最高のアニメを意味する“覇権アニメ”を作るべく2人の監督が奮闘する、映画『ハケンアニメ!』。その世界を忠実に再現するため、映画化にあたって作中アニメのために集められたとは思えないほど豪華なスタッフ&声優陣が集結!『ハケンアニメ!』作中アニメ…トウケイ動画の『サウンドバック 奏の石』トウケイ動画お得意の、ロボットアニメ『サウンドバック 奏の石(かなでのいし)』。登場人物の声を担当する梶 裕貴さん、潘めぐみさん、速水 奨さんにお話をうかがいました。STORYある日、巨大ロボットに襲われたのどかな田舎町。トワコ、タカヤ、リュウイチたちは神社に納められていた「奏(かなで)」と呼ばれる石が現実の音を吸い込むことによってロボット化することを知る。そのロボット・サウンドバックに乗り、少年少女たちは地球を守る。CHARACTERリュウイチ:小学5年生。サウンドバックのパイロット。3年生のときに都会から引っ越してきた。トワコ:奏の石を祀る神社の三姉妹の長女。小学5年生。サウンドバックのモニターを操作できる。タカヤ:小学5年生。サウンドバックのパイロット。スポーツ全般を得意とする熱血漢。マユ:トワコの小学1年生の妹。奏神社の三姉妹の末っ子で、幼いけれどしっかり者。奏の石:奏神社に鎮座する、音を吸い込みロボットを生み出す石。変形し、サウンドバックとなる。梶 裕貴asリュウイチ仕事をテーマにした作品、とりわけアニメ制作や声優といったジャンルをエンターテインメントとして映画にするには、相当なリサーチがないと難しいと思います。ところが、この作品は少なくとも、僕が知るアフレコ現場の表現に関して言えば、ものすごくリアルでした。僕が口出しできるものでは決してないのですが、アニメ制作の現場についても、職人の皆様が作られる空気感というのが、見事に形になっていたのかなと感じました。あらためて、これだけ多くの作品関係者の皆様の努力や時間、愛情や熱意があって、初めてアニメーションは生まれているんだなということを感じさせられました。自分が声優として参加させていただけている、その重みを一層感じましたね。プロデューサーの行城さんがアニメーターの並澤さんに名前の表記を断られて、「名前をください」と言うシーンも痺れました。「この人が関わっているから見たい」と言っていただけるのはありがたい半面、自分の芝居が求められているのか、それとも名前(付加価値)が欲しいのか、葛藤することが僕もありました。でも…どんな理由であれ、見て知っていただけるチャンスは大事ですし、本当にいい芝居さえすれば、必ず良かったと言ってもらえるものだと感じているので、行城さんのこの言葉は今の自分だからこそ理解できたものなのかなとも感じました。僕が声優を志したきっかけは、“声優という仕事は、頑張った分だけ全部自分の力になる職業”だと聞いたから。それまでは、憧れる対象が多すぎて、夢がコロコロと変わってしまう子供で(笑)。新しい夢を持つたびに、それまでの努力が無駄になってしまったように感じていたんです。でもその言葉を知ったとき、“声優はいろいろなことに好奇心が抑えられない自分にぴったりの職業だ”と思えたんですよね。新人の頃は失敗したくないあまりに、“教科書通りの合格点を取ること”に必死でした。でもそれが、とある主演作での、主人公が慟哭するシーンのお芝居をしたときから変化して。泣くとも叫ぶとも形容しがたいその表現を、とても評価してくださったんです。時には、きれいに言葉を発するより、歪んでいたりブレていたりするほうが、見ている人に伝わることもあるんだと。それが、人間なんだと。そのときに“たとえ失敗しても、100点以上を狙う面白さがアフレコにはあるんだな”と知りました。その演技を引き出してくれた音響監督の三間雅文さんは、僕にとって“恩師”です。かじ・ゆうき1985年9月3日生まれ、東京都出身。2004年より声優として活動。現在までアニメ『進撃の巨人』エレン・イェーガー役をはじめ、『僕のヒーローアカデミア』轟焦凍役、『からかい上手の高木さん』西片役など、出演作多数。潘めぐみasタカヤ斎藤瞳監督の「刺され、誰かの胸に」という台詞には本当に心を刺されました。私たち声優がその作品に関わる時間は収録の数時間のみですが、監督をはじめ制作スタッフの皆さんがどれだけの時間と想いを懸けてモノづくりに向き合っているのかをあらためて思い知りました。イベントで紹介していただくとき、「役の潘めぐみです」と自己紹介するんですけど、こうして制作過程を見ると、作品に携わる皆さんと一緒にこの役を演じているんだな、と感じましたね。登場人物の中で一番共感したのは斎藤監督です。一度は就職したけれど、夢を諦めきれずに転職して、ついにはアニメ監督になるのは本当にすごいこと。やりたいことのために勇気を振り絞った選択をするところとか、自分の作品に関して誰に何を言われても譲らない、いい意味での頑固さにも共感しました。私も頑固だったり負けず嫌いなところがあるので、彼女にはすごく感情移入してしまいましたね(笑)。斎藤監督がアニメ監督の道を選んだのと同じように、私も、声優は誰かの力になれる、心に届けることができる素敵な仕事だなと思っています。たった30分の放送時間でも、その30分が見た人の一生に残るかもしれないんですよね。悩んでる人の背中を押したり、人生の岐路に立ったときに思い出してもらえたり。誰かの人生にほんの少しでも関われるということがすごく尊くて、愛おしいんです。私が声優を志したのは、小学生のときに親友の家でたまたま読んだ『HUNTER×HUNTER』がきっかけでした。『週刊少年ジャンプ』に第1話が掲載された号で、表紙は主人公のゴンがグーパンチしてました。それまで少年漫画には触れてこなかったものの、読み始めたらすっかりハマってしまい、アニメが始まったらそちらにも夢中になって…。だからまさか自分がゴンを演じることになるだなんて思ってもいませんでした。人生何がどう動くかなんて、本当にわからないものですよね。その作品には何度も救われてきて、夢まで叶えてもらえるなんて、本当に感謝しています。私は、夢を叶えた先にも夢があると思うんです。例えば斎藤監督は、頑張って公務員になったけど、転職した先でアニメ監督としての才能が花開いて、さらに別の道を進んでいくじゃないですか。そんなふうに夢って変わっていくものだし、今いるこの場所だけが終着点ではないんだなって、この仕事をしてると感じますね。はん・めぐみ1989年6月3日生まれ、東京都出身。2011年にアニメ『HUNTER×HUNTER』のゴン=フリークス役で本格的に声優デビュー。『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』セイラ・マス役、『ULTRAMAN』北斗星司役など出演作多数。速水 奨as奏の石今回は石の役を演じるというより、銀幕デビューを飾るということに少しウキウキしていました。僕はかれこれ42年、声優をやっているんですが、近しい業界であってもまだまだ知らないことがあるんですよね。昔は新人声優がセル画の彩色のアルバイトをしたり、作品が終わるとセル画をいただくこともありました。なのでアニメーターの仕事については知っていましたが、監督やプロデューサーが実際にどのような仕事をしているのかまでは知らなかったので、本当にいろんな方が作品に関わっているんだなというのをあらためて感じました。作中、この業界はみんなやさしい人ばかりという台詞が出てくるんですが、僕らの業界もそう。我のぶつかり合いだと成立しない世界なので、今、自分は何を求められているのかを感じながら、おたがい気を配って、補い合っているところはアニメ業界と似てるなと思いました。僕が声優になったきっかけは、賞金目当てだったんですよ(笑)。ちょうど劇団を辞めた頃で、たまたま目に入った声優コンテストでグランプリをいただいて、声優として仕事を始めました。最初に一番戸惑ったのは“間”ですね。絵に描かれた動きに合わせてしゃべらなくてはいけない上に、演技もしなきゃいけない。何重にも制約があって、これは難しいなと思いました。1987年のOVA『デビルマン』でようやく、台詞はただきれいな音を成立させるのではなく、肉体を削って出していくものなんだということに気づきました。映像に自分の演技をマッチさせるためには、思っている以上のパワーと覚悟が必要なんですよ。そして、自分の声だけが良くても意味がない。作品の中で生きるというのは、みんなと一緒にセッションすること。一つのシーンをみんなと台詞をかけ合わせることで作り上げていく、それが声優という仕事において何より大切なんです。僕は普段、泣くことはほとんどありませんが、『火垂るの墓』を観ると絶対に泣いてしまうんです。そういう喜怒哀楽は絶対にあったほうがいいし、短い時間で感情を表現しなくちゃいけない声優ならなおさらそう。だから、声優という仕事には無駄なことって何一つないんですよ。漫画やゲームにハマったり、僕の場合は読書でしたが、そういうインプットが役に立つときがきっと来ます。いろんな経験をしたり、何でもやってみる、それが声優にとって大事なことだと思います。はやみ・しょう8月2日生まれ、兵庫県出身。1980年に声優として活動を始め、現在までTVアニメ『勇者エクスカイザー』エクスカイザー役、『南国少年パプワくん』マジック総帥役など多数。『ヒプノシスマイク』ではラップにも挑戦した。映画『ハケンアニメ!』新人アニメ監督・斎藤瞳を吉岡里帆、彼女を振り回すプロデューサー・行城理を柄本佑、天才監督・王子千晴を中村倫也、王子に振り回されるプロデューサー・有科香屋子を尾野真千子が演じる。この2組、覇権を取るのはどっち!?監督/吉野耕平脚本/政池洋佑出演/吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子ほか5月20日より全国公開。©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会※『anan』2022年5月25日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・SUGI(FINEST/梶さん)ヘア&メイク・中山芽美(エミュー/梶さん)齊藤栄梨(潘さん)coomie(ビーサイド/速水さん)取材、文・伊 季姫(by anan編集部)
2022年05月22日幾原邦彦監督の作品に影響を受けたと語る人は、アニメ業界にとどまらず数多い。幾原監督はどんな20代を送っていたのだろう?『輪(まわ)るピングドラム』の新作劇場版が公開されている監督に話を聞きに行くと、スタイリッシュなイメージとは違う話が飛び出してきた。――幾原監督がアニメ業界に入ったきっかけはなんでしょうか。幾原:偶然ですね。大学のころ銭湯帰りに寄った書店で、たまたま東映動画(現東映アニメーション)の演出採用試験案内を見たんです。――もともとアニメ業界を目指してはいなかったんですか?幾原:関西の美術系大学に通っていて、映像を作っていたりはしたけれど、それを生業にするのはリアリティがなかった。労働環境的にシビアだとわかっていたし、門戸が狭くて。関西にいたときに映画会社の採用試験に忍び込んだこともあったけど、ごっつい競争率。「自分は無理だな」と思っていました。――それでも東映を受けたのは?幾原:東映のアニメーションを見ていたのもあったし、一回東京に行ってみたくて。半分冷やかしみたいなもので、選考が進むたびに「落ちたな」と(笑)。合格したと聞いてびっくりしましたね。あとで聞いたら、実技試験の結果と、「いろんな可能性があるやつを採った」と。労働環境が過酷でみんなすぐ辞めるから、いろんなタイプの人間を採っておく方針だったみたい。実際、人の入れ替えが激しい職場で、その年は全部で20人くらい採用したようだけど、「同期」はアニメ業界にはほとんど残っていません。――東映の演出試験は、将来の監督候補を募集するもの。会社員時代の仕事はどうでしたか?幾原:大失敗ですね!―――えっ、意外です。幾原:全くうまくいかなかったです。今なら自分が頭でっかちで驕りがあったとわかるけど、当時は全くわからず空回りしていた。多分ね、どこかで上から目線だったんですよ。全てのことをバカにしているのが、態度に透けて出ていた。――てっきり順風満帆かと。幾原:自分の仕事のどこがいけないかも気づけないということが続きましたね。みんなね、2回は教えてくれないんですよ。1回の失敗は聞けば教えてくれるけど、2回目に同じ失敗をしたら、失敗したことすら教えてくれない。なぜかといえば仕事は椅子取りゲームだから、誰かの失敗は「席が空く」ことになるんですよね。だからミスをしないようにやることを目指すけど、それもできない。制作をやっていると秒数やコンテなどの「数字」を見られなきゃいけないけど、全然ダメでした。――29歳のころに『美少女戦士セーラームーンR』のシリーズディレクターを担当しています。客観的に見ると、異例の早さですが…。幾原:当時の東映は今よりも年功序列的だったので、そこから見るとかなり若くはあったけれど、たまたま運がよかったんだと思っています。当時を思い出すと「痛恨」という言葉ばかりが浮かびます。――であれば、当時のお仕事を見返したりはしない?幾原:当時に限らず、なるべく見ないほうがいいかな、忘れたほうがいいと思っています。この仕事は、繊細な部分と同時に鈍感力が必要。受けたダメージを覚えていると動けなくなっちゃう。忘れやすいから、あんなに嫌な目にあってもまたやれるところがありますね。熱せられたヤカンを素手で持つ熱さを毎回忘れているんです。――ダメージというのは…?幾原:「ルーティンワークでやらない」と決めた時点で、ある種のダメージは確定してるんだよね。ルーティンワークとは、ある程度しっかりしている組織には当然ある、先人たちが長い時間をかけて作ったルールなんですよね。でも、そのルール内では、自分が考えている作品はできないし、はみ出したところに「何か」があるのはわかっているから、ダメージを受けるとわかっていても忘れてはみ出す。そうじゃないと続けてこられなかった。でも今は業界そのものが変わってきていますね。僕が始めたころとは全く別の業界です。公開中の劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM[前編]君の列車は生存戦略』は、2011年放送のTVシリーズ『輪るピングドラム』を再構成した作品。漫画家・星野リリィによるキャラクターデザインや、やくしまるえつこメトロオーケストラの主題歌が魅力的なシリーズに、新規シーンや新キャラクターを加え、初見もファンも楽しめる映画に。後編は7月22日公開予定。いくはら・くにひこ1964年生まれ。’86年に東映動画入社、社会現象となった『美少女戦士セーラームーン』アニメ2期のシリーズディレクターを務め、’96年独立。『少女革命ウテナ』『輪るピングドラム』などで高い支持を集める。※『anan』2022年5月25日号より。写真・岩澤高雄(The VOICE)インタビュー、文・青柳美帆子(by anan編集部)
2022年05月21日映像美、アクション、笑い、人間ドラマ。究極のエンターテインメントがここに!プロデューサー対談で明かされる、アニメ『SPY×FAMILY』ができるまで。アニメーションは、1つの作品は1つのアニメスタジオが手掛けるのが、一般的な制作スタイル。しかし今回は、『進撃の巨人Season1~3』で知られるWIT STUDIO、『Fate/Grand Order ‐絶対魔獣戦線バビロニア‐』を手掛けたCloverWorksという、日本を代表する実力派の2つのスタジオがタッグを組み制作するという、業界的に珍しい方法で作られている。それってどういうことなの?一緒に作るメリットとは?そんなあれこれを、プロデューサーの福島祐一さんと中武哲也さんに、根掘り葉掘り聞きました。――お二人は原作のマンガにはどんな印象をお持ちでしたか?福島祐一:僕は連載が少し進んだ頃から読み始めまして、アーニャがダミアンを殴る話あたりで“え、スパイものじゃないの?!”が最初の印象でした(笑)。学園ものなの?!って。中武哲也:確かに読んでいくと、シリアスなスパイものではない。独特の温かみがある物語ですよね。福島:でも、アニメにしたらすごく映えそうな作品だな、とも思いました。中武:僕もそう思いました。原作の絵が魅力的な上、緻密すぎないので、アニメ化には抜群のポテンシャルがある作品だな、と。たぶんアニメ業界の人、みんなそう思ったと思いますが(笑)。福島:確かに(笑)。――そして、それぞれご自身のスタジオが手掛けることになったときには、どう思われました?福島:“WIT STUDIOさんと一緒に作るんだ…”中武:(笑)福島:いや、というのは、弊社の場合、製作に親会社のアニプレックス(編集部注・『鬼滅の刃』などのアニメの企画製作を手掛ける企業)が入ることがほとんどなので、製作会社に東宝さんが入ることが珍しいですし、さらに他のアニメスタジオと組んで作品を作るなんて、前代未聞なんですよ。なので、こういう座組が実現するのか…というのが率直な感想でした。中武:確かに、めったにないことですよね。“あの人と組んだらどんな作品になるかな”とか、“あの作品をあの人が作ったらどうなっただろう…”とか、妄想としてシミュレーションすることはあったとしても…。福島:わかります。〈ベストイレブン〉的なことですよね?中武:そうそう(笑)。でもそういうのは、なかなか実現しないじゃないですか、でも今回はそれがナチュラルに形になっちゃった。――中武さん的に、CloverWorksさんの魅力とは?中武:めっちゃくちゃ今、強い会社ですよね。アニメ界のビジュアリスト。先鋭的で、感性的な映像を作るのが本当に上手です。今エンタメとしてアニメを楽しむ人たちにも、またいわゆるアニメファンの文脈にも刺さるような、感度の高いものを作るスタジオです。福島:世界的に大人気のWIT STUDIOさんに、そんなに褒めていただけるとは…!自分としてはWIT STUDIOさんの人気に便乗させていただきながら、より認知してもらいたい、というのが正直なところです。中武:なんですかそれ(笑)。福島:すみません!真面目に言いますと、WIT STUDIOさんは海外で評価が高い作品をたくさん作られていますし、僕はWIT STUDIOさんの作品に漂う、武骨さ、重厚感、濃厚な感じに憧れるんです。そこがこの作品の、“スパイ”的な要素とすごく合っている気がするんですよね。弊社のライトさと、WIT STUDIOさんの硬派な感じが組み合わさることで、新しい何かが生まれるのかもとは思っています。中武:一緒にやってみると刺激的ですし、本当に面白い。物理的にスタッフの行き来もあるので、若い人たちがすごく活性化されているのも感じます。僕自身も福島さんの仕事ぶりを拝見し、“もっとアニメ好きにならなきゃ!”という焦りと圧をもらってます(笑)。福島:でもなんですかね、お互いの強みを持ち寄れば、強いアニメができるのでは!?みたいな、発想はありますよね。中武:会社の垣根を越えて協業できる未来を夢見てはいたけれど、夢じゃなくなるなんて、すごい。しかも、対象を面白がれる人と一緒にモノづくりをするほうが、絶対に楽しいじゃないですか。今回はまさにそんな感じですよ。――監督とシリーズ構成は『機動戦士ガンダムUC』などを手掛けた古橋一浩さんです。起用の理由はどんなところに?中武:この作品が持つ“あったかみ”の要素が、古橋監督の作る世界に合うのでは、というところですね。あとは、スケジュールに関する絶対的な信頼感。テレビアニメって、安定した速度で、基準を満たした品質を作り続けなくてはいけないので、本当にスケジュールが大切なんです。特に今作は、2つのスタジオが動くので関わる人数が多い。なので、作家性と職人性のいずれもが高い古橋監督にお願いをしました。――キャラクターデザインは、『約束のネバーランド』のキャラクターデザイン・総作画監督を手掛けられている、嶋田和晃さんです。嶋田さんの抜擢理由は?福島:総作画監督はすべての話数の絵を統一する仕事で、嶋田さんの描く絵は、原作の絵に寄せながら、アニメとしてのデザインの良さも出してくれる絵だと思います。仕事を拝見していると、色々なものに対応してくれていて、とても器用な方だなという印象もあります。嶋田さんが描いた絵を遠藤達哉先生(原作の作者)にお見せしたら、気に入ってくださったので、本作のキャラクターデザイン・総作画監督をお願いすることになりました。嶋田さんが描くアーニャが可愛くて素敵です。――それにしても、これだけ人気のマンガをアニメ化するというのは、プレッシャーはないですか?中武:読者の人が好きな原作の世界を、アニメという器に置き換えるにあたって、一番大事なのは、原作へのリスペクトですよね。福島:はい。それは人気のマンガかどうかは関係なく、すべてのアニメ化に対してそう思っています。マンガは自分のペースで読めるエンタメなので、読んだ人の数だけ〈その人が想像する『SPY×FAMILY』〉があり、人気作品だとその数が多いことになるので、そういう意味で、ハードルは高いと思います。でも、2つのスタジオでいろんな議論をする中で、みんなで「ここが『SPY×FAMILY』の大事なところ」というのを寄せ合って、一つの形にたどり着ければと。中武:はい。安定したクオリティの作品を継続的に視聴者に届けられるよう、日々頑張っているので、楽しみにしてほしいです。今の世の中、人に話して理解してもらいたいけれど、本当のことが言えない、そんな悩みを抱えている人も多いと思うんです。そういった意味でも、きっと本作は共感してもらえると思うので。福島:一方で、ほのぼの家族ものとしても楽しめる作品ですので、どうぞよろしくお願いします。ふくしま・ゆういちアニメスタジオ「CloverWorks」プロデューサー。手掛けた作品は、TVアニメ『四月は君の嘘』『ダーリン・イン・ザ・フランキス』『Fate/Grand Order ‐絶対魔獣戦線バビロニア‐』など。なかたけ・てつやアニメスタジオ「WIT STUDIO」プロデューサー。手掛けた作品は、TVアニメ『甲鉄城のカバネリ』など。『進撃の巨人』はTVアニメSeason1~3、劇場版のいずれも制作。『SPY×FAMILY』原作は、マンガアプリ「少年ジャンプ+」で連載中の、遠藤達哉氏の同名コミックス。現在9巻まで発売中。凄腕スパイの〈黄昏(たそがれ)〉は、よりよき世界のため、日々諜報活動にあたっていた。ある日突如言い渡された任務のため、仮初めの家族を作ることに。しかしその家族のメンバーが、娘は超能力者、妻が殺し屋って!?アニメは毎週土曜23:00~23:30、テレビ東京ほかにて放送中。各プラットフォームにて配信も。©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会※『anan』2022年5月25日号より。(by anan編集部)
2022年05月21日4月からスタートし、すでに巷の話題を独占しているアニメ『SPY×FAMILY』。その魅力と世界観を大解剖!「わくわく!」がそこかしこに!作品の魅力が詰まった名場面をピックアップ。スパイが暗躍するシリアス作品…かと思いきや、心温まるホームコメディ要素もたっぷり。“スパイ”と“ファミリー”をどちらも楽しめる本作の魅力を、アニメの場面とともにお届け!原作は、マンガアプリ「少年ジャンプ+」で連載中の、遠藤達哉氏の同名コミックス。現在9巻まで発売中。凄腕スパイの〈黄昏(たそがれ)〉は、よりよき世界のため、日々諜報活動にあたっていた。ある日突如言い渡された任務のため、仮初めの家族を作ることに。しかしその家族のメンバーが、娘は超能力者、妻が殺し屋って!?アニメは毎週土曜23:00~23:30、テレビ東京ほかにて放送中。各プラットフォームにて配信も。『SPY×FAMILY』5つの魅力。1、スパイの極秘任務がスリリング!主人公は、とある国のスパイ。彼にはさまざまなミッションが課せられるが、作戦にまつわる秘密の暗号を特殊な方法でやりとりして解読したり、アクションシーンも満載。スパイならではのスリルにドキドキ!2、〈黄昏(たそがれ)〉の華麗な仕事ぶりが痛快。このスパイ、通称〈黄昏〉。百の顔を使い分ける変装のスペシャリストで、予想外の突発事態が起こっても華麗に対処、手ごわい敵に囲まれてもへっちゃら。難しい局面も見事にさばく仕事ぶりにスカッとする。3、芽生える家族愛が胸に沁みる。作戦のために、家を借り、子供と妻を集め、またたく間に“ファミリー”に。そんなワケあり家族の3人だったが、いつしか絆が深まっていく。お互いを思いやる言葉や行動、力を合わせる姿がグッとくる。4、アーニャがとにかくキュート!魅力的なキャラが多いが、なかでも娘のアーニャが実にキャラ立ち!くるくる変わる表情がとにかくかわいくて目を離せないだけでなく、「わくわく」「うぃ」など特有の言葉遣いもユニークでクセになる魅力が。5、胸キュンどたばた学園ドラマ。アーニャは父・ロイド(〈黄昏〉)の任務のため、名門校に入学。お嬢様の親友や、ちょっかいを出してくる割に実はアーニャを意識しているクラスメイトが登場。そんな学園ドラマとしての楽しみも盛りだくさん!なぜスパイ?なぜファミリー?まずは物語の舞台と背景をざっくり解説します。SPYとFAMILYの意外な組み合わせが気になるタイトルだが、なにゆえ?その質問に答えるため、この家族の成り立ちを紹介。※印の用語は基本用語部分で解説。STEP1:オペレーション〈梟(ストリクス)〉の任務が下る。〈WISE〉(※)に所属するスパイ〈黄昏〉(※)に、ある日「東国の標的(※)の動きを探れ」という任務が下る。その名もオペレーション〈梟〉。「そのために、1週間で結婚して子供をこさえろ」という指令を、新聞に記された暗号により告げられた彼は、クールな出で立ちにもかかわらず、列車でコーヒーを噴き出す。STEP2:孤児院で就学前の子供を引き取る。彼は、“精神科医のロイド・フォージャー”という偽の肩書と名を名乗り、任務開始。標的が唯一定期的に顔を出すという名門・イーデン校(※)の懇親会潜入のため、子供を“こさえる”べく孤児院を訪れ、アーニャを「賢い!」と勘違いして引き取ることに決定。が、彼女は実は心を読める超能力者だった!?STEP3:イーデン校入学試験のため、勉強開始。懇親会に潜入するには、我が子がイーデン校の生徒にならねばならない。しかも入学試験は超難関。ということで、ロイドは作戦を伏せたままアーニャに勉強をさせようとする。しかしアーニャは超能力により密かにその目的を把握。スパイ好きの彼女は作戦には「わくわく」だが、勉強が大の苦手だった…。STEP4:ペーパーテストの一次試験を無事突破。試験当日、アーニャは心を読みカンニングを試みるが、近くに賢い受験者がおらずうまくいかない。そこで、ロイドと一緒に覚えた試験の解答(情報屋から入手)を必死で思い出し、なんとか一次試験に合格した。合格の掲示板を見て安心した二人。だがその後、イーデン校から二次審査の封書が届く。STEP5:二次審査は三者面談。“はは”が必要に。二次審査は面接で、〈必ず両親と3人で出席する〉という条件つき。しかしアーニャには母はいない!面接のための“母”を見つけるためロイドは策を練る。そんなとき訪れた仕立屋で偶然出会ったのが、市役所勤務の女性・ヨル。ヨルは殺し屋という裏の顔を持っていたが、アーニャは超能力でそれを知る。STEP6:そして3人は“仮初めの家族”に!実はヨルのほうにも事情があり、心配性の弟を安心させるために、パートナーを演じてくれる男性を探していた。殺し屋という存在に密かにわくわくするアーニャの細工も功を奏し、利害が一致したロイドとヨルはめでたく結婚。アーニャを含め3人のファミリーが誕生し、イーデン校にも合格を果たした。物語の基本用語を解説!作品世界の理解を深める4つのワードをご説明します。〈WISE(ワイズ)〉とは?東国の動きを探る、西国の情報局対東課。物語の中で冷戦中の東国(オスタニア)と西国(ウェスタリス)。主人公が所属するのが西国側の情報局対東課、通称〈WISE〉である。東西平和を目的とした諜報組織でスパイを擁する。〈黄昏〉とは?主人公がスパイ稼働する際のコードネーム。主人公は〈WISE〉の中で随一と謳われるほど腕の立つスパイ。スパイとなった日に本名を捨てたが、その世界では〈黄昏〉のコードネームで知られており、難易度の高い任務もこなす。東国(オスタニア)の標的(ターゲット)とは?西国が危険視する、東の国家統一党総裁。西国が、「東西平和を脅かす危険人物」として注視しているのが、東国の国家統一党総裁であるドノバン・デズモンド。〈WISE〉はこの男の動向を探るべく、〈黄昏〉を動かす。イーデン校とは?標的と唯一接触できる、東国の名門校。バーリント市にあるエリート校。なかでも選り抜かれた優秀な生徒を“皇帝の学徒(インペリアル・スカラー)”と呼ぶ。選出されるには“星(ステラ)”と呼ばれる褒章の獲得が必須。©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会※『anan』2022年5月25日号より。(by anan編集部)
2022年05月21日ナンセンスでファンタジーな、あの漫画の世界を体感!『コジコジ万博』をご紹介します。さくらももこの漫画『コジコジ』は、宇宙生命体である主人公コジコジと、メルヘンの国の住人たちが繰り広げる日常を描いたナンセンスなギャグ作品。学校でのテストはいつも0点(時にはマイナスも)、空気を読んだり、忖度なども一切なし。向上心はない、悩まない、反省もしない。その一瞬一瞬を楽しく生きるおバカキャラクターのコジコジだけど、「遊んで食べて寝てるだけだよなんで悪いの?」「コジコジはコジコジだよ、生まれた時からずーっと。将来も」など、誰もがふと考えさせられる含蓄ある言葉や、メルヘンの国に広がるファンタジーの物語から、普遍性を感じられる名作だ。その作品の世界観を実世界で体感できる展覧会『コジコジ万博』が始まった。本展ではコジコジたちが暮らすメルヘンの国を再現したインスタレーションをはじめ、漫画やイラストの原画、オリジナル映像を通じて、個性的なキャラクターや名言、名場面を紹介。さくらももこが手がけた原画130点もが一堂に集結する。会場内は、にぎやかな万博をイメージ。巨大なコジコジが名言やギャグをしゃべる「ギャグ50連発」や名場面の原画を絵巻物のように展示する「原画で読む名場面8」、キャラクターたちが抱える心のモヤモヤで埋め尽くされたうず巻き状の廊下「モヤモヤトンネル」など、奇妙なパビリオン(展示)を巡りながら、コジコジや仲間たちと出会い、お話の奥深くへと入り込んでいく構成に。ラストには、テレビアニメのエンディング映像に入り込めるインスタレーションがお待ちかね。電気グルーヴの楽曲「ポケットカウボーイ」に合わせて、ミラーボールが輝くディスコ空間で盛り上がろう!なんて趣向も。また、アニメ制作スタジオ「ドワーフ」が本展のために制作したキュートなコマ撮りアニメーションや、漫画「ちびまる子ちゃん」のまる子とコジコジの交流紹介なども必見のコーナーだ。友情や恋、自分探しなど、仲間たちの悩みも、気ままなコジコジが笑いへと変えてゆく摩訶不思議な世界観。原作を知らない人も、この機会にまずは展覧会でぜひ体感してみて。漫画ではモノクロで描かれているメルヘンの国をカラーで楽しめる。《コジコジの住んでるメルヘンの国の全景》原画 漫画『コジコジ』第1話 コジコジはコジコジの巻 見開きイラスト、1994年12月号より ©さくらももこコジコジの名言も原画で見ると迫力あり。集英社りぼんマスコットコミックス新装再編版「コジコジ」1巻より ©さくらももこNHKキャラクター「どーもくん」などで知られるアニメ制作スタジオ「ドワーフ」によるかわいい仕草の新作コマ撮りアニメ「コジコジと次郎の不毛な会話」も上映。「コジコジと次郎の不毛な会話」©さくらももこ/dwarfCV:あおきさやか(コジコジ役)、高乃麗(次郎役)メルヘンの国の境界を越えやってくるちびまる子ちゃん。コジコジとまる子は旧知の仲。漫画『コジコジ』第29話 まるちゃん達がやってきたの巻 扉絵 原画1997年 ©さくらももこコジコジとは…さくらももこ作の計38話の漫画。1994年から『きみとぼく』(ソニー・マガジンズ)、『富士山』(新潮社)、『りぼん』(集英社)に掲載。アニメ(TBS)は脚本もさくらももこが手がけ、’97~’99年にかけて、全101話が放送された。『コジコジ万博』PLAY! MUSEUM東京都立川市緑町3‐1GREEN SPRINGS W3‐2F開催中~7月10日(日)10時~18時会期中無休一般1500円ほか※1時間毎の日時指定制を導入TEL:042・518・9625※『anan』2022年5月18日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2022年05月16日辻村深月さんによる原作小説『ハケンアニメ!』が、anan連載から10年を経てついに実写映画化!ここでは、スタジオえっじのプロデューサー・有科香屋子を演じる、尾野真千子さんのインタビューをお届けします。尾野真千子さん演じる有科香屋子は、スランプに陥り作品を作れずにいた王子千晴を口説き落とし、表舞台に引っ張り出したプロデューサー。「プロデューサー役でよかったと思いましたよ。みんなが絵を描いたりCGをやったり、手に職的ないろんな技術を芝居でやらなきゃいけない中、指示したり、謝ったりするだけですから。あっちだったら大変だったなと思って」そう言ってアハハと笑う。「香屋子が素敵なのは、スタッフを信頼してちゃんとその人たちに頭が下げられるところ。自分はプロデューサーという立場なわけだから、現場に対して『じゃあお願いね』くらいでもいいのかもしれない。でも、実際に手を動かす側からしたら、それってなんかちょっと腹立つじゃないですか。でも香屋子は、ちゃんとその人たちを信頼して尊敬の念を持っていて、だからこそ『お願いします』って深々と頭を下げられる。仕事相手に対して、ちゃんと敬意を持てるって素敵ですよね」しかも、ワガママな王子の気まぐれに振り回されながらも、彼の起用に懐疑的な上層部から監督を守る気概の持ち主でもある。「それはやっぱり、香屋子自身が王子に対して憧れを持っているっていうことが大きいんでしょうね。だからきっと、振り回されて当たり前、みたいな感覚もあったんじゃないですか。そういう人だとわかって仕事をお願いしているわけですし。ただ、あれだけやりたい放題やられたら、プロデューサーという立場では腹が立ったりするんですよ。それでも彼の作品に心酔しているからこそ、どうにかしたいと思う。王子を演じている(中村)倫也くん自身の、あの雰囲気というか、お芝居のせいもあると思います。何を思っての行動なのか、表情なのか、発言なのか、掴めないからこそ興味が湧く。そんな俳優さんですよね」そんな香屋子と王子には、ラストで驚きの展開が用意されている。「まー、シビれました。今回の撮影で、一番グッときたシーンといったらそこかな(笑)。ただそのとき私、お腹がとてもすいていて、結構シーンとしていた中での現場だったのに、尋常じゃないくらいお腹がぐぉーんって鳴ってめちゃめちゃ恥ずかしかったです」今回、尾野さんの登場シーンは、ほとんどが中村さんとの絡みだけれど、そんな中プライベートで香屋子と(斎藤)瞳が偶然鉢合わせるシーンが挟み込まれる。『リデル』のプロデューサーと『サバク』の監督。ハケンを争うライバル同士ながら、お互いの仕事に対するリスペクトを感じる、微笑ましい場面だ。「なぜかわからないけれど、瞳とのシーンは台本を読んだときからずっと気になっていたんですよね。1対1の場面だから、一見対決のようだけれど、お互いにリング外だから仕事のときに見せる顔と少し違う。そんな状況で、ふたりがちゃんと話をするところだからかもしれないです。撮影でも、とくに気合が入っていた気がします。吉岡(里帆)さんは、普段テレビや映画で見てイメージしていたより、フットワークの軽さというか、気づいたら近くにいるようなサバサバした雰囲気を持っていて。お芝居も素敵ですし、一緒にいて不思議な心地よさがある方でした」気取らず、壁を作らず、サバサバした…といえば、まさに尾野さん自身もそんな人では!?「私の場合、ズカズカ入っていって、気づいたらじゃなく、すでにいるってタイプですから。心地いい系じゃないやつです(笑)」自身のことをそんなふうに茶化してみせるが、今回の吉岡さんしかり、中村さんしかり、尾野さんを慕う共演者は多い。「それは声がデカいからじゃないですかね。いいことも悪いこともすぐに口に出しちゃうの。それも、みんなが聞こえる場所で。昔はもの静かでひと言もしゃべらない子だったのが、今はしゃべらずにいられない子になっていますし」そう変わっていったのは、ここまでのキャリアと立場の変化から。「自分が主役の現場なのに、今日は機嫌が悪いからしゃべりたくない、とか言ってられないじゃないですか。自分の機嫌の良し悪しを出すのは、プライベートの場だけでいいですよ。だって仕事だし、現場ではなるべく居心地いいようにって思っています。それは共演者とか周りとかじゃなく、自分が一番楽しくいるための方法なんですよね。ただ、現場でイラついたぶん、帰りの車の中では愚痴が止まらないってことはありますよ。それを聞くマネージャーは迷惑でしょうけど(笑)」尾野さんの仕事のモチベーションは、好きな気持ちとやりがい。「好きじゃなかったら無理だと思います。楽しくなかったら、そもそもやってなかったと思うし。ここまで続けてこられたのは、やりがい…つまり自分がやってきたことに対しての評価ですよね。もちろん、いい評価であれば嬉しいけれど、悪い評価だって、誰からも何も言われず、見てもらえてないのかもと思うより全然いい。その評価が、次の仕事のドアを開ける原動力になっている気がします」一時期、仕事を続けることに疑問を抱いたこともあったそう。「ちょうど20年やったときくらいかな。すでにテレビや映画に出させてもらえるようになった後で、評価もいただいていたんですけれど、何か壁にぶち当たったのか、この仕事をやっていていいんだろうかって思っちゃったんですよね。だから、事務所の人と話し合って、自主映画を作ってみたんです。自分のやりたいものを形にしたくて。いろんな場所に行って、いろんな人と出会って、カメラマンとか照明さんとかの仕事を身近で見たり話したりして。そのときに、自分がこの世界にいることをおごっていたというか、当たり前に思いすぎていたんだってハッとしたんです。人に何かをしてもらうことが当たり前になっていたことに気づいて、そこからちょっと気持ちが変わって。自分のペースでお仕事をさせてもらうようになって、また仕事が楽しくなったんですよね。なんでこの仕事が好きなのか、原点の気持ちに戻るって大事だなって思いました」最後にこの質問を。人生を変えた作品は何ですか?「全部です。毎回ね、変えてくれるの、いろんな意味で。気持ちが少し変わったり、洋服を変えてみたくなったり。そういうのって、この仕事をするうえで、すごく大事だと思っているんです。たしかに朝ドラっていうものは大きかったし、目に見えて仕事の量は変わったかもしれない。でも私の中では毎回、どんどん自分を変えられるから、毎回ワクワクが止まらない、みたいな感じなんです」映画『ハケンアニメ!』新人アニメ監督・斎藤瞳を吉岡里帆、彼女を振り回すプロデューサー・行城理を柄本佑、天才監督・王子千晴を中村倫也、王子に振り回されるプロデューサー・有科香屋子を尾野真千子が演じる。この2組、覇権を取るのはどっち!?監督/吉野耕平脚本/政池洋佑出演/吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子ほか5月20日より全国公開。©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会おの・まちこ1981年11月4日生まれ、奈良県出身。’97年の映画『萌の朱雀』でデビュー。吹き替えを担当した『ミニオンズフィーバー』が7月15日公開。映画『こちらあみ子』が7月に、『サバカンSABAKAN』が8月に公開予定。ワンピース¥49,500(RUMCHE/BRAND NEWS TEL:03・3797・3673)フラットシューズ¥26,400(CAMPER TEL:03・5412・1844)その他はスタイリスト私物※『anan』2022年5月18日号より。写真・MELON(TRON)スタイリスト・江森明日佳(BRUCKE)ヘア&メイク・山内聖子インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年05月16日辻村深月さんによる原作小説『ハケンアニメ!』が、ついに実写映画化。ここでは、トウケイ動画の敏腕プロデューサー・行城理を演じる、柄本 佑さんにお話を伺いました。主人公・斎藤瞳が監督を務める『サウンドバック 奏の石』のチーフプロデューサーである行城理は、瞳らクリエイター陣の想いや状況などおかまいなしに、宣伝サイドやスポンサーの事情を一方的に押し付けてくる存在。この役を演じた柄本佑さんは、あえて行城とアニメーターたちとの違いを意識したという。「現場からはちょっと離れたところにいる人みたいに見えたらいいなって思って、衣装合わせのときに、わりとスタイリッシュでおしゃれな感じにしたいと思ったんです。小道具とかも、普通の時計じゃなくスマートウォッチ、だったりね。こういう大勢の人が携わってる現場って、みんなが必死こいてやっているところに、綺麗な格好してちょっといいプリンか何かを差し入れに持って急に現れる人がいるんですよね。誰って特定のイメージはないけれど、スタジオの前の控室みたいなところで軽口を叩いたりして、気がつくといなくなっている…みたいな。我々現場の人間の間では、誰なんだろうねって話題になる。スーツでおしゃれ、重要人物っぽいのだけれど、どうも役割が掴めない…。そういう身近さのない人物像をイメージしました」熱い想いを制作にぶつける瞳たちとは対照的に、アニメをビジネスの視点で語る行城の姿はうさんくさく、冷徹に映ることも。「僕の出演シーンはほぼほぼ“対瞳”でしたから、撮影では、シンプルにいかにして吉岡(里帆)さんをムキーッと腹立たしくさせるかっていうところに注力して、手を緩めずにやった感じです(笑)。行城が無断で進めたカップラーメンとのコラボに怒った瞳が部屋を出ていこうとする場面で、僕が、王子(千晴)の過去の失踪にかけて『あなたも失踪ですか?』って止めるでもなく声をかける。あそこはもともと違うセリフだったんですが、本番前に何回かリハーサルをやってみて、それぐらい言っちゃった方がムカつくかなと思って。監督にそれを提案したら、『いいですね~、ムカつきますね』と喜んでくださり採用されました。じつは、そこまで監督とは行城というキャラクターについて話したりしていなかったのですが、そこで考えていた方向性は一緒だったんだなってはっきりして。でも行城の言ってることって、間違ってはいないんですよね。世の中って、情熱があれば届くみたいな甘いもんじゃない。それはその通りで、ぐうの音も出ない。セリフが自然に説得力を持たせられるように書かれていましたから、わりとしっかりハッタリかましてました。そうやって撮影を進める中でちょっとずつ人物像ができていった感じです」ただ、行城が瞳の才能を買っていて、彼女のアニメに向ける情熱を肯定的に見ているのは確か。「そうなんです。いろんなことを言っているけれど、瞳さんが声優さんの演技に納得できずに何テイクも粘る場面とか、意外に喜んでるんじゃないかと思うんですね。こんな骨のあるやつもいたのかって、行城自身も、熱くさせられているというか。誰に対しても態度は変わらない人ではあるんでしょうが(笑)、あえてムカつく言い方をするのは彼なりに鼓舞しようとしてのことなのかもしれません」劇中では、放送時間帯がバッティングすることになった『サバク』と『リデル』が覇権を争う様が描かれていく。「この作品に限らずですけれど、作品の評価って果たして視聴率だけかというとそうじゃないですよね。瞳にしろ王子にしろ、結局そこじゃないところを一番大事にしているわけで。あくまでも視聴率は結果論であって、クリエイティブって、現場で生身の人たちがいて作り上げるもので、やっぱり自分が納得できるものを作るってことが大事だと思うんです」仕事に対して、どんな信念やこだわりを持って向き合っていくかを問われるのがこの作品。柄本さん自身の俳優としてのこだわりとはなんだろう。「逆に、こだわりみたいなものを持たないということですかね、僕としては。役者という何百年も歴史があって、何万人もいる中で、これっていう正解なんてわかるわけないんです。毎回、同じ作品も同じ役もないわけで、現場が始まってみるまで自分の役がどうなるかすらわからない。経験なんてなんの肥やしにもなんねーぞってことなんです。でも、いかんせん長く続けていると、現場の進め方とかを多少知っているものだから、わかったつもりになっちゃうことがあって、それが危ない。だから僕は、毎回現場に入るときには、できるだけ経験値もこだわりも持たずに、何もないところから、この現場での最適解をみんなで探していきたいと思っています」近年、自らが監督で自主映画も撮っているが、チームを指揮する立場として大事にしているのは「嘘をつかないこと」だとか。「目の前で行われたことに対して、何か違和感を覚えたら、その違和感に対して正直に、っていうことくらいですね。それは役者をやっているときも、そんなに変わらないかもしれないですけど」仕事を始める前から映画を観るのが大好きで、大好きな映画が作られている現場を見てみたいという好奇心で、俳優という世界に足を踏み入れた柄本さん。“好きを、つらぬけ。”は今作のキャッチコピーであるが、好きな気持ちが仕事への原動力になるのと同時に、仕事になれば、当初抱いていた好きな気持ちを持続することが難しいと感じることはないだろうか。「だから、っていうのもなんですが、僕の中で一番大事にしているのは、映画を映画館で観るっていうことかなと思います。どちらかというと、出るより観ることの方が仕事という意識が強いかもしれない。もちろん俳優が仕事ですけれど、いまだに自分の根本にあるのは、映画が好きで映画作りの仲間入りがしたかったっていう想い。その地盤が、今もこの仕事を続けさせてくれている気もするので、それをなおざりにするわけにはいかない。もちろん結婚して子供ができてっていう中で、漠然と役者さんっていう仕事を一生の仕事にしていくんだろうとは思いましたけれど、だからこそ、より“映画館で映画を観る自分”を大事にするようになった気がします」そんな柄本さんにとって人生を変えてくれた作品とは、デビュー作の映画『美しい夏キリシマ』。「あれがなければ、今自分がこうして出役をやっているかどうかもわからない。それはもう明確に。あの2か月間の撮影期間に映画作りに取り憑かれてしまったんですよね。あの作品のおかげであり、あの作品のせいでもある。むしろこっちをサボっちゃマズいという意識でいます」映画『ハケンアニメ!』新人アニメ監督・斎藤瞳を吉岡里帆、彼女を振り回すプロデューサー・行城理を柄本佑、天才監督・王子千晴を中村倫也、王子に振り回されるプロデューサー・有科香屋子を尾野真千子が演じる。この2組、覇権を取るのはどっち!?監督/吉野耕平脚本/政池洋佑出演/吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子ほか5月20日より全国公開。©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会えもと・たすく1986年12月16日生まれ、東京都出身。2003年にデビュー。声優参加した『犬王』が5月28日公開。来年の『シン・仮面ライダー』など公開予定作多数。6月には主演ドラマ『空白を満たしなさい』(NHK)も控える。ジャケット¥359,700タートルネックニット¥136,400(共にメゾン マルジェラ/マルジェラ ジャパンクライアントサービス TEL:0800・000・0261)その他はスタイリスト私物※『anan』2022年5月18日号より。写真・MELON(TRON)スタイリスト・林 道雄ヘア&メイク・星野加奈子インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年05月16日辻村深月さんによる原作小説『ハケンアニメ!』が、ついに実写映画化。ここでは、大手スタジオ・トウケイ動画、シリーズアニメの監督に抜擢された新人・斎藤瞳を演じる吉岡里帆さんと、デビュー作『光のヨスガ』が驚異的なヒットとなった伝説のアニメ監督・王子千晴を演じる中村倫也さんの対談をお届け!――昨年の劇団新感線の舞台『狐晴明九尾狩』でも共演していたおふたりですが、じつはこの映画の撮影が初対面だったとか。中村倫也:初めて会ったとき、ものすごい壁を感じましたよ。まあ、初対面なのにイエーイってノリでいっちゃったせいもあるけど。吉岡里帆:びっくりして、めちゃくちゃ警戒しちゃいました(笑)。中村:あそこで、デリカシーがないやつだと思われたみたいで…。吉岡:デリカシーがないとは思ってないですけどね。中村:でも、女性の危機察知能力でアラート鳴ってたでしょ?吉岡:完全にアラートは鳴ってました。まさかこんなに面白い方だとは思ってなかったので。単純に…セクシーすぎて怖いみたいなことってあるじゃないですか。中村:何言ってんだ?絶対に今、思ってないこと言ったでしょ。――中村さんは吉岡さんにどういう印象を持たれたんですか?中村:真面目で一生懸命頑張る子。吉岡:その通りです(笑)。中村:あと“どんぎつね”。吉岡:それも間違いじゃないです。――映画と舞台を経て、お互いの印象は変わりました?吉岡:変わりました。面白い方だなって。どこまでがふざけていて、どこまでが真面目なのか、境界線がわからないんですけど。あと単純に、舞台のときの座長っぷりが本当に素晴らしかったんです。冗談めかしているけれど、じつは一番真面目な方なんじゃないかと。中村:(おどけて)そうなんだよね。根が真面目なんだよね~。吉岡:(笑)。でも本当にとても気配りされるというか、カンパニー全体が楽しくやれるように皆さんに接していらして、そういう現場の向き合い方がとてもいいなあと。中村:俺の場合、里帆ちゃんに当初抱いたイメージはその通りだけど、ちょっと天然な面もあるんだなってのが見えてきたというか。真面目すぎるから全部を抱え込もうとするんだけど、それが追いつかなくなったときの里帆ちゃんの開き直りが結構好き(笑)。吉岡:いろいろ見せたくないところも、目撃されちゃっていますから…。中村:それを俺は横から見て、ニコニコしてました。――たとえばどんな場面でですか。吉岡:たぶん、新感線の稽古場でのことですよね。いのうえ(ひでのり)さんの演出があまりに緻密で、繰り返し同じ場面を稽古するので、どっかでパーンって頭がスパークしちゃったんです。中村:そのときの里帆ちゃんて、すごいわかりやすく、プレーヤーでいうところのチャプター飛ばしボタンを押してる状態になるんですよ。今、心の中で連打してるなって思いながら見てた(笑)。吉岡:めちゃめちゃ恥ずかしくて嫌なんですけど、それ(笑)。中村:でも、そういう無意識の状態が面白いんだよね。舞台でご一緒したときは、何かその魅力をうまいこと板の上に出せたらいいなって考えてましたね。――今お話を聞いていても、おふたりとも役柄と似ているな、と。吉岡:瞳って、感情を溜め込んで溜め込んで、周りの人たちからの刺激があって初めて爆発させるみたいなキャラクターかなと思うんですけど、そこは似ているかもしれません。ひとりでやっているときは冷静で理想が高くて…。でも、モノづくりってそんな簡単なものじゃなく、王子とか行城(理)にいろいろ言われて瞳が感情を出す場面とか、めちゃめちゃ自然にお芝居できました。中村さんと初対面のときに警戒心を感じたのは、何か一種の…劇中で瞳が王子に抱く強い憧れの気持ちからくる畏怖みたいなものだったのかなと。そういう存在と対峙したときに、瞳の本質的なものがバーンって出てきた。それは中村さんとだったから出てきたんだと思います。――まさにおふたりが直接対峙するシーンがそんな感じでした。吉岡:そうなんです!中村:あのシーン、めちゃくちゃいいシーンになってたよね。吉岡:王子がわざと瞳を挑発するような態度をとるんですけど、その表情とかを見ていたらクッソーみたいな気持ちになりましたもん。中村さんと一緒だと、そういうのしょっちゅうです。中村:それは普段ってこと?吉岡:普段もです!なんか私がムキーッてなるような言い方してくることありません?中村:(大爆笑)吉岡:私が悔しがるポイントがわかりすぎてて…。――戦略ですか?中村:いやいや自分ではわかんないです。芝居は全部わざとですが。吉岡:あれは天然だと思います。天然じゃなかったら…ちょっともう、勘弁してください(笑)。中村:でも王子と瞳のシーン、里帆ちゃん、泣いてましたよね。吉岡:泣く気は全然なかったんですけど、幼い頃からシビアな現実を突きつけられて育ってきた瞳は、大人になって王子の作品に出合って、救われたっていう想いがあるんですよね。そういうバックボーンを背負った瞳として、あれを作った人が目の前にいるって考えたら、震えが止まらなくなって…。中村:フフフ…(笑)。吉岡:中村さんって、人柄もだし、不思議な魅力というか引力があるんですよね。その中村さんが王子を演じたからこそ、瞳が我慢して抑えてきたものの蓋が開いたのかな、みたいな感覚がありました。中村:あのシーンをやってるときは、自分はそこまで具体的にわかってなくて。予感はあったんだけど、出来上がったものを見て、このシーン、想像を超えてきたなと思った。王子も瞳も、自分の内側からのプレッシャーと外からかけられる圧力と、いろんな負荷を感じながらあの場にいるんだよね。そんな中で瞳が、抱えていたものを吐き出してアウトオブコントロールになってく様を前にして、それまでカリスマ然としていた王子のいろんなものがほぐれて、彼自身もアウトオブコントロールになっていく。互いが互いに影響されて起こった反応だから、予想できないシーンになっていて、なんかお芝居を超えて、そこにちゃんと生きてる人間がいるなって思えて、すごくいいシーンだなと。吉岡:ですね。中村:ただ王子も瞳も、もう少し社会性は身につけた方がいい。吉岡:私も、もうちょっとうまく立ち回ろうよ、って思ってました(笑)。中村:でも、監督の吉野さんもわりとそういう人だし、世の監督っていう人はああなのかもしれない。吉岡:吉野さん、不器用ですもんね。瞳は、かなり吉野さんエッセンスが強めなので、もうこれは吉野さんそのものだ、って思っていました(笑)。中村:そうそうそう。吉野さんが思うクリエイター像って、たぶんああいう感じなんだろうね。映画『ハケンアニメ!』新人アニメ監督・斎藤瞳を吉岡里帆、彼女を振り回すプロデューサー・行城理を柄本佑、天才監督・王子千晴を中村倫也、王子に振り回されるプロデューサー・有科香屋子を尾野真千子が演じる。この2組、覇権を取るのはどっち!?監督/吉野耕平脚本/政池洋佑出演/吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子ほか5月20日より全国公開。©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会よしおか・りほ1993年1月15日生まれ、京都府出身。現在、出演する蜷川実花監督の映画『ホリックxxxHOLiC』が公開中。7月にはパルコ劇場にて、初の単独主演を務める舞台『スルメが丘は花の匂い』も控えている。ドレス¥59,400パンツ¥61,600(共にMM6 Maison Margiela/マルジェラ ジャパン クライアントサービス TEL:0800・000・0261)なかむら・ともや1986年12月24日生まれ、東京都出身。2014年の舞台『ヒストリーボーイズ』で読売演劇大賞優秀男優賞受賞。10月には、主演ミュージカル『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』が控えている。シャツ¥66,000(ラキネス/アルファ PR TEL:03・5413・3546)中に着たシャツ¥34,100(アンデコレイテッド/アンデコレイテッド TEL:03・3794・4037)パンツ¥28,600(デザインワークス/デザインワークス 銀座 TEL:03・3573・6210)シューズ¥39,600(フット・ザ・コーチャー/ギャラリー・オブ・オーセンティック TEL:03・5808・7515)ソックスはスタイリスト私物※『anan』2022年5月18日号より。写真・MELON(TRON)スタイリスト・Maki Maruko(吉岡さん)小林 新(UM/中村さん)ヘア&メイク・北原 果(KiKi. inc/吉岡さん)Emiy(中村さん)文・望月リサ(by anan編集部)
2022年05月15日辻村深月さんによる原作小説『ハケンアニメ!』が、anan連載から10年を経て、ついに実写映画化。ここでは、デビュー作『光のヨスガ』が驚異的なヒットとなった伝説のアニメ監督・王子千晴を演じる、中村倫也さんにお話を伺いました。主人公・斎藤瞳の人生を大きく変えたアニメーション作品『光のヨスガ』の生みの親であるアニメ監督・王子千晴。この作品で鮮烈なデビューを果たし天才と謳われるも、作品への強いこだわりと突拍子もない言動で周りを振り回す。吉野耕平監督が、このキャラクターにぴったりと白羽の矢を立てたのが中村倫也さん。「僕はあんなに面倒くさくないですけどね」。そう言って、少し含みを持たせたような笑顔を向けた。「王子は、もともとの性格として人を振り回す天然な一面がありつつも、どこかで世間が自分に期待していることへのアンテナも持っている気がするんですよね。どこまで彼が需要を理解して天才然として振る舞っているのか、そのバランスは自分の中で決めずに演じていました。ただ、1作目を経ている王子と、まだ1作目を制作中の瞳とではメディアへの対応の仕方やいろんな面で差はあるだろうから、ふたりの場面では、そこの対比は意識して演じてましたね」本作自体は、アニメ業界で奮闘する人々が描かれた映画。しかし、明確な正解のないモノづくりの世界において、個々がこだわりとプライドを持ち仕事に臨む姿を、自身の環境と重ねて見たと話す。「ここに出ている人たちの持っている感覚とか感情っていうのは、僕も通過してきたことだったり、今もリアルタイムで感じたりしているもの。だから、すごく近い自分ごとのように感じて見ていました。クリエイティブの世界にいる人なら、誰しも共感する部分が多い作品だと思います。でも、こういう業界だけじゃなく、たとえば仕事でも部活でも受験でも、何か形のない目指すものがあって、それを達成するために頑張っている人であれば、この作品に励まされる部分がある気がします。僕自身が見ていてウルッときたのは、さまざまな場面で、誰かが自分のこだわりを発動したとき、それを実現させるためにサポートしてくれたり、一緒に組んで走ってくれたりする人がいるところ。チームっていいなって思ったんですよね。その、人の繋がりみたいなものも、見どころだと思います」そう伺ったら聞いてみたいのは、中村さんの俳優としての矜持。「僕らは監督からOKを出される側なんで、出されなかったらしんどいですけれど、自分としてはやるだけやるっていうだけですよ」とはいえ、舞台になれば、演出家という存在がいるとはいえ、あるところでその手を離れて俳優たちに委ねられるもの。「たしかに、舞台は演出家がいろいろ決めてくれたり整えてくれたりはしますけど、いざ本番が始まれば俳優次第。幕が開いてもなお、それぞれが勝手に芝居を上へ上へと伸ばそうとして、千秋楽が終わってもまだ反省しているくらいの探究心とか向上心みたいなものがある人たちが揃うと、いい作品が作れますよね。自分もわりと、放っておいてもそういうことをしているタイプではあります。モノづくりにおいての正解って、やる人や受け取り手の数だけあると思うんですよ。そういうものだし、そこがいいとも思うし。ただ、確実に不正解っていうのはあって、その不正解を踏まなければOK。そう考えると、OKラインは低い世界なのかもしれないですよね」それは演じた王子も同じ。「若く才能があるクリエイターが出てきて、自分の手がけた作品の裏で彼女が監督するサバクが放送されるわけです。視聴率のこともあるし、王子としては瞳は意識せざるを得ない存在ではあったと思います。ただ、サバクをシンプルに褒めていたりもして、すごくスポーツマンシップがあるっていうかフェアな人でもある。つまるところ、王子自身もずっと自分と向き合っているんです。クリエイティブって、誰かと比べてもしょうがない世界だからこそ、どれだけ上を目指してチャレンジしていくかは自分次第ですよね」同じ作品でも見る人によって、受け取り方が違うのがエンターテインメントの難しく厳しいところ。「でも、見た人それぞれがいろんなことを想像できた方が楽しい作品も多いじゃないですか。そういう場合は、あえて自分も何も決めずにやるってことありますしね」そんな中村さんに質問。どうしてこの業界に入ったんですか?「高1のときに知り合いから誘われて、養成所に入ったのが入り口なんです。当時、やっていたサッカーをやめて暇だったのと、映画が好きだったのもあって、これもご縁かなと思って。あと単純に、ちやほやされるかなと(笑)。ただ、そう思うようにはうまくいかないですよね。どんな仕事もですけれど、最初からやりたいことがやれるわけじゃないし、望むものが手に入るわけじゃないし。そういうのを経て、ちゃんと売れなきゃって思ったのは25歳くらいですかね。腐ってクズ人間になりかけたんですけど、この状況を変えるにはやるしかないなって気持ちを切り替えて今、って感じです」そして“人生を変えた作品”と出合う。それが’14年の初主演舞台『ヒストリーボーイズ』だ。「これでうんともすんともいかなかったら役者を辞めようって思ってたんですよね。そしたら観てくれた人たちがよかったって言ってくれた。自分自身も、小川絵梨子という演出家や、あのチームのみんなと舞台を作っていく中で、これまで知らなかった扉に手を触れられたような気がして。もうちょっと続けようかなって思って、今に至っている。そういう意味で、この舞台は自分にとってはとても意味のある作品でしたね」映画『ハケンアニメ!』新人アニメ監督・斎藤瞳を吉岡里帆、彼女を振り回すプロデューサー・行城理を柄本佑、天才監督・王子千晴を中村倫也、王子に振り回されるプロデューサー・有科香屋子を尾野真千子が演じる。この2組、覇権を取るのはどっち!?監督/吉野耕平脚本/政池洋佑出演/吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子ほか5月20日より全国公開。©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会なかむら・ともや1986年12月24日生まれ、東京都出身。2014年の舞台『ヒストリーボーイズ』で読売演劇大賞優秀男優賞受賞。10月には、主演ミュージカル『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』が控えている。シャツ¥66,000(ラキネス/アルファ PR TEL:03・5413・3546)中に着たシャツ¥34,100(アンデコレイテッド/アンデコレイテッド TEL:03・3794・4037)パンツ¥28,600(デザインワークス/デザインワークス 銀座 TEL:03・3573・6210)シューズ¥39,600(フット・ザ・コーチャー/ギャラリー・オブ・オーセンティック TEL:03・5808・7515)ソックスはスタイリスト私物※『anan』2022年5月18日号より。写真・MELON(TRON)スタイリスト・小林 新(UM)ヘア&メイク・Emiy文・望月リサ(by anan編集部)
2022年05月15日辻村深月さんによる原作小説「ハケンアニメ!」が、ananで連載をスタートしたのが、2012年の10月。それから約10年の時を経て、作者をして、「小説映像化の覇権を取れる!」とまで言わしめた、最高の実写映画ができました!ここでは、大手スタジオ・トウケイ動画の、シリーズアニメの監督に抜擢された新人・斎藤瞳を演じる、吉岡里帆さんのインタビューをお届けします。幼少期の辛い記憶から、将来に希望を持てずに生きてきた斎藤瞳。その瞳が、ある日何気なく目にしたアニメ『光のヨスガ』に衝撃を受け、いつか自分もそんな作品を作りたいとアニメ監督の道を選ぶ。映画『ハケンアニメ!』で主人公の瞳を演じているのが吉岡里帆さん。「瞳は彼女のバックボーンが創作へのエネルギーになっているので、過去にどういうことがあったのかとか、ここに至るまでにどういう想いを重ねてきたのかというような見えない部分が大事だなと思いました。原作の辻村(深月)さんの小説は綿密な取材を元に描かれていて、それがとても役作りのヒントになったんです。アニメができるまでにどんな過程があって、どんな人たちが働いていて、その仕事の何が大切で、監督業がどういうことを求められているのかということも描かれていて、原作に背中を押されることも多くて。あと、瞳はひとりでいるとわりと無機質というか、自分の世界に入り込んでしまう人なんですよね。その彼女が、周りのエネルギッシュな人たちから力をもらい変化していく。そういう共演の方がたとのお芝居の中で生まれる反応を大事にしていました」その中でも最も大きく反応するのが、人生を変えた『光のヨスガ』の監督である王子千晴だ。「瞳にとっての神様ですから、最初に王子を演じる中村倫也さんに会ったとき、うまく会話ができなかったんです。あまりに王子然としているから、ずっと緊張していたし。なのにご本人は、気にせず他愛もない話をしてこられるから感情が追いつかない…みたいな」吉岡さんには、瞳にとっての王子のように強く影響を受けた存在はいるのだろうか。「毎現場毎現場、そういう人だらけの世界なので、いつも身の引き締まる思いです」劇中、県庁勤めからアニメ業界に転職してきた瞳に投げかけられる言葉がある。「どうしてこの業界に入ったんですか?」という問いを吉岡さんにぶつけてみる。「もともと京都の太秦の近くに住んでいたこともあり、撮影所でエキストラが足りないから来てほしいと頼まれて、アルバイトに行ったことがあったんですね。そのとき、こんなに大勢の人で一瞬のシーンを撮っているということに衝撃を受けて、すっごくドキドキと感動が止まらなくなってしまいました。あれは完全に恋に近いトキメキだったと思います。それで、養成所に通ったり小劇場の舞台に出たり、仲間と一緒に映画を撮ったりするうちにプロの世界に入った感じです」そうやって好きなものに夢中になっている最中に、俳優の道へと人生を大きく決定づけるような作品に出合う。「エキストラで知り合った友達が出てるからとチケットをもらって、つかこうへいさんの作品を上演している学生劇団の舞台を観に行ったんです。そこで上演されていた『蒲田行進曲』と『銀ちゃんが逝く』が本当に衝撃的で、あれが本格的に演劇やお芝居に興味を持ったきっかけだったので、人生を変えてくれた作品というと、それかもしれません。自分のプロフィール写真を撮影した瞬間から、俳優としてちゃんと誇りを持ってやろうと心に決めていたんです。ただ、これを糧に生きていこうという覚悟をちゃんと持てたのは、朝ドラ(『あさが来た』)に出られたことが大きいです。それまでは、家族も友達も本当に私が俳優でやっていくなんてあまり信じていなくて、どこかで諦めて辞めるだろうって思っていたと思います。でも朝ドラに出演したら反応が変わったんですよね(笑)。本当に俳優をやっていきたいのね、と」取材の中で発せられる言葉の数々から見えてくるのは、吉岡さんの高いプロ意識だ。「撮影現場で見せる芝居ももちろんですが、その前段階も含めて、私は仕事だと思っています。出演が決まってから本番までの間に、どれくらい準備して、どれだけ熱量を持って臨んだかが、自分の中では大事なことなんです。作品や役のために費やした時間は、必ず作品として昇華されることを、この仕事を何年もやってきてわかっているからこそ、やれるところまでやってみようって気持ちになるんですよね」そんな吉岡さんだからこそ、自分の仕事に対して強いこだわりを持ち、いい作品にするために時間も労力も惜しまず情熱を捧げる『ハケンアニメ!』の登場人物たちの姿は、深く心に刺さったよう。「働くってベースが大変なことじゃないですか。この作品には、自身の喜びだったり、業界に貢献したいというエネルギーを持って働いている人たちがたくさん出てきます。損得勘定なく、ただ面白いものを作るために働く姿を、シンプルにかっこいいと思いました。何よりグッときたのは、ひとりでは難しいことも、ひとりひとりの才能を少しずつ集約させることで実現できて、とんでもないものが完成して、それがちゃんとたくさんの人の元に届くっていう現実。そこに感動したし、今自分が仕事をしている理由もまさにそれなんですよね。だからこそ、この作品に出演できてよかったし、この映画が世に送り出されてよかったなと思います」映画『ハケンアニメ!』新人アニメ監督・斎藤瞳を吉岡里帆、彼女を振り回すプロデューサー・行城理を柄本佑、天才監督・王子千晴を中村倫也、王子に振り回されるプロデューサー・有科香屋子を尾野真千子が演じる。この2組、覇権を取るのはどっち!?監督/吉野耕平脚本/政池洋佑出演/吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子ほか5月20日より全国公開。©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会よしおか・りほ1993年1月15日生まれ、京都府出身。現在、出演する蜷川実花監督の映画『ホリックxxxHOLiC』が公開中。7月にはパルコ劇場にて、初の単独主演を務める舞台『スルメが丘は花の匂い』も控えている。ドレス¥59,400パンツ¥61,600(共にMM6 Maison Margiela/マルジェラ ジャパン クライアントサービス TEL:0800・000・0261)※『anan』2022年5月18日号より。写真・MELON(TRON)スタイリスト・Maki Marukoヘア&メイク・北原 果(KiKi. inc)文・望月リサ(by anan編集部)
2022年05月15日今から11年前にテレビ放送され人気を呼んだアニメ『輪(まわ)るピングドラム』が劇場版になって帰ってきた。高倉冠葉(かんば)を演じた木村昴さんにとって『輪るピングドラム』は声優としての転機となった作品だそう。――『輪るピングドラム』の放送から10年が経ち、このたび劇場版が上映されます。この作品は木村さんにとってどんな作品ですか?2005年に声優デビューして以来、初めてジャイアン以外を演じたのがこの『輪るピングドラム』の高倉冠葉だったんですよ。僕はひょんなことから声優になったので、スキルはゼロ。そんな状態で長い歴史を持つ『ドラえもん』という作品のジャイアンを演じることになり、最初の頃はとにかくジャイアンをやるためだけに頭を使ってたんですよね。そういう6年間を過ごしていたので、良く言えばジャイアンになりきってるし、悪く言えばジャイアンでしかない。そんな時、『輪るピングドラム』のオーディションで、幾原監督に「君ほどへたくそな人に会ったことがない」と言われまして。でも、いい声をしてると。「芝居は練習すればできるとして、お兄ちゃん役はできる?」と聞かれて「できます!」と即答したら、高倉冠葉役に決まって、それから、1話のアフレコまでの3か月間、毎日のように幾原監督が練習に付き合ってくれました。今でこそいろんなキャラクターを演じさせていただくようになりましたけど、そのルーツが『輪るピングドラム』であり、僕の原点ですね。――11年前のご自身の声を聞いてみていかがでしたか?若いなと思いました。年齢的なものだけじゃなくて、まだ何もできなかった頃の自分を振り返っている感覚なんですよ。いま聞くと粗いんだけどすごく一生懸命で、卒業アルバムを見ている気分になりましたね。今回の劇場版は、テレビアニメシリーズを知ってる人が観たらびっくりすると思いますよ。おいしいとこ取りのダイジェストにしちゃうとストーリーがつまらなくなるし、ストーリーを重視すると作品の魅力がなくなっちゃう、というところで考えに考えて今回のシナリオを作ったと監督もおっしゃってましたね。だから総集編というより新しく織り直されてリサイクルされた感じです。原料は全部もとのままなんだけど、監督が新しいものに生み直した作品になってます。そういう理由で新録パートもあったんですけど、監督からは「ダメだよ、そんな上手にやっちゃ!」ってダメ出しされました(笑)。「もっとへたくそだったでしょう、この時は」って。はたから見ると監督の要求に応えられてない力不足の声優なんですけど、僕にはずっと褒め言葉に聞こえてて。「うまくなったな」と言われてる気がして、泣きそうになりましたね。与えられた役割だから、大事にしたいと思いました。――木村さんが声優になったきっかけは何ですか?『ドラえもん』のオーディションがあるということで、当時子役の事務所にいたんですけど、社長にお願いしてそのオーディションを受けさせてもらったんです。子役として現場に行くといろんな芸能人に会うじゃないですか。当時はそれを友達に自慢してちやほやされるのが至福だったので、誰もが知ってる『ドラえもん』のオーディションを受けたぜ!って言いたいだけの、いわば記念受験のつもりだったんですよね。それが思いがけず合格してしまったので、そこから人生が激変しました。僕はそれまでアニメもほとんど見たことがなかったし、漫画も児童館に置いてあった『ドラえもん』を読んだことがあるくらい。声優さんで知ってたのは、僕も子役として出ていた『おはスタ』のやまちゃん(山寺宏一さん)だけでした。それに当時はミュージカルにハマっていて、自分はミュージカル俳優になるんだとばかり思っていたし、同時期にラップミュージックにもハマっていたので、ラッパーとミュージカル俳優を目指していたんです。でも、ジャイアン役をいただいたことで、それをいったん全部諦めないといけなくなったんですよね。しかも、しばらく辛抱すればいいというものでもないですし。今まで目指していたものを全部捨てて、これからはやらなきゃいけないことに人生を捧げないといけないというプレッシャーはすごく感じてましたね。――今のように声優をやりながら夢を目指すということは当時は考えていなかったんですね。ジャイアン役って、当時の僕からしたら二足のわらじでできるようなものではなかったんですよ。学業とジャイアンで精一杯、自分のすべてをジャイアンだと思って挑まないと無理だったんですよね。それに、作品に泥を塗るようなことがあってはいけないから、これから自分は同級生たちが経験するであろう甘酸っぱい青春を味わうこともないんだな、とも思いました(笑)。うまく隠し通せる器用な人ならできたのかもしれないけど、僕は少しでも自分の中に引け目があったらジャイアン役をピュアにできなくなると思ったし、本当に全身全霊でジャイアンになろうとしたんですよね。――そこまで大きなプレッシャーがありながら、辞退しようと思ったことはなかったんですか?そんな選択肢はなかったですね。これは僕が子役出身だからなのかもしれないですけど、自分から「できません」と言う選択肢は、僕にはまったくありませんでした。それに、あらためて考えたらこの道は同級生たちには絶対に味わえない、もしかしたら地球で自分だけしか味わえない青春だなって思ったら胸アツだし、じゃあがんばろうって思いました。だからやりたくもないことをやらされていたということでは全然なくて、いざ覚悟が決まってからは、『ドラえもん』という作品を後世にきれいに残すという役割を与えられたと思って、それを全うしようという使命感がありました。与えられた役割なのだから、大事にしなきゃという感じでした。きむら・すばる1990年6月29日生まれ、ドイツ出身。2005年、中学生当時にアニメ『ドラえもん』のジャイアン役に抜擢され、声優デビュー。『ヒプノシスマイク』では山田一郎役の他、好良瓶太郎名義で作詞も担当。天才劇団バカバッカ主宰、『おはスタ』(テレビ東京系)MCや大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)の以仁王役など、幅広く活躍中。双子の高倉冠葉と晶馬、妹の陽毬はきょうだい3人暮らし。ある日、陽毬は病に倒れ…。妹を助けるため、兄弟は「ピングドラム」を手に入れようとする。テレビ放送から11年、幾原邦彦監督が手掛けたアニメが再編集され、新録パートを加えて映画化。劇場版『RE:cycle of the PENGUINDRUM[前編]君の列車は生存戦略』は4月29日より全国公開。※『anan』2022年4月27日号より。写真・玉村敬太スタイリスト・高山良昭ヘア&メイク・原田琴実インタビュー、文・尹 秀姫(by anan編集部)
2022年04月22日1992年にアニメ放送がスタートして以来、長年にわたって国民的な人気を誇る『クレヨンしんちゃん』。記念すべき30周年を飾る劇場版最新作『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』では、忍者の里を舞台に、しんのすけの出生にまつわる“真実”に迫っています。そこで、ゲスト声優を務めたこちらの方にお話をうかがってきました。川栄李奈さん【映画、ときどき私】 vol. 472女優として目覚ましい活躍をみせる川栄さんが演じたのは、「自分こそがしんのすけの本当の母親だ」と名乗り現れる、くノ一(くのいち)の屁祖隠(へそがくれ)ちよめ。今回は、作品の見どころだけでなく、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』でヒロインを務め終えたばかりの心境や次に掲げる夢などについても、語っていただきました。―まずは、ちよめというキャラクターに対して、どのような印象を抱きましたか?川栄さん最初は、くノ一で妊婦という設定なのにアクションシーンがあることに驚きました。活発な妊婦さんで、なんて面白いんだろうと。しかも、芯の強いところもあるので、カッコイイお母さんだなと思いました。―ご自身と似ているところなどもあったのでしょうか。川栄さん女性としての強さみたいなところは共感できましたし、みさえがちよめに対して「あなたもお母さんでしょ?」と投げかけるシーンでは、すごくジーンときました。『クレヨンしんちゃん』の魅力は、子どもだけでなく、大人も感動できるところ。今回も、野原家を見ていて、当たり前の暮らしができることは素晴らしいことで、すごく幸せなことなんだと感じました。しんちゃんは、つねに身近にいた存在―小さいときからずっとアニメを見ていたそうですが、『クレヨンしんちゃん』との思い出と言えば?川栄さん幼少期から金曜日の夜は『クレヨンしんちゃん』と『ドラえもん』はセットで見ていた家庭だったので、朝のニュース番組のように、自分にとってはつねに身近にあるものでした。ちょっとお下品なギャグとかもあるので、あまり見せたくないという親御さんもいるようですが、そんなことも知らず、みんな見ていると思っていたほど。「見ちゃいけない」と言われている友達がいたのを知ったときは、びっくりしました。―となると、しんちゃんから受けていた影響もかなりあったのでは……。川栄さん「おしりブリブリ」とかはよくしていましたね(笑)。でも、それもみんなしていると思っていたくらいですから。―しんちゃんの真似をして、ご両親に怒られることはなかったですか?川栄さんそれよりも、笑っていましたね。なので、家族のコミュニケーション方法のひとつというか、みんなが微笑ましくなる瞬間でした。―いままでも声優のお仕事は非常に緊張されているそうですが、自分が大好きなアニメに参加することになってプレッシャーもあったのでは?川栄さんそうですね。特に、声優は本職ではないので、「自分が出てる!やったー!」みたいな気持ちよりは、「自分の声で大丈夫かな?」という不安のほうが大きかったです。いい意味で変わることなく、素で生きている―そんななかでも、ご自身なりに工夫されたこともあったと思いますが。川栄さんたとえば、初めのほうはちよめがシリアスな問題を抱えているので、トーンを暗めにしています。そのあと、最後に向けて少しずつ明るくしているのですが、子どもたちと話すときだけは寄り添うような優しい声を意識しました。声優のお仕事をやらせていただけるのは本当に貴重なことなので毎回噛みしめながら収録をしていますし、声優のみなさんのいいところを盗めたらと。そうやっていくうちに、自分の声にも自信を持てるようになったらいいなと考えています。―ちなみに、同じくゲスト声優であるハライチさんとは何かお話されましたか?川栄さんイベントや取材でお会いしただけなので、あまりお話はできませんでしたが、おふたりは本人役で出られるのでうらやましいです。というのも、誰もが知っている方でないとできないことだと思うので。改めてハライチさんのすごさを感じました。―ということは、川栄さんも本人役で出たいと?川栄さん本人役もいつかはやってみたいですね。でも、その前にビッグにならないといけないですが(笑)。―そういう意味では、朝ドラのヒロインを務められたことも次のステージに上がったきっかけになったと思いますが、心境に変化などはありますか?川栄さん私も朝ドラに出たら変わるんだろうと思っていたんですが、意外とあまりそういうこともなく、何も変わらずに素のままで生きています。なので、いい意味で特に変わったことはないですね。今後の作品がモチベーションになっている―大きな夢を叶えたあと、次の目標があれば、教えてください。川栄さんずっと抱いている夢は、映画で賞を獲ること。映画のほうがドラマよりも出演本数が少ないので、これからはもっと映画にもたくさん出たいです。お芝居がすごく好きなので、今後の作品がいつもモチベーションになっていますし、それを楽しみに生きています。―朝ドラではかなり英語も勉強されたということなので、今後は英語を使ったお仕事も考えているのでは?川栄さん実は、英語の勉強は一旦やめてしまったんです(笑)。というのも、私は何か目標がないとできないタイプなので……。しかも、英語ができる方からも「そんなにすぐに話せるようにはならないよ」と言われてしまい、やっぱり日々の積み重ねが大事なんだなと感じています。でも、ご縁があってまた英語を使えたらいいですね。英語を使う役がきたらがんばります!―毎日かなりお忙しいと思いますが、オンオフの切り替えなどは意識的にされているのでしょうか。川栄さん私は仕事の現場が終わったら「終わり!」となる性格で、役を引きずることはまったくありません。現場に行く前もガチガチに決めずに、台本を1、2回読んで空気感をつかんだらそれを持っていく感じにしているので、切り替えは得意なほうだと思います。自分の長所は、前のことを引きずらないところ―それは、お仕事を続ける過程で身に付いたものですか?川栄さん前のことを引きずらずに次の仕事ができるのはAKB48のときからなので、そこはもともと持っている自分の長所でもあるのかなと。セリフ覚えが得意なこともあり、家でも台本を開いている時間は最小限にしているので、息抜きはけっこうできているように感じています。あと、仕事のあとの楽しみといえば、大好きなお風呂に入ること。2~3時間は入るので、映画を観たり、台本を読んだりしながら過ごしています。―ほかにも、マイブーム的なことはありますか?川栄さんここ数年はお香にハマっていて、朝ドラの撮影で大阪にいたときも、朝起きたらまずお香をたくのがルーティーンでした。日によって香りを変えることもありますが、匂いによって癒されたり、スッキリしたりすることが多いかなと。匂いフェチのようなところもあるので、街を歩いているときにいい匂いがしたら、それをたどってお店に入ることもあるくらいです(笑)。―また、髪をバッサリ切ってから雰囲気も変わられましたが、切ろうと思ったきっかけは?川栄さん朝ドラが終わったときに腰のあたりまで伸びていて、ちょうど作品も重なっていなかったので、切りたいなと思って。髪が長かったときとは、洋服やアクセサリーの選び方がかなり変わったので、いまはそれを楽しんでいます。こんな時期でも、楽しいものを見つけてがんばりたい―とても素敵です。川栄さんといえば、撮影時もご自分でメイクをされることがあるほどコスメ好きということですが、最近お気に入りのメイク法を教えてください。川栄さん私は季節によってメイクを変えるのが好きなので、春ならオレンジやピンクを多めに使うようにしています。コスメも新しいものがいろいろと出るので、ネットやインスタで上げている人の情報を参考にしながら買っていますが、それが毎シーズンの楽しみです。―では、美肌を維持するためにしていることとは?川栄さんそれは、シンプルに皮膚科に行くことです(笑)。いまの時期は、花粉で肌が荒れることも多いですからね。そういうときは、皮膚科が一番だと思います。―確かに、それは大事ですね。それでは最後に、ananweb読者へメッセージをお願いします。川栄さんいまは仕事もリモートが増えているので、なかなか外に出られる機会がなくなっているかもしれませんが、そういうこともプラスにとらえられるようになるといいのかなと。家にいる時間を使っていままでできなかった趣味に取り組むのもいいですし、逆にたくさん休むのもありですよね。これは私にも言えることですが、コロナ禍が明けたときに何か役に立つものが身についていたらいいと思うので、みなさんも休みつつ、楽しいものを見つけてがんばってほしいと思っています。インタビューを終えてみて……。とても気さくで明るく、癒しのオーラを放っている川栄さん。子ども時代の思い出話には屈託のない笑顔を見せるいっぽうで、仕事に対しては真剣な眼差しで話されているのが印象的でした。劇中では、物語の大きなカギを握っている屁祖隠ちよめにぜひ注目です。ギャグも感動も満載の忍者アクション超大作!地球の未来と家族の明日を守るために立ち上がった“嵐を呼ぶ5歳児”しんのすけ。笑いに包まれるのはもちろんのこと、家族の絆が生み出す力には、大人でも思わず涙してしまうかも写真・山本嵩(川栄李奈)取材、文・志村昌美ストーリーひろしとみさえのもとに「しんのすけ」が誕生してから5年、嵐のような平和な日々を過ごしていた。ところがある日、5歳になる珍蔵という名の少年とともに屁祖隠ちよめと名乗る女性が野原家を訪れ、「私がしんのすけくんの本当の母親なんです」と打ち明ける。突然のことに戸惑いながらも、追い返すわけにもいかず、2人を野原家に泊めることに。しかし、その夜、謎の忍者軍団が突如襲い掛かる。ちよめはなんと、忍者の里を抜け出して追われているくノ一だったのだ!そしてその息子として、しんのすけもさらわれてしまうことに……。続きが気になる予告編はこちら!作品情報『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』4月22日(金)より全国ロードショー配給:東宝©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2022写真・山本嵩(川栄李奈)
2022年04月18日劇場版第25弾『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』に花を添えるゲスト声優は白石麻衣さん!初めてだったアフレコ時のエピソードや、大人ならではのコナンの楽しみ方をお伺いしました。コナンの劇場版といえば、毎作驚きのゲスト声優が参加することが知られているが、今作のゲストは、なんと白石麻衣さん!しかもその役どころはクールな雰囲気の金髪美女で、爆弾犯に復讐を誓う部隊を束ねるリーダーだ。「出演依頼を頂いたときには、“え、あのコナンですよね?”と(笑)。だって、子供のときからずっと見ているし、本当に大好きなアニメだし、その世界に、しかも劇場版でお邪魔することができるなんて、もうびっくり。でも同時にすごく嬉しかったのも事実です。私以上にコナンファンの姉が、とにかく大喜びしていました(笑)」白石さんが小学校高学年だった当時、学校から帰ってくるとTVアニメのコナンを見て、そのあと塾に行く、という生活スタイルだったそう。さらに家族で車に乗ると、倉木麻衣さんが歌う主題歌もよく聴いていた、とのエピソードも教えてくれた。「姉と一緒に見るのが楽しかった思い出がありますね。もちろん主題歌も二人で歌ってました。ちなみに好きなキャラクターといえば、私は小学生の頃からコナンくん一筋!小学生っぽい無邪気な表情と、事件の推理をするときの凛々しい雰囲気、その二面性というか、ギャップが大好きです」ドラマや映画に出演したことはあるものの、白石さんは“声”だけでの演技というのは今回が初体験。演じたのは、エレニカという外国人女性。ある理由のために東京にやってきて、コナンたちの前に姿を現す謎の美女。“エレニカの芯の強い部分が白石さんと重なる”ということで、制作サイドからオファーがあったのだとか。「確かにエレニカは、芯が通っているカッコいい女性。気持ちが強く前向きで、自信を持って行動しているイメージがあります。自分としては彼女は憧れの存在なので、重なる部分があると言っていただけるのはとても光栄です。ちなみにアフレコ初体験ということで、前日は眠れないくらい緊張した上、現場でもドキドキが止まらず縮こまってしまったのですが…それじゃダメだと頑張ってエレニカのように胸を張って、マイクの前に立ったのを覚えています」エレニカは外国人なので、もちろん外国語のセリフがたくさん。これには最初はかなり手こずったようで…。「まず、絵と合わせるために決められた秒数の中でセリフを言うということに戸惑いました。さらに、外国語の長いセリフを言いながら気持ちを爆発させる場面では、“秒数も大事、でも気持ちも寄せないと!!”となってしまい、かなり難しかったです。でも本当に頑張ったので、ぜひみなさんに観てほしいです」大人世代にとっての劇場版『名探偵コナン』は、子供のときとは違う楽しみ方ができるはず、と白石さん。「大人になると、広い視野や他者に共感する力も上がっていると思うので、コナンくん以外の視点で物語を観てみるのも面白いと思います。特に今回は魅力的なキャラクターがたくさん登場するので、例えばエレニカ、あるいは降谷零などの立場で物語を読み解いてみるのも楽しいかも。私も劇場に観に行きたいのですが、たぶん相当そわそわすると思うので、まずは一人で行きます(笑)。そのあと、コナン好きの姉や友達、さらにコナンを見たことがないという友達を連れていきたい。ということで、3、4、5回くらい観に行くつもりです。なので、みなさんもぜひ何度も劇場へ足を運んでください(笑)」フルネームはエレニカ・ラブレンチエワ。過去のとある事件を理由に、すでに殉職したはずの松田刑事の行方を東京で捜している。コナンの敵なのか、それとも味方なのかはまだよくわからない…。しらいし・まい俳優、タレント、モデル。バラエティ番組『ウラ撮れちゃいました』(テレビ朝日系)でMCを務める。公式YouTube「my channel」は、チャンネル登録者数140万人を誇る。ドレス¥106,920(Nanushka/HiRAO INC TEL:03・5771・8809)靴¥143,000(MANOLO BLAHNIK/ブルーベル・ジャパン TEL:03・5413・1050)ピアス¥759,000リング、右手・人差し指¥278,300中指¥257,400左手・人差し指指先¥199,100真ん中¥622,600付け根¥468,600(以上ニーシング/ニーシング東京 TEL:03・3499・1868)『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』ハロウィンで賑わう東京・渋谷で行われていた、とある結婚式に暴漢が乱入。時を同じく連続爆破事件の犯人が脱獄したことで、降谷は追い詰められ、謎の人物に首輪爆弾を装着されてしまう。爆弾解除のため、コナンが動きだす!原作/青山剛昌監督/満仲 勧脚本/大倉崇裕音楽/菅野祐悟主題歌/「クロノスタシス」BUMP OF CHICKEN©2022 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会※『anan』2022年4月20日号より。写真・樽木優美子(TRON)スタイリスト・鬼束香奈子ヘア&メイク・宇藤梨沙(by anan編集部)
2022年04月17日お待たせしました!もはや日本の春の風物詩である、劇場版『名探偵コナン』の時期がやってきました。世代も国も超えて愛される!『名探偵コナン』の魅力を解説。コナン初心者も、溺愛者も、まずは作品のベースをおさらいすべし。主要キャラをおさえ、『ハロウィンの花嫁』の見どころをチェック。POINT1:大人気作の主人公、コナンは小学生。でもその正体は、高校生探偵!原作漫画は1994年に連載開始、単行本はついに100巻に到達!全世界累計発行部数はなんと2億5000万部を突破したという大人気作『名探偵コナン』。今作で25作目の劇場版アニメは、ミステリーとしての精度の高さ、魅力的なキャラクターたちの人間ドラマ、そしてアクションの迫力など、全方位的な魅力で世界を魅了し続けている。主人公・コナン見た目は小学生だが、中身は頭脳明晰な高校生探偵。〈黒ずくめの組織〉の取引を目撃したことで、口封じのために毒薬を飲まされ、今の姿に。江戸川コナンと名乗る。工藤新一世界的推理作家の父と、元女優の母を持つイケメン高校生。大人顔負けの推理力に加え、サッカーは全国レベルの実力。コナンになって以降、基本的に電話で連絡を取っている。毛利 蘭新一の幼馴染みで、さらに彼女でもある同級生の蘭。特技は空手。なかなか姿を現さない新一を、一途に想い続けている。現在、コナンは蘭の家に居候中。POINT2:最後まで目が離せない、スペクタクル。本格ミステリー&アクション。コナンの劇場版といえば、サスペンス&ミステリーの複雑で奥深い側面が大人に大人気。また大きなスクリーンで迫力あるアクションシーンが堪能できるのも、魅力の一つ。今作は、“過去”と“現在”が絡み合う物語の展開に唸らされること請け合いだ。またバトルシーンはもちろん、ラストの緊迫感には思わず息を呑んでしまう…!!東京を舞台に事件を引き起こす正体不明の敵、〈プラーミャ〉。時代を超えて、降谷やコナンを翻弄する。POINT3:ドキドキの関係があちこちに。物語華やぐ、ラブコメエッセンス。謎解きだけじゃない、コナンの世界観で実は重要なのが“ラブコメ”要素。推しカプに挙げている人も多い高木刑事&佐藤刑事の結婚式を含む、恋やウェディングといった要素が、今作では事件に関わってくる。現在の恋愛、かつての人間関係の中での想いなど、胸キュンなポイントも多々。またコナンをはじめ、結婚式の参列者がおめかしをしているところも見逃せない!上・刑事のときの凛々しい感じに、美しさが加わった、佐藤刑事の花嫁姿。下・大好きな佐藤刑事の花嫁姿に、高木刑事もこの緊張顔!!POINT4:リアリティとファンタジーのいいとこ取り!オリジナルで描かれる、高クオリティな描写。毎回実在する街が登場し、その描かれ方の精巧さにため息が出る劇場版。今回の舞台は渋谷で、驚くほどリアルに描かれる街並みを、キャラクターたちが走り回る。作品への没入感がハンパないので、こんなことあり得る?!それは無理じゃないか…?と思ってしまうファンタジックな展開も納得してしまうから不思議。馴染みあるあのビルやあの通りがコナンの世界に登場!?劇場版プロデューサー・近藤秀峰さん×脚本家・大倉崇裕さんプロデューサー・近藤秀峰さん&脚本家・大倉崇裕さんが語り合う。“チームコナン”の強さ、そして今作の制作ウラ話。原作者の漫画家・青山剛昌先生を中心に、劇場版の作品を作っているチームはいったいどんな雰囲気なの?今作のメインキャラクター決定の背景や、脚本執筆における青山先生の意外な役割などについて、語っていただきました。――コナンの劇場版は、毎年かなり前から準備するそうですね?近藤秀峰:おおよそですが、プロジェクト自体は2年くらい前から動きだす感じですが、“誰が中心になる”ということに関しては、もう少し前から決める感じですね。青山先生に、「いついつの作品ではこの人がフィーチャーされるから、その前の原作連載の展開をこうしておこうかな…」といったことを考えていただけたりすることもあり、その回のメインとなるキャラクターに関してはかなり早い段階で方向性を決めていますね。大倉崇裕:ちなみに今回の『ハロウィンの花嫁』の脚本執筆のお話を頂いたとき、一番最初の段階では、「高木・佐藤をメインでお願いします」と言われた記憶があります。二人が出てくるということは、かつて佐藤刑事が想いを寄せていた、降谷の同期である松田という刑事を出せるかな、と考えました。が、そのあとに「降谷零(安室透)と、彼の警察学校の同期たち4人も登場させてください」と言われ、彼ら、特に萩原、松田、伊達に関しては、原作では本当にさらっとしか描かれていないので、正直キャラクターがよくわからなくて…。近藤:ですよね(笑)。で、今回は原作のスピンオフ連載でまず『警察学校編』という、降谷らの学生時代の物語が掲載され、そのあとそれをTVシリーズでアニメ化し、そこからの劇場版。という流れにしたいねとなっていたので、その漫画のネーム(下描きのようなもの)を編集部から借りてTMSさん経由で大倉さんにお送りし、「すみません、まだ誌面掲載前なので、ここから彼らの背景や性格を想像していただけると…」と。すみませんでした(苦笑)。大倉:いやいや、むしろ貴重なものを拝見できて、役得でした(笑)。そのネームを拝見しながら、脚本のプロットを考えましたね。――警察学校の同期5人を出すというのは、どんなところから出てきたアイデアだったのですか?近藤:実は2018年に公開された『ゼロの執行人』という作品で安室をメインにしたところ、彼の人気が大ブレイクしまして。なので、僕個人としてはもう2年おきに安室を出したいくらいの気持ちなんですが、そういうわけにもいかないので(笑)。今作は、スタッフ揃っての青山先生との打ち合わせの中で、彼を含む警察学校同期組を登場させようという話になった、というのが真相です(笑)。大倉:降谷以外の4人の中では、松田が最も重要なキャラとして登場しますが、彼でさえ、原作ではほんの数話しか出ていないんです。でもものすごく人気がある。なのでキャラを膨らませるときも、原作に近づけることを意識しました。近藤:そうなんですよ。原作ではほんの少ししか触れていないような人でも、青山先生の中では実はものすごく重要なキャラであったり、大きな設定を背負わされていることがあるので、現時点ではちょっとしか出ていない人物が、今後のコナンの展開の大きな鍵になる…という可能性はありますよ。大倉:今僕の部屋の本棚にはコナンの単行本が100冊ズラッと並んでいるので、もっともっと読まないとですね。でも、「調べ物しなきゃ…」と思って読み始めると、面白くてどんどん読んでしまって、仕事が進まなくなってしまうのが困ったもんですが(笑)。――今作はタイトルに“花嫁”とあることから、“ラブコメ要素強めか?!”という期待もあるようですが、そのあたりはどうですか?大倉:確かに劇場版のコナンの世界観には、ラブコメ要素は必須ですよね。でも実は私は、ラブコメ得意じゃないんですよ…。近藤:大倉さんの本業は、推理作家ですからね(笑)。劇場版コナンの脚本を書いていただいたのは今作が3作目で、1作目が2017年の『から紅の恋歌(ラブレター)』…、たしかにこれもラブコメっぽいです。2019年の『紺青の拳(フィスト)』も京極と園子のラブコメがありますね。大倉:「今回はこれで」と提示されたキャラクターを見ると、「え、これはどう考えてもラブコメ…」って。私はまったくその素養がない人間なのに(笑)。近藤:実は青山先生的に、「多分この回は大倉さんに脚本をお願いするだろうから、このキャラクターかな?」と考えてるフシがあるのではないかと。大倉:えー、ホントですか(笑)。近藤:雑談の中だったんでそのとき明確な回答はなかったのですが、大倉さんは割と柔らかい感じのストーリー作りが上手だからなのでは…と想像しています。でも大倉さん、本当に困ったときは、青山先生に、〈ラブコメSOS〉を出されますよね(笑)。大倉:出しました(笑)。『から紅~』のときに高校生の恋模様を描かなければならず、“今の高校生がどんな話をしてるのか、わかんないよ…”というのが正直な気持ちでして。で、第一稿を出したときに、恥を忍んでラブコメの部分に「助けて、青山先生!」って書いて出したら、先生が手直しをしてくださったものが返ってきたんですが、それがもう完璧で。さすが創造主、という感じでした。以前脚本の大先輩に、「コナンのチームは本当に優秀だから、任せればいいんです」と言われたことを今でもよく覚えているのですが、その教えに従って、わからないことは素直に尋ね、思い切って委ねています。最近は“助けて”と言わなくても先生が修正してくださるので、そこに甘えています(笑)。近藤:ミステリーの骨組みやトリックなどを脚本でガッチリと作ってもらい、青山先生にラブコメ要素を足してもらうと完成する、というのが、大倉さんの脚本の出来上がり方かもしれませんね。大倉:(笑)。今回は、たしかにタイトルはラブコメっぽいかもしれませんが、観ていただくと、結構ミステリーやアクション要素が強めだと思いますよ。こんどう・しゅうほう劇場版『名探偵コナン』プロデューサー。小学館『週刊少年サンデー』編集部で原作を5年間担当後、『業火の向日葵』アシスタントプロデューサーを経て『純黒の悪夢(ナイトメア)』より現職。おおくら・たかひろ推理作家。1998年「ツール&ストール」で小説推理新人賞を受賞し、2001年に『三人目の幽霊』でデビュー。劇場版では『から紅の恋歌(ラブレター)』『紺青の拳(フィスト)』の脚本を担当。『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』ハロウィンで賑わう東京・渋谷で行われていた、とある結婚式に暴漢が乱入。時を同じく連続爆破事件の犯人が脱獄したことで、降谷は追い詰められ、謎の人物に首輪爆弾を装着されてしまう。爆弾解除のため、コナンが動きだす!原作/青山剛昌監督/満仲 勧脚本/大倉崇裕音楽/菅野祐悟主題歌/「クロノスタシス」BUMP OF CHICKEN©2022 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会※『anan』2022年4月20日号より。作画監督・須藤昌朋レイアウト・山本泰一郎背景・堤谷奈津子(Y.A.P.石垣プロダクション)(by anan編集部)
2022年04月17日世界を救うため、最強の3人が大活躍!?『SPY×FAMILY』激推しの理由。親子3人のほのぼのモノと思いきや、実は父はスパイで娘は超能力者、母は殺し屋という“仮初め家族”の物語!!映画のような設定&スペクタクル溢れるこのマンガが、とうとうこの春アニメになって登場です!What’s『SPY×FAMILY』?原作は遠藤達哉氏のマンガで、2019年よりアプリおよびウェブの「少年ジャンプ+」で隔週連載中。現在コミックスは8巻まで発売中。4月には待望の9巻が発売に。各528円(集英社)。アニメは4月9日23:00~23:30、テレビ東京系で放送スタート。アニメ『SPY×FAMILY』に注目する5つの理由。原作の素晴らしさに加え、WIT STUDIOとCloverWorksによる圧倒的な映像美、そしてキャストや主題歌まで、すべてがとにかく期待大です。メタリックグリーンの渋い色みがコミックスのキーカラー。キャラクターが順番に登場する表紙が美しい!©遠藤達哉/集英社【理由1】累計発行部数1250万部を誇る、超人気漫画が待望のアニメ化。絵の美しさ、シリアスとハートフルの緩急、そしてウィットに溢れた作風などが話題を呼び、原作は開始すぐに大人気に。’19年12月には、『このマンガがすごい!2020』オトコ編で1位を獲得。今や全方位的に大人気のこの作品、ファンからは「いつアニメ化してくれるの?!」の声が上がっており、まさに満を持しての登場だ。【理由2】大人こそが楽しめる洒脱なストーリー。舞台は異国、主人公は百の顔を使い分ける凄腕のスパイ。娘に迎えた少女は実は他人の心が読める超能力者で、温和な性格の妻の裏の顔は殺し屋。互いに正体を隠した家族が繰り広げる物語は、ハリウッド映画のようにスリリング!そこにアクションとギャグがテンポよく差し込まれるリズム感は、もはやおしゃれなジャズのよう…。【理由3】注目の制作会社、WIT STUDIOとCloverWorksが制作。アニメは、『進撃の巨人Season1~3』や『王様ランキング』を手掛けた「WIT STUDIO」と、『その着せ替え人形は恋をする』や『Fate/Grand Order ‐絶対魔獣戦線バビロニア‐』を手掛けた「CloverWorks」による共同制作。仕上がりが楽しみ~。【理由4】メインキャストに、人気声優がそろい踏み!魅力的なキャラクターに命を吹き込むのはこの3人のキャスト。まず主人公である凄腕スパイのロイド・フォージャーは、江口拓也さんが担当。無邪気で子供らしい口調がかわいいアーニャ・フォージャーは種﨑敦美さん。そしていつでも物腰が柔らかいヨル・フォージャーは、早見沙織さんが担当することに。凄腕スパイと父親の演じ分けに期待が高まる江口拓也さん。女の子キャラだけでなく少年など、幅広い役を演じる種﨑敦美さん。透き通った美しい声がヨルにぴったりな早見沙織さん。【理由5】音楽を手掛けるのも超豪華なミュージシャン。アニメといえば、主題歌を誰が担当するのかも気になるところ。今作のオープニングを彩るのは、Official髭男dismの「ミックスナッツ」。ポップで明るい曲調にワクワクが止まらない!そしてエンディングには星野源さんの「喜劇」がメロウなメロディと大人っぽい音で作品世界を彩ります。共に本作のために書き下ろした楽曲。数々の映像作品から引く手あまたのOfficial髭男dismの曲は、原作の持つ楽しい側面を感じさせる曲調。あたたかい家庭の様子を思わせる、星野源さんのエンディングソング。魅力あふれる3人のファミリーをご紹介!任務のために仮初めの家族になった3人。といいつつも、一緒に過ごすうちに夫婦愛と親子愛がそこにはあったりなかったり…?母【ヨル・フォージャー】実は…殺し屋清く美しく、弩級に強い!「はは」と呼ばれキュン。表の顔は市役所の職員。が、実は暗号名〈いばら姫〉の異名を持つ凄腕の殺し屋。唯一の家族、弟のユーリを安心させたい、そして怪しまれずに殺し屋稼業を続けたい思いから、恋人のフリをしてくれる男性を探していたところロイドと利害が一致。偽装結婚しアーニャの母に。戦闘中の迫力ある姿と日常の優しい表情のギャップが素敵。ロイドとの出会いは、アーニャの服を作りに行ったテーラーで。父【ロイド・フォージャー】実は…スパイクールなスパイの素顔は、優しい紳士?〈WISE〉に所属する敏エージェント腕諜報員。並外れた観察眼と記憶力を持つ変装のスペシャリスト。オペレーション〈梟〉以降は、精神科医のロイド・フォージャーとして任務に励む。冷静沈着に数々の指令をこなしてきた凄腕のスパイだが、子育てという未知の任務には戸惑うことばかり。偽装家族に振り回されつつ、東西平和のために奔走する。なんだかんだ言いながら、きちんとアーニャに優しい。子【アーニャ・フォージャー】実は…超能力者無邪気な笑顔で、実は人の心を読む…!!とある組織の実験で偶然生み出された、他人の心が読める超能力少女!ロイドが養子を探しに訪れた孤児院で出会い、引き取られた。自分の能力は秘密にしているが、ロイドがスパイであること、そしてヨルが殺し屋であることには気がついており、そこに「わくわく」!好きなものはピーナツとアニメ『SPY WARS』、嫌いなものは勉強。“賢い子”を求めるロイドのニーズに応えるべく奮闘!※『anan』2022年4月6日号より。写真・中島慶子(コミックス)©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会(by anan編集部)
2022年04月03日『Free!』シリーズが始まって以来、主人公・七瀬遙を演じられてきた島﨑信長さん。最終章を描いた4月公開の映画『劇場版 Free!‐the Final Stroke‐』後編に先駆けて、長年共に“泳いできた”遙へ、そして最終章にかける想いをインタビュー。2013年にテレビアニメがスタートして以来、主人公・七瀬遙を演じている島﨑信長さん。『Free!』という作品は島﨑さんにとって遙と共に歩んできたという想いが強いと語る。「歩んできたというか、『Free!』風に表現するなら一緒に“泳いできた”と言うべきでしょうか(笑)。遙が作中で感じたこと、課題にしていたことは当時の僕と重なる部分も多くて、僕を育ててくれた本当にかけがえのない作品です」天才・七瀬遙のチャームポイントはたくさんあるけれど、これまで寄り添ってきた島﨑さんが思う彼の一番の魅力は「言葉では表現できない人間らしさ」。「人間っていろんな面があって、例えば遙はクールだと言われるけど、熱くなる時は熱くなる。元気な人でも落ち込む時があるように、穏やかな人でも怒る時があるように、そういう揺れや変化をきちんと持っているのが遙の魅力じゃないかと思いますし、それは『Free!』という作品全般を通して言えることでもあります。ひとりの人間として描かれているからきっとこれだけ長い間『Free!』という作品が愛されているのかな、と思いますね。“こういう特徴を持ったキャラが好き”だと他にもいるかもしれないけれど、“この人が好き!”という気持ちにまで到達すると、代わりはいないじゃないですか。カッコいいところもカッコ悪いところも、強いところも弱いところもある人間として、僕たちとは違う世界かもしれないけれど、遙たちはちゃんと生きてる。そういう全部をひっくるめて、僕は人間・七瀬遙を素敵だと思いますね」アニメが始まった当初は高校2年生だった遙も、今や大学生に。劇場版ではついに世界に挑むことになる。「遙とはもう9年も一緒なので、親戚の子どもを見るような目線になっちゃいます(笑)。それこそちっちゃい頃から見てきた子が中学、高校を経て大学生になり、今や世界に挑んでるんですから!よくぞここまで来たな、と思いますよね。劇場版の収録が終わった後、本当に終わったんだなっていう喪失感に襲われたり、もしくはそれまで背負っていたものがなくなって身軽になったりするのかなって思ってたんですけど、実際に感じたのは“希望”でした。これからの彼らやこの先の未来に対して、すごく前向きで希望にあふれた気持ちで収録を終えたんです。映画を観てくださったみなさんも同じことを感じてもらえるんじゃないかと思います。きっといろんな想いがこみ上げてくるだろうし、絶対泣いちゃったりもするだろうけど、でも観終わった後にはきっと未来への希望が満ちあふれる輝かしい景色が待ってるんじゃないかなって。だから安心して楽しんでもらいたいですね。心は揺さぶられるだろうけど、最後には前を向けると思うので」4月22日に全国公開の『劇場版Free!‐the Final Stroke‐』後編にも、これまでの『Free!』らしさがしっかりと詰まっているそう。「これまで作品をご覧になっている方ならわかると思うのですが、『Free!』ってセルフオマージュが多いんですよ。例えば以前、凛がプールサイドで将来の話を切り出すシーンがあったんですが、後に同じプールサイドで凛の妹である江が同じく将来の話を切り出すとか。そういうシーンや状況、構図など、観ていて“あっ”と気づく仕掛けが今回も細部にわたってたくさんあって、いろんなところにスタッフさんの愛が詰まった作品になっています。だから何度でも劇場に足を運んでいただいて、そういう場面をたくさん発見してもらいたいですね。シリーズのどこから観ても楽しめる作品ですが、知れば知るほど楽しめるのは間違いありません。ぜひ劇場版とともに、テレビアニメシリーズもご覧になってみてください」島﨑さんが振り返る思い出に残るシーン。筋肉の描写、体の動き…美麗で繊細な表現にも注目を。一人ひとりの筋肉のつき方や体の動かし方など、細かなところまで描き分けられている作画も見どころ。「さらに言うと、誰と一緒にいるかで出てくる仕草が変わったり、彼らが人としてこの世界で生きていると感じさせる細やかな表現が素晴らしい。時を経るごとに進化した表現力はこの9年間の集大成です!」全員で繋ぐリレーは『Free!』の醍醐味!背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ、フリーの4種目を4人で繋ぐリレーのシーンも島﨑さんのお気に入り。「リレーを繋いでいるシーンはすべて大好きです!『Free!』といえばやっぱりリレーなんですよね。泳ぐメンバーとか、その時の状況によって全部が全然違うリレーになるんですけど、どれもすごく素敵なんです」シーズンごとに遙が呟く、「水は生きている」遙の人生哲学を表し、折に触れて呟くセリフ。「遙は『Free!』の新シーズンが始まるごとに必ずこの言葉を口にするんですが、僕もこのセリフを言うといよいよ『Free!』が始まったなという気持ちになります。その時その時の遙の感情が入っていて、今回は特に今までとは違った意味が感じられると思います」しまざき・のぶなが12月6日生まれ、宮城県出身。テレビアニメ『あの夏で待ってる』で初の主演を担当して以来、数々の人気作に出演。4月配信『TIGER & BUNNY 2』に新キャストとして参加。カーディガン¥19,800(SHAREEF)ノーカラーシャツ¥6,930パンツ¥5,940(共にCASPER JOHN)チェーンブレスレット¥110,000(LION HEART)リング¥30,800(SHINGO KUZUNO)『Free!』シリーズ『ハイスピード!』(KAエスマ文庫/京都アニメーション)原案。ABCテレビにてTVアニメ『Free!』(TV第1期)、『Free !‐Eternal Summer‐』(TV第2期)連続放送中。ほか各プラットフォームにて好評配信中。TVシリーズ・特別版・劇場版は過去8作。『劇場版 Free!‐the Final Stroke‐』後編が4/22全国公開。©おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶高校水泳部©おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶高校水泳部ES©2017 おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶高校水泳部TM絆©おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶町後援会2021※『anan』2022年4月6日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・宇都宮春男(YKP)ヘア&メイク・瓜本美鈴取材、文・尹 秀姫(by anan編集部)
2022年04月03日ついにファイナルを迎える『Free!』シリーズ。最終章を描いた4月公開の映画『劇場版 Free!‐the Final Stroke‐』後編に先駆けて、お話を振り返りながら魅力に迫ります。泳ぎを通じて成長する少年の物語が、最終章へ。泳ぐことに魅せられた男の子たちが競泳を通じて仲間やライバルたちと出会い、切磋琢磨しながら成長していく様を描いた人気アニメ『Free!』シリーズ。2013年にテレビ放送がスタートして以来、テレビアニメ、劇場版と成長を遂げてきた彼ら。昨年9月に公開された『劇場版 Free!‐the Final Stroke‐』前編では大学生になり、世界に挑んだ。そして今年4月に公開の後編をもって、9年にわたった彼らの物語がひとつのクライマックスを迎える。ここでは、『Free!』をまだ知らない人にも作品の世界と物語を味わってもらえるよう、主人公・七瀬遙と彼の仲間たちの歩みをプレイバック!見てきた人も、初めての人も。七瀬遙が歩んだ軌跡。主人公の七瀬遙は、水、そして泳ぐことに特別な想いを抱き、水に愛された天才スイマー。そんな彼がここまで辿ってきた道のりを、トピックスごとにご紹介します。1、チームメイトとの再会を機に結成された水泳部。戦友たちとのリレーが彼らの熱い想いを繋ぐ!高校2年の七瀬遙と橘真琴は岩鳶高校に入学してきた葉月渚の熱意に押され、陸上部だった竜ヶ崎怜も引き込んで水泳部を立ち上げることに。同じ頃、オーストラリアで挫折を味わい日本に帰国した松岡凛は遙に再会。二人はあることがきっかけで大きなわだかまりを抱えていたのだが…。そんな二人を再び結びつけたのは、小学生の頃にみんなで泳いだメドレーリレーだった。バック(背泳ぎ)の真琴、ブレ(平泳ぎ)の渚、バッタ(バタフライ)の凛、そしてフリーの遙と、4人がリレーを繋いでいく様や意外な展開が胸アツ!得意の型をダイナミックに泳ぐ姿や、美しい水の描写など、見どころは多いが、泳ぎきった後の彼らの清々しい笑顔はまさに青春。2、プレッシャーや故障、進路への想い。悩みの中で自分自身と向き合い、仲間と切磋琢磨の日々を丁寧に描く。過去のトラウマから海が怖いという真琴や、親との関係で水泳部を退部させられそうになる渚など、抱える事情や想いは様々。しかし、どんな時であっても仲間がそばにいてくれる心強さは変わらない。悩みから逃げようとした時は仲間が優しく諭してくれ、逆に一人で落ち込んでいる時はみんなが一丸となって支えてくれる。辛い時も楽しい時も共に寄り添い、成長していくたくましい彼らのひたむきな姿を美しく描く。また、小学校から中学、高校、そして大学まで、少しずつ大人になる過程を長く丁寧に描写しているのも『Free!』シリーズの特徴。全員の成長を、まるで本当の友人のように近くで感じられるのも大きな醍醐味だ。3、「世界で泳ぎたい」仲間に気づかされた自分の夢。全国大会、そして全日本選抜大会の舞台へ挑む姿は必見。高校3年生になり将来のことを考え始める頃になると、大会を見に来たスカウトの視線や結果を求められることに苛立ったり、仲間が競泳の世界の外に夢を見つけ、知らぬ間に進路を決めていたことを不満に感じたり…。未来に対する漠然とした不安と、仲間に置いていかれるかもという焦燥感など、思春期ならではの心の揺れが見る者の心に突き刺さる。そんな遙は、凛に連れられて訪れたオーストラリアで世界の舞台で泳ぐという夢を見つけ、これからは記録や勝ちにこだわっていくと宣言。かつてフリーしか泳がないと言っていた遙に仲間と泳ぐ楽しさを示した凛が、またしても遙を新たな場所へと導いていく。影響し合って成長する二人の友情がまぶしい。4、夢の舞台・シドニー大会に出場、しかし…。新たに抱いた決意を前に、遙が選んだ道とは。自分の夢と水泳にまっすぐ向き合い、それまで絆を培ってきた仲間にも支えられて練習に励む遙は、凛のコーチであるミハイルのかつてのライバル・東龍司をコーチに迎えて指導を仰ぐ。しかし、いよいよ世界へと飛び立とうしたその時、遙の前には絶対的な王者、アルベルト・ヴォーランデルが立ちはだかる。水を愛し、水に愛される遙の力を奪うかのような圧倒的な強さを見せつけられ、どうしていいかわからなくなる遥。さらには凛とのすれ違いから、遥はますます自身を孤独に追い詰めてしまう。そんな遥に東コーチは「すべてを捨てる覚悟を持て」と言うのだが…。遥が伸ばした手の先には一体どんな未来が待っているのか、劇場でぜひ確認を!『Free!』シリーズ『ハイスピード!』(KAエスマ文庫/京都アニメーション)原案。ABCテレビにてTVアニメ『Free!』(TV第1期)、『Free !‐Eternal Summer‐』(TV第2期)連続放送中。ほか各プラットフォームにて好評配信中。TVシリーズ・特別版・劇場版は過去8作。『劇場版 Free!‐the Final Stroke‐』後編が4/22全国公開。©おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶高校水泳部©おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶高校水泳部ES©2017 おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶高校水泳部TM絆©おおじこうじ・京都アニメーション/岩鳶町後援会2021※『anan』2022年4月6日号より。取材、文・尹 秀姫(by anan編集部)
2022年04月02日シーズン1、劇場版に引き続き、今回の新作『TIGER & BUNNY 2』でも主人公を演じる平田広明さんと森田成一さん。数々の作品で人気キャラを演じてきたベテラン声優2人が分析するタイバニの魅力とは。――主人公の二人、鏑木・(かぶらぎ)・T・虎徹(こてつ)を演じる平田広明さんとバーナビー・ブルックス Jr.役の森田成一さん。凸凹バディを演じるお二人に、まずはコンビの魅力を直撃。森田成一:オジサン×若者のコンビは昔からよくあるバディ像で。だからこそ見る人も一緒に喜んで、一緒にイラついて、一緒に泣ける。心が動きやすいのが、虎徹&バーナビーの魅力だと思いますね。平田広明:虎徹もバーナビーも善人ではあるけど、人として欠点がないかといえばそうでもない。その人間くささが好きですね。あとは森田くんも言っていたように年の差。世代が違えば衝突もあるだろうし。カッチリはまらないところが面白いんだと思います。でも、離れ離れにならないのは、お互いにどこか惹かれ合い、大切に思い、セットになったら大きな力になると感じているから。見る人が、「この二人はまた…」なんてツッコみながらもどこかほっとけない二人というのが、名コンビなんでしょうね。森田:ガタガタさが面白い。完全に水と油で、決して混ざり合うことはないけれど、その境界線は隙間なくピッタリくっついてる。それが虎徹とバーナビーで、気持ちのいいところかなって。――そんな名コンビの活躍も楽しみなシーズン2の見どころは?森田:台本を読んで感じたのは、『TIGER & BUNNY』の初期のテイストに戻った気がして。各キャラクターの思いがダイレクトに伝わるような物語になっているなと思いました。僕が演じたバーナビーも虎徹さんと過ごすことで、人間味のあるキャラになっている。そこは注目ですね。平田:ヒーローが敵と戦うアクションのパート以上に、人間ドラマ的な部分が本作の魅力だと思っていて。今回もどんな問題が起こり、どう乗り越え各々が成長していくのか。そこを楽しんでほしいです。森田:人間関係や心理描写が面白い作品ですからね。今回はバーナビーよりも若い新人ヒーローも出てきますから。彼らとの接し方なんかも見どころだと思います。新シーズンでの注意点は若々しく、元気よく!?――ところで、バディ役を演じるお二人の関係性も気になるところ。森田:平田さんとは『TIGER & BUNNY』が初共演。大先輩ですし、最初は大変緊張しました。平田:してなかったでしょ。森田:してましたよー(笑)。ただ、緊張はしているけど、TVアニメが始まった10年ほど前は自分も血気盛んだった分、「やったるぞ、このやろー」みたいな気持ちも強くて。力が入りすぎて、空回りしているところもあったと思います。でも、平田さんの自然体な姿を見ていたら、僕も力が抜けていきました。平田:森田くんの印象は…(と、数秒無言が続き)森田:ないんかいっ!(笑)平田:森田くんは意外と頑固。こだわりが強い。熱い男だからこそ、バーナビーという役を演じるのはツラかろうなと思いますね。バーナビーは心理的な制約も多いから。森田:バレてますね。さすがです。僕は大先輩のアフレコを間近で見ることができて、勉強になります。普通ヒーローと聞くとカッコいい人物を想像するけど、虎徹はオジサンで。それを平田さんが演じると、しっかりオジサンだけど、その中にちゃんとヒーローが存在している。泥くさいけど、むしろそれがカッコいい。絶妙なバランスだと思うんです。小さな吐息なんかも生々しくリアルで「オジサンってこうだよね」と痛感。技術やレベルの高さを思い知る瞬間ですね。…と褒めてみました(笑)。平田:適当なこと言ってやがる。何も出ないよ!森田:アハハハハ!!――前作から期間は空いても息ピッタリのお二人。作品内でも息の合った掛け合いを披露しているが、アフレコでは何やら苦戦も!?平田:作品の時系列的には前作からそれほど空いてないので、演じる上ではヘンに気負わず、今までの流れのままと思い、自分が思う虎徹を演じてみたんです。が、音響監督から「もっと元気よく」と指摘されてしまった。森田:二人とも、とにかく「元気」を要求されましたよね(笑)。平田:最初は、収録が朝イチだから眠くてテンション低いと勘違いされてるのかな、なんて思ったけど、そうではなく…。森田:要は、「もっと若く」ってことで、それを「元気よく」と言われていた。自分では感じていないけれど、老いというものが来たんだなと思いましたね(笑)。平田:自分を客観的には見られないからわからないし、森田くんに対しても老いは感じなかったけど。森田:僕も平田さんに対しては全く感じず。でも、音響監督の耳は確かなので、実際にOKが出た声を聞くと、数段トーンが上がっている。それを朝イチから出すのはキツかったですけどね(笑)。平田広明さん(写真左)1963年8月7日生まれ、東京都出身。洋画の吹き替えやアニメ、ナレーションでも活躍中。代表作は『ONE PIECE』(サンジ役)。ジョニー・デップやユアン・マクレガーなどの吹き替えも務める。森田成一さん(写真右)1972年10月21日生まれ、東京都出身。TVアニメ『キングダム』第4シリーズ(信役)が4月9日より放送スタート。主人公・黒崎一護の声を務める『BLEACH 千年血戦篇』は10月より放送開始。『TIGER & BUNNY 2』シュテルンビルトの街の平和を守るため、所属企業のイメージアップのためにヒーロー活動を続ける鏑木・T・虎徹とバーナビー・ブルックス Jr.。今ではヒーローも増加し、シュテルンビルトにも新人ヒーローが加入。先輩ヒーローとしての活躍も期待される虎徹とバーナビーだが、果たして…。4/8よりNetflixにて全世界独占配信。©BNP/T&B2 PARTNERS※『anan』2022年4月6日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)取材、文・関川直子(by anan編集部)
2022年04月02日2011年に放送され、話題を呼んだヒーローアニメ『TIGER & BUNNY』(通称タイバニ)。多くの熱狂的ファンが待ち焦がれていた新シリーズの配信に先駆けて、タイバニワールドを徹底深掘りします!鏑木(かぶらぎ)・T・虎徹(こてつ)再び1部リーグのヒーローに返り咲いたデビュー10年以上のベテランヒーロー「ワイルドタイガー」。NEXT能力は1分だけ身体能力が100倍になるハンドレッドパワー。一見いい加減なようで正義感が強く義理人情に厚い男。バーナビー・ブルックス Jr.ヒーローの中で唯一、本名の「バーナビー・ブルックス Jr.」の名で活動している。能力はワイルドタイガーと同じハンドレッドパワーで、持続時間は5分。無駄なことが嫌いな合理主義者で、モットーは“スマートにカッコよく”。個性たっぷりで魅力的。バディヒーローが大活躍!「NEXT」と呼ばれる特殊能力者が、スポンサーロゴを背負って街の平和を守る。そんな異色のヒーローたちの活躍を描いたアニメ『TIGER & BUNNY』。11年前にTVシリーズが放送、2本の劇場版を経て、ついにシーズン2がNetflixで独占配信。監督を務めた加瀬充子さんが今作への熱い思いを語る。「最初のTVシリーズの制作中に、面白い作品を作っているという話を聞いていて。私も参加したいと思いましたが、他の仕事もあり、指をくわえて見てるしかなかった(笑)。だから今回、話をもらったときは『やったー』と大喜び。本当に光栄に思います」主人公は落ち目のベテランヒーロー、ワイルドタイガー(鏑木・T・虎徹)とスーパールーキー、バーナビー・ブルックス Jr.。「最初、虎徹はスーパールーキーのバーナビーに対して“俺が先輩ヒーローとして背中を見せなければ”と思い、バーナビーは“オジサン(虎徹)に足を引っ張られないように僕が頑張らなくちゃ”と思っている。衝突し、息が合ってないように見えるけど、裏を返せばそれだけ相手のことを気にしていて。そのうちお互いの存在が大きくなっていく。対照的な二人の掛け合いも面白く、魅力的なバディだと思いますね」虎徹&バーナビーの他にも、個性的なキャラクターが満載。加瀬監督も「どのヒーローもカッコいい」と声を大にして言う。「男性が主人公の作品って、バリバリの格闘系キャラか、もしくは女性に対して優しくて線の細い、柔らかい態度のキャラ、そのどちらかが多かったと思うのですが、この作品はそうではない。各ヒーローの個性が立っていて、いろんなパターンがある。それは個性的な“NEXT能力”を持ち、能力に付随した形で性格も作られているから。みんなバラバラで、みんなカッコいいんですよね」なかでも、加瀬監督の推しキャラは虎徹と、強靭なベテランヒーローのアントニオ・ロペス。「虎徹は一人娘の楓のことが大好きで。父子家庭で、子育ては自分の母親に任せっきりという負い目もあるんだろうけど、楓を溺愛している。そんな父親の顔も見せるのがいいんですよね。アントニオは武骨なところがたまらない。ちょっと暑苦しいキャラだけど(笑)、ネガティブで繊細な一面も。彼の持つ独特な雰囲気が最高に好きです。アントニオはどうなっちゃうの~!って、イチ視聴者として楽しみたい気持ちも(笑)」今の時代に合っているニューヒーロー像。ガンダムシリーズをはじめ、多くのロボットアニメやヒーロー作品を手がけてきた加瀬監督が示唆する、本作のもうひとつの魅力がヒーローたちの戦闘スタンス。「『ウルトラマン』系の旧来の戦闘作品は私も好きですが、宇宙から来た助っ人が地球を荒らす怪獣をやっつけて、人間を守ってくれる。でも『TIGER & BUNNY』のヒーローは決して敵を殺さない。彼らの役目は悪人を取り押さえて、警察に引き渡すこと。それ以上は許されないし、違反すればヒーローの資格は奪われる。そんな“ヒーローシステム”の仕組みも魅力的。敵をやっつけてしまわない、今の時代に合った新しいヒーロー像だと思います」ビギナーの方にも、この新作を機にタイバニの世界を体験してほしいと作り手として猛プッシュ。「新キャラが導線になり、作品の概要がわかる作りになっているので、シーズン2から見ていただいても大丈夫。そこで面白いなと思ったらシーズン1や劇場版に遡っていただければと。作品の世界観を深く知ることで、またシーズン2を見返したくなると思います」加瀬充子さん女性アニメ監督として日本で初めてロボットアニメの演出を担当。監督作品に『最終兵器彼女』『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』など。『TIGER & BUNNY 2』シュテルンビルトの街の平和を守るため、所属企業のイメージアップのためにヒーロー活動を続ける鏑木・T・虎徹とバーナビー・ブルックス Jr.。今ではヒーローも増加し、シュテルンビルトにも新人ヒーローが加入。先輩ヒーローとしての活躍も期待される虎徹とバーナビーだが、果たして…。4/8よりNetflixにて全世界独占配信。©BNP/T&B2 PARTNERS※『anan』2022年4月6日号より。取材、文・関川直子(by anan編集部)
2022年04月02日アニメとコラボした客室や、推し活グッズを用意するなど、非日常空間で推し活を楽しめるホテルステイが注目の的!自分へのご褒美や、大画面でアニメ観賞を楽しみたい時、はたまた推しの誕生日祝いなどにもホテルは利用価値大。夜通しアニメ三昧!推しと一緒に眠る幸せ。アニメ作品の世界観に浸れたり、推し活を応援するプランを実施し、一晩中大好きなアニメを楽しめるホテルが続々登場している。なかでもアニメ好きを虜にしているのが、クールジャパンの一大発信地「ところざわサクラタウン」に完成した「EJアニメホテル」。アニメなどの人気作品とのコラボルームをはじめ、全客室に150インチのプロジェクターと高音質スピーカーを完備。さらに1600万色を超える色彩表現を自由に操れるスマートLED照明など、最新設備を導入した空間で宿泊体験ができる。部屋全体を推し色に包み、推しの祭壇などで部屋を飾り、一日中推し活を楽しみたいアニメファンの予約が殺到。DVD&BDプレーヤーをレンタルできるだけでなく、アニメ専用チャンネルも見られるので、好きなだけアニメ観賞ができる。コラボルームでは、専用スマホを使ったゲームを用意し、ミッションをクリアすると、オリジナルのキャラクターボイスが聴けるという、うれしいサービスも。アニメや声優のイベントなど、推しに会える機会が減っている今こそ、ストレスフルな日常を離れて、スペシャルな空間で推し活を思う存分楽しむホテルステイがおすすめ。同じものを愛でる者同士で情報交換したり、魅力を語り合ったり、テンション上がりまくり。モチベーションもアップし、さらに推しへの愛は増すばかり!ところざわサクラタウン日本最大級のポップカルチャーの発信拠点として話題を集める新スポット。ミュージアム、神社、ホテル、イベントホール、ショップ&レストランなどが集まる。埼玉県所沢市東所沢和田3‐31‐3TEL:0570・017・396営業時間・定休日は施設によって異なる【EJアニメホテル】好きな作品とともに過ごせる、細部にまでこだわり抜いたホテル。“好きな物語に、泊まる。”を理念としたコンセプトホテル。人気声優の声で案内されるエレベーターをはじめ、アニメやコミック、ゲームなどの作品の世界観をさまざまな形で演出。スーペリアや和室といった客室は、映像音響照明設備が整った全6タイプ。大人気のイケメン悪魔調教ゲーム『Obey Me!』のコラボレーションプラン(~6月8日)など、人気作品とコラボし、作品の世界観を反映させた客室やフルコースのディナーが人気。1泊¥21,780~。EJアニメホテル「Obey Me!」コラボルーム ©2019‐2022 Obey Me! Official. All rights reserved.客室のプロジェクターは、色鮮やかな4K相当の高画質の映像が楽しめる。【武蔵野坐令和神社】アニメファンが足を運ぶ、アニメ聖地88か所の一番札所。天照大御神(あまてらすおおみかみ)と素戔嗚命(すさのおのみこと)が御祭神。二柱を総称し、映画やアニメ、コミックなど、全てのコンテンツに宿る神威を尊称して「言霊大神(ことだまのおおかみ)」と呼ばれている。アニメツーリズム協会が選定するアニメ聖地88の一番札所インフォメーションスポットで、聖地巡礼に向かう旅行者の安全祈願も行ってくれる。『ファイナルファンタジー』シリーズのキャラクターデザインを手がけた天野喜孝さんによる拝殿の天井画も必見。10:00~16:30火曜休(祝日の場合は翌平日休)神社も隈研吾さんがデザイン監修。境内にはアニメ聖地88に選ばれているアニメ作品のタイトルが書かれたのぼり旗が並ぶ。右・パステルカラーの「木製御朱印帳‐七宝‐」¥3,800。左・〆柄が印象的な「締切守」¥800。【角川武蔵野ミュージアム】日本が世界に誇る、アニメの企画展も随時開催。アート、文学、博物のジャンルを超え、あらゆる知を再編成したミュージアム。「グランドギャラリー」「EJアニメミュージアム」では、多彩な企画展を随時開催。常設の「本棚劇場」「マンガ・ラノベ図書館」でもイベントが催され、メインカルチャーからポップカルチャーまで多角的に文化を発信。隈研吾さんが手掛けた建築も。スタンダードチケット¥1,200。10:00~18:00(金・土曜~21:00、最終入館は閉館の30分前)第1・3・5火曜休(祝日の場合は翌平日休)作品を取り巻くエンターテインメント全体を紹介する「EJアニメミュージアム」。©2021 異世界みゅーじあむ KADOKAWA約8mの本棚が圧巻の「本棚劇場」。©角川武蔵野ミュージアム「マンガ・ラノベ図書館」の所蔵は3.5万冊以上。【東京ドームホテル】東京ドームが見える部屋で、推し活ホテルステイ。コンサートの聖地とも呼ばれる東京ドームに面した客室に、プロジェクターとBlu‐rayプレーヤーを完備。ミラーボールやペンライト、窓枠の装飾用のワイヤーなども用意しているので、存分に推し活が楽しめる。「推し色デコレーションケーキ」も別料金で注文可能。1日6室限定。5月末まで。1泊1名¥8,900~。東京都文京区後楽1‐3‐61TEL:03・5805・2222【東京ディズニーリゾート・トイ・ストーリーホテル】『トイ・ストーリー』一色のホテルが、4月5日オープン。日本で5番目のディズニーホテルは、ディズニー&ピクサー映画『トイ・ストーリー』シリーズがテーマ。映画の第1作に登場するアンディの部屋をイメージした、全595室の客室数を誇る。おもちゃの世界に入り込んだような遊び心ある作りが随所に感じられる。1泊1室¥26,500~(3月18日時点)。千葉県浦安市舞浜1‐47TEL:0570・00・1928©Disney©Disney/PixarSlinky(R) Dog © Just Play LLCMr. Potato Head(R) and Mrs. Potato Head(R) are registered trademarks of Hasbro, Inc. Used with permission. © Hasbro, Inc. All Rights Reserved.ETCH-A-SKETCH- ©2021 and (R) Spin Master, Ltd. All Rights Reserved※『anan』2022年4月6日号より。写真・森山祐子漫画・ウラモトユウコ取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2022年04月02日愛くるしい動物たちには裏の顔があり、複雑な人間模様が絡み合う――。昨年、地上波で放映され話題を呼んだTVアニメ『オッドタクシー』。本編を再構築した、大注目の映画版『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』は、個性的な声優陣も特徴です。ここでは、ダイアンのお二人にお話を聞きました。津田篤宏(ホモサピエンス 馬場役)、ユースケ(ホモサピエンス 柴垣役)劇中に登場するお笑いコンビ・ホモサピエンスを演じたダイアン。芸人のガチな掛け合いは物語を一層リアルなものにし、ファンからは絶賛の声が上がった。声優(ほぼ)初挑戦という二人に、収録を振り返ってもらった。――『オッドタクシー』が初めての声優のお仕事になるんですよね。津田:そうです。前にアニメの収録現場に取材に行って、チロッと出させてもらったくらい。ユースケ:その時の経験があったからスッと役に入れましたね。津田:いや、一言しか喋ってへん(笑)。経験のうちに入らない。――演技は難しかったですか?津田:「柴垣」が全然言えない時があって、最終的に「お前」に変えてもらいました。ほら、「柴垣」ってすごく難しい名前でしょ?ユースケ:いや、インド人みたいな名前やったらわかるけど、柴垣なんて巷に溢れてるやんか。だから僕、ブースの外出たんですよ。一人のほうがいいかな、柴垣がおると萎縮するかなと思って。津田:なんで萎縮すんねん(笑)。ユースケ:タバコを2本吸って戻ったら、まだ柴垣柴垣言うてて。え、ずっと言うてたん?監督さんもどんだけ頑張んねんと思って。津田:お前も映画のアフレコ、全然言えてなかったやんか。ユースケ:「盛ってる」のイントネーションが関西弁と違くて。で、監督さんがテンパってたから「とりあえず落ち着いてください!」って言うていったん止めて。津田:なんで監督がテンパんねん。あと止めるなよ。――(笑)。馬場と柴垣の性格は、普段のお二人とは違います?津田:全然違いますね。僕、普段あんなおっとりしてないですもん。ユースケ:柴垣はお笑いへの熱が前面に出てて、あの姿勢とかトガリは僕そのまんまですね。津田:全然ちゃうやんけ(笑)。ユースケ:熱いんで。津田:劇中で事件に巻き込まれた柴垣が「おもろいやんけ」なんて言うんですけど、西澤(ユースケ)はいのいちばんに逃げる。ユースケ:柴垣がやってたキャバクラのボーイも経験済みですし。津田:うそつけ!お前、とんかつ屋でしかバイトしてへん。ユースケ:キャバクラのシーンではとんかつ屋さんでバイトしてた時の感じを出しました。とんかつ屋さんで働いてよかったです。――(笑)。好きなシーンは?津田:彼女(二階堂ルイ)と楽屋でハグするところです。すげードキドキした。演じた三森すずこさんと映画のアフレコでご挨拶できた時は、勝手に“やっと会えた”みたいな感覚になりました。ユースケ:僕は、第6話の最後で馬場にネタ合わせを断られた柴垣がトボトボ帰るところ。ショーウィンドーに馬場のパネルがあって。切なかったですね。またトニーフランクの曲が芸人の歌やから。――映画の見どころは?津田:大満足の仕上がりになってると思います。新発見もあるし。ユースケ:アニメを見てはった人も見てなかった人も楽しめる。安心して観られると思います。津田:第三者からの視点で描かれてるのが興味深いよな。ユースケ:…正直、僕は小戸川には何かあると思ってたんです。津田:そらそうやろ。主人公やぞ。ユースケ:早くから気づいてた。津田:ンフ(笑)。小戸川のその後が気になる人はぜひ!ホモサピエンス 柴垣/馬場野心を持つイノシシの柴垣(CV:ユースケ/ダイアン)と脳天気なウマの馬場(CV:津田篤宏/ダイアン)による中堅お笑いコンビで、N‐1グランプリの準決勝進出の常連。コンビ格差に悩む。中学の同級生だった二人が2000年に結成。『ダイアンのTOKYO STYLE』(TBSラジオ)に出演中。『ダイアンのガチで!ごめんやす』(群馬テレビ、BSよしもと)が、4月8日スタート。YouTube「ダイアン公式チャンネル」も配信中。津田さん(写真右)・すべてスタイリスト私物ユースケさん(写真左)・カバーオールジャケット¥89,990(ボストック TEL:03・3470・2221)その他はスタイリスト私物『オッドタクシー』東京のど真ん中で個人タクシー運転手として働く、天涯孤独の小戸川。客との何気ない会話を重ねながら平凡な日々を送っていたが、次第に巷で話題の女子高生失踪事件に巻き込まれていく。2021年4月から6月にかけてテレビ東京系で放送。4月1日に『映画オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』が公開。©P.I.C.S./映画小戸川交通パートナーズ©P.I.C.S./小戸川交通パートナーズ※『anan』2022年4月6日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・内野陽文ヘア&メイク・寺田英美(e‐mu)取材、文・飯田ネオ(by anan編集部)
2022年04月01日昨年、地上波で放映され話題を呼んだTVアニメ『オッドタクシー』。愛くるしい動物たちには裏の顔があり、複雑な人間模様が絡み合う。本編を再構築した、大注目の映画版『映画 オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』に迫る。『オッドタクシー』にハマる3つのポイント。POINT1:引き込まれる会話劇本作の最大の魅力ともいえるのが、脚本家・此元和津也さんによる巧みなフレーズ。例えば第1話の病院での小戸川と医者の剛力とのやり取りは、「小戸川…、早いところ結婚したらどうだ?」(剛力)、「『We Are The World』のブルース・スプリングスティーンより唐突だな」(小戸川)、「アル・ジャロウのあとに入ってくるやつな」(剛力)とラリーが続く。また第3話のサウナの場面では、通りすがりの客が「最初にフリースタイルしたのはK.I.Nだよ確か」「えっ、MELLOW YELLOWの?」とコアなヒップホップネタを繰り出したことも。聞き耳を立てたくなる。POINT2:かわいいけど、本格サスペンス小戸川はセイウチ、友人の柿花はシロテテナガザル、人気アイドルのミステリーキッスはイヌやネコ…と登場人物はみんなキュートな動物たち。しかし第1話の序盤から練馬区の女子高生失踪事件が報じられ、女子高生を乗せたと思われる、小戸川のタクシーのドライブレコーダーを欲しがる人物が複数現れるなど、不穏な空気が漂い始める。登場するキャラクターは全員ひとクセもふたクセもあり、SNSに依存する青年や、指名手配中のチンピラ、カタギではなさそうな謎の組織、癒着に手を染める警察官など、裏の顔があることがわかってくる。POINT3:めくるめく人間ドラマメインストーリーは小戸川の物語だが、タクシー運転手という不特定多数の乗客を乗せる職業がハブとなり、様々な人生が交錯する。バズることしか頭にない樺沢、元カレとの関係に悩む白川、課金厨の田中、マッチングアプリで年収を偽る柿花、コンビ間格差に悩む芸人・ホモサピエンスなど、独立した物語が並走し、思いもよらない繋がりがあちこちで生まれていく。やがて小戸川の人生にも影響を及ぼし、なぜ広い家で一人暮らしなのか、フラッシュバックするイメージは何を表しているのかなど、様々な謎が明らかになっていく。声優陣にも注目!芸人も多く参加した、個性的なキャスト陣も本作の特徴。ここでは、白川役の飯田里穂さんのインタビューをお届けします。飯田里穂(白川役)――TVシリーズ『オッドタクシー』は回を重ねるごとにその世界観に引き込まれる、不思議な魅力を持ったアニメだったと思います。飯田さんはこの作品と出合った時、どんな印象でしたか?はじめにお話をもらった時は、キャラクターの相関図が手元にあり、「飯田さんはアルパカです」って言われたんです。意味がわからず、「え、どういうこと?」って戸惑いました(笑)。ポップでかわいらしい動物アニメなのかなと思いきや、台本を読むと全然そんな感じではなくて。私は物語のラストを知らなかったので、「この人が元凶なの?」「もしかして白川さんも悪者?」ってみなさんと一緒に謎解きをするような感覚でアフレコをしていました。――物語のヒロイン的存在である白川を演じる際に、こだわったところはどこでしょう。監督から「隣の人と喋ってるくらいの自然体な感じで」とお願いされたので、最初に自分の中でイメージしていたものよりもだいぶ引き算した演技をしています。この仕事をしていると声に何かをプラスすることを求められるほうが多いので、マイナスするのってけっこう難しいんです。だから少し不安に思っていた部分もあったのですが、出来上がったものを見てみたら私たちの声が作品に見事にハマっていて、すべてに合点がいきました。――声優だけでなく、お笑い芸人やラッパーなど様々なジャンルで活躍する方が出演されているのも特徴ですね。アフレコが別々だったので直接お会いすることはなかったのですが、完成した作品でダイアンさんやミキさんの声を聞いた時に「私に求められていた自然体の演技ってこれだったのか!」と感じました。独特の間や会話のテンポなど、あれは芸人さんにしかできないだろうなと。――飯田さんのお気に入りのシーンはどれですか?えー、選べない!白川さんのカポエイラはもちろん好きだし…。見ていて感動したのは、柿花と黒田がサウナにいるシーンです。二人が会話しているようで、実は別の人と電話してたっていう。ああいうのもちょっとコントっぽいですよね。『オッドタクシー』はどのキャラクターにも少しずつ共感できるポイントがあるところがすごいと思うのですが、私はやっぱりドブさんが一番好き。大人の色気を感じます。――映画化されると知った時はどう感じましたか?映画になるということはそれだけ作品を愛してくれている方々がたくさんいるということだと思うので、素直に喜びでいっぱいです。久しぶりに白川さんに再会できたのも嬉しかったですね!「ちゃんと以前と同じように演じられるかな?」と少しドキドキしましたが(笑)。――劇場のスクリーンで彼らにまた会えると思うとワクワクします。飯田さんの思う、映画の見どころを教えてください。TVシリーズを再構築し、ストーリーをより深掘りするような内容になっているので、いろんな人物にスポットライトが当たるのではないかと思います。それだけでは終わらず、TVシリーズ同様にびっくりするような仕掛けもあるので、最後の最後までぜひ観てもらいたいです。どうやらキャスト陣もまだ知らないカラクリがあるらしく…私も劇場へ観に行くのを本当に楽しみにしています!白川剛力医院で働くアルパカの看護師。時折コミカルな一面を覗かせる。小戸川に好意を抱き、大胆な行動に出る。ダイエットのためにカポエイラを始め、基本は習得済み。(CV:飯田里穂)いいだ・りほ埼玉県出身。『天才てれびくん』シリーズ出演など子役としての活動を経て、2010年に『ラブライブ!』で声優デビュー。作中に登場するアイドルグループ「μ’s」の一員として紅白歌合戦にも出場。ドレス¥80,300(ISSEY MIYAKE TEL:03・5454・1705)その他はスタイリスト私物『オッドタクシー』東京のど真ん中で個人タクシー運転手として働く、天涯孤独の小戸川。客との何気ない会話を重ねながら平凡な日々を送っていたが、次第に巷で話題の女子高生失踪事件に巻き込まれていく。2021年4月から6月にかけてテレビ東京系で放送。4月1日に『映画オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』が公開。©P.I.C.S./映画小戸川交通パートナーズ©P.I.C.S./小戸川交通パートナーズ※『anan』2022年4月6日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・津野真吾(impiger)ヘア&メイク・樋笠加奈子取材、文・飯田ネオ大場桃果(飯田さん)(by anan編集部)
2022年04月01日「ようこそジャパリパークへ」の大ヒットで知られるアニソンクリエイター&シンガーのオーイシマサヨシさん。徹底して“原作原理主義”を貫く制作や、業界の中心から見たアニソンの未来を伺いました。自分、監督、そしてファン。多くの視点を活かしたい。ジャンルを問わず次々と曲を生み出し“日本一忙しいアニソンアーティスト”の異名をとるオーイシマサヨシさん。アニメ作品とその世界観を音楽で表現する楽曲との関係性をどう捉えるのだろう。「アニソンは、作品と直系で繋がる子どもであり、名刺代わりにもなりますよね。同時に、最終回の後もそのメロディを聴けば、視聴者にとって思い出深いシーンが思い浮かぶ栞のようでもあって。そんな重要な役割を果たしているアニソン作りは、毎回やりがいを持ってやらせていただいています」アニソンが視聴者の心を掴めるかは、イントロにかかってるとも。「30分枠のアニメのオープニングやエンディングは90秒で作られていることがほとんど。その前後0.5秒は無音でないといけないので、実質的には89秒しかありません。この89秒間でどう曲を構成するかがアニソンクリエイターの腕の見せどころ!特に“掴みの2秒”が最重要で、代表的な例でいうと『残酷な天使のテーゼ』のインパクトある頭サビなどですが、実際に売れたアニソンのほとんどは最初の2秒間で作品の世界観を印象付けています。楽曲提供した『ようこそジャパリパークへ』では、牧歌的で平和な空気を出すために、頭でホルンを使いました」自身も大のアニメファン。楽曲を制作する上で掲げる“原作原理主義”こそが、オーイシさんの曲が作品ファンに支持される大きな理由でもある。オファーを受けたら、原作を徹底的に読み込み、台本やキャラクターデザインなど、手に入る資料にはすべて目を通す。ファンのSNSをよく見ていることでも有名だ。「アニメファンの方々の間では『あなたのツイートの背後にオーイシマサヨシがいる』と冗談で言われるほど(笑)、自分が携わらせていただく作品に関するSNSはすごく見ていますね。僕の主観的視点だけで作ってしまうと、原作にないことを盛り込んでしまったり、キャラクターの心情を勝手に読み取ってしまったり、解釈の拡大を招きかねないんです。それを避けるために、監督さんの視点、そして、僕よりも原作に詳しく作品を愛するファンのみなさんの視点と、できるだけ多くの視点を設けます。そして、それらが交わるところを探り、作品が最も“映える”曲の構成を考えるのが僕のアニソンの作り方。そうすることで、主観で勝手に原作にはないことを書いてしまう解釈の不一致や、作品やキャラクターに熱い想いを持ったファンの方々が求めていないことをしてしまう、いわゆる地雷を踏む行為も避けられるんです」さまざまな立場の人たちが関わるアニメ制作。クライアントからのリクエストも多そう。「明らかにこちらのほうがいいという答えをこちらが持っている場合以外は、リテイクはお受けしています。丸々作り直すこともありますし、1つの作品に対して7曲作ったこともありますよ。でも、それは全然苦じゃないですね。僕は、とにかく作品の役に立ちたい。その気持ちが何よりも先行しているので、アニソンは、あくまで自分のためではなく、聴いたファンの方々の曲。みなさんが喜ぶ顔を見て評価していただくことがシンプルに嬉しいんですよね。でも時々、初稿でOKが出るホールインワンの曲もあるんです。ちなみに『ようこそジャパリパークへ』は、ニアピンぐらいでした(笑)」さまざまな動きが進行し変革期真っ只中のアニソン界。大石昌良名義でやっていたバンド活動を経て、アニソンクリエイター&アニソンシンガーになって約8年。アニメを取り巻く環境は大きく変わり、動画配信サイトでの視聴がすっかり定着した。「動画配信サイトの“イントロをスキップ”に、僕は、アニソンの存在危機を感じています。イントロを飛ばされてしまってはあまりにも寂しいですし、アニメ映像とともに主題歌に価値を見出し、尊いと思ってもらえる曲作りがますます必要とされてきていますね」昨年、LiSAさんが歌い、爆発的ヒットとなった「紅蓮華」には、大いに刺激を受けたそう。「アニソンがこんなにも多くの人に愛されるコンテンツになっていたということを改めて感じました。より多くの方々に聴いてもらえるようになったということは、気が抜けないぞと背筋が伸びる思いでしたね。ただ、オリコンチャートに入りたくてアニソンを作っているクリエイターってほとんどいないんですよ。『紅蓮華』にしても、『鬼滅の刃』という作品を高い解像度で表現した結果、アニメファンの間で局所的な熱を帯び、そこから溢れ出た作品愛が一般層に伝わって大ヒットに繋がったと思います。今後、アニメファンだけではなく、お茶の間の一般層にも耳を傾けてもらえるアニソン作りを意識しないといけないけれども、やっぱり根本には“作品への愛”がアニソンに必要とされていることは変わらないと思いますね」クリエイターとして、ファンとして、作品やアニソンに愛を注ぎ続けるオーイシさん。今後のアニソン界を見据えて、こんな予想をしてくれた。「完全な僕の予想ですけど、アニソン業界は二極化していくんじゃないでしょうか。一つは、いわゆる“電波ソング”のようなものすごくコアなファンに向けた、局所的に熱量を持った楽曲が濃度を増していくパターン。もう一方は、J‐POPとして昇華できる、オシャレで聴きやすい一般層向けですね。後者では、King Gnuさん、米津玄師さん、Official髭男dismさんなどJ‐POP、J‐ROCKの方々がアニメ作品へ深い愛を注いで曲を紡ぎ、作品との相乗効果でヒットしていくことが増えていきそう。今後も、J‐POP、J‐ROCKのアーティストがアニソンシーンで活躍して、アニソンクリエイターは、アニメの世界を超えてドラマの主題歌やCMソングを手掛けていく。そんなジャンルのボーダーレス化が始まってきている今、アニソン界はちょうど変革期にあると思います」1980年1月5日生まれ、愛媛県出身。2001年、バンド「Sound Schedule」メンバーとしてデビュー。’14年よりオーイシマサヨシ名義で活動開始。ワンマンライブ「エンターテイナー」Blu‐ray&DVDが発売中。メッシュブルゾン¥63,250(RYU)ボーダーニット¥25,300(CULLNI)ハイネック¥17,600(SHAREEF)スウェットパンツ¥28,600(LOCAL AUTHORITY)ソックス¥2,750(NEW ORDER)スニーカー¥81,400(ALES GREY)※『anan』2022年4月6日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・宇都宮春男(YKP)ヘア&メイク・瓜本美鈴取材、文・小泉咲子(by anan編集部)
2022年03月31日大切な癒しの時間だったり、現実にはない刺激をもらえたり…。アニメの楽しみ方は人それぞれ。アニメを愛してやまない俳優・白石 聖さんに、好きな作品に夢中になること、推しのいる喜びを聞きました!大好きなアニメに出合い、自分ってこんなに何かに熱中できるんだ!と発見が。白石聖さんがアニメの世界に心を奪われたのは小学生の頃のこと。シュールなギャグを含んだ作品が好きで、中学時代には『銀魂』や『ギャグマンガ日和』にハマっていたのだそう。「これまでの人生で最も熱中した作品が『銀魂』です。もともと原作漫画のファンだったのですが、アニメ化されたものを見たら、まさに私がイメージしていた通りで…。セリフがとても多い作品なので“これをアニメでどう表現するんだろう?”とワクワクしていたら、声優さんたちの声や音楽が絶妙なリズム感に仕上がっていて感動しました。アニメを追いつつ、漫画やDVD、グッズなども買い集めて、中学時代は“私もこの世界へ行きたい!”ってずっと思っていましたね。私は『銀魂』に登場する沖田総悟というキャラクターが大好きなのですが、彼の誕生日にはケーキを買ってきてひとりで祝ったりもしていました(笑)」学生時代は少年漫画が原作のバトル系アニメばかり見ていたという白石さんだが、いま最も気になっている作品は『ちいかわ』だと話す。4月に放送スタート予定のアニメを楽しみに、漫画をじっくり読み込んでいるところだ。「社会人になった今は、アニメを見ることが私にとっての癒しの時間になっていて。だから、ハラハラする作品よりゆったりできるものを求めているのかな。初めてSNSで『ちいかわ』を見つけた時は“これ、いったいどういうストーリーなんだろう?”ってイマイチ理解しきれなかったんです。でも、読み続けるうちにいつの間にかこの不思議な世界観の虜になっていて。今では、新しい話が更新されるのを心待ちにしています。こんなに癒し系の可愛らしいキャラクターなのに、内容はけっこう奥深くて、人間味に溢れていますね。ちいかわたちの心優しいやりとりを見ていると、些細なストレスも吹き飛んじゃいます!あと、『ちいかわ』はグッズ展開が豊富なので、お気に入りをコレクションすることも楽しみのひとつ。私はぬいぐるみやクリアファイル、フィギュアやラバーストラップなどを持っていて、次はもうちょっと大きいサイズの“うさぎ”のぬいぐるみを手に入れたいなと狙っているところです」白石さんが出演する、5月スタート予定のドラマ『カナカナ』も、西森博之さんの漫画が原作となっている。大好きな作品が映像化される感動を知っているからこそ、今回の出演に対しても熱い想いを抱えているようだ。「原作があってこそのドラマ化なので、その世界観にしっかり入っていきたいと思います。でも、ただそのまま実写化するのではなく、生身の人間ならではの動きや立体的な演出を楽しんでもらえるように工夫したいとは考えていて。ちゃんと原作をリスペクトしつつ、“どうしたらもっと面白くできるかな?”と自分なりに研究しながら演じていきたいと思っています。私自身、アニメをきっかけに好きな声優さん繋がりで別の作品を見るようになったり、恋愛アドベンチャーゲームの世界に足を踏み入れてみたり、自分の楽しみがどんどん広がっていく感覚がありました。それと同じように、私の演技を見てくれた方が原作や他の作品にも興味の幅を広げてくれたらうれしいです」My Recommendation『ちいかわ』『なんか小さくてかわいいやつ』、通称『ちいかわ』。イラストレーター・ナガノが2020年よりTwitterで連載を開始。可愛らしいキャラクターと独特の世界観が人気となり、2021年には講談社から単行本が刊行された。2022年4月4日から、フジテレビ系『めざましテレビ』内でテレビアニメが放送予定。©nagano / chiikawa committeeしらいし・せい1998年、神奈川県生まれ。2016年に俳優デビューを果たし、映画やドラマ、ラジオなどで幅広く活躍。NHK総合で5月から放送予定のドラマ『カナカナ』では主人公のマサに恋する女性・沙和役を務める。トップス¥33,000ショーツ¥26,400(共にTELA/ティースクエア プレスルーム TEL:03・5770・7068)ネックレス¥209,000(オー/ハルミ ショールーム TEL:03・6433・5395)※『anan』2022年4月6日号より。写真・柏田テツヲスタイリスト・早川すみれ(KiKi inc.)ヘア&メイク・高橋里帆(HappyStar)取材、文・大場桃果(by anan編集部)
2022年03月30日笑ったり、感動したり、大きく価値観を変えられることも。アニメはいつだって、私たちに寄り添ってくれる人生のバイブル的存在。トップランナーとして時代を創作し続ける、表現者、作家の綿矢りささんに「アニメ史」を伺ってみました。“キャラ萌え”期を経て、日常を描くことのすごさが、ようやくわかってきました。高校3年生のとき、小説「インストール」でデビュー。以降、数々の話題作を世に送り出してきた綿矢りささん。幼少期からアニメに触れるも、その付き合い方は時代によって変化していったそう。「中高時代は弟が好きだった『幽遊白書』を一緒に見て、蔵馬というキャラにハマったり、友人の影響で『エヴァンゲリオン』も全作制覇。ただ、当時の私は周りに感化され、流行りに流されていた部分もあったと思います」自分の好きなアニメとは…。それに気づかせてくれたのが、大学生の頃に見たアメリカの人気アニメ『ザ・シンプソンズ』だった。「シンプソン一家の日常を描いたギャグアニメなんですが、今でも大好き。考えてみれば、『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』も好き。自分が惹かれるのはギャグタッチの家族ものなんだなって」さらに、「『ザ・シンプソンズ』で初めて“失礼”というものを学んだ(笑)」と当時の衝撃を明かす。「シンプソン一家は個性的で愛すべきキャラなんですが、本当に好き放題やっていて。生々しい“失礼さ”で笑わせにくる表現方法をこの作品で知りました。風刺の効かせ方など、小説を執筆する上でも大変影響を受けましたね」『ザ・シンプソンズ』同様、創作中に頭に浮かぶ作品があるという。それが『千と千尋の神隠し』。「映画に登場する“カオナシ”が忘れられなくて。想像の世界のキャラクターですが、どこかリアルで現実にもいるような気がする。ちょっと不気味な雰囲気の人物を書くときには思い出しますね」現在は1児の母でもある綿矢さん。息子さんと一緒にアニメを楽しみ、心に響いた作品も多いよう。「『あたしンち』と『新あたしンち』は息子の影響でどハマり。夫も一緒に家族で見ながら、作品の感想を話すこともあるのですが、それで思い出すのが『ちびまる子ちゃん』。小さい頃、作品に出てくる西城秀樹さんや山口百恵さんについて親に質問していたなって(笑)。画面の中の家族とそれを見ている自分の家族、その2家族が賑やかに楽しんでいる感じも好きなんです。キャラ萌えしたり、筋の凝ったものを見るより、日常系アニメでほっこりするほうが私には向いていると再認識しました」家族がテーマの日常系作品に対しては作り手としての見解も。「私が書く恋愛小説では片思いの人と成就するなど、人間関係が完成されるまでを描いています。でも、日常系アニメは人間関係が完成してからを描き、だからこそ長く続くし、その分の大変さもある。例えば、『サザエさん』にしても登場人物は年を取らず、毎年同じ行事に向き合う。その繰り返しに耐えていけるのもすごいな、と。それは、デフォルメされたキャラが動き、声優さんの声が入るアニメの世界だからできること。私も、男女がくっついた“その先”を書いてみたい。そんな願望を抱くのも、アニメの影響です」ザ・シンプソンズシニカルな笑いがツボるアメリカ史上最長のTVアニメ。「“シンプソンズのバートみたい”と『勝手にふるえてろ』(綿矢さんの著書)のセリフに登場したこともあるくらい影響を受けた作品。執筆時はDVDを買って、夢中で見ていた頃だと思います」。架空の街・スプリングフィールドに住むシンプソン一家を通して、アメリカ中流階級の文化や社会状況をブラックユーモアふんだんに描くギャグアニメ。1989年に放送開始。世界各国で人気を呼び、現在は60か国以上で放送されている。©Capital Pictures/amanaimages千と千尋の神隠し国内外の映画賞を受賞、ジブリ映画No.1ヒット作。「宮崎駿監督の作品はすべて見ていますが、『千と千尋の神隠し』も映画館に何度か足を運びました。カオナシは、千尋に砂金を差し出して気を引こうとするけれど、成功しなかったら豹変する。顔は同じまんまで。そういう人って現実にもいますよね」。2001年に公開。神々の世界に迷い込んだ少女・千尋が人間の世界に戻るために様々な出会いを経て奮闘する。当時空前の興行収入を記録したスタジオジブリの長編アニメーション。©2001 Studio Ghibli・NDDTMあたしンち家族みんなで楽しめるほのぼの系アニメの決定版。「私が中高生ぐらいの時代設定なので懐かしさも。ただ、息子はちょっと違和感を抱いているようで。無口な頑固オヤジというものに馴染みがないから、『あのお父さん、なんでいつも怒ってるの?』と聞いてきたり(笑)。続編の『新あたしンち』(2015~’16年)は設定を少し現代に寄せていて、2つを見比べるのも面白いです」。2002~’09年に全330話放送。母、みかん、ユズヒコ、父の4人家族・立花家を中心とした物語。©ママレード/シンエイ綿矢りささん作家。1984年、京都府生まれ。2001年、「インストール」で文藝賞受賞。「蹴りたい背中」で、第130回芥川賞受賞。近著に『あのころなにしてた?』など。※『anan』2022年4月6日号より。写真・小笠原真紀ヘア&メイク・市岡 愛取材、文・関川直子(by anan編集部)
2022年03月30日原作であるアプリゲームに始まり、個性豊かなアイドルたちの魅力とともに、TVアニメ、イベント…と熱狂ぶりが止まらない『あんスタ』。初の映画版アニメ『あんさんぶるスターズ!!‐Road to Show!!‐』のメインキャラクターの声を担当した4名のキャストのみなさんに、7年間にわたって共に歩んできた、それぞれの役への思い入れを伺いました。森久保祥太郎:遊木 真 役性格は正反対だけど、応援したくなる子。真くんに出会ったのは今から7年前。当時すでに40を越えていたので、ずいぶんかわいらしい役にキャスティングしていただいたなと思ったのですが、ここまで長くお付き合いすることになるとは予想外でした(笑)。役作りをするにあたって、自分と演じる役との共通点を探すというのが普段のアプローチの仕方なんですが、真くんは僕とは正反対。僕も悩む時は悩むけど、切り替えが早いんですよ。でも真くんはしっかり悩んで、しっかり落ち込んで、しっかり考えて、しっかり立ち上がるんですよね。最初の頃は、「若いんだから、とっとと切り替えないと!」と思ったこともあったんですよ。僕の性格上、真くんみたいなタイプは見ていてもどかしくてね。でも、長くお付き合いさせていただいて、それこそが彼の魅力なんだって気づいたんです。実際、僕みたいなタイプのほうが稀で、たいていの人は悩んだり、落ち込んだりすることのほうが多いんだろうから、真くんのほうが共感度は高いんですよね。真くんは見ていて背中を押してあげたくなるような、応援したくなる子。彼を見ていると親心のようなものが芽生えて、そういう目線から彼を理解して気持ちを寄り添わせるという、僕としては特殊な距離感で接しています。真くんを愛してくれているプロデューサーちゃんも同じような気持ちで彼を見てくれているんじゃないかなと思いますね。映画版では、いよいよプロとしてエンタメの世界に飛び込む彼らを見るワクワク感と、いきなり世界に飛び出したゴージャスさが味わえます。真くんに関しては、泉との日常が描かれているのが印象的。普段はこんな感じなんだなというところがニュートラルに描かれていて、二人の関係性が体感できます。それに加えて、真くんの努力家な部分や葛藤が垣間見えるシーンも感慨深いです。なかでも今回はユニットの垣根を越えた関係性がいいんですよ。特に凪砂と零がカッコいい!歌と踊りがメインではないにもかかわらず、『あんスタ』の魅力が存分に感じられて、再発見もある。個人的には膝を打つ思いでしたね。もりくぼ・しょうたろう2月25日生まれ。代表作に『NARUTO‐ナルト‐』奈良シカマル役、『弱虫ペダル』巻島裕介役など多数。もし『あんスタ』のユニットに入るなら「『Trickstar』のプロデューサーになって、しなくていい苦労は排除して、どんどん成長させたい!」。ジャケット、レースシャツ 参考商品(共にZARNY/YARNY.K.K TEL:03・4577・8515)その他はスタイリスト私物梶 裕貴:衣更真緒 役真緒はみんなを支え、自分も輝けるアイドル。真緒のドラマを追ってきた今だからこそ言えることですが…いい意味で“アイドルらしからぬところ”が真緒の良さ。広い視野を持っている彼は、状況により自分がどう動くべきかを見定め、その場をいい方向に持っていく力を持っています。どこにいても、誰といても、リズムを合わせて相手を活かすことのできるバランサー。けれど、そんな気遣いのできてしまう彼だからこそ、以前は自分がどうしたいかよりも、周りのことを考えすぎてしまうという難儀な面もありました。ステージ上で輝くアイドルになるためには、やはり強烈な“個”も必要。エゴイストになりきれない性格が、どこか物足りない部分であり、彼自身、悩んできたところでもあったと思います。僕個人としては、彼の気持ちはとてもよく理解できましたし、ありのままの真緒でもじゅうぶん素敵だったわけですけれど…それでも彼は、数々の葛藤を乗り越え、自分と向き合い、ついにその壁を打ち破ったんです。縁の下の力持ち的な役回りが得意だった真緒が、みんなをサポートしつつも、自分自身も強い光を放てるようになったんです。これはもう間違いなく、真緒の最強のアイドル伝説へのフラグってことですよね!(笑)たった数十ワードのアプリゲーム収録から始まった『あんさんぶるスターズ!』の歴史。文字通り、共に作品を育ててきてくださったプロデューサーのみなさんのおかげで、このたび映画化にまでたどり着くことができました。彼らが映画館のスクリーンを所狭しと動き回る姿をご覧いただける事実に、大きな喜びを感じています。そして、なんといっても今回の舞台はニューヨーク!日常を飛び出し、ワールドワイドに活躍する彼らを見られるのはシンプルに嬉しいですよね。個人的には真と真緒の絆にフォーカスを当てていただけたことに感慨深さを感じています。加えて、今回はグループの垣根を越えたイベントでもあり、幼馴染みである凛月との関係性が描かれているのもポイント。学院という場を離れて、等身大の若者としての一面を知ることができる構成にもなっているので、もっと彼らのこと…真緒のことを好きになってもらえる映画になっていると思います。かじ・ゆうき9月3日生まれ。代表作に『進撃の巨人』エレン・イェーガー役など多数。もし『あんスタ』のユニットに入るなら「『流星隊』は名乗りが楽しそうだし、無理やり『2wink』に入って双子に挟まれるのも面白そう(笑)。でも馴染みやすいのはやっぱり『Trickstar』かな」。衣装はすべてスタイリスト私物山下大輝:朔間凛月 役内に秘めた部分があるから、より輝ける。凛月って入り口が難しい子なんですよ。いつも眠そうで、あまり他人には興味なさそうに見えるんですけど、実は甘えたな性格だったり、周りの人を思いやれるやさしさがあったり、深掘りすればするほど魅力がわかってくる子。アイドルとしては、一歩引いたところからみんなを支えるような役割を担うことが多いですね。グループ全体を客観的に見る目を持っていて、いろんな選択肢がある中で、他のメンバーを輝かせるためには何が最適解なのか、即座に考えて行動に移すことができるのが彼の強み。凛月の頭の回転の速さは彼の言葉の端々にも表れているんですが、僕自身、演じる時は、なぜ彼がこの言葉を口にしたのか、真意に想いを馳せるようにしています。今回の映画版でも、仲間の背中を押してあげたり、相対する対象を言葉でノセたり、いろんなことを考えた上で凛月の言葉があるので、そんなに深いところまで考えているんだなって、あらためて凛月のすごさを感じました。一見やる気なさそうに見えて、実はスーパーやる気のある子なんですよ!(笑)それでいて幼馴染みの真緒にはベタベタに甘えるキュートな一面や、兄者との絆も垣間見えて、今作では凛月の魅力を今まで以上に発見していただけると思います。一方で、アイドルにはずっと未完成であってほしいという想いもあるんですよね。未完成だからこそ成長するためにもがくし、応援したい!という気持ちにさせてくれると思うから。そういう想いを内に秘めているからこそ、キラキラな部分がより輝いて見えると思うんです。僕も声優として悔しい思いをすることはあるけれど、それは別に表に出さなくていいものだとも思っています。声優という職業も、オーディションを受けては落ちるの繰り返しで、落ちた時は自分を省みて、次はどうしようって考えて…。だからこそ、役をいただいた時はがんばろうって思いますし、よりたくさんの人に観てもらって、好きになってもらえたらいいなと思うんです。悔しさをバネにして、人には見せない部分を栄養にして、僕ももっとがんばらなきゃ、と思いますね。やました・だいき9月7日生まれ。代表作に『僕のヒーローアカデミア』緑谷出久役、『弱虫ペダル』小野田坂道役など多数。もし『あんスタ』のユニットに入るなら「曲は『Knights』が好きだけど、見守りたいのは『Ra*bits』。アドニスとは肉めぐりをしたいです」。ジャケット¥81,400スラックス¥38,500(共にsemoh/Bureau Ueyama inc. TEL:03・6451・0705)その他はスタイリスト私物伊藤マサミ:瀬名 泉 役他人に左右されない泉には近さを感じます。『あんスタ』がただアイドルを育てるだけのゲームだったら、こんなに長く続いてなかったと思うんですよ。キラキラしているところも、そうでない裏側も見せてくれる、振り幅の大きさが『あんスタ』の最大の魅力ですね。泉に関して言えば、誰に何を言われようと自分を曲げない芯の強さを持ってるけど、それが周りからはわがままに見えることもある。だけど、それが泉の本質であり、彼の正義なんです。現代社会において、他人の意見に左右されないって難しいことだと思うんですけど、泉は周りからどう思われようが構わないという、かなり強烈な性格をしています。口も悪いんですよね。『何でそんなこともできないの?』って、いつも一言多いんですけど(笑)。でも本人も苦手なダンスを克服したり、自分に足りないところはきちんと補おうとする努力家でもあるんです。夢に向かって着実に進んでいくところは尊敬できますね。僕自身、他人の意見に左右されるタイプではないので、泉と似てるかも。泉ほどハッキリ嫌とは言いませんが、自分の原則や理念に反することはしたくないですし。もし自分が間違っていたら、その時はちゃんと謝ります。僕も他人から何を言われてもあんまり気にしないので、泉には親近感がありますね。でも泉にも、実は悩みがあったり、心が折れそうになることもあるんです。周りを気にしないといっても、まったく気にならないわけではなくて、そうしないと折れてしまうのがわかっているから。そういう泉の人間くさいところは、演じる上でも大事にしたいと思っています。今回の映画版はニューヨークが舞台なんですが、アプリゲームからお付き合いいただいているみなさんからしたら、ニューヨークを背景にあの子たちが立っているだけで感慨もひとしおじゃないかと思うんです。もちろん僕もそう。彼らの本当の意味でのアイドルとしての新しいスタートを大画面で見守れるのは嬉しいですね。ゆうくんこと遊木真くんとの絡みも通常運転な感じで(笑)。これぞ『あんスタ』という気持ちになっていただけるんじゃないかと思います。いとう・まさみ7月3日生まれ。劇団「進戯団夢命クラシックス」主宰で、演出・脚本・俳優・アクションディレクター。bpmメンバー。もし『あんスタ』のユニットに入るなら「ビジュアル系世代なので『UNDEAD』一択!ライブの時は楽屋モニターの最前列で観てます」ベスト¥40,700パンツ¥35,200(共にsemoh/Bureau Ueyama inc.)中に着たシャツ¥25,300(junhashimoto/COMITAS TEL:03・6277・5550)その他はスタイリスト私物『あんさんぶるスターズ!!‐Road to Show!!‐』全国劇場にて公開中。入場特典として週ごとに絵柄が変わるコースターやミニ色紙プレゼント。大川ぶくぶによる4コマ漫画「あんさんぶくぶスターズ!!」の映像も週替わりで上映決定。原作:Happy Elements監督:菱田正和脚本:木野誠太郎(Happy Elements)キャラクターデザイン:飯塚晴子©Happy Elements K.K/あんスタ!! アニメ製作委員会※『anan』2022年3月16日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)スタイリスト・小田優士(CreativeGUILD)ヘア&メイク・矢崎麻衣(森久保さん)中山芽美(e‐mu/梶さん)茂木美緒(伊藤さん)yuto(山下さん)取材、文・尹 秀姫(by anan編集部)
2022年03月14日『あんさんぶるスターズ!!』が映画館にやってきた!原作であるアプリゲームに始まり、個性豊かなアイドルたちの魅力とともに、TVアニメ、イベント…と熱狂ぶりが止まらない『あんスタ』。初の映画版アニメ公開を記念して、その見どころを解き明かします。総勢49人の個性的なアイドルをプロデュース!プレイヤーがプロデューサーとなって男子アイドルを育成する『あんさんぶるスターズ!』は2015年にスマホアプリゲームとしてスタートし、2019年にはTVアニメシリーズ化。そして今年ついに映画が公開に。当初は夢ノ咲学院アイドル科に通う高校生だった彼らも、現在はプロダクションに所属する押しも押されもせぬアイドルに。新たなアイドルユニット「ALKALOID」「Crazy:B」も加わり、現在は4つのプロダクション、14のユニット、総勢49名のアイドルたちが“アンサンブルスクエア(ES)”に集い、日本のアイドルの中心を担っている。サービス開始から7年という時が経っても今なお愛され続ける『あんスタ』の魅力を、映画の見どころとともにご紹介します!Game App夢ノ咲学院に転校してきた唯一の女子高生がアイドルをプロデュースするところから物語は始まる。TV Animeアイドルが競う舞台ドリフェスで、さまざまなユニットが個性豊かなパフォーマンスを展開!人気の秘密は?POINT 1:アイドルをプロデュースして育てていく楽しさ。アイドルをファンとしてではなくプロデューサー目線で見守ることができるのが『あんスタ』の特徴。彼らがステージで輝くためにどうすればいいかに心を砕き、誰よりも近い場所から彼らを応援することができる。ステージではキラキラしているアイドルも、その裏側では悩んだり、自分の弱さと闘ったり、もしくは誰かを傷つけてしまったり…。そのすべてを受け止めるのがプロデューサーなのだ。POINT 2:個性が炸裂するキャラクター&ユニットの数々。クセが強いキャラクターが揃っているのも『あんスタ』の魅力。個性溢れるアイドルたちは、演劇やモデルなど各方面に才能を発揮する者も多く、さらには天才すぎるがゆえに余人の理解を超えて、奇人と称される者も…。ユニットごとのカラーも特徴的で、正統派キラキラアイドルもいれば、戦隊ヒーロー系ユニット、愛らしさを前面に出したファンシーユニットなどさまざま。POINT 3:アイドルたちの葛藤や陰も描き出す、深いストーリー。ステージでキラキラ輝くのがアイドルの仕事だとすれば、プロデューサーはその裏側を見守り、支える人。『あんスタ』では学院に在学している時から彼らの成長と苦悩を追うことができる。嫌な奴だと思っても、その裏には必ずその人なりの事情があったり…。一人ひとりの物語をひもといていく楽しみと、彼らの想いを知って胸が締め付けられるような切なさの両方を存分に味わわせてくれる。POINT 4:ステージを賑やかに彩る、カラフルな楽曲たち。多数のユニットを抱える『あんスタ』はそれぞれの個性に合わせた曲が持ち味。和風ユニットの紅月なら三味線などを使った“和”な曲が多く、ワイルドユニット「UNDEAD」はバンドを彷彿とさせるギターリフが印象的。通常のユニット以外にも普段見られないメンバーの組み合わせが堪能できるシャッフルユニットや2組のユニットを掛け合わせたフュージョンユニット企画もあり、飽きさせない。映画の見どころは?1、海外の地に降り立つ、成長したアイドルたちを応援したくなる。アイドルの頂点を決める「SS」でアイドルユニット「Trickstar」が優勝してから1年。アイドル映画の祭典「IFF」に招かれ、いざニューヨークへ!海外の地に降り立った彼らは、リアルな背景もあいまって、世界に羽ばたくアイドルの姿を実感させてくれる。ユニットの垣根を越えた共闘も映画版だけの特別感!2、アプリと連動したストーリーで、楽しみが広がる!原作のアプリゲームでは、昨年12月に映画版のストーリーと連動するストーリー「SHUFFLE×静寂の黒雪」が公開。本作の物語の発端となる「IFF」(アイドルフィルムフェスティバル)にノミネートされた「La Mort」にまつわる物語が展開された。3、ユニットを超えた関係性や素の魅力が見える、フレッシュな物語。幼馴染みの衣更真緒にだけ甘えたな一面を見せる朔間凛月、真に執着心丸出しの瀬名泉など、彼らの関係性のリアルな温度感がわかる日常風景が新鮮。また、「ALKALOID」の白鳥藍良と礼瀬マヨイ、「Crazy:B」の桜河こはくの3人も新たに加わり、ニューヨークを奔走する。『あんさんぶるスターズ!!‐Road to Show!!‐』全国劇場にて公開中。入場特典として週ごとに絵柄が変わるコースターやミニ色紙プレゼント。大川ぶくぶによる4コマ漫画「あんさんぶくぶスターズ!!」の映像も週替わりで上映決定。原作:Happy Elements監督:菱田正和脚本:木野誠太郎(Happy Elements)キャラクターデザイン:飯塚晴子©Happy Elements K.K/あんスタ!! アニメ製作委員会※『anan』2022年3月16日号より。写真・内田紘倫(The VOICE)取材、文・尹 秀姫(by anan編集部)
2022年03月13日『ハケンアニメ!』のスピンオフ集『レジェンドアニメ!』について、作者の辻村深月さんにお話を聞きました。『ハケンアニメ』から『レジェンドアニメ』へ、出会った人たちが一緒に大きくしてくれた。「『ハケンアニメ!』を書き終えてから、スピンオフをいつかまた書きたいと言い続けていました。小説のご依頼が来るたびに、その機会を探っていたのですが、そうやって書いてきたものが形になって、しかも映画の公開のタイミングで送り出すことができて、とても嬉しいです」アニメ業界で働く人々の奮闘を描きanan連載時から反響を呼んだ辻村深月さんの『ハケンアニメ!』。連載スタートから10年の時を経て、実写映画版が公開されるのに先立ち、スピンオフ集『レジェンドアニメ!』がリリース。天才監督と称される王子千晴、デキるプロデューサーの有科香屋子、新人監督・斎藤瞳などハケン(覇権)を取るためにしのぎを削った面々の、ときに意外で、ときに納得しかない過去や未来のエピソードを楽しめる。「最初に書いた『九年前のクリスマス』と『夜の底の太陽』は、『ハケンアニメ!』を一緒に送り出してくれたananチームの人たちが、『こういう話が読みたい!』と言ってくれたのがきっかけになっています。私にはない発想でしたが、書いてみると『ハケンアニメ!』の裏で起こっていたとしか思えないような話になっていて。いろんな立場の人が集団でクリエイトするところに惹かれ、アニメ作りを小説の題材に選んだのですが、多くの人が関わるからこそ余白の部分がこんなにもあったことを『レジェンドアニメ!』を書きながら実感しました」王子の新人時代を描いた「音と声の冒険」は、彼の恩人であるベテラン音響監督・五條とのやり取りとともに、音響監督というアニメを見る側からは一見イメージしにくい仕事についても掘り下げている。余白から、スピンオフとしてはもちろん、独立した短編としても楽しめるほど豊かな物語を生み出すことができるのは、辻村さんのアニメに対する思いの“深化”もあるからだろう。「『ハケンアニメ!』は、ただただアニメが大好きで書いたのですが、その後、『映画ドラえもん』の脚本をやらせてもらうなど、制作に関わる機会がいくつかありました。そういった現場に行くと、私が小説で書いたことを本当にやってる!と嬉しくなって(笑)。登場人物たちの気持ちに沿って言わせていたセリフのなかにも、あとから知る感情などがいっぱいあって、なかでも音の現場により惹かれたんです。特に音全般を見る音響監督は、直接声を吹き入れたり、作曲をするわけじゃなくても、その仕事にかなり個性が出るし、経験を積まないとできない仕事なのだろうなと思いました。それを五條で描くのであれば、若いときの社会性ゼロな王子も描いてみたいと思ったのですが、私も30代から40代になったことで下の世代を見る目が変わったと思うんですよね。だから前作で五條と王子の関係をもっと書いていたら、こうはなっていなかったかもしれないし、私自身の仕事観が変わったからこそ、今回書けた人たちもたくさんいると感じています」一方、連載終了直後から辻村さんが温めてきたテーマのひとつが、今回書き下ろした「ハケンじゃないアニメ」。その期一番とされる「覇権アニメ」を争うフィールドにはいないものの、誰もが必ず通ってきたような長寿アニメを作る現場の話だ。「これも『ドラえもん』のスタッフのみなさんと会って、次に向けてバトンを渡していく姿を見られたことで、出てきた発想でした。『名探偵コナン』の元企画プロデューサーの諏訪(道彦)さんに取材を受けていただいたことも大きかったですね。『コナン』はこれまで何回も覇権を取っている作品ですし、アニメを長く続けていくことは継承なのだと感じることができました。この10年でアニメを取り巻く状況も変わってきているので、当初は瞳も王子も出てこない次世代の話を書くべきなのかなと思っていました。だけどその傍らで続いてきたものを書くことにこそ、意義を感じたんです」「ハケンじゃないアニメ」に登場するのは、『お江戸のニイ太』という30周年を迎える国民的アニメ。プロデューサーの和山は、『ニイ太』のように安定を求められる制作現場でモチベーションを保つ難しさを感じていた。そんななかOPアニメを担当することになったのが、旬の監督と目される斎藤瞳。しかし和山の過度な期待とは裏腹に、瞳は『ニイ太』をほとんど知らないことが判明。「『ハケンアニメ!』はアニメ愛の話だと、私自身も言ってきたのですが、だからといって愛を言い訳にするのもカッコ悪い。愛情とか自分の思い出などには寄りかからない仕事のしかたを、瞳を通して描いてみたかったんです。愛を押し出して仕事をするやり方ではないけれど、作品やファンに対して敬意を持っている瞳が、長く続いているアニメの現場にゲストとして加わることで、見えてくるものもあると思うのです」辻村さん自身は、愛と敬意の両方を持って仕事をする人であることを窺えるエピソードがもうひとつある。『ハケンアニメ!』は2019年に舞台化されているのだが、舞台オリジナルのキャラクターが『レジェンドアニメ!』に登場しているのだ。「私が描ききれなかったアニメーターの感情の機微などまで、原作という設計図通りに表現してくださっていたので、そのときすでに構想していた短編『次の現場へ』に彼らにも“出演”してもらいたくなって。同じように、今度は映画を通して書きたくなるものが、きっとまた出てくるんでしょうね」『ハケンアニメ!』から『レジェンドアニメ!』へ。チームで進めるアニメ制作に対し、小説の執筆は孤独な作業といえるが、辻村さんが抱いている本作の印象はちょっと違う。「自分が書いた話ではあるんですけど、取材させてもらった人が共に大きくしてくれた話なんですよね。しかも映画になることで、旅の仲間がさらに増えていく感じがあって、その人たちからもらった影響が、また原作に返ってくる。10年前、心細い気持ちで最初の取材をさせてもらったクリエイターの方たちが、今回、劇中アニメの制作に関わってくれているのも感無量です。とても幸運な小説だと思っています」辻村深月『レジェンドアニメ!』いつかの仲間がライバルになり、その逆もしかりのアニメ制作現場。おなじみのキャラクターの別の一面を楽しみつつ、再び熱い思いが湧き上がる。書き下ろしを含む6作品を収録。3月3日発売。マガジンハウス1760円辻村深月『ハケンアニメ!』アニメ業界の舞台裏を描いたお仕事小説。『レジェンドアニメ!』を読んでから再読すると、また発見が!マガジンハウス968円5月20日公開!映画『ハケンアニメ!』も待ちきれません!アニメの力を信じ、チャンスを掴んだ新人監督・斎藤瞳を吉岡里帆、彼女を振り回すプロデューサー・行城理を柄本佑、崖っぷちに立たされた天才監督・王子千晴を中村倫也、王子の才能に人生を懸けるプロデューサー・有科香屋子を尾野真千子が熱演。彼らが作る劇中アニメ『運命戦線リデルライト』と『サウンドバック 奏の石』のプロットを辻村さんが手がけ、制作にはProduction I.Gをはじめ、日本を代表するトップクリエイターが参加。声優陣も豪華!監督/吉野耕平脚本/政池洋佑出演/吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子ほか5月20日より全国公開。©2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会つじむら・みづき小説家。2004年、「冷たい校舎の時は止まる」でデビュー。’12年『鍵のない夢を見る』で直木賞受賞。’18年『かがみの孤城』で本屋大賞を受賞。近著に初の本格ホラーミステリー長編『闇祓』。※『anan』2022年3月9日号より。写真・土佐麻理子(辻村さん)中島慶子(本)インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2022年03月07日いくつになっても青春の楽しさを味わいたいものですが、そんな欲求に応えてくれる1本といえば、アニメ映画『ブルーサーマル』。上昇気流に乗って空を飛ぶ航空機・グライダーというスポーツを通じて成長し、恋愛や友情に悩む若者たちの姿が幅広い層から共感を集めています。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。堀田真由さん【映画、ときどき私】 vol. 463“ネクストブレイク必至”として注目を集め、現在は女優、モデルとして活躍している堀田さん。本作では、キラキラな大学生活を夢見ている一生懸命な主人公の都留たまきを演じ、声優に初挑戦しています。今回は、声優として味わった苦労や学生時代の思い出、そしてこれからのことについて語っていただきました。―以前から声のお仕事をやってみたいと思われていたそうですが、そう考えるようになったきっかけはありましたか?堀田さん自分ではあまり意識していませんでしたが、周りの方から声をほめていただくことが多く、自分の声に対する“気づき”があったのがはじまりでした。そこからいつかアニメーションやナレーションといった声のお仕事ができたらいいなと。そんななかで、この作品のことを知り、ぜひ私も参加したいと思ってオーディションを受けることにしました。―オーディションの前に、特別な準備などもしましたか?堀田さん家でセリフの練習はしましたが、ほかに何をしたらいいのかまったくわからなかったので、とにかくフラットでいることを意識しました。あとは、『ブルーサーマル』のタイトルに合わせて、願掛けでブルーのセーターを着ていったくらいですね(笑)。全部にぶつかっていく思いで挑んだ―実際、手ごたえを感じる瞬間もありました?堀田さんそこで自分ができることは精一杯できたかなとは思います。ただ、役が決まってからは周りが声優の方々ばかりだったので、「私で大丈夫なんだろうか」と不安になったことも。でも、やり始めたらすごく楽しかったので、いまはまたぜひやりたいという気持ちでいっぱいです。―演じるうえで苦労したのは、どのあたりでしょうか。堀田さん普段、私は関西弁を使っていますが、長崎弁は話したことがなかったので、本当に大変でした。声優が初めてなうえに、方言も初めてでまさにダブルパンチ。そんななかでも、いろいろな練習をしたり、現場で教えていただいたりしながらできるようになっていった感じです。あとは、テクニック的なことよりも、一生懸命なたまきの気持ちがしっかりと伝わればいいなと。わからないことだらけでしたが、「全部にぶつかっていこう!」くらいの思いで挑みました。―初めてのアフレコ現場ということで、驚いたこともあったのではないかと思いますが。堀田さんそうですね。いつもはすべてのセリフを頭に入れた状態で現場に行くので、台本を見ながらお芝居をする感覚は不思議でした。台本の持ち方から立ち方、ページをめくるタイミングまでびっくりすることはたくさんありましたが、いろいろと学ぶことは多かったです。努力していれば、無駄になることはない―ご自身もたまきと同じように、10代で滋賀から単身で上京を経験されています。演じるうえで、当時のことを思い出すこともあったのでは?堀田さん私の場合は、夢を叶えるために出てきたので、そのとき抱えていた思いはたまきとは少し違うかもしれませんが、「人生は何があるかわからないな」という気持ちは近いと感じました。―たまきは偶然の出会いから思いがけない方向へと人生が進んで行きますが、ご自身にも似た経験があったということですか?堀田さん私は自分の意志でこの仕事を選びましたが、最初は受かると思っていなかったので、「とりあえずオーディションに行ってみよう」くらいの感覚でした。ただ、そのときにいまのマネージャーさんが私を見つけてくれたおかげで、人生が大きく変わったと感じています。―とはいえ、その過程でくじけそうになったことはないのでしょうか。堀田さんいまはいろいろなことを考えてしまいますが、10代のときのほうが怖いもの知らずでしたね(笑)。ただ、たとえ夢が叶わなかったとしてもちゃんと努力をしていれば、絶対に無駄になることはないと昔から思っていたので、ダメ元でもオーディションに向けて準備することが大事だといつも考えていました。おいしいご飯を食べているときが一番幸せ―そういう積み重ねがいまに繋がっているんですね。では、青春の思い出といえば?堀田さん昔は美容にもあまり興味がなかったので、日焼けで真っ黒な“スポーツ女子”みたいな感じでした(笑)。高校生になってからは、学業とレッスンと現場をかけ持っていたので、いま思うとある意味あのときが青春だったなと思います。―本作では、空の映像も圧巻でしたが、実際にグライダーで飛んでみたい場所はありますか?堀田さん地元である琵琶湖や自分が住んでいた街の上を飛んでみたいですね。とはいえ、実は高いところが苦手で、飛行機もあまり得意ではないんですけど……。ただ、映像として完成したものを観たときは、乗ってみたいなと思いました。―劇中でブルーサーマルをつかまえると幸せになれると言われていましたが、いま堀田さんが幸せを感じる瞬間は?堀田さん仕事をしているときやクランクアップの瞬間は幸せですが、やっぱり一番は、そのあとにおいしいご飯を食べているときです(笑)。最近は、韓国料理にハマっています。大切なのは、疲れを次の日に持ち込まないこと―とはいえ、やはり体のことを気遣った食生活などを送っているのでしょうか。堀田さんモデルのお仕事もしているので、「ちゃんとしなきゃ」とは思うんですけど、実はまったく何も意識していなくて……。とにかくいまを楽しみたいという気持ちのほうが強いので、ついいっぱい食べてしまいます(笑)。―では、その代わりに美容法として毎日していることがあるとか?堀田さんどれだけ忙しくても、湯船にはちゃんと浸かるようにしています。その日の疲れはその日のうちに取りたいので、湯船でしっかりとリラックスするというのは続けていることです。というのも、なるべく次の日に持ち込まないというのは大事だなと思うので。悩みを抱え込んでしまいそうなときは、ドラマや映画を観たり、小説を読んだりして、一旦違う世界に行くように心がけています。あとは、なるべくひとりの時間を作ること。自分自身と対話しながら、いまどういうコンディションなのかをチェックするように意識しています。寝る前にその日あったいいことを考えることもありますが、そんなふうに前向きな気持ちで寝るのもオススメです。この作品が何かのきっかけになってほしい―それなら誰でもすぐに実践できそうですね。今回は声優に初挑戦しましたが、これから挑戦したいことを教えてください。堀田さん長く仕事を続けていると、だんだん初めてのことが少なくなってきますが、最近楽しかったのは、ラジオのゲストに初めて呼んでいただいたときのこと。「やっぱり私は声のお仕事が好きなんだなぁ」と改めて感じたので、これからも声を使ったお仕事をもっとしていけたらいいなと思っています。―それでは最後に、ananweb読者へのメッセージをお願いします。堀田さんいまは前向きな気持ちになれないときもあるかもしれませんが、エンターテインメントに救われることもあるので、この作品がみなさんにとって何かのきっかけになってもらえたらいいなと思っています。映像もとてもキレイなので、ぜひ映画館でご覧いただきたいです。インタビューを終えてみて……。たまき同様に笑顔がステキで、何事にも一生懸命なところが伝わってくる堀田さん。劇中では、声優初挑戦とは思えない見事なハマりっぷりを見せています。透明感がありながら、お茶目さもある魅力的な声にぜひ注目です。どこまでも飛んでいける可能性を感じる!「スポーツ・恋愛・青春」の三拍子に加え、まるで空を飛んでいるかのような美しい映像も満喫できる本作。もがきながらも前に進もうとする主人公たちから、自分を信じて飛び出す勇気をもらえるはず。あなたも幸せになれる風に乗って、どこまでも遠くへ飛んでみては?写真・山本嵩(堀田真由)取材、文・志村昌美ドレス¥148,500、ジャケット¥137,500、シューズ¥80,300/すべてPlan C(パラグラフ03-5734-1247)ストーリー「キラキラな恋がしたい!」と普通の大学生活に憧れて長崎から上京した都留たまき。ひょんなことから体育会航空部の雑用係をすることになってしまう。思い描いていた大学生活とかけ離れた環境に不満を抱いていたが、主将の倉持が操縦するグライダーで空に飛び立った瞬間から、その世界に魅了されていく。気がつけば、ともに練習に励む先輩や同期との間にも固い絆が生まれていた。そんななか、仲たがいしていた姉や強力なライバルがたまきの前に現れる。果たしてたまきは“幸せになれる風=ブルーサーマル”を捕まえることができるのか……。吸い込まれるような予告編はこちら!作品情報『ブルーサーマル』出演:堀田真由島﨑信長榎木淳弥小松未可子小野大輔白石晴香大地葉村瀬歩古川慎高橋李依八代拓河西健吾寺田農原作:小沢かな『ブルーサーマル―青凪大学体育会航空部―』(新潮社バンチコミックス)監督:橘正紀脚本:橘正紀高橋ナツコ主題歌:「Blue Thermal」SHE’S(ユニバーサル ミュージック)挿入歌:「Beautiful Bird」SHE’S(ユニバーサル ミュージック)アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム製作:「ブルーサーマル」製作委員会3月4日(金)全国公開配給:東映映画公式Twitter/Instagram:@eigabluethermal© 2022「ブルーサーマル」製作委員会写真・山本嵩(堀田真由)
2022年03月03日TVアニメをきっかけに一躍国民的人気作となった、呪術師の物語『呪術廻戦』。アニメの前日譚『劇場版 呪術廻戦 0』が絶賛公開中。同じ呪術高専を舞台にしながらも、異なる時間軸や主人公によって描かれているTVアニメシリーズと劇場版――。ここでは2作品の相関関係を解説します。TVを見てから『劇場版 呪術廻戦 0』を観る人も、映画を観てからTVを見る人も、これさえ見れば一気にそれぞれの世界観を把握できるはず!劇場版の世界TVアニメシリーズ『呪術廻戦』の約1年前を描き、今作の主人公・乙骨憂太はTV版の主人公・虎杖悠仁の先輩にあたる。敵である夏油傑、高専の教師・五条悟ほか、共通のキャラが多数登場。呪詛師夏油と、彼が「家族」と呼ぶ夏油一派に属する呪詛師たち。非術師を大量虐殺しようと百鬼夜行を企て、呪術高専に宣戦布告する。仲間の呪詛師は、外国人から学生まで個性様々。呪術高専東京校五条の導きで呪術高専に編入した乙骨は、同級生である真希、棘、パンダと共に五条のもとで学ぶ。そこに現れた夏油たち呪詛師の計画を止めるべく命がけの戦いを行うことに。『劇場版 呪術廻戦 0』強大な力を持った特級過呪怨霊・里香に憑りつかれ、苦しんでいる高校生の乙骨憂太。教師である五条 悟は、自身が教鞭を執る東京都立呪術高等専門学校に彼を編入させるが…。大人気TVアニメ『呪術廻戦』の前日譚であり原点となる、愛と呪いの物語。©2021「劇場版 呪術廻戦 0」製作委員会©芥見下々/集英社©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会全国東宝系にて絶賛公開中。原作:「呪術廻戦0 東京都立呪術高等専門学校」芥見下々(集英社 ジャンプ コミックス刊)監督:朴 性厚脚本:瀬古浩司キャラクターデザイン:平松禎史副監督:梅本 唯制作:MAPPATVアニメの世界平凡な高校生ながら、特級呪物である「両面宿儺の指」を食べたことをきっかけに、呪術師の道を歩むことになった虎杖悠仁が主人公。彼の呪いをめぐる戦い、成長する姿を中心に描く。呪詛師+呪霊呪詛師呪霊と結託して呪術高専を襲撃したり、両面宿儺および虎杖を仲間に引き込もうとするなど、暗躍する夏油。その目的は不明。額に傷痕がある。呪霊「人間は滅ぶべき、この世から排除すべき」という共通の思想を持ち、夏油と行動を共にしている個性的な呪霊たち。真人、漏瑚、花御は、いずれも特級呪霊である。呪術高専東京校1年生虎杖は、五条が受け持つ1年生のクラスに編入する。善人救済に重きを置く優秀な伏黒や、排他的な地元から上京してきた勝ち気な性格の野薔薇が同級生となる。2年生真希、棘、パンダは、TVアニメシリーズでは2年生に。京都姉妹校交流会をはじめ、1年生と共に戦い、時にサポートをすることも。なお、乙骨は海外にいる。教師&引率五条は呪術高専東京校1年の担任。七海は、呪術高専を卒業後、一般企業に勤めるものの呪術界に出戻った呪術師。五条に頼りにされ、生徒たちのフォローも行う。TVアニメ『呪術廻戦』呪いを祓うべく呪いを宿すことを選んだ虎杖悠仁の戦いと、壮絶な物語を描く。TVアニメシリーズは現在24話まで放送。ABEMA、Amazon Prime Video、dTV、FOD、Hulu、Netflix、U‐NEXTをはじめ、各動画配信サービスで配信中。劇場版を理解するための、必須用語をざっくり復習。呪いにまつわる用語など、耳慣れない言葉が飛び交う今作。ここでは、最低限押さえておきたい12個の頻出ワードを解説します。作品の世界にスムーズに入り込むために役立つはず。呪術高等専門学校じゅじゅつこうとうせんもんがっこう呪術師を育成することを目的とした4年制の対呪い専門機関で、呪いのことや呪いを祓う方法などを学ぶ場所。東京校と京都校があり、多くの呪術師が卒業後も活動の拠点としている。呪いのろい辛酸、後悔、恥辱といった人間の負の感情から誕生したもの。形を成した呪いは「呪霊」と呼ばれる。日常に存在し、人間を攻撃して死に追いやるケースも。呪いは呪いでしか祓うことができない。呪言師じゅごんし呪力を込めた言葉を放ち、相手に言葉通りの行動を強制的にとらせる術式「呪言」を使う人。狗巻棘がこれに当たり、不用意に呪わないよう、おにぎりの具で会話する。呪言の強さに応じて自身に反動がある。呪具じゅぐ呪いの力が込められた武具の総称。禪院真希は呪具を操って戦う「呪具使い」である。呪術師と同様、威力や効果によって等級がある。劇場版では、真希が使う大刀が該当する。等級とうきゅう呪いの威力や効果によってつけられたランクのことで、呪術師や呪霊、呪具の力を表している。通常は1~4級だが、特殊な効果が付与されたり絶大な威力を誇るものは、特級に分類される。秘匿死刑ひとくしけい秘密裏に行われる処刑のこと。乙骨は秘匿死刑の判決を受けているが、五条の力により即時執行を免れている。帳とばり呪術師や呪霊を外から見えなくして呪いをあぶり出す、ドーム状の黒い結界。非術師には認知できない。「闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え」と唱え発動。呪術師じゅじゅつし呪術を使い呪霊を祓う役割を担う者たちの総称。使用する呪術は人によってさまざま。その力の大きさで等級に分けられ、最高位は1級である。五条をはじめとする特級は異常事態とされている。呪詛師じゅそし事件を起こしたり、人を殺めるなど、呪術を使って非術師に危害を加える者のことを指す。呪術師と対立しており、なかには呪術界に対して反旗を翻す者もいる。呪骸じゅがい内側に呪いを宿して自立できる、無生物の総称。人工的に誕生した呪骸は、「核」という心臓のようなものを持つ。特定の術式はなく、戦闘の場面では、呪骸としてもともと備わった力を駆使している。術式じゅつしき呪いを祓うために呪術師が使うスキル。内容は人によりさまざまだが、基本的に生まれながらにして体に刻まれた先天的なもので、後から会得することは不可能。そのため呪術師の実力は才能が8割といわれる。御三家ごさんけ呪術界で高い地位と権力を誇る歴史ある3つの名門家系のことで、禪院家・加茂家・五条家を指す。代々、血筋によって伝わる術式を受け継ぎ、才能がない者は冷遇されてしまう場合も。※『anan』2022年2月2日号より。取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2022年01月30日