もしかしたら「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないと気付いたゆーとぴあさんの体験を描いたマンガを紹介します。次男が通う療育園の面談をきっかけに自分自身は「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」なのではないかと思うようになったゆーとぴあさん。そんなゆーとぴあさんは25歳のときにテレビ番組を見て、自分は「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないと思っていたのだとか。子どもの定期検診の際、思い切って医師に聞いてみたところ……。★前の話困らないなら診断はいらない?子どものころから忘れ物が多かったり、片付けが苦手だったというゆーとぴあさん。大人になってからも忘れ物でたびたび子どもたちに迷惑をかけてしまうことがありました。自分は自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)かもしれなと思いながら病院へは行っていなかったゆーとぴあさんは、子どもの定期検診で医師に相談をすることに。そこで医師からかけられた言葉は、意外なものでした。次男が通う療育園で忘れ物が多過ぎると指摘されてしまったことを機に、自分自身について見つめ直すことにしてみました。私は子どものころから片付けが苦手だったり忘れ物が多く、母から「ちょっと変な子」と言われることもありました。私自身はかなり悩んだりもしたのですが、自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)の可能性に気付いたのは25歳のとき。ただ、可能性に気付いても病院に行ったりすることはなく……時間だけが過ぎていきました。次男は発達障害を持っているため、定期的に診察を受けています。ついでに私のことについても先生に聞いてみると恐らくADHD(注意欠如・多動症)だと言われました。先生は「別に私生活でそこまで困らないなら、診断とかしなくていいと思いますよ」とあっさり言いました。忘れ物が多いと子どもたちの生活にも支障が出るので困っていると話すも「私もよく忘れます、ADHD(注意欠如・多動症)なので」と笑顔で返されてしまいました。先生いわく、世の中に完璧な人はいないし、私のようなママのほうが家庭の雰囲気が良くなるかもしれないこと。発達障害でも活躍している人はたくさんいると先生はやさしく諭すように、気にすることはないと私に伝えてくれました。私生活でどうにもならないほど困るということはありませんし、正式に診断されたからといって治るものでもない……。先生の言うこともわかりますが、それでも自分のことを知りたい! という気持ちが心の奥底にはあり、診断をしてほしいとは思いながらもどうするべきなのか今も少し迷っています。-----------------自分が「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないことを思い切って相談してみたゆーとぴあさん。自らもADHD(注意欠如・多動症)だという先生は、ゆーとぴあさんの気持ちに寄り添ってくれるやさしい先生でした。長年特性や症状に悩み続けてきたゆーとぴあさんが、自分のことを知りたいという気持ちが膨らんでいくのも自然なことではないでしょうか。先生だけではなく、一緒に暮らす家族ともよく話し合って、不安が少しでも減るといいですね。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。監修/芙和せら先生(一般社団法人芙和せら心理研究所代表理事)公認心理師(国家資格)、シニア産業カウンセラーなどの資格を多数所有。世界初となるフラワー心理セラピーを創始し、芸術療法を中心とした心のケアをおこなっている。「すべての人の心を大切にすること」をモットーに活動している。【芙和先生からのアドバイス】ADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害は問診だけではなく、さまざまな検査をおこない診断を下します。問診を受けただけでは「発達障害の傾向がある」ということしかわかりませんので、正式な診断を受けたい場合は検査も受けるようにしてください。著者/ゆーとぴあ主にインスタとブログで実話を元としたマンガを描いています! 発達障害やその他難病、児童相談所などのテーマを取り上げています。
2023年06月21日もしかしたら「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないと気付いたゆーとぴあさんの体験を描いたマンガを紹介します。次男が通う療育園の面談をきっかけに自分自身は「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」なのではないかと思うようになったゆーとぴあさん。25歳のときにふと見ていたテレビ番組がきっかけで、自分が「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」なのではないかと思うように。そのことを母親に伝えると、まさかの発言が……!★前の話わかっていたなら教えてよ!中学生になったころから勉強について行くことが難しくなり、仕事も長続きしなかったというゆーとぴあさん。そんなある日、自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)に悩むママのことが紹介されているテレビ番組を目にしました。母親に「私、自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)かもしれない」とテレビを指しながら伝えたゆーとあぴさんに対し、母親は衝撃の言葉を放ったのでした。テレビで「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」に何年も苦しんでいたママの特集番組を見た私は、自分にも当てはまる特性や症状があることに気が付きました。どんな反応をされるかわかりませんでしたが、その場で母に「私、自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)かもしれない」と言ってみることに。すると、母からは「私も実は前々からそうじゃないかと思ってたんだよねー」と思ってもいなかった言葉が! どうやら母は、昔から私に自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)の傾向があるのではないかと思っていたようでした。「わかっていたのなら言って欲しかった」とずっと悩んでいた私は拍子抜けしてしまいました。私は片付けや勉強が苦手だったり、忘れ物が多かったりして苦労する場面もたくさんあったのに……。しかし自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)かもしれないと気付いた後も特に病院を受診するようなことはありませんでした。結局、私は自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)なのかどうかわからないまま、夫と結婚し子どもを産みました。-----------------振り返れば子どものころから気になることはたくさんあったものの、テレビ番組をきっかけに自分が「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないと思ったゆーとぴあさん。しかし、母親は前々からそのことに気付いていたようです。本人が悩んでいるのと同じくらい、周りの家族の悩みも深かく、なかなか言いだせなかったのかもしれませんね。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。監修/芙和せら先生(一般社団法人芙和せら心理研究所代表理事)公認心理師(国家資格)、シニア産業カウンセラーなどの資格を多数所有。世界初となるフラワー心理セラピーを創始し、芸術療法を中心とした心のケアをおこなっている。「すべての人の心を大切にすること」をモットーに活動している。著者/ゆーとぴあ主にインスタとブログで実話を元としたマンガを描いています! 発達障害やその他難病、児童相談所などのテーマを取り上げています。
2023年06月20日もしかしたら「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないと気付いたゆーとぴあさんの体験を描いたマンガを紹介します。次男が通う療育園の面談をきっかけに自分自身は「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」なのではないかと思うようになったゆーとぴあさん。思い返せば、子ども時代から思い当たる出来事がたくさんあったようです。中学校への進学後、勉強について行けなくなったそうで……。★前の話中学生になった途端、勉強が苦手に小学生のころ「だらしがない子ちゃん」というあだ名で呼ばれていたというゆーとぴあさん。中学生になると、だんだん勉強について行くことができなくなってしまったのだそう。高校は赤点ギリギリで卒業したそうです。中学生になると勉強にまったくついていけなくなり、数学のテストでは1問しか正解しなかったこともありました。他の科目も半分以下という悲惨な点数しか取ることができませんでした。通信簿はほとんどの科目が5段階評価の2。苦手な数学に至っては1……。そんな成績だったものの、猛勉強の末、公立高校に推薦で合格することができました。猛勉強して入学した高校でも勉強について行くことはできず、赤点ギリギリで卒業しました。高校卒業後は、進学ではなく就職を選択。工場に入社したのですが、3年もたたないうちに退職。その後は、セラピストやマンガ喫茶の店員などいろいろな職場で働いていました。仕事を転々としていた25歳くらいのとき、何げなく見ていたテレビ番組の中で「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」に何年も苦しむママのことが紹介されていました。そこで紹介されていたママの様子と自分に共通することが多く、初めて自分が「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないことに気が付いたのです。-----------------追い詰められた状況になると一気にやる気スイッチが入り、高校受験や就職を乗り越えてきたというゆーとぴあさん。今まで努力することで進学や就職を突破してきたので、自分自身の特性や症状について真剣に調べたり、誰かに相談したりする機会がなかったのかもしれませんね。きっかけは偶然でしたが、テレビ番組で発達障害を自覚できたことは、ゆーとぴあさんにとって大きな一歩となったことでしょう。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。監修/芙和せら先生(一般社団法人芙和せら心理研究所代表理事)公認心理師(国家資格)、シニア産業カウンセラーなどの資格を多数所有。世界初となるフラワー心理セラピーを創始し、芸術療法を中心とした心のケアをおこなっている。「すべての人の心を大切にすること」をモットーに活動している。【芙和先生からのアドバイス】成績不振には次のような理由が考えられます。・知的発達の遅れ・学習障害の可能性・ADHD(注意欠如・多動症)によって集中ができないため何か気になることがあるときは自己診断をせず、病院に相談してください。著者/ゆーとぴあ主にインスタとブログで実話を元としたマンガを描いています! 発達障害やその他難病、児童相談所などのテーマを取り上げています。
2023年06月19日もしかしたら「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないと気付いたゆーとぴあさんの体験を描いたマンガを紹介します。次男が通う療育園の面談をきっかけに自分自身は「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」なのではないかと思うようになったゆーとぴあさん。自分の子どものころのことを思い返し、たびたび「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」の兆候があったかもしれないと気付きました。ゆーとぴあさんは小学生のとき、母親を怒らせてしまったことがあり……。★前の話ゆーとぴあさんは小学生のころ、「だらしがない子ちゃん」というあだ名で呼ばれてしまうほどにボーッとしていることがあったのだそう。髪はボサボサ、左右で違う靴下をはいていたというゆーとぴあさんのだらしなさは部屋にまで影響していたのだとか。そんなゆーとぴあさんに対し、ついに母親が激怒!私は子どものころからだらしがなく、片付けることがとても苦手でした。小学校から帰宅すると、いつも居間をマンガや教科書で散らかしてしまうので母に散々注意されていました。いつものように居間を私物で散らかし、こたつでゴロゴロとしながらマンガを読んでいた私。当然母はと注意してきますが、どうせいつものことだと私は聞く耳を持ちません。しかし、この日の母の様子はいつもと違いました。一向に動こうとしない私に対して、ついに母がブチ切れたのです!「こんニャロ~~! こんなの捨ててやるー!」そう叫びながら、母は居間に散らかっていた私のランドセルや教科書、マンガなどをすべて庭へと投げ捨てたのです……。あまりのショックと驚きに私は、思わず泣きながら叫び声を上げていました。-----------------「片付けないと捨てちゃうよ! 」と、子どものころ親から注意を受けた方も多いはず。ゆーとぴあさんの場合は、本当に私物を投げ捨てられてしまったようです。何度注意しても直らなかったことで、母親は追い詰められていたのかもしれませんね……。大事な私物を捨てられることは、いろいろな意味で忘れられない出来事になりますよね。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。★関連記事:「かわいそうなくらい筋腫ができています」初めて受診した婦人科で手術と言われ #子宮筋腫で開腹手術 6★関連記事:「アカン!」精神的にヤバい…父からの鬼電に幻聴まで聞こえて #預金資産ゼロの父が倒れた話 68★関連記事:「忘れ物し過ぎですよ!」忘れ物が多く、子どもにも迷惑が #私ってアスペルガーなんちゃらかも 1著者/ゆーとぴあ主にインスタとブログで実話を元としたマンガを描いています! 発達障害やその他難病、児童相談所などのテーマを取り上げています。
2023年05月21日もしかしたら「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないと気付いたゆーとぴあさんの体験を描いたマンガを紹介します。次男が通う療育園の面談をきっかけに自分自身は「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」なのではないかと思うようになったゆーとぴあさん。発達障害と向き合っていく中で、とある出来事を思い出しました。その出来事とは一体……。★前の話子どものころから同じミスを繰り返してしまったり忘れ物が多く、鉛筆やお箸を正しく持てないことにも引け目を感じることがあったというゆーとぴあさん。思い返せば、小学生のころの出来事で「これも自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)と関係あるのかな?」と気になる節があるのだそう。それは、授業中にボーッとして上の空になることだったのです。私は昔からボーッとしてしまうことが多かったので、周りからよく注意されていました。ですがボーッとしているように見えても、頭の中は常に何かを考えています。家族と食卓を囲んでいても、脳内はマンガのネタでいっぱいの状態なのです。夫から「何、またボーッとしてたの?」と指摘をされてしまうこともしばしば。そんな私の小学校2年生のときのあだ名は、「だらしがない子ちゃん」。小学生のころの私は毎日忘れ物ばかりで、身なりは整っているとは言えず髪はボサボサ。国語のテストは0点ですし、左右違う靴下をはく始末……。昔の話とはいえ、私のあまりのだらしなさにはぴったりなあだ名でした。さらに学校にいる間だけではなく、下校中もぼんやりすることが多々ありました。上着を腰に巻いて帰れば、帰り道でなくしてしまい、落としたことにも気付かないほどだったのです。-----------------一見ボーっとしているゆーとぴあさんの頭の中は、いろいろな情報であふれているようです。外見からはわからないので、先生やクラスメイト、家族も「ボーッとしている」としか思わなかったのでしょう。見た目だけではわからないこともありますから、その人がどんなことを考えているのか聞いてみることは大切ですよね。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。著者/ゆーとぴあ主にインスタとブログで実話を元としたマンガを描いています! 発達障害やその他難病、児童相談所などのテーマを取り上げています。
2023年05月20日もしかしたら「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないと気付いたゆーとぴあさんの体験を描いたマンガを紹介します。次男が通う療育園の面談をきっかけに自分自身は「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」なのではないかと思うようになったゆーとぴあさん。子どもたちの面談でお箸や鉛筆の持ち方について指摘された際、自分にも心当たりがある、と胸騒ぎがして……。★前の話ゆーとぴあさんは忘れ物が多いだけではなく、何度も同じ間違いを繰り返してしまうことがあったのだそうです。そんなゆーとぴあさんには、子どもに教えることができないことがあるのだそう。そのことを指摘されるとドキッとしてしまうのだとか。私は鉛筆やお箸を正しく持つことを指摘されると、ドキッとすることがあります。長男の面談や次男の面談で、子どもたちの鉛筆の持ち方がグーと握るような形になってしまうことがあると指摘を受けてしまいました。先生方からは、「家庭でも指導してください」と言われ、次男に至っては「しつけ箸でなく普通の箸の練習もお家でしてください」と言われてしまいました。ですが、実際のところ私自身が鉛筆やお箸を正しく持てないのです。それを理由に、子どもたちに正しい持ち方を教えることができない……とお箸や鉛筆の持ち方を教えることを避けていたのでした。小学生のとき、母から鉛筆の正しい持ち方を教えてもらいましたが、「別に書ければいいじゃん」と思い、何でちゃんとした持ち方じゃないといけないのか理解できませんでした。しかし、親となった現在、ちゃんとした鉛筆やお箸の持ち方ができる大人でないと子どもに教えることができない! と気付きました。いまさらではありますが、子どもたちと一緒に正しい持ち方ができるよう猛練習中です。-----------------小さなころから、鉛筆の持ち方を指摘されていたゆーとぴあさん。当時はどうして正しい持ち方をしなければならないのかわからなかったようですが、子どもに正しい持ち方を教えてあげたいという思いで意識が変わったようです。必要だと思ったときが、勉強する一番のチャンスかもしれません。正しい持ち方への道のりは遠くても、懸命に努力するゆーとぴあさんの姿を子どもたちにも見てもらいたいですね。著者/ゆーとぴあ主にインスタとブログで実話を元としたマンガを描いています! 発達障害やその他難病、児童相談所などのテーマを取り上げています。
2023年05月17日もしかしたら「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないと気付いたゆーとぴあさんの体験を描いたマンガを紹介します。次男が通う療育園の面談で「忘れ物が多い」と保育士から注意を受けてしまったゆーとぴあさん。自分自身の忘れ物の多さに「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」なのではないかと思うように。思い返せば子どものころから心当たりがあり……。★前の話療育園での面談をきっかけに自分自身に「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」の疑いがあるのではないかと思い始めたゆーとぴあさん。発達障害と向き合い、治療に向けて一歩踏み出したいと考えるようになりました。そこで自分の子どものころのことをふと思い返すと、今も変わっていない一面がありました。私自身の子どものころを思い返すと、「そういえば今と変わっていないな……」と感じる出来事が。小学生のころから、絵を描くことが好きだった私は家でよく落書きをしていました。自由帳に描けばいいものを、学校に提出しなくてはならない大事なプリントの裏に落書きをしてしまったことがありました。それを見つけた母からは「あー! そのプリントに描いちゃダメー!」と怒られてしまい……。一体何のプリントなのか、本当に絵を描いてもいい紙なのか確認せず、落書きを繰り返す娘に、母はさぞ困っていたことだろうと思います。しかし今も変わらず、無意識のうちに提出しなければいけないプリントに落書きをしてしまうことが。絵を描いてはいけないものだったと気が付くのはいつも紙いっぱいに落書きを終えた後……。同じ失敗を繰り返してしまうということも、自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)の特性の1つのようです。振り返ってみれば、小学生から同じことを繰り返し、現在も変わらない自分がいました。-----------------目の前の事に集中するあまり、落書きをしている紙が大事なプリントと気が付かないというゆーとぴあさん。子どものころだけではなく大人になった今でも、同じ失敗を繰り返しているようですが、短所と長所は紙一重ではないでしょうか。絵を描くことに対する集中力が、現在の活動につながっているともいえますよね。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。監修/芙和せら先生(一般社団法人芙和せら心理研究所代表理事)公認心理師(国家資格)、シニア産業カウンセラーなどの資格を多数所有。世界初となるフラワー心理セラピーを創始し、芸術両方を中心とした心のケアをおこなっている。「すべての人の心を大切にすること」をモットーに活動している。著者/ゆーとぴあ主にインスタとブログで実話を元としたマンガを描いています! 発達障害やその他難病、児童相談所などのテーマを取り上げています。
2023年05月16日もしかしたら「自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)」かもしれないと気付いたゆーとぴあさんの体験を描いたマンガを紹介します。ゆーとぴあさんの次男は発達障害を抱えており、療育園に通っています。ある日、療育園の面談で保育士から注意を受けてしまったゆーとぴあさん。次男のことかと思いきやまさかの自分自身のことで……。★関連記事:「見るのきついな」授業参観で息子が黙ってしまって… #看護師でシングルマザーな私の話 42次男が通っている療育園にて面談をすることになったゆーとぴあさん。保育士から「忘れ物があると次男はパニックになる」という指摘を受けました。それに対して、申し訳なく思っていると、保育士から「ママ、忘れ物し過ぎですよ!」と怒られてしまいました。ある日、次男が通う療育園の面談で保育士さんから「忘れ物があると次男くんはパニックになってその日1日、ずっと機嫌が悪いんです」と告げられました。元々私自身に忘れ物が多く、療育園の持ち物を忘れてしまうことがありました。保育士さんからも「ママ忘れ物し過ぎですよ! 次男くんのほうがしっかりしていますよ」と言われる始末……。保育士さんからは小学校へ入学したときの練習も兼ねて、次男と一緒に持ち物を確認をするように。実は私に忘れ物が多いのは今に始まったことではありません。当時小学2年生だった長男のお弁当を作り忘れたのは1年間の間だけでも2回あり、週明けの月曜日には必ず何かを忘れてしまうほどです。子どもは病院で診察をしてもらったり療育園に通ったりしているけれど、私自身が診断をしてもらい改善していかないと「子どもにとって良くないのでは……」と思い始めました。以前、発達障害の専門書を読んだときに「多分自分は自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)なのだろう」となんとなく思っていました。しかし大人の治療は薬が高額なお金もかかる上に副作用も心配。いまさらどうすればいいのだろう? と悩み、なかなか受診や治療に向けての一歩が踏み出せずにいます。-----------------保育士からの指摘と提案をきっかけに、自身のことについて悩み始めたゆーとぴあさん。自分が忘れ物を繰り返すことで、子どもの日常生活に支障が出るとなると心配です。診断を受け、治療を始めることは、大人であっても心身ともに負担が大きいのではないでしょうか。それでも、子どものために! と行動を起こそうと悩んでいるゆーとぴあさんを応援したいですね。※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。監修/芙和せら先生(一般社団法人芙和せら心理研究所代表理事)公認心理師(国家資格)、シニア産業カウンセラーなどの資格を多数所有。世界初となるフラワー心理セラピーを創始し、芸術両方を中心とした心のケアをおこなっている。「すべての人の心を大切にすること」をモットーに活動している。【芙和先生からのアドバイス】忘れ物が多いことや何かをしているときに考え事をしてしまう過集中などはADHD(注意欠陥・多動症)の特性です。他にもASD(自閉スペクトラム症)やLD(学習障害)など発達障害にはさまざまな種類があり、それぞれに特性があります。何か気になることがあれば自己診断せず、病院に相談して明確にしたほうが良いです。発達障害の特性は治すというものではなく、一生付き合っていくものです。特性を理解した上で社会に適応できるようにトレーニングすること、周りも特性を理解して対応することが大切です。(ただし、発達障害から二次障害として、うつ病などを発症した場合は治療が必要です。)また、自立支援医療(精神通院医療)の制度を使うと診察や薬の費用が軽減されます。一般に3割負担の方が1割負担になります。著者/ゆーとぴあ主にインスタとブログで実話を元としたマンガを描いています! 発達障害やその他難病、児童相談所などのテーマを取り上げています。
2023年05月14日生まれつき耳の聞こえない映画監督が、アスペルガー症候群の友人との関係に悩み、彼女と友達でいる方法を考えるために、自分たちに向けてカメラを回したドキュメンタリー映画 『友達やめた。』の公開が決定。予告編とともに、今村彩子監督と“まあちゃん”からのコメントが到着した。空気を読みすぎて疲れてしまい、人と器用につき合うことができない、アスペルガー症候群のまあちゃん。理解があるような顔をして内心、悶々としたものをかかえる映画監督のわたし。些細なことで、ふたりの仲がギクシャクするたび、これって、彼女がアスペだから? それとも、わたし自身の問題なの? わかり合おうとしなくちゃ…いい人でいなくちゃ…ああ、でも! まあちゃんと友達でいるために、わたしは自分たちに向けてカメラを回しはじめた…はずが、たどりついた答えは、友達やめた!?沖縄~北海道日本縦断の自転車旅を通してコミュニケーションの壁に苦しむ自身の姿を、エイヤ!と晒した『Start Line』から4年、生まれつき耳のきこえない今村監督が、新たな葛藤と向きあっていく本作。人と人ってほんとうに分かりあえるの? 友達って何? 普通ってどういうこと? わたしたちを縛るやっかいな“常識”を捨て、もっと自由に軽やかに、心と心を重ねあう。ヒリヒリして、イラッときて…でも何だかほっこりする、まあちゃんとわたし、ふたりの“違い”から生まれたものがたり。“見えない障がい”といわれる発達障がい当事者の困りごとにフォーカスを当てるのではなく、「自分と異なるバックグラウンドをもつ人とどうすればうまく共存できるのか」という極めて本質的な問題について、理想論だけではなく感情の部分にまでしっかりと向きあった本作は、<わたし=今村監督>と<まあちゃん>、ふたりだけの小さな世界の物語でありながら、誰しもが経験したことのある人間関係のすれ違いや心のモヤモヤを描き、人間の面倒くささとややこしさ、その尊さと愛おしさを嫌味なく感じさせつつ、クスリと笑える作品に仕上げている。監督今村彩子これまで私は「耳がきこえない」という少数派として、物事を捉え考えて生きてきた。でも、アスペルガー症候群のまあちゃんから見ると私は「一般の脳みそ」を持った人間、多数派となる。私は“多数派”に立った経験がほとんどない。まあちゃんと親しくなるにつれ、行動で戸惑うことも出てきた。その度、私は悩み、葛藤するようになった。 そこで、私はまあちゃんを「撮る」ことにした。どうしたらまあちゃんと仲良くやっていけるのかを考えるために。撮ったものを画面で見て、更に編集することで客観的に見つめられると思ったのだ。「友達やめた。」は、こうして生まれた。「いい○○(友達、家族、パートナー etc…)でありたい」と考える人は多いと思う。でも、自分の役割を果たさなければと、頑張りすぎてはいないだろうか。実際、私は「いい友達でいなきゃ」と、たくさんのことを飲み込み、我慢を続けて爆発した…。この映画が「○○でなければいけない」と自分で自分を縛りつけている縄をほどき、あなたが気にかけているあの人との人間関係を見直すきっかけになったら、こんなに嬉しいことはない。出演者まあちゃん初めて監督に会ったのは、12年前のこと。お互いあいさつ程度で、話した記憶はない。わたしは監督が映画を作っている人だということを知っていたが、「食っていけてるんだろうかこの人は?」と思っていた。意気投合してひんぱんに会うようになり、ちょいちょい「まあちゃんを撮りたい」と言い出すようになった。わたしに何のネタがあるのか?と、ほとんど聞き流していた。冗談で言ってるのだろうと思っていた。それぐらいの空気はわたしにだって読める。わたしの知り合いの中で「いただきますを言わないから」「飲み物を勝手に飲んだから」「お菓子を勝手に取ったから」「ピシッと叩いたから」といって本気で怒るのは、監督だけだ。なぜそんなに怒るのか、わたしには正直わからない。いまでもわからない。人はしょせんわかり合えない。それは圧倒的事実だ。大事なのは、わかりたいという気持ち、わかろうとする努力なのだと思う。『友達やめた。』 は9月19日(土)より新宿K’s cinemaほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)
2020年07月07日アスペルガー症候群とは?アスペルガー症候群(AS)はコミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきづらく、知的障害や言葉の発達の遅れがないものをいいます。明確な原因は現在も分かっていませんが、何らかの脳機能の障害と考えられています。アスペルガー症候群には大きく分けて3つの症状があります。「コミュニケーションの問題」「対人関係の問題」「限定された物事へのこだわり・興味」です。これらの症状は、成長発達の段階で現れてくる症状が異なってきます。ここでは、多くみられる症状について、年齢別に具体的に紹介します。年齢別に見たアスペルガー症候群の症状の現れ方出典 : アスペルガー症候群の症状は、年齢別でどのように現れ方が変化するのでしょうか?成長過程によって変化するアスペルガー症状の特徴や困りごとについて説明します。乳児(0歳〜1歳)アスペルガー症候群は知的な遅れがなく、見た目や行動からは分かりづらい障害のため、大人になっても気がつかない場合もあります。特に、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、症状が分かりやすく出ることはありません。ですから、すぐにアスペルガー症候群と診断されることはありませんし、またアスペルガー症候群の症状は他の発達障害の症状と共通するものです。しかし、アスペルガー症候群と診断された人たちは乳児期に特徴的な行動を共通してとることが多いです。それらを紹介します。アスペルガー症候群の乳児は、大きな音や声に過敏に反応する場合があります。大人が大声で笑ったり、くしゃみをしたりすると嫌がって泣きます。また、電車やデパートなど騒々しいところに連れて行くとずっと泣きっぱなしになってしまうなどが見られます。これを聴覚過敏といいます。アスペルガー症候群のある人には、このような聴覚の過敏さをはじめ、視覚、触覚などさまざまな感覚の過敏さがある場合が多いと言われています。アスペルガー症候群は知的な遅れがなく、見た目や行動からはわかりづらい障害のため、大人になっても気がつかない場合もあります。特に、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児では、症状が分かりやすくでることはありません。ですから、すぐにアスペルガー症候群の診断がでることはありませんし、またアスペルガー症候群の症状は他の発達障害の症状と共通するものです。しかし、アスペルガー症候群と診断された人達は乳児期に特徴的な行動を共通してとることが多いです。それらを紹介します。親が目を合わせようとしても視線が合いづらかったり、笑いかけても反応しないなども特徴の一つとして挙げられます。乳児が母親の動作をまねることを「動作共鳴」といいますが、アスペルガー症候群のある乳児はこの「動作共鳴」が苦手とされています。焦点が合いづらく、目を合わせようとしないことはアスペルガー症候群の症状の一つである可能性があります。幼児(2歳〜小学校就学)言葉を覚え出し、会話ができるようになる幼児期のアスペルガー症候群の症状の現れ方をみていきましょう。このころになると症状が見えやすくなり、アスペルガー症候群があるかの判別がしやすくなります。例えば、母親が怒るときに見せる表情や、空気を読み取ることが苦手です。何かしようとしたときに母親が怒った表情をしてその行動を止めようとしても、構わず動作に移します。言葉ではっきりと説明しないと理解しにくいのです。幼児は、数回同じ行動を繰り返すことで、「やってはいけないこと」や「言われなくても分かること」が増えてきます。しかし、アスペルガー症候群のある幼児は、その都度説明しなければ理解しにくいとか、具体的に言われないと理解しづらいという特徴があります。また、注意された内容から応用して考えることも苦手なので、繰り返し伝えたことは理解できても、少し環境が変わると理解できないことがあります。幼児期ともなれば、同じ月齢の子たちと一緒に遊ぶことを覚えます。通常であれば自然に他人との関わりを持とうとしたり、他人に興味を持って輪に入ろうとするのですが、アスペルガー症候群のある幼児は、公園などで同年代の子が遊んでいても一緒に遊ぼうとしないことが多いです。もちろん恥ずかしがり屋で輪に入れない幼児はたくさんいますが、人間関係をうまく築けないことはアスペルガー症候群の一つの特徴として挙げられます。小学生(6歳〜12歳)本格的な集団行動が始まる小学生のころになると、本人がその環境で過ごしにくくなる場面が増えてきます。周囲の理解が必要になってくる時期でもあるので、保護者や周りの大人たちは具体的な対応を考えるようにするとよいでしょう。朝はホームルーム、中間休みは15分、掃除は15時から、など一定の規則を守ることが得意です。すでに決められていること、法則性があることにはきちんとしたがって行動することができます。反面、イレギュラーな時間割やルーティーンが変更になると慌ててしまったり、それらに従うことが難しくなったりすることがあります。小学生になると、特定の友人たちと長い時間を過ごすことになります。ですが、アスペルガー症候群のある子どもは、周囲の人の気持ちを理解することが苦手だったり、マイルールにこだわってしまったり、場違いな発言をしてしまい輪を乱してしまったりする場合があります。周囲と協調するのが苦手で、一人遊びに没頭してしまい集団遊びができないこともあります。アスペルガー症候群には知的発達に遅れがないので気がつきにくいですが、興味や関心が狭く特定のものにこだわるという特性から、特定の科目だけずば抜けて得意となるが、いくつかの科目はとても苦手だというケースも見られます。アスペルガー症候群に加え、学習障害(LD)もある場合などには、聞く、読む、書く、計算する、推論するなどの特定の能力を学んだり実行することに困難を示すことがあります。中高生(12歳〜18歳)出典 : 中高生になると、思春期とも重なり、周りに理解されないことで本人が苦しむケースも珍しくありません。大人へと成長する段階でとても重要な時期なので、家庭や学校での理解と適切な対処が大切になってきます。小学生時代に比べ、中高生になると、趣味・嗜好がより深まり、クラス内でのグループもはっきり分かれてきます。自分の居場所が分からなくなる、なかなか友人が作れないなど、コミュニケーション能力の困難さゆえに出てくる人間関係の問題が多くなります。学習障害もある場合、中高生になると学習内容がより高度となるため、苦手分野の学習についていくのがより困難になります。しかし、得意分野や興味のある科目に対しては、熱意を持って深く掘り下げて取り組むといった特性もあいまって、好成績を出せるようになるなど、本人の強みが明確になってくる時期です。このころに将来の夢やビジョンを一緒に描けるように、周りの工夫や理解、指導が重要となってきます。場の空気を読めないことで友人関係がうまくいかなくなったり、周りから浮いてしまうことで孤立してしまうケースがあります。最悪の場合はいじめに発展したり、それを原因として不登校になってしまうこともあります。不登校の要因としては、人間関係だけでなく、学習面が原因となることもあるため、登校渋りなどが生じた場合は学校と連携しての早期の対応が重要になります。成人期(18歳〜)社会生活を送っていくためには、周りのサポートや理解はもちろん、何より本人が自分自身を理解し、対処法を用意しておくことが重要です。障害特性によるコミュニケーションの苦手さや、周囲の状況を判断して協調することの困難さ、不注意・こだわりなどにより、仕事上のミスや、遅刻、スケジュール管理ができない、手際が悪いなどのマイナスな評価が多くなってしまうことがあります。また、職場での付き合い、上司との関係に悩んでしまうこともあります。自分自身の得意なところや苦手なところを理解し、苦手な部分の対処法を考えたり、相談できる人を増やしたりすることが大切です。周りに理解を得られないまま困難な人生を送ってきたことから、いわゆる「二次障害」を引き起こしてしまう可能性が高くなります。うつ病になったり、パニック障害を併発したり、ひきこもりや家庭内暴力などを起こしてしまう場合もあります。早めに支援機関・医療機関に相談するようにしましょう。アスペルガー症候群をもっと知るためのリンク集「もしかしてアスペルガー症候群?」お子さんの発達等について、気になる症状があるときには、次のコラムが参考になります。まとめアスペルガー症候群は、年齢・成長発達の段階によって目立つ症状が異なります。早期に特性に気づき、一人ひとりに合った環境をつくること、適切な教育を行っていくこと、苦手なことの対応方法を工夫していくことで、逆に特性を強みとして活かすこともできます。ご紹介したさまざまな症状に気づいたら、早めに専門機関に相談するなど、アスペルガー症候群がある人にとって必要な支援が得られる体制をつくれるようにしましょう。アスペルガー症候群は、2013年に発行されたアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)で「自閉症スペクトラム障害(ASD)」の中にまとめられていますが、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(※)による診断を行う医療機関もあること、すでにアスペルガー症候群の診断を受けた人もいるため、本記事ではアスペルガー症候群という用語を用い、症状や特徴を説明しました。※ICD-10について:2019年5月、世界保健機関(WHO)の総会で、国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が承認されました。日本国内ではこれから、日本語訳や審議、周知などを経て数年以内に施行される見込みです。
2019年10月31日医学的にアスペルガー症候群(AS)の発現時期は分かっているの?アスペルガー症候群(AS)は社会性やコミュニケーションの困難を主な特性とする発達障害です。実は、アスペルガー症候群は、2013年のアメリカ精神医学会の診断基準『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)発表以降、自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害と呼ばれることが多いと言われています。ですが世界保健機関(WHO)による『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)による診断基準を用いる医療機関や行政などでアスペルガー症候群を用いる場合があり、すでに確定診断を受けている当事者もいることから、本記事ではアスペルガー症候群という障害名を使用していきます。アスペルガー症候群の素因は先天的な遺伝的要因にあるのではないかと考えられています。それが胎児期や出生後に脳や心身が発達する中で様々な環境要因と相互に影響し合って脳機能障害として発現すると言われています。一般的には症状成長につれ顕著に発現するようになります。幼児期、幼稚園や保育園に入るようになり、集団参加や社会的な機能が要求される時期になると、なんらかの症状が目立ち始めると言われています。コミュニケーションと社会性の困難が、周りの子や大人と関わるようになるとそれが明らかになる場合が多いのです。一方で、知能の発達に遅れがないことなどから見過ごされがちで、学童期以降や大人になってから気づくケースも少なくありません。せせらぎメンタルクリニック 「アスペルガー症候群とは、どのような特徴を持つ障害なのか」アスペルガー症候群の原因は?アスペルガー症候群の原因ははっきりとわかっていません。未だ研究が進められている段階ですが、現在ではアスペルガー症候群を引き起こす原因は1つではないと考えられています。様々な要因が複雑に影響しあい、様々なみちすじを通って発現するため、一部の人に当てはまる原因があっても、すべての人に共通する原因を限定することは非常に難しいと言われています。ですが、親のしつけや育て方の問題といった要因でアスペルガー症候群が起こっているという心因論は誤りであることがはっきりしています。以下に現在考えられている主な要因と、アスペルガー症候群の症状を引き起こす原因となる脳機能障害について詳しくご紹介します。アスペルガー症候群には遺伝的な要因が大きいと考えられ、どの遺伝子が関連するかという研究が盛んに進められてきました。最も中心的な関連遺伝子と考えられているのが、シナプスの形成とシナプスの機能にかかわるタンパク質をつくるために必要な情報にかかわる遺伝子です。たとえば、シナプスの形成に関与する遺伝子であるNLGN3やNLGN4、これらと機能的にかかわりの深いSHANK3などが自閉症スペクトラムとの関連が指摘されています。つまり、シナプスにおける神経伝達の軽微な異常によって、自閉症スペクトラムに見られる精神発達に障害が引き起こされると考えられています。(飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』合同出版,2014年/刊p.95~96より引用)アスペルガー症候群単独の研究ではありませんが、上記を含め、自閉症スペクトラムの関連遺伝子が数十報告されています。ですが、さまざまな遺伝子が複雑に関連しているため、原因となる遺伝子を特定することはできないと考えられています。これらの遺伝的要因の関与度が高いことは、遺伝情報が一致している一卵性双生児における一致率(2人とも自閉症スペクトラムである比率)の調査からも推測されています。2000年以降の大規模な双生児集団を対象とした調査では、遺伝要因の関与度を6~7割とした報告が多い。最新の報告はスウェーデンで実施された大規模調査で、ASDにおける遺伝要因の関与度は約50%だった。(鷲見聡/著『発達障害の謎を解く』日本評論社、2015年/刊p.17より引用)これらの調査から、アスペルガー症候群は遺伝的要因が大きく関与する先天的な脳の機能障害であることは確かですが、完全に遺伝子情報が一致している双子間でも発現率が100%ではないということもわかります。この結果は遺伝子以外の要因も関与しているということを示します。それらが環境的要因と呼ばれるものです。どのような環境因子が関わっているかは研究段階ですが、遺伝的要因だけでなく環境的要因も相互に関係しあって脳機能に偏りを引き起こし、症状となって現れると考えられます。アスペルガー症候群の特性を生じさせていると考えられる脳機能の偏りについても、様々な説が研究されています。以下の中から複数の原因を持ち合わせている場合もあれば、脳以外がアスペルガー症候群の原因となっているとも考えられます。1.脳領域間の機能的連結低下脳内のネットワークの連結機能がうまくいかず、定型発達の人の場合と比べて機能が低下していることからアスペルガー症候群になるのではないかという説があります。これはアスペルガー症候群に限らず、自閉症スペクトラム障害に含まれる全ての障害に関しての原因だと考えられています。2.社会的な活動をするための脳の部位の機能異常人の脳には部位ごとに役割があります。その中に社会的な活動をするために使う部位もあり、以下のような部位に異常が起きたり働きが弱かったりするため、うまく人の表情や感情が理解できないのではないかと言われています。・扁桃体(へんとうたい)…人の表情を認識し感情を読み取る部位です・紡錘状回(ぼうすいじょうかい)…紡錘状回は人の顔を認識する部位です・上側頭溝…人の目や口などの部位の動きを認識する部位です・前頭葉…前頭葉にはミラーニューロンと呼ばれる神経が存在しており、人に対する「共感」の感情に関わっていますUpload By 発達障害のキホン3.小脳の異常小脳は、平衡感覚や強調運動などに関わっていると言われています。そのため小脳に異常が起きると、バランス感覚をあまり持てなくなると言われています。ほかにも、小脳に異常が起きると感情や認知にも影響があるのではないかと報告されていますし、自閉症スペクトラム障害の中には実際に小脳への異常が見られた人もいます。4.脳内物質の異常アスペルガー症候群が含まれる自閉症スペクトラム障害では、脳内物質に異常があるという報告があります。普通の人と比べて、血中オキシトシンが低い、セロトニンが高い、血中グルタミン酸が高いという違いが見られたという研究があります。アスペルガー症候群は親から子どもへ遺伝するの?アスペルガー症候群が含まれる自閉症スペクトラム障害に遺伝的な要因については、すべてが解明されているわけではありません。ですが、一つの遺伝子の変異が発症につながる障害ではないと考えられています。素因となる関連遺伝子が多数あり、その組み合わせや相互の影響による多因子遺伝であるため単純に親からの遺伝子が原因となって発現するということではありません。また、遺伝子だけではなく、そのほかの環境的な要因が複雑に重なった場合に現れるため、親にアスペルガー症候群があるからといって100%子どもに遺伝するとは言えません。また、両親ともに定型発達の場合でも、アスペルガー症候群の子どもが生まれる場合もあるのです。一方で双生児間や家族間研究も進み、遺伝子が近いほど、自閉症スペクトラム障害が発現しやすいという報告もあります。あくまで可能性として考えられている段階ですが、家系としていくつかの関連遺伝子を体質として持っている場合に加え、家族で何らかの環境要因の条件が近いことが重なってその傾向を生むからではないかと推測されています。参考書籍:飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』(合同出版,2014)アスペルガー症候群を検査する方法はあるの?アスペルガー症候群は先天性の発達障害ですが、出生前に検査する方法は現在ありません。また、血液検査や病理検査といった検査からでも判別はできず、出生後すぐの診察や検査では診断することができません。成長に従い、アスペルガー症候群によくみられる性質や特性が顕著に現れると、子の成長に親が疑問を持ったり、気になる点が出てきて専門機関に相談し気づくケースが多いです。医療機関では、問診や心理検査など様々な情報を総合してアスペルガー症候群と診断を受けます。アスペルガー症候群は知的な発達の遅れが見られない障害です。また、一人ひとりの特性は程度の違いもあり、軽度の場合やトラブルにならない場合は単に「個性」として受け取られることも少なくありません。そのため大人になっても自分の障害に気づかない人もいます。こういった状況が、アスペルガー症候群が気がつきにくく、診断も難しい障害とされているゆえんです。アスペルガー症候群の治療法はあるの?アスペルガー症候群の根本的な原因をなくす治療法や、画期的な治療薬はありません。ですが、個々にあった環境や工夫の中で療育や支援を受けることで、より生きやすい生活を送ることが可能です。現在、心理療法やアスペルガー症候群のある人に並存しやすい易刺激性への薬物治療のほか、療育的アプローチ、保護者や周りの人が接する方法を学ぶペアレントトレーニング、過ごしやすい環境を整える環境調整などが一般的によく用いられます。信頼できる医療機関や専門家とつながり、早期にサポートを行うことが重要です。今、困っていることの原因にも目を向けることが重要明確な原因が解明されていませんが、現在様々なデータに基づく実験や検証がされています。原因を探る研究は、今後の治療法を探るためにはとても重要です。ただし、一人ひとりが「なぜアスペルガー症候群になったのか」ということにこだわって原因探しをすることは、その人が今困っていることや特性とどう付き合っていくかを考える上では、あまり意味がないのかもしれません。その代わり、どんなことが原因で症状や困りごとが現れているのかに着目し、考えてみると良いのかもしれません。アスペルガー症候群は、早期発見すれば適切に療育や支援が受けられますし、大人になってからでも十分にトレーニングを積んで、より過ごしやすい生活を手に入れることは可能です。一人で抱えこまずに、専門機関や医療機関と連携し、本人が生きやすい環境を作っていきましょう。参考書籍:飯田順三/編・著『アスペルガー症候群の子どもたち』(合同出版,2014)参考書籍:鷲見聡/著『発達障害の謎を解く』(日本評論社,2015)
2018年10月05日アスペルガー症候群の娘、不登校がきっかけで小学3年生から睡眠障害にアスペルガー症候群の娘は小学校2年生の2学期から欠席日数が目に見えて増えはじめ、3学期からは全く学校へ行けなくなってしまいました。それでも2年生の間は放課後登校もできたし、そこそこ元気に過ごしていたのですが、担任もクラスも変わった3年生の4月から夜眠れなくなってしまったのです。「布団に一緒に入って」「眠れない」と言っては泣く日々が続きました。現状を打破しようと特別支援学校に転籍して訪問指導を受けたものの、担任の先生によって無理やり元の小学校に登校させられ続け、夏休み明けには完全に心も体も折れてしまいました。娘は完全不登校となり、それと同時に昼夜逆転生活になりました。夜は寝ないでゲーム三昧、夜中にあれこれと食べたがる生活に「この子は将来どうなってしまうんだろうか」と真っ暗な気持ちになったのをよく覚えています。昼夜逆転よりつらい!”昼夜回転”する睡眠障害になった娘Upload By ヨーコ次第に娘の睡眠リズムは、寝つく時刻と起きる時刻が毎日少しずつ遅れていくようになりました。これは、概日リズム睡眠障害のなかでも『非24時間睡眠覚醒症候群』といって、寝つく時刻と起きる時刻が毎日遅れていく病気の症状にぴったりあてはまります。この病気にかかると、眠りにつく時間が毎日30分~1時間ずつ遅れていき、起きる時間も後ろにズレていきます。当時の娘の睡眠リズム表を見ると約1ヶ月で生活リズムがぐるりと24時間一回転していることが分かります。最初はその法則がつかめなくて、「この子の睡眠リズムはどうなっているの?」と混乱したものでした。親としてここがツラかった!娘の昼夜回転生活の日々当時まだ9歳だった娘は自分自身の変化について行けず精神的にも不安定になっていました。寝ている私を起こして「眠れないからママは起きてそばでゲームしていて」と要求したり、「上の部屋の人の物音が怖い。変な物音が聞こえた」と怯えたり。食事も無茶苦茶な時間に取るようになりました。しかも、ジャンクフードや冷凍食品を欲しがるようになったので、食事を用意するストレスは相当なものでした。疲れた体で、せっかく手づくりの食事をつくっても「カップラーメンがいい」と言われたり。朝、昼、晩と献立を立てて盛りつけて出すという、今までの食事の用意の仕方は全く通用しなくなりました。とにかく要求されたときに食べさせるだけで精いっぱい。栄養バランスは気になるけれど、本人に"ちゃんとした"食事をとる意思がないのでどうしようもありません。「今食べさせているのは朝ごはんなの?晩ご飯なの?私が食べているのは何ごはん?」という感じで時間感覚はあっという間に失われ、娘の時間と自分の時間が溶けあってしまうような感覚を味わっていました。他に家族がいなかったのが唯一の救いでした。これ以上生活時間の違う人の世話をするのは、疲れ切った私には無理だったと思います。あっという間に私の生活リズムは娘に支配され、狂ってしまいました。でも、一般的な用事や買い物は昼間にしなければならないので、慢性的な睡眠不足にストレス、疲労で自律神経はズタズタに。頭痛、胃腸炎、発熱は日常茶飯事、加えて元々あったウツ状態が悪化して常に「死にたい」と思いながら過ごす日々が続いたのです。主治医からは「お母さんまでが娘さんの生活を否定したら彼女の居場所がなくなってしまう」と生活に関しては注意しないように言われていました。私自身もツラかったけれど「今、娘が睡眠障害になったのは心を守るためだから」と思っていたので治そうとは全く考えていなかったのです。でも周囲は違いました。不登校に関しては意外と「大丈夫だよ、行かなくても」と理解を示す人が多いわりに、睡眠障害の話をすると「どうしてそんな生活させているの!?だめよ、生活リズムだけはちゃんとさせなきゃ」と口をそろえて言うのです。一方的に責められた私は、自分の考えや主治医の助言を説明する気にもなれず、心を閉ざしてしまったのでした。これは本当にツラかった…。娘に少しだけ自立してもらう。親子で倒れないために…出典 : 睡眠障害になるまで追い詰められた娘の姿を見て「学校へ行かせる」ということをあきらめ、本人も「もう学校へは行かない」と宣言してからは、少しずつ元気を取り戻してきました。最初は私がついていなければカップラーメン一つつくることができなかった娘ですが、小学4年生になるころには、電子レンジや電気ポットの使い方を教えると、一人で冷凍パスタやカップラーメンをつくることができるようになりました。私が寝ていても一人で食事をとれるように成長したのです。そこで私は、自分の寝る時間を決めて「ママは夜は何時に寝るからそれからは一人で過ごしてね」と宣言。娘はすんなり受け入れてくれ、私はやっと自分の生活リズムを取り戻したのでした。娘の睡眠障害は今も治っていません。ですが、娘の情緒も安定して精神的にも自立しつつある今、あのころの苦しみは嘘のよう。今は平和に共存しています。
2018年09月17日「あなたは依存症です」医師の言葉に救われた出典 : 発達障害に詳しい病院に転院して約1年半が経ちました。先生のアドバイスは発達障害の特性を踏まえており、ときには痛いほど的をついてきます。ある日の診察で「深夜になってもネットを止められないんです。1日の終わりに、ホッとリラックスしながら、満足するまでSNSをやったり、いろんなサイトを見て回ったり、ネットゲームを楽しまないと気が済まなくて」と言うと、「それなら時間を決めて無理やりパソコンをシャットダウンさせるソフトがあるから、それで止めるようにしてください」とアドバイスされました。探してみると、Windowsでは「Wise Auto Shutdown」という無料ソフトがあり、時間を決めると5分前からカウントダウンが始まって、時間がくると容赦なくシャットダウンされます。ただこのカウントダウン、キャンセルボタンで止めることができるのです。次の診察で「先生、ソフトを入れてみましたが、キャンセルボタンを押してついついそのまま続けてしまうんです。ひどい日には朝までやっていることもあります」と正直に言うと、「あなたは依存症ですよ」と衝撃的な一言を言われてしまいました。「え、娘がネットやゲームの依存症なのは分かっているけど私もなの?」とショックでした。容赦なく先生の言葉は続きます。「まぁね、発達障害がある人に、併発していることが多いんですけどね」「先生、なんだか気分が重くなってきました」「重くさせるように言ったんです。『大丈夫、いつでも止められますよ』なんて言われたら止めないでしょ?アルコール依存症などと一緒ですよ」あきらめきれない私はなお先生に食い下がりました。「ネット小説を読むのも大好きなんですけど、じゃあ本で読めば依存症じゃないんですか?」「それなしではいられないのなら、やはり依存症ですよ」あー、ばっさりやられてしまいました。くやしい。でも、私はそういう病気だったんだと分かったら、ふっと楽になったのです。それから生活習慣をどうすればいいのかという話になりました。すでに睡眠障害状態だった私は「早寝早起きをしなさい」と言われることを恐れていました。だって、それができるくらいなら苦労しないというか自分にできるとは全く思わなかったからです。「先生、私は朝10時ごろに起きるのが精いっぱいなんですけど」「それなら深夜2時に寝て朝10時に起きればいいです。できもしないような目標を立てても仕方ないでしょ。それと睡眠薬は増やしませんよ。そういう問題じゃないですからね」この言葉は、目からウロコでした。そうか、自分にできる範囲で目標を立てればいいんだ!と気づいたんです。そして、このやりとりのおかげでずいぶん気が楽になったのでした。ネットとゲームに救われた経験も。娘の不登校と引きこもりで悩む私の逃げ場だった出典 : とはいえ、ネットやゲームへの依存は悪いことばかりではないと思える出来事が私にはありました。娘が小2で不登校になり、親子2人きりで家に閉じこもるような生活になってから、私はものすごいストレスに押しつぶされそうになっていました。仕事は辞めざるを得なかったし、娘は暗い顔で泣いてばかり。正直、何もかも放り出して娘と一緒にどこかへ消えてしまいたいと思い詰めるほどだったのです。そんなとき娘の主治医のすすめで携帯型ゲーム機を買い、最初は娘が夢中で遊んでいましたが、私も一緒にゲームを楽しむようになりました。ゲームに夢中になっている間はつらい現実を忘れることができる。現実には何も達成感はないけれど、ゲームでは達成感を味わうことができる。「現実よりこの世界の方がいい」と本気で思ったほどです。ゲームをしているときは、娘とも親子という立場を離れて対等にコミュニケーションを持てるようになり、お互い笑顔で楽しく過ごすことができました。娘も私に教えることができて自信を取り戻したようです。だから、一番つらい時期にいる子どもも大人もネットやゲームに避難することは決して悪いことではないとも思っています。自分が起きたときが朝――。「体が、今何時だか分からなくなっている」とぼやく私に放った、娘の一言出典 : 主治医のアドバイスも守ることができず、相変わらずネットやゲームにのめりこんでいった私の生活は、どんどん夜型になりました。朝5時に眠り、11時頃目覚めて朝ごはん。深い睡眠が得られないので、そのあとまたウトウトと昼寝してしまい本格的に活動し始めるのは夕方という生活。でも正直に言うとこの生活の方が快適なんです。聴覚過敏がある私にとって、家の中で娘が走り回る音や、外で子どもが遊んでいる声が聞こえてくると耐えられないのです…。でも夜中なら静かだし、何か作業するにしても集中することができます。働けないことに罪悪感を感じることも、この生活リズムなら少しは楽ということもあります。昼間は、やはりコンプレックスが刺激されてしまうからです。診断される前からそういうところはあって、仕事や育児をしていれば無理やり適応できるのですが、そうでなければ起きる気がしなくて寝てばかりいました。そして夜はやっぱりネットや本などに夢中になっていましたね。起きる目的がないと起きようという気にならないのです。それでも、時には通院も必要ですし、ヘルパーさんもやってきます。できるだけ朝早い時間には用事を入れないようにしているのですが、そういう時は目覚ましを使って無理やり起きます。すると、よけい体内時計が無茶苦茶になってしまうのです。ある日、昼夜回転(※)生活7年目の娘に「体が、今何時だか分からなくなっている」と相談してみました。すると娘はきっぱりと一言「自分が起きたときが朝だ」と言ったのです。なるほど、その思い切りが娘の元気の秘訣なのかと妙に納得したのでした。そして、そう言い切るまでに娘の心の中でもいろいろ葛藤があったのだろうなと思いをはせたのでした。※1日25時間周期で睡眠時間が回転していく概日リズム睡眠障害によるケースワーカーさんの「あせらないでいいのよ」にホッとした出典 : 「やっぱり私ってダメ人間なのかな」「この生活、なおさなくちゃだめだよね」とあせる気持ちもあります。月1回面談しているケースワーカーさんに思い切って自分の気持ちを話してみました。すると「あなたは充分頑張っているんだから、あせらないでいいのよ」と言ってくれたのです。なんだかホッとしました。今までの経験からしても、なおるときにはスコンとなおるので、今は心地よくネットやゲームへ依存し、睡眠障害に浸っていようと思います。ゴミの日がなければもっと安心して浸れるのに。
2018年06月09日いよいよ就職が決まり、憧れの一人暮らし。けれどもトラブル続出!?出典 : 私が一人暮らしを始めたのは、大学を卒業し都内の企業へ就職したタイミングでした。後にアスペルガー症候群、ADHDと診断される私ですが、このときはまだ、自身の特性を自覚しておらず、新しく始まる新生活の期待に満ち満ちていました。しかし、新しい生活のスタートするやいなや、それまで両親がやってくれていたことを自分一人でこなすことが必要になり、新たな困難さに直面することになったのです。それまではやはり、両親が私自身の苦手な部分をカバーしてくれていたから問題が表面化しなかっただけなのでしょう。今回は、私が特に困った重大なポイント4つをご紹介したいと思います。1. ゲームやスマホがやめられない。出典 : 一人暮らしをすればゲームに夢中になる自分に「もういいかげんにしなさい」と両親が声かけをしてくれることもなくなり、「あと少し…あと少し」と繰り返していくうちに、気づけば深夜だったことが何度もありました。私は、過集中の傾向と凝り性な一面があり、やり出したら止められなくなってしまうことが多くあります。また、最近のゲームの多くは、強いカードや珍しいキャラクターを手に入れるためにお金を使わせる仕組みになっています。射幸心を煽る演出もあいまって、もう1回もう1回と衝動的にのめり込んでしまうことに。結局、ゲーム課金で、気付いたら1万円近く使ってしまったことがありました。2. 給与をもらってすぐに、欲しいものを衝動的に買ってしまう。出典 : ヶ月に生活費がいくら必要なのかを考えずに、衝動的に欲しいものを買ってしまうことがありました。私は、衝動性が高いタイプのADHDだと自覚していますが、特に新しい物好きです。パソコン関係などの家電や新製品を見つけると、ついつい目を奪われてしまいます。同時に、手元にあるお金を今自由に使えるお金と錯覚してしまい、即使ってしまうのです。その結果、給料日の1, 2週間前になって、「アレ?足りない…。…。あのー…母さん、お金が足りないんだけど…」とお願いすることがしばしばありました。実際の一人暮らしでは、振り込まれた給料から、家賃や光熱費、上下水道代....その他諸々のお金が引かれるので、今あるお金は、今使えるお金ではない。ときちんと認識することが大切だと痛感しました。3. どこに何を置いたのか、しまったのかを忘れる。出典 : 思いがけないタイミングで、かつ高頻度で発生するのがコレです。不意に置いたメガネや自宅の鍵、定期、スマホなどをどこに置いたか、翌日になるとすっかり忘れてしまっていました。出かける直前になって、コレがないッ!!アレがないといことが日常茶飯事。特によく無くすものは、キーケース。ちょっと出かけるためにテーブルに置いていたり、ポケットに入れておいたりと、絶対的な位置に置いておくのが難しいものは、日常的に捜索をかけなければならない状況になってしまいます。その結果、家を出る時間が予定よりもだいぶ遅くなり、遅刻しそうな状況に陥ることも珍しくありませんでした。4. 自分の疲れているサインに気づかず、無理をしてしまう。出典 : 自分が疲れていることに気づかず、無理をしてしまうことが今でもあります。中でも一番多いのが過集中による休憩を全く挟まないことで生じる疲れです。過集中でいる間は疲れを感じないだけで、疲労が蓄積されていないわけではありません。ゲーム、パソコンを12時間以上、朝から晩までぶっ続けで行って、目に痛みを覚えて鏡を見たら、目が酷い充血をおこしていることが今でもあります。もう一つ多いのが、外出中の刺激過多による疲れです。特に都心部では街のネオンや、たくさんの雑音、人混みなど、自身が疲弊してしまう刺激が雨のように降ってきます。そうした環境下で無理をすると、翌日に寝込んでしまうことまでありました。やっぱり、一人暮らしは難しい。だけど、出典 : 一人暮らしの中で日々直面する多くの困りごと。しかし、そんな毎日であっても、一人暮らしは決して不可能でないと私は確信しています。それでは私が実践してきた一つひとつの対策を見ていきたいと思います。過集中に関しては、自分一人の力では解決が難しく、東京発達・家族相談センターを訪ね、「大人のADHD時間管理セミナー」のグループセラピーに参加して、少しずつ出来るようになりました。それらを含め、実際に私が取り組んだ内容をご紹介したいと思います。(1)睡眠ログを取る1日を睡眠不足と感じること無く、有意義に過ごすために、自分は何時間寝ることが必要なのかを把握します。睡眠時間の把握には、スマホアプリが便利です。iPhoneでもAndorodでも、無料で使えるアプリが公開されています。睡眠のログをとり、自分の日々のコンディションと対比してみることで、自分の特徴というのがだんだんとわかってきました。私の場合であれば、23時頃に寝て、6時くらいに起きる生活であれば、日中に眠くなることなく、仕事に熱心に打ち込めるようです。(2)自動で消灯や調光ができるLEDライトを使用する。また自宅ではスマートフォンアプリで調光や消灯が設定出来るLEDライトを使っています。今は、23時前になると明るさが段々暗くなり、23時に消灯するように設定して、寝る時間が迫っていることを体感的に分かるようにしています。私の場合、家電量販店などの白色灯が眩しいなと感じるため、調光機能を使って、自分好みの明るさと色温度に設定しました。(※製品は一例です。各機能の利用の可否、利用に必要な条件については、製品情報を参照してください。)後先考えずお金を使ってしまうことへの対策は、今現在使った金額を直感的にわかるようにすることで解決しようとしています。まずレシートの量で、視覚的にどのくらい使っているのかを分かるようにするために、ポケット収納を壁に吊り下げました。また私は、視覚優位なタイプなので、項目ごとに色分けしてあると、より直感的に理解しやすいように思います。次の画像の場合だと、外食のカテゴリーに失費が多いということがひと目で分かります。Upload By ツーちゃんまた、Excelなどの表計算ソフトや家計簿アプリなども併用しています。レシートを1回1回撮影するのは、手間が掛かるので、仕事がお休みの日に表計算ソフト上で合計金額を計算し、その値を家計簿アプリで把握しています。さらに家計簿アプリは、ネットバンキングとも同期できるため、非常に使い勝手が良くなっています。鍵、腕時計、ハンカチなど忘れると困るものを、こんな風に置き場所を決めています。Upload By ツーちゃんまた、バッグの中でごちゃごちゃで汚い、探し物がすぐに見つからないことでも悩んでいましたが、バッグインバッグという方法を用いて、今ではスムーズに必要なものが見つかります。障害者手帳や、お薬手帳、受給者資格証など比較的よく使うものなどの場所を取り出しやすい手前のポケットに入れるなど対策をしています。Upload By ツーちゃんそれから、出来るだけ平積みをしないように心掛けています。場所を区切って置き場所を作る事で、一番下のものを引っ張り出す必要がなくなり整理整頓が簡単になります。Upload By ツーちゃん出典 : 週に1度、休憩を取る、早く寝る日を作っています。その日は家事も、夕飯作りも、友達づきあいも全てしないと割り切り、シャワーだけを浴びてすぐに就寝します。強制的に脳と体を休ませることによって、たとえ、疲れているサインに気づかなかったりしても、問題がないようにしています。私の場合は、初対面での対話や、刺激がたくさんある場所を複数箇所訪れるような場合に、疲れが溜まりやすいと感じます。また、疲れているサインとしては、眠気のない疲労によるあくび、刺激過多による偏頭痛などの予兆が起こることがわかってきました。この予兆を感じとれるようになったことで、事前の対策が可能になってきたのです。そして4年の月日が流れ…出典 : 上述したような困り事もあり、大変ではありますが、もうすぐ一人暮らしを初めて4年になります。これまで失敗することも数多くありましたが、それだけ対応策を作ることもできました。もし、この記事を読んでいる親御さんがいらっしゃったら、ぜひ覚えておいてほしいことがあります。それはそれはどう頑張っても一人では対策が難しい面があるということです。それを前提にした上で、失敗そのものを責めずに、どうすれば出来るようになるか、一緒に考えるパートナーとして温かく見守って欲しいなと思います。このコラムが、将来の一人暮らしを考えるときの参考になればと思います。
2018年03月10日私、アスペルガー。予定外のことが大の苦手!出典 : 「晩ごはんの最中に、大きなしゃもじを持ったあの落語家さんが来たらどうしよう?」「あのタレントさんが洗剤を持って玄関先に立っていたらどうしよう?」あなたはそんなことを考えたことがあるだろうか?ご存知ない方に説明すると、前者は民家を訪れ、その日の晩ごはんのメニューを紹介してもらうという、昔のワイドショーのワンコーナー。後者は主婦の方に台所用洗剤の使い心地を試してもらうというものだ。いずれも「アポイントなしで突撃する」という体を取っている。で、私ならどうするか。のんびり晩ごはんを楽しんでいるとき、もしくはその直後に面識のない落語家さんがいらしたら、失礼ながらびっくりして警察に通報してしまうかもしれない。大好きなタレントさんですら、丁重にお断りしてしまう気がする。もし、同様の企画で訪れたのが、私が“推し”と称してはばからない大ファンの俳優さんであったとしても、その場で少し考え込んでしまうと思う。「わーい!○○さんだ!」じゃないんだよ、私なのに!ちなみに、どれだけ”推し”が好きかは、前回のコラムを見ていただければわかると思う。ASD(自閉症スペクトラム)ないしアスペルガーの特性を持っている方ならご共感いただけるだろうか。私は急なスケジュールの変更など、予定外のことが大の苦手。特に一番強いストレスを感じるのが、突然の来客だ。フリーライターはイレギュラーの連続。そこで私が取った対策とは!?出典 : 以前は突然の誘いも苦手だった。それが楽しそうなことだとしても、だ。とにかく予定外、予想外のことに心をかき乱されてしまう。しかしフリーランスのライターなど、イレギュラーの連続だ。ピンチヒッターとしての仕事の打診や急な加筆の依頼、スケジュールの変更などなど。それら全てに「対応できません」と返事をしていたら食っていけない。幸い、仕事でお付き合いしている方々は、私の特性をご存知なので、想像し得る変更点について、前もって説明をしてくれる。もちろんそれ以外の変更だって起こらないとは限らない。そのため自分でも「何か変更が起こるかもしれない」と心構えをするようになった。そのようなことを繰り返しているうちに、私は「仕事に関してはある程度臨機応変に動ける人間」に擬態できるようになった。友人たちにも、私が急な予定変更が苦手であることは伝えてある。が、仕事上で「何か変更が起こるかもしれない」と心構えをすることが日常化したため、急な誘いに関しては、時間や体調の都合がつけば、喜んで出かけることも可能になった。それでもどうしても慣れないことがあるため、以下のようにきっちり伝えてある。「突然の訪問だけは嫌な顔をしてしまうかもしれない。せめて“近くにいるよ”って、事前に一報が欲しいな」。みんな私の難しい質を理解しようと努めてくれているため、両親ですら、息子と私が暮らすアパートを突然訪れることがない。私は心穏やかに日々を過ごしていた。ところが…。「突然の訪問はNG!」と、徹底周知しておいたはずが…出典 : その日突然現れたのは、この集合住宅の工事担当作業員だと名乗る人だった。「室内アンテナの工事があるので、お部屋に入らせてください」工事の業者さんから、事前の告知や日程調整の打診はなかった。私は、自分の顔が強ばるのを感じた。「お知らせをいただいていませんよね…?」「管理人さん経由でチラシが配られたはずなのですが…」確かにチラシは入っていた。しかしそれは「何月何日から、この棟全体に工事が入る。各部屋にも入ることがあるかもしれない」という内容のみ。我が家にいつ入るという連絡ではない。「今日が無理だとしたら、いつごろいらっしゃいますか?」「あの…鈴木さんのお宅の工事が終わらないと、他のお宅の工事ができないんですよ」ぐぬぬ。(勝手な言い分だなぁ)だとか(今日私が留守だったらどうするつもりだったのだろう)と思いつつ、作業員さんにお上がりいただいた。私同様にASDを持ち、急な来客が苦手な息子は、携帯ゲーム機を片手に、猫のごとく押し入れに籠ってしまった。念のためその場に立ち会わなくてはならない私は、押し入れに同行することはできない。頓服用の安定剤を飲み、部屋の隅で絵を描きながら、ざわつく気持ちを抑えていた。「次の予定は知らせてほしい」と願う私に、業者さんは…Upload By 鈴木希望1時間少々で工事は一旦終了したのだが、作業員さん曰く、古い室内アンテナの撤去工事が後日必要だと。「次回はいつごろいらっしゃいますか?」「うーん、他のお部屋の作業の進み具合もありますので、何とも言えませんねぇ」「何日辺りだとか、午前だとか午後だとか、ざっくり教えていただけないでしょうか?いない日もありますし、前日にでもお電話いただけると助かるので…」「いやー、それもできかねますねぇ。で、鈴木さん、必ずいらっしゃるのは何時ごろですか?」それがまちまちだから事前連絡を頼んでるんだろうが!!!!!ーと叫びたい気持ちを抑えつつ「それもまちまちなので、断言しかねますねぇ」と、図らずも作業員さんのような口ぶりで、私は返答した。先方は困っていらしたが…。こうなってくると、私の特性云々関係ないような気もするが、苦手なものは苦手だし、困るものは困る。私がいないときに訪問したら、先方だって困るはずだ。推測でしかないが、日程の詳細や事前連絡ができないのは、会社もしくはそのチームのやり方であるか、担当さんの一存で決めたり断言不可の件で、しかも伺いを立てる相手がその場にいなかったのかもしれない。だとしたら、作業員さんと私がああだこうだと問答を続けるのは建設的ではない。何となく話がうやむやになったまま、とりあえず挨拶をしてお帰りいただいた。翌日私は、私が暮らす集合住宅の管理会社に連絡を入れ、「在宅時間がまちまちであるため、事前の連絡が欲しいとの旨、工事業者さんに伝えていただきたい」とお願いをした。「今後こうした工事や点検が入る場合、鈴木さんには事前連絡を徹底した方がいいですか?」と、担当の方が気を利かせて質問してくださったので、そのようにお願いした。工事業者さんには、おそらくもう伝わっているだろう。ひとりで交渉しきれないときは、第三者の助けを借りる出典 : イレギュラーなことへの対応は、周知の徹底と心の準備でこれまでどうにか乗り切ってきた私だった。しかしそんなことは無関係に発生するイレギュラー中のイレギュラーもあるのだと、今回の件で学んだ。そりゃそうだ、向こうは私のことなんて知ったこっちゃいないのだから。幸い、今回は住宅管理会社さんという、間に入ってくれる第三者がいてくれたから助かった。今後もまた、自分ひとりで対応しきれないことが起こったら、間に入ってくれる誰かを探すつもりだ。これは何も発達障害の特性に絡んだトラブルに限った話ではない。人間ひとりでなんとかできることなんて、実はさほどないのだから。業者さんからの連絡はまだ届いていない。電話が鳴ることを願ってやまないが、もし次回の担当さんが、私のようなうっかりADD風味の方だったら…?うん、ない話ではない。連絡があることを信じながら、工事終了予定日まで「うっかりADD風味の作業員さん」がいらっしゃるかもしれないと覚悟をしておくとしよう。そして本当にそうなったら、またヤギさんの絵でも描いてやり過ごそう。ストレスがないわけではないが、なあに、スズキはやればできる子さ、ずっと続くことではなしに。がんばれ私、乗り切れ私。
2018年03月05日「ママ、20歳になったら胸を取る手術していい?」出典 : アスペルガー症候群のある娘。彼女の第二次性徴は10歳ごろにやってきました。早くも生理が始まり、体つきがどんどん女性らしく変化していきます。生理については私自身も人と比べて早い時期に始まったこともり、娘には生理が始まる前にネットで適切な情報を載せているサイトを探し、プリントアウトして手渡すようにはしていました。それは、反抗期がはじまっている娘にとって、そういった話を直接私から聞くことを嫌がっていたからでもあります。生理が始まったときはすぐ報告してくれたので、手当ての仕方は繰り返し丁寧に教えることができました。それでもよく失敗しましたが、そのときの恥ずかしさは私も身に覚えがあったので、決して怒らず片付けて、余裕ができてきたら自分で処理する方法を教えると、本人も気が楽になったようです。あと、体毛が生えてきたときなどもびっくりして「こんなの生えてきたけど大丈夫?」と一つひとつ確認してきたのを覚えています。そんな娘にとっての一番の問題。それは、胸が大きくなることだったのです。娘は変わり始めた自分の胸を嫌悪していました。「ママ、これ以上目立たないようにしたいからさらし買って」「胸を小さくするにはどうしたらいいの?」「どうしてもいやだったら手術を受けて胸取ってもいい?」本人は真剣です。私もここは真剣に答えるべきだと判断しました。「あなたが大人になって、よく考えたうえでやっぱり手術を望むのなら反対しないよ。手術したら元には戻せないからよく考えて決めようね。息子になったとしても私は受け入れるから。」それを聞いて娘はホッとしたように笑顔を見せました。性同一性障害の子どもたちUpload By ヨーコその後、性的マイノリティなどに詳しいソーシャルワーカーにその話をしたら、「とてもいい対応だったと思いますよ」とのコメントをいただきました。その理由は、身体の性と心の性が一致しない人は、そのことに気付かされたときに最大の精神的危機を迎えるからだそうです。日本性教育協会が発行している「現代性教育研究ジャーナル」にもこのような内容を見つけました。性同一性障害(Gender Identity Disorder: GID)とは、「生物学的性」(身体の性)と「性の自己認識:性自認」(心の性)とが一致しない状態であり、心の性は男性、身体の性は女性の female to male(FTM)と、心の性は女性、身体の性は男性の male to female(MTF)とがあります(1-6)。性指向が男性に向いているか、女性に向いているかは問いません。この点では、身体の性と心の性とは一致していて、性指向が身体の性と同じ性に向かう同性愛とは異なります。性同一性障害では自分の身体の性を強く嫌い、反対の性に強く惹かれた心理状態が続きます。(現代性教育研究ジャーナル2013年No.29 )思春期の MTF 当事者にとっては、ひげが生え、声が低くなることは恐怖です。また、FTM 当事者では、月経時には「自殺したい」「内臓を掻き出したい」などと話す方もいます。自殺念慮の発生も中学生の時期に1つ目のピークがあります。(現代性教育研究ジャーナル2013年No.29)「自分は何者なのだろうか」「これからどうなってしまうのか」という不安でいっぱいな子どもに対し、「あなたは何もおかしくない」というメッセージを、周りの大人から伝えてあげることが大切だというのです。また、一時的に自分の性に違和感を持っても、それは性同一性障害とは限りません。成長とともに自身の性への違和感が解消されることもあるそうです。中には発達障害の場合、性同一性障害と誤診されるようなケースもあると聞いたこともあります。どのケースであれ、そのときに子どもが自分の性について違和感を持っているサインを出してきたら、決して頭から否定することなく「あなたはそう思っているんだね」と受け止めてあげたうえで、落ち着いて対処法を考えた方がいいのではないでしょうか。発達障害の子どもたちは性自認で混乱するケースも出典 : 発達障害を持つ子どもたちは、「なんだか自分は周りの人と違うようだ」「ここは自分の居場所じゃない」と感じることが多く、「自分がみんなの中に溶け込んでいる」と感じることはあまりないようです。それゆえに「自分は何者か」がわからず混乱してしまうことや、それが自分の性別の混乱につながることがあると聞いたことがあります。たとえは、特性によって対人関係がうまくいかないことを「同性とうまくやっていけない」という風にとらえて、それが性別違和と思い込んでしまうケースもあるそうです。私自身、小学生になってからすぐに女子の悪口、仲間はずれなどの洗礼を受け、うまく対応することができず「女は敵だ」と思い込むことによって自分の心を守っていました。そんな自分の身体が「大嫌いな女」になっていくときの気持ちは屈辱的で、「女なんか嫌。男らしくなりたい。」と切実に願っていたことを思い出しました。また発達障害の特徴の一つとして、「変化への対応に弱い」ということがあります。思春期の身体の変化はあまりにも早く、定型発達の子どもたちでさえバランスを崩す時期。発達障害の子どもたちには、なおのことつらい時期だといえるのではないでしょうか。娘は背もあまり伸びず、どちらかというと子どもっぽい外見だったので、胸だけ変化してきたことをとても気にしていました。「ママ、私の胸もいつかママみたいになってしまうの?」「こんな大きいのは嫌だ」と言われたことを覚えています。それからどうやらネットで「胸が大きくならない方法」などのキーワードを検索したみたいで、そこから手術する方法などを知ったようです。男装専用下着などの知識も仕入れていました。(ただ、自分自身で情報を得るための行動を起こしたことで、本人にとってのは、それが精神の安定につながったように見ます。)ただでさえも性同一性障害の診断は難しいと専門家も述べているのを聞きます。発達障害の子どもたちは困りごとも千差万別。だからこそ診断が難しいのでしょう。早々に性同一性障害を疑うよりも子どもの様子をよく見て、必要なようであれば専門家につながったらいいのではと私は思いました。女の子の発達障害特有の思春期の問題Upload By ヨーコそんな娘の気持ちを受け止められるのは、私自身も近しい気持ちを抱いていたからだと思います。私もアスペルガー症候群の診断を受けており、40歳を過ぎても化粧はしないし、「口紅だけは塗らなきゃ怒られる」と思ってもすぐ忘れる、つい足を開いて座ってしまうという有様で必要最低限のマナーも身についていません。言葉遣いについても、外向きには穏やかに話すことができますが、身内(弟や子ども)には「よう、元気か?」といったような男言葉が口から飛び出る始末。自分の娘にはできるだけ気を付けたつもりですが、普通のお母さんよりは男性的な接し方で育ててきたような気がします。思い返せば私が幼いときも、両親はやいのやいの言葉遣いを注意してきましたが、私はかえって反発するばかり。「大人になってからごまかせるようになったらいいじゃない」と思って右から左へと聞き流していました。いまだに「女性の常識」というものは分かりませんが、分かりたくもないという気持ちも理解することができます。そんな自分を「これが私だ」と開き直る一方、「私って大人としていまだに成熟していないってことなのかな」と自信がなかったのも事実です。そんな中、発達障害と女性をテーマにした書籍で私の心を代弁するような記述と出会うことがありました。「女性らしさ」は形のないもの。誰にとっても、わかりにくいものかもしれません。しかし多くの女性は、大人になるにつれ、必要最低限の習慣やマナーは身につけていきます。アスペルガー症候群の女性の場合、そういった習慣やマナーの習得にも悩みます。「足を開かずに座る」というような、多くの人が常識として覚えることが、なかなかできないのです。そもそも女性らしさに価値を感じていないため、家族や友達が多少、注意したくらいでは、改善しません。明確に、具体的に教えられなければ、わからないのです。(『女性のアスペルガー症候群』宮尾益知監修講談社P19より)この一文を読んで、それが女性のアスペルガー症候群の特徴の一つだと知り女性の"常識"が身につきにくいのには訳があるのだと知って正直ホッとしたのです。もうひとつ、「女性らしくなりたくない」という気持ちのもとになったのは、ジェンダー的役割に対する不快感でした。どうして望んでもいないのに女性らしくしなければならないのか。日本の文化は女性に求めるものがたくさんあります。男女平等の思想は少しずつ浸透しているとはいえ、どこかに透けて見える「女は男を立てて家を守りかわいくあれ」という教育は、私にとってとても不快なものでした。「好きなものは好き、嫌いなものは嫌い」という気持ちが人一倍強く頑固だった私は、そうした気持ちを飲み込むことは絶対にしないとと誓ったのです。たまたま生まれついた性別だけで生き方を決められるなんてやってられない。これは今も私の核になっています。そんな私の気持ちを説明するような一節にも出会いました。女性として期待される役割について、私は思春期から悩んでいます。思春期になると、小さいときから仲が良かった女の子の友だちは、いっせいに、本などよりも自分の外見に注意を払い出し、男の子には私に対するよりも優しくふるまうようになりました。あの頃から、ジェンダーの役割には不快感を覚えてきました。(中略)自閉症スペクトラムの人たちの多くは、ASの症状も男女で分けて考える必要はないと考えるのではないでしょうか。ほとんどの場合、本質的に、私たちAS者は、身振りなどの癖や行動において、両性具有的だからです。(『アスパーガール』ルディ・シモン著スペクトラム出版社P83より)気持ちがぴったり一致したのは、「ジェンダーの役割には不快感を覚えてきました」の部分です。今の自分は男性的な面もあれば女性的な面もあって、「あなたのジェンダーは何ですか?」ともし問われても答えようがなく、まさに「両性具有的」というのがぴったりくる表現だと強く感じました。違う国、違う文化に住む人が同じ思いを抱いている。そのことは「アスパーガール」の一人としてとても心強い気持ちになりました。だからこそ、娘の「性」の違和感や、ジェンダー感にはしっかりと向き合っていきたいと思うし、どんな選択をしてもそれを尊重して受け入れる強い意志を持つことができたのです。あれから5年。中3になった娘が思うこと出典 : 娘の第二次性徴期が始まって5年。この機会に娘に直接質問をしてみました。「今でも胸を締め付けるブラジャー欲しい?」「スポーツブラでも目立たないから別にいいかな」「胸を取る手術はどう?」「今くらいで止まってくれたらそのままでもいいかも。でももっと大きくなって『イーッ』となったらやっぱり手術するかもしれない。」「男性器は欲しい?」「う~ん、一人暮らしとかしてるとふっと欲しくなったりするかも」(これはちょっと突っ込めませんでした…。)普段の娘の服装は、通年スポーティなTシャツと半ズボン、わらじのようなサンダルです。冬はそこにフリースの上着とダウンジャケットを着ますが、帰るなり脱ぎ捨てています。小学校2年生から不登校で家にいるので恋愛してる様子もありませんし、アイドルにも興味はありません。子どものころと変わらず戦隊ものやヒーローもの、あとかわいい女の子が出てくるゲームも好きみたい。男性主人公のゲームも好きですし、趣味は男性寄りみたいだけど、何が好きのポイントなのかはどわからないなぁというところです。なんだか性別を超越してるようなところがありますね。今、娘は「別に今は何も悩んでいない」と言いますし、特に相談などは考えていませんが、もしこの先深く悩んだり落ち込むことがあれば迷わず専門のクリニックに相談に行こうと考えています。フィットしない性別に悩み苦しむより、専門家の助けを得て一番自分の望む形を見つけて幸せに生きていてほしいから。そして望まない性別でパートナーを得られず一人で生きていくより、どのような形であれ心預け合えるような人に出会って一緒に生きていってほしいから。娘の本当の気持ちや将来のことは分かりませんが、自分らしく幸せに生きてくれたらいいなと思います。
2018年01月19日洗濯の手伝いを頼んだら...出典 : ある日、アスペルガー症候群のある中学3年の娘に洗濯を頼む場面がありました。普段は私が洗濯をしているのですが、この日は体調が悪く、娘にお願いすることにしたのです。掃除や皿洗いは難なくこなす娘ですし、洗濯のしかたは何度も教えたことがありました。サクッと片づけてくれると思っていたのですが…予想に反し娘は洗濯機の前で立ち尽くしています。どうやら洗濯のやり方をすっかり忘れてしまったようです。泣きそうな顔で立ちすくむ娘。その口からこぼれた「バカでごめんね」という言葉に、私も辛い気持ちになりました。とはいえ、1つひとつ教えていかなければ前には進めません。私が側について教えながら、娘はなんとか洗濯機を回すことができました。ここまでくればできたも同然だろう。私は娘に、「あとは干しといてね」と頼んでその場を離れたのです。ところが、それから約6時間後。寝込んでいた私が起きだしてみると、洗濯物はなぜか下着だけ干されており、それ以外はカゴに突っ込まれたまま廊下に放置状態。「どうして干してないの!?」と娘に言うと「え?だっていつもお手伝いのときは下着しか干してないもん」「下着を干したら終わりだと思ってあとは全部忘れた」との答えが返ってきました。しまいには「こんな娘でごめん」と言い、泣き出してしまいました。娘は怒られると、声もたてず静かにはらはらと涙をこぼして泣きます。「どうして怒られたら泣いちゃうの?」と聞くと「怒られたらとても怖い気持ちになるから泣いちゃうの」と言ってました。そこから見えてきた娘の特性出典 : この洗濯の1件で、以下のような娘の特性が浮かび上がりました。・手順が複雑なことを覚えることが苦手・自分の思い込みで作業してしまう・報告も相談もしない・何度教えられても自分流のやり方を貫こうとする・怒られたらいてもたってもいられず泣いてしまう最後以外は私とそっくりです。学校に通っていたら、自身の特性もいろいろな場面から見つけることができるかもしれません。ですが、小2から不登校で家にこもっている娘は、行動パターンもワンパターン。しかも苦手なことはなるべく避けようとするので、特性がなかなか見えてこないのです。まさか、洗濯のお手伝いでこれだけ課題となる特性が見えてくるとは思いませんでした。就労の場でこの特性が出てしまったら...出典 : この娘の状況には危機感を覚えざる得ませんでした。というのも、私も同じ特性を持っているので、さんざん職場でやらかしてきた過去があるからです。同時に、この特性はとても嫌われます。「どうしてそんなに覚えが悪いの?」「人の話聴いてるの?」「やる気あるの?」と言ったような言葉でさんざんなじられた過去の記憶が頭をよぎります。もし、同じ仕打ちを娘が受けたら、おそらく耐えられないでしょう。そんな辛い目にはあってほしくありません。知り合いのところやなじみのあるところでアルバイトをすることも考えたのですが、字がゆっくりとしか書けない、計算ができないことを気にして気が進まないようです。発達障害者支援センターで相談したときも、「おそらく普通の就労は難しいでしょう。手帳を取って障害者枠で働くことを考えた方がいいです。」と言われたこともあり、将来的には就労移行支援事業所などで訓練を受けたほうがいいだろうと思っています。でも今回はせっかくのチャンス。家庭で苦手なことをカバーする練習はできないだろうかと考えたのです。ピンチはチャンス!今のうちにカバーする術を教えたい出典 : 失敗を恐れる娘なので、しばらくは洗濯機には近寄らないかもしれません。ですが、直接自分でやらなくても私がやっているところを見せたり、簡単な干す作業を手伝ってもらったりしながら、再チャレンジの機会を狙うことができます。そうやってスモールステップを本人のペースで踏めるのが家庭のいいところでしょう。お手伝いという気楽さもありますし。いま私がやっているのは、・洗濯機の前にマニュアルを貼る。・使う洗剤の量を実際に見せながら教える・前回のお手伝いで気になった干し方を「こうしたほうがよく乾くよ」と教える・教えてもらったときはメモを取ったほうがいいことを教える(「字が書けない」と言われたので「スマホでメモしたらいいよ」といったら大発見って顔をしてました。)少しずつ「分からないことは聞く」、「どこまでしなければならないのか確認する」という風にステップアップしていけたらと思っています。また、今度頼むときは完璧にこなすことを目指すのではなく、チャレンジできたことを自体をしっかり褒めたいと思います。「親子」であり「お手伝い」であることを忘れないで出典 : 今回のケースのように繰り返される失敗は娘の特性を知るチャンスであり、 直すことはできなくてもカバーするにはどうしたらいいか教え、それを実践するいい機会になると思います。ただ、先々を考えた訓練であることを意識するあまり、小言を言うだけにならないように、私自身注意しています、あくまで私の立場は親であり、お手伝いとしてやらせているという大前提を崩してしまっては、娘は心を閉ざしてて聞く耳を持たなくなってしまうと思うのです。私が高校生くらいの頃でしょうか。私の母が「結婚したとき困るから、お母さんが料理するときは横で手伝いなさい。」と言いだし、ことあるごとに家事についてとやかく言われるようになりました。その母の態度に私は嫌悪感を抱き、意地になって手伝おうとはしませんでした。お手伝いは今回のように苦手をカバーする練習をしたり、生活能力を身につけたり、働くことの大切さを教えることもできるでしょう。ただ、その目的が「お手伝い」の範囲から逸脱すればするほど、子どもは嫌になってしまうだけではないかと思うのです。私にとってお手伝いとは、子どもの年齢、能力に合わせて家事を負担してもらうものであり、その子の状況に合わせて無理なく、柔軟にやってもらえばいいものです。その過程で、娘自らが気づきを得て、苦手や困難を乗り越えるヒントを学ぶことができればと考えています。確かに時間こそかかると思いますが、娘と二人三脚で、マイペースに進めることを忘れないようにしたいです。
2017年09月15日アスペルガーでADHDの私に、ついに下った糖尿病の診断。出典 : 今までいろいろ病気をしてきたので健康診断だけは行くようにしていた私。今年も締め切りギリギリの3月に滑り込みで受けることができました。すると、「糖尿病です。病院で診察を受けて下さい。」という結果が送られてきました。実は3年位前から「これ以上数値が上がったら糖尿病になってしまいますよ。くれぐれも節制して下さいね。」とお医者さんから言われていました。「糖尿病になるのは嫌だな」と思ったものの、「まぁ、何とかなるだろう」と根拠なく思い込み、好きなものを食べてゴロゴロする生活を続けていたのです。今振り返れば、真面目に考えることから逃げていたような気がしますだから、ついに糖尿病を宣告されたとき、どこかで「ああ、やっぱりダメだったか」という気持ちもあり驚きは全くありませんでした。来るべきものが来てしまったという感じでしょうか。そして受診したかかりつけの内科で服薬をしながら様子をみたのですが、数値は悪くなる一方でついに大きな病院に行くことになってしまったのです。大病院で検査をいろいろ受け、看護師さんから丁寧な聞き取りも受け、最後の先生の診察では、「2~3週間教育入院したほうがいいですね。出来るだけ早く準備してください。」と告げられました。糖尿病の教育入院とは、病院食で食事療法の加減を覚えたり、医師や看護師、臨床検査技師、薬剤師の講義、栄養士による栄養指導で糖尿病についてしっかり勉強します。あと、血管が詰まっていないかなど、検査もたくさん受けることになります。さらに、1日に4回くらい血糖値を計り、インスリンをはじめとするさまざな薬で血糖コントロールしていきます。だいたい教育入院は10人程度の同期がいるので、先輩患者からいろいろとためになる話を聞くことができました。私は女性と接するのが苦手なので、一回り上くらいの男の人たちとナイターを見ながら「わし、これ以上悪くなったら透析やねん」、「腹減るやろ?飯食ったすぐ後で菓子パン食べるねん。そしたらバレへんで。」なんて話を聞きながら笑っているのがいい息抜きになりました。一方、几帳面で勉強好きなアスペルガーの特性を持っている私は、テキストを何度も読み返し、疑問点を書き出して糖尿病専門看護師や主治医を質問攻めにしては、ノートにびっちりと書き込んでいきました。私が入院生活で困ったこととは…出典 : まず困ったのがすぐ迷子になること。入院してすぐに売店に行ったら自分の部屋を忘れてしまって、違う階のナースステーションで尋ねることに。「入院したてなのですが、自分の部屋がどこかわからなくなってしまいました」と聞くと、電子カルテで探してもらってようやく部屋に戻ることができました。そんな状態なので、検査室に行ったときも、帰り道で方向感覚を失って戻り方がわからなくなり、同じ場所をくるくる回っていたりすることもありました。それから血糖測定の手順を覚えるのも大変でした。みんな3日くらいで覚えて自分の部屋で測るようになるのですが、私は1週間処置室で測り続けることに。やっと部屋で測るようになってからも、もたもたしてばかりいました。今思い返せば、イラストにした手順書みたいなものがあったらよかったんですけどね。入院するときに自分の身体についてのアンケートがあり、私はもちろん「アスペルガー症候群、ADHD」と書いておきました。でも、看護師さんも主治医もどうやら発達障害については詳しくないようです。看護師さんに「ADHDってどう読めばいいんですか?」と聞かれたときは「そこから?」とびっくりしてしまいました。医療従事者の集まる病院だから大丈夫だろうと油断していましたが、どんな配慮をして欲しいのか、どんなことが苦痛なのか書いておいたほうがよかったのかもしれません。自分の特性を踏まえ、これまでの生活を振り返ると出典 : 入院中は、これまでの自身の生活を振り返る契機になりました。私は計画的な買い物がとても苦手です。見た目に惹かれて「おいしそう!」とかごに入れてしまったり、値引きシールを見て「これは安い!」とポンポンと衝動的にかごに入れてしまうのです。冷蔵庫の中身をチェックして、「今必要なものはなにか」と冷静に考えることは、これまでなかなかできませんでした。食事でも、ついそのときの食欲にしたがって食べ過ぎたり、逆に食べなかったり、衝動的に食べたりしがち。「これくらいにしておこう」というコントロールができないのです。運動は「いつ、どれだけ運動する」と決めたらマシーンのように続けるアスペルガー的一面がある一方、そのルールに縛られ過ぎて疲れ果て自暴自棄になり、なにもしなくなるという極端な一面もあったように思えます。例えば、自分の立てた目標がきつすぎてできなかったら「もうだめだ」と、計画の見直しをする前に、運動そのものをやめてしまったこともありました。「少しずつ」とか、「柔軟に」ということが特に苦手だったのです。でも糖尿病になってしまい、教育入院中に糖尿病の恐ろしさ、食事療法や運動療法が命綱になること、薬では根治しない病気だということを知って「これは今度こそ本気で頑張らなければ寿命まで生きられないかもしれない」と思いました。同じ発達障害のある、これからの人生でも困難が待ち受けているであろう娘を残して早く逝くのは嫌だし、生き残っても足を切断したリ、透析になってしまったら迷惑をかけてしまいます。健康を保ちながら平均寿命まで生きるには食事療法や運動療法を一生続けていくしかありません。こんな私にとって食事療法は特につらいものです。始めてからまだ1ヶ月余りですが、まだスーパーのスイーツコーナーを見ると涙が出そうになります。今まで限界がくると衝動的に食べてしまっていたので、いつ理性がプツンと切れるか怖いです。だけど、ヘルパーさんが食事療法のつらさを理解しながらも、励まして薄味でも美味しい料理を作ってくれますし、ソーシャルワーカーさんや相談支援員さんが私の気持ちを理解して支えてくれています。裏切りたくない人たちがたくさんいるのでなんとかやっていけそうな気がします。なにより娘が薄味の料理に付き合ったりして応援してくれるのがうれしいですね。一人だったら到底無理だったと思います。入院生活では、まず食事療法だけはしっかりすること。運動療法は少しずつでいいと主治医に言われたので、まず食事だけは守り抜こうと思います。最近ははたくさんノンカロリーのゼリーや飲料があって、それは取り入れていいと言われているので、ほどほど甘いものも食べています。あとは、日常生活の用事はできるだけ歩く、テレビ体操をするということを実践しています。自分の弱点を知ってそれを補う体制を自ら作るということ出典 : 発達障害のある人は、私のように自己管理が苦手な人も多いように感じます。加えて、二次障害で心の病がある場合、さらに健康管理は難しくなるでしょう。私自身も気分の波が大きく、落ち込んだり、眠れない・起きられないこともあります。これからは規則正しい生活が必須なのですが、それだけはなかなか実現できずにいます。ソーシャルワーカーさんには「もっと早くに支援を受けていたら糖尿病にはならなかったかもしれない」と言われました。確かにもっと早くに家事支援を受けて料理を手伝ってもらったり、買い物に同行してもらっていたら、健康管理ができていたのかもしれません。これからは自分だけで頑張ろうとせずに、福祉サービスを使ってヘルパーさんに料理を手伝ってもらったり、糖尿病食の宅配サービスを使ったりと、いろいろなサービスを使って乗り切っていきたいと思っています。また、私の住む市では糖尿病教室が月に一度開かれているので、それにも参加してモチベーションを保っていきたいです。今回入院して、糖尿病が足の壊死、人工透析、心筋梗塞などにつながること、また食事療法に何度も失敗して何度も教育入院を繰り返す人がいることを知りました。そういう人は「食べたい」という気持ちのコントロールが弱く、「足の具合が悪くなれば手術すればいいわ」という風に考えているようでした。私はそういう人たちを笑う資格はありません。誰にでもそういう弱い気持ちがあると思います。だからこそ、病気についてしっかりと理解すること、自分の弱点を知ってそれを補う体制を作っていくことが大切だと感じました。できないことは無理にするんじゃなくて、「できないからどうすればいいんだろう」とどう自分にとって負担にならないように工夫していくかが大切なのではないでしょうか。病院でも福祉と連携してる部門がありますし、主治医に困っていることを言えば必要なところにつないでくれます。病気との戦いは1人ではあまりにも大変です。どうか無理せずいろいろな人や物の力を借りて乗り切りましょう。そして健康診断だけは年に一度受けることを強くおすすめしたいと思います。
2017年08月11日思い通りの色順でないと、気持ち悪いと感じる娘。出典 : 発達障害のあるお子さんの中には、“どうしてコレに!?”と思ってしまうほど、特定の物事に夢中になってしまうタイプの方がいます。アスペルガー症候群のある我が家の娘は、幼い頃に「色」に強い興味を示して以来、娘なりのこだわりがたくさんあります。それは小学4年生になった今でも変わることはありません。複数の色があるものは、思い通りに並んでいなければ気持ちが悪く、イライラと落ち着かなくなります。学校に通っていた頃は、休み時間に率先してお友達の色鉛筆を削らせてもらい、その代わりとして自分の思う通りの色順に並べさせてもらっていたそうです。また、お店の筆記用具コーナーに行くと、試し書きの後できちんと元の場所に戻されていないペンが気になり、すべてのペンをきちんと色別に分け終わるまで、その場を離れることができません。商品の陳列の仕方にも不服があるようで、「どうしてこんな色の順番にしちゃうんだろう!?」とプンスカしていることがよくあります。発達障害と診断されるまでは、度を越した興味の持ち方は一過性のものだと思っていましたが、どうやらこれはれっきとした娘の一部分であり、おそらく生涯持ち続けるこだわりではないかと思うのです。それならば、自分のこだわりから外れているものを攻撃することなく、上手く自分の心を満たしながら付き合っていくことができれば、本人にとっても周囲の人たちにとっても良い結果が生まれるのではないかと考えるようになりました。他人に迷惑をかけずに「こだわり」を楽しむために出典 : そこで「お店の商品や他人の持ち物を自分好みの色順に並べ替えたい!」という衝動を抑えられるようになる方法を考えてみました。衝動が湧き上がってくること自体を抑えることはできませんが、①自他の境界をはっきりさせておく②家で存分に並べ替えが出来る環境を整えておくこれくらいは、私にもできそうです。まず、自他の境界をはっきりさせることに関しては次のように話しました。「あなたにこだわりがあるように、他の人にも気に入った並べ方があるかも知れない」「他人に自分のモノを触られるのが嫌いな人もいるし、勝手に触れるのはマナー違反」「家族や親戚など近しい人でこだわりを理解してくれる人に関しては、了承を得て並べ替えさせてもらっても良い」「お店の商品はその店の方針や戦略があるので絶対に並べ替えてはいけない」こうして、自分が手を加えていい領域と、手を加えていけない領域があることをしっかり意識できるようにしました。現実には、他人の領域に手を出してしまうようなことであっても、「まだ小さいから仕方がないね」と許していただくことも多くあります。ですが、それでOKなんだと本人が勘違いしてしまうと、発達障害を抱える子どもたちは、後からその認識を修正をするのが大変なのです。トラブルが起こってからではなく、起こる前に線引きをしておけば、心地よいコミュニケーションをとるためのポイントが冷静に確認できるので、とても大切な作業だと思います。さて、次に「普段から並べ替えたいという欲を満たしておく」というのも衝動を抑えるためには必要なことだと考えました。めったに出会えない並べ替えのチャンスだったら絶対に逃したくないと思うかもしれませんが、「家に帰れば自由に並べ替えができる」と自分に言い聞かせることで、我慢できる確率も上がってくると思うのです。そこで、60色入の色鉛筆を用意してみました。30本のトレーが2段になった色鉛筆は、眺めているだけでも幸せな気分になるそうです。その色鉛筆を「ああでもない」「こうでもない」と試行錯誤を繰り返して思い通りに並べ替えられたときの娘は、本当に満足そうです。存分に並べ替えを堪能した後は、娘と一緒に塗り絵をして、わざと別の場所に色鉛筆を戻しておきます。塗り絵が終わる頃にはまた色鉛筆の並び順はバラバラになり、大好物の並べ替えを一から楽しむことができるのです。将来を見据えて訓練することも大切だけど...出典 : 娘の色に関するこだわりは私が声をかければ不機嫌になりながらも抑えられる程度のものですので、このような方法が有効でした。「タオルを手放せない」など精神的安定を求めるタイプのこだわりに関しては、無理に矯正をすると不安定になってしまうと思いますので、お子さまの様子をしっかりと観察しながらこだわりとの付き合い方を考えてみてくださいね。発達障害を抱える子どもを育てていると、つい将来のことを考えて「自分で何でもできるようにしていかなければ」「辛いことも乗り越えて力をつけなければ」「苦手なことを減らしていかなければ」と焦ってしまうことも多いともいます。私も、時々どうしようもない不安に襲われて、「こんなことで子どもは生きて行けないのでは」と子どもに成果を出すことを求めてしまうことがあります。もちろん、親の目が届かなくなったときのこと、社会に出てからのこと、親がいなくなった後のことを考えて、丁寧に子育てをしていくことは大切です。しかし、親がそればかりを求めすぎてしまうと、子どもはいくら頑張っても新しい課題を与えられて、疲弊してしまいます。なかなか難しいとは思いますが、毎日の暮らしの中で、お子さまが強い興味を持っていることを一緒に楽しんでみたり、より深くその世界を知ることで、少しずつ世界を広げていく時間を持てるといいですね。娘は色好きが高じて、色事典を写して語彙を増やしたり、聞きなれない色名が出てくる俳句に興味を持ったり、いろんな色の糸が大量に並んでいる織物教室に足を運んだりと、少しずつ世界が広がってきています。興味が限定されてしまうという特性を持つアスペルガー症候群。一つのこだわりを足掛かりに新しい世界を知ることで「好き」が増えれば、共通の話題を分かち合える人とめぐり会うチャンスも増えます。案外、そんなところから人間関係が広がっていったり、楽しいコミュニケーションが取れるきっかけが転がっているかもしれませんね。
2017年07月09日お友だちよりも“ぬいぐるみ”と遊ぶ方が幸せ!?出典 : アスペルガーの娘は、幼い頃からぬいぐるみが大好きでした。いろんな経験をしてもらおうと、幼い頃はよく水族館や動物園などに連れていったのですが、娘のお目当てはお土産屋さんのぬいぐるみ。今日はどの子をお家に連れて帰ろう?と考えている時が一番たのしい時間なのです。「どこか行きたいところはある?」とたずねると、「水族館には入らなくていいから、水族館を出たところのお土産屋さんに連れて行って。あのお店にどうしても連れて帰りたかったのに諦めたぬいぐるみがいるの」とねだられることもしょっちゅうでした。お友達と遊ぶより、ぬいぐるみと遊んでいる時の方がリラックスしていたり、怒られた時にぬいぐるみを抱きしめて気持ちを落ち着けようとしていたりする姿を見ていると、娘にとってぬいぐるみが必要不可欠な存在であることがよくわかります。娘にとって大切なものは、私にとっても大切なもの。一緒にお店をまわって、「どの子が一番かわいい顔をしているか」「どのぬいぐるみが一番手ざわりがいいか」娘にぴったりとくる子を探す旅に、私も楽しみながらつき合っています。ぬいぐるみ専用の箱を用意してみたり、すぐにその時に必要なぬいぐるみを出せるようにハンモックを吊るしてそこに並べてみたり、あれこれ収納を工夫しているうちに、ふと素朴な疑問が湧いてきました。どうして娘はこんなにぬいぐるみが好きなんだろう?娘は心を落ち着かせる安心グッズとして、いつも手ざわりの良いハンドタオルを持ち歩いていますが、ぬいぐるみにはそれとはまた別の安心感があるのでしょうか?当たり前になり過ぎて何とも思わなくなっていた「ぬいぐるみと戯れる娘」について、ゆっくり考えてみました。娘にとって“ぬいぐるみ”とはいったい?出典 : まず、娘がどんな時にぬいぐるみを必要としているのかを観察してみることにしました。私に叱られて寝室にこもっている時には、いろんなぬいぐるみがひっぱり出されています。弟とケンカして「クールダウンしてくる!」という時にも、ぬいぐるみを抱きしめていることが多く、素直に私に甘えられない時には「ママ、このくまのぬいぐるみの声をしてくれる?」とお願いをしてきます。「ねえ、ねえ、〇〇ちゃん、どうしてそんな悲しい顔をしているの?なにか辛いことがあったの?」と声を変えてぬいぐるみを動かしながら娘に話しかけると、「あのね、今日こんなことがあったの。くまちゃんはどう思う?」と、打ち明けにくいことも話してくれたりします。怖いお話を読んでしまって眠れない夜にも、娘のそばにはいつもぬいぐるみが寄り添っています。こうしてみると、ネガティブな感情で心を埋めつくされてしまった時に助けてくれる存在であることは間違いがなさそうです。しかし、楽しそうな話し声に誘われて部屋をのぞいてみると、娘がぬいぐるみのお世話をしていたり、病気になったぬいぐるみを看病していたりします。ぬいぐるみ専用のお布団を作ってあげたり、ブラッシングをしてお手入れをしたりもしていますので、ネガティブな感情を吐き出すための道具というわけではなく、とても大切な存在なのだということがわかります。おそらく、変化に対応することが苦手な娘にとって、いつも同じ表情で自分を迎えてくれるぬいぐるみというのは、とても安心できる相手なのだと思います。“変わらずにいてくれる”存在のありがたさ出典 : 小学校4年生になった娘は、1年生の息子を私が膝に乗せているだけで嫉妬して半泣きになる程、母である私のことを求めてくれています。しかし、私は「親は神ではなく感情を持った生身の人間である」をモットーに子育てをしていますので、当然、疲れていて機嫌の悪いこともあれば、「お願いだから今は話しかけないで!」というオーラを出している時もあります。なるべく子どもの意に添うように暮らしてはいますが、娘が受け入れてほしい時に私に余裕がなく、受け止めきれない時があるのです。ぬいぐるみは、そんな時に黙って娘を受け入れてくれる存在なのではないでしょうか。ぬいぐるみは、娘を拒否しません。否定もしませんし、無理に励ますこともありません。いつも同じ表情をしていますが、見る側の気分によって、いかようにも受け取ることができますから、娘が悲しいときには心配そうに、楽しく遊んでいる時には嬉しそうに、ただただ娘に寄り添ってくれているのです。その柔らかな存在に、これまで娘はどれほど助けられてきたことでしょう。ぬいぐるみを抱きしめることによって傷ついた自分自身を抱きしめ、少しずつ心を回復させて安心感を得ることができる。娘にとってぬいぐるみが必要不可欠である理由が、ようやくわかった気がします。それぞれに合った安心グッズを見つけよう出典 : 発達障害を抱える子どもたちは、計り知れないほどの不安を抱えている場合があります。感覚過敏によって心が消耗してしまっていたり、自己肯定感の低さゆえに何気ない一言に傷ついてしまったり。そんな時に心を癒してくれる安心グッズが1つでもあれば、ゆっくりと心を回復させる手助けになってくれることだと思います。娘にとってはぬいぐるみが安心グッズになっていますが、同じように自閉症スペクトラムと診断されている息子の安心グッズは、まだ見つかっていません。心が疲れた時には、私に抱っこをせがむか、三角すわりをして自分の殻に閉じこもってしまうことしかできないのです。いつか息子にも安心グッズが見つかればいいなと思うのですが、こればかりは他人が勧めて受け入れるようなものでもないので、気長に合うものが見つかるのを待っています。とはいえ、どんどん体も大きくなってくる息子をいつまでも抱っこし続けるわけにもいきません。カチャカチャとボタンを押して数をかぞえる数取器や、扇風機のボタンなどの操作が好きな息子なので、今話題の「ハンドスピナー」や、ポケットに入るぐらいの小さなボタンに興味を持ってくれるかもしれません。さりげなく息子の目に付くところに置いてみて、安心グッズに出会えるチャンスを多く作れたらと思っています。あなたのお子さまにとって、心を癒してくれる安心グッズは何ですか?皆さんで共有して、さまざまなグッズを試すことができればいいですね。
2017年07月02日アスペルガー症候群とは?出典 : アスペルガー症候群とは発達障害の一つです。主な症状としては、「コミュニケーションの障害」「対人関係の障害」「限定された物事へのこだわり・興味」の大きく3つが挙げられます。対人関係の中でも特に複雑といえる恋愛や結婚に関して、その症状・特性ゆえに難しく感じたり悩みを持ったりしている人は少なくありません。アスペルガー症候群は、世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)や、アメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)という診断基準における疾患名です。2013年に発行された『DSM-5』においては「自閉症スペクトラム障害(ASD)」という別の診断名に統合されたため、最近は自閉症スペクトラム(ASD)という名称で呼ばれることが増えています。ただし、恋愛や結婚について考えたり経験したりする思春期のお子さんや成人の方の中には、すでにアスペルガー症候群という診断名のある人も多いと考えられます。そこで今回は、アスペルガー症候群という診断名に統一して解説していきます。アスペルガー症候群の人が恋愛で困ることって?出典 : アスペルガー症候群の人には大きく分けて3つの特徴がある、とご紹介しましたが、その特徴は具体的にどのような場面で困り感をもたらすのでしょうか。アスペルガー症候群の人は、会話そのものは問題なくできる場合がほとんどです。しかし、言葉をそのままの意味で受け取ってしまう傾向があるため、人の言葉を勘違いしやすく、傷つきやすいと言われています。具体的には以下のようなことが困りごととして考えられます。■相手の気持ちを察することが難しい人と人との会話においては、必ずしも目的や要求がすべて言葉に表れるとは限りません。また、コミュニケーションは言葉だけでなく相手の表情や目線を読み取ることも求められます。アスペルガー症候群の人は言葉の裏や行間を読むことや、言葉ではないあいまいなコミュニケーションを取ることが難しいと感じる時があります。相手と恋愛を進めていくためには、相手がどのような表情で会話しているかで相手の気持ちを読み取ったり、発言のトーンや語尾から相手の喜怒哀楽を察したりするなど、はっきりと言葉として表れないようなやりとりも必要になってきます。アスペルガー症候群の人はそのようなあいまいさを的確に解釈するのに困ることがあり、そのため恋愛を進めていくうえで苦労することが多いといえます。■不適切な表現や言動で相手を傷つけてしまうアスペルガー症候群の人は、自分の思ったことをその場面や状況に関係なく素直に発してしまうことがあります。伝えたいことを遠回しに伝えることに難しさを感じることがあり、言い方が直接的すぎたり、キツくなったりしてしまいがちです。そのため、パートナーを知らず知らずのうちに傷つけてしまっていることもあるかもしれません。傷ついたパートナーが悲しんでいたり、怒ったりしても「自分が思ったことをそのまま言っただけなのに、どうして泣かせてしまったのだろう。ケンカになってしまったのだろう。」と自分が相手を傷つけている理由がわからなくて悩むケースも多いようです。■言葉どおりに受け取ってしまい、誤解してしまう世の中には、純粋に相手のことを好きだからデートに誘ったり、気持ちを伝えたりする人もいれば、そうではない人もいます。例えば、他に恋人や配偶者がいるのにも関わらずそのことを隠して近づいてくる人、その人自身ではなく、その人が持っているもの(お金など)が欲しいために恋愛関係を利用して近づいてくる人などがいることも事実です。そのような人達と、純粋に恋愛感情を抱いてくれている人達を見分けることは誰にとっても難しいことです。その中でもアスペルガー症候群の人は相手の好意的な言葉を信じきってしまうようなことが多くあるようです。その結果、相手のことを誤解したまま、悲しい思いをしてしまう人も少なくありません。司馬 理英子/著『シーン別アスペルガー会話メソッド―日本初! コミュニケーション力がぐんぐん身につく 』2013年/主婦の友インフォス情報社コミュニケーションの障害とも関係して、アスペルガー症候群の人は対人関係にも苦労することが多いと言います。例えばこのようなことが考えられます。■他人にノーと伝えるのが苦手で傷つきやすいアスペルガー症候群の人は「お互い恋愛感情を持って思いやっているのだから、相手の要求はすべて呑んであげなくてはならない」「パートナーに自分の意見を否定されてしまった。もう自分のことは嫌いになってしまったのか」など、極端な考え方になってしまったり、相手の言葉や行動に敏感で、ささいなことで傷ついたりしてしまうことがあります。■相手に依存しすぎてしまう片思いの段階でも相手の反応をうかがうことなくアプローチし続けてしまう、「相手が好き、相手のすべてを知りたい」と言う気持ちから相手につきまとってしまい、ストーカーと思われてしまった経験がある人もいるようです。また交際や結婚に至った場合でも、「パートナーのことが好き!」という気持ちに一直線になりすぎて相手に過度に関わりを持とうとしてしまったり、自分を理解してくれるパートナーに何でもかんでも頼ってしまったりすることがあるようです。■他人と長時間一緒にいられないコミュニケーションがうまく取れない、人とうまく付き合えないと自覚しているために自分から人と距離を置いたり、恋人や夫婦になっても一人の時間を強く求めたりするようなアスペルガー症候群の人もいます。デビ・ブラウン/著 『アスピーガールの心と体を守る性のルール 』2017年/東洋館出版社アスペルガー症候群の人は、一度あることに興味を持つと過剰といえるほど熱中し、こだわる特性がある人が多いと言われています。きちんとした法則性や規則性を好む傾向があり、それが崩れるとひどく困惑したり、パニックになったりする傾向があります。恋愛においては次のような困り感につながることがあります。■約束や両者で決めたルールを完璧に守ろうとする、それらの変更に対応できない法則や規則できちんと決められている状態に安心を感じるアスペルガー症候群の人は、デートの約束や恋人・夫婦間で決めたルールも完璧に守ろうとすることがあります。ただ、このような約束事は人と人との間で決めたものなので、やむを得ず守ることができなかったり、破ってしまったりすることもありますよね。アスペルガー症候群の人は「決して故意で約束を破ったわけじゃない、どうにもならなかったんだ」などと説明されても「約束を破った」の一点張りで許すことができなかったり、それによる予定などの変更にひどく混乱してしまったりすることがあります。恋愛で困ったら?アスペルガー症候群の人がやるべきこと出典 : アスペルガー症候群の人がその特性ゆえに恋愛や結婚に関して悩んだ時、どのように乗り越えていけばよいかを解説します。恋愛や結婚で「うまくいかない…困った…」と感じたら、まずはその困りごとの裏側にある自分の特性を、自分自身で理解することが大切です。アスペルガー症候群の特徴はなんなのか、自分はどんな特性がとりわけ見られるのかについて考えていきましょう。自分自身ではもちろん、わからなかったら心理士などの専門家や身近な友人に相談するとよいでしょう。また、自分に特性があるように、相手にも自分とは違う特性があります。自分と相手はいくら仲が良くても違う人間である、自分では考えられないような特性をもっている場合もある、ということへの理解も重要です。お互いの特性を理解することで、苦手なことを補い合っていける良い関係を築くことにもつながるでしょう。恋愛や結婚に関しては、これと言った決まった正解がないために、一人で考えていてもどうしたらよいかわからないことがあると思います。そんな時、恋愛や結婚に関して相談できる人や場を見つけておくことが、恋愛や結婚に関するお悩み解消の手立てとなることがあります。相談する人の例として、家族や友人、自分を診てもらっている医師やカウンセラーの人などが一番身近と言えます。もし、そのような身近な人に相談するのが難しい場合は、自助団体などの困りごとを共有・共感してくれるような場や、発達障害者支援センターなどの相談支援を行っている機関に相談するのも一つの手段でしょう。発達障害者支援センターでは匿名で電話相談やメールをすることも可能なので、恋愛や結婚などの相談も比較的持ちかけやすいかもしれません。一般社団法人日本自閉症協会相談事業のご案内学校では、保健体育の授業などで「思春期になったら異性を意識しはじめる」程度のことしか教えてもらえません。「交際するとはどういうことなのか」「恋愛関係や結婚に至るにはどのようなプロセスを踏めばいいのか」など、恋愛に関する詳しいことは自然に習得することを暗に求められています。しかし、アスペルガー症候群をはじめとする発達障害のある人は、暗黙の了解とされているようなあいまいな物事を理解するのに苦労する傾向があります。そのため、恋愛や結婚をするうえでのルールやプロセスが解説された本やウェブサイトで、恋愛や結婚を進めるためにどう行動すればよいのかを学んでみることをおすすめします。このような本やウェブサイトで紹介されている情報が全部正しい、というわけではなく、全てが自分にあてはまるわけでもありませんが、それらを読んでみることで困り感や悩み解決の第一歩になるかもしれません。アスペルガー症候群の人向けの恋愛アドバイス本も多数出版されているので、興味をそそられたものを手に取ってみるのもよいでしょう。マクシーン アストン/著『アスペルガーの男性が女性について知っておきたいこと』2013年/東京書籍くらげ/梅永雄二/監『ボクの彼女は発達障害』2013年/ヒューマンケアブックス恋愛をしようという時に、なによりはじめに異性との付き合い方や好きになってもらう方法を考える人が多いかもしれません。ですが、「恋愛をしたい、好きな人にアプローチしたい」と思ったらまず、誰にとっても「話してみたい、仲良くなりたい」と思ってもらえるよう、対人関係における基本的なマナーを身につけることです。例えば、以下のようなものがあります。・身だしなみを整える(髪の毛や爪の長さ、服装など)・適切な対人距離を心がける(相手が顔をそむけたくなったり、びっくりしたりするほど近づきすぎないなど)・視線の使い方に気をつける(人と話すときは相手の目、難しかったら相手の顔のどこか一部分を見るように心がける、相手の顔をじろじろ見続けないなど)・人に会ったら挨拶をするなどまずはこのような、相手に好感をもってもらうための基本的なマナーの理解と実践を意識することが恋愛のファーストステップとなります。アスペルガー症候群の人が知っておきたい!恋愛のキホンとは出典 : ここではアスペルガー症候群の人が誤解しやすい、恋愛や結婚に関する基本的なルールを解説していきます。幸運にも好きな人と出会うことができた時、両思いを願いながらアプローチしていくのは勇気がいることだと思います。この段階で念頭に置いておきたいことは、自分が相手のことを好きだからといって、相手も自分のことが好きかどうかはわからないということ、勇気を出して気持ちを告白したとしても、断られる場合もあるということです。アスペルガー症候群の人は、自分が相手のことを好き、という気持ちのみで突っ走ってしまうことがあります。ですが、自分と相手の気持ちが常に一致するとは限らないこと、相手には相手の気持ちがあるということを理解しなくてはなりません。他にも、この段階で気をつけたいことは以下のようなものが挙げられます。・デートやプレゼントだけが好意や愛情を示す手段ではない・メールや電話は直接顔を合わせないが、相手のことを考えてする必要がある(メールや電話をする頻度を相手と同じくらいに合わせてみる、丁寧な文面・話し方を心がけるなどの配慮が必要)・相手の気持ちは言葉だけでは図ることができない・嫌な時はきちんと「嫌です」「やめてください」などと断る・許可なく急に異性に触らない交際をスタートさせるまでは、相手が自分のことをどのように思っているか、なかなかわかりません。だからこそ、相手のことを思いやったアプローチを心がけましょう。また、残念ながらアプローチに対して断られてしまった場合、すぐに諦めたり切り替えたりすることは大変難しいと思います。ですがこの時も相手には相手の気持ちがある、という考え方を忘れないこと、むやみにアプローチを続けようとしないことを意識し、ゆっくりと時間をかけてでも相手の答えを受け入れていくことが大切です。見事、好きな人と交際ができた、結婚したなど、好きな人がパートナーとなった場合も心がけておくことがあります。例えば、このようなことが考えられます。・勉強や仕事と恋愛のバランスが極端に偏りすぎないように心掛ける(依存しない)・恋人だからといってなんでも言われた通りにしない・相手との間に完璧を求めすぎない、妥協点をさぐる・別れることになっても執着しすぎない、追いかけ過ぎない相手と両思いになった、結婚し、生涯のパートナーになったという場合でも、「自分は自分、相手は相手」という考え方を忘れてはいけません。自分にも相手にもそれぞれ抱えている事情があります。そのうえで2人で折り合いをつけつつお互いの気持ちを尊重し合う、お互いに勉強や仕事をするべき時は学習や業務に集中し、恋愛が生活の100%にならないよう声を掛け合う、など工夫することで良い関係性を築いていくことにつながるでしょう。パートナーがアスペルガー症候群の場合、心がけたいこととは?出典 : アスペルガー症候群のパートナーに対して、「どうして相手に構わずストレートな物言いをするのだろう」「約束を守れなかったのはわざとではなく事情があるのに、いくら説明してもわかってくれない」など、さまざまな不満や困り感を抱いている人は多いのではないでしょうか。パートナーがアスペルガー症候群の場合、まずアスペルガー症候群にはどのような特性があり、生活の場面で何につまずいてしまいがちなのかを理解することからはじめましょう。相手からの言葉や行動から、むやみに「自分のことをわかっていない」「実は相手は自分のことを好きではないのかも」と捉えてしまうと、お互いが本当に理解しあう前に関係が破綻してしまうこともあります。アスペルガー症候群の特性を知ることで「わざとあんな言い方をしてるのではなくて、あいまいなコミュニケーションが苦手だからなんだ」「規則や約束を何があっても完璧に守ろうとする特性があるから、予定を変更するとパニックになるのか」とパートナーへ抱いていた不満や悩みが、特性ゆえのものであることが納得できると思います。特性とパートナーの困り感を結びつけて理解できると、困り感の改善方法は2人にとってよりよいものになります。そしてより前向きな姿勢で相手との関係をつくりあげていくことにつながります。前の記述でも詳しく説明したように、アスペルガー症候群の人はあいまいなコミュニケーションが苦手という特性があります。そのため、アスペルガー症候群のパートナーに対して不満があった時に「あなたのこういうところが嫌!直して!」とただ感情的に気持ちをぶつけてもアスペルガー症候群の人にとってはなぜ嫌なのか、なぜそんなに感情的なのか、わからないことが多くあるそうです。パートナーに直してほしいところがあり、それを伝えたいと思った場合、次の3ステップを意識してみることをおすすめします。1. 自分が不満に思った、相手の言葉や行動を詳しく説明する2. その言葉や行動に対してどんな感情を抱いたのか3. 相手にはこれからどのような言葉・行動を心がけてほしいのかこの3ステップに則ってはっきりと伝えてあげることで、アスペルガー症候群の人も相手の考えに納得することができ、不満や困り感が解消されるかもしれません。ルディ・シモン/著『アスペルガーのパートナーのいる女性が知っておくべき22の心得』2010年/スペクトラム出版社野波ツナ/著『旦那(アキラ)さんはアスペルガー‐うちのパパってなんかヘン!?‐』2011年/コスミック出版これまでアスペルガー症候群のパートナーとうまくつきあっていくための工夫を紹介してきましたが、そうはいっても相手とのコミュニケーションに悩んだり、困ったりする場面は多いと思います。そんな時、家族や友人をはじめ、相談しやすい人が誰かを把握し、少し悩んだらすぐ相談できるような環境を整えておくことが大切です。家族や友人には話しづらい…という方は、パートナーがアスペルガー症候群の人が立ち上げたネット上のコミュニティなどで同じ悩みを持つ人を探してみたり、体験談を読んでみたりするのもよいでしょう。アスペルガー症候群の人とのコミュニケーションがうまくいかず、深く悩んでしまうと、カサンドラ症候群と呼ばれる二次障害が生じることもあります。悩みが深刻化し、そのような二次障害を発症する前に、周りの人やコミュニティの中で、相談できるところをいくつか見つけておくことをおすすめします。発達ナビコミュニティカサンドラ症候群に悩まされてアスペルガー症候群の人の恋愛体験談出典 : ここで発達ナビに寄せられた、恋愛体験談を紹介します。まずはパートナーにアスペルガー症候群の傾向があるという人の経験談です。アスペルガー症候群の特性に対する理解が相手と関係を築いていくうえで大切である、ということを実際に感じたとのことです。私は、自分が先天性の「ろう者」で、アスペルガーの夫がいます。夫が、アスペルガーと分かったのは結婚して一緒に暮らしてから、だんだんとアレ?!と思う事が色々と起きて、友達の家でひょんなことから目にした本の中にアスペルガー関連の事が載っていて、思い当たる事がいっぱいあり、夫抜きで1人で発達障害専門の病院へ相談をしに行ったら、アスペルガーの可能性が90%ですね!(残りは本人がいないから) と言われて、やっぱり!!!とモヤモヤしていたのが消えたんです。私も、先天性の障害だから、アスペルガーも先天性の障害なので、こんなものか!と軽く捉えるようになり、夫が突然パニックを起こしても、あまり気にならなくなりました笑やっぱり、お互いの事を理解すればするほど、「なんで?」と思わなくなるし、新しい発見もあったりして楽しいです。パートナーに感じていた疑問や不満も、アスペルガー症候群の特性ゆえなんだ!と気づくことで、ある程度解消されるケースは多いようです。お互いの理解が深まるうちに疑問や不満が少なくなり、代わりに「新しい発見」として楽しむことができると、2人の関係性もより素敵なものになりますね。次に、高機能自閉症当事者の方の恋愛体験談です。異性との接し方が全くわからないので、自分からは全く動けない。恋愛感情が芽生えたことは頻繁にあっても、自分を誤魔化し続けるのが精一杯。(中略)女性との仕事の話や、自分が客として女性店員と接するのに、最近ようやく慣れたところ。異性との接し方ははっきり教えてくれるような場がなく、世の中にはぼんやりとした、それでいてさまざまな情報が出回っています。そのため、どのように異性と接すればよいかわからず、誰かに好意を抱いてもアプローチなどできない、と思っている人は少なからずいるのではないでしょうか。体験談を寄せてくださった方は、女性と仕事の話を通して関わりをもってみる、店員と客という立場を通して女性と話してみるという方法で、女性と接することに対して慣れようと試みているそうです。このように、恋愛や結婚を目指す前に、異性とのコミュニケーションに慣れるという目的で、異性の店員さんなどに話しかけることもひとつの方法と言えます。さまざまな人と話すうちに、異性の中でも性格や趣味、興味などが違うこともわかってくると思います。異性と接することに慣れていくうちに、自分に合う人の特徴も徐々にはっきりとわかってくるかもしれません。まとめ出典 : アスペルガー症候群の人は、「コミュニケーションの障害」「対人関係の障害」「限定された物事へのこだわり・興味」に代表される3つの特性ゆえに、恋愛や結婚において、相手とのやりとりや関係性を築いていくのに苦労することがあります。「恋愛や結婚をしたい!」と思ったら、まず自分が何に困るのかを把握することが大切です。それと同時に、恋愛に関するルールを、相談しやすい人物や機関、また書籍やウェブサイトから少しずつ学んでいくのもよいでしょう。自分が思いを寄せていたり、既にカップルとして関係が築けていたりしたとしても、自分と相手は違う人間です。どんな特性をもっていて、どんなことを嫌に思うのかは人それぞれ異なります。自分がアスペルガー症候群である、パートナーがアスペルガー症候群である、どちらの場合であっても自分と相手の違うところを認め、理解しあうことで素敵な関係を築いていきたいですね。
2017年05月31日アスピーガールの心と体を守る性のルールUpload By 発達ナビ編集部自分に自信がなくて相手に合わせるけれど、とても疲れる…「付き合っているのだから」と、相手の言うことをなんでも聞いてしまい、心も体も傷ついてしまう…友人関係を築くのも苦手だから、恋愛や性に関する情報源も少なくなりがち…そんな、アスペルガー症候群傾向の思春期女子が陥りがちな恋愛や性のトラブルから、自分たちの心と身体を守り、パートナーとより良い関係を育んでいくための書籍、『アスピーガールの心と体を守る性のルール』が東洋館出版社より発売されました。この本の著者は、自身も29歳でアスペルガー症候群と診断を受けた当事者であり、現在は自閉症の研究に従事する女性、デビ・ブラウン氏。「親愛なる妹たちへ」と呼びかけながら、主に著者よりも若い思春期の女の子たちに向けて本を書かれています。書名に「性のルール」と銘打たれている通り、本の後半ではアスペルガー女子にとって情報が得にくい性の情報や自衛についてのことが中心に書かれていますが、前半には、そもそも自衛が必要な危険な状況をつくりだす元となる、アスペルガー女性に特有の「生きづらさ」とその対処法についての情報にページが費やされています。その結果、アスペルガーとしては未診断でも、自分の感情や人間関係、ノーと言うのが苦手など、何かしらの生きづらさを抱える若い女の子にとって参考になる内容となっています。男の子のアスペルガーと、どう違う?出典 : アスペルガー症候群の特徴としては、「あいまいなコミュニケーションが苦手」「相手の気持ちを理解するのが苦手」などがよく挙げられ、他人からはマイペースな印象を持たれがちだと言われています。しかし本書によると、アスペルガー女子(本書では親しみを込めて"アスピーガール"と呼ばれます)は「人に嫌われたくないという気持ちから、本当の姿を隠し、壁を作ってしまう」「(他人に)ノーと伝えるのが苦手な人が多い」「完璧を目指しすぎることで、ストレスや不安を感じ、必要のないプレッシャーに襲われてしまう」などと、むしろ過剰なまでに他人に気を遣ってしまい、その結果しんどくなってしまうような、傷つきやすく繊細な特性を持っているのだということです。本書では、そんな彼女たちが、恋愛と性の問題にどのように対処していけば良いかの指針を示しています。あえて性をテーマの中心においた理由出典 : 生きづらさを抱えやすいアスピーガールにとって、日々の困りごとは多岐に渡ります。そのたくさんの困りごとの中でも、なぜ本書では、性をメインのテーマに置いたのかを考えてみました。つまるところ、アスペルガー女子は、良くも悪くも常識にとらわれないからこそ、危険な目に遭うリスクも多いといえるからではないでしょうか。心や体が傷つけられると時には取り返しのつかないことになりうるからこそ、筆者はアスピーガールの先輩として、本書を執筆したのだと思います。・自分を好きになるための7つのルール・悩みを聞いて支えてくれる「サポーター」の見つけ方・自分と相手との境界線を持ち「ノー」と伝えることの大切さ…などなど、アスピーガールたちが、自分の心と体を守りながら周囲の人やパートナーと関わっていくためのヒントが、本書には満載です。生きづらさを抱えるアスピーガール本人だけでなく、親御さんや先生方など、アスピーガールに関わる大人の方々にも読んで頂きたい本です。アスピーガールの心と体を守る性のルール
2017年05月16日長所だった「目標に向かって一直線」がマイナス要素に!?出典 : 歳になったアスペルガー症候群の娘は、昔から「努力の人」と呼ぶに相応しいタイプの女の子でした。まりつきで「あんたがたどこさ」を最後までやり遂げられるように、鉄棒で逆上がりをできるように、二重跳びがとべるように…。上手く出来ない自分が悔しくて、両手に出来た豆が潰れても泣きながら、毎日毎日何時間も練習を重ねてきました。「体が疲れているから休んでからにしよう?」と声をかけても、首を縦に降ることは決してありませんでした。そうして、人の何倍も努力をして、少しずつ出来ることを増やしてきたのです。幼い頃はこのド根性がプラスに作用しており、娘の一番の長所といえるところでもありました。ところが年齢が上がり、他人とのコミュニケーションが増えるにつれ、この長所がマイナスに作用している場面が目に付くようになってきました。娘の思い描く「理想の完成形」には家族や友達が含まれ、そこに向かって努力をしない人たちに声を荒らげ、強い口調で指示を出して相手をコントロールしようとするのです。このままではせっかくの長所が、娘や周囲の人たちを苦しめる要因になってしまう…。どうすれば「目標に向かって一直線!」を良い方向に持って行くことができるのでしょうか。お箸とコップを出すだけなのに、どうして空気がピリッとしてしまうの?出典 : トラブルは何気ない日常の中にも突然あらわれます。我が家ではご飯の前に、子どもたちにお箸やコップを並べることをお願いしています。子供たちに声をかけると、日頃から「人の役に立ちたい」と強く願っている娘は「はーい!」と気持ちのいい返事を返してくれます。息子もお姉ちゃんに負けまいと急いでやって来て「じゃあ、僕はお箸を出すね!」と楽しそうに話します。問題はここから。娘「お箸はお姉ちゃんが出すから、君はコップを並べて!早く!コップは何色がいいかみんなにちゃんと確認して!」息子「はーい。えーと、僕はこのコップにするね」娘「ちょっと!!!自分のものから選ぶんじゃなくて、まずご飯を作ってくれてるママにどのコップがいいか確認しないとダメでしょ!お姉ちゃんはどれでもいいから、ママに聞いてから自分のコップを決めてちょうだい!」息子「えー、ママはどれでもいいっていつも言ってくれるから、僕はこれにする」娘「たとえママがそう言ってくれても、ママは疲れているのに私たちのためにご飯を作ってくれたりお世話してくれているんだから!ちゃんと聞くのが礼儀でしょ!もしお客さんがいたら、まずお客さんにどれがいいか聞く!自分の事は後回しでいいの!いつもそれをやっていないから、お客さんが来た時にちゃんとできないんでしょ!」私「お姉ちゃん、ありがとう。ママはどのコップでも構わないから、あなたも好きなのを選んでね」娘「ありがとうママ!じゃ、お姉ちゃんはこれにするから、早く飲み物を入れて並べて!ああ、そうじゃなくて一つずつ丁寧にやりなさい!!人が口をつけるところは手で持たないの!」こんな風に早口で息子に矢継ぎ早に指示を出したりお説教をしたり、とても慌ただしくてピリッとした空気になってしまうのです。娘の言っていることはあながち間違いではありませんし、この内容がきちんと息子に入っていけば、息子にとってもプラスになるはずです。なんとかこれを穏やかな空気の中で行うことができれば、お友だちや家族とのトラブルも減って、本人も楽になれるんじゃないかと思うのですが…。娘に教えた「必死」にならない方法出典 : そこで、娘と話し合ってみました。私はまず、そんなに必死になる必要はないのだと伝えました。でも娘の答えはこうでした。娘「私、必死になんてなってないよ!ただ役に立ちたいと思ってやっただけなのに!」そうなのです。娘は純粋に役に立ちたいがために頑張っているのです。でも結果的にはそれが弟を巻き込み、ピリッとした空気になってしまうのでした。私「あなたの『役に立ちたい!』は他の人から見ると『必死』に見えちゃうんだよ。食卓を整えるのは、別に全力でやらなきゃいけないことじゃないでしょ?今からみんなで楽しくご飯を食べようっていう時にピリピリしちゃうともったいないし、あなたもムカムカしちゃって気分が良くないでしょ?」娘「確かに・・・・」娘もここは納得してくれたようです。私はこう続けました。私「ママ考えたんだけど、必死に見えちゃうのは、1つは『早口になっちゃう』ことが原因だと思うの。伝えたいことがたくさんあって、言葉が溢れてくるのはわかるんだけど、ゆっくり伝えるだけで自分も周りもずいぶん印象が違ってくると思うよ?」娘「そう!伝えたいことがたくさんあるんだよ!でもまだ思ってることの半分も言えてないのに、ゆっくりにしたらもっと言えなくなっちゃうじゃない」私「そうだよね。でも、頭の中で考えてることを全部他人に吐き出す必要はないんだよ。何が弟にとって必要な情報かを選んで教えてあげたらいいと思うの」娘「確かに。弟も途中から聞いてないもんね」私「あとね、『これをしてもらえる?』とか『お客さんが来てくれた時はこうすると喜んでもらえるよ』とか、そんな風に話し方を変えるだけで、同じ内容でもずいぶん印象が変わってくると思うの。それだったら、ママもニコニコしながら見守れるよ。」娘「わかった!すぐには無理だと思うけど、やってみる」来年の今頃には成果があらわれると信じて出典 : そんな話し合いをしてしばらく経ったある日のこと。娘が今月の目標欄に「人と笑顔で話す」と書いてあるのを見つけました。この話し合いがきっかけになったのかどうかはわかりませんが、目標をたててそれに向かってひたむきに努力ができる娘だから、いつかきっとこの目標も達成できるのではないかと嬉しく見守っています。発達障害を抱える人は、他人とのコミュニケーションが苦手だとよく言われます。それは、特性を持たない人たちとは物事の見え方や感じ方が異なるために通じ合うことが難しいということが原因としてあげられると思います。ですがもうひとつ、「経験から学んで自然とスキルを身につける」のが苦手であるということが、相手と上手くコミュニケーションを取れない要因になっているのではないかと、最近子供たちを見ていてよく思います。でも、経験から学ぶのは難しくても、繰り返し「こんな風にしてみよう」という声掛けをすることで、少しずつ本人も周囲も楽になっていくことはあるかも知れません。人が自分を変えていくというのは、とても時間がかかります。数日声掛けをして変化が見られなくても、焦らずに年単位の目標だと思って続けてみませんか?「こうすれば上手く人と接することが出来る」という成功体験は、きっといつか社会に出て行く子どもたちの自信に繋がっていくはずです。私も来年の今頃には少しずつ成果が出てくると信じて、「必死にならず、ゆっくり話してみよう」と娘に声掛けを続けていきたいと思います。
2017年04月25日一人の大人として扱われるのが大学です出典 : 高校までは、子どもたちは生徒という立場で先生たちに守られて過ごします。問題があれば担任の先生が中心となって、解決の糸口を探してくれることもあります。ですが、大学に入学すると、世話を焼いたり勉強のやり方を指導する先生は基本的にいません。課目によってはクラスはあるけれど、「ここが私のクラスだ」と毎日通うクラスは存在しません。大学は学生を一人の大人として扱います。高校までのようにいちいち管理されない分、大人としての責任を求められます。それはとても開放的で自由な環境ですが、型にはまるのが得意ともいえるアスペルガー症候群の人には、なじむまでが大変かもしれません。大学という新しい環境に飛び込んだアスペルガーと注意欠陥症を持つ私が、どんなことにつまづいたのか、そして何を得たかを書いていきたいと思います。最初は友達をどう作っていいかわからず…。出典 : 晴れて大学に入学したものの、私には話し相手が一人もいませんでした。学科の人数は約400人。授業も語学以外は大教室で行われます。周りを見ると笑顔で会話しているグループもいるのに、私はどうやって友達を作ればいいのかわかりませんでした。そのことを気にするあまり一時は「この大学は合わないから入試を受け直して別の大学に行こうか」と思ったほどです。でも、しばらくすると語学で一緒になった子と話すようになり、一緒にクラブ見学に行くことになりました。そのクラブ見学で、強いインパクトを受けたのが軽音楽部でした。軽音楽部の部室の前に机とイスがあって、そこに座るアフロヘアの先輩が「ああ、入部希望?」と言ったのを鮮明に覚えています。部室の中にいる先輩たちはなんというか個性が強烈で、「何て自由な人たちなんだ」と私は心底びっくりしました。結局私はその軽音楽部に入部することになりました。最初はどうふるまっていいのかわからず小さくなっていましたが、先輩たちに「バンド一緒に組もうよ」と誘われてからはどんどんなじんでいくように。バンドをやろうという人たちはけっこうアクが強い人が多いのですが、それでも堂々と過ごしている姿に「ああ、変わっていてもいいんだな」とホッとしたのを覚えています。大学というところは、基本的にサークルやクラブ単位で人間関係が深められていく傾向があります。なので適当に顔を出しておけばいいようなサークルでもいいので、どこかのクラブ・サークルに所属することを私は強くおすすめします。ちなみに、そういうところで知り合った先輩は、「楽勝で単位をとれる講義」「出席が甘い先生」などを教えてくれたりもします。学業に励むのもいいけれど、そういう情報も知っていて損はありませんよね。初めて気づいた、自分のコミュニケーションの特徴出典 : 私は大学に入るまで、私は基本的に誰かと群れるということが苦手でした。また当時の私は、難しい言葉を多用するしゃべり方をしたり、本音をオブラートに包まず相手に投げつけたりしていました。さらに、きつく聞こえる方言が、それに拍車をかけていたのです。ある日、そんな私にクラブの先輩が言いました。「ヨーコちゃん、あなたのしゃべり方って怖い」「偉そうに聞こえるし、怒っているようにも見える」「もっとしゃべり方を直した方がいいよ」はっとしました。そのとき初めて、自分の話し方とまわりの人の話し方の違いに気付いたのです。みんなの話し方はトーンが優しく、相手に非があってもいったん受け入れて「だけど自分はこう思うよ」と相手を傷つけないように気遣っていたのです。私は初めてそのことに気づくことができました。また、そのことを私に伝える時にも、先輩は攻撃的な態度ではなく、本音で心配な気持ちを伝えてくれました。私にはそれがうれしく、素直に「そうか、そう思われるようなしゃべり方だったんだな」と納得し、みんなが不快にならないようなしゃべり方を身につけようと思いました。そこで私は、周りの人たちがしゃべっている様子をよく聞いて真似することから始めました。自分の方言を封印することはありませんでしたが、きつい言葉は別の言葉に言い換えました。相手より優位に立とうとする態度もやめるように心がけていったのです。すると周りの人の態度も変わってきて、先輩たちも「ずいぶんマイルドになったね」とほめてくれるように。どんどん肩の力を抜いて過ごせるようになり、大学で過ごすのがますます楽しくなりました。「できない=バカにされる」だと思っていた私を変えた出来事出典 : 私の親は大学教授でした。言いふらすつもりはありませんでしたが、聞かれたら正直に答えていたので知る人は昔から多かったです。ですが親の立派な職業が肩にのしかかり、「できる子じゃなくちゃいけない」と思い詰めていたように思います。高校までは人に弱いところを見せると負けだと思っていましたし、無駄にプライドが高く人より劣っているということは認めることができませんでした。もともと負けず嫌いということもありましたが、勉強ができないと「親は大学教授なのに…」と周りの人や学校の先生から心ない言葉を投げつけられましたし、もちろん親にも「どうしてこんなにバカなんだ」といわれてきました。そのせいで同級生にも「本当は勉強が分からなくて困っているけど、知られたらバカにされる」と思って虚勢を張り続けていました。ところが、大学の語学の授業でのことです。マルクス(Marx)を「マークス」と読み違えた私にクラス中が爆笑し、「ヨーコちゃんがいるからこの授業は癒しの時間になるわ」と言われたのです。そして、あまりに英語ができない私のことをクラスの人はかわいがってくれ、いろいろと助けてくれました。年度の終わりが近くになると、先生も私が単位を落とさないように気を遣って、こんなことを言ってくれました。「君はお父さんが大学教授らしいね。もう、お父さんに頼んでこの問題を日本語に訳してもらってきなさい。そうじゃないと単位があげられないんだよ。」勉強はできない私でしたが、先生やクラスのみんなは、私を愛してくれました。それはおそらく、めちゃくちゃな読み方で大爆笑されても、必死に読み続けたこと、まじめに講義を受けて頑張っているのにどうしてもできない事実がみんなに理解されたこと、親の職業を知っていてもヨーコはヨーコとみんなが見てくれたことがあったからだと思うのです。できないからといって誰のこともバカにしない。できないのなら助けてあげる。そういう空気が教室にあふれていて、ハリネズミみたいになっていた私の心を溶かしてくれました。私はそれまで「できない=バカにされる」だと思っていました。しかし、必ずしもそうではなく、努力する姿を愛してくれる人もいるということをこの時学んだのです。この経験があったからこそ、この先の辛い社会人生活でも人として腐らずに生きてこれたのだと思っています。大学生活を振り返って出典 : 大学生活がスタートした時は、友達の作り方がわからず、大学をやめようかとも思った私ですが、人との関わり方が未熟だったことに気づくことができ、自分の態度を改めることができました。さらには、今でも付き合いのある一生モノの友人を得ることができ、「できない」ということで、必ずしもバカにされるわけではないということを学ぶことができました。ただ、すべてがうまくいったわけではありません。4年で卒業するための授業の選択がうまくできなかったり、就職活動のタイミングや方法が分からなかったり、課題もあった大学生活でした。それでも、主にクラブの仲間のおかげで、大学生活は私にとって一生忘れられない楽しいひとときとなりました。大人同士の付き合いができて、打算も何もない関係の中で友人を作ることができるのは大学ならではです。発達障害の私にとって、「相手が大人になっている」ということは何よりも助かるポイントでした。また、最近では発達障害の学生を支援してくれる大学も増えています。あらかじめそういう支援の充実した大学を調べて、支援を受けながらキャンパスライフを過ごすのもいい方法だと思います。高校までとは違い、大学から広がる世界はとても広いです。大学に行きたいと願う人にはぜひあの自由な世界を味わってほしいなと思います。発達障害学生への就学支援方法について(富山大学)ガクプロ発達障害のある大学生支援プログラム「働くチカラPROJECT」
2017年04月14日どこにでもある石が宝物!?出典 : アスペルガー症候群のある娘がまだ幼稚園生だった頃の話です。ある日、園から帰ってきた娘のポケットがパンパンに膨らんでいました。私「ポケットに何が入ってるの?」娘「あのね、今日もとってもいい石を見つけたの!」私「石?お庭にいい石があったの?」娘「うん!鉄棒の後ろの方にね、すごくいい石がごろごろ転がってたんだよ!先生が持って帰っていいって!」自由時間に園庭でお友だちと遊ぶこともなく、ただひたすら砂場で砂を触っていた娘が、その日を境に毎日石を持って帰ってくるようになりました。なんの変哲もない、どこにでも転がっているようなただの小さな石ころです。ポケットを大切そうに撫でながら、「今日もいい石があったよ!」と話す娘の顔は今までになくキラキラとしていて、私もとっても嬉しくなりました。「あなたにとって大切なものは、もちろんママも一緒に大切にするからね!」そういって2人で家中の引き出しを探って空き瓶を見つけ、そこに娘が拾ってきた石ころを保管することにしました。来る日も来る日も、1人で園庭の隅にしゃがんで“いい石”を探す娘の姿を想像して切なくなったこともありました。でも、それが本人にとってステキな時間ならば、別にお友だちと一緒に遊ばなくてもいいか・・・・と思えるほど、娘が宝物の入った瓶を見る姿は輝いていたのです。しかし、園からお持ち帰り禁止を受けた娘は…出典 : しかし幼稚園の方から「たとえ石だとしても園の所有物を持ちかえるのは禁止します」という旨が伝えられ、娘にとっての自由時間は砂場に座って、ただ砂を触るだけのものに逆戻りしてしまいました。私「石は園の所有物だから、これからは持って帰ってはいけないことになったの」娘「え!?先生はいいって言ってくれたのに」私「先生も毎日あなたが石を持って帰ることは想像してなかったんだよ。宝探しのつもりで石を見つけて、自由時間が終わったらお庭に戻せばいいんじゃないかな?」娘「せっかくいい石を見つけても帰りにお庭に置いて帰らなければいけないのはすごく悲しいから、それなら初めから探さない!」何度か話をしてみましたが、娘の態度は頑なでした。思い返せば、お友だちと一緒に遊べなかったのも、他人から見ればどうでもいいようなものに価値を見出して集めたがるのも、アスペルガーの特性であったのだと思います。でも、当時の私には何の知識もなく、ただせっかく見つけた幸せな時間の過ごし方がダメになってしまって残念だなという強い思いがあっただけでした。所有物がダメならこれはどうだ!幼い娘がたどり着いた答え出典 : ある日、娘がまた目を輝かせて私に言いました。娘「ねえ、ママ!ポケットになにが入っていると思う?」私「えっ?パパと公園に行っていい石を見つけてきたの?」娘「違うよ!誰かのものは勝手に持って帰ったらダメなんでしょ?だからコレだったらいいでしょ?すごくステキなの!!」そういって娘がとり出したのは、道端に落ちていたラムネの包み紙。透明のセロファンで出来たその包み紙は、きれいな色が大好きな娘の心を鷲掴みにしたようでた。それ以後「ゴミは持って帰っても叱られない。道もきれいになってちょうどいい!」と色々なものを拾ってくるようになりました。あまりに不潔なものは処分しますが、それ以外の物は娘にとっての宝物ですので、大きな瓶がいっぱいになるまで集めては一緒に眺めて楽しんでいました。そのうち、幼稚園で工作をした後に床に落ちている毛糸の切れ端やおりがみの切れ端を集めて、先生の許可を得てから持ちかえるようになりました。「誰かの所有物を持ちかえってはダメ」というルールを理解すると、そのルールを厳格に守ろうとするアスペルガーらしい特性がまたここでも見えていたように思います。いくつかの空き瓶が満杯になり、箱や引き出しもいっぱいになった頃、「このままではお家がゴミ屋敷になっちゃう!」と娘と話し合うことに。そして、その段階で思い入れが薄くなっているものは写真を撮った後に思い切って処分しました。以後、「写真に残せば納得して処分できる」という図式が出来上がったようです。あちこちから集めてきた娘のお宝は、物を整理する練習にもつながると感じています。全部揃ってないと気持ち悪い!子どもの「収集癖」とどう付き合うか出典 : アスペルガー症候群に限らず、収集癖が強いお子さまがいるご家庭も少なくないと思います。私自身も、文房具が好きなのでペンは全色揃えたい、本などシリーズで出ているものはすべて揃えたいという願望があります。どうしてそのような欲が湧いてくるのかと考えてみたことがありますが、やはり「規則的なものを好む」という特性が強く影響しているような気がします。規則的なものや完璧に揃っているものを見ると安心して居心地がよいのですが、少しでも欠けていたり変則的であるものに対してはとても居心地が悪く、完璧な姿でないことにイライラしてしまうのです。いまでは小学4年生になった娘も、ひとたびシルバニアファミリーなどを収集し始めると、おもちゃ屋さんに行くたびに「すべてを手に入れたい」という思いに駆られ、お小遣いを使ってどんどん集めていきます。娘を見ていると、集めること、手に入れることを目的にしている様子です。家に帰ってパッケージを開けるだけで満足し、またおもちゃ屋さんに行くと「完璧にそろえなければ」という欲求に飲み込まれてしまっていました。出典 : そこで良い機会だと思い、娘と話し合ってみました。私「ママも同じだからよくわかるんだけど、ここにあるシルバニア、全部集めたいよね~!」娘「やっぱりそうでしょ!私もひとつ残らず自分のものにしたいの!」私「うんうん!想像するだけでワクワクするね~!!全部ここに揃ったら圧巻よね!」娘「でも、もう置き場所がないから全部は無理かも知れない」私「いい所に気がついたね!このまま集め続けたら、私たちが住む場所がなくなっちゃうよ~!お家がシルバニアに乗っ取られちゃう」娘「もっと広い家に引っ越してよ~!」私「そうできればいいんだけど、やっぱり生活のことを考えると出来ることと出来ないことがあるんだよ」娘「うーーーーん」私「お小遣いやお年玉もせっかく貯めてきたけど、今どんどんシルバニアに使ってるよね。あなたが満足するならいい事ではあると思うんだけど、全部使っちゃうと、次にお金が必要なときに一銭もない状態になっちゃうよ?」娘「うーーーーん、確かにそうだけど、まだアルバイトをして自分では稼ぐこともできないし、どうしたらいいの?」私「たとえば、『シルバニアは一ヶ月に一つだけ、800円以内』とか、きちんと自分でルールを決めて、欲しい気持ちをぐっと我慢することも大事だよ?集められないものはカタログを集めて、切り抜いて自分専用に冊子を作るとか、工夫して楽しんでみたらどうかしら?」娘「なるほど、冊子を作るのはいいね!いつでも見られると思えば安心できるし、家にあるような感じもするし!」そんなわけで、娘は今せっせと欲しいおもちゃや楽器のカタログを集め始め、挙句の果てに電化製品などのカタログもお店の方に断っていただいてくるようになりました。それを眺めることで「すべてを手に入れたい」という欲求をずいぶん抑えられるようにもなりました。もちろん収集癖自体が収まったわけではなく、今度は家にカタログが溢れるようになったわけです。でも、自分の欲求を認識した上で実現可能かどうかを冷静に判断し、工夫をして我慢をするという一連の作業ができるようになっただけでも、ずいぶん成長できたのではないかと思います。また、「すべて集めたい」という欲求を私に理解してもらえている、という部分も娘にとっては大きいようです。まず「全部集められたら夢みたい!確かにステキだよね!」とお子さまの気持ちに寄り添った上で、どこまでが実現可能かどうか話し合っていくことで、「実現不能な欲求に歯止めをかける」という練習になるかも知れません。「こんなもの集めてどうするの!?」と本音を口にしてしまう前に、ゆっくりとお子さまの宝物を一緒に眺めて、当人にとってそれがどれほど大切なものなのか聞き出してみませんか?思わぬところにお子さまの成長の種が隠れているかも知れませんよ。
2017年04月11日カミングアウトって必要?一般就労で障害者が働くということ出典 : 発達障害の診断を受けている方は、職場でカミングアウトしているのでしょうか?一般就労で働く方の中には、周囲に黙っているケースも多いようです。私も42歳までは自分が発達障害とは知らなかったので、一般就労で普通に働いていました。いえ、普通とはいえませんね。というのも、私は勤めては1年くらいで辞める、ということをずっと繰り返してきたのです。いつも理由はわからないのですが、周囲の人にだんだん嫌われ、「仕事の覚えが悪い」「やる気あるの?」と責められ、心身ともに限界になってやめるというパターンを繰り返してきました。これからご紹介するお話は、私が障害のカミングアウトに失敗し、結局退職に追い込まれた体験談です。一人でも同じ思いをする人が減ることを祈りながら書きます。障害を隠したまま仕事に就いた私。思わぬ展開で上司に障害を知られることに出典 : 私が当時働いていたのは、派遣会社に登録して応募したデータ登録の仕事です。ここは私が診断を受けてから、初めて職場でカミングアウトした勤務先です。応募時には障害のことは一切伝えませんでした。その後あっさりと採用された私は、出勤して間もなく指導係の上司に、納税関係の書類を書くよう指示を受けました。その書類には障害者かどうか書く欄がありました。「どうしよう…。」思い悩んだ私は上司に正直に伝えることにしたのです。私「あの、私、障害者手帳を持ってるんですが」上司「マジか。何の障害があるの?」私が「アルペルガー症候群です。」上司「何それ?」私はアスペルガー症候群を知らなかった上司に、自分の障害の説明をすることに。知られたときはどうなることかと思いましたが、脳性まひの妹さんがいるとのことで、私の障害にも理解を示してくれました。黙って普通に働くつもりでしたが、こうして私の障害は管理職全員と仕事のチームリーダーに知られることとなったのです。上司が教えてくれた私の個性。ショックだったけれど…出典 : その後、入社して2ケ月が経過した頃です。障害者手帳のことを打ち明けていた指導係の上司は、そのまま私の上司になりました。その日は上司との個人面談がありました。私「この頃なんだかAさんに避けられているような気がするんですよね。いつもそうなんです。気がついたら嫌われているんです」上司「君に言ったら傷つくかもしれないけど、はっきり言わせてもらうよ。君は動作が1つひとつ大げさで、『あっ!』『やってしもた』とか大きな声で独り言を言うよね。それが子どもっぽく見える。そうした振る舞いは日本の社会では異質なものとみられる。日本人は小学生の頃から横へ倣えの精神を叩きこまれるでしょ。異質なもの、変わった人は嫌われてしまう。僕も最初は君のことを『変わった人だな』と思ったよ。だけどアスペルガー症候群と聞いていたし、受け入れようという思いがあったからずいぶん違った。君のバックグランドを知らない人は、嫌ってしまうこともあると思う。知っているから受け入れられるという保証はないけれど、打ち明けてみるという選択肢もある。ちなみにAさんは逆に、『ヨーコさんに避けられてるみたいなんです』って気にしてたよ。」と言われました。これには正直ショックでしたが、「なぜか人に嫌われる」という長年の謎が解けたようでスッキリもしました。スタッフの誤解を解きたかった私は、困りごとを説明することに出典 : 上司との面談の数日後、上司抜きでスタッフとミーティングをする機会がありました。メンバーはいつも一緒に仕事している派遣社員たちです。その場で私は、普段から気になっていたことを聞いてみることにしました。私「私が質問しようとすると『何言ってるのかわからない』とBさんは仰いますが、どうしてなんですか?」Bさん「普通、自分で十分調べてからここがわからないと聞いてくるのに、あなたはそれもせず、やたら焦って聞いてくるから、何を聞きたいのかこちらもわからない」私「私にはちょっと人と違った特性があって、まず騒がしい環境で呼ばれても聴き取ることができません。それから、言葉で次々と説明されると理解が追い付かなくてパニックを起こしてしまうことがあります。あと空気が読めません。いろいろと失礼なことをしてしまうかもしれませんが、申し訳ありません。」このとき、「アスペルガーだ」とは言えませんでした。引かれるのが、偏見を持たれるのが、変に遠慮されるのが怖かったからです。Bさん「そんなこと言われても困る。まるで私がいじめているみたいじゃない」私は、「違うんです」とどれだけ説明しても、その後話を聞いてもらえませんでした。次の日から職場の空気が明らかに変わりました。ものすごく冷たいのです。後に聞いたことですが、みんなは「ヨーコさんはみんなの前でBさんに失礼な態度を取った」と思っていたそうです。そして、私の説明を「そんな私だから優しくして下さい」と訴えてきたと受け止めたようでした。もうこれ以上隠すことはできない…上司の勧めで障害を伝えることに出典 : そのミーティングからしばらく経ったある日、上司から声をかけられました。「スタッフが『ヨーコさんが何度も同じことを質問してくるから困っている』『ヨーコさんが目を合わせてくれなくなった』と訴えてきたよ」このときの私は、すっかり職場の人と接するのが怖くなり、最低限しかコミュニケーションをとらなくなっていたのです。明らかに私の雰囲気が変わったことに気付いた上司は「あのミーティングで何があった?」と聞いてきました。ミーティングでの出来事をそのまま伝えたところ、上司は「それは中途半端なカミングアウトでタイミングも悪かったね。もう、ちゃんとカミングアウトしないとやっていけないと思う。」と言いました。そこで、アスペルガー症候群についての基本的な説明と、医者から言われていた私の特性をプリントにまとめ、上司からみんなに説明してもらうことになったのです。出典 : 説明を受けた一部のスタッフは、私に妙に優しくなりました。一方でこれまでの態度と一切変わらない人や、「いろいろな個性があっていいじゃない。言ってくれてよかったと思うよ」といいながら、これまでよりも距離が遠のいたスタッフもいました。スタッフから言われた言葉の中で「ああ、わかってもらえないんだな…」と思った一言があります。「子どもの頃は学校でやってこれたんでしょ。個性の問題よ。みんな一緒。」どれだけ説明しても、「頑張っているのにできない」「努力ではカバーしきれない問題」だと、理解してもらうことは難しいな…と思った瞬間でした。また、「私がいじめているみたいじゃない」と言っていたBさんは、私の障害について「そんなこと言われても理解できない」と繰り返していたそうで、その後挨拶もしてくれなくなりました。それからしばらくして、出社拒否症のような状態になり限界を迎えた私は、会社を去りました。どうか私と同じ失敗をしないでほしい。カミングアウトするときに気を付けたいこと出典 : この会社を辞めてから、障害者相談機関でこのときの話をしました。すると、「カミングアウトはとても難しいんです。最初からジョブコーチや支援者に入ってもらって、その人から話してもらうことをお勧めします。」と言われました。今回のケースでは、私も最初は隠し通す気だったし、カミングアウトも場当たり的で失敗しても無理はなかったと思います。障害者職業センターでは、自分の特性をまとめ、「知っておいてほしいこと」「それについて会社に配慮してほしいこと」「自分ではどう努力するか」を表にする作業を一緒にしてもらいました。言いっぱなしでは誤解を招くだけになりかねません。しっかり準備して「会社や周りはどうすればいいのか」「自分でも努力すること」などを明示し、十分に計画を練ってカミングアウトすることをお勧めします。
2017年01月06日女の子は幼いころからオシャレに夢中!って聞くけど…出典 : 「まだ幼稚園生なのにオシャレにとっても気をつかってるみたいで、毎朝鏡の前でお洋服をとっかえひっかえ試着してるの。マニキュアは塗るし、お化粧もマネしてタイヘンよ!」女の子のお母さんからそんなお話を聞くたび、「我が子にもいつかそんな日が来るのね!」と心待ちにしていました。あれから数年…。アスペルガーの診断を受けている娘は小学3年生になりましたが、オシャレ心に火がつく気配はいまだ一向にありません。それどころか、着替えるという行為そのものが、娘にとってはこの上なく面倒くさい作業のようです。出典 : つい先日、「身だしなみを整えてね」と声をかけると、Tシャツ1枚とハイソックスを持ってきて着替え始めました。私「その組み合わせで本当にいいの?」娘「いいよ!だって、ママはこの間、Tシャツにズボンだと私のお尻が目立つからやめた方がいいって言ったでしょ?だからハイソックスにしたんだから、文句言わないで!」私「文句を言ってるわけじゃないんだけど…、何か忘れてない?」娘「忘れたりしてないよ!これでいいったらいいの!」私「それでいいんならいいけど、着替えたら1度鏡の前に立って、おかしい所がないかどうか確認してみてね。」数分後、パンツ丸出しの姿で鏡の前に立った娘。「ギャー!エッチ!見ないで!」と叫び声をあげていましたが、どちらかというとあなたが露出しているのですよ、ということを丁寧にお伝えしました。どうしてこんなことになってしまうのでしょうか?無頓着?いいえ、自分の服を適切に選ぶことができない理由があるんです出典 : アスペルガーの特性の1つに「服装に無頓着」というものがあります。「人からどう見られているか」ということに意識が向かない傾向があるため、大人になってからもTPOに合わせた服装をするのが難しいこともあるようです。娘と思考回路が似ている私も、自分が着る洋服を決めるというのはとても苦手です。子どもたちに着せる洋服は、「この組み合わせはおかしい」とか「この色はあまり似合わない」という判断がすんなりできるのですが、これが自分のことになるとサッパリわからなくなるのです。この組み合わせでおかしくないのか、この丈で大丈夫なのか、何1つ、判断できなくなるのです。オシャレを楽しめる人がいるということが信じられず、クローゼットや鏡の前でただただ不安を感じるばかり。その結果、1度組み合わせて誰にもおかしいと指摘されなかった組み合わせの服ばかりを選ぶようになり、「いつも同じような服を着ているね」と言われるようになります。なぜ、自分のことになると判断が難しくなるのでしょうか。答えは簡単です。自分がその服を着て動いているところを想像することができないからです。鏡の中で不安げに正面を向いて立っている自分の姿が全てなのです。同じ服を着ていても、かしこまって立っている時と動いている時とでは、印象がかなり違います。客観的に自分がどう見えるか、それがわからないので判断のしようがないのです。今のところ娘は困っていないみたい。でもいつか、助けを求めたときには…出典 : 娘も私と同じように、今のところ「その洋服を身に着けている自分」というのを全く想像できていないようです。ピンクのTシャツにピンクのパンツ、ピンクの靴にピンクのコートを着て、まるで林家パー子さんのようになっている時もある娘。今は1つひとつ「それはおかしいよ」「こういう風に組み合わせてみるといいよ」と説明しています。サポートをする前に、「今自分が何につまづいているのか」「どんなことが苦手なのか」に気づいてもらう段階ですね。娘が「自分は洋服選びが得意ではない」ときちんと認識できた後で、いずれは娘がそれぞれの洋服を着ている写真をアルバムのようにして、クローゼットに置いてみようかと思っています。私は出産前、スーツで人前に立つ仕事をしていましたが、その時には毎朝洋服選びで苦労しないよう、No.1~No.6までのスーツを用意していました。ハンガーに番号を振り、その番号順にスーツを着て出かけるのです。週5日の出勤でしたので、1着多めの6着を用意し、同じ曜日に会う人にいつも同じスーツだと思われないようにしていました。その頃は、私もアスペルガーの傾向があるとは思ってもいなかったので、洋服選びも満足にできない自分がふがいなかったのです。ただ今となって思い返せば、自分なりに工夫して、なんとか自分をサポートできていたのではないかと思います。つい先回りしがちな私たち。でも、ちょっと待って!出典 : 発達障害を抱える我が子たちにこれから必要なのは、まず自分が苦手だと感じているものは何か、何に困っているのか、という部分をきちんと認識できる力をつけてやることではないかと思っています。その認識があってこそ、自分に合った方法を模索することができるのだと思うのです。娘がきちんと洋服を選べるようにサポートをすることは簡単です。でも、すぐに手を差し伸べずに、子ども自身が苦手を認識するまでじっと待つのも親の仕事なのかもしれませんね。
2017年01月03日PDD-NOS(特定不能の広汎性発達障害)とは?出典 : とはPervasive Developmental Disorder Not Otherwise Specifiedの略で特定不能の広汎性発達障害のことです。自閉症スペクトラム障害やアスペルガー症候群などの、他の広汎性発達障害の特徴がみられるが、それらの基準を満たさない場合に診断される障害です。この障害はアメリカ精神医学会の『DSM-Ⅳ-TR』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第4版テキスト改訂版)という診断基準により分類されたものです。しかし、2013年、この診断基準の改訂版である『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版テキスト改訂版)において、PDD-NOSは自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。そのため、現在はPDD-NOSの診断名が下されることは少なくなりつつあります。とはいえ、すでにこの名称で診断を受けた人も多いこと、医療機関などでPDD-NOSの名称を使用している場合も多いことから、本記事では『DSM-Ⅳ-TR』において定義されているPDD-NOSについてご説明いたします。Upload By 発達障害のキホンこの障害は、発達障害の1カテゴリーである広汎性発達障害が含む5つの障害のうちの一つとして位置づけられます。(上図参照)広汎性発達障害が含む5つの障害とは、自閉症、アスペルガー症候群、レット障害、小児期崩壊性障害、PDD-NOSを指します。この広汎性発達障害という発達障害のグループの特徴として①対人関係・社会性の障害②コミュニケーションの障害③特徴的なこだわりや興味の3つが挙げられます。『DSM-Ⅳ-TR』によるPDD-NOSの定義は以下の通りです。対人的相互反応の発達に重症で広汎な障害があり、言語的または非言語的なコミュニケーション能力の障害や常同的な行動・興味・活動の存在を伴っているが、特定の広汎性発達障害、統合失調症、失調型パーソナリティ障害、または回避性パーソナリティ障害の基準を満たさない場合に用いられるべきである。例えば、このカテゴリーには“非定型自閉症”――発症年齢が遅いこと、非定型の症状、または閾値に達しない症状、またはこのすべてがあるために自閉性紹介の基準を満たさないような病像――が入れられる。引用:高橋三郎ら/訳『DSM‐IV‐TR 精神疾患の診断・統計マニュアル』2004年医学書院/刊という診断区分を定めた『DSM-Ⅳ-TR』は最新の診断基準ではありません。そのため現在、PDD-NOSに相当する症状がある場合は、『DSM-Ⅳ-TR』以外の診断基準で診断をされることが多くなってきています。ここでは、PDD-NOSに相当する症状が、別の診断基準ではどのような名称なのか紹介いたします。・『DSM-5』におけるPDD-NOS『DSM-Ⅳ-TR』の改訂版であり、2013年に発行された『DSM-5』において、PDD-NOSは自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害というカテゴリに変更されています。Upload By 発達障害のキホン・『ICD-10』におけるPDD-NOS世界保健機関(WHO)が定める『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)(以下、本文中の表記は『ICD-10』とする)という診断基準では、『DSM-Ⅳ-TR』におけるPDD-NOSは非定型自閉症、他の広汎性発達障害、広汎性発達障害,特定不能のものという3つのカテゴリーに相当するとされています。Upload By 発達障害のキホン参考文献:神尾陽子/著『DSM-5を読み解く』2014年中山書店/刊PDD-NOSの診断基準出典 : は、1.広汎性発達障害にみられる症状がある2.広汎性発達障害に含まれる他の障害カテゴリー基準に当てはまらず特定できないという2つの条件をどちらも満たすものです。そのため、一言にPDD-NOSといっても、その症状は一人ひとり異なります。また、症状の程度は他の広汎性発達障害のなかでは比較的軽いと一般的には言われています。以下において、PDD-NOSの2つの条件についてそれぞれ説明いたします。1.他の広汎性発達障害にみられる症状があるPDD-NOSを除く4つの広汎性発達障害にみられる症状の特徴として以下の3点があります。・対人関係・社会性の障害人とのかかわりにおいて、お互いが快適に過ごすための振る舞いが難しく、良好な対人関係を築きにくいこと。・コミュニケーションの障害話し言葉や、表情や身振りなどのコミュニケーション能力において、なんらかの障害がみられること。たとえば、一方的な発話、独り言、言外の意味の組み損ねや話題の偏りやお決まりのフレーズなどが例に挙げられます。・特徴的なこだわりや興味特定の習慣や儀式にかたくなな興味をもつことや、特定の対象に対して持続的に熱中すること。参考ページ ペック研究所HP2.他の広汎性発達障害の基準に当てはまらない以下において説明する、4つの広汎性発達障害の基準を満たさない場合、PDD-NOSに分類されます。・自閉症自閉症は、目や耳から脳に入ってきた情報を「意味のあるまとまったこと」として認知することを苦手とします。原因は脳の器質的な異常によるもので、遺伝病ではありませんが、染色体異常や遺伝子異常などの遺伝的素因が強く、先天的に発症するという考え方が有力です。具体的な原因遺伝子はまだ解明されていません。詳しくは以下の記事をご覧ください。・アスペルガー症候群アスペルガー症候群(AS)は対人コミュニケーション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきづらい障害で、知的障害や言葉の発達の遅れがないものを言います。明確な原因は現在もわかっていませんが、何らかの脳機能の障害と考えられています。詳しくは以下の記事をご覧ください。・レット障害レット障害(レット症候群)は、ほとんどが女児に見られる脳障害で、少なくとも6ヶ月の正常な発達の時期を経た後に、重度の精神および運動の発達的後退がみられます。この障害の原因はX染色体上の遺伝子異常(MECP2、CDKL5、FOXG1)であることが1999年に解明されています。このため、『DSM-Ⅳ-TR』の改訂版である『DSM-5』では、自閉症スペクトラム障害から除外されました。参考ページ:レット障害|ハートクリニックHP・小児期崩壊性障害2~5歳頃まで健常な発達をしていたが、言語の理解や表出能力の退行が始まり、退行が終わったあとは自閉症と類似した症状を示すようになる障害です。原因はほとんど解明されていません。脂質代謝異常(コレステロールの蓄積)、はしかやウイルスの脳への感染、遺伝性疾患などとの関連がある可能性を指摘されています。参考ページ:小児期崩壊性障害|ハートクリニックHPPDD-NOSの発現時期出典 : 広汎性発達障害の子どもを持つ親が、言語能力の遅れやこだわりなどの症状から何らかの疑いを持つ時期は、3歳未満が多いとされています。また、1歳半健診や3歳児健診などの乳幼児健康診査で広汎性発達障害を含む発達障害に関する何かしらの指摘があり、その後医師の診断により判明することもあります。中には子どもの頃に気づかず、大人になってから広汎性発達障害と診断された方もいます。不安障害やうつ病などの気分障害・睡眠障害などのいわゆる二次障害と呼ばれる症状や状態となり、その検査を通して広汎性発達障害に気づく人もいます。PDD-NOSの原因特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)は、その名の通り特定の原因は不明とされています。現段階では正確な原因は解明されていませんが、脳機能の障害により症状が引き起こされるといわれています。その脳機能障害は、先天的な遺伝要因と、様々な環境要因が複雑かつ相互に影響し合って発現するというのが現在主流となっている説です。また、かつて言われたような親のしつけや愛情不足といった子育てのしかたによるという説は、医学的に否定されています。PDD-NOSかなと思ったら…?出典 : 上記で述べた症状や特徴などが見受けられる場合、専門家に判断してもらうことをおすすめします。ですが、いきなり専門医に行くことは難しいので、まずは無料で相談できる身近な専門機関の相談窓口を利用するのがおすすめです。また、1歳半や3歳児健診などの乳幼児健康診査がある場合は、医師や専門家もいるのでその際に相談してみるのもよいでしょう。子どもか大人かによって、行くべき専門機関が違うので、以下を参考にしてみてください。【子どもの場合】・保健センター・子育て支援センター・児童発達支援事業所・発達障害者支援センター・児童相談所など【大人の場合】・発達障害者支援センター・障害者就業・生活支援センター・相談支援事業所など児童相談所などでは無料で知能検査や発達検査を受けられることも多いので、児童相談所で相談するパパ・ママも多くいます。まず身近な相談センターに行って、診断をすすめられたら、そこから専門医を紹介してもらいましょう。自宅の近くに相談センターがない場合には、電話での相談にのってくれることもあります。以下のリンクにおいて全国の発達障害者支援センターを検索できます。発達ナビ地域情報|発達障害者支援センターの施設一覧・どの診療科にいけばいいの?PDD-NOSの診療が可能な診療科は、小児科、精神科、児童精神科、小児神経科、心身医療科、心療内科、発達障害外来など、病院により様々な名前となっています。どの病院に行けばいいか少しでも迷った場合は、まずは市町村の窓口や都道府県等の発達障害者支援センター等の相談窓口に電話で相談することをおすすめします。大人になって検査・診断を初めて受ける場合には、精神科や心療内科、大人もみてくれる児童精神科・小児神経科や精神科など専門の医療機関を受診することが一般的ですが、大人の発達障害を診断できる病院はまだ数が多くありません。上記の相談機関で紹介してもらえるほか、医師会や障害者支援センター、発達障害者支援センターなどでも調べることができます。発達障害の専門機関は他の病気に比べると少ないですが、発達障害者支援法などの施行によって年々増加はしています。以下のリンクは発達障害の診療を行える医師の一覧です。この他にも、児童精神科医師や診断のできる小児科医師もいます。担当者との相性も大切なので、納得のいく医療機関を選ぶようにしましょう。日本小児神経学会 「発達障害診療医師名簿」発達ナビ地域情報|病院(発達障害の診療可)の施設一覧・ 診断・検査の流れ本人や保護者に対する問診(面接)や行動観察、家族・学校の先生による提供情報の精査などと、専門機関によっては知能検査や発達検査などを実施する場合もあり、筆記や口頭質問などの検査が行なわれ、様々な情報を総合的に評価して診断されます。検査は複数回に分けて行なわれたり、慎重に経過を見ながら行われるため、一度の受診で診断されることはあまりありません。知能検査は、田中ビネー知能検査Ⅴ(ファイブ)やウェクスラー式知能検査(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月の幼児の場合は「WPPSI」、5歳から16歳11ヶ月の子どもは「WISC」、16歳以上の成人の場合は「WAIS」)などの検査を受けることによって検査結果がでます。特性の現れ方や発達段階などを評価するため「CARS」や「新版K式発達検査2001」、「PEP-R」などを行う場合もあります。・診断に必要な準備や持ち物初診時に必要な物として保険証、子どもであれば母子手帳などがあります。服用中の薬などがあれば、お薬手帳なども持っていくとよいでしょう。また、生育や発達歴についての問診がありますので、言葉を話し始めた時期や日常生活での困りごとなどをメモして持っていくと質問に答えやすいかもしれません。発達外来などの専門機関によっては保育園や幼稚園の連絡帳、小学校の通信簿やホームビデオなどを参考にする場合もあります。事前に問診票をプリントアウトして持参する機関もありますので、専門機関の公式ホームページをチェックしたり、予約時に電話にて必要な持ち物を問い合わせてみてください。PDD-NOSは治療できるの?出典 : 広汎性発達障害のひとつであるPDD-NOSの根本治療はできませんが、症状を緩和するためには療育的アプローチと薬物療法の2つが効果的です。療育とは、障害のある子どもが社会的に自立できるように行う、治療と教育を組み合わせた発達支援の取り組みのことです。自分の問題を自分で解決できるようになるには、療育によりコミュニケーションスキル等の能力を身につける必要があります。療育は何歳からでも始めることができ、なるべく早くから通うことで、その子に合った学び方や人との関わり方を見つけやすくなります。療育とは医療、訓練、教育、福祉などの現代の科学を総動員して障害を克服し、その児童が持つ発達能力をできるだけ有効に育て上げ、自立に向かって育成することである。(出典:療育と教育の接点を考える|障害保健福祉システムHP)療育とは何か|LITALICOジュニアHP広汎性発達障害そのものを根本的に治す薬はありませんが、特定の症状を緩和するために使用することがあります。薬によって開始できる年齢や症状が決まっており、人によって副作用がある場合もあるので、主治医とよく相談し、用法用量を守って服薬していくことが大切です。薬物療法は、症状を一時的に抑えるためのものであり、症状が軽減している間に、その子の課題に応じた支援を行い、自分に合った学び方や人との関わり方の獲得を促していくと効果的であるともいわれています。PDD-NOSの場合、障害者手帳は取得できるの?出典 : 障害者手帳の取得により、就職時に障害に応じた配慮を受けやすくなったり、税金面での控除や医療費助成を受けたりすることができます。・療育手帳PDD-NOSと診断されただけでは療育手帳付与の対象とはなりません。しかし、療育手帳を申請し、知的障害を有すると認められた場合は療育手帳が取得できます。・精神障害者保健福祉手帳精神神経症状をともなう発達障害は、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となります。そのため、PDD-NOSの症状によって、長期にわたり日常生活又は社会生活への制約があると認められた場合は、精神障害者保健福祉手帳を受けることができます。もし、知的障害と精神障害のどちらも有すると判断された場合は、療育手帳と精神障害者保健福祉手帳を両方取得することは可能です。まとめ出典 : 特定不能の広汎性発達障害)も、他の広汎性発達障害と同じく、早めに症状に気づくことで、療育や通院といった専門的な支援につながりやすくなります。お子さまの発達に何か違和感を覚えた段階で、お住まいの地域の発達障害者支援センターなどの相談窓口に連絡を取ることをおすすめいたします。専門家や支援機関のアドバイスも参考にしながら、子どもの課題に応じた支援を受け、その子らしい学び方、過ごし方を身につけることを応援していきましょう。
2016年11月21日「どうしたら一緒に遊べるの?」わからなくて独りぼっちだった幼児期出典 : 私と娘は親子揃ってアスペルガー症候群です。娘の診断をきっかけに、私も42歳で診断を受けました。今回は、私の学生時代を振り返りながら、その特性ゆえに友達作りで苦労したお話をご紹介します。私の母に言わせると、私は昔から友達ができない子どもだったそうです。幼稚園は1年しか行きませんでしたが、入園したとたんにつまづいてしまいました。いつの間にかクラスの子たちは打ち解けて自然に遊んでいるのですが、どうしたらああなれるのかもわからず、「一緒に遊ぼう」の一言が言えなくて、1人で遊ぶことが多かったのを覚えています。というか、仲良く友達と遊んだ記憶がないんですよね。先生は厳しい人で、松ぼっくりを蹴って遊んでいたら「松ぼっくりさんがかわいそうでしょ!」と怒られたことを覚えています。どうして松ぼっくりがかわいそうなのかいまだにわかりません…。幼稚園が楽しいとは、1度も思ったことはありませんでした。自分の言いたいことが言えない…!キレると拳で反撃していた小学生女子出典 : 小学校に入ってすぐに、印象的な出来事がありました。女子数人に次々に悪口を言われたのですが、悔しくて言い返そうとしても頭が真っ白になって何も思いつかないのです。悔しさのあまり、思わずその子たちを突き飛ばすと、帰りの会で「先生、ヨーコちゃんが○○ちゃんを突き飛ばしました」と言われました。先生は真相を確かめずに「ヨーコちゃんは謝って下さい」と言いました。私は悪口で何倍も心にパンチを受けたのに…。このときの「ごめんなさい」で、「女の子なんて大嫌い!!」「もう女の子とは関わらない!」と私の心は決まりました。それからはできるだけ男の子を相手に遊んでいたのですが、男子からもからかわれたりすることが多く、言葉で言い返せない私は暴力を振るうようになりました。気が付けば弟子入り志望の下級生が出てくるほどのケンカ常習犯に。友達が殴られたときも、問答無用でその男の子を投げ飛ばし、先生に追いかけられてトイレに逃げ込んだことを覚えています。でも、いつもそういうことばかりしていたわけではありません。一応女の子のグループにも入っていました。でも、仲間外れや分裂を繰り返し、自分たちだけにしかわからない言葉でしゃべったり…女の子同士の独特の付き合い方には、嫌悪感しか感じられなかったです。だから小学生時代もいい思い出はほとんどなく、卒業できてホッとしたのを覚えています。部活に没頭した中学校時代。他者との価値観の違いにはドライに対応出典 : 中学では剣道部に入り、すっかり武道の面白さに目覚めた私。なぜかと言えば、型から入り型で終わる武道は、アスペルガーである私の特性にとても合っていたのです。仲間と協力し合わなくても完結するのが、心地良かったですね。一緒に部活に入った子たちとも、最初は仲良くなって中学生らしく長電話を楽しんだりしていたのですが、部活に対する熱意の違いでいつの間にかぎこちなくなり、ライバル関係になってしまいました。昔から、人間関係が辛くなってきたらバッサリと切ってしまうか、自分から去っていくかのどちらかの方法ばかり選んできました。我慢してまで守りたい人間関係ではなかったし、修復する方法もわからなかったのです。友達は一応いたけれど、失って立ち直れなくなるほど執着を持ったことはありませんでした。キレやすさは相変わらず。でも、ルールに縛られずに過ごせた高校時代出典 : 高校は自由な校風で私服通学でした。同じ中学から進学した子はほとんどおらず、地元の狭い世界から解き放たれ、やっと一息ついたという感じでした。高校ではテニス部に入り「普通の子らしく」頑張っていましたが、先輩からの理不尽な嫌がらせにキレて、1年の夏休み明けには退部してしまいまいました。頭にきても手を出すことは中学でやめたのですが、カチンと来たときに言葉で相手に気持ちを伝えることは、いまだに苦手です。「なんでやねん!」と毎回思いますし、悔しい気持ちもあります。こうなると、行動に出るまでです。「黙って我慢する」「服従する」という言葉は私の辞書にはありません。大人になってもその傾向は変わらず、理不尽だと思ったら怒ってやめる、ということを繰り返してました。だんだん少しは「我慢する」ようになりましたが、それでも私の我慢の許容量は人よりはるかに小さいのです。出典 : 高校2年生から、学校の中にいるのが嫌になってしょっちゅう抜け出すようになりました。居場所は近所の喫茶店や、大きな公園、パチンコ屋。同級生と話すより、喫茶店のママやマスター、公園にいる路上生活の人と話したり、パチンコ屋の閉じられた世界に身を置く方が楽しかったのです。高校は3年間同じクラスで担任も一緒でした。担任の先生は途中から登校していつの間にかいなくなる私を気にかけ、親と話したり、私と話す時間を取ってくれました。「お母さんがしっかりしているからこの子は大丈夫」と親に言ってくれ、私が下手な嘘をついても、何もかも見抜いていながら泳がせてくれた先生には本当に感謝しています。もし当時、世間体やルール重視の指導をされていたら、私はきっと高校を中退していたことでしょう。大学生になり、始めて知った「人と付き合う楽しさ」出典 : 地元を離れ、他府県の大学に入った私。最初は友だちもできず寂しくて「別の大学に入り直そうか」と思ったくらいでしたが、軽音楽部に入ってから毎日が楽しくなりました。部活では、個性的な仲間と無理することなく打ち解けることができましたし、そこで初めて「しゃべり方が怖い」など、私の欠点を真っすぐに指摘してくれる人にも出会うことができました。下宿先では、夜通し友達とまじめな話をしたり遊びに行ったりと、「学生らしい」生活を堪能して、初めて人といることの楽しさを味わうことができたように思います。ありのままでいられる人間関係だってある。不登校の娘にも知ってほしいこと出典 : きっと、大学くらいになると友達付き合いが成熟してくること、友達も大人になって「ちょっと変わった子」の私と向き合う余裕ができたからなのでしょう。だからもし叶うことなら、娘にも大学に行って、友達とバカなことをしたり羽目を外す楽しさを味わってほしいなぁと願っているのです。大学時代の、成熟していながらも何事にも縛られない付合いって、この時期にしか味わえないものだと思うから。
2016年11月18日アスペルガーだと公表してから、「困っていること」ばかり聞かれるようになった出典 : みなさんこんにちは、高校教師のゴトウサンパチです。36歳でアスペルガー症候群と診断を受けてから10年が経ちました。社会全体としても、発達障害に対する認知や関心が高まり、その間、ボクも著書を出したり、発達障害関連の学会での発表をやらせていただいたり、講演依頼もいただくようになりました。そうした場でお願いされることのほとんどは、発達障害への支援を充実させるために、ボクが何に困っているのかを話してほしい、というものでした。ボクが当事者の1人として話すことで、発達障害への研究や支援が進み、それでたくさんの方が救えるならありがたいことだと思い、ボクは一生懸命お話してきました。他にも大勢いる発達障害当事者たちの代弁者のつもりで、自分が何に困っているのかを発信してきたのです。でも、話しているうちに、何かが違うのではないかという感覚になってきました。当事者の代弁者になんてなれるのか。ボクの困り感をみんなに伝えることが、いったい何になるのか。今日は、そんな逡巡から始まった、ボク自身の内面の変化についてお話します。どれだけ話しても、自分の感覚を他人と分かち合うことはできない出典 : 多くの人からの相談に答え、講演などで話し続けるなか、ある時ボクは気づいてしまったんです。ボクには、「発達障害当事者」の代弁や代表なんてできないということに。そんな風に思ったのは、どれだけ話しても、当事者の代弁はおろか、ボク自身の気持ちを理解してもらえることは決して来ないのだということを知ったからです。ボクの感覚は、ボクだけの感覚なのでいくら説明しようと試みても伝わりませんでした。ボクが絵を描いて説明しても、こうして文章を書いても、それを見る人読む人のその時の感覚や知識に任せざるを得ないのです。つまり、全く同じ気持ちを、2人の異なる人間が分かち合うことはできないのです。それを言っちゃあおしまいよ、支援者の方々はそう思われるかもしれませんが、どうしようない事実です。他の多くのみんなの感覚と、自分の感覚は決して同じではないこと。当事者の方には一刻も早く気づいてほしい。でもボクはこのことをネガティブには捉えていません。決して絶望なのではなく、むしろスタートラインだと思っています。自分と他人は違うのだということを受け容れて初めて、ボクはボク自身の幸せを追求できるようになるからです。他人と比較すればするほど、「困り感」は増幅していく出典 : アスペルガーだと公表してから、周りからいただく質問は「何に困っているか」という話題がほとんどだとお話しました。でも、そもそもボクたちが抱く「困り感」とは、いったいどこから生まれるのでしょう?思うにボクらは、自分と何かを比較することで、差を見つけ、そこからやり場のない困り感を生み出している気がします。わかり合えるはずなのに戦ってみたり、できないことをしようとしてみたり、必要以上に不安に感じたり。できることだけをすればいいのに周囲と合わせなくちゃいけないからとか、仕事だからとか、成績だとか、これができなきゃ将来困るからだとか…そんな風にして周囲と比べ、差を埋める努力を重ねれば重ねるほど、良くも悪くも自分らしさを認めることが減っていく。ボクはそんな自分に疲れたんです。何をやっても上手くいかない日々、悲しくて泣いた日々を思い出すことさえ嫌なんです。実は未来に期待することも嫌です。それより今、幸せでいたい。自分らしく生きていたい。ボクの内側からそんな声が溢れていることに気づきました。そこからボクは、考え方を少し変えてみることにしました。困った時は、困っていることに注目するのではなく、「世界に自分1人であれば、こんなに困ることはないはず」「いつだって1人ぼっちになってもいいように、自分にできることを追求してみよう」そうやって考えることにしたのです。別に何かを始めることではなく、そんな風に意識を変えただけです。驚くことにそれだけで、徐々に葛藤が減り、トラブルが減り、心が穏やかになり、格段に楽しい日々を送れるようになりました。なぜか以前より友達も増えたんですよ。それからは、“他人”との差ではなく、“ボク自身”の内面の変化に気付けるようになりました。自分を観察し昨日とは違う自分を発見するのは楽しいことです。いろいろな実験をしてみることも楽しいです。例えば、散歩したり、食事の内容を変えたり、そんな些細なことで、今日という日は昨日とは違う展開を見せるのです。それは、社会でも、周囲でもなくボクが変化しているからに他なりません。「困っている人の支援」という発想から抜け出そう出典 : ボクに質問や相談をしてくれる人のなかには、発達障害のある人の支援をしたい、という人も多くいます。彼らと話していると、実は「支援したい人も困っている」のだということに気づきました。「困っている人を支援したいけど、どうしたら良いかわからない。彼らが何を感じているか分からない」そのことが彼ら支援者自身の「困り感」を招いていることがしばしばあります。ボクはそういう人たちにも、まずは自分の幸せを第一に考えてほしい、と伝えたい。困っていることを解消するというのは、お互いの間にある「差を埋めようとする」ことです。そもそもそんな期待を持つことを、やめてしまってはいかがでしょうか。あなたにできることだけをしてあげる。それしかありませんし、できないことを前もってハッキリ伝えてあげる方がいいと思います。抱えきれないことを引き受けると、支援者であるあなた自身の困り感が増えてしまいますし、困り感を抱えたもの同士のやり取りはお互いがより困るだけです。できないことをできないと言うと、その時はたしかにギクシャクしますが、大丈夫、正直な行動は時間がしっかり解決してくれます。ですから、あなたは自分の幸せを第一に考えてください。ボクは、他人に合わせることをやめ、自分の幸せを第一に考えるようになってから、不思議と相手の変化にも敏感に気付くようになりました。もしかすると、お互いの変化を認め合い、伝えることが本当の支援なのかもしれません。きっと、ボクもあなたも、お互いが正直に向き合うことで、すでに支援し、支援されているんですよ。さて、今回言いたかったことは言えました。最後まで読んでくださってありがとうございます。
2016年10月27日