国立がん研究センター(国立がん研)は12月9日、肺小細胞がんや悪性リンパ腫などさまざまながんで不活性化変異がみられるCBP遺伝子について、p300遺伝子と相互に補い合い機能する関係があり、両方の遺伝子が機能しなくなるとがん細胞が死滅する「合成致死」の関係にあることを発見し、そのメカニズムを解明したと発表した。同成果は、同研究センター研究所 ゲノム生物学研究分野 河野隆志 分野長、荻原秀明 研究員と、第一三共との研究グループによるもので、11月24日付けの米科学誌「Cancer Discovery」オンライン版に掲載された。同研究グループは、CBPタンパク質とp300タンパク質の両方がなくなると、細胞の生存に必要なMYCタンパク質の発現がなくなってしまい、細胞死に至ることを突き止めた。CBPタンパク質とp300タンパク質は、染色体を構成するヒストンタンパク質をアセチル化する酵素であり、アセチル化は、がん細胞を含めたすべての細胞が生きていくために必要な反応となっている。そこで同研究グループらは、p300タンパク質の機能を阻害する薬剤を用いることで、CBP変異がん細胞を効率よく細胞死に導くことができると考えた。つまり、p300タンパク質の機能を阻害する薬剤が抗がん剤の候補であるとしている。今回の治療法の提案は、CBP遺伝子とp300遺伝子が、その両方が失われると細胞は生きていけないという「合成致死」の関係に基づいたもの。同分野ではこれまでも、肺腺がんに対して別の染色体制御遺伝子であるBRG1/SMARCA4について、合成致死に基づく治療法を見出し、抗がん剤の開発を進めている。
2015年12月09日塩野義製薬はこのほど、がん患者や家族を対象にした「STOP! がんのつらさ」キャンペーンを開始した。同時に、患者・家族・医療従事者のコミュニケーションを活性化させるアプリ「つたえるアプリ」もリリースした。同キャンペーンでは、より多くの患者や家族に「がんのつらさを周囲に伝える大切さ」を知ってもらうために、YouTubeなどで啓発活動を行っていく。同時に、どんな時にでもがまんしてしまう「がまん侍」をキャラクターにしたサイトも公開。「がんのつらさとは」「つらさを伝える」「がんの痛みをとる治療」などのコンテンツや、海外クリエイターによるコンテスト受賞作品を閲覧できる。また、がん治療中の身体とこころに起こるつらさについて、患者が正しい知識を学び、医療従事者に適切につたえることをサポートするためのコミュニケーションツールアプリもリリースした。聖隷三方原病院の森田達也副院長が監修を務めている。アプリでは、毎日の「痛み」「だるさ」「眠気」などの症状の記録や「気になることのメモ」を登録でき、記録した症状とメモは、スマートフォン内でグラフや表で表示できる。グラフなどは印刷も可能なため、印刷したデータを診察時にもっていくことで医師に症状を伝えやすくなるという。アプリの価格は無料。
2015年12月08日毎年冬になると流行し、学校や職場などで感染拡大が叫ばれる「インフルエンザ」。重症化すると死にいたることもあり、予防が欠かせない病気だ。ワクチンの予防接種が有効とされているが、接種しても感染することがあると聞く。では、どのような対策が適切なのだろうか。そこで今回は、インフルエンザウイルスの特徴とワクチンの有効性、適切な予防法などについて、順天堂大学大学院 医学研究科感染制御科学講座 山本典生准教授にお聞きした。○インフルエンザと風邪の違いインフルエンザとは、インフルエンザウイルスによって起こる急性感染症の一種で、通常の風邪とは異なる病気のこと。ここで、風邪とインフルエンザの違いからおさらいしてみよう。主な違いは次のとおり。■風邪(普通感冒)病原体: ライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルスC主な症状: 鼻水、くしゃみ、咳(せき)悪寒: 軽度、極めて短期熱: 37.5度前後合併症: まれ■インフルエンザ病原体: インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB主な症状: 発熱、筋肉痛、関節痛悪寒: 高度熱: 38~40度合併症: 気管支炎、肺炎、脳症高熱などの症状のつらさに加え、合併症リスクが高いこともインフルエンザの怖いところだ。厚生労働省の発表(「平成27年我が国の人口動態」)によると、日本人の死因は、1位「悪性新生物(がん)」、2位「心疾患」に次いで、3位に「肺炎」が入る。高齢者の肺炎は特に深刻な問題とされているが、肺炎には細菌感染(肺炎球菌など)やウイルス感染(インフルエンザウイルスなど)が関与するといわれている。肺炎による死を防ぐという点においても、インフルエンザの予防は重要だ。一般に、"インフルエンザのワクチンを接種すれば大丈夫"と思う人も多いだろう。しかし、ワクチンを打ってもインフルエンザに感染する場合がある。「残念ながら、ワクチンを打っても感染してしまうことはあります。というのも、予防接種は注射によるものなので血液中には抗体が上がってくるのですが、鼻の粘膜などには上がってきません。その点から、感染を防ぐものというよりは、重症化を防ぐものと捉えられています。ただ感染はしたとしても、血液中の抗体によって全身に広がらずに重症化を抑えることができるので、大きな意味があることだと思いますね」。○潜伏期間は検査で「陰性」と出ることもインフルエンザは「学校保健安全施行規則」に定められている伝染病であり、感染が確定すると5日間の出席停止になる。会社の場合は対応がさまざまだが、医師の許可が下りるまでは出勤停止としているところが多いようだ。「例えば高感度の検査キッドを使って検査をすれば、感染後5日を過ぎた場合でもウイルスが検出される可能性はありますし、周りに感染させてしまうリスクはゼロとは言えません。一方で休みが長引くと支障が出ますので、ウイルスの量が少なければ現実的に感染の広がりは防げるだろう、という考えに基づいて5日間と設定されているのでしょう」。なお、インフルエンザをはじめとするウイルス感染症には潜伏期間があるため、その段階で病院に行くと「陰性」で出る可能性も否定はできないという。「潜伏期間はウイルスの増殖が十分でなく、"感染はしつつあっても症状は出ていない"という期間。そのときに検査をすれば、感染していても陰性で出る可能性はあるでしょう。そもそも検査キッドには検出限界値があり、限界値に達していないと検出はできません。ただ通常は、ウイルスの増殖と比例して症状が出ますし、症状が出てから"何かが起きている"と感じて病院に行くと思いますので、感染の場合は陽性で出ることのほうが多いとは思います」。最後に、今年の傾向をお聞きした。「まだ検出報告数が少ないので傾向はつかめませんが、何が起きてもおかしくない状況でしょう。例年にならうと、年明けから注意が必要です。学校の新学期が始まるとともに集団感染が起きて、感染数が伸びてくるのではないかと個人的には思います」。お話を聞いて、インフルエンザはワクチンの予防接種をしていても油断ならないものだと痛感した。厚生労働省では、ワクチン接種のほか、咳エチケット、外出後の手洗い、適度な湿度の保持、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取などを推奨している。少しでも感染リスクを減らすために、ワクチンの予防接種と日常でできる対策との"合わせワザ"でこの冬を元気に乗り切りたいものだ。
2015年11月27日アカデミストは11月26日、同社が運営する学術系クラウドファンディングサイト「academist」にて、がん予防薬開発のためのプロジェクト「正常細胞ががん細胞を駆逐するメカニズムを解明したい!」を開始したと発表した。同プロジェクトは、北海道大学 遺伝子病制御研究所 藤田恭之 教授によるもので、2016年2月26日までにacademist内プロジェクトの過去最高金額となる500万円を集めることを目標とする。藤田教授は、見かけ上は正常で現在では病理診断の対象外となっている「がんの超初期段階」において、正常細胞が隣接するがん細胞の存在を認識し、それらを駆逐していることをこれまでの研究で明らかにしてきた。しかし、このがん排除機構にどのような分子が関わっているのかということについてはまだ解明されていない。そこで同プロジェクトの研究では、さまざまなスクリーニング(ふるい分け)という手法を用いて、正常細胞とがん細胞の境界でどのような分子が細胞間の認識機構やがん細胞の排除に関係しているのかを明らかにすることを目指す。これにより、がん研究のブラックボックスであった、がんの超初期段階で何が起こっているのかという謎に迫ることが期待できる。さらに、それらの分子の機能を制御する薬剤を開発することで、正常細胞ががん細胞を排除するメカニズムを活性化する、あるいはがん細胞が正常細胞からの排除を免れるメカニズムを不活性化するという、がんを取り巻く細胞の社会性を利用した、世界初となるがん予防薬の開発を目指すという。クラウドファンディングで集めた研究費は、細胞を培養するための試薬費・各種スクリーニングにかかる費用や同定したタンパク質に対する抗体の作成費用として使われる予定。支援者への見返りとして「オリジナル画像、学会講演資料(3000円)」や「オリジナル白衣、研究室特製Tシャツ、オリジナル画像、学会講演資料(3万円)」などといったコースが用意されている(価格はすべて税抜)。藤田教授は今回のクラウドファンディングのチャレンジについて「欧米では、国からの研究費のほかに一般の方のドネーション(寄付)が大きな比重を占めている。残念ながら我が国には、サイエンスに興味を持ってドネーションするという文化がないが、その理由としてどんな研究をしているのかということが国民に伝わっていないからというのがあるかもしれない。今回のプロジェクトで、一般の方々と“がんを撲滅したい”という夢を共有して前進していければ」としている。
2015年11月26日金原出版は11月25日、がん患者およびがん患者の家族、放射線治療に携わる医師や看護師、医療関係者に向けた書籍『患者さんと家族のための放射線治療Q&A2015年版』(2,200円・税別)を発刊する。「放射線治療」は手術、薬物療法と並ぶがん治療の3本柱の1つ。手術や化学療法が困難な高齢者や、合併症により手術や化学療法が行えない患者にも適応できる治療法だという。また、通院による治療のため、「がん就労」を可能にする方法としても注目されている。国立がん研究センターがん対策情報センターによると、2015年の予測がん罹患(りかん)数は98万人、予測がん死亡数は37万人まで増加している。このうち放射線治療を受ける患者は約3割とのこと。この数は、"切らないがん治療"として放射線治療を選ぶ人が多い欧米と比べると半分程度だという。同社は、放射線治療を選ぶ人が少ない一因として「放射線治療の良さを知らずにいること」を挙げ、「放射線」という言葉だけで悪影響が出るのではないかと心配する患者や家族も多いことに着目。そこで、放射線治療に関する正しい知識を解説した同書を発刊することとなった。同書はQ&A方式で、さまざまな疑問に答える形で構成している。放射線治療のしくみ、手術や薬物療法との違い、放射線治療の費用、治療にかかる日数、併用療法、各部位別の治療法、治療の進め方などを解説。編集には日本放射線腫瘍学会が携わっており、学会初の公式本であるという。
2015年11月20日国立がん研究センター(国がん)とアストラゼネカは11月16日、国がんが開発中の質量分析イメージング法(Mass Spectrometry Imaging:MSI)を用いて、アストラゼネカの新規抗がん剤の腫瘍組織への局在を解析する非臨床共同研究契約を2015年9月10日に締結したと発表した。国がんが開発中のMSIは腫瘍組織で起こる抗がん剤の複雑な相互作用を放射性同位体を使用せずに直接分析できる技術。同センターは、MSIによりこれまで判らなかった腫瘍組織・細胞への抗がん剤集積を画像として確認することができるようになったとする。今回の共同研究では、坦がん動物モデルを用いて、新規抗がん剤の腫瘍組織分布を解析するMSI技法を開発・確立することを目指す。また、国がんとアストラゼネカは、同共同研究の成果を今後、新規抗がん剤を用いた早期臨床試験(第I相臨床試験)において、生体組織検査により腫瘍組織中の薬物分布濃度と効果の関連を評価し、投与量の設定、作用の評価に役立てるとしている。さらに、同技術を用いて最適な投与量を速やかに決定することによる臨床試験の短縮や、がん治療以外で生体組織検査を行う分野での当該薬剤の組織中の薬物分布濃度と効果の関連を評価することへの応用も期待される。
2015年11月16日国立がん研究センター(国立がん研)は11月9日、膵がん早期診断の血液バイオマーカーを発見したと発表した。同成果は、国立がん研 創薬臨床研究分野 本田一文 ユニット長の研究グループらによるもので、11月9日付の英オンライン科学誌「Scientific Reports」に掲載された。同研究グループはこれまでに、血液中に存在するタンパク質「apoA2 アイソフォーム」が膵がんや膵がんリスク疾患の患者で低下することを質量分析の結果から発見・報告していたが、今回、米国国立がん研究所(NCI)との共同研究においても、健常者に比べ早期膵がん患者でapoA2 アイソフォームが低下していることが確認された。また、既存の膵がんバイオマーカーである「CA19-9」と比べて高い精度でI期、II期膵がんを検出できることも確認。この結果からNCIは、apoA2 アイソフォームが膵がんにおける信頼性の高い血液バイオマーカーになりうる可能性があると評価している。また従来、apoA2 アイソフォーム濃度を計測するためには高価な機器を必要とする質量分析を用いた測定法しかなかったが、今回、同研究グループは、apoA2 アイソフォーム検査を実用化するために簡便な検査法の開発に取り組み、検査キット「Human APOA2 C-terminal ELISA kit(研究用試薬)」の作製に成功した。同検査キットで国内多施設共同研究で集められた膵がんを含む消化器疾患患者と健常者の血液検体を測定し、その判別性能を検討したところ、CA19-9に比べ、より高精度に早期膵がんを検出できたという。また、CA19-9が反応しない膵管内乳頭粘液性腫瘍や慢性膵炎などの膵がんリスク疾患も高い精度で検出。さらにapoA2 アイソフォームとCA19-9との組み合わせにより、早期膵がんの検出率はさらに向上した。今後、国立がん研と神戸大学などが協力し「apoA2 アイソフォームを用いた膵がん模擬検診」が開始予定。この模擬検診を含めたさらなる研究により、apoA2 アイソフォームの検査が本当に早期膵がんや膵がんリスク疾患を適切にスクリーニングでき、検診に実用化できるかどうかを確認していくという。また、同検査キットは研究用試薬であるため、体外診断薬としての承認を得ることも目指していく。
2015年11月10日国立がん研究センター(国立がん研)は11月4日、18歳未満の子供をもつがん患者とその子どもについて調査し、国内で1年間に新たに発生する患者とその子どもの人数などの全国推定値を明らかにしたと発表した。同調査では、2009年1月~2013年12月までの5年間に、初めて国立がん研中央病院に入院した20歳~59歳までのすべての患者を対象に、同居する18歳未満の子どもの有無と人数、子どもの年齢・性別、および患者自身の罹患したがんの種類について、電子カルテ上より集計された。さらに、これを2010年地域がん登録データおよび2011年院内がん登録データと突合させ、国内で1年間に新たに発生する患者とその子どもの人数などを推定した。この結果、国内全体では、1年間に新たに発生する18歳未満の子どものいるがん患者の数は5万6143人、またその子どもたちの数は8万7017人と推定された。これを2010年の人口構成データに当てはめると、1年間に自分の親が新たにがんと診断された子どもの割合は全体の約0.38%となる。また、ひとつのがん診療連携拠点病院においては、1年間におおよそ82人の18歳未満の子どもを持つがん患者と128人の子どもたちが新たに発生していることがわかった。18歳未満の子どものいるがん患者ががんと診断された平均年齢は、男性46.6歳に対して、女性43.7歳。がんの種類は、男性では胃がん(15.6%)、肺がん(13.2%)の順に多く、女性では乳がん(40.1%)、子宮がん(10.4%)の順に多いという結果になった。また、親ががんと診断された子どもの平均年齢は11.2歳であり、子どもの年齢の上昇とともに人数が増えていくことがわかった。
2015年11月04日アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピット夫妻が2人そろってTVインタビューに応じ、アンジェリーナが受けた、がん予防のための手術について語った。アンジェリーナとブラッドは、彼女が監督も務める共演作『By the Sea』(原題)の全米公開を13日(現地時間)に控えて、アメリカのNBCの「The Today Show」に出演。アンジェリーナはがん予防のために、2013年の両乳房、今年3月に卵巣摘出手術を受けたことについても語った。手術を決断したのは、2007年に卵巣がんで亡くなった母が受診していた医師から聞いた言葉がきっかけだという。その女性医師は、アンジェリーナの母親から生前に「アンジーの卵巣摘出手術をすると約束して」と言われていたそうだ。アンジェリーナの祖母や叔母もがんで亡くなっていることから、彼女の母親は愛娘が同じ病を患うことを恐れていたようだ。母親の死後、医師からその話を聞いて、「私たち2人とも号泣したわ」とアンジェリーナは振り返る。「彼女は『お母さんと約束したから、私が執刀しなければ』と話してくれたの」。ブラッドは、手術を受けたことを公表したアンジェリーナについて「妻の行動は、見栄じゃない。僕たちは人生を最高のものにしていきたいだけなんだ」「彼女は子どもたちのため、家族のために手術を受けたんだ。一緒に生きていけるようにね」と言い、家族の絆がより深まったと語った。(text:Yuki Tominaga)
2015年11月04日熊本大学は11月2日、皮膚がんの一種である血管肉腫のがん細胞では、本来は別々であるはずの遺伝子が融合していて、その融合遺伝子ががんの発生に関わっていることを発見したと発表した。同成果は熊本大学生命科学研究部・皮膚病態治療再建学分野の神人正寿 准教授らの研究グループと、北里大学の共同研究によるもので、11月1日に科学誌「Cancer Research」に掲載された。血管肉腫は血管やリンパ管の細胞から発生し、皮膚上では年配の人の頭部にできることが多い。発見されづらく、リンパ節や内蔵に転移していってしまうが、放射線療法や化学療法などの治療が効きづらいため、新しい診断法と治療法の開発が必要とされている。がんの主な原因としてがん遺伝子の変異があるが、今回の研究では、血管肉腫のがん細胞では通常の遺伝子変異とは異なり、NUP160とSLC43A3という本来とは別々の遺伝子が異常に融合してしまっていることを発見。この「NUP160-SLC43A3融合遺伝子」は染色体の一部が切り取られ、別の染色体にくっついた結果2つの遺伝子が融合して作られると考えられており、融合遺伝子が陰性の患者と比べて、がんの進行が早い可能性があるという。また、NUP160-SLC43A3融合遺伝子をマウスに注射したところ、がん化したため、がんの発生との確認が確認されたほか、NUP160-SLC43A3融合遺伝子を血管肉腫の細胞から除去すると血管肉腫の細胞の数が減少したため、治療につながる可能性も確認された。融合遺伝子はこれまで白血病や悪性リンパ腫などのがんでも発見されており、融合遺伝子を検出することで高精度・高感度の診断が可能となる。肺がんの一部ではすでに遺伝子検査が保険適応となっており、融合遺伝子の働きを阻害する薬剤が高い治療効果を発揮していることから、今回の血管肉腫における融合遺伝子の発見は、皮膚がんの原因の解明だけでなく、簡単な診断や特効薬の開発にもつながることが期待される。
2015年11月02日国立がん研究センター(国立がん研)は10月29日、「国際がん研究組織(IARC)」が、ソーセージなどの加工肉や豚や牛などの肉(赤肉)などに発がん性がある、との報告を10月26日に行ったのを踏まえ、日本人における赤肉および加工肉の摂取量と大腸がん罹患リスクについての見解を公開した。IARCの実施した今回の評価は、10カ国、22人の専門家によるもので、その評価は全世界地域の人を対象とした疫学研究(エビデンス)、動物実験研究、メカニズム研究からなる科学的証拠に基づく総合的な判定となっている。結果としては、加工肉について「人に対して発がん性がある(Group1)」と、主に大腸がんに対する疫学研究の十分な証拠に基づいて判定されたほか、赤肉については疫学研究からの証拠は限定的ながら、メカニズムを裏付ける相応の証拠があることから、「おそらく人に対して発がん性がある(Group2A)」との判定がなされた。こうした判定は2007年にも世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)が、赤肉、加工肉の摂取が確実に大腸がんのリスクを上げるとの評価報告を行っており、赤肉は調理後の重量で週500g以内、加工肉はできるだけ控えるように、と勧告していた。IARCの評価の基となった全世界地域の論文の赤肉摂取の範囲はおおむね1日あたり50~100gで、中には200g以上と高い地域もあったが、2013年の国民健康・栄養調査による日本人の赤肉・加工肉の摂取量は1日あたり63g(うち、赤肉は50g、加工肉は13g)で、世界的に見ても摂取量の低い国の1つにあたるという。同センターでも2011年に、国内の45~74歳の男女約8万人を対象に赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて追跡調査を行った結果を発表している。結果の内容としては、例えば、女性では毎日赤肉を80g(調理前の重量。調理後は20%程度重量が減少)以上食べるグループで結腸がんのリスクが高く、それ以下の摂取量ではリスク上昇はみられなかったほか、男性では鶏肉も含む肉全体では摂取量の最も高いグループでリスク上昇がみられましたものの、赤肉では特に関連はみられなかったとしている。また、加工肉については男女ともに関連はみられなかったともしており、結論として、大腸がんの発生に関して、日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても、小さいと言えるとしている。また、同センターにて、さまざまな生活習慣とがんとの関連について日本人を対象とした研究を基にIARCやWCRF/AICRによる報告書の手法を準用して評価を行ったところ、加工肉と大腸がんとの関連については、「可能性あり」との判定であり、海外に比べて弱い判定結果となるとする。今回のIARCの判定は、あくまで大腸がんを主体としたものであり、健康全般を考慮した場合、赤肉はたんぱく質やビタミンB、鉄、亜鉛といった健康維持にとって有用な成分をたくさん含んでいるほか、飽和脂肪酸も摂りすぎは動脈硬化、その結果としての心筋梗塞のリスクを高めるものの、少なすぎると脳卒中(特に、出血性)のリスクを高めることも分かっており、日本においては心筋梗塞より脳卒中の罹患率の方が高いことから、総合的にみても、今回の評価を受けて極端に量を制限する必要性はないと言えると同センターではコメントしている。なお、同センターでは、生活習慣要因の判定結果を基に、現状において推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法「日本人のためのがん予防法」を提示しており、そこで定められた健康習慣全般に気を配ることが大切であり、食事要因については「塩蔵品を控えること」「野菜・果物不足にならないこと」「熱い飲食物をとらないこと」を目標に定めている。
2015年10月29日国立がん研究センター(国がん)は10月19日、腹腔鏡手術支援ロボットの開発を行うA-Tractionを国立がん研究センター発ベンチャーとして認定したと発表した。国がんでは、同センターの役職員が得た知的財産権や研究成果などを活用するために設立したベンチャー企業からの申請に対し、研究成果の活用が期待できると判断した企業を国立がん研究センター発ベンチャーとして認定している。初めて認定されたのはがん免疫療法の研究開発を行うノイルイミューン・バイオテックで、A-Tractionは2社目となる。腹腔鏡手術支援ロボットは米Intuitive Surgicalのda Vinciがほぼ独占している状況にある。日本でも研究開発が進んでいたが、製品化までのハードルが高く大手企業が参入しにくいことなどから、製品化という点で世界から後れをとっているのが現状だ。2015年8月に設立されたA-Tractionはベンチャーというフットワークの軽さを生かして世界に対抗できる手術支援ロボットを製品化し、より質の高い手術を実現することを目的とする。今回の認定を受けて同社は「手術支援ロボットの開発を通じて、日本の腹腔鏡手術の精度と安全性を向上させ、より多くの患者さんに質の高い手術を受けていただけるよう、邁進してまいります」とコメントしている。
2015年10月19日国立がん研究センター(国がん)は9月14日、全国のがん診療拠点病院の177施設約17万症例を対象とした、主要5部位のがんの5年相対生存率を公表した。相対生存率とは、がんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標。5年相対生存率であれば、あるがんのうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどの程度低いかで表される。今回発表されたのは2007年にがん診療拠点病院で治療を開始した患者の5年相対生存率。発表によると、全がんの5年相対生存率は64.3%、各部位で見ると胃が71.2%、大腸が72.1%、肝臓が35.9%、肺が39.4%、女性乳房が92.2%だった。合わせて都道府県別のデータも発表されたが、データの安定性を高めるために、予後把握率90%以上かつ集計対象が50例以上の施設が2施設以上ある都道府県のデータのみ公表しており、単純に比較することはできない。また、年齢分布や病期なども集計しており、国がんは「年齢の分布、病期、手術の割合などで生存率は変わってくる。そうした要素を見ながら分析していただくことに今回のデータの意義がある。各都道府県が分析を通じて、例えば検診の受診率を上げるための取り組みを検討するなど、対策を立てるためのベースとしてほしい」としている。集計するにあたっての課題もあり、生存状況も把握するために地方自治体に外部照会が必要となった際に、個人情報保護などを理由に協力を拒む自治体もあったという。この点については2016年診断例からは全国がん登録が実施され、各施設での生存確認調査がより円滑になると期待されている。なお、2016年診断例の集計結果が公表されるのは2023年の予定で、2022年の発表までは現状の課題を抱えることになる。2008年症例分以降は、都道府県別では主要5部位以外も集計・公表をする方向で検討を進めているほか、施設別生存率を公表する方針だが、国がんは「施設別相対生存率では数字のばらつきがより顕著になる。数字の安定性・相対生存率の意義に関する理解を深める必要がある」としている。
2015年09月15日DeNAは8月27日、同社の子会社であるDeNAライフサイエンスが提供する遺伝子検査サービス「MYCODE」の新たなメニューとしてがんに特化した「がんパック」を追加し、同日より提供開始すると発表した。また、説明会では、提供開始から1周年を向かえた同サービスのこれまでのあゆみを振り返るとともに、今後の展望を明らかにした。「がんパック」は「MYCODE」で提供されている全てのがん38項目を対象としており、「項目数が多くて見きれない。もっと特化したものがほしい」とうユーザーの要望を実現したものとなっている。通常価格は14800円(税別)だが、9月30日までの期間限定で9800円(税別)の特別価格で販売される。なお「がんパック」を購入すれば、「MYCODE」で提供している生活習慣病をはじめとするその他の項目についても、検査後に追加購入することが可能だ。「MYCODE」では、他にもユーザーの声をきっかけとしたサービスを追加していく予定で、「結果をどう捉え、結果を踏まえてどう行動すればいいのかわからない」という意見を受けて、検査後に管理栄養士とTV電話を通じて50分の詳しいアドバイスを受けられるサービスを2980円で9月下旬から提供開始する。さらに、最新の遺伝研究に関する論文に基づいた検査結果のアップデートが今秋に予定されているほか、自分の祖先を調べることができる「ディスカバリー」の検査結果から提供しているオリジナルキャラクター「ゲノミー」を活用したエンターテイメントコンテンツの充実や、遺伝子に関わる研究を幅広く紹介する、ユーザー参加型の新コンテンツを9月中旬から提供するなど、サービス内容の拡充を今後も続けていくとした。2014年8月12日にサービスを開始しして以来、最大280項目の検査結果を提供する「ヘルスケア」をメイン商品として、その簡易版である「ヘルスケアLite」、上述の「ディスカバリー」を展開し、このラインアップに今回「がんパック」が加えられたわけだが、同サービスはまだこれからといった段階にある。そもそも、遺伝子検査市場というのは法整備の面を含めて未成熟で、その点についてDeNAライフサイエンスの大井潤社長は「今は市場の立ち上げに向けて頑張っている。競合各社と『競争』ではなく『共創』をしている段階だ」と説明する。一方、サービスそのものの品質には大きな手応えを感じており、「(検査を受ける前と受けた後で)半分くらいの人が食事を気にするようになったとアンケートに答えている。また、タバコでも10%の人が禁煙を始めた。この10%は結構高い数値で、我々の検査の意義を表している数値といえる。」(大井社長)。実際、「MYCODE」で高リスクと判定されたことがきっかけで、食道がんが見つかった例もあるという。ユーザーに気づきを与えることで健康意識を高め、さまざまな病気の予防につなげるという同サービスのコンセプトが実現しているだけに、ビジネスとして成長していくためには認知度と信頼性が重要になってくる。認知度向上のための取り組みとしては、神奈川県で来年1月末まで20歳以上の県民を対象に「ヘルスケア」と「がんパック」が4割引で購入できる事業を開始しているほか、DeNAベイスターズと連携したプロモーションを展開する。また、医療機関・スポーツクラブとの連携を通じて販売チャネルを増やすと同時に、ユーザー側の遺伝子リテラシーの向上を促進する。一方、信頼性の面ではプライバシーや分析の質、結果の科学的根拠、情報提供の方法など、消費者が安心して遺伝子検査を受けられるような環境整備が必要となる。国内では2004年に個人遺伝情報保護ガイドラインが経済産業省により制定されているほか、2006年に発足し、DeNAライフサイエンスも参画しているNPO法人個人遺伝情報取扱協議会(CPGI)が今年の秋ごろに自主基準認定制度の運用を開始する予定だ。
2015年08月28日味の素は8月7日、同社のがんリスクスクリーニング検査「アミノインデックス(AICS)」が、膵臓がんの早期発見に対応したと発表した。AICSは、味の素と臨床検査会社であるエスアールエルが2011年より共同で提供している検査で、血中アミノ酸濃度バランスの変化を解析・指標化し、胃がんや肺がんなどのリスクを調べることができる。検査に要する血がわずか5mlと少量なことから、体に負担の少ないスクリーニング検査となっており、2015年7月現在で956の医療機関で受診可能となっているほか、地方自治体の住民検診に採用されるなど普及が進んでいる。これまでは胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん(男性のみ)、乳がん(女性のみ)、子宮・卵巣がん(女性のみ)という6種類のがんを対象としていたが、膵臓がんが新たに加えられた。これは、味の素と大阪府立成人病センターの片山和宏 副院長を中心としたグループとの多施設共同研究による成果で、膵臓がん患者360名と健康な人8372名の血中アミノ酸濃度バランスの変化を解析した結果、膵臓がん患者の血中アミノ酸濃度バランスが有意に変化していることがわかった。また、手術可能な段階の患者でも進行がん患者と同様の変化を示すことが判明し、その変化を解析する事で、膵臓がんの早期発見技術の開発が可能となった。膵臓がんは早期の発見が難しく、切除手術も長時間となり患者への負担が大きいだけでなく、腫瘍が2cmを超えると周囲へ浸潤して取りきれないことがあるなど、治療が極めて難しいがんとして知られているだけに、AICSによる膵臓がんの早期発見が可能となり、より効果的な治療につながることが期待される。
2015年08月07日国立がん研究センターはこのほど、全国のがん診療連携拠点病院409施設で2013年の1年間にがんと診断された患者の診療情報を集計し、その結果を明らかにした。同集計は2007年分から開始し、今回で7回目の集計となる。今回は、全国のがん診療連携拠点病院で2013年1月1日~12月31日までの1年間、院内がん登録された診療情報を集計した。自施設で診断または他の病院で診断された後、自施設に初めて受診した、すべてのがんおよび脳腫瘍の患者数を示す「全登録数」は、409施設で65万6,272例だった。これは日本全体のがん罹患(りかん)数の約70%にあたる。全登録数は、2009年からは毎年増加している。男女計の部位別の登録割合を見ると、最も多いのは「大腸」(14%)で、次いで「胃」(12%)、「肺」(11%)、「乳房」(10%)、「前立腺」(8%)と続いた。男女別で見ると、男性の5大がん(胃、大腸、肝臓、肺、前立腺)は、2007年の集計以来、初めて大腸が胃を上回り最多となった。女性の5大がん(胃、大腸、肝臓、肺、乳房)では、乳房と大腸が胃と肺の登録数に比べて増加の傾きが急になっている。上位10部位の登録数においては、子宮頸部と膵臓(すいぞう)が順位を上げ、肝臓と子宮頸部の順位が逆転した。また、膀胱(ぼうこう)がランク外になり膵臓が9位(前回11位)に順位を上げている。同調査の集計結果は、ウェブサイト「がん情報サービスがん登録・がん統計」でも公開している。
2015年08月06日国立がん研究センターは7月16日、肺がんの中でも特に難治性が高い肺小細胞がん110例の全ゲノム解読を実施したと発表した。同成果は同センターが愛知県がんセンターの研究グループとともに参画した、独ケルン大学が主導する16カ国の研究機関からなる国際共同プロジェクトによるもので、英科学誌「Nature」に研究成果に関する論文が掲載された。肺小細胞がんはほとんどが進行がんとして発見され、ゲノム解析に適する手術試料が得られにくい。そのため、今回の研究では、各国の研究機関からこれまでに集めた肺小細胞がんの試料を集結させて解析。肺小細胞がんで高頻度に不活性化している遺伝子群を同定するなどの成果が得られたという。今後、同研究で得られたデータを活用することで肺小細胞がんの新たな治療・診断法の開発につながることが期待される。
2015年07月17日いまや、2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなる時代。しかし、実はその半分近くが予防できることもまた事実。そう明かしているのは、『がんにならないのはどっち?』(秋津壽男著、あさ出版)の著者。これまでにも『長生きするのはどっち?』(あさ出版)などのベストセラーを送り出してきた医師ですが、今回はがんをテーマに、知っておきたいことを二択の質問形式でまとめているわけです。最大のポイントは、正しい情報に基づいた予防法に取り組めば、がんの9割は予防できるということ。そのためにおぼえておきたい2つのことを、第3章「『がん習慣』のどっち」から引き出してみたいと思います。■1:「日傘をさす」と「日焼け止めを塗る」皮膚がんになる習慣はどっち?「太陽からの紫外線を浴びると、皮膚がんになる」、これは正しい情報だそうです。理由は、紫外線を浴びると、皮膚の遺伝子が傷つくから。遺伝子の傷は通常2日ほどで修復されますが、このとき遺伝子のプログラムが誤って修復され、皮膚がんになることがあるというのです。また美容面では、「肌の色が黒くなる」「長年大量に浴び続けることによってメラニンが過剰につくられ、シミやソバカスとなる」といったことも懸念されるとか。そこで美容面を気にして、日傘をさす、帽子をかぶる、日焼け止めクリームを塗るなどの対策をしている女性も多いことでしょう。しかし、これらのなかで「日焼け止めクリーム」はオススメできないと著者。なぜならほとんどの日焼け止めクリームは、それ自体に皮膚がんを起こす「酸化チタン」という成分が含まれるから。最近はこの問題が知られるようになり、自然化粧品のメーカーなどで酸化チタンや化学化合物を使用しないUVケア製品が販売されるようになったといいます。どんな成分が使われているか、しっかりチェックしたいところです。■2:「ランニング」と「ウォーキング」がんに対する免疫を下げるのはどっち?健康のため、習慣的に運動やスポーツを行なっている人も多いと思いますが、意外なことにランニングやテニスなどのスポーツは、がんを抑制するNK(ナチュラルキラー)細胞の活性を低下させる恐れがあるのだそうです。免疫細胞の仲間であるNK細胞は、体内をパトロールしながら、がん細胞やウイスルに感染した細胞を見つけると攻撃してくれる優秀なボディーガード。しかしその働きは、激しい運動のストレスによって低下してしまうのだというのです。たとえば、2時間半のランニング後にNK細胞の活性が50~60%低下したという報告もあるとか。つまり、激しい運動はからだの免疫力を低下させるということです。ただし、まったく運動をしない場合もNK細胞の活性は下がるので注意が必要。自分にとって無理のない適度なペースで、楽しみながらウォーキングする程度が、もっともNK細胞を活性化させるといいます。*このように、がんについての知識がわかりやすく解説されています。予防の意味でも、ぜひ目を通しておきたい一冊です。(文/印南敦史)【参考】※秋津壽男(2015)『がんにならないのはどっち?』あさ出版
2015年07月16日TOKYO FMが推進している子宮頸がん予防啓発プロジェクト「Hellosmile」はこのほど、同プロジェクトの拠点番組が7月よりJFN全国38局ネットに拡大し、内容もリニューアルすることを明らかにした。子宮頸がん予防啓発プロジェクト「Hellosmile」は、若い女性に急増している「子宮頸がん」の予防啓発を推進するプロジェクト。多くの企業や団体、学校等とともに子宮頸がんの正しい情報発信と検診の勧奨を行っている。7月からは同プロジェクトの拠点番組が放送曜日、時間を変えてリニューアルする。番組名は『Hellosmile Lounge』(日曜日23:30~23:55)で、放送もTOKYO FMをはじめとするJFN全国38局ネットに拡大。パーソナリティーには、子宮頸がん予防啓発プロジェクト「Hellosmile」をTOKYO FMと一緒に立ち上げた小巻亜矢さんに、モデルの菅野結以さんが新たに加わる。番組では、少し話しづらい女性ならではの健康・メンタルの悩みなどについても盛り込むという。さらに、日本の若い女性に増え続けている子宮頸がんの検診も呼びかけていく。
2015年06月30日MSDは6月22日、国立がん研究センター(国がん)と「SCRUM-Japan(Cancer Genome Screening Project for Individualized Medicine in Japan:産学連携全国がんゲノムスクリーニング)」に基づく遺伝子変異スクリーニングに関する共同研究契約を締結したと発表した。「SCRUM-Japan」は、国立がん研究センターが、個々のがん患者に最適な医療を提供することを目的に、全国の医療機関、製薬企業と協力して実施するがん遺伝子異常スクリーニング事業。大規模な遺伝子異常のスクリーニングにより、希少頻度の遺伝子異常をもつがん患者を見つけ出し、遺伝子解析の結果に基づいた有効な治療薬を届けること、ならびに複数の遺伝子異常が同時に検出できるマルチプレックス診断薬を臨床応用することをミッションとしており、特定の異常が見つかった患者は、対応する治療薬の臨床試験へ参加できる可能性がある。また、患者の遺伝子情報と診療情報は、治療選択の参考として用いられるほか、匿名化処理された後にデータベースに登録され、新たながん診断・治療薬の研究開発のために2次利用される。なお、MSDでは、今回の事業参加を通じて、個別のがん患者に最適な治療薬の開発が期待されることを踏まえ、がん領域における研究・開発を推進していきたいとしている。
2015年06月23日肥満の人と、10年間喫煙を続けた人。どちらががんになりやすいと思いますか?答えはなんと、肥満の人なのです!がんの最大の原因は、あと10年で喫煙よりも肥満になるだろうと専門家は予測しています。がんの研究者は、抗がん剤に頼る化学療法だけではなく、食事や運動療法によって予防に努めるべきだと主張。肥満はがんを発症するリスクを高めるだけではなく、死亡率さえ高めます。それにも関わらず、WHOは英国の成人肥満率が2030年までに、1/4から1/3まで上昇すると予測しています。こうした肥満の恐ろしさについて、イギリスのニュースサイト『Daily Mail Online』の記事を参考にまとめました。■肥満はがんの死亡率を上げるボストンのハーバード・メディカル・スクールの研究員、ジェニファー博士が率いる研究チームは、肥満とがんとの関連を3年にわたって研究しました。すると20年前の生活と比べると、がんの原因において肥満が占める率が上昇していることがわかったのです。これは人々が、肥満が心臓病や糖尿病にリスクがあることは知っていても、がんのリスクやがんの死亡率を上げていることは認識していないためだと指摘されています。■肥満対策はまだ不十分な状況政府は過去10年間で、タバコ税の引き上げや公共施設での喫煙を禁止するなど、喫煙については幾つもの対策を取ってきました。しかし肥満についての対策は根付いているとは言えません。がんに対する喫煙対策は万全でも、肥満対策はまだ不十分と言えるでしょう。ハーバード大学の研究者は、肥満は乳がん、前立腺がん、大腸がん、子宮頸がんを含むさまざまな腫瘍のリスクを上昇させていると言います。彼らの研究によると、がんと診断された時に肥満であった女性患者は、乳がんの死亡率が75%であることがわかりました。また、肥満率がとても高い女性は、子宮がんを発症する確率が普通の女性の6倍以上でした。別の研究では、がんと診断された後でも積極的に運動をして脂肪を落とした患者は、生存率が2倍にアップしたことがわかっています。以上の結果から、研究者は、人々には基礎的な食事療法と運動プログラムこそ重要であると主張しているのです!■喫煙よりも肥満を改善すべきニューヨークのマウントサイナイ病院のパメラ・グッドウィン博士も、喫煙よりも肥満ががんの原因となっていると主張しています。肥満は体内のホルモン量を変化させてしまい、結果としてがんになりやすい体になってしまうというのです。実際に肥満ががんの治療を妨害し、患者の回復を妨げているとグッドウィン博士は言います。次世代のがんの原因は、肥満ではなく喫煙であると確実に言えることでしょう。喫煙者がタバコをやめるのは重労働ですが、肥満にならないために食事の改善をするのは容易いことです。がんは恐ろしい病気。がんの発症率を確実に上げてしまう肥満体にならないように、今できる食生活の改善から始めましょう。甘いものを摂りすぎず、適度な食事量を守りましょう。適度に運動もできれば、より健康な生活を送れますね。(文/和洲太郎)【参考】※Obesity will cause more cancers than smoking in ten years-Daily Mail Online
2015年06月15日国立がん研究センター がん予防・検診研究センターはこのほど、健診ツール「5つの健康習慣によるがんリスクチェック」をホームページで公開した。○チェック後は改善シミュレーションも可能「がんリスクチェック」は2011年4月に開設。「がんと循環器の病気リスクチェック」を公開して以降、男性を対象とした「大腸がんリスクチェック」「脳卒中リスクチェック」を公開。今回新たに5つの健康習慣によるがんリスクチェックを加え公開した。いずれのチェックも10問以内の簡単な設問で構成され、短時間でチェックすることができる。5つの健康習慣によるがんリスクチェックは、45歳から74歳の男女が対象。「禁煙」「節酒」「塩分控えめ」「運動習慣」「適正BMI」の5つの健康習慣をどれだけ守っているかを診断し、今後10年の間にがんに罹るリスクを算出する。チェックを進める中で5つの健康習慣の知識が得られ、リスクチェックの後に改善シミュレーションにもトライできる。
2015年06月15日風邪の予防や対策のために、マスクをして寝るという方は少なくありません。しかし「マスクをしたまま寝るのって本当に大丈夫なのかな?」と体への負担が気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。寝るときのマスクって睡眠にはOK?風邪の主な感染経路は、鼻や口を通してウイルスが体内に入リ込むことです。そのため、それらの部分をガードしてくれるマスクは、風邪予防に効果的な方法として考えられています。そして、問題の「寝るときにマスクをしていてもよいか」という点ですが、結論からいうと、就寝時は鼻やのどが乾燥しやすいので、それを防ぐうえでとても効果的だそうです。鼻やのどが乾燥してしまうと、免疫力が低下し、ウイルスの繁殖が増長されてしまうからです。ただし、息苦しさを感じるのであれば、睡眠が妨げられてしまうので、注意が必要です。もし、寝ている最中にマスクが原因で目が覚めるようでしたら、マスクのサイズを変えるか使用をやめるようにしてください。夏風邪と冬の風邪は違うので要注意!風邪の予防にマスクは効果的ですが、「夏風邪」については注意が必要です。夏風邪とは、単に夏にひく風邪ではなく、夏風邪特有のエンテロ(腸)ウイルスや、アデノ(のど)ウイルスによる感染症のことを指します。これら夏風邪の原因となるウイルスは、湿気が多く、不潔な環境を好むと言われており、就寝時のマスクがかえって逆効果になってしまうケースもあるのです。だからといってマスクをはずしなさいというわけではありません。大事なのは、定期的にマスクを交換し、きちんと清潔な状態に保つこと。ウイルスが好む環境を作らないことです。夏風邪にかかっているときは普段よりもマスクの管理をきちんと行うようにしましょう。より予防効果を上げるには?寝るときにマスクをして、保湿効果を高めることは風邪予防の第一歩です。さらに効果を高めるためにマスクと並行した風邪対策もご紹介します。風邪予防で大切なのは、乾燥をさせないこと。そのためにも加湿器の使用は有効です。もし、加湿器がない場合は水を入れたコップなどを枕元に置くだけでも違うと言われています。加湿による結露が気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は結露が起きるくらいのほうが風邪の予防には適しているのだそうです。このように、適切なマスクの使用は風邪予防に有効であり、他の対処法と組み合わせることでさらなる効果が期待できます。自身の症状に合わせた方法で取り入れてみてはいかがでしょうか。photo by pixabay
2015年06月15日国立がん研究センター(国がん)がん予防・検診研究センターは6月12日、2011年に開発しWeb上で公開していた、生活習慣などに関する質問に答えることでがんなどの発生リスクを算出する診断ツール「がんリスクチェック」に、新たに「5つの健康習慣によるがんリスクチェック」を追加したと発表した。がんリスクチェックは、チェックを進める過程で、生活習慣の改善によるがん予防の実践への動機づけを行い、がん罹患率の減少を目指すことを目的に開発、公開されているもの。新たに追加された5つの健康習慣によるがんリスクチェックは、45歳から74歳の男女が対象で、「喫煙」、「飲酒」、「食習慣(塩分)」、「運動習慣」、「肥満度(適正BMI)」の5つの健康習慣について、現在の習慣を続けた場合、今後10年の間にがんに罹るリスクを算出するというものとなっている。チェックを進める中で、5つの健康習慣の知識が得られるほか、リスクチェックの後に、改善シミュレーションにもトライすることもできるという。
2015年06月12日東京海上日動あんしん生命保険はこのたび、7月2日より新がん保険「がん治療支援保険NEO」(正式名称:がん治療支援保険NEO(無解約返戻金型))および「がん診断保険R」(正式名称:がん診断保険(無解約返戻金型)健康還付特則 付加)を発売すると発表した。昨今、医療技術の進歩により、正常細胞を傷つけにくい放射線治療や副作用の少ない抗がん剤など、がん治療の選択肢が増えるとともに、これらの治療方法を併用するケースも増えているという。同社は、このような最新の治療実態を踏まえて保障の充実を図るとともに、顧客の要望にあった自在性のあるプラン設計を可能とする「がん治療支援保険NEO」を新たに開発したという。また、発売以来好評を得ているという「メディカルKit R」と同様の仕組みをがん保険にも導入した「がん診断保険R」を開発した。この商品は終身にわたって保険料を払込むことで月々の保険料負担を抑えつつ、70歳までの保険料合計額から診断給付金合計額を差し引いた残額を契約者に戻す機能を備えており、業界初という商品としている(5月同社調べ)。同社は、2007年9月発売の「がん治療支援保険」の発売以来、経済的な支援にとどまらず、予防から罹患時の心のケアまで顧客を総合的にサポートする「お客様をがんからお守りする運動」を展開しきたという。同新商品の発売により、これまで以上に「お客様をがんからお守りする運動」を強化していくとしている。○商品の特長がん治療支援保険NEOa.抗がん剤治療特約の改定:抗がん剤治療は、治療期間が長期にわたるケースが多く、がん治療の中でも金銭的な負担の大きい治療方法。昨今では副作用の少ない抗がん剤が増え、抗がん剤治療を受ける患者様も増えている。そのためこのたびの改定では、万一の際に、より多くの顧客が金銭的な不安なく、抗がん剤治療を受けられるよう、対象となる抗がん剤の範囲を拡大し、保険料を引き下げたb.悪性新生物初回診断特約の新設:初めて悪性新生物(上皮内がんは対象外)と診断された場合、診断保険金を支払う。最新の治療方法は高額なものもあり、複数の治療方法を組み合わせるケースも増えている。金銭的な不安を抱えずに、最良の治療方法を選択できるよう、初回のがんに対する保障を低廉な保険料で手厚くカバーできるc.上皮内がんの診断給付金支払の改定:最新の治療実態を踏まえたa.b.の特約により、金銭的負担の重いケースに備えることができる改定を実施した上で、高額な治療費がかかることの少ない上皮内がんについては、診断給付金の支払いを保険期間を通じて1回とする(支払う診断給付金額は100%)がん診断保険R同商品は同社が2013年1月に発売した医療保険「メディカルKit R」と同様の仕組みを、がん保険にも導入した新商品。なお、「メディカルKit R」は、発売以来、販売件数40万件を突破した(3月末現在)a.70歳までの保険料がリターン(Return):70歳まで、診断給付金の支払いがない場合、払込みした保険料が全額、健康還付給付金として戻ってくる。70歳までに、診断給付金の支払があった場合でも、払込みした保険料が支払った診断給付金の金額を上回るときは、その差額が戻ってくるb.一生涯のがん保障を加入時のお手頃な保険料でリザーブ(Reserve):診断給付金の支払いがなく、払込みした保険料を健康還付給付金として全額受け取った場合、万一がんと診断確定され診断給付金を受け取った場合、いずれも保険料は加入時の金額のまま変わらず、保障を一生涯続けることができる○商品概要保障内容がんに対する保障を確保する。また、各種特約を顧客のニーズにあわせ付加できる保険料例
2015年05月19日武田薬品工業(武田薬品)と国立がん研究センター(国がん)は5月8日、研究開発に関する契約を締結したと発表した。両社は今後、研究者や医師の交流を促進し、がんの発症メカニズムなどの基礎研究を進展させ、得られた成果を臨床開発研究へ応用していくことで新たな治療オプションの探索を進めていく。また、武田薬品は、国がんが進めている産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業「SCRUM-Japan」に参画する。「SCRUM-Japan」は全国の医療機関と製薬企業とが協力して実施するがん遺伝子異常スクリーニング事業。同事業で構築される遺伝子情報と診療情報を合わせたデータベースにアクセスすることで、新たな医薬品の研究開発を加速させることができるとしている。武田薬品は「国がんの臨床研究における知見と、当社の保有する技術基盤を融合させることで、より早く、革新的な治療を患者様と医療関係者の皆様にお届けできるものと期待しています」とコメントしている。
2015年05月11日国立がん研究センターはこのほど、コーヒーと緑茶摂取に関する全死亡リスクおよびがんや心疾患、脳血管疾患などの死亡リスクとの関係について明らかにした。同センターは、コーヒーと緑茶摂取と死亡リスクについて検討するため、多目的コホート研究を実施。多目的コホート研究では、40~69歳の男女約9万人を対象として1990年または1993年から2011年まで追跡調査した。調査から得られた結果をもとに、緑茶とコーヒーの習慣的摂取と全死亡およびがんなどの主要死因死亡リスクとの関連を調べたという。約19年(平均)の追跡期間中に1万2,874人が亡くなったが、その内訳は5,327人ががん、1,577人が心疾患、1,264人が脳血管疾患、783人が呼吸器疾患、992人が外因による死亡だったとのこと。結果を解析したところ、緑茶を一日1杯未満飲むグループを基準として比較した場合、一日5杯以上摂取したグループの全死亡リスクは、男性が「0.87」、女性が「0.83」となっており、それぞれ13%、17%もリスクが低下していることになる。また、摂取量が増えるにつれてリスクが下がる「負の相関」が見られていた。死因別では、がん死亡との関連は男女とも見られなかったが、心疾患による死亡は男女ともリスクが低くなっており、脳血管疾患と呼吸器疾患については男性でのみ低いという結果だった。緑茶摂取で心疾患などによる死亡リスクの低下が確認された理由について、同センターは緑茶に含まれ、血圧や体脂肪、脂質の調整作用があると言われる「カテキン」の効果によるものではないかと推定している。コーヒー摂取と死亡リスクの関連についても、同コホート研究による追跡調査から明らかになっている。研究開始時のコーヒーを飲む頻度に関する質問への回答から、調査対象者をコーヒーを飲む量に応じて5グループ(「ほとんど飲まない」~「一日5杯以上飲む」)に分類し、その後の全死亡およびがんや心疾患などによる死亡との関連性を調べた。その結果、コーヒーをほとんど飲まないグループを基準として比較した場合、一日3~4杯飲むグループの全死亡リスクが最も低くなっていた(0.76)。すなわち、コーヒーを1日3~4杯飲む人の死亡リスクは、全く飲まない人に比べ24%低いことになる。また、飲む量が増えるほど死亡リスクが下がる傾向があることも統計的に有意だった。死因別についても心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患については、コーヒー摂取による有意なリスク低下が見られた。同センターは、血糖値を改善し、血圧を調整する効果があるとされているクロロゲン酸や、血管内皮の機能を改善する効果があるとされているカフェインがコーヒーに含まれていることが、今回の結果につながったのではないかと推測している。ただ、同センターは「一日4杯までのコーヒー摂取は死亡リスク低下と有意な関連があることが示唆されました」とする一方で、「この研究で用いた質問票では、缶コーヒー、インスタントコーヒー、レギュラーコーヒーを含むコーヒーの摂取頻度を尋ねており、またカフェインとカフェイン抜きコーヒーを分けてはいませんので、この点をご留意ください」としている。なお、詳細は国立がん研究センターのホームページで確認することができる。※画像はすべて国立がん研究センターより
2015年05月07日国立がん研究センター がん対策情報センターはこのほど、2015年のがん罹患(りかん)数と死亡数の予測を明らかにした。がん情報の総合サイト「がん情報サービス」で公開している。同予測の「罹患数」とは、新たにがんと診断されるがんの数のことで、「死亡数」はがんで亡くなる人の数を指す。同センターでは、2015年の予測がん罹患数は98万2,100例(男性56万300例、女性42万1,800例)で、2014年の予測値より約10万例増加すると予測した。部位別で見ると、大腸がんと前立腺がんの罹患が増加し、男性では前立腺が最多となっている。同センターでは、2014年予測値と比べて罹患数が増加した要因として、高齢化とがん登録精度の向上を挙げている。前立腺がんの増加も、PSA(prostate specific antigen: 前立腺特異抗原)検診の普及が寄与していると考えられている。死亡数は、37万900人(男性21万9,200人、女性15万1,700人)。2014年の予測値より約4,000人の増加で大きな変化はないという。部位別で見ると、全体では大腸の順位が上がっているが、男女別での順位変動はなく2014年と同様の傾向にある。1980年頃からのデータと比較すると、罹患数、死亡数とも胃がんと肝臓がんの順位が下がり、肺がんと大腸がんの順位が上がっている。胃がんは高齢化の影響を除くと罹患数・死亡数は少ない傾向にあるが、高齢化の影響で増加または横ばいとなっているという。前立腺がんとともに、女性の乳がんの罹患率も高い(乳がんのデータは2003年以降)。なお、予測精度は主要部位の5年間の予測について、実測値と比較することで検証されているが、予測不能な要因などにより誤差が伴う場合もある。また、前立腺がんの罹患は、検診の動向などによって変動がありえるとのこと。
2015年04月30日国立がん研究センター(国がん)は4月28日、2015年に新たにがんと診断される患者の数(罹患数)と死亡数の予測を発表した。この予測値は地域がん登録数による1975~2011年の推計、人口動態統計がん死亡数1975~2013年の実測値、および将来推計人口をベースに算出されたもので、2014年より公開されている。まず、予測がん罹患数は98万2100例(男性:56万300例、女性:42万1800例)で、2014年予測値より10万例増加した。部位別罹患数では、大腸がん、前立腺がんの罹患が増加し、男性では前立腺がんが最多となった。国がんは罹患数の予測値が増加した要因として、高齢化やがん登録精度の向上などを挙げた。一方、死亡数については37万900人(男性:21万9200人、女性:15万1700人)と予測され、2014年の予測値から約4000人増、2013年の実測値からは約5000人増となった。部位別では肺、大腸、胃、膵臓、肝臓の順に死亡数が多いという予測となった。
2015年04月28日国立がん研究センターは4月2日、乳がんの脳転移にがん細胞から分泌される微小な小胞エクソームが関わっていると発表した。同成果は分子細胞治療研究分野の富永直臣 研修生、落合孝広 分野長の研究グループによるもので、4月1日付けの米科学誌「Nature Communications」電子版に掲載された。乳がんは比較的予後の良いがんとして知られる一方、治療後、長期間を経て脳転移が認められることがある。脳への転移は予後に大きな影響を及ぼしQOLを著しく低下させるが、そのメカニズムについてはわかっていなかった。同研究では、がん細胞が分泌する直径約100nmの顆粒(エクソーム)が、脳血管で物質透過を制限しているBBBという生体バリア構造を破壊していることを突き止めた。エクソームに含まれるmiR-181cというマイクロRNAがBBBの構造を変化させた結果、バリア機能が失われ、がん細胞が容易にBBBを通過し、脳転移を引き起こしていると考えられるという。がんの脳転移メカニズムを明らかにした今回の成果は今後、早期発見および新規治療法の開発への応用が期待される。
2015年04月02日