国立がん研究センターは1月20日、「全国がん(成人病)センター協議会」(全がん協)の協力を得て、加盟施設での診断治療症例に関する部位別10年相対生存率を集計したと発表。その結果を全がん協のホームページ上にて公開したと明らかにした。同センターによると、国内においてこれほどの規模でがんの10年相対生存率が公表されるのは初めて。がんの生存率は治療による効果を表す指標で、がん診療評価などにおいて重要な要素となる。一方で、信頼できる生存率を算出するには、精度の高い予後調査の実施などの課題があった。同センターの研究開発費に基づく研究班は、1999年診断症例より部位別施設別5年生存率を公開。さらに2012年からは、グラフを描画する生存率解析システム「KapWeb」を公開するなどしていた。今回、部位別施設別5年相対生存率については、2004年から2007年に診断治療を行った14万7,354症例を集計。10年相対生存率については、1999年から2002年に診断治療を行った3万5,287症例を集計した。個々の数値をみていくと、全部位全臨床病期の5年相対生存率は68.8%で、1997年の62.0%から徐々に改善している傾向にあるという。同センターは「化学療法、放射線治療や早期発見技術の進歩が貢献していると考えられます」としている。生存率が高いのは「前立腺(100%)」「乳(92.9%)」「甲状腺(91.6%)」など。一方、「胆のう胆道(28.9%)」「膵(9.1%)」は3割以下にとどまっている。今回が初集計となる全部位全臨床病期の10年相対生存率は、58.2%だった。同じデータベースの5年相対生存率は63.1%となっており、5年間で4.9%の減少がみられる。10年生存率において高い生存率をみせた部位は、「甲状腺(90.9%)」「前立腺(84.4%)」「子宮体(83.1%)」など。逆に「食道(29.7%)」「胆のう胆道(19.7%)」「肝(15.3%)」「膵(4.9%)」などは低い数値となっていた。国内において死亡者数が多い部位に関しては、「胃(69.0%)」「大腸(69.8%)」「気管・肺(33.2%)」「乳(80.4%)」という結果が出ている。なお、研究班は今回の結果をKapWebに反映させて公開。「がんの種類」「病期」「治療法」などの条件設定で検索でき、5年もしくは10年までの生存率年次推移をグラフで見られるようにしている。
2016年01月20日国立がん研究センター(国がん)はこのほど、全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)の加盟施設での診断治療症例について、部位別10年相対生存率を全がん協のWebサイト上で公開した。○乳がんは長期間のケアが必要生存率には実測生存率と相対生存率があり、実測生存率ではがん以外の死因も含まれる。一方、がん患者について計測した実測生存率を、対象者と同じ性別・年齢・診断分布をもつ日本人の期待生存率で割ったものを相対生存率と呼ぶ。相対生存率は、がん以外で死亡する可能性に影響する要因(性別・年齢など)が異なる集団で生存率を比較することができ、世界と生存率を比較する場合でも用いられる。今回発表された部位別10年相対生存率は、1999年から2002年に診断治療を行った16施設3万5287症例を対象としたもの。全部位を対象とした10年生存率は58.2%だった。部位別がんでは胃がんが69%、大腸がんが69.8%、乳がんが80.4%、肺がんが33.2%、肝臓がんが15.3%となった。同センターは2004年から2007年に診断治療を行った14万7354症例を対象とした5年相対生存率も集計。こちらでは全部位が68.8%、胃がんが73.1%、大腸がんが75.9%、乳がんが92.9%、肺がんが43.9%、肝臓がんが34.8%となった。なお、今回発表した10年相対生存率と5年相対生存率は対象となるデータが異なるため、一概に比較することはできないとしているほか、公表されたデータは新しくて2007年のものであり、治療技術の向上により現在はもっと改善していると考えられるという。また、5年相対生存率では施設別のデータも全がん協のホームページ上で公表した。施設別のデータでは、同じ部位でも対象期間や早期がんと末期がん患者の比率などが施設ごとに異なる点に注意してほしいとする。国がんはこれまで、部位別5年相対生存率は発表しているが、10年相対生存率は初集計となる。10年相対生存率について国がんの堀田知光 理事長は「5年は治療効果を判定する1つのポイントとなる。10年はそのがんがどのような経過を辿るか、どこまでフォローすれば良いかが分かるデータとなる」と説明。10年相対生存率により、例えば胃がんでは5年を過ぎると相対生存率は横ばいになるため5年が治療効果を計る大きな目安となるが、乳がんなどでは第I期に治療を開始した場合でも5年を過ぎても相対生存率が下がり続けるため、より長期間の経過を見る必要があることがわかる。○治療法選択の助けに今回の集計結果は国がんなどが開発した生存率解析システム「KapWeb」にも反映されている。KapWebはがんの種類、病期、性別、年齢、初回治療などの条件を組み合わせて相対生存率を見ることができるシステムで、2012年10月より一般公開されている。今回、10年相対生存率のほか、新規診断症例、治療法の選択項目が追加され、より詳細な条件設定が可能となった。千葉県がんセンターがん予防センターの三上春夫氏は「どの治療法を選んだら生存率が高くなるかを知ることができる。治療法選択の判断の目安になる」と説明し、治療に同システムを活用するよう呼びかけている。
2016年01月20日東京都墨田区は2015年12月、同区内では初となるがん教育のモデル授業「がんのことをもっと知ろう」を、墨田区立業平小学校の6年生を対象に実施した。保健学習の一環として行われたこの授業に用いた教材は、がん教育を検討する過程で区や教育委員会らが共同して作成したもので、このようなケースは全国的にみても珍しいという。教員やがん患者、区、教育委員会が一丸となってモデル授業を実施した目的は何なのか。墨田区 保健計画課の松本静さんに伺ったので、2回にわたって紹介する。○モデル授業のきっかけモデル授業のそもそものきっかけは、2012年6月に閣議決定された「がん対策推進基本計画」にがん教育の推進が盛り込まれたことだった。それとは別に、2013年における墨田区のがんの死亡率は、男性が23区中7位で女性が同1位と、がんの死亡率が高いという素地もあった。これらの現状を受けて、区は2014年に「墨田区がん対策基本方針」を新たに策定。「がんによる死亡者数を減らす」などの基本目標を達成させるため、4つの個別目標を設定した。その中の一つに「がんに関する正しい知識を持つための健康教育・普及啓発活動の推進」も盛り込んだ。複数の目標を達成させるため、区長の付属機関として「がん対策推進会議」を設置。その下部組織として「がん教育部会」を設け、子どもたちへのがん教育の在り方を検討していった。教育部会ではがんの有識者やがん患者、教育関係者らが一堂に会し、何度も検討を重ねて教材作りを進めていった。「がん教育部会にはがんに詳しい日本女子体育大学の助友裕子先生をお招きして、先生からいただいた資料をベースに、墨田区に見合った教材を作成していきました」。○話し合いやクイズでがんの知識を深めるそして迎えた2015年12月3日、業平小学校でモデル授業が実施された。多くの子どもたちはがんにまだ接したことがないため、「予防」という観点を子どもたちとがんをつなげる"架け橋"として、理解を進めてもらうように工夫したという。「授業は、がん予防につながる生活習慣やがんの死亡率が高いこと、今は2人に1人ががんになる時代だということなど、できるだけがんを科学的に理解してもらうよう進めていきました」。「がん予防をするために大切なこと」というテーマで複数グループに分かれて話し合いをしたり、授業で学んだことをクイズ形式で復習したりして、がんについて正しい知識を深めていった。○がん経験者の話で命や家族の大切さを知る授業内容は「机上」だけにとどまらなかった。同11日には、乳がんを患った経験があるがん教育部会の委員が、自身の体験談を子どもたちの前で告白。子どもたちにがんについて語るのは初めての経験だったそうだが、「命の大切さについて、きちんと子どもたちへとメッセージを送ってもらえました」。授業後に実施した子どもたちへのアンケートでも、「家族を大切にしたい」「家族と一緒にいることが大事」などの回答が目立ったそうだ。紙の教材だけではなく、実際のがん体験談という「生きた教材」に触れることによって、子どもたちはがん検診の大切さやがんの治療、緩和ケアまで踏み込んで学べた。「がん患者の話を聞いて命の大切さを知り、がんに対する偏見を緩和・減少してもらえば」と願っていた松本さんも、体験談授業に手ごたえを感じているようだ。ただ、業平小学校での授業は、墨田区が掲げる目標の序章でしかない。次回は、モデル授業の今後の展開について紹介する。※写真と本文は関係ありません
2016年01月19日今月10日に1年半ものがんとの闘病の末に69歳で亡くなったロック歌手デヴィッド・ボウイさんは、死の数週間前にはがん克服に前向きな姿勢を見せていたという。デヴィッドさんの友人であり映画や舞台プロデューサーのロバート・フォックスは、前月デヴィッドに会った際には、長生きするために希望をかけて実験的な新薬を試す準備をし、前向きに治療をしている様子がみられたことをザ・タイムズ紙に明かした。「デヴィッドは具合が悪かったみたいだけど、それについて悩んではいなかったよ。かなり実験的だけど、何人かで成功例がみられた新たな治療を始めようとしているところだったね」「新たなよりよい治療法がまた出てくるという希望と共にそれで命を延ばすことができると前向きだったよ」そんな中、デヴィッドさんは肝臓がんで命を落としたと、舞台『ラザルス』でデヴィッドさんと仕事をしていたイヴォ・ヴァン・ホーヴェ監督が発言。「1年はこのことを知っているよ。僕らの舞台『ラザルス』でのコラボが始まって、ある時に病気のためにいつもいることができないと伝えてきたよ。僕に、がん、肝臓がんを患っているって言っていたよ」「出演者はこのことを最後まで知らなくて、『ブラックスター』を一緒にレコーディングしたミュージシャンたちさえも知らなかったよ。この2つのプロジェクトを時間内に終わらせるために、病気が勝ってしまわないように、デヴィッドはできるすべてのことをしていたよ」と語っていた。(C)BANG Media International
2016年01月14日国立がん研究センターは1月13日、これまでがん化との関連が解明されていなかった「IER5遺伝子」が、がん細胞の増殖に関与していることを発見したと明らかにした。IER5遺伝子は腎がんや大腸がん、膵(すい)がんなど複数のがんで発現上昇することも示された。これにより、IER5を分子標的として阻害することで、がんを抑制できる可能性が示唆されたという。同研究成果は、国立がん研究センター研究所希少がん研究分野の大木理恵子主任研究員の研究グループが行ったもので、英科学誌・ネイチャー系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。正常細胞では、「HSF1(Heat Shock Factor 1)」と呼ばれる転写活性化因子(DNA上の特定の塩基配列に結合し、他の遺伝子の発現を強めるタンパク質)の活性が低く保たれている。HSF1は熱ストレスなどにより活性化し、「ヒートショックプロテイン(Heat shock protein: 熱ストレスなどによって構造が壊れた他のタンパク質を修復するタンパク質)」を誘導することによって、ストレスから回復することがこれまでにわかっている。近年はがんの発生や悪性化にHSF1が関わっていることが報告されていたが、そのメカニズムは明らかとなっていなかった。同研究では、「IER5遺伝子」と呼ばれる遺伝子が腎がんや大腸がんなどのがんで発現上昇し、HSF1と結合してHSF1を活性化、後にヒートショックプロテインを誘導し、ストレスを回避することでがん細胞の増殖に寄与することが示された。また、IER5の発現を抑制するとがん細胞の増殖が抑制されること、さらにはHSF1と結合できないIER5はHSF1を活性化できないことも示された。これらの事実から、IER5とHSF1の結合を阻害する化合物の探索によって、がん治療薬の開発につながることが示唆された。同センターは、「現在、ヒートショックプロテイン阻害剤をがん治療薬にする開発が進んでいますが、本研究成果を応用した、その上流にあるIER5を阻害する化合物の開発により、より効果の高いがん治療薬の創出につながることが期待されます」とコメント。そのうえで、今後は「動物モデルを使った研究により、IER5ががんの浸潤転移にどのように関わるかを明らかにする」予定としている。
2016年01月14日国立がん研究センター(国がん)は1月12日、同センターの中央病院にがん診療に網羅的な遺伝子診断に基づく診療の本格導入を目指し、「遺伝子診療部門」を開設したと発表した。これまでも同病院では、遺伝的にがんになりやすい人に向けたゲノム診療である「個別化予防」を遺伝相談外来で行ってきたが、もう一方のゲノム診療である個々のがん患者の遺伝子異常に基づいた「個別化治療」については、検査の品質管理、遺伝子解析情報の臨床的意義付け、患者への伝達方法、情報の取り扱いなどさまざまな課題が残されており、本格的な日常診療への導入には至っていなかった。そこで同病院は2013年より、個々の患者の治療選択における網羅的遺伝子検査の有用性を検証する目的の研究「TOP-GEARプロジェクト」を進めてきており、2015年末には十分な精度管理が担保された網羅的遺伝子検査室を院内に設置するに至り、個別化治療としてのゲノム診療を開始するための体制が整ったことから、今回の開設に至ったとする。同センター中央病院の荒井保明 院長は、「飛行機の進歩は1903年より始まったが、当初は冒険、挑戦という位置づけであった。しかし、数十年を経て、人々が自由に活用し、好きなようにどこでも行きたいところに行くために利用することができるようになった。遺伝子の研究も、長年にわたって進められてきたが、いまだに手軽に自由に診療の現場で活用できるまでには至っていない。今回の取り組みは、すぐに民間で活用できる段階に至ったというわけではないが、がん診断の際に、遺伝的な可能性が生じた場合、がんを専攻してきた医者であっても、現状はその内容を完全に理解できるのは極一部であり、その専門性を診療レベルに翻訳してくれるプロが間に入ることで、遺伝子に関する情報を整理して提供するという仕組みができるようになった。今回の部門開設によって、これからの日本のがん診療の新たな1ページが開かれたことを感じてもらいたい」と語り、ゲノム診療を日常診療に導入する第一歩が始まったことを強調した。具体的には、国がんが中心となって開発した約100遺伝子の異常を1回で網羅的に調べることが可能な検査キット「NCCオンコパネル」を用いて、2015年11月に中央病院内に開設した「SCI-Lab」にて検査を行うことで、実際の診療で活用可能なレベルの速度を実現する。とはいえ、リソースには限りがあるため、すぐに同病院のすべての患者に実施というわけにはいかないともするほか、遺伝子異常に効果がある阻害薬の多くが認証に至っておらず、保険適用ができないこともあり、対象はまずは、治験や臨床試験に参加する患者から、という形になるという。ただし、同センターでは、医師主導治験をセンター外の病院でも実施して、幅広い連携を進め、最終的には薬事承認まで持っていきたいとしており、ゲノム診療に基づく保険適用の実現を目指すとしている。なお同部門は、中央病院のほか、研究所などの各部門におけるゲノム診療や研究に関わるメンバーで構成されており、専門家チームによる最終診断、解析結果レポートの作成、診療コンサルテーション、遺伝相談外来併診など、中央病院の全診療科のサポートする形で運営されるという。
2016年01月13日先日声帯に腫瘍が発見されたことでがんの検査中だと噂されていたジャネット・ジャクソンが6日、ツイッターを更新し、「アンブレイカブル・ワールド・ツアー」延期の理由ががんの危険性によるものではないとコメントした。ジャネットはツイッターに投稿したビデオで、「私の口からきいたことだけを信じることを忘れないで。噂は真実じゃないわ。私はがんじゃない。私は今回復中よ」と説明。「お医者さんたちはヨーロッパでのコンサートを予定通り行うことを承認してくれているし、約束通り延期された公演については日程を組み直すわ。みんなからの祈りと愛情に感謝しているわ」と話した。ツアー延期の発表の際、ジャネットはオフィシャルサイトで「ねぇみんな・・・幸せなホリデーをね!今日私の医師団から手術がすぐに必要だと言われたことをみんなにお伝えしなくちゃいけないわ」「それで春まで『アンブレイカブル・ツアー』を延期しなくてはならなくなったことをみんなにお伝えするのはとても心が痛いんだけどね」「このつらい時期に私と家族、そして私たちの会社のすべての人たちのために祈ってください...これ以上はコメントを出さないわ」とメッセージを投稿していた。(C)BANG Media International
2016年01月08日国立がん研究センター(国がん)は1月8日、全国がん登録および院内がん登録を推進する「がん登録センター」を開設したと発表した。全国がん登録とは、日本でがんと診断されたすべての人のデータを、国で1つにまとめて集計・分析・管理する仕組みで、1月1日よりスタートしている。全国どこで診断を受けても、がんと診断された時点のがん情報が病院などから都道府県に届出され、国のデータベースで一元管理されるようになる。全ての病院などに届出義務が課せられ、都道府県をまたがった受診や転居による重複や漏れも伏せぐことができるため、今まで集計できていなかった正確な全国のがん罹患数を把握し、収集したデータを用いることで国や都道府県で効果的ながん対策の立案につながると考えられている。一方、院内がん登録ではがん診療連携拠点をはじめとする約1000病院で約90項目にわたる詳細な情報を収集し、より正確で詳細な施設別のデータが比較できるようになっている。全国がん登録で国・地域の状況がもれなく把握された結果が、がん対策に活かされ、院内がん登録で得られる病院ごとの状況が比較されて病院のがん診療が向上していくことが期待される。国がんが新設した「がん登録センター」では、全国がん登録において都道府県に提供されるがん情報を一元的に集約し、都道府県と国のがん対策の基盤として用いられるようにデータベースを整備、データの提供・分析を行う。また、院内がん登録についても、データの収集・分析と提供、院内がん登録実施医療機関の支援について機能強化を図る。いずれのがん登録も情報の収集には人材の育成と収集のルールや手順の標準化が不可欠であり、標準化作業においても国がんならびに同センターがリーダーシップを発揮し標準化事業を推進していくとしている。
2016年01月08日日本人の死因1位である「悪性新生物(がん)」(厚生労働省・2014年人口動態統計より)。近年、診断や治療の進歩により、がんは治せる病気になってきたともいわれている。しかしながら、発見されたときに既にがんが進行していれば、やはり治癒が見込めないケースが多いことも事実だ。がんを完治するために大事なことは、何より早期発見。そして、手術などでの一次治療を行った後、がんの再発を防ぐことである。そこで今回は、がんの再発予防治療について、瀬田クリニックグループ 統括院長の後藤重則医師に伺った。○抗がん剤による再発予防治療手術や放射線治療は、患部を局所的に治療するもの。それに対して、手術後の再発予防や、がんが進行転移して局所治療で対処できない場合の全身治療として行われるのが、抗がん剤による化学療法だ。抗がん剤にはさまざまな種類あるが、がんの部位ごとに効果が確認されているものがガイドラインで定められており、さらに患者さんの個々の状況に応じて、有効だと思われる抗がん剤を医師の判断によって決定する。なお抗がん剤の治療費は、その種類や使用量(患者の体格に基づく)によって変わってくる。早期がんで転移などが見られない場合、基本的には手術での治療が第一選択肢となる。ただ、手術でがんを取りきったように見えても、それはあくまで肉眼や検査で分かる範囲のことで、目に見えない、検査で検出できないような微小ながん細胞が既に体の他の箇所へ転移してしまっている場合もあり、こうしたがん細胞が後々再発のもととなるのだ。そこで、この見えない微小ながん細胞を排除して再発を予防する目的で、手術後に抗がん剤治療を行うことがある。抗がん剤は、がん細胞を殺傷したり、がんのサイズを小さくしたりすることができる治療法だ。一方で、多くの人にとって不安な点は、その副作用だろう。副作用には個人差があり、使用する薬剤によっても異なるが、髪が抜ける、全身の倦怠(けんたい)感やしびれ、吐き気・嘔吐(おうと)などの症状が起こる場合があるとされている。それらの副作用によって日常生活に支障が出ることを懸念する人もいるはずだ。○抗がん剤の効果や副作用は予測可能か?では、抗がん剤の効果や副作用は治療前から予測できるのだろうか。「抗がん剤を投与することで、投与しない場合に比べて再発率が下がることが研究により証明されている場合、そうした治療が行われます。ただ、そのメリットを享受できるのは何割かの方であって、全員というわけではありません」と後藤医師。「というのは、抗がん剤治療を受けたから再発が防げたという場合もありますが、受けても再発する方もいらっしゃいます。また、もともと受けなくても再発しない方もいるため、そのような方々は副作用のある治療を受けたメリットはありません。患者さんごとに効果を事前に予測することは、なかなか難しいと思います」。また、副作用についても言及し、「どういう副作用がどの程度起きるかは個人差が大きく、投与してみないとわかりません。ただ、副作用を抑える薬なども良くなってきています」と話した。○免疫細胞治療の再発予防効果再発を防ぐという観点では、放射線治療や化学療法といった標準治療とともに、免疫細胞治療を行うことも選択肢の一つとなる。免疫細胞治療とは、患者の体内にあるがんと闘う免疫細胞を取り出して体外で培養し、体内に戻してがん細胞を攻撃するという治療法。自分自身の細胞を使うため、大きな副作用が出ないことが特徴だ。後藤医師は、国内でもっとも早くからこの免疫細胞治療を行っている医師の一人で、豊富な症例経験を有している。「16年前に瀬田クリニックを開院して免疫細胞治療を始めたときは、全ての治療をやり尽くして、他に手だてのない末期の患者さんがほとんどでした。しかし最近では、手術後の再発予防を目的に治療を受ける患者さんは増えています。体に負担をかけずに、微小ながん細胞を駆逐する再発予防治療として、免疫細胞治療は期待できると思います」。さらに、がんの再発リスクについて次のように語った。「抗がん剤にしろ、免疫細胞治療にしろ、治療によって再発を防げるかどうかは、患者さんのがんの状況によります。再発リスクが少ない方は治療をしなくても再発しない可能性は高いですし、もともと再発リスクが高い方は治療をせずに防ぐのは難しいでしょう。信頼できる医師のもと、がんの性質やデータ、ライフスタイルなどにあわせて、最善の治療法を検討してほしいと思います」。がん治療では、いかに情報を集め、信頼できる医師を見つけ、納得のいく治療法を選ぶかが重要だ。しかし実際には、がんを宣告されてから治療法を選択するまで、時間がないことも多い。がんを誰にでもかかる可能性のある病気として捉え、一人ひとりがそのリスクと向き合ってみてはいかがだろうか。※画像と本文は関係ありません○記事監修: 後藤重則(ごとう・しげのり)瀬田クリニックグループ統括院長1981年新潟大学医学部卒業1985年県立がんセンター新潟病院1989年新潟大学医学部助手、同年医学博士号取得1991年帝京大学生物工学研究センター講師、帝京大学医学部講師1995年医療法人社団弘生会霞ヶ関ビル診療所1999年瀬田クリニック(現・瀬田クリニック東京)、2001年より同院長2008年東京医科大学内科学兼任講師2009年より医療法人社団滉志会理事長
2015年12月25日今や2人に1人ががんになるといわれる時代。がん治療では、信頼できる医師のもと最善の治療法を選択することになる。日本のがん治療では、手術や放射線治療、化学療法といった標準治療が一般的だが、自分の細胞でがんを治療する方法もあることをご存じだろうか。今回は、"がんの最先端治療"といわれる免疫細胞治療について、瀬田クリニックグループ 統括院長の後藤重則医師にお聞きした。○がん細胞は細胞分裂のコピーミスで起こる!人間の体は毎日、新しい細胞が生まれるとともに古くなったものが死滅している。入れ替わる細胞の数は1日に約8,000億個。新しい細胞は生まれつき持っている細胞情報(DNA)をコピーして作られるが、細胞分裂の過程でコピーミスが起こると異常細胞ができてしまう。その異常細胞の1つが「がん細胞」だ。がん細胞は健康な人の体内でも1日に数千個発生しているといわれているが、免疫細胞の働きによって排除されている。「免疫力を高めてがんを防ぐ」などといわれるのは、こういった理由からだ。では、日頃からどんなことに気をつけて生活をすれば、免疫力を高められるのだろうか。「免疫力を高めるためには、栄養バランスの整った食事、運動や睡眠など規則正しい生活を意識することが大切です。喫煙やストレスは免疫力を下げ、がんのリスクを高めるので注意しましょう」と後藤医師。○がんの最先端治療「免疫細胞治療」とはがんの標準治療は、手術、化学療法、放射線治療の3つが代表的だ。患者のがん細胞の性質や進行度、再発リスクなどによって、医師は適切な治療法を提案する。一方、患者の体内にある免疫細胞を体外で強化したうえで再び体に戻し、がん細胞を攻撃するのが「免疫細胞治療」。つまり、"自分の細胞でがんを治す"という治療法だ。自分の細胞を使うため大きな副作用がないことがメリットの1つで、QOL(生活の質)を下げない全身的な治療法として注目されている。後藤医師が統括院長を務める瀬田クリニックグループは、1999年に国内初のがん免疫細胞治療専門医療機関として東京に開院。現在は全国4カ所(東京・神奈川・大阪・福岡)で展開するとともに、同クリニックと同様の免疫細胞治療が受診できる連携医療機関も全国で44カ所存在する(2015年12月時点)。免疫細胞治療は現在のところ、その多くは自由診療として行われている。○免疫細胞治療の種類免疫細胞治療では、一部(HIV抗体陽性の人、臓器・同種骨髄移植を受けた人など)を除くほぼすべてのがん種が治療対象になる。また、早期から再発・転移を伴う状況まで病期にも関わらず治療可能だが、外来通院での治療になるため、無理なく通院できる程度の健康状態が必要としている。瀬田クリニックで行っている免疫細胞治療は次の5つだ(瀬田クリニックホームページより)。■樹状細胞ワクチン療法樹状細胞は、がん細胞を直接攻撃するT細胞にがんの目印(がん抗原)を伝え、攻撃の指示を与える免疫細胞。樹状細胞ワクチン療法では、樹状細胞に体外でがん抗原を取り込ませてから(教育してから)体内へ戻し、T細胞にがんを攻撃するよう指示させる。■アルファ・ベータT細胞療法がんに対する攻撃力が最も強い細胞のひとつであるT細胞を全般的に活性化し、増殖させてから体内へ戻す治療法。T細胞の多くが「アルファ・ベータT細胞」という種類のため、この名前がついている。がん細胞の目印が分からないとき、がん細胞が目印を隠している場合に、早期がんから進行したケースまで幅広く適用。また、免疫の働きにブレーキがかかっている患者のブレーキを外す働きもあり、化学療法や放射線治療の効果が増すことも期待されている。■ガンマ・デルタT細胞療法がん細胞を攻撃する力を持つ免疫細胞(リンパ球)のうち「ガンマ・デルタT細胞」を用いた治療法。ガンマ・デルタT細胞には、細菌やウイルスなどに感染した細胞やがん化をはじめた細胞の変化を素早く感知して攻撃をしかけるといった特徴がある。抗体医薬を使っている場合や、骨腫瘍・骨転移などの治療にゾレドロン酸を使っている場合、併用することで相乗効果を期待できる。■NK細胞療法NK(ナチュラルキラー)細胞は、末梢血中のリンパ球の10~20%を占め、極めて強い細胞殺傷能力を持った細胞の一種。体の中を常時パトロールし、がん細胞やウイルス感染細胞などの異常な細胞をいち早く発見して攻撃する役割を持つ。NK細胞療法では、患者のNK細胞を体外に取り出し、高度に安全管理された環境下で大幅に増殖・活性化して体内に投与する(治療開始前の患者の免疫状態等により、NK細胞の増殖度合いは異なる)。■CTL療法T細胞を活性化・増殖させる際に、患者のがん細胞を使ってT細胞を増殖させ、そのがんのみを攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)を増やしてから、体内に戻す治療法。腹水や胸水などから、患者のがん細胞が入手できる場合に治療が可能。○標準治療と併用が可能これらの免疫細胞治療は、標準治療と併用できる点も重要だ。例えば、手術、放射線治療、抗がん剤などはがん細胞を大きく減らしたり、腫瘍を小さくしたりすることが可能だが、再発のもととなる隠れたがん細胞が残る可能性もある。一方、免疫細胞治療は、サイズの大きながんを縮小させる力は弱いものの、こうした隠れたがん細胞を探し出して攻撃する力を持っており、標準治療と併用することで再発リスクを下げたり、他の標準治療の効果を底上げしたりすることが期待できる。新しい治療法であるため、現状では高齢者よりも、インターネットなどで自ら情報を探すことに長(た)けている若い人に認知される傾向があるとのこと。「若い患者さんは、ご自分でいろいろと調べてから来院されます。また、ご高齢の患者さんの場合、お子さんやお孫さんが調べて連れて来られるケースも多いですね」。なお瀬田クリニックでは、次のような場合に免疫細胞治療を提案している。1. 手術などを行ったが再発の心配があり、体に負担をかけずそのリスクを下げたい場合2. 放射線治療や抗がん剤と併用して、プラスαの効果が期待できそうな場合3. いろいろな治療を試したが、標準的な治療方法が他にないと言われた場合「免疫細胞治療は、体への負担が少ないので、例えば仕事や趣味、食事など、これまでどおりの生活をしながらがんの治療が行えます。多くの人がさまざまながんの治療法があることを知って、ご自分のライフスタイルに合った治療法を選べるとよいですね」。以前と比べて「がんは治る病気」といわれることも多くなったが、やはり自分や家族、友人ががんを患った場合、まず感じるのは恐怖だろう。事前に治療法について知っておけば、いざ治療が必要になったときも、信頼できる医師や病院、治療法を見つける手がかりになる。健康に気をつけてがんを防げることが一番だが、もしものときに備えて、がん治療に関する知識を持っておくとよいだろう。※画像と本文は関係ありません○記事監修: 後藤重則(ごとう・しげのり)瀬田クリニックグループ統括院長1981年新潟大学医学部卒業1985年県立がんセンター新潟病院1989年新潟大学医学部助手、同年医学博士号取得1991年帝京大学生物工学研究センター講師、帝京大学医学部講師1995年医療法人社団弘生会霞ヶ関ビル診療所1999年瀬田クリニック(現・瀬田クリニック東京)、2001年より同院長2008年東京医科大学内科学兼任講師2009年より医療法人社団滉志会理事長
2015年12月24日九州大学と日本医療研究開発機構は12月22日、肝内胆管がんや混合型肝がんの原因遺伝子を特定し、今年ノーベル賞を受賞した抗寄生虫薬イベルメクチンが肝内胆管がんの治療薬となりうることを発見したと発表した。同成果は、九州大学 生体防御医学研究所 西尾美希 助教、鈴木聡 教授ら、および九州大学病院別府病院 三森功士 博士、産業技術総合研究所 新家一男 博士らの研究グループによるもので、12月21日付けの米科学誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America(米国科学アカデミー紀要)」オンライン版に掲載された。同研究グループは2012年に、「MOB1」ががん抑制遺伝子として作用することを証明するとともに、このシグナルが皮膚がんの原因となることを示している。今回、MOB1をマウスの肝臓で欠損させることで、肝がんの中でも特に肝内胆管がんや混合型肝がんを発症すること、これらがんの発症には、このシグナルの下流で転写共役因子「YAP1」や細胞増殖の調節に関わる分泌タンパク質「TGFβ2/3」が増加することが重要であることを見出した。また、YAP1を標的とする抗がん剤を天然物ライブラリから探索し、抗寄生虫薬「イベルメクチン」や「ミルベマイシン」が実際に肝内胆管がんの治療に有効であることを、MOB1欠損マウスやヒト肝内胆管がん細胞移植マウスを用いて個体レベルで証明した。同研究グループによると、YAP1を標的とする薬剤として、イベルメクチンなどの既存の天然物だけでなく、新規天然物や新規低分子化合物も見出しつつあり、今後肝内胆管がんや混合型肝がんに奏功する治療薬を単離できる可能性が高いとしている。
2015年12月22日アイリックコーポレーションが運営する保険クリニックはこのほど、20~60歳の働く女性を対象に「女性のがん」について調査を実施し、結果を発表した。同調査は11月10日~13日にかけて行い、500人から有効回答を得た。がんは怖いと思うか聞いたところ、97.4%が「怖い」と回答した。女性がかかる「がん」として怖いと思うものは何か尋ねたところ、1位は「乳がん」、2位は「子宮頸がん」、3位は「卵巣がん」という結果になった。「乳がん・子宮がん・卵巣がん」が怖いと思う理由を聞いたところ、一番多かった回答は「がんは全て怖い」だった。2位は「女性特有のがんだから」、3位は「最近話題になっているから」となっている。怖いと思うがん5位だった「大腸がん」が怖い理由としては、「女性がかかる割合が高い」「便秘の人が多いから」が上位に挙げられた。子宮頸がん、乳がんの検診を受けているか尋ねたところ、「不定期に受けている」(31.4%)が最も多く、次いで「定期的に受けている」(28.6%)が続いた。「受けたことがない」は25.4%となっている。各年代別の受診率を見ると年代ごとに受診率が高くなるが、30歳代でも約3人に1人が受けていないのが現実のようだ。身近に「がん」にかかった人がいるか聞くと、68.4%が「いる」と回答した。その内訳を見ると、「父、義父 」が42.1%と最も多い。次いで「母、義母」(24.3%)、「友人、知人」(14.9%)となった。自分は「がん」にかかると思うか尋ねると、60.0%が「わからない」と回答した。「思う」は28.4%で、「思わない」(11.6%)の約3倍いる事がわかった。「思う」と答えた人に、がんを経験した人が身近にいるか聞くと、80.3%が「身近にいる」と答えた。
2015年12月10日国立がん研究センター(国立がん研)は12月9日、肺小細胞がんや悪性リンパ腫などさまざまながんで不活性化変異がみられるCBP遺伝子について、p300遺伝子と相互に補い合い機能する関係があり、両方の遺伝子が機能しなくなるとがん細胞が死滅する「合成致死」の関係にあることを発見し、そのメカニズムを解明したと発表した。同成果は、同研究センター研究所 ゲノム生物学研究分野 河野隆志 分野長、荻原秀明 研究員と、第一三共との研究グループによるもので、11月24日付けの米科学誌「Cancer Discovery」オンライン版に掲載された。同研究グループは、CBPタンパク質とp300タンパク質の両方がなくなると、細胞の生存に必要なMYCタンパク質の発現がなくなってしまい、細胞死に至ることを突き止めた。CBPタンパク質とp300タンパク質は、染色体を構成するヒストンタンパク質をアセチル化する酵素であり、アセチル化は、がん細胞を含めたすべての細胞が生きていくために必要な反応となっている。そこで同研究グループらは、p300タンパク質の機能を阻害する薬剤を用いることで、CBP変異がん細胞を効率よく細胞死に導くことができると考えた。つまり、p300タンパク質の機能を阻害する薬剤が抗がん剤の候補であるとしている。今回の治療法の提案は、CBP遺伝子とp300遺伝子が、その両方が失われると細胞は生きていけないという「合成致死」の関係に基づいたもの。同分野ではこれまでも、肺腺がんに対して別の染色体制御遺伝子であるBRG1/SMARCA4について、合成致死に基づく治療法を見出し、抗がん剤の開発を進めている。
2015年12月09日塩野義製薬はこのほど、がん患者や家族を対象にした「STOP! がんのつらさ」キャンペーンを開始した。同時に、患者・家族・医療従事者のコミュニケーションを活性化させるアプリ「つたえるアプリ」もリリースした。同キャンペーンでは、より多くの患者や家族に「がんのつらさを周囲に伝える大切さ」を知ってもらうために、YouTubeなどで啓発活動を行っていく。同時に、どんな時にでもがまんしてしまう「がまん侍」をキャラクターにしたサイトも公開。「がんのつらさとは」「つらさを伝える」「がんの痛みをとる治療」などのコンテンツや、海外クリエイターによるコンテスト受賞作品を閲覧できる。また、がん治療中の身体とこころに起こるつらさについて、患者が正しい知識を学び、医療従事者に適切につたえることをサポートするためのコミュニケーションツールアプリもリリースした。聖隷三方原病院の森田達也副院長が監修を務めている。アプリでは、毎日の「痛み」「だるさ」「眠気」などの症状の記録や「気になることのメモ」を登録でき、記録した症状とメモは、スマートフォン内でグラフや表で表示できる。グラフなどは印刷も可能なため、印刷したデータを診察時にもっていくことで医師に症状を伝えやすくなるという。アプリの価格は無料。
2015年12月08日LINEは11月26日、11月30日まで、ユーザーと一緒にLINEの安心・安全な利用方法を考えるセキュリティ啓発キャンペーン「LINE安心安全ウィーク」を実施すると発表した。LINEでは、サービス公開以降、社内のセキュリティ専門組織によるセキュリティ検証の実施や、内外の専門家によるアプリケーションへの脆弱性対策、LINEアプリの脆弱性の発見を公募し、報告者に報奨金を支払う「LINE Bug Bounty Program」など、継続的にセキュリティ強化に向けた取り組みを行ってきた(関連記事:【インタビュー】LINEのCISOがメディアに初めて語る「脆弱性報奨金プログラム」「LINEのセキュリティ」)。「LINE安心安全ウィーク」は、LINEなどのインターネットサービス利用上の普遍的なセキュリティに関するクイズやコラム記事の投稿、ユーザーのセキュリティに対する意識・行動アンケートなどを行い、ユーザーから得られた反響や意見を、今後のキャンペーンや機能改善に生かしていく。今後はこうした取り組みを定期的に実施する予定で、ユーザーのセキュリティ意識向上や、最新バージョンへのアップデート促進を継続的に行っていく。クイズは、「LINEチーム」LINE公式アカウント(LINE ID:@lineteamjp)のタイムライン上で、LINE利用上のセキュリティに関するクイズを1日1問、ユーザーに出題する。最終日には、ユーザーのLINE利用時におけるセキュリティ設定や意識に関するアンケートを実施し、後日LINE公式ブログで結果を公表する。なお、クイズの正解者やアンケートの参加者には、抽選でLINEギフトコード 2100円分をプレゼントする。
2015年11月27日アカデミストは11月26日、同社が運営する学術系クラウドファンディングサイト「academist」にて、がん予防薬開発のためのプロジェクト「正常細胞ががん細胞を駆逐するメカニズムを解明したい!」を開始したと発表した。同プロジェクトは、北海道大学 遺伝子病制御研究所 藤田恭之 教授によるもので、2016年2月26日までにacademist内プロジェクトの過去最高金額となる500万円を集めることを目標とする。藤田教授は、見かけ上は正常で現在では病理診断の対象外となっている「がんの超初期段階」において、正常細胞が隣接するがん細胞の存在を認識し、それらを駆逐していることをこれまでの研究で明らかにしてきた。しかし、このがん排除機構にどのような分子が関わっているのかということについてはまだ解明されていない。そこで同プロジェクトの研究では、さまざまなスクリーニング(ふるい分け)という手法を用いて、正常細胞とがん細胞の境界でどのような分子が細胞間の認識機構やがん細胞の排除に関係しているのかを明らかにすることを目指す。これにより、がん研究のブラックボックスであった、がんの超初期段階で何が起こっているのかという謎に迫ることが期待できる。さらに、それらの分子の機能を制御する薬剤を開発することで、正常細胞ががん細胞を排除するメカニズムを活性化する、あるいはがん細胞が正常細胞からの排除を免れるメカニズムを不活性化するという、がんを取り巻く細胞の社会性を利用した、世界初となるがん予防薬の開発を目指すという。クラウドファンディングで集めた研究費は、細胞を培養するための試薬費・各種スクリーニングにかかる費用や同定したタンパク質に対する抗体の作成費用として使われる予定。支援者への見返りとして「オリジナル画像、学会講演資料(3000円)」や「オリジナル白衣、研究室特製Tシャツ、オリジナル画像、学会講演資料(3万円)」などといったコースが用意されている(価格はすべて税抜)。藤田教授は今回のクラウドファンディングのチャレンジについて「欧米では、国からの研究費のほかに一般の方のドネーション(寄付)が大きな比重を占めている。残念ながら我が国には、サイエンスに興味を持ってドネーションするという文化がないが、その理由としてどんな研究をしているのかということが国民に伝わっていないからというのがあるかもしれない。今回のプロジェクトで、一般の方々と“がんを撲滅したい”という夢を共有して前進していければ」としている。
2015年11月26日金原出版は11月25日、がん患者およびがん患者の家族、放射線治療に携わる医師や看護師、医療関係者に向けた書籍『患者さんと家族のための放射線治療Q&A2015年版』(2,200円・税別)を発刊する。「放射線治療」は手術、薬物療法と並ぶがん治療の3本柱の1つ。手術や化学療法が困難な高齢者や、合併症により手術や化学療法が行えない患者にも適応できる治療法だという。また、通院による治療のため、「がん就労」を可能にする方法としても注目されている。国立がん研究センターがん対策情報センターによると、2015年の予測がん罹患(りかん)数は98万人、予測がん死亡数は37万人まで増加している。このうち放射線治療を受ける患者は約3割とのこと。この数は、"切らないがん治療"として放射線治療を選ぶ人が多い欧米と比べると半分程度だという。同社は、放射線治療を選ぶ人が少ない一因として「放射線治療の良さを知らずにいること」を挙げ、「放射線」という言葉だけで悪影響が出るのではないかと心配する患者や家族も多いことに着目。そこで、放射線治療に関する正しい知識を解説した同書を発刊することとなった。同書はQ&A方式で、さまざまな疑問に答える形で構成している。放射線治療のしくみ、手術や薬物療法との違い、放射線治療の費用、治療にかかる日数、併用療法、各部位別の治療法、治療の進め方などを解説。編集には日本放射線腫瘍学会が携わっており、学会初の公式本であるという。
2015年11月20日国立がん研究センター(国がん)とアストラゼネカは11月16日、国がんが開発中の質量分析イメージング法(Mass Spectrometry Imaging:MSI)を用いて、アストラゼネカの新規抗がん剤の腫瘍組織への局在を解析する非臨床共同研究契約を2015年9月10日に締結したと発表した。国がんが開発中のMSIは腫瘍組織で起こる抗がん剤の複雑な相互作用を放射性同位体を使用せずに直接分析できる技術。同センターは、MSIによりこれまで判らなかった腫瘍組織・細胞への抗がん剤集積を画像として確認することができるようになったとする。今回の共同研究では、坦がん動物モデルを用いて、新規抗がん剤の腫瘍組織分布を解析するMSI技法を開発・確立することを目指す。また、国がんとアストラゼネカは、同共同研究の成果を今後、新規抗がん剤を用いた早期臨床試験(第I相臨床試験)において、生体組織検査により腫瘍組織中の薬物分布濃度と効果の関連を評価し、投与量の設定、作用の評価に役立てるとしている。さらに、同技術を用いて最適な投与量を速やかに決定することによる臨床試験の短縮や、がん治療以外で生体組織検査を行う分野での当該薬剤の組織中の薬物分布濃度と効果の関連を評価することへの応用も期待される。
2015年11月16日国立がん研究センター(国立がん研)は11月9日、膵がん早期診断の血液バイオマーカーを発見したと発表した。同成果は、国立がん研 創薬臨床研究分野 本田一文 ユニット長の研究グループらによるもので、11月9日付の英オンライン科学誌「Scientific Reports」に掲載された。同研究グループはこれまでに、血液中に存在するタンパク質「apoA2 アイソフォーム」が膵がんや膵がんリスク疾患の患者で低下することを質量分析の結果から発見・報告していたが、今回、米国国立がん研究所(NCI)との共同研究においても、健常者に比べ早期膵がん患者でapoA2 アイソフォームが低下していることが確認された。また、既存の膵がんバイオマーカーである「CA19-9」と比べて高い精度でI期、II期膵がんを検出できることも確認。この結果からNCIは、apoA2 アイソフォームが膵がんにおける信頼性の高い血液バイオマーカーになりうる可能性があると評価している。また従来、apoA2 アイソフォーム濃度を計測するためには高価な機器を必要とする質量分析を用いた測定法しかなかったが、今回、同研究グループは、apoA2 アイソフォーム検査を実用化するために簡便な検査法の開発に取り組み、検査キット「Human APOA2 C-terminal ELISA kit(研究用試薬)」の作製に成功した。同検査キットで国内多施設共同研究で集められた膵がんを含む消化器疾患患者と健常者の血液検体を測定し、その判別性能を検討したところ、CA19-9に比べ、より高精度に早期膵がんを検出できたという。また、CA19-9が反応しない膵管内乳頭粘液性腫瘍や慢性膵炎などの膵がんリスク疾患も高い精度で検出。さらにapoA2 アイソフォームとCA19-9との組み合わせにより、早期膵がんの検出率はさらに向上した。今後、国立がん研と神戸大学などが協力し「apoA2 アイソフォームを用いた膵がん模擬検診」が開始予定。この模擬検診を含めたさらなる研究により、apoA2 アイソフォームの検査が本当に早期膵がんや膵がんリスク疾患を適切にスクリーニングでき、検診に実用化できるかどうかを確認していくという。また、同検査キットは研究用試薬であるため、体外診断薬としての承認を得ることも目指していく。
2015年11月10日国立がん研究センター(国立がん研)は11月4日、18歳未満の子供をもつがん患者とその子どもについて調査し、国内で1年間に新たに発生する患者とその子どもの人数などの全国推定値を明らかにしたと発表した。同調査では、2009年1月~2013年12月までの5年間に、初めて国立がん研中央病院に入院した20歳~59歳までのすべての患者を対象に、同居する18歳未満の子どもの有無と人数、子どもの年齢・性別、および患者自身の罹患したがんの種類について、電子カルテ上より集計された。さらに、これを2010年地域がん登録データおよび2011年院内がん登録データと突合させ、国内で1年間に新たに発生する患者とその子どもの人数などを推定した。この結果、国内全体では、1年間に新たに発生する18歳未満の子どものいるがん患者の数は5万6143人、またその子どもたちの数は8万7017人と推定された。これを2010年の人口構成データに当てはめると、1年間に自分の親が新たにがんと診断された子どもの割合は全体の約0.38%となる。また、ひとつのがん診療連携拠点病院においては、1年間におおよそ82人の18歳未満の子どもを持つがん患者と128人の子どもたちが新たに発生していることがわかった。18歳未満の子どものいるがん患者ががんと診断された平均年齢は、男性46.6歳に対して、女性43.7歳。がんの種類は、男性では胃がん(15.6%)、肺がん(13.2%)の順に多く、女性では乳がん(40.1%)、子宮がん(10.4%)の順に多いという結果になった。また、親ががんと診断された子どもの平均年齢は11.2歳であり、子どもの年齢の上昇とともに人数が増えていくことがわかった。
2015年11月04日熊本大学は11月2日、皮膚がんの一種である血管肉腫のがん細胞では、本来は別々であるはずの遺伝子が融合していて、その融合遺伝子ががんの発生に関わっていることを発見したと発表した。同成果は熊本大学生命科学研究部・皮膚病態治療再建学分野の神人正寿 准教授らの研究グループと、北里大学の共同研究によるもので、11月1日に科学誌「Cancer Research」に掲載された。血管肉腫は血管やリンパ管の細胞から発生し、皮膚上では年配の人の頭部にできることが多い。発見されづらく、リンパ節や内蔵に転移していってしまうが、放射線療法や化学療法などの治療が効きづらいため、新しい診断法と治療法の開発が必要とされている。がんの主な原因としてがん遺伝子の変異があるが、今回の研究では、血管肉腫のがん細胞では通常の遺伝子変異とは異なり、NUP160とSLC43A3という本来とは別々の遺伝子が異常に融合してしまっていることを発見。この「NUP160-SLC43A3融合遺伝子」は染色体の一部が切り取られ、別の染色体にくっついた結果2つの遺伝子が融合して作られると考えられており、融合遺伝子が陰性の患者と比べて、がんの進行が早い可能性があるという。また、NUP160-SLC43A3融合遺伝子をマウスに注射したところ、がん化したため、がんの発生との確認が確認されたほか、NUP160-SLC43A3融合遺伝子を血管肉腫の細胞から除去すると血管肉腫の細胞の数が減少したため、治療につながる可能性も確認された。融合遺伝子はこれまで白血病や悪性リンパ腫などのがんでも発見されており、融合遺伝子を検出することで高精度・高感度の診断が可能となる。肺がんの一部ではすでに遺伝子検査が保険適応となっており、融合遺伝子の働きを阻害する薬剤が高い治療効果を発揮していることから、今回の血管肉腫における融合遺伝子の発見は、皮膚がんの原因の解明だけでなく、簡単な診断や特効薬の開発にもつながることが期待される。
2015年11月02日国立がん研究センター(国立がん研)は10月29日、「国際がん研究組織(IARC)」が、ソーセージなどの加工肉や豚や牛などの肉(赤肉)などに発がん性がある、との報告を10月26日に行ったのを踏まえ、日本人における赤肉および加工肉の摂取量と大腸がん罹患リスクについての見解を公開した。IARCの実施した今回の評価は、10カ国、22人の専門家によるもので、その評価は全世界地域の人を対象とした疫学研究(エビデンス)、動物実験研究、メカニズム研究からなる科学的証拠に基づく総合的な判定となっている。結果としては、加工肉について「人に対して発がん性がある(Group1)」と、主に大腸がんに対する疫学研究の十分な証拠に基づいて判定されたほか、赤肉については疫学研究からの証拠は限定的ながら、メカニズムを裏付ける相応の証拠があることから、「おそらく人に対して発がん性がある(Group2A)」との判定がなされた。こうした判定は2007年にも世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)が、赤肉、加工肉の摂取が確実に大腸がんのリスクを上げるとの評価報告を行っており、赤肉は調理後の重量で週500g以内、加工肉はできるだけ控えるように、と勧告していた。IARCの評価の基となった全世界地域の論文の赤肉摂取の範囲はおおむね1日あたり50~100gで、中には200g以上と高い地域もあったが、2013年の国民健康・栄養調査による日本人の赤肉・加工肉の摂取量は1日あたり63g(うち、赤肉は50g、加工肉は13g)で、世界的に見ても摂取量の低い国の1つにあたるという。同センターでも2011年に、国内の45~74歳の男女約8万人を対象に赤肉・加工肉摂取量と大腸がん罹患リスクについて追跡調査を行った結果を発表している。結果の内容としては、例えば、女性では毎日赤肉を80g(調理前の重量。調理後は20%程度重量が減少)以上食べるグループで結腸がんのリスクが高く、それ以下の摂取量ではリスク上昇はみられなかったほか、男性では鶏肉も含む肉全体では摂取量の最も高いグループでリスク上昇がみられましたものの、赤肉では特に関連はみられなかったとしている。また、加工肉については男女ともに関連はみられなかったともしており、結論として、大腸がんの発生に関して、日本人の平均的な摂取の範囲であれば赤肉や加工肉がリスクに与える影響は無いか、あっても、小さいと言えるとしている。また、同センターにて、さまざまな生活習慣とがんとの関連について日本人を対象とした研究を基にIARCやWCRF/AICRによる報告書の手法を準用して評価を行ったところ、加工肉と大腸がんとの関連については、「可能性あり」との判定であり、海外に比べて弱い判定結果となるとする。今回のIARCの判定は、あくまで大腸がんを主体としたものであり、健康全般を考慮した場合、赤肉はたんぱく質やビタミンB、鉄、亜鉛といった健康維持にとって有用な成分をたくさん含んでいるほか、飽和脂肪酸も摂りすぎは動脈硬化、その結果としての心筋梗塞のリスクを高めるものの、少なすぎると脳卒中(特に、出血性)のリスクを高めることも分かっており、日本においては心筋梗塞より脳卒中の罹患率の方が高いことから、総合的にみても、今回の評価を受けて極端に量を制限する必要性はないと言えると同センターではコメントしている。なお、同センターでは、生活習慣要因の判定結果を基に、現状において推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法「日本人のためのがん予防法」を提示しており、そこで定められた健康習慣全般に気を配ることが大切であり、食事要因については「塩蔵品を控えること」「野菜・果物不足にならないこと」「熱い飲食物をとらないこと」を目標に定めている。
2015年10月29日国立がん研究センター(国がん)は10月19日、腹腔鏡手術支援ロボットの開発を行うA-Tractionを国立がん研究センター発ベンチャーとして認定したと発表した。国がんでは、同センターの役職員が得た知的財産権や研究成果などを活用するために設立したベンチャー企業からの申請に対し、研究成果の活用が期待できると判断した企業を国立がん研究センター発ベンチャーとして認定している。初めて認定されたのはがん免疫療法の研究開発を行うノイルイミューン・バイオテックで、A-Tractionは2社目となる。腹腔鏡手術支援ロボットは米Intuitive Surgicalのda Vinciがほぼ独占している状況にある。日本でも研究開発が進んでいたが、製品化までのハードルが高く大手企業が参入しにくいことなどから、製品化という点で世界から後れをとっているのが現状だ。2015年8月に設立されたA-Tractionはベンチャーというフットワークの軽さを生かして世界に対抗できる手術支援ロボットを製品化し、より質の高い手術を実現することを目的とする。今回の認定を受けて同社は「手術支援ロボットの開発を通じて、日本の腹腔鏡手術の精度と安全性を向上させ、より多くの患者さんに質の高い手術を受けていただけるよう、邁進してまいります」とコメントしている。
2015年10月19日ステラ マッカートニー(Stella McCartney)が10月1日、15AWランジェリーコレクションの一部として、乳がん啓発をサポートするホットピンクのランジェリーセット「戯れるアリーナ(Alina Playing)」を発売する。乳がん意識向上月間である10月に発売される「戯れるアリーナ」は、ナチュラルかつフェミニンなムードとスポーティーなインスピレーションを融合させたランジェリー。エルゴノミックなストラップやピコトリム、リーバーレースにあしらわれた幾何学模様などのデザインが特徴的で、バルコネットブラ(1万5,000円)、ソフトカップブラ(1万5,000円)、ビキニブリーフ(8,000円)の3アイテムが展開される。また、昨年のケイト・モスに続き、今年はカーラ・デルヴィーニュが乳がん啓発のキャンペーンイメージに起用。「戯れるアリーナ」のブラを着用して登場し、胸の部分にハートを描き、乳がん啓発プロジェクトへの賛同を示している。なお、「戯れるアリーナ」の売り上げの一部は、乳がんの早期発見プログラムと乳がん患者向けの治療を提供する活動をサポートするため、イギリスの「Linda McCartney Centre」や、アメリカ、オーストラリアの「National Breast Cancer Foundation」などのチャリティ団体に寄付される。また公式オンラインショップでは、両乳房切除後に着用する新しいコンプレッションブラ「耳を澄ませるルイーズ(Louise Listening)」を独占販売。「耳を澄ませるルイーズ」のすべての売り上げは、乳がんの女性とその家族ためにロンドンに設立された「Hello Beautiful Foundation」の資金として寄付される。
2015年09月30日エスティ ローダーグループが10月1日、乳がん知識啓発キャンペーン「ピンクリボン」の一環として、世界の主要建築物をピンク色に染め上げるイベントを開催する。米国人女性の8人に1人、日本人女性でも12人に1人が一生にのうちに発症してしまうと言われている乳がん。9月23日には元女子プロレスラーでタレントの北斗晶も自身のブログで、乳がんを患っていることを告白している。乳がんは米国人女性だけでも2分に1人の割合で診断されており、その割合は年々増加。12年には全世界で170万人が乳がんと診断されている。乳がん知識啓発キャンペーン「ピンクリボン」は、1992年にエスティ ローダーのシニアコーポレートヴァイスプレジデントだった故エヴリン・ローダーがスタートしたもの。乳がんの知識啓発と医療支援を行っており、現在ではピンクリボンをシンボルにした「ピンクリボン」キャンペーンとして世界70カ国以上で展開されている。同キャンペーンでは2000年より、啓蒙活動の一環として世界の主要建築物をピンクにライトアップしてきた。今年も10月1日の夜に、女性は自分自身が、男性はパートナーや家族が、乳がんの検診を受けることの重要性を思い出してもらうために、世界中のランドマークをピンク色に点灯。日本では、東京タワー、東京スカイツリー、清水寺本堂に加え、今年より新たに姫路城も点灯されることとなった。今年から新たに加わった姫路城の点灯式では、姫路市のイメージキャラクターである「しろまるひめ」が、スワロフスキーで出来たピンクリボンを付けた姿で登場。乳がんの知識啓発カードの配布も行われる。
2015年09月28日国立がん研究センター(国がん)は9月14日、全国のがん診療拠点病院の177施設約17万症例を対象とした、主要5部位のがんの5年相対生存率を公表した。相対生存率とは、がんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標。5年相対生存率であれば、あるがんのうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べてどの程度低いかで表される。今回発表されたのは2007年にがん診療拠点病院で治療を開始した患者の5年相対生存率。発表によると、全がんの5年相対生存率は64.3%、各部位で見ると胃が71.2%、大腸が72.1%、肝臓が35.9%、肺が39.4%、女性乳房が92.2%だった。合わせて都道府県別のデータも発表されたが、データの安定性を高めるために、予後把握率90%以上かつ集計対象が50例以上の施設が2施設以上ある都道府県のデータのみ公表しており、単純に比較することはできない。また、年齢分布や病期なども集計しており、国がんは「年齢の分布、病期、手術の割合などで生存率は変わってくる。そうした要素を見ながら分析していただくことに今回のデータの意義がある。各都道府県が分析を通じて、例えば検診の受診率を上げるための取り組みを検討するなど、対策を立てるためのベースとしてほしい」としている。集計するにあたっての課題もあり、生存状況も把握するために地方自治体に外部照会が必要となった際に、個人情報保護などを理由に協力を拒む自治体もあったという。この点については2016年診断例からは全国がん登録が実施され、各施設での生存確認調査がより円滑になると期待されている。なお、2016年診断例の集計結果が公表されるのは2023年の予定で、2022年の発表までは現状の課題を抱えることになる。2008年症例分以降は、都道府県別では主要5部位以外も集計・公表をする方向で検討を進めているほか、施設別生存率を公表する方針だが、国がんは「施設別相対生存率では数字のばらつきがより顕著になる。数字の安定性・相対生存率の意義に関する理解を深める必要がある」としている。
2015年09月15日DeNAは8月27日、同社の子会社であるDeNAライフサイエンスが提供する遺伝子検査サービス「MYCODE」の新たなメニューとしてがんに特化した「がんパック」を追加し、同日より提供開始すると発表した。また、説明会では、提供開始から1周年を向かえた同サービスのこれまでのあゆみを振り返るとともに、今後の展望を明らかにした。「がんパック」は「MYCODE」で提供されている全てのがん38項目を対象としており、「項目数が多くて見きれない。もっと特化したものがほしい」とうユーザーの要望を実現したものとなっている。通常価格は14800円(税別)だが、9月30日までの期間限定で9800円(税別)の特別価格で販売される。なお「がんパック」を購入すれば、「MYCODE」で提供している生活習慣病をはじめとするその他の項目についても、検査後に追加購入することが可能だ。「MYCODE」では、他にもユーザーの声をきっかけとしたサービスを追加していく予定で、「結果をどう捉え、結果を踏まえてどう行動すればいいのかわからない」という意見を受けて、検査後に管理栄養士とTV電話を通じて50分の詳しいアドバイスを受けられるサービスを2980円で9月下旬から提供開始する。さらに、最新の遺伝研究に関する論文に基づいた検査結果のアップデートが今秋に予定されているほか、自分の祖先を調べることができる「ディスカバリー」の検査結果から提供しているオリジナルキャラクター「ゲノミー」を活用したエンターテイメントコンテンツの充実や、遺伝子に関わる研究を幅広く紹介する、ユーザー参加型の新コンテンツを9月中旬から提供するなど、サービス内容の拡充を今後も続けていくとした。2014年8月12日にサービスを開始しして以来、最大280項目の検査結果を提供する「ヘルスケア」をメイン商品として、その簡易版である「ヘルスケアLite」、上述の「ディスカバリー」を展開し、このラインアップに今回「がんパック」が加えられたわけだが、同サービスはまだこれからといった段階にある。そもそも、遺伝子検査市場というのは法整備の面を含めて未成熟で、その点についてDeNAライフサイエンスの大井潤社長は「今は市場の立ち上げに向けて頑張っている。競合各社と『競争』ではなく『共創』をしている段階だ」と説明する。一方、サービスそのものの品質には大きな手応えを感じており、「(検査を受ける前と受けた後で)半分くらいの人が食事を気にするようになったとアンケートに答えている。また、タバコでも10%の人が禁煙を始めた。この10%は結構高い数値で、我々の検査の意義を表している数値といえる。」(大井社長)。実際、「MYCODE」で高リスクと判定されたことがきっかけで、食道がんが見つかった例もあるという。ユーザーに気づきを与えることで健康意識を高め、さまざまな病気の予防につなげるという同サービスのコンセプトが実現しているだけに、ビジネスとして成長していくためには認知度と信頼性が重要になってくる。認知度向上のための取り組みとしては、神奈川県で来年1月末まで20歳以上の県民を対象に「ヘルスケア」と「がんパック」が4割引で購入できる事業を開始しているほか、DeNAベイスターズと連携したプロモーションを展開する。また、医療機関・スポーツクラブとの連携を通じて販売チャネルを増やすと同時に、ユーザー側の遺伝子リテラシーの向上を促進する。一方、信頼性の面ではプライバシーや分析の質、結果の科学的根拠、情報提供の方法など、消費者が安心して遺伝子検査を受けられるような環境整備が必要となる。国内では2004年に個人遺伝情報保護ガイドラインが経済産業省により制定されているほか、2006年に発足し、DeNAライフサイエンスも参画しているNPO法人個人遺伝情報取扱協議会(CPGI)が今年の秋ごろに自主基準認定制度の運用を開始する予定だ。
2015年08月28日味の素は8月7日、同社のがんリスクスクリーニング検査「アミノインデックス(AICS)」が、膵臓がんの早期発見に対応したと発表した。AICSは、味の素と臨床検査会社であるエスアールエルが2011年より共同で提供している検査で、血中アミノ酸濃度バランスの変化を解析・指標化し、胃がんや肺がんなどのリスクを調べることができる。検査に要する血がわずか5mlと少量なことから、体に負担の少ないスクリーニング検査となっており、2015年7月現在で956の医療機関で受診可能となっているほか、地方自治体の住民検診に採用されるなど普及が進んでいる。これまでは胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん(男性のみ)、乳がん(女性のみ)、子宮・卵巣がん(女性のみ)という6種類のがんを対象としていたが、膵臓がんが新たに加えられた。これは、味の素と大阪府立成人病センターの片山和宏 副院長を中心としたグループとの多施設共同研究による成果で、膵臓がん患者360名と健康な人8372名の血中アミノ酸濃度バランスの変化を解析した結果、膵臓がん患者の血中アミノ酸濃度バランスが有意に変化していることがわかった。また、手術可能な段階の患者でも進行がん患者と同様の変化を示すことが判明し、その変化を解析する事で、膵臓がんの早期発見技術の開発が可能となった。膵臓がんは早期の発見が難しく、切除手術も長時間となり患者への負担が大きいだけでなく、腫瘍が2cmを超えると周囲へ浸潤して取りきれないことがあるなど、治療が極めて難しいがんとして知られているだけに、AICSによる膵臓がんの早期発見が可能となり、より効果的な治療につながることが期待される。
2015年08月07日国立がん研究センターはこのほど、全国のがん診療連携拠点病院409施設で2013年の1年間にがんと診断された患者の診療情報を集計し、その結果を明らかにした。同集計は2007年分から開始し、今回で7回目の集計となる。今回は、全国のがん診療連携拠点病院で2013年1月1日~12月31日までの1年間、院内がん登録された診療情報を集計した。自施設で診断または他の病院で診断された後、自施設に初めて受診した、すべてのがんおよび脳腫瘍の患者数を示す「全登録数」は、409施設で65万6,272例だった。これは日本全体のがん罹患(りかん)数の約70%にあたる。全登録数は、2009年からは毎年増加している。男女計の部位別の登録割合を見ると、最も多いのは「大腸」(14%)で、次いで「胃」(12%)、「肺」(11%)、「乳房」(10%)、「前立腺」(8%)と続いた。男女別で見ると、男性の5大がん(胃、大腸、肝臓、肺、前立腺)は、2007年の集計以来、初めて大腸が胃を上回り最多となった。女性の5大がん(胃、大腸、肝臓、肺、乳房)では、乳房と大腸が胃と肺の登録数に比べて増加の傾きが急になっている。上位10部位の登録数においては、子宮頸部と膵臓(すいぞう)が順位を上げ、肝臓と子宮頸部の順位が逆転した。また、膀胱(ぼうこう)がランク外になり膵臓が9位(前回11位)に順位を上げている。同調査の集計結果は、ウェブサイト「がん情報サービスがん登録・がん統計」でも公開している。
2015年08月06日国立がん研究センターは7月16日、肺がんの中でも特に難治性が高い肺小細胞がん110例の全ゲノム解読を実施したと発表した。同成果は同センターが愛知県がんセンターの研究グループとともに参画した、独ケルン大学が主導する16カ国の研究機関からなる国際共同プロジェクトによるもので、英科学誌「Nature」に研究成果に関する論文が掲載された。肺小細胞がんはほとんどが進行がんとして発見され、ゲノム解析に適する手術試料が得られにくい。そのため、今回の研究では、各国の研究機関からこれまでに集めた肺小細胞がんの試料を集結させて解析。肺小細胞がんで高頻度に不活性化している遺伝子群を同定するなどの成果が得られたという。今後、同研究で得られたデータを活用することで肺小細胞がんの新たな治療・診断法の開発につながることが期待される。
2015年07月17日