意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「新しい生活様式」です。withコロナの生活。新しい未来を築くチャンス。日本政府は5月25日に、緊急事態宣言を全国で解除しました。しかし、新型コロナウイルスの感染リスクがなくなったわけではありません。専門家会議の提言を踏まえて厚生労働省が掲げた「新しい生活様式」が、引き続き推奨されることになります。具体的には、人との距離をできるだけ2m(最低1m)空けること、マスクの着用、手洗い。感染の多い地域からの移動を避けること。レストランでは対面に座らず、料理のシェアはしない。仕事はテレワークに移行…などです。これからは暮らしも働き方も事業のあり方も大きく変化していくことになるでしょう。まず飲食店は、店内の密接度を減らさなければなりません。自粛期間中、多くの店がテイクアウトを始めました。今後も宅配がメインになったり、キッチンのみで飲食スペースを持たない店も増えていきそうです。人々の移動は世界的に制限され、観光業は大打撃を受けています。タイ国際航空など経営破綻した会社も出てきました。日本はこれまでインバウンド需要拡大に力をいれていましたが、国内旅行に焦点を当てるようになるでしょう。海外セレブ向けの高級ホテルを展開していた星野リゾートも、ワクチンができるまでの1年~1年半は、通常モードには戻らないことを想定し、近場の旅に対応する方針を掲げました。働き方では、都内で62.7%の企業がテレワーク・在宅勤務に対応できるようになりました。高い家賃の都心のオフィスは不要と、郊外または地方に拠点を置く企業も出始めています。感染を防ぐためには、人の移動を抑えることが必須で、物流も制限されています。これまでは東京一極集中で、仕事も消費も行われてきました。これからは地元で作ったものを地元で消費する、地産地消が推進されますし、地方移住者が増えれば、なかなか実現できなかった地方創生も現実味を帯びてきそうです。毎日の通勤ラッシュと決別し、家族と過ごす時間を持てるワークライフバランスがとれるようになるでしょう。まだ手探り状態ですが、ここでいち早く新しい未来を描いた人の社会になっていく、そういう岐路に私たちは立っているのだと思います。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。※『anan』2020年6月24日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年06月19日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「緊急事態条項」です。迅速な判断を求め自分の権利を放棄しないで。5月3日の憲法記念日に安倍総理は、支持層の主催する憲法フォーラムにあてた動画メッセージで、改憲への意欲を示すとともに、「緊急事態条項」の必要性を強く訴えました。憲法改正は、自民党が結成当時から掲げている党是です。改憲したい主な理由について、これまでは憲法9条の自衛隊の明記や、環境保全条項の追加などを主張してきましたが、4月から繰り返し焦点を当てているのが緊急事態条項の創設です。新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、政府は4月に緊急事態宣言を発出。国民に外出の自粛や休業の要請をしました。しかし、あくまでも要請レベルで、日本は海外のようなロックダウンはできません。憲法に緊急事態条項を加えることで、大災害や武力攻撃など国家の秩序が脅かされる状況に陥ったとき、政府などの一部機関に大きな権限を与え、個人の権限を抑制できるようにしたいという考えです。これに対し憲法学者や野党などは、「緊急事態宣言」と「緊急事態条項」は別もので、いま改憲を主張するのは火事場泥棒だと非難しました。民主主義は多くの人が意見を交わし、ひとつひとつを審議・検証するシステムですから、どうしてもことの決定には時間がかかります。その点、指導者に強い権限を預ければ、物事は迅速に進むでしょう。しかし、その指導者がもしも間違った選択をしてしまったらどうなるか?ナチスドイツや太平洋戦争下の日本政府の悲しい歴史を思い出してみてください。内閣が力を持ち、内閣主導で議会をコントロールできるようになれば、いくら支持する議員を選挙で選んでも、私たちの声は届かなくなる可能性があります。ですから、ここは慎重にならなければなりません。緊急事態条項を加えるならば、たとえば国民が不適切と判断した総理大臣はリコールできる仕組みを作っておくなど、暴走した場合に歯止めをきかせることができる対策を、あらかじめ用意しておくことが大事なのではないでしょうか。憲法は、私たちが国家をしばるためにあります。「よくわからないから、誰か決めて」と、自分から権利を差し出すようなことは、どうかしないでください。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。3月に監督2作目となる映画『わたしは分断を許さない』が公開された。※『anan』2020年6月17日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年06月16日2020年6月5日、俳優の生田斗真さんが同じく俳優の清野菜名さんと結婚していたことを発表。2人は2015年に放送されたテレビドラマ『ウロボロス~この愛こそ、正義。』(TBS系)での共演をきっかけに交際をスタートしたといいます。美男美女によるビッグカップルの誕生に、ネットでは祝福の声が相次ぎました。兄・生田斗真の結婚に、生田竜星アナの心境は…同月8日に放送された情報番組『めざましテレビ』(フジテレビ系)でも、今回のおめでたい話題について特集。生田さんの実の弟であり、同番組に出演している生田竜聖アナウンサーは笑顔で「兄のおめでたい話題を責任を持ってお伝えします」というと、原稿を読み上げました。兄への愛が強い生田アナは、ネットで「生田斗真の強火ファン」と呼ばれるほど。番組では生田さんの結婚について、このようにコメントをしました。本当に私の元にもですね、お祝いの言葉をたくさん頂戴しまして。自分のことのように本当に嬉しく思っておりますね。この場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございます。めざましテレビーより引用大好きな兄の幸せそうな姿を見て、弟である自分も嬉しいという生田アナ。しかし、嬉しい反面ある心配ごとがあるといいます。それは何かというと…。ただちょっとあの、兄とは友達感覚でよく遊んでいたので。これで「遊んでくれなくなるのかな?」と思うと、ちょっとさびしい気持ちもあります。めざましテレビーより引用結婚をすると、どうしても家族や友人と過ごす時間が減ってしまうもの。生田アナは、生田さんと遊ぶ機会が減ることを心配してしまったようです。その後、生田アナは恒例のコーナー『めざましじゃんけん』で番組進行を忘れかけてしまい、苦笑いをしながら「完全に気を抜いておりました!申し訳ございません。今日は気持ちがハッピーなので浮かれております!」と謝罪する珍しいミスも!どうやら、本当に生田さんの結婚が嬉しくて仕方がない様子。放送後、ネットでは生田アナの言動に癒される人が続出しました。・嫌な話題も多い中、生田アナの姿に心温まりました!・「結婚したから兄が遊んでくれなくなりそうでさびしい」って考えがかわいすぎる。なんていい弟だ。・『めざましじゃんけん』をド忘れちしゃう姿に笑った!本当におめでとうございます!こんなにも実の弟から祝福される生田さんは幸せ者ですね。「結婚後も生田アナと遊んであげてほしい」と多くの人が思ったことでしょう。[文・構成/grape編集部]
2020年06月08日2020年5月現在、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)の流行により、多くの人が外出自粛を余儀なくされています。これまでとは違う生活に戸惑い、不安を抱く人は多いでしょう。Instagramで『うどばあちゃん』という独自のキャラクターを使い、誰にでも分かりやすくコロナウイルスに関する情報を発信している、有働由美子アナウンサー。有働アナウンサーが公開した2つの動画をご紹介します。有働由美子アナウンサーの投稿が「ためになる」同年4月から全国に発令されていた『緊急事態宣言』が、5月14日に一部地域を除いて解除されたことを受け、有働アナウンサーは次のような動画を投稿しました。緊急事態宣言の一部解除 この投稿をInstagramで見る 有働由美子(@udoyumiko)がシェアした投稿 - 2020年 5月月14日午前5時21分PDTさて、緊急事態宣言、39県で解除されたな。おらは、ここからが本当にそれぞれが試されると思っているよ。今までは命守るためにみーんな一緒に自粛してきた。ここからは、命と暮らしや経済、両方守っていこうって段階に入った。んなこと難しいってことは分かっとるよぉ、再会したいも人、自粛したい人もいる。心配性な人も、「大丈夫よ~」って楽観的な人もいる。違いが出る時には不安と不満が出る。んでもそれぶつけ合わずに、立ち止まって、それぞれの立場考えてあげる余裕持ちてぇなぁ。なんてったっておめぇ、余裕は人間の色気の基本だからな。さあて、どんな色気ある新しい日常作っていくか、考えようかねぇ。udoyumikoーより引用有働アナウンサーは、孫に語りかけるような穏やかな口調で、宣言解除後の心得を呼びかけたのです。「違いによる不安や不満が出る時こそ、それぞれの立場を考える余裕を持ちたい」という言葉が心に刺さりますね。また、有働アナウンサーは、コロナウイルス流行時に地震や大雨による災害が起きた場合についても、以下の動画を投稿しています。コロナウイルスと災害が重なった時のために この投稿をInstagramで見る 有働由美子(@udoyumiko)がシェアした投稿 - 2020年 5月月18日午前3時11分PDT災害で大事なのは早め早めの避難だよね。んでも避難所に行ったら密になる。さあどうする?避難の方法も家族構成や住んでいるところで違う。大雨なのか地震なのかでも違う。んだから、一人ひとり自分で確認しねえといけねぇの。ばあちゃんからの、どうかお願いだ。災害の備えはしてるとしてねぇだば天と地ほど違ってくる。準備してねぇと、混乱して正しい行動が取れねぇんだよ。udoyumikoーより引用有働さんは、自然災害の被害予想範囲を地図化した『ハザードマップ』の確認や、前もって災害の備えをしておくことをうながしました。それぞれの投稿にハッシュタグで『#今日も何かを我慢してくれてありがとう』『#政府発表だけではなくみなさんの年齢の、みなさんの地域の方々に届く言葉でどうぞお伝えください』というメッセージをつづっています。【ネットの声】・うどばあちゃん、ためになる情報を発信してくれてありがとう。・「余裕は人間の色気の基本」という言葉がグッときた。見習いたい!・ただ宣言解除の地域が増えただけで、コロナウイルスが消えたわけではないもんね。気を引き締めていきたい。・最近は地震が多いので、改めてハザードマップの確認と防災グッズを見直したいと思う。高い防災意識を持ち、独自の方法で注意喚起をうながした有働アナウンサー。投稿からは「人々が安心して暮らせるような社会を作りたい」という願いと、強い意思がうかがえますね。[文・構成/grape編集部]
2020年05月21日気象庁によると、2020年5月11日の8時58分頃、茨城県沖を中心に震度3の地震が発生。同日に放送された情報番組『スッキリ』(日本テレビ系)では、同時刻に発生した地震を報せる緊急地震速報が流れました。新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)に関する特集を放送していた最中、番組の流れをさえぎるかのように突然鳴り響いた、緊急地震速報。その瞬間、水卜麻美アナウンサーは冷静さを保ったまま、すぐさま次のようなアナウンスを口にします。緊急地震速報です。茨城県沖で地震が発生しました。強い揺れに注意してください。周りに落ちてくるものはありませんでしょうか。机の下にもぐるなどして、頭を守ってください。身の安全を確保してください。茨城、栃木南部、埼玉北部・南部、千葉北部、福島の方は地震に警戒してください。スッキリーより引用水卜アナは持ち前の聞き取りやすい声で、よどむことなくすらすらとニュースを読み上げました。緊急地震速報が流れると、不安や焦りを感じる人が多いでしょう。特に、同月現在はコロナウイルスの影響もあり、多くの人が神経をとがらせている状況です。ネット上では、緊急時にも落ち着いて対応する水卜アナの姿に多くの反響が上がっています。・水卜アナすごいな…。・さすがプロ。すぐさま対応していて、かっこいいと思った。・水卜アナの臨機応変な対応が見事でした。不測の事態に慌てることなく、冷静に状況を伝えるアナウンサーの姿は、テレビを見ている人に落ち着きをもたらすでしょう。水卜アナのプロフェッショナルな一面は、多くの人に安心を与えたようです。[文・構成/grape編集部]
2020年05月11日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「がんゲノム医療」です。莫大ながん組織のゲノムを解析。今後の治療に期待。「ゲノム」とはDNAをはじめとする、遺伝子情報の全体のことを指します。遺伝子情報を個別に検証し、その特徴を明らかにすることで、体質や病状に合わせた、より効果的、効率的な治療や診断を行うのが「ゲノム医療」です。がんは、遺伝子の変異や異常が蓄積することによって起こる病気。日本で最も多い死亡原因であり、日本人の2人に1人は生涯のうちにがんにかかるといわれています。国際的な共同研究グループ「国際がんゲノムコンソーシアム」の調べによると、がん患者の数は世界的に増え続けており、2012年には800万人の方ががんで亡くなり、1400万人が新たにがん患者として診断を受けていました。このままいくと2050年には年間で1750万人ががんで死亡し、2700万人が新しい患者となると推定されており、がんに対する対策は急務なのです。日本からは国立がん研究センターや理化学研究所、東京大学などが参加している国際がんゲノムコンソーシアム。このたび37か国1300人を超えるがん研究者が協力し、38種類約2800例のがん組織のゲノム解析に成功しました。スーパーコンピューターを使い、4600万個以上のゲノムの変異や異常を調べ、特徴を明らかにしたのです。解析されたデータは公開され、世界中のがん研究者が活用できるようになります。日本では全国に、がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、がんゲノム医療連携病院を指定し、全国どこでもがんゲノム医療を受けられる体制づくりを進めています。一般にがん治療では、標準治療という科学的根拠に基づいて推奨される治療がなされます。具体的には手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療です。がん遺伝子検査によって、その人の特徴的な異常を調べることで、治療法の選択に役立つ場合があります。たとえば、抗がん剤の投与の検討や、標準治療のないがん、標準治療が終わった患者さんに対して、合う薬物療法を調べるために有効とされています。症例の少ない希少がんに関しては、まだデータが不足していますが、がんゲノム医療の発展は、将来のがん治療に期待が持てそうです。ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)公開中。※『anan』2020年5月13日号より。写真・中島慶子題字&イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年05月09日報道番組『news every.』(日本テレビ系)で、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)にまつわる外出自粛の必要性や買い物マナーについて呼びかけている、藤井貴彦アナウンサー。感染者数を伝える藤井貴彦アナの『ひと言』に、称賛の声「これぞ報道」「感動した」藤井貴彦アナ「お客様は神様ですから」続いた予想外の言葉に絶賛の嵐2020年5月6日に、同番組で視聴者に向けた『ある発言』が話題になっています。藤井貴彦アナが視聴者へ贈った『ある言葉』番組では、同日の東京都の感染者数について報道。4日連続で100人を下回り、この日はもっとも少ない数だったそうです。藤井アナは、同月6日までの予定だった緊急事態宣言が、31日まで延長になったことについて、次のように発言しました。今日は当初の緊急事態宣言の最終日ということになりますが、自粛に応じて家にくださったみなさん、まずはここまで本当にお疲れさまでした。一方で明日から今月末までの延長が決まっています。引き続きみなさんのご協力をお願いいたします。news every.ーより引用政府の外出自粛要請を守り、ステイホームを守った人たちに労いの言葉をかけたのです。また、延長が決まった緊急事態宣言ですが、地域によっては一部施設の休業要請が解除されたり、学校が再開したりするとのこと。これに対し藤井アナは「2週間後の未来をつくるか、2周間前に戻るかはみなさんの行動にかかっています」といい、「引き続き人との距離をとる鉄壁のディフェンスをお願いします」と感染防止を呼びかけました。【ネットの声】・心に響く言葉をありがとうございます。感動しました。・藤井アナの言葉を聞くと、これからも外出自粛を頑張ろうって気持ちになります。・何度も藤井アナの言葉に救われている。温かくて、涙が出る。もう少し踏ん張ろう!藤井アナのいう通り、一人ひとりの行動が未来につながるといえるでしょう。コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、私たちにできることはなんなのかを再確認させられますね。[文・構成/grape編集部]
2020年05月07日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「WHO」です。世界的な協力がなければ、健康と平和は保たれない。WHO(World Health Organization)は、日本語で「世界保健機関」。ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)や、IMF(国際通貨基金)と同じ、国連の専門機関の一つで、保健衛生分野を受け持っています。WHOの歴史は、1946年にニューヨークで開かれた国際保健会議にて、「世界保健機関憲章」が採択されて1948年からスタートしました。世界保健機関憲章には、「健康とは、病気ではないだけでなく、肉体的、精神的、社会的に満たされた状態」で、「最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつ」。世界中すべての人々が健康であるためには、「個人と国家の全面的な協力が得られるかどうかにかかっている」と書かれています。現在、WHOの加盟国は194か国。本部はスイスのジュネーブにあり、日本は1951年に正式加盟をしました。WHOの主な役割は、「流行病の制圧」や「疾病の認定や分類」のほかに、医薬品をはじめ保健に関わる分野の国際的な基準を決めることです。どこかの国で新型の疾病が発生していると聞きつけると、WHOの職員が現地に入り、徹底的な調査をし、処置および対応をしていきます。各国で研究のバラつきがある医学情報は整理し、医療の弱っている国や地域に対しては支援や指導も行って、対策も講じています。WHOのこれまでの大きな功績といえば、天然痘を撲滅したことです。1958年に天然痘根絶計画を掲げ、徹底的な調査、治療、ワクチン開発を行い、封じ込め作戦により1977年には世界中から消え去り、1980年に根絶宣言をしました。いま世界的な混乱をきたしている、新型コロナウイルス感染症について、WHOは1月末に緊急事態宣言をし、3月中旬にパンデミックとみなすと発表しました。WHOがイニシアティブをとって、現状調査、対応、認定、支援を行うことで、そこで集めた情報がワクチンの開発に生かされています。国を超えて、人とモノの移動が激しくなっている現代だからこそ、深刻な事態に陥っており、国際協調が必須になっているんですね。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)公開中。※『anan』2020年4月29日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年05月01日2020年4月現在、世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)。同月18日、フリーアナウンサーの赤江珠緒さんがコロナウイルスに感染したことが報じられました。赤江さんの夫もコロナウイルスの陽性が確認されていましたが、幸い子どもは陰性だったそうです。コロナウイルス感染の赤江珠緒アナ、病状についてメッセージ同月29日に放送された、赤江さんがパーソナリティーを務めるラジオ番組『たまむすび』(TBSラジオ)では、療養中の赤江さんからのメッセージを紹介。「病気の症状などは赤江さん一家の一例であることを考慮の上、読んでいただけたら幸いです」と前置きし、『たまむすび』のウェブサイトでも公開されました。同月15日に発症して以来、37度5分の熱が続いているという赤江さん。当初は味覚障害と多少の胸の痛み、咳はあったものの、レントゲン検査で肺炎症状もみられず軽症という診断だったそうです。赤江さんは発熱が続いていた日々を振り返り、このようにつづっています。たとえ37度5分ぐらいの熱でも、10日も続けば、うんざりしてきます。その点が、「軽症」とはいえ、今までの風邪などとは違う感じがしました。そして、この病の特異な点は、何といっても、孤立、隔離を強いられる点です。普通の病ならば、家族や友人に、看病をお願いすることもできます。私のように、子供のいる方なら尚更、その存在がありがたいでしょう。ただ、このコロナウイルスの場合は全く打つ手がありませんでした。玄関まで支援物資を届けてくれる友人の厚意や、宅配の方々の努力によってのみ、生活を維持できる状況です。解熱剤で何とか症状を緩和しつつも、子供がいると昼間に眠ることなどは不可能なので、それは正直、結構きつい状況でした。「たまむすび」リスナーの皆様へ~赤江珠緒さんから病状などの報告(4/29現在)ーより引用軽症の場合はコロナウイルスか判断をしづらいため、赤江さんのように入院が遅くなってしまう人もいるでしょう。このことについて、赤江さんは次のように思いを明かしました。今は入院して、症状が落ち着いていますが、あのままにしていたらと思うと少し怖いです。恐らく、自宅療養されている方、軽症の方も、医療崩壊を避けるために、まだ入院は、と躊躇される方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。重症の方のためになるべく軽症なうちは病院に行かずに…と判断される方もいるかもしれません。軽症のまま完治される方も多いと聞きますので、そのまま乗り越えられる方もいらっしゃるでしょう。ただ10日目を境に悪化するケースも頻発しているそうです。実際に私がそうだったのですが、改善しているのか、悪化しているのかを自分で判断するのはかなり難しいというのが実感です。ですので、軽症の方も数日後に、再び肺の検査を必須でできるような体制ができないだろうか…そうすれば救える命も増えるのではないかと思いました。とにかく、隔離、孤立の中での、未知の病との闘いは、悪い情報ばかりが頭をよぎり、このままでいいのだろうか?と不安がつきまといます。そう言った面からも、肺の状況を定期的にチェックできるなど、きちんと治っていっている、というプロセスを自覚できる体制は、心の支えになる気がします。「たまむすび」リスナーの皆様へ~赤江珠緒さんから病状などの報告(4/29現在)ーより引用「自分の体験から、今後のこの病との闘いで何かヒントになるものはないか」と思い、こうして現状を報告することにしたという赤江さん。先に感染が発覚した夫は無事に退院し、赤江さん自身も快方に向けて進んでいるとのことです。娘さんは自宅で元気を持て余しているほどなのだとか。赤江さんのメッセージはネットで拡散され、「こんな時でも情報を発信してくれてありがとう」「早く治りますように」といった声が上がっています。先述したように、これはあくまでも赤江さんの一例です。信頼できる機関や経験者の話を念頭に置いて、万が一の時に備えたいですね。[文・構成/grape編集部]
2020年04月30日報道番組『news every.』(日本テレビ系)での呼びかけが注目を集めている、藤井貴彦アナウンサー。「緊急事態宣言後も、観光や遊びに出ている人を…」藤井アナの『発言』に反響2020年4月23日にも同番組で視聴者に向けた発言をし、話題になりました。感染症流行時の『買い物のマナー』番組では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続いていることが分かるトピックをまとめて紹介。その中で、藤井アナは週末を前に視聴者に伝えたいことを次のように述べました。この週末、外出を考えている方もいるかも知れませんが、特に買い物に対するマナーが求められています。どうぞ少人数で距離を取って、回数を減らしてください。もちろん、お客様は神様ですから、生活を支えてくれる店員さんにも『神対応』でお願いします。news every.ーより引用スーパーマーケットでは、人々の生活を支えるため、多くの店員が感染リスクを抱えながら働いています。店側はさまざまな感染対策を行っているのですが、客側のマナー違反によって感染リスクが上がってしまうことも。店側の用意した感染対策を無視した行動や、家族総出の買い物などが問題視されており、『一般社団法人全国スーパーマーケット協会』も注意喚起をしています。感染症流行中も休業しないスーパー「家族で出かけられる!」と思っている人に協会が注意また、横暴な態度を取る客も多いようで、ネット上には店員の嘆きが多数投稿されています。それらの背景を踏まえ、藤井アナは視聴者にマナーを守るよう呼びかけたのでしょう。藤井アナの発言に対し、視聴者からは「上手ないい回しだな~!好き!」「やっぱり『神対応』ができなきゃ神じゃないよな」などのコメントが寄せられました。非常時だからこそ、焦りや不安を他人にぶつけずに『神対応』でいきたいものですね。[文・構成/grape編集部]
2020年04月24日2020年4月14日放送の報道番組『news every.』(日本テレビ系)での、外出自粛の必要性を訴える発言が話題になった、藤井貴彦アナウンサー。感染者数を伝える藤井貴彦アナの『ひと言』に、称賛の声「これぞ報道」「感動した」そしてまた、同月20日に放送された同番組での藤井アナの発言が反響を呼んでいます。「この日の言葉が一番響いたかも」の声緊急事態宣言の対象が全国に拡大されてから、初めての週末となった同月18、19日。繁華街や観光地では出歩く人の数が減った一方、全国に緊急事態宣言が拡大された後も、依然として公園や娯楽施設など一部の地域では多くの人が集まっています。同日の放送では、緊急事態宣言後も不要不急の外出をする人たちの様子が報じられ、藤井アナは視聴者に対し「緊急事態宣言を受けて、自分を律している人ほど、観光や遊びに出ている人を腹立たしく思うかもしれません」と語った上で、こうも続けました。しかし、みなさんのような人たちがいるからこそ、欧米のような医療崩壊を防げています。今はみんなの足並みがそろわなくても、その姿勢は必ず誰かの行動を変えるはずです。そして全国には、まだ感染者の少ない地域も多くあります。不用意に生活エリアを越えた移動をしないこと。これが、誰かのふるさとを守ることにつながります。news every.ーより引用感染拡大を防ぐ意識を強く持ち、外出を控えている人からは、依然として不要不急の用で出歩く人に対して批判の声が上がっているのも事実。外出自粛を徹底している人の気持ちによりそい、かつ外出自粛を改めて訴えた藤井アナの発言は共感を呼び「この日の言葉が一番響いた」との声も寄せられています。・藤井アナの言葉で救われる。呑気に外出してる人を見るたび、自粛している意味があるのか不安になっていたけど、また気を引き締めないと。・不安をあおるだけの報道でなく、藤井アナのように協力を呼び掛ける報道をもっとやったほうがいいよね。・藤井アナの言葉を聞いて、「感動した」だけで終わらないでほしいです。外出自粛がうながされているものの、日本はイギリスやフランスなどのように、外出を厳しく取り締まる措置はとられていません。だからこそ、感染拡大を防ぐのは、私たち一人ひとりの意識にかかっています。藤井アナの言葉を受け、改めてその思いを強く持った人は多いはずです。[文・構成/grape編集部]
2020年04月21日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「通常国会」です。テレビ中継が審議のすべてではありません。国会には、通常国会(常会)、臨時国会、特別国会、参議院の緊急集会があります。常会は毎年1月に召集され、150日間開催。審議が長引けば、会期を延長します。国会では翌年度の予算を決めたあとに、様々な法案を審議します。令和2年の常会は約50本の法案が提出されました。夏に東京五輪を控えていたため、会期延長は難しいだろうと法案の数が過去最少に抑えられました。多い年は100近い法案があがることもあります。国会というと、テレビで中継されるものがすべてと思われるかもしれませんが、そうではありません。テーマごとに少人数の「委員会」で議論を交わし、そのあとに「本会議」で採決をとります。内閣委員会、総務委員会などの「常任委員会」と、会期ごとに編成される「特別委員会」があり、国会議員は各々専門分野の委員会に割り振られます。委員会ではしっかり内容を揉み、法案の8割以上が与野党全会一致で可決しています。テレビで取り上げられる本会議は、派手な動きがあったり、政府の疑惑や不祥事を追及する場面が多いので、揉めてばかりいる印象ですが、その他の場所で建設的な議論が着々と進められているのです。新型コロナウイルス対策以外に現常会で注目されているのは「年金制度改革関連法案」。定年の延長も推進されることになりました。その他「デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案」。巨大IT企業に、運営状況の報告や企業内情報の提出を求めることができる法律です。たとえばアマゾンなどが突然大きな規約変更を行い、取引業者や消費者が不利益を被ったときに、メスを入れられる体制をとるためのものです。また、高齢ドライバーの交通事故対策を盛り込んだ「道路交通法改正案」も審議されています。近年、高齢者ドライバーによる交通事故が多発していることを受けて提案されました。運転技能検査の基準に達しない場合には75歳以上の免許更新を認めないという法案です。私たちの暮らしにかかわる法律が日々作られているのが国会。衆議院、参議院のHPでは、審議中継をインターネットで見ることができるので注目してみてください。ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)公開中。※『anan』2020年4月22日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年04月20日2020年4月11日、報道番組『報道ステーション』(テレビ朝日系)のメインキャスターを務める富川悠太アナウンサーが、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナウイルス)に感染していたことが明らかになりました。富川アナウンサーの容態を心配する声が目立つ中、一部からは、38℃の発熱後も番組への出演を続けていたことに対して批判的な意見も。そんな中、お笑いコンビ『爆笑問題』の太田光さんが、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組内で、富川アナウンサーに向けた批判に苦言を呈しました。太田光「犯罪者じゃないんだから…」同月14日放送のラジオ番組『JUNK 爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)で、「かわいそうだよね、叩かれちゃってるんだろ」と、一部から出ている富川アナウンサーへの批判について触れると、続けてこうも語った太田さん。病気になった人だよ?誰だってなりたくてなるわけじゃないんだから。JUNK 爆笑問題カーボーイーより引用太田さんに対し、相方の田中裕二さんからは「(熱が出た場合は)勇気をもって、休んでください」との意見も。その意見に理解を示す一方で、太田さんは感染した人を批判する風潮に対して、「どうかと思う」と疑問を感じずにはいられないといいます。休んでくださいだろうけども、それは分かるけどさ。後からいえばいいじゃない、治ってからさ。落ち込んでるところに持ってきてさ、叩く…。そんな人でなしみたいな感じになる?みんな。病気の人を攻撃するって、どうかと思うよ。だって苦しんでるんだよ相手は、病気になって。犯罪者じゃないんだからさ、そういうのはちょっとどうなのかと思うよ。JUNK 爆笑問題カーボーイーより引用これほどまでにコロナウイルスが感染拡大を続ける中、発症の可能性を意識できていなかった点は、会社側の管理や働き方そのものも含め、改善すべき点ではあるでしょう。しかしだからといって、感染者の過度な批判や中傷は、差別や偏見を生みかねません。太田さんの意見を受け、放送後にはさまざまな意見が寄せられていました。・感染したい人なんていない。感染は罪ではないと思う。・発熱後、平熱に戻ったからといって出演を続けた富川アナウンサーは、不注意だったとは思う。でも、あまりにもバッシングが多くて同情する。・富川アナウンサーの人格を批判するコメントも見かけ、それはさすがにやりすぎでは…と思っていた。連日のように新たな感染者数が報告される中、「怖い」「自分も感染してしまうのでは」と不安に思う気持ちは誰もが抱くことでしょう。その気持ちが差別につながってしまわないよう、感染を広めないために何ができるのか、自分にできることは何か、過去ではなく未来を見て行動できるよう気を付けたいものです。[文・構成/grape編集部]
2020年04月15日2020年4月7日、政府は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、緊急事態宣言を発令。不要不急の外出を自粛するよう要請しました。しかし、感染者数は依然として減少傾向にならず、同月14日の時点で国内で7600人以上の感染者が出ています。藤井貴彦アナが、視聴者に『呼びかけ』こうした状況の中、報道番組『news every.』(日本テレビ系)でMCを務める藤井貴彦アナウンサーの言葉が、多くの人の共感を集めています。同月14日、番組の放送中に「東京都の新たな感染者数が160人を超えた」という速報が入ると、藤井アナは視聴者に次のように呼びかけました。今日は緊急事態宣言の発表からちょうど1週間になりますので、ここから先は少しずつ緊急事態宣言後の私たちの行動が形となって現れてくることですが、大切なのはその先です。2週間後の未来を変えられるように、今日もご協力をお願いします。命より大切な食事会やパーティーはありません。どうぞよろしくお願いします。news every.ーより引用正確な情報を伝えながら、毅然とした態度で「命より大切な食事会やパーティーはない」と注意喚起を行った藤井アナ。また、番組では20代~50代の働きざかりの感染者数が増加していることや、若い人ほど症状が軽く行動の制限につながりにくいという問題点も指摘。専門家の話を受けた藤井アナは、改めて外出自粛の必要性を訴えました。若い方、そして40~50代が外に出て、みなさんが悪いということをいっているわけではありません。どうしてもこういう状況の中で感染者数が増えていってしまうという現状があります。また、みなさんの行動半径が広くなればなるほど、感染をさせてしまう可能性が非常に高くなってしまいますので、必要で外に出ている方には何度も申し上げて申し訳ないのですけれども、感染させないという行動をぜひ取っていただきたいと思います。news every.ーより引用ネット上では、視聴者から藤井アナのコメントを称賛する声が寄せられています。・おっしゃる通り。食事会やパーティーはいつでもできますよね。・こういうひと言って、本当に大事だと思います。・信念を感じるし、的確に言葉を使っている印象です。・この姿勢はすごく好感を持てますね。私たち一人ひとりが、危機意識を持って行動をする必要があると、改めて認識させられますね。[文・構成/grape編集部]
2020年04月15日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「インフォデミック」です。伝染力は脅威に。報道の仕方にも注意が必要です。「インフォデミック」とは、information(情報)とepidemic(伝染、流行)を組み合わせた造語で、誤った情報が拡散されることにより、正しい情報を得にくくなり、社会が混乱する様を指します。新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の流行を受け、WHOがこう呼んだのをきっかけに、日本でも使われるようになりました。海外では2009年の新型インフルエンザの流行のときに、「パンデミック(pandemic世界的大流行)」とともにSNSなどで使われていました。新型コロナウイルスに関しては、「お湯を飲めば感染予防になる」「ニンニクを食べるとよい」などの誤情報が広まりました。また、欧米や中東では、「アジア人は新型コロナウイルスを持っている」という間違った思い込みが広がってしまい、アジア人差別が起き、大きな問題になっています。インフォデミックをみなさんが実感したのはトイレットペーパーではないでしょうか。「トイレットペーパーがなくなる」というのは根拠のないデマでしたが、「なくなるかもしれない」という情報が拡散されたことにより、不安から人々はトイレットペーパーを買い占め、本当に市場に出回らなくなってしまいました。これをアメリカの社会学者マートンの言葉で「予言の自己成就」と言います。嘘や思い込みでも、その予言を人々が信じて行動することにより、現実になってしまうのです。ニュースでは、店の空になった棚を映し、「トイレットペーパーが売り切れました」と報道されましたが、それでは不安を助長し、買い占めをさらに加速させます。「デマです」と伝えたところで、デマは収まりません。それよりも、受け手の行動を先回りして、次の入荷予定や出荷量を具体的に示すことのほうが効果的でしょう。情報発信側も、デマが社会を動かしてしまう危険を自覚するべきです。報道機関には、ファクトチェックの普及活動を行う団体を応援してほしいですね。また、個々人の軽い気持ちのリツイートが、デマに加担してしまう場合も。シェアする前にいったん立ち止まり、不確定なものは拡散しないようにしましょう。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)公開中。※『anan』2020年4月15日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年04月09日自分には関係ない?…いえ、あるんです!知ってますか?未来を変える目標。SDGs(エスディージーズ)について、ジャーナリスト・堀 潤さんが解説してくれました。2030年実現に向けて掲げた17の目標貧困や環境、人権などのテーマに関わるが、世の中のほぼすべての課題を網羅している。注目すべきは12の「つくる責任 つかう責任」など、企業だけでなく、消費者にも自分の問題として考えることを促していることだ。1、貧困をなくそう2、飢餓をゼロに3、すべての人に健康と福祉を4、質の高い教育をみんなに5、ジェンダー平等を実現しよう6、安全な水とトイレを世界中に7、エネルギーをみんなに そしてクリーンに8、働きがいも経済成長も9、産業と技術革新の基盤をつくろう10、人や国の不平等をなくそう11、住み続けられるまちづくりを12、つくる責任 つかう責任13、気候変動に具体的な対策を14、海の豊かさを守ろう15、陸の豊かさも守ろう16、平和と公正をすべての人に17、パートナーシップで目標を達成しよう17の目標のうち、日本が抱える課題は…。SDGsは、17の目標が掲げられていますが、それぞれさらに細かく169のターゲットが設定されています。たとえば目標1の「貧困をなくそう」には、「1日1.25ドル未満で生活する人々、極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」、目標4の「質の高い教育をみんなに」には「全ての若者が、読み書き能力および基本的計算能力を身に付けられるようにする」というようなことが盛り込まれているのです。全項目を数値化し、毎年、世界のSDGs達成度ランキングが発表されています。2019年時点で日本は162か国中15位。ちなみに2017年は11位、’18・’19年は15位に落ちてしまいました。上位3位はデンマーク、スウェーデン、フィンランドなどの、北欧の国々が占め、フランスやドイツが10位以内にランクインしており、アメリカは35位です。日本は、ペットボトルのリサイクル率はとても高いですし、経団連をはじめ、企業がSDGsの目標を掲げていることはとても評価されています。また、「技術革新を進めようとしている姿勢は好ましい」とも言われています。一方、日本の課題と指摘されているのは、5の「ジェンダー平等」、12の「つくる責任つかう責任」、13の「気候変動への具体的な対策」、17の「パートナーシップでの目標達成」などです。ジェンダー問題はなかなか深刻です。まず女性の国会議員が少なく、男女の賃金格差も広がっています。家事やサービス残業など、無償労働も女性に多く負荷がかかっているのが現状です。高等教育を受けた女性の数はOECD先進各国のなかでも、ダントツに多いのに、学んだ専門を仕事に生かしていない率が高い。「女の子なんだから、勉強しなくてもいい」という古い考え方がまだ残っているところがあるからです。これは制度だけの問題ではなく、個々の意識にも大きく関わること。ジェンダー教育そのものを根本から考える必要がありそうです。気候に関する問題としては、日本では近年、大型台風や豪雨災害に見舞われていますね。これらもCO2による気候変動の影響だろうといわれています。川が氾濫し、被害が甚大化したのは、昔のように山を手入れしていないせい。木々の根が細っていたところに、雨によって地盤が崩れて木が倒れる。土砂崩れにより、木々は流され、やがて川をせきとめ、川の水があふれて堤防が決壊してしまったのです。これは11の「住み続けられるまちづくり」や15の「陸の豊かさを守る」にも関わる事柄ですね。また、近年とりざたされている働き方改革問題。不名誉なことに、過労死は英語の名詞(karoshi)にまでなってしまいました。働きすぎを抑え、ワークライフバランスをとろうと努力していますが、日本はこの対策を安易な方法で解決しようとしているので警戒が必要です。不足する働き手を、外国からやってきた人たちでまかなおうとしており、特定技能制度を設けました。しかし、労働条件は悪いまま。日本人だけのための「働き方改革」になっていないか、不平等になっていないか。日本は難民認定率も極めて低く、申請者の1%未満です。難民申請が認められず、強制退去処分になった人たちが、まるで拘置所のような東京出入国在留管理局に何年も収容されています。この扱いは非人道的ではないかと、国連から注意もされているのです。SDGsの17の目標すべてを考えようとしても無理ですから、それぞれが自分にできることをしていけばよいと思います。ただ、自分の行動が、誰かに負荷をかけていないか、何をするときにも想像してみることは大事だと思います。食品ロスに加担していないか、資源の無駄遣いをしていないか。たとえば難民問題など、自分には関係ないと無関心でいることは、間接的にSDGsに反した行為かもしれません。自分で行動を起こすのは大変ですが、SDGsのアクションを起こしている現場はたくさんあります。NPOやNGOの現場はたいてい資金不足に悩んでいますから、賛同するアクションをしている人たちを応援することも立派なSDGs。支えてあげてほしいなと思います。堀 潤さんジャーナリスト。1977年生まれ。兵庫県出身。元NHKアナウンサー。自ら立ち上げた投稿型ニュースサイト「8bitNews」ほか、テレビ、ラジオ、SNS等で情報を発信。監督した映画『わたしは分断を許さない』が上映中。※『anan』2020年4月8日号より。写真・小笠原真紀イラスト・サヲリブラウン取材、文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年04月05日世界中の人々が、未来へより良く暮らし続けていくために必須な目標、SDGs(エスディージーズ)。…って、そもそも何のこと?成り立ちや内容、私たちの普段の生活との関わりまで、anan目線で楽しく学びます。教えてくれたのは、ジャーナリスト・堀 潤さんです。先進国も途上国も皆が豊かな社会にするために。SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略で、「持続可能な開発目標」と訳されます。いま世界では環境破壊、紛争、格差など、様々な問題が起きています。このまま放っておけば、経済が立ちゆかなくなり、格差はますます広がり、生きづらくなる一方です。事態を改善するために、政治経済、環境、教育など多岐にわたる17の目標を設定して、2030年までに加盟国の193か国が協力し合い、達成を目指しましょうと、2015年9月に国連サミットで採択されました。実はSDGsには前身となる「MDGs(Millennium Development Goals)=ミレニアム開発目標」があります。2000年に開かれた国連サミットで、8つの目標を掲げ、2015年のゴールを目指しました。これが成果を示し、10億人以上の人が極度の貧困から脱することができ、子供の死亡率も半分以下に。エイズ感染件数は約40%減らすことができました。ただ、一部の地域で置き去りにされる人たちが出てきてしまい、根本解決には、開発途上国と先進国の両方が協力し、「持続可能」であることが必須だろうとSDGsが生まれたのです。これを後押しするように、2015年の12月には気候変動に関する歴史的合意がなされました。パリ協定です。環境のために、温室効果ガスを減らそうとする先進国と、「さんざん排出しておいて、これから成長しようとする俺たちの開発を止めるのか」という途上国の間で対立していたのですが、ここで削減に向け、合意が叶ったのです(残念ながら後年、アメリカは脱退)。SDGsの必要性を世界が実感した、象徴的な出来事は2013年にバングラデシュで起きた縫製工場の入ったビルの倒壊事故でしょう。低賃金、劣悪な環境で働かされていた労働者が、ビル倒壊により1000人以上が死亡、2500人以上が負傷したにもかかわらず補償もありませんでした。世界のファストファッションが、このように虐げられた労働者たちに支えられていたことが明らかになり、業界の意識を変えるきっかけになりました。SDGsの大事なポイントは、単なる社会貢献ではないということです。豊かになることを我慢する、ミニマリストを目指すものではありません。それでは長続きしません。ちゃんと利益をあげ、環境にも人にも優しく、途上国も先進国もwin‐winの仕組みを知恵を働かせて実現させようというもの。金融業界は、環境や社会、企業管理に配慮した企業経営や投資をすすめる「ESG投資」を謳い始めました。これにより産業界も積極的にSDGsに取り組んでいるのです。堀 潤さんジャーナリスト。1977年生まれ。兵庫県出身。元NHKアナウンサー。自ら立ち上げた投稿型ニュースサイト「8bitNews」ほか、テレビ、ラジオ、SNS等で情報を発信。監督した映画『わたしは分断を許さない』が上映中。※『anan』2020年4月8日号より。写真・小笠原真紀イラスト・サヲリブラウン取材、文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年04月04日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ジェンダー・ギャップ指数」です。極端に低い日本。男女格差をなくすには意識変革を。3月8日は国際女性デーでした。この日に注目されるのが「ジェンダー・ギャップ指数」。ダボス会議主宰で知られる世界経済フォーラムが、政治、経済、教育、健康の4分野で男女格差を指数化し、毎年発表しています。2019年12月の最新報告書で、日本は153か国中121位。‘18年は110位でした。順位が下がった理由は、女性の政治参加度の低さ。今年2月の時点で、日本の衆議院の女性比率は9.9%。これは193か国のうち167位と著しく低い。他国では女性の首相が誕生していますが、日本は知事止まり。選挙候補者の数を男女50%ずつにすることを努力目標に掲げていますが、当選して閣僚になる女性は少数です。企業のなかでも女性管理職の割合は低い状態が続いています。女性の社長の比率は上昇していますが、創業者や同族継承がほとんどで、内部昇格の割合は8%にすぎません。これほど女性のリーダーが極端に少ないというのは、日本の経済発展を阻んでいると思います。子育て政策でも、近年ようやくお母さん方を中心に声があがり、女性議員が先導する形で待機児童問題に目が向くようになりました。「子供は家庭で育てるもの」という古い考えのまま、男性社会と切り離して捉えていたため、問題に気づけなかったのです。つまり政府や企業経営者など、制度を作る側、決める側に女性が参加していなければ、考え方の多様性が担保されず、女性の働きやすい環境実現は遅れる一方です。もうひとつ、ジェンダー・ギャップを生む背景に「マンスプレイニング」が指摘されています。「man(男)」と「explain(説明)」を掛け合わせた言葉で、男性が女性を見下して解説、助言するさまを指します。無意識の男性のそうした態度が、女性の発言する機会を失わせます。昨年は、職場でヒールやパンプスを履くことを強要しないでほしいという#KuToo運動が始まりました。女性性を否定するものではなく、履くのも脱ぐのも自由意思を尊重してほしいという主張です。「オフィスでは女性はヒール」というのも固定観念にすぎません。慣習を疑うことが、ジェンダー・ギャップをなくす第一歩なのかもしれません。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)公開中。※『anan』2020年4月8日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年04月02日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「年金制度改革」です。年金制度存続のために様々な案が出ています。令和2年の通常国会では、「年金制度改革関連法案」が閣議決定されました。少子高齢化により、このままの状態では、年金制度の存続が危ぶまれています。昨年も老後のお金の問題が大きくニュースになりましたよね。そこで、年金制度の様々な改正案がいま審議されていますが、その一つは、定年を延長して高齢者の働く期間を延ばし、老齢年金の受給開始を60~75歳まで幅をもたせるという案です。受給を先に延ばした人には、そのぶん受給額を増額するというもの。実際、いまの60代はとても若い。60歳以上の働く方々のうち8割が65歳以降も働きたいと答えています。また、働く高齢者の年金を減らすという案も出ています。もう一つ注目されているのは、厚生年金に加入できる人のハードルを下げるというもの。現状では、パート従業員やアルバイトは厚生年金ではなく、国民年金です。しかし、年金の加入と納付は国民の義務にもかかわらず、国民年金は未納者も多くいるので、厚生年金に一本化していこうという改革です。現在は、従業員501人以上の会社が加入要件でしたが、それを段階的に引き下げて、2024年には51人以上の規模の会社であれば厚生年金の対象にしようとしています。これにより新たに65万人、加入者が増えると試算されています。また、自分で掛け金や運用を決められる個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」に加入できる年齢も、20歳以上60歳未満から、65歳未満に変更します。昔は60歳定年で、定年後も年金だけで十分生活ができていました。しかし、高齢者は増えますし、寿命も延びますから、これからは自分でなんとかしなければいけない割合は増えていくと思います。100年時代の人生設計のプランを教えてもらいたいですよね。とくにお金に関する教育は、アメリカやヨーロッパのように、国が積極的にやってほしいと思います。何も知らないままでは、資産運用には怖くて手が出せませんし、失敗しても自己責任と突き放すのは問題なのではないでしょうか。これから何歳まで働くことになるのか。みなさんの将来に関わる問題なので、注目していてください。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)公開中。※『anan』2020年4月1日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年03月30日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「指定感染症」です。過度に怖がらず、みんなで、変わらぬ日常を送る訓練を。昨年12月に中国の武漢から発生した、新型コロナウイルスによる感染症。日本政府は1月28日に政令を出し、「指定感染症」に定めました。感染症は、感染症法により、危険度によって5つに分類されています。風しんやインフルエンザは五類。マラリア、デング熱は四類、コレラ、細菌性赤痢は三類、SARS、MERS、結核が二類。深刻な被害をもたらすエボラ出血熱、ペストは一類です。新しい感染症に関しては、検証するまでに時間がかかります。そのため、国が患者に対して入院勧告などができるよう、暫定的に「指定感染症」に定めるのです。今回の新型肺炎は、最初にリスクはそれほど高くないといった情報が流れ、WHOも緊急事態宣言を一度見送ってしまい対応が遅れました。実際には、潜伏期間が予想以上に長く、保菌者でも症状が出ない場合があり、そこから感染が広がることがわかりました。感染者はいま(3月6日現在)南極を除く全大陸で見つかっています。中国は強硬策をとり、武漢を封じ込めました。僕は2月末に、元医療ジャーナリストの武漢市民に、ネットを通じて直接話を聞きました。武漢では隔離生活が続いており、粉ミルクなどのモノの調達が厳しくなってきているとのこと。その方の親戚は5人が感染。そのうちガンの持病があった50代の女性1人が死亡しましたが、健康だった30代のいとこ2人は、入院もせず、薬の投与もなく回復しているそうです。WHOと中国の専門家は、2月20日までに感染した患者5万5924人を対象に共同で調査を行いました。それによると、死亡した患者は2114人で致死率は3.8%。ただし、重症化するのは60代以上の持病のある人で、約8割の人の症状は比較的軽く、肺炎の症状が出ない場合もあると報告されました。手洗いをしっかり行い、よく食べよく寝て、免疫をつけておけば必要以上に怖がることはないと思います。今回、多くの企業がテレワークなどを実施しました。これを機に普段から、家にいながら仕事ができる訓練をしておくとよいと思います。日本は災害国ですから、何が起きても日常を過ごせる強い社会を作りましょう。ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)公開中。※『anan』2020年3月25日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年03月18日日々進化を重ねる最新テクノロジーによって、私たちの生活は大きく変わろうとしています。どんな暮らしが待っているんだろう?少し先のワクワクする未来を、一緒に覗いてみましょう!目まぐるしい勢いで普及して、今後どんどん私たちの暮らしに進出してくるAI、デジタルガジェット、キャッシュレス。各分野に詳しい3人のスペシャリストがこれから数年で起こりえる変化を大予想!(1)AIでもっとスマートになる暮らし。教えてくれた人:マスクド・アナライズさんAIが健康をサポートする時代へ。バーチャルアナウンサーも登場か。AIはすでに身近で活用されており、AIを搭載したスマホアプリもどんどん増えています。例えば「メルカリ」が昨年3月から導入している写真検索機能もそのひとつ。スマホで画像を読み込むだけで、出品したい時に事前に相場を知ることができたり、欲しい商品や似ている商品を簡単に検索できたりするのもAI技術のおかげです。マッチングアプリでも、条件で絞り込むだけでなく、AIが性格や価値観を分析し、相性の良い相手を見つけ出すというサービスを導入し始めています。アプリにとどまらず、AIは多彩なシーンで活用され、さらに暮らしに根付いてくるでしょう。僕が将来的に注目しているキーワードが、AIによる健康管理。すでに健康系のアプリはたくさん登場していますが、ビッグデータを基に、その人のワークパフォーマンスや食生活、健康状態などをより正確に把握・分析し、栄養バランスの整った食事のサポートや最適なトレーニング法などをAIが提案してくれるようになると思っています。もしかしたらAIが「最近体重が増えてきてるので、脂っこいものは控えましょう」「健康のためもっと運動したほうがいいですよ」など、注意喚起してくれるようになるかも(笑)。自分だけのAIトレーナーのようなものが、ここ数年で出てくるかもしれません。それは今のようなアプリという原始的な形ではなく、スマートウォッチや、指輪、イヤリングといったいつでも身に着けておけるウェアラブル端末かも。さらにAI家電もますます進化し、必要な食材を自ら判別してお知らせしてくれる冷蔵庫とか、カロリー計算して自動調理してくれる電子レンジ、年齢や体調に合わせて湯量や温度を調節してくれるお風呂、湿度に合わせて自動的にスイッチが入る加湿器など。今は夢のように思うかもしれませんが、学習してその家に合わせた動きをしてくれる家電は、近い将来普及していくでしょう。また、面白い試みがAIアナウンサー。バーチャルの人物が、人工知能エンジンで機械学習し、人に近い自然な発音で原稿を読み上げてくれるんです。人件費がかからない上に、緊急時にも対応できるから、働き方改革による業務効率化にも繋がります。中国ではすでに国営メディアが導入しています。日本でもソニービジネスソリューションが開発に成功しているので、AIアナウンサーがニュースを読むのが当たり前になる時代も近いかもしれません。マスクド・アナライズさんAIブームのIT業界に出現した謎のマスクマン。辛辣で鋭い口調で、独自の地位を確立。共著に『未来IT 図解 これからのデータサイエンスビジネス』(エムディエヌコーポレーション)。(2)デジタルガジェットトレンド予報。教えてくれた人&文:太田百合子さん5G元年、VRやARが身近に。スマホは動画強化&音声操作へ。5G元年となる今年、日本では5Gに対応したスマホが各社から発売されます。超高速・超低遅延なネットワークを活かせるよう、カメラ、なかでもビデオ機能が充実したモデルが多く、「YouTube」などで自ら情報を発信している人や、「TikTok」などでショートムービーの配信を楽しんでいる人も、より高画質な映像をもっと簡単に配信できるようになるでしょう。高画質な映像がたくさん配信されるようになれば、それをもっと大きな画面で楽しみたいというニーズも出てくるはず。大画面をコンパクトに持ち運べる、折りたたみスマホが人気を集めそうです。大画面スマホは動画以外にも、タブレット感覚でメモを取ったりイラストを描くのに活躍しそう。折りたたみスマホはすでにauから2機種発売されていますが、今後さらに増えるでしょう。5Gの魅力を広めるために、携帯電話会社では、スポーツや音楽ライブをまるで現地にいるかのような高画質なVR(仮想現実)映像で楽しめるイベントを、たくさん開催予定です。これらのイベントを通じてVRや、今見ている実際の風景にバーチャルなデータを重ねるAR(拡張現実)のような、専用のヘッド・マウント・ディスプレイやスマートグラスを使用した体験が、身近でできるようになるでしょう。個人で購入して楽しめるものが登場してくると思います。もうひとつ、今後さらに広がっていきそうなのが、音声を使ったスマホの操作です。「Amazon Echo」や「Google Nest」のような、音声で操作できるスマートスピーカーが各家庭に普及すれば、外出先でも音声で、GoogleアシスタントやSiriなどのAIアシスタントを利用したいと考える人が増えるはず。今はまだ、スマホに向かって語りかけること自体に抵抗を感じる人が多いかもしれませんが、一度音声操作の便利さを知れば、恥ずかしさを超えて抵抗なく使えるようになるはず。特に最近急増している、完全ワイヤレスのイヤホンから音声でスマホを操作するスタイルなら、小さくつぶやくだけでOK。バッグやポケットからスマホを取り出す手間もありません。このように耳に装着して音声で操作できる機器を「ヒアラブルデバイス」と呼びますが、イヤホンタイプだけでなく、自分だけに聞こえるスピーカーを搭載したメガネやサングラスなども登場していて、今後注目が集まるガジェットといえます。太田百合子さん三度のごはんと同じくらい、デジタルガジェットが大好物なテックライター。“難しいテクノロジーをわかりやすく解説する”をモットーに、WEBや雑誌を中心に幅広く記事を執筆。(3)キャッシュレス化が止まらない!教えてくれた人&文・綿谷禎子さんさらなる高齢社会となる日本では、キャッシュレス化は不可欠。今、QRコードを使って支払えるスマホ決済が拡大中。使えるお店も利用者も急速に増えています。お店の支払いがキャッシュレス化すると、次のフェーズは友だち同士などとの支払い。これもキャッシュレスになると、現金を使うシーンがどんどん減ってきます。スマホ決済事業者が目指すのは、スマホ1つで何でもできる“スーパーアプリ”。友だちへの送金はもちろん、バーコード付きの請求書がスマホで支払えたり、タクシーの配車、出前依頼、保険加入や証券を購入できたりといった具合に、今、スマホ決済アプリから利用できるサービスを拡大中です。QRコードのスマホ決済が先行する中国では、「アリペイ」と「ウィーチャットペイ」の2大スマホ決済が浸透。国民の誰もがどちらかのサービスを利用しているといわれる状況で、まさにスマホ1つでライフスタイル全般のサービスを利用できる世界観が広がっています。また、北欧のスウェーデンではキャッシュレス化が進み、現金がほぼ流通しておらず、多くのお店が現金お断り。子どもにお小遣いを渡すのにも、「スウィッシュ」というスマホ決済アプリを使うのだとか。日本もキャッシュレス化が進むことで、このような世界が訪れます。実際、銀行は流通する現金が減少することから、自前のATMの数を減らして、コンビニのATMと契約するところが増えています。近くにコンビニがない地方都市用に、クルマにATMを積んだ移動ATM車の開発が進んでいるほど。キャッシュレス化が浸透すると、買い物の仕方も変わってきます。例えばアメリカではレジなし店舗の『Amazon Go』が増加中。お店に入る前に専用端末にスマホをかざして個人を認証。その後、店内でどの商品をカゴに入れたかをセンシングし、お店を出ると決済が完了しているという仕組みです。日本では今、ローソンが同じくレジなし店舗の『ローソンゴー』の実証実験を行っています。当初はQRコードで認証しますが、3月16日からは新たな方法を導入。もはやスマホさえ持ちません。スマホ決済アプリに登録した手のひらの静脈認証や顔認証などで個人を特定することで、支払いを行います。夏には一般向けの実証実験もスタート。顔認証などの生体認証技術が優れた日本では、生体認証による手ぶら決済も進行中です。日本は今後さらなる高齢社会に。キャッシュレスはその人手不足の課題解決にとっても重要。この流れを止めることはできないでしょう。綿谷禎子さんライター、「All About」ガイド。ビジネス情報誌『DIME』(小学館)を中心に幅広く執筆。自称、キャッシュレスクイーン。主にスマホ決済やクレカ、ポイントなどの記事を手掛ける。※『anan』2020年3月18日号より。イラスト・沼田光太郎文・鈴木恵美(その1)(by anan編集部)
2020年03月12日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「災害関連死」です。直接死を上回る死。明日の我が身の自衛を心がけよう。3月11日で東日本大震災から丸9年経ちます。震災を機に注目されるようになったのが「災害関連死」でした。地震や津波で命を落とすのは「直接死」ですが、その後の長引く避難生活や生活環境の変化により、持病を悪化させたり、孤独死してしまったケースを「災害関連死」「震災関連死」と呼びます。これには自殺も含まれます。自宅で安定した生活をしていれば、たとえば、血圧もコントロールできますが、避難生活を強いられ、おにぎりとお菓子しかない食事が続けば、たちまちコントロールがきかなくなります。避難所から復興住宅や仮設住宅に移り、地域の仲間もバラバラ、家族もなく、隣近所も知らない人ばかりのプレハブ小屋の生活が長引けば、寂しさが募り、お菓子を食べ続けてしまうなどして症状を悪くさせることもあるでしょう。福島で原発作業に携わっていた人のなかには、過酷な労働環境のなか、限られた食生活で長期の作業を強いられ、体調を悪化させた人が大勢いました。震災後、東京大学から志願して相馬中央病院に出向した坪倉正治医師は、「原発事故以降の健康被害といえば、放射線の影響ばかりクローズアップされるが、実際に亡くなった方の原因の多くは、持病の生活習慣病の悪化である」と語っています。令和元年9月現在、福島県では直接死の1613人に対して、災害関連死は2286人と、大きく上回りました。災害関連死で亡くなった方は、地域のコミュニティをまるごと移管して街づくりをするとか、お年寄りを孤立させないよう積極的に声がけをするなど、きめ細かな支援をすれば救えたかもしれません。災害に遭い、幸い生き延びたとしてもその後の環境により死者が生まれていることはぜひ覚えておいてください。災害が起きれば、普段当たり前にできていることがすべて崩れます。水が手に入らず、毎日炭酸飲料を飲むことになるかもしれません。いつもの化粧品や薬、嗜好品が手に入らなくなるかもしれません。家族が孤立をしてしまうかもしれません。普段から近隣の方と挨拶しておくなど、日常を維持できなくなったときのことをイメージして自衛しておくことをお勧めします。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)公開中。※『anan』2020年3月18日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年03月11日2020年3月に50周年を迎えるanan。そんなananの「美乳強化塾」号で、田中みな実さんが見せた大胆な“肘ブラポーズ”は、その美しいボディが大きな話題となり、本誌は完売に。一大センセーションを巻き起こしました。そんな田中さんが当時の思い出を語ってくれました。写真集『Sincerely yours…』(宝島社)が60万部を突破し、2020年の頭から社会現象を巻き起こした田中みな実さん。「こんなに反響をいただけていることに驚いています。写真集のお渡し会に来てくれた9割が女性で、みんなキレイにメイクを施し、お洒落をして、そんな子たちに『みな実ちゃんになりたいんです』なんて言ってもらえて、こんな幸せなことあります!?にわかには信じられない気持ちです(笑)。これほど女性に関心を持っていただけるようになったのは、ananの『美乳強化塾』特集がきっかけだったと思います。ananは心理テストや恋愛、SEX特集など切り口がいつも斬新で、女性に刺さるものばかり。書店やコンビニに並んでいれば必ず目に留まるし、学生のころから手に取っていますね。カバーが毎号印象的で、ステキだと思っていたから、表紙のお話をいただいた時はうれしかったです!」とはいえ、本当は迷いもあったそう。「特集でもお話ししましたが、胸が大きいことをずっとコンプレックスに感じていました。局アナ時代はサラシを巻いてテレビに出ていたことも。カバー撮影時は30歳になった年で、若いころよりはハリがなく、形にも自信はなくて。ただ、お話をいただく少し前からパーソナルトレーニングに通い始め、カラダの変化を実感していた時期でもあったので意を決して、臨むことにしました」やると決めたからには中途半端にしたくない、そんな思いから生まれた“肘ブラポーズ”で表紙を飾り、その号は見事完売!「あれ以来、コンプレックスだった胸を愛でてあげられるようになりました。潰して隠すのではなく、胸に合ったブラをセミオーダーするようになったり、バストケアが習慣になったり。よく『どうしてそんなにストイックに頑張れるんですか』と聞かれますが、自分ではストイックとは思っていないんです。スキンケアやメイクなどの美容が元々大好きなのと、身長が低いことやカラダのバランスが決していいわけではないことなど、コンプレックスがあるからこそ、探究心を持ち続けていられるんじゃないかな。かつては自分が認めたものしか信じなかった私が、固定観念を捨て、他人の意見も信じていいのではないか、と思えるようになったのもこの特集のおかげ。ananは、自分のカラダと向き合うきっかけを与えてくれた特別な思い出です」No.2069(2017年9月20日号)撮影日は1カット目から“肘ブラポーズ”でした!「お尻もぺったんこだし、顔も幼くてどこか自信なさげ…。今は自分のカラダと向き合い、鍛えたことで自信が持てるように。それが表情にも出ている気がします。ちなみに表紙が撮影の1カット目(笑)。刺激的でした」たなか・みなみ1986年11月23日生まれ。2014年にTBSを退社し、フリーに。現在『坂上忍の勝たせてあげたいTV』(日テレ)、『グータンヌーボ2』(カンテレ)などMCのレギュラーを持つ。キャミソール¥29,000パンツ¥47,000(共にエアロン/コロネット TEL:03・5216・6518)サンダル¥43,000(ネブローニ/フラッパーズ TEL:03・5456・6866)リング(K18YG×アコヤパール)¥80,000(カラットアー/ISETAN SALONE 東京ミッドタウン TEL:03・6434・7975)※『anan』2020年3月11日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・NIMU(まきうらオフィス)ヘア&メイク・AYA(LA DONNA)取材、文・若山あや(by anan編集部)
2020年03月08日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ニュースとアンアン」。『anan』50周年を記念して、連載でイラストを担当してくださっている五月女ケイ子さんと一緒に国会議事堂見学へ行ってきました。国会議事堂見学に行ってきました!五月女:生きているうちに、国会議事堂に来られてよかったです(笑)。堀:ここで様々なことが決まります。でも、本当に物事が動くのは控室や廊下のほう(笑)。議場は、事前に提出した議案に対して用意していた答弁を読み上げる、いわば「セレモニー」のようなものですからね。五月女:そうなんですか!?それはちょっと悲しい。その場で思いついたことは話しちゃいけないんですか?堀:無責任な発言はできないので、仕方ないですよね。大臣の読む答弁書を作るために、各省庁の官僚は国会が始まると毎日深夜まで働いています。五月女:事前に用意しているはずなのに失言が出るのはなぜ?政治家ってよく失言するイメージがあります(笑)。堀:(笑)。失言は、国会よりも、オフレコの会見や、支持者向けの講演会場で起きることが多いですね。五月女:普段、国会で我慢をしているぶん、支持者の前では気が緩んじゃうんですかね(笑)。「社会のじかん」で毎号イラストを描くようになって、政治の世界って意外に人間的なんだなと思うようになりました。堀:そうですよ!五月女:最初はTPPかPPTかもわからないくらい、時事に興味なかったけれど、堀さんのおかげで面白いと思うようになりました。国同士のいざこざも、家族や身近な社会と同じ、人間関係の縮図なんだなって。喧嘩したり仲直りしたり。喧嘩しているように見えて、世界に向けたアピールだったり。堀:外交は交渉術ですからね。五月女:前は、ニュースを聞くたびに、いちいち怖がっていたけれど…。堀:何もわからない暗闇にいると不安になりますが、全体の構造がわかると、不安も軽減しますよね。僕は『anan』では、普段のニュースでは届かないところに言葉を届けられている感触があります。報道の狭い世界にいると、どうしてもニュース好きの人にだけ向けてしまうところもあるので。五月女:わかります。ニュース番組はよくわからない単語の羅列で、「私には向けられてないんだな」と寂しい気持ちになることも(笑)。堀さんは、どのテーマでも中立で、良い面/悪い面、賛成派/反対派の両方を教えてくださるのがすごくいいなと思います。社会の出来事って、批判的な意見ばかりが聞こえてきて、私はそういうところが好きじゃなかったんです。堀:敵味方に分かれて撃ち合い、それに飽きたら、内輪で叩き合って何も成し遂げられないということは多々ありますね。本気で解決しようとすると、どちらの言い分もあるので簡単にはいきません。でも、僕は両方の意見を知りたいというのが、取材のモチベーションになっています。時代の変化に柔軟に。楽しいをモットーに50年。堀:『anan』は50周年だそうですが、時代ごとに若者もカルチャーも次々入れ替わるのに、先を読み変化し続けているところがすごいですね。五月女:50年って相当な重みですよね。堀:雑誌も年数を重ねると、作り手も一緒に年を取るので、意識していないと若い読者とのギャップに気づけなくなると思います。「社会のじかん」も、上から目線ではなく、僕の経験から知ることを参考までにシェアします、くらいのスタンスでいたいですね。五月女:『anan』は「こうしなさい!」という、高圧的なところがない。そこが、私には居心地がいいです。堀:権威にならないようにしているのでしょうね。国際貢献などの記事をさらりと取り上げてみたり、ニュース解説も、「効率良く生きるための武器としての教養」ではなく、「役に立つかはわからないけど、考えてみると面白いんじゃない?」という軽やかな印象。五月女:根本に、「楽しいこと、面白いことをいちばん最初に見つけて伝えたい!」という姿勢がある気がします。私は、「たかが一票で社会なんか変わらない」と思っていたタイプなんですけど、この連載に関わるようになって、自分のできることをやってみたり、考えたりすることが、社会につながっていくんだなあと思うようになりました。堀:どんな問題も、たどっていくと自分の生活につながります。この連載が、少しでも何かを考えるきっかけになる、楽しい場でいられたらと思います。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。映画『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)が3/7公開に。五月女ケイ子イラストレーター。楽しいグッズが買える「五月女百貨店」が評判。エッセイ『親バカ本』、作品集『五月女ケイ子ランド』も発売中。LINEスタンプも好評!※『anan』2020年3月11日号より。写真・大澤千尋題字&イラスト・五月女ケイ子取材、文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年03月05日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「イランVSアメリカ」です。イランは日本と関係の深い国。現状に目を向けて。今年に入り、イランとアメリカの緊張関係が急速に高まりました。イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官が、イラクを訪問中の1月3日に、アメリカのドローンを使った空爆により殺害されました。イランは報復措置として、8日にイラクの米軍基地をミサイル攻撃しましたが、それ以上の戦いは望まないと、双方手打ちとなりました。ところが、同日、ウクライナ旅客機がテヘラン近郊で墜落。最初は事故と発表されていましたが、のちにイラン軍による誤射だったことが明らかに。これにより外国人を含む176人の民間人の命が奪われました。イランとアメリカの関係は、オバマ政権時代に改善しかけていました。2009年から8年かけた粘り強い交渉の末、イランの核開発を平和裡に制限させることに成功。代わりに経済制裁を解除する予定でした。歴史的に意味のある合意だったのですが、トランプ政権はそれを白紙に戻してしまいました。前大統領の功績をすべて覆そうとするトランプ大統領。イランに強硬な態勢をとっているのも、秋の大統領選を意識しての行動といわれています。一方、日本とイランは親密な関係にあります。事件後、安倍首相はすぐさまイランに飛び、アメリカと中東の仲介役になろうと働きかけています。日本はイランから、石油や天然ガスを多く輸入していますから、有事にそれらが入らなくなれば、日本の社会は回りません。アメリカに気を使い、中東地域に海上自衛隊を派遣しましたが、目的はあくまで情報取集で、攻撃のためではないことを強調しました。しかし、自衛隊は専守防衛、武器の使用を禁じられています。そんな状態で隊員の安全は守られるのでしょうか?もう一つ注目すべきは、イラン国内で起きている反政府デモです。発端は昨年11月の石油価格の高騰。政府の制圧で300人以上の人が亡くなったとの報道も。そして、ウクライナ旅客機墜落で真実を隠蔽しようとしたことから、国民の不満は再燃。言論統制されているイランで政府に反発を示すのは命がけの行為です。それほど不満が溜まっている状態であることを、みなさんにも知っていただけたらと思います。ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。映画『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)が3月7日公開。※『anan』2020年3月4日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年02月27日小川りかこのツヤ肌をつくるクッションファンデ2020年1月13日(日)、フリーアナウンサーの小川りかこは、「お気に入りクッションファンデ」というタイトルで自身のオフィシャルブログを更新。昨年末から、ゲランの「パリュール ゴールド クッション」を愛用していることを明かした。小川りかこは「パリュール ゴールド クッション」のみずみずしいテクスチャーと、肌なじみの良さを絶賛。精油とわたしの「マルラオイル」で肌を整えてから、トントンとなじませることで、美しいツヤが出せるとしている。小川りかこは熊本県出身。有限会社シャベールに所属し、フリーアナウンサーとして活躍。BBT「BBT大学院マーケティング概論」のキャスターや、BS11「宝くじドリームサテライト」のナビゲーターなどを務めている。2018年10月から、美容オイル精油とわたしのアドバイザーも務める。いつでもツヤ肌をつくれる「パリュール ゴールド クッション」ゲランの「パリュール ゴールド クッション」は、クッション型コンパクトで、ゴールドの煌めきが特長。SPF25、PA++。フローラルの香りが優しく香る。販売価格は8,200円(税抜き)。ゲラン公式サイトなどで購入することができる。(画像は小川りかこオフィシャルブログ「Rikako’s Diary」より)【参考】※小川りかこオフィシャルブログ「Rikako’s Diary」※有限会社シャベール※ゲラン公式サイト
2020年01月17日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「民主主義の歪(ひず)み」です。歪みが生まれたもとにあるのは、果てなき欲望。香港をはじめ、世界中で政府に抗議をするデモが行われています。フランスの黄色いベスト運動は1年以上続いていますし、南米チリでは地下鉄の値上げを発端に、抗議運動が暴徒化しました。昨年、ベルリンの壁崩壊から30年がたちましたが、せっかく自由を得たというのに、旧東欧諸国には民主主義を否定する声も上がっています。なぜ、民主主義にこのような歪みが生じてしまったのか。理由のひとつには、グローバル化により、世界における経済の回る速度がものすごく速くなったことが挙げられるでしょう。ベルリンの壁崩壊のころに比べ、金融の仕組みも変わり、インターネットを使ったサービス、流通網が世界に広がりました。人も情報もお金もスピードを増して行き交います。そんななか、多くの民の意見をぶつけあいながら物事を地道に進めていく民主主義は、決定までに時間がかかる。それよりも強い決断力を持つ国家元首の存在が、国民生活の向上には必要だという空気を生み、アメリカンファーストのトランプ大統領や、EUからの離脱を目指す英国のボリス・ジョンソン首相が生まれ、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領が盤石の体制を築きました。しかし、それはあくまで経済発展を基準にした価値観です。独裁的なトップのスピーディな決定により、開発のために個人の土地が強制的に奪われるようなことが、カンボジアやアフリカや南米で起きています。個人の尊厳に価値を置いて世界を見渡せば、個人が国家に弾圧されている状態。それは、民主主義が欲望に耐えられなかった結果なのだと思います。賃金格差が広がり、教育格差が固定されてしまうと、階層社会の下層に追いやられてしまった人は、這い上がることができなくなります。生活の安定を求めて共産主義的なものを求める貧困層と、資本を持ち、大きな力で帝国を築こうとする国家主義がぶつかりあう。これは、第一次世界大戦、第二次世界大戦の始まるころの構図とよく似ているのです。いま個人に最も必要なのは、自分の尊厳を維持できるかどうか。「仕方がない」と魂を売らずに、誇りを持って自分を大切にしてほしいなと思います。ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。映画『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)が3月7日公開。※『anan』2020年1月22日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年01月15日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「反緊縮」です。先に借金を減らすか雇用をまず生むか日本は揺れている。現在、世界で「反緊縮(財政)」を支持する声が広がっています。緊縮財政とは、増税や公共投資の削減により、国の支出を減らして財政を縮小することです。経済危機に陥ったギリシャは、EUから緊縮財政を促され、公共工事や公務員の数を減らしました。そうして赤字国債の発行を抑え、国の借金を減らそうとしたのです。しかし、緊縮財政にすると失業者が増え、国民の消費は冷え込み、経済がよいほうに転じません。それよりも、まず先に国はお金を投入して公共工事をガンガン増やす。そうすれば、労働力、資材、業者が必要になり、新たな雇用が生まれます。長期工事になれば、ホテルや食堂の需要も喚起されます。緊縮財政よりも「反緊縮」財政策をと、いま、アメリカやフランスなどでも反緊縮ムードが高まっているのです。日本では、2013年のアベノミクス第1第2の矢で、大胆な金融緩和と大規模な公共投資を掲げていました。雇用をまず生んでから消費の活性化を狙う、いわば反緊縮策でした。ところが、日本の慢性的な財政赤字に、国際社会から「そんなに負債を抱えて大丈夫?」という指摘がなされました。IMF(国際通貨基金)によると、日本の債務残高は、GDP比で237.7%。ドイツの58.6%やアメリカの106.2%に比べてダントツの多さ。財政健全度ランキングでは最下位の188位でした。そこで、安倍政権は、2020年度までにプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字にすると約束。緊縮財政に転じ、「だから、安心して日本に投資してください」とアピールしました。しかし、目標達成は難しく、期日は延期されました。日本の借金は、国債を発行してまかなわれています。国債を購入しているのは日本銀行や民間の銀行。ほぼ日本人なので、国全体でみれば、借金を増やしても同等の資産が日本に貯まるため、財政破綻はしないと考えられています。しかし、国債を買う日本人は減少傾向。一方、高齢化により医療費や社会保障費は嵩み、国の借金は膨らむばかり。借金を返したいのなら、増税ではなく反緊縮に舵を切れと、れいわ新選組などが主張しているのです。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。映画『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)が3月7日公開。※『anan』2020年1月15日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年01月09日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「日本人の英語力」です。国費を投じても、グローバルな人材を育成すべきです。2020年度から始まる大学入学共通テストで活用される予定だった、英語民間試験の導入が延期になりました。従来の試験では「読む・聞く」能力を問いますが、実践的な英語を身につけるには、「読む・聞く・話す・書く」が必須。この4技能を測るテストを一から作るには技術もコストもかかるため、7種類の民間試験の導入が提案されていました。しかし、受験生の家庭の経済力や、都市部と地方でも受験機会に差が出て、公平性に欠けると問題になり、延期が決まりました。スイスの国際語学教育機関の調べによると、日本の英語力は非英語圏の中では100か国中53位。中国や韓国を大きく下回り、‘18年より4位順位を下げています。日本の英語教育が遅れたのは、日本語だけで事足りる、非グローバル社会だったからだと思います。かつて日本が一流の消費国だった時代は、貿易が盛んでした。しかし、経済が下降し日本は世界から、商売相手として認められなくなりました。かつての日本は長い間、人件費の高い国でしたが、今は円安政策を行っており、人件費も物価も安くなっています。今後、世界の労働産業で、日本は使う側から、使われる側に回らざるを得なくなるでしょう。今、日本人にとって英語教育はとても重要なのに、英語民間試験の問題が起きました。国策にグローバル感覚がないことが明らかになったと思います。国力の低下を正面から受け止められず、格差の現状から目をそらし、一部の業界への利益誘導に終始した結果です。本来ならば、海外で勉強したい学生は、国費を投入してでもどんどん送り出していくべきなのだと思います。そうして、海外との競争力をつけ、日本市場以外でも生きていける日本人を育てることが、多くの問題を抱える日本の打開策でもあり、国の役割なんじゃないかと思います。英語はあくまでコミュニケーションツール。日本人は発音や文法の正確さにこだわりますが、移民の多いアメリカなどでは、訛りや誤りなど気にせず自由に話しています。語学力以上に問われるのが自分の意見です。考えを言語化して伝える習慣を、まずは日本語でつける教育改革が必要でしょう。堀潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。映画『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)が’20年3月7日公開。※『anan』2019年1月1日-8日合併号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2020年01月06日意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「2019年を振り返る」です。グローバル化が進む一方で、分断は避けられず。今年、最も印象的だった出来事は令和への改元ではないでしょうか。生前退位により、これまでと違い、お祝いムードでしたし、これほど多くの式典に国民が参加できた改元はほかにありません。また、今年はラグビーのワールドカップや、野球の「WBSCプレミア12」など、国際的なスポーツイベントが日本で開催され、外国人サポーターの方が大勢訪れました。これまではグローバル化というと、日本人が海外に出て活躍することが主でしたが、日本にいながら様々な国の方々と交流が深まる「内なるグローバル化」がようやく進んだ印象です。これは、インバウンド政策により、ビザ要件を緩和し、外国人観光客を増やしたこと。そして、少子高齢化により労働者が不足し、コンビニでも居酒屋でも外国人の方が働くことが当たり前になってきたという背景があります。今年の4月には、改正出入国管理法が施行され、農業や建設、介護などの分野で、「特定技能」の在留資格を得ることもできるようになりました。外国人労働者の数はこれからますます増えていくでしょう。ただその一方で、台風や大雨が昨年に続いて多発し、外国人の方に災害報道が的確に伝わらないという問題も浮き彫りになりました。来年の東京オリンピックを控え、駅や電車などのアナウンス同様、報道でも多言語対応の必要性を強く感じます。政治に関することでは、安倍晋三総理の通算在任期間が、憲政史上最長になりました。しかし、豊かになったのはある特定の層のみで、不満や貧困、格差は広がりました。7月の参議院選挙で、「N国(NHKから国民を守る党)」や消費税廃止を謳った「れいわ新選組」のような、極論を主張する政党が想像以上に多くの支持を集めたのも、印象深い出来事でした。人々の不満が政治に直結していることが顕在化した一例だと思います。外交面では、北方領土や、北朝鮮問題は棚上げ状態。日韓関係は悪化したままで、日米貿易交渉も核心部分は先送りになっています。世界的に分断が進みつつあり、残念ながら、先行きは明るいとは言い難い状況なんですね。堀 潤ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。映画『わたしは分断を許さない』(監督・撮影・編集・ナレーション)が来年3月7日公開。※『anan』2019年12月25日号より。写真・中島慶子イラスト・五月女ケイ子文・黒瀬朋子(by anan編集部)
2019年12月20日