長らく彼氏が不在の31歳のみつ子(のん)は、脳内に住む優秀な相談役の“A”とコミュニケーションをとりながら、お一人様ライフを満喫中。そんな彼女に、年下の営業マン・多田くん(林遣都)という気になる男性が!が、20代のときのように物事はスムーズに進まないわけで…。綿矢りさの同名小説『私をくいとめて』が原作のこの映画。みつ子の部屋などの美術を担当しているのが、インテリアスタイリストの作原文子さん。監督を務める大九明子さんとは、’07年にも一緒に映画を作っているそうで、監督からの熱いラブコールに応え、今回再び映画の美術に挑戦したそうです。主人公が楽しく籠もる素敵な部屋は、どう作られる?監督&スタイリストが語ります!大九:’07年の『恋するマドリ』という映画は、タイトルからも分かるように、インテリアが重要な意味を持つ作品だったんです。そのときにプロデューサーが、“その道の第一人者がいる!”と推薦してくれたのが、作原さんでした。ご一緒してみたら、本当に素敵な部屋を作ってくれて…。作原さんの作る部屋は、私の知らない世界を見せてくれ、その上嘘がない。今作も、前作同様、主人公の部屋が重要だったので、ぜひお願いしたいと思い、ご連絡したんです。作原:前作は私にとって初の映画の現場で、分からないことだらけ。とにかく邪魔になっちゃいけないと、それだけを考えていました(笑)。映画の現場は、専門分野の方々が力を合わせて一つの作品を作り上げる一体感があって、濃くて、とても素敵な現場でした。今回お声がけをいただき、“またご迷惑をかけるのでは”と悩みつつ、お力になれるなら…と、参加することを決めました。――登場人物が暮らす部屋は、どういうところから想像するんですか?大九:私からは、具体的なリクエストはしません。1つだけ伝えたのは、“みつ子の部屋は、彼女が不動産屋で見つけた物件に、彼女が探し、選び、触ったものが並んでいる空間である”ということ。作原さんの素敵なスタイリングに、登場人物のフィルターを1枚かけて、空間を作ってほしい、ということです。作原:1日、監督にみつ子ちゃんのことを取材する日を作りましたよね。「コーヒーと紅茶だったら、どっちが好きなイメージですか?」とか、「部屋に花を毎日飾る人でしょうか?」とか。そういうところをヒントに、アイテムを探しました。大九:主人公のみつ子は30歳になるという恐怖を乗り越え、いろんなことを受け入れ、同時に諦め、一人で日常に喜びを見つけながら楽しく暮らしている女の子。大人の女性のかわいらしさを、本当に作原さんは素敵に表現してくれて。私はあまりいろいろ決め込まず、現場で見たものを活かして撮影をしていくタイプなのですが、今回は作原さんが用意してくれた雑貨からも、たくさんヒントをもらいましたよ。「あ、この雑貨があるなら、こういうセリフを言わせたら楽しいかな」とか…。作原:それには本当に驚かされました。インテリアアイテムが物語に取り入れられていくんです。例えば鳥のオブジェとか、フレグランスの小物とか…。どう使われたかは、ぜひ映画を観て確認してください(笑)。――コロナ禍での撮影で、当初ローマロケを予定していたシーンも、日本で撮ったと伺いましたが…。大九:そうなんです。でもそのシーンも、作原さんの力で、みつ子と観客のみなさんを、皐月(橋本愛)が住むローマに無事お連れすることができたのでは、と思っています。作原:普段の仕事で、イタリアのメーカーさんとやりとりしていたことがまさかここで役立つとは(笑)。そんな経験も含めてですが、映画は本当にいろんな人の思いで出来上がるものなんだと、今回もまた実感しました。やらせていただいてよかった。大九:ぜひまたご一緒しましょう!作原:ありがとうございます!こちらが対談の中でも出てきた、ストーリーに加わったフレグランスアイテム。“玄関までしか来ない男”多田くんへの、みつ子の思いを感じさせる使い方に、思わずきゅん。部屋でくつろぐみつ子。ちょっとしたインテリアアイテムに作原さんのセンスが光る!おおく・あきこ(右)映画監督。2007年、長編映画監督デビュー。’17年、『勝手にふるえてろ』で第30回東京国際映画祭コンペティション部門・観客賞などを受賞。さくはら・ふみこ(左)インテリアスタイリスト。岩立通子氏に師事し、1996年に独立。雑誌やカタログ、TV-CM、イベント、ショップディスプレイと、幅広く活躍中。『私をくいとめて』監督・脚本/大九明子出演/のん、林遣都、臼田あさ美、若林拓也、前野朋哉、山田真歩、片桐はいり、橋本愛原作/綿矢りさ『私をくいとめて』(朝日文庫)今年の東京国際映画祭で観客賞を受賞。12月18日より公開。©2020「私をくいとめて」 製作委員会※『anan』2020年12月23日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・尾原小織(大九監督)(by anan編集部)
2020年12月20日「崖っぷちアラサー」「こじらせ女子」「おひとりさま」のどれかひとつでも当てはまる人には、わかりみが深すぎると話題の映画『私をくいとめて』。綿矢りささんによる同名小説を『勝手にふるえてろ』の大九明子監督が映像化した最新作が、12月18日に公開を迎えます。そこで、そんな注目作の魅力に迫るため、今回お届けするのは……。『私をくいとめて』現場取材レポート!【映画、ときどき私】 vol. 331ヒロインは、おひとりさま生活を満喫している31歳の会社員・黒田みつ子。本作では、何年も恋人がおらず、脳内にいる相談役の「A」と会話をしながら楽しく暮らしていたみつ子が取引先の年下営業マン・多田くんに恋をしたことで、“平和な日々”が一変してしまう様子が描かれています。恋愛に対してなかなか一歩を踏み出せなくなった31歳女子のみつ子が繰り広げるむずがゆい恋愛模様は、同世代のananweb読者なら共感せずにはいられないはず。そこで、本作の見どころについてご紹介します。都内某所で行われた撮影現場に現れたのは、みつ子を演じたのんさんと多田くん役の林遣都さん。ここで撮影されたのは、フレンチディナーを楽しんだあと、東京タワーが見える夜道で会話をしながら散歩する2人の姿。少しずつ距離が近づくみつ子と多田くんにとって大事なシーンのひとつです。撮影時には現場付近を通過する新幹線を待つ必要があったり、画角がシビアだったりしたこともあり、ちょっとしたミスも許されなかったのだとか。それだけに、スタッフの方々の間には少し緊張感がただよっているように感じましたが、のんさんと林さんは時折笑顔を見せつつ、楽しく演じられているのが印象的でした。のんさんと林遣都さんの“圧倒的透明感”に魅了される今回が初共演にもかかわらず、息もぴったりだったというのんさんと林さんですが、そんなおふたりの様子を誰よりも近くで見守っていたのは大九監督。そこで、おふたりの魅力について教えていただきました。監督おふたりとも、「どこにでもいそうな、あなたの会社にもいませんか?」という感じをやれるところだと思います。もちろん、見た目麗しいおふたりですが、スッとその役に入って、気持ちよく染まってくださる。それと、おふたりとも本当にかわいいんです。それぞれかわいらしい雰囲気とお姿ですが、合わさると何千倍にもなる。みつ子と多田くんが食事をするレストランのシーンに出てくれた私の友人がおふたりを見て「圧倒的透明感」と言っていたくらいですから。ーー確かに、のんさんと林さんが並んで歩いている姿を見るだけでも、胸がキュンとしてしまうのを感じましたが、監督曰く、みつ子と多田くんがアウトレットモールで買い物をするシーンでもふざけ合うおふたりならではの“化学反応”を感じる瞬間があったのだそう。見事なキャスティングも本作の見どころですが、監督にとって現場で印象的だった出来事とは?30代であることを意識して演じてもらった監督みつ子に関しては、誰にやってもらえばいいのだろうすごく迷いましたが、プロデューサーから「のんさん」と言われたときに、バチっときました。のんさんは、実際の年齢がまだ26歳なので、ときどき喋り方や走り方が幼くなってしまうときもありましたが、30代であるということをすごく意識してやってくれたと思います。実は私が30歳になったとき、あまりの恐ろしさに家を飛び出して、ひとり旅をしたことがありました。それはみつ子の上司のエピソードとして入れていますが、『何かしてないと何ひとつ成し遂げないまま朽ち果てていくなこりゃ!』という不安でいっぱいだったんです。まだ何者でもない自分とアルバイト代だけで貯めたお金が嫌で、それを清めるつもりで一気に使ってやろうと。その恐怖を「経験している者」と「していない者」という違い、女性にとって30歳になることは特別なことだから、それを想像しながらやってほしいとのんさんには説明しました。ーーいっぽうの林さんが演じたのは、原作とはキャラクター設定が少し異なる多田くん29歳。監督多田くんは、私のフィルターを通させていただくことで、私の好みに変換されているのかもしれません。みつ子の家に初めて招待されたときに、うれしくてダッシュで走って行ってしまったので、笑っちゃって、「心はヤッホーだろうけど、普通に去って行く感じでお願いします」と言いました(笑)。ちょっと恥ずかしそうに『はい』って言って、下を向いていてかわいかったです(笑)。ーーそして、もうひとつの注目と言えば、「みつ子の脳内にいるAの声を誰が演じているのか?」ということ。すでにネットでもファンたちが予想をして盛り上がっているところですが、今回はそのヒントもいただきました。監督まずは、「Aをどうやる?」というのはチャレンジではありました。実際、A役の声は一番悩んだかもしれません。原作を読んでいるときから、紳士的な喋り方やみつ子を心地よい気持ちにさせるような声が良いなと思っていました。俳優さんが良いのか、それとも違うほうがいいのかと悩み、最終的にはプロデューサーと話していくなかで、「あっ!彼がいるじゃん!」となって。すごく良い声だということはわかっていたので、面白いと思いました。わかりすぎる気持ちはくいとめられない!ーー紳士的な喋り方で女性を心地よくさせる声の主とはいったい誰なのか……。現在解禁されている特報を見る際には、注意深く聞いて予想してみるのも、本作の公開までの楽しみ方のひとつと言えそうです。ananweb読者なら共感度高めであること間違いなしの本作。いまから作品に関する続報と公開が待ちきれないところです!早く続きが見たくなる特報はこちら!作品情報『私をくいとめて』監督・脚本:大九明子原作:綿矢りさ「私をくいとめて」(朝日新聞出版)出演:のん林遣都ほか製作幹事・配給:日活制作プロダクション:RIKIプロジェクト企画協力:猿と蛇©2020『私をくいとめて』製作委員会12月18日(金)全国ロードショー公式twiter:@kuitometemovie
2020年10月19日