品に取り組むという愛原。つかについて聞かれると「見守ってくれているんじゃないかなと思う。甘えは許されない、という強い思いでお稽古に入りました」と謙虚に話す。犯人の大山金太郎役を演じる若手実力派の中尾明慶も、役作りのために頭を丸刈りにし、気合い十分。「つかさんが生きてらしたら『お前はもう帰れ』と言われそうですが(笑)、この役をしっかり自分のものにしたい」と抱負を語った。東京公演は、同作のホームグラウンドともいえる紀伊國屋ホールでの上演だ。70年代、80年代の、連日満席の熱気溢れる劇場の様子が偲ばれる。「つかさんはこの作品をいろんなバージョンで上演されましたが、僕には、『熱海』は僕たちがやったものが正解だという変な自負心、ちょっとした嫉妬心もあって、その後はあまり観ていなかったんです。この劇場でやれて、感慨もひとしおです」(風間)。12月26日(木)まで東京・紀伊國屋ホールにて上演中。2016年1月から2月に全国9都市で上演予定。チケットは全公演完売、各日若干枚の当日券を発売。取材・文:加藤智子
2015年12月10日伝説の舞台『熱海殺人事件』が12月、奇跡のキャストを揃えて紀伊國屋ホールに帰ってくる。70年~80年代の小劇場ブームを牽引したつかこうへいの代表作に、オリジナルキャストである風間杜夫と平田満が再挑戦。演出にいのうえひでのりを迎え、つかの愛娘である愛原実花、気鋭の若手俳優中尾明慶とともに、新たな伝説を刻むこととなった。「ちょっとヘンだと思うんですよ。無理がありますよね(笑)」。演劇ファンの興奮をよそにのんびりと笑う平田満に、思い出の舞台へ向かう心境を聞いた。舞台『熱海殺人事件』チケット情報「大好きな作品ですけど、これは若い肉体と情熱でやるべきものだと思っていて。この歳で若き熱血刑事の役をやるなんてとんでもない、とは今でも思ってますよ(笑)。でも、風間さんも、演出のいのうえさんも本気でやろうとしている。冗談じゃないとしたら、僕が今やる意味は何だろう?と。自分の原点であるこの作品で、当時の情熱を再び感じられたら素晴らしいなと思いましたし、“あ~やっぱり平田満は歳をとったな”と思われたら、それも本望だと。なんだかリトマス試験紙みたいなものですよ(笑)」舞台では、“熱海で工員が女工を絞め殺した”という平凡な事件を、刑事たちがそれぞれの美学を振りかざし、自身の愛憎劇を絡めながらドラマチックに飾り立ててゆく。熱演という言葉では足りないほどの激情を、惜しみなく放つ俳優たち。その姿を目にした観客にも、味わったことのない破格のカタルシスが押し寄せる。時代によって人物設定やディテールを変えながら、つかは度々、この作品を多くの若い俳優たちとともに甦らせた。「さまざまな変更があっても作品の根幹は変わらない。つかさんは一人一人の役者を魅力的に見せてくれる天才でしたね。役者自身が素っ裸になり、“俺ってこんな人間だったのか!?”と思いながらも汚い言葉を吐いて、でもちょっと気持ちいいなと感じたり(笑)。そこに意義を持たない俳優はダメだ、ということは教わりました」そんな“つか魂”を熟知した平田と、つか作品への初挑戦を決意した愛原との共演にも感慨を深くする。「当然ですけど、愛原さんは僕らの舞台をご覧になっていない。ご自宅では、つかさんは芝居の話をいっさいしなかったと聞いています。一番新鮮な目で、この作品に向かわれるんじゃないかと思いますね。今回はもちろん、いのうえさんのお考えに委ねてやっていこうと思っていますが、その向こうにはつかさんがいらっしゃって、皆でつかさんの声を聞く…、そういう稽古になるような気がします」。つか作品のファンには「きっとこれまでのバージョンを観てきていると思うので、対比によって作品のより深いところまで伝わればいいな」と語った後、すぐに「とは言え」と続ける。笑顔の瞳に、原点の頃を思わせる闘志の輝きが浮かんだ。「骨董品を見るみたいな面白さじゃなく、今現在の感覚で、面白いね!とウケたいな(笑)」12月8日(火)から26日(土)まで東京・紀伊國屋ホールにて。チケットぴあではインターネット先行を受付中、20日(木)午前11時まで。取材・文上野紀子
2015年08月19日東京都・小平市の武蔵野美術大学 美術館・図書館は、演出家や作家の舞台美術を手がける同大学空間演出デザイン学科教授・堀尾幸男の仕事を紹介する「堀尾幸男『対(ツイ)』」を開催する。会期は10月13日~11月7日(日曜・祝日休館、ただし10月25日・11月3日は特別開館)。開館時間は10:00~18:00(土曜・特別開館日は17:00閉館)。入場無料。同展は、野田秀樹、三谷幸喜、いのうえひでのり、中島みゆきなどの、演出家や作家の舞台美術を手がける堀尾氏の仕事を、模型やスケッチ、図面などの舞台美術資料で紹介するもの。500公演を超える舞台美術のなかから厳選した、詳細な舞台模型や構想時に描かれたスケッチや図面などから、堀尾氏の舞台美術が立ち現れる過程、発想の瞬間に注目する展示となっている。また、展示空間は堀尾氏自身が会場デザインを手がけており、舞台空間さながらの会場で、堀尾氏の手がける舞台美術を体感することができるということだ。そのほか、別会場の美術館ホールでは、舞台公演の記録映像が特別に上映される。公演のなかで舞台美術がどのように存在し、機能しているかを観ることができるということだ。なお、堀尾氏は1946年広島県に生まれ、1965年に武蔵野美術大学 造形学部産業デザイン学科芸能デザイン専攻に入学。在学中に旧西ドイツのベルリン芸術大学に留学し、ヴィリー・シュミット教授の下で多様な空間造形を学びながら、自身の表現のかたちを探求した。卒業後は映画の特撮美術の仕事を経て、舞台美術家の金森馨氏に師事。1975年にはホリオ工房を設立し、81年のオペラ「ルチア」の美術を担当以後、現代劇、ミュージカル、オペラ、歌舞伎、落語など500公演を超える舞台美術を手がけており、朝日舞台芸術賞、読売演劇大賞最優秀スタッフ賞ほか多くの評価を得ている。また、吉祥女子中学・高等学校、武蔵野美術大学、東京藝術大学では非常勤講師として教鞭をとり、2010年からは武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科教授に着任している。また、関連イベントとして、会期中に堀尾氏とスペシャルゲストが出演するイベントが予定されている。日時などの詳細は、決まり次第同館ウェブサイトにて告知されるということだ。
2015年08月19日現代アートを代表する画家のひとり、マーク・ロスコが有名レストランから依頼されて制作した30にものぼる連作『シーグラム壁画』。そこから着想を得た戯曲『RED』は、ロスコと彼が雇った助手・ケンとのふたり芝居。時に師弟、時に親子のように意見を戦わせるふたりに田中哲司さんと小栗旬さんが扮する。この舞台のお話を伺いました。* **小栗:この戯曲を読んだ時、ロスコとケンの両方ともに共感する部分が多くて、素直に「こういう役を演じてみたい」と思ったんですよね。田中:確かに舞台の面白さがいっぱい詰まってる脚本だと思いました。しかもケン役が小栗君、演出が小川絵梨子さんだと聞いて、ぜひやらせてくださいとお願いしました。小栗:哲司さんとは、お互いにお互いの作品も観ていて、その後の酒の席で話したりしていたし、芝居に嘘がない人だなと思っていたんです。だから、ロスコ役を哲司さんにオファーしていると聞いて、もし一緒にやれたら自分もステップアップできる気がしてうれしかったです。田中:ふたり芝居だけに、相性って重要ですからね。小栗君は、お酒の席で話していても、演技を見てても、ガッツリ“演劇人”だなって思うことが多かったから、この作品でもうまくやれそうな気がしたんです。小栗:僕は演劇人に憧れてるところがあるんです。ケンに「自分にはルーツがない」っていうセリフがあるんだけど、僕自身もそう感じることが多くて、なんとか演劇に自分の居場所があると思いたいっていうのが正直なところかもしれない。田中:舞台って辛いことだらけだけど、やっぱり自分が帰るところみたいな感覚はあるんです。結局、好きってことなんだろうな。小栗:ただ、稽古が始まってみたら、なかなか気が抜けない作品で…。田中:しかも、演出の小川さんもすごい熱量で稽古に臨まれているでしょ。だから僕らも自然とあの情熱に応えなくてはと気合が入るんです。小栗:たまに迷うんだけれど、それすらさらけ出して向かってこられるから、逃げちゃいけないなって。田中:しっかり自分のなかにビジョンを持っているから、迷うことがあっても安心して委ねられるんだと思う。ただ、ふたり芝居だけに休む場面がなくて集中力を持続するのが…。小栗:ロスコとケンは、つねにお互いの言葉に影響され合っていて、どの場面も気が抜けないですからね。田中:ロスコはずっと葛藤しているんだけど、ケンが時々ズバッと核心を突いてくる。助手である彼から、ロスコが教わることも多いんです。小栗:ケンにとってもロスコは人生の師ともいえる存在。その関係性に自分がどこまで迫れるか楽しみです。田中:僕は絵描きじゃないけれど、モノ作りに携わるひとりとして、この作品には共感する部分が多いです。小栗:わかります。僕自身、自分がやろうとしていることは本当に観客に伝わっているのか、つねに葛藤しています。だから、この作品に強く惹かれたんじゃないのかな。◇(左)たなか・てつし野田秀樹、いのうえひでのり、長塚圭史など数々の演出家の舞台で評価を得、映像作品でも活躍。11 月6 日より舞台『オレアナ』に出演。(右)おぐり・しゅん数々のドラマや映画、舞台に出演。出演映画『ギャラクシー街道』が10月24日公開予定。2016年には劇場版『信長協奏曲』の公開も控えている。◇マンハッタンの有名レストランから大作の依頼を受けたロスコ(田中)は、画家志望のケン(小栗)を助手に雇う。ふたりは互いの芸術論を戦わせながら創作を進めていく。8月21日(金)~10月4日(日)初台・新国立劇場 小劇場作/ジョン・ローガン翻訳、演出/小川絵梨子出演/小栗旬、田中哲司S席8000円バルコニーS席7000円バルコニーA席5000円バルコニーB席4000円(すべて税込み)シス・カンパニーTEL:03・5423・5906www.siscompany.com/red/※『anan』2015年8月26日号より。写真・内田紘倫インタビュー、文・望月リサ
2015年08月19日80年代に一大ムーブメントをつくりだした大ヒットシリーズが、トム・ハーディ主演で究極のリアル・アクションとして現代に蘇った『マッドマックス 怒りのデス・ロード』。先週末に公開された全世界40か国で興行成績1位を獲得、週末全世界興行成績1位、R指定アクション映画としても史上1位のオープニングとなった本作を、いち早く鑑賞した日本のクリエイターたちから、思い入れたっぷりの絶賛コメントが到着した。石油も水も尽きかけた世界を舞台に始まった、生き残りを賭けた息つく暇もないバトル。砂ぼこりを上げて疾駆する超・改造車の隊列、轟く爆音、飛び散る車体、爆走しながら繰り広げられる銃撃と肉弾の容赦なきバイオレンス…。CGを排除した、このガチでリアルなアクション超大作は、先週末フランス、イギリス、韓国、ロシア、オーストラリア、ブラジル、メキシコを始め、全世界40か国でNo.1スタートを切り、過去作の最終興行成績を上回るヒット。米の批評サイト「Rotten Tomatoes」では、99%という評論家の支持と、98%という観客の期待度という驚異的な高評価を早くも獲得している。特に、アドレナリンMAXなコメントを寄せたのは、今年、監督最新作『進撃の巨人』2部作、2016年には庵野秀明・総監督の下、日本版新生『ゴジラ』も控える樋口真嗣監督だ。「いまだに影響を与え続けてきた30年以上前の衝撃…あの衝撃が帰ってきた…ワケじゃねえ!あの衝撃が!いまなおその中心からエネルギーが放たれ続けていたんだッ!すげえ!」と、興奮冷めやらぬ様子で熱くコメント。さらに、『マッドマックス2』に多大な影響を受けたとされる「北斗の拳」の漫画原作者・武論尊氏は、「ヒーローは、絶望や荒廃の中からしか生まれない。(中略)監督が描きたいのは『絶望の中で生きるってすごいことだぞ』ってことだ」と、現代を生きる若者たちへのメッセージがあることも指摘。また、「北斗の拳」の漫画家・原哲夫氏も「『MAD MAX2』の衝撃にまた出会えるとは…ジョージ・ミラーありがとう!」と、シリーの創始者にして、本作でも監督を務めたミラー監督を激賞する。現在の日本のエンタメ、サブカル界とも密接にかかわる“マッド”な世界。日本公開のカウントダウンがますます楽しみになってきた。<著名人コメント>「北斗の拳」漫画原作者武論尊ヒーローは、絶望や荒廃の中からしか生まれない。いまの若い子たちが、生きるということがどうゆうことか、生きる力がどういうことかを感じたらいいんじゃないかな。監督が描きたいのは「絶望の中で生きるってすごいことだぞ」ってことだと思うんだ。「北斗の拳」漫画家原哲夫30年ぶりに30倍の超絶面白さ!世界はまるで天国と地獄。『MAD MAX2』の衝撃にまた出会えるとは…ジョージ・ミラーありがとう!映画監督樋口真嗣いまだに影響を与え続けてきた30年以上前の衝撃…あの衝撃が帰ってきた…ワケじゃねえ!あの衝撃が!いまなおその中心からエネルギーが放たれ続けていたんだッ!すげえ!偉大なる70歳、我らが帝王、ジョージ・ミラー神のもとに集え!跪け!讃えよ!崇めよ!失望させるなッ!ゲームデザイナー/「メタルギア」シリーズ監督小島秀夫これぞ、僕らが待ち望んだ正真正銘の『MAD MAX』! これほどの狂喜に満ちたアクション映画は、誰も体験したことがないはずだ!劇団☆新感線主宰 / 演出家いのうえひでのり祝!!ジョージ・ミラー完全復活!!グォーッ!!アドレナリン大噴出!!文字通りのノンストップアクション!!早くも本年度ベストワン決定か!? (俺の中で)いやあ、燃えます。アクション監督(『るろうに剣心』他)谷垣健治すごいすごいすごい!!『マッドマックス』が1周半して、リアル「北斗の拳」になって帰ってきた!ちゃんと「肉食らって生きている人たち」による「生身感満載」の「超ハイカロリー映画」!2015年夏、人類はね、2種類に分割されますね。この映画を見たか、そうでないか。さあ、本気汁出まくりのこの映画を見てクルクルパーになろう!!『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は6月20日(土)より全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2015年05月19日7月5日(日)より東京・新橋演舞場で上演される『新橋演舞場七月歌舞伎「阿弖流為」』。同作の制作発表が5月8日に行なわれ、市川染五郎、中村勘九郎、中村七之助が出席した。【チケット情報はこちら】同作は、2002年に市川染五郎が劇団☆新感線とタッグを組み上演した舞台『アテルイ』を歌舞伎化するもの。8世紀の日本、現在の東北地方にあたる蝦夷(えみし)の指導者、阿弖流為(あてるい)と、その蝦夷討伐に向かう征夷大将軍・坂上田村麻呂を中心に描いた物語。作を中島かずき、演出をいのうえひでのりが務める。初演と同じく阿弖流為役を演じる市川染五郎は「“歌舞伎NEXT”と銘打った今作、新しい演劇が誕生すると思っています。新しい演劇と言いましたが、決してやったことがないことをやるのではなく、歌舞伎400年以上の歴史を全て紐解いて、立ち回りや、テクニックなども掘り起こして料理したい。キーワードは“交ぜる”。新しいものと歌舞伎の手法、あらゆるものを交ぜ合わせた時の化学反応が起こることを目指していこうと思っております」とコメント。坂上田村麻呂役を務める中村勘九郎は「ずっと劇団☆新感線の舞台に出たかったので、こうして歌舞伎バージョンで参加できて本当に嬉しいです。初演も拝見したのですが、その時の染五郎お兄さんが本当に震えるほどにカッコよかった。阿弖流為と最終的には敵対する役なので、染五郎お兄さんと日々戦えることを誇りに、一生懸命務め上げたい」と意気込んだ。謎に満ちた蝦夷の女・立烏帽子役務める中村七之助は「兄は嬉しいと言っていましたが、僕は怖さでいっぱいです。というのも、僕もずっと新感線の舞台は見ていまして、もちろん初演も拝見しているのですが『こんなすごい人たちの中でよく芝居ができるな』って、染五郎お兄さんを尊敬していました。その舞台がこうして歌舞伎になって、自分が演じる・・・どうしようかなって思ってます(笑)。とにかくお客様に“歌舞伎化しないほうが良かった”と言われないように頑張りたい」と語った。演出のいのうえは歌舞伎化にあたっての見所のひとつに「阿弖流為と坂上田村麻呂が劇場の両花道で見得を切るシーン」と明かし「初演をご覧になった先代の市川猿之助さんに“ギャグを抜けばそのまま歌舞伎になるよ”とおっしゃっていただいたのが今でも心強い言葉として残っています」と話した。市川染五郎は「根拠はないですが、凄いものになると確信しています。13年前の自分より若く、もっと格好いいと今から想像しています。動員記録を作るつもりで、ハードルは高く置いてやります」と自信をのぞかせた。『新橋演舞場七月歌舞伎「阿弖流為」』は7月5日(日)から27日(月)まで、東京・新橋演舞場で上演。チケットぴあでは、一般発売に先がけていち早プレリザーブを5月14日(木)午前11時まで、プレリザーブを5月18日(月)午前11時まで受付中。
2015年05月12日映画初主演となる「V6」の森田剛を迎え、その過激な内容から連載当時に物議を醸した古谷実の伝説的コミック「ヒメアノ~ル」が映画化されることが決定。このほど、“狂気の連続殺人鬼”役を務める森田さんのコメントが到着、さらに濱田岳、佐津川愛美らの出演が明らかになった。物語は、ビルの清掃会社で働く平凡な男、岡田(濱田岳)が同僚・安藤に自らも想いを寄せるユカ(佐津川愛美)とのキューピッド役を頼まれることから動き出す。岡田がユカの働くカフェに向かうと、そこで高校時代の同級生・森田正一(森田剛)に出会うが、ユカから「森田にストーキングされている」と知らされ…。原作は、その過激さから実写化不可能とも言われていた、「行け!稲中卓球部」「ヒミズ」の人気漫画家・古谷実のベストセラー漫画を、『銀の匙 Silver Spoon』の吉田恵輔監督がメガホンをとった本作。森田さんが演じるのは、のちに岡田の恋人となるユカを付け狙い、“人をターゲット=餌としか思わない連続殺人鬼・森田正一”。森田さんといえば、アイドルグループ「V6」のメンバーとしてデビューして以降、多数の作品に出演。近年では舞台を中心に活躍し、蜷川幸雄、宮本亜門、いのうえひでのり、行定勲といった錚々たる名演出家からのオファーが絶えないが、意外にも映画の主演を務めるのは本作が初めてだという。森田さんは今回の出演を機に原作を読んだ感想を「人間がしっかり描けている所が、とても読みやすく面白かったです」としながらも「決して共感はできない今回の役作りに関して、吉田監督とお話ししただけでは、中々理解するのが難しいと感じています。森田正一の過去や、なぜこういう人間になったのかを理解して、クランクインを迎えたいです。いわゆる悪い人は沢山存在しているかもしれないが、彼らの過去には何かしらの理由があるのでは?」と、役作りの難しさについて語る。そんな本作を手がける吉田監督は、高校生の頃からバイブルだった原作を監督出来るなんて夢のよう、とその心境を語り、R15指定となることも辞さない決意を持って挑むという。「ドス黒さ溢れる、良い意味でバランスの悪い映画に仕上げたいです。森田さんには“普通なんだけど普通じゃない”という感じを表現していただきたい。難しい注文ですが、森田さんなら答えてくれると思います」と、監督も実写化にあたり森田さんに強い期待を掛けているよう。数々の映像作品・舞台で演技を研鑽し、今年11月にデビュー20周年を迎える森田さんが、満を持しての映画初主演で、“映画史に残る連続殺人鬼”役を務める本作。「キャスト・スタッフのこめた熱が、しっかり伝わる人間臭い作品を目指したいと思います」と目標を掲げる超意欲作だけに、今後の動向から目が離せない。『ヒメアノ~ル』は3月末日クランクイン、2016年に全国公開予定。(text:cinemacafe.net)
2015年03月23日劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎『蒼の乱』の製作発表が1月30日、都内で行われ、天海祐希、松山ケンイチ、早乙女太一、高田聖子、平幹二朗らキャスト陣と、演出のいのうえひでのり、脚本の中島かずきが顔を揃えた。劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎『蒼の乱』チケット情報作品は平将門伝説をモチーフにした中島かずきの書下ろし。日本の平安時代をイメージした架空の国を舞台に、渡来衆を束ねる女の長・蒼真(そうま)と坂東の若武者・将門小次郎が運命的な出会いを果たし、新たな国作りへと踏み出していく姿を描く。演出のいのうえは「ここ数年のいのうえ歌舞伎はヘビーな内容のものが多かったが、今回は原点に帰って、さわやかで少し軽めの舞台になると思う。主演に天海さんを迎えられたことも大きい。天海さんは現実離れした役が光る(笑)、スケール感のある女優。国盗りをテーマにスケールの大きな舞台になれば」と話す。天海は女長・蒼真を演じる。劇団☆新感線の舞台は4年ぶり3度目。「また新感線に出させていただけるということで本当にうれしく思っています。“人間離れ”した部分があるとするならば、思う存分舞台で発揮したい。今回は恋もあるというので楽しみ」と笑顔。その相手役が松山で、夫となる若武者・将門小次郎を演じる。新感線の舞台は今回が初参加。「先日本読みをしまして、初めて本読みで大笑いしました。そのぐらい楽しい舞台。早くみなさんにお届けしたい」。天海との共演については「“人間離れ”した(笑)天海さんの夫になるには、僕も“人間離れ”しなければいけない。バランスを意識していかなければ。今はまだまだですが、どう天海さんと夫婦になれるか稽古でつめていきたい」と意気込んだ。早乙女は謎の大盗賊・帳の夜叉丸を演じる。新感線へは3度目の出演だが、今回は実弟早乙女友貴が初参加。兄弟で華麗な殺陣シーンも披露する。「僕が新感線へ初参加したのも同じ17歳だった。並ばれてしまったのは悔しくもありうれしくもあります」と話していた。公演は3月27日(木)から4月26日(土)まで東京・東急シアターオーブ、5月8日(木)から27日(火)まで大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて。東京公演のチケット一般発売は明日、2月1日(土)午前10時より。
2014年01月31日いのうえひでのり演出、青木豪脚本、森田剛主演で贈る『鉈切り丸』が10月12日、大阪・オリックス劇場で幕を開けた。シェイクスピアの『リチャード三世』を鎌倉時代に置き換え、天下を獲るために悪の限りを尽くす源範頼の生き様が描かれている。いのうえシェイクスピア「鉈切り丸」~W・シェイクスピア〈リチャード三世〉よりチケット情報戦乱絶えない平安末期。顔にアザ、背中にこぶ、片足を引きずり歩くひとりの男がいた。その名は源範頼、幼名を鉈切り丸(森田)という。容姿は醜いが頭脳明晰で口が立つ範頼は、人並み以上の野望を抱き、天下を獲ろうと舌先三寸で巧妙に策略を仕掛けていく……。愛を知らずに生まれた孤独感、そして醜い容姿による強い劣等感からくるものなのか、その悪のエネルギーは半端じゃない。野心に満ちた目を光らせ、会話には少しの感情もこもらない。自分の手を汚さずして、弟・義経(須賀健太)、兄・頼朝(生瀬勝久)を死に追いやる範頼。知略を尽くして徐々に駒を進めていくその様は、時には目を背けたくなるほどに残忍非道だが、ある種の痛快さをも感じさせる。将軍へと昇りつめた後、急展開で落ちていく哀れな様も見ごたえたっぷりだ。範頼を演じる森田は、将軍へと近づくにつれてどんどん輝きを増し、鋭い眼光を放ちながら吐くキメ台詞にもゾクッとさせられる。さらには憎しみがこもったキレ味鋭い立ち回りを魅せ、強くも哀しく、そして脆い“ダークヒーロー”を見事に演じきっている。また、意外にもいのうえ演出は初となる生瀬はコミカルに頼朝を演じ、張り詰めた空気の中に柔らかさをもたらす。その家臣・大江広元役の山内圭哉と見せる抜群のコンビネーションも必見。柔と剛の絶妙なバランスが観る者の心を揺さぶっていく。さらに、渡辺いっけい、若村麻由美、麻実れい、秋山菜津子など、豪華ベテラン俳優陣がどっしりとした演技で物語に厚みを持たせる。一方、若手の活躍ぶりも見もので、義経役の須賀や家臣・和田義盛役の木村了がフレッシュな演技と俊敏な立ち回りで魅せ、成海璃子は、範頼に夫を殺された巴御前を丁寧な演技で魅せていく。公演前には森田が「僕が演じる源範頼はとても悪い男ですが、この舞台は衣装もキレイで派手、セットも豪華で立ち回りもありますし、たくさんの方々に楽しんで頂けると思います」と魅力を語り、生瀬も「この舞台を観れば人生が変わると言ってもいいくらい。特に若い人たちに観てほしい」と語った。また、初舞台の成海も「巴御前は夫を殺した範頼を復讐しようとするとても強い女性。初舞台を楽しみたいと思います」と意気込んだ。公演は10月26日(土)まで大阪・オリックス劇場(旧大阪厚生年金会館)、11月8日(金)から30日(土)まで東京・東急シアターオーブにて。チケット発売中。取材・文:黒石悦子
2013年10月25日4月5日(金)より新国立劇場 中劇場でシス・カンパニー公演『今ひとたびの修羅』が開幕する。尾崎士郎原作『人生劇場』を劇作家・宮本研が戯曲化した本作は、「劇団☆新感線」の人気演出家・いのうえひでのり演出、堤 真一、宮沢りえ、岡本健一、小出恵介、小池栄子、村川絵梨、鈴木浩介、浅野和之ら実力派キャストが揃い注目を集めている。本公演を目前に、いのうえひでのり、堤 真一、宮沢りえからメッセージが寄せられた。原作は、昭和の銀幕スターたちが演じた任侠映画などでも有名な『人生劇場』だが、この戯曲では、“義理人情”や“男気(おとこぎ)”といった原作の魅力はもちろんのこと、飛車角(堤真一)、おとよ(宮沢りえ)、宮川(岡本健一)、瓢吉(小出恵介)、お袖(小池栄子)らを巡る凄絶な愛の行方、そして、彼らの行く末を案じ、深く静かに見守る吉良常(風間杜夫)らの姿を中心に、愛と人生の修羅を、よりドラマチックに描いている。・いのうえひでのり外部演出をやる際の決め手は、演出したくなるほど面白い戯曲かどうか。今回も読んですぐにやりたい!と思ったし、新たな扉が開くような期待感で楽しくなりました。この物語の肝は「強烈な純愛」。どこかファンタジーにも思える昭和初期の人間たちの濃密なドラマを、燃えたぎるような圧倒的な熱量で説得力をもたせようと稽古を重ねてきました。もちろん、男の意地がぶつかり合う「出入り」場面も物語の重要な要素のひとつ。そのスペクタクル感で人間ドラマとのメリハリを出せたと思っています。・堤 真一飛車角は、義理と人情を背負った自分の生き方を貫くために、惚れぬいた女にも背を向けようとする無骨で不器用な男。今の時代では珍しいくらいストレートで濃密な男女の情念の話です。演じる上で、ものすごくエネルギーが必要な芝居だと思いますが、久々のいのうえさん演出はもちろん、宮沢りえちゃんや岡本健一くん、風間杜夫先輩をはじめ、素晴らしい顔ぶれのカンパニー揃い!稽古中も、いい緊張感を共有しながら芝居づくりができました。1か月の本番を通して、もっと芝居を深めていけると思っています。・宮沢りえ台本を読んだ当初は、ここまでストレートな表現が自分にできるのか戸惑いもありましたが、稽古を重ねて、流れるような「いのうえイズム」満載の演出に身を委ねるうちに、「照れてちゃいけない、思い切りやろう!」と思うようになりました。高い体温や熱量をもって演じています。でも感情い流されすぎず、人の心を打つ表現ができたら、と思っています。男性陣の殺陣には、もう理屈抜きでウットリ(笑い)。観てくださる方も、この世界にどっぷり浸っていただきたいですね。余韻がずっと続く舞台を皆さんにお届けしたいと思っています。公演は4月5日(金)から4月29日(月・祝)まで。チケット発売中。
2013年04月05日小栗旬、森山未來らが出演するアクション・エンターテインメント大作『髑髏城の七人』の予告編映像がこのほど公開された。『髑髏城の七人』予告編本作は、劇団☆新感線の人気公演をデジタル技術を駆使してスクリーンで楽しむ“ゲキ×シネ“の記念すべき第10弾。天下統一をかけて武将たちが割拠していた戦国の世を舞台に、たった7人で2万を擁する関東髑髏党に戦いを挑んだ者たちの活躍を痛快に描く。本作は、中島かずき作、いのうえひでのり演出による劇団の代表作のひとつで、小栗、森山、早乙女太一、小池栄子、勝地涼、仲里依紗ら若手キャストを迎えて昨年上演した舞台を18台ものカメラを駆使して収録。このほど公開された予告編では、ひょんなことから戦乱に巻き込まれる捨之介(小栗)、関東髑髏党を束ねる最強の男・天魔王(森山)ら主要な登場人物を次々に紹介しながら、ダイナミックな殺陣、ポジション/ポーズまで完璧に計算された登場シーン、耳に残るキメ台詞の数々、そして観客を魅了する熱い人間ドラマの一端が紹介されている。エンターテインメントであることを純粋に追求し、重厚な劇世界を構築しながら毎公演、面白さとカッコよさを失わずに走り続けてきた劇団☆新感線だけに、予告編も痛快な描写が続々登場。映画館の客席が一体になるような、思わず歓声があがるような興奮必至の作品になりそうだ。『髑髏城の七人』2013年1月12日(土)より全国ロードショー
2012年11月14日来年1月に劇場公開される、劇団☆新感線の舞台を映像に収めたゲキシネ第10弾『髑髏城の七人』(どくろじょうのしちにん)の特報動画が到着し、小栗旬、森山未來、早乙女太一ら出演者の躍動感あふれる姿が披露された。特報動画『髑髏城の七人』は、中島かずき作、いのうえひでのり演出による劇団☆新感線の“いのうえ歌舞伎”と呼ばれる演目のひとつ。1990年に初演され、キャストを変えて7年ごとに上演されてきた人気作で、戦国の世を舞台に、たった7人で2万を擁する関東髑髏党に戦いを挑む者たちの活躍を描く。今回、劇場上映されるのは、小栗、森山、早乙女、小池栄子、勝地涼、仲里依紗ら若いキャストをむかえ、2011年8月から10月にかけて大阪と東京で上演された舞台『髑髏城の七人』を収録したもの。ストーリーや登場人物を新たな着想で再構築し、通称“ワカドクロ”と呼ばれ人気を博した本公演を、18台ものカメラを駆使し、カメラのアングルや音響など、臨場感にこだわって編集されている。このたび公開された特報動画は、小栗、森山らそれぞれの風貌や殺陣の演技などが収められた鬼気迫る内容となっており、特報は6日より各上映館でも観ることができる。『髑髏城の七人』2013年1月5日(土)より新宿バルト9先行公開2013年1月12日(土)より全国ロードショー
2012年10月09日12月から来年1月にかけ東京・シアターオーブで、劇団☆新感線が新作『ZIPANG PUNKⅢ五右衛門ロック』を上演する。座席数2000近い劇場で約5週間、東京だけで70000人を集める公演は劇団史上初めての規模だ。『五右衛門ロック』は2008年、2010年とシリーズで上演され、今作はその3作目にあたる。1作目からタイトルロールの石川五右衛門を演じている古田新太と演出を担当するいのうえひでのりに話を訊いた。劇団☆新感線SHINKANSEN☆RX「ZIPANGPUNK~五右衛門ロックIII」 チケット情報いのうえは「やるのはいつものバカバカしいやつですよ」と大規模公演にも気負った様子はなく飄々とした笑顔で語る。『五右衛門ロック』は毎回有名俳優を客演に迎え、豪華なセットや衣裳にもこだわり“歌あり踊りあり笑いあり”と新感線ならではの派手で楽しい舞台だ。今作では五右衛門と対峙する明智心九郎役を三浦春馬が演じるほか、蒼井優、村井國夫、麿赤兒らが出演する。『五右衛門ロック』の世界観は、言ってみれば少年マンガですよ。そう、“赤ルパン”って感じかな」と古田は話す。赤ルパンとは、ルパンが赤いジャケットを着ていたアニメの第2シーズンのこと。第1シーズンの緑ジャケットのルパンが渋くて大人っぽかったのと比べて、よりポップで間口が広い作風で人気を博した。いのうえも古田の言葉に大きくうなずき、「もともと『五右衛門ロック』は、新宿コマ劇場の閉館を賑やかに盛り上げようと、お祭り気分で上演したんです。それが予想外の好評で『薔薇とサムライ』(2010年上演)という第2弾をつくり、何事も3部作がキリがいいだろうと、今回の企画を決めました。前作は、天海祐希さんが出てくれたこともあって、結構ミュージカル寄りだったんですけど、今回はもう1度お祭り気分で賑やかにやりますよ」と語る。とは言え、いのうえの言う「お祭り気分」はハードルが高い。動き回った直後に歌い、美しく殺陣を決め、さらに笑いのセンスまで求められる。古田は「でも、ベテランのおふたり(村井と麿)はもちろん、今回客演してくれる春馬も優ちゃんも、ポテンシャルがめちゃめちゃ高いですから、何も心配はしてません。『ZIPANG PUNK』は、ルパンで言ったら、オイラがルパンで春馬が銭形みたいな関係になるらしいんで、むしろどんなふうに絡めるのか楽しみ。気になっているのは、なんだかんだ言って、オイラが1番動き回るんだろうなってこと。五右衛門のカツラと衣裳、重いんですよ!」と笑う。公演は12月19日(水)から2013年1月27日(日)まで東急シアターオーブにて、2月6日(水)から28日(木)までオリックス劇場にて上演される。チケットは東京公演は10月28日(日)より、大阪公演は11月25日(日)より一般発売開始。なお、チケットぴあでは東京公演のインターネット先行抽選・プレリザーブを10月11日(木)11時まで受付中。
2012年10月05日ギタリストの布袋寅泰が初めて舞台音楽を手がける「雪之丞一座~参上公演『サイケデリック・ペイン』」の製作発表が6月23日、都内のライブハウスで行われ、布袋と脚本を書いた森雪之丞、演出のいのうえひでのり、出演の福士誠治、北乃きい、綾野剛、片瀬那奈、内田朝陽、前川紘毅、松田翔が登壇した。雪之丞一座~参上公演「サイケデリック・ペイン」チケット情報本作は、森が長年の夢だった「ロックオペラを作りたい」という思いからはじまった。会見で森は「劇団☆新感線の『五右衛門ロック』(2008年)でいのうえさんとご一緒させていただき、そのロックぶりに、いのうえさんとだったらこの夢が叶えられるんじゃないか、そう思いました」と語り、「音楽は長年一緒に戦ってきた布袋くんに頼むしかないと思い、彼に相談しましたら“森さんの夢を叶えましょう”と言って快諾してくれました」と嬉しそうに話した。「森さんからいよいよチャンスが巡って来たとお話を聞いた時に、ぜひ僕にやらせてくださいという勢いで、音楽監督という大役を引き受けることになりました」と語る布袋。既に20数曲をこの舞台のために書き下ろしたそう。先ごろ、8月ごろより拠点をロンドンに移すと発表したが「たまたま僕の私事と重なってしまいましたが、ご迷惑がかからないよう最後まで責任を持ちたい」と話し、「このステージを観るのは僕の夢でもありますから、必ず日本に帰って来て観たいと思っています。自分にとってもチャレンジの時に、森さんやキャストのみなさんのチャレンジとも重なり、僕だけじゃなくみんなで新しいものに向かっていくという意味でも心に残る舞台になると思います」と公演への思いを語った。この日は劇中で登場するロックバンド“サイケデリック・ペイン”のミニライブも行われ、バンドメンバーを務める福士、綾野、内田、前川、松田が演奏を披露。布袋が舞台の横で聴いている中での演奏に全員が口をそろえて「緊張した」と語り、布袋から「音楽に点数はつけられないですが100点に近かったと思います」との評価をもらうと恐縮しきり。そんな男性陣の様子とは裏腹に、今回が初舞台となる北乃が「布袋さんとBOOWYが一緒なんだと今初めて知りました」と発言し、一同から「えっ!?」と驚かれる場面も。近未来を舞台に、人気ロックバンドのヴォーカルが天使から告げられた救世主としての役割を果たすべく、悪魔を崇拝する秘密結社と対決するという物語。森の独自の世界がいのうえの演出でどう表現されるのか期待したい。また、劇中で俳優が生演奏を披露するのも見どころのひとつ。公演は8月22日(水)から9月11日(火)まで東京・サンシャイン劇場にて、9月22日(土・祝)から24日(月)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。チケットは東京公演が7月1日(日)より、大阪公演が7月29日(日)より一般発売開始。
2012年06月25日作・森雪之丞、演出・いのうえひでのりによる「雪之丞一座~参上公演ロック☆オペラ『サイケデリック・ペイン』」が、東京と大阪で、8月より上演される。森は布袋寅泰や氷室京介など、数多くのアーティストから支持されている日本を代表する作詞家。そんな森が長年抱いていた「ロック・オペラを作りたい」という野望をついに実現させる。彼が自ら書き上げた処女戯曲を託すのは、劇団☆新感線主宰のいのうえひでのり。森といのうえは『五右衛門ロック』(2008年)で初タッグを組んで以来、強く信頼を寄せ合う間柄で、このふたりが作り上げる“ロック・オペラ”とはいかなるものになるのか。森といのうえにその熱い思いを訊いた。『サイケデリック・ペイン』チケット情報森にとっていのうえとの出会いは、衝撃であり感激でもあったと言う。「演劇界の方で、これだけロックな魂を内在している怪物はいない。音楽界と演劇界の間にはやっぱり大きな川が流れていて、でもいのうえさんはその川を気にすることなく、ちゃんと音楽の部分も構築されてきた」と絶賛。だからこそ森は、自らの夢を形作ってもらえる演出家はいのうえのほかにいないと考えたのだろう。演出を任されたいのうえは、森の処女戯曲の仕上がりを「良くも悪くも青春の匂いがする」と評する。「昭和の匂いもするというか……。日常を綴ったものではなく、すごくフィクショナルな感じ。新感線の場合、必ず僕の照れが入るんですが、雪(之丞)さんのホンは真っ向勝負なところがある。そこをどううまく伝えられるかが、今回の課題です」といのうえは明かす。タイトルの“サイケデリック・ペイン”とは劇中のロックバンドの名前。そのため、本作の立ち上げで一番ハードルが高かったとふたりが口を揃えるのは、「ちゃんとロックが演奏できる俳優をキャスティングする」ということ。そして約3年がかりで理想のメンバーが揃い、すでにバンドとしてのプロモーションビデオ=PV(※公式サイトにて視聴可)も制作済みというこだわりようだ。バンドのメンバーにはヴォーカル・詩音を演じる福士誠治をはじめ、綾野剛、内田朝陽、前川紘毅、松田翔らが扮する。「新しいバンドをひとつ作ったようなもの。しかも舞台の開幕前にPVが流れていたら、きっとその1曲は知った状態で観に来てくれるでしょうし。つまり福士くんを観に行くのではなく、このバンドのファンとして、彼が演じる詩音に会いたいって気持ちで劇場に来てくれたら、すでに魔法はかかっているんだろうと思います」。そう語る森の目は、夢を追うロック少年のようにキラリと輝く。肝心の音楽を手がけるのは、こちらも森と親交の深い布袋。初の舞台音楽にして約20曲を書き下ろした。「これを機にあまりお芝居に触れたことのない人にも観て欲しい」とはいのうえ。森、いのうえ、さらに布袋という3人のロック少年が、今夏演劇界に新たな伝説を作り出す。公演は8月22日(水)から9月11日(火)まで東京・サンシャイン劇場にて上演後、大阪を回る。東京公演のチケットは7月1日(日)より一般発売。取材・文:野上瑠美子
2012年06月18日