これまでさまざまな作品で描かれてきた歴史上の人物のひとりといえば、ナチス・ドイツの大物戦犯アドルフ・アイヒマン。その行いや逮捕劇などに関しては知られているものの、最期の日々についてはあまり語られてきませんでした。そこで今回ご紹介するのは、アイヒマンの遺体を巡る秘密の計画とそれに関わった人々の“真相”を描いた話題作です。『6月0日アイヒマンが処刑された日』【映画、ときどき私】 vol. 5991961年、ナチス・ドイツの戦争犯罪人であるアドルフ・アイヒマンに下されたのは死刑の判決。その知らせを告げるラジオに授業を中断して聞き入る先生と同級生たちを不思議そうに見つめていたのは、リビアから一家でイスラエルに移民してきたダヴィッドだった。ある日の放課後、ダヴィッドは父に連れられて、炉の掃除ができる少年を探していたゼブコ社長の鉄工所ヘと向かう。当初はヘブライ語が苦手な父のためにと熱心に働いていたダヴィッドだったが、居心地の悪い学校を抜け出し、いつしか鉄工所に入り浸るようになる。気さくな工員たちはダヴィッドを可愛がり、ゼブコも一目置いていた。そんななか、ゼブコの戦友で刑務官のハイムが小型焼却炉の設計図を片手に、極秘プロジェクトを持ち込んでくる。それがアイヒマンを燃やすためだと知ると、工員たちに動揺が広がるのだった…。死刑が廃止され、火葬が行われないはずのイスラエルで一体何が起きていたのかに迫っている本作。そこで、独自の視点から歴史を見つめ直したこちらの方にお話をうかがってきました。ジェイク・パルトロウ監督アメリカのロサンゼルス生まれで、ベラルーシ系ユダヤ人の父を持つジェイク監督。父は映画監督兼プロデューサーで母は俳優、さらに姉もハリウッドの実力派俳優グウィネス・パルトロウという芸術一家の出身です。今回は、アイヒマンの火葬をテーマにしようと思った理由や実在の人物から聞いた驚きのエピソード、そして日本の好きなところについても語っていただきました。―本作で描いている題材については、いつ頃から興味を持たれていたのでしょうか。監督第二次世界大戦とユダヤ人の歴史は、幼い頃から父とつながる“場所”であり、一緒に考えて議論を交わすテーマでもありました。毎年サンクスギビングの祝日には、BBC制作による第二次世界大戦のドキュメンタリーを観る習慣があったほどです。もともと父がこういった問題に関心が高く、家にもいろんな文献があったので、その影響は大きかったですね。ただ、誤解してほしくないのは、僕の個人的なアイデンティティや宗教的な義務感からこの作品を作ったわけではありません。誰かに恋をするのと同じように、あくまでもフィルムメーカーとしてこの題材に興味を持ち、面白いと思って作りました。―アイヒマンの火葬については、どういったきっかけで知りましたか?監督はっきりといつかは覚えていませんが、ドキュメンタリーや本のなかで知ったことだったと思います。アイヒマンは政治的な理由から火葬されることになりますが、もともとユダヤ教では火葬しないので、「一体何があったんだろう」と考えました。それと、当時は暗殺の可能性なども懸念して「アシュケナージ」と呼ばれる東ヨーロッパ系のユダヤ人を護衛に付けないといった配慮もされていたそうですが、そのあたりのディテールも興味深いなと。その2つの点が面白いと思いましたし、そこにストーリーがあると感じていたので、実際イスラエルに行って当時関わっていた方々にお話を聞くことにしました。これまで描かれていない話だと気が付いた―アイヒマンがどうやって火葬されていたかという事実については、おそらく知らない人のほうが多いと思います。監督僕自身もこの話は聞いたことがなかったし、取り組むにあたってこれまで描かれてもいなかったことに気が付きました。最初は、本作にも登場するホロコーストのサバイバーである板金工をメインにした物語にしようかと考えたのですが、リサーチをするなかで出会ったのがダヴィッド少年。現在の彼と直接会って話を聞いているうちに、興味をそそられるようになりました。ちなみに、彼は過去に自身の話を新聞社に持ち込んだことがあるそうですが、当時工場に働いていた人たちがその場に子どもがいたことを認めなかったため、取り上げてもらえなかったそうです。僕としてはこの映画を作りたい気持ちが強かったので、本当かどうかを重要視することなく、彼の話を信じることにしました。―リサーチのなかで、新たに知った事実や驚いたことはありましたか?監督まず、僕がこの物語に惹かれた理由の1つは、アイヒマンの火葬の計画がとてもカジュアルに話されていたこと。どういうことかというと、本来ならば、秘密警察の人たちが極秘のうちに進めるようなことですが、日中の明るいときに工場で「魚の骨が焼けるかどうか」みたいな話を例に出しながら、担当者同士が軽い感じで話しているんですよね。そういうところも含めて、面白いなと思いました。子どもたちがこの作品にエモーションを与えてくれた―ダヴィッドさん本人から聞いたお話のなかで、印象的なエピソードもあれば教えてください。監督彼の物語については、すべてが映画の通りではありませんが、彼は13歳のときから大人になるまでいろんな仕事をしてきたそうです。最終的にはコンピューター関連の仕事に就くのですが、それまでは僕も聞いたことがないような多種多様な仕事をしていたと聞いて驚きました。そのうえで少年時代の日常がどんなものだったのかを知るために、当時はどういう感情を抱いていたのか、子どもたちはどんなものを食べて、どんな遊びをしていたのか、といったことを深掘りしてこの作品のバックグラウンドを作っていきました。―そのダヴィッドを演じたノアム・オヴァディアくんは、素晴らしかったですね。ただ、演技経験のない11歳の子どもをメインキャラクターにするのは、ある意味大きなチャレンジだったのではないかなと。監督そうですね。特にこの作品にとっては、ダヴィッド役を演じられる少年を見つけられるかどうかが重要だったので、キャスティングディレクターにお願いして国内中を探してもらいました。そこでたくさんの動画を見ましたが、際立っていたのがノアム。何がよかったかというと、彼には役を演じるうえでの自然な資質があったのです。今回、本作に教師役で出演してもらったロテム・ケイナンさんは、イスラエルでは演技指導者としても有名なので、演技教室のようなものまで開いてもらいました。これはほかの子どもたちにも言えることですが、ノアムたちがこの作品にエモーションをもたらしてくれたと思っています。それなくしてこれだけ良質なものは作れなかったので、本当に感謝しています。観客が共感できるのは、本人よりも事件に関わった人たち―これまでアイヒマンを描いた作品は多数あるので、過去作とは違うアイヒマンの見せ方は本作でも大きなポイントだったと思います。そのあたりで意識されたことはありますか?監督実は、この作品ではアイヒマンの心理について掘り下げる意図は最初からまったくありませんでした。個人的にあまり興味をそそられるキャラクターではなかったですし、そこに触れてもいまさら何かの解決になるわけでも、意義深い話になるわけでもありませんからね。しかも、それに関しては過去の作品で描き切っていると考えています。それよりも僕としては、アイヒマンが影響を及ぼした人たちのほうに関心を抱いていました。何か大きな事件を題材にするときは、その本人よりも、そこに関わっている人たちを描いたほうが観客もより共感できるものです。今回は、当時まだ若かったイスラエルという国の人々にどんな影響を与えていたのかをフィクションを交えて見せたいと考えました。日本の好きなところを語り出したらきりがない―まもなく公開を迎える日本に対しては、どのような印象をお持ちですか?監督すごく前に一度だけ行ったことがありますが、また訪れたいなとずっと思っています。日本文化の好きなところを語り出したらきりがないですが、まずはやはり映画ですね。自分のなかでも、小津安二郎監督、成瀬巳喜男監督、小林正樹監督、黒澤明監督は基盤となっています。特に、小津監督の『晩春』ほど傑出した作品はないのではないかと感じているほど。僕の10歳になる娘も、原節子さんの大ファンです。原さんはすでに引退されていましたが、亡くなる前に彼女を短編で撮れたらいいなと夢のまた夢として思い描いていたこともあったので、それを娘に見せられたらよかったですね。いつか小津監督のお墓にも行ってみたいですが、大好きな日本映画が作られた場所をいろいろと巡ってみたいなと思っています。―それでは最後に、観客に向けてメッセージをお願いします。監督本作のことが好きか嫌いとかいうのではなく、描かれるテーマについて、誰かと何か話をしたくなる作品になったと思います。多くの方に作品との繋がりを感じてもらえればうれしいです。激動の時代に、歴史が動いた舞台裏を知る!歴史的事件の知られざる裏側に切り込み、観る者に新たな視点を与えてくれる本作。語られてこなかった真実を目撃するだけでなく、名もなき人々の思いに触れることもできる必見作です。取材、文・志村昌美気になる予告編はこちら!作品情報『6月0日アイヒマンが処刑された日』9月8日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開配給:東京テアトル️(C) THE OVEN FILM PRODUCTION LIMITED PARTERNSHIP
2023年09月07日グウィネス・パルトロウの弟のジェイク・パルトロウが監督・脚本を務めた『6月0日 アイヒマンが処刑された日』より、本編映像が解禁された。最重要ナチス戦犯のアドルフ・アイヒマン処刑までの最期の日々を描いた本作。この度解禁されたのは、一市民でありながら処刑されたアイヒマンの遺体を火葬するという大役を任された男を捉えた本編映像。「仇を討て」と背中を押されるヤネクはホロコーストの生き残りで、焼却炉の制作にも深くかかわっていた1人。同じ工場で働く少年ダヴィッドが焼却炉の着火方法を説明するものの、自分の手によってアイヒマンを火葬するとは夢にも思っていなかったヤネクはどこか上の空。刑務所に焼却炉を運び終え、ふと所内に目を向けると処刑後のアイヒマンの姿を目にする。復讐で怒りに震えるようなこともなく、思考が停止してしまったかのような、憎しみや悲しみといった一切の感情が読み取れない表情でユダヤ人大量虐殺を先導したアイヒマンの亡骸をただ見つめるヤネク。いよいよ着火という段階となるのだが…。本作に登場するアイヒマンを灰にする焼却炉は、皮肉にもアウシュビッツで使われたトプフ商会の小型焼却炉の設計図をもとに制作されるが、これは監督がイスラエルでインタビューして分かった事実で、劇中にもユダヤ人たちの葛藤とともに描かれる。これまで描かれることが無かった“アイヒマン最期の日々”を、史実を基に色んな視点から知ることができる貴重な本編映像となっている。『6月0日 アイヒマンが処刑された日』は9月8日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開。(シネマカフェ編集部)
2023年09月04日まもなく生まれる子どもの名前を、あの独裁者と同じ“アドルフ”にすると言ったことから始まる家族のドタバタ劇を描いた映画『お名前はアドルフ?』。この度、予告編とポスタービジュアルが解禁された。本作の舞台は、ライン川のほとりに佇む優雅な一軒家。この度解禁された予告編では、ディナーに揃った5人が繰り広げる騒動がコミカルに、そしてテンポよく描かれていく。ベルガー夫妻が主催したディナーで、弟トーマスが赤ちゃんのエコー写真を初披露。名前当てゲームが始まり、「Aで始まる」というヒントが出される。しかし、トーマスから「アドルフだ」と衝撃の告白をされたことから事態は一変!「あの悪名高きアドルフ・ヒトラー!?」さらに妊娠中の恋人が登場すると「その名前には深い意味があるのよ」とトーマスに加勢し、議論はさらにヒートアップ。そして舌戦は違う話題へと飛び火していき…。観ながらハラハラドキドキする予告編が完成した。また、ポスタービジュアルでは、ドイツを代表する役者陣たち5人全員が怪訝な顔をしている1枚写真があり、「今夜は、“真実”を召し上がれ」というコピーが躍る。ディナーの席で、これから繰り広げられる様々なバトルを想像をめぐらせずにはいられないビジュアルとなっている。『お名前はアドルフ?』は6月6日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開。(text:cinemacafe.net)■関連作品:お名前はアドルフ? 2020年6月よりシネスイッチ銀座ほか全国にて順次公開© 2018 Constantin Film Produktion GmbH
2020年04月02日アカデミー賞外国語映画賞など数々の賞を受賞したデビュー作『ノー・マンズ・ランド』や、ベルリン国際映画祭で三冠に輝いたロマの一家を描く実話『鉄くず拾いの物語』などで知られる名匠ダニス・タノヴィッチ監督の最新2作が、3月より新宿シネマカリテにて連続公開される。3月4日(土)に公開される『汚れたミルク/あるセールスマンの告発』は、1人の男の勇気ある行動が世界の命運を変えることになった、監督の幻の問題作。そのほかにも、家族や恋人、キャリアを投げうって正義を貫き、我々が知らなかった衝撃の事実を伝える実録映画の公開が相次いでいる。■復讐ではない、正義と尊厳を賭けた闘い…『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』(公開中)第二次世界大戦でアドルフ・ヒトラー率いるナチス・ドイツが敗北すると、数多くの重要戦犯が海外へと逃亡、執拗な追跡作戦が繰り広げられた。その中の最も重要な標的となる人物が「アイヒマン裁判」で有名なアドルフ・アイヒマン。当時の裁判の実際の映像を使用した
2017年01月28日長らく封印されていたナチス・ドイツ最重要人物アドルフ・アイヒマン拘束に関する<極秘作戦>の裏側を濃密かつサスペンスフルなタッチで描き、「ドイツ映画賞」で最多6冠に輝いたほか、世界中の映画祭を席巻した『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』。1月7日(土)に日本公開を控えた本作には、『ワイルド わたしの中の獣』でオオカミに激しく惹かれ、野生化していくヒロインを演じたリリト・シュタンゲンベルクも出演。今回シネマカフェに届いた本編映像から、妖艶な女装美男子に扮していることが分かった。1950年代後半のドイツ・フランクフルト。検事長フリッツ・バウアーは、ナチスによる戦争犯罪の告発に執念を燃やしていたが、未だ元ナチス党員が政治の中枢に多数残り、あらゆる捜査が遅々として進まなかった。そんなある日、バウアーのもとに数百万人のユダヤ人を強制収容所送りにした親衛隊中佐アドルフ・アイヒマン潜伏に関する手紙が届く。アイヒマンの罪をドイツで裁くため、ナチス残党が巣食うドイツの捜査機関を避け、イスラエルの諜報機関モサドにコンタクトをとり、アイヒマンを追い詰めていくバウアー。しかし、そのころ、フランクフルトではバウアーの敵対勢力が、彼の失脚を狙って狡猾な謀略を巡らせていた…。ナチスの戦争犯罪の徹底追及に人生を捧げたフリッツ・バウアーの孤高の闘いを、スリルと知的好奇心をかき立てながらも、人間の尊厳や正義といった普遍的なテーマに添い、力強く描いた本作。1961年のアイヒマン裁判を扱った『ハンナ・アーレント』、1963年~65年のアウシュビッツ裁判を題材にした『顔のないヒトラーたち』、そのアイヒマン裁判のTV放送を追った『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』など、歴史映画ファンにとっても必見の1作となっている。鉄の意志を持つ主人公フリッツ・バウアーを演じるブルクハルト・クラウスナーは、『白いリボン』『パリよ、永遠に』『ヒトラー暗殺、13分の誤算』などのほか、スティーヴン・スピルバーグ監督『ブリッジ・オブ・スパイ』にも出演するドイツ映画界の大スター。ドイツやヨーロッパ公開時に多くの動員を記録した本作は、先ごろ公開されたアメリカ国内でも、ロサンゼルス・タイムズ紙が「映画全体に力を与えているのは、ベテランドイツ人俳優ブルクハルト・クラウスナーの説得力ある演技だ。彼はバウアーの熱狂的な強烈さを正確に捉えている」と評するなど、話題を呼んでいる。そんな本作の舞台は、刑法175条により同性愛が禁止されていた1950年代後半のドイツ。『ワイルド わたしの中の獣』で衝撃のヒロインを演じているリリトは、いま日本でも注目度上昇中。解禁された本編映像では、自身が関わった刑法175条の裁判の傍聴に来ていたリリト演じるヴィクトリアが登場、“彼”が歌うバーへと、若き検事カール・アンガーマン(ロナルト・ツェアフェルト)が密かに足を踏み入れるシーンからスタートする。「私の好きなように遊びたいの。名前を伏せて」「誰にもバレないから」と妖しげに歌うヴィクトリア。そして「すばらしい歌だった」と楽屋を訪ねたアンガーマンは、彼に惹かれていたにも関わらず、「分からない、残念だけど帰らなきゃ、いい歌だった」と言い残し、逃げ帰ってしまう――。今回、女装美男役に女性を起用した理由について、ラース・クラウメ監督は「もともとリリト演じるヴィクトリアの役は男性を考えていました。美しい男性俳優の候補が何名もいたのですが、どうしてもハイヒールを履いたときに格好がつかなかったということと、同性愛が許されない時代に、刑法175条で裁かれるという場の法廷にいるということは、見た目が女性としてパーフェクトでなければならない、どうしても男性では男性らしさが出てしまったためでした。現在は有名な女優ですが、当時はまだ主演作がなく、いまほど有名ではなかったので、気がつく人は少なかったのではないかと思います」と語り、彼女の大抜擢の理由を明かしている。妖艶なヴィクトリアと検事アンガーマンの謎めいた関係が物語にどんな影響を及ぼすのかは、本編でチェックしてみて。『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』は1月7日 (土)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2017年01月05日近年注目のジャンルであるアウトサイダー・アートを代表する伝説的芸術家のアドルフ・ヴェルフリによる日本初の大規模な個展「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」が、17年1月11日から2月26日まで兵庫県立美術館にて開催される。アドルフ・ヴェルフリは、スイスの首都であるベルン近郊の貧しい家庭に生まれ、その約30年後にヴァルダウ精神病院に収容された芸術家。病院内でドローイング作品を描き始めると、『ゆりかごから墓場まで』、『地理と代数のノート』、『葬送行進曲』など多くの物語を生み出した。そうした作品は全45冊、2万5,000ページにものぼり、類を見ない驚異的な表現で描き出される奇想天外な物語で人々を圧倒した。アドルフ・ヴェルフリ財団の全面的な協力のもとに開催される同展では、ヴェルフリの中でも最大級の4メートルを超える作品をはじめとした全74点の作品を展示。新聞用紙に鉛筆で描いた初期の作品から、全9冊・2,970ページに及ぶ初の叙事詩、ヴェルフリが自らに向けたレクイエムとも言われる「葬送行進曲」、日銭稼ぎのためにクレヨンで一枚ずつ独立したシートに描いたという「ブロード・クンスト」まで、門外不出とされてきた第一級のヴェルフリ作品が来日する貴重な機会となっている。なお、同展は兵庫県立美術館での開催後、名古屋、東京でも開催される予定だ。【イベント情報】「アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国」会場:兵庫県立美術館住所:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1会期:17年1月11日~2月26日時間:10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)料金:一般1,400円(1,200円)、大学生1,000円(800円)、高校生・65歳以上700円(600円)、中学生以下無料※()内は前売・団体料金休館日:月曜日
2016年11月04日伝統と革新、優美さと鋭利さ、そして強烈な“密度”と“強度”を持つドイツ映画。今年も、そんなドイツ映画の現在と未来を提示する7作品を一挙上映する「ドイツ映画祭2016HORIZONTE」を開催。このほど、女優で監督の桃井かおりから、ベルリン国際映画祭にも出品された自身出演作『フクシマ・モナムール』の日本上陸を前にコメントが到着した。「HORIZONTE(地平/視野)」と題された本年度ドイツ映画祭は、TOHOシネマズ 六本木を会場に、最新ドイツ映画の中から選りすぐりの注目作・秀作をいち早く上映。気鋭の監督や俳優が来日し、舞台挨拶とQ&Aによって上映作品の魅力を“熱く深く”紹介する。オープンニングを飾るのは、桃井さんが出演したドリス・デリエ監督作『フクシマ・モナムール』。結婚式の直前、式場から逃げ出した若いドイツ人女性マリー(ロザリー・トーマス)は、被災地の人たちに少しでも明るい気持ちを届けたいと、傷心を抱えて福島への慰問の旅を決心する。その試みもうまくいかず落ち込んでいたマリーだが、福島最後の芸者だというサトミ(桃井さん)という女性と知り合い、帰還困難区域で暮らすことに。何もかもが異なる2人の女性の間に、不思議な友情関係が築かれていく…という物語だ。そのほか、13歳の誕生日プレゼントに日記をもらった少女が壮絶な日常や恐怖、希望や夢を書き綴る『アンネの日記』、ナチス戦犯アドルフ・アイヒマンを追う検事長を描く『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』、クリスマスイブに精神科病棟で過ごす若者たちを描く『クリスマスの伝説―4人の若き王子たち』など、全7作を上映。今回、桃井さんは映画祭開催を前に、『フクシマ・モナムール』のロケ地であり、震災の現場である福島の被災者の方たちへ感謝と励ましのメッセージをコメント。10月15日(土)には、桃井さんや各作品の監督や出演者たちが登壇し、オープニング・セレモニー舞台挨拶が行われる。■桃井かおりコメント福島の、そして東北の人びとは未だ復興の真っ只中に居り、私たちも彼らを助けるために出来る限りのことをしなければなりません。この映画が被災者の皆様を元気づけ、ほんの少しだけでも笑顔をお届けできれば幸いです。南相馬での撮影中にご協力頂いた方々、大変お世話になった現地の皆様の親切は決して忘れません。より多くの方に、この映画を楽しんでもらえることを願っています。ドイツ映画祭2016「HORIZONTE」は10月15日(土)~19日(水)までTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて開催。(text:cinemacafe.net)
2016年10月04日映画『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』が、2017年1月、Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー。第二次世界大戦後、数多くの戦犯が海外へ逃亡し、ナチス・ハンターによる執拗な追跡作戦が繰り広げられていた。600万人を強制収容所へ移送させたアドルフ・アイヒマンもその重要人物の1人。本作は、アイヒマン拘束に関する極秘作戦の裏側の真実を描くサスペンス。そして、捕獲作戦を実現へと導いた陰のヒーローというべきひとりのドイツ人・検事長フリッツ・バウアーにスポットを当てた実録ドラマだ。1960年に潜伏先のアルゼンチンでイスラエルの諜報機関モサドに拘束され、エルサレムの法廷へと引きずり出され世界中に中継された“アイヒマン裁判”は当時の人々に衝撃を与えたという。いかにして消息不明のアイヒマンを発見し、追いつめていったのか。緊迫感のある予告編映像も解禁。危険を冒しながらも次第にアイヒマンを追い詰める、正義と信念を貫こうとするバウアーの姿が映し出されている。監督はドイツの気鋭ラース・クラウメが担当。主演は『ブリッジ・オブ・スパイ』『ヒトラー暗殺、13分の誤算』などで話題を集めたブルクハルト・クラウスナー。その他、ロナルト・ツェアフェルトなど、ドイツ内外で活躍する俳優たちが集結。なお、『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』は、ドイツ映画賞で、作品賞、監督賞など最多6部門を受賞、世界の映画祭を席巻した。さらに、10月15日(土)から開催されるドイツ映画祭2016「HORIZONTE」でジャパン・プレミアへ登壇することが決定。世界中で絶賛された注目の本作をいち早く日本で見ることができるチャンスだ。【ストーリー】1950年代後半のドイツ・フランクフルト。検事長フリッツ・バウアーはナチスによる戦争犯罪の告発に執念を燃やしていたが、未だ大勢の元ナチス党員が政治の中枢に残りあらゆる捜査は遅々として進まなかった。そんなある日、バウアーのもとに数百万人のユダヤ人を強制収容所送りにした親衛隊中佐アドルフ・アイヒマン潜伏に関する手紙が届く。アイヒマンの罪をドイツで裁くため、ナチス残党が巣食うドイツの捜査機関を避け、イスラエルの諜報機関モサドにコンタクトをとりアイヒマンを追い詰めていく。しかしその頃、フランクフルトではバウアーの敵対勢力が、彼の失脚を狙って狡猾な謀略を巡らせていた…。【概要】映画『アイヒマンを追え!ナチスがもっとも畏れた男』英題:The People vs Fritz Bauer公開:2017年1月出演:ブルクハルト・クラウスナー、ロナルト・ツェアフェルト、リリト・シュタンゲンベルク、イェルク・シュットアウフ、セバスチャン・ブロムベルク監督:ラース・クラウメ配給:クロックワークス/アルバトロス・フィルム2015年/ドイツ/シネマスコープ/105分/(c) 2015 zero one film / TERZ Film
2016年09月02日実在のユダヤ人女性哲学者を描き、日本でもスマッシュヒットを記録した『ハンナ・アーレント』の監督&主演コンビで贈る最新作『生きうつしのプリマ』が、7月16日(土)より日本公開されることが決定、切なくも謎呼ぶ予告編が解禁となった。「話があるんだ」と思いつめた声で父から呼び出されたゾフィは、ネットのニュースを見せられてがく然とする。そこには、1年前に亡くなった最愛の母エヴェリンに生きうつしの女性が映っていた。彼女の名はカタリーナ。メトロポリタン・オペラで歌う著名なプリマドンナで、同じ歌手でも、ドイツの名もないクラブをクビになったばかりのゾフィとは住む世界が違うスターだ。父はどうしても彼女のことが知りたいと、ゾフィを強引にニューヨークへと送り出す。気まぐれでミステリアスなカタリーナに振り回されながら、彼女と母の関係を探るゾフィ。どうやら母には、家族の知らないもう一つの顔があったらしいのだが…。元ナチス将官アドルフ・アイヒマン裁判の傍聴記事を執筆・発表したユダヤ人哲学者に迫った『ハンナ・アーレント』の名匠マルガレーテ・フォン・トロッタ監督と、主演のバルバラ・スコヴァが再び手を組んだ本作は、オペラとジャズで彩られた母と娘のミステリー。スコヴァが一人二役で挑むのは、秘密を抱えた“母”カタリーナと“プリマ”エヴェリン。母の謎に迫るゾフィには、『帰ってきたヒトラー』にも出演するカッチャ・リーマン。仕事も恋もうまくいかず、さらに母のもう一つの顔と向き合うことになる悩めるゾフィを洒落たユーモアを添えて演じ、女性たちの共感を呼ぶ。今回解禁されたポスタービジュアルは、ネットニュースの記事中のカタリーナを背景に、彼女を求めて見知らぬニューヨークの街を彷徨うゾフィというように、二人の女性の姿を赤と青で印象的に切り取ったものとなっており、“母を知る旅”の始まりを予感させるビジュアル。また、解禁された予告編では、舞台となるドイツとニューヨーク、水と緑の都の美しい風景と、壮麗なアーチに飾られた世界最高峰のオペラハウスMETやセントラルパークが映し出される。母とカタリーナの関係を探るためニューヨークを訪れたゾフィ。カタリーナに拒絶されながらも、亡き母の封印された過去を求めニューヨーク、ドイツ、イタリアと巡り、真実へと近づいていく様がミステリアスに描かれると同時に、愛する母のもう一つの顔と向き合うゾフィの姿に心が揺さぶられる映像となっている。愛し合っていたはずの亡き妻に「復讐される」と口走る父、母の墓に供えられる贈り主不明の花束、記憶を失くしたはずカタリーナの母親が隠す古い写真…。数々の謎が解き明かされ、母の真実の姿が現れるとき、ゾフィもまた、まるで霧が晴れるかのように自分の道を見つけていく。そんな人生の真理に迫るミステリーに、注目していて。『生きうつしのプリマ』は7月16日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年05月29日最新作が劇場公開される大ヒットTVシリーズ「SHERLOCK/シャーロック」や、『ホビット』3部作でおなじみのマーティン・フリーマンが主演する『The Eichmann Show』(原題)が、『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』として4月23日(土)より全国公開されることが決定。併せて、本作のポスタービジュアルが解禁となった。1961年、元ナチス親衛隊(SS)将校アドルフ・アイヒマンの裁判が開廷された。ナチス戦犯を前に、生存者たちが語る証言はホロコーストの実態を明らかにするまたとない機会だった。“ナチスが、ユダヤ人に何をしたのか”…。TVプロデューサーのミルトン・フルックマンとドキュメンタリー監督のレオ・フルヴィッツは、この真実を全世界に知らせるため、“世紀の裁判”を撮影し、その映像を世界へ届けるという一大プロジェクトを計画。さまざまな困難が立ちはだかる中、撮影の準備は進められ、ついに裁判の日を迎えるが…。本作は、ナチスドイツの戦犯アドルフ・アイヒマンを裁く“世紀の裁判”を撮影し、史上初めてTV放送することで全世界に“ホロコーストの真実”を伝えようと奔走した、名もなきTVマンたちの実話を映画化。主演を務めるのは、「SHERLOCK/シャーロック」でベネディクト・カンバーバッチ演じるシャーロックの相棒ジョン・ワトソン役として知られ、いまだ役名が不明なものの『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』にも出演するといわれるマーティン・フリーマン。革新的で野心家の若手TVプロデューサー、ミルトン・フルックマンに扮し、これまでにない新しい一面を見せている。監督を務めるのは、『アンコール!!』のポール・アンドリュー・ウィリアムズだ。今回解禁されたポスタービジュアルでは、実際のナチス戦犯アイヒマンが、さまざまな角度からまるでモニター画面に映し出されているように配置されており、マーティン演じる野心家TVプロデューサーのフルックマンと、名優アンソニー・ラパリア演じる撮影監督レオ・フルヴィッツが力強い眼差しをこちらに向けている。身の危険をも顧みず、真実を全世界に伝えようとするマスメディアとしての覚悟と、初めての裁判放送の実現に挑もうとする力強い使命感を感じさせるビジュアルだ。ホロコーストの恐怖とナチスの大罪を伝え続けることの意味を問う、これまで一度も語られることのなかった熱き男たちのヒューマンドラマに注目してみて。『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』は4月23日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開。(text:cinemacafe.net)
2016年01月18日ハードコアチョコレートは、手塚プロダクションと、手塚治虫の漫画作品、アドルフという名前を持つ3人の男がたどった数奇な運命を描く不朽の名作『アドルフに告ぐ』(1983年~1985年)のコラボレーションTシャツを発売する。日本漫画界の巨匠・手塚治虫が描くアドルフの物語。第二次世界大戦前後のナチス・ドイツ、そして激動の日本を舞台に「ヒトラーがユダヤ人の血を引く」という機密文書を巡る壮絶な長編人間ドラマである本作では、アドルフ・ヒットラー、アドルフ・カウフマン、アドルフ・カミルという3人の「アドルフ」の運命が交錯し、哀しい未来へと進んでゆく。手塚治虫が描いた、ひときわシリアスでハードな社会派ドラマであり、手塚治虫晩年の最高傑作として高い人気を誇る『アドルフに告ぐ』がハードコアチョコレートよってTシャツ化。ストーリー終盤である、パレスチナ解放人民戦線で活躍するアドルフ・カウフマンの姿がデザイン化されている。Tシャツの価格は3,800円(税込)。「ハードコアチョコレート 東中野ヘッドショップ」や「ハードコアチョコレート オンラインストア」ほかにて販売されている。なお、ハードコアチョコレートでは、「手塚治虫×ハードコアチョコレート」シリーズとして、「ブラック・ジャック」「どろろ」「七色いんこ」「ドン・ドラキュラ」Tシャツも展開されているので、こちらもチェックしておきたい。
2015年10月07日「ヒットラーにはユダヤ人の血が流れている」――アドルフ・ヒットラーの出生の秘密が記された機密文書を巡り、歴史の大きなうねりの中で翻弄されていく人々を描いた手塚治虫の歴史漫画『アドルフに告ぐ』。この手塚の代表作が演出家・栗山民也の手により今夏舞台化される。5月某日、神奈川にある稽古場を訪ねた。舞台『アドルフに告ぐ』チケット情報栗山は過去にも手塚作品『火の鳥』『ブッダ』の演出を手掛けた経験があり、『アドルフ~』は3作品目にあたる。物語は、第二次世界大戦前後の日本とドイツで展開される出来事が中心だが、時間軸は1938年から現代までと非常に長い。また次々と場面が変わる構成のため、セットはシンプルな作りになっている。この日行われていた稽古では1シーンやるごとに俳優を集め、栗山がひとつ一つのセリフに「ここは厳粛になりすぎないように」「あまりリアルにしない方がいい」と細かく指示を与えていた。その姿に迷いは感じられない。すでに明確なビジョンが出来上がっているようだ。主人公のアドルフ・カウフマンを演じるのは成河。同じ“アドルフ”の名を持つユダヤ人のカミル(松下洸平)そしてヒットラー(高橋洋)と出会ったことから、数奇な人生をたどることになる。日本人の母とドイツ人でナチス党員の父を持つカウフマンは親友のカミルを庇った為ユーゲント(ナチス党員養成所)に入れられてしまう。やがてヒットラーに傾倒していき、命令とあらば簡単に人を殺す男に変貌していく。成河は「カウフマンは自分が何者かもよくわからず、どこに属していいのかもわからない。彼のもつアイデンティティの曖昧さは共感できます。この物語は決して純粋で善良な市民が悪に手を染めていく話じゃない、“正義と正義の戦い”の話なんです」と語る。本作を舞台化したいと思った理由を栗山に尋ねると「今の時代、過去があるから現在がある、当たり前のことなのにそこから遠ざかってしまっているでしょ」と言う。ホロコーストという苦い歴史もまた過去の事実だ。栗山は「国境を渡れば、民族、宗教、言葉、食べ物だって違う。それをひとつにまとめることはできない。世の中には多様な価値観があるんだと認め合うことが健康な世界のあり方なんです。この作品を通して一番伝えたいことです」と力を込めて語った。現代史への無関心が広がりつつある昨今、アドルフたちが生きた時代を知ることで、現在のわたしたちがいる世界を改めて見つめ直す作品となりそうだ。公演は6月3日(水)から14日(日)までKAAT神奈川芸術劇場<ホール>にて。宮崎、京都、愛知公演あり。
2015年05月22日手塚治虫の『アドルフに告ぐ』が舞台化される。描かれるのは、「アドルフ」というファーストネームを持つ3人の男たちが、第二次世界大戦を背景に、イスラエル建国などの歴史的な事件にも関わりながら数奇な運命を辿る物語。日本に住むふたりのアドルフ少年には、成河、松下洸平、そして、アドルフ・ヒットラーに高橋洋が抜擢された。演出の栗山民也とともに、この手塚の代表作にどう向き合うのか。3人のアドルフに話を聞いた。舞台『アドルフに告ぐ』チケット情報ナチス党党員のドイツ人外交官の父と日本人の母を持つ少年、アドルフ・カウフマンを演じる成河。松下扮するユダヤ人のアドルフ・カミルと、親友の絆を結びながらやがて憎み合うことになる。「チラシにこんな手塚さんの言葉がありました。“この話は本当は、恋愛ものじゃないかと思うんです”と。愛が憎しみに変わるという意味では、カウフマンとカミルも恋愛のように感じますし、ナチス党員にとってはヒットラーはまさに恋愛対象。その根っこにある人間的な感情をしっかり表現すれば、カウフマンのことも理解していただけるのではないかと思っています」。一方、ナチスに迫害される側を演じる松下。「苦しみながらもまっすぐ誠実に生きるカミルには、教わることがたくさんあるなと感じています。家族や愛する人など、命をかけて守るものがある人間の強さには、単純に憧れますね」。また、ヒットラー役を務める高橋も、「負の部分を含め、自分をはるかに越える大きさを持つ人間を演じるのはハードルが高い」と言いながらも、「愛するとか怒るとか、直接的な人と人との関わりがきちんと描かれている作品。バックグラウンドがわからなくても、感じるものはあると思います」と意気込む。物語の背景には、戦争、民族、宗教といったものが入り組んでいる。が、「こういう作品に携わって、過去を学び伝えていけるのが、役者をやっててよかったと思える瞬間。お客様にとってもいろんなことを考えるきっかけになれば嬉しい」と松下が言えば、高橋も、「自分でどうすることもできない大きな何かによって時代が動いているのは今も同じ」と、今に通じるものがあると訴える。さらには、「決して人ごとにはできない作品だなと感じます。栗山さんの緻密な演出は、気づいたら物語に入り込ませてくれると思いますし。何か考えるきっかけになる作品になれば、と思っています」と成河。見せたいのは歴史ではなく人間。3人のその思いは、力強い舞台を誕生させるだろう。舞台は6月3日(水)から14日(日)までKAAT 神奈川芸術劇場 ホールで上演後、京都、愛知で公演。神奈川公演のチケット一般発売は3月28日(土)午前10時より。チケットぴあではインターネット先行も実施中。3月23日(月)午後11時59分まで受付。取材・文:大内弓子
2015年03月20日